弟子规
これは聖人が残した教えである。まず孝を説き、つぎに慎みと信を説く。底本はここに脱文の疑いがある。
儒家典籍
初学は四書から入るのがよい。大学が綱を立て、論語が言を記し、孟子が展開し、中庸が収束する。続いて詩経・尚書・礼記と春秋三伝へ。荀子・春秋繁露・近思録・伝習録は、経学の外で儒学がどう語られてきたかを見る几道である。
総序
弟子規、聖人訓、首孝、次謹信
これは聖人が残した教えである。まず孝を説き、つぎに慎みと信を説く。底本はここに脱文の疑いがある。
愛眾、而親仁、有餘力、則學文
広く衆人を愛し、仁徳のある人に親しむ。さらに余力があれば、典籍を学習する。底本はここに脱文の疑いがある。
入れば孝
父母呼、應勿緩、父母命、行勿懶
父母が呼んだら、応える声を遅らせてはならない。父母が言いつけたら、動くことを怠けてはならない。
父母教、須敬聽、父母責、須順承
父母の教えは恭しく聞き、父母の責めには順って受け入れなければならない。
冬則溫、夏則凊、晨則省、昏則定
冬は父母を温かくし、夏は涼しくする。朝は安否を問い、夜は彼らをちゃんと休ませる。
出必告、反必面、居有常、業無變
外出すれば必ず報告し、家に帰れば必ず顔を見せる。起居に常があり、為すことを勝手に変えない。
事雖小、勿擅為、苟擅為、子道虧
事は小さくても、勝手に決めてはならない。勝手に決めれば、子女の本分を欠く。
物雖小、勿私藏、苟私藏、親心傷
ものは小さくても、私かくしてはならない。私かくせば、父母が知って心を痛める。
親所好、力為具、親所惡、謹為去
父母が好むものは力を尽くして調え、父母が嫌うものは慎んで取り除く。
身有傷、貽親憂、德有傷、貽親羞
身体に傷を受ければ父母を憂えさせ、徳行に欠けがあれば父母に恥をかかせる。
親愛我、孝何難、親憎我、孝方賢
父母が私を愛してくれれば、孝は何が難しかろう。父母が私を嫌ってもなお孝できるのが賢である。
親有過、諫使更、怡吾色、柔吾聲
父母に過失があれば、改めるよう勧める。勧める時は和顔悦色で、声は柔和にする。
諫不入、悅復諫、號泣隨、撻無怨
勧めても聞かなければ、喜んでいる時を待って再び勧める。泣いて懇願しても勧め、打たれても怨まない。
親有疾、藥先嘗、晝夜侍、不離床
父母が病気になったら、湯薬をまず自ら口にしてから差し出す。日夜見守り、病床を離れない。
喪三年、常悲咽、居處變、酒肉絕
三年の喪に服し、常に悲しみ咽ぶ。起居を簡素に改め、酒肉をすべて断つ。
喪盡禮、祭盡誠、事死者、如事生
喪を尽くして礼にかない、祭を尽くして誠にかなう。亡き父母に仕えることは、存命中と同じようにする。
出れば弟
兄道友、弟道恭、兄弟睦、孝在中
兄が弟を友愛し、弟が兄を恭敬する。兄弟が和むこと、それが孝のうちにある。
財物輕、怨何生、言語忍、忿自泯
財物を軽く見れば、怨みはどこから生まれよう。言葉に忍譲があれば、怒りは自ずから消える。
或飲食、或坐走、長者先、幼者後
飲食であれ座り歩くことであれ、年長の者を先にし、年幼の者を後にする。
長呼人、即代叫、人不在、己即到
長上が人を呼んだら、すぐ代わりに呼びに行く。その人がいなければ、自分がすぐ行く。
稱尊長、勿呼名、對尊長、勿見能
尊長を呼ぶには名を直呼せず、尊長の前では腕前を誇示しない。
路遇長、疾趨揖、長無言、退恭立
道で長上に出会ったら、速く進んで礼をする。長上が言葉を発しなければ、退いて恭しく立つ。
騎下馬、乘下車、過猶待、百步餘
馬に乗っていれば下馬し、車に乗っていれば下車する。長上が過ぎても、なお百歩ほど待つ。
長者立、幼勿坐、長者坐、命乃坐
長上が立っていれば、末輩は坐らない。長上が坐り、坐れと言われてから坐る。
尊長前、聲要低、低不聞、卻非宜
尊長の前では話し声を低くする。しかし聞こえないほど低くても、またよくない。
進必趨、退必遲、問起對、視勿移
進むには必ず速く、退くには必ず从容とする。問いには起き上がって答え、目をそらさない。
事諸父、如事父、事諸兄、如事兄
伯父叔父に仕えることは父に仕えるようにし、一族の兄に仕えることは実兄に仕えるようにする。
謹
朝起早、夜眠遲、老易至、惜此時
朝は早く起き、夜は遅く寝る。人は老いやすいので、光陰を惜しむべきである。
晨必盥、兼漱口、便回、輒淨手
朝は必ず顔を洗い、さらに口をすすぐ。便所から帰ったら、手を洗い清める。底本はここに脱文の疑いがある。
冠必正、紐必結、襪與履、俱緊切
帽子は正しくかぶり、紐釦はきちんと結ぶ。襪と靴は、どちらもぴったり履く。
置冠服、有定位、勿亂頓、致汙穢
帽子や衣服を置くには決まった場所がある。乱雑に放り投げて、汚く散らかしてはならない。
衣貴潔、不貴華、上循分、下稱家
衣服は清潔を貴び、華麗を貴ばない。上は身分に合い、下は家の境遇に合うようにする。
對飲食、勿揀擇、食適可、勿過則
飲食に対しては好き嫌いせず、適当に食べればよく、過度にしてはならない。
年方少、勿飲酒、飲酒醉、最為醜
年がまだ若いうちは酒を飲むな。酒に酔うのは、最も醜いものである。
步從容、立端正、揖深圓、拜恭敬
歩くことは从容とし、立つことは端正にする。揖は深く円くし、拜は恭しくする。
勿踐閾、勿跛倚、勿箕踞、勿搖髀
敷居を踏んではならず、身を傾げて凭れてはならない。股を開いて坐るな、腿を揺さぶるな。
緩揭簾、勿有聲、寬轉彎、勿觸稜
廉を上げるにはゆっくりとし、物音を立ててはならない。曲がり角は余裕を残し、角にぶつかるな。
執虛器、如執盈、入虛室、如有人
空の器皿を持つ時は、満ちたものを持つように慎む。空の部屋に入る時は、中に人がいるようにする。
事勿忙、忙多錯、勿畏難、勿輕略
事をするに慌ててはならない。慌てれば間違いが多くなる。難を恐れず、また軽率に侮ってもならない。
鬥鬧場、絕勿近、邪僻事、絕勿問
喧嘩騒ぐ場には、絶対に近づいてはならない。邪僻不正のことは、絶対に聞き入れてはならない。
將入門、問孰存、將上堂、聲必揚
門に入ろうとしたら、まず誰がいるか声をかける。堂に上ろうとしたら、声を必ず先にあげる。
人問誰、對以名、吾與我、不分明
人が誰かと問うたら、自分の名を答える。ただ「私だ」と言うだけでは、聞き分けられない。
用人物、須明求、倘不問、即為偷
人のものを使うには、必ずはっきりと求めなければならない。もし問わなければ、それは盗みである。
借人物、及時還、
人のものを借りたら、期日通りに返す。底本はここに脱文の疑いがある。
信
凡出言、信為先、詐與妄、奚可焉
およそ口を開いて言うことは、誠信を第一にする。欺詐や出まかせは、どうしてよかろうか。
話說多、不如少、惟其是、勿佞巧
言葉を多くするのは、少なくするのに及ばない。ただ言うことが正しければよく、飾り言葉にしてはならない。
奸巧語、穢汙詞、市井氣、切戒之
奸猾で小賢しい言葉、汚秽で下品な言い草、市井の無頼の気風は、すべてきちんと戒めなければならない。
見未真、勿輕言、知未的、勿輕傳
まだよく見えないことは、軽々しく口にしない。まだ確かでないことは、軽々しく伝えない。
事非宜、勿輕諾、苟輕諾、進退錯
事が合宜でなければ、軽々しく承諾しない。いったん軽々しく承諾すれば、進退ともに難しくなる。
凡道字、重且舒、勿急疾、勿模糊
およそ字を吐くには、清楚で舒緩にする。急いで速くせず、また曖昧にしてもならない。
彼說長、此說短、不關己、莫閒管
あの者は人の長を言い、この者は人の短を言う。自分に関係なければ、余計なおせっかいをしてはならない。
見人善、即思齊、縱去遠、以漸躋
人に善行があるのを見れば、彼に倣おうと思う。たとえ隔たりが遠くても、一歩一歩追いつく。
見人惡、即內省、有則改、無加警
人の悪行を見れば、自分を反省する。あれば改め、なければ一層戒める。
唯德學、唯才藝、不如人、當自
徳行と学問、才幹と技芸が人に及ばなければ、自らが……。底本はここに脱文の疑いがある。
若衣服、若飲食、不如人、勿生戚
衣服や飲食が人に及ばないとしても、そのために心を憂えてはならない。
聞過怒、聞譽樂、損友來、益友卻
過失を聞けば怒り、称賛を聞けば喜ぶなら、損友が寄って来て、益友はかえって退く。
聞譽恐、聞過欣、直諒士、漸相親
称賛を聞けば戒め恐れ、過失を聞けば喜ぶなら、正直で誠信の人がだんだん親しくなる。
無心非、名為錯、有心非、名為惡
意図なく誤ることを過ちという。意図して誤れば、それは悪である。
過能改、歸於無、倘飾、增一辜
過ちあって改めれば、過ちがないに等しい。もし隠せば、また一重の罪を添える。底本はここに脱文の疑いがある。
衆を愛す
凡是人、皆須愛、天同覆、地同載
およそ人は、愛すべきである。同じ天の下、同じ地の上にいるのだから。
行高者、名自高、人所重、非貌高
徳行が高い人は、名声も自ずから高い。人が重んじるのは徳行で、外貌ではない。
才大者、望自大、人所服、非言大
才幹が大きい人は、声望も自ずから大きい。人が服するのは才幹で、大言ではない。
己有能、勿自私、人所能、勿輕訾
自分に才があれば、私に隠してはならない。人に才があれば、軽々しく誹毀してはならない。
勿諂富、勿驕貧、勿厭故、勿喜新
富者に諂うな、貧者を慢せず。旧交を厭き捨てず、ただ新しきを喜ばない。
人不閒、勿事攪、人不安、勿話擾
人が忙しい時は、事をもって乱さない。人が具合が悪い時は、言葉をもって煩わさない。
人有短、切莫揭、人有私、切莫說
人に短所があっても、決して暴露しない。人に隠私があっても、決して言い出さない。
道人善、即是善、人知之、愈思勉
人の善を称揚することは、それ自体が善である。その人が知れば、いっそう自ら励む。
揚人惡、即是惡、疾之甚、禍且作
人の悪を張揚することは、それ自体が悪である。あまりに恨めば、かえって禍を招く。
善相勸、德皆建、過不規、道兩虧
互いに善を勧めれば、双方の徳が立つ。過ちを規めないなら、双方の道が損なわれる。
凡取與、貴分曉、與宜多、取宜少
およそ取ることと与えることは、分別を貴ぶ。与えるのは多くし、取るのは少なくすべきである。
將加人、先問己、己不欲、即速已
人に加えようとすることは、まず自分に問うてみる。自分が望まなければ、すぐ手を止める。
恩欲報、怨欲忘、報怨短、報恩長
恩は報い、怨みは忘れる。怨みを記憶するのは短く、恩を報いるのは長く。
待婢僕、身貴端、雖貴端、慈而寬
婢僕に対するには、身が端正であることを貴ぶ。ただし端正を貴びながら、さらに慈愛寛厚でなければならない。
勢服人、心不然、理服人、方無言
勢力で人を屈服させても、人心は服しない。道理で人を説伏せれば、人は言い返せない。
仁に親しむ
同是人、類不齊、流俗眾、仁者
同じ人ではあるが、品類は一様でない。流れに従う者が多く、仁徳のある……。底本はここに脱文の疑いがある。
果仁者、人多畏、言不諱、色不媚
真に仁徳のある人は、衆人が皆彼を畏敬する。彼の言葉は隠諱せず、神色も諂媚しない。
能親仁、無限好、德日進、過日少
仁者に親しむことができれば、利益は言い尽くせない。徳行は日に日に進み、過失は日に日に減る。
不親仁、無限害、小人進、百事壞
仁者に親しまなければ、害は言い尽くせない。小人が隙を見て近づき、百事が敗れる。
余力は文を学ぶ
不力行、但學文、長浮華、成何人
切実に行うことを肯んじず、ただ読書ばかりしては、浮華の気風を長ばせて、どんな人になれよう。
但力行、不學文、任己見、昧理真
切実に行うことばかりして読書しなければ、自分の見解に任せて、真の道理が見えない。
讀書法、有三到、心眼口、信皆要
読書の法に三到がある。心到・眼到・口到、どれも確かに緊要である。
方讀此、勿慕彼、此未終、彼勿起
この一冊を読んでいる間は、あの一冊をうらやむな。この冊が終わらないうちは、あの冊に手を着けるな。
寬為限、緊用功、工夫到、滯塞通
期限はゆったり決め、功を用いるのは緊密にする。工夫が至れば、滞塞のところは自ずから通ずる。
心有疑、隨札記、就人問、求確義
心に疑問があれば、手すきで記しておく。人に会えば教えを請い、確かな意味を求める。
房室清、牆壁淨、几案潔、筆硯正
部屋は清爽にし、壁は清くする。几案は整い、筆硯は正しく置く。
墨磨偏、心不端、字不敬、心先病
墨を偏って磨れば、心が正しくない証である。字を潦草で恭敬なく書けば、心が先に病んでいる。
列典籍、有定處、讀看畢、還原處
書籍を陳列するには、決まった場所がある。読み終わり見終わったら、元の所に戻す。
雖有急、卷束齊、有缺、就補之
急用があっても、書巻を束ねて整える。欠損があれば、それを補修する。底本はここに脱文の疑いがある。
非聖書、屏勿視、蔽聰明、壞心志
聖賢の書でなければ、屏して見ない。そうした書は聡明を蔽い、心志を敗る。
勿自暴、勿自棄、聖與賢、可馴致
自ら暴せず、自ら棄てず。聖人と賢人は、一歩一歩行けば到達できる。
(この段の底本は欠損している)
