太玄经
「玄」に順随せんか――それは渾然として運転し、窮尽無く、端正として天に取法す。陰陽二気は交互に比并し、一つの陽画が一条の統緒を承載し、万物は…
易経易学典籍
術数への応用を目指すなら、まず六十四卦の卦爻辞と《説卦伝》の取象に親しむ。義理を目指すなら《繋辞伝》から入るのがよい。
玄首序
馴乎玄,渾行無窮,正象天。陰陽(土比),以一陽乘一統,萬物資形。
「玄」に順随せんか――それは渾然として運転し、窮尽無く、端正として天に取法す。陰陽二気は交互に比并し、一つの陽画が一条の統緒を承載し、万物は便ち此に依りて各自の形体を取得す。揚雄は《周易》に倣って別に一套の本体を立てる:《易》は「太極」を以て根とし、《太玄》は則ち「玄」を以て根とす;玄は幽深にして見る可からざれども、天地万物の赖以生成し赖以運行する総根源なり。開篇先ず此の大本を立つるは、以下八十一首の推演は皆天道を摹写するに在りて、随意に排布したる符号の遊戯に非ざるを説明せんとするなり。
方州部家,三位疏成。曰陳其九九,以為數生,贊上群綱,乃綜乎名。八十一首,歲事咸貞。
「方」「州」「部」「家」は《太玄》の四重の位次にして、上より下へ層層に分疏し、毎重皆一・二・三の三種の画を用いて区別す:三方は九州を生じ、九州は二十七部を生じ、二十七部は八十一家を生じ、是に於て八十一の「首」有り――「首」は《周易》の卦に相当し、ただ《易》は両爻の相重を以て六十四卦を成し、《玄》は三画の相曇を以て八十一首を成す。陳布せる九九相乗の数、八十一の数は此に由りて生ず。每首の下に九条の「賛」を繋ぐ、「賛」は《易》の爻に相当し、上は綱紀に統摂され、再び総じて首名の下に帰す。八十一首は依次に一年の日辰を分領し、一歳の時序の事は就中皆此に由りて貞定を得る。
玄測序
盛哉日乎,炳明離章,五色淳光。夜則測陰,晝則測陽。晝夜之測,或否或臧。陽推五福以類升,陰幽六極以類降。
太陽は真に盛大なるかな!其の光焰は炳耀して附麗し文章と成り、五色の光輝は純厚にして雑らず。「測」は揚雄が《周易・象伝》に倣って毎賛の為に作りたる断語なり:夜に測る所は陰に属し、白昼に測る所は陽に属す;昼測夜測、あるいは不善と判し、あるいは美善と判す。陽に属する一路は《尚書・洪範》の謂う所の「五福」――寿・富・康寧・攸好徳・考終命――を類に按じて推挙し上昇せしめ;陰に属する一路は則ち「六極」――凶短折・疾・憂・貧・悪・弱――を類に按じて幽抑し下降せしむ。九賛は昼夜に分属す:序数の奇なる首は「陽家」に属し、其の一・三・五・七・九は昼と為す;序数の偶なる首は「陰家」に属し、其の二・四・六・八は昼と為す。昼賛は多く吉、夜賛は多く凶、一賛の休咎は就中此に由りて判定す。
升降相關,大貞乃通。經則有南有北,緯則有西有東。巡乘六甲,輿斗相逢。歷以記歲,而百穀時雍。
上昇と下降の两条の路は互いに関連し彼此相い制約し、大なる貞正の道は始めて貫通を得る。方位に就いて言えば、直なる経線は南有り北有り、横なる緯線は西有り東有り、八十一首は経緯に依りて鋪開し、正しく四方に対す。推し行うに則ち六十甲子――甲子・甲戌・甲申・甲午・甲辰・甲寅の六組の「六甲」――を巡歴し、北斗の斗柄の指す所の月建と相逢会す。一賛は半日を主り、一首九賛は四日半を主り、八十一首は三百六十四日半を合し、再び「踦」「贏」の两条の余賛を加えて一歳を湊足す。之を用いて暦法に編みて以て年を紀れば、百穀は便ち皆時に順い生育し和洽豊熟す。
上巻
第一首 中(冬至)
中:陽氣潛萌於黃宮,信無不在乎中。
「中」は八十一首の首に列し、冬至に値り、一歳最初の四日半を主る。此の時陽気は纔かに「黄宮」――黄は土の色、大地の中央を指し、即ち冬至一陽は地下に生ず――に潜蔵萌動す。生機は確実に発端せざる無くして「中」に在り。全書は「中」を以て開篇す、猶ほ《周易》の《乾》を以て首と為すがごとく、中道は乃ち万事の根本なるを標出せんとするなり。
初一:崑崙磅礴,幽。測曰:崑崙磅礴,思之貞也。次二:神戰於玄,其陳陰陽。測曰:神戰於玄,善惡並也。次三:龍出於中,首尾信,可以為中庸。測曰:龍出於中,見其造也。
初一:崑崙山の如くに渾淪磅礡、混同未分、幽暗の中に処る。測辞に曰く:崑崙磅礡とは、思慮の剛し萌動して能く正を守るなり。九賛の中、一二三は「思」に属し、四五六は「福」に属し、七八九は「禍」に属す;初一は思の最微の処にして、蔵して露わさざるは正しく其の位置に合す。次二:神明は幽玄の中に交戦し、陰と陽の両方を陳列し開く。測辞に曰く:神は玄に戦うとは、善念と悪念と一斉に湧起し、此の時最も自擇せざる可からず。次三:龍は中央より出でて、頭より尾に至るまで皆伸展舒張し、偏倚ならざる「中庸」と称する可し。測辞に曰く:龍の中に出づるは、其の作為已に顕現せるなり。
次四:庳虛無因,大受性命,否。測曰:庳虛之否,不能大受也。次五:日正於天,利用其辰作主。測曰:日正於天,貴當位也。次六:月闕其摶,不如開明於西。測曰:月闕其摶,賤始退也。
次四:地位は卑下し内里空虚にして又拠依する所無く、而も大なる天命を承受せんと欲す、行う可からず。測辞に曰く:卑虚の行う可からざる所以は、器量の此の重任を撑起し得ざればなり;四は「福」の開端にして、根基実ならざれば便ち福を接承し得ず。次五:太陽は正しく天心に当たり、恰好此の時辰を趁て出でて事を主る可し。測辞に曰く:日は天に正しきは、尊貴にして又恰好に位に当たるなり――五は九賛の中に居り、福の最盛の処なり。次六:月は其の円満の団輪を闕き、西辺に余明有るに趁て早く収斂するに如かず。測辞に曰く:月は其の摶を闕くとは、卑下なる者の始めて退譲するなり。
次七:酋酋,火魁頤,水包貞。測曰:酋酋之包,任臣則也。次八:黃不黃,覆秋常。測曰:黃不黃,失中德也。上九:顛靈氣形反。測曰:顛靈之反,時不克也。
次七:気勢は成熟に迫近し将に尽きんとす、火は上に盛んにして魁星の口を張りて呑まんと欲するが如く、水は下に在りて之を包裹し、此の如くして始めて正を得。測辞に曰く:酋酋の包とは、臣下を任用するに法度有るなり――剛烈なる者は須く柔なる者を有して来て収束せしむべし。七は「禍」の起頭にして、能く包容するのみ禍を生ぜざるに至る。次八:本当は中央の黄色たるべきに而も黄を成さず、反って秋令の常道を覆蓋す。測辞に曰く:黄ならざるは、居中の徳を喪失せるなり。上九:頭頂上の霊気は形体と連なりて一斉に反転す。測辞に曰く:顛霊の反とは、時勢已に它を容れて再び持続せしめず;九は禍の極にして、物極まれば必ず反す。
第二首 周(冬至)
周:陽氣周神而反乎始,物繼其匯。
「周」は第二首にして、仍お冬至に値り、冬至後第四日半より第九日に至るを主る。陽気は運行周遍して神妙なり、一圈を繞って又起点の上に返り、万物は便ち各自の族類を接続して継起す。「周」は周而复始の義を取り、《周易》の《復》に近く、天道の循環は直線前行に非ざりて、回還往复なるを説明す。
初一:還於天心,何德之僭,否。測曰:也還心之否,中不恕也。次二:植中樞,周無隅。測曰:植中樞,立督慮也。次三:出我入我,吉凶之魁。測曰:出我入我,不可不懼也。
初一:天の中心に回還す、可なりや自ら何の徳か有りて敢えて此の如く僭越せん、行う可からず。測辞に曰く:天心に回還するの行う可からざる所以は、心中に能く己を推して人に及ぼさざればなり。此の句底本は「測曰:也還心之否」と作す、句首に一つの「也」の字を多出す、当に伝抄の錯簡なるべし、今は照録して改めず。次二:中間の枢軸を立起せば、周転して偏死の角落無し。測辞に曰く:中枢を植うるは、全局を統摂する謀慮を確立せんと欲するなり。次三:我が此より出でて、又我が此に帰り来たる、此処は正しく吉凶の頭脳の在る所なり。測辞に曰く:我に出で我に入るは、戒懼を心存せざる可からず――禍福の起点は全て自身一念に在り。
次四:帶其鉤鞶,錘以玉環。測曰:帶其鉤鞶,自約束也。次五:土中其廬,設其金輿,厥戒渝。測曰:廬金戒渝,小人不克也。次六:信周其誠,上亨於天。測曰:信周其誠,上通也。
次四:帯鉤と皮革の大帯を束上げ、再び玉環を垂掛して之を圧住す。測辞に曰く:其の鉤鞶を帯ぶとは、自己約束なり――四は福の始にして、先ず能く自律し、然る後に福は始めて承得住る。次五:土地の正中に房舎を築起し、又黄金装飾の車子を陳設す、警戒すべきは其の終に変質せんことなり。測辞に曰く:居中の廬と金飾の車とは皆変故を戒備すべし、小人は此の如き盛位に処れば承担し住ること能わず。次六:誠信は周遍し、其の至誠を尽して、上は就中通天に達す。測辞に曰く:信は其の誠を周くすは、上は天に達するなり;六は福の隆にして、此に到りて誠を以て極と為す。
次七:豐淫見其朋,還於蒙,不克從。測曰:豐淫見朋,不能從也。次八:還過躬外,其禍不大。測曰:還過躬外,禍不中也。上九:還於喪,或棄之行。測曰:還於喪,其道窮也。
次七:豊足は頭を過して同類を招来し、回頭して又蒙昧の裏に落ち入り、跟上げて行くこと能わず。測辞に曰く:豊淫に朋を見るは、終に相い随う能わざるなり;七は禍の階にして、盈満の朋を招くは正しく禍の開端なり。次八:回還し経過する所は只自身の外に在るのみ、那の禍患は便ち大と算せず。測辞に曰く:躬の外に還り過ぐるは、禍の要害に撃中せざるなり。上九:回還して却って喪亡の上に帰り、人は索性として之を棄てて去る者有り。測辞に曰く:喪に還るは、此の路は已に尽頭に走り到るなり――周而复始は本是好事なれど、喪地に繞帰れば便ち再び周す可き無し。
第三首 礥(冬至)
礥:陽氣微動,動而礥礥,物生而難。
「礥」は「賢」と読み、艱澀難出の義にして、第三首と為り、仍お冬至に値り、冬至後第九日より第十三日半に至るを主る。陽気は纔かに微微として一動す、一動すれば便ち滞澀艱難、万物は初生の際に在りて最も不易なり。此の首は《周易》の《屯》に相当し、講ずるは生機初起して阻力最大なる那一段なり。底本首名の下に一つの「賢」の字を夾注す、是れ後人の加えたる注音にして、今は正文に録入せず。
初一:黃純於潛,不見其畛,藏鬱於泉。測曰:黃純於潛,化在嘖也。次二:黃不純,屈於根。測曰:黃不純,失中適也。次三:赤子扶扶,元貞有終。測曰:赤子扶扶,父母詹也。
初一:中央の黄色は純正にして深く下に蔵し、其の界畔を見ず、地下の泉水の裏に郁積蘊蔵す。測辞に曰く:黄は潜に純なるは、変化の正に幽深難測の処に醸釀するなり。次二:黄色は純ならず、委屈盤曲して根部に在り。測辞に曰く:黄の純ならざるは、居中にして得当なる分寸を失うなり。次三:初生の嬰児は匍匐して扶行し、大いに貞正を得て能く好結局有らん。測辞に曰く:赤子扶扶とは、父母の旁に在りて看顧扶持する有ればなり――柔弱なる者の成長せんと要するは、先ず拠託を得ざる可からず。
次四:拔我不德,以力不克。測曰:拔我不德,力不堪也。次五:拔車山淵,宜於大人。測曰:拔車山淵,大位力也。次六:將其車,入於丘虛。測曰:將車入虛,道不得也。
次四:我が如き徳無き人を抜挙せんと要するは、光に気力を凭ぐるのみでは弁成し能わず。測辞に曰く:我を抜くも徳あらざるは、力量の此の担子を担起し得ざればなり。次五:山谷深淵の裏に陥れたる車を抜出す、此れは位有り徳有る「大人」に靠らざる可からず。測辞に曰く:車を山淵に抜くは、大位に身居する人のみ此の力を使出し得るなり;五は福の中に居り、艱難の世は正しく此の如き人を等待す。次六:其の車を駕るも、却って荒丘廃墟の裏に駛入す。測辞に曰く:車を将て虚に入るは、路は岔に走り、行う可からず。
次七:出險登丘,或牽之牛。測曰:出險登丘,莫之代也。次八:車不拔,骭軸折。測曰:車不拔,躬自賊也。上九:崇崇高山,下有川波,其人有輯航,可與過其。測曰:高山大川,不輯航不克也。
次七:険地を脱して高丘に登り、人に牛を牽来して拉を助けしむる者有り。測辞に曰く:険を出で丘に登るは、此の力は誰も替代し得ず、終に靠自己に走り出づるを要す。次八:車子は抜き出すこと能わず、小腿骨の如き車軸も亦折断す。測辞に曰く:車の抜けざるは、自己の自ら害うなり。上九:高高たる大山、山下に又江河波涛有り、那人は聯接して排を成し得る舟航を備有すれば、便ち他と一道に之を渡る能し。測辞に曰く:高山大川に面対し、舟を聯ね航を成す準備無ければ過る能わず――艱難の極処に到るは、頼るは預め器具と同行の人とを備えたるに在り。
第四首 閑(冬至・小寒)
閒:陽氣閒於陰,礥然物咸見閒。
「閑」は本は門中の木欄を指し、引申して防閑・阻隔と為す。此れは第四首にして、冬至の末に当たり小寒に交り、冬至後第十三日半より第十八日に至るを主る。陽気は陰気に攔阻せられ、那の艱澀の状は一如として前首の「礥」に如く、万物は皆阻隔を受く。防閑は両面有り:既に外物に挡がるるを是とし、亦自ら其の防を設くるを是とす。
初一:蛇伏於泥,無雄有雌,終莫受施。測曰:蛇伏於泥,君不君也。次二:閒其藏,固珍寶。測曰:閒其藏,中心淵也。次三:關無鍵,舍金管。測曰:關無鍵,盜入門也。
初一:蛇は泥の裏に潜伏し、雌あるのみ雄無く、終に交合施与を得ず。測辞に曰く:蛇の泥に伏するは、君主の君主に似ざるなり――陽出でずして独り陰に任ずれば、上位は便ち主を失う。次二:蔵すべき物を防守せば、珍寶は便ち穏固なり。測辞に曰く:其の蔵を閑くは、心中は深沈して淵の如く、軽く人に示さざるなり。次三:門は関上するも插銷無く、金属の鎖管を棄置して用いず。測辞に曰く:関に鍵無ければ、盗賊は就中門の裏より入り来たる。
次四:拔我輗軏,小得利小徵。測曰:拔我輗軏,貴以信也。次五:礥而閒而,拔我奸而,非石如石,厲。測曰:礥閒如石,其敵堅也。次六:閒黃垁,席金笫。測曰:閒黃垁,以固德也。
次四:我が車轅上の横木を連接する輗と軏とを拆下す、小なる所得有り、小規模の出行に宜し。測辞に曰く:輗軏は車轅と軛と相接する関鍵にして、貴ぶ可き処は人に取信するに在り;関鍵は既に松動せば、便ち只小往のみ能くして大行する能わず。次五:既に艱澀にして又受阻し、我が此の奸邪を抜除せんと欲するに、那の奸邪は石頭に非ざれども石頭の如く硬し、危険有り。測辞に曰く:艱阻磐石の如く堅きは、対手の頑固太だ過ぐるなり。次六:中央の土牆を防守し、金属加固の床板を鋪陳す。測辞に曰く:黄垁を閑くは、以て自らの徳行を穏固ならしむるなり。
次七:跙跙,閒於遽篨,或寢之廬。測曰:跙跙之閒,惡在舍也。次八:赤臭播關,大君不閒,克國乘家。測曰:赤臭播關,恐入室也。上九:閒門以終,虛。測曰:閒門以虛,終不可實也。
次七:脚步は趔趄として行き難く、只粗竹席を以て門戸を遮挡するのみ、あるいは干脆簡陋の棚屋の裏に睡る。測辞に曰く:此の如き勉强の防閑は、毛病の出づるは住処本身の太差なるに在り。次八:血腥腐臭の気は已に関口に散播す、大君は而も防を設けず、敌人は便ち邦国を攻破し卿家を凌奪し得。測辞に曰く:赤臭の関に播するは、其の就中内室に進入せんことを怕るなり。上九:門を一直に関き到底せば、結果は空虚に落得す。測辞に曰く:閑門にして虚なるは、終に充実し起る能わず――一味に防堵すれば、最後に守住するは只是一座の空宅なり。
第五首 少(小寒)
少:陽氣澹然施於淵,物謙然能自韯。
「少」は減損・謙少の義にして、第五首と為り、小寒に値り、冬至後第十八日より第二十二日半に至るを主る。陽気は淡淡として深淵の下に施布し、万物は謙抑自処し、能く自ら削減して過盛ならしめず。此の首は《周易》の《謙》に近く、講ずるは陽気尚微の時に少を以て自守すれば、反って積聚する所有るを得るなり。
初一:冥自少,眇于謙。測曰:冥自少,不見謙也。次二:自少不至,懷其恤。測曰:自少不至,謙不誠也。次三:動韯其得,人主之式。測曰:韯其得,其謙貞也。
初一:幽暗の中に自ら減損し、謙抑して細微に見えざるに至る。測辞に曰く:冥然として自ら少にすとは、謙譲を人の見る無き処に做す、此れぞ真の謙なり。次二:自我減損するも而も徹底せず、心裏に還た憂慮を存す。測辞に曰く:自ら少にして至らざるは、謙の誠懇ならざるなり。次三:一たび挙動有れば便ち先ず自己の所得を削減す、此れは君主の応有の法式なり。測辞に曰く:所得を削減すとは、正しく謙にして正を得るなり。
次四:貧貧,或妄之振。測曰:貧貧妄振,不能守正也。次五:地自沖,下於川。測曰:地自沖,人之所聖也。次六:少持滿,今盛後傾。測曰:少持滿,何足盛也。
次四:貧に貧を加え、人は便ち胡乱に人に求めて賑済せられんとす。測辞に曰く:貧にして妄に賑済を求むるは、正道を守住し得ざるなり。次五:大地は自ら虚に居り、甘んじて江河の下方に処る。測辞に曰く:地の自ら沖なるは、正しく人の奉りて神聖と為す所なり――最も能く容納する者は、恰恰として最も低下なるなり。次六:一点の謙少の心に靠りて盈満を守持す、眼下は盛なりと雖も、往後は必ず傾かん。測辞に曰く:少にして満を持つは、此の如き盛は何処に盛と算さんや。
次七:貧自究,利用見富。測曰:貧自究,富之聘也。次八:貧不貧,人莫之振。測曰:貧不貧,何足敬也。上九:密雨溟沐,潤於枯瀆,三日射谷。測曰:密雨射谷,謙之敬也。
次七:貧困に安んじて自身を極処に修治す、此の如くして反って富足を見るに利あり。測辞に曰く:貧にして自ら究むるは、正しく富貴の前に来りて彼を延聘する憑借なり。次八:明明貧困なるに而も貧ならざるを装えば、便ち人の来りて彼を救助するを肯んずる者無し。測辞に曰く:貧にして貧ならずとは、此れ何の敬重すべき有らんや。上九:細密の雨は連綿として沾洒し、乾涸の溝渠を滋潤し、三日之後水気は直に山谷に注す。測辞に曰く:密雨の谷に射るは、謙徳積久して人に敬重せらるるなり――細水の長注は、一時の暴雨に勝れり。
第六首 戾(小寒)
戾:陽氣孚微,物各乖離,而觸其類。
「戾」は乖違・背離の義にして、第六首と為り、小寒に値り、冬至後第二十二日半より第二十七日に至るを主る。陽気の孵育の力は還た微弱、万物は各自乖離して散開し、反って自己の同類に抵触す。天時未だ和せざれば、物情は便ち相戾す――此の一首の講ずるは、分歧と対立の如何に発生し、又如何に收拾するかなり。
初一:虛既邪,心有傾。測曰:虛邪心傾,懷不正也。次二:正其腹,引其背,酋貞。測曰:正其腹,中心定也。次三:戾其腹,正其背。測曰:戾腹正背,中外爭也。
初一:内里は既に空虚にして又偏邪、心は便ち傾覆せんとす。測辞に曰く:虚邪して心傾くは、懐く所は本より正ならざるなり。次二:其の腹を端正し、其の背を牽引し、到底正を得――腹は内心を指し、背は外行を指す。測辞に曰く:其の腹を正すは、心裏先ず定り住るを得るなり。次三:腹裏は乖戾し、背上は却って端正を装う。測辞に曰く:腹に戾り背を正すは、内と外と互相争闘す;表裏一ならざるは、正しく乖離の病根なり。
次四:夫妻反道,維家之保。測曰:夫妻反道,各有守也。次五:東南射兕,西北其矢。測曰:東南射兕,不得其首也。次六:準繩規矩,不同其施。測曰:準繩規矩,乖其道也。
次四:丈夫と妻子とは各々相反の道を行い、反って一家の保全と成る。測辞に曰く:夫妻の道に反るは、各自其の本分を守住するなり――一は外を主り一は内を主り、方向は相背するも職分は相成す。次五:東南方に向かい犀牛を射るも、箭は却って西北に飛び去る。測辞に曰く:東南に兕を射るは、其の頭に射中らざるなり;用力の方向は目標と相違し、全然落空す。次六:準と縄・規と矩とは、各々其の用处有り、混じて使う能わず。測辞に曰く:準縄規矩は各自其の道に違離す、工具を取り錯えば便ち方円を成す能わず。
次七:女不女,其心予,覆夫諝。測曰:女不女,大可醜也。次八:殺生相午,中和其道。測曰:殺生相午,中為界也。上九:倉靈之雌,不同宿而離失,則歲之功乖。測曰:倉靈之雌,失作敗也。
次七:女子は女子の本分を守らず、一心只だ外人に給与せんと想うのみ、丈夫の謀慮を顛覆す。測辞に曰く:女の女ならざるは、大いに羞恥すべき事なり。次八:粛殺と生長の両股の力量は交午相錯し、其の中和を取れば便ち正道なり。測辞に曰く:殺生の相い午たるは、「中」を以て両者の界限と為す;刑と徳とは相反すれども、中道の上に於て相済す。上九:東方蒼霊の神の雌配は、之と同宿せずして離散失所し、一年の農功は便ち乖違せん。測辞に曰く:倉霊の雌の離失は、次序を失い以て敗に致るなり――乖戾して天象までも皆錯位すれば、一歳の事は便ち成す無し。
第七首 上(小寒・大寒)
上:陽氣育物於下,咸射地而登乎上。
「上」は升進の義にして、第七首と為り、小寒の末に当たり大寒に交り、冬至後第二十七日より第三十一日半に至るを主る。陽気は地下に於て万物を養育し、万物は皆地裏より透射出でて向上攀升す。此の首は《周易》の《升》に近く、説くは下より上への進取にして、亦升進は必ず根有らざる可からざるを提醒す。
初一:上其純心,挫厥鏩鏩。測曰:上純其心,和以悅也。次二:上無根,思登於天,谷在於淵。測曰:上無根,不能自活也。次三:出於幽谷,登於茂木,思其珍榖。測曰:出谷登木,知方向也。
初一:純一の心を以て上に向かい、先ず那の鋒鋭急切の勢頭を挫去す。測辞に曰く:上は其の心を純にするは、和順喜悦の態度を用いて上進し、衝撞に靠らざるなり。次二:上に向かうも而も根無く、一心に天上に登らんと想うも、之を養う穀物は還た深淵の裏に留まる。測辞に曰く:上に根無きは、自己の活き下る能わざるなり;升進して本無ければ、高きほど危し。次三:幽深の山谷の裏より出でて、茂密の樹木に登り、彼処の珍美の果実を惦記す。測辞に曰く:谷を出で木に登るは、方向を辨明するを懂得するなり。
次四:即上不貞,無根繁榮,孚虛名。測曰:即上不貞,妄升也。次五:鳴鶴升自深澤,階天不作。測曰:鳴鶴不作,有諸中也。次六:升於堂,顛衣到裳,廷人不慶。測曰:升堂顛到,失大眾也。
次四:一味に上進して正を守らず、根無きに枝葉は繁茂し、取得するは只是虚名のみ。測辞に曰く:即ち上りて貞ならざるは、妄自に升進するなり。次五:鳴く鶴は深沢の中より飛起し、天を以て階梯と為して而も刻意して造作せず。測辞に曰く:鳴鶴作らざるは、徳は確実に心中に在り、自然而然として就中升り上がるなり。次六:庁堂の上に升到るも、上衣と下裳と顛倒穿反し、満朝の人は皆彼の為に慶賀せず。測辞に曰く:堂に升りて顛倒するは、大衆の心を失うなり;位升りて儀を失えば、衆人は服せず。
次七:升於顛臺,或拄之材。測曰:升臺得拄,輔拂堅也。次八:升於高危,或斧之梯。測曰:升危斧梯,失士民也。上九:棲於菑,初亡後得基。測曰:棲菑得基,後得人也。
次七:高台の頂に登上り、木材有りて之を撑住す。測辞に曰く:台に升りて支柱を得るは、輔佐匡正の人の牢靠なるなり。次八:又高きも険なる所に升り、却って人有りて斧頭を以て彼の梯子を砍断す。測辞に曰く:危に升りて梯を斧すは、士人と百姓の擁護を失うなり。上九:開墾済みの灾荒の地に棲息し、起初は一无所有なりしも、後来却って基業を打下す。測辞に曰く:菑に棲みて基を得るは、後来人心を得たるなり――荒地の基業と成り得るは、靠るは正しく人に在り。
第八首 干(大寒)
乾:如人鑽乎堅,鉿然有穿。
「干」は干求・干進の義にして、第八首と為り、大寒に値り、冬至後第三十一日半より第三十六日に至るを主る。它は人の堅硬の物を钻鑿するに似て、鉿然一声すれば便ち穿透して過ぐ。他の首辞は多く陽気より説き起す、此の首は独り譬喻を取り、説くは求取と進言と皆一股の钻透の劲に凭る要るなれども、此の劲を何処に用うるかは、則ち正有り邪有り。
初一:丸鑽鑽於內隙,厲。測曰:丸鑽於內,轉丸非也。次二:以微幹正,維用軌命。測曰:以微幹正,維大諫微也。次三:箝鍵挈挈,匪貞。測曰:箝鍵挈挈,乾祿回也。
初一:円滑の钻头を拿して内里の縫隙を钻む、危険なり。測辞に曰く:内裏に钻むは、丸珠を転弄するが如き投機は是ならず;内部より钻営すれば、路子は先ず就中邪なり。次二:細微の処より入手して正道を干求す、凭るは法度に合する政令なり。測辞に曰く:微を以て正を干るは、大なる諫諍は往往細微の処より発端するなり。次三:門閂を鉗住し死死として提げて放さず、正ならず。測辞に曰く:鍵を箝み挈挈たるは、禄位を干求する手段の迂回太だ過ぐるなり。
次四:乾言入骨,時貞。測曰:乾骨之時,直其道也。次五:蚩蚩,乾於丘飴,或錫之壞。測曰:蚩蚩之幹,錫不好也。次六:乾乾於天,貞馴。測曰:乾乾之貞,順可保也。
次四:進言は干犯して刻骨の程度に至り、正しく其の時に合して正を得。測辞に曰く:直言は骨に入りて適其時に逢うは、道理を挺直して説くなり。次五:憨憨然として一味に求取し、只丘陵上の一点の飴糖の為に、人家は或いは便ち彼に一塊の土坷垃を賞する。測辞に曰く:蚩蚩の干は、賞賜は好からず――所求は卑下なれば、所得も亦卑下なり。次六:孜孜不倦として上は天に干り、貞正にして柔順なり。測辞に曰く:干干の貞は、理に順い行いてこそ保得住るなり。
次七:河戟解解,遘。測曰:河戟解解,不容道也。次八:赤舌燒城,吐水於瓶。測曰:赤舌燒城,君子以解祟也。上九:乾於浮雲,從墜於天。測曰:乾於浮雲,乃從天墜也。
次七:黄河沿岸に林立する戟の如くに処処戒備を張設すも、終究は還た衝撞に遭遇せん。測辞に曰く:河戟解解とは、正道を容下し得ざるなり;戒備森厳にして通ず可き路無し。次八:赤色の口舌は一座の城を焼掉し得、須く瓶の裏の水を用いて之を澆滅すべし。測辞に曰く:赤舌の城を焼くは、君子は此の禍祟を化解するを設法すべし;讒言の害は烈火に甚しく、火を救う具は須く預め備え置くべし。上九:一路攀附干求して浮雲の上頭に到れば、便ち浮雲に随いて天上より墜落す。測辞に曰く:浮雲に干るは、雲に跟いて一同に天上より摔下するなり;凭る所は虚なれば、跌するも亦重し。
第九首 狩(大寒)
狩:陽氣強內而弱外,物咸扶而進乎大。
「狩」は田猟の義にして、第九首と為り、大寒に値り、冬至後第三十六日より第四十日半に至るを主る。陽気は内里強盛にして外表柔弱、万物は皆互相扶持して壮大に走向す。田猟は取有り舍有り、此の首は打猟を借りて物を取るの道を講ず:取るに其の当を得れば便ち身を養う可し、取るに其の当を失えば反って身を傷う。底本首名の下に「爻守」二字を夾注す、是れ後人の字形を描摹したる注記にして、正文に入れず。
初一:自我匍匐,好是冥德。測曰:匍匐冥德,若無行也。次二:熒狩狧狧,不利有攸往。測曰:滎狩狧狧,多欲往也。次三:卉炎於狩,宜於丘陵。測曰:卉炎丘陵,短臨長也。
初一:我が自身より做起し、地に伏して緩行し、喜好する所は那の見えざる暗徳なり。測辞に曰く:匍匐して冥徳なるは、看るに作為無きが如し;真の徳は形跡に顕れず。次二:貪饞に四処囲猟し、舌を伸して舐め止まず、往く所有るに宜しからず。測辞に曰く:此の如き囲猟は、欲望多くして処処皆往かんと欲するなり。賛辞は「熒」と作り而も測辞は「滎」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次三:草木の火は猟場に焼到り、丘陵一帯に在るに宜し。測辞に曰く:卉炎は丘陵なりとは、短小なる者の高長に凌逼するなり;星火燎原、小なる者は反って大なる者を制する能し。
次四:狩於酒食,肥無譽。測曰:狩於酒食,仕無方也。次五:狩有足,託堅榖。測曰:狩有足,位正當也。次六:獨狩逝逝,利小不利大。測曰:獨狩逝逝,不可大也。
次四:一味に酒食の上に於て猟取し、養い得て肥胖なるも好名聲無し。測辞に曰く:酒食に狩るは、官を為すに正路無きなり。次五:田猟して可靠的の脚力有り、堅実の樹木の上に身を托す。測辞に曰く:狩に足有るは、位置正当なり;五は福の中に居り、凭るは実力にして僥倖に非ず。次六:独自一人急急忙として打猟に行く、小事に宜しく大事に宜しからず。測辞に曰く:独狩逝逝とは、大事を成す能わざるなり;孤行の者は力薄し。
次七:白日臨辰,可以卒其所聞。測曰:白日臨辰,老得勢也。次八:蚤蝨之狩,厲。測曰:蚤蝨之狩,不足賴也。上九:全狩,絭其首尾,臨於淵。測曰:全狩之絭,恐遇害也。
次七:白日は高く照り、正しく好時辰に当たり、平生の聞く所学ぶ所を以て了結を作す可し。測辞に曰く:白日の辰に臨むは、年は老うると雖も而も仍お時勢を得るなり。次八:跳蚤・虱子の如くに零碎に猟取す、危険なり。測辞に曰く:蚤虱の狩は、此の小取小奪に靠るは靠不住なり。上九:猟物を整箇捉住し、绳子を用いて其の頭尾を捆起すも、人は却って深淵の辺上に立つ。測辞に曰く:全狩の絭は、恐らく反って害を遭わん;猟獲は既に尽き、処境は已に険地に在り。
第十首 羨(大寒)
羨:陽氣贊幽,推包羨爽,未得正行。
「羨」は溢出・旁出・迂曲して行くの義にして、第十首と為り、大寒に値り、冬至後第四十日半より第四十五日に至るを主る。陽気は幽隠の物を助佑し、推動して之を包裹せしめ、舒展して開朗ならしむれども、還た正路に走上る能わず。羨は「正」と相対し、此の首は道路の曲直を講ず:一時の迂回は未だ必ずしも坏事に非ず、走り成して習慣と為れば便ち帰り来たる能わず。
初一:羨於初,其次迂塗。測曰:羨於初,後難正也。次二:羨於微,克復可以為儀。測曰:羨微克復,不遠定也。次三:羨於塗,不能直如。測曰:羨於塗,不能直行也。
初一:一開頭に就中岔道に走り、接下来は便ち只迂回の路を剩すのみ。測辞に曰く:初に羨するは、往後は糾正し難きなり;歩を起して一分偏れば、後頭は便ち一丈偏る。次二:細微の処に偏出す、能く立刻に帰れば、便ち衆人の表率と為る可し。測辞に曰く:羨は微にして克く復るは、偏ること遠からずして便ち定住するなり。次三:半路の上に偏出せば、便ち直る能わず。測辞に曰く:涂に羨するは、直路に再走る法無きなり。
次四:羨權正,吉人不幸。測曰:羨權正,善反常也。次五:孔道夷如,蹊路微如,大輿之憂。測曰:孔道之夷,奚不遵也。次六:大虛既邪,或直之,或翼之,得矢夫。測曰:虛邪實夫,得賢臣也。
次四:権変を以て偏斜を矯正す、本是好人なるに而も不幸を遭う。測辞に曰く:羨を権正するは、善く反常の処に於て常道を用うるなり;権を行う人は往往先ず委屈を受く。次五:大道は平平坦坦、小路は却って狭窄行き難し、此れ正しく大車の憂患なり。測辞に曰く:大道此の如く平坦なるに、何故に遵行するを肯んぜざる。次六:大なる空虚は已に偏邪せり、人来りて之を扶直し、人来りて之に輔翼す、是に於て正直矢の如き人を得。測辞に曰く:虚邪にして充実を得るは、賢臣を得たるなり。
次七:曲其故,迂其塗,厲之訓。測曰:曲其故,為作意也。次八:羨其足,濟於溝瀆,面貞。測曰:羨其足,避凶事也。上九:車軸折,其衡抈,四馬就括,高人吐血。測曰:軸折吐血,不可悔也。
次七:事情の原委を扭曲し、該走る路を繞遠す、此れは危険の教訓なり。測辞に曰く:其の故を曲ぐるは、刻意做作・別に用心有るなり。次八:脚步を偏出して、道を繞りて溝渠を渡れば、面前は便ち正路なり。測辞に曰く:其の足を羨するは、為に凶険の事を躲開せんが為なり;此の一偏は偏るに理を得たり。上九:車軸は折断し、車衡も亦弯壊し、四匹の馬は绳索に絆住せられ、車上の貴人は血を吐く。測辞に曰く:軸折れ血を吐くは、已に追悔は及ばず;迂曲の極処に到れば、車は毀れ人は傷う。
第十一首 差(大寒・立春)
差:陽氣蠢闢於東,帝由群雍,物差其容。
「差」は差錯・参差の義にして、第十一首と為り、大寒の末に当たり立春に交り、冬至後第四十五日より第四十九日半に至るを主る。陽気は蠢蠢然として東方より開闢出で、天帝は此に由りて衆物を和洽ならしめ、而も万物の形容は各々参差不齐有り。差は両面有り:物性の本より斉ならざるは自然にして、人事上の偏差は則ち須く及早に改正すべし。
初一:微失自攻,端。測曰:微失自攻,人未知也。次二:其所好,將以致其所惡。測曰:其所好,漸以差也。次三:其亡其亡,將至於暉光。測曰:其亡其亡,震自衛也。
初一:一点の小過失有れば便ち自ら責治し、端正なり。測辞に曰く:微失して自ら攻むるは、別人の未だ知らざるに趁て改むるなり。次二:彼の喜好する物は、将に彼の厭悪する結果を招来せんとす。測辞に曰く:其の好む所は、一点点の偏差の慢慢として積成するなり。次三:口裏は常に「快要亡了快要亡了」と念じ、反って光明に走向せん。測辞に曰く:其の亡なん其の亡なんとは、心に震恐を存して能く自我防衛するなり;常に危亡の念を懐くは、正しく危亡を免るるの道なり。
次四:過小善善,不克。測曰:過小善,不能至大也。次五:過門折入,得彼中行。測曰:過門折入,近復還也。次六:大跌,過其門,不入其室。測曰:大跌不入,誠可患也。
次四:只だ小なる善事の上に於て過分に好を求め、反って事を成す能わず。測辞に曰く:小善に過ぐるは、大処に到達し得ざるなり;細節に糾纏すれば、格局は便ち小なり。次五:門口を走り過ぎて又折返りて入る、是に於て那の不偏不倚の中道を得。測辞に曰く:門を過ぎて折れ入るは、偏ること遠からずして便ち返回するなり。次六:一大跤を跌き、自家の門前より経過するも而も自家の屋に進まず。測辞に曰く:大いに跌きて入らざるは、実に人を憂慮せしむ;錯りて家門までも認めざるに至る。
次七:累卵業嶪,懼貞安。測曰:累卵業業,自危作安也。次八:足累累,其步躟躍,輔銘滅麋。測曰:足累累,履過不還也。上九:過其枯城,或櫱青青。測曰:過其枯城,改過更生也。
次七:堆曇の鶏蛋の如くに岌岌として危く、心に畏懼を懐きて正を守れば、便ち危を転じて安と為す能し。測辞に曰く:累卵業業とは、自ら危険を知り、反って安穏を做成するなり。賛辞は「業嶪」と作り而も測辞は「業業」と作す、底本の用字は一ならず、今は照録す。次八:脚步は一歩緊接一歩、走ること跌撞騰躍し、頬骨までも痕を磨出し眉際までも磨没す。測辞に曰く:足の累累たるは、一路錯を踏み過去して而も回頭するを肯んぜざるなり。上九:那座の荒廃の城を走り過ぐるに、城中に却って青青たる新芽の萌出する有り。測辞に曰く:其の枯城を過ぐるは、過錯を改めれば便ち重新に生発し得るなり;差の極処にして改むるを肯んずれば、反って更生の機と成る。
第十二首 童(立春)
童:陽氣始窺,物僮然咸未有知。
「童」は蒙昧未開の義にして、第十二首と為り、立春に値り、冬至後第四十九日半より第五十四日に至るを主る。陽気は剛し頭を探して窺望し、万物は一派童稚の貌にして、皆未だ知覚有らず。此の首は《周易》の《蒙》に相当し、講ずるは無知の時に如何に明を求むるか:既に人来りて開啓するを要し、亦自ら醒むるを肯んずるを要す。
初一:顓童不寤,會我蒙昏。測曰:顓童不寤,恐終晦也。次二:錯於靈蓍,焯於龜資,出泥入脂。測曰:錯蓍焯龜,比光道也。次三:東辰以明,不能以行。測曰:東辰以明,奚不逝也。
初一:愚頑の童子は睡着して醒めず、偏に又我が蒙昧昏暗の時に撞上す。測辞に曰く:顓童寤めざるは、怕るらくは一直に昏暗して到底せん。次二:霊験の蓍草を錯雑布列し、亀甲を灼焼して其の兆紋を取りて凭と為す、是に於て泥濘の裏より出でて、膏潤の地に走進す。測辞に曰く:蓍を布き亀を灼くは、光明の道に親近せんと要するなり;蒙昧の人は先ず卜筮を借りて明を問う、正しく求知の開端なり。次三:東方の星辰は已に放亮せり、人は而も身を起す能わず。測辞に曰く:東辰以て明なるに、何故に還た動身せざる。
次四:或後前夫,先錫之光。測曰:或後前夫,先光大也。次五:蒙柴求兕,其得不美。測曰:蒙柴求兕,得不慶也。次六:大開惟幕,以引方客。測曰:大開惟幕,覽眾明也。
次四:人の甘んじて原本自己の前頭を走る那位の後面に居る有り、反って先に光栄の賞賜を受く。測辞に曰く:或いは夫に後るるは、人の後に居るを甘んずる者の先に光大を得るなり。次五:柴草を拿して頭を蒙い犀牛を捕らんとす、所得は美好ならず。測辞に曰く:柴を蒙りて兕を求むは、得ると雖も亦慶賀に値せず;眼を蒙いて事を弁ずるは、過ぐるも僥倖のみ。次六:帷幕を大いに敞開し、以て四方の賓客を延引す。測辞に曰く:惟幕を大開するは、衆人の明智を遍覧せんと要するなり;蒙昧を破除する正法は門を開きて賢を納るるなり。
次七:修侏侏,比於朱儒。測曰:洙侏之修,無可為也。次八:或擊之,或刺之,修其玄鑑,渝。測曰:擊之刺之,過以衰也。上九:童麋觸犀,灰其首。測曰:童麋觸犀,還自累也。
次七:号して修長と称す、実則矮小侏儒の状にして、侏儒と一般の高なり。測辞に曰く:此の如き「修長」は作為すべき無きなり;名は修にして実は短、虚に其の表を有するのみ。次八:人の彼を敲打する有り、人の彼を針刺する有り、彼の那の幽深の鏡子を磨治す、是に於て彼は変る。測辞に曰く:之を撃ち之を刺すは、過錯は此に因りて減衰す;「玄鑑」は内心の鏡にして、須く磨礪を経てこそ照明し得。上九:小麋鹿は犀牛を顶撞しに行き、頭は皆砕に撞す。測辞に曰く:童麋の犀に触るるは、反って自己に連累するなり;蒙昧の極処にして自ら量力せざれば、只自ら毀傷を取る能しのみ。
第十三首 増(立春)
增:陽氣蕃息,物則增益,日宣而殖。
「増」は増益・蕃衍の義にして、第十三首と為り、立春に値り、冬至後第五十四日より第五十八日半に至るを主る。陽気は蕃衍生息し、万物は之に随いて増長し、一天天として舒展して繁殖す。増は真増有り虚増有り:根本の上に加うるは実にして、外表の上に加うるは只是装飾のみ、此の首は処処此の両者を分辨す。
初一:聞貞增默,外人不得。測曰:聞貞增默,識內也。次二:不增其方,而增其光,冥。測曰:不增其方,徒飾外也。次三:木以止漸增。測曰:木止漸增,不可蓋也。
初一:正道を聞得して反って更に沈黙し、外人は窺知するに由無し。測辞に曰く:貞を聞きて黙を増すは、所得を心裏に記するなり;増益は先ず内に増すを要す。次二:自己の徳行方正を増厚せずして、只顧表面の光彩を増添す、昏暗なり。測辞に曰く:其の方を増せざるは、白白に外表を装点するのみ。次三:樹木は停停長長の節律に依りて逐漸增高す。測辞に曰く:木は止まりて漸増すは、遮蓋し住る能わざるなり;一寸寸として長り上がれば、終究は看出さる。
次四:要不克,或增之戴。測曰:要不克,可敗也。次五:澤庳其容,眾潤攸同。測曰:澤庳其容,謙虛大也。次六:朱車燭分,一日增我三千,君子慶,小人傷。測曰:朱車之增,小人不當也。
次四:腰腹は本已に支撑し住る能わず、還た頭上に向かいて物を加えんとす。測辞に曰く:腰力は勝えざるは、垮れんと要するなり;根基足らずして一味に碼を加えれば、必ず敗壊に致る。次五:沼沢は自己の容受の処を低下に放し、衆多の水流は便ち皆帰汇して一起に到る。測辞に曰く:沢は其の容を庳くすは、謙虚にしてこそ其の大を成し得るなり。次六:朱漆の車子・分列の火燭、一日の間に我に三千の賞を増添す、君子は慶を得、小人は傷を受く。測辞に曰く:朱車の増は、小人は此の如き厚賜を担当し起る能わざるなり。
次七:增其高,刃其峭,丘貞。測曰:増高刃峭,於損皆行也。次八:兼貝以役,往益來。測曰:兼貝以役,前慶後亡也。上九:崔嵬不崩,賴彼岟崥。測曰:群士橿橿也。
次七:之を増して更に高くし、陡峭の処を刀刃の一般に削り、丘陵の如くに正を得。測辞に曰く:増高と削峭とは、増と損の両辺に於て皆行き通ず;増して該止る処に到れば便ち損に転ず、此れぞ正道なり。次八:財貨を兼并すれば便ち他人を役使し、去る時は益を得、帰り来るに却って……底本此の句の下は疑いに脱字有るべし、今は照録して補わず。測辞に曰く:貝を兼ねて以て役すは、先ず喜慶有りて而る後に喪亡有るなり。上九:山勢は崔嵬として而も崩塌せず、靠るは山脚那片の厚実の坡根なり。測辞に曰く:此れは衆多の賢士の下面に在りて強健有力に撑住すればなり。
第十四首 鋭(立春・雨水)
銳:陽氣岑以銳,物之生也咸專一而不二。
「鋭」は鋭利・專一の義にして、第十四首と為り、立春の末に当たり雨水に交り、冬至後第五十八日半より第六十三日に至るを主る。陽気は高峻にして鋭利、万物は生長の時に皆專一に注して分心せず。鋭の好処は專一にして能く達するにあり、壊処は過鋭必ず折るるにあり、此の首は両面兼ねて説く。
初一:蟹之郭索,後引黃泉。測曰:蟹之郭索,心不一也。次二:銳一無不達。測曰:執道必也。次三:狂銳蕩。測曰:狂銳之蕩,不能處一也。
初一:螃蟹は八爪に横行乱爬し、末了は自己を地下の黄泉の裏に引到る。測辞に曰く:蟹の郭索は、心思の專一ならざるなり。《荀子・勧学》は蟹の六跪二螯にして寄托する所無きを譏る、説くは正しく此の道理なり。次二:鋭意專一なれば、便ち到らざる所無し。測辞に曰く:此れは正道を執守して心志專必なるなり。次三:狂躁に一味に鋭を求めれば、便ち放蕩失拠せん。測辞に曰く:狂鋭の蕩は、那の「一」を守住し得ざるなり。
次四:銳於時,無不利。測曰:銳於時,得其適也。次五:銳其東,忘其西,見其背,不見其心。測曰:銳東忘西,不能迴避也。次六:銳丑,含於五軌萬鍾,貞。測曰:銳於丑,福祿無量也。
次四:合適の時機の上に於て鋭を用うれば、不利無し。測辞に曰く:時に鋭なるは、恰好火喉に対上せるなり。次五:只だ東辺に鋭意し、西辺を忘れ、人家の背は見えても人家の心は見えず。測辞に曰く:東に鋭して西を忘るるは、一頭を偏執して回旋避譲する法無きなり。次六:鋭意を同類衆人の身上に用いれば、五等の車軌・万鐘の俸禄は皆其の中に含まる、正を得。測辞に曰く:丑に鋭なるは、福禄の限量すべき無きなり;鋭にして能く衆と同ずれば、始めて大受有り。
次七:銳於利,忝惡至。測曰:銳於利,辱在一方也。次八:銳其銳,救其敗。測曰:銳其銳,恐轉作殃也。上九:陵崢岸峭,陁。測曰:陵崢岸峭,銳極必崩也。
次七:一味に鋭意して利を牟れば、羞辱と禍悪とは就中跟いて来る。測辞に曰く:利に鋭なるは、耻辱は就中彼の一辺に落着するなり。次八:更に鋭の手段を拿して已に敗壞の局面を補救せんとす。測辞に曰く:其の鋭を鋭にするは、恐らく反って灾殃に転成せん;急を以て急を救うは、往往火の上に油を澆ぐ。上九:山陵は高峻、崖岸は陡峭、終に坍塌して下る。測辞に曰く:陵峥岸峭とは、鋭の極処に到れば必定崩壞するなり;九は禍の極にして、鋭首は此に至りて収束す。
第十五首 達(雨水)
達:陽氣枝枝條出,物莫不達。
「達」は通達の義にして、第十五首と為り、雨水に値り、冬至後第六十三日より第六十七日半に至るを主る。陽気は一枝一条として伸展出で、万物は通達せざる無し。達は内外の分有り:内里の明白なるはぞ真の達にして;只だ耳目の上に通じて心中明ならざるは、反って迷なり。
初一:中冥獨達,迥迥不屈。測曰:中冥獨達,內曉無方也。次二:迷腹達目。迷腹達目,以道不明也。次三:蒼木維流,厥美可以達於瓜苞。測曰:蒼木維流,內恕以量也。
初一:幽暗の中に独自通達し、遠遠として伸展して屈折せず。測辞に曰く:中冥して独達するは、内里明暁して一隅に拘らざるなり。次二:腹中迷惑して、只だ眼睛のみ通達す。底本此の賛は「測曰」二字を脱去し、径に測辞に接す:腹は迷い目は達するは、行う所の道の明ならざるなり。次三:青翠の樹木は水流に順いて生長し、其の美は一直に瓜果の苞蔕にまで通達し得。測辞に曰く:蒼木は流に維ぐは、内心寛恕にして度量有るなり;養分は根より末梢に送到す、正しく恕道の人に推及するが如し。
次四:小利小達,大迷,扁扁不救。測曰:小達大迷,獨曉隅方也。次五:達於中衢,小大無迷。測曰:達於中衢,道四通也。次六:大達無畛,不要止洫作,否。測曰:大達無畛,不可遍從也。
次四:小処に利を得、小処に通達し、大処に於て却って迷失し、浅薄局促、挽救するに由無し。測辞に曰く:小達大迷は、只だ角落里の一方の理を懂得するのみ。次五:四通八達の大路口に於て通達し、小事大事と問わず皆迷失せず。測辞に曰く:中衢に達するは、道路四面皆通ずるなり。次六:大なる通達は辺際無きも、而も溝洫の処に於て収束停住するを肯んぜず、行う可からず。測辞に曰く:大達して畛無きは、様様皆之に跟いて行く能わざるなり;通ずる所無ければ、反って帰着する所無し。
次七:達於砭割,前亡後賴。測曰:達於砭割,終以不廢也。次八:迷目達腹。測曰:迷目達腹,外惑其內也。上九:達於咎,貞終譽。測曰:達咎終譽,善以道退也。
次七:砭石針刺を用い、刀を以て病灶を割去するに肯んずるにまで通達し、眼前は喪失する所有るも、日後は倚頼する所有り。測辞に曰く:砭割に達するは、終究廃棄せられざるに至らず;良薬は口に苦し、一時の痛を忍んでこそ長久を保得す。次八:眼睛は迷乱して腹中は通達す。測辞に曰く:目は迷い腹は達するは、外面の紛擾の内心を迷惑するなり。上九:自己の過咎を看清するに能くするにまで通達し、正を守れば終に美譽を得。測辞に曰く:咎に達して終に譽たるは、善く正道に依りて引退するなり;過を知りて退くは、正しく通達の最高の一層なり。
第十六首 交(雨水)
交:陽交於陰,陰交於陽,物登明堂,矞矞皇皇。
「交」は交接・交感の義にして、第十六首と為り、雨水に値り、冬至後第六十七日半より第七十二日に至るを主る。陽と陰と相交り、陰と陽と相交り、万物は明堂に登上り、一派光明盛美の気象なり。此の首は《周易》の《泰》に相当し、交すれば則ち通じ、交らざれば則ち塞ぐを講じ、亦交る所の人は択ばざる可からざるを講ず。
初一:冥交於神齊,不以其貞。測曰:冥交不貞,懷非含慚也。次二:冥交有孚,明如。測曰:冥交之孚,信接神明也。次三:交於木石。測曰:交於木石,不能向人也。
初一:幽暗中に於て斎戒して神明と相接す、心裏は而も一片貞正に非ず。測辞に曰く:冥交して貞ならざるは、不是を懐き羞慚を含むなり。次二:幽暗中に於て相交りて誠信有り、明亮なり。測辞に曰く:冥交の孚は、誠信を以て神明に接通するなり;人の見る無き処の誠にして、始めて神に通じ得。次三:只だ樹木石頭と相交るのみ。測辞に曰く:木石に交るは、人と相処する能わざるなり;孤僻自守すれば、交道は便ち断たる。
次四:往來熏熏,得亡之門。測曰:往來熏熏,與神交行也。次五:交於鶯猩,不獲其榮。測曰:交於鶯猩,鳥獸同方也。次六:大圈閎閎,小圈交之,我有靈餚,與爾餚之。測曰:小大之交,待煥光也。
次四:往来の間、気息は融融として、此れ正しく所得と所失と共に出づる門戸なり。測辞に曰く:往来熏熏とは、神明と一同に運行するなり;交感の際、得失は皆此処より出づ。次五:黄鶯猩猩の類と相交る、何の栄耀を得る無し。測辞に曰く:鶯猩に交るは、鳥獣と一方に同処するなり;交る所は人に非ざれば、自身も亦之に随いて降格す。次六:大なる圈子は寛宏広大、小なる圈子は来りて之と相交り、我は美好の酒饌を備有し、便ち爾と共享せん。測辞に曰く:小の大と相交るは、等待するは光輝煥発なり;上は下を棄てず、下は上に附るを楽し、交道は始めて盛なり。
次七:交於鳥鼠,費其資黍。測曰:交於鳥鼠,徒費也。次八:戈矛往來,以其貞,不悔。測曰:戈矛往來,徵不可廢也。上九:交於戰伐,不貞,覆於城,猛則啖。測曰:交於戰伐,奚可遂也。
次七:鳥雀老鼠と打交道す、白白に自己の糧食を耗掉す。測辞に曰く:鳥鼠に交るは、純属徒労浪費なり。次八:戈と矛と往来相接す、只だ一つの正の字に凭れば、便ち後悔せざるに至らず。測辞に曰く:戈矛の往来は、征伐の事は全然廃棄す可からず;交りて兵戈を動かすの地步に到れば、正と不正とは唯一の分界なり。上九:戦伐を以て相交り、又正道を守らざれば、便ち城下に覆敗し、一味に猛を逞くば便ち人に吞噬せらる。測辞に曰く:戦伐に交るは、此の路は怎麼して走り到底せんや。
第十七首 耎(雨水・驚蟄)
耎:陽氣能剛能柔,能作能休,見難而縮。
「耎」は「軟」に同じ、柔弱退縮の義にして、第十七首と為り、雨水の末に当たり驚蟄に交り、冬至後第七十二日より第七十六日半に至るを主る。陽気は能く剛にして能く柔、能く振作して能く止息し、艱難を見れば便ち退縮す。縮は怯に等しからず:看準して退くは智にして、退くに時候を錯れば便ち失機と成る。
初一:赤卉方銳,利進以退。測曰:赤卉方銳,退以動也。次二:耎其心,作疾。測曰:耎其心,中無勇也。次三:耎其□,守其節,雖勿肆,終無拂。測曰:耎其□,體不可肆也。
初一:紅色の草木は正しく鋭発の時に当たり、退譲の姿態を用いて前進するに宜し。測辞に曰く:赤卉方に鋭なるは、退を以て動の方式と為すなり。次二:心は先ず軟り下がり、便ち生病せんとす。測辞に曰く:其の心を耎くするは、心裏に勇気無きなり。次三:彼の或る処を軟下し、彼の節操を守住す、放開施展する能わざると雖も、終究拂逆有らず。測辞に曰く:彼の或る処を軟下するは、形体は放縱す可からざるなり。此の賛と測辞とは各々一字を脱す、底本原より闕す、今は「□」を以て標出し、臆補を作さず。
次四:耎其哇,三歲不噣。測曰:耎哇不噣,時數失也。次五:黃菌不誕,俟於慶雲。測曰:黃菌不誕,俟求耦也。次六:縮失時,或承之菑。測曰:縮失時,坐逋後也。
次四:嘴を軟下し、三年も開口して食を啄むを肯んぜず。測辞に曰く:哇を耎くして噣らざるは、屡屡時機を錯過するなり。次五:黄色の菌芝は貿然として生発するを肯んぜず、静候して祥瑞の慶雲を待つ。測辞に曰く:黄菌誕せざるは、相配の時機を等待するなり;該等の時に等るを肯んずるは、正しく柔退の正用なり。次六:退縮して時機を錯過せば、便ち灾禍を承受せん。測辞に曰く:縮して時を失うは、拖延逃避して後頭に落在するに因るなり。
次七:詘其節,執其術,共所歾。測曰:詘節共歾,內有主也。次八:窾枯木,丁沖振其枝,小人有耎,三卻鉤羅。測曰:窾木之振,小人見侮也。上九:悔縮,往去來復。測曰:悔縮之復,得在後也。
次七:彼の気節を屈下するも、而も彼の法術を握定し、人と共に処りて死するに至る。測辞に曰く:節を詘りて歾を共にするは、心裏に自ら主宰有るなり;外面は能く屈して、裏面は動かず、正しく柔中の剛なり。次八:中空の枯木、人に叮叮当当と撞撃して其の枝條を摇撼せらる;小人は一味に退縮し、三次皆鉤網に落ち入る。測辞に曰く:空木の撼せらるるは、小人の人に欺侮せらるるなり;内里空虚なれば、退譲は便ち人の揉搓に任するものと成る。上九:一味の退縮の為に後悔し、去りて又帰り来たる。測辞に曰く:縮を悔いて復るは、所得は後頭に在り;能く悔いて返れば、退縮は還た救い有り。
第十八首 徯(驚蟄)
徯:陽氣有徯,可以進而進,物咸得其願。
「徯」は等待の義にして、第十八首と為り、驚蟄に値り、冬至後第七十六日半より第八十一日に至るを主る。陽気は等待する所有り、前進すべきに到れば便ち前進し、万物は皆自己の心願を遂ぐ。此の首は《周易》の《需》に近く、講ずるは等待の道:待つ所の者正なれば則ち福至り、待つ所の者邪なれば則ち禍来たる。
初一:冥賊徯天,凶。測曰:冥賊之徯,時無吉也。次二:冥德徯天,昌。測曰:冥德之徯,昌將日也。次三:徯後時。測曰:徯而後之,解也。
初一:暗地裏に人を害する心を存して坐等し天意を待つ、凶なり。測辞に曰く:冥賊の徯は、何時に等到ると雖も皆吉利ならざるなり。次二:暗地裏に徳行を積んで静候して天意を待つ、昌盛す。測辞に曰く:冥徳の徯は、昌盛は一天天として到来するなり。次三:等待すれども、等到れば時機は已に経過せり。測辞に曰く:等して時機の後に落るるは、懈怠せるなり。
次四:詘其角,直其足,維以徯谷。測曰:屈角直足,不伎刺也。次五:大爵集於宮庸,小人庳徯空。測曰:宮庸之爵,不可空得也。次六:徯福貞貞,食於金。測曰:徯福貞貞,正可服也。
次四:其の角を屈下し、其の脚を伸直し、只だ山谷の裏に守って等待す。測辞に曰く:角を屈し足を直ぐるは、技を逞いて人を刺しに往かざるなり;鋒芒を收起して時を候うは、ぞ待つの正法なり。次五:大鳥は宮牆の上に聚集し、小人は卑下に空しく一場を等つ。測辞に曰く:宮牆上の大鳥は、白等に得る能く非ざるなり。次六:福分を等待して正を守り移さず、金玉の禄を以て享用す。測辞に曰く:福を徯して貞貞たるは、正を守ってこそ人に信服せしむるなり。
次七:徯禍介介,凶人之郵。測曰:徯禍介介,輿禍期也。次八:不禍禍,徯天活我。測曰:禍不禍,非厥訧也。上九:徯尪尪,天撲之顙。測曰:徯尪之撲,終不可治也。
次七:耿耿然として専ら禍事の門に上るを等つ、此れは凶悪の人の過失なり。測辞に曰く:禍を徯して介介たるは、禍事と日子を約好するに等し。次八:禍患を以て禍患と為さず、只だ上天の来りて我を救活せんを等つ。測辞に曰く:禍を以て禍と為さざるは、実は禍本身の罪過に非ず;錯は坐等に在り、禍の来るに在らず。上九:等ること腰背佝偻・羸弱不堪に至り、上天は一掌を以て彼の額頭上に打つ。測辞に曰く:尪を徯いて撲つは、終に救治する法無し;空しく等到ること形銷骨立に至れば、天も亦彼を幇ける能わず。
第十九首 従(驚蟄)
從:陽躍於淵、於澤、于田、於嶽,物企其足。
「従」は随従の義にして、第十九首と為り、驚蟄に値り、冬至後第八十一日より第八十五日半に至るを主る。陽気は深淵に・水沢に・田野に・山岳に躍動し、万物は皆脚跟を踮起して之に随う。此の首は《周易》の《随》に相当し、講ずるは跟従:従う所の者善なれば則ち吉、従う所の者悪なれば則ち凶、関鍵は全て擇ぶを会するか否かに在り。
初一:日幽嬪之,月冥隨之,基。測曰:日冥月隨,臣應基也。次二:方出旭旭,朋從爾丑。測曰:方出朋從,不知所之也。次三:人不攻之,自然證。測曰:人不攻之,自然證也。
初一:太陽は幽処に隠れ、月は便ち暗中に配合跟随す、此れは根基なり。測辞に曰く:日は隠れて月は随うは、正しく臣下の君上に応和する根基なり。次二:剛し出で来りて旭旭として光有れば、同類の人は皆爾の此一伙に跟く。測辞に曰く:方に出でて朋従すは、還た何処に向かい往くかを知らざるなり;一鬨して従うは、最も准頭無し。次三:別人の彼を攻治するを須せず、自然而然として験証を得。測辞に曰く:外力の攻治を須せざるは、自ら実効を顕出せん;道に従いて人に従わざるは、ぞ真の従なり。
次四:鳴從不藏,有女承其血匡,亡。測曰:鳴從之亡,奚足朋也。次五:從水之科,滿。測曰:從水之科,不自越也。次六:從其目,失其腹。測曰:從目失腹,欲丕從也。
次四:大声鳴叫して人の跟従を招いて全く収斂せず、女子の盛血の筐器を捧ぐる者の来りて相応ずる有り、喪亡す。測辞に曰く:鳴従して亡に致るは、此の如き人は何処に朋類と為るに配せんや。次五:水の如くに行進し、坑坎に遇うは先ず之を填満して而る後に走る。測辞に曰く:水の科に従うは、自己に分限を越越せしめざるなり;《孟子》に流水は科を盈たして而る後に進むと説く、正しく此の意なり。次六:自己の眼睛に跟従して、自己の肚腹を丟失す。測辞に曰く:目に従いて腹を失うは、欲望太だ大にして一味に順従するなり;外に徇えば必ず内を失う。
次七:拂其惡,從其淑,雄黃食肉。測曰:拂惡從淑,救凶也。次八:從不淑,禍飛不逐。測曰:從不淑,禍不可訟也。上九:從徽徽,乃升於階,終。測曰:從徽徽,後得功也。
次七:那些の悪なるを拂拭掉し、那些の善なるに跟従す、好く雄黄の能く毒を解し良薬の能く肌を生ずるに比す。測辞に曰く:悪を拂い淑に従うは、凶を救い得るの弁法なり。次八:不善の人に跟従せば、禍事は飛来して、追うも追い上かず。測辞に曰く:淑ならざるに従うは、此の禍は申弁すべき処無し;自己の選錯したる人なれば、傍人を怨むる得ず。上九:跟従して美好にして条理有れば、是に於て台階に登上り、善終を得。測辞に曰く:徽徽に従うは、後来に到りて終に功業を成就するなり。
第二十首 進(驚蟄)
進:陽引而進,物出溱溱,開明而前。
「進」は前進の義にして、第二十首と為り、驚蟄に値り、冬至後第八十五日半より第九十日に至るを主る。陽気は万物を牽引して前に向かい、万物は涌涌然として地面を冒出し、開朗光明に推進す。此の首は進の分寸を講ず:進は正当の憑借を有するを要し、亦可行の路経を有するを要す。
初一:冥進否,作退母。測曰:冥進否,邪作退也。次二:進以中刑,大人獨見。測曰:進以中刑,刑不可外也。次三:狂章章,不得中行。測曰:狂章章,進不中也。
初一:暗中に於て钻営して前進す、行う可からず、反って後退の根由と成る。測辞に曰く:暗くして進みて正ならざるは、走るは邪路にして、出でれば便ち退なり。次二:適中の法度に依りて前進す、只だ大人のみ此の如き見識有り。測辞に曰く:中刑を以て進むは、刑法は常度の外に施す可からざるなり。次三:狂躁にして張揚、中正の路に走上る能わず。測辞に曰く:狂として章章たるは、進みて中道に合せざるなり。
次四:日飛懸陰,萬物融融。測曰:日飛懸陰,君道隆也。次五:進以欋疏,或杖之扶。測曰:進以欋疏,制於宗也。次六:進以高明,受址無疆。測曰:進以高明,其道迂也。
次四:太陽は高く飛び、陰翳を懸開し、万物は一片融和なり。測辞に曰く:日は飛び陰を懸ぐは、君主の道の興隆するなり。次五:耙歯の如き疏具を拄きて前進す、還た人の拐杖を扶くるに靠らざる可からず。測辞に曰く:欋疏を以て進むは、宗族尊長に受制するなり;行動は自主する能わず、進むに吃力なり。次六:高遠明達に凭りて前進す、承受する基址は広大無辺なり。測辞に曰く:高明を以て進むは、此の路は走るに迂遠なり;志向愈高ければ、路程も亦愈長し。
次七:進非其以,聽咎窒耳。測曰:進非其以,毀滋章也。次八:進於淵,君子用船。測曰:進淵用船,以道行也。上九:逆馮山川,三歲不還。測曰:逆馮山川,終不可長也。
次七:不正当の憑借に靠りて身を進め、人の指責するを聴けば便ち耳朵を堵上す。測辞に曰く:其の以る所に非ざるに進むは、毀謗は愈々昭彰するなり。次八:深淵の裏に往かんと要するに、君子は便ち船を用う。測辞に曰く:淵に進みて船を用うるは、正当の方法に依りて事を行うなり;難処は敢えて進むか否かに在らず、合用の器具有るか否かに在り。上九:水勢に逆らいて徒歩にて山川を強渡す、三年も帰り来たる能わず。測辞に曰く:逆らいて山川に馮ぐは、終に長久する能わざるなり;《論語》は「暴虎馮河」を譏る、正しく此の一類なり。
第二十一首 釈(驚蟄・春分)
釋:陽氣和震,圜煦釋物,咸稅其枯,而解其甲。
「釈」は消釈・解散の義にして、第二十一首と為り、驚蟄の末に当たり春分に交り、冬至後第九十日より第九十四日半に至るを主る。陽気は和暖にして震動し、周遍として万物を煦育し、之を皆枯槁の外殻を脱去し堅硬の甲皮を解开せしむ。此の首は兼ねて《周易》の《解》《震》の両義を取る:震動は手段にして、消解は結果なり。
初一:動而無名,酋。測曰:動而無名,不可得名也。次二:動於向景。測曰:動於向景,不足觀聽也。次三:風動雷興,從其高崇。測曰:風動雷興,動有為也。
初一:動けるも而も名聲を求めず、反って能く成有り。測辞に曰く:動きて名無きは、本より名を取らんと打算せざるなり;無名の動は、做起して反って成り得るなり。次二:只だ日影に向かう処に於て動き動くのみ。測辞に曰く:景に向かいて動くは、看るに値せず聴くに値せず;専ら人に見せる動作は皆虚なり。次三:風は一動し、雷は跟いて興起し、皆那の高大崇隆の勢に順従す。測辞に曰く:風動き雷興るは、動けば便ち作為する所有る要なり。
次四:動之丘陵,失澤朋。測曰:動之丘陵,失下危也。次五:和釋之脂,四國之夷。測曰:和釋之脂,民說無疆也。次六:震於庭,喪其和貞。測曰:震於庭,和正俱亡也。
次四:丘陵高処に動き去り、水沢の裏の同伴を丟下す。測辞に曰く:丘陵に之くは、下面の支持を失掉して危険に陥入するなり。次五:調和融化の油脂の如くに衆人を潤沢す、四方邦国は此に因りて平安なり。測辞に曰く:和釈の脂は、百姓の喜悦無辺なり;解凍の世は寛和を以て要と為す。次六:自家庭院の裏に於て大いに雷霆を発す、和順と貞正とを喪失す。測辞に曰く:庭に震うは、和と正と一斉に失掉するなり。
次七:震震不侮,濯漱其訽。測曰:震震不侮,解恥無方也。次八:震於利,顛仆死。測曰:震於利,與死行也。上九:今獄後谷,終說桎梏。測曰:今獄後谷,於彼釋殃也。
次七:四方を威震して而も人を欺侮せず、還た別人の自己に加えたる辱罵を洗滌干浄し得。測辞に曰く:震震として侮らざるは、耻辱を化解するに固定の成法無く、全て自己の度量を看るなり。次八:利益の為に暴起震動し、跌倒して命を斃す。測辞に曰く:利に震うは、死亡と同行するなり。上九:眼下は獄牢に身陷るも、後来却って山谷の安に入り、終に脚鐐手銬を卸下す。測辞に曰く:今は獄にして後は谷なりとは、灾殃の彼処に於て消釈を得るなり;釈首は此に至りて、苦尽きて解す。
第二十二首 格(春分)
格:陽乞內壯,能格乎群陰,攘而卻之。
「格」は格拒・抵御の義にして、第二十二首と為り、春分に値り、冬至後第九十四日半より第九十九日に至るを主る。陽気は内里に於て壮盛し、能く衆陰を格拒し、之を排斥退去せしむ。拒む所の者悪なれば則ち正を為し、拒む所の者善なれば則ち邪を為す;格は其の宜を得れば是れ護衛にして、格は其の宜を失えば是れ自傷なり。底本「陽乞」の「乞」は当に「気」の字の訛なるべし、今は照録して改めず。
初一:格內善,失貞類。測曰:格內善,中不宵也。次二:格內惡,幽貞。測曰:格內惡,幽貞妙也。次三:裳格鞶鉤,渝。測曰:裳格鞶鉤,無以制也。
初一:内心の善念を門外に拒げば、便ち正道の同類を失掉す。測辞に曰く:内善を格るは、心裏の不肖不明なるなり。次二:内心の悪念を門外に拒ぐ、暗中に於て正を得。測辞に曰く:内悪を格る、此の種の幽隠の処に於て正を守る功夫は最も精妙なり。次三:柔軟の下裳は大帯上の鉤環を格拒しに往けば、変る。測辞に曰く:裳は鞶鉤を格るは、柔軟の物は堅硬の物を制住し得ざるなり。
次四:畢格禽,鳥之貞。測曰:畢格禽,正法位也。次五:膠漆釋,弓不射,角不離。測曰:膠漆釋,信不結也。次六:息金消石,往小來奕。測曰:息金消石,美日大也。
次四:長柄の畢網を用いて飛禽を攔截す、此れは鳥に対付する正法なり。測辞に曰く:畢は禽を格るは、法度を正当の位置の上に擺到せるなり。次五:膠と漆と皆化開し、弓は射出す能わず、角も亦黏り牢めず。測辞に曰く:膠漆釈すは、信義の結得住ざるなり;上下の間は黏合の物を失い、何も格拒し得ず。次六:金属は熔蝕せられ、石頭は消磨せられ、去るは小なり、来るは大なり。測辞に曰く:金を息し石を消すは、美好の一天天として壮大するなり;慢工の堅を消すは、正しく格拒の上策なり。
次七:格其珍類,龜縞厲。測曰:格其珍類,無以自匡也。次八:格彼鞶堅,君子得時,小人鬄憂。測曰:格彼鞶堅,誼不得行也。上九:郭其目,鱎其角,不庳其體,濮。測曰:郭目鱎角,還自傷也。
次七:自己の珍貴の同類までも門外に拒げば、寶龜と白縞と皆招危の物と成る。測辞に曰く:其の珍類を格るは、再び能く自己を匡正する無きなり。次八:那の堅固の大帯を格拒しに往けば、君子は時に逢いて尚可なれど、小人は只だ剪除と憂患とに落得するのみ。測辞に曰く:彼の鞶堅を格るは、道義の行き通らざるなり;力は敵せずして強抗すれば、義も亦伸張するに由無し。上九:眼睛を城郭の如く大に瞪し、角を高高に翘起に矯め、身体は一点も低下するを肯んぜず、終に地に撲倒す。測辞に曰く:郭目鱎角とは、反って自己を傷うるなり。
第二十三首 夷(春分)
夷:陽氣傷,鬄陰無救瘣,物則平易。
「夷」は兼ねて平と傷との両義有り、第二十三首と為り、春分に値り、冬至後第九十九日より第一百零三日半に至るを主る。陽気は損傷を受け、陰気を剪除するも其の病痛を救治するに由無く、是に於て万物は平易に趨す。削平と創傷とは本是一事の両面にして、此の首は正しく此の両義の間に於て往复す。
初一:載幽貳,執夷內。測曰:載幽執夷,易其內也。次二:陰夷,冒於天罔。測曰:陰夷冒罔,疏不失也。次三:柔,嬰兒於號,三日不嗄。測曰:嬰兒於號,中心和也。
初一:幽暗の二心を懐くも、而も内里に於て平易を執守す。測辞に曰く:幽を載せて夷を執るは、内心を平順に整治するなり;心先ず平かにして、外面ぞ平かに下り得。次二:陰気は削平せらる、是れ它の上天の羅網を触犯せるなり。測辞に曰く:陰夷して罔を冒すは、天網は疏なりと雖も漏掉せざるなり;《老子》の謂う所の「天網恢恢、疎而不失」は正しく此の意なり。次三:柔和なり。嬰児は整天啼哭しても、三天も嘶啞せざるなり。測辞に曰く:嬰児の号于るは、心裏一団和気なり;《老子》は赤子の終日号して嗄れざるを称す、取るは就中和の至なり。
次四:夷其牙,或飲之徒。測曰:夷其牙,食不足嘉也。次五:中夷,無不利。測曰:中夷之利,其道多也。次六:夷於廬,其宅丘虛。測曰:夷乾廬,厥得亡也。
次四:牙歯を磨平せば、只だ湯を喝する人と為す能しのみ。測辞に曰く:其の牙を夷にする、此の如き飲食は称美に値せず;利器を自ら去れば、所得は便ち有限なり。次五:中位の上に於て平を取れば、不利無し。測辞に曰く:中夷の利は、此の路は行き通ずる処多きなり。次六:房舎を夷平せば、住処は荒丘廃墟と変成す。測辞に曰く:廬舎を夷平すれば、原有の所得も亦喪失す。底本測辞「夷干廬」の「干」は当に「于」の字の訛なるべし、今は照録す。
次七:乾柔乾弱,離木艾金,夷。測曰:乾柔,柔勝強也。次八:夷其角,厲。測曰:夷其角,以威傷也。上九:夷其耇,利敬病年,貞。測曰:夷耇之貞,懸事向也。
次七:軀干柔軟・軀干柔弱なるも、而も能く木頭を劈開し金属を割断す、平定せり。測辞に曰く:干の柔なるは、柔の能く強に勝るなり;《老子》は柔弱の剛強に勝るを講ず、此の賛は即ち其の一例なり。次八:角を削平す、危険なり。測辞に曰く:其の角を夷にするは、威勢太だ盛んなるに因りて傷を受くるなり。上九:老人への礼遇を削減し、只だ恭敬して彼の衰病の晚年を照料するに宜し、正を守るなり。測辞に曰く:耇を夷にするの貞は、事情の方向を懸定するなり;尊老の礼を傷うこと既に成れば、唯敬を以て相い補うのみ。
第二十四首 楽(春分・清明)
樂:陽氣出奧,舒疊得以和淖,物咸喜樂。
「楽」は喜楽の義にして、第二十四首と為り、春分の末に当たり清明に交り、冬至後第一百零三日半より第一百零八日に至るを主る。陽気は深奥の処より出でて、舒展重叠して和潤と変り、万物は皆歡喜快楽す。楽は其の正を得れば則ち衆人同楽し、楽は其の分を過ぎれば則ち楽極まりて悲を生ず、此の首は両頭皆講じ到る。
初一:獨樂款款,及不遠。測曰:獨樂款款,淫其內也。次二:樂不可支,辰於天。測曰:樂不可支,以時歲也。次三:不宴不雅,嘄呱啞咋,號啕倚戶。測曰:不宴不雅,禮樂廢也。
初一:独自一人款款として楽しみ、影響の及ぶ所は遠からず。測辞に曰く:独楽款款とは、享楽を自己一身に耽溺するなり。次二:快楽して支撑し住る能わず、那の時辰は上天の定むる所なり。測辞に曰く:楽は支う可からざるは、一年の時令に順いて来るなり;時に応ずるの楽にしてぞ正楽なり。次三:既に安閑ならず亦雅正ならず、尖叫呱噪・嗓子を哑して乱嚷し、門辺に靠りて号啕大哭す。測辞に曰く:宴ならず雅ならずとは、礼と楽と皆荒廃するなり。
次四:拂其繫,絕其纗,佚厥心。測曰:拂繫絕纗也。次五:鐘鼓喈喈,管絃嚌嚌,或承之衰。測曰:鐘鼓喈喈,樂後悲也。次六:大樂無間,民神禽鳥之般。測曰:大樂無間,無不懷也。
次四:繋縛を拂開し、繩結を割断し、彼の心を放縱す。測辞に曰く:系を拂い纗を絶つ――底本此の条の測辞は此の一句を仅存し、下に脱文有り、今は照録して補わず。次五:鐘鼓は和鳴鏘鏘、管弦は齊奏啾啾、接着して便ち衰敗を承受せん。測辞に曰く:鐘鼓喈喈とは、歡楽過後に必ず悲哀有るなり。次六:大なる和楽は間隔無く、百姓・神明・飛禽走獣は一同に盤桓娯楽す。測辞に曰く:大楽無間とは、帰心せざる人無きなり;六は福の隆に居り、楽は万物と同楽するの地步に到る。
次七:人嘻完暿,天之要期。測曰:人嘻鬼嘻,稱樂畢也。次八:嘻嘻自懼,亡後愆虞。測曰:嘻嘻自懼,終自保也。上九:極樂之機,不移日而悲。測曰:極樂之機,信可悔也。
次七:人は嬉笑し、天地も亦一片歡騰なり、此れは上天の約定する期限なり。測辞に曰く:人は嬉笑し、鬼も亦嬉笑す、称心の歡楽は此に到りて止む。賛辞は「完暿」と作り而も測辞は「鬼嘻」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次八:嬉笑の中に仍お戒懼を存し、憂患過去之後は再び慮る可き差失無し。測辞に曰く:嘻嘻として自ら懼るは、終に自己を保全するなり;楽しみて懼を知るは、正しく楽を保つの法なり。上九:歡楽の極点に到る那の関口は、一天を用うるに及ばずして悲哀に転成す。測辞に曰く:極楽の機は、実に後悔すべきなり。
第二十五首 争(清明)
爭:陰氣泛施,不偏不頗,物輿爭訟,各遵其儀。
「争」は争訟の義にして、第二十五首と為り、清明に値り、冬至後第一百零八日より第一百一十二日半に至るを主る。陰気は普遍に施布し、偏袒せず亦傾側せず、万物は是に於て相与に争訟し、各自自己の那一套の儀法を援引す。此の首は《周易》の《訟》に相当す:争わざるを上と為し、争いて度有るを中と為し、争いて生死を顧みざるを下と為す。
初一:爭不爭,隱冥。測曰:爭不爭,道之素也。次二:嚇河臞。測曰:嚇河之臞,何可個也。次三:爭射齦齦。測曰:爭射齦齦,君讓鄰也。
初一:争うは争わざるの処に在りて、幽暗中に隠没す。測辞に曰く:不争に争る、此れは道の本色なり;人と争わざるは、正しく最高の争なり。次二:黄河に対して大声に恫嚇す、自己は而も枯痩不堪なり。測辞に曰く:河を嚇かすの臞は、此の分量を凭て怎麼当得起せんや。次三:射箭を比賽して争うこと面紅耳赤・齦齦として相持す。測辞に曰く:射に争いて齦齦たるは、国君も亦隣国に向かい相譲するなり;射礼は本より揖譲を以て主と為し、争うも亦礼を須とす。
次四:爭利,不酋貞。測曰:小利不絕,正道乃昏也。次五:爭於逵,利於無方。測曰:爭乾逵,爭處中也。次六:臂膊脛如,股腳瞋如,維身之疾。測曰:臂膊脛如,臣大隆也。
次四:一味に利益を争奪し、正道の帰宿に到らず。測辞に曰く:小利の上に糾纏して断たざれば、正道は便ち昏暗するなり。次五:四通八達の大路の上に於て公開に争う、利は一方に拘らざるに在り。測辞に曰く:逵に争うは、争いて能く中正の位置の上に立つなり。次六:手臂胳膊は粗壮、大腿小腿は瞋鼓す、此れは身体の毛病なり。測辞に曰く:臂膊脛如とは、臣下の勢力の隆盛太だ過ぐるなり;四肢は軀干に強過ぎるは、正しく尾大して掉さざるなり。
次七:爭於及矛革由,用亨於王前行。測曰:乾矛之爭,衛君躬也。次八:狼盈口,矢在其後。測曰:狼盈口,不顧害也。上九:兩虎相牙,知掣者全。測曰:兩虎相牙,知所掣也。
次七:干戈矛戟・皮革兵具の為に争い、之を君王面前に於て列陣前行に用う。測辞に曰く:干矛の争は、為に君王の身を護衛するが為なり;争いて兵器の上に到れば、唯公の為のみ立得住る。次八:狼は嘴を満満に塞げるも、箭は已に其の背後に射到る。測辞に曰く:狼の口に盈つるは、只顧吞噬して眼前の禍害を管せざるなり。上九:両只の老虎は互相撕咬し、抽身牽制を懂得する那一只是保全を得。測辞に曰く:両虎の相牙するは、貴ぶは何時手を収むべきかを知るに在り。
第二十六首 務(清明)
務:陰氣勉務,物咸若其心而摠其事。
「務」は勉力従事の義にして、第二十六首と為り、清明に値り、冬至後第一百一十二日半より第一百一十七日に至るを主る。陰気は勉力して事を用い、万物は皆自己の心意に順いて自己の那一份の事を総攬す。此の首は力を用うるを講ず:力は人に益有る処に用うるを要し、地方を用い錯れば、勤しければ愈々糟し。
初一:始務無方,小人亦用罔。測曰:始務旡方,非小人所理也。次二:新鮮自求,珍潔精其芳,君子攸行。測曰:新鮮自求,光於已也。次三:不拘不掣,其心腐且敗。測曰:不拘不掣,其體不全也。
初一:一事を做し始むるや便ち方向を漫無し、小人も亦此の弁法を用いて只だ一无所有に落得す。測辞に曰く:務を始むるも方無きは、此れは小人の料理し得るに非ざるなり。測辞中の「旡」は「无」の古字にして、底本此の如し、今は照録す。次二:新鮮潔浄を以て己に自求す、潔白を珍重して其の芬芳を精純す、此れは君子の行う所の路なり。測辞に曰く:新鮮にして自ら求むるは、光輝の自己身上に落るるなり。次三:既に約束を加えず、亦牽引を加えず、彼の心は便ち腐壊敗爛す。測辞に曰く:拘せず掣せざるは、形体までも保全し得ざるなり。
次四:見矢自升,利羽之朋,蓋戴事載。測曰:矢及蓋,道然也。次五:蜘蛛之務,不如蠶之緰。測曰:蜘蛛之務,無益於人也。次六:華實芳若,用則臧若。測曰:華芳用臧,利當年也。
次四:箭の自ら升上去するを見る、那れは羽毛の此一伙に得力するなり;車蓋の頂起して物を承載し得るも、亦同一个の道理なり。測辞に曰く:箭の射得及する所以・蓋の承得住る所以は、道理本より此の如し;事を成すは皆輔助の物に靠るを要す。次五:蜘蛛は力を尽して網を結ぶも、蚕の吐出す細絲に比せず。測辞に曰く:蜘蛛の務は、人に対して益処無きなり;一样に絲を吐くも、有益無益は判然両途なり。次六:花と果と皆芬芳にして、之を用うれば便ち美好なり。測辞に曰く:華芳にして用い臧きは、利は当年に在るなり;勉力して実効有るを、始めて真の務と叫ぶ。
次七:喪其芳,無攸往。測曰:喪其芳也,德以衰也。次八:中黃免於禍,貞。測曰:黃中免禍,和之正也。上九:務成自敗,雨成自隊。測曰:務成自敗,非厥命也。
次七:自己の芬芳を喪失せば、便ち往く可き処無し。測辞に曰く:其の芳を喪うは、徳行の此に由りて衰敗するなり。次八:中央の黄色を守住して禍患を免る、正を得。測辞に曰く:黄中にして禍を免るる、此れは中和の徳の正用なり。上九:勉力して成を求めて反って自ら敗壊を取る、好比として雨の積ること太だ満つれば自己便ち墜落せんとするが如し。測辞に曰く:務は成りて自ら敗るる、此れは命裏の注定に非ず、自己の力を用うること頭を過せるに因るなり。
第二十七首 事(清明)
事:陽氣大勖昭職,物則信信各致其力。
「事」は任事・職事の義にして、第二十七首と為り、清明に値り、冬至後第一百一十七日より第一百二十一日半に至るを主る。陽気は大いに勉励して各自の職分を昭示し、万物は是に於て誠誠懇懇、各々其の力量を尽す。此の首は職守を講ず:位と事とは相称するを要し、男女長幼は各々其の分有り、分を越えて為さば便ち乱なり。
初一:事無事,至無不事。測曰:事無事,以道行也。次二:事在樞,不咎不訁奏,喪其哲符。測曰:不諮不訁奏,其知亡也。次三:時往時來,間不容犛。測曰:時時來,不知趣也。
初一:事を為して事無きが如くにし、到頭来は一事とて成さざる無し。測辞に曰く:事に事なきは、道に依りて往きて行い、張羅に靠らざるなり。次二:事情の関鍵は皆枢紐の上に在り、既に咨詢せず亦商議せず、便ち明智の憑信を喪失す。測辞に曰く:咨せず商せざれば、彼の智慧は便ち無くなる。賛辞は「不咎」と作り而も測辞は「不咨」と作す、「診」は又底本の偏旁を拆开して写したる一つの字なり、今は皆原樣に照りて存録す。次三:時機は一来一去、中間は一根の牦毛の空隙をも容下せず。測辞に曰く:時機は再三到来するも趨赴するを知らず。底本此の条の測辞は一つの「往」の字を脱す、今は補わず。
次四:男女事,不代之字。測曰:男女事,非厥務也。次五:事其事,王假之食。測曰:事其事,職所任也。次六:任大自事,方來不救。測曰:任大自事,奚可堪也。
次四:男子は女子の事を做りに往くも、終に彼女に替りて生養する能わず。測辞に曰く:男女互いに其の事を易うるは、彼の分内の為すべきに非ざるなり。次五:各々其の分内の事を做れば、君王は便ち彼に俸禄を賜う。測辞に曰く:其の事を事とするは、職分の任ずべき所なり;五は福の中に居り、正しく其の位を得。次六:担子は太だ大にして事事皆親自に做せんと要すれば、四方より来る事は便ち皆顧及し過来ず。測辞に曰く:大を任じて自ら事とするは、怎麼承担し得了せんや;大位に居る人は分授を知らざれば、必ず疲敝に至る。
次七:丈人扶孤,豎子提壼。測曰:丈人扶孤,小子知方也。次八:女男事,十年不誨。測曰:女男事,終家不亨也。上九:到耳順止,事貞。測曰:到耳順止,逆聞順行也。
次七:老成の長者は孤弱を扶助し、年少の僮僕は酒壺を提げて旁に侍奉す。測辞に曰く:丈人は孤を扶くは、小輩の此に由りて事を為すの方向を懂得するなり;上に率いる所有れば、下に法る所有らん。次八:女子は男子の事を做りに往く、十年も教え過来ず。測辞に曰く:女男互いに其の事を易うるは、一家は終に亨通する能わず。上九:刺耳の話を聴いて能く順受して而る後に止息す、事を為して正を得。測辞に曰く:耳に到りて順にして止むは、逆耳の言を聴入れて、事情は便ち順いて做り下るなり;此の首は能く諫を納るるを以て収束す、正しく任事の要を見る。
第二十八首 更(清明・穀雨)
更:陽氣既飛,變勢易形,物改其靈。
「更」は変更・改易の義にして、第二十八首と為り、清明の末に当たり穀雨に交り、冬至後第一百二十一日半より第一百二十六日に至るを主る。陽気は已に飛揚起り、形勢は変り、形体も亦改り、万物は自己の神気を換う。此の首は《周易》の《革》に相当す:当に変ずべきに変ずるは是れ善にして、変ずべからざるに変ずるは是れ妄にして、当に変ずべきに変変ぜざるは是れ病なり。
初一:冥化否貞,若性。測曰:冥化否貞,少更方也。次二:時七時九,軫轉其道。測曰:時七時九,不失當也。次三:化白於泥,淄。測曰:化白於泥,變不明也。
初一:幽暗中に於て変化して正を守らず、那副の様子は倒れて天性本より此の如くに似る。測辞に曰く:冥化して貞ならざるは、正路に変ること少なきなり。次二:時に七を用い、時に九を用いて轉動して自己の路数を調整す。測辞に曰く:時に七時に九は、其の当を失わざるなり;七は少陽の数、九は老陽の数、此処は借りて屈伸有度を指す。次三:白き物を泥の裏に放ち入れて変えば、便ち黒に変る。測辞に曰く:白を泥に化するは、変じて不明不白なるなり。
次四:更之小得,用無不利。測曰:更之小得,民所望也。次五:童牛角馬,不今不古。測曰:童牛角馬,變天常也。次六:入水載車,出水載杭,宜於於之更。測曰:車杭出入,其道更也。
次四:一点点を改動して所得有れば、之を用うに往きて利ならざる無し。測辞に曰く:更の小得は、正しく百姓の盼望する所なり;小改して実恵を見るは、大動干戈に勝れり。次五:牛に角を去らしめ馬に角を安上すれば、既に今制に合せず亦古法に合せず。測辞に曰く:童牛角馬は、天の常道を改変するなり。次六:水に入る時は船を以て車を載せ、水より出づる時は車を以て船を載す、此の如き更換にしてぞ合宜なり。測辞に曰く:車と船とは出入に随いて更換す、正しく変通の道なり。底本「宜于于之更」は一つの「于」の字を重出す、今は照録す。
次七:更不更,以作病。測曰:更不更,不能自臧也。次八:駟馬跙跙,能更其御。測曰:駟馬跙跙,更御乃良也。上九:不終其德,三歲見代。測曰:不終之儀,不可久長也。
次七:該変ずるに変ぜず、此に因りて病を生出す。測辞に曰く:更ざるを更ずは、自己の自ら安頓し好不齧るなり。次八:四匹の馬は車を拖して走ること踉蹌して前せず、那の駕車の人を換えれば便ち好し。測辞に曰く:駟馬跙跙とは、御者を換えてこそ転好す;馬の跑動せざるは、多半是駕車の人の不行なり。上九:自己の徳行を守住して到底せざれば、三年之内に就中人に取代せらる。測辞に曰く:終を有する能わざるの儀範は、長久する能わざるなり。
第二十九首 断(穀雨)
斷:陽氣強內而剛外,動能有決斷。
「断」は決断の義にして、第二十九首と為り、穀雨に値り、冬至後第一百二十六日より第一百三十日半に至るを主る。陽気は内里強盛にして外表剛硬、一動すれば便ち決断する所有り。断は心に在るを上と為し、事に在るを中と為し、濫断妄断を下と為し、此の首は依次に此の三層を説尽す。
初一:斷心滅斧,冥其規矩。測曰:斷心滅斧,內自治也。次二:冥斷否,在塞耳。測曰:冥斷否,中心疑也。次三:決其聾鼻至□,利以治穢。測曰:決其聾鼻至□,利以有謀也。
初一:心の上より断ず、斧頭を用うるに及ばず、暗中自ら彼の規矩有り。測辞に曰く:心を断じ斧を滅すは、内里に於て自我整治するなり;真の果決は先ず念頭の上に断ず。次二:暗中に作出する決断は正ならず、毛病の出づるは耳朵を堵住せるに在り。測辞に曰く:冥断否は、心裏本より疑惑不定なればなり。次三:那の壅塞の聴覚と嗅覚とを疏通し、直到して……穢濁を清除するに利あり。測辞に曰く:聾鼻を疏通するは、謀画する所有るに利あり。此の賛と測辞とは底本各々一字を缺く、今は「□」を以て標出し、臆補を作さず。
次四:斷我否,食非其有,恥。測曰:斷我否,食可恥也。次五:大腹決,其骨脫,君子有斷,小人以活。測曰:大腹決脫,斷的有理也。次六:決不決,爾仇不闊,乃後有鉞。測曰:決不決,辜及其身也。
次四:該断ずべき我を断ぜず、吃るは又自己の該得に非ず、可恥なり。測辞に曰く:我を断ぜずは、此の如き飲食は可恥なり。次五:脹満の大肚子を剖開せば、骨頭は皆脱し出ず;君子は此に由りて決断有り、小人は反って此に因りて命を活く。測辞に曰く:大腹は決脱すは、断ること中肯有理なり;骨を刮り毒を療すは、狠なるに道理有り。次六:該決断するに而も決断せざれば、爾の仇敵は並に遠走せず、往後は便ち斧鉞の身に臨む有り。測辞に曰く:決せざるを決せずは、罪咎は終究自己の身上に落る。
次七:庚斷甲,我心孔碩,乃後有鑠。測曰:庚斷甲,誼斷仁也。次八:勇侏之傠,盜蒙決夬。測曰:盜蒙之決,妄斷也。上九:斧刃蛾蛾,利匠人之貞。測曰:蛾蛾之斧,利徵亂也。
次七:庚金を以て甲木を断ず、我が心地は十分宏大にして、後来自ずから熔鋳の功有らん。測辞に曰く:庚は甲を断ずは、義を以て仁を断ずるなり;庚は金に属して刑殺を主り、甲は木に属して生発を主る、心を狠げるを得てぞ義なり。次八:勇夫侏儒式の討伐、盗賊も亦臉を蒙いて彼の決断を行い来る。測辞に曰く:盗蒙の決は、胡乱の決断なり;同一个の「断」の字も、盗賊の手裏に落れば便ち禍と成る。上九:斧刃は磨きて雪亮として蛾眉の如く、工匠の正を守りて之を用うるに利あり。測辞に曰く:蛾蛾の斧は、禍乱を征討するに利あり;利器は之を拿るべき人の手上に交到するを要す。
第三十首 毅(穀雨)
毅:陽氣方良,毅然敢行,物信其志。
「毅」は剛毅果敢の義にして、第三十首と為り、穀雨に値り、冬至後第一百三十日半より第一百三十五日に至るを主る。陽気は正しく良好の時に当たり、毅然として行動するを敢えてす、万物は皆自己の志向を伸展す。毅は心腹と棟梁との上に毅するを要す;言語形貌の上に毅すれば、便ち只是虚張声勢なり。
初一:懷威滿虛。測曰:懷威滿虛,道德亡也。次二:毅於心腹,貞。測曰:毅於心腹,內堅剛也。次三:戴威滿頭,君子不足,小人有餘。測曰:戴威滿頭,小人所長也。
初一:心裏に威勢を揣満す、其実は一肚子の空虚なり。測辞に曰く:威を懐きて虚に満つるは、道徳は已に無くなるなり。次二:剛毅は心腹の内に在り、正を得。測辞に曰く:心腹に毅するは、内里堅強剛定なるなり。次三:威厳を頭上に顶いて満臉に擺し尽くす、此れは君子に於ては還た足らずと嫌い、小人に於ては已に綽綽として余有り。測辞に曰く:威を頭に満戴するは、正しく小人の擅長する那一套なり。
次四:君子說器,其言柔且毅。測曰:君子說器,言有方也。次五:不田而轂,毅於楝祿。測曰:不田而轂,食不當也。次六:毅於棟柱,利安大主。測曰:國任強也。
次四:君子は器物制度を談論す、彼の話は柔和にして又堅定なり。測辞に曰く:君子は器を説くは、言語に法度有るなり;柔中に毅を帯ぶ、ぞ剛の正用なり。次五:田に下りて耕作せずして車子に坐り、還た棟梁の如き高禄の上に剛強を逞くす。測辞に曰く:田せずして轂するは、享用の正当ならざるなり。次六:剛毅は棟梁支柱の如く、君主を安定するに利あり。測辞に曰く:此れは国家の強固の倚仗を有するなり。
次七:觥羊之毅,鳴不類。測曰:觥羊之毅,言不法也。次八:毅於禍貞,君子攸名。測曰:毅於禍貞,不可幽蔀也。上九:豕希毅其牙,發以張弧。測曰:豕希毅其牙,吏所獵也。
次七:大角公羊の如き剛猛、叫ぶこと腔調を成さず。測辞に曰く:觥羊の毅は、説く話の法度に合せざるなり;徒らに蛮劲有りて条理無し。次八:身は禍患の中に処るも仍お毅然として正を守り、君子は此に由りて名を得。測辞に曰く:禍に於て貞に毅する、此の如き人は遮蔽し住る能わざるなり。上九:野猪は獠牙を磨きて又硬く又利なり、人は便ち弓弩を張開して之に対付す。測辞に曰く:豕は其の牙を毅にするは、正しく官吏の猟取せんと要する対象なり;一味に其の鋒利を逞くすは、恰好囲猟を招来す。
第三十一首 装(穀雨・立夏)
裝:陽氣雖大用事,微陰據下,裝而欲去。
「装」は整装・行装の義にして、第三十一首と為り、穀雨の末に当たり立夏に交り、冬至後第一百三十五日より第一百三十九日半に至るを主る。陽気は大権を握有するに雖も、微弱の陰気は已に下面に盤踞し、行装を收拾して離去せんと打算す。此の首は行止を講ず:該走る時に装束停当たるは是れ明にして、走るべからざるに慌張出走するは是れ乱なり。
初一:幽裝,莫見之行。測曰:幽裝莫見,心己外也。次二:哥鳥鵝慘於冰,翼彼南風,內懷其乘。測曰:哥鳥鵝之慘,懷憂無快也。次三:往其志,或承之喜。測曰:往其志,遇所快也。
初一:暗地裏に行装を收拾し、彼の行動を見る人無し。測辞に曰く:幽装して見る莫きは、心思は早已に外頭に在るなり。次二:鴚鵝は氷の上に於て凄惨の苦を受く、只だ那の南来の風を借りて翅膀を張る能しのみ、心裏に一份の可乘の機を存す。測辞に曰く:鴚鵝の惨は、憂愁を懐きて一刻の痛快も無きなり。底本「哥鳥」は偏旁を拆开して写したる「鴚」の字なり、今は原樣に照りて存録す。次三:径直に彼の志向を実現しに往けば、随后に便ち喜慶の相接する有り。測辞に曰く:其の志に往くは、称心の事に遇上せるなり。
次四:軍鳥雞朝飛足卒於北,嚶嚶相和不輟食。測曰:軍鳥雞朝飛,何足賴也。次五:鴻裝於淄,飲食頤頤。測曰:鴻裝於淄,大將得志也。次六:經六衢,周九路,不限其行,賈。測曰:經六衢,商旅事一也。
次四:野鶏は清晨に飛起し、北辺に於て跌落し来る、一路は嘤嘤として相和するも、仍お啄食を停下するを肯んぜず。測辞に曰く:野鶏朝に飛ぶ、此れ何の倚頼すべき有らんや;行装未だ整わずして急ぎて起飛すれば、落地すれば便ち狼狽と成る。底本「軍鳥」「足卒」は皆偏旁を拆开して写したる字なり、今は原樣に照りて存録す。次五:鴻雁は整装して淄水の辺に停り、従容として飲食し、頤養自得なり。測辞に曰く:鴻は淄に装すは、大将の其の志を遂げるを得るなり;遠く行かんとするは先ず気力を養足するを要す。次六:六条の通衢を経過し、九条の大路を周行し、自己の行程に限を設けず、経商する可し。測辞に曰く:六衢を経るは、商旅の事は貴ぶは一心に行に在るなり。
次七:裝無離,利徵咎。測曰:裝無離,禍且至也。次八:季仲播軌,泣於道,用送厥往。測曰:季仲播軌,送其死也。上九:裝於昏。測曰:裝於昏,尚可避也。
次七:行装を收拾停当するも而も離去するを肯んぜず、只だ責咎を招来するに利あり。測辞に曰く:装して離れざるは、禍事は就中来たらんとするなり;該走るに走らざれば、反って禍端と成る。次八:兄弟たちは車轍を路上に撒布し、道旁に於て哭泣して、彼の為に送行す。測辞に曰く:季仲は軌を播くは、送るは其実は彼の死なり。上九:黄昏の時に到りてぞ行装を收拾す。測辞に曰く:昏に装すは、還た躲開するに及ぶ;已に最後の関頭に到ると雖も、夜色に趁て走れば仍お一線の生路有り。
第三十二首 衆(立夏)
眾:陽氣信高懷齊,萬物宜明,嫭大眾多。
「衆」は衆多・師衆の義にして、第三十二首と為り、立夏に値り、冬至後第一百三十九日半より第一百四十四日に至るを主る。陽気は高処に伸展し、齊一を懐抱し、万物は当に顕明なるべく、壮美にして繁多なり。此の首は《周易》の《師》に相当し、通篇兵を借りて衆を講ず:衆を得るは徳に在りて威に在らず、兵を用うるは貴ぶは刀刃に血を沾さしめざるに在り。
初一:冥兵始,火入耳,農輟谷,尸將班于田。測曰:冥兵之始,始則不臧也。次二:兵無刃,師無陳,麟或嬪之,溫。測曰:兵無刃,德服無方也。次三:軍或累車,丈人摧孥,內蹈之瑕。測曰:軍或累車,廟戰內傷也。
初一:暗中に兵を動かすの開端、警訊は火の如くに耳朵の裏に焼進し、農夫は庄稼を丟下し、尸首は将に田野の上に陳列せんとす。測辞に曰く:暗中に兵を起すは、一開頭に便ち好事に非ず。次二:兵器は刃を開かず、軍隊は陣を列せず、麒麟までも来りて帰附す、温和なり。測辞に曰く:兵は刃無きは、徳を以て人を服せしめて一方に拘らざるなり;戦わずして人の兵を屈する、ぞ上策なり。次三:軍中は一輛輛の車は堆曇壅塞し、長者は自己の妻児を摧折し、内部は先ず裂痕を踩出す。測辞に曰く:軍或いは車を累ぐは、廟堂上の謀算は先ず自家を傷うるなり。
次四:虎虓振廞,豹勝其私,否。測曰:虎虓振廞,如鷹之楊也。次五:躆戰喈喈,若熊若螭。測曰:躆戰喈喈,恃力作王也。次六:大兵雷霆,震其耳,維用詘腹。測曰:大兵雷霆,威震無疆也。
次四:老虎は咆哮して威勢を抖擻す、豹子は而も只顧其の一己の私を逞くす、行う可からず。測辞に曰く:虎は虓りて廞を振るは、鷹隼の飛揚するが如き声勢の逼人なり;徒らに声勢有りて各々私心を懐けば、終究事を成す能わず。次五:踞守して戦い、喊声陣陣、熊の如く・螭の如く凶猛なり。測辞に曰く:躆戦喈喈とは、武力を倚仗して王を称さんと欲するなり。次六:大軍の声威は雷霆の如く耳を震わし、只だ人を屈身斂服せしむる能し。測辞に曰く:大兵雷霆とは、威勢の震動して無辺無際に及ぶなり。
次七:旌旗絓羅,乾銊蛾蛾,師孕唁之哭且目買。測曰:旌旗絓羅,大恨民也。次八:兵衰衰,見其病,不見輿尸。測曰:兵衰衰,不血刃也。上九:測曰:也。
次七:旌旗は掛結して羅網の如く、干戈斧鉞は森然として林の如く、軍中に懐孕の婦人は来りて吊唁し、一辺哭いて一辺大眼睛を睜きて望着す。測辞に曰く:旌旗絓羅とは、大いに百姓に怨を結ぶなり。底本「目買」は偏旁を拆开して写したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。次八:軍力は一天天として衰弱し下り、只だ其の病有るを見るも、而も尸を載せて帰るを見ず。測辞に曰く:兵の衰衰たるは、刀刃に血を沾さしめざるなり;衰うると雖も而も覆亡に至らず、還た保全を算す。上九:底本此の賛の賛辞と測辞とは全部脱落し、只だ「上九」「測曰」「也」の幾字を剩すのみ、今は照録して補わず、亦別本に拠りて臆補せず。
第三十三首 密(立夏)
密:陽乞親天,萬物丸蘭,咸密無間。
「密」は親密・周密の義にして、第三十三首と為り、立夏に値り、冬至後第一百四十四日より第一百四十八日半に至るを主る。陽気は天に親近し、万物は団団円円、皆緊密にして空隙無し。密は両面有り:親は其の人を得れば則ち堅固なり、親は其の人に非ざれば則ち其の熏染を受く。底本「陽乞」の「乞」は当に「気」の字の訛なるべし、今は照録す。
初一:窺之無間,大幽之門。測曰:窺之無間,密無方也。次二:不密不比,我心即次。測曰:不密不比,違厥鄉也。次三:密於親,利以作人。測曰:密於親,為利臧也。
初一:窺探せんと想うも而も一絲の縫隙を尋得せず、那れは大幽の処に通ずる門なり。測辞に曰く:之を窺うも間無きは、周密にして一定の方所の尋ね可き無きなり。次二:既に親密ならず亦親附せず、我が心は便ち只好く半路の上に停る。測辞に曰く:密ならず比ならずは、自己の該帰る郷里に背離するなり。次三:親族と相親密す、人材を成就するに利あり。測辞に曰く:親に密するは、図る所の利処の正当なるなり。
次四:密於腥臊,三日不覺,殽。測曰:密於腥臊,小惡通也。次五:密密不罅,嬪於天。測曰:密密不罅,並天功也。次六:大惡之比,或益之恤。測曰:大惡之比,匹異同也。
次四:腥臊の物と親密相処すれば、三天下来は自己も亦聞出せず、混雑難分なり。測辞に曰く:腥臊に密するは、小なる悪習の通行無阻なり;久しく鮑魚の肆に居りて其の臭を覚えざるは、正しく此の道理なり。次五:細密周至にして一条の裂縫無ければ、天と相配し得。測辞に曰く:密密として罅無きは、天の功業と並列するなり。次六:大悪の人と親附すれば、反って還た彼に替りて憂恤を增添せん。測辞に曰く:大悪の比は、同類ならざるを硬に同類に配成するなり。
次七:密有口,小鰓。大君在,無後。測曰:密口小鰓,賴君逹也。次八:琢齒依齦,三歲無君。測曰:琢齒依齦,君自撥也。上九:測曰:也。
次七:親密の中に人の多嘴する有り、小に驚懼す;只だ大君の還た在るに依りて、便ち後患無し。測辞に曰く:密口小鰓とは、君主の通達明察に靠りてぞ無事を得るなり。次八:牙歯は相鑿して而も只だ牙齦に靠りて勉强連らる、三年も君主無し。測辞に曰く:歯を琢りて齦に依るは、君主の自ら根基を抜掉するなり;上下相残すれば、密は便ち潰に変る。上九:底本此の賛の賛辞と測辞とは全部脱落し、只だ「上九」「測曰」「也」の幾字を剩すのみ、今は照録して補わず。
第三十四首 親(立夏・小満)
親:陽方仁愛,全真敦篤,物咸親睦。
「親」は親愛・親睦の義にして、第三十四首と為り、立夏の末に当たり小満に交り、冬至後第一百四十八日半より第一百五十三日に至るを主る。陽気は正しく其の仁愛を行い、本真を保全して敦厚篤実、万物は皆相親し相睦す。此の首は人倫の親を講ず:親は其の人を得れば則ち内里堅固なり、親は其の類に非ざれば則ち名分先ず乱る。
初一:親非其膚,其志齦齬。測曰:親非其膚,中心閒也。次二:孚其內,其志資戚。測曰:孚其內,人莫間也。次三:螟蛉不屬,蜾裸取之,不迓漁侮。測曰:螟蛉不屬,失其體也。
初一:親近する所は並に自己の骨肉肌膚に非ず、両下裏の心志は抵牾合せず。測辞に曰く:其の膚に非ざるに親するは、心中本より隔閡有ればなり。次二:誠信を以て自己の内裏の人に対待すれば、心志は便ち此の份の親情に凭りて相依す。測辞に曰く:其の内に孚するは、外人の插ち進みて離間する能わざるなり。次三:螟蛉の幼虫は本より蜾蠃に属せず、蜾蠃は而も之を抱き去りて親子と当作し、亦那些の漁猟の如き欺侮を迎拒せず。測辞に曰く:螟蛉属せざるは、親属の名分を弄錯せるなり。《詩経・小雅》に「螟蛉に子有り、蜾蠃之を負く」と説く、此の賛は正に反って其意を用う。
次四:賓親於禮,飲食几几。測曰:賓親於禮,賓主偕也。次五:厚不厚,比人將走。測曰:厚不厚,失類無方也。次六:厚厚,君子秉斗。測曰:厚厚君子,得人無疆也。
次四:賓客は礼を以て相親し、飲食の間の挙止は安詳有度なり。測辞に曰く:賓は礼に親するは、賓と主と一齊に得体なり。次五:本当に厚待すべきに而も厚待するを肯んぜず、彼に親附する人は便ち走り去らんとす。測辞に曰く:厚ならずは、自己の同類を失掉して依帰すべき処無きなり。次六:厚に厚を加えれば、君子は便ち斗柄を手持するが一般に衆人を統摂す。測辞に曰く:厚厚君子とは、人の心を得ること広大無辺なり。
次七:高亢其絲,庳於從事。測曰:位高事庳,德不能也。次八:肺附乾餱,其干己良,君子攸弜。測曰:肺附之行,不我材也。上九:童親不貞。測曰:童親不貞,還自荄也。
次七:弦絲を極高に繃げるも、事を做起すに却って低下無能なり。測辞に曰く:位は高くして事を弁ずるは低きは、徳行の担得起ざるなり。次八:至親の人は只だ些の乾糧を拿して相待す、那の乾糧は本身還た算して好なるも、君子は却って寧ろ推辞して受けず。測辞に曰く:至親此の如く行事するは、我を人材と看てなさざるなり。上九:孩童の如くに胡乱に相親して正を守らず。測辞に曰く:童親して貞ならざるは、反って自己の根を傷うるなり。
第三十五首 斂(小満)
斂:陽氣大滿於外,微陰小斂於內。
「斂」は収斂・聚斂の義にして、第三十五首と為り、小満に値り、冬至後第一百五十三日より第一百五十七日半に至るを主る。陽気は外面に於て充盈飽満し、微弱の陰気は已に裏面に於て悄悄として収斂す。此の首は兼ねて両種の斂を説く:自身を収束するの斂は以て富に致す可し、横征暴斂の斂は必ず顛覆に致る。
初一:小斂不貨,利用安人正國。測曰:小斂不貨,其道富也。次二:墨斂韱韱,我匪貞。測曰:墨斂韱韱,非所以無也。次三:見小勿用,以我扶疏。測曰:見小勿用,俟我大也。
初一:小小として収斂して而も財貨を以て目的と為さず、人心を安定し邦国を端正するに利あり。測辞に曰く:小斂して貨ならざる、此の路ぞ真の富足に通向するなり。次二:暗地裏に一星一点として搜刮す、我が此の如く做るは正道に合せず。測辞に曰く:墨斂韱韱とは、応有の做法に非ざるなり。次三:小利を見て動用しに往かず、好く我が枝葉の舒展开来を得しむ。測辞に曰く:小を見て用い勿きは、我の長大するを等つなり。
次四:斂利小刑,小進大退。測曰:斂利小刑,其政退也。次五:畜盤而衍,繭純于田。測曰:畜盤繭純,不奪時也。次六:閔而綿而,作大元而,小人不戒。測曰:閔綿之戒,不識微也。
次四:財利を搜斂して小なる刑罰を濫用す、小処は一歩進み、大処は一大截退く。測辞に曰く:利を斂め刑を小にするは、政事の倒退するに在り。次五:畜養积聚して余有り、蚕繭は純白、皆田桑の利より出づ。測辞に曰く:畜盤して繭純なるは、農時を侵奪せざるなり;時を以て之を取れば、百姓は便ち其の取を覚えず。次六:憂閔の心は綿綿として絶えず、此に由りて大善の元を做成す、小人は而も警戒を知らず。測辞に曰く:閔綿の戒は、細微処の苗头を看出せざるなり。
次七:夫牽於車,妻為剝荼,利於王姑,不利公家,病。測曰:牽車剝荼,斂之資也。次八:大斂大顛。測曰:大斂之顛,所斂非也。上九:斂於時,利圉極菑。測曰:斂於時,奚可幾也。
次七:丈夫は拉去されて車役に服し、妻子は派去されて苦菜を采剥す、只だ自家の婆母に利あり、公室に利無く、病害と成る。測辞に曰く:車を牽き荼を剥くは、皆聚斂の本銭なり;力役と実物と両頭に取れば、民力は便ち竭す。次八:大肆に聚斂す、大いに跟頭を栽ぐ。測辞に曰く:大斂の顛は、斂する所の門路の対らざるなり。上九:合適の時候に於て収斂す、極処に到るの灾禍を抵御するに利あり。測辞に曰く:時に斂する、此の如き時機は何処に常常指望し得る在らんや。
第三十六首 強(小満)
強:陽氣純剛乾乾,萬物莫不強梁。
「強」は「疆」に通じ、剛強の義にして、第三十六首と為り、小満に値り、冬至後第一百五十七日半より第一百六十二日に至るを主る。陽気は純は剛健にして、健行息まず、万物は強横有力ならざる無し。此の首は強を講ず:君子は徳を以て強と為し、小人は力を以て強と為す;能く自己を克制する強、ぞ真の強なり。
初一:強中否貞,無攸用。測曰:強中否貞,不可與謀也。次二:鳳鳥于飛,修其羽,君子於辰,終莫之圉。測曰:鳳鳥于飛,君子得時也。次三:柱不中,梁不隆,大廈微。測曰:柱不中,不能正基也。
初一:内里に於て強を逞くして正を守らず、用う可き処無し。測辞に曰く:強中否貞は、此の種の人は彼と事情を商量する能わず。次二:鳳鳥は翅を展げて飛翔し、其の羽毛を整飭す;君子は好時辰に逢えば、終に彼を攔得住る人無し。測辞に曰く:鳳鳥の飛于るは、君子の時勢を得たるなり。次三:柱子は中に居らず、梁架は隆起せず、大屋子は便ち危険なり。測辞に曰く:柱は中ならずは、根基を端正せざるなり。
次四:爰聰爰明,左右壃壃。測曰:爰聰爰明,庶士方來也。次五:君子強梁以德,小人強梁以力。測曰:小人強梁,得位益憂也。次六:克我強梁,於天無疆。測曰:克我強梁,大美無基也。
次四:既に聴き明白す、又見ること清楚、左右輔弼は強健有力なり。測辞に曰く:爰聡爰明とは、衆多の賢士の正しく紛紛として前来するなり。次五:君子は徳行を以て強と為し、小人は気力を以て強と為す。測辞に曰く:小人の強を逞くするは、位子を得て反って更に憂患を添うるなり。次六:我が自身の強横を克制すれば、便ち天と一般に広大無際なり。測辞に曰く:我が強梁を克すは、此の份の大美は根底を量出するに由無し;自らに勝つ者は強し、此の賛は正しく全首の骨幹なり。
次七:金剛肉柔,血流於田。測曰:金剛肉柔,法太傷也。次八:強其衰,勉其弱。測曰:強其衰,勉白強也。上九:太山撥,樑柱折,其人顛且蹶。測曰:山撥梁折,終以猛也。
次七:金属は剛硬にして血肉は柔軟、血は便ち田野の上に流到る。測辞に曰く:金は剛にして肉は柔とは、刑法の厳苛太だ過ぎて人を傷うるなり;至剛を以て至柔に加えれば、必定血を見る。次八:衰頽の中に於て勉力自強し、孱弱の中に於て勉力振作す。測辞に曰く:其の衰を強にするは、勉力して自己を強く起さんとするなり。底本測辞「勉白強」の「白」は当に「自」の字の訛なるべし、今は照録す。上九:泰山は掀翻せられ、梁柱は折断せられ、那人は跌倒して又顛僕す。測辞に曰く:山は撥れ梁は折るるは、終に剛猛太だ過ぐるに因るなり;強の極処に到れば便ち崩壞なり。
第三十七首 睟(小満)
睟:陽氣袀睟清明,物咸重光,保厥昭陽。
「睟」は純粋潤沢・光彩内蘊の義にして、第三十七首と為り、小満に値り、冬至後第一百六十二日より第一百六十六日半に至るを主る。陽気は純一にして潤沢清明、万物は皆光輝を重曇し、それらの昭明の陽気を保有す。《孟子・盡心》は君子は徳盛んにして「睟然として面に見ゆ」と説く、正しく此の睟なり:色沢は内より透出し、装い出だす能わず。
初一:睟於內,清無穢。測曰:睟於內,清無穢也。次二:冥駁冒睟,胹於中。測曰:冥駁冒睟,中自應也。次三:目上於天,耳下於淵,恭。測曰:目上耳下,聰察極也。
初一:潤沢は内里に在り、清澈にして汚穢無し。測辞に曰く:内に睟なるは、正に清澈にして汚穢無ければなり。次二:暗裏は駁雑にして而も外面に於て純粋を冒充す、裏頭は早已に爛熟発餿せり。測辞に曰く:冥駁して睟を冒すは、内心自ら相応の報応有らん;外貌は再び純に装うとも、内里は早就に応験せり。次三:眼睛は上に向かい天を望み、耳朵は下に向かい淵を聴く、恭敬なり。測辞に曰く:目は上に耳は下とは、聡明察識の極処に到るなり。
次四:小人慕睟,失祿貞。測曰:小人慕睟,道不得也。次五:睟於幽黃,元貞無方。測曰:睟於幽黃,正地則也。次六:大睟承愆,易。測曰:大睟承愆,小人不克也。
次四:小人は此の種の純粋の気象を羨慕して摹仿しに往き、反って本より守正すべき禄位を失掉す。測辞に曰く:小人の睟を慕うは、路子の対らざるなり。次五:潤沢は幽深の黄の中に在り、大いに貞正を得て一方に拘らず。測辞に曰く:幽黄に睟なるは、地の法則を端正するなり;黄は中の色にして、中に睟なれば則ち正ならざる所無し。次六:大なる純粋の中に過失を承接す、変る。測辞に曰く:大睟して愆を承ぐは、小人は承受し住る能わざるなり;盛徳にして小疵を帯ぶれば、君子は之を改む、小人は却って此に由りて潰敗す。
次七:睟辰愆,君子補愆。測曰:睟辰愆,善補過也。次八:睟惡無善。測曰:睟惡無善,終不可佐也。上九:睟終永初,貞。測曰:睟終之貞,誠可嘉也。
次七:純美の時辰の裏に差錯を出せば、君子は便ち此の差錯を補起す。測辞に曰く:辰に睟して愆るは、過失を補救するに善きなり。次八:悪を光潤に粉飾するも、而も一分の善無し。測辞に曰く:悪を睟くして善無きは、此の如き人は終に輔佐する法無し。上九:純粋は最後に保持して、一如として当初の如し、正を得。測辞に曰く:終に睟なるの貞は、実に嘉許に値す;始終如一なるは、正しく睟の極致なり。
第三十八首 盛(小満・芒種)
盛:陽氣隆盛充塞,物窴然盡滿厥意。
「盛」は隆盛の義にして、第三十八首と為り、小満の末に当たり芒種に交り、冬至後第一百六十六日半より第一百七十一日に至るを主る。陽気は隆盛にして天地に充塞し、万物は填満飽足し、其の意を尽遂す。此の首は盛に処るの道を講ず:盛んにして能く謙なれば則ち慶有り、盛んにして自恃すれば則ち傾覆す。
初一:盛不墨,失冥德。測曰:盛不墨,中不自克也。次二:作不恃,克大有。測曰:作不恃,稱玄德也。次三:懷利滿匈,不利大公。測曰:懷利滿匈,營利門也。
初一:正しく盛んの時に沈黙自守する能わざれば、便ち那份の幽隠の徳を喪失す。測辞に曰く:盛にして墨ならざるは、心裏の自ら克制し得住ざるなり。次二:興作する所有れども其の功を自恃せず、能く大なる富有を成就す。測辞に曰く:作して恃まざる、此れぞ「玄徳」二字に配得上なり;《老子》に「生じて有せず、為して恃まず」と説く、正しく此の意なり。次三:満懐の私利は胸膛を填塞し、公家大局に対して利ならず。測辞に曰く:利を懐きて匈に満つるは、一心に営利の門路を経営するなり。
次四:小盛臣臣,大人之門。測曰:小盛臣臣,事仁賢也。次五:何福滿肩,提禍揮揮。測曰:何福提禍,小人之道也。次六:天賜之光,大開之疆,于謙有慶。測曰:天賜之光,謙大有也。
次四:小に興盛有りて恭謹して臣道を守れば、此れは就中大人の門下に走到る。測辞に曰く:小盛にして臣臣たるは、仁徳賢能の人を事奉するを懂得するなり。次五:肩上は満満の福を扛ぐも、手裏は却って禍を提げて四処に揮舞す。測辞に曰く:福を扛ぎ禍を提ぐる、此れは小人の路数なり;福来りて収斂を知らざれば、禍は便ち手辺に在り。次六:上天は彼に光輝を賜い、彼の為に大いに疆土を開拓す、能く謙を守れば便ち喜慶有り。測辞に曰く:天賜の光は、謙徳を以て大有を成就するなり。
次七:乘火寒泉至。測曰:乘火寒泉,禍不遠也。次八:挹於滿熒,幾後之傾。測曰:挹於滿,幾不免也。上九:極盛不救,禍降自天。測曰:極盛不救,天道反也。
次七:正しく烈火の勢頭に乗ずるに、冰冷の泉水は就中到る。測辞に曰く:火に乗りて泉寒きは、禍事の遠からざるなり。次八:満ちて溢れんと欲する器皿の裏より水を舀えば、眼見て便ち傾覆せんとす。測辞に曰く:満に於て挹ぐは、差不多として傾覆を免れ難し;《荀子》の記する満なれば則ち覆るの欹器は、正しく此の理なり。上九:盛の極点に到れば便ち挽救す可き無く、禍患は天上より降る。測辞に曰く:極盛救わざるは、天道の此に到りて反転するなり。
第三十九首 居(芒種)
居:陽方踞膚赫赫,為物城郭,萬物咸度。
「居」は居処・家居の義にして、第三十九首と為り、芒種に値り、冬至後第一百七十一日より第一百七十五日半に至るを主る。陽気は正しく地表に踞守し、赫赫然として万物の為に城郭を做成し、万物は皆其の中に於て安度す。此の首は《周易》の《家人》に相当し、通篇一家之内の秩序と器用とを講ず。
初一:匪譽匪咎,克守厥家。測曰:匪譽厞咎,其道常也。次二:家無壺,婦承之姑,或洗之塗。測曰:家無壺,無以相承也。次三:長幼序,子克父。測曰:子克父,乃能有興也。
初一:既に称誉無く、亦過咎無く、能く自己の家を守住す。測辞に曰く:誉なく咎なき、此れぞ家を持つの常道なり。底本本測辞「厞」は「匪」の字の訛なり、今は照録す。次二:家裏は盛水の壺一箇さえ無く、媳婦は只好く婆婆の活計を接過す、あるいは路上に到りて洗滌す。測辞に曰く:家に壺無きは、相承接すべき家什無きなり;器用備わらざれば、家事は便ち伝下り去る能わず。次三:長幼は次序有り、児子は父親の事業を承担起す能し。測辞に曰く:子は父に克つ、家道ぞ興り起り得るなり。
次四:見豕右堂,狗緊之迒。測曰:見豕在堂,其體不慶也。次五:舳艫調安,利富貞。測曰:舳艫安何,順其疆也。次六:外其井灶,三歲見背。測曰:外其井灶,三歲不享也。
次四:猪の堂屋の右辺に跑到するを見、狗は緊く其の足迹に跟随す。測辞に曰く:猪の堂に在るを見る、此の家の体統は慶賀に値せず。賛辞は「右堂」と作り而も測辞は「在堂」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次五:船頭船尾は調度安穏にして、富足正を守るに利あり。測辞に曰く:舳艫安穏とは、其の界限に順いて行くなり。次六:水井と炉竈とを皆身外に撇いて管せず、三年之内に就中衆叛親離す。測辞に曰く:其の井竈を外にするは、三年も供養を得ず;飲食の本までも顧みざれば、家は還た怎麼居らんや。
次七:老父擐車,少女提壺,利考家。測曰:老父擐車,其體乃壯也。次八:反其幾,雙其朼,其家不旨。測曰:反幾雙朼,家用不臧也。上九:株生蘗,其種不絕。測曰:株生蘗,其類乃長也。
次七:年老の父は還た車輛を推挽し能くし、年少の女兒は水壺を提げて幇忙す、家業を成就するに利あり。測辞に曰く:老父車を擐ぐは、彼の身体は還た壮健なり;老少各々其の力を出せば、家は便ち立得住る。次八:几案を翻転し、匕匙を成雙に乱擺せば、此の家の飲食も亦滋味を成さず。測辞に曰く:几を反し朼を雙くするは、家中の器用の不妥当なるなり;礼数錯乱すれば、一家は便ち体統を成さず。上九:老樹の桩上に新芽を生ず、其の種類は断絶せざらん。測辞に曰く:株は蘗を生ずは、此の一族ぞ長久し得るなり;居家の道は、最後に伝下り得るか否かに落る。
第四十首 法(芒種)
法:陽氣高懸厥法,物仰其墨,莫不被則。
「法」は法度の義にして、第四十首と為り、芒種に値り、冬至後第一百七十五日半より第一百八十日に至るを主る。陽気は其の法度を高く懸起し、万物は皆此の墨線を仰望し、其の規の規範を受けざる無し。此の首は立法と守法とを講ず:法は中道より出づるを要し、自身に於て行い、寛にして苛ならず、密にして羅網を成さず。
初一:造法不法。測曰:造法不法,不足用也。次二:摹法以中,克。測曰:摹法以中,眾之所共也。次三:準繩不甫,亡其規矩。測曰:準繩不甫,其用爽也。
初一:制定し出だしたる法は、本身便ち法に合せず。測辞に曰く:法を造りて法ならざるは、世間に於て行うに用うるに足らず。次二:法度を摹画して其の中正を取れば、成る能し。測辞に曰く:法を摹りて中を以てするは、衆人の共同認可する所なり。次三:準と縄とは擺正せず、規と矩とに跟いて失掉す。測辞に曰く:準縄甫ならざるは、用うれば便ち差錯百出するなり。
次四:準繩規矩,莫違我施。測曰:準繩規矩,由身行也。次五:繘陸陸,瓶窴腹,井潢洋,終不得食。測曰:瓶窴腹,非學方也。次六:於紀於綱,示以貞光。測曰:於紀於綱,大統明也。
次四:準縄と規矩とは、我の施行する所に違背し得る者無し。測辞に曰く:準縄規矩は、自身より做起して践行せんことを要す;法を立つる人は先ず法を守りて、法ぞ立得住る。次五:井繩は一段段として放下去す、瓶子は而も実心に堵がる、井水は汪洋一片、終に水を打ち上げて喝する能わず。測辞に曰く:瓶は肚子を塞ぐは、学問の道を求むる路数に非ざるなり;心裏堵がれば、法度再好なるも灌入るる能わず。次六:綱と紀との上に着眼し、此を以て貞正の光明を昭示す。測辞に曰く:紀に於り綱に於りは、大なる統緒の分明なるなり。
次七:密綱離於淵,不利於鱗。測曰:密綱離淵,苛法張也。次八:正彼有辜,格我無邪。測曰:正彼有辜,歐而至也。上九:井無干,水直衍,匪溪匪谷,終於愆。測曰:井無干,法妄恣也。
次七:細密の網羅を深淵の裏に張設す、魚類に対して利ならず。測辞に曰く:密綱淵に離るは、苛刻の法令の鋪張开来するなり;網眼太だ密なれば、魚は便ち活き成る能わず。次八:那些の罪有る人を糾正し、我が此の邪悪を格拒住す。測辞に曰く:彼の辜有るを正すは、彼らを駆逐して該去る処に送到するなり。上九:井に井欄無く、水は直に外に漫流し、既に溪を成さず亦谷を成さず、終に過失と成る。測辞に曰く:井に干無きは、法度の放縱にして約束する所無きなり;欄無きの井と度無きの法とは、人を害するは一様なり。
第四十一首 応(芒種・夏至)
應:陽氣極於上,陰信萌乎下,上下相應。
「応」は感応・相応の義にして、第四十一首と為り、芒種の末に当たり夏至に交り、冬至後第一百八十日より第一百八十四日半に至るを主る。陽気は最上に到達し、陰気の信息は已に下面に於て萌動し、上と下と彼此相応ず。此の首は正しく一歳の中に当たり、全書陽極陰生の転折なり:上巻四十一首は此に到りて止み、下巻は便ち陰長陽消より説き起す。
初一:六乾羅如,五枝離如。測曰:六乾羅如,附離君也。次二:上歷施之,下律和之,非則否。測曰:上施下和,璣匪其真也。次三:一旋從一橫,天綱罠罠。測曰:一從一橫,經緯陳也。
初一:六根の主干は彼処に羅列し、五条の枝條は其の上に附着す。測辞に曰く:六干羅如とは、衆枝の主干に依附する、正しく臣下の君主に依附するが如し。次二:上に在る者は暦数に依りて施行し、下に在る者は音律に依りて応和す、若し相合せざれば便ち行き通らず。測辞に曰く:上施下和は、倘若璇璣玉衡の校えること准ならざれば、応和し出だすも亦真に非ざるなり。次三:一条の竪・一条の横は交織し起り、天の綱紀は網の如くに張開す。測辞に曰く:一縦一横とは、経と緯と皆陳列し出だすなり。
次四:援我罘罟,絓羅於野,至。測曰:援我罘罟,不能以仁也。次五:龍翰於天,貞栗其鱗。測曰:龍翰之栗,極懼墜也。次六:熾承於天,冰萌於地。測曰:承天萌地,陽始退也。
次四:我が捕獣の網を拉起し、野外に於て羅を掛け阱を設く、来たる。測辞に曰く:我が罘罟を援ぐは、能く仁心を以て感召するに非ざるなり;機巧を用いて感応を求めれば、応じ来るも亦好东西に非ず。次五:龍は高く天に飛び、正を守るも其の鱗甲は戦慄す。測辞に曰く:龍翰の栗とは、極処に升りて墜落を怕るるなり;此れは《周易》乾卦の「亢龍有悔」と正しく相印証す。次六:熾熱は天に承じ、寒冰は已に地下に萌生す。測辞に曰く:天を承げ地に萌するは、陽気の退き始むるなり;夏至に一陰生ず、一年の転折は就中此処に在り。
次七:日強其衰,應蕃貞。測曰:日疆其衰,惡敗類也。次八:極陽徵陰,不移日而應。測曰:極陽徵陰,應其發也。上九:元離之極,君子應以大稷。測曰:元離之極,不可遏也。
次七:一天天として衰落の中に於て勉力自強す、感応する所は繁盛と貞正なり。測辞に曰く:日に其の衰を強にするは、那些の同類を敗壞する人を厭悪するなり。賛辞は「強」と作り而も測辞は「疆」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次八:極盛の陽は往きて陰を征討す、一日を隔てずして回応を得。測辞に曰く:極陽は陰を征すは、感応の発動に随いて至るなり。上九:大なる附麗は極処に到り、君子は社稷の大を以て之に回応す。測辞に曰く:元離の極、此の勢頭は遏止し得住ざるなり。
下巻
第四十二首 迎(夏至)
迎:陰氣誠形乎下,物咸溯而迎之。
「迎」は迎接・感召の義にして、第四十二首と為り、夏至に値り、冬至後第一百八十四日半より第一百八十九日に至るを主る。陰気は確確実実として下面に於て形を成し、万物は皆方向に逆らいて之を迎接す。下巻は此の首より起り、通篇陰長陽消の勢を講ず。迎と応とは相い表裏を為す:応は被動に答え、迎は主動に接ぐ。
初一:迎他匪並,無貞有邪。測曰:迎他匪應,緋所與並也。次二:蛟潛於淵,陵卵化之,人或陰言,百姓和之。測曰:蛟潛之化,中精誠也。次三:精微往來,妖先靈覺。測曰:精微往來,妖咎征也。
初一:別人を迎接しに往くも而も彼と同心せず、正道無くして只だ邪僻有るのみ。測辞に曰く:人を迎えて相応て相応ぜざれば、那れは並肩すべき人に非ざるなり。賛辞は「匪并」と作り而も測辞は「匪応」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次二:蛟龍は深淵に潜伏す、丘陵上の卵は而も它に因りて孵化す;人の暗中に於て一句の話を説く有れば、百姓は便ち皆応和し起る。測辞に曰く:蛟潜の化は、中心の精誠の遠処に感通するなり。次三:精微の気は往来交感し、妖異の兆は霊験に先んじて一歩顕現す。測辞に曰く:精微往来は、妖異は正しく灾咎の征候なり。
次四:裳有衣襦,男子目珠,婦人啑鉤,貞。測曰:裳有衣襦,陰感陽也,也。次五:黃乘否貞。測曰:黃乘否貞,不可與朋也。次六:玄黃相迎,其意感感。測曰:玄黃相迎,以類應也。
次四:下裳の上に衣襦を配し、男子は目光珠の如くに顧盼し、婦人は簪鉤を以て相引く、正を得。測辞に曰く:裳に衣襦有るは、陰の来りて陽を感召するなり。底本此の条の測辞の末尾は一つの「也」の字を重出す、今は照録して刪らず。次五:中央の黄徳は人に乘凌せらる、正ならず。測辞に曰く:黄は乘られて貞ならざるは、此の如き人は彼と朋類を結ぶ可からず。次六:玄色と黄色と互相迎接す、那份の意思は感応綿綿たり。測辞に曰く:玄黄相迎とは、同類の相応ずるなり;玄は天の色、黄は地の色、天地相い迎うるは、感じること深き所以なり。
次七:遠之(目後),近之掊,迎父迦逅。測曰:遠(目後)近掊,失父類也。次八:見血入門,捬迎中庭。測曰:見血入門,以賢自衛也。上九:溼迎床足,累於嬙屋。測曰:溼迎床足,顛在內也。
次七:離るること遠ければ便ち斜眼を以て看て、靠ること近ければ便ち手を伸して攫取し、父輩を迎接するも亦只だ不期而遇の敷衍を当作するのみ。測辞に曰く:遠ければ則ち斜睨、近ければ則ち攫奪とは、人子たるの類属を失掉するなり。底本「(目后)」は偏旁を用いて描摹したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。次八:血跡の家門に進るを見れば、只だ庭院中央に拊掌して迎候する能しのみ。測辞に曰く:血を見て門に入るは、賢能の人に靠りて自我防衛せんことを要するなり。上九:潮気は床脚の上に浸到り、整座の内室までも牽累を受く。測辞に曰く:湿は床足に迎うは、傾覆の根由は已に内部に在るなり;迎う所は陰湿の気なれば、禍は便ち裏頭より起る。
第四十三首 遇(夏至)
遇:陰氣始來,陽氣始往,往來相逢。
「遇」は相逢の義にして、第四十三首と為り、夏至に値り、冬至後第一百八十九日より第一百九十三日半に至るを主る。陰気は開始して到来し、陽気は開始して離去し、一来一往は正しく相逢す。此の首は《周易》の《姤》に相当し、期せずして会することを講ず:遇う所は人か物か・是善か是悪か、往往自己に由らず、能く自処するぞ本事なり。
初一:幽遇神及師,夢貞。測曰:幽遇神,思得理也。次二:沖沖兒遇,不定之諭。測曰:沖沖兒遇,不肖子也。次三:不往不來,得士女之貞。測曰:不往不來,士女則也。
初一:幽暗中に於て神明と先師とに遇い、夢中に見得して正を得。測辞に曰く:幽くして神に遇うは、思慮の事理に合するなり;心裏通じて、夢中ぞ見着し得る。次二:懵懵憁憁として小孩の如くに撞見す、得るは只だ定准無き説法なり。測辞に曰く:冲冲児遇とは、材を成さざる児子なり。次三:往かず亦来らず、得るは士と女と各々其の正を守るなり。測辞に曰く:往かず来らずとは、正しく男女相処の法則なり;苟且に相逢せざるを、始めて正の遇と叫ぶ。
次四:(亻圉)(亻圉),兌人遇雨,歷。測曰:兌人遇雨,還自賊也。次五:田遇禽,人莫之禁。測曰:田遇禽,誠可勉也。次六:俾蛛罔,罔遇蜂,利雖大,不得從。測曰:俾之罔,害不遠也。
次四:踉踉蹌蹌の様子、一味に悦を求める人は偏に大雨に遇い、艱難を歴尽す。測辞に曰く:兌人は雨に遇うは、反って自己を害うるなり。底本「(亻圉)」は偏旁を用いて描摹したる字なり、今は原樣に照りて存録す。次五:田猟の時に禽獣に遇上す、誰も攔得住る能わず。測辞に曰く:田は禽に遇うは、実に勉力して為すに値す;機会は当前に在り、正しく力を尽すべし。次六:蜘蛛に網を結ばしむるも、網は却って黄蜂に撞上す、利は大なりと雖も、而も跟ち下る能わず。測辞に曰く:之に網を結ばしむるは、禍害は就中遠からざる処に在り;遇う所は其の制し得るに非ざれば、網は反って撞破せらる。
次七:振其角,君父遇辱,匪正命。測曰:振其角,直道行也。次八:兩兕斗,一角亡,不勝喪。測曰:兩兕斗,亡角喪也。上九:或氐其角,遇下毀足。測曰:或氐其角,何可當也。
次七:其の角を奮起して抵触しに往けば、君父は此に因りて辱を受く、此れは正当の天命に非ず。測辞に曰く:其の角を振るは、一味に直道に照りて做るなり;直にして曲全を知らざれば、反って尊長を害す。次八:両頭の犀牛は相斗い、一頭は角を折り、勝負未だ分かれずして已に両敗倶傷す。測辞に曰く:両兕の斗い、角を折れば便ち喪亡なり。上九:角を低下来して頂撞しに往けば、下面の阻挡に遇いて反って自己の脚を毀す。測辞に曰く:或いは其の角を氐る、此の如き勢頭は誰が挡不住せんや;相遇の極処に到れば只だ硬拼を剩し、両頭皆保住し得ず。
第四十四首 竈(夏至・小暑)
灶:陰雖沃而灑之,陽猶熱而和之。
「竈」は炊竈の義にして、第四十四首と為り、夏至の末に当たり小暑に交り、冬至後第一百九十三日半より第一百九十八日に至るを主る。陰気は澆灌洒落するに雖も、陽気は仍お其の熱力を以て調和に往く。此の首は炊爨調烹を借りて治国を講ず:鼎中の味は即ち朝廷の政にして、火候・器皿・潔浄、様様講究有り。
初一:灶無實,乞於鄰。測曰:灶無實,有虛名也。次二:黃鼎介,其中裔,不飲不食,孚無害。測曰:黃鼎介,中廉貞也。次三:灶無薪,黃金瀕。測曰:灶無薪,有不用也。
初一:竈上に実在の物無く、只好く隣居に向かい討う。測辞に曰く:竈に実無きは、徒らに虚名有るのみ。次二:黄色の鼎は堅固にして節有り、鼎中の盛む所は而も辺縁に偏し、既に喝せず亦吃せず、誠信有れば便ち害無し。測辞に曰く:黄鼎介とは、居中にして清廉正を守るなり。次三:竈下に柴薪無く、黄金は傍辺に擺すも亦白搭なり。測辞に曰く:竈に薪無きは、物有りて而も用上げ得ざるなり;材料再貴なるも、引火の物を缺けば便ち焼起る能わず。
次四:鬲實之食,得其勞力。測曰:鬲實之食,時我奉也。次五:鼎大可觴,不齊不荘。測曰:鼎大可觴,饗無意也。次六:五味和調,如美如,大人之饗。測曰:味和之饗,宰輔事也。
次四:鬲中に食物を盛満す、是れ自己の労力に靠りて掙来せるなり。測辞に曰く:鬲実の食は、時に按じて我に供奉するなり;食は力より出でて、吃起してぞ安穏なり。次五:鼎は大にして酒器と当用し得るも、斎戒は誠ならず・挙止は荘ならず。測辞に曰く:鼎は大にして觴す可し、此の如き饗礼は誠意無きなり;器再大なるも心敬せざれば、無きに等し。次六:五味は調和得当、美好の至なり、此れは大人の饗宴なり。測辞に曰く:衆味を調和する饗宴は、正しく宰輔の為すべき事なり;鼎を調るは即ち政を調るなり、伊尹は割烹を以て湯を説く、用うるは就中此の譬喩なり。
次七:脂牛正肪,不濯釜而烹,則歐歍之疾至。測曰:脂牛歐歍,不絜志也。次八:食其委,雖噭不毀。測曰:食其委,蒙厥德也。上九:灶滅其火,唯家之禍。測曰:灶滅其火,國之賊也。
次七:肥牛上好の脂膏、而も鍋子を洗浄せずして下りて煮る、嘔吐作悪の毛病は就中来る。測辞に曰く:脂牛は欧歍すは、心志の潔浄ならざるなり;材料再好なるも、器皿潔ならざれば便ち人を害する要す。次八:吃るは積存下来の余糧なり、叫苦するに雖も亦敗亡に至らず。測辞に曰く:其の委を食うは、先前の儲蓄の恩徳を蒙受するなり。上九:竈裏の火は熄滅す、此れは一家の禍事なり。測辞に曰く:竈は其の火を滅すは、大処に往きて説けば便ち国家の禍害なり;炊煙は一たび断たれれば、家国の本は便ち絶たる。
第四十五首 大(小暑)
大:陰虛在內,陽蓬其外,物與盤蓋。
「大」は宏大の義にして、第四十五首と為り、小暑に値り、冬至後第一百九十八日より第二百零二日半に至るを主る。陰は内に虚し、陽気は外に蓬勃し、万物は皆盤の如く蓋の如くに張開す。此の首は大を講ず:真の大は能く容れ能く積むに在り、仮の大は門面声勢に在り;大にして実無ければ、崩るるは最も速し。
初一:淵潢洋,包無方,冥。測曰:淵潢洋,資裹無方也。次二:大其慮,躬自鑢。測曰:大其慮,為思所傷也。次三:大不大,利以成大。測曰:大不大,以小作基也。
初一:深淵は汪洋一片、包容して辺際無く、幽深難測なり。測辞に曰く:淵潢洋とは、其の裹含する所は一定の方所無きなり;大は能く容るるに始まる。次二:思慮を放大し過ぐれば、反って銼刀を拿して自己を磨くに似る。測辞に曰く:其の慮を大にするは、過度の思慮に傷せらるるなり。次三:大にして自ら大と為さず、正しく其の大を成就するに利あり。測辞に曰く:大ならずは、小処を拿して根基と作すなり。
次四:大其門郊,不得其刀,鳴虛。測曰:大其門郊,實去名來也。次五:包荒以中,克。測曰:包荒以中,督九夷也。次六:大失小,多失少。測曰:大失小,禍由微也。
次四:門庭郊野を修治して大ならしむるも、而も一把の刀さえ置弁し起らず、虚名は倒れて伝揚し開く。測辞に曰く:其の門郊を大にするは、実は去り名は来るなり。次五:中道を以て荒遠の地を包容す、成る能し。測辞に曰く:荒を包みて中を以てするは、四方九夷を統領するなり;《周易》泰卦九二に「包荒」と説く、正しく此の義を取る。次六:大を求むる為に小処を失い、多を求むる為に少処を失う。測辞に曰く:大は小を失うは、禍患の細微より起るなり。
次七:大奢迂,自削以觚,或益之餔。測曰:奢迂斥削,能自非也。次八:豐牆峭址,三歲不築,崩。測曰:豐牆峭址,崩不遲也。上九:丈佟以蔑,否出天外。測曰:大終以蔑,小為大資也。
次七:大にして奢侈迂濶なれど、能く自己の用度を削減して只だ簡朴の觚器を用いれば、人々は反って些の飯食を彼に添う。測辞に曰く:奢迂にして肯んじて自我斥退削減するは、能く自己の不是を承認するなり。次八:牆は築きて又高く又厚く、牆基は而も陡峭に修る、三年も修治を加えざれば、便ち崩塌せん。測辞に曰く:豊牆峭址は、崩塌は久しからざらん。上九:大は最後に到りて微末に帰し、閉塞して天外にも出で去る能わず。測辞に曰く:大は終に蔑を以てすは、小処は正しく大の憑資なり;大の極処に到れば、仍お小の上に回到するを得。賛辞は「丈佟」と作り而も測辞は「大終」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。
第四十六首 廓(小暑)
廓:陰氣瘱而怠之,陽猶恢而廓之。
「廓」は開廓・拡張の義にして、第四十六首と為り、小暑に値り、冬至後第二百零二日半より第二百零七日に至るを主る。陰気は収斂して懈怠し下がり、陽気は仍お恢張拡廓す。廓は外囲を撑開するを是とす:撑開して中に人有り徳有れば便ち盛にして、撑開して中空物無ければ便ち虚なり。
初一:廓之恢之,不正其基。測曰:廓之恢之,始基傾也。次二:金乾玉楨,廓於城。測曰:金乾玉楨,蕃輔正也。次三:廓無子,室石婦。測曰:廓無子,焉得後生也。
初一:一味に開廓拡張して、而も其の根基を端正しに往かず。測辞に曰く:之を廓り之を恢くすは、一開始に便ち根基歪みたるなり。次二:金を以て骨幹と為し・玉を以て楨柱と為し、城郭を拡廓し起る。測辞に曰く:金干玉楨とは、屏藩輔弼各々其の正を得るなり。次三:廓は張開するも而も子嗣無く、屋裏は只だ生育能わざる婦人有るのみ。測辞に曰く:廓に子無きは、何処に還た後代有る能せんや;外面再び大に撑げども、承継する人無ければ便ち空なり。
次四:恢其門戶,用圉寇虜。測曰:恢其門戶,大經營也。次五:天門大開,恢堂之階,或生之差。測曰:天門大開,德不能滿堂也。次六:維豐維崇,百辟馮馮,伊德攸興。測曰:維豐維崇,茲太平也。
次四:門戸を恢張拡大し、以て盗寇を抵御す。測辞に曰く:其の門戸を恢くすは、大いに経営を加うるなり;拡張の力を防守の上に用うる、ぞ其の当を得て用うと算す。次五:天門は大いに敞開し、庁堂の台階も亦甚だ寛に拡げ、反って差錯を生出す。測辞に曰く:天門大開は、徳行の此の堂に填満し得ざるなり;門の開くこと愈大なれば、徳足らざれば愈々顕る。次六:既に豊厚にして又崇高、百官は衆多にして気勢充盛、徳行は此に由りて興起す。測辞に曰く:維豊維崇、此れぞ太平の世なり。
次七:外大杚,其中失。君子至野,小人入宅。測曰:外大杚,中無人也。次八:廓其外,虛其內,利鼓鉦。測曰:廓外虛內,乃能有聞也。上九:極廓於高庸,三歲無童。測曰:極廓高庸,終無所臣也。
次七:外面は大にして斉整、裏面は而も已に失守せり;君子は荒野に趕到せられ、小人は宅第に住進す。測辞に曰く:外は大にして杚るは、裏頭に人材無きなり。次八:外殻を甚だ大に拡げ、裏面を甚だ空に掏る、鼓を撃ち鉦を鳴らすに利あり。測辞に曰く:外を廓り内を虚にするは、反って能く声聞を伝出し得;中空にしてぞ響く、此れ正しく虚名の由来なり。上九:高牆を極処に拡廓せば、三年間は僮僕一箇さえ無し。測辞に曰く:極廓高庸とは、終に役使し供べき人無きなり;廓りて人無きに至れば、牆再高きも守住し得ず。
第四十七首 文(小暑)
文:陰斂其質,陽散其文,文質班班,萬物粲然。
「文」は文采・修飾の義にして、第四十七首と為り、小暑に値り、冬至後第二百零七日より第二百一十一日半に至るを主る。陰気は万物の質地を収斂し、陽気はそれらの文采を散布し、文と質と班班として相雑し、万物は是に於て燦然として観る可し。此の首は文質の辨を講ず:文は質より出づれば則ち美、文は質より離れれば則ち乱、文は極処に到るも仍お質に回到するを要す。
初一:袷襀何縵,玉貞。測曰:袷隤何縵,文在內也。次二:文蔚質否。測曰:文蔚質否,不能俱睟也。次三:大文彌樸,孚似不足。測曰:大文彌樸,質有餘也。
初一:夾衣の褶襇の外面に素浄の縵帛を罩け、内里に美玉を蔵す、正を得。測辞に曰く:外に素縵を罩くるは、文采は全て裏面に在るなり。賛辞は「袷襀」と作り而も測辞は「袷隤」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次二:文采は蔚然として質地は足らず。測辞に曰く:文蔚質否は、文と質と一同に純粋なる能わざるなり。次三:最大の文采は反って更に質朴、看るに倒れて還た足らざるに似る。測辞に曰く:大文弥朴とは、質地有余るなり;真に文有る人は外に炫るを須とせず。
次四:斐如邠如,虎豹文如,匪天之享,否。測曰:斐邠之否,奚足譽也。次五:炳如彪如,尚文昭如,車服庸如。測曰:彪如在上,天文炳也。次六:鴻文無範,恣於川。測曰:鴻文無範,恣意往也。
次四:斐然として章を成し紛紛として観る可し、虎豹の皮毛の如く花紋斑斕なるも、而も上天の享用する所に非ず、行う可からず。測辞に曰く:斐邠の行う可からざる所以、此れ何の称誉すべき有らんや;文有りて徳無ければ、虎豹の皮は終究人に剥去せらる。次五:光焰炳耀・紋理彪炳、文治を崇尚して世に昭明し、車馬服飾は各々等差の用有り。測辞に曰く:彪如として上に在るは、天の文采の光明なるなり;上に在る人は文有れば、天下ぞ章法有らん。次六:宏大の文采は規範無く、江河の上に於て任意に流蕩す。測辞に曰く:鴻文範無きは、己意を放縱して往くなり;文一旦法度無ければ、大なるほど愈々乱る。
次七:雉之不祿,而雞藎谷。測曰:雉之不祿,難幽養也。次八:雕韱縠布,亡於時,文則亂。測曰:雕韱縠布,徒費日也。上九:極文密密,易以黼黻。測曰:極文之易,當以質也。
次七:野雉は文采斑斕なるも而も人の豢養を得ず、家鶏は平常文無く反って天天谷を吃すること有り。測辞に曰く:雉の禄せざるは、它の幽閉圈養せられ難きなり;文有りて馴せざれば、便ち世に用いられず。次八:繊細の花紋を雕鏤し、軽薄の縠布を織造し、該正事を為すべき時に於て時令を荒廃せば、文飾は便ち禍乱と変成す。測辞に曰く:韱を雕り縠を布くは、白白に時日を耗費するなり。上九:文采は極密の地步に到れば、便ち黼黻の如き端正の礼服紋様に換成すべし。測辞に曰く:極文の変ずべき所以は、当に質朴の上に回到すべきなり;此れは「文」首の帰結なり。
第四十八首 礼(小暑・大暑)
禮:陰在下而陽在上,上下正體,物與有禮。
「礼」は礼制の義にして、第四十八首と為り、小暑の末に当たり大暑に交り、冬至後第二百一十一日半より第二百一十六日に至るを主る。陰は下に在りて陽は上に在り、上下各々其の体を正しくし、万物は皆此に因りて礼を有す。礼の根本は敬に在り、敬は内心より発す;儀節は外殻にして、心意ぞ実なり。此の首より起りて、底本の第九賛は多く「次九」と題して「上九」と作らず、今は悉く原樣に依りて保留す。
初一:履於跂,後其祖裲。測曰:履於歧,退其親也。次二:目穆穆,足肅肅,乃貫以棘。側曰:穆穆肅肅,敬出心也。次三:畫象成形,孚無成。測曰:畫象成形,非其真也。
初一:脚尖を踮げて路を走り、祖先の衣裳を身後に撇く。測辞に曰く:歧路の上に踩むは、自己の親長を後面に推去するなり。賛辞は「跂」と作り而も測辞は「歧」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次二:眼神は粛穆、脚步は端厳、一挙一動は皆棘刺を貫るが如くに謹慎なり。測辞に曰く:穆穆粛粛とは、恭敬の内心より発するなり。底本此の条「測曰」は誤刻して「側曰」と作す、今は照録して改めず。次三:図像を画出して形貌を做成す、縦ち誠信有るも事を成す能わず。測辞に曰く:象を画きて形を成すは、真の東西に非ざるなり;礼は徒らに儀注有りて実心無ければ、餅を画くに異ならず。
次四:孔雁之儀,利用登階。測曰:孔雁之儀,可法則也。次五:懷其違,折其匕,過喪錫九矢。測曰:懷違折匕,貶其祿也。次六:魚鱗差之,乃大施之,帝用登於天。測曰:魚鱗差之,貴賎位也。
次四:鴻雁の行列を排成するが如き斉整の儀節、階に登りて礼を行うに利あり。測辞に曰く:孔雁の儀は、取法すべき准則なり;雁行は序有るは、正しく礼の本相なり。次五:心裏に礼に違う意を懐き、祭祀の用う所の匕を折断す、過失大にして天子の賜う所の九矢の栄を喪失す。測辞に曰く:違を懐き匕を折るは、彼の俸禄を貶削せんとするなり。次六:魚鱗の如くに一片片依次排列す、是に於て大いに施行し開く、天帝は此の套の礼制に凭りて天に升登す。測辞に曰く:魚鱗之を差すは、尊貴と卑賤の位次を皆排定するなり。
次七:出禮不畏,入畏。測曰:出禮不畏,人所棄也。次八:冠戚月丑履全履。測曰:冠戚履賎,不可不上也。次九:戴無首,焉用此九。測曰:無首之戴,焉所往也。
次七:礼の範囲を出でて還た毫も畏懼せず、礼の中に進みて反って畏縮して前せず。測辞に曰く:礼を出でて畏れざるは、此の如き人は衆人に拋棄せられんとするなり。次八:冠帽は頭頂に親近し、鞋履は最下に踩み、各々其の位置の上に在り。測辞に曰く:冠は貴にして履は賤とは、上下の分は講ぜざる能わざるなり。底本「月丑」は偏旁を拆开して写したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。次九:冠を戴くも而も頭無し、此の第九位は又何の用有らんや。測辞に曰く:首無きの戴は、還た何処に往かんと欲せんや;礼は極処に到りて承戴する所無ければ、便ち空に落る。
第四十九首 逃(大暑)
逃:陰乞章強,陽氣潛退,萬物將亡。
「逃」は逃遁の義にして、第四十九首と為り、大暑に値り、冬至後第二百一十六日より第二百二十日半に至るを主る。陰気は顕揚強盛し、陽気は暗暗に退却し、万物は将に衰亡せんとす。此の首は《周易》の《遁》に相当す:逃げて痕跡を留めざるを上と為し、逃げて人に牽制せらるるを危と為し、逃ぐ可き処無きに到る時に至りてぞ逃げんと想うは便ち晚し。底本「陰乞」の「乞」は当に「気」の字の訛なるべし、今は照録す。
初一:逃水之夷,滅其創跡。測曰:逃水之夷,跡不創也。次二:心惖惖,足金舄,不志溝壑。測曰:心惖惖,義不將也。次三:兢其股,鞭其馬,寇望其戶,逃利。測曰:兢股鞭馬,近有見也。
初一:水路平坦の処より逃走し、留下したる痕跡を皆抹掉す。測辞に曰く:水の夷に逃ぐるは、創痕を留下せざるなり;善く逃ぐる人は人に蹤跡を看見せしめず。次二:心裏は惕惕として安まらず、脚上は而も金飾の鞋を穿き、自己を沟壑に置身するを肯んぜず。測辞に曰く:心惖惖とは、道義の彼を扶持し得住ざるなり;富貴を舎得せざれば、便ち逃げ干浄し得ず。次三:大腿を繃緊し、坐骑を鞭打す、盗寇は已に彼の門戸を盯上せり、逃走してぞ利有り。測辞に曰く:股を兢げ馬を鞭つは、近処已に危険を看見せるなり。
次四:喬木維摐,飛鳥過之,或止降。測曰:喬木之鳥,欲止則降。次五:見鷕踤於林,獺入於淵,徵。測曰:見鷕及獺,深居逃凶也。次六:多田不婁,費我膎功。測曰:多田不婁,費力亡功也。
次四:高大の喬木は枝干撞撃して声有り、飛鳥は彼処を経過して、あるいは便ち停りて降落す。測辞に曰く:喬木上の鳥は、脚を歇めんと想えば便ち降下来る;托すべき処有れば、逃はぞ着落有らん。次五:雌雉の林中に撲落するを見、水獺は深淵に钻進す、行動するに宜し。測辞に曰く:雉と獺との此の如く躲蔵するを見るは、正しく深居して以て凶を避くるなり。次六:田地は多しと雖も而も勤加耕治するを肯んぜず、我が一番の辛苦を白费す。測辞に曰く:田多くして婁せざるは、力気を費して収成無きなり;該収るに収らざるは、該退るに退かざると同様に耗損なり。
次七:見於累,後乃克飛。測曰:見於累,幾不足高也。次八:頸加於矰,維糸羽其繩。測曰:頸加維糸羽,毋自勞也。次九:利逃餅跰,盜德嬰城。測曰:盜德嬰城,何至逃也。
次七:绳索に絆住せられて行蹤を暴露し、随后にぞ勉强して飛起す。測辞に曰く:累に見ゆるは、険くして高く飛び得ざりしなり。次八:脖子は系繩の短箭に撞上し、繩子は還た箭羽に纏る。測辞に曰く:頸上已に繳繩を挂ぐるは、再び力気を白费して挣扎する勿れ。底本「糸羽」は偏旁を拆开して写したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。次九:急急奔逃・跛行して去るに利あり;若し窃取来たるの徳名に靠りて城を環じて自守せば。測辞に曰く:徳を盗み城を嬰ぐは、何処に還た逃を談じ得んや;名は実に副わざれば、城は終に守住し得ず。
第五十首 唐(大暑)
唐:陰氣茲來,陽氣茲往,物且蕩蕩。
「唐」は空蕩・荒廃の義にして、第五十首と為り、大暑に値り、冬至後第二百二十日半より第二百二十五日に至るを主る。陰気は此の如く来り、陽気は此の如く去り、万物は是に於て一片蕩蕩然の空闊なり。唐は即ち空なり:空にして能く己を虚くして物を待つは是好、空にして一も守る所無きは是壊なり。
初一:唐於內,勿作厲。測曰:唐於內,無執守也。次二:唐處冥,利用東征。測曰:唐冥之利,利明道也。次三:唐素不貞,亡彼瓏玲。測曰:亡彼瓏玲,非爾所也。
初一:内里空空蕩蕩、軽挙妄動して禍を招く勿れ。測辞に曰く:内に唐なるは、心中に執守無きなり。次二:空虚にして自ら幽暗に処り、東方に向かい進発するに利あり。測辞に曰く:唐冥の利は、利は道路を明朗ならしむるに在り;己を虚くしてぞ物を受く能く、東は日出の方なり。次三:空疏にして素来正を守らず、那塊の玲瓏の美玉までも丟す。測辞に曰く:那塊の玲瓏玉を丟すは、那は本より爾の有すべき物に非ざるなり。
次四:唐無適,道義之闢。測曰:唐無適,惟義予也。次五:奔鹿懷鼷,得不訾。測曰:奔鹿懷鼷,不足功也。次六:唐不獨足,代天班祿。測曰:唐不獨足,無私容也。
次四:虚懐にして専主を預設せず、只だ道義を以て法則と為す。測辞に曰く:唐に適無きは、唯義に合するのみ給与するなり;《論語》に君子は「適する無き也、莫する無き也、義之与比なり」と説く、正しく此の意なり。次五:奔鹿を追趕す、懐裏に揣むは而も一只の小鼷鼠なり、所得は一提に値せず。測辞に曰く:鹿を奔して鼷を懐くは、何の功労と算すに足らず。次六:空闊にして而も只顧自己一人の飽足せず、上天に代わりて俸禄を頒布下去す。測辞に曰く:唐は独り足らざるは、心裏に私を容下せざるなり。
次七:弋彼三飛,明明於徵,終日不歸。測曰:弋彼三飛,適無所從也。次八:唐收祿,社鬼輟哭,或得其沐。測曰:唐收祿,復亡也。次九:明珠彈于飛肉,其得不復。測曰:明珠彈肉,費不當也。
次七:系繩の箭を用いて那の三只の飛鳥を射る、明明白白として一路追逐し、整天回らず。測辞に曰く:彼の三飛を弋るは、去りて而も一定の帰着無きなり。次八:空手にして俸禄を收取す、社廟の裏の鬼神は皆哭声を止住す、或いは還た一点の余沢に沾得せん。測辞に曰く:唐は禄を収むるは、得て又失うなり。次九:明珠を拿して飛鳥の肉を弾射す、得るは失うに抵らず。測辞に曰く:明珠にて肉を弾ずは、耗費の相称せざるなり;《荘子》は随侯の珠を以て千仞の雀を弾ずる人を譏る、正しく此の喩なり。
第五十一首 常(大暑・立秋)
常:陰以知臣,陽以知闢,君臣之道,萬世不易。
「常」は恒常の義にして、第五十一首と為り、大暑の末に当たり立秋に交り、冬至後第二百二十五日より第二百二十九日半に至るを主る。陰は用いて臣道を知らしめ、陽は用いて君道を知らしむ、君臣の間の名分は万世改らず。此の首は《周易》の《恒》に相当し、日月を以て君臣に比す:日の行は常有りて差忒せず、月は盈亏有りて定無く、各々其の本分有り。
初一:戴神墨,履良式,以一耦萬,終不稷。測曰:戴神墨,體一形也。次二:內常微女,貞厲。測曰:內常微女,不正也。次三:日常其得,三歲不食。測曰:日常其德,君道也。
初一:頭頂は神明の墨繩を戴き、脚は良好の法式を踩み、一個の准則を以て万事に応対す、終に跌倒せざらん。測辞に曰く:神墨を戴くは、此の「一」を自身の形体の上に体現するなり。次二:内室の中に常道を婦人の私の上に降低す、守ると雖も危し。測辞に曰く:内常して女に微るは、正道に合せざるなり。次三:太陽は恒常として其の所得を施予す、三年も一餐を進めずとも照様に運行す。測辞に曰く:日は其の徳を常にする、此れは君主の道なり。賛辞は「其得」と作り而も測辞は「其徳」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。
次四:月不常,或失之行。測曰:月不常,臣失行也。次五:其從其橫,天地之常。測曰:其從其橫,君臣常也。次六:得七而九,懦撓其剛,不克其常。測曰:得七而九,棄盛乘衰也。
次四:月は盈亏常無く、或る時は便ち正常の運行を失掉す。測辞に曰く:月は常ならずは、臣下の行止を失えるなり。次五:縦有り横有り、此れは天地の常道なり。測辞に曰く:一縦一横とは、正しく君と臣と各々其の常に安んずるなり。次六:七を得て却って硬に九に凑成せんと要す、怯懦を用いて自己の剛強を撓折す、其の常道を守住し得ず。測辞に曰く:七を得て九とするは、興盛を丟開して往きて衰敗に乗ずるなり;七は少陽方に壮、九は老陽将に変せんとす、多を貪れば反って衰に転ず。
次七:滔滔往來,有常衰如,克承貞。測曰:滔滔往來,以正承非也。次八:常疾不疾,咎成不詰。測曰:常疾不疾,不能自治也。次九:疾其疾,巫醫不失。測曰:疾其疾,能自醫也。
次七:滔滔として断たず往来す、常道の中已に衰象を現す、能く承接し得住れば仍お正を得。測辞に曰く:滔滔往来とは、正道を以て那些の正ならざるを承接するなり。次八:常と為し以て慣れたる病痛は病と当作せず、過咎已に成るも亦追究しに往かず。測辞に曰く:常疾は疾とせずは、能く自我整治せざるなり。次九:自己の病を病と成して治すれば、巫者と医者とは便ち皆誤診せざらん。測辞に曰く:其の疾を疾とするは、能く自己が自己を医治するなり;病を知れば則ち常道復す可し、此の首は便ち此を以て収束す。
第五十二首 度(立秋)
度:陰氣日躁,陽氣日舍,躁躁舍舍各得其度。
「度」は法度・限度の義にして、第五十二首と為り、立秋に値り、冬至後第二百二十九日半より第二百三十四日に至るを主る。陰気は一天天として躁動し、陽気は一天天として止息し、一躁一舍、各々皆其の限度有り。此の首は《周易》の《節》に相当す:小処に分寸を失えば、大処は便ち傾覆せんとす。
初一:中度獨失。測曰:中度獨失,不能有成也。次二:澤不舍,冥中度。測曰:澤不舍,乃能有正也。次三:小度差差,大攋之階。測曰:小度差差,大度傾也。
初一:偏偏として中道の分寸の上に準を失う。測辞に曰く:中度独り失うは、事を成す能わざるなり;別処再好なるも、中を失えば便ち成無し。次二:潤沢の施は停歇するを肯んぜず、暗中に於て仍お中度に合す。測辞に曰く:沢は舎てざるは、正に此に因りてぞ正を得る能し;施して竭さざるは、ぞ節度有るの施なり。次三:小なる分寸は一点点として参差す、便ち大崩壞の階梯なり。測辞に曰く:小度差差とは、大なる法度も亦傾覆せんと要するなり。
次四:乾楨利於城。測曰:乾楨之利,利經營也。次五:乾不乾,攋於營。測曰:乾不乾,不能有寧也。次六:大度檢檢,於天示象,垂其範。測曰:大度檢檢,垂象貞也。
次四:牆を筑くの干と楨とを立起す、城を筑くに利あり。測辞に曰く:干楨の利は、利は経営建置に在り;牆を筑くは先ず版干を立つ、正しく度有るの開端なり。次五:該骨幹と為すべきは其の骨幹を成さざれば、営造は便ち垮掉せんとす。測辞に曰く:干の干ならざるは、安寧し下来る能わざるなり。次六:大なる法度は整飭有序、天上に於て象を顕示して成し、其の規範を垂下す。測辞に曰く:大度検検とは、天象を垂示して正を得るなり;聖人は象を観て度を制す、取るは就中此のなり。
次七:不度規之,鬼即訾之。測曰:不度規之,明察笑也。次八:石赤不奪,節士之必。測曰:石赤不奪,可與有要也。次九:積差之貸,十年不復。測曰:積差之貸,不得造也。
次七:自己は法度に合せざるに而も往きて別人を規正す、鬼までも彼を譏議せん。測辞に曰く:度ならずして之を規るは、明察の人の看て只だ笑いを発するのみ。次八:丹砂の石は本色は奪去す可からず、此れは節操有る士の必ず守る所なり。測辞に曰く:石は赤にして奪われざるは、此の如き人は彼と盟約を訂立し得。次九:积累下来の差錯は一筆の債の如く、十年も還清し得ず。測辞に曰く:差を積むの貸は、再び造り起る能わざるなり;毫厘の差は積ること久しければ、便ち修復するに由無し。
第五十三首 永(立秋)
永:陰以武取,陽以文與,道可長久。
「永」は長久の義にして、第五十三首と為り、立秋に値り、冬至後第二百三十四日より第二百三十八日半に至るを主る。陰は威武を以て之を取り、陽は文徳を以て之を予う、一取一予、其の道ぞ長久し得るなり。此の首は久を講ず:久は合軌に於て在り、合軌せざるの長久は、只是把禍患を拖長するのみ。
初一:不替不爽,長子之常。測曰:不替不爽,永宗道也。次二:內懷替爽,永矢貞祥。測曰:內懷替爽,安可久也。次三:永其道,未得無咎。測曰:永其道,誠可保也。
初一:廃弛せず、差失せず、此れは長子の応守の常道なり。測辞に曰く:替えず爽らざるは、宗族の道を長久ならしむるなり。次二:心裏已に廃弛差失の念頭を懐くも、嘴上は而も長く貞祥を守らんと発誓す。測辞に曰く:内に替爽を懐くは、怎麼長久し得了せんや。次三:長久に彼の道を守住す、還た全く過失無しと談ずるに及ばざるに雖も。測辞に曰く:其の道を永くするは、実実在在として保住し得;能く守住すれば便ち足る、全備責備を求むる必須無し。
次四:子序不序,先賓永失主。測曰:子序不序,非永方也。次五:三綱得於中極,天永厥福。測曰:三綱之永,其道長也。次六:大永於福,反虛庭,入於酋冥。測曰:大永於福,福反亡也。
次四:児子は該次序に按ずべきに而も次序に按ぜず、反って賓客を前に居らしむれば、便ち永遠に主位を失掉す。測辞に曰く:子の序の序ならざるは、久を求むるの方に非ざるなり。次五:君臣・父子・夫婦の此の三綱は皆中正の極に帰す、上天は便ち彼の福を長久ならしむ。測辞に曰く:三綱の永は、此の路は走ること長きなり。次六:一味に福の長久を求め、回頭して却って只だ空庭を見、幽暗の尽頭に落ち入る。測辞に曰く:福に於て大永なるは、福は反って無くなるなり;久を求むること太だ過ぐれば、久は便ち先ず亡ぶ。
次七:老木生蒔,永以纏其所無。測曰:老木生蒔,永厥體也。次八:永不軌,凶亡流於後。測曰:永不軌,其命劑也。次九:永終馴首。測曰:永終馴首,長愷悌也。
次七:老樹の上に新栽の枝條を生じ、長久にそれを本来無き物に纏続し上去す。測辞に曰く:老木は蒔を生ずは、其の形体を延長するなり。次八:長久に法軌を守らざれば、凶険喪亡は便ち後代に禍を流す。測辞に曰く:永にして軌ならざるは、彼の命数は已に割定せられり。次九:長久は最後に到るも仍お能く柔順にして本初に回到す。測辞に曰く:終に永くして首を馴すは、和楽平易の徳を長保するなり;此の首は馴順を以て結を作す、正しく久の久と為る所以を見る。
第五十四首 昆(立秋)
昆:陰將離之,陽尚昆之,昆道尚同。
「昆」は斉同の義にして、第五十四首と為り、立秋に値り、冬至後第二百三十八日半より第二百四十三日に至るを主る。陰気は将に万物を分離せしめんとし、陽気は還たそれらを同一せしめんと想う、昆道の崇尚する所は正しく此の「同」なり。此の首は《周易》の《同人》に近く:同は公道の上に同在るを要し、一味に同を求めて黒白を辨せざれば、便ち混と成る。
初一:昆於黑,不知白。測曰:昆於黑,不可謂人也。次二:白黑菲菲,三禽一角同尾。測曰:三禽一角,無害心也。次三:昆於白,失不黑,無際一尾三角。測曰:昆白不黑,不相親也。
初一:只だ黒と混同し、世上に還た白有るを知らず。測辞に曰く:黒に昆るは、此れは人と称するに配せず;黒白分かたざれば、同は便ち同流合汚と成る。次二:白と黒とは紛然として並列し、三只の禽鳥は共に一只の角・同一条の尾なり。測辞に曰く:三禽一角とは、彼此に加害の心無きなり;形は異なれども心は相同じき、ぞ真の同なり。次三:只だ白と混同し、白に非ざるを一概に排斥す、彼此に交接無く、一条の尾上に而も三只の角を顶く。測辞に曰く:白に昆して黒ならずは、能く相親し得ざるなり;只だ一色を認むれば、同は便ち排他に変る。
次四:鳥託巢於菆,人寄命於公。測曰:鳥託巢,公無貧也。次五:谷矢疏數,眾犛毀玉。測曰:谷矢疏數,奚足旬也。次六:昆於井市,文車同軌。測曰:昆於井市,同一倫也。
次四:鳥は叢生の好木の上に巢を托し、人は身家性命を公道の上に寄托す。測辞に曰く:鳥の能く巢を托するは、公道の処は窘乏せざるに因るなり。次五:好箭と壊箭と疏密一ならずして混じて射る、衆多の牦毛の如き細なる瑕疵は一塊の玉を毀掉し得。測辞に曰く:谷矢疏数は、何処に用上げて十天に足らんや;雑にして別無ければ、同は便ち乱と成る。次六:市井の間に於て衆人と同処す、車軌の寛窄と紋飾とは一致に帰す。測辞に曰く:井市に昆るは、一個の倫次の上に同在るなり;《中庸》の説く所の「車は軌を同じくし、書は文を同じくす」は、正しく此の種の同なり。
次七:蓋偏不覆,晏雨不救。測曰:蓋偏不覆,德不均也。次八:昆於危難,乃覆之安。測曰:危難之安,素施仁也。次九:昆於死,棄寇遺。測曰:昆於死,棄厥身也。
次七:車蓋は一辺に偏し、遮い周全ならず、天晴下雨皆人を救う能わず。測辞に曰く:蓋偏して覆わざるは、恩徳の施すこと均ならざるなり;同にして偏有れば、便ち同ならざるに等し。次八:危難の中に於て人と患を同じくすれば、反って能く危難を翻転して安寧と為す。測辞に曰く:危難の能く安に転ずる所以は、平素より仁徳を施行すればなり。次九:同すること人と一起去死するに到る、自己を寇仇に丟棄す。測辞に曰く:死に昆るは、自身を拋棄するなり;同の極処に到りて止まるを知らざれば、命までも賠進せん。
第五十五首 減(立秋・処暑)
減:陰氣息,陽氣消,陰盛陽衰,萬物以微。
「減」は減損の義にして、第五十五首と為り、立秋の末に当たり処暑に交り、冬至後第二百四十三日より第二百四十七日半に至るを主る。陰気は滋長し、陽気は消退し、陰盛陽衰、万物は此に由りて微に転ず。此の首は《周易》の《損》に相当す:減は私欲の上に在るは是れ善、減は賢徳の上に在るは是れ悪、減は疾患の上に在るは是れ明なり。
初一:善減不減,冥。測曰:善減不減,常自沖也。次二:心減自中,以形於身。測曰:心減形身,困諸中也。次三:減其儀,利用光於階。測曰:減其儀,欲自禁也。
初一:真に自ら減ずるを会する人は彼の減ずるを看出せず、幽隠無跡なり。測辞に曰く:善く減じて減ぜずは、心裏に常に虚にして盈たざるを保持するなり。次二:心裏より先ず減じ起り、再び一直に形体の上に体現す。測辞に曰く:心を減じ形身するは、節制の功夫を内心に拘束するなり。次三:自己の儀節排場を減省す、反って朝階の上に於て光彩を顕出するに利あり。測辞に曰く:其の儀を減ずるは、自我約束せんと欲するなり。
次四:減於艾,貶其位。測曰:減於艾,無以蒞眾。次五:減黃貞,下承於上,寧。測曰:減黃貞,臣道丁也。次六:幽闡積,不減不施,石。測曰:幽闡不施,澤不平也。
次四:連年高徳有る長者までも裁減せんと要すれば、便ち自己の位子を貶損す。測辞に曰く:艾に於て減ずる、此の如くしては衆人に臨御する法無し。次五:中央の黄を減損して正を守れば、下に在る者は上に在る者を承奉し、安寧なり。測辞に曰く:黄を減じて貞なるは、臣道の其の時に正当するなり。次六:暗中に一味に阐揚积聚し、既に減損せず亦施予せず、硬きこと石頭の如し。測辞に曰く:幽く阐して施さざるは、恩沢の施すこと均平ならざるなり。
次七:減其疾,損其恤,厲不至。測曰:減其疾,不至危也。次八:瀏漣漣,減於生根。測曰:瀏漣之減,生根毀也。次九:減終,利用登於西山,臨於大川。測曰:減終之登,誠可為也。
次七:彼の病を減去し、彼の憂を損掉せば、危険は便ち来らざらん。測辞に曰く:其の疾を減ずるは、危境に陥入せざるに至るなり;其の該損を損ずるは、正しく損道の正用なり。次八:水流は澌澌淙淙として停まず、一直に生命の根にまで減損す。測辞に曰く:瀏漣の減は、生根までも毀了するなり;該減ずるを減じ了えて還た減ずれば、便ち本を傷うるものと成る。次九:減損は尽頭に到れば、西山に登上り大川に面临するに利あり。測辞に曰く:終に減じて登るは、実実在在として作為する所有り得;減じて尽処に到れば、便ち進む可き時に転成す。
第五十六首 唫(処暑)
唫:陰不之化,陽不之施,萬物各唫。唫遇禍,唫遇禍。
「唫」は「噤」に同じ、口を閉じて言わず・閉塞通ぜざるの義にして、第五十六首と為り、処暑に値り、冬至後第二百四十七日半より第二百五十二日に至るを主る。陰気は化育しに往かず、陽気は施予しに往かず、万物は各自閉塞す;閉塞すれば便ち禍に遇う。底本首辞末尾の「唫遇禍」三字は一次重出す、当に伝写の衍文なるべし、今は照録して刪らず。
初一:唫不予,丈夫婦處。測曰:貌不交,唫不予,人所違也。次二:唫於血,資乾骨。測曰:唫於血,臞自肥也。次三:貌不交,口唭凝,唫無辭。測曰:貌不交,人道微也。
初一:口を閉じて而も何も与えるを肯んぜず、堂堂の丈夫は却って婦人の如く家裏に窩る。測辞に曰く:口を閉じて予せざるは、衆人皆彼に背離せんとするなり。此の条の測辞は底本次三の「貌不交」三字を窜入す、今は照録して刪らず。次二:閉塞して血を出すに至り、只だ枯干の骨頭を剩して倚る可し。測辞に曰く:血に唫するは、痩瘠の人は還た自ら以て肥壮と為すなり。次三:容色の上は人と交接せず、嘴巴は唭唭として凝住し、口を閉じて一辞を出さず。測辞に曰く:貌は交らずは、人と人と相処の道の衰微するなり。
次四:唫其谷,不振不俗,累老及族。測曰:唫其谷,不得相希也。次五:不中不督,腐蠹之嗇。測曰:不中不督,其唫非也。次六:泉原洋洋,唫於丘園。測曰:泉園之唫,不可譏也。
次四:自己の糧穀を緊緊に閉住し、既に賑済せず亦俗に随わず、老人に連累し以て整箇の宗族に至る。測辞に曰く:其の穀を唫するは、彼此再び指望し上がる能わざるなり。次五:既に中に居らず亦理に合せず、是那種の腐朽生蠹の吝嗇なり。測辞に曰く:中ならず督ならずは、此の如き閉塞は対らず。次六:泉源は汪洋満溢す、而も只だ自家の丘園の内に閉守す。測辞に曰く:泉園の唫は、倒れて議すべからざるなり;守有りて外溢せざるは、那は隠者の閉なり。
次七:唫於體,黃肉毀。測曰:唫於體,骨肉傷也。次八:唫遇禍,禱以牛,解。測曰:唫遇禍,大費當也。次九:唫不雨,孚乾脯。測曰:唫不雨,何可望也。
次七:自己の身上に閉塞し、中間の肌肉は皆壊死せり。測辞に曰く:体に唫するは、骨と肉と皆傷を受けたるなり。次八:閉塞して禍患に遭遇す、牛牲を用いて祷告し、化解を得。測辞に曰く:唫して禍に遇う、此の一大筆の破費は花るに値当なり。次九:陰雲は閉塞して而も雨下り来らず、只だ一片の干肉の如き枯槁に落得す。測辞に曰く:唫して雨らざるは、還た何を指望し得んや。
第五十七首 守(処暑)
守:陰守戶,陽守門,物莫相干。
「守」は守持の義にして、第五十七首と為り、処暑に値り、冬至後第二百五十二日より第二百五十六日半に至るを主る。陰は内戸を守り、陽は外門を守り、万物は彼此相犯せず。守は該守るを守住するを要す:正を守り中を守るは是れ善守にして、一份の貧陋を守って変通するを肯んぜざるは便ち死守なり。
初一:閉朋牖,守元有。測曰:閉朋牖,善持有也。次二:迷自守,不如一之有。測曰:迷自守,沖無所以也。次三:無喪無得,往來默默。測曰:無喪無得,守厥故也。
初一:外に向かい通気する窓牖を関上し、原有の物を守住す。測辞に曰く:朋牖を閉づるは、善く已有を保持するなり。次二:迷迷糊糊として死守す、還た実実在在として一物を守住するに如かず。測辞に曰く:迷として自守すは、空虚にして憑拠無きなり。次三:既に失去無く亦得到無く、来来去去として黙黙無声なり。測辞に曰く:喪無く得無きは、原來の様子を守るなり。
次四:象艮有守。測曰:象艮之守,廉無個也。次五:守中以和,要侯貞。測曰:守中以和,侯之素也。次六:車案軔,圭璧塵。測曰:車案軔,不接鄰也。
次四:《周易》艮卦の止に取法すれば、便ち守る所有らん。測辞に曰く:艮の守に象るは、清廉にして私党を樹立せざるなり;艮は止なり、其の該止る所に止まれば便ち守なり。次五:中道を守りて和を以て用と為す、能く諸侯を約結して正を得。測辞に曰く:中を守りて和を以てす、此れは諸侯の素來の本分なり。次六:車子は止輪の木楔に按住せられて動かず、圭璧も亦灰塵に蒙上せり。測辞に曰く:車は轫に案すは、隣国と往来せざるなり;関を閉じて自守すれば、礼器までも用上がらず。
次七:群陽不守,男子之貞。測曰:群陽不守,守貞信也。次八:臼無杵,其碓舉。天陰不雨,白日毀暑。測曰:臼無杵,其守貧也。次九:輿荼有守,辭於盧首,不殆。測曰:輿荼有守,故愈新也。
次七:衆陽は一処に困守せず、此れぞ男子の正道なり。測辞に曰く:群陽守らずとは、守るは貞正と信実なり;形跡を死守せざるにして、ぞ実質を守住し得。次八:石臼の裏に杵無く、碓頭は空空として挙ぐ;天は陰りて而も雨を下さず、白日の裏は暑気までも散尽せり。測辞に曰く:臼に杵無きは、一份の貧窘を守るなり。次九:満車の苦菜も亦守る人有り、領頭の人に向かい辞譲する一番すれば、便ち危殆に至らず。測辞に曰く:輿荼に守有るは、旧なるが故に反って一天天として更新す;尋常の物を守住し得れば、家業はぞ陳敗せざらん。
第五十八首 翕(処暑・白露)
翕:陰來逆變,陽往順化,物退降集。
「翕」は収斂・合攏の義にして、第五十八首と為り、処暑の末に当たり白露に交り、冬至後第二百五十六日半より第二百六十一日に至るを主る。陰気は到来して逆向に変動し、陽気は離去して順勢化生し、万物は退降聚集す。翕は即ち翅膀を收起するなり:收るに其の時を得れば便ち力を蓄え得、收りて網羅の裏に入れば便ち縛せらるるものと成る。
初一:狂沖於冥,翕其志,雖欲梢搖,天不之茲。測曰:狂沖於冥,天未輿也。次二:翕冥中,射貞。測曰:翕冥中,正予也。次三:翕食嘬嘬。測曰:翕食嘬嘬,利如舞也。
初一:狂躁に幽暗中に於て衝撞す、只好く志向を収斂し起る;縦ち枝梢を搖動して作為せんと想うとも、上天も亦彼に此の份の機縁を給わず。測辞に曰く:冥に狂冲するは、上天は還た曾て彼を許賛せざるなり。次二:幽暗の中に於て収斂す、指向する所は正道なり。測辞に曰く:冥中に翕するは、端端正正として給与するなり。次三:収攏し起りて一口一口として吃す、嘬嘬として声有り。測辞に曰く:食を翕して嘬嘬たる、那份の便利は節拍に合して起舞するが如く従容なり。
次四:翕其羽,利用舉。測曰:翕其羽,朋友助也。次五:翕其腹,辟穀。測曰:翕其腹,誹所以譽也。次六:黃心鴻翼,翕於天。測曰:黃心鴻翼,利得輔也。
次四:先ず其の羽翼を収攏し、飛挙するに利あり。測辞に曰く:其の羽を翕するは、朋友の前来相助するなり;先ず合攏してぞ起り来る能く。次五:其の肚腹を収縮し、辟谷して食せず。測辞に曰く:其の腹を翕するは、眼下は人に非議せられ、正しく日後に人に称誉せらるるの由来なり。次六:中正の黄心を懐き、鴻雁の如き大翼を長じ、収斂して而る後に天に合す。測辞に曰く:黄心鴻翼は、利は輔佐を得るに在り。
次七:翕繳惻惻。測曰:翕繳惻惻,被離害也。次八:揮其罦,絕其羂,殆。測曰:揮罦絕羂,危得遂也。次九:揮其角,維用抵族。測曰:揮其角,殄厥類也。
次七:絲繩を系げたる箭に缴住せられて翅を収め展げ難し、凄惻已まず。測辞に曰く:缴に翕して惻惻たるは、羅網の害を遭うなり。次八:那張の覆車網を揮開し、那個の套索を挣断す、険なりと雖も脱す。測辞に曰く:罦を揮い羂を絶つは、危険の中に於て終に脱き身を得るなり。次九:其の角を揮動し、只だ自己の同族を抵触するに用う。測辞に曰く:其の角を揮うは、自己の族類を絶滅するなり;同様の一股の奮力も、外に向かえば脱険し得、内に向かえば便ち自戕と成る。
第五十九首 聚(白露)
聚:陰氣收聚,陽不禁御,粅相崇聚。
「聚」は聚集の義にして、第五十九首と為り、白露に値り、冬至後第二百六十一日より第二百六十五日半に至るを主る。陰気は収斂聚合し、陽気は禁阻を加えず、万物は互相崇聚す。此の首は《周易》の《萃》に相当し、多く宗廟祭祀に就きて言を立つ:人を聚めんには先ず心を聚むるを要し、心を聚めんには敬と信とに靠るを要す。底本「粅」は即ち「物」の字なり、今は照録す。
初一:鬼神以無靈。測曰:鬼神無靈,形不見也。次二:燕聚嘻嘻。測曰:燕聚嘻嘻,樂淫愆也。次三:宗其高年,群鬼之門。測曰:宗其高年,鬼待敬也。
初一:鬼神は此に因りて霊験を顕出せず。測辞に曰く:鬼神に霊無きは、それらは本より見る可き形跡無ければなり;聚の開端は幽に在りて顕に在らず。次二:安逸に聚まりて嬉笑取楽す。測辞に曰く:燕聚嘻嘻とは、逸楽の過度にして差失を生出するなり。次三:那些年高の長者を尊奉す、此れは衆鬼神に通往する門径なり。測辞に曰く:其の高年を宗るは、鬼神は人の敬意を有待するなり;老を敬するは即ち神を事る所以なり。
次四:牽羊示於叢社,執圭信其左股,野。測曰:牽羊於叢,不足榮也。次五:鼎血之蕕,九宗之好,乃後有孚。測曰:鼎血之蕕,信王命也。次六:畏其鬼,尊其體,狂作眯淫,亡。測曰:畏鬼之狂,過其正也。
次四:羊を牽きて叢林の裏の社壇の前に陳示し、圭璧を手執するも而も之を左腿の上に靠す、粗野なり。測辞に曰く:羊を叢に牽くは、何の栄耀と算すに足らず;礼器を執ること正ならざれば、聚めるも聚めて体統を出さず。次五:鼎中に血を歃して腥草の気を帯ぶ、此れは九族宗親の結好の礼にして、事後便ち憑る可き誠信有り。測辞に曰く:鼎血の蕕は、王命に取信するなり;血を歃して盟と為す、聚むる所は正しく一個の信の字なり。次六:鬼神を畏懼し、それらの形体を尊崇するも、而も狂乱に昏眯淫祀の事を做出す、喪亡なり。測辞に曰く:鬼を畏れて狂に至るは、正当の分寸を過ぐるなり。
次七:竦萃於丘冢。測曰:竦萃丘冢,禮不廢也。次八:鴟鳩在林,坺吠吠彼眾禽。測曰:鴟鳩在林,眾所吠也。次九:垂涕累鼻,聚家之匯。測曰:垂涕累鼻,時命絕也。
次七:粛然恭敬して墳丘墓塚の前に聚集す。測辞に曰く:竦として丘塚に萃るは、祭祀の礼の荒廃せざるなり。次八:鴟鴞と斑鳩とは林中に栖り、那些の衆鳥に向かい吠叫して休まず。測辞に曰く:鴟鳩の林に在るは、衆鳥に共に憎せらるるなり;聚るに同類を得ざれば、聚め起るは只是敵意のみ。次九:涕涙は長く流れ・鼻涕は串を成し、一家人は一処に聚攏す。測辞に曰く:涕を垂れ鼻を累ぐは、時運と寿命と皆尽頭に到るなり;聚りて最後に到れば、送終の聚と成る。
第六十首 積(白露)
積:陰將大閉,陽尚小開,山川藪澤,萬物攸歸。
「積」は積聚の義にして、第六十首と為り、白露に値り、冬至後第二百六十五日半より第二百七十日に至るを主る。陰気は将に大いに閉蔵せんとし、陽気は還た一線の小開を留む、山川藪沢の間、万物は皆彼処に向かい帰聚す。善と悪とは皆積む可し:善は子孫に積み、悪も亦子孫に積む。
初一:冥積否,作明基。測曰:冥積否,始而在惡也。次二:積不用,而至於大用,君子介心。測曰:積不用,不可規度也。次三:積石不食,費其勞力。測曰:積石不食,無可獲也。
初一:暗中に不正当の物を积累し、反って之を光明の根基と当作す。測辞に曰く:冥積否は、一開頭に便ち悪の上に積むなり。次二:積蓄し起りて而も用いるを急がず、後来に到りて大用を成就す、君子は此の份の心を守住すること甚だ牢し。測辞に曰く:積みて用いざるは、旁人は彼を測度するに由無し;其の用を見ざるは、正しく大用の自ら出づる所なり。次三:一堆の石頭を積むも又吃す能わず、一番の労力を白费す。測辞に曰く:石を積みて食わざるは、収穫すべき無きなり;物を積み錯れば、積むほど愈々無用なり。
次四:君子積善,至於車耳。測曰:君子積善,至於蕃也。次五:藏不滿,盜不贏。測曰:藏滿盜贏,還自損也。次六:大滿碩施,得人無亢。測曰:大滿碩施,人所來也。
次四:君子は善行を积累し、一直に車耳の如き高さに堆到る。測辞に曰く:君子は善を積むは、繁盛の地步に積み到るなり。次五:庫蔵は填めて太だ満とせず、盗賊は便ち大利を得ず。測辞に曰く:蔵ること太だ満ちて盗賊に利を獲らしむるは、反って自己の損を受くるなり。次六:積むこと大満にして又厚厚として他人に施予す、人心を得て彼と相抗する人無し。測辞に曰く:大満碩施とは、衆人皆彼の此処に往き来るなり;能く散ずる、ぞ積む所を守住し得。
次七:魁而顏而,玉帛班而,決欲招寇。測曰:魁而顏而,盜之招也。次八:積善辰禍,維先之罪。測曰:積善辰禍,非己辜也。次九:小人積非,至於苗裔。測曰:小人積非,禍所骫也。
次七:魁然として自大・気焰は臉に上り、玉帛は満地に鋪陳す、簡直に存心盗寇を招来するなり。測辞に曰く:魁として顔たるは、正しく盗賊を招引する做法なり。次八:善を積むも偏偏として禍患に遇上す、那は先人の留下したる罪なり。測辞に曰く:善を積みて禍に辰うは、自己の過咎に非ず;《周易》に不善を積む家は必ず余殃有りと説く、殃は時に正しく後人の身上に落る。次九:小人は過錯を积累し、一直に子孫後代に積み到る。測辞に曰く:小人は非を積むは、禍患は就中此の如く盤結し起るなり。
第六十一首 飾(白露・秋分)
飾:陰白陽黑,分行厥職,出入有飾。
「飾」は修飾の義にして、第六十一首と為り、白露の末に当たり秋分に交り、冬至後第二百七十日より第二百七十四日半に至るを主る。陰は其の白を顕し、陽は其の黒を顕し、各自分頭に職分を履行し、一出一入は皆文飾を帯ぶ。此の首は《周易》の《賁》に相当す、而も通篇言語を借りて論を立つ:言語は人の最も切身の文飾にして、説くと説かざる・何時に説くかは、皆飾なり。
初一:言不言,不以言。測曰:言不言,默而信也。次二:無質飾,先文後失服。測曰:無資先文,失貞也。次三:吐黃舌,鉗黃聿,利見哲人。測曰:舌聿之利,利見知人也。
初一:説くも而も実際は説かず、並に言辞に靠らず。測辞に曰く:言に言わざるは、沈黙して自然に人に取信するなり。次二:質地無くして只だ文飾有るのみ、先ず文采を講じ、後来に到りて身上の衣服までも保住し得ず。測辞に曰く:底子無くして先ず文采を求むるは、正道を失掉するなり。賛辞は「無質飾」と作り而も測辞は「無資先文」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次三:中正の舌頭を吐出して話を説き、中正の筆杆を握定して書写す、明哲の人を見るに利あり。測辞に曰く:舌と筆との利は、利は人を識る人に遇上するに在り。
次四:利舌哇哇,商兒之真。測曰:哇哇之真,利於商也。次五:下言如水,實以天牝。測曰:下言如水,能自沖也。次六:言無追如,抑亦飛如,大人震風。測曰:言無追如,抑亦揚也。
次四:舌頭は霊利・哇哇として停まず、此れは商販子弟の本色なり。測辞に曰く:哇哇の真は、只だ売買を為すに利するのみ;言語を以て利を求むれば、好処も亦此に到りて止む。次五:話を低下して流水の如くに説けば、其の充実は正しく天下の谷牝の如く虚にして能く受るに在り。測辞に曰く:言を下して水の如くするは、能く自ら虚に居るなり。次六:話は一たび口を出口すれば便ち追回し来る能わず、反って飛出去するが如く、大人の言語は疾風の如く四方を震動す。測辞に曰く:言は追如無き、那れ正しく其の飛揚遠播し得るの縁故なり。
次七:不丁言時,微於辭,見上疑。測曰:不丁言時,何可章也。次八:蛁鳴喁喁,血出其口。測曰:蛁鳴喁喁,口自傷也。次九:白舌于于,屈於根,君子否信。測曰:白舌于于,誠可長也。
次七:話を説くに其の時に当たらず、言辞は又含糊隠晦、上位の者に猜疑せらる。測辞に曰く:言時に丁ならざるは、話は怎麼説き明白せんや。次八:蝉の如くに喁喁として停まず鳴叫し、叫ぶこと嘴裏に血を出すに至る。測辞に曰く:蛁鳴喁喁とは、自己の口の自らを害うなり。次九:舌頭は潔白にして舒徐従容、能く根本の処に屈蔵す、君子は軽発の言に対して軽易に相信せず。測辞に曰く:白舌于于とは、此の份の誠実は長久し得るなり;飾りて極処に到りて質実に帰するは、正しく初一の「言不言」と首尾相応ず。
第六十二首 疑(秋分)
疑:陰陽相磑,物咸雕離,若是若非。
「疑」は疑惑の義にして、第六十二首と為り、秋分に値り、冬至後第二百七十四日半より第二百七十九日に至るを主る。陰と陽と互相磨砑し、万物は凋零離散し、看るに似るも亦似ず。此の首は疑を講ず:疑いて能く諸己に反求し旧典を稽考するは、是れ明疑;疑いて心慌主無く・疑神疑鬼するは、是れ妄疑なり。
初一:疑恛恛,失貞矢。測曰:不正之疑,何可定也。次二:疑自反,孚不遠。測曰:疑自反,反清靜也。次三:疑強昭,受茲閔閔,於其心祖。測曰:疑強昭,中心冥也。
初一:疑いて心慌意乱し、那支の笔直の正矢を失掉す。測辞に曰く:正当ならざる疑慮は、怎麼定め下来せんや。次二:疑い起れば便ち反って己に之を求む、誠信は便ち遠からず。測辞に曰く:疑いて自ら反すは、清靜の処に返回到るなり;内に向かい一問せば、疑は自然に消す。次三:本より疑う可きに、而も硬に之を光明正大と説成す、是に於て此の一片の昏昏昧昧を承受す、病根は全て彼の心上に在り。測辞に曰く:疑いて強に昭とするは、心裏本より暗きなり。
次四:疑考舊,遇貞孚。測曰:疑考舊,先問也。次五:赨黃疑金中。測曰:赨黃疑中,邪正也。次六:誓貞可聽,疑則有誠。測曰:誓貞可聽,明王命也。
次四:疑有れば便ち往きて旧典成例を稽考す、便ち貞正と誠信とに遇上し得。測辞に曰く:疑いて旧を考るは、先ず往きて明白を問うなり;下問を恥とせざれば、疑は便ち着落有らん。次五:赤黄の顔色は人に它が究竟純正の黄金の色なるか否かを懐疑せしむ。測辞に曰く:赨黄は中を疑うは、邪と正との間に於て分辨せんことを要す。次六:盟誓は貞正にして聴信するに値し、疑有ると雖も而も自ら誠意有り。測辞に曰く:誓貞聴む可しは、王命の昭明なるなり。
次七:鬼魂疑嚘鳴,弋木之鳥,射穴之狐,反目耳,厲。測曰:鬼魂疑之,誠不可信也。次八:顛疑遇乾客,三歲不射。測曰:顛疑遇乾客,甚足敬也。次九:疑無信,控弧擬麋,無。測曰:疑無信,終無所名也。
次七:疑心して鬼魂の嗚咽鳴叫するを疑い、樹上の鳥を射取り穴中の狐を掏挖するが如く疑神疑鬼し、眼と耳とまでも常を失う、危険なり。測辞に曰く:疑うこと鬼魂の身上に到るは、実に憑信に足らず。次八:疑うこと極処に到りて前来干謁の客人に遇上す、三年も彼を射取りに往かず。測辞に曰く:疑を顛して干客に遇う、此の份の持重は倒れて甚だ敬重に値す。次九:疑いて全く信実無く、弓を張開して麋鹿に比すも而も始終発せず、一の所得無し。測辞に曰く:疑いて信無きは、終究名聲を成就し得ざるなり;疑いて決せざるは、全く疑わざると同様に事を誤る。
第六十三首 視(秋分)
視:陰成魄,陽成妣,物之形貌咸可視。
「視」は観看の義にして、第六十三首と為り、秋分に値り、冬至後第二百七十九日より第二百八十三日半に至るを主る。陰は凝りて形魄を成し、陽は其の配を成就し、万物の形貌は皆見るを得。此の首は看を講ず:内に向かい自己の徳を看るは是れ明視、外に向かい形色を看るは是れ浅視;別人の瑕疵を看見し得るは、自己のを看見し得るに如かず。
初一:內其明,不用其光。測曰:內其明,自窺深也。次二:君子視內,小人視外。測曰:小人視外,不能見心也。次三:視其德,可以乾王之國。測曰:視德之幹,乃能有全也。
初一:光明を内里に収め、其の光耀を動用しに往かず。測辞に曰く:其の明を内にするは、自己の深処に向かい窺察するなり。次二:君子は内に向かい看、小人は外に向かい看。測辞に曰く:小人は外を視るは、人心を看見し得ざるなり。次三:看重する所は徳行にして、此個に凭りて王者の国の任用を求取しに往き得。測辞に曰く:徳を以て進を求む、ぞ始終を保全し得るなり。
次四:粉其題頯,雨其渥須,視無姝。測曰:粉題雨須,不可忍瞻也。次五:鸞鳳紛如,厥德睴如。測曰:鸞鳳紛如,德光皓也。次六:素車翠蓋,維視之害,貞。測曰:素車翠蓋,徒好外也。
次四:額頭顴骨の上に粉を敷き、鬍鬚を湿漉漉に塗り、看るに毫も美好ならず。測辞に曰く:題に粉して須を雨らすは、人に正眼して看るに忍びざらしむ。次五:鸞鳥鳳凰は紛然として至り、それらの徳色は光潤燦爛なり。測辞に曰く:鸞鳳紛如とは、徳の光輝の潔白明亮なるなり。次六:素色の車・翠羽の蓋、看るに好なるも、害処は恰恰就中此処に在り、須く正を守るべし。測辞に曰く:素車翠蓋は、只是一味に外表を愛好するのみ。
次七:視其瑕,無穢。測曰:視其瑕,能自矯也。次八:翡翠于飛,離其翼,狐貂之毛,躬之賊。測曰:翡翠狐貂,好作咎也。次九:日沒其光,賁於東方,用視厥始。測曰:日沒賁東,終顧始也。
次七:能く自己の瑕疵を看見すれば、便ち汚穢無し。測辞に曰く:其の瑕を視るは、能く自我矯正するなり。次八:翡翠鳥は飛翔す、羽毛太だ美なるに因りて翅膀を失掉す;狐と貂の身上の毛皮は、正しくそれら自身の禍害なり。測辞に曰く:翡翠狐貂とは、美好の反って灾咎を招来するなり。次九:太陽は其の光を収斂し、光彩を東方に装点し、以て其の起点を回望す。測辞に曰く:日は没して東を賁るは、終点に走到りて仍お開端を回顧するなり;此の首は此を以て収束す、最後に看到れば還た本初に看回本るを要す。
第六十四首 沈(秋分)
沈:陰懷於陽,陽懷於陰,志在玄宮。
「沈」は兼ねて沈潜と沈溺との両義有り、第六十四首と為り、秋分に値り、冬至後第二百八十三日半より第二百八十八日に至るを主る。陰は陽を懐抱し、陽は陰を懐抱し、心志は皆幽深の玄宮に帰向す。沈り下がり得るは是れ深にして、陥ち入りて出で来らざるは是れ溺なり、此の首は処処此の両者の間に界を劃す。
初一:沈耳於閨,不聞貞。測曰:沈耳於閨,失德體也。次二:沈視白自見,賢於眇之眄。測曰:沈視之見,得正美也。次三:沈於美,失貞矢。測曰:沈於美,作聾盲也。
初一:耳朵を内室の閑言の裏に沈溺せしめ、正道を聴かず。測辞に曰く:耳を閨に沈むるは、徳の本体を失掉するなり。次二:沈静に看て、白なるは自然に顕現し出だす、眼を眯して斜瞟するに比べて高明なること得る多し。測辞に曰く:沈視の見は、正大の美を得たるなり。次三:美色美物の中に沈溺し、那支の笔直の正矢を失掉す。測辞に曰く:美に沈むるは、自己を聾子瞎子と弄成するなり。
次四:宛雛沈視,食苦貞。測曰:宛雛沈視,擇食方也。次五:雕鷹高翔,沈其腹,好憴惡粥。測曰:雕鷹高翔,在腐糧也。次六:見粟如累,明,利以正於王。測曰:見粟如累,其道明也。
次四:鵷鶵は沈静審視し、寧ろ苦澀の物を吃しても正を守る。測辞に曰く:宛鶵沈視とは、食物を挑揀するに法度有るなり;《荘子》は鵷鶵は練実に非ざれば食せずと説く、正しく此の一路なり。次五:雕と鷹とは高く飛翔す、肚子は而も沈甸甸として地面を惦記し、好きも壞きも一概に吃せんと想う。測辞に曰く:雕鷹高翔とは、心思は其実那些の腐壞の糧食の上に落在す;飛ぶこと再高くとも、志は腐鼠に在り。次六:一粒粒として累曇し起る粟米を看見し得、明察なり、此の份の明察を用いて君王を匡正するに利あり。測辞に曰く:粟を累が如く見るは、彼の道の明白清楚なるなり。
次七:離如婁如,赤肉鴟梟,厲。測曰:離婁赤肉,食不臧也。次八:盼得其藥,利徵。測曰:盼得其藥,利徵邁也。次九:血如剛,沈於顙,前尸後喪。測曰:血剛沈顙,終以貪敗也。
次七:眼力は離婁の如く秋毫を明察するも、看中するは而も鴟梟の嘴辺の一塊の生肉なり、危険なり。測辞に曰く:離婁の明は只だ赤肉を盯着するに用うるは、食う所の善ならざるなり;明察を地方に用い錯うなり。次八:一転眼に便ち症に対する薬を尋得す、前行するに利あり。測辞に曰く:其の薬を盼得するは、奮力邁進するに利あり。次九:血は剛劲有力に涌起し、一直に額頭の上に沈聚す、前面に尸有り、後面は喪なり。測辞に曰く:血は剛にして顙に沈むるは、終に貪心に因りて敗亡するなり。
第六十五首 内(秋分・寒露)
內:陰去其內而在乎外,陽去其外而在乎內,萬物之既。
「内」は内室・内人の義にして、第六十五首と為り、秋分の末に当たり寒露に交り、冬至後第二百八十八日より第二百九十二日半に至るを主る。陰は内位を離れて外に処り、陽は外位を離れて内に処る、此れは万物終尽の象なり。此の首は内治を講ず:一家之内の婚配・婦政・母情、件件皆邦国に関わる。
初一:謹於媐求九,初貞後寧。測曰:謹於媐求九,治女政也。次二:邪其內主,於彼黃床。測曰:邪其內主,遠乎寧也。次三:爾儀而悲,坎我西階。測曰:爾儀而悲,代母情也。
初一:婚娶求配の事の上に於て処処謹慎し、起初は正を守り、後来は安寧す。測辞に曰く:配を求むるに謹するは、正しく内室の政を治理するの開端なり。次二:内室の主婦を邪路に走上せしむるは、就中那張の黄色の床上に在り。測辞に曰く:其の内主を邪にするは、安寧より遠きこと甚だし。次三:爾の儀容の中に悲戚を含み、我家の西階下の低窪の処に立つ。測辞に曰く:爾の儀にして悲なりは、母親の情分を代行するなり。
次四:好小好危,喪其縕袍,厲。測曰:好小好危,不足榮也。次五:龍下於泥,君子利用取媐,遇庸夷。測曰:龍下於泥,陽下陰也。次六:黃昏于飛,內其羽。雖欲滿宮,不見其女。測曰:黃昏內羽,不能自禁也。
次四:細小を喜好し・冒険を喜好し、一件の旧絮の袍子までも丟す、危険なり。測辞に曰く:小を好み危を好むは、誇耀に値する無きなり。次五:龍は泥の中に降り、君子は此処に於て妻を娶るに利あり、遇上するは平常安和の人なり。測辞に曰く:龍の泥に下るは、陽の陰に屈就するなり;婚姻の礼は男は先ず女に下る、正しく此の義を取る。次六:黄昏の時分に飛帰り来り、羽翼を内室に収進す;宮室の裏に人を満坐せしめんと想うと雖も、而も那個の女子に見えず。測辞に曰く:黄昏に内に羽すは、自己の自ら管住し得ざるなり。
次七:枯垣生莠,皬頭內其稚婦,有。測曰:枯垣生莠,物慶類也。次八:內不克婦,荒家及國,涉深不側。測曰:內不克婦,國之孽也。次九:雨降於地,不得止,不得過。測曰:雨降於地,澤節也。
次七:枯敗の牆頭に莠草を長出し、白髪蒼蒼の老人は年軽の婦人を門に納り入れ、所得有り。測辞に曰く:枯垣に莠を生ずは、万物各々其の類を以て相慶するなり;枯して復た生ずるは常に合せざると雖も、亦自ら一段の生意有り。次八:内室に於て妻子を治住し得ず、家を荒廃して国に牽累し、深水に渉入するも還た躲避を知らず。測辞に曰く:内は婦に克たざるは、国家の禍害なり。次九:雨は地上に落り、中途に止住する能わず、亦過量する能わず。測辞に曰く:雨の地に降るは、恩沢は節制有るを要するなり;此の首は雨の節有るを以て結を作す、正しく内治の分寸を点出す。
第六十六首 去(寒露)
去:陽去其陰,陰去其陽,物咸倜倡。
「去」は離去・舎棄の義にして、第六十六首と為り、寒露に値り、冬至後第二百九十二日半より第二百九十七日に至るを主る。陽は其の依る所の陰を離れ、陰は其の依る所の陽を離れ、万物は皆倜然として分張す。此の首は去就取舎を講ず:去るに其の所を得るは是れ謙、去るに其の所に非ざるは是れ妄;功成して去るは是れ全、徳失して去るは是れ丑なり。
初一:去此靈淵,舍彼枯園。測曰:去此靈淵,不以謙將也。次二:去彼枯園,舍下靈淵。測曰:舍下靈淵,謙道光也。次三:高其歩,之堂有露。測曰:高歩有露,妄行也。
初一:此の一泓の霊有る深淵を離れ、却って那片の枯敗の園圃に住みに往く。測辞に曰く:此の霊淵を去るは、謙遜を用いて自己を扶持するを肯んぜざるなり;深を舎てて浅に就くは、取舎全く反れり。次二:那片の枯園を離れ、下面の那泓の霊淵の裏に住到る。測辞に曰く:下の霊淵を舎つは、謙遜の道の光彩を放出するなり;下に居るを肯んずる、ぞ深処を得るなり。次三:脚步を甚だ高に抬げ、堂上に走到る、露水は已に衣裳を打湿せり。測辞に曰く:歩を高くして露有るは、妄自に行走するなり;歩子の邁ぐること愈高ければ、愈々一身の湿を沾す。
次四:去於子父,去於臣主。測曰:去於子父,非所望也。次五:攓其衣,之庭有麋。測曰:攓其衣,亦可懼也。次六:躬去於成,天遺其名。測曰:躬去於成,攘不居也。
次四:児子は父親を離棄し、臣下は君主を離棄す。測辞に曰く:子父に於て去るは、此れは人の期望する事に非ざるなり。次五:衣裳を攓起して快步に走開す、庭院の裏には已に麋鹿の游荡する有り。測辞に曰く:其の衣を攓ぐ、此の情形は着実に可怕なり;朝廷は麋鹿の場と成れば、走るは還た及ぶ。次六:功が成った之後に自己引身而退す、上天は反って彼に名聲を留下す。測辞に曰く:成に於て躬を去るは、推譲して功に居るを肯んぜざるなり。
次七:去其德貞,三死不令。測曰:去其德貞,終死丑也。次八:月高弦,火幾縣,不可以動,動有愆。測曰:月弦火縣,恐見咎也。次九:求我不得,自我西北。測曰:求我不得,安可久也。
次七:自己の徳行と貞正とを舎棄し、三次も死に瀕するも一個の善名に換え来らず。測辞に曰く:其の徳貞を去るは、終に死ること難看なり。次八:月は高く上弦の位に懸り、火星は幾乎正しく中天に当たる、此の時は軽挙妄動す可からず、一動すれば便ち過失有り。測辞に曰く:月弦火県とは、咎責を招来するを怕るるなり;天象未だ定まらざれば、静にして之を待つ。次九:来りて我を求むも求め得ず、我は已に西北の方向より離去せり。測辞に曰く:我を求めて得ざるは、此の如くして又怎麼長久せんや;該在る時に在らざれば、去ること最後に到りて人までも尋着かず。
第六十七首 晦(寒露)
晦:陰登於陽,陽降於陰,物咸喪明。
「晦」は昏暗の義にして、第六十七首と為り、寒露に値り、冬至後第二百九十七日より第三百零一日半に至るを主る。陰気は陽位に升登し、陽気は陰位に下降し、万物は皆光明を喪失す。此の首は《周易》の《明夷》に相当す:外面昏暗の時に、君子は自ら其の明を晦して以て禍を避く、心中は而も仍お照見分明なり。
初一:同冥獨見,幽真。測曰:同冥獨見,中獨照也。次二:盲徵否。測曰:盲徵否,明不見道也。次三:陰行陽從,利作不凶。測曰:陰行陽從,事大外也。
初一:衆人と昏暗の中に同処して而も独り看見し得、幽隠にして真実なり。測辞に曰く:冥に同じくして独り見るは、心中に独り一片の光照有るなり。次二:眼を瞎して前に往き走る、行う可からず。測辞に曰く:盲として征して否は、眼前不明にして道路を看見し得ざるなり。次三:陰気は主行して陽気は随従し、興作する所有るも亦凶に至らず。測辞に曰く:陰は行い陽は従うは、事情を外頭に弁むるなり;昏晦の世は主従位を易うるも、仍お以て有為し得。
次四:晦其類,失金匱。測曰:晦其類,法度廢也。次五:日正中,月正隆,君子自晦不入窮。測曰:日中月隆,明恐挫也。次六:玄鳥維愁,明降於幽。測曰:玄鳥維愁,將下昧也。
次四:自己の同類までも一併に遮蔽掉し、金匱の裏に収蔵する典冊までも丟す。測辞に曰く:其の類を晦にするは、法度の荒廃せるなり。次五:太陽は正しく中天に当たり、月は正しく盈満に当たる、君子は而も自ら光芒を隠晦し、此に因りて窮途に陥入せず。測辞に曰く:日中月隆とは、光明太だ盛んなるを怕りて反って受挫するなり。次六:燕子は満懐の憂愁、光明は幽暗の裏に降落し往く。測辞に曰く:玄鳥は愁に維ぐは、将に昏昧に沈入せんとするなり;玄鳥は秋に去る、正しく明の幽に降るの象なり。
次七:睄提明,或遵之行。測曰:睄提明,德將遵行也。次八:視非其真,夷其右目,滅國喪家。測曰:視非夷目,國以喪也。次九:晦冥冥,利於不明之貞。測曰:晦冥之利,不得獨明也。
次七:幽暗中に於て一点の光明を提起せば、便ち人の之に循りて走る有り。測辞に曰く:明を睄提するは、徳行の将に人に遵循せられて行われんとするなり。次八:看見する所は並に真相に非ず、還た自己の右眼を傷い、以て国を滅し家を亡ぼすに至る。測辞に曰く:非を視て目を傷うるは、国家は就中此の如く喪掉するなり。次九:昏暗して一片漆黑に到る、不明の中に於て正を守るに利あり。測辞に曰く:晦冥の利有る所以は、此の時は独り明を逞くする能わざるに因るなり;挙世皆暗にして一人独り亮んとするは、正しく禍を取るの道なり。
第六十八首 瞢(寒露・霜降)
瞢:陰徵南,陽徵北,物失明貞,莫不瞢瞢。
「瞢」は目昏不明の義にして、第六十八首と為り、寒露の末に当たり霜降に交り、冬至後第三百零一日半より第三百零六日に至るを主る。陰気は南に向かい進発し、陽気は北に向かい退行し、万物は光明と貞正とを失掉し、一派瞢瞢然の昏昧なり。晦の講ずるは外面の暗にして、瞢の講ずるは自己の眼裏の暗なり、此の首は専ら人の自らを看清し得ざるを説く。
初一:瞢腹睒天,不睹其畛。測曰:瞢腹睒天,無能見也。次二:明腹睒天,靚其根。測曰:明腹睒天,中獨爛也。次三:師或導射,豚其埻。測曰:師或導射,無以辨也。
初一:肚裏は一団昏昧にして而も眼を抬げて天を窺う、其の界畔を看見せず。測辞に曰く:瞢腹して天を睒むは、根本より何をも看見し得ざるなり。次二:肚裏は明白にして眼を抬げて天を窺えば、其の根柢を看清し得。測辞に曰く:腹明して天を睒むは、内心に独り一片の燦爛有るなり。次三:射師は旁に在りて射法を指点す、箭は而も尽く靶垛の底下に落る。測辞に曰く:師或いは射を導くは、自己に分辨の能力無きなり;人の教うる有るも亦用無し。
次四:鑑貞不迷,於人攸資。測曰:鑑貞不迷,誠可信也。次五:倍明仮光,觸蒙昏。測曰:倍明仮光,人所叛也。次六:瞢瞢之離,不宜熒且妮。測曰:瞢瞢之離,中不眩也。
次四:鏡子の如くに正を守りて迷惑せず、此れは衆人の倚頼する所なり。測辞に曰く:鑑は貞にして迷わざるは、実に信托し得。次五:真の光明を背棄して仮の光亮を借用す、一頭に蒙昧昏黒の裏に撞進す。測辞に曰く:明を倍して光を仮るは、衆人皆彼を背棄せんとするなり。次六:昏昧の中に於て附麗依托す、再び熒惑の小光を用いて人に媚るを応せず。測辞に曰く:瞢瞢の離は、心裏並に昏眩せざるなり;外面瞢して内里眩わざる、ぞ守住し得。
次七:瞢好明其所惡。測曰:瞢好之惡,著不昧也。次八:昏辰利於月,小貞未有及星。測曰:昏辰利月,尚可願也。次九:時(肆差)(肆差),不獲其嘉,男子折笄,婦人易哿。測曰:不獲其嘉,男死婦嘆也。
次七:昏昧の人は偏に彼の憎悪する事を張揚せんと要す。測辞に曰く:瞢は其の悪を好むは、丑事を清清楚楚に顕露し、一点も含糊ならざるなり;自己は看清し得ざるも、倒れて別人の短処を雪亮に照らし出だす。次八:黄昏の時辰は只だ月に利あり、小小として正を守る、還た星辰の明に够上がらず。測辞に曰く:辰昏にして月に利す、此の如くしても亦還た指望し得と算す。次九:時運は参差錯落し、那份の美好を獲得せず、男子は髪笄を折断し、婦人は神色を変ず。測辞に曰く:其の嘉を獲せざるは、男子の死去して婦人の悲嘆するなり。底本「(肆差)」は偏旁を用いて描摹したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。
第六十九首 窮(霜降)
窮:陰氣塞宇,陽亡其所,萬物窮遽窮。
「窮」は窮尽・困窮の義にして、第六十九首と為り、霜降に値り、冬至後第三百零六日より第三百一十日半に至るを主る。陰気は宇内に充塞し、陽気は其の処所を失掉し、万物は急遽に窮尽に走向す。此の首は《周易》の《困》に相当す:窮して中を守るは是れ正、窮して詐を行うは是れ濫;君子は窮に固し、正しく此処に於て高下を分出す。
初一:窮其窮,而民好中。測曰:窮其窮,情在中也。次二:窮不窮,而民不中。測曰:窮不窮,詐可隆也。次三:窮思達。測曰:窮思達,師在心也。
初一:窮すれば便ち窮に安んず、百姓は此に因りて中道を喜好す。測辞に曰く:其の窮を窮くするは、真情実意を皆中正の上に擺するなり。次二:窮するに而も窮ならざるを装えば、百姓も亦跟いて中正ならず。測辞に曰く:窮して窮ならざるは、詐偽の此に由りて隆盛し起るなり。次三:困窮の中に処りて而も通達を想着す。測辞に曰く:窮して達を思うは、老師を自己の心裏に放るなり;問う可き人無きの時に、心は自ら師と為る。
次四:土不和,木科橢。測曰:土不和,病乎民也。次五:羹無糝,其腹坎坎,不失其範。測曰:食不糝,猶不失正也。次六:山無角,水無鱗,困犯身。測曰:山無角,困百姓也。
次四:土壤は調和せず、樹木は便ち長ること歪斜稀落す。測辞に曰く:土は和せざるは、百姓を害うるなり;土は民の養う所にして、土壊れば則ち民病む。次五:羹湯の裏に一粒の米糝無く、肚子は餓えて咕咕として作響するも、而も自己の法度を失わず。測辞に曰く:吃るに米糝無くとも、仍お其の正を失わざるなり;此れ正しく孔子の陳に於て糧を絶たれて弦歌輟まざるの気象なり。次六:山上に走獣の角を見ず、水裏に魚鱗を見ず、困厄は自身に逼到る。測辞に曰く:山に角無きは、百姓は一齊に困厄に陥入するなり;山沢物無ければ、民は便ち取給する所無し。
次七:正其足,蹛於狴獄,三歲見錄。測曰:正其足,險得平也。次八:涉於霜雪,累項於□。測曰:累項於□,亦不足生也。次九:破璧毀圭,臼竃生黿,天禍以他。測曰:破璧毀圭,逢不幸也。
次七:自己の脚步を端正す、一時は獄牢の中に滞留するに雖も、三年之後は仍お起用せらる。測辞に曰く:其の足を正すは、険境は終に平地と化作するなり。次八:霜雪の中に跋涉し、脖子は绳索に捆縛せらる。測辞に曰く:脖子は拴住せらるは、亦活き成る能わず。此の賛と測辞とは底本各々一字を缺く、今は「□」を以て標出し、臆補を作さず。次九:玉璧は打破せられ、圭璋は毀壞せられ、石臼と竈膛の裏に黿を生出し、上天の禍患は又別処より降下す。測辞に曰く:璧を破り圭を毀るは、不幸を遭逢せるなり;窮の極処に到れば、祭器と炊器とまでも其の器を成さず。
第七十首 割(霜降)
割:陰氣割物,陽形縣殺,七日幾絕。
「割」は割截の義にして、第七十首と為り、霜降に値り、冬至後第三百一十日半より第三百一十五日に至るを主る。陰気は万物を割截し、陽気の形跡は高く懸らて扼殺せられ、七日を過ぎずして幾乎断絶せん。割は該割るを割去するを要す:疣贅を割り蠹虫を割るは是れ治;股肱を割り耳目を割れば便ち自残なり。
初一:割其耳目,及其心腹,歷。測曰:割其耳目,中無外也。次二:割其疣贅,利以無穢。測曰:割其疣贅,惡不得大也。次三:割鼻食口,喪其息主。測曰:割鼻喪主,損無榮也。
初一:自己の耳目を割去し、進んで心腹に傷及し、艱険を歴尽す。測辞に曰く:其の耳目を割るは、内里に再び外面に通ずる路無きなり;自ら耳目を絶てば、人は便ち聾瞽と成る。次二:身上の疣贅を割掉す、汚穢を清除するに利あり。測辞に曰く:其の疣贅を割るは、悪に長大せしめざるなり;小悪は早めに去るを趁りて、ぞ大患を養成せざらん。次三:鼻子を割掉して嘴巴を喂えば、呼吸の主宰を喪失す。測辞に曰く:鼻を割りて主を喪うは、損する所有りて毫も光栄無きなり。
次四:宰割平平。測曰:宰割平平,能有誠也。次五:割其股肱,喪其服馬。測曰:割其股肱,亡大臣也。次六:割之無創,飽於四方。測曰:割之無創,道可分也。
次四:宰割分配は平平均均なり。測辞に曰く:宰割平平とは、能く誠意を秉持するなり;分ること均なれば、人心ぞ服せん。次五:自己の大腿と臂膀とを割掉せば、車を駕る服馬を丟す。測辞に曰く:其の股肱を割るは、大臣を失去するなり;股肱は即ち輔弼の臣にして、自ら羽翼を剪れば便ち寸步も難行なり。次六:割れるも而も創口を留めず、四方の人は皆此に因りて飽足す。測辞に曰く:之を割りて創無きは、此の道理は衆人に分给し得るなり;善く割る人は、之を取りて人に其の痛を覚えしめず。
次七:紫霓矞云,朋圍日,其疾不割。測曰:紫霓矞云,不知刊也。次八:割其蠹,得我心疾。測曰:割其蠹,國所便也。次九:割肉取骨,滅頂於血。測曰:割肉滅血,不能自全也。
次七:紫色の虹霓・五彩の矞雲は成群して太陽を囲住す、此の一場の病は而も割治しに往くを肯んぜず。測辞に曰く:紫霓矞雲とは、之を削除せんことを知らざるなり;奸佞は君を蔽うこと雲の日を囲むが如く、削除を加えざれば、太陽は終究明ならず。次八:那些の蛀虫を割掉す、正しく我が心中の患う所に合す。測辞に曰く:其の蠹を割る、此れは国家に対して有益有るなり。次九:肉を割開して骨頭を取りに往けば、血は頭頂を漫過す。測辞に曰く:肉を割りて血を滅すは、自己を保全し得ざるなり;骨頭の上に割到れば、便ち病を治するに非ずして自戕なり。
第七十一首 止(霜降)
止:陰大止物於上,陽亦止物於下,下上俱止。
「止」は停止の義にして、第七十一首と為り、霜降に値り、冬至後第三百一十五日より第三百一十九日半に至るを主る。陰気は上に在りて大いに禁止を加え、陽気は下に在りても亦禁止を加え、上下皆止まり住す。此の首は《周易》の《艮》に相当す:止は該止るの処に止まるは是れ智;該行に而も止り、止まり住らざるに而も硬に止るは、皆病なり。
初一:止於止,內明無咎。測曰:止於止,智足明也。次二:車軔俟,馬酋止。測曰:車軔俟,不可以行也。次三:關其門戶,用止狂蠱。測曰:關其門戶,御不當也。
初一:該止る地方に就中止住し、内心明白、過錯有らざらん。測辞に曰く:止に止るは、智慧の分寸を照見するに足るなり。次二:車子は木楔に墊住せられて彼処に等ち、馬も亦終に停下せり。測辞に曰く:車は轫して俟つは、走り成る能わざるなり。次三:門戸を関起し、以て那些の狂惑蠱乱の事を阻止す。測辞に曰く:其の門戸を関るは、防御の得当ならざるなり;只だ閉門を知るは、並に蠱を治する正法に非ず。
次四:止於童木,求其疏谷。測曰:止於童木,其求窮也。次五:柱奠廬,蓋蓋車,轂均疏。測曰:柱及蓋轂,貴中也。次六:方輪謙軸,坎坷其輿。測曰:方輪坎坷,還自震也。
次四:光秃枝無き樹上に停り、還た其の稀疏の果実を求めんと想う。測辞に曰く:童木に止るは、求む所は已に尽頭に到るなり。次五:柱子は房舎を安定し、車蓋は車廂を覆蓋し、車轂上の輻条は疏密均匀なり。測辞に曰く:柱・蓋・轂の三者の貴ぶ可き処は皆中に居るに在り;中に居ってぞ停り穩る。次六:車輪は方に做成し、車軸は又正しく装わず、車廂は一路坎坷顛簸す。測辞に曰く:輪は方にして坎坷たるは、自己の自らを震蕩するなり。
次七:車累其傂,馬擸其蹄,止貞。測曰:車累馬擸,行可鄰也。次八:弓善反,弓惡反,善馬很,惡馬很。絕弸破車終不偃。測曰:弓反馬很,終不可以也。次九:折於株木,輆於砋石,止。測曰:折木輆石,君子所止也。
次七:車子は横木に絆住せられ、馬蹄も亦絆住せられ、此の時に停下するぞ対なり。測辞に曰く:車は累し馬は擸す、還た硬に走らんと要せば、便ち自ら危難を取るに近し。次八:好弓は反張せんと要し、壊弓も亦反張せんと要す;好馬は性倔し、壞馬も亦性倔し;弓弦を崩断し車子を拉壊しても、終に停るを肯んぜず。測辞に曰く:弓反馬很とは、此の如く下れば便ち行き通らざるなり。次九:車は樹桩の上に折断し、碎石の上に磕住せられ、只好く停る。測辞に曰く:木に折れ石に輆るは、正しく君子の止歩すべき地方なり;撞壊するを等たずして止る、ぞ真に止るを会するなり。
第七十二首 堅(霜降・立冬)
堅:陰形胼冒,陽喪其緒,物競堅強。
「堅」は堅固の義にして、第七十二首と為り、霜降の末に当たり立冬に交り、冬至後第三百一十九日半より第三百二十四日に至るを主る。陰の形体は胼合覆冒し、陽気は其の頭緒を喪失し、万物は競い相て堅強と変る。堅は真假有り:内里は移動す可からざるは是れ真堅、外殻は硬くして中空は是れ仮堅なり。
初一:磐石固內,不化貞。測曰:磐石固內,不可化也。次二:堅白玉形,內化貞。測曰:堅白玉形,可為也。次三:堅不凌,或洩其中。測曰:堅不凌,不能持齊也。
初一:磐石の如く内里堅固、外物に改変せられず、正を得。測辞に曰く:磐石は内を固くするは、之を改変し得る無きなり。次二:堅にして玉の如き潔白の形質、内里は能く変化して而も仍お正を守る。測辞に曰く:堅にして白玉の形は、此の如くしては以て作為する所有り得;堅にして頑ならざる、ぞ玉の徳性なり。次三:堅硬にして而も物に凌駕する能わず、反って中間より泄漏し出だす。測辞に曰く:堅にして凌がざるは、那份の整斉劃一を持守し住らざるなり。
次四:小蜂營營,螮其蛡,蛡不介,在堅螮。測曰:小蜂營營,固其氐也。次五:蛡大螮小,虛。測曰:蛡大螮小,國空虛也。次六:韱螮紗紗,縣於九州。測曰:韱螮之縣,民以康也。
次四:小蜂は営営として飛来飛去し、其の翅翼を蔕結す;翅翼は本身並に堅硬ならず、堅きは那個の蔕なり。測辞に曰く:小蜂営営とは、其の根柢を固結するなり;堅は根に在りて末に在らず。次五:翅翼は大にして蔕は小なり、虚なり。測辞に曰く:蛡は大にして螮は小なれば、国家は便ち空虚と成る;末は大にして本は小なれば、撑不住る。次六:細小の蔕は纖纖然として、而も九州を懸繋す。測辞に曰く:纎蔕は能く懸ぐは、百姓は此に因りて康寧す;小にして堅き者は、足りて大を承担す。
次七:堅顛觸冢。測曰:堅顛觸冢,不知所行也。次八:個堅禍,維用解豸之貞。測曰:個堅禍,用直方也。次九:蜂焚其翊,喪於尸。測曰:蜂焚其翊,所憑喪也。
次七:頭を硬げて墳塚を撞きに往く。測辞に曰く:堅にして冢に触るるは、何処に向かい走るべきかを知らざるなり;一味に堅を逞くすは、撞ぐは死地なり。次八:一人硬に頂いて禍患に当たる、唯有だ獬豸の如き剛直の守正の道を用うるのみ。測辞に曰く:個堅して禍るは、正直方正を用いて応対せんことを要するなり;獬豸は伝説中の邪に触るる神獣にして、此の賛の取るは正しく此の意思なり。次九:蜂は火に翅膀を焼掉せられ、尸首の上に死す。測辞に曰く:蜂は其の翊を焚くは、其の憑借する物は喪失せるなり;堅の極処に到りて恃む所倶に毀れば、便ち依托する所無し。
第七十三首 成(立冬)
成:陰氣方清,陽藏於靈,物濟成形。
「成」は成就の義にして、第七十三首と為り、立冬に値り、冬至後第三百二十四日より第三百二十八日半に至るを主る。陰気は正しく清粛し、陽気は幽霊の中に蔵入し、万物は其の形を済成するを得。此の首は成を講ず:成りて能く謙なれば則ち守住し得、成りて自矜すれば便ち敗る;成りて窮極に到れば一定要毀る、君子は正しく此処に於て善終を求む。
初一:成若否那亅,其用不已,冥。測曰:成若否,所以不敗也。次二:成微改改,未成而始。測曰:成微改改,不能自遂也。次三:成躍以縮,成飛不逐。測曰:成躍以縮,成德壯也。
初一:成れるも而も成らざるに似たり、其の功用は此に因りて停歇せず、幽隠顕れず。測辞に曰く:成りて成らざるに似るは、敗壊に至らざる所以なり。底本此の賛「那亅」二字は費解にして、当に訛脱有るべし、今は照録して改めず。次二:剛し一点の成就有るや便ち改来改去し、還た成らざるに又要して従頭より再起す。測辞に曰く:成は微にして改改たるは、自己の遂に事を成さざるなり。次三:将に騰躍せんとする時は先ず収縮し、将に高飛せんとする時は追逐するを急がず。測辞に曰く:躍を成りて縮を以てすは、成徳已に壮実なり;先ず屈して後に伸ぶは、正しく成の火候なり。
次四:將成矜敗。測曰:將成之敗,成道病也。次五:中成獨督,大。測曰:中成獨督,能處中也。次六:成魁鎖,以成獲禍。測曰:成之魁鎖,不以謙也。
次四:眼見て将に成らんとするに而も自矜自伐す、是に於て敗れたり。測辞に曰く:将に成らんとして敗るる、此れは成の道上の通病なり。次五:中位の上に於て成就して独り能く大要を総持す、大なり。測辞に曰く:中成独督とは、能く中道の上に立つなり。次六:成ること魁然自大にして又拘鎖通ぜず、成功に因りて反って禍患を招来す。測辞に曰く:成の魁鎖は、謙を用うるを肯んぜざるなり;謙ならざるの成は、成は本身就是禍なり。
次七:成關補。測曰:成關之補,固難承也。次八:時成不成,天降亡貞。測曰:時成不成,獨矢中也。次九:誠窮入於敗,毀誠。君子不誠。測曰:成窮以毀,君子以終也。
次七:已に筑成の関隘を再び往きて修補す。測辞に曰く:関を成りて之を補うは、本より承接し得住ること難し;補うは成の後に在れば、終に勉强なり。次八:時機は該成に到るに而も成らず、上天は喪亡を降下して其の正を失う。測辞に曰く:時成らずは、只だ那一支の箭の還た目標に射中せるを剩すのみ;万事倶に失いて、僅かに一線を存す。次九:成りて窮極に到れば便ち敗壊に走入し、誠までも毀れたり、君子は此を以て誠と為さず。測辞に曰く:窮処に成りて毀るるは、君子は正しく此処に於て善終を求むるなり。賛辞は「誠」と作り而も測辞は「成」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。
第七十四首 致(立冬)
致:陰陽交跌,相闔成一,其禍泣萬物。
「致」は招致・交致の義にして、第七十四首と為り、立冬に値り、冬至後第三百二十八日半より第三百三十三日に至るを主る。陰と陽と交錯跌宕し、互相閉合して一体と成り、那の禍患は万物を哭泣せしむ。此の首は多く口腹の貪を以て喩を立つ:招来するは何ぞやは、全て自己の嗜む所を看るなり。
初一:圜方杌棿,其內窾換。測曰:圜方杌棿,內相失也。次二:□無間。測曰:無間之□,一其二也。次三:龍襲非其穴,光亡於室。測曰:龍襲非其穴,失其常也。
初一:円と方とは搖晃不定して合攏せず、裏面は又空虚錯位す。測辞に曰く:圜方杌棿とは、内部彼此に配合を失うなり。次二:某物は一絲の空隙無し。測辞に曰く:那の空隙無き物は、二を一に合するなり。此の賛と測辞とは底本各々一字を缺く、今は「□」を以て標出し、臆補を作さず。次三:龍は之に属せざる洞穴に钻進し、室中の光亮は便ち無くなる。測辞に曰く:龍は其の穴に非ざるに襲すは、其の常処を失掉するなり;其の位に非ざるに居れば、光も亦之に随いて失う。
次四:臭肥滅鼻,利美貞。測曰:滅鼻之貞,沒所芳也。次五:齧骨折齒,滿缶。測曰:齧骨折齒,大貪利也。次六:飲汗吭吭,得其膏滑。測曰:飲汗吭吭,道足嗜也。
次四:肥膩の気味は濃くして鼻子を堵住す、真正の美好を守住するに利あり。測辞に曰く:鼻を滅するの貞は、那点の清芬を淹没するなり;濃香は人に逼りて、反って真味を聞出せず。次五:骨頭を啃ること牙歯の折断に至る、還た瓦缶を装満せんと要す。測辞に曰く:骨を嚙みて歯を折るは、利を貪り得を貪ること太だ過ぐるなり。次六:汗水までも咕咚咕咚として喝下去す、只だ那点の油膏の滑膩を得んが為なり。測辞に曰く:汗を飲みて吭吭たるは、此の路上の嗜欲の重き太だ過ぐるなり。
次七:□其差,前合後離。測曰:□其差,其合離也。次八:輔其折,廅其缺,其人暉且偈。測曰:輔折廅缺,猶可善也。次九:陰陽啟(化口)吪,其變赤白。測曰:陰赤陽白,極則反也。
次七:某処に偏差を生出す、前面は合上し、後面は又分開す。測辞に曰く:此の偏差は、就中時に合し時に離るに在り。此の賛と測辞とは底本各々一字を缺く、今は「□」を以て標出す。次八:折断せるを接続し起り、残缺せるを掩合し起れば、那人は便ち神采煥発して奮勇す。測辞に曰く:折を輔ぎ缺を廅ぐは、還た善に向かい補救し得。次九:陰陽は啓動して変化已まず、其の顔色は赤と白との間に転換す。測辞に曰く:陰は赤色を現じ陽は白色を現ず、極処に到れば便ち反転せんと要す。底本「(化口)」は偏旁を用いて描摹したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。
第七十五首 失(立冬・小雪)
失:陰大作賊,陽不能得,物陷不測。
「失」は喪失の義にして、第七十五首と為り、立冬の末に当たり小雪に交り、冬至後第三百三十三日より第三百三十七日半に至るを主る。陰気は大肆に害を為し、陽気は取得するに由無く、万物は測度す可からざる境地に陥落す。此の首は失を講ず:失して改むるを肯んずれば還た救い有り;失して而も畏るを知らず本を修めざれば、便ち只だ一路失して下る能しのみ。
初一:刺虛滅刃。測曰:刺虛滅刃,深自幾也。次二:藐德靈微,失。測曰:藐德之失,不知畏微也。次三:卒而從而,恤而竦而,於其心祖。測曰:卒而從而,能自改也。
初一:虚空に向かい刺し過去す、刀刃は反って鈍没す。測辞に曰く:虚を刺して刃を滅すは、自己の深深として危機に陥入するなり;的無くして矢を放つは、只だ自己の鋒刃を損するのみ。次二:那の幽微の徳性を軽慢す、失なり。測辞に曰く:軽慢の失は、細微を敬畏するを知らざるに在り。次三:忽然として醒悟して聴従するを肯んじ、憂懼して粛然戒惕し、彼の本心の上に回到す。測辞に曰く:卒として従るは、能く自己改正するなり。
次四:信過不食,至於側匿。測曰:信過不食,矢祿正也。次五:黃兒以中蕃,君子以之洗於愆。測曰:黃兒以中,過以洗也。次六:滿其倉,蕪其田,食其寶,不養其根。測曰:滿食蕪田,不能修本也。
次四:確実に過錯有るに而も此の一句を呑下去して認帳するを肯んぜず、一直に躲躲閃閃す。測辞に曰く:過有りて認めざるは、俸禄の正当の来路までも丟すなり。次五:黄口小児は一点の中正の心に凭りて話を説けば、君子は便ち此を借りて自己の過失を洗去す。測辞に曰く:黄児中を以てすは、過錯は此に由りて洗浄せらるなり;童言は忌無く、反って能く大人の失処を照出す。次六:糧倉を装満するも、而も田地を荒蕪に任す;只顧庫蔵の珍宝を吃掉して、其の根を培養しに往かず。測辞に曰く:食を満して田を蕪すは、能く根本を修治せざるなり。
次七:疾則藥,巫則酌。測曰:疾藥巫酌,禍可轉也。次八:(此鳥)鳴於辰,牝角魚木。測曰:(此鳥)鳴於辰,厥正反也。次九:日月之逝,改於尸。測曰:改於尸,尚不遠也。
次七:病を生ぜば便ち薬を用い、巫を請えば便ち斟酌して弁す。測辞に曰く:疾に薬し巫に酌すは、禍患は以て扭転し得;失有りて救うを知れば、失は便ち其の失と為さず。次八:那の鳥は鳴くべからざる時辰の上に於て鳴叫し、母獣は角を長出し、魚は樹上に爬到る。測辞に曰く:此の鳥は其の辰に於て鳴くは、正常の次序の皆反転せるなり。底本「(此鳥)」は偏旁を用いて描摹したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。次九:日月は此の如く流逝して去り、尸に臨むの際に直到りてぞ悔改す。測辞に曰く:尸に臨みて改むるは、還た太晚と算さず;失すること最後の一刻に到りて回頭するを肯んずれば、仍お取る可き処有り。
第七十六首 劇(小雪)
劇:陰窮大泣於陽,無介(亻夃口),離之劇。
「劇」は繁劇・劇烈の義にして、第七十六首と為り、小雪に値り、冬至後第三百三十七日半より第三百四十二日に至るを主る。陰気は窮極して陽に向かい大声に悲泣し、中間は一点の間隔無く、離散の勢は劇烈已に極まる。此の首は乱世の劇を講ず:内耗・失徳・措足する処無き、様様皆人の身上に逼到る。底本「(亻夃口)」は偏旁を用いて描摹したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。
初一:骨累其肉,幽。測曰:骨累其肉,賊內行也。次二:血岀之蝕,凶貞。測曰:血岀之蝕,君子內傷也。次三:酒作失德,鬼睒其室。測曰:酒作失德,不能將也。
初一:骨頭は其の外面の肉を連累す、幽暗なり。測辞に曰く:骨は其の肉を累ぐは、禍害の内部より生出するなり。次二:血は流出して侵蝕せらる、凶にして須く正を守るべし。測辞に曰く:血岀の蝕は、君子の内里は傷を受けたるなり。底本「岀」は即ち「出」の字の異体なり、今は照録す。次三:酗酒に因りて徳行を喪失す、鬼は彼の屋裏に頭を探して窺視す。測辞に曰く:酒は作りて徳を失うは、自己の自らを扶持し住らざるなり。
次四:食於劇,父母來餕,若。測曰:食劇以若,為順祿也。次五:出野見虛,有虎牧豬,攓絝與襦。測曰:出野見虛,無所措足也。次六:四國滿斯,宅。測曰:四國滿斯,求安宅也。
次四:繁劇艱難の中に在りて還た飯を吃すること有り、父母は来りて彼の剩せるを吃す、順遂なり。測辞に曰く:劇に処りて能く順遂するは、所得の俸禄の顺理に合して来るなり。次五:野外に走り出でて只だ一片の空虚を見、老虎有りて彼処に於て猪を牧す、人は只好く褲子短襖を攓起して奔逃す。測辞に曰く:野に出でて虚を見るは、落脚の地方までも無きなり;猛虎は猪を牧すは、正しく暴政の民に臨むの象なり。次六:四方邦国は皆満は皆満満に擠り、安居す。測辞に曰く:四国満斯とは、人人皆一処の安宅を尋求するなり。
次七:麃而豐而,戴禍顏而。測曰:麃而豐而,戴禍較也。次八:瓶累於繘,貞顇。測曰:累於瓶,厥職迫也。次九:海水群飛,弊於天杭。測曰:海水群飛,終不可語也。
次七:耕耘は勤にして収成は豊、臉上は而も一副の禍相を顶く。測辞に曰く:麃として豊たるは、顶く所の禍は已に十分顕著なり;乱世の中に於て、豊収は反って禍を招くの由頭と成る。次八:水瓶は井井繩に牽累せられ、正を守りて憔悴す。測辞に曰く:瓶に累せらるるは、彼の職分の逼ること太だ緊きなり。次九:海水は成群して翻飛し起り、天上の橋梁までも冲毀せらる。測辞に曰く:海水群飛は、此の地步に到れば已に説む可き話無し;劇の極処に到れば、便ち天翻地覆なり。
第七十七首 馴(小雪)
馴:陰氣大順,渾沌無端,莫見其根。
「馴」は柔順の義にして、第七十七首と為り、小雪に値り、冬至後第三百四十二日より第三百四十六日半に至るを主る。陰気は大いに和順、渾渾沌沌として端緒無く、其の根を看見せず。此の首は《周易》の《坤》に相当す:順は正の上に順なるを要し、其の正に非ざるに順えば便ち苟従なり;嚢を括して密を守るは順にして、顔を犯し直諫するも亦順なり。
初一:黃靈幽貞,馴。測曰:黃靈幽貞,順以正也。次二:(女)憴其膏,女子之勞,不靜亡命。測曰:(女)憴膏之亡,不能清靜也。次三:牝貞常慈,衛其根。測曰:牝貞常慈,不忘本也。
初一:中央黄色の霊気は幽隠にして正を守り、柔順なり。測辞に曰く:黄霊幽貞とは、順なること正道に合するなり。次二:那点の油膏を熬煎す、是れ女子の辛労なり;静まり下来る能わざれば便ち命を送らんとす。測辞に曰く:膏を熬りて亡に至るは、能く清靜自守せざるなり。底本「(女)」は偏旁を用いて描摹したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。次三:雌性は正を守りて常に慈愛を懐き、自己の根を護衛す。測辞に曰く:牝貞常慈とは、根本を忘れざるなり。
次四:徇其勞,不如五之豪。測曰:徇其勞,伐善也。次五:靈囊大包,其德珍黃。測曰:靈囊大包,不敢自盛也。次六:囊失括,洩珍器。測曰:囊失括,臣口諡也。
次四:到処に於て自己の功労を夸示す、還た次五の如き豪傑に如かず。測辞に曰く:其の労を徇うは、自ら其の善を夸るなり;順徳は最も自伐を忌む。次五:霊妙の口袋の如く広大包容し、其の徳性は中央の黄の如く珍貴なり。測辞に曰く:霊嚢大包とは、敢えて自ら以て盛満と為さざるなり。次六:口袋は扎口を忘れ、珍貴の器物を皆泄漏し出去す。測辞に曰く:嚢は括を失うは、臣下の嘴の話を走漏するなり;《周易》坤卦六四に「嚢を括して咎無し」と説く、正しく此の賛と相発明す。
次七:方堅犯順,利臣貞。測曰:方堅犯順,守正節也。次八:馴非其正,不保厥命。測曰:馴非其正,無所統一也。次九:馴義忘生,賴於天貞。測曰:馴義忘生,受命必也。
次七:方正堅定、寧ろ冒犯しても苟順せず、臣下の正を守るに利あり。測辞に曰く:方堅にして順を犯すは、正直の節操を守住するなり;顔を犯して進諫する、ぞ君に順うの真の弁法なり。次八:順う所は正道に非ざれば、便ち彼の性命を保住し得ず。測辞に曰く:其の正に非ざるに馴するは、心裏に一個の統一の主宰無きなり。次九:道義に順従する為に性命を忘掉す、憑恃するは上天の貞正なり。測辞に曰く:義に馴して生を忘るは、天命を承受して必ず行うこと疑わざるなり;順の此の一層に到る、ぞ坤徳の極なり。
第七十八首 将(小雪・大雪)
將:陰氣濟物乎上,陽信將復始乎下。
「将」は扶持・将行の義にして、第七十八首と為り、小雪の末に当たり大雪に交り、冬至後第三百四十六日半より第三百五十一日に至るを主る。陰気は上に在りて万物を成済し、陽気の信息は将に下面に於て重新開始せんとす。将は両義を兼ね:一は扶将輔助、一は将要臨発;此の首の講ずるは正しく事に臨むの初に於て該如何に扶持せらるべきかなり。
初一:將造邪,元厲。測曰:將造邪,危作主也。次二:將無疵,元睟。測曰:將無疵,易為後也。次三:爐鈞否,利用止。測曰:爐鈞否,化內傷也。
初一:一開頭に扶持する所は便ち邪路なり、大いに危険なり。測辞に曰く:将は邪を造るは、危険を主宰と当成するなり。次二:扶持する所は瑕疵無く、大いに純粋なり。測辞に曰く:将に疵無きは、後来の人は手を接するに易きなり。次三:熔炉と陶鈞と皆手に順わず、停下するに宜し。測辞に曰く:炉鈞否は、化育の功は内里に於て傷を受けたるなり;炉は以て金を鋳し、鈞は以て土を陶し、二者利ならざれば、物を造るの初は便ち已に壞れたり。
次四:將飛得羽,利以登於天。測曰:將飛得羽,其輔強也。次五:大爵將飛,撥其翮。毛羽雖眾,不得適。測曰:大雀拔翮,不足賴也。次六:日失烈烈,君子將衰降。測曰:日失烈烈,自光大也。
次四:将に起飛せんとして而も恰好羽翼を得、天に登るに利あり。測辞に曰く:将に飛ばんとして羽を得るは、彼の輔佐の強健なるなり。次五:大鳥は将に起飛せんとす、主翎は而も拔掉せられり;羽毛は多しと雖も、亦該去る地方に飛到る能わず。測辞に曰く:大鳥は主翎を拔去せらるるは、便ち靠不住なり;輔佐は大なるを去掉せば、一堆の小なるは用に顶上がらず。賛辞は「大爵」「撥」と作り而も測辞は「大雀」「拔」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次六:太陽は正午を過ぎて余威烈烈、君子は此の時に便ち自ら衰降に甘んず。測辞に曰く:日は失して烈烈たるは、反って正しく彼の自我光大の時なり;退を知りて退くは、便ち光大なり。
次七:趹舡跋車,其害不遐。測曰:趹舡跋車,不遠害也。次八:小子在淵,丈人播舡。測曰:丈人播舡,濟弱世也。次九:紅蠶緣於枯桑,其繭不黃。測曰:緣枯不黃,蠶功敗也。
次七:船は浅処に於て急划し、車は難行の処に於て硬拖す、禍害は就中遠からざる処に在り。測辞に曰く:舡を趹ぎ車を跋すは、禍害を躲開し得ざるなり;器と地と相宜せざれば、力を用うること愈大なれば愈々糟し。次八:年少のは深淵の裏に落ち、年長のは船を撑起して彼を救いに往く。測辞に曰く:丈人は舡を播くは、衰弱の世に於て他人を救済するなり。次九:紅蚕は枯死の桑樹上に攀附し、結出する繭は黄色を成さず。測辞に曰く:枯に縁りて黄ならざるは、蚕を養う功夫は全て廃了するなり;扶持する所は地方に非ざれば、扶ぐも扶げて結果を出さず。
第七十九首 難(大雪)
難:陰氣方難,水凝地阱,陽弱於淵。
「難」は艱難の義にして、第七十九首と為り、大雪に値り、冬至後第三百五十一日より第三百五十五日半に至るを主る。陰気は正しく艱難の時に当たり、水は凝結して氷と成り、大地は陥穽の如く、陽気は深淵の裏に衰弱不振なり。此の首は《周易》の《蹇》に相当す:難に処るは貴ぶは中心の堅剛にあり、亦難を未形の先に識るを貴ぶ。
初一:難我冥冥。測曰:難我冥冥,見未形也。次二:凍於冰漬,狂馬揣木。測曰:狂馬揣木,妄生也。次三:中堅剛,難於非常。測曰:中堅剛,終莫傾也。
初一:艱難は幽暗不明の中に於て我に向かい逼り来る。測辞に曰く:難は我が冥冥なりとは、能く它の未だ形を成さざる時に於て已に看見せるなり。次二:氷水の中に凍結し、狂躁の馬は樹木を撞撃しに往く。測辞に曰く:狂馬は木を揣るは、妄動して自ら禍端を生ずるなり。次三:中心は堅強剛毅、能く非常の時に於て艱難に応付す。測辞に曰く:中は堅剛なりとは、終に彼を弄倒し得る無きなり。
次四:卵破石毈。測曰:卵破之毈,小人難也。次五:難無間,難大不勤。測曰:難無間,中密塞也。次六:大車川川,上輆于山,下觸於川。測曰:大車川川,上下軔也。
次四:卵は石頭に撞して破れ、孵出する能わず。測辞に曰く:卵破れて孵を成さざる、此れは小人の遭う所の難なり;卵を以て石に撃つは、只だ自ら敗亡を取る能し。次五:艱難は密にして風を透さず、難は大なりと雖も人は而も勤勉するを肯んぜず。測辞に曰く:難に間無きは、中間は厳厳実実に塞がるなり。次六:大車は緩緩として行き、上に向かい山に阻住せられ、下に向かい又河流に撞上す。測辞に曰く:大車川川とは、上下皆卡住せられて動弾し得ざるなり。
次七:拔石袗袗,力沒以引。測曰:拔石袗袗,乘時也。次八:觸石決木,維折角。測曰:觸石決木,非所治也。次九:角觟褫,終以直,其有犯。測曰:角觟褫,終以直之也。
次七:大石を拔起す、衆人は斉斉として力を用い、気力を使尽して牽引す。測辞に曰く:石を拔きて袗袗たるは、為す可きの時に趁りて合力して為すなり;難中の動は、全て時機を看るなり。次八:頭を拿して石頭を撞き・木頭を决裂す、只だ角の折断せるに落得す。測辞に曰く:石に触り木を決するは、難を治する弁法に非ざるなり。次九:角は歪斜脱落するに雖も、終に還た之を扳直せんと要す、此に因りて冒犯する所有ると雖も。測辞に曰く:角は觟褫す、終に之を扳直せんと要す;難の最後に到るは、靠るは還た一個の直の字なり。
第八十首 勤(大雪)
勤:太陰凍冱戁創於外,微陽邸冥膐力於內。
「勤」は勤労の義にして、第八十首と為り、大雪に値り、冬至後第三百五十五日半より第三百六十日に至るを主る。極盛の陰気は凍結凝閉し、外面に於て創痛を造成す;微弱の陽気は幽暗に棲止し、裏面に於て膂力を積蓄す。此の首は勤を講ず:勤は気力と道義との上に在るは是れ徳、勤は私謀と虚労との上に在るは是れ弊なり。
初一:勤謀於心,否貞。測曰:勤謀否貞,中不正也。次二:勞有恩,勤悾悾,君子有中。測曰:勞有恩勤,有諸情也。次三:羈角之吾,其泣呱呱,未得鏹扶。測曰:羈角之吾,不得命也。
初一:只だ心裏に於て算計を勤し、正ならず。測辞に曰く:謀を勤して貞ならざるは、心中本より正ならざるなり。次二:辛労の中に恩意を帯び、勤懇にして誠朴、君子は此に由りて中道に合す。測辞に曰く:労に恩勤有るは、内心に確実に此の一份の真情有るなり。次三:頭上に還た総角を扎げたる孩子は、哭くこと呱呱として作響す、有力の扶助を得ず。測辞に曰く:羈角の吾は、時運は還た到らざるなり。
次四:勤於力,放倍忘食,大人有克。測曰:勤力忘食,大人德也。次五:狂蹇蹇,禍邇福遠。測曰:狂之蹇蹇,遠乎福也。次六:勤有成功,幾於天。測曰:勤有成功,天所來輔也。
次四:力を用うるに勤し、加倍して做して吃飯を忘る、大人は此に由りて成する所有り得。測辞に曰く:力に勤して食を忘る、正しく大人の徳行なり;《論語》は孔子の発憤して食を忘るを記す、即ち此の一副の気象なり。次五:狂躁にして処処艱阻、禍事は逼近して福分は遥遠なり。測辞に曰く:狂として蹇蹇たるは、福より離るること愈々遠し;勤は狂躁の上に在れば、勤すれば愈々蹇し。次六:勤労して成功有り、天道に近し。測辞に曰く:勤して成功有るは、上天の前来して彼を輔助するなり。
次七:勞牽,不其鼻於尾,弊。測曰:勞牽之弊,其道逆也。次八:勞踖踖,心爽蒙柴不卻。測曰:勞踖踖,躬殉國也。次九:其勤其勤,抱車入淵,負舟上山。測曰:其勤其勤,勞不得也。
次七:辛苦に牲口を牽引す、而も其の鼻子を牽かずして往きて其の尾巴を拽す、弊病なり。測辞に曰く:牽を労するの弊は、路数を弄反せるなり;力を用うること再多くとも、方向反れば亦白费なり。次八:労碌して局促安まらず、心裏明白にして仍お頭を蒙い柴を背負して退却するを肯んぜず。測辞に曰く:労して踖踖たるは、身を以て国に殉ずるなり。次九:勤し了又勤し、車を抱いて深淵に走進し、船を背負いて高山に爬上す。測辞に曰く:其の勤其の勤とは、労して所得無きなり;勤の極処に到るも而も其の法を得ざれば、只だ一場の徒労と成る。
第八十一首 養(大雪)
養:陰弸於野,陽蓲萬物,赤之於下。
「養」は養育の義にして、第八十一首と為り、亦全書最末の一首なり、大雪に値り、冬至後第三百六十日より第三百六十四日半に至るを主る。陰気は原野に充満し、陽気は万物を煦育し、生機を地下に施す。八十一首は合計三百六十四日半にして、別に「踦」「贏」の両条の余賛有りて一歳の数を補足す。全書は「中」を以て開篇し・「養」を以て収束す、正しく一陽は地中に生じて而る後に万物を長養し、終而复始の意思なり。
初一:藏心於淵,美厥靈根。測曰:藏心於淵,神不外也。次二:墨養邪,元函匪貞。測曰:墨養邪,中心敗也。次三:糞以肥丘,育厥根荄。測曰:糞以肥丘,中光大也。
初一:心を深淵の裏に収蔵し、那の霊妙の根柢を涵養して之を美好ならしむ。測辞に曰く:心を淵に蔵するは、精神の外に向かい馳散せざるなり。次二:暗地裏に邪念を養う、一開頭に包蔵する所は便ち正に非ざるなり。測辞に曰く:墨養して邪なるは、内心は先ず就中敗壞せるなり。次三:糞肥を用いて丘田を肥沃し、其の根須を培育す。測辞に曰く:糞を以て丘を肥やすは、内里は此に因りて光大す;養は根の上に在って、ぞ養い出だし得るなり。
次四:燕食扁扁,其志(亻)玃玃,利用徵賈。測曰:燕食扁扁,志在賴也。次五:黃心在腹,白骨生肉,孚德不復。測曰:黃心在腹,上德天也。次六:次次,一日三餼,祇牛之兆,肥不利。測曰:次次之餼,肥無身也。
次四:安閑として吃り、挙止軽浮、心思は而も抓摸不定、外出経商するに利あり。測辞に曰く:燕食扁扁とは、心志は只だ別人に依頼するに在るなり。底本「(亻)」は偏旁を用いて描摹したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。次五:中央の黄心は腹中に安在し、白骨の上までも新肉を生出し、誠実の徳行は反復せざらん。測辞に曰く:黄心は腹に在るは、徳行の上は天に合するなり。次六:一次接一次、一天に三回の飼料を供給す、那は祭祀用牛の徴兆にして、養い得て肥えるに反って利ならず。測辞に曰く:一再として喂飼すは、肥えて而も自身を保住し得ざるなり;養うこと太だ過ぐるは、正しく宰せらるるの先兆なり。
次七:小子牽象,婦人徽猛,君子養病。測曰:牽象養病,不相因也。次八:鯁不脫,毒疾發,鬼上壟。測曰:鯁疾之發,歸於墳也。次九:星如歲如,復繼之初。測曰:星如歲如,終養始也。
次七:小孩子は大象を牽きに往き、婦人は猛獣を捆縛しに往き、君子は而も家中に於て疾病を将養す。測辞に曰く:象を牽くと病を養うと此れらの事は一処に凑る、彼此並に相称せず;養う所は其の人に非ざり、任む所は其の力に非ざるなり。次八:魚骨は喉裏に鯁って取出す能わず、毒疾は発作し、鬼は已に墳頭に爬上せり。測辞に曰く:鯁疾発作は、墳墓の裏に帰り往かんと要するなり。次九:星辰の運行の如く・歳月の更替の如くに、又接続して最初に回到す。測辞に曰く:星如歳如とは、養うこと終点に到りて重新に開端を養い起るなり。八十一首は此に至りて尽き、一歳の気は「中」首の冬至に回到し、周而复始、此れ正しく《太玄》全書の帰結なり。
