诗经
雎鳩(みさご)がかんかんと鳴き交わし、河の中洲にいる。あの淑やかで美しい娘は、君子の良き配偶者である。
儒家典籍
初学は四書から入るのがよい。大学が綱を立て、論語が言を記し、孟子が展開し、中庸が収束する。続いて詩経・尚書・礼記と春秋三伝へ。荀子・春秋繁露・近思録・伝習録は、経学の外で儒学がどう語られてきたかを見る几道である。
国風
關關雎鳩,在河之洲。窈窕淑女,君子好逑。
雎鳩(みさご)がかんかんと鳴き交わし、河の中洲にいる。あの淑やかで美しい娘は、君子の良き配偶者である。
參差荇菜,左右流之。窈窕淑女,寤寐求之。
長さのそろわない荇菜(こうなすなずな)が、左右に流れ漂う。あの淑やかで美しい娘は、寝ても覚めても求め続ける。
求之不得,寤寐思服。悠哉悠哉,輾轉反側。
求めても得られず、寝ても覚めても思い慕う。長い夜よ、長い夜よ、転々として眠れない。
參差荇菜,左右采之。窈窕淑女,琴瑟友之。
長さのそろわない荇菜を、左右から摘み取る。あの淑やかで美しい娘には、琴瑟を奏でて近づこう。
參差荇菜,左右芼之。窈窕淑女,鐘鼓樂之。
長さのそろわない荇菜を、左右から選り取る。あの淑やかで美しい娘には、鐘鼓を鳴らして喜ばせよう。
葛之覃兮,施於中谷,維葉萋萋。黃鳥于飛,集於灌木,其鳴喈喈。
葛(かずら)が蔓を延ばし、谷間にまで伸び、その葉は萋萋(せいせい)と茂る。黄鳥(こうちょう)が飛び、灌木にとまり、喈喈(かいかい)と和やかに鳴く。
葛之覃兮,施於中谷,維葉莫莫。是刈是濩,為絺為綌,服之無斁。
葛が蔓を延ばし、谷間にまで伸び、その葉は密密(みつみつ)と繁る。そこで刈り取り、そこで煮て、細かい葛布と粗い葛布を作り、身に着けても厭きない。
言告師氏,言告言歸。薄汙我私,薄浣我衣。害浣害否,歸寧父母。
女師に告げる、私は里帰りすると。私の内衣を少し洗い、私の外衣を少し洗う。洗うべきものと洗わなくてよいものを見分けて、父母に安否を問いに帰る。
采采卷耳,不盈頃筐。嗟我懷人,置彼周行。
采采(さいさい)と卷耳(けんじ)を摘むが、浅い筐(かたみ)にも満たない。思い慕う人を嘆いて、筐を大路のほとりに置く。
陟彼崔嵬,我馬虺隤。我姑酌彼金罍,維以不永懷。
あの高く平らでない山に登れば、我が馬は足萎えて力を失う。とりあえず金罍(きんらい)の酒を斟(く)むのは、永く思い煩わないためだ。
陟彼高岡,我馬玄黃。我姑酌彼兕觥,維以不永傷。
あの高き岡に登れば、我が馬は玄黄(げんこう・病み疲れた)となって病む。とりあえず兕角(じかく)の杯の酒を斟むのは、永く傷まないためだ。
陟彼砠矣,我馬瘏矣,我僕痡矣,云何籲矣。
あの石山に登ったが、我が馬は病んで歩めず、我が僕(しもべ)も疲れ病む。どうすればよいのか、どう憂いを解こうか。
南有樛木,葛藟累之。樂只君子,福履綏之。
南方に下に垂れ曲がった木があり、葛藟(かつるい)がそれに絡まる。楽しき君子よ、福禄が彼を安らげる。
南有樛木,葛藟荒之。樂只君子,福履將之。
南方に下に垂れ曲がった木があり、葛藟がそれを覆う。楽しき君子よ、福禄が彼を助ける。
南有樛木,葛藟縈之。樂只君子,福履成之。
南方に下に垂れ曲がった木があり、葛藟がそれに縈(まと)いつく。楽しき君子よ、福禄が彼を成す。
螽斯羽,詵詵兮。宜爾子孫,振振兮。
螽斯(しゅうし)の翅、なんと多いことか。願わくはあなたの子孫、盛んにして仁厚であらんことを。
螽斯羽,薨薨兮。宜爾子孫。繩繩兮。
螽斯の翅、薨薨(こうこう)と鳴り響く。願わくはあなたの子孫、綿々として絶えざらんことを。
螽斯羽,揖揖兮。宜爾子孫,蟄蟄兮。
螽斯の翅、集まり集う。願わくはあなたの子孫、安らかに多からんことを。
桃之夭夭,灼灼其華。之子于歸,宜其室家。
桃の木は若々しく美しく、花は灼灼(しゃくしゃく)と明るく咲く。この娘が嫁ぐのは、その家室にふさわしい。
桃之夭夭,有蕡其實。之子于歸,宜其家室。
桃の木は若々しく美しく、実は蕡蕡(ふんふん)と実る。この娘が嫁ぐのは、その家室にふさわしい。
桃之夭夭,其葉蓁蓁。之子于歸,宜其家人。
桃の木は若々しく美しく、葉は蓁蓁(しんしん)と茂る。この娘が嫁ぐのは、その家人にふさわしい。
肅肅兔罝,椓之丁丁。赳赳武夫,公侯干城。
緻密な兎網、杭を打つ音が丁丁(ていてい)と響く。赳赳(きゅうきゅう)たる武士は、公侯の城を守る者である。
肅肅兔罝,施於中逵。赳赳武夫,公侯好仇。
緻密な兎網、四通の岐路に張る。赳赳たる武士は、公侯の良き輔佐である。
肅肅免罝,施於中林。赳赳武夫,公侯腹心。
緻密な兎網、林の中に張る。赳赳たる武士は、公侯の腹心である。
采采芣苡,薄言採之。采采芣苡,薄言有之。
采采と芣苡(ふうい・車前草)を摘みに行く。采采と芣苡を摘み取る。
采采芣苡,薄言掇之。采采芣苡,薄言捋之。
采采と芣苡を一粒ずつ拾う。采采と芣苡を一把ずつ扱(すく)い取る。
采采芣苡,薄言袺之。采采芣苡,薄言襭之。
采采と芣苡を、衣の襟を掲げて盛る。采采と芣苡を、襟をたばしおって入れる。
南有喬木,不可休息。漢有遊女,不可求思。漢之廣矣,不可泳思。江之永矣,不可方思。
南方に高い木はあるが、その下で休むことはできない。漢水に遊ぶ娘はいるが、求めることはできない。漢水は広すぎて泳いで渡れず、江水は長すぎて筏では渡れない。
翹翹錯薪,言刈其楚。之子于歸,言秣其馬。漢之廣矣,不可泳思。江之永矣,不可方思。
雑然と高く積まれた薪、その荊条を刈り取る。この娘が嫁ぐなら、その馬に餌をやろう。漢水は広すぎて泳いで渡れず、江水は長すぎて筏では渡れない。
翹翹錯薪,言刈其蔞。之子于歸。言秣其駒。漢之廣矣,不可泳思。江之永矣,不可方思。
雑然と高く積まれた薪、その蒌蒿(ろうこう)を刈り取る。この娘が嫁ぐなら、その小馬に餌をやろう。漢水は広すぎて泳いで渡れず、江水は長すぎて筏では渡れない。
遵彼汝墳,伐其條枚。未見君子,惄如調饑。
あの汝水の堤に沿って、その枝を伐る。まだ君子に会わないと、朝の飢えのように苦しい。
遵彼汝墳,伐其條肄。既見君子,不我遐棄。
あの汝水の堤に沿って、その再生枝を伐る。すでに君子に会えば、彼は私を遠く捨てなかった。
魴魚赬尾,王室如毀。雖則如毀,父母孔邇。
魴魚(ほうぎょ)は疲れて尾が赤くなり、王室は火の燃えるようだ。火の燃えるようだと言っても、父母はすぐ近くにいる。
麟之趾,振振公子,于嗟麟兮。
麒麟(きりん)の趾(あし)、仁厚な公子よ、ああ麒麟よ。
麟之定,振振公姓,于嗟麟兮。
麒麟の額(ひたい)、仁厚な公族の子弟よ、ああ麒麟よ。
麟之角,振振公族,于嗟麟兮。
麒麟の角、仁厚な公族よ、ああ麒麟よ。
維鵲有巢,維鳩居之。之子于歸,百兩御之。
鵲(かささぎ)に巣があり、鳲鳩(しきゅう・ホトトギス)がそこに住む。この娘が嫁ぐとき、百両の車が彼女を迎えに行く。
維鵲有巢,維鳩方之。之子于歸,百兩將之。
鵲に巣があり、鳲鳩がそれを占めて住む。この娘が嫁ぐとき、百両の車が彼女を送る。
維鵲有巢,維鳩盈之。之子于歸,百兩成之。
鵲に巣があり、鳲鳩がいっぱいに住む。この娘が嫁ぐとき、百両の車が婚礼を成す。
於以采蘩?於沼於沚。於以用之?公侯之事。
どこへ行って白蒿(はくこう)を摘むか。池沼で、小洲で。それを何に使うか。公侯の祭祀の事に。
於以采蘩?於澗之中。於以用之?公侯之宮。
どこへ行って白蒿を摘むか。山の涧(かん)の中で。それを何に使うか。公侯の宮廟に。
被之僮僮,夙夜在公。被之祁祁,薄言還歸。
鬘(かずら)を整然と結い上げ、朝から晩まで公家に仕える。鬘が盛んで垂れ下がるほどになって、これで帰れる。
喓喓草蟲,趯趯阜螽。未見君子,憂心忡忡。亦既見止,亦既覯止,我心則降。
草虫(そうちゅう)が喓喓(ようよう)と鳴き、阜螽(ふうしゅう)が跳ねる。君子に会わないと、心は忡忡(ちゅうちゅう)として憂える。すでに会えば、すでに相見えて、私の心は安らぐ。
陟彼南山,言採其蕨。未見君子,憂心惙惙。亦既見止,亦既覯止,我心則說。
あの南山に登って、蕨(わらび)を摘む。君子に会わないと、心は憂えて悩む。すでに会えば、すでに相見えて、私の心は喜ぶ。
陟彼南山,言採其薇。未見君子,我心傷悲。亦既見止,亦既覯止,我心則夷。
あの南山に登って、薇(ぜんまい)を摘む。君子に会わないと、私の心は悲しむ。すでに会えば、すでに相見えて、私の心は静まる。
於以採蘋?南澗之濱。於以採藻?於彼行潦。
どこへ行って浮萍(うきくさ)を摘むか。南の涧の水辺で。どこへ行って藻(も)を摘むか。あの流れゆく淀み水で。
於以盛之?維筐及筥。於以湘之?維錡及釜。
何でそれを盛るか。四角い筐と丸い筥(きょ)。何でそれを煮るか。脚のある錡(き)と脚のない釜。
於以奠之?宗室牖下。誰其屍之?有齊季女。
どこでそれを祭るか。宗廟の窓の下で。誰が祭祀を司るか。慎み深い少女が。
蔽芾甘棠,勿翦勿伐,召伯所茇。
茂った甘棠(かんとう)の木、剪るな、伐るな、召伯(しょうはく)がかつてここに住まれた。
蔽芾甘棠,勿翦勿敗,召伯所憩。
茂った甘棠の木、剪るな、毀(こぼ)つな、召伯がかつてここで休まれた。
蔽芾甘棠,勿翦勿拜,召伯所說。
茂った甘棠の木、剪るな、屈めるな、召伯がかつてここにとどまられた。
厭浥行露,豈不夙夜,謂行多露。
道の露は濃く濡れている。早朝や夜に急いで行かないわけではないが、道の露が多すぎるのが心配だ。
誰謂雀無角?何以穿我屋?誰謂女無家?何以速我獄?雖速我獄,室家不足!
誰が雀に角がないと言ったか。角がなければどうやって私の家を突き破ったか。誰があなたに家室がないと言ったか。家室がなければどうやって私を訴えて裁判にかけるか。たとえ訴えられても、家を成す礼はまだ足りない!
誰謂鼠無牙?何以穿我墉?誰謂女無家?何以速我訟?雖速我訟,亦不女從!
誰が鼠に牙がないと言ったか。牙がなければどうやって私の墻(かき)を突き破ったか。誰があなたに家室がないと言ったか。家室がなければどうやって私を訴えて訴訟を起こすか。たとえ訴訟を起こされても、私はあなたに従わない!
羔羊之皮,素絲五紽。退食自公,委蛇委蛇。
羔羊の皮裘、白い絲で縫った五紽(ごた)。公家から退朝して食事する、委蛇委蛇(いいいい・ゆったりとしてゆったりと)。
羔羊之革,素絲五緎。委蛇委蛇,自公退食。
羔羊の皮革、白い絲で縫った五緎(ごうい)。委蛇委蛇と、公家から退朝して食事する。
羔羊之縫,素絲五總。委蛇委蛇,退食自公。
羔羊の縫い目、白い絲で縫った五総(ごそう)。委蛇委蛇と、公家から退朝して食事する。
殷其雷,在南山之陽。何斯違斯,莫敢或遑?振振君子,歸哉歸哉!
殷殷(いんいん)と響く雷、南山の南のほうに。なぜこの時にここを離れるのか、片時の暇も許されないと。仁厚な君子よ、帰れ帰れ!
殷其雷,在南山之側。何斯違斯,莫敢遑息?振振君子,歸哉歸哉!
殷殷と響く雷、南山のそばに。なぜこの時にここを離れるのか、しばし休むこともできないと。仁厚な君子よ、帰れ帰れ!
殷其雷,在南山之下。何斯違斯,莫或遑處?振振君子,歸哉歸哉!
殷殷と響く雷、南山の麓に。なぜこの時にここを離れるのか、安らかにとどまることもできないと。仁厚な君子よ、帰れ帰れ!
摽有梅,其實七兮。求我庶士,迨其吉兮。
梅が落ちてゆく、木にはまだ七割残っている。私を求める多くの士よ、吉日にあわせておくれ。
摽有梅,其實三兮。求我庶士,迨其今兮。
梅が落ちてゆく、木にはまだ三割残っている。私を求める多くの士よ、今日にあわせておくれ。
摽有梅,頃筐塈之。求我庶士,迨其謂之。
梅が落ちてゆく、浅い筐で取り入れる。私を求める多くの士よ、口を開いて一言いってくれればよい。
嘒彼小星,三五在東。肅肅宵征,夙夜在公。寔命不同!
あの微かに光る小星、東の空に三つ五つ。急いで夜道を行き、朝から晩まで公家に仕える。実に運命が違うのだ!
嘒彼小星,維參與昴。肅肅宵征,抱衾與裯。寔命不猶!
あの微かに光る小星、参星(しん)と昴星(ぼう)だ。急いで夜道を行き、被(ふすま)と衾(きん)と帷(とばり)を抱えて。実に運命が人に及ばないのだ!
江有汜,之子歸,不我以。不我以,其後也悔。
江水に分流が分かれてまた合わさる、あの人は帰ってゆき、私を連れて行かない。連れて行かない、後で彼は悔いるだろう。
江有渚,之子歸,不我與。不我與,其後也處。
江水に小洲がある、あの人は帰ってゆき、私とともにいない。ともにいない、後で彼は憂いに処するだろう。
江有沱,之子歸,不我過。不我過,其嘯也歌。
江水に沱水(だすい)が分かれ出る、あの人は帰ってゆき、私を見に来ない。見に来ない、彼女は長く嘯(うそぶ)いて歌うほかない。
野有死麕,白茅包之。有女懷春,吉士誘之。
野に死んだ獐(しょう・ノロ)があり、白茅(しらちがや)で包まれている。春の心が萌した娘がいて、好い男が彼女を誘う。
林有樸樕,野有死鹿。白茅純束,有女如玉。
林の中に朴樕(ぼくそく)という小さな木があり、野に死んだ鹿がある。白茅を一束に結わえ、玉のように清い娘がいる。
舒而脫脫兮,無感我帨兮,無使尨也吠。
ゆっくりと、おだやかにしてくれ、私の佩巾(はいきん)を動かさないでくれ、尨(ぼう・長毛の犬)を吠えさせないでくれ。
何彼襛矣,唐棣之華?曷不肅雍?王姬之車。
なぜあんなに濃艶なのか、唐棣(とうてい)の花のようだ。なぜ粛然として睦まじくないのか。あれは王姫の車だ。
何彼襛矣,華如桃李?平王之孫,齊侯之子。
なぜあんなに濃艶なのか、花は桃李のようだ。あれは平王の孫、斉侯の娘だ。
其釣維何?維絲伊緡。齊侯之子,平王之孫。
釣りに使うのは何か。絲で作った綸(りん)だ。斉侯の娘、平王の孫だ。
彼茁者葭,壹發五豝,于嗟乎騶虞!
あの蓬々(ほうほう)と生い立つ葦(あし)、一矢を放って牝豚を五頭、ああ騶虞(すうぐ・仁獣よ)!
彼茁者蓬,壹發五豵,于嗟乎騶虞!
あの蓬々と生い立つ蓬(よもぎ)、一矢を放って小豚を五頭、ああ騶虞よ!
泛彼柏舟,亦泛其流。耿耿不寐,如有隱憂。微我無酒,以敖以遊。
あの柏木の舟に漂い、水の流れにまかせて漂う。耿耿(こうこう)として眠れず、隠れた憂いがあるようだ。酒がないわけではない、遨遊(ごうゆう)することもできる。
我心匪鑑,不可以茹。亦有兄弟,不可以據。薄言往訴,逢彼之怒。
私の心は鏡ではない、すべてを容れることはできない。兄弟もいるが、頼ることができない。訴えに行けば、彼らが怒るのに出くわす。
我心匪石,不可轉也。我心匪席,不可卷也。威儀棣棣,不可選也。
私の心は石ではない、勝手に転がされはしない。私の心は蓆(むしろ)ではない、勝手に巻かれはしない。威儀は棣棣(ていてい)と雅やかで、選り好みして捨てることはできない。
憂心悄悄,慍於群小。覯閔既多,受侮不少。靜言思之,寤闢有摽。
憂いの心は悄悄(しょうしょう)として、群小の怨みを受ける。遭う憂患はすでに多く、受けた侮辱も少なくない。静まって思い起こせば、覚めて胸を打ち、音を立てる。
日居月諸,胡迭而微?心之憂矣,如匪浣衣。靜言思之,不能奮飛。
日よ月よ、なぜ代わる代わる欠けてゆくのか。心の憂いは、洗っていない衣のようだ。静まって思い起こせば、奮い立って高く飛ぶことができない。
綠兮衣兮,綠衣黃裹。心之憂矣,曷維其已!
緑の衣よ緑の衣よ、緑の上衣に黄の裏。心の憂いは、いつか止むのか!
綠兮衣兮,綠衣黃裳。心之憂矣,曷維其亡!
緑の衣よ緑の衣よ、緑の上衣に黄の下裳(したも)。心の憂いは、いつか忘れられるのか!
綠兮絲兮,女所治兮。我思古人,俾無訧兮!
緑の絲よ緑の絲よ、あなたが織り成したものだ。古人を思い慕えば、私に過ちがないようにしてくれる!
絺兮綌兮,悽其以風。我思古人,實獲我心!
細かい葛布よ粗い葛布よ、涼しい風が吹くと冷たく感じる。古人を思い慕えば、実に私の心にかなう!
燕燕于飛,差池其羽。之子于歸,遠送於野。瞻望弗及,泣涕如雨。
燕が飛んでゆく、翅を差池(しち)として不揃いに。この娘が嫁ぐのを、遠く郊野まで送る。見上げて見上げても見えなくなり、涙が雨のように落ちる。
燕燕于飛,頡之頏之。之子于歸,遠於將之。瞻望弗及,佇立以泣。
燕が飛んでゆく、上がったり下がったり。この娘が嫁ぐのを、遠くまで送る。見上げて見上げても見えなくなり、立ち尽くして泣く。
燕燕于飛,下上其音。之子于歸,遠送於南。瞻望弗及,實勞我心。
燕が飛んでゆく、鳴き声が上下に響く。この娘が嫁ぐのを、遠く南方まで送る。見上げて見上げても見えなくなり、実に私の心を労(いた)わしめる。
仲氏任只,其心塞淵。終溫且惠,淑慎其身。先君之思,以勖寡人。
仲氏はこのように誠実だ、その心は深く実っている。温和であって柔顺、善良にして身を慎む。先君を思い、これをもって我が寡人(かじん)を励ます。
日居月諸,照臨下土。乃如之人兮,逝不古處?胡能有定?寧不我顧。
日よ月よ、下土に照り臨んでいる。このような人があるとは、もう昔のように交わってくれないのか。どうして定まりがあろうか。私を見に来なくてもいいというのか。
日居月諸,下土是冒。乃如之人兮,逝不相好。胡能有定?寧不我報。
日よ月よ、下土を覆っている。このような人があるとは、もう睦まじくしてくれないのか。どうして定まりがあろうか。私に報いなくてもいいというのか。
日居月諸,出自東方。乃如之人兮,德音無良。胡能有定?俾也可忘。
日よ月よ、東から出てゆく。このような人があるとは、よい名声を持ちながら心は良くない。どうして定まりがあろうか。人に忘れさせることもできるというのか。
日居月諸,東方自出。父兮母兮,畜我不卒。胡能有定?報我不述。
日よ月よ、東から出てゆく。父よ母よ、私を養ってくださるのに終わりまで至らない。どうして定まりがあろうか。私への報いが道理に従わないとは。
終風且暴,顧我則笑,謔浪笑敖,中心是悼。
風が吹いて荒れ狂い、私を振り返って笑い、戯れて放蕩し、嘲り傲るので、私の心はこれを傷悼する。
終風且霾,惠然肯來,莫往莫來,悠悠我思。
風が吹いて塵を舞い上げる、時には恵みとしていらしてくれるが、往かず来ず、私の思いは悠々として絶えない。
終風且曀,不日有曀,寤言不寐,願言則嚏。
風が吹いて陰り、日もなく陰っている、覚めて物を言っても眠れず、どうか彼がくしゃみをして、私が思っていると知ってほしい。
曀曀其陰,虺虺其雷,寤言不寐,願言則懷。
陰々とした空模様、虺虺(きき)と鳴る雷、覚めて物を言っても眠れず、どうか彼の心も私を思い慕っていてほしい。
擊鼓其鏜,踴躍用兵。土國城漕,我獨南行。
鼓が鏜鏜(とうとう)と鳴り、踊り躍って兵を用いる。国人が城を築き、漕邑の城を修める中、ただ私だけが南へ行く。
從孫子仲,平陳與宋。不我以歸,憂心有忡。
孫子仲に従って、陳と宋を平定する。私を帰らせてくれず、心は忡忡として憂える。
爰居爰處?爰喪其馬?於以求之?於林之下。
どこに住み、どこに歇(やす)むのか。馬はどこで失くしたのか。どこで探すのか。林の下で。
死生契闊,與子成說。執子之手,與子偕老。
死生離合、あなたと約束した。あなたの手を取り、あなたとともに老いるまで。
于嗟闊兮,不我活兮。于嗟洵兮,不我信兮。
ああ、こんなに遠く隔たっているのか、私を生かしてくれないのか。ああ、こんなに長いのか、私に信を守ってくれないのか。
凱風自南,吹彼棘心。棘心夭夭,母氏劬勞。
和やかな風が南から吹いてきて、あの酸棗(さんそう)の嫩い芯を吹いている。嫩い芯は少なく美しく、母は苦労している。
凱風自南,吹彼棘薪。母氏聖善,我無令人。
和やかな風が南から吹いてきて、あの酸棗の成った薪を吹いている。母は聖明で善良なのに、私は善い子ではない。
爰有寒痊?在浚之下。有子七人,母氏勞苦。
どこに寒泉があるか。浚邑(しゅんゆう)の下に。(底本は「痊」とするが、「痊」は「泉」の誤字。)息子が七人いても、母は苦労している。
睍睆黃鳥,載好其音。有子七人,莫慰母心。
黄鳥は明るく美しく、しかもよい声を持っている。息子が七人いても、誰も母の心を慰めることができない。
雄雉于飛,洩洩其羽。我之懷矣,自詒伊阻。
雄の雉(きじ)が飛んでゆく、翅を泄泄(えつえつ)と緩やかに羽ばたかせて。私が思い慕う人は、自ら隔たりを残したのだ。
雄雉于飛,下上其音。展矣君子,實勞我心。
雄の雉が飛んでゆく、鳴き声が上下に響く。誠実な君子よ、実に私の心を労わしめる。
瞻彼日月,悠悠我思。道之雲遠,曷雲能來?
あの日月を望み見て、私の思いは悠々として長い。道のりはこんなに遠く、どうして帰ってこられようか。
百爾君子,不知德行。不忮不求,何用不臧。
あなたがた君子は、徳行を知らない。忌害せず貪らなければ、何が善くないことがあろうか。
匏有苦葉,濟有深涉。深則厲,淺則揭。
瓠(ひさご)に枯れ葉があり、済水に深浅の渡れる場所がある。水深ければ衣のまま渡り、水浅ければ裳を掲げて渡る。
有彌濟盈,有鷕雉鳴。濟盈不濡軌,雉鳴求其牡。
済水は満々と漲り平らぎ、雉が鷕鷕(ようよう)と鳴く。水は漲っても車の軸を濡らさず、雉は鳴いてその雄を求める。
雍雍鳴雁,旭日始旦。士如歸妻,迨冰未泮。
雁が雝雝(ようよう)と鳴き、旭日がようやく明けた。男が妻を娶るなら、氷のまだ解けないうちに。
招招舟子,人涉卬否。不涉卬否,卬須我友。
船頭が手を招く、他人は渡るが私は渡らない。他人は渡るが私は渡らない、私は友を待っているのだ。
習習穀風,以陰以雨。黽勉同心,不宜有怒。採葑採菲,無以下體?德音莫違,及爾同死。
谷からの風が習々と吹き、陰って雨も降る。力を合わせ心を同じくして、怒るべきではない。葑(ふう)を摘み菲(ひ)を摘むのに、葉だけで根はいらないというのか。よい言葉を背かず、あなたとともに死ぬまで。
行道遲遲,中心有違。不遠伊邇,薄送我畿。誰謂荼苦,其甘如薺。宴爾新婚,如兄如弟。
歩みは遅々として、心に離れゆく感がある。遠くない、すぐ近くだ、門の口まで送っただけなのに。誰が荼(と)の苦いと言ったか。それは薺(なずな)のように甘い。あなたがたは新婚で宴楽し、兄弟のように親しい。
涇以渭濁,湜湜其沚。宴爾新婚,不我屑以。毋逝我梁,毋發我笱。我躬不閱,遑恤我後。
涇水は渭水によって濁って見えるが、澱んで止まると清く底まで見える。あなたがたは新婚で宴楽し、私を連れて行こうとしない。私の魚梁(ぎょりょう)に行かないで、私の笱(こう)を開けないで。私自身がまだ容れられないのに、去った後のことまでどうして顧みられようか。
就其深矣,方之舟之。就其淺矣,泳之遊之。何有何亡,黽勉求之。凡民有喪,匍匐救之。
深い所に至れば筏や舟を用い、浅い所に至れば泳いで渡る。あるものはあり、ないものはないと、力を尽くして求める。およそ人の家に凶事があれば、匐(は)ってでも助けに行く。
不我能畜,反以我為仇。既阻我德,賈用不售。昔育恐育鞫,及爾顛覆。既生既育,比予於毒。
私を養うことができず、かえって私を仇のように見なす。私のよさを拒んだのだから、商品が売れないようなものだ。昔は生きるのに恐れ、困窮していたとき、あなたとともに顛沛(てんぱい)した。すでに生育しすでに安定したのに、私を毒物にたとえる。
我有旨蓄,亦以御冬。宴爾新婚,以我御窮。有洸有潰,既詒我肄。不念昔者,伊餘來塈。
私には美味しい蓄え菜があり、それで冬を越す。あなたがたは新婚で宴楽し、私を窮乏にあたる盾にする。武を動かして怒りを発し、すでに私に労苦を負わせた。昔を顧みず、ただ私を慰めの対象にする。
式微,式微,胡不歸?微君之故,胡為乎中露!
衰えた、衰えた、なぜ帰らないのか。君のためでなければ、どうして露の中にいるのか!
式微,式微,胡不歸?微君之躬,胡為乎泥中!
衰えた、衰えた、なぜ帰らないのか。君ご自身のためでなければ、どうして泥の中にいるのか!
旄丘之葛兮,何誕之節兮。叔兮伯兮,何多日也?
旄丘(ぼうきゅう)の葛よ、節はなぜあんなに長いのか。叔よ伯よ、なぜこんなに多くの日が経つのか。
何其處也?必有與也!何其久也?必有以也!
なぜ安らかに動かないのか。きっと相手がいるのだ!なぜこんなに久しいのか。きっとわけがあるのだ!
狐裘蒙戎,匪車不東。叔兮伯兮,靡所與同。
狐裘(こきゅう)は蓬茸(ぼうじょう)として散らばり、車が東へ行かないわけではない。叔よ伯よ、私と心を同じくする者がいない。
瑣兮尾兮,流離之子。叔兮伯兮,褎如充耳。
瑣(さ)く細(さい)く小さいよ、流離して所を失った人。叔よ伯よ、盛装しているのに耳を塞いでいるようだ。
簡兮簡兮,方將萬舞。日之方中,在前上處。
簡簡(かんかん)と楽を奏でる、まもなく万舞(ばんぶ)を舞う。太陽が真ん中にある、彼は前列の上位にいる。
碩人俁俁,公庭萬舞。有力如虎,執轡如組。
頎(き)として大きい人が、公の庭で万舞を舞う。力は虎のよう、轡(くつわ)を握れば糸の組み合わせのように斉一だ。
左手執龠,右手秉翟。赫如渥赭,公言錫爵。
左手に籥(やく)を持ち、右手に翟(てき・雉羽)を持つ。顔は赭(しゃ)を塗ったように赤く、公は酒爵を賜うと言う。
山有榛,隰有苓。雲誰之思?西方美人。彼美人兮,西方之人兮。
山の上に榛(はしばみ)があり、隰(しつ)の低地に苓(れい・甘草)がある。思うのは誰か。西方の美人。あの美人よ、西方の人よ。
毖彼泉水,亦流於淇。有懷於衛,靡日不思。孌彼諸姬,聊與之謀。
あの泉は毖(ひつ)として湧き、淇水にも流れ込む。衛を懐かしんで、思わない日はない。あの美しい姫姓の女たちと、しばらく相談しよう。
出宿於泲,飲餞於禰。女子有行,遠父母兄弟,問我諸姑,遂及伯姊。
出て泲(せい)に宿り、禰(ねい)で餞別の酒を飲む。女が嫁いで遠く行くのは、父母兄弟を離れるからだ。私の諸姑(しょこ・おばたち)に挨拶して、ついでに大姐にも問う。
出宿於幹,飲餞於言。載脂載轄,還車言邁。遄臻於衛,不瑕有害?
出て干(かん)に宿り、言(げん)で餞別の酒を飲む。車に脂を塗り轄(かつ)を設け、車を回して前へ進む。早く衛に至るが、害はないだろうか。
我思肥泉,茲之永嘆。思須與漕,我心悠悠。駕言出遊,以寫我憂。
私は肥泉(ひせん)を思い、これに対して永く嘆息する。須(しゅ)と漕(そう)を思い、私の心は悠々として絶えない。車を駕(が)して出て遊び、私の憂いを書き散らそう。
出自北門,憂心殷殷。終窶且貧,莫知我艱。已焉哉!天實為之,謂之何哉!
北門を出てくると、憂いの心は殷殷(いんいん)とする。貧しくて窮乏しているのに、私の艱難を知る者がいない。もうやめだ!実に天が成したのだ、私はどうすればよいのか!
王事適我,政事一埤益我。我入自外,室人交遍謫我。已焉哉!天實為之,謂之何哉!
王の事が私に降りかかり、政事が一つ残らず私に加えられる。私が外から入ってくると、家人が輪番で私を責める。もうやめだ!実に天が成したのだ、私はどうすればよいのか!
王事敦我,政事一埤遺我。我入自外,室人交遍摧我。已焉哉!天實為之,謂之何哉!
王の事が私を敦迫(とんぱく)し、政事が一つ残らず私に残される。私が外から入ってくると、家人が輪番で私を摧辱(さいじょく)する。もうやめだ!実に天が成したのだ、私はどうすればよいのか!
北風其涼,雨雪其雱。惠而好我,攜手同行。其虛其邪?既亟只且!
北風は涼しげに吹き、雪は雱雱(ほうほう)と大きく降る。私を愛し好んでくれる人と、手を取り合ってともに行こう。なお躊躇し、なお遅れるのか。もうとても急いでいるのだ!
北風其喈,雨雪其霏。惠而好我,攜手同歸。其虛其邪?既亟只且!
北風は喈喈(かいかい)と急ぎ、雪は霏霏(ひひ)と密に降る。私を愛し好んでくれる人と、手を取り合ってともに帰ろう。なお躊躇し、なお遅れるのか。もうとても急いでいるのだ!
莫赤匪狐,莫黑匪烏。惠而好我,攜手同車。其虛其邪?既亟只且!
赤くなければ狐ではなく、黒くなければ烏ではない。私を愛し好んでくれる人と、手を取り合って同じ車に乗ろう。なお躊躇し、なお遅れるのか。もうとても急いでいるのだ!
靜女其姝,俟我於城隅。愛而不見,搔首踟躕。
静かな女はあんなに美しく、城の隅で私を待っている。隠れて見えないので、頭を掻きながら歩き回る。
靜女其孌,貽我彤管。彤管有煒,說懌女美。
静かな女はあんなに美しく、私に彤管(とうかん)を贈ってくれた。彤管には光沢がある、あなたの美しさを愛しいと思う。
自牧歸荑,洵美且異。匪女之為美,美人之貽。
牧場から茅荑(ぼうてい)を持ち帰ってきた、実に美しくて格別だ。この茅荑自体が美しいのではない、美人が贈ってくれたものだからだ。
新臺有泚,河水瀰瀰。燕婉之求,蘧篨不鮮。
新台は鮮明に輝き、河水は漲り満ちている。美しい相手を求めたのに、蟾蜍(せんじょ・ヒキガエル)のように醜い人だった。
新臺有灑,河水浼浼。燕婉之求,蘧篨不殄。
新台は高くそびえ、河水は漫漫(まんまん)と漲る。美しい相手を求めたのに、蟾蜍のように滅びない人だった。
魚網之設,鴻則離之。燕婉之求,得此戚施。
魚網を設けたのに、鴻(おおとり)がかかってしまった。美しい相手を求めたのに、この戚施(せきし・背の曲がった人)を得た。
二子乘舟,泛泛其景。願言思子,中心養養!
二人の子が舟に乗り、影が汎汎(はんはん)と漂う。願わくは私があなたがたを思い、心は養養(ようよう)として定まらない!
二子乘舟,泛泛其逝。願言思子,不瑕有害?
二人の子が舟に乗り、汎汎と遠く逝く。願わくは私があなたがたを思うが、害はないだろうか!
泛彼柏舟,在彼中河。髧彼兩髦,實維我儀。之死矢靡它。母也天只,不諒人只!
あの柏木の舟に漂い、あの河の中に。髧(たん)と二つの髷を垂れた少年、実に私の配偶者だ。死ぬまで誓って二心はない。母よ天よ、人の心を察しないのか!
泛彼柏舟,在彼河側。髧彼兩髦,實維我特。之死矢靡慝。母也天只,不諒人只!
あの柏木の舟に漂い、あの河のほとりに。髧と二つの髷を垂れた少年、実に私の良き相手だ。死ぬまで誓って邪な心はない。母よ天よ、人の心を察しないのか!
牆有茨,不可掃也。中冓之言,不可道也。所可道也,言之醜也。
墻に茨(いばら)が生え、掃き除けられない。宮中のことは、言えない。言えるとしても、言えば醜い。
牆有茨,不可襄也。中冓之言,不可詳也。所可詳也,言之長也。
墻に茨が生え、取り除けられない。宮中のことは、くわしく語れない。くわしく語れるとしても、語ればあまりに長い。
牆有茨,不可束也。中冓之言,不可讀也。所可讀也,言之辱也。
墻に茨が生え、束ねて持ち去れない。宮中のことは、読み上げられない。読み上げられるとしても、言えば恥ずかしい。
君子偕老,副笄六珈。委委佗佗,如山如河,象服是宜。子之不淑,雲如之何?
君子は彼女とともに老いる、鬘に笄(かんざし)を挿し、玉の珈(か)を六つ。威儀は委委佗佗(いいだだ)として、山のよう河のよう、礼服がよく似合う。あなたがこんなに不善とは、どうすればよいか?
玼兮玼兮,其之翟也。鬒髮如云,不屑髢也。玉之瑱也,象之揥也,揚且之晳也。胡然而天也!胡然而帝也。
鮮やかよ鮮やかよ、彼女の翟衣(てきい)。黒髪は雲のようで、鬘を用いるに屑としない。玉の瑱(てん・耳飾り)、象牙の揥(てい・髪掻き)、眉上はまた白皙。なぜ天神のようか!なぜ帝のようか。
瑳兮瑳兮,其之展也。蒙彼縐絺,是紲袢也。子之清揚,揚且之顏也。展如之人兮,邦之媛也!
鮮明よ鮮明よ、彼女の展衣(てんい)。あの細葛の縐衣(ちゅうい)を重ねて、身に着ける紲袢(せっぱん)。あなたの眉目は清く揚がり、眉上にまたよい顔色。まことにこのような人は、邦国の美人だ!
爰採唐矣?沬之鄉矣。雲誰之思?美孟姜矣。期我乎桑中,要我乎上宮,送我乎淇之上矣。
どこへ行って菟絲(とし・ネナシカズラ)を摘むか。沬(まい)邑の郷里で。思うのは誰か。美しい孟姜(もうきょう)。桑中(そうちゅう)で私を約し、上宮で私を迎え、淇水のほとりまで送ってくれた。
爰採麥矣?沬之北矣。雲誰之思?美孟弋矣。期我乎桑中,要我乎上宮,送我乎淇之上矣。
どこへ行って麦を摘むか。沬邑の北で。思うのは誰か。美しい孟弋(もうよく)。桑中で私を約し、上宮で私を迎え、淇水のほとりまで送ってくれた。
爰採葑矣?沬之東矣。雲誰之思?美孟庸矣。期我乎桑中,要我乎上宮,送我乎淇之上矣。
どこへ行って葑(ふう)を摘むか。沬邑の東で。思うのは誰か。美しい孟庸(もうよう)。桑中で私を約し、上宮で私を迎え、淇水のほとりまで送ってくれた。
鶉之奔奔,鵲之彊彊。人之無良,我以為兄!
鶉(うずら)が急いで飛び、鵲が健やかに飛ぶ。この人は良くないのに、私は彼を兄としている!
鵲之彊彊,鶉之奔奔。人之無良,我以為君!
鵲が健やかに飛び、鶉が急いで飛ぶ。この人は良くないのに、私は彼を君としている!
定之方中,作於楚宮。揆之以日,作於楚室。樹之榛栗,椅桐梓漆,爰伐琴桑。
営室(えいしつ)の星が中天にある、楚丘の宮を建てる。日影で測定し、楚丘の室を建てる。榛栗(しんりつ)を植え、椅(い)・桐・梓(し)・漆(しつ)を、そこで伐って琴瑟を作る。
升彼虛矣,以望楚矣。望楚與堂,景山與京。降觀於桑,卜雲其吉,終然允臧。
あの虚墟(きょきょ)に登って、楚丘を眺める。楚丘と堂邑(どうゆう)を望み、大山と高丘を望む。降りて桑田を見て、卜に問えば大吉で、ついに実に善かった。
靈雨既零,命彼倌人,星言夙駕,說於桑田。匪直也人,秉心塞淵,騋牝三千。
よい雨がすでに降った、あの御者(ぎょしゃ)に命じて、晴れたら早く車を駕して、桑田に停める。この人だけでなく、心は深く実り、高い牝馬(ひんば)三千匹。
蝃蝀在東,莫之敢指。女子有行,遠父母兄弟。
虹が東に出た、指す者はいない。女が嫁いで遠く行くのは、父母兄弟を離れるからだ。
朝隮於西,崇朝其雨。女子有行,遠兄弟父母。
朝に虹気が西に出れば、朝じゅう雨が降る。女が嫁いで遠く行くのは、兄弟父母を離れるからだ。
乃如之人也,懷婚姻也。大無信也,不知命也!
このような人があるとは、婚姻を思いながら。あまりに信がなく、天命を知らない!
相鼠有皮,人而無儀!人而無儀,不死何為?
あの鼠を見よ、まだ皮があるのに、人は儀容がない!人に儀容がなければ、死なずに何をするか?
相鼠有齒,人而無止!人而無止,不死何俟?
あの鼠を見よ、まだ歯があるのに、人は節止がない!人に節止がなければ、死なずに何を待つか?
相鼠有體,人而無禮,人而無禮!胡不遄死?
あの鼠を見よ、まだ肢体があるのに、人は礼がない、人に礼がない!どうして早く死なないか?
孑孑幹旄,在浚之郊。素絲紕之,良馬四之。彼姝者子,何以畀之?
高々とした干旄(かんぼう)、浚邑(しゅんゆう)の郊外に。白い絲で縁を飾り、よい馬が四匹従う。あの美しい人に、何を贈ろうか?
孑孑幹旟,在浚之都。素絲組之,良馬五之。彼姝者子,何以予之?
高々とした干旟(かんよ)、浚邑の都に。白い絲で組を成し、よい馬が五匹従う。あの美しい人に、何を与えようか?
孑孑幹旌,在浚之城。素絲祝之,良馬六之。彼姝者子,何以告之?
高々とした干旌(かんせい)、浚邑の城に。白い絲で結び、よい馬が六匹従う。あの美しい人に、何を告げようか?
載馳載驅,歸唁衛侯。驅馬悠悠,言至於漕。大夫跋涉,我心則憂。
馳せて駆けて、衛侯を弔問しに帰る。馬を駆って道は悠々、ようやく漕邑に至る。大夫が跋涉(はっしょう)して来たので、私の心は憂える。
既不我嘉,不能旋反。視爾不臧,我思不遠。
すでに私を是としないので、私もすぐには帰れない。あなたがたが善くないと見るが、私の思いは遠くない。
既不我嘉,不能旋濟?視爾不臧,我思不閟。
すでに私を是としないので、私もすぐに渡って帰れないか。あなたがたが善くないと見るが、私の思いは閉塞していない。
陟彼阿丘,言採其蝱。女子善懷,亦各有行。許人尤之,眾稚且狂。
あの阿丘(あきゅう)に登って、貝母(ばいも)を摘む。女は多感で善く思うが、それぞれに理がある。許国の人が彼女を責めるのは、衆人が幼稚でしかも狂っているからだ。
我行其野,芃芃其麥。控於大邦,誰因誰極?大夫君子,無我有尤。百爾所思,不如我所之。
あの野を行くと、麦が芃芃(ぼうぼう)と茂っている。大国に訴えるに、誰に依り誰に奔(はし)るか。大夫君子よ、私を責めるな。あなたがたが思う百の方策も、私の往くところには及ばない。
瞻彼淇奧,綠竹猗猗。有匪君子,如切如磋,如琢如磨,瑟兮僴兮,赫兮咺兮。有匪君子,終不可諼兮。
あの淇水の曲がりを望めば、緑竹が猗猗(いい)と美しい。文采ある君子は、切るように磋(さ)らくように、琢(たく)み磨(みが)くように、瑟(しつ)として僴(かん)として、赫(かく)として咺(けん)として。文采ある君子は、終に忘れられない!
瞻彼淇奧,綠竹青青。有匪君子,充耳秀瑩,會弁如星。瑟兮僴兮。赫兮咺兮,有匪君子,終不可諼兮。
あの淇水の曲がりを望めば、緑竹は青青としている。文采ある君子は、充耳(じゅうじ)が秀でて瑩(えい)として、皮弁(ひべん)の合わせ目が星のよう。瑟として僴として、赫として咺として。文采ある君子は、終に忘れられない!
瞻彼淇奧,綠竹如簀。有匪君子,如金如錫,如圭如璧。寬兮綽兮,猗重較兮。善戲謔兮,不為虐兮。
あの淇水の曲がりを望めば、緑竹は蓆のように密だ。文采ある君子は、金のよう錫(しゃく)のよう、圭(けい)のよう璧(へき)のよう。寛(かん)として綽(しゃく)として、重較(じゅうかく)の車に倚(よ)る。善く戯れるが、虐(ぎゃく)には至らない。
考槃在澗,碩人之寬。獨寐寤言,永矢弗諼。
槃(はん)を考(こう)として山涧にいる、碩人(せきじん)は寛(かん)として広い。独り寝て、覚めて言う、永く誓って忘れない。
考槃在阿,碩人之薖。獨寐寤歌,永矢弗過。
槃を考として山阿にいる、碩人は薖(か)として和らぐ。独り寝て、覚めて歌う、永く誓って過(あやま)らない。
考槃在六,碩人之軸。獨寐寤宿,永矢弗告。
槃を考して陸(りく)にいる(底本は「六」とするが、「六」は「陸」の誤字)。碩人は軸(じく)として去らない。独り寝て、覚めて宿る、永く誓って人に告げない。
碩人其頎,衣錦褧衣。齊侯之子,衛侯之妻。東宮之妹,邢侯之姨,譚公維私。
碩人はそのように頎(き)として長く、錦衣の上に褧(けい)衣を重ねる。斉侯の娘で、衛侯の妻。太子の妹で、邢侯(けいこう)の姨(い)、譚公(たんこう)は彼女の妹婿。
手如柔荑,膚如凝脂,領如蝤蠐,齒如瓠犀,螓首蛾眉,巧笑倩兮,美目盼兮。
手は柔らかい茅の荑(てい)のよう、肌は凝った脂のよう、頸は天牛の幼虫(蠐螬・さいそう)のよう、歯は瓠瓜の子(瓠犀・こせい)のよう、螓首(しんしゅ)に蛾眉(がび)、巧みに笑って倩(せん)とえくぼができ、美しい目は盼(はん)として黒白が分明だ。
碩人敖敖,說於農郊。四牡有驕,朱幩鑣鑣。翟茀以朝。大夫夙退,無使君勞。
碩人は敖敖(ごうごう)として長い、近郊に車を停める。四匹の牡馬は驕健(きょうけん)で、朱幨(しゅてん)を纏った鏣(びょう)が鑣鑣(ひょうひょう)と鳴る。翟羽の車が朝見に来る。大夫は早く退け、国君を労わせるな。
河水洋洋,北流活活。施罛濊濊,鱣鮪發發。葭菼揭揭,庶姜孽孽,庶士有朅。
河水は洋洋(ようよう)と大きく、北へ活活(かつかつ)と流れ響く。網を施して濊濊(わいわい)と水に入り、鱣(てん)・鮪(い)が発発(はつはつ)と跳ねる。芦荻(ろてき)は揭揭(けつけつ)と高く、衆の姜姓の女は盛装し、衆の士は朅(けつ)として強い。
氓之蚩蚩,抱布貿絲。匪來貿絲,來即我謀。送子涉淇,至於頓丘。匪我愆期,子無良媒。將子無怒,秋以為期。
あの人は蚩蚩(しし)と笑い、布を抱いて絲を買いに来た。絲を買いに来たのではない、私と謀りに来たのだ。あなたを淇水を渡って送り、頓丘(とんきゅう)まで。期日を誤ったのは私ではなく、あなたに良い媒人がいなかったのだ。どうか怒らないで、秋を約束の時としよう。
乘彼垝垣,以望復關。不見覆關,泣涕漣漣。既見覆關,載笑載言。爾卜爾筮,體無咎言。以爾車來,以我賄遷。
あの壊れた墻に登って、復関(ふくかん)を望む。復関が見えず、涙は漣漣(れんれん)。すでに復関が見えれば、笑い語る。あなたが卜に問い筮(ぜい)に占えば、卦象に咎(とが)の言葉はない。あなたの車で来て、私の賄(わい・財物)を移し取る。
桑之未落,其葉沃若。于嗟鳩兮!無食桑葚。于嗟女兮!無與士耽。士之耽兮,猶可說也。女之耽兮,不可說也。
桑の葉がまだ落ちないうち、葉は沃若(ようじゃく)として潤う。ああ鳲鳩よ!桑椹(そうじん)を食べるな。ああ女よ!士と耽(たん)して耽るな。士が耽るのは、まだ脱(だっ)することができる。女が耽るのは、脱することができない。
桑之落矣,其黃而隕。自我徂爾,三歲食貧。淇水湯湯,漸車帷裳。女也不爽,士二其行。士也罔極,二三其德。
桑の葉が落ちれば、黄ばんで隕(お)ちる。私があなたの家に来てから、三年貧しく食してきた。淇水は湯湯(しょうしょう)と大きく、車の帷(とばり)を濡らす。女に差失はないのに、士は二心がある。士は極(きょく)がなく、二三その徳。
三歲為婦,靡室勞矣。夙興夜寐,靡有朝矣。言既遂矣,至於暴矣。兄弟不知,咥其笑矣。靜言思之,躬自悼矣。
三年嫁として、家の労苦をせぬことはなかった。夙(つと)に起き夜に寐(ね)て、朝の暇な日はなかった。言(ことば)が遂げられれば、暴虐に至る。兄弟は知らず、咥咥(きき)と笑う。静まって思い起こせば、自らを傷悼する。
及爾偕老,老使我怨。淇則有岸,隰則有泮。總角之宴,言笑晏晏,信誓旦旦,不思其反。反是不思,亦已焉哉!
あなたとともに老いる約束だったのに、老いて私を怨ませる。淇水にも岸があり、隰にも畔(はん)がある。総角(そうかく・幼い頃)の宴楽は、笑い晏晏(あんあん)として安らかだった。信誓は旦旦(たんたん)と誠実だったのに、後のことを思わなかった。後のことを思わないなら、もうやめだ!
籊籊竹竿,以釣於淇。豈不爾思?遠莫致之。
籊籊(てきてき)とした竹竿、淇水で釣りをするのに使う。あなたを思わないわけではない、道が遠くて送り届けられないのだ。
泉源在左,淇水在右。女子有行,遠兄弟父母。
泉源は左にあり、淇水は右にある。女が嫁いで遠く行くのは、兄弟父母を離れるからだ。
淇水在右,泉源在左。巧笑之瑳,佩玉之儺。
淇水は右にあり、泉源は左にある。巧みに笑って瑳(さ)と白い歯を見せ、佩玉を身につけて儺(だ)と歩み調子を取る。
淇水滺滺,檜楫松舟。駕言出遊,以寫我憂。
淇水は滺滺(ゆうゆう)と流れ、檜(かい)の楫(かじ)に松の舟。車を駕して出て遊び、私の憂いを書き散らそう。
芄蘭之支,童子佩觿。雖則佩觿,能不我知。容兮遂兮,垂帶悸兮。
芄蘭(かんらん)の枝、童子が觿(けい・角錐)を佩びている。觿を佩びているのに、私を知ることができない。容態は遂遂(すいすい)として、帯の垂れが悸(き)として動く。
芄蘭之葉,童子佩韘。雖則佩韘,能不我甲。容兮遂兮,垂帶悸兮。
芄蘭の葉、童子が韘(しゃ・弓弽)を佩びている。韘を佩びているのに、私と甲(こう)することができない。容態は遂遂として、帯の垂れが悸として動く。
誰謂河廣?一葦杭之。誰謂宋遠?跂予望之。
誰が河(黄河)が広いと言うか。一葦(いちい)の杭(くい)で渡れる。誰が宋が遠いと言うか。跂(き)として立てば私は見える。
誰謂河廣?曾不容刀。誰謂宋遠?曾不崇朝。
誰が河が広いと言うか。あの小さな刀(とう)の舟さえ容れられない。誰が宋が遠いと言うか。一朝(いっちょう)を費やすに足りない。
伯兮朅兮,邦之桀兮。伯也執殳,為王前驅。
伯はあのように朅(けつ)として武勇だ、邦国の桀(けつ・傑出した士)だ。伯は殳(しゅ)を執って、王の前駆となる。
自伯之東,首如飛蓬。豈無膏沐?誰適為容!
伯が東へ行ってから、髪は飛蓬(ひほう)のようだ。膏沐(こうもく・髪油)がないわけではない、誰のために容(かたち)を整えようか!
其雨其雨,杲杲出日。願言思伯,甘心首疾。
雨を望み雨を望んだのに、杲杲(こうこう)と日が出た。願わくは私が伯を思い、甘心(かんしん)して頭が痛くなるまで。
焉得諼草?言樹之背。願言思伯。使我心痗。
どこで諼草(けんそう・忘れ草)を得られるか。北堂に植えよう。願わくは私が伯を思い、私の心を病ませるまで。
有狐綏綏,在彼淇梁。心之憂矣,之子無裳。
狐が緩緩(かんかん)と行く、あの淇水の梁(はし)の上で。心の憂いよ、この人には裳がない。
有狐綏綏,在彼淇厲。心之憂矣,之子無帶。
狐が緩緩と行く、あの淇水の厲(れい・浅瀬)で。心の憂いよ、この人には帯がない。
有狐綏綏,在彼淇側。心之憂矣,之子無服。
狐が緩緩と行く、あの淇水の側で。心の憂いよ、この人には服がない。
投我以木瓜,報之以瓊琚。匪報也,永以為好也!
あなたが木瓜(もっか)を投げてくれた、私は瓊琚(けいきょ)で報いる。報いではない、永く好(こう)を結ぶためだ!
投我以木桃,報之以瓊瑤。匪報也,永以為好也!
あなたが木桃(もくとう)を投げてくれた、私は瓊瑶(けいよう)で報いる。報いではない、永く好を結ぶためだ!
投我以木李,報之以瓊九。匪報也,永以為好也!
あなたが木李(もくり)を投げてくれた、私は瓊玖(けいきゅう)で報いる(底本は「九」とするが、「九」は「玖」の誤字)。報いではない、永く好を結ぶためだ!
彼黍離離,彼稷之苗。行邁靡靡,中心搖搖。知我者,謂我心憂;不知我者,謂我何求。悠悠蒼天,此何人哉?
あの黍は離離(りり)と列を成して生え、あの稷は苗を出している。歩みは靡靡(びび)として遅く、心は揺揺(ようよう)と定まらない。私を知る者は「心が憂えている」と言い、私を知らぬ者は「何を求めているのか」と言う。悠悠たる蒼天よ、これは何という人だ!
彼黍離離,彼稷之穗。行邁靡靡,中心如醉。知我者,謂我心憂;不知我者,謂我何求。悠悠蒼天,此何人哉?
あの黍は離離と列を成して生え、あの稷は穂を出している。歩みは靡靡として遅く、心は酔ったようだ。私を知る者は「心が憂えている」と言い、私を知らぬ者は「何を求めているのか」と言う。悠悠たる蒼天よ、これは何という人だ!
彼黍離離,彼稷之實。行邁靡靡,中心如噎。知我者,謂我心憂;不知我者,謂我何求。悠悠蒼天,此何人哉?
あの黍は離離と列を成して生え、あの稷は実を結んだ。歩みは靡靡として遅く、心は噎(えつ)したようだ。私を知る者は「心が憂えている」と言い、私を知らぬ者は「何を求めているのか」と言う。悠悠たる蒼天よ、これは何という人だ!
君子于役,不知其期。曷至哉?雞棲於塒。日之夕矣,羊牛下來。君子于役,如之何勿思!
君子は役に出て、期日が分からない。いつ家に至るのか。鶏は墻の塒(ねぐら)に栖(す)む。日が入り、羊牛が下りてくる。君子は役に出て、どうして思わずにいられようか!
君子于役,不日不月。曷其有佸?雞棲於桀。日之夕矣,羊牛下括。君子于役,苟無飢渴?
君子は役に出て、日を算(かぞ)えず月を算えない。いつか相会えるのか。鶏は桀(けつ・木の杭)に栖む。日が入り、羊牛が下りて括(かつ)れる。君子は役に出て、ただ飢え渇かないように!
君子陽陽,左執簧,右招我由房,其樂只且!
君子は陽陽(ようよう)として自得し、左手に簧(こう)を持ち、右手で私を房中から招き出す、その楽しさよ!
君子陶陶,左執翿,右招我由敖,其樂只且!
君子は陶陶(とうとう)として和楽し、左手に翿(とう・羽の幢)を持ち、右手で私を遨(ごう)の所から招き出す、その楽しさよ!
揚之水,不流束薪。彼其之子,不與我戍申。懷哉懷哉,曷月予還歸哉?
激しく揚がる水は、束ねた薪も流せない。あの人は、私とともに申(しん)を戍(じゅ)らない。懐かしいよ懐かしいよ、何月になれば私は帰れるのか?
揚之水,不流束楚。彼其之子,不與我戍甫。懷哉懷哉,曷月予還歸哉?
激しく揚がる水は、束ねた荊(けい)も流せない。あの人は、私とともに甫(ほ)を戍らない。懐かしいよ懐かしいよ、何月になれば私は帰れるのか?
揚之水,不流束蒲。彼其之子,不與我戍許。懷哉懷哉,曷月予還歸哉?
激しく揚がる水は、束ねた蒲(ほ)も流せない。あの人は、私とともに許(きょ)を戍らない。懐かしいよ懐かしいよ、何月になれば私は帰れるのか?
中谷有蓷,暵其幹矣。有女仳離,慨其嘆矣。慨其嘆矣,遇人之艱難矣。
谷の中に蓷(たい・益母草)があり、暵(かん)として乾いた。離散する女があり、嘅(かい)として嘆く。嘅として嘆く、人としての艱難に遭ったのだ。
中谷有蓷,暵其修矣。有女仳離,條其歗矣。條其歗矣,遇人之不淑矣。
谷の中に蓷があり、脩(しゅう)として細長く乾いた。離散する女があり、條(じょう)として長く嘯く。條として長く嘯く、遇った人が不善だったのだ。
中谷有蓷,暵其溼矣。有女仳離,啜其泣矣。啜其泣矣,何嗟及矣。
谷の中に蓷があり、乾いてまた湿ったようだ。離散する女があり、啜(てつ)して泣く。啜して泣く、嘆いて何の役に立とう。
有兔爰爰,雉離於羅。我生之初,尚無為;我生之後,逢此百罹。尚寐無吪。
兎は爰爰(えんえん)と緩く行くが、雉は羅(ら・網)に罹(かか)る。私が生まれた初めには、まだこれらの事はなかった。私が生まれた後には、この百の憂患に逢う。ただ寐て動かなければよい。
有兔爰爰,雉離於罦。我生之初,尚無造;我生之後,逢此百憂。尚寐無覺。
兎は爰爰と緩く行くが、雉は罦(ふ・覆車網)に罹る。私が生まれた初めには、まだこれらの造(ぞう)はなかった。私が生まれた後には、この百の憂愁に逢う。ただ寐て覚めなければよい。
有兔爰爰,雉離於罿。我生之初,尚無庸;我生之後,逢此百兇。尚寐無聰。
兎は爰爰と緩く行くが、雉は罿(どう)に罹る。私が生まれた初めには、まだこれらの庸(よう・労役)はなかった。私が生まれた後には、この百の凶(きょう)に逢う。ただ寐て聴かなければよい。
綿綿葛藟,在河之滸。終遠兄弟,謂他人父。謂他人父,亦莫我顧!
葛藟は綿綿(めんめん)と連なり、河の涘(し)に在る。ついに兄弟から遠く離れ、他人を父と呼ぶ。他人を父と呼んでも、私を顧みてくれない!
綿綿葛爰,在河之藟。終遠兄弟,謂他人母。謂他人母,亦莫我有!
葛藤は綿綿と連なり、河の涘に在る(底本の文字は錯乱しているので、詩意に基づいて訳す)。ついに兄弟から遠く離れ、他人を母と呼ぶ。他人を母と呼んでも、私を子としてくれない!
綿綿葛藟,在河之漘。終遠兄弟,謂他人昆。謂他人昆,亦莫我聞!
葛藟は綿綿と連なり、河の漘(しゅん・岸)に在る。ついに兄弟から遠く離れ、他人を昆(こん・兄)と呼ぶ。他人を昆と呼んでも、私に聞(ぶん)を通じてくれない!
彼采葛兮,一日不見,如三月兮!
あの葛を采る人よ、一日見なければ、三月のようだ!
彼採蕭兮,一日不見,如三秋兮!
あの蕭(しょう・蓬)を采る人よ、一日見なければ、三秋のようだ!
彼採艾兮!一日不見,如三歲兮!
あの艾(がい・蓬)を采る人よ!一日見なければ、三年のようだ!
大車檻檻,毳衣如菼。豈不爾思?畏子不敢。
大車は檻檻(かんかん)と鳴り、毳衣(ぜいい)は菼(たん・荻)の色だ。あなたを思わないわけではない、あなたを畏れて敢えてしないのだ。
大車啍啍,毳衣如璊,豈不爾思?畏子不奔。
大車は啍啍(とんとん)と遅く、毳衣は璊(めん・玉の赤色)だ。あなたを思わないわけではない、あなたを畏れて奔(ほん)らないのだ。
谷則異室,死則同穴。謂予不信,有如皎日。
生きていれば別々の室に住み、死ねば同じ壙(こう)に埋まる。私が信でないと言うなら、この皦(こう)として皎々たる日が証しだ。
丘中有麻,彼留子嗟。彼留子嗟,將其來施施。
丘の中に麻があり、あの留(りゅう)して子嗟(しさ)を待つ人がいる。あの留して子嗟を待つ人は、彼を施施(しし)として徐々に来させるだろう。
丘中有麥,彼留子國。彼留子國,將其來食。
丘の中に麦があり、あの留して子国(しくく)を待つ人がいる。あの留して子国を待つ人は、彼を来させて食(しょく)させるだろう。
丘中有李,彼留之子。彼留之子,貽我佩九。
丘の中に李があり、あの留して待つ人がいる。あの留して待つ人は、私に佩玖(はいきゅう)を贈るだろう(底本は「九」とするが、「九」は「玖」の誤字)。
緇衣之宜兮,敝予又改為兮。適子之館兮。還予授子之粲兮。
緇衣(しい・黒衣)はあんなによく似合う、敝(へい)れたらまた改めて作る。あなたの館に行き、帰ってきたらまた食事を与える。
緇衣之好兮,敝予又改造兮。適子之館兮,還予授子之粲兮。
緇衣はあんなに好(よ)い、敝れたらまた改造する。あなたの館に行き、帰ってきたらまた食事を与える。
緇衣之席兮,敝予又改作兮。適子之館兮,還予授子之粲兮。
緇衣はあんなに蓆(せき・大きい)、敝れたらまた改作する。あなたの館に行き、帰ってきたらまた食事を与える。
將仲子兮,無逾我裡,無折我樹杞。豈敢愛之?畏我父母。仲可懷也,父母之言亦可畏也。
仲子(ちゅうし)にお願いしたい、私の里(り)を踰(こ)えないで、私が植えた杞(き)を折らないで。どうして樹を惜しむだろうか。私の父母を畏れるのだ。仲子は懐かしいが、父母の言葉も畏れる。
將仲子兮,無逾我牆,無折我樹桑。豈敢愛之?畏我諸兄。仲可懷也,諸兄之言亦可畏也。
仲子にお願いしたい、私の墻を踰えないで、私が植えた桑を折らないで。どうして樹を惜しむだろうか。私の諸兄を畏れるのだ。仲子は懐かしいが、諸兄の言葉も畏れる。
將仲子兮,無逾我園,無折我樹檀。豈敢愛之?畏人之多言。仲可懷也,人之多言亦可畏也。
仲子にお願いしたい、私の園を踰えないで、私が植えた檀(だん)を折らないで。どうして樹を惜しむだろうか。人の多言を畏れるのだ。仲子は懐かしいが、人の多言も畏れる。
叔于田,巷無居人。豈無居人?不如叔也。洵美且仁。
叔(しゅく)が狩りに行くと、巷は人が住んでいないようだ。人が住んでいないわけではない、ただ叔に及ばないだけだ。洵(じゅん)に美しくかつ仁だ。
叔於狩,巷無飲酒。豈無飲酒?不如叔也。洵美且好。
叔が狩りに行くと、巷は酒を飲む人がいないようだ。酒を飲む人がいないわけではない、ただ叔に及ばないだけだ。洵に美しくかつ好い。
叔適野,巷無服馬。豈無服馬?不如叔也。洵美且武。
叔が野に適(てき)すると、巷は馬に服(ふく)する人がいないようだ。馬に服する人がいないわけではない、ただ叔に及ばないだけだ。洵に美しくかつ武だ。
叔于田,乘乘馬。執轡如組,兩驂如舞。叔在藪,火烈具舉。襢裼暴虎,獻於公所。將叔勿狃,戒其傷女。
叔が狩りに行く、四匹の馬を駕する。轡を執れば組(そ)のように、両驂(りょうさん)は舞うようだ。叔は藪(そう)にいて、火は烈(れつ)としてともに挙がる。襢裼(たんせき)して素手で虎を搏(はく)ち、公所に献る。どうか叔は狃(じゅう)れないで、それがあなたを傷つけないよう戒めて。
叔于田,乘乘黃。兩服上襄,兩驂雁行。叔在藪,火烈具揚。叔善射忌,又良御忌。抑罄控忌,抑縱送忌。
叔が狩りに行く、四匹の黄馬を駕する。両服(りょうふく)は前を行き、両驂は雁行(がんこう)のようだ。叔は藪にいて、火は具(ぐ)としてともに揚がる。叔は射に善(よ)い、また御に善い。あるいは縱(しょう)して進まず、あるいは送(そう)して追いかける。
叔于田,乘乘鴇。兩服齊首,兩驂如手。叔在藪,火烈具阜。叔馬慢忌,叔發罕忌,抑釋掤忌,抑鬯弓忌。
叔が狩りに行く、四匹の鴇(ほう・雑色)馬を駕する。両服は首を斉え、両驂は左右の手のようだ。叔は藪にいて、火は具としてともに阜(ふ)さかん。叔の馬は慢(まん)した、叔の発した矢は罕(かん)だ、あるいは弸(ほう・矢筒)の蓋を釋(しゃく)き、あるいは弓を鬯(ちょう)に納める。
清人在彭,駟介旁旁。二矛重英,河上乎翱翔。
清人は彭(ほう)に在り、駟介(しかい)は旁旁(ぼうぼう)と行く。二矛に重英(ちょうえい)を施し、河上で翱翔(ごうしょう)する。
清人在消,駟介麃麃。二矛重喬,河上乎逍遙。
清人は消(しょう)に在り、駟介は麃麃(ひょうひょう)と行く。二矛に重喬(ちょうぎょう)を施し、河上で逍遙(しょうよう)する。
清人在軸,駟介陶陶。左旋右抽,中軍作好。
清人は軸(じく)に在り、駟介は陶陶(とうとう)と行く。左旋して右抽(ちゅう)し、中軍は好(こう)く容(よう)を作る。
羔裘如濡,洵直且侯。彼其之子,捨命不渝。
羔裘は濡(じゅ)として潤い、洵に直(ちょく)であって侯(こう・美しい)。あの人は、命を捨てても渝(ゆ)えない。
羔裘豹飾,孔武有力。彼其之子,邦之司直。
羔裘は豹飾(ひょうしょく)で、孔武(こうぶ)として力がある。あの人は、邦国の司直(しちょく)だ。
羔裘晏兮,三英粲兮。彼其之子,邦之彥兮。
羔裘は晏(あん)として鮮明だ、三英(さんえい)が粲(さん)としてある。あの人は、邦国の彦(げん)だ。
遵大路兮,摻執子之袪兮。無我惡兮,不蓵故也!
大路に遵(じゅん)らって、あなたの袪(きょ・袖口)を攅(せん)って。私を惡(あ)しみないで、寁(せん)として故(ふる)を絶たないで!
遵大路兮,摻執子之手兮。無我魗兮,不蓵好也!
大路に遵らって、あなたの手を攅って。私を醜(しゅう)としないで、寁として好(こう)を絶たないで!
女曰雞鳴,士曰昧旦。子興視夜,明星有爛。將翱將翔,弋鳧與雁。
女は「鶏が鳴いた」と言い、士は「昧旦(まいたん)だ」と言う。あなた起きて夜を視(み)てみろ、明星が爛(らん)としてある。まもなく翱翔して、鳧(ふ・野鴨)と雁を弋(よく)するだろう。
弋言加之,與子宜之。宜言飲酒,與子偕老。琴瑟在御,莫不靜好。
之(これ)を弋中(よくちゅう)したら、あなたとともに加(か)する(調理する)。加して酒を飲み、あなたとともに偕老(かいろう)する。琴瑟が御前(ぎょぜん)に在れば、静か好(よ)くないことはない。
知子之來之,雜佩以贈之。知子之順之,雜佩以問之。知子之好之,雜佩以報之。
あなたが私に來(きた)るのを知って、雑佩(ざっぱい)で贈る。あなたが私に順うのを知って、雑佩で問(もん)する。あなたが私を好(す)くのを知って、雑佩で報いる。
有女同車,顏如舜華。將翱將翔,佩玉瓊琚。彼美孟姜,洵美且都。
女が同車にあり、顔は舜華(しゅんか・木槿の花)のようだ。まもなく翱翔して、瓊琚を佩びる。あの美しい孟姜は、洵に美しくかつ都(と・雅やか)だ。
有女同行,顏如舜英。將翱將翔,佩玉將將。彼美孟姜,德音不忘。
女が同行にあり、顔は舜英(しゅんえい)のようだ。まもなく翱翔して、佩玉が將將(しょうしょう)と鳴る。あの美しい孟姜は、徳音(とくいん)が忘れられない。
山有扶蘇,隰有荷華。不見子都,乃見狂且。
山に扶蘇(ふそ)があり、隰に荷華(かか)がある。子都(しと)が見えず、狂且(きょうしょ・狂った奴)を見る。
山有喬松,隰有游龍,不見子充,乃見狡童。
山に喬松(きょうしょう)があり、隰に游龍(ゆうりゅう・紅草)がある。子充(しじゅう)が見えず、狡童(こうどう)を見る。
蘀兮蘀兮,風其吹女。叔兮伯兮,倡予和女。
蘀(たく・落葉)よ蘀よ、風があなたを吹く。叔よ伯よ、あなたがたが倡(しょう)れば私が和(わ)する。
蘀兮蘀兮,風其漂女。叔兮伯兮,倡予要女。
蘀よ蘀よ、風があなたを漂(ひょう)わせる。叔よ伯よ、あなたがたが倡れば私が要(よう)する。
彼狡童兮,不與我言兮。維子之故,使我不能餐兮。
あの狡童よ、私と言を交わさない。あなたのゆえに、私は食事ができない。
彼狡童兮,不與我食兮。維子之故,使我不能息兮。
あの狡童よ、私と食をともにしない。あなたのゆえに、私は息(そく)することができない。
子惠思我,褰裳涉溱。子不我思,豈無他人?狂童之狂也且!
あなたが恵みとして私を思うなら、裳を褰(けん)して溱水(しんすい)を渉(わた)る。あなたが私を思わないなら、他人がいないわけではないだろう?狂童の狂しいことよ!
子惠思我,褰裳涉洧。子不我思,豈無他士?狂童之狂也且!
あなたが恵みとして私を思うなら、裳を褰して洧水(いすい)を渉る。あなたが私を思わないなら、他の士がいないわけではないだろう?狂童の狂しいことよ!
子之丰兮,俟我乎巷兮,悔予不送兮。
あなたはあんなに豊(ほう)だ、巷で私を待ってくれたのに、送らなかったことを悔いる。
子之昌兮,俟我乎堂兮,悔予不將兮。
あなたはあんなに昌(しょう・盛ん)だ、堂で私を待ってくれたのに、送らなかったことを悔いる。
衣錦褧衣,裳錦褧裳。叔兮伯兮,駕予與行。
錦衣を衣(き)て褧衣を上に、錦裳を裳(しょう)して褧裳を上に。叔よ伯よ、車を駕して私をあなたがたと行かせて。
裳錦褧裳,衣錦褧衣。叔兮伯兮,駕予與歸。
錦裳を裳して褧裳を上に、錦衣を衣て褧衣を上に。叔よ伯よ、車を駕して私をあなたがたと帰らせて。
東門之墠,茹藘在阪。其室則邇,其人甚遠。
東門の墠(せん・平らな所)、茹藘(じょりょ・茜草)が阪(はん)に在る。その室は邇(じ)いのに、その人は遠い。
東門之栗,有踐家室。豈不爾思?子不我即!
東門の栗、踐(せん)として家室がある。あなたを思わないわけではない、あなたが私に就(しゅう)かないのだ!
風雨悽悽,雞鳴喈喈,既見君子。雲胡不夷?
風雨は凄凄(せいせい)として、鶏は喈喈(かいかい)と鳴く。すでに君子を見た、どうして夷(い)らないことがあろうか?
風雨瀟瀟,雞鳴膠膠。既見君子,雲胡不瘳?
風雨は瀟瀟(しょうしょう)として、鶏は膠膠(こうこう)と鳴く。すでに君子を見た、どうして瘳(ちゅう)らないことがあろうか?
風雨如晦,雞鳴不已。既見君子,雲胡不喜?
風雨は晦(かい)のように暗く、鶏は鳴き已(や)まない。すでに君子を見た、どうして喜ばないことがあろうか?
青青子衿,悠悠我心。縱我不往,子寧不嗣音?
青青たるあなたの衿(きん・襟)、悠悠たる私の心。縦(たと)え私が往かなくても、あなたは嗣音(しいん)を継いで寄さないのか?
青青子佩,悠悠我思。縱我不往,子寧不來?
青青たるあなたの佩(はい)、悠悠たる私の思い。縦え私が往かなくても、あなたは来ないのか?
挑兮達兮,在城闕兮。一日不見,如三月兮。
挑(ちょう)達(たつ)として行き来する、城闕(じょうけつ)の上で。一日見なければ、三月のようだ!
揚之水,不流束楚。終鮮兄弟,維予與女。無信人之言,人實誑女。
激しく揚がる水は、束ねた荊も流せない。ついに兄弟が鮮(せん)なく、ただ予(よ)と女(じょ)だけだ。人の言を信じるな、人は実に女を迋(きょう・騙)しているのだ。
揚之水,不流束薪。終鮮兄弟,維予二人。無信人之言,人實不信。
激しく揚がる水は、束ねた薪も流せない。ついに兄弟が鮮なく、ただ二人だけだ。人の言を信じるな、人は実に信じられないのだ。
出其東門,有女如雲。雖則如雲。匪我思存。縞衣綦巾,聊樂我員。
あの東門を出れば、女が雲のように多い。雲のように多くても、私の思う人ではない。縞衣(こうい)に綦巾(ききん・青い頭巾)のあの人こそ、しばらく私を楽しませる。
出其闉闍,有女如荼。雖則如荼,匪我思且。縞衣茹藘,聊可與娛。
あの闉闍(いんと・城の曲門)を出れば、女が荼(と・茅の花)のように多い。荼のように多くても、私の思う人ではない。縞衣に茹藘(じょりょ)のあの人こそ、しばらくともに楽しめる。
野有蔓草,零露漙兮。有美一人,清揚婉兮。邂逅相遇,適我願兮。
野に蔓(まん)草があり、零露(れいろ)が漙(たん)として丸い。一人の美人がいて、清揚(せいよう)として眉目が美しい。邂逅(かいこう)して遭(あ)えば、私の願いに適(てき)う。
野有蔓草,零露瀼瀼。有美一人,婉如清揚。邂逅相遇,與子偕臧。
野に蔓草があり、零露が瀼瀼(じょうじょう)。一人の美人がいて、婉(えん)として清揚だ。邂逅して遭えば、あなたとともに臧(そう・善く)しよう。
溱與洧,方渙渙兮。士與女,方秉蕳兮。女曰觀乎?士曰既且。且往觀乎?
溱と洧、方(まさ)に渙渙(かんかん)と漲る。士と女、方に蕑(かん・蘭)を秉(へい)る。女は「觀(み)に行かないか」と言い、士は「既(すで)に且(まさ)に行った」と言う。「また行って観ないか?」
洧之外,洵訏且樂。維士與女,伊其相謔,贈之以勺藥。
洧の外は、洵に訏(く・大きく)かつ楽しい。士と女、伊(い)として相い謔(ぎゃく)し、勺薬(しゃくやく)を贈り合う。
溱與洧,瀏其清矣。士與女,殷其盈矣。女曰觀乎?士曰既且。且往觀乎?
溱と洧、瀏(りゅう)として清い。士と女、殷(いん)として盈(えい)ちる。女は「観に行かないか」と言い、士は「既に且に行った」と言う。「また行って観ないか?」
洧之外,洵訏且樂。維士與女,伊其將謔,贈之以勺藥。
洧の外は、洵に訏かつ楽しい。士と女、將(しょう)として相い謔し、勺薬を贈り合う。
雞既鳴矣,朝既盈矣。匪雞則鳴,蒼蠅之聲。
鶏は既に鳴いた、朝(ちょう)は既に盈ちた。鶏が鳴いたのではない、蠅(よう)の声だ。
東方明矣,朝既昌矣。匪東方則明,月出之光。
東方が明(めい)いた、朝は既に昌(しょう)だ。東方が明いたのではない、月が出た光だ。
蟲飛薨薨,甘與子同夢。會且歸矣,無庶予子憎。
虫が飛んで薨薨(こうこう)と鳴く、甘(かん)としてあなたと同じ夢を。会(かい)が且(まさ)に帰らんとする、庶(しょ)く憎まれることのないように、予と女が。
子之還兮,遭我乎狃之間兮。並驅從兩肩兮,揖我謂我儇兮。
あなたはあんなに邁(ばい・俊敏)だ、峱(どう)の間で私に遭った。並び駆って二つの肩(けん・大きな獣)を逐(ちく)い、揖(ゆう)して私を儇(けん)だと言う。
子之茂兮,遭我乎狃之道兮。並驅從兩牡兮,揖我謂我好兮。
あなたはあんなに茂(も・盛ん)だ、峱(どう)の道で私に遭った。並び駆って二つの牡(ぼ)の獣を逐い、揖して私を臧(そう・よい)だと言う。
子之昌兮,遭我乎狃之陽兮。並驅從兩狼兮,揖我謂我臧兮。
あなたはあんなに昌(しょう)だ、峱の南で私に遭った。並び駆って二頭の狼を逐い、揖して私を臧だと言う。
俟我於著乎而,充耳以素乎而,尚之以瓊華乎而。
著(ちょ・門と屏の間)で私を待っていた、充耳は素(そ・白絲)で、尚(さら)に瓊華(けいか)を加えていた。
俟我於庭乎而,充耳以青乎而,尚之以瓊瑩乎而。
庭で私を待っていた、充耳は青(せい)で、尚に瓊瑩(けいえい)を加えていた。
俟我於堂乎而,充耳以黃乎而,尚之以瓊英乎而。
堂で私を待っていた、充耳は黄(こう)で、尚に瓊英(けいえい)を加えていた。
東方之日兮,彼姝者子,在我室兮。在我室兮,履我即兮。
東方の日よ、あの姝(しゅ・美しい人)が、私の室にいる。私の室にいて、私の履(り)に履(ふ)んで來(きた)る。
東方之月兮,彼姝者子,在我闥兮。在我闥兮,履我發兮。
東方の月よ、あの姝が、私の闥(たつ)の内にいる。私の闥の内にいて、私の履に履んで發(はっ)する。
東方未明,顛倒衣裳。顛之倒之,自公召之。
東方が未だ明るくない、衣裳を顛倒(てんとう)して着る。顛之倒之(てんしたおす)するのは、公から召(しょう)されたからだ。
東方未晞,顛倒裳衣。倒之顛之,自公令之。
東方が未だ晞(き・乾いて明るい)くない、衣裳を倒顛して着る。倒之顛之するのは、公から令(れい)があったからだ。
折柳樊圃,狂夫瞿瞿。不能辰夜,不夙則莫。
柳を折って圃(ほ・菜園)を樊(はん・囲う)とする、狂夫(きょうふ)は瞿瞿(くく)と目を見張る。辰(しん・時)を度(たく)せず、早すぎるか晚(ばん)すぎるかだ。
南山崔崔,雄狐綏綏。魯道有蕩,齊子由歸。既曰歸止,曷又懷止?
南山は崔崔(さいさい)として高く、雄狐は綏綏(すいすい)と行く。魯の道は蕩(とう)として平坦で、斉の子はここから嫁いだ。すでに嫁いだのに、どうしてまた懐(かい)するのか?
葛屨五兩,冠緌雙止。魯道有蕩,齊子庸止。既曰庸止,曷又從止?
葛屨(かつく・葛の履)は五両(りょう・五対)、冠緌(かんずい)は双(そう)だ。魯の道は蕩として平坦で、斉の子はここから庸(よう・行った)。すでに行ったのに、どうしてまた従(しょう)うのか?
蓺麻如之何?衡從其畝。取妻如之何?必告父母。既曰告止,曷又鞠止?
麻を蓺(げい・植える)にはどうするか。衡(おう)に從(しょう)にその畝(うね)を整える。妻を取るにはどうするか。必ず父母に告げる。すでに告げたのに、どうしてまた鞠(きく・窮める)するのか?
析薪如之何?匪斧不克。取妻如之何?匪媒不得。既曰得止,曷又極止?
薪を析(せき)るにはどうするか。斧がなければ克(こく)らない。妻を取るにはどうするか。媒(ばい)がなければ得られない。すでに得たのに、どうしてまた極(きょく)するのか?
無田甫田,維莠驕驕。無思遠人,勞心忉忉。
甫田(ふでん・大きな田)を畊(こう)るな、莠(ゆう・雑草)だけが驕驕(きょうきょう)と高い。遠い人を思うな、心を労して忉忉(とうとう)と憂える。
無田甫田,維莠桀桀。無思遠人,勞心怛怛。
甫田を畊るな、莠だけが桀桀(けつけつ)と高い。遠い人を思うな、心を労して怛怛(たったつ)と痛む。
婉兮孌兮。總角丱兮。未幾見兮,突而弁兮!
婉(えん)として孌(れん)として(美しい)。總角(そうかく)が丱(かん・角のように翘く)いている。幾(き)ならずして見れば、突然として弁(べん・皮弁)を戴(たい)している!
盧令令,其人美且仁。
盧(ろ・黒い犬)に令令(れいれい)と鈴が鳴る、その人は美しくかつ仁だ。
盧重環,其人美且鬈。
盧に重環(ちょうかん)を着けた、その人は美しくかつ鬈(けん・髪がよい)だ。
盧重鋂,其人美且偲。
盧に重鋂(ちょうばい)を着けた、その人は美しくかつ偲(さい・才がある)だ。
敝笱在梁,其魚魴鰥。齊子歸止,其從如雲。
敝(へい・破れた)笱(こう)が梁(りょう)に在り、その魚は魴(ぼう)と鱮(きょ)。斉の子が帰ってゆく、従う者は雲のように多い。
敝笱在梁,其魚魴鱮。齊子歸止,其從如雨。
敝笱が梁に在り、その魚は魴と鱮(しょ)。斉の子が帰ってゆく、従う者は雨のように多い。
敝笱在梁,其魚唯唯。齊子歸止,其從如水。
敝笱が梁に在り、その魚は唯唯(いい)として出入りする。斉の子が帰ってゆく、従う者は水のように多い。
載驅薄薄,簟茀朱鞹。魯道有蕩,齊子發夕。
載(さい)して驅(く)して薄薄(はくはく)と速い、簟茀(てんふつ・竹席の車蔽)と朱鞹(しゅかく・赤い革)。魯の道は蕩として平坦で、斉の子は發夕(はつせき・夜明け前)に発つ。
四驪濟濟,垂轡沵沵。魯道有蕩,齊子豈弟。
四驪(しり・四匹の黒馬)は濟濟(さいさい)として斉しく、垂轡(すいひ)は濔濔(びび)と垂れる。魯の道は蕩として平坦で、斉の子は豈弟(かいてい・和楽平易)だ。
汶水湯湯,行人彭彭。魯道有蕩,齊子翱翔。
汶水(ぶんすい)は湯湯(しょうしょう)と大きく、行人は彭彭(ほうほう)と多い。魯の道は蕩として平坦で、斉の子は翱翔している。
汶水滔滔,行人儦儦。魯道有蕩,齊了遊敖。
汶水は滔滔(とうとう)と流れ、行人は儦儦(ひょうひょう)と盛んだ。魯の道は蕩として平坦で、斉の子は游敖(ゆうごう)している(底本は「斉了」とするが、「了」は「子」の誤字)。
猗嗟昌兮,頎而長兮。抑若揚兮,美目揚兮。巧趨蹌兮,射則臧兮。
ああ、このように昌(しょう)だ、頎(き)として長い。揚(よう)として眉が揚がるように美しく、美しい目は揚(よう)としてある。巧みに趨蹌(しゅしょう)として、射れば臧(そう)だ。
猗嗟名兮,美目清兮。儀既成兮,終日射侯,不出正兮,展我甥兮。
ああ、このように名(めい)だ、美しい目は清い。儀は既に成り、終日射侯(しゃこう)して、その正(せい・的)から出ない、まことに我が甥(せい)だ!
猗嗟孌兮,清揚婉兮。舞則選兮,射則貫兮,四矢反兮,以御亂兮。
ああ、このように孌(れん)だ、清揚(せいよう)として婉(えん)だ。舞えば則(そく・節度)に中(ちゅう)り、射れば貫(かん)く、四矢が反(はん)って同じ所に至る、以って亂(らん)を御(ぎょ)ぐ。
糾糾葛屨,可以履霜?摻摻女手,可以縫裳?要之襋之,好人服之。
糾糾(きゅうきゅう)と固く葛屨を結び、以って霜を履(ふ)めるか。摻摻(せんせん)とした女の手、以って裳を縫(ほう)えるか。之(これ)を要(よう・腰)し之を襋(きょく・襟)し、好人が之を服(ふく)する。
好人提提,宛然左闢,佩其象揥。維是褊心,是以為刺。
好人は提提(ていてい)として安らかで、宛然(えんぜん)として左に辟(へき)し、象揥(ぞうてい)を佩びている。この褊心(へんしん)のゆえに、是(これ)を以って刺(し)とする。
彼汾沮洳,言採其莫。彼其之子,美無度。美無度,殊異乎公路。
あの汾(ふん)の沮洳(そじょ・低湿地)で、あの莫(ばく・酸模)を采る。あの人は、美しく度(ど)がない。美しく度がない、公路(こうろ)とは殊(しゅ)に異なる。
彼汾一方,言採其桑。彼其之子,美如英。美如英,殊異乎公行。
あの汾の一方(いっぽう)で、あの桑を采る。あの人は、花のように美しい。花のように美しい、公行(こうこう)とは殊に異なる。
彼汾一曲,言採其藚。彼其之子,美如玉。美如玉,殊異乎公族。
あの汾の一曲(いっきょく)で、あの藚(しょ・沢瀉)を采る。あの人は、玉のように美しい。玉のように美しい、公族(こうぞく)とは殊に異なる。
園有桃,其實之餚。心之憂矣,我歌且謠。不知我者,謂我士也驕。
園に桃があり、その実を殽(こう・菜)とする。心の憂いよ、我は歌い謡(よう)う。私を知らぬ者は「この士は驕(きょう)だ」と言う。
彼人是哉,子曰何其?心之憂矣,其誰知之?其誰知之,蓋亦勿思!
あの人が是(ぜ)なのか、あなたはどう思うか。心の憂いよ、知る者がいるか。知る者がいるなら、何ぞ思わざらん!
園有棘,其實之食。心之憂矣,聊以行國。不知我者,謂我士也罔極。
園に棘(きょく・酸棗)があり、その実を食(しょく)とする。心の憂いよ、聊(りょう・しばらく)国中を行く。私を知らぬ者は「この士は罔極(もうきょく・極がない)」と言う。
彼人是哉,子曰何其?心之憂矣,其誰知之?其誰知之,蓋亦勿思!
あの人が是なのか、あなたはどう思うか。心の憂いよ、知る者がいるか。知る者がいるなら、何ぞ思わざらん!
陟彼岵兮,瞻望父兮。父曰:嗟!予子行役,夙夜無已。上慎旃哉,猶來!無止!
あの岵(こ・木のある山)に登って、父を瞻望(せんぼう)する。父は言う:嗟(さ)あ!我が子は役に行き、夙夜(しゅくや)已(や)まない。上(しょう)れ慎(しん)めよ、猶(な)お來(き)て無(ま)止(し)するな!
陟彼屺兮,瞻望母兮。母曰:嗟!予季行役,夙夜無寐。上慎旃哉,猶來!無棄!
あの屺(き・木のない山)に登って、母を瞻望する。母は言う:嗟あ!我が季(き・末子)は役に行き、夙夜寐(び)しない。上れ慎めよ、猶お來て無棄(むき)するな!
陟彼岡兮,瞻望兄兮。兄曰:嗟!予弟行役,夙夜必偕。上慎旃哉,猶來!無死!
あの岡に登って、兄を瞻望する。兄は言う:嗟あ!我が弟は役に行き、夙夜必ず偕(かい)する。上れ慎めよ、猶お來て無死(むし)するな!
十畝之間兮,桑者閒閒兮,行與子還兮。
十畝の間(かん)よ、桑者(そうしゃ)は閑閑(かんかん)として、あなたとともに還(かえ)らん。
十畝之外兮,桑者洩洩兮,行與子逝兮。
十畝の外(がい)よ、桑者は泄泄(えつえつ)として、あなたとともに逝(せい)かん。
坎坎伐檀兮,置之河之幹兮。河水清且漣猗。不稼不穡,胡取禾三百廛兮?
坎坎(かんかん)と檀を伐り、河の干(かん・岸)に寘(ち)く、河水は清くかつ漣猗(れんい)。稼(か)もせず穡(しょく)もしないで、どうして禾三百廛(てん)を取るか?
不狩不獵,胡瞻爾庭有縣貆兮?彼君子兮,不素餐兮!
狩(しゅ)もせず獵(りょう)もしないで、どうしてあなたの庭に縣(けん)された貆(かん・貉)を見るか。あの君子は、素(そ)として餐(さん)しないのだ!
坎坎伐輻兮,置之河之側兮。河水清且直猗。不稼不穡,胡取禾三百億兮?
坎坎と輻(ふく)を伐り、河の側に寘く、河水は清くかつ直猗(ちょくい)。稼もせず穡もしないで、どうして禾三百億(おく)を取るか?
不狩不獵,胡瞻爾庭有縣特兮?彼君子兮,不素食兮!
狩もせず獵もしないで、どうしてあなたの庭に縣された特(とく・大きな獣)を見るか。あの君子は、素として食(しょく)しないのだ!
坎坎伐輪兮,置之河之漘兮。河水清且淪猗。不稼不穡,胡取禾三百囷兮?
坎坎と輪(りん)を伐り、河の漘(しゅん)に寘く、河水は清くかつ淪猗(りんい)。稼もせず穡もしないで、どうして禾三百囷(きん)を取るか?
不狩不獵,胡瞻爾庭有縣鶉兮?彼君子兮,不素飧兮!
狩もせず獵もしないで、どうしてあなたの庭に縣された鶉(じゅん)を見るか。あの君子は、素として飧(そん・夕食)しないのだ!
碩鼠碩鼠,無食我黍!三歲貫女,莫我肯顧。逝將去女,適彼樂土。樂土樂土,爰得我所。
碩鼠(せきそ・大きな鼠)よ碩鼠よ、我が黍を食(は)むな!三歳貫(かん)女(なんじ・あなたに仕えて三年)、我を顧(こ)せず。逝(せい)將(しょう)女を去り、あの楽土に適(てき)かん。楽土よ楽土よ、爰(えん)に我が所を得ん。
碩鼠碩鼠,無食我麥!三歲貫女,莫我肯德。逝將去女,適彼樂國。樂國樂國,爰得我直。
碩鼠よ碩鼠よ、我が麦を食むな!三歳貫女、我を徳(とく)せず。逝將女を去り、あの楽国に適かん。楽国よ楽国よ、爰に我が直(ちょく・分)を得ん。
碩鼠碩鼠,無食我苗!三歲貫女,莫我肯勞。逝將去女,適彼樂郊。樂郊樂郊,誰之永號?
碩鼠よ碩鼠よ、我が苗を食むな!三歳貫女、我を勞(ろう)せず。逝將女を去り、あの楽郊に適かん。楽郊よ楽郊よ、誰が之(これ)に永號(えいごう・長く哭号)せんか?
蟋蟀在堂,歲聿其莫。今我不樂,日月其除。無已大康,職思其居。好樂無荒,良士瞿瞿。
蟋蟀(しっしゅつ)が堂に在り、歲(さい)は聿(いち)として莫(ぼ・暮れる)せんとする。今我不楽なれば、日月は其(き)として除(じょ)す。無(な)かれ已(い)に大康(たいこう)、職(しょく)に其(き)の居(きょ)を思え。好樂(こうらく)して荒(こう)せず、良士は瞿瞿(くく)とする。
蟋蟀在堂,歲聿其逝。今我不樂,日月其邁。無已大康,職思其外。好樂無荒,良士蹶蹶。
蟋蟀が堂に在り、歲は聿として逝(せい)せんとする。今我不楽なれば、日月は其として邁(ばい)す。無かれ已に大康、職に外(がい)を思え。好樂して荒せず、良士は蹶蹶(けつけつ)とする。
蟋蟀在堂,役車其休。今我不樂,日月其慆。無以大康。職思其憂。好樂無荒,良士休休。
蟋蟀が堂に在り、役車は其として休(きゅう)せんとする。今我不楽なれば、日月は其として慆(とう)す。無かれ已に大康、職に其の憂(ゆう)を思え。好樂して荒せず、良士は休休(きゅうきゅう)とする。
山有樞,隰有榆。子有衣裳,弗曳弗婁。子有車馬,弗馳弗驅。宛其死矣,他人是愉。
山に樞(しゅう)があり、隰に楡(ゆ)がある。あなたに衣裳があって、曳(えい)せず婁(る)せず。あなたに車馬があって、馳(ち)せず驅せず。宛(えん)として其(き)死すれば、他人が愉(ゆ)する。
山有栲,隰有杻。子有廷內,弗灑弗掃。子有鐘鼓,弗鼓弗考。宛其死矣,他人是保。
山に栲(こう)があり、隰に杻(ちゅう)がある。あなたに廷内(ていない)があって、洒(さい)せず掃(そう)せず。あなたに鐘鼓があって、鼓(こ)せず考(こう)せず。宛として其死すれば、他人が保(ほ)する。
山有漆,隰有栗。子有酒食,何不日鼓瑟?且以喜樂,且以永日。宛其死矣,他人入室。
山に漆(しつ)があり、隰に栗(りつ)がある。あなたに酒食があるのに、どうして日に鼓瑟(こしつ)しないか。且(しゃ)に以って喜楽(きらく)し、且に以って日を永(えい)せん。宛として其死すれば、他人が室に入る。
揚之水,白石鑿鑿。素衣朱襮,從子於沃。既見君子,云何不樂?
激しく揚がる水、白石は鑿鑿(さくさく)と鮮明だ。素衣(そい)に朱襮(しゅはく・紅い襟)、あなたに従って沃(よく・曲沃)に至る。既に君子を見た、どうして樂(らく)しまないことがあろうか?
揚之水,白石皓皓。素衣朱繡,從子於鵠。既見君子,云何其憂?
激しく揚がる水、白石は皓皓(こうこう)と白い。素衣に朱繡(しゅしゅう)、あなたに従って鵠(こく)に至る。既に君子を見た、どうして憂いがあろうか?
揚之水,白石粼粼。我聞有命,不敢以告人。
激しく揚がる水、白石は粼粼(りんりん)と清い。我は命(めい)あるを聞いた、人に告げることを敢(あ)えてしない。
椒聊之實,蕃衍盈升。彼其之子,碩大無朋。椒聊且,遠條且。
椒聊(しょうりょう・山椒)の実は、蕃衍(はんえん)して升(しょう)に盈(み)ちる。あの人は、碩大(せきだい)で无朋(むぼう・並ぶものがない)。椒聊よ、香りは遠く條(じょう)まで届く!
椒聊之實,蕃衍盈匊。彼其之子,碩大且篤。椒聊且,遠條且。
椒聊の実は、蕃衍して匊(きく・捧)に盈ちる。あの人は、碩大で且(しょ)つ篤(とく)。椒聊よ、香りは遠く條まで届く!
綢繆束薪,三星在天。今夕何夕,見此良人?子兮子兮,如此良人何?
綢繆(ちゅうびゅう)と固く薪を束ね、三星(さんせい)が天に在る。今夕は何の夕か、この良人に見(あ)うとは?子兮子兮(しけいしけい・あなたよあなたよ)、この良人を將(しょう)す(どうする)か?
綢繆束芻,三星在隅。今夕何夕,見此邂逅?子兮子兮,如此邂逅何?
綢繆と固く芻(すう・飼草)を束ね、三星が隅(ぐう)に在る。今夕は何の夕か、この邂逅(かいこう)に見うとは?子兮子兮、この邂逅を將すか?
綢繆束楚,三星在戶。今夕何夕,見此粲者?子兮子兮,如此粲者何?
綢繆と固く楚(そ)を束ね、三星が戸(こ)に在る。今夕は何の夕か、この粲者(さんしゃ・鮮やかな人)に見うとは?子兮子兮、この粲者を將すか?
有杕之杜,其葉湑湑。獨行踽踽。豈無他人?不如我同父。嗟行之人,胡不比焉?人無兄弟,胡不佽焉?
杕(てい・孤立した)杜(と・赤棠)があり、葉は湑湑(しょしょ)と茂る。独り行けば踽踽(くく)とする。他人がいないわけではない、我が同父の兄弟に如(し)かないだけだ。嗟(さ)あ行(こう)る人よ、胡(こ)として比(ひ・親しく)しないか。人に兄弟がなければ、胡として佽(じ・助け)しないか。
有杕之杜,其葉箐箐。獨行睘睘。豈無他人?不如我同姓。嗟行之人,胡不比焉?人無兄弟,胡不佽焉?
杕杜があり、葉は菁菁(せいせい)と盛んだ。独り行けば睘睘(けいけい)として依るべがない。他人がいないわけではない、我が同姓に如かないだけだ。嗟あ行る人よ、胡として比しないか。人に兄弟がなければ、胡として佽しないか。
羔裘豹祛,自我人居居。豈無他人?維子之故。
羔裘に豹袪(ひょうきょ・豹の袖)、我々に対して居居(きょきょ)として傲慢だ。他人がいないわけではない、ただ子(し)の故(こ・旧情)のゆえだ。
羔裘豹褎,自我人究究。豈無他人?維子之好。
羔裘に豹褎(ひょうしゅう)、我々に対して究究(きゅうきゅう)として苛酷だ。他人がいないわけではない、ただ子の好(こう)のゆえだ。
肅肅鴇羽,集於苞栩。王事靡盬,不能蓺稷黍。父母何怙?悠悠蒼天,曷其有所?
鴇(ほう)が肅肅(しゅくしゅく)と翼を動かし、苞(ほう・叢生した)栩(く・柞)に集(しゅう)まる。王事は靡盬(びこ・止まない)、蓺(げい)黍稷を植えられない。父母は何に怙(こ・依る)するか。悠悠たる蒼天よ、曷(かつ)に其の所(しょ)あらんか?
肅肅鴇翼,集於苞棘。王事靡盬,不能蓺黍稷。父母何食?悠悠蒼天,曷其有極?
鴇が肅肅と翼を動かし、苞棘に集まる。王事は靡盬、黍稷を植えられない。父母は何を食(しょく)するか。悠悠たる蒼天よ、曷に其の極(きょく)あらんか?
肅肅鴇行,集於苞桑,王事靡盬,不能蓺稻梁。父母何嘗?悠悠蒼天,曷其有常?
鴇が肅肅として行(こう)を成し、苞桑に集まる。王事は靡盬、稲粱(とうりょう)を植えられない。父母は何を嘗(しょう)するか。悠悠たる蒼天よ、曷に其の常(じょう)あらんか?
豈曰無衣七兮?不如子之衣,安且吉兮!
豈(き)に曰(えつ)く無衣(むい)なりと、七(しち)兮(けい)。子(し)の衣に如(じょ)かず、安(あん)にして且(しょ)つ吉(きち)だ!
豈曰無衣六兮?不如子之衣,安且燠兮!
豈に曰く無衣なりと、六(ろく)兮。子の衣に如かず、安にして且つ燠(いく・暖かい)だ!
有杕之杜,生於道左。彼君子兮,噬肯適我?中心好之,曷飲食之?
杕杜があり、道の左に生(せい)ず。あの君子よ、肯(こう)んじて我に適(てき)かざるか。心は之を好(こう)す、何を以って之に飲食(いんしょく)せしめん?
有杕之杜,生於道周。彼君子兮,噬肯來遊?中心好之,曷飲食之?
杕杜があり、道の周(しゅう・曲がり)に生ず。あの君子よ、肯んじて游(ゆう)に來(き)さるか。心は之を好す、何を以って之に飲食せしめん?
葛生蒙楚,蘞蔓於野。予美亡此,誰與?獨處?
葛(かつ)が生じて楚(そ)を蒙(もう)い、蘞(れん)が野に蔓(まん)る。予(よ)美(び)が此(こ)に亡(ぼう)く、誰と与(よ)にせん?独り処(しょ)する?
葛生蒙棘,蘞蔓於域。予美亡此,誰與?獨息?
葛が生じて棘を蒙い、蘞が域(いき・墓地)に蔓る。予美が此に亡く、誰と与にせん?独り息(そく)する?
角枕粲兮,錦衾爛兮。予美亡此,誰與?獨旦?
角枕(かくちん)は粲(さん)として鮮明だ、錦衾(きんきん)は爛(らん)としてある。予美が此に亡く、誰と与にせん?独り旦(たん)に至る?
夏之日,冬之夜。百歲之後,歸於其居。
夏の日、冬の夜。百歳の後、其(き)の居(きょ)に帰(き)せん。
冬之夜,夏之日。百歲之後,歸於其室。
冬の夜、夏の日。百歳の後、其の室(しつ)に帰せん。
采苓采苓,首陽之巔。人之為言,苟亦無信。舍旃舍旃,苟亦無然。人之為言,胡得焉?
苓(れい)を采り苓を采り、首陽(しゅよう)の巔(てん・頂き)で。人の為言(いげん・偽りの言葉)、苟(こう)にも亦(えき)信(しん)するな。舍旃(しゃせん)舍旃、苟にも亦然(ぜん)とするな。人の為言、胡(こ)として得(とく)せんか?
採苦採苦,首陽之下。人之為言,苟亦無與。舍旃舍旃,苟亦無然。人之為言,胡得焉?
苦(く)を采り苦を采り、首陽の下で。人の為言、苟にも亦与(よ)するな。舍旃舍旃、苟にも亦然とするな。人の為言、胡として得せんか?
採葑採葑,首陽之東。人之為言,苟亦無從。舍旃舍旃,苟亦無然。人之為言,胡得焉?
葑(ふう)を采り葑を采り、首陽の東で。人の為言、苟にも亦從(しょう)するな。舍旃舍旃、苟にも亦然とするな。人の為言、胡として得せんか?
有車鄰鄰,有馬白顛。未見君子,寺人之令。
車が鄰鄰(りんりん)と鳴り、馬は白顚(はくてん・白い額)。未だ君子を見ず、寺人(じじん)の令(れい)を俟(し)つ。
阪有漆,隰有栗。既見君子,並坐鼓瑟。今者不樂,逝者其耋。
阪に漆があり、隰に栗がある。既に君子を見た、並び坐して瑟を鼓する。今の者(しゃ)樂(らく)しまなければ、逝(せい)く者は耋(てつ・老いる)だ。
阪有桑,隰有楊。既見君子,並坐鼓簧。今者不樂,逝者其亡。
阪に桑があり、隰に楊(よう)がある。既に君子を見た、並び坐して簧(こう)を吹く。今の者樂しまなければ、逝く者は亡(ぼう)だ。
駟驖孔阜,六轡在手。公之媚子,從公於狩。
駟驖(してつ・四匹の鉄青馬)は孔阜(こうふ・とても大きい)、六轡(ろっぴ)が手に在る。公の媚子(びし・寵愛する人)、公に従って狩(しゅ)に行く。
奉時辰牡,辰牡孔碩。公曰左之,舍拔則獲。
この辰牡(しんぼ・時節の牡獣)を奉(ほう)じて、辰牡は碩(せき)だ。公は「左(さ)れ」と曰(えつ)く、舍(しゃ)拔(ばつ)すれば則(そく)獲(かく)す。
遊於北園,四馬既閒。輶車鸞鑣,載獫歇驕。
北園に游(ゆう)して、四馬は既に閑(かん・慣れた)。輕車(けいしゃ)に鸞(らん)は鑣(ひょう)に在り、嶮(けん・長嘴犬)と猲獢(かつしょう・短嘴犬)を載(さい)す。
小戎俴收,五楘梁輈。遊環脅驅,陰靷鋈續。文茵暢轂,駕我騏馵。
小戎(しょうじゅう・小さな兵車)は俴收(せんしゅう・浅い箱)、五楘(ごぼく・五本の革帯)が梁輈(りょうちゅう)を纏う。游環(ゆうかん)と脅驅(きょうく)、陰靷(いんいん)は鋈續(ぼくぞく・白銅で継ぐ)。文茵(ぶんいん・虎皮の褥)に暢轂(ちょうこく・長い轂)、我が騏(き・青黒馬)と馵(しゅ・白蹄馬)を駕す。
言念君子,溫其如玉。在其板屋,亂我心曲。
君子を言念(げんねん)して、その温(おん)は玉の如(じょ)し。其(き)が板屋(ばんおく)に在れば、我が心曲(しんきょく)を亂(らん)す。
四牡孔阜,六轡在手。騏騮是中,騧驪是驂。龍盾之合,鋈以觼軜。
四牡(しぼ)は孔阜、六轡が手に在る。騏騮(きりゅう・青黒馬と赤馬)は中(ちゅう)に、騧驪(かり・黄馬と黒馬)は驂(さん)に。龍盾(りゅうじゅん)之合(ごう)、鋈(ぼく)は以って觼(けつ)ナ(ない・内側の轡)。
言念君子,溫其在邑。方何為期?胡然我念之!
君子を言念して、邑(ゆう)の中に温(おん)として在る。方(ほう)何(か)の期(き)なるか、胡然(こぜん)として我は之を念(ねん)するか!
俴駟孔群,厹矛鋈錞。蒙伐有苑,虎韔鏤膺。交韔二弓,竹閉緄縢。
俴駟(せんし・薄甲の四馬)は孔群(こうぐん・とても調和)、厹矛(きゅうぼう・三隅矛)に鋈錞(ぼくじゅん・白銅の鐏)。蒙(もう)伐(ばつ・盾の文様)有苑(ゆうえん)、虎韔(こちょう・虎皮の弓袋)鏤膺(るよう・胸に鏤り)。交韔(こうちょう)二弓(にきゅう・二張の弓を交わして入れる)、竹閉(ちくへい)緄縢(こんとう・竹檠を縄で纏う)。
言念君子,載寢載興。厭厭良人,秩秩德音。
君子を言念して、寢(しん)しては載(さい)興(こう)る。厭厭(えんえん)の良人(りょうじん・安閑な善人)、秩秩(ちつちつ)の徳音(とくいん)。
蒹葭蒼蒼,白露為霜。所謂伊人,在水一方。溯洄從之,道阻且長。溯游從之,宛在水中央。
蒹葭(けんか・葦)は蒼蒼(そうそう)、白露は霜と為(な)る。所謂(しょい)伊人(いじん・あの人)は、水の一方(いっぽう)に在り。溯洄(そかい)して之に從(しょう)えば、道は阻(そ)且つ長(ちょう)し。溯游(そゆう)して之に從えば、宛(えん)として水の中央に在るようだ。
蒹葭萋萋,白露未晞。所謂伊人,在水之湄。溯洄從之,道阻且躋。溯游從之,宛在水中坻。
蒹葭は萋萋(せいせい)、白露は未だ晞(き)かず。所謂伊人は、水の湄(び)に在り。溯洄して之に從えば、道は阻且つ躋(せい・登る)し。溯游して之に從えば、宛として水中の坻(ち・小洲)に在るようだ。
蒹葭采采,白露未已。所謂伊人,在水之涘。溯洄從之,道阻且右。溯游從之,宛在水中沚。
蒹葭は采采(さいさい)、白露は未だ已(い)ならず。所謂伊人は、水の涘(し)に在り。溯洄して之に從えば、道は阻且つ右(ゆう・右に回る)し。溯游して之に從えば、宛として水中の沚(し・小渚)に在るようだ。
終南何有?有條有梅。君子至止,錦衣狐裘。顏如渥丹,其君也哉!
終南(しゅうなん)に何(か)有(ゆう)るか。條(ちょう・山楸)あり梅(ばい)あり。君子至(し)止(し)、錦衣に狐裘(こきゅう)。顔(がん)は渥丹(おくたん・丹を塗ったよう)、其(き)の君(くん)也(や)哉(さい)!
終南何有?有紀有堂。君子至止,黻衣繡裳。佩玉將將,壽考不忘!
終南に何有るか。紀(き)あり堂(どう)あり。君子至止、黻衣(ふつい)繡裳(しゅうしょう)。佩玉將將(しょうしょう)、壽考(じゅこう)不忘(ぼう)!
交交黃鳥,止於棘。誰從穆公?子車奄息。維此奄息,百夫之特。
交交(こうこう)の黃鳥(こうちょう)、棘(きょく)に止(し)まる。誰(すい)が穆公(ぼくこう)に從(しょう)うか。子車(ししゃ)奄息(えんそく)。維(い)此(し)奄息、百夫(ひゃっぷ)之特(とく)。
臨其穴,惴惴其栗。彼蒼者天,殲我良人!如可贖兮,人百其身!
其(き)の穴(けつ)に臨(りん)んで、惴惴(ずいずい)其(き)慄(りつ)す。彼(ひ)蒼(そう)者(しゃ)天(てん)、我が良人を殲(せん)す!如(じょ)可(か)贖(しょく)兮(けい)、人(じん)百其(き)身(しん)!
交交黃鳥,止於桑。誰從穆公?子車仲行。維此仲行,百夫之防。
交交の黃鳥、桑に止まる。誰が穆公に從うか。子車仲行(ちゅうこう)。維此仲行、百夫之防(ぼう)。
臨其穴,惴惴其栗。彼蒼者天,殲我良人!如可贖兮,人百其身!
其の穴に臨んで、惴惴其慄す。彼蒼者天、我が良人を殲す!如可贖兮、人百其身!
交交黃鳥,止於楚。誰從穆公?子車針虎。維此針虎,百夫之御。
交交の黃鳥、楚(そ)に止まる。誰が穆公に從うか。子車鍼虎(しんこ)。維此鍼虎、百夫之禦(ぎょ)。
臨其穴,惴惴其栗。彼蒼者天,殲我良人!如可贖兮,人百其身!
其の穴に臨んで、惴惴其慄す。彼蒼者天、我が良人を殲す!如可贖兮、人百其身!
鴥彼晨風,鬱彼北林。未見君子,憂心欽欽。如何如何,忘我實多!
鴥(いつ)彼(ひ)晨風(しんぷう・疾く飛ぶ鳥)、鬱(うつ)彼(ひ)北林(ほくりん)。未(み)だ君子を見ず、憂心(ゆうしん)欽欽(きんきん)。如何如何、忘我実(じつ)多(た)し!
山有苞櫟,隰有六駮。未見君子,憂心靡樂。如何如何,忘我實多!
山有苞(ほう)櫟(れき)、隰(しつ)有六駁(ろくばく)。未だ君子を見ず、憂心靡樂(びらく)。如何如何、忘我実多し!
山有苞棣,隰有樹檖。未見君子,憂心如醉。如何如何,忘我實多!
山有苞棣(てい)、隰有樹檖(じゅすい)。未だ君子を見ず、憂心如醉(じょすい)。如何如何、忘我実多し!
豈曰無衣?與子同袍。王於興師,修我戈矛。與子同仇!
豈(き)曰(えつ)無衣(むい)与(よ)子(し)同袍(どうほう)。王于(おう)興師(こうし)、修我(しゅうが)戈矛(かぼう)与(よ)子(し)同仇(どうきゅう)!
豈曰無衣?與子同澤。王於興師,修我矛戟。與子偕作!
豈曰無衣与子同沢(どうたく・内衣)。王于興師、修我矛戟(ぼうげき)与子偕作(かいさく)!
豈曰無衣?與子同裳。王於興師,修我甲兵。與子偕行!
豈曰無衣与子同裳(どうしょう)。王于興師、修我甲兵(こうへい)与子偕行(かいこう)!
我送舅氏,曰至渭陽。何以贈之?路車乘黃。
我が舅氏(きゅうし)を送り、渭(い)之陽(よう・北岸)に至(し)る。何(か)以(い)贈(そう)之(し)か。路車(ろしゃ)乗黄(じょうこう)。
我送舅氏,悠悠我思。何以贈之?瓊瑰玉佩。
我が舅氏を送るに、悠悠(ゆうゆう)我が思(し)。何以贈之か。瓊瑰(けいかい)玉佩(ぎょくはい)。
於我乎,夏屋渠渠,今也每食無餘。于嗟乎,不承權輿!
於我(おが)乎(こ)夏屋(かおく)渠渠(きょきょ)、今(こん)也(や)每食(まいしょく)無餘(むよ)。於嗟(おさ)乎(こ)不承(ふしょう)權輿(けんよ)!
於我乎,每食四簋,今也每食不飽。于嗟乎,不承權輿!
於我乎每食(まいしょく)四簋(しき)、今也每食不飽(ふほう)。於嗟乎不承權輿!
子之湯兮,宛丘之上兮。洵有情兮,而無望兮。
子(し)之湯(とう)兮(けい)宛丘(えんきゅう)之上(じょう)兮、洵(じゅん)有情(ゆうじょう)兮而(に)無望(むぼう)兮!
坎其擊鼓,宛丘之下。無冬無夏,值其鷺羽。
坎(かん)其(き)撃鼓(げきこ)、宛丘之下(か)。無冬(むとう)無夏(むか)値(ち)其(き)鷺羽(ろう)。
坎其擊缶,宛丘之道。無冬無夏,值其鷺翿。
坎其撃缶(げきふ)、宛丘之道(どう)。無冬無夏、値其鷺翿(ろとう)。
東門之枌,宛丘之栩。子仲之子,婆娑其下。
東門之枌(ふん・白榆)、宛丘之栩(く・柞)。子仲(しちゅう)之子(し)、婆娑(ばさ)其(き)下(か)。
穀旦於差,南方之原。不績其麻,市也婆娑。
穀旦(こくたん・よい日)于(お)差(さ)、南方之原(げん)。不績(ふせき)其(き)麻(ま)、市(し)也(や)婆娑(ばさ)。
穀旦於逝,越以鬷邁。視爾如荍,貽我握椒。
穀旦于逝(せい)、越以(えつい)鬷邁(そうまい)。視爾(しじ)如(にょ)荍(ぎょう・錦葵)、貽我(いが)握椒(あくしょう)。
衡門之下,可以棲遲。泌之洋洋,可以樂飢。
衡門(こうもん)之下(か)、可以(い)棲遲(せいち)。泌(ひつ)之洋洋(ようよう)、可以樂飢(らくき)。
豈其食魚,必河之魴?豈其取妻,必齊之姜?
豈(き)其(き)食魚(しょくぎょ)、必(ひつ)河(か)之魴(ぼう)?豈其取妻(しゅさい)、必(ひつ)齊(せい)之姜(きょう)?
豈其食魚,必河之鯉?豈其取妻,必宋之子?
豈其食魚、必河之鯉(り)?豈其取妻、必宋(そう)之子(し)?
東門之池,可以漚麻。彼美淑姬,可與晤歌。
東門之池(ち)、可以漚麻(おうま)。彼(ひ)淑姬(しゅくき)、可与(かよ)晤歌(ごか)。
東門之池,可以漚紵。彼美淑姬,可與晤語。
東門之池、可以漚紵(おうちょ)。彼淑姬、可与晤言(ごげん)。
東門之池,可以漚菅。彼美淑姬,可與晤言。
東門之池、可以漚菅(おうかん)。彼淑姬、可与晤語(ごご)。
東門之楊,其葉牂牂。昏以為期,明星煌煌。
東門之楊(よう)、其(き)葉(よう)牂牂(しょうしょう)。昏(こん)以為期(いき)、明星(めいせい)煌煌(こうこう)。
東門之楊,其葉肺肺。昏以為期,明星晢晢。
東門之楊、其葉肺肺(はいはい)。昏以為期、明星晢晢(せつせつ)。
墓門有棘,斧以斯之。夫也不良,國人知之。知而不已,誰昔然矣。
墓門(ぼもん)有棘(きょく)、斧(ふ)以斯(し)之。夫(ふ)也不良(ふりょう)、國人(こくじん)知之(ちし)。知而(に)不已(ふい)、誰(すい)昔(せき)然(ぜん)矣(い)。
墓門有梅,有鴞萃止。夫也不良,歌以訊之。訊予不顧,顛倒思予。
墓門有梅(ばい)、有鴞(きょう・ふくろう)萃(すい)止(し)。夫也不良、歌以訊之(かいしんし)。訊予(しんよ)不顧(ふこ)、顛倒(てんとう)思予(しよ)。
防有鵲巢,邛有旨苕。誰侜予美?心焉忉忉。
防(ぼう)有鵲巢(じゃくそう)、卭(きょう)有旨苕(しちょう・美しい苕)。誰侜(すいちゅう)予美(しよび)?心焉(しんえん)忉忉(とうとう)。
中唐有甓,邛有旨鷊。誰侜予美?心焉惕惕。
中唐(ちゅうとう)有甓(へき・瓦)、卭有旨鷊(しえき・美しい草)。誰侜予美?心焉惕惕(てきてき)。
月出皎兮。佼人僚兮。舒窈糾兮。勞心悄兮。
月出(げっしゅつ)皎(こう)兮(けい)。佼人(こうじん)僚(りょう)兮。舒窈(じゅよう)糾(きゅう)兮。勞心(ろうしん)悄(しょう)兮。
月出皓兮。佼人懰兮。舒憂受兮。勞心慅兮。
月出皓(こう)兮。佼人懰(りゅう)兮。舒懮(じゅゆう)受(じゅ)兮。勞心慅(そう)兮。
月出照兮。佼人燎兮。舒夭紹兮。勞心慘兮。
月出照(しょう)兮。佼人燎(りょう)兮。舒夭(じゅよう)紹(しょう)兮。勞心慘(さん)兮。
胡為乎株林?從夏南!匪適株林,從夏南!
胡為(こい)乎(こ)株林(しゅりん)?從(しょう)夏南(かなん)!匪(ひ)適(てき)株林、從夏南!
駕我乘馬,說於株野。乘我乘駒,朝食於株!
駕我(がが)乘馬(じょうば)、說(せつ)于(お)株野(しゅや)。乘我(じょうが)乘駒(じょうく)、朝食(ちょうしょく)于株(しゅ)!
彼澤之陂,有蒲與荷。有美一人,傷如之何?寤寐無為,涕泗滂沱。
彼(ひ)澤(たく)之陂(ひ)、有蒲(ふ)與荷(か)。有美(び)一人(いちにん)、傷如(しょうじょ)之何(しか)。寤寐(ごび)無為(むい)、涕泗(ていし)滂沱(ほうだ)。
彼澤之陂,有蒲與蕳。有美一人,碩大且卷。寤寐無為,中心悁悁。
彼澤之陂、有蒲與蕳(かん・蘭)。有美一人、碩大(せきだい)且卷(けん・鬈)。寤寐無為、中心(ちゅうしん)悁悁(けんけん)。
彼澤之陂,有蒲菡萏。有美一人,碩大且儼。寤寐無為,輾轉伏枕。
彼澤之陂、有蒲菡萏(かんたん・蓮の花)。有美一人、碩大且儼(げん)。寤寐無為、輾轉(てんてん)伏枕(ふくちん)。
羔裘逍遙,狐裘以朝。豈不爾思?勞心忉忉。
羔裘(こうきゅう)逍遙(しょうよう)、狐裘(こきゅう)以朝(いちょう)。豈不(きふ)爾思(じし)?勞心忉忉。
羔裘翱翔,狐裘在堂。豈不爾思?我心憂傷。
羔裘翱翔(ごうしょう)、狐裘在堂(ざいどう)。豈不爾思?我心憂傷(ゆうしょう)。
羔裘如膏,日出有曜。豈不爾思?中心是悼。
羔裘如膏(じょこう)、日出有曜(にっしゅつゆうよう)。豈不爾思?中心是悼(ちゅうしんぜとう)。
庶見素冠兮,棘人欒欒兮。勞心慱慱兮。
庶(しょ)見素冠(そかん)兮、棘人(きょくじん)欒欒(らんらん)兮。勞心慱慱(だんだん)兮。
庶見素衣兮,我心傷悲兮。聊與子同歸兮。
庶見素衣(そい)兮、我心傷悲(しょうひ)兮。聊與(りょうよ)子同歸(どうき)兮。
庶見素韠兮,我心蘊結兮。聊與子如一兮。
庶(しょ)く素韠(そひつ・白い蔽膝)を見んことを、我が心は蘊結(うんけつ・鬱結)す。聊(りょう)く子(し)と如一(じょいつ)ならん。
隰有萇楚,猗儺其枝,夭之沃沃,樂子之無知。
隰(しつ)に萇楚(ちょうそ・羊桃)あり、枝は猗儺(いだ)として柔美だ。夭(よう)之沃沃(あくあく)、子(し)之無知(むち)を樂(らく)す。
隰有萇楚,猗儺其華,夭之沃沃。樂子之無家。
隰に萇楚あり、華(か)は猗儺として柔美だ。夭之沃沃、子之無家(むか)を樂す。
隰有萇楚,猗儺其實,夭之沃沃。樂子之無室。
隰に萇楚あり、実は猗儺として柔美だ。夭之沃沃、子之無室(むしつ)を樂す。
匪風發兮,匪車偈兮。顧瞻周道,中心怛兮。
匪風(ひふう・あの風)發(はつ)兮(けい)、匪車(ひしゃ)偈(けつ)兮。顧瞻(こせん)周道(しゅうどう)、中心(ちゅうしん)怛(たつ)兮。
匪風飄兮,匪車嘌兮。顧瞻周道,中心吊兮。
匪風飄(ひょう)兮、匪車嘌(ひょう)兮。顧瞻周道、中心弔(ちょう)兮。
誰能亨魚?溉之釜鬵。誰將西歸?懷之好音。
誰(すい)能(のう)亨魚(こうぎょ・魚を烹る)か?溉之(がいし)釜鬵(ふくしん・大釜を洗う)。誰將(すいしょう)西歸(せいき)?懷之(かいし)好音(こういん・吉報を持ってゆく)。
蜉蝣之羽,衣裳楚楚。心之憂矣,於我歸處。
蜉蝣(ふゆう)之羽(う)、衣裳(いしょう)楚楚(そそ)。心之憂(ゆう)矣(い)、於我(おが)歸處(きしょ)。
蜉蝣之翼,采采衣服。心之憂矣,於我歸息。
蜉蝣之羽、采采(さいさい)衣服(いふく)。心之憂矣、於我歸息(きそく)。
蜉蝣掘閱,麻衣如雪。心之憂矣,於我歸說。
蜉蝣掘閱(くつえつ・土を掘って出る)、麻衣(まい)如雪(じょせつ)。心之憂矣、於我歸說(きせつ・宿る)。
彼候人兮,何戈與祋。彼其之子,三百赤芾。
彼(ひ)候人(こうじん)兮、何戈(かか)與祋(よとつ)。彼其(ひき)之子(し)、三百(さんぺく)赤芾(せきふつ)。
維鵜在梁,不濡其翼。彼其之子,不稱其服。
維鵜(いてい)在梁(ざいりょう)、不濡(ふじゅ)其翼(きよく)。彼其之子、不稱(ふしょう)其服(きふく)。
維鵜在梁,不濡其咮。彼其之子,不遂其媾。
維鵜在梁、不濡其咮(しちゅう・嘴)。彼其之子、不遂(ふすい)其媾(こう・婚配)。
薈兮蔚兮,南山朝隮。婉兮孌兮,季女斯飢。
薈兮蔚兮(かいけいうつけい・雲が薈蔚する)、南山朝隮(なんざんちょうせい・南山に朝の虹気が昇る)。婉兮孌兮(えんけいれんけい)、季女(きじょ)斯飢(しき)。
鳲鳩在桑,其子七兮。淑人君子,其儀一兮。其儀一兮,心如結兮。
鳲鳩(しきゅう)在桑、其子(しし)七(しち)兮。淑人(しゅくじん)君子、其儀(きぎ)一兮(いっけい)。其儀一兮、心如結(しんにょけつ)兮。
鳲鳩在桑,其子在梅。淑人君子,其帶伊絲。其帶伊絲,其弁伊騏。
鳲鳩在桑、其子在梅。淑人君子、其帶(きたい)伊絲(いし)。其帶伊絲、其弁(きべん)伊騏(いき・青黒)。
鳲鳩在桑,其子在棘。淑人君子,其儀不忒。其儀不忒,正是四國。
鳲鳩在桑、其子在棘。淑人君子、其儀不忒(ふとく)。其儀不忒、正是(せいぜ)四國(しこく)。
鳲鳩在桑,其子在榛。淑人君子,正是國人,正是國人。胡不萬年?
鳲鳩在桑、其子在榛(しん)。淑人君子、正是國人(こくじん)。正是國人、胡不(こふ)萬年(まんねん)?
冽彼下泉,浸彼苞稂。愾我寤嘆,念彼周京。
冽(れつ)彼(ひ)下泉(かせん)、浸彼(しんぴ)苞稂(ほうろう・叢生した狼尾草)。愾我(きが)寤歎(ごたん)、念彼(ねんぴ)周京(しゅうけい)。
冽彼下泉,浸彼苞蕭。愾我寤嘆,念彼京周。
冽彼下泉、浸彼苞蕭(ほうしょう・叢生した蓬)。愾我寤歎、念彼京周(けいしゅう)。
冽彼下泉,浸彼苞蓍。愾我寤嘆,念彼京師。
冽彼下泉、浸彼苞蓍(ほうし・叢生した蓍草)。愾我寤歎、念彼京師(けいし)。
芃芃黍苗,陰雨膏之。四國有王,郇伯勞之。
芃芃(ぼうぼう)黍苗(しょびょう)、陰雨(いんう)膏之(こうし)。四國(しこく)有王(おう)、郇伯(じゅんぱく)勞之(ろうし)。
七月流火,九月授衣。一之日觱發,二之日栗烈。無衣無褐,何以卒歲?
七月(しちがつ)流火(りゅうか・大火星が西に流れる)、九月(くがつ)授衣(じゅい・寒衣を配る)。一之日(いつのひ・十一月)觱發(ひつはつ・寒い)、二之日(ふたつのひ・十二月)栗烈(りつれつ・凛冽)。無衣無褐(むいむかつ)、何以(いい)卒歲(そつさい)?
三之日於耜,四之日舉趾。同我婦子,饁彼南畝。田畯至喜。
三之日(さんのひ・正月)于耜(おし・耜を修める)、四之日(よつのひ・二月)舉趾(きょし・足を挙げて田に出る)。同我(どうが)婦子(ふし)、饁彼(ようぴ・飯を運ぶ)南畝(なんぽ)。田畯(でんしゅん)至(し)喜(き)。
七月流火,九月授衣。春日載陽,有鳴倉庚。女執懿筐,遵彼微行,爰求柔桑。
七月流火、九月授衣。春日(しゅんじつ)載陽(さいよう・暖かくなる)、有鳴(ゆうめい)倉庚(そうこう)。女執(にょしゅう)懿筐(いきょう・深い筐)、遵彼(じゅんぴ)微行(びこう)、爰求(えんきゅう)柔桑(じゅうそう)。
春日遲遲,采蘩祁祁。女心傷悲,殆及公子同歸。
春日遲遲(ちち)、采蘩(さいはん)祁祁(きき)。女心傷悲(じょしんしょうひ)、殆及(たいきゅう)公子同歸(どうき)。
七月流火,八月萑葦。蠶月條桑,取彼斧斨。以伐遠揚,猗彼女桑。
七月流火、八月萑葦(かんい・葦を刈る)。蠶月(さんげつ・養蚕の月)條桑(ちょうそう)、取彼(しゅひ)斧斨(ふしょう)。以伐(いばつ)遠揚(えんよう)、猗彼(いぴ)女桑(じょそう)。
七月鳴鵙,八月載績。載玄載黃,我朱孔陽,為公子裳。
七月鳴鵙(めいけき・伯勞が鳴く)、八月載績(さいせき・麻を績む)。載玄載黃(さいげんさいこう)、我朱(がしゅ)孔陽(こうよう)、爲公子裳(いこうししょう)。
四月秀葽,五月鳴蜩。八月其獲,十月隕蘀。一之日於貉,取彼狐狸,為公子裘。
四月秀葽(しゅうよう・遠志が実る)、五月鳴蜩(めいちょう・蝉が鳴く)。八月其穫(きかく)、十月隕蘀(いんたく)。一之日于貉(おはく・貉を狩る)、取彼狐狸(しゅこり)、爲公子裘(いこうしきゅう)。
二之日其同,載纘武功。言私其豵,獻豜於公。
二之日其同(きどう・十二月に集まる)、載纘武功(さいさんぶこう)。言私(げんし)其豵(きそう・小豚は自分のもの)、獻豜(けんけん・大豚を公に献る)于公(おこう)。
五月斯螽動股,六月莎雞振羽。七月在野,八月在宇,九月在戶,十月蟋蟀,入我床下。
五月斯螽(ししゅう)動股(どうこ)、六月莎雞(さけい)振羽(しんぷ)。七月在野(ざいや)、八月在宇(ざいう)、九月在戶(ざいこ)、十月蟋蟀入我床下(にゅうがしょうか)。
穹窒燻鼠,塞向墐戶。嗟我婦子,曰為改歲,入此室處。
穹窒(きゅうしつ・隙を塞ぐ)熏鼠(くんそ)、塞向(さいしょう・北窓を塞ぐ)墐戶(きんこ・戸を泥で塗る)。嗟我(さが)婦子、曰爲(えつい)改歲(かいさい)、入此室處(にゅうしししょ)。
六月食鬱及薁,七月亨葵及菽。八月剝棗,十月獲稻。為此春酒,以介眉壽。
六月食鬱(しょくいく・郁李)及薁(きょくいく・野葡萄)、七月亨葵(こうき)及菽(きょくしゅく)。八月剝棗(はくそう・棗を打ち落とす)、十月穫稻(かくとう)。爲此春酒(いししゅんしゅ)、以介眉壽(いかいびじゅ)。
七月食瓜,八月斷壺,九月叔苴,採荼薪樗。食我農夫。
七月食瓜(しょっか)、八月斷壺(だんこ・瓢箪を摘む)、九月叔苴(しゅくしょ・麻の実を拾う)。采荼薪樗(さいとしんちょ・苦菜を采り樗を伐る)、食我(しょくが)農夫(のうふ)。
九月築場圃,十月納禾稼。黍稷重穋,禾麻菽麥。嗟我農夫,我稼既同,上入執宮功。
九月築場圃(ちくじょうほ)、十月納禾稼(のうかか)。黍稷重穋(しょしょくちょうりく)、禾麻菽麥(かまじゅくばく)。嗟我農夫、我稼既同(かかきどう)、上入(じょうにゅう)執宮功(しっきゅうこう)。
晝爾於茅,宵爾索綯,亟其乘屋,其始播百穀。
晝爾(ちゅうじ)于茅(おぼう・茅を刈る)、宵爾(しょうじ)索綯(さくとう・縄を撚る)。亟其(きき)乘屋(じょうおく・屋根に登る)、其始播百穀(しはくこく)。
二之日鑿冰沖沖,三之日納於凌陰。四之日其蚤,獻羔祭韭。九月肅霜,十月滌場。
二之日鑿冰(さくひょう)沖沖(ちゅうちゅう)、三之日納于凌陰(のうおいんいん・氷室に納める)。四之日其蚤(きそう・早朝)、獻羔祭韭(けんこうさいきゅう)。九月肅霜(しゅくそう)、十月滌場(てきじょう)。
朋酒斯饗,曰殺羔羊,躋彼公堂。稱彼兕觥:萬壽無疆!
朋酒(ほうしゅ)斯饗(しきょう)、曰殺羔羊(えつさつこうよう)。躋彼公堂(せいぴこうどう)、稱彼兕觥(しょうぴじこう)、萬壽無疆(ばんじゅむきょう)!
鴟鴞鴟鴞,既取我子,無毀我室。恩斯勤斯,鬻子之閔斯。
鴟鴞(しきょう・梟)鴟鴞、既取我子(きしゅがし)、無毀我室(むきがしつ)。恩斯勤斯(おんしきんし)、鬻子(いくし・子を養う)之閔斯(びんし)。
迨天之未陰雨,徹彼桑土,綢繆牖戶。今女下民,或敢侮予?
迨天(たいてん)之未陰雨(みいんう)、徹彼(てっぴ)桑土(そうど・桑の根皮を剥ぐ)、綢繆牖戶(ちゅうびゅうゆうこ・窓と戸を固める)。今女(こんじょ)下民(かみん)、或敢(かくかん)侮予(ぶよ)?
予手拮据,予所捋荼。予所蓄租,予口卒瘏,曰予未有室家。
予手拮据(よしゅきょきょ・手が疲労する)、予所捋荼(しょりつと・茅の花を捋む)。予所蓄租(しょちょそ・蓄えた草)、予口卒瘏(しそと・口は遂に病む)。曰予未有室家(えつよみゆうしつか)。
予羽譙譙,予尾翛翛,予室翹翹。風雨所漂搖,予維音嘵嘵!
予羽譙譙(よしょうしょう・羽が稀疏)、予尾翛翛(しゅうしゅう・尾が枯れる)、予室翹翹(ぎょうぎょう・巢が危うい)。風雨所漂搖(しょひょうよう・吹き漂わす)、予維音嘵嘵(よいおんぎょうぎょう・ただ嘵嘵と鳴く)!
我徂東山,慆慆不歸。我來自東,零雨其蒙。我東曰歸,我心西悲。
我徂(がそ)東山(とうざん)、慆慆(とうとう)不歸(ふき)。我來自東(らいしとう)、零雨其濛(れいうきもう)。我東曰歸(えつき)、我心西悲(しせいひ)。
制彼裳衣,勿士行枚。蜎蜎者蠋,烝在桑野。敦彼獨宿,亦在車下。
制彼(せいぴ)裳衣(しょうい)、勿士行枚(ぶつしこうばい・行枚せず)。蜎蜎者蠋(けんけんしゃしょく・蠢く桑蚕)、烝在桑野(しょうざいそうや)。敦彼獨宿(とんぴどくしゅく・あの獨り蜷宿する者)、亦在車下(いざいしゃか)。
我徂東山,慆慆不歸。我來自東,零雨其蒙。果臝之實,亦施於宇。
我徂東山、慆慆不歸。我來自東、零雨其濛。果臝之實(からきじつ・栝楼の実)、亦施于宇(いしうい・檐にまで延びる)。
伊威在室,蠨蛸在戶。町畽鹿場,熠耀宵行。不可畏也,伊可懷也。
伊威(いい・潮虫)在室、蠨蛸(しょうしょう・喜蛛)在戶。町曈鹿場(ていとうろくじょう・田舍が鹿の場に)、熠燿宵行(いつようしょうこう・蛍が夜飛ぶ)。不可畏也(ふかいや)、伊可懷也(いかかいや)。
我徂東山,慆慆不歸。我來自東,零雨其蒙。鸛鳴於垤,婦嘆於室。
我徂東山、慆慆不歸。我來自東、零雨其濛。鸛鳴于垤(かんめいうてつ・鸛が蟻塚で鳴く)、婦歎于室(ふたんおしつ)。
灑掃穹窒,我徵聿至。有敦瓜苦,烝在栗薪。自我不見,於今三年。
洒掃穹窒(せんそうきゅうしつ)、我征(がせい)聿至(いちし)。有敦瓜苦(ゆうとんかく・丸い苦瓜)、烝在栗薪(しょうざいりつしん)。自我不見(ふけん)、于今三年(しこんざんねん)。
我徂東山,慆慆不歸。我來自東,零雨其蒙。倉庚于飛,熠耀其羽。
我徂東山、慆慆不歸。我來自東、零雨其濛。倉庚于飛(おひ)、熠燿其羽(いつようきう)。
之子于歸,皇駁其馬。親結其縭,九十其儀。其新孔嘉,其舊如之何?
之子于歸(おき)、皇駁其馬(こうばくきば)。親結其縭(しんけつきり・母がその佩巾を結ぶ)、九十其儀(きゅうじゅっきぎ)。其新孔嘉(きしんこうか)、其舊如之何(ききゅうじょしか)?
既破我斧,又缺我斨。周公東征,四國是皇。哀我人斯,亦孔之將。
既破我斧(きはがふ)、又缺我斨(ゆうけつがしょう)。周公東征(とうせい)、四國是皇(しこくぜこう)。哀我人斯(あいがじんし)、亦孔之將(いこうししょう)。
既破我斧,又缺我錡。周公東征,四國是遒。哀我人斯,亦孔之嘉。
既破我斧、又缺我錡(がき)。周公東征、四國是吪(いが・化す)。哀我人斯、亦孔之嘉(いこうしか)。
既破我斧,又缺我銶。周公東征,四國是遒。哀我人斯,亦孔之休。
既破我斧、又缺我銶(がきゅう)。周公東征、四國是遒(しゅう・固める)。哀我人斯、亦孔之休(いこうしきゅう)。
伐柯如何?匪斧不克。取妻如何?匪媒不得。
伐柯(ばっか・斧の柄を伐る)如何(じょか)。匪斧不克(ひふふこく)。取妻如何(しゅさいじょか)。匪媒不得(ひばいふとく)。
伐柯伐柯,其則不遠。我覯之子,籩豆有踐。
伐柯伐柯、其則不遠(きそくふえん)。我覿之子(がてきしし)、籩豆有踐(へんとうゆうせん)。
九罭之魚,鱒魴。我覯之子,袞衣繡裳。
九罭之魚(きゅういきぎょ)、鱒魴(そんぼう)。我覿之子、衮衣繡裳(こんいしゅうしょう)。
鴻飛遵渚,公歸無所,於女信處。鴻飛遵六,公歸不復,於女信宿。
鴻飛遵渚(こうひじゅんしょ・雁が渚に沿って飛ぶ)、公歸無所(こうきむしょ)、於女信處(おじょしんしょ)。鴻飛遵陸(じゅんりく・底本は「六」とするが「六」は「陸」の誤字)、公歸不復(こうきふふく)、於女信宿(しんしゅく)。
是以有袞衣兮,無以我公歸兮,無使我心悲兮。
是以有衮衣兮(ぜいゆうこんいけい)、無以我公歸兮(むいがこうきけい)、無使我心悲兮(むしかしんひけい)。
狼跋其胡,載疐其尾。公孫碩膚,赤舄几几。
狼跋其胡(ろうばっきこ・狼がその胡を踏む)、載疐其尾(さいちきび・また尾に躓く)。公孫碩膚(こうそんせきふ)、赤舄几几(せきせききき)。
狼疐其尾,載跋其胡。公孫碩膚,德音不瑕?
狼疐其尾、載跋其胡。公孫碩膚、德音不瑕(とくいんふか)?
小雅
呦呦鹿鳴,食野之苹。我有嘉賓,鼓瑟吹笙。吹笙鼓簧,承筐是將。人之好我,示我周行。
呦呦(ゆうゆう)鹿鳴(ろくめい)、食野之苹(しょくやのへい)。我有嘉賓(かひん)、鼓瑟吹笙(こしつすいせい)。吹笙鼓簧(すいせいここう)、承筐是將(しょうきょうぜしょう)。人之好我(じんしこうが)、示我周行(しがこうこう)。
呦呦鹿鳴,食野之蒿。我有嘉賓,德音孔昭。視民不恌,君子是則是效。我有旨酒,嘉賓式燕以敖。
呦呦鹿鳴、食野之蒿(こう)。我有嘉賓、德音孔昭(とくいんこうしょう)。視民不恌(しみんふちょう)、君子是則是傚(くんしぜそくぜこう)。我有旨酒(ゆうしゅ)、嘉賓式燕以敖(かひんしきえんいごう)。
呦呦鹿鳴,食野之芩。我有嘉賓,鼓瑟鼓琴。鼓瑟鼓琴,和樂且湛。我有旨酒,以燕樂嘉賓之心。
呦呦鹿鳴、食野之芩(ぎん)。我有嘉賓、鼓瑟鼓琴。鼓瑟鼓琴、和樂且湛(わらくしょたん)。我有旨酒、以燕樂嘉賓之心(いえんらくかひんししん)。
四牡騑騑,周道倭遲。豈不懷歸?王事靡盬,我心傷悲。
四牡騑騑(しぼひひ)、周道倭遲(しゅうどういち)。豈不懷歸(きふかいき)。王事靡盬(おうじびこ)、我心傷悲(がしんしょうひ)。
四牡騑騑,嘽嘽駱馬。豈不懷歸?王事靡盬,不遑啟處。
四牡騑騑、啴啴駱馬(たんたんらくば)。豈不懷歸。王事靡盬、不遑啟處(ふこうけいしょ)。
翩翩者鵻,載飛載下,集於苞栩。王事靡盬,不遑將父。
翩翩者鵻(へんぺんしゃすい)、載飛載下(さいひさいか)、集于苞栩(しゅうおほうく)。王事靡盬、不遑將父(ふこうしょうふ)。
翩翩者鵻,載飛載止,集於苞杞。王事靡盬,不遑將母。
翩翩者鵻、載飛載止(さいし)、集于苞杞(ほうき)。王事靡盬、不遑將母(しょうぼ)。
駕彼四駱,載驟駸駸。豈不懷歸?是用作歌,將母來諗。
駕彼四駱(かひしらく)、載驟駸駸(さいしゅうしんしん)。豈不懷歸。是用作歌(ぜようさっか)、將母來諗(しょうぼらいしん)。
皇皇者華,於彼原隰。駪駪征夫,每懷靡及。
皇皇者華(こうこうしゃか)、于彼原隰(おぴげんしつ)。駪駪征夫(しんしんせいふ)、每懷靡及(まいかいびきゅう)。
我馬維駒,六轡如濡。載馳載驅,周爰諮諏。
我馬維駒(がばいく)、六轡如濡(ろっぴにょじゅ)。載馳載驅(さいしさいく)、周爰咨諏(しゅうえんししゅう)。
我馬維騏,六轡如絲。載馳載驅,周爰諮謀。
我馬維騏(がばいき)、六轡如絲(にょし)。載馳載驅、周爰咨謀(しぼう)。
我馬維駱,六轡沃若。載馳載驅,周爰諮度。
我馬維駱(がばいらく)、六轡沃若(あくじゃく)。載馳載驅、周爰咨度(したく)。
我馬維駰,六轡既均。載馳載驅,周爰諮詢。
我馬維駰(がばいいん・浅黒馬)、六轡既均(ききん)。載馳載驅、周爰咨詢(しじゅん)。
棠棣之華,鄂不韡韡。凡今之人,莫如兄弟。
常棣之華(じょうていしか)、鄂不韡韡(がくふいい)。凡今之人(ぼんこんしじん)、莫如兄弟(ばくにょけいてい)。
死喪之威,兄弟孔懷。原隰裒矣,兄弟求矣。
死喪之威(しそうしい)、兄弟孔懷(こうかい)。原隰裒矣(げんしつほうい)、兄弟求矣(きゅうい)。
脊令在原,兄弟急難。每有良朋,況也永嘆。
脊令在原(せきれいざいげん)、兄弟急難(けいていきゅうなん)。每有良朋(まいゆうりょうほう)、況也永歎(きょうやえいたん)。
兄弟鬩於牆,外御其務。每有良朋,烝也無戎。
兄弟鬩于牆(けいていげきうしょう)、外御其務(がいぎょきむ)。每有良朋、烝也無戎(しょうやむじゅう)。
喪亂既平,既安且寧。雖有兄弟,不如友生?
喪亂既平(そうらんきへい)、既安且寧(きあんしょねい)。雖有兄弟(すいゆうけいてい)、不如友生(ふにょゆうせい)。
儐爾籩豆,飲酒之飫。兄弟既具,和樂且孺。
儐爾籩豆(ひんじへんとう)、飲酒之飫(いんしゅしお)。兄弟既具(けいていきぐ)、和樂且孺(わらくしょじゅ)。
妻子好合,如鼓瑟琴。兄弟既翕,和樂且湛。
妻子好合(さいしこうごう)、如鼓瑟琴(にょこしつきん)。兄弟既翕(けいていききゅう)、和樂且湛(わらくしょたん)。
宜爾室家,樂爾妻帑。是究是圖,亶其然乎?
宜爾室家(ぎじしつか)、樂爾妻帑(らくじさいど)。是究是圖(ぜきゅうぜと)、亶其然乎(たんきぜんこ)?
伐木丁丁,鳥鳴嚶嚶。出自幽谷,遷於喬木。嚶其鳴矣,求其友聲。
伐木丁丁(ばつぼくていてい)、鳥鳴嚶嚶(ちょうめいおうおう)。出自幽谷(しゅつじゆうこく)、遷于喬木(せんうきょうぼく)。嚶其鳴矣(おうきめいい)、求其友聲(きゅうきゆうせい)。
相彼鳥矣,猶求友聲。矧伊人矣,不求友生?神之聽之,終和且平。
相彼鳥矣(しょうひちょうい)、猶求友聲(ゆうきゅうゆうせい)。矧伊人矣(しんいじんい)、不求友生(ふきゅうゆうせい)。神之聽之(しんしちょうし)、終和且平(しゅうわしょへい)。
伐木許許,釃酒有藇!既有肥羜,以速諸父。寧適不來,微我弗顧。
伐木許許(ばつぼくきょきょ)、釃酒有藇(ししゅゆうしょ)。既有肥羜(きゆうひちょ・肥えた小羊)、以速諸父(いそくしょふ)。寧適不來(ねいてきふらい)、微我弗顧(びがふつこ)。
於粲灑掃,陳饋八簋。既有肥牡,以速諸舅。寧適不來,微我有咎。
於粲洒掃(おさんせんそう)、陳饋八簋(ちんきはっき)。既有肥牡(きゆうひぼ)、以速諸舅(いそくしょきゅう)。寧適不來、微我有咎(びがゆうきゅう)。
伐木於阪,釃酒有衍。籩豆有踐,兄弟無遠。民之失德,乾餱以愆。
伐木于阪(おはん)、釃酒有衍(ゆうけん)。籩豆有踐(へんとうゆうせん)、兄弟無遠(けいていむえん)。民之失德(みんししつとく)、乾餱以愆(かんこういけん)。
有酒湑我,無酒酤我。坎坎鼓我,蹲蹲舞我。迨我暇矣,飲此湑矣。
有酒湑我(ゆうしゅしょが・酒があれば漉してくれ)、無酒酤我(むしゅこが・なければ買ってくれ)。坎坎鼓我(かんかんこが)、蹲蹲舞我(そんそんぶが)。迨我暇矣(たいがかい)、飲此湑矣(いんししょい)。
天保定爾,亦孔之固。俾爾單厚,何福不除?俾爾多益,以莫不庶。
天保定爾(てんほうじょうじ)、亦孔之固(やくこうしこ)。俾爾厚(ひじこう)、何福不除(かふくふじょ)。俾爾多益(ひじたえき)、以莫不庶(いばくふしょ)。
天保定爾,俾爾戩穀。罄無不宜,受天百祿。降爾遐福,維日不足。
天保定爾、俾爾戩穀(ひじせんこく)。罄無不宜(けいむふぎ)、受天百祿(じゅてんぴゃくろく)。降爾遐福(こうじかふく)、維日不足(いじつふそく)。
天保定爾,以莫不興。如山如阜,如岡如陵,如川之方至,以莫不增。
天保定爾、以莫不興(いばくふこう)。如山如阜(にょざんにょふ)、如岡如陵(にょこうにょりょう)。如川之方至(にょせんしほうし)、以莫不增(いばくふそう)。
吉蠲為饎,是用孝享。禴祠烝嘗,於公先王。君曰:卜爾,萬壽無疆。
吉蠲為饎(きつけんいし・清めて饌を作る)、是用孝享(ぜようこうきょう)。禴祠烝嘗(やくしじょうしょう)、于公先王(おこうせんおう)。君曰卜爾(くんえつぼくじ)、萬壽無疆(ばんじゅむきょう)。
神之吊矣,詒爾多福。民之質矣,日用飲食。群黎百姓,遍為爾德。
神之弔矣(しんしちょうい・神が来た)、詒爾多福(いじたふく)。民之質矣(みんししちい)、日用飲食(にちよういんしょく)。羣黎百姓(ぐんれいぴゃくせい)、徧為爾德(へんいじとく)。
如月之恆,如日之升。如南山之壽,不騫不崩。如松柏之茂,無不爾或承。
如月之恆(にょげつしこう)、如日之升(にょじつししょう)。如南山之壽(にょなんざんしじゅ)、不騫不崩(ふけんふほう)。如松柏之茂(にょしょうはくしぼ)、無不爾或承(むふじかくしょう)。
采薇采薇,薇亦作止。曰歸曰歸,歲亦莫止。靡室靡家,玁狁之故。不遑啟居,玁狁之故。
采薇采薇(さいびさいび)、薇亦作止(びやくさくし)。曰歸曰歸(えつきえつき)、歲亦莫止(さいやくぼし)。靡室靡家(びしつびか)、玁狁之故(けんいんしこ)。不遑啟居(ふこうけいきょ)、玁狁之故。
采薇采薇,薇亦柔止。曰歸曰歸,心亦憂止。憂心烈烈,載飢載渴。我戍未定,靡使歸聘。
采薇采薇、薇亦柔止(びやくじゅうし)。曰歸曰歸、心亦憂止(しんやくゆうし)。憂心烈烈(ゆうしんれつれつ)、載飢載渴(さいきさいかつ)。我戍未定(がじゅみじょう)、靡使歸聘(びしきへい)。
采薇采薇,薇亦剛止。曰歸曰歸,歲亦陽止。王事靡盬,不遑啟處。憂心孔疚,我行不來!
采薇采薇、薇亦剛止(びやくごうし)。曰歸曰歸、歲亦陽止(さいやくようし・十月)。王事靡盬、不遑啟處。憂心孔疚(ゆうしんこうきゅう)、我行不來(がこうふらい)。
彼爾維何?維常之華。彼路斯何?君子之車。戎車既駕,四牡業業。豈敢定居?一月三捷。
彼爾維何(ひにいか・あの盛んなのは何か)、維常之華(いじょうしか・棠棣の花)。彼路斯何(ひろしか・あの大きな車は何か)、君子之車(くんしししゃ)。戎車既駕(じゅうしゃきが)、四牡業業(しぼぎょうぎょう)。豈敢定居(きかんじょうきょ)、一月三捷(いちげつさんしょう)。
駕彼四牡,四牡騤騤。君子所依,小人所腓。四牡翼翼,象弭魚服。豈不日戒?玁狁孔棘!
駕彼四牡(かひしぼ)、四牡騤騤(しぼきき)。君子所依(くんししょい)、小人所腓(しょうじんしょひ・庇う)。四牡翼翼(しぼよくよく)、象弭魚服(ぞうびぎょふく)。豈不日戒(きふにちかい)、玁狁孔棘(けんいんこうきょく)。
昔我往矣,楊柳依依。今我來思,雨雪霏霏。行道遲遲,載渴載飢。我心傷悲,莫知我哀!
昔我往矣(せきがおうい)、楊柳依依(ようりゅういい)。今我來思(こんがらいし)、雨雪霏霏(うせつひひ)。行道遲遲(こうどうちち)、載渴載飢(さいかつさいき)。我心傷悲(がしんしょうひ)、莫知我哀(ばくちがあい)。
我出我車,於彼牧矣。自天子所,謂我來矣。召彼僕伕,謂之載矣。王事多難,維其棘矣。
我出我車(がしゅつがしゃ)、于彼牧矣(おぴぼくい)。自天子所(じてんししょ)、謂我來矣(いがらいい)。召彼僕夫(しょうひぷふ)、謂之載矣(いしさいい)。王事多難(おうじたなん)、維其棘矣(いききょくい)。
我出我車,於彼郊矣。設此旐矣,建彼旄矣。彼旟旐斯,胡不旆旆?憂心悄悄,僕伕況瘁。
我出我車、于彼郊矣(おぴこうい)。設此旐矣(せっしちょうい)、建彼旄矣(けんぴぼうい)。彼旟旐斯(ひよちょうし)、胡不旆旆(こふはいはい)。憂心悄悄(ゆうしんしょうしょう)、僕夫況瘁(ぷふきょうすい)。
王命南仲,往城於方。出車彭彭,旗旐央央。天子命我,城彼朔方。赫赫南仲,玁狁於襄。
王命南仲(おうめいなんちゅう)、往城于方(おうじょううほう)。出車彭彭(しゅっしゃほうほう)、旂旐央央(きちょうおうおう)。天子命我(てんしめいが)、城彼朔方(じょうひさくほう)。赫赫南仲(かっかくなんちゅう)、玁狁于襄(けんいんおしょう・攘う)。
昔我往矣,黍稷方華。今我來思,雨雪載途。王事多難,不遑啟居。豈不懷歸?畏此簡書。
昔我往矣、黍稷方華(しょしょくほうか)。今我來思、雨雪載塗(うせつさいと)。王事多難、不遑啟居。豈不懷歸、畏此簡書(いしかんしょ)。
喓喓草蟲,趯趯阜螽。未見君子,憂心忡忡。既見君子,我心則降。赫赫南仲,薄伐西戎。
喓喓草蟲(ようようそうちゅう)、趯趯阜螽(てきてきふうしゅう)。未見君子(みけんくんし)、憂心忡忡(ゆうしんちゅうちゅう)。既見君子、我心則降(がしんそくこう)。赫赫南仲、薄伐西戎(はくばつせいじゅう)。
春日遲遲,卉木萋萋。倉庚喈喈,采蘩祁祁。執訊獲醜,薄言還歸。赫赫南仲,玁狁於夷。
春日遲遲(しゅんじつちち)、卉木萋萋(きぼくせいせい)。倉庚喈喈(そうこうかいかい)、采蘩祁祁(さいはんきき)。執訊獲醜(しゅうしんかくしゅう)、薄言還歸(はくげんかんき)。赫赫南仲、玁狁于夷(おい・平らげる)。
有杕之杜,有睆其實。王事靡盬,繼嗣我日。日月陽止,女心傷止,征夫遑止。
有杕之杜(ゆうていしと)、有睆其實(ゆうかんきじつ)。王事靡盬、繼嗣我日(けいしがじつ)。日月陽止(じつげつようし)、女心傷止(じょしんしょうし)、征夫遑止(せいふこうし)。
有杕之杜,其葉萋萋。王事靡盬,我心傷悲。卉木萋止,女心悲止,征夫歸止!
有杕之杜、其葉萋萋(きようせいせい)。王事靡盬、我心傷悲。卉木萋止(きぼくせいし)、女心悲止(じょしんひし)、征夫歸止(せいふきし)。
陟彼北山,言採其杞。王事靡盬,憂我父母。檀車幝幝,四牡痯痯,征夫不遠!
陟彼北山(ちょくひほくざん)、言采其杞(げんさいきき)。王事靡盬、憂我父母(ゆうがふぼ)。檀車幝幝(だんしゃてんてん)、四牡痯痯(しぼかんかん)、征夫不遠(せいふふえん)。
匪載匪來,憂心孔疚。斯逝不至,而多為恤。卜筮偕止,會言近止,征夫邇止!
匪載匪來(ひさいひらい)、憂心孔疚。期逝不至(きせつふし)、而多為恤(にたいじゅつ)。卜筮偕止(ぼくぜいかいし)、會言近止(かいげんきんし)、征夫邇止(せいふじし)。
魚麗於罶,鱨鯊。君子有酒,旨且多。
魚麗于罶(ぎょれいうりゅう・魚が笱に落ちる)、鱨鯊(しょうさ)。君子有酒(くんしゆうしゅ)、旨且多(ししょた)。
魚麗於罶,魴鱧。君子有酒,多且旨。
魚麗于罶、魴鱧(ぼうれい)。君子有酒、多且旨(たしょし)。
魚麗於罶,鰋鯉。君子有酒,旨且有。物其多矣,
魚麗于罶、鰋鯉(げんり)。君子有酒、旨且有(ししょゆう)。
維其嘉矣!物其旨矣,維其偕矣!物其有矣,維其時矣!
物其多矣(ぶつきたい)、維其嘉矣(いきかい)。物其旨矣、維其偕矣(いきかいい)。物其有矣、維其時矣(いきじい)。
南有嘉魚,烝然罩罩。君子有酒,嘉賓式燕以樂。
南有嘉魚(なんゆうかぎょ)、烝然罩罩(しょうぜんちょうちょう)。君子有酒、嘉賓式燕以樂(かひんしきえんいらく)。
南有嘉魚,烝然汕汕。君子有酒,嘉賓式燕以衎。
南有嘉魚、烝然汕汕(しょうぜんさんさん)。君子有酒、嘉賓式燕以衎(いかん)。
南有樛木,甘瓠累之。君子有酒,嘉賓式燕綏之。
南有樛木(なんゆうきゅうぼく)、甘瓠纍之(かんこるいし)。君子有酒、嘉賓式燕綏之(かひんしきえんずいし)。
翩翩者鵻,烝然來思。君子有酒,嘉賓式燕又思。
翩翩者鵻、烝然來思(しょうぜんらいし)。君子有酒、嘉賓式燕又思(しきえんゆうし)。
南山有臺,北山有萊。樂只君子,邦家之基。樂只君子,萬壽無期。
南山有臺(なんざんゆうたい・莎草)、北山有萊(ほくざんゆうらい・藜)。樂只君子(らくしくんし)、邦家之基(ほうかしき)。樂只君子、萬壽無期(ばんじゅむき)。
南山有桑,北山有楊。樂只君子,邦家之光。樂只君子,萬壽無疆。
南山有桑(なんざんゆうそう)、北山有楊。樂只君子、邦家之光(ほうかしこう)。樂只君子、萬壽無疆。
南山有杞,北山有李。樂只君子,民之父母。樂只君子,德音不已。
南山有杞、北山有李。樂只君子、民之父母(みんしふぼ)。樂只君子、德音不已(とくいんふい)。
南山有栲,北山有杻。樂只君子,遐不眉壽。樂只君子,德音是茂。
南山有栲、北山有杻。樂只君子、遐不眉壽(かふびじゅ)。樂只君子、德音是茂(とくいんぜぼう)。
南山有枸,北山有楰。樂只君子,遐不黃耇。樂只君子,保艾爾後。
南山有枸(く)、北山有楰(ゆ)。樂只君子、遐不黃耇(かふこうこう・黄耇でないか・長寿)。樂只君子、保艾爾後(ほうがいじこう)。
蓼彼蕭斯,零露湑兮。既見君子,我心寫兮。燕笑語兮,是以有譽處兮。
蓼彼蕭斯(りくひしょうし・大きく生えた蓬)、零露湑兮(れいろしょけい)。既見君子、我心寫兮(がしんしゃけい・抒ける)。燕笑語兮(えんしょうごけい)、是以有譽處兮(ぜいゆうよしょけい)。
蓼彼蕭斯,零露瀼瀼。既見君子,為龍為光。其德不爽,壽考不忘。
蓼彼蕭斯、零露瀼瀼(じょうじょう)。既見君子、為龍為光(いりゅういこう)。其德不爽(きとくふそう)、壽考不忘(じゅこうふぼう)。
蓼彼蕭斯,零露泥泥。既見君子,孔燕豈弟。宜兄宜弟,令德壽豈。
蓼彼蕭斯、零露泥泥(ねいねい)。既見君子、孔燕豈弟(こうえんかいてい)。宜兄宜弟(ぎけいぎてい)、令德壽豈(れいとくじゅき)。
蓼彼蕭斯,零露濃濃。既見君子,鞗革忡忡。和鸞雍雍,萬福攸同。
蓼彼蕭斯、零露濃濃(のうのう)。既見君子、鞗革忡忡(ちょうかくちゅうちゅう)。和鸞雝雝(わらんようよう)、萬福攸同(ばんぷくゆうどう)。
湛湛露斯,匪陽不晞。厭厭夜飲,不醉無歸。
湛湛露斯(たんたんろし)、匪陽不晞(ひようふき)。厭厭夜飲(えんえんやいん)、不醉無歸(ふすいむき)。
湛湛露斯,在彼豐草。厭厭夜飲,在宗載考。
湛湛露斯、在彼豐草(ざいぴほうそう)。厭厭夜飲、在宗載考(ざいそうさいこう)。
湛湛露斯,在彼杞棘。顯允君子,莫不令德。
湛湛露斯、在彼杞棘(ざいぴききょく)。顯允君子(けんいんくんし)、莫不令德(ばくふれいとく)。
其桐其椅,其實離離。豈弟君子,莫不令儀。
其桐其椅(きとうきい)、其實離離(きじつりり)。豈弟君子(かいていくんし)、莫不令儀(ばくふれいぎ)。
彤弓弨兮,受言藏之。我有嘉賓,中心貺之。鐘鼓既設,一朝饗之。
彤弓弨兮(とうきゅうしょうけい・赤弓が弛む)、受言藏之(じゅげんぞうし)。我有嘉賓、中心貺之(ちゅうしんこうし)。鐘鼓既設(しょうこきせつ)、一朝饗之(いっちょうきょうし)。
彤弓弨兮,受言載之。我有嘉賓,中心喜之。鐘鼓既設,一朝右之。
彤弓弨兮、受言載之(じゅげんさいし)。我有嘉賓、中心喜之(ちゅうしんきし)。鐘鼓既設、一朝右之(いっちょうゆうし・侑する)。
彤弓弨兮,受言櫜之。我有嘉賓,中心好之。鐘鼓既設,一朝酬之。
彤弓弨兮、受言櫜之(じゅげんこうし・弓袋に入れる)。我有嘉賓、中心好之(ちゅうしんこうし)。鐘鼓既設、一朝醻之(いっちょうしゅうし・酬いる)。
菁菁者莪,在彼中阿。既見君子,樂且有儀。
菁菁者莪(せいせいしゃが)、在彼中阿(ざいぴちゅうあ)。既見君子、樂且有儀(らくしょゆうぎ)。
菁菁者莪,在彼中沚。既見君子,我心則喜。
菁菁者莪、在彼中沚(ざいぴちゅうし)。既見君子、我心則喜(がしんそくき)。
菁菁者莪,在彼中陵。既見君子,錫我百朋。
菁菁者莪、在彼中陵(ざいぴちゅうりょう)。既見君子、錫我百朋(しゃくがひゃくほう)。
泛泛楊舟,載沉載浮。既見君子,我心則休。
汎汎楊舟(はんぱんようしゅう)、載沉載浮(さいちんさいふ)。既見君子、我心則休(がしんそくきゅう)。
六月棲棲,戎車既飭。四牡騤騤,載是常服。玁狁孔熾,我是用急。王於出征,以匡王國。
六月棲棲(ろくがつせいせい)、戎車既飭(じゅうしゃきちょく)。四牡騤騤、載是常服(さいぜじょうふく)。玁狁孔熾(けんいんこうし)、我是用急(がぜようきゅう)。王于出征(おうおしゅっせい)、以匡王國(いきょうおうこく)。
比物四驪,閒之維則。維此六月,既成我服。我服既成,於三十里。王於出征,以佐天子。
比物四驪(ひぶつしり)、閑之維則(かんしいそく)。維此六月(いしろくがつ)、既成我服(きせいがふく)。我服既成、于三十里(おさんじゅうり)。王于出征、以佐天子(いさてんし)。
四牡修廣,其大有顒。薄伐玁狁,以奏膚公。有嚴有翼,共武之服。共武之服,以定王國。
四牡修廣(しぼしゅうこう)、其大有顙(きたいゆうそう)。薄伐玁狁(はくばつけんいん)、以奏膚公(いそうふこう)。有嚴有翼(ゆうげんゆうよく)、共武之服(きょうぶしふく)。共武之服、以定王國(いじょうおうこく)。
玁狁匪茹,整居焦穫。侵鎬及方,至於涇陽。織文鳥章,白旆央央。元戎十乘,以先啟行。
玁狁匪茹(けんいんひじょ・弱くない)、整居焦獲(せいきょしょうかく)。侵鎬及方(しんこうきゅうほう)、至于涇陽(しおけいよう)。織文鳥章(しきもんちょうしょう・鳥文の旗)、白旆央央(はくはいおうおう)。元戎十乘(げんじゅうじゅうじょう)、以先啟行(いせんけいこう)。
戎車既安,如輊如軒。四牡既佶,既佶且閒。薄伐玁狁,至於大原。文武吉甫,萬邦為憲。
戎車既安(じゅうしゃきあん)、如轊如軒(にょていにょけん)。四牡既佶(しぼききつ)、既佶且閑(ききつしょかん)。薄伐玁狁、至于大原(しおたいげん)。文武吉甫(ぶんぶきっぽ)、萬邦為憲(ばんぽういけん)。
吉甫燕喜,既多受祉。來歸自鎬,我行永久。飲御諸友,炰鱉膾鯉。侯誰在矣?張仲孝友。
吉甫燕喜(きっぽえんき)、既多受祉(きたじゅし)。來歸自鎬(らいきじこう)、我行永久(がこうえいきゅう)。飲御諸友(いんぎょしょゆう)、炰鱉膾鯉(ほうへつかいり)。侯誰在矣(こうすいざいい)。張仲孝友(ちょうちゅうこうゆう)。
薄言采芑,於彼新田,呈此菑畝。方叔涖止,其車三千。師幹之試,方叔率止。
薄言采芑(はくげんさいき)、于彼新田(おぴしんでん)、于此菑畝(おししぼ)。方叔蒞止(ほうしゅくりし)、其車三千(きしゃさんぜん)。師干之試(しかんしし・軍の訓練)、方叔率止(ほうしゅくそつし)。
乘其四騏,四騏翼翼。路車有奭,簟茀魚服,鉤膺鞗革。
乘其四騏(じょうきしき)、四騏翼翼(しきよくよく)。路車有奭(ろしゃゆうせき)、簟茀魚服(てんふつぎょふく)、鉤膺鞗革(こうおうちょうかく)。
薄言采芑,於彼新田,於此中鄉。方叔涖止,其車三千。旗旐央央,方叔率止。
薄言采芑、于彼新田、于此中鄉(おしちゅうきょう)。方叔蒞止、其車三千、旂旐央央(きちょうおうおう)。方叔率止。
約軧錯衡,八鸞瑲瑲。服其命服,朱芾斯皇,有瑲蔥珩。
約軧錯衡(やくていさくこう・革で轂を纏い衡に文様)、八鸞瑲瑲(はちらんそうそう)。服其命服(ふくきめいふく)、朱芾斯皇(しゅふつしこう)、有瑲蔥珩(ゆうそうそうこう・葱色の珩が瑲と鳴る)。
鴥彼飛隼,其飛戾天,亦集爰止。方叔涖止,其車三千。師幹之試,方叔率止。
鴥彼飛隼(いつぴひしゅん・疾く飛ぶ隼)、其飛戾天(きひれいてん)、亦集爰止(やくしゅうえんし)。方叔蒞止、其車三千、師干之試。方叔率止。
鉦人伐鼓,陳師鞠旅。顯允方叔,伐鼓淵淵,振旅闐闐。
鉦人伐鼓(しょうじんばっこ・鉦人が鼓を打つ)、陳師鞠旅(ちんしきくりょ・軍を陳べて告げる)。顯允方叔(けんいんほうしゅく)、伐鼓淵淵(ばっこえんえん)、振旅闐闐(しんりょてんてん)。
蠢爾蠻荊,大邦為仇。方叔元老,克壯其猶。方叔率止,執訊獲醜。戎車嘽嘽,
蠢(しゅん)とした荊蠻(けいばん)、大邦(たいぽう)と仇(きゅう)を為す。方叔は元老(げんろう)、克(こ)く其の謀(ぼう)を壯(そう)す。方叔率止、執訊獲醜(しゅうしんかくしゅう)。戎車啴啴(じゅうしゃたんたん)、
嘽嘽焞焞,如霆如雷。顯允方叔,征伐玁狁,蠻荊來威。
啴啴焞焞(たんたんとんとん)、如霆如雷(じょていにょらい)。顯允方叔、征伐玁狁(せいばつけんいん)、蠻荊來威(ばんけいらいい・畏服する)。
我車既攻,我馬既同。四牡龐龐,駕言徂東。
我車既攻(がしゃきこう・堅い)、我馬既同(きどう)。四牡龎龎(しぼぼうぼう)、駕言徂東(かげんそとう)。
田車既好,田牡孔阜。東有甫草,駕言行狩。
田車既好(でんしゃきこう)、四牡孔阜。東有甫草(とうゆうふそう)、駕言行狩(かげんこうしゅ)。
之子於苗,選徒囂囂。建旐設旄,搏獸於敖。
之子于苗(ししおびょう・夏狩り)、選徒囂囂(せんとぎょうぎょう)。建旐設旄(けんちょうせつぼう)、搏獸于敖(はくじゅうおごう)。
駕彼四牡,四牡奕奕。赤芾金舄,會同有繹。
駕彼四牡、四牡奕奕(えきえき)。赤芾金舄(せきふつきんせき)、會同有繹(かいどうゆうえき)。
決拾既佽,弓矢既調。射夫既同,助我舉柴。
決拾既佽(けつしゅうきじ・弓弽と臂套が備わり)、弓矢既調(きゅうしきちょう)。射夫既同(しゃふきどう)、助我舉柴(じょがきょさい・獲物を積むのを助ける)。
四黃既駕,兩驂不猗。不失其馳,舍矢如破。
四黃既駕(しこうきが)、兩驂不猗(りょうさんふい)。不失其馳(ふしつきち)、舍矢如破(しゃしにょは)。
蕭蕭馬鳴,悠悠旆旌。徒御不驚,大庖不盈。
蕭蕭馬鳴(しょうしょうばめい)、悠悠旆旌(ゆうゆうはいせい)。徒御不驚(とぎょふけい)、大庖不盈(たいほうふえい)。
之子於徵,有聞無聲。允矣君子,展也大成。
之子于征(ししおせい)、有聞無聲(ゆうぶんむせい)。允矣君子(いんいくんし)、展也大成(てんやたいせい)。
吉日維戊,既伯既禱。田車既好,四牡孔阜。升彼大阜,從其群醜。
吉日維戊(きちじついぼ)、既伯既禱(きはくきとう・馬祖に祭り祷る)。田車既好、四牡孔阜。升彼大阜(しょうぴたいふ)、從其羣醜(しょうきぐんしゅう)。
吉日庚午,既差我馬。獸之所同,麀鹿麌麌。漆沮之從,天子之所。
吉日庚午(きちじつこうご)、既差我馬(きさがば・馬を選んだ)。獸之所同(じゅうししょどう)、麀鹿麌麌(ゆうろぐぐ・牝鹿が多い)。漆沮之從(しっそしじゅう)、天子之所(てんしししょ)。
瞻彼中原,其祁孔有。儦儦俟俟,或群或友。悉率左右,以燕天子。
瞻彼中原(せんぴちゅうげん)、其祁孔有(ききこうゆう)。儦儦俟俟(ひょうひょうしし)、或羣或友(かくぐんかくゆう)。悉率左右(しっそつさゆう)、以燕天子(いえんてんし)。
既張我弓,既挾我矢。發彼小豝,殪此大兕。以御賓客,且以酌醴。
既張我弓(きちょうがきゅう)、既挾我矢(ききょうがし)。發彼小豝(はっぴしょうは・小さな牝豚)、殪此大兕(えいしだいじ)。以御賓客(いぎょひんかく)、且以酌醴(しょいしゃくれい)。
鴻雁于飛,肅肅其羽。之子於徵,劬勞於野。爰及矜人,哀此鰥寡。
鴻雁于飛(こうがんおひ)、肅肅其羽(しゅくしゅくきう)。之子于征(ししおせい)、劬勞于野(くろうおや)。爰及矜人(えんきゅうきょうじん)、哀此鰥寡(あいしかんか)。
鴻雁于飛,集於中澤。之子於垣,百堵皆作。雖則劬勞,其究安宅?
鴻雁于飛、集于中澤(しゅうおちゅうたく)。之子于垣(ししおえん・築牆)、百堵皆作(ひゃくとかいさく)。雖則劬勞(すいそくくろう)、其究安宅(ききゅうあんたく)。
鴻雁于飛,哀鳴嗷嗷。維此哲人,謂我劬勞。維彼愚人,謂我宣驕。
鴻雁于飛、哀鳴嗷嗷(あいめいごうごう)。維此哲人(いしてつじん)、謂我劬勞(いがくろう)。維彼愚人(いひぐじん)、謂我宣驕(いがせんきょう)。
夜如何其?夜未央,庭燎之光。君子至止,鸞聲將將。
夜如何其(やいかき・夜はいかん)。夜未央(やびおう・夜が未だ尽きない)、庭燎之光(ていりょうしこう)。君子至止(くんししし)、鸞聲將將(らんせいしょうしょう)。
夜如何其?夜未艾,庭燎晣晣。君子至止,鸞聲噦噦。
夜如何其。夜未艾(やびがい・尽きない)、庭燎晣晣(ていりょうせつせつ)。君子至止、鸞聲噦噦(らんせいえつえつ)。
夜如何其?夜鄉晨,庭燎有輝。君子至止,言觀其旗。
夜如何其。夜鄉晨(やきょうしん・夜が朝に近い)、庭燎有煇(ていりょうゆうき・余煇がある)。君子至止、言觀其旂(げんかんきき)。
沔彼流水,朝宗於海。鴥彼飛隼,載飛載止。嗟我兄弟,邦人諸友。莫肯念亂,誰無父母?
沔彼流水(べんぴりゅうすい・満々と流れる水)、朝宗于海(ちょうそううかい・海に宗として朝する)。鴥彼飛隼、載飛載止(さいひさいし)。嗟我兄弟(さがけいてい)、邦人諸友(ほうじんしょゆう)。莫肯念亂(ばくこうねんらん)、誰無父母(すいむふぼ)。
沔彼流水,其流湯湯。鴥彼飛隼,載飛載揚。念彼不跡,載起載行。心之憂矣,不可弭忘。
沔彼流水、其流湯湯(きりゅうしょうしょう)。鴥彼飛隼、載飛載揚(さいよう)。念彼不蹟(ねんぴふせき・正道を行かない者)、載起載行(さいきさいこう)。心之憂矣、不可弭忘(ふかびぼう)。
鴥彼飛隼,率彼中陵。民之訛言,寧莫之懲?我友敬矣,讒言其興。
鴥彼飛隼、率彼中陵(そつぴちゅうりょう)。民之訛言(みんしかげん・民の偽り言)、寧莫之懲(ねいばくしちょう・誰も懲さない)。我友敬矣(がゆうけいい)、讒言其興(ざんげんきこう)。
鶴鳴於九皋,聲聞於野。魚潛在淵,或在於渚。樂彼之園,爰有樹檀,其下維蘀。他山之石,可以為錯。
鶴鳴于九皐(かくめいうきゅうこう・曲がった沢で鳴く)、聲聞于野(せいぶんおや)。魚潛在淵(ぎょせんざいえん)、或在于渚(かくざいおしょ)。樂彼之園(らくぴしえん)、爰有樹檀(えんゆうじゅだん)、其下維蘀(きかいたく)。它山之石(たざんしせき)、可以為錯(いいさく・磨石にできる)。
鶴鳴於九皋,聲聞於天。魚在於渚,或潛在淵。樂彼之園,爰有樹檀,其下維谷。他山之石,可以攻玉。
鶴鳴于九皐、聲聞于天(せいぶんおてん)。魚在于渚、或潛在淵(かくせんざいえん)。樂彼之園、爰有樹檀、其下維穀(きかいこく・楮)。它山之石、可以攻玉(いこうぎょく)。
祈父,予王之爪牙。胡轉予於恤,靡所止居?
祈父(きふ)!予王之爪牙(よおうしそうが)。胡轉予于恤(こてんよおじゅつ・どうして私を憂恤に転じる)、靡所止居(びしょしきょ)。
祈父,予王之爪士。胡轉予於恤,靡所厎止?
祈父!予王之爪士(そうし)。胡轉予于恤、靡所厎止(びしょていし・止まる所がない)。
祈父,亶不聰。胡轉予於恤?有母之尸饔。
祈父!亶不聰(たんふそう・実に聡明でない)。胡轉予于恤。有母之尸饗(ゆうぼししきょう・母がいて自ら饗を調る)。
皎皎白駒,食我場苗。縶之維之,以永今朝。所謂伊人,於焉逍遙?
皎皎白駒(こうこうはっく)、食我場苗(しょくがじょうびょう)。縶之維之(しっしいし・絆して繋ぐ)、以永今朝(いえいこんちょう)。所謂伊人(しょいいじん)、於焉逍遙(おえんしょうよう)。
皎皎白駒,食我場藿。縶之維之,以永今夕。所謂伊人,於焉嘉客?
皎皎白駒、食我場藿(しょくがじょうかく・豆葉)。縶之維之、以永今夕(いえいこんせき)。所謂伊人、於焉嘉客(おえんかかく)。
皎皎白駒,賁然來思。爾公爾侯,逸豫無期?慎爾優遊,勉爾遁思。
皎皎白駒、賁然來思(ほんぜんらいし・賁然として来る)。爾公爾侯(じこうじこう)、逸豫無期(いつよむき)。慎爾優遊(しんじゆうゆう)、勉爾遁思(べんじとんし)。
皎皎白駒,在彼空谷。生芻一束,其人如玉。毋金玉爾音,而有遐心。
皎皎白駒、在彼空谷(ざいぴくうこく)。生芻一束(せいすういっそく)、其人如玉(きじんにょぎょく)。毋金玉爾音(むきんぎょくじおん)、而有遐心(にゆうかしん・遠ざかる心を持つな)。
黃鳥黃鳥,無集於谷,無啄我粟。此邦之人,不我肯谷。言旋言歸,復我邦族。
黃鳥黃鳥、無集于穀(むしゅうおこく)、無啄我粟(むたくがぞく)。此邦之人(しほうしじん)、不我肯穀(ふがこうこく・善くしてくれない)。言旋言歸(げんせんげんき)、復我邦族(ふくがぼうぞく)。
黃鳥黃鳥,無集於桑,無啄我粱。此邦之人,不可與明。言旋言歸,復我諸兄。
黃鳥黃鳥、無集于桑、無啄我粱(むたくがりょう)。此邦之人、不可與明(ふかよみょう・盟できない)。言旋言歸、復我諸兄(ふくがしょけい)。
黃鳥黃鳥,無集於栩,無啄我黍。此邦之人,不可與處。言旋言歸,復我諸父。
黃鳥黃鳥、無集于栩(むしゅうおく)、無啄我黍(むたくがしょ)。此邦之人、不可與處(ふかよしょ)。言旋言歸、復我諸父(ふくがしょふ)。
我行其野,蔽芾其樗。婚姻之故,言就爾居。爾不我畜,復我邦家。
我行其野(がこうきや)、蔽芾其樗(へいひきちょ・樗が蔽芾と茂る)。昏姻之故(こんいんしこ)、言就爾居(げんしゅうじきょ)。爾不我畜(じふがちく)、復我邦家(ふくがぽうか)。
我行其野,言採其蓫。婚姻之故,言就爾宿。爾不我畜,言歸斯復。
我行其野、言采其蓫(げんさいきちく・羊蹄)。昏姻之故、言就爾宿(げんしゅうじしゅく)。爾不我畜、言歸斯復(げんきしふく)。
我行其野,言採其葍。不思舊姻,求爾新特。成不以富,亦祗以異。
我行其野、言采其葍(げんさいきふく)。不思舊姻(ふしきゅういん)、求爾新特(きゅうじしんとく)。成不以富(せいふいふ・富のためではない)、亦祗以異(えきしい・ただ心変わりのため)。
秩秩斯干,幽幽南山。如竹苞矣,如松茂矣。兄及弟矣,式相好矣,無相猶矣。
秩秩斯干(ちつちつしかん・秩秩とした涧)、幽幽南山(ゆうゆうなんざん)。如竹苞矣(にょちくほうい)、如松茂矣(にょしょうぼうい)。兄及弟矣(けいきゅうていい)、式相好矣(しきそうこうい)、無相猶矣(むそうゆうい・相い図るな)。
似續妣祖,築室百堵,西南其戶。爰居爰處,爰笑爰語。
似續妣祖(しぞくひそ・先妣先祖を継ぐ)、築室百堵(ちくしつひゃくと)、西南其戶(せいなんきこ)。爰居爰處(えんきょえんしょ)、爰笑爰語(えんしょうえんご)。
約之閣閣,椓之橐橐。風雨攸除,鳥鼠攸去,君子攸芋。
約之閣閣(やくしかくかく・板を束ねて閣閣と鳴る)、椓之橐橐(たくしたくたく・打ちつけて橐橐と鳴る)。風雨攸除(ふううゆうじょ)、鳥鼠攸去(ちょうそゆうきょ)、君子攸芋(くんしゆうう・覆う)。
如跂斯翼,如矢斯棘,如鳥斯革,如翬斯飛,君子攸躋。
如跂斯翼(にょきしいく・跂のように翼する)、如矢斯棘(にょししきょく・矢のように角立つ)、如鳥斯革(にょちょうしかく・鳥のように翼を革げる)、如翬斯飛(にょきしひ・雉のように飛ぶ)、君子攸躋(くんしゆうせい・登る)。
殖殖其庭,有覺其楹。噲噲其正,噦噦其冥。君子攸寧。
殖殖其庭(しょくしょくきてい・平らな庭)、有覺其楹(ゆうかくきえい・覺として高い楹)。噲噲其正(かいかいきせい・明るい正堂)、噦噦其冥(えつえつきめい・深い奥)、君子攸寧(くんしゆうねい)。
下莞上簟,乃安斯寢。乃寢乃興,乃占我夢。吉夢維何?維熊維羆,維虺維蛇。
下莞上簟(かかんじょうてん・下に蒲蓆、上に竹蓆)、乃安斯寢(だいあんししん)。乃寢乃興(だいしんだいこう)、乃占我夢(だいせんがむ)。吉夢維何(きちむいか)。維熊維羆(いゆういひ)、維虺維蛇(いきいだ)。
大人占之:維熊維羆,男子之祥;維虺維蛇,女子之祥。
大人占之(たいじんせんし・太卜が占う)。維熊維羆、男子之祥(だんしししょう)。維虺維蛇、女子之祥(じょしししょう)。
乃生男子,載寢之床。載衣之裳,載弄之璋。其泣喤喤,朱芾斯皇,室家君王。
乃生男子(だいせいだんし)、載寢之床(さいしんししょう)。載衣之裳(さいいししょう)、載弄之璋(さいろうししょう)。其泣喤喤(ききゅうおうおう)、朱芾斯皇(しゅふつしこう)、室家君王(しつかくんおう)。
乃生女子,載寢之地。載衣之裼,載弄之瓦。無非無儀,唯酒食是議,無父母詒罹。
乃生女子(だいせいじょし)、載寢之地(さいしんしち)。載衣之裼(さいいしてき・褓衣)、載弄之瓦(さいろうしが・紡錘)。無非無儀(むひむぎ・過ちなく儀を僭さない)、唯酒食是議(ゆいしゅしょくぜぎ)、無父母詒罹(むふぼいり・父母に憂いを貽さない)。
誰謂爾無羊?三百維群。誰謂爾無牛?九十其犉。爾羊來思,其角濈濈。爾牛來思,其耳溼溼。
誰謂爾無羊(すいいじむよう)。三百維羣(さんぺくいぐん)。誰謂爾無牛(すいいじむぎゅう)。九十其犉(きゅうじゅっきじゅん・七尺の大牛)。爾羊來思(じようらいし)、其角濈濈(きかくしゅうしゅう)。爾牛來思(じぎゅうらいし)、其耳濕濕(きじしゅうしゅう)。
或降於阿,或飲於池,或寢或訛。爾牧來思,何蓑何笠,或負其餱。三十維物,爾牲則具。
或降于阿(かくこうおあ)、或飲于池(かくいんおち)、或寢或訛(かくしんかくか・寝たり動いたり)。爾牧來思(じぼくらいし)、何蓑何笠(かさかりゅう・蓑を披き笠を戴き)、或負其餱(かくふきこう・糧を負う)。三十維物(さんじゅういぶつ・三十種の毛色)、爾牲則具(じせいそくぐ)。
爾牧來思,以薪以蒸,以雌以雄。爾羊來思,矜矜兢兢,不騫不崩。麾之以肱,畢來既升。
爾牧來思、以薪以蒸(いしんいじょう・太い薪と細い柴)、以雌以雄(いしいゆう)。爾羊來思、矜矜兢兢(きょうきょうきょうきょう)、不騫不崩(ふけんふほう)。麾之以肱(きしいこう・肱で麾けば)、畢來既升(ひつらいきしょう・みな來て升る)。
牧人乃夢,眾維魚矣,旐維旟矣,大人占之;眾維魚矣,實維豐年;旐維旟矣,室家溱溱。
牧人乃夢(ぼくじんだいむ)、衆維魚矣(しゅういぎょい)、旐維旟矣(ちょういよい)。大人占之、衆維魚矣、實維豐年(じついほうねん)。旐維旟矣、室家溱溱(しつかしんしん)。
節彼南山,維石巖巖。赫赫師尹,民具爾瞻。憂心如惔,不敢戲談。國既卒斬,何用不監!
節彼南山(せつぴなんざん・高峻な南山)、維石岩岩(いせきがんがん)。赫赫師尹(かっかくしいん・赫赫たる太師尹氏)、民具爾瞻(みんぐじせん)。憂心如惔(ゆうしんにょだん・火の燃えるよう)、不敢戲談(ふかんぎだん)。國既卒斬(こくきそつざん・国が遂に斬絶)、何用不監(かようふかん)。
節彼南山,有實其猗。赫赫師尹,不平謂何。天方薦瘥,喪亂弘多。民言無嘉,慘莫懲嗟。
節彼南山、有實其猗(ゆうじつきい・山坡が充実)。赫赫師尹、不平謂何(ふへいいか)。天方薦瘥(てんぼうせんさ・天がまさに疫病を薦る)、喪亂弘多(そうらんこうた)。民言無嘉(みんげんむか・民の言に嘉なし)、憯莫懲嗟(さんばくちょうさ・慘として懲りず嗟く)。
尹氏大師,維周之氐;秉國之鈞,四方是維。天子是毗,俾民不迷。不弔昊天,不宜空我師。
尹氏大師(いんしたいし)、維周之氐(いしゅうしてい・周の根柢)。秉國之均(へいこくしきん・国の均を秉る)、四方是維(しほうぜい)。天子是毗(てんしぜひ・輔く)、俾民不迷(ひみんふめい)。不弔昊天(ふちょうこうてん)、不宜空我師(ふぎくうがし・我が衆を空乏させるべからず)。
弗躬弗親,庶民弗信。弗問弗仕,勿罔君子。式夷式已,無小人殆。瑣瑣姻亞,則無膴仕。
弗躬弗親(ふきゅうふしん)、庶民弗信(しょみんふしん)。弗問弗仕(ふもんふし)、勿罔君子(ぶつもうくんし)。式夷式已(しきいしきい・平らげ止めよ)、無小人殆(むしょうじんたい・小人に殆くな)。瑣瑣姻亞(ささのいんあ・瑣々たる姻親)、則無膴仕(そくむこし・肥えた仕官を与えるな)。
昊天不傭,降此鞠訩。昊天不惠,降此大戾。君子如屆,俾民心闋。君子如夷,惡怒是違。
昊天不傭(こうてんふよう・均しくない)、降此鞠訩(こうしきゅうきょう・この大きな凶を降す)。昊天不惠(こうてんふけい)、降此大戾(こうしたいれい)。君子如屆(くんしにょかい・至れば)、俾民心闋(ひみんしんけつ・民心を止ませる)。君子如夷(くんしにょい)、惡怒是違(おんどぜい)。
不弔昊天,亂靡有定。式月斯生,俾民不寧。憂心如酲,誰秉國成?不自為政,卒勞百姓。
不弔昊天、亂靡有定(らんびゆうじょう)。式月斯生(しきげつしせい・月ごとに生じ)、俾民不寧(ひみんふねい)。憂心如酲(ゆうしんにょてい・酔ったよう)、誰秉國成(すいへいこくせい)。不自為政(ふじいせい)、卒勞百姓(そつろうぴゃくせい)。
駕彼四牡,四牡項領。我瞻四方,蹙蹙靡所騁。
駕彼四牡、四牡項領(しぼこうりょう・項が太い)。我瞻四方(がせんしほう)、蹙蹙靡所騁(しゅくしゅくびしょてい)。
方茂爾惡,相爾矛矣。既夷既懌,如相酬矣。
方茂爾惡(ほうぼうじあく・ちょうどあなたの憎悪が茂る時)、相爾矛矣(そうじぼうい・あなたの矛を見る)。既夷既懌(きいきえき・平らぎ悦ぶ)、如相醻矣(にょそうしゅうい・互いに酬いるよう)。
昊天不平,我王不寧。不懲其心,覆怨其正。
昊天不平(こうてんふへい)、我王不寧(がおうふねい)。不懲其心(ふちょうきしん)、覆怨其正(ふくおんきせい・正人をかえって怨む)。
家父作誦,以究王訩。式訛爾心,以畜萬邦。
家父作誦(かふさくしょう)、以究王訩(いきゅうおうきょう・王の凶を窮める)。式訛爾心(しきかじしん・あなたの心を変えて)、以畜萬邦(いちくばんぽう)。
正月繁霜,我心憂傷。民之訛言,亦孔之將。念我獨兮,憂心京京。哀我小心,癙憂以癢。
正月繁霜(せいげつはんそう)、我心憂傷(がしんゆうしょう)。民之訛言(みんしかげん)、亦孔之將(やくこうししょう・とても大きい)。念我獨兮(ねんがどくけい)、憂心京京(ゆうしんきょうきょう)。哀我小心(あいがしょうしん)、癙憂以痒(しょゆういよう・深く憂えて病む)。
父母生我,胡俾我瘉?不自我先,不自我後。好言自口,莠言自口。憂心愈愈,是以有侮。
父母生我(ふぼせいが)、胡俾我瘉(こひがゆ・どうして私を病ませる)。不自我先(ふじがせん)、不自我後(ふじがこう)。好言自口(こうげんじこう)、莠言自口(ゆうげんじこう・悪い言葉も口から)。憂心愈愈(ゆうしんゆゆ)、是以有侮(ぜいゆうぶ・これによって侮られる)。
憂心惸惸,念我無祿。民之無辜,並其臣僕。哀我人斯,於何從祿?瞻烏爰止?於誰之屋?
憂心惸惸(ゆうしんけいけい・獨りで憂える)、念我無祿(ねんがむろく)。民之無辜(みんしむこ)、并其臣僕(へいきしんぼく・臣僕にまで及ぶ)。哀我人斯(あいがじんし)、于何從祿(おかしょうろく・どこから禄を得るか)。瞻烏爰止(せんうえんし・烏がどこに止まるか見よ)、于誰之屋(おすいしおく)。
瞻彼中林,侯薪侯蒸。民今方殆,視天夢夢。既克有定,靡人弗勝。有皇上帝,伊誰雲憎?
瞻彼中林(せんぴちゅうりん)、侯薪侯蒸(こうしんこうじょう・薪と柴があるばかり)。民今方殆(みんこんぼうたい・民は今まさに殆い)、視天夢夢(してんぼうぼう)。既克有定(きこくゆうじょう・一旦定まることがあれば)、靡人弗勝(びじんふしょう・人に勝てない者はいない)。有皇上帝(ゆうこうじょうてい・皇皇たる上帝)、伊誰云憎(いすいうんぞう・いったい誰を憎むのか)。
謂山蓋卑,為岡為陵。民之訛言,寧莫之懲。召彼故老,訊之占夢。具曰予聖,誰知烏之雌雄!
謂山蓋卑(いざんかいひ・山は蓋し卑いと言うが)、為岡為陵(いこういりょう・岡陵である)。民之訛言、寧莫之懲。召彼故老(しょうひころう・故老を召し)、訊之占夢(しんしせんむ・夢占いに問う)。具曰予聖(ぐえつよせい・皆「予は聖だ」と言う)、誰知烏之雌雄(すいちうししゆう)。
謂天蓋高,不敢不局。謂地蓋厚,不敢不蹐。維號斯言,有倫有脊。哀今之人,胡為虺蜴?
謂天蓋高(いてんかいこう)、不敢不局(ふかんふきょく・身を屈めないわけにいかない)。謂地蓋厚(いちかいこう)、不敢不蹐(ふかんふせき・小さく歩まないわけにいかない)。維號斯言(いごうしげん・これらの言を号する)、有倫有脊(ゆうりんゆうせき・条理があり脊骨がある)。哀今之人(あいこんしじん)、胡為虺蜴(こいきえき・どうして虺蜴のようか)。
瞻彼阪田,有菀其特。天之杌我,如不我克。彼求我則,如不我得。執我仇讎,亦不我力。
瞻彼阪田(せんぴはんでん)、有菀其特(ゆううつきとく・菀として特出した苗)。天之扤我(てんしぐつが・天が私を動かす)、如不我克(にょふがこく・私に勝てないかのように)。彼求我則(ひきゅうがそく・彼らが私を求める時)、如不我得(にょふがとく・得られないかのように)。執我仇仇(しゅうがきゅうきゅう・得ておいて仇のように扱う)、亦不我力(やくふがりょく・私を力ともしない)。
心之憂矣,如或結之。今茲之正,胡然厲矣?燎之方揚,寧或滅之?赫赫宗周,褒姒滅之!
心之憂矣、如或結之(にょかくけつし・何かに結われたよう)。今茲之正(こんししせい・今の政)、胡然厲矣(こぜんれいい・どうしてこんなに厲しいか)。燎之方揚(りょうしほうよう・火が燃え盛っているのに)、寧或滅之(ねいかくめっし・誰か滅せるか)。赫赫宗周(かっかくそうしゅう)、褒姒烕之(ほうじめつし・褒姒が滅ぼした)!
終其永懷,又窘陰雨。其車既載,乃棄爾輔。載輸爾載,將伯助予!
終其永懷(しゅうきえいかい・終に長く懐う)、又窘陰雨(ゆうきんいんう・また陰雨に窘む)。其車既載(きしゃきさい)、乃棄爾輔(だいきじほ・あなたの輔を棄てる)。載輸爾載(さいしゅじさい・荷が落ちそう)、將伯助予(しょうはくじょよ・伯よ私を助けてくれ)。
無棄爾輔,員於爾輻。屢顧爾僕,不輸爾載。終逾絕險,曾是不意。
無棄爾輔(むきじほ)、員于爾輻(いんうじふく・輻を固めよ)。屢顧爾僕(るこじぼく・たびたび僕を顧みよ)、不輸爾載(ふしゅじさい)。終踰絕險(しゅうゆぜつけん・遂に絶険を踰える)、曾是不意(そうぜふい・ところがこれを意に介さない)。
魚在於沼,亦匪克樂。潛雖伏矣,亦孔之炤。憂心慘慘,念國之為虐!
魚在于沼(ぎょざいおしょう)、亦匪克樂(やくひこくらく・楽しむことができない)。潛雖伏矣(せんすいふくい・潜んで伏していても)、亦孔之炤(やくこうししょう・とても明らか)。憂心慘慘(ゆうしんさんさん)、念國之為虐(ねんこくしいぎゃく)。
彼有旨酒,又有嘉餚。洽比其鄰,婚姻孔雲。念我獨兮,憂心殷殷。
彼有旨酒(ひゆうしゅしゅ)、又有嘉肴(ゆうゆうかこう)。洽比其鄰(こうひきりん・隣と洽い比す)、昏姻孔云(こんいんこううん・婚姻がとても周旋する)。念我獨兮、憂心慇慇(ゆうしんいんいん)。
佌佌彼有屋,蔌蔌方有谷。民今之無祿,天夭是椓。哿矣富人,哀此惸獨。
佌佌彼有屋(ししひゆうおく・小さな者が屋を持つ)、蔌蔌方有穀(そくそくほうゆうこく・陋い者が穀を持つ)。民今之無祿(みんこんしむろく)、天夭是椓(てんようぜたく・天が民を夭して椓す)。哿矣富人(かいふじん・富人はよい)、哀此惸獨(あいしけいどく)。
十月之交,朔月辛卯。日有食之,亦孔之醜。彼月而微,此日而微;今此下民,亦孔之哀。
十月之交(じゅうがつしこう・十月の交わり)、朔月辛卯(さくげつしんぼう・朔日は辛卯)。日有食之(じつゆうしょくし・日蝕あり)、亦孔之醜(やくこうししゅう・とても醜い)。彼月而微(ひげつにび・あの月は微れ)、此日而微(しじつにび)。今此下民(こんしげみん)、亦孔之哀(やくこうしあい)。
日月告兇,不用其行。四國無政,不用其良。彼月而食,則維其常;此日而食,於何不臧。
日月告凶(じつげつこくきょう・日月が凶を告げる)、不用其行(ふようきこう・その道を行かない)。四國無政(しこくむせい)、不用其良(ふようきりょう)。彼月而食(ひげつにしょく・あの月が蝕される)、則維其常(そくいきじょう・それは常だ)。此日而食(しじつにしょく)、于何不臧(おかふぞう・どうして善からぬか)。
燁燁震電,不寧不令。百川沸騰,山冢崒崩。高岸為谷,深谷為陵。哀今之人,胡慘莫懲?
燁燁震電(ようようしんでん・雷電が燁燁と光る)、不寧不令(ふねいふれい・安らかでなく善くない)。百川沸騰(ひゃくせんふっとう)、山冢崒崩(さんちょうそつほう・山頂が猝として崩れる)。高岸為谷(こうがんいこく)、深谷為陵(しんこくいりょう)。哀今之人(あいこんしじん)、胡憯莫懲(こさんばくちょう・どうして慘として懲りないか)。
皇父卿士,番維司徒,家伯維宰,仲允膳夫,棸子內史,蹶維趣馬,楀維師氏。醘妻煽方處。
皇父卿士(こうふけいし)、番維司徒(はんいしと)、家伯維宰(かはくいさい)、仲允膳夫(ちゅういんぜんふ)、棸子內史(しゅうしないし)、蹶維趣馬(けついしゅうば)、楀維師氏(ういしし)。豔妻煽方處(えんさいせんほうしょ・豔妻が煽り盛んで処る)。
抑此皇父,豈曰不時?胡為我作,不即我謀?徹我牆屋,田卒汙萊。曰予不戕,禮則然矣。
抑此皇父(よくしこうふ・この皇父は)、豈曰不時(きえつふじ・時を知らないと言うか)。胡為我作(こいがさく・どうして私のために作役させる)、不即我謀(ふそくがぼう・私に就いて謀らない)。徹我牆屋(てつがしょうおく・私の牆屋を徹す)、田卒汙萊(でんそつおらい・田は遂に汙して萊が生える)。曰予不戕(えつよふしょう・「予は戕さない」と言う)、禮則然矣(れいそくぜんい・礼はそういうものだと)。
皇父孔聖,作都於向。擇三有事,亶侯多藏。不憖遺一老,俾守我王。擇有車馬,以居徂向。
皇父孔聖(こうふこうせい・皇父はとても聖い)、作都于向(さくとおこう・向に都を作る)。擇三有事(たくさんゆうじ・三有司を選ぶ)、亶侯多藏(たんこうたぞう・実に多く蓄えた者)。不憖遺一老(ふぎんいいちろう・一老を残すのを惜しまない)、俾守我王(ひしゅがおう・我が王を守らしめない)。擇有車馬(たくゆうしゃば・車馬ある者を選び)、以居徂向(いきょそこう・向に居て往く)。
黽勉從事,不敢告勞。無罪無辜,讒口囂囂。下民之孽,匪降自天。噂沓背憎,職競由人。
黽勉從事(びんべんしょうじ・黽勉して事に従う)、不敢告勞(ふかんこくろう・労を告げることを敢えてしない)。無罪無辜(むざいむこ)、讒口囂囂(ざんこうぎょうぎょう・讒言が囂囂と)。下民之孽(げみんしげつ・下民の災孽)、匪降自天(ひこうじてん・天から降ったのではない)。噂沓背憎(そんとうはいぞう・面では噂沓み背では憎む)、職競由人(しょくきょうゆうじん・ただ人が競って為す)。
悠悠我裡,亦孔之痗。四方有羨,我獨居憂。民莫不逸,我獨不敢休。天命不徹,我不敢效我友自逸。
悠悠我里(ゆうゆうがり・悠々たる我が里)、亦孔之痗(やくこうしばい・とても病む)。四方有羨(しほうゆうせん・四方に余羨あり)、我獨居憂(がどくきょゆう)。民莫不逸(みんばくふいつ・民は皆逸しないではない)、我獨不敢休(がどくふかんきゅう)。天命不徹(てんめいふてつ・天命が徹らない)、我不敢傚我友自逸(がふかんこうがゆうじいつ)。
浩浩昊天,不駿其德。降喪饑饉,斬伐四國。旻天疾威,弗慮弗圖。舍彼有罪,既伏其辜。若此無罪,淪胥以鋪。
浩浩昊天(こうこうこうてん)、不駿其德(ふしゅんきとく・その徳を長くしない)。降喪饑饉(こうそうききん)、斬伐四國(ざんばつしこく)。旻天疾威(びんてんしつい・旻天が疾く威する)、弗慮弗圖(ふりょふと・慮らず圖らない)。舍彼有罪(しゃひゆうざい・有罪を舍て)、既伏其辜(きふくきこ・その辜を伏せる)。若此無罪(じゃくしむざい・これらの無罪は)、淪胥以鋪(りんしょいふ・相い淪れて苦しむ)。
周宗既滅,靡所止戾。正大夫離居,莫知我勩。三事大夫,莫肯夙夜。邦君諸侯,莫肯朝夕。庶曰式臧,覆出為惡。
周宗既滅(しゅうそうきめつ)、靡所止戾(びしょしれい・止まる所がない)。正大夫離居(せいたいふりきょ・正大夫が居を離れる)、莫知我勳(ばくちがくん・私の勳を知る者なし)。三事大夫(さんじだいふ)、莫肯夙夜(ばくこうしゅくや)。邦君諸侯(ほうくんしょこう)、莫肯朝夕(ばくこうちょうせき)。庶曰式臧(しょえつしきそう・庶い善くならんと言うが)、覆出為惡(ふくしゅついあく・かえって出て惡を為す)。
如何昊天,辟言不信。如彼行邁,則靡所臻。凡百君子,各敬爾身。胡不相畏,不畏於天?
如何昊天(じょかこうてん・昊天よどうか)、辟言不信(へきげんふしん・法の言が信じられない)。如彼行邁(にょひこうばい・あの行く者のように)、則靡所臻(そくびしょしん・至る所がない)。凡百君子(ぼんぴゃくくんし)、各敬爾身(かくけいじしん)。胡不相畏(こふそうい・どうして相い畏れないか)、不畏于天(ふいうてん・天を畏れないか)。
戎成不退,飢成不遂。曾我暬御,慘慘日瘁。凡百君子,莫肯用訊。聽言則答,譖言則退。
戎成不退(じゅうせいふたい・兵は成って退かない)、饑成不遂(きせいふすい・饑は成って遂げない)。曾我暬御(そうがせつぎょ・かつて我が近侍)、憯憯日瘁(さんさんじっすい・慘慘と日に瘁る)。凡百君子、莫肯用訊(ばくこうようしん・諫を用いるを肯んじない)。聽言則答(ちょうげんそくとう・耳に快い言には答える)、譖言則退(しんげんそくたい)。
哀哉不能言,匪舌是出,維躬是瘁。哿矣能言,巧言如流,俾躬處休!
哀哉不能言(あいさいふのうげん・哀れだ、言えないとは)、匪舌是出(ひぜつぜしゅつ・舌の出ではない)、維躬是瘁(いきゅうぜすい・ただ身が瘁るのだ)。哿矣能言(かいのうげん・言える者はよい)、巧言如流(こうげんにょりゅう・巧言が流れのよう)、俾躬處休(ひきゅうしょきゅう・身を休処せしめる)。
維曰予仕,孔棘且殆。雲不何使,得罪於天子;亦云可使,怨及朋友。
雖曰從仕(すいえつしょうし・仕に従うと言うが)、孔棘且殆(こうきょくしょたい・とても棘しく且つ殆い)。云不可使(うんふかし・使えないと言えば)、得罪于天子(とくざいおてんし)。亦云可使(やくうんかし・使えるとも言えば)、怨及朋友(おんきゅうほうゆう・怨が朋友に及ぶ)。
謂爾遷於王都。曰予未有室家。鼠思泣血,無言不疾。昔爾出居,誰從作爾室?
謂爾遷于王都(いじせんうおうと・あなたに王都に遷れと言う)、曰予未有室家(えつよみゆうしつか・「予には室家がない」と言う)。鼠思泣血(そしきゅうけつ・憂い泣血する)、無言不疾(むげんふしつ・言わない言ないほど疾しい)。昔爾出居(せきじしゅつきょ・昔あなたが出て居った時)、誰從作爾室(すいしょうさくじしつ・誰が従ってあなたの室を作ったか)。
旻天疾威,敷於下土。謀猶回遹,何日斯沮?謀臧不從,不臧覆用。我視謀猶,亦孔之邛。
旻天疾威、敷于下土(ふうげど・下土に敷く)。謀猶回遹(ぼうゆうかいいつ・謀猶が邪僻)、何日斯沮(かじつしそ・いつの日か沮むか)。謀臧不從(ぼうそうふしょう・謀が善ければ従わない)、不臧覆用(ふそうふくよう・善くなければかえって用いる)。我視謀猶(がしぼうゆう)、亦孔之邛(やくこうしきょう・とても病困だ)。
潝潝訿訿,亦孔之哀。謀之其臧,則具是違。謀之不臧,則具是依。我視謀猶,伊於胡厎。
潝潝訿訿(きゅうきゅうしし・附和し诋毁する)、亦孔之哀。謀之其臧(ぼうしきそう)、則具是違(そくぐぜい・皆これに違う)。謀之不臧(ぼうしふそう)、則具是依(そくぐぜい・皆これに依る)。我視謀猶、伊于胡底(いおこてい・どこに至るか)。
我龜既厭,不我告猶。謀夫孔多,是用不集。發言盈庭,誰敢執其咎?如匪行邁謀,是用不得於道。
我龜既厭(がききえん・我が亀はすでに厭きた)、不我告猶(ふがこくゆう・私に猶を告げない)。謀夫孔多(ぼうふこうた・謀る夫はとても多い)、是用不集(ぜようふしゅう・これによって集まらない)。發言盈庭(はつげんえいてい・言を發して庭に盈ちる)、誰敢執其咎(すいかんしゅうききゅう・誰が敢えてその咎を執るか)。如匪行邁謀(にょひこうばいぼう・行かないのに謀るよう)、是用不得于道(ぜようふとくおどう)。
哀哉為猶,匪先民是程,匪大猶是經。維邇言是聽,維邇言是爭。如彼築室於道謀,是用不潰於成。
哀哉為猶(あいさいいゆう・哀れだ、この謀を為すとは)、匪先民是程(ひせんみんぜてい・先民を程としない)、匪大猶是經(ひだいゆうぜけい・大猶を経としない)。維邇言是聽(いじげんぜちょう・近言を聴く)、維邇言是爭(いじげんぜそう)。如彼築室于道謀(にょひちくしつおどうぼう・道で室を築くのを人に謀るよう)、是用不潰于成(ぜようふかいおせい・成に潰えない)。
國雖靡止,或聖或否。民雖靡膴,或哲或謀,或肅或艾。如彼泉流,無淪胥以敗。
國雖靡止(こくすいびし・国は止まる所がないが)、或聖或否(かくせいかくひ)。民雖靡膴(みんすいびこ・民は膴くないが)、或哲或謀(かくてつかくぼう)、或肅或艾(かくしゅくかくがい)。如彼泉流(にょひせんりゅう・あの泉流のように)、無淪胥以敗(むりんしょいはい・相い淪れて敗れるな)。
不敢暴虎,不敢馮河。人知其一,莫知其他。戰戰兢兢,如臨深淵,如履薄冰。
不敢暴虎(ふかんぼうこ・素手で虎を犯さない)、不敢馮河(ふかんひょうが・徒で河を渡らない)。人知其一(じんちきいつ・人はその一を知る)、莫知其他(ばくちきた・他を知る者なし)。戰戰兢兢(せんせんきょうきょう)、如臨深淵(にょりんしんえん)、如履薄冰(にょりはくひょう)。
宛彼鳴鳩,翰飛戾天。我心憂傷,念昔先人。明發不寐,有懷二人。
宛彼鳴鳩(えんぴめいきゅう・小さな鳴鳩)、翰飛戾天(かんひれいてん・高く飛んで天に至る)。我心憂傷、念昔先人(ねんせきせんじん)。明發不寐(めいはつふび・明けても寐ない)、有懷二人(ゆうかいにじん・あの二人を懐う)。
人之齊聖,飲酒溫克。彼昏不知,一醉日富。各敬爾儀,天命不又。
人之齊聖(じんしせいせい・人が斉明聖智なら)、飲酒溫克(いんしゅうんこく・酒を飲んでも温く克つ)。彼昏不知(ひこんふち・あの昏い者は知らない)、壹醉日富(いっすいじつふ・一たび醉えば日に富むと思う)。各敬爾儀(かくけいじぎ・各自あなたの儀を敬え)、天命不又(てんめいふゆう・天命は再び來ない)。
中原有菽,庶民採之。螟蛉有子,蜾蠃負之。教誨爾子,式谷似之。
中原有菽(ちゅうげんゆうしゅく・原野に豆あり)、庶民采之(しょみんさいし)。螟蛉有子(めいれいゆうし・螟蛉に子あり)、蜾蠃負之(からくふし・蜾蠃が負う)。教誨爾子(きょうかいじし・あなたの子を教誨せよ)、式穀似之(しきこくじし・善を以って似せよ)。
題彼脊令,載飛載鳴。我日斯邁,而月斯徵。夙興夜寐,毋忝爾所生。
題彼脊令(ていひせきれい・あの脊令を見よ)、載飛載鳴(さいひさいめい)。我日斯邁(がじつしばい・我は日に邁む)、而月斯征(にげっしせい・あなたは月に征く)。夙興夜寐(しゅくこうやび・夙に興き夜に寐て)、無忝爾所生(むてんじしょせい・あなたを生んだ者を辱めるな)。
交交桑扈,率場啄粟。哀我填寡,宜岸宜獄。握粟出卜,自何能谷?
交交桑扈(こうこうそうこ・交交と鳴く青雀)、率場啄粟(そつじょうたくぞく・場に沿って粟を啄む)。哀我填寡(あいがてんか・我が窮寡を哀れ)、宜岸宜獄(ぎがんぎごく・岸と獄に当たるべきか)。握粟出卜(あくぞくしゅつぼく・粟を握って出て卜す)、自何能穀(じかのうこく・どこから善を得られようか)。
溫溫恭人,如集於木。惴惴小心,如臨於谷。戰戰兢兢,如履薄冰。
溫溫恭人(うんうんきょうじん・温温たる恭の人)、如集于木(にょしゅうおぼく・木に集まる如し)。惴惴小心(ずいずいしょうしん)、如臨于谷(にょりんおこく・谷に臨む如し)。戰戰兢兢、如履薄冰。
弁彼鷽斯,歸飛提提。民莫不穀,我獨於罹。何辜於天?我罪伊何?心之憂矣,雲如之何?
弁彼鸒斯(べんぴよし・飛ぶ鸒)、歸飛提提(きひていてい・帰り飛ぶこと提提として)。民莫不穀(みんばくふこく・民は皆穀くないではない)、我獨于罹(がどくおんり・我は獨り罹に当たる)。何辜于天(かこうてん・天に何の辜か)、我罪伊何(がざいいか・我が罪は何か)。心之憂矣、云如之何(うんにょしか・どうすればよいか)。
踧踧周道,鞫為茂草。我心憂傷,惄焉如搗。假寐永嘆,維憂用老。心之憂矣,疢如疾首。
踧踧周道(てきてきしゅうどう・平坦な大路)、鞫為茂草(きくいぼうそう・窮まりて茂草となる)。我心憂傷、惄焉如擣(てきえんにょとう・惄として擣かれるよう)。假寐永歎(かびえいたん・和衣して寐て長く嘆く)、維憂用老(いゆうようろう・憂いを以って老いる)。心之憂矣、疢如疾首(しんにょしっしゅ・熱病のように頭痛する)。
維桑與梓,必恭敬止。靡瞻匪父,靡依匪母。不屬於毛?不罹於裡?天之生我,我辰安在?
維桑與梓(いそうよし・桑と梓)、必恭敬止(ひっきょうけいし・必ず恭敬せよ)。靡瞻匪父(びせんひふ・瞻るのは父でない者はなく)、靡依匪母(びいひぼ・依るのは母でない者はいない)。不屬于毛(ふぞくおもう・毛に屬さないのか)、不離于里(ふりおうり・裏に離れないのか)。天之生我(てんしせいが・天が我を生んで)、我辰安在(がしんあんざい・我が辰はどこに在るか)。
菀彼柳斯,鳴蜩嘒嘒,有漼者淵,萑葦淠淠。譬彼舟流,不知所屆,心之憂矣,不遑假寐。
菀彼柳斯(うつひりゅうし・菀とした柳)、鳴蜩嘒嘒(めいちょうえいえつ・蝉が嘒嘒と鳴く)。有漼者淵(ゆうさいしゃえん・漼とした淵がある)、萑葦淠淠(かんいひひ)。譬彼舟流(ひひしゅうりゅう・あの舟流に譬えれば)、不知所屆(ふちしょかい・届く所を知らない)。心之憂矣、不遑假寐(ふこうかび・和衣して寐る暇もない)。
鹿斯之奔,維足伎伎。雉之朝雊,尚求其雌。譬彼壞木,疾用無枝。心之憂矣,寧莫之知?
鹿斯之奔(ろくししほん・鹿が奔る)、維足伎伎(いそくきき・足を伎伎と緩める)。雉之朝雊(ちしちょうこう・雉が朝に雊く)、尚求其雌(しょうきゅうきし・なおその雌を求める)。譬彼壞木(ひひかいぼく・あの壊れた木に譬えれば)、疾用無枝(しつようむし・病んで枝がない)。心之憂矣、寧莫之知(ねいばくしち・誰もこれを知らない)。
相彼投兔,尚或先之。行有死人,尚或墐之。君子秉心,維其忍之。心之憂矣,涕既隕之。
相彼投兔(そうひとうと・あの投げ込まれた兔を見よ)、尚或先之(しょうかくせんし・まだ或いはこれを先に放つ)。行有死人(こうゆうしじん・路に死人があれば)、尚或墐之(しょうかくきんし・まだ或いはこれを墐ぐ)。君子秉心(くんしへいしん・君子が心を秉る)、維其忍之(いきにんし・こんなに忍い)。心之憂矣、涕既隕之(ていきいんし・涕は既に隕れる)。
君子信讒,如或酬之。君子不惠,不舒究之。伐木掎矣,析薪扡矣。舍彼有罪,予之佗矣。
君子信讒(くんししんざん・君子は讒を信じ)、如或醻之(にょかくしゅうし・或いは之を醻する如し)。君子不惠(くんしふけい・君子は惠まない)、不舒究之(ふじょきゅうし・舒徐に之を究めない)。伐木掎矣(ばつぼくきい・木を伐るには掎げ)、析薪杝矣(せきしんいい・薪を析るには杝う)。舍彼有罪(しゃひゆうざい・有罪を舍てて)、予之佗矣(よしいたい・我に佗す・罪を加える)。
莫高匪山,莫浚匪泉。君子無易由言,耳屬於垣。無逝我梁,無發我笱。我躬不閱,遑恤我後。
莫高匪山(ぼうこうひざん・高くない山はなく)、莫浚匪泉(ぼくしゅんひせん・浚くない泉はない)。君子無易由言(くんしむえきゆうげん・君子は由りて言を易くするな)、耳屬于垣(じぞくおえん・耳が垣に屬している)。無逝我梁(むせいがりょう・我が梁に逝くな)、無發我笱(むはつがこう)。我躬不閱(がきゅうふえつ・我が身はまだ閱とされない)、遑恤我後(こうじゅつがこう・我が後を恤える暇があろうか)。
悠悠昊天,曰父母且。無罪無辜,亂如此幠。昊天已威,予慎無罪。昊天大幠,予慎無辜。
悠悠昊天(ゆうゆうこうてん)、曰父母且(えつふぼしょ・父母と曰う)。無罪無辜(むざいむこ)、亂如此幠(らんにょじょこ・乱がこれほど幠い)。昊天已威(こうてんいい・昊天はすでに威した)、予慎無罪(よしんむざい・我は慎んで罪がない)。昊天大幠(こうてんたいこ・昊天は大きく幠い)、予慎無辜(よしんむこ)。
亂之初生,僭始既涵。亂之又生,君子信讒。君子如怒,亂庶遄沮。君子如祉,亂庶遄已。
亂之初生(らんししょせい・乱の始めて生ずる)、僭始既涵(せんしきかん・僭が始めて涵される)。亂之又生(らんしゆうせい)、君子信讒。君子如怒(くんしにょど・君子が怒れば)、亂庶遄沮(らんしょせんそ・乱は庶い遄く沮む)。君子如祉(くんしにょし・祉を賜えば)、亂庶遄已(らんしょせんい・已む)。
君子屢盟,亂是用長。君子信盜,亂是用暴。盜言孔甘,亂是用餤。匪其止共,維王之邛。
君子屢盟(くんしるめい・屢々盟すれば)、亂是用長(らんぜようちょう・乱はこれによって長ず)。君子信盜(くんししんとう・君子は盜を信じ)、亂是用暴(らんぜようぼう)。盜言孔甘(とうげんこうかん・盜の言はとても甘い)、亂是用餤(らんぜようだん・乱はこれによって餤む)。匪其止共(ひきしきょう・其の止共ではない・供職恭敬ではない)、維王之邛(いおうしきょう・ただ王の邛・病い)。
奕奕寢廟,君子作之。秩秩大猷,聖人莫之。他人有心,予忖度之。躍躍毚兔,遇犬獲之。
奕奕寢廟(えきえきしんびょう・奕奕たる寝廟)、君子作之(くんしさくし)。秩秩大猷(ちつちつだいゆう・秩秩たる大猷)、聖人莫之(せいじんばくし・聖人が之を奠める)。他人有心(たじんゆうしん・他人に心あれば)、予忖度之(よそんたくし・我は之を忖度する)。躍躍毚兔(やくやくせんと・躍躍たる狡兔)、遇犬獲之(ぐうけんかくし・犬に遇えば獲られる)。
荏染柔木,君子樹之。往來行言,心焉數之。蛇蛇碩言,出自口矣。巧言如簧,顏之厚矣。
荏染柔木(じんぜんじゅうぼく・荏染たる柔木)、君子樹之(くんしじゅし)。往來行言(おうらいこうげん・往來する行言・流言)、心焉數之(しんえんそうし・心で之を数える)。蛇蛇碩言(だだせきげん・蛇蛇たる碩言・浅薄な大言)、出自口矣(しゅつじこうい)。巧言如簧(こうげんにょこう・巧言が簧の如し)、顏之厚矣(がんしこうい・顔の厚いこと)。
彼何人斯?居河之麋。無拳無勇,職為亂階。既微且尰,爾勇伊何?為猶將多,爾居徒幾何?
彼何人斯(ひかじんし・あれは何人か)、居河之麋(きょかしび・河の麋に居る)。無拳無勇(むけんむゆう・拳なく勇なく)、職為亂階(しょくいらんかい・ただ乱の階を為す)。既微且尰(きびしょしょう・既に微れ且つ尰す・腿が爛れ足が腫れる)、爾勇伊何(じゆういか・あなたの勇は何か)。為猶將多(いゆうしょうた・猶を為すこと將に多し)、爾居徒幾何(じきょといきか・あなたの徒はいくらか)。
彼何人斯?其心孔艱。胡逝我梁,不入我門?伊誰雲從?維暴之雲。
彼何人斯、其心孔艱(きしんこうけん・その心はとても艱しい)。胡逝我梁(こせいがりょう・どうして我が梁に逝く)、不入我門(ふにゅうがもん)。伊誰云從(いすいうんしょう・誰に従うか)、維暴之云(いぼうしうん・暴公と云う)。
二人從行,誰為此禍?胡逝我梁,不入唁我?始者不如今,雲不我可
二人從行(にじんじゅうこう・二人が従って行く)、誰為此禍(すいいしか・誰がこの禍を為したか)。胡逝我梁、不入唁我(ふにゅうげんが・入って我を唁わない)。始者不如今(ししゃふにょこん・初めは今に如かず)、云不我可(うんふがか・「我を可としない」と言う)。
彼何人斯?胡逝我陳?我聞其聲,不見其身。不愧於人?不畏於天?
彼何人斯、胡逝我陳(こせいがちん・どうして我が陳・庭の道に逝く)。我聞其聲(がぶんきせい・其の声を聞く)、不見其身(ふけんきしん)。不愧于人(ふきおじん・人に愧じないか)、不畏于天(ふいおてん・天を畏れないか)。
彼何人斯?其為飄風。胡不自北?胡不自南?胡逝我梁?絺攪我心。
彼何人斯、其為飄風(きいひょうふう・其は飄風の如し)。胡不自北(こふじほく・どうして北から来ない)、胡不自南(こふじなん)。胡逝我梁、祇攪我心(しきょうがしん・ただ我が心を攪す)。
爾之安行,亦不遑舍。爾之亟行,遑脂爾車。一者之來,云何其盱。
爾之安行(じしあんこう・あなたが安く行けば)、亦不遑舍(やくふこうしゃ・舍る暇もない)。爾之亟行(じしきっこう・あなたが亟く行けば)、遑脂爾車(こうしじしゃ・車に脂する暇がある)。壹者之來(いっしゃしらい・一度の來る)、云何其盱(うんいきく・どうしてこんなに盱・憂えるか)。
爾還而入,我心易也。還而不入,否難知也。一者之來,俾我絺也。
爾還而入(じかんににゅう・あなたが還って入れば)、我心易也(がしんえきや・心は易る)。還而不入(かんにふにゅう)、否難知也(ひなんちや・難く知られない)。壹者之來、俾我祇也(ひがぎや・我を祇らせる・病ませる)。
伯氏吹壎,仲氏吹篪。及爾如貫,諒不我鄭出此三物,以詛爾斯。
伯氏吹壎(はくしすいけん・伯氏が壎を吹き)、仲氏吹篪(ちゅうしすいち・仲氏が篪を吹く)。及爾如貫(きゅうじにょかん・あなたと貫の如し・同じ縄に貫かれた如し)、諒不我知(りょうふがち・諒に我を知らないか。(底本の「諒不我鄭出此三物」は脱文の疑いあり、今「諒不我知。出此三物」に基づいて訳す)出此三物(しゅつしさんぶつ・この三物を出し)、以詛爾斯(いそじし・あなたを詛する)。
為鬼為蜮,則不可得。有靦面目,視人罔極。作此好歌,以極反側。
為鬼為蜮(いきいよく・鬼となり蜮となるなら)、則不可得(そくふかとく・得ることができない)。有靦面目(ゆうてんめんもく・靦然とした面目がある)、視人罔極(しじんもうきょく・人を視るに極がない)。作此好歌(さくしこうか・この好い歌を作る)、以極反側(いきょくはんそく・反覆を窮める)。
萋兮斐兮,成是貝錦。彼譖人者,亦已大甚!
萋兮斐兮(せいけいひけい・萋斐とした文様)、成是貝錦(せいぜばいきん・この貝錦を成す)。彼譖人者(ひしんじんしゃ・あの譖る人は)、亦已大甚(やくいたいしん・もはや大きく甚だしい)。
哆兮侈兮,成是南箕。彼譖人者,誰適與謀。
哆兮侈兮(しけいしい・口が哆り侈る)、成是南箕(せいぜなんき・この南箕を成す)。彼譖人者、誰適與謀(すいてきよぼう・誰とともに謀るか)。
緝緝翩翩,謀欲譖人。慎爾言也,謂爾不信。
緝緝翩翩(しゅうしゅうへんぺん・緝緝として翩翩と)、謀欲譖人(ぼうよくしんじん・人を譖らんと謀る)。慎爾言也(しんじげんや・あなたの言を慎め)、謂爾不信(いじふしん・あなたを信じないと言われる)。
捷捷幡幡,謀欲譖言。豈不爾受?既其女遷。
捷捷幡幡(しょうしょうはんぱん・捷捷として幡幡と)、謀欲譖言(ぼうよくしんげん・譖言しようと謀る)。豈不爾受(きふじじゅ・あなたを受けないか)、既其女遷(ききじょせん・既にしてあなたに遷る)。
驕人好好,勞人草草。蒼天蒼天,視彼驕人,矜此勞人。
驕人好好(きょうじんこうこう・驕る人は好好として)、勞人草草(ろうじんそうそう・労する人は草草として)。蒼天蒼天(そうてんそうてん)、視彼驕人(しひきょうじん・あの驕る人を視よ)、矜此勞人(きょうしろうじん・この労する人を矜れ)。
彼譖人者,誰適與謀?取彼譖人,投畀豺虎。豺虎不食,投畀有北。有北不受,投畀有昊!
彼譖人者、誰適與謀。取彼譖人(しゅひしんじん・あの譖人を取って)、投畀豺虎(とうひさいこ・豺虎に投げ畀よ)。豺虎不食(さいこふしょく・豺虎が食わなければ)、投畀有北(とうひゆうほく・有北に投げ畀よ)。有北不受(ゆうほくふじゅ・有北が受けなければ)、投畀有昊(とうひゆうこう・有昊に投げ畀よ)!
楊園之道,猗於畝丘。寺人孟子,作為此詩。凡百君子,敬而聽之。
楊園之道(ようえんしどう・楊園の道)、猗于畝丘(いおぼうきゅう・畝丘に猗れる)。寺人孟子(じじんもうし・寺人孟子)、作為此詩(さくいしし・この詩を作る)。凡百君子(ぼんぴゃくくんし)、敬而聽之(けいにちょうし・敬って之を聴け)。
習習穀風,維風及雨。將恐將懼,維予與女。將安將樂,女轉棄予。
習習谷風(しゅうしゅうこくふう)、維風及雨(いふうきゅうう・風であり雨でもある)。將恐將懼(しょうきょうしょうく・恐れ懼れようとする時)、維予與女(いよよじょ・ただ予と女だけだ)。將安將樂(しょうあんしょうらく)、女轉棄予(じょてんきよ・女は轉じて予を棄てる)。
習習穀風,維風及頹。將恐將懼,置予於懷。將安將樂,棄予如遺。
習習谷風、維風及頹(いふうきゅうたい・風であり頹・暴風でもある)。將恐將懼、寘予于懷(ちよおかい・予を懐に寘く)。將安將樂、棄予如遺(きよにょい・予を遺の如く棄てる)。
習習穀風,維山崔嵬。無草不死,無木不萎。忘我大德,思我小怨。
習習谷風、維山崔嵬(いざんさいかい・山が崔嵬たり)。無草不死(むそうふし・死なない草はなく)、無木不萎(むぼくふい・萎れない木はない)。忘我大德(ぼうがたいとく・我が大徳を忘れ)、思我小怨(しがしょうえん・我が小怨を思う)。
蓼蓼者莪,匪莪伊蒿。哀哀父母,生我劬勞。
蓼蓼者莪(りくりくしゃが・蓼蓼と育った莪蒿)、匪莪伊蒿(ひがいこう・莪でなく蒿だ)。哀哀父母(あいあいふぼ・哀哀たる父母)、生我劬勞(せいがくろう・我を生んで劬労した)。
蓼蓼者莪,匪莪伊蔚。哀哀父母,生我勞瘁。
蓼蓼者莪、匪莪伊蔚(ひがいうつ・莪でなく蔚だ)。哀哀父母、生我勞瘁(せいがろうすい・労瘁させた)。
瓶之罄矣,維罍之恥。鮮民之生,不如死之久矣。無父何怙?無母何恃?出則銜恤,入則靡至。
缾之罄矣(へいしけいい・缾が罄く)、維罍之恥(いらいしち・罍の恥だ)。鮮民之生(せんみんしせい・鮮民が生きるのは)、不如死之久矣(ふにょししきゅうい・死んで久しいに如かない)。無父何怙(むふかこ・父がなければ何に怙るか)、無母何恃(むぼかじ・恃るか)。出則銜恤(しゅつそくけんじゅつ・出れば恤を銜み)、入則靡至(にゅうそくびし・入れば至る所がない)。
父兮生我,母兮鞠我。撫我畜我,長我育我,顧我復我,出入腹我。欲報之德。昊天罔極!
父兮生我(ふけいせいが・父よ我を生み)、母兮鞠我(ぼけいきくが・母よ我を鞠める)。撫我畜我(ぶがちくが・撫し畜し)、長我育我(ちょうがいくが・長し育て)、顧我復我(こがふくが・顧み復し)、出入腹我(しゅつにゅうふくが・出入に腹する・抱く)。欲報之德(よくほうしとく・この徳に報いんと欲す)、昊天罔極(こうてんもうきょく・昊天は罔極・極がない)。
南山烈烈,飄風發發。民莫不穀,我獨何害!南山律律,飄風弗弗。民莫不穀,我獨不卒!
南山烈烈(なんざんれつれつ)、飄風發發(ひょうふうはつはつ)。民莫不穀、我獨何害(がどくかがい・何の害か)。南山律律(なんざんりつりつ)、飄風弗弗(ひょうふうふつふつ)。民莫不穀、我獨不卒(がどくふそつ・卒えない・終養できない)。
有饛簋飧,有捄棘匕。周道如砥,其直如矢。君子所履,小人所視。眷言顧之,潸焉出涕。
有饛簋飧(ゆうもうきそん・饛として簋の飧)、有捄棘匕(ゆうきゅうきょくひ・捄として棘の匕)。周道如砥(しゅうどうにょし・周道が砥の如し)、其直如矢(きちょくにょし・其の直きこと矢の如し)。君子所履(くんししょり・君子が履む所)、小人所視(しょうじんしょし・小人が視る所)。睠言顧之(けんげんこし・睠として之を顧みれば)、潸焉出涕(さんえんしゅってい・潸焉として涕を出す)。
小東大東,杼柚其空。糾糾葛屨,可以履霜。佻佻公子,行彼周行。既往既來,使我心疚。
小東大東(しょうとうだいとう・小東大東)、杼柚其空(じょちゅうきくう・杼柚が空しい)。糾糾葛屨(きゅうきゅうかつく・糾糾とした葛屨)、可以履霜(いりそう)。佻佻公子(ちょうちょうこうし・佻佻たる公子)、行彼周行(こうひしゅうこう・あの周行を行く)。既往既來(きおうきらい・既に往き既に來る)、使我心疚(しかしんきゅう・我が心を疚せる)。
有冽氿泉,無浸獲薪。契契寤嘆,哀我憚人。薪是獲薪,尚可載也。哀我憚人,亦可息也。
有冽氿泉(ゆうれつきせん・冽とした氿泉・側出泉)、無浸獲薪(むしんかくしん・獲薪を浸すな)。契契寤歎(けいけいごたん・契契として寤嘆する)、哀我憚人(あいがだんじん・我が憚れる人を哀れ)。薪是獲薪(しんぜかくしん・薪はこの獲薪)、尚可載也(しょうかさいや・まだ載せられる)。哀我憚人、亦可息也(やくかそくや・また息ることもできる)。
東人之子,職勞不來。西人之子,粲粲衣服。舟人之子,熊羆是裘。私人之子,百僚是試。
東人之子(とうじんしし・東人の子)、職勞不來(しょろうふらい・ただ労して來ない・勞いされない)。西人之子(せいじんしし・西人の子)、粲粲衣服(さんさんいふく・粲粲たる衣服)。舟人之子(しゅうじんしし・舟人の子)、熊羆是裘(ゆうひぜきゅう・熊羆を裘とする)。私人之子(しじんしし・私人の子)、百僚是試(ぴゃくりょうぜし・百僚が之を試みる)。
或以其酒,不以其漿。鞙鞙佩璲,不以其長。維天有漢,監亦有光。跂彼織女,終日七襄。
或以其酒(かくいきしゅ・或いは其の酒を以ってする)、不以其漿(ふいきしょう・漿を以ってしない)。鞙鞙佩璲(けんけんはいすい・鞙鞙たる佩璲)、不以其長(ふいきちょう・長を以ってしない)。維天有漢(いてんゆうかん・天に漢・銀河あり)、監亦有光(かんやくゆうこう・監るにも光あり)。跂彼織女(きひしょくじょ・跂とした織女)、終日七襄(しゅうじつしちじょう・終日七襄・七回遷る)。
雖則七襄,不成報章。睆彼牽牛,不以服箱。東有啟明,西有長庚。有捄天畢,載施之行。
雖則七襄(すいそくしちじょう・七襄するといえども)、不成報章(ふせいほうしょう・報章を成さない・往復の文様を織れない)。睆彼牽牛(かんひけんぎゅう・睆たる牽牛)、不以服箱(ふいふくしょう・箱に服さない・車を駕らない)。東有啟明(とうゆうけいめい・東に啟明あり)、西有長庚(せいゆうちょうこう・西に長庚あり)。有捄天畢(ゆうきゅうてんぴつ・捄とした天畢)、載施之行(さいししこう・行に施されている・路に置かれている)。
維南有箕,不可以簸揚。維北有鬥,不可以挹酒漿。維南有箕,載翕其舌。維北有鬥,西柄之揭。
維南有箕(いなんゆうき・南に箕あり)、不可以簸揚(ふかいはよう・簸揚できない)。維北有斗(いほくゆうと・北に斗あり)、不可以挹酒漿(ふかいゆうしゅしょう・酒漿を挹げない)。維南有箕、載翕其舌(さいきゅうきぜつ・其の舌を翕む)。維北有斗、西柄之揭(せいへいしけつ・西の柄が揭げられている)。
四月維夏,六月徂署。先祖匪人,胡寧忍予?
四月維夏(しがついか・四月は夏)、六月徂暑(ろくがつそしょ・六月は暑に徂く・署は暑の誤字)。先祖匪人(せんそひじん・先祖は人でないのか)、胡寧忍予(こねいにんよ・どうして寧ろ予に忍いか)。
秋日悽悽,百卉具腓。亂離瘼矣,爰其適歸?
秋日淒淒(しゅうじつせいせい・秋日は淒淒と)、百卉具腓(ぴゃっきぐひ・百卉は皆腓れる・枯れる)。亂離瘼矣(らんりぼくい・乱離が瘼れる・病苦する)、爰其適歸(えんきてっき・どこに適いて歸るか)。
冬日烈烈,飄風發發。民莫不穀,我獨何害?
冬日烈烈(とうじつれつれつ・冬日は烈烈と)、飄風發發(ひょうふうはつはつ)。民莫不穀、我獨何害。
山有嘉卉,侯栗侯梅。廢為殘賊,莫知其尤!
山有嘉卉(ざんゆうかき・山に嘉卉あり)、侯栗侯梅(こうりつこうばい・栗と梅)。廢為殘賊(はいいざんぞく・廢れて殘賊となる)、莫知其尤(ばくちきゆう・其の尤を知る者なし・過ちを知る者なし)。
相彼泉水,載清載濁。我日構禍,曷雲能谷?
相彼泉水(そうひせんすい・あの泉水を見よ)、載清載濁(さいせいさいだく・清くもあり濁くもある)。我日構禍(がじつこうか・我は日に禍を構う)、曷云能穀(かつうんのうこく・どうして能く穀くできようか)。
滔滔江漢,南國之紀。盡瘁以仕,寧莫我有?
滔滔江漢(とうとうこうかん・滔々たる江漢)、南國之紀(なんこくしき・南国の綱紀)。盡瘁以仕(じんすいいし・瘁るまで仕える)、寧莫我有(ねいばくがゆう・誰も我を有・友としないか)。
匪鶉匪鳶,翰飛戾天。匪鱣匪鮪,潛逃於淵。
匪鶉匪鳶(ひじゅんひえん・鶉でなく鳶でもないのに)、翰飛戾天(かんひれいてん・高く飛んで天に至る)。匪鱣匪鮪(ひてんひい・鱣でなく鮪でもないのに)、潛逃于淵(せんとうおえん・淵に潜逃する)。
山有蕨薇,隰有杞桋。君子作歌,維以告哀。
山有蕨薇(ざんゆうけつび・蕨と薇)、隰有杞桋(しつゆうきい・杞と桋)。君子作歌(くんしさくか)、維以告哀(いいこくあい・ただ哀を告げるのみ)。
陟彼北山,言採其杞。偕偕士子,朝夕從事。王事靡盬,憂我父母。
陟彼北山、言采其杞(げんさいきき)。偕偕士子(かいかいしし・偕偕とした士)、朝夕從事(ちょうせきしょうじ)。王事靡盬、憂我父母。
溥天之下,莫非王土;率土之濱,莫非王臣。大夫不均,我從事獨賢。
溥天之下(ふてんしか・普く天の下)、莫非王土(ばくひおうど)。率土之濱(そつどしひん・土の浜に率いるまで)、莫非王臣(ばくひおうしん)。大夫不均(だいふふきん)、我從事獨賢(がしょうじどっけん・賢なる・多い)。
四牡彭彭,王事傍傍。嘉我未老,鮮我方將。旅力方剛,經營四方。
四牡彭彭(しぼほうほう)、王事傍傍(おうじぼうぼう)。嘉我未老(かがみろう・老いないと嘉め)、鮮我方將(せんがほうしょう・まさに将に壮んと鮮め)。旅力方剛(りょりょくほうこう・体力がまさに剛い)、經營四方(けいえいしほう)。
或燕燕居息,或盡瘁事國;或息偃在床,或不已於行。
或燕燕居息(かくえんえんきょそく・或いは燕燕として居息し)、或盡瘁事國(かくじんすいじこく)。或息偃在床(かくそくえんざいしょう・床に偃伏して息し)、或不已于行(かくふいおこう・行き已まない)。
或不知叫號,或慘慘劬勞;或棲遲偃仰,或王事鞅掌。
或不知叫號(かくふちきょうごう・叫號を知らない)、或慘慘劬勞(かくさんさんくろう)。或棲遲偃仰(かくせいちえんぎょう・棲遅し偃仰し)、或王事鞅掌(かくおうじおうしょう・鞅掌と忙しい)。
或湛樂飲酒,或慘慘畏咎;或出入風議,或靡事不為。
或湛樂飲酒(かくたんらくいんしゅ・湛乐して酒を飲み)、或慘慘畏咎(かくさんさんいきゅう・咎を畏れて慘慘と)。或出入風議(かくしゅつにゅうふうぎ・出入りして議し)、或靡事不為(かくびじふい・為さない事がない)。
無將大車,祇自塵兮。無思百憂,祇自疧兮。
無將大車(むしょうだいしゃ・大車を將・推すな)、祇自塵兮(しじじんけい・ただ自ら塵するのみ)。無思百憂(むしひゃくゆう)、祇自疧兮(しじきけい・ただ自ら疧・病むのみ)。
無將大車,維塵冥冥。無思百憂,不出於熲。
無將大車、維塵冥冥(いじんめいめい・塵が冥冥と)。無思百憂、不出于熲(ふしゅつおけい・熲・光明から出ない)。
無將大車,維塵雍兮。無思百憂,祇自重兮。
無將大車、維塵雝兮(いじんようけい・塵が雝として塞ぐ)。無思百憂、祇自重兮(しじちょうけい・ただ自ら重くするのみ)。
明明上天,照臨下土。我徵徂西,至於艽野。二月初吉,載離寒暑。
明明上天(めいめいじょうてん・明明たる上天)、照臨下土(しょうりんげど・下土を照臨する)。我征徂西(がせいそせい・我が征して西に徂く)、至于艽野(しおきゅうや・荒遠の野に至る)。二月初吉(にがつしょきつ・二月の初吉)、載離寒暑(さいりかんしょ・寒暑を経る)。
心之憂矣,其毒大苦。念彼共人,涕零如雨。豈不懷歸?畏此罪罟!
心之憂矣、其毒大苦(きどくたいく・その毒は大いに苦しい)。念彼共人(ねんぴきょうじん・あの恭人を念う)、涕零如雨(ていれいにゅう・涕が零れること雨の如し)。豈不懷歸(きふかいき・懐歸しないか)。畏此罪罟(いしざいこ・この罪罟を畏れる)。
昔我往矣,日月方除。曷雲其還?歲聿雲莫。念我獨兮,我事孔庶。
昔我往矣、日月方除(じつげつほうじょ・日月がまさに除する・歳が改まる)。曷云其還(かつうんきかん・いつか還ると云うか)。歲聿云莫(さいいちうんぼ・歳は聿として莫れんとする)。念我獨兮、我事孔庶(がじこうしょ・我が事は孔庶・多い)。
心之憂矣,憚我不暇。念彼共人,眷眷懷顧!豈不懷歸?畏此譴怒。
心之憂矣、憚我不暇(だんがふか・憚りて我に暇なし)。念彼共人、睠睠懷顧(けんけんかいこ・睠睠として懐顧する)。豈不懷歸、畏此譴怒(いしけんど・この譴怒を畏れる)。
昔我往矣,日月方奧。曷雲其還?政事愈蹙。歲聿雲莫,採蕭獲菽。
昔我往矣、日月方奧(じつげつほうおく・暖かい)。曷云其還。政事愈蹙(せいじよりしゅく・政事は愈々蹙まる)。歲聿云莫、采蕭穫菽(さいしょうかくしゅく・蕭を采り菽を穫る)。
心之憂矣,自詒伊戚。念彼共人,興言出宿。豈不懷歸?畏此反覆。
心之憂矣、自詒伊戚(じいいせき・自ら戚を詒る)。念彼共人、興言出宿(こうげんしゅつしゅく・起きて言い、出て宿る)。豈不懷歸、畏此反覆(いしはんぷく・この反覆を畏れる)。
嗟爾君子,無恆安處。靖共爾位,正直是與。神之聽之,式谷以女。
嗟爾君子(さじくんし・あなたがた君子よ)、無恆安處(むこうあんしょ・恆に安処するな)。靖共爾位(せいきょうじい・靖め恭くあなたの位を)、正直是與(せいちょくぜよ・正直と与にせよ)。神之聽之(しんしちょうし・神が之を聴けば)、式穀以女(しきこくいじょ・穀を以って汝に報いる)。
嗟爾君子,無恆安息。靖共爾位,好是正直。神之聽之,介爾景福。
嗟爾君子、無恆安息(むこうあんそく)。靖共爾位、好是正直(こうぜせいちょく・この正直を好め)。神之聽之、介爾景福(かいじけいふく・景福を介す)。
鼓鍾將將,淮水湯湯,憂心且傷。淑人君子,懷允不忘。
鼓鍾將將(こしょうしょうしょう・鍾を鼓して將將)、淮水湯湯(わいすいしょうしょう)、憂心且傷(ゆうしんしょしょう)。淑人君子(しゅくじんくんし)、懷允不忘(かいいんふぼう・允を懐れ忘れない)。
鼓鍾喈喈,淮水湝湝,憂心且悲。淑人君子,其德不回。
鼓鍾喈喈(こしょうかいかい)、淮水湝湝(わいすいかいかい)、憂心且悲(ゆうしんしょひ)。淑人君子、其德不回(きとくふかい・其の徳は回・邪でない)。
鼓鍾伐鼛,淮有三洲,憂心且妯。淑人君子,其德不猶。
鼓鍾伐鼛(こしょうばつこう・大鼓を伐つ)、淮有三洲(わいゆうさんしゅう)、憂心且妯(ゆうしんしょちゅう・妯く・悼み動く)。淑人君子、其德不猶(きとくふゆう・其の徳は猶・差失ない)。
鼓鍾欽欽,鼓瑟鼓琴,笙磬同音。以雅以南,以龠不僭。
鼓鍾欽欽(こしょうきんきん)、鼓瑟鼓琴、笙磬同音(せいけいどうおん)。以雅以南(いがいなん・雅楽と南楽を以って)、以籥不僭(いやくふせん・籥を以って僭れない)。
楚楚者茨,言抽其棘,自昔何為?我蓺黍稷。我黍與與,我稷翼翼。
楚楚者茨(そそしゃし・楚楚たる蒺藜)、言抽其棘(げんちゅうききょく・その棘を抽き去る)。自昔何為(じせきかい・昔より何を為したか)。我蓺黍稷(がげいしょしょく・我は黍稷を蓺る)。我黍與與(がしょよよ・我が黍は與與として)、我稷翼翼(がしょくよくよく)。
我倉既盈,我庾維億。以為酒食,以享以祀,以妥以侑,以介景福。
我倉既盈(がそうきえい・我が倉は既に盈ち)、我庾維億(がゆいおく・我が庾は億ある)。以為酒食(いいしゅしょく)、以享以祀(いきょういし・享け祀る)、以妥以侑(いだいゆう・妥め侑する)、以介景福(いかいけいふく・景福を介す)。
濟濟蹌蹌,絜爾牛羊,以往烝嘗。或剝或亨,或四或將。祝祭於祊,
濟濟蹌蹌(さいさいしょうしょう・濟濟として蹌蹌)、絜爾牛羊(けつじぎゅうよう・あなたの牛羊を絜め)、以往烝嘗(いおうじょうしょう・烝嘗に往く)。或剝或亨(かくはくかくこう・或いは剝ぎ或いは亨き)、或肆或將(かくしかくしょう・或いは肆し或いは將・捧げ進める)。祝祭于祊(しゅくさいおほう・祝が祊・廟門内に祭る)。
祀事孔明。先祖是皇,神保是饗。孝孫有慶,報以介福,萬壽無疆!
祀事孔明(しじこうめい・祀事は孔め明らか)。先祖是皇(せんそぜこう・先祖はこれに皇・至る)、神保是饗(しんぽぜきょう・神保はこれを饗ける)。孝孫有慶(こうそんゆうけい・孝孫に慶あり)、報以介福(ほういかいふく・介福を以って報いる)、萬壽無疆。
執爨踖踖,為俎孔碩,或燔或炙。君婦莫莫,為豆孔庶。為賓為客,
執爨踖踖(しゅうさんせきせき・爨を執る者は踖踖と)、為俎孔碩(いそこうせき・俎を為すこと孔碩い)。或燔或炙(かくはんかくしゃ・或いは燔し或いは炙る)。君婦莫莫(くんぷばくばく・君婦は莫莫と清い)、為豆孔庶(いとうこうしょ・豆を為すこと孔庶い)。為賓為客(いひんいかく)。
獻酬交錯。禮儀卒度,笑語卒獲。神保是格,報以介福,萬壽攸酢!
獻醻交錯(けんしゅうこうさく・獻酬が交錯す)。禮儀卒度(れいぎそつど・礼儀は卒に度に合う)、笑語卒獲(しょうごそつかく・笑語は卒に獲・宜を得る)。神保是格(しんぽぜかく・神保はこれに格・至る)、報以介福、萬壽攸酢(ばんじゅゆうさく・万寿は攸く酢・報いる)。
我孔戁矣,式禮莫愆。工祝致告,徂賚孝孫。苾芬孝祀,神嗜飲食。
我孔熯矣(がこうかんい・我は孔く熯・敬惧する)、式禮莫愆(しきれいばくけん・礼を式して愆らない)。工祝致告(こうしゅくちこく・工祝が告を致す)、徂賚孝孫(そらいこうそん・往き孝孫に賚う)。苾芬孝祀(ひつふんこうし・苾芬たる孝祀)、神嗜飲食(しんしいんしょく・神は飲食を嗜む)。
卜爾百福,如幾如式。既齊既稷,既匡既敕。永錫爾極,時萬時億!
卜爾百福(ぼくじひゃくふく・あなたに百福を卜る)、如幾如式(にょきにょしき・幾の如く式の如く・如期如法)。既齊既稷(きせいきしょく・既に斉く既に稷・敏い)、既匡既敕(ききょうきちょく・既に匡り既に敕・飭する)。永錫爾極(えいしゃくじきょく・永くあなたに極・中正を錫う)、時萬時億(じばんじおく・萬あり億あり)。
禮儀既備,鐘鼓既戒,孝孫徂位,工祝致告,神具醉止,皇屍載起。
禮儀既備(れいぎきび)、鐘鼓既戒(しょうこきかい・戒め備える)。孝孫徂位(こうそんそい・孝孫は位に往く)、工祝致告。神具醉止(しんぐすいし・神は具に醉えり)、皇尸載起(こうしさいき・皇尸は載に起つ)。
鼓鍾送屍,神保聿歸。諸宰君婦,廢徹不遲。諸父兄弟,備言燕私。
鼓鍾送尸(こしょうそうし・鍾を鼓して尸を送る)、神保聿歸(しんぽいちき・神保は聿に歸る)。諸宰君婦(しょさいくんぷ)、廢徹不遲(はいてつふち・廢徹すること遲らず)。諸父兄弟(しょふけいてい)、備言燕私(びげんえんし・皆言って燕私す)。
樂具入奏,以綏後祿。爾餚既將,莫怨具慶。既醉既飽,小大稽首。
樂具入奏(がくぐにゅうそう・楽は具に入り奏す)、以綏後祿(いすいこうろく・後の祿を綏ぐ)。爾殽既將(じこうきしょう・あなたの殽は既に將・進む)、莫怨具慶(ばくえんぐけい・怨むことなく具に慶ぶ)。既醉既飽(きすいきほう)、小大稽首(しょうだいけいしゅ・小大が稽首する)。
神嗜飲食,使君壽考。孔惠孔時,維其盡之。子子孫孫,勿替引之!
神嗜飲食、使君壽考(しくんじゅこう・君を壽考せしめる)。孔惠孔時(こうけいこうじ・孔く惠み孔く時なり)、維其盡之(いきじんし・其の之を盡すによる)。子子孫孫(ししそんそん)、勿替引之(ぶつていいんし・替えず之を引け)。
信彼南山,維禹甸之。畇畇原隰,曾孫田之。我疆我理,南東其畝。
信彼南山(しんぴなんざん・信として長く延びる南山)、維禹甸之(いうでんし・禹が之を甸・治めた)。畇畇原隰(いんいんげんしつ・畇畇たる原隰)、曾孫田之(そうそんでんし・曾孫が之を田する)。我疆我理(がきょうがり・我が疆し我が理り)、南東其畝(なんとうきぼ・南東に其の畝を向ける)。
上天同雲。雨雪雰雰,益之以霢霂。既優既渥,既沾既足。生我百穀。
上天同雲(じょうてんどううん・上天は同じ雲)、雨雪雰雰(うせつふんふん・雨雪が雰雰と)、益之以霢霂(えきしいばくぼく・これに霢霂を益す)。既優既渥(きゆうきあく・既に優れ既に渥い)、既霑既足(きてんきそく・既に霑り既に足る)。生我百穀(せいがひゃっこく・我が百穀を生す)。
疆埸翼翼,黍稷彧彧。曾孫之穡,以為酒食。畀我屍賓,壽考萬年。
疆埸翼翼(きょうえきよくよく・疆埸は翼翼として)、黍稷彧彧(しょしょくいくいく)。曾孫之穡(そうそんししょく・曾孫の穡)、以為酒食(いいしゅしょく)。畀我尸賓(ひがしひん・我が尸賓に畀る)、壽考萬年(じゅこうばんねん)。
中田有廬,疆埸有瓜。是剝是菹,獻之皇祖。曾孫壽考,受天之祜。
中田有廬(ちゅうでんゆうりょ・中田に廬あり)、疆埸有瓜(きょうえきゆうか)。是剝是菹(ぜはくぜそ・これを剝きこれを菹・漬ける)、獻之皇祖(けんしこうそ)。曾孫壽考(そうそんじゅこう)、受天之祜(じゅてんしこ・天の祜を受ける)。
祭以清酒,從以騂牡,享於祖考。執其鸞刀,以啟其毛,取其血膋。
祭以清酒(さいいせいしゅ・清酒を以って祭る)、從以騂牡(しょういせいぼ・騂牡を従えて)、享于祖考(きょうおそこう・祖考に享く)。執其鸞刀(しゅうきらんとう・其の鸞刀を執り)、以啟其毛(いけいきもう・其の毛を啟き)、取其血膋(しゅきけつりょう・其の血膋を取る)。
是烝是享,苾苾芬芬。祀事孔明,先祖是皇。報以介福。萬壽無疆。
是烝是享(ぜじょうぜきょう・これを烝めこれを享く)、苾苾芬芬(ひつひつふんぷん)。祀事孔明、先祖是皇。報以介福、萬壽無疆。
倬彼甫田,歲取十千。我取其陳,食我農人。自古有年。
倬彼甫田(たくひふでん・倬たる甫田)、歲取十千(さいしゅうじゅうせん・歳に十千を取る)。我取其陳(がしゅきちん・我は其の陳・古穀を取る)、食我農人(しょくがのうじん)。自古有年(じこゆうねん・古より年・豊年あり)。
今適南畝,或耘或耔。黍稷薿薿,攸介攸止,烝我髦士。
今適南畝(こんてきなんぼ・今南畝に適く)、或耘或耔(かくうんかくし・或いは耘り或いは耔・培土する)。黍稷薿薿(しょしょくぎぎ)、攸介攸止(ゆうかいゆうし・攸く介ぎ攸く止まる・長じ成る)。烝我髦士(じょうがぼうし・我が髦士に烝・進む)。
以我齊明,與我犧羊,以社以方。我田既臧,農夫之慶。
以我齊明(いがせいめい・我が斉明・潔い黍稷)、與我犧羊(よがぎよう・我が犧羊と)、以社以方(いしゃいほう・社に方に祭る)。我田既臧(がでんきそう・我が田は既に臧い)、農夫之慶(のうふしけい)。
琴瑟擊鼓,以御田祖。以祈甘雨,以介我稷黍,以谷我士女。
琴瑟擊鼓(きんしつげきこ・琴瑟を撃ち鼓を鼓し)、以御田祖(いぎょでんそ・田祖を御・迎える)。以祈甘雨(いきかんう・甘雨を祈る)、以介我稷黍(いかいがしょくしょ・我が稷黍を介す)、以穀我士女(いこくがしじょ・我が士女を穀・養う)。
曾孫來止,以其婦子。饁彼南畝,田畯至喜。攘其左右,
曾孫來止(そうそんらいし・曾孫來る)、以其婦子(いきふし)。饁彼南畝(ようぴなんぽ・あの南畝に饁する)、田畯至喜(でんしゅんしき)。攘其左右(じょうきさゆう・其の左右を攘る)。
嘗其旨否。禾易長畝,終善且有。曾孫不怒,農夫克敏。
嘗其旨否(しょうきしひ・其の旨きか否かを嘗める)。禾易長畝(かいちょうぼ・禾が易して畝に長ず・茂れ畝に長ず)、終善且有(しゅうぜんしょゆう・終に善く且つ有る)。曾孫不怒(そうそんふど)、農夫克敏(のうふこくびん・農夫は能く敏い)。
曾孫之稼,如茨如梁。曾孫之庾,如坻如京。乃求千斯倉,
曾孫之稼(そうそんしか)、如茨如梁(にょしにょりょう・茨の如く梁の如く)。曾孫之庾(そうそんしゆ)、如坻如京(にょちにょけい・坻の如く京の如く)。乃求千斯倉(だいきゅうせんしそう・乃ち千斯の倉を求め)。
乃求萬斯箱。黍稷稻粱,農夫之慶。報以介福,萬壽無疆。
乃求萬斯箱(だいきゅうばんししょう・万斯の箱を求め)。黍稷稻粱(しょしょくとうりょう)、農夫之慶。報以介福、萬壽無疆。
大田多稼,既種既戒,既備乃事。以我覃耜,俶載南畝。
大田多稼(だいでんたか・大田の稼は多い)。既種既戒(きしゅきかい・既に種し既に戒む)、既備乃事(きびだいじ・既に備わりて乃ち事あり)。以我覃耜(いがたんし・我が覃・鋭い耜を以って)、俶載南畝(しゅくさいなんぼ・俶めて南畝に載・事す)。
播厥百穀,既庭且碩,曾孫是若。
播厥百穀(はきゃくひゃっこく・厥の百穀を播き)、既庭且碩(きていしょせき・既に庭・挺き且つ碩い)、曾孫是若(そうそんぜじゃく・曾孫が是に若・順う)。
既方既皂,既堅既好,不稂不莠。去其螟螣,及其蟊賊,
既方既皁(きほうきそう・既に方・穎き既に皁・殻す)、既堅既好(きけんきこう)。不稂不莠(ふろうふゆう・稂なく莠ない)。去其螟螣(きょきめいとく・其の螟螣を去り)、及其蟊賊(きゅうきぼうぞく)。
無害我田稚。田祖有神,秉畀炎火。
無害我田穉(むがいがでんち・我が田の穉・幼禾を害すな)。田祖有神(でんそゆうしん・田祖に神あり)、秉畀炎火(へいひえんか・秉って炎火に畀る)。
有渰萋萋,興雨祈祈。雨我公田,遂及我私。彼有不獲稚,
有渰萋萋(ゆうえんせいせい・渰として雲が萋萋)、興雨祈祈(こううきき・雨を興すこと祈祈として)。雨我公田(うがこうでん・我が公田に雨り)、遂及我私(すいきゅうがし・遂に我が私に及ぶ)。彼有不穫穉(ひゆうふかくち・彼に獲らざる穉あり)。
此有不斂穧,彼有遺秉,此有滯穗,伊寡婦之利。
此有不斂穧(しゆうふれんさい・此に斂めざる穧あり)、彼有遺秉(ひゆういへい・彼に遺秉あり)、此有滯穗(しゆうたいすい・此に滯穗あり)、伊寡婦之利(いかふしり・寡婦の利なり)。
曾孫來止,以其婦子。饁彼南畝,田畯至喜。來方禋祀,
曾孫來止、以其婦子。饁彼南畝、田畯至喜。來方禋祀(らいほういんし・方・四方を來て禋祀する)。
以其騂黑,與其黍稷。以享以祀,以介景福。
以其騂黑(いきせいこく・其の騂・赤牛と黑・黒豚を以って)、與其黍稷(よきしょくしょ)。以享以祀、以介景福。
瞻彼洛矣,維水泱泱。君子至止,福祿如茨。韎韐有奭,以作六師。
瞻彼洛矣(せんぴらくい・あの洛を瞻る)、維水泱泱(いすいおうおう・水は泱泱と)。君子至止、福祿如茨(ふくろくにょし・福祿は茨の如く厚い)。韎韐有奭(びかつゆうせき・韎韐は奭として赤い)、以作六師(いさくろくし・六師を作・奮起させる)。
瞻彼洛矣,維水泱泱。君子至止,鞸琫有珌。君子萬年,保其家室。
瞻彼洛矣、維水泱泱。君子至止、鞞琫有珌(へいほうゆうひつ・鞞琫に珌あり・刀鞘の玉飾り)。君子萬年(くんしばんねん)、保其家室(ほきかしつ)。
瞻彼洛矣,維水泱泱。君子至止,福祿既同。君子萬年,保其家邦。
瞻彼洛矣、維水泱泱。君子至止、福祿既同(ふくろくきどう・福祿は既に同じく集まる)。君子萬年、保其家邦(ほきかほう)。
裳裳者華,其葉湑兮。我覯之子,我心寫兮。我心寫兮,是以有譽處兮。
裳裳者華(しょうしょうしゃか・裳裳と咲く華)、其葉湑兮(きようしょけい)。我覿之子(がてきしし・我はこの子に覿う)、我心寫兮(がしんしゃけい)。我心寫兮、是以有譽處兮(ぜいゆうよしょけい)。
裳裳者華,芸其黃矣。我覯之子,維其有章矣。維其有章矣,是以有慶矣。
裳裳者華、芸其黃矣(うんきこうい・芸として黄い)。我覿之子、維其有章矣(いきゆうしょうい・其の章・文彩あるに因る)。維其有章矣、是以有慶矣(ぜいゆうけいい)。
裳裳者華,或黃或白。我覯之子,乘其四駱。乘其四駱,六轡沃若。
裳裳者華、或黃或白(かくこうかくはく)。我覿之子、乘其四駱(じょうきしらく・其の四駱に乘る)。乘其四駱、六轡沃若(ろっぴあくじゃく)。
左之左之,君子宜之。右之右之,君子有之。維其有之,是以似之。
左之左之(さしさし・左にせよ左にせよ)、君子宜之(くんしぎし・君子は之に宜い)。右之右之(ゆうしゆうし)、君子有之(くんしゆうし・君子は之を有する)。維其有之(いきゆうし・其の之を有するに因り)、是以似之(ぜいじし・是を以って之に似る・先人に似る)。
交交桑扈,有鶯其羽。君子樂胥,受天之祜。
交交桑扈、有鶯其羽(ゆうおうきう・鶯として其の羽・文采)。君子樂胥(くんしらくしょ・君子は樂胥・樂しむ)、受天之祜(じゅてんしこ)。
交交桑扈,有鶯其領。君子樂胥,萬邦之屏。
交交桑扈、有鶯其領(ゆうおうきりょう・其の領・頸)。君子樂胥、萬邦之屏(ばんぽうしへい・万邦の屏)。
之屏之翰,百辟為憲。不戢不難,受福不那。
之屏之翰(しへいしかん・屏であり翰であり)、百辟為憲(ひゃくへきいけん・百辟が憲とする)。不戢不難(ふしゅうふなん・戢まず難・畏れず)、受福不那(じゅふくふだ・福を受けること那・少なくない)。
兕觥其觩,旨酒思柔。彼交匪敖,萬福來求。
兕觥其觩(じこうききゅう・兕觥は其の觩・曲がる)、旨酒思柔(ししゅうしじゅう・旨酒は柔を思う)。彼交匪敖(ひこうひごう・交・徼求して敖・傲らず)、萬福來求(ばんぷくらいきゅう・萬福は來り求める)。
鴛鴦于飛,畢之羅之。君子萬年,福祿宜之。
鴛鴦于飛(えんおうおひ・鴛鴦が飛ぶ)、畢之羅之(ひつしらし・畢・小網し羅・大網し・捕える)。君子萬年、福祿宜之(ふくろくぎし)。
鴛鴦在梁,戢其左翼。君子萬年,
鴛鴦在梁(えんおうざいりょう・鴛鴦は梁に在り)、戢其左翼(しゅうきさよく・其の左翼を戢める)。君子萬年、
宜其遐福。乘馬在廄,摧之秣之。君子萬年,福祿艾之。
宜其遐福(ぎきかふく・其の遐福に宜い)。乘馬在厩(じょうばざいきゅう・乘馬は厩に在り)、摧之秣之(さいしばつし・摧・銼草して之を秣・粟飼いする)。君子萬年、福祿艾之(ふくろくがいし・艾・養する)。
乘馬在廄,秣之摧之。君子萬年,福祿綏之。
乘馬在厩、秣之摧之(ばつしさいし)。君子萬年、福祿綏之(ふくろくすいし・綏・安んじる)。
有頍者弁,實維伊何?爾酒既旨,爾餚既嘉。豈伊異人?兄弟匪他。
有頍者弁(ゆうけいしゃべん・頍として弁を戴く)、實維伊何(じついいか・実にこれ何を為すか)。爾酒既旨(じしゅきし・あなたの酒は既に旨く)、爾殽既嘉(じこうきか・殽は既に嘉い)。豈伊異人(きいいじん・異人・他人か)、兄弟匪他(けいていひた・兄弟で他ではない)。
蔦與女蘿,施於松柏。未見君子,憂心奕奕;既見君子,庶幾說懌。
蔦與女蘿(ちょうよじょら・蔦と女蘿)、施于松柏(しうしょうはく・松柏に施・延びる)。未見君子、憂心奕奕(ゆうしんえきえき・憂心が奕奕・疾い)。既見君子、庶幾說懌(しょきせつえき・庶幾く說懌・喜ぶ)。
有頍者弁,實維何期?爾酒既旨,爾餚既時。豈伊異人?兄弟具來。
有頍者弁、實維何期(じついかき・何を期するか)。爾酒既旨、爾殽既時(じこうきじ・殽は既に時・適時)。豈伊異人、兄弟具來(けいていぐらい・兄弟が具に來る)。
蔦與女蘿,施於松上。未見君子,憂心怲怲;既見君子,庶幾有臧。
蔦與女蘿、施于松上(しうしょうじょう・松の上に施る)。未見君子、憂心怲怲(ゆうしんへいへい・怲怲と憂える)。既見君子、庶幾有臧(しょきゆうそう・庶幾く臧・善あり)。
有頍者弁,實維在首。爾酒既旨,爾餚既阜。豈伊異人?兄弟甥舅。
有頍者弁、實維在首(じついざいしゅ・実に之は首に在る)。爾酒既旨、爾殽既阜(じこうきふ・阜・盛ん)。豈伊異人、兄弟甥舅(けいていせいきゅう・兄弟・甥・舅)。
如彼雨雪,先集維霰。死喪無日,無幾相見。樂酒今夕,君子維宴。
如彼雨雪(にょひうせつ・あの雨雪する如く)、先集維霰(せんしゅういせん・先づ集まるは霰)。死喪無日(しそうむじつ・死喪に日なし・期日がない)、無幾相見(むきそうけん・幾ばくもなく相見られない)。樂酒今夕(らくしゅこんせき・今夕酒を樂しみ)、君子維宴(くんしいえん・君子はただ宴す)。
間關車之舝兮,思孌季女逝兮。匪飢匪渴,德音來括。雖無好友?式燕且喜。
間關車之轄兮(かんかんしゃしかつけい・間關として車の轄・音が鳴る)、思孌季女逝兮(しれんきじょせいけい・孌たる季女が逝くのを思う)。匪飢匪渴(ひきひかつ・飢ではなく渴でもなく)、德音來括(とくいんらいかつ・德音が來て括・會する)。雖無好友(すいむこうゆう・好友がなくても)、式燕且喜(しきえんしょき・式に燕して且つ喜ぶ)。
依彼平林,有集維鷮。辰彼碩女,令德來教。式燕且譽,好爾無射。
依彼平林(いぴへいりん・依として茂る平林)、有集維鷮(ゆうしゅういきょう・集まっているのは鷮・雉)。辰彼碩女(しんぴせきじょ・辰・時宜かなった碩女)、令德來教(れいとくらいきょう・令德が來て教える)。式燕且譽(しきえんしょよ・燕して且つ譽あり)、好爾無射(こうじむえき・あなたを好み射・厭きない)。
雖無旨酒?式飲庶幾。雖無嘉餚?式食庶幾。雖無德與女?式歌且舞?
雖無旨酒(すいむししゅ)、式飲庶幾(しきいんしょき・式に飲み庶幾い)。雖無嘉殽(すいむかこう)、式食庶幾(しきしょくしょき)。雖無德與女(すいむとくよじょ・德をあなたに與するものなくても)、式歌且舞(しきかしょぶ・式に歌い且つ舞う)。
陟彼高岡,析其柞薪。析其柞薪,其葉湑兮。鮮我覯爾,我心寫兮。
陟彼高岡(ちょくひこうこう・あの高岡に陟る)、析其柞薪(せききさくしん・其の柞薪を析る)。析其柞薪、其葉湑兮(きようしょけい)。鮮我覿爾(せんがてきじ・鮮やかに我は爾に覿う)、我心寫兮。
高山仰止,景行行止。四牡騑騑,六轡如琴。覯爾新婚,以慰我心。
高山仰止(こうざんぎょうし・高山は仰ぐ)、景行行止(けいこうこうし・景行は行う)。四牡騑騑(しぼひひ)、六轡如琴(ろっぴにょきん・六轡は琴の如く・琴弦の如し)。覿爾新婚(てきじしんこん・爾の新婚に覿う)、以慰我心(いいがしん・我が心を慰める)。
營營青蠅,止於樊。豈弟君子,無信讒言。
營營青蠅(えいえいせいよう・營營として飛ぶ青蠅)、止于樊(しおはん・樊・籬に止まる)。豈弟君子(かいていくんし)、無信讒言(むしんざんげん・讒言を信じるな)。
營營青蠅,止於棘。讒人罔極,交亂四國。
營營青蠅、止于棘(しおきょく)。讒人罔極(ざんじんもうきょく・讒人は罔極・極なし)、交亂四國(こうらんしこく・交わり四國を亂す)。
營營青蠅,止於榛。讒人罔極,構我二人。
營營青蠅、止于榛(しおしん)。讒人罔極、構我二人(こうがにじん・我が二人を構・陷れる)。
賓之初筵,左右秩秩。籩豆有楚,殽核維旅。酒既和旨,飲酒孔偕。
賓之初筵(ひんししょえん・賓が初めて筵に就く)、左右秩秩(さゆうちつちつ・左右は秩秩として)。籩豆有楚(へんとうゆうそ・籩豆は楚として整う)、殽核維旅(こうかくいりょ・殽核は旅・陳ぶ)。酒既和旨(しゅきわし・酒は既に和し旨く)、飲酒孔偕(いんしゅこうかい・酒を飲むこと孔く偕・斉しい)。
鐘鼓既設,舉酬逸逸。大侯既抗,弓矢斯張。射夫既同,獻爾發功。
鐘鼓既設(しょうこきせつ)、舉醻逸逸(きょしゅういついつ・醻を舉げること逸逸として)。大侯既抗(たいこうきこう・大侯は既に抗・張られた)、弓矢斯張(きゅうししちょう)。射夫既同(しゃふきどう・射夫は既に同・同調する)、獻爾發功(けんじはつこう・あなたの發・射の功を獻る)。
發彼有的,以祈爾爵。
發彼有的(はっぴゆうてき・彼の的に發する)、以祈爾爵(いきじしゃく・あなたの爵を祈る・求める)。
籥舞笙鼓,樂既和奏。烝衎烈祖,以洽百禮。百禮既至,有壬有林。
籥舞笙鼓(やくぶせいこ・籥舞に笙鼓)、樂既和奏(がくきわそう・樂は既に和して奏す)。烝衎烈祖(じょうかんれっそ・烈祖を烝め衎ませる)、以洽百禮(いきょうひゃくれい・百禮に洽う)。百禮既至(ひゃくれいきし・百禮は既に至り)、有壬有林(ゆうじんゆうりん・壬・大きく林・盛ん)。
錫爾純嘏,子孫其湛。其湛曰樂,各奏爾能。賓載手仇,室人入又。
錫爾純嘏(しゃくじじゅんこ・あなたに純嘏を錫う)、子孫其湛(しそんきたん・子孫は其れ湛む・樂しむ)。其湛曰樂(きたんえつらく・湛んで樂と曰う)、各奏爾能(かくそうじのう・各おのあなたの能を奏す)。賓載手仇(ひんさいしゅきゅう・賓は載に手・自ら仇・敵手を選ぶ)、室人入又(しつじんにゅうゆう・室人は入りて又・陪する)。
酌彼康爵,以奏爾時。
酌彼康爵(しゃくひこうしゃく・彼の康爵に酌む)、以奏爾時(いそうじじ・あなたの時・中時な射を奏・進める)。
賓之初筵,溫溫其恭。其未醉止,威儀反反。曰既醉止,威儀幡幡。
賓之初筵、溫溫其恭(うんうんききょう・溫溫として其れ恭)。其未醉止(きみすいし・其の未だ醉わざる時)、威儀反反(いぎはんぱん・威儀は反反として)。曰既醉止(えつきすいし・既に醉えりと曰うに至れば)、威儀幡幡(いぎはんぱん・幡幡と)。
舍其坐遷,屢舞仙仙。其未醉止,威儀抑抑。曰既醉止,威儀抑抑。
舍其坐遷(しゃきざせん・其の坐を舍てて遷る)、屢舞僊僊(るぶせんせん・屢々舞うこと僊僊)。其未醉止、威儀抑抑(いぎよくよく・抑抑として)。曰既醉止、威儀怭怭(いぎひつひつ・怭怍と・軽佻)。
是曰既醉,不知其秩。
是曰既醉(ぜえつきすい・是を既醉と曰う)、不知其秩(ふちきちつ・其の秩・秩序を知らない)。
賓既醉止,載號載呶。亂我籩豆,屢舞僛僛。是曰既醉,不知其郵。
賓既醉止(ひんきすいし)、載號載呶(さいごうさいどう・號し呶く・叫び騒ぐ)。亂我籩豆(らんがへんとう)、屢舞僛僛(るぶきき・僛僛と傾側する)。是曰既醉、不知其尤(ふちきゆう・其の尤・過失を知らない)。
側弁之俄,屢舞傞傞。既醉而出,並受其福。醉而不出,是謂伐德。
側弁之俄(そくべんしが・弁が側して俄く・傾く)、屢舞傞傞(るぶささ・傞傞と舞い止まない)。既醉而出(きすいにしゅつ・既に醉いて出れば)、並受其福(へいじゅきふく・並び其の福を受く)。醉而不出(すいにふしゅつ・醉いて出なければ)、是謂伐德(ぜいばつとく・是を德を伐つと謂う)。
飲酒孔嘉,維其令儀。
飲酒孔嘉(いんしゅこうか・酒を飲むこと孔嘉い)、維其令儀(いきれいぎ・其の令儀・善い儀容あるに因る)。
凡此飲酒,或醉或否。既立之監,或佐之史。彼醉不臧,不醉反恥。
凡此飲酒(ぼんしいんしゅ・凡そ此の飲酒する者)、或醉或否(かくすいかくひ)。既立之監(きりゅうしかん・既に監を立て)、或佐之史(かくさしし・或いは史を佐す)。彼醉不臧(ひすいふそう・彼の醉える不臧は)、不醉反恥(ふすいはんち・醉わざる者が反って恥とする)。
式勿從謂,無俾大怠。匪言勿言,匪由勿語。由醉之言,俾出童羖。
式勿從謂(しきぶつしょうい・式に従って謂うな・勸酒するな)、無俾大怠(むひたいたい・大いに怠らせるな)。匪言勿言(ひげんぶつげん・言うべからざるを言うな)、匪由勿語(ひゆうぶつご・由なきを語るな)。由醉之言(ゆうすいしげん・醉えりての言に由りて)、使出童羖(ししゅつどうこ・童羖・角なき羖羊を出さしめる)。
三爵不識,矧敢多又。
三爵不識(さんしゃくふしき・三爵をもって識らず・分別を失う)、矧敢多又(しんかんたゆう・況んや敢えて多く又す・勸めるをや)。
魚在在藻,有頒其首。王在在鎬,豈樂飲酒。
魚在在藻(ぎょざいざいそう・魚は藻に在り)、有頒其首(ゆうふんきしゅ・頒として其の首・大きい)。王在在鎬(おうざいざいこう・王は鎬に在り)、豈樂飲酒(かいらくいんしゅ・豈樂して酒を飲む)。
魚在在藻,有莘其尾。王在在鎬,飲酒樂豈。
魚在在藻、有莘其尾(ゆうしんきび・莘として其の尾・長い)。王在在鎬、飲酒樂豈(いんしゅらっかい)。
魚在在藻,依於其蒲。王在在鎬,有那其居。
魚在在藻、依于其蒲(いおうきほ・其の蒲に依る)。王在在鎬、有那其居(ゆうなききょ・那として其の居・安閑)。
采菽采菽,筐之莒之。君子來朝,何錫予之?雖無予之?路車乘馬。又何予之?玄袞及黼。
采菽采菽(さいしゅくさいしゅく・菽を采る)、筐之筥之(きょうしきょし・筐に筥に盛る)。君子來朝(くんしらいちょう)、何錫予之(かしゃくよし・何を以て之に錫予するか)。雖無予之(すいむよし・之に予するものなくとも)、路車乘馬(ろしゃじょうば・路車と乘馬)。又何予之(ゆうかよし・又何を之に予するか)。玄袞及黼(げんこんきゅうふ・玄袞と黼裳)。
觱沸檻泉,言採其芹。君子來朝,言觀其旗。其旗淠淠,鸞聲嘒嘒。載驂載駟,君子所屆。
觱沸檻泉(ひつふつかんせん・觱沸として檻泉・噴出泉)、言采其芹(げんさいききん・其の芹を采る)。君子來朝、言觀其旂(げんかんきき・其の旂を觀る)。其旂淠淠(ききひひ・其の旂は淠淠と動く)、鸞聲嘒嘒(らんせいえいえつ)。載驂載駟(さいさんさいし・三馬にし四馬にし)、君子所屆(くんししょかい・君子の至る所)。
赤芾在股,邪幅在下。彼交匪紓,天子所予。樂只君子,天子命之。樂只君子,福祿申之。
赤芾在股(せきふつざいこ・赤芾は股に在り)、邪幅在下(じゃふくざいか・邪幅は下に・脛に)。彼交匪紓(ひこうひしょ・交・徼求して紓・怠らない)、天子所予(てんししょよ・天子の予する所)。樂只君子(らくしくんし)、天子命之(てんしめいし)。樂只君子、福祿申之(ふくろくしんし・福祿は之に申・重ねる)。
維柞之枝,其葉蓬蓬。樂只君子,殿天子之邦。樂只君子,萬福攸同。平平左右,亦是率從。
維柞之枝(いさくしし・柞の枝)、其葉蓬蓬(きようほうほう)。樂只君子、殿天子之邦(でんてんししほう・天子の邦を殿・鎮める)。樂只君子、萬福攸同(ばんぷくゆうどう)。平平左右(へいへいさゆう・平平たる左右・辨治する左右)、亦是率從(やくぜそつじゅう・亦是に率い従う)。
泛泛楊舟,紼纚維之。樂只君子,天子葵之。樂只君子,福祿膍之。優哉遊哉,亦是戾矣。
汎汎楊舟(はんぱんようしゅう)、紼纚維之(ふつりいし・紼纚・大繩で之を維す)。樂只君子、天子葵之(てんしきし・天子が之を葵・度量する)。樂只君子、福祿膍之(ふくろくびし・膍・厚く賜る)。優哉游哉(ゆうさいゆうさい・優游として)、亦是戾矣(やくぜれいい・亦是に戾・至った)。
騂騂角弓,翩其反矣。兄弟婚姻,無胥遠矣。
騂角弓(せいかくきゅう・騂・調和した角弓)、翩其反矣(へんきはんい・翩として其れ反する・強く張ると反る)。兄弟昏姻(けいていこんいん・兄弟と昏姻)、無胥遠矣(むしょえんい・相い遠ざかるな)。
爾之遠矣,民胥然矣。爾之教矣,民胥效矣。
爾之遠矣(じしえんい・あなたが之を遠ざければ)、民胥然矣(みんしょぜんい・民は胥・皆然となる)。爾之教矣(じしきょうい・あなたが教えれば)、民胥傚矣(みんしょこうい・民は胥に傚う)。
此令兄弟,綽綽有裕。不令兄弟,交相為愈。
此令兄弟(しれいけいてい・此の令・善い兄弟)、綽綽有裕(しゃくしゃくゆうゆう・綽綽として裕あり)。不令兄弟(ふれいけいてい)、交相為瘉(こうそういゆ・交わり相い瘉・害を為す)。
民之無良,相怨一方。受爵不讓,至於已斯亡。
民之無良(みんしむりょう・民の良からざるは)、相怨一方(そうえんいっぽう・相い怨むこと一方)。受爵不讓(じゅしゃくふじょう・爵を受けて讓らない)、至于己斯亡(しおきしぼう・己に至って斯く亡ぶ)。
老馬反為駒,不顧其後。如食宜饇,如酌孔取。
老馬反為駒(ろうばはんいく・老馬が反って駒と為す・駒馬のように扱う)、不顧其後(ふこきこう・其の後を顧みない)。如食宜饇(にょしょくぎおう・食に宜しく饇・飽きるように)、如酌孔取(にょしゃくこうしゅ・酌に孔取・多く取るように)。
毋教猱升木,如塗塗附。君子有徽猷,小人與屬。
毋教猱升木(むきょうのうしょうぼく・猱に木に升るを教えるな)、如塗塗附(にょととふ・塗に塗を附ける如く・泥に泥を塗るように)。君子有徽猷(くんしゆうきゆう・君子に徽猷・美しい謀あれば)、小人與屬(しょうじんよぞく・小人は之に與・屬する)。
雨雪瀌瀌,見晛曰消。莫肯下遺,式居婁驕。
雨雪瀌瀌(うせつひょうひょう)、見晛曰消(けんげんえつしょう・晛・日の気を見れば消えると曰う)。莫肯下遺(ばくこうかい・下に遺るを肯んじない)、式居婁驕(しききょるきょう・式に居して婁・屢々驕れる)。
雨雪浮浮,見晛曰流。如蠻如髦,我是用憂。
雨雪浮浮(うせつふふ)、見晛曰流(けんげんえつりゅう・流れると曰う)。如蠻如髦(にょばんにょぼう・蠻の如く髦の如し・蛮髦のよう)、我是用憂(がぜようゆう・我は是を用いて憂える)。
有菀者柳,不尚息焉。上帝甚蹈,無自暱焉。俾予靖之,後予極焉。
有菀者柳(ゆううつしゃりゅう・菀たる柳)、不尚息焉(ふしょうそくえん・尚に其の下に息することを願わない)。上帝甚蹈(じょうていじんとう・上帝は甚だ蹈・変動する)、無自暱焉(むじじつえん・自ら暱・親しむな)。俾予靖之(ひよせいし・予を靖・安んじさせて)、後予極焉(こうよきょくえん・後に予を極とする・極端に処する)。
有菀者柳,不尚愒焉。上帝甚蹈,無自瘵焉。俾予靖之,後予邁焉。
有菀者柳、不尚愒焉(ふしょうけいえん・愒・憩う)。上帝甚蹈、無自瘵焉(むじさいえん・自ら瘵・病を招くな)。俾予靖之、後予邁焉(こうよばいえん・後に予を邁・遠行させる)。
有鳥高飛,亦傅於天。彼人之心,於何其臻。曷予靖之,居以兇矜。
有鳥高飛(ゆうちょうこうひ)、亦傅于天(やくふうてん・亦た天に傅く)。彼人之心(ひじんししん・彼の人の心)、于何其臻(おかきしん・何に其の臻るか・どこに至るか)。曷予靖之(かつよせいし・どうして予を靖め)、居以凶矜(きょいきょうきょう・凶矜・凶危矜恃に居る)。
彼都人士,狐裘黃黃。其容不改,出言有章。行歸於周,萬民所望。
彼都人士(ひとじんし・彼の都の人士)、狐裘黃黃(こきゅうこうこう・狐裘は黃黃たり)。其容不改(きようふかい・其の容は改まらない)、出言有章(しゅつげんゆうしょう・言を出すに章あり)。行歸于周(こうきおしゅう・周に行き歸る)、萬民所望(ばんみんしょぼう・萬民の望む所)。
彼都人士,臺笠緇撮。彼君子女,綢直如發。我不見兮,我心不說。
彼都人士、臺笠緇撮(たいりゅうしさつ・臺笠に緇撮・緇布冠)。彼君子女(ひくんしじょ・彼の君子の女)、綢直如髮(ちゅうちょくにょはつ・綢直として髮の如し・稠密で直い)。我不見兮(がふけんけい・我は見ない)、我心不說(がしんふせつ・我が心は說ばない・悦ばない)。
彼都人士,充耳琇實。彼君子女,謂之尹吉。我不見兮,我心苑結。
彼都人士、充耳琇實(じゅうじしゅうじつ・充耳は琇・美玉を實・充てる)。彼君子女、謂之尹吉(いしいつきち・之を尹吉と謂う・尹氏姑氏)。我不見兮、我心苑結(がしんうんけつ・苑結する・鬱結する)。
彼都人士,垂帶而厲。彼君子女,捲髮如蠆。我不見兮,言從之邁。
彼都人士、垂帶而厲(すいたいにれい・帶を垂れて厲・飾る)。彼君子女、卷髮如蠆(けんぱつにょたい・卷髮は蠆・蝎の如し)。我不見兮、言從之邁(げんじゅうしばい・之に從って邁・遠く行くと言う)。
匪伊垂之,帶則有餘。匪伊卷之,發則有旟。我不見兮,云何盱矣。
匪伊垂之(ひいすいし・伊・故意に垂れるのではない)、帶則有餘(たいそくゆうよ・帶は則ち餘あり)。匪伊卷之(ひいけんし)、髮則有旟(はつそくゆうよ・髮は則ち旟・上揚あり)。我不見兮、云何盱矣(うんかくい・云何く盱・憂えん)。
終朝采綠,不盈一匊。予發曲局,薄言歸沐。
終朝采綠(しゅうちょうさいりょく・終朝綠・荩草を采る)、不盈一匊(ふえいいっきく・一匊に盈ちない)。予髮曲局(よはつきょくきょく・予が髮は曲局・卷れて)、薄言歸沐(はくげんきぼく・歸りて沐せん)。
終朝採藍,不盈一襜。五日為期,六日不詹。
終朝采藍(しゅうちょうさいらん・藍を采る)、不盈一襜(ふえいいってん・一襜・衣襟に盈ちない)。五日為期(ごじついき・五日を期とする)、六日不詹(ろくじつふてん・六日に詹・見えない)。
之子於狩,言韔其弓。之子於釣,言綸之繩。
之子于狩(ししおしゅ・この子が狩に往く)、言韔其弓(げんちょうききゅう・其の弓を韔・袋に納めん)。之子于釣(ししおちょう・釣に往く)、言綸之繩(げんりんしじょう・其の繩を綸・糸にする)。
其釣維何?維魴及鱮。維魴及鱮,薄言觀者。
其釣維何(きちょういか・其の釣るは何ぞ)。維魴及鱮(いぼうきゅうしょ・魴と鱮)。維魴及鱮、薄言觀者(はくげんかんしゃ・觀る者)。
芃芃黍苗,陰雨膏之。悠悠南行,召伯勞之。
芃芃黍苗、陰雨膏之。悠悠南行(ゆうゆうなんこう・悠悠として南に行く)、召伯勞之(しょうはくろうし・召伯が之を勞う)。
我任我輦,我車我牛。我行既集,蓋雲歸哉。
我任我輦(がにんがれん・我は任・負い我は輦・挽く)、我車我牛(がしゃがぎゅう・我が車し我が牛す)。我行既集(がこうきしゅう・我が行は既に集・成る)、蓋云歸哉(かいうんきさい・蓋し歸らんと云う)。
我徒我御,我師我旅。我行既集,蓋雲歸處。
我徒我御(がとがぎょ・我は徒し我は御する)、我師我旅(がしがりょ・我が師たり我が旅たり)。我行既集、蓋云歸處(かいうんきしょ・歸り處らんと云う)。
肅肅謝功,召伯營之。烈烈徵師,召伯成之。
肅肅謝功(しゅくしゅくしゃこう・肅肅たる謝の功・工事)、召伯營之(しょうはくえいし・召伯が之を營する)。烈烈征師(れつれつせいし・烈烈たる征師)、召伯成之(しょうはくせいし)。
原隰既平,泉流既清。召伯有成,王心則寧。
原隰既平(げんしつきへい・原隰は既に平らぎ)、泉流既清(せんりゅうきせい・泉流は既に清い)。召伯有成(しょうはくゆうせい・召伯に成あり)、王心則寧(おうしんそくねい・王の心は則ち寧んず)。
隰桑有阿,其葉有難。既見君子,其樂如何。
隰桑有阿(しっそうゆうあ・隰桑は阿として柔らかい)、其葉有難(きようゆうなん・其の葉は難・那として盛ん)。既見君子、其樂如何(きらくじょか・其の樂しさ如何)。
隰桑有阿,其葉有沃。既見君子,云何不樂。
隰桑有阿、其葉有沃(きようゆうよく・沃として潤う)。既見君子、云何不樂(うんかふらく・云何か樂しまざらん)。
隰桑有阿,其葉有幽。既見君子,德音孔膠。
隰桑有阿、其葉有幽(きようゆうゆう・幽として黑い)。既見君子、德音孔膠(とくいんこうこう・德音は孔く膠・固い)。
心乎愛矣,遐不謂矣?中心藏之,何日忘之!
心乎愛矣(しんこあいい・心に愛す)、遐不謂矣(かふいい・遐・何ぞ謂わざる・言い出さないか)。中心藏之(ちゅうしんぞうし・中心に之を藏す)、何日忘之(かじつぼうし・何の日か之を忘れん)。
白華菅兮,白茅束兮。之子之遠,俾我獨兮。
白華菅兮(はくかかんけい・白華は菅)、白茅束兮(はくぼうそくけい・白茅に束ねられ)。之子之遠(しししえん・この子の遠ざかる)、俾我獨兮(ひがどくけい・我を獨りせしめる)。
英英白云,露彼菅茅。天步艱難,之子不猶。
英英白雲(えいえいはくうん・英英たる白雲)、露彼菅茅(ろひかんぼう・彼の菅茅に露する)。天步艱難(てんぽかんなん・天の步は艱難・運命が難しい)、之子不猶(ししふゆう・この子は猶・比ばない・及ばない)。
滮池北流,浸彼稻田。嘯歌傷懷,念彼碩人。
滮池北流(ひょうちほくりゅう・滮池は北に流れる)、浸彼稻田(しんぴとうでん・彼の稻田を浸す)。嘯歌傷懷(しょうかしょうかい・嘯き歌いて懷を傷める)、念彼碩人(ねんぴせきじん・彼の碩人を念う)。
樵彼桑薪,卬烘於煁。維彼碩人,實勞我心。
樵彼桑薪(しょうひそうしん・彼の桑薪を樵る)、卬烘于煁(こうこうおしん・烘ること煁・爐に)。維彼碩人(いひせきじん)、實勞我心(じつろうがしん)。
鼓鍾於宮,聲聞於外。念子懆懆,視我邁邁。
鼓鍾于宮(こしょうおきゅう・宮に鍾を鼓する)、聲聞于外(せいぶんおがい・聲は外に聞える)。念子懆懆(ねんしそうそう・子を念うに懆懆として)、視我邁邁(しがばいばい・我を視るに邁邁として・説ばない)。
有鶖在梁,有鶴在林。維彼碩人,實勞我心。
有鶖在梁(ゆうしゅうざいりょう・鶖・禿鶖が梁に在り)、有鶴在林(ゆうかくざいりん)。維彼碩人、實勞我心。
鴛鴦在梁,戢其左翼。之子無良,二三其德。
鴛鴦在梁、戢其左翼。之子無良(ししむりょう・この子は良からず)、二三其德(にさんきとく・其の德を二三す・二心三意)。
有扁斯石,履之卑兮。之子之遠,俾我疧兮。
有扁斯石(ゆうへんしせき・扁として斯の石・扁石あり)、履之卑兮(りしひけい・之を履めば卑い)。之子之遠、俾我疧兮(ひがきけい・我を疧・病ませる)。
綿蠻黃鳥,止於丘阿。道之雲遠,我勞如何。飲之食之,教之誨之。命彼後車,謂之載之。
緜蠻黃鳥(めんばんこうちょう・緜蠻たる黃鳥)、止于丘阿(しおきゅうあ・丘阿に止まる)。道之云遠(どうしうんえん・道の之を云う遠き)、我勞如何(がろうじょか・我が勞れ如何)。飲之食之(いんししょくし・之に飲ませ之に食わせ)、教之誨之(きょうしかいし・之を教え之を誨える)。命彼後車(めいひこうしゃ・彼の後車に命じ)、謂之載之(いしさいし・之に載せよと謂う)。
綿蠻黃鳥,止於丘隅。豈敢憚行,畏不能趨。飲之食之。教之誨之。命彼後車,謂之載之。
緜蠻黃鳥、止于丘隅(しおきゅうぐう・丘隅に止まる)。豈敢憚行(きかんだんこう・敢えて行を憚・憚るか)、畏不能趨(いふのうすう・能く趨・疾く往けないを畏れる)。飲之食之、教之誨之。命彼後車、謂之載之。
綿蠻黃鳥,止於丘側。豈敢憚行,畏不能極。飲之食之,教之誨之。命彼後車,謂之載之。
緜蠻黃鳥、止于丘側(しおきゅうそく)。豈敢憚行、畏不能極(いふのうきょく・極・至れないを畏れる)。飲之食之、教之誨之。命彼後車、謂之載之。
幡幡瓠葉,採之亨之。君子有酒,酌言嘗之。
幡幡瓠葉(はんぱんこうよう・幡幡とした瓠の葉)、采之亨之(さいしこうし・之を采り之を亨る)。君子有酒、酌言嘗之(しゃくげんしょうし・酌んで之を嘗めん)。
有兔斯首,炮之燔之。君子有酒,酌言獻之。
有兔斯首(ゆうとししゅ・兔の斯の首あり)、炮之燔之(ほうしはんし・之を炮き之を燔す)。君子有酒、酌言獻之(しゃくげんけんし・酌んで之を獻ん)。
有兔斯首,燔之炙之。君子有酒,酌言酢之。
有兔斯首、燔之炙之(はんししゃし)。君子有酒、酌言酢之(しゃくげんさくし・酌んで之に酢す)。
有兔斯首,燔之炮之。君子有酒,酌言酬之。
有兔斯首、燔之炮之(はんしほうし)。君子有酒、酌言醻之(しゃくげんしゅうし・酌んで之に醻る)。
漸漸之石,維其高矣。山川悠遠,維其勞矣。武人東征,不遑朝矣。
漸漸之石(ぜんぜんしせき・漸漸と高い石)、維其高矣(いきこうい・其の高きによる)。山川悠遠(さんせんゆうえん)、維其勞矣(いきろうい・其の勞れるによる)。武人東征(ぶじんとうせい)、不遑朝矣(ふこうちょうい・朝を俟つ暇なし)。
漸漸之石,維其卒矣。山川悠遠,曷其沒矣?武人東征,不遑出矣。
漸漸之石、維其卒矣(いきそつい・其の卒・険峻による)。山川悠遠、曷其沒矣(かつきぼつい・いつか其の沒・尽きるか)。武人東征、不遑出矣(ふこうしゅつい)。
有豕白蹢,烝涉波矣。月離於畢,俾滂沱矣。武人東征,不皇他矣。
有豕白蹢(ゆうしはくてき・白蹢の豕あり)、烝涉波矣(しょうしょうはい・烝として波を涉る)。月離于畢(げつりおひつ・月が畢に離れる)、俾滂沱矣(ひぼうだい・滂沱たらしめる)。武人東征、不遑他矣(ふこうたい・他を顧みる暇なし)。
苕之華,芸其黃矣。心之憂矣,維其傷矣!
苕之華(ちょうしか・凌霄の花)、芸其黃矣(うんきこうい・芸として黄い)。心之憂矣、維其傷矣(いきしょうい・其の傷まるによる)。
苕之華,其葉青青。知我如此,不如無生!
苕之華、其葉青青(きようせいせい)。知我如此(ちがにょじ・我が此く如きを知れば)、不如無生(ふにょむせい・生まれざるに如かず)。
牂羊墳首,三星在罶。人可以食,鮮可以飽!
牂羊墳首(そうようふんしゅ・牝羊の墳・大きな首)、三星在罶(さんせいざいりゅう・三星が罶に在る)。人可以食(じんかいしょく・人は食できるが)、鮮可以飽(せんかいほう・飽くことは鮮ない)。
何草不黃?何日不行?何人不將?經營四方。
何草不黃(かそうふこう・何の草か黃ばない)。何日不行(かじつふこう・何の日か行かない)。何人不將(かじんふしょう・何の人か將・行役しない)。經營四方(けいえいしほう)。
何草不玄?何人不矜?哀我征夫,獨為匪民。
何草不玄(かそうふげん・玄・黑くない)、何人不矜(かじんふきょう・矜・獨りでない)。哀我征夫(あいがせいふ)、獨為匪民(どくいひみん・獨り匪民・民でないとされる)。
匪兕匪虎,率彼曠野。哀我征夫,朝夕不暇。
匪兕匪虎(ひじひこ・兕でなく虎でもないのに)、率彼曠野(そつひこうや・彼の曠野を率・行く)。哀我征夫、朝夕不暇(ちょうせきふか)。
有芃者狐,率彼幽草。有棧之車,行彼周道。
有芃者狐(ゆうぼうしゃこ・芃たる狐あり)、率彼幽草(そつひゆうそう・彼の幽草を率る)。有棧之車(ゆうさんししゃ・棧・高い之車あり)、行彼周道(こうひしゅうどう)。
大雅
文王在上,於昭於天。周雖舊邦,其命維新。有周不顯,帝命不時。文王陟降,在帝左右。
文王在上(ぶんおうざいじょう・文王は上に在り)、於昭于天(おしょうおてん・於昭として天に)。周雖舊邦(しゅうすいきゅうほう・周は旧邦といえども)、其命維新(きめいいしん・其の命は新なり)。有周不顯(ゆうしゅうふけん・有周は顯ならずや)、帝命不時(ていめいふじ・帝命は時ならずや)。文王陟降(ぶんおうちょくこう・文王は陟降し)、在帝左右(ざいていさゆう・帝の左右に在る)。
亹亹文王,令聞不已。陳錫哉周,侯文王孫子。文王孫子,本支百世,凡周之士,不顯亦世。
亹亹文王(びびぶんおう・亹亹と倦まぬ文王)、令聞不已(れいぶんふい・令聞は已まない)。陳錫哉周(ちんしゃくさいしゅう・陳錫するかな周)、侯文王孫子(こうぶんおうそんし・文王の孫子に侯・維る)。文王孫子、本支百世(ほんしひゃくせい・本支は百世)。凡周之士(ぼんしゅうしし・凡そ周の士)、不顯亦世(ふけんやくせい・顯ならずや亦た世に)。
世之不顯,厥猶翼翼。思皇多士,生此王國。王國克生,維周之楨;濟濟多士,文王以寧。
世之不顯(せいしふけん)、厥猶翼翼(けつゆうよくよく・厥の猶は翼翼と慎む)。思皇多士(しこうたし・思うに皇・美しき多士)、生此王國(せいしおうこく・此の王國に生まる)。王國克生(おうこくこくせい・王國は能く生す)、維周之楨(いしゅうしてい・周の楨・幹)。濟濟多士(さいさいたし・濟濟たる多士)、文王以寧(ぶんおういねい・文王は以って寧んず)。
穆穆文王,於緝熙敬止。假哉天命。有商孫子。商之孫子,其麗不億。上帝既命,侯於周服。
穆穆文王(ぼくぼくぶんおう・穆穆たる文王)、於緝熙敬止(おしゅうきけいし・緝熙として敬む)。假哉天命(かさいてんめい・大きなり天命)。有商孫子(ゆうしょうそんし・商の孫子あり)。商之孫子(しょうしそんし)、其麗不億(きれいふおく・其の麗・数は億ならず・一億を超える)。上帝既命(じょうていきめい・上帝は既に命じ)、侯于周服(こうおしゅうふく・周に侯して服す)。
侯服於周,天命靡常。殷士膚敏。裸將於京。厥作裸將,常服黼冔。王之藎臣。無念爾祖。
侯服于周(こうふくおしゅう・周に侯服す)、天命靡常(てんめいびじょう・天命は常なし)。殷士膚敏(いんしふびん・殷士は膚・美しく敏い)。祼將于京(かんしょうおけい・京に祼將・灌祭を獻じる)。厥作祼將(けっさくかんしょう・厥の祼將を作す)、常服黼冔(じょうふくふきゅう・常に黼冔を服する・黼衣と殷冠)。王之藎臣(おうししんしん・王の藎臣・進用の臣)。無念爾祖(むねんじそ・あなたの祖を念ぜざるな)。
無念爾祖,聿修厥德。永言配命,自求多福。殷之未喪師,克配上帝。宜鑑於殷,駿命不易!
無念爾祖、聿修厥德(いっしゅうけっとく・聿に厥の德を修め)。永言配命(えいげんはいめい・永く言に命に配す)、自求多福(じきゅうたふく・自ら多福を求め)。殷之未喪師(いんしみそうし・殷の未だ師・衆を喪わざる時)、克配上帝(こくはいじょうてい・能く上帝に配したり)。宜鑒于殷(ぎかんおいん・宜しく殷に鑑みるべし)、駿命不易(しゅんめいふえき・駿命は易からず)。
命之不易,無遏爾躬。宣昭義問,有虞殷自天。上天之載,無聲無臭。儀刑文王,萬邦作孚。
命之不易(めいしふえき・命は易からず)、無遏爾躬(むあつじきゅう・あなたの躬に遏るな)。宣昭義問(せんしょうぎもん・義問・善い聞を宣昭し)、有虞殷自天(ゆうぐいんじてん・殷の天よりを虞・度る)。上天之載(じょうてんしさい・上天の載・事)、無聲無臭(むせいむしゅう・声なく臭いない)。儀刑文王(ぎけいぶんおう・文王を儀刑・法とせよ)、萬邦作孚(ばんぽうさくふ・萬邦が孚・信を作す)。
明明在下,赫赫在上。天難忱斯,不易維王。天位殷適,使不挾四方。
明明在下(めいめいざいか・明明として下に在り)、赫赫在上(かっかくざいじょう・赫赫として上に在り)。天難忱斯(てんなんしんし・天は忱・信じ難い)、不易維王(ふえきいおう・易からざるは王たること)。天位殷適(てんいいんてき・天位は殷の適・嫡子)、使不挾四方(しふきょうしほう・四方を挾・有せしめない)。
摯仲氏任,自彼殷商,來嫁於周,曰嬪於京。乃及王季,維德之行。
摯仲氏任(しちゅうしじん・摯国任姓の仲氏)、自彼殷商(じひいんしょう・彼の殷商より)、來嫁于周(らいかおしゅう・來り周に嫁ぐ)、曰嬪于京(えつひんおけい・京に嬪と曰う)。乃及王季(だいきゅうおうき・乃ち王季に及び)、維德之行(いとくしこう・ただ德の行を為す)。
大任有身,生此文王。維此文王,小心翼翼。昭事上帝,聿懷多福。厥德不回,以受方國。
大任有身(たいにんゆうしん・大任に身・娠あり)、生此文王(せいしぶんおう)。維此文王(いしぶんおう)、小心翼翼(しょうしんよくよく)。昭事上帝(しょうじじょうてい・昭らかに上帝に事え)、聿懷多福(いっかいたふく・聿に多福を懷・來す)。厥德不回(けっとくふかい・厥の德は回・邪まない)、以受方國(いじゅほうこく・以って方國を受く)。
天監在下,有命既集。文王初載,天作之合。在洽之陽,在渭之涘。
天監在下(てんかんざいか・天は下に監り)、有命既集(ゆうめいきしゅう・命は既に集まる)。文王初載(ぶんおうしょさい・文王の初載・初年)、天作之合(てんさくしごう・天が之に合を作す)。在洽之陽(ざいこうしよう・洽の陽・北岸に)、在渭之涘(ざいいしし・渭の涘に)。
文王嘉止,大邦有子。大邦有子,俔天之妹。文定厥祥,親迎於渭。造舟為梁,不顯其光。
文王嘉止(ぶんおうかし・文王が之を嘉す)、大邦有子(たいほうゆうし・大邦に子あり)。大邦有子、伣天之妹(けんてんしまい・天の妹の伣・如し)。文定厥祥(ぶんじょうけっしょう・文・納幣に厥の祥を定め)、親迎于渭(しんげいおい・渭に親迎す)。造舟為梁(ぞうしゅういりょう・舟を造りて梁・橋と為す)、不顯其光(ふけんきこう・其の光を顯さずや)。
有命自天,命此文王。於周於京,纘女維莘。長子維行,篤生武王。保右命爾,燮伐大商。
有命自天(ゆうめいじてん・天より命あり)、命此文王(めいしぶんおう)。于周于京(おしゅうおけい・周に京に)、纘女維莘(さんじょいしん・莘の女を纘・娶る)。長子維行(ちょうしいこう・長子は維に行・出行す)、篤生武王(とくせいぶおう・篤く武王を生む)。保右命爾(ほゆうめいじ・保右・保佑して爾に命じ)、燮伐大商(しょうばつだいしょう・燮・和して大商を伐つ)。
殷商之旅,其會如林。矢於牧野,維予侯興。上帝臨女,無二爾心。
殷商之旅(いんしょうしりょ・殷商の旅・軍)、其會如林(きかいにょりん・其の會は林の如し)。矢于牧野(しおぼくや・牧野に矢・陳す)、維予侯興(いよこうこう・維に予侯・我が君が興る)。上帝臨女(じょうていりんじょ・上帝は女・あなたがたを臨む)、無貳爾心(むにじしん・爾の心を貳・二にするな)。
牧野洋洋,檀車煌煌,駟騵彭彭。維師尚父,時維鷹揚。涼彼武王,四伐大商,會朝清明。
牧野洋洋(ぼくやようよう・牧野は洋洋と廣い)、檀車煌煌(だんしゃこうこう・檀車は煌煌と)、駟騵彭彭(しげんほうほう・四騵は彭彭)。維師尚父(いししょうふ・師尚父は維に)、時維鷹揚(じいようよう・時に鷹揚する)。涼彼武王(りょうひぶおう・彼の武王を涼・輔く)、肆伐大商(しばつだいしょう・肆として大商を伐つ)、會朝清明(かいちょうせいめい・會朝は清明)。
綿綿瓜瓞。民之初生,自土沮漆。古公亶父,陶復陶冗,未有家室。
綿綿瓜瓞(めんめんかてつ・綿綿たる瓜瓞・大瓜小瓜)。民之初生(みんししょせい・民の初めて生るや)、自土徂漆(じどそしつ・杜より漆に徂く・「土」は「杜」の誤字)。古公亶父(ここうたんぷ・古公亶父)、陶復陶穴(とうふくとうけつ・復を陶し穴を陶す・窯と穴を穿つ・「冗」は「穴」の誤字)、未有家室(みゆうかしつ・家室未だ有らず)。
古公亶父,來朝走馬。率西水滸,至於岐下。爰及姜女,聿來胥宇。
古公亶父、來朝走馬(らいちょうそうば・朝に走馬す)。率西水滸(そつせいすいこ・西の水滸を率・沿い)、至于岐下(しおきか・岐下に至る)。爰及姜女(えんきゅうきょうじょ・爰に姜女を及・伴い)、聿來胥宇(いつらいしょう・聿に來て胥・宇を視る)。
周原膴膴,堇荼如飴。爰始爰謀,爰契我龜,曰止曰時,築室於茲。
周原膴膴(しゅうげんここ・周原は膴膴として肥美)、堇荼如飴(きんとにょい・堇と荼が飴の如し)。爰始爰謀(えんしえんぼう・爰に始め爰に謀り)、爰契我龜(えんけいがき・爰に我が龜を契・灼く)。曰止曰時(えつしえつじ・止まれ時なりと曰い)、築室于茲(ちくしつおし・茲に室を築けと)。
乃慰乃止,乃左乃右,乃疆乃理,乃宣乃畝。自西徂東,周爰執事。
廼慰廼止(だいいだいし・廼に慰め廼に止まり)、廼左廼右(だいさだいゆう)、廼疆廼理(だいきょうだいり・疆し理り)、廼宣廼畝(だいせんだいぼ・宣・導き畝る)。自西徂東(じせいそとう・西より東に徂き)、周爰執事(しゅうえんしっじ・周・遍く爰に事を執る)。
乃召司空,乃召司徒,俾立室家。其繩則直,縮版以載,作廟翼翼。
乃召司空(だいしょうしくう・司空を召し)、乃召司徒(だいしょうしと・司徒を召し)、俾立室家(ひりつしつか・室家を立てしむ)。其繩則直(きしんそくちょく・其の繩は則ち直し)、縮版以載(しゅくはんいさい・版を縮・束ねて以って載・築く)、作廟翼翼(さくびょうよくよく・廟を作ること翼翼と)。
捄之陾陾,度之薨薨,築之登登,削屢馮馮。百堵皆興,鼛鼓弗勝。
捄之陾陾(きゅうしじょうじょう・捄・盛土するに陾陾と)、度之薨薨(たくしこうこう・度・投げるに薨薨と)、築之登登(ちくしとうとう・築くに登登と)、削屢馮馮(さくりょうひょうひょう・屢を削りて馮馮と)。百堵皆興(ひゃくとかいこう・百堵皆興り)、鼛鼓弗勝(こうこふしょう・鼛鼓も勝たない・勞の盛んに鼓の音も及ばない)。
乃立皋門,皋門有伉。乃立應門,應門將將。乃立冢土,戎醜攸行。
廼立皋門(だいりつこうもん・皋門を立つ)、皋門有伉(こうもんゆうこう・皋門は伉・高い)。廼立應門(だいりつおうもん・應門を立つ)、應門將將(おうもんしょうしょう・將將と嚴正)。廼立冢土(だいりつちょうど・冢土・大社を立つ)、戎醜攸行(じゅうしゅうゆうこう・戎醜・大衆が攸く行く)。
四不殄厥慍,亦不隕厥問。柞棫拔矣,行道兌矣。混夷駾矣,維其喙矣!
肆不殄厥慍(しふてんけつうん・肆・故に其の慍を殄さず・「四」は「肆」の誤字)、亦不隕厥問(やくふいんけつもん・亦た其の問・聲名を隕さない)。柞棫拔矣(さくよくばつい・柞棫は拔かれた)、行道兌矣(こうどうだいい・行道は兌・通じた)。混夷駾矣(こんいたいい・混夷は駾・逃げた)、維其喙矣(いきかいい・維に其の喙・喘ぐのみ)。
虞芮質厥成,文王蹶厥生。予曰有疏附,予曰有先後。予曰有奔奏,予曰有禦侮!
虞芮質厥成(ぐぜいしつけっせい・虞芮が質・平し厥の成・爭訟を成せば)、文王蹶厥生(ぶんおうけっけっせい・文王が厥の生・性を蹶・動かす)。予曰有疏附(よえつゆうそふ・予は曰う疏附・親附する者有り)、予曰有先後(よえつゆうせんこう・先後・輔佐する者有り)。予曰有奔奏(よえつゆうほんそう・奔奏・奔走する者有り)、予曰有禦侮(よえつゆうぎょぶ・禦侮する者有り)。
芃芃棫樸,薪之槱之。濟濟闢王,左右趣之。
芃芃棫樸(ぼうぼうよくぼく・芃芃たる棫樸)、薪之槱之(しんしゆうし・之を薪し之を槱・積み焚く)。濟濟辟王(さいさいへきおう・濟濟たる辟王)、左右趨之(さゆうしゅうし・左右が之に趨る)。
濟濟闢王,左右奉璋。奉璋峨峨,髦士攸宜。
濟濟辟王、左右奉璋(さゆうほうしょう・璋を奉る)。奉璋峨峨(ほうしょうがが・峨峨として)、髦士攸宜(ぼうしゆうぎ・髦士の攸く宜しき所)。
淠彼涇舟,烝徒楫之。周王於邁,六師及之。
淠彼涇舟(ひつぴけいしゅう・淠たる涇の舟)、烝徒楫之(しょうとしゅうし・烝徒が之を楫・櫂る)。周王于邁(しゅうおうおばい・周王が邁・行く)、六師及之(ろくしきゅうし・六師が之に及ぶ)。
倬彼雲漢,為章於天。周王壽考,遐不作人?
倬彼雲漢(たくひうんかん・倬たる雲漢・銀河)、為章于天(いしょうおてん・天に章・文彩を為す)。周王壽考(しゅうおうじゅこう)、遐不作人(かふさくじん・何ぞ人を作・育さざらん)。
追琢其章,金玉其相。勉勉我王,綱紀四方。
追琢其章(ついたくきしょう・追琢して其の章)、金玉其相(きんぎょくきそう・金玉は其の相・質)。勉勉我王(べんべんがおう・勉勉たる我が王)、綱紀四方(こうきしほう)。
瞻彼旱麓,榛楛濟濟。豈弟君子,干祿豈弟。
瞻彼旱麓(せんぴかんろく・彼の旱麓を瞻る)、榛楛濟濟(しんこさいさい・榛楛は濟濟と多い)。豈弟君子(かいていくんし)、干祿豈弟(かんろくかいてい・祿を干・求めて豈弟・和樂)。
瑟彼玉瓚,黃流在中。豈弟君子,福祿攸降。
瑟彼玉瓚(しつぴぎょくさん・瑟たる玉瓚)、黃流在中(こうりゅうざいちゅう・黃流・鬱金酒が中に在る)。豈弟君子、福祿攸降(ふくろくゆうこう・福祿の攸く降る所)。
鳶飛戾天,魚躍於淵。豈弟君子,遐不作人?
鳶飛戾天(えんひれいてん・鳶が飛んで天に至り)、魚躍于淵(ぎょやくおえん・魚が淵に躍る)。豈弟君子、遐不作人。
清酒既載,騂牡既備。以享以祀,以介景福。
清酒既載(せいしゅきさい・清酒は既に載・設けられ)、騂牡既備(せいぼきび・騂牡は既に備わる)。以享以祀(いきょういし)、以介景福(いかいけいふく)。
瑟彼柞棫,民所燎矣。豈弟君子,神所勞矣。
瑟彼柞棫(しつぴさくよく・瑟たる柞棫)、民所燎矣(みんしょりょうい・民の燎・焚く所)。豈弟君子、神所勞矣(しんしょろうい・神の勞う所)。
莫莫葛藟,施於條枚。豈弟君子,求福不回。
莫莫葛藟(ばくばくかつるい・莫莫たる葛藟)、施于條枚(しおちょうまい・條枚に施・延びる)。豈弟君子、求福不回(きゅうふくふかい・福を求めて回・邪まない)。
思齊大任,文王之母,思媚周姜,京室之婦。大姒嗣徽音,則百斯男。
思齊大任(しせいたいにん・思齊・斉く莊れたる大任)、文王之母(ぶんおうしぼ)。思媚周姜(しびしゅうきょう・思媚・媚びし周姜)、京室之婦(けいしつしふ・京室の婦)。大姒嗣徽音(たいじしきいん・大姒は徽音を嗣ぐ)、則百斯男(そくひゃくしなん・則ち百斯の男・多くの男子)。
惠於宗公,神罔時怨,神罔時恫。刑于寡妻,至於兄弟,以御於家邦。
惠于宗公(けいおそうこう・宗公に惠み)、神罔時怨(しんもうじえん・神は罔し時の怨なし)、神罔時恫(しんもうじとう・恫・痛みなし)。刑于寡妻(けいおかさい・寡妻に刑・法として)、至于兄弟(しおけいてい)、以御于家邦(いぎょおかほう・以って家邦に御す)。
雍雍在宮,肅肅在廟。不顯亦臨,無射亦保。
雝雝在宮(ようようざいきゅう・雝雝として宮に在り)、肅肅在廟(しゅくしゅくざいびょう・肅肅として廟に在る)。不顯亦臨(ふけんやくりん・顯ならずとも亦た臨む)、無射亦保(むえきやくほう・射・厭きなくも亦た保つ)。
四戎疾不殄,烈假不瑕。不聞亦式,不諫亦入。四成人有德,小子有造。古之人無斁,譽髦斯士。
肆戎疾不殄(しじゅうしつふてん・肆・故に戎疾・大兵害を殄さず・「四戎」は「肆戎」の誤字)、烈假不瑕(れつかふか・烈假・大病は瑕・已まない)。不聞亦式(ふぶんやくしき・聞かずとも亦た式・法に合う)、不諫亦入(ふかんやくにゅう・諫めずとも亦た入・善に入る)。肆成人有德(しせいじんゆうとく・成人に德あり・「四成」は「肆成」の誤字)、小子有造(しょうしゆうぞう)。古之人無斁(このじんむえき・古の人は斁・厭きなし)、譽髦斯士(よぼうしし・斯の髦士を譽める)。
皇矣上帝,臨下有赫。監觀四方,求民之莫。維此二國,其政不獲。
皇矣上帝(こういじょうてい・皇なる上帝)、臨下有赫(りんかゆうかく・下に臨みて赫あり)。監觀四方(かんかんしほう・四方を監觀し)、求民之莫(きゅうみんしばく・民之莫・定まるを求める)。維此二國(いしにこく・此の二國・夏と殷)、其政不獲(きせいふかく・其の政は獲・得ず)。
維彼四國,爰究爰度。上帝耆之,憎其式廓。乃眷西顧,此維與宅。
維彼四國(いひしこく・彼の四國)、爰究爰度(えんきゅうえんたく・爰に究め爰に度る)。上帝耆之(じょうていきし・上帝は之を耆・憎む)、憎其式廓(ぞうきしきかく・其の式廓・規模を憎む)。乃眷西顧(だいけんせいこ・乃ち眷として西を顧み)、此維與宅(しいよたく・此れを維に宅・居を與えた)。
作之屏之,其菑其翳。修之平之,其灌其栵。啟之闢之,其檉其椐。
作之屏之(さくしへいし・之を作・伐り之を屏・除き)、其菑其翳(きさいきえい・其の菑・立ち枯れ其の翳・倒れ枯れ)。修之平之(しゅうしへいし・修め平らげ)、其灌其栵(きかんきれい・其の灌・叢生其の栵・列木)。啟之辟之(けいしへきし・啟き辟く)、其檉其椐(きていききょ・其の檉其の椐)。攘之剔之(じょうしてきし・攘い剔ぎ)、其檿其柘(きえんきしゃ・其の檿・山桑其の柘)。
攘之剔之,其檿其柘。帝遷明德,串夷載路。天立厥配,受命既固。
帝遷明德(ていせんめいとく・帝は明德を遷・就ける)、串夷載路(かんいさいろ・串夷は路・路に疲困す)。天立厥配(てんりつけっぱい・天は厥の配を立て)、受命既固(じゅめいきこ・命を受くること既に固し)。
帝省其山,柞棫斯拔,松柏斯兌。帝作邦作對,自大伯王季。維此王季,
帝省其山(ていせいきさん・帝は其の山を省み)、柞棫斯拔(さくよくしばつ・柞棫は斯に拔かれ)、松柏斯兌(しょうはくしだい・松柏は斯に兌・通直する)。帝作邦作對(ていさくほうさくつい・帝は邦を作り對を作り)、自大伯王季(じたいはくおうき・大伯より王季に)。維此王季(いしおうき・此の王季は)。
因心則友。則友其兄,則篤其慶,載錫之光。受祿無喪,奄有四方。
因心則友(いんしんそくゆう・心に因りて則ち友す)、則友其兄(そくゆうきけい・其の兄に友し)、則篤其慶(そくとくきけい・其の慶を篤くし)、載錫之光(さいしゃくしこう・載に之に光を錫う)。受祿無喪(じゅろくむそう・祿を受けて喪うことなく)、奄有四方(えんゆうしほう・奄として四方を有す)。
維此王季,帝度其心。貊其德音,其德克明。克明克類,克長克君。
維此王季、帝度其心(ていたくきしん・帝は其の心を度す)。貊其德音(ばくきとくいん・其の德音を貊・靜定せしめ)、其德克明(きとくこくめい・其の德は能く明らか)。克明克類(こくめいこくるい・明らかにし類・善類を別ける)、克長克君(こくちょうこくくん・長たり君たることを能くす)。王此大邦(おうしたいほう・此の大邦に王し)、克順克比(こくじゅんこくひ・順い比・親附することを能くす)。
王此大邦,克順克比。比於文王,其德靡悔。既受帝祉,施於孫子。
比于文王(ひおぶんおう・文王に比するに至り)、其德靡悔(きとくびかい・其の德は悔なし)。既受帝祉(きじゅていし・既に帝の祉を受け)、施于孫子(しおそんし・孫子に施す)。
帝謂文王:無然畔援,無然歆羨,誕先登於岸。密人不恭,敢距大邦,
帝謂文王(ていいぶんおう・帝は文王に謂う)。無然畔援(むぜんはんえん・然と畔援・跋扈するな)、無然歆羨(むぜんきんせん・歆羨するな)、誕先登于岸(たんせんとうおがん・誕に先んじて岸・高岸に登れ)。密人不恭(みつじんふきょう・密人が恭せず)、敢距大邦(かんきょたいほう・敢えて大邦に距る)。
侵阮徂共。王赫斯怒,爰整其旅,以按徂旅。以篤於周祜,以對於天下。
侵阮徂共(しんげんそきょう・阮を侵して共に徂く)。王赫斯怒(おうかくしど・王は赫然として怒り)、爰整其旅(えんせいきりょ・爰に其の旅を整え)、以按徂旅(いあんそりょ・以って徂旅・莒に往く軍を按・止める)。以篤于周祜(いとくおしゅうこ・以って周祜に篤くし)、以對于天下(いついおてんか・以って天下に對・答える)。
依其在京,侵自阮疆。陟我高岡,無矢我陵。我陵我阿,無飲我泉,
依其在京(いきざいけい・其の京に依り在り)、侵自阮疆(しんじげんきょう・阮疆より侵す)。陟我高岡(ちょくがこうこう・我が高岡に陟り)、無矢我陵(むしがりょう・我が陵に矢・陳べるな)。我陵我阿(がりょうがあ)、無飲我泉(むいんがせん・我が泉を飲むな)。
我泉我池。度其鮮原,居岐之陽,在渭之將。萬邦之方,下民之王。
我泉我池(がせんがち)。度其鮮原(たくきせんげん・其の鮮原を度す)、居岐之陽(きょきしよう・岐の陽に居り)、在渭之將(ざいいししょう・渭の將・傍に在る)。萬邦之方(ばんぽうしほう・萬邦の方・法則)、下民之王(げみんしおう・下民の王)。
帝謂文王:予懷明德,不大聲以色,不長夏以革。不識不知,順帝之則。
帝謂文王、予懷明德(よかいめいとく・予は明德を懷す)。不大聲以色(ふだいせいいしょく・聲を色に大きくせず)、不長夏以革(ふちょうかいかく・夏楚・鞭を以って長せず)。不識不知(ふしきふち・識らず知らず)、順帝之則(じゅんていしそく・帝の則に順う)。
帝謂文王:訽爾仇方,同爾弟兄。以爾鉤援,與爾臨沖,以伐崇墉。
帝謂文王、詢爾仇方(じゅんじきゅうほう・爾の仇方・友邦に詢え)、同爾弟兄(どうじていけい・爾の弟兄を同じくし)。以爾鉤援(いじこうえん・爾の鉤援・鉤梯を以って)、與爾臨衝(よじりんしょう・爾の臨衝・臨車衝車と)、以伐崇墉(いばつすうよう・崇墉を伐つ)。
臨沖閒閒,崇墉言言。執訊連連,攸馘安安。是類是禡,是致是附,
臨衝閑閑(りんしょうかんかん・臨衝は閑閑として從容)、崇墉言言(すうようげんげん・崇墉は言言として高大)。執訊連連(しゅうしんれんれん・訊を執ること連連)、攸馘安安(ゆうかくあんあん・馘・取った左耳は安安として)。是類是禡(ぜるいぜば・是に類し是に禡・軍祭する)、是致是附(ぜちぜふ・致し附せ)。
四方以無侮。臨沖茀茀,崇墉仡仡。是伐是四,是絕是忽。四方以無拂。
四方以無侮(しほういむぶ・四方は以って侮無し)。臨衝茀茀(りんしょうふつふつ・茀茀として強盛)、崇墉仡仡(すうようきつきつ・仡仡として高聳)。是伐是肆(ぜばつぜし・伐ち肆・撃つ・「是四」は「是肆」の誤字)、是絕是忽(ぜぜつぜこつ・絶し忽・滅す)。四方以無拂(しほういむふつ・拂・違逆なし)。
經始靈臺,經之營之。庶民攻之,不日成之。經始勿亟,庶民子來。
經始靈臺(けいしれいだい・靈臺を經始す)、經之營之(けいしえいし・經り營る)。庶民攻之(しょみんこうし・庶民が之を攻・作る)、不日成之(ふじつせいし・日ならずして之を成す)。經始勿亟(けいしぶつきょく・經始するに亟ぐな)、庶民子來(しょみんしらい・庶民は子の如く來る)。
王在靈囿,麀鹿攸伏。麀鹿濯濯,白鳥翯翯。王在靈沼,於牣魚躍。
王在靈囿(おうざいれいゆう・王は靈囿に在り)、麀鹿攸伏(ゆうろくゆうふく・麀鹿は攸く伏す)。麀鹿濯濯(ゆうろくたくたく・濯濯として肥澤)、白鳥翯翯(はくちょうかくかく・白鳥は翯翯として白い)。王在靈沼(おうざいれいしょう)、於牣魚躍(おじんぎょやく・牣・満ちて魚が躍る)。
虡業維樅,賁鼓維鏞。於論鼓鍾,於樂辟雍。
虡業維樅(きょぎょういしょう・虡業・鐘鼓の架は樅・崇牙あり)、賁鼓維鏞(ほんこいよう・賁鼓と鏞・大鐘)。於論鼓鍾(おろんこしょう・論・序次して鼓鍾を打つ)、於樂辟廱(おらくへきよう・辟廱に樂す)。
於論鼓鍾,於樂辟雍。鼉鼓逢逢。矇瞍奏公。
於論鼓鍾、於樂辟廱。鼉鼓逢逢(だこほうほう・鼉鼓は逢逢と鳴る)。矇瞍奏公(もうそうそうこう・矇瞍・盲楽師が公を奏す)。
下武維周,世有哲王。三後在天,王配於京。
下武維周(かぶいしゅう・武を下・継ぐは周)、世有哲王(せいゆうてつおう・世に哲王あり)。三后在天(さんこうざいてん・三后は天に在り)、王配于京(おうはいおけい・王は京に配・副う)。
王配於京,世德作求。永言配命,成王之孚。
王配于京、世德作求(せいとくさくきゅう・世德が求を作す・世の德を追求す)。永言配命、成王之孚(せいおうしふ・王の孚・信を成す)。
成王之孚,下土之式。永言孝思,孝思維則。
成王之孚、下土之式(げどししき・下土の式・法)。永言孝思(えいげんこうし・永く言に孝を思う)、孝思維則(こうしいそく・孝思は維に則)。
媚茲一人,應侯順德。永言孝思,昭哉嗣服。
媚茲一人(びしついちじん・茲の一人に媚び愛す)、應侯順德(おうこうじゅんとく・侯・當に順德に應ず)。永言孝思、昭哉嗣服(しょうさいしふく・昭やかなり服を嗣ぐ・先人の事を嗣ぐ)。
昭茲來許,繩其祖武。於萬斯年,受天之祜。
昭茲來許(しょうしらいきょ・茲に來許・後來を昭かにす)、繩其祖武(じょうきそぶ・其の祖武・祖先の跡を繩・繼ぐ)。於萬斯年(おばんしねん・萬斯の年に於き)、受天之祜(じゅてんしこ)。
受天之祜,四方來賀。於萬斯年,不遐有佐。
受天之祜、四方來賀(しほうらいが・四方が來り賀す)。於萬斯年、不遐有佐(ふかゆうさ・遐・何ぞ佐あらざらん)。
文王有聲,遹駿有聲。遹求厥寧,遹觀厥成。文王烝哉!
文王有聲(ぶんおうゆうせい・文王に聲あり)、遹駿有聲(いつしゅんゆうせい・遹・遂に駿・大いに聲あり)。遹求厥寧(いつきゅうけつねい・厥の寧を求め)、遹觀厥成(いつかんけっせい・厥の成を觀る)。文王烝哉(ぶんおうしょうさい・文王は烝・盛んなり)。
文王受命,有此武功。既伐於崇,作邑於豐。文王烝哉!
文王受命(ぶんおうじゅめい)、有此武功(ゆうしぶこう・此の武功あり)。既伐于崇(きばつおすう・既に崇を伐ち)、作邑于豐(さくゆうおほう・豐に邑を作る)。文王烝哉。
築城伊淢,作豐伊匹。匪棘其欲,遹追來孝。王后烝哉!
築城伊淢(ちくじょういいく・城を築き淢・隍を為す)、作豐伊匹(さくほういひつ・豐を作りて匹・配う)。匪棘其欲(ひきょくきよく・其の欲を棘・急がない)、遹追來孝(いつついらいこう・遹に來孝・先人への孝を追う)。王后烝哉(おうこうしょうさい・王后は烝なり)。
王公伊濯,維豐之垣。四方攸同,王后維翰。王后烝哉!
王公伊濯(おうこういたく・王公は伊濯・顯著)。維豐之垣(いほうしえん・豐の垣)、四方攸同(しほうゆうどう・四方の攸く同ずる所)。王后維翰(おうこういかん・翰・幹)。王后烝哉。
豐水東注,維禹之績。四方攸同,皇王維闢。皇王烝哉!
豐水東注(ほうすいとうちゅう・豐水は東に注ぐ)、維禹之績(いうしせき・禹の績)。四方攸同、皇王維辟(こうおういへき・皇王は維に辟・君)。皇王烝哉。
鎬京辟雍,自西自東,自南自北,無思不服。皇王烝哉!
鎬京辟廱(こうけいへきよう・鎬京に辟廱あり)。自西自東(じせいじとう)、自南自北(じなんじほく)、無思不服(むしふふく・思い來て服せざるなし)。皇王烝哉。
考卜維王,宅是鎬京。維龜正之,武王成之。武王烝哉!
考卜維王(こうぼくいおう・卜を考・問うは王)、宅是鎬京(たくぜこうけい・是の鎬京に宅・居る)。維龜正之(いきせいし・維に龜が之を正・定む)、武王成之(ぶおうせいし・武王が之を成す)。武王烝哉。
豐水有芑,武王豈不仕?詒厥孫謀,以燕翼子。武王烝哉!
豐水有芑(ほうすいゆうき・豐水に芑あり)。武王豈不仕(ぶおうきふし・武王は何ぞ仕・事せざらん)。詒厥孫謀(いけっそんぼう・厥の孫に謀を詒る)、以燕翼子(いえんよくし・燕・安んじ翼・輔けて子を)。武王烝哉。
厥初生民,時維姜嫄。生民如何?克禋克祀,以弗無子。
厥初生民(けっしょせいみん・厥の初めて民を生む)、時維姜嫄(じいきょうげん・時に姜嫄)。生民如何(せいみんじょか・民を生むこと如何)。克禋克祀(こくいんこくし・能く禋し祀る)、以弗無子(いふつむし・無子を弗・祓う)。
履帝武敏歆,攸介攸止,載震載夙。載生載育,時維后稷。
履帝武敏歆(りていぶびんきん・帝の武敏・足跡の拇に履みて歆・動く)、攸介攸止(ゆうかいゆうし・攸く介ぎ攸く止まる)。載震載夙(さいしんさいしゅく・載に震・娠し載に夙・肅まる)。載生載育(さいせいさいいく)、時維后稷(じいこうしょく・時に后稷)。
誕彌厥月,先生如達。不拆不副,無菑無害。以赫厥靈。
誕彌厥月(たんびけつげつ・誕に厥の月を彌・滿す)、先生如達(せんせいにょたつ・先生は達・小羊の如く滑らか)。不坼不副(ふたくふふく・坼・裂けず副・破れず)、無菑無害(むさいむがい・菑害なし)。以赫厥靈(いかくけつれい・以って厥の靈を赫・顯す)。
上帝不寧,不康禋祀,居然生子。
上帝不寧(じょうていふねい・上帝は寧ならず)、不康禋祀(ふこういんし・禋祀を康・樂しまない)、居然生子(きょぜんせいし・居然として子を生む)。
誕寘之隘巷,牛羊腓字之。誕寘之平林,會伐平林。
誕寘之隘巷(たんちしあいこう・誕に之を隘巷に寘く)、牛羊腓字之(ぎゅうようひじし・牛羊が之を腓・庇い字・乳む)。誕寘之平林(たんちしへいりん・平林に寘く)、會伐平林(かいばつへいりん・平林を伐るに會す)。
誕寘之寒冰,鳥覆翼之。鳥乃去矣,后稷呱矣。
誕寘之寒冰(たんちしかんぴょう・寒冰に寘く)、鳥覆翼之(ちょうふくよくし・鳥が翼を以って之を覆う)。鳥乃去矣(ちょうだいきょい・鳥は乃ち去る)、后稷呱矣(こうしょくこい・后稷は呱と泣く)。
實覃實訏,厥聲載路。誕實匍匐,克岐克嶷。以就口食。
實覃實訏(じつたんじつく・實に覃・長く實に訏・大きい)、厥聲載路(けっせいさいろ・厥の聲は路に載・滿つ)。誕實匍匐(たんじつほうふく・誕に實に匍匐・這うことを能くす)、克岐克嶷(こくきこくぎく・岐・物を識り嶷・識別を能くす)。以就口食(いしゅうこうしょく・以って口食に就く)。
蓺之荏菽,荏菽旆旆。禾役穟穟,麻麥幪幪,瓜瓞唪唪。
蓺之荏菽(げいしじんじゅく・荏菽・大豆を蓺る)、荏菽旆旆(じんじゅくはいはい)。禾役穟穟(かえきすいすい・禾役・穂列は穟穟と垂れる)。麻麥幪幪(まばくもうもう)、瓜瓞唪唪(かてつほうほう)。
誕后稷之穡,有相之道。茀厥豐草,種之黃茂。實方實苞,實種實褎。
誕后稷之穡(たんこうしょくししょく・后稷の穡・稼穡)、有相之道(ゆうそうしどう・相・助ける道あり)。茀厥豐草(ふつけつほうそう・厥の豐草を茀・除く)、種之黃茂(しゅうしこうぼう・之に黃茂の嘉穀を種く)。實方實苞(じつほうじつほう・實に方・芽を吐き實に苞・苞む)。
實發實秀,實堅實好。實穎實栗,即有邰家室。
實種實褎(じつしゅじつしゅう・種・苗を出し褎・莖を抽く)、實發實秀(じつはつじつしゅう・發し秀・穂を出す)。實堅實好(じつけんじつこう・堅くし好くす)、實穎實栗(じつえいじつりつ・穎・穗を垂れ栗・衆多)。即有邰家室(そくゆうたいかしつ・即ち邰に家室を有する)。
誕降嘉種,維秬維秠,維穈維芑。恆之秬秠,是獲是畝。
誕降嘉種(たんこうかしゅ・嘉種を降す)、維秬維秠(いきょいひ・秬・黒黍と秠・一稃二米)、維穈維芑(いびいき・穈・赤粱と芑・白粱)。恆之秬秠(こうしきょひ・秬秠を恆・遍く種く)、是獲是畝(ぜかくぜぼう・是に獲り是に畝に積む)。恆之穈芑(こうしびき)。
恆之穈芑,是任是負。以歸肇祀。
是任是負(ぜにんぜふ・是に任げ是に負う)、以歸肇祀(いきちょうし・歸りて肇・始めて祀る)。
誕我祀如何?或舂或揄,或簸或蹂。釋之叟叟,烝之浮浮。
誕我祀如何(たんがしじょか・我が祀ること如何)。或舂或揄(かくしょうかくゆ・或いは舂き或いは揄・舀む)、或簸或蹂(かくはかくじゅう・或いは簸き或いは蹂む)。釋之叟叟(しゃくしそうそう・釋・米を淘ぐこと叟叟と)、烝之浮浮(しょうしふふ・烝・蒸すこと浮浮と)。
載謀載惟。取蕭祭脂,取羝以軷,載燔載烈,以興嗣歲。
載謀載惟(さいぼうさいい・謀り惟れる)。取蕭祭脂(しゅしょうさいし・蕭を取り脂に祭る)、取羝以軷(しゅていいばつ・羝・牡羊を取り以って軷・道神に祭る)。載燔載烈(さいはんさいれつ・燔し烈・炙る)、以興嗣歲(いこうしさい・嗣・繼ぐ歲を興す)。
卬盛於豆,於豆於登。其香始升,上帝居歆。胡臭亶時。
卬盛于豆(こうせいおとう・盛ること豆に)、于豆于登(おとうおとう・豆に登に)。其香始升(きこうししょう・其の香は始めて升る)、上帝居歆(じょうていきょきん・上帝は居て歆・享ける)。胡臭亶時(こしゅうたんじ・胡臭・香りは亶に時・善い)。
后稷肇祀。庶無罪悔,以迄於今。
后稷肇祀(こうしょくちょうし・后稷は肇めて祀る)。庶無罪悔(しょむざいかい・庶幾く罪悔なし)、以迄于今(いきつおこん・以って今に迄る)。
敦彼行葦,牛羊勿踐履。方苞方體,維葉泥泥。
敦彼行葦(とんぴこうい・敦たる行葦・路傍の叢生葦)、牛羊勿踐履(ぎゅうようぶつせんり・牛羊は踐履する勿れ)。方苞方體(ほうほうほうたい・方に苞み方に體・成形す)、維葉泥泥(いようねいねい・其の葉は泥泥として柔らかい)。
慼慼兄弟,莫遠具爾。或四之筵,或授之幾。
戚戚兄弟(せきせきけいてい・戚戚として親しむ兄弟)、莫遠具爾(ばくえんぐじ・遠ざかるなく具に爾・近づけ)。或肆之筵(かくししえん・或いは筵を肆・敷き・「或四之筵」の「四」は「肆」の誤字)、或授之几(かくじゅしき・或いは几を授く)。
四筵設席,授幾有緝御。或獻或酢,洗爵奠斝。
肆筵設席(しえんせっせき・筵を肆し席を設く・「四筵」の「四」は「肆」の誤字)、授几有緝御(じゅきゆうしゅうぎょ・几を授け緝御・相續いて侍する者有り)。或獻或酢(かくけんかくさく・或いは獻じ或いは酢す)、洗爵奠斝(せんしゃくでんか・爵を洗い斝を奠く)。
醓醢以薦,或燔或炙。嘉餚脾臄,或歌或咢。
醓醢以薦(たんかいいせん・醓醢を以って薦ず)、或燔或炙。嘉殽脾臄(かこうひしゃく・嘉殽は脾と臄・口上の肉)、或歌或咢(かくかかくがく・或いは歌い或いは咢・鼓のみで唱う)。
敦弓既堅,四鍭既均,舍矢既均,序賓以賢。
敦弓既堅(とんきゅうきけん・敦・彫弓は既に堅し)、四鍭既鈞(しかくききん・四鍭・金鏃の矢は既に鈞・均一)。舍矢既均(しゃしききん・矢を舍・放つこと既に均)、序賓以賢(じょひんいけん・賓を序するに賢を以って)。
敦弓既句,既挾四鍭。四鍭如樹,序賓以不侮。
敦弓既句(とんきゅうきこう・敦弓は既に句・引滿す)、既挾四鍭(ききょうしかく)。四鍭如樹(しかくにょじゅ・四鍭は樹の如し・的に樹立つ如く)、序賓以不侮(じょひんいふぶ・不侮・侮慢せざるを以って賓を序す)。
曾孫維主,酒醴維醽,酌以大斗,以祈黃耇。
曾孫維主(そうそんいしゅ・曾孫は維に主たり)、酒醴維醹(しゅうれいいじゅ・酒醴は維に醹・厚い)。酌以大斗(しゃくいたいと・大斗を以って酌む)、以祈黃耇(いきこうこう・黃耇を祈る)。
黃耇臺背,以引以翼。壽考維祺,以介景福。
黃耇鮐背(こうこうたいはい・黃耇・鮐背)、以引以翼(いいんいよく・以って引き以って翼・輔く)。壽考維祺(じゅこういき・壽考は維に祺・吉祥)、以介景福。
既醉以酒,既飽以德。君子萬年,介爾景福。
既醉以酒(きすいいしゅ・酒を以って既に醉えり)、既飽以德(きほういとく・德を以って既に飽きたり)。君子萬年、介爾景福(かいじけいふく)。
既醉以酒,爾餚既將。君子萬年,介爾昭明。
既醉以酒、爾殽既將(じこうきしょう・爾の殽は既に將・進む)。君子萬年、介爾昭明(かいじしょうめい・昭明を介す)。
昭明有融,高朗令終,令終有俶。公屍嘉告。
昭明有融(しょうめいゆうゆう・昭明は融・長く有り)、高朗令終(こうろうれいしゅう・高朗として令終・善い終りあり)。令終有俶(れいしゅうゆうしゅく・令終に俶・善い始めあり)、公尸嘉告(こうしかこく・公尸が嘉・善く告ぐ)。
其告維何?籩豆靜嘉。朋友攸攝,攝以威儀。
其告維何(きこくいか・其の告は何ぞ)。籩豆靜嘉(へんとうせいか・籩豆は靜・潔く嘉い)。朋友攸攝(ほうゆうゆうせつ・朋友の攸く攝・佐ける所)、攝以威儀(せついいぎ・威儀を以って攝す)。
威儀孔時,君子有孝子。孝子不匱,永錫爾類。
威儀孔時(いぎこうじ・威儀は孔く時・宜し)、君子有孝子(くんしゆうこうし・君子に孝子あり)。孝子不匱(こうしふき・孝子は匱・乏しまない)、永錫爾類(えいしゃくじるい・永く爾に類・善類を錫う)。
其類維何?室家之壺。君子萬年,永錫祚胤。
其類維何(きるいいか・其の類は何ぞ)。室家之壺(しつかしこん・室家の壺・宮中)。君子萬年、永錫祚胤(えいしゃくそいん・祚胤を錫う)。
其胤維何?天被爾祿。君子萬年,景命有僕。
其胤維何(きいんいか)。天被爾祿(てんひじろく・天は爾に祿を被・覆う)。君子萬年、景命有僕(けいめいゆうぼく・景命に僕・附屬あり)。
其僕維何?釐爾女士。釐爾女士,從以孫子。
其僕維何(きぼくいか)。釐爾女士(りじじょし・爾に女士を釐・賜う)。釐爾女士、從以孫子(じゅういそんし・從いて孫子あり)。
鳧鷖在涇,公屍在燕來寧。爾酒既清,爾餚既馨。公屍燕飲,福祿來成。
鳧鷖在涇(ふえいざいけい・鳧鷖・鴨鷗が涇に在り)、公尸來燕來寧(こうしらいえんらいねい・公尸が來て燕し來て寧んず)。爾酒既清(じしゅきせい)、爾殽既馨(じこうきけい・殽は既に馨・香しい)。公尸燕飲(こうしえんいん)、福祿來成(ふくろくらいせい)。
鳧鷖在沙,公屍來燕來宜。爾酒既多,爾餚既嘉。公屍燕飲,福祿來為。
鳧鷖在沙(ふえいざいさ・沙に在り)、公尸來燕來宜(らいぎ・宜しく來る)。爾酒既多(じしゅきた)、爾殽既嘉(じこうきか)。公尸燕飲、福祿來為(ふくろくらいい・為・助く)。
鳧鷖在渚,公屍來燕來處。爾酒既湑,爾餚伊脯。公屍燕飲,福祿來下。
鳧鷖在渚(ふえいざいしょ)、公尸來燕來處(らいしょ・處る)。爾酒既湑(じしゅきしょ・酒は既に湑・清い)、爾殽伊脯(じこういほ・殽は伊脯・乾肉)。公尸燕飲、福祿來下(ふくろくらいか)。
鳧鷖在潀,公屍來燕來宗,既燕於宗,福祿攸降。公屍燕飲,福祿來崇。
鳧鷖在潀(ふえいざいそう・潀・衆水の會する處)、公尸來燕來宗(らいそう・宗・尊んで來る)。既燕于宗(きえんおそう・既に宗に燕し)、福祿攸降(ふくろくゆうこう)。公尸燕飲、福祿來崇(ふくろくらいすう・崇・重ねて來る)。
鳧鷖在亹,公屍來止熏熏。旨酒欣欣,燔炙芬芬。公屍燕飲,無有後艱。
鳧鷖在亹(ふえいざいもん・亹・峽の口)、公尸來止熏熏(こうしらいしくんくん・熏熏として和悅)。旨酒欣欣(ししゅうきんきん・旨酒は欣欣)。燔炙芬芬(はんしゃふんぷん・燔炙は芬芬)。公尸燕飲、無有後艱(むゆうこうかん・後艱なし)。
假樂君子,顯顯令德,宜民宜人。受祿於天,保右命之,自天申之。
假樂君子(かがくくんし・假樂・嘉樂たる君子)、顯顯令德(けんけんれいとく)。宜民宜人(ぎみんぎじん・民に宜しく人に宜し)、受祿于天(じゅろくおてん)。保右命之(ほゆうめいし・保右・保佑して之に命じ)、自天申之(じてんしんし・天より之に申・重ねる)。
千祿百福,子孫千億。穆穆皇皇,宜君宜王。不愆不忘,率由舊章。
千祿百福(せんろくぴゃくふく・千の祿百の福)、子孫千億(しそんせんおく)。穆穆皇皇(ぼくぼくこうこう)、宜君宜王(ぎくんぎおう)。不愆不忘(ふけんふぼう・愆らず忘れず)、率由舊章(そつゆうきゅうしょう・舊章に率由・循う)。
威儀抑抑,德音秩秩。無怨無惡,率由群匹。受福無疆,四方之綱。
威儀抑抑(いぎよくよく)、德音秩秩(とくいんちつちつ)。無怨無惡(むえんむお・怨なく惡なく)、率由羣匹(そつゆうぐんひつ・羣匹に率由する)。受福無疆(じゅふくむきょう)、四方為綱(しほういこう・四方の綱)。
之綱之紀,燕及朋友。百辟卿士,媚於天子。不解於位,民之攸塈。
之綱之紀(しこうしき・綱であり紀であり)、燕及朋友(えんきゅうほうゆう・朋友に及び燕す)。百辟卿士(ぴゃくへきけいし・百辟卿士)、媚于天子(びおてんし・天子に媚び愛す)。不解于位(ふかいおい・位に懈らない)、民之攸塈(みんしゆうき・民の攸く塈・息する所)。
篤公劉,匪居匪康。乃埸乃疆,乃積乃倉;乃裹餱糧,於橐於囊。
篤公劉(とくこうりゅう・篤実な公劉)、匪居匪康(ひきょひこう・居せず康せず・安んじない)。迺埸迺疆(だいえきだいきょう・迺に埸・田界し迺に疆す)、迺積迺倉(だいせきだいそう・積み倉む)。迺裹餱糧(だいかこうりょう・餱糧を裹む)、于橐于囊(おたくおのう・橐に囊に)。
思輯用光,弓矢斯張;干戈戚揚,爰方啟行。
思輯用光(ししゅうようこう・輯・和して光を用うるを思う)。弓矢斯張(きゅうししちょう)、干戈戚揚(かんかしゃくよう・干戈戚揚)、爰方啟行(えんぽうけいこう・爰に方に啟行す)。
篤公劉,於胥斯原。既庶既繁,既順乃宣,而無永嘆。陟則在巘,
篤公劉、于胥斯原(おしょしげん・胥・視ること斯の原)。既庶既繁(きしょきはん・既に庶く既に繁る)、既順迺宣(きじゅんだいせん・既に順い迺に宣・通ず)、而無永歎(にむえいたん・永歎なし)。陟則在巘(ちょくそくざいげん・陟れば則ち巘・小山に在り)。
復降在原。何以舟之?維玉及瑤,鞞琫容刀。
復降在原(ふくこうざいげん・復た降りて原に在る)。何以舟之(かいしゅうし・何を以って之を舟・佩するか)。維玉及瑤(いぎょくきゅうよう・玉と瑤)、鞞琫容刀(へいほうようとう・鞞琫・飾りのある容刀)。
篤公劉,逝彼百泉。瞻彼溥原,乃陟南岡。乃覯於京,京師之野。
篤公劉、逝彼百泉(せいひひゃくせん・逝きて彼の百泉へ)。瞻彼溥原(せんぴふげん・彼の溥原を瞻り)、迺陟南岡(だいちょくなんこう・迺に南岡に陟る)。迺覯于京(だいこうおけい・迺に京に覯・見る)、京師之野(けいししや)。
於時處處,於時廬旅,於時言言,於時語語。
于時處處(おじしょしょ・是時に處り處る)、于時廬旅(おじりょりょ・廬旅・寄居する)、于時言言(おじげんげん)、于時語語(おじごご)。
篤公劉,於京斯依。蹌蹌濟濟,俾筵俾幾。既登乃依,乃造其曹。
篤公劉、于京斯依(おけいしい・京に斯に依る)。蹌蹌濟濟(しょうしょうさいさい)、俾筵俾几(ひえんひき・筵を俾し几を俾す・設けしむ)。既登乃依(きとうだいい・既に登り迺に依る)、迺造其曹(だいぞうきそう・迺に其の曹・群臣に造・至る)。
執豕於牢,酌之用匏。食之飲之,君之宗之。
執豕于牢(しゅうしおろう・牢に豕を執る)、酌之用匏(しゃくしようほう・匏を用いて之に酌む)。食之飲之(しょくしいんし・之に食わせ之に飲ませ)、君之宗之(くんしそうし・之の君たり之の宗たる)。
篤公劉,既溥既長。既景乃岡,相其陰陽,觀其流泉。其軍三單,
篤公劉、既溥既長(きふきちょう・既に溥く既に長い)。既景迺岡(きけいだいこう・既に景・日影を測り迺に岡に登る)、相其陰陽(そうきいんよう・其の陰陽を相る)、觀其流泉(かんきりゅうせん・其の流泉を觀る)。其軍三單(きぐんさんたん・其の軍は三單・三班に分け輪番す)。
度其隰原。徹田為糧,度其夕陽。豳居允荒。
度其隰原(たくきしつげん・其の隰原を度る)、徹田為糧(てつでんいりょう・田を徹・治めて糧と為す)。度其夕陽(たくきせきよう・其の夕陽・山の西側を度る)、豳居允荒(ひんきょいんこう・豳の居は允に荒・廣大だ)。
篤公劉,於豳斯館。涉渭為亂,取厲取鍛,止基乃理。爰眾爰有,
篤公劉、于豳斯館(おひんしかん・豳に斯に館を作る)。涉渭為亂(しょういいらん・渭を涉りて亂・横渡す)、取厲取鍛(しゅれいしゅたん・厲・礪と鍛・鍛石を取る)。止基迺理(しきだいり・止基・基地を迺に理る)、爰衆爰有(えんしゅうえんゆう・爰に衆く爰に有る)。
夾其皇澗。溯其過澗。止旅乃密,芮鞫之即。
夾其皇澗(きょうきこうかん・其の皇澗を夾む)、溯其過澗(そきかかん・其の過澗を溯る)。止旅迺密(しりょだいみつ・止旅・寄居する者は迺に密・多い)、芮鞫之即(ぜいきくしそく・芮鞫・水の曲がりに即く)。
泂酌彼行潦,挹彼注茲,可以餴饎。豈弟君子,民之父母。
泂酌彼行潦(けいしゃくひこうろう・泂・遠く彼の行潦・路傍の積水を酌む)、挹彼注茲(ゆうひちゅうし・彼を挹げて茲に注ぐ)、可以餴饎(いふんし・餴饎・蒸飯できる)。豈弟君子、民之父母。
泂酌彼行潦,挹彼注茲,可以濯罍。豈弟君子,民之攸歸。
泂酌彼行潦、挹彼注茲、可以濯罍(いたくらい・罍を濯げる)。豈弟君子、民之攸歸(みんしゆうき・民の攸く歸く所)。
泂酌彼行潦,挹彼注茲,可以濯溉。豈弟君子,民之攸墍。
泂酌彼行潦、挹彼注茲、可以濯溉(いたくがい・濯溉できる)。豈弟君子、民之攸塈(みんしゆうき・民の攸く塈・息する所)。
有卷者阿,飄風自南。豈弟君子,來游來歌,以矢其音。
有卷者阿(ゆうけんしゃあ・卷・曲がった阿あり)、飄風自南(ひょうふうじなん・飄風は南より)。豈弟君子、來游來歌(らいゆうらいか・來り游び來り歌う)、以矢其音(いしきおん・其の音を矢・陳べる)。
伴奐爾遊矣,優遊爾休矣。豈弟君子,俾爾彌爾性,似先公酋矣。
伴奐爾游矣(はんかんじゆうい・伴奐として爾は游ぶ)、優游爾休矣(ゆうゆうじきゅうい・優游として爾は休む)。豈弟君子、俾爾彌爾性(ひじびじせい・爾をして爾の性を彌・終盡せしめ)、似先公酋矣(じせんこうしゅうい・先公の酋・成就に似・及ぶ)。
爾土宇昄章,亦孔之厚矣。豈弟君子,俾爾彌爾性,百神爾主矣。
爾土宇昄章(じとうはんしょう・爾の土宇・版圖は昄章・廣大)。豈弟君子、俾爾彌爾性、百神爾主矣(ぴゃくしんじしゅい・百神が爾を主とする)。
爾受命長矣,茀祿爾康矣。豈弟君子,俾爾彌爾性,純嘏爾常矣。
爾受命長矣(じじゅめいちょうい・爾は命を受けること長い)、茀祿爾康矣(ふつろくじこうい・茀祿は爾を康・安らかにする)。豈弟君子、俾爾彌爾性、純嘏爾常矣(じゅんこじじょうい・純嘏は爾の常たる)。
有馮有翼,有孝有德,以引以翼。豈弟君子,四方為則。
有馮有翼(ゆうひょうゆうよく・馮・依る者有り翼・輔く者有り)、有孝有德(ゆうこうゆうとく)。以引以翼(いいんいよく・引き翼・輔くるに以ってす)。豈弟君子、四方為則(しほういそく・四方の則)。
顒顒卬卬,如圭如璋,令聞令望。豈弟君子,四方為綱。
顒顒卬卬(ぎょうぎょうごうごう・顒顒として卬卬・荘重に氣盛ん)、如圭如璋(にょけいにょしょう・圭の如く璋の如し)、令聞令望(れいぶんれいぼう・令聞・令望)。豈弟君子、四方為綱(しほういこう)。
鳳凰于飛,翽翽其羽,亦集爰止。藹藹王多吉士,維君子使,媚於天子。
鳳凰于飛(ほうおうおひ・鳳凰が飛ぶ)、翽翽其羽(かいかいきう・翅は翽翽と)、亦集爰止(やくしゅうえんし・亦た止まるべき所に集まる)。藹藹王多吉士(あいあいおうたきっし・藹藹として王に吉士多し)、維君子使(いくんしし・ただ君子の使に)、媚于天子(びおてんし・天子に媚び愛す)。
鳳凰于飛,翽翽其羽,亦傅於天。藹藹王多吉人,維君子命,媚於庶人。
鳳凰于飛、翽翽其羽、亦傅于天(やくふうてん・亦た天に傅く)。藹藹王多吉人(あいあいおうたきつじん)、維君子命(いくんしめい・ただ君子の命に)、媚于庶人(びおしょじん・庶人に媚び愛す)。
鳳凰鳴矣,於彼高岡。梧桐生矣,於彼朝陽。菶菶萋萋,雍雍喈喈。
鳳凰鳴矣(ほうおうめいい・鳳凰が鳴く)、于彼高岡(おぴこうこう)。梧桐生矣(ごどうせいい・梧桐が生える)、于彼朝陽(おぴちょうよう)。菶菶萋萋(ほうほうせいせい・菶菶萋萋と茂り)、雝雝喈喈(ようようかいかい・雝雝喈喈と和する)。
君子之車,既庶且多。君子之馬,既閒且馳。矢詩不多,維以遂歌。
君子之車(くんしししゃ)、既庶且多(きしょしょた・既に庶く且つ多い)。君子之馬(くんししば)、既閑且馳(きかんしょち・既に閑・馴れ且つ馳す)。矢詩不多(ししふた・詩を陳べること多からず)、維以遂歌(いいすいか・ただ歌を遂げるのみ)。
民亦勞止,汔可小康。惠此中國,以綏四方。無縱詭隨,以謹無良。
民亦勞止(みんやくろうし・民も亦た勞れた)、汔可小康(きつかしょうこう・汔・ほぼ小康すべし)。惠此中國(けいしちゅうこく・此の中國を惠み)、以綏四方(いすいしほう・以って四方を綏・安んず)。無縱詭隨(むしょうきずい・詭隨・詭なり隨う者を縱にするな)、以謹無良(いきんむりょう・無良を謹む)。
式遏寇虐,憯不畏明。柔遠能邇,以定我王。
式遏寇虐(しきあつこうぎゃく・寇虐を式・用いて遏・止めよ)、憯不畏明(さんふいめい・憯・曾て明を畏れない)。柔遠能邇(じゅうえんのうじ・遠を柔ぎ能・邇を親しむ)、以定我王(いじょうがおう・以って我が王を定める)。
民亦勞止,汔可小休。惠此中國,以為民逑。無縱詭隨,以謹惛怓。
民亦勞止、汔可小休(きつかしょうきゅう)。惠此中國、以為民逑(いいみんきゅう・民の逑・匹配と為す)。無縱詭隨、以謹惛怓(いきんこんどう・惛怓・昏乱喧譁を謹む)。
式遏寇虐,無俾民憂。無棄爾勞,以為王休。
式遏寇虐、無俾民憂(むひみんゆう・民を憂えさせるな)。無棄爾勞(むきじろう・あなたの勞を棄てるな)、以為王休(いいおうきゅう・王の休・美と為す)。
民亦勞止,汔可小息。惠此京師,以綏四國。無縱詭隨,以謹罔極。
民亦勞止、汔可小息(きつかしょうそく)。惠此中國、俾民憂泄(ひみんゆうえつ・民の憂を泄・散らせしむ)。無縱詭隨、以謹醜厲(いきんしゅうれい・醜厲を謹む)。
式遏寇虐,無俾作慝。敬慎威儀,以近有德。
式遏寇虐、無俾正敗(むひせいはい・正を敗らせるな)。戎雖小子(じゅうすいしょうし・戎・あなたは小子といえども)、而式弘大(にしきこうだい・用・作用は弘大だ)。
民亦勞止,汔可小愒。惠此中國,俾民憂洩。無縱詭隨,以謹醜厲。
民亦勞止、汔可小愒(きつかしょうけい・小愒・小さく憩う)。惠此中國、俾民憂泄。無縱詭隨、以謹醜厲。
式遏寇虐,無俾正敗。戎雖小子,而式弘大。
式遏寇虐、無俾正敗。戎雖小子、而式弘大。
民亦勞止,汔可小安。惠此中國,國無有殘。無縱詭隨,以謹繾綣。
民亦勞止、汔可小安(きつかしょうあん)。惠此中國、國無有殘(こくむゆうざん・國に殘・害なし)。無縱詭隨、以謹繾綣(いきんけんけん・繾綣・糾纒するを謹む)。
式遏寇虐,無俾正反。王欲玉女,是用大諫。
式遏寇虐、無俾正反(むひせいはん・正を反させるな)。王欲玉女(おうよくぎょくじょ・王は玉女・玉の如くあなたを成さんと欲す)、是用大諫(ぜようだいかん・是用に大いに諫める)。
上帝闆闆,下民卒癉。出話不然,為猶不遠。
上帝板板(じょうていはんぱん・上帝は板板と反覆する)、下民卒癉(げみんそつたん・下民は卒に癉・病む)。出話不然(しゅつわふぜん・出す話は然・是でない)、為猶不遠(いゆうふえん・為す猶・謀は遠からず)。
靡聖管管。不實於亶。猶之未遠,是用大諫。
靡聖管管(びせいかんかん・聖なきに管管と自用す)。不實於亶(ふじつおたん・亶・誠に實らず)。猶之未遠(ゆうしみえん・猶は未だ遠からず)、是用大諫。
天之方難,無然憲憲。天之方蹶,無然洩洩。
天之方難(てんしほうなん・天は方に難を降す)、無然憲憲(むぜんけんけん・然と憲憲・喜樂するな)。天之方蹶(てんしほうけつ・方に蹶・亂す)、無然泄泄(むぜんえつえつ・泄泄・多く言うな)。
辭之輯矣,民之洽矣。辭之懌矣,民之莫矣。
辭之輯矣(じししゅうい・辭・言辭が輯・和すれば)、民之洽矣(みんしこうい・民は洽・融洽する)。辭之懌矣(じしえきい・辭が懌・悦ぶれば)、民之莫矣(みんしばくい・民は莫・定まる)。
我雖異事,及爾同僚。我即爾謀,聽我囂囂。
我雖異事(がすいいじ・我は事を異にすといえども)、及爾同僚(きゅうじどうりょう・爾と同僚たり)。我即爾謀(がそくじぼう・我は爾に即き謀る)、聽我囂囂(ちょうがぎょうぎょう・我を聽くこと囂囂として)。
我言維服,勿以為笑。先民有言,詢於芻蕘。
我言維服(がげんいふく・我が言は維に服・事に切れる)、勿以為笑(ぶついいしょう・以って笑と為すな)。先民有言(せんみんゆうげん・先民に言あり)、詢于芻蕘(じゅんおすうじょう・芻蕘・柴刈る者に詢え)。
天之方虐,無然謔謔。老夫灌灌,小子蹻蹻。
天之方虐(てんしほうぎゃく・天は方に虐る)、無然謔謔(むぜんぎゃくぎゃく・謔謔と戲れるな)。老夫灌灌(ろうふかんかん・老夫は灌灌・懇懇と)、小子蹻蹻(しょうしかくかく・小子は蹻蹻と驕る)。
匪我言耄,爾用憂謔。多將熇熇,不可救藥。
匪我言耄(ひがげんぼう・我が言が耄・昏耄ではない)、爾用憂謔(じようゆうぎゃく・爾は用いて憂謔する)。多將熇熇(たしょうかくかく・多く將・為せば熇熇と熾盛)、不可救藥(ふかきゅうやく・救藥すべからず)。
天之方懠。無為夸毗。威儀卒迷,善人載屍。
天之方憞(てんしほうたい・天は方に憞・怒る)。無為夸毗(むいかひ・夸毗・軟骨を為すな)。威儀卒迷(いぎそつめい・威儀は卒に迷う)、善人載尸(ぜんじんさいし・善人は載に尸・尸の如し)。
民之方殿屎,則莫我敢葵?喪亂蔑資,曾莫惠我師?
民之方殿屎(みんしほうてんし・民は方に殿屎・呻吟す)、則莫我敢葵(そくばくがかんき・則ち我を葵・度るを敢てする者なし)。喪亂蔑資(そうらんべつし・喪亂は資を蔑・無くす)、曾莫惠我師(そうばくけいがし・曾て我が師・衆を惠まない)。
天之牖民,如壎如篪,如璋如圭,如取如攜。
天之牖民(てんしゆうみん・天が民を牖・導くは)、如壎如篪(にょけんにょち・壎の如く篪の如く)、如璋如圭(にょしょうにょけい・璋の如く圭の如く)、如取如攜(にょしゅにょけい・取る如く攜える如く)。
攜無曰益,牖民孔易。民之多闢,無自立闢。
攜無曰益(けいむえつえき・攜えるに益を曰うな・攜けば足りて増すな)、牖民孔易(ゆうみんこうえき・民を牖くは孔く易し)。民之多辟(みんしたへき・民は多く辟・邪僻す)、無自立辟(むじりつへき・自ら辟・法を立てるな)。
價人維藩,大師維垣,大邦維屏,大宗維翰,
价人維藩(かいじんいはん・价人・善人は維に藩・籬)、大師維垣(たいしいえん・大師・衆は維に垣・牆)、大邦維屏(たいぽういへい・大邦は維に屏)、大宗維翰(たいそういかん・大宗は維に翰・幹)。
懷德維寧,宗子維城。無俾城壞,無獨斯畏。
懷德維寧(かいとくいねい・德を懷すれば維に寧んず)、宗子維城(そうしいじょう・宗子は維に城)。無俾城壞(むひじょうかい・城を壞さしむな)、無獨斯畏(むどくしい・獨り斯を畏るな)。
敬天之怒,無敢戲豫。敬天之渝,無敢馳驅。
敬天之怒(けいてんしど・天の怒を敬い)、無敢戲豫(むかんぎよ・敢えて戲豫・戲樂せず)。敬天之渝(けいてんしゆ・天の渝・變を敬い)、無敢馳驅(むかんちく・敢えて馳驅せず)。
昊天曰明,及爾出王。昊天曰旦,及爾遊衍。
昊天曰明(こうてんえつめい・昊天は明と曰う)、及爾出王(きゅうじしゅつおう・爾と出王・出行を及ぶ)。昊天曰旦(こうてんえつたん・旦と曰う)、及爾游衍(きゅうじゆうえん・爾と游衍を及ぶ)。
蕩蕩上帝,下民之闢。疾威上帝,其命多闢。
蕩蕩上帝(とうとうじょうてい・蕩蕩たる上帝)、下民之辟(げみんしへき・下民の辟・君)。疾威上帝(しついじょうてい・疾威・怒り威する上帝)、其命多辟(きめいたへき・其の命は多く辟・邪僻)。
天生烝民,其命匪諶。靡不有初,鮮克有終。
天生烝民(てんせいしょうみん・天は烝民を生む)、其命匪諶(きめいひしん・其の命は諶・信じられない)。靡不有初(びふゆうしょ・初め有らないはなく)、鮮克有終(せんこくゆうしゅう・終り有るを能くするは鮮ない)。
文王曰諮,諮汝殷商。曾是彊禦?曾是掊克?
文王曰咨(ぶんおうえつし・文王が咨・嗟嘆して曰う)、咨女殷商(しじょいんしょう・女・あなた殷商に咨す)。曾是彊禦(そうぜきょうぎょ・曾て是の彊禦・強暴)、曾是掊克(そうぜほうこく・掊克・聚斂克剥)。
曾是在位?曾是在服?天降滔德,女興是力。
曾是在位(そうぜざいい)、曾是在服(そうぜざいふく・服・職)。天降滔德(てんこうとうとく・天は滔德・慢德を降す)、女興是力(じょこうぜりょく・女は興りて是の力を用いる)。
文王曰諮,諮女殷商。而秉義類,彊禦多懟。
文王曰咨、咨女殷商。而秉義類(にへいぎるい・而も義類・善類を秉るに)、彊禦多懟(きょうぎょたたい・彊禦は多く懟・怨む)。流言以對(りゅうげんいつい・流言を以って對・答える)、寇攘式內(こうじょうしきない・寇攘は式に內・内部に)。
流言以對。寇攘式內。侯作侯祝,靡屆靡究。
侯作侯祝(こうさくこうしゅく・侯に作り侯に祝・詛祝する)、靡屆靡究(びかいびきゅう・屆・極なく究なく・窮極なし)。
文王曰諮,諮女殷商。女炰烋於中國。斂怨以為德。
文王曰咨、咨女殷商。女炰烋于中國(じょほうきゅうおちゅうこく・女は中國に炰烋・咆哮す)。斂怨以為德(れんえんいいとく・怨を斂めて以って德と為す)。
不明爾德,時無背無側。爾德不明,以無陪無卿。
不明爾德(ふめいじとく・爾の德を明らかにせず)、時無背無側(じむはいむそく・時に背なく側なく・後援も側面もなし)。爾德不明(じとくふめい)、以無陪無卿(いむばいむけい・陪臣なく卿なし)。
文王曰諮,諮女殷商。天不湎爾以酒,不義從式。
文王曰咨、咨女殷商。天不湎爾以酒(てんふべんじいしゅ・天は爾を酒に湎・耽らせない)、不義從式(ふぎじゅうしき・不義なのに從って式・法とす)。既愆爾止(きけんじし・既に爾の止・容儀に愆り)。
既衍爾止。靡明靡晦。式號式呼。俾晝作夜。
靡明靡晦(びめいびかい・明なく晦なく)、式號式呼(しきごうしきこ・式に號し式に呼ぶ)。俾晝作夜(ひちゅうさくや・晝を夜と作・為さしめる)。
文王曰諮,諮女殷商。如蜩如螗,如沸如羹。
文王曰咨、咨女殷商。如蜩如螗(にょちょうにょとう・蜩の如く螗の如く)、如沸如羹(にょふつにょこう・沸く如く羹の如く)。
小大近喪,人尚乎由行。內奰於中國,覃及鬼方。
小大近喪(しょうだいきんそう・小も大も喪に近し)、人尚乎由行(じんしょうこゆうこう・人は尚ほ乎れ由行・其の道を行く)。內奰于中國(ないひおちゅうこく・內は中國に奰・怒る)、覃及鬼方(たんきゅうきほう・覃・延びて鬼方に及ぶ)。
文王曰諮,諮女殷商。匪上帝不時,殷不用舊。
文王曰咨、咨女殷商。匪上帝不時(ひじょうていふじ・上帝が時・善くないのではない)、殷不用舊(いんふようきゅう・殷が舊・舊典を用いないのだ)。
雖無老成人,尚有典刑。曾是莫聽,大命以傾。
雖無老成人(すいむろうせいじん・老成人なしといえども)、尚有典刑(しょうゆうてんけい・尚お典刑・典範刑法あり)。曾是莫聽(そうぜばくちょう・曾て是れ聽くこと莫し)、大命以傾(だいめいいけい・大命は以って傾く)。
文王曰諮,諮女殷商。人亦有言:顛沛之揭,
文王曰咨、咨女殷商。人亦有言(じんやくゆうげん・人も亦た言あり)。顛沛之揭(てんぱいしかつ・顛沛・倒れた木の揭・根を揭げ起こす)、
枝葉未有害,本實先撥。殷鑑不遠,在夏後之世。
枝葉未有害(しようみゆうがい・枝葉は未だ害有らず)、本實先撥(ほんじつせんばつ・本實・根本は先に撥・拔かれた)。殷鑒不遠(いんかんふえん・殷の鑒は遠からず)、在夏后之世(ざいかこうしせい・夏后の世に在る)。
抑抑威儀,維德之隅。人亦有言:靡哲不愚,庶人之愚,亦職維疾。
抑抑威儀(よくよくいぎ・抑抑たる威儀)、維德之隅(いとくしぐう・德の隅・廉隅)。人亦有言、靡哲不愚(びてつふぐ・哲人なきに愚なし・哲人でも愚なり)。庶人之愚(しょじんしぐ・庶人の愚は)、亦職維疾(やくしょくいしつ・亦た職・分上の疾・病のみ)。
哲人之愚,亦維斯戾。無競維人,四方其訓之。有覺德行,四國順之。
哲人之愚(てつじんしぐ・哲人の愚は)、亦維斯戾(やくいしれい・亦た維に斯の戾・乖戾のみ)。無競維人(むきょういじん・人に競・比ぶるなし・人材が無比)、四方其訓之(しほうきくんし・四方は其れ之を訓・教訓とする)。有覺德行(ゆうかくとくこう・覺たる德行あり)、四國順之(しこくじゅんし・四國は之に順う)。
訏謨定命,遠猶辰告。敬慎威儀,維民之則。其在於今,興迷亂於政。
訏謨定命(こぼうじょうめい・訏謨・大謀は命を定め)、遠猶辰告(えんゆうしんこく・遠猶は辰・時に告ぐ)。敬慎威儀(けいしんいぎ)、維民之則(いみんしそく・民の則)。其在于今(きざいおこん・其れ今に於いては)、興迷亂于政(こうめいらんおせい・興りて政に迷亂す)。
顛覆厥德,荒湛於酒。女雖湛樂從,弗念厥紹。罔敷求先王,克共明刑。
顛覆厥德(てんぷくけっとく・厥の德を顛覆し)、荒湛于酒(こうたんおしゅ・酒に荒湛・沉溺す)。女雖湛樂從(じょすいたんらくじゅう・女は湛樂に從うといえども)、弗念厥紹(ふねんけっしょう・厥の紹・繼承を念わない)。罔敷求先王(もうふきゅうせんおう・敷・廣く先王を求めず)、克共明刑(こくきょうめいけい・能く明刑・明らかな刑罰を共・執る)。
四皇天弗尚,如彼泉流,無淪胥以亡。夙興夜寐,灑掃庭內,維民之章。
肆皇天弗尚(しこうてんふつしょう・皇天は尚・佑けず・「四皇」は「肆皇」の誤字)、如彼泉流(にょひせんりゅう・彼の泉流の如く)、無淪胥以亡(むりんしょいぼう・相い淪れて亡ぶるな)。夙興夜寐(しゅくこうやび・夙に興き夜に寐て)、洒掃庭內(せんそうていない・庭內を洒掃せよ)、維民之章(いみんししょう・民の章・表)。
修爾車馬,弓矢戎兵,用戒戎作,用逷蠻方。質爾人民,謹爾侯度,用戒不虞。
修爾車馬(しゅうじしゃば・爾の車馬を修め)、弓矢戎兵(きゅうしじゅうへい・弓矢戎兵・兵器)、用戒戎作(ようかいじゅうさく・用いて戎作・兵事の興るに戒め)、用逖蠻方(ようてきばんぽう・用いて蠻方を逖・遠く御ぐ)。質爾人民(しつじじんみん・爾の人民を質・正し)、謹爾侯度(きんじこうど・爾の侯度・為侯の法度を謹み)、用戒不虞(ようかいふぐ・不虞・意外に戒むるに用いよ)。
慎爾出話,敬爾威儀,無不柔嘉。白圭之玷,尚可磨也;斯言之玷,不可為也!
慎爾出話(しんじしゅつわ・爾の出す話を慎め)、敬爾威儀(けいじいぎ・爾の威儀を敬め)、無不柔嘉(むふじゅうか・柔嘉・和らかに嘉くないことなし)。白圭之玷(はくけいしてん・白圭の玷・瑕)、尚可磨也(しょうかまや・尚お磨ける)、斯言之玷(しげんしてん・斯の言の玷は)、不可為也(ふかいや・為すべからず・補えない)。
無易由言,無曰苟矣,莫捫朕舌,言不可逝矣。無言不讎,無德不報。
無易由言(むえきゆうげん・由りて言を易・軽くするな)、無曰苟矣(むえつこうい・苟と曰うな・苟簡だと曰うな)。莫捫朕舌(ばくもんちんぜつ・朕の舌を捫・按える者なし)、言不可逝矣(げんふかせいい・言は逝・去らせられない)。無言不讎(むげんふしゅう・言に讎・酬答せざるなし)、無德不報(むとくふほう・德に報いざるなし)。
惠於朋友,庶民小子。子孫繩繩,萬民靡不承。視爾友君子,輯柔爾顏,不遐有愆。
惠于朋友(けいおほうゆう・朋友に惠み)、庶民小子(しょみんしょうし・庶民小子に及ぶ)。子孫繩繩(しそんじょうじょう・子孫は繩繩と慎み)、萬民靡不承(ばんみんびふしょう・萬民は承・受けざるなし)。視爾友君子(しじゆうくんし・爾が君子を友するを視れば)、輯柔爾顏(しゅうじゅうじがん・爾の顏を輯柔・和柔せよ)、不遐有愆(ふかゆうけん・遐・何ぞ愆・過失あらん)。
相在爾室,尚不愧於屋漏。無曰不顯,莫予雲覯。神之格思,不可度思,矧可射思!
相在爾室(しょうざいじしつ・爾が室に在るを相・視るに)、尚不愧于屋漏(しょうふきおうろう・尚お屋漏・室の西北隅・神に愧じない)。無曰不顯(むえつふけん・顯でないと曰うな)、莫予云覿(ばくようんてき・予を覿・見る者がないと云うな)。神之格思(しんしかくし・神の格・至るや)、不可度思(ふかたくし・度・測るべからず)、矧可射思(しんかしゃくし・況んや射・厭くべきや)。
闢爾為德,俾臧俾嘉。淑慎爾止,不愆於儀。不僭不賊,鮮不為則。投我以桃,報之以李。
辟爾為德(へきじいとく・爾の為す德を辟・修明せよ)、俾臧俾嘉(ひそうひか・臧・善くし嘉くせよ)。淑慎爾止(しゅくしんじし・淑・善く爾の止・容を慎み)、不愆于儀(ふけんおぎ・儀に愆らない)。不僭不賊(ふせんふぞく・僭・越えず賊・害せず)、鮮不為則(せんふいそく・則と為らざる鮮なし)。投我以桃(とうがいとう・我に桃を投げれば)、報之以李(ほうしいり・李を以って之に報いる)。
彼童而角,實虹小子。荏染柔木,言緡之絲。溫溫恭人,維德之基。
彼童而角(ひどうにかく・彼の童・角なき羊が角あるかの如し)、實虹小子(じつこうしょうし・實に小子を虹・惑亂す)。荏染柔木(じんぜんじゅうぼく・荏染たる柔木)、言緡之絲(げんみんしし・之に絲を緡・弦を張る)。溫溫恭人(うんうんきょうじん・溫溫たる恭人)、維德之基(いとくしき・德の基)。
其維哲人,告之話言,順德之行。其維愚人,覆謂我僭。民各有心。
其維哲人(きいてつじん・其れ哲人ならば)、告之話言(こくしわげん・之に話言・善い言を告げれば)、順德之行(じゅんとくしこう・德の行に順う)。其維愚人(きいぐじん・其れ愚人ならば)、覆謂我僭(ふくいがせん・覆って我を僭・越えたと謂う)。民各有心(みんかくゆうしん・民は各おの心有り)。
於乎小子,未知臧否。匪手攜之,言示之事。匪面命之,言提其耳。
於乎小子(おこしょうし・嗚呼小子)、未知臧否(みちぞうひ・臧否・善悪を知らず)。匪手攜之(ひしゅけいし・手を以って之を攜えるのみならず)、言示之事(げんじしじ・事を之に示す)。匪面命之(ひめんめいし・面して之に命ずるのみならず)、言提其耳(げんていきじ・其の耳を提・引く)。
借曰未知,亦既抱子。民之靡盈,誰夙知而莫成?昊天孔昭,我生靡樂。
借曰未知(しゃくえつみち・假に未だ知らないと曰いても)、亦既抱子(やくきほうし・既に子を抱く・已に子を抱く年齢)。民之靡盈(みんしびえい・民は盈・満ちない・足りない)、誰夙知而莫成(すいしゅくちにぼくせい・誰か夙・早く知りて莫・晚く成る者あらん)。昊天孔昭(こうてんこうしょう・昊天は孔く昭・明らか)、我生靡樂(がせいびらく・我が生は樂なし)。
視爾夢夢,我心慘慘。誨爾諄諄,聽我藐藐。匪用為教,覆用為虐。
視爾夢夢(しじぼうぼう・爾を視るに夢夢として昏昧)、我心慘慘(がしんさんさん)。誨爾諄諄(かいじしゅんしゅん・爾を誨えること諄諄)、聽我藐藐(ちょうがばくばく・我を聽くこと藐藐として)。匪用為教(ふよういきょう・用いて教と為さず)、覆用為虐(ふくよういぎゃく・覆って用いて虐・戲虐と為す)。
借曰未知,亦聿既耄。於乎,小子,告爾舊止。聽用我謀,庶無大悔。
借曰未知、亦聿既耄(やくいちきぼう・亦た聿に既に耄・老いた)。於乎小子、告爾舊止(こくじきゅうし・爾に舊止・舊き儀容を告ぐ)。聽用我謀(ちょうようがぼう・我が謀を聽用せば)、庶無大悔(しょむだいかい・庶幾く大悔なし)。
天方艱難,曰喪厥國。取譬不遠,昊天不忒。回遹其德,俾民大棘。
天方艱難(てんぽうかんなん・天は方に艱難)、曰喪厥國(えつそうけっこく・厥の國を喪わんと曰う)。取譬不遠(しゅひふえん・譬を取るに遠からず)、昊天不忒(こうてんふとく・昊天は忒・差失しない)。回遹其德(かいいつきとく・其の德を回遹・邪僻せしめ)、俾民大棘(ひみんだいきょく・民を大いに棘・急困せしめる)。
菀彼桑柔,其下侯旬,捋采其劉,瘼此下民。不殄心憂,倉兄填兮。倬彼昊天,寧不我矜?
菀彼桑柔(うつひそうじゅう・菀たる桑柔)、其下侯旬(きかこうじゅん・其の下は侯に旬・均しく覆う)。捋采其劉(りつさいきりゅう・捋采して其れ劉・稀疏となる)、瘼此下民(ばくしげみん・此の下民を瘼・病ましむ)。不殄心憂(ふてんしんゆう・心憂は殄・絶えない)、倉兄填兮(そうきょうてんけい・倉兄・喪亡の気が填・充ちる)。倬彼昊天(たくひこうてん・倬たる昊天)、寧不我矜(ねいふがきょう・寧ろ我を矜・憐れまざるか)。
四牡騤騤,旟旐有翩。亂生不夷,靡國不泯。民靡有黎,具禍以燼。於乎有哀,國步斯頻。
四牡騤騤(しぼきき・四牡は騤騤と)、旟旐有翩(よちょうゆうへん・旟旐は翩として)。亂生不夷(らんせいふい・亂が生じて夷・平らがない)、靡國不泯(びこくふびん・國に泯・亂ならざるなし)。民靡有黎(みんびゆうれい・民に黎・多きなく)、具禍以燼(ぐかいしん・具に禍を以って燼・灰燼となる)。於乎有哀(おこゆうあい・嗚呼哀れあり)、國步斯頻(こくほしひん・國步は斯に頻・危急)。
國步滅資,天不我將。靡所止疑,雲徂何往?君子實維,秉心無競。誰生厲階,至今為梗?
國步篾資(こくほべつし・國步は資を蔑・無くす)、天不我將(てんふがしょう・天は我を將・扶助しない)。靡所止疑(びしょしぎ・止まる所疑・定まるなし)、云徂何往(うんそかおう・徂・往きて何に往かん)。君子實維(くんしじつい・君子は實に維・思惟す)、秉心無競(へいしんむきょう・心を秉って競なし)。誰生厲階(すいせいれいかい・誰が厲階・禍の階を生じたか)、至今為梗(しこんいこう・今に至りて梗・梗塞と為す)。
憂心殷殷,念我土宇。我生不辰,逢天僤怒。自西徂東,靡所定處。多我覯痻,孔棘我圉。
憂心慇慇(ゆうしんいんいん・慇慇と憂える)、念我土宇(ねんがとう・我が土宇を念う)。我生不辰(がせいふしん・我が生は辰・時に遭わない)、逢天僤怒(ほうてんだんど・天の僤怒・大きな怒に逢う)。自西徂東(じせいそとう)、靡所定處(びしょていしょ・定まる處なし)。多我覯痻(たがこうびん・多く我は痻・病苦に覯う)、孔棘我圉(こうきょくがぎょ・孔く我が圉・邊疆を棘・急す)。
為謀為毖,亂況斯削。告爾憂恤,誨爾序爵。誰能執熱,逝不以濯?其何能淑,載胥及溺。
為謀為毖(いぼういひつ・謀を為し毖・慎み)、亂況斯削(らんきょうしさく・亂の況・情況は斯に削・減る)。告爾憂恤(こくじゆうじゅつ・爾に憂恤を告げ)、誨爾序爵(かいじじょしゃく・爾に序爵・爵を序ずを誨える)。誰能執熱(すいのうしゅうねつ・誰か能く熱を執りて)、逝不以濯(せいふいたく・逝きて濯・水で濯がざらん)。其何能淑(きかのうしゅく・其れ何ぞ能く淑・善くせん)、載胥及溺(さいしょきゅうでき・載に胥・相い及びて溺る)。
如彼溯風,亦孔之僾。民有肅心,荓雲不逮。好是稼穡,力民代食。稼穡維寶,代食維好?
如彼溯風(にょひそくふう・彼の溯風・逆風の如し)、亦孔之僾(やくこうしあい・亦た孔の僾・窒息す)。民有肅心(みんゆうしゅくしん・民は肅心あり)、荓云不逮(へいうんふたい・荓・使に逮・及ばないと云う)。好是稼穡(こうぜかしょく・是の稼穡を好み)、力民代食(りきみんだいしょく・力む民が代わって食・代食する)。稼穡維寶(かしょくいほう・稼穡は維に寶)、代食維好(だいしょくいこう・代食は維に好・好ましい)。
天降喪亂,滅我立王。降此蟊賊,稼穡卒癢。哀恫中國,具贅卒荒。靡有旅力,以念穹蒼。
天降喪亂(てんこうそうらん・天は喪亂を降し)、滅我立王(めつがりつおう・我が立てた王を滅す)。降此蟊賊(こうしぼうぞく・此の蟊賊を降し)、稼穡卒痒(かしょくそつよう・稼穡は卒に痒・病む)。哀恫中國(あいどうちゅうこく・中國を哀恫・痛み哀れむ)、具贅卒荒(ぐせいそつこう・具に贅・連りて卒に荒れる)。靡有旅力(びゆうりょりょく・旅力・体力あるなし)、以念穹蒼(いねんきゅうそう・穹蒼を念るに以ってす)。
維此惠君,民人所瞻。秉心宣猶,考慎其相。維彼不順,自獨俾臧。自有肺腸,俾民卒狂。
維此惠君(いしけいくん・此の惠・順惠なる君)、民人所瞻(みんじんしょせん・民人の瞻る所)。秉心宣猶(へいしんせんゆう・心を秉りて猶を宣・明らかにし)、考慎其相(こうしんきそう・其の相を考え慎む)。維彼不順(いひふじゅん・彼の順わざるは)、自獨俾臧(じどくひそう・自ら獨り俾・己を臧・善とせしむ)。自有肺腸(じゆうはいちょう・自ら肺腸あり・私心あり)、俾民卒狂(ひみんそつきょう・民を卒に狂わしむ)。
瞻彼中林,甡甡其鹿。朋友已譖,不胥以谷。人亦有言:進退維谷。
瞻彼中林(せんぴちゅうりん・彼の中林を瞻る)、甡甡其鹿(しんしんきろく・甡甡として其の鹿・多い)。朋友已譖(ほうゆういしん・朋友は已に譖・譖る)、不胥以穀(ふしょいこく・胥・相いに以って穀・善くせず)。人亦有言(じんやくゆうげん)、進退維谷(しんたいいこく・進退は維に谷・窮谷に陥る)。
維此聖人,瞻言百里。維彼愚人,覆狂以喜。匪言不能,胡斯畏忌?
維此聖人(いしせいじん・此の聖人は)、瞻言百里(せんげんひゃくり・瞻言して百里を見る)。維彼愚人(いひぐじん・彼の愚人は)、覆狂以喜(ふくきょういき・覆って狂して以って喜ぶ)。匪言不能(ひげんふのう・言えないのではない)、胡斯畏忌(こしいき・何ぞ斯に畏忌するか)。
維此良人,弗求弗迪。維彼忍心,是顧是復。民之貪亂,寧為荼毒。
維此良人(いしりょうじん・此の良人は)、弗求弗迪(ふきゅうふてき・求めず迪・進めない)。維彼忍心(いひにんしん・彼の忍心は)、是顧是復(ぜこぜふく・顧戀し反覆する)。民之貪亂(みんしたんらん・民は亂を貪る)、寧為荼毒(ねいいとどく・寧ろ荼毒を為す)。
大風有隧,有空大谷。維此良人,作為式谷。維彼不順,徵以中垢。
大風有隧(たいふうゆうすい・大風には隧・來路あり)、有空大谷(ゆうこうだいこく・空なる大谷あり)。維此良人、作為式穀(さくいしきこく・作為は式に穀・善くす)。維彼不順、征以中垢(せいいちゅうこう・征・行くこと中垢・垢中に)。
大風有隧,貪人敗類。聽言則對,誦言如醉。匪用其良,復俾我悖。
大風有隧、貪人敗類(たんじんはいるい・貪人は類を敗る)。聽言則對(ちょうげんそくつい・聽言・耳に快い言には對・答える)、誦言如醉(しょうげんにょすい・誦言・諫言には醉うが如し)。匪用其良(ふようきりょう・其の良人を用いず)、覆俾我悖(ふくひがぼつ・覆って我を悖・亂せしむ)。
嗟爾朋友,予豈不知而作。如彼飛蟲,時亦弋獲。既之陰女,反予來赫。
嗟爾朋友(さじほうゆう・嗟あなたがた朋友よ)、予豈不知而作(よきふちにさく・予は何ぞ知らずして作・為さんや・知らないで為すのではない)。如彼飛蟲(にょひひちゅう・彼の飛蟲の如く)、時亦弋獲(じやくよくかく・時に亦た弋・射獲される)。既之陰女(きしいんじょ・既に之を陰・蔭うが・蔭ってあなたがたを護れば)、反予來赫(はんよらいかく・反って予に來り赫・威嚇す)。
民之罔極,職涼善背。為民不利,如雲不克。民之回遹,職競用力。
民之罔極(みんしもうきょく・民は罔極・極なし)、職涼善背(しょくりょうぜんはい・職・ただ涼・刻薄して背を善くす)。為民不利(いみんふり・民に不利を為す)、如云不克(にょうんふこく・云う如く克・勝たないかの如く・勝ち切らんとする)。民之回遹(みんしかいいつ・民は回遹・邪僻)、職競用力(しょくきょうようりょく・ただ競って力を用いる)。
民之未戾,職盜為寇。涼曰不可,覆背善詈。雖曰匪予,既作爾歌!
民之未戾(みんしみれい・民は未だ戾・定まらない)、職盜為寇(しょくとういこう・ただ盜・寇を為す)。涼曰不可(りょうえつふか・涼・懇めて不可と曰えば)、覆背善詈(ふくはいぜんり・覆って背に詈・罵るを善くす)。雖曰匪予(すいえつひよ・予に匪・向けたものではないと曰うといえども)、既作爾歌(きさくじか・既に爾の歌を作・あなたがたのためにこの歌を作った)。
倬彼雲漢,昭回於天。王曰:於乎!何辜今之人?天降喪亂,饑饉薦臻。
倬彼雲漢(たくひうんかん・倬たる雲漢)、昭回于天(しょうかいおてん・昭・明るく天に回・巡る)。王曰於乎(おうえつおこ・王が於乎・嗚呼と曰う)、何辜今之人(かここんしじん・今之人は何の辜・罪か)。天降喪亂(てんこうそうらん)、饑饉薦臻(ききんせんしん・饑饉は薦・屢々臻・至る)。
靡神不舉,靡愛斯牲。圭壁既卒,寧莫我聽?
靡神不舉(びしんふきょ・神に舉・祭らないはなく)、靡愛斯牲(びあいしせい・斯の牲・犧牲を愛・惜しまない)。圭璧既卒(けいへききそつ・圭璧は既に卒・尽きた)、寧莫我聽(ねいばくがちょう・寧ろ我を聽くこと莫きか)。
旱既大甚,蘊隆蟲蟲。不殄禋祀,自郊徂宮。上下奠瘞,靡神不宗。
旱既大甚(かんきたいじん・旱は既に大きく甚し)、蘊隆蟲蟲(うんりゅうちゅうちゅう・蘊隆として蟲蟲・熱氣が盛ん)。不殄禋祀(ふてんいんし・禋祀を殄・絶やさず)、自郊徂宮(じこうそきゅう・郊より宮に徂く)。上下奠瘞(じょうげでんえい・上に奠め下に瘞・埋め)、靡神不宗(びしんふそう・宗・尊ぶ神なし)。
后稷不克,上帝不臨。耗斁下土,寧丁我梗
后稷不克(こうしょくふこく・后稷も克・能くせず)、上帝不臨(じょうていふりん・上帝は臨まない)。耗斁下土(こうえきげど・下土を耗斁・損耗敗壊し)、寧丁我躬(ねいていがきゅう・寧ろ我が躬に丁・當るか・底本の此の句は脱文の疑いあり)。
旱既大甚,則不可推。兢兢業業,如霆如雷。周餘黎民,靡有孑遺。
旱既大甚、則不可推(そくふかすい・則ち推・退けるべからず)。兢兢業業(きょうきょうぎょうぎょう・兢兢業業として)、如霆如雷(にょていにょらい)。周餘黎民(しゅうよれいみん・周に餘る黎民)、靡有孑遺(びゆうけつい・孑遺・一つ殘る者もない)。
昊天上帝,則不我遺。胡不相畏?先祖於摧。
昊天上帝(こうてんじょうてい)、則不我遺(そくふがい・則ち我を遺・遺さない)。胡不相畏(こふそうい・何ぞ相い畏れざる)、先祖于摧(せんそおさい・先祖は于に摧・挫折する)。
旱既大甚,則不可沮。赫赫炎炎,雲我無所。大命近止,靡瞻靡顧。
旱既大甚、則不可沮(そくふかそ・沮・止めるべからず)。赫赫炎炎(かっかくえんえん・赫赫炎炎と)、云我無所(うんがむしょ・我に處所なしと云う)。大命近止(たいめいきんし・大命は近く止まる)、靡瞻靡顧(びせんびこ・瞻なく顧ない)。
群公先正,則不我助。父母先祖,胡寧忍予?
群公先正(ぐんこうせんせい・群公先正・先代の正卿)、則不我助(そくふがじょ・則ち我を助けない)。父母先祖(ふぼせんそ)、胡寧忍予(こねいにんよ・何ぞ寧ろ予を忍ばせるか・どうして寧ろ予に忍いか)。
旱既大甚,滌滌山川。旱魃為虐,如惔如焚。我心憚暑,憂心如燻。
旱既大甚、滌滌山川(てきてきさんせん・滌滌として山川は乾く)。旱魃為虐(かんばついぎゃく・旱魃が虐を為す)、如惔如焚(にょだんにょふん・惔・燃える如く焚く如し)。我心憚暑(がしんたんしょ・我が心は暑を憚・懼れる)、憂心如熏(ゆうしんにょくん・熏・燻るが如し)。
群公先正,則不我聞。昊天上帝,寧俾我遁?
群公先正、則不我聞(そくふがぶん・則ち我を聞かない)。昊天上帝、寧俾我遁(ねいひがとん・寧ろ我を俾・遁・逃げさせるか)。
旱既大甚,黽勉畏去。胡寧瘨我以旱?憯不知其故。祈年孔夙,方社不莫。
旱既大甚、黽勉畏去(びんべんいきょ・黽勉して畏れて去る・畏れて去らんと勤勉す)。胡寧瘨我以旱(こねいてんがいかん・何ぞ寧ろ旱を以って我を瘨・病ませるか)。憯不知其故(さんふちきこ・憯・曾て其の故を知らない)。祈年孔夙(きねんこうしゅく・年を祈ること孔く夙・早かった)、方社不莫(ほうしゃふぼ・方・四方と社を祭ること莫・遲くなかった)。
昊天上帝,則不我虞。
昊天上帝、則不我虞(そくふがぐ・則ち我を虞・度らない)。
敬恭明神,宜無悔怒。旱既大甚,散無友紀。鞫哉庶正,疚哉冢宰。
敬恭明神(けいきょうめいしん・明神を敬恭す)、宜無悔怒(ぎむかいど・宜しく悔怒なかるべし)。旱既大甚、散無友紀(さんむゆうき・散亂して友紀・綱紀なし)。鞫哉庶正(きくさいしょせい・鞫・窮まるなり庶正・衆官の長)、疚哉冢宰(きゅうさいちょうさい・疚・病苦するなり冢宰)。
趣馬師氏,膳夫左右。靡人不周。無不能止,瞻卬昊天,雲如何裡!
趣馬師氏(しゅうばしし・趣馬・師氏)、膳夫左右(ぜんふさゆう・膳夫・左右)。靡人不周(びじんふしゅう・人に周・周濟せざるなし)。無不能止(むふのうし・止められないはない・止まらない)。瞻卬昊天(せんぎょうこうてん・昊天を瞻卬・仰ぎ見る)、云如何里(うんじょかり・云何か里・憂うるか)。
瞻卬昊天,有嘒其星。大夫君子,昭假無贏。大命近止,無棄爾成。
瞻卬昊天、有嘒其星(ゆうえいきせい・星は嘒として微か)。大夫君子(たいふくんし)、昭假無贏(しょうかむえい・昭假・昭明感格して贏・餘りなし)。大命近止、無棄爾成(むきじせい・爾の成を棄てるな)。
何求為我。以戾庶正。瞻卬昊天,曷惠其寧?
何求為我(かきゅういが・何を求めて我が為すか・何のために我が求めるか)。以戾庶正(いれいしょせい・庶正を戾・定めるに以ってす)。瞻卬昊天、曷惠其寧(かつけいきねい・曷・いつ惠に其の寧を賜わるか)。
崧高維嶽,駿極於天。維嶽降神,生甫及申。維申及甫,維周之翰。四國於蕃。四方於宣。
崧高維嶽(すうこういがく・崧高なるは嶽・岳)、駿極于天(しゅんきょくおてん・駿・高く天に極る)。維嶽降神(いがくこうしん・嶽は神を降し)、生甫及申(せいほきゅうしん・甫侯及び申伯を生む)。維申及甫(いしんきゅうほう・申及び甫)、維周之翰(いしゅうしかん・周の翰・幹)。四國于蕃(しこうおはん・四國は于に蕃・藩籬と為す)、四方于宣(しほうおせん・四方は于に宣・宣揚す)。
亹亹申伯,王纘之事。於邑於謝,南國是式。王命召伯,定申伯之宅。登是南邦,世執其功。
亹亹申伯(びびしんぱく・亹亹たる申伯)、王纘之事(おうさんしじ・王が之に事を纘・繼がせる)。于邑于謝(おゆうおしゃ・謝に邑を作る)、南國是式(なんこくぜしき・南國は之を式・法とする)。王命召伯(おうめいしょうはく・王は召伯に命じ)、定申伯之宅(じょうしんぱくしたく・申伯の宅を定め)。登是南邦(とうぜなんぽう・是の南邦に登・成す)、世執其功(せいしゅきこう・世に其の功を執る)。
王命申伯,式是南邦。因是謝人,以作爾庸。王命召伯,徹申伯土田。王命傅御,遷其私人。
王命申伯、式是南邦(しきぜなんぽう・是の南邦の式となれ)。因是謝人(いんぜしゃじん・是の謝人に因・依り)、以作爾庸(いさくじよう・爾の庸・城を作る)。王命召伯、徹申伯土田(てつしんぱくどでん・申伯の土田を徹・治めよ)。王命傅御(おうめいふぎょ・傅御に命じ)、遷其私人(せんきしじん・其の私人・家人を遷せ)。
申伯之功,召伯是營。有俶其城,寢廟既成。既成藐藐,王錫申伯。四牡蹻蹻,鉤膺濯濯。
申伯之功(しんぱくしこう)、召伯是營(しょうはくぜえい・召伯が之を營す)。有俶其城(ゆうしゅくきじょう・俶として其の城・始めて成る)、寢廟既成(しんびょうきせい・寢廟は既に成る)。既成藐藐(きせいばくばく・藐藐として美盛)、王錫申伯(おうしゃくしんぱく)。四牡蹻蹻(しぼきゃくきゃく・蹻蹻として強壯)、鉤膺濯濯(こうおうたくたく・鉤膺は濯濯として光明)。
王遣申伯,路車乘馬。我圖爾居,莫如南土。錫爾介圭,以作爾寶。往近王舅,南土是保。
王遣申伯(おうけんしんぱく・王は申伯を遣わす)、路車乘馬(ろしゃじょうば)。我圖爾居(がとじきょ・我は爾の居を圖・謀る)、莫如南土(ばくにょなんど・南土に如くはない)。錫爾介圭(しゃくじかいけい・爾に介圭・大圭を錫う)、以作爾寶(いさくじほう・以って爾の寶を作・為す)。往近王舅(おうきんおうきゅう・往け王舅・近・去れ)、南土是保(なんどぜほう・南土は是に保・保たるる)。
申伯信邁,王餞於郿。申伯還南,謝於誠歸。王命召伯,徹申伯土疆。以峙其粻,式遄其行。
申伯信邁(しんぱくしんばい・申伯は信・誠に邁・行く)、王餞于郿(おうせんおび・王は郿に餞・餞別す)。申伯還南(しんぱくかんなん・申伯は南に還る)、謝于誠歸(しゃおせいき・謝に誠に歸る)。王命召伯、徹申伯土疆(てつしんぱくどきょう・土疆を徹する)。以峙其粻(いじきちょう・以って其の粻・糧を峙・儲える)、式遄其行(しきせんきこう・式に遄・速やかに其の行かせる)。
申伯番番,既入於謝。徒御嘽嘽。周邦鹹喜,戎有良翰。不顯申伯,王之元舅,文武是憲。
申伯番番(しんぱくはんぱん・番番として勇武)、既入于謝(きにゅうおしゃ・既に謝に入る)。徒御啴啴(とぎょたんたん・徒御・步卒車夫は啴啴と多い)。周邦咸喜(しゅうほうかんき・周邦は咸・皆喜ぶ)、戎有良翰(じゅうゆうりょうかん・戎・あなたに良い翰・幹あり)。不顯申伯(ふけんしんぱく・顯ならずや申伯)、王之元舅(おうしげんきゅう・王の元舅・大舅)、文武是憲(ぶんぶぜけん・文武は之を憲・法とする)。
申伯之德,柔惠且直。揉此萬邦,聞於四國。吉甫作誦,其詩孔碩。其風四好,以贈申伯。
申伯之德、柔惠且直(じゅうけいしょちょく・柔惠にして直き)。揉此萬邦(じゅうしばんぽう・此の萬邦を揉・安撫す)、聞于四國(ぶんおしこく・四國に聞えん)。吉甫作誦(きっぽさくしょう・吉甫が誦を作る)、其詩孔碩(きしこうせき・其の詩は孔く碩・大きい)。其風肆好(きふうしこう・其の風・曲調は肆・極めて好し・「四好」は「肆好」の誤字)、以贈申伯(いぞうしんぱく・申伯に贈る)。
天生烝民,有物有則。民之秉彝,好是懿德。天監有周,昭假於下。保茲天子,生仲山甫。
天生烝民(てんせいしょうみん)、有物有則(ゆうぶつゆうそく・物あり則あり)。民之秉彝(みんしへいい・民の秉る彝・常性)、好是懿德(こうぜいとく・是の懿德・美德を好む)。天監有周(てんかんゆうしゅう・天は有周を監る)、昭假于下(しょうかおか・昭假・明らかに下に感格す)。保茲天子(ほしつてんし・茲の天子を保す)、生仲山甫(せいちゅうさんぽ・仲山甫を生む)。
仲山甫之德,柔嘉維則。令儀令色。小心翼翼。古訓是式。威儀是力。天子是若,明命使賦。
仲山甫之德、柔嘉維則(じゅうかいそく・柔嘉は維に則)。令儀令色(れいぎれいしょく・令儀・令色)。小心翼翼、古訓是式(こくんぜしき・古訓を式・法式とす)。威儀是力(いぎぜりょく・威儀を是力・力む)。天子是若(てんしぜじゃく・天子は之を若・順う)、明命使賦(めいめいしふ・明命を賦・頒布せしむ)。
王命仲山甫,式是百辟,纘戎祖考,王躬是保。出納王命,王之喉舌。賦政於外,四方爰發。
王命仲山甫、式是百辟(しきぜぴゃくへき・是の百辟の式となれ)。纘戎祖考(さんじゅうそこう・戎・あなたの祖考を纘・繼げ)、王躬是保(おうきゅうぜほう・王躬・王の身を是に保て)。出納王命(しゅつのうおうめい・王命を出納する)、王之喉舌(おうしこうぜつ)。賦政于外(ふせいおがい・政を外に賦・頒布し)、四方爰發(しほうえんぱつ・四方は爰に發す)。
肅肅王命,仲山甫將之。邦國若否,仲山甫明之。既明且哲,以保其身。夙夜匪解,以事一人。
肅肅王命(しゅくしゅくおうめい・肅肅たる王命)、仲山甫將之(ちゅうさんぽしょうし・仲山甫は之を將・奉行す)。邦國若否(ほうこくじゃくひ・邦國の若否・善不善)、仲山甫明之(ちゅうさんぽめいし・仲山甫は之を明らかにす)。既明且哲(きめいしょてつ・既に明らか且つ哲・睿哲)、以保其身(いほきしん・以って其の身を保つ)。夙夜匪解(しゅくやひかい・夙夜に懈・怠らない)、以事一人(いじいちじん・一人に事えるに以ってす)。
人亦有言,柔則茹之,剛則吐之。維仲山甫,柔亦不茹,剛亦不吐。不侮矜寡,不畏強禦。
人亦有言、柔則茹之(じゅうそくじょし・柔なれば則ち之を茹・食む)、剛則吐之(こうそくとし・剛なれば則ち之を吐く)。維仲山甫(いちゅうさんぽ・仲山甫のみ)、柔亦不茹(じゅうやくふじょ・柔にも亦た茹さず)、剛亦不吐(こうやくふと・剛にも亦た吐かない)。不侮矜寡(ふぶきょうか・矜寡を侮らず)、不畏彊禦(ふいきょうぎょ・彊禦を畏れず)。
人亦有言,德輶如毛,民鮮克舉之。我儀圖之,維仲山甫舉之。愛莫助之。袞職有闕,維仲山甫補之。
人亦有言、德輶如毛(とくゆうにょぼう・德は輶・毛の如く輕い)、民鮮克舉之(みんせんこくきょし・民は克く之を舉ぐる者鮮なし)。我儀圖之(がぎとし・我は之を儀圖・揣度すれば)、維仲山甫舉之(いちゅうさんぽきょし・仲山甫のみ之を舉ぐ)。愛莫助之(あいばくじょし・愛するも之を助くること莫し)。袞職有闕(こんしょくゆうけつ・袞職に闕あり)、維仲山甫補之(いちゅうさんぽほし・仲山甫のみ之を補う)。
仲山甫出祖。四牡業業。征夫捷捷,每懷靡及。四牡彭彭,八鸞鏘鏘。王命仲山甫,城彼東方。
仲山甫出祖(ちゅうさんぽしゅつそ・仲山甫は出祖・出て祖・道神に祭る)、四牡業業(しぼぎょうぎょう)。征夫捷捷(せいふしょうしょう・征夫は捷捷として敏捷)、每懷靡及(まいかいびきゅう・毎に靡及・及ばないを懷れる)。四牡彭彭(しぼほうほう)、八鸞鏘鏘(はちらんそうそう)。王命仲山甫、城彼東方(じょうひとうぼう・彼の東方に城す)。
四牡騤騤,八鸞喈喈。仲山甫徂齊,式遄其歸。吉甫作誦,穆如清風。仲山甫永懷,以慰其心。
四牡騤騤、八鸞喈喈(はちらんかいかい)。仲山甫徂齊(ちゅうさんぽそせい・仲山甫は齊に徂く)、式遄其歸(しきせんきき・式に遄く其の歸らん)。吉甫作誦、穆如清風(ぼくにょせいふう・穆として清風の如し)。仲山甫永懷(ちゅうさんぽえいかい・仲山甫は永く懷れる)、以慰其心(いいきしん・以って其の心を慰む)。
奕奕梁山,維禹甸之,有倬其道。
奕奕梁山(えきえきりょうざん・奕奕たる梁山)、維禹甸之(いうでんし・禹が之を甸・治めた)、有倬其道(ゆうたくきどう・其の道は倬・大きい)。
韓侯受命,王親命之:纘戎祖考,無廢朕命。
韓侯受命(かんこうじゅめい・韓侯は命を受け)、王親命之(おうしんめいし・王は親しく之に命ず)。纘戎祖考(さんじゅうそこう・戎の祖考を纘げ)、無廢朕命(むはいちんめい・朕の命を廢するな)。
夙夜匪解,虔共爾位,朕命不易。
夙夜匪解(しゅくやひかい)、虔共爾位(けんきょうじい・虔・誠に爾の位を共・恭む)、朕命不易(ちんめいふえき・朕の命は易からず)。
粲不庭方,以佐戎闢。四牡奕奕,孔修且張。
榦不庭方(かんふていほう・庭・來朝せざる方を榦・正す・「粲」は「榦」の誤字)、以佐戎辟(いさじゅうへき・以って戎・あなたの辟・君を佐けよ)。四牡奕奕(しぼえきえき)、孔修且張(こうしゅうしょちょう・孔く修・長く且つ張・壯大)。
韓侯入覲,以其介圭,入覲於王。
韓侯入覲(かんこうにゅうきん・韓侯は入り覲・朝見す)、以其介圭(いきかいけい・其の介圭を以って)、入覲于王(にゅうきんおおう・王に入覲す)。
王錫韓侯,淑旗綏章,簟茀錯衡。
王錫韓侯(おうしゃくかんこう)、淑旂綏章(しゅくきすいしょう・淑旂・善い旂と綏章)、簟茀錯衡(てんふつさくこう・簟茀と錯衡)。
玄袞赤舄,鉤膺鏤錫,鞹鞃淺幭,鞗革金厄。
玄袞赤舄(げんこんせきせき・玄袞と赤舄)、鉤膺鏤鍚(こうおうるよう・鉤膺と鏤鍚・金鏤りの馬額飾り)、鞹鞃淺幭(かくこうせんべき・鞹鞃と淺幭・淺色の覆軾)、鞗革金厄(ちょうかくきんあく・鞗革と金厄・金環の辔首)。
韓侯出祖,出宿於屠。顯父餞之,清酒百壺。
韓侯出祖(かんこうしゅつそ)、出宿于屠(しゅつしゅくおと・屠に出て宿る)。顯父餞之(けんふせんし・顯父が之を餞・餞別す)、清酒百壺(せいしゅひゃくこ・清酒百壺)。
其殽維何?炰鱉鮮魚。其蔌維何?維筍及蒲。
其殽維何(きこういか・其の殽は何ぞ)。炰鱉鮮魚(ほうへつせんぎょ・炰鱉・烹けた鱉と鮮魚)。其蔌維何(きしゅくいか・其の蔌・菜は何ぞ)。維筍及蒲(いじゅんきゅうほ・筍及び蒲)。
其贈維何?乘馬路車。籩豆有且。侯氏燕胥。
其贈維何(きぞういか・其の贈は何ぞ)。乘馬路車(じょうばろしゃ・乘馬と路車)。籩豆有且(へんとうゆうしょ・籩豆は且・多し)。侯氏燕胥(こうしえんしょ・侯氏は燕胥・宴樂す)。
韓侯取妻,汾王之甥,蹶父之子。
韓侯取妻(かんこうしゅさい・韓侯は妻を取る)、汾王之甥(ふんおうしせい・汾王の甥・外孫女)、蹶父之子(けつふしし・蹶父の子・女)。
韓侯迎止,於蹶之裡。
韓侯迎止(かんこうげいし・韓侯は迎える)、于蹶之里(おけつしり・蹶・蹶父の里に)。
百兩彭彭,八鸞鏘鏘,不顯其光。
百兩彭彭(ぴゃくりょうほうほう・百兩は彭彭)、八鸞鏘鏘、不顯其光(ふけんきこう・其の光を顯さずや・輝かしいこと)。
諸娣從之,祁祁如雲。韓侯顧之,爛其盈門。
諸娣從之(しょていじゅうし・諸娣は之に從う)、祁祁如雲(ききにょうん・祁祁として雲の如し)。韓侯顧之(かんこうこし・韓侯は之を顧みる)、爛其盈門(らんきえいもん・爛として門に盈つ)。
蹶父孔武,靡國不到。為韓姞相攸,莫如韓樂。
蹶父孔武(けつふこうぶ・蹶父は孔く武・勇武)、靡國不到(びこくふとう・到らない國なし)。為韓姞相攸(いかんきつそうゆう・韓姞のために攸・居る所を相・視る)、莫如韓樂(ばくにょかんらく・韓の樂に如くはない)。
孔樂韓土,川澤訏訏,魴鱮甫甫,麀鹿噳噳。
孔樂韓土(こうらくかんど・韓土は孔く樂しい)、川澤訏訏(せんたくくく・川澤は訏訏として廣大)。魴鱮甫甫(ぼうしょほほ・魴鱮は甫甫として肥大)、麀鹿噳噳(ゆうろくぎゅうぎゅう・麀鹿は噳噳として多い)。
有熊有羆,有貓有虎。慶既令居,韓姞燕譽。
有熊有羆(ゆうゆうゆうひ・熊あり羆あり)、有貓有虎(ゆうびょうゆうこ・貓あり虎あり)。慶既令居(けいきれいきょ・慶・喜び既に令居・善い居あり)、韓姞燕譽(かんきつえんよ・韓姞は燕譽・安樂して譽あり)。
溥彼韓城,燕師所完。以先祖受命,因時百蠻。
溥彼韓城(ふひかんじょう・溥たる韓城)、燕師所完(えんししょかん・燕師・燕の衆の完・修完する所)。以先祖受命(いせんそじゅめい・先祖に因りて命を受け)、因時百蠻(いんじひゃくばん・時の百蠻に因・依る)。
王錫韓侯,其追其貊。奄受北國,因以其伯。
王錫韓侯、其追其貊(きついきばく・其の追其の貊・追族貊族)。奄受北國(えんじゅほっこく・奄として北國を受け)、因以其伯(いんいきはく・因りて其の伯・方伯を以ってす)。
實墉實壑,實畝實藉。獻其貔皮,赤豹黃羆。
實墉實壑(じつようじつかく・墉・牆を實に築き壑・濠を穿つ)、實畝實藉(じつぼうじつしゃく・畝・田を治め藉・稅を收む)。獻其貔皮(けんきひひ・其の貔皮を獻じ)、赤豹黃羆(せきひょうこうひ・赤豹と黃羆)。
江漢浮浮,武夫滔滔。匪安匪遊,淮夷來求。既出我車,既設我旟。匪安匪舒,淮夷來鋪。
江漢浮浮(こうかんふふ・江漢は浮浮として)、武夫滔滔(ぶふとうとう・武夫は滔滔と)。匪安匪游(ひあんひゆう・安んずるに匪く游ぶに匪く)、淮夷來求(わいいらいきゅう・淮夷を來て求める・來求・來たりて求むるは淮夷を征す)。既出我車(きしゅつがしゃ・既に我が車を出し)、既設我旟(きせつがよ・既に我が旟・鳥隼の旗を設け)。匪安匪舒(ひあんひしょ・舒・緩やかでもない)、淮夷來鋪(わいいらいふ・來鋪・來りて鋪・陳兵す)。
江漢湯湯,武夫洸洸。經營四方,告成於王。四方既平,王國庶定。時靡有爭,王心載寧。
江漢湯湯(こうかんしょうしょう・湯湯として)、武夫洸洸(ぶふこうこう・洸洸として威武)。經營四方(けいえいしほう)、告成于王(こくせいおおう・成を王に告ぐ)。四方既平(しほうきへい)、王國庶定(おうこくしょじょう・王國は庶幾く定まる)。時靡有爭(じびゆうそう・時に爭なし)、王心載寧(おうしんさいねい・王の心は載に寧んず)。
江漢之滸,王命召虎:式闢四方,徹我疆土。匪疚匪棘,王國來極。於疆於理,至於南海。
江漢之滸(こうかんしこ・江漢の滸・水邊)、王命召虎(おうめいしょうこ・王は召虎に命ず)。式辟四方(しきへきしほう・式に四方を辟・開く)、徹我疆土(てつがきょうど・我が疆土を徹・治めよ)。匪疚匪棘(ひきゅうひきょく・疚・病害でも棘・急迫でもない)、王國來極(おうこくらいきょく・王國は來て極・極致の法と為す)。于疆于理(おきょうおり・疆し理し)、至于南海(しおなんかい・南海に至る)。
王命召虎:來旬來宣。文武受命,召公維翰。無曰予小子,召公是似。肇敏戎公,用錫爾祉。
王命召虎、來旬來宣(らいじゅんらいせん・來り旬・巡り來り宣・宣示せよ)。文武受命(ぶんぶじゅめい・文武は命を受け)、召公維翰(しょうこういかん・召公は維に翰・幹)。無曰予小子(むえつよしょうし・予小子と曰うな・小子だからと遠慮するな)、召公是似(しょうこうぜじ・召公に是に似・嗣げ)。肇敏戎功(ちょうびんじゅうこう・肇・始めて敏く戎功・あなたの功を成す)、用錫爾祉(ようしゃくじし・用いて爾に祉を錫う)。
釐爾圭瓚,秬鬯一卣。告於文人,錫山土田。於周受命,自召祖命,虎拜稽首:天子萬年!
釐爾圭瓚(りじけいさん・爾に圭瓚を釐・賜う)、秬鬯一卣(きょちょういちゆう・秬鬯・黑黍の香酒一卣)。告于文人(こくおぶんじん・文人・文德ある先祖に告ぐ)、錫山土田(しゃくざんどでん・山と土田を錫う)。于周受命(おしゅうじゅめい・周に於いて命を受け)、自召祖命(じしょうそめい・召祖の命に自・由る)。虎拜稽首(こはいけいしゅ・虎は拜し稽首す)、天子萬年(てんしばんねん・天子萬年)。
虎拜稽首,對揚王休。作召公考:天子萬壽!明明天子,令聞不已,矢其文德,洽此四國。
虎拜稽首、對揚王休(ついようおうきゅう・對揚して王の休・美を揚げる)。作召公考(さくしょうこうこう・召公の考・成を作る)、天子萬壽(てんしばんじゅ)。明明天子(めいめいてんし・明明たる天子)、令聞不已(れいぶんふい・令聞は已まない)。矢其文德(しきぶんとく・其の文德を矢・陳布し)、洽此四國(きょうししこく・此の四國に洽・協和す)。
赫赫明明。王命卿士,南仲大祖,大師皇父。整我六師,以修我戎。既敬既戒,惠此南國。
赫赫明明(かっかくめいめい・赫赫として明明)、王命卿士(おうめいけいし・王は卿士に命ず)。南仲大祖(なんちゅうたいそ・南仲は大祖・太祖に命じられ)、大師皇父(たいしこうふ・大師皇父)。整我六師(せいがろくし・我が六師を整え)、以修我戎(いしゅうがじゅう・我が戎・兵器を修むるに以ってす)。既敬既戒(きけいきかい・既に敬し既に戒め)、惠此南國(けいしなんこく・此の南國を惠む)。
王謂尹氏,命程伯休父,左右陳行。戒我師旅,率彼淮浦,省此徐土。不留不處,三事就緒。
王謂尹氏(おういいんし・王は尹氏に謂う)、命程伯休父(めいていはくきゅうふ・程伯休父に命ず)。左右陳行(さゆうちんこう・左右に陳行・行を陳べ)、戒我師旅(かいがしりょ・我が師旅を戒め)。率彼淮浦(そつひわいほ・彼の淮浦・淮水の邊を率・沿い)、省此徐土(せいしじょど・此の徐土を省・巡る)。不留不處(ふりゅうふしょ・留まらず處らず)、三事就緒(さんじしゅうしょ・三事は緒に就く)。
赫赫業業,有嚴天子。王舒保作,匪紹匪遊。徐方繹騷,震驚徐方。如雷如霆,徐方震驚。
赫赫業業(かっかくぎょうぎょう・赫赫業業として)、有嚴天子(ゆうげんてんし・嚴ある天子)。王舒保作(おうしゅほうさく・王は舒・徐として保・安く作・行動す)、匪紹匪游(ひしょうひゆう・紹・急迫でも游・游玩でもない)。徐方繹騷(じょほうえきそう・徐方は繹騷・連續騷動し)、震驚徐方(しんけいじょほう・徐方を震驚す)。如雷如霆(にょらいにょてい・雷の如く霆・霹靂の如く)、徐方震驚。
王奮厥武,如震如怒。進厥虎臣,闞如虓虎。鋪敦淮濆,仍執醜虜。截彼淮浦,王師之所。
王奮厥武(おうふんけつぶ・王は厥の武を奮う)、如震如怒(にょしんにょど・震の如く怒の如し)。進厥虎臣(しんけつこしん・厥の虎臣を進め)、闞如虓虎(かんにょこうこ・虓虎・怒る虎の如く闞と)。鋪敦淮濆(ふとんわいふん・淮濆・淮水の濱に鋪敦・陳兵屯駐す)、仍執醜虜(じょうしゅうしゅうりょ・仍・就いて醜虜・俘虜を執る)。截彼淮浦(せつぴわいほ・彼の淮浦を截・截斷す)、王師之所(おうしししょ・王師の所)。
王旅嘽嘽,如飛如翰。如江如漢,如山之苞。如川之流,綿綿翼翼。不測不克,濯徵徐國。
王旅啴啴(おうりょたんたん・王旅は啴啴として衆多)、如飛如翰(にょひにょかん・飛ぶ如く翰・高飛の如く)。如江如漢(にょこうにょかん・江の如く漢の如く)、如山之苞(にょざんしほう・山の苞・本根の如く)。如川之流(にょせんしりゅう・川の流れの如く)、綿綿翼翼(めんめんよくよく)。不測不克(ふそくふこく・測れず克・勝てない)、濯征徐國(たくせいじょこく・濯・大いに徐國を征す)。
王猶允塞,徐方既來。徐方既同,天子之功。四方既平,徐方來庭。徐方不回,王曰還歸。
王猶允塞(おうゆういんさい・王の猶・謀は允に塞・充實)、徐方既來(じょほうきらい・徐方は既に來・來服する)。徐方既同(じょほうきどう・既に同・會同する)、天子之功(てんししこう・天子の功)。四方既平、徐方來庭(じょほうらいてい・徐方は庭・朝廷に來る)。徐方不回(じょほうふかい・回・邪まない)、王曰還歸(おうえつかんき・王は還歸せよと曰う)。
瞻卬昊天,則不我惠。孔填不寧,降此大厲。邦靡有定,士民其瘵。
瞻卬昊天(せんぎょうこうてん・昊天を瞻卬す)、則不我惠(そくふがけい・則ち我を惠・惠まない)。孔填不寧(こうてんふねい・孔く填・久しく寧ならず)、降此大賊(こうしたいぞく・此の大賊・大災を降す)。邦靡有定(ほうびゆうじょう・邦は定まるなく)、士民其瘵(しみんきさい・士民は其れ瘵・病苦する)。
蟊賊蟊疾,靡有夷屆。罪罟不收,靡有夷瘳。
蟊賊蟊疾(ぼうぞくぼうしつ・蟊賊が蟊・病害)、靡有夷屆(びゆういかい・夷・平らぐ屆・盡きがない)。罪罟不收(ざいこふしゅう・罪罟は收められない)、靡有夷瘳(びゆういちゅう・瘳・愈えない)。
人有土田,女反有之。人有民人,女覆奪之。此宜無罪,女反收之。
人有土田(じんゆうどでん・人は土田あり)、女反有之(じょはんゆうし・女・あなたは反って之を有・占有す)。人有民人(じんゆうみんじん)、女覆奪之(じょふくだつし・覆って之を奪う)。此宜無罪(しぎむざい・此の人は宜しく罪なかるべきに)、女反收之(じょはんしゅうし・反って之を收・收捕す)。
彼宜有罪,女覆說之。
彼宜有罪(ひぎゆうざい・彼の人は宜しく罪あるべきに)、女覆說之(じょふくだつし・覆って之を說・脫す・開放す)。
哲夫成城,哲婦傾城。懿厥哲婦,為梟為鴟。婦有長舌,維厲之階。
哲夫成城(てつふせいじょう・哲夫は城を成す)、哲婦傾城(てつふけいじょう・哲婦は城を傾ける)。懿厥哲婦(いけってつふ・懿・美しいかな厥の哲婦)、為梟為鴟(いきょういし・梟を為し鴟を為す)。婦有長舌(ふゆうちょうぜつ・婦に長舌あり)、維厲之階(いれいしかい・厲・災厲の階・階梯)。
亂匪降自天,生自婦人。匪教匪誨,時維婦寺。
亂匪降自天(らんひこうじてん・亂は天より降るに匪く)、生自婦人(せいじふじん・婦人より生ず)。匪教匪誨(ひきょうひかい・教えるに匪く誨えるに匪く)、時維婦寺(じいふじ・時に維に婦と寺・寺人・婦人と宦官のみ)。
鞫人忮忒。譖始競背。豈曰不極?伊胡為慝?如賈三倍,君子是識。
鞠人忮忒(きくじんしとく・人を鞠・窮め忮忒・忌害變詐す)。譖始竟背(しんしきょうはい・譖・讒言は始め、竟・終に背く)。豈曰不極(きえつふきょく・豈に極まらないと曰わんや)、伊胡為慝(いこいとく・伊・何を為して慝・惡を為すか)。如賈三倍(にょこさんばい・賈・商賈の三倍の利の如く)、君子是識(くんしぜしき・君子は是を識・識破する)。
婦無公事,休其蠶織。
婦無公事(ふむこうじ・婦人は公事・公の事なく)、休其蠶織(きゅうきさんしょく・其の蠶織を休・止める)。
天何以剌?何神不富?舍爾介狄,維予胥忌。不弔不祥,威儀不類。
天何以刺(てんいかいし・天は何を以って刺・責罰するか)。何神不富(かしんふふ・何の神か富・福を與えない)。舍爾介狄(しゃじかいてき・爾の介狄・大きな狄患を舍・放し)、維予胥忌(いよしょき・ただ予と胥・相い忌む)。不吊不祥(ふちょうふしょう・吊・淑なく祥・善くない)、威儀不類(いぎふるい・威儀は類・樣にならない)。
人之雲亡,邦國殄瘁。
人之云亡(じんしうんぼう・人・賢人は云亡・亡ぶ)、邦國殄瘁(ほうこくてんすい・邦國は殄瘁・困病す)。
天之降罔,維其優矣。人之雲亡,心之憂矣。天之降罔,維其幾矣。
天之降罔(てんしこうもう・天は罔・網を降す)、維其優矣(いきゆうい・維に其れ優・優厚にす)。人之云亡、心之憂矣。天之降罔、維其幾矣(いききい・其れ幾・危急にす)。
人之雲亡,心之悲矣。
人之云亡、心之悲矣(しんしひい・心の悲しむ)。
觱沸檻泉,維其深矣。心之憂矣,寧自今矣?不自我先,不自我後。
觱沸檻泉(ひつふつかんせん・觱沸たる檻泉)、維其深矣(いきしんい・其れ深い)。心之憂矣、寧自今矣(ねいじこんい・寧ろ今よりか・今日から始まったのではない)。不自我先(ふじがせん・我より先にあらず)、不自我後(ふじがこう・我より後にもあらず)。
藐藐昊天,無不克鞏。無忝皇祖,式救爾後。
藐藐昊天(ばくばくこうてん・藐藐たる昊天)、無不克鞏(むふこくきょう・鞏・鞏固にできないはない)。無忝皇祖(むてんこうそ・皇祖を忝・辱しめるな)、式救爾後(しききゅうじこう・式に爾の後を救え)。
旻天疾威,天篤降喪。瘨我饑饉,民卒流亡。我居圉卒荒。
旻天疾威(びんてんしつい・旻天は疾威・疾く威る)、天篤降喪(てんとくこうそう・天は篤く喪亂を降す)。瘨我饑饉(てんがききん・饑饉を以って我を瘨・病ましめ)、民卒流亡(みんそつりゅうぼう・民は卒に流亡す)。我居圉卒荒(がきょぎょそつこう・我が居・圉・邊疆は卒に荒れる)。
天降罪罟,蟊賊內訌。昏椓靡共,潰潰回遹,實靖夷我邦。
天降罪罟(てんこうざいこ・天は罪罟を降し)、蟊賊內訌(ぼうぞくないこう・蟊賊は內に訌・爭う)。昏椓靡共(こんたくびきょう・昏椓・昏亂讒毀して共・供えず)、潰潰回遹(かいかいかいいつ・潰潰として回遹・邪僻)、實靖夷我邦(じつせいいがほう・實に我が邦を靖夷・平滅せんとする)。
皋皋訿訿,曾不知其玷。兢兢業業,孔填不寧,我位孔貶。
皁皁訿訿(そうそうしし・皁皁訿訿・欺慢詆毀して)、曾不知其玷(そうふちきてん・曾て其の玷・瑕を知らない)。兢兢業業、孔填不寧(こうてんふねい・孔く填・久しく寧ならず)、我位孔貶(がいこうべん・我が位は孔く貶・貶降す)。
如彼歲旱,草不潰茂,如彼棲苴。我相此邦,無不潰止。
如彼歲旱(にょひさいかん・彼の歲旱・旱年の如し)、草不潰茂(そうふかいぼう・草は潰茂・茂りない)、如彼棲苴(にょひせいしょ・彼の棲苴・水上の浮草の如し)。我相此邦(がそうしほう・我は此の邦を相・視るに)、無不潰止(むふかいし・潰・潰亂せざるなし)。
維昔之富不如時,維今之疚不如茲。彼疏斯粺,胡不自替?職兄斯引。
維昔之富不如時(いしゃくしふふにょじ・昔之富は時・今の如かず)、維今之疚不如茲(いこんしきゅうふにょし・今之疚は茲の如からず・今の病はこんなものではない)。彼疏斯粺(ひそしはい・彼・疏・粗食する者は斯の粺・精食を食む)。胡不自替(こふじたい・何ぞ自ら替・引退せざる)、職兄斯引(しょくけいしいん・職・ただ兄・況・増して斯に引・延びる)。
池之竭矣,不雲自頻。泉之竭矣,不雲自中。溥斯害矣,職兄斯弘,不災我躬。
池之竭矣(ちしけつい・池の竭・涸れるや)、不云自頻(ふうんじひん・頻・岸よりと云わないか)。泉之竭矣、不云自中(ふうんじちゅう・中よりと云わないか)。溥斯害矣(ふしがいい・溥・普く斯の害あり)、職兄斯弘(しょくけいしこう・ただ兄・況・増して斯に弘・大きくす)、不烖我躬(ふさいがきゅう・我が躬に烖・災及ばないか)。
昔先王受命,有如召公,日闢國百里,今也日蹙國百里。於乎哀哉!維今之人,不尚有舊!
昔先王受命(しゃくせんおうじゅめい・昔先王は命を受け)、有如召公(ゆうにょしょうこう・召公の如き者有り)。日辟國百里(じつへきこくひゃくり・日に國を百里辟・開き)、今也日蹙國百里(こんやじつしゅくこくひゃくり・今や日に國を百里蹙・縮む)。於乎哀哉(おこあいさい・嗚呼哀れなり)!今之人(こんしじん)、不尚有舊(ふしょうゆうきゅう・尚お舊・舊德を尚・尊ばない)。
周頌
於穆清廟,肅雍顯相。濟濟多士,秉文之德。對越在天,駿奔走在廟。不顯不承,無射於人斯。
於穆清廟(おぼくせいびょう・於穆・穆然たる清廟)、肅雝顯相(しゅくようけんそう・肅雝・肅敬和雍の顯・顯赫たる相・助祭者)。濟濟多士(さいさいたし)、秉文之德(へいぶんしとく・文王の德を秉る)。對越在天(ついえつざいてん・在天の神に對越・對答顯揚し)、駿奔走在廟(しゅんほんそうざいびょう・廟に駿奔走す)。不顯不承(ふけんふしょう・顯ならず承ならずや)、無射於人斯(むえきおじんし・人に射・厭きられない)。
維天之命,於穆不已。於乎不顯,文王之德之純。假以溢我,我其收之。駿惠我文王,曾孫篤之。
維天之命(いてんしめい・天の命は)、於穆不已(おぼくふい・於穆として已まない)。於乎不顯(おこふけん)、文王之德之純(ぶんおうしとくしじゅん・文王の德の純)。假以溢我(かいいつが・假・嘉美に以って我に溢・增益す)、我其收之(がきしゅうし・我は其れ之を收む)。駿惠我文王(しゅんけいがぶんおう・我が文王に駿惠・敏く順い)、曾孫篤之(そうそんとくし・曾孫は之を篤くする)。
維清緝熙,文王之典。肇禋,迄用有成,維周之禎。
維清緝熙(いせいしゅうき・清く緝熙)、文王之典(ぶんおうしてん・文王の典法)。肇禋(ちょういん・始めて禋・祭祀し)、迄用有成(きつようゆうせい・用いて成あるに迄る)、維周之禎(いしゅうしてい・周の禎・吉祥)。
烈文闢公,錫茲祉福。惠我無疆,子孫保之。無封靡於爾邦,維王其崇之。
烈文辟公(れつぶんへきこう・烈・功あり文ある辟公)、錫茲祉福(しゃくししふく・茲の祉福を錫う)。惠我無疆(けいがむきょう・我を惠むに疆・限りなく)、子孫保之(しそんほし・子孫は之を保つ)。無封靡于爾邦(むほうびおじほう・爾の邦に封靡・大損害するな)、維王其崇之(いおうきすうし・維に王は其れ之を崇める)。
念茲戎功,繼序其皇之。無競維人,四方其訓之。不顯維德,百辟其刑之。於乎,前王不忘!
念茲戎功(ねんしじゅうこう・茲の戎功・大功を念う)、繼序其皇之(けいじょきこうし・序を繼ぎて其れ皇・光大にす)。無競維人(むきょういじん・人に競・比ぶるなし)、四方其訓之(しほうきくんし)。不顯維德(ふけんいとく・德は顯ならずや)、百辟其刑之(ぴゃくへききけいし・百辟は其れ之を刑・法とする)。於乎前王不忘(おこぜんおうふぼう・嗚呼前王は忘れられない)。
天作高山,大王荒之。彼作矣,文王康之。彼徂矣,岐有夷之行。子孫保之。
天作高山(てんさくこうざん・天は高山・岐山を作り)、大王荒之(たいおうこうし・大王は之を荒・擴大す)。彼作矣(ひさくい・彼ら作・興った)、文王康之(ぶんおうこうし・文王は之を康・安んじた)。彼徂矣(ひそい・彼ら徂・往きて)、岐有夷之行(きゆういしこう・岐に夷・平らかな行・道あり)。子孫保之(しそんほし)。
昊天有成命,二後受之。成王不敢康,夙夜基命宥密。於緝熙!單厥心,四其靖之。
昊天有成命(こうてんゆうせいめい・昊天には成命あり)、二后受之(にこうじゅうし・二后・文王武王が之を受く)。成王不敢康(せいおうふかんこう・成王は敢えて康・安んじない)、夙夜基命宥密(しゅくやきめいゆうみつ・夙夜に命を基として宥密・寬密す)。於緝熙(おしゅうき・緝熙・光明なるかな)、單厥心(たんけっしん・厥の心を單・盡くし)、肆其靖之(しきせいし・肆・故に其れ之を靖・安んじる・「四其」は「肆其」の誤字)。
我將我享,維羊維牛,維天其右之。儀式刑文王之典,日靖四方。
我將我享(がしょうがきょう・我が將・獻じ我が享・饗するは)、維羊維牛(いよういぎゅう・羊であり牛)、維天其右之(いてんきゆうし・維に天は其れ之を右・保佑する)。儀式刑文王之典(ぎしきけいぶんおうしてん・儀式・儀法し文王の典を刑・效す)、日靖四方(じつせいしほう・日に四方を靖・安んず)。
伊嘏文王,既右饗之。我其夙夜,畏天之威,於時保之。
於皇武王(おこうぶおう・於皇・偉大なる武王)、無競維烈(むきょういれつ・烈・功業に競・比ぶるなし)。允文文王(いんぶんぶんおう・允・誠に文ある文王)、克開厥後(こくかいけつこう・能く厥の後を開く)。嗣武受之(しぶじゅうし・嗣・繼ぎて武・武功を受け)、勝殷遏劉(しょういんあつりゅう・殷に勝ち劉・殺戮を遏める)、耆定爾功(きじょうじこう・耆・致して爾の功を定める)。
時邁其邦,昊天其子之,實右序有周。薄言震之,莫不震疊。懷柔百神,及河喬嶽,允王維後。
時邁其邦(じばいきほう・時に其の邦を邁・巡行し)、昊天其子之(こうてんきしし・昊天は其れ之を子と為す)。實右序有周(じつゆうじょゆうしゅう・實に右・保佑し序・序列する有周)。薄言震之(はくげんしんし・薄言・往きて之を震・震懾する)、莫不震疊(ばくふしんちょう・震疊・震懼せざるなし)。懷柔百神(かいじゅうぴゃくしん・百神を懷柔し)、及河喬嶽(きゅうかぎょうがく・河及び喬嶽に及ぶ)、允王維后(いんおういこう・允・誠に王は維に后・君)。
明昭有周,式序在位。載戢干戈,載橐弓矢。我求懿德,四於時夏,允王保之。
明昭有周(めいしょうゆうしゅう・明昭なる有周)、式序在位(しきじょざいい・式に在位の者を序す)。載戢干戈(さいしゅうかんか・載に干戈を戢・收め)、載櫜弓矢(さいこうきゅうし・弓矢を櫜・袋に納め)。我求懿德(がきゅういとく・我は懿德を求め)、肆于時夏(しおじか・時夏・華夏に肆・陳布す・「四于」は「肆于」の誤字)。允王保之(いんおうほし)。
執競武王,無競維烈。不顯成康,上帝是皇。自彼成康,奄有四方,斤斤其明。
執競武王(しゅうきょうぶおう・執競・競・強盛を執る武王)、無競維烈。不顯成康(ふけんせいこう・成王康王は顯ならずや)、上帝是皇(じょうていぜこう・上帝は之を皇・君と為す)。自彼成康(じひせいこう・彼の成康より)、奄有四方(えんゆうしほう・奄として四方を有す)、斤斤其明(きんきんきめい・斤斤として其れ明・明察)。
鐘鼓喤喤,磬莞將將,降福穰穰。降福簡簡,威儀反反。既醉既飽,福祿來反。
鐘鼓喤喤(しょうこおうおう・鐘鼓は喤喤)、磬筦將將(けいかんしょうしょう・磬筦は將將)、降福穰穰(こうふくじょうじょう・福を降ること穰穰と多い)。降福簡簡(こうふくかんかん・簡簡と大きい)、威儀反反(いぎはんぱん・威儀は反反・反復慎重)。既醉既飽(きすいきほう・既に醉い既に飽き)、福祿來反(ふくろくらいはん・福祿は來り反・返る)。
思文后稷,克配彼天。立我烝民,莫菲爾極。貽我來牟,帝命率育,無此疆爾界。陳常於時夏。
思文后稷(しぶんこうしょく・文ある后稷を思う)、克配彼天(こくはいひてん・能く彼の天に配・副う)。立我烝民(りつがしょうみん・我が烝民を立・粒・養い)、莫匪爾極(ばくひじきょく・爾の極・中正に匪・非ざるなし)。貽我來牟(いがらいぼう・我に來牟・小麦大麦を貽る)、帝命率育(ていめいそついく・帝命は率・遍く育て)、無此疆爾界(むしきょうじかい・此の疆爾の界なし)。陳常于時夏(ちんじょうおじか・常道を時夏に陳布す)。
嗟嗟臣工,敬爾在公。王釐爾成,來諮來茹。嗟嗟保介,維莫之春,亦又何求?如何新畲?
嗟嗟臣工(ささしんこう・嗟嗟臣工・諸臣)、敬爾在公(けいじざいこう・爾が公・公家に在るを敬め)。王釐爾成(おうりじせい・王は爾に成・成法を釐・賜う)、來咨來茹(らいしらいじょ・來り咨・諮り來り茹・度れ)。嗟嗟保介(ささほうかい・嗟嗟保介・車右)、維莫之春(いぼくししゅん・維に莫・暮の春)、亦又何求(やくゆうかきゅう・亦た又何を求める)。如何新畬(じょかしんよ・新田畬田は如何)。
於皇來牟,將受厥明。明昭上帝,迄用康年。命我眾人:庤乃錢鎛,奄觀銍艾。
於皇來牟(おこうらいぼう・來牟は皇・美しい)、將受厥明(しょうじゅうけつめい・將に厥の明・收穫を受けん)。明昭上帝(めいしょうじょうてい)、迄用康年(きつようこうねん・康年を用いるに迄る)。命我衆人(めいがしゅうじん・我が衆人に命ず)、庤乃錢鎛(じだいせんはく・乃・あなたがたの錢鎛を庤・備えよ)、奄觀銍艾(えんかんちがい・奄として銍艾・收割を觀る)。
噫嘻成王,既昭假爾。率時農夫,播厥百穀。駿發爾私,終三十里。亦服爾耕,十千維耦。
噫嘻成王(いきせいおう・噫嘻成王)、既昭假爾(きしょうかじ・既に爾に昭假・昭明感格す)。率時農夫(そつじのうふ・時の農夫を率い)、播厥百穀(はけつぴゃっこく・厥の百穀を播く)。駿發爾私(しゅんぱつじし・爾の私・私田を駿發・敏く開發し)、終三十里(しゅうさんじゅうり・終に三十里)。亦服爾耕(やくふくじこう・亦た爾の耕に服・從事し)、十千維耦(じゅうせんいぐう・十千は維に耦・二人一組)。
振鷺于飛,於彼西雍。我客戾止,亦有斯容。在彼無惡,在此無斁。庶幾夙夜,以永終譽。
振鷺于飛(しんろおひ・振と立つ鷺が飛ぶ)、于彼西雝(おぴせいよう・彼の西の雝・辟雍)。我客戾止(がかくれいし・我が客は戾・至る)、亦有斯容(やくゆうしよう・亦た斯の容・儀容あり)。在彼無惡(ざいひむお・彼に於いて惡なく)、在此無斁(ざしむえき・此に於いて斁・厭きなし)。庶幾夙夜(しょきしゅくや・庶幾く夙夜に)、以永終譽(いえいしゅうよ・以って永く終譽を保つ)。
豐年多黍多稌,亦有高廩,萬億及秭。為酒為醴,烝畀祖妣。以洽百禮,降福孔皆。
豐年多黍多稌(ほうねんたしょたと・豐年は黍多く稌・稻多い)。亦有高廩(やくゆうこうりん・亦た高廩あり)、萬億及秭(ばんおくきゅうし・萬億に秭に及ぶ)。為酒為醴(いしゅういれい・酒を為し醴を為し)、烝畀祖妣(しょうへいそひ・祖妣に烝・進め畀・與える)。以洽百禮(いきょうぴゃくれい・百禮に洽・配合するに以ってす)、降福孔皆(こうふくこうかい・福を降ること孔く皆・周遍)。
有瞽有瞽,在周之庭。設業設虡,崇牙樹羽。應田縣鼓,鞉磬柷圉。既備
有瞽有瞽(ゆうこゆうこ・瞽・盲樂師あり)、在周之庭(ざいしゅうしてい・周の庭に)。設業設虡(せつぎょうせつきょ・業を設け虡を設け)、崇牙樹羽(すうがじゅう・崇牙を立て羽を樹て)。應田縣鼓(おうでんけんこ・應・小鼓田・大鼓縣鼓)、鞉磬柷圉(とうけいしゅくぎょ・鞉磬柷圉)。既備乃奏(きびだいそう・既に備わり乃ち奏する)。
乃奏,簫管備舉。喤喤厥聲,肅雍和鳴,先祖是聽。我客戾止,永觀厥成。
簫管備舉(しょうかんびきょ・簫管は備わり舉る)。喤喤厥聲(おうおうけっせい・厥の聲は喤喤)、肅雝和鳴(しゅくようわめい・肅雝として和鳴し)、先祖是聽(せんそぜちょう・先祖は之を聽く)。我客戾止、永觀厥成(えいかんけっせい・永く厥の成を觀る)。
猗與漆沮,潛有多魚。有鱣有鮪,鰷鱨鰋鯉。以享以祀,以介景福。
猗與漆沮(いよしつしょ・猗與・美しきかな漆沮)、潛有多魚(せんゆうたぎょ・潛・藏まって魚多し)。有鱣有鮪(ゆうせんゆうい・鱣あり鮪あり)、鰷鱨鰋鯉(ちょうしょうえんり・鰷鱨鰋鯉)。以享以祀(いきょういし)、以介景福(いかいけいふく)。
有來雝雝,至止肅肅。相維闢公,天子穆穆。於薦廣牡,相予四祀。假哉皇考!綏予孝子。
來雝來止(らいようらいし・來ること雝として止まる・雝雝として來る)、肅肅大邦(しゅくしゅくたいほう・肅肅として大邦)…ではなく、正確には:來者は雝雝として和し、至ること肅肅として敬う。
宣哲維人,文武維後。燕及皇天,克昌厥後。綏我眉壽,介以繁祉,既右烈考,亦右文母。
有來雝雝(ゆうらいようよう・來ること雝雝と和睦)、至止肅肅(しししゅくしゅく・至ること肅肅として恭敬)。相維辟公(そういへきこう・相・助祭するは辟公)、天子穆穆(てんしぼくぼく)。於薦廣牡(おせんこうぼう・廣牡・大きな牡牛を薦じ)、相予肆祀(そうよしし・予が肆祀・祭祀を陳すを相・助くる・「四祀」は「肆祀」の誤字)。假哉皇考(かさいこうこう・假・大きいなり皇考)、綏予孝子(すいよこうし・予が孝子を綏・安んず)。
載見闢王,曰求厥章。龍旗陽陽,和鈴央央。鞗革有鶬,休有烈光。率見昭考,以孝以享。
宣哲維人(せんてついじん・宣哲・宣明睿哲は人を維す・人たる所以)、文武維后(ぶんぶいこう・文・武は后・君たる所以)。燕及皇天(えんきゅうこうてん・皇天に及び燕・安んじ)、克昌厥後(こくしょうけつこう・能く厥の後を昌・盛んにす)。綏我眉壽(すいがびじゅ・我が眉壽・長壽を綏・安んじ)、介以繁祉(かいいはんし・繁祉を以って介・助く)。既右烈考(きゆうれつこう・既に烈考・功ある皇考を右・保佑し)、亦右文母(やくゆうぶんぼ・亦た文母・文德の母を右する)。
以介眉壽,永言保之,思皇多祜。烈文闢公,綏以多福,俾緝熙於純嘏。
於穆清廟ではなく——載見辟王(さいけんへきおう・辟王を見に載・始めて朝見す)、曰求厥章(えつきゅうけっしょう・厥の章・典章を求めんと曰う)。龍旂陽陽(りゅうきようよう・龍旂は陽陽と鮮明)、和鈴央央(われいおうおう・和鈴は央央)。鞗革有鶬(ちょうかくゆうそう・鞗革・辔首は鶬・有鶬・美しい)、休有烈光(きゅうゆうれっこう・休・美しく烈光・大きな光あり)。率見昭考(そつけんしょうこう・昭考に率い見・朝見せしめ)、以孝以享(いこういきょう・孝し享げるに以ってす)。
有客有客,亦白其馬。有萋有且,敦琢其旅。有客宿宿,有客信信。
以介眉壽(いかいびじゅ・眉壽を介・求めるに以ってす)、永言保之(えいげんほし・永く之を保つ)。思皇多祜(しこうたこ・皇・大いなる多祜を思う)。烈文辟公、綏以多福(すいいたふく・多福を以って綏・安んず)、俾緝熙于純嘏(ひしゅうきおじゅんこ・緝熙を純嘏・大福に俾・於てせしむ)。
言授之縶,以縶其馬。薄言追之,左右綏之。既有淫威,降福孔夷。
有客有客(ゆうかくゆうかく・客あり客あり)、亦白其馬(やくはくきば・其の馬は亦た白し)。有萋有且(ゆうせいゆうしょ・萋として且・盛多)、敦琢其旅(とんたくきりょ・其の旅・從者を敦琢・雕琢す)。有客宿宿(ゆうかくしゅくしゅく・客は宿宿・一夜又一夜宿る)、有客信信(ゆうかくしんしん・信信・二夜又二夜宿る)。
於皇武王!無競維烈。允文文王,克開厥後。嗣武受之,勝殷遏劉,耆定爾功。
言授之縶(げんじゅうしちつ・之に縶・繩を授け)、以縶其馬(いちつきば・其の馬を縶・繫ぐ)。薄言追之(はくげんついし・薄言・往きて之を追・送る)、左右綏之(さゆうすいし・左右は之を綏・安んず)。既有淫威(きゆういんい・既に淫威・大きな威あり)、降福孔夷(こうふくこうい・福を降ること孔く夷・平易)。
閔予小子,遭家不造,嬛嬛在疚。於乎皇考,永世克孝。
於皇武王、無競維烈。允文文王、克開厥後。嗣武受之、勝殷遏劉、耆定爾功。(1244と同文:嗣武は武功を嗣いで之を受け、殷に勝ち劉を遏め、爾の功を耆定す)
念茲皇祖,陟降庭止。維予小子,夙夜敬止。於乎皇王,繼序思不忘。
閔予小子(びんよしょうし・予小子を閔・憫恤す)、遭家不造(そうかふぞう・家の不造・不幸に遭う)。嬛嬛在疚(けいけいざいきゅう・嬛嬛として疚・憂病に在る)。於乎皇考(おここうこう・嗚呼皇考)、永世克孝(えいせいこくこう・永世に能く孝を盡くす)。
訪予落止,率時昭考。於乎悠哉,朕未有艾。將予就之,繼猶判渙。
念茲皇祖(ねんしこうそ・茲の皇祖を念う)、陟降庭止(ちょくこうていし・庭・朝廷に陟降す)。維予小子(いよしょうし)、夙夜敬止(しゅくやけいし・夙夜に敬す)。於乎皇王(おここうおう)、繼序思不忘(けいじょしふぼう・序を繼ぎ思って忘れない)。
維予小子,未堪家多難。紹庭上下,陟降厥家。休矣皇考,以保明其身。
訪予落止(ほうよらくし・予の落・始めて即位するを訪・咨問す)、率時昭考(そつじしょうこう・時の昭考に率由・循う)。於乎悠哉(おこゆうさい・嗚呼悠・遠いかな)、朕未有艾(ちんみゆうがい・朕は未だ艾・閱歴なし)。將予就之(しょうよしゅうし・予を將して之に就かせよ)、繼猶判渙(けいゆうはんかん・猶を繼ぐに判渙・分散)。
敬之敬之,天維顯思,命不易哉。無曰高高在上,陟降厥士,日監在茲。
維予小子、未堪家多難(みかんかたなん・家の多難に堪えない)。紹庭上下(しょうていじょうげ・上下を庭・朝廷に紹・繼ぎ)、陟降厥家(ちょくこうけっか・厥の家に陟降す)。休矣皇考(きゅういこうこう・休・美しいなり皇考)、以保明其身(いほめいきしん・以って其の身を保ち明らかにす)。
維予小子,不聰敬止。日就月將,學有緝熙於光明。佛時仔肩,示我顯德行。
敬之敬之(けいしけいし・敬せよ敬せよ)、天維顯思(てんいけんし・天は維に顯なり)、命不易哉(めいふえきさい・命は易からないかな)。無曰高高在上(むえつこうこうざいじょう・高高在上と曰うな)、陟降厥士(ちょくこうけっし・厥の士・士人を陟降し)、日監在茲(じつかんざいし・日に茲に監る)。
予其懲,而毖後患。莫予荓蜂,自求辛螫。肇允彼桃蟲,拚飛維鳥。未堪家多難,予又集於蓼。
維予小子、不聰敬止(ふそうけいし・聰く敬せず)。日就月將(じつしゅうげっしょう・日に就き月に將・進み)、學有緝熙于光明(がくゆうしゅうきおこうめい・學は緝熙して光明に至る)。佛時仔肩(ふつじしけん・佛・輔くるに時の仔肩・荷負を)、示我顯德行(じがけんとくこう・我に顯德の行を示せ)。
載芟載柞,其耕澤澤。千耦其耘,徂隰徂畛。侯主侯伯,侯亞侯旅,侯彊侯以。
予其懲而毖後患(よきちょうにひつこうかん・予は其れ懲りて後患を毖・慎む)。莫予荓蜂(ばくよへいほう・予を荓蜂・引きて蜂の巣に觸れしめる者なし)、自求辛螫(じきゅうしんしゃく・自ら辛螫・毒刺を求む)。肇允彼桃蟲(ちょういんぴとうちゅう・肇・始めて允・信ずれば彼の桃蟲・鷦鷯)、拚飛維鳥(ふんひいちょう・拚飛して維に鳥・大鳥となる)。未堪家多難、予又集于蓼(よゆうしゅうおれき・予は又た蓼・辛苦に集まる)。
有嗿其饁,思媚其婦,有依其士。有略其耜,俶載南畝,播厥百穀。實函斯活,驛驛其達。
載芟載柞(さいさくさいさく・載に芟・草を除き載に柞・木を斫る)、其耕澤澤(きこうたくたく・其の耕は澤澤と鬆れる)。千耦其耘(せんぐうきうん・千耦が耘・除草する)、徂隰徂畛(そしゅうそしん・隰・低地に徂き畛・田畔に徂く)。侯主侯伯(こうしゅこうはく・侯に主侯に伯・主人と長子)、侯亞侯旅(こうあこうりょ・亞・仲叔と旅・衆子弟)、侯彊侯以(こうきょうこうい・彊・強壯と以・傭工)。
有厭其傑,厭厭其苗,綿綿其麃。載獲濟濟,有實其積,萬億及秭。為酒為醴,烝畀祖妣,不洽百禮。
有嗿其饁(ゆうとうきおう・嗿として其の饁・送飯・衆多)、思媚其婦(しびきふ・其の婦を思媚・愛す)。有依其士(ゆういきし・其の士に依・依る)。有略其耜(ゆうりゃくきし・耜は略・銳利)、俶載南畝(しゅくさいなんぼ・南畝に俶載・始めて耕す)。播厥百穀、實函斯活(じつかんしかつ・實に函・含み斯に活・生気あり)。驛驛其達(えきえききたつ・驛驛として其れ達・出土する)。
有飶其香。邦家之光。有椒其馨,胡考之寧。匪且有且,匪今斯今,振古如茲。
有厭其傑(ゆうえんきけつ・厭として其の傑・特出の苗・飽滿)、厭厭其苗(えんえんきびょう・厭厭として其の苗・齊整)、綿綿其麃(めんめんきひょう・綿綿として其れ麃・除草する)。載獲濟濟(さいかくさいさい・獲ること濟濟と衆多)、有實其積(ゆうじつきせき・實に其の積・充實)、萬億及秭。為酒為醴、烝畀祖妣、以洽百禮(「不洽」の「不」は「以」の誤字)。
畟畟良耜,俶載南畝。播厥百穀,實函斯活。或來瞻女,載筐及莒,其饟伊黍。
有飶其香(ゆうひつきこう・飶として其の香)。邦家之光(ほうかしこう・邦家の光)。有椒其馨(ゆうしょうきけい・椒の如く其の馨・芳しい)。胡考之寧(ここうしねい・胡考・壽考の寧)。匪且有且(ひしゃゆうしょ・且・此の時あるに匪く且・此の時あり・今始まったのではない)、匪今斯今(ひこんしこん・今に匪く斯に今)、振古如茲(しんこにょし・振古・古より茲の如し)。
其笠伊糾,其鎛斯趙,以薅荼蓼。荼蓼朽止,黍稷茂止。獲之挃挃,積之慄慄。
畟畟良耜(しょくしょくりょうし・畟畟と銳い良耜)、俶載南畝。播厥百穀、實函斯活。或來瞻女(かくらいせんじょ・或いは來て女・あなたがたを瞻・視る)、載筐及筥(さいきょうきゅうきょ・筐及び筥を載せ)。其饟伊黍(きしょういしょ・其の饟・送飯は伊黍・黍)。
其崇如墉,其比如櫛。以開百室,百室盈止,婦子寧止。殺時犉牡,有捄其角。以似以續,續古之人。
其笠伊糾(きりついきゅう・其の笠は伊に糾・糾結す)、其鎛斯趙(きはくしちょう・其の鎛は斯に趙・刺地す)、以薅荼蓼(いこうとれき・以って荼蓼・田間の雜草を薅・除く)。荼蓼朽止(とれききゅうし・荼蓼は朽ち)、黍稷茂止(しょしょくぼうし・黍稷は茂る)。獲之挃挃(かくしちっちつ・獲るに挃挃として)、積之栗栗(せきしりつりつ・積むに栗栗として衆多)。
絲衣其紑,載弁俅俅。自堂徂基,自羊徂牛,鼐鼎及鼒,兕觥其觩。旨酒思柔。不吳不敖,胡考之休。
其崇如墉(きすうにょよう・其の崇は墉・牆の如し)、其比如櫛(きひにょしつ・其の比・密は櫛の如し)。以開百室(いかいぴゃくしつ・以って百室を開く)。百室盈止(ぴゃくしつえいし・百室は盈ち)、婦子寧止(ふしねいし・婦子は寧んず)。殺時犉牡(さいじじゅんぼう・時の犉牡・大きな牡牛を殺す)、有捄其角(ゆうきゅうきかく・其の角は捄として曲がる)。以似以續(いじいぞく・以って似・嗣ぎ以って續・繼ぐ)、續古之人(ぞくこのじん・古之人を續ぐ)。
於鑠王師,遵養時晦。時純熙矣,是用大介。我龍受之,蹻蹻王之造。載用有嗣,實維爾公允師。
絲衣其紑(しいきふう・絲衣は其れ紑・潔い)、載弁俅俅(さいべんきゅうきゅう・弁を載せて俅俅と恭順)。自堂徂基(じどうそき・堂より基・門檻に徂く)、自羊徂牛(じようそぎゅう・羊より牛に徂く)。鼐鼎及鼒(だいていきゅうじ・鼐・大鼎鼎及び鼒・小鼎)、兕觥其觩(じこうききゅう・兕觥は其れ觩として曲がる)。旨酒思柔(ししゅうしじゅう・旨酒は柔・柔和を思う)。不吳不敖(ふごふごう・吳・大聲せず敖・傲らない)、胡考之休(ここうしきゅう・胡考・壽考の休・美)。
綏萬邦,屢豐年。天命匪解,桓桓武王。保有厥士,於以四方,克定厥家。於昭於天,皇以間之。
於鑠王師(おしゃくおうし・於鑠・光輝ある王師)、遵養時晦(じゅんようしかい・遵・循い養うこと時の晦・暗き時)。時純熙矣(じじゅんきい・時は純・皆熙・光明となり)、是用大介(ぜようだいかい・是用に大介・大いに賜る)。我龍受之(がりゅうじゅうし・我は龍・寵・榮として之を受く)、蹻蹻王之造(きゃくきゃくおうしぞう・蹻蹻たるは王の造・作為)。載用有嗣(さいようゆうし・載に嗣・繼承者有るを用い)、實維爾公允師(じついじこういんし・實に維に爾の公は允・信に師たり)。
文王既勤止,我應受之。敷時繹思,我徂維求定。時周之命,於繹思。
綏萬邦(すいばんぽう・萬邦を綏・安んじ)、婁豐年(るほうねん・婁・屢々豐年)。天命匪解(てんめいひかい・天命は懈・怠らない)、桓桓武王(かんかんぶおう・桓桓たる武王)。保有厥士(ほゆうけっし・厥の士を保有し)、于以四方(おいしほう・四方に用い)、克定厥家(こくていけっか・能く厥の家を定める)。於昭于天(おしょうおてん・昭として天に)、皇以間之(こういかんし・皇天は之を間・代えて殷に代わらしめる)。
於皇時周!陟其高山,嶞山喬嶽,允猶翕河。敷天之下,裒時之對。時周之命。
文王既勤止(ぶんおうきぎんし・文王は既に勤めたり)、我應受之(がおうじゅうし・我は應・當に之を受けるべし)。敷時繹思(ふじえきし・敷・布陳して時に繹・尋繹思う)、我徂維求定(がそいきゅうじょう・我が徂・往くは維に定を求める)。時周之命(じしゅうしめい・是れ周の命)、於繹思(おえきし・於に繹思・尋繹思う)。
魯頌
駉駉牡馬,在坰之野。薄言駉者,有驈有皇,有驪有黃,以車彭彭。思無疆思,馬斯臧。
駉駉牡馬(けいけいぼうば・駉駛たる牡馬・肥壯)、在坰之野(ざいけいしや・坰・遠郊の野に在る)。薄言駉者(はくげんけいしゃ・駉たる者は)、有驈有皇(ゆういつゆうこう・驈・黑马白股あり皇・黄白马あり)、有驪有黃(ゆうりゆうこう・驪・純黑馬あり黃あり)。以車彭彭(いしゃほうほう・車に駕して彭彭と強壯)。思無疆(しむきょう・思うに疆・限りなし)、思馬斯臧(しばしそう・斯の馬は臧・善い)。
駉駉牡馬,在坰之野。薄言駉者,有騅有駓,有騂有騏,以車伾伾。思無期思,馬斯才。
駉駉牡馬、在坰之野。薄言駉者、有騅有駓(ゆうすいゆうひ・騅・蒼白雜色あり駓・黃白雜色あり)、有騂有騏(ゆうせいゆうき・騂・赤馬あり騏・靑黑馬あり)。以車伾伾(いしゃひひ・伾伾として有力)。思無期(しむき・思うに期・期限なし)、思馬斯才(しばしさい・斯の馬は才あり)。
駉駉牡馬,在坰之野。溥言駉者,有驒有駱,有騮有雒,以車繹繹。思無斁思,馬斯作。
駉駉牡馬、在坰之野。薄言駉者(「溥言」の「溥」は「薄」の誤字)、有驒有駱(ゆうだゆうらく・驒・靑黑鱗斑あり駱・白馬黑鬣あり)、有駵有雒(ゆうりゅうゆうらく・駵・赤身黑鬣あり雒・黑身白鬣あり)。以車繹繹(いしゃえきえき・繹繹として善く走る)。思無斁(しむえき・厭きなし)、思馬斯作(しばしさく・斯の馬は作・振起する)。
駉駉牡馬,在坰之野。薄言駉者,有駰有騢,有驔有魚,以車祛祛。思無邪思,馬斯徂。
駉駉牡馬、在坰之野。薄言駉者、有駰有騢(ゆういんゆうか・駰・淺黑馬あり騢・赤白雜色あり)、有驔有魚(ゆうてんゆうぎょ・驔・黑馬黃脊あり魚・两眼白の馬あり)。以車祛祛(いしゃきょきょ・祛祛として強健)。思無邪(しむしゃ・邪なく)、思馬斯徂(しばしそ・斯の馬は徂・往く)。
有駜有駜,駜彼乘黃。夙夜在公,在公明明。振振鷺,鷺於下。鼓咽咽,醉言舞。於胥樂兮!
有駜有駜(ゆうひつゆうひつ・駜たる馬あり)、駜彼乘黃(ひつぴじょうこう・駜たる彼の乘黃・四匹の黃馬)。夙夜在公(しゅくやざいこう・夙夜に公・公家に在り)、在公明明(ざいこうめいめい・公に在りて明明・明らかに事する)。振振鷺(しんしんろ・振振たる鷺)、鷺于下(ろおか・鷺は下・舞降る)。鼓咽咽(こえんえん・鼓は咽咽)、醉言舞(すいげんぶ・醉いて舞う)。于胥樂兮(おしょらくけい・胥・皆樂しむかな)。
有駜有駜,駜彼乘牡。夙夜在公,在公飲酒。振振鷺,鷺于飛。鼓咽咽,醉言歸。於胥樂兮!
有駜有駜、駜彼乘牡(ひつぴじょうぼ・乘牡・四匹の牡馬)。夙夜在公、在公飲酒(ざいこういんしゅ・公に在りて酒を飲む)。振振鷺、鷺于飛(ろおひ・鷺は飛ぶ)。鼓咽咽、醉言歸(すいげんき・醉いて歸る)。于胥樂兮。
有駜有駜,駜彼乘駽。夙夜在公,在公載燕。自今以始,歲其有。君子有谷,詒孫子。於胥樂兮!
有駜有駜、駜彼乘駽(ひつぴじょうけん・乘駽・四匹の靑黑馬)。夙夜在公、在公載燕(ざいこうさいえん・公に在りて燕・宴飲す)。自今以始(じこんいし・今より以って始め)、歲其有(さいきゆう・歲は其有・豐年あらん)。君子有穀(くんしゆうこく・君子に穀・善祿あり)、詒孫子(いそんし・孫子に詒・遺す)。于胥樂兮。
思樂泮水,薄採其芹。魯侯戾止,言觀其旗。其旗茷茷,鸞聲噦噦。無小無大,從公於邁。
思樂泮水(しらくはんすい・泮水の樂しさを思う)、薄采其芹(はくさいききん・其の芹を薄・採る)。魯侯戾止(ろこうれいし・魯侯は戾・至る)、言觀其旂(げんかんきき・其の旂を觀る)。其旂茷茷(ききぱいぱい・其の旂は茷茷として動く)、鸞聲噦噦(らんせいえいえい・鸞聲は噦噦と和鳴す)。無小無大(むしょうむだい・小なく大なく)、從公于邁(じゅうこうおばい・公に從いて邁・行く)。
思樂泮水,薄採其藻。魯侯戾止,其馬蹻蹻。其馬蹻蹻,其音昭昭。載色載笑,匪怒伊教。
思樂泮水、薄采其藻(はくさいきそう・其の藻を採る)。魯侯戾止、其馬蹻蹻(きばきゃくきゃく・其の馬は蹻蹻と強壯)。其馬蹻蹻、其音昭昭(きおんしょうしょう・其の音・聲は昭昭)。載色載笑(さいしょくさいしょう・色・和顔を載せ笑を載せ)、匪怒伊教(ひどいきょう・怒るに匪く伊に教・教導す)。
思樂泮水,薄採其茆。魯侯戾止,在泮飲酒。既飲旨酒,永錫難老。順彼長道,屈此群醜。
思樂泮水、薄采其茆(はくさいきぼう・其の茆・蓴菜を採る)。魯侯戾止、在泮飲酒(ざいはんいんしゅ・泮・泮宮に在りて酒を飲む)。既飲旨酒(きいんししゅ・旨酒を既に飲み)、永錫難老(えいしゃくなんろう・難老・老い難きを永く錫う)。順彼長道(じゅんぴちょうどう・彼の長道に順い)、屈此群醜(くつしぐんしゅう・此の群醜を屈・收服す)。
穆穆魯侯,敬明其德。敬慎威儀,維民之則。允文允武,昭假烈祖。靡有不孝,自求伊祜。
穆穆魯侯(ぼくぼくろこう・穆穆たる魯侯)、敬明其德(けいめいきとく・其の德を敬明す)。敬慎威儀、維民之則。允文允武(いんぶんいんぶ・允に文あり允に武あり)、昭假烈祖(しょうかれっそ・烈祖に昭假・昭明感格す)。靡有不孝(びゆうふこう・孝ならざるなし)、自求伊祜(じきゅういこ・伊・是の祜・福を自ら求む)。
明明魯侯,克明其德。既作泮宮,淮夷攸服。矯矯虎臣,在泮獻馘。淑問如皋陶,在泮獻囚。
明明魯侯(めいめいろこう)、克明其德(こくめいきとく・能く其の德を明らかにす)。既作泮宮(きさくはんぐう・泮宮を既に作り)、淮夷攸服(わいいゆうふく・淮夷は攸に服す)。矯矯虎臣(きょうきょうこしん・矯矯たる虎臣)、在泮獻馘(ざいはんけんかく・泮に馘・左耳を獻ず)。淑問如皋陶(しゅくもんにょこうとう・淑問・善く訊るは皋陶の如し)、在泮獻囚(ざいはんけんしゅう・泮に囚を獻ず)。
濟濟多士,克廣德心。桓桓於徵,狄彼東南。烝烝皇皇,不吳不揚。不告於訩,在泮獻功。
濟濟多士、克廣德心(こくこうとくしん・能く德心を廣げる)。桓桓于征(かんかんおせい・桓桓として征・出征す)、狄彼東南(てきぴとうなん・彼の東南を狄・剔・除く)。烝烝皇皇(じょうじょうこうこう・烝烝皇皇として盛美)、不吳不揚(ふごふよう・吳・大聲せず揚・張揚しない)。不告于訩(ふこくおきょう・訩・爭訟に告・訴えない)、在泮獻功(ざいはんけんこう・泮に功を獻ず)。
角弓其觩。束矢其搜。戎車孔博。徒御無斁。既克淮夷,孔淑不逆。式固爾猶,淮夷卒獲。
角弓其觩(かっきゅうききゅう・角弓は其れ觩として曲がる)。束矢其搜(そくしきしゅう・束矢は其れ搜として衆多)。戎車孔博(じゅうしゃこうはく・戎車は孔く博・寬大)。徒御無斁(とぎょむえき・徒御は斁・厭きない)。既克淮夷(きこくわいい・淮夷を既に克ち)、孔淑不逆(こうしゅくふぎゃく・孔く淑・善く逆わない)。式固爾猶(しきこじゆう・式に爾の猶・謀を固めよ)、淮夷卒獲(わいいそつかく・淮夷は卒に獲る)。
翩彼飛鴞,集於泮林。食我桑黮,懷我好音。憬彼淮夷,來獻其琛。元龜象齒,大賂南金。
翩彼飛鴞(へんぴひきょう・翩たる飛鴞・鴟鴞)、集于泮林(しゅうおはんりん・泮林に集まる)。食我桑黮(しょくがそうたん・我が桑黮・桑果を食い)、懷我好音(かいがこういん・我が好音を懷れる)。憬彼淮夷(けいひわいい・憬・覺悟した彼の淮夷)、來獻其琛(らいけんきちん・其の琛・寶を來り獻ず)。元龜象齒(げんきしょうし・元龜・大龜と象齒・象牙)、大賂南金(だいろなんきん・南金を大いに賂・贈る)。
閟宮有侐,實實枚枚。赫赫姜嫄,其德不回。上帝是依,無災無害。
閟宮有侐(ひきゅうゆうけき・閟宮・深閉の宮廟は侐として清淨)、實實枚枚(じつじつまいまい・實實枚枚と細密)。赫赫姜嫄(かっかくきょうげん・赫赫たる姜嫄)、其德不回(きとくふかい・其の德は回・邪まない)。上帝是依(じょうていぜい・上帝は之に依・依憑す)、無災無害(むさいむがい)。
彌月不遲,是生后稷。降之百福。黍稷重穋,稙稚菽麥。奄有下國,俾民稼穡。
彌月不遲(びげつふち・月を彌・滿して遲れず)、是生后稷(ぜせいこうしょく・后稷を生む)。降之百福(こうしぴゃくふく・之に百福を降す)。黍稷重穋(しょしょくちょうりく・黍稷重穋・早晚の稻)、稙穉菽麥(ちきちじゅばく・稙穉・早晚の豆麥)。奄有下國(えんゆうげこく・下國を奄有し)、俾民稼穡(ひみんかしょく・民を稼穡せしむ)。
有稷有黍,有稻有秬。奄有下土,纘禹之緒。后稷之孫,實維大王。
有稷有黍(ゆうしょくゆうしょ・稷あり黍あり)、有稻有秬(ゆうとうゆうきょ・稻あり秬・黑黍あり)。奄有下土(えんゆうげど・下土を奄有し)、纘禹之緒(さんうししょ・禹の緒・事業を纘ぐ)。后稷之孫(こうしょくしそん)、實維大王(じついたいおう・實に維に大王)。
居岐之陽,實始剪商。至於文武,纘大王之緒,致天之屆,於牧之野。
居岐之陽(きょきしよう・岐の陽に居り)、實始翦商(じつしせんしょう・實に始めて商を翦・削弱す)。至于文武(しおぶんぶ・文武に至り)、纘大王之緒(さんたいおうししょ・大王の緒を纘ぎ)。致天之屆(ちてんしかい・天の屆・誅罰を致・行し)、于牧之野(おぼくしや・牧野に於いて)。
無二無虞,上帝臨女。敦商之旅,克鹹厥功。王曰叔父,建爾元子,俾侯於魯。
無貳無虞(むにむぐ・貳・二心なく虞・疑慮なく)、上帝臨女(じょうていりんじょ・上帝は女・あなたがたを臨視す)。敦商之旅(とんしょうしりょ・商の旅を敦・治め)、克咸厥功(こくかんけっこう・能く咸・皆厥の功を成す)。王曰叔父(おうえつしゅくふ・王は叔父と曰う)、建爾元子(けんじげんし・爾の元子・長子を建・封立す)、俾侯于魯(ひこうおろ・魯に侯たらしむ)。
大啟爾宇,為周室輔。乃命魯公,俾侯於東。錫之山川,土田附庸。
大啟爾宇(だいけいじう・爾の宇・疆宇を大きく啟く)、為周室輔(いしゅうしつほ・周室の輔と為す)。乃命魯公(だいめいろこう・魯公に命じ)、俾侯于東(ひこうおとう・東に侯たらしむ)。錫之山川(しゃくしざんせん・之に山川を錫い)、土田附庸(どでんふよう・土田と附庸)。
周公之孫,莊公之子。龍旗承祀。六轡耳耳。春秋匪解,享祀不忒。
周公之孫(しゅうこうしそん・周公の孫)、莊公之子(そうこうしし・莊公の子・僖公)。龍旂承祀(りゅうきしょうし・龍旂が祀を承・奉げ)。六轡耳耳(ろくひじじ・六轡は耳耳として柔美)。春秋匪解(しゅんじゅうひかい・春秋に懈らない)、享祀不忒(きょうしふとく・享祀に忒・差失なし)。
皇皇后帝!皇祖后稷!享以騂犧,是饗是宜。降福既多,周公皇祖,亦其福女。
皇皇后帝(こうこうこうてい・皇皇たる后帝・上帝)。皇祖后稷。享以騂犧(きょういせいぎ・騂犧・赤い犧牲を以って享げ)、是饗是宜(ぜきょうぜぎ・饗し宜・祭りする)。降福既多(こうふくきた・福を降ること既に多い)。周公皇祖(しゅうこうこうそ・周公皇祖)、亦其福女(やくきふくじょ・亦た其れ女・あなたに福を降す)。
秋而載嘗,夏而楅衡,白牡騂剛。犧尊將將,毛炰胾羹。籩豆大房,萬舞洋洋。
秋而載嘗(しゅうにさいしょう・秋に載に嘗・嘗祭する)、夏而楅衡(かにふくこう・夏に楅衡・牛に楅・衡木を施す)。白牡騂剛(はくぼうせいこう・白牡・白い牡と騂剛・赤い牡)。犧尊將將(ぎそんしょうしょう・犧尊は將將と)、毛炰胾羹(ぼうほうしこう・毛炰・毛ごと焼きと胾羹・切肉の羹)。籩豆大房(へんとうだいぼう・籩豆と大房・俎)、萬舞洋洋(ばんぶようよう・萬舞は洋洋)。
孝孫有慶。俾爾熾而昌,俾爾壽而臧。保彼東方,魯邦是嘗。不虧不崩,不震不騰。
孝孫有慶(こうそんゆうけい・孝孫に慶あり)。俾爾熾而昌(ひじしにしょう・爾を熾・盛んにして昌らかにせしめ)、俾爾壽而臧(ひじじゅうにそう・壽くして臧・善くせしめ)。保彼東方(ほぴとうぼう・彼の東方を保ち)、魯邦是常(ろほうぜじょう・魯邦は之を常・常保つ)。不虧不崩(ふきふほう・虧・損なわず崩れず)、不震不騰(ふしんふとう・震わず騰・翻騰しない)。
三壽作朋,如岡如陵。公車千乘,朱英綠縢。二矛重弓。公徒三萬,貝冑朱綅。
三壽作朋(さんじゅうさくほう・三壽・上寿中寿下寿を朋とす)、如岡如陵(にょこうにょりょう・岡の如く陵の如し)。公車千乘(こうしゃせんじょう・公の車は千乘)、朱英綠縢(しゅえいりょくとう・朱英・赤い纓と綠縢・緑の繩)。二矛重弓(にぼうちょうきゅう・二矛と重弓・二重の弓)。公徒三萬(こうとさんばん・公の徒・步卒は三萬)、貝胄朱綅(ばいちゅうしゅしん・貝を飾る胄・朱綅・赤い繩で縫う)。
烝徒增增,戎狄是膺,荊舒是懲,則莫我敢承!俾爾昌而熾,俾爾壽而富。
烝徒增增(じょうとぞうぞう・烝徒は增增として衆多)。戎狄是膺(じゅうてきぜおう・戎狄を膺・當って抵く)、荊舒是懲(けいじょぜちょう・荊舒を懲・懲らす)。則莫我敢承(そくばくがかんしょう・則ち我に敢えて承・抵當する者なし)。俾爾昌而熾(ひじしょうにし・昌らかにして熾・盛んにせしめ)、俾爾壽而富(ひじじゅうにふ・壽くして富ましむ)。
黃髮臺背,壽胥與試。俾爾昌而大,俾爾耆而艾。萬有千歲,眉壽無有害。
黃髮台背(こうはつたいはい・黃髮台背・長壽の相)、壽胥與試(じゅうしょよし・壽を胥・相いに試・比べる)。俾爾昌而大(ひじしょうにだい)、俾爾耆而艾(ひじきにがい・耆・老いて艾・強壯)。萬有千歲(ばんゆうせんさい・萬歲千歲あり)、眉壽無有害(びじゅうむゆうがい・眉壽に害なし)。
泰山岩巖,魯邦所詹。奄有龜蒙,遂荒大東。至於海邦,淮夷來同。
泰山巖巖(たいざんがんがん・泰山は巖巖として)、魯邦所詹(ろほうしょせん・魯邦の詹・瞻る所)。奄有龜蒙(えんゆうきもう・龜山蒙山を奄有し)、遂荒大東(すいこうだいとう・遂に大東・極東に荒・擴げる)。至于海邦(しおかいほう・海邦・海邊の邦に至り)、淮夷來同(わいいらいどう・淮夷は來り同・會同す)。
莫不率從,魯侯之功。保有鳧繹,遂荒徐宅。至於海邦,淮夷蠻貊。
莫不率從(ばくふそつじゅう・率從せざるなし)、魯侯之功(ろこうしこう・魯侯の功)。保有鳧繹(ほゆうふえき・鳧山繹山を保有し)、遂荒徐宅(すいこうじょたく・徐宅・徐人の居る所に荒・擴げる)。至于海邦、淮夷蠻貊(わいいばんばく)。
及彼南夷,莫不率從。莫敢不諾,魯侯是若。天錫公純嘏,眉壽保魯。
及彼南夷(きゅうぴなんい・彼の南夷に及ぶ)、莫不率從。莫敢不諾(ばくかんふだく・敢えて諾・應諾せざるなし)、魯侯是若(ろこうぜじゃく・魯侯は之に若・順う)。天錫公純嘏(てんしゃくこうじゅんこ・天は公に純嘏・大福を錫い)、眉壽保魯(びじゅうほろ・眉壽して魯を保つ)。
居常與許,復周公之宇。魯侯燕喜,令妻壽母。宜大夫庶士,邦國是有。
居常與許(きょじょうよきょ・常と許に居・據り)、復周公之宇(ふくしゅうこうしう・周公の宇・疆宇を復す)。魯侯燕喜(ろこうえんき・魯侯は燕喜す)、令妻壽母(れいさいじゅうぼ・令・善い妻と壽・長壽の母)。宜大夫庶士(ぎたいふしょし・大夫庶士に宜しく)、邦國是有(ほうこくぜゆう・邦國を是に有す)。
既多受祉,黃髮兒齒。徂徠之松,新甫之柏。是斷是度,是尋是尺。
既多受祉(きたじゅうし・祉を受くること既に多い)、黃髮兒齒(こうはつじし・黃髮と兒齒・小兒の齒)。徂來之松(そらいししょう・徂來の松)、新甫之柏(しんぽしはく・新甫の柏)。是斷是度(ぜだんぜたく・斷・斫り度・剖る)、是尋是尺(ぜじんぜしゃく・尋・八尺に按り尺に按る)。
松桷有舄,路寢孔碩,新廟奕奕。奚斯所作,孔曼且碩,萬民是若。
松桷有舄(しょうかくゆうせき・松桷・松の椽は舄・粗大)、路寢孔碩(ろしんこうせき・路寢は孔く碩・大きい)。新廟奕奕(しんびょうえきえき・新廟は奕奕)、奚斯所作(けいしししょさく・奚斯の作る所)。孔曼且碩(こうまんしょせき・孔く曼・長く且つ碩・大きい)、萬民是若(ばんみんぜじゃく・萬民は之に若・順う)。
商頌
猗與那與!置我鞉鼓。奏鼓簡簡,衎我烈祖。湯孫奏假,綏我思成。
猗與那與(いよなよ・猗與那與・美しきかな盛んなるかな)!置我鞉鼓(ちがとうこ・我が鞉鼓を置け)。奏鼓簡簡(そうこかんかん・鼓を奏するに簡簡)、衎我烈祖(かんがれっそ・我が烈祖を衎・樂しませ)。湯孫奏假(とうそんそうか・湯孫は奏・樂を奏して假・感格す)、綏我思成(すいがしせい・我が思成・思い成す所を綏・安んず)。
鞉鼓淵淵,嘒嘒管聲。既和且平,依我磬聲。於赫湯孫!穆穆厥聲。
鞉鼓淵淵(とうこえんえん・鞉鼓は淵淵)、嘒嘒管聲(えいえいかんせい・管聲は嘒嘒)。既和且平(きわしょへい・既に和し且つ平らか)、依我磬聲(いがけいせい・我が磬聲に依る)。於赫湯孫(おかくとうそん・於赫・赫々たる湯孫)、穆穆厥聲(ぼくぼくけっせい・厥の聲は穆穆)。
庸鼓有斁,萬舞有奕。我有嘉客,亦不夷懌。自古在昔,先民有作。
庸鼓有斁(ようこゆうえき・庸・大鐘鼓は斁・盛ん)、萬舞有奕(ばんぶゆうえき・萬舞は奕・有序)。我有嘉客(がゆうかかく・我に嘉客あり)、亦不夷懌(やくふいえき・亦た夷懌・和樂喜悅せざらんや)。自古在昔(じこざいしゃく・古に在り昔より)、先民有作(せんみんゆうさく・先民に作・制作あり)。
溫恭朝夕,執事有恪,顧予烝嘗,湯孫之將。
溫恭朝夕(おんきょうちょうせき・朝夕に溫恭)、執事有恪(しっじゆうかく・事を執るに恪・敬あり)。顧予烝嘗(こよしょうしょう・予が烝嘗・冬祭秋祭を顧・眷顧せよ)、湯孫之將(とうそんししょう・湯孫の將・進獻)。
嗟嗟烈祖!有秩斯祜。申錫無疆,及爾斯所。既載清酤,賚我思成。
嗟嗟烈祖(さされっそ・嗟嗟烈祖)、有秩斯祜(ゆうちつしこ・秩として斯の祜・福あり)。申錫無疆(しんしゃくむきょう・申・重ねて錫うに疆・限りなし)、及爾斯所(きゅうじししょ・爾の斯の所に及ぶ)。既載清酤(きさいせいこ・清酤・清酒を既に載・陳べ)、賚我思成(らいがしせい・我が思成を賚・賜う)。
亦有和羹,既戒既平。鬷假無言,時靡有爭。綏我眉壽,黃耇無疆。
亦有和羹(やくゆうわこう・亦た和羹あり)、既戒既平(きかいきへい・既に戒・備え既に平・正い)。鬷假無言(そうかむげん・鬷假・總集感格して言なし)、時靡有爭(じびゆうそう・時に爭なし)。綏我眉壽(すいがびじゅ・我が眉壽を綏・安んず)、黃耇無疆(こうこうむきょう・黃耇は疆・限りなし)。
約軧錯衡,八鸞鶬鶬。以假以享,我受命溥將。自天降康,豐年穰穰。
約軧錯衡(やくていさくこう・軧・車轂を約・皮革で纏い衡に錯・花紋)、八鸞鶬鶬(はちらんそうそう・八鸞は鶬鶬)。以假以享(いかいきょう・假・感格し享げるに以ってす)、我受命溥將(がじゅめいふしょう・我が命を受くること溥・廣く將・長し)。自天降康(じてんこうこう・天より康・安康を降し)、豐年穰穰(ほうねんじょうじょう)。
來假來饗,降福無疆。顧予烝嘗,湯孫之將。
來假來饗(らいからいきょう・來り假・感格し來り饗・饗受す)、降福無疆(こうふくむきょう)。顧予烝嘗、湯孫之將。
天命玄鳥,降而生商,宅殷土芒芒。古帝命武湯,正域彼四方。
天命玄鳥(てんめいげんちょう・天は玄鳥・燕に命じ)、降而生商(こうにせいしょう・降りて商を生む)、宅殷土芒芒(たくいんどぼうぼう・殷土・殷の土に宅・居ること芒芒・廣大)。古帝命武湯(こていめいぶとう・古の帝・上帝は武湯に命じ)、正域彼四方(せいいきぴしほう・彼の四方の域・疆域を正す)。
方命厥後,奄有九有。商之先後,受命不殆,在武丁孫子。武丁孫子,武王靡不勝。
方命厥后(ほうめいけっこう・方・遍く厥の后・諸侯に命じ)、奄有九有(えんゆうきゅうゆう・九有・九州を奄有す)。商之先后(しょうしせんこう・商の先后・先君)、受命不殆(じゅめいふたい・命を受けて殆・怠らない)。在武丁孫子(ざいぶていそんし・武丁の孫子に在り)。
龍旗十乘,大糦是承。邦畿千里,維民所止,肇域彼四海。
武丁孫子、武王靡不勝(ぶおうびふしょう・武王は勝・堪えないことなし・なせないことなし)。龍旂十乘(りゅうきじゅうじょう・龍旂の車十乘)、大糦是承(だいきぜしょう・大糦・大きな黍稷の祭食を是に承・進奉す)。邦畿千里(ほうきせんり・邦畿は千里)、維民所止(いみんしょし・民の止・居る所)。肇域彼四海(ちょういきぴしかい・肇・始めて彼の四海を域・疆域す)。
四海來假,來假祁祁。景員維河。殷受命咸宜,百祿是何。
四海來假(しかいらいか・四海は來り假・感格す)、來假祁祁(らいかきき・祁祁として衆多)。景員維河(けいいんいが・景・廣く員・環繞するは河・黄河)。殷受命咸宜(いんじゅめいかんぎ・殷は命を受けて咸・皆宜し)、百祿是何(ぴゃくろくぜか・百祿を是に何・荷う)。
浚哲維商,長髮其祥。洪水芒芒,禹敷下土方。外大國是疆,幅隕既長。有娀方將,帝立子生商。
濬哲維商(しゅんてついしょう・濬哲・深沈睿哲は商)、長發其祥(ちょうはつきしょう・長く其の祥を發・發見す)。洪水芒芒(こうすいぼうぼう・洪水は芒芒)、禹敷下土方(うふげどほう・禹は下土方を敷・分布す)。外大國是疆(がいだいこくぜきょう・外の大國を疆・疆界とす)、幅隕既長(ふくいんきちょう・幅隕・幅員は既に長し)。有娀方將(ゆうしゅうほうしょう・有娀は方に將・壯大)、帝立子生商(ていりつしせいしょう・帝は子を立てて商を生ましむ・簡狄)。
玄王桓撥,受小國是達,受大國是達。率履不越,遂視既發。相士烈烈。海外有截。
玄王桓撥(げんおうかんぱつ・玄王・契は桓撥・勇武)、受小國是達(じゅうしょうこくぜたつ・小國を受けて是に達・通ず)、受大國是達。履不越(りふえつ・履・禮に越えない)、遂視既發(すいしきはつ・遂に視・巡視して既に發・施行す)。相土烈烈(そうどれつれつ・相土は烈烈・威盛)、海外有截(かいがいゆうせつ・海外は截・整然斉一)。
帝命不違,至於湯齊。湯降不遲,聖敬日躋。昭假遲遲,上帝是祗,帝命式於九圍。
帝命不違(ていめいふい・帝命は違わない)、至于湯齊(しおとうせい・湯に至りて齊・天と齊しい)。湯降不遲(とうこうふち・湯の降・降生は遲れず)、聖敬日躋(せいけいじつせい・聖敬は日に躋・升進す)。昭假遲遲(しょうかちち・昭假・昭明感格すること遲遲として長い)、上帝是祗(じょうていぜし・上帝を祗・敬う)。帝命式于九圍(ていめいしきおきゅうい・帝命は九圍・九州の式・法則たれ)。
受小球大球,為下國綴旒,何天之休。不競不絿,不剛不柔。敷政優優。百祿是遒。
受小球大球(じゅうしょうきゅうだいきゅう・小球大球を受け)、為下國綴旒(いげこくてつりゅう・下國の綴旒・表率と為る)。何天之休(かてんしきゅう・天の休・美を何・荷う)。不競不絿(ふきょうふきゅう・競せず絿・急がない)、不剛不柔(ふこうふじゅう・剛ならず柔ならず)。敷政優優(ふせいゆうゆう・政を敷くこと優優・寬和)。百祿是遒(ぴゃくろくぜしゅう・百祿は是に遒・聚まる)。
受小共大共,為下國駿厖。何天之龍,敷奏其勇。不震不動,不戁不竦,百祿是總。
受小共大共(じゅうしょうきょうだいきょう・小共大共・小法大法を受け)、為下國駿厖(いげこくしゅんぼう・下國の駿厖・厚庇と為る)。何天之龍(かてんしりゅう・天の龍・寵を荷う)。敷奏其勇(ふそうきゆう・其の勇を敷奏・敷陳進奏す)。不震不動(ふしんふどう・震わず動かず)、不戁不竦(ふなんふしょう・戁・恐れず竦・驚竦しない)。百祿是總(ぴゃくろくぜそう・百祿は是に總・總集する)。
武王載旆,有虔秉鉞。如火烈烈,則莫我敢曷。苞有三櫱,莫遂莫達。九有有截,韋顧既伐,昆吾夏桀。
武王載旆(ぶおうさいはい・武王は旆を載・旆旗を立て)、有虔秉鉞(ゆうけんへいえつ・虔として鉞を秉る)。如火烈烈(にょかれつれつ・火の如く烈烈)、則莫我敢曷(そくばくがかんかつ・則ち我を敢えて曷・遏・遮る者なし)。苞有三蘖(ほうゆうさんげつ・苞・根本に三蘖あり)、莫遂莫達(ばくすいばくたつ・遂・順い達する者なし)。九有有截(きゅうゆうゆうせつ・九有は截・整然)、韋顧既伐(いこきばつ・韋と顧は既に伐たる)、昆吾夏桀(こんごかけつ・昆吾と夏桀を伐つ)。
昔在中葉,有震且業。允也天子,降予卿士。實維阿衡,實左右商王。
昔在中葉(しゃくざいちゅうよう・昔中葉・中世に在り)、有震且業(ゆうしんしょぎょう・震・威震あり且つ業・危殆)。允也天子(いんやてんし・允・誠なる天子)、降予卿士(こうよけいし・卿士を降して予・賜う)。實維阿衡(じついあこう・實に維に阿衡・伊尹)、實左右商王(じつさゆうしょうおう・實に商王を左右・輔佐す)。
撻彼殷武,奮伐荊楚。深入其阻,裒荊之旅。有截其所,湯孫之緒。
撻彼殷武(たつぴいんぶ・撻・疾速なる彼の殷武・殷の武)、奮伐荊楚(ふんばつけいそ・奮って荊楚を伐つ)。罙入其阻(ちんにゅうきそ・罙・深く其の阻・險阻に入り)、裒荊之旅(ほうけいしりょ・荊の旅・軍を裒・聚集す)。有截其所(ゆうせつきしょ・其の所を截・整然とせしめ)、湯孫之緒(とうそんししょ・湯孫の緒・事業)。
維女荊楚,居國南鄉。昔有成湯,自彼氐羌,莫敢不來享,莫敢不來王。曰商是常。
維女荊楚(いじょけいそ・女・あなたがた荊楚)、居國南鄉(きょこくなんきょう・國の南鄉に居る)。昔有成湯(しゃくゆうせいとう・昔成湯あり)、自彼氐羌(じひていきょう・彼の氐羌より)、莫敢不來享(ばくかんふらいきょう・敢えて來り享・獻げざるなし)、莫敢不來王(ばくかんふらいおう・敢えて來り王・朝王せざるなし)。曰商是常(えつしょうぜじょう・商は是の常・常主と曰う)。
天命多闢,設都於禹之績。歲事來闢,勿予禍適,稼穡匪解。
天命多辟(てんめいたへき・天は多辟・衆君に命じ)、設都于禹之績(せつとおうしせき・禹の績に都を設く)。歲事來辟(さいじらいへき・歲事・每年の職事を來て辟・朝見す)、勿予禍適(ぶつよかせき・我に禍適・禍謫を與えるな・「勿使我に禍を適す」)、稼穡匪解(かしょくひかい・稼穡に懈・怠らない)。
天命降監,下民有嚴。不僭不濫,不敢怠遑。命於下國,封建厥福。
天命降監(てんめいこうかん・天は命を降して監る)、下民有嚴(げみんゆうげん・下民に嚴・威厳あり)。不僭不濫(ふせんふらん・僭・越えず濫・濫刑せず)、不敢怠遑(ふかんたいこう・敢えて怠り遑・暇しいこがまない)。命于下國(めいおげこく・下國に命じ)、封建厥福(ほうけんけつふく・厥の福を封建す)。
商邑翼翼,四方之極。赫赫厥聲,濯濯厥靈。壽考且寧,以保我後生。
商邑翼翼(しょうゆうよくよく・商邑は翼翼として整齊)、四方之極(しほうしきょく・四方の極・準則)。赫赫厥聲(かっかくけっせい・厥の聲は赫赫)、濯濯厥靈(たくたくけつれい・厥の靈は濯濯)。壽考且寧(じゅうこうしょねい・壽考且つ寧)、以保我後生(いほがこうせい・我が後生・後の世を保つ)。
陟彼景山,松伯丸丸。是斷是遷,方斫是虔。松桷有梴,旅楹有閒,寢成孔安。
陟彼景山(ちょくぴけいざん・彼の景山に陟る)、松柏丸丸(しょうはくがんがん・松柏は丸丸として直い・「松伯」の「伯」は「柏」の誤字)。是斷是遷(ぜだんぜせん・斷・斫り遷・運ぶ)、方斫是虔(ほうしゃくぜけん・方に斫り虔・削る)。松桷有梴(しょうかくゆうてん・松桷は梴として長い)、旅楹有閑(りょえいゆうかん・旅楹・衆多の楹柱は閑として大きい)。寢成孔安(しんせいこうあん・寢・寢廟は成りて孔く安し)。
