梵網経 巻上
梵網經菩薩戒序
梵網経菩薩戒序
「諸佛子等!合掌至心聽。我今欲說諸佛大戒序。眾集,默然聽。自知有罪當懺悔,懺悔即安樂,不懺悔罪益深。無罪者默然,默然故,當知眾清淨。諸大德優婆塞、優婆夷等諦聽。佛滅度後於像法中,應當尊敬波羅提木叉,波羅提木叉者即是此戒。持此戒時如暗遇明、如貧得寶、如病得差、如囚繫出獄、如遠行者得歸。當知此則是眾等大師,若佛住世無異此也。怖心難生、善心難發,故經云:『勿輕小罪以為無殃,水滴雖微漸盈大器。』剎那造罪殃墮無間,一失人身萬劫不復。壯色不停猶如奔馬,人命無常過於山水,今日雖存明亦難保。眾等各各一心勤修精進,慎勿懈怠懶惰睡眠縱意,夜即攝心存念三寶。莫以空過徒設疲勞,後代深悔。眾等各各一心謹依此戒,如法修行,應當學。」
「諸の仏子等よ!合掌して至心に聴け。我いま諸仏の大戒の序を説かんとす。大衆会集して、黙然として聴け。自ら罪あるを知らば懺悔すべし、懺悔すればすなわち安楽、懺悔せざれば罪はなお深し。罪なき者は黙然たれ、黙然なるをもって、まさに大衆清浄なるを知るべし。諸の大徳優婆塞(在家の男居士)・優婆夷(在家の女居士)等よく聴け。仏滅度の後、像法の中において、まさに波羅提木叉(別解脱戒、すなわち条々に身心を防護する戒)を尊敬すべし。波羅提木叉はすなわちこれらの戒なり。これらの戒を持する時、黒闇の中に光明に遇うが如く、貧窮の人が宝物を得るが如く、病んで愈えるを得るが如く、囚われの人が獄を出づるが如く、遠行の人が家に帰るが如し。まさに知るべし、これすなわち大衆の大師、仏の世に住するに異ならず。怖畏の心は生じ難く善良の心は発し難し。ゆえに経に説く、『小罪を軽んじて殃なしと為すなかれ、水滴は微細なりといえども、漸々に大器を満たすことを得』と。刹那に罪を造れば、災殃は無間地獄に堕ち、一旦人身を失えば、万劫も再び得べからず。壮盛の容色は住まず、奔馬の如く、人命無常は山水の流るるよりも速く、今日は在りといえども明日も保たんとす。大衆各自一心に勤修精進して、千万に懈怠懶惰・睡眠放縦するなかれ、夜には心意を収摂し三宝を憶念せよ。時光を空しく過ごし徒らに労苦して、後に深く悔ゆることなかれ。大衆各自一心に謹んでこれらの戒に依りて、法の如く修行し、学ぶべし。」
梵網経 盧舍那仏説菩薩心地戒品第十 巻下
後秦龜茲國三藏鳩摩羅什譯
後秦の時、亀茲国の三蔵法師鳩摩羅什が訳した。
爾時盧舍那佛,為此大眾略開百千恆河沙不可說法門中心地,如毛頭許:「是過去一切佛已說、未來佛當說、現在佛今說,三世菩薩已學、當學、今學。我已百劫修行是心地,號吾為盧舍那。汝諸佛轉我所說,與一切眾生開心地道。」時蓮花臺藏世界赫赫天光師子座上盧舍那佛放光光,告千花上佛:「持我心地法門品而去,復轉為千百億釋迦及一切眾生,次第說我上心地法門品。汝等受持讀誦一心而行。」
その時盧舍那仏はこの大衆のために、百千恒河沙ほどの不可説の法門の中において、略して心地を開き、毛端許の如く言われた。「これは過去一切仏の已説、未来仏の将説、現在仏の今説にして、三世菩薩の已学・将学・今学なり。我はすでに百劫この心地を修行せり。これを因として我を盧舍那と号す。あなたがた諸仏は我が説く所を転述して、一切衆生のために心地の道を開示せよ」と。その時蓮華台蔵世界の赫々たる天光師子座上の盧舍那仏は光光を放ち、千華上の仏に告げられた。「我が心地法門品を持して去り、さらに転じて千百億釈迦および一切衆生に授け、次いで上の我が心地法門品を宣説せよ。あなたがたは受持読誦し、一心に往きて実行せよ」と。
爾時千花上佛、千百億釋迦,從蓮花藏世界赫赫師子座起,各各辭退,舉身放不可思議光,光皆化無量佛。一時以無量青黃赤白花供養盧舍那佛,受持上說心地法門品竟,各各從此蓮花藏世界而沒。沒已入體性虛空花光三昧,還本源世界閻浮提菩提樹下,從體性虛空華光三昧出。出已方坐金剛千光王座,及妙光堂說十世界海。復從座起,至帝釋宮說十住。復從座起,至炎天中說十行。復從座起,至第四天中說十迴向。復從座起,至化樂天說十禪定。復從座起,至他化天說十地。復至一禪中說十金剛,復至二禪中說十忍,復至三禪中說十願,復至四禪中摩醯首羅天王宮,說我本源蓮花藏世界盧舍那佛所說心地法門品。其餘千百億釋迦亦復如是無二無別。如賢劫品中說。
その時千華上の仏・千百億の釈迦は、蓮華蔵世界の赫々たる師子座より起ちて、各自告げ辞して退き去り、身を挙げて不可思議の光を放ち、光はみな化して無量の仏と為る。同一時に無量の青黄赤白の華をもって盧舍那仏を供養し、上の説く所の心地法門品を受持し畢えて、各自この蓮華蔵世界より隠没す。隠没して後、体性虚空華光三昧に入り、本源世界の閻浮提菩提樹下に帰り、体性虚空華光三昧より出づ。出でて後、まさに金剛千光王座に上り坐し、および妙光堂において十世界海を説く。さらに座上より起ち、帝釈宮に至りて十住を説く。さらに座上より起ち、焰天の中に至りて十行を説く。さらに座上より起ち、第四天の中に至りて十回向を説く。さらに座上より起ち、化楽天に至りて十禅定を説く。さらに座上より起ち、他化天に至りて十地を説く。さらに初禅に至りて十金剛を説き、さらに二禅に至りて十忍を説き、さらに三禅に至りて十願を説き、さらに四禅の中の摩醯首羅天王宮に至りて、我が本源蓮華蔵世界の盧舍那仏の説く所の心地法門品を説く。余の千百億釈迦もまた是の如く、二なく別なし。《賢劫品》の中に説く所の如し。
爾時釋迦牟尼佛,從初現蓮花藏世界東方來入天王宮中說魔受化經已,下生南閻浮提迦夷羅國,母名摩耶、父字白淨。吾名悉達,七歲出家、三十成道,號吾為釋迦牟尼佛。於寂滅道場坐金剛花光王座,乃至摩醯首羅天王宮。其中次第十住處所說。時佛觀諸大梵天王網羅幢,因為說無量世界猶如網孔,一一世界各各不同別異無量,佛教門亦復如是。吾今來此世界八千返,為此娑婆世界坐金剛花光王座,乃至摩醯首羅天王宮,為是中一切大眾略開心地法門品竟。復從天王宮下至閻浮提菩提樹下,為此地上一切眾生凡夫痴闇之人,說我本盧舍那佛心地中初發心中常所誦一戒。光明金剛寶戒是一切佛本源、一切菩薩本源、佛性種子。一切眾生皆有佛性,一切意識色心是情是心,皆入佛性戒中,當當常有因故,有當當常住法身。如是十波羅提木叉出於世界,是法戒,是三世一切眾生頂戴受持。吾今當為此大眾重說十無盡藏戒品,是一切眾生戒本源自性清淨。
その時釈迦牟尼仏は、最初に現じ出でた蓮華蔵世界の東方より来り、天王宮の中に入りて《魔受化経》を説き畢えて後、南閻浮提の迦夷羅国に下生す。母の名は摩耶、父の名は白浄。我が名は悉達、七歳にして出家し三十歳にして成道す、我を釈迦牟尼仏と号す。寂滅道場において金剛華光王座に坐し、摩醯首羅天王宮に至るまで、その中の次第の十箇の住処に説く所の法。その時仏は諸の大梵天王の網羅幢を観察して、因りて無量世界は網孔の如く、一一の世界各自同じからず差別無量、仏教の法門もまた是の如しと宣説す。我いまこの世界に来ることすでに八千次、この娑婆世界のために金剛華光王座に坐し、摩醯首羅天王宮に至るまで、ここの一切大衆のために略して心地法門品を開き畢えたり。さらに天王宮より下りて閻浮提の菩提樹下に至り、この地上の一切衆生・凡夫愚暗の人のために、我が本師盧舍那仏心地の中の最初発心の時に常に持誦した一戒を説く。光明金剛宝戒は一切仏の本源・一切菩薩の本源・仏性の種子なり。一切衆生はみな仏性あり、一切の意識色心、是の情、是の心は、みな仏性戒の中に入る。当に常に因あるがゆえに、便ち当に常に住する法身あらん。この如く、十波羅提木叉は世界に出現し、これは法戒、三世一切衆生の頂戴受持する所なり。我いままさにこの大衆のために十無尽蔵戒品を重説すべし、これは一切衆生戒の本源、自性清浄なり。
「我今盧舍那,方坐蓮花臺,
「我いま是れ盧舍那、方に蓮華台座の上に坐す、
周匝千花上,復現千釋迦。
周囲の千片の花瓣の上に、また千の釈迦を現出す。
一花百億國,一國一釋迦,
一花すなわち百億の国土あり、一国すなわち一釈迦あり、
各坐菩提樹,一時成佛道。
各自菩提樹下に坐して、同一時に仏道を成就す。
如是千百億,盧舍那本身,
かくの如き千百億仏、盧舍那は彼らの本身なり、
千百億釋迦,各接微塵眾,
千百億の釈迦、各自微塵の数の大衆を接引し、
俱來至我所,聽我誦佛戒,
斉しく我が所に来たりて、我が仏戒を持誦するを聴き、
甘露門則開。是時千百億,
甘露法門はここに敞きぬ。この時千百億の仏、
還至本道場,各坐菩提樹,
各自の本来の道場に帰り、各自菩提樹下に坐して、
誦我本師戒。十重四十八,
我が本師の戒法を持誦す。十重戒と四十八軽戒、
戒如明日月,亦如瓔珞珠,
戒は明き日月の如く、また瓔珞宝珠の如し、
微塵菩薩眾,由是成正覺。
微塵の数の菩薩衆、これに由って正覚を成就す。
是盧舍那誦,我亦如是誦,
これ盧舍那の誦する所、我もまたかくの如く誦す、
汝新學菩薩,頂戴受持戒,
あなたがた新学の菩薩、頂戴してこれらの戒を受持し、
受持是戒已,轉授諸眾生,
これらの戒を受持して後、さらに転じて諸衆生に授けよ、
諦聽我正誦,佛法中戒藏,
よく聴け我が正しく誦出す、仏法の中の戒蔵、
波羅提木叉,大眾心諦信。
波羅提木叉を、大衆は心に真実に信ずべし。
汝是當成佛,我是已成佛,
あなたがたは将に仏と成らんとする者、我は已に仏と成れる者、
常作如是信,戒品已具足。
常にかくの如き信を作せば、戒品は便ち已に具足す。
一切有心者,皆應攝佛戒,
一切の心ある人は、みな仏戒を摂受すべし、
眾生受佛戒,即入諸佛位。
衆生は仏戒を受ければ、すなわち諸仏の位に入る。
位同大覺已,真是諸佛子,
位次すでに大覚に同じ、まさに真に諸仏の子なり、
大眾皆恭敬,至心聽我誦。」
大衆はみな恭敬して、至心に我が誦を聴け。」
爾時釋迦牟尼佛,初坐菩提樹下成無上覺,初結菩薩波羅提木叉:「孝順父母、師僧、三寶,孝順至道之法,孝名為戒,亦名制止。」佛即口放無量光明。是時百萬億大眾諸菩薩,十八梵天,六慾天子,十六大國王,合掌至心聽佛誦一切佛大乘戒。
その時釈迦牟尼仏は、最初菩提樹下に坐して無上覚を成じ、最初に菩薩波羅提木叉を結集された。「父母・師僧・三宝に孝順せよ、孝順は道に至るの方法、孝を名づけて戒といい、また名づけて制止という」と。仏はすなわち口中より無量光明を放ちたまう。この時百万億の大衆の諸菩薩・十八梵天・六欲天子・十六大国王は、合掌して至心に仏が一切仏の大乗戒を誦するを聴いた。
佛告諸菩薩言:「我今半月半月,自誦諸佛法戒。汝等一切發心菩薩亦誦,乃至十發趣、十長養、十金剛、十地諸菩薩亦誦。是故戒光從口出,有緣非無因故。光光非青黃赤白黑、非色非心、非有非無、非因果法,是諸佛之本源、菩薩之根本、是大眾諸佛子之根本。是故大眾諸佛子應受持、應讀誦、善學。佛子諦聽!若受佛戒者,國王、王子、百官宰相、比丘、比丘尼、十八梵天、六慾天子、庶民黃門、婬男婬女奴婢、八部鬼神金剛神、畜生乃至變化人,但解法師語,盡受得戒,皆名第一清淨者。」
仏は諸菩薩に告げて言われた。「我いま半月ごとに自ら諸仏の法戒を誦す。あなたがた一切発心の菩薩もまた誦せよ、乃至十発趣・十長養・十金剛・十地の諸菩薩もまた誦せよ。戒光は口中より出づる所以は、縁ありて因なきにあらず。光光は青黄赤白黒にあらず、色でもなく心でもなく、有でもなく無でもなく、また因果法でもない。これは諸仏の本源・菩薩の根本・大衆諸仏子の根本なり。ゆえに大衆諸仏子は受持すべし、読誦すべし、善く学ぶべし。仏子よく聴け!もし仏戒を受くる者は、国王・王子・百官宰相・比丘(出家の男衆)・比丘尼(出家の女衆)・十八梵天・六欲天子・庶民・黄門・淫男淫女・奴婢・八部鬼神・金剛神・畜生乃至変化人、能く法師の言を解する者は、みな戒を受くることを得、みな名づけて第一清浄の人という」と。
佛告諸佛子言:「有十重波羅提木叉,若受菩薩戒不誦此戒者,非菩薩、非佛種子。我亦如是誦,一切菩薩已學、一切菩薩當學、一切菩薩今學。已略說菩薩波羅提木叉相貌,是事應當學,敬心奉持。」
仏は諸仏子に告げて言われた。「十重波羅提木叉あり、もし菩薩戒を受けてこれらの戒を誦せざる者は、菩薩にあらず、仏の種子にあらず。我もまたかくの如く誦す。一切菩薩已学・一切菩薩将学・一切菩薩今学なり。已に菩薩波羅提木叉の相貌を略説せり、この事まさに学ぶべし、恭敬心をもって奉持せよ」と。
佛言:「佛子!若自殺、教人殺、方便讚歎殺、見作隨喜乃至呪殺。殺因、殺緣、殺法、殺業,乃至一切有命者不得故殺。是菩薩應起常住慈悲心、孝順心,方便救護一切眾生,而自恣心快意殺生者,是菩薩波羅夷罪。
仏は言われた。「仏子よ!もし自ら殺し、人に教えて殺さしめ、方便をもって殺を讃嘆し、殺を見て随喜し、乃至呪をもって殺す。殺の因・殺の縁・殺の法・殺の業、乃至一切命ある者をみな故に殺すことを得ず。この菩薩はまさに常住の慈悲心・孝順心を生起し、方便をもって一切衆生を救護すべし。しかるに心意を放縦し快を図って殺生するは、是れ菩薩波羅夷罪(最も重き根本重罪、犯せば戒を失う)なり。
「若佛子!自盜、教人盜、方便盜,盜因、盜緣、盜法、盜業,呪盜乃至鬼神有主、劫賊物,一切財物,一針一草不得故盜。而菩薩應生佛性孝順慈悲心,常助一切人生福生樂,而反更盜人財物者,是菩薩波羅夷罪。
「もし仏子よ!自ら盗み、人に教えて盗ましめ、方便をもって盗む。盗の因・盗の縁・盗の法・盗の業、呪をもって盗み、乃至鬼神主あるの物・劫賊の物、一切の財物、一針一草も故に盗むことを得ず。しかして菩薩はまさに仏性の孝順慈悲心を生起し、常に一切人を助けて福を生じ楽を生ぜしむべし。反って再び人の財物を盗むは、是れ菩薩波羅夷罪なり。
「若佛子!自婬、教人婬,乃至一切女人不得故婬。婬因、婬緣、婬法、婬業,乃至畜生女、諸天鬼神女,及非道行婬。而菩薩應生孝順心,救度一切眾生,淨法與人,而反更起一切人婬,不擇畜生,乃至母女姊妹六親行婬,無慈悲心者,是菩薩波羅夷罪。
「もし仏子よ!自ら淫し、人に教えて淫せしめ、乃至一切女人に対して故に淫を行ずることを得ず。淫の因・淫の縁・淫の法・淫の業、乃至畜生女・諸天鬼神女、および道に非る淫を行ず。しかして菩薩はまさに孝順心を生起し、一切衆生を救度し、清浄法を人に与うべし。反って再び一切人の淫欲を挑起し、畜生を択ばず、乃至母女・姉妹・六親に対し淫を行じ、慈悲心なきは、是れ菩薩波羅夷罪なり。
「若佛子!自妄語、教人妄語、方便妄語,妄語因、妄語緣、妄語法、妄語業,乃至不見言見、見言不見,身心妄語。而菩薩常生正語正見,亦生一切眾生正語正見,而反更起一切眾生邪語、邪見、邪業者,是菩薩波羅夷罪。
「もし仏子よ!自ら妄語し、人に教えて妄語せしめ、方便をもって妄語す。妄語の因・妄語の縁・妄語の法・妄語の業、乃至見ずして見と言い見て見ずと言い、身心ともに妄語す。しかして菩薩は常に正語正見を生起し、また一切衆生をして正語正見を生起せしむべし。反って再び一切衆生の邪語・邪見・邪業を挑起するは、是れ菩薩波羅夷罪なり。
「若佛子!自酤酒、教人酤酒,酤酒因、酤酒緣、酤酒法、酤酒業,一切酒不得酤,是酒起罪因緣。而菩薩應生一切眾生明達之慧,而反更生一切眾生顛倒之心者,是菩薩波羅夷罪。
「もし仏子よ!自ら酒を売り、人に教えて酒を売らしめ、売酒の因・売酒の縁・売酒の法・売酒の業、一切の酒は売ることを得ず、酒は罪過を生起する因縁なればなり。しかして菩薩はまさに一切衆生をして明達の智慧を生起せしむべし。反って再び一切衆生をして顛倒の心を生起せしむるは、是れ菩薩波羅夷罪なり。
「若佛子!自說出家在家菩薩比丘、比丘尼罪過,教人說罪過,罪過因、罪過緣、罪過法、罪過業。而菩薩聞外道惡人及二乘惡人說佛法中非法非律,常生悲心教化是惡人輩,令生大乘善信,而菩薩反更自說佛法中罪過者,是菩薩波羅夷罪。
「もし仏子よ!自ら出家・在家の菩薩・比丘・比丘尼の罪過を説き、人に教えて罪過を説かしめ、罪過の因・罪過の縁・罪過の法・罪過の業。しかして菩薩は外道の悪人および二乗の悪人が仏法の中の非法非律を説くを聞き、まさに常に悲心を生起して、これらの悪人を教化し、彼らをして大乗の善信を生起せしむべし。菩薩反って自ら仏法の中の罪過を説くは、是れ菩薩波羅夷罪なり。
「若佛子!自讚毀他亦教人自讚毀他,毀他因、毀他緣、毀他法、毀他業。而菩薩應代一切眾生受加毀辱,惡事自向己、好事與他人,若自揚己德、隱他人好事,令他人受毀者,是菩薩波羅夷罪。
「もし仏子よ!自ら己を称讃し他を毀謗し、また人に教えて自讃毀他せしめ、毀他の因・毀他の縁・毀他の法・毀他の業。しかして菩薩はまさに一切衆生に代わって毀辱を承受し、悪事は自ら承当し好事は他人に与うべし。もし自ら己が徳を張揚し、他人の好事を隠暱して、他人をして毀を受けしむるは、是れ菩薩波羅夷罪なり。
「若佛子!自慳、教人慳,慳因、慳緣、慳法、慳業。而菩薩見一切貧窮人來乞者,隨前人所須一切給與。而菩薩以惡心瞋心,乃至不施一錢一針一草,有求法者不為說一句一偈一微塵許法,而反更罵辱者,是菩薩波羅夷罪。
「もし仏子よ!自ら慳吝し、人に教えて慳吝せしめ、慳の因・慳の縁・慳の法・慳の業。しかして菩薩は一切貧窮の人の来たりて乞求するを見て、まさに前の所需とする一切に随って与うべし。菩薩しかも悪心瞋心をもって、乃至一銭一針一草を施さず、法を求むる者ありても肯んじて一句一偈・一微塵許の法をも説かず、反って再び罵辱するは、是れ菩薩波羅夷罪なり。
「若佛子!自瞋、教人瞋,瞋因、瞋緣、瞋法、瞋業。而菩薩應生一切眾生中善根無諍之事,常生悲心。而反更於一切眾生中,乃至於非眾生中,以惡口罵辱加以手打,及以刀杖意猶不息,前人求悔善言懺謝,猶瞋不解者,是菩薩波羅夷罪。
「もし仏子よ!自ら瞋怒し、人に教えて瞋怒せしめ、瞋の因・瞋の縁・瞋の法・瞋の業。しかして菩薩はまさに一切衆生の中において善根・無諍の事を生起し、常に悲心を生起すべし。反って再び一切衆生に対し、乃至非衆生に対しても、悪口をもって罵辱し、手打を加え、および刀杖を用い、心意なお歇まず、前人が来たりて悔を求め、好言をもって懺謝するも、なお瞋怒解けざるは、是れ菩薩波羅夷罪なり。
「若佛子!自謗三寶、教人謗三寶,謗因、謗緣、謗法、謗業。而菩薩見外道及以惡人一言謗佛音聲,如三百鉾刺心。況口自謗不生信心孝順心,而反更助惡人邪見人謗者,是菩薩波羅夷罪。
「もし仏子よ!自ら三宝を謗り、人に教えて三宝を謗らしめ、謗の因・謗の縁・謗の法・謗の業。しかして菩薩は外道および悪人の一句の謗仏の声を聞くに、三百の矛が心を刺すが如し。いわんや口に自ら謗り、信心孝順心を生ぜず、反って再び悪人・邪見の人を助けて謗らしむるは、是れ菩薩波羅夷罪なり。
「善學諸仁者!是菩薩十波羅提木叉,應當學。於中不應一一犯如微塵許,何況具足犯十戒。若有犯者,不得現身發菩提心,亦失國王位轉輪王位,亦失比丘、比丘尼位,亦失十發趣、十長養、十金剛、十地佛性常住妙果,一切皆失。墮三惡道中,二劫三劫不聞父母三寶名字。以是不應一一犯。汝等一切諸菩薩今學、當學、已學,如是十戒應當學敬心奉持。八萬威儀品當廣明。」
「善く学ぶ諸の仁者よ!これ菩薩十波羅提木叉なり、まさに学ぶべし。この中間において一一に違犯すべからず、微塵ほど小さきも、いわんや具足して十戒を犯すをや。もし犯す者あらば、現身において菩提心を発すること能わず、また国王位・転輪王位を失い、また比丘・比丘尼位を失い、また十発趣・十長養・十金剛・十地・仏性常住の妙果を失い、一切みな失わん。三悪道の中に堕ちて、二劫三劫、父母・三宝の名字を聞くことを得ず。これを因って一一に違犯すべからず。あなたがた一切諸菩薩の今学・将学・已学、この如き十戒まさに学ぶべし、恭敬心をもって奉持せよ。《八万威儀品》の中にまさに広く説明せん。」
佛告諸菩薩言:「已說十波羅提木叉竟,四十八輕今當說。」
仏は諸菩薩に告げて言われた。「十波羅提木叉已に説き畢えり、四十八軽戒いままさに説くべし」と。
佛言:「佛子!欲受國王位時、受轉輪王位時、百官受位時,應先受菩薩戒。一切鬼神救護王身、百官之身,諸佛歡喜。既得戒已,生孝順心、恭敬心,見上座、和上、阿闍梨、大同學、同見同行者,應起承迎禮拜問訊。而菩薩反生憍心、慢心、痴心,不起承迎禮拜,一一不如法供養,以自賣身國城男女七寶百物而供給之。若不爾者,犯輕垢罪。
仏は言われた。「仏子よ!国王位を受けんとする時・転輪王位を受けんとする時・百官が職位を受くる時、まさに先ず菩薩戒を受くべし。一切鬼神は王身・百官の身を救護し、諸仏は歓喜す。已に戒を得て後、孝順心・恭敬心を生起し、上座・和尚・阿闍梨・大同学・同見同行の人を見ては、まさに起身して迎候し礼拝問訊すべし。菩薩反って驕心・慢心・痴心を生起し、起身して迎候礼拝せず、一一如法に供養せず――まさに自己の身売・国城・子女・七宝百物をもって彼らに供給すべし。もし是の如くならざれば、軽垢罪を犯す。
「若佛子!故飲酒而生酒過失無量。若自身手過酒器與人飲酒者,五百世無手,何況自飲。不得教一切人飲,及一切眾生飲酒,況自飲酒。若故自飲、教人飲者,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!故に酒を飲んで酒の過失を生ずること無量なり。もし自ら手で酒器を人に渡して飲ませる者は、五百世も手なし、いわんや自ら飲むをや。一切人に飲ましむることを得ず、および一切衆生に酒を飲ましむ、いわんや自ら飲酒せんや。もし故に自ら飲み人に教えて飲ましむるは、軽垢罪を犯す。
「若佛子!故食肉。一切肉不得食,斷大慈悲性種子,一切眾生見而捨去,是故一切菩薩不得食一切眾生肉,食肉得無量罪。若故食者,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!故に肉を食す。一切の肉は食することを得ず、大慈悲性の種子を截断し、一切衆生は見れば便ち離れ去る。ゆえに一切菩薩は一切衆生の肉を食することを得ず、肉を食すれば無量の罪を得。もし故に食するは、軽垢罪を犯す。
「若佛子!不得食五辛:大蒜、革蔥、慈蔥、蘭蔥、興蕖。是五種,一切食中不得食。若故食者,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!五辛を食することを得ず。大蒜・革葱・慈葱・蘭葱・興蕖。この五種は、一切食物の中に食することを得ず。もし故に食するは、軽垢罪を犯す。
「若佛子!見一切眾生犯八戒、五戒、十戒,毀禁、七逆八難一切犯戒罪,應教懺悔。而菩薩不教懺悔,共住同僧利養,而共布薩同一眾住說戒,而不舉其罪教悔過者,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!一切衆生が八戒・五戒・十戒を犯し、禁を毀し、七逆八難の一切犯戒の罪を見ては、まさに彼に教えて懺悔せしむべし。菩薩しかも懺悔を教えずして、共に居住し同じく僧の利養を分かち、また共に布薩し同じ衆に住して戒を説きながら、しかも彼の罪を挙げず悔過を教えざるは、軽垢罪を犯す。
「若佛子!見大乘法師、大乘同學、同見同行,來入僧坊舍宅城邑。若百里千里來者,即起迎來送去、禮拜供養。日日三時供養,日食三兩金,百味飲食床座醫藥供事法師,一切所須盡給與之。常請法師三時說法,日日三時禮拜,不生瞋心、患惱之心,為法滅身請法不懈。若不爾者,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!大乗法師・大乗同学・同見同行が僧坊・舍宅・城邑に来たるを見ては、もし百里千里より来たる者ならば、即座に起身して迎え送り、礼拝供養すべし。日々三度供養し、毎日の食用は三両の金の如く豊かに、百味の飲食・床座医薬をもって法師に供事し、一切の所需はみな彼に与う。常に法師に請いて一日三度法を説かせ、日々三度礼拝し、瞋心・患悩の心を生ぜず、法のためには身を捨つるをも辞さず、法を請うて懈怠せず。もし是の如くならざれば、軽垢罪を犯す。
「若佛子!一切處有講毘尼經律,大宅舍中講法處,是新學菩薩應持經律卷至法師所聽受諮問。若山林樹下、僧地房中,一切說法處悉至聽受。若不至彼聽受者,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!一切の処に毘尼経律を講ずるあらば、大宅舍の中の説法の処、この新学菩薩はまさに経律の巻を帯びて法師の所に至り聴受咨問すべし。もし山林樹下・僧地房中、一切の説法の処にはみな往きて聴受すべし。もし往きて聴受せざれば、軽垢罪を犯す。
「若佛子!心背大乘,常住經律言非佛說,而受持二乘聲聞、外道惡見、一切禁戒邪見經律者,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!心に大乗に背き、常住の経律に対し仏説にあらずと言い、却って二乗声聞・外道悪見・一切禁戒邪見の経律を受持するは、軽垢罪を犯す。
「若佛子!見一切疾病人,常應供養如佛無異,八福田中看病福田第一福田。若父母師僧弟子疾病,諸根不具、百種病苦惱,皆養令差。而菩薩以惡心瞋恨,不至僧房中,城邑曠野山林道路中,見病不救者,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!一切病める人を見ては、まさに供養すること仏に供するが如く分別なく、八福田の中に病を看る福田は第一福田なり。もし父母・師僧・弟子が病み、諸根具せず百種の病苦悩あらば、みな養い畢えて愈えんまで。菩薩しかも悪心瞋恨をもって、僧房に到らず、城邑・曠野・山林・道路の中において、病を見て救わざるは、軽垢罪を犯す。
「若佛子!不得畜一切刀杖弓箭鉾斧鬪戰之具,及惡網羅殺生之器,一切不得畜。而菩薩乃至殺父母尚不加報,況餘一切眾生。若故畜一切刀杖者,犯輕垢罪。如是十戒,應當學敬心奉持。下六品中當廣明。」
「もし仏子よ!一切の刀杖・弓箭・矛斧等の争闘の器具、および凶悪の網羅等殺生の器具を畜養することを得ず、一切みな畜することを得ず。しかして菩薩は乃至父母を殺されてもなお報復を加えず、いわんやその余の一切衆生をや。もし故に一切刀杖を畜養するは、軽垢罪を犯す。この如き十戒、まさに学ぶべし、恭敬心をもって奉持せよ。下の六品の中にまさに広く説明せん。」
佛言:「佛子!不得為利養惡心故,通國使命軍陣合會,興師相伐殺無量眾生。而菩薩不得入軍中往來,況故作國賊。若故作者,犯輕垢罪。
仏は言われた。「仏子よ!利養に因り悪心に因りて、両国のために軍情を伝え軍陣を会合し、師を興して互いに攻伐し無量の衆生を殺すことを得ず。しかして菩薩は軍中に入り往来することを得ず、いわんや故に国賊を作さんや。もし故に作すは、軽垢罪を犯す。
「若佛子!故販賣良人奴婢六畜,市易棺材板木盛死之具,尚不自作況教人作。若故作者,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!故に良人・奴婢・六畜を販売し、棺材・板木等の死人を盛殮する器具を売買す、自らなお作さず、いわんや人に教えて作さしめんや。もし故に作すは、軽垢罪を犯す。
「若佛子!以惡心故,無事謗他良人善人法師師僧國王貴人,言犯七逆十重。於父母兄弟六親中應生孝順心慈悲心,而反更加於逆害墮不如意處者,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!悪心に因りて、根拠なく他の良人・善人・法師・師僧・国王・貴人を毀謗し、彼らが七逆十重を犯せりと言う。父母兄弟六親の中においてまさに孝順心・慈悲心を生起すべし。反って再び逆害を加え、人をして不如意の処に落としむるは、軽垢罪を犯す。
「若佛子!以惡心故放大火燒山林曠野。四月乃至九月,放火若燒他人家屋宅城邑僧房田木及鬼神官物,一切有主物不得故燒。若故燒者,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!悪心に因りて大火を放ちて山林曠野を焼く。四月より九月に至るまで、火を放ちてもし他人の家の屋宅・城邑・僧房・田木および鬼神官府の物を焼く、一切主ある物はみな故に焼くことを得ず。もし故に焼くは、軽垢罪を犯す。
「若佛子!自佛弟子及外道人、六親、一切善知識,應一一教受持大乘經律,應教解義理,使發菩提心、十發心、十長養心、十金剛心。三十心中,一一解其次第法用。而菩薩以惡心瞋心,橫教他二乘聲聞經律、外道邪見論等,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!自己の仏弟子および外道人・六親・一切善知識に対し、まさに一一に彼らに教えて大乗経律を受持せしめ、彼らに教えて義理を理解せしめ、彼らをして菩提心・十発心・十長養心・十金剛心を発さしむべし。三十心の中、一一にその次第法用を理解せしめよ。菩薩しかも悪心瞋心をもって、強いて彼に二乗声聞経律・外道邪見論等を教うるは、軽垢罪を犯す。
「若佛子!應好心先學大乘威儀經律,廣開解義味。見後新學菩薩有從百里千里來求大乘經律,應如法為說一切苦行,若燒身燒臂燒指。若不燒身臂指供養諸佛,非出家菩薩。乃至餓虎狼師子一切餓鬼,悉應捨身肉手足而供養之,後一一次第為說正法,使心開意解。而菩薩為利養故應答不答、倒說經律文字無前無後、謗三寶說者,犯輕垢罪。
「もし仏子よ!まさに好心をもって先ず大乗威儀経律を学び、広く義味を開解すべし。後の新学菩薩に百里千里より来たりて大乗経律を求むる者あるを見ては、まさに法の如く彼のために一切苦行を説くべし、身を焼き・臂を焼き・指を焼くが如き。もし身臂指を焼きて諸仏を供養せざれば、すなわち出家菩薩にあらず。乃至飢渇の虎狼師子・一切餓鬼に対しても、みな身肉手足を捨てて彼らを供養すべし。然る後一一次第に彼のために正法を説きて、心を開き意を解かしめよ。菩薩しかも利養に因りて、答うべきを答えず、経律の文字を顛倒して説き、前後なく、三宝を毀謗して説くは、軽垢罪を犯す。
