焦氏易林
乾の卦が自ら変じても乾の卦のままである。道は移り変わって険しい坂が多く、胡人の言葉は屈折して通じにくい。通訳を務める者は唖であり聾であるため…
易経易学典籍
術数への応用を目指すなら、まず六十四卦の卦爻辞と《説卦伝》の取象に親しむ。義理を目指すなら《繋辞伝》から入るのがよい。
乾の林(乾卦六十四林)
乾之乾:道徙多阪,胡言連蹇。譯喑且聾,莫使道通。請遏不行,求事無功。
乾の卦が自ら変じても乾の卦のままである。道は移り変わって険しい坂が多く、胡人の言葉は屈折して通じにくい。通訳を務める者は唖であり聾であるため、消息を伝える術がない。漢代に西域と交通するには譯官の取り次ぎに頼るほかなく、譯人が職を失すれば言路は断たれる。請託は遮られて行われず、事を謀り財を求めても力を空費し、ついに成ることがない。
乾之坤:招殃來螯,害我邦國。病傷手足,不得安息。
乾の卦が坤の卦に変わる。災殃を招き、毒螫を引き入れて、我が邦国を害する。病痛は手足を傷つけ、日夜安らぐことがない。純陽が尽く純陰に変じ、剛健の気を失い、外患と内疾とが並び起こる。国事を問えば兵災があり、身体を問えば手足の傷病がある。静かに守り危険を避けるべきである。
乾之屯:陽孤亢極,多所恨惑。車傾蓋亡,身常憂惶。乃得其願,雌雄相從。
乾の卦が屯の卦に変わる。孤陽が亢盛して極に至り、心中に怨恨と疑惑が多い。車は転倒し、車蓋を失い、人は常に憂惧を抱く。まさに《乾》上九「亢龍有悔」の写しである。しかし屯は万物初生の卦であり、困窮の後に終に願いを得て、雌雄は相従って配偶となる。先に険しく後に吉である。
乾之蒙:鵊鵴鳲鳩,專一無憂。君子是則,長受嘉福。
乾の卦が蒙の卦に変わる。鵊鵴と鸤鳩は雛を育てるのに均平で専一なので、憂患がない。《詩経・曹風・鳲鳩》は鳲鳩が子に餌を与えること一つのごとく、君子の心の専一を喩える。君子がこれに倣えば、長く美善の福沢を受けることができる。事を謀るには正を守り専一にすべきで、吉を主とする。
乾之需:目瞤足動,喜如其願,舉家蒙寵。
乾の卦が需の卦に変わる。瞼がときめき足も動く。古人はこれを喜事の近づく先兆とみなした。果たして願いのごとくなり、家を挙げて恩寵を蒙る。需は時を待つ卦であり、しばし静かに待てば喜びの知らせが届く。占うに吉を主とする。
乾之訟:龍馬上山,絕無水泉,喉焦唇乾,舌不能言。
乾の卦が訟の卦に変わる。竜馬が高山に駆け上がるが、山上には水泉が絶えてなく、渇いて喉は焦げ、唇は乾き、舌は強ばって言葉を発することができない。竜は本来水に属し、水を失えば窮する。剛強の人が相応しくない位置にいることの喩えである。争訟のとき口舌は利かず、理は直くても自ら弁ずることが難しい。凶を主とする。
乾之師:倉盈庾億,宜稼黍稷。年歲豐熟,民人安息。
乾の卦が師の卦に変わる。倉廩は満ち溢れ、露天の穀倉は億をもって積み上げられ、黍稷を植えるにちょうどよい。年歳は豊熟し、民は安らかに休まる。師の卦は本来兵を興し衆を動かすことを主とするが、兵衆あって糧あるとき初めて安定する。ここはまさに豊年で食が足りる象である。農事を問い、家宅を問うにいずれも吉。
乾之比:中夜犬吠,盜在牆外。神明佑助,消散皆去。
乾の卦が比の卦に変わる。夜半に犬が吠え止まない。もとは盗賊が塀の外に控えていたのである。幸い神明の護佑を得て、盗賊は四散して退いた。比は親しく輔ける卦であり、衆の力が相親しめば外患はおのずから解ける。驚き擾されても終に損失はなく、先に危なく後に安し。
乾之小畜:據斗運樞,順天無憂。所行造德,與樂並居。
乾の卦が小畜の卦に変わる。手に北斗を握り天枢の星を運転し、天道の運行に順って憂いがない。行うところはみな徳を積み、こうして楽しみとともに居る。北斗は帝の車であり、四時を主掌する。位に居る者が天に順って政を施すことの喩えである。占うに位を得時を得るを主とし、吉。
乾之履:空拳握手,委地更起。富饒豐衍,快樂無已。
乾の卦が履の卦に変わる。両手は空しく、ただ拳を握るばかり、地に倒れてまた起き上がる。その後家業は饒い豊かになり、楽しみに尽きることがない。履は践み行う卦であり、白手で家を興すにはひたすら地に足をつけるよりほかない。初めは貧窘しても、終に豊足を得る。先に難があり後に獲る。
乾之泰:不風不雨,白日皎皎,宜出驅馳,通理大道。
乾の卦が泰の卦に変わる。風もなく雨もなく、白日は光明皎潔で、まさに車に駕して出かけ奔るべく、一路さわりなく大道を行く。泰とは通ずることで、天地交感して万物は亨通する。まさにこの象に合う。出行を問い、事を謀るを問うにいずれも阻礙なく、大吉。
乾之否:載日晶光,驂駕六龍。祿命徹天,封為燕王。
乾の卦が否の卦に変わる。身に太陽の晶瑩たる光輝を載せ、六竜の車駕に乗って馳行する。福禄の命数は直に天に通じ、燕王に封じられることを得た。《乾・彖》に「時に六竜に乗りて天を御す」とあるのはまさにこのような気象である。否の中に泰を含み、閉塞のうちにかえって大いに貴ぶ。占うに昇遷して封を受けるを主とする。
乾之同人:子號索哺,母行求食。反見空巢,訾我長息。
乾の卦が同人の卦に変わる。雛鳥が鳴き叫んで食を乞い、母鳥は外に出て食を求める。帰ってきて見れば空しい巣ばかりで、それに対して長く悲嘆するよりほかない。同人は本来和同して聚まるを主とするが、ここでは母子が相失う。同伴の離散を喩える。家宅を問い、子嗣を問うに分離の憂いあり、凶を主とする。
乾之大有:上帝之生,福佑日成。修德行惠,樂且安寧。
乾の卦が大有の卦に変わる。天の生ずる気数を承け、福祐は日ごとに積み成る。徳を修め恵を広く施せば、こうして楽しくかつ安し。大有とは有する所が大きいことで、ただ厚き徳あるのみ久しくその位に居ることができる。占うに福沢の長久なるを主とし、善を行い徳を積んでこれを守るべきである。
乾之謙:山險難登,澗中多石。車馳軎擊,載重傷軸,擔載差躓,踠跌失足。
乾の卦が謙の卦に変わる。山勢は険しく登りがたく、澗底には乱石が多い。車は疾走して軸頭が相撞し、積み荷が重すぎて車軸を傷め、肩に担いで背に負うて一路躓き、足を捻って転倒する。謙は本来卑下して益を受けるを主とするが、ここでは力が小さく任が重く、自ら量らない象である。占うに行路に険あり、事に折損あり。荷を軽くし、歩を緩めて徐行すべきである。
乾之豫:禹鑿龍門,通利水源。東注滄海,民得安從。
乾の卦が豫の卦に変わる。大禹が竜門山を鑿ち開き、水源を疎通して、河水を東流させ滄海に注がせ、百姓は安らかに居り順服することを得た。《尚書・禹貢》に禹が河を導き積石し、竜門を鑿ちて洪水を泄らしたと載る。豫は和楽の卦であり、禍患を除いて後に民心は安定する。占うに大事成るべく、衆心の帰順するを主とする。
乾之隨:乘龍上天,兩蛇為輔,踴躍雲中,遊觀滄海,民樂安處。
乾の卦が随の卦に変わる。飛竜に乗って天に昇り、二条の神蛇が左右に輔き従い、雲中に騰躍して、遨游し滄海を観覧する。百姓は安楽して各々その所を得る。竜は昇り蛇は輔ける。君主が賢臣の佐助を得ることの喩えである。随とは相随い相従うことで、上下心を同じくすれば天下安寧す。占うに貴人の扶助、事業の騰達を主とする。
乾之蠱:彭祖九子,據德不殆。南山松柏,長受嘉福。
乾の卦が蠱の卦に変わる。彭祖に九人の子が生まれ、徳に凭依して危殆に至らず、南山の松柏のごとく、長く美しい福沢を受ける。彭祖は伝える所、寿八百年に至り、古人の心中の長寿の象徴である。蠱は本来弊の積んで治を待つを主とするが、徳をもってこれを守れば弊は生じない。占うに寿考して子多く、家業の久長なるを主とする。
乾之臨:南山昊天,刺政關身。疾悲無辜,皆憎為仇。
乾の卦が臨の卦に変わる。《詩経・小雅・節南山》は南山と蒼天を仰ぎ見て時政を譏刺するが、譏刺はついに自身に累を及ぼす。無辜の人の害を受けるを痛み惜しみ、衆は憎悪によって仇怨を結ぶ。臨は上に居りて下に臨む卦であり、臨むこと当を得なければ衆怨叢が集まる。占うに口舌が禍を招き、怨を結んで累を受けるを主とする。凶。
乾之觀:江河淮海,天之奧府。眾利所聚,可以饒有。樂我君子,百福是受。
乾の卦が観の卦に変わる。長江・黄河・淮水・大海は、天が財貨を深く蔵する庫府であり、衆多の利益はみなそこに汇聚し、これによって富に至ることができる。観は仰ぎ観て化を示す卦であり、高く居り遠くを望めば利の帰する所を清く見る。我が君子をして歓楽せしめ、百様の福沢みな来たりて受く。占うに財を進め利を得るを主とし、吉。
乾之噬嗑:堅冰黃鳥,終日悲號。不見白粒,但見藜蒿,數驚鷙鳥,為我心憂。
乾の卦が噬嗑の卦に変わる。堅氷が地を封じ、黄雀は終日悲しみ哀れに鳴く。一粒の白米も見つからず、見えるのは叢生する野の藜蒿ばかりで、なお屡々猛禽に驚かされ、人の心を愁えさせる。《詩経・小雅・黄鳥》はまさに黄鳥が粟を啄むこと得ずして故郷に帰らんことを思うを写す。噬嗑は啮合して梗阻を去るを主とするが、この時梗阻はいまだ除かれず。占うに衣食の艱難、時に驚恐あるを主とする。
乾之賁:室如懸磬,既危且殆。早見之士,依山谷處。
乾の卦が賁の卦に変わる。屋内は磬を懸けたように空しく、一物もなく、処境は危険にして困殆である。先見の明ある賢士は、すなわち山谷の中に退きて隠居する。「室如悬磬」は《左伝・僖公二十六年》に出て、倉廩の空虚なるを形容する。賁は文飾を主とするが、文飾は貧窘を掩うことができない。占うに退避して自ら守るべく、進み求むべからず。
乾之剝:大禹戒路,蚩尤除道。周匝萬里,不危不殆,見其所使,無所不在。
乾の卦が剥の卦に変わる。大禹が前に出て道路を戒備し、蚩尤がこれのために障碍を清除する。万里の遥かを環行して、危なくもなく困殆でもなく、到る所みな彼の派出した人手を見、至らぬ所なし。剥は剥落の卦であるが、しかし強い助けが行を護れば剥落の勢いは自身を傷つけられない。遠行を問い、外出を問うに、通達して阻むものなし。
乾之復:三人為旅,俱歸北海。入門上堂,拜謁王母,飲勞我酒。
乾の卦が復の卦に変わる。三人が伴を結んで成行き、ともに北海に赴く。門に入り堂に登り、西王母に拝見すると、西王母は美酒をもって犒労する。復は一陽来復の卦であり、遠行して帰ることを得、また貴人の款接に逢う。占うに出行して獲る所あり、貴人の相助に遇うを主とし、吉。
乾之無妄:傳言相誤,非乾徑路。鳴鼓逐狐,不知跡處。
乾の卦が无妄の卦に変わる。伝言は転転として真を失い、彼此相い貽誤し、正路と本来関わりがない。鼓を敲いて狐狸を追うが、その蹤跡がどこにあるかを知らない。《无妄》は妄りに動かざる卦であり、妄動してこれを求めればかえって一つの得る所もない。占うに消息実ならず、人を尋ね物を求めても落着なし。
乾之大畜:三羊爭雌,相逐奔馳。終日不食,精氣勞疲。
乾の卦が大畜の卦に変わる。三頭の雄羊が一頭の雌羊を争い、互いに追逐して奔走する。終日草を食む暇なく、精気は耗損して疲弊し堪えない。大畜は本来徳を蓄え力を養うを主とするが、ここではかえって争闘して力を耗す象となる。占うに争競益なし、徒労して身を損ずるを主とし、退譲して争いを息めるべきである。
乾之頤:純服黃裳,戴上以興。德義既生,天下歸仁。
乾の卦が頤の卦に変わる。一身に純正な黄色の下裳をまとい、上に在る者を擁戴して興起する。徳行と義理とがすでに立てば、天下はみな仁徳に帰向する。《坤》六五「黄裳元吉」、黄は中央の色、裳は下に在る服で、まさに中に居りて下を守る象である。頤は正を養うを主とし、徳を養って他人を化育する。占うに衆望を得、事業の昌興するを主とする。
乾之大過:桀蹠並處,人民愁苦。權兵荷糧,戰於齊魯。
乾の卦が大過の卦に変わる。夏桀のような暴君と盗跖のような巨盗とが同時に道を当たり、百姓は愁苦して堪えない。兵器を担ぎ糧食を背負い、斉魯の地に往きて戦うほかない。大過とは棟梁の曲がることで、負荷が重すぎれば傾覆する。占うに兵役の災い、労苦奔波を主とし、凶。
乾之坎:黃鳥采綠,既嫁不答。念我父兄,思復邦國。
乾の卦が坎の卦に変わる。黄雀が緑草を采り摘んでいる。婦人はすでに嫁したが夫の応答を得られず、自分の父兄を思い、一心に本国に帰ろうとする。《詩経・小雅・采緑》はまさに婦人の怨にして曠れ、帰らんと思う情を写す。坎は重なる険陷であり、其中に陷って脱するが難い。婚姻を問えば離異の憂いあり、行人を問えば久しく客にして帰りを思う。
乾之離:胎生孚乳,長息成就。充滿帝室,家國昌富。
乾の卦が離の卦に変わる。懐胎して生育し、卵を孵し乳を与え、長成した子息は個々に成就がある。子孫は帝王の家に充満し、家と国はこれによって昌盛し富足する。離は附麗の卦であり、明は両つ相い継いで絶えず、まさに代々相承の象に合う。子嗣を問い、家業を問うに、人丁の興旺を主とし、大吉。
乾之咸:三人求桔,反得大粟。女貴以富,黃金百鎰。
乾の卦が咸の卦に変わる。三人が橘を尋ねに行くが、かえって大粒の穀子を得た。女子はこれによって顕貴にして富み、黄金百鎰を得る。咸は交感の卦であり、求める所は願いのごとくならなくても、別に厚い獲がある。占うに意外の財、婚によって利を得るを主とし、吉。
乾之恆:東山西嶽,會合俱食。百家送從,以成恩福。
乾の卦が恒の卦に変わる。東の山と西の岳とが一所に会合して同じく祭饗を享け、上百家が相送り相従って、ともに恩沢と福分とを成就する。恒とは久しいことで、山岳は移らず、ゆえに福沢は持久することができる。占うに聚会して助けを得、衆人の帰附するを主とし、吉。
乾之遁:弱雞無距,與鵲交斗。翅折目盲,為鳩所傷。
乾の卦が遯の卦に変わる。痩せ弱った鶏に足後の利き距がないのに、鵲と格闘して、果たして翅を折られ眼を失明し、また斑鳩に傷つけられた。遯とは退避することで、力足らずして退くことを知らざれば、ゆえに傷を受ける。占うに強を逞しゅうして禍を招くを主とし、争競すべからず、早めに退避すべきである。
乾之大壯:隙大牆壞,蠹眾木折。狼虎為政,天降罪罰。高弒望夷,胡亥以斃。
乾の卦が大壮の卦に変わる。隙が大きくなれば墻壁は崩壊し、蛀虫が多ければ木は折れる。虎狼が政を当たれば、天は罪罰を降す。秦の時、趙高が望夷宮で二世胡亥を弑殺したのはまさにこのような下場である。大壮は剛に過ぎれば必ず折れ、弊を積んで除かざれば必ず傾覆に至る。占うに内変して禍を生じ、上下相い残るを主とし、大凶。
乾之晉:三痴俱走,迷路失道。惑不知歸,反入患口。
乾の卦が晋の卦に変わる。三人の癡愚なる者がともに奔走し、路途に迷う。昏惑して家に帰ることを知らず、かえって自ら禍患の口に投ずる。晋は前進して上るを主とするが、しかし方向を弁えずして進めば険境に誤り入る。占うに行事糊涂して、行けば行くほど誤るを主とし、凶。
乾之明夷:弓矢俱張,把彈折弦。丸發不至,道遇害患。
乾の卦が明夷の卦に変わる。弓と箭とはすでに張られ、弾弓を握るが弓弦を弄び断つ。弾丸は射出されても目標に届かず、半路にまた禍患に遭遇する。明夷は光明が地中に沈み、明德が傷つく卦であり、ゆえに備えあってもその用を得ない。占うに謀りて成らず、出行して害に遇うを主とする。
乾之家人:三女求夫,伺候山隅,不見覆關,長思嘆憂。
乾の卦が家人の卦に変わる。三人の女子が夫婿を見つけんと欲し、山角の辺に守候するが、心上の人が復關の彼方から来るを望見できず、ただ長く思念し、歎息して憂傷する。《詩経・衛風・氓》に「彼の垝垣に乗り、以て復關を望む」の句あり、まさにこのような情景である。婚姻を問うに佳期就き難く、久しく候して成らずを主とする。
乾之睽:陽旱炎炎,傷害禾穀。穡人無食,耕夫嘆息。
乾の卦が睽の卦に変わる。烈日炎炎の大旱で、禾苗の穀物はみな日に焼き傷められる。收割する人に糧食なく、耕田する人は歎息するのみ。睽とは乖離で、天時と人事とが相い背く。田産を問い、生計を問うに、収成の歉薄にして衣食足らずを主とし、凶。
乾之蹇:騎豚逐羊,不見所望。徑涉虎廬,亡羝失羔。
乾の卦が蹇の卦に変わる。猪に騎って羊を追い、望む所の物を見ず、また直ちに老虎の巢穴に闖入して、公羊も小羊もことごとく失う。蹇は跛足にして行き難い卦で、乗る所は合用の坐騎にあらず、往く所は往くべき所にあらず。占うに人を用うること当たらず、求めてかえって失うを主とし、凶。
乾之解:闇昧冥語,相傳詿誤。鬼魅所居,誰知臥處。
乾の卦が解の卦に変わる。昏暗の中で窃窃と私語し、輾転相い伝えて彼此貽誤する。それは鬼魅の棲身する所で、誰かそれが果たして何処に臥するかを知らん。解は険難を消散する卦であるが、しかし陰私除かざれば疑惑は解け難い。占うに流言の中傷、隠患明らかなり難しを主とし、行事正々堂々とすべきである。
乾之損:姬姜祥淑,而人偶食。論仁議福,以安王室。
乾の卦が損の卦に変わる。姫姓と姜姓の貴族の女子は賢淑にして吉祥で、人と配偶を結んでともに食らう。夫婦の間は仁徳を論説し福祉を商議して、もって王室を安定する。損とは下を損して上を益し、一己の私を減省して公家に奉ずること。婚姻を問うに賢い配を得るを主とし、家国を問うに内助ありて邦を安んずるを主とし、吉。
乾之益:公孫駕驪,載聘東齊。延陵說產,遺季紵衣。
乾の卦が益の卦に変わる。公孫が黒い駿馬に駕して、聘礼を載せ東行して斉国に至る。延陵季子と鄭国の子産とは一見して心を傾け、彼に纻麻の衣裳を贈る。《左伝・襄公二十九年》に呉の季札が上国を聘問し、子産と相い贈答した事を載す。益は上を損して下を益す。交遊して獲る所有り。占うに遠行して利を得、交結して賢を得るを主とする。
乾之夬:孤竹之墟,失婦亡夫。傷於蒺藜,不見少妻,東郭棠姜,武氏以亡。
乾の卦が夬の卦に変わる。孤竹国の廃墟の上に、妻子は失散し夫は亡故する。身は蒺藜に刺され傷つき、年少の妻室に見ることを得ない。斉の崔武子が東郭偃の姉棠姜を娶り、ついに君を弑し家を敗すに至った(《左伝・襄公二十五年》)。夬は決断して邪を去る卦であり、色欲を決して去ることができなければ身亡び家破れる。占うに女色によって家を破るを主とし、大凶。
乾之姤:仁政不暴,鳳凰來舍。四時順節,民安其處。
乾の卦が姤の卦に変わる。仁政を施行して暴虐でなければ、鳳凰は飛来して棲息する。四季は各々その節候に順い、百姓は自分の処所に安んじ居る。古人は鳳凰の来儀をもって聖王の瑞とし、《尚書・益稷》にすなわちこの記載あり。姤は期せずして遇うことで、徳行至れば祥瑞はおのずから来りて相遇う。占うに上下相い安んじ、時和して歳稔るを主とし、吉。
乾之萃:任劣力薄,孱駑恐怯。如蝟見鵲,不敢格拒。
乾の卦が萃の卦に変わる。担当の才具は低劣にして気力は単薄で、怯懦駑鈍にして心に畏懼あり。ちょうど蝟が鵲に遇うがごとく、ただ一団に縮まるばかりで、抵当するを敢えてしない。萃は聚合の卦であり、才が位に称わなければ聚まっても用をなさない。占うに任重くして勝え難く、事に遇えば退縮するを主とし、大事を担当すべからず。
乾之升:衛侯東遊,惑於少姬。忘我考妣,久迷不來。
乾の卦が升の卦に変わる。衛侯が東に他郷に游び、年少の姫姓の美人に迷惑される。自家の先父先母を忘れ、長く沈迷して帰るを肯んじない。升とは上進であるが、しかし私愛に沈溺すれば升してその守りを失う。行人を問えば久しく出て帰らずを主とし、自身を問えば声色に耽るを主とし、凶。
乾之困:噂噂所言,莫如我垣。歡喜堅固,可以長安。
乾の卦が困の卦に変わる。衆人の紛々として議論する話は、みな我が自家の墻垣の牢靠に及ばない。心中歓喜して家宅は堅固で、長く安寧することができる。《詩経・小雅・十月之交》に「噂沓背憎」の語あり、説く所まさに衆口の紛紜たるである。困の中に自ら守ることを得れば困に困まれない。占うに外議多しと雖も内実損なし、旧を守れば安し。
乾之井:鸑鳴岐山,鱉應山淵。男女構精,萬物化生。文王以成,為開周庭。
乾の卦が井の卦に変わる。鸑鷟が岐山の上に鳴き、鼈が深淵の中に応和する。男女は精気を交合し、万物はこれによって化育して生ず。《国語・周語》に「周の興るや、鸑鷟岐山に鳴く」と載せ、「男女構精、萬物化生」は《周易・繫辞下》に出る。井の徳は人を養いて窮まらず、文王はこれによって大業を成就し、周室の基業を開創した。占うに基業初め創りて後に必ず大いに興るを主とし、吉。
乾之革:玄黃虺隤,行者勞疲,役夫憔悴,逾時不歸。
乾の卦が革の卦に変わる。馬は病んで毛色黯淡、脚腿は發軟し、路を趕く人は疲弊し堪えない。服役する人は形容憔悴し、期限を過ぎてもなお家に帰ることができない。《詩経・周南・巻耳》に「我が馬虺隤たり」「我が馬玄黄たり」の句あり、写す所まさに行役の苦しみである。革は変革を主とするが、しかし力すでに竭きれば変改する由なし。行人を問えば淹留して外に在るを主とし、自身を問えば労累して疾を成すを主とする。
乾之鼎:弱足鉞跟,不利出門。市賈不利,折亡為患。
乾の卦が鼎の卦に変わる。脚力はもともと孱弱で、脚跟はまた斧鉞に傷つけられ、出門して遠行するに宜しくない。市に到りて売買しても利を得られず、本を折り損して禍患となる。鼎は賢を養い新を成すを主とするが、鼎足傷つけば鼎は必ず傾覆する。出行を問い、経商を問うにいずれも亏折を主とし、守るべくして動くべからず。
乾之震:懸貆素餐,居非其安。失輿剝廬,休坐徒居。
乾の卦が震の卦に変わる。庭中に猟り獲た猪獾を懸け、白く俸禄を食んで労作せず、居る所はもともと安穏の地にあらず。《詩経・魏風・伐檀》は「彼の君子兮、素餐せず兮」と譏刺し、《剥》上九にまた「小人廬を剥く」の誡あり。ついに車輿を失い房屋を拆され、ただ閒坐して空しく守るのみ。震は動であり、動いて徳なければその守る所を失う。占うに位を失い家を破るを主とし、凶。
乾之艮:民怯城惡,奸人所伏。寇賊大至,入我邦城,妻子俘獲。
乾の卦が艮の卦に変わる。百姓は怯懦で城防は敗壊し、まさに奸人の藏身する所である。盗寇は大挙して来り、我が邦城に攻め入り、妻子児女はみな俘擄される。艮は静止で、止まるべきにして止まる能わざれば、防守は憑拠を失う。国事を問えば兵災あり、家を問えば骨肉失散の厄あり。大凶。
乾之漸:陽低頭,陰仰首,水為災,傷我足,進不利,難生子。
乾の卦が漸の卦に変わる。陽気は頭を低れて下に伏し、陰気は面を仰いで上に騰がり、陰陽の位置は顛倒する。洪水は災を成して我が足を傷つけ、前進利あらず、子嗣を生育するも艱難である。漸は循序漸進を主とするが、陰陽序を失えば進んで安んぜず。嗣を求むを問い、出行を問うにいずれも利ならず、時を待って後に動くべきである。
乾之歸妹:背北相憎,心意不同,如火與金。
乾の卦が帰妹の卦に変わる。二人は背を負わせ相い向き合い憎悪し、心意は各々相同じず、火と金とのごとく相克して相容れない。帰妹は嫁娶を主とするが、しかし情志合わなければ配すと雖も諧わず。婚姻を問い、合伙を問うにいずれも反目を主とし、強いて撮合すべからず。
乾之豐:太微帝室,黃帝所值。藩屏周衛,不可得入,常安無患。
乾の卦が豊の卦に変わる。太微垣は天帝の宮室で、黄帝の星がまさにその位に当たる。四面の屏藩は環衛して周密で、外人侵入すること能わず、これによって長く平安にして患なし。豊とは大きいことで、大位に居りて護衛あれば危くない。占うに居処安固にして貴人の庇護あるを主とし、吉。
乾之旅:繭栗犧牲,敬享鬼神。神嗜飲食,受福多孫。
乾の卦が旅の卦に変わる。角生え始めて蚕繭や栗子のような小牛を犠牲として用い、恭敬して鬼神を祭享する。《詩経・小雅・楚茨》に「神は飲食を嗜み、君をして寿考ならしむ」とあり、神明すでに受享すれば、こうして福沢を受けて子孫众多となる。旅は外に在りて祭祀の事を忘れず、ゆえに神霊の護佑を得る。占うに祭祀して福を得、子孫昌盛を主とし、吉。
乾之巽:出門逢惡,與禍為怨。更相擊刺,傷我手端。
乾の卦が巽の卦に変わる。一たび門を出れば悪人に碰上し、禍事と仇怨を結ぶ。彼此交手して撃刺し、我が手指を傷つける。巽は順入の卦であり、順うべきにかえって逆らうがゆえに禍に触れる。占うに出行して争闘に遇い、身に刀刃の傷あり。回避し忍譲すべきである。
乾之兌:鷁飛中途,舉事不進,眾人亂潰。
乾の卦が兌の卦に変わる。鷁鳥は半途に飛びて便ち退きて回り、弁ずる所の事は行うこと能わず、衆人は紛乱潰散する。《春秋・僖公十六年》に「六鷁飛び退いて宋都を過ぐ」と記し、古人はこれを退敗の兆とした。兌は和悦を主とするが、衆心悦ばざれば事は必ず敗潰する。占うに中途阻まれ、人心離散するを主とし、凶。
乾之渙:跛踦相隨,日暮牛疲。陵遲後旅,失利亡雌。
乾の卦が渙の卦に変わる。瘸腿の者と跛脚の者とが相い扶けて行く。天色すでに晩く牛も乏れ、緩慢拖沓して隊伍の後に落ち、財利を失い母牛をも失う。渙とは離散で、行動遅緩なれば人衆星散する。占うに行事遅緩にして時機を失い損耗あるを主とし、凶。
乾之節:龍角博顙,位至公卿。世祿長久,起動安寧。
乾の卦が節の卦に変わる。額の上に骨が隆起して竜角のごとく、前額は広く豊かで、これは相術の言う貴人の相であり、官位は公卿に至ることができる。代々俸禄を享有して長く絶えず、一動一静みな安寧である。節は度を守り節あるを主とし、その節を守る能けば禄位久しかるべし。占うに昇遷して顕貴、家門長く盛んを主とし、大吉。
乾之中孚:舜升大禹,石夷之野。徵詣王庭,拜治水土。
乾の卦が中孚の卦に変わる。虞舜が石夷の原野で大禹を挙げ抜き、彼を召して王庭に来させ、命を拝して水土を治めさせた。《尚書・舜典》に舜が禹をして司空とし、水土を平治せしめた事を載す。中孚とは誠信であり、上下誠信相い通ずれば賢者進用を得る。占うに上に在る者の知遇を受け、重職に任ずるを得るを主とし、吉。
乾之小過:從風放火,荻芝俱死。三害集房,叔子中傷。
乾の卦が小過の卦に変わる。風勢に順って火を放てば、野の荻と霊芝とがともに灰燼に焼け、三種の禍害が一屋に齐聚して、叔子これによって中傷を受ける。小過は小事を為すべくして大事を謀るべからず。火を縦して風に乗ずれば玉石俱に焚かれる。占うに殃が無辜に及び、人に誣陷せられるを主とし、凶。
乾之既濟:梗生荊山,命制輸班。袍衣剝脫,夏熱冬寒。飢餓枯槁,眾人莫憐。
乾の卦が既済の卦に変わる。荊山に生えた良材が、名を指して公輸班に交えて削り器を作らせられる。身の袍衣は剥がれ、夏は熱を受け冬は凍え、飢えて形容枯槁するも、衆人に憐れむ者一人もなし。既済は事已に成りて復た危機を生ずる卦で、材質美しければ美しいほどかえって戕害を受ける。占うに人の役使を受け、労苦して依る所なきを主とし、凶。
乾之未濟:長面大鼻,來解己憂。遺吾福子,與我惠妻,惠吾嘉喜。
乾の卦が未済の卦に変わる。長い顔に高い鼻の貴人が来たりて、己のために憂愁を解く。我に福ある子を留め、賢恵の妻室を賜い、美しい喜事を贈る。未済は事いまだ成らずしてなお済すべき機ある卦で、人の相助を得れば憂愁解くべし。占うに貴人厄を解き、婚姻子嗣両全するを主とし、吉。
坤の林(坤卦六十四林)
坤之坤:不風不雨,白日皎皎。宜出驅馳,通利大道。
坤の卦が自ら変じても坤の卦のままである。風なく雨なく、白日皎潔にして明亮、まさに車に駕して出行し奔走すべく、暢通して阻るものなく大道を行く。坤の徳は深厚にして載せる能く、柔静にして順承する能く、ゆえに往く所に窒碍なし。出行・遷徙・謀事を問うに、一路順遂にして吉。
坤之乾:谷風步氣,萬物出生。萌庶長養,華葉茂盛。
坤の卦が乾の卦に変わる。東風が和暖の気を送り、万物は紛々として萌生し、衆多の幼苗は長養を得て、花も葉も茂盛となる。《爾雅・釋天》は東風を穀風と称し、生養を主司す。坤は乾の陽気を得て、陰陽相交じて生意勃発す。占うに生機初めて動き、諸事漸々興るを主とし、吉。
坤之屯:蒼龍單獨,與石相觸。催折兩角,室家不足。
坤の卦が屯の卦に変わる。蒼竜が孤身独行して、石に頭を撞き当て、両角とも折られ、家室これによって完うすることを得ない。屯は万物初生して動作し難い時で、孤軍深入して外援なければ必ず挫折を受ける。占うに孤立して助けなく、婚姻家事に缺あるを主とし、凶。
坤之蒙:城上有鳥,自名破家。招呼鳩毒,為國患災。
坤の卦が蒙の卦に変わる。城頭に一羽の怪鳥が停まり、自らその名を呼んで「破家」と曰う。それは鴆鳥の毒害を招き、国家の禍患災殃となる。古人は怪鳥の自ら名を呼ぶをもって大凶の兆とした。蒙とは昏昧にして明らかならず。心明らかならざれば禍を引きて門に入る。占うに家宅寧ならず、災殃を招引するを主とし、大凶。
坤之需:霜降閉戶,蜇蟲隱處。不見日月,與死為伍。
坤の卦が需の卦に変わる。霜降の後、門を関じ戸を閉ざし、蛰伏の虫豸はみな蔵れてしまい、日月の光を見ず、死者と伴をなすがごとし。需とは時機を待つことで、時機いまだ至らざれば宜しく潜蔵して自ら守るべし。占うに閉塞して通ぜず、静養して時を待つべく、妄動すれば凶。
坤之訟:天之德室,溫仁手福。衣裳所在,凶惡不起。
坤の卦が訟の卦に変わる。天の徳を施す居室は、温厚仁愛にして福沢を手中に握る。衣冠礼法の在る所あれば、凶暴邪悪は興ることができない。訟は本来争闘を主とするが、徳をもって化導すれば争端おのずから息む。占うに徳ありて身を庇い、争端消弭するを主とし、吉。
坤之師:皇陛九重,絕不可登。未見王公,謂天蓋高。
坤の卦が師の卦に変わる。皇宮の階陛は九重の高さがあり、根本として攀登することができない。王公の面を見たことがなく、ただ《詩経・小雅・正月》の歎ずる「天を謂うに蓋し高し」のごとく、上天の高遠にして及び難きを感慨するのみ。師は衆を聚むるを主とするも統帥あらざればならず、進身の路なくば衆力施す由なし。占うに干謁に門なく、進を求めて遂げざるを主とする。
坤之比:孔德如玉,出於幽谷。升高鼓翼,輝光照國。
坤の卦が比の卦に変わる。極めて美しい徳行は温潤にして玉のごとく、幽深の山谷より顕れ出る。翅を振りて高きに飛び上がり、光輝は邦国全体を照らす。《詩経・小雅・伐木》に「幽谷より出でて、喬木に遷る」の句あり、賢者の隠より顕へを喩える。比は親附であり、徳行昭著なれば衆心帰向す。占うに微より顕れ、声名遠く播まるを主とし、大吉。
坤之小畜:五軛四軌,復得饒有。陳力就列,騶虞悅喜。
坤の卦が小畜の卦に変わる。五副の車軛、四道の車轍、往来絶えずして重ねて富足す。《論語・季氏》に「力を陳べて列に就く」と曰う。各人力を量りてその職を担当すれば、仁獣の騶虞もまたこれがため歓喜す。小畜は小をもって大を蓄え、各々その分に安んずれば少を積んで多と成す。占うに職に称い位を得、家道漸々裕かなるを主とし、吉。
坤之履:四足無角,君子所服。南征述職,以惠我國。
坤の卦が履の卦に変わる。四足ありて角生えざる良馬は、君子の駕御する所である。これに駕して南行して朝覲し職を述べ、恩惠を帯びて我が国に帰る。履は礼に循いて行うを主とし、礼に依り職を奉ずれば事必ず功あり。占うに命を奉じて出使し、行事成る所有るを主とし、吉。
坤之泰:雷行相逐,無有攸息。戰於平陸,為夷所覆。
坤の卦が泰の卦に変わる。雷声は連なり滾り相い追逐し、停歇する時なし。両軍は平曠の地に交戦して、夷人に撃潰さる。泰は亨通を主とすると雖も、動いて休止を知らざれば終に傾覆に至る。兵事を問えば大敗を主とし、自身を問えば奔波して寧ならず。凶。
坤之否:六龍爭極,服在下飾。謹慎管鑰,結禁毋出。
坤の卦が否の卦に変わる。六条の竜が至高の位を争い、下位に居る者は服飾を収斂して自ら晦ますのみ。門戸の鎖鑰を謹慎して看守し、緊閉禁絶して外出せず。否は天地交わらざる卦で、上位相い争えば下位は避くべし。占うに時局動蕩す。閉門して自ら守るべく、妄動すれば禍を招く。
坤之同人:長男少女,相向共語,福祿歡喜。
坤の卦が同人の卦に変わる。震は長男、兌は少女、二者相い対して互いに衷情を訴え、福禄随いて来り、一片の歓喜である。同人は人と和同するを主とし、男女情意相い得れば家道興旺す。婚姻を問えば成るべしを主とし、謀事を問えば相助する人あるを主とし、吉。
坤之大有:奸延惡人,使德不通。炎火為殃,禾穀大傷。
坤の卦が大有の卦に変わる。奸邪の徒が悪人を引き入れて、徳政をして通行すること能わしめず、烈火は災殃を釀して禾苗穀物大いに損傷を受く。大有は本来富盛を主とするが、小人を任用すれば有する所の一切尽く毁される。占うに小人道を当たり、家業損を受くるを主とし、凶。
坤之謙:修其翰翼,隨風向北,至虞夏國,與舜相得。年歲大樂,邑無盜賊。
坤の卦が謙の卦に変わる。羽翎の翅を整え修め、風に順って北に飛び去り、虞夏の国に到りて、虞舜と情意相い投ず。謙とは卑下をもって自ら養う。ゆえに上は聖主の心に合う能く、ここに年成大好にして举国歓楽し、城邑にも盗賊なし。占うに明主に遇いて重用を得、歳稔り民安んずるを主とし、大吉。
坤之豫:鉛刀攻玉,堅不可得。盡我筋力,胝繭為疾。
坤の卦が豫の卦に変わる。鉛に鋳た鈍刀をもって玉石を雕琢せんとするも、玉は堅硬にして下手する由なし。我が筋骨気力を耗し尽し、手上に老繭を磨き出し、かえって疾患と成る。《後漢書・班超伝》に「鉛刀一割」の喩あり、まさにその鈍なるを言う。豫は時に順いて動くを主とするが、器具その事に称わざれば労して功なし。占うに力小にして任重く、徒労して病を致すを主とする。
坤之隨:舉被覆目,不見日月。衣裳簠簋,就長夜室。
坤の卦が随の卦に変わる。被子を掲げて眼を蒙えば、再び日月を見ず。衣裳と簠簋の祭器とを備えて、長夜明らまらざる墓室に送り入る。随とは時に随いて動くことであるが、ここで随う所は死地である。疾病を問えば危殆を主とし、家宅を問えば丧事あるを主とし、大凶。
坤之蠱:賊仁傷德,天怒不福。斬刈宗社,失其邦域。
坤の卦が蠱の卦に変わる。仁義を残害し徳行を損傷すれば、天は震怒して福を降すことを肯んぜず、宗廟社稷は摧毀され鏟平され、己の邦国疆土を失う。蠱は積弊して患を生ずる卦で、弊極まりて整治を加えざれば国亡ぶ。占うに徳敗れ家傾き、位を失い土を失うを主とし、大凶。
坤之臨:白龍赤虎,戰鬥俱怒。蚩尤敗走,死與魚口。
坤の卦が臨の卦に変わる。白竜と赤虎とが交戦し、双方ともに怒気騰騰たり。果たして蚩尤敗走して、魚口の地に死す。《史記・五帝本紀》に黄帝と蚩尤とが涿鹿の野に戦い、遂に蚩尤を擒え殺したと載す。臨は大をもって小に臨む卦で、正が邪に勝てば禍乱平定す。占うに争闘終に勝負見え、正に居り直を守る者は吉を得る。
坤之觀:北辰紫宮,衣冠立中。含和建德,常受天福。
坤の卦が観の卦に変わる。北極星は紫微宮に居り、衣冠整肅として正位に立つ。中和の気を懐き徳業を建て、これによって長く上天の福沢を受く。《論語・為政》に「譬えば北辰のごとし、其の所に居りて衆星これに共る」と曰う。観は中正に居りて天下に示すを主とし、中を守り徳を守れば福おのずから至る。占うに尊きに居りて安んじ、福沢綿長を主とし、大吉。
坤之噬嗑:稷為堯使,西見王母。拜請百福,賜我善子。
坤の卦が噬嗑の卦に変わる。后稷が唐堯の使命を奉じて西行し、西王母に拝見しに往く。叩拜して百様の福沢を祈請し、我に賢善の子嗣を賜うを求む。后稷は堯の農師で、その事《史記・周本紀》に見ゆ。噬嗑は啮合して梗阻を去るを主とし、誠意通達すれば求む所応あり。占うに嗣を祈りて子を得、求む所願のごとしを主とし、吉。
坤之賁:三人異趣,反覆迷惑。一身五心,亂無所得。
坤の卦が賁の卦に変わる。三人の志趣各々相同じず、翻り覆りて猶疑困惑す。一つの身にして五種の心思を懐き、紛乱の下に一の獲る所なし。賁は文飾を主とするが、外表の修飾は心志の定まらざるを掩う能わず。占うに意見合わず、棋を挙げて定まらず、事を謀りて終に成る所なし。
坤之剝:南山大玃,盜我媚妾。怯不敢逐,退而獨宿。
坤の卦が剥の卦に変わる。南山の上の大猿猴が、我が心愛する妾室を奪い去る。我は胆怯にして追うを敢えてせず、退きて回り独り安寝するのみ。剥は陰盛んにして陽を剥ぐ卦で、弱者侵されて自ら保つ力なし。占うに人の欺凌を受け、妻を失い財を失いて争う能わざるを主とし、凶。
坤之復:眾鬼所趨,反作大怪。九身無頭,魂驚魄去,不可以居。
坤の卦が復の卦に変わる。衆鬼一斉に奔集して来り、天大の怪異を鬧なす。九つの身に頭顱なく、人をして魂飛び魄散るほど嚇かし、その地は再び居住すること能わず。復は本来一陽来復を主とするが、群陰いまだ退かざれば怪異叢生す。家宅を問えば邪祟の侵擾あるを主とし、遷移して避くべし。凶。
坤之無妄:延頭遠望,眯為目疾。不見叔姬,使伯心憂。
坤の卦が无妄の卦に変わる。頸を伸ばして遠くを眺望するに、塵沙眼を迷わして眼疾と成る。叔姬の身影を望見えず、伯氏の心中をして憂愁せしむ。《无妄》は人に妄求すべからずを誡め、盼望切なれば愈甚く傷損深し。行人を問えば音信通ぜずを主とし、身体を問えば目疾あるを主とし、凶。
坤之大畜:典冊法書,藏在蘭臺。雖遭亂潰,獨不遇災。
坤の卦が大畜の卦に変わる。典籍の册命と法度の文書は、蘭台の中に收藏す。兵乱溃敗に遭遇すると雖も、唯だそれらのみ災禍に遇わず。蘭台は漢代宮中の蔵書の府で、班固かつて蘭台令史と為る。大畜は蓄聚して固守するを主とし、蔵ることその所得れば保ちて虞れなし。占うに備えありて患なく、乱に臨みて全きを得るを主とし、吉。
坤之頤:自衛反魯,時不我與。冰炭異室,仁道隔塞。
坤の卦が頤の卦に変わる。孔子衛国より鲁国に返り、詩を删り楽を正すも、時勢彼を成全することを肯んぜず。氷と炭と両室に分処して彼此相容れず、仁道これによって隔絶阻塞す。《論語・子罕》に「吾衛より魯に反り、然る後に楽正し」と載す。頤は正を養うを主とし、道行われざれば唯だ退きて自ら養うのみ。占うに才を懐きて遇わず、志時に違うを主とする。
坤之大過:瘤癭禿疥,為身瘡害。疾病癃殘,常不遠逮。
坤の卦が大過の卦に変わる。瘤子・癭瘤・禿瘡・疥癬を生じて、身上の瘡痍の害と成る。疾病人をして衰弱残廃せしめ、常に近処にも走り到る能わず。大過は負荷重過ぎて棟梁曲がる卦で、身弱くして任重ければ病を致す。疾病を問えば纏綿して愈え難し。静養して調攝すべし。凶。
坤之坎:東齊郭盧,嫁於洛都。俊良美好,媒利過倍。
坤の卦が坎の卦に変わる。東の斉地郭氏・盧氏の女、遠く洛陽の京都に嫁ぐ。夫婿は才俊賢良にして容貌美好、媒を為す人の得る所の利もまた倍を加す。坎は険陷なりと雖も、険中に信あり、婚姻かえって美満を得る。婚姻を問えば遠嫁して佳偶を得るを主とし、財を求むを問えば間に居りて利を獲るを主とし、吉。
坤之離:齊魯爭言,戰於龍門。構怨連禍,三世不安。
坤の卦が離の卦に変わる。斉国と鲁国とが言語をもって相い争い、竜門の地に交戦す。仇怨を結び連綿として禍を成し、三代の人安寧を得ず。離は附麗で、附く所若し争闘ならば禍患綿延して絶えず。占うに口舌釁を啓き、世代仇を結ぶを主とし、大凶。
坤之咸:膏澤肥壤,農人豐敞。利居長安,歷世無患。
坤の卦が咸の卦に変わる。雨露滋潤して土壤肥沃、農人これによって豊収して家計寛裕なり。安く居りて長治久安の地に在るに宜しく、歴代禍患なし。咸は交感の卦で、天地の気相交じれば物阜かに民豊かなり。田産を問い、居処を問うに、安穏富足を主とし、大吉。
坤之恆:倉盈庾億,宜種黍稷。年歲豐熟,民得安息。
坤の卦が恒の卦に変わる。糧倉は満々と裝まれ、露天の穀囤は山のごとく堆積し、まさに黍稷を栽種するに宜しい。年成豊収成熟して、百姓安居休息を得る。恒とは久しきことで、稼穡常あれば歳歳食足れり。農事を問い、家計を問うに、積蓄日に厚く久安長治を主とし、吉。
坤之遁:鴟鴞破斧,邦人危殆。賴其忠德,轉禍為福,傾危復立。
坤の卦が遯の卦に変わる。鴟鴞は巢を毀り斧斨は残破し、国人危殆の中に陥る。《詩経・豳風》中の《鴟鴞》《破斧》二篇、写す所まさに周公東征して乱を平げる艱険である。全く周公の忠誠徳行に頼り、禍を転じて福と為し、傾覆の勢いを将に墮さんとするを重ねて扶立す。遯とは退避して自らを保全する。退きて守る能けば危は復た安んじるべし。占うに驚きありて険なく、賢者に頼りて安んずるを得るを主とする。
坤之大壯:歲疾無年,虐政害民。乾溪驪山,秦楚結冤。
坤の卦が大壮の卦に変わる。年成疫に遭いて粒も収めず、暴虐の政令百姓を残害す。楚の霊王乾谿に敗死し、秦始皇驪山に厚葬さる。秦楚両国みなこれによって民怨を結ぶ。大壮剛に過ぎれば必ず折れ、強を恃み民を虐げれば必ず自ら敗亡を取る。占うに上苛くして下怨み、家国寧ならずを主とし、大凶。
坤之晉:捯潔累累,締結難解。嫫母衒嫁,媒不得坐,自為身禍。
坤の卦が晋の卦に変わる。繩結は一つ一つ連なり、纏まりて解け難し。嫫母のような貌醜い女子が四方に自ら誇り嫁を求め、媒人纏まれて席に安んずること能わず、ついに自ら禍患を招く。嫫母は伝えて黄帝の妃、貌醜きをもって世に著わる。晋は上進を主とするが、自身を度量せず妄りに進めば自ら辱を取る。占うに糾纏して脱し難く、自ら禍事を招くを主とし、凶。
坤之明夷:訾陬開門,鶴鳴彈冠,章甫進用,舞韶和鸞。三人翼事,國無災患。
坤の卦が明夷の卦に変わる。訾陬の地に大門敞かれ、鶴野に鳴きて同道者は冠上の塵を掻淨して出仕を待つ。章甫の冠を戴く儒者進用を得、《韶》楽奏起して鸞鈴相い和す。「彈冠」の典は《漢書・王吉伝》の記す「王陽位に在り、貢公冠を彈く」に出で、「章甫」は《論語・先進》に見ゆ。三位の賢臣国事を輔翼すれば、国中災患なし。明夷は明德傷つく時なりと雖も、賢者下に在りて終に出頭の日あり。占うに賢路漸々開くるを主とし、吉。
坤之家人:弟妹和居,與類相扶。願慕群丑,不離其處。
坤の卦が家人の卦に変わる。弟弟妹妹和睦にして同居し、同類の間彼此相い扶持す。己の同伴に親しむを楽しみ、誰もこの地方を離るるを肯んぜず。「丑」は古義に於て「類」と訓し、同儕群伴を指す。家人は一家の道を主とし、家和すれば内外みな治まる。占うに骨肉和順にして聚まりて散ぜざるを主とし、吉。
坤之睽:邯鄲反言,兄弟生患。涉叔憂恨,卒死不還。
坤の卦が睽の卦に変わる。邯鄲より伝わる話語前後相反して、兄弟の間これによって禍患を生ず。渉叔憂愁怨恨して、ついに他郷に客死して帰ることを得ず。睽とは乖離で、言語相い違えば骨肉仇と成る。兄弟を問えば和を失うを主とし、行人を問えば凶信あるを主とし、大凶。
坤之蹇:三人逐兔,各爭有得,愛亡善走,多獲鹿子。
坤の卦が蹇の卦に変わる。三人一同に兎を追赶し、各々争搶してみな獲る所有り。惜しむらくは善く走る好手すでに在らず、却って意外に小鹿を幾隻か多く捉う。蹇は行走艱難の卦で、失う所有ると雖も別に獲る所有り。占うに争中に得あり、此を失い彼を得るを主とし、先に損あり後に益あり。
坤之解:北辰紫宮,衣冠立中。含和建德,常受天福。
坤の卦が解の卦に変わる。北極星は安く居りて紫微宮に在り、衣冠端整として正中の位に立つ。和気を含蓄して徳行を樹立し、これによって常に上天の福沢を受く。解卦は険難消散を主とし、中に居り徳を守れば難解けて福来たる。占うに憂患解除し、地位安穏を主とし、吉。
坤之損:拜跪請免,不得其哺。俯首銜枚,低頭北走。
坤の卦が損の卦に変わる。跪拜叩首して罪を免れんことを懇求するも、一口の飯をも討ることを得ず。低頭して枚を銜え敢えて声を作さず、北に向かいて倉皇として奔逃するのみ。銜枚は古代行軍の喧嘩を禁ずる法である。損とは己を減じて上に奉ずる。損するも太だ過ぐれば自身余りなし。占うに人を求めて応ぜず、羞を蒙りて奔走するを主とし、凶。
坤之益:鶴盜我珠,逃於東隅。求之郭噓,不見所居。
坤の卦が益の卦に変わる。仙鶴我が宝珠を倫み去り、東辺の角落に逃ぐ。城郭の廃墟に到りてこれを尋ぬるも、それの棲身する所を見付ける能わず。益は本来增益を主とするが、ここではかえって失物の象と成る。失物を問えば追回し難しを主とし、財を求むを問えば暗中損あるを主とし、凶。
坤之夬:一簧兩舌,妄言謬語。三奸成虎,曾母投杼。
坤の卦が夬の卦に変わる。一張の口に两条の舌を含み、胡言乱語して是非を顛倒す。三人の奸人反復して相い告げば憑空に一只の老虎を造り出し、曾参の母すらもついに織梭を抛て墻を逾えて逃走す。「三人成虎」は《戦国策・魏策》に見え、「曽母投杼」は《戦国策・秦策》に見ゆ。夬は小人を決し去るを主とし、讒言決断を加えざれば害は至親に及ぶ。占うに人の誣謗に遭い、親信疑を見るを主とし、凶。
坤之姤:孤獨特處,莫與為旅。身日勞苦,使布五穀,陰陽順序。
坤の卦が姤の卦に変わる。孤零零として一人独り処り、同伴して結伴同行する者なし。自身日々に労苦するも、司る所の事は五谷を布種し、陰陽をして依次順行せしむるなり。姤は期せずして相遇う。独行すと雖も暗に天時に合す。占うに形単影只にして身労るれど事終に成る所有り。先に苦あり後に甘し。
坤之萃:褰衣涉河,澗流浚多。賴遇舟子,濟脫無他。
坤の卦が萃の卦に変わる。衣裳を提起して水を渉り河を渡るも、澗中の水流また深くまた急なり。幸いに船夫に遇い、渡りて険を脱して別の意外なることなきを得たり。萃は聚合の卦で、衆力相聚まれば険難済るべし。占うに凶に逢いて吉と化し、人の相助を得るを主とし、吉。
坤之升:憑河登山,道路阻難,求事少便。
坤の卦が升の卦に変わる。徒歩にて水を渉り河を渡り、高山を攀登す。道路艱阻にして行い難く、事を弁ずるに順当なること少なし。《論語・述而》は「暴虎馮河」をもって人に徒らに勇力を恃むべからずを誡む。升は上進を主とするが、進途阻多ければ速達し難し。占うに謀事遅滯にして周折を費やすこと多し。
坤之困:兔罝之榮,不失其恭,和謙致樂,君子攸同。
坤の卦が困の卦に変わる。《詩経・周南・兎罝》の裏に網を張り兎を捕る武士のごとく、公侯の干城の栄に堪え、始終恭謹を失わず。平和謙遜にして歓楽を招来す。これ正に君子の共有する操守なり。困にしてその節を守る能くば、困厄彼を困む能わず。占うに困に処りて正を守り、終に衆人の称誉を得るを主とし、吉。
坤之井:三女求夫,伺候山隅,不見覆關,泣涕漣如。
坤の卦が井の卦に変わる。三人の女子夫婿を覓得せんことを盼び、山角の辺に守候すれど、心上の人復關の彼方より来るを望見えず、淚水漣々として下る。《詩経・衛風・氓》に「復關を見ず、泣涕漣々たり」の句あり。井は人を養いてその位移らざるを主とするが、守りて遇わざれば空しく自ら悲傷す。婚姻を問えば久しく候して成らず、徒らに悲泣を増すを主とし、凶。
坤之革:螟蟲為賊,害我五穀。中溜空虛,家無所食。
坤の卦が革の卦に変わる。螟虫害物と成りて、我が五谷を糟蹋す。屋子の中空空荡荡として、一家人食うものなし。「中溜」は室内の中央を指し、ここでは屋宅を代称す。革は変革して弊を除くを主とし、虫害除かざれば家余糧なし。農事を問えば歉収を主とし、家計を問えば匱乏を主とし、凶。
坤之鼎:望尚阿衡,太宰國公。藩屏輔弼,福祿來同。
坤の卦が鼎の卦に変わる。呂尚のごとき太師、伊尹のごとき阿衡、官は太宰に居りて位は国公に列す。彼らは屏藩のごとく王室を護衛し君主を輔佐すれば、福と禄とともに至る。《尚書・太甲》は伊尹を阿衡と称す。鼎は烹飪して賢を養うを主とし、賢臣を得れば国安し。占うに大臣の扶持を得、爵禄並び至るを主とし、大吉。
坤之震:三年生狗,以戌為母。荊夷上侵,姬伯出走。
坤の卦が震の卦に変わる。三年を養う犬、戌地をもってその母と為す。荊楚の蛮夷上に向かいて侵犯し、姫姓の伯主出逃せざるを得ず。震は動であり、驚懼である。外患驟然として起これば君位安んぜず。占うに外侮境に入り、家主遠く走りて難を避くるを主とし、凶。
坤之艮:途遏道塞,求事不得。
坤の卦が艮の卦に変わる。途中阻遏せられ道路堵塞せられ、求む所の事成らず。艮は止まるなり。行くべきにして止められれば、ゆえに一の成る所なし。占うに諸事窒碍にして進退両難なり。宜しく暫くその事を緩むべし。凶。
坤之漸:探懷得蚤,無有凶憂,所願失道,善居漸好。
坤の卦が漸の卦に変わる。手を懐中に伸ばして只だ一隻の跳蚤を摸るのみ。心に称わずと雖も凶険の憂患なし。盼望する事正途を偏離すれど、安分にして自ら守れば、境況漸々に好転せん。漸は循序して進むを主とし、躁進せざれば自ら佳に転ずる能し。占うに小に遂わざる有りて終に大いなる碍げなし。守るべくして求むべからず。
坤之歸妹:飛樓屬道,趾多攪垣,居之不安,覆厭為患。
坤の卦が帰妹の卦に変わる。凌空の楼閣閣道に連なり、楼脚多処墻垣を擾動し、住むこと甚だ安穏ならず、随時傾覆し壓塌して禍患と成るべし。帰妹は嫁娶を主とするも位分当たらず、根基固からざれば愈高ければ愈危し。占うに居処険あり、托する所人にあらず。早く遷避を図るべし。凶。
坤之豐:義不勝情,以欲自傾,幾危利寵,折角催頸。
坤の卦が豊の卦に変わる。道義は私情に壓す能わず、貪欲によって自ら傾覆を取る。眼前の利禄恩寵を貪りて危険に瀕し、ついに頭角を折り頸を摧折す。豊とは盛大で、盛んに極まりて節制を知らざれば敗る。占うに欲を縱にし徳を敗り、身敗れ名裂くるを主とし、大凶。
坤之旅:潼翁蔚薈,扶首來會,津液來降,流淹滂霈。
坤の卦が旅の卦に変わる。雲氣濃密に涌き聚まり、連綿として會合して陣を成し、雨水随いて降下し、流溢滂沱として遍地沾潤す。《詩経・曹風・候人》に「薈兮蔚兮、南山朝隮」とあり、写す所まさに雲興り雨作るである。旅外に在りて甘霖に逢い、久旱潤いを得る。占うに困境解け、恩沢下に及ぶを主とし、吉。
坤之巽:白駒生芻,猗猗盛姝。赫喧君子,樂以忘憂。
坤の卦が巽の卦に変わる。《詩経・小雅・白駒》は一束の青草をもって白駒に乘りて來る賢人を挽留し、《衛風・淇奧》また「綠竹猗猗」「赫兮咺兮」をもって君子の盛美を形容す。このように顯赫たる君子、快樂して憂愁を忘る。巽は順入で、賢者相い就けば上下和樂す。占うに賢賓來會し、心情舒暢なるを主とし、吉。
坤之兌:車馳人趨,卷甲相仇。齊魯寇戰,敗於犬丘。
坤の卦が兌の卦に変わる。車馬疾馳し人衆奔走し、鎧甲を卷起して彼此仇を為す。齊國と魯國と互相い寇伐交戰し、最後に犬丘にて敗仗を喫す。兌は口舌、毁折である。勝を爭い鬥を好めば終に一敗あり。占うに兵戈相い見え、兵を損し將を折るを主とし、凶。
坤之渙:舉首望城,不見子貞,使我悔生。
坤の卦が渙の卦に変わる。頭を擡げて遠く城池を望むも、子貞の身影を見ず、我をして此生を懊悔せしむ。渙とは離散で、思念する人星散して聚まるを得ず。行人を問えば音信杳然を主とし、會晤を問えば相見ることを得ざるを主とし、凶。
坤之節:龍鬥時門,失理傷賢。內畔外賊,則生禍難。
坤の卦が節の卦に変わる。竜時門の地に相い鬥い、常理に違背して賢良を傷害す。內部叛離し外に寇を成し、ここに禍難を釀成す。節は度を守り制あるを主とし、度を失えば內外交困す。占うに上下相い爭い、內憂外患並び起こるを主とし、大凶。
坤之中孚:安如泰山,福喜屢臻。雖有豹虎,不致危身。
坤の卦が中孚の卦に変わる。安穩なること泰山のごとく、福氣喜事一次次に來至す。縱ひ豹子老虎傍らに在ると雖も、自身を危ふくするに至らず。中孚は內に誠信を懷く卦で、誠信心中に立てば外物相い傷つく能わず。占うに根基穩固にして險に逢いて害なし。大吉。
坤之小過:初憂後喜,與福為市。八佾列陳,飲御嘉友。
坤の卦が小過の卦に変わる。初め憂愁して後に歡喜し、福氣と一筆の交易を做成したがごとし。八佾の舞行列を排列し、酒宴を設けて嘉賓好友を款待す。八佾は本來天子の樂舞で、《論語・八佾》に見ゆ。小過は小事を謀るに宜しく、小心謹慎なれば憂轉じて喜と成るべし。占うに先に難あり後に獲、賓朋歡聚を主とし、吉。
坤之既濟:持刀操肉,對酒不食。夫行從軍,小子入獄,抱膝獨宿。
坤の卦が既濟の卦に変わる。手裏に刀を拿り肉を握るも、酒に面對して喫し下る能わず。丈夫出門して從軍し、兒子また關えられて牢獄に入り、膝を抱きて獨り夜を過すのみ。既濟は事成りて後復た憂患を生ずる卦で、看似完備にして人事離散す。家宅を問えば骨肉分離を主とし、自身を問えば孤苦愁悶を主とし、凶。
坤之未濟:陰衰老極,陽建其德。履離戴光,天下昭明。功業不長,蝦蟆代王。
坤の卦が未濟の卦に変わる。陰氣衰微して極に至り、陽氣重新してその徳用を建立す。足離明を踏み頭頂光輝し、天下一片昭朗光明なり。しかし功業長久なる能わず、蛤蟆竟に君王の位に取代わる。古人は月中の蟾蜍月を蝕むをもって大異の象とした。未濟は事いまだ成らざる卦で、明極まりて復た晦暗に歸す。占うに先に盛んで後に衰え、功敗れて垂成に垂ぶを主とし、宜しく好きを見て收むべし。
屯の林(屯卦六十四林)
屯之屯:兵征大宛,北出玉關。與胡寇戰,平城道西,七日絕糧,身幾不全。
屯の卦が自ら変じても屯の卦のままである。兵を發して大宛を征討し、北に玉門關を出る。胡人の寇兵と交戰し、平城道西に圍まれ、七日糧を斷たれ、性命ほとんど保たず。漢武帝が李廣利に命じて大宛を伐たしめ、漢高祖匈奴に平城白登山に圍まれて七日なるは、皆《史記》に見ゆ。屯は萬物初生して艱難未だ通ぜざる卦で、正に師老いたり兵疲れたる象に合す。出行を問い兵事を問うに、困厄危殆を主とし、大凶。
屯之乾:泛泛柏舟,流行不休。耿耿寤寐,心懷大憂。仁不逢時,身隱窮居。
屯の卦が乾の卦に変わる。柏木の小舟漂蕩として、水流に隨い漂行して停まらず。心裏耿耿として安んぜず、睡るも睡る能わず、深重の憂愁を懷く。《詩経・邶風・柏舟》は寫す所まさに賢者遇わず、讒を憂え譏を畏るる之情。仁人生に時に逢わず、窮困の中に隱居するよりほかなし。占うに才を懷きて遇わず、漂泊して依る所なし。宜しく韜光養晦して時を待つべし。
屯之坤:采薪得麟,大命隕顛。豪雄爭名,天下四分。
屯の卦が坤の卦に変わる。山に上り柴を打つに卻って一隻の麒麟を捉う。天命これによって傾覆墜落す。《春秋》哀公十四年に「西狩して麟を獲」と記し、孔子聞訊して絕筆し、以て亂世の兆と為す。此の後豪傑梟雄名を爭い利を奪い、天下分裂して四と為る。屯は草創して難多き時で、聖瑞時に非ざるに出づればかえって凶兆と成る。占うに時局大亂し、群雄割據するを主とし、凶。
屯之蒙:山崩谷絕,天福盡竭。涇渭失紀,玉曆盡已。
屯の卦が蒙の卦に変わる。高山崩塌し深谷斷絕し、上天の賜う所の福澤全部枯竭す。涇水渭水常軌を亂り、天子の曆數もまた盡頭に走り至る。《詩経・小雅・十月之交》に「百川沸騰、山冢崒崩」の句あり、寫す所まさにこの等の災異。蒙とは昏昧にして明らかならず。天地序を失いて人事これに隨いて亂る。占うに氣數將に終らんとし、大廈傾覆するを主とし、大凶。
屯之需:夏臺羑里,湯文所厄。鬼侯俞賄,商王解舍。
屯の卦が需の卦に変わる。夏臺と羑里とは、商湯と周文王とがかつて受困せし所である。鬼侯財貨を進獻して賄賂し、商王乃ち文王を釋放す。《史記・殷本紀》《周本紀》に湯夏臺に囚われ、文王羑里に囚われて後獲釋せし事を載す。需とは時機を待つこと。聖人尚且忍辱して待つを須いとす。占うに困厄の中終に解脱を得、先に凶後に吉。
屯之訟:泥津汙辱,棄捐溝瀆。所共笑哭,終不顯錄。
屯の卦が訟の卦に変わる。泥濘の渡口に陷りて汚辱を蒙り、人に拋棄せられて溝渠の中に在り。衆人一同に譏笑哭罵する對象と成り、終に顯揚錄用せられず。訟は爭辯の卦で、爭いて棄てられんば名聲地に掃く。占うに辱を受け位を失い、終身顯達を得ざるを主とし、凶。
屯之師:李梅冬實,國多盜賊。擾亂並作,君不能息。
屯の卦が師の卦に変わる。李樹梅樹冬天に結果し、物候顛倒して國中これによって盜賊眾多なり。擾亂の事一齊に發作し、君主も平息する能わず。古人は草木時令に按せず實るをもって災異の兆とした。師は兵を用うるを主とし、亂起りて止む能わざれば兵連禍結ぶ。占うに時局動蕩し、盜賊四起するを主とし、凶。
屯之比:獐鹿逐牧,飽歸其居。反還次舍,無有疾故。
屯の卦が比の卦に変わる。獐子と鹿と追逐して到る處食を覓、飽食すれば便ち己が窩裏に回る。住處に返回して安歇し、疾病なく變故なし。比は親附相輔の卦で、各々その所得れば安然恙なし。占うに出入平安にして衣食缺なきを主とし、吉。
屯之小畜:夾河為婚,期至無船。搖心失望,不見所歡。
屯の卦が小畜の卦に変わる。一条の河を隔てて婚事を議定すも、約期至りて渡船なし。心神搖蕩して大いに望を失い、己が喜歡する人を見る能わず。小畜は蓄うる所尚小さく力事を濟すに足らざる卦。婚姻を問えば中途阻まれ、佳期踐約し難し。凶。
屯之履:百足俱行,相福為強。三聖翼事,王室寵光。
屯の卦が履の卦に変わる。百足の蟲衆足齊動して行き、彼此相助けて乃ち强健を顯す。三位の聖賢國事を輔翼し、王室これによって寵榮光曜を蒙る。履は禮を踐みて行うを主とし、同心協力すれば勢自ら强盛す。占うに衆を合して力を得、上の恩寵を受くるを主とし、吉。
屯之泰:坐位失處,不能自居。賊破王邑,陰陽顛倒。
屯の卦が泰の卦に変わる。座位本來の位置を失い、自らも身を安んずる能わず。盜賊王城を攻破し、陰陽倒錯して上下序を失う。泰は本來上下交通を主とするが、ここでは名分紊亂の象。占うに位を失い所を離れ、時局倒置するを主とし、凶。
屯之否:登几上輿,駕駟南遊。合縱散橫,燕齊以強。
屯の卦が否の卦に変わる。小几を踏みて車輿に登り、四馬の車に駕して南行遊歷す。合縱を主張して連横の謀を離散し、燕國と齊國これによって强盛す。戰國時蘇秦合縱を倡め張儀連横を主とす。事《史記・蘇秦列傳》に見ゆ。否は閉塞不通なれど、善辯の士かえって閉塞の中に通を求むる能し。占うに口舌游說に憑りて志を得るを主とし、吉。
屯之同人:三孫荷弩,無益於輔。城弱不守,邦君受討。
屯の卦が同人の卦に変わる。三人の孫輩弓弩を扛ぐも、輔弼國事に補益絲毫なし。城防薄弱にして守る能わず、邦國の君因りて討伐を遭う。同人は同心を貴ぶ。人衆なれどその力を得ざれば用なし。占うに外强中乾にして兵有りて敵を禦ぐ能わざるを主とし、凶。
屯之大有:河伯大呼,津不得渡。船空無人,往來亦難。
屯の卦が大有の卦に変わる。河伯水中に大聲呼喝し、渡口過ぐる能わず。船隻空しく船夫なく、來來往往みな艱難なり。河伯は古代の黄河水神で、その事《莊子・秋水》に見ゆ。大有は本來富盛を主とするが、接引する人なくば擁有多しと雖も施展し得ず。占うに行程阻まれ、事人の助けなきを主とし、凶。
屯之謙:甘露醴泉,太平機關。仁德感應,歲樂民安。
屯の卦が謙の卦に変わる。甘露降下し醴泉涌出す。これ太平盛世啟動の樞機なり。仁徳至る所にして天人相い感じ、年成歡樂にして百姓安寧す。《禮記・禮運》は天降甘露、地出醴泉を以て大同の瑞とす。謙とは益を受くること。徳行謙下なれば祥瑞自ら至る。占うに時和し年豊かにして上下俱に安し。大吉。
屯之豫:重茵厚席,循皋采藿。雖躓不懼,反覆其宅。
屯の卦が豫の卦に変わる。層層の褥墊、厚厚の坐席を鋪くも、仍ほ水邊に沿いて豆葉野菜を采りに往く。縱ひ跤を跌すと雖も害怕せず、來回皆己が家に回る能し。豫は和樂の卦で、安に居りて儉素を忘れず、ゆえに驚ありて險なし。占うに家道安穩にして小挫ありと雖も碍げなし。吉。
屯之隨:太乙駕騮,從天上來。徵我叔季,封為魯侯。
屯の卦が隨の卦に変わる。太乙神赤色の駿馬に駕し、天上より降臨す。我が家の叔季の子を徵召し、彼を封じて魯國の諸侯と為す。太乙は古代尊神の名で、命祿を主司す。隨とは相い從うこと。天命の召す所なれば貴擋るべからず。占うに徵擢を受け用ゐられ、官を加え爵を晉めるを主とし、大吉。
屯之蠱:南巴六安,石解戟天。所指不已,耊老復丁。弊室舊噓,更為新家。
屯の卦が蠱の卦に変わる。南巴と六安の地、山石戟のごとく裂けて天を刺し、指す所連綿として絶えず。年邁の老人竟に返老還童して壯丁のごとくなり、破敗の屋子・荒廢の舊墟、重ねて整治して嶄新の宅院と成す。蠱は積弊を整治するを主とし、弊去れば百事更新す。占うに老いて復た壯になり、舊業重ねて興るを主とし、吉。
屯之臨:家給人足,頌聲並作。四夷賓伏,干戈韜閣。
屯の卦が臨の卦に変わる。家家豐足し人人飽暖し、頌揚の聲一齊に興起す。四方夷族皆賓服歸順し、兵器收起さら戰事擱置す。臨は上に居りて下に臨む卦で、徳澤下に達すれば遠人自ら服す。占うに國泰民安にして干戈止息す。大吉。
屯之觀:東鄰嫁女,為王妃后。莊公築館,以尊王母。歸於京師,季姜悅喜。
屯の卦が觀の卦に変わる。東邊鄰家女を嫁せしめ、天子の妃后と為す。魯莊公彼女のために館舍を修筑し、以て王姬の母を尊崇す。彼女遠く京師に嫁ぎ、季姜心中歡喜す。《春秋・桓公九年》に「紀季姜京師に歸す」と記す。説く所まさに此事。觀は觀仰して化を示すを主とし、禮數完備なれば婚事成るを得る。婚姻を問えば高きに攀じ顯貴、美事を成就す。大吉。
屯之噬嗑:陳妻敬仲,兆興齊姜。營丘是適,八世大昌。
屯の卦が噬嗑の卦に変わる。陳國の懿氏女を敬仲に嫁せしめ、卜兆彼の後裔將に齊姜の國に興盛せんと預示す。敬仲後に營丘に奔り定居し、八代の後果たして大いに昌盛す。《左傳・莊公二十二年》に陳完齊に奔る及び卜妻の辭を載せ、その後田氏果たして齊を代ふ。噬嗑は嚙合して梗阻を去るを主とし、梗阻既に去れば前途大いに開く。占うに他鄉に客居して後世發達するを主とし、吉。
屯之賁:路多枳棘,步刺我足。不利旅客,為心作毒。
屯の卦が賁の卦に変わる。路上枳樹荆棘滿ち、一歩走れば我が足を扎傷す。旅行外に在る人に甚だ利ならず、心頭の一樁苦事と成る。賁は文飾を主とするが、外表の修飾は脚下の荆棘を救う能わず。出行を問えば阻多く傷多し。暫く止まりて行かざるべし。凶。
屯之剝:天官列宿,五神共舍。宮闕光堅,君安所居。
屯の卦が剥の卦に変わる。天上の星官衆宿排布序あり、五方の神一舍に共處す。宮殿樓闕光潔にして堅固、君主其中に安居す。剥は剥落の卦なれど、上天神の護持あれば傾危に至らず。占うに居處穩固にして神明の庇佑あり。吉。
屯之復:牧羊稻園,聞虎呻喧。懼畏惕息,終無禍患。
屯の卦が復の卦に変わる。稻田園圃の裏に羊を放ち、老虎低吼喧鬧するを聞く。嚇かされて呼吸を屏し戰戰兢兢とするも、最終に禍患に遭うことなし。復は一陽來復の卦で、心戒懼を存せば險象自ら消ゆ。占うに虛驚一場にして備あれば患なし。先に危後に安し。
屯之無妄:鳴條之圖,北奔犬胡。左衽為長,國號匈奴。主君旄頭,立尊單于。
屯の卦が无妄の卦に変わる。鳴條の戰敗亡の圖謀、夏后氏の遺族をして北に犬戎胡地に投奔せしむ。彼ら左衽を以て俗とし首領を推擧し、國號匈奴と作し、君主旄頭の衆を執掌して單于を尊立す。《史記・匈奴列傳》に匈奴を夏后氏の苗裔と稱す。《无妄》は人に妄動すべからずを誡む。敗亡の餘別に門戶を立つるは、亦た無可奈何の數なり。占うに流離遷徙し、別に基業を立つるを主とす。
屯之大畜:克身潔吉,逢禹巡狩,錫我玄圭,拜受福佑。
屯の卦が大畜の卦に変わる。自身を克制し身を潔くして吉を守るに、正に大禹外に出て巡狩するに逢う。我に一枚の玄色玉圭を賜い、叩拜して福祐を領受す。《尚書・禹貢》に「禹玄圭を錫り、厥の成功を告ぐ」と載す。大畜は徳を蓄えて用を待つを主とし、徳行積厚なれば賞賜自ら來る。占うに身を修めて賞を得、上恩を蒙るを主とし、大吉。
屯之頤:冬華不實,國多盜賊。疾病難醫,鬼哭其室。
屯の卦が頤の卦に変わる。冬天に開花するも果實を結ぶ能わず、國中盜賊眾多なり。疾病醫治し難く、鬼屋裏に哭泣す。草木時令に按せず開花するは、古人之大凶の異と視る所なり。頤は頤養を主とし、養い其道を失えば病生じ祟起る。疾病を問えば危重を主とし、家宅を問えば寧ならざるを主とし、大凶。
屯之大過:襄送季女,至於蕩道。齊子旦夕,留連久處。
屯の卦が大過の卦に変わる。小女兒を護送して出嫁せしめ、一直に平坦の大道に送る。齊國の女子早晚往來し、流連徘徊して久留して去らず。《詩経・齊風・載驅》に「魯道蕩有り、齊子夕を發く」とあり、文姜私通の事を譏刺す。大過は過甚の卦で、行止過度なれば人の譏議を招く。占うに男女檢を失い、久留して事を生ずるを主とし、凶。
屯之坎:朽根倒樹,花葉落去。卒逢火焱,隨風偃仆。
屯の卦が坎の卦に変わる。樹根朽爛して大樹傾倒し、花と葉と皆零落す。忽然また烈火に遇い、風勢に隨いて地に倒伏す。坎は重なる險陷で、根本既に壞れて外患また至る。占うに根基敗壞し、禍單行せざるを主とし、大凶。
屯之離:陰變為陽,女化作男。治道得通,君臣相承。
屯の卦が離の卦に変わる。陰氣轉變して陽氣と為り、女子化して男子と成る。治國之道これによって通達し、君と臣上下相承す。離は附麗して重明なり。柔轉じて剛と為れば事勢これに隨いて順に轉ず。占うに弱を轉じて強と為し、時來りて運轉す。吉。
屯之咸:炎絕續光,火滅復明。簡易理得,以成乾功。
屯の卦が咸の卦に変わる。火焰將に熄んとすれど重新して光亮を續ぎ、火滅びて復た明るくなり。簡易の理を把握し、因りて乾道の功業を成就す。《周易・繫辭上》に「乾は易を以て知り、坤は簡を以て能くす」と曰う。咸は交感の卦で、絶えて復た續けば生機再起す。占うに絶處生に逢い、舊業復興するを主とし、吉。
屯之恆:多載重負,捐棄於野。予母誰子,但自勞苦。
屯の卦が恒の卦に変わる。裝載し過ぎて負擔重く、東西を荒野に丟棄するよりほかなし。養い給はれど何れの家の兒子かを知らず、白白と自ら勞苦を受く。恒とは常久で、負荷常度を失えば持久し難し。占うに多を貪り重きを失い、勞して功なし。凶。
屯之遁:江河海澤,眾利安宅,可以富有,飲御嘉客。
屯の卦が遯の卦に変わる。長江大河・海洋湖澤は衆多利益安んじて匯聚する所在で、これによって富足し、酒宴を設けて貴客を款待すべし。遯は本來退避を主とするが、水澤の鄉に退居すればかえって廣くその利を收む能し。占うに退守して財を得、賓主歡を盡す。吉。
屯之大壯:冬采薇蘭,地凍堅坼。利走室北,暮無所得。
屯の卦が大壯の卦に変わる。冬天薇菜蘭草を采りに往くに、地凍りて堅硬開裂す。急々として屋子北邊に奔向するも、天黑くなるまで一の獲る所なし。大壯は正を守るに宜しく妄動すべからず。時令に違逆して强く求めば徒労なり。占うに時機對せず、勞して獲なし。凶。
屯之晉:烏鳴嘻嘻,天火將起。燔我室屋,災及姬後。
屯の卦が晋の卦に変わる。烏鴉嘻嘻と怪鳴し、天火將に燒き起こらんとす。我が屋舍を燒掉し、災禍還た姬姓の后妃に波及す。古人は烏鴉の異鳴を以て火災の兆とす。晋は上進して大明に附麗するを主とするが、明盛んなり過ぐればかえって焚燒と成る。占うに火厄門に臨み、內眷に殃及ぶ。大凶。
屯之明夷:蠆室蜂戶,螯我手足。不可進取,為身害速。
屯の卦が明夷の卦に変わる。蝎子窩を做し馬蜂戶を結び、我が手と足を蜇傷す。更に前進して取るべからず。然らざれば傷害を招くこと極めて速し。明夷は光明傷つく卦で、暗處に毒物潜伏す。占うに暗中害あり、動けば輙ち傷つく。止步して自ら守るべし。凶。
屯之家人:崔嵬北嶽,天神貴客。溫仁正直,主布恩德。閔哀不已,蒙受大福。
屯の卦が家人の卦に変わる。高峻の北岳恒山は、天神と貴客との居る所である。そこらの神明温厚仁愛にして公正剛直、布施恩徳を主司す。悲憫哀憐の心絶えず、因りて大福を蒙る。家人は內治に恩あるを主とし、恩徳人に及べば福自ら身に歸す。占うに神佑人助を得、家門福を蒙る。大吉。
屯之睽:伯蹇叔盲,莫與守床。失我衣裘,伐民除鄉。
屯の卦が睽の卦に変わる。伯氏跛脚にして叔氏眼盲、病床邊に守る能う人なし。我が衣服皮裘を丢し、また征伐を遭いて鄉里より遷出せらる。睽とは乖離で、親人殘廢離散すれば依靠する所なし。占うに親眷助けを失い、財を失い鄉を離るるを主とし、凶。
屯之蹇:為季求婦,家在東海。水長無船,不見所歡。
屯の卦が蹇の卦に変わる。小兒子のために媳婦を求娶するも、女家遠く東海の濱に在り。水路漫長にして渡船なく、心中喜ぶ所の人を見る能わず。蹇は跛足にして行き難い卦で、路遠く舟なければ心願遂げ難し。婚姻を問えば路遠く成り難く、隔阻して通ぜず。凶。
屯之解:山陵丘墓,魂魄失舍,精神盡竭,長寢不覺。
屯の卦が解の卦に変わる。山陵の間盡く墳丘墓塚なり。魂魄歸宿を失い、精神耗竭して長眠して醒めず。解は本來險難消散を主とするが、解き開く所若し形神相繫の結ならば、それ便ち死亡の象なり。疾病を問えば起き難し。家宅を問えば喪事あり。大凶。
屯之損:踦牛失角,下山傷軸,失其利祿。
屯の卦が損の卦に変わる。跛脚の牛角を折り、山を下るにまた車軸を壓傷し、因りて應得の利祿を丢す。損とは減損で、器具損壞し氣力衰微なれば得る所もまた隨いて減損す。占うに財を折り位を失い、求む所遂げず。凶。
屯之益:水載船舟,無根以浮。往來溶溶,心勞且憂。
屯の卦が益の卦に変わる。水面上船隻を載せ、根柢なくして只だ漂浮するのみ。來來往往蕩漾して定まらず、心裏勞苦にして憂愁す。益は本來增益を主とするが、根基立たざれば得て復た失う。占うに漂泊して定まらず、心神寧ならず。宜しく先ず根本を立定すべし。
屯之夬:有鳥來飛,集於古樹。鳴聲可惡,主將出去。
屯の卦が夬の卦に変わる。鳥飛來りて、古樹に停落す。叫聲難聽刺耳にして、主人將に家を離れ外出せんことを預示す。古人は惡鳥宅に棲み鳴叫するを以て不祥の兆とす。夬は決断除去を主とし、凶兆既に現るれば宜しく早く決断を作すべし。占うに家宅變あり、主人遠行す。凶。
屯之姤:東徙不時,觸患離憂。井泥無濡,思叔舊居。
屯の卦が姤の卦に変わる。東に遷徙するは時宜に合せず、禍患に觸犯して憂愁に遭遇す。井底泥を積みて水汲むなく、只だ叔氏の舊宅を思念するのみ。《井》初六に「井泥食せず」と曰う。正に廢井用なき象なり。姤は期せず遇うを主とするが、遇うこと其の時に非ざればその害を受く。占うに遷移利あらず、舊を思うも返り難し。凶。
屯之萃:黃帝所生,伏羲之宇。兵刃不至,利以居止。
屯の卦が萃の卦に変わる。これ黄帝誕生の地、伏羲居住の屋なり。兵器刀刃ここに到る能わず、安居止息するに宜しい。黄帝と伏羲皆上古の聖王で、その居る所即是福地なり。萃は聚合で、吉地に聚まれば長安なるべし。占うに地を擇びて宜を得、兵災を免る。吉。
屯之升:東山救亂,處婦思夫。勞我君子,役無休已。
屯の卦が升の卦に変わる。東山に到りて叛亂を平定す。家中に留まる婦人丈夫を思念す。我が君子を勞苦せしめ、兵役休止の時なし。《詩経・豳風・東山》は周公東征三年、征夫歸を懷く情を寫す。升は上進を主とするが、久しく外に役すれば家室怨曠す。占うに勞役息まず、夫妻分離す。凶。
屯之困:跛躓未起,先利後市,不得鹿子。
屯の卦が困の卦に変わる。脚を跛まして地に絆倒し、未だ起身せず。先にその利を謀取して後市集に趨赴するも、終に小鹿を得る能わず。困は困窮の卦で、脚力濟わざれば利に趨るも及ばず。占うに行動挫折を受け、財を求めて落空す。凶。
屯之井:大蛇當路,使季畏懼。湯火之災,切近我膚。賴其天幸,趨於王廬。
屯の卦が井の卦に変わる。一条の大蛇路上に擋り、季氏をして心に畏懼を生ぜしむ。滾湯烈火のごとき災禍、我が肌膚に緊貼して逼り來る。全く上天の僥幸眷顧に頼り、君王の居所に奔入して難を避くるを得たり。井は人を養いてその徳常あるを主とし、險に遇いて庇護を得れば虞れなし。占うに險象環生するも終に救助を獲。先に凶後に吉。
屯之革:從容長閒,遊戲南山。拜祠禱神,神使無患。
屯の卦が革の卦に変わる。從容悠閒、長日事なく、南山に游玩嬉戱す。祠廟に到り拜祭して神明を禱告すれば、神明彼をして禍患を免れしむ。革は變革を主とし、安閒の中に祭祀の禮を廢せざれば、變ずと雖も驚かず。占うに身心安泰にして神の護佑あり。吉。
屯之鼎:區脫康居,慕義入朝。湛露之歡,三爵畢恩。復歸野廬,與母相扶。
屯の卦が鼎の卦に変わる。匈奴辺地の區脱と西域の康居とは、中原の禮義を仰慕して入朝進見す。天子《湛露》の宴を設けて以て歡洽を示し、三爵の酒罷めて恩意周備なり。《詩経・小雅・湛露》は天子の諸侯を燕饗する詩で、《禮記・玉藻》に「三爵にして油油として退く」の禮あり。此の後鄕野の廬舍に返回し、母親と相い扶持す。鼎は賢を養うを主とし、遠人來り歸すれば國盛んに家安し。占うに遠行して禮遇を受け、家に歸りて團聚を得るを主とし、吉。
屯之震:龜鱉列市,河海饒有。長錢山賈,商李悅喜。
屯の卦が震の卦に変わる。烏龜と鱉と排を成して市に擺せられ、河海の出產豐饒にして餘りあり。錢串長長として貨山のごとく堆み、行商李氏心中歡喜す。震は動である。貨殖流通すれば財自ら生ず。經商を問い財を求むを問うに、大いにその利を得るを主とし、吉。
屯之艮:年常蒙慶,今歲受福。三夫採葩,出必有得。
屯の卦が艮の卦に変わる。年年吉慶を蒙り、今年また福澤を領受す。三人出門して花草を采摘し、一たび去れば必ず收穫有らん。艮は止まるなり。分に安んじ常を守れば福澤長く在り。占うに成を守りて利を得、出行して獲あるを主とし、吉。
屯之漸:二人俱東,道路爭訟。意乖不同,使君洶洶。
屯の卦が漸の卦に変わる。二人一同に東行すれど、路上爭吵して訟を興す。心意乖離して各々相同じず、您の心緒洶洶として寧ならざるを弄す。漸は循序漸進を主とし、同行して志向相い異なれば漸進成らず。占うに同伴和を失い、口舌是非を主とし、凶。
屯之歸妹:樹我藿豆,鹿兔為食。君不恤護,秋無收入。
屯の卦が歸妹の卦に変わる。我が豆苗豆葉を種すれど、悉く鹿と兔子に喫し盡さる。主人體恤看護を加えず、秋天に到りて收成名し。歸妹は嫁娶を主とするも位分當たらず。事主る人なくば終に荒廢に歸す。占うに經營照管を失い、勞して收なし。凶。
屯之豐:黃鳥悲鳴,愁不見星。困於鷙鳥,鸇使我驚。
屯の卦が豐の卦に変わる。黄雀悲聲哀鳴し、愁えて星星をも見ず。凶猛の鷙鳥に困せられ、鸇鷹我をして驚懼安んぜしめず。《詩経・小雅・黄鳥》は黄鳥所を失いて故鄉に歸らんと思うを寫す。豐とは盛大なれど、弱小者盛勢の下に處りてかえって欺凌を受く。占うに强者に迫られ、驚恐寧ならず。凶。
屯之旅:雙鳧俱飛,欲歸稻食。經涉萑澤,為矢所射,傷我胸臆。
屯の卦が旅の卦に変わる。二隻の野鴨一同に飛起し、稻田裏に回りて食を覓まんと欲す。途中蘆葦蕩を經過するも、箭に射中せられ、我が胸膛を傷つく。旅外に在りて庇護する所なく、行蹤一たび露れれば卽ち暗算に遭う。占うに中途害に遇い、樂極まりて悲を生ず。大凶。
屯之巽:久客無依,思歸我鄉。雷雨盛溢,道未得通。
屯の卦が巽の卦に変わる。長く客居して依托する所なく、一心に我が家鄉に回到せんと欲す。偏に雷声大作し雨水泛濫して、道路尚ほ通行する能わず。巽は順入で、時勢順ならざれば擧步艱難なり。占うに歸期阻まれ、家有りて回り難し。暫く時を待つべし。
屯之兌:道路僻除,南至東遼。衛子善辭,使國無憂。
屯の卦が兌の卦に変わる。道路既に開闢清除せられ、南に向かい一直に東遼に通ず。衛國の使者言辭體を得て、國家をして憂患を免れしむ。兌は口舌で、言辭を善く用ゐれば以て危難を紓解すべし。占うに言辭に憑りて危機を化解し、出使功あり。吉。
屯之渙:同枕同袍,中年相知。少賈無失,獨居愁思。
屯の卦が渙の卦に変わる。枕を同じく被を共にし袍澤相い親しみ、中年に到りて乃ち知己と成る。年輕の時經商して虧損有らず、如今獨り居處して滿懷愁思なり。渙とは離散で、縱ひ舊交あるも終に寂寞に歸す。占うに聚まること少なく離るること多く、晚境孤單なり。
屯之節:眾神集眾,相與議語。南國虐亂,百姓愁苦。興師征討,更立賢主。
屯の卦が節の卦に変わる。衆位の神明聚まりて衆議し、彼此商量謀劃す。南方の國暴虐動亂して、百姓愁苦堪えず。ここに兵を興して征討し、別に賢明の君主を立つ。節は度あり制あるを主とし、暴を除きて賢を立つるは正に節制の義に合す。占うに亂を撥き正に反し、舊去り新來る。先に凶後に吉。
屯之中孚:北陸閉蜇,隱伏不出。目盲耳聾,道路不通。
屯の卦が中孚の卦に変わる。太陽北陸に運行して嚴冬の時節、蟄蟲閉藏して隱伏して出來ず。眼睛見る能わず耳朵聞く能わず、道路もまた通暢せず。《左傳・昭公四年》に「日北陸に在りて冰を藏る」の語あり。中孚は誠信相い通ずるを貴ぶが、この時上下彼此隔絕す。占うに閉塞不通にして消息斷絕す。宜しく潜藏して自ら守るべし。
屯之小過:痴狂妄作,心逛善惑。迷行失路,不知南北。
屯の卦が小過の卦に変わる。癡迷瘋狂して胡亂に行事し、心神恍惚として極めて人の迷惑を受け易し。路に迷いて方向を走り錯へ、南北すらも分かち辨ふ能わず。小過は只だ小事を謹守するに宜しく、妄動すれば愈行くほど愈錯る。占うに心志昏亂にして擧措當を失う。凶。
屯之既濟:棟隆輔強,寵貴日光。福善並作,樂以高明。
屯の卦が既濟の卦に変わる。棟梁高隆にして輔木强固、恩寵尊貴一天天に光大す。福澤と善報と一同に興起し、高明の境に歡樂す。《大過》九四に「棟隆、吉」と曰う。正にその任重き能くする義を取る。既濟は諸事已に成る卦で、之に居りて正を得れば安し。占うに位高く福厚く、家道興隆す。大吉。
屯之未濟:愛我嬰女,牽衣不與。冀幸高貴,反曰下賤。
屯の卦が未濟の卦に変わる。我が小女兒を疼愛し、衣角を拉きて人に許すを捨て難し。本來彼女に高門顯貴に攀らんことを指望するも、反って卑下低賤の境地に落到す。未濟は事情未だ辦成せざる卦で、期望愈高ければ落差愈大なり。婚嫁を問えば願う所遂げず、高より低に轉ず。凶。
蒙の林(蒙卦六十四林)
蒙之蒙:何草不黃,至未盡玄。室家分離,悲愁於心。
蒙の卦が自ら変じても蒙の卦のままである。何れの草か枯黄せざらん、到頭變じて焦黑と成らざるなし。夫妻家室分離して、滿心悲愁す。《詩経・小雅・何草不黄》は征夫行役息まず、人草木と同じく悴るる之苦を寫す。蒙とは昏昧にして未だ明ならず。此のごとき境地に處れば憂思解け難し。占うに別離傷感し、家室安んぜず。凶。
蒙之乾:海為水王,聰聖且明。百流歸德,無有叛逆,常饒優足。
蒙の卦が乾の卦に変わる。大海は衆水の王にして、聰睿聖明なり。百川皆その徳澤に歸向し、背離叛逆する一条もなし。因りて常に豐饒充足を保つ。《莊子・秋水》は百川河に灌ぎ、河伯東面して洋を望みて海の大を歎ずるを寫す。蒙乾卦の剛健光明を得て、昏昧轉じて通達と爲る。占うに衆望の歸する所、財源廣く進む。大吉。
蒙之坤:天之所有,禍不過家。左輔右弼,金玉滿堂。常盈不亡,富如敖倉。
蒙の卦が坤の卦に変わる。上天の賜予する所、災禍この家門に臨まず。左に輔臣右に弼佐あり、金玉廳堂に堆滿す。常に盈滿を保ちて亡失せず、富厚なること敖倉のごとし。敖倉は秦漢の際の國家大糧倉で、《史記・酈生列傳》に見ゆ。坤は厚德にして物を載すを主とし、徳厚ければ財物自ら聚まる。占うに富貴門に盈ち、根基穩固なり。大吉。
蒙之屯:安息康居,異國穹廬。非吾習俗,使我心憂。
蒙の卦が屯の卦に変わる。安息と康居のこれ異域の邦は、住む所は氈帳穹廬なり。そこは我が熟悉する風俗にあらず、我をして心中憂愁せしむ。安息・康居皆西域の古國で、《漢書・西域傳》に見ゆ。屯は初生して通じ難き卦で、人地生疏なれば處處窒礙す。占うに異鄉に客居し、水土服せず。凶。
蒙之需:范公鴟夷,善賈飾資。東之營丘,易字子皮。把珠載金,多得利歸。
蒙の卦が需の卦に変わる。范蠡自ら鴟夷子皮と號し、經商を善くして資財を增殖す。彼東行して營丘一帶に至り、名を改め字を換えて子皮と作す。《史記・貨殖列傳》に范蠡越を辭し經商して、三たび千金を致した事を載す。彼手に珍珠を握り車に黄金を載せ、利を獲ること豐厚にして歸る。需とは時機を待つこと。時を待つを善くすれば貨殖財を生ず。經商財を求むを問えば、大いに獲る所有り。吉。
蒙之訟:老楊日衰,條多枯枝。爵級不進,遂下摧隤。
蒙の卦が訟の卦に変わる。老楊樹一天天に衰敗し、枝條大多枯幹す。官爵等級晉升を得ず、終に一路向下して崩壞傾頹す。訟は爭辯の卦で、爭いて勝たざれば勢必ず日に削らる。占うに仕途蹭蹬し、家業漸々衰ゆ。凶。
蒙之師:小狐渡水,汙濡其尾。利得無幾,與道合契。
蒙の卦が師の卦に変わる。小狐狸水を涉り河を過ぐるに、尾巴を弄し沾濕せり。得る所の好處雖多からず、卻って正道と相合す。《未濟》卦辭に「小狐汔として濟る、其の尾を濡らす」と曰う。正に險を涉りて將に成らんとする意を取る。師は衆を聚むる卦で、力を量りて行えば小さく沾濡する有れど其の正を失わず。占うに小利得るべく、正を守りて咎なし。
蒙之比:豕生魚魴,鼠舞庭堂。奸佞施毒,上下昏荒,君失其國。
蒙の卦が比の卦に変わる。猪魚魴を生出し、老鼠庭堂の上に跳舞し、物類常に反して竟に此の般の地步に至る。奸邪佞人毒害を施放し、上下皆昏亂荒廢し、君主終に國家を丢却す。古人は物妖を以て亡國の徵とす。比は親附を主とし、親しむ所若し小人ならば國危し。占うに小人勢を得、家國傾覆す。大凶。
蒙之小畜:天地配享,六位光明。陰陽順序,以成和平。
蒙の卦が小畜の卦に変わる。天と地と相配して共に祭饗を享け、六爻の位一片光明なり。陰陽依次順行して、從りて太平の世を成就す。《乾・彖》に「六位時成」の説あり。小畜は柔を以て剛を畜え、各々その位を得れば上下和洽す。占うに上下相い諧し、諸事順遂す。吉。
蒙之履:踝踵足傷,右指病癰。失旅後時,利走不來。
蒙の卦が履の卦に変わる。脚踝脚跟皆傷を受け、右手指また毒瘡を生ず。隊伍に跟かずして時辰を誤り、手に到りし好處跑げ去りて再び來らず。履は踐行を主とし、足傷つけば行いその正を得ず。占うに身に傷病あり、良機を錯失す。凶。
蒙之泰:異體殊患,各有所屬。喜鄰孤媼,欲寄我家。王母罵詈,求之不得。
蒙の卦が泰の卦に変わる。形體同じからず憂患各々異なり、各人自ら各々の歸屬あり。鄰家の孤老婦人を喜歡し、彼女をして我が家に寄住せしめんと欲す。家中の老毋親破口して斥罵し、此事終に求めて成らず。泰は通達を主とすると雖も、人情合わざれば事諧わず。占うに家中意見相い左し、求む所阻まる。凶。
蒙之否:操稻鄉畝,折禍稷黍。飲食充口,安利無咎。
蒙の卦が否の卦に変わる。鄉間田畝の裏に稻作を操持し、禳除して黍稷の間の禍害を折斷す。飲食口を充たすに足り、安穩して利を得て過錯有らず。否は閉塞不通なれど、躬耕して自足すれば塞ぐと雖も困まらず。占うに衣食憂なく、平安して利を得。吉。
蒙之同人:所受大喜,福祿重來。樂且日富,蒙慶得財。
蒙の卦が同人の卦に変わる。領受する所は天大の喜事、福と禄と接續して來る。歡樂の中に家道一天天に富裕し、吉慶を蒙りて錢財を獲得す。同人は人と和同するを主とし、同心協力すれば獲利豐厚なり。占うに喜慶門に臨み、財源斷えず。大吉。
蒙之大有:舉杯飲酒,無益溫寒,指直失取,亡利不歡。
蒙の卦が大有の卦に変わる。杯子を擧げて酒を飲むも、寒を禦ぎ暖を取るに補益なし。手指僵直して抓取する能わず、利益を丢して心中快からず。大有は本來富盛を主とするが、用うる所其の法に合わざれば富むと雖も益なし。占うに徒勞功なく、得て復た失う。凶。
蒙之謙:日月指望,光明盛昌。三聖茂承,功德大隆。
蒙の卦が謙の卦に変わる。太陽と月亮と遥遥と相い望み、光明盛大昌隆なり。三位の聖人先後相い承けて徳業繁茂し、功德極めて隆盛す。謙とは益を受くること。謙徳愈厚ければ光輝愈顯れり。占うに徳業昌盛し、聲名遠く揚がる。大吉。
蒙之豫:猾夫爭強,民去其鄉。公孫叔子,戰於城南。
蒙の卦が豫の卦に変わる。狡猾の徒强を爭い勝を鬥い、百姓迫られて家鄉を離る。公孫氏と叔子氏と城南に交戰す。豫は本來和樂を主とするが、安樂怠惰して防を設けざれば禍亂驟然と起る。占うに兵爭民を擾し、鄉を離れ井を背く。凶。
蒙之隨:猿墮高木,不踒手足。還歸其室,保我金玉。
蒙の卦が隨の卦に変わる。猿猴高樹より跌落して下るも、手脚扭傷することなし。平安に己が窩裏に回り、我が金玉財物を保住す。隨とは時に隨いて動く。勢に順い下れば險なれど傷つかず。占うに險に逢いて恙なく、財物保つを得。吉。
蒙之蠱:逐狐東山,水遏我前。深不可涉,失利後便。
蒙の卦が蠱の卦に変わる。東山に到りて狐狸を追捕するも、河水我が前面に擋る。水深く涉渡する能わず、手に到りし利益を丢して便宜を錯過す。蠱は積弊を整治するを主とし、弊未だ治まらず阻碍當前に在れば、圖る所便ち成る能わず。占うに中途阻まれ、坐して其の利を失う。凶。
蒙之臨:鑿井求玉,非卞氏寶。名困身辱,勞無所得。
蒙の卦が臨の卦に変わる。井を挖きて美玉を求美するも、得る所は卞和のごとき至寶にあらず。名聲困に受け自身辱を蒙り、勞苦して一の獲る所なし。《韓非子・和氏》に卞和三たび璞を獻じ、兩たび刖足に遭いし事を載す。臨は上に居りて下に臨むを主とし、求む所其の法を得ざれば終に徒勞に歸す。占うに力を用うること當たらず、名利兩空なり。凶。
蒙之觀:黃玉溫厚,君子所服。甘露溽暑,萬物生茂。
蒙の卦が觀の卦に変わる。黄色の玉温潤厚實にして、君子の佩戴する所なり。甘露悶熱の暑天に降り、萬物これによって生長茂盛す。黄は中央の色、玉は君子の徳を喩う。觀は觀仰して天下を化育するを主とし、徳澤人を潤すは正に甘露の物を潤すがごとし。占うに徳厚く尊を受け、生機勃發す。吉。
蒙之噬嗑:畫龍頭頸,文章不成。甘言善語,說辭無名。
蒙の卦が噬嗑の卦に変わる。竜を畫きて只だ頭と脖頸とを畫き出し、紋采終に畫き成らず。滿口甜言好話するも、游說の辭成名を成る能わず。噬嗑は嚙合して梗阻を去るを主とし、半途にして廢すれば梗阻去らず。占うに始ありて終なく、言ありて實なし。凶。
蒙之賁:招禍致凶,來弊我邦。病在手足,不得安息。
蒙の卦が賁の卦に変わる。禍事を招引し凶險を招致し、前來して我が邦國を敗壞す。病痛苦難手足の上に落ち、安寧休息を得ず。賁は文飾を主とするが、外表の修飾は內裏の禍患を遮る能わず。國事を問えば敗象あり、身體を問えば肢體の疾あり。凶。
蒙之剝:履位乘勢,靡有絕斃。替為隸圉,與眾庶伍。
蒙の卦が剥の卦に変わる。元來身その位に居り勢に乘じて行うも、斷絶敗亡の虞なしとせず。後來卻って廢黜せられて奴隸馬夫に淪し、普通百姓と伍を爲す。剥は剥落の卦で、位高くして徳相い稱わざれば終に墜落せん。占うに貴より賤に轉じ、位を失い職を降る。凶。
蒙之復:獐鹿雉兔,群聚東囿。廬黃白脊,俱往趨逐。九齚十得,君子有喜。
蒙の卦が復の卦に変わる。獐子・鹿・野鷄・兔子群を成して東邊の園囿裏に聚まる。廬黄と白脊のこのごとき名犬一齊に撲上して追逐し、九たび咬めば十隻を得、君子これによって歡喜す。復は一陽來復の卦で、生機既に動けば獵する所必ず豐なり。田獵を問い財を求むを問うに、大いに獲る所有り。吉。
蒙之無妄:治金未成,緯畫無名。長子逐兔,鹿起失路。後利不得,因無所據。
蒙の卦が无妄の卦に変わる。金屬を冶煉するも未だ器を成さず、經緯の謀劃にも名目なし。長子兔子を追うに、鹿卻って先に竄起し、反って道路を迷失す。到る後來利益得る能わざるは、只だ本來憑據依るべきなきが故なり。《无妄》は人に妄動すべからずを誡む。本なくして妄りに求めば終に成る所なし。占うに事を謀る未だ定まらずして妄動し、終に落空す。凶。
蒙之大畜:天厭周德,命與仁國。以禮靖民,兵革休息。
蒙の卦が大畜の卦に変わる。上天周室の徳運を厭棄し、天命を仁政を施行する國家に交す。新主禮制を以て百姓を安定し、兵戈甲胄皆收藏休止す。大畜は徳を蓄えて後大用するを主とし、徳厚き者のみ能く命を受く。占うに朝を改め主を易えて天下安を得る。先に危後に吉。
蒙之頤:重譯賀芝,來除我憂。善說逐良,與喜相求。
蒙の卦が頤の卦に変わる。遠方の國輾轉幾重の通譯を經て前來して道賀し、靈芝を進獻して、我のために憂愁を除去す。善言勸說して賢良を進擧し、喜慶の事と互相い招引す。《漢書》屢々「重譯して朝に來る」を以て盛世の象を記す。頤は正を養うを主とし、賢を得て自ら養えば憂愁自ら解く。占うに遠方に喜信あり、賢を得て困を解く。吉。
蒙之大過:膏澤肥壤,人民孔樂。宜利俱止,長安富貴。
蒙の卦が大過の卦に変わる。雨露滋潤して土壤肥沃、百姓非常に快樂なり。適宜と利益と皆ここに聚集し、長く富貴を安享す。大過は負重の卦なれど、根基深厚なれば任重くして折れず。占うに居處宜を得、富貴長久なり。大吉。
蒙之坎:白龍黑虎,起鬐暴怒。戰於涿鹿,蚩尤敗走。居止不殆,君安其所。
蒙の卦が坎の卦に変わる。白竜と黑虎と鬃鬣竪起して暴跳發怒し、涿鹿の野に交戰して、蚩尤終に敗逃す。《史記・五帝本紀》に黄帝と蚩尤と涿鹿に戰い、遂に蚩尤を擒え殺したと載す。坎は險陷なれど、正邪に勝てば險難自ら平ぐ。此の後居處安止して危殆ならず、君主己が位置に安居す。占うに爭鬥獲勝し、危を轉じて安と爲す。吉。
蒙之離:抱關傳語,聾跛摧殆。眾賤無下,災殃所在。
蒙の卦が離の卦に変わる。門を守る小吏人のために話を傳えるも、自ら又聾にして跛にして困頓危殆なり。卑賤なること復た加ふる無きに至りて、災殃便ちここに落つ。離は附麗で、附く所卑下なれば以て自ら立つ無し。占うに地位低微にして身に殘疾あり、禍患頭に臨む。凶。
蒙之咸:憂禍解除,喜至慶來。坐立歡門,與樂為鄰。
蒙の卦が咸の卦に変わる。憂愁と禍患と皆已に解除せられ、喜事到來して吉慶之に隨う。坐るも立つも皆歡喜の門裏に在り、快樂と鄰を結ぶ。咸は交感の卦で、氣機相い通ずれば憂去りて喜來る。占うに否極まりて泰來り、家門吉慶なり。大吉。
蒙之恆:折鋒載殳,輿馬放休。狩軍依營,天下安寧。
蒙の卦が恒の卦に変わる。兵刃を折斷し殳杖を收起し、車輛馬匹皆放歸休息せしむ。出征の軍隊營に回り駐守し、天下これによって安寧す。《尚書・武成》に周武王「武を偃め文を修め、馬を華山之陽に歸す」と載す。恒とは常久で、兵戈止息すれば治平久しかるべし。占うに戰事平息し、四方安定す。大吉。
蒙之遁:至德之君,仁政且溫。伊呂股肱,國富民安。
蒙の卦が遯の卦に変わる。徳行至高の君主、仁政を施行してまた温厚なり。伊尹・呂尚のごとき賢臣ありて臂膀を充當し、國家富强にして百姓安定す。伊尹は商湯を輔佐し、呂尚は周武王を輔佐す。皆開國の名相なり。遯は本來退避を主とするが、君明く臣賢ければ退を言うを須いとせず。占うに上下相い得、國富み家安し。大吉。
蒙之大壯:千里望城,不見山青。老兔蝦蟆,遠絕無家。
蒙の卦が大壯の卦に変わる。千里相隔てて遥遥に城池を望むも、青山をも望見えず。月中の老兔と蛤蟆とは、遠く歸路を斷絕して歸る家なし。古神話は玉兔と蟾蜍と月中に居ると以す。大壯は正を守るに宜しく妄行すべからず。遠出して據なければその歸る所を失う。占うに故土を遠く離れ、孤懸して依る所なし。凶。
蒙之晉:有莘季女,為夏妃后。貴夫壽子,母字四海。
蒙の卦が晋の卦に変わる。有莘國の小女兒、夏后氏の妃后と爲る。夫婿顯貴にして兒子長壽、彼女慈母の心を以て四海の民を撫育す。《史記・殷本紀》に有莘氏の女出嫁して伊尹媵臣と爲りし事を載す。晋は上進して福を受くるを主とし、女子貴を得れば一家俱に榮す。婚嫁を問えば貴婿に攀るを得、子孫昌盛す。大吉。
蒙之明夷:不虞之患,禍至無門。奄忽暴卒,痛傷我心。
蒙の卦が明夷の卦に変わる。意料し得ざる禍患、來る時防ぐべき門徑なし。忽然の間暴病して身亡び、我が心を痛傷す。明夷は光明地中に陷る卦で、暗中に生ずる禍患最も提防し難し。疾病を問えば暴亡を主とし、家宅を問えば喪事あり。大凶。
蒙之家人:飛鷹退去,不食鄰鳥。憂患解除,君主安居。
蒙の卦が家人の卦に変わる。飛來の老鹰退走し、鄰家の小鳥を喫わず。憂愁禍患此より解除せられ、主人安然として居住す。家人は內治に法度あるを主とし、家に防範あれば外來の害自ら退く。占うに虛驚化解し、閤家平安なり。吉。
蒙之睽:跮蹉側跌,申酉為祟。亥戌滅明,顏子隱藏。
蒙の卦が睽の卦に変わる。脚步踉蹌して側身跌倒し、申・酉兩個の時辰上に邪祟作怪を爲す。亥・戌の時光に到りて光明熄滅し、顔子隱藏するのみ得たり。地支の値う所各々吉凶あり、古人之に據りて時日方位を推占す。睽とは乖離で、時運利ならざれば賢者退藏す。占うに時辰利あらず、行動跌蹉す。避くべくして進むべからず。凶。
蒙之蹇:司錄憑怒,謀議無道。商民失政,殷人乏祀。
蒙の卦が蹇の卦に変わる。司錄の神大いに雷霆を發し、人間の謀議全く道理なし。商朝の百姓善政を失い、殷人の宗廟もまた祭祀を斷つ。《尚書・牧誓》に紂王の罪を歷數し、其中便ち祭祀を廢棄する一条あり。蹇は跛足にして行き難し。政令昏亂すれば國步維艱なり。占うに政令當を失い、宗祀繼がず。大凶。
蒙之解:望雞得雉,冀馬獲駒。大德生少,有廖從居。
蒙の卦が解の卦に変わる。一隻の鷄を得んと盼ぐも野雉を得、一匹の冀北良馬を指望するも馬駒を得る。大徳の人生養する子嗣雖少なきも、廖氏の人ありて相い從いて居る。解は險難消散を主とし、得る所雖原望に合せずも終に獲あり。占うに意外の喜、人の相助を得るを主とし、吉。
蒙之損:忉忉怛怛,如將不活。黍稷之恩,靈輒以存。
蒙の卦が損の卦に変わる。憂心忡忡にして悲傷慘怛し、活きて下らんとせずとするがごとし。全く一頓の黍稷飯食の恩情に頼り、靈輒乃ち性命を保全するを得たり。《左傳・宣公二年》に趙盾翳桑に於て餓人靈輒を賑濟し、後來靈輒戟を倒して相い救い以て此の恩に報いたるを載す。損とは己を減じて人を益す。一飯の施し竟に人の一命を救う能し。占うに困厄の中人の接濟を得る。先に凶後に吉。
蒙之益:莫莫輯輯,夜作晝匿。謀議我資,來攻我室。空盡我財,幾無以食。
蒙の卦が益の卦に変わる。一伙の人悄悄地に聚集して群を成し、夜裏出て行動し白天躲藏す。彼ら我が資財を圖謀し、前來して我が家室を侵犯す。我が錢財を掏き盡して精光にし、ほとんど喫う所なし。益は本來增益を主とするが、ここではかえって剝奪を遭う。家宅を問えば盜竊を遭うを主とし、財物を問えば耗散殆ど盡きるを主とし、大凶。
蒙之夬:天之所壞,不可強支。眾口指笑,雖貴必危。
蒙の卦が夬の卦に変わる。上天の毁壞せんとする物は、人力勉强して支撐する能わず。衆人指指点点して紛紛と譏笑し、縱ひ身顯貴に居るも必ず危殆なり。夬は決し去る卦で、天意と人心と俱に已に去れば大勢挽回すべからず。占うに大勢已に去り、位高くして險し。凶。
蒙之姤:目動睫瞤,喜來加身。舉家蒙歡,吉利無殃。
蒙の卦が姤の卦に変わる。眼睛跳動し睫毛抽動す。古人これを以て喜事身に加わる先兆と爲す。全家皆歡樂を蒙り、吉利にして災殃なし。姤は期せず遇う。喜慶外より自ら來る。占うに意外の喜あり、閤家歡慶す。吉。
蒙之萃:黿羹芬香,染指弗嘗。口飢於手,子公恨饞。
蒙の卦が萃の卦に変わる。黿魚の羹は香氣鼻を撲つも、手指沾りつきて嘗めることを得ず。嘴巴飢えて只だ手指に頼りて饞を解すのみ。子公これによって恨みを懷き心在り。《左傳・宣公四年》に鄭國の公子宋食指大いに動き、靈公黿羹を賜うも偏偏彼に與えず、子公便ち鼎に染指し、終に弑君の禍を釀成するに至るを載す。萃は聚合で、聚まりて分配均しからざれば怨を生ず。占うに待遇公ならず、小に因りて大を失いて怨を結ぶ。凶。
蒙之升:天福所豐,兆如飛龍。成子得志,六三以興。
蒙の卦が升の卦に変わる。上天の賜う所の福澤豐厚にして、卜兆好比飛竜天に在り。田成子其の志願を實現し、累世の後大いに興盛す。《史記・田敬仲完世家》に田氏世々齊に徳を施し、終に齊を代えて立つを載す。升とは上進で、積累既に久しくして後驟然騰達す。占うに漸進して志を得、後世昌大なり。吉。
蒙之困:氓伯以婚,抱布自媒。棄禮急情,卒罹悔憂。
蒙の卦が困の卦に変わる。あの氓と呼ぶ男子前來して婚を議し、布匹を抱きて自ら媒を爲す。禮法を抛開して成せることを急ぎ、終に悔恨と憂愁とを招來す。《詩経・衛風・氓》は正に此の女棄てられし痛を寫す。困は困窮の卦で、苟合して禮を失すれば終に必ず困を受く。婚姻を問えば始め亂りて終に棄てられ、後日悔を生ず。凶。
蒙之井:夏姬親附,心聽悅喜。利以搏取,無言不許。
蒙の卦が井の卦に変わる。夏姬前來して親附依從し、心中樂意に聽從して歡喜す。勢に乘じて求取するに宜しく、應允せられざる一句もなし。夏姬は鄭穆公の女で、美色を以て列國を傾動す。事《左傳・成公二年》に見ゆ。井は人を養いてその源竭きざるを主とし、求む所皆應あり。占うに人を求めて允を得、願う所多く遂げる。吉。然れど色欲の累を防ぐを須いとす。
蒙之革:南山昊天,刺政閔身。疾悲無辜,背憎為仇。
蒙の卦が革の卦に変わる。《詩経・小雅・節南山》は南山蒼天に仰對して時政を譏刺するも、譏刺かえって自身を累にせしむ。無辜の人害を遭うを痛惜し、衆人背地裏に憎惡して仇怨を結ぶ。革は變革して舊を除くを主とし、變ずるも其の道を得ざれば怨仇叢生す。占うに事を言うて怨を招き、背後謗を受く。凶。
蒙之鼎:三人為旅,俱歸北海。入門上堂,拜謁王母。勞賜我酒,歡樂無強。
蒙の卦が鼎の卦に変わる。三人結伴同行して、一同に北海に奔赴す。門に入り堂に登りて、西王母に拜見す。西王母慰勞して我に美酒を賜い、歡樂窮盡なし。鼎は烹飪して賓客を饗するを主とし、遠行して貴人の款待を得る。占うに出行して貴に遇い、賓主歡を盡す。大吉。
蒙之震:愆淫旱疾,傷害稼穡。喪制病來,農人無食。
蒙の卦が震の卦に変わる。雨水時を失して過量なり、續いてまた旱災疫病ありて、莊稼を損傷す。喪事と疾病と接續して來り、農人食う飯なし。震は動であり驚懼である。天時と人事と一齊に震蕩す。農事を問えば歉收を主とし、家宅を問えば喪病を主とし、大凶。
蒙之艮:攫飯把肉,以就口食。所往必得,無有虛乏。
蒙の卦が艮の卦に変わる。飯を抓み肉を握り、嘴邊に送りて卽ち喫す。往く所必ず收穫あり、空手匱乏せず。艮は止まるなり。安んずべき所に止まれば飲食自ら足る。占うに衣食缺えず、出でば必ず獲あり。吉。
蒙之漸:鳥飛無翼,兔走折足。雖欲會同,未得所欲。
蒙の卦が漸の卦に変わる。鳥飛ばんと欲すれど翅膀なく、兔子走らんと欲すれど腿を折る。一心會合聚首せんと欲すと雖も、心願に達せず。漸は循序漸進を主とし、條件具備せざれば進むに進む可きなし。占うに力逮らざる有り、求む所遂げず。凶。
蒙之歸妹:體重飛難,不得逾關,不離室垣。
蒙の卦が歸妹の卦に変わる。身體沈重にして飛起し難く、關隘を過ぐる能わず、自家の屋牆を離るる能わず。歸妹は嫁娶を主とするも位分當たらず。力弱く勢拘せられれば動彈すること能わず。占うに出行阻まれ、久しく一隅に困す。舊を守るに宜しく遠圖すべからず。
蒙之豐:四雄並處,人民愁苦。擁兵西東,不得安所。
蒙の卦が豐の卦に変わる。四個の梟雄同時並立し、百姓愁苦堪えず。彼ら各々兵を擁して東西各處に盤踞し、人民安身の地を得ず。豐とは盛大で、群雄盛を爭えば天下累を受く。占うに時局割據し、流離して所を失う。大凶。
蒙之旅:譯重關牢,求解己憂。心感乃成,與喜俱居。
蒙の卦が旅の卦に変わる。通譯輾轉して關卡重重として牢固なれど、只だ己が憂愁を解開せんことを求む。心意相い感じて事情終に辦成し、此より喜慶と同住す。旅外に在りて阻碍甚だ多しと雖も、誠意通ずる能くば阻碍其の阻碍と爲らず。占うに阻を歷て後解を得、憂を轉じて喜と爲す。吉。
蒙之巽:患解憂除,王母相於。與喜俱來,使我安居。
蒙の卦が巽の卦に変わる。禍患化解し憂愁消除し、西王母前來して相助す。喜事一同に到來し、我をして安然居住するを得しむ。巽は順入で、神明の相佑を得れば往くに順ならざるなし。占うに厄運消散し、居家安泰なり。吉。
蒙之兌:冬生不華,老女無家。霜冷蓬室,更為枯株。
蒙の卦が兌の卦に変わる。冬天生長の草木花を開出する能わず、年老の女子歸宿なし。寒霜蓬草の搭成せる屋上に落ち、人もまた枯木朽株と變成す。兌は和悦なれど、時過ぎ境遷れば喜ぶ可き事なし。婚姻を問えば蹉跎して成らず、家計を問えば凄凉冷落なり。凶。
蒙之渙:震慄恐懼,多所畏惡。行道留難,不可以步。
蒙の卦が渙の卦に変わる。戰慄發抖して心懷恐懼し、處處畏忌厭惡する所有り。行路する時阻難重重として、一歩をも邁出する能わず。渙とは離散で、心神渙散すれば擧步艱難なり。占うに驚懼安んぜず、行事窒礙す。凶。
蒙之節:三人共妻,莫適為雌。子無名氏,公不可知。
蒙の卦が節の卦に変わる。三人一共に一個の妻子を有し、誰も彼女の究竟歸屬する所を説き清める能わず。生下した孩子名分姓氏なく、父誰なるかもまた知る由なし。節は度あり別あるを主とし、男女別なければ名分盡く亂る。占うに家門混濁にして名分明らかならず。大凶。
蒙之中孚:早凋被霜,花葉不長。非時為災,家受其殃。
蒙の卦が中孚の卦に変わる。過早に凋零し霜打ちを遭い、花と葉と皆長起する能わず。時令に合せざる氣候災害と成りて、一家人皆その禍殃を受く。中孚は誠信にして時に合するを貴ぶ。時序錯亂すれば萬物成らず。占うに時機合わず、家に災患有り。凶。
蒙之小過:雉兔之東,狼虎所從,貪叨凶惡,不可止息。
蒙の卦が小過の卦に変わる。野鷄と兔子と東邊に往き、豺狼虎豹其の後に緊隨す。貪婪凶惡の徒罷休するを肯んぜず、制止平息する能わず。小過は只だ小事を謹守するに宜しく、弱者强敌に遭遇すれば自ら免れ難し。占うに强鄰窺伺し、危機斷えず。凶。
蒙之既濟:馬驚破車,主墜深溝。身死魂去,離其室廬。
蒙の卦が既濟の卦に変わる。馬驚きて車子を撞壞し、主人深溝に墜入す。人死に魂散り、己が屋舍を離る。既濟は事已に辦成して復た危險を生ずる卦で、安中に危を藏す。出行を問えば車馬の禍を主とし、身體を問えば性命の憂を主とし、大凶。
蒙之未濟:山林麓藪,非人所往。鳥獸無禮,使我心苦。
蒙の卦が未濟の卦に変わる。深山老林・山麓草澤は、人の往くべき地にあらず。そこらの鳥獸禮法を解せず、我をして心中苦惱せしむ。未濟は事情未だ辦成せざる卦で、其の地に非ざるに處れば作爲有る難し。占うに處する所當を失い、人と合わず。速やかに此地を離るべし。凶。
需の林(需卦六十四林)
需之需:久旱三年,草木不生。粢盛空乏,無以供靈。
需の卦が自ら変じても需の卦のままである。大旱連續三年、草木皆長出する能わず。祭祀に用うる穀物空缺匱乏して、神靈に供奉すべき東西なし。《禮記》は粢盛を以て祭祀の本と爲す。粢盛繼がざれば祭祀斷絕す。需とは時機を待つこと。久しく待ちて甘霖至らず。占うに長期困乏し、祈求應なし。大凶。
需之乾:火滅復息,君明其德,仁人可遇,身受利福。
需の卦が乾の卦に変わる。火已に熄滅して重新して燃起し、君主其の徳行を昌明す。仁徳の人遇見すべく、自身利益と福澤とを領受す。乾は剛健の天で、絶えて復た續けば徳業重ねて光り輝く。占うに時來り運轉し、貴に遇いて福を得。吉。
需之坤:溫山松柏,常茂不落。鸞鳳所庇,得其歡樂。
需の卦が坤の卦に変わる。温煖山上の松樹柏樹、四季常青にして凋落せず。鸞鳥鳳凰樹蔭の下に庇護を得て、因りて歡樂す。松柏後れて凋むは、古人之を以て君子の節を守りて移らざるを喩う所なり。坤の徳深厚にして載す能くし、庇護する所の一切皆安穩を得。占うに根基長固にして依托する所有り。吉。
需之屯:西誅不復,恃強負力。倍道趨敵,師徒敗覆。
需の卦が屯の卦に変わる。西に向かいて征討するも一去返らざるは、只だ强悍を倚仗し氣力を自恃するが故なり。加倍して路を趕り敵に奔向すれば、軍隊因りて覆沒す。《孫子・軍爭》に「五十里にして利を爭えば、則ち上將軍を蹶す」と曰う。正に倍道兼行すべからずを告誡す。屯は初生艱難の卦で、力を恃み躁進すれば必ず敗る。兵事を問い爭競を問うに、大敗を主とし、凶。
需之蒙:三塗五嶽,陽城太室,神明所伏,獨無兵革。
需の卦が蒙の卦に変わる。三塗山と五岳、陽城と太室山とは、皆神明の潜居する所在で、唯だこれらの地方のみ兵戈戰亂なし。太室は嵩山の主峰で、古時祭天の地なり。蒙とは昏昧にして未だ開けざること。然れど神山に依托すれば兵禍を免るべし。占うに地を擇びて難を避け、兵災を遭うを免る。吉。
需之訟:三牛生狗,以戌為母。荊夷上侵,姬伯出走。
需の卦が訟の卦に変わる。三頭の牛狗を生出し、戌地を以て毋親と爲す。物類顛倒して常を失す。荊楚蠻夷上に向かいて侵擾し、姬姓の伯主出逃するのみ得たり。古人は牲畜の異類を生出するを以て大凶の妖とす。訟は爭訟を主とし、怪異既に現るれば爭端これに隨いて起る。占うに外患侵逼し、主人避け走る。凶。
需之師:鳧游江海,役行千里。以為死亡,復見空素。長主凶憂。
需の卦が師の卦に変わる。野鴨江海の上に遨游し、服役の人千里に遠行す。家裏以て彼已に死せりと爲すも、再び見るに及びて只だ一片空白の素服の餘るのみ。師は兵を興し衆を動かすを主とし、久しく外に役すれば生死卜し難し。占うに行人凶信あり、家中喪憂あり。大凶。
需之比:太乙駕騮,從天上來,徵君叔季,封為魯候,無有凶憂。
需の卦が比の卦に変わる。太乙神赤色の駿馬に駕し、天上より降臨して、您が家の叔季の子を徵召し、彼を封じて魯國の諸侯と爲さば、凶險の憂患なし。太乙は古代の尊神で、命祿を主司す。比は親附相輔で、命を天に受ければ貴く且つ安し。占うに徵擢を受け用ゐられ、平安にして顯達す。大吉。
需之小畜:紝績獨居,寡處無夫。陰陽失忘,為人僕使。
需の卦が小畜の卦に変わる。紗を紡ぎ布を織りて獨自居住し、寡居して夫なし。陰陽配偶之道既に失落し、人に仆役を爲して差遣に任ずるのみ得たり。小畜は蓄うる所尚小さく力弱く濟し難き卦。婚姻を問えば孤寡して偶なし。身世を問えば人の籬下に寄す。凶。
需之履:兵征大宛,北出玉門。與胡寇戰,平城道西。七日絕糧,身幾不全。
需の卦が履の卦に変わる。兵を發して大宛を征討し、北に玉門關を出る。胡人の寇兵と交戰して平城道西に困せられ、七日糧を斷たれ、性命ほとんど保たず。漢武帝の大宛を伐ち、漢高祖平城に圍まれて七日なるは、皆《史記》に見ゆ。履は危を踐みて行うを主とし、險を履みて回避を知らざれば危殆なり。兵事を問い遠行を問うに、困厄危亡を主とし、大凶。
需之泰:楚靈暴虐,疲極民力。禍起乾溪,棄疾作毒。扶仗奔逃,身死亥室。
需の卦が泰の卦に変わる。楚靈王暴虐無道にして、民力を消耗して極處に至らしむ。禍端乾谿より發起し、公子棄疾兵を興して害を爲す。靈王拐杖を扶けて倉皇として奔逃し、最後に人家の裏に死す。《左傳・昭公十三年》に楚靈王敗亡の事を載す。泰は通達を主とすると雖も、民を虐め力を耗せば通極まりて否に轉ず。占うに民を勞して亂を致し、身敗れ名裂く。大凶。
需之否:雌單獨居,歸其本巢。毛羽憔悴,志如死灰。
需の卦が否の卦に変わる。雌鳥孤獨にして獨處し、己が元來の巢裏に回る。羽毛憔悴堪えず、心志灰冷して死灰のごとし。否は天地交わらざる卦で、孤陰生育する能わず。占うに孤獨にして偶を失い、意志消沉す。凶。
需之同人:兩矛相刺,勇力鈞敵。交綏結如,不破不缺。
需の卦が同人の卦に変わる。兩支の長矛互相い刺擊し、雙方の勇力勢均力敵なり。交戰の後各々兵を退き、糾結相持して誰も破損缺口なし。「交綏」は《左傳・文公十二年》に見え、兩軍刃を接して各々退却するを指す。同人は人と和同するを主とし、勢均力敵なれば同を求め兵を罷むるに如かず。占うに爭うも勝負分かれず。和解して爭を息むるに宜し。
需之大有:乘船渡濟,載水逢火。賴倖免禍,蒙我生全。
需の卦が大有の卦に変わる。船に乘りて濟水を渡るに、船上水を載せて卻って火に遇う。幸いに僥倖災禍を躲過し、性命を保全するを得たり。大有は本來富盛を主とするが、水火交攻すれば成を守ること易からず。占うに險中に脫を得、驚ありて險なし。先に危後に安し。
需之謙:喪寵溢尤,政傾家覆。我宗失國,秦滅周室。
需の卦が謙の卦に変わる。恩寵を失して怨尤滿溢し、政事傾頹して家道覆亡す。我ら宗族國家を丢し、秦國周室を滅掉す。《史記・周本紀》に秦昭王五十一年西周を滅ぼしし事を載す。謙とは益を受くること。驕盈して謙徳を失えば必ず傾覆す。占うに勢を失い家を亡し、宗祀斷絕す。大凶。
需之豫:冬無藏冰,春陽不通。陰流為賊,國被其殃。
需の卦が豫の卦に変わる。冬天冰を藏ること好しとせざれば、春天の陽氣順暢に通行する能わず。陰氣流竄して害を爲し、國家其の災殃を蒙る。《左傳・昭公四年》に申豐の藏冰の政を論ずるを載せ、其の時を失せば陰陽序を失して災疫並び作ると曰う。豫は豫め防備するを主とし、豫めざれば事廢る。占うに準備周ならず、後患之に隨う。凶。
需之隨:田鼠野雞,意常欲逃。拘制籠檻,不得動搖。
需の卦が隨の卦に変わる。田鼠と野鷄と、心裏總に逃走せんと想うも、籠子柵欄の裏に關えられて、一動も動く能わず。隨とは時に隨いて動く。人に受制せられれば自らその志に隨うを得ず。占うに身拘束を受け、志ありて伸び難し。凶。
需之蠱:佩玉蕊兮,無所繫之。旨酒一壺,莫與笑語。孤寡獨特,常愁憂苦。
需の卦が蠱の卦に変わる。佩玉低垂すれど、繫挂すべき所なし。美酒一壺あれど、陪して談笑する人なし。孤零零として一個人、常に憂愁苦悶す。蠱は積弊治を待つを主とし、人事零落すれば百聊賴なし。占うに孤獨にして侶なく、憂思解け難し。凶。
需之臨:沒遊源口,求鮫為寶。家危自俱,復出生道。
需の卦が臨の卦に変わる。水源の口に潜入して游泳し、往きて鮫人の珠を求めて寶物と爲す。家中危難にして自身もまた一同に險境に陷入す。所幸また水面に浮出して生路を得たり。古傳南海に鮫人あり、泣淚珠と成る。臨は高に居りて下に臨むを主とし、利を貪りて險を涉れば危し。占うに財のために險を冒し、僥倖して生を得。先に凶後に吉。
需之觀:河水孔穴,壞敗我室。水深無岸,魚鱉傾側。
需の卦が觀の卦に変わる。河堤上に孔洞出現し、河水我が房屋を沖壞す。水深くして岸を望見えず、魚鱉すらも沖し倒されて東倒西歪なり。觀は觀察省視を主とし、堤上の穴早く察せざれば大禍頭に臨む。占うに水患門に臨み、居室傾毁す。大凶。
需之噬嗑:教羊牧兔,使魚捕鼠。任非其人,費日無功。
需の卦が噬嗑の卦に変わる。羊を教へて兔子を放牧せしめ、魚をして老鼠を捕捉せしむ。人を用ゐて其の當を得ず、時日を白費して功效毫もなし。噬嗑は嚙合して梗阻を去るを主とするが、その材に非ざるを用ゐれば梗阻愈甚し。占うに人を用ゐること當を失い、勞して功なし。凶。
需之賁:升戶入室,就溫燠食。冰凍北陸,不能相賊。
需の卦が賁の卦に変わる。階を登り門に入り屋に進み、温暖の處に就きて進食す。北方嚴寒氷凍するも、屋裏の人を傷害するに及ばず。賁は文飾を主とし、居處其の所得れば外寒相い侵す能わず。占うに所を得て安居し、險を避けて害なし。吉。
需之剝:孤竹之噓,老婦無夫。傷於蒺藜,不見少妻。東郭棠姜,武氏破亡。
需の卦が剥の卦に変わる。孤竹國の廢墟の上、老婦人丈夫なし。身上蒺藜に刺傷せられ、年少の妻室を見る能わず。齊國崔武子東郭偃の姉棠姜を娶り、終に弑君敗家に致る(《左傳・襄公二十五年》)。剥は剥落の卦で、女色を貪戀すれば家業剥盡す。占うに色に因りて家を破り、孤苦にして依る所なし。大凶。
需之復:凶禍災殃,日益明彰。福不可剺,三郄夷傷。
需の卦が復の卦に変わる。凶險禍事と災殃と、一天比一天に顯露分明なり。福氣已に割取する能わず、晋國の三郤終に誅滅せらる。《左傳・成公十七年》に晋厲公郤錡・郤犨・郤至を殺し、尸を朝に陳ししを載す。復は一陽來復なれど、惡積むこと既に深ければ復と雖も救う无し。占うに禍端漸々顯れ、大族傾覆す。大凶。
需之無妄:載璧秉珪,請命於河。周公作誓,沖人瘳愈。
需の卦が无妄の卦に変わる。玉璧を捧げ玉圭を手持ちして、河神に命を請う。周公祝辭を寫して誓を立て、年幼の君王病體痊愈す。《尚書・金縢》に周公身を以て武王に代りて先王に命を請いし事を載す。《无妄》は至誠にして妄求せざるを主とし、誠心感格すれば災去り病除く。占うに禱告應あり、疾病愈を得。吉。
需之大畜:鳥升鵲舉,照臨東海。龍降庭堅,為陶叔後。封圻英六,履祿綏厚。
需の卦が大畜の卦に変わる。鳥兒飛升し喜鵲高擧し、光輝東海を照臨す。竜徳庭堅の身上に降り、彼陶叔の後嗣と成る。庭堅卽ち皐陶なり。其の後代英・六の地に封を受け、《左傳・文公五年》に「皐陶庭堅祀忽諸ならん」の歎あり。英・六に封疆せられ、享くる所の祿位安穩にして豐厚なり。大畜は徳を蓄え積厚を主とし、徳厚ければ澤子孫に及ぶ。占うに家世顯達し、福蔭後人に及ぶ。大吉。
需之頤:危坐至暮,請求不得。膏澤不降,政戾民忒。
需の卦が頤の卦に変わる。端端正正に跪坐して天黑くなるまで、請求する事仍ほ得る能わず。恩澤降下するを肯んぜず、政令乖戾にして民心疑貳す。頤は萬民を頤養するを主とし、上に在る者其の下を養わざれば民怨沸騰す。占うに人を求めて應ぜず、上下相い違う。凶。
需之大過:宜昌娶婦,東家歌舞。宴樂有序,長樂嘉喜。
需の卦が大過の卦に変わる。昌盛の時に乘じて妻を娶るに宜しく、東鄰人家歌を載せ舞を載せて相い慶す。宴飲歡樂して秩序井然として、長く快樂にして喜事美滿なり。大過は過甚の卦なれど、禮節序あれば過ぐとも其の正を失わず。婚姻を問えば大吉。家宴を問えば和樂を主とす。
需之坎:鑿井求玉,非卞氏寶。名因身辱,勞無所得。
需の卦が坎の卦に変わる。井を挖きて美玉を求美するも、得る所は卞和のごとき至寶にあらず。名聲これによって自身辱を蒙り、勞苦して一の獲る所なし。《韓非子・和氏》に卞和璞を獻じて兩たび刖足に遭いし事を載す。坎は重なる險陷で、妄求に陷れば愈陷るほど愈深し。占うに方法當を失い、名利兩空なり。凶。
需之離:鴻鵠思其雄,欲隨鳳東。順理羽翼,出次須日。中留北邑,復反其室。
需の卦が離の卦に変わる。雌の鴻鵠其の配偶を思念し、鳳凰に隨從して東に飛去らんと欲す。羽毛翅膀を梳理して、出行駐扎して吉日を等待す。中途卻って北方の城邑に滯留し、最終また己が巢室に返回す。離は附麗で、附く所未だ定まらざれば去りて復た返る。行人を問えば中途折回を主とし、婚姻を問えば聚まりて復た散ずを主とす。
需之咸:早霜晚雪,傷害禾麥。損功棄力,飢無所食。
需の卦が咸の卦に変わる。霜下ること太早く雪來ること太晚く、禾苗麥子を傷害す。一年の功夫白費し氣力白抛し、飢餓して喫ふべき東西なし。咸は交感の卦で、天時人事と相い感ぜざれば農功盡く敗る。占うに天時利あらず、收成活計なし。凶。
需之恆:蝙螺生子,深目黑丑。雖飾相就,眾人莫取。
需の卦が恒の卦に変わる。蝙蝠螺蚌の類の生ずる子、眼窩深陷して面色黑醜なり。裝飾を加えて人と相い就らんとするも、衆人肯んじて娶る者なし。恒とは常久で、本質美ならざれば修飾もまた長久し難し。占うに外飾內陋を掩う能わず、偶を求め名を求めて皆遂げず。凶。
需之遁:去如飛鴻,避凶直東。遂得全脫,與福相逢。
需の卦が遯の卦に変わる。離去する時飛鴻のごとく迅疾にして、凶險を躲避して徑に東に往く。ここに完全に身を脫し、福氣と相遇う。遯とは退避して自身を保全する。機を識り早く退けば禍を免るべし。占うに時に及んで身を抽き、危を轉じて福と爲す。吉。
需之大壯:婚姻合配,同枕共牢,以降休嘉,子孫封候。
需の卦が大壯の卦に変わる。婚姻配合當を得て、枕を同じくして臥し牲を共にして食す。これによって美善吉慶を降し、子孫封を受けて侯と爲る。《禮記・昏義》に「牢を共にして食らい、卺を合して酳す」と載せ、これ夫婦一體の禮なり。大壯は剛正して勢を得るを主とし、配合正を以てすれば家道大いに興る。婚姻を問えば美滿、子嗣を問えば顯貴を主とす。大吉。
需之晉:咸陽辰巳,長安戌亥。丘陵生止,非魚鰍市。不可辭阻,終無悔咎。
需の卦が晋の卦に変わる。咸陽辰巳の方位に在り、長安戌亥の方位に在り。丘陵高處安居止息すべく、そこは魚鰌の聚集する低窪の水市にあらず。辰巳戌亥皆地支方位の名で、古人之に據りて居處の吉凶を判定す。晋は上進を主とし、地を擇びて正を得れば進んで咎なし。推辭退縮すべからず、終に悔恨過失なし。占うに高に居り正に就き、行事咎なし。
需之明夷:螟蟲為賊,害我五穀。簞食空虛,家無所食。
需の卦が明夷の卦に変わる。螟蟲害物と成りて、我が五谷を糟蹋す。飯筐空空如也として、一家人喫うものなし。明夷は光明傷つく卦で、暗中の蠹害最も人を耗す能し。農事を問えば歉收を主とし、家計を問えば匱乏を主とし、凶。
需之家人:謀恩拜德,東歸吾國。慷慨宴笑,歡樂有福。
需の卦が家人の卦に変わる。恩情を圖報し徳惠に叩謝し、東に我が國家に回る。意氣慷慨として宴を設け談笑し、歡樂の中自ら福氣あり。家人は一家和睦を主とし、本に報い始に反れば家道興旺す。占うに家に歸りて團聚し、賓主歡洽す。吉。
需之睽:齋具贖狸,不聽我辭。繫於虎鬚,牽不得來。
需の卦が睽の卦に変わる。齋食器具を備えて狸猫を贖回せんとするも、對方我が説辭を聽かず。あの狸猫老虎の鬍鬚の上に繫がれ、牽くも牽き過ぐる能わず。睽とは乖離で、求む所と遇う所と道を背にして馳す。占うに交渉成らず、求む所望なし。凶。
需之蹇:比目附翼,歡樂相得。行止集周,終不離忒。
需の卦が蹇の卦に変わる。比目魚雙を成し比翼鳥並び飛び、歡樂して彼此相い得。一行一止皆周全合宜にして、始終差失分離せず。比目と比翼とは、古人之を以て夫婦相守して離れざるを喩う所なり。蹇は難行の卦なれど、良伴を得て同行すれば難もまた其の難と爲らず。婚姻を問えば白頭偕老す。大吉。
需之解:一指食肉,口無所得。染其鼎鼐,舌饞於腹。
需の卦が解の卦に変わる。たった一本の指で肉を取りて喫わんとするも、口の中ついに何も得ず。手指鼎鼐の中の汁に沾り、舌饞えて腹鳴るやまず。これ鄭靈公の黿羹を賜い、子公鼎に染指するの故事と同一の意趣なり。解は險難消散するを主とするも、然れど欲する所得られざれば饞念消え難し。占うに望むべくして即く可からず、求む所落空す。凶。
需之損:曳綸江海,鉤掛魴鯉。王孫得利,以享仲友。
需の卦が損の卦に変わる。釣糸を江海の中に拖く、魚鉤魴魚と鯉魚とに挂上る。王孫これによって利を得、以て仲氏この友を款待す。損とは己を減りて人に益す。得る所有りて人と共享する能くば福厚し。占うに漁獵獲あり、利を以て良友を結ぶ。吉。
需之益:商紂牧野,顛敗所在。賦斂重數,黎元愁苦。
需の卦が益の卦に変わる。商紂王牧野の一戰、それ正に彼の傾覆敗亡する地なり。賦税征斂沈重にして頻繁、百姓愁苦堪えず。《尚書・牧誓》は周武王の紂を伐ち、牧野に會戰する事を載す。益は本來上を損りて下に益す。若し反つて下を剥りて上に奉ぜば、便ち大損と成る。占うに苛斂民を失い、根基崩壞す。大凶。
需之夬:北辰紫宮,衣冠立中。含和建德,常受天福。
需の卦が夬の卦に変わる。北極星紫微宮に安處し、衣冠肅整として中位に立つ。和氣を蘊含し徳業を樹立して、因りて常に上天の福澤を承る。《論語・爲政》は北辰其の所に居りて衆星環に拱するを以て、徳を以て政を爲すに喩う。夬は決斷して邪を去るを主とし、自身正に居れば邪干る能わず。占うに中を守りて福を得、邪を去りて自ら安し。吉。
需之姤:輕戰尚勇,不知兵權。為敵所制,從師北奔。
需の卦が姤の卦に変わる。軽率に交戰して只だ勇力を尚び、用兵の權變を解せず。結果敵に制せられ、軍隊に隨いて北に敗逃す。《孫子》は「兵は詭道なり」を以て要旨と爲す。勇を尚びて謀なければ必ず敗る。姤は期せずして遇う。敵に遇いて備えなければ處處制を受く。兵事を問い爭競を問うに、大敗を主とし、凶。
需之萃:大口宣舌,神使仲言。黃龍景星,出應德門。與福上天,天下安昌。
需の卦が萃の卦に変わる。大口を張り言辭を宣揚し、神明仲氏を差遣して前來して話を傳えしむ。黄龍と景星と出現し、徳ある者の門に應和す。古人は黄龍・景星を以て太平の祥瑞と爲す。《漢書・天文志》に見ゆ。福氣隨いて上達して天に至り、天下安定昌盛す。萃は聚合で、徳行既に聚れば瑞應自ら來る。占うに祥瑞並び至り、國泰民安なり。大吉。
需之升:凶子禍孫,把劍向門。凶訟歡囂,驚駭我家。
需の卦が升の卦に変わる。兇悍の子・禍を惹く孫、劍を提げて家門に冲り向かう。凶險の爭訟喧鬧休まず、我が一家人を驚駭せしむ。升は上進を主とするも、家教立たざれば子孫反つて禍患と爲る。占うに家門寧ならず、官非纏まる。大凶。
需之困:祝伯善言,能事鬼神。辭祁萬歲,使君延年。
需の卦が困の卦に変わる。祝史伯氏祝禱の辭に擅み、鬼神に侍奉する能くす。彼萬歳の壽を祈求し、君主をして延年益壽せしむ。《詩経・小雅・楚茨》に「工祝告を致す」の語あり。祝官は正に祭祀祝辭を主司する人なり。困は困窮の卦なれど、神明の護佑を得れば困厄解くべし。占うに祈禳効あり、身安く壽永し。吉。
需之井:圭璧琮璋,執贄見王。百里甯戚,應聘齊秦。
需の卦が井の卦に変わる。圭・璧・琮・璋等の玉器を手持ちして見面の禮と爲し、君王を朝見す。百里奚と寧戚、分かれて秦國と齊國とに應聘す。百里奚は秦穆公の五羖大夫、寧戚は牛角を扣きて歌い齊桓公に用ゐられたり。事皆《史記》に見ゆ。井は人を養いてその源竭きざるを主とし、賢者其の所を得れば國家之を用う。占うに才を懷きて遇を得、聘を受けて顯達す。大吉。
需之革:昧旦乘車,履危蹈溝。亡失裙襦,催折兩軸。
需の卦が革の卦に変わる。天未だ明けざるに車に乘りて路を趕り、危途を踏み溝に跌入す。裙子と短襖とを丢し、還つて車軸二本を壓折す。革は變革を主とし、變を急ぎて時を審らかに勢を度さざれば必ず損を受く。占うに行事躁急にして、財を破り身を傷く。凶。
需之鼎:膠著木連,不出牛欄。斯饗羔羊,家室相安。
需の卦が鼎の卦に変わる。膠を以て木料を黏合堅固にせば、牛便ち欄圈を出る能わず。ここに羊を宰し飨を設け、一家人相安じて事なし。鼎は烹飪して人を養うを主とし、之を守るに堅固を以てすれば內外皆安し。占うに成を守りて安を得、家宅和順す。吉。
需之震:卷領遁世,仁德不舍。三聖攸同,周家茂興。
需の卦が震の卦に変わる。古朴の巻領の衣を著て世を避けて隱居し、仁徳の心卻って始終捨てず。太王・王季・文王の三位の聖人守る所相同じく、周家これによって繁茂興盛す。震は動なり。動きて其の徳を失わざれば必ず興る。占うに隱居して徳を守りて後大いに興る。吉。
需之艮:黍稷苗稻,垂秀方造,中旱不雨,傷風枯槁。
需の卦が艮の卦に変わる。黍・稷・禾苗と稻子、正に穗を抽き花を吐くの際に當たり、中途旱に遇いて雨降らず、また風に吹傷せられて枯槁す。艮は止なり。生長して中途に止められれば功簣を虧く。占うに事半途に至りて挫を受け、收成望なし。凶。
需之漸:冠帶南遊,與福喜逢。期於嘉貞,拜為公卿。
需の卦が漸の卦に変わる。衣冠を整え腰帶を束ねて南に遊歴し、福氣喜事と相逢う。美善貞正の道を期望し、終に公卿に拜せらる。漸は循序して進むを主とし、正道を以て進めば位顯要に至る。占うに外出して貴に遇い、仕途昇遷す。大吉。
需之歸妹:一巢九子,同公共母。柔順利貞,出入不殆,福祿所在。
需の卦が歸妹の卦に変わる。一個の巢裏に九隻の雛鳥を養い、父同じく母同じ。性情柔順にして正を守るに利あり、進入し退出して皆危險なく、福と祿と皆ここに匯聚す。《詩経・召南・鵲巢》は鳥の巢を以て家室に喩う。歸妹は嫁娶を主とし、柔順にして正を守れば家道昌盛す。占うに子孫繁盛し、出入平安なり。大吉。
需之豐:韓氏長女,稼於東海。宜家富主,柔順以居。利得過倍。
需の卦が豐の卦に変わる。韓氏家の大女兒、東海の濱に出嫁す。彼女夫家を和睦せしめ主人を富足せしめ、柔順の徳を以て安んじて其の位に居り、獲る所の利倍を加う。「稼」ここに「嫁」に通ず。豐とは盛大で、賢婦內助あれば家業倍增す。婚姻を問えば賢妻を得、財を求むを問えば厚利を獲。大吉。
需之旅:因禍受福,喜盈我室,所願必得。
需の卦が旅の卦に変わる。禍事に因りて反つて福氣を得、喜慶我が屋舍に充滿し、盼望する所必ず實現するを得。《老子》に「禍兮とは福の倚る所」と曰う、正に此の理なり。旅外に居りて轉機に逢い、逆境反つて順境と成る。占うに禍を轉じて福と爲し、心に想う事成る。大吉。
需之巽:晉平有疾,迎醫秦國。病乃大患,分為兩豎。逃匿膏盲,和不能愈。
需の卦が巽の卦に変わる。晋國の國君病を生じ、秦國に赴きて醫生を請う。病勢竟に大患と成り、二個の小童と化し、膏肓の間に逃蔵し、名醫をも治す能わず。《左傳・成公十年》は二竪膏肓に入り醫緩手を束ねるを載せ、《昭公元年》また秦國の醫和晋侯の疾を診るを載す。巽は順入で、病邪深く入りて極に至れば藥力到達する能わず。疾病を問えば沈疴起ち難し。大凶。
需之兌:牡飛門啟,憂患大解。修福行善,不為身禍。
需の卦が兌の卦に変わる。門閂飛脫し大門敞開し、憂愁禍患大いに消解す。福徳を修積し善事を廣く行えば、便ち自身に禍患を招かず。兌は和悦で、心懷開朗なれば事事順遂す。占うに困局打開し、善を行いて安を得。吉。
需之渙:追亡逐北,至止而得。雉叔相呼,反其室廬。
需の卦が渙の卦に変わる。逃亡を追趕し敗兵を追擊し、目的地に追及して擒獲する所有り。野雉と叔氏と相互に呼應し、一同に自家の屋舍に返回す。渙とは離散で、散じて復た聚れば事得て成る。占うに追尋獲あり、離れて復た合す。吉。
需之節:鳥銘既端,一呼三顛。動搖東西,危栗不安。疾病無患。
需の卦が節の卦に変わる。鳥形の銘器端正に擺放せど、一聲の呼喝三たび顛倒す。東に搖れ西に晃え、危懼戰慄して安寧を得ず。所幸疾病の方に憂患なし。節は度あるを主とし、度を失えば動蕩して寧からず。然れど其の節を守る能ければ、故に病大礙なし。占うに局勢動蕩して身體恙なく、吉凶相い參ず。
需之中孚:龍化為虎,泰山之陽。眾多從者,莫敢救藏。
需の卦が中孚の卦に変わる。竜變化して老虎と成り、泰山の南面に盤踞す。隨從する人多しと雖も、敢えて救助し藏匿する者なし。中孚は誠信相い孚るを貴ぶ。威勢太盛なれば衆人畏懼して親しまず。占うに威重くして孤立し、衆畏れて助けなし。威を省みて徳を修むるに宜し。
需之小過:焱風忽起,車馳揭揭。棄名追亡,失其和節,憂心輟輟。
需の卦が小過の卦に変わる。旋風忽然刮起し、車馬疾馳して顛簸止まず。名聲を抛下して逃亡する人を追趕し、和順の節度を失い、憂心忡忡として自ら止む能わず。小過は只だ小事を行うに宜しく、下に宜しく上に宜しくならず。躁進すれば節を失す。占うに行事度を失い、心神寧からず。凶。
需之既濟:遊居石門,祿安身全。受福西鄰,歸飲玉泉。
需の卦が既濟の卦に変わる。石門に遊歴安居し、祿位安穩にして身體保全す。西邊の鄰居より福澤を領受し、歸りて玉泉の水を飲用す。《既濟》九五に「東鄰の牛を殺すは、西鄰の禴祭に如かず、實に其の福を受く」と曰う。重んずる所は誠敬にして牲牢の豐厚に在らず。占うに身を安んじ命を立て、福を受け養を得。吉。
需之未濟:登高上山,見王自言。申理我饞,得職蒙恩。
需の卦が未濟の卦に変わる。高處に登り山頂に爬り、君王に見えて自ら陳説す。我に對する讒毀を申辯澄清し、因りて官職を得恩澤を蒙る。未濟は事情尚未だ辦成せざる卦で、自ら陳する能くば未成の者終に成るべし。占うに冤屈雪を得、身を進めて祿を受く。吉。
訟の林(訟卦六十四林)
訟之訟:文巧俗弊,將反大質。僵死如麻,流血濡櫓。皆知其母,不識其父,干戈乃止。
訟の卦が自ら変じても訟の卦のままである。文飾巧僞にして風俗敗壞し、將に質朴の世に返歸せんとす。僵卧の死尸亂麻のごとく多く、流出の血大盾をも浸透す。賈誼《過秦論》に「尸を伏すこと百萬、血を流して櫓を漂はす」の語あり。正に此の等の慘狀を寫す。亂世の中人々只だ母あるを知りて父を識らず、干戈至りて終に停息す。訟は爭訟を主とし、爭い極處に至れば兩敗俱に傷く。占うに大亂の後大治に歸し、先に大凶にして後定を得。
訟之乾:文王四乳,仁愛篤厚。子畜十男,夭折無有。
訟の卦が乾の卦に変わる。周文王四乳を生有し、仁愛の心篤實深厚なり。十個の兒子を養育し、夭折する一個もなし。《淮南子・修務訓》に「文王四乳、これを大仁と謂う」と記す。乾は父道剛健で、徳厚ければ子孫蕃盛す。子嗣を問えば人丁興旺にして育養災なし。大吉。
訟之坤:日入望東,不見子家。長女無夫,左手搔頭。
訟の卦が坤の卦に変わる。太陽山に落つる時東に眺望して、子家の人影を望見ず。長女尚未だ夫婿なく、只だ左手を以て頭髮を搔きて愁う。《詩経・邶風・靜女》に「首を搔きて踟蹰す」の態あり、正に此の般の光景なり。坤は純陰で、孤陰陽なければ婚配成り難し。婚姻を問えば佳期渺茫、行人を問えば音信斷絕す。凶。
訟之屯:東上泰山,見堯自言。申理我冤,以解憂患。
訟の卦が屯の卦に変わる。東に向かい泰山に登り、唐堯に見えて自ら陳訴す。我が冤屈を申辯伸雪し、因りて憂愁禍患を解除す。傳うる所に堯舜東に巡狩して岱宗に至り、訟を聽き疑を決すと。屯は初生艱難の卦で、冤情申訴するを得れば艱難自ら解く。占うに冤を訴えて直を得、憂患消除す。吉。
訟之蒙:奎軫溫湯,過角宿房。宣時布和,無所不通。
訟の卦が蒙の卦に変わる。奎宿と轸宿との間温暖湯のごとく、星次運行して角宿を經て房宿に止宿す。時令を宣明し和氣を布散し、行われざる無し。奎・轸・角・房は皆二十八宿の名で、古人星次に據りて農時を定む。蒙とは昏昧にして啓かるるを待つ。天時の明を得れば通ぜざる無し。占うに時令順遂にして、諸事亨通す。吉。
訟之需:飲船牽頭,雖拘無憂。王母善禱,禍不成災。
訟の卦が需の卦に変わる。船身水に浸りて人に船頭を牽かれて前行す。拘管を受くると雖も憂患なし。西王母祈禱に善く、禍事災難を釀成せず。需とは時機を待つこと。靜に待ちて祈禳の効を俟てば險象自ら消ゆ。占うに小さく拘束あれど終に大害なし。先に憂後に安し。
訟之師:鳧得水沒,喜笑自啄。毛羽悅澤,利以攻玉。公出不復,伯氏客宿。
訟の卦が師の卦に変わる。野鴨水を得て其の中に潜入し、歡喜して自ら羽を梳理啄む。羽毛光潤悦澤にして、以て美玉を琢磨するに宜し。然れど主公門を出でて再び回らず、伯氏只だ外に客居して夜を過ごすのみ得たり。《詩経・小雅・何人斯》に「伯氏塤を吹き、仲氏箎を吹く」の歎あり、正に朋友の乖離を傷む。師は衆を聚めて出征するを主とし、其の所を得れば安樂に、其の歸を失せば孤零なり。占うに意を遂げて人事離散す。吉凶相い參ず。
訟之比:水流趨下,欲至東海。求我所有,買魴與鯉。
訟の卦が比の卦に変わる。水低處に向かいて奔流し、一心に東海に流れんと要す。我が有する所の物を尋求し、魴魚と鯉魚とを買來す。比は親附相輔で、勢に順い行えば求む所必ず得。占うに流れに順いて利を得、交易順遂す。吉。
訟之小畜:獐鹿逐牧,安飽其居。反返次舍,無有疾故。
訟の卦が小畜の卦に変わる。獐子と鹿と追逐して食を覓め放牧し、己が居處に安んじて飽足す。住所に返回して安歇し、疾病なくまた變故なし。小畜は小を以て大を蓄う。分に安んじ自ら足れば災なく難なし。占うに生活安穩にして平安事なし。吉。
訟之履:樹植藿豆,不得芸鋤。王事靡盬,秋無所收。
訟の卦が履の卦に変わる。豆苗豆葉を種下すと雖も、草を除き土を松くするに顧みず。《詩経・唐風・鴇羽》に「王事盬ならず」と曰う、公家の差事盡くることなく、秋に至りて何をも收せず。履は禮に循い踐行するを主とし、外に勞役すれば內に荒廢す。占うに公務纏まり、家業荒廢す。凶。
訟之泰:弱水之西,有西王母。生不知死,與天相保。
訟の卦が泰の卦に変わる。弱水の西邊、西王母を住ましむ。彼女生れて死あるを知らず、天地と一同に長存す。《山海經・大荒西經》は西王母の崑崙の丘に居り、弱水其の外を環繞するを載す。泰とは通なり。長生の地を得れば永く虞なきを保つ。占うに長壽安康にして、根基永く固し。大吉。
訟之否:數窮廓落,困於曆室。卒登玉堂,與堯侑食。
訟の卦が否の卦に変わる。氣數窮盡して空落として依る無く、簡陋の屋室に被困す。最終卻って玉堂の上に登り、唐堯に陪して一同に進食す。否極まれば則ち泰來る。困窮到底の後反つて明主に遇う。占うに先に困にして後達し、賤より貴に入る。先に凶にして後大吉。
訟之同人:子鉏執麟,春秋作元。陰聖將終,尼父悲心。
訟の卦が同人の卦に変わる。叔孫氏の車夫鉏商麒麟を捕獲し、《春秋》一書これによって絕筆して其の始元と成る。素王の運將に終盡せんとし、孔夫子之がために傷心す。《公羊傳・哀公十四年》に「西に狩りて麟を獲、孔子曰く、吾が道窮まりぬ」と載す。同人は人と和同するを主とし、聖人時に遇わざれば唯有だ悲歎す。占うに時運將に終わらんとし、志士憾を抱く。凶。
訟之大有:尹氏伯奇,父子生離。無罪被辜,長舌所為。
訟の卦が大有の卦に変わる。尹吉甫と其の子伯奇、父子活きながら分離す。伯奇本來罪過なくして刑戮を蒙るは、全て長舌婦の讒を進ませしに致る。《詩経・小雅・巷伯》は讒人を譏刺し、古注多く伯奇の事を引きて説と爲す。大有本來富盛を主とするも、然れど讒言を聽信すれば骨肉相い殘す。占うに家庭和を失い、冤を蒙りて逐わる。大凶。
訟之謙:播木折枝,與母別離。九皋難扣,絕不相知。
訟の卦が謙の卦に変わる。樹木を搖動して枝條を折斷し、孩子母親と分別離散す。深遠の九皋叩問し難く、此より音訊斷絕して彼此知らず。《詩経・小雅・鶴鳴》に「鶴九皋に鳴く」の句あり、以て幽遠にして達し難き地に喩う。謙とは卑下して益を受くること。然れど離散の痛は謙徳の化解する所能にあらず。占うに母子分離し、消息隔絕す。凶。
訟之豫:弱雞無距,與鵲格鬥。翅折目盲,為鳩所傷。
訟の卦が豫の卦に変わる。瘦弱の鶏足後の利距なく、偏に喜鵲と格鬥せんと要し、結果翅膀を折り眼睛を瞎し、また斑鳩に傷せらる。豫本來和樂順動を主とするも、强を逞うし爭鬥すれば樂極まりて悲を生ず。占うに自ら量力せず、屢々損傷を遭う。拙を守り爭を避くるに宜し。凶。
訟之隨:甲乙丙丁,俱歸我庭。三丑六子,入門見母。
訟の卦が隨の卦に変わる。甲・乙・丙・丁の諸人、一同に我が庭院に回る。三個の同類・六個の子弟、門に入り母親に拜見す。甲乙丙丁は本來天干の次序で、ここに借りて衆人の依次に至るを指す。隨とは相い隨いて從う。人衆內に歸すれば家道聚合す。占うに人丁歸聚し、闔家團圓す。吉。
訟之蠱:桑葉螟蠹,衣弊如絡。女工不成,絲布為玉。
訟の卦が蠱の卦に変わる。桑葉螟蟲に蛀蝕せられ、衣裳破れて漁網のごとし。女工布を織成さず、絲と布と貴重なること美玉のごとし。蠱は積弊患を生ずるを主とし、蠹害除かざれば百業凋敝す。占うに物力匱乏し、衣食昂貴す。凶。
訟之臨:開牢闢門,巡狩釋冤。夏臺羑里,湯文悅喜。
訟の卦が臨の卦に変わる。牢獄を打開し牢門を敞開し、天子巡狩の時冤を蒙る人を釋放す。商湯夏台を脫出し、周文王羑里を走出し、二位の聖人之がために歡喜す。《史記》は湯夏台に囚われ、文王羑里に囚われて後釋を獲しの事を載す。臨は上に居りて下に臨む。徳澤下達すれば獄囚釋を得。占うに冤獄解を得、久困身を脫す。大吉。
訟之觀:欽明之德,坐前玉食。必保嘉美,長受安福。
訟の卦が觀の卦に変わる。恭敬明察の徳行を具有し、座前珍美の膳食を擺す。必ず美善の名を保有し、長く安寧の福澤を領受す。《尚書・堯典》は唐堯を「欽明文思安安」と稱贊す。觀は觀仰化育を主とし、徳行上に昭著なれば福澤其の身に厚し。占うに徳位相稱い、安んじて厚祿を享く。大吉。
訟之噬嗑:武夫司空,多口爭訟。金火當戶,民不安處,年飢無有。
訟の卦が噬嗑の卦に変わる。武夫をして司空の職を充任せしめ、衆口紛紜として爭執興訟す。金と火と門に當たりて相克し、百姓安居を得ず、年成饑荒にして一の有する無し。噬嗑は嚙合して梗阻を去るを主とし、人を用ゐて當を失せば梗阻愈甚し。占うに官非口舌あり、歳歉れて民困す。大凶。
訟之賁:紫閣九重,尊嚴在中。黃帝堯舜,履行至公。冠帶垂衣,天下康寧。
訟の卦が賁の卦に変わる。紫色の樓閣九重の深き有り、尊嚴の君主其の中に居る。黄帝と堯舜、踐行する所皆至公の道なり。彼ら冠帶を整肅し衣を垂れて拱手すれば、天下便ち安康寧靜す。《周易・繫辭下》に「黄帝堯舜衣裳を垂れて天下治まる」と曰う。賁は文飾を主とし、文明以て止まれば敎化天下に行わる。占うに政通じて人和し、四海康寧す。大吉。
訟之剝:負牛上山,力劣行難。烈風雨雪,遮遏我前。中道復還,憂苦自歡。
訟の卦が剥の卦に変わる。牛を背負い山に向かいて走り、力濟わずして寸步行き難し。狂風雨雪を夾み、我が去路を擋住す。半路上にて只だ折回せざるを得ず、憂苦の餘反つて自ら寛慰を尋ぬ。剥は剥落の卦で、力勝任せざれば及早に退回するに如かず。占うに力を量りて返るを知り、憂中に解あり。先に凶にして後平。
訟之復:褰兔缺唇,行難齒寒。口痛不言,為身生患。
訟の卦が復の卦に変わる。兔子の嘴唇豁裂し、行動艱難にして牙齒寒を受く。嘴痛みて話を説き出す能わず、自身に禍患を招來す。「唇亡びて齒寒し」の理は《左傳・僖公五年》宮之奇の諫に見ゆ。復は一陽來復なれど、缺損身に在れば復と雖も未だ愈えず。占うに口舌の疾あり、苦有りて言う能わず。凶。
訟之無妄:合體比翼,嘉耦相得,與君同好,使我有福。
訟の卦が无妄の卦に変わる。形體相合し雙翼並び飛び、美好の配偶彼此相い得。您と志趣相同じくして、我をして福氣を獲得せしむ。《左傳・桓公二年》に「嘉耦を妃と曰う」と稱す。《无妄》は至誠にして妄ならざるを主とし、情投意合すれば福自然生ず。婚姻を問い合伙を問うに、和順にして福を得。大吉。
訟之大畜:口啄卒卒,憂從中來。喪我寶貝,妻妾失位。
訟の卦が大畜の卦に変わる。衆口啄咬急促休まず、憂愁心裏より生出す。我が珍寶を喪失し、妻妾も皆位分を失す。大畜は蓄聚して固守するを主とし、讒口交攻すれば蓄う所盡く散ず。占うに讒言中傷し、財を破り和を失う。凶。
訟之頤:兩心不同,或從西東。明論終日,莫適相從。
訟の卦が頤の卦に変わる。兩個人心意相同じからず、一個は西に往き一個は東に往く。明明白白に爭論して整整一日、誰も肯んじて誰をも聽かず。頤は正を養うを主とし、志向同じからざれば相い養う能わず。占うに意見相い左にし、合作成り難し。凶。
訟之大過:啞啞笑言,與善飲食。長樂行觴,千秋起舞,拜受大福。
訟の卦が大過の卦に変わる。笑語啞啞、善人と一同に飲食す。長く歡樂して杯を傳え酒を行い、千秋の壽のために起舞し、叩拜して大福を領受す。《震》卦辭に「笑言啞啞」あり、處變して其の常を失わざるを説く。大過は過甚を主とすると雖も、歡會節あれば福澤深厚なり。占うに宴樂福を得、親友和睦す。大吉。
訟之坎:初憂後喜,與福為市。八佾列陳,飲御諸友。
訟の卦が坎の卦に変わる。起初憂愁して後來歡喜し、福氣と一筆の交易を做したるがごとし。八佾の舞行陣を列ね、酒を設けて衆位の朋友を款待す。八佾は天子の樂舞で、《論語・八佾》に見ゆ。坎は險陷なれど、險境過ぎたれば則ち喜慶到來す。占うに先に憂後に樂し、賓朋座に滿つ。吉。
訟之離:西徙無家,破其新車。王孫失利,不如止居。
訟の卦が離の卦に変わる。西に向かいて遷徙して歸るべき家なく、還つて新たに買いし車子を撞壞す。王孫これによって損失を蒙るは、原處に安居するに如かず。離は附麗で、附く所其の地に非ざれば動く輙ち失あり。占うに遷移利あらず、財を破り損を受く。守るに宜しく動くべからず。凶。
訟之咸:鳳凰在左,麒麟處右。仁聖相遇,伊呂集聚。時無殃咎,福為我母。
訟の卦が咸の卦に変わる。鳳凰左邊に立ち、麒麟右邊に守る。仁徳と聖明と彼此相遇い、伊尹・呂尚のごとき賢才一堂に齊聚す。鳳麟並び現るるは、古人之を以て太平の瑞と爲す。咸は交感の卦で、君臣相い感ずれば天下大いに治まる。時世災殃過咎なく、福氣母親のごとく我を護佑す。占うに賢才雲集し、時世清平なり。大吉。
訟之恆:區脫康居,慕仁入朝。湛露之歡,三爵畢恩,復歸舊廬。
訟の卦が恒の卦に変わる。匈奴邊地の區脫と西域の康居、仁徳を慕い入朝して進見す。天子《湛露》の宴を設けて歡洽を示し、三爵の酒畢りて恩意周全なり、隨いて各自故居に回歸す。《詩経・小雅・湛露》は天子諸侯を燕饗するの詩なり。恒とは常久で、遠人を懷柔すれば邦交持久すべし。占うに遠客來りて歸し、賓主歡を盡す。吉。
訟之遁:疾貧望幸,使伯行販。關牢擇羊,多得大牂。
訟の卦が遁の卦に変わる。貧窮に苦しみ僥倖して利を得んことを盼望し、便ち伯氏を打發して門を出でて貨を販らしむ。關卡牢牢欄の裏に羊隻を挑選し、肥大の母羊許多を得たり。遁本來退避を主とするも、退きて生計を經營すれば反つて厚獲あり。占うに經商利を得、求む所望む所を超出す。吉。
訟之大壯:處高不傷,雖危不亡。握珠懷玉,還歸其鄉。
訟の卦が大壯の卦に変わる。高位に身處して傷害を受けず、危險なりと雖も敗亡に至らず。明珠を手握し美玉を懷揣し、平安に己が故鄉に回到す。大壯は剛健正を守るを主とし、高に處りて正を守る能くば傾覆に至らず。占うに高に居りて安を得、財を攜えて里に歸る。吉。
訟之晉:右手棄酒,左手牧牂。行逢禮御,餌得玉杯。
訟の卦が晋の卦に変わる。右手酒杯を放下し、左手母羊を牽きて放牧に往く。路上禮を以て相い迎うる人に遇い、還つて玉杯一隻を饋贈として得たり。晋は上進して福を受くるを主とし、逸を去り勤に就けば賞を獲。占うに勤勉なれば必ず得る所有り、出行して厚遇に遇う。吉。
訟之明夷:養虎牧狼,還自賊傷。大勇小捷,雖危不亡。
訟の卦が明夷の卦に変わる。老虎を豢養し豺狼を放牧し、反つて己が身を傷害す。大勇に憑りて只だ小勝を取るのみ、危險ありと雖も滅亡に至らず。明夷は光明傷つくの卦で、禍患を內に養えば終に自ら其の害を受く。占うに自ら禍患を招きて僥倖に全うすを得。先に凶後に平。
訟之家人:戴堯扶禹,松喬彭祖。西遇王母,道路夷易,無敢難者。
訟の卦が家人の卦に変わる。頭唐堯を頂き大禹を扶助し、また赤松子・王子喬・彭祖これらの長生の士相隨う有り。西行して西王母に遇い、道路平坦にして行き好し、敢えて來りて難と爲す者なし。家人は內治序あるを主とし、聖賢仙眞の助を得れば往くに利あらざるなし。占うに貴人扶持し、行程通達し、壽考綿長なり。大吉。
訟之睽:秋冬探巢,不得鵲雛。銜指北去,愧我少姬。
訟の卦が睽の卦に変わる。秋冬の時節鳥巢を掏めに往くも、喜鵲の雛鳥を捉得せず。只だ手指を含み北に往くよりなく、我が年少の姬妾に愧う。睽とは乖離で、時令對せざれば求む所獲られず。占うに時機合わず、空手して歸り、面上光なし。凶。
訟之蹇:兩羝三牂,俱為代鄉。留連多難,損其食糧。
訟の卦が蹇の卦に変わる。二隻の公羊・三隻の母羊、一同に趕りて代地他鄉に向かわしむ。一路滯留して困難重重、還つて隨身の糧食を損耗す。蹇は跛足行き難きの卦で、遠く行きて接濟なければ愈走るほど愈困す。占うに遠行阻まれ、財を耗し折損す。凶。
訟之解:南徙無廬,鳥破其巢。伐木思初,不利動搖。
訟の卦が解の卦に変わる。南に往き遷徙して居住すべき房屋なく、鳥兒の巢もまた毀壞せり。樹木を砍伐するの際由ならず當初を追想す。此の時軽擧妄動すべからず。《詩経・小雅・伐木》は伐木丁丁を以て興を起し、故舊を追念す。解は險難消散するを主とするも、然れど根基未だ立たざれば妄動すべからず。占うに遷居着く所なく、靜守して時を待つに宜し。凶。
訟之損:爭訟不已,更相擊劍。張季弱口,被髮北走。
訟の卦が損の卦に変わる。爭執訴訟盡くることなく、雙方竟に至りて相互に劍を拔き相擊す。張季口才拙弱にして人に説き過ぐる能わず、只だ頭髮を披散して北に逃走す。損とは減損で、爭訟愈久しければ則ち損する所愈多し。占うに官非纏まり、辯して人に過ぐる能わずして挫を受く。凶。
訟之益:延頸望酒,不入我口。初喜後否,得利無有。
訟の卦が益の卦に変わる。頸を伸ばして酒を飲まんことを盼ぐも、酒卻って我が口に入らず。起初歡喜して後來落空し、利を得ると説きて其の實一の獲る所なし。益本來增益を主とするも、望むべくして得る可からざれば益反つて空と成る。占うに期望落空し、名有りて實なし。凶。
訟之夬:被髮傾走,寇逐我後。亡失刀兵,身全不傷。
訟の卦が夬の卦に変わる。頭髮を披散して倉皇として奔逃し、寇賊後ろに緊追して捨てず。刀劍兵器を丢すと雖も、身體卻って保全するを得て傷を受けず。夬は決斷して捨棄するを主とし、物を棄てて身を存るは正に決斷に善し。占うに財を破りて災を免れ、驚ありて險なし。先に凶後に安し。
訟之姤:麒鳳所遊,安樂無憂。君子撫民,世代千秋。
訟の卦が姤の卦に変わる。麒麟と鳳凰と遊息する所、安寧快樂にして憂愁なし。君子百姓を撫育し、世代傳承して千秋萬年。麒麟鳳凰同じく至るは、古人之を以て聖王の瑞と爲す。姤は期せずして遇う。徳行至れば祥瑞自ら遇う。占うに政善く民安し、家世綿長なり。大吉。
訟之萃:褰衣涉河,水深漬疲。賴幸舟子,濟脫無他。
訟の卦が萃の卦に変わる。衣裳を撩起し水を涉りて河を過ぐるも、水深く身を浸して疲憊堪えず。幸いに船夫の相助に遇い、渡りて險を脫するを得て別の意外なし。萃は聚合で、衆力相聚れば險難濟るべし。占うに危中に救を得、凶に逢いて吉に化す。吉。
訟之升:憒憒不悅,憂從中來。喪我金罌,無妄失位。
訟の卦が升の卦に変わる。心中昏亂郁悶にして快活ならず、憂愁內裏より生出す。我が金罂寶器を丢失し、平白無故に位分を失了。升は上進を主とするも、然れど內憂去らざれば升ると雖も安を得ず。占うに物を失い位を失い、心緒郁結す。凶。
訟之困:絆跳不遠,心與言反。尼父望家,萏菡未華。
訟の卦が困の卦に変わる。腿脚絆住せられ、跳ぶこと遠からず、心裏想う所と嘴上説く所と正相い違背す。孔夫子遙かに故鄉を望見すれど、池中の荷花尚未だ開放せず。困は困窮の卦で、心口一ならざれば道行き通らず。占うに進退阻まれ、言衷に由らず、時機未だ至らず。凶。
訟之井:大壯肥牸,惠我諸舅。內外和睦,不憂飢渴。
訟の卦が井の卦に変わる。肥壯の母牛、以て我が各位の舅父に饋贈す。內親外戚皆和睦して相處し、飢餓口渴を憂慮するを須いず。井は人を養いてその源竭きざるを主とし、能く財物を以て親族に惠を施せば家門和洽す。占うに親族和睦し、衣食豐足す。吉。
訟之革:黃帝建元,文德在身。祿若陽春,封為魯君。
訟の卦が革の卦に変わる。黄帝紀元を創建し、文治の徳一身に集まる。福祿和暖の春天のごとく豐潤にして、魯國の君に受封せらる。革は變革鼎新を主とし、徳業既に立てば爵位これに隨いて來る。占うに新業を開創し、封を受け祿を得。大吉。
訟之鼎:虎聚摩牙,以待臀豬。往必傷亡,宜利止居。
訟の卦が鼎の卦に変わる。老虎一處に聚まりて牙齒を磨き、肥臀の野猪の自ら門に送上するを待つ。往けば必ず傷亡し、止まりて安居するに宜し。鼎は賢を養い新を成すを主とするも、然れど險地輕く入るべからず。占うに前に埋伏あり、前往すべからず。步を止めて自ら守るに宜し。凶。
訟之震:天地配享,六位光明。陰陽順序,以成和平。
訟の卦が震の卦に変わる。天と地と相配し共に祭饗を受け、六爻の位一片光明なり。陰陽依次に行い、從つて太平の治を成就す。震は動にして其の法則あるなり。動きて天序に合すれば上下和洽す。占うに上下相い應じ、局面轉じて和す。吉。
訟之艮:猿墮高木,不踒手足。保我金玉,還歸其室。
訟の卦が艮の卦に変わる。猿猴高樹より跌落すれど、手脚卻って扭傷せず。我が金玉財物を保住し、安然として己が屋裏に回到す。艮は止なり。止まるを知りて妄動せざれば跌くとも傷つかず。占うに險を涉りて全うすを得、財物損なし。吉。
訟之漸:營室紫宮,堅不可攻。明神建德,君受大福。
訟の卦が漸の卦に変わる。營室の宿と紫微宮、堅固にして攻破する能わず。聖明の神靈徳業を樹立し、君主大福を領受す。營室は二十八宿の一で、古人宮室を營建するに其の昏中の時を依りて準と爲す。漸は循序して進むを主とし、險に據りて正を守れば外力犯す可からず。占うに根基堅固にして、天の福を受く。大吉。
訟之歸妹:孤翁寡婦,獨宿悲苦。目張耳鳴,無與笑語。
訟の卦が歸妹の卦に変わる。孤單の老翁と守寡の婦人、各々獨宿して悲傷困苦す。眼睜きて睡る能わず、耳中嗡嗡響き、談笑すべき一個人もなし。歸妹は嫁娶を主とするも位分當たらず。孤陰孤陽なれば配偶する所なし。占うに孤獨凄凉にして、鰥寡依る無し。凶。
訟之豐:低頭窺視,有所畏避。行者不利,酒酸魚敗,眾莫貪嗜。
訟の卦が豐の卦に変わる。頭を低めて偷偷に窺探し、心裏畏懼躲避する所有り。出行する人順利ならず、酒變じて酸となり魚も腐壞し、衆人皆肯んじて貪食せず。豐とは盛大で、物其の盛に過ぎて時を失せば敗壞す。占うに行藏疑を見、貨物變質し、問津する人なし。凶。
訟之旅:載金販狗,利棄我走。藏匿淵底,悔折為咎。
訟の卦が旅の卦に変わる。黄金を帶びて狗只を販賣するも、利益卻って我を抛下して跑去る。錢を深淵の底下に藏匿し、悔恨折損して過咎と成る。旅外に居りて經營する所本行にあらず、此に因りて利を失す。占うに經營當を失い、財を藏する所を失い、追悔及ばず。凶。
訟之巽:行觸大忌,與司命牾,執囚束縛,拘制於吏。
訟の卦が巽の卦に変わる。行事大忌諱に觸犯し、司命の神と相い抵牾す。抓起來られ囚禁捆綁せられ、官吏の拘管制約を受く。司命は人間の壽夭を主司する神なり。巽は順入で、逆いて順ならざれば刑罰を招致す。占うに忌を犯して禍を招き、身官司に陷る。大凶。
訟之兌:執玉歡喜,配之解攣。危詳及安,使我無患。
訟の卦が兌の卦に変わる。美玉を手執して心生歡喜し、佩帶すれば便ち拘攣の疾を解開す。危險より轉じて詳審を經て安穩に至り、我をして禍患無からしむ。兌は和悦で、心中喜悅すれば則ち周身舒泰す。占うに病痛解除し、危を轉じて安と爲す。吉。
訟之渙:機杼紛擾,女功不成。長妹許嫁,衣無襦絝。聞禍不成,凶惡消去。
訟の卦が渙の卦に変わる。織機と梭子と亂作一團と成り、女紅成さず。大妹妹已に人に許嫁すれど、短襖褲子すら置辦する能わず。所幸聽説する禍事並に釀成せず、凶險邪惡皆消散離去す。渙とは離散で、散亂の中終に轉機あり。占うに家貧しく事亂るれど禍災を成さず。先に憂後に安し。
訟之節:金人鐵距,火燒左右。雖俱不恐,獨得全處。
訟の卦が節の卦に変わる。金鑄の人・鐵打の足距、大火左右に燃燒す。身火中に處ると雖も毫不畏懼し、唯だ彼獨り保全するを得。節は度を守り自ら固くするを主とし、質地堅實にして節を守る能くば外患傷つく能わず。占うに險に處りて驚かず、獨り其身を善くす。吉。
訟之中孚:謝恩拜德,東歸吾國。舞蹈欣悅,歡樂受福。
訟の卦が中孚の卦に変わる。恩情を答謝し徳惠に叩拜し、東に我が國家に回る。手舞足蹈して心中欣悦し、歡歡樂樂として福澤を承受す。中孚は誠信相通ずるを貴ぶ。恩を知り本に報いれば福澤自ら隨う。占うに恩を受けて歸を得、家を擧げて歡慶す。吉。
訟之小過:青牛白咽,呼我俱田,歷山之下,可以多耕。歲樂時節,人民安寧。
訟の卦が小過の卦に変わる。青色の牛白脖子を長きて、我を招呼して一同に田を耕さんとす。歷山の脚下に在りて、多く開墾耕種すべし。傳うる所に虞舜曾て歷山に耕し、《史記・五帝本紀》に見ゆ。年成歡樂し節候時に適い、百姓安寧す。小過は小事を謀るに宜しく、躬耕自足正に其の宜に合す。占うに農を務めて利を得、歳稔れて民安し。吉。
訟之既濟:白雉群雎,慕德朝貢。湛露之恩,使我得歡。
訟の卦が既濟の卦に変わる。白色の野雉と成群の雎鳩、徳政を仰慕して前來して朝貢す。天子《湛露》燕饗の恩を以て相待し、我をして歡樂を得しむ。傳うる所に周公攝政の時越裳氏重譯して白雉を獻ず、《尚書大傳》に見ゆ。既濟は諸事已に成れる卦で、徳澤遠人に被れば四方來りて歸す。占うに遠人歸附し、恩を蒙り賞を受く。大吉。
訟之未濟:避患東西,反入禍門。糟糠不足,憂愁我心。
訟の卦が未濟の卦に変わる。東に躲り西に藏れて禍患を躲避するも、反つて自ら禍事の門に投ず。糟糠すら喫い飽くる能わず、憂愁我が心に充滿す。未濟は事情尚未だ辦成せざる卦で、趨避據を失せば愈躲るほど愈險し。占うに禍を避けて反つて禍を得、饑困して心を憂う。大凶。
師の林(師卦六十四林)
師之師:烏鳴呼子,哺以酒脯。高樓之處,子來歸母。穡人成功,年歲大有,妒婦無子。
師の卦が自ら変じても師の卦のままである。烏鴉鳴叫して幼子を呼喚し、酒と乾肉とを以て彼らを喂養す。高樓の上に在りて、孩子母親の身邊に回る。烏鴉反哺するは、古人之を以て孝義の鳥と爲す。農人耕作成あり、年成大豐收なり。只だ善妬の婦人兒子なし。師は衆を聚めて統屬あるを主とし、母子團聚すれば家道內和す。占うに家人團聚し、五谷豐登す。唯だ妒忌の和を傷るを忌む。吉中に礙を帶ぶを主とす。
師之乾:一簧兩舌,佞言諂語。三奸成虎,曾母投杼。
師の卦が乾の卦に変わる。一張の口裏に兩條の舌頭を含み、奸佞諂媚の辭に滿つ。三個の奸人反復して相い告げば便ち憑空に一隻の老虎を造出し、曾參の母親すらも終に織梭を抛下して逃走す。「三人虎を成す」は《戰國策・魏策》に見え、「曾母杼を投ぐ」は《戰國策・秦策》に見ゆ。師は衆を興すを主とし、衆口金を鑠かすれば賢者誣を受く。占うに讒言衆を惑わし、親信疑を見る。凶。
師之坤:春桃生花,季女宜家。受福且多,在師中吉,男為封君。
師の卦が坤の卦に変わる。春天の桃樹花朵を開出し、年少の女子家を成すに宜し。《詩経・周南・桃夭》に「此の子歸するに、其の室家に宜しからん」の詠あり。受くる所の福澤既に厚く且つ多し。正に《師》九二爻辭の説く「師中に在りて吉」のごとく、中に居りて正を得て吉を獲す。生下した男孩將來君に受封せん。婚嫁を問えば美滿、子嗣を問えば顯貴を主とす。大吉。
師之屯:殊類異路,心不相慕。牝牛牡猳,獨無家室。
師の卦が屯の卦に変わる。種類相同じからず道路各異にして、彼此心中並に相い慕わず。母牛と公猪と對を配成せず、只だ孤零零として家室なし。屯は初生通じ難きの卦で、類相同じからざれば終に一處に合する能わず。婚姻を問えば諧わず、合伙を問えば志異なるを主とす。凶。
師之蒙:折葉蔽目,不見稚叔。三足孤鳥,遠其元夫。
師の卦が蒙の卦に変わる。樹葉を折下して眼睛を遮住し、年幼の叔弟を看不見ず。三隻脚の孤鳥、遙かに其の元配を離る。蒙とは昏昧不明で、眼目外物に遮蔽せられれば至親をもも看不見ず。占うに耳目蒙蔽を受け、骨肉疏離し、夫婦分張す。凶。
師之需:雀東求粒,誤入網域。賴逢君子,脫復歸息。
師の卦が需の卦に変わる。麻雀東に往きて穀粒を覓め喫わんとすれど、誤りて張網の地界に入る。幸いに仁厚の君子に遇い其を放走せしめ、身を脫して巢に回り安歇するを得。《史記・殷本紀》は成湯網を開くこと三面なるを載す。正に此の般の仁心なり。需とは時機を待つこと。仁人に遇えば險境解くべし。占うに小さく驚險ありて貴に遇いて救を得。先に凶後に吉。
師之訟:王孫季子,相與孝友。明允篤誠,升擢薦舉,為國乾輔。
師の卦が訟の卦に変わる。王孫と季子、彼此孝順友愛す。彼ら明察誠信・篤實忠厚にして、因りて提拔薦擧せられ、國家の棟梁輔佐と成る。《左傳・文公十八年》は高陽氏の才子を「齊聖廣淵・明允篤誠」と稱す。師は衆を興すを主とし、賢を得て將と爲せば國勢强盛なり。占うに品行賞を受け、進用位を得。大吉。
師之比:削樹無枝,與子分離。飢寒莫食,獨泣哀悲。
師の卦が比の卦に変わる。樹削られて光秃禿として一枝條をも剩さず、父母孩子と分離す。饑寒交迫して喫ふべき東西なく、獨自哭泣哀傷悲切す。比は親附で、依るべき枝なければ孤苦告ぐる無し。占うに骨肉離散し、衣食着く所なし。大凶。
師之小畜:舜生大禹,石夷之野。徵詣玉闋,拜理水土。
師の卦が小畜の卦に変わる。虞舜石夷の原野に大禹を擧拔し、彼を召して玉闕王庭に至らしめ、命を拜して水土を治理せしむ。《尚書・舜典》は舜禹に命じて司空と爲り水土を平治せし事を載す。小畜は柔を以て剛を畜う。賢を任じて人を得れば功業漸々成る。占うに命を受け職に任じ、職專らに司る所有り。吉。
師之履:義不勝情,以欲自營。見利危寵,滅君令名。
師の卦が履の卦に変わる。道義私情に壓倒する能わず、只だ一己の私欲のために奔走經營す。利益を見れば便ち恩寵を喪失の危險を甘冒し、君子の美名を毀掉す。履は禮に循いて行うを主とし、私に徇りて禮を失せば名節盡く毀る。占うに利を貪りて徳を敗り、聲名地に掃く。凶。
師之泰:三人北行,六位光明。道逢淑女,與我驥子。
師の卦が泰の卦に変わる。三個人一同に北行し、六爻の位一片光明なり。路上賢淑の女子に遇い、我に千里駒のごとき好兒郎を贈る。泰とは通なり。行きて遇合する所有れば願う所償うを得。婚姻を問えば佳偶に遇い、子嗣を問えば貴子を得。大吉。
師之否:弈張烏號,彀射天狼。柱國雄勇,鬥死滎陽。
師の卦が否の卦に変わる。烏號のごとき良弓を張開し、弦を拉滿して天狼星を射んとす。國家の柱石雄壯勇武なるも、滎陽に戰死す。烏號は傳うる所に黄帝の弓と爲し、《淮南子・原道訓》に見ゆ。天狼は侵掠を主司する惡星なり。楚漢相い爭うの際紀信・周苛皆滎陽に死難す。否は閉塞通ぜず。勇ありと雖も時之を與せざれば終に身を殞するに至る。占うに忠勇命を效くれど善終を得ず。凶。
師之同人:季姬躑躅,結衿待時。終日至暮,百兩不來。
師の卦が同人の卦に変わる。季姬徘徊して進まず、衣襟を繫好して時機を等待す。早より天黑くなるまで等すれど、親迎の百輛の車子始終來らず。《詩経・召南・鵲巢》に「此の子歸するに、百兩之を禦ぐ」の句あり。同人は人と和同するを主とし、相い期して遇わざれば空しく守候す。婚姻を問えば佳期落空し、久候して成る無し。凶。
師之大有:鴻雁翩翩,始怨勞苦。災疫病民,鰥寡愁憂。
師の卦が大有の卦に変わる。鴻雁翩翩と飛行し、行役の勞苦を怨恨し始む。災荒疫病百姓をして病ましめ、鰥夫寡婦愁憂に滿懷す。《詩経・小雅・鴻雁》は正に流民哀鴻の苦を寫す。大有本來富盛を主とするも、然れど民力困竭すれば國用もまた虛し。占うに勞役疫病あり、孤苦依る無し。凶。
師之謙:穿胸狗邦,僵離旁舂。天地易紀,日月更始。
師の卦が謙の卦に変わる。穿胸の國と狗國、僵尸形を離れ旁舂臂を反し、盡く遠方の異人異俗なり。《山海經》と《淮南子・墬形訓》と皆貫胸民・犬封國のごとき海外の國を記す。天地綱紀を更換し、日月重新して運行を始む。謙とは卑下して益を受くること。天地更に始まれば舊有の秩序盡く變ず。占うに時局劇變し、舊貌觀を改む。謙退して時に順うに宜し。
師之豫:北山有棗,使叔壽考。東岑多栗,宜行賈市,陸梁雌雉,所至利喜。
師の卦が豫の卦に変わる。北山の上棗樹を長せ、叔氏をして高壽を得享せしむ。東邊の山嶺栗子を多産し、外出して經商販賣するに宜し。雌野鷄陸上に跳躍奔走し、至る所皆利益喜慶あり。豫は順動和樂で、地に因りて宜を制し以て利を取れば處處源に逢う。占うに長壽し、經商して利を獲、出行して喜あり。大吉。
師之隨:干旄旌旗,撫幟在郊。雖有寶玉,無路致之。
師の卦が隨の卦に変わる。牛尾裝飾の干旄と各色の旌旗、旗幟を扶けて郊外に立つ。《詩経・鄘風・干旄》は大夫車に乘り旌を建てて以て賢者を招納するを寫す。寶玉を懷有すと雖も、以て送到する路徑なし。隨とは相い隨いて從う。道路通ぜざれば賢才至らず。占うに心有りて門なく、良材薦め難し。凶。
師之蠱:精潔淵塞,為饞所言。證訊詰請,繫於枳溫。甘棠聽斷,怡然蒙恩。
師の卦が蠱の卦に変わる。人と爲り精純潔淨・深沈篤實なるも、讒人に誣告せらる。取證訊問・詰責求實を經て、一度牢獄の中に拘係せらる。所幸召伯の甘棠樹下に訟を聽くがごとき明察の官長に遇い、《詩経・召南・甘棠》の詠う所正に此の徳なり。ここに欣然として恩釋を蒙る。蠱は積弊を整治するを主とし、積弊既に清ければ冤情自ら白し。占うに冤を蒙りて後昭雪す。先に凶後に吉。
師之臨:玄黃虺隤,行者勞疲。役夫憔悴,逾時不歸。
師の卦が臨の卦に変わる。馬兒病みて毛色晦暗・腿脚發軟し、路を趕る人疲憊堪えず。服役する人形容憔悴し、期限を超過しても家に回る能わず。《詩経・周南・巻耳》に「我が馬虺隤たり」「我が馬玄黄たり」の句あり。臨は上に居りて下に臨む。役使度なければ在下の者疲敝す。行人を問えば外に淹留す。身體を問えば勞累病を成す。凶。
師之觀:膚敏之德,發憤忘食。虜豹禽說,以成主德。
師の卦が觀の卦に変わる。敏捷通達の徳行有り、發憤用功して喫飯を忘る。豹子のごとき勇士を擒獲し、傅説のごとき賢臣を擧拔し、以て君主の徳業を成就す。《論語・述而》は孔子の「憤を發して食を忘る」を記し、《尚書・説命》は武丁の傅説を版築の間に擧ぐるを載す。觀は觀仰化育を主とし、人を得れば徳業成るべし。占うに勤學用を得、賢を擧げて主を佐く。大吉。
師之噬嗑:采唐沫鄉,要我桑中。失信不會,憂思約帶。
師の卦が噬嗑の卦に変わる。沬邑の鄕に往きて女蘿を採り、我と桑林の中に相會せんことを約す。《詩経・鄘風・桑中》の詠う所正に此の事なり。對方失約して前來せず、憂思度を過して腰帶すら鬆むに至る。噬嗑は嚙合相い就くを主とし、相い約して合する能わざれば相思病を成す。婚姻を問い約會を問うに、失約して遇わず、徒らに愁思を增す。凶。
師之賁:伯寧子福,惠我邦國。蠲除苛殘,使季無患。
師の卦が賁の卦に変わる。伯氏安寧にして子嗣福あり、恩惠我が邦國に施及す。苛刻殘暴の政令を清除し、季氏一家をして禍患を免れしむ。賁は文飾を主とし、文徳を以て政事を修飾すれば百姓安定す。占うに政令寛和にして、家國虞なし。吉。
師之剝:饞父佞雄,賊亂邦國。生雖忠孝,敗恩不福。
師の卦が剥の卦に変わる。讒を進ませる老者・奸佞の梟雄、邦國を殘害擾亂す。縱ほ生れて忠誠孝順の人も、恩情を敗壞せられて福澤を得ず。剥は陰陽を剥する卦で、小人勢を得れば君子殃を遭う。占うに小人道に當たり、忠良害を受く。大凶。
師之復:淵泉堤防,水道通利。順注湖海,邦國富有。
師の卦が復の卦に変わる。深泉堤防を築起し、水道疏通して暢達す。流れに順いて湖海に注入し、邦國これによって富足す。《周禮・稻人》に防を以て水を止め、溝を以て水を蕩すの職あり。復は一陽來復で、勢に因りて導けば利源大いに興る。占うに水利成あり、財源廣く進む。吉。
師之無妄:江南多蝮,螫我手足。冤繁詰屈,痛徹心腹。
師の卦が无妄の卦に変わる。江南一帶蝮蛇多く、我が手と脚とを蜇傷す。冤屈繁多にして曲折辨え難く、疼痛直ちに心腹に透る。《无妄》は人に妄行すべからずを告誡す。誤りて險地に入れば其の毒害を受く。占うに身毒害を遭い、冤を含みて白く莫し。大凶。
師之大畜:三人俱行,別離獨食。一身五心,反覆迷惑,亂無所得。
師の卦が大畜の卦に変わる。三個人一同に出行し、中途卻って手を分かち各々喫す。一個の身體五種の心思を懷き、反反復復として疑惑し、紛亂の中一の得る所なし。大畜は蓄聚固守を主とし、心志專ならざれば聚めて復た散ず。占うに同伴心を離れ、棋を擧げて定まらず、終に歸して成る無し。凶。
師之頤:鴉鳴庭中,以戒災凶。重門擊柝,備不速客。
師の卦が頤の卦に変わる。烏鴉庭院の中に鳴叫し、以て災禍凶險を警戒す。ここに重重の門戶を設置し木梆を敲きて夜を巡り、請わざりて自ら來る客を防備す。《周易・繫辭下》に「門を重ね柝を撃ちて、以て暴客を待つ」と曰う。頤は正を養うを主とし、警戒する所を知りて豫め防備すれば養う所安を得。占うに警あり先んじて、患を未然に防ぐ。先に危後に安し。
師之大過:功成事就,拱手安居。立德有言,坐飾貢賦。
師の卦が大過の卦に変わる。功業已に成り事情辦妥し、手を拱きて安然と居家す。徳行を樹立し嘉言を留下し、安坐して貢賦の事を整飭す。《左傳・襄公二十四年》は徳を立て・功を立て・言を立つるを以て三不朽と爲す。大過は負重を主とすると雖も、功成りて退くを知れば折損に至らず。占うに功を成し名を遂げ、安んじて清福を享く。大吉。
師之坎:國亂不安,兵革為患。掠我妻子,家中飢寒。
師の卦が坎の卦に変わる。國家動亂して安寧を得ず、兵戈甲冑禍患と成る。妻子兒女擄掠されて去り、家中饑寒交迫す。坎は重重の險陷で、亂世に逢えば險上に險を加う。占うに兵災身に及び、家破れて人離る。大凶。
師之離:戴堯扶禹,從喬彭祖。西遇王母,道路夷宜,無敢難者。
師の卦が離の卦に変わる。頭唐堯を頂き大禹を扶助し、王子喬と彭祖とのごとき長生の士に追隨す。西に向かいて西王母に遇い、道路平坦にして適宜、敢えて來りて阻難する者なし。離は附麗で、附く所皆聖賢仙眞なれば通行礙なし。占うに高人の提携を得、前程坦蕩なり。大吉。
師之咸:長尾委蛇,畫地成河。深不可涉。絕無以比,惆悵會息。
師の卦が咸の卦に変わる。長長の尾巴曲折蜿蜒として、地上に一道の河を劃出す。水深くして涉渡する能わず、これと相比すべきもの更になく、只だ惆悵として止まり歇息す。咸は交感の卦で、中間阻隔を橫亘すれば感じて通ぜず。占うに前路阻まれ、志有りて達し難し。凶。
師之恆:乘龍從蜺,徵詣北闋。乃見宣室。拜守東城。鎮慰黎元,舉家蒙富。
師の卦が恒の卦に変わる。飛竜に乘り云霓に駕し、應徵して北面の宮闕に來る。ここに宣室に召見を得、命を拜して東城に鎮守に往く。漢文帝曾て宣室に賈誼を召見し、《史記・屈原賈生列傳》に見ゆ。此の後百姓を安撫し、全家これによって富足す。恒とは常久で、位を得て常を守れば福澤長遠なり。占うに召を受け官に任じ、家道殷實なり。大吉。
師之遁:土與山連,終身無患。天地高明,萬歲長安。
師の卦が遁の卦に変わる。土地と山巒と相連なり、終身禍患なし。天地高遠光明にして、萬年長久安寧す。遁本來退避を主とするも、厚土の上に退居すれば根基穩固なり。占うに居處其の所を得、一生平安なり。大吉。
師之大壯:久旱水涸,枯槁無澤。虛修其德,未有所獲。
師の卦が大壯の卦に変わる。長久乾旱にして水源枯竭し、草木枯槁して潤澤毫もなし。空しく徳行を修飭するも、得る所何もなし。大壯は正を守るに宜しく妄進すべからず。時機至らざれば徳修むと雖も功效顯れず。占うに時運濟わず、修為効を見見難し。靜守して時を待つに宜し。
師之晉:依天倚地,凶危不至。上清下淨,受福大明,君受其利。
師の卦が晋の卦に変わる。上蒼天に依り下大地に靠すれば、凶險危難皆到來せず。在上の者清明にして在下の者潔淨なり、大明の福を承受して君主其中の利益を得。晋は上進して大明に附麗するを主とし、上下皆其の正を得れば福澤自ら至る。占うに根基穩固にして、上下清明、福を受け利を得。大吉。
師之明夷:火烈不去,必殪僵仆。燔我衣裾,福不可悔。
師の卦が明夷の卦に変わる。烈火燃燒して退去するを肯んぜず、必ず人をして倒斃僵卧せしむ。我が衣襟下擺を燒着き、福氣喪盡して追悔及ばず。明夷は光明傷つくの卦で、火勢炎に過ぐれば反つて焚毀の患と成る。占うに火厄身を傷め、悔やむも及ばず。大凶。
師之家人:配合相迎,利之四鄉。欣喜心釋,所言得當。
師の卦が家人の卦に変わる。婚配相合し彼此迎娶し、利益四方鄰里に通達す。心中欣喜して疑慮消釋し、説く所の話句句恰當なり。家人は一家和睦を主とし、內和すれば則ち外順う。占うに婚配宜を得、言語的を中り、四方利を獲。大吉。
師之睽:清人高子,久屯外野。道遙不歸,思我慈母。
師の卦が睽の卦に変わる。清邑の人と主將高克、長久城外の荒野に屯駐す。《詩経・鄭風・清人》は正に鄭文公の高克を派して兵を領り河上に屯せしめて久しく召還せざるを譏刺す。道路遙遠にして家に回る能わず、我が慈愛の母親を思念す。睽とは乖離で、君臣相い棄てれば士卒心を離る。占うに久しく役して歸らず、親を思いて返り難し。凶。
師之蹇:武庫軍府,甲兵所聚,非裡邑居,不可舍止。
師の卦が蹇の卦に変わる。武庫と軍府は、甲冑兵器聚集する所で、鄉里城邑人の居住に供する處にあらず、そこに留宿停歇すべからず。蹇は跛足行き難きの卦で、身其の地に非ざるに處れば動く輙ち咎あり。占うに處する所宜を失し、速やかに遷離するに宜し。凶。
師之解:三德五材,和合四時。陰陽順序,國無咎災。
師の卦が解の卦に変わる。正直・剛克・柔克この三徳と、金木水火土の五材と、四季の中に調和配合す。陰陽依次運行し、國家過咎災禍なし。《尚書・洪範》は三徳を言い、《左傳・襄公二十七年》は「天五材を生じ、民並び之を用う」と言う。解は險難消散するを主とし、徳と材と並び用ゐれば災禍自ら解く。占うに諸事協調し、國泰民安なり。大吉。
師之損:解衣毛羽,飛入大都。晨門戒守,鄭忽失家。
師の卦が損の卦に変わる。衣裳を脫下して羽毛に換え、大都邑に飛入す。晨門を守る人嚴加に戒備し、鄭國の公子忽終に家國を失了。《左傳・桓公十一年》は鄭昭公忽の衞に出奔する事を載す。損とは減損で、一旦位を失せば則ち損する所大なり。占うに遠く他鄉に走り、官を丢し家を失す。凶。
師之益:削根燒株,不生肌膚。病在心腹,日以焦枯。
師の卦が益の卦に変わる。樹根を削掉し樹桩を燒盡し、再び新たな皮肉を長出せず。病根心腹の內に在り、一天天焦約枯槁す。益本來增益を主とするも、根本既に損傷せられれば補益するに從なし。疾病を問えば病根本に入り、日に就て危篤に趨く。大凶。
師之夬:文山紫芝,雍梁朱草。生長和氣,福祿來處。
師の卦が夬の卦に変わる。文山の上紫色の靈芝を生出し、雍州・梁州朱草を長出す。彼ら天地和洽の氣に生じ、福祿此より來る。古人は朱草・靈芝を以て王者徳至るの瑞と爲す。《白虎通・封禪》に見ゆ。夬は邪佞を決去するを主とし、邪佞既に去れば和氣自ら生ず。占うに祥瑞呈現し、福祿門に臨む。大吉。
師之姤:多栽重負,捐棄於野。予母誰子,但自勞苦。
師の卦が姤の卦に変わる。裝載多く負擔重く、只だ東西を野外に丟棄するよりなし。母親に養給されど誰の家の孩子なるかを知らず、白白と自ら勞苦を受く。姤は期せずして遇う。力を量りて當たらざれば事に遇いて卽ち棄つ。占うに多く貪りて失を致し、勞して功なし。凶。
師之萃:鳧雁啞啞,以水為家。雌雄相和,心志娛樂,得其歡欲。
師の卦が萃の卦に変わる。野鴨と大雁と啞啞と鳴叫し、水域を以て己が家と爲す。雌雄相い和し相い隨い、心志歡愉にして、彼らの歡好の願を滿足す。萃は聚合で、同類相聚まりて各々其の所を得れば則ち樂し。婚姻を問えば和順、家宅を問えば安樂を主とす。大吉。
師之升:耳目盲聾,所言不通。佇立以泣,事無成功。
師の卦が升の卦に変わる。眼睛失明し耳朵失聰し、説く所の話彼此相通ずる能わず。久久と站立して暗に哭泣し、事情終に辦成せず。升は上進を主とするも、上下隔塞すれば升るに進む由なし。占うに消息通ぜず、志有りて伸び難く、諸事成る無し。凶。
師之困:天宮列宿,五神所舍。宮闕堅固,君安其居。
師の卦が困の卦に変わる。天上の宮垣と衆星宿と排列序あり、五方の神の居住する所なり。宮殿樓闕堅固にして搖れず、君主其の中に安居す。困は困窮の卦なれど、然れど居處穩固なれば困と雖も危しからず。占うに根基牢靠にして、身安く位穩し。吉。
師之井:范子妙材,戮辱傷膚,然後相國,封為應侯。
師の卦が井の卦に変わる。范雎絶妙の才幹を有するも、先に鞭笞折辱を遭い肌膚を傷る。此の後秦に入りて相國と爲り、應侯に受封せらる。《史記・范雎蔡澤列傳》は彼の魏を亡れて秦に入り、終に相を拜せし事を載す。井は人を養いてその徳窮まらざるを主とし、賢者一時困頓すと雖も終に必ず用を得。占うに先に辱められ後に榮え、大器晚成す。先に凶後に大吉。
師之革:秋冬探巢,不得鵲雛。銜指北去,慚我少夫。
師の卦が革の卦に変わる。秋冬の時節鳥巢を掏めに往くも、喜鵲の雛鳥を捉得せず。只好と手指を含み北に往き、我が年少の夫君に愧う。革は變革を主とし、時令に逆いて動けば一の獲る所なし。占うに時機合わず、空手して返り、面上光なし。凶。
師之鼎:子畏於匡,厄困陳蔡。德行不危,竟脫厄害。
師の卦が鼎の卦に変わる。孔子匡地に圍困を受け、また陳國・蔡國の間に厄難に遭遇す。《論語・子罕》は「子匡に畏る」を記し、《衛靈公》は「陳に在りて糧を絕ち、從者病み、能く興くる莫し」を記す。彼徳行端正にして此に因りて動搖せず、終に厄困の害を擺脫せり。鼎は賢を養い新を成すを主とし、徳業既に立てば險難解くべし。占うに身險境に處りて終に身を脫するを得。先に凶後に吉。
師之震:鴻飛在陸,公出不復。仲氏任止,伯氏客宿。
師の卦が震の卦に変わる。鴻雁飛落して陸地に在り、主公門を出でて一去回らず。《漸》九三に「鴻陸に漸む、夫征きて復たらず」と曰う、正に此の般の景象なり。仲氏家事を擔當して內に留守し、伯氏卻って外に客居して夜を過ごす。震は動なり。各々動けば家人分離す。行人を問えば久しく出でて歸らず、家宅を問えば骨肉處を分かつを主とす。凶。
師之艮:鶴鳴九皋,避世隱居。抱朴守真,竟不隨時。
師の卦が艮の卦に変わる。仙鶴深遠の九皋に鳴叫し、聲音天上に傳はるも、其の身卻って世を避けて隱居す。《詩経・小雅・鶴鳴》は其の聲外に聞ゆるを詠じ、《老子》は則ち「素を見て樸を抱き、私を少くし欲を寡くす」と言う。彼本真を持守し、始終肯んじて流れに隨い波に逐わず。艮は止なり。當に止まるべきの處に止まれば則ち徳行完備す。占うに隱逸して節を守り、名高くして身安し。吉。
師之漸:舜升大禹,石夷之野。徵詣玉闋,拜治水土。
師の卦が漸の卦に変わる。虞舜石夷の原野に大禹を擧拔し、彼を徵召して玉闕王庭に至らしめ、命を拜して水土を治理せしむ。《尚書・舜典》は舜禹に命じて司空と爲り水土を平治せし事を載す。漸は循序して進むを主とし、賢者下より升れば功業依次に成るべし。占うに資に循いて位を得、命を受け事に任ず。吉。
師之歸妹:左輔右弼,金玉滿匱。常盈不亡,富如厫倉。
師の卦が歸妹の卦に変わる。左に輔臣・右に弼佐あり、金玉箱櫃に裝滿す。常に盈滿を保て散失に至らず、富厚なること敖倉のごとし。敖倉は秦漢の際の國家大糧倉で、《史記・酈生列傳》に見ゆ。歸妹は嫁娶を主とし、賢配と良輔とを得れば家道殷實なり。占うに貴人相助け、財富豐盈す。大吉。
師之豐:崔嵬北嶽,天神貴客。衣冠不已,蒙被恩德。
師の卦が豐の卦に変わる。高峻の北岳恒山は、天神と貴客との在る所なり。衣冠濟濟の賢士絡繹不絶として、人人恩澤徳惠を蒙受す。豐とは盛大で、賢士雲集すれば恩澤廣く四方に被る。占うに貴人相い與し、廣く恩惠を受く。大吉。
師之旅:空巢注豬,獖彘不到。張弓祝雞,雄父飛去。
師の卦が旅の卦に変わる。空しき圈欄の裏水を注滿して猪の來るを待つも、閹せし猪肯んじて來らず。弓弩を張開して野鷄の門に上らんを祈求するも、雄雉反つて飛去る。旅外に居りて行う所其の法を得ず、此に因りて一の獲る所なし。占うに方法乖謬にして、竹籃水を打つがごとし。凶。
師之巽:胡蠻戎狄,大陰所積,涸凍冰寒,君子不存。
師の卦が巽の卦に変わる。胡・蠻・戎・狄これらの邊遠の地は、極盛の陰氣積聚する所在なり。水源乾涸し氷凍嚴寒にして、君子肯んじてそこに居留せず。巽は順入で、入る所の地宜しからざれば自ら安んずるに從なし。占うに環境險惡にして、久しく留まるに宜しからず。凶。
師之兌:甘露醴泉,太平機關。仁德感應,歲樂民安。
師の卦が兌の卦に変わる。甘露天より降り醴泉地より湧出す、これ太平の世啓動するの樞機なり。仁徳至る所にして天人相い應じ、年成歡樂して百姓安寧す。《禮記・禮運》は天の甘露を降らし地の醴泉を出すを以て大同の瑞と爲す。兌は和悦で、上下俱に悦べば時和らぎ歳稔る。占うに祥瑞並び現れ、四方安樂す。大吉。
師之渙:惡來呼伯,慎驚外客。甲守閉宅,以備凶急。臨折之憂,將滅無災。
師の卦が渙の卦に変わる。惡來のごとき凶人同伙を招呼す、須らく驚擾の外客を謹慎提防すべし。甲を披き守衛し宅門を緊閉し、以て凶險突然發作するを防備す。惡來は商紂の佞臣で、力多く讒に善むを以て著稱す。《史記・秦本紀》に見ゆ。瀕臨摧折の憂慮あると雖も、終に消弭して災なし。渙とは離散で、能く豫め戒備すれば散じて亂れず。占うに外患將に至らんとすれど備え有りて患なし。先に危後に安し。
師之節:日月相望,光明盛昌。三聖茂功,仁德大隆。
師の卦が節の卦に変わる。太陽と月亮と遙遙相い望み、光明盛大昌隆なり。三位の聖人功業繁茂し、仁徳極めて隆盛す。節は度を守り制あるを主とし、日月運行度あれば則ち光明息まず。占うに徳業昌明にして、家國興隆す。大吉。
師之中孚:葛藟蒙棘,華不得實。饞佞亂政,使恩壅塞。
師の卦が中孚の卦に変わる。葛藤纏繞して荆棘を覆蓋し、花を開くも果實を結出せず。讒人佞臣朝政を擾亂し、君恩をして壅塞して下達する能わざらしむ。《詩経・王風・葛藟》は葛藥の蔓延を以て興を起し、流離所を失うの痛を寫す。中孚は誠信相通ずるを貴ぶ。讒佞間に居りて阻隔すれば上下相い孚る能わず。占うに名有りて實なし、恩路阻塞す。凶。
師之小過:鄰不我顧,而望玉女。身多癩疾,誰肯媚者。
師の卦が小過の卦に変わる。鄰里皆肯んじて我を照顧せず、我卻って玉のごとき美女子を痴望す。自身惡瘡疾病を多く生じ、誰か肯んじて來りて親近愛悦せん。小過は分に安んじ小を守るに宜しく、自身を度量せずして妄求すれば自ら其の辱を取る。占うに孤立援無く、痴心妄想し、求む所遂げず。凶。
師之既濟:精誠所至,神為之輔。德教尚忠,彌世長久。三聖尚功,多受福祉。
師の卦が既濟の卦に変わる。精誠の心至る所、神明もまた來りて相助す。徳化教令忠信を崇尙し、世を歷て久遠にして衰えず。三位の聖人功業を崇尙し、因りて多く福祉を領受す。《莊子・漁父》に「眞とは精誠の至なり」と曰う。既濟は諸事已に成れる卦で、之を守るに誠を以てすれば長く可く久しき可し。占うに誠神明を感じ、家世綿長にして、福祉深厚なり。大吉。
師之未濟:鑽木取火,掘地索泉。主母飢渴,手為心福。
師の卦が未濟の卦に変わる。木頭を鑽りて火種を取り、土地を挖開して泉水を尋ぬ。主母正に飢餓口渴すれど、全く一雙の手に賴りて心願のために福分を造出す。《周易・繫辭下》は上古聖人器を制し利を用うるの事を記し、燧を鑽りて火を取るは卽ち其の一なり。未濟は事情尚未だ辦成せざる卦で、勤力して自ら求めれば未成の者終に成るべし。占うに自ら其の力を喫い、勤にして能く困を解く。吉。
比の林(比卦六十四林)
比之比:鹿得美草,鳴呼其友。九族和睦,不憂飢乏。長子入獄,霜降族哭。
鹿豐美の水草を覓得して、便ち鳴叫して同伴を招呼し共に食す。正に《詩経・小雅・鹿鳴》の詠う所の和樂の象なり。故に九族親睦にして、饑荒を愁えず。然れど長房の子弟一旦獄に下れば、霜降の時節全族只だ相對して哭す。先に吉後に凶。親比の福仍ほ須らく刑獄の災を防ぐべし。
比之乾:繼祖復宗,追明成康。光照萬國,享世長久。
祖上の基業を承繼し宗廟を重振し、上周成王・周康王の「刑措して四十餘年用ゐず」の太平の治を追う。徳澤光萬邦に照り、家國世を享けて代代綿長なり。此の林純吉。成を守るに宜しく業を承ぐるに宜しく、凡事先人の餘蔭倚るべき有り。
比之坤:麒子鳳雛,生長家國。和氣所居,康樂無憂,邦多聖人。
麒麟の子・鳳凰の雛家國の中に長養す。古人は麟鳳を以て太平の瑞獸と爲し、見れば則ち聖賢世に出づ。一團の和氣居る所の地に聚まり、上下安樂して憂なし、國中賢聖輩出す。此の林大吉。生育・擧賢・家門興旺を主とす。
比之屯:取火流泉,釣鰟山顛。魚不可得,火不肯燃。
奔流の泉水の裏に往きて火を取り、山頂の上に往きて鰟魚を釣り、力を用ゐる方向と求む所の物と全然相い背反す。魚既に釣り上ぐる能わず、火もまた點きず。此の林求む所方を失い、事を謀るに南轅北轍す。縱ほ氣力を費盡すとも一の成る所なし。及早に弦を改め張を更うるに宜し。
比之蒙:彭生為娛,白虎行乾。盜堯衣裳,桀蹠荷兵。青禽照火,三日夷傷。
齊國の力士彭生本來國君の取樂に供するも、終に魯桓公を拉殺したるに因りて誅せらる。白虎天に橫行し、凶星座に當たる。堯の衣冠を竊取するも堯の徳行なく、夏桀と盗跖とまた兵を執りて暴を爲す。青鳥火光に撲向して、三日の內便ち焚傷を遭う。此の林凶險。僭竊して强を逞うし、終に身を殺するを致すを主とす。
比之需:黍稷醇醴,敬奉山宗。神嗜飲食,甘雨嘉降。黎庶蕃殖,獨蒙福祉。
黍稷の佳肴と醇厚の甜酒とを備え、恭く山川宗神に祭獻す。《詩経・小雅・楚茨》に「神飲食を嗜む」と曰う。神明歆享したる後便ち甘霖を降下し、百姓これによって繁衍生息し、獨り福澤を得。此の林祭祀應を得、雨を求めて雨を得を主とす。靜候して後收成有るに宜し。
比之訟:李花再實,鴻飛降集。仁哲權輿,蔭國受福。
李樹花開きて再度結實し、鴻雁成群飛落棲止す。皆祥を呈する異兆なり。仁厚明哲の人此より發端す(「權輿」卽ち萌芽起始なり)。其の徳行を以て國家を蔭庇して共に福澤を受く。此の林賢才初めて出で、後福方に長し。爭訟あると雖も終に歸して和順す。
比之師:千歲之墟,大兵所屠。不見子都,城空無家。
千年の古城已に廢墟と成る、只だ大軍境を過ぎて屠戮したるに因る。城中再び《詩経・鄭風》の稱美する男子都のごとき人物を見ず、滿城空寂にして家家主なし。此の林大凶。兵災・離散・人煙斷絕を主とす。出行と爭戰とに宜しからず。
比之小畜:公子王孫,把彈攝丸。發輒有得,室家饒足。
貴家の公子王孫彈弓を手執して彈丸を捻起し、一出手すれば便ち獲る所有り、家中これによって豐饒富足す。此の林小さく畜聚するを主とし、才力長ずる所の處に用ゐれば便ち成效を見。財を求め・行獵・小事を謀るに皆順なり。只だ得る所游藝の利に屬し、以て大業を期すべからず。
比之履:驪姬饞喜,與二嬖謀,譖殺恭子,賊害忠孝。申生以縊,重耳奔逃。
晋獻公の寵妃驪姬讒を進めて寵を取り、優施・梁五等の二嬖臣と密謀して、太子申生を誣陷し、忠孝の人を殘害す。申生終に自縊して死し、公子重耳出奔して外に十九年。此の林大凶。內嬖構陷し、骨肉相い殘すを主とす。行事須らく身邊親近の人を防ぐべし。
比之泰:長生無極,子孫千億。柏柱栽青,堅固不傾。
生生不息・綿長無盡にして、子孫繁衍して千億を計う。語《詩経・大雅・假樂》の「子孫千億」に本づく。柏木の做せる柱子根を扎めて常青、堅固にして傾倒せず。此の林極吉。家族昌盛・根基穩固を主とす。業を立つるに宜しく生育に宜し。
比之否:失意懷憂,如幽狴牢。亡子喪夫,附托寄居。
心願落空して憂愁に滿懷し、牢獄の中に幽禁せらるるがごとし(「狴」は古獄の名なり)。子を喪いまた夫を喪い、只だ他人に依附して寄居して日を度る。此の林凶。孤苦依る無く、進退困を受くを主とす。隱忍して分を守るに宜しく、軽擧妄動すべからず。
比之同人:仁智隱伏,麟不可得。龍蛇潛藏,虛居堂室。
仁徳智慧の士隱居して出でず、麒麟のごとき瑞獸もまた之を求めて得られず。竜蛇蟄伏深く藏れ、堂室空空として人なし。此の林賢者退隱して時機未だ至らざるを主とす。賢を求め助を求めても皆回應有る難し。自ら守りて時を待つに宜しくして強求すべからず。
比之大有:列結累累,締結難解。嫫母衒嫁,媒不得坐,自為身禍。
繩結一個一個に連なり、纏縛牢固にして解開し難し。傳うる所に黄帝の妻嫫母相貌極醜なるも、卻って四處自ら誇りて嫁を求め、媒人纏られて坐臥安からず、彼女終に自ら其の禍を招く。此の林糾纏清まらず、自炫して辱を招くを主とす。凡事人に強いて合を求むるに宜しからず。
比之謙:蜩飛墜木,不毀頭足。保我羽翼,復歸其室。
蟬樹上より飛落墜地すれど、頭脚を損傷せず、羽翼を保全し、また己が巢穴に飛回る。此の林跌挫に遇うと雖も傷を受くるに至らず。謙退して自ら守れば便ち身を全うして返るべし。失して復た得、去りて復た歸るの象なり。
比之豫:陳媯敬仲,兆興齊姜。乃適營丘,八世大昌。
陳國の公子完(諡敬仲)難を避けて出奔して齊に至るも、卜筮の兆早已に彼の齊國に興起せんことを預示せり。彼營丘卽ち齊國の都城に來り、八世に傳はりて田氏大いに盛んに、終に齊を代えて立つ。此の林遠く徙りて地を得、後嗣顯達するを主とす。出行遷居反つて大利と成る。
比之隨:過時不歸,雌雄苦悲。徘徊外國,與母分離。
歸期を過ぐるも仍ほ家に返らず、雌雄雙鳥各々哀鳴す。人徘徊滯留して異國他鄉に在り、母親と長久分離す。此の林行人歸らず、音信隔絕するを主とす。離散憂思の象なり。遠行を問い歸期を問うに皆吉ならず。
比之蠱:齊魯爭言,戰於龍門。構怨結禍,三世不安。
齊・魯兩國言語に因りて相い爭い、龍門に交兵す。怨仇を結下して禍端を釀成し、三代の人安寧を得ず。此の林口舌釁を起し、怨を積りて災と成るを主とす。爭訟の事宜しく及早に平息すべし。然らざれば患を子孫に貽す。
比之臨:府藏之富,王以賑貸。捕魚河海,苟願多得。
國庫府藏充盈し、君王倉を開きて民に賑濟借貸す。また江河大海の中に往きて魚を捕り、肯んじて功夫を下せば便ち多く獲る所有り。此の林上に恩澤あり、下に厚利ありを主とす。財を求め助を求むるに皆應を得。廣く施すにも宜しく廣く取るにも宜し。
比之觀:鳴鶴北飛,下就稻池。鱣鮪鰉鯉,眾多饒有,一狗獲兩,利得過倍。
鶴鳴叫して北に飛去り、稻田水池の邊に落つ。池中鱣・鮪・鰉・鯉各色の魚類繁多豐饒にして、一たび網を投げれば便ち雙份を得、獲利本錢を超出すること一倍。此の林大吉。財を求めて利を得、至る所獲あるを主とす。商賈漁獵の事に宜し。
比之噬嗑:蒼梧鬱林,道易利通。元龜象齒,寶貝南金,為吾福功。
蒼梧・郁林一帶の嶺南の地道路平易通達し、大龜甲・象牙・珍貝と南方美金等の珍貨皆求致すべく、我が福分と功業とを成就す。此の林遠行通商して大利を主とす。噬嗑決斷の艱あると雖も、終に貫通して寶を得る能くす。
比之賁:兩火爭明,雖斗不傷。分離且忍,全我弟兄。
兩團の火爭りて光を發するも、相い鬥うと雖も相い損傷するに至らず。彼此分かれ各々忍讓し、反つて兄弟の情分を保全す。此の林同類相い競うも大害なきを主とす。退讓して居を分かつに宜しく、同處して勝を爭うに宜しからず。
比之剝:伯夷叔齊,貞廉之師。以德防患,憂禍不存。
伯夷・叔齊國を讓りて周粟を食わず、堅貞清廉の典範なり。徳行を以て禍患を防範すれば、憂慮と災禍と自然消解す。此の林剥落の時に處ると雖も、節を守り廉を持せば便ち災を免るべし。清苦にして過咎なきを主とす。
比之復:季去我東,發櫛如蓬。展轉空床,內懷憂傷。
幼弟東に向かいて離去し、留下する人蓬頭散發して梳理する心無し。獨り空牀に卧し輾轉反側して、滿心憂傷す。此の林別離思念・獨居寂寞を主とす。婚姻を問い團聚を問うに皆其の時を得ず。
比之無妄:百足俱行,相輔為強。三聖翼事,王室寵光。
馬陸の百足一齊に邁動し、彼此扶助して其の强健を成す。《説文》の謂う所の「百足の虫、死するに至りて僵れず」。三位の聖賢共同に王事を輔佐し、王室因りて尊榮光あり。此の林群力相い濟う、輔弼人を得るを主とす。合作して事を共にするに宜し。
比之大畜:壅遏堤防,水不得行。火盛陽光,陰霓伏藏,退還其鄉。
堤防高く築きて水道を壅塞し、水流通行するを得ず。火勢旺盛にして陽光熾烈なれば、陰云虹霓只だ隱伏して本處に退回す。此の林陽盛にして陰を制し、勢を蓄えて發せざるを主とす。求む所暫く阻遏せられ、儲備して時を待つに宜しくして強通すべからず。
比之頤:滕蛇乘龍,年歲飢凶,民食草蓬。
騰蛇云を騰がせ竜に駕して行くは、本來靈異の兆なれど、然れど年成饑荒凶險にして、百姓只だ草蓬を采りて饑を充とす。此の林其の表有るのみにして實養なく、頤養の資匱乏するを主とす。年成を問い衣食を問うに皆足らず。
比之大過:鉛刀攻玉,堅不可得。盡我筋力,胝繭為侯。
軟鈍の鉛刀を以て堅玉を雕琢せんとするも、終に功を奏する能わず。全身の筋力を耗盡し、手脚に老繭を磨出し、也只だ胼手胝足の名を落得す。此の林器任に稱わず、勞して功なきを主とす。力小さく任重き者及早に自ら量るに宜し。
比之坎:恆山浦壽,高邑所在。陰氣下淋,洪水不處,牢人開戶。
恒山水濱の長壽の地は、正に高邑の在る所なり。陰氣下降して淫雨と化し、洪水泛濫して安居する處なく、獄中の囚人すらも門を開きて放出せらる。此の林水患災を成し、舊序崩解するを主とす。坎險の中に處るに當たりて先に地を避くるを謀るべし。
比之離:比目四翼,來安我國。福善上堂,與我同床。
比目魚雙雙として並行し、四翼を合成し、前來して我が邦國を安定す。福善の神堂に登り室に入り、我と共に一牀に處す。此の林大吉。配偶を得、助力を得るを主とし、內外相い親しむ。婚姻と合伙との事最も相宜。
比之咸:杜口結舌,心中怫鬱。去菑患生,莫告所冤。
口を閉じて言わず舌頭結びて、胸中愁悶郁結す。舊災方に去りて新患また生じ、冤を含みて申訴すべき處無し。此の林口有りて言う能わず、感應通ぜざるを主とす。訴訟を問い陳情を問うに皆門路なし。靜守して變を待つに宜し。
比之恆:牽尾不前,逆理失臣,忠莫往來,惠朔以奔。
牛尾を牽住して前に往きて拉くも、牛反つて肯んじて走らず。事理に違逆すれば便ち臣屬を失す。忠信の人再び往來せず、衛惠公朔終に他國に出奔す。事《左傳》に見ゆ。此の林行事勢に逆い、上下心を離れるを主とす。久しく其の道を守れば反つて害と成る。
比之遁:早霜晚遁,傷害禾麥。損功棄力,飢無所食。
霜降ること過早にして退くこと太晚く、禾苗麥穗盡く損傷を受く。一年の功夫白費し氣力空抛し、終に糧無く食う可からずに至る。此の林時令乖違し、勞して收を失うを主とす。退避及ばざれば便ち其の害を受く。
比之大壯:適戌失期,患生無聊。懼以發憂,發藏閉塞,邦國騷愁。
前往して戍守するも期限を誤り、禍患此より生じて百聊賴なし。驚懼の下憂中より來り、倉廩府藏盡皆閉塞し、擧國騷動愁苦す。此の林强を逞うし期を誤り、禍を招きて國に及ぶを主とす。凡事時を守り分を守るに宜し。
比之晉:昊天白日,照臨我國。萬民康樂,咸賴嘉福。
蒼天朗日高く懸り、光輝普く我が邦國を照す。萬民安康喜樂にして、人人美好の福澤を沐すを得。此の林大吉。正に晋卦「明地上に出づ」の象に合す。前程光明にして上下同じく慶す。進取して名を求むるに宜し。
比之明夷:元吉無咎,安寧不殆。時行則行,勿之有悔。
至極吉利にして、過錯あることなく、安寧にして危險なし。行動すべき時に便ち行動せよ。悔恨を留下することなかれ。此の林明夷晦暗の世に居ると雖も、能く時を審りて動くに因りて、故に危を轉じて安と爲す。機を見て作すを主とすれば則ち吉なり。
比之家人:懿公淺愚,不深受謀。無援失國,為狄所賊。
衛懿公淺薄愚昧にして、鶴を好みて良謀を接納するを肯んぜず。衆叛れ親離れて相い救う人なく、國破れ身狄人の手に死す。事《左傳・閔公二年》に見ゆ。此の林忠言を聽かず、內治修まらざるを主とす。家と國と皆危境に陷る。
比之睽:城上有烏,自號破家。呼喚鳩毒,為國患災。
城頭に烏鴉棲り、鳴聲自ら號して破家の音と爲す。招來するはまた鴆鳥毒羽にして、國家の災患と成る。此の林凶兆頻に現れ、狼を室に引き入るるを主とす。睽違乖離の下親む所人に非ず。務須く小人を遠離すべし。
比之蹇:長股善走,趨步千里。王良嘉言,伯來在道。申見王母。
長腿の人奔走に善く、一趨一步にして便ち千里を行く可し。御に善き王良嘉言を留下し、長兄已に途中より趕來りて、終に再び西王母に拜見するを得たり。此の林蹇難に處ると雖も、良御有り健足有るに因りて、反つて遠行して見るを得能し。艱難の中別に助力有るを主とす。
比之解:耕石山顛,費種家貧。無聊處作,苗發不生。
山頂石頭の上に耕種し、白白と種子を耗費して家境更に貧し。依託する所なく胡亂に勞作し、苗芽終に出ず。此の林力を用ゐて其の地を得ざるを主とす。困局を解散するの機あると雖も收成なし。地を擇びて後動くに宜し。
比之損:二人異步,東趨西步。千里之行,不相知處。
兩人步調一ならず、一個は東に向かい一個は西に向かう。各々千里の遠を走り、彼此再び對方の身在る何處を知らず。此の林同行志異なり、終に必ず分離するを主とす。合伙と婚配との事皆損有りて益なし。
比之益:純服黃裳,栽土以興。德義茂生,天下歸仁。
身純正の黄色の下裳を著す。《坤》卦六五「黄裳元吉」は、中正の服なり。土を培い基を立てて興起す。徳行仁義蓬勃として生長し、天下仁に歸心す。此の林大吉。中に居り正を守り、徳業日に增すを主とす。人に益すも亦以て己に益す。
比之夬:五銑鐵頤,倉庫空虛。賈市無盈,與利為仇。
器物只だ粗鐵の邊角を剩し、倉庫空空如也。買賣盈餘なく、反つて財利と冤家を結ぶ。此の林耗散決潰し、經營本を折るを主とす。夬決の時須らく錢財外流を防ぐべし。
比之姤:登崑崙,入天門,過糟丘,宿玉泉,問惠觀,見仁君。
崑崙仙山に登り、天門に入り、糟丘を經て、夜玉泉に宿す。一路恩惠の景象を訪求し、終に仁徳の君を見るを得。此の林奇遇際會を主とす。姤とは遇なり。遠行して貴を謁し、遇う所皆善なり。
比之萃:團團白日,為月所食。損上毀下,鄭昭出走。
圓圓の白日月亮に遮蔽せられて日食と成る。上其の明を損し下其の基を毀し、鄭昭公終に出奔す。事《左傳》に見ゆ。此の林君徳掩を受け、聚りて復た散ずるを主とす。上位に居る者當に陰に掩わるるの禍を防ぐべし。
比之升:倉盈庾億,宜稼黍稷。年歲有息,國家富有。
倉廩盈滿し、露天に積起せる穀堆億を以て計う。正に廣く黍稷を種するに宜し。年成歳歳餘有り、國家因りて富足す。此の林大吉。升卦小を積みて高を成すの義に合す。積累漸々豐かにして家國俱に裕かなり。
比之困:虎狼結謀,相聚為保。伺齧牛羊,道絕不通,傷我商人。
虎狼合謀し、一夥に聚成して相互に庇護し、機を伺い牛羊を咬食し、道路これによって斷絕し、往來の商旅害を受く。此の林群惡道に當たり、途窮りて阻まるるを主とす。行商遠出最も忌諱。暫く止まりて行かざるに宜し。
比之井:木年催折,常恐不活。老賴福慶,光榮輔相。
樹木年久しくして摧折を遭い、常に活きて來る能わざらんを擔心す。年老の人卻って福慶に倚仗して保全を得、還つて輔相の榮を享有す。此の林先に危後に安を主とす。井久しく廢して復た食を得るがごとし。老來福を得、舊業重ねて光るを主とす。
比之革:同載共車,中道分去。喪我元夫,獨為孤苦。
本來同車共載なりしも、半路上卻って道を分かちて去る。我が良人を喪失す。「元夫」卽ち善士・丈夫なり。只だ自己孤苦依る無しを剩す。此の林變革中途變を生じ、伴侶離散するを主とす。孤獨の象なり。
比之鼎:飲酒醉酗,跳躍爭鬥,伯傷叔疆,東家治喪。
飲酒量に過ぎて酒瘋を撒起し、跳踉して相い鬥い、伯傷を受け叔其の强を逞うし、東鄰人家これによって喪事を辦起す。此の林凶。酒禍爭鬥・兄弟相い殘すを主とす。鼎中飲食あると雖も其の節度を失す。酒を戒め爭を慎むに宜し。
比之震:出值凶災,逢五赤頭,跳言死格,扶杖伏聽,不敢動搖。
一たび門を出れば便ち凶災に遇い、五個の赤頭凶煞に撞見し、跳踉喊叫して人を死地に置かんと説く。只だ拐杖を扶けて地に伏し命を聽く、一動も敢えて動かず。此の林大凶。驚懼して制を受くを主とす。震動の下宜しく身を屈して自ら保つべし。
比之艮:狼虎爭強,利義不行。兼吞其國,齊晉無主。
豺狼猛虎强を爭い勝を鬥い、利と義の道皆行き通らず。强者兼并して他國を吞滅し、齊・晋兩國皆其の主を失す。此の林强梁橫行し、綱紀廢墜するを主とす。艮止の義ここに行き通らず。其の鋒芒を避くるに宜し。
比之漸:南國少子,方略美好。求我長女,薄賤不與。反得醜惡,後乃大悔。
南國に年少の男子有り、才略出衆す。彼來りて我が家の長女を求娶すれど、家人其の微賤を嫌みて許配するを肯んぜず。結果女兒別に醜惡の人に嫁し、事後追悔及ばず。此の林偶を擇びて當を失い、貧賤を以て人を取るを主とす。漸進の事宜しく開端に審愼すべし。
比之歸妹:一身兩頭,莫適其軀。亂不可治,孰為湯漢。
一個の身體兩個の頭を長きて、肢体從適する所なし。混亂して整治する能わず、又誰か能く商湯・漢高祖のごとく亂を撥きて正に反らさん。此の林大凶。政多門に出で、名分正ならざるを主とす。歸妹の失此に甚だしき莫し。
比之豐:李耳匯鵲,更相恐怯,偃而以腹,不能距格。
李耳は虎の別名なり。虎群鵲と相遇い、彼此驚懼安んぜず、只だ仰向けに卧して肚腹を翻出し、抵擋對抗する力無し。此の林外强中乾・事に臨みて怯懦するを主とす。豐盛の時に處ると雖も自ら守る能わず。
比之旅:松柏棟樑,相輔為強。八哲五教,王室康寧。
松柏棟梁の材と作るべく、彼此支撐して更に堅固なり。八位の賢哲五常の教を推行し、王室因りて安康寧靜す。此の林賢才共に濟し、羈旅依托する所を得るを主とす。外出して貴に遇い、共に大事を成すを主とす。
比之巽:雀行求食,暮歸孚乳。反其屋室,安寧如故。
麻雀白日外に出でて食を覓め、傍晚巢に歸りて雛鳥を孵育す。己が屋舍に回到し、安寧常のごとし。此の林勞して歸有り、出入順遂するを主とす。巽は入なり。事を謀るに從容たり、家宅平安なり。
比之兌:四尾六頭,為凶作妖。陰不奉陽,上失其明。
四條の尾巴・六個の腦袋、作祟して凶を爲す妖異の形なり。陰陽を承奉せず、上位に居る者明察を失す。此の林怪異叢生し、綱紀倒置するを主とす。兌説の下暗に邪佞を藏む。宜しく先に名分を正すべし。
比之渙:一衣三闋,結緝不便。岐道異路,日暮不到。
一件の衣裳三處裂け、縫補するに極めて手に稱わず。岔路紛歧して各々異途に奔り、天色已に晚くして未だ到達せず。此の林離散破碎・途中迷失するを主とす。渙散の時凡事成り難し。
比之節:牙櫱生齒,室堂啟戶。幽人利貞,鼓翼起舞。
草木萌蘖して新芽を抽き、堂室もまた門戶を敞開す。幽居の人正道を守持して利を得、翅を振い舞い起きて歡欣す。此の林閉極まりて通じ、節を守りて吉を得るを主とす。隱者出でて用ゐられるを見るの象なり。
比之中孚:春鴻飛東,以馬至金。利得十倍,重載歸鄉。
春天鴻雁東に向かいて飛去り、人馬匹を以て黄金に換う。獲利十倍して、滿載して歸る。此の林大吉。中孚は誠信なり。交易信を守り、往來大いに得る所有るを主とす。
比之小過:歡悅以喜,子孫俱在。守發能忍,不見殃咎。
歡欣喜悅して、子孫皆平安にして側に在り。本分を守住し能く忍耐せば、便ち災殃過錯に遭遇せず。此の林小さく過越有りて大害なきを主とす。能く忍讓すれば卽ち保全すべし。
比之既濟:精神消落,形骸醜惡。齬齚頓挫,枯槁腐蠹。
精神衰頹消散し、形體憔悴醜陋なり。牙齒參差して咬合頓挫し、身軀枯槁して朽木蠹蟲に蛀空せらるるがごとし。此の林功成りて氣衰うるを主とす。既濟の後卽ち衰敗なり。疾病を問うに最も忌諱。
比之未濟:登高上山,見王自言。申理我冤,得職夢恩。
高山に登り、君王に面見して自ら陳情す。冤屈申理するを得、還つて職位を獲授し恩澤を蒙る。此の林冤を訴えて伸を得、干謁用を得るを主とす。《未濟》は事猶ほ未成れど前途已に開けり。
小畜の林(小畜卦六十四林)
小畜之小畜:白鳥銜餌,鳴呼其子。斡枝張翅,來從其母。伯仲叔季,尤賀舉手。
白鳥食物を銜え、鳴叫して雛鳥を呼喚す。雛鳥樹枝に攀り翅を張開して、飛來して母親に跟從す。伯仲叔季兄弟幾人手を擧げて稱賀す。此の林哺育人を成し、骨肉團聚するを主とす。小畜積漸の義正に養に在り。家宅丁を添うの喜を主とす。
小畜之乾:東遇虎地,牛馬奔驚。道絕不通,南困無功。
東に向かいて走り入りて虎踞の地に至り、牛馬驚きて奔散す。道路斷絕して通行する能わず、南に往けばまた困を受けて一の成る所なし。此の林行止兩難・東西俱に阻まるを主とす。出行・求財皆相宜ならず。
小畜之坤:子鉏執麟,春秋作元。陰將以終,尼父悲心。
魯哀公十四年、叔孫氏の車夫子鉏商麒麟を獵獲し、孔子これによって《春秋》に絕筆す。陰氣將に盡き、聖道成らず、孔子之がために傷心す。卽ち「西狩獲麟」の典なり。此の林瑞時に逢わず、事業中輟するを主とす。才を懷きて末世に遭逢するを主とす。
小畜之屯:取火泉源,釣魚山顛。魚不可得,火不肯燃。
泉水の源頭に往きて火を取り、山頂の上に往きて魚を釣り、方向全然弄反す。魚既得らず、火も點燃せず。此の林求めて其の所に非ず、勞して功なきを主とす。屯難の中更に須く路徑を愼擇すべし。
小畜之蒙:機關不便,不能出言。精誠不通,為人所冤。
機括靈便ならず、話嘴邊に到りて説き出せず。一片の精誠上達する能わず、反つて人に誣枉せらる。此の林蒙昧壅塞し、辯白門無きを主とす。暫く沈黙して天明を守候するに宜し。
小畜之需:故室舊廬,稍弊且徐。不如新巢,可治樂居。
舊屋老宅日に就て破敗遲緩し、別に新巢を築き、收拾整齊して安樂に居住すべきに如かず。此の林更新して居を易うるを宜とす。需とは待なり。遷改して後安を得るを主とす。
小畜之訟:蛇循流,東求大魚。預且舉網,庖人歌謳。
蛇水に順いて行き、東に往きて大魚を尋覓す。漁人豫且大網を撒下して其を捕獲す。《史記・龜策列傳》は神龜の豫且に網せらるるを載す。正に此の意なり。厨人歡歌して厨に下る。此の林大を圖りて反つて人に得られるを主とす。爭訟の中宜しく他人のために嫁を作るを防ぐべし。
小畜之師:鑿山通道,南至嘉國。周公祝祖,襄適荊楚。
山を開き路を鑿り、南に直ちに美好の邦に通ず。周公祖先に祝禱し、使者遠く荆楚の地に赴く。此の林開闢して通途と爲し、命を奉じて遠行するを主とす。師出でて名有れば南行吉を得。
小畜之比:鵲近卻縮,不見頭目。日以困急,不能自復。
喜鵲將に靠近せんとして卻って退縮回り、頭臉を看不見ず。處境一天比一天窘迫にして、自ら恢復する力無し。此の林親しまんと欲して親しむを得ず、進退據を失うを主とす。比附の志願を遂げ難し。
小畜之履:五舌啄難,各自有言。異國殊俗,使心迷惑,所求不得。
五張の嘴爭りて啄辯し、各々一詞を執す。異國他鄉風俗相同じからず、人をして心生迷惑せしめ、求む所終に得る能わず。此の林衆口紛紜・一是を衷する莫し。履道明らかならざれば寸步も行き難し。
小畜之泰:天門開闢,牢戶寥闊。桎梏解脫,拘囚縱釋。
天門洞開し、牢門大いに敞開す。手銬脚鐐盡皆解除し、被囚の人釋放を獲得す。此の林大吉。困厄頓に解け、天地交通するを主とす。刑獄を問い疾病を問うに最も吉利。
小畜之否:堅冰黃鳥,常哀悲愁。數驚鷙鳥,雛為我憂。
嚴冬堅氷の中の黄雀、終日哀鳴悲愁す。屢々猛禽に驚擾せられ、巢中の雛鳥人をして憂心せしむ。此の林弱くして寒に勝えず、屢々欺凌を遭うを主とす。否塞の時宜しく深く藏れて露せざれ。
小畜之同人:日走月步,娶不同舍。夫妻反目,主君失居。
日行月走り、各々其の軌道有り、婚配を成すと雖も同じく一室に居らず。夫妻反目相い爭い、主君もまた安居の所を失了。此の林同牀異夢・內外俱に失うを主とす。婚姻の事最も忌諱。
小畜之大有:金牙鐵齒,西王母子。無有患殃。扶舍徙道,到來不久。
金牙鐵齒を生ずるは、西王母の子なり。彼の護佑有れば便ち災殃なし。舍館を扶助し其道を移徙し、不久便ち到達すべし。此の林神靈の庇佑を得、遷徙順遂するを主とす。大有の得依托する所有るに在り。
小畜之謙:式微式微,憂禍相半。隔以巖山,室家分散。
「式微式微、胡爲ぞ歸らざる」、語《詩経・邶風・式微》に出づ。衰微の歎にして、憂と禍と各々一半を占む。中間險峻の山岩を隔て、家室離散して各處す。此の林日に就て衰落し、親人分居するを主とす。謙退するも其の憂を免れ難し。
小畜之豫:眾神集聚,相與議語。南國虛亂,百姓勞苦。興師征伐,更立賢主。
衆神會集し、共同に議論す。南方の國空虛動亂にして、百姓勞苦堪えず。ここに兵を興して征討し、別に賢明の君を立つ。此の林亂を撥きて更に始まるを主とす。豫とは備なり。先に謀りて後動き、終に更新を得るを主とす。
小畜之隨:狼虎爭食,禮義不行。兼吞其國,齊魯無主。
豺狼猛虎食物を爭奪し、禮義の道施行するに從なし。强者他國を吞幷し、齊・魯兩國君主を失す。此の林强者弱を凌ぎ、勢相い隨い追うて道義存せざるを主とす。强を避けて自ら守るに宜し。
小畜之蠱:寄生無根,如過浮雲。本立不固,斯須落去,更為枯樹。
寄生の物根柢なく、飄過の浮云のごとし。根本立てること牢ならざれば、頃刻の間便ち脫落し、反つて枯樹と變成す。此の林依附して根なく、盛んにして能く久しからざるを主とす。蠱壞の象宜しく根本より整治すべし。
小畜之臨:子啼索哺,母行求食。反見空巢,長息訾弋。
雛鳥啼叫して食を索め、母鳥外出して食を覓む。回來すれど卻って空巣を見るのみ、長く嘆息一聲して、彼の射獵の人を怨恨す。此の林養育中斷し、骨肉害を遭うを主とす。事に臨みて宜しく外患の親む所に傷るを防ぐべし。
小畜之觀:駕駟逐狐,輪掛荊棘。車不結轍,公子無得。
四馬の車に駕して狐狸を追逐するも、車輪卻って荆棘に挂上る。車轍すら壓成する能わず、公子一の獲る所なし。此の林成を急ぎて反つて牽絆を受くるを主とす。觀望して勢を審らかにせば方に失誤を免るべし。
小畜之噬嗑:方喙廣口,仁智聖厚。釋解倒懸,唐國太安。
方口濶嘴の相、主人仁徳智慧・聖明寛厚なり。百姓を倒懸の苦より解救し、唐堯の國大いに安定す。此の林賢者政に當たり、危難解を得るを主とす。噬嗑梗阻を去除して後通達す。
小畜之賁:駕福乘西,來至家國。戴慶南行,離我安居。
福氣を載せて西に向かいて車を駕し、己が家國に回る。頭喜慶を頂きてまた南に往き行き、我が安穩の居所を離る。此の林吉中に動あり。賁飾の下先に福を得て後遷徙するを主とす。成を守るに宜しくして再び遠行を作すべからず。
小畜之剝:孔鯉伯魚,北至高奴,木馬金車,駕遊大都,王母送我,來牝字駒。
孔子の子孔鯉字は伯魚、北行して高奴に至り、木馬金車に乘りて大都に遊歴す。西王母相い送り、母馬を贈來して良駒を產下す。此の林剥落の世に在ると雖も、貴人の相送を得るに因りて遠遊獲あり。行旅助を得、後嗣繼有るを主とす。
小畜之復:三足無頭,不知所之。心狂精傷,莫使為明,不見日光。
三隻の脚あるも頭なく、何の處に往くべきかを知らず。心神狂亂し精氣損を受け、人彼を明白ならしむる能わず、終日天日を見ず。此の林主を失い向を迷い、神志昏惑するを主とす。返復の路尋ね難し。
小畜之無妄:來牝龍身,日馭三千,南止蒼梧,與福為婚。道里夷易,安全無忌。
竜身の母馬一匹來り、一日三千里を行く能く、南に苍梧に止まり、福氣と婚姻を結ぶ。道路平坦にして、一路安全にして忌諱なし。此の林大吉。妄なくして得。遠行順遂し、姻緣天成するを主とす。
小畜之大畜:辰次降婁,王駕巡時。廣佑施惠,安國無憂。
歳星運行して降婁の次に至る、十二次の一なり。君王時に依りて天下を巡行す。佑助恩惠を廣施し、國家安定して憂なし。此の林徳を積みて廣く被らし、時に按じて動くを主とす。大畜の富施與する能くするに在り。
小畜之頤:望幸不到,文章來就。王子逐走,馬騎銜傷。昳跡不得,曷其有常。
君王の臨幸を盼望するも來るを見ず、倒れては文書辭章眼前に送到す。王子馬を驅りて奔逐し、人馬皆銜勒の傷を受く。蹤跡散亂して尋ね難く、何處にか還つて常度言うべき有らん。此の林望む所落空し、動きて傷を受くるを主とす。頤養節を失うの象なり。
小畜之大過:中原有菽,以待饔食。飲御諸友,所求大得。
原野の中豆菽を長せ、正に早晚の飯食に備うべし。語《詩経・小雅・小宛》の「中原に菽有り、庶民之を采る」に本づく。酒を設けて諸位の朋友を宴請し、求む所大いに得あり。此の林吉。素朴自足し、賓主歡を盡すを主とす。大過の世に當たると雖も其の養を失わず。
小畜之坎:亂茅縮酒,靈巫拜禱。神怒不許,瘁愁憂苦。
零亂の茅草を以て酒を濾して祭を行う。「縮酒」は古祭禮で、《左傳・僖公四年》に見ゆ。靈巫再三拜禱す。神明震怒して應允するを肯んぜず、只だ憔悴憂愁困苦を落得す。此の林祭祀禮を失い、祈求應ぜざるを主とす。坎陷の中自ら出る難し。
小畜之離:李華再實,鴻卵降集。仁哲以幸,蔭國受福。
李樹花開きて再度結實し、鴻雁の卵紛紛として降落聚集す。皆祥異の兆なり。仁厚明哲の人因りて幸を得、邦國を蔭庇して共に福澤を受く。此の林吉。附麗して其の所を得。賢者遇合し、後福綿長なり。
小畜之咸:源出陵足,行於山趾。不為暴害,民得安居。
水の源丘陵の下より出で、山脚に沿い流淌す。泛濫して災を成さず、百姓安居するを得。此の林柔順にして爭わず、感應正を以てするを主とす。澤人に及びて侵害する所無し。
小畜之恆:客人其門,奔走東西。童女不織,士奇耕畝。暴骨千里,歲寒無年。
客人門を闖入し、人人東西に奔走す。少女織機を停下し、士人田畝を抛下す。千里の內白骨暴露し、歳寒にして年成收なし。此の林大凶。兵荒馬亂し、生業盡く廢するを主とす。恒久の道ここに斷絕す。
小畜之遁:天之所予,福祿常在。以永康寧,不憂危殆。
上天の賜與する所、福分祿位長く在り。此に因りて長く安康寧靜を享け、危難を憂慮するを須いず。此の林大吉。遁退して天佑を得。退處して反つて安く、身家過咎なきを主とす。
小畜之大壯:蝗食我稻,驅不可去。實穗無有,但見空藁。
蝗蟲我が稻子を啃食し、驅趕するも趕き去る能わず。穀穗顆粒存することなく、只だ空空の秸秆を剩す。此の林外患侵奪し、徒勞して收なきを主とす。壯健の勢あると雖も自衛する能わず。
小畜之晉:牛驥同堂,郭氏已亡。國破空虛,君奔走逃。
劣牛と駿馬と同槽して共處し、賢愚分かれず、郭國これによって滅亡す。《説苑》は郭君の「善を善して用ゐる能わず、惡を惡して去る能わず」にして國を亡ぼすを載す。國破れ城空しく、國君倉皇として出逃す。此の林人を用ゐて明ならず、進みて國を失うを主とす。
小畜之明夷:狗無前足,陰謀其比。為身賊害,何以安息。
狗前脚を失い、暗中還つて彼と相い親しむ同伴を算計す。終に自身を害し、何處にか還つて安寧休息せん。此の林自ら其の黨を傷め、暗中害を生ずるを主とす。明夷の世陰謀終に其の身を反噬す。
小畜之家人:兩輪自轉,南上大阪。四馬共轅,無有重難。與禹笑言。鶴鳴竅穴,不離其室。
兩輪自ら轉動し、南に向かいて大坡に登る。四匹の馬共に一轅を駕し、再び沈重艱難なし。大禹と談笑して相い得。鶴穴中に長鳴し、始終自家の居室を離れず。此の林大吉。同心協力し、家宅安固なりを主とす。
小畜之睽:芽櫱生達,陽昌於外。左手執#,公言錫爵。
草木萌芽して條を抽き通達し、陽氣外に昌盛す。左手某物を執持す、此の處源文缺字あり。公侯口を開けば便ち爵位を賜下す。此の林生機外に發し、賞を受け祿を得るを主とす。睽異の中反つて際遇あり。
小畜之蹇:秋花冬萼,數被嚴霜。甲兵當庭,萬物不生。雄犬夜鳴,民擾大驚。
秋日の花・冬日の萼、屢々嚴霜の摧折を遭う。兵甲庭前に陳列し、萬物生長するに從なし。雄犬深夜狂吠し、百姓騷動大いに驚く。此の林大凶。兵禍門に臨み、生機斷絕するを主とす。蹇難の極退避するに宜しくして前行すべからず。
小畜之解:霜降必戶,蜇蟲隱處。不見日月,與死為伍。
霜降の時節必ず戸を閉ずべし、蟄蟲深く藏伏す。日月の光を見ず、死氣と伴と爲す。此の林閉藏して時を待つを主とす。解散の機あると雖も時候未だ至らず。靜養して動くこと勿れに宜し。
小畜之損:身載百里,功加四海。為文開基,武立大柱。
一身百里の責を擔起し、功業四海に遍及す。文治を以て基業を開創し、武功を以て支柱を樹立す。此の林大吉。己を損りて天下に益す。功を建て業を立て、文武兼ねて濟すを主とす。
小畜之益:禹作神鼎,伯益銜指。斧斤高閣,憧位獨坐。賣庸不售,苦困為禍。
大禹神鼎を鑄造し、伯益旁に在りて口を噤み指を含む。斧斤高閣に束ね、空しく位子を守りて獨坐す。勞力を出賣せんと想うも雇用する人なく、困苦災を成す。此の林才有りて施展を得ず、位有りて用ゅる所なきを主とす。益の至らざる反つて困と成る。
小畜之夬:福祚之家,喜至憂除。如風兼雨,出車入魚。如魚逢水,長樂受庇。
福澤有る人家、喜事門に臨み憂患消除す。風調り雨順うがごとく、門を出れば車有り門を入れば魚有り。魚兒の水を得るがごとく、長く安樂を享け人の庇蔭を受く。此の林大吉。舊憂を決去して福氣自ら至るを主とす。
小畜之姤:蒼龍隱伏,麟鳳遠匿。寇來同處,未得安息。
蒼竜隱伏して出でず、麟鳳遙かに躲藏す。盗寇卻って來りて人と同處し、安寧休息するに從なし。此の林賢者退き小人進むを主とす。姤は期せずして遇う。遇う所偏偏其の人に非ず。
小畜之萃:旦生夕死,名曰嬰鬼,不可得視。
早晨生れ傍晚に卽ち死す、此のごときを嬰鬼と呼ぶ。一見するも得る可からず。此の林大凶。聚りて驟かに散じ、生機永からざるを主とす。胎產を問い新事を問うに最も忌諱。
小畜之升:白鶴銜珠,夜食為明。懷安德音,身受光榮。
白鶴口に明珠を銜え、夜其の光亮に憑りて進食す。心懷安和の徳音、自身榮光を得享す。此の林吉。內に其の徳を蘊め、漸々上升するを主とす。暗中自ら照明の資あり。
小畜之困:行役未已,新事復起。姬姜勞苦,不得休息。
徭役差事完結なく、新たの差事また派下せらる。姬姓姜姓の貴家女子も勞苦堪えず、休息を得ず。此の林勞役窮りなく、困頓相い繼ぐを主とす。忍守して時を待つに宜し。
小畜之井:憂患解除,喜至慶來。坐立歡欣,與樂為鄰。
憂愁禍患一一解除し、喜事慶事接續して到來す。坐するも立つるも滿心歡欣し、快樂と鄰を爲す。此の林大吉。井泉の復た通ずるがごとし。困頓轉じて安と爲り、福慶自ら至るを主とす。
小畜之革:晨風指翰,大舉就溫,昧過我邑,弈無所得。
晨風鳥翅を振い高飛し、大擧して温暖の地に遷往す。天色昏昧の時我が城邑を掠過し、射獵の人一の獲る所なし。此の林時機稍縱即逝するを主とす。變革の際把握せざれば便ち只だ空手して回る。
小畜之鼎:下田稷黍,芳華生齒。大於集降,紛澇滿甕。
低窪田の裏の稷と黍、花穗芬芳にして顆粒行を成す。豐收天より降るがごとく、穀物紛紛として瓮缸に裝滿す。此の林吉。鼎は烹飪して人を養うを主とす。收成充盈し、飲食豐足するを主とす。
小畜之震:君子碌碌,鳥庇茂木。見春百穀,心勞願德。
君子勤勉して息まず、鳥兒の茂密林木の中に庇護を得るがごとし。春天到來し百谷萌發し、心力勞苦すと雖も徳願償うを得。此の林動きて庇う所有るを主とす。震驚の中自ら安身の所有り。
小畜之艮:折臂踒足,不能進酒。祠祀闊曠,神怒不喜。
手臂を折り脚踝を扭傷し、酒を獻ずるすら能わず。祭祀久しく廢れ荒疏し、神明震怒悦ばず。此の林身殘し事廢れ、禮敬周ならざるを主とす。止まりて能く行わざるの象なり。
小畜之漸:學靈三年,聖且神明。光見善祥,吉喜福慶。鳴鳩飛來,告我無憂。
靈術を修習する三年、終に聖明神に通ずるに至る。光芒の中吉祥善兆を顯出し、喜慶福澤接續して來る。鳴叫の鳩鳥飛來して、我に平安無憂を報ず。此の林大吉。漸修成有り、積久して通ずるを主とす。
小畜之歸妹:三婦同夫,志不相思。心懷不平,志常愁悲。
三個の婦人共に一夫に事え、心志並に相合わず。各々不平の氣を懷き、終日愁苦悲傷す。此の林名分正ならず、衆心齊し難きを主とす。歸妹の失妾を以て妻を僭するに在り。
小畜之豐:中田膏黍,以享王母。受福千億,所求大得。
田中肥美の黍米、以て西王母に祭享す。受くる福澤千億を以て計り、求む所大いに獲有り。此の林大吉。祭祀應を得、豐盛餘有るを主とす。
小畜之旅:陽火不災,喜至慶來。降福送喜,鼓琴歌謳。
陽火光明にして災を成さず、喜事慶事接續して到來す。神明福を降し喜を送り、人々琴を鼓し歌を唱う。此の林吉。旅外に居りても歡樂を得能し。客途喜に逢うを主とす。
小畜之巽:陽明不息,君無恩德。伯氏失利,農喪其力。
烈日空に當たりて止息するを肯んぜず、君上卻って恩徳下に施す無し。長者利益を失い、農夫氣力を白費す。此の林上澤を施さず、下其の苦を受くるを主とす。巽順の義行われざれば百姓困苦す。
小畜之兌:燕雀銜茅,以生孚乳。兄弟六人,姣好孝悌。各得其願,和悅相樂。
燕雀茅草を銜來して巢を築き、幼雛を孵育す。兄弟六人容貌端好にして孝順友愛し、各々心願を遂げ、和悦して相處す。此の林大吉。家門和睦し、人丁興旺するを主とす。兌は悦なり。其の歡樂正に親情に在り。
小畜之渙:鶉尾奔奔,火中成軍。虢叔出奔,下失其君。
鶉鳥雙を成し飛逐す。語《詩経・鄘風・鶉の奔奔》に本づき、宮闈別なきを諷刺す。大火星昏見の時正に軍を整うるに宜し。虢叔出奔して外に在り、下民君主を失了。此の林上亂れ下散ずるを主とす。渙離の象なり。君臣相い失うを主とす。
小畜之節:兩人相距,止不同舍。夫妻立散,衛侯失居。
兩人相互に抗拒し、各々止息して同じく一室に居らず。夫妻當に離散し、衛侯もまた安居の所を失了。此の林節制過甚して隔絕に至るを主とす。分離・位を失うを主とす。
小畜之中孚:魃為燔虐,風吹雲卻。欲止不得,反鬼其宅。
旱魃虐を肆にして焚くがごとく、狂風云を吹散す。旱情を停めんと想うも能わず、反つて鬼魅をして住宅を占めしむ。此の林誠信天に通ぜず、祈禳效なきを主とす。中孚其の感應の力を失す。
小畜之小過:關雎淑女,佩我君子。少妻在門,君子嘉喜。
《詩経・周南・關雎》の詠う所の窈窕淑女、君子と佳偶を結ぶ。年少の妻子已に門前に在り、君子歡喜稱慶す。此の林吉。婚姻美滿を主とす。小過の時小事を行えば則ち吉なり。
小畜之既濟:慈母赤子,饗賜得士。夷狄服除,以安王家。
慈母赤子を養育し、饗宴賞賜して賢士を得。四方の夷狄歸服し兵戈解除し、王室因りて安定す。此の林大吉。內外俱に濟う、上下相い安し。
小畜之未濟:三足孤鳥,靈鳴督卸。思過罰惡,自賊其家。
三足の孤鳥靈異に鳴叫し、督責して罪を卸さんとするがごとし。過失を思量し罪惡を懲治すれど、卻って自家を害す。此の林自省當に過ぎ、苛責親を傷るを主とす。《未濟》の時事猶ほ未定まらず。寛厚に宜しくして刻薄すべからず。
履の林(履卦六十四林)
履之履:十烏俱飛,弈射九雌。雄得獨全,雖驚不危。
十隻の烏鴉一齊に飛起し、射手九隻の雌鳥を射落す。唯だあの雄鳥保全するを得、驚嚇を受くると雖も危險なし。此の林群中獨り免れ、險を履みて夷のごとくするを主とす。行事謹愼なれば便ち身を脫すべし。
履之乾:東向藩垣,相與笑言。子般執鞭,圉人作患。
面東に向かい垣牆の下に立ちて談笑す。魯莊公の子般曾て圉人犖を鞭打ち、後來正に此の人亂を作し彼を殺す。事《左傳・莊公三十二年》に見ゆ。此の林一時の歡好にして禍患其の中に伏すを主とす。虎の尾を履む者下人を輕侮すべからず。
履之坤:循河樀舟,旁淮東遊。漁夫舉網,先得大鰍。
黄河に順いて船を划き、淮水に沿い東に游行す。渔夫大網を撒き、先んじて一條の大鰌を撈獲す。此の林吉。勢に順いて行い、人に先んじて利を得るを主とす。柔順の下自ら獲る所有り。
履之屯:轅折輪破,馬倚僕臥。後旅先宿,右足跌踒。
車轅折斷し車輪破損し、馬匹歪みて地に卧す。後頭に落ちた隊伍反つて先に住下し、自己卻って右脚を扭傷す。此の林行進挫を受け、事事後落するを主とす。屯難の時遠行に宜しからず。
履之蒙:兩人相伴,相與悖戾。心乖不同,爭訟凶凶。
兩人本來同伴なれど、相處卻って彼此違逆す。心意乖離合わず、爭訟の聲洶洶なり。此の林同行心異なり、糾紛斷えざるを主とす。蒙昧未だ開けざれば則ち是非判斷し難し。
履之需:北辰紫宮,衣冠立中。含和建德,常受天福。
北極星紫微宮に居り、衣冠儼然として正中に端立す。中和を心懷し徳行を建立し、長く上天の福佑を受く。此の林大吉。正に居りて時を待つを主とす。需して守有れば福自然到來す。
履之訟:遊居石門,祿祉安全。受福西鄰,歸飲玉泉。
石門に遊歴居止し、祿位福祉安穩して虞なし。西鄰より福澤を受得し、歸りて玉泉の水を痛飲す。此の林吉。爭訟の象あると雖も安然として祿を得能し。外出して助を得るを主とす。
履之師:羊腸九縈,相推並前。止須王孫,乃能上天。
羊腸の小道九曲を盤繞し、衆人相互に推挽して肩を並べ前進す。只だ王孫の相助を待てば、便ち扶揺直上すべし。此の林險途須らく衆力に憑るべし。師衆相い扶けて後濟る可し。貴人を得れば則ち通ずるを主とす。
履之比:爭訟相倍,和氣不處。陰陽俱否,谷風母子。
爭訟相持して彼此背離し、和氣安處するに從なし。陰陽俱に塞がりて通ぜず、《詩経・邶風・谷風》の詠う棄婦母子の怨のごとし。此の林親比轉じて仇隙と成るを主とす。家室不和の象なり。
履之小畜:郭叔矩頤,為棘所拘。龍額重顙,禍不成殃,復歸其鄉。
郭叔方正の下頷を生ずるも、荆棘に纏住せらる。彼竜額高隆にして額骨重疊し、本來貴相なり。故に禍事災殃を釀成せず、終に故鄉に回到するを得。此の林貴相厄を解くを主とす。拘係に遇うと雖も過咎なし。
履之泰:蠆室蜂戶,螯我手足。不得進止,為吾害咎。
蝎子の窩・馬蜂の巢、我が手脚を蜇傷す。進むも得ず止まるも得ず、我が禍害と成る。此の林細微の毒人を傷るを主とす。通泰の時に當たると雖も、須らく身邊の小患を防ぐべし。
履之否:怒非其願,因物有遷。貪妬腐鼠,而呼鴞鳶。自合失餌,到掖困患。
發怒本願にあらず、只だ外物の牽動に因りて改變す。一隻の腐鼠を貪妒し、便ち鴟鴞鳶鳥を招來す。《莊子・秋水》の鴟腐鼠を得るの典を用ゐ。自ら湊上して反つて餌食を丢了、腋肘の間の困患に落到す。此の林小に因りて大を失い、自ら其の禍を招くを主とす。
履之同人:嬰孩求乳,母歸其子。黃麑悅喜,自樂甘餌。
嬰孩啼哭して乳を求め、母親孩子の身邊に回る。小黄鹿歡欣喜悅して、自ら甘美の食物を享く。此の林吉。母子相い得、同心相い親しむを主とす。求む所卽刻應有り。
履之大有:針縷徒勞,錦繡不成。鷹逐雉突,爪折不得。
針を穿ち線を引きて工夫を白費し、錦繡終に織成さず。鷹野雉を追逐して突襲して下るも、爪子を折斷しても抓着せず。此の林勞して功なし、力盡きて獲なきを主とす。大有の位に居ると雖も求む所落空す。
履之謙:雨潦集降,河渠不通。齊魯閉塞,破費市空。
大雨積水一齊に降下し、河道溝渠壅塞して通ぜず。齊魯の間道路閉塞し、錢財を耗費して市集空虛す。此の林水商を阻み斷ち、財散じて收なきを主とす。謙退するも其の困を免れ難し。
履之豫:封豕溝瀆,水潦空谷。客止舍宿,泥塗至腹,處無黍稷。
大猪溝渠を拱翻し、積水空谷に灌滿す。客人此に投宿するも、泥漿腰腹に沒し、一點の黍稷の食すらもなし。此の林豫備周ならず、行止污泥に陷るを主とす。出行最も忌諱。
履之隨:三奸相擾,桀蹠為友。上下騷離,隔絕天道。
三個の奸人相互に攪擾し、夏桀・盗跖と伍を爲す。上下騷動離析し、天道因りて阻絕す。此の林大凶。隨う所人に非ず、流れに同じく污を合すを主とす。
履之蠱:齊景惑疑,為孺子牛。嫡庶不明,賊孽為患。
齊景公溺愛に惑い、甘んじて口に繩索を銜えて牛を扮して幼子に牽かしむ。「孺子牛」の典は《左傳・哀公六年》に出づ。嫡庶の名分明らかならず、庶孽終に禍患と成る。此の林庶を寵して嫡を亂り、家事蠱を生ずるを主とす。及早に名分を端正するに宜し。
履之臨:三羊俱亡,走奔南行。會暮失跡,不知所藏。
三隻の羊一齊に走失し、南に向かいて奔逃す。傍晚に至りて蹤跡全く無く、何の處に藏るるかを知らず。此の林物を失い尋ね難く、臨む所獲なきを主とす。人を尋ね物を問うに皆吉利ならず。
履之觀:請伯行賈,岱山之野,夜歷險阻,不逢危殆,利如澆酒。
長兄を請じて外出して經商せしめ、泰山脚下の原野を經行し、夜險阻を穿越するも、危難に遇わず、獲利豐厚なること酒の滿溢するがごとし。此の林吉。遠行して經商し、險を履みて安しを主とす。
履之噬嗑:桑之將落,殞其黃葉。失勢傾側,而無所立。
桑樹將に凋まんとし、黄葉紛紛として墜落す。語《詩経・衛風・氓》の「桑の落つるや、其の黄にして隕たる」に本づく。憑恃を失い傾側して倒れんと欲し、立足する處無し。此の林盛極まりて衰え、恩斷え義絕ゆるを主とす。
履之賁:上山求魚,入水捕兔。市非其歸,自令久留。
山に上りて魚を覓め、水に下りて兔を捉え、方向全然弄錯す。集市往くべき處にあらず、白白と自ら久留せしむ。此の林木に緣りて魚を求め、徒らに文飾を事とするを主とす。求む所道に合せず。
履之剝:名成德就,項領不試。景公耋老,尼父逝去。
名聲成就し徳行完備するも、卻って肥壯の馬只だ頸項を養いて駕用を加えざるがごとし。語《詩経・小雅・節南山》の「四牡項領」に本づく。齊景公老邁し、孔子も已に辭世せり。此の林徳有りて用ゐられず、時我を待たざるを主とす。
履之復:天之奧隅,堯舜所居。可以存身,保我邦家。
上天深く藏する一偶、正に堯舜の居る所の地なり。此に在りて身を安んじ命を立つべく、我が家國を保全す。此の林大吉。本に返りて所を得、安居して過咎なきを主とす。
履之無妄:雎鳩淑女,賢聖配偶。宜家壽福,吉慶長久。
《詩経・關雎》の中の雎鳩と淑女、賢聖佳偶を結ぶ。室に宜しく家に宜しく、長壽にして福有り、吉慶綿長なり。此の林大吉。婚姻美滿し、天成して妄なきを主とす。
履之大畜:兩人俱爭,莫能有定。心乖不同,訟言起凶。
兩人相持爭執し、人定奪する能くする無し。心意乖違合わず、爭訟の言凶禍を引出す。此の林怨を蓄えて解けず、爭端息め難きを主とす。退讓して訟を息むるに宜し。
履之頤:涉伯殉名,棄禮誅身。不得其道,成子奔燕。
涉伯名聲を求めて身を喪い、禮法を抛弃して終に身を殺すに至る。行う所正道に合せず、成子只だ燕國に出奔するを得たり。此の林名を逐いて身を失い、養う所其の正に非ざるを主とす。頤養の道禮を守るに貴し。
履之大過:逾江求橘,並得大栗。烹羊食肉,飲酒歌笑。
大江を渡りて橘子を求めに往き、連帶して大栗を得。羊を烹り肉を食い、酒を飲み歡歌す。此の林吉。遠く求めて多く獲るを主とす。事常度の外に出ると雖も終に豐美を得。
履之坎:山險難升,澗中多石,車馳轊擊,重傷載軸,擔負善躓,跌豕手足。
山勢險峻にして攀登し難く、澗中亂石叢生す。車馬奔馳して車軸頭相い撞き、重載車軸を壓傷し、挑擔の人頻に跌倒し、猪すらも手足を摔壞す。此の林大凶。險途重載し、進退皆傷くを主とす。
履之離:元利孔福,神所子畜。般樂無苦,得其歡欲。
大いに利有り極めて福氣有り、神明の養育眷顧する所と爲る。安樂にして苦楚なく、心願遂成するを得。此の林大吉。光明に附麗し、上庇佑を得下欲する所を遂ぐるを主とす。
履之咸:烏鵲食穀,張口受哺。蒙被恩福,長大成就。柔順利貞,君臣合德。
烏鵲穀粒を啄食し、雛鳥口を張開して哺喂を承受す。恩澤福佑を蒙り、長大して材と成るを得。柔順にして正を守りて利を得、君臣徳行相合す。此の林大吉。感應相い得、上下心を同じくするを主とす。
履之恆:潼滃蔚薈,膚寸來會。津液下降,流潦滂沛。
云氣蓊鬱として涌起し、一寸一寸聚合成團す。古人は「肤寸して合す」を以て泰山云起の速を形容す。雨水降下し、積流滂沱盛大なり。此の林吉。微を積みて著を成し、恒久にして乃ち成るを主とす。久旱雨を得るの象なり。
履之遁:路多枳棘,步刺我足。不利旅客,為心作毒。
道路上枳樹荆棘多く、一步一刺我が脚を扎傷す。行旅の人に利あらず、心頭の患と成る。此の林退路阻多きを主とす。遁避するも其の便を得ず。出行宜しからず。
履之大壯:虺蝮所聚,戲以居處。毒螯痛甚,瘡不可愈。
毒蛇蝮蟲聚集の地、卻って以て嬉游居住の所と爲す。毒刺に蜇傷せられ劇痛當え難く、瘡口愈合する能わず。此の林强を恃み險を涉り、自ら重傷を取るを主とす。
履之晉:麟鳳相隨,觀察安危。東郭聖人,后稷周公。共和政令,君子攸同。利以居止,長無憂凶。
麒麟と鳳凰と伴を結び同行し、安危の機を審察す。東郭の聖人・后稷と周公、共同に政令を和協し、君子向かう所一致す。安居して止を守るに宜しく、長久憂患凶險なし。此の林大吉。賢者聚會し、政通じて人和すを主とす。
履之明夷:桀亂不時,使民恨憂。立祉為笑,君危臣羞。
夏桀暴亂にして天時に合せず、百姓をして怨恨憂愁せしむ。本來福を立つべき事を以て兒戲取笑と爲し、君主危殆にして臣子羞を蒙る。此の林大凶。上昏く下怨ずるを主とす。明夷の世宜しく其の明を隱晦すべし。
履之家人:黃帝所生,伏羲之宅。兵刃不至,利以居止。
黄帝誕生の地、伏羲居住の宅。刀兵波及せず、安居止息するに宜し。此の林大吉。家宅地を得、兵禍を免るを主とす。
履之睽:雀行求食,暮歸屋宿。反其室舍,安寧無故。
麻雀白日外に出でて食を覓め、傍晚屋に回りて歇宿す。己が居所に返回し、平安にして事なし。此の林吉。乖睽の世に處ると雖も終に歸宿を得。出入常あり、家宅安寧なりを主とす。
履之蹇:太倉積穀,天下饒食。陰陽調和,年歲時熟。
京師太倉穀米を堆滿し、天下人飲食豐足す。陰陽調和し、年成時に按じて成熟す。此の林大吉。蓄積深厚を主とす。蹇難に當たると雖も衣食虞なし。
履之解:干旄旌旗,執幟在郊。雖有寶玉,無路致之。
干旄旌旗を豎立し、旗幟を執りて郊野に立つ。語《詩経・鄘風・干旄》に本づき、賢を訪うの禮と爲す。寶玉相い贈る有ると雖も、送達する路徑なし。此の林誠意通じ難く、賢者至らざるを主とす。解けて未だ通ぜざるの象なり。
履之損:履危蹈顛,墜入泉淵。蹇不能前,足踒不便。
危處を踏み顛險に行き、終に深淵に墜落す。跛蹇して前行する能わず、脚扭傷して行動便ならず。此の林大凶。險を涉りて損を受け、擧步維艱なるを主とす。
履之益:銜命上車,合和兩家。峨眉皓齒,二國不殆。
命を奉じて車に登り出使し、兩家の和好を促成す。娥眉皓齒の美人出嫁聯姻し、兩國これによって危難を免る。此の林吉。使命成有り、和親利を得るを主とす。
履之夬:吉日車攻,田弋獲禽。宣王飲酒,以告嘉功。
吉日を擇定して車馬を整治す。語《詩経・小雅・車攻》に本づき、田獵して禽獸を射獲す。周宣王宴を設けて飲酒し、以て美好の功績を告成す。此の林大吉。行動果決にして、獵獲して後功を慶するを主とす。
履之姤:金帛貴寶,宜與我市。嫁娶有恩,得利過倍。
金銀布帛これらの貴重寶貨、正に我と交易するに宜し。嫁娶恩義を結下し、獲利一倍を超出す。此の林吉。姤は相遇なり。交易と婚姻と皆厚利を得る能くするを主とす。
履之萃:延頸望酒,不入我口。深以自喜,得利無有。
頸を伸長してあの杯酒を盼ぐも、始終我が口に進まず。空しく暗暗に歡喜し、實は毫も得る所なし。此の林梅を望みて渴を止むるがごとく、聚りて己に屬せざるを主とす。求む所終に歸して落空す。
履之升:牧為代守,饗食甘賜。德利士意,戰大破胡,長安國家。
牧守邊防の任を代行し、美食厚賜を以て軍士を犒勞す。恩徳深く士心を得、一戰大いに胡虜を破り、長く國家を安定す。此の林大吉。衆心を得て奇功を建つるを主とす。正を履みて後升を得。
履之困:日出溫谷,照臨萬國。高明淑仁,虞夏配合。
太陽温谷より升起し、光萬國を照す。高遠明睿・善良仁厚にして、虞舜夏禹と相い匹配すべし。此の林吉。困中徳を顯し、光明終に到來するを主とす。
履之井:逐兔索烏,破我弓車。日暮不及,失利後時。
兔子を追いまた烏鴉を尋ぬ、己が弓と車とを弄壞す。天黑くなるも追趕上せず、時機を錯失して利益を失去す。此の林多く貪りて兩失し、遲滯事を誤るを主とす。
履之革:訛言妄語,傳相詿誤。道左失跡,不知戶處。
謠言妄語輾轉相い傳え、彼此相い貽誤す。路旁蹤跡を失了、自家門戶すら找着けず。此の林流言衆を惑わし、變革據を失うを主とす。宜しく先に眞僞を辨明すべし。
履之鼎:履虎躡尾,貶損我威。君子失否,去其國家。
老虎を踏み虎尾を踏住す、正に履卦の本義なれど、威勢これによって損を受く。君子憑依を失い、只だ己が國家を離るるを得たり。此の林險を犯して位を失うを主とす。鼎重器と雖も守る能わず。
履之震:本跟不固,新花落去。更為孤嫗,不得相視。
根柢牢ならず、新開の花朵紛紛として墜落す。轉眼孤苦の老婦と成り、相い顧る人無し。此の林根本立たず、盛華速やかに謝すを主とす。震動の下更に其の危を顯す。
履之艮:五軛四國,優得饒有。陳力就列,騶虞悅喜。
五輛の車四方の國に駕行し、寛裕にして豐饒なり。各々其の力を盡し各々其の位に就き、《詩経・召南・騶虞》の詠うがごとく、仁澤物に及びて人心歡喜す。此の林吉。各々其の分に安んじ、上下俱に足るを主とす。
履之漸:黃帝紫雲,聖哲且神,光明見祥,告我無殃。
黄帝の上紫云繚繞し、聖明睿哲にして神に通ず。光明の中祥瑞を顯出し、我に平安無災を昭告す。此の林大吉。漸々顯達し、瑞應昭彰するを主とす。
履之歸妹:五利四福,俱田高邑。黍稷盛茂,多獲藁稻。
五種の利益・四樣の福氣、一同に高地城邑に耕作す。黍稷茂盛し、大量の禾稻を收穫す。此の林大吉。歸りて其の所を得、耕穫豐盈するを主とす。
履之豐:群虎入邑,求索肉食。大人衛守,君不失國。
群虎城邑に闖入し、四處肉食を搜尋す。幸いに大人鎮守防衛有り、國君邦國を失わず。此の林外患來侵すれど賢に賴りて保を得るを主とす。豐盛の中仍ほ須らく守御の備有るべし。
履之旅:烏子鵲雛,常與母居。願慕群侶,不離其巢。
烏鴉と喜鵲の雛鳥、常に母親と同住す。同伴を眷戀し、巢穴を離るるを肯んぜず。此の林家を戀して遠行に宜しからざるを主とす。旅外に居るは反つて巢を守りて自ら安んずるに如かず。
履之巽:蹇驢不材,駿驥失時。筋老力盡,疲於沙丘。
跛驢本來才力なく、駿馬また生れて時に逢わず。筋骨衰老し氣力用盡き、沙丘の上に困頓す。此の林才時に遇わず、力心に從わざるを主とす。時に順い收斂するに宜し。
履之兌:玄鬣黑顙,東歸高鄉。朱鳥道引,靈龜載莊。遂抵天門,見我貞君,人馬安全。
黑鬣黑額の駿馬、東に向かいて高地の故鄉に回る。朱雀前に在りて路を引き、靈龜行裝を載す。終に天門に抵達し、我が正直の君主に拜見し、人馬平安損なし。此の林大吉。神物の護行有り、貴人に謁見して成を得るを主とす。
履之渙:探巢得雛,鳩鵲俱來,使我欣娛。
鳥巢に探入して雛鳥を取得し、鳩鵲一齊に飛來して、我をして歡欣娛悦せしむ。此の林吉。探取する所有れば便ち獲る所有るを主とす。渙散の中反つて歡喜を聚起す。
履之節:安上宜官,一日九遷,升擢超等,牧養常山,君臣獲安。
上位に安んじ官職に居るに宜しく、一日の內九次昇遷し、級を越えて提拔せられ、出でて常山の地を牧し、君臣皆安寧を得。此の林大吉。仕途驟かに顯れるを主とす。節度宜を得て位望日に高し。
履之中孚:大頭目明,載受嘉福。三雀飛來,與祿相得。
頭大きく眼明らかの相、美好の福澤を承受す。三隻の雀鳥飛來して、祿位と相い應ず。此の林吉。誠信內に充ちて福祿外に應ずるを主とす。
履之小過:遠視千里,不見黑子。離婁之明,無益於光。
目力千里の外を望見する能くするも、眼前の小黑點を卻って看不見ず。縱ほ離婁のごとき明目あるも、《孟子》は離婁の能く秋毫の末を察するを稱すと雖も、近處を照見するに助け無し。此の林遠に明らかにして近に昧きを主とす。小事察を失せば便ち過錯と成る。
履之既濟:三女成奸,背夫夜行,與伯笑言,不忍王母,為失醴酒,冤天誰告。
三個の女子勾結して奸を爲し、丈夫を背負き夜間外出し、人と談笑し、王母を容忍する能わず、以て祭祀の醴酒を失掉し、冤を含み天を呼ぶも申告する處無し。此の林凶。內亂禮を失い、事成りて復た敗るを主とす。
履之未濟:日辰不良,強弱相振,一鳥兩離,客勝主人。
日辰時令吉ならず、强弱相互に震蕩し、一隻の鳥兩下に分扯せられ、客反つて主人を壓倒す。此の林主客倒置し、力守る能わざるを主とす。《未濟》の世事情猶ほ底定を待つ。
泰の林(泰卦六十四林)
泰之泰:有求陳國,留連東域,須我王孫,四月來復。主君有德,蒙受恩福。
事有りて陳國に求め、東方の地界に滯留し、我が王孫を等待し、四月に方りて返回す。主君徳有り、これによって恩澤福佑を蒙る。此の林吉。往返遲しと雖も終に其の福を得るを主とす。泰道通達してまた守る所有り。
泰之乾:伯夷叔齊,貞廉之師。以德防患,憂禍不存。
伯夷・叔齊國を讓り節を守るは、堅貞清廉の表率なり。徳行を以て禍患を防範すれば、憂愁災禍自然生ぜず。此の林吉。正を守りて禍を遠ざけ、徳を以て自ら全うするを主とす。
泰之坤:濟深南渡,濡我衣袴。五子善擢,脫無他故。
深水を涉り南に渡り、我が衣褲を打濕す。五個の兒子划槳に善く、終に險を脫して別の變故なし。此の林險を涉るも驚ありて險なきを主とす。衆人の相い濟うに賴りて安を得。
泰之屯:倚立相望,適我道通,驅駕奔馳,比目同創。
門に倚りて相い望み、正に我が道路通達し、ここに車を驅りて奔馳す。比目魚のごとく雙雙同行すべくも、また一同に創を受くべし。此の林同行同命なり。通中險を含む。同伴を審察するに宜し。
泰之蒙:葛藟蒙棘,花不得實。饞佞為政,使恩壅塞。
葛藤纏繞し荆棘を覆蓋し、花を開くも果實を結ばず。讒佞の徒政に當たり、君上の恩澤をして壅塞して下達する能わざらしむ。此の林上下隔絕し、華有りて實なきを主とす。
泰之需:四併兼用,君子所服。南征述職,與福同德。
四方の才並び用ゐ兼ね收め、君子の信服する所と爲る。南行征伐し朝覲述職し、福徳と相合す。此の林吉。人を用ゐて宜を得、出行功有るを主とす。
泰之訟:踝踵足傷,大指病癰。失旅後時,利走不來。
脚踝脚跟傷を受け、大脚指毒瘡を生ず。隊伍より掉れて期を誤り、利益跑掉して回らず。此の林行動阻を受け、爭いて利を失うを主とす。
泰之師:春稱夏國,生長之域。可以服食,保全家國。
春夏の交の南方の國、正に萬物生長の地なり。此に於て衣食を取給すべく、家國を保全す。此の林吉。地利を得て養う所有るを主とす。師衆これによって憑資する所有り。
泰之比:望驥不來,駒蹇為憂。雨驚我心,風撼我肌。
良馬を盼望するも來るを見ず、小馬また跛足にして人をして憂心せしむ。驟雨我が心を驚動し、狂風我が肌體を吹撼す。此の林望む所至らず、內外交に驚くを主とす。親比して援なきの象なり。
泰之小畜:久客無床,思歸故鄉。雷雨浸盈,道不得通。
長久客居して外に在り、牀鋪一張すらなく、一心に故鄉への歸りを思う。雷雨積水彌漫し、道路通行する能わず。此の林歸心阻まるるを主とす。畜積小なりと雖も終に行く能わず。
泰之履:方船備水,傍河燃火。積善有徵,終身無禍。田福吉昌,永得安康。
舟を竝べて筏と成し以て涉水に備え、河邊に傍りて火を生ず。徳を積み善を行えば自ら應驗あり、終身禍患なし。田產福氣吉慶昌盛し、永く平安康泰を得。此の林大吉。患を先んじて防ぎ、正を履みて安を得るを主とす。
泰之否:徙岵望母,役事未已。王政靡鹽,不得相保。
山岡に登りて遙かに母親を望見す。語《詩経・魏風・陟岵》に本づき、役夫の親を思うを寫す。差役卻って盡頭なく、王政繁苛度なく、母子相い保つを得ず。此の林凶。徭役親を傷め、泰極まりて否に轉ずるを主とす。
泰之同人:多載重負,捐棄於野。王母離子,思勞自苦。
裝載過多にして負擔沈重、只だ荒野に抛弃するを得たり。王母孩子と分離し、思念勞心して自ら其の苦を受く。此の林多く貪りて棄置を致し、骨肉因りて相い離るるを主とす。
泰之大有:生值地乳,上皇大喜。賜我福祉,壽算無極。賓於作命。
生れて大地甘泉の湧出する祥瑞に逢い、上天の帝大いに歡喜す。我に福澤を賜い、壽數窮りなく、還つて賓禮を以て相待し王命を授く。此の林大吉。天厚福を賜い、貴なること言うべからざるを主とす。
泰之謙:翕翕##,稍墜山顛。滅我令名,長沒不全。
衆口附和して紛紛擾擾す、源文此の處缺字あり、漸々山頂より墜落す。我が美名を毀掉し、長久湮沒して保全を得ず。此の林衆に隨い俯仰して名節を喪失するを主とす。
泰之豫:東鄰嫁女,為王妃后。莊公築館,以尊王母。歸於京師,季姜悅喜。
東鄰女兒を嫁出し、立てて王妃王后と爲す。魯莊公館舍を築起し、以て王姬に尊禮す。事《春秋》莊公元年に見ゆ。女子京師に歸し、季姜歡喜す。此の林大吉。婚姻高貴にして、豫備して禮に合するを主とす。
泰之隨:伯虎仲熊,德義淵閎。使布五穀,陰陽順敘。
伯虎・仲熊は「八元」の中の賢人、徳義深廣宏大なり。彼らを派して農事を推行し五谷を布種せしめ、陰陽順序調和す。此の林大吉。賢を用ゐて治を得、隨う所皆善類なるを主とす。
泰之蠱:敏捷勁疾,如猿升木。彤弓雖調,終不能獲。
身手敏捷迅疾にして、猿猴の樹に攀るがごとし。紅漆の弓已に調好せど、終に射中らず。此の林徒らに其の能有りて獲る所なきを主とす。蠱壞の下事情成り難し。
泰之臨:舉袂覆目,不見日月。衣裘簟床,就長夜室。
衣袖を擧起して眼睛を遮住し、日月の光を看不見ず。裘衣を穿著し竹席の牀に卧し、長夜の室に走進す。此の林自ら其の明を蔽い、安逸に耽るを主とす。事に臨みて察せざれば終に幽暗に陷る。
泰之觀:忍丑少羞,無面有頭。耗見寡虛,日以削酒。
醜事を忍受して羞恥を知らず、頭有りて臉面無し。耗損日に就て顯現し、空虛寡少なり、家業一天天削薄なること酒の漸々盡くるがごとし。此の林自ら省みるを知らず、日に趨て消耗するを主とす。觀に返りて內照し自ら守るに宜し。
泰之噬嗑:固陰冱塞,長冰不溫,令人隳殆,庖火為災,電火為蕃。
陰氣凝固閉塞し、堅氷久しく消融せず、人をして頹敗危殆せしむ。厨房失火して災と成り、電閃雷火反つて滋蔓す。此の林凶。寒熱序を失い、內外相い交りて禍を爲すを主とす。
泰之賁:夏麥麩曲,霜擊其芒。疾君敗國,使民夭傷。
夏天の麥子只だ麸皮酒麴を剩し、霜打麥芒を折す。君を害し國を敗る政令、百姓をして夭折受傷せしむ。此の林凶。時令倒錯し、虛飾して實を害するを主とす。
泰之剝:淵涸龍憂,箕子為奴。干叔隕命,殷破其家。
深淵乾涸し、竜之がために憂懼す。箕子奴に貶せられ、比干と叔父輩と命を喪い、殷商終に國破れ家亡ぶ。此の林大凶。賢者難に遭い、基業剥落するを主とす。
泰之復:跛踦相隨,日暮牛罷。陵遲後旅,失利亡雌。
跛脚の人相い隨いて行き、天色已に晚くして牛もまた疲乏す。漸々隊伍の後頭に落ち、利益を損失しまた雌畜を丢了。此の林行遲れ力竭き、失有りて得なきを主とす。
泰之無妄:桑之將落,隕萁黃葉。失勢傾側,如無所立。
桑樹將に凋まんとし、黄葉紛紛として墜落す。勢位を失い傾側穩かならず、髣髴として立足する處無きがごとし。此の林盛衰其の時有るを主とす。无妄の災強いて避くべからず。及早に退身の計を爲すに宜し。
泰之大畜:長生以時,長柱根本。陰陽相和,歲樂無憂。
生長時令に順應し、長久根本を培固す。陰陽調和し、年成歡樂して憂なし。此の林大吉。徳を蓄え本を固くし、歳歳豐安なりを主とす。
泰之頤:童女無室,未有配合。陰陽不和,空坐獨宿。
少女尚未だ家を成さず、配偶未だ有らず。陰陽諧わず、空しく獨坐獨宿す。此の林孤陰生せず、婚配未成るを主とす。頤養偶なきの象なり。
泰之大過:春令原宥,仁德不周。三聖攸同,周國茂興。
春令寬赦を頒下し、仁徳雖ほ還て普く及ぶ能わず。三位の聖人志同道を合し、周國因りて茂盛興起す。此の林吉。寛政衆を得るを主とす。過失あると雖も終に大業を成す。
泰之坎:金景耀怒,帶劍過午。兩虎相距,雖驚無咎。
金氣の光耀然として怒を含み、帶劍の人正午を經過す。兩虎相持對峙し、驚嚇を受くると雖も過錯なし。此の林險中相持するを主とす。謹愼して自ら守れば便ち咎を免るべし。
泰之離:危坐至暮,謀求不得。膏澤不降,政戾民忒。
端坐苦思して傍晚に至るも、謀る所仍然得る能わず。恩澤下らず、政令乖戾にして百姓變を生ず。此の林上惠を施さず、下其の常を失うを主とす。明ありて照る能わざるの象なり。
泰之咸:老楊日衰,條多枯枝。爵級不進,日下摧頹。
老楊樹一天天衰敗し、枝條多く已に枯槁す。爵位等級昇遷を得ず、日に就て頹敗す。此の林氣衰え勢退き、感應力無きを主とす。
泰之恆:蔡侯適楚,留連江湖。逾日歷月,思其後君。
蔡侯楚國に前往し、江湖の間に滯留す。日復一日・月復一月、其の嗣君を思念す。此の林羈留して返らず、久客歸りを思うを主とす。
泰之遁:右撫劍頭,作援鉤帶,凶訟不止,相與爭戾,失利市肆。
右手劍柄を按住し、また鉤帶を攀援す。凶險の爭訟止まず、彼此爭執乖戾して、市肆の中財利を失了。此の林强を逞うし訟を興し、退避及ばずして財を破るを主とす。
泰之大壯:水流趨下,遠至東海。求我所有,買鮪與鯉。
水低處に往きて流れ、遠く東海に達す。我が需うる所の物を求取し、鮪魚と鯉魚とを買來す。此の林吉。勢に順いて行い、求む所卽ち得るを主とす。
泰之晉:登几上輿,駕駟南遊,合縱散衡,燕寢以強。
几案を踏みて車輿に登り、四馬の車を駕して南行遊歴し、合縱の勢成りて連横の局散じ、安寝の間國勢轉じて强し。此の林大吉。謀略行を得、進みて强を致すを主とす。
泰之明夷:求兔得獐,過其所望。歡一相迎,高位夷傷。
本來兔を捉えんと欲して卻って獐子を得、望む所を超出す。歡喜相い迎うの際、高位に居る者反つて傷損を遭う。此の林意外の得にして隱憂を伴うを主とす。明夷の世高位最も危險。
泰之家人:過時不歸,道遠且迷。旅人心悲,使我徘徊。
歸期を過ぐるも仍ほ回來せず、路途遙遠にしてまた方向を迷失す。行旅の人心中悲苦し、我をして徘徊安んじ難からしむ。此の林家人分隔し、歸期定まる無きを主とす。
泰之睽:魂孤無室,御宿舍食。盜張民潰,見敵失內。
魂魄孤單にして身を安んずる處なく、只だ他處に借宿し人に寄食す。盗賊張狂し百姓潰散し、敵に遇い內部先に自ら失守す。此の林大凶。乖離して守を失い、內外皆潰するを主とす。
泰之蹇:居如轉丸,危不得安。東西不寧,動生憂患。
居處滾動の彈丸のごとく、危殆にして安穩を得ず。東西奔走して皆安寧ならず、一動すれば便ち憂患を生ず。此の林動く輙ち禍を招くを主とす。蹇難の時靜守して行かざるに宜し。
泰之解:坤厚地載,庶物蕃息。平康正直,以綏百福。
坤徳深厚にして、大地萬物を承載し、衆物繁衍生息す。平和安康・公正正直にして、因りて安んじて百福を享く。語《尚書・洪範》の「平康正直」に本づく。此の林大吉。厚徳物を載せ、百福來りて歸するを主とす。
泰之損:列敝牡荊,聖賢止悔。仇敵皆憎,孰肯相迎。上下有眚。
破敝の牡荆の物を陳列し、聖賢をも步を止めて歎を興すのみ。仇敵人人憎惡し、誰か肯んじて出でて相い迎えん。上下皆災眚あり。此の林凶。衆叛れ親離れ、損して補う所なきを主とす。
泰之益:鳳凰銜書,玄珪賜我,封為晉侯。
鳳凰口に天書を銜えて來り、黑色の玉圭我に賜与し、晋侯に受封す。此の林大吉。天命歸する所有り、尊榮を增益するを主とす。
泰之夬:作凶不善,相牽入井。溺陷辜罪,禍生憂滋。
惡を作し凶を行い、彼此牽連して井中に墜入す。沉溺して罪罰に陷入し、禍患滋生して憂愁日に增す。此の林大凶。惡を同じくして相い濟し、決して自ら出る能わざるを主とす。
泰之姤:悲鳴北行,失其長兄。伯中不幸,骸骨敗亡。
悲聲哀鳴して北に往き行き、長兄を失了。伯氏・仲氏不幸に遭遇し、尸骨敗亡す。此の林大凶。骨肉夭折し、遇う所善に非ざるを主とす。
泰之萃:羔衣豹裘,高揚我宇,君子維新。
羔羊の裘・豹皮の袖を身著す。語《詩経・鄭風・羔裘》に本づき、大夫の服に喩う。門庭を高揚し、君子氣象一新す。此の林吉。徳を聚め榮を顯し、面目更新するを主とす。
泰之升:日中為市,各抱所有。交易資貨,含珠懷寶,欣悅歡喜。
正午市を設く。語《易・繫辭》の「日中にして市を爲す」に本づき、人人自家の所有を攜えて來る。貨物を互通し資財を交易し、珠寶を懷揣して歡欣喜悅す。此の林大吉。貿易興旺し、上下俱に得る所有るを主とす。
泰之困:振急絕理,恆陽不雨。物病焦乾,華實無有。
事勢急迫にして條理斷絕し、久晴して雨降らず。萬物焦枯病害し、花と果と全く無し。此の林大凶。亢陽旱を成し、生機枯竭するを主とす。
泰之井:狐貉載剝,凌溫厚蓐。寒棘為疾,何所不足。
狐貉の皮を剥取して衣を做し、凌寒の時温厚の褥墊有り。寒荆人を刺すの患有ると雖も、何ぞ滿足せざる有らん。此の林吉。備御周全にして、困して憂なきを主とす。
泰之革:履踐危難,脫執去患。入福喜門,見誨大君。
危難を親身經歴し、拘執を擺脫し禍患を除去す。福門喜門に踏入し、大君を得見て其の教誨を受く。此の林大吉。變革して難を脫し、貴に遇いて教を得るを主とす。
泰之鼎:四亂不安,東西為患。退止我足,毋出國城。乃得全完,賴齊生福。
四方動亂安んぜず、東西兩面皆禍患なり。脚步を收住して退居し、國都城門を出でず、方に保全すべし。此の齊整に賴りて福を生ず。此の林亂を避けて常を守り、靜守すれば則ち安を得るを主とす。
泰之震:南國少子,材略美好。求我長女,賤薄不與。反得醜惡,後乃大悔。
南國に少年有り、才略出衆す。彼來りて我が家の長女を求娶すれど、家人其の微賤を嫌みて許嫁を肯んぜず、女兒反つて醜惡の人に配し、事後大いに後悔す。此の林賢を輕んじて辱を取るを主とす。震動の下悔ゆる已に及ばず。
泰之艮:妄弩失理,陽孤無輔。物病焦枯,年飢於黍。
胡亂に弩を張り法度を失し、陽氣孤立して輔助する無し。萬物病害焦枯し、年成黍米すら歉收す。此の林凶。孤陽生せず、止まりて濟なきを主とす。
泰之漸:倬然遠咎,闢患害旱。田獲三狐,見民為寶。
卓然として過咎を遠離し、禍患と旱災とを避開す。田獵して三隻の狐狸を獲得す、《解》卦九二爻辭の語なり。百姓之を寶と視す。此の林吉。漸々其の害を去除し、衆人の歸心を得るを主とす。
泰之歸妹:逐鹿山顛,利去我西。維邪南北,無所不得。
山頂に在りて野鹿を追逐すれど、利益卻って我が西邊に跑去る。南北の間に斜行往來し、反つて獲らざる無し。此の林正取得られずして旁求獲有るを主とす。歸妹の得る所變通に在り。
泰之豐:龍蛇所聚,大水樂處。滑滑沛沛,使我無賴。
竜蛇聚集の地、正に大水の樂居する所なり。水勢滑溜盛大にして、我をして依頼する所無からしむ。此の林水盛んにして患と爲り、豐極まりて憂を生ずるを主とす。
泰之旅:從風吹火,牽騏驥尾。易為功力,因催受福。
順風火を吹き、駿馬の尾巴に攀りて行く。力を省き成り易し、勢に借りて福を受く。此の林吉。人に因りて事を成し、旅途の中助を得るを主とす。
泰之巽:澤狗水鳧,雞畜少雛。不為家饒,心其亟逋。
沼澤の中の野狗水鴨、家中鷄畜雛子少なし。家道を豐饒ならしむる能わず、心中只だ趕緊逃走せんことを想う。此の林家業聚まらず、人心散を思うを主とす。
泰之兌:水壞我裡,東流為海。龜鳧還囂,不見慈母。
大水我が鄉里を冲毀し、東に流去して大海に匯成す。龜と野鴨と喧鬧して回來すれど、卻って再び慈母を見ず。此の林凶。水患離散し、親人失散するを主とす。
泰之渙:褰衣涉行,水深漬多。賴幸舟子,濟脫無他。
衣裳を提起して水を涉りて行き、水深く浸濕甚だ多し。幸いに船夫の相助に賴り、難關を渡過して別の變故なし。此の林險を涉りて濟を得るを主とす。渙難の中人に賴りて免る。
泰之節:龜厭河海,陸行不止。自令枯槁,失其都市。有悔為咎,亦無及已。
龜江河大海に厭き、一味陸地上に行きて止まず。自ら乾枯憔悴を弄し、本來聚居すべき所を失了。後悔して過咎と成るも、已に及ぶに及ばず。此の林其の本位を失い、節止を知らざるを主とす。
泰之中孚:同本異葉,樂仁正德。東鄰慕義,來興我國。
同一の根本にして枝葉各異なり、仁徳を樂しみ徳行を端正す。東鄰仁義を仰慕し、前來して我が國を興盛せしむ。此の林大吉。誠信遠方に及び、四方來りて歸するを主とす。
泰之小過:桃李花實,累累日息。長大成熟,甘美可食,為我利福。
桃李花を開き果を結び、纍纍として相連なり日に就て滋長す。長大成熟し、甘美にして食す可く、我が利益と福分と成る。此の林吉。小を積みて大を成し、漸々利を得るを主とす。
泰之既濟:重瞳四乳,聰明順理。無隱不形,微視千里。災害不作,君子集聚。
重瞳・四乳の異相を生有す。傳うる所に舜目重瞳・文王四乳なり。聰明にして事理に順應す。隱微の事顯現せざるなく、細察千里に及ぶ可し。災害生ぜず、君子濟濟一堂す。此の林大吉。明察して務を成し、賢者會聚するを主とす。
泰之未濟:實沈參墟,以義討尤。次止結盟,以成霸功。
實沈參星の墟に居る。《左傳・昭公元年》は實沈の參神と爲り晋地の分野を主するを載す。道義を以て過錯を討伐す。軍を駐して盟を結び、霸主の功を成就す。此の林吉。《未濟》は事業未だ竟らずと雖も、義を擧げ盟を結べば終に成功する能くす。
否の林(否卦六十四林)
否之否:秦為虎狼,與晉爭強,併吞其國,號曰始皇。
秦國虎狼のごとく凶暴にして、三晋と强を爭い、終に六國を吞幷し、其の君號稱始皇。此の林强暴吞幷するを主とす。否塞の世唯だ力を視るのみ。仁者の吉に非ず。
否之乾:江河淮濟,天之奧府,眾利所聚。可以饒有,樂我君子。
江・河・淮・濟四瀆は、上天深く藏する府庫、衆多の利益匯聚する處なり。これに因りて豐饒富足すべく、君子をして歡樂せしむ。此の林大吉。財源廣く聚まり、取用尽きざるを主とす。
否之坤:天之所災,凶不可居。轉徙獲福,留止危憂。
上天災禍を降下するの地、凶險にして居留すべからず。他處に遷移すれば便ち福を得、原地に滯留すれば則ち危險憂患す。此の林地を避けて吉を得るを主とす。遷徙に宜しくして固守すべからず。
否之屯:名成德就,項領不試。景公耋老,尼父逝去。
名聲成就し徳行完備するも、卻って肥馬只だ頸項を養いて駕用せられざるがごとし。齊景公已に老邁し、孔子も已に辭世せり。此の林才を懷きて遇わず、時機已に錯過せりしを主とす。
否之蒙:持善避患,福祿長存。雖有豺虎,不能危患。
善道を守持して禍患を避け、福分祿位長久に保存す。縱ほ豺狼猛虎あるも、害を加うる能わず。此の林吉。善を守りて災を免れ、蒙昧の中徳行に賴りて自ら全うするを主とす。
否之需:避患東西,反入禍門。糟糠不足,憂動我心。
東に奔り西に走りて禍患を躲避すれど、反つて禍事の門に走進す。糟糠すら食い飽かず、憂愁我が心を擾動す。此の林凶。禍を避けて禍を得、衣食給せざるを主とす。
否之訟:珪璧琮璋,執贄見王。百里甯戚,應聘齊秦。
手に珪・璧・琮・璋等の玉器を執りて見面の禮と爲し、君王に進見す。百里奚と寧戚の二位の賢者、分れて秦・齊に應聘す。此の林吉。賢者遇を得、干謁成有るを主とす。
否之師:揚水潛鑿,使石潔白。衣素表朱,遊戲皋沃。得君所願,心志娛樂。
激揚の水暗に冲鑿し、石頭を洗いて潔白ならしむ。內に素衣を着し外に朱服を罩え、水邊の沃野に遊樂す。君上の許す所の願を得て、心志歡娛す。此の林吉。磨礪して用ゐられ、心願を遂ぐるを得るを主とす。
否之比:官爵相保,居之無咎。求免不得,使伯悔恨。
官位爵祿相互に保持し、其の位に安居して過錯なし。辭免せんと想うも能わず、長兄をして之がために悔恨せしむ。此の林位辭すべからず、居れば則ち安きを主とす。强いて退避を求めて反つて悔を生ず。
否之小畜:載車無褌,裸裎出門。小兒作笑,君為憂患。
車に滿載するも穿くべき褲子なく、赤身して門を出づ。小孩子哄笑し、君子引きて憂患と爲す。此の林物有りて用無く、體を失して辱を招くを主とす。
否之履:把珠入口,為我利寶。得吾所有,欣然嘉喜。
明珠を口中に含み、我が寶貨と成る。本來我に屬すべき物を得て、欣然として歡喜す。此の林吉。寶を守りて自ら珍しみ、履みて其の分を得るを主とす。
否之泰:行不如止,直不如曲,進不如退,可以安吉。
行動するは停下に如かず、直行は迂迴に如かず、前進は後退に如かず、こうすればこそ平安吉利ならん。此の林否極まりて泰に轉ずるは全く退を知るに在るを主とす。退守して後安を得るを主とす。
否之同人:眾鬼瓦聚,中有大怪,九身無頭。魂驚魄去,不可以居。
衆鬼瓦片のごとく聚集し、其の中に大怪物有り、九個の身子あるも頭無し。魂飛び魄散じて、此に居留すべからず。此の林大凶。群邪聚集し、同じくする所其の類に非ざるを主とす。
否之大有:家給人足,頌聲並作。四夷賓服,干戈囊閣。
家家充裕し人人富足し、頌揚の聲四起す。四方の夷族賓服し、兵器袋中に收めて高閣に束る。此の林大吉。天下太平し、大に成有るを主とす。
否之謙:人面鬼口,長舌如斧。斫破瑚璉,殷商絕祀。
人の面孔・鬼の嘴巴、長舌鋒利なること斧鉞のごとし。瑚琏のごとき宗廟禮器を砍破し、殷商これによって祭祀斷絕す。此の林大凶。讒舌宗を毀り、禍宗廟に及ぶを主とす。
否之豫:南山之峻,真人所在。德配唐虞,天命為子。保佑飲享,身受大慶。
南山高峻にして、眞人其の間に居る。徳行唐堯虞舜に比すべく、天命を受けて天子と爲る。神明の保佑歆享を得て、自身大喜慶を承受す。此の林大吉。徳高く命を受け、豫備して大福有るを主とす。
否之隨:春桃生花,季女宜家。受福多年,男為邦君。
春天桃樹開花し、少女其の室家に宜し。語《詩経・周南・桃夭》に本づく。福を享くること多年、生下した兒子一邦の君と成る。此の林大吉。婚嫁時を得、後嗣顯貴するを主とす。
否之蠱:鴟鴞破斧,沖人危殆。賴其忠德,轉禍為福,傾危復立。
鴟鴞巢を毀り斧斤破損す。語《詩経・豳風》の《鴟鴞》《破斧》二篇に本づき、周公東征の事を詠う。年幼の君處境危殆なり。周公の忠誠徳行に賴りて、禍を轉じて福と爲し、傾危の局重ねて立てて穩かならしむ。此の林危なくして復た安きを主とす。忠臣に賴りて以て蠱壞を整治す。
否之臨:猿墮高木,不踒手足。保我金玉,還歸其室。
猿猴高樹より跌落するも、卻って手脚を扭傷せず。我が金玉を保全し、己が居室に回到す。此の林吉。墜ちて傷なく、失いて復た得るを主とす。
否之觀:天之奧隅,堯舜所居。可以存身,保我邦家。
上天深く藏する一偶、正に堯舜居住の處なり。此に在りて性命を保全すべく、我が家國を守住す。此の林大吉。地を擇びて安んじ、正を觀て其の所を得るを主とす。
否之噬嗑:伯蹇叔盲,足痛難行。終日至暮,不離家鄉。
伯氏跛足し叔氏失明し、脚痛みて行走し難し。早より晚に至るまで、始終家鄉を離るる能わず。此の林殘缺して阻まり、寸步行き難きを主とす。噬嚙して通ずる能わざるの象なり。
否之賁:日月相望,光明盛昌。三聖茂功,仁德大隆。
日月遙々相い對し、光明極盛なり。三位の聖人功業茂盛し、仁徳大いに隆厚なり。此の林大吉。文明外に著われ、徳業昌隆するを主とす。
否之剝:桃李花實,累累日息。長大成就,甘美可食。
桃李花を開き果を結び、纍纍として相連なり日に就て滋長す。長大成熟し、甘美にして食用すべし。此の林吉。剥落の時に當たると雖も生意絕えず。漸々收成する所有るを主とす。
否之復:入和出明,動作有光。運轉休息,所為允康。
入れば則ち和順し、出づれば則ち明察し、擧動皆光彩有り。運作と休息と各々其の宜を得、作爲する所確實に安康なり。此の林大吉。動靜宜に合い、正道に復歸するを主とす。
否之無妄:陰衰老極,陽見其德。履離載光,天下昭明。功業不長,蝦蟆代王。
陰氣衰竭して極點に至り、陽氣其の徳性を顯出す。離明を踏みて光輝を承載し、天下昭然として明亮なり。惜しむべし功業長久する能わず、蛤蟆竟に君王を取代す、月蝕其の明を掩うを喩う。此の林先に明にして後に晦し。盛極まりて衰に轉ずるを主とす。
否之大畜:行役未已,新事復起。姬姜勞苦,不得休止。
差役完結なく、新たの事端また起る。姬姓姜姓の貴婦も勞苦堪えず、停歇を得ず。此の林事を積みて累と成り、勞して止息する能わざるを主とす。
否之頤:狐鳴室北,飢無所食。困於空丘,莫與同力。
狐狸屋北に鳴叫し、饑餓にして覓るべき食無し。空蕩の山丘に困守し、彼と合力する人無し。此の林凶。孤困して養う所なく、助を求めて門路なきを主とす。
否之大過:雄聖伏名,人匿麟遠。走鳳飛北,擾亂未息。
雄杰聖哲名聲を隱沒し、賢人躲藏し麒麟遠去す。鳳凰奔走北飛し、擾亂曾て止息せず。此の林賢者盡く隱れ、亂世未だ平ならざるを主とす。
否之坎:病貧望幸,使伯行販。開牢擇羊,多得大牂。
また病みまた窮して僥倖を盼ぎ、便ち長兄を打發して外出して販賣せしむ。圈欄を打開して羊隻を挑選し、肥壯の母羊を多得す。此の林困中求めて利を得る所有るを主とす。坎險の中も生路を覓得すべし。
否之離:翕翕##,隕墜崩顛。滅其令名,長沒不存。
衆口紛紛として聲に隨い附和す、源文此の處缺字あり、終に墜落崩塌に至る。彼の美名を毀滅し、長久湮沒して存せず。此の林凶。勢に附する者速やかに亡び、名と節と兩失するを主とす。
否之咸:華薄實槁,衣敝入絡。女工不成,絲布如玉。
花朵稀薄にして果實枯槁し、衣裳破敝して只だ粗絡を剩す。女紅做成らず、絲布價貴きこと玉のごとし。此の林物力匱乏し、感應して功なきを主とす。
否之恆:溫山松柏,常茂不落。鸞鳳所庇,得其歡樂。
溫暖山中の松柏、四季常青にして凋落せず。鸞鳳此に於て庇蔭を得、各々其の歡樂を得。此の林大吉。恒久にして衰えず、賢者依託する所有るを主とす。
否之遁:失持毋教,嘉偶出走。傫如失老,如喪家狗。
操守を失いまた教誨する人なく、好配偶もまた家を離れて出走す。頹喪すること主人を失いし老者のごとく、喪家の犬に同じ。語《史記・孔子世家》に出づ。此の林凶。守を失い偶を失い、歸依する所なきを主とす。
否之大壯:太乙駕騮,從天上來。徵我季叔,封為魯侯。
太乙神赤馬を駕して、天より降る。我が家の季叔を徵召し、彼を封じて魯侯と做す。此の林大吉。天命下降し、驟かに顯貴するを主とす。
否之晉:雙鳧俱飛,欲歸稻池。徑涉萑澤,為矢所射,傷我胸臆。
兩隻の野鴨一同に飛起し、稻田水池に回歸せんと想う。路を取りて蘆葦沼澤を穿越すれど、卻って箭に射中てられ、我が胸膛を傷る。此の林凶。進途害に遇い、歸りて傷を受くるを主とす。
否之明夷:深坑復平,天下安寧。意娛心樂,賴福長生。
深坑重ねて填平し、天下安寧す。心意歡娛快樂し、福澤を倚仗して長久生息す。此の林吉。險陷平を得、晦暗の極にして轉じて光明と爲るを主とす。
否之家人:俱為天民,雲過我西。風伯雨師,與我無恩。
同じく上天の生む所の民なれど、云只だ我が西邊より掠過す。風伯・雨師の二神、我に對して並びに恩澤なし。此の林雨露均ならず、家中惠を受くる所なきを主とす。
否之睽:野鳥山鵲,來集六博。三梟四散,主人勝客。
野鳥山鵲飛來して六博棋局の上に聚る。三枚の梟棋勢を得て四散他子し、主人客人に勝る。六博は古の博戲、梟を得る者勝つ。此の林吉。主を以て客を制し、乖異の中反つて勝算を得るを主とす。
否之蹇:北陰司寒,堅冰不溫。凌人惰殆,大雹為災。
北方陰氣嚴寒を主宰し、堅氷回暖を肯んぜず。氷を掌る凌人怠惰して職を失す、《周禮》に「凌人」氷を掌るの官有り、大氷雹これによって災を成す。此の林凶。職守廢弛し、天災隨い而來るを主とす。
否之解:伊伯致仕,去桀耕野。執順以待,反和無咎。
伊尹官を辭して做さず、夏桀を離れて野に躬耕す。順道を持守して時機を等待し、終に和順に返歸して過錯なし。此の林吉。退耕して時を待ち、困を解くるに自ら其の道有るを主とす。
否之損:秋風牽手,相提笑語。伯歌季舞,燕樂以喜。
秋風の中手を攜えて同行し、彼此提携し談笑す。長兄唱歌し小弟起舞し、宴飲歡樂して喜ぶ。此の林吉。兄弟和樂するを主とす。損と言うと雖も其の中益有り。
否之益:徙巢去家,南過白馬。東西受福,與母相得。
巢を遷し家を離れ、南に向かいて白馬の地を經過す。東西兩處皆福澤を受け、母親と重逢して相い得。此の林吉。遷徙して益を得、親人重聚するを主とす。
否之夬:鳥飛跌破,兩兩相和。不併四肢,但去莫疑。
鳥飛ぶ時跌落して傷を受け、兩兩相互に和合す。既に四肢を湊齊して並行する能わざれば、索性離去して遲疑する必ずしも要せず。此の林殘缺合し難きを主とす。果斷に決去して反つて計を得るなり。
否之姤:三年生狗,以戌為母。荊夷上侵,姬伯出走。
三年にして纔に生むの狗、戌を以て其の母と爲す、戌は十二屬相の中狗と爲す。荆楚の夷族上に向かいて侵犯し、姬姓の伯外に出奔す。此の林凶。異類相遇し、外患其の主を逼迫するを主とす。
否之萃:破筐敝莒,棄損於道。壞落穿敗,不復所實。
破爛の筐・殘破の筥、路上に丢弃せらる。破損穿孔して、再び物を裝る能わず。此の林凶。器廢し物散じ、聚れども容納する能わざるを主とす。
否之升:結紐得解,憂不為禍。食利仙家,受福安坐。
打死した繩結解けるを得、憂愁禍事を釀成するに至らず。仙家の利益を享用し、安坐して福を受く。此の林吉。結解け憂消ゆるを主とす。坐して其の成を享く。
否之困:白日揚光,雷車避藏。雲雨不行,各自還鄉。
白日光芒大盛にして、雷公の車駕避讓隱藏す。云雨施行する能わず、各々本鄉に返回す。此の林陽亢して陰退き、澤を施して成らざるを主とす。雨なきに困す。
否之井:杜口結舌,心中怫鬱。去災生患,無所告冤。
口を閉じ言わず、舌打結し、心中愁悶鬱結す。舊災方に去りて新患また生じ、冤を含みて申告する處無し。此の林凶。言路通ぜざるを主とす。井の壅塞して食を得ざるがごとし。
否之革:齎貝贖狸,不聽我辭。繫於虎髯,牽不得來。
財貨を攜帶して狸貓を贖回せんと往くも、對方我が說辭を聽かず。狸虎鬚の上に繫がれ、怎樣牽くも牽き過來ず。此の林求む所强者に受制すを主とす。變革せんと欲するも能わず。
否之鼎:持鶴抱子,見蛇何咎。室家俱在,不失其所。
手に仙鶴を持ち幼子を懷抱し、蛇に遇うも何の過錯か有らん。家室俱全にして、其の安身の所を失わず。此の林吉。守有り養有り、險に遇い咎なきを主とす。
否之震:逐兔山西,利走入門。賴我仁德,獲為我福。
山西に在りて野兔を追逐すれば、利益自ら門に跑入す。我が仁徳を倚賴し、獲る所皆我が福分と成る。此の林吉。動きて利を得、徳厚くして福を受くるを主とす。
否之艮:興役不休,與民爭時。牛生五趾,行危為憂。
勞役を大興して停歇を肯んぜず、百姓と農時を爭奪す。牛五趾の怪異の兆を生出して出現し、行事危殆にして憂う可し。此の林凶。時に違い民を擾し、妖異警を示すを主とす。步を止めて動かざるに宜し。
否之漸:春栗夏梨,少鮮稀有。斗千石萬,貴不可求。
春天の栗子・夏天の梨、新鮮なること極めて稀少なり。一斗千を値し一石萬を値し、貴きこと求取するに從無し。此の林物稀にして價昂く、欲する所求致し難きを主とす。
否之歸妹:悲號北行,失其長兄。伯仲不幸,骸骨散王。
悲聲哭號して北に往き行き、長兄を失了。伯氏・仲氏不幸に遭遇し、尸骨道に散失す。此の林大凶。骨肉喪亡し、行きて歸無きを主とす。
否之豐:賦斂重數,政為民賊。杼軸空盡,家去其室。
賦稅徵斂既に重く且つ頻にして、政令百姓を殘害する禍根と成る。織機上の絲線抽空用盡す、語《詩経・小雅・大東》の「杼柚其の空なり」に本づく、人家只だ屋を棄てて走るを得たり。此の林大凶。横征暴斂し、豐盛に見えて其の實空虛なるを主とす。
否之旅:履服自敵,殃咎並列,憂不能笑。
穿する所行く所自ら人と敵と爲り、災殃過咎並び排して來り、憂愁して笑い出す能わず。此の林凶。自ら仇敵を樹て、羈旅の中禍單行せざるを主とす。
否之巽:杜口結舌,言為禍母。代伯受患,無所禱免。
口を閉じ言わず、舌打結す。說話正に禍事の根源なり。長兄に替りて禍患を承受すれど、祈禱するも免除する能わず。此の林凶。口舌災を招き、順入して反つて其の累を受くるを主とす。
否之兌:免冠進賢,步出朝門。儀禮不正,賊孽為患。
冠冕を脫下し賢能を擧薦し、緩步して朝門を走出す。禮儀端正せず、奸邪の輩禍患と成る。此の林賢を進めて禮を失うを主とす。喜說の下暗に隱憂を藏す。
否之渙:娶於姜女,駕迎新婦。少齊在門,夫子悅喜。
姜姓の女を娶り、車を駕して新婦を迎接す。年少の齊女已に門前に在り、丈夫と做る者歡喜す。此の林吉。婚姻成就するを主とす。渙散の際反つて聚合を得。
否之節:牡羊稻園,聞虎喧歡。畏恐悚息,終無禍患。
公羊稻田园の中に在り、老虎の喧鬧の聲を聽聞す。驚懼息を屏し動くを敢えてせず、最終卻って禍患に遭遇せず。此の林危に臨みて自ら斂むるを主とす。節制を知れば便ち過咎なし。
否之中孚:老妾踞機,緯絕不知。女功不成,冬寒無衣。
年老の侍妾織機に靠坐し、緯線斷れても知らず。女紅做成らず、冬天嚴寒にして穿くべき衣無し。此の林凶。怠忽して業を廢し、誠信持續する能わざるを主とす。
否之小過:黑龍吐光,使陰復陽。榮獵載聖,六師以昌。
黑龍光芒を吐出し、陰氣をして回轉して陽と爲らしむ。榮耀の畋獵聖徳を載せて行き、六軍これによって昌盛す。此の林吉。晦を轉じて明と爲し、小過して大功を成すを主とす。
否之既濟:東鄰嫁女,為王妃后。莊公築館,以尊王母。歸於京師,季姜悅喜。
東鄰女兒を嫁出し、立てて王妃王后と爲す。魯莊公館舍を修築し、以て王姬に尊禮す。女子京師に歸往し、季姜歡喜す。此の林大吉。婚姻顯貴にして、事成りて禮備わるを主とす。
否之未濟:灌頡同徒,道頓跌踦。日辰不良,病為身禍。
灌氏・頡氏同じく徒衆と爲り、半路上顛仆跛行す。日辰時令吉ならず、疾病自身の禍患と成る。此の林凶。《未濟》の時事猶ほ定まらず。同行挫を受け、身疾厄に染まるを主とす。
同人の林(同人卦六十四林)
同人之同人:槖置山顛,銷鋒鑄刃。示不復用,天下大歡。
兵器を囊袋に裝入して山頂に置き、鋒刃を熔掉して別に他器を鑄て、再び刀兵を動かさざるを表示す。天下之がために大喜す。此の林大吉。武を偃め文を修め、萬衆心を同じくするを主とす。
同人之乾:一臂六手,不使堵口。莫肯為用,利棄我走。
一條の臂膊に六隻の手長るも、一張の嘴を堵住する能わず。人我に用ゐられんことを肯んずる無し。利益我を棄てて去る。此の林枝節多しと雖も實用なきを主とす。衆心歸附を肯んぜず。
同人之坤:獐鹿逐牧,飽歸其居,安息無悔。
獐子と鹿と水草を逐いて食い、飽きるを食いて後栖息の處に回り、安然として休息して悔恨なし。此の林吉。時に順いて養を得、居止安穩するを主とす。
同人之屯:鴻魚逆流,至人潛渚。蓬蒿代柱,大屋顛倒。
鴻雁と魚と流れに逆いて上り、至徳の人水洲に隱居す。蓬蒿を以て棟柱に充て、大屋これによって傾覆す。此の林凶。賢者退隱し、用ゐる所其の材に非ざるを主とす。
同人之蒙:三羖五牂,相隨俱行。迷入空澤,經涉六駿,為賊所傷。
三隻の黑公羊・五隻の母羊相い隨いて同行す。方向を迷失して荒澤に走入り、途中六匹の駿馬を越過すれど、終に賊人の傷を被る。此の林凶。群行路を失い、中途害に遇うを主とす。
同人之需:黃帝出遊,駕龍乘馬,東上泰山,難過齊魯。邦國咸喜。
黄帝出遊し、竜を駕して馬に乘り、東に向かいて泰山に登る。一路齊魯を經過して艱難あると雖も、邦國上下皆歡喜す。此の林吉。貴人出行し、艱難にして終に吉慶を得るを主とす。
同人之訟:履危不安,心欲東西。步走逐鹿,空無所得。
危境に身處して安寧を得ず、心思東に奔り西に想う。徒步して野鹿を追逐し、空手して一の獲る所なし。此の林心定方向なく、爭いて功なきを主とす。
同人之師:望尚阿衡,太宰周公,藩屏湯武,立為侯王。
呂尚卽ち太公望を仰望し、阿衡と號稱する伊尹と、還つて太宰周公あり、彼ら商湯・周武を輔佐して國の屏藩と爲り、功に因りて侯王に立つ。此の林大吉。賢を得て輔と爲し、功を建てて侯に封ぜらるるを主とす。
同人之比:白龍黑虎,起伏俱怒,戰於阪兆,蚩尤走敗,死與魚首。
白竜と黑虎と一に起き一に伏し、同時に發怒し、阪泉の野に交戰し、蚩尤敗逃して「魚首」の地に死す。黄帝蚩尤を戰すの典を用ゐ。此の林兩强相い鬥い、一勝ち一亡ぶを主とす。
同人之小畜:載石上山,步跌不前。顰眉之憂,不得所歡。
石頭を背着して山に上り、步步跌絆して前行し難し。愁眉展かず、歡喜する所を得ず。此の林重を負いて行き難く、求む所願のごとく能わざるを主とす。
同人之履:周德既成,行軸不傾。中酉跌墓,耋老衰去,箴石不佑。
周家徳業已に成り、車行軸正しくして傾側せず。中酉の交に至りて墓限に墜入し、年老衰朽して去り、砭石を以て醫治するも佑助する無し。此の林盛極まれば必ず衰え、壽數終に其の盡有るを主とす。
同人之泰:乘雲帶雨,與飛鳥俱。動舉千里,見我慈母。
云に乘り雨を帶び、飛鳥と同行す。一擧千里にして、我が慈母を得見す。此の林大吉。勢に乘りて遠く達し、親人相い見るを主とす。
同人之否:齎貝贖狸,不聽我辭。繫於虎鬚,牽不得來。
財貨を帶びて狸貓を贖回せんと往くも、對方我が說辭を聽かず。狸虎鬚の上に繫がれ、牽くも牽き過來ず。此の林强者に受制し、求む所得る能わざるを主とす。
同人之大有:三翼飛來,字我逢時。俱行先至,多得大利。
三隻の飛鳥翼を展ばして來り、我を養育して正に其の時に逢う。同行して先んじて到達する能く、大きに利を多獲す。此の林大吉。同心して先機を占得し、得る所豐厚なるを主とす。
同人之謙:兩足四翼,飛入吾國。寧我伯姊,與母相得。
兩足四翼の祥禽我が國に飛入す。我が長姐を安定し、また母親と團聚して相い得。此の林吉。家人安寧にして、謙退して福を受くるを主とす。
同人之豫:案民湖池,玉貝文案。魚如白雲,一國獲願。
百姓を湖池の利に安撫し、玉貝文書案上に陳列す。魚白雲の翻涌するがごとく多く、全國上下願のごとく償うを得。此の林大吉。豫備宜を得、國を擧げて利を獲るを主とす。
同人之隨:季姬踟躕,望我城隅。終日至暮,不見齊侯,君上無憂。
季姬徘徊して前せず、遙かに我が城角を望見す。語《詩経・邶風・靜女》の「我を城隅に俟つ」に本づく。早より天黑まで等ちて、終に齊侯を見ず。君上反つてこれによって憂無し。此の林約會遇わざるを主とす。然るに遇わざるは反つて其の禍を免る。
同人之蠱:龍渴求飲,黑雲影從。河伯捧觴,跪進酒漿。流潦滂滂。
竜口渴して水を飮まんとすれば、黑云影に隨いて來る。河伯酒器を捧げ、跪きて酒漿を進獻す。積水滂沱として流淌す。此の林吉。求む所回應を得、上下承奉するを主とす。蠱壞の弊ここより潤澤を得て解を得。
同人之臨:出門逢患,與怒為怨。更相擊刺,傷我手端。
一たび門を出れば卽ち禍患に遇上し、憤怒に因りて怨仇を結ぶ。彼此擊刺相い鬥い、我が手指を傷る。此の林凶。外出して釁を招き、事に臨みて爭端を起すを主とす。
同人之觀:播天舞地,神明所守,安樂無咎。
聲勢天に播れ、舞動地に及び、神明の守護する所と爲り、安樂にして過錯なし。此の林吉。氣象宏大にして、觀瞻其の正を得るを主とす。
同人之噬嗑:兩金相擊,勇武敢敵。終日大戰,不破不缺。
兩塊の金屬相互に撞擊し、勇猛にして對抗を敢えてす。整日激戰すれど、誰も擊破缺損せられず。此の林勢均力敵にして、爭いて勝負分る可きなきを主とす。及早に兵を罷むるに宜し。
同人之賁:車雖駕,兩紖絕,馬奔出,雙輪脫,行不至,道遇害。
車已に駕好せど、兩條の繮繩斷れ、馬奔逸して出で、兩個の車輪脫落し、路盡頭に走らず、途中禍害に遭遇す。此の林大凶。外飾備わると雖も中道崩壞するを主とす。
同人之剝:文山紫芝,雍梁朱草。長生和氣,王以為寶。公尸侑食,福祿來處。
文山の紫芝・雍州梁州の朱草、皆祥瑞の物にして、和氣を長養し、君王之を珍寶と視す。祭祀の時公尸食を勸め、福祿隨い而來る。此の林大吉。剥落の時に當たると雖も瑞應絕えず。
同人之復:把珠入口,為我畜寶。得吾所有,欣然嘉喜。
明珠を口中に含み、我が蓄藏の寶物と成る。本來我に屬する物を得て、欣然として歡喜す。此の林吉。失いて復た得、珍を藏して自ら足るを主とす。
同人之無妄:負車上山,力盡行難。烈風雨雪,遮過我前。中道復還,憂者得歡。
車を推して山に上り、氣力用盡き行進艱難す。狂風雨雪前に遮蔽す。半路折返すれば、憂愁の人反つて憂を轉じて喜と爲す。此の林難を知りて退くは反つて吉を得るを主とす。
同人之大畜:陶朱白珪,善賈息資。三致千金,德放上人。
陶朱公范蠡と白圭、皆《史記・貨殖列傳》に載する治生の祖にして、經商生息に善し。三度千金を積成し、徳行常人を超出す。此の林大吉。經商して大に蓄積有り、富んで徳有るを主とす。
同人之頤:子鉏執麟,春秋作元。陰聖將終,尼父悲心。
車夫子鉏商麒麟を獵獲し、孔子これによって《春秋》に絕筆す。素王の道將に終なんとし、孔子之がために傷心す。此の林瑞時に當たらず、道窮まりて志悲しむを主とす。
同人之大過:春日載陽,福履齊長。四時不忒,與樂為昌。
春日陽氣漸々盛んなり、語《詩経・豳風・七月》の「春日陽を載す」に本づく、福祿一同に增長す。四季運行差わず、歡樂と同じく昌盛す。此の林大吉。時序調順にして、福と樂と並び至るを主とす。
同人之坎:孔德如玉,出於幽谷。飛上喬木,鼓其羽翼,大光照國。
大徳溫潤なること玉のごとく、幽深の山谷の中より出づ。高大の喬木に飛上し、羽翼を振動し、光輝普く邦國を照す。此の林大吉。幽より顯れ、坎險を出でて高位に登るを主とす。
同人之離:甌脫康居,慕仁入朝。湛露之歡,三爵畢恩。復歸窮廬,以安其居。
邊地甌脫と西域康居の人、仁徳を仰慕して前來朝覲す。《湛露》の宴を設く、《詩経・小雅・湛露》は天子諸侯を燕するの樂なり、三爵にして禮成り恩盡く。己が氈廬に歸返し、其の所に安居す。此の林大吉。遠人來りて附し、賓主歡を盡すを主とす。
同人之咸:秋冬夜行,照覽星辰。道理利通,終身無患。
秋冬の時節夜間路を趕き、星辰に憑りて方向を照看す。道路通達順利にして、終身禍患なし。此の林吉。感應徵有り、暗中引導を得るを主とす。
同人之恆:鳴鵠抱子,見蛇何咎。室家俱在,不失其所。
天鵝鳴叫して幼雛を護抱し、蛇を見るも何の妨害か有らん。家室俱全にして、其の安身の處を失わず。此の林吉。護守法を得、常保して虞なきを主とす。
同人之遁:安如泰山,福祿屢臻。雖有豺虎,不能危身。
安穩なること泰山のごとく、福祿屢々到來す。縱ほ豺狼猛虎あるも、自身を危害する能わず。此の林大吉。退處して安を得、外患侵犯する能わざるを主とす。
同人之大壯:老目瞢眠,不知東西。歲君失理,命直為曲。王稱為寶。
老眼昏花して睡るに似て睡らず、東西方向を分不清す。歳君條理を失了、直なるを曲と說成し、君王反つて寶貝と當爲す。此の林凶。昏聵して其の人に非ざるを用ゐ、是非顛倒するを主とす。
同人之晉:植璧秉珪,請命於河。周公克敏,沖人瘳愈。
玉璧を樹立し玉珪を手執し、河神に向かいて命を請う。周公勤勉敏行し、武王に代りて禱告し、年幼の成王病痊愈を得。事《尚書・金縢》に見ゆ。此の林大吉。至誠神に感じ、危疾愈を得るを主とす。
同人之明夷:大王執政,歲熟民富。國家豐有,王者有喜。
大王國政を主持し、年成豐熟して百姓富足す。國家豐饒にして、王者喜慶有り。此の林大吉。明主上に在り、上下俱に豐足を得るを主とす。
同人之家人:爭訟相悖,和氣不處。陰陽俱否,谷風母子。
爭訟相互に違逆し、和氣安處するに從なし。陰陽皆閉塞して通ぜず、《詩経・谷風》の詠う棄婦母子の悲のごとし。此の林凶。家內和を失い、恩義斷絕するを主とす。
同人之睽:齊魯爭言,戰於龍門。構怨結禍,三世不安。
齊・魯言語に因りて相い爭い、龍門に交戰す。怨を結びて禍を成し、三代安寧を得ず。此の林凶。口舌釁を起し、乖離して怨を積むを主とす。
同人之蹇:鹿得美草,鳴呼其友。九族和睦,不離邦域。
鹿豐美の水草を覓得し、鳴叫して同伴を呼喚して共に食わしむ。九族和睦して相處し、本邦疆域を離れず。此の林吉。蹇難の時に處ると雖も親族相守るを主とす。
同人之解:百里南行,雖微復明。去虞適秦,為穆國卿。
百里奚南行し、一度微賤なれど後來重ねて顯達す。彼虞國を離れて秦國に投奔し、秦穆公の國卿を做す。此の林大吉。困厄解を得、舊地を去りて後顯貴するを主とす。
同人之損:梅李冬實,國多寇賊,擾亂並行,王不能制。
梅李冬天に結實するは、反常の兆なり。國中盗賊衆多く、騷擾動亂一齊に發作し、君王制する力無し。此の林大凶。時序失常にして、綱紀廢弛するを主とす。
同人之益:府藏之富,王以賑貸。捕魚河海,笱網多得,巨蛇大鰍。戰於國郊,君遂走逃。
國庫充盈し、君王倉を開きて賑貸す。江河大海に至りて魚を捕え、竹笱大網獲る所甚だ多しと雖も、卻って巨蛇大鰌のごとき凶物を撈上す。戰事國都近郊に起り、國君只だ出逃するを得たり。此の林先に益し後に損ず。得て復た失うを主とす。
同人之夬:牡飛門啟,憂患大結。去老乘馬,不為身禍。
門閂飛脫し門戸洞開し、憂患大いに糾結す。老弱を舍棄して馬に乘りて去れば、纔に自身の禍を釀成するに至らず。此の林機に當たりて決斷して去るを主とす。遲疑すれば便ち害を受く。
同人之姤:宜昌娶婦,東家歌舞長樂歡喜。
昌盛に宜しく正に婦を娶るに好く、東鄰人家歌舞絕えず、長久歡樂喜慶す。此の林吉。佳偶相遇し、家門歡慶するを主とす。
同人之萃:正陽之央,甲氏以亡。禍及留籲,湮滅為墟。
正に陽氣天に中するの時に當たりて、甲氏の國これによって滅亡す。禍事留吁に波及し、一幷に湮滅して廢墟と成る。甲氏・留吁皆赤狄の國にして、晋の滅ぼす所なり、《左傳・宣公十五年》に見ゆ。此の林大凶。聚集して俱に亡ぶを主とす。
同人之升:鳧過稻廬,甘樂麥鰍。雖驅不去,田畯懷憂。
野鴨稻田の田舍を飛過し、麥子と泥鰍とを貪食して去るを肯んぜず。驅趕するに任せても趕き去らず、田官之がために發愁す。此の林外物侵奪するを主とす。上升の勢あると雖も反つて損耗を受く。
同人之困:跛踦俱行,日暮車傷,失旅乏糧。
跛脚の人伴を結び同行すれど、天黑くして車また壞れ、隊伍より掉れてまた糧を缺く。此の林凶。力任に勝えず、中途に困頓するを主とす。
同人之井:龍門水穴,流行不害。民安其土,君臣相保。
龍門の水道穴口、水流通行して害を爲さず。百姓其の土に安居し、君臣相互に保全す。此の林大吉。疏導法を得、上下相い安んずるを主とす。
同人之革:山陵四塞,遏我徑路。欲前不得,復還故處。
山陵四面阻塞し、我が去路を堵住す。前進せんと想うも能わず、只だ原處に返回するを得たり。此の林變革阻まるるを主とす。進退門無し。
同人之鼎:兩虎爭鬥,血流漂忤。城郭空虛,蒿藜塞道。
兩虎相い爭い惡鬥し、血流杵を漂わす。城郭空しく人煙なく、蒿草藜草道路に塞滿す。此の林大凶。兩强相い殘し、國土殘破するを主とす。
同人之震:依東牆隅,志下心老。楚亭晨食,韓子低頭。
東牆角落に倚靠し、志氣低落して心境衰老す。楚地の亭舍に早飯を食い、韓子頭を低くして語らず。此の林志氣消沉し、人の籬下に寄るを主とす。
同人之艮:龍生無常,或托空桑。憑乘風雲,為堯立功。
竜の降生定處なく、或る時空桑の地に寄托す、伊尹空桑に生るるの典を用ゐ。風云の勢に憑藉し、堯舜の君のため功業を建立す。此の林大吉。出身微賤にして時に遇いて顯達するを主とす。
同人之漸:魁行搖尾,逐雲吹水。淤泥為陸,下田為稷。
魁星運行し蛟竜尾を搖り、云氣を追逐し水流を吹動す。淤泥淤積して陸地と成り、低田稷谷に改種す。此の林吉。漸變して利と成り、害を化して用と爲すを主とす。
同人之歸妹:跛踦相隨,日暮牛罷。陵遲後旅,失利亡雌。
跛脚の人相い隨いて行き、天晚了して牛もまた乏了す。漸々隊伍の後に落ち、財利を損りまた雌畜を丢了。此の林凶。同行力弱く、失有りて得なきを主とす。
同人之豐:三人俱行,北求大祥。長子病足,請季負囊。柳下之責,不失驪黃。
三人一同に北行して大福を求取す。長子脚上病有り、便ち幼弟を請じて行囊を背負せしむ。柳下惠のごとく各々其の責を盡し、また九方皋の馬を相して毛色雌黄に拘わらずして終に千里馬を得るがごとし。此の林吉。分工人を得、其の實を取りて其の外表を計わざるを主とす。
同人之旅:鳳凰在左,麒麟在右。仁聖相遇,伊呂集聚。傷害不至,時無殃咎,福為我母。
鳳凰左に在り麒麟右に在り、仁徳聖哲の人彼此相遇し、伊尹・呂尚の類の賢才聚集す。傷害來らず、時運災殃なく、福氣母親のごとく我を養育す。此の林大吉。賢者會合し、旅途安泰するを主とす。
同人之巽:乘筏渡海,雖深不殆。曾孫皇祖,累累具在,受其大福。
木筏に乘りて海を渡り、水深しと雖も危險なし。曾孫皇祖を祭祀し、歷代の神主一一俱に在りて、大福を承受す。此の林大吉。順入して咎なく、祖徳庇佑するを主とす。
同人之兌:比目四翼,來安吾國。畿福上堂,與我同床。
比目魚雙雙並行して四翼を合成し、前來して我が邦國を安定す。福氣畿內に進入し堂に登り室に入り、我と同床して共處す。此の林大吉。兩相配臺し、福家門に至るを主とす。
同人之渙:娶於姜呂,駕迎新婦。少妻在門,夫子悅喜。
姜姓呂氏の女を娶り、車を駕して新婦を迎接す。年少の妻子已に門前に在り、丈夫歡喜す。此の林吉。渙散の際反つて嘉禮を成就するを主とす。
同人之節:螟蟲為賊,害我稼穡。盡禾單麥,秋無所得。
螟蟲災を成して害を爲し、我が莊稼を損傷す。禾苗食い盡され麥子食い盡くされ、秋顆粒の收なし。此の林大凶。蟲害收を絕ち、用を節するも措手するに從なきを主とす。
同人之中孚:衣裳顛倒,為王來呼。成就東周,邦國大休。
衣裳顛倒して穿く、只だ君王急召し來るに因るのみ。語《詩経・齊風・東方未明》に本づく。終に東周の業を成就し、邦國大いに安寧を得。此の林吉。倉促に命に應じて終に大功を成すを主とす。
同人之小過:王孫季子,相與為友。明允篤誠,升擢薦舉。
王孫と季子と朋友を結ぶ。明達誠信・篤實忠厚にして、因りて提拔擧薦を獲得す。此の林吉。同道相い助け、誠を以て進を獲るを主とす。
同人之既濟:湧泉滑滑,流行不絕。汙為江海,敗壞邑里,家無所處。聞虎不俱,向我笑喜。
泉水汩汩として湧出し、流行絕えず、江海を積成し、鄉里を冲毀し、人家身を安んずる處無し。猛虎一齊には前來せざるを聽說して、纔に我に向かいて笑意を露出す。此の林水盛んにして災を成すを主とす。濟極まりて復た危し。驚懼の中稍々一の慰を得。
同人之未濟:桑戶竊脂,啄粟不宜。亂政無常,使心亂明。
桑戸の上の竊脂鳥、粟米を啄食して並に相宜ならず。政令混亂常なく、人心をして迷亂し其の清明を失はしむ。此の林凶。《未濟》の時名實正ならず。上下序を失うを主とす。
大有の林(大有卦六十四林)
大有之大有:白虎張牙,征伐東來。朱雀前驅,讚道說辭。敵人請服,銜璧前驅。
白虎利齒を張開し、大軍東より征伐して來る。朱雀前に在りて道を開き、辭令を宣揚す。敵人歸服を請求し、口に玉璧を銜えて來りて降を迎う。銜璧は古代の降禮なり。此の林大吉。威徳並び行い、戰わずして人の兵を屈するを主とす。
大有之乾:南山大行,困於空桑。老沙為石,牛馬無食。
南に向かいて大山を翻越して遠行し、空桑の地に困頓す。年久の沙土硬石に結成し、牛馬食うべき草無し。此の林凶。途窮まり地瘠せ、剛健施展する處なきを主とす。
大有之坤:蟠枝失岐,與母別離,絕不相知。
盤曲の枝條分岔を脫離し、母株と分離し、此より音信斷絕す。此の林凶。骨肉離散し、音問通ぜざるを主とす。
大有之屯:噂噂所言,莫如我垣。歡樂堅固,可以長安。
衆人紛紛として議論す、「噂沓背憎」の語《詩経・小雅・十月之交》に出づ、皆我が自家の垣牆の可靠に如かず。歡樂穩固にして、長久安寧すべし。此の林吉。自ら其の家を守り、屯難して傷る所なきを主とす。
大有之蒙:李桃零墜,心思精憒。歡憂小愧,亂我魂氣。
李子桃子紛紛として墜落し、心思昏亂す。歡喜と憂愁と交雑し、略々慚愧を覺え、我が神魂氣息を擾亂す。此の林心神定まらず、憂喜常なきを主とす。
大有之需:火雖熾,在吾後。寇雖多,在吾右。身安吉,不危殆。
火勢猛しと雖も、卻って我が身後に在り。盗寇多しと雖も、卻って我が右側に在り。自身平安吉利にして、危險なし。此の林吉。險難身に及ばざるを主とす。待ちて自然に安を得。
大有之訟:虎臥山隅,鹿過後朐,弓矢設張,蝟為功曹,伏不敢起,遂至平野,得我美草。
老虎山角に卧し、鹿其の身後より經過し、弓箭已に張設して發を待つ。刺猬功曹の小吏に充て、伏して起身を敢えてせず、終に平野に走到し、我が美草を吃到す。此の林伏藏して害を避け、終に欲する所を得るを主とす。爭訟の際退讓を以て計を得と爲す。
大有之師:三火起明,雨滅齊光。高位疾顛,驕恣誅傷。
三處火光同時に燃起し、一場の雨光亮を盡數澆滅す。高位に居る者迅速に傾覆し、驕橫恣肆して誅戮を遭い傷を受く。此の林凶。盛極まりて驟かに衰え、驕兵必ず敗るを主とす。
大有之比:疋居楚鳥,遇饞無辜,久散離憂。
獨居楚地の鳥兒、無辜にして人の讒害を遭い、長久流散して離愁斷えず。此の林凶。孤立して謗を受け、親比して援なきを主とす。
大有之小畜:一室十子,同公異母。以義防患,禍災不起。
一家に十個の孩子有り、父を同じくして母を異にす。道義を以て爭端を防範すれば、禍患災殃發生せず。此の林吉。家人衆多なれど法度有り、畜積小なれど內部亂れざるを主とす。
大有之履:商人行旅,資無所有。貪貝利珠,留連王市。還家內顧,公子何咎。
商人外出して行旅し、本錢一の所有無しと雖も、卻って貝幣珠寶を貪圖し、王都集市に滯留す。家に回りて家室を內顧すれば、公子何の過錯か有らん。此の林利を貪りて歸を忘るるを主とす。幸いに返るを知れば便ち過咎なし。
大有之泰:禹將為君,北入崑崙。稍進陽光,登入溫湯。代舜為治,功德昭明。
大禹將に君と爲らんとして、北に向かいて崑崙に進入す。漸々陽光を迎え向い、温湯の地に登入す。虞舜に接替して天下を治理し、功業徳行昭然として彰明なり。此の林大吉。大位を承繼し、功徳顯著するを主とす。
大有之否:乾行天德,覆幬無極,嘔呼烹熟,使各自得。
乾道運行し上天の徳、覆蓋庇護窮り盡きる無く、煦育萬物すること烹調の熟するを使するがごとく、各物をして各々其の性を遂げしむ。此の林大吉。天覆の徳廣く被り、否塞に居ると雖も其の中泰を含むを主とす。
大有之同人:南國茂盛,庶稷釀酒。可以享老,樂我嘉友。
南方の國物產茂盛にして、衆多の稷米を以て酒を釀す。以て長者を奉養し、嘉賓良友と同じく樂しむ可し。此の林吉。豐足共に享け、同心同樂するを主とす。
大有之謙:方船備水,旁河燃火。終身為禍,與夫吉昌,永得安康。
舟船を幷連して水患を防ぎ、河邊に傍りて火を生じて取暖す。終身禍有りと說うと雖も、卻って吉慶昌盛と相い連なり、終に永く平安康泰を保つ能くす。此の林先に防備有りて後安を得、禍中より轉じて吉を出すを主とす。
大有之豫:雷行相逐,無有休息。戰於平陸,為夷所覆。
雷聲接續して滾動し、停歇なし。平陸の地に交戰し、夷人の擊敗する所と爲る。此の林凶。動きて止まるを知らず、豫備周ならずして傾覆を致すを主とす。
大有之隨:躑躅踟躕,拊心搔頭。五晝四夜,睹我齊候。
徘徊躊躇し、胸を捶り頭を搔く。五個の白天四個の夜晚を等ちて、纔に我が待つ所の齊侯を見る。此の林守候艱難にして終に相見るを得るを主とす。隨う所終に獲る所有り。
大有之蠱:大口宣唇,神使伸言。黃龍景星,出應侯門。與福上堂,天下吉昌。
大口厚唇の相、神明の差遣する所と爲りて代りて傳言す。黄竜と景星と出現し、侯門に應ず。福氣堂に登りて入り、天下吉慶昌盛す。此の林大吉。瑞應顯發し、蠱壞を整治して吉を得るを主とす。
大有之臨:陰衰老極,陽建其德。離陽載光,天下昭明。
陰氣衰竭して極點に至り、陽氣其の徳を建立す。陽に附麗して光明を承載し、天下昭然として明亮なり。此の林大吉。陽氣來復して天下に臨照するを主とす。
大有之觀:三塗五嶽,陽城太室,神明所伏,獨無兵革,下有保國。
三塗山と五岳、陽城と太室山、皆神明潛藏の處にして、唯だ兵災なく、其の下自ら保全の邦國有り。此の林大吉。聖地兵なく、徳を觀て安を得るを主とす。
大有之噬嗑:年歲豐熟,政仁民樂。利以居止,旅人獲福。
年成豐收し、政令仁厚にして百姓安樂す。安居止息するに宜しく、旅居の人もまた福澤を得。此の林大吉。刑清く政仁にして、內外俱に安しを主とす。
大有之賁:楚烏逢矢,不可久放。離居無辜,意昧精喪。作此哀詩,以告孔憂。
楚地の烏鴉飛箭に遇上し、野外に久留すべからず。離居して外に在りて本來罪過なく、心意昏昧にして精神耗損す。此の哀傷の詩を寫下し、以て深切の憂愁を訴說す。此の林凶。無辜にして難に遭い、文飾其の悲を掩い難きを主とす。
大有之剝:出門大步,與凶惡忤。罵公詈母,為我憂恥。
門を出でて大步にして行き、凶惡の人と相い抵觸す。對方尊長を辱罵し其の母を詬詈し、我が憂愁と耻辱と成る。此の林凶。外出して惡人に遇い、辱を受けて羞を蒙るを主とす。
大有之復:火之井谷,楊芒生角。犯歷天市,#觀太極,登上玉床,家易六公。
火井谷に落入り、楊樹の芒刺犄角を長出す、皆異象なり。星象上天市垣を衝犯し、遙かに太極を觀て、玉床に登り、家中六位の公卿を更替す。源文此の處缺字あり。此の林變異頻仍にして、位次更迭するを主とす。
大有之無妄:牧羊逢狼,雖憂不傷。畏不惕息,終無禍殃。
羊を放す時狼に遇上すれど、擔憂すると雖も傷を受けず。心畏懼を存して懈怠喘息を敢えてせず、最終禍殃なし。此の林吉。戒懼して災を免るを主とす。无妄の險謹愼に因りて化解す。
大有之大畜:繭栗犧牲,敬奉貴神。享者飲食,受福多孫。望季不來,孔聖厄陳。
犄角初めて生ること繭栗のごとき小牛を以て犧牲と做し、恭敬して尊貴の神明を奉獻す。神明歆享飲食し、福を賜して子孫多し。盼ぐ所の季子來らず、孔子陳蔡の間に被困す。此の林吉中に厄あり。祭享福を得て行道困に遇うを主とす。
大有之頤:大澤治妝,南歸羖羊。長伯為我,多得馬牛。利於徙居。
大澤の邊に行裝を整治し、南に向かいて黑公羊を趕回す。長兄我に替りて經營し、馬匹牛隻を多得す。居處を遷徙するに宜し。此の林吉。經營して畜を得、遷移して利を獲るを主とす。
大有之大過:枯樹無枝,與子分離。飢寒莫養,獨立哀悲。
枯樹枝條なく、孩子と分離す。饑寒して供養する人なく、孤身して立ち哀傷悲苦す。此の林大凶。本枯れ親離れ、依養する所なきを主とす。
大有之坎:天地九重,堯舜治中。正冠衣裳,宇宙平康。
天地共に九重有り、堯舜中に居りて治理す。冠冕衣裳を端正し、宇宙太平で安康なり。此の林大吉。中に居りて正を守り、坎險に處ると雖も天下安寧なり。
大有之離:鳧鷖游涇,君子以寧。履德不愆,福祿來成。
野鴨鷗鳥涇水の中に游弋す、語《詩経・大雅・鳧鷖》に本づき、君子因りて安寧す。徳行を踐行して過失なく、福祿自然成就す。此の林大吉。徳行虧なく、福祿相い隨うを主とす。
大有之咸:裸裎逐狐,為人所笑,牝雞司晨,主作亂根。
赤身して狐狸を追逐し、人の耻笑する所と爲る。母鸡公雞に代りて曉を報ず、《尚書・牧誓》に「牝鷄晨を司るは、惟れ家の索なり」と曰う、正に禍亂の根源なり。此の林凶。體を失い倒置し、陰盛んにして以て亂を致すを主とす。
大有之恆:典冊法書,藏在蘭臺。雖遭亂潰,獨不遇災。
典籍法令文書、蘭臺に收藏す、蘭臺は漢代藏書の府なり。動亂潰敗に遭逢すると雖も、唯だ它曾て災に遇わず。此の林吉。常を守りて憑恃する所有り、亂世の中獨り保全を得るを主とす。
大有之遁:三痴俱狂,欲之平鄉。迷惑失道,不知昏明。
三個の痴人一同に發狂し、平鄉に往かんと想う。迷惑して道路を失了、天黑天亮了を分不清す。此の林凶。群昏して路を失い、退きて歸る所なきを主とす。
大有之大壯:癭瘤瘍疥,為身瘡害。疾病癃痢,常不危殆。
癭瘤瘡疥身上の病害と成り、また癃閉痢疾を患う、好くして常に性命を危及するに至らず。此の林小疾身に纏いて大凶なきを主とす。壯健なると雖も病を帶ぶ。
大有之晉:三豕俱走,斗於谷口。白豕不勝,死於坂下。
三頭の猪一齊に奔走し、谷口に相い鬥う。白猪勝を取る能わず、山坡の下に死す。此の林凶。强を爭いて敗亡し、進取して反つて挫を受くるを主とす。
大有之明夷:賴主之光,受德之佑。遂造顛沛,獨不凶咎。
君主の光輝を倚賴し、恩徳の庇佑を承受す。縱ほ顛沛流離に遭逢するも、唯だ凶險過咎なし。此の林吉。晦暗の世庇を得、險中獨り保全する能くするを主とす。
大有之家人:上義崇德,以建大福。吉宜誥旦,周武功立。
道義と徳行とを崇尚し、以て大福を建立す。吉慶誥命の晨に宜しく、周武王の功業此より確立す。此の林大吉。徳を修め家を齊えて後大業を成就するを主とす。
大有之睽:四亂不安,東西為恨,身止無功。不出國城,乃得完全,賴其生福。
四方動亂安んぜず、東西兩面皆人をして怨恨せしめ、自身步を止めて功なし。只だ國都城門を出でざれば、便ち保全すべし。此に賴りて福を生ず。此の林乖離の世守るに宜しくして行うに宜しからざるを主とす。
大有之蹇:金牙鐵齒,西母王子。無有患殆,涉道大利。
金牙鐵齒を生ずるは、西王母の子なり。彼の護佑有れば便ち災患危險なし、途を涉りて遠行すれば大いに利有り。此の林吉。神助有りて蹇難濟る可きを主とす。
大有之解:賀喜從福,日利蕃息,歡樂有得。
慶賀喜事して福氣行に隨い、每日利を獲て滋生繁衍し、歡樂して得る所有り。此の林大吉。困厄解を得て福氣到來し、日に其の益を增すを主とす。
大有之損:昊天白日,照臨我國。萬民康寧,咸賴受福。
蒼天朗日高く懸り、光我が邦國を照す。萬民安康寧靜にして、人人福澤を蒙る。此の林大吉。損と言うと雖も其の實損する所なし。上明くして下安しを主とす。
大有之益:左眇右盲,視暗不明。下民多櫱,君失其常。
左眼失明し右眼瞎盲し、物を看るに昏暗不清なり。下民多く禍端を生じ、君主常道を失了。此の林凶。上明察する能わず、增益して反つて害と成るを主とす。
大有之夬:吾有黍梁,委積道旁。有架服箱,運我到鄉,藏於嘉倉。
我に黍米粱米有り、道旁に堆積す。車架大箱有りて裝載すべく、之を我が家鄉に運回し、好倉廩に藏進す。此の林大吉。決斷して收穫する能く、積藏豐實するを主とす。
大有之姤:殊類異路,心不相慕。牝豕無#,鰥無室家。
種類同じからず道路各異なり、彼此並びに相い慕わず。母猪其の配偶を失い、源文此の處缺字あり、鰥夫妻室無し。此の林凶。遇う所其の配偶に非ず、孤單にして合する所なきを主とす。
大有之萃:雀行求食,出門見鷂。顛蹶上下,幾無所處。
麻雀外に出でて食を覓め、一たび門を出れば卽ち鷂鷹に撞見す。上下顚簸して奔逃し、幾ほど身を安んずる處無し。此の林凶。利を求めて險に遇い、聚りて其の所を失うを主とす。
大有之升:野有積庾,穡人駕取,不逢虎狼,暮歸其宅。
野外に露天堆積の穀垛有り、農夫車を駕して前に往きて取運し、路上虎狼に遇わず、傍晚平安にして家宅に回到す。此の林吉。收成獲有り、往返虞なきを主とす。
大有之困:膚敏之德,發憤忘食。虜豹禽越,為王求福。
美好敏捷の徳行、發憤用功して廢寢忘食に至る。《論語》に「發憤して食を忘る」の語有り。豹類を擒獲し越人を制服し、君王のため福澤を求取す。此の林吉。困中奮勵し、功を建てて賞を受くるを主とす。
大有之井:光祀春成,陳寶雞鳴。陽明失道,不能自守,消亡為咎。
光耀の祭祀春天に完成し、陳寶祠の中神鷄長鳴す。秦文公陳寶を獲し、其の來雄鷄の鳴くに若し、《史記・封禪書》に見ゆ。惜しむべし陽明其の常道を失い、自ら守る能わず、消亡して禍咎と成る。此の林先に吉にして後に凶。守ること固からざれば則ち福澤終に盡くるを主とす。
大有之革:左抱金玉,右得熊足。常盈不亡,獲心所欲。
左手金玉を抱持し、右手熊掌の美味を得。長く盈滿を保して失わず、心中の願う所を得遂ぐ。此の林大吉。變革して利を得、左右源に逢うを主とす。
大有之鼎:履泥汙足,名困身辱。兩仇相得,身其為虛。
泥濘に踩進して脚を弄髒し、名聲困を受け身屈辱を遭う。兩個の仇家彼此纏繞し、自身反つて空虛と成る。此の林凶。自ら其の名を污し、兩敗俱に傷くを主とす。
大有之震:安居重遷,不去其廛。禾米相聞,樂得常產。
居る所に安んじて輕々しく遷徙せず、己が屋宅市廛を離れず。禾谷米糧相い接して斷えず、恒常の産業を守住するを樂しむ。此の林吉。震動の中土に安んじて搖れざるを主とす。
大有之艮:天災所遊,凶不可居。轉徙獲福,留止危憂。
天災流行の地方、凶險にして居留すべからず。他處に遷移すれば便ち福を得、原處に滯留すれば則ち危殆憂患す。此の林其の所に非ずに止まるを主とす。遷徙に宜しくして固守すべからず。
大有之漸:昧昧默默,不知白黑。景雲亂擾,光明隱伏。犬戎攻來,幽王失國。
昏昧沉默して、黑白を分不清す。祥云錯亂紛擾し、光明隱沒して見えず。犬戎攻め打ちて來り、周幽王これによって國を亡ぼす。此の林大凶。漸々其の明を喪失し、終に傾覆に至るを主とす。
大有之歸妹:鳧雁啞啞,以水為宅。雌雄相和,常共娛樂。得其所欲。
野鴨大雁嘎嘎と鳴叫し、水面を以て家と爲す。雌雄和鳴し、常に一緒に在りて娛樂し、各々願う所を遂ぐ。此の林大吉。配偶相い得、歸りて其の所を得るを主とす。
大有之豐:長生無極,子孫千億。柏柱載梁,堅固不傾。
生々して息まず、綿長にして盡くるなく、子孫繁衍して千億を以て計る。柏木の柱子屋梁を承載し、堅固にして傾倒せず。此の林大吉。根基穩固にして、後嗣繁昌するを主とす。
大有之旅:麒麟鳳凰,善政得祥。陰陽合調,國無災殃。
麒麟と鳳凰と出現するは、善政の招來する祥瑞なり。陰陽調和し、國中災殃なし。此の林大吉。徳政感召し、旅途もまた平安を得るを主とす。
大有之巽:天之奧隅,堯舜所居。可以存身,保我室家。
上天深く藏する一偶、正に堯舜居住の地なり。此に在りて身を安んずべく、我が家室を保全す。此の林大吉。地を擇びて順入し、家宅長久にして平安なり。
大有之兌:配合相迎,利之四鄰。昏以為期,與福笑喜。
男女配合して彼此迎娶し、利益四鄰に及ぶ。黄昏を以て婚期と爲す、古時婚禮正に昏時に行うなり。福氣と同じく歡笑喜慶す。此の林大吉。婚姻和合し、喜慶門に盈つるを主とす。
大有之渙:砥德礪材,果當成周。拜受大命,封為齊侯。
徳行を砥礪し才幹を磨練し、果然周室に成就す。重大の使命を拜受し、齊侯に受封す、卽ち呂尚齊を封ぜらるるの事なり。此の林大吉。己を修めて命を受け、渙然として大いに顯るるを主とす。
大有之節:與福俱坐,畜水備火。思患豫防,終無殃禍。
福氣と同じく坐し、水を蓄えて以て火患に備う。豫め禍患を思慮して之を防範す、《易・既濟》象辭に「患を思いて豫防す」と曰う、終に災殃なし。此の林大吉。用を節して備有り、患を未然に防ぐを主とす。
大有之中:晨昏潛處,候時熙熙。卒逢白日,為世榮主。
早晚皆潜藏して隱處し、靜かに時機を候い、和樂して自適す。終に朗朗の白日に遇上し、一世榮顯の主と成る。此の林大吉。潜養して時を待ち、一朝顯達するを主とす。
大有之小過:視日再光,與天相望。長生歡悅,與福為兄。
あの太陽再度放光し、天と遙々相い對するを看よ。長久生存して歡欣喜悅し、福氣と兄弟を結ぶ。此の林大吉。光明重來し、福と壽と並び至るを主とす。
大有之既濟:大頭明目,載受嘉福。三雀飛來,與祿相觸。
頭大きく眼明らかの相、美好の福澤を承受す。三隻の雀鳥飛來して、祿位と相應して合す。此の林大吉。事成りて福至り、祿位相い隨うを主とす。
大有之未濟:梗生荊山,命屬輸班。袍衣剝脫,夏熱冬寒。立成枯槁,眾人莫憐。
桃梗荆山に生長すれど、性命卻って公輸班の手に操らる。《戰國策》に土偶と桃梗と相い詰るの喻有り。袍衣剥去せられ、夏酷熱を受け冬嚴寒を受く。轉眼枯槁して死し、憐惜する人無し。此の林大凶。《未濟》の時身己に由らず。人に受制して終に凋零を致すを主とす。
謙の林(謙卦六十四林)
謙之謙:王喬無病,狗頭不痛。亡跛失履,之我逆從。
仙人王子喬眞を修めて終身病なく、門を守る狗頭すら疼痛を覺えず。跛足の人鞋子を丢了と雖も、仍ほ人面前に迎い來りて我に歸順する有り。此の林仙家康寧を以て興を起し、災病生ぜず、小さく折損あるも大體に妨げ無きを言う。占う者反つて人の助を得て安んず。
謙之乾:喋囁處曜,昧冥相待。多言少實,終無成事。
口舌喋喋不休するも、人卻って明暗不定の中に處り、彼此昏昧の裏に相互に觀望等待す。話多く說くも實事少なく、最終一件事も辦成らず。此の林專ら虛談浮誇を戒む。謀事を占問い官を求むるは、皆遷延拖沓して成る無きを主とす。
謙之坤:北辰紫宮,衣冠中立。含和達德,常受大福。鉛刀攻玉,堅不可得。
北極星高く紫微宮中に居り、人君衣冠を整肅して正位に端立す。內に中和の氣を含み、徳行外に通達し、故に常に大福を受く。然るに鉛鑄の軟刀を以て美玉を雕琢せんとすれば、玉堅く刀鈍く、終に刻入れず。此の林前半は正に居る者福を獲るを言い、後半は才小なる者其の任に勝えざるを戒む。占う者當に力を量りて行うべし。
謙之屯:東壁為光,數暗不明。王母嫉妒,亂我事業。
東壁星本來文章典籍を主掌する光明の宿なれど、如今卻って屢々晦暗不明なり。また西王母のごとき陰神の見妒を遭い、我が事業を攪亂す。此の林文書學業の運陰人の阻撓を受くるを言う。功名を占問うに、女子或は小人の妨げる所と爲りて成り難きを主とす。
謙之蒙:下背其上,資明其讓。子嬰兩頭,陳破其墟。
下位に在る者上位に在る者を背棄し、本來明主を輔助して謙讓の徳を成全すべく、反つて二心を生出す。秦王子嬰首鼠兩端と爲し、義軍一たび起れば、秦都終に廢墟と化作す。此の林上下心を離れ、基業傾覆するを主とす。事業を占問うに當に內部の背叛を嚴防すべし。
謙之需:鳳生會稽,稍具能飛。翱翔桂林,與眾鳥雄。
鳳凰偏遠の會稽に出生し、羽翼稍々長成すれば便ち高飛する能く、桂林の上に盤旋翺翔して、群鳥の中に稱雄す。此の林出身微遠にして終に大器と成るを言う。功名を占問うに、隱より顯れ後來上に居るを主とす。
謙之訟:鑿井求玉,非卞氏寶。名困身辱,勞無所得。
井を掘りて美玉を求めに往くも、掘出したるは卞和の獻じし荆山之璧に非ず。名聲困を受け身屈辱を遭い、氣力を白費して一の獲る所なし。此の林求む所其の道に合せざるを戒む。財を求め名を求めて占問うに、徒らに往復するのみ。
謙之師:拜傑載復,送至東萊。百僚具舉,君王嘉喜。
豪杰の士を拜任し、車を以て彼を載せて返回し、一路護送して東萊の地に至る。百官一齊に擧薦稱美し、君王これによって歡喜す。此の林賢を薦めて人を得、上下相い得るを主とす。官を求め擧に應ずるを占問うに、必ず嘉納を獲べし。
謙之比:安息康居,異國穹廬,非吾邦域,使伯憂戚。
安息と康居とは皆西域の他邦、住するは氈製の圓頂穹廬にして、我が國の疆土に非ず。命を奉じて出使せし伯氏これによって憂愁悲戚す。此の林遠役異域にして、風土宜ならざるを言う。出行遠行を占問うに、客中愁苦して安んぜざるを主とす。
謙之小畜:江河淮海,天之都市。商人受福,國家富有。
長江・黄河・淮水と大海は、上天の設けたる通都大市なり。商旅它に憑りて往來して利を獲て福を受け、國家もまたこれによって富足す。此の林財貨流通の象を主とす。經商して財を求むるを占問うに、大いに其の利を得。
謙之履:同木異葉,樂仁上德。東鄰慕義,來興吾國。
同一株の樹上形狀不同の葉を生出し、各々其の分に安んじて同じく仁を樂しみ共に上徳を尚ぶ。東の鄰國此の道義を仰慕して、前來して我を助けて邦を興さしむ。此の林徳を以て遠を懐くるを言う。邦交人事を占問うに、己に異なる者もまた歸附を願う。
謙之泰:白鶴銜珠,夜室反明。懷我德音,身受光榮。
白鶴口に明珠を銜えて飛來し、昏黑の屋室反つて通明す。旁人我が徳音善言を感念し、我自身もまたこれによって榮顯を得。此の林暗より明に轉じ、令名外に著わるるを主とす。功名を占問うに、貴人の提携を得て譽を受くるを主とす。
謙之否:踐履危難,脫厄去患。入福喜門,見吾邦君。
身危難を歴して一歩一歩踏み過ぐる能く、困厄を脫出して禍患を除掉す。隨うて後福喜の門に走進し、本國の君に拜見するを得。此の林先に險にして後に夷し。疾厄官非を占問うに、終に危を轉じて安と爲し並びに上位の賞識を獲べし。
謙之同人:宮商既和,聲音相隨。驪駒在門,主君以歡。
宮・商の二音已に調諧し、聲と聲と彼此相い應和す。客を送る《驪駒》の曲門前に奏起し、主人之がために歡喜す。此の林人事和諧し、賓主相い得るを主とす。婚姻交際を占問うに、情意相い投じて吉なり。
謙之大有:天地配享,六位光明。陰陽順序,以成厥功。
天と地と相配して同じく祭享を受け、六爻の位各々光明なり。陰陽次に依りて行いて相い爭奪せず、ここに其の功業を成就す。此の林時位皆正しく、上下協同するを主とす。諸事を占問うに、理に順いて成る。
謙之豫:江河淮海,天之奧府,眾利所聚,可以饒有,樂我君子。
長江・黄河・淮水と大海は、上天深く藏する財貨の府庫、各種の利益皆此に匯聚して、足りて人をして富饒ならしめ、君子をして其の樂を安享せしむ。此の林財源廣く聚まるを主とす。財を求め營運するを占問うに、獲る所豐厚にして身心俱に安んず。
謙之隨:雙鳧俱飛,欲歸稻池。徑涉萑澤,為矢所射。傷我胸臆。
兩隻の野鴨一同に飛起し、本來熟悉的稻田池塘に回歸せんと想うも、卻って徑直に蘆葦沼澤を穿越し、埋伏の獵人の一箭に射中てられ、胸口に傷く。此の林近便を貪圖して誤りて險地に入るを戒む。出行謀事を占問うに、途中暗算を遭いて損を受く。
謙之蠱:伯仲叔季,日暮寢寐。裸臥失明,喪我貝囊,銜卸道旁。
伯仲叔季の兄弟四人天一たび黑くなれば便ち躺下して安睡し、赤身して卧し燈火全滅し、錢貝を裝めし袋子人の偷走する所と爲り、空袋叼まれて路旁に丢弃せらる。此の林防範疏忽して財を失うを言う。出行財物を占問うに、竊盜を遭い遺失するを主とす。
謙之臨:受阻文祖,承率復起。以義自閒,雖苦無咎。
文祖の廟に命を受くる時阻難に遭遇すれど、仍ほ舊業を承繼し、衆を率ゐて重ねて振作す。道義を以て自己を約束すれば、困苦に身處すると雖も、過錯を招來せず。此の林先に難にして後に起つを主とす。事業を占問うに、正道を堅守すれば則ち災なし。
謙之觀:旋斗運樞,順天無憂,與樂並俱。
北斗旋轉し天樞運行して息まず、人天時に順應して動けば便ち憂患なく、歡樂自身と相伴う。此の林時に隨い消息し、天に逆いて行わざるを主とす。諸事を占問うに、分に安んじ時を守れば則ち吉なり。
謙之噬嗑:周師伐紂,戰於牧野。甲子平旦,天下悅喜。
周武王大軍を統率して商紂を討伐し、牧野に會戰す。甲子の日天剛に亮く、一戰して天下を定む。四方の人歡喜せざる無し。此の林暴を除きて衆心を得、一擧して成功するを主とす。爭訟征伐を占問うに、正を持する者必ず勝つ。
謙之賁:十雌百雛,常與母俱。抱雞博虎,誰敢害諸。
十隻の母鸡上百隻の小鷄を帶び、時時母親の身傍を離れず。雛を護る母鸡猛虎をも搏撃を敢えてし、還て誰か敢えて來りて彼らを加害せん。此の林母子相守し、護養力有るを主とす。家宅子嗣を占問うに、安固して虞なし。
謙之剝:桀蹠並處,人民愁苦。擁兵荷糧,戰於齊魯。
夏桀のごとき暴君と盗跖のごとき巨盗と同時に道に當たり、百姓愁苦堪えず。各方兵を擁し糧を負い、齊魯の地に交鋒す。此の林亂世に兵禍並び起るを主とす。時局出行を占問うに、凶險當に避くべし。
謙之復:南山昊天,刺政閔身。侯悲無辜,皆憎為仇。
《詩経》に《節南山》亂政を譏刺し《巧言》悠悠たる昊天を呼吁する有り、皆自身を哀憫して當權を怨刺す。諸侯無辜の受害者のために悲憤し、人人恨を懷きて仇怨を結ぶ。此の林政亂れ謗興るを主とす。是非を占問うに、冤を蒙りて怨を結ぶを主とす。
謙之無妄:百川朝海,流行不止。道雖遼遠,無不到者。
衆多の河流宗を朝いて海に歸し、奔流して停まず。路途遙遠なれど、到らざる處なし。此の林積漸必ず成り、志有れば竟に達するを主とす。遠行謀望を占問うに、縱ほ遲緩するも終に必ず抵達す。
謙之大畜:目不可合,憂來搖足,悚惕危懼,去其邦域。
眼睛合う能わず、憂愁襲來して雙脚すら發抖し、心中驚懼安んぜず、只だ己が家邦を離るるを得たり。此の林內に憂い外に懼れ、迫られて遠く走るを主とす。居處を占問うに、動蕩寧ならざるを主とす。
謙之頤:烏夫鵠舉,照臨東海。龍降庭堅,為陶叔後。封於蓼丘,福履綏厚。
烏鴉翅を振い天鵝高擧し、光明東海の濱に照臨す。祥竜瑞を庭堅に降す、彼皋陶一族の後人にして、蓼丘に受封し、福祿安厚綿長なり。此の林皋陶後裔蓼・六に封ぜらるるの舊典を用ゐ。功名子孫を占問うに、先蔭を承けて封を受け厚福を享くるを主とす。
謙之大過:北方多棗,橘柚所聚。荷囊載黍,盈我框#。
北方盛んに棗子を產し、南方の橘柚もまた匯聚して來る。口袋を背着して黍米を滿裝し、我が筐篋を皆塞ぐること滿滿なり。此の林南北貨殖流通し、倉廩充實するを主とす。財を求め收成するを占問うに、皆豐足にして餘有るを主とす。
謙之坎:懸貆素食,食非其任。失望遠民,實勞我心。
庭前獵來の貉子を懸掛し、自己卻って白く俸祿を食らいて勞作を事とせず、受くる所實に其の職に稱せず。遠方の百姓これによって失望し、眞に我をして心中憂勞せしむ。此の林《詩・伐檀》の素餐を譏刺するの義を取る。居官任事を占問うに、徳位に稱せずして怨を招くを主とす。
謙之離:羔羊皮革,君子朝服。輔政扶德,以合萬國。
羔羊の皮の制成する裘革は、君子上朝する所着の禮服なり。之を穿著して朝政を輔助し徳教を扶持し、以て萬邦を會合す。此の林《詩・羔羊》の節儉正直の義を取る。仕進を占問うに、位に居ること體を得、衆人を協和するを主とす。
謙之咸:齊魯爭言,戰於龍門。構怨致禍,三歲不安。
齊國と魯國と口舌に因りて相い爭い、進みて龍門に交兵す。彼此怨仇を結下して禍患を招來し、三年の內安寧を得ず。此の林爭訟釀成して兵禍と爲るを主とす。口舌爭執を占問うに、久久として平め難く、及早に爭を息むるに宜し。
謙之恆:久陰霖雨,塗行泥潦。商人休止,市空無有。
久陰開けず連日大雨し、路上盡く泥濘積水なり。行商これによって脚步を停下し、市集空蕩として一の所有無し。此の林時運滯塞し、生計中斷するを主とす。經商出行を占問うに、阻を受け停頓するを主とす。
謙之遁:桃雀竊脂,巢於小枝。搖動不安,為風所吹。寒心悚悚,常憂殆危。
桃雀脂膏を偷食し、細弱の枝條の上に巢を築く。巢枝に隨いて搖晃定まらず、一たび大風に遇えば更に墜ちんと欲し、鳥兒心寒く發抖して、時時傾危を憂懼す。此の林託する所地に非ざるを戒む。依附して安を求むるを占問うに、根基固からず、驚懼して寧ならざるを主とす。
謙之大壯:防患備災,凶禍不來。雖困無災,未或安休。
事先に禍患を防備し豫め救災の資を儲えば、凶禍便ち頭に臨まず。處境困頓すると雖も、實際の災殃なく、只是れ還て高枕安臥する能わず。此の林豫防力を得るを主とす。安危を占問うに、勞すると雖も咎なし、仍ほ須らく戒愼を持續すべし。
謙之晉:引頸絕糧,與母異門。不見所歡,孰與共言。
頸を伸長して食を盼ぐも糧已に斷絕し、母親と分居して兩處す。親愛する所を見ず、還て誰と同じく說話せん。此の林孤困離散し、依託する所なきを主とす。親人團聚を占問うに、分離して愁苦するを主とす。
謙之明夷:鰍蝦去海,藏於枯裡。街巷偏隘,不得自在。南北無極,渴餒成疾。
泥鰍と蝦と大海を離れ、乾涸の溝渠の中に躲藏す。街巷狹窄偏塞し、轉身すら自在ならず。南北奔走して漫に邊際なく、また渴きまた饑え、終に病を成す。此の林其の本處を失い、進退困窮するを主とす。遷徙して生を謀るを占問うに、困頓して疾を致すを主とす。
謙之家人:恭寬信敏,功加四海。闢去不祥,喜來從母。
恭敬・寛厚・誠信・勤敏、此の四徳は《論語・陽貨》に見ゆ、功業を四海に遍及する能くしむ。不祥の氣驅除せられ、喜慶母親と同じく到來す。此の林徳を修めて福を致すを主とす。家宅子嗣を占問うに、吉慶內より自ら生ずるを主とす。
謙之睽:歲飢無年,虐政害民。乾溪驪山,秦楚結冤。
年成饑荒にして顆粒の收なく、苛虐の政また百姓を殘害す。楚靈王乾溪に困死し、秦始皇大いに驪山陵墓を興し、秦楚兩國皆これによって民怨を結下す。此の林暴政亂を召すを主とす。國事家業を占問うに、上下怨を積みて變を生ずるを主とす。
謙之蹇:右目無瞳,偏視寡明。十步之外,不知何公。
右眼瞳仁なく、只だ偏きて看て少しく明察す。十步の外、連れ來る人の哪一位なるかをも認出する能わず。此の林見識偏狹にして、人を辨え清からざるを主とす。決斷人を用ゐるを占問うに、蒙蔽を受けて事を誤るを主とす。
謙之解:蜩螗歡喜,草木喜茂。百果蕃熾,日益庶行。
蟬枝頭に歡鳴し、草木欣然として繁茂す。各種の果實繁盛に結、一天天興旺して通通ぜざる無し。此の林時令和順にして、生機勃發するを主とす。農事事業を占問うに、日を逐いて增益して昌盛するを主とす。
謙之損:常德自如,安坐無尤。幸如貴鄉,到老安榮。
恒常の徳を持守して從容自如し、安然として靜坐するも過失を招來せず。幸運顯貴の鄉に身處するがごとくを得、老年に至るまで安泰榮顯なり。此の林常を守りて福を獲るを主とす。身命を占問うに、一生平順にして善終するを主とす。
謙之益:狡兔##,良犬逐咋。雄雉受害,為鷹所獲。
狡兔奔竄跳躍し、良犬緊追撕咬す。雄雉もまた劫難を逃れ難く、蒼鷹の抓獲する所と爲る。此の林强弱を凌ぎ、獵者利を得るを主とす。身家を占問うに强勢の者の制する所と爲る。鋒を避け靜を守るに宜し。
謙之夬:春桃生花,季女宜家。受福多年,男為封君。
春天桃樹開花し、正に少女出嫁して家に宜しきの時節なり。此の後多年福澤を承受し、生する所の男兒還て君に受封す。此の林《詩・桃夭》の義を取る。婚姻子嗣を占問うに、大吉にして後福綿長なり。
謙之姤:山石朽弊,少崩墜落。上下離心,君受其祟。
山上の岩石朽壞殘破し、稍々動搖すれば便ち崩塌墜落す。上下心を離れ徳を離れ、人君此の禍祟を承受せんとす。此の林根基敗壞して傾覆を致すを主とす。家國官位を占問うに、內潰して殃を遭うを主とす。
謙之萃:水壞我裡,東流為海。龜鳧歡譁,不睹我家。
洪水我が鄉里を冲毀し、東に向かいて奔流して大海に匯成す。龜と野鴨と水面上に歡鳴喧鬧するも、我が家卻って再び見る能わず。此の林水患産を蕩すを主とす。家宅居處を占問うに、所を失い流離するを主とす。
謙之升:七竅龍身,造化八元。法天則地,順時施恩。富貴長存。
面七竅有り身神竜のごとき聖王、八元のごとき賢才を化育す。天地の道を效法し、時令に順應して恩澤を施行し、これによって富貴長久に保全す。此の林聖徳賢を用ゐるを主とす。功名家業を占問うに、根基深厚にして福澤綿遠なるを主とす。
謙之困:四夷慕德,來興我國。文君徙降,同受福德。
四方の外族徳教を仰慕し、前來して我を助けて邦國を興盛せしむ。文徳有る君主遷居して下臨し、君民一同に福徳を承受す。此の林遠人を懐柔するを主とす。邦交合作を占問うに、外助內應して共に其の利を獲るを主とす。
謙之井:華首山頭,仙道所遊。利以居上,長無咎憂。
華首山の峰頂は、神仙往來遨游する處なり。清高に居りて靜かに自守するに宜しく、長久過錯と憂患と無し。此の林高蹈して禍を遠ざくるを主とす。居處進退を占問うに、高を守れば則ち安きを主とす。
謙之革:鸇鳩徙巢,西至平州。遭逢雷雹,闢我葦蘆。室家飢寒,思吾故初。
鸇と鳩と巢穴を遷移し、一路西行して平州に至る。途中雷電氷雹に遭遇し、只だ蘆葦叢の中に躲進して避難す。一家老小饑寒交迫し、當初の舊居を回想起す。此の林遷徙計を失うを主とす。搬遷遠行を占問うに、中途挫を受けて歸を思うを主とす。
謙之鼎:狗無前足,陰謀叛背,為身害賊。
狗前足を失了、還て暗中背叛を圖謀し、反つて自己を害す。此の林力なくして妄動し、奸を懷きて自ら傷るを言う。謀事を占問うに、陰謀成らずして反つて其の禍を受くるを主とす。
謙之震:陽孤亢極,多所恨惑。車傾蓋亡,身常驚惶。乃得其願,雌雄相從。
陽氣孤立して亢盛極點に至り、心中怨恨迷惑多し。車子翻倒して車蓋もまた丢了、人常に驚惶定まらず。後來に至りて終に心願を遂げ、雌雄相い隨うを得。此の林先に凶にして後に吉。婚姻謀事を占問うに、顚簸を經ると雖も終に願のごとく能くす。
謙之艮:空巢注豬,豚彘不至。張弓祝雞,雄父飛去。
空巢に對して猪を喂う食料を灌注すれど、猪卻って一頭も來らず。弓弩を張開してまた鷄に向かいて祝禱するも、公鷄已に早く飛去す。此の林施す所其の所を得ず、事願に違うを言う。求取を占問うに、勞して獲なきを主とす。
謙之漸:長夜短日,陰為陽賊。萬物空枯,藏於北陸。
黑夜漫長にして白昼短促し、陰氣反つて陽て陽氣を戕害す。萬物凋零枯竭して、皆北方の幽寒の地に藏伏す。此の林陰盛んで陽衰え、生機潜伏するを主とす。事業を占問うに、時運閉塞す。靜かに轉機を待つに宜し。
謙之歸妹:爪牙之士,怨毒乞父。轉憂於己,傷不及母。
爪牙に充つる武士、怨毒を皆乞父の身上に歸す。憂患自己の頭上に轉到し、幸いに傷害母親に牽連せず。此の林人の驅使を受けて怨を招くを主とす。身家を占問うに、己身累を受けて家人全うするを得るを主とす。
謙之豐:拜跪請兔,不得臭腐。挽眉銜指,低頭北去。
跪拜して人に兔肉を討乞するも、腐臭の殘餘すらも討い得ず。只だ眉頭を皺起して手指を咬み、頭を低くして北に走開す。此の林卑しく求めて辱を受け、望む所落空するを主とす。干謁して人を求むるを占問うに、壁に碰壁して返るを主とす。
謙之旅:有莘季女,為王妃后。貴夫壽子,母字四海。
有莘氏の小女兒太姒、周王の妃后と成る。丈夫顯貴にして子嗣長壽し、彼女母親のごとく四海の民を養育す。此の林賢女夫を旺かすを主とす。婚姻家道を占問うに、內助に因りて門庭昌盛するを主とす。
謙之巽:季姜踟躕,待孟城隅。終日至暮,不見齊侯。
季姜徘徊躊躇し、城角に相い約したる孟氏を等候す。白天より日暮に至るまで等ちても、齊侯の到來を見ず。此の林《詩・靜女》の我を城隅に俟つの意を取る。會合婚約を占問うに、約して至らず、期望落空するを主とす。
謙之兌:邯鄲反言,父兄生患。涉此憂恨,卒死不還。
邯鄲反覆無常の謠言を傳え、父兄これによって禍患を生出す。此の憂恨の中に牽涉し、最終他鄉に客死して返回を得ず。此の林流言構陷するを主とす。出行訴訟を占問うに、凶險異常なり。是非を遠避するに宜し。
謙之渙:逐鹿山顛,利去我西。維邪南北,所求不得。
山頂上に麋鹿を追逐すれど、利益卻って我が西邊に溜走す。南北方向皆偏斜錯亂し、追求せんとする物終に得る能わず。此の林方向據を失い、利を逐いて落空するを主とす。謀望財を求むるを占問うに、勞碌して成るなきを主とす。
謙之節:穿鼻繫株,為虎所拘。王母祀福,禍不成災,突然自來。
牛鼻を穿たれて木桩に拴がれ、また老虎の逼住する所と爲りて脫身を得ず。幸いに西王母祭を受けて福を賜い、禍事大災を釀成せず、福氣忽然として自ら到來す。此の林制を受けて神助を得るを主とす。困厄を占問うに、凶中轉じて吉なり。
謙之中孚:虎豹熊羆,遊戲山谷。君子仁賢,亦得所欲。
虎豹熊羆各々山谷の間に嬉游し、各々其の所を得。君子仁厚賢明にして、同じく願う所を實現する能くす。此の林各々其の位に安んじ、性に隨いて遂ぐるを主とす。謀望を占問うに、順遂意のごとし。
謙之小過:梅李冬實,國多盜賊,擾亂並作,王不得制。
梅樹李樹冬天に反常して結實し、國中盗賊因りて衆多なり。擾攘變亂一齊に發生し、君王もまた制する力無し。此の林物候の失序を以て人事の亂に應ず。時局を占問うに、綱紀守を失い、動蕩して安んじ難きを主とす。
謙之既濟:望幸不到,文章未就。羊子逐兔,犬踦不得。
君王の臨幸を盼望するも一直に來らず、文章もまた寫成せず。羊を牽く孩子兔子を追うも、狗また腿を瘸えて追上げず。此の林機緣至らず、力逮ぶ及ばざるを主とす。功名求取を占問うに、功敗れて成に垂ぼさるを主とす。
謙之未濟:千柱百梁,終不傾僵。仁智輔聖,周宗寧康。
千根の柱子・上百道の梁木大厦を撑起し、終に傾倒せず。仁者と智者と聖王を輔佐し、周室宗廟これによって安寧康泰す。此の林衆賢共に扶け、國基穩固するを主とす。家國事業を占問うに、長久虞なきを主とす。
豫の林(豫卦六十四林)
豫之豫:冰將泮散,鳴雁雍雍。丁男長女,可以會同。生育賢人。
堅氷將に消融解散せんとし、鴻雁和鳴して雍雍たり。成年の男子と及笄の長女、正に婚配して相い會し、賢徳の後人を生育すべし。此の林《詩・匏有苦葉》の士妻に歸するに若くば冰の未だ泮けざるに迨べの義を取る。婚姻子嗣を占問うに、正に其の時に當たりて吉なり。
豫之乾:龍馬上山,絕無水泉。喉焦唇乾,口不能言。
竜馬高山に奔上すれど、山上一點の水泉もなし。喉嚨焦渴して嘴唇乾裂し、話すら說出す能わず。此の林其の地に非ずに處り、資源斷絕するを主とす。出行謀事を占問うに、困乏して援なきを主とす。
豫之坤:蔡侯朝楚,留連江濱。逾時歷月,思其後君。
蔡侯楚國に前往して朝見し、扣留せられて江て江邊に滯す。時限を過ぎ整月を經て、只だ身後の國君と家國とを思念す。此の林羈旅に留めらるるを主とす。出行公幹を占問うに、期に逾えて歸るを得ざるを主とす。
豫之屯:文厄羑里,湯囚夏臺。仁聖不害,數困何憂。免於縲紲,為世明侯。
周文王羑里に囚えられ、商湯夏臺に拘さる。仁徳聖明の人終に傷害を受けず、屢々困厄に遭うも何の憂う可き有らん。後來皆牢獄を脫出し、一世の賢明君侯と成る。此の林先に困にして後に通ずるを主とす。牢獄是非を占問うに、陷ると雖も必ず出で、反つて美名を成す。
豫之蒙:典冊法書,藏閣蘭臺。雖遭亂潰,獨不遇災。
典籍册書と法令文書、蘭臺の庫閣の中に收藏す。兵亂潰敗に遇上すると雖も、唯だ彼ら災を遭わず。此の林守藏して所を得、難を避くるに方有るを主とす。文書學業と藏物とを占問うに、完好にして失なきを主とす。
豫之需:氈裘羶國,文禮不#。跨馬空弦,伐我都邑。
氈裘を穿き羶氣有る外族の國、中原の文教禮法に通ぜず。彼ら馬を跨ぎ弦を控えて來り、我が都邑を攻打す。此の林外患侵擾するを主とす。邊事出行を占問うに、兵戈の憂有るを主とす。
豫之訟:星隕如雨,力弱無輔。強陰制陽,不得安土。
星辰雨點のごとく隕落し、自身力弱くしてまた幫手なし。强盛の陰氣陽氣を壓制し、故土に安居する能わず。此の林陰盛んにして陽を欺き、位を失いて安んぜざるを主とす。居處官位を占問うに、人の制する所と爲りて迫られて遷動するを主とす。
豫之師:蝗齧我稻,驅不可去。實穗無有,但見空藁。
蝗蟲我が稻子を啃食し、怎麼驅趕するも趕き去らず。結實の穗子一個も剩さず、只だ空空の秸秆を見る。此の林横災侵奪するを主とす。農事財を求むるを占問うに、辛苦して積む所盡く耗空せらるを主とす。
豫之比:虎飢欲食,為蝟而伏。禹導龍門,避咎除患,元丑以安。
餓虎正に食を擇ばんとするも、卻って蜷團と成したる刺猬に逼られて伏して動くを敢えてせず。また大禹の龍門を開鑿して洪水を疏導するがごとく、災咎を躲開し禍患を除去し、凶險の開端反つて安寧に歸す。此の林柔を以て暴を制し、疏導して險を化すを主とす。危難を占問うに、凶を轉じて安と爲るを主とす。
豫之小畜:蝙蝠夜藏,不敢晝行。酒是酸漿,魴死鮑羹。
蝙蝠白天藏匿し、只だ夜間に出没し、日に當たりて行くを敢えてせず。家中の酒酸漿と變成し、魴魚死して只だ腥臭の鮑魚羹を做成す。此の林光を見る能わず、境況敗壞するを主とす。事業飲食を占問うに、行事晦暗にして、得る所腐劣なるを主とす。
豫之履:精華墮落,形體醜惡。齟齬挫頓,枯槁腐蠹。
精粹光華皆消散墜落し、形體醜陋と變成す。牙齒參差して擧步頓挫し、人枯瘦すること蟲の蛀みし朽木に同じ。此の林氣血衰敗し、時運凋零するを主とす。身體事業を占問うに、日に就て衰頹するを主とす。
豫之泰:兩足不獲,難以遠行。疾步不能,後旅失時。
兩隻の脚使喚を聽かず、遠路を走り難し。快步せんと想うも快き能わず、隊伍の後に落ちて時辰を誤る。此の林行動阻を受け、進程遲滯するを主とす。出行して期に赴くを占問うに、期を誤りて機を失うを主とす。
豫之否:令妻壽母,宜家無咎。君子之歡,得以長久。
賢善の妻子・長壽の母親有り、家道相宜にして過錯なし。君子の歡樂これによって長久保持する能くす。此の林內助人を得るを主とす。家宅婚姻を占問うに、和順にして綿長なるを主とす。
豫之同人:飢蠶作室,緡多亂纏,緒不可得。
腹を空かしたる蚕繭を結びて室を作し、絲線紛亂纏繞し、怎麼しても頭緒を找着けず。此の林根基足らずして事緒紛雜なるを主とす。謀事を占問うに、頭緒理め難く、久しく拖えて決めざるを主とす。
豫之大有:子鉏執麟,春秋作元。陰聖將終,尼父悲心。
魯人鉏商麒麟を獵獲し、《春秋》これによって獲麟に絕筆す。素王の聖業將に終なんとし、孔子之がために傷心痛哭す。此の林賢者時に遭うて遇わず、大業將に止まらんとするを主とす。事業を占問うに、功成りて運盡く。止まるを知るに宜し。
豫之謙:螟蟲為賊,害我稼薔。禾殫麥盡,秋無所得。
螟蟲禍害と成り、我が莊稼を糟蹋す。禾苗食い盡くし麥子もまた盡き、秋顆粒の收なし。此の林暗中蠹蝕するを主とす。農事財利を占問うに、蓄積侵奪せられて落空するを主とす。
豫之隨:憂在腹內,山崩為疾。禍起蕭牆,竟制其國。
憂患腹內に潜藏し、山崩のごとく突然發作して病と成る。禍端門屏の內に起り、終に整個の國家を操控す。此の林《論語・季氏》の憂は顓臾に在らずして蕭牆の內に在りの典故を用ゐ。家國を占問うに、內亂大患と爲るを主とす。
豫之蠱:茹芝餌黃,飲食玉瑛。與神流通,長無憂凶。
靈芝を服食し黃精を吞餌し、玉石の精華の液を飮用す。此より神明氣息と相通し、長久憂患凶險なし。此の林養生して道を得るを主とす。身命を占問うに、年を延べて病を卻けて安んずるを主とす。
豫之臨:一夫兩心,技刺不深。所為無功,求事不成。
一個の人兩樣の心思を懷き、刺擊を出手するも扎りて深からず。做する所の事功效なく、求むる所の事辦成らず。此の林心志專ならざるを主とす。謀事を占問うに、三心二意して敗るを主とす。
豫之觀:十里望煙,散渙四方。形容滅亡,終不見君。
遙かに十里の外の炊煙を望見す、煙氣渙散して四方に飄向す。形影消失して見えず、終に盼ぐ所の人を見ず。此の林音信離散し、相會期無きを主とす。人を尋ね歸を待つを占問うに、失望して落空するを主とす。
豫之噬嗑:張弓控弩,經涉山道。雖有伏虎,誰敢害諸。
弓を張開し弩を扣緊し、險峻の山路を走過す。縱ほ猛虎埋伏あるも、また誰か敢えて來りて加害せん。此の林戒備充足すれば則ち險患と爲らざるを主とす。出行して險を涉るを占問うに、備有れば則ち咎なし。
豫之賁:泉閉澤竭,王母飢渴。君子困窮,乃徐有說。
泉眼堵塞し水澤乾涸し、西王母すらも饑渴を感ず。君子一時困窮し、慢慢として纔に解脫を得。此の林資源枯竭して後緩解するを主とす。困厄を占問うに、須らく時を待つべし。久しくして後通ず。
豫之剝:野鳶山雀,弈棋六博。山梟四散,主人勝客。
野鳶と山雀と相聚まり、棋局を擺開して六博を賭す。山中の梟鳥四散して逃開し、主人客人に贏る。此の林主位に居る者利を得るを主とす。博弈爭競を占問うに、守方勝を獲るを主とす。
豫之復:羊驚馬走,上下揮擾。鼓音不絕,頃公奔敗。
羊驚き馬奔逃し、上下一片に揮擾混亂す。戰鼓の聲斷えず、齊頃公終に潰奔して敗す。此の林鞌の戰齊頃公敗績の典を用ゐ。爭戰競逐を占問うに、驚亂して敗を致すを主とす。
豫之無妄:黃帝神明,八子聖聰。俱受大福,天下康平。
黄帝神明睿智にして、其の衆子もまた個個聰慧聖哲なり。父子一同に大福を承受し、天下因りて康泰太平す。此の林德才相い繼ぎ、後嗣昌盛するを主とす。家門子孫を占問うに、大吉なり。
豫之大畜:住車醊酒,疾風暴起。泛亂福器,飛揚位卓,明神降祿,道無害寇。
車を停下して酒を奠りて神を祭れば、忽然狂風大作す。祭器吹きて散亂翻覆せられ、反つて飛揚して高遠顯赫なり。聖明の神靈福祿を降下し、路上盗寇害を爲すなし。此の林變故の中神助を見るを主とす。出行祭禱を占問うに、驚きて傷つかず、反つて吉慶を獲。
豫之頤:騰蛇乘龍,宋鄭飢凶,民食草蓬。
腾蛇攀附して竜と飛行すれど、宋・鄭の兩國卻って饑荒凶年に遭遇し、百姓只だ草蓬を食いて充饑す。此の林强勢に依附して民生凋敝するを主とす。年成生計を占問うに、歉收して困乏するを主とす。
豫之大過:揚水潛鑿,使石潔白。裡素表朱,遊戲皋澤。得君所欲。心志娛樂。
激揚の流水暗に冲刷鑿磨し、石頭を洗いて潔白ならしむ。內裏素淨にして外表朱紅、從容として水澤の間に游玩す。君上に求むる所皆已に願のごとく、心志歡暢快樂す。此の林漸磨して器と成り、表裏宜を得るを主とす。謀望を占問うに、心に稱い意に遂ぐるを主とす。
豫之坎:西過虎廬,驚我前驅。雖憂無危。
西に向かいて虎穴の所在を經過し、我が前導の人馬を驚動す。驚憂を受くると雖も、卻って眞の危險なし。此の林虛驚一場なるを主とす。出行を占問うに、驚有りて險なし。
豫之離:衣成無開,不知所穿。客指東西,未得使安。
衣服做成せど領口袖口を開かず、何の處よりか穿進せんを知らず。客人東を指し西を說き、始終人をして安心せしめず。此の林事缺環有り、衆議紛紜するを主とす。謀事を占問うに、進退據を失い、決斷し難きを主とす。
豫之咸:晨風文翰,隨時就溫。雄雌相和,不憂危殆。
晨風鳥と羽毛華美の錦鷄、時令に隨いて溫暖の地に飛向す。雌雄相互に唱和し、危難を擔憂する必ずしも要せず。此の林時に順いて害を避け、伉儷相い諧ぐを主とす。婚姻遷移を占問うに、安順にして虞なきを主とす。
豫之恆:心多悔恨,出言為怪。梟鳴室比,聲丑可惡。請謁不得。
心中悔恨に充滿し、說出口の話もまた乖張失常なり。惡梟近旁の屋角に鳴叫し、聲音醜惡刺耳なり。前に往きて求見するも見る能わず。此の林口舌凶を招き、干謁遇わざるを主とす。人を求めて事を辦するを占問うに、壁に碰壁して反つて怨を招く。
豫之遁:離女去夫,閔思苦憂。齊子無良,使我心悲。
女子丈夫を離れて去り、獨り哀念苦憂す。齊國のあの女子行止端ならず、我をして心中悲傷せしむ。此の林《詩・南山》の齊襄公を譏刺するの事を用ゐ。婚姻家室を占問うに、離異して情を傷るを主とす。
豫之大壯:過時不歸,雌雄苦悲。徘徊外國,與叔分離。
歸期を過ぐるも仍ほ回來せず、雌雄兩地各々悲苦す。一人異國他鄉に徘徊し、叔氏の親人と分離す。此の林羈留して返り難きを主とす。遠行等候を占問うに、久しく別れて聚まらざるを主とす。
豫之晉:鵲巢柳樹,鳩奪其處。任力德薄,天命不佑。
喜鵲柳樹の上に巢を築好すれど、斑鳩卻って來りて强占す。氣力を仗恃して徳行淺薄なるは、天命保佑せず。此の林《詩・鵲巢》の象を反用す。爭奪を占問うに、强取の者終に久しき能わざるを主とす。
豫之明夷:鶴盜我珠,逃於東都。鵠怒追求,郭氏之墟。不見蹤跡,使伯心憂。
白鶴我が明珠を偷走して、東都に逃往す。天鵝憤怒して追趕し、一直に郭氏の廢墟に找到すれど、卻って半點の蹤跡を見ず、伯氏をして心中憂愁せしむ。此の林物を失い追い難きを主とす。失を尋ね債を索るを占問うに、徒勞して得ざるを主とす。
豫之家人:夫婦相背,和氣弗處。陰陽俱否,莊姜無子。
丈夫と妻子と相互に背棄し、和睦の氣存留する處無し。陰陽彼此閉塞して交わらず、正に衛莊公の夫人莊姜終身子無きがごとし。此の林室家和せずして嗣息艱難なるを主とす。婚姻して嗣を求むるを占問うに、諧わずして成るなきを主とす。
豫之睽:月走日步,趣不同舍。夫妻反目,主君失居。
月行迅疾にして日行舒緩し、二者の趨る所の星舍同じからず。夫妻これによって反目し、主人もまた居所を失掉す。此の林步調相い違い、內訌して外に失うを主とす。家室居處を占問うに、離析して動搖するを主とす。
豫之蹇:洛陽嫁女,善逐人走。三寡失夫,婦妒無子。
洛陽人家女兒を嫁出すれど、彼女卻って人に隨いて私奔するに慣れり。接續して三度寡を守り夫を失い、また妒忌に因りて子嗣なし。此の林女徳正ならずして家道敗るるを主とす。婚姻子嗣を占問うに、凶なり。
豫之解:周德既成,杼軸不傾。太宰東西,夏國康寧。
周家の徳業已に成就し、織機の杼軸再び空竭傾覆せず。太宰東西に奔走して政事を經理し、中夏の國これによって康泰安寧す。此の林徳政成有り、經綸人を得るを主とす。國事家業を占問うに、富庶にして安定するを主とす。
豫之損:日中為市,交易資寶。名利所有,心悅以喜。
正午市を設立し、人々財貨珍寶を交換す。名と利と皆得る所有り、心中歡欣喜樂す。此の林《易・繫辭》の日中にして市を爲し、天下の民を致すの典故を取る。經商交易を占問うに、兩利して喜ぶを主とす。
豫之益:童妾獨宿,長女為室,利無所得。
年幼の婢妾獨り夜を過ごし、長女已に室を立て家を成せど、此のごとき情形終に何の利益の得可きもなし。此の林陰陽接せず、生機未だ啓かざるを主とす。婚姻して財を求むるを占問うに、空しく守りて成るなきを主とす。
豫之夬:忠言輔成,王政不傾。公劉兆基,文武綏之。
忠直の言大業を輔助成就し、王朝政事傾覆を致さず。公劉周室の基業を開創し、文王武王承繼して天下を安定す。此の林諫を納れ業を承くるを主とす。家國事業を占問うに、根基穩固にして、後繼人あらんを主とす。
豫之姤:牛驥同堂,郭氏以亡。國破為墟,主君奔逃。
駑牛と駿馬と同槽して共處し、賢愚分かれず、郭國これによって滅亡す。國土殘破して廢墟と化し、國君狼狽として奔逃す。此の林郭君善を善して用ゐる能わざるの典を用ゐ。人を用ゐて事を治むるを占問うに、賢愚倒置して敗るを主とす。
豫之萃:中原有菽,以待雉食。飲御諸友,所求大得。
原野の中豆子を長せ、正に野鷄の來りて啄食せんを待つ。酒食を備えて衆友を款待し、求むる所の事大いに得あり。此の林《詩・小宛》の中原に菽有りの句を取る。求謀交際を占問うに、衆助けて大獲するを主とす。
豫之升:多虛少實,語不可知。尊空無酒,飛言如雨。
虛話多くして實事少なく、說く所の話人をして判斷するに從無からしむ。酒尊空しくして並びに酒なく、浮言卻って雨點のごとく飛來す。此の林言實に過ぐるを主とす。傳聞承諾を占問うに、名有りて實なく、輕信すべからざるを主とす。
豫之困:青蠅集蕃,君信讒言,害賢傷忠,患生婦人。
青蠅群を成して籬笆の上に聚り、人君讒言を聽信し、賢良を殘害し忠臣を傷及し、禍患內寵の女子より生ず。此の林《詩・青蠅》の讒を刺るの義を取る。官非人事を占問うに、讒口の構陷の災を主とす。
豫之井:履株履輿,馬驚傷車,步為我憂。
車輪樹桩を碾過し、馬驚を受けて車撞壞せられ、只だ徒步して行くを得、我が憂愁と成る。此の林途中變を生じ、其の憑借を失うを主とす。出行運輸を占問うに、車馬の厄を主とす。
豫之革:商風召寇,呼我北盜。間諜內應,與我爭鬥。殫以寶藏。主人不勝。
西風一たび起れば盗寇を招來し、北方の賊人をも引き過來す。奸細內に在りて應接し、我方と爭鬥す。家中の寶藏搜刮して一空と爲り、主人終に抵擋する能わず。此の林內奸外患を招引するを主とす。家財爭訟を占問うに、大敗して財を失うを主とす。
豫之鼎:逸豫好遊,不安其家。或有少姬,久迷不來。
安逸を貪圖し游荡を喜好し、家室を安守するを肯んぜず。外面或いは別に年少の姬妾有り、長久沉迷して歸らず。此の林樂に耽りて返るを忘るるを主とす。家室行人を占問うに、家を離れて返らずして變を生ずるを主とす。
豫之震:無有驊騮,畜之以時。東家翁孺,來詣我車,價極可與,後無賤憂。
本來驊騮のごとき名馬無しと雖も、時節に按じて精心畜養す。東鄰の老人小孩皆來りて我が車馬を看、極好の價錢を出して成交すべく、此の後再び價賤を憂うる必ずしも要せず。此の林久しく積みて値有るを主とす。賣買畜養を占問うに、時を待ちて售り、高價の利を得るを主とす。
豫之艮:厄窮上通,與堯相逢。登升大麓,國無凶人。
困厄窮途の中忽然上達し、唐堯のごとき聖君と相遇す。大麓に登入して命を受け事を任じ、國中再び凶惡の人無し。此の林舜大麓に納るの典を用ゐ。困境して進を求むるを占問うに、明主に遇いて拔擢を獲るを主とす。
豫之漸:眾兔俱走,熊羆在後。踦不能進,失信寡處。
群兔一齊に奔逃し、熊羆後に緊追す。腿を瘸えて跑動かず、また人に信を失して孤零零として獨處す。此の林力心に從わず、衆に見棄てらるるを主とす。逃避して助を求むるを占問うに、孤立して援なきを主とす。
豫之歸妹:旁行不遠,三思復返。心多畏惡,中日止舍。
旁側に向かいて行くこと遠からず、反覆思量してまた折り回來す。心裏畏懼厭惡に滿ち、中午に停下して住宿す。此の林疑慮重重にして、進退果ならざるを主とす。出行謀事を占問うに、中途にして止むを主とす。
豫之豐:倉皇奉使,中山以孝。文侯悅喜,擊子徵召。
匆促の間命を奉じて出使し、中山に孝行を以て著稱す。魏文侯之がために歡喜し、兒子魏擊を召回す。此の林魏擊中山を守るの典を用ゐ。差遣任使を占問うに、徳を以て賞に見えて召用を獲るを主とす。
豫之旅:入天門,守地戶,君安樂,不勞苦。
天門に進入し、地戸を守住し、各々其の正に居る。君子これによって安樂し、勞苦する必ずしも要せず。此の林其の門徑を得て分に安んじ位を守るを主とす。居處任事を占問うに、安逸にして憂なきを主とす。
豫之巽:等階上堂,見吾父兄。左酒右漿,與福相迎。
次序に按じて級を拾い堂に登り、我が父親兄長を見る。左に酒を奉り右に漿を進め、福氣と相い迎えて至る。此の林家門禮有り、和樂して福を生ずるを主とす。家宅聚會を占問うに、吉慶を主とす。
豫之兌:秋蛇向穴,不失其節。夫人姜氏,自其復入。
秋深ければ蛇便ち洞穴に歸伏し、其の時節を失わず。魯國の夫人姜氏の原處より重ねて歸來するがごとし。此の林時に順いて歸り、去りて復た返るを主とす。行人歸期を占問うに、期のごとく至るを主とす。
豫之渙:忍丑少羞,有面無頭。耗減寡虛,日以削消。
醜事を忍受する能くして羞恥少なく、空しく一張の臉面有りて頭腦無し。家業耗損空虛にして、一天天削减消亡す。此の林耻なくして家を敗るを主とす。家計名聲を占問うに、日に就て凋零するを主とす。
豫之節:景星照堂,麟遊鳳翔。仁施大行,頌聲以興。
祥瑞の景星堂室を照亮し、麒麟出遊し鳳凰翺翔す。仁徳廣く天下に施し、頌揚の聲隨い之を興す。此の林徳政祥瑞を感召するを主とす。功名聲譽を占問うに、大吉にして令名有るを主とす。
豫之中孚:竿旄旌旗,執幟在郊。雖有寶珠,無路致之。
牦牛尾を飾りし旗竿と各色の旌旗、旗幟を執りて郊外に立つ。身に珠寶を懷有ると雖も、之を送達する路徑なし。此の林《詩・干旄》の賢を招くの意を反用す。獻納して進を求むるを占問うに、物有りて門なく、才用ゐられざるを主とす。
豫之小過:李華再實,鴻卵降集。仁德以興,萌國受福。
李樹開花して再度結實し、鴻雁卵を產して群を成し降落す。仁徳此より興起し、新生の邦國福澤を承受す。此の林生機重來し、基業初めて立つを主とす。事業子嗣を占問うに、復興して福を得るを主とす。
豫之既濟:白馬赤烏,戰於東都。天輔有德,敗亡為憂。
白馬と赤烏の兩支の旗號の軍隊東都に交戰す。上天徳有る一方を佑助し、徳なき者只だ敗亡の憂を落得す。此の林徳有る者勝つを主とす。爭鬥訴訟を占問うに、正なる者吉にして邪なる者凶なり。
豫之未濟:采薪得麟,大命隕顛。豪雄爭名,天下四分。
打柴人野外に麒麟を捕獲し、天命將に傾墜せんとするを象徵す。豪杰群雄名位を爭奪し、天下因りて四分五裂す。此の林魯哀公西狩して麟を獲るの典を用ゐ。時局大勢を占問うに、政統衰亂し、群雄割據するを主とす。
隨の林(隨卦六十四林)
隨之隨:鳥鳴東西,迎其群侶。似有所屬,不得自專,空返獨還。
鳥兒東西兩兩邊に鳴叫し、其の同伴群侶を呼喚す。已に歸屬する所有るに似て、卻って自ら主張を作る能わず、最終空手して獨り飛回す。此の林人に受制し、願う所專なり難きを主とす。偶を求め伙を合するを占問うに、意有りて成るなきを主とす。
隨之乾:必自易處,不知香臭。君密於是,失其寵位。
一味自ら以て輕易に處置すべしと爲し、香と臭とすら分辦出來ず。人君此の事上に過ぎて親暱私密し、終に尊寵の位置を失了。此の林輕忽して辨えざるにより位を失うを主とす。官職を占問うに、私昵に因りて敗るを主とす。
隨之坤:唐虞相輔,鳥獸喜舞。安康無事,國家富有。
唐堯と虞舜と相互に輔佐し、鳥獸すらも歡欣鼓舞す。四境安康して事なく、國家富庶充盈す。此の林聖賢相い濟ぐを主とす。國事家業を占問うに、大吉にして豐足なり。
隨之屯:左輔右弼,金玉滿匱。常盈不亡,富如倉廒。
左に輔臣有り右に弼士有り、金玉櫃匣に裝滿す。常年充盈して虧失せず、富足すること滿倉の糧廩のごとし。此の林賢佐成を守るを主とす。財を求め家業を占問うに、蓄積豐厚にして保つ能くするを主とす。
隨之蒙:蒼龍單獨,與石相觸,摧折兩角。
蒼竜孤身獨行し、石頭の上に撞し、兩隻の角皆折斷せらる。此の林孤進して硬を犯し、自ら其の銳を傷るを主とす。强爭を占問うに、挫折を受け損を致すを主とす。
隨之需:釣目厭部,善逐人走。來嫁無父,不安其廬。
目光斜釣して神色厭倦し、慣れて他人に追隨して奔走す。嫁來する時已に父親主婚無く、此の屋裏に住むもまた安穩ならず。此の林根柢依無く、心志浮動するを主とす。婚姻居處を占問うに、安定し難きを主とす。
隨之訟:逐兔驅狼,避去不祥。凶惡北行,與善相逢。
野兔を追趕し豺狼を驅走し、不祥の物を遙かに避開す。凶惡の氣北に往き去り、自身善慶と相遇す。此の林害を除きて吉を得るを主とす。災禍官非を占問うに、凶去りて福來るを主とす。
隨之師:齎貝贖狸,不聽我辭。繫於虎鬚,牽不得來。
錢貝を帶びて狸て狸貓を贖回せんと往くも、對方卻って我が說辭を聽かず。あの狸虎鬚の上に繫がれ、怎麼牽くも牽き過來ず。此の林求む所强者に受制すを主とす。贖取索還を占問うに、力及ぶ能わずして得ざるを主とす。
隨之比:同載共輿,中道別去。喪我元夫,獨與孤居。
本來車を同じくして共に載せ、半路に走到して卻って道を分ちて去る。我元配の丈夫を失掉し、只だ孤身獨居す。此の林中途離散するを主とす。婚姻同行を占問うに、半途にして廢し、孤單して依無きを主とす。
隨之小畜:奮翅鼓翼,將之嘉國。愆期失時,乃得所欲。
雙翅を振奮して鼓翼高飛し、あの美好の國度に往かんとす。期を誤り時を錯過すると雖も、最終還て心願を遂ぐ。此の林遲到して終に成るを主とす。謀望を占問うに、延誤の後仍ほ得る可きを主とす。
隨之履:目傾心惑,夏姬在側。申公顛倒,巫臣亂國。
眼睛斜視して心神迷惑す、只だ夏姬傍に在るに因る。申公巫臣彼女のために神魂顚倒し、終に國事を敗亂するに至る。此の林楚國夏姬の典を用ゐ。情色人事を占問うに、美色に惑いて事を覆すを主とす。
隨之泰:博鳩彈鵲,逐兔山北,丸盡日暮,失獲無得。
彈丸を以て斑鳩を打ち喜鵲を射、また山北に到りて野兔を追う。彈丸用尽きて天色已に晚く、一の獲る所なし。此の林多く貪りて得を務めて反つて空しきを主とす。求取漁獵を占問うに、勞して功なきを主とす。
隨之否:鹿求其子,虎廬之裡。唐伯李耳,貪不我許。
母鹿其の幼崽を尋找して、一直に虎穴の中に找到す。唐伯と李耳のごとき猛獸貪食して、幼鹿を我に還すを肯んぜず。此の林險に入りて索求するを主とす。人を尋ね物を索るを占問うに、强者與えず、徒らに危を涉る。
隨之同人:敗魚鮑室,臭不可息。上山履塗,歸傷我足。
腐敗の魚鮑魚鋪子の裏に放り、臭氣人をして安歇する能わざらしむること熏く。また山に上りまた泥路を踩み、回來して我が脚を傷る。此の林惡に近づきて污に染み、險を行きて傷を致すを主とす。交游出行を占問うに、累を受け傷を受くるを主とす。
隨之大有:花燈百枝,消暗衰微。精光訖盡,奄有灰靡。
百枝花燈本來通明なるも、漸々暗淡衰微す。精光耗盡して後、只だ一片の灰燼を剩す。此の林盛極まりて衰えるを主とす。事業家運を占問うに、盛より竭に轉ず。早く後計を圖るに宜し。
隨之謙:顏叔子夏,遨遊仁宇。溫良受福,不失其所。
顏回・子夏のごとき賢者、仁徳の境宇の中に優游す。溫和善良にして福澤を承受し、其の安身の所を失わず。此の林仁を守りて安を得るを主とす。身命處世を占問うに、平順にして福有るを主とす。
隨之豫:樑柱堅固,子孫蕃盛。福喜盈積,終無禍悔。
屋梁支柱牢固にして、子孫繁衍興盛す。福氣喜慶門庭に積滿し、終に災禍悔吝なし。此の林根基牢にして家道旺ぐを主とす。家宅子嗣を占問うに、大吉なり。
隨之蠱:邊鄙不寧,民狎於野。穡人成功,年歲大有。
邊地太平ならず、百姓野外に勉强して安居す。然るに農人耕作成有り、年景大いに豐收す。此の林外擾れども內足るを主とす。農事生計を占問うに、驚擾あると雖も仍ほ豐稔を主とす。
隨之臨:蝸牛鳴呴,呼求水潦。雲雨大會,流成河海。
蝸牛鳴聲を發し、雨水を呼求す。云雨大いに聚まりて下り、積流江河大海と成る。此の林微誠感召し、小願大應を得るを主とす。祈求を占問うに、願う所期する所に超乎るを主とす。
隨之觀:志合意同,姬姜相從。佳偶在門,夫子悅喜。
志向契合し心意相同にして、姬姓と姜姓と世代通婚して相い從す。佳偶已に門前に到り、丈夫之がために歡喜す。此の林情投意合するを主とす。婚姻合伙を占問うに、成就して美滿するを主とす。
隨之噬嗑:白馬駁騮,更生不休。富有商人,利得如丘。
白馬と雜色の騮馬と交替して繁育して停まず。經商の人これによって富有し、獲利山のごとく堆積す。此の林生息絕えず、財源繁衍するを主とす。畜養經商を占問うに、厚利を主とす。
隨之賁:大姒夏禹,經啟九道。各有攸處,民得安所。
太姒の賢徳夏禹の功業と相い輝映し、禹疏通開鑿して九條の水道と爲す。萬物各々安處有り、百姓安身の地を得。此の林治理方有るを主とす。居處國事を占問うに、安定して所を得るを主とす。
隨之剝:甲戊己庚,隨時轉行。不失其心,得且安寧。唐季發憤,擒滅子嬰。
甲・戊・己・庚等の日辰時序に隨いて推移運行す。人若し其の本心を失わざれば、得る所便ち安寧する能くす。漢高祖劉季奮起發憤して、秦王子嬰を擒獲幷せて誅滅す。此の林時に順い心を守りて後爲有るを主とす。時機擧事を占問うに、時を待ちて動けば則ち成るを主とす。
隨之復:穆違百里,使孟歷武。將帥襲戰,敗於淆石。
秦穆公百里奚の勸諫に違背し、孟明視・西乞術・白乙丙を派して出征せしむ。將帥長途奔襲して作戰し、崤山の亂石の間に大敗す。此の林秦師崤に敗るるの典を用ゐ。兵を用ゐ遠行するを占問うに、忠告を聽かずして覆敗するを主とす。
隨之無妄:茅如木居,與類相投。顧慕群旅,不離其巢。
茅草樹木に依附して居り、同類と相い投じ相い依す。成群の伙伴を眷顧思慕し、己が巢穴を離るるを肯んぜず。此の林同類相聚まり、土に安んじ遷を重んずるを主とす。遷移合群を占問うに、舊を守れば則ち安きを主とす。
隨之大畜:伯仲叔季,日暮寢寐。坐臥失明,喪其貝囊。
伯仲叔季の兄弟天黑くなれば便ち就寝し、坐卧の間燈火全無く、錢貝を裝めし袋子これによって丟失す。此の林昏惰して守を失うを主とす。財を守り物を護るを占問うに、疏忽して損を致すを主とす。
隨之頤:亡羊補牢,張氏失牛。騂駟奔走,鵠盜我魚。
羊跑れて後羊圈を修補に往き、張氏また牛を丢了。赤色の駟馬四散して奔逃し、天鵝還て我が魚を偷走す。此の林接續して物を失い、補救及ばざるを主とす。財畜を占問うに、耗散頻仍するを主とす。
隨之大過:雀目燕顙,畏昏無光。思我狡童,不見子充。
雀のごとく夜盲し燕のごとく額窄く、一たび黄昏に到れば便ち見えず。心裏あの狡黠の少年を思念すれど、子充を見ず。此の林《詩・山有扶蘇》の語を取る。相會情事を占問うに、思う所遇わざるを主とす。
隨之坎:人和出明,動作有光。運轉休息,常樂允康。
人事和睦すれば則ち光明自ら生じ、一擧一動皆光彩有り。運轉と休止と各々其の宜を得、長久歡樂して確實に安康なり。此の林和順して祥を致すを主とす。諸事を占問うに、平安順遂を主とす。
隨之離:不勝私情,以利自嬰。其室出孤,毀其良家。
私情を克服する能わず、利慾の纏住する所と爲りて自身と爲る。家中孤兒を出し、好い一個の家此より毀壞す。此の林私を徇りて利を逐いて家を敗るを主とす。家室を占問うに、私欲に因りて禍を致すを主とす。
隨之咸:稱幸上令,媚悅於神。受福重重,子孫蕃功。
君上の詔令を稱頌して寵幸を蒙り、また虔敬して神明を取悦す。これによって層層福を受け、子孫功業繁盛す。此の林上を敬い神を敬いて佑を獲るを主とす。福を求め仕進するを占問うに、上下俱に吉なり。
隨之恆:齊姜叔子,天命在位。實沈參墟,封為康侯。
齊姜の生する所の叔子天命を承受して其の位に居る。彼實沈の主する參星の故墟に受封し、一方の康侯と成る。此の林唐叔虞晋に封ぜらるるの典を用ゐ。封賞業を立つるを占問うに、命を受け地を得て昌盛するを主とす。
隨之遁:遨遊無患,出入安全,長受其歡,君子萬年。
四處遨游して禍患なく、出入往來平安にして事なし。長久此の歡樂を享受し、君子萬年安泰なり。此の林行止皆安しを主とす。出行身命を占問うに、長吉を主とす。
隨之大壯:被服文德,升入大麓。四門雍肅,登受大福。
文徳の衣を身披し、大麓に登入して命を受け事を任ず。四方の門肅穆和順にして、ここに階に登りて大福を領受す。此の林舜四門に賓し大麓に納るの典を用ゐ。仕進を占問うに、任を受けて重福を獲るを主とす。
隨之晉:負金懷玉,南歸嘉國。蜂蠆不螯,利入我室。
黄金を背着し美玉を懷揣し、南に向かいて美好の邦國に回る。蜂と蝎と皆來りて人を蜇せず、利益我が家門に進入す。此の林財を攜えて安く歸るを主とす。遠行して財を求むるを占問うに、平安にして獲有るを主とす。
隨之明夷:日在阜顛,向昧為昏。小人成群,君子傷倫。
太陽已に土山の巔に落到し、將に昏暗に轉入せんとす。小人成群して黨を結び、君子の倫序これによって傷を受く。此の林明將に晦に轉ぜんとし、正氣抑を受くるを主とす。時勢人事を占問うに、小人勢を得。自ら晦めて靜を守るに宜し。
隨之家人:水火父母,先來鳴呴。澤高之上,從高而處。
水と火と萬物の父母に同じく、先に自ら鳴響を發出す。水澤高高處に漲り、人便ち高地に順いて居住す。此の林勢に隨い自處し、高に趨きて險を避くるを主とす。居處を占問うに、安を擇べば則ち咎なし。
隨之睽:東鄰少女,為王長歸。柔順利貞,宜夫壽子。
東鄰の少女、出嫁して王家の長婦と做る。性情柔順にして正固を守持し、其の夫に宜しくして子嗣長壽す。此の林女其の正を得るを主とす。婚姻を占問うに、賢配して家道興るを主とす。
隨之蹇:戴瓶望天,不見星辰。願小失大,福逃於外。
頭上瓶子を頂きて天空を仰望すれど、何の星辰をも看不見ず。只だ小願を顧みて大局を失い、福氣門外に跑去す。此の林自ら蔽いて機を失うを主とす。謀望を占問うに、小に因りて大を失うを主とす。
隨之解:王喬不病,狗頭不痛。三尸頭履,乏我逆從。
仙人王子喬病なく恙なく、狗頭すらも疼痛を覺えず。體内に祟りを爲す三尸の蟲脚下に踩まれ、略ば匱乏あると雖も、仍ほ人迎えて順う有り。此の林邪祟侵さざるを主とす。疾病を占問うに、小虞して終に安きを主とす。
隨之損:使燕築室,身無庇宿。家不容車,微我衣服。
燕子に來りて屋を築かせ、自己卻って棲身する可き地方無し。房子小さくして一輛の車を容れず、衣服もまた簡陋寒微なり。此の林託する所人に非ず、貧に居りて依なきを主とす。業を置きて依附するを占問うに、窘迫して安んじ難きを主とす。
隨之益:威權分離,烏夜徘徊。爭蔽月光,大人誅傷。
威權分散して一處に歸せず、烏鴉夜裏飛來飛去す。爭うて月亮の光を遮蔽し、位に在る大人これによって誅傷に遭う。此の林權柄傍落し、群邪明を蔽うを主とす。官位を占問うに、害を受け、早く防ぐに宜しきを主とす。
隨之夬:辯變白黑,巧言亂國。大人失福,君子迷惑。
巧辯黑きを說きて白しと爲し、花言巧語國政を攪亂す。大人福澤を失掉し、君子もまた迷惑せらる。此の林詭辯衆を惑すを主とす。是非を占問うに、眞僞辨え難く、正人損を受くるを主とす。
隨之姤:衣鋸甲鎧,敝筐為具。大人不顧,少婦不取。棄捐於道。
破損の甲胄を穿著し、殘破の筐子を以て器物に充てり。大人看ること一眼もせず、少婦もまた要るを肯んぜず、最後路旁に丟棄せらる。此の林物陋にして見棄てらるるを主とす。獻納して售を求むるを占問うに、人の取る所と爲らざるを主とす。
隨之萃:燕雀銜泥,以生孚乳。兄弟六人,叫好孝悌。得心歡欣,和悅相樂。
燕雀泥を銜みて巢を築き、孵育して雛鳥を出す。兄弟六人相互に美を稱し、孝悌の道を篤行す。人人心に稱い歡欣し、和睦歡悦す。此の林家門和睦し、生育繁茂するを主とす。家宅子嗣を占問うに、大吉を主とす。
隨之升:登几上輿,駕駟南遊。合從散衡,燕秦以強。
憑几を踏みて車輿に登上し、四馬を駕して南に出游す。合縱の約結成して連橫の勢瓦解し、燕國と秦國とこれによって强盛す。此の林縱橫に術有るを主とす。謀略結盟を占問うに、運籌して勢を得るを主とす。
隨之困:黯黯許許,仇偶相得。冰入炭室,消亡不息。
昏暗の中衆聲嘈雜し、冤家對頭卻って一處に湊りて到る。比するに氷を炭火房の裏に放るがごとく、消融殆ど盡きて停止する能わず。此の林水火容れずして自ら耗るを主とす。合作婚配を占問うに、相克して兩傷するを主とす。
隨之井:鴟鴞破斧,邦人危殆。賴其忠德,轉禍為福。傾亡復立。
《詩經》に《鴟鴞》《破斧》の二篇有り、周室東征の際國人處境危殆なるを寫す。幸いに周公の忠貞の徳に賴り、禍を轉じて福と爲し、將に傾覆せんとする局面を重ねて扶立す。此の林賢臣國を救うを主とす。危難を占問うに、力人の相助けを得て復た安んずるを主とす。
隨之革:載金販狗,利棄我走。藏匿淵渠,悔折為咎。
黄金を載せて狗を販りに往くも、利益反つて我を離れて去る。財物を深溝暗渠に藏進せど、終に悔恨に因りて折損して災咎と成る。此の林經營道を失い、藏匿して禍を招くを主とす。財を求むるを占問うに、得る所償うに足らざるを主とす。
隨之鼎:淵坑復平,宇穴安寧。憂患解除,賴福長生。
深坑重ねて填平し、屋宇洞穴安寧に歸す。憂患解除して、福澤に仰賴して長生を得。此の林險除き患解くるを主とす。疾厄を占問うに、危を轉じて安と爲るを主とす。
隨之震:驪姬饞嬉,與二孽謀。譖我恭子,賊害忠孝。駕出喜門,商伯有害。
晋獻公の寵妃驪姬讒を進め媚惑し、兩個の庶孽の子と合謀す。太子申生のごとき恭順の兒子を誣陷し、忠孝の人を殘害す。車駕喜門より出ずると雖も、商伯の流仍ほ害を受くるを免れず。此の林讒妃嫡を亂るを主とす。家國嗣位を占問うに、構陷の禍を主とす。
隨之艮:刺羊不當,血少無羹。女執空筐,不得采桑。
羊を宰りて刀を下すに其の法を得ず、出血既に少なくして羹もまた成らず。女子空筐を提げて、桑葉を采り得ず。此の林力を用ゐて其の道を得ざるを主とす。勞作求取を占問うに、空手して回るを主とす。
隨之漸:牧羊稻園,聞虎喧嚷。畏懼悚息,終無禍患。
稻田邊に羊を放ち、虎啸喧鬧を聽聞す。呼吸を屏るに嚇かされると雖も、最終禍患發生せず。此の林虛驚して實害なきを主とす。危疑を占問うに、驚有りて險なし。
隨之歸妹:明德隱伏,麟鳳遠匿。周室傾側,不知所息。
光明の徳行隱伏して彰かず、麒麟鳳凰遙かに藏匿す。周王室傾危欹側し、何處か安歇する可きを知らず。此の林賢者退隱し、王綱振わざるを主とす。時勢を占問うに、晦暗にして守るに宜しきを主とす。
隨之豐:鄰不我顧,而求玉女。身多禿癩,誰肯媚者。
鄰里我を照看するを肯んぜず、我卻って妄想して美玉のごとき女子を求娶せんとす。自身禿瘡疥癩多く、誰か肯えて來りて親近愛悦せん。此の林己を度らずして妄求するを主とす。婚姻干求を占問うに、拒に見えて成るなきを主とす。
隨之旅:處雖無輿,後得戰車。賴幸逢福,不罹兵革。
起初車乘無きと雖も、後來卻って戰車を得。幸運に仰賴して福氣に遇上し、兵戈の災を遭受せず。此の林先に無くして後有り、險中全きを得るを主とす。出行軍旅を占問うに、轉じて資助を得て安しと主とす。
隨之巽:水壞我裡,東流為海。龜鳧歡囂,不睹王母。
大水我が鄉里を冲毁し、東に奔流して大海を匯成す。龜と野鴨と水上に歡鬧喧囂すれど、卻って再び西王母の庇佑を見ず。此の林水患して所を失い、神佑至らざるを主とす。家宅を占問うに、漂蕩して歸なきを主とす。
隨之兌:兩心不同,或欲西東。明論終始,莫適所從。
兩人心意合せず、一つは西に往かんと想い一つは東に往かんと想う。本末始終を辯論明白ならしむるも、仍ほ誰を聽く可きかを知らず。此の林意見相い左なり、衷の一に莫るを主とす。合謀を占問うに、定奪し難きを主とす。
隨之渙:天地懸車,廢禮不朝。禳服不制,失寵其家。
天地の間車駕高懸して用ゐず、禮數を廢棄して朝覲に往かず。禳災の祭服すらも置辦せず、家門これによって尊寵を失掉す。此の林怠廢して禮法を失うを主とす。官職家運を占問うに、職を失い寵を失うを主とす。
隨之節:交川合浦,遠溼難處。水土不同,思吾皇祖。
江河交匯し、遙かに合浦一帶に至り、地遠く潮濕して居住し難し。水土故鄉と同じからず、因りて我が先祖の故土を思念す。此の林遠徙宜ならざるを主とす。遷居遠役を占問うに、水土服せずして歸を思うを主とす。
隨之中孚:勾踐之危,棲於會稽。太宰機言,越國復存。
越王勾踐處境危急にして、退守して會稽山上に棲息す。呉國太宰嚭のあの進言周旋するに靠り、越國纔に保存を得。此の林絕境轉機に逢うを主とす。危難を占問うに、人の力を借りて禍を免るるを主とす。
隨之小過:慈鳥鳴鳩,執一無尤。寢門內治,軍自悅喜。
慈孝の烏鴉と鳴叫の斑鳩、專一不二にして過失なし。內室の中治理條有り、全軍上下自然に歡喜す。此の林一を守り正を持し、內治して外安しを主とす。家國治軍を占問うに、上下和順するを主とす。
隨之既濟:富年早寡,孤與獨居。雞鳴犬吠,無敢問者。我生不遇,獨罹寒苦。
正に盛年に當たるも早早寡を守り、孤兒寡母獨り度日す。鷄鳴狗叫あると雖も、門に上りて過問する人無し。生まれて時に逢わず、獨り寒苦を遭受す。此の林孤苦して援なきを主とす。家室身命を占問うに、凄涼困頓するを主とす。
隨之未濟:江海變服,淫湎無測。高位顛崩,寵祿反覆。
江海其の常態を改換し、沉湎放縱して深淺測り難し。高位の者傾覆崩塌し、寵幸と俸祿と反覆無常なり。此の林常道守を失い、位祿保たざるを主とす。官運を占問うに、起回落るに憑なきを主とす。
蠱の林(蠱卦六十四林)
蠱之蠱:魴生江淮,一轉為百。周流天下,無有難惡。
魴魚江淮の間に生長し、一條轉眼に百條と繁衍す。天下各處を游遍し、何の險難と厭惡とや無し。此の林生息繁盛し、通行して礙なきを主とす。財を求め遠行するを占問うに、順暢にして增益有るを主とす。
蠱之乾:首釋與目,載受福慶。我有好爵,與善相迎。
頭腦と眼目と皆舒解を得、ここに福慶を承受す。我好き爵位酒祿有り、善人と相い迎えて共享す。此の林《易・中孚》の我好き爵有り吾爾と靡れんの意思を取る。仕進交友を占問うに、同じく其の福を享くるを主とす。
蠱之坤:####,歲暮偏蔽。寵名捐棄,君衰去位。
時序歲末に到り、光景偏枯して遮蔽明白ならず。寵幸と名位と皆抛棄せられ、人君衰敗して其の位を離る。此の林時窮まり勢盡くるを主とす。官運家運を占問うに、盛より衰に入る。早く退避するに宜し。
蠱之屯:折箬蔽日,屏遮王目。司馬無良,平子沒傷。
箬葉を折下して太陽を遮り、君王の視線を屏蔽す。兵を掌る司馬良善ならず、季平子の流終に損傷に遭う。此の林君上を蒙蔽して自ら其の敗を取るを主とす。權位是非を占問うに、壅塞して禍を致すを主とす。
蠱之蒙:家在海隅,繞旋深流。王孫單行,無妄以趨。固陰互寒,長冰不溫。後入墜胎,大雹為害。
家海角に住し、四周深深の水流に環繞せらる。王孫獨り出行す、本來輕率に前往すべからず。陰氣凝結し交々嚴寒、長年の堅氷回暖を見ず。後來婦人門に入りて竟に墮胎に至り、大冰雹また災害と成る。此の林陰寒祟りを爲すを主とす。出行孕產を占問うに、凶險にして慎むに宜しきを主とす。
蠱之需:執義秉德,不危不殆。延頸盤恆,安其室垣。屯耗未得,終無大恤。
道義を持守し徳行を秉承すれば、危殆に陷入せず。頸を引きて盤桓して時機を等待し、自家牆垣の內に安居す。一時積聚耗損して收穫無きも、終に大なる憂患なし。此の林正を守りて時を待つを主とす。困に處るを占問うに、小損して大害なきを主とす。
蠱之訟:長舌亂國,大斧破車。陰陽不順,姬姜衰憂。
長舌の人國政を攪亂し、大斧の車輛を劈破するに同じ。陰陽相い順應せず、姬姓姜姓の貴族門第因りて衰敗憂愁す。此の林讒言家を敗るを主とす。家國を占問うに、內訌して門第衰落するを主とす。
蠱之師:二人共路,東趨西步。千里之外,不相知處。
兩人同じく一路を走り、一つは東に快行し一つは西に緩步す。千里之外に相隔て、彼此皆對方の何處に在るかを知らず。此の林同行にして志異にし、終に失散に至るを主とす。同伴合作を占問うに、道を分かち轅を異にす。
蠱之比:視暗不明,雲蔽日光。不見子都,鄭人心傷。
視線昏暗にして分明を見ず、云層日光を遮蔽す。子都のごとき美好の人物を見ず、鄭國人爲めに心傷す。此の林《詩・山有扶蘇》の句を取る。賢を求め會面するを占問うに、明者蔽はれ、思う所遇わざるを主とす。
蠱之小畜:初憂後喜,與福為市。八佾列陳,飲御嘉友。
起初憂愁して後來歡喜す、市集の上に福氣を換來したるに似たり。八佾の舞列隊陳設し、宴席を設けて嘉賓良友を款待す。此の林先に難く後に獲るを主とす。謀事宴集を占問うに、憂を轉じて樂と爲るを主とす。
蠱之履:童妾獨宿,長女未室,利無所得。
年幼の婢妾獨り夜を過ごし、年長の女兒未だ出嫁成家せず。陰陽接せず、何の利益の得可きもなし。此の林姻緣未だ成らず、生機未だ啓かざるを主とす。婚姻して財を求むるを占問うに、空しく守りて獲なきを主とす。
蠱之泰:玄黃四塞,陰雌伏謀。呼為牆屋,為巫所識。
天玄地黄の氣四面閉塞し、陰柔の一方潜伏して圖謀す。牆屋を隔てて私下に呼應すれど、卻って巫者に識破せらる。此の林暗謀敗露するを主とす。陰事密約を占問うに、機事密ならずして外泄するを主とす。
蠱之否:中歲摧隕,常恐衰微。老復賴慶,五羖為相。
中年の時挫折隕落に遭遇し、常に此より衰微せんを擔心す。晚年に到りて反つて喜慶に遇上し、百里奚の五張の羊皮の身を以て秦相の位に至るがごとし。此の林晚運轉發するを主とす。身命功名を占問うに、老來志を得るを主とす。
蠱之同人:伯氏殺牛,行悖天時。亳社夷燒,朝歌丘墟。
伯氏擅に牛を殺して祭祀し、行事天時に違背す。亳社夷平焚燒せられ、朝歌廢墟に淪落す。此の林時に逆いて妄行して覆亡を招くを主とす。祭祀擧事を占問うに、大凶を主とす。
蠱之大有:日短夜長,祿命不光。早離父兄,免見憂傷。
白昼短くして黑夜長し、祿命光彩を見ず。早早父親兄長を離れ、反つて憂傷の事を目睹するを免る。此の林時運晦暗にして、骨肉早く離るるを主とす。家運を占問うに、孤にして災少なきを主とす。
蠱之謙:采唐深鄉,徼期桑中。失心不會,憂思忡忡。
遠鄉に到りて女蘿を采り、桑中に期會を相い約す。對方心意を失して赴約せず、只だ憂思忡忡を落得す。此の林《詩・桑中》の典を取る。約會情事を占問うに、約を失して悵惘するを主とす。
蠱之豫:昧視無光,夜不見明。冥抵空床,季葉逃亡。
目光昏昧して光亮なく、夜に入れば更に一片漆黑なり。黑を摸して空床に撞到し、末世子孫四散逃亡す。此の林家道昏暗衰敗するを主とす。家室を占問うに、離散して依なきを主とす。
蠱之隨:舉趾振翼,南至嘉國,見我伯姑,與惠相得。
足を抬げ翅を振って南に飛行し、美好の邦國に到り、我が伯姑を見、其の恩惠眷顧を得。此の林遠行して親に遇い、助を獲て意を得るを主とす。出行して人を訪うを占問うに、願のごとくして吉を主とす。
蠱之臨:則天順時,周流其墟。與樂並居,無有咎憂。
上天を效法し時序を順應し、故地の間に周游す。歡樂と同居し、過錯と憂患と無し。此の林天に順いて動くを主とす。出行處世を占問うに、平安して意に適うを主とす。
蠱之觀:蠆室蜂戶,螯我手足。不可進取,為我害咎。
蝎子の窩・馬蜂の巢、我が手脚を蜇傷す。此のごとき地方進取する可からず、只だ我が禍害と成るを得。此の林險を犯して傷を受くるを主とす。進取投資を占問うに、前行すべからざるを主とす。
蠱之噬嗑:公孫駕驪,載遊東齊。延陵悅產,遺季紵衣。
公孫黑色の駿馬を駕し、人を載せて東に游んで齊國に到る。延陵季子と鄭國子産と相互に悦服し、纻麻衣と縞帶とを互贈す。此の林季札鄭に聘し縞纻を贈るの典を用ゐ。出行交友を占問うに、貴人と結交して彼此相い得るを主とす。
蠱之賁:轉作驪山,大失人心。劉季發怒,命滅子嬰。
轉じて驪山陵墓を大修し、天下の人心を大失す。劉季奮起して難を發し、秦王子嬰の命數もまた就此に絕える。此の林民を勞して亡を致すを主とす。興造役使を占問うに、衆を耗して禍を招くを主とす。
蠱之剝:羊腸九縈,相推稍前。止須王孫,乃得上天。
羊腸小道盤曲九轉し、衆人相互に推擠して纔に稍許前進す。停下して王孫の引路を等待して、纔に高處に登上する能くす。此の林道險にして人援を待つ須くを主とす。進取を占問うに、遲緩して後に得るを主とす。
蠱之復:螮蝀充測,佞人傾惑。女遏橫行,正壅道塞。
虹霓天際に橫亙し變化測る可からず、佞人其の中より傾陷惑亂す。陰柔の一方橫行阻遏し、正道壅塞せられて通ぜず。此の林《詩・蝃蝀》の淫を刺るの義を取る。是非仕途を占問うに、邪正を妨げて路阻まるを主とす。
蠱之無妄:福祿不遂,家多怪祟。麋鹿悲啼,思其大雄。
福祿總じて願のごとく能わず、家中怪異祟り斷えず。麋鹿悲聲哀啼し、其の雄伴を思念す。此の林家宅寧ならず、孤思遂げ難きを主とす。家運婚姻を占問うに、愁苦して順わざるを主とす。
蠱之大畜:雲雷因積,大雨重疊。久不見日,使我心悒。
云と雷と層層積聚し、大雨連接して下る。久しく太陽を見ず、我をして心情郁悶せしむ。此の林陰霾久しく滯るを主とす。時運出行を占問うに、沉悶阻滯す。晴を放つを待つに宜し。
蠱之頤:三河俱合,水怒湧跌。壞我王室,民因無食。
三條の大河一齊に匯合し、水勢憤怒奔涌跌宕す。我が王室宮宇を冲毁し、百姓これによって口糧を斷たる。此の林大水災を成すを主とす。家國生計を占問うに、傾覆して飢困するを主とす。
蠱之大過:旦雨夜行,早遍都城。更相覆傾,終無所成。三頭兩眠,不見其真。
清早日下雨し夜裏路を趕り、一大早都城を跑遍す。彼此反覆傾軋し、終究一事成らず。三個の頭兩處に睡り、眞實の樣子を看出さず。此の林奔忙錯亂し、虛假憑り難きを主とす。謀事を占問うに、勞して功なきを主とす。
蠱之坎:褒後生蛇,經老育微。側跌哀公,酒減黃離。
褒姒の降生竜漦の蛇と化すの舊說に源出し、經年久遠にして隱微の禍を孕育す。魯哀公傾側跌落し、宴飲の酒もまた减じ、光明隨い之黯淡す。此の林禍根久しく伏し後に發するを主とす。家國を占問うに、隱患終に災を成すを主とす。
蠱之離:鴻雁南飛,隨時休息。轉送天和,千歲不衰。
鴻雁南に飛行し、時令に隨いて棲止す。輾轉して天地の和氣を傳送し、千年衰竭せず。此の林時に順いて動き、綿長して絕えざるを主とす。遷徙身命を占問うに、長久安らかにして吉きを主とす。
蠱之咸:後時失利,不得所欲。莫享偕結,自逐自逐。
時機を錯過して利益を失掉し、想う所の物を得ず。同心の好を共享するに從無く、只だ自己を驅趕して奔走するを得。此の林時を失い孤行するを主とす。合を求め利を求むるを占問うに、落空して自ら擾るを主とす。
蠱之恆:心多恨悔,出言為怪。梟鳴室北,丑聲可惡。請謁不得。
心中怨恨悔意に滿ち、出口の話乖戾反常なり。惡梟屋北に鳴叫し、聲音醜惡して人に厭憎せしむ。前往して求見するも見る能わず。此の林心口俱に乖なり、干謁失利するを主とす。人を求むるを占問うに、怨を招きて成るなきを主とす。
蠱之遁:四馬過隙,時難再得。尼父孔聖,繫而不食。
四匹の馬の引く車縫隙を馳過し、轉瞬即逝して、時機再び得難し。孔夫子のごとき聖人もまた、匏瓜の枝頭に空繫して食用を得ざるがごとし。此の林時我に與せず、才用ゐられざるを主とす。進を求むるを占問うに、才を懷きて遇わざるを主とす。
蠱之大壯:陰變為陽,女化為男。治道得通,君臣相承。
陰轉化して陽と爲り、女變化して男と爲る。治國の道通行を得、君臣上下相互に承接す。此の林氣運翻轉し、上下相い得るを主とす。時局仕進を占問うに、弱を轉じて强と爲るを主とす。
蠱之晉:崑崙源口,流行不止。龍門砥柱,民不安處。母歸扶子,黃麋悅喜。
河水昆侖の源頭より流出し、奔流して停まず。竜門と砥柱の間水勢險惡にして、百姓安居を得ず。後來母親歸來して孩子を扶助し、黄麋もまた歡喜す。此の林險中援を得るを主とす。家人聚散を占問うに、先に危く後に安きを主とす。
蠱之明夷:葛藟蒙棘,華不得實。饞佞亂政,使恩壅塞。
葛藤荆棘の上に纏繞し、花を開くも果實を結ぶ能わず。讒佞の徒朝政を擾亂し、君上の恩澤をして壅塞して下らざらしむ。此の林糾纏して阻を受け、恩信通ぜざるを主とす。恩を求め進を謀るを占問うに、始有りて終なきを主とす。
蠱之家人:公無長驅,天王駿馬。非其當所,傷折為患。
主公馬を縱して長驅することなかれ、あれは天子の駿馬なり。用うべからざる所に用ゐば、必ず折傷に因りて禍患と成る。此の林僭越濫用するを主とす。物を用ゐ人を用ゐるを占問うに、分を逾えて損を致すを主とす。
蠱之睽:大倉充盈,萬物蕃盛,年歲熟榮。
大倉裝めて滿滿なり、萬物繁衍茂盛し、年成成熟豐榮す。此の林積儲豐足するを主とす。農事家計を占問うに、收成大好にして衣食憂なきを主とす。
蠱之蹇:執簧照犧,為風所吹,火滅無光,不見玄黃。
燈燭を手持して祭牲を照せど、一陣の風吹來し、火熄滅して光亮なく、天玄地黄すらも分辨清楚ならず。此の林中途明を失い、祭事成らざるを主とす。明を求め事を問うを占問うに、功一簣に虧くを主とす。
蠱之解:鳥反故巢,歸其室家,心平意正,與叔相鳴。登高隕墜,失其寵貴。
鳥兒舊巢に飛回し、自己の家室に回り、心氣平和して意念端正、叔氏と相互に和鳴す。然れど登ること太だ高きに因りて反つて墜落し、原有の寵貴を失掉す。此の林先に吉にして後に凶なり。歸家進位を占問うに、得て復た失う。止まるを知るに宜し。
蠱之損:弩馳弓藏,良犬不烹。內無怨女,征夫在堂。
弩弦松弛し良弓收藏し、獵狗もまた烹殺する必ずしも要せず。家中曠怨の女子無く、出征の丈夫已に堂上に回る。此の林兵息みて人歸るを主とす。行人征役を占問うに、平安して團聚するを主とす。
蠱之益:牡犧孔博,日新其德。文君出獵,姜氏受福。
祭牲に用ゐし公牛肥碩豐大にして、徳行もまた日日更新す。文徳の國君出外して田獵し、姜姓の夫人一同に福澤を承受す。此の林祭を敬い徳を修むるを主とす。祭祀家門を占問うに、上下俱に吉なり。
蠱之夬:秋季孟冬,寒露霜降。大陰在庭,庶物不生。雞鳴犬吠,家憂數驚。
深秋入冬の際、寒露凝結して霜華降下す。極盛の陰氣庭院を籠罩し、衆物皆生長せず。鷄鳴狗叫斷えず、家中憂患にして屢々驚擾を受く。此の林陰寒肅殺するを主とす。家宅生計を占問うに、凋敝して驚多きを主とす。
蠱之姤:心多恨悔,出門見怪。歹蛇三足,丑聲可惡。嫫母為媒,請求不得。
心中怨悔多く、一たび門を出れば便ち怪異に撞見す。惡蛇竟に三足を生じ、聲音醜惡可憎なり。嫫母のごとき醜婦を請して媒を作れば、求む所自然に成らず。此の林凶兆連連にして、託する所人に非ざるを主とす。婚姻請託を占問うに、諧わざるを主とす。
蠱之萃:虎豹爭強,道閉不通。小人歡訟,貪天之功。
虎豹相互に强を爭い、道路因りて閉塞して通ぜず。小人訟を興すを樂とし、還て上天の功勞を己が有と據す。此の林强梁相い爭い、小人功を竊るを主とす。出行爭訟を占問うに、阻滯して是非多きを主とす。
蠱之升:雞方啄粟,為狐所逐。走不得食,惶怖惕息。
鷄正に粟米を啄食す、狐狸の追趕する所と爲る。逃走して後食に上がらず、惶恐して呼吸を屏す。此の林横に侵奪せられ、驚懼して所を失うを主とす。飲食營生を占問うに、擾を受けて安きを得を得ざるを主とす。
蠱之困:陳媯敬仲,兆興齊姜。乃適營丘,八世大昌。
陳國妫姓の公子敬仲、卜兆彼の將に齊國姜氏の地に興起せんを預示す。ここに營丘に前往し、八世を歷經して大いに昌盛す。此の林陳完齊に奔り田氏齊に代わるの典を用ゐ。遷徙業を立つるを占問うに、遠く徙りて後に大興するを主とす。
蠱之井:昊天白日,照臨我國。萬民康寧,咸賴喜福。
廣大の蒼天と明亮の太陽、我が邦國を照臨す。萬民安康寧泰にして、人人皆喜慶福澤を蒙受す。此の林光明普く被くを主とす。國事家運を占問うに、大吉にして衆安きを主とす。
蠱之革:雲夢大藪,嘉有所在。虞人共職,驪駒樂喜。
云夢は廣大の湖澤にして、美好の物産皆其の中に在り。山澤を掌管する虞人各々其の職を盡し、驪駒の歌歡喜に唱う。此の林物阜んで職修まるを主とす。漁獵産業を占問うに、豐饒にして和樂を主とす。
蠱之鼎:獐鹿雉兔,群聚東國。蘆黃白春,俱往逐追,九齚十得。主君有喜。
獐・鹿・野鷄・兔子、成群して東方の國に聚集す。蘆荻轉黄・春色轉白の際、衆人一同に前往して追逐し、九隻を咬獲し十隻を擒得す。主君これによって歡喜す。此の林獵獲豐盛するを主とす。求取を占問うに、獲る所望む所に超出するを主とす。
蠱之震:得惠孔明,主君復章,保其室堂。
受くる所の恩惠十分明白顯著にして、主君重ねて顯揚し、自家の室堂を保住す。此の林恩を蒙りて位を復するを主とす。家業官職を占問うに、失いて復た得るを主とす。
蠱之艮:天之所壞,不可強支。眾口嘈嘈,雖貴必危。
上天の毀壞せんとする所の物、人力勉强支撐する能わず。衆口喧騰非議すれば、縱ほ身顯貴に居ると雖も必ず危險なり。此の林大勢已に去り、衆議敵し難きを主とす。官位を占問うに、强爭すべからざるを主とす。
蠱之漸:天之奧隅,堯舜所居。可以全身,保我邦家。
上天深藏の一隅、堯舜のごとき聖人の居る所の處なり。此に在りて自身を保全し、我が邦國家室を守住する能くす。此の林地を擇びて自ら守るを主とす。居處難を避くるを占問うに、安穩にして虞なきを主とす。
蠱之歸妹:下泉苞稂,十年九主。旬伯遇時,憂念周京。
《詩・下泉》寒泉の丛生する莠草を浸没するを寫し、十年の間九位の主君を換ふ。荀伯時に適逢し、心中周室京師を憂念す。此の林政局屢變して忠臣國を憂うるを主とす。時局任事を占問うに、動蕩にして節を守るに宜しきを主とす。
蠱之豐:江河海隅,眾利聚居。可以遨遊,卒歲無憂。
江河と海角一帶、各種の利益皆彼の處に聚集す。從容遨游する可く、終年憂愁なし。此の林財源匯聚し、身心俱に安しを主とす。經商遠行を占問うに、利を獲て安樂するを主とす。
蠱之旅:南山黃竹,三身六目。出入制命,東皇宣政。主尊君安,鄭國無患。
南山黄竹を生ず、傳說中三身六目の異人有り。出入の間教命を掌管し、東方の帝政令を宣布す。主上尊崇し國君安泰にして、鄭國禍患なし。此の林威令通行するを主とす。國政官職を占問うに、令行はれて境内安きを主とす。
蠱之巽:重譯置之,來除我憂。與喜俱居,同其福休。
輾轉幾重の通譯を經て纔に消息を傳到し、前來して我が憂愁を解除す。喜慶我と同住し、福澤美善を共享す。此の林遠方より助に來るを主とす。援を求め音信を占問うに、憂解けて吉を得るを主とす。
蠱之兌:南山高崗,麟鳳室堂。含和履中,國無災殃。
南山高高の山岡の上、麒麟と鳳凰と以て居室廳堂と爲す。中和を含蘊し中正を脚踏し、國中災殃なし。此の林祥瑞正に居るを主とす。國事家宅を占問うに、安泰にして災なきを主とす。
蠱之渙:紫芝朱草,生長和氣。公尸侑食,福祿來下。
紫芝と朱草のごとき瑞物、和順の氣の中に生長す。祭祀の時代神として祭を受くる公尸飲食を勸進し、福祿隨い之降下す。此の林《詩・鳧鹥》の公尸燕飲の義を取る。祭禱して福を求むるを占問うに、神歆かじめて福至るを主とす。
蠱之節:宮城室就,進樂相舞。英俊在堂,福祿光明。
宮室城郭皆已建成し、樂を奏起して相い與に起舞す。英才俊士堂に滿ち、福祿光明显耀す。此の林功成りて賢を聚むるを主とす。興造仕進を占問うに、圓滿にして榮盛を主とす。
蠱之中孚:商之子孫,資無所有。貪貝逐狐,留連都市。還轅內鄉,嘉喜何咎。
殷商の後裔子孫、資財一の所有せず。財貝を貪求し狐皮の利を追逐し、都市の間に流連す。後來車轅を掉轉して故鄉に返回し、反つて喜慶有り、何の過錯有らん。此の林外に求めて得ずして本に歸りて吉を得るを主とす。經商遠行を占問うに、返歸を宜と爲すを主とす。
蠱之小過:執贄入朝,獻其狐裘。元戎燮安,妙漠以歡。
見面の禮を手持して朝に入り、狐皮裘衣を獻上す。主帥大軍因りて調和安定し、邊遠の地もまた歡悦に歸す。此の林獻納當を得、爭を化して和と爲すを主とす。進獻結交を占問うに、納を受けて和順するを主とす。
蠱之既濟:湧泉汩汩,南流不絕。洿為淮海,壞敗邑里。
泉水汩汩として涌出し、南に向かいて奔流して斷えず。積みて淮河大海のごとき水澤と成り、城邑村里を冲壞す。此の林水勢控を失いて災を成すを主とす。家宅田産を占問うに、水患に遭いて損を受くるを主とす。
蠱之未濟:固陰冱寒,常冰不溫。凌人惰殆,大雹為災。
陰氣凝固して天寒地凍し、長年の堅氷回暖を見ず。氷を掌る凌人怠惰して職を失し、大冰雹これによって災を成す。此の林陰寒職を失して災を生ずるを主とす。時令職守を占問うに、怠慢して禍を招くを主とす。
臨の林(臨卦六十四林)
臨 弱水之西,有西王母。生不知老,與天相保。行者危殆,利居善喜。
弱水の西邊、西王母住む。彼女長生して衰老を知らず、天と其の久長を同じくす。然るに弱水渡り難く、出行の人危險有り、安居して靜を守れば反つて善慶を得。此の林靜吉動凶を主とす。出行居處を占問うに、守るに宜しく行くに宜しからず。
乾 黃獹生子,白戌為母。晉師在郊,虞公出走。
黄色の獵犬崽子を產下し、白狗其の母親と做る。晋國軍隊已に郊外に逼近し、虞公只だ國を棄てて出逃するを得。此の林晋道を假りて虢を伐ちて虞を滅すの典を用ゐ。防守國事を占問うに、外敵隙に乗じ、土を失いて出亡するを主とす。
坤 倉皇奉使,中山以孝。文侯悅喜,繫子徵召。
匆促の間命を奉じて出使し、中山に孝行を以て見稱す。魏文侯之がために歡喜し、兒子を身邊に召回す。此の林孝を以て上に信を取るを主とす。差使薦擧を占問うに、賞識を得て召を受くるを主とす。
屯 機關不便,不能出言。精誠不通,為人所冤。
機竅靈便ならず、話もまた說出口せず。一片の精誠人に通達する能わず、反つて人の冤枉する所と爲る。此の林溝通阻を受け、口有りて辯え難きを主とす。訴訟陳情を占問うに、冤を含みて白ぐる莫きを主とす。
蒙 白茅醴酒,靈巫拜禱。神嗜飲食,使君壽考。
白茅を鋪き甜酒を奉り、靈驗の巫者拜伏祈祷す。神明此の祭品を享用するを樂とし、君主をして長壽ならしむ。此の林祭禱して神の歆享を得るを主とす。福を祈り疾病を占問うに、年を延べて佑を獲るを主とす。
需 重瞳四乳,目聰耳明。普仁表聖,為作元輔。
傳說虞舜重瞳有り周文王四乳有り、皆聖人の異相なり。此の人耳目聰明にして、廣く仁徳を施し聖徳を彰顯し、首輔に出任する可し。此の林異才國を當たるを主とす。人を用ゐ仕進するを占問うに、大用を得るを主とす。
訟 水漲無船,破城壞堤,大夫從役。一朝亡殞,不見少妻。
洪水上漲して船只なし、城牆を冲破し堤壩を毀壞し、大夫命を奉じて役に服して搶險す。一朝命を喪い、再び年輕の妻子を見ず。此の林水厄役難を主とす。出行服役を占問うに、凶險にして喪亡するを主とす。
師 六人俱行,各遺其囊。鴻鵠失珠,無以為明。
六人一同に路上し、各々行囊を丟失す。鴻鵠明珠を丢して、再び照明の物なし。此の林群行俱に損し、其の憑恃を失うを主とす。同行合伙を占問うに、共同に財を折るを主とす。
比 隨時轉行,不失其常。各樂厥類,身無咎殃。
時序に隨いて輾轉運行し、其の恒常の道を失わず。各々同類と同樂し、自身災咎禍殃なし。此の林時に順い常を守るを主とす。諸事を占問うに、平安にして過なきを主とす。
小畜 蔡女盪舟,為國患憂。褒後在側,屏蔽王目。早衰六畜。
蔡姬舟を蕩かして齊桓公を戲弄し、因りて國家の禍患と成る。褒姒周幽王の身邊に侍立し、君王の眼目を遮蔽す。六畜すらも早早衰敗す。此の林女禍國を亂るを主とす。家國內閨を占問うに、內寵に因りて敗を致すを主とす。
履 駕龍騎虎,周遍天下。為神人使,西見王母。不憂危殆。
竜を駕し虎を騎り、天下各處を走遍す。神人の差遣を受け、西行して西王母を拜見す。一路危難を憂慮する必ずしも要せず。此の林神助有りて遠行阻なきを主とす。出行を占問うに、通達して險なきを主とす。
泰 胥恐之吳,畫策闔閭。鞭平服荊,除大咎殃。威震敵國,還受上卿。
伍子胥恐懼を懷きて吳國に奔往し、闔閭のために方略を謀劃す。後來楚平王の尸を鞭撻し荆楚を征服し、大禍患を除去す。威勢敵國を震動し、回來して上卿を受封す。此の林命を亡して仇を復し後に顯達するを主とす。困厄して强を圖るを占問うに、終に耻を雪ぎ名を顯かす能くするを主とす。
否 唐邑之廬,晉人以居。虞叔受福,實貺是國。世載其樂。
唐地の城邑屋舍、晋人の居所と成る。虞叔受封して福を得、實實在在に此の國家を賞賜せらる。世世代代其の樂を享受す。此の林唐叔虞晋に封ぜらるるの典を用ゐ。封を受け業を置くを占問うに、地を得て家を傳うるを主とす。
同人 管鮑相知,至德不離。三言於桓,齊國以安。
管仲と鮑叔牙と彼此深く相知り、至誠の徳彼らをして相い背離せざらしむ。鮑叔再三齊桓公に進言擧薦し、齊國これによって安定す。此の林知己賢を擧ぐるを主とす。交友薦擧を占問うに、知交に力を得るを主とす。
大有 三十無室,長女獨宿。心勞未得,憂在胸臆。
年三十を過ぐるも未だ家を成さず、長女獨り安寝す。心力交瘁して一の得る所なきに、憂愁胸中に積む。此の林婚期遲誤するを主とす。婚姻して配を求むるを占問うに、蹉跎して成り難きを主とす。
謙 散渙水長,風吹我鄉。火滅無光,隳敗桓功。
水勢渙散して漫長にして、狂風我が鄉里を吹過す。火熄滅して光亮なく、齊桓公のごとき功業もまた隨い之毀壞す。此の林基業渙散するを主とす。家國事業を占問うに、盛より堕すを主とす。
豫 蜎飛蠕動,各有配偶。大小相保,咸得其所。
飛ぶ蟲・爬る蟲、各々皆配偶有り。大小の生靈相互に保全し、全て各々其の所を得。此の林萬物各々其の分に安んずるを主とす。婚配處世を占問うに、和順して安んずるを主とす。
隨 安樂几筵,未出王門。
安然歡樂して几案筵席の間に坐し、未だ曾て王家の門庭を走出さず。此の林內に居りて安を享くるを主とす。出處を占問うに、內を守るに宜しく遠行に宜しからず。
蠱 大生災禍,下土恩塞,抵亂我國。
大災大禍接續發生し、下界百姓の受くる所の恩澤壅塞せられ、動亂我が國家を冲擊す。此の林上恩下らず、亂此より生ずるを主とす。國事時局を占問うに、凶亂にして避くべきを主とす。
觀 長生無極,子孫千億。柏柱載梁,堅固不傾。
壽命長久して窮盡なく、子孫繁衍して千億なり。柏木の柱子大梁を承托し、堅固にして傾倒せず。此の林家門根基牢固するを主とす。身命子嗣を占問うに、長壽して福多きを主とす。
噬嗑 欽敬昊天,曆象星辰。宜受民時,陰陽和調。
蒼天を對待するに恭敬し、日月星辰を觀測推算す。據りて百姓に農時を頒授し、陰陽因りて調和す。此の林《尚書・堯典》の日月星辰を歷象し民時を敬授するの典を用ゐ。政事農事を占問うに、時に順いて治すれば則ち吉なり。
賁 三河俱合,水怒踴躍。壞我王室,民困於食。
三條の大河一齊に匯合し、水勢憤怒騰躍す。王室宮宇を毀壞し、百姓糧を缺きて困頓す。此の林水患國を傷るを主とす。家宅生計を占問うに、災を受けて食を乏しくするを主とす。
剝 壽如松喬,與日月俱。常安康樂,不離禍憂。
壽命赤松子・王子喬のごとく綿長にして、日月と一同に長久す。常に安康快樂を保ち、禍患憂愁に遭わず。此の林長壽して災なきを主とす。身命を占問うに、安泰を主とす。
復 天之所予,福祿常在,不憂危殆。
上天の賜予する所の物、福と祿と常に身邊に在り、危難を憂慮する必ずしも要せず。此の林天賜の福を主とす。身命家運を占問うに、自然に安らかにして吉きを主とす。
旡妄 受讖六符,招搖室虛。雖跌無憂,保我命則。
符讖六種の祥瑞の征應を承受し、北斗招搖星と室・虛の二宿と高照す。縱ほ跌挫する所有ると雖も憂慮する必ずしも要せず、我が性命と法度とを保住する能くす。此の林天符の護持有るを主とす。危疑を占問うに、險あると雖も咎なきを主とす。
大畜 金買車,失道後時,勞罷為憂。
金を攜えて車を買いに往くも、卻って路を迷いまた時辰を誤り、勞苦疲憊して反つて憂愁と成る。此の林行事時を失うを主とす。賣買出行を占問うに、勞して其の利を得ざるを主とす。
頤 華首山頭,仙道所遊。利於居止,長無咎憂。
華首山の峰頂、仙人往來遨游の地なり。此に居留停止するに宜しく、長久過錯と憂患と無し。此の林高處清居するを主とす。居處を占問うに、靜を守れば則ち安きを主とす。
大過 采唐沫鄉,徼期桑中。失信不會,憂思約帶。
沫鄉に到りて女蘿を采り、桑中に相會せんと約定す。對方信を失して赴約せず、憂思の下衣帶皆松む。此の林《詩・桑中》の典を取る。約期して相會するを占問うに、約を爽して愁損するを主とす。
坎 人面九口,長舌為斧。斲破瑚璉,殷商絕後。
人面して九口を生じ、長舌利斧に同じ。瑚琏のごとき宗廟禮器を砍破し、殷商これによって後嗣を絕つ。此の林讒口器を毀り國を敗るを主とす。是非家祀を占問うに、口舌の禍極めて重きを主とす。
離 臨溪橋疚,雖恐不危,樂以笑歌。
溪に臨む橋梁少々損壞するも、心裏害怕するも並びに實險なく、反つて笑歌して樂を取る能くす。此の林虛驚して害なきを主とす。出行して險を涉るを占問うに、驚有りて險なし。
咸 泱泱沸溢,水泉為害,使我無賴。
水勢浩大沸騰漫溢し、泉水反つて禍害と成り、我をして依る所無からしむ。此の林水盛んで災を爲すを主とす。居處田産を占問うに、害を受けて依を失うを主とす。
恆 蝗螟為賊,害我稼穡。秋飢於年,農夫鮮食。
蝗蟲と螟蟲と災を成し、我が莊稼を糟蹋す。秋天飢年に遇上し、農夫食物少なし。此の林蟲災歉收するを主とす。農事生計を占問うに、匱乏を主とす。
遯 八百諸侯,不期同時。慕西文德,興我宗族。家門雍睦。
八百の諸侯約せずして同じく孟津に會盟す。彼ら西伯の文徳を仰慕し、因りて我が宗族を興旺し、家門和睦雍容す。此の林徳衆を感じて歸すを主とす。人望家運を占問うに、衆助けて門第興盛するを主とす。
大壯 長男少女,相向笑語。來歡致福,和悅樂喜。
年長の男子と年少の女子と相い對して談笑す。歡樂到來して福氣隨い之し、和順歡悦して喜樂す。此の林男女相い得るを主とす。婚姻交際を占問うに、吉慶を主とす。
晉 平國不君,夏氏作亂。烏號竊發,靈公殞命。
陳國國政體統を成さず國君道を失い、夏氏これによって亂を作す。烏號の良弓暗中發射し、陳靈公性命を喪う。此の林陳靈公弑せらるるの典を用ゐ。君臣內閨を占問うに、淫亂弑を招くの禍を主とす。
明夷 春多膏澤,夏潤優渥。稼穡成熟,畝獲百斛。
春天雨水豐沛滋潤し、夏天の潤澤もまた優厚なり。莊稼成熟し、一畝上百斛を收穫す。此の林雨暘時に若くを主とす。農事收成を占問うに、大豐を主とす。
家人 客宿臥寒,席蓐不安。行為危害,留不得歡。
外に客居し、睡臥寒を受け、席墊褥子皆安穩ならず。出行すれば危害に遇會し、留下するも歡樂を得ず。此の林進退兩難を主とす。出行留止を占問うに、處處適わざるを主とす。
睽 乘槎浮海,雖懼不殆。母載其子,終焉何咎。
木筏に乘りて海上を漂浮す、畏懼すると雖も危險なし。母親孩子を帶載し、終究何の過錯有らん。此の林險中護有るを主とす。遠行して眷を攜うるを占問うに、驚有りて咎なきを主とす。
蹇 手拙不便,不能伐檀。車無軸轅,行者苦難。
手笨しく靈便ならず、檀木を砍動かず。車子軸と轅と無く、路を趕る人苦しみ言に堪えず。此の林器備わらず、力逮ばざるを主とす。興作出行を占問うに、困難重重を主とす。
解 唐虞相輔,鳥獸率無。民安無事,國家富有。
唐堯と虞舜と相互に輔佐し、鳥獸すらも循序して害を爲さず。百姓安居して事なく、國家富庶充盈す。此の林聖治平を致すを主とす。國事家業を占問うに、安泰豐足を主とす。
損 秋蛇向穴,不失其節。夫人姜氏,自齊復入。
秋深ければ蛇便ち洞穴に歸伏し、其の時節を失わず。魯國夫人姜氏もまた齊國より重ねて歸來す。此の林時に循い返るを主とす。行人歸期を占問うに、期のごとく歸るを主とす。
益 病篤難醫,和不能治。命終永訖,下即蒿蘆。
病勢沈重にして醫治し難く、名醫醫和すらも能くせず。性命終結して永遠に完し、身蒿草蘆葦の下に歸す。此の林病膏肓に入るを主とす。疾病を占問うに、大凶を主とす。
夬 青蛉如云,城邑閉門。國君御守,民困於患。
蜻蜓のごとき飛蟲多きこと云のごとし、城邑只だ緊く城門を閉すを得。國君親しく防御守衛し、百姓災患に困む。此の林異災城を圍むを主とす。城守生計を占問うに、困厄を主とす。
姤 牙孽生齒,室堂啟戶。出入利貞,鼓翼起舞。
牙牀の上新齒を萌し、屋室廳堂門戸を敞開す。出入正固を守持して利有り、翅を振りて起舞す。此の林生機初めて動き、門戸通達するを主とす。進を求め出行するを占問うに、亨通を主とす。
萃 鳧游江湖,役行千里。以為死亡,復見空桑,長生樂鄉。
野鴨江湖の間に游び、服役奔走して上千里。家人以て已に死せりと爲すも、不料また空桑の地に見、安樂の鄉に長生す。此の林失いて復た得るを主とす。行人生死を占問うに、絕處生に逢うを主とす。
升 黃帝出遊,駕龍乘鳳。東上泰山,南遊齊魯。邦國咸喜。
黄帝出外巡游し、竜を駕し鳳に乘り、東に泰山に上り、南に齊魯の地に游ぶ。到る所の邦國歡喜せざるなし。此の林巡行して衆を得るを主とす。出行謀望を占問うに、處處順遂を主とす。
困 履危不止,與鬼相視。驚恐失氣,如騎虎尾。
危境の上に踏んで仍ほ歩を停むるを肯んぜず、簡直鬼怪と對視す。驚恐して氣すらも喘上げ能わず、虎尾の上に騎りて進退する能わざるに同じ。此の林險を犯して止まらざるを主とす。冒進を占問うに、大凶なり。速かに退くに宜し。
井 秋南春北,不失消息。涉和履中,時無陰匿。
秋南に往き春北に往き、陰陽消長の節候を失わず。行事平和して中道を脚踏し、時運の中阴暗隱匿なし。此の林時に順い中を守るを主とす。處世行事を占問うに、光明して咎なきを主とす。
革 龍門砥柱,通利水道。百川順流,民安其居。
大禹竜門を鑿開し砥柱を疏理し、水道をして通暢ならしむ。衆多の河流勢に順いて下り、百姓安居を得。此の林壅を治めて通を得るを主とす。困阻を占問うに、障碍打通して衆安きを主とす。
鼎 千歲廟堂,棟橈傾僵。天厭周德,失其寵光。
千年の宗廟殿堂、棟梁彎曲して以て傾倒す。上天周家の徳運を厭棄し、它原有の寵榮光輝を失了。此の林氣數將に盡きんとするを主とす。家國基業を占問うに、傾頹して支え難きを主とす。
震 折箬蔽目,不見稚叔。五足孤鳥,遠離室家。
箬葉を折下して眼睛を遮り、年幼の叔弟を看不見ず。五足を生じし孤鳥、遙かに自己の巢家を離る。此の林自ら蔽いて親を失い、異變離散するを主とす。家人相聚を占問うに、分離を主とす。
艮 望叔山北,陵隔我目。不見所得,使我心惑。
山北に向かいて叔氏を眺望するも、高陵我が視線を擋住す。尋ねんとする人を見ず、我をして心中疑惑せしむ。此の林阻隔して失望するを主とす。尋訪を占問うに、音信通ぜざるを主とす。
漸 匏瓠之息,一畝十室。萬國都邑,北門有福。
匏瓜葫蘆生長繁息し、一畝地の收成十戸人家を供する能くす。萬國の都城の中、北門一帶最も福氣有り。此の林小物大用し、聚居して利を得るを主とす。業を置き方位を占問うに、地を擇べば則ち吉なり。
歸妹 域域牧牧,憂和相伴。隔我巖山,室家分散。
疆界重重にして牧野茫茫たり、憂愁と和樂と相伴して行く。高峻の山岩我を隔開し、家室因りて離散す。此の林阻隔して憂喜半ば相半ばするを主とす。家人聚散を占問うに、分離して聚まり難きを主とす。
豐 麒麟騄耳,遊食萍草。逍遙石門,循山上下。不失其子。一本無末句)
麒麟と騄耳のごとき神獸良馬、浮萍水草の間に悠然として覓食す。石門の下に逍遥し、山勢に沿いて上下往來し、曾て其の幼子を失わず。此の林祥物所を得、母子相い保つを主とす。家宅子嗣を占問うに、安らかにして吉なり。舊本或いは末句無し。
旅 天所祚昌,文以為良。篤生武王,姬受其福。
上天の福を賜い昌盛せしむる所は、文徳を以て其の美善と爲す。これによって周武王を生下し、姬姓の一族此の福澤を承受す。此の林天佑して賢を生ずるを主とす。子嗣家運を占問うに、後嗣顯達するを主とす。
巽 羊腸九縈,相推稍前。止須王孫,乃能上天。蠱之剝)
羊腸小路盤曲九折し、衆人相い推して纔に稍許前行す。須く停下して王孫の引領を等候して、纔に高處に登上する能くす。此の林道險にして援を待つを主とす。進取を占問うに、須く力を借りて方に成るを主とす。此の條蠱の剥と辭同じ。
兌 貧鬼守門,日破我盆。孤牝不駒,雞不成雛。
貧窮の鬼門口に守住し、天天我が盆罐を打破す。孤單の母馬小馬を生む能わず、母鷄もまた小鷄を孵成せず。此の林貧耗して成るなきを主とす。家計生育を占問うに、匱乏して育たざるを主とす。
渙 飽食從容,入門上堂。不失其常,家無咎殃。
食して飽足し擧止從容にして、門に入り堂に登る。其の恒常の道を失わず、家中災咎禍殃なし。此の林分に安んじ常を守るを主とす。家宅を占問うに、平安を主とす。
節 陰淫不止,白馬為海。澤皋之子,就高而處。
陰雨淫溢して停まず、白浪馬のごとく平地海と成る。水澤岸邊の人家、只だ高處に遷往して居住するを得。此の林水患して遷を迫るを主とす。居處を占問うに、低を避けて高に就くに宜し。
中孚 執戈俱立,以備暴急。千人舉龍,困危得海。終安何畏。
衆人戈を執りて幷立し、以て突發の暴亂を防備す。千人力を合力して竜形の物を擧起し、困危の際終に大海に抵達す。最終安定して下來、また何の怕る可き有らん。此の林同心して難を御するを主とす。危急を占問うに、力を合すれば平安を保つ可きを主とす。
小過 夾河為婚,水漲無船。追心失望,不見歡君。
大河兩岸を隔てて親を結ぶも、水漲起すも船只なし。追隨の心願落空し、心の上の人を見ず。此の林阻隔して成り難きを主とす。婚姻會合を占問うに、望みて得ざるを主とす。
既濟 陰陽變化,各得其宜。上下順通,奏為膚功。
陰陽相互に變化し、各々其の宜を得。上下順暢相通し、因りて大功を奏建す。此の林時位協調するを主とす。謀事仕進を占問うに、大いに成就有るを主とす。
未濟 狂劣德薄,失其臣妾。田不見禽,犬無所得。
狂妄淺劣にして徳行淺薄、臣僕婢妾すらも留住せず。出獵して禽獸を見ず、獵犬もまた一の獲る所なし。此の林徳薄くして衆を失うを主とす。求取して人を用ゐるを占問うに、兩手空空を主とす。
觀の林(觀卦六十四林)
觀 歷山之下,虞唐所處。躬耕致孝,名聞四海。為堯所薦,禪位天子。唐當作舜)
歷山脚下、虞舜の居住耕作の處なり。彼親しく田に下りて耕種し孝道を極盡し、名聲四海に傳遍す。唐堯に擧薦せられ、終に禪を受けて天子と爲る。此の林身自ら孝徳を行いて大位を得るを主とす。出身進取を占問うに、微賤よりして貴顯を致すを主とす。原文「唐」の字は當に「舜」と作るべし。
乾 蜎飛蠕動,各有所配。歡悅相迎,咸得其處。
飛ぶ蟲・爬る蟲、各々皆配偶有り。歡歡喜喜として相い迎え、全て各々其の所を得。此の林萬物雙を成し、各々其の位に安んずるを主とす。婚配處世を占問うに、和順して意に遂ぐるを主とす。
坤 繼祀宗邑,追明成康。光照萬國,享世久長。病疾不醫,下即蒿蘆。此二句疑衍)
宗廟都邑に祭祀を繼續し、成王康王の盛徳を追述彰明す。光輝萬國を照耀し、世代國を享くること長久なり。此の林祧を承け統を繼ぐを主とす。家國宗祀を占問うに、基業綿長を主とす。末の二句「病疾不醫、下即蒿蘆」は上文と屬らず、舊校衍文を疑う。
屯 秋冬探巢,不得鵲雛。銜指北去,媿我少姬。
秋冬の時節鳥巢を掏りに往くも、喜鵲の雛鳥を掏り得ず。只だ手指を咬みて北に走開し、我が年少の姬妾に愧づ。此の林求む所落空して人に信を失うを主とす。求取承諾を占問うに、交代し難きを主とす。
蒙 僮妾獨宿,長女未室,利無所得。
年幼の婢妾獨り夜を過ごし、長女未だ出嫁成家せず。陰陽接せず、何の利益の得可きもなし。此の林姻緣未だ啓かざるを主とす。婚姻して財を求むるを占問うに、空しく守りて成るなきを主とす。
需 洪魚逆流,至人潛去。蒿蓬代柱,大屋顛仆。
大魚流れに逆いて上り、有道の人悄然として隱去す。蒿草蓬梗を以て屋柱に充てれば、大屋自然に傾倒す。此の林賢者退去して庸材位に當たるを主とす。人を用ゐ家業を占問うに、根基堪えずして覆るを主とす。
訟 日闇不明,讒夫在堂。右臂疾痺,君失其光。
太陽昏暗明白ならず、讒を進むる人卻って堂上に坐す。右臂麻痹して力を用ゐる能わず、君主これによって光輝を失う。此の林讒人勢を得、股肱用を失うを主とす。官非人事を占問うに、小人に害を受くるを主とす。
師 王孫季子,相與孝友。明允篤誠,升擢薦舉。為國乾柱。
王孫と季子の輩、彼此孝順友愛す。明察誠信にして篤實眞摯、因りて提拔擧薦を獲得し、國家の棟梁支柱と成る。此の林孝友顯を致すを主とす。仕進擧薦を占問うに、重用を受くるを主とす。
比 麟趾龍身,日馭三千。南上蒼梧,與福為婚。道里夷易,安全無患。
麒麟の趾・神竜の身、一日に三千里を行く可し。南に蒼梧の野に上り、福氣と姻親を結ぶ。道路平坦易行にして、一路安全して禍患なし。此の林貴象遠行して福を獲るを主とす。遠行婚姻を占問うに、順遂にして大吉なり。
小畜 三子成駒,折損轅軸。輪載空輿,後時失期。
三匹の小馬剛に長成するも、車轅車軸卻って折斷す。車輪空車を載せて行き、後頭に落ちて期限を誤る。此の林器具全からずして事を誤るを主とす。出行して約に赴くを占問うに、延誤して機を失うを主とす。
履 逐福除患,道德神仙。避惡萬里,常歡以安。
福澤を追求し禍患を除去し、道德修養を以て自處すること神仙のごとし。凶惡を遙かに萬里避開し、長久歡樂して安寧なり。此の林徳を修めて害を避くるを主とす。身命を占問うに、吉安して災なきを主とす。
泰 黃池之盟,吳楚爭強。勾踐為患,夷門不安。探 得螽,所願不喜。
吳王夫差黄池に會盟し、楚國と强を爭い霸を稱す。越王勾踐虛に乘じて禍患と成り、都城門戸安寧を得ず。手を伸べて探取すれば、得るは卻って蝗蟲にして、願う所並びに心に稱わず。此の林外に爭いて內虛なるを主とす。勝を爭い取を求むるを占問うに、得る所償うに足らず。
否 青牛白咽,呼我俱田。歷山之下,可以多耕。歲藏時節,人保安寧。
青色の牛白喉を長せ、我を呼びて一同に田に下らしむ。歷山脚下に在りて、多く耕種する可し。歲時に按じて莊稼を收藏し、人人安寧を保つを得。此の林勤く耕して安を致すを主とす。農事家計を占問うに、豐足平順を主とす。
同人 有頭無目,赫赫粟粟。一作不見菽粟)消耗為疾,三年不復。
頭有りて眼睛無し、只だ戰栗恐懼の狀を落得す。耗損して病と成り、三年もまた恢復する能わず。此の林明を失い養を失い、久病して起ち難きを主とす。疾病家業を占問うに、長期困頓するを主とす。舊本此の句一作「菽粟を見ず」。
大有 山沒丘浮,陸為水魚。燕雀無巢,民無室廬。
大山淹没し丘陵漂浮し、陸地魚の游ぶ處と成る。燕雀巢穴を失い、百姓房屋なし。此の林大水陸を滅すを主とす。家宅居處を占問うに、流離して所を失うを主とす。
謙 高岡鳳凰,朝陽梧桐。雝雝喈喈,奉奉萋萋。陳辭不多,以告孔嘉。
鳳凰高岡の上に棲し、朝陽梧桐樹を照す。鳴聲雝雝喈喈、枝葉蓬蓬萋萋なり。陳說の言辭多からざると雖も、告ぐる所の事十分美好なり。此の林《詩・卷阿》の鳳凰高岡に鳴くの義を取る。賢を求め言を進むるを占問うに、嘉美して應を獲るを主とす。
豫 鰥寡獨宿,憂動胸臆,莫與笑食。
鰥夫寡婦獨り安寝し、憂愁胸中に翻動し、同じく說笑して食飯する可人無し。此の林孤獨して侶なきを主とす。婚姻家室を占問うに、寂寞して偶り難きを主とす。
隨 躓馬破車,惡婦破家。青蠅汙白,暴子離居。
劣馬絆倒すれば車子を毀壞し、惡婦家室を敗壞す。青蠅潔白の物を弄污し、凶暴の兒子家を離れて居る。此の林內其の家を損うを主とす。家宅婚姻を占問うに、家道敗壞するを主とす。
蠱 長女二嫁,進退無羞。逐狐作妖,行者離憂。
長女兩度出嫁し、進退の間羞恥を知らず。狐媚の祟り妖を興すがごとく、出行の人これによって憂患に遭遇す。此の林邪媚患を生ずるを主とす。婚姻出行を占問うに、是非を招惹するを主とす。
臨 人無足法,緩行長奸。地雄走歸,陽不制陰。男失其家。
人效法する可き準則無く、行事遲緩すれば便ち奸邪を滋長す。本來雌伏の地反つて雄を稱し衆人歸附し、陽陰を制する能わず。男子これによって自己の家を失掉す。此の林綱紀序を失い、陰盛んで陽衰るるを主とす。家室を占問うに、主導の權傍落するを主とす。
噬嗑 茹芝餌黃,飲食玉英。與神流通,長無憂凶。
靈芝を服食し黃精を吞餌し、玉石の精華を飮用す。此より神明氣息と相通し、長久憂患凶險なし。此の林養生して神に通ずるを主とす。身命疾病を占問うに、年を延べて安きを主とす。
賁 東行無門,西出華山。道塞於難,遊子為患。
東に向かいて走れば門路無く、西に向かえばまた華山に擋住せらる。道路艱難に堵塞せられ、門を出でて外に在る游子これによって患に遭う。此の林四路通ぜざるを主とす。出行謀望を占問うに、進退阻を受くるを主とす。
剝 壽如松喬,與日月俱。常安康樂,不罹禍憂。
壽命赤松子・王子喬のごとく綿長にして、日月と其の久遠を同じくす。常に安康快樂を保ち、禍患憂愁に遭わず。此の林長壽康寧を主とす。身命を占問うに、大吉を主とす。
復 探 得螽,所願不喜。黃池之盟,吳楚爭強。勾踐為患,夷門不安。
手を伸べて探取すれば、得るは卻って蝗蟲にして、願う所並びに心に稱わず。吳王黄池に會盟し、楚國と强を爭う。越王勾踐隙に乘じて禍患と成り、都城門戸安寧を得ず。此の林得る所望む所に非ず、外强して內虛なるを主とす。求取勝を爭うを占問うに、徒勞して變を生ずるを主とす。
旡妄 蝠螺生子,深目黑丑。雖飾相就,眾人莫取。
蝠螺の類の生下する子、眼窩深陷して面色黑醜なり。縱ほ修飾を加えて凑合するも、衆人還是要るを肯んぜず。此の林質陋にして掩い難きを主とす。婚配して售を求むるを占問うに、終に取られざるを主とす。
大畜 喜怒不時,霜雪為災。稼穡無功,后稷飢寒。
喜怒常なく時宜に合せず、霜雪因りて災を成す。耕種收穫なく、后稷のごとき農神すらも餓え凍えるを受く。此の林氣候政令時を失うを主とす。農事を占問うに、歉收して困乏するを主とす。
頤 烏升鵲舉,照臨東海。尨降庭堅,為陶叔後。封為蓼丘,履祿綏厚。
烏鴉空に升り喜鵲高飛し、光明東海を照臨す。祥瑞庭堅に降り、彼皋陶一族の後人にして、蓼丘に受封し、享くる所の祿位安厚なり。此の林先徳後を蔭し、封を受け祿を食むを主とす。功名子孫を占問うに、蔭を承けて貴を得るを主とす。
大過 黃離白日,照我四國。元首昭明,民賴其福。
黄色の光麗白日に附麗し、我が四方の國を照耀す。元首昭明して徳有り、百姓其の福澤に仰賴す。此の林《易・離》の黄離元吉の義を取る。君政民生を占問うに、上明にして下安きを主とす。
坎 黍稷醇醲,敬奉山宗。神嗜飲食,甘雨嘉降。獨蒙福力,時災不至。
黍稷の釀する酒醇厚濃香にして、恭敬して山川宗神に獻上す。神明享用するを樂とし、及時の甘雨隨い之降下す。獨り神力の庇佑を蒙受し、時令の災害來らず。此の林祭禱應を得るを主とす。福を祈り農事を占問うに、佑を受けて災なきを主とす。
離 禍不更生,福過我裡。入門笑喜,與吾利市。
禍事再び發生せず、福氣我が鄉里を經過す。門に進めば便ち歡笑喜慶なり、我に利市の財を帶來す。此の林禍去りて福來るを主とす。家宅經商を占問うに、吉に轉じて利を獲るを主とす。
咸 晝臥牢門,怵惕不安。目不得闔,鬼搔我足。
白天牢獄の門口に躺臥し、驚懼して安んぜず。眼睛合する能わず、鬼有りて我が脚を撓むに彷彿たり。此の林身囹圄に陷り、驚悸して眠り難きを主とす。官非疾病を占問うに、凶擾して寧ならざるを主とす。
恆 春草榮華,長女宜夫。受福多年,世有封祿。
春天の草木繁茂開花し、長女正に夫に嫁ぐに宜し。此の後多年福澤を承受し、世代封爵俸祿を享有す。此の林婚其の時を得るを主とす。婚姻家運を占問うに、吉慶綿長を主とす。
遯 雍門內崩,賊賢傷仁。暴亂狂悖,簡公失位。
雍門の內先に自ら崩壞し、賢良を殘害し仁人を傷及す。暴亂狂悖の事發生し、齊簡公これによって君位を丢了。此の林田氏齊簡公を弑するの典を用ゐ。君臣內政を占問うに、內潰して位を失うを主とす。
大壯 心壯無良,猖獗妄行。觸抵牆壁,不見戶房。
心氣强盛にして良善の徳無く、猖狂放肆して胡亂に行事す。一頭牆壁の上に撞し、門戸房舍すらも找着けず。此の林剛愎妄動するを主とす。行事を占問うに、壁に碰壁して挫を受くるを主とす。
晉 膠車木馬,不利遠賈。出門為患,安止不危。
膠を以て粘成したる車・木頭の刻みし馬、遠行經商に適合せず。門を出れば卽ち禍患と成り、安居して動かざれば纔に危險なし。此の林器用に堪へざるを主とす。遠行經商を占問うに、止むに宜しく行くに宜しからず。
明夷 家在海隅,橈短流深。企立望宋,無木以趨。
家海角に住し、船桨太短にして水流また深し。脚を踮起して宋國を遥望すれど、渡り過ぐる可き木筏無し。此の林力願に及ばざるを主とす。遠行歸鄉を占問うに、望みて至る莫きを主とす。
家人 冬桑枯槁,當風失道。蒙被塵埃,左右勞苦。
冬天の桑樹枯萎し、風を迎えて立ちて生路を失う。一層の塵埃を蒙り、左右の人爲めに勞苦す。此の林生機凋零するを主とす。家業を占問うに、困頓して勞して功少なきを主とす。
睽 過時不行,妄逐王公。老女無夫,不安其居。
時機を錯過して仍ほ身を動かさず、還て妄想して王公顯貴に追隨せんとす。年老の女子夫家無く、住むもまた安穩ならず。此の林時を失い妄求するを主とす。婚姻して進を求むるを占問うに、蹉跎して着無きを主とす。
蹇 履泥汙足,名困身辱。兩仇相當,自為痛疾。
泥の裏に踩みて脚を弄脏し、名聲困を受け自身辱を受く。兩個の仇家勢均力敵にして、彼此皆自己の痛病と成る。此の林污に陷り怨を結ぶを主とす。爭訟を占問うに、兩敗俱傷するを主とす。
解 精華墮落,形客醜惡。齟齬挫頓,枯槁腐蠹。
精粹光華散落し、形貌醜陋と變成す。牙齒參差して擧步頓挫し、枯槁すること蟲の蛀みし朽木に同じ。此の林形神俱に衰えるを主とす。身體事業を占問うに、衰敗して振い難きを主とす。
損 長生無極,子孫千億。松柏為梁,堅固不傾。
壽命長久して窮盡なく、子孫繁衍して千億なり。松柏を用ゐて梁と爲し、堅固にして傾倒せず。此の林家門長盛するを主とす。身命子嗣を占問うに、福壽雙全を主とす。
益 去辛就蓼,毒愈酷甚。避井入坎,憂患日生。
辛辣の物を離れるもまた蓼草に碰上し、毒性反つて更に烈し。水井を躲開してまた坑坎に掉進し、憂患一天天滋生す。此の林害を避けて反つて害を得るを主とす。趨避を占問うに、愈々避くれば愈々凶なり。
夬 行堯欽德,養賢致禮。眾英積聚,國無寇賊。
唐堯のごとき恭敬の徳を推行し、賢才を供養して禮を以て相待す。衆多の英才聚集し、國中盗寇亂賊なし。此の林賢を養いて治を致すを主とす。國事して人を用ゐるを占問うに、人才歸附して境内安寧なり。
姤 狗逐兔走,俱入谷口。與虎逢之,迫不得去。
狗兔子を追いて跑り、一同に山谷口に鑽進す。不料老虎と相遇し、逼られて脫身する能わず。此の林利を逐いて險に入るを主とす。追求爭奪を占問うに、自ら險地に投ずるを主とす。
萃 望尚阿衡,太宰周公。藩屏湯武,立為侯王。
姜太公呂尚と阿衡と號する伊尹、幷びに太宰と爲る周公を仰望す。彼ら商湯・周武を屏衛し、自身もまた侯王と立てらる。此の林輔弼して功を建つるを主とす。仕進輔佐を占問うに、功成りて封を受くるを主とす。
升 清人高子,久屯外野。逍遙不歸,思我慈母。
清邑の人と高子、長久城外の原野に駐屯す。逍遥して外に在りて回來を肯んぜず、我慈母を思念す。此の林《詩・清人》の典を取る。戍役行人を占問うに、久しく役して歸らずして親を思うを主とす。
困 三蟲作蠱,削跡無與。勝母盜泉,居不安處。
三條の蟲器皿の中に相い食して蠱と成り、行跡削除せられて相い與にする人無し。曾子の勝母の里に入らず、孔子の盗泉の水を飮まざるがごとく、此の地安居する可からず。此の林環境正ならざるを主とす。居處交游を占問うに、避くるに宜しく留るに宜しからざるを主とす。
井 作龍身,進無所前。三日五夜,得其所欽。
竜身と化して行くも、前面卻って進む可き路無し。三日五夜の等待を經て、終に敬慕する所の人物を得。此の林阻を受けて後に得るを主とす。謀望を占問うに、遲滯して終に成るを主とす。
革 黃裡綠衣,君服不宜。淫湎毀常,失其寵光。
黄色裏と作し綠色面と作し、此のごとき衣服君子穿著すれば禮制に合せず。沉溺放縱して常道を敗壞し、因りて寵榮光彩を失う。此の林《詩・綠衣》の綠衣黄裏の義を取る。名位內閨を占問うに、嫡庶序を失して敗るを主とす。
鼎 天所顧佑,禍災不到,安吉無懼。
上天の眷顧保佑する所は、禍患災害到來せず、平安吉慶にして怕る可き事なし。此の林天佑の吉を主とす。諸事を占問うに、安然として咎なきを主とす。
震 盤紆九回,行道留難。止須千丘,乃睹所歡。
道路盤曲九轉し、行進の途中屢々阻難に遭う。停留して千丘の地に等候して、纔に喜歡する所の人を見る。此の林曲折して後に相遇うを主とす。會合謀望を占問うに、久しく候して方に成るを主とす。
艮 暴虐失國,為下所逐。北奔陰胡,主君旄頭。
暴虐無道にして國家を丢了、臣下の驅逐する所と爲る。北に逃奔して陰山胡地に到り、主君旄を執りて前驅するの地步に淪落す。此の林道を失いて逐わるを主とす。君位家權を占問うに、流亡して勢を失うを主とす。
漸 御騂從龍,至霍華東。與禹相逢,送至子邦。
赤色の馬を駕して竜に隨いて行き、霍山・華山の東に來到す。大禹と相遇し、護送せられて汝の封國に到る。此の林貴人同行して相い送るを得るを主とす。遠行して投奔するを占問うに、人の接引有りて安く抵るを主とす。
歸妹 銅人鐵距,雨露勞苦。終日卒歲,無有休息。
銅の鑄たる人・鐵の打ちたる爪距、風雨霜露の中辛苦操勞す。早より晚に至り終年到頭、一刻の休息なし。此の林勞役窮無きを主とす。事を任じ工を作るを占問うに、辛苦して閑を得ざるを主とす。
豐 大人失宜,盈滿復虧。成長之木,盛者滅衰。
上の位に在る者處置當を失し、盈滿して後また轉じて虧損と爲る。長成の大樹、極盛の時便ち衰敗に走向す。此の林物極まれば必ず反るを主とす。盛運を占問うに、須く盛より衰に轉ずるを防ぐべきを主とす。
旅 梅李冬實,國多盜賊。亂擾並作,王不能制。
梅樹李樹冬天に反常して結實し、國中盗賊滋多し。禍亂騷擾一齊に發生し、君王制する力無し。此の林物候の反常を以て世の亂に應ず。時局を占問うに、綱紀振わずして動蕩するを主とす。
巽 澤枯無魚,山童難株。長女嫉妒,使身虛空。
水澤乾涸して魚なく、山上光禿として樹株を存し難し。長女嫉妒を心懷し、自身をして空虚を落得せしむ。此の林資源枯竭し、妒心自ら傷るを主とす。家業婚姻を占問うに、兩皆空乏するを主とす。
兌 天門冬虛,晉季為災。膉暌默蒼,秦伯受殃。
天門冬季に空虚し、晋國末世これによって災を成す。上下暌違して默然蒼茫たり、秦伯もまた禍殃を遭受す。此の林天時人事俱に乖れるを主とす。國運を占問うに、兩國交困の凶を主とす。
渙 褰衣涉河,水深漬衣。賴幸舟子,濟脫無他。
衣裳を提起して水を涉り河を過ぐも、水深くして衣服皆浸濕す。幸いに船夫に遇上し、渡りて險を脫して別の意外なし。此の林險中助を得るを主とす。難を渡るを占問うに、貴人に逢いて禍を免るるを主とす。
節 推車上山,高仰重難。終日至暮,不見阜顛。
車を推して山に往き上り、坡陡く車重く擧步維艱なり。早より天の黑くなるまで推すも、山頭を看見せず。此の林力を用ゐること過ぎて艱にして達せざるを主とす。謀事進取を占問うに、勞苦して成るなきを主とす。
中孚 鼎易其耳,熱不可舉。大路壅塞,旅人辛苦。
鼎の耳朵形を變じ、鼎身また燙して端擧する能わず。大路堵塞せられて通ぜず、行旅の人辛苦堪へざらん。此の林《易・鼎》の鼎耳革し其の行塞るの義を取る。行事出行を占問うに、阻を受けて行き難きを主とす。
小過 四亂不安,東西為患。退身止足,無出邦域。乃得完全,賴其生福。
四方動亂して安んぜず、東西兩面皆禍患なり。身を退き足るを知り國境を出でざれば、纔に自身を保全し、它に仰賴して福氣を生出す能くす。此の林亂を避けて靜を守るを主とす。出行して難を避くるを占問うに、守れば則ち安し、動けば則ち凶なり。
既濟 班馬還師,以息勞疲。役夫嘉喜,入戶見妻。
戰馬列班し大軍師を班にし、疲勞の將士をして休息を得せしむ。服役の人歡喜し、門に進めば便ち妻子を見る。此の林師還り人歸るを主とす。行人征役を占問うに、平安して團圓するを主とす。
未濟 積德不怠,遇生逢時。載善(一作喜)渭陽,身受榮光。
徳行を積累して懈怠を敢えてせず、因りて生機に遇い好い時候に趕上す。善慶を滿載して渭水の北に行き、自身榮耀光輝を承受す。此の林《詩・渭陽》の舅甥贈別の地を言と爲すを取る。功名を占問うに、徳積みて福至るを主とす。「善」の字一本「喜」と作る。
噬嗑の林(噬嗑卦六十四林)
噬嗑 麒麟鳳凰,善政得祥。陰陽和調,國無災殃。
麒麟と鳳凰と現身す、善政の感召し來たる祥瑞なり。陰陽調和順暢し、國中災殃なし。此の林徳政祥を致すを主とす。國事家運を占問うに、平安して興旺するを主とす。
乾 北風相牽,提笑語言。伯歌叔舞,燕樂以喜。
北風吹來し、衆人彼此相い攜え、手を攜えて笑語す。兄長唱歌し叔弟起舞し、宴飲歡樂して喜悅す。此の林親族和樂するを主とす。家宴聚會を占問うに、融洽歡欣を主とす。
坤 甲戊己庚,隨時運行。不失常節,咸逢出生。各樂其類,達性任情。
甲・戊・己・庚等の日辰時に隨いて運行し、常有の節度に違背せず。萬物皆生長の機に遇上し、各々同類と同樂し、本性を通達して其の眞情を任す。此の林時に順い性を任すを主とす。處世養生を占問うに、自然にして吉きを主とす。
屯 破亡之虛,神所憂衰。進德無光,留止有慶。
殘破滅亡の廢墟、正に神明の憂慮衰敗する所の處なり。此の時進取して徳を修めるも光彩を見ず、停留して守住すれば反つて喜慶有り。此の林靜に宜しく進むに宜しからざるを主とす。進退を占問うに、守れば則ち慶有り。
蒙 注斯膏澤,祈衛百毒。防以江南,虺不能螫。
此のごとき膏澤恩潤を灌注し、各種の毒害を防衛せんを祈求す。江南一帶に防備を加えば、毒蛇もまた人を蜇する能わず。此の林豫防法を得るを主とす。疾病災害を占問うに、備有れば患なし。
需 日月相望,光輝盛昌。三聖成功,仁德大降。
日と月と遙々相い望み、光輝盛大昌明なり。三位の聖人各々其の功を成し、仁徳廣泛に降臨す。此の林明德幷び耀くを主とす。國事仕進を占問うに、大吉を主とす。
訟 大蛇巨魚,戰於國郊。上下濟塞,衛侯廬漕。
大蛇と巨魚と國都郊外に爭鬥す。上下交通時に通じ時に塞し、衛侯只だ漕邑に廬舍を搭起して暫居するを得。此の林衛國東に漕に徙すの典を用ゐ。爭鬥國事を占問うに、都を失い居を寄するの厄を主とす。
師 龍入天關,經歷九山。登高上下,道里險難。日晏不食,絕無甘酸。
竜天門關隘に進入し、九重の山嶺を翻越す。高に登り下に涉り、路途險阻艱難なり。日頭の西に偏するに到りて未だ飯を吃上げず、一點の酸甜の滋味すらもなし。此の林遠征跋涉の苦を主とす。出行軍旅を占問うに、艱險にして食を乏しくするを主とす。
比 沙漠北塞,純無水泉。君子征凶,役伕力殫。
沙漠と北方邊塞、全く水泉無し。君子出征すれば凶險有り、服役の人力氣用尽きる。此の林絕地行軍するを主とす。遠征遠役を占問うに、大凶にして止むに宜し。
小畜 關柝門啟,衿帶解墮。福與善生,憂不為禍。
關卡の木柝停み門戸開啓し、衣襟帶子もまた松解し下來す。福氣善行に隨いて生じ、憂慮禍患を釀成せず。此の林戒嚴解除し、身心舒緩するを主とす。困擾を占問うに、安に轉ずるを主とす。
履 狼虎所嗥,患害必遭。不利有為,宜以遁逃。
豺狼虎豹嗥叫の地方、禍患傷害必ず遇上す。此の時爲す所有るに利ならず、當に退避して遠走すべし。此の林凶地避くべきを主とす。進取を占問うに、退くに宜しく進むに宜しからざるを主とす。
泰 金精耀怒,帶劍過午。兩虎相距,弓弩滿野,雖憂無咎。
太白金星の光耀して怒を含み、佩劍の人正午を過ぎて出行す。兩虎相持對峙し、弓弩郊野に佈滿す。憂懼あると雖も、過錯有るを得ず。此の林兵氣盛なると雖も己身傷なきを主とす。爭鬥を占問うに、驚きて咎なきを主とす。
否 朽根枯樹,華葉落去。卒逢火焱,相隨偃仆。
樹根朽爛し樹身枯干し、花葉皆已に落盡す。忽然烈火に遇上し、接續して倒伏す。此の林根本已に壞れ、變に遇えば卽ち倒るるを主とす。家業身體を占問うに、危にして支え難きを主とす。
同人 入和出暗,動作有光。轉運休息,常樂允康。
入れば和順、出れば韬晦し、一擧一動皆光彩有り。運轉と休止と各々其の時を得、長久快樂して確實に安康なり。此の林動靜宜に合するを主とす。處世を占問うに、平安順遂を主とす。
大有 國多忌諱,大人恆畏。結口無患,可以長存。
國中忌諱多く、上の位に在る者もまた常に畏懼を懷く。口を閉じて言わざれば便ち禍患なく、長久保全する可し。此の林言語禍を招くを主とす。是非仕途を占問うに、言を謹めば則ち安きを主とす。
謙 天地淳亨,六合光明。陰序陽順,厥功以成。
天地敦厚亨通し、上下四方一片光明なり。陰次序有り陽順應する能くし、功業因りて成就す。此の林時位和諧するを主とす。謀事を占問うに、諸事順成を主とす。
豫 裸裎逐狐,為人觀笑。牝雞鳴晨,主作亂妖。
赤身裸體して狐狸を追い、人の圍觀取笑する所と爲る。母鷄鳴きて曉を報ず、亂象妖異有るを主とす。此の林《尚書・牧誓》の牝鷄晨を司るの典を用ゐ。家國內政を占問うに、序を失して亂を招くを主とす。
隨 陰失陽復,桀失其室,相餧不食。
陰氣消退し陽氣回復すれど、夏桀卻って自己の宮室を失掉す。彼此食を喂すも吃し下がらず。此の林時運轉ずると雖も己身所を失うを主とす。家宅を占問うに、據を失いて安んぜざるを主とす。
蠱 蜎飛蠢動,各有配偶。大小相保,咸得其所。臨之豫)
飛ぶ蟲・蠕動の蟲、各々皆配偶有り。大小相互に保全し、全て各々其の所を得。此の林各々其の位に安んずるを主とす。婚配處世を占問うに、和順を主とす。此の條臨の豫と辭同じ。
臨 鬼守我廬,欲呼伯去。曾孫壽考,司命不許。與生相保。
鬼怪我が屋舍の傍に守住し、伯氏を叫び去らんと想う。然るに曾孫自ら長壽の分有り、司命の神許准するを肯んぜず。性命因りて保全を得。此の林邪正に勝たざるを主とす。疾病壽數を占問うに、驚有りて險なきを主とす。
觀 禍走患伏,喜為我福。凶惡消亡,災害不作。
禍事跑開し憂患潜伏し、喜慶我が福氣と成る。凶惡の氣消亡し、災害再び發生せず。此の林禍を轉じて福と爲すを主とす。災厄を占問うに、全く消して吉を主とす。
賁 智不別揚,張誑妄行。陷淵僕顛,傷殺伯身。
智慮是非を分辨する能わず、只だ一味虛張欺誑し胡亂に行事す。終に深淵に墜入して跌倒し、伯氏自身を傷害す。此の林愚妄して自ら敗るを主とす。行事を占問うに、自ら其の禍を取るを主とす。
剝 凶憂災殃,日益明章。禍不可救,三都夷傷。
凶險憂患と災殃、一天天明顯なり。禍事已に挽救する能わず、三處の都邑皆夷平損傷に遭う。此の林積りし禍暴發するを主とす。時局家國を占問うに、大凶にして救い難きを主とす。
復 長尾蜲蛇,畫地為河。深不可涉,絕無以北。悵然憤息。
長尾の委蛇の屬、地上に一道の河を劃出す。水深くして涉り過ぐる能わず、北に去る路徹底して斷絕す。只だ悵然として嘆息憤懣するを得。此の林虛境阻を成すを主とす。出行謀望を占問うに、難を受けて行き難きを主とす。
旡妄 愛我嬰女,牽引不與。冀幸高貴,反曰下賤。
我が小女兒を疼愛し、彼女を牽きて他人に許配するを肯んぜず。本來高貴の人家に攀上せんを指望すれど、反つて人に卑下微賤と說成せらる。此の林高攀を貪慕して辱を受くるを主とす。婚嫁して進を求むるを占問うに、願高くして得低きを主とす。
大畜 鳧游江湖,甘樂其餌。既不近人,雖驚不駭。
野鴨江湖の上に游び、甘んじて其の食餌を享用す。人に靠近せざるに因り、驚を受くると雖も驚駭に至らず。此の林害に遠ざかりて自ら安きを主とす。處世して險を避くるを占問うに、距離を保持すれば則ち虞なし。
頤 明滅光息,不能復食。精魄既喪,以夜為室。
光明熄滅し光輝止息し、再び進食する能わず。精氣魂魄已に喪失し、只だ黑夜を以て居室と爲すを得。此の林生機斷絕するを主とす。疾病を占問うに、大凶を主とす。
大過 奇適無偶,習靜獨處。所願不從,心思勞苦。
只身一人して配偶無く、清靜獨處に習慣す。願う所實現する能わず、心思勞苦す。此の林孤獨して遂げざるを主とす。婚姻謀望を占問うに、孤單して成るなきを主とす。
坎 葛藟蒙棘,花不得實。讒 亂政,使忠壅塞。
葛藤荆棘の上に攀纏し、花を開くも果實を結ぶ能わず。讒を進むる人朝政を攪亂し、忠言をして壅塞して通ぜざらしむ。此の林糾纏して阻を受け、忠良抑に見ゆるを主とす。仕進陳情を占問うに、始有りて終なきを主とす。
離 鵲笑鳩舞,來遺我酒。大喜在後,授我龜紐。龍喜張口,超拜福祉。
喜鵲歡笑し斑鳩起舞し、前來して我に美酒を贈る。更大なる喜事還て後頭に在り、我に龜紐印綬を授く。竜もまた歡喜して口を張き、級を越えて拜を受けて福祉を得。此の林喜訊連々至り、超擢して爵を受くるを主とす。功名を占問うに、大吉を主とす。
咸 搖尾逐災,雲孽闢除。洿泥生粱,下為田主。
尾巴を搖いて災禍を驅走し、妖孽の氣辟除せらる。低窪の污泥の裏好穀を長出し、人もまた田地の主人と做る。此の林害を除きて豐に轉ずるを主とす。田産家業を占問うに、貧より富に轉ずるを主とす。
恆 白鶴銜珠,夜食為明。膏潤優渥,國歲年豐。
白鶴口に明珠を銜み、夜裏進食するも光亮有り。雨露膏澤豐厚優渥にして、國中年成豐稔す。此の林暗處明を得、時雨滋潤するを主とす。農事家運を占問うに、豐足して吉を主とす。
遯 內執柔德,止訟以默。宗邑賴德,禍災不作。
內心柔順の徳を持守し、沉默を以て爭訟を止息す。宗廟都邑此の徳行に仰賴し、禍災再び發生せず。此の林柔を以て爭を化すを主とす。爭訟を占問うに、事を息め人を寧んじて吉を主とす。
大壯 犬吠驚駭,公拔戈起。元冥厭火,消散瓦解。
狗吠聲人をして驚駭せしめ、主公戈を拔起す。水神玄冥火勢を壓住し、禍患隨い之消散瓦解す。此の林驚變制を得るを主とす。火災驚擾を占問うに、驚有りて終に解くるを主とす。
晉 公悅嫗喜,子孫俱在。榮譽日登,福祿來處。
男主人歡悦し老婦人喜樂し、子孫皆身邊に在り。榮譽一天天上升し、福祿紛紛として到來す。此の林家門興旺するを主とす。家運子嗣を占問うに、大吉を主とす。
明夷 鳥鳴捕 ,長欲飛去。循枝上下,適與風遇。顛損樹根,命不可救。
鳥兒鳴叫して捕らる、一心飛去らんと想う。樹枝に沿いて上下跳躍す、恰好大風に遇上す。樹根傾倒折損し、性命挽救する能わず。此の林危に臨みて掙扎するも終に脫るを得ざるを主とす。危難を占問うに、凶を主とす。
家人 析薪熾酒,使媒求婦。和合齊宋,姜子悅喜。
柴を劈き火を燒きて酒を溫め、媒人に托して妻子を求娶せんとす。齊・宋兩國の聯姻を促成し、姜姓の女と其の子と皆歡喜す。此の林媒妁成を得るを主とす。婚姻を占問うに、兩姓和合して吉を主とす。
睽 鄰不我顧,而望玉女。身多疣癩,誰當媚者。
鄰里我を照顧するを肯んぜず、我卻って美玉のごとき女子を娶るを指靠す。自身疣瘡疥癩を長滿せ、誰か來りて親近愛悦せん。此の林自ら量らずして妄求するを主とす。婚姻して人を求むるを占問うに、拒に見ゆるを主とす。
蹇 遠視無光,不知青黃。黈纊塞耳,使君闇聾。
遙望するも光亮なく、青色黄色すらも分清楚せず。黄綿の制する耳塞耳朵を堵住し、君主をして昏く且つ聾ならしむ。此の林耳目蔽はるるを主とす。決斷して人を用ゐるを占問うに、蒙蔽を受けて事を誤るを主とす。
解 克身整己,逢禹巡狩。賜我元圭,蒙受福佑。
自身を克制し己行を整肅し、恰に大禹の出巡に逢う。彼我に大圭の玉を賜い、我因りて福澤庇佑を蒙受す。此の林己を修めて明主に遇うを主とす。進を求め賞を受くるを占問うに、賜を得て吉を主とす。
損 遠望千里,不見黑子。離婁之明,無益於光。
千里之外を遙望す、一顆の黑痣すらも看不見ず。縱ほ離婁のごとき目力あるも、光亮を增添するに助無し。此の林才高きと雖も境明ならざるを主とす。明察して斷を謀るを占問うに、力及ばざる所有るを主とす。
益 斧斤所斫,瘡疣不息。針口不施,下即空室。
斧頭の砍傷する所の地方、瘡疣痊愈する能わず。針藥もまた施治するに從無く、最後只だ空空の屋子を落得す。此の林創傷愈え難く、家業空虚するを主とす。疾病家計を占問うに、凶を主とす。
夬 齊侯少子,才略美好。求我長女,賤薄不與。反得醜陋,後乃大悔。
齊侯の小兒子才略出衆して品貌美好、前來して我が長女を求娶す。我彼を嫌ひて微賤輕薄と爲して許嫁を肯んぜず。結果女兒反つて醜陋の人に嫁し、事後大いに後悔す。此の林貌を以て人を取りて良配を失うを主とす。婚姻を占問うに、錯失して當に早く決斷すべきを主とす。
姤 失儷後旅,天門地戶。不知所在,安止無咎。
配偶を失掉し隊伍の後に落ち、天門地戸茫然として辨え難し。身の何處に在るかを知らず、安然として停下すれば反つて過錯なし。此の林途を迷いて止むに宜しきを主とす。出行謀望を占問うに、靜守すれば則ち咎なきを主とす。
萃 烏孫氏女,深目黑丑。嗜慾不同,過時無咎。
烏孫國の女子、眼窩深陷して面色黝黑なり。彼此嗜好欲求同じからず、此の段の時候を過ぎれば便ち過錯なし。此の林異俗合し難きを主とす。婚姻合伙を占問うに、諧わずして緩く圖るに宜しきを主とす。
升 伯駕純騮,南至東華。求索車馬,道闕中止。
伯氏清一色の騮馬を駕し、南に向かいて東華の地に到達す。一路車馬を尋求するも、道路殘缺に因りて半途停下す。此の林行程阻を受くるを主とす。出行謀望を占問うに、中道にして廢するを主とす。
困 二女寶珠,誤鄭大夫。君父無禮,自為作笑。
兩位の女子と珠寶の事、鄭國の大夫を誤らす。君父行事禮なく、自己譏笑を招來す。此の林色に因り財に因りて度を失うを主とす。人事名聲を占問うに、自ら其の羞を貽すを主とす。
井 陽城太室,神明所息。仁者之君,獨無兵革。
陽城と太室山、神明棲息の處なり。仁政を行く國君、唯だ兵戈の患無し。此の林仁者敵無きを主とす。國事安危を占問うに、仁を守れば則ち兵災を免るるを主とす。
革 反(一作大)蛇為殃,使道不通。歲收甚少,年穀敗傷。
反常の蛇災殃と成り、道路をして通ぜざらしむ。年成收穫少なく、穀物歉收敗壞す。此の林異災道を阻みて歲歉くを主とす。農事出行を占問うに、兩皆利ならざるを主とす。「反」の字一本「大」と作る。
鼎 三足孤鳥,靈明為御。司過罰惡,自殘其家。毀敗為憂。坎之渙)
三足を生じし孤鳥、神靈の驅使する所と爲る。專ら過を察し惡を罰するの職を司るも、反つて自己の家を殘害す。毀敗これによって憂患と成る。此の林苛察して自ら傷るを主とす。法を執り家を治むるを占問うに、過ぎて嚴刻にして敗るを主とす。此の條坎の渙と辭同じ。
震 車駕兩靷,絕馬欲步。雙輪脫行,至道遇害。一本作膠車乃駕,兩引如繩。馬絕靷走,雙輸脫去)
車上兩條の引繩を駕す、繩子斷れ、馬只だ緩步して行くを得。兩隻の車輪脫落し、大路に到れば禍害に遭遇す。此の林行具敗壞し、途中變を生ずるを主とす。出行運輸を占問うに、中途損を受くるを主とす。舊本「膠車乃駕、兩引如繩。馬絕靷走、雙輸脫去」と作る。
艮 鬱映不明,為陰所傷。眾霧麗集,共奪日光。
光影鬱結して映照するも分明ならず、陰氣の傷る所と爲る。重重の濃霧附着聚集し、一同に日光を奪去す。此の林群陰明を蔽うを主とす。事理時局を占問うに、晦暗して辨え難きを主とす。
漸 鸇 梟,治城御災。周公勤勞,綏得安家。
鸇鳥惡梟を驅逐し、城池を修治して災禍を抵禦す。周公勤勉操勞し、終に安撫を得て家國安寧す。此の林惡を除きて固く守るを主とす。患を防ぎ家を治むるを占問うに、勞して後に安きを主とす。
歸妹 名成德就,項領不試。景公耄老,尼父逝去。
名聲已に成り徳行已に就くも、卻って肥壯の馬頸のごとく駕用せられず。齊景公年老昏聵し、孔夫子只だ離去するを得。此の林孔子齊を去るの典を用ゐ。仕を求むるを占問うに、才成りて用ゐられざるを主とす。
豐 一夫兩心,岐刺不深。所為無功,求事不成。
一個の人兩樣の心思を懷き、分叉の刺扎りて深からず。做する所の事功效なく、求辦する事成らず。此の林心志專ならざるを主とす。謀事を占問うに、半途にして廢するを主とす。
旅 羿張烏號,彀射天狼。趙國雄勇,敗於滎陽。
后羿烏號の良弓を張開し、弦を拉滿して天狼星に射向す。趙國雄壯勇武なると雖も、卻って滎陽一帶に敗北す。此の林强弓必勝を保ち難きを主とす。爭戰競逐を占問うに、勇を恃みて敗るを主とす。
巽 東家殺牛,汙臭腥臊。神皆西顧,命衰絕周。
東鄰牛を殺して盛祭すれど、牲肉卻って污穢腥臭なり。神明皆頭を掉して西に向かいて看、氣數衰落して周室斷絕す。此の林《易・既濟》の東鄰の牛を殺すは西鄰の禴祭に如かずの義を取る。祭祀國運を占問うに、奢祭して益なきを主とす。
兌 火起我後,喜炙吾廬。蒼龍銜水,泉噀屋柱,雖難無咎。
火我が身後より燒起し、眼看我が屋子を烤せんとす。蒼竜口に水を銜みて來り、泉水を屋柱の上に噴す。危難あると雖も過錯有るを得ず。此の林火厄救を得るを主とす。災患を占問うに、險して解を獲るを主とす。
渙 桃雀竊脂,巢於小枝。搖動不安,為風所吹。寒心飄搖,常憂殆危。
桃雀脂膏を偷食し、細小の枝條の上に巢を築く。巢搖晃定まらず、また風の吹動する所と爲る。鳥兒心寒して搖蕩し、時時傾危を擔憂す。此の林身を託すること固からざるを主とす。依附居處を占問うに、驚懼して安んじ難きを主とす。
節 徒足去域,飛入東國。有所畏避,深藏遠匿。
徒步して本境を離れ、一路東方の國に奔入す。畏懼躲避する所有るに因り、只だ深藏遠匿するを得。此の林禍を避けて遠遁するを主とす。出行して難を避くるを占問うに、隱るるに宜しく顯るるに宜しからざるを主とす。
中孚 璚英朱草,仁政得道。鳧鷖在渚,福祿來下。
瓊玉の英と朱草のごとき瑞物出現す、仁政大道に合するの應驗なり。野鴨と鷗鳥と水中の小洲の上に棲し、福祿隨い之降下す。此の林《詩・鳧鹥》の義を取る。福を求むるを占問うに、徳至りて福來るを主とす。
小過 陳蔡之厄,從者飢瘦。明德上通,憂不為凶。
孔子陳・蔡の間に困せられ、隨行の弟子餓えて消瘦す。然るに光明の徳行天に上達し、憂患終に凶險を釀成せず。此の林困厄其の徳を損わざるを主とす。困境を占問うに、終に脫出する能くするを主とす。
既濟 春桃生花,季女宜家。受福多年,男為邦君。
春天桃樹開花し、少女正に出嫁成家するに宜し。此の後多年福澤を承受し、生む所の男兒還て一方の國君と做る。此の林《詩・桃夭》の義を取る。婚姻子嗣を占問うに、大吉して後福顯達するを主とす。
未濟 徑邪賊田,政惡傷民。夫婦咒詛,太山覆顛。
歪斜の小路田地を侵占し、政令苛惡にして百姓を傷害す。夫妻すらも暗中咒罵詛咒し、泰山もまた傾覆坍塌せんとするがごとし。此の林苛政民心を失うを主とす。國事時局を占問うに、民怨沸騰して傾覆を致すを主とす。
賁の林(賁卦六十四林)
賁 仁政不暴,鳳凰來舍。四時順節,民安其居。
仁政を推行して暴虐を施さざれば、鳳凰便ち飛來して棲息す。春夏秋冬各々節令に依りて運轉し、百姓安穩として自己の家園に住す。《尚書・益稷》に「簫韶九成、鳳凰來儀」と記す、正に徳有る君の祥禽を感召するの意なり。此の林上下和洽し、家國安寧するを主とし、事を謀れば吉を得。
乾 八口九頭,長舌破家。帝辛沈湎,商滅其墟。
怪物八張の嘴・九個の頭を生出し、長舌是非を搬弄し、家業これによって敗壞す。商紂王帝辛酒色に沉溺し讒言を聽信し、終に國亡び、都城化して廢墟と爲るを致す。此の林怪形を以て衆口交讒に喩へ、占問うに口舌禍を招き、家國傾覆するを主とす、凶。
坤 鬼守我門,呼伯入山。去其室家,舍其兆墓。
鬼魅門口に守住し、家中の長兄を招呼して山に入らしむ。人迫られて屋舍田宅を離れ、祖先の墳地すらも丟下して顧みず。古人墓域を「兆」と稱す、祖墳を棄つるは流亡の極に到るなり。此の林遷徙離散し、所を失いて歸無きを主とす。家宅と出行とを占うに皆凶。
屯 日出阜東,山蔽其明。章甫薦履,箕子佯狂。剝之泰)
太陽東邊の土山より升起すれど、卻って高山に光明を遮住せらる。「章甫」の禮冠を脚下に墊きて鞋と爲す、貴賤倒置す。箕子紂王の無道を眼見して、只だ狂を裝りて禍を避くるを得、《史記・宋微子世家》に其の囚われて佯狂して奴と爲るを載す。此の林賢者蔽を受け、尊卑序を失うを主とし、韬晦して自ら守るに宜し。同辭また「剥の泰」に見ゆ。
蒙 戴盆望天,不見星辰。顧小失大,福逃牆外。
頭上盆子を頂きて天空を仰望す、一顆の星辰も見えず。只だ眼前の小利を顧みて、反つて大處を丢了、福氣牆外より溜走す。司馬遷《報任安書》に「盆を戴きて何以天を望まん」と有り、二事兼ね得る能わざるを喩う。此の林見識蔽を受け、小に因りて大を失うを主とし、占問うに利ならず。
需 兩輪日轉,南上大阪。四馬共轅,無有重難。與語笑言。
車子兩輪整日轉動し、南に向かいて高大の坡坂に翻上す。四匹馬同じく一轅を拉し、再び重き負擔も艱難を覺えず、一路談笑して行く。此の林同心協力の象を取り、人多く助け行程順遂するを主とし、出行・合伙・財を求むるを占うに皆吉。
訟 羊驚狼虎,聳耳群聚。行旅稽難,留連愁苦。
羊群狼虎の驚嚇する所と爲り、耳朵を竪起して一團に擠作す。門を出でて外に在る人處處阻留難を受け、他鄉に滯留し、憂愁困苦す。此の林弱畜の猛獸に遇うを以て處境險迫に喩へ、行旅と訴訟とを占問うに多く阻滯有り、凶を主とす。
師 楩生荊山,命制輸班。袍衣剝脫,夏熱冬寒。飢餓枯槁,眾人莫憐。
楩木荆山の中に生す、下令せられて公輸班に交へ砍伐して器を制さしむ。樹皮衣袍のごとく剥去せられ、夏日暴曬し冬日凍を受け、枯槁憔悴して憐惜する人無し。公輸班卽ち魯班なり、最も大木を役使するに善し。此の林良材の戕に遭うを借りて賢者の役せられて苦を受くるに喩へ、占問うに勞役損傷を主とす、凶。
比 鳥飛無翼,兔走折足。不常其德,自為羞辱。
鳥飛ばんと欲するも翅膀無く、兔跑らんと欲するも腿を折斷す。徳行常のごとく一に守る能わざれば、只だ自ら羞辱を取るを得。《論語・子路》に「其の徳を恒にせざれば、或いは之に羞を承けん」と引く、語本《易・恒》の九三爻辭なり。此の林力心に從わず、反覆して成るなきを主とす、占問うに吉ならず。
小畜 條風制氣,萬物出生。明庶長養,花葉壯茂。
東北方の「條風」節氣を調理し、萬物隨い之萌生す。東方の「明庶風」生長を滋養し、花葉因りて壯盛繁茂す。八風の名《淮南子・天文訓》に見ゆ。此の林時序宜を得、生機勃發するを主とし、生養と事業の起步とを占問うに皆吉。
履 坤厚地德,萬物蕃息。平康正直,以綏大福。
大地厚德承載し、萬物其の上に繁衍生息す。人と爲り平和安順・正直にして邪ならず、因りて大福を招來す。「平康正直」は《尚書・洪範》の三德の說に出づ。此の林厚德物を載せ、福禄を安享するを主とし、家宅と子嗣とを占問うに皆吉。
泰 昴畢附耳,將軍乘怒。路徑隔塞,燕雀驚駭。
昴宿・畢宿と附耳星と相い犯す、天象已に兵事を示す。將軍怒に乘じて師を興し、道路阻絕して通ぜず、燕雀すらも驚飛四散す。附耳讒言と邊兵とを主とす、《史記・天官書》に見ゆ。此の林兵戈驟に起り、行路阻を受くるを主とす、出行を占問うに凶。
否 東風啟戶,黔啄翻舞。各樂其類,咸得生處。
東風門戸を吹開し、黑喙の鳥兒翻飛起舞す。各類の生靈同類と相い歡し、皆安身の地を找到す。此の林春氣發動し群生所を得るの象を取り、各々其の位に安んじ和樂して相い親しむを主とし、居處と交友とを占問うに皆吉。
同人 兩足四翼,飛入家國。寧我伯姊,與母相得。
兩足四翅を生じし異禽家門と邦國とに飛進す。它我が長姐を安撫し、彼女をして母親と重ねて融洽に歸らしむ。此の林祥鳥宅に入るを以て吉兆と爲し、親族和睦し久しく隔たりて重ねて合するを主とし、家事と婚姻とを占問うに皆吉。
大有 歲暮花落,陽入陰室。萬物伏匿,歲不可得。
一年將に盡きんとし、花朵凋落し、陽氣幽暗の室に退入す。萬物潜藏隱伏し、此の一年の收成再び指望する能わず。此の林冬閉の象を取り、時機已に過ぎ、求む所落空するを主とし、財を求め事を謀るを占問うに皆利ならず、靜守して來春を待つに宜し。
謙 釋然遠咎,避患高阜。田獲三狐,以貝為寶。君子所在,安寧不殆。
心中釋然として災咎に遠ざかり、高地に登上して禍患を躲開す。田獵して三隻の狐狸を捕得し、また寶貨と作る貝幣を得。「田に三狐を獲」は本《易・解》の九二爻辭なり。此の林險を避けて利を得、身安くして危なきを主とし、出行と財を求むるとを占問うに皆吉。
豫 遷延卻縮,不見頭目,日以困急。
一味拖延退縮し、事情の頭緒すらも理出す能わず、處境一天天窘迫危急す。此の林猶豫して機を失い、進退據なきを主とし、事を謀るを占問うに成らず、速かに斷ずるに宜しく再び拖るに宜しからず。
隨 秋隼冬翔,數被嚴霜。雄犬夜鳴,家擾不寧。
隼鳥秋冬に到りて仍ほ空中に盤旋し、屢々嚴霜の侵する所と爲る。公狗夜裏狂吠し、家中騷擾して安寧を得ず。此の林時を失しし禽・夜を警す犬を以て象と爲し、外に寒苦有り內に驚擾有るを主とし、家宅を占問うに安んぜず。
蠱 班馬還師,以息勞疲。役夫嘉喜,入室見妻。
軍馬師を班にして朝に回り、疲憊の士卒をして休息を得せしむ。服役の人歡歡喜喜として、家中に回到して妻子に見着く。「班馬」卽ち師を回らす馬にして、語《左傳》に見ゆ。此の林勞役告終し、久別重逢するを主とし、家に歸ると久事の成を得とを占問うに皆吉。
臨 老楊日衰,條多枯枝。爵級不進,遂至摧隤。
老楊樹一天天衰敗し、枝條多半已に枯死す。官爵品級升遷を得ず、終に頹敗傾倒す。《易・大過》は枯楊を以て衰老將に盡きんとするに喩う。此の林氣數已に衰え、仕途進まざるを主とし、功名と疾病とを占問うに皆凶。
觀 順風吹火,牽騎驥尾。易為功力,因懼受福。
風勢に順いて火を吹き、駿馬の尾に攀附して路を趕り、力を用ゐること少なくして成功易し。心存して戒懼し敢えて自恃せざるに因り、反つて福澤を承受す。「驥尾に附」の喩《史記・伯夷列傳》に見ゆ。此の林勢を借りて事を成し、謙懼して福を得るを主とし、進を求むるを占問うに吉有り。
噬嗑 六人俱行,各遺其囊。黃鵠失珠,無以為明。
六個の人一同に路上し、各々行囊を丟失す。黄鵠口中の明珠を失し、再び前路を照亮する光なし。此の林同行して守を失い、恃む所盡く失うを主とし、出行と財を求むるとを占問うに皆亡失を主とす、凶。
剝 依叔牆隅,志下心勞。楚王晨食,韓子低頭。
叔父家の牆角に依傍して棲身し、志氣低落して心神勞苦す。楚王安然として早膳を享用し、韓國の臣只だ俯首侍立するを得、强弱の勢判然として見る可し。此の林人の籬下に寄るを以て象と爲し、下位に屈居し勞して伸ばざるを主とし、干謁して人を求むるを占問うに多く屈抑を受く。
復 三年生狗,以戌為母。荊夷上侵,姬伯出走。坤之震,需之訟,否之姤)
三年養いし狗、「戌」を以て母と認む、十二支の中戌本犬に配す。南方荆楚の夷北に侵逼し、姬姓の諸侯只だ國を棄てて出走するを得。此の林外患內迫し、位を失いて遠遁するを主とし、土を守ると官に居るとを占問うに皆凶。同辭また「坤の震」「需の訟」「否の姤」に見ゆ。
旡妄 鶴盜我珠,逃於東都。鵠起追求,郭氏之墟。不見蹤跡,反為禍災。
鶴我が明珠を銜走して、東都に逃往す。鵠鳥身を起して追討し、一直に郭氏の廢墟に追到す。蹤跡全無く、反つて災禍を惹上す。郭氏の墟《管子》に見ゆ、善を善して用ゐる能わず以て國を亡ばすの舊地なり。此の林物を失いて尋ね難く、追討して殃を招くを主とし、失脫と爭訟とを占問うに皆凶。
大畜 外與中退,舉事不遂。餔麋毀齒,失其道理。
外面の應接と裏面の支撐と一齊に後退し、辦事因りて成就する能わず。粥糜を吃するは本來牙を省くの事なるに、反つて牙齒を弄壞し、做法全く道理を失了。此の林內外援無く、擧措方に乖るを主とし、事を謀るを占問うに成らず。
頤 鴻鵠高飛,鳴求其雌。雌來在戶,雄哺嘻嘻。甚獨勞苦,炮鱉膾鯉。
鴻鵠長空を高飛し、鳴叫して配偶を尋求す。雌鳥門前に來到し、雄鳥歡歡喜喜として食を銜みて彼女に喂す。獨り十分勞苦すると雖も、終に鼈を炮き鯉を切して佳肴を享用する能くす。此の林偶を求めて應を得、辛勤して報有るを主とし、婚姻と財を求むるとを占問うに皆吉。
大過 褰衣涉河,水深漬衣。幸賴舟子,濟脫無他。觀之渙,剝之賁)
衣裳を提起して徒步して河を過ぐるも、水太だ深く、衣裳全く浸濕せらる。幸いに船夫の相渡するに遇上して、纔に平安して險を脫し、別の禍事なし。此の林險を涉りて救に遇い、驚有りて險なきを主とし、出行と危難とを占問うに人の相助けを得れば則ち吉。同辭また「觀の渙」「剥の賁」に見ゆ。
坎 虎齧龍指,泰山之崖。天命不佑,不見其雌。
老虎泰山の崖畔に龍爪を啃咬す。天命庇佑を加えず、雌者始終曾て相見ず。此の林龍虎の相い搏つを以て强敵の交爭に喩へ、孤立して助無く、求む所遇わざるを主とし、婚姻と事を謀るとを占問うに皆凶。
離 明不處暗,智不履危。終年卒歲,樂以笑歌。
明白の人暗處に待つを肯んぜず、智慧有る人險地に踏上するを去らず。此のごとく一年到頭、皆歡笑歌唱して日を度る能くす。此の林機を見て害に遠ざかり、平安して歲を終るを主とし、身家安泰を占問うに、吉。
咸 三足俱行,傾危善僵。六指不便,慁累弟兄。樹柱閡車,失其正當。車一作居)
三隻の脚一齊に路を走り、重心偏倚して跌倒し易し。手上指を多生すれば反つて不便にして、還て兄弟を連累す。柱子を竪起して車道を擋し、處置全く正當を失う。此の林形體正ならず、行事礙難するを主とし、出行と合作とを占問うに多く滯礙有り。「車」一本「居」と作る。
恆 含車而徒,亡其駁牛。雖喪白頭,酒以療憂。
車子を舍てて步行す、あの雜色の牛すらも丢了。老に託する憑借を失了と雖も、還て酒を借りて憂愁を消解する能くす。此の林車畜俱に失い、損耗免れ難きを主とし、憂暫く紓る可し、財を求むるを占問うに利ならずして身大害なし。
遯 析薪熾酒,使媒求婦。和合齊宋,姜子悅喜。
柴を劈き酒を溫めて禮席を備下し、媒人を派して前去して親を求めしむ。齊國と宋國と婚好を結成し、姜姓の女子歡喜して出嫁す。《詩經》屢々「薪を析」を以て婚姻の事に喩う。此の林媒妁成を得、兩姓和合するを主とし、婚嫁を占問うに大吉。
大壯 夜視無明,不離商賈。子反笑歡,與市為仇。
夜裏物を視れば亮光を見ず、然れど仍ほ經商賣買を舍下げ能わず。子反只だ飲酒歡笑を顧みて、反つて市井と怨仇を結下す。《左傳》楚將子反酒を嗜みて國を誤るを載す。此の林時勢に昧く、利を逐いて怨を招くを主とし、經商を占問うに利ならず。
晉 徒行離車,□厭泥塗,利以休居。
車子を舍てて徒步して行き、深深此の一路の泥濘を厭惡す。眼下停下して歇息安居するに宜し。此の林行程阻を受け、勉强して前進すべからざるを主とし、出行を占問うに利ならず、靜を守れば則ち安し。
明夷 作室山根,人以為安。一夕崩巔,破我□飧。
山脚下に屋を造れば、人人皆以て穩當と爲す。不料一夜の間山頂崩塌し、一頓の飯すらも吃成せず。此の林險地に安處し、禍測らざるに生ずるを主とし、居宅と營造とを占問うに皆凶、早く遷避するに宜し。
家人 東山西山,各自言安。雖相登望,竟未同堂。
東邊一座の山、西邊一座の山、各々皆自家安穩と說す。高に登りて相互に眺望する能くすると雖も、終に一堂に同處する能わず。此の林兩地分居し、親しくして合せざるを主とし、合伙と團聚とを占問うに成り難し。
睽 君子在朝,凶言消去。驚駭逐狼,不見雄英。
君子朝堂に立てば、惡言凶語自然に消散す。衆人驚駭の下惡狼を驅趕するも、卻って眞正の英傑の出面を見ず。此の林正人位に當たれば則ち邪祟自ら退くを主とすれど、事に臨みて才に乏し、朝局を占問うに安んずる可し然れど人を用ゐるに闕有り。
蹇 □慎慎,一作□墳墳)火燒山根。不潤我鄰,獨不蒙恩。
火勢隱隱騰騰として、一直に山脚下に燒到す。此の場の火並びに我が鄰里を潤澤せず、唯だ我が一家恩惠を得ず。此の林災己身に及び、恩澤均しからざるを主とし、恩を求め助を借るを占問うに皆得る所なし。「愼愼」一本「墳墳」と作る。
解 南山之蹊,真人所遊。德配唐虞,天命為子。保佑歆享,身受大慶。復之比,否之豫)
南山の小徑、道を得たる眞人の往來の處なり。其の徳唐堯虞舜と相配する可く、天命を受けて天子と爲る。神明保佑して祭祀を歆享し、自身大福慶を承受す。此の林徳高くして位尊く、福祿綿長を主とし、功名と福を求むるとを占問うに大吉。同辭また「復の比」「否の豫」に見ゆ。
損 龍蛇所聚,大小來處。泱泱霈霈,淡淡磕磕。使我無賴。
龍蛇聚集の地、大小の物皆來りて棲止す。水勢浩蕩して雨聲滂沱し、波光蕩漾して石聲磕碰し、我をして依託する所無からしむ。此の林環境雜亂し、群邪幷び至るを主とし、居處を占問うに安んぜず、心主とする所なし。
益 旃裘若闔,慕德獻服。邊鄙不悚,以安王國。
氈裘を穿つ外族門を關し戸に歸るがごとく紛紛として來附し、徳化を仰慕して貢服を獻上す。邊地再び驚恐せず、王朝これによって安定す。此の林遠人心を歸し、邊境警なきを主とし、國事と遠行とを占問うに皆吉。
夬 光體春成,陳倉雞鳴。陽明失道,不能自守。消亡為咎。大有之井)
光華の體春日に生成し、陳倉の寶鷄夜半啼鳴す。《史記・封禪書》秦文公の陳寶を得るを載す、鷄鳴祥と爲す。然るに陽明の氣其の常道を失い、自ら守る能わず、終に消亡して災咎と成るに至る。此の林始め盛んにして終に衰え、吉兆保ち難きを主とし、成を守るを占問うに利ならず。同辭また「大有の井」に見ゆ。
姤 下泉苞稂,十年無王。荀伯遇時,憂念周京。無一作九蠱之歸妹)
低窪處の泉水成叢の莠草を浸壞し、十年の間王者出でて事を主する無し。《詩經・曹風・下泉》正に周室の衰微を傷む、荀伯時に適逢し、日夜周室京師を憂念す。此の林王綱振わず、忠臣獨り憂うるを主とし、時局を占問うに艱難にして心志嘉むべし。「無」一本「九」と作る、同辭また「蠱の歸妹」に見ゆ。
萃 仁德不暴,五精就舍。四序允釐,民安其居。
仁徳を施行して暴虐を用ゐざれば、五方精氣皆來りて歸依す。四時次序治理を得、百姓安居樂業す。此の林「賁の賁」と意同じ、徳政感召し時和して歲稔るを主とし、家國を占問うに皆吉。
升 隋和重寶,眾所貪有。相如睨柱,趙王危殆。
隋侯の珠と和氏の璧とは絕世の重寶にして、人人皆己が有と據せんと想う。藺相如怒視して庭柱を睨み身を以て璧を護れば、趙王の處境其の實已に十分危險なり。事《史記・廉頗藺相如列傳》に見ゆ。此の林璧を懷きて其の罪と爲り、寶に因りて危を致すを主とし、財を守るを占問うに慎むに宜し。
困 鳳生五雛,長於南郭。君子康寧,悅樂身榮。
鳳凰五隻の雛鳥を生下し、南面の城郭に養育す。君子これによって安康寧泰にして、歡悦快樂して身榮顯に居る。此の林鳳の五雛を育るを以て子孫衆多、門第昌盛に喩へ、子嗣と家運とを占問うに皆吉。
井 二人為旅,俱歸北海。入門上堂,拜謁王母。勞賜我酒,女功不喜。
兩人伴を結びて遠行し、一同に北海に回る。門に進み堂に登り、王母を拜見し、彼女の慰勞して酒を賜うを蒙る。只だ女子の紡織の功着落無く、喜と爲すに足らず。此の林行旅して貴人に遇うを主とし、然れど內事成らず、出行を占問うに吉、婦功平平なり。
革 逐憂除殃,洿泥生粱,下田為王。
憂愁を驅走し災殃を除去し、污泥の裏すらも好糧を長出し、低窪田反つて第一等の好田と成る。此の林否極まりて泰來り、賤地貴を生ずるを主とし、禍を轉じて福と爲すを占問うに、田産と農事と皆吉。
鼎 東門之墠,茹藘在阪。禮義不行,與我心反。
東門外の平坦祭場、茜草坡上に長す。《詩經・鄭風・東門之墠》本來男女の相思を詠んで禮防行はれず、如今禮義廢弛し、我が心意と全然相い違す。此の林情禮相い乖るを主とし、願う所諧わざるを占問うに、婚姻多く阻隔有り。
震 鳧遇稻蘆,甘樂□,雖驅不去。
野鴨稻田と蘆蕩とに遇上し、甘美して自ら其の樂を得、人の怎樣驅趕するを任せども離るるを肯んぜず。此の林其の安んずる所を得、戀いて返るを忘るるを主とし、居處を占問うに安穩なり、亦た貪戀して移らざるの虞有り。
艮 清人高子,久屯外野。逍遙不歸,思我君母。公子謁請,王孫嘉許。
清邑の將士と主帥高克、長久城外の曠野に屯駐す。彼ら河上に逍遥して師を回らすを肯んぜず、心裏國君と母親とを思念す、《詩經・鄭風・清人》正に此の事を詠む。後來公子出面して命を請い、王孫之に嘉許を予以す。此の林久しく外に役して終に召還を得るを主とし、遠行して軍に從うを占問うに先に困にして後に通ず。
漸 讒□所言,語不成全。虎狼之患,不為我殘。
讒人の說く所の話支離破碎して、前後理を成す能わず。縱ほ虎狼のごとき禍患有ると雖も、我に傷害到らず。此の林讒言自ら破り、身害を免るるを主とし、占問うに是非に纏はるると雖も終に咎無きを得。
歸妹 張羅捕鳩,鳥麗其災。雌雄俱得,為網所賊。剝之歸妹)
羅網を張開して斑鳩を捕捉す、鳥兒正に此の場の災禍に落進す。雌雄一齊に擒せられ、皆羅網の殘害に遭う。此の林羅網に陷入し、夫婦同じく其の難を罹るを主とし、出行と事を謀るとを占問うに皆凶。同辭また「剥の歸妹」に見ゆ。
豐 安仁尚德,東鄰慕義,來安吾國。
仁厚に安んじ徳行を崇尚し、東邊の鄰邦此の道義を仰慕し、前來して我が國家をして安寧を得せしむ。此の林徳鄰邦を感じ、敵を化して友と爲すを主とし、外交と人事の和合とを占問うに皆吉。
旅 猾丑假誠,前後相違。言如鱉咳,語不可知。
奸猾醜惡の人誠懇を假裝し、前言と後語と自相違背す。彼說話すること鼈の咳嗽するに同じく、含糊して聽明白ならず。此の林小人詐を飾り、言信に足らざるを主とし、交易と合謀とを占問うに欺誑を防ぐに宜し。
巽 懷璧越鄉,不可遠行。蔡侯兩裘,久苦流離。
寶璧を懷揣して鄉を離れて遠く去る、此のごときは遠門を出ずるに宜ならず。蔡侯只だ兩件の裘衣に因りて楚人を罪し、扣留せられて長久困苦流離す、事《左傳》に見ゆ。此の林財に因りて禍を賈い、羈旅して歸り難きを主とし、遠行を占問うに凶。
兌 伯氏歸國,多所恨惑。車頓蓋傾,身常驚惶。乃得其願,雌雄相從。
伯氏本國に返回し、心中怨恨と疑惑と多し。車子顛覆し車蓋傾倒し、一路驚慌して安んぜず。最終卻って心願を遂げ、雌雄相隨相合す。此の林先に險にして後に遂う、終に團圓を得るを主とし、家に歸ると婚姻とを占問うに先に凶にして後に吉。
渙 火石相得,乾無潤澤,利少囊縮。
火と石と相い擊して熱を生じ、乾燥の極毫も潤澤なく、利息微薄にして、錢囊一天天乾癟す。此の林燥竭して資無く、利を獲ること甚少しを主とし、財を求むるを占問うに利ならず。
節 君明聖哲,鳴呼其友。顯德之徒,可以禮仕。
君主聖明睿智にして、鳴禽の同伴を呼喚するがごとく賢友を招來す、《詩經・小雅・伐木》正に鳥鳴して友を求むるの義を取る。徳行顯著の人、禮を依りて出仕する可し。此の林明主賢を求め、士其の時を得るを主とし、官を求めと薦擧とを占問うに皆吉。
中孚 騎豚逐羊,不見所望。徑涉虎廬,亡豚失羊。乾之蹇)
小豬を騎りて羊群を追趕に往けば、指望する物一樣も追上げ得ず。また徑直に老虎の巢穴を闖過し、結果猪無くなり、羊もまた丢了。此の林恃む所人に非ず、貪求して兩失するを主とし、財を求めと追討とを占問うに皆凶。同辭また「乾の蹇」に見ゆ。
小過 元黃虺隤,行者勞罷。役夫憔悴,處子猥衰。
馬病みて毛色黯淡・腿脚發軟す、《詩經・周南・卷耳》正に「我が馬虺隤」の句有り。路を趕る人もまた疲勞不堪なり。服役の人形容憔悴し、閨中の女子隨い之枯槁す。此の林行役困頓し、內外交瘁するを主とし、出行と身體とを占問うに皆利ならず。
既濟 右手掩目,不見長叔。失其所得,悔吝相仍。
右手を以て眼睛を遮住し、自家の長輩叔父すらも看不見ず。已に手に到手したる物また失了、悔恨と吝惜と接續して斷えず。此の林自ら其の明を蔽い、得て復た失うを主とし、成を守ると財を理するとを占問うに皆凶。
未濟 免冠進賢,步出朝門。儀體不正,賊孽為患。否之兌)
官帽を脫下し賢能を推擧し、緩步して朝堂大門を走出す。然るに儀容擧止法度に合せず、奸邪の輩便ち隙に乘じて害を爲す。此の林賢に讓るは善なると雖も自處儀を失し、終究禍端を啓開すを主とし、官事を占問うに禮法を謹守するに宜し。同辭また「否の兌」に見ゆ。
剥の林(剥卦六十四林)
剝 行觸大諱,與司命忤。執囚束縛,拘制於吏。憂人有喜。中孚之震)
行事重大の忌諱に觸犯し、人の生死を掌る司命の神と相い抵牾し、因りて捉拿捆縛せられ、官吏の拘管を受く。幸いに憂愁の人終に喜事有り。此の林忌を犯して刑を招き、先に囚われて後に釋かるを主とし、官訟を占問うに先に凶にして後に吉。同辭また「中孚の震」に見ゆ。
乾 穿胸狗邦,僵離旁舂。天地易紀,日月更始。師之謙)
穿胸國・狗國此等の遠方異邦、《山海經》貫胸の民と犬封の國とを載す。彼の處の人僵仆流離し、只だ傍に在りて米を舂き役に服するを得。天地綱紀を更換し、日月重ねて開始す。此の林世道劇變し、舊秩序崩壞するを主とし、占問うに元を改め主を易うるの象有り、靜觀して時を待つに宜し。同辭また「師の謙」に見ゆ。
坤 從風縱火,荻芝俱死。三害集房,十子中傷。
風勢に順いて火を放ち、蘆荻と靈芝と一同に燒死し、好壞俱に毀る。三樣の禍害屋の中に聚集し、十個の孩子皆傷を受く。此の林玉石俱に焚れ、子孫に殃及ぶを主とし、家宅を占問うに大凶。
屯 北山有棗,橘柚所聚。荷囊載擔,香盈筐筥。
北山上棗樹を長せ、亦た橘柚の匯聚の處なり。口袋を背起し擔子を挑上して前去して采摘すれば、香氣圓筐方筥に裝滿す。此の林物産豐饒にして、獲を載せて歸るを主とし、財を求めと遠行して利を獲るとを占問うに皆吉。
蒙 □金贖狸,不聽我辭。繫於虎鬚,牽不得來。否之革,需之睽,震之咸,巽之需)
錢を以て狸貓を贖回せんと往くも、對方卻って我が說辭を聽かず。あの狸老虎の鬚の上に拴がれ、怎麼牽くも牽き過來ず。此の林求む所强者に受制し、贖討功なきを主とし、失物と人情とを占問うに皆遂い難し。同辭また「否の革」「需の睽」「震の咸」「巽の需」に見ゆ。
需 上下惟邪,寡婦無夫。歡心隔塞,君子離居。
上上下下皆邪路を走り、寡婦丈夫依る可きなし。歡好の心阻隔壅塞せられ、君子只だ家を離れて別居するを得。此の林風俗敗壞し、情意通通ぜざるを主とし、婚姻と家宅とを占問うに皆凶。
訟 二人輦車,徙去其家。並沸釜鳴,不可安居。復之旅)
兩個の人車子を推し、家を擧げて搬遷離去す。鍋中水一齊に沸騰して釜鳴響を發す、此れ不祥の兆にして、再び安居する能わず。此の林遷徙動蕩し、宅守る可からざるを主とし、居處を占問うに凶。同辭また「復の旅」に見ゆ。
師 蹇驢不才,駿驥失時。筋力勞盡,罷於沙丘。履之巽)
跛驢本來才力なく、駿馬また生まれて時に逢わず。筋力耗尽し、困頓して沙丘に倒斃す。此の林良材時を失い、力竭きて成るなきを主とし、人を用ゐと遠行とを占問うに皆利ならず。同辭また「履の巽」に見ゆ。
比 明傷之初,為穆出郊。以讒復歸,名曰豎牛。剝亂叔孫,飫於空丘。
光明初めて損傷を受くるの時、穆子の緣故に因りて郊外に出づ。此の人讒言を進るを靠りて回來を得、名づけて豎牛と曰う。《左傳》豎牛の叔孫氏の家を攪亂し、終に叔孫穆子をして餓死せしめ、自己卻って空丘に飽食するを載す。此の林讒佞家を亂り、嫡庶序を失うを主とし、家事を占問うに大凶。
小畜 天火大起,飛鳥驚駭。作事不時,為多咎。
天大火を降して熊熊と燃え起き、飛鳥驚駭して四散す。事を做すに時宜に合せず、因りて災咎多し。此の林天災驟に至り、擧動時を失うを主とし、諸事を占問うに利ならず。
履 土與山連,共保歲寒。終無災患,萬世長安。
平地と高山と相い連なり、一同に歲末の嚴寒を守住す。始終災禍なく、萬代長久安寧す。此の林基業厚重にして、久安して危ならざるを主とし、家宅と國運とを占問うに皆大吉。
泰 日出阜東,山蔽其明。章甫薦履,箕子佯狂。賁之屯)
太陽東邊の土山より升起すれど、卻って高山に光明を遮蔽せらる。章甫の禮冠を墊きて鞋子と作す、尊卑顛倒す。箕子紂王の亂に面對し、只だ佯狂して禍を免るるを得。此の林賢才抑を受け、時事昏亂するを主とし、隱晦して自ら全うするに宜し。同辭また「賁の屯」に見ゆ。
否 龍馬上山,絕無水泉。喉焦唇乾,口不能言。乾之訟)
竜馬高山に奔上すれど、山上一點の泉水もなし。喉嚨焦渴して嘴唇乾裂し、話すらも說出す能わず。此の林高に處りて其の資とする所を失い、才大にして養う所無きを主とし、財を求めと助を求むるとを占問うに皆着落なく、凶。同辭また「乾の訟」に見ゆ。
同人 雄處弱水,雌在海濱。將別持食,悲哀於心。
雄鳥西方の弱水に棲し、雌鳥遙かに東邊の海濱に在り。弱水《山海經》に見ゆ、遙かに涉る可からざるの水なり。別れに臨みて各々食物を銜みて、心中一片悲哀なり。此の林兩地相隔て、生離して聚まり難きを主とし、婚姻と遠行とを占問うに別離を主とす。
大有 庭燎夜明,追嗣日光。陽軟不至,陰雄生戾。
庭中火炬を燃起して長夜を照亮し、勉强して白日の光明を接續す、《詩經・小雅・庭燎》正に朝會に燭を秉るの事を詠む。陽氣衰弱して時に按じて至る能わず、陰氣反つて雄位に居りて乖戾を生出す。此の林主弱くして臣强し、陰陽位を失うを主とし、家國を占問うに皆內變の憂有り。
謙 三婦同夫,忽不相思。志恆不愁,顏色不怡。
三個の婦人一夫に共事し、彼此漠然として並びに相い念ぜず。心志憂愁と說くに足らずと雖も、臉色總じて歡愉ならず。此の林同室にして心を離れ、貌合せども神離るるを主とし、家事と合伙とを占問うに皆和睦し難し。
豫 鶴盜我珠,逃於東都。鵠怒追求,郭氏之墟。不見蹤跡,反為患災。豫之明夷)
鶴我が明珠を銜走して、東都に逃往す。鵠鳥憤然として追討し、一直に郭氏の廢墟に追到す。蹤跡全無く、反つて災患を惹上す。此の林物を失いて追い難く、窮究して禍を招くを主とし、失脫と爭訟とを占問うに皆凶。同辭また「豫の明夷」に見ゆ。
隨 沐猴冠帶,盜在非位。眾犬共吠,倉狂蹶足。
獼猴冠帶を戴きて人樣を裝い、本來占むべからざる位子を竊據す、《史記・項羽本紀》之を譏りて「沐猴而冠」と爲す。衆犬一齊に狂吠し、它倉皇失措して一跤を跌す。此の林小人位を竊び、衆怒當たり難きを主とし、官を求めと人を用ゐとを占問うに皆凶。
蠱 黍稷禾稻,垂畝方好。中旱不雨,傷風病稿。
黍・稷・禾・稻田壟に掛滿し、長勢正に好し。中途大旱不雨に遭遇し、また風の傷る所と爲り、禾苗枯槁して病と成る。此の林先に盛んにして後に衰え、功敗れて成に垂ぼさるを主とし、農事と事を謀るとを占問うに中折の憂有り。
臨 雄聖伏名,人匿麟遠。走鳳飛北,亂禍未息。中孚之損)
雄杰聖者名聲を隱藏し、賢人躲避して麒麟遠去す。鳳凰北に飛走し、禍亂始終平息せず。此の林賢者世を遁れ、亂象未だ止まざるを主とし、時局を占問うに安んぜず、退藏して出づる勿れに宜し。同辭また「中孚の損」に見ゆ。
觀 三母多福,天祿所伏。居之寵光,君子有福。
太姜・太任・太姒三位の賢母福澤深厚にして、天賜の祿位便ち此の裏に潜藏す。周室三母の賢《列女傳》に見ゆ。此の高位に居りて寵榮を享け、君子因りて福有り。此の林善を積む家慶餘り有るを主とし、家門と子嗣とを占問うに皆吉。
噬嗑 被服文德,升入大麓。四門雍肅,登受大福。
文徳の教を身披り、山麓深林に進入して試を受く。《尚書・舜典》舜の「大麓に納る」を載す、また「四門に賓して、四門穆穆たり」。四方の門肅穆して序有り、因りて位に登りて大福を承受す。此の林徳備わりて命を受け、拔擢望み有るを主とし、進を求むるを占問うに大吉。
賁 褰裳涉河,水流漬衣。幸賴舟子,濟脫無他。觀之渙,賁之大過,坤之萃)
下裳を撩起して徒步して河を渡れば、水流衣裳を浸濕せしむ。幸いに船夫の相渡する有りて、纔に平安して險を脫し、別の禍事なし。此の林險を涉りて救を得、驚有りて險なきを主とし、危難を占問うに人の扶助を得れば則ち吉。同辭また「觀の渙」「賁の大過」「坤の萃」に見ゆ。
復 班馬還師,以息勞疲。役夫嘉喜,入戶見妻。觀之既濟,賁之蠱)
軍馬師を班にして朝に回り、疲憊の士卒をして休息を得せしむ。服役の人歡喜萬分にして、門に進めば便ち妻子を見る。此の林征役告終し、夫妻重逢するを主とし、家に歸ると久事の成を得とを占問うに皆吉。同辭また「觀の既濟」「賁の蠱」に見ゆ。
旡妄 東鄰嫁女,為王妃后。莊公築館,以尊王母。歸於京師,季姜悅喜。
東邊の鄰國女兒を嫁出し、天子の妃后と做る。魯莊公彼女のために館舍を修築し、以て王姬を尊崇す。《春秋》莊公の王姬の館を外に築くを載す。女子京師に歸し、季姜心中歡喜す。此の林女貴して宮に入り、婚姻高攀するを主とし、嫁娶を占問うに大吉。
大畜 百足俱行,相輔為強。三聖翼事,王室寵光。屯之履,晉之坤,遯之復)
百足の蟲衆足齊動し、彼此扶持して因りて强健なり。三位の聖賢國事を輔翼し、王室これによって榮耀して光有り。此の林群策群力し、賢佐人を得るを主とし、合作と仕進とを占問うに皆吉。同辭また「屯の履」「晋の坤」「遯の復」に見ゆ。
頤 危坐至暮,請求不得。膏澤不降,政戾民忒。泰之離,需之頤,漸之坎)
端坐して日暮に至るまで守候す、請求する所の事仍ほ着落なし。恩澤膏雨のごとく降下せず、政令乖戾にして百姓變を生ず。此の林上情達せず、下情通ぜざるを主とし、干求と官事とを占問うに皆遂わず。同辭また「泰の離」「需の頤」「漸の坎」に見ゆ。
大過 百川朝海,泛流不止。路雖遼遠,無不到者。
百川大海に奔赴し、滔滔として流れ曾て停歇せず。道路遙遠なると雖も、到らざる一條もなし。此の林衆望の歸する所、志有れば竟に成るを主とし、遠行と事を謀るとを占問うに終に必ず成るを得、吉。
坎 乘騮駕驪,東至於濟。遭遇仁友,送我以資。厚得利歸。
赤馬を騎り黑馬を駕し、東に濟水の濱に來到す。路上仁厚の朋友に遇見し、我に盤纏資財を贈り、厚利を滿載して歸る。此の林行きて貴人に遇い、利を獲ること豐厚を主とし、出行して財を求むるを占問うに大吉。
離 禮壞樂崩,陰請不當。成子傲慢,為簡生殃。欲求致理,力疲心爛。
禮制敗壞し樂章崩廢し、暗中請託全く法度に合せず。陳成子驕橫傲慢にして、齊簡公に殺身の禍を招來す、事《左傳》哀公十四年に見ゆ。治理を求得せんと想うも、只だ力盡き心焦るを落得す。此の林權臣主を凌ぎ、政亂れて救い難きを主とし、國事と官事とを占問うに皆凶。
咸 一人輦車,乘入虎家。王母貪饕,盜我犁牛。
一個の人車子を推して、徑直に虎狼の家に闖進す。あの王母貪婪にして厭無く、我が田を耕る牛をも偷走す。此の林自ら險地に投じ、財物奪はるるを主とし、財を求めと人に託するとを占問うに皆凶。
恆 羊頭兔足,少肉不飽。漏囊敗粟,利無所得。渙之艮)
只だ一個の羊頭・幾隻の兔脚を得、肉太少くして肚子を填飽せず。口袋破漏して粟米霉壞し、利益一の得る所なし。此の林獲る所微薄にしてまた得に隨いて失うを主とし、財を求むるを占問うに大利ならず。同辭また「渙の艮」に見ゆ。
遯 新田宜粟,上農得谷。君子懷德,以千百福。恆之離)
新開墾の田地粟を種るに適し、勤力の上等農夫滿倉の谷子を收得す。君子心に徳行を懷き、因りて千百種の福氣を招來す。此の林耕耘して獲有り、徳厚くして福隨うを主とし、農事と家運とを占問うに皆吉。同辭また「恒の離」に見ゆ。
大壯 夷羿所射,發輒有獲。雙鳧俱得,利伐王國。
東夷の后羿弓を張りて射獵し、一箭を發すれば每に斬獲有り、一箭便ち兩隻の野鴨を射得す。此を以て兵を出して敵國を征伐するも利有り。此の林箭虛發なく、事を擧ぐれば必ず成るを主とし、征戰と謀取とを占問うに皆吉。
晉 鳧舞鼓翼,嘉樂堯德。虞夏美功,要荒賓服。
野鴨翅膀を鼓動して翩然として起舞し、唐堯の聖徳を歡慶す。虞舜と夏禹功業美盛にして、極邊遠の要服・荒服の地すらも來りて歸順す。此の林徳化遠く播れ、四方賓從するを主とし、國事と遠交とを占問うに皆吉。
明夷 登丘上山,對酒遇歡。終年卒歲,優福無患。
土丘に登上し高山に攀上し、美酒に面對して喜慶に逢う。一年到頭、福澤優裕にして禍患なし。此の林高に登りて意を得、終歲安樂するを主とし、諸事を占問うに皆吉。
家人 歲暮花落,陽入陰室。萬物伏匿,藏不可得。
一年將に盡きんとし、花朵凋落し、陽氣幽暗の室に退入す。萬物潜伏隱匿し、藏起すれば再び尋着けず。此の林時過ぎ境遷り、求む所着無きを主とし、人を尋ね物を覓るを占問うに皆得ず。
睽 螟蟲為賊,害我禾穀。簞瓶空虛,飢無所食。
螟蟲肆虐して災を成し、我が莊稼を毀壞す。飯箪と水瓶と皆空空如也、饑餓して食う可き糧なし。此の林蟲害歲歉し、家餘儲無きを主とし、農事と衣食とを占問うに皆凶。
蹇 陽虎脅主,使德不通。炎離為殃,年穀患傷。
陽虎季氏を挾持し國君を脅迫し、徳政をして通行する能わざらしむ、《左傳》定公八年其の魯に亂を作すを載す。烈火の災禍殃と成り、當年の穀物大いに損傷を受く。此の林權臣擅に命じ、天時順わざるを主とし、國事と農事とを占問うに皆凶。
解 四馬共轅,東上泰山。騂驪同力,無有重難。與君笑言。渙之豐)
四匹馬同じく一轅を拉し、東に泰山に攀上す。赤馬と黑馬と心を齊しく力を合し、再び重き路も艱難を覺えず、還て您と談笑して行く能くす。此の林同心協力して、艱險越る可きを主とし、出行と事を共にするとを占問うに皆吉。同辭また「渙の豐」に見ゆ。
損 牧羊稻園,聞虎喧讙。畏懼悚息,終無禍患。隨之漸,井之否,中孚之小過)
稻田邊に羊を放ち、忽然老虎の喧鬧の吼聲を聽聞す。呼吸を屏り戰栗して安んぜざるに嚇かされると雖も、最終卻って平安にして事なし。此の林虛驚一場、險有りて傷なきを主とし、諸事を占問うに驚きて凶ならず。同辭また「隨の漸」「井の否」「中孚の小過」に見ゆ。
益 陽花不時,冬實生危。憂多橫賊,生不能服。崑崙之玉,取求必得。
陽氣の生ずる所の花時令に按じて開放せず、冬天結實は本來危殆の兆なり。憂患多くして橫禍相い侵す、生きても安順を得難し。幸いに崑崙山の美玉、前去して求取すれば必ず手に到手す。此の林時序錯亂して憂中獲有るを主とし、占問うに先に險にして後に得。
夬 高阜所在,陰氣不淋。洪水不處,為家利寶。
高高の土岡の上に住し、陰濕の氣浸上せず。洪水此に淹れ到らず、此の塊の高地便ち一家の利と寶と成る。此の林高を擇びて險を避け、家業保を得るを主とし、居宅と産を置くとを占問うに皆吉。
姤 釋然遠咎,避患革害。田獲三狐,以貝為寶。君子所在,安寧不殆。
心中釋然として災咎に遠ざかり、禍患を躲開し損害を革除す。田獵して三隻の狐狸を捕得し、また貝幣のごとき寶貨を得、語本《易・解》の九二爻辭なり。此の林害を除きて利を得、身安くして危なきを主とし、出行と財を求むるとを占問うに皆吉。
萃 兩目失明,日奪無光。脛足跛曳,不可以行。頓於丘旁,亡妾莫逐。嵬然獨宿。
兩眼失明し、太陽光亮を奪去せらる。小腿脚跛して、拖いて路を成さず。山丘の旁に困頓し、妾室逃走するも追趕する力無く、只だ孤零零として獨宿するを得。此の林身殘して助を失い、家人離散するを主とし、疾病と家事とを占問うに大凶。
升 鴻飛循陸,公出不復,伯氏客宿。中孚之同人)
鴻雁高地に沿いて飛行し、主人門を出でて一去して返らず、伯氏只だ外に寄宿して客と做るを得。《詩經・豳風・九罭》に「鴻飛びて陸を遵り、公歸りて復たせず」の句有り。此の林遠行して歸らず、外に羈旅するを主とし、歸期を占問うに卜り難し。同辭また「中孚の同人」に見ゆ。
困 佩玉累蕊,無以繫之。孤怨獨處,愁哀相憂。一作桑方云云)
佩玉一串串花蕊のごとく垂るれど、卻って繫住する可き絲帶無し。孤獨怨恨して獨り居處し、憂愁悲哀相接續す。此の林美質託する所無く、孤苦して依無きを主とし、婚姻と依託とを占問うに皆遂わず。一本此の條「桑方將落」云々と作る。
井 載船渡海,雖深何咎。孫子俱在,不失其所。
船に乘りて海を渡る、水深しと雖も又何の災禍有らん。子孫皆身邊に在り、各々其の安身の處を失わず。此の林舟楫恃む可く、家を擧げて安穩なるを主とし、出行と家宅とを占問うに皆吉。
革 鵠求魚食,道遇射弋。繒加我頸,繳縛兩翼。欲飛不能,為羿所得。
鵠鳥魚を尋ねて饑を充さんとし、半路射獵の人に遇上す。絲繩頸脖を套住し、繳線雙翅を縛住し、飛ばんと想うも飛動かず、終に后羿のごとき善射の者の捉える所と爲る。此の林食を貪りて彀に入り、身羅網に陷るを主とし、利を求むるを占問うに反つて其の困を受くる、凶。
鼎 泥面亂頭,忍恥少羞,日以削消。
滿臉污泥して頭髮蓬亂し、耻辱を忍受して羞慚を知らず、家業一天天削减消亡す。此の林頹敗して自ら棄て、日に就て衰微するを主とし、家運と名聲とを占問うに皆凶。
震 桑方將落,隕其黃葉。失勢傾倒,如無所立。一作佩玉云云)
桑樹將に凋零せんとし、紛紛として枯黄の葉子を落下す、《詩經・衛風・氓》正に桑落を以て色衰に喩う。人憑恃を失して傾倒し、站つも站たざるに似たり。此の林盛極まりて衰え、勢を失いて依無きを主とし、家道と恩寵とを占問うに皆衰替を主とす。一本此の條「佩玉累蕊」云々と作る。
艮 巨蛇大□,戰於國邦。上下隔塞,主君走逃。巽之臨)
巨蛇と大獸と國中に相い鬥い、上下音信阻隔壅塞し、國君只だ出走逃亡するを得。此の林異物の國中に鬥うを以て內亂大作に比喻す、國事と家事とを占問うに皆凶、遠避するに宜し。同辭また「巽の臨」に見ゆ。
漸 已動死,連商子。揚砂石,胡貉擾。軍鼓振,吏士恐。
變亂一動すれば便ち死傷有り、還て行商の人に牽連す。狂風沙石を揚起し、北方の胡貉の族前來して騷擾す。軍鼓震響し、官吏兵士人人驚恐す。此の林邊警驟に起り、商旅累に遭うを主とし、出行と經商とを占問うに皆凶。
歸妹 張羅搏鳩,鳥麗其災。雌雄俱得,為網所滅。賁之歸妹,一作二人俱行,別離持食。一身五心,亂無所得)
羅網を張開して斑鳩を搏取す、鳥兒正に此の場の災禍に撞上す。雌雄一齊に擒せられ、皆羅網の滅する所と爲る。此の林同じく羅網に陷り、夫婦俱に傷るを主とし、出行と事を謀るとを占問うに皆凶。同辭また「賁の歸妹」に見ゆ、一本此の條「二人俱に行き、別離して食を持つ。一身五心、亂れて得る所なし」と作る。
豐 三聖相輔,鳥獸喜舞。安樂富有,二人諧偶。
三位の聖賢相互に輔佐し、鳥獸すらも歡喜起舞す。天下安樂富足し、男女二人和諧して雙を成す。此の林賢佐位に在り、人和して年豐なるを主とし、婚姻と家業とを占問うに皆吉。
旅 三奇六耦,相隨俱市。王孫善賈,先得利寶。居止不移,大盜為咎。
三個の奇數・六個の偶數相隨して群を成し、一同に市集に前往す。王孫經商に善く、先に厚利と寶貨とを搶得す。然れど原地に停留して挪動するを肯んぜば、大盗有りて禍患と成らん。此の林先に利を獲て後に失有るを主とし、經商を占問うに好を見れば卽ち收むるに宜し。
巽 三人俱行,一人言北。伯叔欲南,少叔不得。中路分道,爭鬥相賊。歸妹之中孚)
三個の人一同に路上し、一人北に往かんを主張す。伯と叔南に走らんと想うも、少叔卻って依らず。半路上各々一方に奔り、爭鬥起りて彼此傷害す。此の林同行にして志異にし、內訌して自ら傷るを主とし、合伙と出行とを占問うに皆凶。同辭また「歸妹の中孚」に見ゆ。
兌 播天舞地,擾亂神所。居樂無咎,言不信誤。
上蒼天を撼し下大地を舞し、神明の居所を驚擾す。安居享樂本來過錯無かる可しも、只だ言語誠實ならざるに因りて過誤を招來す。此の林行事分を越え、信を失して咎を取るを主とし、占問うに言を謹み動を慎むに宜し。
渙 坐爭立訟,紛紛洶洶。幸成禍亂,災及我公。大過之離)
坐して爭執し立して訴訟し、鬧して紛紛擾擾・聲勢汹汹なり。終に禍亂を釀成し、災禍我が家の主公に牽連す。此の林爭訟亂を生じ、殃尊長に及ぶを主とし、官非を占問うに大凶。同辭また「大過の離」に見ゆ。
節 蛇行蜿蜒,不能上阪。履節安居,可以無憂。
蛇蜿蜒爬行すれど、終に陡坡に上る能わず。節度を守住し分に安んじて居れば、便ち憂患無きを得。此の林力强求する可からず、分に安んずれば則ち吉を主とし、進取を占問うに利ならずして成を守れば安を得。
中孚 隙大牆壞,蠹眾木折。狼虎為政,天降罪伐。高殺望夷,胡亥以斃。
縫隙一大なれば牆將に塌せんとし、蛀蟲一多ければ木頭將に斷れんとす。狼虎のごとき人國政を執掌し、上天罪罰を降下す。趙高望夷宮に君を弑し、秦二世胡亥これによって命を喪う、事《史記・秦始皇本紀》に見ゆ。此の林弊を積みて崩を致し、權奸上を弑するを主とし、家國を占問うに大凶。
小過 陽不違德,高山多澤。顏子逐兔,未有所得。
陽氣徳性に違背せず、高山の上もまた潤澤の沼澤多し。顏回野兔を追逐すれど、卻って終に一の獲る所なし。此の林天時順なると雖も人事功なきを主とし、求取を占問うに徒勞す。
既濟 心多畏惡,時愁日懼。雖有小咎,終無大悔。
心中畏懼厭惡多く、時時發愁し天天害怕す。些小の過失あると雖も、終に大なる悔恨有るを得ず。此の林戒懼して禍を免れ、小疵害なきを主とし、占問うに平安を保つ可し。
未濟 眾神集聚,相與議語。南國虐亂,百姓愁苦。舉師征討,別立賢主。無妄之家人)
衆神聚集して商議す。南方の國家暴虐して亂を生じ、百姓愁苦不堪なり。ここに兵を興して征討し、別に賢明の君主を立つ。此の林民を弔い罪を伐ち、改めて新主を立つるを主とし、變革の事を占問うに吉有り。同辭また「無妄の家人」に見ゆ。
復の林(復卦六十四林)
復 周師伐紂,克於牧野。甲子平旦,天下悅喜。
周武王の軍隊商紂を討伐し、牧野に一戰して勝を取る。甲子日清晨天剛に發亮すれば勝負を決出し、天下人皆歡欣喜悅せざるなし。《尚書・牧誓》と《詩經・大雅・大明》と皆此の役を記す。此の林弔伐時を得、故を革め新を鼎ぐを主とし、大事を興擧するを占問うに大吉。
乾 任武負力,東征不伏。陷履泥塗,雄師敗覆。
一味武を逞し蠻力を恃仗し、東征すれど對方並びに降服せず。大軍泥濘に陷入して行き難く、强盛の師終に敗亡傾覆す。此の林强を恃みて輕進し、軍を覆すの象有るを主とし、征戰と爭競とを占問うに皆凶。
坤 義不勝情,以欲自營。覬利危躬,折角摧頸。
道義私情を壓住する能わず、只だ慾望を憑りて自身を經營す。財利を覬覦して身をして危境に處らしめ、最終角を折斷し頸脖を壓傷す。此の林慾を縱して利を貪り、自ら殘傷を取るを主とし、財を求めと私を謀るとを占問うに皆凶。
屯 懸貆素餐,食非其任。失輿剝廬,休坐徙居,室家何憂。
家中獵來の貉子を懸掛し、俸祿を白喫し、享受する所並びに分內應得に非ず、《詩經・魏風・伐檀》正に「素餐せずや」を譏る。因りて車輿を失い房屋剝奪せられ、只だ停下して別に他處に遷るを得、家室豈に憂なからんや。此の林功なくして祿を受け終に所を失うを主とし、官に居ると家宅とを占問うに皆凶。
蒙 鶹鴟娶婦,深目窈身。折腰不媚,與伯相背。
鵂鶹の猫頭鷹妻を娶る、あの女子深目細腰にして形容幽暗なり。腰を折りて禮を行くと雖も並びに人の歡心を討せず、終に夫兄と反目相背す。此の林配偶諧わず、親族違戾するを主とす。婚姻を占問うに吉ならず。
需 東風解凍,河川流通。西門子產,升擢有功。
東風吹來して氷雪消融し、河流川渠通行して阻なし。西門豹と子産のごとき能吏提拔を得、各々功業を建つ、二人鄴を治め鄭に相たること分けて《史記》《左傳》に見ゆ。此の林時運解凍し、賢能用ゐられんを得るを主とし、官を求めと事を謀るとを占問うに皆吉。
訟 三足俱行,傾危善僵。六指不便,累慁弟兄。樹柱閡車,失其正當。賁之咸)
三隻の脚一齊に路を走り、重心偏斜して跌倒し易し。一根の手指を多出すれば反つて累贅となり、還て兄弟を連累す。柱子を竪起して車路を擋し、處置全く正當を失う。此の林體制正ならず、行事窒礙するを主とし、出行と合謀とを占問うに皆阻有り。同辭また「賁の咸」に見ゆ。
師 京庾積倉,黍稷以興。亟行疾至,以厭飽食。
高大の糧倉と露天の穀囤と堆めて滿滿なり、黍稷これによって興旺す。快步して前往し迅速に趕到すれば、便ち一頓を飽餐する能くす。此の林倉廩充實し、衣食缺なきを主とし、食を求めと財を求むるとを占問うに皆吉。
比 南山之蹊,真人所在。德配唐虞,天命為子。保佑歆享,身受大慶。賁之解)
南山の小徑、正に道を得たる眞人の居る所の處なり。其の徳唐堯虞舜と相配する可く、天命を受けて天子と爲る。神明保佑して祭祀を歆享し、自身大福慶を承受す。此の林徳隆くして位尊く、福祚綿遠を主とし、福を求めと功名とを占問うに大吉。同辭また「賁の解」に見ゆ。
小畜 車馳人趨,卷甲相仇。齊魯寇戰,敗於犬丘。坤之兌)
車馬疾馳し人衆奔走し、鎧甲を卷起して相互に仇と爲る。齊國と魯國と交兵し、一方犬丘に戰敗す。此の林兵連なり禍結び、爭鬥して敗を致すを主とし、爭訟と征戰とを占問うに皆凶。同辭また「坤の兌」に見ゆ。
履 十五許室,柔順有德。霜降歸嫁,夫以為合。先王日至,不利出域。
女子十五歲人に許配し、性情柔順にして徳行有り。霜降の後出嫁し、丈夫十分般配と認む。古禮冬至の日先王關を閉じ商旅行わず、語本《易・復》の大象なり、此の時出境して遠行するに宜からず。此の林婚配時を得て行旅止むに宜しきを主とし、嫁娶を占問うに吉、出行利ならず。
泰 任力劣薄,遠托邦國。輔車不僵,為癰所傷。
自身才力單薄にして、卻って遙かに別の邦國に身を託す。頰骨と牙牀と本來相依して倒れざるなり、如今卻って毒瘡の傷る所と爲る。「輔車相依」の語《左傳》僖公五年に出づ。此の林依託所を失い、親近して反つて害すを主とし、遠行して投靠するを占問うに利ならず。
否 千載舊室,將有困急。荷糧負囊,出門直北。
千年を傳えし舊家宅、將に困頓危急に陷入せんとす。只だ糧食を挑起し行囊を背上し、門を出でて一直に北に逃去るを得。此の林舊業守り難く、迫られて遠遷するを主とし、家宅と成を守るとを占問うに皆凶。
同人 惡災殆盈,日益章明。禍不可救,三郄夷傷。
惡行と災禍と已に積滿せんと將にし、一天天顯露分明なり。禍事挽救するに從無く、晋國郤氏の三卿同じく誅殺に遭う、事《左傳》成公十七年に見ゆ。此の林惡を積みて貫盈し、族滅の象有るを主とし、家國を占問うに大凶。
大有 冠危載患,身驚不安。與禍馳逐,凶來入門。
帽子戴ること歪斜にして、頭上禍患を頂き、人驚慌して安定を得ず。整日災禍と相い追逐し、凶事便ち門に直闖す。此の林危行して禍を招き、驚擾して寧ならざるを主とし、諸事を占問うに皆凶。
謙 虎狼並處,不可以事。忠謀轉改,禍必及己。退隱深山,身乃不殆。
虎狼と一地に共處す、之と事を共にする可からず。忠誠の謀劃反つて篡改せられ、禍患必ず自身に殃及ぶ。深山の中に退隱して、身家纔に危險ならず。此の林危邦居らず、明哲して身を保つを主とし、出仕を占問うに利ならずして退避すれば安を得。
豫 卵與石斗,糜碎無處。挈瓶之使,不為憂懼。
鷄蛋を拿りて石頭と相い碰せんとすれば、粉身碎骨して收拾する處すらもなし。而も小水瓶を提ぐる差役識見淺短にして、竟に憂懼を知らず。此の林弱を以て强に敵し、自ら量らざるを主とし、爭鬥を占問うに大凶。
隨 五心六意,岐道多怪。非君本志,生我恨悔。
心思紛雜して主意游移し、岔路上處處古怪なり。此れ本來您の原來の志向に非ず、因りて我が怨恨と悔意とを生出す。此の林心志專ならず、歧路途を迷うを主とし、事を謀るを占問うに變多くして悔を生ず。
蠱 雨雪載塗,東行破車,旅人無家。
雨雪道路に覆滿し、東に向かいて路を趕るも車子損壞し、行旅の人身を安んずる處無し。此の林天候惡劣にして、行途挫を受くるを主とし、出行を占問うに大利ならず。
臨 尚利壞義,月出平地。國亂天常,咎徵滅亡。
私利を崇尚して道義を敗壞す。月亮竟に平地より升起し、全く其の所に非ず。國家天道の常綱を擾亂し、災異の征已に現れ、終に滅亡に至る。此の林利を重くし義を輕くし、綱常倒置するを主とし、國事と家事とを占問うに皆凶。
觀 東行破車,步入范家。衡門穿射,無以為主。賣袍續食,糟糠不飽。
東に向かいて路を趕るも車子壞れ、只だ步行して范家に走進するを得。橫木を門と爲し四壁風を透し、家中人の主を作る無し。袍子を賣掉して飯に換え食す、糟糠すらも吃飽せず。此の林車敗れ家貧しく、食を寄せて日を度るを主とし、衣食と出行とを占問うに皆凶。
噬嗑 逐金出門,並失玉丸。往來井上,甑破缺盆。丸一作幾)
金子を追うて門を出でて往けば、玉丸すらも一幷に丢了。井邊に來來往往し、飯を蒸す甑摔破して、盆子もまた口を缺く。此の林得を貪りて反つて失い、家器破損するを主とし、財を求めと家宅とを占問うに皆凶。「丸」一本「几」と作る。
賁 春孟醴酒,使君壽考。南山多福,宜行賈市。秋梁雌雉,所至利喜。
孟春の時節釀成の甜酒、主人をして長壽康健ならしむ。南山福氣深厚にして、出外して經商するに宜し。秋日梁上の雌雉肥美にして、到る所の處皆利有り喜有り。此の林壽考して福多く、賈を行きて利を獲るを主とし、財を求めと身體とを占問うに皆吉。
剝 持刃操肉,對酒不食。夫亡從軍,長子入獄,抱膝獨宿。
刀子を手持して肉を切着す、酒菜に面對すれど卻って吃下がらず。丈夫軍に從りて一去して返らず、長子また大牢に下る、只だ膝を抱きて獨り夜を過ごすを得。此の林家人離散し、憂えて食する能わざるを主とし、家事を占問うに大凶。
旡妄 踦牛傷暑,不能成畝。草萊不墾,年歲無有。
獨脚の牛暑熱を中し、一畝の地すらも耕完せず。荒草叢生の田地人の開墾する無く、此の一年顆粒の收なし。此の林耕力濟わず、歲計落空するを主とし、農事と生計とを占問うに皆凶。
大畜 南邦大域,鬼魅滿室。讙聲相逐,為我行賊。
南方大國の廣闊の疆域の裏、屋中鬼魅に滿つ。喧嘩の聲此起彼落し、皆暗中に我を害す。此の林邪祟盤踞し、群小交々攻むを主とし、家宅と出行とを占問うに皆凶。
頤 噂噂所言,莫如我垣。歡樂堅固,可以長安。
衆人一處に聚まりて議論紛紛すれど、皆我が自家の牆垣の可靠に如かず。《詩經・小雅・十月之交》に「噂沓して背き憎む」の譏有り。歡樂牢固して散ぜず、長久安寧する可し。此の林己を守りて自ら固くし、外議畏るるに足らざるを主とし、家宅を占問うに安らかにして吉。
大過 堯舜禹湯,四聖敦仁。允施德音,民安無窮。旅人相望,未同朝卿。
堯・舜・禹・湯四位の聖王仁徳を篤行し、誠信して善政を施布し、百姓安寧して盡きる無し。只だ羈旅の人彼此遙望して、未だ朝廷卿位に同列する能わず。此の林世道清明にして己身未だ達せざるを主とし、國事を占問うに吉、仕進尚ほ時を待つ須し。
坎 桎梏拘獲,身入牢獄。髡刑受法,終不得釋。耳閉道塞,求事不得。
脚鐐手銬身に加えられて拘拿せられ、人牢獄の裏に關進せらる。髮を剃る髡刑を受け、始終開釋を得ず。耳目閉塞し門路通ぜず、求む所の事全く着落なし。此の林刑獄身に纏い、告を求むるに門なきを主とし、官訟を占問うに大凶。
離 蹠並桀處,民困愁苦。行旅遲遲,留連齊魯。
盗跖と夏桀と一世に同處し、暴虐橫行し、百姓困頓愁苦す。行旅の人遲遲として前進する能わず、齊魯の間に滯留す。此の林亂世行き難く、羈留して返らざるを主とし、出行を占問うに利ならず。
咸 求雞獲雉,買鱉失魚。出入均貨,利得無餘。齊姜宋子,婚姻孔喜。
鷄を求めんと想うて野雉を得、鼈を買うて反つて魚を丢了。買進賣出所値相當にして、一點の利も賺るを得ず。幸いに齊國姜姓と宋國子姓の兩家聯姻し、婚事大いに喜慶なり。此の林經商利なくして婚姻成る可きを主とし、財を求むるを占問うに平平、嫁娶大吉。
恆 雨師駕駟,風伯吹雲。秦楚爭強,施不得行。
雨師四馬の車を駕し、風伯層云を吹散す。秦國と楚國と强を爭い勝を鬥い、恩澤因りて施行する能わず。此の林風雨交作し、强鄰相い爭うを主とし、政令と事を謀るとを占問うに皆阻を受く。
遯 仲冬兼秋,鳥散飲憂。困於米食,數驚鸇鵰。
仲冬また秋寒を兼ねて、鳥群離散して憂を含み恨を飮む。一口の米食の困る所と爲り、還て屢々鸇鷹雕鶚の驚嚇を受く。此の林時令嚴酷にして、食を覓ること艱危なるを主とし、衣食と身を安んずるとを占問うに皆利ならず。
大壯 三羝上山,俱至陰安。遂到南陽,完其芝香。兩崖相望,未有枕狀。
三隻の公羊山に登り、一同に背陰安穩の處に到達す。接して南陽に來到し、あの芝草の芬芳を保全す。只だ兩邊の山崖を隔てて遙遙相い望み、未だ枕を同じく席を共にする能わず。此の林安んずる所を得て偶る所を未だ得ざるを主とし、身家安穩、婚姻尚ほ缺くるを主とす。
晉 飛之日南,還歸遼東。雌雄相從,和鳴雍雍。解我胸舂。
鳥兒南に日南郡に飛び、また遼東に返回す。雌雄相隨相伴し、和諧鳴叫して聲音融融たり。胸中舂搗のごとき鬱結これによって消解す。此の林遠行して往還し、伉儷和睦するを主とし、出行と婚姻とを占問うに皆吉。
明夷 堯飲舜舞,禹拜上酒。禮樂所豐,可以安處。保我淑女。
堯帝杯を擧げ、舜帝起舞し、禹拜禮を行きて美酒を進獻す。禮樂此のごとく豐盛にして、人安然として自處する能くし、還て我が家の賢淑の女子を保全する能くす。此の林禮樂興隆し、家室安寧するを主とし、家事と婚姻とを占問うに皆吉。
家人 太乙置酒,樂正起舞。萬神攸同,可以安處。綏我齒兒。
太乙尊神酒宴を設し、樂正節に應じて起舞す。萬神一同に來會し、人因りて安然として自處する能くし、家中の小兒もまた安撫を得。此の林神明福を降し、老幼皆安しを主とし、家宅と子孫とを占問うに皆吉。
睽 白馬騂騮,生乳不休。富我商人,得利饒優。
白馬と赤色の駿馬と絕えず駒を產す。此れ經商の人をして富ませ、獲利豐厚して餘有り。此の林畜産蕃息し、財源絕えざるを主とし、財を求めと畜牧とを占問うに大吉。
蹇 宛馬疾步,盲師坐御。目不見路,中止不到。
大宛の良馬疾步飛奔すれど、車を駕するは卻って一個の瞎眼の樂師なり。眼睛道路を看不見ず、半途停下し、終に到る能わず。此の林良材庸手に誤られ、事人を用ゐるに敗るを主とし、出行と託付とを占問うに皆成らず。
解 春桃萌生,萬物華榮。邦君所居,國樂無憂。
春天桃樹芽を抽き萌生し、萬物開花繁榮す。國君の居る所の處、擧國歡樂して憂患なし。此の林春氣發動し、上下同樂するを主とし、家國と事を謀るとを占問うに皆吉。
損 把珠入口,蓄為玉寶。得吾所有,欣然嘉喜。
珠子を口中に含み、收藏して寶玉と當てり。本來我に屬すべき物を得到し、欣然として歡喜す。此の林失いて復た得、寶藏身に在るを主とし、財を求めと物を尋ねとを占問うに皆吉。
益 襦燒褲燔,羸剝飢寒,病證凍攣。
短襖燒かれ褲子焚かれ、衣體を蔽わず、瘦弱剥落して餓え凍えを受け、終に病みて手脚拘挛す。此の林衣食斷絕し、疾病之に隨うを主とし、衣食と身體とを占問うに皆凶。
夬 水沬沉浮,沮溼不居,為心疾憂。
水沫波面上に時に沉み時に浮き、低窪潮濕の地安居する可からず、因りて心病憂愁を生出す。此の林浮蕩して定まらず、居處安んぜざるを主とし、家宅と心疾とを占問うに皆利ならず。
姤 行如桀紂,雖禱不佑。命衰絕周,文君乏祀。
行事夏桀商紂のごとく暴虐にして、縱ほ神明を祈祷するも庇佑を加えず。天命衰竭して周室斷絕し、文王の一脈の祭祀すらも承繼する人無し。此の林徳を失いて國を亡し、香火斷絕するを主とし、家國を占問うに大凶。
萃 蜉蝣戴盆,不能上山。腳摧跛蹶,損傷其頭。
蜉蝣盆子を頂き、怎麼しても山に上る能わず。脚壓折して跛行跌倒し、頭すらも磕傷す。此の林力小さくして任重し、自ら損傷を取るを主とし、强求の事を占問うに必ず敗る。
升 長子入獄,婦饋母哭。霜降旬甚,嚮晦伏法。
長子牢獄の裏に關進せられ、媳婦飯を送り母親痛哭す。霜降の後十天愈々嚴酷にして、黄昏に將近ければ便ち法に伏し刑を受く。此の林刑戮身に臨み、家門哀慟するを主とし、官訟と人口とを占問うに皆大凶。
困 求犬得兔,請新遇故。雖不當路,踰吾舊舍。
狗を尋ねんと想うて兔子を得、新人を請わんと想うて舊交に遇上す。正路に在らざると雖も、卻って我が原來の居所を越過す。此の林遇う所求む所に非ずして別に獲有るを主とし、占問うに事變通有り、尚ほ害と爲さず。
井 鳥鳴葭端,一呼三顛。動搖東西,危而不安。靈符禱祉,疾病無患。
鳥蘆葦の梢頭に停りて鳴叫し、一叫すれば便ち三度晃動す。東に搖れ西に擺れて、危險にして安穩ならず。幸いに靈符を憑りて福を祈れば、疾病虞なき可し。此の林處境岌岌として禱祝應有るを主とし、占問うに身危しと雖も病愈る可し。
革 天厭禹德,命興湯國。祓社釁鼓,以除民疾。
上天夏后氏の徳を厭棄し、轉じて成湯をして興起立國せしむ。社を祭り穢を除き牲血を以て鼓に塗る、百姓の疾苦を除去せんが爲なり。此の林天命更易し、舊を革め民を安んずるを主とし、變革の事を占問うに大吉。
鼎 陰霧作匿,不見白日。邪徑迷通,使君亂惑。
陰云濃霧一切を遮蔽し、白日を見ず。邪僻の小路人をして去向を迷失せしめ、您をして心中昏亂疑惑せしむ。此の林蔽を蒙りて道を失い、心志迷亂するを主とし、事を謀るを占問うに明ならず、正を守りて動く勿れに宜し。
震 猿墮喬木,不跛手足。握珠懷玉,還歸我室。屯之豫,蒙之隨)
猿猴高樹の上より跌落すれど、手脚卻って傷を受けず。手に明珠を握り美玉を懷揣し、安然として我が家中に回る。此の林險中損なく、寶を攜えて歸るを主とし、出行と財を求むるとを占問うに大吉。同辭また「屯の豫」「蒙の隨」に見ゆ。
艮 三驪負衡,南取芝香。秋蘭芬馥,盈滿篋筐,利我少姜。
三匹の黑馬車衡を駕し、南に往きて芝草の芳香を采摘す。秋日蘭花馥郁として、箱篋竹筐に裝滿し、我が家のあの年少の姜姓の女子に利有り。此の林遠行して獲を采り、女眷利を得るを主とし、出行と婚姻とを占問うに皆吉。
漸 春生孚乳,羽毛成就。舉不失宜,君臣相好。盜走奔北,終無所悔。
春天鳥兒卵を孵して雛を育て、羽毛漸々長成す。擧動皆宜に合し、君臣相處融洽す。盗贼北に逃向し、終に何の懊悔す可きもなし。此の林生養成有り、上下相い得るを主とし、家國と仕途とを占問うに皆吉。
歸妹 東行破車,還反室家。天命訖終,無所禱凶。
東に向かいて路を趕るも車子毀壞し、只だ家中に返回するを得。天命已に盡頭に到り、再怎麼祈祷するも凶險を免る能わず。《論語・述而》孔子の「丘の禱久し」を記す、此れ則ち禱の及ばざるを言う。此の林氣數將に盡きんとし、挽回し難きを主とし、疾病と遠行とを占問うに大凶。
豐 九雁列陣,雌獨不群。為罾所牽,死於庖人。
九隻の大雁行列を排成し、唯だあの雌雁群を離れて獨飛す。結果漁網の牽住する所と爲り、厨子の手裏に死す。此の林群を離れ伴を失い、獨行して禍を招くを主とし、出行と獨斷とを占問うに皆凶。
旅 二人輦車,從去其家。井沸釜鳴,不可以居。從疑作徙)
兩個の人車子を推して、家を離れ去るに跟從す。井水沸騰し鍋釜自鳴す、此れ大不祥にして、此の地再び住む可からず。此の林凶兆家中に現れ、迫られて遷徙するを主とし、居處を占問うに凶。「從」は疑らく當に「徙」と作るべし。
巽 閉塞復通,與喪相逢。甘棠之人,解我憂凶。
閉塞の道路重ねて通暢すれど、卻ってまた喪事に碰上す。幸いに召伯のごとき人に愛戴せらるる賢者の出面有りて、我がために憂患凶險を解開す。《詩經・召南・甘棠》正に召伯の棠樹の下に訟を聽くを詠む。此の林先に阻れ後に通じ、貴人に遇いて厄を解くを主とし、憂疑を占問うに散ず可し。
兌 賦斂重數,政為民賊。杼軸空虛,家去其室。
賦稅征斂既に重く且つ頻にして、政令反つて百姓を殘害する物と成る。織機の上の經緯皆空しく、人家只だ屋舍を舍棄して逃亡するを得。《詩經・小雅・大東》に「杼柚其れ空し」の嘆有り。此の林苛政民を害し、家業凋敝するを主とし、生計を占問うに大凶。
渙 怒非其怨,貪妒腐鼠。而呼鵲鴟,自令失餌,倒被災患。
發怒の對象並びに眞正の仇人に非ず、只だ一隻の腐爛の死鼠のために貪妒して相い爭う。《莊子・秋水》正に鴟の腐鼠を得て鵷鶵を嚇すを以て喩と爲す。反つて喜鵲鴟鳥を招來し、自己をして餌食を丢了せしめ、反つて災禍を受く。此の林怒を遷して微利を爭い自ら其の殃を招くを主とし、爭競を占問うに大凶。
節 簪短帶長,幽思最苦。瘠貌少疲,以疾病降。
髮簪太短く衣帶過長にして、衣飾全く相稱せず。心底に深藏する思念最も苦楚なり。形容瘦削して精力衰疲し、因りて疾病を染上す。此の林憂思疾と成り、身心俱に損するを主とし、身體を占問うに利ならず。
中孚 三人俱行,各別采桑。蘊其筐筥,留我嘉侶。得歸無咎,四月來處。
三個の人一同に門を出で、各々頭を分ちて桑を采りに往く。桑葉圓筐方筥に裝滿し、還て我が好伴侣を留住す。平安して歸來して災禍無き能くし、四月の裏住處に回到す。此の林工を分ちて獲有り、歸期待つ可きを主とし、出行と團聚とを占問うに皆吉。
小過 逐鳩南飛,與喜相隨。井獲鹿子,多得利歸,雖憂無危。
斑鳩を追うて南に飛去し、一路喜事相隨う。井邊に幼鹿を捕獲し、厚利を滿載して歸る、憂慮あると雖も危險なし。此の林意外に利を得、憂して害なきを主とし、財を求むるを占問うに吉。
既濟 驅羊南行,與福相逢。狼驚吾馬,虎盜我子。悲恨自咎。
羊群を趕りて南に向かいて走り、本來福氣に遇上せり。不料狼我が馬を驚かし、虎また我が孩子を叼走す、只だ悲痛怨恨し自責已まざるを落得す。此の林福中禍を生じ、樂極まりて悲を生ずるを主とし、出行を占問うに凶。
未濟 東鄰西國,福喜同樂。出得隋珠,留獲和玉。俱利有息。
東邊の鄰邦と西邊の國家、同じく福慶喜樂を享す。門を出れば便ち隋侯の珠を得、留守するもまた和氏の璧を獲得す。兩頭皆利有り、而且斷えず增益す。此の林內外雙美にして、財貨生息するを主とし、出行と成を守るとを占問うに皆大吉。
旡妄の林(旡妄卦六十四林)
旡妄 夏臺羑里,湯文厄處。皋陶聽斷,岐人悅喜。西望華首,東歸無咎。
夏台と羑里とは、成湯と文王の當年囚はれ困を受けし地方なり。幸いに皋陶のごとき公正の人の訟を聽き案を斷ずる有りて、岐周の人因りて歡喜す。西に望みて華山の巔を見、東に歸去するも災禍なし。此の林聖賢困にして後に亨り、獄訟直を得るを主とし、困厄を占問うに終に解く、吉。
乾 儋耳穿胸,纏離勞舂。天地易紀,日月更始。蝮螫我手,痛為吾毒。
儋耳國・穿胸國此等の遠方の異族、纏縛流離して舂米の苦役に服す。天地綱紀を更改し、日月重ねて開始す。毒蝮我が手を蜇し、痛楚切身の害と成る。此の林世變わりて身危く、禍患近く肘腋に在るを主とし、諸事を占問うに凶。
坤 慈母之恩,長大無孫。消息褓襁,害不入門。
慈母の深恩孩子を養育して長大せしむ、孫輩未だ有らざると雖も。襁褓の中の嬰兒を悉心して照料すれば、災害便ち家門に進まず。此の林慈養法を得、家門災なきを主とし、兒を育ると家宅とを占問うに皆吉。
屯 □言妄語,轉相詿誤。道左失跡,不知郎處。
胡言亂語して虛妄實ならず、一より一へ傳えて彼此を貽誤す。道路の左に蹤跡を失い、あの人果して何處に在るかを知らず。此の林訛言相い誤り、人を尋ねて着無きを主とし、訪求と音信とを占問うに皆得ず。
蒙 鬱映不明,陰積無光。日在北陸,萬物雕藏。
云氣鬱結して光影昏昧し、陰氣積聚して全く光亮なし。太陽北陸の冬至の位に運行し、萬物凋零收藏す。此の林陰盛んにして陽微しく、生機閉塞するを主とし、事を謀るを占問うに通ぜず、靜守して時を待つに宜し。
需 主母多福,天祿所伏。居之寵昌,君子有光。
主母福澤深厚にして、上天の祿位便ち此の裏に潜藏す。此の位に居りて恩寵昌盛し、君子因りて光彩有り。此の林內助力を得、家門榮顯するを主とし、家事と仕進とを占問うに皆吉。
訟 不耕而獲,家食不給。中女無良,長子跛足。疏齒善市,商人有喜。
耕種せずして收穫を想う、家中の口糧接濟が上がらず。次女品行佳ならず、長子また跛脚なり。幸いに牙縫稀疏の人交易に善く、商人因りて喜有り。此の林家門缺多くして商賈獲有るを主とし、家事を占問うに利ならず、經營利有り。
師 火起上門,不為我殘。跳脫東西,獨得生完。不利山鄰,病疾憂患。
大火門に燒到すれど、卻って我に傷らず。東に躲ざらい西に閃けて跳脫出來し、獨り性命を保全す。只だ山邊の鄰居利ならず、疾病憂患有らん。此の林自身災を免れて旁人害を受くるを主とし、己身を占問うに平安、親鄰憂ふ可し。
比 持刃操肉,對酒不食。夫亡從軍,少子入獄。抱膝獨宿。復之剝)
刀子を手持して肉を切着す、酒菜に面對すれど卻って吃下がらず。丈夫軍に從りて一去して返らず、小兒子また獄に下され、只だ膝を抱きて獨宿するを得。此の林骨肉離散し、憂愁して食を廢するを主とし、家事を占問うに大凶。同辭また「復の剥」に見ゆ。
小畜 □蝦去海,遊於枯裡。街巷迫狹,不得自在。南北四極,渴餒成疾。
蝦蟹大海を離れて、干枯の巷陌の中に游到す。街巷狹窄逼仄にして、一點も自在ならず。南北四方の極處に奔走し、又渴え又餓えて、終に病と成る。此の林其の本處を失い、動すれば卽ち困を受くるを主とし、遷徙と遠行とを占問うに皆凶。
履 啞啞笑語,與歡飲酒。長樂行觴,千秋起舞。拜受大福。
笑語啞啞として、歡喜の人と共に美酒を飮む。長久歡樂して杯を傳え酒を行き、千秋を祝せんがために起舞し、莫大の福氣を拜受す。此の林宴樂和洽し、福祿自ら至るを主とし、喜慶の事を占問うに大吉。
泰 登高上山,賓於四門。士伍得歡,福為我根。
高山に登上し、また賓禮を以て四方の門の賢才を延納す、《尚書・舜典》に「四門に賓す」の文有り。士卒行伍上下歡悅し、福氣便ち我が根基と成る。此の林賢を納れ衆を得、根基穩固なるを主とし、功名と家國とを占問うに皆吉。
否 天厭周德,命與南國。以禮靜民,兵革休息。
上天周室の徳を厭棄し、天命を南方の國に交す。新主禮を以て百姓を安定し、兵戈甲胄皆停歇を得。此の林天命轉移して政局安に趨くを主とし、變革の後太平を獲る可きを占問うに。
同人 壅遏堤防,水不得行。火光盛陽,陰魄伏匿。走歸其鄉。
堤防水路を堵塞し、水流通行する能わず。火光盛旺して陽氣充盈し、陰魂只だ潜伏藏匿して、其の本鄉に逃回るを得。此の林陽盛んにして陰を制し、邪敢えて犯さざるを主とし、祟を驅るを占問うに吉有り、惟だ水道壅塞は亦た財路通ぜざるを主とす。
大有 河海都市,國之奧府。商人受福,少子玉石。一作食)
河海の濱の通都大邑、國家最富庶の府庫なり。商人此れ由りて福を獲、年少的兒子もまた玉石の富を得。此の林水陸の要衝に居りて富を致すを主とし、經商と家業とを占問うに皆吉。「石」一本「食」と作る。
謙 東行避兵,南去不祥。西逐凶惡,北□福生。與喜相逢。
東に向かいて行走すれば兵禍を躲避する可く、南に往けば則ち吉利ならず。西に向かえば凶惡を驅逐する可く、北に向かえば則ち福氣滋生し、處處喜事と相逢す。此の林方を擇びて害を避け、吉に趨るに據有るを主とし、出行を占問うに東北に宜しく南を忌む。
豫 東家中女,嫫母最丑。三十無室,媒伯勞苦。
東隣家の次女、傳說の黃帝の妃嫫母のごとく醜し。三十歲にして未だ家を成さず、媒人彼女のために奔走辛苦す。此の林姻緣諧い難く、久議して成らざるを主とし、婚嫁を占問うに利ならず。
隨 破亡之國,天所不福,難以止息。
已に破敗滅亡せし國家、上天の肯えて降福せざる所にして、亂象停息し難し。此の林氣數已に盡き、禍患止まざるを主とし、家國と事業とを占問うに皆凶。
蠱 驂駕蹇驢,日暮失時。居者無憂,保我樂娛。
跛驢を以て車を駕し驂馬と做れば、天色已に晚にして時辰を誤る。幸いに家中に留まる人憂患なく、還て我が歡樂を保住する能くす。此の林出行時を失し居家して安を得るを主とし、遠行を占問うに利ならず、家を守れば則ち吉。
臨 蝃蝀之側,佞幸傾惑。女謁橫行,王道充塞。
彩虹の升起するあの一邊、佞幸の徒人をして傾倒迷惑せしむ。《詩經・鄘風・蝃蝀》正に淫奔節なきを刺す。婦人干與請託の風橫行し、王道これによって壅塞通ぜず。此の林內寵政を亂り、正道阻を受くるを主とし、朝局と家事とを占問うに皆凶。
觀 三羖五羊,相隨並行。迷入空澤,有谷直北。徑涉六駁,為所傷賊。
三隻の黑公羊と五隻の羊と相隨同行し、路を迷うて空曠の大澤に進入す。正北方本來通ず可き山谷有るに、卻って徑直に猛獸駮の居る所の地を闖過し、其の咬傷殘害せらるる所と爲る。《山海經》駮の狀馬のごとくして虎豹を食うを載す。此の林途を迷うて險に遇い、群行して害を受くるを主とし、出行を占問うに大凶。
噬嗑 戴喜抱子,與利為友。天之所命,不憂危殆。荀伯勞苦,西來王母。
頭頂喜事・懷裏孩子を抱き、利益と朋友を結ぶ。此れ上天の命定する所にして、危險を憂慮する須からず。荀伯辛苦奔勞すると雖も、西來の王母終に福を降す。此の林天佑して喜有り、勞して報を得るを主とし、家事と財を求むるとを占問うに皆吉。
賁 織縷未就,針折不復。女工多態,亂我政事。
織線未だ織成らざるに、針また折斷して再び用ゐる能わず。女子の針黹の事花樣太多くして、我が正務を擾亂す。此の林功業中輟し、內事外を妨ぐるを主とし、事を謀るを占問うに成らず。
剝 行露之訟,貞女不行。君子無食,使道壅塞。
《詩經・召南・行露》女子の强逼せられて訟に涉るを詠み、貞を守る女子終に屈從して行かんことを肯んぜず。君子周濟す可き食無くして、道路をして壅塞通じ難からしむ。此の林正を守りて訟に遇い、困頓して行き難きを主とし、婚訟と出行とを占問うに皆利ならず、惟だ貞守を以て身を保つ可し。
復 羿張烏號,彀射天狼。鐘鼓不鳴,將軍振攘。趙國雄勇,鬥死滎陽。
后羿烏號の良弓を張開し、弦を拉滿して天狼星に射向す。鍾鼓未だ擂響せざるに、將軍便ち已に臂を奮りて起つ。趙國の勇士何等雄健なるや、卻って滎陽に戰死す。此の林武事勇烈にして終に身を殞するを免れず、征戰を占問うに凶多吉少。
大畜 延頸望酒,不入我口。商人勞苦,利得無有。夏臺羑里,難為復喜。
頸子を伸長して美酒を盼着すれど、酒卻って我が嘴に進まず。商人辛苦奔走して、一點の利も得ず。成湯の夏台に困み文王の羑里に囚はるるがごとく、再び歡喜有ること難し。此の林望みて得ず、困厄未だ解けざるを主とし、財を求めと難を脫するとを占問うに皆利ならず。
頤 冠帶南遊,與喜相期。邀於嘉國,拜位逢時。坎之井)
冠を整え帶を束ねて南に遠游し、喜事と相約して至る。美好の邦國に延請を受け、官位を拜受して恰も其の時に逢う。此の林遠游して合に遇い、爵を拜して時を得るを主とし、官を求めと出行とを占問うに大吉。同辭また「坎の井」に見ゆ。
大過 東西觸垣,不利出門。魚藏深水,無以樂賓。爵級摧頹,光威咸衰。
東に走り西に撞いて皆牆壁に碰上し、門を出づるに宜からず。魚深水の裏に藏れて捕得せず、佳肴を拿出して賓客を款待する能わず。官爵品級頹落し、光彩威望一幷に衰减す。此の林處處阻を受け、名位俱に損するを主とし、出行と仕進とを占問うに皆凶。
坎 兩母千子,轉息無已。五乳百雛,騂駁驤駒。
兩位の母畜千百の子息を生下し、輾轉繁衍して窮盡無し。五度哺乳すれば便ち上百の雛兒有り、赤色の雜色の馬駒昂首騰躍す。此の林生息蕃盛にして、家畜財貨俱に增すを主とし、子嗣と畜産とを占問うに大吉。
離 重□祖後,司馬太史。陽氏之災,雕宮悲苦。
重疊祖先の餘蔭を承繼し、世代司馬・太史の類の官を做す。然るに陽氏災禍に遭い、華美の宮室の中一片悲苦なり。此の林世家難を蒙り、榮極まりて悲を生ずるを主とし、家門と官職とを占問うに皆隱憂有り。
咸 內執柔德,止訟以默。宗邑賴福,禍災不作。
內心柔順の徳を守持し、沉默を以て爭訟を止息す。宗族城邑これによって福を得、禍患災殃再び興起せず。此の林柔を以て爭を止め、宗族安を獲るを主とし、爭訟を占問うに和解するに宜し、吉。
恆 采唐沬鄉,邀期桑中。失信不會,憂思約帶。巽之乾,師之噬嗑。一作牛驥同堂,郭氏以亡。國破為墟,君奔走逃。
沬鄕に女蘿を采摘し、桑中に會面するを相約す、《詩經・鄘風・桑中》正に此の事を詠む。對方信を失して來らず、人をして憂思憔悴して腰帶すらも收緊せしむ。此の林約會成らず、相思徒勞するを主とし、婚戀を占問うに遂わず。同辭また「巽の乾」「師の噬嗑」に見ゆ、一本此の條「牛驥堂を同じくし、郭氏以て亡ぶ。國破れ墟と爲り、君奔走して逃ぐ」と作る。
遯 官成立政,衣就缺袂。恭謙為衛,終無禍尤。
官職成を做し政事立定すれど、衣服卻って做好して偏に一隻の袖子を缺き、總じて足らざる有り。恭敬謙退を以て身を護る衛と爲せば、終に禍患過失有ることなし。此の林位未だ全からざると雖も謙退保つ可きを主とし、官に居り成を守るを占問うに安を得。
大壯 麒麟鳳凰,子孫盛昌。少齊在門,利以合婚。貴人大歡。
麒麟と鳳凰のごとき祥瑞出現し、子孫興盛昌隆す。年少の齊女已に門前に在り、婚姻を結成するに宜しく、貴人大いに歡喜す。此の林祥瑞門に臨み、婚配貴を得るを主とし、嫁娶と子嗣とを占問うに大吉。
晉 亂危之國,不可涉域。機機發發,身頓僵覆。
動亂危殆の國家、其の疆界に踏進する可からず。弩機一觸すれば卽ち發し、稍も不慎なれば便ち身仆倒斃す。此の林危邦入らず、動すれば卽ち咎を得るを主とし、遠行を占問うに大凶。
明夷 千雀萬鳩,與鷂為仇。威勢不敵,雖眾無益。為鷹所擊,萬事皆失。
千百隻の麻雀と斑鳩、鷂鷹と仇怨を結下す。威勢對方に敵し得ず、縱ほ數量衆多なるも用無し。終に鷹の襲擊する所と爲り、萬事盡く失う。此の林衆弱一强に敵せざるを主とし、爭鬥と合謀とを占問うに皆凶。
家人 眾神集聚,相與議語。南國虐亂,百姓愁苦。興師征討,更立賢主。剝之末濟,屯之節,小畜之豫)
衆神一處に聚まりて商議す。南方の國暴虐して亂を生じ、百姓愁苦不堪なり。ここに兵を興して征討し、別に賢明の君主を立つ。此の林暴を除き民を安んじ、改めて新君を立つるを主とし、變革を占問うに吉有り。同辭また「剥の未濟」「屯の節」「小畜の豫」に見ゆ。
睽 顏淵閔騫,以禮自閒。君子所居,禍災不存。
顏淵と閔子騫兩位の賢者、皆禮を以て己を防閑す。君子の居る所の處、禍患災殃自然に生ぜず。此の林禮を守りて自ら持し、災禍侵さざるを主とし、身家平安を占問うに、吉。
蹇 三桓子孫,世秉國權。爵勢上卿,富於周公。
魯國孟孫・叔孫・季孫三桓の後代、世世代代國政を把持す。爵位權勢上卿に位居し、富有更に周公の後に勝る。此の林世卿權を專にし、臣の富君に逾るを主とし、權勢を占問うに得る可しと雖も僭越の危有り。
解 鶴鳴九皋,處子失時。載土販鹽,難為功力。
鶴深遠の沼澤の中に鳴叫して聲天に聞ゆ、《詩經・小雅・鶴鳴》正に此の意を詠む。閨中の女子卻って婚期を錯過す。車を以て土を裝して鹽を販れば、力を費して成效見え難し。此の林賢聲著るると雖も時我と與せざるを主とし、婚嫁と經營とを占問うに皆勞多く功少なし。
損 方軸圓輪,車行不前。組囊以錐,失其事便。還師振旅,兵革休止。二句疑衍文)
方形の車軸圓形の車輪を配し、車子怎麼しても走動かず。錐子を以て絲囊を縫織せんとすれば、工具全く手に稱えず。幸いに大軍師を班にし旅を整えて還り、兵戈停息を得。此の林器用に合せず、事多く窒礙して干戈止む可きを主とし、事を謀るを占問うに成り難く、戰事將に休まんとす。末二句疑らく衍文なり。
益 魚擾水濁,桀亂我國。駕龍出遊,東之樂邑。天賜我祿,與生為福。
魚一攪動すれば水便ち渾濁し、夏桀のごとき暴君我が國家を攪亂す。ここに龍車を駕りて出游し、東に向かいて安樂の城邑に往く。上天我に福祿を賜り、生れと俱に便ち福氣なり。此の林亂中遠避して別に吉地を得るを主とし、遷徙を占問うに吉有り。
夬 白虎黑狼,伏伺山陽。遮遏牛羊,病我商人。
白虎と黑狼と山南に埋伏して窺伺し、牛羊を攔截し、我が商隊を害苦す。此の林道路寇有り、貨畜阻を受くるを主とし、出行と經商とを占問うに皆凶。
姤 履危不安,疏顛我顏,傷腫為瘢。
危險の處を踩在りて心中安んぜず、一失脚して臉面を摔壞し、傷處紅腫して疤痕を留む。此の林險を涉りて傷を受け、顔面に損及ぶを主とし、出行と事を擧ぐるとを占問うに皆利ならず。
萃 三人輦車,東入旁家。主母貪饕,盜我資財。亡失犁牛。
三個の人車を推して東に走り、旁邊の人家に進入す。あの家の主母貪婪にして厭無く、我が資財を偷走し、田を耕る牛すらも丢了。此の林誤りて貪門に入り、財畜俱に失うを主とし、出行と託付とを占問うに皆凶。
升 三鶴南飛,俱就塘池。蝦□饒有,利得過倍。
三隻の鶴南に飛去し、一同に池塘邊に落着す。塘裏蝦蟹豐足にして、獲る所の利本錢の一倍に超過す。此の林地を擇ぶこと宜しきを得、利を獲ること加倍するを主とし、財を求むるを占問うに大吉。
困 鷹棲茂樹,候雀往來。一擊獲兩,利在枝柯。
鷹枝葉繁茂の樹上に棲し、麻雀の來往を靜候す。一次出擊すれば便ち兩隻を捕獲し、利便ち此の枝柯の間に在り。此の林靜を守りて時を待ち、一擧雙收するを主とし、財を求めと謀取とを占問うに皆吉。
井 堯舜欽明,禹稷股肱。伊尹往來,進履登堂。顯德之徒,可以輔王。
堯舜恭敬明察にして、禹と后稷彼らの股肱の臣と做る。伊尹湯桀の間に往返し、終に進身して堂に登りて用ゐられんを見る。徳行顯著の人、王業を輔佐する可し。此の林明主賢臣相い遇うを主とし、仕を求めと賢を薦るとを占問うに大吉。
革 枯旱三年,草萊不生。粢盛空乏,無以供靈。
大旱三年に連なり、野草すらも生長せず。祭祀に用ゐる黍稷空乏して有る無く、神靈を供奉する能わず。此の林天災歲凶し、祭祀繼がざるを主とし、農事と福を祈るとを占問うに皆利ならず。
鼎 方口圓舌,為知樞門。解釋鉤帶,商旅以歡。
方正の口・圓轉の舌、言辭に善くして關鍵門徑に通曉す。人のために鉤帶を解開し糾結を化開し、商旅因りて歡喜す。此の林言を善くして紛を解き、關節に通達するを主とし、交涉と經商とを占問うに皆吉。
震 鳧池水溢,高陸為海。江河橫流,魚鱉成市。千里無牆,鴛鳳遊行。
野鴨の棲息する池水漫溢し、高地もまた汪洋と變成す。江河橫決汎濫し、魚鼈多きこと市集のごとし。千里の內一堵の牆垣をも看不見ず、唯だ鴛鴦と鳳凰と其の間に往來す。此の林水患人居を蕩盡すを主とし、家宅を占問うに大凶、惟だ漁獵反つて獲有る所なり。
艮 烹魚失刀,駕車馬亡。錫刃不入,魴鯉腥臊。
魚を煮えんと要すれど刀を尋着けず、車を駕せんと要すれど馬を丢了。錫做の刀刃鈍くして切入らず、魴魚鯉魚腥臊して食い難し。此の林器具稱せず、事に臨みて備無きを主とし、諸事を占問うに成らず。
漸 戎狄蹲踞,無禮貪饕。非吾族類,君子攸去。
戎狄の人箕踞して坐し、禮節を講せずして貪婪厭無し。《左傳》成公四年「我が族類に非ざれば、其の心必ず異なり」と曰う、君子只だ此のごとき地方を離るるに應し。此の林異類處し難く、早く退避するに宜しきを主とし、交結と合伙とを占問うに利ならず。
歸妹 渡河踰水,狐濡其尾。不為禍憂,捕魚遇蟹。利得無幾。
河を渡り水を越えて、狐狸尾巴を沾濕せしむ、語本《易・未濟》なり。幸いに何の禍患とも算するに足らず、只だ魚を捕えんと想うて螃蟹を撈到し、利を得ること多からず。此の林險を涉りて傷なくして獲る所有限なるを主とし、財を求むるを占問うに平平。
豐 河出小魚,不宜勞煩。苛政害民,君受其患。
河裏只だ些小の魚を出す、力を費して張羅するに値せず。苛刻の政令百姓を殘害し、君と爲る者終に自ら其の禍を受く。此の林小利圖るに足らず、苛政自ら其の咎を貽すを主とし、財を求めと事を治むるとを占問うに皆寬簡に宜し。
旅 偃武修文,兵革休安。清人逍遙,來歸空閒。
武備を停止し文治を修明し、兵甲收藏安放を得。像す《詩經・鄭風・清人》の寫す所の久しく河上に戍する將士も、逍遥して歸來し、閑暇を得享す。此の林兵を偃め民を息め、久役歸を得るを主とし、家國と遠人の歸來とを占問うに皆吉。
巽 九疑鬱林,沮溼不中。鸞鳥易去,君子不安。
九疑山と郁林郡の一帶、低濕にして瘴重く居住に宜からず。鸞鳥すらも輕易に飛走す、君子此に在りて自然安寧を得ず。此の林水土服せず、居處宜ならざるを主とし、遷徙と遠行とを占問うに利ならず。
兌 搏□逢虎,患厭不起。遂至歡國,與福笑語。君子樂喜。
猛獸と搏鬥してまた老虎に碰上し、禍患壓來して爬起す能わざるに幾し。終に歡樂の邦國に到り、福氣と談笑相い對し、君子快樂歡喜す。此の林先に危にして後に安く、否極まりて泰來るを主とし、占問うに先に凶にして後に吉。
渙 狗生龍馬,公勞嫗苦。家無筐筥,折悔為吝。
狗竜馬を生下すのごとき怪異の事出現し、老翁勞碌して老婦困苦す。家中物を盛る筐筥すらも無く、折損懊悔して困吝に陷る。此の林怪異家に見え、貧窘之に隨うを主とし、家宅と生計とを占問うに皆凶。
節 嬰孩求乳,慈母歸子。黃麑悅喜,得其甘餌。
嬰兒乳を吃せんと要し、慈母便ち孩子の身邊に回到す。小鹿もまた歡喜起來して、甜美の食物を得到す。此の林慈愛相い應じ、求む所卽ち得るを主とし、育養と助を求むるとを占問うに皆吉。
中孚 有兩赤鷂,從五隼噪。操矢無筈,趣釋爾射。扶伏聽命,不敢動搖。
兩隻の赤色の鷂鷹有りて、五隻の隼を帶びて一同に聒噪す。箭を手持するに扣弦の箭筈なく、射出せず、只だ趕緊に弓矢を放下するを得。衆鳥匍匐して命を聽き、敢えて亂動せず。此の林外强にして實用なく、勢を以て人を服するを主とし、爭鬥を占問うに徒らに其の表有るのみ、止むに宜しく發するに宜しからず。
小過 伊尹智士,去桀耕野。執順以強,天佑無咎。
伊尹は智慧有る人にして、夏桀を離れて田野に躬耕す、《孟子・萬章》其の有莘の野に耕すを載す。柔順の道を守持して自然に强健し、上天保佑して過錯なし。此の林暗を去りて明に投じ、時に順いて自ら保つを主とし、退處を占問うに吉を得。
既濟 逐鹿山西,利入我門。陰陽和調,國無災殃。長子東遊,須其三仇。二句疑衍文)
山西に鹿群を追逐し、利益之に隨いて我が門に進入す。陰陽調和順暢して、國中災殃なし。長子東に往きて出游し、須く彼が三位の匹配の人を等候すべし。此の林獵獲利有り、國泰く家安しを主とし、財を求めと家國とを占問うに皆吉。末二句疑らく衍文なり。
未濟 龍興之德,周武成福。長女宜家,與君相德。長股遠行,狸且善藏。
竜の騰起する徳行を具備し、周武王因りて福業を成就す。長女家を持するに宜しく、夫君と徳行相配す。長腿の人遠行に善く、狸貓の類則ち隱藏に善し。此の林徳位相い稱い、各々其の宜しきを得るを主とし、家室と出行とを占問うに皆吉。
大畜の林(大畜卦六十四林)
大畜 朝鮮之地,姬伯所保。宜人宜家,業處子孫。求事大喜。
朝鮮あの片の土地、箕子の周室の封を受けて守有する所の地なり。人に宜しく家室に宜しく、世代子孫の産業を安置する可く、事を謀るに大いに喜慶有り。此の林地を得て安居し、子孫託有るを主とし、遷徙と業を置くとを占問うに大吉。
乾 金柱鐵關,膠固衛災。君子居之,安無憂疑。
金鑄の柱子・鐵打の關門、牢牢固守して災禍を防ぐ。君子此に住して、安穩して憂慮疑懼なし。此の林防衛堅固にして、內外虞なきを主とし、家宅と守禦とを占問うに大吉。
坤 轉禍為福,喜來入屋。春城夏國,可以飲食。保全家室。
禍事轉じて福氣と成り、喜慶屋の中に進入す。春夏の際城邑豐足にして、安心して飲食する可く、一家の老小を保全す。此の林危を轉じて安と爲し、衣食着有るを主とし、家宅を占問うに吉。
屯 水暴橫行,浮屋壞牆。泱泱溢溢,市師驚惶。居止不殆,與母相保。
洪水暴發橫流し、房屋を沖浮し牆垣を沖壞す。水勢浩蕩漫溢して、市集と軍旅と一片驚慌す。幸いに自家の居處危險なく、還て母親と相互に保全する能くす。此の林外水患に遭うて自身免を獲るを主とし、家宅を占問うに驚有りて險なし。
蒙 虎豹熊羆,遊戲山隅。得其所欲,君子無憂。旅人失利,市空無人。
虎豹熊羆山角に游戲し、各々其の願う所を得、君子これによって憂慮なし。只だ行旅の人利益を失い、市集空蕩して人無し。此の林猛獸志を得、商途蕭條するを主とし、家に居るを占問うに憂なく、經商利ならず。
需 躬禮履仁,尚德止訟。宗邑已安,三伯無患。
親身禮を守り仁道を踐行し、徳義を崇尚して爭訟を止息す。宗族城邑已に安定し、三位の方伯皆禍患なし。此の林徳を以て爭を息め、上下皆安しを主とし、爭訟を占問うに解く可し、吉。
訟 江淮易服,元黃朱飾。靈公夏徵,哀禍無極。高位崩巔,失其寵室。
江淮の一帶服色を改換し、玄黄朱紅を以て裝飾す。陳靈公夏姬と淫亂するに因りて夏征舒の弑する所と爲り、哀禍窮盡なし、事《左傳》宣公十年に見ゆ。身高位に處りて頂上より崩墜し、寵を受くる家室を失う。此の林淫亂して身を亡し、位高くして覆り易しを主とし、家國を占問うに大凶。
師 不虞之患,禍至無門。奄忽暴卒,痛傷我心。(蒙之明夷)
意料到らざる禍患、來るとき並びに尋ぬ可き門徑なし。忽然の間暴病して身亡し、我が心腸に痛徹す。此の林橫禍猝に至り、生死常ならざるを主とし、身體と家人とを占問うに大凶。同辭また「蒙の明夷」に見ゆ。
比 三塗五嶽,去危入室。凶禍不作,桀盜堯服。失其寵福,貴人有疾。
三塗山と五岳を越過し、險地を離れて室內に入居す。凶禍再び發作せず、桀のごとく凶暴・盗賊の流もまた堯の衣冠を穿上して歸化す。只だ昔日の寵遇福氣を失い、貴人還て疾病を染有す。此の林險を避けて安を得て福損有る所を主とし、身安んじて福減ずを占問うに。
小畜 配合相迎,利之四鄉。昏以為期,明星煌煌。欣喜奭懌,所言得償。
男女相配して彼此迎娶し、四方の何れの一鄕に往くも皆利有り。黄昏を期と約定し、啓明星光輝燦爛たり、《詩經・陳風・東門之楊》正に「明星煌煌」の句有り。欣喜快樂して、說く所の話皆應驗を得。此の林婚配禮を成し、言出づれば必ず踐えるを主とし、嫁娶と約信とを占問うに皆吉。
履 三首六身,莫適所閒。更伏搖動,動失事便。箕子佯狂,國乃不昌。
三個の頭六個の身子の怪物、安適にして棲止す可き一處なし。忽伏し忽動き、一動すれば便ち便利を失う。箕子只だ瘋を裝して禍を避くるを得、國家これによって昌盛する能わず。此の林體制乖異にして、賢者退避するを主とし、國事と事を謀るとを占問うに皆利ならず。
泰 虎臥山隅,鹿過後胊。弓矢設張,蝟為功曹。伏不敢起,遂全其軀。得我羙章之。(大有之訟)
老虎山角に臥し、鹿其の身後より走過す。弓箭張設して發を待ち、刺猬一團に縮まりて功曹の小吏を充當す。伏して敢えて身を起さず、因りて身軀を保全し、還て我が美好の文彩を得。此の林藏伏して禍を免れ、靜守して全を得るを主とし、占問うに潜藏するに宜しく妄動するに宜しからず、吉。同辭また「大有の訟」に見ゆ。
否 麟鳳執獲,英雄失職。自衛反魯,畏昧不起。福祿訖己。(畏一作晦)
麒麟鳳凰人の捕獲する所と爲り、英雄職位を失う。孔子衞より魯に返り、時局昏暗なるに因りて畏懼して出でず、《論語・子罕》に「鳳鳥至らず」の嘆有り。福祿自己に到りて便ち斷絕す。此の林賢者困に遭い、氣數將に終らんとするを主とし、仕進と家運とを占問うに皆凶。「畏」一本「晦」と作る。
同人 欒子作殃,伯氏誅傷。州犁奔楚,失其寵光。
晋國欒氏禍端を興起し、伯宗一家因りて誅せらる。伯宗の子伯州犁楚國に出逃し、原有の榮寵光彩を失う、事《左傳》成公十五年に見ゆ。此の林權臣禍を構え、良臣奔を出づるを主とし、家國と仕途とを占問うに皆凶。
大有 黃帝出遊,駕龍乘馬。東至泰山,南過齊魯。王良御右,文武何咎。不利市賈。
黃帝出巡遠游し、竜を駕り馬を騎す。東に泰山に到り、南に齊魯を經過す。御に善き王良車右に駕馭し、文武の臣豈に過失有らんや。只だ市集の賣買に利ならず。此の林出行顯赫にして、隨從人を得るを主とし、遠行を占問うに吉、經商利ならず。
謙 齊魯爭言,戰於龍門。構怨致禍,三世不安。
齊國と魯國と爭執下せず、龍門に交戰す。仇怨を結下して禍患を招來し、三代の人安寧を得ず。此の林口舌仇と成り、禍後世に延びるを主とし、爭訟と交惡とを占問うに大凶。
豫 道禮和德,仁不相賊。君子往之,樂有其利。
禮義を講求し徳行を調和し、心仁厚を存して彼此相い殘害せず。君子此のごとき地方に前往すれば、歡樂して獲益有る所なり。此の林風俗醇厚にして、之に往きて利を得るを主とし、出行と交結とを占問うに皆吉。
隨 嫗妒公姥,毀益亂類。使我家憤,利不得遂。
老婦公婆を忌妒し、毀謗多ければ多きほど是非愈々亂る。我が一家をして憤懣不平ならしめ、利益手に到る能わず。此の林內闈和を失い、家事紛亂するを主とし、家宅と財を求むるとを占問うに皆利ならず。
蠱 一巢九子,同公共母。柔順利貞,君子不殆。福祿所在。
一個の巢の裏九隻の雛鳥を養い、同一の父・同一の母なり。《詩經・召南・鵲巢》正に巢を以て室家に喩う。柔順にして正を守れば則ち利有り、君子これによって危險なく、福祿便ち其の中に在り。此の林家門和順し、子孫衆多なるを主とし、家事を占問うに大吉。
臨 崔嵬北嶽,天神貴客。溫仁正直,主布恩德。閔哀不已,蒙受大福。
高峻の北岳恒山、天神と貴客の居る所なり。人と爲り溫厚仁愛・正直邪無くして、主上恩徳を施布す。哀憐の心絕えず、因りて大福を蒙受す。此の林神を敬い徳を修め、天福澤を賜るを主とし、福を祈りと恩を求むるとを占問うに皆吉。
觀 三蛆逐蠅,陷墮釜中。灌沸淹殪,與母長訣。
三隻の蛆蟲蒼蠅を追逐し、鍋の裏に掉進す。沸水一澆せば便ち燙死淹沒し、此れより母親と永別す。此の林微利を逐いて死地に陷るを主とし、貪求の事を占問うに大凶。
噬嗑 東山西陵,高峻難升。滅夷掘壘,使道不通。商旅無功,復反其邦。
東邊の山・西邊の丘陵、高峻にして攀登し難し。また地勢を鏟平し壁壘を掘開し、道路をして通行する能わざらしむ。商旅一の獲る所なく、只だ本國に返回するを得。此の林道路阻絕し、經營功なきを主とし、出行と財を求むるとを占問うに皆利ならず。
賁 常德自如,不逢禍殃,福祿自來。
恒常の徳行守持自如にして、禍殃に遭遇せず、福祿自然に到來す。此の林常を守りて福有り、求めずして自ら得るを主とし、諸事を占問うに平安、吉。
剝 范子妙材,戮辱傷膚。後相秦國,封為應侯。
范雎才具卓異にして、早先笞辱を受けて幾に命を喪い肌膚俱に傷つきしも。後來秦國の丞相と做り、應侯に封ぜらる、事《史記・范雎蔡澤列傳》に見ゆ。此の林先に辱められ後に顯れ、困にして後に達するを主とし、占問うに先に凶にして後に吉。
復 狼虎結謀,相聚為儔。同齧牛羊,道絕不通。病我商人。
狼と虎と合謀し、聚まりて同伙と成る。一起に牛羊を撕咬し、道路因りて斷絕通ぜず、我が商隊を害苦す。此の林群凶黨を爲し、商途阻を受くるを主とし、出行と經商とを占問うに皆凶。
旡妄 不宜杜公,與我爭訟。媒伯無禮,自令塞壅。
本來杜公のごとき人と相交るべからざるに、彼竟に我と訟を爭起す。媒を做る人失禮無狀にして、自ら壅塞不通を招致す。此の林交る其の人に非ず、婚事訟を生ずるを主とし、爭訟と婚姻とを占問うに皆利ならず。
頤 上天樓臺,登拜受福,喜慶大來。
通天の高台に登上し、禮を行き參拜して福澤を承受し、喜慶大量に到來す。此の林高に登りて福を受け、吉慶門に盈つるを主とし、福を求めと升遷とを占問うに大吉。
大過 三羊上山,東至平康。黃龍服箱,南至魯陽。完其佩囊,執綏車中。行人有慶。
三隻の羊山に登り、東に平安康泰の地に到達す。黄竜車廂の前に駕し、南に魯陽に到る。佩囊完好にして損無く、人車中に在りて車に上るの綏帶を握る。出行の人喜慶有り。此の林行途安順し、物を載せて失なきを主とし、出行を占問うに大吉。
坎 天地閉塞,仁智隱伏。商旅不行,利深難得。
天地閉塞通ぜず、仁人智士隱伏して出でず、語本《易・坤》の「天地閉じ、賢人隱る」なり。商旅往來を停止し、深藏の利益求得し難し。此の林時運壅塞し、賢者當に隱るべきを主とし、財を求めと出仕とを占問うに皆利ならず。
離 延陵適魯,觀樂太史。車轔白顛,知秦興起。卒兼其國,一統為主。
延陵季子魯國に出使し、太史をして彼のために列國の樂を演奏せしむるを請う。《秦風》の裏車聲轔轔・白額の馬の歌辭を聽聞し、便ち秦國將に興起せんとするを斷定す、事《左傳》襄公二十九年季札樂を觀るに見ゆ。秦終に諸國を兼幷し、天下を一統す。此の林微を見て著を知り、大勢測る可きを主とし、遠圖を占問うに吉有り。
咸 櫜戢甲兵,歸放馬牛。徑路開通,國無凶憂。一下有朽牆難鑿,疾病難治。
甲胄兵器を皮囊に收進して藏起し、馬牛を山野に放歸す、《詩經・周頌・時邁》に「弓矢を櫜う」の文有り。道路暢通して阻無く、國中凶險憂患なし。此の林武を偃め農に歸し、天下太平を主とし、國事と出行とを占問うに皆吉。一本此の下に「朽牆鑿き難し、疾病治し難し」の二句有り。
恆 牛驥同堂,郭氏以亡。國破為壚,君奔走趍。
耕牛と駿馬と槽を同じくして共處し、賢愚分れず、郭氏これによって滅亡す。《管子》郭君の善を善して用ゐる能わず惡を惡して去る能わざるを載し、遂に亡國に至る。國破れて後廢墟と化し、國君倉皇奔逃す。此の林人を用ゐること明ならず、國を亡して位を失うを主とし、家國を占問うに大凶。
遯 大尾小腰,重不可搖。棟撓壤壞,臣為君憂。湯火之言,消不為患,使我復安。
尾大にして腰細く、沉重にして搖動する能わず。屋梁彎曲して牆壁塌壞し、臣子國君のために憂慮す、「棟橈」の語《易・大過》に出づ。あの湯のごとく火のごとき危言終に消解し、禍患を成さず、我をして重ねて安寧に歸らしむ。此の林尾大掉かざるの危にして終に化解を得るを主とし、占問うに先に憂えて後に安し。
大壯 太乙置酒,樂正起舞。萬福攸同,可以安處。保我齯齒。一下有暗空無餌,不利為旅。
太乙尊神酒宴を設し、樂正節に應じて起舞す。萬福一同に聚集し、人安然として自處する能くし、高壽の者の重生の齒牙を保有す。此の林神庥降臨し、壽考安康を主とし、家宅と身體とを占問うに皆吉。一本此の下に「暗空餌無く、旅と爲すに利ならず」の二句有り。
晉 飲酒醉酗,跳起爭鬥。伯傷叔僵,東家治喪。
酒を飮みて大醉して酒瘋を撒起し、跳起して打鬥す。兄長傷を受け叔父倒斃し、東隣人家喪事を辦起す。此の林酒後徳を失い、鬥毆して禍を致すを主とし、宴飮と爭鬥とを占問うに皆凶。
明夷 陵險難登,澗中多石。車馳□擊,重載傷軸。擔負善躓,跌踒右足。
山陵險峻にして攀登し難く、澗谷の中亂石多し。車子奔馳して磕碰斷えず、載せること太だ重くして車軸を壓傷す。擔を挑ぐ人屢々絆倒し、跌きて右脚を扭傷す。此の林路險くして載重く、行けば必ず損を受くるを主とし、出行と負荷の事とを占問うに皆凶。
家人 爭訟不已,更相諮詢。張李弱口,被髮北走。一下有耳順從心,躬行至仁。不須以兵,天下太平。
爭訟完まること沒く、雙方輪番に四處求告す。張氏と李氏と皆口舌怯弱にして、只だ頭髮を披散して北に逃走するを得。此の林訟に纏はりて了無く、理屈して敗走するを主とし、官非を占問うに利ならず。一本此の下に「耳順は心に從い、躬行は仁に至る。兵を以てする須からず、天下太平」の四句有り。
睽 心志無良,傷破妄行。觸牆抵壁,不見戶房。先王閉關,商旅委棄。
心志正ならず、胡亂に行事して傷損破敗を致す。東に撞き西に碰えて牆壁を見るのみ、門戸房舍を尋着けず。古禮冬至先王關を閉じ商旅行わず、語本《易・復》の大象なり、商を行くの事只だ作罷するを得。此の林心邪にして路塞がり、行止俱に廢するを主とし、出行と經商とを占問うに皆凶。
蹇 鸋鴂鴟鴞,治成御災。綏德安家,周公勤勞。
鷦鷯と鴟鴞と辛苦して巢を營し、修治完成すれば便ち風雨の災を抵禦する能くす、《詩經・豳風・鴟鴞》正に其の未だ雨せざるに綢繆するを詠む。徳を以て安撫して家室をして安定せしむ、正に周公の勤勞のごとし。此の林預め綢繆を爲し、勤勞して家を保つを主とし、守禦と家事とを占問うに皆吉。
解 清人高子,久屯外野。逍遙不歸,思我慈母。
清邑の將士と主帥高克、長久城外の曠野に屯駐す。河上に逍遥して師を回らすを肯んぜず、心中家中の慈母を思念す、《詩經・鄭風・清人》正に此の事を詠む。此の林久しく戍して歸を思い、家有りて回り難きを主とし、遠行と軍に從るとを占問うに別離を主とす。
損 兩虎爭鬥,股創無處。不成仇讎,行解卻去。
兩隻の老虎相い鬥い、大腿上處處皆傷なり。終究死仇を結成せず、各々鬥を罷めて退去す。《史記・張儀列傳》に卞莊の虎を刺す・兩虎相い鬥うの喩有り。此の林爭いて兩傷して、終に和解を得るを主とし、爭訟を占問うに損するも大害に至らず。
益 天女推床,不成文章。南箕無舌,飯多沙糠。虐眾盜名,雄雞折頸。
織女星機杼を推動すれど、卻って花紋を織成せず。南方の箕宿狀簸箕のごとくして舌なく、米を簸きて淨せず、飯の裏沙多く糠多し。《詩經・小雅・大東》正に星宿の名有りて實なきを譏る。衆人を虐待して名聲を竊取するは、雄鷄の頸脖を折斷せらるるに同じ。此の林名有りて實なく、名を盗みて禍を致すを主とし、名利を占問うに兩失す。
夬 太子扶蘇,出於遠郊。佞幸成邪,改命生憂。慈母之恩,無路致之。
秦の太子扶蘇遠方の邊郡に遣はされて軍を監す。趙高の流佞幸奸邪を造作し、遺詔を僞改して禍憂を生出す、事《史記・秦始皇本紀》に見ゆ。慈母の恩情、再び彼に傳達する辦法なし。此の林嫡長廢せられ、詔を矯めて賢を害するを主とし、家國と骨肉とを占問うに大凶。
姤 寒暑相推,一明一微。赫赫宗周,榮光滅衰。
寒來暑往相互に推移し、此明ければ彼暗く、此盛んなれば彼衰う。當年何等顯赫の宗周王室なるや、榮光もまた終に熄滅衰敗す。《詩經・小雅・正月》に「赫赫たる宗周、襃姒之を滅す」の嘆有り。此の林盛衰數有り、榮極まれば必ず替わるを主とし、成を守るを占問うに盈滿を戒むに宜し。
萃 雞狗相望,仁道篤行。不吠昏明,各安其鄉。周鼎和餌,國富民有。八極蒙佑。
鷄鳴狗吠の聲相い聞え、仁道篤實に推行す。狗昏曉を論せず亂叫せず、人人为本鄕に安居す。周鼎の中美昧を調和し、國家富庶して百姓餘有り、八方極遠の地皆庇佑を蒙受す。此の林治世安寧にして、家給し人足るを主とし、家國を占問うに大吉。
升 窗牖戶房,通利明光。賢智輔聖,仁施大行。家給人足,海內殷昌。
窓戸房舍通暢明亮なり。賢者智士聖君を輔佐し、仁政廣泛に施行す。家家富足して人人溫飽し、四海の內殷實昌盛す。此の林明堂洞達し、賢佐治を致すを主とし、家國と仕進とを占問うに皆吉。
困 雨雪三月,鳥獸飢乏。旅人失宜,利不可得。機言解患,以療篤難,危身復安。
雨雪三個月を下し、鳥獸饑餓困乏す。行旅の人時宜を失い、利益獲得するに從無し。幸いに一句の機敏の話禍患を化解し、沉重の危難を醫好し、危殆の身重ねて平安に歸る。此の林天寒くして事阻るるも善言厄を解くを主とし、占問うに先に困にして後に安し。
井 白鶴銜珠,夜食為明。膏潤優渥,國歲年豐。中子來同,見惡不凶。
白鶴明珠を銜み、夜裏食を進むも照らして通明なり。雨露膏澤豐沛にして、國中年成豐稔す。次子前來して會合し、縱ほ惡事に遇上するも凶に至らず。此の林明珠握に在り、歲稔えて家和するを主とし、家國と農事とを占問うに皆吉。
革 從豕牽羊,與虎相逢,雖驚不凶。
猪を趕り羊を牽きて路を上り、半途老虎と相遇う、驚を受くると雖も凶險に致らず。此の林虛驚害なく、險有りて傷なきを主とし、出行を占問うに平安を保つ可し。
鼎 鳧雁啞啞,以水為宅。雌雄相和,心志娛樂。得其所欲。(大有之歸妹)
野鴨と大雁と啞啞として叫び、水面を以て居所と爲す。雌雄和諧して相處し、心情歡愉快樂して各々其の願う所を遂ぐ。此の林安んじて居る所を得、夫婦和順するを主とし、婚姻と家宅とを占問うに皆吉。同辭また「大有の歸妹」に見ゆ。
震 逐狐平原,水遏我前。深不可涉,暮無所得。
平原上に狐狸を追逐し、前面大水に攔住せらる。水深くして涉過する能わず、天黑くなるまで一の獲る所なし。此の林中途阻を受け、勞して功なきを主とし、追討と求取とを占問うに皆成らず。
艮 窟室蓬戶,寒賤所處。千里望煙,渙散四方。形體滅亡,下入深淵,終不見君。
地穴を室と爲し蓬草を門と爲す、貧寒卑賤の人の居る所なり。千里の外炊煙を眺望すれば、人已に四方に離散す。形體消亡して深淵に沈み、終に您に見えず。此の林家破れ人散り、生死永訣するを主とし、家宅と人を尋ねとを占問うに大凶。
漸 桀紂之主,悖不堪輔。貪榮為人,必定其咎。聚斂積實,野在都邑,未來我室。
夏桀商紂のごとき君主、悖亂して輔佐する能わず。榮寵を貪圖して彼のために事を爲せば、必ず災咎を招來す。財貨を搜刮聚斂堆積し、粗野の氣都邑に充斥す、此れ等終に我が家門に進まず。此の林昏主事ふ可からず、聚斂爲す可からざるを主とし、出仕と財を求むるとを占問うに皆遠避するに宜し。
歸妹 倉庫盈億,年歲有息。商人留連,雖久有得。陰多陽少,因地就力。
倉庫堆めて盈滿巨萬にして、年年皆增益有り。商人外に滯留し、日久きと雖も終に收穫する所有り。陰多く陽少なきの時、便ち地利に因順し力を量りて行くべし。此の林積蓄豐厚にして、久しくして獲有るを主とし、財を求むるを占問うに吉、順を守るに宜しく强爭に宜しからず。
豐 泰山不然,釣鯉失綸。魚不可得,利去我北。一作三人同福,以興周國,君子安息。
泰山の火燃え起こらず、鯉魚を釣るにまた絲線を斷れたり。魚捕えず、利益我が北面より溜走す。此の林圖る所落空し、財利離散するを主とし、財を求むるを占問うに利ならず。一本此の條「三人福を同じくし、以て周國を興し、君子安息す」と作る。
旅 童女無媒,不利動搖。安其室廬,待母動憂。
未嫁の少女媒人なくして、輕擧妄動するに宜からず。安心して自家の屋裏に待在り、母命を待たずして妄動すれば便ち憂患を生ず。此の林靜を守りて時を待ち、自ら專らにする可からざるを主とし、婚嫁を占問うに緩に宜しく急に宜しからず。
巽 載風雲母,遊觀東海。鼓翼千里,見吾愛子。
風に乘り云母を載せて、遨游して東海を觀賞す。翅膀を鼓動して千里を飛行し、終に我が心愛の孩子を見る。此の林遠行成有り、骨肉相會するを主とし、出行と親を尋ねとを占問うに皆吉。
兌 鴻盜我襦,逃于山隅。不見其跡,使伯心憂。
鴻雁我が短襖を叼走して、山の角落に逃到す。蹤跡一點も尋着けず、兄長をして滿心憂愁せしむ。此の林物を失いて蹤なく、追尋するも得ざるを主とし、失を尋ねるを占問うに利ならず。
渙 夜視失明,不利遠鄉。閉門塞牖,福為我母。
夜裏物を看不見ず、他鄕に遠去するに宜からず。門を關し窗を堵住し、分に安んじて自ら守れば、福氣便ち母親のごとく我を護佑す。此の林藏守して災を免れ、動けば則ち利ならざるを主とし、出行を占問うに凶、家に居れば則ち吉。
節 三狗逐兔,於東門路。利以進取,商人有得。
三條の狗東門の大路に野兔を追趕す。進取に宜しく、商人其の中より收穫する所有り。此の林協力して獵を圍み、進取して利を獲るを主とし、財を求めと事を謀るとを占問うに皆吉。
中孚 武王不豫,周公禱謝。載璧秉珪,安寧如故。
周武王病重くして安んぜず、周公先王に向かいて祈祷し身を以て代らんことを請う。彼玉璧を捧げ玉圭を執りて禱告すれば、武王便ち常のごとく安寧す、事《尚書・金縢》に見ゆ。此の林至誠神を感じ、病める者愈る可きを主とし、疾病と祈禳とを占問うに皆吉。
小過 同載共車,中道別去。爵級不進,君子下輿。
本來一輛の車を同乘せり、半路上卻って道を分ちて別る。官爵品級升進を得ず、君子只だ車を下りて去るを得。此の林同伴中に散じ、仕途阻を受くるを主とし、合伙と官を求むるとを占問うに皆遂わず。
既濟 六雁俱飛,遊戲稻池。大飲多食,食飽無患。一下有舉事不遂,商旅作僓。
六隻の大雁一同に飛翔し、稻田水池の間に嬉戲す。盡情に飮啄して、喫飽するも禍患なし。此の林群聚して食を得、飽足して憂なきを主とし、衣食と同行とを占問うに皆吉。一本此の下に「事を擧げて遂わず、商旅僓を作す」の二句有り。
未濟 符左契右,相與合齒。乾以坤利,季生六子。長大成就,風言如母,不利為咎。
符の左半と契の右半と相合し、齒印嚴絲合縫なり。乾坤を以て利と爲し、二者相配して六個の孩子を生下す。孩子長大成人し、傳聞の中皆母親のごとく賢良にして、不利と災咎とある無し。此の林兩相契合し、生育成有るを主とし、婚姻と子嗣とを占問うに大吉。
頤の林(頤卦六十四林)
頤 家給人足,頌聲並作。四夷賓服,干戈卷閣。
家家豐足して人人溫飽し、歌頌の聲一齊に興起す。四方の夷族皆來りて賓服し、兵器收卷して擱置し用ゐず。此の林太平盛世にして、內外咸く安しを主とし、家國を占問うに大吉。
乾 思初道古,哀吟無輔。陽明不制,上失其所。
當初を追思し古道を稱說し、哀聲吟嘆して輔助する人なし。陽明の氣主宰する能わず、上位に居る者其の本位を失う。此の林古を懷いて補なく、上位正ならざるを主とし、助を求めと仕進とを占問うに皆利ならず。
坤 江淮河海,天之奧府。眾利所聚,可以饒有。樂我君子。
江・淮・河・海、上天最深厚の府庫なり。各種の利益此に匯聚し、富饒して餘有る可く、君子をして歡樂せしむ。此の林水利豐盈し、財源匯集するを主とし、財を求むるを占問うに大吉。
屯 三雁俱飛,避暑就涼。適與矰遇,為繳所傷。
三隻の大雁一同に飛行し、暑熱を避けて涼爽の地に往く。恰巧絲繩を繫げし短箭に遇上し、繳線の傷る所と爲る。此の林利に趨り害を避けて反つて橫禍に遭うを主とし、出行を占問うに意外の傷有り。
蒙 秋南春北,隨時休息。處和履中,安無憂凶。
秋天南に飛び春天北に歸り、時令に順いて作息す。身を處するに平和にして行事中を守り、安穩して憂患凶險なし。此の林時に順い中を守り、平安して咎なきを主とし、諸事を占問うに皆吉。
需 履危無患,逃脫獨全。不利出門,傷我左膝。疾病不食,鬼哭其室。
危險の中を走りて卻って禍患なく、獨り逃脫して保全を得。然れど門を出づるに宜からず、門を出れば便ち左膝を傷る。疾病身に纏い飯を吃下がらず、屋裏還て鬼哭の聲傳來す。此の林居れば則ち禍を免れ、出れば則ち傷を受くるを主とし、家を守るを占問うに安んずる可く、出行大凶。
訟 東家兇婦,怨其公姥。毀盤破盆,棄其飯餐。使我困貧。
東鄰あの凶悍の婦人、自家の公婆を怨恨す。盤子を摔碎し瓦盆を打破し、飯食を皆扔了して、我が家をして困頓貧窮ならしむ。此の林家人相い怨み、器毀れ財耗ゆるを主とし、家宅と生計とを占問うに皆凶。
師 泥滓汙辱,棄捐溝瀆。眾所笑哭,終不顯錄。
泥污を沾滿して人の輕辱を受け、溝渠の中に拋棄せらる。衆人對して又笑い又哭くも、終に顯達する能わず錄用を得ず。此の林淪落して棄を見、名錄せられざるを主とし、進を求むるを占問うに大利ならず。
比 旦往暮還,吝與相存,身無患凶。
早上門を出で晚上歸來す、些かの吝惜爲難相伴する有ると雖も、自身卻って禍患凶險なし。此の林近行して往還し、小滯して害なきを主とし、出行を占問うに平安。
小畜 六翮長翼,夜過射國,羿氏無得。
六根の强健の羽茎を長ぜし長翅の大鳥、夜に趁りて善射の國を飛過し、后羿すらも彼を射着けず。此の林本領を憑りて害を避け、時に乘じて險を脫するを主とし、難を逃れと遠行とを占問うに皆吉。
履 蜂蠆之國,難以止息。嘉媚之士,為王所食。從去其室。
蜂蠆毒蟲の盤踞する國度、身を安んじ停留し難し。諂媚討好に善き人反つて君王の信用せらる、正直の者只だ自己の居室を離れて遠走するを得。此の林毒地留まる可からず、佞人道に當たるを主とし、居處と仕進とを占問うに皆遠避するに宜し。
泰 被□乘龍,為王道東。過時不返,使我憂聾。
披挂整齊して竜車に乘り、君王のために東に往きて道を開く。約期を過ぐるも仍ほ回らず、我をして耳目聰を失うほどに憂愁せしむ。此の林使を奉じて遠行し、期を逾えて返らざるを主とし、出行と等待とを占問うに皆憂を生ず。
否 雪梅零墜,心思憒憒。懷憂少愧,亂我魂氣。
雪中の梅花紛紛として墜落し、心思昏亂して清らならず。心に憂慮を懷きまた略ば愧疚を帶び、我が魂魄氣息を攪亂す。此の林心神寧ならず、憂思纏繞するを主とし、身心を占問うに皆安んぜず。
同人 長女三嫁,進退多態。牝狐作妖,夜行離憂。
長女三回改嫁し、進退の間姿態百出す。母狐妖を作起し、夜裏出行すれば便ち憂患に遭遇す。此の林女徳貞ならず、夜行して禍を招くを主とし、婚姻と夜出とを占問うに皆凶。
大有 轟轟□,驅東向西。盛盈必毀,高位崩顛。
車馬轟轟隆隆として、一會兒東に驅り一會兒西に奔る。盛滿して極處に至れば必ず毀損し、高位久坐すれば終に崩墜す。此の林奔忙して定まらず、盈滿して損を招くを主とし、成を守るを占問うに退讓を知るに宜し。
謙 乘船涉濟,載水逢火。賴得無患,蒙我全生。
船に乘りて濟水を渡り、水を載せて卻って火に碰上す。幸いに事を出さざるに賴り、福を蒙りて性命を保全するを得。此の林水火交迫して終に安全を獲るを主とし、占問うに驚有りて險なし。
豫 德至之君,政仁且溫。伊呂股肱,國富民安。
徳行極高の君主、政令仁厚にして溫和なり。伊尹・呂尚のごとき股肱の臣有りて、國家富强して百姓安定す。此の林明君賢相にして、國泰く民安しを主とし、家國と仕進とを占問うに大吉。
隨 生不逢時,困且多憂。無有冬夏,心常悲愁。
合適ならざる時代に生まれ、既に困頓にしてまた憂愁多し。冬夏を論ぜず、心裏總じて悲傷愁苦す。此の林命途舛多く、終歲歡ならざるを主とし、諸事を占問うに遂わず。
蠱 南歷玉山,東入生門。登福上堂,飲萬歲漿。
南に向かいて西王母の居る所の玉山を經過し、東に入りて生門に進入す。福堂正室に登上し、萬歲長生の漿を飮下す。此の林行きて仙境に遇い、壽福並びに至るを主とし、遠行と壽を求むるとを占問うに大吉。
臨 大斧斫木,讒人敗國。東關二五,禍及三子。晉人亂危,懷公出走。
大斧樹木を砍伐し、讒佞の人國家を敗壞す。梁五と東關嬖五兩個の佞臣構陷して、禍晋獻公の三個の兒子に及ぶ、事《左傳》莊公二十八年に見ゆ。晋國これによって動亂危殆し、懷公終に出奔す。此の林讒人政を亂り、宗嗣害を受くるを主とし、家國を占問うに大凶。
觀 一室百孫,公悅嫗歡。相與笑言,家樂以安。
一家の內百子千孫にして、老翁歡悅し老婦高興す。彼此談笑し、家中和樂して安寧なり。此の林子孫堂に滿ち、闔家歡洽するを主とし、家事と子嗣とを占問うに大吉。
噬嗑 隨陽轉行,不失其常。君安於鄉,國無咎殃。
陽氣運轉に順いて行き、常道に違背せず。國君本土に安居し、國中災咎禍殃なし。此の林時に順い常を守り、上下安泰を主とし、家國を占問うに吉。
賁 群虎入邑,求索肉食。大人御守,君不失國。
群虎城邑に闖進し、四處肉食を索取す。大人の出面して抵禦守衛する有りて、國君纔に國家を失わず。此の林强寇境に壓するも賢者の守禦を得るを主とし、占問うに危くして失わず、能人に倚重するに宜し。
剝 弱足刖跟,不利出門。商賈無贏,折崩為患。湯火之憂,轉解喜來。
脚力孱弱にしてまた脚跟を砍去せられ、門を出づるに宜からず。經商盈餘なく、折損崩敗して禍患と成る。幸いに湯のごとく火のごとき憂患轉じて消解し、喜事之に隨いて至る。此の林先に困にして後に通ずを主とし、出行を占問うに利ならずして終に轉機を得。
復 夏臺幽戶,文王厄處。鬼侯飲食,岐人悅喜。
夏台の幽暗の牢門、正に聖者の困を受くる處にして、文王もまた嘗て羑里に囚はれり。九侯紂王の醢と爲し肉醬と作りて人に飨せらる、岐周の人後來終に歡喜を得。此の林賢者厄に遭いて終に伸雪を獲るを主とし、困厄を占問うに解く可し、先に凶にして後に吉。
旡妄 棟撓壤壞,廊屋大敗。宮闕空廓,如冬枯樹。
屋梁彎曲して牆壁塌壞し、廊屋大いに破敗す。宮殿樓闕空空蕩蕩として、冬天の枯樹に似たり。此の林基業傾頹し、門庭冷落するを主とし、家宅と國事とを占問うに皆凶。
大畜 讒以內安,不利其國。室家大懼,幽囚重閉。疾病多求,罪亂憤憒。
讒言を靠りて內部の苟安を換取す、國家に對して並びに好處なし。家室大いに恐懼し、人重重の門閉の中に幽禁せらる。疾病身に纏いて四處醫を求め、罪亂交加して憤懣昏亂す。此の林讒佞國を誤り、刑病交迫するを主とし、家國と身體とを占問うに皆大凶。
大過 六龍俱怒,戰於陂下。蒼黃不勝,旅人艱苦。
六條の竜一齊に震怒し、池陂の下に相い鬥う。青竜黄竜皆勝を取る能わず、行旅の人處境艱苦なり。此の林群雄相い爭い、人の利を得る無きを主とし、爭鬥と出行とを占問うに皆不吉。
坎 天下雷行,塵起不明。市空無羊,疾人憂凶。三木不喜,脫歸家邦。
雷聲天下に響徹し、塵土飛揚して昏暗不明なり。市集空蕩して羊賣なく、病人憂愁凶險す。桎梏枷鎖三木身に加わるは本來喜事に非ず、幸いに終に身を脫して家邦に回到する能くす。此の林驚擾刑厄して終に脫免を得るを主とし、占問うに先に凶にして後に解く。
離 一指食肉,口無所得。染其鼎鼐,舌饞於腹。
只だ一根の手指を以て肉を取りて吃せんとすれど、嘴裏終に得着せず。手指鼎鼐の裏に伸進して一たび蘸し、舌頭饞れて肚裏直に響く。《左傳》宣公四年子公の食指大いに動きて鼎に染指するを載す。此の林淺嘗足らず、貪饞して獲なきを主とし、求取を占問うに徒勞す。
咸 喜笑不常,失其福慶。口辨言疥,行者畏忌。
時に喜び時に笑いて反復常なく、因りて福氣喜慶を失う。口舌爭辯して言語瑣碎にして人を傷つけ、出行の人之のために畏懼忌憚す。此の林情緒度を失い、口舌忌を招くを主とし、出行と交際とを占問うに皆利ならず。
恆 毛生毫背,國樂民富,侯王有德。
背上細密の毫毛を長出す、本來豐厚の象なり。國中歡樂して百姓富足し、侯王徳有り。此の林上徳有りて下富庶なるを主とし、家國を占問うに大吉。
遯 豶豕童牛,害傷不來。三光同堂,生我福仁。
閹過の猪・角を未だ生ぜざる小牛、皆人を傷害する能わず、語本《易・大畜》の「豶豕の牙」「童牛の牿」なり。日月星三光同じく一堂に照り、我が福氣と仁徳とを生出す。此の林禍患預め除き、光明照臨するを主とし、平安と家運とを占問うに皆吉。
大壯 江河淮濟,盈溢為害。邑被其癩,年困無歲。
長江・黄河・淮水・濟水四瀆一齊に漲滿外溢し、水害を釀成す。城邑其の毒を遭受し、年成困窘して顆粒の收なし。此の林大水災を成し、歲計俱に廢するを主とし、農事と家宅とを占問うに大凶。
晉 兩虎爭鬥,股瘡無處。不成仇讎,行解卻去。
兩隻の老虎相い鬥い、大腿上處處皆傷なり。終究死仇を結成せず、各々鬥を罷めて散去す。此の林爭いて兩傷して、終に怨を解く能くすを主とし、爭訟を占問うに損有ると雖も了結す可し。
明夷 五嶽四瀆,潤洽為德。行不失理,民賴恩福。
五岳と四瀆、萬物を滋潤するを以て徳と爲す。行事常理に違背せず、百姓因りて其の恩澤に依賴す。此の林徳澤廣く被り、民心歸附するを主とし、事を治むと家國とを占問うに皆吉。
家人 載車乘馬,南逄君子。與我嘉福,離憂無咎。
車を駕り馬を騎りて、南に向かいて君子に遇上す。彼我に美好の福氣を與え、憂愁遠離して災禍なし。此の林行きて貴人に遇い、憂散じ福來るを主とし、出行を占問うに大吉。
睽 缺囊破筐,空無黍粱。不媚始公,棄於糞場。
口袋殘缺して筐子破爛し、裏面一點の黍米高梁もなし。當權の公卿に討好するを肯んぜざるに因りて、糞土場に拋棄せらる。此の林貧しくして所有無く、上に忤いて棄を見るを主とし、財を求めと干謁とを占問うに皆凶。
蹇 殺行桃園,見虎東還。螳螂之敵,使我無患。
殺氣騰騰として桃園を行經し、老虎を見れば便ち東に折返す。螳螂の力を以て强敵を抵擋せんとするは本來自ら量らず、幸いに終に我をして禍患なからしむ。此の林險を見て返るを知り、弱くして禍を免るるを主とし、險に遇うを占問うに退くに宜しく、咎無きを保つ可し。
解 箕仁入室,政衰弊極。抱其彝器,奔於他國。因禍受福。
箕子のごとき仁者退いて室中に入りて隱居し、政局衰敗して極點に到る。太史宗廟の彝器を抱きて、別の國家に逃奔し、反つて此の場の禍事に因りて福を得。此の林亂世に器を抱きて遠避し、禍に因りて福を得るを主とし、遷徙を占問うに吉有り。
損 庭燎夜明,追古傷今。陽弱不制,陰雄坐戾。
庭中火炬長夜を照亮し、古昔を追懷して當今に傷感す。陽氣衰弱して主宰する能わず、陰氣反つて雄位に居りて乖戾を生ず。此の林主弱くして臣强く、今昔に如かざるを主とし、家國を占問うに內變の憂有り。
益 懸貆素餐,食非其任。失輿剝廬,休坐徙居。
家中獵來の貉子を懸け、俸祿を白喫し、享受する所並びに分內應得に非ず。因りて車輿を失い房屋剝奪せられ、只だ停下して別に他處に遷るを得。此の林功なくして祿を受け終に所を失うを主とし、官に居ると家宅とを占問うに皆凶。
夬 嘉聞福喜,繒帛盛織,日就為得。
好消息を聽聞して福有り喜有り、繒帛織ること豐盛にして、一天天收穫する所有り。此の林喜信頻に傳わり、少を積みて多を成すを主とし、財を求めと喜事とを占問うに皆吉。
姤 執綏登車,驂乘東遊。說齊解燕,霸國以安。
綏帶を握りて車子に登上し、驂乘を做して東に出游す。齊國を游說し燕國を開解し、霸を稱する國をして安定を得せしむ。此の林縱橫游說して、功成りて國を安んずるを主とし、出行と事を謀るとを占問うに皆吉。
萃 水深無桴,蹇難何遊。商伯失利,庶人愁憂。
水深くして木筏なく、擧步維艱にして、怎麼渡過する能わんや。商賈の長利を失し、平民百姓もまた愁苦憂慮す。此の林舟無くして險を濟り、上下俱に困むを主とし、出行と財を求むるとを占問うに皆凶。
升 三鳥鴛鴦,相隨俱行。南到饒澤,食魚與粱。君子長樂,見惡不傷。
三隻の鳥鴛鴦と相隨同行し、南に豐饒の水澤に到り、魚と粱米とを吃す。君子長久歡樂して、惡事に遇上するも傷害を受けず。此の林地を擇びて所を得、樂して害なきを主とし、出行と食を求むるとを占問うに皆吉。
困 遠視目盻,臨深苦眩。不離越都,旅人留難。
目を極めて遠望して雙眼酸澀し、深淵に臨近すれば便ち眩暈に苦しむ。始終越地の都城を離去る能わず、行旅の人滯留刁難せらる。此の林遠を視て神を傷り、羈旅阻を受くるを主とし、出行を占問うに利ならず。
井 終風東西,渙散四方。終日至暮,不見子歡。
大風整日刮きて停まず、忽ち東忽ち西にして、一切を四方に吹散す、《詩經・邶風・終風》正に終風を以て乖戾に喩う。早より晚に至るまで、您の歡顏を見ず。此の林離散して聚まらず、思う所見えざるを主とし、團聚と音信とを占問うに皆遂わず。
革 言無要約,不成券契。殷叔季姬,公孫爭之。強入委命,不悅我心。
言語明確の約定なくして、契券憑據を成さず。殷叔と季姬の婚事、公孫の橫加爭奪する所と爲る。强りて手を插手して只だ命運の擺布に聽憑するを得、實に我が心意に合せず。此の林口說憑無く、婚事奪はるるを主とし、約信と婚姻とを占問うに皆不吉。
鼎 牛馬聾聵,不知聲味。遠賢賤仁,自令亂憒。疾病無患,生福在門。
牛馬また聾にしてまた昧く、聲音と滋味とを分辦せず。賢者を疏遠し仁人を輕賤し、自ら昏亂糊塗を招來す。幸いに疾病並びに大礙なく、福氣還て門口に在り。此の林昏聵して賢を失い然れど身尚ほ安泰を主とし、人を用ゐるを占問うに利ならず、身體恙なし。
震 從商近遊,食飽無憂。囹圄之困,中子見囚。
商隊に跟りて近處に販運し、喫うること飽きて憂愁なし。不料牢獄の災頭に臨み、次子關押せらる。此の林小獲して大憂を生ずるを主とし、經商を占問うに小利、家人刑厄有り。
艮 據斗運樞,順天無憂,與樂並居。
北斗を據守して天樞を運轉し、天道に順應して憂患なく、歡樂と一處に同處す。此の林要を秉り本を執り、天に順いて安を得るを主とし、諸事を占問うに皆吉。
漸 姬奭姜望,為武守邦。藩屏燕齊,周室以強。子孫億昌。
召公姬奭と太公姜尚、周武王のために邦國を守衛し、燕・齊に分封して周室の藩屏と爲し、周朝これによって强盛し、子孫億萬昌隆す。此の林賢臣拱衛して、家國久安するを主とし、功業と子嗣とを占問うに大吉。
歸妹 亡羊東澤,循堤直北。子思其母,隨返其所。
羊東邊の水澤の裏に走失し、堤岸に沿いて一直に北に尋ね往く。小羊母羊を思念し、跟りて原來の地方に返回す。此の林失いて復た得、母子重ねて聚まるを主とし、失を尋ねと團聚とを占問うに皆吉。
豐 張鳥開口,舌直距齒。然諾不行,政亂無緒。
鳥嘴を張開すれど、舌頭直挺挺として牙齒に抵着し、一聲も叫出せず。答應過したる事兌現せずして、政事混亂して頭緒なし。此の林信を失して政を廢し、綱紀立たざるを主とし、許諾と事を治むるとを占問うに皆利ならず。
旅 載船逢火,憂不為禍。家在山東,入門見公。
滿載の船只火に遇上す、憂慮一場にして卻って禍事を釀成せず。家山東に在り、門に進めば便ち主人を見る。此の林險して傷なく、家に歸りて喜有るを主とし、出行を占問うに驚有りて險なし。
巽 絕國異路,心不相慕。蛇子兩角,使我相惡。
隔絕の邦國・不同の道路、彼此心裏並びに相互に愛慕せず。小蛇兩隻の角を長出すのごとき怪異の事、我らをして相互に憎惡せしむ。此の林道殊にして心異にし、怪生じて嫌隙するを主とし、交結と合作とを占問うに皆諧わず。
兌 鼻項移徙,居不安坐。枯竹後生,失其寵榮。
鼻子と頸脖と皆位置を挪し、坐するも安穩を得ず。枯竹後來に到りて纔に新枝を發す、早已當年の榮寵を失了。此の林形位常を失い、榮華遲暮するを主とし、居處と恩寵とを占問うに皆利ならず。
渙 火息無光,千歲不長,殷湯遠明。
火熄滅すれば便ち光亮なく、千年もまた增長せず。成湯の聖明已に十分遙遠なり。此の林明徳已に遠く、氣數續き難きを主とし、助を求めと復興とを占問うに皆利ならず。
節 文王四乳,仁孝篤厚。子蓄十男,無有折夭。
周文王四乳の異相を生有し、仁愛孝順にして篤實敦厚なり。彼十個の兒子を養育し、夭折する一個もなし。此の林聖徳にして子多く、後嗣康健なるを主とし、子嗣と家運とを占問うに大吉。
中孚 熊羆豺狼,在山陰陽。伺鹿取麞,道伏畏難。
熊羆と豺狼と山の南北兩面に盤踞し、鹿群を窺伺し獐子を捕捉す。路上猛獸潜伏有りて、人をして畏懼艱難せしむ。此の林道に虎狼有り、行くに戒懼する須しを主とし、出行を占問うに凶。
小過 雕葉被霜,獨蔽不傷。駕入喜門,與福為婚。
凋殘の樹葉寒霜を蒙る、唯だ它遮蔽好くして傷を受けず。車を駕りて喜慶の門に駛入し、福氣と姻親を結成す。此の林霜を避けて全を得、喜中より來るを主とし、婚姻と家事とを占問うに皆吉。
既濟 黃離白日,照我四國。元首昭明,民賴為福。一下有漢有遊女,人不可得。
黄色の日光中天に麗し、我が四方の國を照耀す、「黄離元吉」の語《易・離》の六二に出づ。元首聖明昭著にして、百姓彼に依賴して福を得。此の林君明くして國治まり、民其の福を得るを主とし、家國を占問うに大吉。一本此の下に「漢に游女有り、人得る可からず」の二句有り。
未濟 順風直北,與歡相得。歲熟年豐,邑無寇賊。一下有長女行嫁,子孫不昌,棄疾為殃。
風勢に順いて一直に北に向かい、歡喜と相逢相得す。莊稼成熟して年成豐足し、城邑の中盗賊なし。此の林勢に順いて利を得、歲稔えて民安しを主とし、出行と農事とを占問うに皆吉。一本此の下に「長女嫁を行く、子孫昌ならず、疾を棄てて殃と爲す」の三句有り。
大過の林(大過卦六十四林)
大過 典冊法書,藏在蘭臺。雖遭亂潰,獨不遇災。
典籍冊書と法令文書、蘭台の中に收藏す。動亂潰敗に遭遇すると雖も、唯だ它ら災禍に遇上せず。此の林文獻存を得、亂中獨り全きを主とし、藏を守ると災を避くるとを占問うに皆吉。
乾 日在北陸,陰蔽陽目。萬物空虛,不見長育。
太陽北陸の冬至の位に運行し、陰氣陽光を遮蔽す。萬物空虛蕭條して、生長養育を看不見ず。此の林陽氣衰微し、生機斷絕するを主とし、生養と事を謀るとを占問うに皆利ならず。
坤 鬼泣哭社,悲商無後。甲子昧爽,殷人絕祀。
鬼神社廟に悲泣し、商朝に後嗣無きを爲して哀傷す。甲子日天將に明けんとして未だ明けざるの時、牧野一戰し、殷人の宗祀便ち斷絕す。此の林宗社傾覆し、香火斷絕するを主とし、家國を占問うに大凶。
屯 涉塗履危,不利有為。安坐垂堂,乃無災殃。門戶自開,君憂不昌。
泥途の中を走り險處を踏む、作爲有るに宜からず。堂上に安坐して檐下の險地に近づかず、纔に災殃なし。「千金の子坐して堂に垂れず」は《史記・袁盎晁錯列傳》に見ゆ。門戸故なく自開すれば、主人便ち家道興ならざるを憂慮す。此の林動すれば卽ち險有り、靜守すれば安んずる可きを主とし、占問うに守るに宜しく進むに宜しからず。
蒙 陽失其紀,枯木復起。秋華冬實,君不得失。
陽氣常度を失い、枯死の樹重ねて發起す。秋天開花して冬天結果し、節令全然顛倒し、君と爲る者も是得か是失かを說清する能わず。此の林時序常に反し、吉凶明らめ難きを主とし、諸事を占問うに審慎して觀望するに宜し。
需 大樹之子,百條共母。當夏六月,枝葉盛茂。鸞鳳以庇,召伯避暑。翩翩偃仰,各得其所。
大樹の枝條、百條同じく一母より出づ。夏季六月に到れば、枝葉極めて繁茂す。鸞鳳其の中に庇蔭を得、召伯もまた樹下に暑を避く、《詩經・召南・甘棠》正に召伯の棠下に憩うの事を詠む。衆鳥翩翩として起伏し、各々其の所を得。此の林蔭庇廣く被り、群下所を得るを主とし、家國と依附とを占問うに皆吉。
訟 秉鉞執殳,挑戰先驅。不役元帥,敗破為憂。
斧鉞を手持し長殳を執着し、先に搶りて陣を出でて挑戰す。元帥の調度を聽從せず、因りて敗績して憂患と成る。此の林令に違いて輕進し、師を喪うの憂有るを主とし、爭戰と事を共にするとを占問うに皆凶。
師 啟室開門,巡狩釋冤。夏臺羑里,湯文悅喜。
牢室を打開し監門を敞開し、天子四方を巡狩して冤屈を洗雪す。夏台に困したる成湯・羑里に囚はれし文王、これによって歡喜して難を脫す。此の林大赦して囚を釋し、冤屈伸を得るを主とし、獄訟と困厄とを占問うに皆解く、吉。
比 衰滅無幾,淵溺在項。吠狗夜驚,家乃不寧。
衰敗滅亡已に遠からず、深淵の水已に頸脖に淹到す。狗夜裏狂吠して四鄰を驚擾し、家中便ち安寧を得ず。此の林危亡即に在り、內外驚擾するを主とし、家宅を占問うに大凶。
小畜 西鄰小女,未有所許。志如委衣,不出房戶。心無所處,傅母何咎。
西隣家の小女兒、未だ人家に許配せず。心志安靜にして掛着の衣裳のごとく、足閨房を出でず。心中安んずる處無くして、彼女を教養する傅母又何の過錯か有らん。此の林字を待ちて未だ嫁がず、心事託無きを主とし、婚嫁を占問うに尚ほ早し、咎なくして未だ成らず。
履 狗吠夜驚,履鬼頭頸。危者弗傾,患者不成。
狗夜裏吠叫して驚擾し、人鬼の頭頸の上を踩在るがごとく驚悚す。幸いに危險の者終に傾覆せず、禍患の者終に釀成せず。此の林虛驚して實なく、險にして復た安しを主とし、占問うに驚有りて險なし。
泰 當年少寡,獨與孤處。雞鳴犬吠,無敢難者。我生不辰,獨嬰寒苦。
正に年少に當たりて便ち寡を守り、孤身孤兒と相依す。鷄鳴狗吠の間、敢えて來りて欺侮する人なし。只だ我生れて時に逢わず、獨り寒苦を纏受す、《詩經・大雅・桑柔》に「我生れたるに辰ならず」の嘆有り。此の林孤寡自守し、身安くして命苦しきを主とし、家事を占問うに清苦にして大禍なし。
否 無道之君,鬼哭其門。命與下國,絕不得食。
道無き君主、鬼すらも彼の門前に哭泣す。天命下面の邦國に交し、彼自已に食祿を斷てり。此の林徳を失い命を失い、祿位斷絕するを主とし、國事と仕途とを占問うに大凶。
同人 乘龍南遊,夜過糟丘,脫厄增憂。一下有繒絕魯傷,羿不得美。
竜に乘りて南に遨游し、夜裏酒糟の堆成せる土丘を經過す。「糟丘」正に商紂の酒池肉林の奢を以て典と爲す。厄難を脫離すると雖も、憂愁反つて增添す。此の林險を離れて未だ安を得ず、憂中より來るを主とし、出行を占問うに先に脫して後に憂う。一本此の下に「繒絕えて魯傷み、羿美を得ず」の二句有り。
大有 馬躓車傷,長舌破家。東關二五,晉君出走。
馬前蹄を失し車子損壞し、長舌讒を進めて家業を敗壞す。梁五と東關嬖五內に構陷し、晋國の君終に出奔す。此の林讒言家を敗し、國主位を失うを主とし、家國を占問うに大凶。
謙 瓜花瓠實,百女同室。酰苦不熟,未有配合。
瓜花を開き瓠果を結び、上百個の女子一室内に同じく在り。醋酸味苦にして未だ釀熟せず、未だ好き搭配を配成せず。此の林時機未だ熟せず、姻緣未だ定まらざるを主とし、婚嫁を占問うに尚ほ等待する須し。
豫 晨風文翰,火舉就溫。時過我邑,羿無所得。
晨風鳥と彩羽長翎の錦鷄、火光に趨向して暖を取る。彼ら時に按じて我が城邑を飛過し、善射の后羿すらも捕得せず。此の林機敏にして所を得、害を避くるに術有るを主とし、難を逃れと遠行とを占問うに皆吉。
隨 浼浼促促,塗泥至轂。雨濘不進,虎囓不得。
水流盛大にして路途逼仄し、泥漿車轂に沒す。雨中泥濘して前進する能わず、幸いに老虎もまた咬着けず。此の林路を行くこと艱阻なるも傷害を免るを主とし、出行を占問うに滯して凶ならず。
蠱 膠車駕東,與雨相逢。放革懈惰,頓禹(一作輸)獨坐。憂不為禍。(一作福)
膠を以て粘合せる車子東方に駕向し、半路大雨に遇上す。膠水泡に開け、皮革松脫懈弛し、車子路上に癱れ、人只だ獨坐して等候するを得。憂慮一場にして卻って禍患と成らず。此の林器用に耐えず、行きて天の阻に遇いて終に大害なきを主とし、出行を占問うに滯を受く。「禹」一本「輸」と作り、「禍」一本「福」と作る。
臨 六家作權,公室剖分。陰制其陽,唐叔失明。
六家の權臣大權を把持し、公室剖分瓜割せらる、晋國の六卿政を專にし終に三家の晋を分つに致る。陰柔陽剛を壓制し、唐叔虞の後裔これによって光明を失う。此の林强臣國を分ち、公室傾覆するを主とし、家國を占問うに大凶。
觀 去室離家,來奔大都。火息復明,姬伯以昌。商人失功。
屋舍を離れ家園を別れて、大都邑に投奔す。熄滅の火重ねて點亮し、姬姓の諸侯これによって昌盛す、只だ商人功利を失う。此の林遷徙して志を得、舊業中斷するを主とし、居を遷すを占問うに吉有り、經商利ならず。
噬嗑 牧羊稻園,聞虎喧讙。危懼喘息,終無禍患。
稻田邊に羊を放ち、老虎の喧鬧の吼聲を聽聞す。戰栗して息を屏るに嚇かされるも、最終卻って平安にして事なし。此の林虛驚一場、險有りて傷なきを主とし、諸事を占問うに驚きて凶ならず。
賁 嬰兒求乳,母歸其子。黃麑悅喜,乃得甘飽。
嬰兒乳を吃せんと要し、母親便ち孩子の身邊に回到す。小鹿もまた歡喜起來して、終に甘美に喫飽す。此の林慈愛相い應じ、需求卽ち遂げるを主とし、育養と助を求むるとを占問うに皆吉。
剝 廓落失業,跨禍變福,利無所得。
空落落として生業を失い、禍事を跨過して轉じて福氣と成る、只だ利益一の得る所なし。此の林危を轉じて安と爲して獲る所なきを主とし、身保つ可しと雖も財は則ち空し。
復 出入無時,憂患為災。行人失牛,利去不來。若馬遺駒,勿與久居。
出入定時なく、憂患便ち災禍と成る。行路の人牛を丢了、利益一去して回らず。母馬の馬駒を遺落せるがごとく、此のごとき地方久留する可からず。此の林行止度を失い、財畜俱に失うを主とし、出行と居處とを占問うに皆凶。
旡妄 風怒漂木,女感生疾。陽失其時,陰孽為賊。
狂風大作して木材を漂走し、女子外感を受けて生病す。陽氣應有の時令を失し、陰邪の氣便ち肆虐して害を爲す。此の林氣候常に反し、陰邪人を侵すを主とし、疾病と家事とを占問うに皆利ならず。
大畜 車馬疾傷,不利越鄉。幽人無貪,去晦就明。
車馬疾病損傷し、境を越えて遠行するに宜からず。幽居して靜を守る人心に貪求する所なく、昏暗を離れて光明に趨向す。此の林行けば則ち損を受け、靜なれば則ち明を得るを主とし、出行を占問うに利ならず、隱退すれば則ち吉。
頤 三奇六耦,各有所主。周南召南,聖人所在。德義流行,民悅以喜。
三個の奇數・六個の偶數、各々主とする所有り。《詩經》の《周南》《召南》二南、正に聖人教化の在る所なり。徳義廣泛に推行し、百姓歡悅して喜樂す。此の林教化流布し、上下和樂するを主とし、家國と風教とを占問うに皆吉。
坎 坐爭立訟,紛紛哅哅。卒成禍亂,災及家公。
坐して爭執し立して訴訟し、鬧して紛紛擾擾・聲勢汹汹なり。終に禍亂を釀成し、災禍家中の尊長に牽連す。此の林爭訟亂を生じ、殃尊親に及ぶを主とし、官非を占問うに大凶。
離 凶憂為殘,使我不安。從之南國,以除心疾。
凶險憂患殘害を造成し、我が心中をして安んぜざらしむ。彼に跟隨して南方の國に往き、以て心中の病痛を消除す。此の林遠行して憂を避け、地を易えて心を療すを主とし、遷徙を占問うに憂を解く可し。
咸 愛我嬰女,牽引不得。冀幸高貴,反曰下賤。
我が家の幼女を疼愛し、牽引提携せんと想うも辦到する能わず。彼女の高貴顯達を指望して、反つて卑下低賤に落到す。此の林期望落空し、事願と違うを主とし、婚嫁と提携とを占問うに皆遂わず。
恆 宜行賈市,所取必倍。載喜抱子,與利為友。
出外して經商賣買するに宜しく、得る所必ず加倍す。喜慶を滿載し孩子を懷抱し、利益と朋友を結ぶ。此の林經營して利を獲、喜と財と雙至するを主とし、財を求むるを占問うに大吉。
遯 坐席未溫,憂來扣門。踰牆北走,兵交我後。脫於虎口。
座席未だ坐暖めざるに、憂患已に門を敲きに來る。牆を翻越して北に逃走し、追兵身後に在りて交戰し、終に虎口の中より脫身す。此の林禍至りて倉皇にして幸いに難を免るを得るを主とし、險に遇うを占問うに速かに避くるに宜しく、脫する可し。
大壯 赤帝懸車,廢職不朝。叔帶之災,君子記廬。
赤帝車を高懸して用ゐず、職守を荒廢して再び上朝せず。王子帶狄人と勾結して亂を作し、周襄王迫られて鄭に出居す、事《左傳》僖公二十四年に見ゆ。君子只だあの草廬に難を避けし日子を記着するを得。此の林君其の政を廢し、亂蕭牆に起るを主とし、國事と官事とを占問うに皆凶。
晉 子畏於匡,厄困陳蔡。明德不危,竟自免害。
孔子匡地に圍まれて驚恐を遭受し、また陳蔡の間に糧を絕たれて困を受く、事《論語・子罕》と《先進》とに見ゆ。徳行光明なるを以て、終に危亡に至らず、最後自然に禍害を免る。此の林聖者厄に遇いて徳足りて難を免るるを主とし、困境を占問うに終に脫身を得。
明夷 逐雁南飛,馬疾牛罷。不見魚池,失利憂危。牢戶之冤,脫免無患。
大雁を追うて南に飛去し、馬病み牛もまた累垮す。魚池を尋着けず、利益を失して憂慮危殆す。幸いに牢獄の中の冤情昭雪を得て、脫身出來して禍患なし。此の林勞して功なくして刑厄解く可きを主とし、財を求むるを占問うに利ならず、訟事釋を得。
家人 推輦上山,高仰重難。終日至暮,不見阜巔。
車子を推して山に上り、仰頭して望めば又高く又重くして、極めて艱難なり。早より天黑くなるまで忙しくするも、山頂をも看不見ず。此の林任重くして道遠く、力事に及ばざるを主とし、事を謀るを占問うに成り難し。
睽 憂不為患,福在堂門,使君偃安。
憂慮並びに禍患を釀成せず、福氣便ち堂前門口に守在り、您をして安臥して事なからしむ。此の林憂散じて福來り、身心安を得るを主とし、占問うに平安、吉。
蹇 春桃生華,季女宜家。受福多年,男為邦君。
春天桃樹花を開出す、年少の女子家を成すに宜し、《詩經・周南・桃夭》に「其の室家に宜し」の詠有り。多年福を享け、生ずる所の男孩一方の君と做る。此の林婚配時を得、子貴くして門榮えるを主とし、嫁娶と子嗣とを占問うに大吉。
解 高山之巔,去地億千。雖有兵寇,足以自守。
高山の頂峰、平地と距ること何ぞ止まらん千萬丈。縱ほ兵禍盗寇有るも、此の險要を憑りて以て自ら守るに足る。此の林險を據りて自ら固くし、外患侵し難きを主とし、守禦と家宅とを占問うに皆吉。
損 過時歷月,役夫憔悴。處子嘆室,思我伯叔。
約期を過ぎてまた數月を歷經し、服役の人形容憔悴す。閨中の女子屋裏に嘆息し、我が兄長と叔父とを思念す。此の林行役期を逾え、閨中遠を思うを主とし、歸期と團聚とを占問うに皆遲し。
益 太微復明,說升傅巖,乃稱高宗。一作疾在頭頸,和不能生,滅其令名。
太微垣重ねて光明を放ち、傅說傅岩の版築の間より擧用せられて相と爲り、殷王武丁これによって高宗と稱するを得、事《尚書・說命》に見ゆ。此の林賢者草野に拔かれ、君臣相い得るを主とし、賢を求めと仕進とを占問うに大吉。一本此の條「疾頭頸に在り、和して生ずる能わず、其の令名を滅す」と作る。
夬 旁多小星,三五在東。早夜晨行,勞苦無功。
天邊の小星衆多にして、參宿と昴宿と三五群を成して東方に掛る、《詩經・召南・小星》正に小吏の夙夜奔忙を詠む。早く起きて黑に貪りて路を趕り、辛苦勞碌して功效なし。此の林奔波して成なく、勞して獲少なきを主とし、出行と事を謀るとを占問うに皆利ならず。
姤 東鄉煩煩,相與笑言。子般鞭革,圉人作患。
東邊の鄕裏熱鬧紛紛として、人々相互に說笑す。魯公子般圉人犖を鞭打ち、あの養馬人恨を心に懷き、終に君を弑するの禍を釀成す、事《左傳》莊公三十二年に見ゆ。此の林歡會の中暗に殺機を伏せ、下人を輕侮して禍を招くを主とし、下を待するを占問うに慎むに宜し。
萃 鼻移在頭,枯葦復生。下朽上榮,家乃不寧。其舍不成。
鼻子頭頂に至るまで長出し、枯葦また新芽を抽く。下面朽壞して上面繁榮し、根基實ならず、家中これによって安寧を得ず、房舍もまた蓋成らず。此の林本末倒置し、根基固からざるを主とし、家宅と營造とを占問うに皆凶。
升 蝦蟆群聚,從天請雨。雲雷集聚,應時輒與。得其所願。
蛤蟆群を成して聚集し、天に向かいて雨の降るを祈求す。云と雷と聚拢して、時に應じて便ち甘霖を降下し、彼らの心願を遂ぐ。此の林誠求應有り、願う所必ず遂げるを主とし、祈求の事を占問うに皆吉。
困 大步上車,南到喜家。送我貂裘,與福載來。
大步して車子に登上し、南に喜事有る人家に來到す。主人我に貂皮の大衣を送り、福氣之と一同に載せて回る。此の林客を訪うて贈を得、福身に隨いて來るを主とし、出行と財を求むるとを占問うに皆吉。
井 賊仁傷德,天怒不福。斬刈宗社,失其土宇。一本此下有皆頤之三字,闕一字)
仁義を殘害し徳行を損傷すれば、上天震怒して再び福を降さず。宗廟社稷斬伐し盡くされ、疆土屋宇すらも失う。此の林徳に逆いて國を亡し、土を失い祀を絕つを主とし、家國を占問うに大凶。一本此の下に「皆頤之」の三字有り、一字を闕く。
革 從蝟見虎,雖危無殆,終已不處。
刺猬に跟りて走りて卻って老虎に撞見す、危險なると雖も敗亡に至らず、終に此に久留するを肯んぜず。此の林險中全を得、機を見て遠去るを主とし、險に遇うを占問うに速かに離るるに宜しく、咎無きを保つ可し。
鼎 履行素德,卒蒙佑福。與堯侑食,君子有息。
朴素本分の徳行を踐行し、終に神明の保佑を蒙受して福を得。堯のごとき聖君と侑食して席を共にする能くし、君子これによって生息する所有り。此の林素徳報を獲、明主に遇いて安んずるを主とし、福を求めと仕進とを占問うに皆吉。
震 利在北陸,寒苦難得。憂危之患,福為道門。商叔生存。
利益北方の陸地に在り、あの處天寒くして地苦しくして取得し難し。憂愁危殆の禍患の中、福氣反つて通達の門と成り、商叔これによって生存を得。此の林苦寒にして利を求め、危中にして福を得るを主とし、占問うに先に難にして後に獲。
艮 四蹇六盲,足痛難行。終日至暮,不離其鄰。
四處跛蹇して六處昏盲し、脚痛みて行走し難し。早より晚に至るまでも、鄰近の地を走り出る能わず。此の林行動限を受け、寸步移り難きを主とし、出行と事を謀るとを占問うに皆成らず。
漸 臺駘昧子,明知地理。障澤宣德,封居河涘。
台駘微昧より出身すれど、卻って地理に深通す。彼堤を築き水を障え澤を疏濬して徳澤を廣布し、功に因りて封を受けて汾河の濱に居る、事《左傳》昭公元年に見ゆ。此の林微賤の者大能有り、水を治めて功を建つを主とし、事を治むと封賞とを占問うに皆吉。
歸妹 畜水待時,以備火災。柱車絆馬,郊行出旅。可以無咎。
水を蓄好して需用の時を待ち、以て火災に防備す。車子を支住し馬匹を絆住し、郊外に出行して遠游すれば、過錯無き可し。此の林豫備周全にして、行止節有るを主とし、出行を占問うに平安。
豐 歲暮花落,君衰於德。榮寵殞墜,陰棄其室。
一年將に盡きんとして花朵凋落し、國君の徳行もまた之に隨いて衰减す。榮耀恩寵墜落し、陰柔の人自己の家室を拋棄す。此の林徳衰え寵失い、家道零落するを主とし、家國と恩寵とを占問うに皆凶。
旅 夏敗蔡悲,千里為市。黃落潱鬱,利得無有。
夏國敗亡し蔡國悲傷し、千里の地皆交易の場と成る。草木枯黄凋落して水氣鬱塞し、利益一の得る所なし。此の林國破れて商滯り、財路斷絕するを主とし、財を求むるを占問うに大利ならず。
巽 仲春巡狩,東見群后。昭德允明,不失其所。
仲春の時節天子出巡し、東に諸侯群后に會見す、《尚書・舜典》舜の「歲二月東に巡守す」を載す。徳行を彰明し誠信昭著にして、人人其の位を失わず。此の林巡行會同し、上下所を得るを主とし、出行と朝覲とを占問うに皆吉。
兌 冽潔縲縲,締構難解。嫫母衒嫁,媒不得坐。自為身禍。
繩索一圈圈に纏えて又緊く又結實にして、締結の死扣解開し難し。醜陋の嫫母處處自誇して嫁を求め、媒人纏えられて席に安んずる能わず、反つて自らのために禍事を招來す。此の林糾纏して解き難く、自ら炫えて殃を招くを主とし、婚事と糾紛とを占問うに皆凶。
渙 鳥嚕夜中,以戒災凶。重門擊柝,備憂外客。
鳥半夜の裏に鳴叫し、以て災禍凶險を警戒す。重重の門戸を設け更を打ちて柝を敲き、外來の不速の客に防備す。「重門擊柝」の語《易・繫辭》に出づ。此の林警備森嚴にして、患を未だ然らざるに防ぐを主とし、守禦を占問うに吉を得。
節 朝霽暮露,纖我衣濡,道無行牛。
早上剛に晴放れしも、傍晚また露水を下し、細細として我が衣裳を沾濕せしむ、路上一頭の路を趕る牛すらもなし。此の林天時定まらず、路を行くこと冷落するを主とし、出行を占問うに利ならず。
中孚 抱璞懷玉,與桀蹠觴。詘坐不申,道無良人。
璞石を抱懷し美玉を懷揣すれど、卻って夏桀・盗跖の類の人と對飲す。卞和の璞を抱きて遇わざるの事《韓非子・和氏》に見ゆ。膝を屈して坐し抱負伸ぶるを得ず、一路上一個の好人もなし。此の林才を懷きて遇わず、交る所其の人に非ずを主とし、進を求めと交游とを占問うに皆利ならず。
小過 兩心相悅,共其茀□。一作茅蘆)夙夜在公,不離房中。得君子意。
兩心相互に喜悅し、一處の遮蔽の下に同處す。早晚皆公事の中に在れども、人卻って房室の內を離れず、《詩經・召南・小星》に「夙夜公に在り」の語有り。終に君子の心意に合す。此の林情投意合し、內外相い安んずるを主とし、婚姻と事を共にするとを占問うに皆吉。「茀」一本「茅蘆」と作る。
既濟 載饋茹田,破鉏失餐。苗稼不闢,獨飢於年。
飯を田間に送りて吃せしめんとすれど、鋤頭卻って折斷し、此の頓の飯すらも誤了す。禾苗莊稼人の開墾耕治する無く、此の一年只だ獨り餓へるを落得す。此の林農具損壞し、耕作荒廢するを主とし、農事と生計とを占問うに皆凶。
未濟 甘露醴泉,太平機關。仁德感應,歲樂民安。屯之謙)
天甘露を降し地醴泉を涌す、此れ太平盛世の樞機の在る所なり。仁徳感召して上天回應し、年歲歡樂して百姓安寧す。此の林祥瑞幷びに至り、徳天和を感ずるを主とし、家國と福を求むるとを占問うに大吉。同辭また「屯の謙」に見ゆ。
坎の林(坎卦六十四林)
坎:有鳥黃足,歸呼季玉。從我睢陽,可避刀兵。與福俱行,有命久長。
坎の卦が自ら変じても坎の卦のままである。黄い足の鳥が旧巣に帰り、声々に季玉を呼んで、我を睢陽に移らせる。そこは兵刃の禍いを避けられる地で、福が一路付き従い、寿命は長い。睢陽は古の宋国の奥地で、漢人はこれを乱を避けて身を安んずる所と見做し、黄足の異鳥は警戒して吉を報じる祥禽である。この林は遠く移って危険を避けて福寿を得ることを主とし、大吉である。
乾:太王為父,季歷孝友。文武聖明,仁德興起。孔張四國,載福綏厚。
坎の卦が乾の卦に変わる。古公亶父が父となると、子の季歴は孝順友愛で、文王・武王に伝わり、聖徳は昭明、仁政は大いに興り、周室は四方に張大して深厚な福沢を受けた。これは《詩経・大雅》が詠う周家三世が徳を積んで国を開いた旧事である。この林は累世善を行って門戸が興隆し、福禄が綿厚であることを主とし、大吉である。
坤:猿墮高木,不踒手足。保我全生,還歸其室。
坎の卦が坤の卦に変わる。猿が高い木から落ちても手足を挫かず、命を全うして安らかに己の巣に帰る。猿はよく攀縁するので、墜ちても傷つかないのは天賦の本领が身を守る喩えである。この林は転落の険境を経ても終に損折なく、平安に家に帰れることを主とし、驚きあれど険なき吉である。
屯:重耳恭敏,遇讒出處。北奔戎狄,經涉齊楚。以秦代懷,誅殺子圉,身為伯主。
坎の卦が屯の卦に変わる。晋の公子重耳は恭謹勤敏であったが、驪姫の讒言によって出亡を余儀なくされ、北に戎狄へ奔り、また斉・楚の間を転々とした。後に秦穆公の力を借りて晋懐公に代わり、子圉を誅して自ら君位に立ち、終に春秋の覇者、すなわち晋文公となった。この林は先に讒害に遭って異郷に流れ、久困の後にかえって高位に登ることを主とし、先凶後吉・苦尽甘来の象である。
蒙:倚鋒據戟,傷我胸臆,耗折不息。
坎の卦が蒙の卦に変わる。身を刀の刃に倚せ、手に長戟を按えば、胸は刺し傷つけられ、損耗折損が止まらない。身をもって兵刃に当たるのは自ら傷を取ることである。この林は強を逞しゅうして険を犯し、処事に避けることを知らず、必ず身の傷と財の損を致すことを主とし、凶である。
需:狗冠雞步,君失其所。出門抵山,行者憂難。水灌我園,高陸為泉。
坎の卦が需の卦に変わる。狗に冠冕を冠せ、鶏が人の歩みを学べば、尊卑と名実は転倒し、君主は在るべき位を失う。出門すれば大山にぶつかり、行路の人は愁苦して進めず、大水が園圃に灌ぎ込み、高き地さえ泉眼と化する。狗冠鶏歩は漢人が名実の錯乱を形容する常語である。この林は上下失序・行止の阻害に加えて水患に逢うことを主とし、凶である。
訟:眾鳥所翔,中有大怪。丈身長頸,為我驚憂。
坎の卦が訟の卦に変わる。群鳥が盤旋する所の中に一つの怪物が現れ、身の丈一丈、頸は細長く、人を驚駭憂懼させる。漢人は異形の禽を妖祥の変の示しとした。この林は反常の意外な驚擾があり、事は不測に起こり、口舌と憂驚を主とし、不吉である。
師:虎行相逐,未有休息。戰於平陸,為夷所覆。
坎の卦が師の卦に変わる。二虎が互いに追い合い、一刻も歇めず、ついに平陸一帯で交戦し、かえって外族に打たれて傾覆した。平陸は斉国の辺邑で、これは両強が争って外敵が虚に乗ずる喩えである。この林は内争が止まず外患の覆敗を招くことを主とし、用兵は大凶である。
比:禹鑿龍門,通利水泉。同注滄海,民得安然。
坎の卦が比の卦に変わる。大禹が龍門山を鑿ち開き、水道と泉源を疏通させ、衆流を同じく大海に注がせ、百姓はこれによって安居した。事は《尚書・禹貢》に記す禹が九河を疏した功に見える。この林は疏導が法を得て衆力が一に帰し、害を除き民を安んずることを主とし、大吉である。
小畜:堯舜仁德,養賢致福。眾英積聚,國無寇賊。
坎の卦が小畜の卦に変わる。堯・舜は仁徳をもって天下を治め、賢才を供養して福沢を招き、英俊の士は朝廷に聚集し、国中に盗賊がなかった。これは二帝が皐陶・稷・契を挙用した旧事を用いる。この林は賢を任じ士を納れ、人才が輻輳して家国が安寧であることを主とし、大吉である。
履:陸居少泉,山高無雲。車行千里,塗不汙輪。渴我為怨。
坎の卦が履の卦に変わる。高い陸上に住めば泉水は稀で、山は高くても雲雨を生ぜず、車は千里を走っても道路が乾きて車輪に泥さえ沾らず、人は渇して心に怨恨を生ず。これは久旱無雨の象である。この林は行路は通畅でも所需の物は匱乏し、乾渇によって怨を生ずることを主とし、小さな不足の憂いがある。
泰:朝不見光,夜不見明。暝抵空床,季女奔亡。愴然心傷。
坎の卦が泰の卦に変わる。昼は日光を見ず、夜は月明を見ず、暗を摸して帰れば空床に触れるばかりで、小さな娘はすでに私奔して逃げ去り、凄愴して傷心させる。この林は家中が昏昧にして察することを失い、骨肉が离散することを主とし、人口の走失と悲憂傷心を主とし、凶である。
否:齊魯永國,仁聖輔德。造禮雅言,定公以安。
坎の卦が否の卦に変わる。斉・魯両国の国祚が長久なのは、仁徳の聖賢が政を輔けるに依る。礼楽を制作し雅正の言を講ずれば、魯定公はこれによって安穏を得た。魯は周公の後で礼楽の存する所であり、孔子はかつて定公の相を務めた。この林は礼義をもって政を輔けて安定を致すことを主とし、吉である。
同人:束帛元圭,君以佈德。伊呂百里,應聘輔國。
坎の卦が同人の卦に変わる。束帛と大圭を捧げ持ち、君主はこれをもって恩徳を広く施せば、伊尹・呂尚・百里奚の流の賢者が聘に応じて来て国政を輔佐する。束帛加璧は古の賢を聘する重礼である。この林は賢に礼し士を下して輔弼の才を得、謀事に人の助けあることを主とし、大吉である。
大有:棘鉤我襦,為絆所拘。靈巫拜祝,禍不成災。東山之邑,中有肥土,可以饒飽。
坎の卦が大有の卦に変わる。荊棘が我が短衣に鉤り、絆されて脱け出せない。霊験ある巫者に叩拜祷祝させると、禍事は終に災殃を成さなかった。東山一帯の城邑には肥沃な土地があり、人を飽かせるに足る。この林は初めに牽絆の小阻があり、攘解の後に険を夷に化し、また田土の利を得て、先に滞り後に吉である。
謙:門燒屋燔,為下所殘。西行出戶,順其道理。虎臥不起,牛羊歡喜。
坎の卦が謙の卦に変わる。門が焼かれ屋が焚かれるのは、下人の残害に遭ったからである。西へ出て避ければ、ようやく事理に順うこととなる。猛虎が伏臥して再び起たなければ、牛羊はこれによって歓喜する。この林は先に内奸の放火の禍があり、避けて西行すれば安に転じ、凶煞は退伏して終に吉利に帰る。
豫:牆高蔽目,崑崙翳日。遠行無明,不見歡叔。
坎の卦が豫の卦に変わる。牆を高く築き過ぎて視線を遮り、崑崙山が高くて太陽さえ遮る。遠行の路上に光亮なく、望む叔父に見えない。この林は隔閡蒙蔽を受けて音信が通じず、見たい人に見えないことを主とし、壅塞して行き難く、不吉である。
隨:天地際會,不見內外。祖辭遣送,與世長訣。
坎の卦が隨の卦に変わる。天と地が交接して混同し、内外を分つことができない。祖道の礼を行って辞別し送れば、これから人世と永訣する。祖はもと出行前に路神を祭る礼であるが、ここでは死を送るに借りる。この林は陰陽が混沌として生死が永隔するを主とし、喪亡の象で、大凶である。
蠱:深水難涉,泥塗至轂。牛罷不進,浮陷為疾。
坎の卦が蠱の卦に変わる。水は深くて渉り難く、泥濘は車轂に没し、牛は疲れて進めず、車身は漂浮して陷落し大患となる。この林は道路が艱阻で力竭きて行き難く、凡事が陷溺して前に進まないことを主とし、凶である。
臨:羊驚虎狼,獼猴群走。無益於僵,為齒所傷。
坎の卦が臨の卦に変わる。羊が虎狼に驚かされ、獼猴は群れて逃げる。奔逃はすでに倒斃した同伴に何の用もなく、己も終に利歯に咬み傷つけられる。この林は驚懼して奔避するも事に補いなく、仍として害を免れないことを主とし、凶である。
觀:履蛇躡虺,與鬼相視。驚恐失氣,如騎虎尾。
坎の卦が觀の卦に変わる。足に長蛇と短虺を踏み、また鬼怪と四目相対し、魂が体に附かず驚き、あたかも虎の尾に騎るがごとし。履虎尾は《周易・履》卦に出て、極険の地に身を処する喩えである。この林は身が険境に臨み驚懼して寧らかならざるを主とし、凶である。
噬嗑:車驚人傾,兩輪脫去。行者不止,人生憂懼。結締復解,夜明為喜。
坎の卦が噬嗑の卦に変わる。車馬が驚いて人は転覆し、両輪がともに脱落したが、行人は仍として歇まらず、これによって心に憂懼を生ず。後に死結を打ったものがまた解け、長夜が明に転じて喜事となる。この林は途中で事が起き器物が損壊し、冒進すれば憂患を添えるが、糾結は終に化解して、先凶後吉である。
賁:南販北賈,與喜為市,利得百倍。
坎の卦が賁の卦に変わる。南へ貨を販り北へ商い、交易は順遂して心に歓喜を生じ、百倍の利を得る。この林は遠行して経商し大いに財利を得ることを主とし、財を求める者の上吉の兆である。
剝:延陵適魯,觀樂太史。車鄰白顛,知秦興起。卒兼其國,一統為主。
坎の卦が剝の卦に変わる。呉の季札は延陵に封じられ、魯に使いして太史に列国の楽歌を奏させた。《秦風・車鄰》の「有馬白顛」の句を聞き、秦が將に興らんことを断定し、後に秦は果たして諸国を兼併し天下を一統して主と称した。事は《左伝・襄公二十九年》の季札の楽観に見える。この林は微を見て著を知り盛衰を預知することを主とし、後起の者が終に大成する、吉である。
復:出門逢惡,與福為患。反相擊刺,傷我手端。
坎の卦が復の卦に変わる。出門すれば凶悪の人に逢い、福を求めんとしてかえって禍患となる。互いに反目して相撃ち相刺し、我が手指を傷つける。この林は外出して悪に遇い、利を求めてかえって争闘を招き、血光の小傷あることを主とし、凶である。
旡妄:獐鹿群走,自然燕喜。公子好遊,他人多有。
坎の卦が无妄の卦に変わる。獐と鹿は群れて奔走し、自ら安楽であるが、公子はただ遊び戯れるのみで、家業は多く他人に帰した。この林は自ら逸楽して憂いなきも、経営を疏にして財産を他人の手に落とすことを主とし、喜びの中に失を帯びる。
大畜:恭寬信敏,履福不殆。從其邦域,與喜相得。
坎の卦が大畜の卦に変わる。人を待つに恭敬寛厚・誠信勤敏であり、福地を踏んで危険なし。自家の疆域に順って事を行えば、処処に喜慶と相遇う。恭寛信敏はもと《論語・陽貨》に挙げる仁者の徳である。この林は徳を守り自ら持して本分を越えず、福喜は自ら至ることを主とし、吉である。
頤:欲飛無翼,鼎重折足。失其福利,庖羞為賊。一下有上卿之家,富其蒙宰。喜除我憂,解吾思愁。
坎の卦が頤の卦に変わる。高く飛ばんと欲して翼なく、鼎に重く装い過ぎて足を折れば、福利はこれによって尽く失われ、一鼎の佳肴がかえって禍害となる。鼎折足覆餗は《周易・鼎》九四に出て、才力が其の任に勝えず事を敗る喩えである。別本にはこの句の下に「上卿之家は其の蒙宰を富ましめ、喜は我が憂いを除き、吾が思愁を解く」数語があり、卿相の家が先ず自家の家臣を富ましめ、後に喜事が臨んでようやく憂愁を除いたと説く。この林は力小さく任重ければ必ず傾覆を致し、外来の助けを待たねば憂いを解けないことを主とし、先凶して後に転機あり。
大過:府藏之富,王以賑貸。捕魚河海,佈網多得。
坎の卦が大過の卦に変わる。府庫と倉廩は十分に充盈し、君王はこれをもって百姓に賑済し貸与し、また江河大海に出て魚を捕れば、網を下ろして収穫甚だ多し。この林は財貨が豊足で施予に余りあり、漁猟商賈の謀に皆得あることを主とし、吉である。
離:陰生麓鹿,鼠舞鬼哭。靈龜陸處,釜甑塵生。仁智盤桓,國亂無歡。
坎の卦が坎の卦に変わる。陰気が山麓の鹿群の間に滋生し、鼠は舞い鬼魅は夜哭し、霊験ある神亀は陸地に擱置され、鍋と甑は久しく火を挙げず塵埃を積む。仁人智士は徘徊して前に進まず、国中大乱で欢乐なし。鼠舞鬼哭は皆漢人が記した災異の象である。この林は陰邪が道に当たり賢者が困頓し、家に炊食なきことを主とし、大凶である。
咸:風塵坎坷,不見南北。行迷失利,復反其室。
坎の卦が離の卦に変わる。風沙が面に撲し道路は坎坷で、南北の方向さえ弁え難い。出行して路に迷い利を失い、ただ家に折り返すのみ。この林は時局が昏乱して去就が明らかでなく、外に出て一無所得なることを主とし、静守すべく妄動すべからず。
恆:金革白黃,宜利戎市。嫁娶有息,商人悅喜。
坎の卦が咸の卦に変わる。金革と白銀黄金は、辺地の兵器市集に持ち込んで交易し利を得るに最も宜しい。嫁娶の家は丁を添え後嗣あり、商人も心満ちて歓喜する。この林は五金皮革を販運して大いに利を得、婚姻と子嗣が両ながら順遂なることを主とし、吉である。
遯:匏瓜之德,宜繫不食。君子失輿,官正懷憂。
坎の卦が恒の卦に変わる。匏瓜の品性は只だ懸けるに宜しく人の食用に供せず。《論語・陽貨》に孔子が「吾豈匏瓜ならんや、焉んぞ能く繋がれて食われざらん」と嘆じたのは、まさに空しく懸けられて用いられぬを甘んぜぬ意である。今君子は車輿を失い、官長は心に憂愁を懐く。この林は才を懐いて遇われず棄置されて用いられず、また位と勢を失うを主とし、不吉である。
大壯:乘船渡濟,載水逢火。賴得免患,我有所持。
坎の卦が遯の卦に変わる。舟に乗りて済水を渡るに、船に水を載せて偏に火に遇う。幸いに載せた水が正好く火を救い、これによって禍患を免れ、全く己が手中に元より恃む所ありによる。この林は険厄に遇うとも、平日の儲備と憑仗によって化解することを主とし、驚きあれど険なき吉である。
晉:道險多石,傷車折軸。與市為仇,不利客宿。
坎の卦が大壯の卦に変わる。道路は険悪で乱石多く、車は撞壊して車軸が折れる。また市集の人と怨仇を結び、客居して外に在っても安穏ならず。この林は出行が阻害され車馬器物が毀損し、兼ねて人の怨を招き、旅宿に利なきことを主とし、凶である。
明夷:托寄之徒,不利請求。結衿無言,乃有悔患。
坎の卦が晋の卦に変わる。寄居して身を托する人に対しては請托するに宜しくない。しかし衣襟を繫げ口を閉じて言わぬは、かえって悔恨と禍患を留める。この林は人を求めて助けても益なく、一味に緘黙して心跡を申し明かさぬも同じく事を誤ることを主とし、進退の間に皆小咎あり。
家人:三年爭妻,相逐奔馳。終日不食,精氣竭罷。
坎の卦が明夷の卦に変わる。妻室を争うて三年を糾纏し、互いに追逐奔走して歇まず、終日食に遑あらず、精力気血はみな耗竭疲弊する。この林は婚姻の情事によって久訟相争い、神を労し身を傷めて終に得る所なきことを主とし、凶である。
睽:退惡防患,日之中息,解釋倒懸。
坎の卦が家人の卦に変わる。悪人を退避して預め患に防ぎ、日頭が正中に至る時に歇まって一気を休めれば、倒懸のごとき困苦は解脱を得る。倒懸は《孟子・公孫丑上》に出て、困厄が極に至るを形容する。この林は回避と防範に善く、危困は解けて凶より吉に転ずることを主とする。
蹇:兩足四翼,飛入家國。寧我伯姊,與母相得。
坎の卦が睽の卦に変わる。二つの足に四つの翼を生やした異禽が家国の中に飛び入り、我が大姐を安撫し、また母女を相睦らかにする。この林は異事が忽然として門に臨み、然れど終に骨肉は団聚し家宅は安寧なることを主とし、吉である。
解:寒露所凌,漸至堅冰。草木瘡瘍,花落葉亡。
坎の卦が蹇の卦に変わる。先ず寒露に欺凌され、漸く堅氷を結ぶ。《周易・坤》初六に「霜を履めば堅氷至る」というは、まさに禍患が漸より成るを言う。草木はこれによって瘡を生じ溃爛し、花は凋れ葉は落つ。この林は寒気が日に盛んとなり積漸して災を成し、小患が終に大禍を醸すことを主とし、凶である。
損:后稷農功,富利我國。南畝治理,一室百子。
坎の卦が解の卦に変わる。后稷が民に耕稼を教えて農功を建て、我が邦国を富ち利あらしめた。南の田畝は整治が当を得て、一家に百の子孫を添えた。后稷は周人の始祖で、事は《詩経・大雅・生民》に見える。この林は農事が豊稔で家道が殷実、人丁が繁盛なることを主とし、大吉である。
益:設網張羅,捕魚園池。網罟自決,雖得復失。危許之患,受其忻歡。
坎の卦が損の卦に変わる。網羅を布きて園池に入り魚を捕えるが、網目は自ら破裂し、捕えたのにまた走がす。一場の懸危の患を経た後、かえって歓喜を得た。この林は器具が牢ならず先に得て後に失うを主とすれど、虚驚が過ぎて終に喜慶あり、失して復た得るの象である。
夬:路與縣休,侯伯恣驕。上失其威,周室相微。
坎の卦が益の卦に変わる。道路と県邑がともに荒廃して停頓し、諸侯方伯は恣意に驕横し、天子は威権を失い、周王室はこれに随いて衰微する。これは東周に王綱が解け紐を失い諸侯が坐大した局面を説く。この林は上下失序して尊者が勢を失い下屬が跋扈することを主とし、凶である。
姤:逐走追亡,相及扶桑。復見其鄉,使我悔喪。
坎の卦が夬の卦に変わる。逃走した人を追い、東方日出ずる扶桑の地まで追い及ぶ。再び故郷に帰るを待つに、ただ我に懊悔と沮喪を教えるのみ。この林は奔波して追索し遠行して労頓し、縱え追い及んでも終に失落することを主とし、徒労して悔を生ず。
萃:履祿綏厚,載受福祉。衰微復起,繼世長久。疾病無危,晉人起告。
坎の卦が姤の卦に変わる。享くる禄位は安穏深厚で福祉を承け、衰敗の後に重新たに振起し、世代相承くること長久。疾病にも危険なく、晋の人が起ち来たりて訊を報ず。この林は衰より盛に転じ家世が綿長で、病める者も愈えることを主とし、吉である。
升:鰥寡孤獨,祿命苦薄。入宮無妻,武子哀悲。
坎の卦が萃の卦に変わる。鰥夫寡婦と孤児独老は禄命が皆苦薄で、家門に入るも妻子の相待つなく、武子は独り哀傷するのみ。この林は孤苦して依る所なく、姻縁は成り難く福禄は浅薄なることを主とし、凶である。
困:山沒丘浮,陸為水魚。燕雀無巢,民無室廬。
坎の卦が升の卦に変わる。大山が淹没し土丘が漂浮し、陸地は魚の遊ぶ所と変わり、燕雀は巣を失い百姓も房屋なし。この林は洪水が天に滔み家園が蕩尽して、人は皆流離して所を失うことを主とし、大凶である。
井:冠帶南遊,與福喜期。遨遊嘉國,拜位逢時。
坎の卦が困の卦に変わる。冠を戴き帯を束ねて南方に遊歴すれば、正好く福喜と相約す。美わしき邦国の中に遨游して、時に逢うて官職を拜せられることを得る。この林は外出して干謁すれば機縁に適逢し、進身して禄を受けるを望むべきことを主とし、吉である。
革:東行亡羊,失其羝牂。少女無夫,獨坐空廬。
坎の卦が井の卦に変わる。東へ行きて羊を失い、牡羊も牝羊も全く見えず、年少の女子は夫なく、独り空屋に坐す。この林は出行して財畜を折損し、婚姻が成らず、孤单落寞たることを主とし、凶である。
鼎:探巢捕魚,耕田捕鰍。費日無功,右手虛空。
坎の卦が革の卦に変わる。鳥巣に入りて魚を捉え、旱田の上に出て泥鰌を撈れば、路数は全然対せず、時日を白白に耗費して毫も効功なく、右手は到頭仍として空空如也。この林は求むる所は其の処に在らず、木に縁りて魚を求めるがごときことを主とし、労して獲る所なし、凶である。
震:東行飲酒,與喜相抱。福為我家,利來從母。水澤之徒,望邑而處。
坎の卦が鼎の卦に変わる。東へ行きて宴に赴き酒を飲み、喜事と相拥する。福気は我が家に帰り、財利は母家の辺より送られ来たり、水沢辺の人は城邑を望見して即ち安頓する。この林は東行に喜宴あり、内親の助けを得て財を進め、居処も安穏なることを主とし、吉である。
艮:妄怒失精,自令畏悔。怡怡之歡,君子無咎。
坎の卦が震の卦に変わる。端なく怒れば精気を耗損し、自ら畏懼と悔恨を招く。若能く和顔悦色にして和楽に相处すれば、君子は過ちなし。怡怡は《論語・子路》に出て、兄弟間の和順を形容する。この林は躁と怒を戒め、和悦をもって人に接すれば災禍なきことを主とする。
漸:白雲如帶,往往來處。飛風送迎,大雹將下。擊我禾稼,僵死不起。
坎の卦が艮の卦に変わる。白雲が一条の帯のごとく、往ったり来たりして聚拢し、狂風が迎送して至れば、大きな氷雹がまさに落ちんとし、我が庄稼を打ち壊し、禾苗は僵れ倒れて再び起つ能わず。この林は天時が利あらず風雹が災を成し、田禾が受損することを主とし、凶である。
歸妹:南至之日,陽消不息。北風烈寒,萬物藏伏。
坎の卦が漸の卦に変わる。南至の日に至り、陽気は初めて生ずるも陰寒は仍として消磨して止まず、北風は凛冽として厳寒にして、万物は皆藏伏する。南至は即ち冬至で、太陽が南行して極に至った日である。この林は時令が厳閉して陽気未だ振るわず、凡事は潜藏して時を待つに宜しく、妄動は利あらざることを主とする。
豐:火中仲夏,鴻雁解舍。體重難移,未能高舉。君子顯名,不失其譽。
坎の卦が歸妹の卦に変わる。大火星が昏れて南天の正中に見え、正に仲夏に当たる時、鴻雁は栖まる所を离散し、身は重くて挪め難く、高く飛ぶこと能わず。君子は却ってこの時に名声を顕揚し、その美誉を失わず。火中は《尚書・堯典》が季節を定めるに用いた星象である。この林は一時行動が滞るも声名は損なわれぬことを主とし、中を守りて誉を得るの象である。
旅:北行出門,履蹈躓顛。踒足據塗,汙我襦褲。
坎の卦が豐の卦に変わる。北へ出門して遠行し、一路磕絆して摔跌し、足を扭して傷つけ、泥地に跌坐して、我が短衣と褲を汚す。この林は出行が順ならず跌仆して受傷し、狼狽して汚損することを主とし、凶である。
巽:輕車醊祖,疾風暴起。促亂祭器,飛揚鼓舞。明神降佑,道無害寇。
坎の卦が旅の卦に変わる。軽車を駕して祖道の祭を行い、酒を酹する未だ畢らざるに狂風が驟り起こり、祭器を吹きて東倒西歪せしめ、塵土は飛揚して鼓舞のごとし。幸いに神明は終に庇佑を降し、路上に盗賊の為害なし。祖は出行前に路神を祭る礼である。この林は臨行に驚擾の変故あるも神助を得て終に平安を獲ることを主とし、先に驚き後に吉である。
兌:酒為歡伯,除憂來樂。福喜入門,與君相索。使我有得。
坎の卦が巽の卦に変わる。酒は「歓伯」と称せられ、憂愁を除き歓楽を帯び来ることが能く、福気の喜事が門に入り、自ら主人に向かって親を求め相就き、我に収穫あることを得さす。歓伯は漢人が酒に起こした雅号である。この林は宴飲して憂を解き、喜慶が門に臨みて実得あることを主とし、吉である。
渙:三足孤烏,虛鳴督郵。司過罰惡,自賊其家。毀敗為憂。
坎の卦が兌の卦に変わる。三足の孤烏が空しく督郵に向かって鳴きて状を告げる。もとより過失を糾察し悪人を懲辦する差事なのに、かえって自ら一家を害し、毁敗の憂いに落ちる。三足烏はもと日中の神鳥だが、ここでは孤鳴して応ずるものなし。この林は好んで挙訐告発して、かえって自身の門戸を傷つけることを主とし、凶である。
節:三河俱合,水怒踴躍。壞我王屋,民飢於食。
坎の卦が渙の卦に変わる。三条の大河が一斉に汇合し、水勢は暴怒して翻騰し、王屋一帯の房舍を冲壊し、百姓はこれによって飢える。この林は洪水が冲決して屋宇が傾毁し、糧食が断絶することを主とし、大凶である。
中孚:南行棗園,惡虎畏斑。執火銷鋒,使我無患。
坎の卦が節の卦に変わる。南へ行きて棗園に入れば、凶悪の老虎もその斑斕の紋彩を畏れる。火把を執り刀鋒を銷熔すれば、我に禍患なし。この林は威勢と預備をもって凶険を震攝し、患に先んじて防ぐれば、平安を保つべきことを主とし、吉である。
小過:求鹿過山,與利為怨。闇襲不言,誰知其歡。
坎の卦が中孚の卦に変わる。鹿を追わんがために山嶺を翻越し、利を争わんがために怨仇を結ぶ。暗中に襲取して口を閉じて言わざれば、誰か其の中の快意を知らん。この林は利を貪りて暗に其の事を行い、小得あれど怨を身に結ぶことを主とし、長く恃むべからず。
既濟:行旅困蹴,失明守宿。囹圄之憂,啟蟄出遊。
坎の卦が小過の卦に変わる。旅途は困頓窘迫し、天黑れて方向を失い、就きて宿るほかなし。もとより牢獄の憂いあったが、啓蟄に至りて陽気升発し、ようやく出游を得た。啓蟄は即ち驚蟄で、蟄虫が始めて動いて出る時である。この林は先に拘囚困厄を受け、時節の転機を待って後に解脱することを主とし、先凶後吉である。
未濟:據棘履杞,跌刺為憂。夫婦不和,亂我良家。
坎の卦が既済の卦に変わる。手に荊棘を按え足に枸杞の叢を踏み、跌倒して刺に扎されて憂愁を生ず。夫妻は不和で、もと好端端であった一家を搅乱する。この林は処境が荊棘のごとく手に刺さり挙歩が艱難で、また家室の失和に逢い、内外交困たることを主とし、凶である。
離の林(離卦六十四林)
離:時乘六龍,為帝使東。達命宣旨,無所不通。
離の卦が自ら変じても離の卦のままである。時に乗じて六条の龍を駕して馳せ、天帝に代わって東方に出使し、命令を伝達し旨意を宣示して、通じざる所なし。時乘六龍は《周易・乾》彖辞に出る。この林は命を奉じて事を行い通達して阻まず、出使干謁の諸般の事がみな順遂であることを主とし、大吉である。
乾:執轡四驪,王以為師。陰陽之明,載受東齊。
離の卦が乾の卦に変わる。手に韁繩を執りて四匹の黒馬を駕し、君王は彼を尊んで師とする。彼は陰陽の理を洞明し、これによって東方の斉の地に封を受けた。これは呂尚が周室を輔佐して斉に封ぜられたを暗に指す。この林は才学が上に見重んじられて封賞を受けることを主とし、大吉である。
坤:春秋禱祀,解禍除憂,君子無咎。
離の卦が坤の卦に変わる。春秋二季に時に依りて祷告祭祀すれば、禍事を化解し憂患を除去して、君子は過ちなし。この林は神明を敬い事い礼に依りて攘解すれば、災咎は自ら消えて平安無事であることを主とする。
屯:坐朝乘軒,據國子民。虞叔受命,和合六親。
離の卦が屯の卦に変わる。朝に臨み政を理め高車に乗り、邦国を拠有して民を愛すること子のごとし。虞叔は上の命を承けて、六親を和睦相合せしむ。この林は位に居りて勢を得て施政に方あり、家国親族が俱に和順を得ることを主とし、吉である。
蒙:門戶下堂,與福相迎。祿於公室,曾孫以昌。
離の卦が蒙の卦に変わる。門戸を出て堂階を歩み下れば、正好く福気を迎える。公家に在りて俸禄を領受し、子孫後代はこれによって昌盛する。この林は出でて福に逢い進身して禄を受け、沢が後嗣に及ぶことを主とし、大吉である。
需:高木腐巢,漏溼難居。不去甘棠,使我無憂。
離の卦が需の卦に変わる。高い木の上の鳥巣はすでに朽爛し、雨漏りして湿潤で居住め難い。ただあの甘棠の木を伐らなければ、我に憂愁あらしめざるを得ん。甘棠は召伯が訟を聴いた処で、《詩経・召南・甘棠》がその遺愛を詠じて人に伐るに忍びなからしめた。この林は旧居が堪え難いも、旧徳の余蔭を存留すれば仍として憂なし、旧を守るに宜しく妄改すべからざるを主とする。
訟:三女為奸,俱行高園。倍室夜行,與伯笑言。不認主母,為設歡酒,冤尤誰禱。
離の卦が訟の卦に変わる。三人の女子が串通して奸を為し、ともに高い処の園圃に走る。家室を背いて夜に出行し、あの伯氏と説笑し、自家の主母を認めず、かえって外人のために歓宴を設ける。この一陥の冤屈怨恨をまた誰に向かって祷告せん。倍は即ち背弃の背である。この林は内室が淫乱で尊卑が失序し、冤を含みて申し訴える処なし、大凶である。
師:漏卮盛酒,無以養老。春貸黍稷,年歲實有。履道坦坦,平安無咎。
離の卦が師の卦に変わる。底漏れの酒器で酒を盛れば物を留め置けず、老人を奉養することができない。しかし春に黍稷を借りて種を下せば、年成の時に果たして収穫あり。平坦な大道を行けば、平安にして過ちなし。履道坦坦は《周易・履》九二に出る。この林は先に耗漏の失あるも、稼穡に勤めば後に獲あり、終に平順に帰することを主とする。
比:松柏枝葉,常茂不落。君子歡寧,日富求樂。
離の卦が比の卦に変わる。松柏の枝葉は四時常青で、曾て凋落せず。君子は歓楽安寧にして、日に富足して其の楽を享く。松柏後凋は《論語・子罕》に堅貞を称許する旧喻である。この林は堅守恒久して家業が日に盛んになり、安楽富足なることを主とし、大吉である。
小畜:夫婦不諧,為燕攻齊。良弓不張,騎劫憂亡。
離の卦が小畜の卦に変わる。夫妻が和睦せざるは、あたかも燕国が兵を興して斉国を打つがごとし。好弓を張らざるも、主将騎劫は憂愁して敗亡す。戦国の時、燕の将騎劫は楽毅に代わって斉を攻め、田単の火牛陣に撃破されて死した。この林は内が和睦せず外にまた人を用いるに当を失して、必ず敗亡を致すことを主とし、凶である。
履:出令不勝,反為大災。強不克弱,君受其憂。
離の卦が履の卦に変わる。発した政令は推行できず、かえって大災を醸成する。強き者は弱きを圧し倒せず、君主はこの憂患を承受する。この林は号令が行われず上下が相持して、主事の人が累を受けることを主とし、凶である。
泰:奔走相錯,敗亂諸緒,民不得作。
離の卦が泰の卦に変わる。衆人が奔走して彼此錯雑し、諸項の頭緒を皆搅敗搅乱せしめ、百姓は安心して労作すること能わず。この林は紛擾して章なく政令が交錯し、事業が停頓することを主とし、不吉である。
否:載璧秉珪,請命於河。周公克敏,沖人瘳愈。
離の卦が否の卦に変わる。車に玉璧を載せ手に玉圭を持ち、河辺に到りて神明に命を請う。周公は誠敬勤敏にして君に代わりて祷告し、年幼の嗣君の病体はこれによって痊愈した。《尚書・金縢》に周公が璧と珪をもって王のために命を請うた事を載す。この林は至誠をもって神に祷れば感通し得ることを主とし、病める者は愈え危難は安に転ず、吉である。
同人:素車為馬,不任重負。王侯出征,憂危為咎。
離の卦が同人の卦に変わる。装飾なき素車に駑馬を配せば、沈重な負載を担うに堪えず。王侯がこのまま兵を出して征伐すれば、憂愁危険が即ち災咎となる。この林は器具も人力も重任に堪えず、勉強して師を興せば必ず禍患あることを主とし、凶である。
大有:大樹之子,百條共母。比之火中,枝葉盛茂。
離の卦が大有の卦に変わる。大樹の生ずる枝條、百根が同じく一つの本幹より出づ。大火星が昏れて見ゆる仲夏の時節に至れば、枝葉は格外繁茂である。この林は根本が壮盛で子孫衆多く、正に興旺の時に当たることを主とし、大吉である。
謙:壅遏堤防,水不得行。火盛陽光,陰蜺伏藏。走歸其鄉。
離の卦が謙の卦に変わる。堤壩が壅塞して水は流れ出ず、火気は熾盛で陽光は強烈なれば、陰虹はただ隠伏して藏匿するのみ。行人はこれによって己の郷里に奔り帰る。この林は陽盛にして陰消し、邪祟は退避す。壅滞あるも人は家に帰ることを得て、先に塞がり後に安んず。
豫:五嶽四瀆,合潤為德。行不失理,民賴恩福。
離の卦が豫の卦に変わる。五岳と四瀆が会合して万物を滋潤せしむるは、これ即ち彼らの德行である。事を行うに常理に違わざれば、百姓は恩を蒙り福を受くることを得る。五岳四瀆は古代国家が常祀した山川の大神である。この林は徳沢が広く被り施政が合理で、衆人が利を得ることを主とし、大吉である。
隨:駕駿南遊,虎驚我牛。陰不奉陽,其光滅蹴。訾之謙謙,奉義解患。
離の卦が隨の卦に変わる。駿馬を駕して南に遊歴するに、猛虎が我が牛を驚かす。陰気は陽気に順承せんとせず、日月の光亮はこれによって黯滅する。若し訾氏のごとく謙にしてまた謙なれば、道義を秉持して禍患を解くべし。謙謙君子は《周易・謙》初六に出る。この林は先に驚擾失序の象あるも、ただ謙退守義を以てのみ災を消すべきことを主とする。
蠱:早霜晚雪,傷害禾麥。損功棄力,飢無所食。
離の卦が蠱の卦に変わる。秋霜が早すぎて下り春雪が晩すぎて落ち、禾苗と麦を皆凍傷せしむ。一年の功夫は白白に費え気力は白白に抛たれ、飢荒を鬧がして食べる物なし。この林は天時が常を失い稼穡が害を受け、労して収穫なきことを主とし、凶である。
臨:岐周海隅,獨樂無憂。可以避難,全身保財。
離の卦が臨の卦に変わる。岐山周原より海辺の一隅に至るまで、独り安楽して憂愁なし。このような所は禍難を避けて身家和財物を保全すべし。岐周は周人の発祥の地で、古人は王気の鍾まる所と為した。この林は地を擇び遠く避ければ禍を免れ、人と財が両全することを主とし、吉である。
觀:陰蔽其陽,目暗不明。君憂其國,求騂得黃。駒犢從行。
離の卦が觀の卦に変わる。陰気が陽気を遮蔽し、目は昏暗にして見ること明らかならず。君主は国事のために愁え、もとより赤色の犠牲を求めたに、得たるは黄色のものであったが、幸いに馬駒牛犢が皆随いて来た。騂は祭祀に用いる赤色の牲である。この林は視聴が蔽を受け求むる所と得る所とが符せざるも、終竟空手に至らざるを主とし、小さな偏差あれど大失なきに属す。
噬嗑:金城鐵廓,上下仝力。政平民歡,寇不敢賊。
離の卦が噬嗑の卦に変わる。金で鋳た城、鉄で築いた外郭に、上下同心協力す。政事は公平で百姓は歓悦し、盗寇は敢えて来り侵害せず。仝は即ち同である。この林は守御が穏固で君民一体となり、外患が侵入する能わざることを主とし、大吉である。
賁:平公有疾,迎醫秦國。和不能治,晉人疑惑。
離の卦が賁の卦に変わる。晋平公が病を得て、秦より良医を迎えた。医和が診視した後に治せないと言い、晋国人は心に満ちて疑惑した。事は《左伝・昭公元年》の医和が晋侯の疾を論じたに見える。この林は病勢が深重で良医も手を束ね、医を求め薬を問うも効験あること難し、凶である。
剝:載堯扶禹,從喬彭祖。西遇王母,道路夷易。無敢難者。
離の卦が剝の卦に変わる。車に堯を載せ禹を扶け、随行するに王子喬と彭祖あり。西に行きて西王母に遇えば、道路は平坦で行きよく、敢えて来りて難する者なし。王子喬・彭祖は皆伝説中の長寿の仙人である。この林は聖賢仙真を伴とするを得、行程は通畅で寿長く阻まざるを主とし、大吉である。
復:羔羊皮革,君子朝服。輔政天德,以合萬國。
離の卦が復の卦に変わる。羔羊の皮革で縫い成した衣裳は、君子が朝に上る礼服である。これを着て朝政を輔佐し天徳に順応して、万国を和合に帰せしむ。《詩経・召南・羔羊》はまさに位に在る者の節倹正直を詠ず。この林は官に居りて正を守り徳をもって政を輔け、四方を協和する能くすることを主とし、大吉である。
旡妄:振鐘鼓樂,將軍受福。安帖之家,虎狼為憂。履危不殆,師行何咎。
離の卦が无妄の卦に変わる。鐘鼓を敲き軍楽を奏すれば、将軍はこれによって福を受く。安分守己の人家は、かえって虎狼を以て憂患と為す。険しき処を踏んで危殆ならざれば、兵を出し師を行うに何の過ちかあらん。この林は行軍征伐して功あり福を受けるを主とし、険境に臨むも災咎なし、ただ家に居る者は外侵に防ぐべし。
大畜:嫡庶不明,孽亂生殃,陳失其邦。
離の卦が大畜の卦に変わる。嫡子と庶子の名分が清らかならず、庶孽が位を争い乱を為して禍殃を生じ、陳国はこれによって其の国家を失った。春秋の時、陳国は屡々公族の争立によって衰亡した。この林は名分が正ならず家内で嗣を争い、終に家を敗り国を亡ぼすことを主とし、大凶である。
頤:鳥驚孤鴻,亂國不寧。上弱下強,為陰所行。
離の卦が頤の卦に変わる。群鳥が孤单の鴻雁を驚き起こし、乱世の国は安寧を得ず。上に居る者は衰弱し下に在る者は強横で、事事皆陰柔の一方に主使される。この林は主弱く臣強く綱紀が倒置して、国家が動蕩することを主とし、凶である。
大過:被繡夜行,不見文章。安坐於堂,乃無咎殃。長子帥師,得其正常。
離の卦が大過の卦に変わる。錦繡を着て夜に路を行けば、衣上の花紋を見る人なし。安穏に堂上に坐するのみこそ、災殃あらざらん。長子に軍隊を統率せしむるは、正に常道に合す。長子帥師は《周易・師》六五に出る。この林は美を暗処に炫ぶは徒労無益にして、静かに本位を守り長を擇びて任ぜば、即ち其の正を得ることを主とする。
坎:六月采芑,征伐無道。張仲方叔,克勝飲酒。
離の卦が坎の卦に変わる。六月芑を采る時節に師を出して、道なき国を討伐す。張仲・方叔の一班の良将が勝ちて帰り来り、宴を設け酒を飲みて功を慶す。《詩経・小雅》に《六月》《采芑》の二篇あり、まさに方叔・張仲の北伐を詠ず。この林は師を興すに名あり将は其の人を得、敵を克き凱を奏することを主とし、大吉である。
咸:昧暮乘車,東至伯家。踰梁越河,濟脫無他。
離の卦が咸の卦に変わる。天色昏暗の傍晚に車に乗りて出発し、東に行きて伯氏の家に到る。橋梁を越え河水を渡り、平安にして険を脱し別の意外なし。この林は暮夜の遠行は険阻を渉るも、終に渡越して事なきを得ることを主とし、驚きあれど険なきに属す。
恆:東風解凍,和氣兆升,年歲豐登。
離の卦が恒の卦に変わる。東風吹き来たり氷雪は消融し、和暖の気が始めて上升すれば、一年の収成は必ず豊足ならん。東風解凍は《礼記・月令》に記す孟春の物候である。この林は時序が暖に回り阻滞が氷釈して、農事人事が皆亨通を得ることを主とし、吉である。
遯:三狸搏鼠,遮遏前後。死於圜域,不得脫走。
離の卦が遯の卦に変わる。三匹の野猫が合力して鼠を撲ち、前後一斉に堵截すれば、老鼠は囲困の圏子の中に死し、逃げ脱ぐことを得ず。この林は身が囲困の中に処り四面受制して、走るべき路なきことを主とし、凶である。
大壯:綏德孔明,履祿久長。貴且有光,疾病憂傷。
離の卦が大壯の卦に変わる。民を安んずる徳は十分に昭明で、享くる禄位は長久。身份は顕貴にして光彩あるも、ただ身に疾病あるを憂うとす。この林は徳位ともに佳く富貴が長遠なるを主とすれど、疾病に纏わるるを防がねばならず、吉の中に憂いを帯ぶ。
晉:三虎搏狼,力不相當。如摧腐枯,一擊破亡。
離の卦が晋の卦に変わる。三匹の虎が合わせて一頭の狼を撃つは、双方の力量が懸殊なれば、朽ち枯れた木を折るがごとく、たちまちそれを打ち垮す。この林は衆を以て寡を凌ぎ強を以て弱を撃つを主とし、敵を克くこと甚だ易く、用兵と争訟に皆勝利を得、吉である。
明夷:使伯采桑,狠不肯行。與叔爭訟,更相毀傷。
離の卦が明夷の卦に変わる。伯氏を遣わして桑を采らしめんとするに、彼は執拗に往かんとせず。また叔氏と官司を打起して、彼此互いに詆毀し傷害す。この林は兄弟が睦まざるを主とし、差遣は従わず訟争は両敗す、凶である。
家人:抱空握虛,鴞驚我雛,利去不來。
離の卦が家人の卦に変わる。抱くは空、握るは虚で、猫头鹰がまた我が雏鳥を驚かし、利益は一去して再び回らず。鴞は古人が見るに不祥の悪鳥である。この林は得る所が皆虚で家中が驚を受け、財利が流失することを主とし、凶である。
睽:李花再實,鴻卵降集。仁哲以興,隆國不賊。
離の卦が睽の卦に変わる。李樹が花を開きまた第二回の果を結び、鴻雁の卵が降りて聚集す。仁徳明哲の人はこれによって興起し、興隆の国は賊害を受けず。草木の再実と异物の降集は、漢人は皆受命の祥瑞と見做した。この林は祥瑞が疊に現れ賢者が当に興らんとするを主とし、国泰にして患なし、大吉である。
蹇:東山皋落,勇悍不服。金瑛玩好,衣為身賊。絲麻不作。
離の卦が蹇の卦に変わる。東山の皋落氏は勇猛強悍にして、帰服せんとせず。美玉宝器はただ玩賞に供し、華美の衣裳はかえって身を害する物となり、蚕糸麻布も織り成さず。皋落は赤狄の一支で、晋献公はかつて太子申生に命じてこれを討たしめた。この林は外敵が桀驁で、玩好が志を喪わしめ、女紅が廃弛することを主とし、凶である。
解:飛蚊汙身,為邪所率。青蠅分白,真孝放逐。
離の卦が解の卦に変わる。飛蚊が叮きて身を汚し、人は邪佞に牽かれて行く。青蠅は黒白を搅混することが能く、真の孝子はかえって放逐に遭う。《詩経・小雅・青蠅》はまさに青蠅を以て讒人に比す。この林は讒言が政を乱り忠孝が棄てられるを主とし、大凶である。
損:南山大木,丈身六目。制命出文,東里宣敷。尊主安居,鄭國無患。
離の卦が損の卦に変わる。南山の上の大木、一丈の身に六つの節眼を生ず。鄭国の政令は先ず文辞に由りて擬成し、再び東里に住む子産に交わして潤色し宣布せしむ。《論語・憲問》に鄭国が命を為すに「東里子産之を潤色す」と記す。この林は賢臣が筆を秉り政令が体を得て、君安く国寧んずることを主とし、吉である。
益:泉起崑崙,西出玉門。流為九河,無有憂患。
離の卦が益の卦に変わる。泉源は崑崙山より発して、西に流れて玉門関を出づ。九条の大河に分かれて、一路憂患なし。古人は黄河の源が崑崙に出づと信じた。この林は源は遠く流は長く支派が暢達して、行事が順遂にして阻まざることを主とし、吉である。
夬:命短不長,中年夭傷。思及哭堂,哀其子亡。
離の卦が夬の卦に変わる。寿命は短促して長久あたわず、人は中年に到りて夭折損傷す。霊堂上に痛哭せんことを一想するに、兒子の死亡のために哀傷す。この林は寿元が永ならず喪子の痛あることを主とし、人口に損あり、大凶である。
姤:君臣不和,上下失宜,宗子哀歌。
離の卦が姤の卦に変わる。君と臣が和睦せず、上下の分際が皆当を失し、宗族の嫡長子はただ哀傷悲歌するのみ。この林は上下が心を離れ家族が失序し、主事する者が憂愁することを主とし、凶である。
萃:苛政日作,螟食華葉。割下啖上,民被其賊。秋無所得。
離の卦が萃の卦に変わる。苛刻の政令が日一日と出台し、あたかも螟虫が花葉を啃食するがごとし。下民を割剥して上頭を供養すれば、百姓は深く其の害を受け、秋に到りて一穫なし。この林は賦斂が煩重で下を剥りて上に奉じ、民は困し歳は歉することを主とし、凶である。
升:南行載鎧,登履九魁。車傷牛罷,日暮嗟諮。
離の卦が升の卦に変わる。南へ行軍して鎧甲を載せ、一路攀登して九重の高岡を翻る。車は壊れ牛も疲れ垮れ、天色は晩に向かい嘆息嗟怨のみ残る。この林は重を負い遠行して力尽き途窮まり、事は日暮に至りて終に成る所なきことを主とし、凶である。
困:春東夏南,隨陽有功,與利相逢。
離の卦が困の卦に変わる。春は東に往き夏は南に往き、陽気の在る方向に順って事を行えば功を建て、処処に利益と相遇う。この林は時令方位に順応して動けば、天時の相助を得て謀事に獲あることを主とし、吉である。
井:頭尾顛倒,不知緒處,君失其國。
離の卦が井の卦に変わる。頭と尾を顛倒させば、頭緒が何処に在るか理め清らかならず、君主はこれによって国家を失う。この林は本末を倒置し綱紀を紊乱して、上に居る者が失守することを主とし、凶である。
革:言無要約,不成券契。殷叔季姬,公孫爭之。強入委命,不悅子南。
離の卦が革の卦に変わる。言葉に確たる約定なくては、契券を訂成せられず。殷家の叔氏と季姬の婚事には、公孫も来りて争奪し、強いて門に入りて終身を託し去れども、終竟あの子南に中意せず。この語は《左伝》に載する鄭国徐吾犯の妹が婿を擇び子南子皙が相争った旧案を影射する。この林は約定が明らかならず婚事が争われ、勉強して結合しても心甘んぜざるを主とし、凶である。
鼎:缺陷不成,胎卵不生,不見其形。
離の卦が鼎の卦に変わる。缺損残陷あれば器を成すこと能わず、胎は孕まず卵は孵らず、形状さえ見え出でず。この林は根基が残缺で孕育が成らず、謀事に形なく果なきことを主とし、凶である。
震:見蛇交臥,惜蜒畏惡,心乃無悔。
離の卦が震の卦に変わる。蛇が相交わり盤卧するを見て、あの蜿蜒の物を厭い心に畏忌を生ずとも、回避するを知れば心に悔恨を留めず。この林は畏るべき象に遇うも、能く敬慎して躲避すれば咎を招くに至らざることを主とする。
艮:河水孔穴,壞敗我室。水深無涯,魚鱉傾倒。
離の卦が艮の卦に変わる。河堤に洞穴を穿ち、大水が我が房屋を冲毁す。水深くて辺際を望むこと能わず、魚鼈さえ冲られて翻倒す。この林は堤防が潰決して家宅が傾覆するを主とし、水厄の凶である。
漸:五嶽四瀆,地得以安。高而不危,驚懼避患。
離の卦が漸の卦に変わる。五岳四瀆の鎮守あって、大地はようやく安定を得る。高位に処りて傾危なきは、心に驚懼を存せば即ち禍患を躲くことを得ん。この林は根基が穏固なるを主とすれど、常に戒懼を懐くべく、かくすれば高きに居るも険なし、吉である。
歸妹:南至之日,陽消不息。北風冽寒,萬物藏伏。
離の卦が歸妹の卦に変わる。南至の日に到り、陽気は初生するも陰寒は消磨して止まず。北風は骨を刺すごとく厳寒にして、万物は一斉に藏伏す。南至は即ち冬至で、太陽が南行して極処に至る日である。この林は寒気が事を用い生機が深く藏することを主とし、凡事は閉藏静守に宜しく、発動すべからず。
豐:五利四福,俱田高邑。黍稷盛茂,多獲高稻。
離の卦が豐の卦に変わる。五様の利益、四種の福気が、皆高地城邑の田畝の上に聚集す。黍稷は繁茂に長じ、多くの好稲を収穫す。この林は田産が豊盛で五穀が登熟し、財福が並び至ることを主とし、大吉である。
旅:公孫駕車,載遊東齊。延陵子產,遺我紵衣。疾病哀悲。
離の卦が旅の卦に変わる。公孫が車を駕して、我を載せて東に游んで斉国に至る。延陵季子と鄭国子産のごとき賢者が我に細麻布衣を贈る。《左伝》に季札と子産が一見して故のごとくなり、互いに縞帯紵衣を贈ったと記す。この林は遠游して知己の厚贈に遇うことを主とすれど、身に疾病ありて、喜びの中に悲しみを含む。
巽:蛟虯當道,民困愁苦。望羊置群,長子在門。
離の卦が巽の卦に変わる。蛟龍虬螭が路上に盤踞し、百姓は困頓愁苦す。眼を擡げて遠く望むも、羊群を撇下するよりなく、長子は仍として門口を守る。この林は険物が道に当たり生計が阻まるるを主とすれど、幸いに家中の長子が尚お門戸を守り得て、凶の中に守りあり。
兌:金玉滿堂,忠直乘危。三老凍餓,鬼奪我室。求魚河海,網舉必得。
離の卦が兌の卦に変わる。金玉は厅堂に堆満するも、忠直の士は身を危境に処し、三老は凍え餓え、鬼魅は我が居室を奪う。ただ江河大海に往きて魚を求めれば、網を提げる毎に必ず収穫あり。この林は財は豊かなれど人は安んぜず家宅に祟あり、ただ漁猟の利を経営せば得るべし、吉凶相雑するを主とする。
渙:日入明匿,陽精隱伏。小人心勞,求事不得。
離の卦が渙の卦に変わる。太陽落ち光明隠没して、陽気の精華は潜伏す。小人は徒らに心を労し神を費やせど、求むる事は辦らず。この林は時運が昏暗で陽気の助けなく、営謀が成らざることを主とし、凶である。
節:頻逢招飲,失利後福。不如子息,舊器故杵。申請必得,乃無大悔。
離の卦が節の卦に変わる。頻々と人に請われて飲宴するは、眼前に利を失い福は後に在るを知らざるなり。これらは皆子嗣を生養するに及ばず、家中旧有の器物杵臼の如き実在に及ばず。若し再三申説して請求すれば、終竟得る所有り、また大きな悔恨なからん。この林は浮華の応酬は無益にして、旧を守り実を務め堅く請して捨てざれば、終に得て悔いなきことを主とする。
中孚:南有嘉魚,驚黃取遊。魴鱮詡詡,利來無憂。
離の卦が中孚の卦に変わる。南方に肥美の魚あり、驚を受ければ游動す。魴魚と鰱魚は成群相随いて自ら其の楽を得、利益到來して憂愁なし。《詩経・小雅・南有嘉魚》はまさに君子に酒あり嘉賓式燕の楽を詠ず。この林は漁利が豊足で賓主が相歓し、財を得て憂なきことを主とし、吉である。
小過:黃裳建元,文德在身。祿佑洋溢,封為齊君。
離の卦が小過の卦に変わる。黄裳を身に着け元年を開創して、文徳が一身に集まる。福禄の庇佑は充盈流溢して、封を受けて斉国の君となる。黄裳元吉は《周易・坤》六五に出て、中に居り正を守るの象である。この林は徳位が相称じ封を受け爵を進めるを主とし、大吉である。
既濟:口不從心,欲東反西。與意乖戾,動舉失便。
離の卦が既済の卦に変わる。口に言う所と心に想う所と一致せず、本は東に往かんとして西に走向す。事事皆本意と相違背し、一挙一動皆合宜ならず。この林は言行が相違し事と願とが相違し、動けば即ち当を失することを主とし、不吉である。
未濟:虎狼之鄉,日爭凶訟。叨爾為長,不能定證。
離の卦が未済の卦に変わる。身を虎狼のごとき郷里に処し、日々争闘して凶悪の官司を打つ。長者の位に忝居すれど、案を断じ証を定めること能わず。この林は処境が険悪で訟争が休まず、主事する者に裁断する力なきことを主とし、凶である。
咸の林(咸卦六十四林)
咸:雌單獨居,歸其本巢。毛羽憔悴,志如死灰。
咸の卦が自ら変じても咸の卦のままである。雌鳥が孤单独処して、元の己の巣に帰る。羽毛は枯敗憔悴し、心志は死灰のごとく冷寂する。この林は孤独して偶を失い意気が消沉することを主とし、帰宿あれど毫も生気なし、不吉である。
乾:小窗多明,道里利通。仁賢君子,國安不僵。
咸の卦が乾の卦に変わる。小さな窓から多くの光亮が透し入り、道路里巷は畅通して利あり。仁徳賢能の君子が位に在れば、国家は安定して僵滞せず。この林は狭小の地に処るも前程が明朗で、賢人の相助を得て家国が平安なることを主とし、吉である。
坤:心惡來恠,沖沖何懼。顏淵子騫,尼父聖誨。
咸の卦が坤の卦に変わる。心に怪異の事が門に来るを厭い、憂心忡忡なれど亦畏るるに足らず。顔淵と閔子騫は徳行が高潔で、孔夫子の聖人の教誨に依った。この林は怪異に遇うも、孔門弟子のごとく徳を修め自ら守れば、懼るべきなし、凶より安に転ずることを主とする。
屯:鳥鳴呼子,哺以酒脯。高棲水起,來歸其母。
咸の卦が屯の卦に変わる。鳥が鳴いて幼雛を呼び、酒と肉脯を取りて養う。高き処に栖まりて水勢が漲れば、幼鳥は即ち母の辺に帰る。この林は慈親の抚育と子女の来帰を主とし、縱え水患に遇うも団聚を得、吉である。
蒙:國馬生角,陰孽萌作。變易常服,君失於宅。
咸の卦が蒙の卦に変わる。国中の馬の頭に角が生え、陰邪の妖孽が萌動を始める。人々は平素の服色を改め換え、君主はこれによって居宅を失う。馬に角生ずるは漢人の《五行志》の類の書に記す災異である。この林は怪異が警を示し礼制が紊乱し、上に居る者が位を失うことを主とし、凶である。
需:入年多悔,耕石不富。衡門屢空,使士失意。
咸の卦が需の卦に変わる。この一年に入れば悔事多く、石の地に耕しても家を発すること能わず。简陋の柴門の家は屡々糧を断ち、読書人はこれによって失意する。衡門は《詩経・陳風・衡門》に出て、隠者の寒素の居を指す。この林は年運が佳からず労して収穫なく、寒士が困頓することを主とし、凶である。
訟:諸孺行賈,遠涉山阻。與旅為市,不危不殆。利得十倍。
咸の卦が訟の卦に変わる。一班の年軽人が外出して経商し、山川の険阻を遠く渉る。同行の旅人と売買して、危にも遇わず険にも遭わず、十倍の利を得る。この林は遠行して経商し、艱阻を歴るも終に厚利を獲ることを主とし、吉である。
師:梁破橋壞,水深多畏。陳鄭之間,絕不得前。
咸の卦が師の卦に変わる。橋梁は破損坍壊し、水は深くて人を畏れしむ。陳国と鄭国の間に阻まれ、隔絶して前に行くこと能わず。孔子が陳蔡に厄したは、まさにこの一帯の旧事である。この林は道路が断絶し進退両難で、行人が困を受けることを主とし、凶である。
比:雙鳧俱飛,以歸稻池。經涉萑澤,為矢所傷。損我胸臆。
咸の卦が比の卦に変わる。一対の野鴨がともに飛び起こり、稻田水池に帰らんとす。途中葦葦の沼沢を経て、箭に射中されて我が胸口を傷つく。この林は行途に暗く埋伏を蔵し、楽極まりて災を生じ、傷を受け血を見ることを主とし、凶である。
小畜:謾誕不成,佶梁滅文。許人買牛,三夫爭之。失利後時,公孫懷憂。
咸の卦が小畜の卦に変わる。満口の謊話は終に事を辦らず、梁木は壮なれど文采は尽く失わる。許国人が牛を買いに来り、三人が一斉に争搶す。利益を錯過しまた時機を誤りて、公孫は心に憂愁を懐く。この林は誑語に信なく多人が争奪し、利を失い期を誤ることを主とし、凶である。
履:南國飢凶,民食糟糠。少子困捕,利無所得。
咸の卦が履の卦に変わる。南方の邦国に飢荒が鬧ぎ、百姓はただ酒糟米糠を食らう。小兒子は捕獵に困して一無所得なり。この林は歳歉して糧絶え、漁猟に功なく、家中に食が乏しいことを主とし、凶である。
泰:狗吠非主,狼虎夜擾。驚我東西,不為家咎。
咸の卦が泰の卦に変わる。狗は主人ならざる来客に向かい狂吠し、狼虎は夜に来りて搅擾す。東西両辺が皆驚動せられたれど、幸いに家中の禍事を醸さず。この林は夜に驚擾あり外物が侵犯するも、虚驚一場にして実害なきことを主とする。
否:望龍無目,不見手足。入水求玉,失其所欲。
咸の卦が否の卦に変わる。望み見た龍には眼睛なく、また手脚も見えず。水の中に下りて美玉を求めしに、果して欲する所の物を失う。この林は見る所が真ならず求むる所が実ならず、徒労一場たることを主とし、凶である。
同人:以鹿為馬,欺誤其主。聞言不信,三口為咎。黃龍三子,中樂不殆。
咸の卦が同人の卦に変わる。鹿を指して馬と為して、其の君主を欺瞞誤導す。実話を聴きても肯んじて信ぜず、三つの嘴が凑れば即ち災咎を成す。指鹿為馬は趙高が秦二世を愚弄した旧事である。黄龍は三人の兒子を生み、中に居りて安楽にして危殆ならず。この林は奸佞が蒙蔽し讒口が交攻するを主とすれど、中を守りて自ら処る者は無虞を保つべし。
大有:養幼新婚,未能出門。登宋望齊,不見太師。
咸の卦が大有の卦に変わる。幼兒を養育しまた新たに成婚したばかりで、一時門を出て遠行する能わず。宋国の高き処に登りて斉国を遥望するも、あの太師に見えず。この林は家事の牽絆があり行止が限られ、見たき人は終に相見ること難し、不吉である。
謙:王孫貴子,相與為友。明允篤誠,升擢薦舉。
咸の卦が謙の卦に変わる。王孫公子が彼此朋友と結び、明察誠信・篤厚真摯なるを以て、これによって提拔薦挙を得る。明允篤誠はもと《左伝・文公十八年》に八元八愷を称賛した言葉である。この林は貴人と結交し誠を以て立身し、仕途に進用することを主とし、大吉である。
豫:山水暴怒,壞梁折柱。稽旅難行,留連愁苦。
咸の卦が豫の卦に変わる。山洪が暴発して勢い震怒のごとく、橋梁を冲壊し屋柱を折断す。旅人は阻滞して前に行き難く、滞留して外に在り愁苦に堪えず。この林は水患が災を成し行程が阻まるるを主とし、羈旅は憂困す、凶である。
隨:鸇鳩徙巢,西至平州。遭逢雷電,碎我苕蘆。室家飢寒,思吾故初。
咸の卦が隨の卦に変わる。鸇鳥と斑鳩が巢穴を遷移し、西に往きて平州に到る。途中雷電に遭遇し、我が葦稈蘆草の窝を撃ち碎く。一家人は飢寒交迫して、ただ当初の旧居を懐うのみ。この林は遷徙して所を失い天災に遭いて家を破られ、飢寒にして旧を思うことを主とし、凶である。
蠱:登高傷軸,土阪棄粟。販鹽不利,市賈折角。
咸の卦が蠱の卦に変わる。高き坡に上れば車軸を壓傷し、土坡に在りて穀子を落し去る。鹽を販るに利潤なく、市上に在りて売買すれば本を折る。この林は運載が損を受け経商が亏折して、営む所皆利を得ざるを主とし、凶である。
臨:祝鮀王孫,能事鬼神。節用綏民,衛國以存。眉壽多年。
咸の卦が臨の卦に変わる。衛国の祝鮀と王孫賈は、鬼神に奉事するに善し。用度を節省し百姓を安撫せば、衛国はこれによって保全を得、君臣は長寿多年なり。《論語・憲問》に孔子が衛靈公は道なきも亡びざるを論ずるは、正に祝鮀が宗廟を治め王孫賈が軍旅を治めたに依る。この林は賢臣が職を分かち神を敬い民を愛して、国存んで人壽なることを主とし、大吉である。
觀:九里十山,道卻峻難。牛馬不前,復反來還。(還又作道)
咸の卦が觀の卦に変わる。九里の路を行くに十座の山を翻え、道路は陡峭にして行き難し。牛馬は皆前に進まんとせず、ただ頭を掉して折り返すのみ。末句の「還」の字は、一本に「道」と作る。この林は道途が険峻にして寸步行き難く、出行して成ることなし、退くに宜しく進むべからず。
噬嗑:枯樹不花,空淵無魚。舊鳥飛翔,利棄我去。
咸の卦が噬嗑の卦に変わる。枯死の樹は再び花を開かず、空蕩の深潭には魚なし。旧日の鳥さえ飛び去りて、利益は我を抛て去る。この林は生機が断絶し旧好が离散し、財利が尽く失わるることを主とし、凶である。
賁:雄狐綏遺,登山崔嵬。昭告顯功,大福允興。
咸の卦が賁の卦に変わる。雄狐が長尾を拖きて従容と行き、高峻の山巔に登る。上に昭告し功績を顕揚すれば、大福はこれによって確たる興起あり。崔嵬は《詩経・周南・巻耳》に出る。この林は高きに登り遠きに致し功業が彰明にして、福を受け興旺することを主とし、大吉である。
剝:啞啞笑言,與歡飲酒。長樂行觴,千秋起舞。拜受大福。
咸の卦が剝の卦に変わる。笑語が啞啞として断えず、人と歓聚して酒を飲む。長楽の中で盃を傳え令を行い、千秋を祝して起舞し、跪拜して大福を領受す。この林は宴楽が融洽で喜慶が門に臨み、福と賜を受くることを主とし、大吉である。
復:大推破轂,長舌亂國。床笫之言,三世不安。
咸の卦が復の卦に変わる。力を用い猛く推して車轂を撞破し、長舌の婦人の讒言が国家を搅乱す。枕席の間の私語が外に傳わり、三代を害して安寧を得しめず。長舌の喩は《詩経・大雅・瞻卬》の「婦に長舌有り、厲の階なり」に出る。この林は内言が外に泄れ閨門が政を干すを主とし、禍が数世に延びて、大凶である。
旡妄:男女合室,三姓同食。婚姻孔云,宜我孝孫。(三疑作二)
咸の卦が无妄の卦に変わる。男女が成婚して同室に居り、三姓の人家が同じく飯を食う。婚姻の事は十分に和洽して、正に我が家の孝順の子孫に宜し。校語に「三」の字は疑わしく「二」と作るべしという。この林は婚配が和美し家族が融洽し、子孫が昌盛することを主とし、大吉である。
大畜:千仞之牆,不得入門。金籠鐵疏,利以避兵。欲上南阪,軸方不轉,還車復反。
咸の卦が大畜の卦に変わる。千仞の高き城牆が前に挡えて門に入る能わず。金籠鐵柵のごとく堅固な所は、正に兵禍を避けるに利あれど、南の山坡に上らんと欲するに車軸が卡して轉動せず、ただ車頭を掉せて折り返すのみ。この林は外に入るべき門路なく、堅壁を固守して兵災を避くるに宜しく、妄りに進めば阻まれて返ることを主とする。
頤:華言風語,自相詿誤。終無凶事,安寧如故。
咸の卦が頤の卦に変わる。浮夸の言辞と捕風捉影の傳聞は、彼此牽累して貽誤すれど、到頭に凶事なかりき。仍として安宁で常のごとし。この林は流言が紛擾するも実に其の事なく、虚驚が過ぎた後に平安に帰することを主とする。
大過:泛泛柏舟,流行不休。耽耽寐寐,公懷大憂。仁不遇時,退隱窮居。
咸の卦が大過の卦に変わる。柏木の小舟が水面に漂浮して流れに隨いて歇まず。輾轉反側して夜に寐を成さず、公は心に深重の憂愁を懐く。《詩経・邶風・柏舟》はまさに仁人が遇われず憂心悄悄の情を詠ず。この林は漂泊して依る所なく憂思が解け難く、賢者が生まれて時に逢わず、ただ退隱して窮を守るのみ、不吉である。
坎:大尾小頭,重不可搖。上弱下強,陰制其雄。
咸の卦が坎の卦に変わる。尾は大にして頭は小、沈重にして搖撼せる能わず。上に居る者は衰弱し下に在る者は強横で、陰柔の一方が雄強を壓制したり。尾大不掉は《左伝・昭公十一年》に出る。この林は枝強く干弱く、下が上を凌ぎ替えて、主事する者が制を受くることを主とし、凶である。
離:一身三口,語無所主。東西南北,迷惑失道。
咸の卦が離の卦に変わる。一つの身に三張の嘴を生やして、言葉に一定の主見なし。東西南北に四処乱走して、迷惑して正路を失う。この林は政が多門より出て心に定見なく、方向を迷失することを主とし、凶である。
恆:南行求福,與喜相得。封受上賞,鼎足輔國。(晉之謙同)
咸の卦が恒の卦に変わる。南辺に往きて福を求めば、正好く喜事と相遇う。封を受けて上等の賞賜を領し、鼎の三足のごとく国家を輔佐す。校語にこの条は「晋之謙」の林と同じと指摘す。この林は南行して喜を得て爵を進め賞を受け、位は輔弼に列することを主とし、大吉である。
遯:過時不歸,雌雄苦悲。徘徊外國,與母分離。
咸の卦が遯の卦に変わる。約定の時を過ぎても仍として帰らず、雌雄一対が苦しみて悲鳴す。外邦に徘徊して、母と分離す。この林は期を踰えて帰らず異郷に羈留し、骨肉が离散することを主とし、凶である。
大壯:堯舜在國,陰陽和德。涿聚衣裳,晉人無殃。
咸の卦が大壯の卦に変わる。堯舜のごとき聖君が位に在り、陰陽は調和して徳沢は相済す。衣冠の士は一処に聚集し、晋国人に災殃なし。この林は聖主が上に在り賢才が雲集して、境内に災なきことを主とし、大吉である。
晉:周公之隆,越裳夷通。疾病多祟,鬼哭其公。狼子野心,客宿不同。
咸の卦が晋の卦に変わる。周公が世を治めて興隆し、南方越裳氏のごとき遠夷さえ來りて通好す。然れど疾病に鬼祟の作乱多く、鬼が公府の中に哀哭す。また狼子野心の徒が其の間に混在り、彼と共に宿するは終竟可ならず。越裳の雉を献ずるは《尚書大伝》に記する周公の盛徳の事である。この林は外邦の帰附は盛なれど、内に邪祟と異心の人あり、吉の中に凶を蔵す。
明夷:申酉脫服,牛馬休息。君子以安,勞者得歡。
咸の卦が明夷の卦に変わる。申時酉時に到れば労作の衣裳を脱ぎ、牛馬も一並びに歇息する。君子はこれによって安を得、労苦の人も歓楽を得た。この林は作息に度あり時に及んで休止し、人畜ともに安んずることを主とし、吉である。
家人:凱風無母,何恃何怙。幼孤弱子,為人所苦。
咸の卦が家人の卦に変わる。《詩経・邶風・凱風》は孝子が母を思うを詠ず。今母は在らず、なお誰を依頼し誰を仰仗せん。年幼孤弱の子は、人に欺凌され苦を喫す。父なきを無怙・母なきを無恃というは、《詩経・小雅・蓼莪》に本づく。この林は恃を失い孤苦して依托する所なく、人の欺凌を受くることを主とし、凶である。
睽:出門上堂,從容牖房。不失其常,天牢地戶。勞者憂苦。
咸の卦が睽の卦に変わる。門を出てまた厅堂に登り、窗下の房中に在りて従容として自ら処る。其の常度を失わざれば、即ち天牢地戸のごとく本位を固守せん。ただ操労する人は仍として憂苦を免れず。この林は常を守り自ら保てば失なかるべきを主とすれど、身に労役を当たる者は依りて辛苦す、平の中に憂いを帯ぶ。
蹇:天厭周德,命與南國。以禮靜民,兵革休息。
咸の卦が蹇の卦に変わる。上天が周朝の徳運を厭棄し、天命を南方の国に交わす。彼処は礼を以て百姓を安んじ、兵戈甲冑は皆収蔵して休止す。この林は旧運が終を告げ新主が命を承け、礼を以て兵を息め、乱の後に安を得ることを主とし、吉である。
解:堂桑折衡,佐斗者傷。暴臣反國,良臣被殃。
咸の卦が解の卦に変わる。堂前の桑樹が車衡を壓折し、人の打架を助ける者は自ら傷を受く。暴虐の臣は反逆して乱を為し、賢良の臣はかえって禍殃に遭う。この林は他人の争闘に巻き入れば必ず連累を受け、忠良が害を見ることを主とし、凶である。
損:合歡之國,嘉喜我福。東嶽西山,朝齊成思。
咸の卦が損の卦に変わる。歓洽和合の邦国に在りて、美好の喜慶が我が福気を成就す。東辺の岳・西辺の山が、ともに斉地に朝向して心意が相聚まる。この林は上下が和合し四方が心を帰し、福慶が並び至ることを主とし、吉である。
益:耕石不生,棄禮無名。縫衣失針,襦褲不成。
咸の卦が益の卦に変わる。石の地に耕しても苗を生ぜず、礼法を抛棄すれば名声を留めず。衣裳を縫うに針を失えば、短衣長褲も皆成らず。この林は根本が宜ならず器具が備わらずして、凡事が始有りて終なきことを主とし、凶である。
夬:聾瞢闇盲,跛倚不行。坐戶孚骸,身被大災。困其多憂。
咸の卦が夬の卦に変わる。聾にして昏、暗にして瞎、足を瘸めて物に倚るも行く能わず。ただ門口に坐して空しく一副の身骨を守るのみ、身上に大災を遭い、困頓の中に憂愁重々なり。この林は身に残疾あり行動が無能で、災患が身に纏わるることを主とし、大凶である。
姤:生長太平,仁政流行。四方歸德,社稷康榮。
咸の卦が姤の卦に変わる。太平盛世に生長し、仁政が天下に推行す。四方は皆其の徳に帰附して、社稷は安康繁栄なり。この林は時に治世に逢い徳化が広く被り、家国が康寧なることを主とし、大吉である。
萃:桀蹠並處,民人愁苦。捕兵荷糧,戰於齊魯。合巹得牢,姬姜並居。
咸の卦が萃の卦に変わる。夏桀と盗跖のごとき凶人が一世に同処し、百姓は愁苦す。兵を徴し役を派し糧草を背負いて、斉魯の一帯に往きて戦う。幸いに成婚合巹は牲牢を備えるに足りて、姫姓姜姓の女子が同じく門を過ぐ。この林は時世が凶乱で兵役が煩重なるを主とすれど、ただ婚姻の一事は成るべし、凶の中に喜びあり。
升:南與凶俱,破車失襦。西行無褲,亡其寶賂。
咸の卦が升の卦に変わる。南に行けば凶険と相伴い、車は撞壊して短衣も失う。西に行けば褲子さえなく、宝物財貨は全部喪失す。この林は出行の方位が利ならず財を破り物を失い、狼狽極まることを主とし、凶である。
困:空曹注器,豚彘不至。張弓祝雞,雄父飛去。
咸の卦が困の卦に変わる。空槽に對して器皿の中に傾倒するも、小猪も大猪も肯んじて來らず。一辺弓を張りて一辺鶏に向かい祷祝するも、公鶏は早くに飛び去った。この林は招くも来らず挙措が自相矛盾して、畜養が成らざることを主とし、凶である。
井:望尚阿衡,太宰周公。藩屏湯武,立為王侯。
咸の卦が井の卦に変わる。呂尚と阿衡と号する伊尹、また太宰を為した周公を仰望す。彼らは商湯・周武の屏障輔弼を作し、自身も立ちて王侯と為った。阿衡は伊尹の官号である。この林は輔弼の位を得て君を佐え業を成し、進んで封ぜられ顕貴となることを主とし、大吉である。
革:朝鮮之地,姬伯所保。宜家宜人,業處子孫。
咸の卦が革の卦に変わる。朝鮮のあの一片の土地は、周室姫姓の伯によって保守せしめられた。家室に宜しく人衆に宜しくして、子孫に世代安居して業を立てしむべし。この林は地を擇ぶに宜を得て家業が久しからんことを主とし、沢は後代に及ぶ、吉である。
鼎:息憂解笑,故貧今富。載樂履善,與福俱憂。(下憂字疑當作優)
咸の卦が鼎の卦に変わる。憂愁は止息して愁容は笑顔と化し、従前は貧窮なりしが今は富足す。心に歓楽を懐き足に善道を踏みて、福気とともに優游す。校語に下の「憂」の字は疑わしく「優」と作るべしという。この林は貧より富に転じ憂去り楽来たるを主とし、善を行いて福を得る、大吉である。
震:叔迎伯兄,遇巷在陽。君子季姬,並坐鼓簧。
咸の卦が震の卦に変わる。叔弟が伯兄を迎えに往き、陽に向かう巷子の中で相遇う。君子は季姬と肩を並べて坐し、笙簧を吹奏す。この林は兄弟が相迎い男女が和楽して、宴飲に歓ありとすることを主とし、吉である。
艮:順風縱火,艾芝俱亡。三官集房,一子中傷。(剝之坤,作三害集房,十子中傷)
咸の卦が艮の卦に変わる。風勢に順いて火を放てば、艾草と霊芝がともに焼き尽くさる。三様の官祟が房中に聚集して、一人の兒子がこれによって傷を受く。「剝之坤」の林には「三害房に集まり、十子傷を中れる」と作る。この林は玉石ともに焚かれ良秀ともに尽きて、家中の人口が害を受くることを主とし、凶である。
漸:駕車八里,求鮮魴鯉。非吾肆居,自令失布。君子所在,安無危殆。
咸の卦が漸の卦に変わる。車を駕して八里を行き、新鮮の魴魚鯉魚を求めに往く。彼処は我が平日攤を設くる所にあらず、白白に錢幣を落す。しかし君子が傍に在るのみあれば、安穏にして危険なし。この林は熟地を離れて経営すれば必ず本を折るに至り、君子に依附すれば平安を得ることを主とし、先に失い後に安んず。
歸妹:拔劍傷手,見敵不起。良臣無佐,困辱為苦。
咸の卦が歸妹の卦に変わる。劍を抜く時に自らの手を傷つけ、敵人に見えても奮い起つ能わず。賢良の臣は輔助を得られず、困頓して辱を受け苦言に堪えず。この林は自ら其の力を傷つけ事に臨んで援なし、困に遭い辱を受くることを主とし、凶である。
豐:亂君之門,佐鬥傷跟。營私貪祿,身為悔殘。東下泰山,見我所歡。
咸の卦が豐の卦に変わる。昏乱の君主の門下に出入して、人の争闘を助けて脚跟を傷つく。私を営み弊を舞い俸禄を貪れば、自身は悔恨残傷に落ちる。後に東に泰山に下りて、ようやく己の好む所の人に見ゆ。この林は乱主に依附して争闘に巻き入れば必ず傷損を受けるを主とすれど、ただ東行すれば歓ぶ所に遇うべし、凶の中に転あり。
旅:慈母望子,遙思不已。久客外野,使我心苦。
咸の卦が旅の卦に変わる。慈母は兒子の帰るを盼望し、遥かに思念して歇まず。游子は久しく外の荒野に客居して、我が心を苦楚ならしむ。この林は母子が分隔し久しく客居して帰らず、思念が苦と成ることを主とし、不吉である。
巽:魴生淮郄,一轉為百。周流四海,無有患惡。淮郄又作江雒)
咸の卦が巽の卦に変わる。魴魚は淮水の曲隈に生まれ、瞬く間に一条が上百条と変じる。四海を周游して、禍患と凶悪とを遇わず。校語に「淮郄」は一本に「江雒」と作るという。この林は生息が繁盛で財貨が倍加し、四方を行きて皆平安を得ることを主とし、大吉である。
兌:甘露醴泉,太平機關。仁德感應,歲樂民安。
咸の卦が兌の卦に変わる。天は甘露を降し地は醴泉を湧かす、これは太平盛世の枢機の在る所である。君上の仁徳と天意とが相感応して、年成は歓楽、百姓は安宁。甘露醴泉は皆漢代に常に挙げられた祥瑞である。この林は上の徳と下の応とが時和し歳豊かなることを主とし、大吉である。
渙:采薇出車,魚麗思初。上下役急,君子免憂。
咸の卦が渙の卦に変わる。《詩経・小雅》に《采薇》《出車》《魚麗》の諸篇あり、将士が出征して辺を戍り、帰りて飲至するを写して、人に当初を追念せしむ。上下皆徭役に逼られて緊急なるも、君子は独り憂患を免るることを得。この林は時に征役が煩重なるに逢い、ただ正を守る者のみが脱して咎なきを得ることを主とする。
節:豕生魚魴,鼠舞庭堂。雄佞施毒,上下昏荒。君失其邦。
咸の卦が節の卦に変わる。猪が魴魚を生み、老鼠が庭堂の上に起舞す。強横の佞臣が毒害を施放し、上下は昏乱荒廃して、君主は其の邦国を失う。これらは皆漢人のいわゆる物妖災異である。この林は怪異が叢生し奸邪が権に当たり、家国が傾覆することを主とし、大凶である。
中孚:三頭六目,道畏難宿。寒苦之國,利不可得。
咸の卦が中孚の卦に変わる。三つの頭に六つの眼の怪物が、路上人を畏れしめて投宿すること難し。苦寒の国に到れば、利益も得る能わず。この林は行途に怪に遇い寄宿に門なく、往く所の地が貧瘠にして獲なきことを主とし、凶である。
小過:燕雀御茅,以生孚乳。昆弟六人,歡好孝悌。各同心願,和悅相樂。
咸の卦が小過の卦に変わる。燕雀が茅草を衔えて来り巣を築き、孵化して幼雛を生養す。兄弟六人は歓好和睦して孝順友愛、各人の心願は一致し、和悦に相处して快楽なり。この林は巣を営みて成あり子嗣が繁衍し、手足が同心して家門が和楽なることを主とし、大吉である。
既濟:文君德義,仁聖致福。年無胎夭,國富民實。臥者在室,曾累益息。
咸の卦が既済の卦に変わる。文徳ある君主が徳義を秉持し、仁聖を以て福沢を招来す。年々胎死夭折の事なく、国家は富足し百姓は充実し、病を臥す室中の人さえ一層々と康復して長養す。この林は徳政の感召と人口の蕃息、家国の殷富を主とし、大吉である。
未濟:秋梁未成,無以至陳。水深難涉,使我不前。
咸の卦が未済の卦に変わる。秋の橋梁は未だ修成せず、陳国に到達すること能わず。水は深くて渉り難く、我をして前進すること能わざらしむ。この林は津梁が未だ通ぜず去路が阻まるるを主とし、事を辦するは時候未だ至らず、待つに宜しく進むべからず。
恒の林(恒卦六十四林)
恆:黃帝所生,伏羲之宇。兵刃不至,利以居止。
恒の卦が自ら変じても恒の卦のままである。彼処は黄帝の誕生の地、伏羲の居住の域である。兵器刀刃も到る能わず、正に安居止息に利あり。この林は地を擇びて霊秀なり、兵禍を遠く離れ、宅を安んじ久しく処るに宜しきことを主とし、吉である。
乾:登墀踒足,南行折角。長夜之室,不逄忠直。
恒の卦が乾の卦に変わる。台階に登る時に足を扭傷し、南に行きてまた角を折断す。長夜明けざる屋に住みて、忠誠正直の人に遇わず。この林は歩を挙げて傷を受け锋芒が挫を受け、居処は昏暗にして良友なきことを主とし、凶である。
坤:燕雀衰老,悲鳴入海。憂在不飾,差池其羽。頡頏上下,寡位獨處。
恒の卦が坤の卦に変わる。燕雀が衰老して、悲鳴しながら海上に飛び往く。憂愁は羽毛が復た整飭せざるに在り、長短は参差として、上下に翻飛し孤孤零零として一隅に独処す。差池其羽は《詩経・邶風・燕燕》に出る。この林は年老い力衰えて飘零して所を失い、孤单して偶なきことを主とし、凶である。
屯:關門除憂,伯自外來。切切之患,我心得歡。(切切疑當作忉忉)
恒の卦が屯の卦に変わる。門を関ざして憂愁を除けば、伯氏が外より帰り来る。もとの憂切の患が消解して、我が心は歓喜を得た。校語に「切切」は疑わしく「忉忉」と作るべしという、憂思不安の貌である。この林は戸を閉じて静を守れば憂患が自ら消え、親人が帰り来たり、憂より喜に転ずることを主とし、吉である。
蒙:郊耕擇耜,有所疑止。空虛無子,蒙昧不知。
恒の卦が蒙の卦に変わる。郊外に往きて耕し耒耜を擇ぶも、心中に迟疑あれば即ち停頓す。家里は空虚にして子嗣なく、蒙昧にして其の缘故を明らかにせず。この林は猶疑不決して事業が停頓することを主とし、また子息が艱難なるを主とし、不吉である。
需:張牙切齒,斷怒相視。禍起蕭牆,牽引吾子。患不可解,憂驚吾母。
恒の卦が需の卦に変わる。牙を張り歯を切りて、忿怒して相視る。禍事は自家の屏牆の内より起こり、我が兒子に牵连す。禍患は解けず、また我が母を驚擾す。禍起蕭牆は《論語・季氏》に出る。この林は内訌が禍を成し家人に株連し、憂驚が解け難きことを主とし、大凶である。
訟:履不容足,南山多棘。毋出房閨,乃無病疾。
恒の卦が訟の卦に変わる。脚を落す処は一只の足を容れるも能わず、南山上にまた満ち満ちて荊棘あり。内室を出るなかれ、乃ち病を生じ害を受けざらん。この林は処境が局促にして外に凶険多く、静かに閨門を守りて疾患を避くるに宜しきことを主とする。
師:牛騂亡子,鳴於大野。申後陰微,還歸其母。
恒の卦が師の卦に変わる。赤色の母牛が小牛を失いて、曠野の上に哀鳴す。申后は勢弱く位微なり、ただ己の母家に帰るのみ。周幽王が申后を廃したは、《詩経》と《史記》に記する旧事である。この林は子を失い离散し、后妃が寵を失い、棄てられて宗に帰ることを主とし、凶である。
比:龍生於淵,因風昇天。章虎炳文,為禽敗軒。發輗溫谷,暮宿崑崙,終身無患。光精照耀,不被患難。
恒の卦が比の卦に変わる。龍は深淵の中に生まれ、風勢に乗じて天空に升る。斑斕の虎は焕然の花紋を顕し、禽獣を捕獲して車軒を毁壊す。清晨に温谷より啓程し、傍晚に崑崙に投宿し、終身に禍患なし。光華は四方を照耀して、患難に遭わず。「大人虎変して其の文炳たり」は《周易・革》に出る。この林は勢に乗じて騰達し光彩顕赫にして、遠行に礙なく終身安泰なることを主とし、大吉である。
小畜:既嫁宜吉,出入無咎。三聖並居,國安無災。
恒の卦が小畜の卦に変わる。女子はすでに出嫁し、吉慶に宜しく、出入に皆過ちなし。三位の聖人が同じく一朝に処して、国家は安定にして災禍なし。この林は婚嫁が宜を得て行止に咎なく、賢者が位に在りて境内が平安なることを主とし、大吉である。
履:北陸陽伏,不知黑白。君子傷讒,正害善人。
恒の卦が履の卦に変わる。太陽が北陸に行きて、陽気は潜伏し、人は黒白を分つ能わず。君子は讒言に中傷され、正直の名がかえって善人を加害するに用いらる。北陸は《左伝・昭公四年》のいわゆる日が虚危に在り隆冬に氷を蔵する時である。この林は是非が混淆して讒佞が賢を害することを主とし、凶である。
泰:一身兩頭,延適二家,亂不可治。
恒の卦が泰の卦に変わる。一つの身に二つの頭を生やし、一人の人を二家に嫁がすことを許す。紛乱して整治する能わず。この林は政が両門より出て心志が二属し、頭緒が混乱して収拾し難きことを主とし、凶である。
否:牝馬牡駒,歲孳不休。君子衣服,利得有餘。
恒の卦が否の卦に変わる。母馬と公駒は年々生息して歇まず。君子の衣裳は斉備して、得る所の利益は绰绰として余りあり。この林は畜産が蕃息し衣食が豊足して、財利に余りあることを主とし、吉である。
同人:南行懷憂,破其金輿。安坐故廬,乃無殃患。
恒の卦が同人の卦に変わる。南に遠行して心に憂愁を懐き、あの華美の車を弄り壊す。安穏に旧屋に坐するのみこそ、災殃禍患なからん。この林は出行して財を破り憂を招くを主とし、旧を守り家に居れば平安なり、静に宜しく動すべからず。
大有:憂人之患,履傷浮顏。為身禍殘,篤心自守。與喜相抱。
恒の卦が大有の卦に変わる。他人の禍患を替わって憂え、脚下に傷を受けて愁容が面頬に浮かぶ。本より已に自身に禍残を招けり。若能く篤実に心を用い堅守して自ら持せば、便ち喜慶と相拥することを得ん。この林は初め多事によって損を招き、転じて篤く本分を守れば終に喜慶を得ることを主とし、先凶後吉である。
謙:咸陽辰巳,長安戌亥。丘陵生心,非魚鰍市。可以避水,終無凶咎。
恒の卦が謙の卦に変わる。咸陽は辰巳の位に当たり、長安は戌亥の方に居る。心中に主意を打ち定めて丘陵の高き処に遷往せんとす、彼処は魚鰌の聚集する水郷にあらず。かくすれば便ち水患を躲くるを得、終竟凶険の過ちなし。この林は高地を擇びて居れば水厄を避くべく、趨避に法を得れば咎なきことを主とする。
豫:不知何孫,夜來扣門。我慎外寇,兵戎且來。
恒の卦が豫の卦に変わる。何れの家の子孫か知らず、夜に来りて門を敲く。我は謹慎して外来の盗寇を防備す、兵戈の战事がまさに到らんとす。この林は夜に明らかならざる来客あり外患が將に起こらんとす、須く厳に戒備を加うべし、凶である。
隨:昧旦不明,目暗無光。喪滅失常,使我心傷。
恒の卦が隨の卦に変わる。天が將に明けんとすれど仍だ明けず、眼前は昏暗にして光亮なし。喪亡毀滅して常度を失い、我が心を悲傷せしむ。昧旦は《詩経・鄭風・女曰鶏鳴》に出る。この林は時運が晦暗で家に喪亡あり、悲傷を免れ難きことを主とし、凶である。
蠱:江陰水側,舟楫破乏。狐不得南,豹無以北。雖欲會盟,河水梁絕。
恒の卦が蠱の卦に変わる。江南の水辺に在りて、船只の桨艪は残破匱乏す。狐狸は南岸を過ぐ能わず、豹子も北辺に到る能わず。会盟に往かんと欲すれど、河上の橋梁は断えたり。この林は舟車が備わらず南北が隔絶して、約会が成らざることを主とし、凶である。
臨:神之在丑,逆破為咎。不利西南,商人休止。
恒の卦が臨の卦に変わる。神煞が丑位に居り、冲逆破害して即ち災咎を成す。西南の方向は利あらず、商人はただ歇まりて行かざるのみ。この林は方位の神煞が相冲し、出行と経商とに皆暫く止むに宜しく、妄動は利あらざることを主とする。
觀:然諾不行,欺訟誤人。使我虛宿,夜歸溫室。神怒不直,鬼擊無目。欲求福利,適反自賊。
恒の卦が觀の卦に変わる。応許の言は肯んじて兌現せず、欺詐の訴訟を以て他人を貽誤す。我を害して空しく一宿を待たしめ、夜に独り温暖の屋に帰る。神明は彼が正直ならざるを惱怒し、鬼魅は暗に撃つも眼長からず。もとより福利を求めんと欲したに、恰恰かえって自らを害したり。この林は信を失し人を欺きて神鬼ともに怒るを主とし、福を求めてかえって禍を招く、大凶である。
噬嗑:攘臂拯肘,怒不可止。狼戾愎很,無與為市。
恒の卦が噬嗑の卦に変わる。袖子を捋し胳膊を擧げて、怒気は止む能わず。性情は凶戾にして剛愎乖張なれば、彼と売買を為さんとする人なし。この林は暴躁自用にして人と和を失い、交易が成らざることを主とし、凶である。
賁:販馬買牛,會值空虛。利得尟少,留連為憂。
恒の卦が賁の卦に変わる。馬を販りまた牛を買うに、偏に市面の空虚に赶上ぐ。獲る所の利は極めて少なく、滞留して外に在りかえって憂愁を成す。尟は即ち鮮で、稀少の意である。この林は経商が其の時に逢わず獲る所無幾にして、羈留して憂を生ずることを主とし、不吉である。
剝:高樓陸處,以避風雨。深堂邃宇,君安其所。牝雞之息,為我利福。請求弗得。
恒の卦が剝の卦に変わる。高樓を高地の上に建てば、風雨を避くることを得。深広の厅堂屋宇に、主人は其の中に安居す。母鶏が蛋を生み孳息して、我が利益と福気と為る。ただ請托する所有れど辦らず。牝鶏はもと司晨の戒あれど、ここでは其の生養の利を取る。この林は居処が安穏で家中に生息して余りあることを主とすれど、ただ他に干求して応ずるなし、吉の中に略々不足あり。
復:阿衡服箱,太乙載行。迯時歷舍,所求吉昌。
恒の卦が復の卦に変わる。阿衡と号する伊尹が車を駕し馱載し、太乙の神が車に乗りて行く。時辰に順応して列舍を歴れど、求むる所の事は吉慶昌盛す。服箱は《詩経・小雅・大東》に出る。この林は神明と賢佐の相助を得、行程が時日に合して、謀事が亨通することを主とし、大吉である。
旡妄:飛來之福,入我居室,以安吾國。
恒の卦が无妄の卦に変わる。意外に飛来した福気が、我が居室に入りて、我が邦国を安定せしむ。この林は福が天より降りて求めずして至り、家国ともに安んずることを主とし、大吉である。
大畜:不孝之患,子孫為殘。老耄莫養,獨坐空垣。
恒の卦が大畜の卦に変わる。不孝の禍患に遭いて、子孫はかえって自家を残害する人と成る。年老い力衰えて奉養する人なく、ただ独り空牆の下に坐すのみ。この林は家門が教を失い老いて依る所なきことを主とし、孤苦凄涼たり、凶である。
頤:南過棘門,駒裂我冠。斷衣傷襦,使君恨憂。
恒の卦が頤の卦に変わる。南に往きて棘門を経るに、馬駒が我が帽子を撕裂す。衣裳は扯断され短襖は弄壊され、人をして又恨まし憂えらしむ。この林は行途に損を受け衣冠が整わず、羞を蒙り恨を含むことを主とし、不吉である。
大過:重門射平,不知所定。質疑蓍龜,孰可避火。明神答報,告以犧牲。宜利止居。
恒の卦が大過の卦に変わる。層々の門戸の中に在りて射て平允を求むれど、心に終始主意を定むる能わず。ここに蓍草と龟甲を以て疑難を卜問し、何如にすれば火災を躲け得るかを問う。神明は回答を作し、犠牲を以て祭祷せよと指示す。かくすれば便ち歇まりて安居するに宜し。この林は疑難は当に決すべき時に卜に問い、神示に依りて攘祭して後に静守すれば、災を免るべきことを主とする。
坎:麟麑鳳雛,安樂無憂。捕魚河海,利踰徙居。
恒の卦が坎の卦に変わる。麒麟の幼崽、鳳凰の雛鳥は、安楽にして憂愁なし。江河大海に往きて魚を捕れば、利を得ること多くして遷り居るに値う。麟鳳は古人の最も看重する祥瑞である。この林は家に祥瑞あり後輩が安吉で、また漁猟に大いに財利を得ることを主とし、大吉である。
離:新田宜粟,上農得谷。君子懷德,以乾百祿。
恒の卦が離の卦に変わる。新たに開墾した田は粟を種るに宜しく、上等の農夫は好穀を収む。君子は心に徳行を懐きて、これによって百様の福禄を求め得る。干禄百福は《詩経・大雅・假楽》の類の頌詩の成語である。この林は田事が豊收し徳を修めて禄を得、財福両全することを主とし、大吉である。
咸:簪短帶長,出思苦窮。瘠蠡小瘦,以病之癃。
恒の卦が咸の卦に変わる。髪簪は短すぎ衣帯は長すぎて、門を出る時に心に満ちて己の窮苦のみを念ず。身は瘦弱枯瘠にして、病によって残廃と成る。この林は衣冠が称わず貧病が交加し、身体が羸弱なることを主とし、凶である。
遯:爭訟之門,不可與鄰。出入有為,憂生我患。疑當作生我憂患)
恒の卦が遯の卦に変わる。官司を好む人家とは、彼と隣居を為すべからず。出入の間に稍々作為あれば、憂愁が便ち禍患を生ず。校語に末句は疑わしく「我が憂患を生ず」と作るべしという。この林は訟門に近ければ必ず牽累を受け、妄りに挙動あれば憂を招くを主とし、遠く避け静かに守るに宜し。
大壯:朽根枯株,不生肌膚。病在心腸,日以燋枯。
恒の卦が大壯の卦に変わる。朽爛の根、枯死の樹桩は、再び新たな皮肉を生ずる能わず。病根は心腸の深き処に在りて、日一日と焦灼枯槁す。この林は根本が已に壊れ生機が断絶し、宿疾の内傷が日に甚だしくなることを主とし、大凶である。
晉:雨師娶婦,黃岩季女。成禮就婚,相呼南上。膏我下土,年歲大茂。
恒の卦が晋の卦に変わる。雨師が新婦を迎娶す、娶るは黄岩の小女兒なり。婚礼を行い畢りて親を成し、相呼びて南に路に上る。雨水は大地を潤沢し、年成は十分に豊茂なり。この林は婚姻が和合し雨暘が時に応じ、五穀が豊登することを主とし、大吉である。
明夷:冬采薇蘭,地凍堅難。利走失北,暮無所得。
恒の卦が明夷の卦に変わる。冬に往きて薇菜蘭草を采るに、地は凍えて硬く下手し難し。奔走して利を求むれど方向を迷失し、天黑るるに及びて一無所得なり。この林は時令に合せず方向を已に失ひ、労して功なきことを主とし、凶である。
家人:昧之東域,誤過虎邑。失我熟(一作熊)羆飢無所食。
恒の卦が家人の卦に変わる。昏昧の中に東辺の地界に走り至り、誤りて虎狼の盤踞する城邑に闖入す。我が熊羆の獵獲を落し去りて、餓えて食べる物なし。「熟」の字は一本に「熊」と作る。この林は険地に誤入して獵獲を尽く失い、飢困が交加することを主とし、凶である。
睽:日莫閉目,隨陽休息。箕子以之,乃受其福。舉事多言,必為悔殘。
恒の卦が睽の卦に変わる。日暮に目を閉じて安歇し、陽気の消長に順いて休息す。箕子は正にかくのごとく自ら晦して全身を求め、これによって福沢を承受した。箕子が狂を佯りて禍を免れたるは、《史記・宋微子世家》に見える。この林は韜晦して静を守る者は福を得、多言多事の者は必ず悔残を致すことを主とする。
蹇:蓼蕭瀼瀼,君子龍光。鳴鸞噰噰,福祿來同。
恒の卦が蹇の卦に変わる。蓼蕭の上の露水は濃重にして、君子は龍のごとき光彩あり。車上の鸞鈴は噰噰として鳴り、福と禄が一斉に到来す。語は《詩経・小雅・蓼蕭》に本づく。この林は君臣が歓宴し恩沢が下に逮び、福禄が並び集まることを主とし、大吉である。
解:鳥飛無翼,兔走折足。雖不同會,未能利達。
恒の卦が解の卦に変わる。鳥は飛ばんと欲して翅膀なく、兎は走らんと欲して足を折る。両者は一処に在らざれど、同じく順利に通達する能わず。この林は憑藉に乏しく行動が阻まるるを主とし、求むる所は目的に到らず、凶である。
損:五勝相賊,火得水息。精光消滅,絕不能續。
恒の卦が損の卦に変わる。五行は相克相害し、火は水に遇えば即ち熄滅す。精華光亮は一斉に消失し、断絶して接続する能わず。五勝は即ち五行相勝の説である。この林は気数が相克して光明が熄滅し、事業が断絶して継ぐこと難きを主とし、凶である。
益:東資齊魯,得騂大馬。便辟能言,市人善賈。鄰人並戶,請火不與。人道閉塞,鬼祟其宇。
恒の卦が益の卦に変わる。東辺の斉魯の一帯に往きて貨を取れば、赤色の大馬を得る。巧言善弁にして能く説き能く道えば、市上の人は皆経商に善し。しかし隣の両家は緊く挨りて、火種を討ちに往きても肯んじて与えず。人情道路は閉塞して、鬼祟が便ち屋裏に盤踞す。この林は貿易は獲る所有るも、人情は浇薄にして家宅は寧らかならず、吉凶相半ばすることを主とする。
夬:爭雞失羊,亡其金囊。利不得長,陳蔡之患。賴楚以安。
恒の卦が夬の卦に変わる。一只の鶏を争うて羊を失い、錢袋さえ一並びに丟失す。利益は長久する能わず、正に孔子が陳蔡の間に困せられた禍患のごとく、全く楚国の来援に頼りて乃ち安寧を得たり。事は《史記・孔子世家》に見える。この林は小に因りて大を失い一時困を受け、外力の相救に頼りて方に険を脱することを主とし、先凶して後に安んず。
姤:九登十陟,馬跌不前。管子佐之,乃能上山。
恒の卦が姤の卦に変わる。連續して九次十次を攀登するも、馬は跌倒して上る能わず。管仲のごとき人が傍より輔佐あって、ようやく山頂に登ることを得た。この林は独力では成し難く屡々試み屡々挫け、賢者の相助を得て乃ち事を成す能くすることを主とする。
萃:東鄰愁苦,君亂天紀。日貪祿寵,必受其咎。一本有意合志同,內外相從,見吾伯公。
恒の卦が萃の卦に変わる。東辺の隣居は愁苦に堪えず、君主は天時綱紀を擾乱す。日々俸禄恩寵を貪れば、必ずこの災咎を承受せん。一本にこの下に「意合志同、内外相従、吾が伯公を見る」の数句ありて、上下が同心し内外が相従いて伯公を見るを得ると説く。この林は上が其の道を失い禄を貪りて禍を招くを主とすれど、ただ同心に相従う者は尚お転機あらん。
升:三狸捕鼠,遮遏我前。死於壞域,不能脫走。
恒の卦が升の卦に変わる。三匹の野猫が合力して鼠を捕え、我が前路を堵えて死ぬほど固めた。終に残破の囲欄の裏に死して、逃げ脱ぐことを得ず。この林は四面に囲を受け前路が断絶して、身を脱する所なきことを主とし、凶である。
困:狼虎爭強,禮義不行。兼吞其國,齊魯無王。
恒の卦が困の卦に変わる。豺狼猛虎が強を争い勝を鬥い、礼義は推行する能わず。強者は兼併して他人の国家を吞没し、斉魯の一帯に共主なし。この林は強梁が横行して礼崩れ楽壊れ、弱者が吞まるることを主とし、凶である。
井:五嶽四瀆,合潤為德。行不失理,民賴恩福。
恒の卦が井の卦に変わる。五岳と四瀆が共同して天下を滋潤せしむるは、これ即ち彼らの功德である。行事に常理に違わざれば、百姓はこれによって恩福を蒙受す。五岳四瀆は歴代国家が常に祀る山川である。この林は恩沢が普く施され挙措が合宜して、衆庶が安を得ることを主とし、吉である。
革:六月種黍,歲晚無雨。秋不宿酒,神失其所。先困後通,與福相從。
恒の卦が革の卦に変わる。六月に至りて乃ち黍の種を下し、年底に到ればまた雨なし。秋祭の時は隔宿の酒さえ備え出せず、神霊は在るべき享祀を失う。幸いに先に困頓して後に亨通し、福気は終竟相随いて来る。この林は播種が時を失し祭享が備わらず、前路は困なれど後に転機あることを主とし、先凶後吉である。
鼎:騋牝龍身,日取三千。南上蒼梧,與福為婚。道理夷易,身安無患。
恒の卦が鼎の卦に変わる。七尺の高き母馬は龍のごとき身躯を生やし、一日に三千里を走る能し。これに乗りて南に蒼梧に上り、福気と婚姻を結ぶ。道路は平坦にして行きよく、身体は安康にして禍患なし。騋牝は《詩経・鄘風・定之方中》に出る。この林は良驥を得て遠行し佳縁を締結し、途は順にして身は安んずることを主とし、大吉である。
震:出入休居,安止無憂。上室之歡,虐為季殘。
恒の卦が震の卦に変わる。出で入りし歇息し安居して、其の所に止まりて憂愁なし。ただ上房の裏のあの歓楽は、強を恃み暴虐を以て年幼の一輩を害したり。この林は起居は安穏にしてもとより憂なかるべきも、家中に強を以て弱を凌ぎ、少き者が傷を受くるを主とし、吉の中に損あり。
艮:南山昊天,刺政閔身。疾病無辜,背憎為仇。
恒の卦が艮の卦に変わる。《詩経・小雅》に《節南山》の類の篇章あり、蒼天を仰望して弊政を譏刺し己を哀憫す。辜なきに疾病に遭い、背裏の憎恨は仇怨を結ぶ。この林は政乱れて身危うく暗に怨を結び、疾病が端なく至ることを主とし、凶である。
漸:潼頓東徙,道路跛踦。日辰不良,病為祟禍。
恒の卦が漸の卦に変わる。潼関の一帯に停頓した後、東に遷移するに道路は崎嶇にして行き難し。日辰を擇ぶに善からざれば、病痛は鬼祟の作り出す禍害と成る。この林は遷徙に日を擇ぶに吉ならず途中に艱険あり、疾病が身に纏わるることを主とし、凶である。
歸妹:兄征東燕,弟伐遼西。大克勝還,封居河間。
恒の卦が歸妹の卦に変わる。哥哥は出征して東辺の燕地に往き、弟弟は遼西を討伐す。大いに勝ち全勝して帰り、封を受けて河間に住す。この林は兄弟が並び出でて功を立て征伐して勝を得、封を受けて地を得ることを主とし、大吉である。
豐:播輪折輻,馬不得行。豎牛之讒,賊其父兄。布衣不傷,終身無患。
恒の卦が豐の卦に変わる。車輪は搖れ散らばり輻條は折断し、馬も走る能わず。豎牛が讒を進めて、己の父と兄を害したり。豎牛が叔孫氏の父子を譖殺したは、《左伝・昭公四年》に見える。幸いに布衣平民は牵连を受けず、終身に禍患なし。この林は貴家が讒に遭い内乱するを主とすれど、分を安んじ素を守る人はかえって保全を得る。
旅:駕之南海,晨夜不止。君子勞罷,僕伕憔苦。
恒の卦が旅の卦に変わる。車を駕して南海に往き、清晨より深夜に至るまで肯んじて停歇せず。君子は労累疲憊し、車夫も憔悴困苦す。この林は奔波に度なく人馬俱に疲れ、行役が辛苦なることを主とし、不吉である。
巽:怨重被燒,忿怒生禍。褊心作事,意如為亂。
恒の卦が巽の卦に変わる。怨を積むこと太だ深くして焚焼の殃に遭い、忿怒の下に禍端を生ず。心胸を狭窄にして事を辦し、意気に任せば即ち禍乱を成す。褊心は《詩経・魏風・葛屨》に出る。この林は怨を積み怒を動かし器量が狭小にして、自ら災禍を招くことを主とし、凶である。
兌:張狂妄行,竊食稻粱。狗吠非主,囓傷我足。
恒の卦が兌の卦に変わる。張狂妄為して胡乱に事を行い、人の稻米粱谷を偷食す。狗は主人ならざる人に對して狂吠し、また我が足を咬傷す。この林は行止に檢なく小さな利を貪竊して、かえって其の害を受くることを主とし、凶である。
渙:驚蹕式道,先驅除咎。王后親桑,以率群功。安我祖宗。
恒の卦が渙の卦に変わる。道を清め戒厳して車駕が出行し、前駆が路を開き先に災咎を除く。王后は自ら桑を采り、衆人を率いて女功を操持せんがためなり。かくすれば我が祖宗の基業を安定せり。天子が警を出し蹕を入れ、王后が自ら蚕を行うは、皆古礼なり。この林は上下が各おの其の職を守り内外を並び挙げて、宗祧が安を得ることを主とし、大吉である。
節:門戶乏食,困死誰告。對門不通,安所歸急。積藏五穀,一花千葉,市賈有息。
恒の卦が節の卦に変わる。家里に糧が断えて、困死してまた誰に訴えん。対門さえ行き通わず、緊急の時は投奔すべき処なし。後に五穀を積儲せば、一朵の花が千片の葉を開き、売買を為せば即ち贏利あり。この林は先に飢困して援なき厄を受け、後に積蓄に因りて豊に転じ、商賈が息を獲ることを主とし、先凶後吉である。
中孚:破敝復完,危者得安。鄉善無損,商人有息。利來入門。
恒の卦が中孚の卦に変わる。破損したるは復た完好し、危険なるは転じて安定す。一心に善に向えば虧損なく、商人にも利息あり、財利は自ら門に送られ来る。この林は破より成に転じ危より安に転じ、善に向えば福を得、経営に利あることを主とし、吉である。
小過:迭迭累累,如岐之室。一息十子,古公治邑。
恒の卦が小過の卦に変わる。一重又一重、一層又一層、岐山の下の周家の屋宇のごとく綿密なり。一胎に十人の兒子を生養し、古公亶父は其の城邑を治理す。古公亶父が岐山に遷居したは、周室が基を開いた始めである。この林は基業が穩固で子孫が衆多く、家門が蕃盛なることを主とし、大吉である。
既濟:三嫗治民,不勝其任。兩馬爭車,敗壞家室。
恒の卦が既済の卦に変わる。三人の老婦人が百姓を治理に往くも、此の職任を担うに堪えず。両匹の馬が一輛の車を争搶して、家室を皆弄り壊す。この林は人を用いるに当たらず内部に争奪あり、家業が敗落することを主とし、凶である。
未濟:蔽鏡無光,不見文章。少女不市,棄於相望。
恒の卦が未済の卦に変わる。塵を蒙った鏡は光亮を失い、紋理文采を照し出さず。年少の女子は市に赶集せず、人に抛て一旁に置かれて遥遥に相望むのみ。この林は明鑑が彰れず才華が埋もれ、人は冷落して棄てられるを見ることを主とし、凶である。
遯の林(遯卦六十四林)
遯:三塗五嶽,陽城太室。神明所住,獨無兵革。
遯の卦が自ら変じても遯の卦のままである。三塗山と五嶽、陽城と太室山は、いずれも神明の居住する所であり、独り兵戈戦乱なし。太室は即ち嵩山の主峰である。この林は神霊の護佑する地に処り、兵禍侵されざることを主とし、大吉である。
乾:軟弱無輔,不能自理。意在外野,心懷勞苦。雖憂不殆。
遯の卦が乾の卦に変わる。自ら軟弱にして辅助する人なく、己が事を料治する能わず。心思は外面の曠野に飄び、胸中に労苦満つ。憂愁と雖も、尚お危殆に至らず。この林は孤弱無援、心志外に馳し、憂労多しと雖も大害なきことを主とす。
坤:周成之隆,刑措無凶。大眾贊佑,君子作仁。
遯の卦が坤の卦に変わる。周成王の時代に隆興し、刑罰措置して用いずして凶事なし。万众称頌して佑助し、君子仁政を行う。成康の世は刑措四十余年用いず、《史記・周本紀》に見る。この林は政清人和、刑罰施さず、众望の帰する所を主とし、大吉である。
屯:穴有狐烏,坎生蝦蟆。象去萬里,不可得捕。
遯の卦が屯の卦に変わる。洞穴に狐狸と烏鴉が住み、坑坎に蝦蟆が生ず。大象は既に万里の外に走出して、再び捕捉する能わず。この林は身辺に尽く小物にして、求むる大きな者は遠く遁れ、志大きくして力及ばざることを主とし、不吉である。
蒙:俱為天民,雲過吾面。治民嫉妒,與我無恩。(民一作門)
遯の卦が蒙の卦に変わる。みな同じく天の生みたる百姓なるに、雲彩は只だ我が面前を飄過するのみ。百姓を治むる者は嫉妒の心を存し、我に毫も恩惠なし。「民」の字は一本に「門」と作る。この林は上加恩せず、人の妒忌に遭い、孤立無援を主とし、不吉である。
需:三首六目,政多煩惑。皋陶瘖聾,亂不可從。
遯の卦が需の卦に変わる。三つの頭に六つの眼、政令繁多にして人を迷惑せしむ。皐陶のごとき賢明なる法官も又た瘂聾となり、乱局に依循すべきものなし。皐陶は虞舜の時に刑罰を掌る官。この林は政出多門、賢者失声、綱紀紊乱を主とし、凶である。
訟:德積不輕,辭王釣耕。三媒不已,大福來成。
遯の卦が訟の卦に変わる。積徳深厚にして軽浅ならず、王命を辞謝して垂釣耕田に往く。説合に来る者再三不断にして、大福終に成就す。呂尚は渭濱に釣り、伊尹は有莘に耕せり、皆待時して起つ旧り事。この林は積徳隠居、三聘乃ち出で、終に大福を獲るを主とし、大吉である。
師:堅固相親,日用自完。六體不易,孰為安全。雨師駕西,濡我轂輪。張伯李季,各噬關門。
遯の卦が師の卦に変わる。彼此堅固に親近し、日常の用度は自給自足す。六体曽て変換せず、尚お安不安全を談ずべきあらんや。雨師車を駕して西に去り、我が車轂車輪を淋湿せり。張伯と李季は各々関門を把守す。この林は内部牢固自足、風雨阻隔と人各一方に拠るに遭うも、尚お自守する可し、平にして滞を帯ぶ。
比:方內不行,輻摧輪傷。馬禁堤與,愛子閔時。
遯の卦が比の卦に変わる。境内でも亦た行き通る能わず、輻条摧折して車輪損壊す。馬は堤辺に拦まれて過ぎる能わず、疼愛の子は只だ時運を感傷するのみ。この林は車馬受損、去路阻まるを主とし、子女の為に憂傷す、凶である。
小畜:畜牝無駒,養雞不雛。群羊三歲,不生兩頭。
遯の卦が小畜の卦に変わる。母馬を養いても馬駒を生まず、鶏を養いても雛を孵さず。一群の羊三年を養うも、連れて兩匹の小羊も添えず。この林は孳生成らず、畜養蕃せず、家中の子息と財産は毫も増益なし、凶である。
履:老耄罷極,無取中直。懸輿致仕,得歸鄉國。
遯の卦が履の卦に変わる。年老い力衰え疲憊極に至り、事を行いて中正の道を取る能わず。是において車を懸けて官を辞し退休し、故郷に帰るを得たり。懸車致仕は漢人の告老の常語。この林は年高退位、功名止むべし、安らかに還郷する能し、知止の吉に属す。
泰:縮緒亂絲,手與為災。越畝逐兔,斷其褌襦。
遯の卦が泰の卦に変わる。乱糸の頭緒を抽理するに、手は反って纏われて災となす。田壟を越えて兎を追い、褲子と短衣を扯断す。この林は頭緒紛乱して理すること能わず、小利を貪逐して反って衣物を損し、徒労して害を受くるを主とし、凶である。
否:海老水乾,魚鱉蕭索。高落無澗,獨有沙石。
遯の卦が否の卦に変わる。大海衰老して水皆乾き、魚鱉零落蕭条たり。高処塌陷して渓澗を成さず、残るは沙子石头のみ。この林は源枯本竭、生物凋零、依るべき一物なし、大凶である。
同人:入市求鹿,不見頓足。終日至夜,竟無所得。
遯の卦が同人の卦に変わる。市集に鹿を求めに行くも、蹄印さえ見えず。白昼より夜に至るまで探すも、終に一物も得ることなし。この林は求むる所其処に在らず、方向根本より誤りて、労して獲なし、凶である。
大有:築門壅戶,虎臥當道。驚我驊騮,不利出處。
遯の卦が大有の卦に変わる。門は堵せられ戸は塞がれ、老虎は又た路の当央に卧す。我が駿馬を驚かし、出門と居家と倶に利あらず。驊騮は周穆王八駿の一。この林は前路壅塞、猛獣道に当たり、進退倶に合宜ならざるを主とし、凶である。
謙:陶朱白圭,善賈息資。公子王孫,富貴不貧。
遯の卦が謙の卦に変わる。陶朱公范蠡と白圭は、倶に経商を善くして本銭をして息を生ぜしめたり。公子王孫は此れによって富貴にして貧窮せず。范蠡は三たび千金を致し、白圭は時変を楽観す、《史記・貨殖列伝》に見る。この林は理財を善くし、貨殖息を生ずるを主とし、家道富厚、大吉である。
豫:王良善御,伯樂知馬。周旋步驟,行中規矩。止息有前,延命壽考。
遯の卦が豫の卦に変わる。王良は車を駕るを善くし、伯楽は馬を相するを善くす。車馬周旋緩急、進退倶に規矩に合う。行止倶に法度有りて、因って延年長寿す。この林は良御良相の助を得、挙措度に合い、事順い寿永きことを主とし、大吉である。
隨:堯問大舜,聖德增益。使民不懼,安無怵惕。
遯の卦が随の卦に変わる。堯は大舜に咨詢請教し、聖人の徳は此れによって一層增益せり。百姓をして畏懼せざるに至らしめ、安寧にして驚惕なし。この林は虚心に賢を問い、徳業日に進み、衆庶安泰を主とし、大吉である。
蠱:昭公失常,季氏悖狂。遊齊處鄆,喪其寵身。
遯の卦が蠱の卦に変わる。魯昭公は常度を失い、季氏は悖逆狂妄せり。昭公は出奔して斉国に流落し、鄆地に寄居して、その尊寵の身位を喪失せり。事は《左伝・昭公二十五年》に見る。この林は君弱臣強、位を失って出奔し、尊貴の人流離するを主とし、大凶である。
臨:昏暮不行,候旦待明。復住止後,未得相從。
遯の卦が臨の卦に変わる。黄昏の時、出発を肯ぜず、天亮を待って行かんとす。後にまた停下して後に留まり、終に同伴に及ばざりき。この林は行動遅疑、時機錯過を主とし、人と交りを失う、不吉である。
觀:安止宜官,一日九遷。升擢超等,牧養常山。
遯の卦が観の卦に変わる。安穏に位を守りて居官に宜しく、一日の内に九遷す。提拔は常等を超越し、常山の地を治むるに出づ。一日九遷は拔擢の速きを形容す。この林は仕途驟進、位望日に隆れ、一方を牧守するを得るを主とし、大吉である。
噬嗑:去惡就凶,東西多訟,行者無功。
遯の卦が噬嗑の卦に変わる。悪を避けんと欲するも反って凶に撞き、東も西も皆官司なり。出門の人は白忙一場なり。この林は趨避当を失い、四処に争訟し、事を行いて功なし、凶である。
賁:老馬垂耳,不見百里。君子弗恃,商人莫取。無與為市。
遯の卦が賁の卦に変わる。老馬は耳を垂れて、百里にも満たず走る。君子は之に依るを肯ぜず、商人も之を買うを肯ぜず、之と交易せんとする者なし。この林は力衰えて用なく、人の取る所と為らず、售らんと欲して門なし、凶である。
剝:蟙螺生子,深自黑丑。似類其母,雖或相就。眾人莫取。(一雲蝸螺自疑當作目)
遯の卦が剥の卦に変わる。蝙蝠と螺蛳は子を生じて、深黒にして醜陋たり。其の母に似ると雖も、偶に之と親しむ人あれど、衆人は皆之を要せず。校語に「蝸螺」句の「自」の字は疑うらく「目」と作るべしと。この林は形陋質卑、人の取る所と為らず、縦い同類相親しむも終に用いられ難し、不吉である。
復:百足俱行,相輔為強。三聖翼事,王室寵光。
遯の卦が復の卦に変わる。百足の虫、衆足斉しく行動し、互相扶持して強健を顕す。三位の聖人は共同で国事を輔翼し、王室は此れによって栄寵光耀を得たり。この林は衆力協同、賢者政を輔け、門庭光を増すを主とし、大吉である。
旡妄:容民蓄眾,履德有信。大人受福,童蒙憂惑。利無所得。
遯の卦が旡妄の卦に変わる。百姓を包容し衆人を蓄養し、徳行を践み信用を講ず。大人は此れによって福を受くれど、蒙昧の幼童は仍お憂愁迷惑の中に在りて、利益を得ず。容民畜衆は《周易・師》の大象辞に出る。この林は上位に居る者は寛厚にして福を得、无知无位の者は仍お利を獲難し、吉凶は人に因って異なる。
大畜:左跌右僵,前躓觸桑。其稽據石,傷其弟兄。老蠶不作,家無織帛。貴貨賤身,久留連客。
遯の卦が大畜の卦に変わる。左に跌き右に僵仆し、前に往きて又た桑樹に绊つ。停下して石頭に倚りて歇くも、自ら其の兄弟を傷す。老蚕は絲を吐かず、家に絹帛を織る能わず。貨物を看重して自身を軽賤し、長久滞在して外に客たり。この林は行止顚躓、手足受傷、生業蕭条、財を重んじて身を累い羈旅となるを主とし、凶である。
頤:昏人旦明,賣食老昌。國祚東表,號稱太公。
遯の卦が頤の卦に変わる。昏昧の人は天亮の時に終に明白となり、喫食を売るに倚りて老いて昌盛す。国運は東海の表に延伸し、尊称して太公と曰わる。呂尚は曾て朝歌の屠肆、棘津で食を売って困窮せり、後に斉に封じられ太公と称す。この林は困頓の人終に開明発達の日有り、晩歳貴盛を主とし、大吉である。
大過:敝笱在梁,魴逸不禁。漁父勞苦,焦喉乾口。虛空無有。
遯の卦が大過の卦に変わる。破れた魚簍を魚梁に擺せば、魴魚は溜走して攔む能わず。漁翁は忙しく辛苦して喉焦げ口乾き、到頭空しく一物も得ず。敝笱在梁は《詩経・斉風・敝笱》に出る。この林は器具敗壊、防範厳ならず、労して獲なし、凶である。
坎:盛中後跌,衰者復掇。盈滿或毀,疾羸肥腯。鄭昭失國,重耳興立。
遯の卦が坎の卦に変わる。中途に盛んにして後に跌落し、衰敗の者は反って重新に收拾す。盈満の者は時に傾毀し、瘦弱の者は転じて肥壮す。鄭国の昭公は国家を失い、晋公子重耳は興起して立てり。この林は盛衰互いに易え、消長循環し、盛に処る者は跌落を防ぐべく、衰に居る者は復興を望む可し。
離:折亡破甕,使我困貧。與母生分,別離異門。
遯の卦が離の卦に変わる。折損喪亡して瓮を打破し、我をして困頓貧窮に陷入せしむ。母親と生生に分かれ、別離して各々一門に在り。この林は財を破り器を損じ、骨肉分離し、貧困交加するを主とし、凶である。
咸:野有積庾,嗇人駕取。不逢狼虎,暮歸其宇。
遯の卦が咸の卦に変わる。野外に露天の谷囤を堆き、農人は車を駕して装取に往く。一路狼虎に遭わず、傍晚安然として自屋に帰る。嗇人は即ち農夫。この林は野に収穫有り、運載順利にして、往復平安を主とし、吉である。
恆:襁褓孩孤,冠帶成家。出門如賓,父母何憂。
遯の卦が恒の卦に変わる。襁褓中の孤児は、長成して冠を戴き帯を束ね、成家立業す。出門して人に接すること恭敬して賓客を接待する如くなれば、父母尚お何の憂愁かあらん。出門如賓は《左伝・僖公三十三年》に出る。この林は孤幼終に自立成人する能く、恭謹有禮にして、家門憂なし、吉である。
大壯:陳力就列,官職無廢。手不勝盆,失其寵門。
遯の卦が大壮の卦に変わる。力を量りて事に任じ各々其の位に就けば、官職は荒廃に至らず。しかれども手は盆を托する能わず、終に得寵の門路を失う。陳力就列は《論語・季氏》に出る。この林は職に称う者は其の位を保つ能く、力任に勝えざる者は必ず恩寵を失うを主とし、吉凶は全く自量に在り。
晉:積雪大寒,萬物不生。陰制庶士,時本寒貧。
遯の卦が晋の卦に変わる。積雪深厚にして天気酷寒、万物皆生長せず。陰気は衆人を圧制し、時運本より寒苦貧薄なり。この林は時令厳寒、生機発さず、衆人制せられ、貧困免れ難し、凶である。
明夷:龍鬥海門,失理傷賢。內畔生賊,自為心疾。
遯の卦が明夷の卦に変わる。群竜は海門に相鬪い、常理に違背して賢者を傷害す。内部に叛乱生じ禍賊を出し、自ら己が心腹の患と為れり。畔は即ち叛。この林は上層争鬪、賢良害を受け、禍蕭墻に起るを主とし、大凶である。
家人:不畏猛虎,依人為輔。三夫執獸,伏不敢起。身安無咎。
遯の卦が家人の卦に変わる。猛虎を害怕せず、衆人に倚りて帮手を為す。三個の壮漢は野獣を制伏して、之を伏せ地にして敢えて起たざらしむ。自身平安にして過咎なし。この林は衆を合わせて自ら壮め、協力して凶を制し、身家保たるるを主とし、吉である。
睽:南山高岡,回隤難登。道路遼遠,行者無功。憂不改凶,惡亦消去。
遯の卦が睽の卦に変わる。南山の高岡は盤曲険陡にして、攀登し難し。道路遥遠にして、行人白く跑一趟するのみ。憂愁未だ解せず凶象未だ改らざると雖も、悪事は到底消散せり。この林は道途艱難、行う所功なし、然れど災禍終に散去るを主とし、凶中より平に転ず。
蹇:逢時陽遂,富且尊貴。
遯の卦が蹇の卦に変わる。恰好時運に趕え付き、陽気順遂通達して、因って既に富にして又た貴し。この林は時運亨通、諸事心に遂うを主とし、財位双の全きを得、大吉である。
解:求我所欲,得其利福。終身不辱,盈盛之門。高屋光覆,君先其固。
遯の卦が解の卦に変わる。己が欲する所を求取すれば、即ち利益と福気を得。終身屈辱を受けず、門戸豊盈興盛す。高大の房屋は光華罩籠し、主人は先ず根基を築きて牢固ならしむ。この林は求むる所願の如く、家門昌盛を主とし、根本先に立てて後に能く久し、大吉である。
損:安坐至暮,禍災不到。利詰妒姝,皇宥不赦。
遯の卦が損の卦に変わる。安安稳稳として天黑まで坐しても、禍災も門に上らず。宜しく嫉妒の美人を責問すべし、君上寛宥と雖も之等を赦免すること肯ぜず。この林は静守すれば則ち災なく、対内に当たり妒忌争寵の人を整粛すべく、処置は厳よりすれば則ち吉。
益:膠車駕東,與雨相逢。五楘(一作婺)解墮,頓斬獨宿。憂為身福。
遯の卦が益の卦に変わる。膠で粘接せる車を以て東に行くも、偏に下雨に遇う。車轅の上の五道の皮束は散脱落ち、頓住停下して独自投宿するを得ざりき。此の一場の憂患は反って自身の福気と為れり。「五楘」は一本に「五婺」と作る、五楘梁輈は《詩経・秦風・小戎》に出る。この林は車器堅ならず、途に風雨に遇い阻まるるも、然れど禍に因って福を得、先凶後吉。
夬:擇日高飛,遠至東齊。見孔聖師,徒我相諧。
遯の卦が夬の卦に変わる。好日を選んで高飛遠挙し、一直して東方の斉国に至る。孔子のごとき聖人の師に見え、門徒は我と相処して和諧なり。この林は時を擇びて遠行し、明師良友に遇うを得るを主とし、志同道合、大吉である。
姤:陳媯敬仲,兆興齊姜。乃適營丘,八世大昌。
遯の卦が姤の卦に変わる。陳国の妫姓の公子敬仲は、卜兆に彼が斉国に興起せんことを预示せり。是に営丘に奔往し、八世之後大いに昌盛せり。《左伝・荘公二十二年》に陳敬仲の斉に奔るを記す、占辞に「八世之后、莫之與京」と。この林は遠く異国に遷りて卜兆吉利なり、子孫数世昌隆、大吉である。
萃:缺將無憚,難從東西。毀破我盆,泛棄酒食。
遯の卦が萃の卦に変わる。主将を欠けば人人忌憚する所なく、東も西も依従し難し。我が盆を打破して、酒食皆潑洒拋棄せり。この林は群竜首なく、進退拠を失い、器毀れ食廃るるを主とし、凶である。
升:中夜狗吠,盜在廬外。神光佐助,消散歸去。
遯の卦が升の卦に変わる。夜半に狗叫び、盗賊屋の外に在り。神明の光輝の旁より相助する有りて、盗賊消散退去せり。この林は夜に盗警有るも、神助に賴りて化解し、驚有りて険なし。
困:雷車不藏,隱隱西行。霖雨三旬,流為河江。使我憂心。
遯の卦が困の卦に変わる。雷声は車の如くにして収蔵を肯ぜず、隠隠として西に滚り往く。綿綿たる大雨三十日降りて、積水汇りて江河を成し、我をして憂心忡忡ならしむ。この林は陰雨澇を成し、水勢遏め難く、憂患身に纏うを主とし、凶である。
井:老河空虛,舊井無魚。利得不饒,避患東鄰。福來入門,使我悔存。
遯の卦が井の卦に変わる。老河道は干涸空虚にして、旧井に魚なし。所得の利益は並びに豊厚ならず、東辺の隣家に避禍しに往く他なし。後に福気門に入りて、始めて我をして悔恨を身後に留めしむ。この林は旧業枯竭、獲利微薄、禍を避けて他処に往きて終に福を得、先困後に転ず。
革:福德之士,歡悅日喜。夷吾相國,三歸為臣。貴流子孫。
遯の卦が革の卦に変わる。福徳有る人は、歓欣喜悅して一日に一日勝る。管夷吾は斉国の相を為し、三歸の富を享有するも仍お臣位に居り。富貴は子孫に流伝す。管仲に三帰有り、《論語・八佾》に見る。この林は徳厚位隆、富貴継ぐ可きを主とし、沢後代に被す、大吉である。
鼎:清人高子,久屯外野。逍遙不歸,思我慈母。
遯の卦が鼎の卦に変わる。《詩経・鄭風・清人》に高克が兵を領して河上に久駐するを詠ず、将士長期に野外に屯守す。逍遥閑散と雖も家に帰る能わず、只だ己が慈母を思念するのみ。この林は久しく外に戍し、帰期定まらず、親を思いて憂を成すを主とし、不吉である。
震:驄 (音葛)黑 ,東歸高鄉。白虎推輪,蒼龍把衡。朱雀導引,靈鳥載遊。遠扣天門,入見真君。馬全人安。
遯の卦が震の卦に変わる。青白雑毛と黑色の良馬を駕して、東に高郷に帰る。白虎は後に車輪を推し、蒼竜は車衡を把持し、朱雀は前に路を引き、霊鳥は遨遊を載せる。遠行して天門を叩き、入りて真君に朝見す。馬匹斉備にして人也平安なり。四靈導從は漢人の想像する神行の儀仗。この林は神霊護衛、遠行天に通ずるを主とし、人馬倶に安し、大吉である。
艮:路多枳棘,前刺我足。不利旅客,為心作毒。
遯の卦が艮の卦に変わる。路上に枳樹荊棘満ち、前に往けば我が足を扎傷す。出門の旅客に利あらず、心頭の毒害と為れり。この林は前途に荊棘叢生し、歩を挙げて傷を受くるを主とし、行旅宜しからず、凶である。
漸:端坐生患,憂來入門,使我不安。
遯の卦が漸の卦に変わる。端端正正坐しているも禍患を生じ、憂愁自ら門に上がり来り、我をして安寧を得ざらしむ。この林は災禍端なくして至り、静守も亦た免れ難く、心神寧ならざるを主とし、不吉である。
歸妹:小陬之市,利不足喜。二世積仁,蒙其祖先。匪躬之言,狂悖為患。
遯の卦が帰妹の卦に変わる。偏僻小角落の集市、其の一点の利益は歓喜に値せず。两代人仁徳を積累し、祖先の余蔭を蒙る。自身を顧みず直言進諫は本より美事なれど、一旦狂妄悖乱すれば即ち禍患と成る。王臣蹇蹇、匪躬之故は《周易・蹇》の六二に出る。この林は小利道うに足らず、祖徳の庇佑に賴り、言を進むるに分寸を守るべく、過ぎれば則ち禍を招くを主とす。
豐:登高望時,見樂無憂。求利南國,與寶相得。
遯の卦が豊の卦に変わる。高処に登りて時勢を観望すれば、見る所皆歓楽にして憂愁なし。南方の邦国に利を求め、正に珍宝と相遇す。この林は高に居りて遠くを見、時機乗ずべく、南行して宝を得て財を進むを主とし、大吉である。
旅:跛足息肩,有所忌難。金城鐵郭,以銅為關。藩屏自衛,安土無患。
遯の卦が旅の卦に変わる。足を瘸んで肩上の担子を卸すは、顧忌為難する所有ればなり。金鑄の城、鉄築の郭、銅を以て関門を成す。屏障を築きて自ら防衛し、本土に安居すれば禍患なし。この林は行動便ならざれば暫く止るを主とし、堅固の守りに憑れば平安無事、守れば吉なり行けば凶なり。
巽:江水沱汜,思附君子。伯仲處市,不我肯顧。侄娣恨悔。
遯の卦が巽の卦に変わる。江水は沱汜の两支流を分かち、心の内に君子に依附せんと思う。伯仲両位は市上に在りて、肯えて回頭して我を一顧せず。随嫁の侄女と妹妹は皆恨悔の心を懐く。《詩経・召南・江有汜》は正に媵妾の被弃の怨を詠ず。この林は附くれんと欲して門なく、人の冷落に遭い、姻親怨を生ずを主とし、凶である。
兌:芽糵生達,陽唱於外。左手執鑰,公言錫爵。
遯の卦が兌の卦に変わる。谷芽萌発し、抽条通達して、陽気は外に在りて生機を倡導す。左手に舞籥を執りて起舞し、主公開口して酒爵を賞賜す。左手執籥は《詩経・邶風・簡兮》に出る。この林は生機勃発、時に陽長に逢い、上の賞賜爵禄を得るを主とし、大吉である。
渙:雲夢苑囿,萬物蕃熾。犀象玳瑁,荊人以富。
遯の卦が渙の卦に変わる。雲夢沢の苑囿の中、万物繁盛興旺す。犀角、象牙と玳瑁応有尽く有りて、楚国人此れによって富足せり。雲夢は楚国の大沢、物産の富は《戦国策》に見る。この林は物産豊饒、珍貨充盈を主とし、家国倶に富めり、大吉である。
節:渠戎萬里,晝夜愁苦。櫜甲戍服,雖荷不賊。鷹鸇之殃,害不能傷。
遯の卦が節の卦に変わる。万里の外に戎人を防御しに往きて、日夜愁苦す。鎧甲を囊中に収め戍守の衣服に換え、身重任を負うと雖も賊害に遭わず。縦い鷹鸇の撲撃するがごとき災殃有りとも、彼を傷害する能わず。この林は遠戍艱苦にして終に保全を得るを主とし、凶险身に加え能わず、苦中に吉有り。
中孚:出門東行,日利辰良。步騎與駟,徑歷京邦。暮宿北燕,與樂相逢。
遯の卦が中孚の卦に変わる。出門して東に行けば、日子利有り時辰吉良なり。歩卒騎兵は駟馬の車に連なりて、一路直に京城大邦を穿つ。傍晚北方の燕地に投宿して、恰好歓楽に相遇す。この林は時を擇びて東行し、行程通達にして、途中楽を得るを主とし、大吉である。
小過:騎騅與蒼,南賈太行。逢蛟猛虎,為所吞餐。葬於渭陽。
遯の卦が小過の卦に変わる。騅馬と青馬に騎りて、南に太行を越え経商に往く。路上蛟竜猛虎に遇い、之等に吞吃せられ、最後に渭水の北に葬らる。渭陽は《詩経・秦風・渭陽》に出る。この林は遠行経商して猛悪に遭遇し、身は異郷に死するを主とし、大凶である。
既濟:鎡基逢時,稷契皋陶。貞良得願,微子解囚。市恐無虎,謾言妄語。
遯の卦が既済の卦に変わる。好い鋤頭有りとも又た農時に趕えば、正に后稷、契、皐陶が各々明主に遇うが如し。忠貞良善の人は心願を得て償われ、微子も亦た囚繋を解脱せり。《孟子・公孫丑上》に「雖有鎡基、不如待時」と曰う。至りて市に虎有りと説するは、不過謊話妄語なり、三人成虎の説は《戦国策》に見る。この林は時に逢い位を得、賢者志を伸べ、囚者釈を獲るを主とし、流言取信に足らず、吉である。
未濟:酒為歡伯,除憂來樂。福善入門,與君相索。使我有得。(來一作未)
遯の卦が未済の卦に変わる。酒は「歓伯」と号して、憂愁を除去し歓楽を招来する能し。福気と善慶は一同に門に入り、来りて主人に親を求め相就かんとし、我をして収穫有らしむ。校語に「来」の字は一本に「未」と作ると。この林は宴楽して憂を消し、福善門に臨むを主とし、求むる所得有り、吉である。
大壮の林(大壮卦六十四林)
大壯:左有噬熊,右有囓虎。前觸鐵矛,後躓強弩。無可抵者。
大壮の卦が自ら変じても大壮の卦のままである。左には人を咬む熊、右には人を噬う虎。前に往けば鉄矛に撞き、後に退けば強弩に绊つ。四面皆な抵当すべき地なし。この林は前後左右尽く凶险にして、避くるべき処なし、大凶である。
乾:金齒鐵牙,壽考宜家。年歲有儲,貪利者得。有其咎憂。
大壮の卦が乾の卦に変わる。金のごとき歯、鉄のごとき牙床にして、長寿にして家室に宜し。年年積儲有りて、利益を貪求する人も亦た手に入るを得、只だ之に随いて災咎と憂慮有るのみ。この林は身強く家旺え、年谷余り有るも、然れど利を逐うこと甚しければ咎を招く、吉中に憂を帯ぶ。
坤:家給八足,頌聲並作。四夷賓服,干戈櫜閣。
大壮の卦が坤の卦に変わる。家家豊足、人人富裕にして、頌揚の声斉しく興る。四方の外族皆来りて帰服し、兵器鎧甲は袋中に収め擱置して用いず。櫜甲束兵は《礼記・楽記》に記する武王の偃武修文の事。この林は家国殷実、天下太平にして、兵革興らざるを主とし、大吉である。
屯:獮猴冠帶,盜載非位。眾犬持吠,狂走蹶足。
大壮の卦が屯の卦に変わる。獼猴冠帯を戴き、本より其の属すべからざる位子を窃踞せり。群犬之に向かい狂吠し、狂奔逃走する時に足を跌傷せり。沐猴而冠は漢人の虚有其表を譏笑する旧語。この林は小人高位を窃据し、衆怒犯し難く、終に顚躓に至るを主とし、凶である。
蒙:心患其身,不念安存。忠臣孝子,為國除患。
大壮の卦が蒙の卦に変わる。心は只だ自身の安危を憂うるのみで、如何にすれば安身長存せんやを思わず。真の忠臣孝子は、国家の為に禍患を除く者なり。この林は私を一己に憂うる者は成す所難く、唯だ身を忘れて国に報ゆる者は功業を建つる能し、取捨全く公私の間に在り。
需:君不明德,臣亂為惑。丞相命駕,胡亥失所。
大壮の卦が需の卦に変わる。君主徳行を昭明せず、臣下作乱して人心迷惑す。丞相車を備えよと下令するも、秦二世胡亥は容身の処を失えり。趙高の二世を弑するは、《史記・秦始皇本紀》に事見る。この林は君昏く臣乱れ、権臣命を専らにし、主上傾危を主とし、大凶である。
訟:東行西窮,南北無功。張伯買鹿,從者失羊。
大壮の卦が訟の卦に変わる。東に行き西に行きて倶に絶路に至り、南北奔波しても功效なし。張伯は鹿を買いに行き、随従する人は却って羊を失えり。この林は四方奔走するも皆利を得ず、此を顧みて彼を失うを主とし、凶である。
師:鹿下西山,欲保其群。逄羿箭鋒,死於矢端。
大壮の卦が師の卦に変わる。鹿は西山より下り、己が鹿群を保全せんと欲すも、后羿の箭鋒に撞き、箭頭の下に死せり。后羿は射を善くす、《楚辞・天問》等の書に見る。この林は本より衆を護らんと欲して自ら険地に投じ、反って殺身の禍に遭うを主とし、大凶である。
比:夷明兆初,三旦為災。以讒復歸,名曰豎牛。剝亂叔孫,餒卒虛丘。
大壮の卦が比の卦に変わる。光明傷せられし兆剛わずかに顕れ、連日三日倶に災禍なり。讒言に倚りて重ねて帰り来る者、名を竪牛と曰う。彼は叔孫氏を剥奪攪乱し、終に叔孫豹をして虚丘に餓死せしめたり。事は《左伝・昭公四年》に見る。この林は小人讒を以て勢を得て人家を攪乱し、主家餓死するを主とし、大凶である。
小畜:秦失嘉居,河伯為恠。還其銜璧,神怒不佑。織組無文,燒香不芬。
大壮の卦が小畜の卦に変わる。秦国は美好の居処を失い、河伯は妖を興し怪を為す。口銜の玉璧を退け返し、神明惱怒して庇佑を加えず。織出の綬帯に花紋なく、焼起の香も芬芳ならず。銜璧は古の降服請罪の礼。この林は地を失い祟に遭い、神歆享せず、為す所皆成らず、凶である。
履:至德之君,禍不過鄰。使我世存,身無患災。
大壮の卦が履の卦に変わる。至高の徳行有る君主は、禍事隣近の処にも波及せず。我が家をして世代長存せしめ、自身禍患災殃なし。この林は徳厚く福深く、災身に及ばず、家世綿長を主とし、大吉である。
泰:眾惡之堂,相聚為殃。幽毒良人,使道不通。
大壮の卦が泰の卦に変わる。衆多の悪人聚集する厅堂は、湊り合わされば禍殃と成る。暗中に善良の人を毒害し、正道をして通行する能わざらしむ。この林は群小党を結び、暗に賢良を害し、公道壅塞するを主とし、凶である。
否:三痴六狂,欲之平鄉。迷惑失道,不知昏明。
大壮の卦が否の卦に変わる。三個の痴人、六個の狂徒、平郷に往かんと欲す。一路迷惑して正道を失い、天の昏れ天亮も分辨せず。この林は同行者尽く昏悖の輩にして、方向を迷失して自ら知らざるを主とし、凶である。
同人:老弱無子,不能自理。郭氏雖憂,終不離咎。管子治國,侯伯來服。乘輿八百,尊祀祖德。(一作大有卦)
大壮の卦が同人の卦に変わる。年老い体弱くして子嗣なく、己が事を料治する能わず。郭氏憂慮すると雖も、終に災咎を脱する能わず。至りて管仲の斉国を治むるは、諸侯方伯皆帰服し、車馬八百乗、隆重に祭祀して祖徳を彰顯せり。校語に此の条は一本に大有卦の辞と作ると。この林は孤弱無嗣の者は咎患を免れ難く、賢相を得て国を治むる者は則ち覇業昌隆す、两象吉凶懸殊なり。
大有:褒後生蛇,經孝曰微。追跌老耄,覆滅黃離。(一作同人卦)
大壮の卦が大有の卦に変わる。褒姒の来歴は伝うる所、竜漦の化して蛇と為るに関有り、経伝の記する孝道此れによって衰微す。追究すれば、年老昏聵の者の跟头を跌すが故、光明の黄離の徳再度熄滅せり。褒姒の周を亡ぼすは《史記・周本紀》に見る。黄離元吉は《周易・離》の六二に出る。校語に此の条は一本に同人卦の辞と作ると。この林は女寵禍を為し、老昏政を失い、光明淪喪するを主とし、大凶である。
謙:聰鬣黑髯,東歸南鄉。白虎推輪,蒼龍把衡。遂至夷傷,不離咎殃。
大壮の卦が謙の卦に変わる。長鬃黑髯の駿馬は、東に南郷に帰る。白虎後に輪を推し、蒼竜車衡を把持す。然れど終に受傷に落ち、災咎禍殃を脱開する能わず。この林は「遯之震」と同じく四靈駕車の象を用うるも、吉より凶に転ず。この林は神物の護送有ると雖も、去向当ならざれば仍お傷損に遭うを主とし、凶である。
豫:信譎龍且,塞水上流。半渡決囊,楚師覆亡。
大壮の卦が豫の卦に変わる。詭詐の竜且を軽信し、河水の上流に囊を築きて水流を壅塞す。楚軍の半渡を待ちて沙囊を決開し、楚軍此れによって覆滅せり。此れ正に韓信の囊沙して潍水を断ち竜且を破るの戦、《史記・淮陰侯列伝》に見る。この林は敵の計に中り、半渡に襲に遇い、全軍覆没するを主とし、大凶である。
隨:有莘季女,為王妃后。貴夫壽子,母尊四海。
大壮の卦が随の卦に変わる。有莘氏の小女児は、君王の妃后と為れり。丈夫顕貴にして兒子長寿し、母儀四海に尊し。有莘の女は周文王に嫁す、即ち太姒、《詩経・大雅・大明》に見る。この林は婚配貴を得、夫栄え子寿し、母儀天下を主とし、大吉である。
蠱:德被八表,蠻夷率服。蝥賊不作,道無苛慝。
大壮の卦が蠱の卦に変わる。徳沢は八方の辺際に覆い被せ、蛮夷皆相率いて帰服す。害虫のごとき賊人は再び風浪を興さず、路上に苛政と邪悪なし。この林は徳化遠く播き、四夷賓服し、境内清平を主とし、大吉である。
臨:載日精光,驂駕六龍。祿命徹天,封為燕王。
大壮の卦が臨の卦に変わる。車上に太陽の精華光輝を載せ、六竜を驂服して駕行す。禄命は天に高く通じ、封を受けて燕王と為れり。この林は気象宏大、貴ぶべきに言う可からず、封を受けて土を列するを主とし、大吉である。
觀:纓急縮頸,行不得前。五石示象,襄伯不成。
大壮の卦が観の卦に変わる。帽纓勒めて太甚く、脖子縮み返りて、前に走り到る能わず。天は五塊の隕石を降して徵兆を顕し、宋襄公の覇業終に成らざりき。隕石於宋五は《左伝・僖公十六年》に見る。この林は束縛太甚にして進退前せず、異象警を示すも事業成ることなし、凶である。
噬嗑:蛇鄉其穴,載麻當喪。哀悲哭泣,送死離鄉。
大壮の卦が噬嗑の卦に変わる。蛇は自ら其の洞穴に向かい、車上に麻布を載せて正に喪事に逢う。哀傷悲痛して哭泣し、送葬の後故郷を離る。この林は家に喪亡有り、哀を挙げて郷を離れ、凄凉極まるを主とし、大凶である。
賁:四潰不安,兵革為患。掠我妻子,客屢飢寒。
大壮の卦が賁の卦に変わる。四方潰散して安寧を得ず、兵戈甲冑禍患と為れり。我が妻兒を擄掠し去り、外に客居して屢屢凍餒を受く。この林は兵乱四起、家破れ人離れ、流落飢寒するを主とし、大凶である。
剝:乘風雨橋,與飛鳥俱。一舉千里,見吾愛母。(雨一作禹)
大壮の卦が剥の卦に変わる。風に乗りて雨中の橋を越え、飛鳥と同じく路に上る。一飛すれば即ち千里、我が敬愛する母親を見えたり。校語に「雨」の字は一本に「禹」と作ると。この林は行程神速、願の如く相見え、母子団聚するを主とし、大吉である。
復:雷霆所擊,誅者五逆。劘滅無跡,有懼方息。
大壮の卦が復の卦に変わる。雷霆の撃打する所は、是れ五種の大逆不道の人なり。之等を磨滅して痕跡を留めず、衆人心中的の恐懼始めて平息せり。この林は天悪逆を誅し、凶を除き乱を靖め、衆心安らぐを得、先驚後吉。
旡妄:張氏揖酒,請謁左右。王時枯槁,獨不蒙所。(王一作平)
大壮の卦が旡妄の卦に変わる。張氏杯を挙げて酒を敬い、左右の人に向かい引薦を拜求す。王氏一時形容枯槁にして、独り棲身の処を得ず。校語に「王」の字は一本に「平」と作ると。この林は奔走干謁するも遭遇均ならず、寵を得る者と隅に向く者と有り、吉凶人に因って分かつ。
大畜:坐爭立訟,紛紛匈匈。卒成禍亂,災及家公。
大壮の卦が大畜の卦に変わる。坐しても争い立ちても訟え、紛紛擾擾喧囂寧まらず。終に禍乱を醸成し、災禍一家の主に波及す。この林は争訟休まず、内外喧騰し、終に家主累を受くるに致るを主とし、凶である。
頤:霜降門戶,蟄蟲隱處。不見日月,與死為伍。
大壮の卦が頤の卦に変わる。霜は門戸に降り、蟄虫皆な躲蔵す。日月の光亮を見る能わず、死気と伍を為す。この林は時令肅殺、陽気尽く隱れ、閉塞して死の如し、大凶である。
大過:鼠聚生恠,為我患悔。道絕不通,商旅失意。
大壮の卦が大過の卦に変わる。老鼠成群に聚集して怪異を生じ、我が禍患と悔恨と為れり。道路断絶して通ぜず、行商旅客皆失意して帰る。この林は物妖災を示し、去路阻まるを主とし、経商成らず、凶である。
坎:寒暑不當,軌度失常。一前一後,年歲鮮有。
大壮の卦が坎の卦に変わる。寒暑の来るは時令に合わず、天時の軌度常規を失えり。節気或いは一時に提前し、或いは一時に落後して、年成の収穫便ち稀少なり。この林は天時乖違、寒温序を失い、収成歉薄を主とし、凶である。
離:築室水上,危於一齒。丑寅不徙,辰卯有咎。
大壮の卦が離の卦に変わる。屋を水上に建てば、危険なること歯一つの間のみ。丑寅の時に遷移するを肯ぜず、辰卯の際に至れば災咎有り。この林は居址安ならず、根基険に臨み、遅疑して遷らざれば必ず其の禍を受く、凶である。
咸:畜雞養狗,長息有儲。耕田得黍,主母喜舞。
大壮の卦が咸の卦に変わる。鶏を養い又た狗を養い、日に生息して積儲有り。耕田して黍子を収穫し、女主人喜びて手舞足蹈す。この林は畜牧農耕両旺、家道日に殷く、主婦歓欣を主とし、吉である。
恆:東壁餘光,數暗不明。主母嫉妒,亂我事業。
大壮の卦が恒の卦に変わる。東墻の彼方より透過する余光は、屢屢昏暗にして明亮ならず。女主人嫉妒の心を懐き、我が事業を攪乱す。鑿壁借光は本より明を求むるを喻うるも、此処は余光を連ねても足らず。この林は憑借足らず、内寵妒忌して、事業擾を受くるを主とし、凶である。
遯:剛柔相傷,火爛銷金。鵰鷹制兔,伐楚有功。
大壮の卦が遯の卦に変わる。剛と柔相互に損傷し、烈火金属を熔化す。雕鷹兔子を制服し、楚国を討伐して戦功を立つ。この林は剛柔相剋して損傷有ると雖も、然れど強を以て弱を制し、兵を出して功有り、凶中に得有り。
晉:鄭國讒多,數被楚憂。征夫愁苦,民困無聊。一本雲三豕俱走,斗於虎口。白豕不勝,死於坎下。
大壮の卦が晋の卦に変わる。郑国は讒言太多にして、屢屢楚国の侵擾の憂を受く。出征の人愁苦し、百姓困頓して依頼すべき所なし。一本に此の条を「三豕倶に走り、虎口に鬪う。白豕勝たず、坎下に死す」と作り、三匹の猪一同に奔逃して虎口の下に相鬪い、白猪敵せず、坎陷の中に死すと説く。この林は讒多く外患有り、民疲れ兵苦しみ、弱者必ず敗るるを主とし、凶である。
明夷:弓矢斯張,把彈弦折。丸發不至,道遇害患。
大壮の卦が明夷の卦に変わる。弓箭剛わずかに張り、弾弓を握る時弦断ける。弾丸射出して標的に及ばず、路上又た禍害に遇う。弓矢斯張は《詩経・大雅・公劉》に出る。この林は器械霊を失い、力遠く及ばず、出行して害に遇うを主とし、凶である。
家人:舉觴飲酒,未得至口。側棄醉酗,拔劍斫怒。武侯作悔。
大壮の卦が家人の卦に変わる。酒杯を挙げて飲まんとするも、未だ嘴辺に到らず。傍らに醉酒撒瘋する人有り、剣を抜きて怒気冲冲に乱砍し、武侯此れが為に追悔して及ばざりき。この林は宴飲変を生じ、酒後事を鬧し、刀兵を見て悔を致すを主とし、凶である。
睽:蒼鷹群行,相得旅前。王孫申公,驚奪我雄。北天門開,神火飛災。如不敬信,事入塵埃。
大壮の卦が睽の卦に変わる。蒼鷹成群に飛行し、彼此相随して前に排列す。王孫と申公一驚して我が雄鷹を奪走す。北方天門開啓し、神火飛下して災と為る。若し恭敬誠信なる能わざれば、事塵埃に落ちん。この林は強者我が所有を奪い、天災警を示すを主とし、唯だ敬慎守信のみ以て敗亡を免れん。
蹇:穿屋相宜,利倍我北。循邪詭道,迎不可得。南北望邑,遂歸入室。
大壮の卦が蹇の卦に変わる。屋舎を打通すれば正に相宜にして、我が北辺に往かば利益加倍す。若し邪僻詭詐の路に循れば、迎取せんと欲する物は手に到らず。南北張望して城邑を望み、最終に仍お己が屋に帰る。この林は正に循れば利倍し、邪を行けば獲なく、往返一場して仍お本位に帰る。
解:壽如松喬,與日月俱。常安康樂,不離禍憂。
大壮の卦が解の卦に変わる。寿命は赤松子と王子喬の如く長く、日月と同じく長存す。常に安穏康楽にして、禍患憂愁に遭わず。松喬は古来伝うる两仙の人。この林は長寿康寧、災憂侵されざるを主とし、大吉である。
損:出門望東,伯仲不來。疾病為患,使母憂歡。
大壮の卦が損の卦に変わる。出門して東に張望すれば、兄長と仲弟倶に帰らず。疾病禍患と為りて、母親をして憂愁して歓顔を展べ難からしむ。この林は親人帰らず、家に病患有り、慈母心を懸くを主とし、不吉である。
益:太姬之孫,周文九子。咸遂受成,寵貴富有。
大壮の卦が益の卦に変わる。太姫の子孫、周文王の九個の兒子は、個個皆な功業を成就し、恩寵を蒙りて富貴せり。太姫は周武王の女、陳胡公の妻、《左伝・襄公二十五年》に見る。この林は宗支昌盛、子孫器を成し、恩栄富厚を主とし、大吉である。
夬:桃李花實,累累日息。長大成熟,甘美可食。為我利福。
大壮の卦が夬の卦に変わる。桃樹李樹は花を開き果を結び、一串串として一日日に生長す。長大成熟の後、甘甜美にして食用すべく、我が利益と福気と為れり。この林は培植成り有り、日漸収穫し、先労後享を主とし、大吉である。
姤:婚禮不明,男女失常。行路有言,出爭我訟。
大壮の卦が姤の卦に変わる。婚姻の礼は不明不白に办められ、男女の名分常度を失えり。路上の人皆紛紛議論し、因って争執と官司を鬧出せり。この林は婚事正ならず、名分明ならず、口舌訟争を招来するを主とし、凶である。
萃:空穿漏敝,破桴殘缺。陰弗能完,瓦碎不全。(空一作室)
大壮の卦が萃の卦に変わる。房子は洞を穿ち四處漏損破敝し、屋椽も断裂殘缺せり。陰湿の処は修完する法なく、瓦片碎裂して斉備ならず。校語に「空」の字は一本に「室」と作ると。この林は居室敗壊、修補すべき所なく、家宅安ならざるを主とし、凶である。
升:數窮廓落,困於曆室。往登玉堂,與老侑食。(老一作堯)
大壮の卦が升の卦に変わる。気数尽頭に走り至り、四顧空空落落たり。推暦算日の屋子に困守す。後に玉堂に登り、老者に陪して食に進み餐を勧む。校語に「老」の字は一本に「堯」と作ると。この林は先に窮困寂寥、後に升進して宴に侍るを得、先困後達。
困:道溼為坑,輪陷躓強。南國作諱,使我多畏。
大壮の卦が困の卦に変わる。道路湿軟して坑洼に陷り、車輪陷り込みて勉强挣扎す。南方の邦国は此れに対し諱莫如深にして、我が心中格外に畏懼せしむ。この林は行路泥に陷り、進退勉强し、隠情明ならざれば畏を生ずを主とし、凶である。
井:鰥寡孤獨,福祿苦薄。入室無妻,我子哀悲。
大壮の卦が井の卦に変わる。鰥夫寡婦、孤児独老は、福禄皆苦薄なり。屋に入りて妻子相待するなく、我が兒子只だ悲傷哀哭するのみ。この林は孤苦依る所なく、福薄く命蹇し、家室成らざるを主とし、凶である。
革:舉袂覆目,不見日月。衣衾杖幾,就其夜室。
大壮の卦が革の卦に変わる。衣袖を擡げて眼を遮り、日月を見ず。衣衾と杖几を備え、彼の長夜の墓室に走り入る。夜室は即ち幽宅。この林は光明断絶、喪具已に備わり、是れ土に入るの象、大凶である。
鼎:長尾踒跎,畫地為河。深不可涉,絕世之比。憫然憤息。
大壮の卦が鼎の卦に変わる。長尾を拖きて跚跚前せず、地に一線を画して河と為す。深くして渉る能わず、世と隔絶するが如し。只だ憐憫憤懣に嘆息するのみ。画地為牢の類の比喻は、自ら障碍を設くるを説く。この林は自ら手脚を縛り、寸步も行難く、隔絶孤憤するを主とし、凶である。
震:晨風文翰,火舉就溫。昧過我邑,羿無所得。
大壮の卦が震の卦に変わる。晨風鳥と文彩斑斕の錦鶏は、火光の燃起を見て湊り近づき暖を取る。昏昧中に我が城邑を経過するも、后羿も一物も獲ず。《詩経・秦風・晨風》は正に此の鳥の疾飛を詠ず。この林は禽鳥暖に趨りて自ら投ずるも、猟者は反って空手して帰る、得失人意表に出ず。
艮:出入節時,南北無憂。亟行所逐,在外來歸。(亟行所逐又作行者亟至)
大壮の卦が艮の卦に変わる。出入倶に時節に合い、南来北往倶に憂愁なし。急切追趕の事は着落有りて、外に在る人も帰り来れり。校語に「亟行所逐」は一に「行者亟至」と作ると。この林は行止度有り、四方通達し、遠人速やかに帰るを主とし、吉である。
漸:陽氏狂惑,季孫亂潰。陪臣執政,平子俱折。季心不快。
大壮の卦が漸の卦に変わる。陽虎狂妄惑乱し、季孫氏此れによって潰散失序せり。家臣国政を執掌し、季平子一系も連れて一同に折損し、季氏心中甚だ痛快ならず。陪臣執国命は《論語・季氏》に出る。この林は家臣権を越え政を乱り、主家損を受け、上下倶に安んぜざるを得ず、凶である。
歸妹:五鳥六鴟,相對蹲跂。禮讓不興,虞芮爭訟。
大壮の卦が帰妹の卦に変わる。五隻の鳥、六隻の鴟鴞は、相対して蹲踞踮立す。礼譲の風興らず、虞・芮の両国が田界の為に官司を打起するが如し。虞芮は文王の庭に質成す、《詩経・大雅・綿》に見る。この林は群小相対峙し、礼譲廃弛して、訟争を興起するを主とし、凶である。
豐:願念所生,隔在東平。遭離滿沸,河川決潰。幸得無恙,復生歸室。
大壮の卦が豊の卦に変わる。己を生養する父母を思念するも、人は東平に隔てられ。禍乱沸騰に遭逢し、河川口を決し堤を潰す。所幸平安恙なく、生路を重獲して家中に帰る。この林は親人阻隔、水乱交わり逼るを主とし、終に険を脱し家に還る、凶中より吉に転ず。
旅:追獵東走,兔迯我後。吾銳不利,獨空無有。
大壮の卦が旅の卦に変わる。東に往きて獵物を追えば、兎子は却って我が背後より溜走す。我が鋒刃銳利足らず、孤零零として一物も得ず。迯は即ち逃。この林は追逐落に空しく、器鈍く力弱く、白忙一場を主とし、凶である。
巽:犬吠非主,上下渾擾。敵人襲戰,閔王迯走。
大壮の卦が巽の卦に変わる。狗は主人に非ざる人に対して狂吠し、上上下下一片混亂たり。敵人偷袭して戦を開き、斉閔王只だ出逃するを得ざりき。燕将楽毅の斉を破り閔王出奔せしは、《史記・田単列伝》に見る。この林は内外擾攘、猝に敵襲に遭い、君主逃亡するを主とし、大凶である。
兌:嵩高岱宗,峻直且神。觸石膚寸,千里蒙恩。
大壮の卦が兌の卦に変わる。嵩山と泰山は、高峻挺直にして神霊有り。雲気山石に触れて湧出し、初めは一寸の厚さなりしが、転眼千里を滋潤して、衆人同じく恩沢を蒙る。触石而出、肤寸而合は《公羊伝・僖公三十一年》に出る。この林は徳名山の如く、恩沢広く被り、小より大に及ぶを主とし、大吉である。
渙:陳魚觀社,狼虎踰距。為民開緒,亡其祖考。
大壮の卦が渙の卦に変わる。魚貨を陳列し社祭を観るも、狼虎は却って界限を越過せり。本より百姓の為に頭緒を開かんと欲するも、反って祖宗基業を喪失せり。魯隠公の棠に矢魚し、荘公の斉に如きて社を観たるは、皆《春秋》の其の非礼を譏るの事。この林は遊観に耽り、礼法を逾越し、惠民の名有ると雖も其の祖業を失うを主とし、凶である。
節:四壁無戶,三步一止。東西南北,利不可得。
大壮の卦が節の卦に変わる。四面皆な墻壁にして門戸なく、歩三步走れば一停しなければならず。東西南北何れの辺に於いても、利益皆得る能わず。この林は四面壅塞、寸步行くこと難く、利を謀るに門なし、凶である。
中孚:求君衣裳,情不可當。觸諱西行,為伯生殃。君之上安,得生安存。
大壮の卦が中孚の卦に変わる。主君に衣裳を求取するは、情面上実に承け難し。忌諱を触犯して西に行き、伯氏に禍殃を惹出す。所幸主君は上に在りて安穏にして、自身も亦た生存を保全するを得たり。この林は干求忌を犯して他人を連累するを主とし、上位者の庇護に賴りて方に事なきを得。
小過:春鴻飛東,以馬貨金,利可得深。
大壮の卦が小過の卦に変わる。春の鴻雁は東に飛び去る。馬匹を以て黄金に換え、厚利を獲る可し。この林は時に順い動き、物を以て財を易え、獲利豊厚を主とし、吉である。
既濟:禾生蟲蠹,還自克賊,使我無得。
大壮の卦が既済の卦に変わる。禾苗に蛀虫生じ、反って自身を残害し、我をして一物も得ざらしむ。この林は内部蠹を生じ、自ら根本を傷し、収成落空するを主とし、凶である。
未濟:桀亂無道,民散不聚。背室之家,遁迯出走。
大壮の卦が未済の卦に変わる。夏桀昏乱無道にして、百姓離散して聚める能わず。家室を背弃する人家、紛紛として逃遁出走す。この林は上道なくして衆叛親離れ、人口流亡するを主とし、大凶である。
晋の林(晋卦六十四林)
晉:銷鋒鑄耜,休牛放馬。甲兵解散,夫婦相保。
晋の卦が自ら変じても晋の卦のままである。兵器の鋒刃を熔し改めて犂耜に鋳て、牛を歇め馬を放帰す。甲士兵卒解散して家に帰り、夫妻相守り保全するを得たり。歸馬放牛は《尚書・武成》に見る。この林は武を偃め文を修め、兵を化して農と為し、家室団圓を主とし、大吉である。
乾:一衣三冠,冠無所絆。衣服不成,為身災患。
晋の卦が乾の卦に変わる。只だ一件の衣裳有るのみにして三頂の帽子を配し、帽子には又た絆ぐ可き繋帯なし。衣服樣子を成さず、反って自身の災患と為れり。この林は名実称わず、器用斉わず、巧を弄して拙と成るを主とし、凶である。
坤:百足俱行,相輔為強。三聖翼事,王室寵光。
晋の卦が坤の卦に変わる。百足の虫衆足斉しく動き、彼此扶持して強健を顕す。三位の聖人は共同で国事を輔翼し、王室此れによって栄寵光耀せり。この林は協力同心、賢佐朝に在り、門庭輝を生ずるを主とし、大吉である。
屯:魚蛇之恠,大人憂懼。梁君好城,失其安居。
晋の卦が屯の卦に変わる。魚と蛇の類の怪異出現し、大人之れが為に憂愁畏懼す。梁国の君は一味に好大喜功して城を築き、反って安居の所を失えり。この林は妖異警を示し、民を労して役を興し、居処安ならざるを主とし、凶である。
蒙:少無強輔,長不見母。勞心遠思,自傷憂苦。
晋の卦が蒙の卦に変わる。年少の時強力の依靠なく、長成の後又た母親を見ず。遠方に於いて心を労し思を苦しめ、独自感傷憂苦す。この林は孤立無援、母子分離し、憂思自ら傷むを主とし、凶である。
需:前不溽暑,解不可取。離門二里,敗我利市。老牛病馬,去之何悔。
晋の卦が需の卦に変わる。眼前未だ湿熱の暑天に至らず、解除せんと欲するも下手すべき処なし。家門を離るること纔かに二里路にして、我が好い買売を壊せり。老牛病馬の類の累贅は、之を売却するに又何の后悔かあらん。この林は時機未だ至らず、近処に失利し、宜しく果断に無用の物を捨棄すべし。
訟:君明有德,登天大祿。佈政施惠,以成恩福。中子南遊,翱翔未復。
晋の卦が訟の卦に変わる。君主賢明にして徳有り、禄位高く天に登る。政令を頒布し恩惠を広く施して、恩沢と福気を成就せり。只だ次子南に游びて外に在り、盤桓翱翔して未だ帰らず。この林は上に明主有り、恩福広く被るを主とし、唯だ家中の子弟遠游して未だ帰らず、吉中に念を帯ぶ。
師:嘵然唯諾,敬上尊客。執恭除患,禦侮致福。
晋の卦が師の卦に変わる。恭恭敬敬として声を連ねて応諾し、上級を敬重し賓客を尊礼す。恭謹を持守すれば即ち禍患を除去する能く、外侮を抵禦すれば即ち福気を招来する能し。この林は謙恭有禮、内外周全にして、禍を避け福を得るを主とし、吉である。
比:黍稷禾稻,垂秀方造。中旱不雨,傷風病槁。
晋の卦が比の卦に変わる。黍・稷・禾・稻は正に穗を抽き秀を吐く。中途に乾旱に遇いて雨降らず、又た風に吹傷せられて枯槁成病せり。この林は莊稼將に熟せんとして旱風に遇い、功垂成に敗るを主とし、凶である。
小畜:三羸六罷,不能越跪。東賈失馬,往反勞苦。
晋の卦が小畜の卦に変わる。三分瘦弱、六分疲憊にして、一歩を跨ぎ一跪するも能わず。東辺に経商に往きて又た馬を失い、来返奔波して徒らに労苦す。この林は力疲れ体弱く、経営折損し、往返功なし、凶である。
履:倚立相望,引衣欲裝。陰雲蔽日,暴雨降集。使道不通,阻我歡會。
晋の卦が履の卦に変わる。門に倚りて立ちて相互に張望し、衣裳を牽起して装を整え路に上らんと欲す。陰雲太陽を遮住し、暴雨傾盆して下る。道路此れによって通ぜず、我が歓聚の約を阻断せり。この林は行に臨みて雨に遇い阻まれ、佳期錯過するを主とし、不吉である。
泰:高腳疾步,受肩喜趨。日走千里,賈市有得。
晋の卦が泰の卦に変わる。腿腳高長にして步子飛快、肩上に貨物を担ぎても奔走を楽しむ。一日千里を走る能く、買売を為して大いに得る所有り。この林は行動敏捷、奔走に勤しみ、経商利を獲るを主とし、吉である。
否:北風寒涼,雨雪盈冰。憂思不樂,哀悲傷心。
晋の卦が否の卦に変わる。北風寒冷凄凉にして、雨雪落下して堅冰を積成す。憂思重重にして快楽せず、哀傷悲痛して人心を砕く。北風其涼、雨雪其雱は《詩経・邶風・北風》に出る。この林は寒気人を逼り、憂愁苦悶し、心境悲涼を主とし、凶である。
同人:貞鳥雎鳩,執一無尤。寢門治理,君子悅喜。
晋の卦が同人の卦に変わる。貞潔の雎鳩鳥は、専一不二にして過失なし。内室の門治理方有りて、君子此れによって歓悦欣喜す。關雎は后妃の徳を詠ず、《詩経・周南・關雎》に見る。この林は夫婦専一、内治整粛にして、家道和楽を主とし、大吉である。
大有:蓼蕭露瀼,君子寵光。鳴鸞噰噰,福祿來同。
晋の卦が大有の卦に変わる。蓼蕭の上の露水濃重にして、君子恩寵の光輝を承受す。鸞鈴噰噰として鳴り、福と禄倶に来れり。語は《詩経・小雅・蓼蕭》に本づく。この林は上の恩寵を得、禄位並び臨むを主とし、大吉である。
謙:南行求福,與喜相得。受封上賞,鼎足輔國。咸之恆同。
晋の卦が謙の卦に変わる。南辺に往きて福を求め、正に喜事と相遇す。封を受けて上等の賞賜を領し、鼎の三足の如く國家を輔佐す。校語に此の条は「咸之恒」の一林と相同じと。この林は南行して喜に遇い、封賞身に加えられ、位は輔弼に居るを主とし、大吉である。
豫:桑華腐蠹,衣敝如絡。女功不成,絲布為玉。
晋の卦が豫の卦に変わる。桑葉花朵虫に蛀壊せられ、衣裳破爛して一張の網の如し。女紅成らず、絲と布反って玉の如く貴し。この林は蚕桑害を受け、紡織成らず、衣料騰貴するを主とし、凶である。
隨:左服易右,王良心歡,喜利從己。
晋の卦が随の卦に変わる。左辺の服馬を右辺に換え、王良車を駕して心中歓喜し、喜慶と利益倶に己に随う。王良は古の車を駕るを善くする人。この林は調度宜を得、駕馭方有り、喜利自ら随うを主とし、吉である。
蠱:壽考不忘,駕駟東行。三適陳宋,南賈楚荊。得利息長,旅身多罷。畏晝喜夜。
晋の卦が蠱の卦に変わる。長寿にして旧徳を忘れず、四馬の車を駕して東に行く。三たび陳・宋に往き、又た南に下りて楚荆一帯に経商す。獲利生息増長するも、只だ旅途中身は十分に疲憊し、白昼の赶路を怕れて夜行を喜ぶ。この林は遠く賈して多く厚利を得るも、然れど奔波労苦す、吉中に苦を含む。
臨:羔羊皮弁,君子朝服。輔政扶德,以合萬國。
晋の卦が臨の卦に変わる。羔羊皮の作れる皮弁は、君子の朝に上るの礼服なり。之を穿きて朝政を辅助し徳義を扶持して、万国をして和合に帰せしむ。皮弁服は古代朝会の服。この林は官に居りて礼を守り、徳を以て政を輔け、四方を協和するを主とし、大吉である。
觀:鸇鳩徙巢,西至平州。遭逢雷電,破全葦蘆。室家飢寒,思吾故初。全一作我。(咸之隨同)
晋の卦が観の卦に変わる。鸇鳥と斑鳩は巢穴を遷移し、西に往きて平州に到る。途中雷電に遭遇し、整片の葦蘆の窩を撃破せり。一家人飢寒交迫して、只だ当初の旧居を懐念するのみ。校語に「全」の字は一に「我」と作り、此の条は「咸之随」の一林と相同じと。この林は遷徙して災に遭い、家園天変に毀られ、飢寒して旧を思うを主とし、凶である。
噬嗑:大尾小頭,重不可搖。上弱下強,陰制其雄。(咸之坎同)
晋の卦が噬嗑の卦に変わる。尾大きくして頭小さく、沉重にして揺撼する能わず。上に居る者衰弱し、下に在る者強横にして、陰柔の一方雄強を圧制せり。校語に此の条は「咸之坎」の一林と相同じと。尾大不掉は《左伝・昭公十一年》に出る。この林は本末倒置、下強く上弱く、事を主とる者制せらるるを主とし、凶である。
賁:疏足息肩,有所忌難。金城銅郭,以鐵為關。藩屏自衛,安心無患。
晋の卦が賁の卦に変わる。双脚を分かち肩上の担子を卸すは、顧忌為難する所有ればなり。金鑄の城、銅築の郭、鉄を以て関門を成す。屏障を築きて自ら防衛し、心を安んぜれば禍患なし。この林は行動暫く止み、堅に憑りて自ら守るを主とし、心安く事なし、守れば則ち吉を得。
剝:天命元鳥,下生大商。造定四表,享國久長。
晋の卦が剥の卦に変わる。上天の命令玄鳥に降りて、偉大の商朝を生出せしむ。四方の辺際を開創安定し、国祚長久を享有す。天命玄鳥、降而生商は《詩経・商頌・玄鳥》に出る。この林は命を受けて興り、基を開き業を立て、国祚綿長を主とし、大吉である。
復:賦斂重數,政為民賊。杼軸空虛,我去其室。
晋の卦が復の卦に変わる。賦税征斂既に重く又た頻りにして、政令は百姓を残害する禍賊と為れり。織機の上の杼軸空空如として、我只好く己が屋を離る。杼柚其空は《詩経・小雅・大東》に出る。この林は苛政民を剥し、家資耗盡し、迫られて流離するを主とし、凶である。
旡妄:陰陽隔塞,許嫁不答。宛丘新臺,悔往嘆息。
晋の卦が旡妄の卦に変わる。陰陽隔絶壅塞して、婚約を許すも回音を得ず。《陳風・宛丘》の譏る所の游荡、《邶風・新台》の刺る所の丑事の如く、前往の後只だ悔恨嘆息あるのみ。この林は男女阻隔、婚事諧せず、行けば必ず悔有るを主とし、凶である。
大畜:願望登虛,意常欲迯。賈辛丑惡,妻不安夫。
晋の卦が大畜の卦に変わる。心願空に落ち、念頭に總は逃開せんことを想う。賈辛容貌醜陋にして、妻子丈夫の身辺に住みて安穏ならず。賈辛の貌惡は《左伝・昭公二十八年》に見る。この林は願う所空と成り、夫婦相安んぜず、家室心を離るるを主とし、凶である。
頤:踄行竊視,有所畏避。蔽目伏藏,以夜為利。
晋の卦が頤の卦に変わる。手蹑り足蹑りに走り、偷偷に張望して、心の内に畏懼躲避する所有り。眼を遮りて身を伏せ蔵匿し、夜色を以て有利の時機と為す。この林は事を行いて光を見る能わず、只だ潜蔵暗行に宜しく、明るき処利あらざるを主とす。
大過:信敏恭謙,敬鬼尊神。五嶽四瀆,克厭帝心。受福宜年。
晋の卦が大過の卦に変わる。誠信勤敏、恭敬謙遜にして、鬼神を敬奉す。五岳四瀆を祭祀して、上帝の心意に合すること能し。因って福沢を承受し、年成も亦た好し。厭は饜と読みて、称心合意の意。この林は敬慎にして徳を修め、祀典闕なく、天福年を賜るを主とし、大吉である。
坎:懸懸南海,去家萬里。飛兔腰褭。一日見母,除我憂悔。
晋の卦が坎の卦に変わる。心は南海に懸り、家を離るること万里の遥か有り。幸いに飛兎、腰褭のごとき駿馬有りて、一日の内に便ち母親を見え、我が憂愁悔恨を除去せり。飛兎、腰褭は皆な古書の載する所の良馬名。この林は千里を遠隔するも速やかに帰りて親を見るを得、憂解け事順うを主とし、吉である。
離:雖汙不辱,因何跣足。童子褰衣,五步平復。
晋の卦が離の卦に変わる。污泥に沾れたりと雖も辱を受けたとは算えず、又何ぞ必ずしも赤脚せん。童子衣裳を提起して、五步を走上すれば即ち如常に恢復す。この林は小さく汚損有るも大体を傷めず、稍やかに整頓すれば即ち復原すべく、過咎なし。
咸:宮城立見,衣就袂裾。恭謙自衛,終無禍尤。
晋の卦が咸の卦に変わる。宮城転眼の間に眼前に在り、衣裳を整好し袖口と衣襟を理正す。恭敬謙遜を以て自身を護衛すれば、終に禍患過失なし。この林は覲見に礼有り、恭謹に自ら持し、保て咎なき可し、吉である。
恆:敝笱在梁,不能得魚。望食千里,所至空虛。
晋の卦が恒の卦に変わる。破れた魚簍を魚梁に擺せば、一條の魚も捕えず。千里之外を望みて食を求めるも、到る所皆な空空如たり。敝笱在梁は《詩経・斉風・敝笱》に出る。この林は器具敗壊、圖む所落空し、遠く求めて獲なし、凶である。
遯:千里騂駒,為王服車。嘉其驪榮,君子有成。
晋の卦が遯の卦に変わる。日に千里を行く赤色の馬駒は、君王の為に車を駕す。其の黑亮の鬃毛と光彩を嘉許して、君子此れによって成就有り。この林は良才用を見、主の賞識を得、事業成る有りを主とし、大吉である。
大壯:鼎足承德,嘉謀生福。為王開庭,得心所欲。
晋の卦が大壮の卦に変わる。三公は鼎足の如く徳政を承担し、美好の謀劃福気を生出す。君王の為に朝堂を開闢し、求むる所皆な心に称う。この林は輔臣得力、謀議中を肯し、事事心に遂うを主とし、大吉である。
明夷:右手無合,獨折左指。禹湯失位,事功弗立。
晋の卦が明夷の卦に変わる。右手攏め合わす能わず、単々左手の指頭を折断す。禹・湯のごとき聖王も位を失い、事業功勲建てるべき処なし。この林は肢体損を受け、才具全からず、縦い聖徳有るも亦た事を成し難し、凶である。
家人:憂凶增累,患近不解。心西意東,事無成功。
晋の卦が家人の卦に変わる。憂愁凶険層層に累加し、禍患眼前に近くして解けず。心思西に往き意念東に走り、事一件も办成る能わず。この林は内憂外患交わり迫り、心志分裂して、諸事成らざるを主とし、凶である。
睽:東行食榆,困於枯株。夫妻無家,志窮為憂。
晋の卦が睽の卦に変わる。東に行きて只だ榆樹の皮を食して飢に充つるのみ、枯樹樁の傍らに被困せり。夫妻安身の家なく、志向窮盡して憂愁を生ず。この林は飢困して食なく、居るに定所なく、夫妻同じく愁うを主とし、凶である。
蹇:五經六紀,仁道所在。正月繁霜,獨不離咎。
晋の卦が蹇の卦に変わる。五經六紀の載する所は、正に是れ仁道の在る所なり。然れど正月に就いて繁霜下れば、独り災咎を躲開する能わず。正月繁霜は《詩経・小雅・正月》に出る、是れ時を傷み世を刺るの作。この林は仁道を守ると雖も時に天変に逢い、賢者も仍お咎を受くるを免れ難し、吉中に凶を帯ぶ。
解:懈緩不前,怠墮失便。二至之戒,家無禍凶。刻木象形,聞言不信。
晋の卦が解の卦に変わる。鬆懈遅緩にして前進せず、怠惰堕落して便利を錯過す。若し冬至夏至に閉関静養の戒を守る能わば、家中便ち禍凶なし。至りて木頭を刻みて人形を作りて事を問うは、是れ聞くも信ずるに足らざるなり。二至閉關は《周易・復》の大象に本づく。この林は怠惰事を誤るを主とし、宜しく時節に依りて安分自守し、虚妄の説を信ずる勿かれ。
損:仁愛篤厚,不以所忿,害其所子。徙我舊都,日益富有。
晋の卦が損の卦に変わる。仁愛篤実厚道にして、一時の忿怒に因りて己が愛する子弟を傷害せず。旧都を遷離して別に新居を擇べば、家道一日日に富有す。この林は忿気を克制し、骨肉を厚く待い、居を遷して利を得、日漸殷富するを主とし、大吉である。
益:缺破不成,胎卵未生,弗見兆形。
晋の卦が益の卦に変わる。殘缺破損すれば便ち器を成す能わず、胎孕まず卵生まず、連れて一点の徵兆形迹も看見えず。この林は根基殘缺、孕育成らず、事を謀るに毫も端倪なし、凶である。
夬:摧角不傷,雖折復長。秉德無愆,老賴榮光。
晋の卦が夬の卦に変わる。角は摧折せられたりと雖も本身を傷めず、断ちても還た重新に生出す。徳行を秉持して過失なく、年老いても仍お榮光を享有す。この林は小挫根本を礙ぐることなく、損して復た得、徳を守る者は晩歳光栄なり、吉である。
姤:乘桴浮海,免脫厄中,雖困無凶。
晋の卦が姤の卦に変わる。木筏に乗りて海上に漂浮し、困厄の中より脱身して出づ。処境艱難と雖も凶险なし。乘桴浮於海は《論語・公冶長》の孔子の歎に出る。この林は世を避け遠行して困を脱するを主とし、身は困頓と雖も大害なし。
萃:孔鸞鴛雛,鴞鸃鵜鴣,翱翔紫淵。嘉禾之國,君子以說。
晋の卦が萃の卦に変わる。孔雀、鸞鳥、鴛雛、又た鴞鸃、鵜鴣は、一同に紫色の深淵の上に翱翔す。嘉禾を出産する邦国の内に於て、君子此れによって喜悦す。嘉禾は古人の最も重んずる祥瑞の一。この林は群賢畢集、祥瑞並び現れ、君子歓欣するを主とし、大吉である。
升:甘露溫潤,眾來得願。樂易君子,不逢禍亂。
晋の卦が升の卦に変わる。甘露温和滋潤にして、衆人前来するも皆な願の如し。和楽平易の君子は、禍乱に遇わず。楽只君子は《詩経・小雅・南山有台》に出る。この林は恩沢普く沾わり、衆望得て遂い、平和の人は禍患に遠ざかるを主とし、大吉である。
困:東騎墮落,千里獨宿。高岸為谷,陽失其室。
晋の卦が困の卦に変わる。東に往きて馬に騎るも馬上より摔下し、千里を走りて只だ独自投宿するを得ざりき。高き堤岸塌れて深谷と為り、陽気其の居所を失えり。高岸為谷は《詩経・小雅・十月之交》に出る。この林は行途顚仆、地勢劇変し、陽衰えて位を失うを主とし、凶である。
井:入村既登,以成嘉功。尨降庭堅,國無災凶。
晋の卦が井の卦に変わる。村荘に入りて又た高処に登り、美好の功業を成就せり。尨降、庭堅のごとき賢人朝に在りて、国中災禍凶険なし。庭堅は八凱の一、《左伝・文公十八年》に見る。この林は進取成り有り、賢者國を輔け、境内災なきを主とし、大吉である。
革:邯鄲反言,父兄生患。竟涉憂恨,卒死不還。
晋の卦が革の卦に変わる。邯鄲に在りて反覆無常の話を説き、父親兄長此れによって禍患を生出せり。一路跋涉尽く憂愁怨恨にして、最終に外に死して家に帰る能わざりき。この林は言語反覆して禍を招き、尊親を連累し、他郷に客死するを主とし、大凶である。
鼎:玉銳鐵頤,倉庫空虛。賈市無盈,興利為仇。
晋の卦が鼎の卦に変わる。玉の作れる鋒刃、鉄の鋳れる下巴は、皆な中に看るも中に用ゐざるの物なり。倉庫空空蕩蕩として、買売を為すも盈餘なく、本より利を興さんと欲するも反って仇怨を結ぶ。この林は外強く中干き、家資匱乏し、利を謀りて怨を招くを主とし、凶である。
震:白鳥御餌,鳴呼其子。施枝張翅,來從其母。
晋の卦が震の卦に変わる。白鳥食餌を銜みて、鳴叫して己が幼雛を呼ぶ。幼鳥枝を離れ翅膀を張り、飛来りて母親に随う。この林は慈親哺育、子女来りて帰り、家人相聚まるを主とし、吉である。
艮:學靈三年,聖且神明。先見善祥,吉盛福慶。神馬來見,告我無憂。
晋の卦が艮の卦に変わる。靈異の術を学習すること三年にして、聖明にして神に通ずるの地步に達す。能く預め吉祥の徵兆を見、吉慶豊盛、福沢綿長なり。神馬前来りて相見え、我に憂うる勿れと告ぐ。この林は修習成り有り、先先を知り覚り、祥瑞降臨するを主とし、大吉である。
漸:雲孽蒸起,失其道理。傷害年穀,神君之精。
晋の卦が漸の卦に変わる。妖異の雲気蒸騰して起り、応有の常理を失えり。一年の穀物を損傷せるは、此れ神君の気の致す所なり。この林は天象反常、莊稼損を受け、鬼神警を示すを主とし、凶である。
歸妹:春耕有息,利入利福。獻 大豵,以樂成功。(大疑當作私)
晋の卦が帰妹の卦に変わる。春天耕種して収成有り、利益門に入り福気到来す。大小の猪豕を献上し、以て成功を歓慶す。校語に「大」の字は疑うらく「私」と作るべしと、《詩経・豳風・七月》は正に「言私其豵、献豣于公」の句有り。この林は農事獲有り、祭享礼を成し、功を慶して福を得るを主とし、大吉である。
豐:羸豕躑躅,虎來都邑。遮遏左右,國門敕急。
晋の卦が豊の卦に変わる。瘦弱の猪徘徊して前せず、老虎は却って都城に闖入せり。左右皆な堵截せられ、城門令を下して緊急戒厳す。羸豕孚蹢躅は《周易・姤》の初六に出る。この林は弱者其の位に安んぜず、猛悪境に入り、四面急を告ぐるを主とし、凶である。
旅:東行西維,南北善迷。逐旅失群,亡我襦衣。
晋の卦が旅の卦に変わる。東に走りて又た西に纜を繋ぎ、南北方向最も迷失し易し。旅伴に追随するも隊を掉ち、還た我が短衣を失えり。この林は方向定まらず、群を離れ伴を失い、行旅折損するを主とし、凶である。
巽:居室之倫,夫婦和親。小人乘車,車在夫家。碩果失豢,不知孰是。
晋の卦が巽の卦に変わる。一家人の倫常は、夫妻和睦相親するに在り。地位低下の人は車に乗れたりと雖も、而して車は本より丈夫家の所有なり。大きな果実養護を失い、誰が是で誰が非かも亦た弄清楚ず。碩果不食は《周易・剥》の上九に出る。この林は内室本より和順に宜しきも、然れど名分錯乱し是非明らかに難く、吉中に疑を生ず。
兌:東方孟春,乘冰載盆。懼危不安,終身所歡。
晋の卦が兌の卦に変わる。東方孟春の時節、薄冰を踩み又た盆子を頂きて行走す。心中恐懼危険にして安寧を得ざれど、此の戒慎は反って終身歓楽の憑借と為れり。この林は処境危殆を主とし、唯だ常に戒懼を懐くのみ方に平安を長保する能し、懼れて後安んず。
渙:風吹塵起,十地無所。南國年傷,不可安處。
晋の卦が渙の卦に変わる。大風塵土を吹起して、四方の大地倶に容身すべき処なし。南方の邦国年成損を受け、安居する法なし。この林は風塵日を蔽い、歳歉して民流れ、居処寧ならざるを主とし、凶である。
節:重載傷車,婦女無夫。三十不室,獨坐空廬。
晋の卦が節の卦に変わる。裝載太重にして車子を壓壞し、婦人に丈夫なし。三十歳に到るも未だ家を成さず、独自空屋の中に坐す。この林は負荷過重にして器毀れ、婚姻遅滞し、孤身伴なきを主とし、凶である。
中孚:敗牛羸馬,與利為市,不我嘉喜。
晋の卦が中孚の卦に変わる。病牛瘦馬を拿して交易して利を求めるも、我が盼望する歓喜を換え来れず。この林は貨色低劣、交易失利し、求むる所遂わざるを主とし、不吉である。
小過:月出阜東,山蔽其明。章父憂僂,箕子徉狂。
晋の卦が小過の卦に変わる。月亮は東辺の土山より升起するも、山巒却って其の光明を遮住せり。章父は駝背を為に憂愁し、箕子只好く疯狂を假裝せり。箕子の佯狂して禍を避くるは《史記・宋微子世家》に見る。この林は賢者蔽われ、明にして彰らざるを主とし、唯だ痴を裝い自ら晦して以て身を保つのみ。
既濟:出入門所,欲道開通。杞梁之信,不失日中。少季渡江,來歸其邦。疾病危亡。
晋の卦が既済の卦に変わる。自家の門戸に出入し、只だ道路の開通せんことを盼ぐ。杞梁のごとき守信の人は、正午に約せば便ち決して期を失わず。少季大江を渡りて、己が邦国に帰る。只だ身に疾病有りて性命に危る。この林は信を守り期の如くし、遠人帰るを得るを主とし、然れど疾病身に纏い、吉中に大凶を蔵す。
未濟:邑居衛師,如轉蓬時,居之凶危。
晋の卦が未済の卦に変わる。衛国の軍を駐する城邑に住み、風に随いて打転る蓬草の如く漂泊定まらず、居留するは凶险危殆なり。轉蓬は古人の漂泊無根を形容する常喻。この林は兵戎の地に寄居し、居るに定所なく、処れば必ず危うきを主とし、凶である。
明夷の林(明夷卦六十四林)
明夷:他山之錯,與璆為仇。來攻吾城,傷我肌膚。邦家騷憂。
明夷の卦が自ら変じても明夷の卦のままである。他郷の山より採り来たる粗礪の磨石は、本より美玉を琢磨するに用いるべきに、如今反って美玉と仇敵を結び、来りて我が城邑を攻打し、我が肌膚を划破し、邦国上下をして騒動憂懼せしめたり。《詩経・小雅・鶴鳴》に「他山之石、可以攻玉」の語有り、本より外力を借りて以て己の善を成すを喻うも、此処は反って其の意を用い、本より倚重すべき外援が反って禍患と為るを指す。主とする所は外侮内扰の象、宜しく壁を堅くして自ら守り、軽挙妄動すべからず。
乾:踐履寒冰,十步九尋。惟有苦痛,不為病憂。
明夷の卦が乾の卦に変わる。足は薄薄たる寒冰を踏みて行走し、十歩を走るに九次深浅を探摸し、歩歩小心す。此のごとき走法は苦楚難当と雖も、終に只だ筋骨の労頓なるのみ、疾病の憂を醸成するに至らず。主とする所は険に処りて自ら保つ能くの象、過程辛苦なれど結局傷なし。
坤:太公避紂,七十隱處。卒逢聖文,為王室輔。
明夷の卦が坤の卦に変わる。姜太公呂尚は商紂の暴政を避くるが為に、渭水の濱に隠居して垂釣し、年七十を過ぐも仍お仕に出るを肯ぜず。後に終に聖明の周文王に遇い、師尚父と尊ばれ、周王室の輔弼重臣と為れり。此れは《史記・斉太公世家》の載する所の文王渭濱に呂尚に遇うの事を用う。主とする所は久しく困えりて終に明主に逢うの象、眼下は宜しく隠忍して時を待ち、晩来必ず大用を獲ん。
屯:日月之塗,所行必到,無有患悔。
明夷の卦が屯の卦に変わる。走る所は日月運行のごとき恒常有度の軌道にして、只だ此の路に循りて前行すれば、目的地必定にして到達する能く、途中憂患を生ぜず、事後も懊悔を留めず。主とする所は正道に循りて穏妥にして必ず成るの象、吉である。
蒙:諷德誦功,美風盛隆。旦輔成周,光濟沖人。
明夷の卦が蒙の卦に変わる。人人上に在る者の徳行と功業を傳誦し、美好の風気此れによって昌盛隆厚なり。周公旦は年幼の成王を輔佐し、成周洛邑を営建し、周室を光大して幼主を扶助せり。「沖人」は即ち幼小の君、是れ成王の自ら称する所、《尚書・金縢》諸篇に見る。主とする所は賢臣幼主を佐え、政通じ人和するの象、大吉である。
需:童子無室,未有配合,空坐獨宿。
明夷の卦が需の卦に変わる。年少の男子未だ家を成さず、相配すべき伴侶を尋ね得ず、只だ空しく一室を守り、独自に夜を過ぐすのみ。主とする所は時機未だ至らず、孤单にして偶を待つの象、求むる事眼下に応和する人なく、宜しく安分にして等待し、必ずしも強求する勿れ。
訟:穿鼻繫株,為虎所拘。王母祝祠,禍不成災。遂然脫來。(祠一作詞)
明夷の卦が訟の卦に変わる。牛は鼻縄を穿たれて樹樁に拴られて動く能わず、又た猛虎に圍困せられたり。幸いに西王母之が為に祝禱祠祭し、凶禍終に災殃を釀成せず、最後に竟に安然として脱身して帰れり。主とする所は身拘系に陷りて神霊の護佑を得るの象、初めは凶险にして制せらるも、終に危を轉じて安と為す能し。夾注に「祠」は一本に「詞」と作ると称す、即ち祝禱の辞。
師:黃帝神明,八子聖聰。佚受大福,天下平康。
明夷の卦が師の卦に変わる。黄帝英明神武にして、其の衆多の子嗣個個に聖哲聡睿なり。天下此れによって大福を安享し、四海平定康寧す。伝えて黄帝二十五子、姓を得る者十四人、《國語・晋語》に見る。主とする所は上に明主有り、下に賢嗣有り、国安泰を挙ぐの象、大吉である。
比:深谷為陵,衰者復興。亂傾之國,民德安息。中婦病困,遂入冥室。
明夷の卦が比の卦に変わる。深深たる山谷隆起して丘陵と変じ、本已に衰敗せるは重新に振興す。原先動乱傾覆せし國家も、百姓も亦た徳政に因りて安息を得たり。「高岸為谷、深谷為陵」は《詩経・小雅・十月之交》に出る、世事の翻覆を喻う。只だ家中の主婦病重困頓にして、終に挺り過ぐる能わず、幽冥の墓室に入れり。主とする所は国運転じて吉に向かい私門に喪有るの象、公事成る可し、家中は須らく疾病を防ぐべし。
小畜:道遠遼絕,路宿多悔。頑嚚相聚,生我畏忌。
明夷の卦が小畜の卦に変わる。前路遥遠にして阻絶し、途中投宿する處處に人をして懊悔せしむ。一路上遇う所は又た尽く頑劣愚妄の徒が一處に聚まり、人をして心に畏懼顧忌を生ぜしむ。「頑嚚」は《尚書・堯典》の「父頑母嚚」に出る、事理を明らめず信義を講ぜざる人を指す。主とする所は遠行利あらず、交る所其の人に非ざるの象、門を出でて遠く渉るに宜しからず。
履:旦樹菽豆,暮成藿羹。心之所樂,志快心歡。
明夷の卦が履の卦に変わる。早晨に豆苗を種え、傍晚に就いて豆葉を摘みて菜羹に煮る、収成の来ること又た快く又た実在り。此れ本より己が心の喜び好む所の事を為すにして、因って志気舒暢にして、歓喜心に満つ。主とする所は謀るに速効を求め、心に称い意に如くの象、吉である。
泰:切切之患,凶憂不成。虎不敢囓,利當我身。
明夷の卦が泰の卦に変わる。彼の眉睫に迫る切身の憂患は、最終に並びに真の凶险を釀成せず。猛虎を連ねても敢えて口を下し噬咬せず、好処は反って我が身に落ち着く。主とする所は驚有りて険なし、憂を轉じて利と為すの象、虚驚一場して終に実恵を得。
否:王伯遠宿,長婦在室。異庖待食,所求不得。
明夷の卦が否の卦に変わる。王侯の長は遠行して外に投宿し、家中の長婦は独り空房を守る。両處各々竈爨を起し、分かれて飯の開くを待つも、欲する団聚は終に求めて得ず。主とする所は人事離析、求むる所落空するの象、凶である、事を謀るは宜しく緩く、合を求めて成り難し。
同人:寒燠失時,陽旱為災,雖耗無憂。
明夷の卦が同人の卦に変わる。寒冷と温暖顛倒して序を失い、節候正ならず、烈日久旱して災荒を釀成す。此れに因って折損耗費有ると雖も、却って大なる憂患を招来するに至らず。主とする所は小損にして大害なきの象、財を破りて災を消し、平安を保つ可し。
大有:雖窮復通,履危不凶,得其明功。
明夷の卦が大有の卦に変わる。眼下困窘阻塞と雖も、隨後重新に通達す。危険の地に踏み入るも凶禍を招致せず、反って顕赫の功業を成就する能し。主とする所は先に困えりて後に亨り、険を履みて夷の如しの象、吉である。
謙:狼虎所宅,不可以居,為我患憂。
明夷の卦が謙の卦に変わる。彼処は豺狼猛虎の盤踞する巢穴にして、決して人の安身すべき地方に非ず、勉强して住み下すれば只だ自らに憂患を招来せん。主とする所は地に処ること当ならず、居を擇ぶに宜を失せしの象、凶である、宜しく速やかに遷避し、久しく留まるべからず。
豫:喋囁處耀,明昧相傳。多言少實,語無成事。
明夷の卦が豫の卦に変わる。頭を交え耳を接し、窃窃と私議する人は四處に張揚し、真話假話展転相伝し、明暗混雑す。話の多きこと実事の極めて少なきにして、終に一件の事も办成る能わず。主とする所は口舌紛紜、虚言事を誤るの象、宜しく言を慎み默を守り、伝聞を軽信すべからず。
隨:履冰蹈凌,雖困不窮。播鼓登巖,卒無憂凶。
明夷の卦が随の卦に変わる。足は薄冰を踏み、堅硬の冰凌の上を行走す。処境困頓と雖も走頭无路に至らず。鼓を撃ちて道を開き高岩に攀登して、最終も亦た憂患凶险に遇わざりき。主とする所は険を渉りて自ら全うする能くの象、艱難の中に自ずから護持有りて、終に平安に帰す。
蠱:文墨且墨,禍福相雜。南北失志,東西不得。(一云:文墨且黑,禍福相雜。)
明夷の卦が蠱の卦に変わる。文書筆墨昏暗不明にして、吉凶禍福一處に混雑して分辨し難し。南に往き北に往きても倶に心願に合わず、東に向かい西に向かうも一物の獲もなし。主とする所は進退両難、吉凶未だ定まらざるの象、事を謀るに宜しく静守して明を待ち、四出奔走すべからず。夾注に一本を載せて「文墨且黑」と作り、字異なれど義同じとす。
臨:爭訟不已,更相談詢。張季弱口,被髮北走。
明夷の卦が臨の卦に変わる。官司争執休まず、両造反覆して対質盤問す。張季口拙く辞窮まりて、答辩及ばず、最後に披頭散髪して北に逃走せり。主とする所は詞訟利あらざるの象、人と争競すれば必ず敗訴受辱に致る、宜しく早く訟を息め和を求むべし。
觀:德積逢時,宜其美才。相明輔聖,拜受福休。長女不嫁,後為大悔。
明夷の卦が観の卦に変わる。徳行積累深厚にして又た恰好其の時に逢い、正に其の美好の才具に配するに足る。明君を輔相し聖主を佐助して、官爵と美好の福禄を拜受す。只だ家中の長女遅遅として嫁するを肯ぜず、日后必ず大憾と成らん。主とする所は仕途大吉にして婚嫁宜しく早きの象、功名就る可し、兒女の婚事は拖延すべからず。
噬嗑:江水沱汜,思附君子。仲氏愛歸,不我肯顧。侄娣恨悔。
明夷の卦が噬嗑の卦に変わる。大江は沱・汜の两條の支流を分かち、終に還た主流に匯り帰る、正に女子の一心に君子に依附せんと思念するが如し。「江有汜」は《詩経・召南・江有汜》に出る、本より媵妾の被弃の怨を詠ず。仲氏寵愛を承けて帰ると雖も、肯えて回頭して我を照看せず、随嫁の侄娣は只だ満懐の怨恨懊悔を落とすのみ。主とする所は情縁偏薄、人に見弃せらるるの象、凶である。
賁:光禮春成,陳室雞鳴。師明失道,不能自守。消亡為咎。
明夷の卦が賁の卦に変わる。春天の典礼光彩隆重に办められ、陳国の宮室には暁を報ずる鶏鳴の声声不断に絶えず、「鶏鳴」は《詩経・斉風・鶏鳴》の賢妃夫を警めて政に勤むの意を用う。惜しむらくは軍旅精明を顕すと雖も正道に背離し、己が本分を守る能わず、終に消亡して大咎と成るに至れり。主とする所は始め盛んにして終に敗るるの象、外表光鮮にして内其の守りを失う、凶である。
剝:驚虎無患,虞為我言,賴得以安。
明夷の卦が剥の卦に変わる。途中猛虎の驚嚇を受けたれど禍患を釀成せず、山沢を掌る虞人我が為に通報指點し、其の助けに頼って始めて平安を得たり。「虞」は《周礼》の載する所の山林川沢を守る官。主とする所は険に遇いて貴人の相救を得るの象、驚有りて険なし、終に安寧を獲。
復:偽言妄語,轉為詿誤,不知狼虎。
明夷の卦が復の卦に変わる。虚假の言辞、荒誕の伝聞展転相伝し、最後に牽連貽誤を釀成して、人をして渾然として覚らざる中に豺狼虎豹に撞上せしむ。主とする所は謡言を軽信し、誤りて険地に入るの象、凶である、凡事宜しく自ら査証し、人に任せて擺布せらるるべからず。
旡妄:履□自敵,凶憂來到,痛不死哭。
明夷の卦が旡妄の卦に変わる。行い履む所は自ら己と為敵して、凶险憂患随いて来れり、痛み極処に至るも連れて哭を哭するに声なし。原文此処に闕字有り、「□」を以て疑を存して臆補せず。主とする所は自ら災咎を招くの象、大凶である、禍は己より作す、宜しく躬を反し省みて、行止を收斂すべし。
大畜:牽尾不前,逆理失臣,惠朔以奔。
明夷の卦が大畜の卦に変わる。牛尾を牽きて前に拉くも紋絲も動かず、事事常理に違背し、因って臣属の擁戴を失う。衛惠公朔は終に迫られて他国に出奔せり。此れは《左伝》の載する所の衛宣公の子公子朔(衛惠公)国人に逐われて斉に出奔せしの事を用う。主とする所は理に悖り衆を失い、迫られて出走するの象、凶である。
頤:三狸捕鼠,遮遏我後。死於還城,不得脫走。(還一作環)
明夷の卦が頤の卦に変わる。三匹の野猫圍を合わせて鼠を捕え、背後より退路を死死に堵住す。老鼠は環城の処に於いて逮えられ咬死せられ、終に逃脱する能わざりき。主とする所は四面制を受け、進退路なきの象、大凶である、宜しく早く鋒芒を避け、恋戦すべからず。夾注に「還」は一本に「環」と作ると称す、環城は即ち城を繞るの地。
大過:言笑未畢,憂來暴卒。身墨丹索,檻內裝米。
明夷の卦が大過の卦に変わる。談笑未だ說き終らざるに、憂患已に猝然として降臨せり。身上に墨刑刺字せられ、紅縄を以て捆縛せられ、囚籠に裝められて米を裝むが如く押解し去れり。「墨」は五刑の中の黥面の刑、《尚書・呂刑》に見る。主とする所は楽極まりて悲を生じ、禍天より降るの象、大凶である、眼下歓会の中に已に刑獄の災を伏せたり、宜しく謹慎して自ら守るべし。
坎:陰積不已,雲作淫雨。傷害平陸,民無室屋。
明夷の卦が坎の卦に変わる。陰気断えず積聚し、濃雲化して綿綿として止まざる暴雨と為り、平坦の陸地を沖し狼藉一片と為し、百姓連れて棲身の屋舎もなし。主とする所は陰盛んにして災を為し、水患民を傷めるの象、凶である、宜しく早く防備を為し、低下の地に安居すべからず。
離:山林麓藪,非人所處。鳥獸無禮,使我心苦。
明夷の卦が離の卦に変わる。深山老林、山脚草沢は、本より人の安居すべき去処に非ず。彼処は鳥獣横行して礼数を知らず、我が心中をして愁苦堪え難からしむ。主とする所は身僻陋に処り、情理に通ぜざる者と事を共にするの象、凶である、在る所其の位に非ず、宜しく遷改を謀るべし。
咸:新作初陵,踰陷難登。三駒推車,跌損傷頤。(陷一作險)
明夷の卦が咸の卦に変わる。剛わずかに堆筑し起されたる高陵は、坡陡く坑深くして、攀登し上ること甚だ難し。三匹の小馬力を合わせて車を推すも、仍お足を失し跌倒して、下巴を摔傷せり。主とする所は力小さくして任重きの象、凶である、新たに起る事根基未だ固からず、勉强して力を用いれば反って損傷を受く。夾注に「陷」は一本に「險」と作ると称す。
恆:魂微惙惙,屬纊聽絕。擴然大通,復更生活。
明夷の卦が恒の卦に変わる。魂魄微弱、気息奄奄として、家人已に新綿を口鼻の上に放して探試するも、幾ほどなく呼吸を聞き得ず。「属纊」は古人の気絶を験するの礼節、《礼記・喪大記》に見る。忽然として胸中豁然として通暢し、竟に又た活転して来れり。主とする所は絶処に生に逢うの象、危困極点に到りて反って轉機を得、久病愈る可し。
遯:欒子作殃,伯氏誅傷。州籲奔楚,去其邑鄉。
明夷の卦が遯の卦に変わる。欒氏の子風浪を興して禍殃を釀成し、伯氏此れによって誅戮傷害に遭えり。衛国の公子州吁は楚地に出奔して、己が城邑郷里を抛下せり。州吁兄を弑して自立するも終に誅せらる、事は《左伝・隠公四年》に見る。主とする所は禍蕭墻に起り、身放逐に遭うの象、大凶である、宜しく是非に遠ざかり、争権に参与すべからず。
大壯:驕滷奇形,造惡作凶。無所能成,還自滅身。
明夷の卦が大壮の卦に変わる。驕横粗魯、模様を裝い樣子を作る人は、一味に悪を造り凶を行い、結果何事も办成る能わず、反って自らを毀し去れり。主とする所は強を逞しゅうして禍を肇め、自ら滅亡を取るの象、大凶である、宜しく驕気を收斂し、行を改め正を守るべし。
晉:陳辭達情,使安不傾。增榮益譽,以成功名。
明夷の卦が晋の卦に変わる。辞令を陳述して実情を説き透す能く、局面をして安定して傾覆に致らざらしむ。此れにより聲望日に増え榮譽日に厚くして、終に功名を成就せり。主とする所は言を善くして用を得るの象、吉である、宜しく言を進め策を献ずべし、主上必ず納れん。
家人:三杞無棗,家無積莠。使鳩求婦,頑不我許。
明夷の卦が家人の卦に変わる。三株の杞樹は棗子を結ばず、家裏に連れて一堆の雑草も積み得ず、一貧如洗たり。笨拙の鳩鳥を派して己が為に親を求めしむるも、対方頑固として肯諾せず。主とする所は家貧にして偶を求めて成らざるの象、凶である、托する所其の人に非ず、婚事諧ること難し。
睽:慎禍重患,顏子為尤,乃能安存。牢戶繫羊,乃能受福。
明夷の卦が睽の卦に変わる。謹慎に禍を防ぎ後患を重んじ、顔回の如く己を克して礼を復るを最も要緊の事と為して、始めて平安長存を保つを得。羊を圈の内に拴牢して走失せしめずして、始めて福沢を承受する能し。顔子の事は《論語・顔淵》に見る、孔子其の「三月仁に違わず」を許せり。主とする所は慎守自持すれば則ち吉の象、謹慎すれば則ち安んじ、疏忽すれば則ち失う。
蹇:鹿得美草,鳴喚其友。九族和睦,不憂飢乏。
明夷の卦が蹇の卦に変わる。鹿は肥美の青草を尋ね得て、便ち鳴叫して同伴を招呼して斉しく来りて食せしむ。「呦呦鹿鳴、食野之苹」は《詩経・小雅・鹿鳴》に出る、是れ嘉賓を宴饗するの楽。九族此れによって和睦相親し、再び飢餓匱乏を憂うるに及ばず。主とする所は利を得て人と共享する能く、家族和順の象、大吉である。
解:亡玉失鹿,不知所伏。利以避危,全我生福。甘雨時降,年穀有得。
明夷の卦が解の卦に変わる。美玉を失い獵鹿を走脱せしめ、其の蔵れ在る所を知らず。此の時最も宜しく危険を避けて、始めて性命と福分を保全する能し。後に甘美の雨水時に按じて降下し、年成穀物終に収穫有り。主とする所は先に失い後に得るの象、小さく損耗有り、険を避け静を守りて、反って豊足を獲。
損:逢時積德,身受福慶。
明夷の卦が損の卦に変わる。好い時運に趕え付きて又た能く徳行を積累せば、自身此れによって福沢と喜慶を承受す。主とする所は徳時相済するの象、吉である、時来り運轉ずるの際更に宜しく徳を厚くすべし、福自ら身に随う。
益:鵠思其雄,欲隨鳳東。順理羽翼,出次日中。須留北邑,復反其室。
明夷の卦が益の卦に変わる。雌鵠其の配偶を思念して、鳳凰に追随して東に飛び往かんと欲す。是に羽翼を梳理し、正午時分に啓程出発す。中途北辺の城邑に滞留すること一陣するも、最終は仍お己が巢室に帰れり。主とする所は出行阻有るも終に家に返る能くの象、求むる所耽擱有ると雖も、人事終に完聚に帰す。
夬:環緒倚鉏,斗升屬口。貧賤所處,心寒悲苦。
明夷の卦が夬の卦に変わる。衣帯繞り来たり繞り往きて結びを打ち、人は鋤頭に斜めに倚りて歇息し、一斗一升の口糧は全く此の一点の収成に指望して糊口す。身貧賤の地に処り、心の裏涼を発して、悲酸苦楚に満つ。主とする所は困窮艱窘の象、凶である、宜しく貧に安んじ分を守り、妄りに僥倖を圖るべからず。
姤:孤獨特處,莫依為輔,心勞志苦。
明夷の卦が姤の卦に変わる。孤零零として一人独処して、依頼すべく輔助と為すべき人を尋ね得ず、因って心力交瘁して意志苦悶す。主とする所は援なく孤立するの象、凶である、宜しく広く善縁を結び、独り其の事に任ずるに宜しからず。
萃:稷為堯使,西見王母。拜請百福,賜我喜子,長樂富有。
明夷の卦が萃の卦に変わる。后稷堯の使命を奉じて西に行き、西王母を朝見しに往く。跪拜して諸種の福沢を祈請すれば、西王母我に可喜の子嗣を賜い、従是長く歓楽を享け家道富足せり。后稷は周人の始祖、堯の農官、《史記・周本紀》に見る。主とする所は命を奉じて遠行して大福を獲るの象、大吉である、嗣を求め財を求め倶に遂う。
升:鳴條之災,北奔於胡。左衽為長,國號匈奴。主君旄頭,立為單于。
明夷の卦が升の卦に変わる。夏桀鳴條の戦に大敗し、其の後裔北に逃奔して胡地に至れり。彼処の人は衣襟左に掩い、首領を推挙し、国号を匈奴と作り、其の君主旄頭の衆を執掌して、立てられて単于と為れり。鳴條の戦は《史記・夏本紀》に見る、匈奴夏后氏の苗裔に出づの説は《史記・匈奴列伝》に見る。主とする所は敗亡して別に一局を成すの象、故業毀れたりと雖も、地を改め另に起れば猶お自立する可し。
困:絕而復通,雖危不窮。終得其願,姬姜相從。
明夷の卦が困の卦に変わる。路断たれて又た重新に接通し、一時危殆と雖も走頭无路に至らず。最終に願う所を得て償い、姫姓と姜姓の両大族相互に婚配追随す。周の姫姓と斉の姜姓は世々婚姻を為す、故に「姫姜」を以て良配に代指す。主とする所は困極まりて通に轉じ、婚姻和合の象、吉である。
井:陽並悖狂,拔劍自傷,為身生殃。
明夷の卦が井の卦に変わる。陽気壅塞并聚して、人因って悖乱発狂し、剣を抜きて自らを砍傷し、白白に自身に災殃を招来す。主とする所は情志控を失い、自らを残し自らを害するの象、大凶である、宜しく心を平らげ怒を息め、切に一時の衝動を忌むべし。
革:方圓不同,剛柔異鄉。掘井得石,勞而無功。
明夷の卦が革の卦に変わる。方と圓形狀合わず、剛と柔各々一方に処り、本より一處に湊る能わず。井を掘りて堅石に到るが如く、気力を費尽しても水を打出す能わず。主とする所は格格不入、徒労獲なきの象、凶である、謀る所時勢と合わず、宜しく弦を改め張を更うべし。
鼎:乘風駕雨,與鳴鳥俱。動舉千里,見我愛母。
明夷の卦が鼎の卦に変わる。長風に乗り行雨を駕して、鳴叫の飛鳥と同じく路に上る。一擧一動便ち千里の遥かにして、終に我が思念する慈母を見えたり。主とする所は遠行迅捷、願の如く相會の象、吉である、門を出づれば助有り、久別逢う可し。
震:三塗五嶽,陽城太室。神明所扶,獨無兵革。
明夷の卦が震の卦に変わる。三塗山と五岳名山、陽城故都と嵩山太室は、皆な神霊の居する所の地なり。三塗、太室は倶に《左伝・昭公四年》の挙ぐる所の天下の険要に見る。神明の扶助有りて、此の一帯独り兵戈戦乱を免る。主とする所は居に神護有るの象、大吉である、此に処れば兵災を避くる可く、安然として事なし。
艮:鴟鴞娶婦,深目窌身。折腰不媚,與伯相悖。
明夷の卦が艮の卦に変わる。猫頭鷹妻を娶りに往きて、娶り来たるは却って深目凹陷、身形佝僂の醜婦なり。縦い腰を折りて逢迎するも歓心を討ち得ず、反って夫兄と鬧りて乖違不合せり。《詩経・豳風・鴟鴞》は鴟鴞を以て不祥の鳥と為す。主とする所は配偶称わず、家内和を失せしの象、凶である、婚姻宜しく軽結すべからず。
漸:轉行軌軌,行近不遠。旦夕入門,與君笑言。
明夷の卦が漸の卦に変わる。車輪轆轆として轉動して路に上る、走る所の路程は近くして並びに遥遠ならず。早晚の間に便ち門に入る能く、您と歓笑叙談せん。主とする所は近事速成、會面即ち在りの象、吉である、盼む所の人日ならずして帰る可し。
歸妹:求利難國,迯去我北。復歸其城,不為吾賊。(難一作離)
明夷の卦が帰妹の卦に変わる。艱危の国度に往きて財利を求取するも、只だ逃离するを得て、我が北辺に走り往く。後に又た彼の城中に帰る、所幸対方は並びに我を加害する仇敵と成らざりき。主とする所は外に出でて財を求めて挫を受くるも終に恙なきを得るの象、驚擾奔波有ると雖も、人身損を受くるに致らず。夾注に「難」は一本に「離」と作ると称す。
豐:日月之塗,所行必到。無凶無咎,安寧不殆。
明夷の卦が豊の卦に変わる。日月運行のごとき恒定の軌道に沿い前進して、往かんとする所必定にして到達する能し。一路上凶险なく、亦た過錯有ることなく、平安寧靜にして危殆なし。主とする所は常に循り正を守り、諸事順遂の象、大吉である。
旅:管叔遇桓,得其願歡。膠日殺糾,振冠無憂。笑喜不莊,空言妄行。(豐之困)
明夷の卦が旅の卦に変わる。管仲斉桓公に遇い、願う所を得て償いて心に歓欣を懐く。即ち魯国が生竇に於いて公子糾を殺せし其の日子に於て、管仲冠を彈じて仕に出で、反って憂慮なし。事は《左伝・荘公九年》と《史記・管晏列伝》に見る。只だ若し一味に嬉笑して荘重ならざれば、便ち空口大話、軽率妄行と成れり。主とする所は明主に逢遇して吉を獲る可し、然れど須らく持重自守すべし、軽浮すれば則ち事を敗る。夾注に此の繇《豊》之《困》と重出と標す。
巽:出入蹈踐,動順天時。俯仰有節,禍災不來。
明夷の卦が巽の卦に変わる。一出し一入れ、一擧一動皆な正道に踩み、事を行いて天時に順応す。俯仰進退倶に分寸節度有りて、災禍自ら門に上門せず。主とする所は動静合宜、自ら禍患に遠ざかるの象、吉である。
兌:內崩中傷,上亂無常。雖有米粟,我不得食。
明夷の卦が兌の卦に変わる。内部崩壊、中道損を受け、上頭政令混乱にして反覆無常なり。家中米谷を存すと雖も、我は一口を吃する能わず。主とする所は内政敗壞、物有るも享用を得ざるの象、凶である、財貨在ると雖も、終に己が用と為ること難し。
渙:逐禍除患,道德神仙。過惡萬里,福常在前。身樂以安。
明夷の卦が渙の卦に変わる。災禍を駆走し憂患を除去して、道徳を修持すること神仙中人の如し。一切の過失邪悪皆な万里の外に抛在せられ、福沢常に眼前に在り、自身安楽平和なり。主とする所は徳を修め禍を避くるの象、大吉である、心正しければ則ち邪侵する能わず。
節:牛驚馬走,上下渾擾。鼓音不絕,項公奔敗。
明夷の卦が節の卦に変わる。牛驚き馬狂奔して、上上下下乱れて一團と成る。戦鼓の声響き停まず、項王終に兵敗れて奔逃せり。項羽垓下の敗は《史記・項羽本紀》に見る。主とする所は軍心渙散、大局崩潰の象、大凶である、兵を動かし争鬪するに宜しからず、出行も亦た須らく驚擾を防ぐべし。
中孚:西上九陂,往來留連。心須時日,靈與有德。
明夷の卦が中孚の卦に変わる。西に向かい層層の堤坡に攀上し、来来往往にして滞留前せず。心の裏只だ耐え忍びて時日を等待するのみ、神霊終に徳有る人を眷顧せん。主とする所は遅滞して時を待つの象、求むる所速に在らずして、徳を修めて以て候うに在り、久しきの後成る可し。
小過:虎怒捕羊,蝟不能攘。
明夷の卦が小過の卦に変わる。猛虎怒を発して羊群に撲向するも、即ち刺猬満身尖刺するも其の凶勢を擋ぐ能わず。主とする所は強弱懸殊の象、凶である、勢人に敵せず、宜しく退避して硬く抗すべからず。
既濟:湧泉涓涓,南流不絕。卒為江海,將帥襲戰,獲其丑虜。
明夷の卦が既済の卦に変わる。噴涌の泉水細々として流淌し、南に向かい奔流して断えず、最終に匯りて江海を成せり。将帥勢に乗じて兵を出し掩襲して、衆多の敵寇を俘獲せり。主とする所は小を積みて大を成し、師を出して勝を獲るの象、吉である、日積月累の功、終に大業を成就する能し。
未濟:桃弓葦戟,除殘去惡,敵人執服。
明夷の卦が未済の卦に変わる。桃木を以て弓を做り、葦を以て戟と為し、疫を駆り邪を逐うの礼を行い、殘暴を剪除し邪悪を掃去して、敵人因って擒獲帰服せられり。桃弓葦矢は乃ち古代不祥を禳除するの具、《左伝・昭公四年》及び《周礼》の説に見る。主とする所は正を以て邪を駆り、強敵を懾服するの象、吉である。
家人の林(家人卦六十四林)
家人:王命赤烏,與君徼期。征伐無道,誅其君傲。居止何憂。
家人の卦が自ら変じても家人の卦のままである。上天は赤烏の祥瑞を降して王命の憑信と為し、君主と時期を約定せり。是に兵を出して無道の国を討伐し、彼の驕横の君主を誅除せん。赤烏の書を銜むの瑞は周の天命を得るの徵、《史記・周本紀》に見る。事成りて後安居して事なく、又何の憂慮かあらん。主とする所は天を奉じて罪を討ち、師出でて名有るの象、大吉である。
乾:千歲槐根,身多斧痕。傷夷倒掘,枝葉不存。
家人の卦が乾の卦に変わる。千年を活きたる老槐樹根は、樹身の上尽く斧劈の傷痕なり。後に砍傷掘倒せられて、枝葉も亦た蕩然として存せず。主とする所は根基厚しと雖も終に摧折に遭うの象、大凶である、宿業深重の者は尤も須らく人為の害を防ぐべし。
坤:喭喭諤諤,虎豹相齰。畏懼悚息,終無難惡。
家人の卦が坤の卦に変わる。衆人吵嚷嚷として直言相争い、虎豹の如く彼此撕咬す。傍観者嚇して呼吸を屏せど、最終に並びに何の禍難悪事も釀成せざりき。主とする所は虚に声勢を張るの象、争執烈しと雖も、驚有りて険なし。
屯:娶於姜呂,駕迎新婦。少齊在門,夫子歡喜。
家人の卦が屯の卦に変わる。姜姓呂氏の族に往きて親を娶り、車馬を駕して新婦を迎え還る。年少の斉国女子已に門前に到り、丈夫を為る者は心に歓喜を満てり。斉は姜姓呂氏の国、故に「姜呂」を以て良配を指す。主とする所は婚姻偶を得るの象、大吉である、嫁娶求親皆な遂う。
蒙:高壤肥澤,民人孔樂。宜利居止,長安有福。
家人の卦が蒙の卦に変わる。高処の田土肥沃にして水沢豊潤、百姓生活十分に安楽なり。此のごとき地方は最も家を安んじ定居するに宜しく、長久平安にして福沢有り。主とする所は地を擇びて宜を得るの象、大吉である、遷居、置産倶に宜し。
需:主有聖德,上配太極。皇靈建中,授我以福。
家人の卦が需の卦に変わる。君主聖明の徳行を具備し、其の徳上に太極と相配すべし。上天の神霊は中正の道を樹立して、福沢を我に授予せり。「建中」は即ち《尚書・仲虺之誥》の謂う所の中道を建立するなり。主とする所は上下徳合し、天福を蒙るの象、大吉である。
訟:耄老懞鈍,不見東西。少者弗慕,君不與謀。懸輿致仕,退歸里居。
家人の卦が訟の卦に変わる。年邁昏聵、耳目蒙昧遅鈍にして、連れて東西方向も分辨清楚ならず。年輕人再び彼を仰慕せず、国君も亦た彼と政事を商議せず。是に車子を掛けて官を辞し老を告げ、退きて郷里に居り返る。「懸車致仕」は古人の七十にして退くの礼。主とする所は時過ぎ境遷り、退くべくして進むべからざるの象、宜しく止るを知り引退すべし、強いて留まれば必ず辱められん。
師:三狂北行,道逢大狼。暮宿患宅,為禍所傷。
家人の卦が師の卦に変わる。三個の狂妄の人北に向かい行けば、半路上に大狼に撞見せり。傍晚又た凶险の屋舎に投宿して、終に禍患に傷せられり。主とする所は妄行して険に遇うの象、大凶である、出行は須らく伴を擇び地を擇び、軽率に北往すべからず。
比:更旦初歲,振除禍敗。新衣元服,拜受利福。
家人の卦が比の卦に変わる。新たなる一日、新たなる一年剛わずかに開始し、旧日の禍患敗運を一挙に掃除す。新衣を換えて、冠を加うるの元服の礼を行い、利禄と福沢を拜領す。元服は即ち《儀礼・士冠礼》の言う所の成人加冠なり。主とする所は旧を除き新を布き、更始して福を得るの象、大吉である。
小畜:杲杲白日,為月所食。損上(一作下)毀上,鄭昭出走。
家人の卦が小畜の卦に変わる。明晃晃の太陽は月亮に遮蔽せられて日食を生じ、上に在る者損を受け毀れり。鄭昭公忽因って外に出奔せり。鄭昭公両度国を失い出奔せしは、《左伝・桓公十一年》《桓公十七年》に事見る。主とする所は君位蝕を受け、上に在る者勢を失うの象、凶である、尊に居る者は宜しく下の侵すを防ぐべし。夾注に「損上」の「上」は一本に「下」と作ると称す。
履:君子失意,小人得志。亂憂並作,奸邪充塞。雖有百堯,顛不可救。
家人の卦が履の卦に変わる。君子勢を失い意を得ず、小人反って春風得意なり。禍乱と憂患一斉に爆發し、奸佞邪僻の徒朝堂に充塞す。此の時縦い百個の唐堯のごとき聖人有るも、傾覆の勢挽救する法なし。主とする所は賢退き佞進み、大厦將に傾かんとするの象、大凶である、宜しく禍に遠ざかり自ら全うし、勉强して支撑すべからず。
泰:仁德優洽,恩及異域。澤被殊方,福慶隱伏。作蠶不織,寒無所得。
家人の卦が泰の卦に変わる。仁厚の徳沢寛広周遍にして、恩惠遠く异国他郷に及び、恩沢四方を覆い、福慶其の中に潜蔵す。只だ蚕を養いても布を織らざれば、到頭天寒の時仍お穿くべき衣なし。主とする所は徳有り資有るも事に勤めざるの象、外惠厚しと雖も、若し自身怠惰ならば、終に一物の獲もなし。
否:東求金玉,反得敝石。名曰無宜,字曰醜惡。眾所賤薄。
家人の卦が否の卦に変わる。東に往きて金玉珍宝を尋求するも、反って只だ一塊の破石头を撿回るのみ。此の石は名を「無宜」と曰い、字を「醜惡」と号して、人人皆な之を輕賤鄙薄す。主とする所は美を求めて惡を得、名実倶に損ずるの象、凶である、謀る所但だ獲なきのみならず、反って譏議を招く。
同人:擊鼓合戰,士怯叛亡。威令不行,敗我成功。
家人の卦が同人の卦に変わる。鼓を擂して交鋒接戦するも、士卒却って胆を怯え潰散叛逃し去れり。威信号令行き下る能わず、眼把いに成らんとする功業を断送せり。主とする所は号令厳ならず、功垂成に敗るるの象、大凶である、兵を興し争競するに宜しからず、先ず当に内部を整粛すべし。
大有:仲春孟夏,和氣所舍。生我嘉福,國無殘賊。
家人の卦が大有の卦に変わる。仲春と初夏の時節は、正に是れ和順の気の停駐する時なり。因って美好の福沢を生出して、国中に殘暴人を害するの徒なし。主とする所は気候和順、時運亨通の象、大吉である、正に其の時に当たり、諸事為す可し。
謙:尹氏伯奇,父子相離。無罪被辜,長舌為災。
家人の卦が謙の卦に変わる。尹吉甫の兒子伯奇は、后母に讒を進められ、父子此れによって分離せり。彼は並びに罪過なくして刑辜を蒙受せり、全く是れ長舌の讒を進めて招来せし災禍なり。伯奇の冤は漢人の習く称する孝子讒を受くるの故事、《詩経・小雅・巷伯》も亦た讒人を刺る。主とする所は讒に遭い誣を被るの象、大凶である、宜しく小人の口舌を防ぎ、骨肉の間を慎処すべし。
豫:五穀不熟,困民惡極。駕之新邑,嘉禾有得。
家人の卦が豫の卦に変わる。五谷歉收して熟せず、百姓困苦極に至れり。是に車を駕して新たの城邑に遷往し、彼処に於て嘉美の禾稼終に収穫有り。主とする所は旧地窮困、遷移して利を得るの象、此を守れば則ち困えり、図を改むれば則ち通ず。
隨:登虛望貧,暮食無飧。長子南戍,與我生分。
家人の卦が随の卦に変わる。高丘に登りて遠くを望めば、眼に満つるは皆な窮困の光景なり。晚上に至りて連れて一頓の熟飯も吃する能わず。長子又た征調せられて南方に戍辺し、我と生生として両地に分離せり。主とする所は家貧しく人散ずるの象、凶である、財乏しく親離れ、宜しく分を守りて時を待つべし。
蠱:東市齊魯,南賈荊楚。羽毛齒革,為吾利寶。
家人の卦が蠱の卦に変わる。東に往きて斉魯一帯に買売を為し、南に往きて荊楚の地に行商す。羽毛、象牙、皮革の類の貨物を販運して、皆な我が利を獲るの珍宝と成れり。「羽毛齒革」は《尚書・禹貢》の記する所の荊揚の貢品。主とする所は経商遠賈して大いに其の利を獲るの象、大吉である。
臨:節情省欲,賦斂有度。家給人足,公劉以富。
家人の卦が臨の卦に変わる。情性を節制し嗜欲を減省して、賦税征收倶に限度有り。是に家家豊足、人人飽暖にして、当年公劉の豳に遷りて周人をして富庶ならしめしが如し。公劉の事は《詩経・大雅・公劉》に見る。主とする所は用を節し民を愛し、家国倶に豊なるの象、大吉である。
觀:恭寬信敏,功加四海。闢去不祥,喜來從母。
家人の卦が観の卦に変わる。恭敬、寛厚、誠信、勤敏にして、徳行の功効四海に遍及す。不祥の気は駆除して浄く、喜慶母家に随いて倶に来れり。「恭寛信敏惠」は《論語・陽貨》の言う所の仁の五者。主とする所は身を修めて福を致すの象、大吉である、徳立てば則ち祥至る。
噬嗑:張狂妄行,與惡相逢。不得所欲,生我獨凶。
家人の卦が噬嗑の卦に変わる。張狂放肆、胡作非為して、一路上浄く凶惡の徒に碰見す。欲する物は一樣も得ることなく、独り己に凶禍を招来せり。主とする所は妄動して災を招くの象、大凶である、宜しく自ら心志を斂め、安分して己を守るべし。
賁:畫龍頭頸,文章不成。甘言美語,詭辭無名。
家人の卦が賁の卦に変わる。竜を画いて只だ頭と頸脖を画出せしのみ、通体の紋彩終に画き成らず。説く所尽く甜言美語にして、皆な是れ詭詐の辞、半分の実名も落下せず。主とする所は始有りて終なき、華にして実なきの象、凶である、巧言恃むに足らず、事を成すは須らく真功に憑るべし。
剝:騎龍乘鳳,上見神公。彭祖受制,王高贊通。巫咸就位,拜壽無窮。
家人の卦が剥の卦に変わる。神竜に騎り彩鳳に乗りて直に雲天に上り、天上の神君を朝見しに往く。長寿の彭祖は旁に在りて命を聽き、王子喬と赤松高士は之が為に礼を贊し引見し、神巫巫咸位に就きて祭を主とし、衆人跪拜して無窮の寿を祝頌す。彭祖、巫咸は皆な古の寿者と神巫、《荘子》《世本》に見る。主とする所は神明の護佑を得、福寿綿長の象、大吉である。
復:溫仁君子,忠孝所在。八國為鄰,禍災不起。
家人の卦が復の卦に変わる。温厚仁慈の君子は、一身尽く忠と孝なり。四方八方の隣国皆な彼と相隣り交好せんと願い、禍患災殃自ら生ずるに由なし。主とする所は徳を以て隣を睦するの象、大吉である、身を修め徳を立てれば則ち外患自ら消ゆ。
旡妄:威權分離,烏夜徘徊。群蔽月光,大人誅傷。
家人の卦が旡妄の卦に変わる。権柄威勢分散して旁落し、烏鴉深夜に盤旋して去らず。群鴉月亮の清光を遮住して、位高き大人此れによって誅戮傷害に遭えり。烏の夜に鳴き飛ぶは、古これを以て不祥の兆と為す。主とする所は権柄旁落し、群邪主を蔽うの象、大凶である、高位に居る者は尤も当に身を防ぐべし。
大畜:學靈三年,聖且神明。先知吉祥,言喜福慶。神鳥來見,告我無窮。
家人の卦が大畜の卦に変わる。神靈の道を研習すること整整三年、聖哲にして神に通ずるの境界に修め至れり。能く預め吉祥の兆を知り、口を開きて説く所皆な喜慶福沢の話なり。神鳥前来りて身を現わし、我に向かい無窮無盡の福分を預告す。主とする所は精修成り有り、祥瑞を感召するの象、大吉である。
頤:東山辭家,處婦思夫。伊威盈室,長股羸戶。嘆我君子,役日未已。
家人の卦が頤の卦に変わる。丈夫遠く東山に赴きて軍に從りて家門を辞別し、独居の妻子日夜思念す。屋裏に伊威土鱉爬り満ち、門戸の上に長脚蜘蛛の網結び満つ。此れ全く《詩経・豳風・東山》の征人帰りを思い室家荒蕪の景を取る。我が夫君を哀歎す、服役の日子未だ尽頭有ることなし。主とする所は久しく役して離散するの象、凶である、遠行の人帰期定まらず、家中は宜しく耐守すべし。
大過:張頷開口,舌直絕齒。然諾不行,政亂無緒。
家人の卦が大過の卦に変わる。下巴を張開して大声に説話するも、舌頭僵直、牙關咬合せず。許した諾言は一件も兌現する能わず、政事宜って混乱して毫も頭緒なし。主とする所は言して信なく、綱紀序を失せしの象、凶である、軽く許すに宜しからず、許せば則ち必ず践むべし。
坎:吹角高邦,有失牛羊。眾民驚惶,敬慎避咎。敕行不殃。
家人の卦が坎の卦に変わる。号角高処の城邦に吹響し、牛羊走失すること少なからず、百姓一片に驚慌す。此の時只だ恭敬謹慎して禍端を躲開し、行止を整飭して行けば、災殃を招致せず。主とする所は驚有りて避くる可きの象、変故起ると雖も、謹慎自持すれば則ち難を免る。
離:南行出城,世德福祉。三姬嫁齊,賴其所欲。
家人の卦が離の卦に変わる。南に往きて城を出でて行けば、累世の徳沢に憑りて福を獲るを得。三位の姫姓女子斉国に嫁して、皆な此の門の親事に靠着して心願を遂げたり。周姫と斉姜は世代通婚す、故に此を以て吉配の象と為す。主とする所は出行と婚嫁両得の象、大吉である。
咸:心狂志悖,耳聽從類。政令無常,下民多孽。
家人の卦が咸の卦に変わる。心思狂乱、志向悖謬にして、耳朵只だ同類人の話を聴くを肯ず。政令此れによって朝令夕改して毫も定準なく、底下の百姓災殃断えず。主とする所は上惑い下困るの象、凶である、偏りて同党を聴けば必ず政乱に致る、宜しく広く異議を納るべし。
恆:安上宜官,一日九遷。踰群越等,牧養常山。
家人の卦が恒の卦に変わる。能く君上をして心安くせしむれば、最も官を為るに宜しく、一日の内に連続して九次遷升す。同儕を越え等級を超出して、常山の地を治め百姓を牧養しに派せられり。主とする所は仕途驟に顕れ、超擢遷升の象、大吉である、官を求め職を問うに、往きて利あらざるなし。
遯:東鄰嫁女,為王妃后。莊公築館,以事主母。歸於京師,季姜悅喜。
家人の卦が遯の卦に変わる。東辺の隣国女兒を嫁出せば、天子の妃后と成れり。紀荘公彼女の為に館舎を修築して、恭敬して此の主母を侍奉す。女子京師に出嫁して、季姜心に歓喜を満てり。此れは《詩経・大雅・韓奕》《春秋》の紀季姜京師に帰するの事を用う。主とする所は貴門に攀附し、女嫁して貴を得るの象、大吉である。
大壯:六甲無子,以喪其戊。五丁不親,庚失曾孫。癸走出門。
家人の卦が大壮の卦に変わる。六甲の日子嗣を見ず、因って戊土の根基を喪失せり。五丁の神親しむを肯ぜず、庚位又た曾孫を失い、癸日に到りて連れて人も門を出でて走り去れり。此れ干支紀日を以て人事凋零に附會す。主とする所は子嗣断絶、家門離散の象、大凶である、嗣を求め人を求め倶に遂わず。
晉:陰霧不清,濁政亂民。孟春季夏,水壞我居。
家人の卦が晋の卦に変わる。陰霾大霧遅遅として散ぜず、污濁の政令百姓を攪乱せり。初春より一直して夏末に至るまで、大水我が住処を沖壞せり。主とする所は政昏く災至るの象、大凶である、上其の道を失えば則ち天時も亦た逆なり、宜しく水患を防ぎ遷徙すべし。
明夷:騎肫逐羊,不見所望。徑涉虎廬,亡身失羊。
家人の卦が明夷の卦に変わる。小さき猪に騎りて羊群を追趕するも、盼望する所に追い付く能わず。一路直に老虎の窝棚に闖進して、結果人と羊倶に断送せられり。主とする所は器事に称わず、貪進して身を喪うの象、大凶である、用うる所其の具に非ず、宜しく力を量りて止るべし。
睽:安床厚褥,不得久宿。棄我喜宴,困於南國。投杼之憂,不成禍災。
家人の卦が睽の卦に変わる。床を鋪き厚褥を墊きても、住むこと幾夜ならず。我が本より歓喜すべき宴席を丢下して、南方の国に困頓せり。所幸曾参の母の三次讒言を聞きて杼を投げて奔走せしが如き驚憂は、終に真の禍を釀成せざりき。投杼の事は《戦国策・秦策》に見る。主とする所は奔波して困を受くるも虚驚害なきの象、安処すること久しからず、讒言実ならず。
蹇:五日四維,安平不危。利以居止,保有玉女。
家人の卦が蹇の卦に変わる。五日の数、四方の維倶に各々其の位に安んじ、一切平順にして危殆を見ず。此の時最も宜しく安居して動かず、還た玉の如き佳人を保有する能し。主とする所は静を守りて安を得るの象、吉である、動かざれば則ち吉なり、妄動すれば則ち損なり。
解:西賈巴蜀,寒雪至轂。欲前不得,反覆其室。
家人の卦が解の卦に変わる。西に往きて巴蜀に経商すれば、途中大雪深くして車轂を没す。前に往かんと欲するも動く能わず、只好く頭を掉して己が家中に回る。主とする所は出行阻に遇い、功なくして返るの象、凶である、遠行して財を求むるに宜しからず、宜しく守りて時を待つべし。
損:剛柔相呼,二姓為家。霜降既同,惠我以仁。
家人の卦が損の卦に変わる。剛と柔彼此呼応相配して、两姓一家を結成す。霜降の節候に到りて、双方合卺同心して、仁厚の徳を以て相互に惠待す。古礼嫁娶は多く霜降以後、冰泮以前に在り、《荀子・大略》に見る。主とする所は陰陽和合、婚姻美満の象、大吉である。
益:天馬五道,夾大分處。往來上下,相隨哭歌。凶惡如何。
家人の卦が益の卦に変わる。天馬五條の大道の上を奔馳し、大路を夾みて各処に分立す。人們上上下下来往奔走して、一路哭声と歌声相随す。此のごとき景象凶悪なること何等の地步に至るや。主とする所は喪乱奔亡の象、大凶である、宜しく静守して出でず、喧擾の地を遠避すべし。
夬:出門懷憂,東上禍丘。與凶相遇,自為災患。
家人の卦が夬の卦に変わる。出門の時心の裏に便ち憂慮を懐き、東に登りて彼の禍患の丘に上れり。果して凶人と狭路に相逢して、自ら己に災患を招来せり。主とする所は明らかに不吉を知りて而も強行するの象、大凶である、心に疑忌有れば即ち当に歩を止むべし、勉强して東行すべからず。
姤:西行求玉,冀得隋璞。反見凶惡,使我驚惑。
家人の卦が姤の卦に変わる。西に向かい美玉を尋求し、隋侯の珠、和氏の璞のごとき至宝を得んことを指望す。不料反って凶惡の事に撞上して、我を弄して又た驚き又た惑わしめり。隋珠、和璞は並びに至宝と称す、《淮南子》に見る。主とする所は奇貨を貪求して反って凶险に遭うの象、凶である、分に非ざるの宝は強求すべからず。
萃:出門無至,動作失利。御憂懷禍,使我多悴。(門一作入;至一作妄)
家人の卦が萃の卦に変わる。門を出でしも往くべき地方に到らず、一擧一動皆な其の利を得ず。憂患を抵禦するも却って禍事を招来して、我を弄して形容憔悴ならしめり。主とする所は動けば輙ち咎を得るの象、凶である、此の時宜しく静にして動に宜しからず、出行し事を謀るは皆な当に暫く緩むべし。夾注に「門」は一本に「入」と作り、「至」は一本に「妄」と作ると称す。
升:高樓無柱,顛僵不久。紂失三仁,身死牧野。
家人の卦が升の卦に変わる。高樓の底下支柱なく、用いること久しからずして便ち傾倒僵仆せんとす。正に商紂王の微子、箕子、比干の此の三位の仁人を失い、終に兵敗れて牧野に身死せしが如し。三仁の説は《論語・微子》に見る、牧野の戦は《尚書・牧誓》に見る。主とする所は賢輔を失い、根基崩壊の象、大凶である、宜しく亟く良佐を求むべし、否ずんば則ち傾覆立ち至る。
困:避禍迯殃,身全不傷。高貴疾顛,華落墜亡。
家人の卦が困の卦に変わる。禍端を避開し災殃を逃离して、自身を保全して損傷を受けず。彼の身に高貴の位を居る者は却って迅速に傾覆して、繁花の凋落するが如く地に墜ちて亡ぶ。主とする所は退避して全うを得、高く居れば危殆の象、卑く退く者は吉なり、亢進する者は凶なり。
井:張牙反目,怒齰忿怒。狂馬撓犬,道驚傷軫。
家人の卦が井の卦に変わる。牙を齜し嘴を咧げ、顔を翻して相向かい、怒気冲冲として相互に撕咬す。狂奔の馬、乱扑の狗、路上に於いて驚いて衝撞して、車廂の後横木を撞壞せり。主とする所は忿争して傷を致すの象、凶である、宜しく怒を息め忍讓し、出行は須らく車馬の厄を防ぐべし。
革:泉涸龍憂,箕子為奴。干叔隕命,殷破其家。
家人の卦が革の卦に変わる。泉水涸竭して神竜憂懼し、箕子迫られて狂を裝い奴と為れり。比干此の王叔は心を剖かれて殞命し、商朝終に攻破せられて家国倶に亡べり。箕子の佯狂して奴と為る、比干の諫めて死せしの事は《史記・殷本紀》に見る。主とする所は賢者難に遭い、家国傾覆の象、大凶である。
鼎:向食飲酒,嘉賓會聚。牂羊大豬,君子饒有。
家人の卦が鼎の卦に変わる。豊盛の飯食に面して杯を挙げて酒を飲めば、貴客佳賓済済として一堂に満つ。母羊肥壮、大きな猪成群にして、君子家中富足にして余り有り。主とする所は宴饗豊足、賓主歓を尽くすの象、大吉である、宴を設け、客を待ち、財を求め倶に宜し。
震:黃牛騂犢,東行折角。冀得百祥,反亡我囊。
家人の卦が震の卦に変わる。黄牛と赤色の小牛犢を牽きて東に行くも、途中却って牛角を折断せり。本より諸種の吉祥を求めんと指望するも、反って随身の行囊も亦た失えり。赤色の牲犢は本より祭祀して福を求むるの用、《論語・雍也》の「犂牛之子騂且角」に見る。主とする所は福を求めて反って損するの象、凶である、祭求応ずることなく、東行して財を破る。
艮:路多枳棘,步刺我足。不利旅客,為心作毒。
家人の卦が艮の卦に変わる。道路の上尽く枳樹荊棘にして、一歩一刺我が双脚を扎傷す。此れ行旅の人に極めて不利にして、一路を走りて一路を苦しみ、心の裏毒に中したるが如く難受なり。主とする所は途中阻多きの象、凶である、遠行に宜しからず、勉强して路に上れば徒らに折磨を受くるのみ。
漸:執斧破薪,使媒求婦。和合二姓,親御斯酒。召彼鄰里,公姑悅喜。
家人の卦が漸の卦に変わる。手に斧頭を持ちて柴を劈き、媒人を托して親を説き、两姓を撮合して一家と為す。新人自ら喜酒を捧げ上げて、遍く四隣郷里を請い、公公婆婆歓喜せざるなし。「伐柯如何、匪斧不克;取妻如何、匪媒不得」は《詩経・豳風・伐柯》に出る。主とする所は婚姻礼に依りて成り、合家歓慶の象、大吉である。
歸妹:駕車出門,順時宜西。福佑我身,安寧無患。
家人の卦が帰妹の卦に変わる。車馬を駕して門を出でて遠行し、時令に順応して西方に往くに宜し。福沢我を庇佑して、一路安寧にして禍患なし。主とする所は方を擇びて宜を得るの象、吉である、出行、遷徙は西に宜しく、平安を保つ可し。
豐:日新東昇,魁杓為禍。漢臺為秦,使我久坐。
家人の卦が豊の卦に変わる。太陽一日日として東方より升起するも、北斗の魁星と杓柄は却って凶位を指向して禍を生ず。漢家の楼臺秦人の手に落ちて、我を害して久しく其の中に困坐せしめり。主とする所は星象凶を示し、基業主を易うるの象、凶である、時運己に在らず、宜しく静守して争う勿れ。
旅:山陵丘墓,魂空室屋。精光竭盡,長臥無覺。
家人の卦が旅の卦に変わる。山陵の間尽く墳丘墓塚にして、魂魄空しく地下の屋室を守る。精神光華消耗して尽き、従是長眠して再び醒めず。主とする所は気尽き命終わるの象、大凶である、病を問い寿を問うに倶に利あらず、宜しく早く善を修めて以て延ぶべし。
巽:孩子含餌,為利所悅。探釜把甑,爛其手臂。
家人の卦が巽の卦に変わる。小孩子嘴の裏に食餌を含み、眼前の好処に引かれて心花怒開す。手を伸べて鍋を掏み蒸甑を抓むに至り、結果手臂を燙爛せり。主とする所は利を見て険を忘るるの象、凶である、一時の利を貪れば必ず実傷を受く、宜しく力を量り自ら制すべし。
兌:何村待時,門戶獨悲。蚯蚓冬行,解我無憂。桑蠶不得,女紅無成。
家人の卦が兌の卦に変わる。荒僻の村落の裏に守りて時機を等待すれば、門庭冷落して只だ悲愁余るのみ。蚯蚓を連ねても冬天に土を出でて爬行し、節候反常なれど、却っても亦た算ふに我が為に一点の憂悶を解开せり。桑蚕収め上るる能わず、婦人の女紅針線も亦た做成すべき処なし。主とする所は時序失常、生計落空の象、凶である、蚕桑紡織の事成らず、宜しく別に出路を謀るべし。
渙:解傷驚惶,散我衣裳,君不安邦。
家人の卦が渙の卦に変わる。驚惶惶として受傷の処を解开し、衣裳も亦た散乱不整なり。君主此れによって邦国を安定する能わず。主とする所は上下驚擾、綱紀鬆散の象、凶である、内治むる能わざれば則ち外必ず変を生ず。
節:害政養賊,背主入愆。跛行不安,國為危患。
家人の卦が節の卦に変わる。政事を敗壞し、奸賊を豢養し、君主を背棄して罪愆に陷入す。路を走るに一瘸一拐して安穏ならず、国家此れによって危難に陷入せり。主とする所は奸を養いて自ら害するの象、大凶である、宜しく速やかに邪佞を去り、本を正し源を清くすべし。
中孚:禍走患伏,喜為我福。凶惡消亡,災害不作。
家人の卦が中孚の卦に変わる。禍事遠く走り去り、憂患潜伏して出でず、喜慶化して我が福沢と為る。凶险悪事消散浄尽して、災害再び興起する能わず。主とする所は禍を轉じて福と為すの象、大吉である、諸事順遂し、久困解く可し。
小過:老馬為駒,病雞不雛。三雌獨宿,利在山北。
家人の卦が小過の卦に変わる。老馬硬く小馬駒として使役せんと欲すも、病弱の母鶏は雛を孵し出す能わず。三隻の母鶏各々独宿して、依るべき雄なし。此の時唯だ山北の方向は還た算ふに利有り。主とする所は力心に及ばず、陰盛んにして陽なきの象、凶である、嗣を求め配を求め倶に難し、唯だ宜しく北向を擇びて轉機を求むべし。
既濟:播天舞地,嘵亂神所,居樂無咎。
家人の卦が既済の卦に変わる。歌舞歓騰直に天に上り地に遍く、喧鬧の声神靈の居所を驚動せり。然れど其の中に安居して仍お快楽にして、過錯有ることなし。主とする所は歓會喧たりと雖も害なきの象、吉である、祭祀宴楽倶に宜しく、情を縱せも咎を招くに致らず。
未濟:異國殊俗,情不相得。金木為仇,酋長擅役。
家人の卦が未済の卦に変わる。身异国他郷に処りて、風俗迥然として同じからず、彼此情意一處に合せず。金と木の相克して仇を成すが如く、当地の酋長又た擅自に我に役使す。主とする所は身異地に在りて人に受制するの象、凶である、遠く殊方に適するに宜しからず、勉强して前往すれば必ず欺凌を受けん。
睽の林(睽卦六十四林)
睽:倉盈庾億,宜稼黍稷。年豐歲熟,民得安息。
睽の卦が自ら変じても睽の卦のままである。粮仓満満当当に裝められ、露天の谷堆多く億を以て計る、最も黍と稷を種植するに宜し。年成豊美、五谷成熟して、百姓因って安居休息を得たり。主とする所は歳稔り民安んずるの象、大吉である、農事、儲蓄、置業倶に宜し。
乾:被服文衣,遊視酒池。上堂見觴,喜為吾兄。使我憂忘。(蹇之同人)
睽の卦が乾の卦に変わる。身は華美の錦繍衣裳を穿き、酒池の畔に游賞す。堂に登り室に入りて杯を挙げて暢飲し、欣喜して我が兄長と相聚まり、一時に憂愁を全く忘れたり。主とする所は歓宴して親を聚むるの象、吉である、兄弟親族と相會すれば愁懐を解く可し。夾注に此の繇《蹇》之《同人》と重出と標す。
坤:邑姜叔子,天文在手。實沈參墟,封為晉侯。
睽の卦が坤の卦に変わる。邑姜叔虞を懐く時、天帝の命を夢見て、掌中に天賜の文字有り。後に叔虞封を受けて実沈の神の主する参星分野の旧墟に至り、晋国之侯と為れり。此れは《左伝・昭公元年》の唐叔虞の封を受くるの説を用う。主とする所は命を受けて封を得、貴ぶべきに言う可からざるの象、大吉である、宜しく名を求め位を求むべし。
屯:改柯易葉,飯溫不食。豪雄爭強,先者受福。
睽の卦が屯の卦に変わる。樹木は枝條を換え葉を改め、飯已に温熱するも顧みて吃するに及ばず。豪傑英雄争い逞を強め、頭里を搶る人才に福分を得せしむ。主とする所は変革して先を争うの象、時局更易の際、宜しく捷足先登し、遅疑すれば則ち失う。
蒙:馨香陟降,明德上登。社神佑顧,命為大鄰。
睽の卦が蒙の卦に変わる。祭祀の馨香の気上下に升降し、光明の徳行直に上天に達す。社稷の神護佑眷顧を加え、命を受けて大国の近隣と成れり。「黍稷非馨、明德惟馨」は《尚書・君陳》に出る。主とする所は誠敬神に感じ、地位上升の象、大吉である。
需:老狼白駒,長尾大狐。前顛卻躓,進退遇祟。
睽の卦が需の卦に変わる。老狼、白馬駒、長尾巴の大狐狸一處に擠り合い、前に走れば跟头を栽え、後に退けば又た绊倒し、進退無論倶に鬼祟の作怪を撞く。「狼跋其胡、載疐其尾」は《詩経・豳風・狼跋》に出る。主とする所は進退拠を失うの象、凶である、此の時妄動に宜しからず、静候する可し。
訟:山沒丘浮,陵為水魚,燕雀無廬。
睽の卦が訟の卦に変わる。大山は水に淹没せられ、小丘浪中に漂浮し、高高たる丘陵は魚群の游動する処と為り、燕雀を連ねても巢を築くべき屋檐を失えり。主とする所は洪水滔天、身を安んずべき処なきの象、大凶である、宜しく水患を避け高処に遷るべし。
師:懿公淺愚,不受深謀。無援失國,為狄所滅。
睽の卦が師の卦に変わる。衛懿公見識浅薄愚昧にして、深遠の謀略を採納するを肯ぜず。到頭人の相助なくして国家を喪失し、狄人に滅せられり。衛懿公の鶴を好みて国を亡ぼせし事は《左伝・閔公二年》に見る。主とする所は諫を拒みて身を亡ぼすの象、大凶である、宜しく虚心に言を納るべし、否ずんば則ち孤立して敗を取る。
比:鼎易其耳,熱不可舉。大塗壅塞,旅人心苦。
睽の卦が比の卦に変わる。鼎の两耳脱落して様を改め、燙えて端挙すべき法なし。大路又た堵塞して通ぜず、行旅の人心に愁苦を満てり。「鼎折足」「鼎耳革」は皆な《周易・鼎》の爻辞の象。主とする所は器壞れ路阻まるの象、凶である、憑る所の具恃む可からず、出行尤も不利。
小畜:凶聲丑言,要不可聞。君子舍之,往恨我心。(要當作惡)
睽の卦が小畜の卦に変わる。凶惡の声気、醜陋の言辞は、実に聴き下す能わず。君子只好く此のごとき地方を捨棄して離去し、一路を走りて一路心中怨恨を懐く。主とする所は其の人に非ざる処に処りて、去らざるを得ざるの象、凶である、宜しく小人に遠ざかるべし、不甘有ると雖も亦た当に身を抽くべし。夾注に「要」は当に「惡」と作るべしと称す。
履:昧暮乘車,履危蹈溝。亡失群物,摧折兩軸。
睽の卦が履の卦に変わる。天色昏暗の傍晚に還た車を趕りて走り、険処を踩みて溝裏に翻り落つ。車に随う物一地に丢げ、車の两根の軸も亦た折断せり。主とする所は時に合わずして行き、車馬損を受くるの象、大凶である、暮夜は車を行るに宜しからず、宜しく時を擇びて動くべし。
泰:南有嘉魚,駕黃取□。魴鱮詡詡,利來毋憂。
睽の卦が泰の卦に変わる。南方に肥美の嘉魚有りて、車を駕して前に往き捕取す。魴魚と鰱魚成群に尾を擺して悠然自得にして、利益随いて来れり、憂愁を用ゐるに及ばず。「南有嘉魚」は《詩経・小雅・嘉魚》に出る、是れ嘉賓を宴楽するの詩、原文此処に闕字有り、「□」を以て疑を存して臆補せず。主とする所は利を求めて獲有るの象、吉である。
否:隔在九山,往來勞難。心結不通,失其所歡。
睽の卦が否の卦に変わる。九重の大山に隔断せられ、来来往往労苦艱難す。心の裏の疙瘩解开する能わず、原本歓好の人を失去せり。主とする所は阻隔して通じ難く、情意断絶するの象、凶である、會合期なく、宜しく暫く懐を放寛すべし。
同人:下流難居,任失多態。貞良溫柔,年歲不富。
睽の卦が同人の卦に変わる。下游卑下の地に処りて久居し難く、托する所其の人に非ずして職を失い、各種の情態百出す。縦い操守貞正、性情温良柔順なるも、年成終に豊ならず。主とする所は下位に居りて徳報を獲ざるの象、凶である、善人必ずしも即ち富まず、宜しく貧に安んじ節を守りて以て時を待つべし。
大有:狐狸雉兔,畏人逃去。分首竄匿,不知所處。
睽の卦が大有の卦に変わる。狐狸、野鶏と兎子は、一たび人の来るを見れば便ち嚇して逃開す。四散奔逃して各々蔵匿し、何処に躲めたるかを知る者なし。主とする所は衆散じ人離るるの象、凶である、求むる所の物已に遠く遁れ、人を尋ね物を覓るも倶に着落有ること難し。
謙:異體殊俗,各有所屬。西鄰孤嫗,欲寄我室。主母罵詈,終不可得。
睽の卦が謙の卦に変わる。形貌同じからず風俗異なる人は、各々各々の帰属有り。西辺隣家の孤老婦人我が屋裏に借住せんと借り来るも、家中の主母破口大駡して、此の事終に办成る能わざりき。主とする所は格格不入、収容遂わざるの象、凶である、異類と相処するに諧ること難く、善意も亦た施行し難し。
豫:怒非怨妒,貪得腐鼠。而呼鷹鸇,自今失餌。倒被困患。
睽の卦が豫の卦に変わる。怒を発するは怨恨嫉妒に出ずるに非ず、只だ一隻の腐爛の死鼠を貪圖するが為なり。却又た鷹隼鸇鳥を招喚して來りて搶わしめ、従是口の中の食餌を連ねても失い、反って困厄禍患に陷入せり。鵷鶵腐鼠を屑とせずして鴟之を嚇すは、《荘子・秋水》に事出づ。主とする所は小を貪りて大を失い、狼を引きて室に入るるの象、大凶である。
隨:五心六意,岐道多怪。非君本心,生我恨悔。
睽の卦が随の卦に変わる。三心二意、主張を拿定する能わず、岔路口の上處處に蹊蹺を透す。此れ本より您の真心に非ざるに、我をして心に怨恨懊悔を生ぜしむ。主とする所は心志揺摆、彼此疑を見るの象、凶である、事を謀るは宜しく専一にすべし、猶豫すれば必ず嫌隙を生ず。
蠱:三班六黑,同室共食。日長月息,我家有德。
睽の卦が蠱の卦に変わる。三行の斑紋、六頭の黑色の牲畜同じく一欄に在りて食を共にし、和睦して争わず。日日増長、月月生息して、家中此れによって厚德を積起せり。主とする所は畜養蕃息、家道日に隆るの象、大吉である、畜牧、置産倶に宜し。
臨:方船備水,旁河燃火,終身無禍。
睽の卦が臨の卦に変わる。両船を并連して以て水患を防ぎ、河辺に靠りて火を生じて暖を取り飯を為し、凡事皆な備有りて患なく、因って終身禍事に遭わず。主とする所は預め之が為に備えれば則ち安んずるの象、大吉である、凡事先ず防範を立てば、長久の平安を保つ可し。
觀:翳屏獨語,不聞朝市,利以居言,究被後門。
睽の卦が観の卦に変わる。屏風の後頭に躲めて自ら言い自ら語れば、朝廷と市井の動静一概に聴こえず。此のごとき処境は隠居して出でず言語を謹慎するに宜しく、追究して来れば終に後門より悄悄として脱身せん。主とする所は隠るるに宜しく顕るるに宜しからざるの象、光を韜め晦を養えば則ち安んじ、張揚すれば則ち後患有り。
噬嗑:居處不安,徒反觸患。
睽の卦が噬嗑の卦に変わる。住む所安寧を得ず、白白に折騰一遭して反って禍患に撞上せり。主とする所は動静両難の象、凶である、既に久留に宜しからず、妄動すれば又た事を生ず、宜しく時を擇びて緩に圖るべし。
賁:刺刖髡劓,人所賤棄。批捍之言,我心不快。
睽の卦が賁の卦に変わる。黥刺、断足、剃髪、割鼻の此れらの刑罰を受けて、世人に輕賤抛弃せられり。再び彼の排揎頂撞の話を聞けば、心の裏更加に痛快ならず。刺、刖、髡、劓は皆な古の肉刑、《尚書・呂刑》に見る。主とする所は身刑辱に遭い、人に見弃せらるるの象、大凶である、宜しく法度を謹守し、刑獄を遠避すべし。
剝:皋田禾黍,堆壤麻阜。衣食我躬,室家饒有。
睽の卦が剥の卦に変わる。水辺の肥田に禾苗黍稷長じ満ち、田壟の上に麻株堆まること小山の如し。穿く所吃る所皆な中より來り、一家人富足にして余り有り。主とする所は耕織豊足の象、大吉である、農桑の利は身家を養う可し。
復:兩目失明,日奪無光。脛足跛踦,不可以行。頓於丘傍。
睽の卦が復の卦に変わる。両眼失明して、白日の光亮奪い去られり。小腿脚掌又た瘸け又た跛れて、寸步行くこと難く、只好く困頓して土丘の傍らに倒れ臥せり。主とする所は耳目蔽塞、行止阻まるるの象、大凶である、出行し進を謀るに宜しからず、宜しく地に就きて静養すべし。
旡妄:金城朔方,外國多羊。履霜不時,去復為憂。
睽の卦が旡妄の卦に変わる。金の如く堅固の城池北方辺地に築かれ、境外の部族牛羊成群なり。只だ脚下霜に踏む時節候已に對ならず、来来去去皆な憂患と成れり。「履霜堅冰至」は《周易・坤》の初六爻辞に出る、禍端の漸く積むを喻う。主とする所は辺地固しと雖も変端將に起らんとするの象、凶である、宜しく早く微兆を察し、患を未然に防ぐべし。
大畜:匿痼不醫,亂政生災。紂作淫虐,商破其墟。
睽の卦が大畜の卦に変わる。久しく治らざる痼疾を蔵して疾を諱み医を忌み、紊乱の政令因って災禍を釀成す。商紂王恣に淫乱暴虐を行い、商朝終に攻破せられて只だ廃墟余るのみ。此れは《史記・殷本紀》の紂亡の事を用う。主とする所は過を諱みて禍を成し、終に覆亡に致るの象、大凶である、病有れば早く醫し、過有れば早く改むべし。
頤:鬼哭泣社,悲傷無後。甲子昧爽,殷湯絕祀。
睽の卦が頤の卦に変わる。鬼魂社壇の辺に哭泣して、己が再び祭祀する後人なきを悲傷す。甲子の日天將に曉けんとする時、商湯一脈の宗祀此れに就きて断絶せり。牧野の戦は甲子日昧爽に在り、《尚書・牧誓》に見る。主とする所は宗祀断絶の象、大凶である、喪亡絶嗣を主とし、宜しく徳を厚くし善を積みて以て轉ずべし。
大過:焱風卒起,車馳袍褐。棄古追亡,失其和節。憂心惙惙。
睽の卦が大過の卦に変わる。暴風骤然として刮起し、車馬疾馳し、衣袍破敝せり。古來の成法を抛弃して已に敗亡せる物を追逐し、和順の節度を失い、心の裏憂愁已まず。主とする所は本を背き末を逐い、動蕩して序を失せしの象、凶である、宜しく旧章を守り、軽く常度を改るべからず。
坎:耄老失明,聞善不從。自今顛沛,反為咎殃。
睽の卦が坎の卦に変わる。人已に年邁昏聵、両目失明して、好い建議を聞くも肯えて採納せず。従今以後顛沛流離して、反って罪咎災殃を招来せん。主とする所は固執して善を拒むの象、凶である、宜しく諫に従い図を改むべし、否ずんば則ち自ら困頓を取る。
離:隨風騎龍,與利相逢。日獲三狐,商伯有功。衢衢之邑,長安無他。
睽の卦が離の卦に変わる。風に乘り竜を駕して行けば、一路上遇う所皆な利益なり。一日に三隻の狐狸を獵得して、行商の長此れによって功労を立つ。「田獲三狐」は《周易・解》の九二爻辞に出る。四通八達の城邑の中、長久平安にして別の憂慮なし。主とする所は勢に順い利を得るの象、大吉である、経商、出行倶に厚獲有り。
咸:三牛五牂,重明作福。使我有得,疾入官獄。憂在心腹。
睽の卦が咸の卦に変わる。三頭の牛、五隻の母羊備えて犧牲と為し、重重の光明福沢を降して、我をして収穫有らしむ。不料速やかに便ち牽連して獄に下せられ、憂愁心腹の間に鬱結せり。主とする所は得て復た失い、楽極まりて憂を生ずるの象、初め獲有ると雖も、須らく官非牢獄の厄を防ぐべし。
恆:孟巳乙丑,哀呼尼父。明德訖終,亂虐滋起。
家人の卦は恒の卦に変わる... 恒の卦に変わる。彼の年巳月乙丑の日に至りて、世人哀恸悲呼して孔夫子の去世せしを哭す。魯哀公孔子を誄して「尼父」と称す、《左伝・哀公十六年》に見る。光明の徳教従是に終わり、昏乱暴虐の事随いて滋生す。主とする所は哲人其の萎ゆ、世道下衰の象、大凶である、喪亡と時局の敗壊を主とす。
遯:華燈百枝,消暗衰微。精光訖盡,奄如灰糜。
睽の卦が遯の卦に変わる。華美の燈樹上百枝の燈火は、漸漸暗淡衰微して下去す。光華耗盡の後、忽然として一堆の灰燼余燼の如し。主とする所は盛極まりて衰え、光尽きて滅するの象、大凶である、眼下顕赫と雖も、須らく速衰の変を防ぐべし。
大壯:鷹飛雉退,兔伏不起。狐張狼鳴,野雞驚駭。
睽の卦が大壮の卦に変わる。蒼鷹一たび飛べば、野雉便ち退避し、兎子地に伏して敢えて身を起さず。狐狸牙を張り豺狼嗥叫して、野鶏嚇して四散驚駭せり。主とする所は強弱を凌ぎ、弱者驚懼するの象、凶である、勢人の如かず、宜しく形を蔵し跡を匿して以て自ら保つべし。
晉:斗身戰天,門有何患。室家俱在,不失其歡。
睽の卦が晋の卦に変わる。身を挺して天と搏ち、一身の胆気、門戸の内に何の禍患かあらん。家人妻小倶に斉斉整整として、歓楽和睦を失わず。主とする所は気壮にして畏れず、家宅安寧の象、吉である、外争有ると雖も、内損を受けず。
明夷:東家殺牛,汙臰腥臊。神背西顧,命絕衰周。亳社災燒,宋人夷誅。
睽の卦が明夷の卦に変わる。東辺の人家牛を殺して祭祀し、血污腥臊の気天に衝つ。神靈頭を掉して只だ西を看るのみ、衰微の周室氣數此れに就きて断絶せり。殷人の立てし亳社火に焚燒せられ、宋国の人因って誅戮に遭えり。亳社の災は《春秋》の哀公四年に見る。主とする所は祭礼の如からず、神怒りて国亡ぶるの象、大凶である。
家人:陰陽辨舒,二姓相合。婚姻孔云,生我利福。
睽の卦が家人の卦に変わる。陰陽各々其の分を得て舒展調暢し、两姓因って結合して親を成す。婚姻の事傳えられて衆口美を称し、此れにより種種の利益福沢を生出す。主とする所は陰陽和合、婚姻大吉の象、嫁娶、合伙倶に宜し。
蹇:東入海口,循流北走。一高一下,五色無主。十日六夜,死於水涘。
睽の卦が蹇の卦に変わる。東に向かい駛りて海口に入り、水流に順い北に漂行す。船身忽ち高く忽ち低く、眼前五色迷乱にして心神主なく。漂うこと十天六夜にして、終に水辺に死せり。主とする所は水を渉り遠行し、途を迷いて命を喪うの象、大凶である、切に水路遠征を忌むべし。
解:孤竹之墟,失婦無夫。傷於蒺藜,不見其妻。東郭棠姜,武子以亡。
睽の卦が解の卦に変わる。孤竹国の廃墟の上、女子偶を失い男子妻なし。蒺藜に刺傷せられて、再び己が妻子を見る能わず。崔武子の東郭偃の姉棠姜を娶りて、終に此の婚事に因りて家破れ身を亡ぼせしが如し。崔杼の棠姜を娶るの事は《左伝・襄公二十五年》に見る。主とする所は色戒の凶、妻室の故に因りて禍を招き、婚配尤も須らく審慎すべし。
損:天門東墟,盡既為災。跡□喑聾,秦伯受殃。
睽の卦が損の卦に変わる。天門の方位と東辺の廃墟は、一倂に化して災殃の地と為れり。蹤跡湮没、口痺れ耳聾えて、秦国の君此れによって禍殃を蒙受せり。原文此処に闕字有り、「□」を以て疑を存して臆補せず。主とする所は耳目閉塞、上位殃に遭うの象、凶である、宜しく言路を通じ、国門を謹守すべし。
益:賴生光水,受福之祉。雖遭亂,潰獨不危殆。
睽の卦が益の卦に変わる。此の生機勃勃の粼粼たる水沢に依託して、福沢の庇佑を承受す。即ち乱世潰敗に遭遇するも、独り自身危殆に陷入せず。主とする所は乱の中に全うを得るの象、吉である、世擾攘と雖も、徳に憑り勢に依れば虞なきを保つ可し。
夬:折舌閉目,不見稚叔。三足孤烏,遠其無失。
睽の卦が夬の卦に変わる。舌を咬断し眼を閉じて、再び年幼の叔弟を見る能わず。彼の三足の孤烏高飛遠去して、遠く躲開すれば反って一物も失わず。三足烏は日中の神鳥、《淮南子・精神訓》に見る。主とする所は黙を緘み遠く避ければ則ち禍を免るるの象、言わず視ざらず、遠く走高く飛べば、方に虞なきを保つ。
姤:七人同室,兄弟合食。和樂相好,各得所欲。
睽の卦が姤の卦に変わる。七個の人同じく一屋に住み、兄弟們一處に圍坐して飯を吃す。和睦歓楽、彼此友愛して、人人皆な心に称い意に如し。主とする所は家人聚合、和順して所を得るの象、大吉である、合伙して事を共にし、親族相処するも倶に宜し。
萃:繼體守藩,縱慾廢賢。君臣淫佚,夏氏失身。側室之門,福祿來存。
睽の卦が萃の卦に変わる。君位を繼承し封疆を守る人は、情欲を放縱して賢才を廢棄す。君臣一同に淫楽放蕩して、陳国の夏姫此れによって身を失い辱を受けり。陳靈公と孔寧、儀行父の夏姫に通ずるは、《左伝・宣公九年》に事見る。倒れに彼の旁支側室の家は、福禄反って安存せり。主とする所は嫡系徳を敗りて旁支福を得るの象、位尊き者は宜しく淫佚を戒むべし。
升:老狐屈尾,東西為鬼。病我長女,哭涕詘指。或西或東,大革易誘。
睽の卦が升の卦に変わる。老狐狸尾巴を夾みて、東に一頭西に一頭として祟を為し鬼を為す。我が家の長女を害して病を染めしめ、泪水漣漣として哭り、指を屈指て日子を数えり。妖物忽ち西に忽ち東にして、大いに変幻を加え、最も人を誘いて当に上らしめ易し。主とする所は邪祟侵擾の象、凶である、家中宜しく疾病を防ぎ、事を行いて誘惑を軽信すべからず。
困:大樹之子,百條共母。當夏六月,枝葉茂盛。鸞鳳以庇,召伯避暑。穉穉卭甚,各得其所。
睽の卦が困の卦に変わる。大樹の生ずる所の枝條は、成百條同じく一本に出づ。夏季六月に到りて、枝葉格外に繁茂し、鸞鳥鳳凰樹下に於いて庇蔭を得、召伯も亦た此に在りて涼を納め暑を避く。《詩経・召南・甘棠》は召伯の甘棠の下に訟を聽くを詠ず。樹幼嫩と雖も長勢極めて盛んにして、衆物各々其の安んずる所を得たり。主とする所は蔭庇広く被り、各々其の位に安んずるの象、大吉である。
井:井堙木刊,國多暴殘。秦王失所,壞我大壇。
睽の卦が井の卦に変わる。水井填塞せられ、樹木砍伐して尽き、国中暴虐殘害の事頻りに起る。秦王此れによって立足の地を失い、我らの大祭壇を連ねても毁壞せられり。「井堙木刊」は《左伝・哀公元年》に出る、其の資生の具を毁るを言う。主とする所は根本毁るるを被り、国破れ祀絶ゆるの象、大凶である。
革:駕黃買蒼,與利相迎。心獲所守,不累弟兄。
睽の卦が革の卦に変わる。黄馬を駕して門を出で、青騘の良駒を買い回り、一路上迎面する皆な利益なり。心の裏本分を守住して所有を得、兄弟を連累するに至らず。主とする所は経営して利を得て後患なきの象、吉である、交易買売成る可く、且つ親情を傷めず。
鼎:倉盈庾億,宜稼黍稷。年豐歲熟,民得安息。
睽の卦が鼎の卦に変わる。粮仓盈満、露囤の穀物億計に至る多し、最も黍稷を種植するに宜し。年成豊美、五谷成熟して、百姓安居休養を得たり。主とする所は歳稔り家足るの象、大吉である、農事、蓄積、安居倶に宜し。
震:人生馬淵,壽考且神。飛騰上天,舍宿軒轅。居常樂安。
睽の卦が震の卦に変わる。人馬淵のごとき神異の地より降生し、長寿にして神に通ず。能く飛騰して天に上り、軒轅星宿の次に宿る。軒轅は黄帝の号、亦た星名、《史記・天官書》に見る。日常起居安楽して憂なし。主とする所は異気を禀受し、福寿康寧の象、大吉である。
艮:思願所之,今乃逢時。洗我故憂,拜我歡來。
睽の卦が艮の卦に変わる。心中の思い願う往かんとする所は、如今終に好い時機に趕え付けり。従前の憂愁を洗去して、歓喜の事連々として訪れて門に上る。主とする所は夙願償いを得るの象、大吉である、久しく盼し事此の時成る可し。
漸:魁罡所當,初為敗殃。君子留連,困於水漿。求金東山,利在茂鄉。賈市有息,子載母行。
睽の卦が漸の卦に変わる。魁罡の凶星の臨む所の方位に当たりて、起初免れ難く敗落して殃に遭い、君子滞留して行くこと難く、連れて飲食湯水も亦た愁う。但だ只だ東山に往きて財貨を求取すれば、利益は即ち草木繁茂の郷に在り。経商買売して息を得る可有り、兒子母親を載せて一同に路に上る。主とする所は先に困えりて後に通ずるの象、初め阻まるると雖も、改めて東に行けば則ち利を獲て帰る。
歸妹:鉛刀攻玉,無不鑽鑿。龍體具舉,魯般為輔。三聖翼事,所求必喜。
睽の卦が帰妹の卦に変わる。軟鈍の鉛刀を以て玉を琢れば、本より鑽ち動かす能わざりしが、如今却って刃に迎えて入らざるなし。竜形の器物整体に成り型し、還た巧匠魯班の旁より相助する有り、三位の聖人其の事を輔翼して、求むる所心に称わざるなし。魯般は即ち公輸般、古の巧匠。主とする所は賢助を得て拙工も亦た成るの象、大吉である。
豐:喜來如云,舉家歡忻。眾才君子,駕福盈門。
睽の卦が豊の卦に変わる。喜事雲の如く紛紛として湧来り、全家人歓欣鼓舞す。衆多の才徳有る君子車を駕して福を載せ、門庭を都な擠満せり。主とする所は福慶門に盈ち、人才輻輳の象、大吉である。
旅:響像無形,骨體不成。微行衰索,消滅無名。
睽の卦が旅の卦に変わる。只だ回響と虚影有るのみにして実形なく、骨骼軀体も亦た個の樣子を長成せず。行跡隠微、気象衰敗蕭索にして、終に湮滅して名声を留めず。主とする所は虚にして実ならず、終に消亡に帰するの象、大凶である、謀る所根基なく、成立すること難し。
巽:積水不溫,北陸苦寒。露宿多風,君子傷心。
睽の卦が巽の卦に変わる。積存の水始終回暖を見ず、北方の大地苦寒人を逼る。露天に夜を過ごすも又た風多く、君子之が為に傷心難過す。主とする所は処境厳寒困頓の象、凶である、北行に宜しからず、露処すれば疾病を招き易し。
兌:黃馬綠車,駕之大都。贊達才能,使我無憂。(贊當作薦)
睽の卦が兌の卦に変わる。黄馬と青緑装飾の車子を駕して、直に大都会に奔り往く。人我が才能を推挙引薦して、我をして従是憂慮なからしむ。主とする所は人の挙薦を得、顕達して憂なきの象、大吉である、名を求め進を求むるに正に其の時に逢う。夾注に「贊」は当に「薦」と作るべしと称す、即ち薦挙の義。
渙:從風放火,芝艾俱死。三害集聚,叔子中傷。
睽の卦が渙の卦に変わる。風勢に順い火を放ちて荒を焼けば、霊芝と艾草一同に燒死し、好きも悪きも玉石倶に焚かる。三種の禍害一處に聚まりて、叔子此れによって中傷を受けり。主とする所は良莠を辨えず、殃無辜に及ぶの象、大凶である、株連の禍免れ難し、宜しく是非の地を遠避すべし。
節:一身三手,無益於輔。兩足共節,不能克敏。
睽の卦が節の卦に変わる。一個の人に三隻の手長じたり、多く出たるも亦た手伝うに及ばず。两隻の脚共用する一個の関節にして、路を走るに快き能わず。主とする所は形制乖錯、多くして用なきの象、凶である、人手衆しと雖も力を得ず、事必ず遅滞せん。
中孚:南向陋室,風雨併入。埃塵積溼,王母盲痺。偏枯心疾,亂我家次。
睽の卦が中孚の卦に変わる。南に朝かれたる一間の破屋は、風雨一斉に灌り入る。塵土積もりて又た厚く又た潮く、家中の老母此れによって両目失明、肢体麻痺して、半身不遂と心疾を患い、家中の次序を全く攪乱せしめり。主とする所は居処宜を失い、親長疾を染むるの象、大凶である、宜しく居所を修葺し、長者の病患を謹防すべし。
小過:采薇出車,魚麗思初。上下促急,君子懷憂。
睽の卦が小過の卦に変わる。《采薇》の歌を唱えて車を駕して出征し、《魚麗》の樂を聽きて当初を追思す。上上下下皆な催逼すること緊くして、君子心中憂愁を満懐せり。《采薇》《出車》《魚麗》は皆な《詩経・小雅》の征戍宴饗の篇。主とする所は征役煩促の象、凶である、公事逼迫するも、宜しく従容として之に應じ、強争すべからず。
既濟:先易後否,告我利市。騷蘇自苦,思再故止。(一作改正)
睽の卦が既済の卦に変わる。起初順遂にして後来閉塞す、人我に此処交易して利有りと告ぐ。結果奔波擾攘、自ら苦を尋ねて吃し、再三考慮の後還はた停下して為さず。主とする所は先に順い後に阻まるの象、利を貪りて再往すれば必ず其の困を受く、時に及んで手を收むるを宜と為す。夾注に一本に「改正」と作ると称す。
未濟:生宜地乳,上皇大喜。隆我祉福,貴壽無極。
睽の卦が未済の卦に変わる。土地滋養乳汁の如く豊厚の地方に生長せば、上天の皇帝之が為に大喜なり。隆厚の福祉を降下して、我をして富貴長寿にして窮盡なからしむ。主とする所は天地の養いを得、福寿倶に全きの象、大吉である。
蹇の林(蹇卦六十四林)
蹇:同濟共輿,中道別去。喪我元夫,獨與孤苦。
蹇の卦が自ら変じても蹇の卦のままである。本より是れ同船共車して一路相伴するも、半途に走りて却って道を分かちて別れたり。我が良人を喪失して、只だ己が独自孤苦余るのみ。主とする所は中道分離の象、大凶である、同行者散じ、主として偶を喪い伴を失うの厄。
乾:叔肸居冤,祁子自邑。乘遽解患,羊舌免脫。賴得生全。
蹇の卦が乾の卦に変わる。羊舌肸不白の冤を蒙受して囚わるるも、年邁の祁奚封邑より趕來り、驛車に乗りて飛馳して至り、彼の為に禍患を解开して、叔向終に罪を免れ脱身し、彼に靠着して始めて性命を保全し得たり。祁奚の叔向を救うは《左伝・襄公二十一年》に事見る。主とする所は難に遭いて貴人の力救を得るの象、吉である、獄訟解く可く、凶中に救有り。
坤:兔聚東郭,眾犬俱獵。圍缺不成,無所能獲。
蹇の卦が坤の卦に変わる。兎子東城外に聚集し、一群の猟犬一同に追捕す。然るに包圍圈缺口有りて合攏せず、結果一物の獲もなし。主とする所は衆力斉わず、功垂成に敗るるの象、凶である、事を謀るは須らく周密なるべし、稍やかに疏漏あれば則ち前功尽く棄つ。
屯:作室山根,人以為安。一夕崩顛,敗我壺餐。
蹇の卦が屯の卦に変わる。山脚の下に房子を蓋えば、人人皆な以て穏当安全と為す。不料一夜の間に山石崩塌して、壺の中の飲食を連ねても砸翻せられり。主とする所は地を擇ぶこと当ならず、隠患猝發するの象、大凶である、安処の中に已に危機を伏せたり、宜しく地勢を察して遷避すべし。
蒙:疾風塵起,亂我崩始。強大並小,先否後喜。
蹇の卦が蒙の卦に変わる。疾風驟起し塵土飛揚して、一開始に便ち我を攪りて潰乱不堪ならしめり。強大の者弱小の者を吞并して、事先是れ閉塞不通、後来始めて歓喜に轉ず。主とする所は先に乱れ後に定まるの象、初時挫を受くるは免れ難く、堅忍到底すれば則ち終に吉を得。
需:潔齋沐浴,思明居德。哀公怯弱,風氏復北。
蹇の卦が需の卦に変わる。身を潔くし齋戒して、沐浴して衣を更え、一心に光明を思慕して徳行を安守す。只だ魯哀公性情怯懦軟弱にして、風姓の成風一族又た重新に北に帰れり。主とする所は己徳を修むると雖も上位者堪えずの象、自守すれば過なきを保つ可し、人に倚りて事を成さんとすれば則ち難し。
訟:土瘠瘦薄,培塿無柏,使我不樂。
蹇の卦が訟の卦に変わる。土地貧瘠瘦薄にして、小土丘の上に連れて一株の柏樹も長起らず、我をして心中不快ならしむ。「培塿無松柏」は小処に大材生ぜざるを喻う、語《左伝・襄公二十四年》の意に見る。主とする所は地薄くして材を生ぜざるの象、凶である、処する所の境作為有ること難し、宜しく別に沃土を求むべし。
師:褰衣涉河,澗流波多。賴遇舟子,濟脫無他。
蹇の卦が師の卦に変わる。衣裳を提起して水を趟りて河を過ぐるも、澗中の水流湍急、波浪重重なり。幸好撑船の艄公に遇い、安然として渡過して別の禍事なし。主とする所は険に遇いて人の相助を得るの象、吉である、難を渉るの際必ず救う者有り、終に脱身する能し。
比:送我季女,瑩於蕩道。齊子旦夕,留連久處。
蹇の卦が比の卦に変わる。我が家の小女を送りて出嫁せしむれば、光彩照人として寛闊の大道の上を行く。彼の斉国より來りし女子早晚相伴して、留恋して去らず、久久として同じく処れり。「斉子」は《詩経・斉風・載驅》に出る、本より文姜を詠ず。主とする所は婚嫁偶を得、相守りて長久なるの象、吉である。
小畜:三孫六子,安無所苦。中藏廢殆,亡我所使。
蹇の卦が小畜の卦に変わる。三個の孫兒、六個の兒子、一家安穏にして何の苦楚もなし。只だ中間に積存せる家底漸漸荒廢衰敗して、使嗚すべき人手を連ねてもなし。主とする所は人丁旺しと雖も家業中落するの象、外表安泰なれど、内裏空虚なり、宜しく早く振作を圖るべし。
履:揚風偃草,塵埃俱起。清濁溷散,忠直隱處。
蹇の卦が履の卦に変わる。大風刮り過ぐれば、草木尽く伏し、塵埃一斉に揚起す。清濁混雑して分かち難く、忠誠正直の士只だ隠居して出でざるを得ず。「君子之徳風、小人之徳草」は《論語・顔淵》に出る、此処反って其の意を用う。主とする所は世道混濁、賢者退蔵の象、凶である、宜しく晦を韜して自ら守り、強いて出づべからず。
泰:歷險登危,道遠勞疲。去家自歸,困涉大波。
蹇の卦が泰の卦に変わる。険阻を翻越し危処を攀登して、路途遥遠にして疲憊不堪なり。家を離れて又た自ら回りて趕り、困頓して大浪を渡過す。主とする所は奔波労頓、往返徒労の象、凶である、遠行利あらず、宜しく安居して動を少なくすべし。
否:六藝之門,仁義俱存。鎡基逢時,堯舜為君。傷寒執溫,下至黃泉。
蹇の卦が否の卦に変わる。六藝の学の門庭に進みて、仁と義両樣倶に備えり。縦い鋤頭のごとき好い農具有るも、好い時節に趕え付くに如かず、況んや上に唐堯虞舜のごとき聖君有るをや。「雖有鎡基、不如待時」は《孟子・公孫丑上》に出る。只だ身傷寒を染めて又た強いて温補を要して、反って一路黄泉まで病み至れり。主とする所は時に遇うと雖も善く調攝宜を失せしの象、外境吉なりと雖も、須らく疾病用藥の誤を防ぐべし。
同人:被服文衣,遊觀酒池。上堂見觴,喜為吾兄。使我憂亡。
蹇の卦が同人の卦に変わる。身は華美の文繍衣裳を穿き、酒池の畔に游賞す。堂に登りて杯を挙げて暢飲し、歓喜して兄長と相會して、憂愁一掃して空し。主とする所は聚會歓宴、憂解け愁消ゆるの象、吉である、親族と相聚まれば愁懐を釋す可し。
大有:生時不利,天命災至。制於斧瘢,當夜勤苦。
蹇の卦が大有の卦に変わる。出生の時辰便ち吉利ならず、天命注定して災禍降臨す。刀斧の留下せし傷疤に受制して、整夜整夜辛苦して労作す。主とする所は禀賦佳ならず、労苦して制を受くるの象、凶である、宜しく安分にして成を守り、非分を強求すべからず。
謙:天門開闢,牢戶寥廓。桎梏解脫,拘囚縱釋。
蹇の卦が謙の卦に変わる。天門大きく開き、牢獄の門も亦た豁然として空曠なり。手錬脚鐐一倂に解开して、拘押せられし囚徒統統に釈放を獲たり。主とする所は枷鎖尽く解け、否極まりて泰來るの象、大吉である、訟獄脱する可く、困厄自ら解けん。
豫:川淵難遊,水為我憂。多言少實,命鹿為駒。道德開基,君子逢時,利以中疑。
蹇の卦が豫の卦に変わる。江河深淵泅渡し難く、大水成りて我が憂患と為れり。周圍の人話多くして実ならず、硬く鹿を把て馬駒と説成し、鹿を指して馬と為し是非を顛倒す。所幸道徳に憑りて根基を立定し、君子适に其の時に逢い、最も宜しく中に居りて疑難を排解すべし。主とする所は水厄口舌の中にして徳を以て自ら処れば則ち吉、人と争辯せず、正を守りて時を待つ。
隨:鄉歲逢時,與生為期。枝葉盛茂,君子無憂。
蹇の卦が随の卦に変わる。豊年に向かいて好い時運に趕え付き、生長の機と相約して同期す。枝葉長じて繁盛茂密にして、君子此れによって憂慮なし。主とする所は時に順いて長ず、生機勃発の象、大吉である、諸事順遂し、家業日に盛えん。
蠱:六鷁退飛,為衰毀祥。陳師合戰,左股夷傷。遂崩不起,霸功不成。
蹇の卦が蠱の卦に変わる。六隻の鷁鳥風に吹かれて倒退して宋都を飛び過ぐるは、此れ衰敗毀傷の凶兆なり。後に宋襄公兵を陳べて楚と交戦し、大腿射傷せられて、終に床に臥して起たず、覇を称るの功業泡影と化せり。六鷁退飛は《春秋》の僖公十六年に見る、泓の戦は《左伝・僖公二十二年》に見る。主とする所は凶兆先に見え、事を挙げば必ず敗るるの象、大凶である、兵を用い強を争うに宜しからず。
臨:雷君出裝,隱隱西行。霖雨不止,流為河江。南國憂凶。
蹇の卦が臨の卦に変わる。雷神装を整えて出行し、隆隆の声西に滚り往く。綿綿たる大雨下个に停まず、積りて江河横流を成し、南方の国此れによって憂患凶险に陷入せり。主とする所は水潦災を成すの象、凶である、宜しく雨患を防ぎ、南行利あらず。
觀:牙孽生齒,陽倡於外。左手執鑰,公言錫爵。
蹇の卦が観の卦に変わる。新芽萌発して齒牙の初生するが如く、陽気外に在りて率先して倡導す。左手籥管を拿りて起舞すれば、公侯口を開きて便ち爵位を賜下せり。「左手執籥」は《詩経・邶風・簡兮》に出る、舞師の容を為す。主とする所は生機初めて動き、身を進めて禄を受くるの象、吉である、名を求め禄を求むるに正に其の時に当たる。
噬嗑:火起土門,不為我殘。跳脫東西,獨得生完。不利出鄰,病疾憂患。
蹇の卦が噬嗑の卦に変わる。大火土門一帯に於いて燒起するも、却って我を傷めず。東に躲め西に閃きて火場を跳出して、独り性命を保全せり。只だ門を出でて隣里に往くに宜しからず、彼処に疾病憂患之を待ちて在り。主とする所は災に逢いて免を得るも外出に宜しからざるの象、家を守れば則ち安んじ、門を出でれば則ち病を招く。
賁:舉事無成,不利出征。言不可用,眾不能平。
蹇の卦が賁の卦に変わる。事を办起するも一物も成らず、尤も兵を出して征伐するに利あらず。進むるの言採納せられず、衆人の心も亦た安撫し下る能わず。主とする所は事を謀りて遂わず、衆心服せざるの象、凶である、宜しく兵を按じて動かず、先ず内を安んじて後に外を圖るべし。
剝:老狼白驢,長尾大胡。前顛卻躓,進退遇祟。
蹇の卦が剥の卦に変わる。老狼と白驢同行して、一は長尾巴を拖き、一は頷下に大きな肉髯を垂る。前に往けば頷肉を踩みて栽倒し、後に退けば又た尾巴に绊住し、進退倶に鬼祟の作梗に遇う。「狼跋其胡、載疐其尾」は《詩経・豳風・狼跋》に出る。主とする所は進退両難の象、凶である、宜しく静守して以て時を待つべし。
復:日入道極,勞者休息。班馬還師,復我燕室。
蹇の卦が復の卦に変わる。太陽山に落ちて、一天の路頭に走り尽き、労作の人歇息を得たり。戦馬班師して朝に回り、我も亦た安適の居室に帰れり。主とする所は功成りて身退き、家に帰りて安を得るの象、吉である、遠行する者帰る可く、労苦する者息む可し。
旡妄:山林麓藪,非人所處。鳥獸無禮,使我心苦。
蹇の卦が旡妄の卦に変わる。深山密林、山脚草沢は、本より人の安身すべき地方に非ず。彼処は鳥獣横行して礼数を講ぜず、我が心中をして愁苦ならしめり。主とする所は居処当を失し、情理に通ぜざる者と相処するの象、凶である、在る所其の地に非ず、宜しく遷改を謀るべし。
大畜:蓄利積福,日新其德。高氏飲食,憂不為患。
蹇の卦が大畜の卦に変わる。利益を積蓄し福沢を累積して、徳行一日に一日新たなり。高門大族飲食豊足にして、縦い小さき憂有るも禍患を構成せず。「苟日新、日日新、又日新」は《大学》の引く所の湯の盤銘に出る。主とする所は徳を積みて豊を致すの象、大吉である。
頤:張羅百目,鳥不得北。縮頸掛翼,困於窘國。君子治德,獲譽受福。
蹇の卦が頤の卦に変わる。百目の大網を張開せば、飛鳥連れて北に往くことも能わず。脖子を縮め翅膀を挂けられて、窘迫の国に困えり。唯だ君子心を専らにして徳行を修治せば、始めて声譽を獲得し福沢を承受する能し。主とする所は困に処りて徳を以て自ら拔するの象、外境窘しと雖も、徳を修むる者は終に吉なり。
大過:伯虎仲熊,德義淵弘。使布五教,陰陽順序。
蹇の卦が大過の卦に変わる。伯虎、仲熊の此れら八元の才は、徳行道義深厚宏大なり。彼等を派して父義、母慈、兄友、弟恭、子孝の此の五教を推行せしめ、天地陰陽因って各々其の序に順えり。八元八凱は《左伝・文公十八年》に見る、「敬敷五教」は《尚書・舜典》に見る。主とする所は賢才用を得、教化大いに行わるるの象、大吉である。
坎:跛踦相隨,日暮牛罷。陵遲後旅,失利亡雌。
蹇の卦が坎の卦に変わる。瘸腿の人彼此扶携して走るも、天色已に晚くして牛も亦た累垮せり。一路衰頽して隊伍の後頭に落ち、既に利を折り又た母畜を失えり。主とする所は力衰え序を失い、財を損じ口を折るの象、凶である、勉强して路を趕るに宜しからず、宜しく近くに就きて歇止すべし。
離:嬴氏違良,使孟尋兵。老師不已,敗於齊卿。
蹇の卦が離の卦に変わる。嬴姓の秦君蹇叔のごとき賢良の諫に違背し、孟明視を派して兵を興して遠襲せしめり。軍隊久しく労して疲敝するも仍お罷休を肯ぜず、終に敵国卿大夫の手下に敗れり。秦師の鄭を襲い殽に敗れしの事は《左伝・僖公三十二年、三十三年》に見る。主とする所は忠諫を聴かず、師を労して敗を致すの象、大凶である、遠征に宜しからず。
咸:日月並居,常暗且微。高山崩顛,丘陵為溪。
蹇の卦が咸の卦に変わる。日と月倂せて一處に在りて、光亮常に昏暗微弱なり。高山崩塌傾覆して、丘陵陷落して渓谷と成れり。主とする所は天変地異、根本動搖の象、大凶である、上位者失明し、家国傾覆の厄を主とす。
恆:烏鵲食穀,張口受哺。蒙恩被德,長大成就。柔順利貞,君臣相好。
蹇の卦が恒の卦に変わる。烏鵲谷粒を啄食し、雛鳥嘴を張りて哺養を接受す。恩徳の滋養を蒙受して、終に長大成材せり。柔順を以て正を守りて利を得、君臣の間此れによって相親相好せり。主とする所は恩を承け養いを得、上下和洽の象、大吉である、人に依りて事を成し、柔順すれば則ち吉なり。
遯:雖躓復起,不毀牙齒。克免平復,憂除無疾。
蹇の卦が遯の卦に変わる。跟头を跌したりと雖も又た爬起る能く、牙齒も亦た磕壞せざりき。終に禍患を免れて如常に恢復し、憂愁消除して身に疾病なし。主とする所は跌きて復た起つの象、吉である、小挫大礙なく、久病痊る可し。
大壯:草木黃落,歲暮無室。虐政為賊,大人失福。
蹇の卦が大壮の卦に変わる。草木枯黄凋落して、年関將に近づくも家に帰る可きなし。暴虐の政令は人を害するの賊と為りて、大人物を連ねても福沢を失えり。主とする所は時衰え政虐なるの象、大凶である、宜しく蟄伏して冬を過ぎ、政事と相干まるべからず。
晉:避凶東走,反以禍口。制於牙爪,骨為灰土。
蹇の卦が晋の卦に変わる。凶险を避けんとして東に逃走するも、反って禍患の口の中に撞進せり。人家の爪牙に牢牢と制住せられて、骨頭皆な化して灰土と為れり。主とする所は禍を避けて反って禍を招くの象、大凶である、躲閃すれば益なし、東行尤も忌むべし。
明夷:欲飛不能,志苦心勞,福不我來。
蹇の卦が明夷の卦に変わる。翅を振りて高飛せんと欲するも飛び起る能わず、心志苦悶、精神労頓して、福気終に我が身に降臨するを肯ぜず。主とする所は志有りて伸び難きの象、凶である、時運未だ開けず、勉强して進を求むるは只だ徒労のみ。
家人:羔裘豹褎,東與福遇。駕迎吾兄,送我驪黃。
蹇の卦が家人の卦に変わる。羔皮を衣と為し豹皮を袖に鑲めたる礼服を穿きて、東に行きて正に福分と相遇す。車を駕して我が兄長を迎接しに往けば、彼又た我一対の黑馬黄馬を贈れり。「羔裘豹袪」は《詩経・唐風・羔裘》に出る、卿大夫の服を為す。主とする所は衣冠体を得、出行して喜に遇うの象、大吉である。
睽:東耕破犁,西失良妻。災害不避,家貧無資。
蹇の卦が睽の卦に変わる。東に往きて地を耕すも犂具を弄壞し、西に往きて又た賢良の妻子を失えり。災害躲めばも亦た開かず、家裏窮して一点の資財もなし。主とする所は四方損を受け、内外交困するの象、大凶である、農事、婚姻倶に利あらず、宜しく静を守りて運を待つべし。
解:魚陸失所,鳥蠅困苦。澤無萑蒲,晉國以墟。
蹇の卦が解の卦に変わる。魚は陸地の上に抛げられて依る所を失い、飛鳥蚊蠅も亦た困頓受苦せり。沼沢の裏に連れて蘆荻蒲草も生ぜず、晋国此れによって廃墟に淪落せり。「沢之萑蒲」は国の資産を為す、《左伝・昭公二十年》に見る。主とする所は生養の資尽く絶え、国破れ家亡ぶるの象、大凶である。
損:脫兔無蹄,三步五罷。南行不進,後市勞苦。
蹇の卦が損の卦に変わる。逃げ脱げし兎子蹄足を失い、三步を走れば五回歇まねばならず。南に往きて走るも動かず、集市に趕り到れば已に散場して、白白に辛苦一場なり。主とする所は力能く行くこと能わず、時機を錯失するの象、凶である、南行、赶集倶に利あらず、宜しく期を改め向きを改むべし。
益:行役未已,新事復起。姬姜勞苦,不得休止。
蹇の卦が益の卦に変わる。服役出行の差事未だ結束せざるに、新たの事端又た冒出来れり。姫姜のごとき貴家の女子を連ねても跟着労苦奔波して、片刻の歇息を得ず。主とする所は事務身に纏い、労碌休まざるの象、凶である、諸事踵を接し、宜しく力を量りて應付し、更に新事を攬るべからず。
夬:向日揚光,火為正王。消金厭兵,雷車避藏。陰雨不行,民定其鄉。
蹇の卦が夬の卦に変わる。太陽に面向して光焰高揚し、火德令に当たりて正統の主と為れり。金鉄を銷熔し兵革を鎮壓して、雷車を連ねても退避収蔵せしめり。陰雨再び横行せず、百姓因って郷里に安定せり。主とする所は陽德権に当たり、兵戈止息の象、大吉である、禍乱を平定し四境安寧を主とす。
姤:放銜垂轡,奔馬不制。棄法作奸,君失其位。
蹇の卦が姤の卦に変わる。馬嚼子を鬆開し繮繩を放下すれば、狂奔の馬便ち再び控制する能わず。法度を抛開して私を營り奸を作せば、君主終に己が位子を失えり。主とする所は綱紀廢弛、上位守りを失うの象、大凶である、宜しく法度を整粛し、人心を收束すべし。
萃:司命不遊,喜解我憂。皇母緩帶,嬰兒笑喜。
蹇の卦が萃の卦に変わる。人の寿命を掌る司命の神再び四處游走して災を降さず、喜事我が為に憂愁を解开せり。老母亲衣帯を寛松して安然自適にして、懐中の嬰児も亦た笑逐顔開せり。司命は寿を主るの神、《楚辞・九歌》に見る。主とする所は災星退避、闔家安楽の象、大吉である、病愈る可く、憂解く可く、嗣を求むるも成る可し。
升:黃帝出遊,駕龍乘馬。東上泰山,南過齊魯。郡國咸喜。
蹇の卦が升の卦に変わる。黄帝出巡遠游して、神竜を駕し駿馬に乘り、東に泰山に登り、南に斉魯の地を経過して、到る所の郡国歓喜せざるなし。黄帝の鬼神を泰山に合するの説は《韓非子・十過》に見る。主とする所は尊者巡行、四方沢を蒙るの象、大吉である、出行、上進倶に宜し。
困:既往不說,憂來禍結。比戶為患,無所申冤。
蹇の卦が困の卦に変わる。過去の事已に辯説すべき由なく、憂患踵を接して至り禍結びて解け難し。家家户户皆な其の害を受くるも、申訴冤屈すべき地方なし。主とする所は群其の困を受け、冤有りて訴へる處なきの象、大凶である、訴訟成らず、宜しく隱忍して変を待つべし。
井:荷蕢隱居,以避亂傾。終身不仕,遂其潔清。
蹇の卦が井の卦に変わる。彼の草筐を背負う隱者は隠居を選擇して、以て乱世の傾覆を避く。一生官を為りて出るを肯ぜず、終に己が高潔清白を成全せり。荷蕢者の孔氏の門を過ぐるは《論語・憲問》に事見る。主とする所は退隱して節を全うするの象、出仕して名を求むるに宜しからず、拙を守れば反って清吉を得。
革:折梃舂稷,君不得食。頭癢搔跟,無益於疾。
蹇の卦が革の卦に変わる。一根の木棒を折りて谷子を舂くるも、主人終に飯を吃上ぐる能わず。頭上痒きに却って脚後跟を撓むは、病症に於いて毫も益処なし。主とする所は力を用るること当ならず、轅を南にして辙を北にするの象、凶である、施す所の法路に對せず、宜しく別に正途を尋ねるべし。
鼎:植根不固,華葉落去,便為枯樹。
蹇の卦が鼎の卦に変わる。根基扎めたること牢からず、花朵葉子紛紛として凋落して、転眼の間に便ち一棵の枯樹と成れり。主とする所は根本立たず、終に枯敗に帰するの象、凶である、宜しく先ず本を固くし、只だ枝葉の浮華を務むべからず。
震:凶門生意,牢戶多冤。沙陁禿齒,使我困窮。
蹇の卦が震の卦に変わる。凶险の門の裏に營生を做起して、牢獄の中冤屈に満ち満てり。沙磧荒灘、牙齒脱落して、我を弄して困頓窮乏ならしめり。主とする所は營謀して険を渉り、身冤獄に陷るの象、大凶である、宜しく刑名を遠避し、改めて正業に就くべし。
艮:登山履谷,與虎相觸。蝟為功曹,班奴奔北。脫之喜國。
蹇の卦が艮の卦に変わる。山に登り谷を越ゆるの間、迎面して猛虎に撞上せり。幸いに満身尖刺の刺猬功曹を充て相助する有りて、虎奴倉皇として北に奔逃せり。終に険を脱して、可喜の国に回り帰れり。主とする所は険に遇いて異助を得て脱身するの象、凶中に吉を蔵し、小き者も亦た大難を済す可し。
漸:麟鳳所翔,國無咎殃。賈市十倍,復歸惠裡。
蹇の卦が漸の卦に変わる。麒麟と鳳凰の翱翔する処は、国中過錯災殃有ることなし。買売を為して十倍の利を獲て、満載して帰りて寛厚の郷里に回る。主とする所は祥瑞並び至り、経商大いに獲るの象、大吉である。
歸妹:路險道難,水過我前。進往不利,回車復還。
蹇の卦が帰妹の卦に変わる。道路険峻艱難にして、大水又た我が前に横たわる。再び前に往けば好処なく、只好く車頭を掉轉して返回するのみ。主とする所は前途阻まるるの象、凶である、難を知りて退くを方に計を得と為し、強行すれば必ず陷らん。
豐:延頸望邑,思歸我室。臺榭不成,未得安息。
蹇の卦が豊の卦に変わる。脖子を伸長して故邑を遠望し、一心に己が家中に回らんことを想う。然るに楼臺亭榭未だ修成せず、暫く還た安身歇息の処を得ず。主とする所は帰心切なれど時未だ至らざるの象、盼む所終に実現する可し、但だ眼下須らく再び等待すべし。
旅:蒙生株瞿,棘掛我須。小人嫉妒,使恩不遂。
蹇の卦が旅の卦に変わる。荒草叢生、枯株叢立して、荊棘我が鬚鬚を勾住せり。小人旁に在りて嫉妒して梗を作り、恩沢をして施行し下る能わざらしむ。主とする所は小人阻橈するの象、凶である、好意行くこと難し、宜しく是非の人を避開すべし。
巽:南至隱域,深潛處匿。聰明閉塞,與死為伍。
蹇の卦が巽の卦に変わる。南に往きて幽隱の地に走りて、深深として潜蔵躲め起れり。耳目閉塞、聰明用ゐず、直ちに死人と伍を為す。主とする所は退蔵し過度して自棄に近きの象、凶である、晦を韜くは禍を避くる可しと雖も、久しく蔵れば則ち志気消尽せん。
兌:機餌設張,計暴子良。範叔不廉,凶害及身。
蹇の卦が兌の卦に変わる。機関と誘餌倶に布置停当せられたりしも、算計賢良の人の面前に暴露せり。范叔操行清白ならず、凶禍終に己が身上に落着せり。范叔は即ち范雎、其の須賈の譖に遭いて幾ほどなく死せしは、《史記・范雎蔡沢列伝》に事見る。主とする所は機を設けて人を害し反って噬を返るるの象、大凶である、宜しく事を行いて光明にし、切に暗算を忌むべし。
渙:從騎出谷,遊戲苦域。坡高不進,利無所得。
蹇の卦が渙の卦に変わる。随従を帯びて馬に騎りて谷を出で、困苦の地の裏に游荡玩耍す。山坡太陡にして上る能わず、一点の好処も亦た撈え得ざりき。主とする所は游荡功なきの象、凶である、出行して嬉游すれば徒らに財力を耗す、安守するに如かず。
節:西國強梁,為虎作狼。東吞齊楚,並有其王。
蹇の卦が節の卦に変わる。西辺の国家強横霸道にして、虎狼よりも凶なり。東に向かい斉・楚等の国を吞并して、彼等の君王を連ねても一倂に收服せり。此れ秦の六国を并するの勢を指す。主とする所は強者兼并の象、強者に於いては吉なり、弱者に於いては大凶なり、弱勢に処る者は宜しく早く之が為に圖るべし。
中孚:登山伐輻,虎在我側。王孫無懼,仁不見賊。
蹇の卦が中孚の卦に変わる。山に登りて木材を砍伐して車輻を做れば、猛虎即ち身の旁に在り。王孫却って毫も懼怕せず、仁心を懐くる人は残害せられざるが故なり。主とする所は徳足りて物を服するの象、吉である、心に仁厚を存すれば則ち険境も亦た恙なき可し。
小過:六目睽睽,各欲有至。後來未壯,候待明旦。
蹇の卦が小過の卦に変わる。六隻の眼睛瞪りて大きくして相互に盯着し、各々皆な先を搶りて到達せんと欲す。後到の一方力量還た壮大ならずして、只だ第二天の天亮を待って再び説くのみ。主とする所は先を争い未だ決せざるの象、眼下宜しく兵を按じて動かず、時機成熟するを待ちて行くべし。
既濟:道涉多阪,牛馬蛇蟺。車不利載,請求不得。
蹇の卦が既済の卦に変わる。行く所の路須らく許多の山坡を跋涉すべく、牛馬蜿蜒盤繞して蛇の如く艱難に前行す。車子物を載せ動く能わず、請求する事も亦た办成る能わず。主とする所は道阻みて事滞るの象、凶である、運輸、請託倶に利あらず、宜しく暫く其の行を緩むべし。
未濟:一口三舌,相妨無益。群羊百牂,不為威強。亡馬失駒,家耗於時。
蹇の卦が未済の卦に変わる。一張の嘴の裏に三條の舌頭長じて、彼此妨礙して毫も益処なし。成群の公羊母羊多しと雖も、亦た何の威勢強盛を算えんや。馬失い駒子も亦た走失して、家業便ち此の時に耗損して下去せり。主とする所は言多くして相妨げ、虚に其の衆有るの象、凶である、口舌損を招き、牲畜財物倶に宜しく看緊すべし。
解の林(解卦六十四林)
解:駕言出遊,鳥斗車前。更相捽滅,兵馬且來。回車亟還,可以無憂。
解の卦が自ら変じても解の卦のままである。車を駕して門を出でて游歴すれば、飛鳥車の前に於いて相互に争鬪し、彼此揪扯廝殺して、是れ兵馬將に至らんとするの凶兆なり。「駕言出游」は《詩経・邶風・泉水》に出る。此の時趕緊に車頭を掉轉して家に回れば、憂患を免るる以て可なり。主とする所は兆を見て早く避ければ則ち吉の象、出行して異に遇えば当機立断して返るべし。
乾:大都之居,無物不具。抱布貿絲,所求必得。
解の卦が乾の卦に変わる。繁華の大都会の裏に住めば、何の物件も斉備せり。布匹を抱きて絲線を換えに往けば、欲する必定にして得る能し。「抱布貿絲」は《詩経・衛風・氓》に出る。主とする所は百物豊備、交易心に称うの象、大吉である、買売、物を求むる皆な遂う。
坤:膠著木連,不出牢關,家室相安。
解の卦が坤の卦に変わる。膠を以て木料を牢牢と粘接し一處に合わせ、堅固にして散脱することなく、彼の緊閉せる関門を出ずるも及ばず。一家人此れによって彼此安寧せり。主とする所は固く守りて動かざれば則ち安んずるの象、吉である、宜しく安居して成を守り、遠出に宜しからず。
屯:孟伯食長,懼其畏王。賴四蒙五,抱福歸房。
解の卦が屯の卦に変わる。孟伯長者の位に居りて俸禄を享用するも、心の裏却って君王の威厳を畏懼す。幸いに四方五方の庇蔭護佑を得て、最終に福分を抱きて己が房中に回れり。主とする所は身高位に処りて畏を知りて全うを得るの象、吉である、謹慎して畏を存すれば則ち福自ら身に随う。
蒙:朽輿瘦駟,不任銜轡。君子服之,談何容易。
解の卦が蒙の卦に変わる。朽壞の車子に瘦弱の駟馬を配せば、連れて嚼子繮繩も受持つ能わず。君子此のごとき車馬を駕して路に上らんとす、談ずること何の易きや。主とする所は器用に堪えず、任重くして行くこと難きの象、凶である、憑る所の資太だ薄し、宜しく先ず根本を更換すべし。
需:許嫁既婚,利福在身。適惠生桓,為我魯君。
解の卦が需の卦に変わる。許した婚約已に礼を成し婚を完して、利益と福沢倶に自身に帰せり。正に魯惠公の桓公を生み、我らの魯国の国君と成りしが如し。魯惠公、桓公の事は《左伝・隱公元年》に見る。主とする所は婚成りて後嗣貴を得るの象、大吉である、嫁娶、嗣を求むる倶に宜し。
訟:入門大喜,上堂見母。妻子俱在,兄弟饒有。
解の卦が訟の卦に変わる。一たび家門に進めば即ち天大の喜事にして、堂に登りて母親を拜見す。妻子兒女皆な在りて、兄弟們も各々富足せり。主とする所は家に帰りて團聚し、闔門興旺の象、大吉である、外に出づる者帰る可く、家中喜有り。
師:推車上山,力不能任。顛蹶蹉跌,傷我中心。
解の卦が師の卦に変わる。車を推して山上に往くも、力気実に承け担う能わず。連連として跟头を栽え足を失し跌倒して、我が心を傷透せり。主とする所は力小さくして任重きの象、凶である、能力を超出する事を勉强して承担すべからず。
比:鷹飛退去,不食其雛。禽尚如此,何況人乎。
解の卦が比の卦に変わる。蒼鷹飛び回りて又た退開して、終に己が雛鳥を吃掉するを肯ぜず。禽鳥尚お此の如く骨肉を顧念するに、況んや人をや。主とする所は親情棄て可からざるの象、吉である、骨肉の間は当に慈愛を以て相待し、人心恃む可し。
小畜:福棄我走,利不可得。幽人利貞,終無怨慝。
解の卦が小畜の卦に変わる。福気我を抛きて去り、利益も亦た手に求め得ず。然れど幽居して静を守る人は只だ正を持して移さざれば、終に怨恨と邪悪の身に纏う有ることなし。「幽人貞吉」は《周易・履》の九二爻辞に出る。主とする所は利なきも守有るの象、財禄薄しと雖も、正を守れば心安く咎なきを保つ可し。
履:夫妻反目,不能正室。公雲子南,姬言還北。並後匹嫡,二政亂國。
解の卦が履の卦に変わる。夫妻顔を翻して相惡み、家室端正する能わず。丈夫は南に往かんと説き、妻子偏に北に回らんと説いて、各々一詞を執す。妾媵と正后并立し、庶子と嫡子相匹して、两套の政令并行して、国家此れによって大乱せり。「并后匹嫡、両政耦国」は《左伝・桓公十八年》に出る。主とする所は名分正ならず、内乱將に起らんとするの象、大凶である。
泰:陽衰伏匿,陰淫為賊。幸賴王孫,遂至家國。
解の卦が泰の卦に変わる。陽気衰微して潜伏隠匿し、陰気泛濫して害を為し賊を成せり。所幸王孫の類の賢者の扶持有りて、終に安然として家国に回れり。主とする所は陰盛の世賢に賴りて自ら全うするの象、時局悪しと雖も、人の相助を得れば則ち虞なき可し。
否:入水求玉,不見和璞。終日至暮,勞無所得。
解の卦が否の卦に変わる。水の裏に下りて美玉を尋ねんも、和氏の璞の影子を連ねても見ず。早より天黑まで尋ねて、白く辛苦一場して毫も獲る所なし。和氏璧の事は《韓非子・和氏》に見る。主とする所は求むるに其の道に非ざるの象、凶である、尋ねる所此処に在らず、宜しく弦を改め張を更うべし。
同人:鳴鸞四牡,駕出行狩。合格有獲,獻公飲酒。
解の卦が同人の卦に変わる。車上の鸞鈴叮噹として響き、四匹の雄馬車を拉きて城を出でて行獵す。礼法に合して大いに斬獲有りて、獵物を國君に献じて酒を挙げて慶賀す。「四牡騑騑」「鸞声將將」は倶に《詩経・小雅》の田狩の篇に見る。主とする所は出行獲有り、進献して賞を得るの象、大吉である。
大有:覆手齊犢,易為功力。正月元日,承平致福。
解の卦が大有の卦に変わる。掌を翻すの間に便ち牛犢を料理して齊整し、事を办して力を省きて功を見易し。正月初一元日の時、太平を承接して福沢を招来す。主とする所は手を挙げるの労にして事成るの象、大吉である、新歳開端して、諸事順遂す。
謙:三火起明,雨滅其光。高位疾顛,驕恣誅傷。
解の卦が謙の卦に変わる。三堆の火燃起して光明するも、一場の雨便ち之を澆滅せり。身高位に居る人迅速に傾覆して、驕横放縱に因りて誅戮傷害に遭えり。主とする所は盛極まりて驟に衰え、驕る者禍を取るの象、大凶である、宜しく自ら抑えて謙退し、勢を恃みて強を逞しゅうすべからず。
豫:裹糗荷糧,與利相逢。高飛有得,君子獲福。
解の卦が豫の卦に変わる。乾糧を包好し口糧を背負いて路に上れば、一路上倶に利益と相遇す。高飛遠挙して獲有りて、君子福沢を獲得せり。主とする所は備有りて遠行し、進取して利を得るの象、大吉である、出行、遷升倶に宜し。
隨:水土相得,萬物蕃殖。膏澤優渥,君子有得。
解の卦が随の卦に変わる。水と土彼此相配相宜して、万物因って繁衍生長す。肥美の雨露豊厚充足して、君子中より大いに獲る所有り。主とする所は條件和洽、生養繁盛の象、大吉である、農事、置業、生育倶に宜し。
蠱:道理和得,人不相賊。君子往之,樂有利福。
解の卦が蠱の卦に変わる。道理講じて通じ彼此和順して、人と人の間再び相互に残害せず。君子彼処に到りて、歓歓喜喜として利益と福沢を享有す。主とする所は風俗淳和の象、大吉である、遷居、出仕、結交倶に宜し。
臨:天孫帝子,與日月處。光榮於世,福祿繁祉。
解の卦が臨の卦に変わる。天孫織女と天帝の子は、日月と同じく天上に居処す。彼等の光榮人世を照耀して、福禄と吉祥繁盛豊厚なり。主とする所は身份尊貴、榮寵身に加わるの象、大吉である、名を求め貴を求め倶に遂う。
觀:布衣在位,乘非其器。折足覆餗,毀傷我玉。
解の卦が観の卦に変わる。平民百姓高位を占據して、乘る所用る所皆な彼の用うべき器物に非ず。結果即ち鼎の足を折断して其の中の美食を一地に傾覆せしが如く、還た我が美玉を毁壞せり。「鼎折足、覆公餗」は《周易・鼎》の九四爻辞に出る。主とする所は徳位に称わず、必ず事を敗るに致るの象、大凶である、宜しく才を量りて任を受け、分を越すべからず。
噬嗑:鷁飛中退,舉事不遂。且守仁德,猶恐失墜。
解の卦が噬嗑の卦に変わる。鷁鳥半空に飛びて風に逼られて倒退し、事を办起して順遂する能わず。此の時姑く仁徳を守住して、還た失落墜敗有らんことを唯恐す。六鷁退飛の異は《春秋》の僖公十六年に見る。主とする所は勢に逆らい進み難きの象、凶である、宜しく退きて本分を守り、之を慎みに慎むべし。
賁:經棗整冠,意盈不厭。桀紂迷惑,讒佞傷賢。使國亂傾。
解の卦が賁の卦に変わる。棗樹の下を經過するも還た手を伸べて帽子を整え、人を惹きて疑心して棗を偷むと疑わしめ、心の裏志得意満にして收斂を知らず。夏桀と商紂迷惑せられて、讒佞の徒賢良を残害して、終に国家をして動乱傾覆せしめり。「瓜田不納履、李下不整冠」は古の嫌を避くるの訓。主とする所は嫌を避くるを知らず、邪に任せて正を害するの象、大凶である、宜しく嫌疑を謹守し、小人を遠斥すべし。
剝:申酉退跌,陰雨前作。柯條花枝,復泥不白。
解の卦が剥の卦に変わる。申酉の時分に到りて節節に倒退跌落し、陰雨前頭に於いて下り起れり。樹枝花條泥水に濺えられて汚濁し、再び潔白なる能わず。主とする所は時衰え運降り、清白汚を受くるの象、凶である、名声損し易し、宜しく身を守りて自ら潔くすべし。
復:平正賤使,至服苦事。
解の卦が復の卦に変わる。人と為りて平実正直なれど却って低賤の差役として使嗚せられ、最終に只だ彼の苦累の事情を承担するに往くのみ。主とする所は賢くして労に屈を受くるの象、凶である、徳行有ると雖も位卑く任重し、宜しく心を安んじ分を守りて時を待つべし。
旡妄:釣魴河湄,水泛無涯。振衣徒歸,上下昏迷。厲公經齊。
解の卦が旡妄の卦に変わる。河辺に在りて魴魚を垂釣すれば、水面泛濫して一望辺なく。衣裳を抖抖して空手して帰り、上上下下昏乱迷惘せり。陳厲公の事も亦た此のごとき昏迷失據なり。主とする所は徒労功なく、上下據を失うの象、凶である、水に臨みて利を求めて遂わず、宜しく静かに其の変を観るべし。
大畜:胎養萌生,始見兆形。遭逢雷電,摧角折頸。採□山頭,終安不傾。
解の卦が大畜の卦に変わる。胚胎母体の中に於いて孕育萌發して、剛わずかに形狀徵兆を顯出せり。不料雷鳴電閃に遭遇して、角を摧折し頸脖を扭断せられり。所幸山頭に於いて採擷して所を得、最終は仍お安穏にして傾覆せず。原文此処に闕字有り、「□」を以て疑を存して臆補せず。主とする所は初生して厄に遇うも終に保全する能くの象、起步難多し、堅持すれば則ち安んず。
頤:陽春枯槁,夏多水潦。雷雹俱擊,傷我禾黍。年歲困苦。
解の卦が頤の卦に変わる。本より生發すべき陽春の時節に草木反って枯槁し、夏天に到りて又た連日積水して澇を成せり。雷電冰雹一斉に打下して、我が禾苗黍稷を皆な毀し、一年到頭困苦不堪なり。主とする所は天時反常、農事大敗の象、大凶である、宜しく早く荒歉に備え、収成を指望すべからず。
大過:三耳六齒,痛疾不已。齲病蠹缺,墮落其宅。(缺一作鐵)
解の卦が大過の卦に変わる。三隻の耳朵、六顆の牙齒長じて、形体乖異にして病痛止まず。牙齒龋壞蛀空して、一顆々牙牀の上より脱落して下れり。主とする所は形殘え病久しきの象、凶である、口齒の疾と身体の虧損を主とし、宜しく及早に調治すべし。夾注に「缺」は一本に「鉄」と作ると称す。
坎:失時無友,嘉偶出走,傫如喪狗。
解の卦が坎の卦に変わる。時機を錯過して身辺に友なく、連れて美好の配偶も亦た家を離れ出走去れり。一個人頽喪疲憊して、喪家の犬の如し。「累累若喪家之狗」は鄭人の孔子を形容せし語、《史記・孔子世家》に見る。主とする所は時を失し孤零の象、大凶である、親友離散し、宜しく自ら省み自ら持して以て轉機を待つべし。
離:宜重微民,歲樂年豐。百國無咎,君子安喜。
解の卦が離の卦に変わる。当に彼の卑微の百姓を看重すべし、此の如くすれば則ち年成歓楽、五谷豊登す。各国倶に過錯災禍有ることなく、君子安然歓喜せり。主とする所は民を重んじて安を得るの象、大吉である、政を施し家を治むるに倶に宜しく下を恤むるを以て本と為すべし。
咸:登几上車,駕駟南遊。合散從橫,燕秦以強。
解の卦が咸の卦に変わる。凭几を扶けて車子に登り、四馬を駕して南に游歴す。合縱と連横の説時に聚まり時に散じて、燕国と秦国此れによって強盛せり。合縱連横の事は《戦国策》に見る。主とする所は縦横捭闔、勢に因りて強を得るの象、吉である、善く外援を用うる者は大勢を成す可し。
恆:鳥集茂木,心樂願得。烏鵲食穀,張口受哺。柔順利貞,感戴慈母。
解の卦が恒の卦に変わる。飛鳥枝葉繁茂の大樹の上に聚集して、心満意足、願の如く償われり。烏鵲谷粒を啄食し、雛鳥口を張りて哺養を接受す。柔順を以て正を守りて利を獲て、心の中感念して慈母に徳を戴く。主とする所は依託する所を得、恩を承け養を獲るの象、大吉である、人に依りて事を成し、孝順すれば則ち福なり。
遯:啟蟄始生,萬物美榮。福祉未成,市買無贏。
解の卦が遯の卦に変わる。驚蟄の時節虫豸初めて醒め、万物欣々として栄に向かう。只だ福沢未だ成就の時候に到らず、買売を為すも利銭を賺る能わず。主とする所は生機初めて動きて時機未だ熟せざるの象、宜しく勢を蓄えて時を待つべし、此の刻経商利なし。
大壯:驕滷火形,造惡作凶。無所能成,還自滅身。(一作:草木黃落,歲云暮矣。唐攻高城,大人失福。)
解の卦が大壮の卦に変わる。驕横粗魯、面に火気を帯びたる人は、一味に悪を造り凶を行い、結果一事も成らず、反って自らを毀し去れり。主とする所は凶を逞しゅうして自ら滅するの象、大凶である、宜しく驕気を平息し、行を改め正を守るべし。夾注に一本を載せて「草木黄落、歳云暮矣。唐攻高城、大人失福」と作る、則ち時序晩に向かい、征伐功なく、上位に居る者其の福沢を失うを言い、義を取りて相通ず。
晉:異國他土,出良駿馬。去如奔□,害不能傷。(一作:避亡東走,反入禍口。制於爪牙,骨為灰土。)
解の卦が晋の卦に変わる。异国他郷優良の駿馬を出産して、走れば疾風の如く快く、何の禍害も之を傷るに到らず。原文此処に闕字有り、「□」を以て疑を存して臆補せず。主とする所は良資を得て遠く害を避くる能くの象、吉である、依る所の力自ら全うするに足る。夾注に一本を載せて「避亡東走、反入禍口。制於爪牙、骨為灰土」と作る、則ち禍を避けて反って禍に遭うの凶辞にして、此の吉義と相反す、両存して考に備う。
明夷:恪敬競職,心不作慝。君明臣忠,民賴其福。
解の卦が明夷の卦に変わる。恭敬謹慎、心を尽くし職を尽くして、心の裏一点の邪悪の念頭を生ぜず。君主賢明、臣下忠誠にして、百姓彼等に倚靠して福を得たり。主とする所は君臣同徳、上下相安の象、大吉である、官を為り事を為るに、忠敬必ず報を獲ん。
家人:三女求夫,伺候山隅。不見覆關,長思憂嘆。
解の卦が家人の卦に変わる。三個の女子嫁人せんと欲して、山脚の一隅に守候して等待す。却って始終復關の彼方の心上人の身影を望見えず、只だ長久思念し憂愁嘆息するのみ。「不見復關、泣涕漣漣」は《詩経・衛風・氓》に出る。主とする所は盼む所至らず、婚事落空するの象、凶である、等待益なし、宜しく別に打算を作るべし。
睽:駕福乘喜,東至嘉國。戴慶南行,離家室居。
解の卦が睽の卦に変わる。福気を駕し喜事に乗りて、東に来りて美好の国度に至る。慶賀の名を頂きて又た南に行きて、従是旧日の家室居所を離れたり。主とする所は福を得て遷移するの象、吉中に別を帯ぶ、外出すれば吉慶を獲る可し、但だ須らく家を離れ遠く居るべし。
蹇:四奸為殘,齊魯道難。前驅執役,戒守無患。
解の卦が蹇の卦に変わる。四方の奸邪の徒害を為し乱を作して、斉魯に通ずる道路艱難にして行くこと難し。前に在りて道を開き、役を執りて随行する人只だ戒備厳守せば、便ち禍患有ることなし。主とする所は途中険有るも謹守すれば免るる可きの象、遠行は須らく伴を結び防を設け、慎めば則ち咎なし。
損:下憂上煩,蠹政為患,歲飢無年。
解の卦が損の卦に変わる。下面の百姓憂愁し、上面の官長煩擾して、蛀虫のごとき弊政禍患と成りて、年成飢荒、颗粒収るることなし。主とする所は政蠹れ民困るの象、大凶である、宜しく積弊を清除すべし、否ずんば則ち歳凶免れ難し。
益:雞雉失雛,常畏狐狸。黃池要盟,越國以昌。
解の卦が益の卦に変わる。母鶏野雉雛鳥を丢し、時時狐狸の来りて偷むを提防す。正に呉王夫差の北に上りて黄池に於いて諸侯と盟を争いしが如く、後方空虚にして、越国機に乗じて崛起して昌盛せり。黄池の會は《左伝・哀公十三年》に見る。主とする所は外を顧みて内を失うの象、凶である、只だ外面の威風を逞しゅうして根本を疏忽すべからず。
夬:堅冰黃鳥,常哀悲愁。不見米粒,但觀蓬蒿。數驚鷙鳥,為我心憂。
解の卦が夬の卦に変わる。堅冰封凍の時節、黄雀哀鳴して、終日悲愁す。一粒の米を尋ね得ず、眼前に只だ叢叢の蓬蒿のみ。又た屢屢猛禽に驚擾せられて、我が為に平らに憂愁を添えり。「交交黄鳥」は《詩経・秦風・黄鳥》に出る、本より哀傷の音を為す。主とする所は飢寒交迫、驚擾断えざるの象、大凶である、宜しく早く粮儲を蓄え、強横を避開すべし。
姤:玉銳鐵頤,倉庫空虛。市賈為盈,與我為仇。(元本有:時不我與,亡利為作。)
解の卦が姤の卦に変わる。玉製の刃口に鉄打の下巴を配して、鋒利に看るも実は相克せり。倉庫空空如として、市上の商賈満鉢満盌に賺り、反って我と対頭を結べり。主とする所は経営挫を受け、人に奪わるるの象、凶である、貿易して利を争うに宜しからず、宜しく本を守りて自足すべし。夾注に元本別に「時不我與、亡利為作」の両句有り、時機我を待たず、失利已に定局を成すを言うと称す。
萃:竊名盜位,居非其家。霜隕不實,為陰所賊。三年失室。
解の卦が萃の卦に変わる。名声を窃取し高位を盗据して、住む所己が住むべき屋子に非ず。秋霜早く降りて果実成らず、陰気に戕害せられ、三年の内連れて家室も亦た失えり。主とする所は名実に副わず、終に敗亡に致るの象、大凶である、宜しく本分を守り、切に僭越を忌むべし。
升:賊仁傷德,天怒不福。斬刈家社,失其本域。
解の卦が升の卦に変わる。仁義を残害し徳行を損傷すれば、上天震怒して再び福を降さず。家中の社主砍伐鏟除せられて、連れて祖傳の封域も亦た失えり。主とする所は徳に悖りて祐を失うの象、大凶である、宜しく速やかに前非を改め、徳を修めて以て轉圜を求むべし。
困:萬物和生,蟄蠱振起。益爵增福,日受其喜。
解の卦が困の卦に変わる。万物和順に生長して、蟄伏の虫豸も亦た翅を振りて甦醒す。官爵日に増し福沢日に厚くして、天天皆な喜事門に臨む有り。主とする所は生機復甦、禄位遞進の象、大吉である、困久しければ必ず通ず、正に宜しく進取すべし。
井:和氣所生,物皆不朽。聖賢居位,國無凶咎。
解の卦が井の卦に変わる。和順の気に由りて化生せる物は、皆な長久にして不朽壊する能し。聖人賢者身其の位に居れば、国中便ち凶险と過錯なし。主とする所は賢を得て治を致すの象、大吉である、托する所其の人を得れば、諸事長久を保つ可し。
革:龍游鳳舞,歲樂民喜。
解の卦が革の卦に変わる。神竜遨游し彩鳳起舞して、祥瑞並び現る。年成歓楽にして、百姓歓喜せり。主とする所は瑞應昭彰、歳稔り人和の象、大吉である、諸事倶に宜しく、利あらざる所なし。
鼎:鼎行窘步,次伯方舍。居安不懼,姬妾何憂。
解の卦が鼎の卦に変わる。鼎を扛げて行走すれば、步子局促艱難なり。副手と長官正に住処を安頓せり。既に安居して事なければ便ち畏懼するに及ばず、姫妾們又何の憂愁かあらん。主とする所は重を担ぐと雖も難きも処境自ら安んずるの象、事に任ずる苦しと雖も、内室憂なし。
震:水深難遊,霜寒難涉。商伯失利,旅人稽留。
解の卦が震の卦に変わる。水太だ深くして泅渡し難く、霜重く天寒にして跋涉し難し。行商の頭領本を折り、旅客も亦た路上に被困して停留して前せず。主とする所は行程受阻、経商失利の象、凶である、門を出でて利を謀るに宜しからず、宜しく天時の暖に轉ずるを待つべし。
艮:跛踦相隨,日暮牛罷。陵原徙傷,失利亡雌。
解の卦が艮の卦に変わる。瘸腿の彼此扶携して走るも、天色晩に向かい牛も亦た累趴せり。山陵原野の上に於いて遷徙して傷を受け、既に利を折り又た母畜を失えり。主とする所は力尽き途窮まるの象、凶である、遷徙、行旅倶に利あらず、宜しく近くに就きて安頓すべし。
漸:一牛九鎖,更相牽攣。案明如市,不得東西。請讞得報,日中被刑。
解の卦が漸の卦に変わる。一頭の牛九道の鎖鏈を拴せられ、彼此牽扯拘攣して動彈する能わず。案卷審りて明明白白なれど、圍観する者市集の如く多くして、人却って東西に往くこと倶に成らず。上报复審の請求批復を得て、正午の時分便ち行刑せられり。主とする所は訟獄身に纏い、終に刑罰を受くるの象、大凶である、務めて官司を遠避すべし。
歸妹:春桃生花,季女宜家。受福孔多,男為邦君。
解の卦が帰妹の卦に変わる。春天の桃樹繁花を綻開して、年少の女子正に出嫁成家に宜し。承受する福沢極めて多くして、生ずる所の男兒日後一国之君と成れり。「桃之夭夭」「之子于帰、宜其室家」は《詩経・周南・桃夭》に出る。主とする所は婚嫁大吉、子貴き門榮の象。
豐:雷鼓東行,稼穡凋傷。大夫執政,君贊其明。
解の卦が豊の卦に変わる。雷声戦鼓の如く東に滚り往き、庄稼摧折凋傷せられり。大夫政柄を把持して、国君反って彼を称して英明と為す。主とする所は権下移へ移り、上其の察を失うの象、凶である、農事損を受け、政令旁落す、宜しく早く権を收めて自ら任ずべし。
旅:季世君憂,亂國淫遊。殃禍立至,民無以休。
解の卦が旅の卦に変わる。衰世の君憂懼を満懐するも、却って仍お動乱の国中に於いて恣に游楽す。災殃禍患頃刻に降臨して、百姓再び休息を得る能わず。主とする所は末世昏乱の象、大凶である、宜しく享楽を收斂し、力を尽くして頽勢を挽すべし、否ずんば則ち禍至るに日なし。
巽:發輗溫陽,過雨宿房。宜時布和,無所不通。
解の卦が巽の卦に変わる。車轅の上の横木を装好して啓程し、天気和暖なり。途中雨に遇えば便ち房舎に投宿して、従容不迫なり。時令に順應して和気を布施すれば、處處暢通して阻まることなし。主とする所は時に随いて変に應じ、往きて利あらざるなきの象、大吉である、出行、交涉倶に遂う。
兌:水中大賈,求利十千。商人不至,市空無有。
解の卦が兌の卦に変わる。水路上の大商賈は、万貫の利を賺らんと指望す。不料同行の商人一個も来らず、市上空空蕩蕩として何の貨もなし。主とする所は期望落空、交易成らざるの象、凶である、貿易宜しく緩むべし、大宗の投入を作る勿れ。
渙:春草萌生,萬物敷榮。陰陽和暢,國樂無憂。
解の卦が渙の卦に変わる。春草土を破りて萌發し、万物舒展繁榮す。陰陽二気調和通暢して、举国して安楽にして憂慮なし。主とする所は生機勃発、上下和楽の象、大吉である、万事発端して、正に宜しく有為すべし。
節:左眇右盲,目視不明。下民多孽,君失其常。
解の卦が節の卦に変わる。左眼瞎え右眼盲えて、何を看るも清楚ならず。底下の百姓災殃頻仍にして、君主も亦た応有の常道を失えり。主とする所は上昏く下乱るるの象、大凶である、耳目明らかならざれば則ち政令必ず失わん、宜しく広く聴き兼ねて視るべし。
中孚:悅以內安,不利出門。憂禍消除,公孫何尤。
解の卦が中孚の卦に変わる。心の裏喜悦にして内室安寧せば、此の時門を出でて遠行するに宜しからず。憂愁禍患自然に消除して、公孫一族又何の過失の言かあらん。主とする所は内を守れば則ち吉、外に出でれば則ち損ずるの象、宜しく家中に安処し、静かに福の至るを待つべし。
小過:冊書之信,言不負語。易我驎驥,君子有德。
解の卦が小過の卦に変わる。簡冊の上に写したる凭信は、説き出したる話決して言に食わず。之を以て我が駿馬良駒を換得して、君子此れによって徳行を顯出せり。主とする所は言有りて信有り、交易成るを得るの象、大吉である、約を立て、買売倶に托付する可し。
既濟:上政搖擾,蟲螟並起。害我嘉穀,年歲無稷。
解の卦が既済の卦に変わる。上頭の政令動揺紛擾して、螟蛉の害虫一斉に発作す。我が好い庄稼を皆な糟蹋して、一年下来稷谷を連ねても収上る能わず。「去其螟螣」は《詩経・小雅・大田》に見る。主とする所は政乱れて災を招き、田禾害を受くるの象、大凶である、宜しく内政を安定せしめ、方に虫荒を免れん。
未濟:干旄旌旗,執在載郊。雖有寶玉,無路致之。
解の卦が未済の卦に変わる。牛尾の装飾せる旌旗高く挙げて、儀仗郊野に停む。手の中珍宝美玉有ると雖も、送るべき人の手裏に送り届くべき路子なし。「孑孑干旄、在浚之郊」は《詩経・鄘風・干旄》に出る。主とする所は物有りて門なく、進献達せざるの象、凶である、資有りて路なし、宜しく先ず関節を通ずべし。
損の林(損卦六十四林)
損:路多枳棘,步刺我足。不利旅客,為心作毒。
損の卦が自ら変じても損の卦のままである。道路上枳樹荊棘叢生して、一步一刺我が両脚を扎傷す。此れ行旅の人に於て極めて不利にして、一路苦楚心の中に毒を中したるが猶し。主とする所は途中阻まり多きの象、凶である、出行に宜しからず、勉强して路に上れば只だ自ら苦しむのみ。
乾:鯉鮪鮒鯽,積福多魚。資所無有,富我窮家。
損の卦が乾の卦に変わる。鯉魚、鱘魚、鯽魚成群して、積み下げし福気満塘の魚の如し。原先一无所有の境况を填補して、我が窮苦の人家をして富裕に致起せしむ。主とする所は財源豊足、貧より富に轉ずるの象、大吉である、漁獵、経営倶に厚獲有り。
坤:景星照堂,麟遊鳳翔。仁施大行,頌聲作興。仁序無明,失其寵光。(豫之艮)
損の卦が坤の卦に変わる。祥瑞の景星厅堂に照り入りて、麒麟遨游し鳳凰翱翔す。仁政天下に広く行われて、歌頌の声四處に興起す。可なりしも若し仁徳の次序明らかならざれば、亦た此の寵榮光耀を失去せん。景星は太平の瑞、《史記・天官書》に見る。主とする所は徳修まれば則ち瑞至り、徳失せば則ち福去るの象、吉凶全系くは自身の修為に在り。夾注に此の繇《豫》之《艮》と重出と標す。
屯:羊腸九縈,相推稍前。止須王孫,乃能至天。
損の卦が屯の卦に変わる。羊腸の小道曲折盤繞して九重、衆人相互に推挤して稍稍前進す。只だ王孫貴人の帯引を待ちて、始めて天庭に登上る能し。主とする所は道路艱阻、須らく貴人の提携に賴るべきの象、独り力進むこと難く、援を得れば則ち通ず。
蒙:四手共身,莫失所圖。更相訪接,動失事便。
損の卦が蒙の卦に変わる。四隻の手一個の身子の上に長じて、本より所謀を錯失せざらんと想う。然るに彼此往来牽扯して、一たび動けば反って事を办するの便利を失掉せり。主とする所は人多く手雑く、掣肘して事を誤るの象、凶である、宜しく一人に専責せしめ、多頭して倂進すべからず。
需:水流趨下,逮至東來。求我所有,買鱣與鯉。(益之無妄)
損の卦が需の卦に変わる。水低處に流れて、一直に東方に流れて來れり。來人我が此処に所有する物を求取して、鱣魚と鯉魚を買い去れり。主とする所は勢に順いて來り、買売成るを得るの象、吉である、客有りて自ら來りて貨を求む、宜しく勢に就きて成交すべし。夾注に此の繇《益》之《旡妄》と重出と標す。
訟:春栗夏棗,山鮮希有。斗千萬石,貴不可賤。(否之漸)
損の卦が訟の卦に変わる。春天の栗子、夏天の棗児は、皆な山中の得難き時鮮なり。一斗千万石の値に抵る能く、貴重にして價を壓下す能わず。主とする所は奇貨居る可きの象、吉である、持する所の物稀罕にして求め難し、宜しく價を待ちて沽るべし。夾注に此の繇《否》之《漸》と重出と標す。
師:旦往暮還,相佑與聚,無有凶患。
損の卦が師の卦に変わる。早上門を出で、傍晚帰來りて、彼此照應し又た一處に聚まりて、凶险禍患なし。主とする所は近く行きて伴有り、往返平安の象、吉である、短途出入倶に宜しく、遠く圖るに及ばず。
比:大蛇當路,使季畏懼。湯火之災,切直我膚。賴其天幸,歸於室廬。(屯之井)
損の卦が比の卦に変わる。一条の大蛇路上に横たわりて、小児子をして嚇して發抖せしむ。滚湯烈火のごとき災禍、幾ほどに我が皮肉に燙き至らんとせり。幸いに上天の眷顧に賴りて、終に平安に自家屋舎に回れり。主とする所は険に遇いて天佑を得るの象、凶中に救有り、驚きて傷なし。夾注に此の繇《屯》之《井》と重出と標す。
小畜:徒足去域,亂入陳國。有所畏避,深藏邃匿。
損の卦が小畜の卦に変わる。徒歩にて本郷を離れ、慌てて陳国に闖進す。心畏懼有りて躲避せんとするが為に、只好く深深として蔵匿するのみ。主とする所は流離して禍を避くるの象、凶である、宜しく隱忍して潜蔵し、頭を抛げ面を露す可からず。
履:海為水宗,聰明且聖。百流歸得,無有叛逆。常饒優足。
損の卦が履の卦に変わる。大海は衆水の帰する所の宗主にして、聡明にして聖哲なり。百川皆な之に汇帰して、一条も背離するなく、此れによって常に豊饒充足せり。「海納百川」の喻は《荘子・秋水》に見る。主とする所は徳厚くして衆帰するの象、大吉である、首を為す者容るる能ければ、則ち人心帰附して基業豊足せん。
泰:夏麥麩曲,霜擊其芒。疚君敗國,使年大傷。(泰之賁)
損の卦が泰の卦に変わる。夏天の麦子只だ麸皮酒曲余りて、霜凍麦芒を打壞せり。此れ君主をして憂病し国事敗壞せしめ、一年の収成大いに損傷を受く。主とする所は天災禾を傷め、国事随いて敗るるの象、大凶である、宜しく及早に荒に備え、豊年を指望する勿れ。夾注に此の繇《泰》之《賁》と重出と標す。
否:秋隼冬翔,數被履霜。雄犬夜鳴,家憂不寧。
損の卦が否の卦に変わる。秋天の鷹隼冬天に到りても還た飛翔して、屢屢寒霜に踏む。公狗夜に在りて狂吠して、家中憂擾して安寧を得ず。「履霜堅冰至」は《周易・坤》に出る、禍端の漸く成るを喻う。主とする所は凶兆頻りに現れ、家宅安ならざるの象、凶である、宜しく門戸を謹守し、患を微に於いて防ぐべし。
同人:樂仁上德,東鄰慕梁,來安吾國。
損の卦が同人の卦に変わる。仁を行うを樂しみ徳を崇尚して、東辺の隣邦此処の橋梁津渡と教化を仰慕して、紛紛として前に來り、我が国家をして安定せしむ。主とする所は徳遠人を感ずるの象、大吉である、徳を以て衆に服せば、遠き者自ら來たらん。
大有:還憂除殃,汙泥上義,下田為江。
損の卦が大有の卦に変わる。憂愁退去して災殃解除せられたりと雖も、污泥反って上位に推挙せられて仁義と号され、低窪の農田淹れて江河と成れり。主とする所は上下倒置、名実錯乱の象、憂暫く解くると雖も、然れど賢愚顛倒し、田業水損を受け易し。
謙:闇昧冥語,傳相詿誤。鬼魅所居,誰知臥處。
損の卦が謙の卦に変わる。昏暗の中の私語、幽冥の裏の傳言は、輾轉相傳して彼此貽誤す。是れ鬼魅の身を栖まう所在にして、誰か彼等の究竟何処に臥するかを知らん。主とする所は謡言暗害、禍伏みて明らかならざるの象、凶である、宜しく陰私の言を遠離し、暗昧の者と共に謀る勿れ。
豫:南歷玉山,東入玉關。登上福堂,飲萬歲漿。
損の卦が豫の卦に変わる。南に往きて玉山を游歴し、東に入りて玉門関に至る。福徳の堂に登りて、万岁不老の瓊漿を暢飲す。玉山は西王母の居する所、《山海経・西山経》に見る。主とする所は遠游して福を得、寿考綿長の象、大吉である、出行、寿を求むる倶に宜し。
隨:比目四翼,來安我國。福善上堂,與我同床。
損の卦が随の卦に変わる。比目魚双を成し、鳥児四翼斉び飛ぶは、皆な対を成す祥瑞にして、前に來りて我が国家を安定せしむ。福気と善事堂に登り室に入りて、我と同床共枕す。比目、比翼は古人の称する所の嘉瑞、《爾雅・釋地》に見る。主とする所は福善相随、家国倶に安んずるの象、大吉である。
蠱:乘牛逐驥,日暮不至。路宿多畏,亡其騂騅。
損の卦が蠱の卦に変わる。牛に騎りて千里馬を追赶すれど、天黑くなりても追い上ぐる能わず。夜途中に投宿するも處處可怕にして、還た彼の赤色の駿馬を丢失せり。主とする所は力人に敵せず、追逐して反って損するの象、凶である、強者と速を競る可からず、途中尤も須らく失を防ぐべし。
臨:元吉無咎,安寧不殆。
損の卦が臨の卦に変わる。至りて吉利にして、過錯有ることなく、平安寧靜にして危殆なし。「元吉」は《周易》の断辞の中の最上の吉。主とする所は純吉の象、大吉である、諸事順遂して、利あらざる所なし。
觀:奮翅鼓翼,翱翔外國。逍遙徙倚,來歸溫室。
損の卦が観の卦に変わる。翅を振りて高く飛び、翱翔して国外に去れり。従容徘徊、逍遥自在の後、又た温暖の居室に回り帰れり。主とする所は遠游して後に安く帰るの象、吉である、外に出でれば志向を展ぶ可く、終に平安に家に還る能し。
噬嗑:河伯娶婦,東山氏女。新婚三日,浮雲灑雨。露我管第,萬邦蒙佑。
損の卦が噬嗑の卦に変わる。河伯親を娶るに、娶る所は東山氏の女児なり。新婚三天にして、浮雲便ち甘霖を洒り下して、我が屋舎庭院を潤沢して、万国此れによって庇佑を蒙れり。河伯娶婦の俗は《史記・滑稽列伝》の西門豹の鄴を治むる事に見る。主とする所は婚成りて甘沢を降すの象、大吉である、雨沢普く施し、恩惠広く被るを主とす。
賁:嬰兒求乳,慈母歸子。黃麑悅喜,得其甘飽。
損の卦が賁の卦に変わる。嬰児哭きて奶を吃せんとすれば、慈愛の母親便ち孩子の身辺に回り來れり。小さき黄鹿も亦た歓喜雀躍して、吃ること又た甘く又た飽かん。主とする所は養いを求めて應を得るの象、大吉である、需る所人の供給する有り、飢困解く可し。
剝:貧鬼守門,日破我盆。毀罌傷瓶,空虛無子。
損の卦が剥の卦に変わる。窮神門口に守りて、天天我が盆罐を打破す。壇子摔碎し瓶子磕傷して、家裏空空蕩蕩として個の子嗣を連ねてもなし。主とする所は家道窮敗、器毁れ人稀なるの象、大凶である、宜しく用を節して積蓄し、倂せて嗣續を求むべし。
復:多載重負,捐棄於野。王母誰子,但自勞苦。
損の卦が復の卦に変わる。車上満満当当に裝められ負荷沈重なるも、最後に却って全く荒野の裏に丢棄せり。王母又た誰家の人なるや、白く彼女の為に辛苦一場せり。主とする所は徒労獲なく、托する所其の人に非ざるの象、凶である、相干まらざる人の為に気力を耗尽すべからず。
旡妄:雄狐綏綏,登山崔嵬。昭告顯功,大福允興。
損の卦が旡妄の卦に変わる。雄狐従容緩行して、高峻の山頭に登上す。上に向かいて昭告し、功業を彰顕して、大福此れによって確実に興起せり。「有狐綏綏」は《詩経・衛風・有狐》に出る、此れ其の従容として偶を求むるの意を取る。主とする所は高きに登りて名を顯し、福沢興發の象、大吉である。
大畜:嬰兒駭笑,未有所識。狡童而爭,亂我政事。
損の卦が大畜の卦に変わる。嬰児驚きて笑うも、何も還た懂せず。狡黠の少年却って旁に在りて争鬧して、我が政事を攪乱せり。「彼狡童兮」は《詩経・鄭風・狡童》に出る、小人の政を乱るるを刺す。主とする所は幼稚権に当たり、小人政を乱るの象、凶である、宜しく名分を正しくし、佞人を去るべし。
頤:十丸同投,為雉所離。獨得逃脫,完全不虧。
損の卦が頤の卦に変わる。十顆の彈丸一斉に射出せば、野鶏打たれて四散す。唯だ一隻有りて逃脱して、毫髪損なく。主とする所は衆の中に独り全うするの象、吉である、険境に処ると雖も脱身する能く、宜しく機を見て作るべし。
大過:狐濟濡尾,來揭得枳。季姜懷悔,鮑舍魚臰。
損の卦が大過の卦に変わる。小狐狸河を渡りて尾巴を沾湿し、岸上りて衣裳を提起するも只だ几枚の枳実を撿得せり。季姜心の裏懊悔を懐きて、住む所鮑魚鋪子の如く腥臭当に堪え難し。「小狐汔済、濡其尾」は《周易・未済》の卦辞に出る、「如入鮑魚之肆」は《孔子家語》に見る。主とする所は功垂成に敗れ、処する所汚濁の象、凶である、事に臨みて將に成らんとして失い、居処宜しく擇ぶべし。
坎:踆足息肩,所忌不難。金城銅郭,以鐵為關。藩屏周衛,安全無患。
損の卦が坎の卦に変わる。脚步を歇め肩担を卸下すれば、原先忌憚せし所難く対付するに非ず。城牆金銅の如く堅く、関門鉄を以て鑄成し、四周藩籬護衛周密にして、安全にして禍患なし。「金城湯池」の喻は《漢書・蒯通伝》に見る。主とする所は守御堅固の象、大吉である、固く守れば万全を保つ可し。
離:戴堯扶禹,松喬彭祖。西過王母,道路夷易。無敢難者。(訟之家人)
損の卦が離の卦に変わる。上に唐堯を戴き旁に大禹を扶け、身辺に又た赤松子、王子喬と彭祖の此れらの神仙寿者有り。西に向かい西王母の居を經過して、一路道路平坦にして、敢えて来りて阻難する者なし。主とする所は聖賢仙真の護持を得るの象、大吉である、出行阻まるなく、福寿双全す。夾注に此の繇《訟》之《家人》と重出と標す。
咸:京庾積聚,黍稷以極。行者疾至,可以厭飽。
損の卦が咸の卦に変わる。高大の粮仓と露天の谷囤堆積して山の如く、黍稷多きこと極処に到れり。路を趕る人快步にして來りて、正に飽足を吃个べし。主とする所は積储豊厚、行旅食を得るの象、大吉である、家に余粮有りて、來る者拒まず。
恆:良夫孔姬,負理登臺。欒季不扶,衛輒走逃。
損の卦が恒の卦に変わる。渾良夫と孔姬常理に違背して高台に登りて事を謀れば、欒氏、季氏等扶助を肯ぜず、衛出公輒只だ出奔逃亡するのみ。此れは《左伝・哀公十五、十六年》の衛国蒯聵の乱を用う。主とする所は理に悖りて事を謀り、終に位を失うに致るの象、大凶である、正理に循わざれば必ず衆助を失う。
遯:天之所予,福祿常在,不憂危殆。
損の卦が遯の卦に変わる。上天の賜う所は、福気と俸禄長久にして常に在りて、危難を擔憂するに用ゐず。主とする所は天授の福自然に長く保つの象、大吉である、分内の得る所は安く享く可く、必ずしも強求するに及ばず。
大壯:行觸天網,馬死車傷。身無寥賴,困窮乏糧。
損の卦が大壮の卦に変わる。門を出でれば便ち天羅地網に撞上して、馬死に車も亦た壞れたり。孤身一人依頼する所なく、困頓窮乏して粮食を連ねても断えり。主とする所は天忌を触犯し、行止倶に困るの象、大凶である、宜しく行を停め歩を止め、安守して救を待つべし。
晉:鉛刀切玉,堅不可得。盡我觔力,胝胼為疾。
損の卦が晋の卦に変わる。軟鈍の鉛刀を以て美玉を切れば、玉太だ堅硬にして何としても切動す能わず。我が全身の筋力を用尽して、手脚老繭を磨出して病痛と成れり。「鉛刀不可以斬」は古の才任に勝えざるを喻うる語。主とする所は力任に勝えず、徒らに気力を耗するの象、凶である、宜しく器を換え法を換え、蛮干すべからず。
明夷:穆逢百里,使孟奮武。將軍帥戰,敗於殽口。
損の卦が明夷の卦に変わる。秦穆公賢臣百里奚に遇うも、却って孟明視を派して武を逞しゅうし遠征せしめり。將軍師を率ゐて戦を作して、終に殽山の谷口に大敗して帰れり。殽の戦は《左伝・僖公三十三年》に見る。主とする所は賢有りて用ゐず、勇を恃みて敗を致すの象、大凶である、兵を興すに宜しからず、宜しく老成の言を聴くべし。
家人:有人追亡,為言所匿,不日而得。
損の卦が家人の卦に変わる。人逃亡する者を追捕すれば、逃者一句话に因りて蔵身の処を泄露せられ、数日を過ぎずして便ち抓住せられり。主とする所は隱匿久しきこと難きの象、人を尋ね物を覓れば得る可し、然れど逃避する者に於ては凶なり、宜しく早く自首して安を求むべし。
睽:府藏之富,玉以振貨。捕魚河海,罟網多得。
損の卦が睽の卦に変わる。府庫の中儲蔵豊富にして、美玉を以て財貨の流通を調劑す。江河湖海に到りて魚を捕えば、網を撒きて收穫頗る豊なり。主とする所は財貨充盈、漁獵大獲の象、大吉である、経商、財を求むる倶に宜し。
蹇:鴻飛遵陸,公歸不復,伯氏客宿。
損の卦が蹇の卦に変わる。鴻雁陸地に沿いて低く飛ぶは、本より其の所を失う。周公東征して去りて、久久として回來を見ず、長兄のごとき人只だ他郷に客居して夜を過ぐるのみ。「鴻飛遵陸、公歸不復」は《詩経・豳風・九罭》に出る。主とする所は遠行返らず、羈旅外に在るの象、凶である、離別し久しく客たるを主とし、帰期卜し難し。
解:鳧過稻蘆,甘樂麩。雖鶩不去,田畯懷憂。
損の卦が解の卦に変わる。野鴨稻田蘆蕩を飛び過ぎて、津々たる味有りて谷糠を啄食す。家鴨なりと雖も亦た頼りて去るを肯ぜず、農事を管る田畯此の為に心に愁を満てり。田畯は即ち《詩経・豳風・七月》の載する所の農を勸めるの官。主とする所は禽稼穡を害し、田事損を受くるの象、凶である、宜しく厳かに看守を加え、小損の積りて大耗と成るを防ぐべし。
益:雨師娶婦,黃岩季子。成禮既婚,相呼而南。膏澤應時,年豐大喜。
損の卦が益の卦に変わる。雨師親を娶るに、娶る所は黄岩家の小女兒なり。礼成り婚を完しての後、夫婦相喚びて一同に南に往く。是れに於て甘潤の雨水時に按じて降下し、年成豊収して、举国大いに喜べり。雨師は雨を主るの神、《周礼・大宗伯》に見る。主とする所は婚成りて雨順い、歳稔り人歓ぶの象、大吉である。
夬:蓄積有餘,糞土不居。美哉輪奐,出有高車。
損の卦が夬の卦に変わる。積蓄綽綽として余り有りて、糞土の類の賤物を連ねても堆放するに屑とせず。屋宇高大華美にして、門を出でれば還た高蓋の車子有り。「美哉輪焉、美哉奐焉」は《礼記・檀弓下》の晋大夫の趙武の新室を賀するの辞に出る。主とする所は富貴顕赫の象、大吉である、家業隆盛にして、出入榮耀す。
姤:重門擊柝,介士守護。終有他道,雖驚不懼。
損の卦が姤の卦に変わる。層層の門戸の内梆子を敲きて夜を巡り、甲士日夜守護す。縦い別に別の岔路通ずる可有るも、驚擾を受くると雖も懼怕するに及ばず。「重門撃柝、以待暴客」は《周易・繫辞下》に出る。主とする所は戒備森厳、驚有りて険なきの象、吉である、預め防範を設ければ則ち外患入る能わず。
萃:大都王市,稠人多寶。公孫宜賈,資貨萬倍。
損の卦が萃の卦に変わる。大都会の王家市集の上、人烟稠密、珍宝雲集す。公孫一族最も買売を為すに宜しく、本銭貨物万倍に翻れり。主とする所は通都大邑に経商して大利の象、大吉である、貿易、投資倶に厚報有り。
升:秋隼冬翔,數被嚴霜。甲兵庭堂,萬物不生。
損の卦が升の卦に変わる。秋天の鷹隼冬天に到りても還た飛翔して、屢屢嚴霜の摧折に遭う。兵甲刀槍庭院厅堂に擺満して、万物此れによって生長する能わず。主とする所は殺気充盈、生機断絶の象、大凶である、宜しく武を偃め兵を息め、方に復甦する能し。
困:招禍致凶,來螫我邦。痛在手足,不得安息。
損の卦が困の卦に変わる。禍端を招来し凶险を引致して、毒虫のごとき禍害我が邦国を螫傷せり。痛み手足の間に在りて、一刻も安寧を得ず。主とする所は自ら其の禍を招き、上下倶に傷つくの象、大凶である、宜しく禍源を断絶し、切に狼を引きて室に入るる勿れ。
井:秦失其鹿,高足先得。勇夫慕義,君子率服。
損の卦が井の卦に変わる。秦朝天下と此の鹿を丢失して、腿脚快き人先を搶りて追到せり。勇武の士大義を仰慕して、君子も皆な相率ゐて歸服せり。「秦失其鹿、天下共逐之」は《史記・淮陰侯列伝》の蒯通の語に出る。主とする所は群雄利を逐い、捷足先登の象、吉である、機会当前に在り、宜しく速やかに行い果断すべし。
革:山陵四塞,遏我徑路。欲前不得,復還故處。
損の卦が革の卦に変わる。四面皆な山陵に堵塞せられて、我が路徑を全く挡住せられり。前に往かんと想うも走る能わず、只好く原地に折回るのみ。主とする所は四面受阻、進退門なきの象、凶である、此の時進を謀るに宜しからず、旧地を安守するを上と為す。
鼎:一指食肉,口無所得,舌嚵於腹。
損の卦が鼎の卦に変わる。只だ一根の手指を用ゐて肉汁に蘸りて味を嘗むるも、嘴の裏実は一物も吃到せず、舌頭饞えて肚子直に叫ぶ。鼎に指を染むるの事は《左伝・宣公四年》に見る。主とする所は徒らに其の名有りて実恵なきの象、凶である、得る所欲を充たすに足らず、宜しく妄想を絶つべし。
震:晨夜驚駭,不知所止。皇母相佑,卒得安處。
損の卦が震の卦に変わる。早より晩に到るまで驚慌失措して、何処に在りて始めて停下する能くするかを知らず。幸いに神母の護佑有りて、最終に安身の処を得たり。主とする所は驚擾の後終に安頓を得るの象、初め倉皇と雖も、尊長の庇護に賴りて定まる。
艮:擒狼所言,語無成全。設我白馬,使乾口來。
損の卦が艮の卦に変わる。豺狼を抓住する時其の説く所の話は、一句も亦た数を算う可からず。我が白馬を备好して、人を派して空口に來りて信を傳えても亦た用なし。主とする所は言して信なく、約恃むに足らざるの象、凶である、不義の人と約を立てば必ず欺を受けん。
漸:呼精靈來,魄生無憂。疾病瘳愈,解我患愁。
損の卦が漸の卦に変わる。神靈を呼請して降臨せしめば、魂魄重新に生発して再び憂懼せず。疾病痊愈して、我が憂患愁苦を解开せり。主とする所は祈禳して應を獲、病去りて憂消ゆるの象、大吉である、病を問えば愈る可く、久愁釋す可し。
歸妹:牧羊逐兔,使魚捕鼠。任非其人,卒歲無功。不免辛苦。
損の卦が帰妹の卦に変わる。羊を放る者をして兎子を追わしめ、魚をして老鼠を捉えしむ。人を用うること当ならず、一年忙しきも功效なく、白く辛苦一場なり。主とする所は其の才に非ずを任ずるの象、凶である、宜しく才を量りて事を授け、否ずんば則ち労して成ることなし。
豐:堂祥上樓,與福俱居。帝姬治好,國安無憂。
損の卦が豊の卦に変わる。祥瑞厅堂に降臨して、直に楼閣に上りて、福気と同じく居住す。帝室の女家を治むるに方有りて、国家安定して憂患なし。主とする所は祥福同居、内治め外安んずるの象、大吉である、家宅、国事倶に佳し。
旅:禹召諸神,會稽南山。執玉萬國,天下康安。
損の卦が旅の卦に変わる。大禹衆神を召集して、會稽南山に於いて盟を會す。万国諸侯玉帛を手執して前に來りて朝會して、天下康泰安寧なり。禹の諸侯を會稽に會するは《史記・夏本紀》に事見る。主とする所は群賢畢まりて至り、四海心を歸するの象、大吉である、盟を會し、衆を聚め、助を求むる倶に宜し。
巽:太姒文母,仍生聖子。昌發受命,為天下主。
損の卦が巽の卦に変わる。太姒は周文王の妻にして文母と尊ばるる賢婦にして、連々として聖明の兒子を生下せり。文王昌と武王發天命を承受して、天下の主と成れり。太姒の「則百斯男」は《詩経・大雅・思齊》に見る。主とする所は賢母貴子を育つるの象、大吉である、嗣を求め家を興す倶に大順なり。
兌:兩罝同室,兔無誰告。與狂相觸,蒙我與惡。
損の卦が兌の卦に変わる。两張の兎を捕る網同じく一間の屋裏に放ち置くも、兎子却って告状しに往く處なし。狂徒と迎面して相撞して、白く我をして惡名を蒙受せしむ。主とする所は申訴する處なく、人に代りて過を受くるの象、凶である、宜しく狂悖の人を遠避し、牽累に遭うを免れん。
渙:桃雀竊脂,巢於小枝。動搖不安,為風所吹。心寒悚惕,常憂殆危。
損の卦が渙の卦に変わる。桃雀油脂を銜取して巢を筑くも、却って巢を細小の枝條の上に做れり。風一たび吹けば便ち搖晃不定して、心の裏寒を發して時時驚惕し、常に危殆將に至らんを憂う。主とする所は根基牢からず、危に居りて自ら擾るの象、凶である、宜しく巢を移して固きに就き、薄弱の處に身を托する勿れ。
節:陽春長日,萬物華實,樂有利福。(一作:春陽盛長,萬物成實。福利所鍾,忻忻過日。)
損の卦が節の卦に変わる。陽和の春天白昼漸く長じ、万物開花結果して、歓楽の中利益と福沢を帯來す。主とする所は時序昌明、生養成有るの象、大吉である、諸事順遂し、宜しく時に及んで経営すべし。夾注に一本を載せて「春陽盛長、万物成實。福利所鍾、忻忻過日」と作る、福利匯聚して日日歓欣を言い、義を取りて相同じ。
中孚:鄰不顧我,而望玉女。身疾瘡癩,誰肯媚者。
損の卦が中孚の卦に変わる。隣里倶に我と理睬するを願わず、却って一個個に玉の如き美女を巴望す。自身瘡癩の惡疾を患えて、還た誰か肯えて來りて親近討好せん。主とする所は形穢れて見弃せられ、孤立して援なきの象、凶である、先ず当に其の疾を自治し、然る後に人の和を望む可し。
小過:涸旱不雨,澤竭無流。魚鱉乾口,皇天不憂。
損の卦が小過の卦に変わる。久しく旱して雨せず、湖沢乾涸し水流断絶す。魚鼈嘴を張りて泥の裏に渴死して、上天却って毫も心を動かさず。主とする所は大旱災を成し、求告する門なきの象、大凶である、宜しく早く水源を謀り、坐して天恩を待つ可からず。
既濟:狼虎之鄉,日爭凶訟。受性貪饕,不能容縱。
損の卦が既済の卦に変わる。是れ豺狼虎豹聚居の郷にして、天天凶惡の争鬪訴訟有り。彼等の人生性貪婪饕餮にして、別人の半分を容る能わず。主とする所は地に処りて凶险、暴人と伍を為すの象、大凶である、宜しく速やかに善地に遷り、切に争訟に巻入る勿れ。
未濟:陰住陽疾,水離其室。舟楫大作,傷其黍稷。民飢於食,亦病心腹。
損の卦が未済の卦に変わる。陰気滞留し陽気損を受けて、大水其の河床を溢出せり。處處船槳に靠りて行かざるを得ず、黍稷庄稼を皆な淹壞せしめり。百姓粮を缺きて餓えて、心腹を連ねても病を害えり。主とする所は水患稼を傷め、飢饉疫を成すの象、大凶である、宜しく洪を防ぎ荒に備え、兼ねて飲食を慎むべし。
益の林(益卦六十四林)
益:文王四乳,仁愛篤厚。子畜十男,無有夭折。
益の卦が自ら変じても益の卦のままである。相傳えて周文王四乳の異相有りて生れ、人と為りて仁愛篤実厚道なり。十個の兒子を養育して、一個も夭折せざりき。文王四乳の説は《淮南子・修務訓》に見る。主とする所は徳厚くして男多く、子嗣繁昌の象、大吉である、嗣を求め家を興す倶に得。
乾:下堂出門,東西九山。逢福值喜,得其安閒。
益の卦が乾の卦に変わる。厅堂を走下して大門を出でれば、東西一帯皆な重重の山峦なり。一路上福に遇い喜に逢い、安逸清閑を得享せり。主とする所は出行して吉に遇うの象、大吉である、遠行、游歴倶に喜慶有り。
坤:城上有烏,自鳴破家。招呼丑毒,為國災患。
益の卦が坤の卦に変わる。城頭の上烏鴉落ちて、自ら顧み自ら啼叫するは、是れ家を破るの凶兆なり。其れ醜惡毒害の気を招来して、国家の災患と成れり。城上烏の鳴くは、古より不祥と為す。主とする所は凶兆上に現れ、禍家国に及ぶの象、大凶である、宜しく徳を修めて災を禳げ、門庭を謹守すべし。
屯:伯虎仲熊,德義淵泓。使布五穀,陰陽順序。
益の卦が屯の卦に変わる。伯虎、仲熊のごとき賢才は、徳行道義深厚宏大なり。彼等を派して五谷の農事を推廣せしめ、天地陰陽因って各々其の序に順えり。八元八凱は《左伝・文公十八年》に見る。主とする所は賢者職に当たり、農事順遂の象、大吉である。
蒙:飲酒醉臥,跳起爭鬥。伯傷仲僵,東家治喪。
益の卦が蒙の卦に変わる。酒を喝醉して頭を倒して睡下するも、忽然として跳び起きて手を動かして打架す。老大傷を受け老二打ち倒されて起たず、東隣の人家此れに就きて喪事を办起せり。主とする所は酒後に控を失い、争鬪して死に致るの象、大凶である、宜しく酒を戒め鬪を慎み、喧嚣の席を遠離すべし。
需:四目相視,稍近同執。日映之後,見吾伯姨。
益の卦が需の卦に変わる。両人四目相対に視て、漸漸走り近づき、手を携えて同行す。日影西に斜めし後を待ちて、便ち我が伯母姨母に見ゆるを得たり。主とする所は相親し相就き、親に會して遂うを得るの象、吉である、約會、親を訪ねる倶に願の如くなる可し。
訟:隨時逐便,不失利門。靈獲得福,富於封君。
益の卦が訟の卦に変わる。時勢に順應し、便利に就きて事を行い、何れの一道の利を生ずる門をも錯過せず。因って神靈の賜福を獲得して、富有の程度封を受けし君侯に勝過せり。主とする所は時に因りて利を取るの象、大吉である、善く時機を把握する者は巨富に致る可し。
師:隴西冀北,多見駿馬。去如焱,害不能傷。
益の卦が師の卦に変わる。隴西と冀北一帯良馬を盛産して、隨處に駿驥を見る。跑れば火焰の飛竄するが如く快く、任ずるに何の禍害も傷るに到らず。冀北良馬多しの説は韓愈の述ぶる所の古諺に見る、其の源甚だ早し。主とする所は憑る所の力迅捷にして恃む可きの象、吉である、良助を得れば則ち害を遠くして行かん。
比:白龍黑虎,起伏俱怒。期戰盤空,蚩尤敗走。死於魚首。(同人之比,蒙之坎)
益の卦が比の卦に変わる。白龍と黑虎一起一伏して、同時に暴怒す。期を約して半空に盤旋鏖戦して、蚩尤終に敗逃して、魚首の地に死せり。黄帝の蚩尤を涿鹿に擒殺するの事は《史記・五帝本紀》に見る。主とする所は強敵交鋒して邪終に正に勝たざるの象、吉である、争鬪烈しと雖も、正直の者勝を獲ん。夾注に此の繇《同人》之《比》、《蒙》之《坎》と重出と標す。
小畜:鴻飛戾天,避害紫淵。雖有鋒門,不能危身。
益の卦が小畜の卦に変わる。鴻雁高飛して直に雲天に上り、又た深遽の紫淵に躲め入りて害を避く。縦い前頭に刀鋒のごとき険門有るも、其の身子に危害するに到らず。「鴻飛戾天」は《詩経・大雅・旱麓》の「鳶飛戾天」に化す。主とする所は高く挙げ遠く避けて身を全うするの象、大吉である、進む能く退く能き者は其の害を受けず。
履:平國不均,夏氏作亂。烏號竊發,靈公隕命。
益の卦が履の卦に変わる。陳靈公名は平国、国を治むるに公ならず平ならずして、夏氏一族因って乱を作せり。烏号の良弓暗裏より一箭を射出して、靈公場を当たりて殞命せり。夏徵舒の陳靈公を射殺するは《左伝・宣公十年》に事見る。主とする所は政其の平を失し、身弑逆に遭うの象、大凶である、宜しく正を持して下に待ち、患を内に於いて防ぐべし。
泰:江漢上游,政逆民憂。陰伐其陽,雄者受殃。
益の卦が泰の卦に変わる。江漢の上游一帯に在りて、政令倒行逆施して百姓憂愁す。陰気陽気を侵伐して、雄位に居る人反って災殃を蒙受せり。主とする所は陰盛んに陽を凌ぎ、上位損を受くるの象、凶である、尊きに処る者は宜しく自ら斂み、下人の侵奪を防ぐべし。
否:東家殺豬,聞臭腥臊。神怒不顧,命絕衰國。亳社火燒,宋公夷誅。
益の卦が否の卦に変わる。東辺の人家猪を殺して祭祀するも、只だ一片の腥臊臭気を聞るのみ。神靈震怒して垂顧するを肯ぜず、衰敗の国氣數此れに就きて断絶せり。殷人の立てし亳社火に焚燒せられ、宋公因って誅戮に遭えり。亳社の災は《春秋》の哀公四年に見る。主とする所は祭誠敬ならず、神怒りて国滅ぶるの象、大凶である。
同人:西誅不服,恃強負力。倍道趍敵,師走敗覆。
益の卦が同人の卦に変わる。西に向かい帰服を肯ぜざる一方を討伐すれば、一味に強横を依仗し武力を逞恃す。倍に路を趕りて敵を奔襲するも、結果軍隊潰散、全軍覆沒せり。主とする所は強を恃みて軽く進むの象、大凶である、兵持重を貴ぶ、急躁すれば必ず敗る。
大有:一婦六夫,擾亂不治。張王季莊,莫適為公。政道塞壅,周君失邦。
益の卦が大有の卦に変わる。一個の婦人六個の丈夫を配し、綱紀擾乱して整治すべき法なし。張氏、王氏、季氏、莊氏各々相讓らずして、誰も亦た誰を奉じて主と為すを肯ぜず。政令の路此れによって壅塞不通にして、周天子終に邦国を失掉せり。主とする所は名分紊乱、政多門より出づるの象、大凶である、宜しく名を正しく分を定め、号令を統一すべし。
謙:配合相迎,利之四鄉。昏以為期,明星煌煌。欣喜奭懌,所言得當。
益の卦が謙の卦に変わる。男女相配し彼此迎娶して、利益四方郷里に通達す。黄昏を約して親迎の期と為せば、啓明星閃爍して輝を生ず。「昏以為期、明星煌煌」は《詩経・陳風・東門之楊》に出る。衆人歓欣喜悦して、説く所の話樣樣に体を得たり。主とする所は婚配時を得、言事倶に当たるの象、大吉である。
豫:猿墜高木,不踒手足。握金懷玉,還歸其室。(蒙之隨,訟之艮,否之臨)
益の卦が豫の卦に変わる。猿猴高樹の上より跌落して下るも、手脚却って扭伤せず。還た黄金を握り美玉を懐きて、安然として己が窩裏に回れり。主とする所は険に遇うも傷なく且つ厚獲有るの象、大吉である、波折を経ると雖も、人財両全せり。夾注に此の繇《蒙》之《随》、《訟》之《艮》、《否》之《臨》と重出と標す。
隨:卷領遁世,仁德不害。三聖攸同,周國茂興。(需之震)
益の卦が随の卦に変わる。卷領の粗朴の衣裳を穿きて隱遁して世を避け、仁徳を懐抱して人を害せず。太王、王季、文王の三位の聖人志同道合にして、周室此れによって繁茂興盛せり。三聖相承は《詩経・大雅》《中庸》の述ぶる所の周徳の積に見る。主とする所は徳を守り善を積み、家国日に興るの象、大吉である。夾注に此の繇《需》之《震》と重出と標す。
蠱:去危脫厄,安無怵惕。上福善堂,見我喜悅。
益の卦が蠱の卦に変わる。険境を離れ困厄を脱出して、安穏にして再び心を提げ胆を吊るすに及ばず。福徳善慶の堂に登上れば、我に見ゆる時人人歓喜せり。主とする所は険を脱して安を獲、人に逢いて皆な吉の象、大吉である、困厄解く可く、喜事將に臨まん。
臨:帶季兒良,時利權兵。將師合戰,敵不能當。趙魏以強。
益の卦が臨の卦に変わる。兵符を佩帯し兒良のごとき良將を任用して、正に兵を用ゐ権を掌るの有利の時機に逢えり。將帥師を率ゐて交鋒すれば、敵人抵擋する能わず、趙国と魏国此れによって強盛せり。兒良は古の善く兵を用うる者、《呂氏春秋・不二》に見る。主とする所は良將を得て戦勝するの象、大吉である、宜しく賢を任じて兵を用ゐ、師を出でば必ず克たん。
觀:鵠思其雄,欲隨鳳東。順理兩翼,出自日中。須留北邑,復反其室。
益の卦が観の卦に変わる。雌鵠其の伴侶を思念して、鳳凰に追随して東に往かんと欲す。双翅を理順して、正午の時分啓程出發す。中途北辺の城邑に些日を停留せりしも、最後還はた己が巢室に回れり。主とする所は出行滞有るも終に家に返る能くの象、求む所擱擱すると雖も、人事終に完聚に帰す。
噬嗑:且如驚鹿,不能定足。室家分散,各走竄匿。
益の卦が噬嗑の卦に変わる。驚きたる鹿の如くして、脚跟倶に站め立つこと稳からず。一家人四散分離して、各々奔逃して躲藏せり。主とする所は驚乱離散の象、大凶である、家宅寧ならず、宜しく先ず人心を安んずべし。
賁:甲乙丙丁,俱歸我庭。三丑六子,入門見母。
益の卦が賁の卦に変わる。甲乙丙丁の諸方の人物、一斉に汇帰して我が庭院に至る。三丑六子の此れらの兒孫輩、門に進みて便ち母親に見ゆ。主とする所は人丁歸聚、闔家團圓の象、大吉である、人を尋ね、親を聚むる倶に遂う。
剝:躡華巔,觀浮雲。風不搖,雨不薄。心安吉,患無咎。
益の卦が剥の卦に変わる。華山の巔に登上して、脚下の浮雲を靜観す。風吹きても動かず雨も亦た侵るに到らず。心中安泰吉祥にして、縦い憂患有るも過錯有ることなし。主とする所は超然として高處に在り、外擾を受けざるの象、大吉である、高きに処りて自ら守れば、虞なきを保つ可し。
復:德施流行,利之四鄉。雨師灑道,風伯逐殃。巡狩封禪,以告成功。
益の卦が復の卦に変わる。恩徳広く布き流行して、利益四方郷里に通達す。雨師水を洒りて道を浄め、風伯災殃を駆逐す。天子四方を巡狩し泰山に封禅して、天地に向かい功業已に成るを報告す。封禅の礼は《史記・封禅書》に見る。主とする所は徳業大成、天人共に慶するの象、大吉である。
旡妄:水流趍下,遂成東海。求我所有,買鱣與鯉。(損之需)
益の卦が旡妄の卦に変わる。水低處に向かいて奔流して、日積月累して終に東海に匯成れり。人來りて我が此処の物を求取して、鱣魚と鯉魚を買い去れり。主とする所は小を積みて大を成し、買売順遂の象、大吉である、涓滴の功巨業を成す可し。夾注に此の繇《損》之《需》と重出と標す。
大畜:和氣相薄,膏潤津澤,生我嘉穀。
益の卦が大畜の卦に変わる。和順の気交じて激蕩して、化して肥美の雨露と為りて大地を滋潤して、我が好い庄稼を長出せしめり。主とする所は陰陽交泰、生養豊美の象、大吉である、農事、孕育、経営倶に宜し。
頤:憂驚以除,禍不成災,安全以來。
益の卦が頤の卦に変わる。憂愁と驚恐一倂に消除して、禍端災殃を釀成せず、平安此れにより來れり。主とする所は険を化して夷を為すの象、吉である、憂う所の事終に患を為さず、放心する可し。
大過:堅冰黃鳥,常哀悲愁。不見甘粒,但睹藜蒿。數驚鷙鳥,為我心憂。
益の卦が大過の卦に変わる。堅冰封凍の時節、黄雀哀鳴已まず、終日悲愁す。一粒の好穀を尋ね得ず、眼前に只だ藜草蓬蒿のみ。又た屢屢猛禽に驚擾せられて、我に替えて平らに憂愁を添えり。「交交黄鳥」は《詩経・秦風・黄鳥》に出る。主とする所は飢寒交迫、驚擾頻仍の象、大凶である、宜しく早く粮儲を蓄え、強横を遠避すべし。
坎:翕翕□,實墜崩顛。滅其令名,身命不全。(泰之謙,否之離)
益の卦が坎の卦に変わる。聚集依附して相相與に黨を結び、果実墜落し根本崩塌す。美好の名声此れに就きて毀滅して、性命を連ねても保つ能わず。原文此処に闕字有り、「□」を以て疑を存して臆補せず。「翕翕訿訿」は《詩経・小雅・小旻》に見る、群小の苟合を刺す。主とする所は朋比して名を敗り、身死に名裂くの象、大凶である、宜しく私党を絶ち、独り其の正を守るべし。
離:因禍受福,喜盈其身。
益の卦が離の卦に変わる。一場の禍事に因りて反って福気を得て、喜慶全身に充盈せり。「禍兮福之所倚」は《老子》に出る。主とする所は禍の中に福を蔵するの象、大吉である、眼前の厄正に是れ轉機なり、憂懼するに及ばず。
咸:陸居千里,不見河海,無有魚市。
益の卦が咸の卦に変わる。方円千里の内陸に住みて、江河大海を見ず、魚を売る集市も亦たなし。主とする所は地業に宜しからざるの象、凶である、処する所の境此の資源なし、求めんと欲する者は当に別に他途を謀るべし。
恆:鹿得美草,鳴呼其友。九族和睦,不憂飢乏。(益之恆,同人之蹇)
益の卦が恒の卦に変わる。鹿肥美の青草を尋ね到れば、便ち鳴叫して同伴を呼喚して食を共にせしむ。「呦呦鹿鳴、食野之苹」は《詩経・小雅・鹿鳴》に出る、嘉賓を宴饗するの樂を為す。九族因って和睦親近して、再び飢餓匱乏を憂愁せず。主とする所は利を得て共享し、宗族和順の象、大吉である。夾注に此の繇《益》之《恒》、《同人》之《蹇》と重出と標す。
遯:出門得堂,不逢禍殃。入戶自苦,不見矛戟。
益の卦が遯の卦に変わる。門を出でれば便ち歇息すべき厅堂有りて、禍殃に遇上せず。反って屋裏に留在して自ら苦を尋ねて吃す、刀兵矛戟を連ねても見ざると雖も。主とする所は出づるに宜しく守るに宜しからざるの象、外出すれば接済を獲る可く、門を閉じて自ら守れば徒らに困を受く。
大壯:累尊重席,命我家客。福佑久長,不見咎殃。
益の卦が大壮の卦に変わる。層る。層層の酒尊を擺し重なりの坐席を鋪きて、我が家の中の賓客を請じて座に入らしむ。福沢庇佑長長久久として、一点の罪咎災殃を見ず。「重席」は賢を敬するの礼、《礼記》に見る。主とする所は賢を礼して福を致すの象、大吉である、客を宴し、結び交わり、好を修むる倶に宜し。
晉:鴻雁俱飛,北就魚池。鱣鰋鯰鯉,眾鳥饒有。一鳴獲兩,得之過倍。
益の卦が晋の卦に変わる。鴻雁成群して斉び飛びて、北に向かいて魚塘の上に落る。鱣魚、鰋魚、鲶、鲶魚、鯉魚樣樣倶に有りて、群鳥此れによって吃りて飽足せり。一声叫べば便ち两条を抓りて、收穫預期に超過すること一倍なり。「鱣鮪發發」「鰋鯉處之」は《詩経・衛風・碩人》《小雅・魚麗》の属に見る。主とする所は獲る所倍蓰の象、大吉である、財を求め漁利する倶に厚報有り。
明夷:當風奮翼,與鳥飛北。入我家國,見吾慶室。
益の卦が明夷の卦に変わる。風に迎い翅を振りて高く挙げ、群鳥と同じく北に飛び往く。飛び入りて我が家邦に到りて、我が喜慶に満ちたる居室を見れり。主とする所は風に乘りて勢を得、家に還りて喜に逢うの象、大吉である、北行利有り、帰來慶有り。
家人:麒麟鳳凰,善政得祥。陰陽和調,國無災殃。
益の卦が家人の卦に変わる。麒麟と鳳凰同時に出現するは、是れ善政の感召して來らしめし祥瑞なり。陰陽二気調和順暢して、国中災殃なし。麟鳳は王者の瑞、《礼記・礼運》に見る。主とする所は徳政瑞を致すの象、大吉である、政修まり家和して、諸事皆な吉なり。
睽:逐狐東山,水過我前。深不可涉,失其後便。
益の卦が睽の卦に変わる。東山に到りて狐狸を追獵せば、一道の大水我が前に横たわれり。水深くして渉り過ぐる能わず、連れて後頭の方便の退路も亦た失掉せり。主とする所は前阻みて後絶え、追逐功なきの象、凶である、求むる所水を隔てて致し難し、宜しく速やかに歩を止むべし。
蹇:丑戌亥子,饑饉所生。陰為暴客,水絕我食。
益の卦が蹇の卦に変わる。丑、戌、亥、子の此の几个の方位時辰は、正に是れ飢荒の由りて発生する所の処なり。陰気化して凶暴の來客と為りて、大水我が食粮を断絶せり。主とする所は水厄飢を致すの象、大凶である、宜しく水患を防ぎ、預め口粮を蓄うべし。
解:狐狸雉兔,畏我迯去。分走竄匿,不知處所。
益の卦が解の卦に変わる。狐狸、野鶏と兎子は、一たび我を見れば便ち嚇して逃開す。四散奔走して各々蔵匿し、誰も亦た何処に去りしかを知らず。主とする所は衆散じ物失うの象、凶である、人を尋ね物を覓るも倶に着落有ること難し、宜しく静候して自ら現るるを待つべし。
損:桀蹠惡人,使得不通。炎旱為殃,年榖大傷。
益の卦が損の卦に変わる。夏桀と盗跖のごとき惡人道に当たりて、政令下情をして倶に通達せざらしむ。酷熱乾旱災殃と成りて、一年の谷物大いに損傷を受く。盗跖の事は《荘子・盗跖》に見る。主とする所は惡人権に当たり、天時随いて之が為に災を成すの象、大凶である、宜しく惡人を去り、旱荒に備うべし。
夬:兔乳立室,行來雀食。虎攫我子,長號不已。
益の卦が夬の卦に変わる。母兎乳を哺り家を安んじ室を立つるに、走り來る麻雀も亦た來りて食を分かつ。不料猛虎撲來りて我が幼子を叼去れば、母を為る者長声哀号して止まず。主とする所は安居して忽ち強奪に遭うの象、大凶である、子女の厄を主とし、宜しく厳かに看護を加うべし。
姤:土階明堂,禮讓益興。雄雌相得,使我無疾。(疾一作疚)
益の卦が姤の卦に変わる。素土の台階、朴素の明堂にして、礼讓の風因って更に興盛す。雌雄相配して宜を得て、我が身上病痛なからしむ。「土階三等」は堯の倹徳、《史記・太史公自序》に見る。主とする所は倹を尚び礼を崇び、身心康泰の象、大吉である。夾注に「疾」は一本に「疚」と作ると称す。
萃:送金出門,井失玉兔。往來井上,破甕壞盆。(兔一作丸)
益の卦が萃の卦に変わる。金子を把きて門を出でて送り、井の裏又た玉兔のごとき宝物を丢失せり。井辺に来来回回として打捞するも、只だ瓮を摔破し盆を砸壞するを落得せり。主とする所は財物両失、労して益損ずるの象、大凶である、貸借し餽贈するに宜しからず、器物の損毀を謹防すべし。夾注に「兔」は一本に「丸」と作ると称す。
升:諷德誦功,美周盛隆。加其旦輔,夬濟沖人。(夬一作大)
益の卦が升の卦に変わる。人人徳行を傳誦し功業を歌頌して、周朝の昌盛隆厚を讃美す。更に周公旦の輔佐を加えて、果決に年幼の成王を扶助せり。「沖人」は即ち幼君、成王の自称と為す、《尚書》の諸誥に見る。主とする所は賢臣幼主を佐え、国運隆昌の象、大吉である。夾注に「夬」は一本に「大」と作ると称す。
困:盜竊滅身,二母不親。王后無黨,毀其寶靈。
益の卦が困の卦に変わる。盗竊に因りて身を殺すの禍を招致して、两位の母親も亦た肯えて相認し相親まず。王后党羽の依靠を失いて、彼女の那件の宝貴の靈物を連ねても毁掉せられり。主とする所は不義を行いて衆叛り親離るるの象、大凶である、宜しく正を守り貪を戒め、非分の財を取る勿れ。
井:六月騤騤,名欲有至。專征未裝,俟侍明旦。
益の卦が井の卦に変わる。六月の裏戦馬雄壮にして馳騁して、声名眼の前に到手せんとす。只だ専擅征伐の行裝未だ備え斉わずして、只好く明日の天亮を待って再び説くのみ。「四牡騤騤」は《詩経・小雅・采薇》に出る。主とする所は勢成りて時機未だ到らざるの象、圖る所期す可し、但だ須らく再び一日の功を候すべし。
革:雀行求粒,誤入網罭。賴仁君子,復說歸室。
益の卦が革の卦に変わる。麻雀四處に谷粒を覓食して、一たび小心せざれば誤って細密の網の中に撞入れり。幸いに仁厚の君子の相救に賴りて、解脱して巢に回るを得たり。主とする所は網に陷りて仁者に遇いて脱するを得るの象、吉である、一時困を受くるも、終に貴人の開釋有らん。
鼎:仁德孔明,患禍不傷。期誓不至,室人御恤。
益の卦が鼎の卦に変わる。仁厚の徳行極めて昭彰にして、憂患禍事傷害するに到らず。約定したる人期を失して未だ至らずと雖も、家裏の人も亦た應付して照料周全する能し。主とする所は徳を以て禍を免れ、内助力を得るの象、吉である、縦い失約の小挫有るも、家中憂なし。
震:龜厭江海,陸行不止。自今枯槁,失其都市。憂悔咎生。
益の卦が震の卦に変わる。神龜江海に厭きて、偏に陸地の上に於いて停まず爬行せんと要す。従是身体干枯憔悴して、原本安身の所在を丢失して、憂愁、懊悔と過錯一倂に生出せり。主とする所は本性を背弃し、自ら其の所を離るるの象、大凶である、宜しく本業を安守し、軽く途を改む可からず。
艮:孤獨特處,莫依為輔。正心允濟,神勞志苦。
益の卦が艮の卦に変わる。孤零たる一個人独り処りて、依靠し輔助すべき人なし。唯だ心志を端正し誠実にして自ら勵まして始めて難関を渡過する能く、只だ精神労頓、心志苦楚なり。主とする所は孤立して援なくして自強せねばならざるの象、外に助くる所なく、端に自持を賴りて、苦尽きて方に通ず。
漸:伯仲言留,叔子云去。誰云無咎,主母大喜。
益の卦が漸の卦に変わる。大哥二哥は留下せんと説き、三弟却って去らんと説く。誰か此の如くすれば便ち過錯なからんと説く、倒れに家中の主母此の為に大いに歓喜せり。主とする所は家人去留一ならずして内主心に称うの象、意見分岐すると雖も、家内に於いて反って喜事と成る。
歸妹:初憂不安,後得笑歡,雖懼無患。
益の卦が帰妹の卦に変わる。起初憂愁不安なるも、後来却って歓笑喜楽を得たり。一度驚懼せりと雖も、終究禍患なし。主とする所は先に憂え後に喜ぶの象、吉である、眼下の慮患を為すに足らず、堅持すれば轉機を待つ可し。
豐:好戰亡國,師不以律。稱上殞墜,齊疾狼戾。被其災祟。
益の卦が豊の卦に変わる。戦を好めば必ず国を亡ぼすに致り、兵を出でば又た法度節制に依らず。上に在ると号称する者反って墜落喪亡して、斉国暴戾狼の如くに因りて速やかに敗れ、衆人皆な此の災祟を蒙受せり。「師出以律」は《周易・師》の初六爻辞に出る。主とする所は武を黷みて紀なく、上下殃を同じくするの象、大凶である、切に兵を興し鬪を好むを忌むべし。
旅:鹿生澤陂,豺傷其麑,泣血獨哀。
益の卦が旅の卦に変わる。母鹿水沢の岸辺に於いて子を産むるに、豺狼却って其の小鹿を咬傷せり。母鹿泣血のごとく独り哀鳴す。「彼沢之陂」は《詩経・陳風・沢陂》に出る。主とする所は骨肉傷に遭い、孤苦して告ぐるなきの象、大凶である、子女の厄を主とし、宜しく倍に防護を加うべし。
巽:天地鈐塞,仁智隱伏。商旅不行,利潤難得。
益の卦が巽の卦に変わる。天地の間閉鎖不通にして、仁者と智者倶に隱伏して出でず。商旅行き通うに法なく、利潤も亦た獲得し難し。「天地閉、賢人隠」は《周易・坤》の文言に出る。主とする所は時局閉塞の象、凶である、経商遠行倶に利あらず、宜しく晦を韜して通を待つべし。
兌:福德之士,歡悅日喜。夷吾相桓,三歸為臣。賞流子孫。
益の卦が兌の卦に変わる。福有り徳有るの人は、天天歓欣喜悦す。正に管仲字夷吾の斉桓公を輔佐して、三帰の富を享有して位人臣の極に居りて、賞賜還た子孫に惠及するが如し。管仲の三帰有りて、位陪臣の上に在るは《論語・八佾》《史記・管晏列伝》に事見る。主とする所は主に遇いて志を得、蔭後代に及ぶの象、大吉である。
渙:上無飛鳥,下無走獸。擾亂未治,勞民於事。
益の卦が渙の卦に変わる。天上に一隻の飛鳥なく、地下に一頭の走獣なく、一派荒寂なり。禍乱未だ平定せざるに、百姓仍お各種の差事に役使労苦せられり。主とする所は地荒れて政擾り、民力枯竭の象、大凶である、宜しく民と休息し、再び事役を興す可からず。
節:月削日衰,工夫下機。宇宙滅明,不見三光。(謙之觀)
益の卦が節の卦に変わる。月亮一天一天として虧損し、日光一天一天として衰微して、織婦も亦た織機を放下して停工す。天地の間光明熄滅して、日、月、星の三光倶に見えず。主とする所は光明晦絶、生業停頓の象、大凶である、宜しく静を守りて明を待ち、有為すべからず。夾注に此の繇《謙》之《観》と重出と標す。
中孚:戴盆望天,不見星辰。顧小失大,福迯牆外。
益の卦が中孚の卦に変わる。盆子を頂きて天空を仰望すれば、何の星辰も亦た見ず。只だ眼前の小利を顧みて大處を失掉して、福気牆外より溜走せり。「戴盆望天」は司馬遷の《報任安書》に出る。主とする所は自ら其の明を蔽い、小に因りて大を失うの象、凶である、宜しく其の障蔽を去り、眼を放して長遠を見るべし。
小過:握斗運樞,順天無憂。所行造德,與樂並居。
益の卦が小過の卦に変わる。北斗を手握りて天樞を運轉して、天道に順應して憂患なし。一言一行倶に徳行を積累して、歓楽と相伴して居れり。「斗為帝車、運於中央」は《史記・天官書》に見る。主とする所は天に順い徳を修むるの象、大吉である、行う所道に合せば、福樂自ら随わん。
既濟:操戟刺魚,披髮立憂。虎脫我輿,狼取我袍。亡馬失財。
益の卦が既済の卦に変わる。長戟を挙げて魚を叉り、頭髪を披散して立ちて愁を発す。老虎我が車を拆き去り、豺狼我が袍子を叼去りて、馬も亦た失い、銭財も亦た没くなりぬ。主とする所は用其の器に非ず、内外交失の象、大凶である、用う所の法当ならず、反って劫奪破財を招く。
未濟:兩人俱醉,相與悖戾。心乖不同,爭訟匈匈。
益の卦が未済の卦に変わる。両人倶に喝醉して、彼此頂撞乖違す。心思相背いて一處に合わずして、吵吵嚷嚷として争執して官司を打起せり。主とする所は酒後に和を失い、争訟紛起の象、凶である、宜しく酒を戒め争を息め、一步退けば方に禍を免れん。
夬の林(夬卦六十四林)
夬:戴堯扶禹,松喬彭祖。西遇王母,道路夷易。無敢難者。
夬の卦が自ら変じても夬の卦のままである。頭上に唐堯の徳を頂戴し、身辺に夏禹の功を扶持して、又た赤松子、王子喬、彭祖のごとき長寿の福を兼ね有す。西行の途中西王母に得遇して、道路平坦順暢にして、敢えて来りて阻攔刁難する者なし。此れ賢主の提携を得、仙縁の庇佑に遇うの象、出行し事を謀る倶に通達して、福寿綿長を主とす。
乾:狼戾美謀,無言不殊。允厭帝心,悅以獲佑。
夬の卦が乾の卦に変わる。心思剛決にして謀略精美にして、口を開きて話を説けば一句として衆に出でざるなし。果して帝王の心意に深く合し(「厭」は即ち「饜」、満足)、君上歓悦して因って庇佑を降下せり。此れ策を献じて納を見るの象、言を進め進を求むる者は必ず賞識を得て福を受けん。
坤:歲暮花落,陽入陰室。萬物伏匿,絕不可得。
夬の卦が坤の卦に変わる。一年將に尽きんとして、花朵凋落して、陽気陰分の中に退入せり。万物潜蔵隱匿して、何かを尋求せんと想うも一獲なし。此れ時令閉塞、生機内に斂まるの象、事を謀り財を求むる倶に成就し難し、宜しく安靜に守候し、陽の回り春の至るを待ちて再び動くべし。
屯:雞鳴失時,君騷於憂。犬吠不休,行者稽留。
夬の卦が屯の卦に変わる。雄鶏暁を報ずるも時辰を錯過して、主人此れによって心緒煩擾す。門を看る犬叫び停まざるに因りて、路を趕る人滞留するを迫られり。此れ節候序を失し、行止阻まるるの象、門を出でて遠行すれば擱擱多く、謀る所の事も亦た期を按じて办成ること難し。
蒙:鳧鷖游涇,君子以寧。履任不愆,福祿來成。
夬の卦が蒙の卦に変わる。野鴨と鷗鳥涇水の上に自在に浮游するは、正に是れ《詩経・大雅・鳧鷖》の詠ずる所の太平を祭祀するの景にして、君子因って安寧を得享せり。官に居りて事に任ずるに差錯出でず、福気と禄位自然に随いて成就せり。此れ正を守りて安を得るの象、職に任じ、命を受くる者吉なり。
需:薄為蕃皮,勁風吹卻。欲上不得,復歸其宅。
夬の卦が需の卦に変わる。単薄の物只だ藩籬の外皮を算えり、一陣の勁風便ち之を吹き落とせり。上に向かい攀升せんと欲するも办する能わず、只だ元来の居所に退回するを得たり。此れ根基浅薄、衝撃に経えざるの象、進を求めて成ることなく、宜しく本位を退守して以て折損を免るべし。
訟:東行破車,步入危家。衡門垂倒,無以為主。賣袍續食,糟糠不飽。
夬の卦が訟の卦に変わる。東に出行して車子壞損して、只好く徒歩にて一戸の衰危の家に投入す。彼の家横木を以て門と為し、屋宇將に傾かんとして、事を主る能くの人なく、只だ衣袍を変売して飯を換えて吃るのみ、糟糠を連ねても肚子を填飽す能わず。此れ家業凋敝、行旅所を失うの象、出行と財を求むる倶に大いに利あらず。
師:青牛白咽,呼我俱田。歷山之下,可以多耕。歲精之節,民人安寧。
夬の卦が師の卦に変わる。青色の牛白喉を生じて、我を呼喚して同じく田に下りて耕作せしむ。歷山の脚下正に宜しく多く開墾すべし——彼処は正に是れ虞舜当年躬耕の処なり。年成精好の時節に逢えば、百姓自然に安居寧定せり。此れ田を力めて養を得、上下相安の象、農を務め経営する倶に吉なり。
比:異國殊俗,情不相得。金木為仇,百賊擅谷。
夬の卦が比の卦に変わる。異邦風俗同じからずして、彼此情意相投じ難し。金と木五行の上に於て相克して仇を成し、衆多の盗賊山谷に盤踞せり。此れ格格不入、外患叢生の象、合伙、婚を通じ、遠行倶に相い宜しからず、尤も須らく劫奪の災を提防すべし。
小畜:陰陽精液,高熟脫折。治卵成鬼,肇生頭目。日有大吉。
夬の卦が小畜の卦に変わる。陰陽二気凝聚して精液と為りて、高處に長じて熟透すれば便ち自ら脱落す。鳥卵を孵治して異物を生出して、一開始に便ち頭有り眼有りと為れり。此れ造化萌動、生機初めて具わるの象、事無より有となりて漸漸形を成し、日日倶に大吉なり。
履:飢蟲作害,多亂纏綿,不可得秋。
夬の卦が履の卦に変わる。飢餓の虫啃食して害を為し、紛乱纏繞して休まず、庄稼秋天の収成に熬え到らず。此れ暗に耗損し、功垂成に敗るるの象、事を謀れば多く小人に牽掣糾擾せられて、終に結果有ること難し。
泰:清冷如云,為兵導先。民人寬急,不知東西。
夬の卦が泰の卦に変わる。寒気清冷として陰雲の聚集するが如く、正に是れ兵禍到來の先兆なり。百姓一時寛緩し一時窘急して、慌てて東西南北を辨え得ず。此れ兵災將に起らんとして、人心惶惑の象、宜しく険を避け静を守り、軽く挙げ妄動すべからず。
否:班馬旅師,以息勞疲。役夫嘉喜,入戶見妻。
夬の卦が否の卦に変わる。馬を勒めて班師して、遠征の軍旅を撤回して、疲憊の士卒休息を得しむ。服役の人歓喜慶幸して、家門に走り入りて妻子に見ゆ。此れ久役して帰るを得、労苦終止の象、行人信有りて、久しく別離し散ずる事終に團圓せん。
同人:坐爭立訟,紛紛哅哅。卒成禍亂,災及家公。
夬の卦が同人の卦に変わる。坐しても争執し立ち起きても訟を興して、吵嚷喧騰して休まず。最終に禍乱を釀成して、災殃一家の長に波及せり。此れ争鬪して和を失うの象、凡そ詞を興し訟を構えば必ず家門に累を及ぼす、宜しく及早に争を息め怨を釋すべし。
大有:鹿食美草,逍遙求飽。趍走山間,過期乃還。肥澤且厭。
夬の卦が大有の卦に変わる。鹿児豊美の青草を吃りて、自在に游荡して只だ飽を求む。山間に奔走して、約期を過ぎて回來れど、已に長じて肥壮潤沢、飽足にして余り有り。此れ処に随いて養を得るの象、行人遅れて帰ると雖も恙なく、食を求め利を求むる終に豊足に帰す。
謙:田鼠野雉,意尚欲去。拘制籠檻,不得搖動。
夬の卦が謙の卦に変わる。田鼠と野雉一心還た逃走せんと想うも、却って籠檻の中に関められて牢牢と拘住せられ、丝毫も動彈する能わず。此れ身己に由らず、人に受制するの象、脱身、遷徙、外出を謀る者倶に阻まるを受け、宜しく安分にして自ら守りて以て時を待つべし。
豫:日趍月步,周遍次舍。歷險致遠,無有難處。
夬の卦が豫の卦に変わる。太陽の疾行し月亮の緩歩するが如く、次を依りて天上二十八宿の舍次を走り遍らす。縦い険阻を歴し他方に遠く赴くも、難き行く處なし。此れ行運序有り、険に遇いて通ずる能くの象、遠行、遷調倶に順遂なり。
隨:天孫帝子,與日月處。光榮於世,福祿祺祉。
夬の卦が随の卦に変わる。天孫織女と帝王の子は、日月と同じく天上に居せり。人世に於いて光耀顕赫して、福気、禄位、吉祥倶に一身に聚まれり。此れ貴極まりて榮顯の象、名を求め位を求むる者大吉にして、事業光大を望む可し。
蠱:晨風文翰,大舉就溫。時過我邑,羿無所得。
夬の卦が蠱の卦に変わる。《詩経・秦風・晨風》の詠ずる所の鸇鳥と羽毛華美の錦鶏は、高く翅を振りて温暖の地に飛び往く。一時我が城邑を飛び過ぐるに、善射の后羿を連ねても之を捕え得ず。此れ高く挙げ遠く引き、害を避けて全うを得るの象、禍を避けて遠行する者吉なり、擒獲有らんと想うは則ち終に落空に帰す。
臨:旦生夕死,名曰嬰鬼,不可潛視。
夬の卦が臨の卦に変わる。早晨纔わかに出生して、傍晚に到れば便ち夭亡する、此のごとき小児を「嬰鬼」と作り呼びて、偷偷と看る可からず。此れ短促夭折、凶穢当に避くべきの象、謀る所久長し難く、病を問い孕を問う尤も当に警惕すべし。
觀:疾貧望幸,使伯南販。開牢擇羊,多得大牂。
夬の卦が観の卦に変わる。貧病に苦しみて時の來り運の轉ずるを盼望して、是に於て伯氏を打発して南に下りて貨を販らしむ。羊圏を打開して挑選せば、果して肥壮の母羊の「牂」を多く得たり。此れ苦尽きて利を得るの象、外に出でて経商し、貨物を擇取すれば必ず厚獲有らん。
噬嗑:長城驪山,生民大殘。涉井發難,唐叔為患。
夬の卦が噬嗑の卦に変わる。秦朝万里の長城を修築し驪山の陵墓を營造して、百姓摧殘せられて尽きんとせり。井の旁の細故に由りて禍難を引発して、唐叔一系の宗親を連ねても禍患と成れり。此れ民を労して怨を生じ、内乱微末より起るの象、大役を興し大事を挙ぐる者は必ず其の害を受けん。
賁:娶於姜呂,駕迎新婦。少齊在門,夫子歡喜。
夬の卦が賁の卦に変わる。姜姓呂氏の家に娶を求めて、車を駕して前に往きて新婦を迎接す。年少の斉国の女子已に門の前に到りて、男家の主人心に歓喜を満てり。此れ婚姻配を得るの象、嫁娶、盟を結び、約を締する倶に吉慶順遂なり。
剝:隨時草木,灌時葉起。扶疏條桃,長大盛美。華沷鑠疏。
夬の卦が剥の卦に変わる。草木時令に順應して生じて、澆灌時に及べば便ち葉を抽びて舒展す。桃樹の枝條扶疏して交映りて、漸漸長じて高大茂美と為りて、花光潑灑して鮮亮疏朗せり。此れ時を得て長ずるの象、凡そ事勢に順いて培養すれば、自ずから日に興盛して観る可からん。
復:姬姜悅歡,二姓為婚。霜降合好,西施在前。
夬の卦が復の卦に変わる。姬姓と姜姓両家歓悦して相得して、婚姻を結べり。古礼を依りて霜降の後に礼を成し好を合すれば、西施の如き佳人即ち眼前に在り。此れ良縁時に應じて成るの象、婚嫁、合作倶に佳偶美事を得る能し。
旡妄:戴笠獨宿,晝不見日。勤勞無妄,長勞悲思。
夬の卦が旡妄の卦に変わる。斗笠を頭に戴きて独り露宿して、白日も亦た太陽を見ず。終日勤苦操労して半点の虚妄非分の求有るを敢えてせず、長久労累して只だ満懐の悲思を落得せり。此れ辛労して獲少なく、孤苦にして自ら守るの象、正を守りて身を失わずと雖も、終に労して功寡なし。
大畜:始加元服,二十繫室。新婚既樂,伯季有德。
夬の卦が大畜の卦に変わる。初次冠礼を行い首服を戴くは、正に是れ《儀礼・士冠礼》の記する所の成人の始めにして、二十歳にして便ち妻を娶りて家を成せり。新婚和楽融融として、兄弟長幼各々徳行有り。此れ成人して室を立て、家門慶有るの象、婚娶、業を立て、身を進むる倶に恰も其の時を得たり。
頤:二至靈臺,文所止遊。雲物備具,長樂無憂。
夬の卦が頤の卦に変わる。冬至、夏至の両個の節気靈台に登りて雲物を観測するは、彼処は正に是れ《詩経・大雅・靈台》の詠ずる所の周文王游息の所なり。雲気物候一々斉備して、長久に歓楽して憂慮する所なし。此れ天に順い時に應じ、太平を安享するの象、凡そ事備有れば則ち久安にして患なし。
大過:久陰霖雨,塗行泥潦。商人休止,市空無有。
夬の卦が大過の卦に変わる。連日陰晦、霪雨止まずして、路上行走するに尽く泥濘積水なり。商販此れによって業を停めて出でず、集市空蕩蕩として貨物なし。此れ阻滞不通、買売断絶の象、出行と貿易倶に利あらず、宜しく暫く手を停めて晴を待つべし。
坎:城壞厭境,數為齊病。侵伐不休,君臣擾憂。上下屈竭,士民乏財。
夬の卦が坎の卦に変わる。城牆崩壞して辺境の上に壓りて、屢々斉国の進逼の禍患と成れり。侵伐停まずして、君臣上下惶擾憂懼して、国力屈尽枯竭にして、士人百姓倶に銭財没くなりぬ。此れ辺患息まず、国用匱乏の象、国事を問い財運を問う倶に凶を主とす。
離:南國盛茂,黍稷醴酒。可以饗養,樂我嘉佑。
夬の卦が離の卦に変わる。南方の国五谷盛茂にして、黍稷成熟して甜美の醴酒を釀成せり。以て賓客を宴享奉養するに足りて、歓歓喜喜として此の美好の福佑を領受す。此れ豊年養を得るの象、祭祀、賓を宴し、福を求むる倶に吉利なり。
咸:憂在心腹,內崩為疾。禍起蕭牆,意如制國。
夬の卦が咸の卦に変わる。憂患心腹の間に生じて、内裏崩壞して疾病と成れり。正に《論語・季氏》の説く所の禍蕭牆に起るが如くして、心の裏還た邦国を制馭せんと想えり。此れ内変將に作らんとして、外強く中幹なるの象、宜しく先ず内部を安頓し、親近の人の乱を生ずるを謹防すべし。
恆:朽根刖樹,花葉落去。卒逢大焱,隨風僵仆。
夬の卦が恒の卦に変わる。樹根朽爛し樹身砍傷せられて、花と葉紛紛として凋落す。終に又た大火烈焰に遇い、風に随いて倒伏僵死せり。此れ根本已に傷え、再び横禍に遭うの象、凡そ根基固からざる者は必ず傾覆に致る、尤も須らく意外の災を提防すべし。
遯:樹表為壇,相與笑言。午中不會,寵榮棄袚。
夬の卦が遯の卦に変わる。標木を樹起して祭壇を筑成して、衆人相聚まりて談笑す。可なりしも正午の約期に到りて會齊する能わず、恩寵榮華も亦た祓除の礼に随いて一倂に棄置せられり。此れ約會期を失し、榮寵中断の象、期望する所の事多半落空せん。
大壯:四足俱走,駑疲任後。兩戰不勝,敗於東楚。
夬の卦が大壮の卦に変わる。四条の腿一斉に奔跑するも、駑劣疲憊の馬只だ後頭に落つるのみ。两度交戦して未だ勝を取らず、終に東方の楚国に敗れり。此れ力任に勝えず、屡々戦い屡々北ぐの象、争競し比試する者利あらず、宜しく其の鋒芒を避くべし。
晉:執轡在朝,回還故處。麥秀傷心,叔父無憂。
夬の卦が晋の卦に変わる。馬繮を手執して朝に供職して、又た元来の位次に回れり。故国の麦苗秀发を見て、箕子の《麦秀歌》を作れるが如く傷心せりも、叔父の一輩却って安然として憂なし。此れ旧位に復帰し、時に感じて旧を懐うの象、悲慨有ると雖も身家咎有るに至らず。
明夷:夜長日短,陰為陽賊。萬物空枯,藏於北陸。
夬の卦が明夷の卦に変わる。黒夜漫長にして白昼短促にして、陰気陽気を侵害す。万物空虚枯槁して、倶に北方幽寒の地に潜蔵せり。此れ陰盛んに陽衰え、生機閉蔵の象、小人勢を得て君子宜しく隱るべし、謀る所顯發し難し。
家人:鳴鳩七子,均而不殆。長大成就,棄合於好。
夬の卦が家人の卦に変わる。《詩経・曹風・鳲鳩》の鳲鳩の七隻の雛鳥を養育して、用心均一にして懈怠せざるを詠ず。雛鳥長じて材を成して、一度離散の後又た重新に和好せり。此れ心を持つこと均平、家道興旺の象、子を教え、家を理め、親族を和睦する倶に吉なり。
睽:三羊上山,馳至大原。黃龍負舟,逐到夷陽。宛其玉囊。
夬の卦が睽の卦に変わる。三隻の羊山岡に登上して、一路奔馳して広闊の高原に到れり。黄龍舟船を背負して、平坦向陽の地に追随して、宛然として温潤の玉囊の如し。此れ勢に乘じて上に行き、神物の相助有るの象、遠行遷徙して宝を獲て利を得るを望む可し。
蹇:首足易處,頭尾顛倒。公為雌嫗,亂其蠶織。
夬の卦が蹇の卦に変わる。頭と脚位置を換えられて、頭尾整个として顛倒せり。一家の主竟に婦人の活計を做して、蚕を養い紡織する事を皆な攪乱せしめり。此れ尊卑序を失し、職分錯乱の象、各々其の位を失えば則ち百事成ることなし、宜しく名分を端正すべし。
解:登高望家,役事未休。王事靡盬,不得逍遙。
夬の卦が解の卦に変わる。高處に登上して家郷を遥望するも、差役の事未だ完らず。正に《詩経・唐風・鴇羽》の嘆ずる「王事靡盬」の如く、公家の差事止息なくして、自在安閑を得ず。此れ身役外に在り、帰期卜し難きの象、行人帰らんと思えど未だ帰る能わず。
損:畏昏不行,候旦待明。燎獵受福,老賴其慶。
夬の卦が損の卦に変わる。天黑を怕りて身を動かさず、破暁天明を等候して走る。時に到りて火を挙げて圍獵して福気を蒙受して、年老の人も亦た此の喜慶を仰賴せり。此れ重を持して時を待ち、後に動きて吉を得るの象、凡そ事躁進せざれば便ち獲有りて、尤も老成の人に利なり。
益:孤獨特處,莫依無輔,心勞志苦。
夬の卦が益の卦に変わる。孤零たる一個人独り処りて、依靠なく輔助なくして、心力交瘁にして志意苦悶せり。此れ孤立して援なきの象、謀る所援手を缺き、須らく先ず同心の人を結交せねばならず、否ずんば則ち只だ徒らに心を労するのみ。
姤:山石朽破,消崩墜墮。上下離心,君受其祟。
夬の卦が姤の卦に変わる。山上の岩石朽壞破裂して、消蝕崩塌して墜落して下れり。上下心を離れ徳を離れて、君主此れによって禍祟に遭受せり。此れ根基崩解、人心渙散の象、上位に居る者は須らく臣下の背离して災を招くを防ぐべし。
萃:文母聖子,無疆壽考,為天下主。
夬の卦が萃の卦に変わる。《詩経・周頌》の頌ずる太姒のごとき徳美の「文母」有りて、又た聖明の兒子を生下して、無窮の高寿を享有して、天下の主と成れり。此れ母賢く子聖にして、福祚綿遠の象、子嗣を問い貴顯を問う倶に大吉なり。
升:倔傀如儀,前後相違。言如鱉咳,語不可知。
夬の卦が升の卦に変わる。神情倔强怪異なるも、装うて礼仪に合すの模様を出して、前後の言行自ら相背す。話を説けば鳖の咳嗽するが如く、含混にして人をして明らかに聴得しめず。此れ表裏一ならず、言語通ぜざるの象、人と交涉して実情を得難し、軽信すべからず。
困:五龍俱起,強者敗走。露我苗稼,年歲大有。
夬の卦が困の卦に変わる。五條の龍一斉に興起して雨を降らせば、強横の者反って敗退逃走せり。雨露我が禾苗庄稼を滋潤して、此の年大いに豊収を獲たり。此れ群賢倂び作り、邪正に勝たざるの象、農事と財を求むる倶に危を轉じて豊と為す能し。
井:雷除善猛,雖為功醫。驥疲鹽車,出於御棰。
夬の卦が井の卦に変わる。雷霆の汚穢を掃除する最も迅猛にして、説くと雖も亦た算えて功を建て疾を療す。可なりしも千里の馬却って《戦国策》の記する所の如く鹽車を拉きて疲れ、還た車夫の鞭打を挨らん。此れ大材小用、功有りて反って屈を受くるの象、才高き者其の位を得ず、須らく伯楽に遇いて方に困を脱する能し。
革:江南多蝮,螫我手足。冤煩詰屈,痛徹心腹。
夬の卦が革の卦に変わる。江南一帯蝮蛇多くして、我が手脚を螫傷せり。冤屈煩乱、曲折して伸び難く、疼痛一直に心腹に透達せり。此れ暗害に遭い、冤情身に纏うの象、南行尤も須らく毒物と口舌の傷を提防すべし。
鼎:心無可據,射鹿不得。多言少實,語無成事。
夬の卦が鼎の卦に変わる。心の裏凭据すべき主意なく、鹿を射るも亦た中たらず。説くこと多くして実処に落ること少なく、空話事を办成る能わず。此れ心志定まらず、言実に過ぐるの象、謀る所成ること難し、宜しく言を少くして行を篤くすべし。
震:君明臣賢,鳴求其友。顯德之政,可以履土。
夬の卦が震の卦に変わる。君主聖明にして臣子賢能にして、《詩経・小雅・伐木》の詠ずる鳥児の鳴叫して友を求むるが如く彼此感召す。彰明せる徳義の政令を施行せば、便ち安然として疆土を据有する可し。此れ君臣相得の象、賢を求め、事に任じ、土を守る倶に吉なり。
艮:安土宜官,一日九遷。踰越群等,牧養常山。
夬の卦が艮の卦に変わる。本土に安居して官に居るに宜しくて、一天の内連ねて九級に升せり。同輩衆人を超越して、常山の地の牧守に出任せり。此れ遷擢神速の象、官を求め職を謀る者大吉にして、級を越えて超升するを望む可し。
漸:保辭解謝,除去垢活。驚之成患,屢去酷殘。(活一作汙)
夬の卦が漸の卦に変わる。委婉持重の言辞を以て辯解して罪を謝して、汚垢と嫌隙を洗去す。一たび驚擾を受けば便ち禍患を釀成せりと雖も、所幸屢々酷烈の残害を躲開せり。此れ善く辯して禍を免るるの象、訟に遇い謗に遇えば宜しく頭を低うして解説し、硬く争う可からず。旧本の「活」の字或は「污」と作る。
歸妹:不狂嫗盲,相牽北行。欲歸高邑,迷惑公得。
夬の卦が帰妹の卦に変わる。一個は瘋癲、一個は老婦眼瞎にして、彼此牽扶して北に往く。本より高邑に回らんと想うも、却って半路に迷い方向を失い、反って公家に尋獲せられり。此れ盲くして行きて道を失うの象、明智の人の引領なければ必ず迷途に致る、宜しく静を守り妄動する勿れ。
豐:醉臥道傍,迷且失明,不合我生。
夬の卦が豊の卦に変わる。酒を喝醉して路の旁に倒臥して、昏迷の中連れて眼睛も亦た見えず、此れ実に我が身を安んじ命を立つるの道に合わず。此れ沈溺して守りを失うの象、欲を縱い逸を放せば必ず其の正を失う、宜しく自ら警め自ら持して以て身を保つべし。
旅:北登鬼丘,駕龍東遊。王母御後,文武何憂。
夬の卦が旅の卦に変わる。北に向かい鬼丘に登上し、又た龍を駕して東に巡游す。西王母後に在りて車を駕して随行して、文臣武将又何の憂慮かあらん。此れ神靈護佑、上下相随の象、遠行し使を出づる倶に庇蔭を得て患なし。
巽:恬淡無患,遊戲道門。與神來往,長出以安。
夬の卦が巽の卦に変わる。心境恬淡なれば便ち禍患なく、優游自在にして道術の門に在り。神明と往来相接して、長久出入倶に平安を得たり。此れ清靜にして自ら守り、神明相佑するの象、身を修め、静に養い、遠行する倶に吉なり。
兌:以緡易絲,抱布自媒。棄禮怠惰,卒罹悔憂。
夬の卦が兌の卦に変わる。銭串を拿りて絲を換え、布匹を抱きて自ら門に上りて婚事を説合すは、正に是れ《詩経・衛風・氓》の写す所の光景なり。礼法を抛開し怠慢懈惰して、終に悔恨憂愁を招来せん。此れ苟合して礼を失うの象、婚配と交易正路に循わざる者は必ず後悔有らん。
渙:被服衣冠,遊戲道門。以禮相終,身無災患。
夬の卦が渙の卦に変わる。衣冠を穿戴して斉整にして、道術の門に優游す。始終礼を以て相待して善始善終して、自身災禍憂患なし。此れ礼に循りて自ら守るの象、凡そ事正を守りて矩を逾えざれば、平安无事を保つ可し。
節:大麓魚池,陸為海涯。君子失行,小人相攜。
夬の卦が節の卦に変わる。大山の脚下の林麓変じて魚池と為り、陸地海辺と成れり。君子身を立つるの常道を失いて、小人却って彼此拉扯して一伙を結べり。此れ世道顛倒、正邪位を易うの象、君子当に跡を斂めて時を待ち、妄進に宜しからず。
中孚:淵泉溢出,為邑之祟。道路不通,孩子心憒。
夬の卦が中孚の卦に変わる。深淵の泉水漫溢して出でて、城邑の禍祟と成れり。道路水に阻断して通ぜず、孩童を連ねても心慌意乱せり。此れ水患阻隔の象、出行と音信倶に阻まるを受け、尤も須らく水厄を提防すべし。
小過:十里望煙,散渙四方。形體滅亡,可入深淵。終不見君。
夬の卦が小過の卦に変わる。十里の外に於て炊烟を望見するも、却って四散飄渙して往く所を知らず。形体消散滅尽して、深淵に没入せしが如くして、終に思念する所の人を見る能わず。此れ音信断絶、尋訪着なきの象、人を求め物を尋ねる倶に落空せよとす。
既濟:傳言相談,非好徑路。鳴鼓逐狼,不知跡處。
夬の卦が既済の卦に変わる。傳聞に靠りて輾轉相告するは、並びに穏妥の門路に非ず。鼓を擂き起して野狼を駆赶すれど、其の蹤跡何処に在るかを知らず。此れ道聴途説、盲目に事を行うの象、傳言に憑りて事を办れば終に結果なし、宜しく自ら核実すべし。
未濟:東失大珠,西行棄襦。時多不利,使我後起。
夬の卦が未済の卦に変わる。東辺に於て大顆の明珠を丢失して、西に走りて又た短衣を落下せり。時運多く利あらずして、我をして起步人の後頭に落ちしむ。此れ屡々失い屡々損ずるの象、行止倶に其の時を得ず、宜しく暫く圖謀を緩めて以て轉機を待つべし。
姤の林(姤卦六十四林)
姤:河伯大呼,津不可渡。往復示故,乃無大悔。
姤の卦が自ら変じても姤の卦のままである。河伯高声に呼喝して、渡口通行を許さず。來回往返して、缘由を説明しての後、始めて大きの悔咎を免れたり。此れ水阻みて当前に在るの象、険に遇えば須らく歩を停めて申説し、勉强して渡を搶れば必ず凶险を生ず。
乾:蒙被恩澤,長大成就。柔順利貞,君臣合好。
姤の卦が乾の卦に変わる。上天の恩沢の潤被を蒙受して、長大成材を得たり。柔順にして正を守りて持に利あり、君臣の間和洽相好せり。此れ恩を承けて成を得るの象、上に事え職に任ずる倶に宜しく柔順を以て自ら処り、福禄期す可し。
坤:東山西土,各自止安。雖欲登望,竟不同堂。
姤の卦が坤の卦に変わる。東辺の山、西辺の土は、各々一方に安居す。高きに登りて遥望して相聚まらんと想うと雖も、終に同じく一堂に処る能わず。此れ両地に分隔の象、會合の期成ること難く、親友相望みて相親む能わず。
屯:登山上谷,與虎相觸。蝟為功曹,班叔奔北。脫之嘉同。
姤の卦が屯の卦に変わる。山に登りて深谷に上れば、猛虎と迎面して相撞せり。幸いに刺猬「功曹」を充てて出でて周旋する有りて、班叔始めて北に向かい奔逃するを得たり。険を脱したる後又た同伴と會合して、轉じて嘉美と為れり。此れ険に遇いて救を得るの象、危中に貴人の相援有りて、終に大害なし。
蒙:躓跌未起,失利後市。不得鹿子。
姤の卦が蒙の卦に変わる。地に跌倒して未だ爬起る能わずして、赶集已に遲くして行情を錯失せり。連れて一隻の小鹿も亦た獵着せず。此れ起步して機を失うの象、利を謀れば人の後に落ち、求むる所終に空手に帰す。
需:結珠懷履,卓斯以思。為君奴婢。
姤の卦が需の卦に変わる。珠子を繫結し、鞋を懐裏に揣えて、孤零零として彼処に立ちて苦苦として思念す。情願人に充作して奴婢と為らん。此れ身を委ねて屈就するの象、情繫る所有りて自ら身份を降し、事成る可しと雖も身位卑下なり。
訟:雞鳴失時,民作勞苦。犬吠不休,行者稽留。
姤の卦が訟の卦に変わる。雄鶏暁を報ずるも時辰を錯過して、百姓此れによって操労辛苦す。門を看る犬叫び停まざるに因りて、路を趕る人滞留を迫られり。此れ時序錯乱、行程受阻の象、出行擱擱有りて、事を興すも亦た多く労して成ること少なし。
師:陳媯敬仲,逃興齊姜。營丘立適,八世大昌。(屯之睽,旅之豫)
姤の卦が師の卦に変わる。陳国の敬仲陳完出奔して、姜姓の斉国に到りて反って興盛せり。營丘に於て嫡系一支を立てて、八世に傳わりて大いに昌盛せり。此れ危を去りて安に就き、異地に發達するの象、遷徙して遠く適く者は基を開き業を立て、子孫昌隆を望む可し。此の条「屯之睽」「旅之豫」の両林と文同じ。
比:鹿畏人匿,俱入深谷。短命不長,為虎所得。死於牙腹。
姤の卦が比の卦に変わる。群鹿人を怕れて躲蔵して、一斉に深谷に鑽入す。無奈命短く長からずして、老虎に捉えられて、虎口の中に死せり。此れ害を避けて反って険地に入るの象、趨避して其の法を得ざる者は終に禍を免れ難し、宜しく形勢を審明して後に動くべし。
小畜:言無約結,不成券契。殷叔季姬,公孫爭之。強入委禽,不悅於心,乃適子南。
姤の卦が小畜の卦に変わる。口頭の言約定して結びを作らざれば、便ち契券を立成す能わず。殷叔と季姬の親事に、公孫氏出でて争奪して、強いて大雁を送りて納采の礼を行えば、女方心の裏並びに情願せざるも、終に子南に嫁げり。此れ婚約憑なく、争奪休まざるの象、凡そ事文書を以て據と為さざれば必ず糾葛を生ず。
履:鼓瑟歌舞,歡悅於酒。龍喜張口,大悅在後。
姤の卦が履の卦に変わる。瑟を鼓し樂を奏して、歌舞して興を助けて、酒宴の中に歡愉暢快せり。竜も亦た喜んで大きく口を張るを得て、更大の喜悦還た後頭に在り。此れ歓慶將に至らんとするの象、宴飲、慶典、喜事連々として來りて、後の福尤も深厚なり。
泰:凶憂災殃,日益明章。禍不可救,王卻夷傷。
姤の卦が泰の卦に変わる。凶险憂患と災殃は、一天に一天として顯露分明なり。禍事已に可なき挽救の歩地に到りて、君王退避するも仍お創傷に遭えり。此れ災禍昭著の象、凶兆已に明らかにして補救するに従なし、唯だ及早に退避するのみ。
否:水流趍下,遂成東海。求我所有,貿鱣與鯉。
姤の卦が否の卦に変わる。水低處に向かいて奔流して、涓滴匯聚して終に東海と為れり。我が擁有する物を求取して、以て鱣魚と鯉魚と交易せり。此れ小を積みて大を成し、有を以て無を易うるの象、経商して積累する者は漸く大業を成すを望む可し。
同人:陰為陽賊,君不能克。舉動失常,利無所得。
姤の卦が同人の卦に変わる。陰気陽気を侵害して、君主も亦た之を制伏する能わず。舉動常度を失して、何の好処も亦た得る能わず。此れ陰邪道に当たり、上其の柄を失うの象、事を行い錯乱すれば便ち一獲なし、宜しく静守して以て時の変を待つべし。
大有:離床失案,龜喪其願。都市無會,叔季懷恨。
姤の卦が大有の卦に変わる。卧床を離れて又た几案を失い、占卜の龜も亦た其の願に遂う能わず。都城の集市の上に於いて會合成らずして、叔と季両人心に怨恨を懐けり。此れ居処安ならず、約期落空の象、求む所遂わずして嫌隙を生ず。
謙:壅遏堤防,水不得行。大慎陽光,陰霓伏藏。走歸其鄉。
姤の卦が謙の卦に変わる。堤防を筑起して水道を壅塞して、水流通行を得ず。十分に謹慎して陽光を守住して、陰晦の虹霓潜伏隱蔵せり。是れに於て奔走して故郷に回帰せり。此れ壅塞して帰を思うの象、前路通ぜざれば便ち宜しく本處に退返し、守慎すれば以て咎を免る可し。
豫:躄屈腹伸,東乘浮雲,貴寵母前。(腹一作復)
姤の卦が豫の卦に変わる。跛足屈すると雖も腹背舒展を得て、東に浮雲に乘りて上行して、顯貴寵幸を獲得して、母親の面前に於て榮耀せり。此れ屈より轉じて伸となるの象、先に困頓有りて後に騰達して、親を顯し名を揚ぐるを望む可し。旧本の「腹」の字或は「復」と作る。
隨:實沈參伐,以義斷割。次陸服刑,成我霸功。
姤の卦が随の卦に変わる。《左伝》の記する所の高辛氏の子實沈参・伐の星を主掌して、道義に依りて決斷裁割を作出せり。次序を依りて罪を伏し刑を服して、我が霸業の功を成就せり。此れ刑賞を明断し、義を以て威を立つるの象、公道を主持する者は大功を建つ可し。
蠱:金泉黃寶,宜與我市。娶嫁有息,利後過母。
姤の卦が蠱の卦に変わる。金泉の地黄色の珍宝を出産して、正に宜しく我と交易すべし。婚嫁の後生育して嗣有りて、日后の利益更に母家に勝る。此れ交易して宝を得、婚育して福を得るの象、経商と嫁娶倶に厚利有り。
臨:禹召諸神,會稽南山。執玉萬國,天下安寧。
姤の卦が臨の卦に変わる。大禹諸方の神祇を召集して、會稽南山に於て會盟せり。万邦の諸侯玉帛を手執して前に來りて朝會して、天下因って安寧せり。此れ大いに群賢を會し、四方歸服の象、衆を聚め、盟を結び、大業を開創する倶に吉なり。
觀:三蟲作蠱,踐跡無與。勝母盜泉,君子不處。
姤の卦が観の卦に変わる。三條の虫器皿の裏に聚まりて蠱毒を釀成せば、彼のごとき路徑踏上する可からず。里の名を「勝母」と呼び泉の名を「盗泉」と呼ぶは、曾子と孔子倶に肯えて居留して飲を取らざりき。此れ身を潔くして穢を遠ざくるの象、凡そ名正ならず、來路明らかならざる者は倶に近づく可からず、避開すれば便ち過錯なし。
噬嗑:花葉隕落,公歸樞宅。夷子失民,潔己不食。
姤の卦が噬嗑の卦に変わる。花と葉倶に凋零墜落して、主公中樞の宅第に回れり。夷子民心を失掉して、只だ身を潔くし自ら守り、食を絶ちて志を明らかにする能わず。此れ盛極まりて轉じて衰え、退守して自ら潔くするの象、位を失せし人は宜しく節を守り自ら持し、強争すべからず。
賁:履機懼毀,身王子廢。終得所欲,無有凶害。
姤の卦が賁の卦に変わる。脚機関の上に踩みて唯だ傾毀を恐るも、本より王と称すべき身分却って廢黜せられり。然れど終に欲する所の物を得て、凶险禍害なし。此れ先に危く後に安んずるの象、険に処りて能く懼を知れば、反って敗を轉じて得と為す能し。
剝:道理和得,仁不相賊。君子攸往,我有利福。
姤の卦が剥の卦に変わる。道義事理和順得当にして、仁徳を講ずる人彼此相残害せず。君子往く所有れば、我便ち利益と福気を得着せり。此れ和を以て福を致すの象、出行、合作、事を謀る倶に順利にして得有り。
復:合匏同牢,姬姜並居,壽考長久。
姤の卦が復の卦に変わる。瓠を剖りて卺を為し牲を共食して、古婚礼の中の「合卺同牢」の儀を行えり。姬姓と姜姓の男女并肩して同居して、同じく長久の高寿を享く。此れ佳偶白頭の象、婚姻美満にして、家道久安せん。
旡妄:關雎淑女,賢妃聖偶。宜家壽母,福祿長久。
姤の卦が旡妄の卦に変わる。《詩経・周南・關雎》の詠ずる窈窕淑女は、正に是れ賢良の妃子、聖明の配偶なり。家室をして和宜せしめ、母親をして長寿せしめ、福気と禄位久久として衰えざる能し。此れ賢い内助を得るの象、婚娶、嗣を求め、家を治むる倶に大吉なり。
大畜:騅驥脫乳,不知子處。旋踵悲鳴,痛傷我心。
姤の卦が大畜の卦に変わる。騅馬と駿馬の幼駒剛わかに奶を断ちて便ち走失して、母馬子の何処に在るかを知らず。脚跟を轉じて便ち悲鳴止まずして、其の声我が心を痛傷せり。此れ骨肉離散の象、失物を問い人を尋ねる倶に着落有ること難し、傷別の痛有るを主とす。
頤:知嚴絕理,陰孽謀主。十日不食,困於申亥。
姤の卦が頤の卦に変わる。嚴酷を明知するも常理を断絶して、陰狠の孽臣君主に害を加えんと圖謀す。十天食を進めずして、終に申亥の家裏に困死せり——正に是れ《左伝》の記する所の楚靈王の下場なり。此れ衆叛り親離れ、食を絶ちて困斃するの象、君位を問い疾厄を問う倶に大凶なり。
大過:鑿諸攻玉,無不宜鑿。麟鳳成形,得象君子。三人翼事,所求必喜。(人一作仁,鑿諸攻玉者,鑿其攻玉之事,無不宜。鑿者,鑿則必有也)
姤の卦が大過の卦に変わる。凿子を拿りて美玉を琢磨して、凿を下すに宜しからざる一處なし。麒麟と鳳凰漸漸形を成して、正に君子の気象に合す。又た三人有りて旁より其の事を輔翼して、求むる所必ず心に称い欢喜せん。此れ琢磨して器を成し、助を得て事を成すの象、凡そ營求有れば倶に願の如くなる可し。旧注に「人」の字或は「仁」と作り、倂せて「凿諸攻玉」を釋して即ち攻玉の工に從事すれば、宜しからざる所なく、凡そ凿を動かせば必ず成る所有りと謂う。
坎:昧暮乘車,以至伯家。踰梁渡河,濟脫無他。
姤の卦が坎の卦に変わる。天色昏暮の時車に乘りて路を趕りて、一直に伯氏の家中に到れり。橋梁を越え大河を渡りて、平安にして身を脱し、別に他患なし。此れ夜行して済を得るの象、昏晦の中に奔波すると雖も、終に難関を渡過する能し。
離:吾有黍稷,委積外場。有角服箱,運致我藏。富於嘉糧。
姤の卦が離の卦に変わる。我に黍稷等の谷物有りて、外面の場院の上に堆積す。角有る牛車厢を駕起して、一趟々として運び回りて我が倉廩に収め、好い粮食十分に富足せり。此れ收穫して倉に帰するの象、農を務め財を求むる倶に実在の積蓄有り。
咸:喜笑且語,不能掩口。官爵並至,慶賀盈門。
姤の卦が咸の卦に変わる。又た笑い又た説きて、歓喜して口を掩う能わず。官職と爵位一斉に來り到りて、前に來りて道賀する人門庭に擠満せり。此れ喜信重疊の象、官を求め名を求むる者は必ず顕達の慶を得ん。
恆:霧露雪霜,日暗不明。陰孽為疾,年穀大傷。
姤の卦が恒の卦に変わる。霧気、露水、雪と霜交じて害を為し、太陽昏暗不明なり。陰邪の気疾病を釀成して、一年の谷物大いに損傷を受く。此れ陰晦生を傷めるの象、農事歉収し人多く疾患を患え、宜しく早く防備を作すべし。
遯:伯去我東,髮如飛蓬。寤寐長嘆,展轉空床。內懷悵恨,心摧肝腸。
姤の卦が遯の卦に変わる。夫君東に向かい我を離れて去れば、我が頭髪散乱して飛蓬の如し。睡るも裏も醒むるも裏も倶に長声嘆息して、空床の上に輾轉して眠り難し。心の中怨恨を満懐して、肝腸皆な摧折せんと欲す。此れ離別相思の象、行人未だ帰らず、帰期を問い婚情を問う倶に愁苦を主とす。
大壯:亡羊補牢,張氏失牛。騂駟奔走,鵠盜我魚。
姤の卦が大壮の卦に変わる。羊失いて始めて羊圏を補えば、張氏又た牛を走失せり。赤色の駟馬四散奔逃して、天鵝還た我が魚を叼去せり。此れ屢々失脱の象、損耗接連して來りて、事後の補救已に遲し、宜しく先ず藩籬を固くすべし。
晉:販鼠賣蛙,利少無謀,難以得家。
姤の卦が晋の卦に変わる。老鼠を販売し青蛙を售売して、利潤微薄にして又た毫も籌劃なく、此の如く家を成し業を立つること難し。此れ營生卑微、経営術なきの象、獲る所の利太だ薄くして、以て富を致すに足らず。
明夷:西戎為秩,幽君去室。陳子發難,項伯成亂。
姤の卦が明夷の卦に変わる。西戎秩序の主位に坐上して、周幽王宮室より逐出せられり。陳渉兵を起して難を発して、項氏一族終に大乱を釀成せり。此れ外患内叛、宗社傾覆の象、国事を問い家宅を問う倶に凶なり、宜しく禍を遠ざけ地を避くべし。
家人:秋風生哀,花落心悲。公室多難,羊舌氏衰。
姤の卦が家人の卦に変わる。秋風一たび起れば便ち哀思を生じて、花朵零落して人をして心悲しましむ。公室多く患難有りて、晋国の羊舌氏一族此れによって衰敗せり。此れ時衰えて族替わるの象、門第將に落ちんとす、宜しく斂蔵して自ら守り、張揚すべからず。
睽:持福厭患,去除大殘。日長夜盡,嘉世蒙恩。
姤の卦が睽の卦に変わる。福気を守住し禍患を壓住して、大きの残害を除去せり。白昼漸く長く黑夜將に尽きんとして、美好の世道に逢着して恩沢を蒙受せり。此れ否を轉じて泰と為すの象、災去りて福來りて、恩を求め赦を求むる者吉なり。
蹇:新受大喜,福履重來。樂且日富,足用豐財。
姤の卦が蹇の卦に変わる。新近大きの喜慶を領受して、福禄接連して至れり。一天に一天として歓楽富足して、用度充裕、銭財豊盈なり。此れ喜慶重疊の象、財を求め、禄を受け、家を成す倶に大吉なり。
解:前頓卻躓,左跌右逆。登高安梯,復反來歸。
姤の卦が解の卦に変わる。前に往きて挫を受け後に退きて又た跌绊して、左に摔倒し右に順わず。高きに登らんとすれば便ち先ず梯子を安好して、随後平安に折返せり。此れ進退阻まり多きの象、凡そ事須らく階梯を預備し、次第を按じて行い、方に往返傷なからん。
損:夢飯不飽,酒來入口。嬰女難好,媒應不許。
姤の卦が損の卦に変わる。夢の裏飯を吃るも肚子を填飽す能わずして、只だ酒嘴辺に送り到るのみ。幼小の女兒許配し難くして、媒人來りて説合するも答應せず。此れ虚に其の名有りて、求む所遂わざるの象、婚事と実利終に落空に帰す。
益:大都王市,稠人多寶。公孫宜買,資禍萬倍。(禍一作貨)
姤の卦が益の卦に変わる。大都城の王家集市の上、人群稠密、宝貨衆多なり。公孫氏正に宜しく此に在りて採買すべく、積む所の財貨万倍に增す可し。此れ鬧市に於て利を得るの象、経商して市に入る者厚獲有り。旧本の「禍」の字或は「貨」と作る。
夬:兩人俱醉,相與悖戾。心乖不同,爭訟恟恟。
姤の卦が夬の卦に変わる。両人倶に喝醉して、彼此乖張抵觸す。心思背离して意見合わずして、是に於て争吵して訟を興し喧鬧して休まず。此れ和を失い訟を構うるの象、事を同じくし伙を合する者齟齬を生じ易し、宜しく飲を節し忍讓すべし。
萃:身無頭足,超蹠庶乖。不能遠中,之道疲休。失利後市。
姤の卦が萃の卦に変わる。身子頭もなく脚もなければ、縱躍踩踏樣樣乖違す。既に遠行する能わず、中的する能わずして、半路を走りて便ち疲憊して停下し、赶集遲到して行情を錯失せり。此れ形殘え力尽きるの象、行う所達せず、謀る所成ることなし。
升:三人俱行,六目光明。道逢淑女,與我驥子。
姤の卦が升の卦に変わる。三個人伴を結びて同行して、六隻の眼睛倶に分明に看る。路上賢淑の女子に遇見して、還た我に一匹の良駒を贈れり。此れ同心して助を得るの象、伴を結びて出行する者貴人に遇い財物を獲て、大吉である。
困:進士為官,不若復田,獲壽保年。
姤の卦が困の卦に変わる。功名を求取して官を做するは、反って頭を回して田を種るに如かず、倒れに長寿を獲得し天年を保全する能し。此れ退隱して安を得るの象、仕途険多くして、拙を守りて田に帰る者は反って身を全うして福寿を享く能し。
井:先易後否,失我所市。騷蘇自苦,思吾故事。
姤の卦が井の卦に変わる。起先順利にして後来閉塞して、我が市の上に於いて成せし買売を失掉せり。心緒騷擾して自ら苦惱を尋ねて、従前の旧事を追想す。此れ先に順い後に阻まるの象、事中変有りて、宜しく成を守りて再び新利を圖るに宜しからず。
革:蘇秦發言,韓魏無患。張子馳說,燕齊以安。
姤の卦が革の卦に変わる。蘇秦合縱を倡言して、韓、魏此れによって禍患を免れり。張儀奔走游説して、燕、斉安定を得たり。此れ口舌に憑りて紛を解くの象、善く言辞を用ゐて游説する者は険を化して夷を為す能し、宜しく議和を以て上策と為すべし。
鼎:武庫軍府,甲兵所聚。非裡邑居,不可舍止。(師之蹇)
姤の卦が鼎の卦に変わる。武庫と軍府は、是れ甲胄兵器聚集の処なり。彼処は郷里民居に非ず、此に於て止宿する可からず。此れ地を擇ぶこと宜を失うの象、居処して足を驻むるは須らく凶险の地を避け、方に禍を免る能し。此の条「師之蹇」と文同じ。
震:三桃三口,莫適所與。為孺子牛,西氏生咎。
姤の卦が震の卦に変わる。三隻の桃子三張の口に對して、誰も亦た何れに給すべきかを定下する能わず。身を俯して甘んじて《左伝》の説く所の「孺子牛」を充當すれば、西氏一族此れによって禍咎を惹出せり。此れ分配均ならず、身を屈して禍を招くの象、衆に処りて持平する能わざる者は必ず争端を生ず。
艮:西山東山,各自止安。雖相登望,竟不同堂。
姤の卦が艮の卦に変わる。西辺の山、東辺の山は、各々一方に安処す。彼此高きに登りて相望みると雖も、終に同じく一堂に坐する能わず。此れ遥隔して聚まり難きの象、情通ずると雖も形迹接せず、會合の事成ること難し。
漸:不改柯葉,和氣沖適。君子所在,安無怵惕。
姤の卦が漸の卦に変わる。枝幹と葉片常態を改めずして、和気充盈して調暢適意なり。君子の居る所の処は、安穏にして驚懼なし。此れ常を守りて安を得るの象、妄りに自ら更張せざれば則ち身心倶に泰にして、家に居り職に任ずる倶に吉利なり。
歸妹:將戌繫亥,陽藏不起。君子散亂,大上危殆。
姤の卦が帰妹の卦に変わる。時序將に戌位に到らんとして又た亥位に繫りて、陽気潜蔵して發動せず。君子四散離乱して、上位に居る者危殆に陷入せり。此れ陽気閉塞、上下據を失うの象、国事を問い前程を問う倶に衰危を主とす。
豐:天官列宿,五神舍室。宮闕完堅,君安其居。
姤の卦が豊の卦に変わる。天上の星官衆宿羅列して序有りて、五方の神靈各々其の舍に安んず。宫殿城闕完固堅牢にして、君主其の中に安居せり。此れ上下序有り、居処安穩の象、營建、遷居、位を守る倶に吉なり。
旅:左手把水,如光與鬼,不可得徙。
姤の卦が旅の卦に変わる。左手を用ゐて水を捧げれば、其の水光影の如く鬼魅の如くして、一点も亦た挪移する能わず。此れ徒労して憑なきの象、把握する所尽く虚幻にして、事を謀るに着手するに従なし。
巽:逐狐東山,水遏我前。深不可涉,失利後便。
姤の卦が巽の卦に変わる。東山に到りて狐狸を追捕せば、大水我が前に横攔せり。水深くして涉渡するに法なくして、因って時機を錯失して人の後に落れり。此れ中途受阻の象、逐う所の利隔絶せられり、宜しく別に通路を尋ねるべし。
兌:水瀆魚室,來灌吾邑。沖破我家,與狗俱遊。
姤の卦が兌の卦に変わる。溝渠の中の魚群の居所水を漲して、我が城邑に漫灌せり。我が家宅を沖垮して、人と狗一同に水の裏に漂游せり。此れ水患家を破るの象、居処低窪の者尤も須らく洪を防ぐべし、家宅を問う主として大凶なり。
渙:山險難登,澗中多石。車馳轊繫,重載傷軸。擔負善躓,跌踒右足。(繫一作擊)
姤の卦が渙の卦に変わる。山勢険峻にして攀登し難く、山澗の中乱石堆積せり。車子疾馳して車頭绊住せられ、載重多過して車軸を壓傷せり。担を挑ぐ人頻々に绊跌して、右脚を摔傷せり。此れ重を負い険を渉るの象、事に任ずる過重なれば必ず損折に致る、宜しく負を減じ緩に行くべし。旧本の「系」の字或は「撃」と作る。
節:槽空無實,豚彘不食。庶民屈竭,離其居室。
姤の卦が節の卦に変わる。食槽空空として粮食なく、猪を連ねても吃るものを得ず。百姓力尽き財竭きて、只好く己が居室を離れて荒を逃るのみ。此れ倉廩枯竭、流離して所を失うの象、年成を問い家計を問う倶に凶なり。
中孚:執熱爛手,大為災咎。公孫無賴,敗我王室。
姤の卦が中孚の卦に変わる。手に滚燙の物を握りて手掌を燙爛して、大きの災咎を釀成せり。公孫一輩の無賴の徒、我が王室を敗壞せり。此れ妄りに禍源を触れ、宗室害を受くるの象、凡そ事鋒鏑を軽く犯す可からず、尤も宜しく小人を遠離すべし。
小過:三虎上山,更相噬囓。心志不親,如仇如怨。
姤の卦が小過の卦に変わる。三隻の老虎一同に山に上りて、相互に撕咬啃齧す。心志彼此親しまずして、形同じく仇敵怨家なり。此れ強者相争の象、同じく処りて心を同じくせず、伙を合し事を共にすれば必ず反目に致る。
既濟:西家嫁女,借鄰送女。嘉我淑姬,賓主俱喜。
姤の卦が既済の卦に変わる。西隣の人家女を嫁せば、隣里の力を借重して親を送れり。衆人我が家の賢淑の姬姓の女子を夸贊して、賓客と主人倶に歓喜せり。此れ衆の相助を得、婚姻美満の象、嫁娶し交を結ぶ倶に吉慶なり。
未濟:克身潔己,逢禹巡狩。錫我元圭,拜受福祉。
姤の卦が未済の卦に変わる。自身を克制して潔淨を保持して、恰も大禹の天下を巡行するに逢えり。我に大圭を賜りて信と為して、拜謝して此の福祉を領受すは、正に是れ《尚書・禹貢》の「禹錫玄圭」の義なり。此れ身を修めて明主に遇うの象、潔を守り自ら持する者は必ず表彰厚賞を得ん。
萃の林(萃卦六十四林)
萃:蒙慶受福,有所獲得。不利出城,疾人困極。
萃の卦が自ら変じても萃の卦のままである。慶賀を蒙受し福気を領得して、確実に収獲所有り。只だ城を出でて遠行するに宜しからずして、患病の人困頓して極に到らん。此れ居守して得有り、出行利あらざるの象、宜しく静かに処りて福を受け、遠出と疾を問うを忌むべし。
乾:碩鼠四足,飛不上屋。顏氏淵德,未有爵祿。
萃の卦が乾の卦に変わる。《詩経・魏風》の刺す所の大きの老鼠四足有ると雖も、屋頂に飛び上る能わず。顔淵のごとき深厚の徳行も亦た、未だ爵位俸禄を得ず。此れ徳高く位卑きの象、才行美なりと雖も時機未だ至らず、宜しく貧に安んじ道を守りて以て待つべし。
坤:新受大喜,福優重職,樂且日富。
萃の卦が坤の卦に変わる。新近大きの喜事を領受して、福気優渥にして又た職任を加重せられ、歓楽して一天に一天として富足せり。此れ喜慶して官を加うの象、職を求め禄を受くる者大吉にして、家道日に興隆せん。
屯:克身潔己,逢禹巡狩。錫我元圭,拜受福祉。
萃の卦が屯の卦に変わる。自身を克制して潔淨を保持して、恰も大禹の天下を巡行するに遇う。我に大圭を賜りて以て憑信と為して、拜謝して此の福祉を領受せり。此れ己を修めて時に遇うの象、身を持すること廉潔なる者は必ず恩賞と顯名を獲ん。
蒙:置筐失筥,輪破無輔。家伯為政,病我下土。
萃の卦が蒙の卦に変わる。方筐を放下して又た圓筥を丢了して、車輪破損して輔木相夾するなし。《詩経・小雅・十月之交》の譏る所の家伯の流朝政を把持して、下方の百姓を害苦せしめり。此れ器用殘缺、政令民を害するの象、凡そ事其の憑借を失えば、庶民因って累を受けん。
需:機言不發,頑不能達。齊魯為仇,亡我葵丘。
萃の卦が需の卦に変わる。關鍵の話肯えて口に出さずして、愚頑にして通達する能わず。齊、魯両国讐敵を結成して、我をして葵丘の地を失掉せしめり。此れ言路壅塞、地を失い怨を招くの象、当に言うべきにして言わざれば必ず禍敗に致る。
訟:亡錐失斧,公輸無輔。抱其彝器,適君子處。(一本蒙下二句在訟之下,訟下二句在蒙之下)
萃の卦が訟の卦に変わる。錐子を丢了し斧頭を失了せば、縦い是れ巧匠の公輸班も幇手を没了せり。只好く祭祀用の彝器を抱きて、君子の彼処に投奔するのみ。此れ其の利器を失い、人に依りて庇を求むるの象、憑借なき時は宜しく徳有る人に身を托すべし。別に一本有りて「蒙」の条の後の二句を此の条の下に移し、而も此の条の後の二句を以て「蒙」の条に帰入す。
師:家在海隅,橈短深流。伯氏難行,無木以超。
萃の卦が師の卦に変わる。家海角の辺に住みて、船橈太短くして水流又た深し。伯氏行を成すこと難く、架橋して越る可き木料もなし。此れ力小さく任重きの象、憑借足らざれば便ち寸步行くこと難し、宜しく先ず器具を備うべし。
比:德施流行,利之四鄉。雨師灑道,風伯逐殃。巡狩封禪,以告成功。
萃の卦が比の卦に変わる。恩徳施布流行して、四方郷邑に惠及す。雨師水を洒りて道を浄め、風伯災殃を駆逐す。天子天下を巡行し山に登りて封禅して、以此天地に向かい其の功の成を告ぐ。此れ徳沢広く被り、功成して賀を受くるの象、大事を行い大典を挙ぐる倶に吉なり。
小畜:筐傾筥覆,畏我公置。簡伯無禮,太師正食。
萃の卦が小畜の卦に変わる。方筐傾倒し圓筥翻覆して、只だ主公に察問處置せられんことを恐る。簡伯事を行うに礼なければ、太師便ち其の膳食の数を裁正して以て懲抑を示せり。此れ職を失し責を受くるの象、事を行い疎失の者は必ず糾挙せられん、宜しく本分を謹守すべし。
履:泥滓汙辱,棄捐溝瀆。為眾所笑,終不顯祿。
萃の卦が履の卦に変わる。泥汚に沾满して恥辱を蒙受して、溝渠の中に棄丢せられり。衆人に譏笑せられて、終に顕赫の禄位を得ず。此れ身卑汚に陷るの象、名を求め進を求むる者出頭すること難し、宜しく先ず自ら潔くし自ら立つべし。
泰:獮猴兔走,腥臊少肉。漏卮盛酒,利無所有。
萃の卦が泰の卦に変わる。獼猴と兎子四散奔逃して、腥臊にして吃る可き肉多少なし。漏底の酒器を用ゐて酒を盛れば、何の利益も亦た留め得ず。此れ徒労無獲の象、得る所既に薄くして又た断えず漏耗して、財を求むる終に空手に帰す。
否:鹿畏人藏,俱入深谷。命短不長,為虎所得。死於牙腹。
萃の卦が否の卦に変わる。群鹿人を怕れて躲蔵して、一斉に深谷に鑽入す。無奈寿命短促にして、老虎に捉え去られて、虎口の中に死せり。此れ禍を避けて反って更に険に入るの象、趨避當を失する者は厄運を逃れ難し、宜しく審愼に路を擇ぶべし。
同人:南山芝蘭,君子所有。東家淑女,生我王室。
萃の卦が同人の卦に変わる。南山の上の靈芝と香蘭は、是れ君子の擁有する所なり。東隣賢淑の女子、我が王室に子嗣を生下せり。此れ賢を得嗣を得るの象、名を求め、偶を求め、子を求むる倶に吉利なり。
大有:左指右揮,邪望侈靡。執節無良,靈君以亡。
萃の卦が大有の卦に変わる。左に指點し右に揮舞して、眼光邪僻にして奢侈無度なり。節操を持守する人進用を得ずして、衛靈公の一類の君主此れによって敗亡せり。此れ驕奢して政を失うの象、人を用ゐるに正ならず、事を行うに浮夸の者は終に傾覆に帰す。
謙:爵秩不明,為臣所傷。眾陰群聚,共奪日光。
萃の卦が謙の卦に変わる。爵位品秩混乱不明にして、君主反って臣下に傷せられり。衆多の陰気群を聚集して、一斉に太陽の光輝を遮奪せり。此れ名分立たず、群小主を蔽うの象、上位の者其の權柄を失せば、宜しく及早に綱紀を整粛すべし。
豫:穿鼻繫株,為虎所拘。王母祝禱,禍不成災。突然自來。
萃の卦が豫の卦に変わる。鼻子穿を穿孔せられ繩索木桩に係れて、老虎に拘えられたるが如し。幸いに西王母の代わりに祝禱するを得て、禍事災殃を釀成せずして、好處反って突然自ら門に尋ね來れり。此れ制を受けて解を得るの象、困厄の中に神の助有りて、凶轉じて吉と為す可し。
隨:貧鬼守門,日破我盆。毀鼠傷綬,空虛無子。
萃の卦が随の卦に変わる。貧窮の鬼門口を守りて、天天我が盆罐を打破す。老鼠印綬を咬壞して、家中空虚にして子嗣なし。此れ財を耗し嗣を絶つの象、家宅寧ならず官印損を受け、財を問い嗣を問う倶に凶を主とす。
蠱:襄王束帶,鄭人是賴。莊公卿士,王母憂喜。
萃の卦が蠱の卦に変わる。周襄王衣帶を整束して難を避けて出奔すれば、全く鄭国の人の接納庇護に賴れり。鄭莊公王朝の卿士と為りて、王母此の為に憂喜交集せり。此れ危難に援を得るの象、難に落つる者は鄰邦の相助を獲るを望む可く、憂の中に喜有り。
臨:昭君守國,諸夏蒙德。異類既同,崇我王室。
萃の卦が臨の卦に変わる。昭明の君邦国を守衛して、中原諸夏の各国倶に恩徳を蒙受せり。異族も亦た同化に帰して、共同に我が王室を尊崇せり。此れ徳遠人を服するの象、異を懐柔して化せば、四方の來歸を致す可し。
觀:冬藪朽腐,當風於道。蒙被塵埃,左右勞苦。
萃の卦が観の卦に変わる。冬天の草澤腐朽敗壞して、又た正に風口に当たりて路の上に横たわれり。一層の塵土を蒙りて、左右の人其の為に労苦不堪せり。此れ朽敗して事を碍げるの象、廢棄の物徒らに煩擾を增す、宜しく及早に清除すべし。
噬嗑:六爻既立,神明所告。文定吉祥,康叔受福。
萃の卦が噬嗑の卦に変わる。六爻已に立成して、彼は正に是れ神明の昭告する所なり。文定納幣の礼を占問して吉祥を得着して、康叔因って福気を蒙受せり。此れ卜筮して吉を得るの象、納征、祭祀、福を祈る倶に順遂なり。
賁:泣涕長訣,我心不悅。遠送衛野,歸寧無咎。
萃の卦が賁の卦に変わる。哭いて涙を流し長く訣別して、我が心裏並びに歓喜せず。一直に衛国の郊野に遠送して、娘家に回りて親を省る總に過錯なかりしは、正に《詩経・邶風・泉水》の写す所の衛女の帰を思う情に合せり。此れ離別して寧に帰るの象、悲傷有ると雖も災に至らず。
剝:三宿無主,南行勞苦。東里失利,喪其珍寶。(本卦遯同)
萃の卦が剥の卦に変わる。一連三晚倶に主人の接待なくして、南に行走して十分に労苦せり。東辺の里巷に於て本を折りて、隨身の珍宝を丢失せり。此れ旅途依を失い財を破るの象、門を出でて外に在りて帰宿する所なく、財を求めて反って損に致る。本卦の「遯」の条此の文と同じ。
復:大斧砍木,讒佞敗國。東關良工,禍及三子。晉人亂邑,懷公出走。
萃の卦が復の卦に変わる。大斧樹木を砍伐して、讒佞の臣国家を敗壞す。東關嬖五のごとき巧佞の人は、禍害晋獻公の三個の兒子に連累し、晋人都邑を擾乱して、懷公只だ出奔せり。此れ讒言國を乱すの象、小人を聴信すれば則ち骨肉相殘して、君位保を保たず。
旡妄:乘風上天,為時服軒。周旋萬里,無有患難。
萃の卦が旡妄の卦に変わる。風に乘りて天空に飛び上りて、時に應じて華美の車駕を駕起す。來回萬里の遥かに周游して、患難なし。此れ時を得て騰達するの象、遠行、遷調、任に赴く倶に一路平安順遂なり。
大畜:大樹百根,比與山連。文君作義,受福萬年。
萃の卦が大畜の卦に変わる。大樹上百條の根須を生じて、密密連結して山勢と相接す。文王のごとき君主道義を倡行して、福を受くること長くして万年なり。此れ根深く徳厚きの象、基業穩固の者は福沢綿長なり。
頤:陽伏在下,陰制佑福。生不逢時,潛龍隱處。
萃の卦が頤の卦に変わる。陽気下方に潜伏して、陰気に壓制せられて福佑限を受けり。利ならざる時に生れて、只だ潜龍の如く隱居して出でざるのみ。此れ時機未だ到らざるの象、宜しく光を韜み晦を養いて静かに其の時を待ち、妄動すれば必ず挫折を受けん。
大過:亂頭多憂,搔蝨生愁。膳夫仲年,使我無聊。
萃の卦が大過の卦に変わる。頭髪蓬乱、憂慮重重として、虱を搔きて更に煩悩を添ゆ。膳夫仲年の一類の人事に当たりて、我をして依託する所なく百無聊賴と為しむ。此れ瑣憂身に纏うの象、小さの煩擾接連して断えず、託する所其の人に非ざれば則ち事事遂わず。
坎:江河淮海,天之都市。商人受福,國家富有。
萃の卦が坎の卦に変わる。長江、黄河、淮水と大海は、是れ上天の設けし大都会の集市なり。商人此に於て福利を蒙受して、国家因って富足せり。此れ商を通じて財を聚むるの象、往来して貿易する者利を得て、公私倶に豊なり。
離:泰山幽谷,鳳凰遊宿。禮義有序,可以求福。
萃の卦が離の卦に変わる。泰山幽深の山谷の中に、鳳凰游息して棲宿す。礼と義井然として序有りて、正に此に憑りて福気を祈求する可し。此れ祥瑞降臨の象、礼に循り序を守る者は福を得て、禱祀應有り。
咸:水山暴怒,壞梁折柱。稽難行旅,留連愁苦。
萃の卦が咸の卦に変わる。洪水と山崩暴發して肆虐して、梁木を沖壞し柱子を折断せり。行旅の人受阻して難に遇い、他郷に滞留して愁苦不堪せり。此れ天災路を阻むの象、出行して険に遭えば、宜しく暫く行程を停めて以て其の鋒を避くべし。
恆:阿衡服箱,太乙載行。延時歷舍,所之吉昌。
萃の卦が恒の卦に変わる。阿衡を官号と為す伊尹車厢を駕起して、太乙天神も亦た車中に載りて同行せり。時日を延展して星宿の舍を歴過して、至る所吉利昌盛せり。此れ賢佐を得て兼ねて神助を獲るの象、遠行し事を謀る往くところ利あらざるなし。
遯:三宿無主,南行勞苦。東里失利,喪其珍寶。(本卦剝同)
萃の卦が遯の卦に変わる。一連三晚接待する人なくして、南に行走して極めて労苦を備えり。東辺の里巷に於て本銭を折りて、隨身の珍宝を丢失せり。此れ羈旅して依を失い、破耗するの象、門を出でて投止する所なく、財を求めて反って損失を受く。本卦の「剥」の条此の文と同じ。
大壯:生無父母,出門不喜。買椒失粟,亡我大利。
萃の卦が大壮の卦に変わる。生來父母依る可きなくして、門を出でて外に在りても亦た心に称わず。花椒を買い入れて却って粟米を丢了して、我が大筆の利益を損失せり。此れ孤苦にして算を失うの象、既に親援なくして又た謀劃周ならずして、小に因りて大を失う。
晉:安坐玉堂,聽樂行觴。飲福萬鍾,日受無疆。
萃の卦が晋の卦に変わる。安穏にして華美の玉堂の上に坐りて、音楽を聽き盃を傳えて酒を行う。祭余の福酒萬鍾を暢飲して、天天無窮の恩沢を領受せり。此れ榮禄を安享するの象、官に居りて禄を受くる者は福厚くして綿長なり。
明夷:登危入厄,四時變易。春霜夏雪,物皆凋落。
萃の卦が明夷の卦に変わる。危處に攀上して厄境に陷入して、四时の節候變乱して常を失せり。春天霜を降らし夏天雪を落とせば、万物倶に凋零敗落せり。此れ時序倒錯の象、生機戕を受けて、謀る所尽く時宜に合わず。
家人:衣空履穿,無以禦寒。細小貧窶,不能自好。
萃の卦が家人の卦に変わる。衣裳単薄、鞋子破穿して、寒冷を抵御するに法なし。家道細微貧窘にして、連れて自身も亦た照顧し周らず。此れ家計困乏の象、衣食給せず、宜しく先ず温飽を謀りて再び他を圖るべし。
睽:目不可合,憂來搔足。怵惕恐懼,去其邦域。
萃の卦が睽の卦に変わる。眼睛合する能わずして入睡するに法なく、憂愁襲來して只だ脚を搔き顧る。心中戒懼惶恐して、只好く本国の疆域を離開するのみ。此れ憂懼して亡に出づるの象、内安んずる能わざれば便ち遠く走るを迫られ、居処を問う動蕩を主とす。
蹇:齎貝贖狸,不聽我辭。繫於虎鬚,牽不得來。
萃の卦が蹇の卦に変わる。貝幣を帶ゐて狸猫を贖回せば、對方我が説辞を聽かず。繩子老虎の鬍鬚の上に係れて、怎麼牽くも牽き過ぐる能わず。此れ贖を求めて得ざるの象、求むる所の物凶险の処に係れり、強取すれば必ず危険に致る。
解:伯夷叔齊,貞廉之師。以德防患,憂禍不存。芳聲後時。
萃の卦が解の卦に変わる。伯夷と叔齊は、是れ堅貞廉潔の表率なり。徳行を以て禍患を防範して、憂慮と災禍倶に留存せずして、美名更に後世に流傳せり。此れ節を守りて禍を遠ざくるの象、廉を持して自ら守る者は当世に患なくして声名久長なり。
損:張王子季,爭財相制。商君頑嚚,不知所由。
萃の卦が損の卦に変わる。張氏、王氏と子、季の諸人は、財産を争奪して相互に牽制せり。経商の人頑劣愚妄にして、事情の來由を弄清楚せず。此れ財を争いて和を失うの象、産を分け利を析くれば必ず訟争を生ず、宜しく及早に名分を定下すべし。
益:長城既立,四夷賓服。交和結好,昭君是福。
萃の卦が益の卦に変わる。長城已に筑成して、四方の夷族皆な來歸せり。彼此交好して和親を結成して、昭君塞を出でしは正に是れ此のごとき一份の福気なり。此れ辺を固くし親を和ぐの象、和を講し盟を結べば長久の安寧を致す可し。
夬:千歡萬悅,舉事為決。獲受嘉慶,動作有福。
萃の卦が夬の卦に変わる。千般の歓喜、万種の愉悦して、事を办起せば果斷決絶なり。美好の慶賀を獲得して、一挙一動倶に福気を帶ゐせり。此れ欣悦して決行するの象、凡そ挙有る所倶に心に称い福を得る能し。
姤:種一得十,日益有息。仁政獲民,四國親睦。
萃の卦が姤の卦に変わる。一粒を种下して十粒を收得して、一天に一天として利息を增長す。仁政を施行して民心を得着して、四方の国親近和睦せり。此れ増殖して益を広ぐるの象、農を務め、経営し、惠を施す倶に倍償を得る能し。
升:安子富有,東國不殃。齊鄭和親,顯比以喜。
萃の卦が升の卦に変わる。安子家道富足にして、東方の国災殃に遭わず。齊、鄭両国和親を結成して、親比を顯明にして共に喜慶有り。此れ邦交和洽の象、交好し盟を結ぶ者同じく安寧と富足を享く。
困:九里十山,道仰峻難。牛馬不前,復反來還。
萃の卦が困の卦に変わる。九里の路竟に十座の山有りて、道路仰面にして陡峻、極めて攀登し難し。牛馬倶に肯えて前行せずして、只だ頭を掉して折返するを得たり。此れ路阻みて通ぜざるの象、前程険峻にして越え難し、宜しく退守して以て坦途を待つべし。
井:鳩杖扶老,衣食百口。曾孫壽考,凶惡不起。
萃の卦が井の卦に変わる。漢代の賜る所の高年への鳩頭の手杖を拄りて老人を扶助して、衣食以て上百口の人を供養するに足れり。曾孫の一輩も亦た高寿を享有して、凶惡の事興起せず。此れ老を養い家昌んなるの象、老を尊び長を敬する者は福沢綿延にして災なし。
革:霧露雪霜,日暗不明。陰孽為疾,年穀大傷。
萃の卦が革の卦に変わる。霧気、露水、雪と霜交じて侵襲して、太陽昏暗にして光なし。陰邪の気疾病を釀成して、一年の谷物大いに損傷を受く。此れ陰晦生を傷めるの象、年成佳からず人多く病患を患え、宜しく預め防備すべし。
鼎:迷行數卻,不知西東。陰疆暴逆,道理不通。(疆一作強)
萃の卦が鼎の卦に変わる。路に迷いて乱れ走り、屢々退却して、東西南北を分き得ず。陰気強横暴逆にして、事理と道路倶に通暢せず。此れ迷して據を失うの象、方向明らかならざれば則ち歩を挙ぐる倶に錯なり、宜しく停下して辨明して再び動くべし。旧本の「疆」の字或は「強」と作る。
震:登高上山,見王自言。信理我冤,得職蒙恩。
萃の卦が震の卦に変わる。高きに登り山に上りて、君王に見ゆて親しく陳説す。果して我が冤情を辨明して、職位を得着し恩沢を蒙受せり。此れ冤を申して直を得るの象、上訴、求告、理を伸ぶる者は昭雪して賞を受くるを望む可し。
艮:三世為德,天祚以國。封建少昊,魯侯之福。
萃の卦が艮の卦に変わる。三代倶に徳を積み善を行えば、上天便ち彼等に国土を賜せり。少昊の墟に於て建を分け国を封ずるが如く、彼は正に是れ魯侯の享くる所の福気なり。此れ徳を累ねて封を受くるの象、善を積む家は必ず余慶有りて、世代業を承け継ぐを望む可し。
漸:喬木無息,漢女難得。禱神請佩,反手離汝。
萃の卦が漸の卦に変わる。《詩経・周南・漢廣》の詠ずる「南有喬木、不可休思」、高木の下歇息する處なく、漢水の辺の游女も亦た求め難し。神に祈禱して、彼女に解佩して相贈せんことを求めれば、一轉手の間に彼女便ち汝を離れて去れり。此れ望む可くして即る可からざるの象、慕う所の事終に虚幻と成る、強求すれば益なし。
歸妹:東鄰西家,來即我謀。中告吉誠,使君安寧。
萃の卦が帰妹の卦に変わる。東隣と西舍の人、皆な來りて我と同じく商議謀劃す。中に居りて稟告する倶に誠実吉利の話にして、主君をして安寧无事せしめり。此れ衆の謀助を得るの象、広く忠言を納るる者は平安を保つ可し。
豐:褰衣出戶,心欲奔走。王孫毋驚,使我長生。
萃の卦が豊の卦に変わる。衣襟を提起して門戸を走り出れば、心の裏只だ腿を拔きて奔逃せんと想う。幸いに王孫我に驚慌する勿れと勧めて、反って我をして長久に保全を得しめり。此れ驚いて安を得るの象、変に臨みて能く鎮定する者は反って禍を免る可し。
旅:三日不飲,遠水無酒。晝夜焦喉,使我為咎。
萃の卦が旅の卦に変わる。三天水を喝らずして、水源を離れて又た遠く、更に酒なし。日夜喉嚨焦渇して、終に我に禍咎を招来せしめり。此れ渇乏して援なきの象、資用断絶して補給する處なく、久しく困れば必ず災厄を生ず。
巽:眾口銷金,愆言不驗。腐臭敗兔,入市不售。
萃の卦が巽の卦に変わる。《國語・周語》の説く所の「衆口鑠金」、衆人の口舌金属を熔化する能しと雖も、頭を過ぐる謡言終に應驗する能わず。腐臭敗壞の兎肉は、集市に拿りて去るも亦た肯えて買う人なし。此れ謡諑盛んなりと雖も假物行い難きの象、謗言畏る可しと雖も、実を守り自ら明らかにすれば便ち損なし。
兌:嫗冠應門,與伯爭言。東家失狗,意在不存。爭亂無怠,絕無所歡。
萃の卦が兌の卦に変わる。老婦冠帽を戴きて出でて門に應じて、伯氏と同じく争辯せり。東隣狗を丢了するに、彼女の心思却って全く此の上に在らず。争吵紛乱して肯えて罷休せずして、一点の歓楽もなし。此れ口角休まざるの象、家中和を失し、凡そ事擾攘して一の獲もなし。
渙:祚加明德,與我周國。公劉文母,福流子孫。
萃の卦が渙の卦に変わる。福祚明徳有るの人に加えられて、我に周室の邦を賜れり。公劉のごとき先祖、太姒のごとき文母有りて、福気子子孫孫に流傳せり。此れ徳厚く祚を承ぐるの象、祖徳深厚の者は後代必ず昌んなり。
節:針頭刺手,百病瘳愈。抑按捫灸,死人復起。
萃の卦が節の卦に変わる。針尖を以て手上の穴位に刺入せば、各種の疾病倶に痊癒せり。更に按摩推拿と艾灸を加えれば、垂死の人を連ねても新たに起身する能し。此れ良医廃を起すの象、疾病を問う者は症に対する治を得る可く、危轉じて安と為す可し。
中孚:元龜象齒,大賂為寶。稽疑當否,衰微復起。
萃の卦が中孚の卦に変わる。大きの龜甲と象牙は、是れ厚重の饋贈、貴重の宝物なり。《尚書・洪範》の説く所の「稽疑」の法を依りて卜問して当否すれば、衰微の勢新たに振起する可し。此れ疑を決して助を得るの象、疑に遇い而て卜に問えば、頽局復す可し。
小過:故室舊廬,消散無餘。不如新創,可以樂居。
萃の卦が小過の卦に変わる。旧日の房舍と老屋は、已に消散して一の余有りと為らず。倒れに別に新居を起せば不如く、以て安楽に住み下る可し。此れ旧を棄て新を圖るの象、殘を守り缺を抱くは別に規劃を作るに如かず、遷改すれば則ち吉なり。
既濟:老狐多態,行為蠱恠。為魅為妖,驚我王母。終無咎悔。
萃の卦が既済の卦に変わる。老狐狸變幻多端にして、行為怪異にして人を惑わす。神を装い鬼を弄して、魅を化して妖を成して、我が王母を驚嚇せり。然れど終に過錯悔恨なし。此れ妖異虚驚の象、看て怪駭するが如くして実に真の害なし、安心して処る可し。
未濟:愛子多材,起跡空虛。避害如神,水不能濡。
萃の卦が未済の卦に変わる。心愛の兒子才幹有ると雖も、是れ白手に家を起し、空虚の處より發跡せしなり。禍害を躲避すること神の助有るが如く、水を連ねても彼を沾湿す能わず。此れ才高く害を避くるの象、才有りて機を知る者は身を全うし禍を遠くして、終に興起を得ん。
升の林(升卦六十四林)
升:禹鑿龍門,通利水源。東注滄海,人民得安。
升の卦が自ら変じても升の卦のままである。大禹龍門を開凿して、水源を疏通して之を暢行せしむ。河水東流して滄海に注入して、百姓此れによって安居を得たり。此れ疏導成功の象、壅を除き滞を通ずる能くの者は大功を建てて衆人益を受く。
乾:白鹿鳴呦,呼其老少。喜彼茂草,樂我君子。
升の卦が乾の卦に変わる。白鹿呦呦として鳴叫して、同群の老幼を呼喚す。彼の茂密の青草を歓喜して、我が此の君子をも歓楽せり、正に《詩経・小雅・鹿鳴》の詠ずる賓を宴するの樂の如し。此れ同類相召の象、聚會、宴請、賢を招く倶に吉利なり。
坤:百里南行,雖微復明。去虞適秦,為穆國卿。
升の卦が坤の卦に変わる。百里奚南行して秦に入り、一度微賤に淪したりと雖も而して後重新に顯達せり。虞国を離れて秦国に投奔して、秦穆公の国の上卿を做れり。此れ暗を去りて明に投ずるの象、才を懐くる人門庭を改換すれば大用を望む可し。
屯:王孫宜家,張名益有。龍子善行,西得大壽。
升の卦が屯の卦に変わる。王孫家を成し室を立つるに宜しくて、名声を張揚して財貨日に增す。龍子遠行を善くして、西に行きて高寿を獲得せり。此れ業を立て名を揚ぐるの象、家を成し、遠行し、名を求むる倶に增益有り。
蒙:畫龍頭頸,文章不成。甘言善語,譎辭無名。
升の卦が蒙の卦に変わる。只だ龍の頭と頸を畫出して、整幅の紋彩終に畫成る能わず。甜言蜜語説きて動聽するも、詭詐の辞名声を成就する能わず。此れ始有りて終なき、虚言実なきの象、虚を務めて実を務めざる者は其の事を成すこと難し。
需:商子無良,相怨一方。引斗交爭,咎以自當。
升の卦が需の卦に変わる。経商の人善念を存せずして、一方に於て彼此怨を結べり。争鬪を招引して交相争奪して、禍咎只好く自ら承擔するのみ。此れ怨を構えて自ら招くの象、争鬪を興して狠なる者は自ら其の果を食む、宜しく和順退讓すべし。
訟:衰老困極,無齒不食。痔病痏瘵,就陰為室。
升の卦が訟の卦に変わる。衰朽年老して困頓極に到りて、牙歯掉光して物を吃る能わず。又た痔瘡、瘡傷と癆瘵を患えて、只だ陰處に挨りて身を安んずるのみ。此れ老病交侵の象、疾を問い寿を問う倶に利あらず、宜しく静養して労する勿れ。
師:鴛生會稽,稍巨能飛。翱翔桂林,為眾鳥雄。
升の卦が師の卦に変わる。鴛鳥會稽に生れて、身量漸く大きくなれば便ち飛翔する能し。桂林の上空に翱翔して、群鳥の中の雄杰と成れり。此れ漸く長じて雄と成るの象、出身微なりと雖も終に類を抜き萃を出ずる能し、宜しく序に循りて培養すべし。
比:安平不傾,載福長生,君子以寧。
升の卦が比の卦に変わる。安穩平正にして傾覆せずして、福気を承載して長久に生息を得て、君子此れによって安寧せり。此れ平を持し正を守るの象、家に居り、職に任じ、業を守る倶に平安にして虞なし。
小畜:牛驥同槽,郭氏以亡。國破為墟,君奔走逃。
升の卦が小畜の卦に変わる。耕牛と駿馬同一の食槽に在りて、賢愚分かたずして、郭氏の国此れによって滅亡せり。国土破敗して廢墟に淪して、国君只だ奔走逃亡せり。此れ賢愚混雑の象、人を用ゐるに辨えざれば則ち基業傾覆せん。
履:日中明德,兩國盛興。仁聖會遇,君受其福。臣多榮祿。
升の卦が履の卦に変わる。日正に中に当たりて徳行昭明にして、両国一同に興盛せり。仁厚聖明の人相會遇合して、君主此の福気を領受して、臣下も亦た多く榮顯俸禄を得たり。此れ明君賢に遇うの象、上下倶に榮して、仕を求め名を求むる倶に吉なり。
泰:公劉之居,太王所業。可以長生,拜受福爵。
升の卦が泰の卦に変わる。公劉の定居せし豳の地、太王古公亶父の開創せし岐山の基業なり。此に在りて長久に生息する可く、拜謝して福気と爵位を領受せり。此れ祖業を承けて安を得るの象、居処、業を立て、承襲する倶に吉なり。
否:時凋歲寂,君子疾病。宋女無辜,鄭受其殃。
升の卦が否の卦に変わる。時節凋敝、年歲蕭索にして、君子疾病に染上せり。宋国の女子本より罪過なくして、鄭国却って此れによって禍殃に遭受せり。此れ衰時に累を受くるの象、辜なくして連坐に遭えば、疾を問い事を問う倶に利あらず。
同人:濟河踰厄,脫母怵惕。四序為衛,使惠不廢。
升の卦が同人の卦に変わる。大河を渡り険厄を越えて、母親をして驚懼を脱出せしむ。四时の次序之が為に護衛して、恩惠中廃に至らず。此れ険を渉りて全うを得るの象、難を救い親を護る者は終に庇佑を受けて、恩沢断えず。
大有:缺破不完,殘際側偏。公孫幽遏,跛倚後門。
升の卦が大有の卦に変わる。器物殘缺破損して完整ならずして、邊角殘破して歪斜偏側なり。公孫氏幽禁阻遏せられて、只だ脚を跛りて後門に倚れるのみ。此れ殘缺して勢を失うの象、身偏側に処りて伸展を得ず、宜しく分を守りて争う勿れ。
謙:延頸遠望,昧為目病。不見叔姬,使伯心憂。
升の卦が謙の卦に変わる。脖子を伸長して遠處に眺望すれば、望みて昏花して眼病と成れり。始終叔姬の身影を見ずして、伯氏をして憂愁を満心せしめり。此れ望みて見えざるの象、待つ所の人來らず、行人を問い音信を問う倶に遲滯を主とす。
豫:上無飛鳥,下無走獸。擾亂未清,民勞於事。
升の卦が豫の卦に変わる。天上飛鳥なく、地上走獣なし。擾乱未だ肅清せざるに、百姓差事の為に労苦せり。此れ荒殘未だ定まらざるの象、世局動蕩、民力凋敝にして、大事を興挙するに宜しからず。
隨:久陰霖雨,塗行泥潦。民人休止,市空無有。
升の卦が随の卦に変わる。長久陰霾して霪雨連綿して、路上行走するに尽く泥濘積水なり。百姓活計を停下して、集市空空として貨物なし。此れ雨阻みて業を停むるの象、出行と買売倶に停滞に陷れり、宜しく天晴を待ちて再び動くべし。
蠱:盲者目張,跛倚起行。瞻望日月,與主相迎。
升の卦が蠱の卦に変わる。瞎子の眼睛新たに開きて、跛子物を扶けても亦た起身行走する能し。頭を擡げて日月の光明を瞻望して、前に往きて主上と相迎えり。此れ廢疾復を得るの象、久しく困る人は復明して起行を望む可く、貴に逢いて遇合を得ん。
臨:據斗運樞,順天無憂。與樂並居,萬代歡慶。
升の卦が臨の卦に変わる。北斗を依據として樞機を運轉して、天道に順應すれば便ち憂患なし。歓楽と一處に同処して、萬代倶に喜慶有り。此れ天に順いて安を得るの象、時に依りて動く者は長く福樂を享く。
觀:稼穡不偏,重適不傾。巧言賊忠,傷我申生。
升の卦が観の卦に変わる。耕種収穫倶に偏廢せずして、重を負うこと当を得れば便ち傾覆せず。可なりしも巧言讒語忠良を殘害して、晋国の太子申生を害死せしめり。此れ忠にして謗を被るの象、縦い事を行うに中を得ると雖も、仍お須らく讒口の身を傷るを防ぐべし。
噬嗑:金城鐵郭,上下同力。政平民歡,寇不敢賊。
升の卦が噬嗑の卦に変わる。城牆金の如く外郭鐵の如くして、上下斉心して力を合す。政令公平にして百姓歓悦して、盗寇敢えて前に來りて侵害せず。此れ固く守りて安を得るの象、内和せば則ち外侮侵せず、守御と事を治むる倶に吉なり。
賁:日鏡不明,冬災大傷。盜花失實,十年消亡。
升の卦が賁の卦に変わる。太陽鏡子の如くして昏暗不明にして、冬天の災害大きの損傷を造成せり。花偷去せられ果実落空して、十年の間消耗殆盡せり。此れ長期損耗の象、華にして実ならざる者は終に敗亡に帰す、宜しく本を務め実を固くすべし。
剝:鰥寡孤獨,命祿苦薄。入室無妻,武子悲哀。
升の卦が剥の卦に変わる。鰥夫、寡婦、孤兒、獨老は、命数と禄分倶に苦薄なり。屋子に進み入るも妻子相伴するなくして、武子此れによって悲哀せり。此れ孤苦無依の象、婚姻を問い家室を問う倶に利あらず。
復:飲酒醉飽,跳起爭鬥。伯傷叔僵,東家治喪。
升の卦が復の卦に変わる。酒を飲んで大いに醉い飽足するに到りて、跳び起きて打鬪を動かせり。伯氏傷を受け叔氏僵仆して地に倒れ、東隣の人家是れに於て喪事を办起せり。此れ醉後に禍を生ずるの象、宴飲度を失えば必ず凶事を釀す、宜しく節制して自ら持すべし。
旡妄:介召微子,使君不殆。二國合歡,燕齊以安。
升の卦が旡妄の卦に変わる。間に居りて引介して、微子のごとき賢人を召請して、国君をして危殆に陷らざらしむ。両国歓好を結為して、燕、斉此れによって安定せり。此れ賢を薦め邦を和ぐの象、人を得て中より斡旋せば便ち険を化して安と為す可し。
大畜:牽頸繫尾,詘折幾死。雕世無仁,不知所比。
升の卦が大畜の卦に変わる。脖子牽住せられ尾巴繫緊せられて、屈曲折磨して幾に命を喪わんとせり。澆薄の世道仁徳なくして、誰に親附すべきかを知らず。此れ困を受けて依なきの象、世風古ならずして身拘系に遭えば、宜しく隱忍して以て時の変を待つべし。
頤:東龍究毒,不知所觸。南北困窮,王子危急。
升の卦が頤の卦に変わる。東方の龍毒を発し尽くして、却って何を触犯せしを知らず。南北両頭倶に困窮に陷入して、王子处境危急なり。此れ四面受困の象、禍何の処より來るかを知らず、唯だ宜しく謹慎して身を防ぐべし。
大過:疾貧王孫,北極無輝。祿命苦薄,兩守孤門。
升の卦が大過の卦に変わる。王孫貧病に苦しみて、北極星の光輝を失せるが如し。禄分と命数倶に苦薄にして、両個人一扇の孤零零たる門を守れり。此れ貴にして勢を失うの象、福禄以て継ぐべきなく、宜しく貧に安んじ自ら守るべし。
坎:公孫駕驪,載遊東齊。延陵故產,遺季紵衣。
升の卦が坎の卦に変わる。公孫黑色の駿馬を駕して、人を載せて東に斉国に游せり。延陵季子故郷の物産を把きて、子産に紵麻の縫製する衣裳を贈りしは、正に是れ《左伝》の記する所の呉季札の贈答の事なり。此れ出游して贈答するの象、遠行して友を交わる者は礼を以て相結びて、深厚の情誼を得る可し。
離:王良善御,伯樂知馬。文王東獵,獲嘉賢士。開福佑周,發且興起。
升の卦が離の卦に変わる。王良車を駕すること善く、伯楽馬を相するに善し。周文王東に出でて獵して、呂尚のごとき賢良の士を得着せり。此れより福運を開啓して周室を庇佑して、事業勃然として興起せり。此れ賢を得て邦を興すの象、才を求め、賢を訪ね、出行する倶に大吉なり。
咸:日月不居,重耳趨舍。遊燕入秦,晉國是霸。
升の卦が咸の卦に変わる。日月肯えて停留せずして、重耳各處の館舍に奔走せり。先に燕地を游し後に秦国に入りて、終に晋国をして諸侯に称霸せしめり。此れ流亡して而して後に興るの象、久しく艱難を歴る者は終に大業を成さん。
恆:假文翰翼,隨風背北。至虞夏國,與舜相得。年歲大樂,邑無盜賊。
升の卦が恒の卦に変わる。華美の羽翼を借りて、風に順いて北を背いて飛び去れり。虞、夏の邦に到りて、虞舜と情意相合せり。年歲大いに歓楽して、城邑の中盗賊なし。此れ明主に遇いて志を得るの象、遷徙して投奔する者は安樂を得て、境内太平せん。
遯:南行北走,延頸望食。舉口失利,累我子孫。
升の卦が遯の卦に変わる。一會兒南に行き一會兒北に走りて、脖子を伸長して吃食を盼望す。一たび口を開けば便ち利益を失して、還た我が子孫に連累せり。此れ奔波無獲の象、妄言妄動の者は不但ただ徒労、還た後人に患を貽さん。
大壯:開市作喜,建造利事。平準貨寶,海內殷富。
升の卦が大壮の卦に変わる。集市を開設して喜事と成りて、興建營造事業に利有り。漢時の平準の法を以て貨物宝贝の価格を調平すれば、海内因って殷實富足せり。此れ商を興して富を致すの象、開業、營建、貿易倶に吉利なり。
晉:三犬俱走,斗於谷口。白者不勝,死於坂下。
升の卦が晋の卦に変わる。三條の狗一斉に奔跑して、谷口に於て厮鬪せり。白色の彼隻未だ勝を取らずして、山坡の下に死せり。此れ争鬪して傷を致すの象、力弱き者は人と相争えば必ず敗る、宜しく避讓して争わざるべし。
明夷:驕滷火形,造惡作凶。無所能成,還自滅身。
升の卦が明夷の卦に変わる。驕横粗魯、性情火の如くして、惡事を造作し凶を興風せり。結果何も亦た成就する能わずして、反って自身を毀滅せり。此れ暴を逞して自ら敗るの象、強を恃みて惡を行う者は終に自ら滅亡を取らん。
家人:拜跪讚辭,無益於尤。大夫頑嚚,使我心憂。
升の卦が家人の卦に変わる。下拜跪求して好話を説き尽くすも、已に成るの過咎に於て毫も補益なし。大夫頑劣愚妄にして、我をして憂愁を満心せしめり。此れ求告して門なきの象、頑固の人に遇上せば則ち辯解用なし、宜しく別に出路を謀るべし。
睽:辰次降婁,王嘉巡狩。廣佑施惠,萬國咸喜。子孫榮品,長安不殆。
升の卦が睽の卦に変わる。歲星の次舍降婁の位に行きて、君王欣然として天下を巡行せり。庇佑と恩惠を広施して、万邦倶に之が為に歓喜せり。子孫榮顯にして品位有りて、長久安寧にして危殆なし。此れ徳沢広く被るの象、出巡、惠を施し、業を承ぐる倶に大吉なり。
蹇:牽瑜上樓,與福俱遊。勞躬治國,安樂無憂。
升の卦が蹇の卦に変わる。美玉を牽携して高樓に登上して、福気と同じく游賞せり。親しく操労して国家を治理して、安樂にして憂患なし。此れ宝を持して高きに居るの象、事に任ずるを勤むる者は身安んじて福随わん。
解:白鳥御餌,鳴呼其子。旋枝張趐,來從其母。
升の卦が解の卦に変わる。白鳥食餌を銜えて、鳴叫して己が雛兒を呼喚す。雛鳥枝頭を繞りて翅膀を張開して、飛び來りて母親に跟従せり。此れ母子相召の象、家人團聚、撫育所を得る、家宅と子女を問う倶に吉なり。
損:盲聾獨宿,莫與共食。老窮於人,病在心腹。
升の卦が損の卦に変わる。又た瞎き又た聾して独り夜を過ごして、彼と同じく飯を吃る人なし。老に到りて人に比して更に窮困にして、病痛還た心腹の間に結れり。此れ孤にして病交加の象、相扶くる人なく、疾を問い晚景を問う倶に利あらず。
益:登木出淵,稍上升天。明德孔聖,白日載熒。寵祿再榮。
升の卦が益の卦に変わる。樹木に攀れて深淵より爬出して、一步々として上に向かい直に天際に升れり。徳行孔子のごとき聖哲の如く昭明にして、白日の下光輝閃耀せり。恩寵と俸禄再度榮顯せり。此れ困を脱して上に達するの象、低處より升進して、重ねて榮寵を獲るを望む可し。
夬:彭離濟東,遷之上庸。狼戾無節,失其寵功。
升の卦が夬の卦に変わる。《漢書》の記する所の濟東王劉彭離は、上庸に貶遷せられり。彼凶狠乖戾にして毫も節制なくして、是れに於て原有の寵信と功業を喪失せり。此れ驕横して位を失うの象、寵を恃みて驕る者は必ず貶黜に遭わん。
姤:譖陽上舞,神明正氣。禹拜受福,君使我德。居則厚祿。(譖一作贊)
升の卦が姤の卦に変わる。陽位の上に於て頌称して舞い起これば、神明純正の気を降下せり。大禹下拜して福気を領受して、君主我をして徳政を施行するを得しめり。其の位に安居すれば便ち豊厚の俸禄有り。此れ祭禱して福を得るの象、神を敬し徳を修むる者は禄を受けて安んず。旧本の「譖」の字或は「賛」と作る。
萃:從首至足,部分為六。室家離散,逐南乞食。
升の卦が萃の卦に変わる。頭頂より脚跟に至るまで、身体六段に割分せられり。家室此れによって離散して、只好く南に逃げ去りて飯を討るのみ。此れ支離破碎の象、家道崩解、他郷に流落せり、家宅を問う大凶なり。
困:民迷失道,亂我統紀。空使乾華,賓無所有。先憂後樂。
升の卦が困の卦に変わる。百姓正道を迷失して、我が綱紀法度を擾乱せり。白白と花朵をして枯萎せしめ、賓客空手にして一の獲もなし。不過是れ先に憂愁有りて後に轉じて歓楽と為る。此れ先に乱れ後に治まるの象、紛擾を歴ると雖も終に安に帰す。
井:刻畫為飾,毛嬙西施,求事必得。
升の卦が井の卦に変わる。精心に彫刻繪畫して以て修飾すれば、便ち毛嬙、西施のごとき美貌動人の如し。求むる所の事必ず得手する能し。此れ文飾して成を得るの象、肯えて心を用ゐて修治すれば則ち圖る所必ず遂わん。
革:日居月諸,遇暗不明。長夜喪甲,絕其紀綱。
升の卦が革の卦に変わる。《詩経・邶風・柏舟》の嘆ずる「日居月諸」——太陽と月亮よ、偏偏昏暗に遇いて光を放たず。長夜の中甲冑を丢失して、法度綱紀も亦た随いて断絶せり。此れ昏乱して序を失うの象、上明主なく、下法度を失えば、凡そ事安んずること難し。
鼎:衣裳顛倒,為王來呼。成就東周,封受大侯。
升の卦が鼎の卦に変わる。衣と裳穿き顛倒せり、只だ君王の急召に因りて匆忙に來り趕りし、正に是れ《詩経・齊風・東方未明》の写す所の情形なり。終に東周の基業を成就して、大諸侯に受封せり。此れ倉促に召に應じて貴を得るの象、匆忙にして儀を失すと雖も、反って王を勤むるに因りて封賞を獲ん。
震:當變立權,擿解患難。渙然冰釋,六國以寧。
升の卦が震の卦に変わる。變故に臨みて權宜の計を立下して、症結を挑破して患難を化解せり。一切氷の消え雪の融けるが如く渙然として解けて、六国此れによって安寧せり。此れ權變して紛を解くの象、善く機變を用うる者は以て大難を消弭する可し。
艮:西戎獯鬻,病於我國。扶陽之政,以保乾德。終無患惑。
升の卦が艮の卦に変わる。西方の戎狄と獯鬻部族は、我が国に患を為せり。陽剛を扶助するの政令を施行して、以て剛健の乾徳を保全せり。終に禍患と疑惑なし。此れ外を御して正を守るの象、正を扶け邪を祛けば則ち外患自ら消えん。
漸:南行逐羊,子利喜亡。陰孽為病,復返其邦。
升の卦が漸の卦に変わる。南に行走して羊を追えば、本より利を得んと想うも喜事却って空を落せり。陰邪の気疾病を釀成して、只好く本国に折返するのみ。此れ利を求めて止むるの象、外に出でて事を謀れば阻を遇いて又た病に染えり、宜しく及早に頭を回すべし。
歸妹:遊戲仁德,日益有福。凶言不至,妖孽滅息。
升の卦が帰妹の卦に変わる。仁徳の中に優游涵泳して、福気一天に一天として增益す。凶惡の言語傳來せずして、妖異災孽も亦た倶に消滅止息せり。此れ徳を以て災を弭くの象、徳を修め善を積む者は百邪侵せず。
豐:春日新婚,就陽日溫。嘉樂萬歲,獲福大椿。
升の卦が豊の卦に変わる。春日の裏新婚礼を成して、陽に向かいて居りて日に温暖なり。歓楽嘉美万年に至る可く、獲る所の福《荘子・逍遥游》の説く八千歲を春と為す大椿のごとき長久有り。此れ婚慶して寿を得るの象、嫁娶と慶典倶に吉にして、福寿綿長を主とす。
旅:陰昇陽伏,鬼哭其室。相飾不食,安巢如棘。
升の卦が旅の卦に変わる。陰気上昇して陽気潜伏して、鬼屋子の裏に於て哭泣せり。彼此虚にして委蛇なりて肯えて食を進めずして、安身の巢荊棘の上に扎せるが一般なり。此れ陰盛んにして家危きの象、居処寧ならず、飲食安ならず、宜しく遷避して修禳すべし。
巽:臣尊主卑,權威日衰。侵奪無光,三家逐公。
升の卦が巽の卦に変わる。臣子尊貴にして君主卑弱にして、君權威勢一天に一天として衰落せり。侵奪せられて毫も光彩なきに至りて、三家の大夫終に国君を駆逐せり。此れ權柄下に移るの象、主弱く臣強ければ必ず篡逐に致る、宜しく及早に權を收めて自ら固くすべし。
兌:反言為賊,戎女生患。亂吾家國,父子相賊。
升の卦が兌の卦に変わる。出爾反爾の言語禍害と成りて、戎族の女子驪姫禍患を引出せり。我が家と国を攪乱して、父子をして相互に殘害せしむ。此れ婦言家を乱すの象、讒惑を聴信すれば則ち骨肉相殘せん、宜しく是非を辨明すべし。
渙:迎福開戶,喜逐我後。康伯愷悌,治民以禮。
升の卦が渙の卦に変わる。門戸を打開して福気を迎接すれば、喜事我が身後に緊跟せり。康伯和楽平易にして、礼法を以て百姓を治理せり。此れ門を開きて福を納るるの象、寛和して人を待する者は福之に随いて至りて、事を治め家に居る倶に吉なり。
節:日就月將,昭明有功。靈臺觀賞,膠鼓作仁。
升の卦が節の卦に変わる。《詩経・周頌・敬之》の説く日就月將の如く、一天々として成就し一月々として進益して、徳行昭明にして功業を建立せり。靈台に登上して游賞し樂を觀て、鼓を敲き起して仁政を推行せり。此れ漸を積みて功を成すの象、日に進みて已まざる者は必ず観る可きの績有らん。
中孚:百草嘉卉,萌芽將出。昆蟲扶戶,陽明所得。
升の卦が中孚の卦に変わる。百樣の野草と嘉美の花卉は、萌芽將に土を破りて出でんとす。昆虫門戸を扶けて爬動するは、此れ皆な陽気光明の帯來する所なり。此れ生機初めて動くの象、事萌發の際に在りて、宜しく時に順い培育すべし。
小過:天所佑助,福至禍去,君主何憂。
升の卦が小過の卦に変わる。上天の護佑幇助有りて、福気到來して禍患離去すれば、君主又何の憂慮かあらん。此れ天佑して吉を得るの象、凡そ事神助有りて、以て危を轉じて安と為す可し。
既濟:窮夫失居,唯守舊廬。初憂中懼,終日競競。無悔無虞。
升の卦が既済の卦に変わる。窮困の人居所を失去して、只だ旧屋を守りて日を度るのみ。起初憂愁して中間恐懼して、整天戦戦兢兢なり。到底悔恨もなく意外の患もなし。此れ旧を守りて禍を免るるの象、困に処りて戒懼を知る者は艱なりと雖も終に保全を得ん。
未濟:買玉得石,失其所欲。荷蕢擊磬,隱耳無聲。
升の卦が未済の卦に変わる。銭を出して玉を買い入るも却って一塊の頑石を得て、心中の要する所を失掉せり。正に《論語・憲問》の裏草筐を擔ぎて孔子の門前を經過せし人、彼の磬を擊くの聲を聽きて、却って隱沒して眞切を辨え得ざるが如し。此れ求むる所称わざるの象、真才有ると雖も知音遇い難く、交易も亦た欺を受け易し。
困の林(困卦六十四林)
困:席多針刺,不可以臥,動而有悔,言行俱過。
困の卦が自ら変じても困の卦のままである。席子の上針刺に満ちて、躺臥するに法なし。一たび動けば便ち悔恨を招来して、言語と行為倶に差錯を出だす。此れ处境荊棘の象、進退両難にして、宜しく言を謹み行を慎み、静かに守りて動かざるべし。
乾:烏鵲食穀,張口受哺,蒙被恩德,長大成就。柔順利貞,君臣合好。
困の卦が乾の卦に変わる。烏鴉と喜鵲谷粒を啄食して、雛鳥嘴を張開して哺喂を受け、恩徳の潤沢を蒙受して長大成材せり。柔順にして正を守りて持に利あり、君臣の間和洽相好せり。此れ養を受けて成を得るの象、下に居りて恩を承くる者は成有るを望む可し。
坤:六鷁退飛,為襄敗祥,陳師合戰,右股夷傷,遂以薨崩,霸功不終。
困の卦が坤の卦に変わる。《春秋》の記する所の六隻の鷁鳥退きながら飛びて宋国の都城を過ぐるは、宋襄公の敗亡の凶兆と成れり。泓水に於て兵を陳して戰を合して、右腿創傷を被りて、終に此れによって身死して、霸業善終を得ず。此れ凶兆先に見るの象、勢に逆いて争う者は功敗れて身亡ぶ。
屯:匍匐出走,驚惶悼恐,白虎王孫,蓐收在後,居中無咎。
困の卦が屯の卦に変わる。手脚を并用地して爬りて逃走して、驚慌恐懼已まず。白虎の居る所の方王孫の相護有りて、西方の金神蓐収又た後面に跟隨せり。中位に安居すれば便ち過錯なし。此れ驚いて護を得るの象、倉皇の中に神靈の扶持有りて、中を守れば則ち災なし。
蒙:庇盧不明,使孔德妨,女孽亂國,虐政傷仁。
困の卦が蒙の卦に変わる。遮蔽の屋廬昏暗不明にして、大徳妨礙を受けしむ。女子孽を作して国家を擾乱して、暴虐の政令仁義を傷害せり。此れ昏暗して徳を害するの象、内嬖幸有りて外苛政を行えば、国事家事倶に安寧を得ず。
需:石屬四足,不能上屋,顏氏淑德,未有爵祿。
困の卦が需の卦に変わる。石頭縦い四隻の脚を連ねるも、屋頂に爬上する能わず。顔回のごとき美善の徳行も、却って未だ爵位俸禄を得ず。此れ徳才未だ遇わざるの象、才行美なりと雖も時位至らず、宜しく安守して以て待つべし。
訟:襄送季女,至於蕩道,齊子旦夕,留連久處。
困の卦が訟の卦に変わる。小女を護送して嫁せしめて、一直に平坦の大道に送り到れり。《詩経・齊風・載驅》の刺す所の如く、斉国の彼の女子早晚往来して、外に滞留して久久と帰らず。此れ嫁を送りて淹留の象、行人遲歸、婚事遷延して、須らく閑言を防ぐべし。
師:麞鹿逐牧,飽歸其居,還反次舍,樂得自如。
困の卦が師の卦に変わる。麞と鹿牧場に随いて移動して食を覓りて、飽きたれば便ち己が窩の裏に回れり。元來の住處に返回して、快楽にして自在なり。此れ順遂して所を得るの象、往返節有り、飲食缺なく、居処安適なり。
比:望尚阿衡,太宰周公,藩屏湯武,立為侯王。
困の卦が比の卦に変わる。呂尚と阿衡と号する伊尹のごとき賢臣、太宰周公のごとき輔弼を得んと期望す。彼等屏障の如く商湯と周武を護衛して、自身も亦た侯王に立てられり。此れ賢を得て政を輔くの象、賢を用ゐれば則ち国安んじ、命を佐くる者は封を受けん。
小畜:開廓洪緒,王跡所基,報以八子,功得俟時。
困の卦が小畜の卦に変わる。恢弘の大業を開拓するは、彼は正に是れ王者事蹟の根基なり。上天《論語》の称する所の周の八士のごとき賢子を以て回報して、功業只だ時機成熟を待つのみ。此れ基を開きて時を待つの象、広く根本を植うる者は子孫昌盛、功成日有らん。
履:八會大都,饒富有餘,安民利國,可以長居。(八疑當作入)
困の卦が履の卦に変わる。四方會聚の大都会に進入して、物産饒富にして綽綽として余り有り。百姓を安定し国家に利有りて、此に於て長久に居住する可し。此れ都を擇びて利を得るの象、遷居、経商、職に任ずる倶に吉なり。旧注に「八」の字当に「入」と作るべしと疑う。
泰:陰雲四方,日在中央,人雖昏霧,我獨昭明。
困の卦が泰の卦に変わる。四方倶に陰雲なれど、太陽却って正に中天に在り。別人昏霧の中に処ると雖も、独り我が此処光明朗照せり。此れ独り清明を得るの象、衆人迷惑して我独り醒めり、事を謀れば先ず覚り先ず得るを望む可し。
否:薄為災虐,風吹雲卻,欲上不得,復規其宅。
困の卦が否の卦に変わる。単薄の物災虐に遭受して、風一たび吹けば便ち雲を推き去れり。上に升らんと欲するも办する能わずして、只好く自家の居所を重新に謀劃するのみ。此れ力弱くして挫を受くるの象、上進成らざれば則ち退守して本業を為すを宜とす。
同人:昭昭略略,非忠信客,言語反覆,以黑為白。
困の卦が同人の卦に変わる。話説きて又た明白にして又た簡略なるも、其の実忠厚誠信の人に非ず。言語翻來覆去して、硬に黑のを説いて白と為す。此れ巧言欺詐の象、此のごとき人に遇上しては深信する可からず、凡そ事須らく憑据を留むべし。
大有:三女為奸,俱遊高園,背室夜行,與伯笑言,禍及乃身,冤死誰禱。
困の卦が大有の卦に変わる。三個の女子暗中不端の事を做して、一同に高處の園子に游玩せり。家室を背負して夜間外出して、伯氏と談笑す。禍事終に自身に落到して、冤死したる後又た誰に向かいて祈禱せんや。此れ私に行いて禍を招くの象、暗昧不正の事は必ず自ら其の咎を貽さん。
謙:涉尸留鬼,大斧所視,文昌司過,簡公亂死。
困の卦が謙の卦に変わる。水を渉りて尸首を見て游魂を留むるは、彼は正に是れ大斧の刑戮の注視する處なり。文昌星専ら過失を糾察を司どりて、齊簡公終に田氏の乱に死せり。此れ刑戮身に臨むの象、罪咎逃れ難し、安危を問う主として大凶なり。
豫:大足長股,利出行道,困倉充盈,疏齒善市,宜錢富家,事得萬倍。
困の卦が豫の卦に変わる。脚大きく腿長くして、外に出でて路を趕るに利あり。倉廩充実盈満して、牙歯疏朗にして買売を做するに善し。宜しく銭を聚めて家道をして富足せしむべく、事を為せば万倍の利を獲る可し。此れ商を行いて大いに獲るの象、遠く出でて経営する者は財源広く進む。
隨:筐筥錡釜,可活百口,伊氏鼎俎,大福所起。
困の卦が随の卦に変わる。方筐、圓筥と錡釜の此れらの炊具有りて、以て上百口の人を養活するに足れり。伊尹鼎俎を背負して成湯に見ゆしは、正に是れ大福興起の開端なり。此れ食を以て貴を致すの象、飲食生計を操持する者は此れにより發跡する可し。
蠱:升高登虛,欲有望侯,駕之北邑,與喜相扶。
困の卦が蠱の卦に変わる。高處に登上して空曠の地に踏上して、封侯を謀求せんと要す。車を駕して前に往きて北面の城邑に到りて、喜事と相互に扶持せり。此れ上進して喜に遇うの象、出行して進を求むる者は位を得慶を得るを望む可し。
臨:用彼嘉賓,政平且均,螟蟲□不作,民得安寧。
困の卦が臨の卦に変わる。彼の嘉美の賓客賢才を任用して、政令公平にして又た均一なり。螟虫のごとき害虫再び滋生せずして、百姓安寧を得たり。此れ賢を用ゐて治を致すの象、人を得れば則ち災害興らず境内平安せん。源文此処に一字殘缺有り、姑く「□」を存して以て考を待つ。
觀:桃夭少葉,婚悅宜家,君子樂胥,長利止居。
困の卦が観の卦に変わる。桃花初めて開きて葉子尚お少なきは、正に是れ《詩経・周南・桃夭》の詠ずる嫁して家に宜しきの好時節なり。婚事歓悦、家室和順にして、君子歓楽して相與にして、長久安居に利有り。此れ婚姻時を得るの象、嫁娶して家を安んずる倶に吉なり。
噬嗑:東行失旅,不知所處,西歸無妃,莫與笑語。
困の卦が噬嗑の卦に変わる。東に行走して却って同伴を失散して、何の處に身を安んずべきかを知らず。西に家に回るも又た配偶なくして、己と同じく説笑する人なし。此れ孤行して侶なきの象、出行して伴を失い家に居りて偶なく、孤寂にして成す所なし。
賁:玩好亂目,巧聲迷耳,賊敗貞良,君受其咎。
困の卦が賁の卦に変わる。珍玩愛物眼睛を迷乱して、巧飾の音声耳朵を迷惑せり。忠貞良善の人を殘害敗壞せば、君主便ち此の禍咎を承受せん。此れ声色政を害するの象、玩好に溺るる者は必ず賢臣を失いて災を招かん。
剝:明德孔嘉,萬歲無虧,駕龍巡狩,王得安所。
困の卦が剥の卦に変わる。光明の徳行十分に嘉美にして、万年を歴しても虧損せず。龍車を駕して天下を巡行して、君王安穩の處所を得たり。此れ徳盛んにして安を得るの象、徳を修むる者は位固くして長久虞なし。
復:同本巽葉,樂仁尚德,東鄰慕義,來興吾國。
困の卦が復の卦に変わる。同一の根本にして枝葉順暢にして相連りて、仁を行うを樂しみ徳義を崇尚せり。東辺の隣邦此の道義を仰慕して、前に來りて我が国家を興盛せしむ。此れ徳隣邦を感ずるの象、仁徳を以て相召せば則ち遠人來附せん。
旡妄:戴山崔嵬,曰高無頹,軍主好德,賜以家國。
困の卦が旡妄の卦に変わる。巍峨高聳の大山を頭に戴きて、高峻にして崩頹せざると説く。軍を統する主徳行を喜好して、因って家室と封国を賜与せられり。此れ徳厚くして封を受くるの象、高位に居りて能く徳を修むる者は根基搖がず。
大畜:築室合歡,千里無患,周公萬年,佑我二人。
困の卦が大畜の卦に変わる。屋室を營建して合歓を共享して、千里の内禍患なし。周公の徳万年に流傳して、我ら二人を庇佑せり。此れ宅を安んじて佑を得るの象、營建、家を成し、伴を結びて同行する倶に平安にして福有り。
頤:養雞生雛,畜馬得駒,明堂太學,君子所居。
困の卦が頤の卦に変わる。鶏を養いて小鶏を孵し、馬を養いて馬駒を生下せり。明堂と太学は、正に是れ君子の安居して講学する処なり。此れ孳生蕃息の象、畜養、教化、学を求むる事倶に增益有り。
大過:雷行相逐,無有休息,戰於平陸,為夷所覆。
困の卦が大過の卦に変わる。雷声接連して追逐して來りて、片刻の停息なし。平坦の陸地の上に於て交戦するも、却って夷人に擊潰せられり。此れ躁進して績を敗るの象、急に動きて地を擇ばざる者は必ず挫敗に遭わん。
坎:委蛇循河,北至海涯,涉歷要荒,君世無他。
困の卦が坎の卦に変わる。曲折蜿蜒として河道に沿ゐて行きて、北に向かい海辺に到達せり。跋涉して《尚書・禹貢》の説く要服、荒服のごとき遠方を經歷して、君主一世も亦た別の禍患なし。此れ遠行して険を歴して安んずるの象、長途跋涉して終に平順を得ん。
離:鴻聲大視,高舉神化,背昧嚮明,以道福功。
困の卦が離の卦に変わる。鴻雁鳴声遠く聞え、目光高遠にして、高く飛挙して神妙變化せり。昏暗を背離して光明に面向して、正道に憑りて福気と功業を成就せり。此れ暗を棄て明に投ずるの象、時を識りて高く挙ぐる者は大功を建つ可し。
咸:比目四翼,來安吾國,福善上堂,與我同床。
困の卦が咸の卦に変わる。比目の魚双を成し鳥兒四翼齊び飛びて、來りて我が国家を安定せり。福気と善事厅堂に登上して、我と同じく一床に眠れり。此れ配を得福を得るの象、婚姻、伙を合し、家宅倶に吉慶親密なり。
恆:先縠彘季,反謀桓子,不從元帥,遂行挑戰,為荊所敗。
困の卦が恒の卦に変わる。晋国の先縠と彘季の一流は、反って主帥荀桓子を算計せり。元帥の号令に服従せずして、擅自に兵を出し戰を挑して、終に邲の地に於て楚国に打敗せられり。此れ令に違いて自ら敗るの象、統屬に遵わず各々其の是を行う者は必ず大潰に致る。
遯:三頭六足,欲盜東國,顏子在邇,禍滅不成。
困の卦が遯の卦に変わる。三頭六足の怪物有りて、東方の国を盗取せんと欲す。幸いに顔回のごとき賢者身辺に近在して、禍事消滅して未だ逞を得ず。此れ賢者邪を鎮むるの象、正人側に在れば則ち奸謀自ら敗れん。
大壯:緣山升木,中墮於谷,子輿失勞,黃鳥哀作。
困の卦が大壮の卦に変わる。山勢に攀りて樹木に爬上するも、半途却って山谷の裏に墜落せり。子輿の一番の辛労空を落し、《詩経・秦風・黄鳥》のごとく哀鳴を発せり。此れ半途に墜折の象、勉力して高きに攀る者は中道に挫を受け、労して傷有るを主とす。
晉:南有嘉魚,駕黃娶鱗,魴鯉瀰瀰,利來無憂。
困の卦が晋の卦に変わる。《詩経・小雅》の詠ずる「南有嘉魚」、黄色の車を駕して鱗有るの族を迎娶せり。魴魚と鯉魚満満たる一片にして、利益到來して憂慮なし。此れ利を得て婚を成すの象、賓を宴し、嫁娶し、財を求むる倶に吉なり。
明夷:邃氣作云,蒙覆大君,塞聰閉明,殷人賈傷。
困の卦が明夷の卦に変わる。深郁の気雲霧を結成して、大君を籠罩遮蔽せり。聴覚を堵塞し視力を閉合して、殷商の人此れによって経商損を受けり。此れ蒙蔽して察を失うの象、上壅蔽せられれば則ち下其の害を受く、宜しく広く言路を開くべし。
家人:舉翅櫖翼,跂望南國,延頸卻縮,未有所得。
困の卦が家人の卦に変わる。翅膀を擧起して羽翼を張開して、脚を踮きて南方の国を遥望す。脖子を伸長して又た縮め回りて、終に一の獲もなし。此れ進まんと欲して復た止まるの象、心圖る所有りて敢えて行わざれば、坐りて其の機を失す。
睽:坎中蝦蟆,乍盈乍虛,三夕二朝,形消無餘。
困の卦が睽の卦に変わる。坑窪積水の中の蛤蟆は、一會兒盈滿し一會兒空虚す。三夜两朝に過ぎずして、形体便ち消散して一点の余もなし。此れ盈虚无常、旋ち得て旋ち失うの象、得る所久保し難し、須らく速成速敗を防ぐべし。
蹇:僮子射御,不知所定,質疑蓍龜,孰知所避。國安土樂,宜利止居,兵蔻不至,民無騷擾。
困の卦が蹇の卦に変わる。童子射箭と車を駕するを学習して、還た定准何の處に在るかを知らず。疑問を蓍草と龜甲に質證するに、又た誰か何を躲避すべきかを知らんや。所幸国土安寧歓楽にして、止息して安居するに宜しく、兵禍盗寇倶に來らずして、百姓騷擾なし。此れ疑して安を得るの象、一時適従する所なしと雖も、終に太平无事に帰す。
解:陰淫寒疾,水離其室,舟楫大作,傷害黍稷。民飢於食,不無病厄。
困の卦が解の卦に変わる。《左伝》の謂う所の「陰淫寒疾」、陰気過盛なれば便ち寒病を生じ、大水其の溝道を漫出せり。至る處船隻を動用して、黍稷の庄稼を皆な毀壞せしめり。百姓粮を缺きて挨餓して、病痛災厄を免れず。此れ水患災を成すの象、年成傷を受け疾疫随いて生ず、宜しく早く粮を備え疫を防ぐべし。
損:離友絕朋,巧言纏匿,覆白汙玉,顏叔哀哭。
困の卦が損の卦に変わる。朋友を離弃して同伴を断絶して、巧言纏繞して実情を隱匿せり。潔白を翻覆して美玉を弄髒して、顔叔此の為に哀声痛哭せり。此れ讒言毀誉の象、清白汚を遭いて知交離散せり、宜しく正を守りて以て昭雪を待つべし。
益:童女無媒,不宜動搖,安其室廬,傅母何憂。(傅一作傍)
困の卦が益の卦に変わる。幼小の女子未だ媒人來りて説合せずして、軽く挙げ妄動するに宜しからず。安心して自家の屋裏に守在して、教養の傅母又何の憂慮かあらん。此れ静を守りて時を待つの象、其の時に未だ至らざれば妄動する可からず、安分なれば便ち憂なし。旧本の「傅」の字或は「傍」と作る。
夬:作凶作患,北檄困貧,東與禍連,傷我老根。
困の卦が夬の卦に変わる。凶事を興作して禍患を釀成して、北方の征調文書頓困貧乏を弄せしめり。東辺又た禍事と牽連して、我が此の老根を傷せしめり。此れ四面禍を招くの象、妄動して事を生ずる者は根本損を受く、宜しく静守して擾する勿れ。
姤:東南其戶,風雨不處,曣晲仁人,父子相保。
困の卦が姤の卦に変わる。門戸東南に開きて、風雨吹き入る能わず。天色晴朗溫煦にして仁徳の人在りて旁に在りて、父子彼此保全を得たり。此れ向を擇びて宜を得るの象、居処所を得て又た仁人の相助に遇い、家室安然たり。
萃:被髮獸心,難與比鄰,來如飄風,去似絕弦,為狼所殘。
困の卦が萃の卦に変わる。頭髪を披散して野獣の心を懐きて、此のごとき人隣居と為ること難し。來る時旋風のごとく急にして、去る時断絃のごとく快くして、終に狼に殘害せられり。此れ惡と隣と為るの象、凶暴の人と交結せば必ず其の害を受く、宜しく遠く遠く避開すべし。
升:天覆地載,日月運照。陰陽允作,方內四富。
困の卦が升の卦に変わる。上に天の覆う有り下に地の載する有りて、日月運行して普く照らす。陰陽時に依りて興作して、四方境内一片富足なり。此れ天地位育の象、時序に順應すれば則ち万物各々其の養を得て、大吉である。
井:桀亂無道,民散不聚。背室棄家,君孤出走。
困の卦が井の卦に変わる。夏桀昏乱無道にして、百姓離散して肯えて聚集せず。人屋室を背弃して家园を抛下して、国君も亦た孤零零として出逃せり。此れ道を失して衆叛るの象、政を為すに仁ならざれば則ち民散じ国傾く。
革:申酉稷射,陰慝萌作。柯葭載牧,泥塗不白。
困の卦が革の卦に変わる。申、酉の位に到りて谷物穂を射りて成熟して、陰邪の気も亦た萌動を開始せり。蘆葦を砍下して載せて去りて放牧するに、泥涂に沾りて便ち再び洗い白くする能わず。此れ吉の中凶を伏するの象、収成の際邪気暗に生じて、清白の身沾染を受け易し、宜しく交わりを擇ぶを慎むべし。
鼎:踝踵足傷,右指病瘍。失旅後時,利走不來。
困の卦が鼎の卦に変わる。脚踝と脚跟倶に傷を受けて、右手の指头又た瘡を生じて潰爛せり。同伴を跟丢して時辰を誤りて、利益溜走して再び回來らず。此れ足を傷え時を失うの象、身妨礙有れば便ち行動遲誤して、求むる所終に落空に帰す。
震:四足俱走,駑疲在後。戰既不勝,敗於東野。
困の卦が震の卦に変わる。四条の腿一斉に奔跑して、駑劣疲弱の者最も後に落ちり。交戦既に勝を取る能わざれば、便ち東郊の原野に敗れり。此れ力弱くして北に敗るの象、才力足らずして強いて人と相争えば、必ず潰敗に至らん。
艮:塗行破車,丑女無媒。莫適為耦,孤困獨居。
困の卦が艮の卦に変わる。泥路の上を行走して車を弄壞して、貌醜の女子媒人上門するなし。相配の伴侶を尋ね得ずして、孤单困頓として独り活を過ごせり。此れ偶なく孤処の象、婚姻を問い同伴を問う倶に心に遂わず。
漸:搏髀大笑,不知憂懼。開立大路,為主所召。
困の卦が漸の卦に変わる。大腿を拍きて声を放って大笑して、全く憂愁畏懼を知らず。開辟建立して康荘の大道を成して、因って主上に召見任用せられり。此れ坦蕩して用を得るの象、胸懐開闊の者は反って賞識を得て征召を獲ん。
歸妹:伯圭東行,與利相逢。出既遭昧,孰不相知,憂不成凶。
困の卦が帰妹の卦に変わる。伯圭東に出行して、正に利益と相逢せり。門を出づる時昏暗不明の处境に遇上すると雖も、誰か又た彼此相知するに非ざらん。憂愁終に凶禍を釀成するに至らず。此れ憂にして害なきの象、出行小阻有ると雖も、人相識を得れば便ち安んず。
豐:東行賊家,鄭伯失辭。國無貞良,居受其殃。
困の卦が豊の卦に変わる。東に行走して人家を殘害して、鄭伯此れによって應對の辞令を失せり。国中堅貞良善の臣なくして、其の間に居処する人倶に禍殃を遭受せん。此れ辞を失し賢を失うの象、国正人なければ則ち上下同じく其の害を受けん。
旅:前屈後曲,形體飭急。絞黑大索,困於清室。
困の卦が旅の卦に変わる。前彎曲し後も亦た蜷曲して、身形梱束せられて緊迫難受なり。黒色の大繩を絞りて身を縛められて、牢獄の中に囚困せられり。此れ身縲紲に陷るの象、官非を問い出行を問う倶に凶なり、宜しく訟を避け禍を免るべし。
巽:鼓腋大喜,行婚飲酒。嘉彼諸姜,樂我皇考。
困の卦が巽の卦に変わる。掌を鼓し手を拍ちて大いに歓喜して、婚礼を舉行して酒を飲んで慶賀す。彼の姜姓の女子を贊美して、我が先父在天の靈をも歓楽せしむ。此れ婚慶して宗を光るの象、嫁娶、祭祀、宴飲倶に吉慶なり。
兌:國將有事,狐嘈向城。三日悲鳴,邑主大驚。
困の卦が兌の卦に変わる。国家變故有らんとして、狐狸城池に對して鳴叫喧鬧す。接連三天悲鳴止まずして、城邑の主大いに驚駭せり。此れ妖異警を示すの象、怪兆先に見れば則ち變故之に随わん、宜しく及早に防備すべし。
渙:明德克敏,重華貢舉。放勳徵用,公哲蒙佑。
困の卦が渙の卦に変わる。徳行光明にして又た事に任ずるに敏にして、重華と号する虞舜此れによって挙薦せられて上れり。放勛と号する唐堯征召して彼を任用して、公正明哲の人庇佑を蒙受せり。此れ賢を挙げ能を任ずるの象、徳才兼備の者は必ず薦抜を獲ん。
節:秋隼冬翔,數被嚴霜。甲兵充庭,萬物不生。雄父夜鳴,民大擾驚。
困の卦が節の卦に変わる。秋天の鷹隼冬天に到りても還た盤旋して、屢々嚴霜の摧折を遭受せり。甲冑兵器庭院に堆満して、万物生長するに従なし。雄鶏夜の裏に啼叫して、百姓大いに驚擾せり。此れ兵凶災異の象、兵禍と怪徵并び見えて、民聊生せず。
中孚:絲紵布帛,人所衣服。摻摻女手,紡績善織,南國饒足,取之有息。
困の卦が中孚の卦に変わる。絲、麻、布、帛は、是れ人衣裳を做るに用うる所なり。《詩経・魏風》の詠ずる纎纎女子の一双の手は、紡紗績麻して織造を善くせり。南方の国此れによって豊饒富足して、取用して還た余息有り。此れ織を勤めて富を致すの象、女工、紡織、経営倶に增益有り。
小過:鳳有十子,同巢共母。仁聖在位,歡以相保,興彼周魯。
困の卦が小過の卦に変わる。鳳凰十個の孩子を生じて、一巢に同住して一母を共侍せり。仁厚聖明の人位に在りて、歓歓喜喜として彼此保全して、周、魯のごとき邦国を興盛せしむ。此れ同心して族を保つの象、家族和睦して上仁主有れば、興旺を致す可し。
既濟:雄雞不晨,雌雞且伸。志庇心離,三旅出哀。
困の卦が既済の卦に変わる。公鶏暁を報ずるを司らずして、母鶏反って頸を引きて鳴くは、正に是れ《尚書・牧誓》の戒める所の事なり。心志各々遮蔽して彼此離散して、三軍出征して只だ一片の哀声を落得せり。此れ陰陽倒置の象、主弱く婦専にして上下心を離れば、事を挙げれば必ず敗れん。
未濟:光祀春成,陳寶雞鳴。陽鳥失道,不能自守,消亡無咎。(舉事不成,自取凶咎。)
困の卦が未済の卦に変わる。祭祀を光大して春天に礼を成するは、《史記・封禅書》の載する所の陳宝の神の降臨する時雄鶏の長鳴するが若し。南飛の陽鳥道路を迷失して、自身を守住する能わずして、消散亡去すると雖も罪咎と算うに足らず。旧注に此の象事を挙げて成らず、自ら凶咎を取ると謂う。此れ祭は吉にして行は凶の象、祀を守れば則ち安んじ、妄動すれば則ち敗れん。
井の林(井卦六十四林)
井:躓跛未起,失利後市,不得鹿子。
井の卦が自ら変じても井の卦のままである。跌倒して跛足して還た起きる能わずして、赶集遲くして行情を錯失し、一隻の小鹿を連ねても獵着せず。此れ起步して挫を受くるの象、行動遲滯すれば則ち利他の人に帰し、求むる所空手にして返る。
乾:左輔右弼,金玉滿堂。常盈不亡,富如廒倉。
井の卦が乾の卦に変わる。左右倶に輔佐の臣有りて、金玉厅堂に堆满せり。長久盈满にして虧損せずして、富足して装满の粮仓の如し。此れ助を得て富を致すの象、賢輔有れば則ち家国倶に豊にして、成を守れば久しき可し。
坤:雨師娶婦,黃岩季女。成禮既婚,相呼南上。膏澤下土,年歲大喜。
井の卦が坤の卦に変わる。雨師妻を娶るは、黄岩の人家の小女兒を迎えたり。礼成婚を完しての後、相互に招呼して南に向かいて上れり。甘霖下方の土地を潤沢して、此の年大いに喜慶有り。此れ婚成りて雨を得るの象、嫁娶と農事倶に吉にして、豊年に逢うを主とす。
屯:螟蟲為賊,害我嘉榖。中留空虛,家無所食。
井の卦が屯の卦に変わる。螟虫害を成して、我が好い庄稼を糟蹋せり。穂心空殻のみ留めて、家の裏吃る可き粮食なし。此れ虫蠹稼を傷めるの象、暗中侵蝕する者は家計をして空乏せしむ、宜しく内耗を察すべし。
蒙:跛躄難步,道不及舍。露宿澤陂,亡其襦褲。
井の卦が蒙の卦に変わる。跛脚殘廢して走路し難く、天黒くして還た宿た宿處に趕り到らず。只好く水沢の堤岸の上に露宿して、短衣と褲子を丢失せり。此れ行旅困頓の象、力及ばずして勉强して路に上れば、反って所を失い又た物を失うに致る。
需:大夫祈父,無地不涉。為吾相土,莫如韓樂。可以居止,長安富有。
井の卦が需の卦に変わる。《詩経・小雅》の詠ずる大夫祈父は、何の處も皆な跋涉し盡くせり。我に替えて居る可きの地を察看すれば、《大雅・韓奕》の贊する所の韓国の土より安樂なる莫し。此に於て定居して止息する可く、長久安寧にして富足せり。此れ地を擇びて吉を得るの象、遷居して宅を卜する者は安富を望む可し。
訟:少孤無父,長失慈母。悖悖煢煢,莫與為耦。
井の卦が訟の卦に変わる。年幼にして父を喪して孤兒と成りて、長ずれば又た慈母を失去せり。心緒紛乱、孤单無依にして、己と相伴する人なし。此れ孤苦無依の象、六親縁薄くして、凡そ事只だ自ら立て自ら謀るのみ。
師:側弁醉客,長舌作凶。披髮夜行,迷亂相誤。亡失居處。
井の卦が師の卦に変わる。帽子歪斜の醉客、加うるに《詩経・大雅・瞻卬》の刺す所の口舌を搬弄する人の風を興し凶を作す。頭髪を披散して夜に路を趕りて、迷乱の中彼此相耽誤して、連れて住處も亦た弄失せり。此れ醉乱して迷失の象、酒後言多ければ必ず事を敗り所を失うに致る。
比:馬驚車破,王墜深津。身絕魂去,離其室廬。貞難無虞。
井の卦が比の卦に変わる。馬驚きて車子撞壞して、君王深深の渡口に墜入せり。身死し魂離れて、永遠に己が屋舍を離開せり。唯だ正を守りて難に処れば始めて意外を免る可し。此れ車馬凶禍の象、出行大いに忌み、正を持し謹慎すれば方に虞なからん。
小畜:東行述職,征討不服。侵齊伐陳,御璧為臣。大得意還。
井の卦が小畜の卦に変わる。東に行走して朝覲して職を述べて、肯えて帰服せざる者を征討せり。斉国を侵伐し陳国を討伐すれば、對方玉璧を奉上して俯首して臣と称せり。大いに得意として凱旋して回れり。此れ征伐して捷を奏するの象、師を出し罪を問う者は敵を克ち降を受くるを望む可し。
履:百足俱行,相輔為強。三聖翼事,王室寵光。
井の卦が履の卦に変わる。上百隻の脚一斉に行走して、相互に扶持して因って強健なり。三位の聖人国事を輔翼して、王室此れによって光寵顯耀せり。此れ衆力協同の象、同心して事を共にする者は力強くして榮を得ん。
泰:根本不固,華落葉去,更為孤嫗。
井の卦が泰の卦に変わる。根柢牢固ならずして、花朵凋落し葉子飄去して、轉眼孤零零の老婦と成れり。此れ根本動搖の象、基業固からざれば則ち榮華速やかに謝りて、終に孤寂に帰す。
否:牧羊稻園,聞虎喧讙。畏懼怵惕,終無禍焉。
井の卦が否の卦に変わる。稻田園圃の裏に羊を放せば、老虎の喧叫声を聞る。心中害怕戒懼するも、終に禍事発生せず。此れ虚驚して害なきの象、驚に遇いて能く戒慎する者は以て安然として度過する可し。
同人:履位乘勢,靡有絕弊。為隸所圖,與眾庶伍。
井の卦が同人の卦に変わる。位置を占め勢を乘じて、從來弊病を断絶せず。結果奴仆に算計せられて、淪落して平民百姓と伍を為すに至れり。此れ勢を恃みて位を失うの象、位に居りて弊政を革めざる者は終に傾覆に遭わん。
大有:大輿多塵,小人傷賢。皇甫司徒,使君失家。
井の卦が大有の卦に変わる。大車過ぐる處多くの塵土を揚起して、小人因って賢良を傷害せり。《詩経・小雅・十月之交》の刺す所の皇父、司徒のごとき權臣道に当たりて、君主をして家国を失掉せしめり。此れ小人賢を蔽うの象、權奸事を用ゐれば則ち家国保を保たず。
謙:安如泰山,福祿屢臻。雖有狼虎,不能危身。
井の卦が謙の卦に変わる。安穩にして泰山の如くして、福気と禄位屢々到來せり。縦い豺狼猛虎有るも、自身に危害する能わず。此れ穩固して危なきの象、謙を守り重を持する者は百邪侵せず、大吉である。
豫:同氣異門,各別東西。南與凶遇,北傷其孫。
井の卦が豫の卦に変わる。本より同気連枝なれど分かれて不同の門戸に属して、各々東に向西に向かいて離散せり。南に往けば凶险に遇い、北に往けば又た子孫を傷せり。此れ親族離散の象、四方倶に利あらず、宜しく本を守りて遷らざるべし。
隨:蜺見不祥,禍起我鄉。行人畏懼,使命不通。
井の卦が随の卦に変わる。虹霓出現するは本より不祥の兆にして、禍事便ち我が郷里より生出せり。路を趕る人心に畏懼を存して、使者の音信も亦た通達する能わず。此れ凶兆行を阻むの象、使を出を出づ、遠行、通信倶に阻滯を受く。
蠱:養虎畜狼,還自賊傷。無事招福,自取災殃。
井の卦が蠱の卦に変わる。老虎を養い豺狼を蓄えて、反って自己を傷害せり。本より事なきに硬に福を招かんと欲して、結果自ら災殃を取れり。此れ患を養いて自ら害するの象、凶徒を姑息し非分を妄求する者は必ず其の禍を受けん。
臨:順風吹火,幸附驥尾。易為功力,因權受福。
井の卦が臨の卦に変わる。風勢に順いて火を吹きて、又た幸いに駿馬の尾巴の上に附せり。力を出すこと易くして功を收むる却って大なり、権勢に憑借して福気を領受せり。此れ力を借りて事を成すの象、善く時勢に依附する者は事半にして功倍す。
觀:五嶽四瀆,沾濡為德。行不失理,民賴恩福。
井の卦が観の卦に変わる。五岳と四瀆万物を滋潤するは、此れ便ち其の徳なり。事を行いて事理を失わざれば、百姓便ち皆な此の恩沢福気を仰賴せり。此れ徳沢下に済の象、政を為すに理に循る者は深く民心を得ん。
噬嗑:延陵聰敏,聽樂太史。雞鳴大國,姜氏受福。
井の卦が噬嗑の卦に変わる。延陵季子聰明敏悟にして、太史に向かい周楽を観せんことを請いて列国の興衰を尽く知れり。又た《詩経・齊風・雞鳴》の詠ずる大国の賢妃の夫を催して早く起こしむるが如くして、姜氏因って福を受けり。此れ音を知りて福を得るの象、事理を明察し内助賢明の者は家国倶に吉なり。
賁:神鳥五氣,鳳凰為主。集於王國,使君得所。
井の卦が賁の卦に変わる。神鳥五方の気を禀受して、鳳凰を以て其等の首領と為せり。王者の国に群集して、君主をして各々其の所を得しむ。此れ祥瑞歸聚の象、衆賢來附して、位に居る者は安穩にして尊顯なり。
剝:媒妁無明,雖期不行。齊女長子,亂我紀綱。
井の卦が剥の卦に変わる。媒人事を办するに不明不白にして、日期を約定するも亦た行を成す能わず。斉国の女子と長子の糾葛は、我が綱紀を擾乱せり。此れ婚事成らず、綱常乱を受くるの象、約を締し嫁娶する倶に宜しく愼重すべし。
復:明月作書,大人失居。眾星宵亂,不知所據。
井の卦が復の卦に変わる。明月文書のごとき光亮を発すれど、大人却って居所を失去せり。衆星夜の裏に散乱無序にして、何に依憑すべきかを知らず。此れ所を失し依なきの象、上其の位を失えば則ち下守る所なし、宜しく静観して以て安定を待つべし。
旡妄:少康興起,誅澆復祖。微滅復明,宮祀大禹。
井の卦が旡妄の卦に変わる。夏少康振興して起こりて、澆を誅滅して、祖先の基業を恢復せり。衰微湮滅より重新に光明して、宗廟の裏に於て大禹を祭祀せり。此れ中興して業を復するの象、衰えて能く起つる者は、位を失せし者は復た得るを望む可し。
大畜:千門萬戶,大福所處。黃屋左纛,龍德獨右。
井の卦が大畜の卦に変わる。千門万戸の巍峨の宮室は、正に是れ大福の在る所の処なり。黄繒を以て蓋と為し左に旄尾の大旗を挿すは、彼は是れ天子車駕の儀制にして、龍のごとき徳行独り尊位に居れり。此れ貴の極の象、位を求め名を求むる者は顕要に登臨するを望む可し。
頤:乾作聖男,坤為智女。配合成就,長住樂所。
井の卦が頤の卦に変わる。乾道聖明の男子を生成し、坤道智慧の女子を生成せり。両相配して美满を成就して、長久安住して歓楽の處所に在り。此れ陰陽配を得るの象、婚姻と合作倶に成りて、家宅長く安んず。
大過:羿張烏號,彀射驚狼。鐘鼓夜鳴,將軍壯心。趙國雄勇,鬥死滎陽。
井の卦が大過の卦に変わる。后羿「烏号」と号する良弓を張開して、弦を拉満して驚きたる狼に向かいて射れり。鍾鼓夜の裏に鳴響して、將軍豪情懐を満てり。趙地の勇士雄壮にして、終に力戦して滎陽に死せり。此れ勇戦して身を殞ずるの象、威名有ると雖も終に凶を免れず、慎みて軽く戰端を啓する勿れ。
坎:炙魚銅斗,張伺夜鼠。不忍香味,機發為祟。祟在頭頸。筰不得去。
井の卦が坎の卦に変わる。銅斗を以て魚を烤きて、機関を張設して夜裏の老鼠を守候せり。老鼠彼の香味に忍ぐ能わずして凑り前に來れば、機関一たび發すれば便ち禍祟と成れり。禍祟正に頭頸の上に落ちて、竹索に捆住せられて身を脱する能わず。此れ餌を貪りて彀に入るの象、小利を貪図する者は必ず羅網に陷る、宜しく欲念を克制すべし。
離:高飛不視,貪饕所在。臭腐為患,自害其身。(一作竊位貪榮,內汙外清。時時暫過,日日禍生。)
井の卦が離の卦に変わる。高々飛翔するも脚下を看て清らかにせずして、全く貪婪の心の致す所なり。腐臭の物を争食して禍患を釀成して、反って自己を害せり。此れ貪求して自ら戕うの象、利を逐うて危を忘るる者は終に自ら其の害を取らん。別の一本に「位を竊み榮を貪りて、内汚れて外清く、時時暫く過ぎて、日日禍を生ず」と作る、取る義相近し。
咸:鉛刀攻玉,堅不可得。盡我觔力,胝胼為疾。
井の卦が咸の卦に変わる。鉛鑄の鈍刀を拿りて玉を琢れば、玉太だ堅硬にして始終琢り動かず。我が筋骨の気力を用い尽くして、手脚老繭を磨出して病痛と成れり。此れ器事に称わざるの象、才具足らずして強いて重き事を任ずれば、徒労して又た損を受く。
恆:方喙宣口,聖智仁厚。解釋倒懸,歷國安泰。
井の卦が恒の卦に変わる。方正の口舌、宣暢の言辞して、其の人聖明睿智にして仁徳淳厚なり。倒懸のごとき危困を解く能くして、經歷する所の邦国倶に安泰を得たり。此れ賢者難を濟すの象、明智仁厚の人に遇えば則ち危局解く可し。
遯:踟躕南北,誤入喪國。社季利兵,傷我心腹。
井の卦が遯の卦に変わる。南北の間に猶豫徘徊して、誤って將亡の国に入れり。社季の一輩兵器を磨利して、我が心腹の人を傷せり。此れ遲疑して険に入るの象、進退決せざれば便ち誤りて凶地に陷る、尤も須らく近侍の変を生ずるを防ぐべし。
大壯:公孫之政,惠而不煩。喬子相國,終身無患。
井の卦が大壮の卦に変わる。公孫氏政を施して、民に惠を施して百姓を煩擾せず。喬子国相を做して、終身禍患なし。此れ寛政して安を得るの象、政を為すに簡惠の者は身安んじて位固し。
晉:弧矢大張,道絕不通。小人寇賊,君子塞壅。
井の卦が晋の卦に変わる。弓箭大張して劍抜き弩張して、道路断絶不通なり。小人盗寇を做起して、君子壅塞せられて進用を得ず。此れ兵乱して賢を塞ぐの象、世乱るれば則ち正人阻まるを受く、宜しく隱忍して難を避くべし。
明夷:藏戟之室,封豕受福。充澤肥腯,子孫蕃息。
井の卦が明夷の卦に変わる。戈戟を收藏する庫室の裏に、大猪反って福気を得着せり。水草豊沛にして膘肥体壮にして、子孫繁衍生息せり。此れ禍の中養を得るの象、険地に処ると雖も反って繁息を獲て、家口蕃盛を主とす。
家人:八子同巢,心勞相思,雉苦無憂。
井の卦が家人の卦に変わる。八隻の雛鳥一巢に同住して、母鳥心力操労して彼此相思念せり。野雉辛苦なりと雖も、憂患有るに至らず。此れ劬勞して子を育るの象、家中労碌なりと雖も大憂なく、子女終に成全を得ん。
睽:循理舉手,典求相予。六休相磨,終無殃咎。
井の卦が睽の卦に変わる。事理に依循して而して後に手を動かして、典章を按じて求取し彼此給与せり。六方の和美の気相互に切磨して、終に災殃過咎なし。此れ理に循りて咎なきの象、凡そ事規矩に依りて行えば便ち平安を得ん。
蹇:公子王孫,把彈攝丸。發輒有獲,室家饒足。
井の卦が蹇の卦に変わる。公子と王孫の等は、手に彈弓を持して彈丸を挾えり。一發すれば便ち獵獲有りて、家室此れによって豊饒富足せり。此れ發すれば必ず得有るの象、求取、獵獲、経営倶に心に称い豊なり。
解:井渚有悔,渴蜺為怪。不亟徙鄉,家受其殃。
井の卦が解の卦に変わる。井辺の水洲悔咎の兆を出現して、虹霓首を垂れて水を吸いて怪異と成れり。若し趕緊に別郷に遷往せざれば、家の裏便ち禍殃を遭受せん。此れ凶兆遷を促すの象、異を見て避けざる者は必ず其の害を受く、宜しく従速に離開すべし。
損:鄭澮有聲,國亂失傾。弘明早見,止樂不能。
井の卦が損の卦に変わる。鄭国の澮水異声を発して、国家動乱して傾覆失守せり。見識宏通、明察早悟の人有ると雖も、彼の淫楽を制止せんと想うも办する能わず。此れ知りて能く救わざるの象、衰乱の勢已に成りて、独り醒めし者も亦た天に回らんとすること難し。
益:穿室鑿牆,不直生訟。褰衣涉河,雖勢無功。
井の卦が益の卦に変わる。房屋を穿破し牆壁を凿透して、理直ならずして争訟を生出せり。衣裳を提起して河を渉り過ぐるも、気勢有ると雖も功なくして返る。此れ強行して理なきの象、正道に循わざる者は争えば必ず敗れ行えば必ず空し。
夬:胎卵胞乳,長大成就。君子萬年,動有利得。
井の卦が夬の卦に変わる。胎生の、卵生のは、倶に胞の中に於て乳養して、漸漸長大成材せり。君子福を享くること万年にして、一挙一動倶に獲益有り。此れ孳育して成就の象、培養、経営、事を挙ぐる倶に実利有り。
姤:五心乖離,各引是非。莫適為主,道路塞壅。
井の卦が姤の卦に変わる。五個人心思乖離して、各々是非を拉扯せり。誰も亦た当たりて事を主るの人なくして、道路此れによって壅塞不通せり。此れ衆議主なきの象、人多くして心を同じくせざれば則ち事事阻滯せん、宜しく先ず主従を定下すべし。
萃:百柱載梁,千歲不僵。大願輔福,文武以昌。
井の卦が萃の卦に変わる。上百根の柱子大梁を承托して、千年も亦た倒塌せず。宏大の心願福気の相輔有りて、文治と武功此れによって昌盛せり。此れ根基穩固の象、衆力支撐する者は基業長久にして、大吉である。
升:營城洛邑,周公所作。世連三十,年曆七百。福佑豐實,堅固不落。(連一作運七一作八)
井の卦が升の卦に変わる。洛邑の城を營建するは、是れ周公の主持する所なり。国祚相承して三十代にして、年数七百年を經歷せり。福佑豊厚充実にして、根基堅固にして衰落せず。此れ国を立てて久遠の象、營建して基を開く者は世代綿延を望む可し。旧本の「連」の字或は「運」と作り、「七」或は「八」と作る。
困:從叔旅行,食於東昌。嘉伯悅喜,與我芝香。
井の卦が困の卦に変わる。叔父に跟りて外に出でて遠行して、東昌に於て飯食を進めり。嘉美の伯氏歓喜して相待して、還た我に芬芳の靈芝を贈れり。此れ出行して友に遇うの象、遠行すれば款待と饋贈を得る可く、吉を主とす。
革:失耳聾蔽,不曉聲味。委以鼎俎,方始亂憒。
井の卦が革の卦に変わる。聴覚を失去して耳聾にして閉塞して、声音と滋味を分辨し出だせず。却って鼎俎烹調の事を彼に托付すれば、一たび手を動かせば便ち乱作一団と為れり。此れ人を用ゐるに当を失うの象、託する其の人に非ざれば則ち事必ず敗壞せん。
鼎:訾娵開門,鶴鳴彈冠。文章進用,舞韶和鸞。三仁翼政,國無災殃。
井の卦が鼎の卦に変わる。美人訾娵門戸を打開して、鶴天に鳴きて同道の人冠上の塵土を弾きて出仕を準備せり。文采有るの士進用を得て、《韶》楽の舞を跳びて鸞鈴の声に和せり。又た《論語》の称する所の微子、箕子、比干のごとき三位の仁人朝政を輔翼して、国家災殃なし。此れ群賢并進の象、仕を求め挙を薦むる倶に大吉なり。
震:游魂六子,百木所起。三男從父,三女從母。至己而足,各得其所。
井の卦が震の卦に変わる。游魂の卦六個の子女を生出して、百樣の樹木此れにより發端するが如し。三個の男卦父卦に跟従し、三個の女卦母卦に跟従せり。自身の此処に到れば便ち圓滿具足して、各々應有の位置を得たり。此れ各々其の分に安んずるの象、尊卑序有れば則ち家道斉整なり。
艮:南山藍蔵,使君媚好。皇女長婦,多孫眾子。
井の卦が艮の卦に変わる。南山の上蓼藍葱郁として蓄藏して、主君をして美好可愛ならしむ。皇家の女子長房の媳婦を做して、孫兒衆多、子嗣繁盛せり。此れ婚貴して子多きの象、嫁娶、嗣を求むる倶に吉慶なり。
漸:黃虹之野,賢君所在。榮段為相,國無災殃。
井の卦が漸の卦に変わる。黄虹顯現の原野は、正に是れ賢明の君主の在る所の処なり。榮氏、段氏国相に出任して、国家災殃なし。此れ祥瑞して賢を得るの象、明主賢相相得して、境内太平せん。
歸妹:穿鑿道路,為君除舍。開闢福門,喜在我鄰。
井の卦が帰妹の卦に変わる。道路を開凿修通して、君主に替えて館舍を打掃せり。福気に通向する門戸を開辟して、喜事便ち我が近隣に在り。此れ路を開きて福を迎えるの象、興修、接引、客を待つ倶に吉利なり。
豐:商風數起,天下昏晦。旱魃為虐,七凡兵作。
井の卦が豊の卦に変わる。秋天の西風屢々刮起して、天下一片昏暗なり。《詩経・大雅・雲漢》の嘆ずる旱魃の肆虐して害を為すが如くして、各處兵事紛紛として興起せり。此れ旱災兵乱の象、年成大いに壞れて干戈四に作る、宜しく乱を避け粮を囤むべし。
旅:自衛反魯,時不我與。冰炭異室,仁道閉塞。
井の卦が旅の卦に変わる。孔子衛国より魯国に返回するも、時運並びに彼を成全せず。氷と炭不同の屋裏に放りて、仁徳の道堵塞不通せり。此れ道行うを得ざるの象、大才有ると雖も時に逢わずして生れり、宜しく退きて己を修めて以て待つべし。
巽:春陽生草,夏長條枝。萬物蕃滋,充實益有。
井の卦が巽の卦に変わる。春天の陽気野草を催生して、夏天條々の枝幹を長出せり。万物繁衍滋長して、充実豊盈にして日に富有せり。此れ時に順いて生長の象、積累して経営する者は漸々豊足せん。
兌:大蛇奔走,奔入茂草。驚於長往,畏懼喙口。
井の卦が兌の卦に変わる。大蛇倉皇として奔走して、茂密の草叢に鑽入せり。驚を受けたる後一去して返らざるは、只だ人家の利嘴口舌を畏懼するが為なり。此れ驚を受けて匿を避るの象、謗に遭い危に遇う者は宜しく隱伏して自ら蔵し、強いて頭を出づる可からず。
渙:明月照夜,使暗為晝。國有仁賢,君尊於故。
井の卦が渙の卦に変わる。明月夜空を照亮して、黑暗をして白昼の如からしむ。国中仁徳賢能の士有りて、君主従前より更加に尊崇せり。此れ賢を得て光を增すの象、賢を用うる者は威望日に隆る。
節:避地東走,反入虎口。制於爪牙,骨於灰土。
井の卦が節の卦に変わる。難を避けんと為めて東に逃走するも、反って虎口の中に送り入れり。爪牙に制伏せられて、尸骨灰土と化作せり。此れ禍を避けて険に入るの象、逃避して其の法を得ざる者は反って自ら死地に投ず、宜しく去向を擇ぶを慎むべし。
中孚:傾迭不行,弱走善僵。孟縶無良,失其寵光。
井の卦が中孚の卦に変わる。傾倒跌撞して走り動く能わずして、腿脚孱弱して一たび走れば便ち仆倒す。衛国の公孟縶自ら其の身を善くする能わずして、原有の寵幸榮光を失掉せり。此れ足弱くして寵を失うの象、身缺陷有りて、事を行い振わざる者は其の位を保つこと難し。
小過:十年俱見,黃頭為首。歲尾民安,國樂無咎。
井の卦が小過の卦に変わる。十年の間倶に見る能くして、黄頭の人を以て首領と為せり。年末に到りて百姓安定して、国中歓楽にして過錯なし。此れ長治久安の象、賢者久しく其の位に在れば、境内安楽せん。
既濟:望風入門,來到我鄰,鋪吾養均。
井の卦が既済の卦に変わる。風を聞き名を慕いて門に登りて、一直に我が近隣に來れり。供養を鋪陳して、一概に均平を以て相待せり。此れ名を聞きて來附の象、声名遠く播れれば則ち賓客門に盈ちん、宜しく公平を以て之を待すべし。
未濟:登高連返,視失彌遠。虎口不張,害賊消亡。
井の卦が未済の卦に変わる。高處に登上して又た接連して折返して、望むること遠ければ反って愈々方向を迷失せり。所幸老虎の嘴巴未だ張開せずして、害を為すの賊寇消散滅亡せり。此れ険にして發せざるの象、隱憂有ると雖も終に化解に帰し、以て安心する可し。
革の林(革卦六十四林)
革:馬眼長股,宜行善市。皆蒙福佑,獲金三倍。
革の卦が自ら変じても革の卦のままである。馬の眼睛明亮、腿脚修長にして、路を趕るに宜しく、又た交易を善くす。人人倶に福佑を蒙受して、獲取する金銭三倍に增至せり。此れ商を行いて大いに利有るの象、出行して貿易する者は利獲豊厚なり。
乾:高原峻山,址大少泉。草木林麓,喜得所蓄。
革の卦が乾の卦に変わる。高高の原野と険峻の山峰は、地基広大にして泉水稀少なり。草木林を成し山麓葱郁として、蓄積する所の物を欣喜して得たり。此れ地厚くして積有るの象、資源均ならずと雖も終に獲所有り。
坤:一門二關,結弭不便。峻道異路,日暮不到。
革の卦が坤の卦に変わる。一道の門却って两重の關卡を設けて、繫結と解開倶に方便ならず。山路険峻にして又た岔道紛歧して、天黒くしても亦た走り到らず。此れ重重阻隔の象、事関節多ければ則ち遲滯して成ること難し、宜しく及早に籌劃すべし。
屯:憂患解除,喜至慶來。坐立歡門,與樂為鄰。
革の卦が屯の卦に変わる。憂愁と禍患倶に已に解除して、喜事到來して慶典之に随えり。坐るも立つも倶に歓楽の門の内に在りて、快楽と近隣を結成せり。此れ憂散じて喜臨むの象、久しく困る者は吉に轉じ、諸事順遂なり。
蒙:疏類異路,心不相慕。牝牛牡豭,鰥無室家。
革の卦が蒙の卦に変わる。種類疎遠、道路各異にして、彼此心の裏並びに傾慕せず。母牛公猪に配すれど、終に配偶を成す能わずして、只だ鰥居して家室なし。此れ相匹配らざるの象、勉强して結合する者は成ることなく、婚事諧せず。
需:太王為父,王季孝友。文武聖明,仁政興起。旦隆四國,載福綏厚。
革の卦が需の卦に変わる。太王古公亶父父親を作して、王季孝順友愛せり。文王、武王聖明睿智にして、仁政此れにより興起せり。周公旦四方の国をして隆盛せしめて、福気を承載して深厚を安撫せり。此れ世徳相承の象、家風相継ぐ者は福沢綿遠にして、大吉である。
訟:臨河求鯉,燕婉笑弭。屏氣攝息,不得鯉子。
革の卦が訟の卦に変わる。河辺に來りて鯉魚を求得せんと想うて、安閑和順にして笑みを含みて守候す。呼吸を屏いて気を收敛して静かに待つも、終に鯉魚を釣上する能わず。此れ守候して落空の象、心を尽くし力を尽くすと雖も求むる所遂わず。
師:買利求福,莫如南國。仁德所在,金玉為寶。
革の卦が師の卦に変わる。利益を謀取し福気を求むるには、南方の国より合適なる莫し。彼処は正に是れ仁徳の在る所の処にして、金玉自然に珍宝と成れり。此れ南行して利を得るの象、仁厚の地に往きて経営する者は必ず厚獲有らん。
比:白虎赤憤,門觀王庭。宮闕被甲,大小出征。天下煩憒,育不能嬰。
革の卦が比の卦に変わる。白虎星現れて赤気憤張して、兵象直に宮門と王庭に逼れり。宮闕の内人皆な甲を披きて、大小の官員一同に出征せり。天下煩擾昏乱して、婦人生養しても亦た嬰兒を撫育するに顧みず。此れ兵禍地に遍きの象、国事を問い生育を問う倶に大凶なり。
小畜:子車針虎,善人危殆。黃鳥悲鳴,傷國無輔。
革の卦が小畜の卦に変わる。子車氏の針虎等の三位の良臣秦穆公の為に殉葬を迫られて、善良の人危殆に陷れり。《詩経・秦風・黄鳥》之が為に悲鳴して、国家従是輔弼を失うを痛惜せり。此れ賢良を戕害するの象、善人保たれざれば則ち邦国依恃する所なし。
履:兩目失明,入暮無光。脛足跛步,不可以行。頓於丘傍。
革の卦が履の卦に変わる。两只の眼睛失明して、一たび傍晚に到れば更に漆黑にして光なし。小腿と脚倶に跛れて、行くに法なし。只好く土丘の旁に困頓して停むるのみ。此れ目盲き足廢の象、行動全く憑借なく、出行し事を謀る倶に窒碍して通ぜず。
泰:羅網四張,鳥無所翔。征伐困極,飢窮不食。(窮一作寒)
革の卦が泰の卦に変わる。羅網四面張開して、鳥兒飛ぶ處なし。征戰討伐して困頓して極に至りて、飢餓窮乏にして吃る可き飯なし。此れ四面受困の象、兵役繁重なれば則ち民生路なし、宜しく難を避けて安を求むべし。旧本の「窮」の字或は「寒」と作る。
否:伯夷叔齊,貞廉之師。以德防患,憂禍不存。(歸妹之臨,泰之乾,比之剝)
革の卦が否の卦に変わる。伯夷と叔齊は、是れ堅貞廉潔の表率なり。徳行を以て禍患を防範して、憂愁と災禍倶に存留せず。此れ廉を守りて禍を免るるの象、正を持して自ら守る者は百患侵せず。此の条「帰妹之臨」「泰之乾」「比之剥」の諸林と文同じ。
同人:疾貧望幸,使伯行販。開牢擇羊,多得大牂。
革の卦が同人の卦に変わる。貧病に苦しみて時の來り運の轉ずるを盼て、便ち伯氏を派して外に出でて貨を販らしむ。羊圏を打開して挑選せば、果して肥壮の母羊の「牂」を多く得たり。此れ貧極まりて豊に轉ずるの象、外に出でて経営し、貨物を擇取すれば必ず厚利有らん。
大有:南山之楊,其葉將將。嘉樂君子,為國寵光。
革の卦が大有の卦に変わる。南山の上の白楊は、葉子茂盛にして鏗然として響を作せり。歓楽嘉美の君子は、国家の榮寵光輝と成れり。此れ賢者顯達の象、君子位に在れば則ち邦国光を增ず、名を求むる者吉なり。
謙:東壁餘光,數暗不明。主母嫉妒,亂我事業。
革の卦が謙の卦に変わる。文章を主る東壁星微光のみ残りて、屢々昏暗にして明亮せず。主母心に嫉妬を懐きて、我が事業を攪乱せり。此れ内嫉して事を敗るの象、文運振わずして又た内訌に遭えば、事を謀れば阻まり多し。
豫:迷行晨夜,道多湛露。沾濡襦褲,重不可步。
革の卦が豫の卦に変わる。早晚路に迷いて乱れ走りて、路上《詩経・小雅・湛露》の詠ずる濃重の露水に満てり。短衣と褲子倶に浸湿せられて、沉重にして歩を邁開する能わず。此れ湿滯して行き難きの象、負累身に纏えば便ち歩を挙げて維艱なり、宜しく乾爽を待ちて再び動くべし。
隨:目足動,嘉喜有頃,舉家蒙寵。
革の卦が随の卦に変わる。眼睛と脚一斉に動作し起して、美好の喜事頃刻に便ち到れり。全家倶に恩寵を蒙受せり。此れ動きて喜を得るの象、機縁驟然として至れば、家を挙げて同じく福沢に沾せん。
蠱:鷹鷂欲食,雉兔困急。延頸見尾,為我所賊。
革の卦が蠱の卦に変わる。鷹と鷂正に食を覓らんと想うに、野雉と兎子逼られて走投するに路なし。脖子を伸長して又た尾巴を露出して、反って我に捉えられて殘害せられり。此れ逼極まりて形を現るの象、獵取する者は手を得て逐わるる者は害を受く、求取を問えば則ち吉、自身を問えば則ち凶なり。
臨:鼻移在項,枯葉傷生。下枯上榮,家擾不寧。失其金城。
革の卦が臨の卦に変わる。鼻子頚脖の上に移りて、枯葉生機を妨害せり。下面枯槁にして上面繁榮して、家中擾攘して安寧を得ずして、堅固の城池を連ねても守住する能わず。此れ上下顛倒の象、本末序を失えば則ち家国倶に危し。
觀:飛不遠去,汝為內傷。祿養未富,終無災咎。君善安止。
革の卦が観の卦に変わる。遠く飛ぶ能わざるは、只だ汝の内裏傷有るに因れり。俸禄供養未だ富裕と算うに足らずと雖も、終に災禍過錯なし。君子善く安然として止息せり。此れ力弱くして分を守るの象、顯達せざると雖も能く平安を保つ。
噬嗑:倒基敗筥,重舌作凶。被髮長夜,迷亂相誤。深亡吉居。
革の卦が噬嗑の卦に変わる。地基傾倒、竹筥破敗して、口舌を搬弄する人風を興し凶を作せり。頭髪を披散して長夜の裏に行走して、迷乱の間彼此相耽誤して、深深と吉利の居所を失掉せり。此れ讒乱して所を失うの象、家基動揺し、言語禍を招く、宜しく口を慎み宅を守るべし。
賁:亥午相錯,敗亂緒業。民不得作。
革の卦が賁の卦に変わる。亥と午の両個の地支相互に錯雑沖犯して、先人の緒業を敗壞擾乱せり。百姓安心して労作するに法なし。此れ時位相冲の象、頭緒紊乱なれば則ち事業中輟せん、宜しく時を擇びて而して後に動くべし。
剝:野麋畏人,俱入山谷。命短不長,為虎所得。死於牙腹。
革の卦が剥の卦に変わる。野麋人を怕れて躲避して、一斉に山谷に鑽入す。無奈命数短促にして、老虎に捉えられて、虎口の中に死せり。此れ害を避けて険に入るの象、趨避して當を失する者は災殃を免れ難し、宜しく審察して而して後に動くべし。
復:秋冬探巢,不得鵲雛。御指北去,愧我少姬。
革の卦が復の卦に変わる。秋冬の時節鳥巢を掏るも、却って喜鵲の雛兒を尋ね得ず。車を駕して北方に指向して往きて、我が彼の年少の姬姓の女子に愧いり。此れ徒労して約に負うの象、求取落空して又た人に信を失し、愧悔して安ならざるを主とす。
旡妄:雙鳧俱飛,欲歸稻池。經涉雚澤,為矢所射。傷我胸臆。(屯履咸同)
革の卦が旡妄の卦に変わる。一対の野鴨一同に飛翔して、長稻の池塘に回らんと想う。途中蘆葦叢生の水沢を經過して、箭に射中せられて、我が胸膛を傷せしめり。此れ途に帰りて害に遇うの象、返程の中暗に危機を蔵し、須らく明槍暗箭を防ぐべし。此の条「屯」「履」「咸」の諸本卦の属する林と文同じ。
大畜:天門開闢,宇戶寥廓。桎梏解脫,拘囚縱釋。(小畜之泰,蹇之謙)
革の卦が大畜の卦に変わる。天門大いに開きて、屋宇門戸空闊敞亮なり。手銬脚鐐解開脱落して、拘囚せられたる人釋放を獲得せり。此れ厄を解きて脱を得るの象、訟獄と羈絆倶に解除する可く、大吉である。此の条「小畜之泰」「蹇之謙」と文同じ。
頤:尼父孔丘,善釣鯉魚。羅網一舉,得獲萬頭。富我家居。
革の卦が頤の卦に変わる。尼父孔丘鯉魚を垂釣するに善し。網羅一たび撒開せば、便ち上万條を捕得せり。我が家業をして此れによって富足せしむ。此れ広く收めて厚く獲るの象、招徠、経営、徒を聚めて業を授くる者は得る所極めて豊なり。
大過:彭生為妖,暴龍作災。盜堯衣裳,聚蹠荷兵。青禽照夜,三旦夷亡。
革の卦が大過の卦に変わる。《左伝》の記する所の殺されたる彭生厲を化して妖を成して、暴戾の龍災禍を興起せり。人唐堯の衣裳を盗穿して聖賢を假冒し、又た盗跖の徒を聚集して兵器を扛起せり。青色の怪鳥夜に光を発して、三個の早晨に過ぎずして便ち夷滅せられり。此れ妖孽據を竊むるの象、名義を假借して乱を作る者は旋ち起こり旋ち滅ぶ。
坎:華言風語,亂相誑誤。終無凶事,安寧如故。(咸之頤)
革の卦が坎の卦に変わる。浮華の言辞、根なきの風言風語は、紛紛擾擾として相互に欺哄耽誤せり。但だ終に凶事なく、一切平常の如く安寧なり。此れ虚驚して実なきの象、謡言擾ると雖も害を為すに足らず、以て安処する可し。此の条「咸之頤」と文同じ。
離:延頸見足,身困名辱。欲隱避仇,為害所滅。
革の卦が離の卦に変わる。脖子を伸長して反って脚を露出して、自身困頓にして名声辱を受けり。本より隱匿して仇家を躲避せんと想うも、却って禍害に滅せられり。此れ隱れんと欲して反って顯るの象、身を蔵すること密ならざる者は終に其の禍に遭わん、宜しく及早に周全の打算すべし。
咸:無足斷跟,居處不安。凶惡為殘,君臣相得。(一作君臣得安,和合於天。保下奠上,大相蒙湛。)
革の卦が咸の卦に変わる。脚なく脚跟を断きて、居処安穩を得ず。凶惡の人肆行して殘害するも、所幸君臣の間還た相得する能し。此れ身危くして上下相保の象、凶险に逢うと雖も、君臣同心なれば尚お支撐する可し。別の一本に「君臣安を得て、天と和合して、下を保ち上を奠めて、大いに相蒙湛せり」と作る、語意更に和吉なり。
恆:三人俱行,北求大牂。孟長病足,借季負糧。柳下之貞,不失驪黃。
革の卦が恒の卦に変わる。三個人一同に路に上りて、北に往きて肥壮の母羊を求取せり。老大脚上病有りて、便ち老三に借重して粮食を背負せしむ。柳下惠のごとき貞正の操守有りて、識見又た九方皐の馬を相して毛色黑黄の表相に拘らざるが如し。此れ同行して相助の象、人を識るに外貌を以てせざる者は求むる所必ず得ん。
遯:退飛見祥,傷敗毀墜。守小失大,功名不遂。
革の卦が遯の卦に変わる。倒退して飛びて凶兆を顯して、損傷敗壞、毀折墜落を招致せり。只だ小處を守住して大局を失して、功名終に成就する能わず。此れ小に因りて大を失うの象、退縮して細を守る者は大事を成すこと難し。
大壯:持心懼怒,善搖數動。不安其處,散渙府藏。利得無有。
革の卦が大壮の卦に変わる。心の裏既に畏懼し又た憤怒して、動すれば便ち搖擺して屢々妄動す。己が位置に安んずる能わずして、府庫の中の積蓄も亦た散失渙尽せり。一点の利益も亦た得ず。此れ心浮いて財を散ずるの象、躁動して定まらざる者は家資を耗尽して終に獲る所なし。
晉:牽尾不前,逆理失臣,怒翔以奔。
革の卦が晋の卦に変わる。尾巴を拉りて肯えて前に向かわずして、事理に違背して臣属を失去せり。彼憤怒して翅を振りて奔逃して去れり。此れ強く牽きて和を失うの象、理に逆いて下を馭る者は衆叛り親離せん。
明夷:祿如周公,建國洛東,父子俱封。
革の卦が明夷の卦に変わる。俸禄周公の如く豊厚にして、洛水以東に封国を建立して、父親と兒子倶に封爵を受けたり。此れ世代封を受くるの象、功高く徳厚き者は一門倶に貴にして、大吉である。
家人:君有八人,信允篤敏,為堯所舉。
革の卦が家人の卦に変わる。君王の手下八位の賢臣有りて、誠信篤実にして又た事に任ずるに敏にして、倶に唐堯に挙抜任用せられり。此れ群賢挙を受くるの象、徳才兼備の者は必ず薦用を獲て、進を求むる者吉なり。
睽:久陰霖雨,泥塗行潦。商人休止,市空無有。
革の卦が睽の卦に変わる。長久陰霾、霪雨停まずして、路上泥濘にして積水横流せり。商販買売を停下して、集市空空として貨物なし。此れ雨阻みて業を廢するの象、出行と経営倶に滞碍を受く、宜しく暫く緩めて晴を待つべし。
蹇:無足斷跟,居處不安。凶惡為殘。(夬之大過)
革の卦が蹇の卦に変わる。脚なく脚跟を断きて、居処安穩を得ず。凶惡の人還た肆行して殘害せり。此れ身殘えて危に処るの象、行止憑なくして外患相逼れば、宜しく静守して自ら保つべし。此の条「夬之大過」と文同じ。
解:馬蹄躓車,婦惡破家。青蠅汙白,恭子離居。
革の卦が解の卦に変わる。馬蹄绊住して車子傾覆して、婦人凶惡にして家業を弄破せり。《詩経・小雅・青蠅》の比する所の讒人潔白を玷汚して、恭子申生此れによって己が居所を離開せり。此れ讒婦家を敗るの象、内惡婦有りて外讒口有れば、家宅安ならんとすること難し。
損:噂噂所言,莫如我垣。歡喜堅固,可以長安。(乾之困,大有之屯。噂噂一作鳴鳴)
革の卦が損の卦に変わる。衆人当面に聚談する彼の些の話は、倶に我が自家の一堵の牆垣の如く可ならず。歓喜にして又た堅固にして、以て長久安寧する可し。此れ己を守りて安を得るの象、浮議を聽かず、本分を固守する者は平安長久なり。此の条「乾之困」「大有之屯」と文同じ、旧本の「噂噂」或は「鳴鳴」と作る。
益:懿公淺愚,不受深謀。無援失國,為狄所滅。
革の卦が益の卦に変わる。衛懿公見識淺薄愚昧にして、深遠の謀劃を採納するを肯ぜず。人來りて援くるなくして国家を丢了して、終に狄人に滅せられり。此れ諫を拒みて国を亡ぼすの象、善言を聽かざる者は衆叛れて身死せん。
夬:騏驥綠耳,章明造父。風伯所獻,襄續厥緒。佐文成伯,為晉元輔。
革の卦が夬の卦に変わる。騏驥と綠耳のごとき良馬は、造父の馭術の名を顯彰せり。風伯の進獻する所の駿馬は、趙襄此の基業を承續せり。晋文公を輔佐して霸業を成就して、晋国の首輔の臣を做れり。此れ技藝に憑りて貴を致すの象、一技の長家を傳へ族を興す可し。
姤:駕車十里,來鮮魴鯉。非其肆居,自今後市。
革の卦が姤の卦に変わる。車を駕して十里の路を走りて、新鮮の魴魚と鯉魚を帶來せり。可なりしも此処は彼の攤を設け店を開くの地に非ずして、従今以後只だ別處に改めて集を趕るのみ。此れ貨市に逢わざるの象、好貨有ると雖も地点宜ならず、宜しく別に去處を擇ぶべし。
萃:求麞嘉鄉,惡地不行。道止中返,復還其床。
革の卦が萃の卦に変わる。美好の郷裏に到りて麞鹿を尋求して、凶惡の地便ち肯えて前往せず。半路の上停下して折返して、重新に己が床榻に回れり。此れ険を知りて返るの象、善を擇び惡を避くる者は獲なしと雖も身平安を得ん。
升:使鳩負裝,醉臥道傍。不知何功,竊我衣囊。(功一作公)
革の卦が升の卦に変わる。斑鳩を派して我に替えて行裝を背負せしむるも、彼却って路の旁に醉倒せり。何者かを知らずして、我が衣袋行囊を偷去せられり。此れ付託其の人に非ずの象、託する所職を失えば則ち財物竊を被る、凡そ事宜しく親力親為すべし。旧本の「功」の字或は「公」と作る。
困:登崑崙,入天門。過糟丘,宿玉泉。問惠觀,見仁君。
革の卦が困の卦に変わる。崑崙山に登上して、天門に進入せり。糟丘を經過して、玉泉に夜宿せり。惠觀の所在を探問して、終に仁徳の君に見ゆるを得たり。此れ高きに登りて貴に遇うの象、遠行して高く挙ぐる者は明主に遇いて大福を得る可し。
井:木為大床,患厭不起。季伯夜行,與善相逢。
革の卦が井の卦に変わる。木頭を用ゐて大床を做りて、病患身を壓して起き身する能わず。季氏と伯氏夜の裏に路を趕りて、却って善縁と相遇せり。此れ病の中助に遇うの象、病に臥して困を受くると雖も、暗中自ずから貴人の相扶有らん。
鼎:烏孫氏女,深目黑丑。嗜慾不同,過時無耦。
革の卦が鼎の卦に変わる。烏孫氏の女子は、眼窩深陷、膚色黝黑にして貌美ならず。彼此嗜好欲求同じからずして、適婚の時を過ぐるも亦た配偶なし。此れ習尚合わざるの象、志趣相異なれば便ち配對を成すこと難く、婚事遷延して諧し難し。
震:子鉏執麟,春秋作經。元聖將終,尼父悲心。(豫之大有)
革の卦が震の卦に変わる。車子鉏商西狩の時麒麟を捕獲して、孔子因って《春秋》の一經を寫成せり。大聖人の生命將に終結せんとして、尼父之が為に悲傷を満懐せり。此れ筆を絶ちて事を終るの象、功業成を告げて時命將に尽きんとす、宜しく及時に大事を了却すべし。此の条「豫之大有」と文同じ。
艮:灼火泉源,釣魴山巔。魚不可得,火不肯燃。(鼎之旅)
革の卦が艮の卦に変わる。泉水の源頭に於て火を點きて、山頂の上に到りて魴魚を釣れり。魚自然に釣着せずして、火も亦た點起す能わず。此れ求むる所を失うの象、方法と處所全然背謬にして、凡そ事必ず成る所なし。此の条「鼎之旅」と文同じ。
漸:天馬五道,炎火久處。往來上下,作文約己。衣枲絲麻,相隨笑歌,凶惡如何。
革の卦が漸の卦に変わる。天馬五方の道路に於て奔行して、炎炎の烈火長く盤踞せり。上下往来奔走の間に、文辞を撰作して自身を約束せり。身に枲麻絲布の衣を穿きて、相随い歌笑して、凶惡又た我を如何せんや。此れ文を修めて自ら守るの象、身を謹み己を約する者は炎威に処ると雖も畏懼する所なし。
歸妹:鴟鴞破斧,沖人危殆。賴旦忠德,轉禍為福。危傾覆立。
革の卦が帰妹の卦に変わる。《詩経・豳風》に《鴟鴞》《破斧》の篇有りて、年幼の成王の处境危殆を写せり。全く周公旦の忠誠徳行に賴りて、始めて禍を轉じて福と為して、傾危の局新たに立穩せり。此れ賢臣危を扶くるの象、危難の際忠良の匡扶有れば便ち復た安なる可し。
豐:牡飛關啟,憂患大解,不為身禍。
革の卦が豊の卦に変わる。門閂飛脱して關卡打開して、憂愁禍患大いに解除して、自身の災禍と為るに至らず。此れ束縛解開の象、久しく困る者は忽ち開釋を得て、凶事之に随いて化消せん。
旅:石門晨門,荷蕢食貧。遁世隱居,竟不逢時。
革の卦が旅の卦に変わる。《論語・憲問》の裏石門を守る晨門人、草筐を擔ぐ荷蕢者は、貧賤粗食に安んず。彼等世を避けて隱居して、終に道を行う可きの時機に遇上せず。此れ才を懐きて隱遁の象、賢者遇わざれば、宜しく貧に安んじ志を守るべし。
巽:兔聚東郭,眾犬俱獵。圍缺不成,無所能獲。
革の卦が巽の卦に変わる。兎子東辺の城郊に聚集して、許多の獵犬一同に追捕せり。包圍圈却って缺口を留めて合攏せずして、結果一の獲もなし。此れ功簣を虧くの象、布置周密ならざれば則ち前功尽く弃さるん。
兌:三羊群走,雉兔驚駭。非所畏懼,自令勞苦。
革の卦が兌の卦に変わる。三隻の羊成群して奔跑して、野雉と兎子驚を受けて慌て乱れり。其の実何の可怕るもなしに、白白と自己をして労苦せしむ。此れ自ら驚き自ら擾るの象、庸人自ら擾る者は徒らに心力を耗す、宜しく鎮定して虚実を辨明すべし。
渙:羽翮病傷,無以為強。宋公德薄,敗於水泓。
革の卦が渙の卦に変わる。翅膀の羽莖傷を受けて、再び強健する能わず。宋襄公徳薄く力弱くして、泓水の一戦に於て敗北せり。此れ力衰えて敗を致すの象、実力足らずして強いて人と勝を争えば必ず挫辱に遭わん。
節:姬姜稚叔,三人偶食。論仁議福,以安王室。
革の卦が節の卦に変わる。姬姓、姜姓と年幼の叔氏は、三人相対して食せり。一同に仁徳を談論し福祚を商議して、以て王室を安定せしむ。此れ同心して共に謀るの象、志同道合の者聚りて議れば家国を安んずる可し。
中孚:精誠所在,神人為輔。德教亡患,彌世長久。三聖仍事,多受福祉。
革の卦が中孚の卦に変わる。精誠の心の在る所、神明と衆人倶に來りて相輔す。徳を以て教を施せば便ち禍患なく、綿延世代長久にして衰えず。三位の聖人相継いで其の事を承擔して、多く福祉を領受せり。此れ至誠神を感ずるの象、誠を以て物に待する者は助を得て福を受けん。
小過:岐周海隅,獨樂不憂。可以避難,全身保財。
革の卦が小過の卦に変わる。岐山周原と海角の一隅に、独り安楽して憂愁なし。此に於て患難を躲避して、身家を保全し財物を守住する可し。此れ地を擇びて乱を避くるの象、隱居して僻遠の者は身財両全せり。
既濟:孤獨特處,莫為依輔,心勞志苦。
革の卦が既済の卦に変わる。孤零零として独り処りて、依靠し輔助すべき人なくして、心力労瘁にして志意困苦せり。此れ孤立無援の象、凡そ事幇手を缺きて、宜しく先ず同道を結交して再び進取を圖るべし。
未濟:顧望登臺,意常欲逃。買辛丑惡,妻不安夫。
革の卦が未済の卦に変わる。頭を回りて張望して高台に登上して、心の裏總に奔逃せんと想えり。買來の物又た辛辣にして又た醜惡にして、妻子も亦た丈夫に安んぜず。此れ心志離散の象、内去意を懐きて家室和せずして、謀る所安定し難し。
鼎の林(鼎卦六十四林)
鼎 積德之君,仁政且溫。伊呂股肱,國富民安。
鼎の卦が自ら変じても鼎の卦のままである。君主世代徳を積みて、仁政を推行して下を待つに寛和温厚にして、又た伊尹、呂尚のごとき賢臣股肱を充てり。伊尹商湯を輔き呂尚周武を佐けて王業を成すは、是れ古來君臣相得の典範なり。上明主有り下良輔有れば、所以国用充裕、百姓安居せり。此の林主として人の相助を得て家国興旺し、事を謀れば成有りて、大吉である。
乾 頃筐卷耳,憂不能傷。心思古人,悲慕失母。
鼎の卦が乾の卦に変わる。淺淺の筐子の裏只だ幾株の卷耳を采得す、語《詩経・周南・卷耳》の「采采卷耳、盈まず頃筐」より出でて、寫す所は心牽挂有りて采摘に心なし。憂思在ると雖も、根本に傷を到らず。只だ先人を追懐して、母親を失うの為に悲慕して平らぎ難し。占問うに主として憂心に在りて身に在らず、親縁缺有り、旧事懐を縈りて、事に於て大害なし。
坤 郄叔賈貸,行祿多悔,利無所得。
鼎の卦が坤の卦に変わる。郄叔外に出でて經商放貸して、一路財禄を求取して、處處悔恨を生出して、本利倶に空を落せり。此れ是れ本を舍て末を逐い、貪求して太過の象。此の林主として經商借貸利あらず、出行して財を謀れば徒労して往返し、宜しく成を守りて妄進する宜ならず。
屯 蹙足跛袵,闢坐不行。棄捐平人,名字無中。
鼎の卦が屯の卦に変わる。脚傷を受けて、路を走れば一瘸一拐して、衣襟足を绊して、只だ一旁に避りて坐して行動する能わず。人既に殘廢なれば、便ち衆人に拋開せられて、名字を連ねても錄用の名册の中に列せず。此の林主として身疾患有りて、進退阻まるを受け、名を求め進を求むる倶に願いを遂げる能わず、凶なり。
蒙 文王四乳,仁愛篤厚。子畜十男,夭折無有。
鼎の卦が蒙の卦に変わる。相傳周文王胸に四乳を生じて、古人以て仁厚の相と為し、《淮南子》便ち此れを以て其の人を愛すること窮まりなきを喻す。彼仁愛篤実にして、十個の兒子を養育して倶に長成大人して、一個も夭折するなし。此の林主として子孫繁盛、家門蕃衍して、兒を育てて災なし、大吉である。
需 容民畜眾,不離其居。
鼎の卦が需の卦に変わる。語《周易・師卦》の大象の「君子以て民を容れ衆を畜う」に本づく。政を為す者寛容して百姓を蓄養せば、人民便ち土に安んじて遷を重んじて、故居を離るるを肯ぜず。此の林主として寛厚にして下を待てば則ち人心歸附して、居處安穩にして、遷動するを須いず、吉なり。
訟 三雛相逐,蠅墜釜中。灌沸潦殪,與母長決。
鼎の卦が訟の卦に変わる。三隻の雛鳥相互に追逐嬉鬧して、蒼蠅の如く鍋の裏に跌進して、滾水一たび澆れば便ち尽数燙死して、従此母鳥と永訣せり。此れ是れ幼稚無知にして自ら険地に投ずるの象。此の林主として小兒湯火の厄有り、骨肉生離す、大凶なり。
師 所望在外,鼎令方來。拭爵滌罍,炊食待之。不為季憂。
鼎の卦が師の卦に変わる。盼望する人還た外頭に在りて、鼎の中の飯食剛く熟成して、好消息も亦た正に送到せんとす。於是酒爵を擦凈し酒罍を洗刷して、火を生じて餐を備えて彼の歸來を待てり。此の林主として遠人將に歸らんとし賓客門に登らんとし、家中須らず幼子の為に擔憂するなし、吉なり。
比 陸居少泉,高山無雲。車行千里,塗汙爾輪。亦為我患。
鼎の卦が比の卦に変わる。高陸の地に住して本より泉を少くして、高山の上又た雲雨を起さず。車子千里を遠行して、泥濘車輪に沾满して、一路倶に拖累と成れり。此の林主として処する所乾枯して潤なく、出行阻まるを受く、勉力して前行すると雖も仍ほ憂患を生ず、遠き動に利あらず。
小畜 東家殺牛,汙臰腥臊。神背西顧,命絕衰周。亳社災燒,宋人夷誅。(睽之明夷)
鼎の卦が小畜の卦に変わる。東隣牛を殺して盛祭するも、牲血反って腥臊汚穢と成れり、語《周易・既済》の「東隣牛を殺すは、西隣の禴祭に如かず」に本づき、講ずる所は祭の厚きは心の誠に如かざるなり。神靈身を背過して西の方を顧るのみして、東家気數断絶して、一周室の衰の如し。《春秋》哀公四年に亳社の火に遭うを記して、宋国其の後亦た誅滅に遭う。此の林主として祭祀誠ならず、国運衰敗して、兼ねて火災兵禍有り、大凶なり。末の注此の林《睽》の《明夷》と文同じを示す。
履 長子入獄,婦饋母哭。霜降旬日,嚮晦伏法。
鼎の卦が履の卦に変わる。長子牢獄に下せられて、妻子飯を送りて獄に進めて、母親家に在りて啼哭せり。霜降過後十來天にして、天色晚に向かうの時便ち處決せられり。此の林主として家中長男刑獄の災有り、秋冬の際尤も危險にして、大凶なり。
泰 溫山松柏,常茂不落。鳳凰以庇,得其歡樂。
鼎の卦が泰の卦に変わる。陽に向かい温暖の山上松柏長青にして、四時凋落せずして、鳳凰樹蔭の下に於て庇護を得て、棲止して歓楽せり。此の林主として根基牢固、依托する所有りて、賢者其の安處を得て、事業長久にして歓欣せり、吉なり。
否 大屋之下,朝多君子。德施溥育,宋受其福。
鼎の卦が否の卦に変わる。高大の厅堂の下、朝廷の上徳有るの君子多し。恩徳遍く万民に施及して衆生を撫育して、宋国此れによって福沢を蒙受せり。此の林主として賢人位に在り、政教寛厚にして、国と家同じく其の福を受けん、吉なり。
同人 羅張目列,圍合有缺。採捕無功,魚鳥得脫。
鼎の卦が同人の卦に変わる。羅網張開して、網眼一格格整斉に排るも、可なりしも合圍の處缺口を留めり。忙しき一場にして、魚と鳥倶に缺口より逃走去りて、一の獲もなし。此の林主として事を謀るに漏有り、功簣を虧きて、捕獵求取倶に空し。若し困を被る人を問えば、反って路有りて身を脱するを主とす。
大有 羔裘豹衣,高易我宇。君子惟好,至老無憂。
鼎の卦が大有の卦に変わる。身に羔裘豹袖の礼服を穿くは、《詩経・鄭風・羔裘》に見ゆ、彼は是れ卿大夫の服色なり。此れに憑りて高大の居室を換得せり。君子彼此交好して、老に到りても倶に憂患なし。此の林主として爵を進め居を遷し、交游人を得て、終身安楽せり、吉なり。
謙 大頭明目,載受福喜。三雀飛來,與祿相得。
鼎の卦が謙の卦に変わる。頭角高大、眼目清亮は、是れ福喜を承受する相貌なり。三隻の雀鳥飛來投止して、正に禄位手に到るに應せり。此の林主として貴相身に加り、喜信頻りに傳わりて、官を求め財を求むる倶に福禄と相遇する能し、吉なり。
豫 銷鋒鑄耜,縱牛放馬。甲兵解散,夫婦相保。
鼎の卦が豫の卦に変わる。刀劍の鋒刃を熔掉して改めて耕田の耜を鑄て、牛馬を放りて田野に歸し、鎧甲兵器一幷に解散して、夫妻相守して保全を得たり。此れ是れ武を偃め文を修め、天下休息の象。此の林主として兵戈化解して家室安寧せり、吉なり。
隨 吉月車攻,田弋雙禽。宣王飲酒,以告嘉功。
鼎の卦が随の卦に変わる。吉月を選定して車を出でて田獵すは、《詩経・小雅・車攻》の記する所の周宣王諸侯を東都に會合して狩を行いて、双を成すの禽鳥を射得せり。歸來して酒を置きて慶賀して、祖廟に向かい此の美功を禀告せり。此の林主として事を挙げて時を得て、獲る所双を成して、君臣同じく慶ばん、吉なり。
蠱 商人行旅,資無所有。貪貝逐利,留連王市。轘轅內安,君子何咎。
鼎の卦が蠱の卦に変わる。商人外に在りて行旅して、手上本より多少の本銭なきに、却って財貨を貪圖して厚利を追逐して、久久王城の集市に滯留せり。所幸轘轅關内の一帯安定なれば、所以君子奔波労碌すると雖も亦た過錯有らず。此の林主として外に在りて久留して、利薄くして災なく、平安を保つ可し。
臨 火入井口,陽芒生角。犯歷天門,窺見太微。登上玉床,家易其公。
鼎の卦が臨の卦に変わる。火光井口の裏に落進して、日辺の光芒角状の暈気を生出せり。此の光天門を沖犯して、直に太微星垣を窺いて、又た帝座の玉床に登れり。天象此の如くは、是れ臣下君位を侵犯するの兆。此の林主として上下位を易え、家中主人を更換す、非常の変に属して、凶なり。
觀 秋隼冬翔,數被嚴霜。甲兵充庭,萬物不生。雄父夜鳴,民擾大驚。
鼎の卦が観の卦に変わる。秋日の鷹隼冬天に到りても還た盤旋して、屢々嚴霜を遭受せり。甲士兵器庭院に塞満して、万物因って生長する能わず。雄鶏夜の裏に乱れ啼きて、百姓騷動驚惶せり。此の林主として兵革擾攘して、時序常を失し、人心安ならず、凶なり。
噬嗑 東行西步,失其次舍。乾侯野井,昭君喪居。
鼎の卦が噬嗑の卦に変わる。東に往かんと想うも、脚下却って西辺に邁いて、進退拠を失して、宿を投ぐるの館舍を連ねても尋ね着かず。《春秋》に魯昭公三桓に逐出せられて、乾侯に流亡して、終に異郷に客死すと記す。此の林主として行止乖違して、其の居所を失して、出亡して返らず、凶なり。
賁 腫脛病腹,陷廁汙辱。命短時極,孤子哀哭。
鼎の卦が賁の卦に変わる。小腿浮腫、腹中病を生じて、又た廁の中に跌進して汚辱を受け尽くせり。寿命短促にして、気數已に尽きて、孤児のみ旁に在りて哀哭せり。此の林主として疾病身に纏りて、死期將に近づき、家の中喪有り、大凶なり。
剝 切膚近災,虎絕我須。小人橫暴,君子何災。
鼎の卦が剥の卦に変わる。災禍肌膚に切近して、猛虎面前に逼到して、幾ほど我が鬍須を扯断せんとせり。小人横行暴虐するは只だ一時にして、君子正を持して身を守れば、又た何の災殃かあらん。此の林主として危險身に貼して終に能く自ら保ち、小人凶なると雖も正人に傷及する能わず。
復 女室作毒,為我心疾。和弗能治,晉人赴吉。
鼎の卦が復の卦に変わる。内室の女色毒害を釀成して、心腹の疾を結成せり。《左伝》昭公元年に秦国の医和晋平公を診視するを載して、此の病「蠱の如し」と説き、女室に近きより生じて、藥石の医する所能に非ずとし、其の後晋人果して喪訊を発す。此の林主として色に因りて病を致し、醫治功なく、家凶信有り、凶なり。
旡妄 兵征大宛,北出玉關。與胡寇戰,平城道西。七日絕糧,身幾不全。
鼎の卦が旡妄の卦に変わる。兵を出して遠く大宛を征して、北に玉門關を出でて、又た胡人と平城以西に於て交戦せり。漢高祖匈奴の為に白登山に圍困せられて七日にして、粮道断絶して、幾ほど生還する能わず。此の林主として遠行して征戰し、深く険地に入りて、困を被り食を乏うして、身命危殆せり、凶なり。
大畜 十子夫九,莫適與居。貞心不宣,至今名孤。
鼎の卦が大畜の卦に変わる。十個の兒子を生養して、九個を走散して、一個も肯えて留まりて同住せず。節を守るの心意人の體察するなくして、到如今空しく一個の孤苦の名声を落せり。此の林主として子女多しと雖も依靠を得ず、貞守して人の報答するなく、晚景孤单せり。
頤 車行稻麥,遂至家國。樂土無災,君子何憂。
鼎の卦が頤の卦に変わる。車の稻麦を满して一路運りて回りて、直に家門と邦国に抵達せり。居る所正に是れ《詩経・魏風・碩鼠》の説く所の「樂土」にして、災害なく、君子還た何を憂愁せんや。此の林主として収成豊足して、財貨門に入りて、家国安楽せり、吉なり。
大過 作室山根,所以為安。一夕崩巔,破我饔餐。
鼎の卦が大過の卦に変わる。房子を山の脚の下に蓋して、本より以て身を安んずる可しと為せり。不料一夜の間山頂崩塌して下り來りて、早晚両餐の飯食器具を連ねても砸毀せられり。此の林主として倚る所其の地に非ざれば、根基牢ならずして、安処の中忽ち大禍を生ず、凶なり。
坎 六人俱行,各遺其囊。黃鵠失珠,無以為明。
鼎の卦が坎の卦に変わる。六個人伴を結して路に上りて、各々行囊を丢失せり。黄鵠の口に啣む明珠を失するが如くして、再び夜を照らすの光亮なし。此の林主として同行する者財を失い、恃む所の宝散尽して、人依る所を失し前程光なし、凶なり。
離 伯蹇叔盲,莫為守裝。失我衣裘,我是陰邦。
鼎の卦が離の卦に変わる。長兄跛足、次兄失明して、家中我に替えて行裝を看守する人なし。結果衣裘尽く失して、只だ身を幽暗偏僻の邦に處するを落得せり。此の林主として託する所人に非ずして、行旅物を失して、門の外に出づれば照應する人なし、凶なり。
咸 褒寵溢尤,敗政傾家。覆我宗國,秦滅周室。
鼎の卦が咸の卦に変わる。嬖寵分を過ぎて、罪咎叢生して、政事敗壞して、家門傾覆せり。周幽王褒姒を寵して天下を失して、周室終に秦の為に滅せられり。此の林主として寵に因りて禍を致し、女謁政を乱して、家国傾覆す、大凶なり。
恆 詭言譯語,仇禍相得。冰入炭室,消滅不息。
鼎の卦が恒の卦に変わる。言語詭詐にして、輾轉傳譯して真を失して、於是仇怨災禍と相遇せり。氷塊を搬りて炭火の房に進めるに譬ゆれば、消融殆盡して挽回する可ならず。此の林主として言語禍を招き、彼此相克して、所有終に必ず消亡せん、凶なり。
遯 彭生為妖,暴龍作災。盜堯衣裳,聚蹠荷兵。青禽照夜,三日夷亡。
鼎の卦が遯の卦に変わる。《左伝》莊公八年に齊襄公公子彭生を殺すを載して、後に田獵して大豕の人立して啼くに遇いて、衆人驚呼して彭生化して妖祟を為して、凶龍災を作すとす。盜賊堯の衣裳を竊取して以て聖人に充てて、盜跖の徒衆を聚めて兵を持ちて、怪鳥夜間光を発して、三日の内便ち夷滅の禍有らん。此の林主として冤気祟を為し、盜乱位を竊むれば、国速亡の象有り、大凶なり。
大壯 朝暮日月,四馬過隙。歲短期促,時難再得。
鼎の卦が大壮の卦に変わる。日月朝に升り暮に落ちて、光陰駟馬の隙を奔過して一閃即逝するが如し、語《莊子・知北游》の「白駒の郤を過ぐ」に本づく。年歲短促にして、期限逼近して、時機一たび錯過すれば便ち再び來り難し。此の林主として時に當たりて事を行うべく、遲疑すれば必ず機會を失せん。
晉 耳闕道喪,所為不成,所求匪得。
鼎の卦が晋の卦に変わる。耳目閉塞して聞こえずして、正道又た已に喪失して、此れによって何を做すも做す能わず、何を求むるも求むる能わず。此の林主として見聞明ならず、路徑已に失して、謀為落空して、事を挙ぐるに宜しからず。
明夷 申公患楚,危不自安。重耳出奔,側喪其魂。
鼎の卦が明夷の卦に変わる。申公楚国に於て難に遭いて、处境危殆にして自ら安んずる能わず。晋公子重耳他国に出奔せられて、惶惶然として幾ほど魂魄を丢了せり。二事倶に是れ貴人流亡の象。此の林主として身危地に居りて、遠行を迫られて、驚懼して寧ならず、凶の中須らく身を脱することを求むべし。
家人 南上泰山,困於空桑。左沙右石,牛馬無食。
鼎の卦が家人の卦に変わる。南に往きて泰山を攀登して、空桑のごとき荒僻の地に困せられり。左は沙にして右は石にして、牛馬草料を連ねても尋ね得ず。此の林主として絶地に行き入りて、資粮断絶して、進退倶に困り、凶なり。
睽 海隅遼右,福祿所在。柔嘉義禮,九夷何咎。
鼎の卦が睽の卦に変わる。遠く海辺と遼東以西の地に在るは、正に是れ福禄の鍾する所なり。只だ《詩経・大雅・烝民》の説く所の「柔嘉」の徳を秉持して、義と礼を守住すれば、九夷の郷に僑居するも亦た過錯有らず。此の林主として遠方福を得て、徳を以て異俗に服す、吉なり。
蹇 陽春生長,萬物茂壯。垂秋布葉,君子比德。
鼎の卦が蹇の卦に変わる。陽春の時節草木萌生して長して、万物茂盛壮大せり。秋に近きに到りても仍ほ枝葉舒展して、君子之を看れば便ち以て己が徳行を比擬せり。此の林主として時運正に生髮に當たりて、根深く葉茂くして、徳を修むる者は之と相應せり、吉なり。
解 低頭竊視,有所畏避。行作不利,酒酸魚敗。眾莫貪嗜。
鼎の卦が解の卦に変わる。頭を低くして偷偷に張望して、心の裏忌憚する所有りて回避せり。所以事を做して順わずして、摆出の酒已に酸を発し魚已に腐敗して、衆人誰も亦た貪嘴するを肯ぜず。此の林主として心畏怯を懐きて、事を挙げて順わず、貨物陳敗して問う人なし、營謀に利あらず。
損 左輔右弼,金玉滿堂。常盈不亡,富如敖倉。(師之歸妹)
鼎の卦が損の卦に変わる。左右倶に輔弼の賢臣有りて、家中金玉堂に満てり。財富常に満ちて虧損せずして、富厚して秦漢の際粮を儲えて算する無き敖倉の如し。此の林主として力有る助手環繞して、家資豊盈にして長保せん、大吉である。末の注此の林《師》の《帰妹》と文同じを示す。
益 坐朝垂軒,據德宰民。虞叔受命,六合和親。
鼎の卦が益の卦に変わる。朝に臨みて華軒の下に端坐して、徳行に依凭して以て百姓を治理せり。虞叔王命を承受して其の職に出任して、天下四方上下倶に和睦親附せり。此の林主として位に居りて正を得て、徳を以て人に服して、四方來和せん、吉なり。
夬 東行西走,喪其犬馬。南求驊騮,失車林下。
鼎の卦が夬の卦に変わる。忽ち東忽ち西として奔走して、犬馬を連ねても丢了せり。又た南に往きて驊騮のごとき良馬を尋求するも、結果車子を連ねても林子の裏に丟失せり。此の林主として奔波して定まらず、愈々求めて愈々失して、動きて損有り、凶なり。
姤 砥德礪材,果當成周。拜受大命,封為齊侯。
鼎の卦が姤の卦に変わる。徳行を磨礪し才干を錘鍊して、終に成周に於て重用を得たり。跪して册命を受けて、斉国の諸侯に封ぜられり。指す所便ち是れ呂尚周を佐けて斉に封を受くるの事なり。此の林主として學を積みて用を致し、榮く爵命を受く、大吉である。
萃 西逢王母,慈我九子。相對歡喜,王孫萬戶。家蒙福祉。
鼎の卦が萃の卦に変わる。西行して西王母に遇いて、彼女慈愛して我が九個の孩子を撫育せり。賓主相対して歓喜して、王孫貴胄封食万户せり。此の林主として遠行して貴人に遇い、子嗣庇佑を得て、一家福祉を蒙受せん、大吉である。
升 安坐玉床,聽韶行觴。飲福萬歲,曰壽無疆。
鼎の卦が升の卦に変わる。玉飾の坐床の上に安坐して、舜の《韶》楽を聴きて、一巡々杯を傳え酒を行せり。飮む所は祭余の福酒にして、衆人斉しく万歲を呼して、寿命無疆を祝願せり。此の林主として尊に居りて楽を享き、福を受けて年を延ばす、大吉である。
困 登高望家,役事未休。王事靡盬,不得逍遙。
鼎の卦が困の卦に変わる。高處に登上して家郷を遥望するも、差役終止の日なし。《詩経・唐唐風・鴇羽》に「王事靡盬」と説きて、公家の差事了なくして、従容自在の工夫を連ねてもなし。此の林主として労役身に纏りて、歸を思うて得ざれど、辛苦して咎なし。
井 擊鼓陷陔,不得相踰。章甫文德,福厭禍消。
鼎の卦が井の卦に変わる。鼓を撃つ人田埂の下に陷りて、彼此隔阻して相越する能わず。所幸頭に章甫の冠を戴きて、礼樂文徳を以て自ら持せば、福気充盈して禍患消散せり。章甫は是れ殷人の冠にして、《論語》の「端章甫」便ち是れ礼を行うの服を指す。此の林主として一時阻まるを受くるも、文を修め礼を守れば便ち禍を轉じて福と為す可し。
革 追亡逐北,呼還幼叔。至止而德,復歸其室。
鼎の卦が革の卦に変わる。逃亡敗走の人を追趕して、一路呼喚して年幼の小弟を把りて找回せり。家中に到りて人人其の恩徳を感念して、各々己が居室に回歸せり。此の林主として失散する者復た得られて、離乱の後安に歸せん、吉なり。
震 老猾大偷,東行盜珠。困於噬敖,幾不得去。
鼎の卦が震の卦に変わる。老奸巨猾の大盜東に行きて竊して、明珠を偷取せり。結果噬敖の地に困せられて、幾ほど身を脱する能わず。此の林主として険を行いて得を貪りて、終に困頓に遭う、不義の財禍を招く、凶なり。
艮 禹召諸神,南山會稽。執玉萬國,天下康寧。(姤之臨)
鼎の卦が艮の卦に変わる。《國語・魯語》に大禹會稽山に於て群神諸侯を會合して、防風氏後に至りて戮せられたるを載す。《左伝》に禹諸侯を塗山に會して、玉帛を執りて來朝する者万国の多き有りと説く。号令既に行われて、天下安康寧定せり。此の林主として号令統一して、四方來朝して、国泰らかに民安んず、大吉である。末の注此の林《姤》の《臨》と文同じを示す。
漸 忉忉怛怛,如將不活。黍稷之恩,靈輒以存。獲生保年。(蒙之損)
鼎の卦が漸の卦に変わる。心中憂懼不安にして、気息奄奄として活きる能わざるが若し。幸いに人一飯黍稷の恩を受けて以て命を保つを得たり。《左伝》宣公二年に趙盾翳桑に於て餓人靈輒を救活するを載して、後に靈輒反戈して相救いて以て報ゆ。此の林主として危困の際貴人の一飯の恩を得て、因って性命年寿を保全す、先ず凶にして後に吉なり。末の注此の林《蒙》の《損》と文同じを示す。
歸妹 俟叔興起,季子富有。照臨楚國,蠻荊是安。
鼎の卦が帰妹の卦に変わる。叔輩奮起有為するに及びて、季子の一房も亦た此れによって富足せり。徳威楚国に照臨して、南方の蠻荊の地を連ねても以て安定を得たり。此の林主として家中後輩發跡して、兄弟に蔭及して、声名遠く播れて辺地寧靖せり、吉なり。
豐 白馬駿騮,更生不休。富我商人,利得如丘。
鼎の卦が豊の卦に変わる。白馬と駿騮の良駒一代々繁衍止まずして、商を行う人此れによって富を致して、得る所の利丘の如く堆積せり。此の林主として畜養蕃息して、貿易興旺して、財源絶えず、大吉である。
旅 灼火泉源,釣魴山巔。魚不可得,火不肯燃。(革之艮)
鼎の卦が旅の卦に変わる。泉水の源頭に到りて火を點きて、山頂の上に到りて魴魚を釣れり。魚固より釣着せずして、火も亦た決して燃起するを肯ぜず。此れ正に是れ《孟子》の譏る所の木に緣りて魚を求むるなり。此の林主として方法全然理に背きて、力を用いること愈々勤ければ得る所愈々空し、凶なり。末の注此の林《革》の《艮》と文同じを示す。
巽 避患東西,反入禍門。糟糠不足,憂動我心。
鼎の卦が巽の卦に変わる。東奔西走して禍患を躲避するも、反って一頭禍事の門の裏に撞進せり。糟糠のごとき粗食を連ねても吃るに足らずして、憂愁心懐を震動せり。此の林主として趨避して當を失して、愈々避けて愈々凶となり、衣食窘迫せり、凶なり。
兌 我王多寵,商人惶恐。生其禍心,使我危殆。終無災咎。
鼎の卦が兌の卦に変わる。君王偏寵する人多くして、商を行う人因って惶恐不安せり。寵を受くる者人を害するの壊心を動して、我をして一度处境危險せしめり。所幸事最後に到りて並びに禍患を釀成せず。此の林主として小人構陷して、虛驚一場にして、正を守る者終に災禍有らず。
渙 虎飢欲食,見蝟而伏。禹通龍門,避咎除禍。元丑以安。
鼎の卦が渙の卦に変わる。老虎餓極まりて物を吃らんと要して、渾身刺の刺猬を見れば便ち伏して敢えて口を動かさず。大禹龍門を凿通して洪水を疏導して、従って咎害を躲け禍患を除去せり。凶险の開端反って平安を換來せり。此の林主として強敵阻に遇いて自ら退き、阻塞を疏通すれば以て禍を免る可く、先ず険にして後に安んず。
節 安民呼池,玉杯大案。泉如白蜜,一挹獲願。
鼎の卦が節の卦に変わる。百姓を池畔に安頓して、玉杯と大案を陳設して宴飲せり。泉水甜美して白蜜の如くして、一勺を舀きて便ち心に称い願の如し。此の林主として居處安を得て、飲食豊美にして、求むる所軽く得る可し、吉なり。
中孚 雙鳧鴛鴦,相隨群行。南至饒澤,食魚與粱。君子樂長。(澤一作洋)
鼎の卦が中孚の卦に変わる。双を成すの野鴨と鴛鴦相随い群を成して飛びて、南に下りて水草豊饒の湖沢に到りて、魚蝦と稻粱を吃りて。此の林主として夫妻和順、朋類相聚して、衣食充足にして、君子の楽悠久せり、吉なり。末の注「沢」の字一本「洋」と作るを載す。
小過 蔡侯朝楚,留連江渚。踰時歷月,思其君后。
鼎の卦が小過の卦に変わる。蔡侯楚国に到りて朝見するも、江中の小洲の上に扣留せられて遲遲として歸を得ず。一季を過ぎて又た一月を過ぎて、只だ己が国君と夫人を思念せり。此の林主として出行羈を被りて、久しく客として返らず、歸を思うて得ざれども、凶なり。
既濟 驂車駕東,與雨相逢。五楘解墮,頹杌獨坐。憂為身禍。
鼎の卦が既済の卦に変わる。驂馬の車を駕して東に行走して、半路大雨に遇上せり。轅を束ぬる五道の皮革松脱掉落して、人只好く断木の上に呆坐せり。此の林主として行途阻に遇い、車馬損壞して、憂患終に己身の禍と成れり、凶なり。
未濟 螟蟲為賊,害我稼穡。盡禾殫麥,秋無所得。(同人之節,豫之謙)
鼎の卦が未済の卦に変わる。螟虫害を成して、我が庄稼を啃食せり。禾と麦倶に喰い精光して、秋に顆粒収無し。《詩経・小雅・大田》に「其の螟螣を去れ」との語有り、正に是れ此の患なり。此の林主として虫蝗害を為して、田事収を失して、財を求めて獲なし、凶なり。末の注此の林《同人》の《節》、《豫》の《謙》と文同じを示す。
震の林(震卦六十四林)
震 枯瓠不朽,利以濟舟。渡踰江海,無有溺憂。
震の卦が自ら変じても震の卦のままである。晒乾の葫蘆腐らず朽ちずして、腰間に繫げば人を助けて水を渡る可し、《詩経・邶風・匏有苦葉》の説く済渡便ち此れなり。之に憑りて江海を横渡すれば、沉溺を擔心するを必とせず。此の林主として倚る可きの具有り、険を渉りて済を得て、出行して水を渡り平安せり、吉なり。
乾 陷塗溺水,火燒我履,憂患重累。
震の卦が乾の卦に変わる。泥沼に陷進して又た水中に落入して、好容易に岸に上れば、火又た我が鞋子を燒けり。憂患一層一層と接して壓來せり。此の林主として水火交わり侵し、災難連綿として、進退倶に損せり、凶なり。
坤 旦生夕死,名曰嬰鬼,不可得祀。
震の卦が坤の卦に変わる。早晨生まれて傍晚に便ち夭亡して、此のごとき孩子嬰鬼と称せられて、古礼に按ずれば祭祀を連ねても享有する能わず。此の林主として生育成らずして、夭殤の痛有り、立てる所久長する能わず、凶なり。
屯 揚水潛鑿,使石潔白。衣素表朱,遊戲皋澤。得君所願,心志娛樂。
震の卦が屯の卦に変わる。《詩経・唐風・揚之水》に激揚の流水石を沖刷して、白石を洗いて凿凿分明たらしむと説く。身に素衣朱領の礼服を穿きて、水辺の高地に遊賞せり。君上に求むる所倶に得られて、心意愉悦せり。此の林主として濁去りて清出で、心に遂い志を得て、吉なり。
蒙 眾鳥所翔,呼有大怪。九身無頭,魂驚魄去。不可以居。
震の卦が蒙の卦に変わる。群鳥盤旋する地方に、忽然驚呼して大怪出現せり。九個の身にして頭なくして、見る人魂飛魄散せり。此のごとき地方絶に居住する可からず。此の林主として居る所妖異の兆有りて、驚恐して拠を失し、宜しく速やかに遷避すべし、凶なり。
需 刖根枯株,不生肌膚。病在於心,身以燋枯。
震の卦が需の卦に変わる。樹根斬断せられて、只だ枯干の殘株を残して、再び新皮新肉を長出する能わず。人の病根心に在れば、所以整個の身子随いて焦枯せり。此の林主として病根本に在りて、外治功なく、元気衰竭せり、凶なり。
訟 府藏之富,王以振貧。捕魚河海,罟網多得。
震の卦が訟の卦に変わる。府庫積藏豊厚にして、君王之を用ゐて以て貧困を賑濟せり。又た江河大海の中に到りて魚を捕えて、網を撒下して獲る所甚だ多し。此の林主として上恩施有りて下漁利有りて、財を求めば財を得ん、吉なり。
師 一莖九躔,更用牽攣。安明俯仰,不得東西。贊讞當決,日午被刑。
震の卦が師の卦に変わる。一根の茎の上九道を纏わりて、交相に牽扯拘挛して、人綁られて只だ俯仰する能くして左右移動する能わず。案卷罪を議して已に定讞して、正午に到れば便ち刑を行わん。此の林主として身羅網に陷り、人に受制せられて、官非刑獄頭に臨む、大凶なり。
比 耋老鮐背,齒牙動搖。近地遠天,下入黃泉。
震の卦が比の卦に変わる。人已に老邁して、背上鮐魚のごとき斑紋を生出して、牙歯も亦た松動して落ちんと欲す。地を離るること近くして天を離るること遠くして、眼看に便ち黄泉に下入せんとす。此の林主として年寿將に終わらんとして、気力衰竭して、病を問い寿を問う倶に利あらず。
小畜 季蛇叔虎,野心善怒。黷貨無厭,以滅其身。
震の卦が小畜の卦に変わる。季氏の蛇、叔氏の虎は、倶に是れ心に野性を懐きて輙ち怒を發する人なり。財貨を貪求して毫も滿足なくして、終に此れによって身を喪せり。晋国の羊舌虎の流便ち貪暴に因りて族滅せり。此の林主として貪暴して止を知らず、自ら滅亡を取る、大凶なり。
履 籲疑八子,更相欺紿。管叔善政,不見邪期。
震の卦が履の卦に変わる。八個人猜疑歎息して、彼此欺騙蒙蔽せり。而して管叔一心に善政を施行するも、却って別人暗中に約定する邪謀を看出せず。此の林主として群小相欺して正人蔽を受く、本意善を為すと雖も仍ほ構陷に遭う、凶なり。
泰 絆逃不遠,心與言反。尼丘顧家,茅簟朱華。
震の卦が泰の卦に変わる。脚を绊住して逃げること遠からずして、心の所想と口の所説正に相違背せり。孔子尼丘に生まれて終に家室を顧念するが如くして、屋の中過ぎず茅席一張、朱花一枝のみ。此の林主として遠行成らず、言行相違して、清素の家に安守すれば反って平和を得ん。
否 蜉蝣戴盆,不能上山。搖推□跛,頓傷其顏。
震の卦が否の卦に変わる。朝生暮死の蜉蝣一隻の盆子を頂きて、怎麼も山に爬上する能わず。搖搖晃晃として跛行を推擠して、一跤跌倒して顔面を摔傷せり。《詩経・曹風・蜉蝣》蜉蝣を以て遠圖を知らざる者を喻す。此の林主として力小さく任重くして、勉强して行えば必ず損傷を受く、凶なり。原文此処缺字有り、□を以て之を存す。
同人 朝露不久,為恩惠少。膏澤欲盡,咎在枯槁。
震の卦が同人の卦に変わる。早晨の露水存留して久しからずして、施す所の恩惠便ち微薄なり。滋潤の雨露將に用い盡さんとして、過錯便ち草木の枯槁の上に落れり。此の林主として恩沢短淺にして、後に継ぐ力なく、養う所終に枯竭せん、不吉なり。
大有 河伯之功,九州島攸同。載祀六百,光烈無窮。
震の卦が大有の卦に変わる。河伯水を治めて功有りて、《尚書・禹貢》の謂う所の九州此れによって一同に歸せり。国の祭祀を享くること六百年にして、功業光耀窮まりなし。此の林主として水を治めて成功し、基業綿長にして、福沢後世に及ぶ、大吉である。
謙 三人北行,大見光明。道逢淑女,與我驥子。
震の卦が謙の卦に変わる。三個人一同に北に向かいて行きて、前路豁然として大放光明せり。途中賢淑の女子に遇い、還た我に千里馬のごとき良駒を贈れり。此の林主として同行して助を得て、路途通達して、又た良配佳贈に遇う、吉なり。
豫 金精耀怒,帶劍過午。徘徊高庫,宿於木下。兩虎相距,弓弩滿野。
震の卦が豫の卦に変わる。太白金星光芒憤怒して、劍気を帶びて午位を經過せり。高高の庫楼の上に徘徊して、夜樹の下に宿せり。两隻の猛虎相持して下らずして、弓弩原野に布満せり。此れ是れ兵象。此の林主として兵戈將に起らんとして、两強相争して、出行して険に遇う、凶なり。
隨 江河淮海,天之奧府。眾利所聚,可以富有。安樂無憂。
震の卦が随の卦に変わる。長江、黄河、淮水、大海は、是れ上天の設けたる幽深の庫府なり。各种の利源倶に彼処に匯聚して、以て富を致すに足れり。此の林主として水に臨みて利を興し、貨殖成有りて、安楽して憂なし、大吉である。
蠱 不虞之患,禍至此門。奄忽暴卒,病傷我心。
震の卦が蠱の卦に変わる。意料せざる患難にして、禍事忽然此の一家門の上に臨到せり。親人轉眼暴亡して、此の病痛我が心を傷透せり。此の林主として意外の災、猝然の喪亡、大凶なり。
臨 畫龍頭角,文章未成。甘言美語,說譯無名。
震の卦が臨の卦に変わる。龍を画いて纔かに頭角を画き出して、紋彩還た画き成らず。甜言美語を説尽して、游説陳辞終に名分を得ず。此の林主として功業半途にして、虚言実なく、事を謀れば成らず。
觀 缺破不成,胎卵不生,不見兆刑。(晉之益)
震の卦が観の卦に変わる。器物殘缺破損して形を成さずして、胎と卵倶に孵育し出ださずして、一点の征兆形跡を連ねても見えず。此の林主として事形を成すなく、孕育遂わずして、謀望落空す、凶なり。末の注此の林《晋》の《益》と文同じを示す。
噬嗑 旁行不遠,三里反覆。心多畏惡,日中止舍。
震の卦が噬嗑の卦に変わる。身を側らせて走ること遠からずして、纔かに三里路にして來回折返せり。心の裏畏懼厭惡に満ちて、日頭剛く正中に到れば便ち歇宿を停下せり。此の林主として行きて遠くする能わず、疑懼して前せず、事を謀れば遲滯して成ること難し。
賁 四瀆不安,兵革為患。探我妻子,家復飢寒。
震の卦が賁の卦に変わる。江、河、淮、済の四瀆の地倶に安寧を得ずして、兵戈甲冑大患と成れり。乱兵我が妻兒を搜掠して、一家人重たび飢寒に陷入せり。此の林主として兵乱家に及びて、妻子驚を受け、衣食断絶す、大凶なり。
剝 喜來如云,舉家蒙歡。眾財君子,喜福盈門。(睽之豐)
震の卦が剥の卦に変わる。喜事雲の如く涌來して、全家倶に歓楽に沾れり。財貨君子の門に聚りて、喜慶と福気門庭に充満せり。此の林主として喜信頻りに至り、財禄豊盈して、家を挙げて慶を蒙る、大吉である。末の注此の林《睽》の《豊》と文同じを示す。
復 載金販狗,利棄我走。藏匿淵底,拆晦為咎。(艮之革)
震の卦が復の卦に変わる。車を用ゐて金子を載せて狗を販れば、利潤却って我を弃てて去れり。錢財を深淵の底下に蔵して、隱晦不明にして反って咎害を招来せり。此の林主として本重く利軽くして、買売倒置して、藏匿愈々深ければ損失愈々甚なり、凶なり。末の注此の林《艮》の《革》と文同じを示す。
旡妄 日中為市,各抱所有。交易貲賄,函珠為寶。心悅歡喜。
震の卦が旡妄の卦に変わる。《周易・繫辭》に神農氏の「日中に市を為す」と説きて、天下の民各々所有るを携えて前來を招致せり。彼此財貨を交換して、匣子を用ゐて珠玉を装えて寶物と為して、人人心の裏歓喜せり。此の林主として交易して利を得て、買売两便にして、歓欣して得有り、吉なり。
大畜 日趨月步,周遍次舍。經歷致遠,無有難處。
震の卦が大畜の卦に変わる。日月運行の如くして、日に逐いて推移し月に逐いて前進して、一處々の館舍を走り遍くせり。一路經歷遠行して、走り難きの地方に遇わず。此の林主として行程順遂して、序に循りて遠を致し、出入平安せり、吉なり。
頤 陽明失時,陰凝為憂。主君哀泣,喪其元侯。
震の卦が頤の卦に変わる。陽気盛んなるべきに却って時令を失して、陰寒凝聚して憂患と成れり。国君之が為に哀哭するは、其の首輔の重臣を失うを以てなり。此の林主として陰盛んにして陽衰え、棟梁折損して、上喪亡の痛有り、凶なり。
大過 年衰歲暮,精魂游去。形容消枯,哀子相呼。
震の卦が大過の卦に変わる。年歲已に衰えて、一年又た尽頭に到りて、精神魂魄漸々游離して去れり。形貌消瘦枯槁して、居喪の孝子旁に在りて哀哀と呼喚せり。此の林主として寿元將に尽きんとして、家の中喪事有り、病を問えば大凶なり。
坎 少無功績,老困失福。跌行跛踦,不知所立。
震の卦が坎の卦に変わる。年少の時功績を立下せずして、年老うれば便ち困頓して福を失せり。路を走れば便ち跌跌撞撞、一瘸一拐して、何の處に身を立つべきかを知らず。此の林主として早年虛度して、晚境依無し、進退拠を失し、凶なり。
離 持心耀目,善數搖動。自東徂西,不安其處。渙散府藏,無有利得。
震の卦が離の卦に変わる。心を存して人に炫耀し、又た反復動搖に慣れり。東より西に走りて、心を安んずる能わず。府庫の中の積藏此れによって散尽して、何の好處も亦た得ず。此の林主として心志定まらず、遷動常なく、家財耗散す、凶なり。
咸 □貝贖狸,不聽我辭。繫於虎鬚,牽不得來。(需睽否革同人否隨師)
震の卦が咸の卦に変わる。財貨を帶びて去りて彼の狸を贖わんとすれど、對方却って我が説辞を聽かず。狸虎須の上に繫がれて、怎麼に牽いても牽き來らず。此の林主として求むる所強者の據る所と為りて、贖救門なく、財を用ゐて效を見ず、凶なり。原文首の字殘缺して、□を以て之を存し、末の注此の林と《需》《睽》《否》《革》《同人》《随》《師》の諸卦文同じの處を列す。
恆 老狼白□,長尾大胡。前顛後躓,岐人悅喜。
震の卦が恒の卦に変わる。《詩経・豳風・狼跋》に老狼の颔の下に大胡を垂れ身の後に長尾を拖きて、前に走れば胡を踩み、後に退けば尾を绊して、進退狼狽を写せり。旁觀の岐周の人之を見て笑を發して歓喜せり。此の林主として行動制を受けて、進退两難して、反って他人の笑資と成る、進を謀るに利あらず。原文缺字有り、□を以て之を存す。
遯 背地相憎,心志不同。如火與金,君猛臣懾。虎行兔伏。
震の卦が遯の卦に変わる。背地の裏彼此憎惡して、心志根本に合わず。火と金の相克するが如くして、君主剛猛にして臣下畏懼せり。老虎一たび走動すれば、兎子便ち地に伏して敢えて動かず。此の林主として上下相疑して、強弱懸殊して、弱者宜しく退避して自ら保つべし。
大壯 夏臺羑里,湯文厄處。鬼侯歠醢,岐人悅喜。
震の卦が大壮の卦に変わる。商湯曾て夏台に囚せられ、周文王曾て羑里に囚せられしは、倶に是れ聖人難に遭うの地なり。紂王鬼侯を肉醤に剁して以て文王に賜うに、文王忍を含みて吞下して、岐周の人後に終に其の歓喜を得見せり。此の林主として難を蒙り辱を忍して終に轉機有り、先ず困して後に通ず。
晉 牙□生齒,螳蜋啟戶。幽人利貞,鼓翼起舞。
震の卦が晋の卦に変わる。牙床の上重新に牙歯を長出して、螳螂戸を開きて出づるは、倶に是れ時気來復の象なり。《周易・履卦》に「幽人貞吉」と説きて、幽居して正を守る人此の時正に翅を振りて起舞する可し。此の林主として生機重たび來り、隱者時を得て、正を守れば則ち吉なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
明夷 烈女無夫,閔思苦憂。齊子無良,使我心愁。
震の卦が明夷の卦に変わる。貞烈の女子丈夫なくして、憂思苦悶せり。《詩経・齊風》斉国の公子の行為不良を譏刺して、人をして心の裏發愁せしむ。此の林主として婚配成らず、遇う所人に非ずして、憂思解くこと難し、凶なり。
家人 踐履危難,脫厄去患。入福喜門,見我大君。(我一作海)
震の卦が家人の卦に変わる。一路危險艱難を踏過して、終に厄運を擺脱し禍患を除去せり。福喜の門に走り進みて、我が大君を得見せり。此の林主として険の中脱を得て、危を轉じて安と為し、又た能く貴人に面見す、先ず凶にして後に吉なり。末の注「我」の字一本「海」と作るを載す。
睽 拆臂接手,不能進酒。析杞閒曠,神怒弗喜。
震の卦が睽の卦に変わる。胳膊断きて再び手を接上するも、終に酒杯を擧げて敬獻する能わず。杞木を砍去して、廟庭空曠荒廢して、神靈発怒して歆享するを肯ぜず。此の林主として人殘えて事廢れて、祭祀礼を失して、神に罪を得、凶なり。
蹇 蟻封戶穴,大雨將集。鵲數起鳴,牝雞嘆室。相薨雄文,來到在道。
震の卦が蹇の卦に変わる。螞蟻洞口を封して土封を堆起するは、是れ大雨將に至らんとの先兆なり。喜鵲屢々起飛鳴叫して、母鶏却って屋の裏に長歎せり。種種の異象の後は、是れ相国薨逝の消息正に路上に在りて傳來せん。此の林主として天変先に見えて、大人物の凶信將に至らんとし、凶を主とす。
解 胡俗戎狄,太陰所積。涸洌冱寒,君子不存。
震の卦が解の卦に変わる。胡人戎狄の風俗の地は、是れ極陰の気積聚の處なり。水枯れ氷凍して、寒気凝閉して、君子彼処に於て身を存するに法なし。此の林主として处境陰寒にして久留に宜しからず、遠行して北方大いに利あらず。
損 翕翕□,稍頹崩顛。滅其令名,身不得全。
震の卦が損の卦に変わる。《詩経・小雅・小旻》小人を譏刺して「潝潝訿訿」、聚りて附和詆毀せり。此のごとき作為根基をして漸々崩壞傾頹せしめて、好名声此れによって毁滅して、身家を連ねても保つ能わず。此の林主として朋比して姦を為し、名敗れて身危うし、大凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
益 螟蟲為賊,害我稼穡。盡禾殫麥,秋無所得。
震の卦が益の卦に変わる。螟虫群を成して害を作して、我が庄稼を啃食せり。禾苗と麦子喰い乾淨して、秋収一の得もなし。此の林主として虫害農を傷めて、財を耗し益なく、利を謀れば落空す、凶なり。
夬 三鳥飛來,自我逢時。俱行先至,多得大利。
震の卦が夬の卦に変わる。三隻の鳥一斉に飛來して、正に我が好時運に撞上せり。伴を結して同行して先に到達して、此れによって獲利甚多し。此の林主として時來りて運合して、捷足して先に登りて、財を求めば大いに得る所有り、吉なり。
姤 龍馬上山,絕無水泉。喉唇燋乾,渴不可言。
震の卦が姤の卦に変わる。龍馬高山の上に奔上するも、山の上一点の泉水も亦たなし。咽喉嘴唇焦裂乾枯して、渇して話を説き出だす能わず。此の林主として往く所資養するなく、才高くして其の地を失して、困渇して支うこと難し、凶なり。
萃 春生子乳,萬物蕃熾。君子所集,禍災不至。
震の卦が萃の卦に変わる。春天万物生育哺乳して、草木鳥獣繁盛旺盛せり。君子此のごとき地方に聚集して、災禍身に臨まず。此の林主として生機蓬勃して、同類相聚して、家宅平安せり、吉なり。
升 王孫季子,相與為友。明允篤誠,升擢薦舉。(大有之小過)
震の卦が升の卦に変わる。王孫と季子朋友を結びて、二人倶に明察誠信、篤実忠厚にして、因って提拔挙薦せられり。此の林主として友を交えて人を得て、徳を以て知を見られて、升遷望有り、吉なり。末の注此の林《大有》の《小過》と文同じを示す。
困 六明並照,政入有統。秦楚戰國,民受其咎。
震の卦が困の卦に変わる。六道の光明同時に照耀して、政令一統に歸せり。可なりしも秦楚等の国相争う戦国の世は、百姓終に兵禍の咎を承受せん。此の林主として上統有ると雖も下其の苦を遭い、公事序有りて民力困竭す。
井 蝃蝀充側,□人所惑。女謁橫行,正道壅塞。
震の卦が井の卦に変わる。《詩経・鄘風・蝃蝀》彩虹空に當たるを以て淫奔の事を比喻して、虹霓一側に布満して、人をして迷惑せしむ。宮闈の女子請託横行して、正直の路堵塞せられり。此の林主として邪佞事を用ゐ、女子政を干して、君子の道消ゆ、凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
革 登崑崙,入天門。過糟丘,宿玉泉。問惠觀,見仁君。(比之姤,革之困)
震の卦が革の卦に変わる。崑崙の巔に登上して、天門に進入せり。糟丘を經過して、玉泉の畔に夜宿せり。一路問訊して見ゆるを求めて、終に仁厚の君主を得見せり。此の林主として高きに登り遠を歴して、尋訪成有りて、明主に遇うを得、大吉である。末の注此の林《比》の《姤》、《革》の《困》と文同じを示す。
鼎 體重飛難,未能越關,不離空垣。
震の卦が鼎の卦に変わる。身子太だ重くして、飛び起きる能わずして、關隘を越過する能わずして、只だ空蕩蕩の墻院の裏に守在して打轉するのみ。此の林主として力心に従わず、処する所に限られて、行かんと欲して得ず、事を謀れば出頭すること難し。
艮 元黃虺隤,行者勞罷。役夫憔悴,踰時得歸。(乾之革,師之臨得作不)
震の卦が艮の卦に変わる。《詩経・周南・卷耳》に「我馬虺隤」と説きて、馬匹病困して力なくして、路を趕る人も亦た疲憊不堪せり。服役の丁夫面容憔悴して、期限を過ぎて始めて家に回るを得たり。此の林主として行役労苦して、歸期延誤するも、遲しと雖も終に郷に還るを得ん。末の注此の林《乾》の《革》、《師》の《臨》と文同じを示し、并びに異文を載す。
漸 孔德如玉,出於幽谷。飛上高木,鼓其羽翼。輝光照國。(同人之坎)
震の卦が漸の卦に変わる。徳行温潤して玉の如き人は、幽深の山谷より走出せり。正に《詩経・小雅・伐木》の説く「幽谷より出でて、喬木に遷る」の如くして、高枝に飛上して双翼を振動して、光輝一国を照耀せり。此の林主として賢者隱微より出でて顯位に登りて、声名遠く播れる、大吉である。末の注此の林《同人》の《坎》と文同じを示す。
歸妹 火雖熾,在吾後。寇雖眾,在吾右。身安吉,不危殆。
震の卦が帰妹の卦に変わる。火勢猛烈なると雖も、却って我が身の後に燒きて、盗寇衆多なると雖も、我が右辺を經過せり。災禍身を擦りて過ぎて、人身安吉せり。此の林主として凶险臨みて近きも己が身に及ばずして、驚有りて険なし、吉なり。
豐 旃裘羶國,文禮不飾。跨馬控弦,伐我都邑。(豫之需)
震の卦が豊の卦に変わる。毡裘を披き膻腥を食する異族の国は、文教礼儀を講究せず。彼等戰馬に跨り、弓を張り弦を引きて、來りて我が都城を攻打せん。此の林主として外寇入侵して、礼樂行われず、辺境兵有り、凶なり。末の注此の林《豫》の《需》と文同じを示す。
旅 被髮八十,暮德獻服。邊鄙不聳,以安王國。
震の卦が旅の卦に変わる。髪を披く遠方の民八十部落は、晚成の徳を感慕して來りて貢を献じ歸服せり。辺地再び驚擾せずして、王国此れによって安定せり。此の林主として遠人來歸して、辺患消弭して、国家安寧せり、吉なり。
巽 心得所好,口常欲笑。公孫蛾眉,雞鳴樂夜。
震の卦が巽の卦に変わる。心の裏喜愛する所を得て、嘴上常に笑を帶びたり。公孫の家の女子生まれて蛾眉美貌にして、《詩経・齊風・雞鳴》夫妻夜半相語の楽を写すは、正に是れ此のごとき光景なり。此の林主として心に称い意に遂い、家室和楽せり、吉なり。
兌 馬西負乘,見邑之野。並獲粱稻,喜悅無咎。
震の卦が兌の卦に変わる。馬西に向かいて載を駝して行きて、城邑の外の郊野を望見せり。一幷に粱米と稻谷を收得して、歓喜して過錯なし。此の林主として行きて載する所有り、至る所獲有りて、喜慶して災なし、吉なり。
渙 高飛視下,貪饕所在。腐臭為患,害於躬身。
震の卦が渙の卦に変わる。高處に飛びて下を窺看して、専ら貪食する可きの地方を找りて、結果腐臭の物を吃到して禍患と成りて、己が身の上に害を到せり。此の林主として貪求度なく、食を擇ぶに精ならずして、自ら其の害を取る、凶なり。
節 東行西步,失其次舍。乾侯野井,昭公喪居。(鼎之噬嗑)
震の卦が節の卦に変わる。東に往かんと想うも却って西辺に邁いて、進退錯乱して、歇宿の館舍を連ねても失去せり。《春秋》に魯昭公出奔して、乾侯に流落して、客地に死すを載す。此の林主として擧止乖違して、其の居所を失して、他郷に客死するの象、凶なり。末の注此の林《鼎》の《噬嗑》と文同じを示す。
中孚 神鳥五彩,鳳凰為主。集於山谷,使年歲育。
震の卦が中孚の卦に変わる。五彩の神鳥鳳凰を以て首と為して、群を成して山谷の中に栖集せり。瑞鳥一たび至れば、年成便ち順遂豊育せり。此の林主として祥瑞降臨して、歲稔して物豊なり、吉なり。
小過 石門晨門,荷蕢食貧。遁世隱居,竟不逢時。(革之旅)
震の卦が小過の卦に変わる。《論語・憲問》に石門の門を守る人と草筐を背負して路を過ぐる荷蕢者を記して、倶に是れ識見高遠にして貧賤に甘んずる隱士なり。彼等世を避けて隱居して、終に為す可きの時に碰上せず。此の林主として才を懐きて遇わず、退隱して貧を守りて、分に安んずれば則ち咎なく、進を求むれば利あらず。末の注此の林《革》の《旅》と文同じを示す。
既濟 □齧齧,貧鬼相責。無有歡怡,一日九結。(□音澗)
震の卦が既済の卦に変わる。牙歯相磨して啮啮として響を作して、窮鬼一個個門に上りて債を索り責問せり。家中毫も歓楽なくして、一天の内心の裏九個の結を打てり。此の林主として貧困交迫して、債主門に臨みて、愁悶解けず、凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存し、末の注其の注音を為す。
未濟 白日揚光,雷車避藏。雲雨不行,為止其鄉。
震の卦が未済の卦に変わる。白日光芒大いに盛んにして、雷神の車駕避けて蔵起せり。雲と雨倶に行くを肯ぜずして、別の地方に停まりて來らず。此の林主として陽亢して沢なく、久しく旱し雨せず、望む所の事停滞して至らず、農事に利あらず。
艮の林(艮卦六十四林)
艮 君孤獨處,單弱無輔。名曰困苦,輔心湧泉。碌碌如山。
艮の卦が自ら変じても艮の卦のままである。君主孤零零として独り處りて、勢単く力薄くして輔佐する人なし、此のごとき处境困苦と作す。内心の憂思泉水の如く湧出するも、肩上の重擔仍ほ山の如く堆積せり。此の林主として孤立して援なく、重任身に在りて、労して功少なし、凶なり。
乾 憂驚已深,禍不為災,安全以來。
艮の卦が乾の卦に変わる。憂慮驚恐已に甚だ深しと雖も、然るに禍事終に災害を釀成せずして、平安便ち此れに就りて到來せり。此の林主として虚驚一場にして、険有りて傷なく、憂を轉じて安と為す、吉なり。
坤 穿匏浥水,構鐵熒火。勞疲力竭,飢渴為禍。
艮の卦が坤の卦に変わる。洞を穿けたる葫蘆を用ゐて去りて水を舀い、冷鉄を拿りて彼の螢火のごとき微光を取れば、徒らに疲累して力を用い尽して、反って飢渇に困せられり。此の林主として器を用ゐるに当たらずして、労して功なく、衣食困を受く、凶なり。
屯 蹇牛折角,不能載粟。災害不避,年歲無谷。
艮の卦が屯の卦に変わる。跛脚の牛又た角を折断して、一車の粟米を拉動する能わず。災害躲避し開かずして、一年到頭谷子を收到せず。此の林主として畜力傷損して、運輸通ぜずして、歲歉しく収なし、凶なり。
蒙 邑將為墟,居之憂危。
艮の卦が蒙の卦に変わる。此の座の城邑眼看に便ち廃墟と変成せんとして、裏頭に住するは只だ憂愁と危險有るのみ。此の林主として居る所將に敗れんとして、根基保たれず、宜しく早く遷避すべし、凶なり。
需 根刖樹殘,花葉落去。卒逢火焱,隨風僵仆。
艮の卦が需の卦に変わる。樹根砍傷せられて、樹身殘破して、花と葉倶に凋落せり。末了又た一場の烈火に遇い、風に随いて地に倒伏せり。此の林主として根本已に傷え、再び外禍に遭いて、終に傾覆に至る、大凶なり。
訟 元后貪慾,窮極民力。執政乖劣,為夷所覆。
艮の卦が訟の卦に変わる。君王貪して厭くことなくして、民力を用いて窮尽せしめり。政に當たる者又た乖張無能にして、終に外族に傾覆せられり。此の林主として上貪くして下困り、政其の道を失して、国傾危有り、大凶なり。
師 北山有黍,使叔壽考。東嶺多粟,宜行賈市。陸梁雄雉,所至利喜。
艮の卦が師の卦に変わる。《詩経・小雅・北山》の詠ずる北山黍稷を生長して、長輩を奉養して之をして高寿せしむ可し。東辺の山嶺粟米を盛産して、正に宜しく前に往きて販売すべし。雄雉高地に於て跳躍鳴叫するは、是れ到る所倶に利喜有るの兆頭なり。此の林主として田産豊足して、經商して利を得て、長者康寧せり、吉なり。
比 高原峻山,陸土少泉。草木林麓,嘉禾所災。
艮の卦が比の卦に変わる。高原と険峻の山地は、土層乾燥にして泉水を少くす。只だ宜しく山林草木を生長するに、好庄稼彼処に種すれば反って害を受けん。此の林主として地稼に宜からずして、処する所其の所を失して、勉强して経営すれば必ず損耗に致る。
小畜 (小畜)辰次降婁,王駕巡狩。廣施德惠,國安無憂。
艮の卦が小畜の卦に変わる。歲星降婁の次に運行するは、正に是れ吉時にして、君王車を駕して四方を出巡せり。一路広く恩徳惠沢を施して、国家安定して憂なし。此の林主として時令宜を得て、上徳政を行いて、出行して功有り、吉なり。原文此処卦名の小注を夾みて、仍ほ其の旧を存す。
履 □轠轠,歲暮偏弊。寵名復棄,君衰於位。
艮の卦が履の卦に変わる。車声轠轠として絶えずして駛過して、一年將に尽きんとして處處凋敝せり。曾ての寵信と名位又た弃置せられて、君主位の上に在りて日に衰頹せり。此の林主として盛りに極まりて衰に轉じ、恩寵終わらずして、位に居る者は勢を失す、凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
泰 放銜委轡,奔亂不制。法度無常,君失其位。
艮の卦が泰の卦に変わる。馬嚼を松開して韁繩を丢下して、車馬狂奔して控制するに法なし。法度反復無常にして、君主此れによって君位を丢了せり。此の林主として綱紀廢弛して、駕馭方なく、上位保たれず、凶なり。
否 獨登西垣,莫與笑言。秋風多哀,使我心悲。
艮の卦が否の卦に変わる。独り西辺の城牆に登上して、四顧して談笑する可きの人なし。秋風一片の悲声を送來して、我が心をして酸を發せしむ。此の林主として孤独して侶なく、時序蕭瑟して、憂思遣ること難し。
同人 脛急股攣,不可出門。暮速群旅,必為身患。
艮の卦が同人の卦に変わる。小腿抽緊、大腿痙攣して、門を連ねても出でる能わず。此の時還た傍晚に於て一群の人を招集して伴を結して出行せんとすれば、必ず自身の禍患と為らん。此の林主として身体恙有りて、擧動時を失して、勉强して行えば災を招く、凶なり。
大有 情偽難知,使我偏頗。小人在位,雖聖何咎。
艮の卦が大有の卦に変わる。人情の真偽分辨し難くして、我をして判斷偏頗せしめり。小人高位を竊據して、縦い是れ聖人此の位置の上に處るも、又た怎んぞ責難を受けざるを得んや。此の林主として真偽混淆して、賢路壅塞して、事を處すれば物議を招き易し、宜しく謹慎すべし。
謙 黍稷醇醲,敬奉山宗。神嗜飲食,甘雨嘉祥。庶物蕃茂,時無災咎,獨蒙福祉。
艮の卦が謙の卦に変わる。醇厚の黍稷の酒を用ゐて恭敬に山岳の神を祭獻せり。《詩経・小雅・楚茨》に「神飲食を嗜む」と説きて、神靈享用したる後甘霖嘉瑞を降下して、万物繁茂して、四時災咎なく、独り此の一家福祉を蒙受せり。此の林主として祭祀して神佑を得て、風調雨順して、家門独り福沢を享く、大吉である。
豫 公子王孫,把彈攝丸。發輒有獲,室家饒足。
艮の卦が豫の卦に変わる。公子王孫手に彈弓を持して彈丸を捏えて、一發すれば便ち得有り。家の裏此れによって富足有余せり。此の林主として手を挙げて獲を得て、求むる所愿に随いて、家道豊饒せり、吉なり。
隨 陰昇陽伏,舜失其室。元元赤子,相餒不食。
艮の卦が随の卦に変わる。陰気上昇して陽気潜伏して、虞舜のごとき聖人を連ねても己が家室を保つ能わず。黎民百姓、初生の嬰孩、倶に腹を空して吃る可き食なし。此の林主として陰盛んにして陽衰え、家室守を失して、民生飢困せり、凶なり。
蠱 七竅龍身,造易八元。法天則地,順時施恩。引和貴長,以富永存。
艮の卦が蠱の卦に変わる。伝説伏羲七竅通明、龍身人首にして、八卦を創制して《易》の元始と為せり。彼天地の則を效法して、時令に順應して恩徳を施行して、和気を導引して長養の道を尊崇すれば、此れによって富厚長存せり。此の林主として自然に法を秉り、時に順いて事を行えば、家業綿長せん、大吉である。
臨 逐狐東山,水遏我前。深不可涉,失利後便。(姤之巽,漸之夬,蒙之蠱)
艮の卦が臨の卦に変わる。東山に到りて狐狸を追うも、前大水に擋せられり。水深くして徒渉する能わずして、只好く良機を錯失して、退き回りて別に方便を尋るのみ。此の林主として前阻隔有りて、逐う所獲なし、宜しく退くべく強く渡る宜ならず。末の注此の林《姤》の《巽》、《漸》の《夬》、《蒙》の《蠱》と文同じを示す。
觀 銜命辱使,不堪其事。中墜落去,更為負載。
艮の卦が観の卦に変わる。命を奉じて使に出づるも却って使命を辱没して、此の差事を擔起する能わず。半途の中掉下来して、反って変じて別人の累贅と為れり。此の林主として才職に称わずして、命を受けて成らずして、中途失墜す、凶なり。
噬嗑 溫仁君子,忠孝所在。八閏為儀,禍災不起。
艮の卦が噬嗑の卦に変わる。温厚仁愛の君子は、忠と孝倶に其の身の上に在り。八節閏余の数を以て法度と為して、時令を謹守して行えば、災禍便ち興起せず。此の林主として徳行醇正して、擧措度に合して、家国災なし、吉なり。
賁 春多膏澤,夏潤優渥。稼穡熟成,數獲百斛。師行以律,霸功不遠。
艮の卦が賁の卦に変わる。春天雨水豊沛して、夏天潤沢優厚にして、庄稼成熟して、一收すれば便ち百斛なり。《周易・師卦》に「師律を以て出づ」と説きて、兵を用ゐるに紀律有れば、則ち霸業の功も亦た遠からず。此の林主として農事豊収して、兵を挙げて序有りて、功名期す可し、大吉である。
剝 二女同室,心不聊食。首髮如蓬,憂常在中。
艮の卦が剥の卦に変わる。两個の女子一室に同處すは、《周易・睽卦》に「二女同居、其の志同行せず」と説くが如くして、彼此別扭して飯を連ねても喰い下る能わず。頭髪飛蓬の如く乱れて、憂愁常に心間に存せり。此の林主として同處して和せず、家内睦を失して、憂郁解け難し、凶なり。
復 築闕石顛,立本泉源。病疾不安,老孤為鄰。
艮の卦が復の卦に変わる。宮闕を乱石の巔に築きて、根基を泉水の源頭に立てて、地基潮にして固からず。此れによって疾病身に纏りて安寧を得ずして、孤老の人のみ隣居と為せり。此の林主として居處宜を失して、根本牢ならずして、病多くして孤单せり、凶なり。
旡妄 欲避凶門,反與禍鄰。顛覆不制,痛熏我心。
艮の卦が旡妄の卦に変わる。凶险の門を躲开せんと想うも、反って禍患と隣居を做れり。局面傾覆して控制するに法なくして、痛楚心懐を熏灼せり。此の林主として趨避して反って招引と成りて、事勢控制を失して、心痛の凶なり。
大畜 踧行竊視,有所畏避。狸首伏藏,以夜為利。
艮の卦が大畜の卦に変わる。身を縮めて路を走りて偷偷に張望して、心の裏畏懼する所有りて躲避せり。狸猫頭を低くして潜伏するが如くして、只だ夜色を以て利有るの時と為せり。此の林主として处境須らく隱忍潛蔵すべく、晝に動けば利あらずして暗に行えば全からん可し。
頤 人面鬼口,長舌為斧。斲破瑚璉,殷商絕後。
艮の卦が頤の卦に変わる。人の面孔にして却って鬼のごとき口を生じて、長舌便ち是れ斧頭なり。《詩経・大雅・瞻卬》に「婦に長舌有れば、維れ厲の階なり」と説きて、讒言以て瑚琏のごとき宗廟の重器を砍破するに足りて、殷商も亦た此れによって後嗣を絶てり。此の林主として讒口人を傷めて、宗祀に毀及す、大凶なり。
大過 和氣相薄,膏澤津液,生我嘉穀。
艮の卦が大過の卦に変わる。陰陽の和気相互に交迫して、滋潤の雨露津液を化して、我が田の裏の好庄稼を養出せり。此の林主として気候和順して、生養成有りて、田事豊収せり、吉なり。
坎 銷金鑄兵,雷車不行,民安其鄉。
艮の卦が坎の卦に変わる。金屬を熔して兵器を鑄成するも、雷車のごとき戰陣卻って始終開動せずして、百姓本郷に安居を得たり。此の林主として兵備して用ゐずして、干戈自ら止みて、境内平安せり、吉なり。
離 秦儀機言,解其國患。一說燕下,齊相以權。
艮の卦が離の卦に変わる。蘇秦、張儀機機變の辯辞に憑りて本国の禍患を化解せり。蘇秦一番の游説便ち燕国をして折服せしめて、進みて斉国の相位の權柄を握有せり。此の林主として口舌功を立てて、游説して勢を得て、事を謀れば言を以て取る可し、吉なり。
咸 旦奭輔王,周德孔明。越裳獻雉,萬國咸寧。
艮の卦が咸の卦に変わる。周公旦と召公奭成王を輔佐して、周家の徳政十分に昭明なり。南方の越裳氏遠く道を來りて白雉を献じて、万国倶に安寧を得たり。此の林主として賢臣国に當たりて、遠人來朝して、天下太平せん、大吉である。
恆 弱足刖跟,不利出門。賈市無過,折亡為患。
艮の卦が恒の卦に変わる。脚力本より弱くして又た脚跟を傷えて、門を出でれば大いに利あらず。買売を做すに過失無しと雖も、折本して虧損するに因りて憂患を生ず。此の林主として行動限を受けて、經營虧耗して、宜しく本を守りて遠く圖る宜ならず。
遯 堅冰黃鳥,常哀悲愁。不見甘粒,但睹藜蒿。數驚鷙鳥,為我心憂。(乾之噬嗑之大過)
艮の卦が遯の卦に変わる。《詩経・秦風・黄鳥》黄鳥の哀鳴を詠じて、此処堅氷の時黄鳥長悲すと説く。一粒の好粮を見ずして、只だ地に満つる藜蒿を見、又た屢々凶猛の鷹隼に驚起せられて、人をして心中憂懼せしむ。此の林主として時寒くして食絶えて、常に強者の驚擾を受けて、憂愁安ならず、凶なり。末の注此の林《乾》の《噬嗑》《大過》と文同じを示す。
大壯 魂微惙惙,屬纊聽絕。豁然大通,復更生活。
艮の卦が大壮の卦に変わる。魂気微弱、気息奄奄として、家人古礼に依りて新綿を口鼻の上に放りて察驗すれば、幾ほど呼吸を聞かず。忽然の間豁然貫通して、又た活き轉りて來れり。此の林主として病危くして救を得て、絶處生に逢う、先ず凶にして後に吉なり。
晉 陰生□鹿,鼠舞鬼谷。靈龜陸處(一雲靈鼠陸處,鬼哭鼠舞)釜甑草土。人知敗國,桀亂無緒。
艮の卦が晋の卦に変わる。陰気の生する所の怪鹿出現して、老鼠鬼谷の中に跳舞して、靈龜水を離れて陸地に處りて、鍋甑の中草土を長出す、全く是れ亡国の妖異の兆なり。人人倶に国事將に敗れんとすることを知りて、夏桀の世の如く昏乱して毫も頭緒なし。此の林主として妖異叢生して、政乱れて国危うし、大凶なり。原文缺字と異文の小注有りて、一幷に之を存す。
明夷 鑿諸攻玉,無不穿鑿。龍體吾舉,魯班為輔。舞鳳成形,德象君子。
艮の卦が明夷の卦に変わる。《詩経・小雅・鶴鳴》に「他山の石、以て玉を攻る可し」と説きて、利器を用ゐて玉を琢れば穿透せざる能わざるなし。我龍の形体を擧げて雕琢するに、又た魯班のごとき巧匠の相助有りて、鳳凰翩然として形を成して、其の徳正に君子の象の如し。此の林主として良工の相輔を得て、器成りて徳就きて、事業成有り、吉なり。
家人 山作天時,陸為海口,民不安處。
艮の卦が家人の卦に変わる。山川變異して天時の災に應じて、陸地海口に陷成して、百姓身を安んずる處なし。此の林主として地気大いに変じて、居所傾陷して、人民流離す、凶なり。
睽 東風啟戶,隱伏歡喜。萌庶蒙恩,復得我子。
艮の卦が睽の卦に変わる。東風門戸を吹開して、蟄伏の生物倶に歓喜せり。万物萌生して皆な恩沢を蒙りて、我が失散せる孩子も亦た重新に找回せられり。此の林主として陽和令に當たりて、隱者頭を出だし、失して復た得る、吉なり。
蹇 華燈百枝,植暗衰微。精光欲盡,命如灰麋。
艮の卦が蹇の卦に変わる。華美の燈樹百枝の燭火有るも、却って暗暗處に挿して漸々衰微せり。光焰將に耗尽せんとして、性命燒殘の灰燼の如し。此の林主として外華やかにして内竭きて、氣數將に終らんとし、病を問い寿を問う倶に凶なり。
解 三十無室,寄伯桑中。上宮長女,不得樂同。
艮の卦が解の卦に変わる。三十歲しても還た家を成さずして、長兄の桑田の間に身を寄す。《詩経・鄘風・桑中》に「我を桑中に期し、我を上宮に要す」と説くも、上宮の彼の長女終に彼と同歓する能わず。此の林主として婚姻遲滯して、佳期落空して、孤身偶なし。
損 卵與石斗,糜碎無處。動而有悔,出不得時。
艮の卦が損の卦に変わる。蛋を拿りて去りて石頭と相鬥せば、碎けて渣を連ねても尋ね着かず。一たび動けば便ち悔恨有りて、出行又た其の時に逢わず。此の林主として弱を以て強に敵して、自ら毀滅を取る、妄動大凶なり。
益 尋兵爭強,失其貞良,敗我殽鄉。
艮の卦が益の卦に変わる。動すれば便ち兵を用ゐて強を争い勝を好んで、因って忠貞良善の臣を失して、終に殽山の一帯に於て大敗せり。秦晋殽の戰全軍覆沒するは、便ち是れ此の象なり。此の林主として武を黷して敵を輕くし、賢を失して敗を致し、師を出でば大凶なり。
夬 虐除善疑,難為攻醫。驥窮鹽車,困於御御。
艮の卦が夬の卦に変わる。病人暴躁にして又た多疑にして、医師手を下して診治すること甚だ難し。《戰國策》の記する所の千里馬の鹽車の下に套せられて、坡道に於て力を尽して、車を駕る人に受制するが如し。此の林主として良材下位に屈居して、病有りて医し難く、才展ぶを得ず、凶なり。
姤 操笱搏狸,荷弓射魚。非其器用,自令心勞。
艮の卦が姤の卦に変わる。魚を捕るの竹笱を拿りて去りて狸猫を打ちて、弓箭を扛りて去りて水の裏の魚を射れば、器物用ゐる所路に對わずして、只だ白白と神を労するのみ。此の林主として用ゐる所其の材に非ずして、方法乖謬にして、徒労して功なし。
萃 葵丘之盟,獻晉會庭。見太宰辭,後秦還興。
艮の卦が萃の卦に変わる。斉桓公葵丘に於て諸侯を大會して、周天子宰孔を遣はして胙を賜はしむ。晋献公會庭に趕赴するも、路上宰孔に遇い彼を勧めて會に与らずして返れとせり。此の後秦国却って此れによって漸々興起せり。此の林主として會盟変有りて、遲到する者は利を失して、形勢転じて他人に歸す。
升 臏詐龐子,夷□書木。伏兵卒發,矢至如雨。魏師驚亂,將獲為虜。
艮の卦が升の卦に変わる。孫臏詐を設けて龐涓を誘い馬陵道に入れて、樹皮を削去して木の上に字を題して記を為せり。伏兵驟然として發して、箭矢雨の如く落下して、魏軍驚乱して、主將擒えられて俘と為れり。此の林主として謀を用ゐて敵を制して、伏して後に動けば、師を出でば勝を得ん。若し龐涓の位に居れば則ち大凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
困 南行出城,世得大福。王姬歸齊,賴其所欲。以安邦國。
艮の卦が困の卦に変わる。南に往きて城を出でて行けば、一世倶に大福を得ん。王室の女兒斉国に出嫁して、此の門の親事に靠りて各々其の愿を遂げて、邦国此れによって安定せり。此の林主として南行して喜有り、親を結びて利を得て、家国两安なり、吉なり。
井 冬采薇蘭,地凍堅難。雖利奔走,暮無所得。(堅難一作冰堅)
艮の卦が井の卦に変わる。冬天薇菜と蘭草を采るに去れば、地凍えて又た硬くして挖り難し。縦い奔走に勤むと雖も、天黒く到れば仍ほ一の獲もなし。此の林主として時令合わずして、労して功なく、財を求めて遂わず。末の注「堅難」一本「氷堅」と作るを載す。
革 王喬無病,狗頭不痛。亡破失履,乏我欲速。
艮の卦が革の卦に変わる。仙人王子喬本より病痛なくして、狗頭も亦た疼を覚えず。可なりしも鞋子破れて丢了して、快くせんと想うも亦た快くする能わず。此の林主として本身恙無しと雖も器用缺有りて、速を欲して反って遲りて、事小滯有り。
鼎 宛馬疾步,盲師坐御。自不見路,中止弗到。
艮の卦が鼎の卦に変わる。大宛の良馬走ること飛ぶが如く快きに、車を駕る者は却って瞎眼の車夫なり。自己道路を見る能わずして、半途停下して終に到る能わず。此の林主として良材にして明主を失して、託する所人に非ずして、中道に廢す、凶なり。
震 求我難國,亡去我北。憂歸其城,反為我賊。
艮の卦が震の卦に変わる。危難の邦に到りて所須を求取するも、彼の人却って我が北辺より逃走去れり。心を憂忡忡として彼の城の中に回れば、反って我を害する仇敵と成れり。此の林主として求むる所人に非ずして、恩反って怨と成りて、交結して害を生ず、凶なり。
漸 比目四翼,安我邦國。上下無思,為我嘉福。
艮の卦が漸の卦に変わる。比目の魚両々として并行して、比翼の鳥四翼齊び飛ぶは、正に是れ上下相和の象にして、以て我が邦国を安定するに足れり。君臣の間猜疑の心なきは、便ち是れ我が大福なり。此の林主として内外協同して、和衷して済を共にす、吉なり。
歸妹 八材既登,以成嘉功。龍降庭堅,國無災凶。
艮の卦が帰妹の卦に変わる。《周礼》の載する所の珠、象、玉、石、木、金、革、羽の八種の材料斉備して用う可くして、於是美好の功業を成就せり。又た庭堅のごとき賢人降生して政を輔きて、国の中災凶なし。庭堅便ち是れ皐陶の字なり。此の林主として材備わりて人を得て、功成りて国安んず、大吉である。
豐 消弊穿空,家莫為宗。奴婢□走,子西父東。為身作凶。
艮の卦が豊の卦に変わる。家業消耗敗壞して空を穿き底を見るに到りて、一家の中事を主る可きの人なし。奴婢四散して逃走して、兒子西に往き父親東に往けり。此の林主として家道敗落して、骨肉離散して、自ら凶禍を招く、大凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
旅 鳥舞國城,邑懼卒驚。仁德不修,為下所傾。
艮の卦が旅の卦に変わる。怪鳥国都の城の上に盤旋起舞して、全城惶惧、突然大驚せり。只だ上に在る者仁徳を修めざるに因りて、終に下面の人に顛覆せられり。此の林主として妖異警を示して、徳を失し衆を失して、位保つ能わず、凶なり。
巽 五穀不熟,民苦困急。駕之南國,嘉樂有得。
艮の卦が巽の卦に変わる。五穀歉收して熟せずして、百姓困苦危急せり。車を駕して南方の国に遷往すれば、反って豊足と歓楽を得たり。此の林主として本土艱難にして遷徙して福を得て、南行利有り。
兌 黃裳建元,病得在身。福佑洋溢,封為齊君。賈市無門,富貴多餐。
艮の卦が兌の卦に変わる。《周易・坤卦》の六五の爻辞「黄裳元吉」に、《左伝》に魯人南蒯曾て此の爻を筮して得たりと載す。然るに徳位に配わざれば便ち病自身に在り。若し徳行相称なれば、則ち福佑洋溢して、以て一国の君に受封する可く、便ち經商に往かざるも、自ずから富貴の享くべき有り。此の林主として吉爻須らく徳配すべく、正を守れば則ち大吉にして、妄りに求めれば則ち病を致す。
渙 齊東郭廬,嬪於洛都。駿良美好,利得萬倍。
艮の卦が渙の卦に変わる。斉国東郭氏の女兒は、洛陽の京都に嫁して婦と為れり。車馬駿良にして、人物美好にして、獲る所の利万倍の多き有り。此の林主として遠く嫁して貴を得て、婚姻して富を致す、大吉である。
節 安床厚褥,不得失宿。棄我嘉宴,困於南國。投杼之憂,不成禍災。
艮の卦が節の卦に変わる。床鋪を安好して厚褥を墊けて、外に露宿するに至らず。豊盛の宴席を舍下するも、一時南方に困して、又た曾母杼を投ぐるがごとき流言の驚を受くるも、所幸終に禍災を釀成せず。此の林主として居る所安有りて、讒言驗せずして、虚驚して害なし。
中孚 內崩身傷,中亂無恆。雖有美粟,不得其食。
艮の卦が中孚の卦に変わる。内部崩壞、身体傷を受けて、中心擾乱して常度なし。縦い倉の裏好粮有るも、亦た嘴の裏に吃り到らず。此の林主として病内裏に在りて、心志定まらずして、資財有ると雖も享用を得ず、凶なり。
小過 出門逢患,與禍為怨。更有拏刺,傷我指端。
艮の卦が小過の卦に変わる。一たび門を出でれば便ち患難に遇上して、禍事と冤仇を結下せり。又た牽扯刺傷せられて、指尖の上に傷えり。此の林主として出行して災を招きて、訟に纏わりて傷を受く、傷重ならずと雖も仍ほ宜しく行を避くべし。
既濟 出入節持,南北無憂。行者即至,在外歸來。
艮の卦が既済の卦に変わる。出入進退倶に節制持守有りて、南來北往倶に憂患なし。出行の人將に到達せんとして、外に在る人も亦た歸來せんとす。此の林主として節を守れば則ち通じて、行止倶に宜しく、遠人返るを得、吉なり。
未濟 公孫駕車,載遊東齊。延陵說產,遺季紵衣。
艮の卦が未済の卦に変わる。公孫車を駕して、一路東游して斉国に到れり。《左伝》襄公二十九年に呉国の延陵季子と鄭国の子産一見して故の如くして、互いに縞帶紵衣を贈りて以て情誼を結ぶを載す。此の林主として出游して知己に遇い、往来して投贈して、交游得有り、吉なり。
漸の林(漸卦六十四林)
漸 別離分散,長子從軍。稚叔就賊,寡老獨安。莫為種瓜。
漸の卦が自ら変じても漸の卦のままである。一家人離別分散して、長子軍に従りて遠征して、年幼の小弟又た賊手に落入せり。只だ寡婦老人を残して独り家中に守りて、瓜を種る人を連ねてもなし。此の林主として骨肉離散して、労力尽く失して、田園荒廢す、凶なり。
乾 旦種穀豆,暮成藿羹。心之所願,志快意愜。
漸の卦が乾の卦に変わる。早晨谷子豆子を種下して、傍晚に便ち豆葉の羹を煮成せり。心の裏盼望する所倶に真と成りて、志気舒暢、心に称い意に快せり。此の林主として収效神速にして、求むる所便ち遂ぐ、吉なり。
坤 牡飛門啟,憂患大解,不為身禍。
漸の卦が坤の卦に変わる。門閂飛脱して大門自ら開きて、積壓の憂患一挙に解除して、再び自身の禍害と為らず。此の林主として壅塞頓に開きて、患難氷釋して、危を轉じて安と為す、吉なり。
屯 東山西山,各自止安。雖相登望,竟未同堂。(姤之坤)
漸の卦が屯の卦に変わる。東山と西山各々一方に安處せり。两边高きに登りて相望する能くするも、終に一堂に同處する能わず。此の林主として彼此心有ると雖も縁分合わずして、望む可くして即く可からずして、合を謀れば成らず。末の注此の林《姤》の《坤》と文同じを示す。
蒙 眾鳥所翔,中有大怪。九身無頭,魂驚魄去。不可以居。(震之蒙)
漸の卦が蒙の卦に変わる。群鳥盤旋の處に竟て大怪出現せり。九個の身にして頭なくして、見る者魂飛魄散せり。此のごとき地方如何と雖も居住する能わず。此の林主として居地妖有りて、驚恐して守を失し、宜しく速やかに遷避すべし、凶なり。末の注此の林《震》の《蒙》と文同じを示す。
需 交侵如亂,民無聊賴。追我濟西,狄人便殫。
漸の卦が需の卦に変わる。外敵交相に侵擾して、局面紛乱して、百姓依靠する所なし。済水以西に追撃して、狄人終に殲滅殆盡せられり。此の林主として先ず侵擾を受けて而して後に能く敵を克ちて、苦戰の後安を得ん。
訟 麟鳳所翔,國無咎殃。賈市十倍,復歸惠鄉。
漸の卦が訟の卦に変わる。麒麟と鳳凰の翱翔する所の地方は、国の中災殃なし。商を行いて利十倍を獲して、満載して彼の恩惠有るの郷里に回れり。此の林主として祥瑞境に在りて、經營大いに利あって、往返倶に吉なり。
師 鑿井求玉,非卞氏宅。身困名辱,勞無所得。
漸の卦が師の卦に変わる。井を挖りて去りて美玉を求むるも、彼処は又た卞和璞玉を得たるの地方に非ず。結果身子困頓して、名声辱を受けて、力気を白費して一の得もなし。此の林主として求むるに道に非ずして、在る所宝なし、労苦して功なし、凶なり。
比 文山鴻豹,肥腯多脂。王孫獲願,載福巍巍。
漸の卦が比の卦に変わる。文山の中大雁と豹子倶に肥壮して脂多し。王孫前に往きて田獵して、心愿を遂げて、満載して歸りて、受くる所の福高大隆盛せり。此の林主として獵する所豊厚にして、愿の如くに償いて、福気巍然たり、大吉である。
小畜 周成之隆,刑措除凶。太宰費佑,君子作仁。
漸の卦が小畜の卦に変わる。周成王の時国勢隆盛にして、刑罰擱置して用ゐずして凶乱自ら除ゆ、史の成康の世刑措すること四十余年と称す。太宰力を尽して輔佑して、君子人人仁を行せり。此の林主として政清く刑省かれて、上下和仁して、太平の象、大吉である。
履 珪璧琮璋,執贄見王。百里甯戚,應聘齊秦。(需之井,否之訟)
漸の卦が履の卦に変わる。手に珪、璧、琮、璋の此れらの玉製の見面の礼を捧げて去りて君王を朝見せり。百里奚秦国の聘に應じ、寧戚斉桓公の用を受くるは、倶に微賤より卿相に登れり。此の林主として賢者聘を受けて、礼を執りて君に見ゆ、身を進むる路有り、吉なり。末の注此の林《需》の《井》、《否》の《訟》と文同じを示す。
泰 穿空漏敝,破壞殘缺。陶弗能治,瓦甓不鑿。
漸の卦が泰の卦に変わる。器皿洞を穿きて漏泄して敗壞して、損壞殘缺せり。陶匠も亦た修復する能わずして、磚瓦更に形を凿成する能わず。此の林主として器物已に壞れて、補救するに従なく、事を謀れば成ること難し、凶なり。
否 鴻飛循陸,公出不復,伯氏客宿。(損之蹇)
漸の卦が否の卦に変わる。《周易・漸卦》に「鴻陸に漸す」と説きて、大雁陸地に沿い飛び去りて返らず。主公出行して一去して回らずして、伯氏只だ他郷に客居して宿を投ぐるのみ。此の林主として出行して返らずして、羈旅して外に在りて、家人失望す、凶なり。末の注此の林《損》の《蹇》と文同じを示す。
同人 蝦蟆群聚,從天請雨。雲雷連集,應時輒下。得其所願。(大過之升)
漸の卦が同人の卦に変わる。蛤蟆群を成して聚集鳴叫するは、上天に向かい雨を祈るに似たり。雲と雷接連に匯集して、時に應じて便ち大雨を降下して、正に衆人の心愿を遂げたり。此の林主として祈求して應有りて、旱して甘霖を得て、愿う所便ち得る、吉なり。末の注此の林《大過》の《升》と文同じを示す。
大有 先弱無子,不能自理。為民雖憂,終不離咎。管子治國,侯伯賓服。乘輿八百,尊我恆德。
漸の卦が大有の卦に変わる。起初勢弱くして又た後嗣なくして、自己料理するも亦た來らずして、百姓の為に憂労するも、仍ほ過咎を免れず。後に管仲国政を主持して、諸侯方伯紛紛として賓服して、兵車八百乘にして、人人此の久長の徳を尊崇せり。此の林主として初め困して後に興り、賢相を得て霸業成る、先ず難にして後に吉なり。
謙 搖梅折枝,與母別離,絕不相知。
漸の卦が謙の卦に変わる。梅樹を搖動して枝子を折断するは、子女の母親と分離するが如くして、従此音信断絶して、彼此消息を知らず。此の林主として骨肉分張して、離れて聚り難し、凶なり。
豫 盛中不絕,衰老復拙。盈滿減虧,瘯□腯肥。鄭昭失國,重耳興起。(一雲去必衰,羸去卻肥。鄭昭失國,重耳得時。)
漸の卦が豫の卦に変わる。正盛の時連綿不絶にして、衰老の後便ち笨拙無能せり。盈滿の後必ず虧減有るは、正に牲口の瘦弱の瘯蠡の疾より博碩肥腯に轉ずるが如くして、此れ消えて彼れ長ず。鄭昭公国を失して晋公子重耳興起するは、正に是れ此のごとき更替なり。此の林主として盛衰相代して、彼失い此れ得、盛に居る者は宜しく其の衰を防ぐべし。末に一本の異文を附す。
隨 聞虎入邑,心欲□匿。走據陽德,不見霍叔。絕無憂慝。
漸の卦が随の卦に変わる。老虎城に進み入りと聞きて、心の裏只だ地方を找りて蔵せんと想えり。奔走の間陽に向かい徳有るの處を占住して、霍叔のごとき禍の人に碰上せずして、終に絶に憂患邪祟なし。此の林主として険を避けて所を得て、凶人遇わずして、驚有りて険なし。原文缺字有り、□を以て之を存す。
蠱 隨時逐便,不失利門。多獲得福,富於封君。
漸の卦が蠱の卦に変わる。時勢に順應して、便に因りて利を取りて、一處の財を生ずるの門路を錯過せず。獲る所甚多にして福を蒙りて、富厚封を受くる君侯を超過せり。此の林主として時を識りて賈を善くして、財を積みて富を致す、大吉である。
臨 禹作神鼎,伯益衒指。斧斤既折,憧立獨倚。賣市不售,枯槁為福。
漸の卦が臨の卦に変わる。大禹神鼎を鑄造して、伯益旁に在りて指點夸示せり。可なりしも斧斤倶に已に折断して、工匠只だ怔々として独り倚立するのみ。東西集市に拿到するも又た売却する能わずして、反って是れ枯槁清素を守りて福分と成れり。此の林主として器廢れて工窮まり、貨滯して售り難く、貧に安んぜば方に咎なからん。
觀 春鴻飛東,以馬貨金。利得十倍,重載歸鄉。
漸の卦が観の卦に変わる。春天大雁東に向かいて飛び去りて、商人も亦た時に趁りて馬匹を以て金銭を換取せり。利十倍を獲して、満載して郷に歸れり。此の林主として時に順いて經營して、貿易大いに利あって、往返獲有り、吉なり。
噬嗑 金齒鐵牙,壽考宜家。年歲有餘,貪利者得。雖憂無咎。
漸の卦が噬嗑の卦に変わる。牙歯金鉄の如く堅くして、是れ長寿して家に宜しきの相なり。年成余粮有りて、逐利の人を連ねても亦た獲有り。些かの憂慮有ると雖も、終に過錯有らず。此の林主として体健くして家安んじ、財用余り有りて、小憂害なし。
賁 膏澤沐浴,洗去汙辱。振除災咎,更與壽福。(浴一作德)
漸の卦が賁の卦に変わる。恩沢を承受すること沐浴の如くして、身の上の汚辱を洗刷して乾凈せり。災殃過咎一幷に振除して、別に長寿と福気を換來せり。此の林主として恩を蒙りて恥を滌して、災を轉じて福と為す、大吉である。末の注「浴」の字一本「徳」と作るを載す。
剝 履階登墀,高升峻巍。福祿洋溢,依天之威。
漸の卦が剥の卦に変わる。台階を踏みて殿庭に登上して、一歩歩高升して崇峻の位に到れり。福禄充溢して、全く上天の威靈の庇護に憑れり。此の林主として升遷顯達して、禄位豊厚なり、大吉である。
復 坤厚地德,庶物蕃息。平康正直,以綏大福。
漸の卦が復の卦に変わる。大地厚徳して物を載せて、万物其の上に蕃衍生息せり。《尚書・洪範》に「平康正直」と説きて、世道平康の時正直の道を以て事を行えば、便ち能く大福を安享せん。此の林主として根基厚実して、生養成有りて、正を守りて福を得、大吉である。
旡妄 絕域異路,多所畏惡。使我驚惶,思吾故處。
漸の卦が旡妄の卦に変わる。身極遠の異域に在りて、陌生の道路を走りて、處處人をして畏懼厭惡せしむ。心の裏驚惶不安にして、只だ己が旧居を思念せり。此の林主として遠行安ならずして、客地驚多くして、歸を思うを宜とす。
大畜 襁褓孩幼,冠帶成家。出門如賓,父母何憂。(遯之恆)
漸の卦が大畜の卦に変わる。襁褓の中の幼兒長成大人して、冠を加え帶を束ねて家を成し業を立てり。門を出でて人を待てば賓客を接待するが如く恭敬にして、父母還た何の憂愁すべきかあらん。此の林主として子弟材を成して、家風嚴整して、父母安心せり、吉なり。末の注此の林《遯》の《恒》と文同じを示す。
頤 一尋百節,綢繆相結。其指詰屈,不能解脫。
漸の卦が頤の卦に変わる。八尺長の繩索上百個の結を打ちて、纏繞糾結して一と處に在り。頭緒曲折にして尋ね難くして、怎麼も解開する能わず。此の林主として糾纏牽連して、事端解け難く、久困の象なり。
大過 鷹鸇獵食,雉兔困極。□走見尾,為人所賊。
漸の卦が大過の卦に変わる。鷹隼四出して食を獵して、野鶏と兎子追われて困窘して極まりたり。倉皇奔逃の時尾巴を露出して、終に人に捕殺せられり。此の林主として強者に逼せられて、身を蔵すること密ならずして、害に遭うの凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
坎 危坐至暮,請求不得。膏澤不降,政戾民忒。
漸の卦が坎の卦に変わる。端坐して日暮を待つも、請求する事仍ほ獲准せず。雨露降らずして、政令乖戾にして百姓変乱せり。此の林主として上情通ぜずして、恩沢下らずして、事を求めて成らず、凶なり。
離 剛柔相呼,二姓為家。霜降既同,惠我以仁。
漸の卦が離の卦に変わる。剛と柔相互に唱和して、两姓一家を結成せり。霜降の時期の如くに礼を成して、彼此仁厚を以て相待せり。古礼霜降に女を逆うは、正に婚期に合せり。此の林主として陰陽相配して、婚姻時を得て、家室和順せり、吉なり。
咸 慈母念子,饗賜德士。蠻夷來服,國人歡喜。
漸の卦が咸の卦に変わる。慈母兒子を思念して、食を設けて徳有るの士を賞賜せり。蠻夷の邦を連ねても來りて歸服して、国人歓喜せざるなし。此の林主として上恩養有りて、遠人化に向かいて、国を挙げて同じく慶ばん、吉なり。
恆 良夫孔姬,負悝登臺。欒季不扶,衛輒走逃。
漸の卦が恒の卦に変わる。《左伝》哀公十五年に衛国の孔姫と家臣渾良夫合謀して、孔悝を劫持して台に登らしめて盟を結ぶを脅迫せり。欒氏の季扶を扶助するを肯ぜずして、衛出公輒只だ出奔逃亡するのみ。此の林主として内乱閨門より起りて、君臣相脅して、国主出走す、大凶なり。
遯 子長忠直,季氏為賊。禍及無嗣,司馬失福。
漸の卦が遯の卦に変わる。人の子と為りて既に長じ且つ忠直なるも、季氏の一黨却って乱賊を做れり。禍事後嗣を断絶するに波及して、兵を掌る司馬も亦た福禄を失去せり。此の林主として忠直して陷に遭い、權門禍を為して、家門衰絶す、凶なり。
大壯 節慶之德,不涉亂國。雖昧無光,民受大福。
漸の卦が大壮の卦に変わる。節を守りて慶可きの徳行は、乱邦に涉足せざるに在り。一時晦暗にして光なく人に知られざると雖も、百姓却って此れによって大福を蒙受せり。此の林主として乱を避けて正を守り、光を韜りて晦を養えば、反って衆人の利と成る、吉なり。
晉 驅羊南行,與福相逢。狼驚我馬,虎盜我子。悲恨自咎。
漸の卦が晋の卦に変わる。羊群を趕りて南に往きて、本より正に福気と相遇せり。不料野狼我が馬を驚かして、猛虎又た我が小羊を叼去せしめて、只だ悲傷悔恨、自ら責めて已まざるを残せり。此の林主として先ず得て後に失して、楽極まりて悲を生じ、途中険に遇う、凶なり。
明夷 尼父孔丘,善釣鯉魚。羅網一舉,獲利萬頭。富我家居。
漸の卦が明夷の卦に変わる。尼父孔丘垂釣を善くして鯉を得て、其の子便ち此れによって鲤と名づけたり。一挙に羅網を撒下して、獲る所万を以て計して、我が家道をして富足せしむ。此の林主として其の技を善く用ゐて、一挙大いに獲して、家業豊饒せり、吉なり。
家人 本根不用,華葉落去,更為孤嫗。
漸の卦が家人の卦に変わる。根本弃置して用ゐざれば、花と葉便ち紛紛として凋落せり。頭に到りて只だ一個の孤零零の老婦を残すのみ。此の林主として本を舍てて養を失して、家門凋零して、孤苦して依なし、凶なり。
睽 設罟捕魚,反得居諸。負困竭忠,伍氏夷誅。
漸の卦が睽の卦に変わる。網を張りて魚を捕るも、撈上する所は却って魚に非ず。伍子胥困厄を背負して、忠誠を竭尽するも、最終に反って夷滅誅戮に遭う。此の林主として求むる所遂わず、忠を尽して禍を受けて、忠にして弃せられん、大凶なり。
蹇 敏捷亟疾,如猿集木。彤弓雖調,終不能獲。
漸の卦が蹇の卦に変わる。身手敏捷迅疾にして、猿猴の樹上に騰躍するが如し。縦い朱漆の良弓を調えて手に称えしむるも、終に之を射中する能わず。此の林主として對手靈變して制し難く、器利にして施す所なく、謀取するを得ず。
解 冠帶南行,與福相期。邀於嘉國,拜位逢時。
漸の卦が解の卦に変わる。衣冠を整肅して帶を束ねて南に往きて、福気と期の如く相會せり。美好の邦国に於て礼遇邀請を受けて、官位を拜受して正に其の時に逢えり。此の林主として南行して合に遇い、爵を受けて時を得、吉なり。
損 年豐歲熟,政仁民樂,祿入獲福。
漸の卦が損の卦に変わる。年成豊稔にして五穀成熟して、政令仁厚にして百姓安楽せり、俸禄門に入りて福気を獲得せり。此の林主として上下相安して、財禄双至なり、大吉である。
益 築闕石巔,立基水源。疾病不安,老孤無鄰。
漸の卦が益の卦に変わる。楼闕を乱石の頂に築きて、地基を泉水の源頭に立てて、湿冷にして穩かならず。此れによって疾病身に纏りて安寧を得ずして、年老孤单して隣居を連ねてもなし。此の林主として地を擇ぶに宜を失して、根基固からずして、病多くして孤寂せり、凶なり。
夬 逐狐東山,水遏我前。深不可涉,失利後還。(蒙之蠱,姤之巽,艮之臨)
漸の卦が夬の卦に変わる。東山に到りて狐狸を追逐するも、大水前に横たわりて去路を擋住せり。水深くして徒渉する能わずして、只好く時機を失掉して退回するのみ。此の林主として前程阻有りて、逐う所獲なし、宜しく退守して時を待つべし。末の注此の林《蒙》の《蠱》、《姤》の《巽》、《艮》の《臨》と文同じを示す。
姤 麟子鳳雛,生長嘉國。和氣所居,康樂溫仁。邦多聖人。
漸の卦が姤の卦に変わる。麒麟の子、鳳凰の雛は、美好の邦国に生長せり。彼処は是れ和気の聚まる所の地にして、安康歓楽、温厚仁愛にして、国の中聖賢多し。此の林主として生まれて盛世に逢い、賢才輩出して、家国同じく慶ばん、大吉である。
萃 西行求玉,莫得卞璞。反得凶惡,使我驚惑。
漸の卦が萃の卦に変わる。西に往きて美玉を尋求するも、却って卞和のごとき璞玉を得ず。反って凶惡の事に碰上して、我をして又た驚き又た惑わしむ。此の林主として遠く求めて獲なくして、反って凶险を招きて、出行利あらず。
升 心狂志悖,聽視聾盲。正命無常,下民多孽。
漸の卦が升の卦に変わる。心思狂乱、志向悖謬にして、耳目聾盲の如し。政令法度反復無常にして、底下の百姓災禍重重せり。此の林主として上昏くして下乱れて、擧措拠を失して、民其の殃を受く、凶なり。
困 南國少子,才略美好。求我長女,賤薄不與。反得醜惡,後乃大悔。(噬嗑之夬)
漸の卦が困の卦に変わる。南方の国の一位の少年は、才干謀略倶に出衆して、來りて我が家の長女を求娶せり。只だ其の門第貧薄を嫌て許さざるに因りて、結果女兒別に一個の醜惡の人に嫁して、事後始めて大いに後悔せり。此の林主として婿を擇ぶに當を失して、貌を以て人を取りて、追悔及ぶ可ならず、凶なり。末の注此の林《噬嗑》の《夬》と文同じを示す。
井 透迤高源,家伯妄施,亂其在官。
漸の卦が井の卦に変わる。水源高遠曲折にして、本より序を以て引導すべきに、家伯却って胡乱に施為せり。《詩経・小雅・十月之交》「家伯維れ宰」の擅權を譏刺して、終に官府の事を攪乱せしめり。此の林主として事に當たる者妄為して、政令序を失して、公事清ならず、凶なり。
革 謝恩拜德,東歸吾國,歡樂有福。
漸の卦が革の卦に変わる。受くる所の恩徳を叩謝して、東に向かいて己が邦国に回りて、一路歓楽して福を蒙れり。此の林主として恩を受けて歸を得て、賓主两歓にして、出入倶に吉なり。
鼎 雞鳴同舉,思配無家。執佩持鳧,莫使致之。
漸の卦が鼎の卦に変わる。鶏叫の時一同に起身するも、婚配を成さんと想うも歸る可きの家室なし。手の裏佩玉を拿りて野鴨を提げて聘礼と為すも、人彼に替えて傳達するを為すなし。此の林主として意有りて媒なくして、婚事成らずして、求むる所達し難し。
震 凶重憂慮,身受誅罪,神不能解。
漸の卦が震の卦に変わる。凶险重重、憂慮不断にして、自身誅罰の罪を受けんとして、神明明を連ねても解救する能わず。此の林主として罪咎已に成りて、祈禳效なく、大凶なり。
艮 虎豹熊羆,遊戲山谷。仁賢君子,得其所欲。(謙之中孚)
漸の卦が艮の卦に変わる。虎豹熊羆山谷の間に於て自在に游嬉して、各々其の地を得たり。仁厚賢明の君子も亦た一樣に心に称い愿を遂げたり。此の林主として各々其の所に安んじて、求むる所心に随う、吉なり。末の注此の林《謙》の《中孚》と文同じを示す。
歸妹 海隅遼右,福祿所至。柔嘉蒙祉,尤夷何咎。
漸の卦が帰妹の卦に変わる。遠く海辺と遼東以西の地は、正に是れ福禄の到る所の處なり。柔順美善の徳を秉持すれば便ち福祉を蒙りて、夷方に居ると雖も又た何の過錯かあらん。此の林主として遠方福を得て、徳を以て俗を化す、吉なり。
豐 華首之山,仙道所遊。利以居止,長無咎憂。(謙之井)
漸の卦が豊の卦に変わる。華首の山は、是れ神仙往来遨游する所の地方にして、居住停留するに宜しく、長久過咎と憂患なし。此の林主として地を擇びて清勝にして、安居して長く吉なり。末の注此の林《謙》の《井》と文同じを示す。
旅 甲乙戊庚,隨時轉行。不失常節,萌芽律屈。咸達生出,各順其類。(歸妹之□)
漸の卦が旅の卦に変わる。甲乙戊庚等の日辰時序に随いて推移運行して、常度節令を失わず。草木の萌芽律吕に依りて屈伸して、時に到れば便ち一斉に生發して、各々其の種類に按じて生長せり。此の林主として時に循りて動きて、各々其の宜を得て、理に順えば則ち吉なり。末の注の示す所の卦名殘缺して、□を以て之を存す。
巽 跂躓未起,失利後市,不得鹿子。
漸の卦が巽の卦に変わる。脚を踮きて行かんと欲するも却って地に绊倒して、還た爬起こる能わず。行情を錯過して、集市に趕到して已に晚しして、一頭の小鹿を連ねても獵着せず。此の林主として動きて時を失して、求むる所落空して、營謀に利あらず。
兌 惟恃自負,不志於下。血從地出,誅罰失理。
漸の卦が兌の卦に変わる。一味に自恃して高傲して、下情を體察する心なし。以致地の裏より血を冒出して、刑罰誅戮全く其の理を失せり。此の林主として驕慢して衆を失し、刑を用ゐるに當たらずして、慘禍を招致す、大凶なり。
渙 江河淮海,天之都市。商人受福,國家饒有。
漸の卦が渙の卦に変わる。長江、黄河、淮水、大海は、是れ上天の設けたる大都会集市なり。商人此に於て福利を蒙りて、国家も亦た之に因りて富饒せり。此の林主として水陸商を通じて、財貨流通して、公私倶に足る、大吉である。
節 節情省欲,賦斂有度。家給人足,且貴且富。
漸の卦が節の卦に変わる。情欲を節制し貪求を減省して、賦税を征收するに節度有り。於是家家充裕、人人富足して、既に尊貴を得て又た財富を得たり。此の林主として自ら奉ずるに節有りて、取与に度有りて、富貴保つ可し、吉なり。
中孚 牝馬鳴呴,求呼其潦。雲雨大會,流成河海。
漸の卦が中孚の卦に変わる。母馬嘶鳴呼喚するは、積水の降臨を祈求するに似たり。雲と雨大挙して會合して、流淌して河海を匯成せり。此の林主として求むる所應有りて、潤沢大いに來りて、事聚合に於て成る、吉なり。
小過 日月之塗,所行必到,無有患故。
漸の卦が小過の卦に変わる。日月運行の軌道に沿い行けば、去る所の處必ず到達して、患難事故なし。此の林主として正道に循りて行きて、目標期す可くして、出入平安せり、吉なり。
既濟 乘風而舉,與飛鳥俱。一舉千里,見吾愛母。(明夷之鼎)
漸の卦が既済の卦に変わる。風を乘りて飛起して、飛鳥と翼を并びて行けり。一たび飛べば便ち千里にして、終に我が思念する母親を得見せり。此の林主として勢を借りて遠行して、迅速にして愿の如くして、骨肉重ねて逢う、吉なり。末の注此の林《明夷》の《鼎》と文同じを示す。
未濟 陰配陽事,臥木反立。君子攸行,喪其官職。
漸の卦が未済の卦に変わる。陰柔の人陽剛の事に插手して、本より横臥すべきの木頭反って竪立して、上下顛倒せり。君子此の時出行すれば、己が官職を丢了せん。此の林主として名分錯乱して、陰陽位を失して、仕宦利あらず、凶なり。
帰妹の林(帰妹卦六十四林)
歸妹 堅冰黃鳥,常悲哀鳴。不見甘粒,但歡藜荊。數驚鷙鳥,為我心憂。
帰妹の卦が自ら変じても帰妹の卦のままである。堅氷未だ解けざるの時、《詩経・秦風・黄鳥》の詠ずる黄鳥長声に哀鳴せり。一粒の好粮を見ずして、只だ藜蒿荊棘の棲む可き有り。又た屢々凶猛の鷙鳥に驚起せられて、人をして心中憂愁せしむ。此の林主として時寒くして食乏しく、常に欺凌を受けて、憂懼安ならず、凶なり。
乾 荊木冬生,司寇緩刑。威權在下,國亂且傾。
帰妹の卦が乾の卦に変わる。荊木冬天に於て常に反して生發して、刑を主る司寇又た刑罰を放寛せり。威權臣下の手裏に落到して、国家便ち動乱して以て傾覆せり。此の林主として綱紀松弛して、權柄下に移りて、国危亡有り、凶なり。
坤 喘牛傷暑,弗能耕畝。草萊不闢,年歲無有。(丙吉問牛喘)
帰妹の卦が坤の卦に変わる。牛粗氣を喘ぐは、是れ暑熱に傷せられて、田に下りて耕作するに法なし。荒草叢生の田地開辟し出だせずして、一年到頭収成なし。漢の丞相丙吉路に牛の喘ぐに遇いて問うは、正に是れ時候の変を察するなり。此の林主として天時和を失して、耕作成らずして、歲歉しく収なし、凶なり。
屯 魚欲負流,眾不同心,至德潛伏。
帰妹の卦が屯の卦に変わる。魚流れに逆い上らんと欲するも、同伴各々異心を懐けり。徳行最高の人只好く潜蔵して露さず。此の林主として衆志斉わずして、勢に逆いて行き難く、賢者宜しく隱忍して時を待つべし。
蒙 春耕有息,秋入利福。獻豜大豭,以樂成功。
帰妹の卦が蒙の卦に変わる。春天耕作して労息有りて、秋天収入して利を獲て福を得たり。《詩経・豳風・七月》に大獣を獵して「豜を公に献ず」と説きて、衆人大猪を献上して一年の成功を慶賀せり。此の林主として春に作り秋に成りて、労して獲有りて、歓慶の吉なり。
需 生有聖德,上配太極。皇靈建中,授我以福。(家人之需)
帰妹の卦が需の卦に変わる。生まれて便ち聖人の徳行有りて、上太極の道と相配する可し。天神中正の道を樹立して、福気を我に交付せり。此の林主として徳天心に合して、上より福を受く、大吉である。末の注此の林《家人》の《需》と文同じを示す。
訟 右撫琴頭,左手援帶。凶訟不已,相與相戾。失利而歸。
帰妹の卦が訟の卦に変わる。右手琴頭を按じて、左手又た去りて衣帶を扯れば、手忙しく脚乱れん。凶险の官司纏訟して休まずして、彼此相互に抵触して、最後に本銭を折りて家に回れり。此の林主として争訟止まずして、两相違逆して、財を破りて返る、凶なり。
師 炙魚拈斗,陰倚碩鼠。舌不思味,譏發為祟。笮不得去。
帰妹の卦が師の卦に変わる。烤好の魚剛く斗の中に夾上するも、暗處却って《詩経・魏風・碩鼠》の譏る所の大老鼠に倚れり。食物口に到りて品を味わう心なくして、譏議一たび起れば便ち祟害と成りて、逼迫せられて身を脱する能わず。此の林主として小人食を竊みて、謗議身に纏りて、制を受けて去ること難し、凶なり。
比 申酉說服,牛馬休息。君子以安,勞者得歡。
帰妹の卦が比の卦に変わる。申酉の時分に到りて衣装を卸下して歇息して、牛馬も亦た休養を得たり。君子此れによって安適して、労苦の人歓楽を得たり。此の林主として労逸節有りて、上下倶に安んず、吉なり。
小畜 堯門尹爵,聖德增益。使民不疲,安無怵惕。
帰妹の卦が小畜の卦に変わる。堯の門下功を按じて爵を授けて、聖人の徳行日に增益せり。百姓を役使して疲敝せしめずして、人人安居して驚懼なし。此の林主として賞罰當を得て、政簡くして民安んず、吉なり。
履 孤公寡婦,獨宿悲苦。目張耳鳴,莫與笑語。(訟之歸妹)
帰妹の卦が履の卦に変わる。偶を失せる老翁と寡を守る婦人は、各々独宿して悲苦せり。眼睛を睜いて耳の中鳴を作して、身辺説笑する可きの人一個もなし。此の林主として孤独して偶なく、夜眠を成さずして、憂苦の凶なり。末の注此の林《訟》の《帰妹》と文同じを示す。
泰 外得好畜,相與嫁娶。仁賢集聚,諮詢厥事。傾奪我城,使家不寧。
帰妹の卦が泰の卦に変わる。外に在りて好い牲畜を得て、両家婚姻を結成せり。仁人賢士一處に聚りて、共同に此の事を商議せり。不料後に人我が城邑を傾覆搶奪して、家宅をして安寧を得ざらしむ。此の林主として先ず喜慶有りて後に侵奪に遭い、吉の中凶を蔵して、須らく後患を防ぐべし。
否 煎砂盛暑,鮮有不朽。去河千里,敗我利市。老手育馬,去之何悔。
帰妹の卦が否の卦に変わる。盛暑の中沙の上に於て煎晒して、東西腐壞せざるを得る者甚だ少し。河を離るること千里の遠にして、買売を做すも亦た成らず。倒れて是れ老練の人馬を養うは、便ち売出去ると雖も亦た悔すべき何もなし。此の林主として時と地倶に宜からずして、經營損を受く、唯だ本業を守るのみ悔を免る可し。
同人 甲乙戊庚,隨時轉行。不失常節,萌芽律屈。咸達出生,各樂其類。(漸之旅)
帰妹の卦が同人の卦に変わる。甲乙戊庚等の日辰時序に依りて推移して、常度を失わず。草木の萌芽律吕に依りて屈伸して、時に到れば便ち一斉に生發して、各々其の類に按じて各々其の楽を得たり。此の林主として時に順いて動きて、万物各々安んず、吉なり。末の注此の林《漸》の《旅》と文同じを示す。
大有 依宵夜遊,與君相遭。除解煩惑,使心不憂。
帰妹の卦が大有の卦に変わる。夜色に趁りて出游して、恰好に君と相遇せり。一席の話煩悶疑惑を解開して、心の中をして再び憂愁せざらしむ。此の林主として暗の中合に遇い、疑難釋を得て、憂を轉じて安と為す、吉なり。
謙 天有絕明,巧言為讒。覆白汙玉,顏叔哀音。
帰妹の卦が謙の卦に変わる。上天本より一切を洞察するの明鑑有るも、可なりしも巧言の徒専ら讒を進むるを事とせり。《詩経・小雅・巧言》正に此の事を刺して、讒言能く白を説いて黑と為し、美玉を説いて汚物と為して、顔叔を逼って哀鳴を發せしむ。此の林主として讒口是非を混淆して、正直屈を受く、凶なり。
豫 逐利三年,利走如神。展轉東西,如鳥避丸。
帰妹の卦が豫の卦に変わる。財利を追逐して三年を追えど、利頭却って神靈の如く跑げて影蹤無し。東奔西走して輾轉定まらずして、飛鳥の彈丸を躲避するが如し。此の林主として財を求めて獲なく、奔波労碌して、且つ須らく危を防ぐべし、不吉なり。
隨 堤防壞決,河水泛溢。傷害稼穡,民流去室。君孤獨宿,沒溺我邑。
帰妹の卦が随の卦に変わる。堤防潰決して、河水泛濫四溢して、庄稼淹を被りて、百姓流離して所を失せり。国君孤零零として独宿して、城邑大水の中に淹沒せり。此の林主として水患災を成して、家国倶に損す、大凶なり。
蠱 陰陽隔塞,許嫁不答。旄丘新臺,悔往嘆息。(晉之無妄)
帰妹の卦が蠱の卦に変わる。陰陽隔絶不通にして、已に許したる婚事對方却って回應せず。《詩経・邶風》の《旄丘》人に怨望し、《新台》衛宣公の子の妻を奪うを刺すは、嫁ぐ所人に非ずして、只好く悔恨歎息するのみ。此の林主として婚事阻絶して、託する所偶に非ずして、悔恨の凶なり。末の注此の林《晋》の《無妄》と文同じを示す。
臨 伯夷叔齊,貞廉之師。以德防患,憂禍不存。(泰之乾,革之否,比之剝)
帰妹の卦が臨の卦に変わる。伯夷、叔齊国を讓りて節を守るは、是れ堅貞清廉の表率なり。徳行を以て患難を防備して、憂愁と禍事自然に存留せず。此の林主として廉を守りて退讓して、徳を以て禍を免る、吉なり。末の注此の林《泰》の《乾》、《革》の《否》、《比》の《剥》と文同じを示す。
觀 陽為狂悖,拔劍自傷,為身生殃。(明夷之井)
帰妹の卦が観の卦に変わる。陽剛甚だ過ぎて狂悖に流れて、劍を拔出して反って自己を傷して、自身に替えて禍殃を招来せり。此の林主として剛愎して妄動して、自ら其の身を傷する、凶なり。末の注此の林《明夷》の《井》と文同じを示す。
噬嗑 進士為官,不苦服田,獲壽保年。
帰妹の卦が噬嗑の卦に変わる。身を進むる途に由りて官を做して、必ずしも田に下りて耕作するの苦を吃らずして、還た長寿して年を保つ能し。此の林主として労役を脱離して、身を進めて禄を得て、身安んじて寿永し、吉なり。
賁 耕石不生,棄禮無名。縫衣失針,襦褲弗成。
帰妹の卦が賁の卦に変わる。石頭の上に於て耕種しても苗を長出せずして、礼法を拋弃すれば便ち名分を得ず。衣服を縫いて針を丟失して、短襖長褲倶に做り成らず。此の林主として為す所其の法を得ずして、憑借を缺少して、事事成らず、凶なり。
剝 靈龜陸處,一旦失所。伊子復耕,桀亂無輔。
帰妹の卦が剥の卦に変わる。靈龜水を離れて陸地に處りて、一旦憑依を失せり。伊尹重たび有莘の野に回りて田を耕し、夏桀昏乱にして輔佐する人なし。此の林主として賢者退隱して、上良弼なく、国政守を失し、凶なり。
復 室當原口,漂溺為海。財產殫盡,衣食無有。
帰妹の卦が復の卦に変わる。房屋正に水源の出口に対して、一たび大水を發すれば便ち漂沒して一片の汪洋と成れり。財産荡然として存せずして、衣食倶になし。此の林主として居地険に臨みて、水厄家を破る、大凶なり。
旡妄 雞方啄粟,為狐所逐。走不得食,惶懼喘息。
帰妹の卦が旡妄の卦に変わる。鶏剛く粟米を啄到するも、便ち狐狸に追趕せられり。一路逃竄して食を吃り上ぐる能わずして、驚慌して直に喘氣せり。此の林主として剛く得る所有れば便ち奪に遭い、驚惶安ならず、不吉なり。
大畜 家在海隅,繞旋深流。豈敢憚行,無木以趨。
帰妹の卦が大畜の卦に変わる。家海角の上に住して、四面倶に深水に盤繞せられり。並びに門を出でるを害怕するに非ずして、實に是れ趁行する可きの舟楫木筏なし。此の林主として地勢に困を受けて、心有りて具なくして、行かんと欲して得ず。
頤 他山之錯,與璆為仇。來攻吾城,傷我肌膚。國家騷憂。(明夷之井)
帰妹の卦が頤の卦に変わる。《詩経・小雅・鶴鳴》に他山の石以て玉を攻る可しと説くも、如今此の磨石却って美玉と冤家を結成せり。敵人來りて我が城池を攻して、我が肌膚を傷して、国を挙げて騷動憂懼せり。此の林主として外侮身に加りて、器我が害と為して、邦国寧ならず、凶なり。末の注此の林《明夷》の《井》と文同じを示す。
大過 弊鏡無光,不見文章。少女不嫁,棄於其公。
帰妹の卦が大過の卦に変わる。破舊の鏡子再び明亮せずして、紋飾文采を照出する能わず。年少の女兒嫁し去る能わずして、彼女の父親に家の中に弃せられり。此の林主として昏昧して文なく、婚配時を失して、弃せられんの凶なり。
坎 大蛇巨魚,相輔殺之。君臣隔塞,郭公失廬。
帰妹の卦が坎の卦に変わる。大蛇と巨魚相互に勾連して而して後に人に合力して誅殺せられり。君臣の間隔閡堵塞して、《春秋》の記する所の郭公此れによって国土居所を丢了せり。此の林主として上下通ぜずして、強梁自ら斃れて、国主位を失し、凶なり。
離 絕世無嗣,福祿不存。精神渙散,離其躬身。
帰妹の卦が離の卦に変わる。後代を断絶して子嗣なくして、福禄も亦た再び存留せず。精神渙散飄蕩して、己が身体を離開せり。此の林主として家祀將に絶えんとして、元神離散す、大凶なり。
咸 文君之德,養人致福。年無胎夭,國富民寶。憂者之望,曾參盜息。
帰妹の卦が咸の卦に変わる。文王のごとき君徳にして、百姓を養育して福気を招来せり。年成の中胎死夭折の事なくして、国家富足して、人民便ち是れ国宝なり。憂愁の人も亦た轉機を盼到して、曾參誣に遭うがごとき流言を連ねても止息せり。此の林主として上徳民を養いて、謡諑自ら消えて、家国倶に吉なり。
恆 合歡之國,喜為我福。東嶽南山,朝濟成恩。
帰妹の卦が恒の卦に変わる。和睦歡洽の邦国に處りて、喜慶便ち是れ我が福気なり。東岳を朝拜して南山に面對して、早晚祭享して恩沢を成就せり。此の林主として上下歓合して、祭禱應を得て、福を受くるの吉なり。
遯 憂人之患,履悖易顏。為身禍殘,率身自守。與喜相抱,長子成考,封受福佑。
帰妹の卦が遯の卦に変わる。別人に替えて患難を擔憂して、事を行いて一旦違悖すれば便ち臉色を変ずべし。禍害己身を殘傷するの時、唯だ自身を約束して本分を謹守する有るのみ。守住し得れば便ち喜慶と相擁する能くして、長子長成大人して、封を受けて福佑を得たり。此の林主として先ず険にして後に安んじ、能く自ら守れば終に福を得ん、吉なり。
大壯 太公避紂,七十隱處。卒逢聖文,為王室輔。(明夷之坤)
帰妹の卦が大壮の卦に変わる。姜太公商紂の暴政を躲避して、七十歲に隱居せり。終に聖明の周文王に遇上して、王室の輔弼と成れり。此の林主として久しく隱れて時を待ちて、老いて主に遇い、先ず困して後に大吉なり。末の注此の林《明夷》の《坤》と文同じを示す。
晉 江漢上流,政逆民憂。陰代其陽,雌為雄公。
帰妹の卦が晋の卦に変わる。江漢の上游に處りて、政令悖逆にして百姓憂苦せり。陰陽の位置を取代して、母鶏雄鶏に充作せり。此の林主として陰陽倒置して、婦夫の權を奪いて、政乱れて民困る、凶なり。
明夷 縮縮亂絲,舉手為災。越畝逐兔,濡其衣褲。
帰妹の卦が明夷の卦に変わる。絲綫一団の乱麻に縮りて、一たび手を動かせば便ち乱を添えて災と成れり。田壟を越えて去りて兎子を追えば、衣褲を倶に弄湿して弄髒せり。此の林主として頭緒紛乱して、妄動して損を招きて、逐う所得ず、凶なり。
家人 臭彘腐木,與狼相輔。亡夫失子,憂及父母。
帰妹の卦が家人の卦に変わる。腐臭の猪と朽爛の木頭は、正に好く豺狼と相伴せり。婦人丈夫を死なれて又た兒子を失去して、憂愁年老の父母に連累及せり。此の林主として家道敗壞して、惡と隣と為して、喪亡の凶なり。
睽 刲羊不當,女執空筐。兔跛鹿踦,緣山墜墮。讒□亂作。
帰妹の卦が睽の卦に変わる。《周易・帰妹》の上六に「士羊を刲して血無し、女筐を承けて実無し」と説きて、羊を宰すに法を得ずして、女子空の筐を捧げり。兎子跛脚にして鹿も亦た瘸腿にして、山に沿い攀爬する時跌落して下れり。讒言又た紛紛として興起せり。此の林主として祭礼成らず、婚事落空して、讒乱交わり至る、大凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
蹇 拔劍傷手,見敵不喜。良臣無佐,困憂為咎。
帰妹の卦が蹇の卦に変わる。劍を拔く時先ず自己の手を割傷して、敵人を見て心の裏怵を發せり。忠良の臣幇手を得ずして、困頓憂愁して便ち過咎と成れり。此の林主として未だ戰わずして先ず傷え、孤立して援なくして、事を處すに艱難せり、凶なり。
解 三羖五羊,相隨俱行。迷入空澤,循入直北。經涉六駁,為聽傷敗。
帰妹の卦が解の卦に変わる。三隻の黑公羊と五隻の羊伴を結して同行して、路に迷いて空曠の沼沢に走进して、一直に北に向かいて深入せり。途中《詩経・秦風・晨風》の説く所の六駁の猛獣出没するの地を經過して、誤りて人言を聽したるに因りて害を受けて敗亡せり。此の林主として途に迷いて向を失して、軽く信じて禍を招きて、行旅大凶なり。
損 爭雞失羊,亡其金囊。利得不長,陳蔡之患。賴楚以安。(恆之夬)
帰妹の卦が損の卦に変わる。一隻の鶏を争わんが為に羊を丢了して、還た錢袋を失落せり。得る所の利長久する能わずして、孔子の陳蔡に困えて粮を絶たるがごとき難を受けて、幸いに楚昭王兵を發して相迎えに賴りて始めて安全を得たり。此の林主として小に因りて大を失して、中途厄に遇いて、終に貴人の相救を得、先ず凶にして後に安んず。末の注此の林《恒》の《夬》と文同じを示す。
益 三灑負衡,南取芷香。秋蘭芬馥,盈滿神匱。利我仲季。
帰妹の卦が益の卦に変わる。再三灑掃して、横木を肩負して南に行きて、白芷の芳香を采得せり。秋蘭馥郁として、神匱に装満して供奉せり。此の福気我が家の次子と幼子に利及せり。此の林主として遠行して采獲して、芳馨室に盈ちて、子弟に惠及す、吉なり。
夬 孟春己丑,哀呼仲父。明德訖終,亂虐滋起。
帰妹の卦が夬の卦に変わる。孟春己丑の彼の日、斉桓公病篤して、哀声呼喚して仲父管仲とせり。賢相既に殁して、聖明の徳此に到りて終結して、禍乱暴虐随いて滋生せり。此の林主として賢輔既に失われて、盛業中断して、乱此れにより起る、凶なり。
姤 履不容足,南山多葉。家有芝蘭,乃無病疾。(葉又作草)
帰妹の卦が姤の卦に変わる。地方局促して脚を連ねても放り下る處なきも、好し南山草木繁茂せり。家中芝蘭のごとき香草有れば、便ち病痛なし。此の林主として处境窄しと雖も養う所有りて、居家清芳して、身体安康せり、吉なり。末の注「葉」の字又た「草」と作るを載す。
萃 三足無頭,弗知所之。心在精傷,莫使為明。不見日光。
帰妹の卦が萃の卦に変わる。三隻の脚にして頭なくして、何の處に往くべきかを知らず。心神損を受けて、彼に替えて辨明する人なくして、終日日の光を見ず。此の林主として其の首領を失して、進退主なくして、昏昧して明ならず、凶なり。
升 戴堯扶禹,喬松彭祖。西過王母,道路夷易。無敢難者。(師之離)
帰妹の卦が升の卦に変わる。頭に堯を頂き身に禹を扶くるがごとき聖王有りて、又た王子喬、赤松子、彭祖の此れらの長寿の仙と同行せり。西行して西王母の處を經過して、道路平坦にして、人敢えて阻難を加うるなし。此の林主として聖賢の庇護有りて、路途通達して、長寿して福多し、大吉である。末の注此の林《師》の《離》と文同じを示す。
困 式微式微,憂禍相半。隔以巖山,室家分散。
帰妹の卦が困の卦に変わる。《詩経・邶風・式微》に「式微式微、胡為歸らざる」と哀歎して、憂愁と禍事各々一半を占めり。中間又た険峻の山岩に隔たりて、一家人四散分離せり。此の林主として流落して外に在りて、歸途阻まるを受けて、骨肉離散す、凶なり。
井 靈龜陸處,一旦失所。伊子復耕,桀亂無輔。
帰妹の卦が井の卦に変わる。靈龜水を離開して陸地に處りて、一旦憑依を失せり。伊尹重新に田間に回りて耕作して、夏桀昏乱にして輔佐する人なし。此の林主として賢者位を去りて、上良弼なく、政乱の凶なり。
革 仁德覆洽,恩及異域。澤及殊方,禍災隱伏。蠶不作室,寒無所得。
帰妹の卦が革の卦に変わる。仁徳広く被りて恩沢異域他郷に遍く及して、禍災此れによって潜伏して發せず。只だ蚕繭を結びて室を作るを肯ぜずして、天寒の時便ち衣著の得る可きなし。此の林主として徳広く施すと雖も本業修めずして、外和して内乏し、吉の中缺有り。
鼎 夏麥□,霜擊其芒。疾君敗國,使年夭傷。
帰妹の卦が鼎の卦に変わる。夏天の麦子正に穂を抽すも、却って霜に打たれて麦芒を傷せられり。奸人の君を害し国を敗するに猶お如くして、年成をして夭折して損を受けしむ。此の林主として時令常に反して、賢者害を受けて、歲収と国事倶に傷う、凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
震 火雖熾,在吾後。寇雖多,在吾右。身安吉,不危殆。(震之歸妹,大有之需)
帰妹の卦が震の卦に変わる。火勢猛なると雖も、却って我が身の後に燒きて、盗寇多しと雖も、我が右辺に行けり。災禍身を擦りて過ぎて、人安吉を得て危殆ならず。此の林主として険象環生しても己が身に及ばずして、驚有りて険なし、吉なり。末の注此の林《震》の《帰妹》、《大有》の《需》と文同じを示す。
艮 遼遠絕路,客宿多悔。頑嚚相聚,生我畏惡。(明夷之小畜)
帰妹の卦が艮の卦に変わる。路途遼遠にして又た去路を断絶して、客居して宿を投ぐれば處處悔を生ず。《尚書・堯典》の説く所の父頑なり母嚚なりのごとき人一處に聚れば、我が心をして畏懼厭惡を生ぜしむ。此の林主として遠行して路を失して、遇う所人に非ずして、客の中安ならず、凶なり。末の注此の林《明夷》の《小畜》と文同じを示す。
漸 懸懸南海,去家萬里。飛兔褭駿,一日見母,除我憂悔。
帰妹の卦が漸の卦に変わる。心懸懸として遠く南海に在りて、家を離るること万里なり。幸いに飛兎、要褭のごとき駿馬有りて、一日の内便ち母親を見て、我が憂愁悔恨を解除せり。此の林主として千里を遠隔して速やかに歸を得て、母子重ねて逢う、吉なり。
豐 因而後通,難厄不窮。終得其願,姬姜相從。
帰妹の卦が豊の卦に変わる。形勢に順い而して後に通達して、艱難困厄絶路に走り至らず。終に心愿を遂げて、姬姓と姜姓のごとき名門婚姻を結成して、彼此相随えり。此の林主として困にして能く通じて、婚姻美满して、先ず難にして後に吉なり。
旅 西賈巴蜀,寒雪已沒。欲前不得,還反空室。
帰妹の卦が旅の卦に変わる。西に往きて巴蜀に到りて經商するも、道路已に寒雪に淹沒せられり。前進せんと想うも能わずして、只好く空手にして家中に回るのみ。此の林主として時令道を阻みて、商旅困を受けて、往返徒労せり。
巽 作新初陵,爛焰難登。三駒推車,躓損傷頤。
帰妹の卦が巽の卦に変わる。新修の陵墓剛く工を起して、山勢陡峭して烈焰の如く攀登し難し。三匹の小馬車を推して上に往きて、跤を跌して下巴を摔傷せり。此の林主として力弱くして任重くして、勉强して高きに登れば、傷を受くるの凶なり。
兌 延頸望酒,不入我口。深目自苦,利得無有。幽人悅喜。
帰妹の卦が兌の卦に変わる。脖子を伸長して眼巴々として酒を望むも、一口も亦た喝み到らず。眼を望みて穿かんと欲して自ら苦悩を尋ねて、終に一の得もなし。倒れて是れ幽居して静を守る人自ら其の楽を得たり。此の林主として得んと欲して得ず、唯だ分に安んずる者のみ反って能く歓喜せり。
渙 仲春孟夏,和氣所舍。生我喜福,國無殘賊。
帰妹の卦が渙の卦に変わる。仲春と孟夏の時節は、正に是れ和気停駐するの時なり。喜慶と福気を生出して、国の中殘害して乱を作す人なし。此の林主として時和くして気順にして、境内清寧せり、吉なり。
節 張網捕鳩,兔離其災。雌雄俱得,為罝所賊。
帰妹の卦が節の卦に変わる。網を張るは本より斑鳩を捕えんと要すれど、兎子倒れて此の災を躲過せり。結果雌雄两隻の鳩倶に網に落ちて、羅網に害せられり。此の林主として設計中と失有りて、圖る所の物終に免を得難し、獵する者に於ては吉にして獵せられる者に於ては凶なり。
中孚 三人俱行,一人言北。伯仲欲南,少叔不得。中欲分道,爭鬥相賊。
帰妹の卦が中孚の卦に変わる。三個人一同に路に上りて、一個北に往かんと主張せり。老大老二南に行かんと想うに、小弟肯えて依従せず。半路の上各々道を分かたんと要して、争執し起して彼此相害せり。此の林主として同行して志を異にして、内訌して変を生じて、合謀成らず、凶なり。
小過 然諾不行,欺紿誤人。使我露宿,夜歸溫室。神怒不直,鬼擊其目。欲求福利,適反自賊。(恆之觀)
帰妹の卦が小過の卦に変わる。許したる諾言兌現せずして、欺騙を以て別人を耽誤せり。我をして荒野に露宿せしめて、他自己却って暖屋に回りて安眠せり。神靈此のごとき不正直を惱怒して、鬼便ち彼の眼睛を打瞎せり。本より福利を求取せんと想うも、恰恰に反って自己を害せり。此の林主として信に背きて人を欺きて、終に自ら報を受く、凶なり。末の注此の林《恒》の《観》と文同じを示す。
既濟 陳辭達誠,使安不傾。增祿益壽,以成功名。(明夷之晉)
帰妹の卦が既済の卦に変わる。言辞を陳述して誠意を表出して、局面をして安穩して傾覆に至らざらしむ。此れによって俸禄を增加して寿命を延長して、功業名声を成就せり。此の林主として誠を以て人を動かして、言を進めて用を得て、禄寿功名兼ねて得る、大吉である。末の注此の林《明夷》の《晋》と文同じを示す。
未濟 火燒公床,家破滅亡。然得安昌,先憂後喪。
帰妹の卦が未済の卦に変わる。大火主人の床榻に燒到して、家業破敗して以て滅亡せり。一度安定興盛を得たると雖も、終に是れ先ず憂患有りて而して後に喪亡有り。此の林主として火厄家を破りて、盛にして復た衰う、凶なり。
豊の林(豊卦六十四林)
豐 清懦行賈,徑陟山阻。與狄為市,不憂危殆。利得十倍。
豊の卦が自ら変じても豊の卦のままである。性情清和柔順の人外に出でて商を行いて、徑直に険阻の山路を翻越して、狄人と買売を做せり。人を待つに平和を以てすれば、反って危險を擔憂するを必とせずして、利十倍を獲たり。此の林主として柔和にして利を取りて、険を犯して傷なく、經商大吉なり。
乾 鼎足承德,嘉謀生福。為王開庭,得心所欲。(晉之大壯)
豊の卦が乾の卦に変わる。三足鼎立の如く穩々として徳業を承載して、好い謀劃福気を生出せり。君王に替えて朝庭を開設して、事事心に称い意の如し。此の林主として輔弼力を得て、謀劃成有りて、位に居りて志を遂ぐ、大吉である。末の注此の林《晋》の《大壮》と文同じを示す。
坤 曳綸江海,釣魴與鯉。王孫列俎,以饗仲友。
豊の卦が坤の卦に変わる。江海の上に於て絲綫を牽きて垂釣して、魴魚と鯉魚を釣得せり。王孫魚を俎の上に陳列して、以て彼の朋友を宴請せり。此の林主として獲る所豊美にして、賓主歓會せり、吉なり。
屯 東山皋落,叛逆不服。興師征討,恭子敗覆。
豊の卦が屯の卦に変わる。東山の皋落氏叛逆して肯えて帰服せざれば、晋献公便ち太子申生に命じて師を興して征討せしむ。申生勉力して命に従うも、終に讒間に陷りて敗亡して、恭君と謚せられり。此の林主として命を受けて叛を伐ちて内猜忌を被りて、功賞を見ず、凶なり。
蒙 千里騂駒,為王服車。嘉其驪榮,君子有成。
豊の卦が蒙の卦に変わる。日に千里を行く赤色の良駒は、選ばれて來りて君王の為に車を駕せり。人人其の毛色の光榮を称美して、君子の事業も亦た此れによって成有り。此の林主として良材用を見られて、榮顯して成有り、吉なり。
需 三龍北行,道逢六狼。莫宿中澤,為禍所傷。
豊の卦が需の卦に変わる。三条の龍北に向かいて行きて、路上六隻の狼に遇見せり。半途の沼沢の中に宿を留るる勿れ、否らずんば便ち禍患に傷せられん。此の林主として行途険に遇い、留止して災を招く、宜しく速やかに過ぐべく久しく留る宜ならず。
訟 天災所遊,凶不可居。轉徙獲福,留止危憂。
豊の卦が訟の卦に変わる。天災流行の到る所の處は、凶险にして居住する可ならず。他に遷移して往けば反って福を得る能くして、原地に滯留すれば便ち危難憂患有り。此の林主として動に宜しくして静に宜からずして、遷徙して災を避くれば則ち吉なり。
師 狐狸雉兔,畏人□去。分走竄匿,不知所處。(益之解,睽之大有)
豊の卦が師の卦に変わる。狐狸、野鶏と兎子は人を怕れて、一たび人を見れば便ち跑げり。四散奔逃して躲蔵して、何の處に去りたるかを知らず。此の林主として求むる所の物驚散して、蹤跡尋ね難くして、事を謀れば獲なし。原文缺字有り、□を以て之を存し、末の注此の林《益》の《解》、《睽》の《大有》と文同じを示す。
比 雨師娶婦,黃岩季子。成禮既婚,相呼南上。膏潤下土,年歲大有。(損之益,井之坤,恆之晉,本卦之大過)
豊の卦が比の卦に変わる。雨師親を娶るは、黄岩季子の家の女兒に配せり。礼成婚を完したる後、相呼びて南に向かいて上れり。沛然の雨沢大地を滋潤して、一年収成大いに好し。此の林主として陰陽交合して、雨足りて年豊にして、婚姻と田事倶に吉なり。末の注此の林《損》の《益》、《井》の《坤》、《恒》の《晋》及び本卦の《大過》と文同じを示す。
小畜 外棲野鼠,與雉為伍。瘡痍不息,即去其室。
豊の卦が小畜の卦に変わる。身を外に棲して野鼠と隣を為して、又た野鶏と伴を作せり。身上の瘡傷總に好く見えずして、只だ己が居室を離開するを得たり。此の林主として依託する所を失して、疾患愈えずして、遷離を迫られり、凶なり。
履 天命絕後,孤傷無主。彷徨兩社,獨不得酒。
豊の卦が履の卦に変わる。天命後嗣を断絶して、孤苦傷痛にして事を主る人なし。两處の社廟の間に徘徊して、独り一杯の祭酒を連ねても討い到らず。此の林主として宗祀継ぐなく、祭享分無し、孤独の凶なり。
泰 鵠思其雄,欲隨鳳東。順理羽翼,出次日中。傾流北邑,反覆其室。(明夷之益,需之離,益之觀)
豊の卦が泰の卦に変わる。雌鵠其の雄伴を思念して、鳳凰に跟りて東に飛ばんと想えり。羽翼を理順して、正午の時分に起程せり。一路順流して北辺の城邑に到りて、最後に又た己が巢室に回れり。此の林主として偶を思いて遠行して、往して復た返りて、労すると雖も終に本位に歸す、平吉なり。末の注此の林《明夷》の《益》、《需》の《離》、《益》の《觀》と文同じを示す。
否 蜲蛇九子,長尾不殆。均明光澤,燕自受福。
豊の卦が否の卦に変わる。蜿蜒の長蛇九子を產して、尾長にして傾危に至らず。一樣に明亮にして光沢有りて、燕の地自然に福気を承受せり。此の林主として子孫衆多にして、各々其の養を得て、一門福を受く、吉なり。
同人 日走月步,趨不同舍。夫妻反目,君主失國。(小畜之同人,謙之睽)
豊の卦が同人の卦に変わる。太陽と月亮各々運行して、趨る所の星次並びに相同じからず。正に《周易・小畜》の説く「夫妻反目」の如くして、家中和を失して、国君も亦た此れによって国家を丢了せり。此の林主として床を同じくして夢を異にして、上下乖離して、家国倶に損す、凶なり。末の注此の林《小畜》の《同人》、《謙》の《睽》と文同じを示す。
大有 定房戶室,括薪除毒。文德淵府,害不能賊。(一作宜房戶室,括卿深毒。)
豊の卦が大有の卦に変わる。房舍門戸を安定して、柴薪を收拾好して毒害を清除せり。文徳淵深の府庫の如く深厚にして、禍害分毫に傷を到らず。此の林主として居處安固して、徳を修めて自ら守れば、外患害を加うる能わず、吉なり。末に一本の異文を附す。
謙 東齊郭廬,嫁於洛都。駿良美好,多好讓主。利得過倍。(臨之益)
豊の卦が謙の卦に変わる。斉国東郭氏の女兒洛陽の京都に嫁せり。陪嫁の車馬駿良にして、人物美好にして、又た多く謙讓主人の美徳有りて、得る所の利一倍を超過せり。此の林主として婚嫁して貴を得て、謙を以て益を獲る、吉なり。末の注此の林《臨》の《益》と文同じを示す。
豫 病篤難醫,和不能治。命期終訖,下既蒿里。(臨之益)
豊の卦が豫の卦に変わる。病勢沉重にして医すること難くして、秦国の名医医和を連ねても策を束する手なし。寿数尽頭に到りて、人已に蒿里の墓地に下れり。此の林主として病膏肓に入りて、藥石靈なく、大凶なり。末の注此の林《臨》の《益》と文同じを示す。
隨 開郭聚業,王跡所起。姬德七百,振以八子。
豊の卦が随の卦に変わる。城郭を開辟して産業を聚集するは、正に是れ王業發跡の起點なり。姬姓周室の徳沢綿延して七百年にして、又た周の八士のごとき賢才其の業を振起せり。此の林主として業を創りて基を奠めて、後嗣蕃昌して、家国長久なり、大吉である。
蠱 豐年多儲,河海饒魚。商客善賈,大國富有。
豊の卦が蠱の卦に変わる。豊年積儲多くして、江河大海の裏魚産豊饒なり。商旅経營を善くして、大国此れによって富足せり。此の林主として積蓄余り有りて、貨殖興旺して、公私倶に富めり、吉なり。
臨 鵠求魚食,過彼食邑。繒加我頸,繳掛羽翼。欲飛不能,為羿所得。
豊の卦が臨の卦に変わる。天鵝魚食を覓らんと為めて、彼の采邑を飛過せり。不料絲網脖子を套住して、箭を繫ぐ生絲又た翅膀に纏住せり。飛ばんと想うも飛び動く能わずして、終に后羿のごとき善射する者に捕獲せられり。此の林主として食を貪りて険を履みて、羅網に堕ちて、行動制を受く、大凶なり。
觀 望城抱子,見邑不殆。公孫上堂,文君悅喜。
豊の卦が観の卦に変わる。遠く城池を望みて幼子を懐抱して、城邑を見れば便ち再び危險ならざるを知れり。公孫堂に登りて拜見して、文君心中歓喜せり。此の林主として行きて安處に至りて、母子相全して、主賓相得せり、吉なり。
噬嗑 左指右麾,邪侈靡靡。執節無良,靈君以亡。
豊の卦が噬嗑の卦に変わる。左に指點して右に揮使して、事を行いて邪僻奢侈にして頹靡せり。節操を持守する人其の位を得ずして、靈公の一類の国君終に敗亡せり。此の林主として上驕き下佞にして、良臣節を執るなし、国危くして身亡ぶ、凶なり。
賁 日中為市,各持所有。交易資賄,函珠懷寶。心悅歡喜。(泰之升)
豊の卦が賁の卦に変わる。《周易・繫辭》に「日中に市を為す」と説きて、正午集市開張して、人人己が貨物を帶びて前來せり。相互に財貨を交換して、匣子を用ゐて珠を盛りて懐の裏寶を揣めて、心の裏十分に歓喜せり。此の林主として交易暢通して、買売利を得て、歓欣して成有り、吉なり。末の注此の林《泰》の《升》と文同じを示す。
剝 山沒丘浮,陸為水魚,燕雀無廬。
豊の卦が剥の卦に変わる。山陵沈沒、丘阜漂浮して、陸地魚兒の游動する水域と変成して、燕雀を連ねても巢を築くの地方を找り得ず。此の林主として天地翻覆して、水患頂を滅して、身を安んずる處なし、大凶なり。
復 馬服長股,宜行善市。蒙佑諧偈,獲利五倍。(一作終日在市,詰朝獲利。既享嘉福,得久乃幾。)
豊の卦が復の卦に変わる。馬匹脚力長健にして、正に宜しく遠行して集を趕り買売すべし。神佑を蒙りて事事諧順して、利五倍を獲たり。此の林主として脚力至る所倶に利を得て、貿易興隆せり、吉なり。末に一本の異文を附す。
旡妄 三狸捕鼠,遮遏前後。死於國城,不得脫走。(離之遯)
豊の卦が旡妄の卦に変わる。三隻の狸猫力を合して鼠を捕えて、前後堵截せり。老鼠都城の中に死して、逃げ出づる能わず。此の林主として衆力に圍困せられて、退路断絶して、身を脱するに望なし、凶なり。末の注此の林《離》の《遯》と文同じを示す。
大畜 鬼舞國社,歲樂民喜。臣禮於君,子孝於父。
豊の卦が大畜の卦に変わる。社日に神を祭りて、神を扮する人国社の前に起舞して、年成安楽して、百姓歓喜せり。臣下君主に對して礼を守りて、兒子父親に對して孝を尽せり。此の林主として祭祀宜を得て、上下序有りて、風俗淳美せり、吉なり。
頤 慈母望子,遙思不已。久客外野,我心悲苦。
豊の卦が頤の卦に変わる。慈母兒子の歸來を盼望して、遠く思念して止まず。兒子却って久しく野外に居りて客として返らずして、人をして心中悲苦せしむ。此の林主として遠客歸らずして、親人懸念して、憂思の凶なり。
大過 雨師娶婦,黃岩季子。成禮既婚,相呼南上。膏潤下土,年歲大有。(損之益,恆之晉,井之坤,本卦之比)
豊の卦が大過の卦に変わる。雨師親を娶るは、配する所は黄岩季子の女なり。礼を行いて婚を成したる後、相呼びて南に向かいて上れり。甘霖大地を滋潤して、一年大いに豊収を獲たり。此の林主として陰陽和合して、雨沢時に及びて、婚姻と農事倶に吉なり。末の注此の林《損》の《益》、《恒》の《晋》、《井》の《坤》及び本卦の《比》と文同じを示す。
坎 兩狗圍室,相咬爭食。枉矢西流,射我暴國。高宗伐鬼,三年乃服。
豊の卦が坎の卦に変わる。两条の狗屋辺に圍りて互に咬みて食を争えり。妖星枉矢西に向かいて飛流して、直に彼の暴虐の国を射れり。《周易・既済》に殷高宗鬼方を征伐して、三年を打ちて始めて之をして臣服せしむと記す。此の林主として内争い外伐して、兵事曠日持久して、久しく戰いて方に勝つ、先ず凶にして後に定まる。
離 早霜晚雪,傷禾害黍。損功棄力,飢無可食。(離之蠱)
豊の卦が離の卦に変わる。過早の霜と過晚の雪は、禾苗を傷し黍稷を害せり。一年の功夫気力全く白費して、飢餓にして吃る可き食なし。此の林主として天時害を為して、農功尽く弃さる、飢荒の凶なり。末の注此の林《離》の《蠱》と文同じを示す。
咸 腐臭何在,青蠅集聚。變白為黑,敗亂邦國。君為臣逐,失其寵光。
豊の卦が咸の卦に変わる。何の處腐臭有れば、蒼蠅便ち何の處に聚まる。《詩経・小雅・青蠅》青蠅を以て讒人を比して、能く白を説いて黑と為し、邦国を敗壞擾乱せり。国君反って臣下に驅逐せられて、尊寵と光彩を失去せり。此の林主として讒佞朝に盈ちて、黑白を顛倒して、君位保たれず、大凶なり。
恆 牽羊不前,與心戾旋。聞言不信,誤紿丈人。(一雲言語不富,誤詒丈人。)
豊の卦が恒の卦に変わる。羊を牽きても却って拉動する能わずして、事心愿と正に相違背せり。忠言を聴聞するも又た肯えて信ぜずして、結果欺瞞して長者を耽誤せり。此の林主として事を行いて拂逆して、良言を聽かずして、人を誤り己を誤る、凶なり。末に一本の異文を附す。
遯 甘忍利害,還相剋敵。商子酷刑,鞅喪厥身。
豊の卦が遯の卦に変わる。甘んじて利害得失の煎迫を忍受して、反って人と相克して敵と為せり。商君法を立てて嚴酷にして、法を作して自ら斃れて、商鞅終に性命を喪失せり。此の林主として刻薄にして刑を用ゐて、終に自ら害を受く、凶なり。
大壯 刲羊不當,血少無羹。女執空筐,不得桑根。(隨之艮)
豊の卦が大壮の卦に変わる。《周易・帰妹》に「士羊を刲して血無し、女筐を承けて実無し」と説く:羊を宰して血少くして、羹湯を做り成らず。女子空の筐を捧げて、桑根を連ねても采い到らず。此の林主として祭と婚两失して、労して実なし、凶なり。末の注此の林《随》の《艮》と文同じを示す。
晉 □,貧鬼相責。無有歡怡,一日九結。(震之既濟)
豊の卦が晋の卦に変わる。窮鬼一個個門に上りて催逼責問して、家中一絲の歓楽なしして、一日の内心の裏九個の結を打てり。此の林主として貧困交迫して、債主門に臨みて、愁悶解け難し、凶なり。原文首句殘缺して、□を以て之を存し、末の注此の林《震》の《既済》と文同じを示す。
明夷 兩足四翼,飛入嘉國。寧我伯姊,子母相得。(賁之同人)
豊の卦が明夷の卦に変わる。两隻の脚、四片の翅膀にして、美好の邦国に飛進せり。我が大姐をして安寧を得しめて、母子團聚して相得せり。此の林主として遠く飛びて所を得て、親人團圓せり、吉なり。末の注此の林《賁》の《同人》と文同じを示す。
家人 文山紫芝,雍梁朱草。生長和氣,王以為寶。公尸侑食,福祿來處。
豊の卦が家人の卦に変わる。文山紫芝を出産して、雍州梁州朱草を生長するは、倶に是れ和気の鍾まる所の祥瑞にして、君王之を国宝と視せり。《詩経・大雅・鳧鷖》公尸の勧を受けて飲食するを写して、福禄之に随いて來れり。此の林主として祥瑞呈現して、祭享して福を得て、家門慶を蒙る、大吉である。
睽 絕世游魂,福祿不存。精神渙散,離其躬身。
豊の卦が睽の卦に変わる。後代を断して、魂魄游荡して歸る處なくして、福禄荡然として存せず。精神渙散して、己が形体を離開せり。此の林主として宗祧断絶して、元気離散す、大凶なり。
蹇 北辰紫宮,衣冠立中。含弘建德,常受大福。
豊の卦が蹇の卦に変わる。北極星の居る所の紫微宮は、衣冠整肅の人其の中に端立せり。胸懐寛宏にして徳業を建立すれば、此れによって常に大福を受く。此の林主として中に居りて正を守りて、徳位相称して、長く福禄を享く、大吉である。
解 伯蹇叔盲,莫為守株。失我衣裘,代爾陰鄉。(鼎之離)
豊の卦が解の卦に変わる。長兄跛足、次兄目盲にして、人我に替えて此の基業を守る能くするなし。衣裘尽く失して、只好く彼の陰僻の郷里に遷往するのみ。此の林主として家中託する可きの人なく、財物散失して、处境轉じて衰う、凶なり。末の注此の林《鼎》の《離》と文同じを示す。
損 兩女共室,心不聊食。亂髮如蓬,憂常在中。(艮之剝)
豊の卦が損の卦に変わる。两個の女子一室に同住して、志相合わずして、悶して飯を連ねても喰い下る能わず。頭髪蓬草の如く乱れて、憂愁常に心の裏に在り。此の林主として同處して和せず、内室睦を失して、鬱結解け難し、凶なり。末の注此の林《艮》の《剥》と文同じを示す。
益 去辛就蓼,毒愈酷甚。避□遇坑,憂患日生。
豊の卦が益の卦に変わる。辛辣を離れて又た苦蓼に碰上して、毒害反って更に甚し。一一處の険阻を躲开するも却って坑の裏に掉ちて、憂患一天ずつ滋生せり。此の林主として趨避當を失して、愈避け愈苦し、凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存す。
夬 初病終凶,季為死喪,不見光明。
豊の卦が夬の卦に変わる。起初只だ是れ生病なりしも、最終に凶事と成れり。幼子此れによって夭亡して、再び光明を見ず。此の林主として病久しくして危に轉じて、家喪亡有り、大凶なり。
姤 三鳥飛來,自到逢時。俱行先至,多得大利。(同人之夬)
豊の卦が姤の卦に変わる。三隻の鳥一斉に飛來して、自ら好時機に撞上せり。伴を結して同行して先んじて到達して、此れによって利を獲ること甚多し。此の林主として時機湊巧にして、足捷き者之を得て、財を求めて大吉なり。末の注此の林《同人》の《夬》と文同じを示す。
萃 鹿食山草,不思邑里,雖久無咎。
豊の卦が萃の卦に変わる。鹿山上に於て草を吃りて、自在にして村邑の裏に回らんと想わず。此のごとく久しきを過るも亦た過錯有らず。此の林主として處する所に安んじて、塵擾を遠離して、久しく居りて災なし、吉なり。
升 羊腸九縈,相催併前。止須王孫,乃能上天。(損之夬,履之師,蠱之剝,臨之巽)
豊の卦が升の卦に変わる。羊腸の小道九曲に盤繞して、衆人相互に催促して肩を并びて前行せり。只だ王孫一たび到るを待ちて、始めて能く一挙に天に登らん。此の林主として道路曲折艱難にして、須らく貴人の提携を待つべし、人を得れば則ち大吉なり。末の注此の林《損》の《夬》、《履》の《師》、《蠱》の《剥》、《臨》の《巽》と文同じを示す。
困 管仲遇桓,得其願歡。膠日殺糾,振冠無憂。笑戲不莊,空言妄行。(明夷之旅)
豊の卦が困の卦に変わる。管仲斉桓公に遇上して、君臣相得して各々心愿を遂げたり。桓公公子糾を誅殺したる後、管仲冠を掸きて出仕するを得て、従此憂なし。只だ嬉笑して荘重ならず、空言妄行の人は、終に能く此のごとくならず。此の林主として主に遇い志を得れば則ち吉にして、軽佻妄言すれば則ち敗る。末の注此の林《明夷》の《旅》と文同じを示す。
井 桀蹠並處,民困愁苦。旅行遲遲,留連齊魯。(復之離)
豊の卦が井の卦に変わる。夏桀と盗跖のごとき暴人惡人一世に同處して、百姓困頓愁苦せり。行旅緩慢にして進み難くして、齊魯の一帯に滯留せり。此の林主として時局昏乱して、行程阻まるを受けて、客の中愁苦せり、凶なり。末の注此の林《復》の《離》と文同じを示す。
革 魂孤無室,銜損不食。盜張氏饋,見敵失肉。
豊の卦が革の卦に変わる。魂魄孤零として帰宿なくして、傷損を含みて東西を吃り下る能わず。張家の食物を偷うも、一たび對頭を見れば又た嘴に到れる肉を丢了せり。此の林主として孤苦して養を失して、得る所復た失して、険を行いて益なし、凶なり。
鼎 讒言亂國,覆是為非。伯奇乖離,恭子憂哀。(巽之觀)
豊の卦が鼎の卦に変わる。讒言国政を擾乱して、是を説いて非と為せり。尹吉甫後妻の言を聴信して孝子伯奇を逐走し、晋献公驪姬の讒を聴信して太子申生憂愁哀痛して以て死せり。此の林主として讒口横行して、父子相疑して、賢良弃せられん、大凶なり。末の注此の林《巽》の《觀》と文同じを示す。
震 衛侯東遊,惑於少姬。亡我考妣,久迷不來。(乾之升,旅之師)
豊の卦が震の卦に変わる。衛侯東游して、年輕の姬姓の女子に迷住せられり。父母を抛下して顧みずして、長久沉迷して肯えて回らず。此の林主として色を貪りて歸を忘れて、親の養を廢弃して、家事荒疏せり、凶なり。末の注此の林《乾》の《升》、《旅》の《師》と文同じを示す。
艮 雞鳴同興,思配無家。執佩持鳧,莫使致之。(漸之鼎)
豊の卦が艮の卦に変わる。鶏叫の時一同に起身するも、婚配を成さんと想うも帰宿なし。手に佩玉を執りて野鴨を提げて聘礼に充作するも、人彼に替えて傳達するを為すなし。此の林主として意有りて媒なくして、婚事成ること難くして、愿う所達せず。末の注此の林《漸》の《鼎》と文同じを示す。
漸 義不勝情,以欲自縈。覬利危躬,催角折頸。(坤之豐,復之坤,小過之升)
豊の卦が漸の卦に変わる。義理私情を壓住する能わずして、欲望に身を纏住せられり。小利を貪圖して身家をして危殆ならしめて、最後に角摧折せられて頸子も亦た断れり。此の林主として欲を縱りて利を逐いて、自ら危亡を取る、大凶なり。末の注此の林《坤》の《豊》、《復》の《坤》、《小過》の《升》と文同じを示す。
歸妹 臣尊主卑,權力日衰。侵奪無光,三家逐公。(升之巽)
豊の卦が帰妹の卦に変わる。臣下尊大にして君主卑弱にして、君權一天ずつ衰微せり。權柄侵奪せられて威光尽く失して、終に魯国の三桓の如く国君を出境に驅逐せり。此の林主として主弱くして臣強くして、權下に移りて、国君位を失し、凶なり。末の注此の林《升》の《巽》と文同じを示す。
旅 叔仲善賈,與喜為市。不憂危殆,利得十倍。
豊の卦が旅の卦に変わる。叔仲經商を善くして、做す所倶に心に称うの買売なり。必ずしも危險を憂慮せずして、利十倍を獲たり。此の林主として賈を善くして法を得て、財源順遂して、經營大吉なり。
巽 六蛇奔走,俱入茂草。驚於長路,畏懼啄口。(井之兌,中孚之家人)
豊の卦が巽の卦に変わる。六条の蛇倉皇奔走して、一斉に茂密の草叢に鑚進せり。長路の上に於て驚を受けて、禽鳥に啄食せらるるを害怕せり。此の林主として驚を受けて禍を避けて、身を草莽に蔵して、宜しく隱忍すべく頭を出だすに宜ならず。末の注此の林《井》の《兌》、《中孚》の《家人》と文同じを示す。
兌 水壞我裡,東流為海。鳧□讙囂,不可安居。(旅之歸妹)
豊の卦が兌の卦に変わる。大水我が郷里を衝毀して、東に泛濫して大海を匯成せり。野鴨の類水上に於て聒噪喧鬧して、人已に安居するに法なし。此の林主として水患家を毀して、故土留ること難し、凶なり。原文缺字有り、□を以て之を存し、末の注此の林《旅》の《帰妹》と文同じを示す。
渙 飛不遠去,卑廝內侍,祿食未富。(渙之大畜)
豊の卦が渙の卦に変わる。飛ぶこと遠からざる能わずして、只だ地位低下の内侍雜役を做る能くして、俸禄飲食倶に豊厚と算す可ならず。此の林主として才位有限にして、身を進むること遠からずして、僅かに温飽を得るのみ。末の注此の林《渙》の《大畜》と文同じを示す。
節 陰變為陽,女化為男。治道大通,君臣相承。(屯之離,未濟之夬,渙之旅)
豊の卦が節の卦に変わる。陰轉變して陽と為りて、女變化して男と為れり。国を治むるの道此れによって大いに通達して、君と臣上下相承せり。此の林主として時局翻轉して好に向かいて、上下相得して、政通じて人和せり、吉なり。末の注此の林《屯》の《離》、《未済》の《夬》、《渙》の《旅》と文同じを示す。
中孚 踐履危難,脫厄去患。入福喜門,見誨大君。(震之家人,兌之乾)
豊の卦が中孚の卦に変わる。危險艱難を踏過して、厄運を擺脱して禍患を除去せり。福喜の門に走進して、大君を得見して并びに其の教誨を受けたり。此の林主として険の中脱を得て、貴に遇いて教を得て、先ず難にして後に吉なり。末の注此の林《震》の《家人》、《兌》の《乾》と文同じを示す。
小過 網密綱縮,動益蹙急,困不得息。
豊の卦が小過の卦に変わる。網眼細密にして綱繩収緊して、愈掙扎すれば愈急迫にして、裏頭に困して喘息を得ず。此の林主として約束重重にして、動けば便ち咎を得て、愈動く愈困る、凶なり。
既濟 負牛上山,力劣行難。烈風雨雪,遮遏我前。中道復還,憂者得歡。(同人之無妄,訟之剝,旅之睽)
豊の卦が既済の卦に変わる。牛を背負して山に上れば、力気足らずして行走艱難せり。又た烈風雨雪前頭に擋るに逢えり。半路折返して回れば、憂愁の人反って轉じて歓喜を得たり。此の林主として任重くして行き難くして、返るを知れば則ち安んじ、退守して吉を得ん。末の注此の林《同人》の《無妄》、《訟》の《剥》、《旅》の《睽》と文同じを示す。
未濟 喁喁嘉草,思降甘雨。景風升上,霑洽時澍,生我禾稼。
豊の卦が未済の卦に変わる。嘉美の草木口を張りて上に向かいて、甘霖の降下を盼れり。和暖の景風升起して、時雨大地を沾潤して、我が庄稼を養活せり。此の林主として久旱して雨を得て、望む所期に應じて、田事成有り、吉なり。
旅の林(旅卦六十四林)
旅 羅網四張,鳥無所翔。征伐困極,飢渴不食。(革之泰,兌之小過)
四方に網を張りめぐらせ、鳥は飛び去るところがない。征伐に出て困窮しきり、飢え渇いて食べるものもない。この林は四方から受け困り、進退の道がなく、行軍や遠役は大凶であることを主とする。末注はこの林が《革》の《泰》、《兌》の《小過》と文が同じであることを示す。
乾 寄生無根,如過浮雲。立本不固,斯須落去。更為枯樹。(小畜之蠱)
寄生の枝には自分の根がなく、空を流れ過ぎる浮雲のようだ。根本がしっかり立たなければ、たちまち落ちて、枯れ木となってしまう。この林は根なしの依附、基盤の不実を主とし、たちまち空しくなる。凶。末注はこの林が《小畜》の《蠱》と文が同じであることを示す。
坤 人無定法,綬降牛出。蛇雄走趨,陽不制陰。宜其家困。
人事に一定の法度がなく、印綬が下がり耕牛が出て行く。雄の蛇があちこちに走り、陽が陰を制することができない。その家が困窮するのは当然である。この林は法度の失守、陰陽の倒置を主とし、家道が窮する。凶。
屯 眾鳥所翔,中有大怪。九身無頭,魂驚魄去。不可以居。(漸之蒙)
群れの鳥が旋回する場所に、大きな怪物が現れた。九つの胴体に頭がなく、見た者は魂が驚き魄が去る。このような場所に住んではならない。この林は住居に妖異の兆しがあり、惊恐して安らかでなく、移り避けるべきことを主とする。凶。末注はこの林が《漸》の《蒙》と文が同じであることを示す。
蒙 封涿溝瀆,灌潰國邑。人宿口中,民多病疾。
溝渠の水道を塞ぎ、溜まった水が溢れて城邑を押し潰す。人は水口の中に宿るようになり、民は病気が多くなる。この林は水利の失修、湿気の害を主とし、疫疾が流行する。凶。
需 奮趐鼓翼,翱翔外國。消遙徙倚,來歸溫室。(損之觀)
翼を奮い羽ばたいて、外国を翱翔する。自在に游歩し徘徊した後、温かい家に帰って来る。この林は遠游の得意、去って帰れることを主とし、出入りともに吉。末注はこの林が《損》の《観》と文が同じであることを示す。
訟 秋蠶不成,冬種不生。設王逆理,棄其寵名。
秋に蚕を飼っても繭ができず、冬に種を蒔いても苗が出ない。为政者が常理に逆らって行えば、受けた尊寵と名位を失う。この林は時と理に逆らい、為すところ成らず、位を失う凶を主とする。
師 衛侯東遊,惑於少姬。亡我考妣,久迷不來。(乾之升,豐之震)
衛侯が東に游び、年少の姫姓の女子に惑わされた。父母を捨てて顧みず、長く迷って帰らない。この林は色に耽って帰るを忘れ、親の養いが廃れることを主とし、家事が守られない。凶。末注はこの林が《乾》の《升》、《豊》の《震》と文が同じであることを示す。
比 鳥會雀合,與惡相得。鴟鴞相酬,為心所賊。
鳥と雀が一か所に集まり、わざわざ悪類と気が合う。《詩経・豳風・鸱鸮》に刺された悪鳥が互いに唱和し、ついに自分の悪い心に害される。この林は匪類と交わり、悪をともに済ませ、かえってその害を受けることを主とする。凶。
小畜 雞鳴無距,與雀格鬥。趐折目盲,為仇所傷。
雄鶏は鳴くが距爪がなく、雀と格闘しようとする。結果、翼が折れ目も盲き、仇に傷つけられる。この林は自らの力を量らず、短をもって人を撃つことを主とし、かえって傷を受ける。凶。
履 木生內蠹,上下相賊。禍亂我國。
木の内部に蛀虫が生じ、上下が互いに戕害し合う。禍乱がこれによって我が国を乱す。この林は禍が蕭牆の内に起こり、内耗して自ら敗れることを主とし、国家が安らかでない。凶。
泰 延陵適魯,觀樂太史。車鄰白顛,知秦興起。卒兼其國,一統為主。(坎之剝,大畜之離)
《左伝》襄公二十九年に呉国の延陵季子が魯に聘し、周の楽を観ることを請うたとある。《秦風》の「車の鄰鄰たり、馬に白顛あり」の音を聞いて、秦が興起するだろうと断定した。後に秦は果たして六国を併呑し、天下を一統して主となった。この林は微を観て著を知り、時勢を予見することを主とし、占った事は弱から強に転じる。末注はこの林が《坎》の《剝》、《大畜》の《離》と文が同じであることを示す。
否 輔相之好,無有休息。時行雲集,所在遇福。
輔弼の大臣が心を同じくして交わり、政事に勤めて休まない。時に応じて行い、雲の集まるがごとく、行く先々で福に遇う。この林は上下が協力し、動いて吉に逢うことを主とし、いたる所で福を得る。大吉。
同人 床傾簀折,屋漏垣缺,季姬不愜。
床が傾き竹の席が折れ、屋根は漏り垣は欠け、季姫は住んで気が晴れない。この林は居室の破敗、家人の不安を主とし、処境が窘迫する。不吉。
大有 東入海口,循流北走。一高一下,五邑失主。七夜六日,死於水浦。(睽之蹇)
東へ海の口に入り、流れに沿って北へ漂う。波は一つ高く一つ低く、五つの城邑が主を失う。七夜六日漂って、ついに水辺で死んだ。この林は船行の危難、波に随って主なきことを主とし、溺死の凶。末注はこの林が《睽》の《蹇》と文が同じであることを示す。
謙 群虎入邑,求索肉食。大人守禦,君失其國。
群れの虎が城邑に入り、肉食を求めてあちこちを探す。大人が守り禦いでも、国君はその国を失う。この林は強暴が境に入り、防ぐ力がないことを主とし、失国の凶。
豫 四亂不安,東西為患。退身山足,無出邦域。乃得完全,賴其生福。(大有之睽)
四方が乱れて安らかでなく、東も西も禍患となる。山の麓に身を退き、国の境を出なければ、やっと保全を得て、その慎みによって福が生まれる。この林は乱世には退くべきを主とし、静を守り自ら保てば吉。末注はこの林が《大有》の《睽》と文が同じであることを示す。
隨 叔□抱冤,祈子自邑。乘遽解患,羊舌以免。賴其生全。(蹇之乾)
《左伝》襄公二十一年に晋の叔向が冤罪で囚われ、祁奚が封邑から駆けつけ、駅車に乗って執政に面会して彼のために弁明し、患難が解け、羊舌氏の一族はこれによって禍を免れ保全されたとある。この林は冤罪に救いがあり、貴人が急難に援けることを主とし、先は凶で後は吉。原文に欠字があり、□をもって存する。末注はこの林が《蹇》の《乾》と文が同じであることを示す。
蠱 延頸望酒,不入我口。深目自若,利得無有。(訟之益,履之萃)
首を長く伸ばしてあの一杯の酒を望んでも、一口も私の口に入らない。じっと見つめて平然を装っても、結局何も得られない。この林は望んでも及ばず、求めるものが空しくなることを主とする。末注はこの林が《訟》の《益》、《履》の《萃》と文が同じであることを示す。
臨 仁政之德,恭一日息。成都就邑,日受厥福。(巽之屯)
仁政を施す徳の恩沢は、恭く勤勉に一日も怠らない。集落が都会となり村邑が日に日に栄え、毎日その福を受ける。この林は徳政が日に積み、人烟が輻輳することを主とし、安居して福を受ける。吉。末注はこの林が《巽》の《屯》と文が同じであることを示す。
觀 牽頭繫尾,屈折幾死。雕世無仁,不知所歸。(升之大畜)
頭を引かれ尾を繋がれ、屈折してほとんど死ぬ。世は凋み仁を行う者がなく、どこに帰るべきか分からない。この林は人に制され、挙世に援けがないことを主とし、走るも投ずるも路がない。凶。末注はこの林が《升》の《大畜》と文が同じであることを示す。
噬嗑 教羊逐兔,使魚捕鼠。任非其人,費日無功。(需之噬嗑)
羊に兎を追わせ、魚に鼠を捕らえさせる。人をその才に任せず、日を費やして功がない。この林は任がその人に非ず、託する所を失うことを主とし、労して成らない。凶。末注はこの林が《需》の《噬嗑》と文が同じであることを示す。
賁 生角有尾,張孽制家。排揚逐狐,張氏易公。憂禍重凶。
角が生え尾が生え、妖孽が張り勢いを得て家門を把る。狐媚を排し追い払おうとするが、張氏はついに旧主に取って代わる。この林は妖孽が柄を窃み、主客が位を易えることを主とし、憂患が重なる。大凶。
剝 去安就危,墜陷井池,破我玉螭。
安を去り危に就き、井池に墜ちて、我が玉螭を破った。この林は自ら平安を捨て、険を行って損に至ることを主とし、宝器もろとも毀れる。凶。
復 茹芝餌黃,塗飲玉英。與神通流,長無憂凶。(既濟之蹇)
芝を茹で黄精を饵とし、玉の精液を飲む。これによって神明と気が通じ流れ、長く憂患も凶もない。この林は修養に道があり、身心が康泰であることを主とし、長安して咎なし。吉。末注はこの林が《既済》の《蹇》と文が同じであることを示す。
旡妄 體重飛難,未能越關。不離室垣。(震之鼎)
体が重く飛ぶことが難しく、関を越えることができず、屋の垣の内に守り留まるしかない。この林は力が任に勝えず、出行が阻まれることを主とし、旧を守れば咎なし。末注はこの林が《震》の《鼎》と文が同じであることを示す。
大畜 巢成樹折,傷我彝器。伯踒叔跌,凶羊乃追。
巣が成ったばかりで樹が折れ、宗廟の彝器まで損なわれた。兄は挫き弟は転び、凶は悪羊のように追いかけて放さない。この林は功成りて毀れ、禍は単行せず、家人皆傷つくことを主とする。凶。
頤 六人俱行,各遺其囊。黃鵠失曉,無以為明。(曉又作珠)
六人がともに行き、それぞれ行嚢を失った。黄鵠が暁の時を失したように、依り凭すべき明るさがない。この林は伴を結んで財を失い、時機を迷うことを主とし、前路に明なし。凶。末注は「暁」の字がまた「珠」と作ることを載せる。
大過 播枝遷岐,與母分離,絕不相知。(大有之坤)
枝が岐路の向こうに移し栽えられ、これによって母株と離れ、互いに消息が絶えて知らない。この林は遷徙し遠く別れ、母子が離れることを主とし、音問が通じない。凶。末注はこの林が《大有》の《坤》と文が同じであることを示す。
坎 迎福開戶,喜隨我後。曹伯愷悌,為宋國主。
門戸を開いて福を迎え、喜びは我の後に随って来る。曹伯は和楽平易の人で、これによって宋国の政を主とすることができた。この林は門を開き福を納れ、和悦をもって位を得ることを主とする。吉。
離 既痴且狂,兩目又盲。箕踞坐喑,名為無用。
人は癡でもあり狂でもあり、両目はまた盲いている。箕のように足を開いて坐り言葉を発することができず、廃人と見なされる。この林は神志が昏昧で、才能が廃棄されることを主とし、何の用もなさない。凶。
咸 金梁鐵柱,十年牢固。完全不腐,聖人安處。
金で鋳た梁、鉄で鋳た柱は、十年経てもなお牢固である。完全で朽ちず、聖人がその中に安らかに居る。この林は根基が堅実で、屋宇が長久であることを主とし、居家が安穏。吉。
恆 裹糗荷糧,與蹠相逢。欲飛不得,為網所獲。
乾粮を包み荷を担いで路に出たが、あいにく盗跖の類の強人に遇う。身を脱して飛び去ろうとしてもできず、ついに網に落ちて擒えられた。この林は行旅に盗に遇い、財も身も失うことを主とする。大凶。
遯 彭生為妖,暴龍作災。盜堯衣裳,聚蹠荷兵。青禽照夜,三旦夷亡。(鼎之遯,比之蒙)
斉の公子彭生が冤死して妖となり、暴龍が災いを作す。盗賊は尭の衣裳を窃み聖人を装い、跖徒は衆を聚め兵を荷い、怪鳥は夜に光を照らし、三旦の内に夷滅の禍がある。この林は冤気が祟りをなし、僭窃が乱を作すことを主とし、速亡の象。大凶。末注はこの林が《鼎》の《遯》、《比》の《蒙》と文が同じであることを示す。
大壯 褐夫老婦,不能生子,鰥寡居處。
粗布を着た貧夫と年老いた婦人は、もはや子女を生むことができず、ただ鰥寡として独居するだけだ。この林は年衰えて嗣がなく、孤身で自ら守ることを主とし、嗣を問うは利ならず。
晉 鷦鷯竊脂,巢於小枝。搖動不安,為風所吹。內寒飄搖,常憂殆危。
鷦鷯や竊脂のような小鳥が、細い枝に巣を作る。《荘子・逍遥游》に鷦鷯は林に巣うも一枝に過ぎないとあるが、枝が細ければ揺れて安らかでなく、風に吹かれれば巣の中は寒く飄搖し、常に傾覆を憂惧する。この林は託する所が固くなく、居処が安らかでないことを主とし、常に危惧を懐く。凶。
明夷 素車木輿,不任負重。王子出征,憂疑為咎。
飾りのない素車木の輿は、重い荷に堪えられない。王子が軍を率いて出征するが、心中で憂い疑い決せず、これによって咎となる。この林は器が任に勝えず、将帥が猶豫することを主とし、出師は利ならず。凶。
家人 土陷四維,安平不危。利以居止,保其玉女。
土を四角の維に固めて、地基は安穏平正で傾き危ぶむことがない。ここに居り止まるに宜しく、家中の玉のような娘を保つことができる。この林は宅基が牢固で、居家が安寧であることを主とし、子女が護られる。吉。
睽 負牛上山,力劣行難。烈風雨雪,遮遏我前。中道復還。(訟之剝)
牛を負って山に登るが、力が劣り歩みが難しい。さらに烈しい風雨雪が前を遮り、途中で引き返すしかない。この林は任重く力薄く、外の阻みが重なることを主とし、返るを知るが宜しき。末注はこの林が《訟》の《剝》と文が同じであることを示す。
蹇 金城鐵郭,上下同力。政平民親,寇不敢賊。
金の城、鉄の郭で、上下が心を同じくして力を合わせる。政令は公平で百姓が親附し、寇は賊なすことを敢えてしない。この林は内固く外安し、衆志が城を成すことを主とし、境内に虞なし。大吉。
解 清潔淵塞,為讒所言。證訓詰情,繫於枳溫。甘棠聽斷,昭然蒙恩。(師之蠱)
品行が清白で深沈した人が、かえって讒言に傷つけられる。対証し案を詰問され、しばらく獄に繋がれる。幸い召伯が甘棠の樹の下で訟を聴いたような明察の官に遇い、案情が昭雪されて恩沢を蒙る。この林は冤を蒙り獄に入りながら、終に昭雪を得ることを主とし、先は凶で後は吉。末注はこの林が《師》の《蠱》と文が同じであることを示す。
損 皋陶聽理,岐伯悅喜。西登華道,東歸無咎。
皐陶が刑獄を執り案を理するに公允で、岐伯もこれを喜んだ。西に登って華山の道を行き、東に帰っても咎はない。この林は獄を折るに平を得、往来ともに宜しいことを主とし、災禍はない。吉。
益 低頭竊視,有所畏避。行作不利,酒酸魚敗。眾莫貪嗜。(鼎之解)
頭を低くしてこっそり見るのは、畏れ避ける所があるからだ。だから行事が利せず、酒は酸くなり魚も敗れ、衆は誰も貪り食おうとしない。この林は心が虚しく事が滞り、貨が敗れて売れないことを主とし、営謀は利ならず。末注はこの林が《鼎》の《解》と文が同じであることを示す。
夬 十雉百雛,常與母俱。抱雞搏虎,誰肯為娛。
十羽の雉に百の雛が、常に母とともにいる。だが一羽の鶏を抱いて虎と搏つなら、誰がこれを楽しみとするだろうか。この林は群小が相依ればなお自ら保てるが、弱をもって強に犯せば自ら滅亡を取ることを主とする。
姤 高阜山陵,峻□顛崩。為國妖祥,元后以薨。
高い阜の山陵、その峻しい嶺が忽然と崩れる。山崩れは国家の妖異の兆で、君王はこれによって薨ずる。この林は天変が凶を示し、上に大きな喪があることを主とする。大凶。原文に欠字があり、□をもって存する。
萃 六鷁退飛,為襄敗祥。陳師合戰,左股疾傷。遂以崩薨,霸功不成。(蹇之蠱)
《春秋》僖公十六年に六羽の鷁鳥が退きながら飛んで宋の都を過ぎたと記すが、これは宋襄公が敗亡する凶兆だった。後に彼は泓水に兵を陳して楚と交戦し、左腿に重傷を負い、傷によって薨じ、覇業はついに成らなかった。この林は異兆が先に見え、兵を挙げて創を受けることを主とし、功は敗れて垂成となる。大凶。末注はこの林が《蹇》の《蠱》と文が同じであることを示す。
升 異國殊俗,情不相得。金木為仇,酋賊擅役。(家人之未濟)
異国に身を置き風俗が違えば、互いの情意は通じ得ない。金と木が相克するように仇となり、凶横の徒が擅りに徴役し駆使する。この林は客居して異地にあり、格格不入することを主とし、人に制される。凶。末注はこの林が《家人》の《未済》と文が同じであることを示す。
困 鴉噪庭中,以戒災凶。重門擊柝,儕憂暴客。
鴉が庭の中で噪ぐのは、災凶が至る戒めだ。《周易・繋辞》に「重門して柝を撃ち、暴客を待つ」とあるように、層々に門を設け更を打ち夜を巡り、衆はともに強暴の徒を防ぐ。この林は凶兆が先に現れて戒備が法を得ることを主とし、謹み守れば災を免れ得る。
井 慈母赤子,享賜得士。獲夷服除,以安王家。側陋逢時。(除一作徐)
慈母が幼い子を養い、君上は饗宴し賞賜して賢士を得る。外夷を平定し患を除き去り、これをもって王家を安んずる。微賤で側陋の身の人も好い時に逢う。この林は上下が相養い、外患が平息することを主とし、寒士が時を得る。吉。末注は「除」の字が一は「徐」と作ることを載せる。
革 跡造惡人,使得不通。炎旱為殃,年穀大傷。(坤之大有)
行跡が悪人の手に落ち、至る所で通じなくなる。さらに炎暑の旱が災いとなり、年の穀は大いに傷つく。この林は遇う所が人に非ず、天時もまた逆なことを主とし、収成が大いに壊れる。凶。末注はこの林が《坤》の《大有》と文が同じであることを示す。
鼎 躬履孔德,以帶束帶。文王燎獵,呂尚獲福。號稱太師,封建齊國。
みずから大きな徳を履み、衣帯を整え束ねて自ら守る。周の文王が渭のほとりに猟に出て、卜辞に獲る所は熊でも羆でもなく王者の師であるとあり、これによって呂尚に遇う。呂尚はこれによって福を得、太師と尊ばれ、後に斉に封じられ国を建てた。この林は徳を修め時を待ち、明主に遇って顕達することを主とし、爵を封ぜられる大吉。
震 徵將止惡,鼓鞞除賊。慶仲奔莒,子般獲福。
兵を出して征するのは暴悪を止めるためで、鼓鞞が一たび響けば乱賊を除き去る。魯の慶父は乱を作し事敗れて莒に奔り、子般の一脉の冤屈が伸び、公室はこれによって福を得る。この林は乱を討って功があり、祸首が遠く遁れることを主とし、危を転じて安とする。吉。
艮 良夫淑女,配合相保。多孫壽子,歡樂長久。
良い夫と淑やかな女が配偶を結び、互いに守り保つ。孫は多く子は寿で、歓楽が長く久しい。この林は婚姻が美満で、子嗣が繁昌することを主とし、長久の吉。
漸 逶迤四牡,思念父母。王事靡盬,不得安處。(渙之復)
《詩経・小雅・四牡》は四匹の牡馬が逶迤と奔るさまを写し、行役の人が父母を思い念う。公家の差事は終わりがなく、終始安らかに居ることができない。この林は王事に労し、親を思いて帰るを得ないことを主とし、辛苦あれど咎なし。末注はこの林が《渙》の《復》と文が同じであることを示す。
歸妹 水壞我裡,東流為海。龜鼉讙囂,不得安居。(豐之兌)
大水が我が郷里を壊し、東に流れて海となる。亀と鼉が水中で歡び騒ぎ、人はもはや安らかに居ることができない。この林は水患が家を毀り、故居が守り難いことを主とする。凶。末注はこの林が《豊》の《兌》と文が同じであることを示す。
豐 束帛戔戔,賻我盂空。徵召送君,處號易子。
《周易・賁卦》六五に「束帛は戔戔たり」とある。送って来た一束の帛はあまりに薄く、助葬に用いても盂器すら満たせない。征召されて国君を送り、残された者は号哭し、ついに子を易えて日を度るほどになる。この林は饋助が菲薄で、喪乱に離散することを主とし、困苦の凶。
巽 乾行大德,履贍六合。嘔喣成熟,使我福德。
天道の運行の大徳を效い、行う所は六合を周ぎ赡するに足る。和気が吹き煦んで万物が成熟し、我に福徳を得させる。この林は徳行が広く被り、万物が益を受けることを主とする。大吉。
兌 秦並六國,更相剋賊。獲惠質圉,鄭被其咎。
秦が六国を併呑し、各国は交々に相克し賊い合った。秦はかつて晋の恵公を俘え、また太子圉を質とし、鄭国も連帯してその咎を被った。この林は強隣が併呑し、弱者が制されることを主とし、牽連の凶。
渙 晦昧昏冥,君無紀綱。甲子成亂,簡公喪亡。
世の道は晦昧昏冥で、国君は綱紀を失う。甲子の日に大乱を醸し、斉の簡公は田氏に弑されて喪亡した。この林は上が綱紀を失い、権臣が乱を作すことを主とし、国君が害に遇う。大凶。
節 三足無頭,弗知所之。心狂精傷,莫使為明。不見日光。(小畜之復)
三本の足があるのに頭がなく、どこへ行くべきか分からない。心神は狂乱し精気は損なわれ、誰も彼のために明らかにしてくれず、終日日光を見ない。この林は群竜に首なく、神志が昏昧であることを主とし、進退の拠り所を失う。凶。末注はこの林が《小畜》の《復》と文が同じであることを示す。
中孚 長夜短日,陰為陽賊。萬物空枯,藏於北陸。(夬之明夷,謙之漸)
夜は長く昼は短く、陰気が陽気を賊う。万物は空しく枯れ、みな北の幽陸に潜蔵した。この林は陰盛んで陽微かく、生機が閉塞することを主とし、蔵るべきで出るべからず。凶。末注はこの林が《夬》の《明夷》、《謙》の《漸》と文が同じであることを示す。
小過 依宵夜遊,與君相遭。除煩解惑,使我無憂。(歸妹之大有)
夜に乗じて出かけ、ちょうど君と遭遇した。一場の言談で煩悶を除き疑惑を解き、我に憂いなからしめた。この林は暗中の遇合、疑慮が釈然とすることを主とし、憂を転じて安とする。吉。末注はこの林が《帰妹》の《大有》と文が同じであることを示す。
既濟 逐鹿南山,知我入門。陰陽和調,國無災殘。長子出逃,須其仁君。(逃一作迎)
南山で鹿を逐い、収穫が満ちて我が門に入ったことを知る。陰陽は和調し、国の中に災害も残虐もない。長子はいったん出て行ったが、なおあの仁厚な君主を待っている。この林は田猟に獲ることあり、国は泰く家は安しを主とし、離散した者も終に帰る所がある。吉。末注は「逃」の字が一は「迎」と作ることを載せる。
未濟 請騁作耳,嗇不我與,驅我父母。
車馬を借りて馳驱し力を尽くそうと請うたが、相手は吝嗇で与えてくれず、かえって我の父母を駆り立てて労働させた。この林は求めに応じず、かえって欺凌を受けることを主とし、親長が累を受ける。凶。
巽の林(巽卦六十四林)
巽 溫山松柏,常茂不落。鸞鳳以芘,得其歡樂。(鼎之泰,需之坤,否之恆)
巽の巽。日向の暖かい斜面の松と柏は、四季を通じて青々として枝葉は決して凋まない。鸞鳥と鳳凰はこれを蔭の居所とし、その間に棲み、それぞれその楽しみを得る。松柏は寒さに耐えて凋まず、昔から君子が節を守り移らないことの喩えとされ、鸞鳳が木を択んで棲むのは賢者が依拠を得た象徴である。この林は根基が穏固で庇蔭に余りあることを主とし、求める事に長久して頼りになる憑依があり、安く処り成を守るに宜しく、歓楽が期せられる。同文はまた《鼎》の《泰》、《需》の《坤》、《否》の《恒》に見える。
乾 采唐沬鄉,要我桑中。失信不會,憂思鉤帶。(無妄之恆,師之噬嗑)
巽の乾。沬邑の郊野で女蘿を采り、桑林の中で会おうと約した。この二句は《詩経・鄘風・桑中》に出て、もとは男女の私約の辞である。ところが相手は信約を失して終に会いに来ず、ただ衣帯の鉤飾りを撫でて、独り憂い思うばかり。この林は約束が空しくなり、期待が虚しくなることを主とし、人事に背信爽約の憂いがある。事を謀るには早めに二手の用意をし、ただ空しく望んではならない。
坤 有鳥飛來,集於宮樹。鳴聲畏惡,主將出去。(屯之夬)
巽の坤。一羽の鳥が飛んで来て、宮室の庭前の樹に集まり止まり、鳴き声は凄まじく恐ろしく、人の心を驚かす。古人は異鳥が室に入り鳴き噪ぐのを凶兆とし、宅の主人が移り去るか亡くなることを予示した。この林は家宅が安らかでなく、驚変の象があることを主とし、居処に変動があるだろう。占者は意外に対して謹慎して防ぎ、久しく原処に留まるべきでない。
屯 仁政之德,參參日息。成都就邑,日受厥福。
巽の屯。仁政を施して積んだ徳沢は、草木のように枝葉が紛れ披り、日に日に生長して息まない。これによって聚落は都会となり村邑は城郭となり、百姓は日々それが齎す福沢を受ける。古人の「一年で聚を成し、二年で邑を成し、三年で都を成す」というのは、まさに舜が歴山に耕し民衆が帰附した旧事を言う。この林は大吉で、徳業が日に進み人口が輻輳することを主とし、凡事は寛厚をもって積み累ねるべきで、久しければ必ず福を得る。
蒙 他山之錯,與璆為仇。夾攻吾城,傷我肌膚。邦家搔擾。(明夷巽蒙)
巽の蒙。《詩経・小雅・鶴鳴》に「他山の石、以て錯とすべし」とある。砥ぐ粗石はもとより美玉を琢磨するのに用いられたが、今や粗石が美玉と怨敵を結んだ。二つが挟み攻めて我の城を攻め、刀兵の及ぶ所、我の肌膚を傷つけ、国家はこれによって騒動して安らかでない。この林は内外が交々攻め、賢と佞が相い闘うことを主とし、身がその傷を受け邦家が動盪する凶がある。占者は敵を樹てるべきでなく、特に腹背に敵を受ける局を忌む。
需 齎貝贖狸,不聽我辭。繫於虎鬚,牽不得來。(震之咸,萃之蹇,否之革,隨之師)
巽の需。貝幣を携えてあの狸猫を贖おうとするが、相手は我の説辞を聞き入れない。狸は虎の髭の傍に繋がれ、牽いても牽き出せない。財をもって物を求めて強横に制されるのが、この四句の本意である。この林は求める所が勢力の家に阻まれることを主とし、贖救は得られず交渉も功なく、人を贖うこと、債を取ること、旧物を索還すること、いずれも成り難い。暫く緩めて時を待つべき。同文はまた《震》の《咸》、《萃》の《蹇》、《否》の《革》、《随》の《師》に見える。
訟 一簧兩舌,□言諂語。三奸成虎,曾母投杼。(師之乾)
巽の訟。一枚の簧から二種の音が出るように、口いっぱいに諂媚奉承の言を吐く。三人の奸人が繰り返し伝えれば、市に真に「虎あり」となる。曽参の母は「曽参が人を殺した」と三度聞かされ、ついに織布の杼を投げて垣を越えて逃げた。二つの典故はいずれも《戦国策》に出て、讒言の畏るべきこと、衆口が金を鑠かすことを言う。この林は口舌が構い陥れ、争訟が身に纏わることを主とする。占者は是非の口を遠ざけ、凡事に証拠を残して自ら明らかにすべき。
師 薄行搔尾,逐雲塗水。汙泥為陸,下田宜稷。
巽の師。浅く水を渉って行き、尾を泥に曳いて揺らす。雲の影を逐い、満地の泥水を踏んで進む。污泥が淤積して陸地となる頃、その低窪の下田はちょうど稷を植えるに宜しい。この林は污から浄に転じ、涝から耕に転ずる象を取り、主として目下は艱難で泥濘するが、困頓の所にまさに生機が孕まれており、前行し続ければ終に収穫を得る。先難後獲の占である。
比 天門九重,澤內難通。明登到暮,不見神公。
巽の比。天帝の宮門は九重の深さがあり、《楚辞》にいう「虎豹が九関を守る」のとおり、凡人の誠意はその内に達し難い。夜明けから日暮れまで攀じ登り続けても、終にあの神明の天公に見えない。この林は関節が重々しく、上達に門がないことを主とし、貴人に見えること、上書して情を陳ずることは徒労に往復する。占者は強いて高攀すべきでなく、別の門径を求めるか本分を安く守るべき。
小畜 闇昧不明,耳聾不聰。陷入深淵,滅頂成凶。(兌之井)
巽の小畜。目の前が暗昧ではっきり見えず、耳が聾して聡くない。心目がすでに閉塞していれば、一歩足を失して深淵に陥り、水が頭頂を没して大凶を醸す。《周易・大過》上六の「渉りて頂を没す」はまさにこの象である。この林は耳目が蔽塞し判断に拠り所を失って滅頂の災を招くことを主とする。占者は冒険して険に渉ることを切に忌み、まず明察を求め、慎に慎むべき。同文はまた《兌》の《井》に見える。
履 霧露早霜,日暗不明。陰陽孽疾,年穀大傷。
巽の履。濃い霧と冷たい露、早くから厳しい霜が降り、日光は遮られて晦暗不明である。陰陽二気が調を失して災疾を生じ、一年の穀物はこれによって大きく傷つく。古人は霜降が時を失するのを陰気が陽を侵す象とし、天時が順でないことを主とした。この林は農事が歎收し、時令が乖違することを主とし、耕種・経営・養生の事は皆挫折を受ける。占者は早めに備蓄をして匱乏に備えるべき。
泰 三階土廓,德義明堂。交讓往來,享燕相承。箕伯朝王,錫我元黃。
巽の泰。泰階の三星は平正で、都邑の城郭は安穏、天子は明堂の上で徳義を宣明する。賓主は往来して互いに譲り合い、宴饗が相継いで絶えない。風を掌る箕伯の神まで君王に朝見し、我に玄色と黄色の幣帛を賜る。泰階星が平なのは天下太平の徴で、明堂は政を布く所である。この林は大吉で、上下が和順し礼譲が風を成すことを主とし、賜を受け財を得、名位がともに進む喜びがある。
否 爭雞失羊,利得不長。陳蔡之患,賴楚以安。
巽の否。一羽の鶏を争って一匹の羊を失い、得た小利は長く保てない。春秋の時、陳・蔡両国はたびたび兵禍に遭い、全て楚国が出て来てやっと安定を得た。この林はまず小のために大を失う戒めを示し、後に危うくして救いのある機を示す。目下患難はあっても、終に強援を藉りて険を脱せる。占者は錙銖を計るべきでなく、難に遇えば外力の扶持を求めるべきで、そうすれば危を転じて安とする。
同人 天旱水涸,枯槁無澤,未有所獲。
巽の同人。天は久しく雨がなく、河水は涸れ、草木は枯れ、地上に一点の潤いもなく、田にも何の収穫もない。この林は旱魃が虐をなし生機が断絶する象を取り、時運が枯竭し財源が継がないことを主とし、事を謀り経営しても皆得る所なし。占者は退いて守り雨を待つべきで、力を尽くして開拓してはならない。
大有 陶朱白圭,善賈息貲。公子王孫,富利不貧。
巽の大有。陶朱公范蠡と戦国の白圭は、いずれも商売に巧みで、元本を絶えず息を生じ増やすことができた。彼らの子孫は公子王孫のごとく、厚い利を享けて代々貧しくならなかった。范蠡は三度千金を致し、白圭は「人が棄てれば我が取る」で、《史記・貨殖列伝》にその事を記す。この林は経営に法を得て財源が広く進むことを主とし、商賈を行い産業を置くに宜しく、財を求める上吉である。
謙 龜厭江海,陸行不止。自令枯槁,失其都市。憂悔無咎。
巽の謙。亀が江海に厭き、わざわざ水を棄てて陸に登り、一途に這い進んで止まらない。結果、自らを日干しにして枯れ、もとの聚居の地を失った。これは本分を離れ、自ら長ずる所を棄てる喩えである。幸いなお憂惧し悔改むる心が残り、終に災禍はない。この林は性に違い妄動して自ら困頓を取ることを主とするが、時に及び反省し回頭すれば、なお禍患を免れ得る。
豫 黃鳥採蓄,既嫁不答。念吾父兄,思復邦國。
巽の豫。黄鳥が葍菜を啄む。《詩経・小雅・黄鳥》はこれを借りて遠く異国に嫁した女を写す。女子はすでに嫁いだのに夫家の善待を得られず、これによって自分の父兄を思い念い、一心に故国に帰りたいと思う。この林は身を他郷に寄せてその所を得ず、去就が安からず、帰り旧を思う象があることを主とする。占者は旧地または旧業に退くことを考えるべきで、強いて留まり滞ればかえって委屈を受ける。
隨 田鼠野雛,意常欲逃。拘制籠檻,不得動搖。(夬之謙)
巽の随。田の鼠、野の雛鳥は、心に常に逃れたいと思っているが、籠と檻に拘えられ、少しも動揺することができない。この林は困った獣が逸を思いながら人に制される象を取り、身は己に由らず、志と勢が相い違うことを主とし、脱身・遷転・辞退を謀ることは一時に成り難い。占者は忍び隠れて時を待つべきで、妄動すれば徒に束縛を増す。同文はまた《夬》の《謙》に見える。
蠱 平國不君,夏氏作亂。烏號竊發,靈公殞命。(既濟之噬嗑,臨之晉)
巽の蠱。陳国(宛丘に都し、古く平国と称す)の君が君道を守らず、夏姫と淫乱し、ついに夏氏の変を激成した。夏徴舒は暗に烏号の良弓を張り、一箭で陳の霊公を射殺した。事は《左伝・宣公十年》に見える。この林は上がその徳を失い、下に逆乱が生ずることを主とし、骨肉宮闈の禍と暗算の凶がある。占者は自ら行止を検し、特に近侍・親信が変を生ずるのを防ぐべき。
臨 巨蛇大□,戰於國郊。上下閉塞,君遁走逃。(剝之艮)
巽の臨。巨蛇と大獣が国都の郊外で闘い、妖異の象がすでに現れ、上下の道は塞がれ、国君は位を棄てて出奔し逃亡するしかない。古人は蛇が郊で闘うのを国に難があらんとする徴とした。この林は強敵が相攻ぎ、政令が通じないことを主とし、君臣が離散し出奔して禍を避ける象がある。占者は早めに退避すべきで、危局の中で強いて支えてはならない。
觀 讒言亂國,覆是為非。伯奇流離,恭子憂哀。(豐之鼎)
巽の観。讒人の言が国政を乱し、是を覆して非とする。尹吉甫の子伯奇は継母に讒され、父に放逐されて流離し在外した。晋献公の太子申生(諡「恭」)も驪姫の構陥によって憂い哀しみ、ついに自裁に至った。この林は讒慝が賢を害し、冤屈が白し難いことを主とし、父子が相い疑い親人に見棄てられる凶がある。占者は身辺の小人が是非を翻すのを防がなければならない。
噬嗑 鬱怏不明,為陰所傷。眾霧集聚,共奪日光。
巽の噬嗑。心が鬱として快からず、神思が昏昧で清からないのは、陰邪の気に傷つけられたからだ。四方の霧が聚まり集い、ともに太陽の光を奪った。この林は群陰が陽を掩う象をもって、小人が党を成して上の者を蒙蔽し、賢路が塞がれ真相が彰かれないことを主とする。占者は静を守り自ら保ち、霧が散り日が出るを待つべきで、昏暗の中で強いて事を行ってはならない。
賁 望城抱子,見邑不殆。公孫上堂,大君歡喜。
巽の賁。遠く城を望み幼子を抱いて帰り、すでに自分の城邑を見れば、路途にもはや危険はない。公族の子孫が堂に登り拝見し、国君はこれを喜ぶ。この林は危を経て安に就き、幼きを帯びて帰ることを主とし、行く道に虞なく、上の者の歓心を得る。吉。
剝 三蟲為蠱,劃跡無與。勝母盜泉,君子弗處。(姤之觀,觀之困)
巽の剝。三匹の毒虫が器皿の中に聚まり相食して「蠱」となる。界を劃してこれと交わらない。地の名が「勝母」なら曽子は入るを肯んじず、泉の名が「盗泉」なら孔子は渇しても飲まなかった。事は《淮南子・説山訓》に見える。この林は環境が穢悪で名実が正しくないことを主とし、君子は身を潔くして遠く避けるべきで、これと同処してはならない。占者は地を択び友を択ぶに宜しく、寧ろ避けるとも、染まってはならない。
復 車馳人趨,卷甲相求。齊魯寇戰,敗於犬丘。(復之小畜,明夷之兌)
巽の復。戦車は馳騁し士卒は疾走し、甲冑を巻いて軽装で追撃し、互いに交鋒を求め合う。斉・魯両国が兵を興して相寇し、ついに犬丘の一戦で潰敗した。この林は兵戈が相い求め、争競して両傷することを主とし、訴訟・競争・遠行の事は皆凶を帯びる。占者は争端を挑むべきでなく、出行は特に険地を避けなければならない。
旡妄 欲訪子車,善相欺紿。桓叔相迎,不見所期。
巽の旡妄。子車氏を訪ねようとしたら、あちらは花言巧語で欺瞞するのが上手だった。曲沃の桓叔が迎えに出ると約したのに、土地に着いても約束の人に見えない。この林は人の蒙騙を受け、約期が空しくなることを主とし、交際往来に虚言誑語の患がある。占者は人と事を謀るにその言を核実すべきで、軽く許諾を信じてはならず、特に遠道して約に赴くに証拠なきを忌む。
大畜 爭雉失羊,亡其金囊。利得不長,陳蔡之患。賴楚以安。(歸妹之損)
巽の大畜。一羽の雉を争って羊を失い、銭を入れた嚢まで失った。得た小利は終に長く保てない。まさに春秋の時、陳・蔡両国がたびたび兵禍に遭い、最後に楚国が出て来てやっと安定を得たようなものだ。この林はまず小を貪り大を失う戒め、後に危の中に援ありを示す。目下損耗と驚擾はあっても、終に外力を藉りて安に転ずる。占者は小を捨て大を求めるに宜しく、難に遇えば強援を求めるべき。
頤 歲莫花落,陽入陰室。萬物伏匿,利不可得。
巽の頤。年の暮れに花が落ち、陽気は退蔵して陰室に入り、万物はみな潜伏して隠れ、この時に利を求めても得られない。「歳莫」はすなわち歳暮で、冬の閉蔵の時を指す。この林は時令が未だ至らず生機が内に敛することを主とし、経営・求財・出仕の事は皆時に逢わない。占者は精を養い鋭を蓄え、静かに来春を待つべきで、妄動は徒労に過ぎない。
大過 晨風文翰,大舉就溫。過我成邑,羿無所得。(大壯之震,小畜之革,大過之豫)
巽の大過。晨風の鳥と文彩の斑しい白翰が高く飛び起き、温かい南に向かって遷って行く。それらは我の城邑の上空を掠め、善射の后羿でさえ一獲も得なかった。この林は高く飛び遠く挙げ、人力の及ばない象を取り、賢者が遠く引き良機が手を脱することを主とし、捕捉・追討・挽留の事は皆成らない。占者は自然に順うに宜しく、強求すればかえって空しくなる。
坎 持鵠抱子,見蛇何咎。室家俱在,不失其所。
巽の坎。手に鴻鵠を托し、懐に子を抱き、路で蛇に遇っても何の害があろうか。古人は蛇を小怪とし、懐中に鴻あり子あれば福気は自ずから厚く、邪は干ることができないとした。この林は小さな驚きに遇うも実害なしを主とし、家室は完好で、各々その位に安んずる。占者は縦しく場の虚驚があっても、終にその守る所を失わず、心を安くして事を行ってよい。
離 隱隱大雷,□霈為雨。有女痴狂,驚駭鄰里。
巽の離。隠隠と沈んだ雷の音が伝わり、続いて大雨が滂沱と傾瀉する。ちょうどその時、女子が痴狂の病を発し、喧騒の状が四隣を驚かす。雷雨が驟至し人心が常を失うのは、陰陽が調を失い内外が交い乱れる象である。この林は家の中に疾病・驚擾・名声の損傷の憂いがあることを主とする。占者は婦孺の病と門内の是非に留意すべき。
咸 無足斷跟,居處不安,凶惡為患。(革之蹇)
巽の咸。足がなく、踵も断たれ、立とうとしても立ち得ず、居る所は自ずから安らかでなく、凶悪の事が相継いで患となる。足は行動の本であり、足が傷つけば進退ともに廃れる。この林は根基が損なわれ行止が両難であることを主とし、残傷・遷徙不定・災禍相尋の凶がある。占者は遠行・謀動に宜しからず、まず本を固め傷を療し、静かに守って害を避けるべき。
恆 破筐敝筥,棄捐於道,不復為寶。
巽の恒。破れた方筐、壊れた円筥は、道の傍に棄て捐てられ、もはや宝とは数えられない。器物はいったん残破すれば人に見棄てられるのは、才用が彰れず恩愛が断絶する喩えである。この林は棄てられ寵を失い、旧物・旧交は皆恃むに足らざることを主とし、事を謀り人を求めても多く冷落に遭う。占者は自らその身を惜しみ、別に根本を立てるに宜しく、旧日の情分を指してはならない。
遯 三雞啄粟,十雛從食。飢鳶卒擊,凶其兩叔。(中孚之頤作「八雛從食」)
巽の遯。三羽の雌鶏が粟を啄み、十羽の雛が随いて食う。忽然として一匹の飢えた鳶が猛り撃ち下ろし、二羽の雛が殃に遭った。安享の際に禍が天から降るのは、防ぎ難き横禍である。この林は食を聚める時に暴至の災あることを主とし、特に兄弟・子侄の輩に応ずる。占者は安逸の中に予め戒備を設け、親しい者を単り落とさぬようにすべき。
大壯 乘車七百,以明文德。踐土葵丘,齊晉受福。(兌之剝)
巽の大壮。七百乗の兵車に乗って諸侯と会盟し、もって礼楽文徳を宣明した。晋の文公は践土に盟し、斉の桓公は葵丘に盟し、斉・晋両国はこれによって福沢を受けた。二つの盟の事は《左伝》《史記》に見え、春秋覇業の頂点である。この林は大吉で、威をもって徳を済し、衆人を会合して功名を立てることを主とし、盟約・結社・共事の挙は皆成る。
晉 百足俱行,相輔為強。三聖翼事,王室寵光。(屯之履,晉之坤,遯之復,井之履)
巽の晋。百足の虫は衆足が斉しく動き、互いに輔け扶け合うゆえに強健である。三位の聖賢が王事を翼佐し、周の王室はこれによって栄光赫たる。いわゆる三聖とは、周公・召公・太公の類の輔弼の重臣を指す。この林は同心協力・群賢共済を主とし、事業が衆人の助けを得て昌盛する。占者は伙を合わせて共に謀るに宜しく、独断専行を忌む。
明夷 典策法書,藏在蘭臺。雖遭潰亂,獨不遇災。(坤之大畜,大有之恆,中孚之恆)
巽の明夷。国家の典籍・簡策と法令文書は、蘭台の中に蔵せられ、兵禍・潰乱に遇っても、独りこれらだけは損毀に遭わなかった。蘭台は漢代の御史が図籍を掌り蔵する所で、深固慎密の処を喩える。この林は善く蔵守する者は乱世に保全を得ることを主とし、明に傷つきながら根本を失わない象がある。占者は韜晦・收斂に宜しく、要紧の物を妥当に保存すべき。
家人 西誅不服,恃強負力。倍道奔敵,師徒敗覆。(益之同人,需之屯)
巽の家人。西に向かって服さざる部族を誅し、ひたすら強横を恃み膂力を負う。道を倍して奔り敵を襲い、結果、軍隊は疲弊して全軍覆没した。《孫子》の「五十里にして利を争えば、上将軍を蹶く」はまさにこの弊である。この林は強を恃み軽く進み、師を労して敗に致ることを主とし、争競・遠征・急切に功を図る事は皆凶。占者は切に操り過ぐるを忌むべき。
睽 春陽生草,夏長條肄。萬物蕃滋,充實益有。(井之巽)
巽の睽。春は陽気が升発して百草が萌生し、夏は枝條が新枿を抽いて愈長愈茂る。万物は繁衍し滋長し、倉廩は充実し、有る所は愈々豊かになる。この林は時序が順遂で生機が勃発する象を取り、積累が日に増し家道が興旺することを主とする。占者の営む事はその生長の時に逢い、勢に乗じて推進するに宜しく、収穫が期せられる。
蹇 磝磽禿白,不生黍稷。無以供祭,祗靈代祀。
巽の蹇。土地は堅硬で瘠薄、地皮は禿げて白く泛き、黍も稷も生えない。祖先に供える祭品すら出せず、他家に代わりに致祭を請うしかない。この林は地が物を生ぜず家に余糧なき象を取り、貧乏窘迫・力心に及ばざるを主とし、尽くすべき礼数も周全し難い。占者は人に接濟を求め、暫く外力を藉りて日を度るに宜しく、強いて門面を支えてはならない。
解 褰衣涉河,澗流浚多。幸賴舟子,濟脫無他。(坤之萃,蹇之師)
巽の解。衣裳を褰げて徒歩で河を渉り、山澗の水流は深く急で、もとより極めて険な事だった。幸い渡し守の船夫に遇い、安らかに渡り済し、他に意外もなかった。この林は険に処りて援を得ることを主とし、危難が人の相助に遇って化解する。占者の目下は険に渉る憂いがあっても、他人の力を藉るを肯んずれば、終に身を脱して恙なし。先危後安の占である。
損 宜行賈市,所求必倍。載喜抱子,與利為友。(未濟之益,大過之恆)
巽の損。外出して商賈し市をなすに宜しく、求める利は必ず倍する。喜びを満載して帰り、懐に子を抱き、財利が自分と長く友となる。この林は財を求めて大順、行商して利を得ることを主とし、兼ねて丁を添える喜びがある。占者は主動して外に出て営謀するに宜しく、静守すればかえって機を失う。財を求め出行する上吉である。
益 兄征東燕,弟伐遼西。大克勝還,封君河間。
巽の益。兄は東の燕地に出征し、弟は遼西一帯を伐ち、双ならびに大いに克ち勝って帰り、河間の君に封ぜられた。この林は兄弟が協力し内外が併せ挙げて大功を成すことを主とし、戦勝して封を受け名利を兼ね収める象がある。占者が手足・親党と心を同じくすれば、事業は遠く達することを望め、争競・謀職の事は俱に吉。
夬 初雖驚惶,後乃無傷。受其福慶,相孝為王。
巽の夬。初めは驚惶したが、後は毫髪の傷もなく、かえって福沢・慶賞を受け、上下が孝道をもって相待し、これによって一方に君臨できた。この林は先に驚き後に喜び、驚ありて険なしを主とし、かつ孝順仁厚をもって福を得る本とする。占者は事に遇うて縦しく場の虚驚があっても、終に禍を転じて福となす。敦厚をもって人を待ちその慶を固くすべき。
姤 隨風乘龍,與利相逢。田獲三倍,商旅有功。憧憧之邑,長安無他。
巽の姤。風の勢いに随い龍に乗って行き、一路財利と相逢う。田猟の獲る所は常の三倍、行商遠賈も大いに収穫あり。あの人の来り往き、熙熙攘攘たる城邑の中、長く安穏で他に意外なし。この林は勢に乗じて利を得、動いて獲る所あるを主とし、行商・出猟・遷居は皆吉。巽の風に相随い、往けば利あらざらざる上占である。
萃 魚擾水濁,寇圍吾邑。城危不安,驚恐狂惑。
巽の萃。魚の群れが攪動して池の水が濁るは、まさに盗寇が我の城邑を囲んだごとき。城池は危急で安からず、人心は惊恐し、慌て乱れてほとんど狂惑する。水が濁り魚が扰れるのは衆乱の兆。この林は外患が囲み逼り、人心が動揺することを主とし、兵盗の驚擾・家宅不寧の凶がある。占者は固く守って援を待つべきで、自ら陣脚を乱すことを切に忌む。
升 雖塞復通,履危不凶。保其明功,以道立宗。
巽の升。道は一度塞がっても、随いて再び通ずる。危の上を履んでも凶に至らない。己の顕明な功業を保つことができ、正道を凭って宗祀家門を立てる。この林は困して後に通じ、危うくして能く安しを主とし、凡事は先に阻まり後に順う。占者はただ正を守り道を持せば、縦し阻碍に遇うても局面を打開し得、功名は保つべきものがある。
困 坤厚地德,庶物蕃植。平康正直,以綏大福。(泰之解,賁之履,渙之解,漸之復)
巽の困。大地の徳は寛厚にあり、これによって万物がその上に繁衍し生長する。《尚書・洪范》の「平康正直」は、世に処り平和で心が正直ならば、安らかに大福を享けられると講ずる。この林は困の名に居るも取象は極めて醇厚で、厚徳をもって物を載せ、正をもって自ら守って安泰を得ることを主とする。占者は地の厚さに效い、争わず躁らずに宜しく、福は自ずから随う。
井 山木暴怒,壞梁折柱。稽難行旅,留連愁苦。(咸之豫)
巽の井。山間の樹木が狂風に摧折され、怒号して倒れ、屋梁を圧壊し廊柱を折る。道路はこれによって阻塞し、行旅の人は阻まれ停留し、外に滞留して愁苦堪え難い。この林は意外の災がその棟梁を壊し、行程が阻まれ帰期が定まらないことを主とする。占者は遠行に宜しからず、居家においても屋宇の修繕を防ぐべきで、静かに険の過ぐるを候すべき。
革 使燕築室,身不庇宿。家無聊賴,織我衣服。
巽の革。燕に差遣して巣を築き室を造らせ、自分はかえって庇ぎ宿る所がない。家の中に頼る所が一つもなく、自ら手を動かして衣裳を織るしかない。この林は人のために嫁を作り、労してその恵を得ないことを主とし、人に代わり営謀して身の帰る所なしの嘆がある。占者の出す力は多く他人に帰し、まず自身の安顿を謀るに宜しく、ひたすら人のために操持してはならない。
鼎 矢石所射,襄公□據。吳子巢門,傷病不治。
巽の鼎。飛矢と礌石に傷つけられる。宋の襄公は泓水の戦で股に箭を受け、物に扶けて支えるしかなかった。呉子諸樊は楚の附庸たる巢邑を攻め、城門の下で箭に中たりて死した。事は《左伝》に見える。この林は兵刃の傷、疾病治り難きを主とし、出戦・争闘・渉険の事は皆身の危の凶がある。占者は切に鋒鏑を親冒することを忌み、争闘を遠く避けるに宜しい。
震 日月運行,一寒一暑。榮寵赫赫,不可得保。顛隕墜墮,更為士伍。(中孚之晉)
巽の震。日月は輪転して停まらず、一寒一暑が交替して来る。人間の赫々たる栄寵も寒暑と同じく、終に長く保つことはできない。いったん跌落すれば、普通の兵卒に淪落する。《周易・繋辞》の「日往けば月来り、寒往けば暑来る」は、まさに盈虚に時あるを講ずる。この林は盛んに極まりて衰え、位高くして墜ち易しを主とする。占者は得意の時に退路を予め留め、驕を戒め満を戒めるべき。
艮 宮門悲鳴,臣圍其君,不得東西。
巽の艮。宮門の内から悲切な哭き声が伝わり、臣下が兵を起して自分の君主を囲み、東にも行けず西にも成らないようにした。この林は内変が肘腋にあり、下が上を犯して進退に路なしを主とし、幽禁され制され、親信に困られる凶がある。占者は身辺の者の反噬を防ぐべく、これに遇えば早めに自ずから脱を図り、決して内に孤立してはならない。
漸 戴盆望天,不見星辰。顧小失大,福逃牆外。(賁之蒙,小過之蠱)
巽の漸。頭に盆を戴いて天を望めば、自ずから星辰は見えない。司馬遷《報任安書》の「盆を戴き何以か天を望まん」は、二事が兼ね得ない喩えである。眼前の小利を顧みるだけで、かえって大処を失い、福気は墻外に逃げ去った。この林は見識が蔽いを受け、小のために大を失うことを主とする。占者はまずその遮蔽を去り眼界を放くべきで、目前の瑣碎なる得を貪ってはならない。
歸妹 天之所明,禍不遇家。反目相逐,終得和美。
巽の帰妹。上天が照臨し明らかに見る家には、禍患は訪ねて来ない。縦しくば夫婦が反目し互いに責め逐うことがあっても、最終的には再び和美に帰る。この林は家の中に口角争いがあっても、根基は損なわれないことを主とし、風波が過ぎた後は和睦に転ずる。占者は婚姻家室の争いに遇っても憂惧する必要はなく、正をもって自ら処るに宜しく、久しき後におのずから解ける。
豐 天陰霖雨,塗行泥潦。商人休止,市無所有。(革之睽,升之困,夬之大過)
巽の豊。天色は陰り、連日の大雨で、道路上は泥濘と水溜まりばかり。行商の人は足を止めるしかなく、市の上は空っぽで、どんな貨物もない。この林は天時が阻隔し交易が停頓することを主とし、豊の名はあれど実は得る所なし。占者の経商・求財は一時通じ難く、暫く歇んで晴を待つに宜しく、強いて路に上れば徒に泥濘を招く。
旅 善門福喜,增累盛熾。日就有得,宜其家國。
巽の旅。善を行い徳を積む家には福慶が門に盈ち、層々に累ね積まれて日に日に興盛し熾んとなる。毎日得る所があり、家門も邦国もこれによって安らかに宜しい。この林は善因が善果を結び福沢が漸く厚くなることを主とし、小を積んで大を成す吉象である。占者はただ善を存じ行い、持続して輟めなければ、家業も前程も俱に日に進む。
兌 南山之陽,華葉將將。嘉樂君子,為國寵光。(革之大有)
巽の兌。終南山の南の日向きの所は、草木の花葉が繁盛して将将たり。そこに嘉く楽しき君子がおり、国家の栄寵と光輝となる。《詩経》は多く南山の草木をもって興とし、賢者が養わるる所を得ることを喩える。この林は賢徳が顕揚され国の倚重を受けることを主とし、占者に上に賞識され名声が光り大きくなる喜びあり。進身して名を求めるに宜しい。
渙 晝龍頭頸,文章未成。甘言美語,詭辭無名。(井之蒙,蒙之噬嗑,家人之賁)
巽の渙。龍を画いて頭と頸だけを画き出し、鱗爪の紋彩はまだ画き成らない。まさに口いっぱいの甘言美語で、言うことは聞きよいが、実は言辞が詭詐で実に落ちず、名を成すことができない。この林は始めあって終わりなく、虚言で実なしを主とし、承諾・合作・文書の事は多く半途で廃する。占者は言を辨じ行を察すべく、巧語に惑わされてはならない。
節 嬰兒孩子,未有知識。彼童而角,亂我政事。
巽の節。年幼の嬰孩はまだ見識というべきものがない。《詩経・大雅・抑》は「彼の童にして角あり」と譏り、角のない小牛をわざわざ角が生えたと言うのは虚妄不実の比である。このような人を攪り入れれば、我の政事を乱すことになる。この林は人を用いること当たらず、稚弱が権を当たることを主とし、政令がこれによって紊乱する。占者は重任を無識の輩に託すべきでなく、事を謀るには老成を択ばねばならない。
中孚 陰作大奸,欲君勿言。鴻鵠利口,發其禍亂。荊季懷憂,張伯被患。
巽の中孚。暗に大奸大悪を醸し、なおかつ国君に緘口して言わざらしめんとする。偏って鴻鵠のごとき利口の人がそれを掲発し、これによって禍乱が驟かに起こり、荊季はこれを憂い、張伯はこれによって殃に遭う。この林は陰謀が敗露し無辜に牽連することを主とし、口舌が禍を招き暗事が外に揚がる凶がある。占者は身を持すること端正なるべく、陰謀に参与せず、また軽々しく人の短を掲げてはならない。
小過 德之流行,利之四鄉。雨師灑道,風伯逐殃。巡狩封禪,以告成功。(萃之比,益之復)
巽の小過。徳沢が流布し、利益が四方の郷に遍く及ぶ。雨師は前に道を洒掃し、風伯は後に災殃を駆逐する。天子は四方を巡行し泰山に封禅して、もって天地に功業の成就を告げる。この林は極めて吉で、徳威が並び行い天人が相助することを主とし、大功が告成し栄顕を賀される象がある。占者の謀る事は順遂通達し、隆重の慶を望める。
既濟 禹將為君,裝入崑崙。稍進陽光,登見溫湯。功德昭明。
巽の既済。大禹が天下の君とならんとして、装いを整え遠く崑崙に入る。一路陽光は漸く明るくなり、登臨する所に温泉の湧き流れるを見、彼の功徳はこれによって昭顕し明らかとなる。この林は禹が水を治め成功し、終に禅譲を受けた象をもって、険艱を歴尽して終に大業を成すことを主とする。占者の目下は跋涉の中にあれど、前程は漸く光明に入り、功名が期せられる。
未濟 五嶽四瀆,含潤為德。行不失理,民賴恩福。(恆之井,頤之明夷,離之恆)
巽の未済。五岳と四涜は万物を潤す水気を含み、これがすなわちそれらの徳である。山川の運行は常理に違わず、百姓はこれによってその恩沢・福佑を仰ぎ頼む。四涜とは江・河・淮・済の四大水を指す。この林は徳恵が広く被り理に循って行うことを主とし、安穏して福を受ける象である。占者はただ正を守り矩を踰えなければ、自ずから衆人に擁戴され恩沢が身に及ぶ。
兌の林(兌卦六十四林)
兌 班馬還師,以息勞疲。役夫嘉言,入戶見妻。(觀之既濟,賁之蠱,剝之復)
兌の兌。戦馬が列をなし回旋し、師を班して国に返り、疲労した士卒を休ませる。役に服す人から佳い便りが伝わり、ついに家門に入って自分の妻子に見える。この林は遠役が終わり久別が再逢することを主とし、帰家して団らんし労苦が釈かれる喜びがある。占者の外に奔走する者は帰るを望め、音信を待ち人の帰返を盼む事は皆吉。
乾 踐履危難,脫去厄患。入福嘉門,見誨大君。(震之家人,豐之中孚)
兌の乾。一路危険艱難を踏み踐めて、ついに厄運と禍患を脱し去った。福気の盈ちた佳い人家に入り、なお大人君子の教誨を得る。この林は先に険あり後に安く、難に遇って祥を成すことを主とし、かつ名師・貴人の指点あり。占者の眼下は困境にあれど、熬え忍びさえすれば佳境に転じ得、徳ある長者に多く親近して教益を承るに宜しい。
坤 子鉏執麟,春秋作經。元聖將終,尼父悲心。(訟之同人,豫之大有,革之震)
兌の坤。魯の哀公十四年、西の狩りで叔孫氏の車夫たる子鉏商が麒麟を獲し、孔子は《春秋》を作ってここに絶筆した。この大聖人は自ら終わらんとすることを知り、麟を撫でて悲しみ、仁獣がその時に非ずして出たことを感傷した。この林は賢者が遇わず、大徳が将に窮まらんとすることを主とし、物がその類を傷む、時我に与せずの嘆がある。占者は光を韜め晦を養うに宜しく、乱世に強いて頭を出してはならない。
屯 夾河為婚,期至無船。淫心失望,不見所歡。(屯之小畜)
兌の屯。一条の大河を隔てて婚約を締び、約期が至ったのに渡船がない。心意は切迫して希望は空しくなり、終に愛する人に見えない。この林は中間に阻みあり、望んでも即かないことを主とし、婚姻・合作・約会の事は皆隔て断たれる。占者はまず中間に横たわる障碍を解決すべきで、さもなくば空しく期待を懐き徒に惆悵を増す。
蒙 天孫帝子,與日月處。光榮於世,福祿繁祉。(解之臨)
兌の蒙。天帝の孫、上帝の子嗣が、日月と同じく天の上に処る。彼らは世に栄光赫々とし、福禄と吉祥が層出して窮まらない。この林は貴くして言うべからず、光華が人を照らす象を取り、出身あるいは際遇が尊顕で、名声と実恵を兼ね得ることを主とする。占者は貴人に攀附し提携を蒙るを望め、名を求め禄を求める上吉の林である。
需 三年爭妻,相隨奔馳。終日不食,精氣勞疲。(乾之大畜,坎之家人。「年」一作「羊」)
兌の需。三年の久しきにわたり一つの妻室を争って互いに譲らず、彼此追逐し奔走する。終日食に顧みる暇なく、精神気力は皆消耗し尽くした。この林は久しく争って果なく、両敗して俱に傷つくことを主とし、婚訟・財産の争いは皆拖延して神を耗する。占者は早めに手を罷め和を求めるべきで、久しく纏えばただ元気を耗し尽くすのみで、事に補いなし。末注は「年」の字が一は「羊」と作ることを載せる。
訟 禹召諸神,會稽南山。執玉萬國,天下安寧。(姤之臨,鼎之艮,損之旅)
兌の訟。大禹が群神を召集し、会稽の南山で会盟し、万国の諸侯は玉帛を手執して朝会に来り、天下はこれによって安寧した。《国語》に禹が「諸侯を会稽に会す」と載せ、防風氏は後れ至って誅された。この林は号令が厳明で衆望の帰する所であることを主とし、訟の名に居るも実は争いて治を得ることを主とする。占者がもし主導の位に居れば、衆を服して事を成すを望める。
師 早霜晚雪,傷害禾麥。損功棄力,飢無所食。
兌の師。霜が降りるのが早く、雪が下るのが遅く、禾苗と麦は皆凍え傷ついた。一年の功夫は徒に費やされ、気力は全て抛擲され、到頭飢えて食べる粮もない。この林は天時が順でなく、労して功なしを主とし、耕作・投入・長線の経営の事は皆収成があり難い。占者は余粮を留めて匱乏に備えるに宜しく、一擲に孤注してはならない。
比 嵩融持戟,杜伯荷弩。降觀下國,誅逐無道。憂商之季,失福逃走。(比之遯,豐之離,需之咸)
兌の比。祝融の神は手に長戟を持ち、冤を含んで死んだ杜伯は強弩を負い、一同に降臨して下界の諸国を察看し、あの無道の君を誅戮し駆逐する。《墨子・明鬼》に杜伯が厲鬼と化して周の宣王を射殺したことを記す。商代の末世に至り、君徳は敗壊し、福気もこれを棄てて逃げた。この林は天罰が身に及び悪政が禍を招くことを主とする。占者は自ら行事を省みて、無道の轍を蹈まないようにすべき。
小畜 生有聖德,上配太極。皇靈建中,受我以福。(家人之需,歸妹之需)
兌の小畜。生まれながらにして聖人の徳行を備え、上は太極の道と相配し得る。皇天の神霊が中正の則を建て、福沢を我に授ける。「建中」は《尚書・仲虺之誥》の「王が大徳を懋昭にし、中を民に建つ」に出る。この林は大吉で、徳が天に合し命を受けて福あることを主とする。占者は中道を秉持して行えば、自ずから神明の護佑があり、求める所は皆遂う。
履 下田陸黍,萬華生齒。大雨霖集,波病漬腐。
兌の履。低窪の下田と高所の陸地にいずれも黍を植え、万千の花穂が齒のごとく抽発した。ところが意に反し連綿たる大雨が傾注し、積水が波を成して、庄稼を泡だて病み腐らせた。この林は眼の前に成らんとするに横加の害に遭うことを主とし、喜びの中に憂いが生ずる。占者は収穫が即ち在る時に特に意外を防備すべく、早めに排涝・防患の計を作るに宜しい。
泰 子畏於匡,困厄陳蔡。明德不危,竟克免害。(渙之坎,大過之晉)
兌の泰。孔子は匡の地に囲まれて険に遭い、また陳・蔡の間で粮を絶たれ困を受けた。しかし彼の徳行は光明で、終に傾危に至らず、最後に禍害を免れ得た。二事は並び《論語》《史記・孔子世家》に見える。この林は困厄は深けれど正気は恃むべきを主とし、占者は縦し険境に陥るも、徳義を持守しさえすれば、終に安らかに身を脱せる。
否 有兩赤頭,從五嶽遊。淫言無佑,趍爾之林。俯伏聽命,不敢動搖。
兌の否。二つの赤色の頭の神怪があり、五岳の神に随いて四方を巡游する。あの邪妄の言は神明の保佑を得られず、ただ奔逃して汝の山林に入るしかない。神威を見れば地に俯伏して命を聴き、更に絲毫の動揺を敢えてしない。この林は邪が正に勝たず、妄言する者は終に懾服されることを主とする。占者がもし正位に身を居すれば、宵小を鎮めるに足り、もし心に詭詐を存すれば、制裁を逃れ難い。
同人 當得自知,不逢凶災。衰來復興,終得福來。
兌の同人。得るべきものは自ずから心の中に数あり、これによって凶災に遇わない。衰敗が過ぎて再び振興し、終に福気が門に臨むを待つ。この林は分を知り己を守り、進退に明るいことを主とし、ゆえに能く害を避く。かつ運勢は落から起に転じ、先衰後盛の象である。占者の眼下は縦し低谷にあっても、分を安んじて時を待てば、転機は自ずから至る。
大有 朽根枯樹,華葉落去。卒降火焱,隨風僵仆。(屯之坎,噬嗑之否,艮之需,夬之恆)
兌の大有。樹根はすでに朽ち枝幹は枯れ乾き、花葉は尽く凋落した。忽然として烈火の飛焔が降り、枯木は風に随いて地に倒れ僵れ臥す。この林は根本がすでに壊れ禍は単行せずを主とし、衰敗の上に更に焚劫に遭う。占者の依託する人事はすでに生機なし。切に再び心力を投入することを忌み、早めに身を抽き別に根本を謀るに宜しく、特に火燭と突発の災を防ぐべし。
謙 葛生衍蔓,絺綌為願。家道篤厚,父兄悅喜。
兌の謙。葛藤が蔓延して生長し、割き取って細葛布と粗葛衣を織り成し、正しく心願に合う。《詩経・周南・葛覃》はこれをもって家室の労を詠う。この林は家道が篤厚で、父兄が悦び喜ぶことを主とし、家人和楽・勤労して功ある象。占者の居家・営織の事は皆順で、倹を守り勤めれば福は自ずから至る。
豫 東行求玉,反得弊石。名曰「無直」,字曰「醜惡」。眾所賤薄。(家人之否)
兌の豫。東へ行き美玉を求めたのに、かえって一塊の破石を得た。この石の名は「無直」、字は「醜悪」といい、衆人に軽賤し鄙薄される。「無直」は一銭の値もないことを言う。この林は求める所が得る所に非ず、労して羞を蒙ることを主とし、賢を訪い物を求め親を議る事は皆偽劣に遇い易い。占者はまずその実を験すべく、虚名・遠途に誘われてはならない。
隨 瞻白用弦,駑孱恐怯。任力隨身,如蝟見鵲。偃視怒腸,不敢拒格。
兌の随。張り望みて弓弦を搭えようとするも、性が駑鈍孱弱で心に怯えあり。ただ一身の蛮力を凭って事を行い、まさに刺猬が喜鵲に遇うがごとく。古人は鵲が猬を制し得、猬はすなわち蜷伏して動かぬと言う。それは身を翻して仰視し、満腹に恼怒するも、終に抵抗し格闘を敢えてしない。この林は外は強く中は怯え、剋に遇えば即ち伏することを主とする。占者は人と硬く拼すべきでなく、勢を審らかに己を量り、忍譲を上とすべし。
蠱 瘡痍多病,宋公危殆。吳子巢門,無命失所。
兌の蠱。身上に瘡傷が累々とし疾病に纏われる。宋の襄公は泓水の戦で股を傷つけ危かった。呉子諸樊は巢邑の城門の下で箭に中たり、性命を保たずその帰る所を失った。二事は《左伝》に見える。この林は創傷いまだ愈えずして禍が再び至ることを主とし、疾病・兵刃の凶がある。占者は静かに養い険を避けるに宜しく、争闘・好勝を忌み、特に病を帯びて危に渉るを忌む。
臨 東山西嶽,會合俱食。為吳從送,以成恩福。
兌の臨。東の山と西の岳が一か所に会合し、ともに祭祀の血食を享ける。また呉国のために送り護従し、これによって恩義と福沢を成した。この林は両方が相合し、共にその事を襄ることを主とし、聨姻・結盟し彼此が相成する象がある。占者は遠方または異地の人と手を携えるに宜しく、合すれば同じくその利を得る。聚合して福を成す占である。
觀 舞非其處,失節多悔,不合我意。
兌の観。舞うべきでない場合に舞い、挙止が節度を失し、これによって悔恨が多く、事も我の意に合わない。この林は行事が場合を失し進退に節なく、懊悔を招くことを主とする。占者は時を審らかに勢を度り、言行は身份と場面に合うべきで、強いて表現すれば巧を弄して拙を成すに過ぎない。
噬嗑 南循汝水,伐樹斬枝。過時不遇,惄如周飢。
兌の噬嗑。汝水に沿い南へ行き、樹木を伐り枝を斫る。《詩経・周南・汝墳》の「いまだ君子を見ず、惄として調饥のごとし」は、妻子が薪を伐り夫を待つもその帰るを見ず、心の憂愁は朝の飢えのごとくと写す。この林は苦しく候して人至らず、時機を錯過することを主とする。占者の望む人事は一時に合し難く、耐え忍んで守候するに宜しく、焦燥してはならない。
賁 公孫駕驪,載遊東齊。延陵說產,遺季紵衣。(艮之未濟)
兌の賁。公孫は黒い駿馬に駕して、人を載せ東の斉国に遊ぶ。呉の延陵季子と鄭の子産は一見して故のごとく互いに欣賞し、臨別に季子に纻麻の衣裳を贈った。事は《左伝・襄公二十九年》に見える。この林は遠游して友を得、意気が相投ずることを主とし、占者の外出は知己・貴人に遇い、兼ねて贈を受け物を得る喜びあり。
剝 乘輿八百,以明文德。踐土葵丘,齊魯受福。(巽之大壯)
兌の剝。八百乘の車馬で諸侯と会盟し、もって礼楽文徳を彰明した。晋の文公は践土に盟し、斉の桓公は葵丘に盟し、斉・魯はこれによって福沢を蒙った。この林は剥落の名に居るも、取象は威徳で人を服し諸侯が賓服することを主とする。占者は縦し削損の時にあっても、徳をもって衆を服し四隣と好を結べば、なお庇佑を転得できる。
復 雄處弱水,雌在海邊。別離將食,哀悲於心。
兌の復。雄鳥は遥かな弱水のほとりに棲み、雌鳥は海辺に留まる。それぞれ別れ離れて食を求め、心中に哀悲が満ちる。弱水は伝説に遥かにして渡り得ず、相隔たることの遠さを喩える。この林は夫婦が離散し天の一方おのおのに在ることを主とし、別離して懐を傷む象がある。占者は親しき人と一時に聚り難く、音信もまた稀なり。心を寛くして自ら守り、時を待って合するに宜しい。
旡妄 結網得鮮,受福安坐,終無患禍。
兌の旡妄。漁網を結べば鮮魚を得、家に安坐して福沢を受け、終始禍患はない。この林は労せずして獲、坐してその成を享くことを主とし、運勢は自然に通順である。占者の営む事は順遂如意で、強求の需なく、分を安んじ常を守れば便ち利を得る。平穏にして安吉の林である。
大畜 秋南春北,隨時休息。處和履中,無有憂凶。
兌の大畜。候鳥は秋に南へ飛び春に北へ返り、時令に順い来り往きして作息する。人がもし世に処り平和で、中正の道を履めば、同じく憂愁と凶険はない。この林は時に順いて動き中を守って和を致すことを主とし、身を修め泰を保つ要である。占者は凡事時に逆らい強いて為すべからず、分に随い時に随えば、自然に平安で咎なし。
頤 啟戶閉門,巡狩釋冤。夏臺羑里,湯文喜悅。
兌の頤。門戸を啓き閉じる間に、天子は四方を巡行し、人のために冤屈を洗雪する。商の湯はかつて夏の桀に夏台に囚えられ、周の文王はかつて商の紂に羑里に囚えられ、後にいずれも釈かれて大いに喜んだ。二事は《史記・夏本紀》《周本紀》に見える。この林は冤屈が伸び幽囚が釈かれることを主とし、占者に困して復た出で沈冤が昭雪する喜びあり。
大過 符左契右,相與合屬。乾坤利貞,乳生六子。長大成就,夙言如母。
兌の大過。符信は左右の两半に分かれ、契券も各々一辺を執り、両下が合さえば厳絲合縫となる。乾坤の二卦は正を守るに利あり、交感して六つの子卦を生ず。子女は長じて成人し、早くから言葉を能くし、声口は母のごとし。この林は陰陽が配合し家道が綿延することを主とし、婚配の和順・子嗣の蕃昌の吉あり、合伙・締約の事もまた成る。
坎 飢蠶作室,絲多亂緒,端不可得。
兌の坎。飢えた蚕が強いて絲を吐き繭を作るも、絲は多いのに頭緒が紛乱し、抽引すべき線頭が見つからない。この林は事が繁雑で手を下すに由なく、見れば用いるべき物あるも、実は条理を理出せないことを主とする。占者の面前の局面は千頭万緒で、まず根本を補足し元気を養足してから整理を談ずべきで、急げば愈々乱れる。
離 東壁餘光,數暗不明。主母嫉妒,亂我事業。(革之謙,大壯之恆,謙之屯)
兌の離。東壁から透して来る一点の余光は、屡々昏暗で明らかでない。主母は心に妒忌を懐き、我の事業を攪乱する。東壁はもと文章の星を主とし、光が微弱ならば文運は昌ならず。この林は内助が賢からず、家事が外務に牽累し、事業がこれによって阻まれることを主とする。占者はまず内を安んずべく、門内の是非が正務を牽動せしめてはならない。末注は同文が《革》の《謙》、《大壮》の《恒》、《謙》の《屯》に見えることを示す。
咸 白茅漉酒,靈巫拜禱。神嗜飲食,使君壽考。
兌の咸。白く潔い茅草をもって清酒を濾し、霊験ある巫祝が地に伏して祈禱する。神明はこの酒食を飲食することを嗜み、これによって君主に長寿を賜う。《周易・大過》に「白茅を藉き用る」とあり、その潔敬を取る。この林は誠敬が神に感じ祈福に応あることを主とし、占者の禱する事は福佑を獲すべく、特に祭祀・祈寿・消災の挙に利あり。
恆 范公陶朱,巧賈貨資。東之營丘,易字子皮。抱珠載金,多得利歸。
兌の恒。范蠡は功を成し身を退き、陶朱公と号し、経商して貨を積むに巧みであった。彼は東の斉地営丘に遷り、姓名を改めて自ら鴟夷子皮と称した。珠玉を抱き黄金を満載して、豊かに利を獲て帰った。事は《史記・貨殖列伝》に見える。この林は財において大吉で、善く賈きて富を致し、名を隠し遠く徙して利を得ることを主とする。占者は低調に経営し異地に財を取るに宜しい。
遯 三羖五牂,相隨俱行。迷入空澤,經涉虎廬。循谷直北,經涉六駁。為所傷賊,死於牙腹。
兌の遯。三匹の雄羊と五匹の牝羊が伴を結んで同行し、迷って空っぽの水沢に入り、また虎の巢穴を経渉した。山谷に沿い直ちに北へ進み、再び伝説の虎豹を食う六駁の猛獣に遇い、ついに咬まれ傷つけられ、それらの歯牙と腹の中に身を葬った。この林は大凶で、伴を結んで遠行して誤って険地に入ることを主とする。占者は切に盲従して路に上るを忌み、特に北行と山に入るを忌む。
大壯 雄鵠延頸,欲飛入關。雨師灑道,□我袍裘。車重難前,侍者稽首。
兌の大壮。雄の鴻鵠は首を延ばし、翼を振って関中に飛び入らんとする。雨師が前に道を洒掃するも、雨水は我の袍と皮裘を濡らした。車は載せすぎて重く、前に進み難く、随侍の人はただ首を稽いて命を請うしかない。この林は志向は高遠なれど行装が累重で進程が阻まれることを主とする。占者は負を減らし装を軽くして初めて前行し得、負担が多過ぎれば寸步も移り難い。
晉 中年蒙慶,今歲受福,必有所得。
兌の晋。中年に至り慶幸の事を蒙り、まさに今年福沢を受け、必ず得る所がある。この林は時が来り運が転じ、当年に効を見ることを主とし、明白暢快の吉占である。占者の謀る事は遠く待つ需なく、年内に便ち実恵が手に至る。積極的に進取し、当下の時機を把捉するに宜しい。
明夷 祿如周公,建國洛東,父子俱封。(革之明夷)
兌の明夷。俸禄が豊かで周公のごとく、洛邑の東に封国を建て営み、父子の二代が皆諸侯に封ぜられた。周公は魯に封ぜられ子の伯禽が国に就く。事は《史記・魯周公世家》に見える。この林は明夷の名に居るも、功名厚禄を主とし、後人に蔭が及ぶ。占者は官禄の進益を望め、かつ福沢が子孫に延び、勤勉して功を建つに宜しい。
家人 安床厚褥,不得久宿。棄我嘉燕,困於東國。投杼之憂,不成禍災。(家人之睽,艮之篩)
兌の家人。安らかな床を鋪き厚い褥を墊けるも、久しく宿ることができない。我の美好な宴楽を抛下して、東方の異国に困り留まる。曽母が杼を投げたような、讒言に驚擾される憂惧はあるも、終に真の災禍を醸すには至らない。この林は居処が安からず羈旅して外にあり、かつ人の議論に遭うことを主とする。然れど虚驚のみ、占者は心を寛くして自ら守れば恙なしを保てる。
睽 蓄積有餘,糞土不居,利有所得。
兌の睽。儲蓄し積累するに頗る盈余あり、糞土さえ徒らに擱置せず、様様皆用場に派し、これによって利の得る所有り。この林は倹勤して財を生み、物をその用に尽くすことを主とし、乖睽の時に処りながら家計は匱えず。占者は精を打ち細を算し、廃を化して宝と為すに宜しく、細微の処に経営すれば、求める利は自ずから手に至る。
蹇 心願所喜,乃今逢時。我得利福,不離兵革。(既濟之復)
兌の蹇。心に願い喜ぶ所の事が、今まさに好い時に逢う。我は利益と福気を得たも、ただ終始兵戈戦事を脱しない。この林は願望が遂げられて処境いまだ寧ならず、福の中に険を帯びることを主とする。占者の求める所は成るも、紛争の中に在って経営しなければならず、安に居て危を思うに宜しく、得意に因りて備を弛めてはならない。
解 目不可合,憂來搔足。怵惕危懼,去其邦族。(萃之睽、明夷)
兌の解。目が合せられず、憂愁が襲い来ればただ双足を搔くのみ。心中に戒惧し安からず、ついに自分の邦国・宗族を離れた。この林は憂思して寐り難く、危惧が交迫して流亡し郷を去るに至ることを主とする。占者の眼前に解し難き憂いあり、あるいは故土を離れざるを得ず。早めに遷避の打算を作るに宜しく、恋棧して進退の拠り所を失ってはならない。
損 福德之士,歡悅日喜。夷吾相桓,三歸為臣。賞流子孫。
兌の損。福徳の士は、日々歓悦して意に称う。管夷吾は斉の桓公を輔けて覇業を成し、位は人臣に極まり三帰の台を享有し、賞賜はなお流沢して子孫に及んだ。事は《史記・管晏列伝》に見える。この林は徳厚くして位を得、栄寵が優渥であることを主とし、占者は明主に遇い重賞を受けるを望め、かつ福蔭は後代に及ぶ。
益 憂姬附耳,心聽悅喜,利後搏取。
兌の益。もとより憂愁の姫妾が耳に附いて低語し、心に聴くに歓喜に転じ、これによってこの後は手を放して利益を争取できる。この林は憂を転じて喜びと為し、内助によって機を得ることを主とする。占者はまず一段の愁悶があり、人の一言の点撥を経て便ち豁然と開朗し、随いて進取すれば獲る所有り。
夬 叔迎兄弟,遇巷在陽。君子季姬,並坐鼓簧。(咸之震)
兌の夬。叔父が門を出て兄弟を迎え、陽向の巷口で相遇う。あの君子と季姫は肩を並べて坐り、ともに笙簧を吹奏する。《詩経》は多く簧を鼓するをもって賓主の燕楽を写す。この林は親族が相聚まり、賓主が歓を尽くすことを主とし、歓会の和楽・婚姻の諧美の吉あり。占者は親友と多く往来するに宜しく、喜事が期せられる。
姤 徙巢去家,南遇白鳥。東西受福,與喜相得。
兌の姤。巣を徙し家を去り、南へ行き白鳥に遇う。東へ行き西へ往くも皆福沢を受け、至る所で喜慶と相逢う。この林は遷移して吉を得、遇合に縁あることを主とし、占者の搬家・改業・遠行は皆宜しく、動は静に比して佳く、到る所に自ずから貴人の接応あり。
萃 舜登大禹,石夷之野。徵詣王庭,拜治水土。(乾之中孚,師之小畜)
兌の萃。虞舜は石夷の原野で大禹を挙用し、彼を召して王庭に至らせ、水土を治める重任を拜授した。《尚書・舜典》に舜が禹に命じて「水土を平らぐ」と載せ、後に禹は終に大功を成した。この林は明主が才を識り賢能が命を受けることを主とし、占者がもし真才あれば、上位者に拔擢され重用されるを望め、仕を求め職を求める大吉の林である。
升 江河淮海,天之都市。商人受福,國家富有。
兌の升。長江・黄河・淮水・大海は、上天の設けた通都大邑と集市である。行商の人は水運に因りて福を蒙り、国家もこれによって富庶にして充盈する。この林は水路が通達し貨殖が興旺することを主とし、占者は舟楫・商賈の利を藉るに宜しく、往来して貿易すれば皆吉。財を求め広く進む上占である。
困 隱隱煩煩,火燒山根。下潤我鄰,獨不蒙恩。(賁之蹇)
兌の困。隠隠煩煩と、火が山の麓まで焼き付く。雨露はただ我の隣人を潤し、独り我が家だけが恩沢を蒙らない。この林は禍は己が身に近く福は他人に帰することを主とし、彼を厚くし此を薄くし、独りその困を受ける嘆がある。占者の眼下は利を分かつ均からず、援手を得難し。自ずから出路を求めるに宜しく、他人の分惠を指望してはならない。
井 闇昧不明,耳聾不聰。陷入深淵,滅頂憂凶。(巽之小畜)
兌の井。眼前は昏暗してはっきり見えず、耳が聾して聡くない。一歩踏み誤れば深淵に跌き、水が頂を没して憂患が凶を成す。この林は耳目が蔽塞して誤って険境を蹈むことを主とし、《巽》の《小畜》と辞が同じ。占者はまず明察を求めるべきで、水に渉り険に渉り深に渉る事は一概に回避し、慎行すれば大禍を免れ得る。
革 鳥鳴喈喈,天火將下。燔我館舍,災及妃后。(中孚)
兌の革。群鳥が喈喈と驚き鳴きやまず、天火がまさに降りかかろうとしている。我が館舎を焼き払い、災いは妃后にまで及ぶ。鳥の噪きは火災の先兆とされ、古人は異変とみなした。この林は火において大凶で、宅舎の焚燬と内眷の被累を主とする。占う者は火の気を厳しく慎み、家の女眷はとりわけ留意し、警があれば速やかに避けるのがよい。
鼎 十雉百雛,常與母俱。抱虎搏雞,誰敢難者。
兌の鼎。十羽の雌雉が百羽の雛を連れ、常に母鳥に従って離れない。それらに守られていれば、虎を抱いて鶏と闘うようなもので、誰があえて難をしかけようか。この林は群聚して主があり、勢い衆く力強く、万事に強い援護があることを主とする。占う者の倚る勢いは甚だ厚く、行うに阻む者なく、勢いに乗じて為すがよい。
震 營城洛邑,周公所作。世建三十,年曆八百。福佑盤結,堅固不落。(井之升)
兌の震。洛邑の城郭を営建したのは周公の手筆である。それより周室は三十代伝わり、年代は八百載に及んだ。福祐が根を張りつるを結んで一体となり、堅固にして堕ちない。事は《尚書・洛誥》に見える。この林は大吉で、基業が深く固く、綿々と久遠を主とする。占う者の立つ根本は極めて牢として、長くその利を享くべく、久長の計を謀るがよい。
艮 三人俱行,別離將食。一身五心,反覆迷惑。
兌の艮。三人が道を同じくして行き、食時に至って各自離れる。一人が五つの心を生じて反復し、迷惑して定まらない。この林は同伴が心を離れ、自ら猶疑して、謀事が主意の定まらぬために散ずることを主とする。占う者はまず己の志を定め、然る後に人と事を共にすべきで、さもなくば人心は渙散し終に成すところなし。
漸 三虎搏狼,力不相當。如鷹格雉,一擊破亡。
兌の漸。三匹の虎が一頭の狼を囲んで搏み、双方の力は懸隔する。鷹が野雉を撃つように、一撃してこれを破り殺す。この林は強弱が分明にして勝敗が立ちどころに判ずるを主とする。占う者が強勢の一方に居れば速やかな勝利が期すべし。弱勢に処すればその鋒を避くべし。切に卵をもって石に当たってはならない。
歸妹 養虎畜狼,還自賊傷。年歲息長,疾君拜禱。雖危不凶。
兌の帰妹。虎を豢養し豺狼を蓄え留めれば、終に反ってそれに咬傷される。年歳が漸々増すとはいえ、君上に疾あれば祭祀を設けて祈るべく、幸いに危境に処すといえども終に大凶とはならない。この林は患を養いて自ら傷き、なお救済すべきを主とする。占う者の縦容する人事はすでに隠憂と成れり。早く裁抑すべし。縦え驚険あるとも、誠をもって補救すればなお安きに転ずべし。
豐 後時失利,不得所欲。
兌の豐。時機に後れて落ち、それゆえ利益を失い、欲するものを得ること能わず。この林は遅疑して事を誤り、時点を逸し、豊盛の名あれども豊盛の実なきを主とする。占う者は機に当たり断ずればこそ獲ること有らん。一味に観望して待てば、好処は他に先んじて取られてゆく。
旅 雉兔之東,以野為場。見鷹奔走,死於谷口。
兌の旅。野雉と野兎が東の方に活動し、原野を以てその遊猟の場と為す。鷹隼を一見すれば慌てて奔逃し、終に山谷の口にて死す。この林は依託するところなくして強敵に擒にされるを主とし、羈旅して外にあるはとりわけ危殆なり。占う者は門を出でて安地を択ぶべく、空曠にして援なき処に久しく留まることなかれ。警に遇えば速かに退くべし。
巽 秋蛇見穴,不失其節。夫人姜氏,自齊復入。
兌の巽。秋の蛇は時を按じて洞穴に帰り、蟄蔵の時節に背かない。《春秋》の記すところ、夫人姜氏が斉より重ねて魯に返るがごとし。この林は時に依りて返り、去りて復た帰るを主とする。占う者の去りし人事に回還の機あり。出行の者は帰来を望み得べく、失物旧業もまた復得の望みあり。
渙 鳥鳴巢端,一呼三顛。搖動東西,危嵬不安。
兌の渙。鳥が巢の頂に鳴けば、一鳴きして巢は三たび晃れた。東に搖れ西に擺れ、高危険峻にして少しも安穩ならず。この林は居るところ固からず根基動揺し、巢の危枝に在るがごときを主とし、些かの風吹あれば即ち傾覆の虞あり。占う者は速かに安穩の地に遷るべく、高危の位に久しく処るべからず。
節 命夭不遂,死多為祟。妻子啼喑,早失其雄。
兌の節。寿命短促にして志愿遂げず、死者の怨気は多く作祟の患と化す。妻子が哭いて声嘶力竭し、早く一家の主を失う。この林は大凶にして夭折喪亡、家が頂梁を失うを主とする。占う者は格別に身体を珍摂し険事を回避すべく、疾に遇えば速かに良医を求むべし。拖延すべからず。
中孚 茆屋結席,祟我文德。三辰□旗,家受其福。
兌の中孚。茅で搭した屋と編結の席は、簡樸なれども我が文徳を成全す。旗には日月星の三辰の象を畫し、《左伝・桓公二年》にいわゆる「三辰旂旗、其の明を昭らかにす」なり。家門は此に因りて福沢を承く。この林は陋に居りて志は明く、文徳を以て福を受くるを主とする。占う者は貧に安んじ身を修むるに宜しく、声名自ずから顕れん。
小過 羅網一張,鳥無一翔。征伐困極,飢窮不食。
兌の小過。羅網を一張すれば鳥は一羽も飛び出す能わず。兵を用い征伐して極めて困窘に至り、飢餓窮乏にして食うべき糧なし。この林は羅網に陥り進退俱に窮することを主とし、凡そ出行・征戦・謀動の事はみな囲困せらる。占う者は兵を按じて動かざるに宜しく、先ず眼前の衣食の急を解くべし。妄動すればただ自ら羅網に投ずるのみ。
既濟 天成地安,積石為山。潤給萬里,人賴其歡。
兌の既済。上天の化育は已成り、大地は安定して揺がず、衆石を累積して高山を堆成す。水沢は潤して万里の遠きに供給し、人人はそれに仰頼して歓欣す。この林は大吉にして功業成就し、恩沢が広く被るを主とし、漸を積みて大器を成すの象なり。占う者の積める功はすでに収成の時に至れり。広く恵沢を施して衆心を固むるに宜し。
未濟 銅人鐵柱,暴露勞苦。終月卒歲,無有休止。
兌の未済。銅に鋳たる人像と鉄に鋳たる立柱は、風に吹き日に晒されて露天に立ち、終日労苦を受く。月を整え年を整えて、一刻の停歇もなし。この林は労役窮まりなく身己に由らず、堅忍なれども休息を得ざるを主とする。占う者の任ずる事は繁重にして卸し難し。力を量りて分担するに宜しく、切に血肉の躯を以て銅鉄の用に当つべからず。
渙之林(渙卦六十四林)
渙 望幸不到,文章未就。三子逐兔,犬踦不得。(未濟之兌,謙之既濟)
渙の渙。君王の臨幸を望むも終に来らず、錦繍の文章もまた成り書かれず。三人が同じく野兎を追い、猟犬はまた足を跛めて、終に捕獲する能わず。この林は期望が落空し才具が施展を得ざるを主とし、凡そ名を求め、干謁し、競逐する事は皆功が一簣に欠く。占う者はまずその内を修めその缺失を補うべく、急いで售を求むべからず。
乾 焱風阻越,車馳竭竭。棄名追亡,失其和節。憂心惙惙。(需之小過)
渙の乾。狂風が拦阻して逾越し難く、車馬は奔馳して力竭き声嘶く。名分を抛きて逃亡の人を追捕すれば、それに因りて従容の節度を失い、心に憂愁已まず。「憂心惙惙」は《詩経・召南・草虫》に出づ。この林は奔波労頓して事は願いに違うを主とする。占う者は行事過急なれば分寸を失う。轡を緩め徐行し、本分を守るに宜し。
坤 蛇得澤草,不憂危殆。
渙の坤。蛇が水沢辺の豊草を見出して蔵身する所を得れば、危険を憂うるに及ばず。この林はその処所を得て進退に拠るところあり、微弱の身と雖もまた安んじて自ら保つ能きを主とする。占う者はただ己に適う位置を見準すれば、縦え勢い単く力薄くとも、凶険に遭遇するに至らず。分に安んじ位を守るの平吉の林なり。
屯 兩犬爭鬥,股瘡無處。不成仇讎,行解卻去。
渙の屯。二匹の狗が撕咬して争闘し、腿上に咬まれて一塊の好肉なし。然れども未だ真の仇敵を結ばず、闘うこと一陣にして自ずから分かれて行く。この林は一時の争執にして怨を結ぶに至らず、皮肉の損あるといえども事後に化解し得べきを主とする。占う者の眼前の口角衝突は懐に挂るに足らず。一歩退譲すれば即ち自ら消散す。
蒙 因禍受福,喜盈其室,求事皆得。
渙の蒙。一場の禍事に因りて反って福気を得、喜慶が屋室に充満し、求むる事は様様に意の如し。この林は禍中に福を蔵し、敗に因りて成るを主とし、危を転じて安と為すの上吉の象なり。占う者の眼前の挫折は正しく転機の在るところなり。沮喪するに及ばず。勢いに順じて行えば即ち百事成るべし。
需 江有寶珠,海多大魚。亟行疾去,可以得財。(節之中孚)
渙の需。江中に宝珠を蔵し、海里に多くの大魚あり。急ぎ身を動かし速やかに前往せば、即ち財貨を得べし。この林は財は遠方に在り、速取に貴ぶを主とし、動けば即ち得る有るの占に属す。占う者は株を守り兎を待つべからず。機に当たり断じて外に出でて営謀すべし。遅くなれば宝は他人の得るところと為らん。
訟 三年生狗,以戌為母。荊夷上侵,伯姬出走。(坤之震,否之姤,需之訟,賁之復)
渙の訟。三年養いし狗は、地支の「戌」を以てその母と認む。南方の荊蠻が北に上りて侵擾し、伯姫は出奔逃亡するのみ。この林は外患と内乱と交わり作し、貴人が流離して所を失うを主とし、兵禍が人を逼りて迫って迁徙せしむるの凶あり。占う者は早く是非の地を避くべく、尤も南来の扰を防ぐべし。
師 安息康居,異國窮廬。非吾習俗,使伯憂惑。
渙の師。安息と康居は皆西域の遠国にして、あの窮荒の地の氈帳なり。風土人情は我が習俗に合わず、人の心を憂愁困惑せしむ。二国の名は《漢書・西域伝》に見ゆ。この林は遠く異域に適きて格格不入するを主とする。占う者は遠方に出行し或いは生地に調任せば、一時に適応し難し。多方に打点して、貿然として久居すべからず。
比 行觸天網,馬死車傷。身無聊賴,困窮乏糧。
渙の比。路に上りて即ち天羅地網に触犯し、馬匹は倒斃し車は損壊す。孤身として依るところなく、困頓窮乏にして糧食もまた断たれたり。この林は行において大凶にして、動けば即ち咎を得て進退拠り所を失うを主とする。占う者は兵を按じて動かざるべく、凡そ出行・遷転・興造の事は一概に推後せよ。静守すればこそ絶境を免れん。
小畜 裸裎逐狐,為人觀笑。牝雞司晨,主母亂門。(大有之咸)
渙の小畜。赤身露体にして狐狸を追えば、人に囲観取笑せらる。母鶏が公鶏に代わりて暁を報ずれば、女主人は門戸を攪乱す。《尚書・牧誓》は「牝鶏の晨、惟れ家の索なり」を以て亡家の兆と為す。この林は行止が体を失し陰陽倒置して、家中の内政修まらず外に譏議を遭うを主とする。占う者は名分を正しくし礼度を守ればこそ、能く笑柄を止めん。
履 為季求婦,家在東海。水長無船,不見所歡。(屯之蹇)
渙の履。小児子の為に妻室を求め娶らんとするに、女家は遠く東海の浜に在り。水路漫長にして渡船なく、終に心上人に見る能わず。この林は遠隔して通じ難く良縁が阻まるを主とし、凡そ議婚・求人・遠交の事は皆水土に隔たる。占う者は近きに就きて択取し、遠きを舎て近きを図るに宜し。さもなくば空しく往返を労す。
泰 男女合室,二姓同食。婚姻孔云,宜我多孫。
渙の泰。男女は一家を結び、両氏が席を同じくして共に食う。婚姻の事は説きて極めて和洽にして、正しく我が家に多く子孫を添うるに宜し。「孔云」は甚だ融洽なるの意なり。この林は婚において大吉にして、嫁娶が和順にして家道が昌盛するを主とする。占う者は親を論じ家を成すに皆宜しく、兼ねて丁を添え口を進むるの喜あり。
否 天門帝室,黃帝所直。藩屏周衛,不可得入。常安長在,終無禍患。
渙の否。天門と上帝の宮室は、黄帝が自ら当値して守護し、四面の藩籬は周密に防衛して、外人入る由なし。因りて永く安穩にして長く存し、終始禍患なし。この林は守御が厳密にして内固く揺がざるを主とする。占う者が若し進取を求むれば門径通じ難く、若し自保を求むれば万に一失なし。守勢を取るに宜しくして強攻すべからず。
同人 □金觀市,欲置騮子。猾□竊發,盜我黃寶。
渙の同人。金銭を帯びて集市に至り察看し、一匹の赤身黒鬣の騮馬を買わんと欲す。不料、狡獪の徒が暗中に手を動かし、我が黄金珍宝を偷み去る。この林は交易の中に窃を遭い騙を受け、財去り物空しきを主とする。占う者は外に出でて大宗の財物を置弁するに、扒窃と掉包とを防ぐべし。銭財は白に露すべからず。身辺の奸猾の人を慎防すべし。
大有 三思俱行,欲歸故鄉。望邑入門,拜見家親。
渙の大有。思量を反覆したる後に同じく路に上り、一心に故郷に帰らんと欲す。遙かに城邑を望見し、家門に進み入り、家中の親長を拝見す。この林は帰途が順遂にして骨肉重ねて聚まるを主とし、游子の還郷の吉なり。占う者の盼む人は帰来を望み得べく、凡そ返郷・復職・旧地重遊の事は皆遂う。
謙 娶於姜女,駕迎新婦。少妻在門,夫子悅喜。
渙の謙。姜姓の女を娶りて、車馬を駕して新婦を迎えに往く。若き妻はすでに門前に至り、夫たる者は心に歓喜満つ。斉国の姜姓は多く美女あり。《詩経》は屡々「斉姜」を以てこれを称す。この林は婚配において大吉にして、佳偶成るを得て門庭に喜有りを主とする。占う者は婚を論ずれば必ず諧い、凡そ迎うる有り納るる有れば、皆心に称い意に如し。
豫 伯仲旅行,南求大牂。孟長痛足,倩季負囊。柳下之貞,不失我邦。
渙の豫。兄弟几人が伴を結びて遠行し、南に往きて肥壯の母羊を求む。老大は脚痛くして行き難く、便ち小弟を請うて行囊を代背せしむ。柳下恵の如き貞正の操守に憑りて、終に己が邦国を失わず。この林は兄弟が相扶け、正を以て自ら守り、小挫ありと雖も根本に傷なきを主とする。占う者は手足を倚重して正を持して行えば平安なり。
隨 潔身白齒,衰老復起。多孫眾子,宜利姑舅。
渙の随。身を修潔にして歯色新たなり、衰老の人は重ねて振作す。子孫衆多にして、公婆翁姑も皆利を得て養を受く。この林は老いて弥々健やかに、家門繁茂して、老を返り童に還り後嗣興旺するの吉を主とする。占う者の身体は復元を望み得べく、家中の長輩もまた安養を得べし。寿を延し丁を添うの好占なり。
蠱 獨宿深夜,嫫母畏晝。平王逐建,荊子憂懼。
渙の蠱。深夜に独り安寝し、貌醜き嫫母は白日を見るを怕る。楚平王は讒言を聴信して太子建を駆逐し、楚国の公子たちは因りて憂惧安んぜず。事は《左伝・昭公十九年》に見ゆ。この林は自ら慚じて形穢し、骨肉が相疑いて、父子が離間し身が嫌隙に処るの憂を主とする。占う者は是非を避けるべく、他人の家事の争に巻入ることなかれ。
臨 追亡逐北,呼還幼叔。至山而得,復歸其室。(未濟之大過,需之渙)
渙の臨。逃亡を追い敗兵を追い、一路呼喚して年幼の叔弟を叫び回さんとす。山中に追い至りて終に彼を找着し、同じく家に帰り到る。この林は失して復た得、離れて復た合するを主とする。占う者の走失せる人或いは物に尋回の望みあり。凡そ追索・招還の事は成るべし。先憂後喜の占なり。
觀 鳥飛無翼,兔走折足。雖欲會同,未見其功。
渙の観。鳥は飛ばんと欲すれども翼なく、兎は走らんと欲すれどもまた脚を折断せり。縦え一心に会合して事を共にせんと欲すとも、成效を見る能わず。この林は条件備わらず、心有余りて力足らずを主とし、凡そ聚会・合伙・共謀の事は皆成就し難し。占う者は先ず本銭と能力とを具足するに宜し。さもなくば空しくその志有るのみにして労して功なし。
噬嗑 抱空握虛,鴞驚我雛,利出不成。(一作「來」。離之家人)
渙の噬嗑。懐に抱くは空にして手に握るは虚なり、何らの実物もなし。悪鳥の鴟鴞はまた来りて我が雛鳥を驚嚇し、利を得んと欲するも終に成らず。この林は一獲する無くして反って驚扰を受くるを主とする。占う者の図る事は落空し、なお外来の凶険が家小に衝撞するを提防すべし。家を守り幼を護りて、非分の想を作さざるに宜し。
賁 山作大池,陸地為海,各得其所。
渙の賁。高山は大池と化し、陸地は海洋と変る。看れば天地が翻覆するがごとく、其の実は水陸各自安んじて合宜の位置に頓く。この林は格局に巨变あると雖も万物各々その宜しきを得るを主とし、変じて正を得るの象なり。占う者の面临する環境は大いに改まらん。驚慌するに及ばず。改換の後に反って更に合適なる位置を見出ださん。
剝 為虎所齧,太山之陽。眾多從者,莫敢救藏。
渙の剝。泰山の南麓にて虎に咬傷せらる。随行の人衆多なれども、敢えて前に出でて救護し、敢えて人を蔵匿する者一もなし。この林は大凶にして強暴の害に遭いて衆叛れ援なきを主とする。占う者は猛悪の地と強横の人とを遠く避くべし。患難の際に随衆の力を指望すべからず。早く防身の計を作すに宜し。
復 逶迤四牡,思歸念母。王事靡盬,不得安處。(旅之漸)
渙の復。四匹の公馬が車を迤邐として行く。路上に家に帰るを思念し、母を挂記す。無奈、王家の差事は止境なく、終に安居を得ず。この四句はもと《詩経・小雅・四牡》に本づき、使臣が王事に労するを写す。この林は公務に身を羈され、帰るを思いながら得ざるを主とする。占う者は帰意あると雖も責任肩に在り。先ず公事を了すに宜しく、帰期自ずから有らん。
旡妄 獮猴所言,語無成全。誤我白馬,使口不至。(一作「使乾口來」)
渙の无妄。獼猴が口より出す言は、一句も周全にして信すべきものなし。それが我が白馬を耽誤し、来るべき口信は終始送り到らず。この林は軽薄の人に事を誤られ、消息断絶するを主とする。占う者の托する所は人にあらず。音信・約定は皆兌現し難し。凡そ人を遣わして話を伝え事を辦せしむるに、穏重なる者を択ぶべし。巧舌を信ずることなかれ。
大畜 飛不遠去,卑廝內侍,祿養未富。(豐之渙)
渙の大畜。能く飛ぶと雖も飛ぶこと遠からず、ただ低賤の雑役・宮中の近侍を做し、俸禄の供養は並びて豊厚ならず。この林は格局限り有りて才展を得ず、貴人に近いと雖も得る所微薄なるを主とする。占う者の眼下は位卑く禄薄し。本職を安守し実力を積蓄するに宜しく、一時に大なる進取を奢望するに及ばず。
頤 大尾細腰,重不可搖。陰權制國,平子逐昭。
渙の頤。尾巴大なりて腰身細弱にして、尾重くして搖り難し。正に尾大にして掉れざるの象なり。権柄が陰私の手に落ちて国政を挾制し、是に季平子は魯昭公を駆逐す。事は《左伝・昭公二十五年》に見ゆ。この林は末大にして本小、臣強く君弱きを主とする。占う者は属下の坐大と権柄の旁落とを防ぐべし。早く収束するに宜し。
大過 旦生夕死,名曰嬰兒,不可得視。(小畜之升,未濟之乾,震之坤。「視」一作「祀」)
渙の大過。早晨に生れて傍晚に即ち夭亡す。ただ嬰児と喚ぶべく、好く見る一眼すら能わず。この林は大凶にして生機短促、成りて復た毀るを主とし、凡そ新立の事・新生の物は皆存続し難し。占う者の謀る業は根基太だ薄し。切に倉促に発動すべからず。尤も幼小なる者の安危に留意すべし。
坎 子畏於匡,困於陳蔡。明德不危,竟免厄害。(兌之泰,大過之晉,坤之鼎)
渙の坎。孔子は匡地に遭囲して驚を受け、また陳・蔡の間に糧を絶たれ困を受く。然れども徳行は光明にして、終に傾危に至らず、最后に厄難禍害を免除したり。事は《史記・孔子世家》に見ゆ。この林は身が重険に陥るも徳を以て自ら全うすを主とする。占う者は縦え坎陷の中に在りとも、ただ正道を持守せば、終に能く安んじて脱出せん。
離 畏昏潛處,候時昭朗。卒逢白日,為世榮主。
渙の離。昏暗を怕れて潜蔵し、静かに天光の明に転ずる時を等候す。終に朗朗たる白日に遇い、世間の栄顕の主人と成る。この林は韜晦して時を待ちて後に志を得るを主とし、先ず隠れ後に顕るるの吉なり。占う者の眼下は低調に隠忍するに宜しく、光明将に至らんとする時に自然と出頭せん。切に昏暗中に妄動すべからず。
咸 白鳥御餌,鳴呼其子。旋枝張趐,來從其母。(晉之震)
渙の咸。白鳥は食餌を銜え、鳴呼して己が雛児を呼喚す。雛鳥は枝は枝條を繞りて翼を張り、飛びて母に随従す。この林は母子相親しみ、呼応して情あるを主とし、骨肉が団聚し恩養相接するの吉なり。占う者の家中は和睦して長幼相得べし。凡そ召喚・招募・尋親の事は皆回応有らん。
恆 宮商角徵,五音和氣。君臣父子,弟順有序。唐虞襲德,國無災咎。
渙の恒。宮・商・角・徴の諸音は相和し、五音は諧調して和気を生ず。君臣父子は各々その位に安んじ、兄弟は恭順にして次第有り。唐堯・虞舜は相承りてその徳を受け、国中は因りて災禍過失なし。この林は大吉にして上下和順にして綱紀井然たるを主とする。占う者の処する局は安定して序有り。常を守り久しく持するに宜しく、変更すべからず。
遯 季姬踟躕,望子城隅。終日至暮,不見齊侯。(豫之巽)
渙の遯。季姫は徘徊して定まらず、城墻の角楼に在りて思う所の人を張望す。《詩経・邶風・静女》のいわゆる「我を城隅に俟つ、愛して見えず」なり。早より日暮に至るまで等して、終に斉侯に見えず。この林は苦く候して人至らず、良会は空しきに成るを主とする。占う者の約する人は多くは信を失す。別に安排を作るに宜しく、空しく守るに及ばず。
大壯 鬼哭於社,悲傷無後。甲子昧爽,殷人絕祀。(大過之坤)
渙の大壮。鬼魂は社廟に哭泣し、己が後嗣の断たれたを悲傷す。甲子の日に天将に破暁せんとし、牧野の一戦に殷商の宗廟祭祀は此より断絶す。事は《尚書・牧誓》に見ゆ。この林は大凶にして宗祀断絶・家国傾覆を主とする。占う者は力めて根本を保ち慎みて香火を守るべし。凡そ存亡の争有らば、務めてその鋒を避くべし。
晉 天之所予,福祿常在,不憂危殆。(小畜之遯,損之遯,臨之復)
渙の晋。上天の賜与する所の物は、福気と禄位と常に身辺に在り、危険を憂慮するに及ばず。この林は天が其の福を予え根基自ら固きを主とし、安穩にして受用するの吉に属す。占う者の得る所は僥倖にあらず、乃ち分内の応有なり。ただ坦然として承受し、正を以てこれを守れば、自ずから傾覆の患なし。
明夷 比目附翼,相待為福。姜氏季女,與君合德。(節之隨)
渙の明夷。比目魚は両々に相并びて游び、比翼鳥は双々に翼を附けて飛ぶ。彼此依託してこそその福を成す。姜家の小女児は君子と徳行相配す。《爾雅》に比目・比翼は皆双ならずんば行かずと載す。この林は佳偶相得、内外相成るを主とする。占う者は伴を結びて事を共にし、親を議り婚を論ずるに宜しく、独力は支え難くして合すれば即ち福有り。
家人 翕翕□,稍崩墜顛。滅其令名,長沒不全。(泰之謙,否之離,益之坎)
渙の家人。表面上は一団和気にして附和苟同するも、根基は漸々崩塌墜落す。美好の名声は此に就きて泯滅し、長く沈淪して保全を得ず。《詩経・小雅・小旻》は「潝潝訿訿」を譏る。正しく此の苟合の風を指す。この林は門内虚浮にして実ならず終に敗名に致るを主とする。占う者は偽を去り真を存すべく、敷衍を以て家業を維持することなかれ。
睽 折芒蔽目,不見雉叔。三足飛鳥,遠去家室。(師之蒙,坤之同人)
渙の睽。芒草を折りて眼を遮れば、即ち身辺に近在する雉叔を見る能わず。三足の怪鳥は翅を振りて高く飛び、遥かに家室を離れたり。この林は自ら其の明を蔽い親人相失うを主とする。占う者の局面を看清す能わざる所以は、正に自ら遮檔を設ければなり。先ず成見を除去するに宜し。さもなくば骨肉も亦た疎遠に飘散せん。
蹇 羊腸九縈,相催稍前。止須王孫,乃能上天。(豐之升,履之師,蠱之剝,損之屯)
渙の蹇。羊腸の小道は九曲に盤旋し、衆人は互相いに催促して勉强して前に挪動す。須らく王孫の前来して主持するを待ちて、方に能く天に上達せん。この林は路途険艱にして、貴人あらざれば通達し能わざるを主とする。占う者は性子を耐えて一歩々々走るべく、同時に有力者の提携を求むべし。独りで硬闖すれば出頭し難し。
解 坤厚地德,庶物蕃息。平康正直,以綏大福。(泰之解,巽之困,賁之履)
渙の解。大地の徳は寛厚に在り、因りて万物は其の上に繁衍生息す。《尚書・洪範》に「平康正直」と曰う。世に処りて和平にして心地正直なれば、便ち安んじて大福を享く。この林は厚徳にして物を載せ、正を以て安を得るを主とし、難解の後に平順に帰するの象なり。占う者は寛厚にして人を待ち、正を守りて阿らざるに宜しく、福沢自ずから来らん。
損 有莘外野,不逢堯主。復歸窮處,心勞志苦。
渙の損。有莘国の郊野に耕作するも、堯の如き明主に遇わず。ただ窮困の処に帰るのみ、心力交瘁にして志向受挫せり。伊尹は有莘の野に耕し而る後に湯に遇う。事は《孟子・万章》に見ゆ。この林は才を懐きて遇わず、時未だ至らずして空しく心を労するを主とする。占う者は安く守りて時を待つに宜しく、当下に強求するに及ばず。
益 咠長景行,來觀柘桑。止伯自喜,都叔允藏。
渙の益。私語相伝えて而る後に大道に走り、前来して柘樹と桑樹の長勢を察看す。伯氏は留まりて自ずから欣喜し、都邑中の叔氏も亦た収蔵実に豊足なり。柘桑は蚕を養うの本にして、桑を観れば即ち農事を察するなり。この林は正道を循りて実務を察するを主とする。占う者は本業に勤しみ自ら過問せば、即ち收成充盈して家に儲蓄有らん。
夬 周師伐紂,戰於牧野。甲子平旦,天下喜悅。(謙之噬嗑,節之升)
渙の夬。周武王の軍隊は商紂を討伐し、牧野に決戦す。甲子の日に天剛らかに明け、一戦して定まり、天下の百姓は歓欣せざる無し。事は《尚書・牧誓》《史記・周本紀》に見ゆ。この林は暴を除き悪を決し、一挙して功成るを主とする。占う者の欲する清除の患は決断し了結すべし。行動は速なるに宜しく緩なるべからず。衆望の帰する所なり。
姤 踰江求橘,並得大栗。烹羊食豕,飲食歌笑。
渙の姤。大江を渡りて柑橘を求めに行けば、連れて大きな板栗をも得る。羊を宰し猪を烹げて、飲宴の間に歌い談笑す。この林は外に出でて獲るところあり、意外に兼ね得るを主とし、兼ねて宴楽の喜有り。占う者は遠く行きて物を求めば必ず願いを得、且つ額外にまた収成有り。凡そ交易・宴請・訪友の事は皆吉なり。
萃 敝笱在梁,魴逸不禁。漁夫勞苦,口燋喉乾。虛空無有。(遯之大過)
渙の萃。破れた竹簍が魚梁に横たわり、魴魚が一条づつ溜走して拦むも拦めず。漁夫は忙しくて口乾舌燥となり、到頭、簍の中は空如也なり。《詩経・斉風・敝笱》はこれを以て防閑の厳ならざるを譏る。この林は器具修まらず防守に疏漏ありて獲る所が尽く失わるるを主とする。占う者は先ず自家の漏洞を補うべし。さもなくば労して功なし。
升 生有陰孽,制家非陽。遂受還作,張氏易休。憂禍重凶。
渙の升。家中に陰私の禍根を生じ、門戸を主持する者は正当の男主人にあらず。因りて禍事は往復して断たず、張氏の家は主人を換えたり。憂愁と禍患と重ね畳みて、極めて凶険なり。この林は内乱が権を奪い家主が人に易うを主とする。占う者は内部の隐患が坐大するを防ぐべし。名分を正しく門戸を清むるに宜しく、遅くなれば挽回し難し。
困 絕域異路,多有怪惡。使我驚懼,思我故處。
渙の困。身が極めて遠き異域・陌生の道路に処して、一路上多く怪异凶悪の事あり。我をして驚慌恐懼せしめ、一心に己が旧居を想念す。この林は遠行して険に遇い帰るを思いて得ざるを主とする。占う者は遠く生地に赴くべからず。若し已に外に在れば、早く還るを思うべく、陌生凶悪の境に久しく留まることなかれ。
井 迷行失道,不得馬牛。伯賈□亡,市沒無有。
渙の井。路を迷いて方向を誤り、走失した馬牛もまた尋ね回る能わず。伯氏は行商に虧損して逃亡し、市面は蕭條にして何もかも無くなれり。この林は方向迷失して資本折尽し、凡そ物を尋ね・商いを為し・追討する事は一概に落空すを主とする。占う者は先ず向き去るを辨明すべく、盲目に投入すべからず。市況利あらざれば暫く手を収むるに宜し。
革 雌鸑生鵰,神異興起。乘雲龍騰,民戴為父。
渙の革。雌鳳が雕鳥を生みて、神奇の異象は此に由りて興る。それが雲気に乗じて龍の如く騰飛すれば、百姓はそれを擁戴して父の如くす。鸑鷟は鳳の属にして、《国語・周語》の「周の興るや、鸑鷟岐山に鳴く」に見ゆ。この林は異軍が突出し故を革め新を鼎めて衆心が帰附するを主とする。占う者は非常の遇を望み得べく、一鳴して人を驚かさん。
鼎 迭迭累累,如岐之室。畜一息十,古公治邑。(恆之小過)
渙の鼎。屋宇は層層畳畳として一間に一間を連ね、岐山下の房舎の如し。一頭の牲畜を養えば十頭に繁息し得べし。あれは古公亶父が都邑を営治せし時の景象なり。事は《史記・周本紀》に見ゆ。この林は大吉にして基業興造・財畜倍増を主とする。占う者は産を置き家を興すに宜しく、積む所は必ず厚からん。
震 瘡瘍疥瘙,孝婦不省。君多疣贅,四時作災。
渙の震。身上に瘡瘍疥癬を生じ、痒くて痛くて当たり難く、孝順の媳婦を以てしても照料し周らず。主人の身上にはまた贅疣を長満せり。一年四季皆病を鬧して災を成す。この林は疾病が身に纏いて久しく治せず、且つ家人は力及ばず照拂し得ざるを主とする。占う者は早く医を延いて調理すべく、凡そ小疾有らば拖延すべからず。積みて大患を成すを免れんが為なり。
艮 羊頭兔足,羸瘦少肉。漏囊敗粟,利無所得。(剝之恆,既濟之訟)
渙の艮。羊の頭に兎の脚を配し、痩せ骨嶙峋にして肉幾両もなし。口袋はまた漏るに、装うは仍ほ霉壊の粟米なり。利を得んと想うも終に一獲も無し。この林は形質が称わず積む所が尽く漏るを主とし、凡そ投資・儲蓄・経営の事は皆財を留めず。占う者は先ず漏処を補い住すべし。さもなくば進む多少は漏る多少なり。
漸 孽蔑徙靡,空無誰是。言季不明,樂減少解。
渙の漸。禍孽と軽蔑と輾転として相随い、紛紛擾擾、空落として誰が是に誰が非か辨え難し。話は末を説くに至りて仍ほ明白ならず、歓楽は漸く減じ、疑慮もまた化解し難し。この林は是非混淆して言語明白ならず歓意消退するを主とする。占う者は争議の事に遇えば一時に定論有り難し。暫く置きて論ぜざるに宜しく、久しく待てば自ずから明らかならん。
歸妹 妹貌親熟,敗君正色。作事不成,自為心賊。
渙の帰妹。少女の容貌は親暱熟稔にして、君子の端正の顔色を壊す。因りて作る所の事は成功能わず、実に自ら心里に賊を生じたるなり。この林は私情に耽りて正務を敗壊するを主とする。占う者は自ら心念を反省すべく、児女の私に因りて本業を荒廃することなかれ。さもなくば事を敗る者は人にあらず、乃ち己の心なり。
豐 四馬共轅,東上太山。騂驪同力,無有重艱。與君笑言。(剝之解)
渙の豐。四匹の馬が共に一轅を駕りて、東に泰山を攀登す。赤馬と黒馬とが斉心協力し、再び逾越し難き険阻なく、一路君と談笑して行く。この林は同心協力して険途を平易に化すを主とする。占う者は人と合作すれば重担は分け可く難関は過ぎ可し。凡そ伴を結びて同行し、共に大事を図るは皆吉なり。
旅 陰變為陽,女化為男。治道得通,君臣相衛。(豐之節,未濟之夬,屯之離)
渙の旅。陰気は陽気に転じ、女子は男身と化作す。治国の道は此に由りて通達し、君臣彼此扶衛す。この林は局面が翻転し弱より強に転ずるを主とし、窮極して変じ変じて通ずるの象なり。占う者の眼下の処境は下位に居ると雖も、運勢は大なる転折を将にせんとす。其の時に至りて上下相得、事を謀れば成るべし。
巽 南國少子,才略美好。求我長女,賤薄不與。反得醜惡,後乃大悔。(比之漸,泰之震,漸之困)
渙の巽。南方の国の年若き男子は、才干謀略いずれも出色にして、前来して我が長女を求娶せんとす。我はその門第の低微なるを嫌いて許配せず、反って娘を醜悪の人に嫁がせ、事後に追悔して及ばず。この林は貌を以て人を取り佳配を錯失するを主とする。占う者は人を択び事を択ぶに、切に外相門面のみを見るを忌むべし。さもなくば悔ゆるに及ばざらん。
兌 昭公失常,季女悖狂。遜齊處野,喪其寵光。(遯之蠱)
渙の兌。魯昭公は挙止して常度を失い、宮中の女子はまた悖乱狂放す。終に斉に出奔して荒野に栖身し、原有の寵遇と栄光とを喪失せり。事は《左伝・昭公二十五年》に見ゆ。この林は位を失い国を去り栄寵尽く失わるるを主とする。占う者は法度を謹守すべく、内闈の乱に因りて根本を動揺することなかれ。
節 文山紫芝,雍梁朱草。生長和氣,王以為寶。公尸侑食,福祿來處。(同人之剝,豐之家人)
渙の節。文山は紫芝を出産し、雍州・梁州は朱草を生長す。これらの瑞草は和順の気に因りて生じ、君王は国宝と視なす。祭祀の時に公尸が勧を受けて食するや、《詩経・大雅・鳬鷖》のいわゆる「公尸燕飲」に就きて、福禄は即ち随いて降臨す。この林は大吉にして祥瑞現れ祭祀に福を得るを主とする。占う者の求むる所は天の佑を邀るを望み得べし。
中孚 牽羊不前,與心戾旋。聞言不信,誤紿丈人。
渙の中孚。羊を牽くもそれを拉して前に動かす能わず、己が心意と背道而馳す。他人の話を聴きてまた信ぜんと肯ぜず、因りて長者を誤騙せり。この林は意願相違して誠信立たざるを主とする。占う者の做す事は處處に別扭にして、且つ勧告を聴かざるに因りて尊長に信を失し易し。虚心に言を納るるに宜しく、方に順に転ずべし。
小過 東山西山,各自止安。心雖相望,竟不同堂。(姤之坤,漸之屯,中孚之賁)
渙の小過。東に一座の山、西に一座の山、各々安く己が位置に処す。心中は彼此遥かに相望して思念すれども、終に同居一堂する能わず。この林は両地に分隔し情は通いながら身は聚まらざるを主とする。占う者と思う所の人とは各々その位有り。勉强して合并すれば反って齟齬を生ず。各々その所に安んじ、遥かに相呼応するに宜し。
既濟 鹿求其子,虎廬之裡。唐伯李耳,貪不我許。(隨之否)
渙の既済。母鹿がその幼崽を尋ねるに、却って虎の巢穴の裏に至る。あの唐伯・李耳はもと虎の別名なり。《方言》に見ゆ。それは食を貪り性を成せば、怎んぞ肯んじて小鹿を我に還さんや。この林は失せる所を尋ねて誤りて険地に入るを主とする。占う者の尋ぬる人の物は已に強横の手に落ち、還を索むる望みなし。早く歩を止め身を保つに宜し。
未濟 三虎上山,更相咆哮。心志不親,如仇與怨。(姤之小過)
渙の未済。三匹の虎が一同に山に上りて、彼此に向かい咆哮して休まず。心志は各々相亲しまず、仇敵怨家のごとし。この林は強者相聚まるも相容れざるを主とし、凡そ合伙・共事・同居の局は皆強を争うに因りて隙を生ず。占う者は同類の強人と共に謀るべからず。各々その是を行えば反って禍を免るべし。
節之林(節卦六十四林)
節 海為水王,聰聖且明。百流歸德,無有叛逆。常饒優足,不利攻玉。所求弗得。(末二句疑衍)
節の節。大海は衆水の王にして聡叡聖明なり。百川は皆その徳沢に帰向し、一条も背離逆流する無し。因りて常年豊饒充足す。ただ玉石を攻治するに利あらず、求むる物は一時に得られず。この林は徳厚く衆帰り根本豊足するを主とし、衆を聚め勢を得るの吉なり。惟だ琢玉の類の精工細務において心に称わざるのみ。
乾 虎豹怒咆,慎戒外憂。上下俱搔,士民無聊。
節の乾。虎豹は怒りて咆哮し、須らく外部よりの憂患を謹慎戒備すべし。上上下下皆攪められて騒動安んぜず、士人と百姓は依る所なし。この林は強敵外に在りて挙国寧ならざるを主とする。占う者は意を加えて外来の侵擾を防範すべく、先ず内部の人心を安んじ、切に軽々しく釁端を啓くべからず。
坤 探巢得雛,鳩鵲俱來,使我心憂。
節の坤。手を伸べて鳥巢を掏れば雛鳥を得、斑鳩と喜鵲とが一一斉に飛来して聒噪し、反って我が心中を憂愁せしむ。この林は小利を貪取して糾纏を招来し、得るは失うに償わざるを主とする。占う者は縦え獲る所有るとも、随いて来る麻煩は更に多し。軽重を権衡し、舎る能ければ則ち舎れ、方に煩憂を免れん。
屯 日望一食,常恐不足,祿命寡薄。
節の屯。毎日ただ一頓の飯を喫うを盼ぐのみ、仍ほ常に足らざるを擔心す。見ゆるに俸禄と命分とは皆微薄なり。この林は衣食艱難にして入る所は出る所に敷かざるを主とする。占う者の眼下は正しく窘迫の中に処す。倹省して日を度り入を量りて出を為すに宜しく、大なる開銷と挙動と有るべからず。
蒙 良馬疾走,千里一宿。離逃它鄉,誰能追復。
節の蒙。良馬は疾馳して一夜の間に千里を行く可し。一旦逃奔して別の地方に至れば、誰か復た追い回さんや。この林は人才或いは財物の迅速流失して之を追うに及ばざるを主とする。占う者が若し得力の人或いは緊要の物有らば、須らく早く留め住すべし。一旦手を脱せば便ち再び挽回し難し。
需 鵲巢鳩城,上下不親。內外乖畔,子走失顧。
節の需。喜鵲の築きし巢は斑鳩に占拠せられ、城池は主を易え、上下の間に因りて親しまず。内外は心を離れ背反し、児子は出走して照看する人なし。《詩経・召南・鵲巢》はもと「維れ鵲巢有り、維れ鳩之に居る」を詠ず。この林は基業を人に鳩占せられ家人離散するを主とする。占う者は外人の侵奪を防ぐべく、早く内部を穏住すべし。
訟 雲龍集會,征討西戎。招邊定眾,誰敢當鋒。
節の訟。雲と龍とは風雲際会し、師を興して西戎を征討す。辺地を招撫して部衆を安定すれば、誰か敢えて正面して此の鋒芒を抵当せんや。この林は威勢正しく盛んにして向かう所靡くを主とする。占う者が若し争競の事有らば、気勢は我に在り。果断に出撃するに宜しく、兼ねて招撫を以て輔となせば、勝算頗る大なり。
師 春多膏澤,夏潤優渥。稼穡成熟,畝獲百斛。(臨之明夷)
節の師。春の雨水は豊沛にして膏の如く、夏は滋潤充足し、庄稼は因りて成熟して一亩に百斛の多きを収む。この林は農において大吉にして、時雨調順・收成豊厚を主とする。占う者の営む事は水到れば渠成り、付出すれば必ず厚報有り。尤も耕作・投資・長線経営に利あり。
比 僮妾獨宿,長女未室。利無所得。(豫之益,蠱之履,乾之蒙)
節の比。年幼の婢妾は独り安寝し、家中の長女は未だ出嫁成家せず。因りて何らの利益も得られず。この林は陰陽接せず縁が成らずして生機停滞するを主とする。占う者の求むる事は配合を缺少し、一時に成就し難し。先ず人事の結合を促成し、而る後にその利を図るに宜し。
小畜 四野不安,東西為患。退身止足,無出邦域。乃得全完,賴其生福。(觀之小過,旅之豫,大有之睽)
節の小畜。四方の原野は皆安寧ならず、東辺西辺ともに禍患有り。此の時に身を退きて自ら守り、知足して歩を止め、己が国境を出でざれば、能く周全を保ち得、并せて此に頼りて福気を生出せん。この林は外乱に内静にして退を以て吉となすを主とする。占う者は遠行妄動を切忌すべし。安居して分を守るは正しく身を全うし福を獲るの道なり。
履 長寧履福,安我百國。嘉賓上堂,與季同床。
節の履。長久安寧にして脚は福地を踏み、我が治下の百国をして皆安定を得しむ。嘉宾は堂に登り入りて、主人の幼弟と榻を同じくして夜話す。この林は国泰に家安く、賓主相歡ずるを主とする。占う者の処する環境は安穩にして、兼ねて貴客門に臨み益友を結交するの喜有り。凡待客・議事は皆順なり。
泰 騏驥綠耳,章明造父。伯夙奏獻,衰續厥緒。佐文成霸,為晉元輔。
節の泰。騏驥・緑耳は皆周穆王の駿馬にして、因りて御手造父の名声を彰顕せしめたり。趙夙は功績を進献し、趙衰は彼の事業を承続して、晋文公を輔佐して覇業を成就し、晋国の首輔の臣と為れり。事は《史記・趙世家》に見ゆ。この林は大吉にして家世相承りて君を輔け功を建つを主とする。占う者は業を承けて大名を立つを望み得べし。
否 張陳嘉謀,贊成漢都。主歡民喜,其樂休休。(張良、陳平也)
節の否。張良と陳平とは好謀略を献上し、関中に都を定め漢家の基業を成就するを輔助す。君主は歓欣し百姓は喜悦し、あの快楽は寛舒自得なり。事は《史記・留侯世家》《陳丞相世家》に見ゆ。この林は謀臣得力にして大計底定するを主とする。占う者が若し賢助を得れば便ち事を成すべし。善謀を多く聴くに宜しく、衆心自ずから安からん。
同人 大面長頭,來解君憂。遺吾福善,與我嘉惠。
節の同人。面闊頭長・相貌不凡の一人が前来して、君主の為に憂愁を解く。我に福気と善果とを留め、我に美好の恩惠を賜う。この林は貴人時に及んで出現し憂患得解するを主とする。占う者の困む事は将に人の代わりて難を排する有らん。来人を広く接するに宜しく、貌を以て取ることなかれ。恩惠自ずから至らん。
大有 畏昏不行,待旦昭明。燎獵受福,老賴其慶。(夬之損)
節の大有。天黒を怕るるに因りて貿然として出行せず、天明光あるを待ちて身を動かす。火を挙げて田猟して因りて大に収獲有り。年老の人も此の慶幸に依頼して奉養を得べし。この林は時を択びて動き穏中に福を得るを主とする。占う者は黒を摸して冒進すべからず。時機明朗なるを待ちて再び手を出せば、収獲自ずから豊厚にして、且つ能く家中の長者に恵及せん。
謙 伯去我東,首髮如蓬。長夜不寐,輾轉空床。內懷惆悵,憂摧肝腸。(垢之遯)
節の謙。丈夫は東行して我を離れ去れり。我便ち梳妝する心なく、頭髪は乱れて飛蓬の如し。《詩経・衛風・伯兮》のいわゆる「伯の東するより、首飛蓬の如し」なり。長夜眠り難く、空牀に輾転反側し、心里に惆悵満ちて、憂愁は肝腸を摧折す。この林は別離して思念し独り空房を守るを主とする。占う者は親しむ所の人と暫く聚まり難し。懐を寛げ自ら遣るに宜し。
豫 朽條腐索,不堪施用。安靜候時,以待親知。
節の豫。朽壊の枝條・腐爛の繩索は皆用に派せず。此の時はただ安静に時機を等候して親友故交の前来を待つのみ宜し。この林は器具人力皆堪えるに足らず、勉强して事を行えば必ず意外を生ずを主とする。占う者は収斂静守して人の相助を待つべし。自ら単幹し或いは旧物旧法を用ゆるは皆靠り難し。
隨 比目四翼,相倚為福。姜氏季女,與君合德。(煥之明夷)
節の随。比目魚は双を成し、比翼鳥は四翅相并びて、彼此依倚してこそその福を成す。姜家の小女児は君子と徳行相合す。この林は佳偶天成にして相互に依托するを主とする。占う者は配合の人を尋求するに宜しく、婚姻・合伙の事は皆吉なり。独り行えば則ち福薄く、相随えば則ち福厚し。
蠱 履階升墀,高登崔嵬。福祿洋溢,依天之威。
節の蠱。台階を踩んで丹墀に登り、一歩々々高く昇りて巍峨の処に至る。福気と禄位と充盈洋溢して、全く上天の威霊庇佑に憑るのみ。この林は歩々高升して位望日に隆らかなるを主とする。占う者は仕進に望み有り。倚る所は人力にあらずして時運なり。天を敬し正を守るに宜しく、福禄長く保つ可し。
臨 奢淫吝嗇,神所不福。靈祗憑怒,鬼瞰其室。
節の臨。奢侈放縦にして且つ人に対して吝嗇なる者は、神明は福を賜わず。地祇は之が為に震怒し、鬼魅は彼が屋室を窺伺す。揚雄《解嘲》に「高明の家、鬼其の室を瞰む」有り。この林は徳行虧ありて冥譴を招致するを主とする。占う者は奢を戒め吝を戒め行事度有るべし。さもなくば災禍暗中に窺伺せん。
觀 大步上車,南到喜家。送我狐裘,與福載來。(中孚之泰,未濟之坤)
節の観。大步を邁ぎて車子に登り、南に至りて喜事を辦する人家に往く。主人は我に狐皮の裘衣を贈り、福気を連ねて一斉に載せ帰れり。この林は出行して礼を得贈を受け福を獲るを主とする。占う者は南方に往き或いは喜慶の約に赴けば必ず収獲有り。凡そ走動交際は皆吉にして、兼ねて財を得物を得るの喜有り。
噬嗑 東行西步,失次後舍。乾侯野井,昭王失居,與彼作期,不覺至夜。
節の噬嗑。東に走り行くもまた西に一歩を迈み、脚歩錯乱して宿処の後に落つ。魯昭公は出奔して乾侯の野井の地に客死し、己が居所を喪失せり。人と日期を約するや、知らず知らず已に夜に至る。事は《左伝・昭公三十二年》に見ゆ。この林は行止が序を失い国を去り所を失うを主とする。占う者は出行には次第を守るべく、期を誤り宿を誤ることなかれ。
賁 喜樂踴躍,來迎歡客。鵲巢百兩,以成嘉福。多獲利益。
節の賁。歓喜雀躍して、門を出でて前来の道賀の客を迎接す。《詩経・召南・鵲巢》に「之の子の帰るや、百両之を御る」と曰う。百輛の車馬は親を迎え、美好の福分を成就して、因りて多く収獲と利益と有り。この林は婚慶において大吉にして、嘉礼順成・賓客盈門を主とし、兼ねて財利を得べし。
剝 非理所求,誰肯相與。往來不獲,徒勞道路。
節の剝。求むる事は情理に合せず、誰か肯んじて汝に応答应んや。来来去去に一獲も無く、白白と路上に奔波す。この林は非分を強求して處處に碰壁するを主とする。占う者の図る事は本身脚を立て難し。縦え腿を跑断すとも成り難し。先ず求むる所が合宜なるやを反省し、弦を改め張を更ぬれば方に出路有らん。
復 北虜匈奴,數侵邊境。左衽為長,國猶未慶。
節の復。北方の匈奴は屢々辺境を侵擾し、衣襟を左に掩う夷狄の俗は竟に主導と為る。国家は因りて仍ほ可慶の事を言い得ず。孔子の曰く「管仲微なりせば、吾其れ髪を被り衽を左にせん」と。見《論語・憲問》。この林は外患頻仍にして正統受抑するを主とする。占う者は意を加えて辺角要害を戒備すべし。一時に未だ喜を言うべからず。
旡妄 續事康域,針折不成。嬰兒短舌,說辭無名。(一作:徵不以理,辭乃無名。縱獲臣子,伯功不成。)
節の无妄。安定の地に在りて事を接続し下さんと欲するも、無奈、針已に折断して縫補成らず。又如嬰児の舌短く、説話含混にして名堂を講出し得ざるがごとし。この林は接続力なく言辞達せず、凡そ旧事を続辦し弁情を申陳する挙は皆奏效し難きを主とする。占う者は別に工具を備え別に説客を択ぶに宜し。勉强して之を為せばただ半途に廃せん。
大畜 景星明堂,麟遊鳳翔。仁施大行,頌聲作興。
節の大畜。祥瑞の景星は明堂を照臨し、麒麟は悠游し鳳凰は飛翔す。仁政は天下に広施され、頌揚の声因りて興起す。景星・麟鳳は皆太平の瑞にして、《史記・天官書》に見ゆ。この林は大吉にして徳政昭著・声誉鵲起を主とする。占う者の行う事は人心に合し、名利双収すべし。
頤 文明之世,銷鋒鑄耜。以道順昌,百王不易。(一作:焚膏銷鋒,鎮壓危凶。招來文德,君安其國。)
節の頤。文治昌明の時代に在り、兵器の鋒刃を銷毀して耕田の耜に改鋳す。正道を憑りて天下をして順遂昌盛ならしめ、百代の君王皆此の法を改めず。《漢書》は秦の鋒鏑を銷するを載せ、此は則ち其の意を農に反用せり。この林は大吉にして武を偃め文を修め争を転じて養となすを主とする。占う者は干戈を生計に化するに宜しく、長久の道は正に此に在り。
大過 鳥飛無羽,雞鬥折距。徒自長嗟,誰肯為侶。(一作:不順其德,自為凶咎。)
節の大過。鳥は飛ばんと欲するも羽毛なく、鶏は闘わんと欲するもまた脚上の距を折れり。ただ独り長く声を嘆息するのみ、誰か肯んじてそれと伴を作さんや。この林は憑借尽く失い孤立援なきを主とする。占う者の眼下に欠くるは正しく最も緊要の憑借なり。強いて争競せば徒に自ら傷く。先ず欠くる所を補足し、再び同伴と出路とを談ずるに宜し。
坎 群隊虎狼,囓彼牛羊。道路不通,妨農害商。
節の坎。群を結び隊を成す虎狼は、あの牛羊を撕咬す。道路は因りて通ぜず、既に農耕を妨げ又商賈を損害す。この林は盗匪横行して交通断絶するを主とする。占う者の営む業は外力の阻斷を受く。暫く往来を停め家園を固守するに宜しく、路清く人静かなるを待ちて再び恢復を図るべし。
離 商伯沉醉,庶兄奔走。淫女蕩夫,仁德並孤。
節の離。商代の方伯は酒に沈湎し、微子ら庶出の兄長は紛紛として出走す。淫佚の女子と放蕩の男子とが道に当り、仁徳の人は一併に孤立せられたり。此は紂王が徳を失い微子之を去るを指す。事は《史記・殷本紀》に見ゆ。この林は上淫し下乱れ賢者見棄せらるを主とする。占う者は荒淫の局を遠離すべく、身を潔くして自ら保つを上となす。
咸 三狸搏鼠,遮遏前後。當此之時,不能脫走。
節の咸。三匹の狸猫は合わせて一只の老鼠を捕え、前後左右皆堵せられたり。此の地步に到りて、再び逃脱する法なし。この林は人に囲困せられ退路尽く絶えたるを主とする。占う者が若し弱勢に居れば脱し難し。早く和を求め款を納るるに宜し。若し強勢に居れば、則ち囲捕の功は期すべし。
恆 陶叔孔圉,不處亂國。初雖未萌,後受福慶。
節の恒。陶叔・孔圉の類の賢者は、動乱の邦国に居留せず。起初は雖も未だ端倪を見ずと雖も、日後終に福沢慶幸を承受せん。孔子の曰く「危邦には入らず、乱邦には居らず」と。見《論語・泰伯》。この林は地を択びて処り乱を避けて安を得るを主とする。占う者は早く是非の地を離るるに宜しく、後福自ずから厚からん。
遯 奮翅鼓翼,翱翔外國。逍遙北域,不入溫室。
節の遯。双翅を振奮して風を鼓して飛び起き、翱翔して国外に到る。北方の地に逍遥自在にして、温暖の居室に帰るを肯ぜず。この林は遠く走り高く飛び、苦を寧ろにして返らざるを主とする。占う者は遠行避世の志有り。安逸を失うと雖も自由を得べし。凡そ旧局を脱離せんと欲する者は、此の時正しく身を動かすべし。
大壯 德音孔博,升在王室。八極蒙佑,受其福祿。
節の大壯。美好の声嘆は極めて広博にして、王室の中に升達す。八方極遠の地は皆庇佑を蒙り、此の福沢と禄位とを承受す。この林は大吉にして声名上達し恩沢遠く被るを主とする。占う者は徳望正しく隆し、朝廷或いは上司の重用を得るを望み得べく、福禄随いて来らん。
晉 當變立權,擿解患難。渙然冰釋,大國以安。(升之震)
節の晋。変故に面临する能く権を通じて変に達し、患難を剔除并せて化解す。難題は氷の暖水に遇うが如く消散して、大国因りて安定す。この林は機に臨み変に応じ険を夷に化すを主とする。占う者は難題に遇えば旧規に拘泥すべからず。変通を善用すれば則ち疑難頓に解け、局面安に転ぜん。
明夷 羽動角甘,雨續草木,茂年歲熟。
節の明夷。羽音振動して角音和美に、五音調暢すれば則ち陰陽順応す。雨水は接続して草木を滋潤し、草木は茂盛して年成豊熟す。この林は気候調和して万物養を得るを主とする。占う者の営む事は其の滋長の時に逢う。晦暗の名に処すと雖も実は豊収を獲べし。勤めて培育を加ふるに宜し。
家人 天所佑助,福來禍去,君王何憂。
節の家人。上天の保佑扶助有りて、福気到り禍患退き去れば、君王に尚ほ何ぞ憂愁すべき有らんや。この林は大吉にして天の助を得禍を転じて福となすを主とする。占う者の慮る事は自ずから消解せん。家門安泰にして、凡そ牵挂有らば皆放下すべし。安心して事を行うのみ可なり。
睽 方啄廣口,聖智仁厚。釋解倒懸,唐國大安。(小畜之噬嗑)
節の睽。方口闊嘴・相貌奇偉の人は、聖明の智慧と仁厚の心腸とを具備す。彼は百姓の頭下脚上が如き倒懸の苦を解き、唐堯の国は因りて大いに安定す。《孟子・公孫丑》に「民を倒懸より解く」の説有り。この林は賢を得て困を済い危局得解するを主とする。占う者は明達の人に遇い己が為に難を紓るを望み得べし。
蹇 葛藟蒙棘,華不得實。讒□亂政,使恩壅塞。(泰之蒙,蠱之明夷,師之中孚)
節の蹇。葛藤が荊棘に纏い覆いかぶさり、花は開けども果実を結ばず。讒佞の徒は政事を擾乱して、恩沢を堵塞し下達せざらしむ。この林は小人に牽纏せられ、花有りて果なきを主とする。占う者の営む事は中間の阻梗に生機を耗尽せらる。先ず身辺の纏繞と讒言とを清理するに宜しく、さもなくば終に実獲なし。
解 皇母多恩,字養孝孫。脫於襁褓,成就為君。
節の解。祖母は恩情深く厚く、孝順の孫児を撫育す。孩児は襁褓を脱して長じ成人し、終に成就して一国の君と為る。この林は長輩の庇養を得て終に大器を成すを主とする。占う者の眼下は弱小にして依る無しと雖も、ただ扶持する人有らば、日後必ず出息有らん。尤も育幼・承嗣の事に利あり。
損 積水下溼,北陸苦寒。露宿多風,君子傷心。
節の損。積水は低處を浸して潮濕甚だしく、北方の地は嚴寒に耐え難し。露天に住宿すればまた風吹多く、君子之が為に傷心す。この林は環境悪劣にして身を栖むる所なきを主とする。占う者は困苦の境に身を處すも之を體恤する人無し。先ず身を安んずる一處を謀るに宜しく、寒濕風露の中に久しく熬ぜ身を傷るべからず。
益 伯夷叔齊,貞廉之師。以德防患,憂禍不存。(革之否,歸妹之臨,中孚之解)
節の益。伯夷・叔斉は堅貞清廉の表率にして、国を譲りて去り周粟を食まず。事は《史記・伯夷列傳》に見ゆ。能く徳行を以て禍患を防範すれば、憂愁と災禍とは甞て生ずる無し。この林は廉徳を以て自ら守りて禍に遠ざかるを主とする。占う者は心を清くし欲を寡くして名利を爭わざるに宜しく、此の如くなれば則ち災自ずから至らず。身を修め禍を免るるの吉なり。
夬 一雌二雄,子不得公。亂我族類,使吾心憒。
節の夬。一羽の雌鳥が二羽の雄鳥を配りて、生ずる所の子嗣は帰属を分清し得ざらん。我が族類を擾乱して、我が心中を煩乱して堪えざらしむ。この林は名分明白ならず血脉混淆して、家族は因りて乱を生ずを主とする。占う者は早く名分と帰属とを正定すべく、含糊して拖延すればただ愈々演じて愈々乱るるのみ。
姤 主安多福,天祿所伏。居之寵昌,君子有光。
節の姤。主上安泰にして福気豊厚にして、天の賜う禄位は即ち其の中に潛蔵す。此の位に居れば則ち寵遇昌盛して、君子因りて榮光有り。この林は大吉にして位安く福厚く、光彩が人を照らすを主とする。占う者の処する位は正しく時宜に合す。其の中に安く守るに宜しく、寵禄自ずから至るべし。別に求むるに及ばず。
萃 千載槐根,身多斧瘢。樹維枯屈,枝葉不出。
節の萃。千年の老槐の根株は、樹身に満ちて斧砍の疤痕有り。整樹は枯槁彎曲して、再び枝葉を發出し得ざらん。この林は根本が創を受くること太だ深く生機斷絶し、縦え年資有るとも重ねて發し難きを主とする。占う者の依託する旧業は已に衰朽し、聚合すとも益なし。別に新根を栽るるに宜しく、枯木の上に功を用うるに及ばず。
升 周師伐紂,勝殷牧野。甲子平旦,天下大喜。(謙之噬嗑,渙之夬、履)
節の升。周武王の軍隊は商紂を討伐して、牧野に殷軍を戰勝す。甲子の日に天剛らかに亮き放てば便ち定局と為り、天下の人は大いに喜ばざる無し。事は《尚書・牧誓》に見ゆ。この林は大吉にして一挙して克ち、旧を除き新を布くを主とする。占う者の圖る事は速成を望み得べし。衆望の歸する所にして、果斷に發動するに宜しく、遲疑すれば反って其の機を失わん。
困 日走月步,趍不同舍。夫妻反目,主君失位。(豐之同人,小畜之同人,豫之睽)
節の困。太陽は疾行し月亮は緩歩して、各々同ならざる星舍に奔向す。正しく夫妻が反目して相視、君主が其の位を失うが如し。この林は同體にして趨を異にし内外分裂するを主とする。占う者の処する関係は正しく道を分かち轡を分かつ。家事と公事と俱に安穩ならず。早く調停するに宜しく、裂痕をして擴大せしむることなかれ。
井 宣勞就力,為王主國。安土成稷,天下蒙福。
節の井。政令を宣佈して勤勞して力を出し、君王の為に国政を主持す。土地を安定し五穀を豊成せしめ、天下皆福沢を蒙受す。この林は大吉にして事を任じて得力にして、衆人に恵及するを主とする。占う者が若し重任を擔當すれば必ず能く勝任せん。行う所の政は国に利し民に利し、功名と実恵と兼ね得べし。
革 諷德誦功,美周盛隆。奭旦輔成,光濟沖人。(明夷之蒙,益之升)
節の革。徳行を歌詠し功業を傳誦して、周室の隆盛を贊美す。召公奭と周公旦とは成王を輔佐し、光を大にし此の年幼の君主を成全せり。「冲人」は幼主を指し、《尚書・大誥》に見ゆ。この林は大吉にして賢臣が幼主を佐え家国安きに至るを主とする。占う者は得力の輔助を望み得べく、幼弱の者も亦た扶成する人有らん。
鼎 三夜不寢,憂來益甚。戒以危懼,棄其安居。
節の鼎。一連して三夜入唾能わず、憂愁は愈々重たし。危険を戒懼するに因りて、安穩の住處を舎棄せざるを得ざるなり。この林は憂懼交加して迫られて遷離するを主とする。占う者の眼下、心神寧ならざるは自ずから其の由有り。須らく潛在の危険を正視し、早く移居して険を避くるは、強えて安唾を撐るに勝れり。
震 思願所之,乃今逢時。洗濯故憂,並其所來。(睽之艮)
節の震。心中の思う所願う所の去らんと欲する地は、如今正しく其の時に逢う。旧日の憂愁を洗浄して、新来の福気を連ねて一併に収下せり。この林は宿願償いを得て旧憂尽く滌がるるを主とする。占う者の久しく心頭に壓する事は了結の期に至れり。勢に乗じて行くに宜しく、前は愁い後は喜び、両ならびに心に称わん。
艮 噂噂懾懾,夜行晝伏。謀議我資,來攻吾室。空盡己財,幾無所食。
節の艮。一群の人は頭を交え耳を接し鬼鬼祟祟として、夜に出動し晝に潛伏す。彼らは我が財貨を算計して、前来して我が屋室を攻掠し、我が家産を洗劫して一空にして、幾んど喫う所連れても余さざらんとす。この林は財において大凶にして、盗竊劫奪に遭うを主とする。占う者は嚴加して防盗すべく、銭財は露にせず、夜間尤も戒備すべし。
漸 騂牛亡子,鳴於大野。申後陰徵,還歸其母。說我除悔。
節の漸。赤色の母牛は小牛を丟いて、曠野の上に哀鳴す。正しく申后が暗中に召を受けて、終に母家に歸り至るがごとし。母子重ねて聚まりて、我をして歓悦せしめ、悔恨も亦た随いて消除す。この林は失して復た得、離れて復た歸るを主とする。占う者の失せる人或いは物に回還の望み有り。久しく懸る心事は釋然を望み得べし。
歸妹 王良善御,伯樂知馬。周旋步驟,行中規矩。止息有節,延命壽考。(遯之豫)
節の帰妹。王良は車を駕するに善く、伯楽は馬を相するに善し。車馬周旋進退して、行止皆規矩に合し、休息も亦た節度有り。因りて能く年を延び寿を長らう。二人の事は《孟子》《戦国策》に見ゆ。この林は大吉にして事を行うに法度有り動靜宜に合するを主とする。占う者は規矩に依りて行えば則ち平安長久す。尤も養生と持家とに利あり。
豐 釋然遠咎,避患革害。田獲三狐,以貝為寶。
節の豐。心境釋然として過失に遠ざかり、禍患を躲き損害を革除す。田猟の中に三匹の狐狸を捕獲し、《周易・解》九二に「田に三狐を獲、黄矢を得」と曰う。又貝幣を以て寶と為す。この林は害を除き利を得て憂を轉じて喜となすを主とする。占う者の患う所の事は解すべく、且つ意外の財が手に入る有らん。
旅 仁獸所處,國無凶咎。市賈十倍,復歸惠裡。
節の旅。麒麟の如き仁獸の居る所の處は、国中に凶険過失無し。市上の買賣は十倍の利を獲て、滿載して歸りて仁厚の鄉里に到る。この林は大吉にして祥瑞門に臨み經商大に獲るを主とする。占う者は外に出でて賈を為せば必ず厚利を得、且つ能く平安に家に還らん。旅途財を求むるの上上の占なり。
巽 六目俱視,各欲有志。一言不同,乖戾生訟。
節の巽。六只の眼睛は一斉に張望し、各人は心里に各自の主張有り。一句の話も一處に及ばず、便ち乖違して相爭い、訴訟を鬧出す。この林は人多く口雜くして意見分歧し争端に致るを主とする。占う者は衆と事を共にするに須らく先ず主意を統一すべし。さもなくば一言合わざれば便ち官非と為らん。
兌 傅說休明,驂御四龍。周徑萬里,無有危凶。
節の兌。商相の傅説は徳業美好顕明にして、《荘子・大宗師》は彼が死して東維に乗り箕尾に騎りて星辰に列ると説く。如今四條の龍を駕りて、周行して万里の遥かなるも、一路に危険凶咎無し。この林は大吉にして行程遠大にして平安を主とする。占う者は出行・遷転俱に順にして、前程寛廣にして阻無し。
渙 伯仲叔季,日暮寢寐。醉醒失明,喪其貝囊。臥拜道旁。(謙之蠱)
節の渙。兄弟四人は日暮に倒頭して即ち睡り、醉後に醒めて神志昏昏として、銭を裝る口袋を丟失して、ただ路旁に橫臥して頭を磕げて人を求むのみ。この林は酒を縱えて財を失い顔面地に掃るを主とする。占う者は宴飲の度無きを切忌すべし。酒後は尤も物を失い態を失し易し。飲を節して自ら持するに宜しく、以て財を保ち身を保たん。
中孚 江有寶珠,海多大魚。亟行疾至,可以得財。(渙之需)
節の中孚。江中に宝珠有り、海里に大魚多し。急ぎ身を動かし迅速に趕到せば、即ち財貨を取得すべし。この林は財は遠方に在りて及時に貴ぶを主とする。占う者は遲疑觀望すべからず。果斷に外に出でて營求すれば則ち収獲豊厚なり。一歩慢ければ便ち人に捷足して先に登られん。
小過 遠視千里,不見所視。離婁之明,無益於耳。
節の小過。眼を放ちて千里之外を望むも、真に看るべきの物を看る能わず。縦え離婁の如き目力有るとも、《孟子・離婁》は彼が能く秋毫の末を明察すと稱すれども、耳朵の聴聞に於ては毫も幇助無し。この林は長處を錯りたる地方に用うるを主とする。占う者の恃む所の能は当前の事と並びて路に對せず。方法を改換するに宜しく、己が長を以て他の短を強攻することなかれ。
既濟 弱足刖跟,不利出門。市賈無贏,折亡為患。(乾之鼎)
節の既済。双脚孱弱にして脚跟はまた砍傷せられ、門を出でて遠行するに利あらず。買賣を做すも盈余無く、反って本を虧き折耗して禍患と為る。この林は行動受損して経営虧折するを主とする。占う者は外に出でて商いせざるに宜しく、家中に安く守れば反って損少なからん。凡そ遠行と投資との議有らば皆擱置すべし。
未濟 利盡得媒,時不我來。鳴雌深步,寡宿獨居。
節の未済。好處は皆媒人に占尽せられ、時機は肯んじて我を眷顧せざるなり。雌鳥は独り鳴叫して緩歩して行き、形單影只として独り宿し独り居る。この林は人の為に嫁を作り姻縁時を失するを主とする。占う者の托する人は反って利を得る者と成り、自身は孤零にして偶なし。自ら出路を謀るに宜しく、必ずしも他人の促成を再び待つに及ばず。
中孚之林(中孚卦六十四林)
中孚 鳥鳴喈喈,天火將下。燔我屋室,災及妃后。(兌之革)
中孚の中孚。群鳥が喈喈と驚き鳴きやまず、天火がまさに降りかかろうとしている。我が房屋居室を焼毀し、災いはなお妃后に牽連す。鳥の噪きは反常にして、古人はこれを火災の兆と視たり。この林は火において大凶にして、宅舎焚毀・内眷被累を主とする。占う者は務めて火燭を嚴防すべく、家中の婦孺は尤も留意すべし。異を見れば速やかに避くべし。
乾 黃虹之野,賢君所在。管仲為相,國無災咎。
中孚の乾。黄虹が横亙する原野の上は、正しく賢明の君主の在る所の處なり。管仲の如き人有りて丞相と為れば、国中に便ち災禍過失無し。管仲は斉桓公に相きて九合諸侯す。事は《史記・管晏列傳》に見ゆ。この林は大吉にして明君賢相相得るを主とする。占う者は英主或いは得力の助手に遇うを望み得べく、家国俱に安からん。
坤 叔梁有名,相與合齒。乾坤利貞,乳生六子。長大成就,風言如母。
中孚の坤。叔梁紇は素より名望有りて、人と門戸當對なる婚姻を結成す。乾坤二卦は正を守るに利あり、交感して六つの子卦を生出す。子女は長じて成人し、談吐風度は皆母に像れり。この林は婚配宜しきを得て子嗣蕃盛するを主とする。占う者は親を論じ家を成すに皆吉にして、兼ねて家風相承り後嗣出息するの喜有り。
屯 蝗囓我稻,驅不可去。實穗無有,但見空槁。(豫之師)
中孚の屯。蝗虫は我が稲子を啃食して、怎樣に驅趕するも趕き去らず。結実の穗子は一個も余さず、ただ空空たる枯稈を看るのみ。この林は外来の虫害が根本を侵蝕して顆粒の収無きを主とする。占う者の営む事は人に蚕食されて殆ど尽きんとす。先ずこれらの啃噬の患を除去するに宜しく、さもなくば辛苦一場にして終に空しきと為らん。
蒙 嬰孩求乳,母歸其子,黃麑悅喜。
中孚の蒙。嬰孩は啼哭して奶を喫わんとすれば、母親は便ち孩児の身邊に歸り來る。林中の小さき黄鹿を連れても之が為に歓喜す。この林は母子相依して需求應を得るを主とし、慈愛相接するの吉なり。占う者の盼む人は身邊に歸り來らん。求むる物も亦た手中に送到せられん。凡そ育幼・求助の事は皆遂う。
需 折箬蔽目,不見稚叔。失旅亡民,遠去家室。
中孚の需。箬葉を折りて眼を遮れば、近旁の稚叔を看る能わず。同行の人は走散し百姓は流亡して、遥かに己が家室を離れたり。この林は自ら其の明を蔽いて親衆離散するを主とする。占う者は先ず眼前の遮擋を去るべし。さもなくば身邊の人を連れても失わん。尤も盲目に行事して人心の流散を致すを忌むべし。
訟 牂羊羵首,君子不飽。年飢孔荒,士民危殆。
中孚の訟。母羊は痩せて只一大頭を余すのみ。《詩経・小雅・苕之華》は「牂羊墳首」を以て荒年の惨を写す。君子も亦た飯を喫い飽く能わず。年成は飢饉荒歉にして、士人と百姓は皆危境に陷入す。この林は飢荒困乏して上下俱に窘なるを主とする。占う者は用を節し糧を儲うべく、凡そ食を爭い利を爭うの訟は皆手を罷むるに宜し。
師 靈龜陸處,盤桓失所。伊子退耕,桀亂無輔。(歸妹之井,歸妹之剝)
中孚の師。神靈の龜は陸地に困まれ、徘徊して前に進まず其の居所を失う。伊尹は退隱して田を耕しに行き、夏桀は荒乱にして輔佐する人無し。この林は賢者位を失い乱世助なきを主とする。占う者の処する局は既に依托を失い又援手無し。暫く退きて自ら守り静かに輔すべきの主を待つに宜しく、強いて乱局の中に留まるに及ばず。
比 威約拘囚,為人所誣。皋陶平理,幾得脫免。
中孚の比。威勢に逼迫せられて拘禁囚繫を遭うは、実に人に誣陷せられたるなり。幸いに皐陶の如き公正の法官を得て持平に審理せられ、幾んど身を脱して罪を免るべし。皐陶は舜の理官と為り、《尚書・舜典》に見ゆ。この林は冤を蒙り屈を受けて明察の者に遇うを主とする。占う者は官非牢獄の驚有ると雖も、終に能く雪を得べし。實に據りて申辯するに宜し。
小畜 烏升鵲舉,照臨東海。龍降庭堅,為陶叔後。封於蓼丘,福履綏厚。(謙之頤,需之大畜,觀之頤)
中孚の小畜。烏鴉は高く飛び喜鵲は翅を振りて、東海の濱を光照す。神龍は庭堅を降し、即ち皐陶の字なり。陶叔の後嗣と為りて、蓼丘の地に封を受け、福禄安厚なり。皐陶の後は英・六・蓼に封ぜらる。見《史記・夏本紀》。この林は大吉にして貴子降生・受封得地・福沢綿長を主とする。
履 四目相視,稍延同埶。日映之後,見吾伯姊。(益之需)
中孚の履。四只の眼睛は彼此対望し、漸々拉り近づきて一勢に同處す。日影西に斜めたる後に、終に我が大姐に見えたり。この林は両情相接して久しく盼じて見るを得るを主とする。占う者の思念する人は会面を望み得べく、凡そ約見・尋訪・認親の事は皆願いの如く能わん。ただ須らく時日を待つべし。
泰 大步上車,南至喜家。送我狐裘,與福載來。(節之觀,未濟之坤)
中孚の泰。大步を邁ぎて車に登り路に上り、南に至りて喜事を辦する人家に往く。主人は我に狐皮の裘衣を贈り、福気を連ねて一併に載せ帰れり。この林は喜に赴き贈を受け、満載して帰るを主とする。占う者は南行或いは慶典に赴けば必ず獲る所有り。凡そ走動交際・人の饋贈を受くる事は皆吉なり。
否 穿都相合,未敢面見。媒妁無良,使我不鄉。
中孚の否。城を穿ち邑を過ぎるは本已に談妥相合せるに、仍ほ敢えて当面して相見ず。媒人は肯んじて心を尽くさず、我をして帰る處無からしむ。この林は中介が職を失して好事成り難きを主とする。占う者の托する居間の人は並びて可靠ならず。姻縁或いは交易は因りて懸りて決まらず。別に妥なる人を択びて中より撮合するに宜し。
同人 鴻飛遵陸,公母不復,伯氏客宿。(剝之井)
中孚の同人。鴻雁は高地に沿いて飛び去る。《詩経・豳風・九罭》のいわゆる「鴻飛びて陸に遵う、公帰りて復たせず」なり。あの公は再び帰らず、伯氏はただ客舎の中に借宿するのみ。この林は遠行して返らず、旅に羈して他鄉に在るを主とする。占う者の盼む人は恐らく帰来し難く、自身も亦た外に羈旅するの象有り。早く長住の計を作すに宜し。
大有 代戍失期,患至無聊。懼以發難,為我開基,邦國憂愁。
中孚の大有。防を換え辺を戍るに期限を誤り、禍患は頭に臨みて依る所無し。恐懼に因りて険を鋌って変乱を發動すれば、反って我が為に基業を開き、ただ邦国之が為に憂愁す。陳勝・呉広は期を失して漁陽に戍りて挙事す。事は《史記・陳渉世家》に見ゆ。この林は逼極して変を生じ乱中に機有りを主とする。占う者は人を逼ること太だ甚しきを慎防すべし。
謙 伯氏爭言,戰於龍門。構怨結禍,三世不安。
中孚の謙。伯氏は人と口角して相爭い、竟に龍門に於て交戰するに至る。此に由りて怨仇を結び禍患を醸成して、三代の人皆安寧を得ず。この林は一言の爭にして禍を子孫に遺すを主とする。占う者は意気に任せて事を用うるを切忌すべし。口舌の爭は務めて早く化解すべく、さもなくば怨は結びて解け難く、後人に累及せん。
豫 周政養賊,背生人足。陸行不安,國危為患。
中孚の豫。周室の政令は反って乱賊を養い大ならしめ、背上に人脚を長出せるが如く、怪异にして不祥なり。陸地の上を走るも皆安穩を得ず、国家は危殆にして患を成す。この林は姑息に奸を養い、反って其の主を噬するを主とする。占う者は早く心腹の患を裁抑すべく、寛縦して下さり行けば必ず大禍と為らん。
隨 蜩螗歡喜,草木嘉茂。百果蕃生,日增富有。(謙之解)
中孚の随。蝉と螗虫とは歡鳴して、草木は美好茂盛なり。各種の果実は繁衍叢生して、家資は一天天と富足して起る。この林は大吉にして時令和順・物産豊盈を主とする。占う者の営む業は勢に順じて生長して、収益は日を逐うて増加す。時に順じて作るに宜しく、強いて速效を求むるに及ばず。
蠱 薄災暴虎,風吹雲卻。欲上不得,復歸其宅。
中孚の蠱。災禍迫近して、また凶猛の老虎に遇う。風一吹すれば雲便ち退散し、上に行かんと想うも上り得ず、只好く己が住處に退回る。この林は前路受阻して進取門無きを主とする。占う者の圖る事は眼下推動し得ず。暫く家中に退守して、風雲際会を待ちて再び打算を作るに宜し。
臨 乘騮駕驪,遊至東齊。遭遇行旅,送我以貨,厚得利歸。
中孚の臨。赤馬に騎り黒馬を駕して、一路游歴して東方の斉国に到る。途中に行商旅客に遇い、我に貨物を贈送して、因りて豊厚に利を獲て帰れり。この林は財において大吉にして、遠行して貴人に遇い意外に財を進むを主とする。占う者は主動して外に出づるに宜しく、途中の遇う所の人は正しく財源の在る所なり。
觀 鳳生十子,同巢共乳,歡悅相保。
中孚の観。鳳凰は十羽の雛鳥を生下し、一巢に同住して共同で哺育し、彼此歓悦として相互に護持す。この林は大吉にして人丁興旺・骨肉和睦を主とする。占う者の家中は和洽して、兄弟同心なり。凡そ丁を添え居を合し業を共にする事は皆吉なり。族を聚め相保つるの好占なり。
噬嗑 桃雀竊脂,巢於小枝。動搖不安,為風所吹。心寒慄搖,常憂殆危。(損之渙)
中孚の噬嗑。桃雀・窃脂の類の小鳥は、巢を細小の枝條の上に築く。風一吹すれば便ち搖晃して定まらず、心里に寒を發して戦慄し、常に危険を憂懼す。この林は托する所其の地にあらず根基太だ薄きを主とする。占う者は別に穏固の處を択びて身を安んずるべし。人に寄居すれば終日惴惴として、安寧を得難し。
賁 東山西山,各自止安。雖相登望,不得同堂。(姤之坤,漸之屯,渙之小過)
中孚の賁。東に一座の山、西に一座の山、各々一方に安處す。能く高に登りて相望むと雖も、終に一堂に同處する能わず。この林は両地に分居し遥かに相牽念して聚首を得ざるを主とする。占う者と思う所の人とは各々その位に安んずれば反って妥当なり。勉强して凑合すれば未だ必ずしも益有らず。書信を往来して情意を通ずるに宜し。
剝 匍匐出走,驚懼皇恐。白虎生孫,蓐收在後。
中孚の剝。地に伏して爬行して逃げ出で、驚慌恐懼して惶惶として安んぜず。白虎は子孫を生下し、西方の金神蓐収はまた後に跟う。《国語・晋語》は虢公が蓐収を夢みて国亡びるを載す。この林は大凶にして凶神後に在りて逃遁及ばざるを主とする。占う者は西方と刀兵の地とを避くべく、謹慎して自ら守れば方に災を減ぜん。
復 重弋射隼,不知所定。質疑蓍龜,告以肥牡。明神答報,宜利止居。
中孚の復。一再に弓を張りて高墉の上の鷹隼を射取らんとす。《周易・解》上六に「公、隼を高墉の上に射る」有り。而るに意を拿りて主意を定めざらん。是に蓍草と亀甲とを用いて卜問し、肥壯の公牲を献じて祭告す。神明回応有る所にして、安居して動かざるが最も利あるを指示す。この林は動きて疑いて卜して静吉を得るを主とする。占う者は守るに宜しくして攻むべからず。
旡妄 開門內福,喜至我側。加以善祥,為吾家宅。宮城洛邑,以昭文德。
中孚の无妄。門戸を打開して福気を迎納し、喜慶は我が身邊に来到す。再び種種の善美の祥瑞を加えて、皆我が家宅の中に歸到す。洛邑の宮城を營建して、以て禮樂文徳を彰明せり。この林は大吉にして福は外より來り家宅興旺するを主とする。占う者は門路を広く開きて善縁を接納するに宜しく、興造修建の事も亦た順なり。
大畜 烏飛狐鳴,國亂不寧。下強上弱,為陰所刑。
中孚の大畜。烏鴉は乱飛し狐狸は夜に鳴きて、国中は動乱して安寧を得ず。下位は強橫にして上位は孱弱にして、反って陰柔の一方に制裁せられたり。陳勝の事を起す前に「狐鳴呼びて曰く」の謀有り。見《史記・陳渉世家》。この林は綱紀倒置して下を以て上に犯るを主とする。占う者は属下の坐大を防ぐべく、早く整肅するに宜し。
頤 三雞啄粟,八雛從食。飢鷹卒擊,失亡兩叔。
中孚の頤。三羽の母鶏は粟粒を啄食して、八羽の雛鶏は跟いて一起に喫う。忽然として一羽の飢餓の鷹が猛撲して下り、二羽の小鶏は因りて命を喪せり。この林は安享の際に横禍驟降するを主とし、尤も子姪兄弟の輩に應ずべし。占う者は飲食安逸の時に戒備を預留すべく、幼小なる者をして単を落さしむることなかれ。天外の飛災を謹防すべし。
大過 嘆息不悅,憂逆中出。喪我金罌,無妄失位。
中孚の大過。長吁短嘆して心中快からず、憂愁と違逆とは内部より生出す。我が金罌宝器を丟失して、平白無故に位置を失掉せり。この林は内憂自生して財位両失するを主とする。占う者の眼下の麻煩は多くは内部より起りて外来にあらず。先ず己が心を安んじ内務を整頓せば方に能く財位を保住せん。
坎 剛柔相呼,二姓為家。霜降既同,惠我以仁。(家人之損,漸之離)
中孚の坎。剛と柔とは彼此呼応して、两つの姓氏は一家を結ぶ。霜降の時に同心協力して、仁厚を以て我に相待す。古礼は霜降に女を逆うるを嫁娶の時と為す。この林は陰陽相合して婚配成家するを主とする。占う者は親を論じ約を締するに皆吉なり。縦え坎険の中に在りとも亦た人の恵を得べし。
離 送我季女,至於蕩道。齊子旦夕,留連久處。
中孚の離。我が小女児を出嫁せしめて送りて、一直線に平坦の大道に送り至る。《詩経・斉風》は斉子が早晚魯道を往来するを詠ず。彼女は流連して去らず、久久に停留す。この林は嫁を送りて遠行して依依として舎て難きを主とする。占う者は親人に遠離の事有り。不舎有ると雖も終に須らく放行すべし。尚ほ変を生ずるに至らず。
咸 低頭竊視,有所畏避。行作不利,酒酸魚敗,眾莫貪嗜。(鼎之解)
中孚の咸。頭を低れて偸々と窺看して、心里に畏懼して躲避する所有り。行事作為は皆順利ならず、出だす酒は已に酸を發し魚は已に腐敗して、衆人誰も肯んじて嘴を貪らず。この林は心虚に気餒して人皆嫌弃するを主とする。占う者の備ふる物・行う事は皆時新を失せり。徹底に更換するに宜しく、勉强して推行すればただ冷落を招くのみ。
恆 典策法書,藏在蘭臺。雖遭亂潰,獨不遇災。(巽之明夷,坤之大畜,大有之恆)
中孚の恒。国家の典籍簡策と法令文書とは、蘭台の中に収蔵す。縦え動乱潰敗に遭遇すとも、唯だそれらは曽て災に遇わず。蘭台は漢代の御史が書を蔵する所なり。この林は善く蔵する者は全きを得るを主とする。占う者は深く蔵り慎みて守るに宜しく、緊要の人事財物を穏妥の處に置けば、乱世の中に方に独り存すべし。
遯 旦醉病酒,暮即瘳愈,獨不及咎。
中孚の遯。早晨に醉て病し、傍晚に至れば便ち已に痊愈して、唯だ過失を醸成せざるのみ。この林は小病小失にして速やかに愈え咎なきを主とする。占う者の眼下の不適或いは過錯はただ一時なり。很快く過ぎて後患を留めず。心を寛げて調養するに宜しく、過慮するに及ばず。
大壯 畫龍頭頸,文章不成。甘言美語,說辭不名。(升之蒙,蒙之噬嗑,家人之賁)
中孚の大壯。龍を畫くに頭と頸のみを畫き出し、紋彩鱗爪は皆畫き成らず。正しく口一杯の甜言蜜語の如く、説くは聴き良しと雖も名目を立つ能わず。この林は始有りて終無く、言して実ならざるを主とする。占う者の聴く承諾は多くは実處に落ちざらん。凡そ合作・許諾の事は須らく其の実績を驗すべく、巧言に動かされることなかれ。
晉 日月運行,一寒一暑。榮光赫赫,不可得保。顛躓殞墜,更為士伍。(巽之震)
中孚の晋。日月は輪轉して息まず、一寒一暑交替す。人間の榮光は再び顕赫なりと雖も、長久を保つ能わず。一旦跌跤して墜落せば、便ち尋常の兵卒に淪落す。《周易・繫辭》に「寒往けば則ち暑來る」と曰う。盈虛時有り。この林は盛極まりて必ず衰うるを主とする。占う者は鼎盛の時に退步を預留し、驕を戒め盈を戒むべし。
明夷 爭利王市,朝多君子。蘇氏六國,獲其榮寵。
中孚の明夷。王城の市集の上に利益を競逐し、朝廷の上に君子衆多なり。蘇秦は六国を游説し、身に六国の相印を佩びて、榮耀と寵遇とを贏得せり。事は《史記・蘇秦列傳》に見ゆ。この林は口才謀略に憑りて貴を取るを主とする。占う者は衆人競逐の處に在りて其の長を一展するに宜しく、游説奔走すれば顯名を獲べし。
家人 六蛇奔走,俱入茂草。驚於長塗,畏懼啄口。(井之兌,豐之兌)
中孚の家人。六條の蛇は一斉に奔逃して、皆茂密の草叢に鑽入す。漫長の路途の上に驚嚇を受けて、啄傷咬傷せられんことを怕る。この林は家を挙げて驚惶して難を避け身を草莽に蔵るを主とする。占う者の處する境は安ならず。全家は暫く鋒芒を避くるに宜しく、途中尤も口舌と暗算とを防ぐべし。
睽 懸□素餐,食非其任。失輿剝廬,休坐徙居。(頤之益)
中孚の睽。白く俸禄を喫いながら事を做さず。《詩経・魏風・伐檀》は「素餐せざらんや」を譏る。食う所と任ずる所と相稱せず、終に車輿を失い房屋は拆かる。《周易・剝》上九のいわゆる「小人廬を剝ぐ」なり。ただ止まりて別に住處を尋ぬるのみ。この林は尸位素餐して終に斥退を遭うを主とする。占う者は職に稱じ責を尽くすべし。さもなくば位と産と俱に失わん。
蹇 歡欣九子,俱見大喜。攜提福至,王孫是富。
中孚の蹇。九個の孩児は歡天喜地として、一同に大喜の事に遇う。福気を提攜して到り、王孫因りて富足す。この林は人丁興旺にして家を挙げて同じく慶び、蹇難の名に居ると雖も実は大吉を得るを主とする。占う者の家中に喜事門に臨み、且つ子孫受益せん。広く福縁を納れ、同じく其の楽を享くるに宜し。
解 伯夷叔齊,貞廉之師。以德防患,憂禍不存。(革之否,歸妹之臨,節之益)
中孚の解。伯夷・叔斉は堅貞清廉の表率にして、国を譲りて去れり。事は《史記・伯夷列傳》に見ゆ。能く徳行を以て未然に防範すれば、憂愁と禍害とは復た存せざらん。この林は廉徳を以て危難を化解するを主とする。占う者は心を清くし正を守りて爭わず貪らざるに宜しく、眼前の難は自ずから消解せん。身を修め禍を免るるの吉なり。
損 雄聖伏名,人匿麟驚。走鳳飛北,亂潰未息。(否之大過,剝之臨)
中孚の損。雄傑聖哲は姓名を隠し、賢人は躲蔵して、麒麟を連れても驚を受けたり。鳳凰は奔走して北に飛び、動乱潰敗は未だ停息せず。この林は賢者世を避け乱局未定なるを主とする。占う者は扰攘の中に身を處す。才を蔵り跡を隱して靜かに其の變を觀るに宜しく、亂世の中に鋒芒を顯露すべからず。
益 久鰥無偶,思配織女。求其非望,自令寡處。
中孚の益。長く鰥居して配偶無し。而るに妄りに天上の織女を娶りて妻と為さんと想う。求むる所は本より分内の可望にあらず、結果ただ己をして引續き孤零獨處せしむるのみ。この林は非分の想・痴心妄求を主とする。占う者の圖る事は自身の條件を超出す。惟だ期望を降低し務実して択取すれば、方に成る有らん。
夬 破亡之國,天所不福,難以止息。
中孚の夬。已に破敗滅亡せし国家は、上天は再び福を賜わず、禍乱平息し難し。この林は氣數已に盡きて挽回すべからざるを主とする。占う者の依附する人事は已に盡頭に至れり。勉强して維持すればただ徒勞のみ。早く決斷して脱離し、別に出路を謀るは方に上策と為るに宜し。
姤 老慵多欲,弊政為賊。阿房驪山,子嬰失國。
中孚の姤。年老倦怠するも貪欲は減せず、敗壞の政令は民を害する賊と為る。大いに阿房宮を興し驪山陵を營造して、終に子嬰の手上に至りて天下を丟せり。事は《史記・秦始皇本紀》に見ゆ。この林は奢欲が根本を耗尽して傳わりて末代に亡ぶを主とする。占う者は欲望を節制し靡費を停止すべし。さもなくば家を敗し業を敗せん。
萃 三羖六牂,相隨俱行。迷入空澤,經涉虎廬。為所傷賊,死於牙腹。
中孚の萃。三匹の公羊・六匹の母羊は伴を結びて同行し、路を迷いて空曠の水沢に進入し、また老虎の巢穴を經過して、終に咬傷殘害せられ、虎口に身を葬れり。この林は大凶にして、伴を結びて遠行するに誤りて険地に入るを主とする。占う者は盲從して路に上るを切忌すべく、尤も山沢荒僻の處に入るを忌むべし。人烟稠密の地に留まるに宜し。
升 噬囁□嚾,昧冥相搏。多言少實,語無成事。(明夷之豫,謙之乾)
中孚の升。汝は一言、我は一語と喧嚷して爭嚼し、昏暗の中に彼此撲打す。話を説くは多くして實事を做すは少く、終に何事をも談り成さず。この林は空言紛擾・糊塗爭執を主とする。占う者の議る事は一味に口舌の來往なり。言を行に化するに宜しく、さもなくば議り來り議り去りて一獲する無し。
困 舞陽漸離,擊築善歌。慕丹之義,為燕荊軻。陰謀不遂,霍目死亡,功名何施。
中孚の困。秦舞陽と高漸離とは、一は随行し一は筑を撃ちて善く歌う。燕太子丹の義氣を仰慕して、是に燕の為に行刺する荊軻有り。密謀は成功せず、目を瞪らして亡び、功名何より談ずらん。事は《史記・刺客列傳》に見ゆ。この林は大凶にして、注を孤りて擲ち功敗れて身死すを主とする。占う者は険を冒し難を犯るを切忌すべし。
井 尹氏伯奇,父子分離。無罪被辜,長舌為災。
中孚の井。尹吉甫と其子伯奇とは父子離散す。伯奇は本より罪過無しと雖も罪名を蒙受せり。全く後母の長舌が讒を進めて災禍を醸成せるに因る。《詩経・大雅・瞻卬》に「婦に長舌有り、惟れ厲の階なり」有り。この林は冤を蒙りて逐われ骨肉分離するを主とする。占う者は身邊の婦人の言の挑撥を防ぐべく、讒に遇えば實に據りて自ら明らかにすべし。
革 五精亂行,政逆皇恩。湯武赫怒,天伐利域。
中孚の革。五星は運行錯乱して、政令は上天の恩徳に違逆す。商湯と周武とは因りて勃然として震怒し、天を奉じて討伐し、向かう所の地は皆其の利を得べし。《周易・革》彖辭に「湯武革命、天に順い人に應ず」と曰う。この林は天象警を示して正義の師興起するを主とする。占う者が若し行う所は弊を除くの挙なれば、名正しくして功成るを望み得べし。
鼎 西曆玉山,東入玉門。登上福堂,飲萬歲漿。
中孚の鼎。西行して西王母の居る玉山を經過し、東歸してまた玉門関に進入す。福氣の殿堂に登りて、寿を萬年に祝する玉漿を飲下す。この林は大吉にして、遠行して遍歴して終に福地に歸るを主とする。占う者は東西に往來して皆其の利を得、兼ねて年を延び福を受くるの喜有り。行旅と養生と俱に吉なるの好占なり。
震 行觸忌諱,與司命忤。執囚束縛,拘制於吏,迷人有喜。
中孚の震。事を行うに忌諱に觸犯して、人の寿命を掌る司命の神と抵牾す。因りて捉拿囚繫せられて捆綁され、官吏の拘管を受く。倒れそれの此に迷惑する人は反って可喜を覺ゆ。この林は忌を犯して災を招き、身が囹圄に陷るを主とする。占う者は事を行うに須らく禁忌と法度とを避くべし。一旦規を逾えれば便ち牢獄の厄有らん。
艮 機父不賢,朝多讒臣。君失其政,保我久貧。
中孚の艮。權を當る父輩は賢明ならず、朝廷の裏には進讒の臣多し。国君は因りて政柄を失掉して、我も亦た只好く貧寒を長く守りて日を度る。この林は上に明主無く下に小人多く、賢者の進用する由無きを主とする。占う者の處する局は政出して門多し。貧に安んじ拙を守るに宜しく、強いて聞達を求むるに及ばず。
漸 三人俱行,北求大牂。孟長病足,倩季負囊。柳下之貞,不失我邦。
中孚の漸。三人は伴を結びて同行し、北に往きて肥壯の母羊を尋求す。老大は脚上に病有りて行走し難く、便ち小弟を請うて行囊を代背せしむ。柳下恵の如き貞正の操守に憑りて、終に己が邦国を失わず。この林は兄弟相扶け正を以て自ら守るを主とする。占う者は小挫有ると雖も、人の分擔を得れば則ち根本に損なし。
歸妹 鵠思其雄,欲隨鳳東。順理羽翼,出次日中。雖留比邑,復歸其室。(益之觀,需之離,豐之泰)
中孚の帰妹。雌の天鵝は其の配偶を思念して、鳳凰に跟いて東に飛び去らんと欲す。羽翼を理順して、正午の時分に啓程す。隣近の城邑に停留すること一陣有ると雖も、最終に仍ほ己が巢室に歸り至る。この林は離れて復た歸り、心に属する所有るを主とする。占う者の盼む人は縦え躭擱有るとも、終に會い來らん。耐心して相待つに宜し。
豐 常德自如,不逢禍災。(「如」一作「加」)
中孚の豐。恒常の徳行を持守して從容自在にして、因りて禍患災殃に遇わず。この林は徳足りて自ら保ち平安事無きを主とする。占う者はただ言行常の如くして非分の心を生ぜずんば、眼前の諸事は自ずから平順なり。常を守りて吉を致すの簡明の占なり。
旅 白鵠遊望,君子以寧。履德不愆,福祿來成。
中孚の旅。白天鵝は從容として游弋して遠くを望み、君子因りて安寧す。徳義を踐行して過失無く、福氣と禄位と便ち随いて成就す。この林は行止高潔にして徳に依りて福を得るを主とする。占う者は縦え旅途異鄉に在りとも、ただ徳を守りて虧なければ、自ずから安穩にして、且つ名利漸々成るの喜有らん。
巽 膚敏之德,發憤忘食。虜豹擒越,為王得福。(大有之困)
中孚の巽。美好敏捷の徳行有り。《詩経・大雅・文王》は「殷士膚敏」と稱す。發憤して功を用うるに至りて寝食を廢忘す。《論語・述而》のいわゆる「憤を發して食を忘る」なり。因りて豹隼を俘獲し越人を擒服して、君王の為に福沢を贏得す。この林は勤勉して功を建て敵を克ち賞を受くるを主とする。占う者は努力して成る有りて、功を立て禄を受くるを望み得べし。
兌 百足俱行,相輔為強。三聖翼事,王室寵光,國富民康。(屯之履)
中孚の兌。百足の虫は衆足齊しく動き、彼此扶持するを以て強健なり。三位の聖賢は王事を輔佐して、王室因りて榮光顯耀し、国家は富足し百姓は安康なり。この林は大吉にして衆策衆力・君臣相済するを主とする。占う者は衆人の力を合し共に大事を圖るに宜しく、獨り其の勞を任ずれば則ち周全し難し。
渙 生不逢時,困且多憂。年老衰極,中心悲愁。
中孚の渙。合宜ならざる時代に生れて、既に困頓にして又憂愁多し。年老衰敗して極に至るの時に到れば、心里に悲哀満つ。この林は時運濟らず老境凄凉なるを主とする。占う者の遇う時は施展に利あらず。期望を降低し力を量りて行うに宜しく、并せて早く晚年の為に打算し、心力を無望の事上に耗ぐることなかれ。
節 出門蹉跌,看道後旅。買羊逸亡,所謂□走。空手握拳,坐狼為咎。
中孚の節。門を出づれば即ち一跤を絆き、頭を回りて後に落ちたる同伴を張望す。買來の羊はまた跑掉して、いわゆる走脱して影蹤無し。到頭に両手空空としてただ拳頭を攥む。坐して狼の來りて禍患と成るを待つ。この林は門を出でて利あらず財物走失するを主とする。占う者の近日は出行交易すべからず。家中に守るは反って損少なからん。
小過 牧羊稻田,聞虎喧讙。畏懼惕息,終無禍患。(隨之漸,井之否,剝之損)
中孚の小過。稲田の辺に羊を放して、老虎の喧叫の声を聞く。害して息を屏し膽を提げて心に吊ると雖も、最終に並びて禍患に遭わず。この林は虚驚一場にして驚有りて険無きを主とする。占う者の眼前の恐慌は実は其の実害無し。ただ須らく小心謹慎すべく、風声過ぎ去らば自ずから平安ならん。
既濟 龍潛鳳池,箕子變服,陰孽萌作。
中孚の既済。龍は鳳池の中に潛伏して頭を露に肯ぜず。箕子は服色を改換して佯狂し奴と為りて以て紂王の害を避く。事は《史記・宋微子世家》に見ゆ。此は正しく陰邪禍孽の萌生を始むるの時なり。この林は賢者晦を隱して自ら保ち乱象初起するを主とする。占う者は微を見て著を知るべく、早く鋒芒を収斂して以て將來の禍を避くべし。
未濟 國無比鄰,相與爭強。紛紛凶凶,天下擾攘。
中孚の未済。国と国との間に和睦の鄰邦無く、彼此強を爭い勝を闘う。紛紛擾擾として凶険斷たず、天下は動蕩して寧ならず。この林は四鄰交惡して群雄相爭うを主とする。占う者の處する環境は到る處に對手なり。先ず善縁を結び強敵を少く樹るるに宜しく、硬く硬を碰くればただ休止無き紛爭に陷入せん。
福祉日增。
福氣と吉祥とは一天天と増多す。この四字は傳本中に錯簡して此に在り、本は下文《小過》の《乾》「徳を積み仁を累ねて、靈佑順信」の一林の結句にして、「積徳累仁」の两句と連讀して方に全章を成す。今仍ほ源本の次序に依りて錄存し、以て旧本の面目を見ん。
小過之林(小過卦六十四林)
小過 初雖驚惶,後乃無傷。受其福慶,永永其祥。
小過の小過。起初は雖も驚慌失措すれども、後來は却って毫髮無傷なり。反って福沢慶賞を承受して、あの吉祥は長久にして絶えず。この林は先ず驚き後に安んじ、憂を轉じて喜となすを主とする。占う者の憂う事はただ虚驚なり。過ぎて後に但だ害無きのみならず、尚ほ意外の福分有らん。鎮定して應對するに宜しく、自ら陣脚を乱ることなかれ。
乾 積德累仁,靈佑順信
小過の乾。一滴一滴と徳行を積累し仁愛を累聚せば、神靈便ち此の誠順守信の人を保佑す。本林の末句「福祉日增」は傳本中に錯簡して上文《中孚》の《未済》の後に到れり。此の二句と連讀すれば、正しく説く福氣は徳を積むに因りて日漸に増多すると。この林は厚徳にして福を致すを主とする。占う者は持久して善を行うに宜しく、福報自ずから厚からん。
坤 謹慎重言,不幸遭患。周召述職,脫免牢門。
小過の坤。謹慎小心にして言を出だすも持重すれども、仍ほ不幸にして患難に遭遇す。幸いに周公・召公有りて職守を陳述し中より周旋して、終に身を脱して牢門を走出せり。この林は辜無くして累を受けて貴人の營救を得るを主とする。占う者は縦え官非牢獄の厄に遇うとも、ただ平日言を謹み行を慎めば、自ずから面相を出でて援る人肯んずべし。
屯 鳥飛鼓翼,喜樂堯德。虞夏著功,要荒賓服。
小過の屯。飛鳥は翅を振り翼を鼓して、唐堯の徳政を歓欣す。虞舜と夏禹とは相継いで功業を建立して、要服・荒服の如き遠方の地を連れても來り賓服して歸順す。要服・荒服は《尚書・禹貢》に見ゆ。この林は大吉にして徳沢遠く播き四方心を歸すを主とする。占う者の行う事は人の擁戴を得、声名は遠處に及ぶべし。
蒙 牙□生齒,室堂啟戶。幽人利貞,鼓翼起舞。
小過の蒙。牙牀の上に新齒を長出し、屋室廳堂は門戸を敞開す。幽居の人は正道を守持するに利あり。《周易・履》九二に「幽人貞にして吉」有り。是に翅を振りて起舞す。この林は生機初めて萌え門戸重ねて開くを主とする。占う者は久しく閉塞の中に處して將に轉機を得ん。ただ正を守り自ら持せば、歓欣の日遠からず。
需 使伯東求,拒不肯行。與叔爭訟,更相□傷。
小過の需。伯氏を差遣して東に往きて求取せしめんとすれば、彼は推拒して肯んじて前往せず。又叔氏と爭執して官司を打ちて、彼此互相に傷害す。この林は使喚して動かず兄弟墻に鬩ぐを主とする。占う者の托する人は調遣を聽かず、家中は還た因りて爭訟を生出す。先ず内部を調和するに宜しく、切に家事を公堂に鬧上することなかれ。
訟 手足易處,頭尾顛倒。公為雌嫗,亂其蠶織。
小過の訟。手と脚とは位置を換え、頭と尾とは顛倒せり。男主人は婦人の活計を做起して、反って養蚕紡織の事を攪乱す。この林は本末倒置して爼を越え庖を代うを主とする。占う者は各々其の職を守り各々其の分に安んずべし。己に属せざる事に插手すればただ局面を乱すに至らん。
師 匠卿操斧,豫章危殆。袍衣既剝,祿命訖已。
小過の師。工匠大師は手に斧頭を執りて、參天の豫章大木は便ち旦夕に危うし。身上の袍服は剥去せられ、俸禄と性命とも便ち此に至りて止まる。この林は大材が伐を遭い位禄俱に失わるるを主とする。占う者が若し才高く顯露せば反って砍伐を招かん。収斂して自ら晦るに宜しく、切に人前に其の材具を逞ることなかれ。
比 天女踞床,不成文章。南箕無舌,飯多砂糠。虐眾盜名,雌雄折頸。(大畜之益)
小過の比。織女神は機前に踞坐するも花紋を織成せず。《詩経・小雅・大東》は南箕星は名は箕と雖も糠秕を簸揚する能わずと説く。因りて飯裏には砂石と糠皮と多し。衆人を虐待し名声を窃取する人は、終に雌雄双双頸を折りて亡ぶ。この林は名有りて実なし世を欺き名を盗む者は必ず敗るを主とする。占う者は務実して自ら持するに宜し。
小畜 大椎破轂,長舌亂國。床笫之言,三世不安。
小過の小畜。大槌は車轂を撃破し、長舌の婦人は国政を攪乱す。《詩経・大雅・瞻卬》に「婦に長舌有り、惟れ厲の階なり」と曰う。牀帷の間の私語は外に傳われり。《左傳》に「牀笫の言は閾を逾えず」と曰う。因りて三代の人皆安寧を得ず。この林は枕辺の讒言が家を敗し国を敗るを主とする。占う者は内言を慎み私語の外泄を防ぐべし。
履 銜命辱使,不堪厥事。中墜落去,更為負載。
小過の履。命を奉じて使を出だすも使命を辱めて、受けたる差事を擔當し起れず。半途の上に垮て下りて、只好く改めて重物を背負うの苦役を做す。この林は才職に稱わず、貴より賤に轉ずるを主とする。占う者が若し能力を超出する任務を接下せば、非但だ辦り成さざるのみならず還た身份を貶損せん。力を量りて受くるに宜しく、勉强して承當すべからず。
泰 三蛇共室,同類相得。甘露時降,生我百穀。
小過の泰。三條の蛇は一室に同處して、同類彼此相安んじ相得べし。甘美の露水は時を按じて降下して、我が百樣の穀物を滋養出す。この林は大吉にして、同類相聚まりて和睦し天時は期に應じて潤澤すを主とする。占う者は同道と共處すれば則ち各々其の益を得、営む所の事も亦た滋長の機に逢いて、収成期すべし。
否 衣繡夜遊,與君相逢。除患解惑,使君不憂。
小過の否。身に錦繍を穿ちながら夜間に出行するは、本より人の見る無きの憾なり。《史記・項羽本紀》のいわゆる「繡を衣て夜行く」なり。不意に竟に君子と相逢して、彼の為に禍患を除去し疑惑を解き、彼をして再び憂愁せざらしむ。この林は暗中に遇合して意外に助を得るを主とする。占う者は顯ならざる時に處すと雖も、仍ほ知音の相賞する有りて、憂疑解すべし。
同人 被髮獸心,難與為鄰。來如風雨,去如絕弦,為狼所殘。
小過の同人。頭髮を披き散らし心は禽獸の如き人は、彼と鄰居を做し難し。來るは狂風暴雨の如く、去るは琴弦驟斷の如くして、終に豺狼に殘害せられたり。この林は處する所人にあらず凶暴防ぎ難きを主とする。占う者は鄰を択び友を択びて居るべく、粗野凶悍の徒を遠離すべし。さもなくば驟來の禍は避くるに避る可からず。
大有 剛柔相呼,二姓為家。霜降既同,惠我以仁。(家人之損,中孚之坎,漸之離)
小過の大有。剛と柔とは彼此呼応して、两つの姓氏は一家を結ぶ。霜降の時に同心相聚まりて、仁厚を以て我に相待す。古礼は霜降を嫁娶の期と為す。この林は陰陽和合して婚姻美満するを主とする。占う者は親を論じ約を締するに皆宜しく、凡そ両方結合の事は皆各々其の恵を得べし。
謙 牛耳聾瞶,不曉聲味。委以鼎俎,治亂潰潰。
小過の謙。牛は耳聾く眼花して、声音と滋味とを分清し得ざらん。而るに烹調の鼎爼を交托せば、結果愈々治めて愈々乱れて、一塌糊涂なり。この林は用う所其の人にあらず托する所其の才にあらざるを主とする。占う者は才に依りて任を授くべし。緊要の事を此の道に通道に通ぜざる人に交すれば、ただ局面を攪りて収拾すべからざらしむるのみ。
豫 低頭竊視,有所畏避。行旅不利,酒酸魚餒,眾莫貪嗜。(鼎之解)
小過の豫。頭を低れて偸々と窺看して、心中に畏懼して回避する所有り。門を出でて遠行すれば順利ならず、備下の酒は已に酸を發し魚は已に腐臭して、衆人誰も肯んじて箸を下さず。この林は心怯く氣短くして備ふる所は時を失するを主とする。占う者は事を行うに既に底氣無く又貨色好からず。先ず整備して停當するに宜しく、さもなくば處處に人の冷落を遭わん。
隨 雨師娶婦,黃岩季子。成禮既婚,相呼南上。膏我下土,年歲大有。(否之坤,恆之晉,豐之比,豐之大過)
小過の随。雨師は新婦を迎娶す。あれは黄岩季氏の女なり。礼成りて婚を完したる後に、彼此招呼して一同に南行す。雨沢因りて我が土地を潤沢して、年成大いに豊収す。この林は大吉にして嫁娶時を得て雨は田疇を潤すを主とする。占う者の婚事は順成して、兼ねて田産豊収・家業増益の喜有らん。
蠱 戴盆望天,不見星辰。顧小失大,遁□牆外。(賁之蒙,巽之漸,益之中孚)
小過の蠱。盆を頭に頂きて天空を仰望すれば、自然に星辰を看る能わず。司馬遷《報任安書》は此を以て二事の兼顧し難きを喩う。只小處を顧れば便ち大處を失い、福、福氣は墻外より溜走せり。この林は自ら遮蔽を設け小に因りて大を失うを主とする。占う者は先ず眼前の障碍を除去して眼光を放開せば、方に芝麻を撿ひて西瓜を丟うを致さざらん。
臨 二人輦車,徙去其家。井沸釜鳴,不可以居。
小過の臨。兩個の人は車子を推して、家を挙げて遷走す。井水沸騰して鍋釜自鳴するに因る。古人は此を大凶の兆と視て、此の地方は再也住む可からず。この林は宅に異兆有りて迫られて遷徙するを主とする。占う者の居る處は已に安穩ならず。異を見れば速かに遷るべく、棧に恋りて去らざれば反って大禍を招かん。
觀 攘臂反肘,怒不可止。狼戾腹心,無與為市。
小過の観。袖子を捋げて手肘を反轉して、怒氣は止めどなく發作す。心腸は狼の如く凶狠乖戾にして、肯んじて彼と買賣を做する人無し。この林は暴戾にして和を傷り衆の與する所無きを主とする。占う者が若し一味に怒を逞しく氣を使わば、必ず孤立援無きに致らん。凡そ交易合作の事は更に須らく心平氣和なるべし。
噬嗑 湯火之憂,轉解喜來。
小過の噬嗑。原有の湯煮火焼の一般の憂患は、眼を轉ずる間に化解開けて、喜事随いて到来す。この林は大憂頓に釋れ凶を轉じて吉となすを主とする。占う者の眼下は正しく焦灼煎熬の中に在り。絶望するに及ばず。轉機は即ち近前に在り。此の一関を忍過せば便ち喜色を見ん。
賁 忠信輔成,王政不傾。公劉肇基,文武綏之。
小過の賁。忠誠守信を憑りて輔佐して王業を成就せば、王朝の政令は因りて傾覆に至らず。公劉は豳地に基業を開創して、文王・武王はそれを安定光大せり。事は《詩経・大雅・公劉》《史記・周本紀》に見ゆ。この林は大吉にして忠信に身を立て先を承け後を啓くを主とする。占う者は誠信を以て人を輔ぐるに宜しく、家業は世代相續くを望み得べし。
剝 登高折木,頓躓蹈險。車傾馬疲,叔伯嗟噓。
小過の剝。高處に攀りて樹枝を折取らんとして、脚下絆倒して険境に踏入す。車は翻覆し馬匹は疲憊して、叔伯たちはただ声を連ねて嘆息するのみ。この林は高を貪りて険を致し行程受挫するを主とする。占う者は攀援して過高く追求して過遠きを宜からず。力を量りて行えば方に傾覆の患を免れん。
復 桑方隕落,黃葉敗散。失勢傾側,如無所立。
小過の復。桑樹は正しく凋落す。《詩経・衛風・氓》に「桑の落つるや、其の黄にして隕す」と曰う。黄葉は敗壞して飄散し、憑恃を失いて歪斜傾側して、直に足を立つる處無し。この林は勢去り人衰え根基穩ならざるを主とする。占う者の倚る勢は正しく消退せんとす。早く別に立足の地を尋ぬるに宜しく、將に傾かんとする處に久しく待つことなかれ。
旡妄 鸞鳳翱翔,集於家國。念我伯姊,與母相得。
小過の无妄。鸞鳥と鳳凰とは空中に翱翔して、最后に我が家国の中に栖落す。我が大姐を思念すれば、彼女は母親と相處融洽せり。この林は大吉にして祥瑞降臨・親人和睦を主とする。占う者の家中に喜慶の兆有りて、兼ねて骨肉団圓・母女相安の楽を得べし。
大畜 陰淫所居,盈溢過度,傷害禾稼。
小過の大畜。陰濕の氣は過盛に聚積して此に在り、雨水は氾濫して限度を過して、庄稼を皆淹壊せり。この林は積蓄過量にして反って災害と成るを主とする。占う者の聚むる物・存する勢は已に承受を超出す。及時に疏泄して減損するに宜しく、さもなくば積み多くして患を成して、反って本業を傷らん。
頤 霄冥高山,道險峻難。王孫罷極,困於阪間。
小過の頤。高山は雲霄に聳入して昏暗明らかならず、道路険峻艱難なり。王孫は走りて筋疲力尽して、半山の斜坡の間に困す。この林は路途険阻して力尽きて中途に在るを主とする。占う者の圖る事は難度が預估を超出す。力を量りて程を分つに宜しく、一鼓作氣に強攀すべからず。以て半道に力竭するを免れん。
大過 和璧隋珠,為火所燒。冥昧失明,奪精無光,棄於道傍。
小過の大過。和氏の璧と隋侯の珠と、烈火に焚焼せられたり。昏暗の中に光沢を失い、精華は奪われて再び光彩無く、終に路旁に丟棄せられたり。二宝の事は《韓非子・和氏》《淮南子・覧冥訓》に見ゆ。この林は大凶にして、至宝が横禍に毀れ才俊が淪落して見棄せらるを主とする。占う者は其の珍しむ所を護惜すべく、尤も火を防防ぎ奪を防ぐべし。
坎 虞君好田,惠我老親。恭承宗廟,長慍不去,復我內事。
小過の坎。虞国の君は田猟を喜好するも、また我が年老の双親に恵を施す。恭しく宗廟の祭祀を承奉して、心中に長く慍怒を含むと雖も肯んじて去らず、終に我が家の内務を恢復せり。この林は怨を忍び職を守りて終に復位を得るを主とする。占う者の眼下は不平有ると雖も、本分を堅守すれば則ち旧業復るべし。
離 爪牙之士,怨毒祈父。轉憂與己,傷不及母。(謙之歸妹)
小過の離。爪牙を充當する武士は、兵を掌る祈父を怨恨す。《詩経・小雅・祈父》は正しく「祈父、予は王の爪牙」の怨なり。憂患を転じて自己身上に担當せしむ。幸いに傷害は母親に波及せず。この林は怨望上に在りて独り其の咎を任ずるを主とする。占う者は牽累を受くると雖も、家人は尚ほ保全すべし。自ら忍んで以て親を護るに宜し。
咸 倉盈庾億,宜稼黍稷,年歲有息。
小過の咸。粮倉は滿滿と裝え、露天の穀堆は億に至るまで多し。《詩経・小雅・楚茨》に「我が倉は既に盈ち、我が庾は維れ億なり」と曰う。黍と稷とを種植するに宜しく、年成年年に増益有り。この林は農と財とにおいて大吉にして、積儲豊足・逐年増長を主とする。占う者の営む業は穏歩に累積す。耕耨に勤め攢積するに宜し。
恆 窗牖戶傍,通利明光。賢智輔聖,仁德大行。家給人足,海內殷昌。(大畜之升)
小過の恒。窓戸門旁は通透敞亮にして光線充足す。賢能の智者は聖主を輔佐して、仁徳は世に大行す。家家豊足にして人人飽暖なり。四海の内は殷実昌盛す。この林は大吉にして政通して人和し家国俱に興るを主とする。占う者の處する局は豁然として開朗す。賢者の力を借りるに宜しく、長久経営すれば殷富を致すべし。
遯 忉忉之患,凶重與薦,為虎所吞。
小過の遯。憂心怛怛として禍患は接続して断たず、凶険は重重畳畳と壓り來りて、終に老虎に吞噬せられたり。「忉忉」は《詩経・斉風・甫田》に出づ。この林は大凶にして、禍は単に行わず終に吞噬を遭うを主とする。占う者は早く遠遁して険を避くべく、切に遲疑觀望して、坐して凶勢の身に加るを待つべからず。
大壯 水無魚滋,陸為海涯。君子失居,小人相攜。
小過の大壯。水中は復た魚蝦を繁衍せず、陸地は海邊に變成せり。君子は住處を失い、小人は却って群を成し伴を結べり。この林は環境劇變して正邪位を易うを主とする。占う者の處する局面は已に翻轉し、正直の人は一時に所を失う。暫く鋒芒を避けて、群小と相爭わざるに宜し。
晉 九疑鬱林,沮溼不中。鸞鳳所惡,君子攸去。(無妄之巽)
小過の晋。九疑山と郁林郡の一帯は、低窪潮濕にして居處に合せず。鸞鳳を連れても彼の地を嫌悪して、君子是に離去す。この林は水土宜からず賢者遠く避くるを主とする。占う者の在る所或いは往かんと欲する地は並びて自己に適合せず。早く遷離するに宜しく、勉强して留駐すれば反って身家を損せん。
明夷 六翮泛飛,走歸不及。脫歸王室,上其騂特。
小過の明夷。六翮を展開して高く飛び起き、走りて歸るに已に及ばず。終に身を脱して王室に歸附して、赤色の公牛を献上して祭牲と為す。「騂特」は周人の祭祀の尚う所なり。この林は険を脱して正に歸り、進獻して容を取るを主とする。占う者は困頓の中に在ると雖も、ただ正途に歸依して奉獻有らば、仍ほ身を安んじ命を立つべし。
家人 不直莊公,與我爭訟。媒伯無禮,自令壅塞。
小過の家人。荘公は理が虧き正道を占めず。而るに我と爭執して官司を打つ。媒を做す伯氏はまた礼數を守らず。是に事を自ら僵局に弄成せり。この林は曲直明白ならず居間が礼を失して阻塞に致るを主とする。占う者の議る事は中人の不當に因りて卡住せり。別に妥なる人を換えて中より疏通するに宜しく、無理の者と纏訟することなかれ。
睽 倉庚多億,宋公危殆。吳子巢門,殞命失所。(「庚」一作「庾」)
小過の睽。倉廩と露囤との中の粮穀は億に至るまで多く、本は豊足の象なり。然るに宋襄公は泓水に傷を受けて危殆となり、呉子諸樊は巢邑の城門の下に箭に中りて殞命して死して歸る所無し。二事は《左傳》に見ゆ。この林は外富して身危しを主とする。占う者は縦え厚積有るとも平安を保ち難し。兵刃を遠く避け身を慎みて守るに宜し。
蹇 失羊捕牛,無損無憂。
小過の蹇。一隻の羊を丟いて一頭の牛を捕獲せば、算來するに既に虧損無くまた憂愁するに及ばず。この林は小失にして大得、失して償う有るを主とする。占う者の眼前は些許の損耗有ると雖も、随後に別に更大の補進有らん。一時の失を懐に介するに及ばず。通盤に算來すれば仍ほ好局なり。
解 夏麥麩□,霜擊其芒。疾君敗國,使我誅傷。(泰之賁)
小過の解。夏の麦子は只麸皮を余し、霜凍は麦芒を打折せり。君主は疾有りて国事敗壞して、我をして誅戮傷害に遭わしむ。この林は収成受損して上其の政を失し、禍は下民に及ぶを主とする。占う者の處する局は根本已に壞れり。早く身を脱するを求むるに宜しく、敗局の中に在りて刑責を承當することなかれ。
損 昧昧暗暗,不知白黑。風雨亂擾,光明伏匿,幽王失國。
小過の損。昏昏暗暗として、黑白是非を分清し得ざらん。風雨交加して擾攘寧ならず、光明は潛蔵して、周幽王は因りて天下を丟せり。事は《史記・周本紀》に見ゆ。この林は大凶にして、是非顛倒して昏乱に亡国するを主とする。占う者は力めて明辨を求むべく、切に昏昧の中に波に随い流に逐うことなかれ。以て同じく覆亡に陷るを免れん。
益 執斧破薪,使媒求婦。和合二姓,親御飲酒。色比毛嬙,姑公悅喜。
小過の益。手に斧頭を執りて柴薪を劈き開き、媒人を遣わして妻室を求娶せしむ。《詩経・斉風・南山》に「薪を析るは之れ如何、斧匪ざれば克たず。妻を取るは之れ如何、媒匪ざれば得ず」と曰う。两姓和合して、自ら車を駕して親を迎へ喜酒を共飲す。新婦の美貌は毛嬙に比すべく、公婆は歓喜す。この林は婚において大吉にして、佳偶成るを得て翁姑意に称うを主とする。
夬 六疾生狂,痴走妄行。北入患門,與禍為鄰。
小過の夬。六種の病氣は交攻して狂乱を生出し、痴痴として奔走して胡乱に行事す。一頭北に闖入して禍患の門に入り、災禍と隣居を做せり。この林は大凶にして、神志守を失して自ら険地に投ずるを主とする。占う者は軽挙妄動を切忌すべく、尤も北行を忌むべし。先ず心神を安定して静守して以て禍を避くるに宜し。
姤 驅羊就群,狼不肯前。慶季愎諫,子之被患。
小過の姤。羊只を驅趕して群に合せしむれども、狼は肯んじて上前せず。慶氏と季氏とは剛愎自用して勧諫を聽かず、燕相子之が権を專らにして終に禍を招けるに如し。子之が燕を乱るの事は《史記・燕召公世家》に見ゆ。この林は異類合い難く諫を拒みて禍を致すを主とする。占う者は虚心に言を納るべく、強いて心を同じくせざる人を合せれば反って大患を生ぜん。
萃 二人異路,東趍西步。十里之外,不知相處。
小過の萃。兩個の人は走る所同ならざる路なり。一は東に疾行し一は西に邁歩す。十里の外に相隔てて、彼此對方の何の處に在るかを知らず。この林は同行して志を異にし終に失散に至るを主とする。占う者は人と事を共にするに若し方向一ならざれば、早晚道を分かち轡を分かたん。早く向き去るを説清するに宜しく、両相いに耽誤するを免れんが為なり。
升 義不勝情,以欲自營。睹利為躬,折角摧頸。
小過の升。道義は私情に壓り勝る能わず。ただ欲望に憑りて己の為に経営す。利益を一見すれば便ち身上に往きて攬る。結果角を折断して頸項を摧傷せり。この林は私を徇り利を逐いて自ら傷残を取るを主とする。占う者は義を以て欲を制すべく、利を見れば先ず其の害を思うべし。一味に貪求すれば必ず重創に致らん。
困 騷騷擾擾,不安其類。疾在頸項,凶危為憂。
小過の困。騒動擾攘して、同類の間に安寧を得ず。病痛は頸項要害の處に生じて、凶険危殆として人をして憂愁せしむ。この林は内外安ならずして病は緊要の處に在るを主とする。占う者は頸項肩背の疾に留意すべく、早く医に就くべし。事を處するも亦た須らく要害の制せられんことを防ぎ、先ず其の枢紐を固むるに宜し。
井 三河俱合,水怒湧躍。壞我王室,民困於食。
小過の井。三條の大河は一斉に汇合して、水勢は暴怒して翻騰涌躍す。我が王室宮城を衝毀して、百姓は因りて粮を缺き困を受く。この林は水において大凶にして、洪涝災を成し根基毀れらるを主とする。占う者は水患と衆力の汇聚して成る衝撃とを防ぐべし。早く堤防を築き粮を儲えて以て荒歉に備うるに宜し。
革 陽曜旱疾,傷病稼穡,農人無食。
小過の革。烈日は曝曬して旱情迅猛なり。庄稼は傷を受け病を致して、農人は因りて飯を喫う無し。この林は亢旱災を成し耕作収無きを主とする。占う者の営む事は枯竭の運に遇上す。水源を尋ね生路を覓るに宜しく、切に坐して天時を待つべからず。別に活計を謀じて以て荒年を度るべし。
鼎 流浮出食,載豢入屋。釋轡繫馬,西南廡下。
小過の鼎。水上に食物漂り來りて取る可く、又飼養の牲畜を裝載して屋に進めり。韁繩を解きて馬を西南邊の廊廡の下に拴す。この林は食を得畜を得て安頓所あるを主とする。占う者は衣食に落着有りて、行旅は脚を歇むるを望み得べし。凡そ儲備を置辦し人馬を安頓する事は皆宜しく、尤も西南の方向に利あり。
震 門戶之居,可以止舍。進士不殆,安樂相保。
小過の震。此は門有り戸有りの居所にして、止まりて住宿を安頓すべし。賢士を進用して危険有るべからず。衆人は安楽として彼此保全す。この林は身を安んずる地を得て人を用うるに咎無きを主とする。占う者は安心して居を定むべし。凡そ人才を招納し同伴を結交する事は皆穏妥可靠なり。
艮 過時不歸,雌雄苦悲。徘徊外國,與母分離。(咸之遯,豫之大壯)
小過の艮。約定の時を過するも仍ほ歸らず、雌雄双鳥は苦苦として悲鳴す。人は異国に徘徊して定まらず、母親と両地に分隔す。この林は期を逾えて歸らず母子相離るるを主とする。占う者の盼む人は一時に返り難く、自身も亦た外に滞留するの象有り。先ず音信を通じて以て親心を慰むるに宜し。
漸 中田有廬,疆埸有瓜。獻進皇祖,曾孫壽考。
小過の漸。田中に搭好の廬舎有り、田界の上に瓜を種う。《詩経・小雅・信南山》に「中田に廬有り、疆埸に瓜有り⋯⋯皇祖に献じて、曾孫寿考ならん」と曰う。それらを先祖に進献して、曾孫因りて長寿す。この林は大吉にして農事成る有りて祖を祭りて福を得るを主とする。占う者は本業に勤しみ且つ先人を敬奉せば、寿考の慶を獲べし。
歸妹 失時無友,覆家出走,何如喪狗。
小過の帰妹。時機を錯過して又朋友無し。家業傾覆して只出走するに、あの狼狽の状は喪家の犬の如し。孔子は曽て自ら「累累として喪家の狗の若し」と比す。見《史記・孔子世家》。この林は時運両失して歸依する所無きを主とする。占う者は早く援手を結交して時機を把握すべし。さもなくば一旦傾覆せば便ち身を容るる處無からん。
豐 反鼻岐頭,三寡獨居。
小過の豐。蝮蛇は鼻を仰ぎ頭を昂げて蛇頭岔れ分かれて、形状可怖なり。三個の寡婦は各々独居して依る無し。この林は凶物前に當りて孤弱援なきを主とする。占う者の身辺に陰毒の患有りて帮手を缺少す。謹慎して身を防ぐに宜しく、切に独り険地に處ることなかれ。多く人と伴を結ぶに宜し。
旅 衣裳顛倒,為王來呼。成就東周,封受大福。
小過の旅。衣裳を穿きて顛倒せり。《詩経・斉風・東方未明》のいわゆる「衣裳顛倒す」なり。只君王が急召するに因りて匆忙に起身したるなり。終に東周の基業を成就して、封を受けて大福を承受せり。この林は召に奉じ任を受け、匆忙の中に貴を得るを主とする。占う者は倉促して陣に上りて畧だ狼狽を顯すと雖も、却って正しく功を建て封を受くるの機なり。
巽 飛不遠去,還歸故處,興事多悔。
小過の巽。飛ぶこと能く遠からずして便ち原處に返回す。此の時に事を興辦すれば多く悔恨有らん。この林は力逮がざる有りて去りて復た還るを主とする。占う者の圖る事は眼下の能力を超出す。旧地に安く守るに如かず。勉强して興挙すればただ懊悔を招来せん。実力を養足して再び遠挙を圖るに宜し。
兌 含血走禽,不曉五音。匏巴鼓瑟,不悅於心。
小過の兌。血を含む走獣飛禽は五音を聴懂せず。瓠巴の瑟を鼓せば本より能く沈魚をして出水して聴かしむ。《荀子・勧学》は其の事を記す。如今それらに弾じて聴かしむれども、心里は喜悦を覺えず。この林は牛に対して琴を弾ずるに知音遇い難きを主とする。占う者の長ずる所は對方に解せられず。別に貨を識る人を覓るに宜しく、無知の者の面前に費心することなかれ。
渙 求玉獲石,非心所欲,祝願不得。
小過の渙。美玉を求めんと想うも頑石を得て、心里の欲する所にあらず。祈祷許願も亦た落空せり。この林は求むる所は得る所にあらず愿望遂わざるを主とする。占う者の眼下の圖謀は本意に合し難し。期待を降低し或いは目標を改換するに宜しく、勉强して之を求むればただ徒労のみ。
節 山崩谷絕,大福盡歇。涇渭失紀,玉石既已。
小過の節。山峰は崩塌し深谷は斷絶して、大きな福氣は全く止息せり。涇水と渭水とは清濁の常度を乱して、玉と石とも便ち分辨する無く、一切此に至りて止まる。この林は大凶にして、根本崩壊して賢愚分けずを主とする。占う者の依る勢は已に盡きたり。徹底に別に炉灶を起すに宜しく、再び旧局の回転を指望すべからず。
中孚 雜目懼怒,不安其居。散漫府藏,無有利得。
小過の中孚。衆目雜沓して又惧れ又怒りて、住みて安穩ならず。府庫中の積蔵は散乱流失して、何らの利益をも得られず。この林は人心寧ならず財物耗散するを主とする。占う者は先ず居處と人心とを安定し、再び庫蔵を整頓すべし。さもなくば内外皆散じて積む所尽く失わん。
既濟 眾邪充側,鳳凰折翼。微子復北,去其邦國。
小過の既済。衆多の邪佞は身辺に充斥して、鳳凰因りて翅膀を折断せられたり。微子は只好く北に歸りて、己が邦国を離去す。微子が殷を去るの事は《史記・宋微子世家》に見ゆ。この林は群小道に當りて賢者受挫して遠く去るを主とする。占う者は小人環伺の局に身を處す。早く身を抽きて地を避くるに宜しく、硬く爭うべからず。
未濟 六月采芑,征伐無道。張仲季叔,孝友飲酒。(離之坎)
小過の未済。六月に師を出だして芑を野に采り、無道の敵を討伐す。《詩経・小雅・六月》《采芑》は皆宣王中興の戦を詠ず。凱旋の後に、張仲と諸位の兄弟とは孝友の徳を以て共に聚まり酒を飲す。《六月》末章は正しく「侯誰か在れりや、張仲孝友なり」と説く。この林は大吉にして、征伐名有りて功成りて宴楽するを主とする。占う者は師を出でて功有りて、家門和睦せん。
既済之林(既済卦六十四林)
既濟 元兔捐掌,與足相視。證訊詰問,詿情自侶。死誣難告,口為身禍。
既済の既済。大兎は前掌を棄てて、ただ後足と面面相観するのみ。傳訊対質せられて層層と盤問され、供辭は牽連して、反って自己も亦た扯り入れらる。冤を含みて死するも申告する處無く、一張の嘴は禍を招くの根由と成れり。この林は訟において大凶にして、口供牽累して冤を蒙りて白する莫きを主とする。占う者は多言を切忌すべく、訟に渉れば須らく措辭を謹慎すべし。
乾 遊駒石門,騄耳安全。受福西鄰,歸隱玉泉。
既済の乾。小馬は石門の一帯に游走して、駿馬騄耳は平安事無し。西西邊の鄰国に在りて福沢を承受して、随後に玉泉の地に歸隱す。騄耳は周穆王の八駿の一にして、《穆天子傳》に見ゆ。この林は行程平安にして福を得て退を知るを主とする。占う者は出行恙無くして獲る所有りて、功の成る後に早く手を収め退蔵するに宜し。
坤 陽春草生,萬物風興。君子所居,禍災不到。
既済の坤。陽春の時節に百草萌生して、万物は風に随い興起す。君子の居住する所の地方は、災禍は眼前に到らず。この林は大吉にして時和に氣清く居處安泰を主とする。占う者の處する環境は正しく生發の機に當りて、且つ徳有りて以て自ら庇うべし。凡そ安居・創業の事は皆順なり。
屯 人無足法,紱除牛出。雄走羊驚,不失其家。
既済の屯。人事の上に效法すべき成規足らず。印綬を解きて牛を牽きて出づ。公畜は奔走し羊群は受驚すれども、幸いに家業を失掉するに至らず。この林は規矩立たず局面動蕩して根本尚ほ存るを主とする。占う者の眼下は人心浮動す。ただ家底を守れば、驚扰有ると雖も終に家を傾げるに致らざらん。
蒙 太山上奔,變見太傲。陳吾廢忽,作為禍患。
既済の蒙。泰山の巓に奔上して、異變顕現して態度極めて傲慢なり。我が荒廢疏忽を陳説して、終に禍患を醸成せり。この林は高に居りて自ら傲り、疏忽して事を誤るを主とする。占う者は勢を得るの時に在りて格外に謙抑謹細なるべし。一旦傲慢懈怠せば、禍患は便ち此に由りて生出せん。
需 乘龍光土,先暗後明。燎獵大得,太師以昌。
既済の需。龍に乗じて大地を照臨して、先是昏暗して後に光明に轉ず。火を挙げて田猟して大に収獲有りて、太師因りて昌盛す。姜太公は周を佐けて興る。見《史記・斉太公世家》。この林は暗より明に轉じて輔弼志を得るを主とする。占う者の眼下は晦暗の中に在ると雖も、等待の後に自ずから大獲有らん。耐心して時を候うに宜し。
訟 羊頭兔足,羸瘦少肉。漏囊貯粟,利無所得。(渙之艮,剝之恆)
既済の訟。羊の頭に兎の脚を配して、瘦弱して肉幾両も無し。漏底の口袋を拿りて粟米を裝えば、利を得んと想うも終に一獲も無し。この林は形質が称わず積む所が尽く漏るを主とする。占う者は縦え進項有るとも存め住めず。先ず漏洞を補い住め内耗を清理するに宜しく、さもなくば爭い來り爭い去りて仍ほ空手ならん。
師 因禍受福,喜盈其室。螟蟲不作,君無苛惑。
既済の師。一場の禍事に因りて反って福氣を得、喜慶屋室に充満す。螟虫は復た害を為さず、君主も亦た苛刻疑惑の政無し。この林は大吉にして禍を轉じて福となし内外清明なるを主とする。占う者の眼前の挫折は正しく轉機なり。且つ外患内疑は一併に消除して、安心して進を圖るべし。
比 舜升大禹,石夷之野。徵詣黃門,拜治水土。(乾之中孚,豫之小畜,兌之萃)
既済の比。虞舜は石夷の原野の上に大禹を提拔して、彼を召して黄門に來らしめ、水土を治理する重任を拜授す。事は《尚書・舜典》に見ゆ。この林は大吉にして賢才が上に知を受けて重任を委ねらるるを主とする。占う者が若し真才実学有らば、上位者に破格擢用せらるるを望み得べし。仕を求め身を進むるの好占なり。
小畜 烏子鵲雛,常與母居。顧類群聚,不離其巢。
既済の小畜。烏鴉の幼鳥と喜鵲の雛児とは、常に母鳥と同住す。同類は相顧みて一處に群聚して、甞て己が巢を離れず。この林は母子相依して族類相聚まるを主とする。占う者は家を守りて動かず親族と相守るに宜しく、凡そ居を合し團聚する事は皆吉なり。遠く離れれば則ち其の庇护を失わん。
履 夷羿所射,發輒有獲。增加倉鷹,雙鳥俱得。
既済の履。東夷の善射の后羿は一箭射去すれば便ち獲る所有り。再び蒼鷹の猟を助くるを加えて、二羽の鳥は一齊に手に到れり。后羿の日を射るの事は《淮南子・本経訓》に見ゆ。この林は大吉にして一挙に双収して技芸人に過ぐるを主とする。占う者の圖る事は非但だ成る能きのみならず、還た兼ねて意外の利を得べし。果斷に手を出だすに宜し。
泰 晨風文翰,火舉就溫。昧過我邑,羿無所得。(小畜之革,大過之豫,大壯之震)
既済の泰。晨風鳥と文彩斑斕の白翰とは翅を振りて高く飛び、温暖の處に向かいて遷る。天色昏昧の時に我が城邑を掠過すれば、善射の后羿を連れても一獲も無し。この林は高く飛び遠く挙げて人力の羈縻し能う所にあらざるを主とする。占う者の欲する挽留或いは捕捉の人事は已に手を脱せり。其自然に順うに宜しく、必ずしも強求するに及ばず。
否 六喜三福,南至歡國。與喜同樂,嘉我潔德。
既済の否。六重の喜慶・三重の福氣にして、南行して歓楽の国に到る。喜慶の事と同じく其の楽を享け、衆人は我が洁白の徳を称美す。この林は大吉にして福喜重叠して徳行賛を受くるを主とする。占う者は南行して喜有りて、且つ品行端正なるに因りて衆人の推重を得、名実兼ねて収めん。
同人 斗龍股折,日就遂明。自外為主,弟伐其兄。
既済の同人。爭闘の龍は大腿を折断せるも、日頭は却って漸々通明に轉ず。外面より來る人は反って客をして主と為し、弟弟は己が兄長を討伐す。この林は強者受挫して外人勢を得て骨肉相攻むるを主とする。占う者は外来者の権を奪うと兄弟の墻に鬩ぐとを防ぐべし。早く嫡庶の名分を定めて以て其の爭を息むるに宜し。
大有 蒙慶受福,有所獲得,不利出域。
既済の大有。慶幸を蒙受して福沢を承接して、収獲有る所なり。只是己が疆域の外に走出すに宜からず。この林は内を守れば則ち吉にして外に出れば則ち否なるを主とする。占う者の得る所の利は本郷本業の中に在り。安守すれば豊盈を保ち得べし。遠行すれば則ち福氣は反って減ず。地に就きて経営するに宜し。
謙 蠻夷戎狄,太陰所積。涸水冱寒,君子不存。
既済の謙。四方の蛮夷戎狄の地は、極陰の氣の聚積する處なり。水は皆乾涸凍結して寒氣凝閉し、君子は其の間に居留せんと肯ぜず。この林は苦寒絶域にして人の堪う所にあらざるを主とする。占う者は荒遠苦寒の處に前往すべからず。勉强して居留すれば則ち身心俱に損せん。温厚の地を択びて身を安んずるに宜し。
豫 畏昏潛處,候時昭明。卒遭白日,為榮祿主。
既済の豫。昏暗を害怕して潛蔵して、静かに天光の明に轉ずる時を候す。終に朗朗たる白日に遇い、榮華禄位を享有する主人と為る。この林は韜晦して時を待ちて後に顕達するを主とする。占う者の眼下は低調に隠忍するに宜しく、光明到来の日に自然と出頭せん。切に黑暗の中に冒進すべからず。
隨 水流趍下,欲至東海。求我所有,買鮪與鯉。(姤之否,損之需,益之無妄)
既済の随。水は低處に往きて流れ、一路東海に奔向す。我の需要する物を尋求して、鮪魚と鯉魚とを買下せり。この林は勢に順じて行い各々其の需を取るを主とする。占う者は形勢に随順して水に逆いて上らざるに宜しく、凡そ交易采買の事は皆心に称わん。流に順いて利を得るの平吉の占なり。
蠱 冠帶南行,與福喜期。徼為嘉國,釋為逢時。
既済の蠱。冠帯を整えて南に出行して、福氣喜事と会を約定す。辺地は美好の邦と成りて、心結は釋然として、正しく好時候に遇上せり。この林は儀容を整肅して南行して福を得るを主とする。占う者は鄭重に其の事を為して門を出でて謀求するに宜しく、旧日の困結は化解を得べし。時機正しく合せり。
臨 莎雞振羽,為季門戶。新沐彈冠,仲父悅喜。
既済の臨。莎鶏は翅膀を振動して声响を發す。《詩経・豳風・七月》に「六月に莎鶏羽を振う」と曰う。正しく小弟の為に門戸を撐起するの時なり。剛に頭を洗えば便ち冠上の灰塵を弾去す。《楚辭・漁父》に「新沐の者は必ず冠を弾く」有り。仲父之が為に歓喜す。この林は自ら整飭して新たとなり家門托有るを主とする。占う者は振作して業を立つるを望み得べく、長輩意に称わん。
觀 結衿流溺,遭讒桎梏。周召述職,身受大福。
既済の観。衣襟を繫緊するも仍ほ水流に淹没せられ、又讒言に遭い構陷せられて刑具を戴上せり。幸いに周公・召公有りて職守を陳述し中より周旋して、終に難を脱して身受大福せり。この林は先ず讒難に陷りて後に貴人の營救を蒙るを主とする。占う者は縦え牢獄の厄有るとも、終に能く昭雪して、并せて禍に因りて福を得べし。
噬嗑 田鼠野雞,意常欲□。拘制籠檻,不得動搖。(夬之謙,需之隨,巽之隨)
既済の噬嗑。田間の老鼠・野地の山鶏は、心里に總て挣脱逃走せんと想う。而るに籠子と柵欄との中に関せられて、挪動一下すら能わず。この林は身が拘限を受け志と勢と違うを主とする。占う者は身を脱せんと欲し遷転せんと欲するも一時に皆得べからず。隠忍して時を守るに宜しく、妄動すればただ束縛を加緊せん。
賁 居華山巔,遊觀浮雲。有雨不濡,心樂無憂。
既済の賁。華山の巓に居住して、悠然として往來の浮雲を觀賞す。縦え雨有るとも湿らし濡らす能わず。心中快楽にして憂愁無し。この林は高に居りて害に遠ざかり超然として自適するを主とする。占う者は清高の位に身を處して、風雨も相侵する能わず。其の境を安享するに宜しく、必ずしも下方の紛擾に卷入るに及ばず。
剝 傾倚將顛,亂不能存。英雄作業,家困無年。
既済の剝。歪斜倚側して、眼を以て見れば将に傾倒せんとす。乱れて維持する能わず。縦え英雄有りて功業を重建せんと欲するも、家中困乏して、一年をも支撑し下がる能わず。この林は大凶にして、根基将に傾かんとして力は挽く能わざるを主とする。占う者は早く損を止めて身を脱すべく、切に必敗の局中に注を孤りて擲つことなかれ。
復 心願所喜,乃今逢時。保我利福,不離兵革。(兌之蹇)
既済の復。心里の盼望喜愛する事は、如今正しく其の時に逢う。我が利益と福氣とを保住せしも、只是始終兵戈戦事を脱離せず。この林は愿望遂を得て険象未だ除かれざるを主とする。占う者の求むるは成ると雖も、却って須らく紛爭の中に成果を守護すべし。安きに居りて危きを思うに宜しく、松懈すべからず。
旡妄 靈龜陸處,盤桓失所。阿衡退耕,夏封於國。
既済の无妄。神靈の龜は陸地上に困して、徘徊して前せず其の居を失せり。阿衡伊尹は退きて田間に歸り耕作して、夏后氏は別に他人を国に封ず。この林は賢者位を失して田園に退隱するを主とする。占う者の眼下は其の所を得ず。暫く退きて自ら守りて、明主の再起を等待するに宜しく、強いて其の位に留まれば反って困を受けん。
大畜 弱水之右,有西王母。生不知老,與天相保。不利行旅。
既済の大畜。弱水の西邊に西王母を住まわしむ。《山海経》は其の不死の薬を掌るを記す。彼の地の人は生きて衰老を知らず、天と寿を同じうす。只是外に出でて行旅するに利あらず。この林は長寿して居を安んじて遠行を忌むを主とする。占う者は靜養して家を守るに宜しく、延年の福を得べし。一旦遠く出づれば反って其の安を失わん。
頤 抱瑰求金,日暮坐吟。終身卒歲,竟無成功。
既済の頤。次等の玉石を抱きて黄金を換えんとするも、日暮に至るまで還た坐して吟嘆す。一生一年を耗尽しても、終究成功無し。この林は劣を以て優を求め痴心に枉費するを主とする。占う者の持する物と求むる價とは並び相當せず。久しく守りて售れざるは只だ虚しく光陰を耗すのみ。早く門路を換うるに宜し。
大過 言笑未畢,憂來暴卒。身加檻纜,囚繫縛束。
既済の大過。談笑は未だ結束せざるに、憂患便ち突然襲來す。身上に枷鎖繩索を加えられて、囚禁捆縛せられたり。この林は大凶にして、楽極まりて悲を生じ禍は頃刻に起るを主とする。占う者は歓会の中に在りて戒心を留くべく、尤も須らく言語に因りて禍を招きて刑獄の厄を致すを防ぐべし。
坎 望幸不至,文章未成。王子逐兔,犬踦不得。(未濟之兌)
既済の坎。君王の臨幸を盼ぐも始終來らず。錦繍の文章も亦た寫成せず。王子は野兎を追赶するも、猟犬はまた脚を瘸めて、終究捕獲無し。この林は期待落空して功業半成るを主とする。占う者の望む人は至らず圖る事は一着を欠く。先ず自身の缺自身の缺處を補足するに宜しく、必ずしも空しく機縁を守るに及ばず。
離 震悚恐懼,多所畏忌。行道留難,不可以步。
既済の離。心驚膽戦して恐懼安ならず、處處に畏忌する所有り。路上は阻難重重として、一步も邁出する能わず。この林は内怯え外阻まれて歩を挙げるに維艱なるを主とする。占う者の眼下は顧慮多すぎて路また通ぜず。先ず心神を安定し障碍を掃清するに宜しく、勉强して路に上がればただ寸步行き難からん。
咸 雄狐綏綏,登山崔嵬。昭告顯功,大福允興。
既済の咸。雄狐は從容として獨行す。《詩経・斉風・南山》に「雄狐綏綏たり」の句有り。巍峨の高山に登上して、顕赫の功業を天に昭告して、大福因りて確実に興起す。この林は大吉にして、功成りて天に告げ福沢大いに興るを主とする。占う者の立つる功は以て衆に公にすべく、声名と福氣と一併に到来せん。
恆 火起吾後,喜炙我廡。倉龍含水,深潠吾柱,雖憂無咎。
既済の恒。火は我が身後より焼き起こりて、眼看に我が廊廡を燎かんとす。幸いに蒼龍は水を含みて、深く我が屋柱の上に噴灑せり。一場の憂驚有ると雖も、終究災禍無し。この林は火厄救を得て驚有りて険無きを主とする。占う者は突發の患に遇うと雖も、自ずから救援化解有らん。鎮靜して應對するに宜しく、過憂するに及ばず。
遯 危坐至暮,請求不得。膏澤不降,政戾民忒。(剝之頤,需之頤,漸之坎)
既済の遯。端坐して守候すること天黑に至るまでなれども、請求する事は仍ほ獲准せず。恩沢は肯んじて降下せず、政令乖戾にして百姓は從う所適なし。この林は告げ求むるに門無く上下阻隔するを主とする。占う者の干謁陳情の事は回音を得難し。暫く退きて求めず、別に通達の径を尋ぬるに宜し。
大壯 孟春和氣,鷹隼搏鷙,眾雀憂潰。
既済の大壯。初春は本より和暖の氣なれども、鷹隼は凶猛に撲撃して、衆多の小雀は因りて憂懼潰散す。この林は強者威を逞しくし弱者驚散するを主とする。占う者が若し強勢に居れば則ち手を出でせば必ず得べし。若し弱小に属すれば則ち須らく早く躲避すべく、切に猛禽空に當るの時に頭を出だすことなかれ。
晉 緩法長奸,不能理冤。沉湎失節,君受其患。
既済の晋。刑法寛弛すれば便ち姦邪を助長して、冤屈は審理を得ず。上位者は酒色に沈湎して節度を失し、君主因りて禍患を蒙受す。この林は法度廢弛して荒淫に禍を致すを主とする。占う者は綱紀を整肅し自ら節度を守るべし。さもなくば姦邪滋生して冤屈平らげ難く、終に必ず其の身を反噬せん。
明夷 魚鱉貪餌,死於網釣。受危因寵,為身殃咎。
既済の明夷。魚と鱉とは釣餌を貪圖して、結果網罟と釣鈎との下に死せり。人も亦た寵を受くるに因りて危険に陷入して、自身に災殃罪咎を招来す。この林は利を貪り寵を受けて反って身を殺すに致るを主とする。占う者の眼前の好處は正しく鈎上の餌なり。其の後患を辨ずるに宜しく、寵盛の時尤も須らく自ら斂すべし。
家人 金精耀怒,帶劍過午。徘徊高原,宿于山谷。兩虎相距,弓矢滿野。(震之豫)
既済の家人。太白金星は光芒熾怒として、劍を佩びる人正午に經過す。高原の上に徘徊して、夜は山谷の中に宿す。两虎は對峙相持して、弓箭原野に布滿す。金星は兵を主る。見《史記・天官書》。この林は兵において大凶にして、強敵相爭い身は其の中に在るを主とする。占う者は爭闘の地を遠く避くべく、两強の間に介入することなかれ。
睽 四目相望,精近同光,並坐鼓簧。
既済の睽。四隻の眼睛は彼此相望して、精神相近くして光華一同なり。肩を並べて坐して、一齊に笙簧を吹奏す。この林は两情相得して同心に共に楽しむを主とする。乖睽の名に居ると雖も実は和合を主とす。占う者は人と分岐有ると雖も、終に能く彼此照応し、凡そ結交・議合の事は融洽を望み得べし。
蹇 茹芝餌黃,飲酒玉漿。與神流通,長無憂凶。
既済の蹇。靈芝を服食して黄精を進用して、飲む所は美酒玉漿なり。因りて神明と氣息相通じて、長久憂愁凶険無し。この林は養生して道を得て身心通泰するを主とする。占う者は蹇難の時に處すと雖も、ただ身心を保养して心を清く欲を寡くすれば、自ずから憂患を遠離すべし。年を延び病を却くの吉なり。
解 求獐嘉鄉,惡蛇不行。豳岐口還,復反其床。
既済の解。美好の郷里に到りて獐鹿を尋求せんとするも、毒蛇を忌憚して敢えて前行せず。豳地・岐山の一帯より折返して、重ねて又己が牀上に歸り至る。この林は難を畏れて中止して去りて復た返るを主とする。占う者の圖る事は険阻に因りて中輟せり。本處に退回するは獲る所無しと雖も、却って凶険を免れたり。
損 天門地戶,幽冥不觀,不知所在。(「觀」又作「睹」)
既済の損。天の門・地の戸は、幽暗深遠にして、何らも看見すること能わず。究竟何の處に在るかを知らず。この林は前途晦暗にして方向辨い難きを主とする。占う者の眼下は去向を判断する由無し。暫く決斷を緩め静かに明朗を待つに宜しく、盲目に摸索すればただ愈々迷失せん。
益 跛足息肩,有所忌難。金城鐵郭,以銅為關。藩屏息衛,安止無患。(遯之旅)
既済の益。跛脚の人は肩上の擔子を卸下して、前に忌憚の険難有るに因る。所幸に金城鐵壁・銅を以て鑄成せる関門有りて、藩籬屏障は層層と護衛して、安然として停駐して禍患無し。この林は自ら不足を知りて険に據りて自ら守るを主とする。占う者は力を量りて歩を止め防務を加固すべし。守れば則ち虞無く、進めば則ち険有り。
夬 三雁俱飛,欲歸稻池。經涉山澤,為矢所射。
既済の夬。三隻の大雁は一同に飛び起きて、稻子の長ずる水池に歸らんと想う。一路山巒沼沢を經過するも、却って飛箭に射中られたり。この林は歸途険に遇い中道に傷を遭うを主とする。占う者は明確の去處有ると雖も、路上に暗に殺機を蔵す。安全の路経を択びて行うに宜しく、空曠にして覬覦せられ易き地を走ることなかれ。
姤 濟深難渡,濡我衣褲。王子善濯,決無他故。
既済の姤。水深くして渡り難く、我が衣袴を打湿せり。幸いに王子は洗滌を善くして、最終に並びて別の變故無し。この林は険に渉りて污に沾りて終に洗清を得るを主とする。占う者は小の損失と污名と有ると雖も、事後に能く澄清して、大患を醸すに至らず。坦然として之に處するに宜し。
萃 飲酒醉飽,跳趨爭鬥。伯傷叔僵,東家治喪。(比之鼎,大畜之晉,益之蒙)
既済の萃。酒を喫き飯を飽きて足れり。跳び起きて相互に爭闘す。伯氏は傷を受け叔氏は倒地して、東邊の人家は因りて丧事を辦起せり。この林は大凶にして、酒後に控を失し飲を聚めて禍を醸すを主とする。占う者は宴飲度無きを切忌すべく、尤も酒後に強を爭い狠を闘うを忌むべし。以て楽極まりて悲を生じ、人命を鬧出するを免れん。
升 跛躓未起,失利後市。蒙被殃咎,不得鹿子。
既済の升。跛脚して跌倒して還た爬起こる能わず。集に趕くも遲れて利益を錯失し、反って災殃罪咎を蒙受して、一頭の小鹿をも捉えず。この林は行動便ならずして處處に落後するを主とする。占う者の圖る事は既に遲く且つ拙なり。先ず自身の短處を修好するに宜しく、さもなくば手を出でせば必ず晚く、気力を白費せん。
困 辰次降婁,建星中堅。子無遠行,外顛霄陷,遂合訖終。
既済の困。日月は降婁の宿に会次して、建星は正しく中天に當りて堅定なり。此の時に汝は遠行することなかれ。外に出づれば便ち顛僕墜陷の危有りて、終了に至るまで勉强して合攏す。降婁は十二次の一にして、《漢書・律暦志》に見ゆ。この林は天時動に利あらざるを主とする。占う者は家中に守るに宜しく、遠行すれば必ず挫折を遭わん。
井 商風召寇,來呼外盜。間諜內應,與我爭鬥。殫己寶藏,主人不勝。
既済の井。秋風は盜寇を招來して、外部の賊人を呼引す。又間諜有りて内に接應して、我と相闘う。自家の宝蔵を耗尽して、主人は終究勝を得能わず。この林は大凶にして、内姦が外賊に勾結して財盡き人敗るを主とする。占う者は内部を厳査して未然に防範すべし。さもなくば家を傾け産を蕩せん。
革 甘露醴泉,太平機關。仁德感應,歲樂民安。
既済の革。甘美の露水・甜美の泉水は、皆天下太平の枢機の兆なり。仁厚の徳は天地と相感応して、因りて年成歓楽し百姓安寧す。この林は大吉にして、祥瑞が徳に應じて時和に歳豊かなるを主とする。占う者の行うは仁義に合乎すれば、自ずから能く善果を感召して、家国俱に安んずべし。
鼎 蔡仲子突,要門逐急。禍起子傷,弟伐其兄,鄭文不昌。
既済の鼎。祭仲は公子突を擁立す。即ち鄭厲公にして、城門要道の上に急急として相逐う。禍端は此に由りて起りて、公子は傷を受け、弟弟は兄長を討伐して、鄭国の文徳は因りて振わず。事は《左傳・桓公十一年》に見ゆ。この林は嗣位相爭いて兄弟墻に鬩ぐを主とする。占う者は早く名分を定めて、同室の禍を生ぜしめざるに宜し。
震 反孽難步,留不及舍。露宿澤陂,亡其襦褲。
既済の震。禍孽反復して、歩を挙げるに維艱なり。止まれば又宿處に趕き着かず。只好く露天に池塘の岸坡の上に睡りて、還た己が短衣長袴を丟失せり。この林は行程狼狽して所を失し物を失うを主とする。占う者は門を出でて外に在りて多く躭擱と損失と有らん。提前に食宿を安排するに宜しく、切に夜行して野宿することなかれ。
艮 狼虎結謀,相聚為保。伺候牛羊,病我商人。
既済の艮。豺狼と虎とは同謀を結成して、聚まりて互いに屏障を為す。窺伺する所は牛羊にして、亦た我が商旅を危害す。この林は悪人党を成して共に侵害を謀るを主とする。占う者の處する境に团伙の悪を為す有り。凡そ販運往來は須らく隊を結びて行き多く防護を加うべし。獨行すれば必ず其の害に遭わん。
漸 明德克敏,乘興貢舉。故(一作放)勳御用,人(一作乂)哲蒙佑。
既済の漸。徳行光明にして又勤勉敏捷なれば、因りて時に乘じて薦挙任用せられん。帝堯の名は放勲にして、其の人は重用を得、明智の士も亦た庇佑を蒙受す。「放勲」は堯の名にして、《尚書・堯典》に見ゆ。この林は大吉にして賢能が挙を受け明主が賢を任ずるを主とする。占う者は徳業を勤修するに宜しく、身を進むるの路正しく開けり。
歸妹 貧鬼守門,日破我盆。□罌破甕,空虛無子。(損之剝)
既済の帰妹。窮鬼は門口に守りて、天天我が盆子を打破す。瓶罌壇瓮は尽く破損して、家中空空蕩蕩として、孩子一個を連れても無し。この林は家計において大凶にして、貧困身に纏わり器毀れ人稀なるを主とする。占う者の眼下は入るは出に敷かず損耗止まず。節儉して日を度り且つ外助を求むるに宜しく、更に大の開銷有るに宜からず。
豐 天命赤烏,與兵徼期。征伐無道,箕子遨遊。
既済の豐。上天は赤烏の瑞を降下せり。《史記・周本紀》は武王の紂を伐つ時に火流して烏と為るの兆有りを載す。兵事と時期を約定して、無道の君を討伐して、箕子因りて從容として遠游するを得べし。この林は天を奉じて罪を討ち賢者難を脱するを主とする。占う者の行う事は天時の助有りて、悪を除きて成る可く、賢良も亦た自由を得べし。
旅 威約拘囚,為人所誣。皋陶平理,剖械出牢,脫歸家閭。
既済の旅。威勢に逼迫せられて拘禁囚繫せらるるは、実は人の誣陷に遭えり。幸いに皋陶の如き公正の法官の持平審理を得て、刑具を剖き開き牢門を走出して、身を脱して己が家郷に歸れり。この林は冤を蒙りて終に昭雪を得るを主とする。占う者は縦え牢獄の厄有るとも、ただ實に據りて申辯せば、自ずから能く平反して家に歸るべし。
巽 羊驚虎狼,聳耳群聚。無益威僵,為齒所傷。
既済の巽。羊群は虎狼に驚動せられて、耳を竪てて一団に擠れり。此の如く聚まりて既に威勢を挡ぐ能わず又僵立して策無く、終に利齒に咬傷せられたり。この林は弱者聚まりて策無く終に吞噬を遭うを主とする。占う者が若し実力無ければ、僅かに人多しを以て自ら保つ能わず。別に強援を求め或いは早く遠く避くるに宜し。
兌 初雖啼號,後必慶笑。光明照耀,百嘉如意。
既済の兌。起初は雖も哭泣號叫すれども、後來は必ず慶賀歓笑に轉ずるべし。光明は四方を照耀して、百樣の美好の事は皆意に称う。この林は先ず苦して後に甜く否極まりて泰來るを主とする。占う者の眼下の哭泣は正しく喜事の前奏なり。ただ須らく此の時を忍過せば、随後に諸事順遂せん。
渙 馬服長股,宜行善市。蒙佑諧耦,獲金五倍。
既済の渙。駿馬は腿長くして善く走り、門を出でて買賣を做すに適宜なり。庇佑を蒙りて配合當を得て、利を獲ること五倍に達すべし。この林は商において大吉にして、脚力便捷にして遇合人を得るを主とする。占う者は主動して外に出でて経営するに宜しく、且つ対の搭档を找るべし。得る所は本銭を遥かに超えん。
節 應門內崩,誅賢殺暴。上下咸愜,景公失位。長歸元恆(一作「洹」),望妻不來。
既済の節。應門の内は崩塌して、賢良を誅戮して又凶暴の徒を殺掉す。上下一時に皆称快を覺ゆるも、斉景公は却って因りて君位を失掉せり。遠く元恒の地に歸りて、妻子を盼望するも始終來らず。この林は内變して禍を致し位を去り家を離るるを主とする。占う者は門内の乱を防ぐべく、一時の快意を以て根本を傷ることなかれ。
中孚 執斧破薪,使媒求婦。好合二姓,親御斯酒。色比毛嬙,姑悅公喜。(小過之益)
既済の中孚。手に斧頭を執りて柴薪を劈き開き、媒人を遣わして妻室を求娶せしむ。《詩経・斉風・南山》は正しく薪を析ることと妻を求むるとを並挙す。两姓は和好結合して、自ら車を駕して此の酒を共飲す。新婦の容貌は古の美人毛嬙に比すべく、婆婆と公公と皆歓喜す。この林は婚において大吉にして、佳偶成るを得て翁姑心に称うを主とする。
小過 兩輪日轉,南上大阪。四馬共轅,無有險難,與禹笑言。(賁之需)
既済の小過。二隻の車輪は整日轉動して、南に向かいて高大の坡坂に攀上す。四匹の馬は一轅を共駕して、一路険阻艱難無く、大禹と談笑して行けり。この林は大吉にして、行程順利にして力を同じくして共に済るを主とする。占う者は出行して南方順遂碍無く、凡そ力を合せ事を共にするの挙は皆軽く難関を渡り得べし。
未濟 千柱百梁,終不傾僵,周家寧康。
既済の未済。千根の立柱・百道の横樑は屋宇を支撑して、終究傾倒垮塌せず。周王室因りて安寧康泰す。この林は大吉にして、根基牢固にして支撑衆多なるを主とする。占う者の立つる業は結構穏當にして、縦え風雨有るとも動揺せず。広く支柱を置くに宜しく、長久保つべし。
未済之林(未済卦六十四林)
未濟 志慢未習,單酒糗脯。數至神前,欲求所願,反得大患。
未済の未済。心志怠慢にして又礼數に熟悉せず。只だ薄酒と干粮肉脯とを備うるのみ。屢次神前に跑りて、所願を求め得んと想うも、反って大禍を招来す。この林は礼薄く心慢くして祈求が咎を招くを主とする。占う者が若し心誠ならず備周ならざれば、神を求め事を問うは非但だ益無きのみならず、還た禍を惹かん。先ず自身を端正するに宜し。
乾 且生夕死,名曰嬰鬼,不可得祀。(渙之大過,震之坤,小過之升)
未済の乾。早上に剛に出生して傍晚に便ち死去せば、只好く嬰鬼と称するに、祭祀を連れても擧行する無し。この林は大凶にして、生機短促にして成りて復た毀るを主とする。凡そ新立の人事は皆存續し難し。占う者の謀る業は根基太も薄し。切に倉促に發動することなかれ。家中の幼小の者は尤も須らく照護に留意すべし。
坤 大步上車,南至喜家。送我狐裘,與福喜來。(節之觀,大過之困,中孚之泰)
未済の坤。大步を邁開して車子に登上して、南に往きて喜事を辦ずる人家に到る。主人は我に狐皮の裘衣を贈りて、福氣と喜慶と一同に到来す。この林は喜に赴き贈を受け南に往きて福を得るを主とする。占う者は主動して走動して交際するに宜しく、凡そ宴に赴き友を訪い南行する事は皆収獲有らん。
屯 西多小星,三五在東。早夜晨行,勞苦無功。(大過之夬)
未済の屯。西邊に小星は密布して、三三五五として還た東方に挂る。《詩経・召南・小星》に「嘒かなる彼の小星、三五東に在り」と曰う。正しく小吏の星を披き月を戴くの労を寫す。早起して夜行して天の亮まらざるに路を趕きて、到頭に辛苦して功無し。この林は奔波して徒労するを主とする。占う者は勤なりと雖も其の報を得ず。法を改むるに宜しく力を加うるに非ず。
蒙 北陸藏冰,君子心悲。困於粒食,鬼驚我門。
未済の蒙。日は北陸を行くの時に始めて氷を蔵る。《左傳・昭公四年》は「古者日は北陸に在りて氷を蔵る」を記す。君子は却って心中悲涼なり。一粒の米を連れても求め難く、鬼魅は還た來りて我が門戸を驚擾す。この林は厳冬に食を乏しく内外寧ならざるを主とする。占う者は冬を過ぐるの資を預儲して、并せて家宅を安定すべく、人心を浮動せしむることなかれ。
需 山泉暴怒,壞梁折柱。稽難行旅,留連愁苦。
未済の需。山中の泉水は暴漲怒發して、屋樑を衝壊し廊柱を折断す。行旅の人は因りて阻を受けて、外に滞留して、愁苦堪え難し。この林は水患が屋を壊り行程困を受くるを主とする。占う者は遠行に宜からず。居處も亦た須らく漏を防ぎ塌を防ぐべし。静かに水の退くを候するに宜しく、勉强して路に上がれば徒らに愁苦を増せん。
訟 比目四翼,來安吾國。福喜上堂,與我同床。(損之隨,同人之兌,比之離)
未済の訟。比目魚は双を成し比翼鳥は四翅相並びて、前來して我が邦国を安定す。福氣と喜慶とは堂に登りて入りて、我と榻を同じくして共處す。この林は大吉にして、佳偶相得して福喜門に臨むを主とする。爭訟の名に居ると雖も実は和合を主とす。占う者の爭う事は以て化解して、轉じて好合と成るべし。
師 狡兔趯趯,良犬逐咋。雄雌爰爰,為鷹所獲。
未済の師。狡兎は跳躍奔逃して、良犬は追い上げて撕咬す。雌雄双兎は本より悠然自得なりしも、《詩経・王風・兎爰》に「兎爰爰たり有り」と曰う。終究鷹隼に捕獲せられたり。この林は逃るるも亦た免れ難く終に擒獲を遭うを主とする。占う者が若し追わるるの列に在れば速かに庇护を求むるに宜しく、若し追捕の人と為れば則ち成功を期すべし。
比 增祿益福,喜來入室,解除憂惑。
未済の比。俸禄増加して福氣加厚して、喜事は家門に進入して、憂愁と疑惑とは一併に解除せらる。この林は大吉にして、禄を進め福を添えて心結頓に開くを主とする。占う者の憂う事は自然消散して、且つ実恵手に到る有らん。安然として承受するに宜しく、凡そ財を求め安を求むる事は皆遂げん。
小畜 騎龍乘鳳,上見神公。彭祖受制,王喬贊通。巫咸就位,拜福無窮。(家人之剝)
未済の小畜。龍に騎し鳳に乗りて、天に上りて神明を拜見す。彭祖は敕命を承受して、王子喬は之が為に引薦通達して、巫咸は位に就きて主持す。拜求して得來の福氣は無窮無尽なり。三人は皆古の長生の神仙にして、《列仙傳》に見ゆ。この林は大吉にして、天聴に上達して福を得て長寿するを主とする。占う者の求むる所は神の佑を邀ぐるを望み得べし。
履 天火卒起,燒我旁裡。延及吾家,空盡己財。
未済の履。天火は突然焼き起こりて、先ず我が隣近の里巷を焚き、接いで蔓延して我が家に到りて、己が財産を焼きて精光とせり。この林は火において大凶にして、隣火延焼して家財尽く毀るるを主とする。占う者は務めて須らく火燭を厳防すべく、且つ左隣右舎の隠患に留意すべし。早く退路と救急の資とを備うるに宜し。
泰 金帛黃寶,宜與我市。嫁娶有息,利得萬倍。
未済の泰。黄金・繒帛と各色の珍宝とは、正しく我と交易するに宜し。嫁娶の事は又子息を添えて、利を獲ること万倍に達すべし。この林は大吉にして、財貨流通して婚嗣両旺するを主とする。占う者は大胆に商を経じ貨を置くに宜しく、兼ねて家を成し丁を添うの喜有り。財丁両全の上上の占なり。
否 鬼魅之居,凶不可舍。
未済の否。此は鬼怪魍魎の盤踞する地にして、凶険にして此に居留する能わず。この林は居處祥ならずして必ず速かに離るべきを主とする。占う者の在る所或いは往かんと欲する處は暗に凶患を蔵す。當機立斷して遷走するに宜しく、一刻も亦た停留するに宜からず。棧に恋れば必ず其の害を受けん。
同人 飛鳥逐兔,各有畏惡。鵰鷹為賊,亂我室舍。
未済の同人。飛鳥は野兎を追赶して、彼此各々畏懼厭悪する處有り。雕と鷹とは害物と成りて、我が屋舎を攪乱す。この林は異類相擾して強禽患を為すを主とする。占う者の身辺に凶悍の者の局を攪す有りて、家宅寧ならず。先ず害源を駆除せば、方に能く居を安んずべし。
大有 初雖驚惶,後乃無傷,受其福慶。
未済の大有。起初は雖も驚慌失措すれども、後來は却って毫髮無傷にして、反って福沢と慶賞とを承受せり。この林は虚驚轉じて喜となり驚有りて険無きを主とする。占う者の眼前の憂懼は並びて実禍にあらず。鎮靜して應對すれば便ち能く関を過ぐべく、随後に還た意外の福有らん。
謙 兩金相擊,勇氣均敵。日月鬥戰,不破不缺。
未済の謙。两塊の金属は互相撞撃して、勇氣と力量と勢均力敵す。日と月との相爭うに同じくして、誰も甞て破損缺失せず。この林は两強對峙して勢均して勝負無きを主とする。占う者の爭う事は一時に高下を分かち出だす能わず。暫く相持し或いは退譲して和を求むるに宜しく、硬く拼するは益無し。
豫 曳綸河海,掛釣魴鯉。王孫利德,以享仲發。(一作「友」)
未済の豫。江河大海の中に釣絲を拖きて、魴魚と鯉魚とを釣上せり。王孫は此を以て徳恵の利と為して、以て仲發に供奉す。この林は垂釣して獲有りて以て得る所を親に奉ずるを主とする。占う者の営む事は収成有るを望み得べく、且つ得る所を家人尊長と共享するに宜しく、福氣因りて更に厚からん。
隨 犬畏虎狼,依人作輔。三夫執戟,伏不敢起,身安無咎。
未済の随。狗は虎狼を害怕して、便ち主人に依附して倚靠と為す。三名の武士は手に長戟を執りて護衛すれば、虎狼は只好く地に伏して敢えて起身せず。因りて自身平安にして、災禍無し。この林は強者に依附して以て自ら保つを主とする。占う者が若し勢単にして力薄ければ、可靠の靠山を找るに宜しく、人に随いて行けば則ち安然として恙無し。
蠱 蜘蛛作網,以伺行旅。青蠅嚵聚,觸我羅域。為網所得,死於網羅。
未済の蠱。蜘蛛は羅網を結起して、往來過去の行人を等候す。青蠅は食を貪りて聚まり來りて、我が網域に撞入して、終に網に住められて、羅網の中に死せり。この林は食を貪りて陷に入り自ら羅網に投ずるを主とする。占う者の眼前の便宜は正しく圈套なり。切に小の利を貪るに因りて他人の預設する局に落入ることなかれ。
臨 所望在外,鼎命方來。拭爵滌罍,炊食待之,不為季憂。
未済の臨。盼望する所は外面に在りて、鼎重の任命は正しく到来せんとす。酒爵を擦淨し酒罍を洗好して、飯食を做好して彼を等候す。小弟の為に担憂するに及ばず。この林は大吉にして、喜訊将に至らんとして貴命門に臨むを主とする。占う者の待つ事は落着有りて、整備して迎候するに宜しく、家人も亦た挂慮するに及ばず。
觀 日月並居,常暗匪明。高山崩顛,丘陵為溪。(蹇之咸)
未済の観。日と月とは一處に同處して、反って常常昏暗にして明亮ならず。高山は崩塌墜落して、丘陵は溪谷に陷成せり。《詩経・小雅・十月之交》は「高き岸は谷と為り、深き谷は陵と為る」を以て世世變を寫す。この林は明が反って晦と成り地覆して天翻るを主とする。占う者の處する局は将に劇變有らん。早く之が備を為すに宜しく、旧勢に恃ることなかれ。
噬嗑 春服既成,載華復生。莖葉茂盛,實穗泥泥。
未済の噬嗑。春の衣服は已に做成せり。《論語・先進》に「春服既に成れり」有り。草木は又花を開きて再生す。莖葉は繁茂して、果実と穀穂とは潤沢豊美なり。この林は大吉にして、時序順暢にして生機重ねて發すを主とする。占う者の営む事は其の復蘇の期に逢う。春氣に趁いて作すに宜しく、収成期すべし。
賁 華首山頭,仙道所遊。利以居止,長無咎憂。
未済の賁。華首山の峰頂は、仙を修め道を得る人の游息する地方なり。此に居住停留するに宜しく、長久に過失と憂愁と無し。この林は勝を択びて居り清靜にして安を得るを主とする。占う者は一處の清幽の地を尋ねて身を安んじ命を立つるに宜しく、其の中に久しく居れば自ずから災咎無からん。
剝 三狐嗥哭,自悲孤獨。野無所由,死於丘室。
未済の剝。三隻の狐狸は嗥叫悲鳴して、自ら形単影只なるを傷る。曠野の中に走るべき路無く、終に土丘の洞穴の裏に死せり。この林は大凶にして、孤立援無く投ずるに路無きを主とする。占う者は早く援手を結交し退路を留好すべし。荒僻の境に獨行すれば必ず絶境に致らん。
復 火中暑退,求藿其食。商人不至,市空無有。
未済の復。大火星は昏に中天に見えて、暑氣退去す。只好く豆葉を些か采りて饑を充つ。行商の人は來らず、市面は空空蕩蕩として何も無し。《詩経・豳風・七月》に「七月に火流る」有り。この林は時令寒に轉じて物資匱乏するを主とする。占う者の待つ人は至らず需む物は求め難し。自ら儲備を謀るに宜し。
旡妄 獨立山巔,求麋耕田。草木不闢,秋飢無年。
未済の无妄。獨り山頂の上に立ちて、彼の地に在りて麋鹿を捕え田地を種えんと想う。草木は未だ開闢せず、秋に到るも仍ほ饑荒にして、収成無し。この林は地を択ぶに當らずして勞して獲無きを主とする。占う者の選ぶ路経と處する位置とは根本に生を謀るに適合せず。山を下りて別に沃土を択ぶに宜し。
大畜 火雖熾,在吾後。寇雖近,在吾右。身安吉,不危殆。(歸妹之震)
未済の大畜。火勢は雖も熾烈なれども、却って我が身後に在り。盜寇は雖も逼近するも、却って我が右邊に在り。因りて自身平安吉利にして、危殆に陷入するに至らず。この林は険は身外に在りて避くるに宜を得るを主とする。占う者は凶険に環繞せらるると雖も、ただ迎えて上に走らざれば、便ち保全すべし。鎮定して位を守るに宜し。
頤 □□,貧鬼相賁。無有歡怡,一日九結。(豐之晉)
未済の頤。愁苦の状は言い尽くし難く、窮鬼は彼此裝點作勢して門に找來す。毫も歓欣愉悅と言う可き無く、一天の内心中に九個の結を打てり。この林は貧困相逼りて憂結解き難きを主とする。占う者の眼下は愁緒身に纏わり進項斷絶す。基本の用度を穏住し、慢慢として心中の結を解くに宜し。
大過 追亡逐北,呼還幼叔。至山而得,反歸其室。(渙之臨,需之渙)
未済の大過。逃亡を追赶し敗兵を追撃して、一路呼唤して年幼の叔弟を叫び歸らせんと欲す。山中に追い到りて終に彼を尋着して、一同に家中に返回せり。この林は失いて復た得、離れて復た合するを主とする。占う者の走失する人或いは物は尋回の望有り。凡そ追索・招還の事は成るべし。
坎 銜命辱使,不堪厥事。遂墮落去,更為欺吏。
未済の坎。命を奉じて使を出だすも使命を辱めて、受けたる差事を擔當し起れず。于是一路堕落下去して、反って欺上瞞下の小吏を做せり。この林は才職に稱わず正より邪に轉ずるを主とする。占う者は力を量りて任を受くべし。勉强して承當すれば既に事を辦成せず、又其の中に悪習に沾染し易し。
離 被珠銜玉,沐浴仁德。應聘唐國,四門穆穆。蟊賊不作,凶惡伏匿。
未済の離。身に珠飾を披き口に美玉を銜みて、仁厚の徳沢の中に沐浴す。聘に應じて唐堯の国に到れば、四門の賓客は肅穆有序なり。《尚書・舜典》に「四門に賓すれば、四門穆穆たり」有り。苗を害する蟊賊は起らず、凶悪の徒は潛蔵して出でず。この林は大吉にして、聘を受けて位を得て徳威并せて著るを主とする。
咸 機關不便,不能出言。精誠適通,為人所冤。
未済の咸。喉舌機関は便ならずして、話を説き出だす能わず。縦え一片の精誠恰好通達すべき有るも、還た是れ人に冤枉せらる。この林は口有りて辯い難く誠にして誣を見るを主とする。占う者の眼下は辯解門無し。実拠を留存して時日を静待するに宜しく、急切に自ら明らめれば反って疑を招かん。
恆 甕破缶缺,南行凶失。
未済の恒。瓮は已に破裂し缶は已に残缺して、南に出行すれば則ち凶険損失有り。この林は器物残損して行止宜からざるを主とする。占う者の家中の用う物は多く破敗して、及時に更換を需す。凡そ南行の議有れば、一概に擱置すべし。動けば則ち失有り。
遯 唇亡齒寒,積日凌根。朽不可用,為身災患。
未済の遯。嘴唇は歯を没せば便ち寒を發す。《左傳・僖公五年》は宮之奇が「唇亡びて歯寒し」を以て虞公に諫めるを記す。日子一久しくなれば、寒氣は根部に侵到して、朽壊して再び用う能わず、自身の災患と為る。この林は唇歯相依する者は一失せば則ち己危しを主とする。占う者は己と相依する一方を護住すべく、其の亡ぶを坐視することなかれ。
大壯 蒙惑憧憧,不知西東。魁罡指南,告我失中。利以宜止,去國憂患。
未済の大壯。心神昏惑して往來定まらず、東西南北を分清し得ざらん。北斗の魁罡は南方を指向して、我に已に中道を偏離せりを告ぐ。此の時は停下して動かざるに利あり。若し本国を離れれば便ち憂患有らん。この林は方向迷失して静守に宜しきを主とする。占う者は遠行して国を去るを切忌すべく、本地に安處すれば方に憂を免るべし。
晉 烏鴟搏翼,以避陰賊。盜伺二女,賴厥生福。旱災為疾,君無黍稷。
未済の晋。烏鴉と鴟鳥とは翅膀を拍打して、以て陰毒の害物を躲避す。盜賊は二名の女子を窺伺するも、幸いに賴みて躲过して反って福氣を生ぜり。只是旱災患を成して、君家は黍稷を収む可き無し。この林は害を避けて福を得て年成歡薄なるを主とする。占う者は防ぐ能くば則ち身安し。惟だ田産収成の上に須らく早く打算を作すべし。
明夷 名成德就,項領不試。景公耄□,尼父避去。
未済の明夷。名声は已に成り徳業は已に就くも、肥頸の駿馬の如く起用せられず。《詩経・小雅・節南山》は「四牡項領」を譏る。斉景公は年老昏聵して、孔子は只好く斉国を離去す。事は《史記・孔子世家》に見ゆ。この林は賢にして用いられず明主已に衰うるを主とする。占う者は早く引退して別に謀るに宜し。
家人 言與心詭,西行東望。鯀湮洪水,佞賊為禍。
未済の家人。嘴上の説くと心里の想うとは相違背して、人は西に往きて眼睛は却って東辺を望む。正しく鯀が堵塞の法を用いて洪水を治むるに如く、《尚書・洪範》に「鯀洪水を堙む」と曰う。終に失敗を致して、姦佞の徒因りて禍を成せり。この林は言行一ならず方法反に用るを主とする。占う者は表裏如一にして勢に因りて導くべし。堵塞すれば必ず潰せん。
睽 獫狁匪度,治兵焦穫。伐鎬及方,與周爭疆。元戎其駕,衰及夷王。(一作「以安我王」)
未済の睽。獫狁は法度を守らず、焦獲の一帯に兵馬を整治して、鎬地と方地とを進犯して、周室と疆土を爭奪す。大型の兵車は駕起して敵に迎えたり。《詩経・小雅・六月》は正しく此の事を詠ず。周室の衰微は一直に夷王の世に延續す。この林は外寇境に壓りて王室漸々衰うるを主とする。占う者は辺防に意を加うべく、強鄰をして坐りて大なるを致さしむることなかれ。
蹇 三火起明,雨滅其光。高位疾顛,驕恣誅傷。
未済の蹇。三處の火光は剛に燃起するに、一場の雨便ち其の光亮を澆滅せり。身は高位に居りて急速に傾覆して、驕横放縦終に誅戮傷害を遭う。この林は盛りて驟に衰え驕は必ず禍を致すを主とする。占う者は縦え高位を得るとも須らく謙抑して自ら守るべし。一旦恣意妄為せば、傾覆は只だ旦夕に在らん。
解 陰涿川決,水為吾祟。使我潰心,毋樹枲麻,居止凶殆。
未済の解。陰雨連綿して、河川決口して、大水は我が禍祟と成れり。我をして心神潰乱せしめて、田里は枲麻を種成せず、居住の地は凶険危殆なり。この林は水において大凶にして、水患が田を毀り居を傷るを主とする。占う者は洪涝を防ぐべく、早く高高處に遷往するに宜しく、田事も亦た須らく別に打算を作すべし。
損 厭浥晨夜,道多湛露。沾我襦褲,重難以步。
未済の損。清晨と夜間と地上潮濕す。《詩経・召南・行露》に「厭浥たる行露」と曰う。路上は濃重の露水に満ちて、我が短衣長袴を打湿して、衣服重く變じて、歩を挙げるに艱難なり。この林は行途沾濡して重負して行き難きを主とする。占う者は門を出でて多く阻滯を受けん。軽裝して緩行するに宜しく、或いは索性天晴を待ちて再び身を動かさん。
益 宜行賈市,所求必倍。載喜抱子,與利為友。(大過之恆,巽之損)
未済の益。外に出でて商を経じ買賣を做すに適宜なり。求むる所の利潤は必ず倍成すべし。喜慶を満載して歸りて、懐裏に孩子を抱きて、財利は己と長く相伴を為す。この林は財において大吉にして、商を経じて大に獲、兼ねて丁を添うの喜有るを主とする。占う者は主動して外に出でて営謀するに宜しく、静守すれば反って其の利を失わん。
夬 陰變為陽,女化為男。治道得通,君臣相承。(煥之旅,豐之節,屯之離)
未済の夬。陰氣は陽氣に轉成して、女子は男身に化作せり。治国の道は此に由りて通達して、君臣上下相承相續す。この林は局面翻轉して柔より剛に轉ずるを主とする。占う者の眼下の弱勢は将に根本の改観有らん。其の時には上下相得して、凡そ決斷して弊を除くの挙は皆推行すべし。
姤 淵蔽杜荊,生蘙山旁。仇敵皆憎,孰肯相迎。
未済の姤。深淵は杜梨と荊棘とに遮蔽せられて、草木は蔭翳叢生して山旁に在り。仇敵は人人憎惡して、誰か還た肯んじて出来て迎接せんや。この林は蔽塞孤立して四面に敵を樹るを主とする。占う者の眼下は人縁佳からず去路遮られり。先ず旧怨を清理して関係を修好するに宜しく、さもなくば處處に壁に碰壁せん。
萃 坐茵乘軒,握德宰臣。虞叔受命,六合和親。
未済の萃。錦墊に坐し高車に乗ずるは、徳望を掌握する宰輔の臣なり。虞叔は任命を承受して、天地四方因りて和睦親善す。この林は大吉にして、命を受けて顕位に居り四方心を歸すを主とする。占う者は要職に膺任するを望み得べく、且つ能く各方面を協調せん。衆を聚めて事を成すの上吉の占なり。
升 雲興蔽日,雨集草木,年茂歲熟。
未済の升。雲氣升騰して日頭を遮住して、雨水汇聚して草木を滋潤して、因りて年成茂盛にして穀物成熟す。この林は農において大吉にして、雲行き雨施して万物養を得るを主とする。占う者の営む事は正しく滋潤生長の時に逢う。時に順じて培育するに宜しく、収成自ずから豊厚ならん。
困 播枝折岐,與母別離。絕不相知。(旅之大過)
未済の困。播散の枝條は分岔を折断せられて、此より母株と分離して、往來を斷絶して彼此再び音信無し。この林は骨肉離析して音問斷絶するを主とする。占う者は至親の人と分別の象有りて、且つ消息を通じ難し。早く聯絡の途を留下するに宜しく、永訣に致るを免れんが為なり。
井 天旱水涸,枯槁無澤。困於沙石,未有所獲。
未済の井。天は久しく雨せず、水源乾涸して、草木枯槁して一点の潤沢も無し。沙礫石堆の中に困して、一獲も無し。この林は源枯れ地瘠しくして勞して功無きを主とする。占う者の求むる處は本より資源の取る可き無し。別に活水の地を尋ぬるに宜しく、此に死守すればただ気力を白費せん。
革 圭璧琮璜,執贄見王。百里甯戚,應聘齊秦。
未済の革。手に圭・璧・琮・璜等の玉器を捧げて見面礼と為して君王を謁見す。百里奚と寧戚の如き賢士は、分かれて秦国と斉国とに聘に應じたり。二人の事は《史記・秦本紀》《管晏列傳》に見ゆ。この林は大吉にして、礼を執りて身を進め賢者聘を受くるを主とする。占う者の干謁して仕を求むるは正しく其の時に當りて、用いらるるを獲るを望み得べし。
鼎 龍渴求飲,雲黑景從。河伯捧醴,跪進酒漿,流潦滂滂。
未済の鼎。龍は口渴して水を找みて飲まんとすれば、烏雲は影に随いて至る。河伯は甜酒を捧げて、跪きて酒漿を進献して、是に流水滂沱として奔涌す。この林は大吉にして、需む所は求に應じて至り上下奉承するを主とする。占う者は但だ求むる所有れば便ち人の送來する有りて、且つ來ること極めて充沛なり。水到して渠成るの好占なり。
震 雹梅零蔕,心思積憤,亂我雲氣。
未済の震。氷雹は梅子を打落として、果蒂零落して地に満つ。心中の思緒は鬱積して憤と成りて、我が原本平和の氣象を攪乱せり。この林は外來の打撃が内心の鬱結を引發するを主とする。占う者の近日情緒寧ならざるは自ずから其の因有り。積憤を疏導するに宜しく、心氣を紊乱せしめて正事を誤らしむることなかれ。
艮 鹿求其子,虎廬之西。唐伯李耳,貪不我許。(煥之既濟,隨之否)
未済の艮。母鹿は其の幼崽を尋找して、老虎巢穴の西邊に尋到れり。唐伯・李耳は原は虎の別名にして、《方言》に見ゆ。それは食を貪ること性と成りて、怎んぞ肯んじて小鹿を我に還さんや。この林は尋むる所は強横の手に落入して索還望無きを主とする。占う者は早く歩を止めて身を保すべく、追討の為に険地に深入することなかれ。
漸 穿匏挹水,構鐵燃火。勞瘦力竭,飢渴為禍。
未済の漸。葫蘆を凿穿して以て水を舀い、鉄器を架起して以て火を生ず。人を忙しめて又纍れて又痩せて気力用尽して、饑渇反って禍患と成れり。この林は器用を称えずして徒労自苦するを主とする。占う者の用う方法と工具とは皆路に対せず。個の法子を換うるに宜しく、さもなくば愈々忙しくして愈々窘ならん。
歸妹 龍生馬淵,壽考且神。舍宿軒轅,居樂常安。
未済の帰妹。龍は深淵の中より駿馬を化生して、既に長寿にして又神に通ず。軒轅星宿の下に歇宿して、居處歓楽にして常年安穩なり。この林は大吉にして、貴物世に出でて居所安寧なるを主とする。占う者の家中に出衆の才の誕生或いは杰出の事の發生を望み得べく、且つ長く安楽を享けん。
豐 崔嵬北嶽,天神貴客。溫仁正直,主布恩德。衣冠不已,蒙受大福。
未済の豐。巍峨の北嶽恒山は、天神と貴客との臨する地なり。彼の地の主人は温厚仁愛にして公正耿直なり。恩徳を廣布して、衣冠往來絡繹絶たず。衆人皆大福を蒙受す。この林は大吉にして、徳高く望重くして賓客門に盈つるを主とする。占う者は人に恵を施せば則ち衆望の帰する所となりて、福沢深厚ならん。
旅 鬼夜哭泣,齊失其國,為下所賊。
未済の旅。鬼は夜裏に哭泣して、斉国は因りて社稷を失掉して、国君は臣下に弑害せられたり。田氏の斉に代わり・陳恒の簡公を弑すは、《史記・田敬仲完世家》に見ゆ。この林は大凶にして、異兆先ず現れ下が上を犯して国亡ぶを主とする。占う者は属下の變を生ずるを防ぐべく、切に人に柄を授けることなかれ。
巽 二政多門,君失其權。三家專制,禍起季孫。
未済の巽。政令は两處より出でて門戸衆多なり。君主因りて権柄を失し、魯国の三桓は国政を專擅して、禍端は季孫氏より起れり。事は《論語・季氏》《左傳》に見ゆ。この林は権柄旁に落ちて大臣命を擅にするを主とする。占う者は政令を収束して号令を統一すべし。さもなくば家国の禍は内より自ずから起らん。
兌 望幸不到,文章未就。三子逐兔,犬踦不得。
未済の兌。君王の臨幸を盼ぐも始終來らず。錦繍の文章も亦た寫成せず。三人は一同に野兎を追赶するも、猟犬はまた脚を瘸めて、終に捕獲能わず。この林は期望落空して功垂に成るに敗るるを主とする。占う者の待つ機は至らず圖る事は一着を欠く。先ず自身の缺處を補足するに宜しく、必ずしも空しく自ら守候するに及ばず。
渙 伯虎仲熊,德義淵弘。使布五教,陰陽順序。
未済の渙。伯虎と仲熊とは皆高辛氏「八元」の中の賢人にして、徳行道義は深厚宏大なり。舜は彼らを派して四方に向かいて父義・母慈・兄友・弟恭・子孝の五種の教化を宣布せしめり。《左傳・文公十八年》は其の事を記す。是に陰陽順應して綱紀有序なり。この林は大吉にして、賢人教を施して風俗大いに化するを主とする。
節 兩足四翼,飛入家國。寧我伯姊,與母相得。
未済の節。两足四翅を生ずる祥禽は、我が家国の中に飛入せり。我が大姐を安定して、彼女は母親と相處融洽せり。この林は大吉にして、祥瑞門に入りて家人和睦するを主とする。占う者の家中に喜慶の兆将に有らんとして、骨肉の間は尤も相安んず。多く聚合して共に天倫を叙するに宜し。
中孚 春秋禱祝,解禍除憂,君無災咎。
未済の中孚。春秋两季は時を按じて祭祀祈祷して、因りて禍端を化解して憂愁を消除して、君主に災禍過失無し。この林は誠敬に神を祀りて禍消ゆるを主とする。占う者は時に遵い礼に循いて心に敬慎を存するに宜しく、凡そ憂う所有れば皆禳解すべし。平安事無きの吉占なり。
小過 牧羊稻園,聞虎喧讙。畏懼悚息,終無禍患。(剝之損,井之否,隨之漸)
未済の小過。稲田園圃の辺に羊を放して、老虎の喧叫の声を聞く。雖も嚇えて息を屏し心驚膽戦するも、最終に並びて禍患に遭わず。この林は虚驚一場にして驚有りて険無きを主とする。占う者の眼前の恐慌は並びて実害無し。ただ須らく謹慎小心すべく、風声過ぎ去らば自ずから平安ならん。
既濟 大蛇巨魚,相搏於郊。君臣隔塞,郭公出廬。
未済の既済。大蛇と巨魚とは郊野に相闘いて、妖異の象は既に現れ、君臣の間は隔閡閉塞して、郭公は終に国を棄てて出走せり。《春秋》荘公二十四年は「郭公」と書し、《公羊傳》は以て郭公の国を失うと為す。この林は異兆警を示し君臣心を離れて位を失い国を去るを主とする。占う者は早く上下を疏通すべく、嫌隙をして災を成さしむることなかれ。全書六十四卦四千九十六林此に至りて尽く。
