Libo

第41卦 損(そん)

周 · 佚名 · 第2巻 / 2

作盤ガイド: 大衍筮法, 六爻納甲の立卦

彖曰:損,損下益上,其道上行。損而有孚,元吉,無咎,可貞,利有攸往。曷之用?二簋可用享。二簋應有時,損剛益柔有時,損益盈虛,與時偕行。象曰:山下有澤,損。君子以懲忿窒慾。

《彖伝》は損卦を解釈する:「損」とは下卦を減損して上卦を增益し、下を損し上を益して、その道は上に向かい運行す。減損して能く誠信より出づれば、大いに吉利にして咎なく、正を守るべく、また往くところあるに利あり。何をもって奉献せんや。両簋(りょうき)の薄き祭品をもって神明に享祭し得――誠意至れば、礼物は丰厚を要せず。ただし両簋の薄祭を用いるも時を見るべく、陽剛を減損して陰柔を增益するもまた時を見るべし。損と益・満と虚とは、必ず時勢の変化に随いて推移すべく、一端に執著すべからず。《大象伝》は上卦の艮が山・下卦の兌が沢という卦象を取って言う:山下に沢あり、沢は自ら損して山は益を受く、これが損の象なり。君子はこれに則り、己の忿怒を懲戒し、己の貪欲を窒塞(ちっそく)す――この両者こそまさに最も損ずべきものなり。

第42卦 益(えき)

彖曰:益,損上益下,民說無疆,自上下下,其道大光。利有攸往,中正有慶。利涉大川,木道乃行。益動而巽,日進無疆。天施地生,其益無方。凡益之道,與時偕行。象曰:風雷,益。君子以見善則遷,有過則改。

《彖伝》は益卦を解釈する:「益」とは上卦を減損して下卦を增益し、上に在る者は自ら減じて下を厚くし、百姓の喜悦は辺際なし。上位に居る者が尊を屈して下民に下れば、この道は比なき光大なり。卦辞に往くところあるに利ありと言うは、九五・六二ともに中正相応じて、必ず福慶あるによる。「大川を渉るに利あり」とは、上卦の巽は木で、木は舟を成し得て、険を渉る道はこれによって行わるを得るによる。下卦の震は動、上卦の巽は順で、動きて能く順なり。ゆえに日々精進して止境なし。天は雨露を施降し、地は万物を生育し、この增益は四方に普及して固定の方所なし。およそ增益の道は、皆時勢に随いて推行すべし。《大象伝》は上卦の巽が風・下卦の震が雷という卦象を取って言う:風雷相激して彼此勢を増す、これが益の象なり。君子はこれに則り、善行を見れば即ち遷りてこれに従い、過ちを発見すれば即ち改正す――これ己を益する最も速き路なり。

第43卦 夬(かい)

彖曰:夬,決也,剛決柔也。健而說,決而和,揚于王庭,柔乘五剛也。孚號有厲,其危乃光也。告自邑,不利即戎,所尚乃窮也。利有攸往,剛長乃終也。象曰:澤上於天,夬。君子以施祿及下,居德則忌。

《彖伝》は夬卦を解釈する:「夬」とは決断、決去(けっきょ)にして、全卦五陽は下にあり一陰は上にあり、衆陽が一陰を決去するなり。下卦の乾は剛健、上卦の兌は和悦で、能く果決にして和順を失わず。卦辞の「王庭に揚ぐ」とは、小人の罪状を朝廷に公開して宣明するなり、上六の一陰爻がまさに五つの陽爻の上に凌駕して、その悪すでに彰れるによる。「孚ありて號(か)きて厲(あや)うし」とは、誠信をもって呼號しかつ常に戒懼を存すれば、ただその危を知るゆえに、徳は愈々光大を顕す。「邑より告ぐ、戎(つわもの)に即くに利あらず」とは、まずその邑を自治して、兵戎に訴うべからず、ひたすら武力を崇尚すれば必ず窮途に至るによる。「往くところあるに利あり」とは、陽剛の生長これに至りて終に成功するを言う。《大象伝》は上卦の兌が沢・下卦の乾が天という卦象を取って言う:沢水は天に升って、勢い必ず傾降す、これが夬の象なり。君子はこれに則り、禄惠を下民に施及して、己が徳に自居し権位を貪恋するを大忌と為す。

第44卦 姤(こう)

彖曰:姤,遇也,柔遇剛也。勿用取女,不可與長也。天地相遇,品物咸章也。剛遇中正,天下大行也。姤之時義大矣哉!象曰:天下有風,姤。后以施命誥四方。

《彖伝》は姤卦を解釈する:「姤」とは相遇(そうぐう)にして、全卦一陰は五陽の下に生じ、陰柔が来りて陽剛に遇うなり。卦辞にこのごとき女子を取るなかれと言うは、彼女は請われずして自ら来り、その勢い将に長ぜんとし、これと長久に相処すべからざるによる。しかし一面を換えて見れば、天地の二気は相遇して、万物は初めて皆彰顯を得るを得たり。九五の陽剛は中に居り正を得て人と相遇し、教化は初めて天下に大行するを得。姤卦の含む時に随いて義を取るの理は実に大なるを見るべし。《大象伝》は上卦の乾が天・下卦の巽が風という卦象を取って言う:天下に風あり、風は天下を行きて遇わざる物なし、これが姤の象なり。君子の中の君主はこれに則り、命令を頒布し四方に告諭して、政教を風のごとく処々に相遇し至らざるところなからしむ。

第45卦 萃(すい)

彖曰:萃,聚也;順以說,剛中而應,故聚也。王假有廟,致孝享也。利見大人亨,聚以正也。用大牲吉,利有攸往,順天命也。觀其所聚,而天地萬物之情可見矣。象曰:澤上於地,萃。君子以除戎器,戒不虞。

《彖伝》は萃卦を解釈する:「萃」とは聚集(しゅうしゅう)。下卦の坤は順、上卦の兌は悦で、理に順いて和悦す。九五の陽剛は中に居りて六二と相応ず。ゆえに衆心は帰聚す。卦辞の「王、庙(びょう)に假(いた)る」とは、君王は自ら宗廟に至りて、孝道を尽くして祭享を行うなり。人を聚めんとするはまず神を聚め、祖考の霊を聚むるなり。「大人を見るに利あり亨」とは、聚合は必ず正道に依循し、正大の人物の主持あってこそ亨通するを言う。「大牲を用いて吉、往くところあるに利あり」とは、物聚まれば財豊かなり、太牢の厚祭を用いかつ往くところあるは、皆天命に順承する挙なり。万物の聚合する理を觀れば、天地万物の実情は皆見るべからん。《大象伝》は上卦の兌が沢・下卦の坤が地という卦象を取って言う:沢水は地上に積聚し、聚まれば易く潰(やぶ)る、これが萃の象なり。君子はこれに則り、兵器を修繕し武備を整飭して、意外の変故に防備す。

第46卦 升(しょう)

彖曰:柔以時升,巽而順,剛中而應,是以大亨。用見大人,勿恤,有慶也。南征吉,志行也。象曰:地中生木,升。君子以順德,積小以高大。

《彖伝》は升卦を解釈する:陰柔は時機に順応して歩々に上る。下卦の巽は遜入、上卦の坤は柔順で、遜順にして和緩なり。九二の陽剛は下卦の中に居り、六五と相応ず。ゆえに卦辞は大いに亨通すと言う。「用いて大人を見、恤(うれ)うなかれ」とは、このごとき徳を凭りて大人物に謁見すれば、憂うるを要せず、必ず福慶あるを言う。「南征は吉」とは、南方は光明向陽の地にして、往けば心志は施行を得るを言う。《大象伝》は上卦の坤が地・下卦の巽が木という卦象を取って言う:樹木は地中より生長し出でて、一寸一寸にしてその升るを覚えず、これが升の象なり。君子はこれに則り、徳に順循して躁進せず、日積月累して、微細の処より積みて高大を成す。

第47卦 困(こん)

彖曰:困,剛揜也。險以說,困而不失其所,亨,其唯君子乎?貞大人吉,以剛中也。有言不信,尚口乃窮也。象曰:澤無水,困。君子以致命遂志。

《彖伝》は困卦を解釈する:「困」とは陽剛が陰柔に遮蔽掩蓋(しゃへいえんがい)されること。下卦の坎は険、上卦の兌は悦で、身は険境に処りて心中なお能く安然自得し、困るもその操守を失わず、ゆえになお亨通し得――これを為し得るは、ほぼ君子のみならん。卦辞に正を守る大人物は吉と言うは、九二・九五ともに陽剛をもって中に居りて「剛中」の徳あるによる。「言ありて信ぜられず」とは、困厄の時に口を開きて弁解するも人に信ぜられず、ひたすら口舌を崇尚すれば窮途に至るのみ、この時ただ行動をもって自ら明らかにすべきを言う。《大象伝》は上卦の兌が沢・下卦の坎が水という卦象を取って言う:沢中の水は下に漏り去りて、沢は干涸(かんこ)して水なし、これが困の象なり。君子はこれに則り、寧ろ性命を捨てても己の志向を成全す。

第48卦 井(せい)

彖曰:巽乎水而上水,井;井養而不窮也。改邑不改井,乃以剛中也。汔至,亦未繘井,未有功也。羸其瓶,是以凶也。象曰:木上有水,井。君子以勞民勸相。

《彖伝》は井卦を解釈する:下卦の巽は入、上卦の坎は水で、器具を水中に深く入れて再び水を提げ上ぐる、これすなわち井なり。井水は人を養いて取り尽くすことなし。卦辞の「邑を改めて井を改めず」とは、村邑は移迁し得るも水井は搬去し得ず、これまさに九二・九五の陽剛が中に居りて、その徳は常定にして迁らざるがごとし。「汔(きっ)と至るも、亦だ井を繘(いつ)せず」とは、汲水は井口に至らんとするも綱は未だ引き尽くさず、功は簣(き)を欠きて、成功なきに等しを言う。「其の瓶を羸(つく)す」とは、汲水の瓶は破れて前功尽く棄つ、ゆえに凶あるを言う。《大象伝》は上卦の坎が水・下卦の巽が木という卦象を取って言う:木桶の上に水あり、まさに井を汲む象なり。君子はこれに則り、百姓の労苦を慰労し、彼らの互いに扶助するを勉励して、井の人を養うがごとく民衆を養育する。

第49卦 革(かく)

彖曰:革,水火相息,二女同居,其志不相得,曰革。己日乃孚;革而信之。文明以說,大亨以正,革而當,其悔乃亡。天地革而四時成,湯武革命,順乎天而應乎人,革之時大矣哉!象曰:澤中有火,革。君子以治曆明時。

《彖伝》は革卦を解釈する:上卦の兌は沢にして水、下卦の離は火で、水火は互相に息止克制す。離は中女、兌は少女で、二の女子は一家に同住すれども心志相合せず、勢い必ず変を生ず。ゆえに「革」――変革――と名づく。卦辞の「己(き)の日に乃ち孚(まこと)あり」とは、変革は一定の日に至って初めて人の信ずるところとなり、事すでに改易して人心これに随いて相信ずを言う。下卦の離は文明、上卦の兌は和悦で、文明の徳をもって人を喜悦せしむれば大いに亨通して正を守るべし。変革を為すこと当を得れば、悔恨は自ずから消亡す。天地変革して四季は初めて成就を得、商湯の桀を放ち周武の紂を伐つは、天道に順応して人心に合せり。革卦の値る時勢の意義は実に大なり。《大象伝》は沢中に火ある卦象を取って言う:水火相処りて相変ず、これが革の象なり。君子はこれに則り、暦法を修治し時序を明辨して、天時の変革を記録してこれに順応す。

第50卦 鼎(てい)

彖曰:鼎,象也。以木巽火,亨飪也。聖人亨以享上帝,而大亨以養聖賢。巽而耳目聰明,柔進而上行,得中而應乎剛,是以元亨。象曰:木上有火,鼎。君子以正位凝命。

《彖伝》は鼎卦を解釈する:鼎卦の卦画はそれ自体まさに一つの鼎に似たり――初六は足、二三四は腹、六五は耳、上九は鉉(げん)なり。下卦の巽は木、上卦の離は火で、木を火中に送入するは、まさに烹煮(ほうしゃ)の象なり(「亨」はここに烹と読む)。聖人は牲牢を烹煮して上帝に祭享し、また盛大に烹調して聖賢を供養す。下卦の巽は遜順、上卦の離は明で、謙遜にして耳聡く目明らかなり。六五の陰柔は上行して尊位に居り、「中」を得てまた下に九二の剛に応ず。ゆえに卦辞は「元亨」――大いに亨通す――と言う。《大象伝》は上卦の離が火・下卦の巽が木という卦象を取って言う:木の上に火あり、まさに烹飪(ほうにん)なり、これが鼎の象なり。君子はこれに則り、己の位分を端正し、穏やかに上天の付する使命を凝守して、鼎のごとく安重にして動摇すべからず。

第51卦 震(しん)

彖曰:震亨,震來虩虩,恐致福也。笑言啞啞,後有則也。震驚百里,驚遠而懼邇也。出可以守宗廟社稷,以為祭主也。象曰:洊雷,震。君子以恐懼修省。

《彖伝》は震卦を解釈する:震の亨る所以は、卦辞に雷震の来る時、人は皆驚懼不安と言うが、この戒懼はまさに福沢を招来し得るによる。此の後また談笑自如と言うは、先に戒懼あれば行事に法度ありて、ゆえに能く安然自得するによる。「百里を驚かす」とは、雷威の及ぶところ、遠方の人は震動を受け、近処の人は畏懼を生ずるを言う。このごとき長子は大任を担当し得て、一旦出でて事を主(つかさど)れば、宗廟社稷を守護して祭祀の主たるべし。《大象伝》は上下ともに震・雷声連続して至る卦象を取って言う:雷は一陣また一陣と響く、これが震の象なり。君子はこれに則り、心に恐懼を懐きて自身を修養省察し、外来の震動を内心の警策と化す。

第52卦 艮(ごん)

彖曰:艮,止也。時止則止,時行則行,動靜不失其時,其道光明。艮其止,止其所也。上下敵應,不相與也。是以不獲其身,行其庭不見其人,無咎也。象曰:兼山,艮。君子以思不出其位。

《彖伝》は艮卦を解釈する:「艮」とは止なり。止まるべき時に止まり、行動すべき時に行動し、動と静とは時機を錯(のが)さざれば、その道は光明なり。謂うところの「其の止を艮にす」とは、それ当に止まるべき所に止まるを言い、ひたすら動かざるにあらず。全卦上下両艮、初と四・二と五・三と上とは皆同性相敵して相応ぜず、彼此相亲しく与せず。ゆえに卦辞は「其の身を獲ず」――静止して己の身体を忘るるに至る――「其の庭を行きて其の人を見ず」――庭院を行き過ぎても旁人を見ず――と言う。かくのごとく内には己を見ず外には人を見ず、物我両忘すれば、自ら過ちあることなし。《大象伝》は両山並峙(へいじ)の卦象を取って言う:山は山に連なり、各々その所に止まる、これが艮の象なり。君子はこれに則り、思慮は己の職位本分を越えず。

第53卦 漸(ぜん)

彖曰:漸之進也,女歸吉也。進得位,往有功也。進以正,可以正邦也。其位剛,得中也。止而巽,動不窮也。象曰:山上有木,漸。君子以居賢德善俗。

《彖伝》は漸卦を解釈する:「漸」とは循序漸進にして、ゆえに卦辞は女子の嫁ぐに礼に依って行えば吉と言う――婚姻の六礼は一歩一歩に来る、まさに漸進の様子なり。九五らの爻は漸進して各々その位を得、往けば功を建つべし。漸進して正道に合すれば、邦国を匡正すべし。九五は陽剛をもって第五位に居り、剛にしてかつ「中」を得たり。下卦の艮は止、上卦の巽は遜順で、能く止まりて躁(あせ)らず、順いで逆(さか)らわず、ゆえに行動は困窮に陥ることなし。《大象伝》は上卦の巽が木・下卦の艮が山という卦象を取って言う:山の上に樹木は生い、日積月累してその長ずるを見ず、これが漸の象なり。君子はこれに則り、賢良の徳に安処し、漸化の功をもって風俗を改善して、一朝一夕の効を求めず。

第54卦 帰妹(きまい)

彖曰:歸妹,天地之大義也。天地不交,而萬物不興,歸妹人之終始也。說以動,所歸妹也。征凶,位不當也。無攸利,柔乘剛也。象曰:澤上有雷,歸妹。君子以永終知敝。

《彖伝》は帰妹卦を解釈する:少女の嫁ぐは、これ天地陰陽交合の大義なり。天地の二気若し相交わらざれば、万物は興起すること能わず。男女の婚配は、人に就いて言えば一世の終結にしてまた新たな一代の開端なり。下卦の兌は悦、上卦の震は動で、喜悦を因りて動くは、まさに少女の嫁ぐを急ぐ様子なり。卦辞に往けば凶と言うは、六三・九四・六五らの爻は多く陰をもって陽に居り陽をもって陰に居り、位置皆正当ならざるによる。「利するところなし」とは、六三は九二に凌駕し六五は九四に凌駕し、陰柔が陽剛の上に騎(の)るは正理に合せざるを言う。《大象伝》は上卦の震が雷・下卦の兌が沢という卦象を取って言う:沢の上に雷あり、雷動かば沢随う、これが帰妹の象なり。君子はこれに則り、結合の初めに於いて長遠の結局を想い、その中に現れ得べき弊敗を予知す。

第55卦 豊(ほう)

彖曰:豐,大也。明以動,故豐。王假之,尚大也。勿憂,宜日中,宜照天下也。日中則昃,月盈則食,天地盈虛,與時消息,而況於人乎?況於鬼神乎?象曰:雷電皆至,豐。君子以折獄致刑。

《彖伝》は豊卦を解釈する:「豊」とは盛大。下卦の離は明、上卦の震は動で、明察して後に行動すればこそ盛大を致すを得。卦辞の「王これに假る」とは、ただ君王のみ能くこのごとき豊盛に達し、その崇尚する所はまさに宏大なるによる。「憂うなかれ、日中に宜し」とは、憂うるを要せず、正午の太陽のごとく遍く天下を照らして偏私なかるべきを言う。然れども太陽は正午に至れば西に斜め、月は満ちれば亏(か)くる。天地の盈満と空虚とすら時序に随いて消長す、いわんや人をや、いわんや鬼神をや。豊に処る道はその必ず衰えるを知りて先に自ら惕(つつし)むに在るを見べし。《大象伝》は雷電同時に至る卦象を取って言う:雷の威動と電の明照とは斉しく至る、これが豊の象なり。君子はこれに則り、案情を明察して訟獄を判決し刑罰を施行して、威と明と並び用いる。

第56卦 旅(りょ)

彖曰:旅,小亨,柔得中乎外,而順乎剛,止而麗乎明,是以小亨,旅貞吉也。旅之時義大矣哉!象曰:山上有火,旅。君子以明慎用刑,而不留獄。

《彖伝》は旅卦を解釈する:卦辞に旅途中は小さく亨通するのみと言うは、六五の陰柔が外卦の中に居りて「中」を得、また上九に順承し下に九四に比するこれらの陽剛による。下卦の艮は止、上卦の離は明で、止息する所はまた光明に依附す。これら数重の条件あるがゆえに、能く小さく亨通し、しかも旅人は正を守れば吉を得る。羇旅(きりょ)外に在りて、処身の難と時に因りて義を取るの切なること、その意義は実に重大なり。《大象伝》は上卦の離が火・下卦の艮が山という卦象を取って言う:山上に火燃ゆ、火は草木に随いて移りて久しく一処に留まらず、これが旅の象なり。君子はこれに則り、刑を用いるに明察かつ謹慎にして、案件を久しく拖(た)らして決せず――過客の一地に滞留せざるがごとし。

第57卦 巽(そん)

彖曰:重巽以申命,剛巽乎中正而志行。柔皆順乎剛,是以小亨,利有攸往,利見大人。象曰:隨風,巽。君子以申命行事。

《彖伝》は巽卦を解釈する:上下両卦ともに巽で、重々の遜順、もって政令を繰り返し申明す。九五の陽剛は能く「中正」の道に遜順すればこそ心志は推行を得る。初六・六四の二陰爻は皆それぞれその上の陽爻に順従す。これら数層あるがゆえに、卦辞は小さく亨通し、往くところあるに利あり、大人を見るに利ありと言う――順徳は陰に属し、功效は大ならざるも、能く潜かに移し黙かに化す。《大象伝》は上下ともに巽・風が風に随いて行く卦象を取って言う:一陣の風に一陣の風が随い、入らざる孔なし、これが巽の象なり。君子はこれに則り、命令を繰り返し申明して後に政事を推行し、教令を風のごとく処々に渗透せしむ。

第58卦 兌(だ)

彖曰:兌,說也。剛中而柔外,說以利貞,是以順乎天,而應乎人。說以先民,民忘其勞;說以犯難,民忘其死;說之大,民勸矣哉!象曰:麗澤,兌。君子以朋友講習。

《彖伝》は兌卦を解釈する:「兌」とは喜悦。九二・九五の陽剛は中に居り、六三・上六の陰柔は外に在り、これ内は剛実にして外は和柔なり。喜悦してまた正固を守持すればこそ、上は天道に順応し、下は人心に感応す。喜悦の道をもって率先して百姓に垂範すれば、百姓は労苦を忘れ、喜悦の道をもって百姓を領して難に赴かしめれば、百姓は死亡を忘る。喜悦の力量かくのごとき大なれば、百姓は自ら鼓舞勧勉せらる。《大象伝》は上下ともに兌・両沢相連なる卦象を取って言う:二片の水沢は彼此依附し互相に潤沢す、これが兌の象なり。君子はこれに則り、朋友とともに学問を講論し切磋研習す――彼此相滋潤して、まさに両沢の相資するがごとし。

第59卦 渙(かん)

彖曰:渙,亨。剛來而不窮,柔得位乎外而上同。王假有廟,王乃在中也。利涉大川,乘木有功也。象曰:風行水上,渙。先王以享于帝立廟。

《彖伝》は渙卦を解釈する:「渙」とは離散にして、卦辞に亨通すと言うは、九二の陽剛が外より来りて下卦の中に居り、険に処りて困窮に至らず、六四の陰柔は外卦に於いてその正位を得て、また九五と同心なるによる。卦辞の「王、庙に假る」とは、君王は自ら宗廟に臨んで、九五は上卦の中に居りて能く誠敬をもって已に散じた人心を聚合するによる。「大川を渉るに利あり」とは、上卦の巽は木で、木舟に乗りて水を渡ればこそ成功するを得るを言う。《大象伝》は上卦の巽が風・下卦の坎が水という卦象を取って言う:風は水面に行きて水波を吹き散らす、これが渙の象なり。先王はこれに則り、上帝を祭享し宗廟を建立して、祭祀をもって涣散の人心を再び收聚した。

第60卦 節(せつ)

彖曰:節,亨,剛柔分,而剛得中。苦節不可貞,其道窮也。說以行險,當位以節,中正以通。天地節而四時成,節以制度,不傷財,不害民。象曰:澤上有水,節。君子以制數度,議德行。

《彖伝》は節卦を解釈する:「節」とは節制。全卦三陰三阳で剛柔の分布は均等にして、九二・九五ともに陽剛をもって中に居るがゆえに亨通す。卦辞の「苦節は貞すべからず」とは、節制が苦しみ堪え難き地步に至れば長く固守する能わず、その路はすでに尽頭に至るを言う。下卦の兌は悦、上卦の坎は険で、能く和悦にして険難を穿行す。九五は位に当たりて節制を行い、中に居り正を得てゆえに通達す。天地に節度あれば四季は初めて成就し、国を治むるに制度を節と為せば、財用を損傷せず百姓を危害せず。《大象伝》は上卦の坎が水・下卦の兌が沢という卦象を取って言う:沢の上に水あり、沢に容量ありて水は満つるを過ぐべからず、これが節の象なり。君子はこれに則り、もろもろの数目法度を制定し、徳行の等差を評議して、人事に各々分寸あらしむ。

第61卦 中孚(ちゅうふ)

彖曰:中孚,柔在內而剛得中,說而巽,孚乃化邦也。豚魚吉,信及豚魚也。利涉大川,乘木舟虛也。中孚以利貞,乃應乎天也。象曰:澤上有風,中孚。君子以議獄緩死。

《彖伝》は中孚卦を解釈する:「中孚」とは心中の誠信。六三・六四の二陰爻は卦体の内に居り、九二・九五の二陽爻は各々中位を得て、中虚にして心誠、中実にして信篤し。下卦の兌は悦、上卦の巽は遜順で、和悦にして遜順、このごとき誠信は邦国を感化するに足る。卦辞の「豚魚は吉」とは、誠信は小猪小鱼の類の微賤の物にすら感通し得るを言う、いわんや人をや。「大川を渉るに利あり」とは、卦体は中虚にして、中空の木舟に乗りて水を渡るがごとく、ゆえに沈まざるを言う。中孚にしてまた正を守るに利あり、これ初めて天道に相応ず――天道は最も欺かざるなり。《大象伝》は上卦の巽が風・下卦の兌が沢という卦象を取って言う:風は沢面に吹き、水波はこれに応じて動く、まさに感応の象なり。君子はこれに則り、刑獄を審議して詳尽を求め、死刑に対しては寛緩慎重にして、一片の至誠をもって人命に対す。

第62卦 小過(しょうか)

彖曰:小過,小者過而亨也。過以利貞,與時行也。柔得中,是以小事吉也。剛失位而不中,是以不可大事也。有飛鳥之象焉,有飛鳥遺之音,不宜上宜下,大吉;上逆而下順也。象曰:山上有雷,小過。君子以行過乎恭,喪過乎哀,用過乎儉。

《彖伝》は小過卦を解釈する:「小過」とは陰小なる者が稍々(しょうしょう)過分にしてなお亨通し得ること。稍過すれども必ず正を守るべし、この「過」は時勢の需要に随いて行う権宜なるがゆえに。六二・六五の陰柔は各々中位を得たればこそ小事を為せば吉利なり。九三・九四の陽剛は位を失い中に居らざればこそ大事を為すべからず。全卦四陰は外にあり二陽は内にあり、鳥身の両翼を張るがごとく、ゆえに飛鳥の象あり。卦辞に飛鳥は哀鳴の声を遺し、上に向かいて強いて飛ぶべからず下に向かいて栖止すべし、かくのごとくしてこそ大吉と言う――上に向かうは勢に逆らいて強求し、下に向かうは勢に順いて自安するがゆえに。《大象伝》は上卦の震が雷・下卦の艮が山という卦象を取って言う:雷は山上に響き、声勢は平地よりも略々過ぎる、これが小過の象なり。君子はこれに則り、行いの恭敬は稍々一分過ぎ、喪に居るの哀戚は稍々一分過ぎ、用度の儉省は稍々一分過ぎとす――皆寧ろ略々過ぐれども及ばざるべからざるの処なり。

第63卦 既済(きせい)

彖曰:既濟,亨,小者亨也。利貞,剛柔正而位當也。初吉,柔得中也。終止則亂,其道窮也。象曰:水在火上,既濟。君子以思患而預防之。

《彖伝》は既済卦を解釈する:「既済」とは事はすでに渡り済りて大功告成す、ゆえに亨通す。ただしこの時亨通し得るは多くは細小の事にして、大局すでに定まり、復た大いに作為すべきなし。卦辞に正を守るに利ありと言うは、六爻は陽は陽位に居り陰は陰位に居り、剛柔各々正しくして位置は一つとして当たらざるなきによる。「初め吉」とは、六二の陰柔は下卦の中に居りて「中」道を得るによる。「終に止まれば乱る」とは、功成の後に此れに就いて停頓して進取せざれば、混乱は便ち重生し、その路はすでに尽頭に至るを言う。《大象伝》は上卦の坎が水・下卦の離が火という卦象を取って言う:水は火の上にあり、水火相済いで各々その用を得る、これが既済の象なり。君子はこれに則り、安定の時に予め患害を思い、事を先んじて防備す。

第64卦 未済(びせい)

彖曰:未濟亨,柔得中也。小狐汔濟,未出中也。濡其尾,無攸利,不續終也。雖不當位,剛柔應也。象曰:火在水上,未濟。君子以慎辨物居方。

《彖伝》は未済卦を解釈する:「未済」とは事は未だ渡成せず、しかも卦辞はなお亨通すと言うは、六五の陰柔が上卦の中に居りて「中」道を得て、済し得べきの理あるによる。卦辞に小狐は将に河を渡らんとすと言うは、それは未だ坎険の中より出でざるを言う。「其の尾を濡らし、利するところなし」とは、小狐は渡りて将成の際に尾を沾濡(てんじゅ)し、力竭きて事を末底に接続する能わず、ゆえに何の益もなし。全卦六爻は皆陽は陰位に居り陰は陽位に居り、位置は当たらざると雖も、剛柔は一一相応ず。ゆえに未済の中に依然として済し得べきの機を蔵す。《大象伝》は上卦の離が火・下卦の坎が水という卦象を取って言う:火は水の上にあり、火は上に炎し水は下に潤して、両者相交わらず、これが未済の象なり。君子はこれに則り、慎みて事物の性質を辨别し、各類の事物をして各々その在るべき方位に安んぜしむ――まず分かち清めて、然る後に済を論ずべきなり。

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