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第四一象 甲辰 坎下坎上 坎

唐 · 李淳风、袁天罡(旧题) · 第2巻 / 2

作盤ガイド: 暦注(黄暦), 万年暦

天地晦盲,草木繁殖。陰陽反背,上土下日。帽兒須戴血無頭,手弄乾坤何日休。九十九年成大錯,稱王只合在秦州。

本象は「坎」卦を配す。上下二体ともに坎で、坎は水にして険、両険相重る。故に《周易》はこれを「習坎」と称し、険を行きて其の信を失わず、心を維して亨るは剛中をもってなりの義を取る。讖はいう――天地は昏暗にして盲のごとく、草木はかえって繁殖す。陰陽は顛倒して相背し、上には土、下には日あり。末句は上下相畳むる拆字で、旧解の合わせる字は互いに異なる。「天地晦盲」と「草木繁殖」とは並置して、物候の反常をもって世運の失常を写す。頌はいう――帽子は須らく戴くべし、「血」の字は頭を去れ。手中に乾坤を摆弄して、いずれの日にか罷まん。九十九年は大錯を鋳成し、王を称すはただ秦州に在るべし。「血無頭」は血の字の上の一撇を去るを謂い、「帽児」と合読してまた一字を成し、各家の拆るところ一つならず。「九十九」は旧解で百の一を去りて「白」の字を成すと読み、数字拆文の手法なり。「秦州」は関中一帯を指す。指すところの事は従来定説なく、ここではただ字面を解す。

第四二象 乙巳 兌下坎上 節

美人自西來,朝中日漸安。長弓在地,危而不危。西方女子琵琶仙,皎皎衣裳色更鮮。此時渾跡匿朝市,鬧亂君臣百萬般。

本象は「節」卦を配す。下体「兌」は沢、上体「坎」は水で、沢の上に水ありて容に定量あり、多ければ溢れ少なければ涸る。ゆえに「節」と名づけ、節をもって制度を為し財を傷めず民を害せざるの義を取る。讖はいう――美人は西辺より来り、朝廷の中は日に日に安定して行く。長弓は横たえて地に在り。危なきに似て又危なからず。「長弓在地」は拆字で、「長」と「弓」とは相合して旧解で一姓氏を成すとす。「危而不危」は正反相成の語をもって転折を作る。頌はいう――西方の女子は琵琶仙のごとく、衣裳皎潔にして顔色は愈々鮮明なり。このとき混迹して朝市の中に隠匿し、君臣を攪擾して百般に紛乱せしむ。「琵琶」の二字は四つの「王」を並列し、旧解は毎にこれに由り附会す。「渾迹匿朝市」は市朝の間に潜蔵して形迹を露さざるを謂う。指すところは従来解説一つならず、ここでは実指を為さず。

第四三象 丙午 震下坎上 屯

君非君,臣非臣。始艱危,終克定。黑兔走入青龍穴,欲盡不盡不可說。唯有外邊根樹上,三十年中子孫結。

本象は「屯」卦を配す。下体「震」は雷、上体「坎」は水で、雲雷交作して万物始めて生ずるも未だ暢通せず。ゆえに「屯」と名づけ、草創艱難にして侯を建つるに宜しく寧ならざるの義を取る。讖はいう――君は君に似ず、臣は臣に似ず。初めは艱難危殆なるも、終に平定することを得ん。四句は名分の正しからざるをもって起り、終に底定に帰するをもって結ぶ。先に抑えて後に揚ぐるの写法なり。頌はいう――黒兎は青龍の洞穴に走り入る。窮めんと欲するも尽くすべからず、明言すべからず。ただ外辺の樹根の上に、三十年の中に子孫を結出せん。「黒兎」「青龍」はみな干支紀年の隠語なり。五行は黒をもって水に配し、青をもって木に配し、兎は卯に属し龍は辰に属す。故に黒兎は癸卯の類の兎年を指し、青龍は甲辰の類の龍年を指す。二句を合読すればすなわちある卯辰相接の際を指す。「根樹」「子孫」は樹木の滋生をもって世系の綿延を喩う。指すところは従来定説なく、ここではただ其の紀年隠語と字面を釈す。

第四四象 丁未 離下坎上 既済

日月麗天,群陰懾服。百靈來朝,雙羽四足。而今中國有聖人,雖非豪傑也周成。四夷重譯稱天子,否極泰來九國春。

本象は「既済」卦を配す。下体「離」は火、上体「坎」は水で、水は火の上にありて相い用を為し、六爻また各々其の正位を得る。ゆえに「既済」と名づけ、事すでに成就して当に患を思い予防すべしの義を取る。讖はいう――日月は天に附麗し、群陰は懾伏す。百神は来りて朝会し、双羽四足なり。「麗」は附着の義で、正に「離」卦の本訓を用う。「双羽四足」は旧解で拆字とし、各家の合わせる字は一つならず。頌はいう――今や中国に聖人出づ。豪杰と謂うに足らざるも、周成王のごときに似たり。四方の遠夷は輾転翻訳して来りて臣を称し天子を尊ぶ。否運は頭に到りて泰運随って来り、九国は皆春なり。「重訳」は言語の輾転伝訳を謂い、《尚書大伝》の越裳氏が重訳して来朝した典故を用う。「否極泰来」は直ちに《周易》の否泰両卦相因の理を取り、本象の既済の卦義と相承す。指すところは従来解説紛紜、ここでは実指を為さず。

第四五象 戊申 離下兌上 革

有客西來,至東而止。木火金水,洗此大恥。炎運宏開世界同,金烏隱匿白洋中。從此不敢稱雄長,兵氣全消運已終。

本象は「革」卦を配す。下体「離」は火、上体「兌」は沢で、水火相滅息し、二女同居して心志同じからず。ゆえに「革」と名づけ、天に順い人に応じて旧制を改易するの義を取る。讖はいう――客ありて西方より来り、東方に至りて便ち止住す。木火金水。この大恥を洗刷せん。第三句は五行を列挙して独り「土」を缺く。旧解は意有りて土を去りしとし、説一つならず。「洗此大恥」は恥を雪ぎ仇を復するを謂う。頌はいう――炎運は宏大に開啓し、世界は大同に帰す。金烏は白洋の中に隠没す。これより雄長を自ら称するを敢えてせず。兵気は全く消散し、気運すでに終了せり。「炎運」は離火に承る。「金烏」は太陽の別称で、《淮南子》の日の中に三足烏ありの説に出づり、前の炎運と一明一晦を為して対照を構成す。指すところは従来定説なく、ここではただ字面と其の中の五行・日象の取譬を釈す。

第四六象 己酉 離下震上 豊

黯黯陰霾,殺不用刀。萬人不死,一人難逃。有一軍人身帶弓,只言我是白頭翁。東邊門裡伏金劍,勇士後門入帝宮。

本象は「豊」卦を配す。下体「離」は火にして明、上体「震」は雷にして動で、明にして能く動く、故能く豊大に致す。然れど《彖伝》はまた曰く、日は中すれば則ち昃き、月は盈ちれば則ち食らう、と。盛極まりて当に憂うべしの義を取る。讖はいう――陰霾は一片に昏黒す。人を殺すに刀を用いず。万人は死せず、一人は逃れがたし。「殺不用刀」は禍の兵刃に在らざるを謂う。後二句は衆寡を対挙して、矛頭を一人の身上に收束す。頌はいう――一個の軍人ありて身に弓を帯び、ただ言う我は白頭翁と。東辺の門の裏に金剣を埋伏す。勇士は後門より帝宮に入る。「身帯弓」と「白頭翁」とは旧解で拆合して姓名を成すとし、「東辺門裏伏金剣」も同じく拆字合文の路数で、各家の指すところ互いに異なる。末句は潜入して宮禁するをもって筆を収め、語気森然たり。指すところは従来解者紛紜、ここでは附会を為さず。

第四七象 庚戌 離下坤上 明夷

偃武修文,紫薇星明。匹夫有責,一言為君。無王無帝定乾坤,來自田間第一人。好把舊書多讀到,義言一出見英明。

本象は「明夷」卦を配す。下体「離」は火にして明、上体「坤」は地で、光明は地中に陥る。ゆえに「明夷」と名づけ、内に文明して外に柔順、難に遭いて能く其の志を正しくするの義を取る。讖はいう――武備を停止し文教を修明す。紫薇の星明亮なり。匹夫もまた一份の責任あり。一言をもって君上の取則と為さん。「偃武修文」は《尚書・武成》に出づり、「紫薇」はすなわち紫微にして帝座の星なり。「匹夫有責」は天下興亡人人責ありの成語を化用す。頌はいう――王なく帝なくして乾坤を安んじ得たり。田間より来る第一人なり。旧書を好く読み通せ。一句の義理に合する言を説き出せば、英明を見出すことを得ん。「田間第一人」は草野に出身して首功に居るを謂い、上句の「無王無帝」と相承す。「旧書」は前代の典籍を指す。指すところは従来定説なく、ここではただ字面を釈す。

第四八象 辛亥 坎下坤上 師

卯午之間,厥象維離。八牛牽動,雍雍熙熙。水火既濟人民吉,手持金戈不殺賊。五十年中一將臣,青青草自田間出。

本象は「師」卦を配す。下体「坎」は水、上体「坤」は地で、地の中に水あり、衆聚まりて必ず正法をもって統率すべし。ゆえに「師」と名づけ、丈人吉にして衆を正して王となるの義を取る。讖はいう――卯と午との間に在り。この象は正しく「離」に属す。八牛牽動す。一片の雍雍熙熙たり。「卯午之間」は地支をもって時を紀るも方位を紀るも可なりとし、旧解一つならず。「厥象維離」は直ちに離火の象を点じ、卦爻と相扣えり。「八牛」は上下相合してなお拆字なり。頌はいう――水火既済、人民吉を得ん。手に金戈を握りて賊を殺さず。五十年の中に一位の将臣出づ。青青の草は田間より長出す。「水火既済」は徑に《周易》の卦名を用い、陰陽調停・事其の成を得るを謂う。「手持金戈不殺賊」は兵を持して用いざるをもって偃兵の意を写す。末句は草の田間に生ずるをもって姓氏を隠指し、旧解の合わせるところ一つならず。指すところは従来解説紛紜、ここでは実指を為さず。

第四九象 壬子 艮下艮上 艮

山谷少人口,欲剿失其巢。帝王稱弟兄,紛紛是英豪。一個或人口內啼,分南分北分東西。六爻占盡文明見,棋佈星羅日月齊。

本象は「艮」卦を配す。上下二体ともに艮で、艮は山にして止、両山重畳す。《彖伝》に曰く、時に止まれば則ち止まり、時に行けば則ち行き、動静其の時を失わず、と。其の所に止まるの義を取る。讖はいう――山谷の裏に人口少なし。剿滅せんと欲して其の巣穴を失い、帝王は彼此兄弟を以て相称す。紛紛攘攘として皆自ら英豪を命ず。首句は旧解で拆字とし、「人」「口」を字形の中より減じて其余を留む。各家の合わせる字は一つならず。「帝王称弟兄」は名号の並立して復た統属なきを写す。頌はいう――一つの「或」の字の裏に人あり口ありて啼哭す。南を分かち北を分かち、また東西を分かつ。六爻の占算すでに尽きて文明畢竟に現ず。棋子のごとく鋪開し星辰のごとく羅列し、日月は一斉に輝映す。「或」の字に口を加えれば正に「國」の繁体と為り、人を加えれば則ち「域」と成る。拆字の常法なり。「六爻」は一卦六画を指し、推占の数はここに於て窮尽するを謂う。指すところは従来定説なく、ここではただ字面と其の中の拆字の法を釈す。

第五十象 癸丑 離下艮上 賁

水火相戰,時窮則變。貞下起元,獸貴人賤。虎頭人遇虎頭年,白米盈倉不值錢。豺狼結隊街中走,撥盡風雲始見天。

本象は「賁」卦を配す。下体「離」は火、上体「艮」は山で、山の下に火あり、草木は其の映照を受けて文采を成す。ゆえに「賁」と名づけ、文飾の義を取る。上九爻辞に「白賁」と称し、素朴に返帰するの飾は過なからざるを謂う。讖はいう――水と火と互相攻戦す。時運は窮処に走れば則ち変化す。貞は尽きて元はまた生ず。野獣は貴重にして人はかえって低賤なり。「貞下起元」は乾卦の元亨利貞の四徳を用い、貞は終、元は始にして、終わりて復た始まる、循環已まず。「獣貴人賤」は軽重の倒置をもって乱世を写す。頌はいう――虎頭の人は虎頭の年に遇う。白米は倉に満つるも銭に値せず。豺狼は隊を結んで街上を行走す。満天の風雲を撥き開いて初めて青天を見ん。「虎頭人」「虎頭年」は寅虎をもって人を紀り歳を紀る生肖隠語なり。「豺狼」は横行之徒を喩え、末句は雲を撥きて天を見るをもって転を作る。指すところは従来解説一つならず、ここでは実指を為さず。

第五一象 甲寅 乾下艮上 大畜

陰陽和,化以正。坤順而感,後見堯舜。誰云女子尚剛強,坤德居然感四方。重見中天新氣象,卜年一六壽而康。

本象は「大畜」卦を配す。下体「乾」は天、上体「艮」は山で、山の中に天の剛健を藴含し、蓄うるところは大なり。ゆえに「大畜」と名づく。《彖伝》は其の「剛健篤実、輝光を輝かし、日に其の徳を新たにす」と称し、また賢を養い健を止むるの義あり。讖はいう――陰陽調和す。化育は其の正を得たり。坤徳は柔順にして能く感通す。此の後に尭舜の世を見ん。「坤順而感」は坤卦の柔順と咸卦の感応とを合わせて言う。卦徳をもって人事を説くなり。頌はいう――誰か言わん女子なお剛強を崇ぶべしと。坤徳は竟に四方を感動す。重ねて中天の新気象を見ん。年数を卜算して一と六とを得、既に長寿にして康寧なり。「卜年」は周初の「卜年七百」の旧典を用い、享国の数を推算するを謂う。「一六」は河図生成の数の中に於て水に属して北に居る。旧解あるいはこれに由りて説を立つ、諸家一つならず。指すところは従来定説なく、ここではただ卦義と字面を釈す。

第五二象 乙卯 兌下艮上 損

慧星乍見,不利東北。踽踽何之,瞻彼樂國。欃槍一點現東方,吳楚依然有帝王。門外客來終不久,乾坤再造在角亢。

本象は「損」卦を配す。下体「兌」は沢、上体「艮」は山で、下体の剛を損いて上体を益す。山の下に沢ありて其の気は上通す。ゆえに「損」と名づけ、忿を懲め欲を窒ぎ、損にして孚あるの義を取る。讖はいう――彗星忽ち出現す。東北方に利ならず。孤単として何れの処にか往かん。彼の安楽の国土を瞻望す。底本は「慧星」と作るは「彗星」の通行の異写で、ここでは照録して改めず。「踽踽」は《詩経・唐・唐風・杕杜》に出づり、独り行きて伴なきを形容す。「瞻彼楽国」は《詩経・魏風・碩鼠》に出づ。頌はいう――欃槍の一点の光芒は東方に出現す。呉楚の一帯は依然として帝王あり。門外より来るの客は終に久しく留まることを得ず。乾坤は重ねて造就されて角・亢の間に在り。「欃槍」はまさに彗星の別名で、讖の首句と相呼応す。「角亢」は二十八宿の中の東方蒼龍の頭両宿で、古人は星宿の分野をもって地域に配属す。ここでは借りて方位を指す。指すところは従来解説紛紜、ここでは実指を為さず。

第五三象 丙辰 兌下離上 睽

關中天子,禮賢下士。順天休命,半老有子。一個孝子自西來,手握乾綱天下安。域中兩見旌旗美,前人不及後人才。

本象は「睽」卦を配す。下体「兌」は沢、上体「離」は火で、火性は炎上して沢性は潤下し、両相乖離す。また二女同居して志同行せずのごとし。ゆえに「睽」と名づけ、乖異なると雖も事同じくすべきあり、小事吉なるの義を取る。讖はいう――関中の天子。礼をもって賢を待ち己を屈して士に下る。天道に順応して其の命を休美せしむ。半老の年にして子あり。「順天休命」は《周易》大有卦《象伝》「順天休命」に出づり、天意を奉承するを謂う。「半老有子」は晩歳に嗣を得るを謂う。頌はいう――一個の孝子は西辺より来り、手中に朝綱を握りて天下安定す。域中に両度旌旗の盛美を見ん。前人は後人の才具に及ばず。「干綱」は朝廷の綱紀権柄を指し、「両見旌旗美」は两度の中興気象を謂う。末句は後の前に勝るをもって結び、讖の中の「礼賢下士」と相承す。指すところは従来定説なく、ここではただ字面を釈す。

第五四象 丁巳 兌下乾上 履

磊磊落落,殘棋一局。啄息茍安,雖笑亦哭。不分牛鼠與牛羊,去毛存〈革享〉尚稱強。寰中自有真龍出,九曲黃河水不黃。

本象は「履」卦を配す。下体「兌」は沢、上体「乾」は天で、柔順をもって剛健を践履す。卦辞に「虎の尾を履むも、人を咥えず」と称す。ゆえに「履」と名づけ、上下を弁じ民志を定め、礼に循い行うの義を取る。讖はいう――光明磊落。残棋一局を残すのみ。喘息して安んずるを苟む。笑うに在るも、其の実また哭くなり。「啄息」はすなわち喘息にして、僅かに一口气を存するを謂う。「残棋一局」は棋をもって局勢の将に終らんとするを喩う。頌はいう――牛鼠なるか牛羊なるかを分かつ能わず。毛を去りて皮革のみを留め、なお強と称することを得ん。天下には自ら真龍の出世あり、九曲の黄河の水はもはや渾黄ならず。底本第三句の「革享」の二字の外に尖括弧を加うるは、伝写の留めた合文標記で、ここでは照録して改めず、別本に拠りて臆補せず。「去毛存革」は浮華を剥落して本質のみを余すを謂う。「黄河水不黄」は前の第三三象の「黄河水清」と同じく一類の祥瑞の説を用う。指すところは従来解説一つならず、ここでは実指を為さず。

第五五象 戊午 兌下巽上 中孚

懼則生戒,無遠勿屆。水邊有女,對日自拜。覬覦神器終無用,翼翼小心有臣眾。轉危為安見節義,未必河山是我送。

本象は「中孚」卦を配す。下体「兌」は沢、上体「巽」は風で、風は沢の上を行きて其の中を感動す。卦体は中間の両爻は虚にして外面の四爻は実、中心誠信の象なり。ゆえに「中孚」と名づけ、誠信は物に及びて豚鱼皆吉なるの義を取る。讖はいう――畏懼する所有れば則ち戒備を生ず。遠きと雖も至らざることなし。水辺に女子あり。太陽に対して自ら下拜す。「無遠勿届」は《尚書・大禹謨》「無遠弗届」に語本づく。「水辺有女」は拆字で、水旁に一つの女の字を配す。旧解の合わせる字は一つならず。頌はいう――帝位を覬覦するは終に用なし。小心翼々として衆臣の擁戴あり。危を転じて安と為すの際に節操道義を見出す。必ずしもこの河山は我が断送せしに非ず。「神器」は帝位を指し、《老子》「天下の神器、為すべからず」に語出づり。「翼翼」は恭謹戒懼を形容して正に讖の首句と相応す。指すところは従来定説なく、ここではただ字面を釈す。

第五六象 己未 艮下巽上 漸

飛者非鳥,潛者非魚。戰不在兵,造化遊戲。海疆萬里盡雲煙,上迄雲霄下及泉。金母木公工幻弄,干戈未接禍連天。

本象は「漸」卦を配す。下体「艮」は山、上体「巽」は木で、山の上に木あり、其の生長は必ず次第を以てす。ゆえに「漸」と名づけ、序に循いて進み、賢徳に居りて俗を善くするの義を取る。讖はいう――天上を飛ぶは鳥に非ず。水裏に潜むは魚に非ず。戦は士卒を恃まず。造化は不過一場の游戯なり。前二句は否定の句法を用いて、禽にも非ず鱗にも非ざる形制の外の器物を写し出す。全象の最も著名なる隠語なり。頌はいう――万里の海疆はみな云烟と化す。上は雲霄に達し、下は黄泉に及ぶ。「金母」「木公」は変幻戯弄に長ず。干戈は未だ交接せずして、禍患すでに天に連なる。「金母」はすなわち西王母、「木公」はすなわち東王公で、みな道家の奉ずる神名なり。一は西に一は東に、一は金に一は木に、相対して文を成す。旧解は毎にこれに由りて方位に附会す。末句は兵未だ交わらずして禍すでに成るを謂う。指すところは従来解説紛紜、ここでは実指を為さず。

第五七象 庚申 坤下坤上 坤

物極必反,以毒制毒。三尺童子,四夷讋服。坎離相剋見天倪,天使斯人弭殺機。不信奇才產吳越,重洋從此戢兵師。

本象は「坤」卦を配す。上下二体ともに坤で、六爻は純陰。《象伝》に曰く、地勢は坤、君子は厚徳を以て物を載す、と。柔順にして天を承け、弘を含み光を大にするの義を取り、第一象の純陽の「乾」と首尾相対す。讖はいう――事物は極点に至れば必ず反転す。毒を以て毒を制す。三尺の高の童子。四方の夷は震懾して服す。「讋服」はすなわち懾服にして、驚懼して順従す。「三尺童子」は其の幼小を極言し、「四夷讋服」と強烈なる反差を形成す。頌はいう――坎と離とは相克して天の端倪を見ん。上天はこの人をして殺機を消弭せしむ。奇才の呉越の地に産するを思わざりき。重洋はこれより兵師を収む。「坎離」は水火の両卦で、正に讖の中の毒をもって毒を制するに相発明す。「天倪」は《荘子・斉物論》に出づり、自然の分際を指す。「戢」は兵器を収蔵するの義で、《詩経・周頌・時邁》「干戈を戢す」に出づ。指すところは従来定説なく、ここではただ字面と用いる卦象・典故を釈す。

第五八象 辛酉 震下坤上 復

大亂平,四夷服。稱兄弟,六七國。烽煙淨盡海無波,稱王稱帝又統和。猶有煞星隱西北,未能遍唱太平歌。

本象は「復」卦を配す。下体「震」は雷、上体「坤」は地で、雷は地中に蔵まれ一陽は下より回還す。ゆえに「復」と名づく。《彖伝》に曰く、其の道に反復して七日にして来り復す、と。また曰く、復は其れ天地の心を見るか、と。剥極まりて反り生機重ねて啓くの義を取る。讖はいう――大乱は平定す。四方の夷は帰服す。彼此兄弟を以て相称す。共に六七箇の国家あり。四句は乱の定まりて後に列邦並立して相安んずるを写し、上象の「四夷讋服」と一脈相承す。頌はいう――烽烟は掃蕩浄尽し、海上に波濤なし。王を称し帝を称すもまた統和に帰す。ただなお煞星の西北に隠伏するあり。処処に太平の歌を唱えんとは未だ能わざりき。「煞星」は術家の謂う凶神で、ここでは残存の禍根を借喩す。末句は「未能」の二字をもって余波を留め、正に復卦の一陽初生・其の道未だ盛ならざるの卦義に合す。指すところは従来解説一つならず、ここでは実指を為さず。

第五九象 壬戌 兌下坤上 臨

無城無府,無爾無我。天下一家,治臻大化。一人為大世界福,手執籤筒拔去竹。紅黃黑白不分明,東南西北盡和睦。

本象は「臨」卦を配す。下体「兌」は沢、上体「坤」は地で、沢の上に地ありて高きに居りて下に臨む。二陽は下より漸く長ず。ゆえに「臨」と名づく。《象伝》に曰く、君子は以て教を思うこと窮りなく、民を容保すること疆なし、と。上を以て下に臨み涵容して広く被らすの義を取る。讖はいう――城なく府もなし。汝なく我もなし。天下は一家に合成す。治道は大化の境に達す。四句は層層に疆界・人我を泯除し、全書の中で最も大同の説に近き一象なり。頌はいう――一人は大と為り、是れ世界の福分なり。手裏に籤筒を持ちて竹を抽き去る。紅・黄・黒・白は彼此を分たず、東南西北はみな和睦す。「一」と「人」とは相合して正に一つの「大」の字を成す拆字なり。「籤」の字は竹冠を去れば、余すところの形は旧解で別に一字を成すとし、各家の指すところ一つならず。「紅黄黒白」は四色を挙げて衆類を概す。指すところは従来定説なく、ここではただ字面と其の中の拆字を釈す。

第六十象 癸亥 乾下坤上 泰

一陰一陽,無始無終。終者自終,始者自始。茫茫天數此中求,世道興衰不自由。萬萬千千說不盡,不如推背去歸休。

本象は「泰」卦を配す。下体「乾」は天、上体「坤」は地で、天気は下降し地気は上騰し、二気交感して万物亨通す。ゆえに「泰」と名づく。《彖伝》に曰く、天地交りて万物通ず、と。第四象の「否」と正に相対反す。全書の六十象は「泰」を以て收束し、否極まりて泰来り、周りて復た始まるの意を取る。讖はいう――一陰一陽。開始なく、終結もなし。終るべきは自ら終結に去り、始まるべきは自ら開始に去る。四句は直ちに《周易・繋辞》「一陰一陽の謂の道」を引申し、全書を循環の理に帰す。頌はいう――茫茫たる天数はみなこの裏面より尋求すべし。世道の興衰は人に由りて主を為すを得ず。千万々々言うも尽くすべからず。推背して歇息せばに如かず。末句は第一象の「茫茫天地」「周而复始」の諸語を照応して首尾相銜え、また《推背図》の書名の由来を交代す。「帰休」は手を罷めて退隠するを謂う。旧本はこの象をもって全書の結束とし、第一象の総序と相対し、具体の史事に繋げず。

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