分身集会品第二
爾時,百千萬億不可思、不可議、不可量、不可說、無量阿僧祇世界,所有地獄處,分身地藏菩薩,俱來集在忉利天宮。以如來神力故,各以方面,與諸得解脫從業道出者,亦各有千萬億那由他數,共持香華,來供養佛。彼諸同來等輩,皆因地藏菩薩教化,永不退轉於阿耨多羅三藐三菩提。是諸眾等,久遠劫來,流浪生死,六道受苦,暫無休息。以地藏菩薩廣大慈悲,深誓願故,各獲果證。既至忉利,心懷踴躍,瞻仰如來,目不暫捨。
爾の時、百千万億の不可思・不可議・不可量・不可説・無量阿僧祇世界の、所有の地獄処の分身地蔵菩薩、皆来集して忉利天宮に在り。如来の神力の故を以て、各々彼の方より、諸の解脱を得て業道より出で来たる者と、亦各々千万億那由他の数にして、共に香花を持して、来たりて仏を供養せり。彼の同じく来たる同儕は、皆地蔵菩薩の教化に因りて、阿耨多羅三藐三菩提(無上正等正正覚、仏の証し給う円満の覚り)に於て永不退転せり。是の大衆、久遠劫より已来、生死に流浪して、六道に苦しみ、暫く休息せず。地蔵菩薩の広大慈悲・深誓願の故を以て、各々果証を獲得せり。忉利に至りて已って、心に踊躍を懐き、如来を瞻仰して、目もくばりもせず。
爾時,世尊舒金色臂,摩百千萬億不可思、不可議、不可量、不可說、無量阿僧祇世界諸分身地藏菩薩摩訶薩頂,而作是言:「吾於五濁惡世,教化如是剛強眾生,令心調伏,捨邪歸正。十有一二,尚惡習在。吾亦分身千百億,廣設方便。或有利根,聞即信受。或有善果,勤勸成就。或有暗鈍,久化方歸。或有業重,不生敬仰。如是等輩眾生,各各差別,分身度脫。或現男子身,或現女人身,或現天龍身,或現神鬼身,或現山林川原、河池泉井,利及於人,悉皆度脫。或現天帝身,或現梵王身,或現轉輪王身,或現居士身,或現國王身,或現宰輔身,或現官屬身,或現比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷身,乃至聲聞、羅漢、辟支佛、菩薩等身,而以化度。非但佛身,獨現其前。汝觀吾累劫勤苦,度脫如是等難化剛強罪苦眾生。其有未調伏者,隨業報應。若墮惡趣,受大苦時,汝當憶念吾在忉利天宮,殷勤付囑。令娑婆世界,至彌勒出世已來眾生,悉使解脫,永離諸苦,遇佛授記。」
爾の時、世尊は金色の臂を舒かれて、百千万億不可思・不可議・不可量・不可説・無量阿僧祇世界の諸の分身地蔵菩薩摩訶薩の頂を摩でて、而もかくの如く言さく、「我は五濁悪世に於て、かくの如き剛強の衆生を教化して、心を調伏せしめ、邪を捨てて正に帰せしむ。十人に一人二人、悪習猶存り。我もまた身を分けて千百億にし、広く方便を設く。或いは利根にして、一聞すれば信受す。或いは善果にして、勤めて勧導して成就す。或いは暗鈍にして、久しく化して乃ち帰す。或いは業重くして、敬仰を生ぜず。是の如き等の衆生、各々差別有り、身を分けて度脱す。或いは男子身を現じ、或いは女人身を現じ、或いは天龍身を現じ、或いは神鬼身を現じ、或いは山林川原・河池泉井を現じて、人に利益せり、皆悉く度脱せり。或いは天帝身を現じ、或いは梵王身を現じ、或いは転輪王身を現じ、或いは居士身を現じ、或いは国王身を現じ、或いは宰輔身を現じ、或いは官属身を現じ、或いは比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷身を現じ、乃至声聞・阿羅漢・辟支仏・菩薩等の身を現じて、以て化度す。但だ仏身を以て、独り其の前に現ずるに非ず。汝が我が累劫の勤苦、かくの如き難化剛強の罪苦衆生を度脱せしを見よ。其の中に未だ調伏せざる者は、業に随って報応す。若し悪趣に堕ちて、大苦を受くるの時、汝当に我が忉利天宮に於ける殷勤の付嘱を憶念すべし。娑婆世界をして、弥勒出世以来の衆生に至るまで、悉く解脱せしめ、永く諸の苦を離れ、仏に遇いて授記を受けしめよ」と。
爾時,諸世界分身地藏菩薩,共復一形,涕淚哀戀,白其佛言:「我從久遠劫來,蒙佛接引,使獲不可思議神力,具大智慧。我所分身,遍滿百千萬億恆河沙世界。每一世界,化百千萬億身。每一身,度百千萬億人,令歸敬三寶,永離生死,至涅槃樂。但於佛法中,所為善事,一毛一渧,一沙一塵,或毫髮許,我漸度脫,使獲大利。唯願世尊不以後世惡業眾生為慮。」如是三白佛言:「唯願世尊不以後世惡業眾生為慮。」
爾の時、諸の世界の分身地蔵菩薩、共に復た一形と為り、涕泪哀恋して、仏に白して言さく、「我は久遠劫より已来、仏の接引に蒙りて、不可思議の神力を獲得し、大智慧を具せり。我が分かる所の身、百千万億恒河沙世界に遍満せり。每一世界に、百千万億身を化す。每一身に、百千万億人を度して、三宝に帰敬せしめ、永く生死を離れ、涅槃の楽に至らしむ。但だ仏法の中に於て、作す所の善事、一毛一滴、一沙一塵、或いは毫髪許りなりとも、我漸く度脱して、大利を得しむ。唯願はくは世尊、後世の悪業衆生を以て慮りと為さざれ」と。かくの如く三返仏に白して言さく、「唯願はくは世尊、後世の悪業衆生を以て慮りと為さざれ」と。
爾時,佛讚地藏菩薩言:「善哉!善哉!吾助汝喜。汝能成就久遠劫來,發弘誓願,廣度將畢,即證菩提。」
爾の時、仏は地蔵菩薩を讃歎したまわく、「善なるかな善なるかな!我は汝が歓喜を助けん。汝能く久遠劫より已来に発したる弘誓願を成就し、広度将に畢わらんとして、即ち菩提を証せん」と。
観衆生業縁品第三
爾時,佛母摩耶夫人,恭敬合掌,問地藏菩薩言:「聖者!閻浮眾生,造業差別,所受報應,其事云何?」
爾の時、仏母摩耶夫人は恭敬合掌して、地蔵菩薩に問うて言さく、「聖者!閻浮提の衆生は業を造ること各々差別有りて、受くる所の報は、云何にせん」と。
地藏答言:「千萬世界,乃及國土,或有地獄,或無地獄,或有女人,或無女人,或有佛法,或無佛法,乃至聲聞、辟支佛,亦復如是。非但地獄,罪報一等。」摩耶夫人重白菩薩:「且願聞於閻浮罪報,所感惡趣。」地藏答言:「聖母!唯願聽受,我粗說之。」佛母白言:「願聖者說。」
地蔵答えて言さく、「千万の世界、乃至国土、或いは地獄有り、或いは地獄無し。或いは女人有り、或いは女人無し。或いは仏法有り、或いは仏法無し。乃至声聞・辟支仏、亦復かくの如し。但だ地獄の罪報のみに非ず」と。摩耶夫人は重ねて菩薩に白して言さく、「且く閻浮提の罪報の、感ずる所の悪趣を聞かんことを願う」と。地蔵答えて言さく、「聖母!聴受したまえ、我麁く説かん」と。仏母言さく、「願はくは聖者説かれよ」と。
爾時,地藏菩薩白聖母言:「南閻浮提罪報,名號如是:若有眾生,不孝父母,或至殺害,當墮無間地獄,千萬億劫,求出無期。若有眾生,出佛身血,毀謗三寶,不敬尊經,亦當墮於無間地獄,千萬億劫,求出無期。若有眾生,侵損常住,玷汙僧尼,或伽藍內,恣行淫慾,或殺或害,如是等輩,當墮無間地獄,千萬億劫,求出無期。若有眾生,偽作沙門,心非沙門,破用常住,欺誑白衣,違背戒律,種種造惡,如是等輩,當墮無間地獄,千萬億劫,求出無期。若有眾生,偷竊常住財物穀米、飲食衣服,乃至一物不與取者,當墮無間地獄,千萬億劫,求出無期。」
爾の時、地蔵菩薩は聖母に対して言さく、「南閻浮提の罪報、名号かくの如し。若し衆生有りて父母に孝せず、乃至殺害せば、当に無間地獄に堕ちて、千万億劫、出づる期を求めて得ること無かるべし。若し衆生有りて仏身より血を出し、三宝を毀謗し、尊経を敬わざれば、亦当に無間地獄に堕ちて、千万億劫、出づる期を求めて得ること無かるべし。若し衆生有りて常住を侵損し、僧尼を玷点し、或いは伽藍の中に恣に淫を行い、或いは殺し或いは害する、是の如き者は、当に無間地獄に堕ちて、千万億劫、出づる期を求めて得ること無かるべし。若し衆生有りて沙門を詐作して、心は沙門に非ざり、常住を破用し、在家人を欺誑し、律戒に違背して、種々悪を造る、是の如き者は、当に無間地獄に堕ちて、千万億劫、出づる期を求めて得ること無かるべし。若し衆生有りて常住の財物・穀米・飲食・衣服を偸盗し、乃至一物を与えずして取る者は、当に無間地獄に堕ちて、千万億劫、出づる期を求めて得ること無かるべし」と。
地藏白言:「聖母!若有眾生,作如是罪,當墮五無間地獄,求暫停苦,一念不得。」
地蔵言さく、「聖母!若し衆生有りて是の如き罪を作さば、当に五無間地獄に堕ちて、暫時の停苦を求むるも、一念も得ること能わざるべし」と。
摩耶夫人重白地藏菩薩言:「云何名為無間地獄?」
摩耶夫人は重ねて地蔵菩薩に白して言さく、「云何にか無間地獄と名づくる」と。
地藏白言:「聖母!諸有地獄,在大鐵圍山之內。其大地獄,有一十八所。次有五百,名號各別。次有千百,名字亦別。無間獄者,其獄城周匝八萬餘里,其城純鐵,高一萬裡,城上火聚,少有空缺。其獄城中,諸獄相連,名號各別。
地蔵言さく、「聖母!諸の地獄は大鉄囲山の内に在り。大地獄十八所有り。次に五百有りて、名号各別なり。次に千百有りて、名字亦各別なり。無間獄は、其の獄城の周匝八万餘里、其の城は純鉄にして、高一万里、城上は火聚にして、少なくても空缺有り。其の獄城の中、諸の獄相い連なり、名号各別なり。
「獨有一獄,名曰無間。其獄周匝萬八千里,獄墻高一千里,悉是鐵圍,上火徹下,下火徹上,鐵蛇鐵狗,吐火馳逐,獄墻之上,東西而走。獄中有床,遍滿萬裡。一人受罪,自見其身,遍臥滿床。千萬人受罪,亦各自見,身滿床上。眾業所感,獲報如是。又諸罪人,備受眾苦。千百夜叉,及以惡鬼,口牙如劍,眼如電光,手復銅爪,拖罪人。復有夜叉,執大鐵戟,中罪人身,或中口鼻,或中腹背,拋空翻接,或置床上。復有鐵鷹,啗罪人目。復有鐵蛇,繳罪人頸。百肢節內,悉下長釘,拔舌耕犁,抽腸剉斬,洋銅灌口,熱鐵纏身。萬死千生,業感如是。動經億劫,求出無期。此界壞時,寄生他界。他界次壞,轉寄他方。他方壞時,展轉相寄。此界成後,還復而來。無間罪報,其事如是。
(地蔵菩薩また説きていわく、)「独り一獄有りて、名を無間と曰う。其の獄の周匝一万八千里、獄牆高一千里、悉く是れ鉄囲にして、上の火は下に徹し、下の火は上に徹し、鉄蛇鉄狗は火を吐きて馳逐して、獄牆の上を東西に奔走す。獄中に牀有りて、万里に遍満す。一人の受罪するは、自ら身の牀に遍臥して満てるを見る。千万人の受罪するも、亦各各自ら身の牀上に満てるを見る。衆業の感ずる所、報を獲ることかくの如し。また諸の罪人は衆苦に備え受す。千百の夜叉および悪鬼、口牙は剣の如く、眼は電光の如く、手は復み銅爪を具し、罪人を拖拽す。又有る夜叉は大鉄戟を執りて、罪人の身を刺し、或いは口鼻を中る、或いは腹背を中りて、空中に拋てて翻接し、或いは牀上に置く。又有る鉄鷹は罪人の目を啖う。又有る鉄蛇は罪人の頸を絞む。百肢節の内に悉く長釘を下し、舌を抜きて犁を以て耕し、腸を抽きて剉斬し、烊銅を口に灌ぎ、熱鉄を身に纏う。万死千生、業感かくの如し。動くれば億劫を経て、出づる期を求めて得ること無し。此の界壊るるの時、他界に寄生す。他界また次いで壊るるの時、他方に転寄す。他方壊るるの時、展転相い寄す。此の界成じて後、復た還り来たる。無間の罪報、事はかくの如し。
「又五事業感,故稱無間。何等為五?一者,日夜受罪,以至劫數,無時間絕,故稱無間。二者,一人亦滿,多人亦滿,故稱無間。三者,罪器叉棒,鷹蛇狼犬,磨鋸鑿,剉斫湯,鐵網鐵繩,鐵驢鐵馬,生革絡首,熱鐵澆身,飢吞鐵丸,渴飲鐵汁。從年竟劫,數那由他,苦楚相連,更無間斷,故稱無間。四者,不問男子女人,羗胡夷狄,老幼貴賤,或龍或神,或天或鬼,罪行業感,悉同受之,故稱無間。五者,若墮此獄,從初入時,至百千劫,一日一夜,萬死萬生。求一念間,暫住不得。除非業盡,方得受生。以此連綿,故稱無間。」
(地蔵菩薩また説きていわく、)「また五事の業感有るが故に、無間と称す。何を以て五と為すや。一には日夜受罪して、劫数に至るまで、時断なし、故に無間と称す。二には一人も亦満ち、多人も亦満つ、故に無間と称す。三には罪器——叉棒・鷹蛇狼犬・磨鋸鑿・剉斫湯・鉄網鉄縄・鉄驢鉄馬、生皮にして絡頭し、熱鉄を身に浇に浇ぎ、飢えて鉄丸を呑み、渇して鉄汁を飲み、年より劫に至るまで、其数那由他、苦楚相い連なりて、更に間断無し、故に無間と称す。四には男子女人を問わず、羌胡夷狄、老幼貴賤、或いは龍或いは神、或いは天或いは鬼、罪行業感、悉く同じく受く、故に無間と称す。五には若し此の獄に堕つれば、初入の時より百千劫に至るまで、一日一夜万死万生、一念間に暫く停まるを求むるも得ること能わざるべし。業尽きざるに非ざれば、受生すること能わず。此の連綿あるが故を以て、無間と称す」と。
地藏菩薩白聖母言:「無間地獄,粗說如是。若廣說地獄罪器等名,及諸苦事,一劫之中,求說不盡。」
地蔵菩薩は聖母に対して言さく、「無間地獄、麁説すればかくの如し。若し広く地獄罪器等の名、および諸の苦事を説かば、一劫の中に、求めても説き尽くさじ」と。
摩耶夫人聞已,愁憂合掌,頂禮而退。
摩耶夫人は聞き畢わりて、愁憂合掌して、頂礼して退きたり。
閻浮衆生業感品第四
爾時,地藏菩薩摩訶薩白佛言:「世尊!我承佛如來威神力故,遍百千萬億世界,分是身形,救拔一切業報眾生。若非如來大慈力故,即不能作如是變化。我今又蒙佛付囑,至阿逸多成佛已來,六道眾生,遣令度脫。唯然,世尊,願不有慮。」
爾の時、地蔵菩薩摩訶薩は仏に白して言さく、「世尊!我は仏の如来威神力の故に承りて、百千万億世界に遍じて、かくの如き身形を分かちて、一切の業報衆生を救抜す。若し如来大慈力の故に非ざれば、即ち能くかくの如き変化を作すこと能わず。我いままた仏の付嘱に蒙りて、阿逸多(弥勒菩薩)の成仏以来に至るまで、六道の衆生、皆解脱せしめんとす。唯然り、世尊、願はくは慮り無かれ」と。
爾時,佛告地藏菩薩:「一切眾生,未解脫者,性識無定。惡習結業,善習結果,為善為惡,逐境而生。輪轉五道,暫無休息,動經塵劫,迷惑障難。如魚遊網,將是長流,脫入暫出,又復遭網。以是等輩,吾當憂念。汝既畢是往願,累劫重誓,廣度罪輩,吾復何慮?」
爾の時、仏は地蔵菩薩に告げたまわく、「一切衆生の未だ解脱せざる者は、性識定まり無し。悪習は業を結び、善習は果を結び、善を為し悪を為すは、境に随いて生ず。五道に輪転して、暫く休息無く、動くれば塵劫を経て、迷惑障難す。たとえば魚の網に遊びて、長流を以て出路と為すが如し、脱ぎて入りて暫く出づるも、又網に遭う。是の如き人、我当に憂念すべし。汝既に往昔の願を圓備し、累劫重誓して、広く罪輩を度せんとす、我復何の慮りかあらん」と。
說是語時,會中有一菩薩摩訶薩,名定自在王,白佛言:「世尊!地藏菩薩累劫已來,各發何願?今蒙世尊,殷勤讚歎。唯願世尊,略而說之。」
是の語を説きし時、会中に一の菩薩摩訶薩有りて、名を定自在王と曰い、仏に白して言さく、「世尊!地蔵菩薩は累劫以来、各々何の願を作したまえるや、今世尊の殷勤の讃歎に蒙る。唯願はくは世尊、畧めて説かれよ」と。
爾時,世尊告定自在王菩薩:「諦聽!諦聽!善思念之,吾當為汝,分別解說。乃往過去,無量阿僧祇那由他不可說劫,爾時有佛,號一切智成就如來、應供、正遍知、明行足、善逝、世間解、無上士、調御丈夫、天人師、佛、世尊,其佛壽命六萬劫。未出家時,為小國王,與一鄰國王為友,同行十善,饒益眾生。其鄰國內,所有人民,多造眾惡。二王議計,廣設方便。一王發願,早成佛道,當度是輩,令使無餘。一王發願,若不先度罪苦,令是安樂,得至菩提,我終未願成佛。」
爾の時、世尊は定自在王菩薩に告げたまわく、「諦聴!諦聴!善く思念せよ、我当に汝が為に分別解説せん。往昔過去、無量阿僧祇那由他不可説劫、爾の時仏有りて、号は一切智成就如来・応供・正遍知・明行足・善逝・世間解・無上士・調御丈夫・天人師・仏・世尊、其の仏の寿命六万劫なり。未だ出家せざりし時は、小国王たりき。一の隣国王と友と為りて、十善を同行し、衆生を饒益せり。其の隣国の内、所有の人民は多く諸の悪を造れり。二王議して、広く方便を設く。一王発願していわく、早く仏道を成じ、当に斯輩を度して、余遺すること無からしめんと。一王発願していわく、若しまず罪苦を度して、安楽せしめ、菩提に至らしめざれば、我終に願わく仏を成ぜじと。」
佛告定自在王菩薩:「一王發願早成佛者,即一切智成就如來是。一王發願永度罪苦眾生,未願成佛者,即地藏菩薩是。復於過去無量阿僧祇劫,有佛出世,名清淨蓮華目如來,其佛壽命四十劫。像法之中,有一羅漢,福度眾生。因次教化,遇一女人,字曰光目,設食供養。羅漢問之:『欲願何等?』光目答言:『我以母亡之日,資福救拔,未知我母生處何趣?』羅漢愍之,為入定觀,見光目女母墮在惡趣,受極大苦。羅漢問光目言:『汝母在生,作何行業?今在惡趣,受極大苦。』光目答言:『我母所習,唯好食噉魚鼈之屬。所食魚鼈多食其子,或炒或煮,恣情食噉。計其命數,千萬復倍。尊者慈愍,如何哀救?』羅漢愍之,為作方便,勸光目言:『汝可志誠念清淨蓮華目如來,兼塑畫形像,存亡獲報。』」
仏定自在王菩薩に告げたまわく、「一王の発願して早く仏を成ぜんとしたる者は、即ち一切智成就如来是れなり。一王の発願して永く罪苦衆生を度し、願わく仏を成ぜじとしたる者は、即ち地蔵菩薩是れなり。復み過去無量阿僧祇劫に、仏出世して、名は清浄蓮華目如来、其の仏の寿命四十劫なり。像法の中に、一の阿羅漢有りて、福を以て衆生を度す。因次に教化し、一の女人に遇う、名を光目と曰い、食を設けて供養せり。阿羅漢彼女に問うて言さく、『何を求めんと欲するや』と。光目答えて言さく、『我は母の亡日に於て福を資して救抜せんと欲し、我が母の生ずる所の趣を未知なり』と。阿羅漢彼女を憐愍して、彼女が為に入定観察して、光目女の母、悪趣に堕ちて極大苦を受くるを見たり。阿羅漢光目に問うて言さく、『汝が母は在生に何の行業を作せるや、今悪趣に於て極大苦を受く』と。光目答えて言さく、『我が母の所習、唯魚鱉の類を食啖するを好む。所食の魚鱉は、多く其子を食啖し、或いは炒め或いは煮て、恣情に食啖せり。其の命の数を計すれば、千万復倍するなり。尊者慈愍したまえ、如何にか哀救せん』と。阿羅漢彼女を憐愍して、彼女が為に方便を作して、光目を勧めて言さく、『汝可く志誠に清浄蓮華目如来を念じ、兼ねて形像を塑画せよ、存亡共に報を獲ん』と。」
「光目聞已,即捨所愛,尋畫佛像,而供養之。復恭敬心,悲泣瞻禮。忽於夜後,夢見佛身,金色晃耀,如須彌山,放大光明,而告光目:『汝母不久,當生汝家,才覺飢寒,即當言說。』」
(仏また説きていわく、)「光目は聞き已って、即ち所愛を捨てて、遂に仏像を画きて供養し、又恭敬の心を以て悲泣瞻礼せり。忽ち夜後に仏身を夢見る、金色晃耀して、須弥山の如し、大光明を放ちて、光目に告げて曰わく、『汝が母は久しからずして当に汝が家に生ずべく、饑寒を覚えれば、便ち言語せん』と。」
「其後家內,婢生一子,未滿三日,而乃言說,稽首悲泣,告於光目:『生死業緣,果報自受。吾是汝母,久處闇冥,自別汝來,累墮大地獄。蒙汝福力,方得受生。為下賤人,又復短命,壽年十三,更落惡道。汝有何計,令吾脫免?』光目聞說,知母無疑,哽咽悲啼,而白婢子:『既是我母,合知本罪,作何行業,墮於惡道?』婢子答言:『以殺害毀罵二業受報。若非蒙福,救拔吾難,以是業故,未合解脫。』光目問言:『地獄罪報,其事云何?』婢子答言:『罪苦之事,不忍稱說,百千歲中,卒白難竟。』」
(仏また説きていわく、)「其の後家の婢女は一子を産みて、未だ三日満たざるに能く言語し、稽首悲泣して、光目に告げて曰わく、『生死業縁、果報は自ら受くるなり。我は汝が母にして、久しく暗冥に処せり。自ら汝に別れて已来、累々大地獄に堕つ。汝が福力に蒙りて、方に受生を得たり。下賤人と為りて、又復短命、寿年十三、更に悪道に落つ。汝何の計策有りて、我を脱免せしめん』と。光目聞きて、説くは母なりと知りて疑惑無く、哽咽悲啼して、婢子に白して言さく、『既に我が母是れなれば、当に本罪を知るべし、何の行業を作して、悪道に堕したる』と。婢子答えて言さく、『殺害・毀罵の二業を以て報を受けたり。若し福に蒙りて我が難を救拔せざれば、此の業の故を以て、未だ解脱を合せざるなり』と。光目問うて言さく、『地獄の罪報、事云何にせん』と。婢子答えて言さく、『罪苦の事、称説するに忍びず、百千歳の中に、卒に説くも説き尽くさじ』と。」
「光目聞已,啼淚號泣,而白空界:『願我之母,永脫地獄。畢十三歲,更無重罪,及歷惡道。十方諸佛,慈哀愍我,聽我為母所發廣大誓願:若得我母永離三塗,及斯下賤,乃至女人之身,永劫不受者,願我自今日後,對清淨蓮華目如來像前,卻後百千萬億劫中,應有世界,所有地獄,及三惡道諸罪苦眾生,誓願救拔,令離地獄惡趣、畜生、餓鬼等。如是罪報等人,盡成佛竟,我然後方成正覺。』」
(仏また説きていわく、)「光目は聞き已って、啼泪号泣して、空界に白して言さく、『願はくは我が母、永く地獄を脱せん。十三歳を畢えて後、更に重罪無く、および悪道を経歴せんことを。十方の諸仏、慈哀して我を憐愍したまえ、我が母が為に発する所の広大誓願を聴かん:若し我が母をして永く三涂(地獄・餓鬼・畜生)を離れ、および斯の下賤、乃至女人の身、永劫に受けざらしめば——願はくは我、今日より已後、清浄蓮華目如来の像の前に於て、却りて後百千万億劫の中、有るべき世界、所有の地獄および三悪道の諸の罪苦衆生に、誓願救抜して、地獄悪趣・畜生・餓鬼等を離れしめん。是の如き罪報等の人、尽く仏を成じ畢わりて、我然る後に正覚を成ぜん』と。」
「發誓願已,具聞清淨蓮華目如來而告之曰:『光目!汝大慈愍,善能為母發如是大願。吾觀汝母,十三歲畢,捨此報已,生為梵志,壽年百歲。過是報後,當生無憂國土,壽命不可計劫。後成佛果,廣度人天,數如恆河沙。』」
(仏また説きていわく、)「誓願を発し畢わりて、具に清浄蓮華目如来が彼女に告げて曰わくを聞きけり、『光目!汝大慈愍にして、善く母が為に是の如き大願を発せり。我汝が母を観るに、十三歳畢わりて、此の報を捨てて已って、梵志と為りて生ぜん、寿年百歳なり。過ぎて是の報の後、当に无忧国土に生じて、寿命は計り難き劫なり。後に仏果を成じて、広く人天を度して、数は恒河沙の如し』と。」
佛告定自在王:「爾時羅漢福度光目者,即無盡意菩薩是。光目母者,即解脫菩薩是。光目女者,即地藏菩薩是。過去久遠劫中,如是慈愍發恆河沙願,廣度眾生。」
仏定自在王に告げたまわく、「爾の時福を以て光目を度したる阿羅漢は、即ち無尽意菩薩是れなり。光目の母は、即ち解脱菩薩是れなり。光目女は、即ち地蔵菩薩是れなり。過去久遠劫の中、かくの如く慈愍して、恒河沙の願を発して、広く衆生を度したり」と。
「未來世中,若有男子女人,不行善者,行惡者,乃至不信因果者,邪淫妄語者,兩舌惡口者,毀謗大乘者,如是諸業眾生,必墮惡趣。若遇善知識,勸令一彈指間歸依地藏菩薩,是諸眾生,即得解脫三惡道報。若能志心歸敬,及瞻禮讚歎,香華衣服,種種珍寶,或復飲食,如是奉事者,未來百千萬億劫中,常在諸天受勝妙樂。若天福盡,下生人間,猶百千劫,常為帝王,能憶宿命因果本末。定自在王,如是地藏菩薩,有如此不可思議大威神力,廣利眾生,汝等諸菩薩,當記是經,廣宣流佈。」
(仏また説きていわく、)「未来世の中、若し男子女人有りて、善を行ぜざる者は、悪を行ぜり、乃至因果を信ぜざる、邪淫・妄語・両舌・悪口・大乗を毀謗する、是の如き諸の業の衆生は、必ず悪趣に堕つべし。若し善知識に遇い、勧めて一弹指の間に地蔵菩薩に帰依せしめば、是の衆生は即ち三悪道の報を解脱せん。若し能く志心に帰敬し、および瞻礼讃歎し、香花・衣服・種種珍寶、或いは復飲食、是の如きを奉事すれば、未来百千万億劫の中、常に諸天に於て勝妙の楽を受けん。若し天福尽きて、下生して人間に生ずれば、猶百千劫常に帝王と為りて、能く宿命の因果本末を憶念せん。定自在王!地蔵菩薩は是の如き不可思議の大威神力有りて、広く衆生を利せん。汝ら諸の菩薩、当に此の経を記持して、広く宣流布するべし」と。
定自在王白佛言:「世尊!願不有慮。我等千萬億菩薩摩訶薩,必能承佛威神,廣演是經於閻浮提,利益眾生。」
定自在王は仏に白して言さく、「世尊!願はくは慮り無かれ。我等千万億の菩薩摩訶薩、必ず能く仏威神に承りて、閻浮提に於て此の経を広く演じて、衆生を利益せん」と。
定自在王菩薩白世尊已,合掌恭敬,作禮而退。
定自在王菩薩は世尊に白して已りぬれば、合掌恭敬して、作礼して退きたり。
爾時,四方天王,俱從座起,合掌恭敬,白佛言:「世尊!地藏菩薩於久遠劫來,發如是大願,云何至今,猶度未絕,更發廣大誓言?唯願世尊,為我等說。」
爾の時、四方の天王は皆座より起きて、合掌恭敬して、仏に白して言さく、「世尊!地蔵菩薩は久遠劫より已来、かくの如き大願を発したまえば、云何して今に至るまで猶度し尽くさず、更に広大の誓言を発したまうや。唯願はくは世尊、我等が為に説きたまえ」と。
佛告四天王:「善哉!善哉!吾今為汝,及未來現在天人眾等,廣利益故,說地藏菩薩於娑婆世界,閻浮提內,生死道中,慈哀救拔,度脫一切罪苦眾生方便之事。」
仏四天王に告げたまわく、「善哉善哉!我いま汝らの為、および未来現在の天人衆等、広く利益の故を以て、地蔵菩薩が娑婆世界閻浮提の内、生死道の中に於て、慈哀救抜し、一切の罪苦衆生を度脱する方便の事を説かん」と。
四天王言:「唯然,世尊!願欲聞。」
四天王言さく、「唯然り、世尊!願はくは聞かん」と。
佛告四天王:「地藏菩薩久遠劫來,迄至於今,度脫眾生,猶未畢願。慈愍此世罪苦眾生,復觀未來無量劫中,因蔓不斷,以是之故,又發重願。如是菩薩,於娑婆世界,閻浮提中,百千萬億方便,而為教化。」
仏四天王に告げたまわく、「地蔵菩薩は久遠劫より已来、今に至るまで衆生を度脱して、猶誓願を畢えず。慈愍して此の世の罪苦衆生を愍し、復み未来の無量劫の中、因蔓に断えざるを観るが故を以て、又重ねて願を発す。是の如き菩薩は、娑婆世界閻浮提の中に於て、百千万億の方便を以て教化せり」と。
「四天王!地藏菩薩若遇殺生者,說宿殃短命報。若遇竊盜者,說貧窮苦楚報。若遇邪淫者,說雀鴿鴛鴦報。若遇惡口者,說眷屬鬪諍報。若遇毀謗者,說無舌瘡口報。若遇瞋恚者,說醜陋癃殘報。若遇慳悋者,說所求違願報。若遇飲食無度者,說飢渴咽病報。若遇畋獵恣情者,說驚狂喪命報。若遇悖逆父母者,說天地災殺報。若遇燒山林木者,說狂迷取死報。若遇前後父母惡毒者,說返生鞭撻現受報。若遇網捕生雛者,說骨肉分離報。若遇毀謗三寶者,說盲聾瘖瘂報。若遇輕法慢教者,說永處惡道報。若遇破用常住者,說億劫輪迴地獄報。若遇汙梵誣僧者,說永在畜生報。若遇湯火斬傷生者,說輪迴遞償報。若遇破戒犯齋者,說禽獸飢餓報。若遇非理毀用者,說所求闕絕報。若遇吾我貢高者,說卑使下賤報。若遇兩舌鬪亂者,說無舌百舌報。若遇邪見者,說邊地受生報。」
(仏また説きていわく、)「四天王!地蔵菩薩は若し殺生者に遇えば、宿殃短命の報を説く。若し竊盗者に遇えば、貧窮苦楚の報を説く。若し邪淫者に遇えば、雀鴿鴛鴦の報を説く。若し悪口者に遇えば、眷属闘諍の報を説く。若し毀謗者に遇えば、無舌瘡口の報を説く。若し瞋恚者に遇えば、醜陋癃残の報を説く。若し慳吝者に遇えば、所求違願の報を説く。若し飲食無度の者に遇えば、飢渇咽病の報を説く。若し畋猟恣情の者に遇えば、驚狂喪命の報を説く。若し父母に悖逆する者に遇えば、天地災殺の報を説く。若し山林木を焼く者に遇えば、狂迷取死の報を説く。若し前後の父母に悪毒なる者に遇えば、返生して鞭撻現受の報を説く。若し網捕して生雛を獲る者に遇えば、骨肉分離の報を説く。若し三宝を毀謗する者に遇えば、盲聾瘖唖の報を説く。若し法を軽毀し教に慢る者に遇えば、永く悪道に処るの報を説く。若し常住を破用する者に遇えば、億劫地獄輪回の報を説く。若し梵行を汚し僧を誣う者に遇えば、永く畜生に在るの報を説く。若し湯火斬傷の生を害する者に遇えば、輪回逓相償の報を説く。若し戒を破り斎を犯す者に遇えば、禽獣飢餓の報を説く。若し非理に毀用する者に遇えば、所求闕絶の報を説く。若し貢高我慢の者に遇えば、卑使下賤の報を説く。若し両舌闘乱の者に遇えば、無舌百舌の報を説く。若し邪見の者に遇えば、辺地受生の報を説く。」
「如是等閻浮提眾生,身口意業,惡習結果,百千報應,今粗略說。如是等閻浮提眾生,業感差別,地藏菩薩百千方便,而教化之。是諸眾生,先受如是等報,後墮地獄,動經劫數,無有出期。是故汝等,護人護國,無令是諸眾業,迷惑眾生。」
(仏また説きていわく、)「是の如き等の閻浮提の衆生、身口意の業、悪習の結果、百千の報応、今麁く説く。是の如き等の閻浮提の衆生、業感の差別、地蔵菩薩は百千の方便を以て而も教化せり。是の衆生は先に是の如き等の報を受け、後に地獄に堕ちて、動くれば劫数を経て、出づる期無し。故に汝らは人を護り国を護り、此の衆業をして衆生を惑わせること無かれ」と。
四天王聞已,涕淚悲歎,合掌而退。
四天王は聞き已って、涕泪悲嘆して、合掌して退きたり。
;地藏菩薩本願經捲上
;地蔵菩薩本願経巻上
*讚
讃。
如來慈愍,轉大法輪,婆羅門女救慈親,覺華度迷津,摩耶夫人,請問地藏因。
如来慈愍して、大法輪を転じ;婆羅門女は慈親を救い、覚華は迷津を度し;摩耶夫人は、地蔵の因縁を請問す。
南無常住十方佛(三稱)
帰命常住十方仏。(三遍唱える)
巻中
地獄名号品第五
爾時,普賢菩薩摩訶薩白地藏菩薩言:「仁者!願為天龍四眾,及未來現在一切眾生,說娑婆世界及閻浮提罪苦眾生,所受報處、地獄名號及惡報等事,使未來世末法眾生,知是果報。」
爾の時、普賢菩薩摩訶薩は地蔵菩薩に対して言さく、「仁者!願はくは天龍四衆、および未来現在の一切衆生の為に、娑婆世界および閻浮提の罪苦衆生の受くる所の報処、地獄名号および悪報等の事を説きて、未来世の末法衆生をして是の果報を知らしめよ」と。
地藏答言:「仁者!我今承佛威神,及大士之力,略說地獄名號,及罪報惡報之事。仁者,閻浮提東方有山,號曰鐵圍,其山黑,無日月光。有大地獄,號極無間。又有地獄,名大阿鼻。復有地獄,名曰四角。復有地獄,名曰飛刀。復有地獄,名曰火箭。復有地獄,名曰夾山。復有地獄,名曰通槍。復有地獄,名曰鐵車。復有地獄,名曰鐵床。復有地獄,名曰鐵牛。復有地獄,名曰鐵衣。復有地獄,名曰千刃。復有地獄,名曰鐵驢。復有地獄,名曰烊銅。復有地獄,名曰抱柱。復有地獄,名曰流火。復有地獄,名曰耕舌。復有地獄,名為剉首。復有地獄,名曰燒腳。復有地獄,名曰啗眼。復有地獄,名曰鐵丸。復有地獄,名曰諍論。復有地獄,名曰鐵鈇。復有地獄,名曰多瞋。」
地蔵答えて言さく、「仁者!我いま仏の威神、および大士の力に承りて、畧めて地獄名号および罪報・悪報の事を説かん。仁者!閻浮提の東方に山有りて、号を鉄囲と曰う。其の山は黒くて、日月の光無し。有る大地獄、号は極無間。又有る地獄、名は大阿鼻。又有る地獄、名を四角と曰う。又有る地獄、名を飛刀と曰う。又有る地獄、名を火箭と曰う。又有る地獄、名を夾山と曰う。又有る地獄、名を通槍と曰う。又有る地獄、名を鉄車と曰う。又有る地獄、名を鉄牀と曰う。又有る地獄、名を鉄牛と曰う。又有る地獄、名を鉄衣と曰う。又有る地獄、名を千刃と曰う。又有る地獄、名を鉄驢と曰う。又有る地獄、名を烊銅と曰う。又有る地獄、名を抱柱と曰う。又有る地獄、名を流火と曰う。又有る地獄、名を耕舌と曰う。又有る地獄、名を剉首と曰う。又有る地獄、名を焼脚と曰う。又有る地獄、名を啖眼と曰う。又有る地獄、名を鉄丸と曰う。又有る地獄、名を諍論と曰う。又有る地獄、名を鉄𫓧と曰う。又有る地獄、名を多瞋と曰う。」
地藏白言:「仁者!鐵圍之內,有如是等地獄,其數無限。更有叫喚地獄、拔舌地獄、糞尿地獄、銅鎖地獄、火象地獄、火狗地獄、火馬地獄、火牛地獄、火山地獄、火石地獄、火床地獄、火梁地獄、火鷹地獄、鋸牙地獄、剝皮地獄、飲血地獄、燒手地獄、燒腳地獄、倒刺地獄、火屋地獄、鐵屋地獄、火狼地獄。如是等地獄,其中各各復有諸小地獄,或一或二,或三或四,乃至百千。其中名號,各各不同。」
地蔵言さく、「仁者!鉄囲の内には是の如き等の地獄有りて、其数無限なり。更有る叫喚地獄、拔舌地獄、糞尿地獄、銅鎖地獄、火象地獄、火狗地獄、火馬地獄、火牛地獄、火山地獄、火石地獄、火牀地獄、火梁地獄、火鷹地獄、鋸牙地獄、剥皮地獄、飲血地獄、焼手地獄、焼脚地獄、倒刺地獄、火屋地獄、鉄屋地獄、火狼地獄。是の如き等の地獄、其の中に各々また諸の小地獄有りて、或いは一或いは二、或いは三或いは四、乃至百千なり。其の中の名号、各々不同なり」と。
地藏菩薩告普賢菩薩言:「仁者!此者皆是南閻浮提行惡眾生,業感如是。業力甚大,能敵須彌,能深巨海,能障聖道。是故眾生莫輕小惡,以為無罪,死後有報,纖毫受之。父子至親,岐路各別,縱然相逢,無肯代受。我今承佛威力,略說地獄罪報之事。唯願仁者,暫聽是言。」
地蔵菩薩は普賢菩薩に告げて言さく、「仁者!是の如き者は、皆是れ南閻浮提の悪を行ふ衆生の、業感かくの如くせしなり。業力甚だ大なり、須弥に敵する能く、巨海に深きを過ぎる能く、聖道を障せる能くして故に、衆生は小悪を軽視すること莫かれ、以て罪無きと為すこと勿れ。死して後、報有りて、繊毫悉く之を受く。父子至親なりと雖も、岐路各別なり、縦い相逢うとも、肯んじて代受せず。我いま仏の威力に承りて、畧めて地獄の罪報の事を説く。唯願はくは仁者、暫く是の語を聴け」と。
普賢答言:「吾已久知三惡道報,望仁者說,令後世末法一切惡行眾生,聞仁者說,使令歸佛。」
普賢答えて言さく、「我は已に久しく三悪道の報を知る、望むらくは仁者説きて、後世の末法の一切悪行の衆生をして、仁者の説くを聞かしめ、彼らをして仏に帰せしめよ」と。
地藏白言:「仁者!地獄罪報,其事如是:或有地獄,取罪人舌,使牛耕之。或有地獄,取罪人心,夜叉食之。或有地獄,鑊湯盛沸,煮罪人身。或有地獄,赤燒銅柱,使罪人抱。或有地獄,使諸火燒,趁及罪人。或有地獄,一向寒氷。或有地獄,無限糞尿。或有地獄,純飛鈒鑗。或有地獄,多攢火槍。或有地獄,唯撞胸背。或有地獄,但燒手足。或有地獄,盤絞鐵蛇。或有地獄,驅逐鐵狗。或有地獄,盡駕鐵騾。仁者,如是等報,各各獄中,有百千種業道之器,無非是銅,是鐵,是石,是火。此四種物,眾業行感。若廣說地獄罪報等事,一一獄中,更有百千種苦楚,何況多獄。我今承佛威神,及仁者問,略說如是。若廣解說,窮劫不盡。」
地蔵言さく、「仁者!地獄の罪報、事はかくの如し。或いは地獄有りて、罪人の舌を取りて、牛をして耕さしむ。或いは地獄有りて、罪人の心を取りて、夜叉食らう。或いは地獄有りて、鑊湯に沸湯を盛りて、罪人の身を煮る。或いは地獄有りて、焼きし銅柱を、罪人をして抱かしむ。或いは地獄有りて、諸の火をして焼きて、罪人に追及せしむ。或いは地獄有りて、一向に寒冰なり。或いは地獄有りて、無限の糞尿なり。或いは地獄有りて、純に飛鏗の利刃なり。或いは地獄有りて、多く火槍を攅む。或いは地獄有りて、唯胸背を撞く。或いは地獄有りて、但手足を焼く。或いは地獄有りて、鉄蛇を盤絞す。或いは地獄有りて、鉄狗を駆逐す。或いは地獄有りて、尽く鉄騾に駕る。仁者!是の如き等の報、各々獄中に百千種の業道の器有りて、非ずとも是れ銅なり、是れ鉄なり、是れ石なり、是れ火なり。此の四種の物、是れ衆業行の感ずる所なり。若し広く地獄の罪報等の事を説かば、一々獄中に更に百千種の苦楚有り、況んや多獄をや。我いま仏の威神、および仁者の問う所に承りて、畧めてかくの如く説く。若し広く解説せば、劫を窮めても説き尽くさじ」と。
