Libo

維摩詰所説経 巻中

姚秦 · 鸠摩罗什译 · 第5巻 / 9

天曰:「如舍利弗還為凡夫,我乃當成阿耨多羅三藐三菩提。」

天女言う——「舎利弗の還りて凡夫と為るがごとくにして、我乃ちまさに無上正等正覚と為るべし。」

舍利弗言:「我作凡夫,無有是處。」

舎利弗言う——「我凡夫と作るは、是の理あらず。」

天曰:「我得阿耨多羅三藐三菩提,亦無是處。所以者何?菩提無住處,是故無有得者。」

天女言う——「我の無上正等正覚を得るも、また是の理あらず。なぜなら、菩提に住処なければ、得る者なきが故に。」

舍利弗言:「今諸佛得阿耨多羅三藐三菩提,已得、當得如恆河沙,皆謂何乎?」

舎利弗言う——「いま諸仏の無上正等正覚を得たる、已に得たり当に得べしとて恒河沙のごとくなるは、皆何を説く所ぞ?」

天曰:「皆以世俗文字數故,說有三世,非謂菩提有去、來、今。」

天女言う——「皆世俗の文字計数の故を以て、三世ありと説くのみ、菩提に去・来・今ありと説くにあらず。」

天曰:「舍利弗!汝得阿羅漢道耶?」

天女言う——「舎利弗!汝阿羅漢道を得たりや?」

曰:「無所得故而得。」

(舎利弗)言う——「得る所なきが故を以て得たり。」

天曰:「諸佛、菩薩亦復如是,無所得故而得。」

天女言う——「諸仏・菩薩もまたこのごとく、得る所なきが故を以て得たり。」

爾時維摩詰語舍利弗:「是天女已曾供養九十二億佛,已能遊戲菩薩神通,所願具足,得無生忍,住不退轉;以本願故,隨意能現,教化眾生。」

その時維摩詰は舎利弗に謂いて言う——「この天女は已に九十二億の仏を供養し、已に能く菩薩の神通に遊戯し、願する所具足し、無生忍を得て、不退転に住す;本願の故を以て、意に随ひて能く現じて、衆生を教化す。」

維摩詰所說經佛道品第八

維摩詰所説経 仏道品第八

爾時文殊師利問維摩詰言:「菩薩云何通達佛道?」

その時文殊師利は維摩詰に問うて言う——「菩薩はいかにして仏道に通達する?」

維摩詰言:「若菩薩行於非道,是為通達佛道。」

維摩詰言う——「もし菩薩非道に行ずれば、これすなわち仏道に通達す。」

又問:「云何菩薩行於非道?」

また問う——「菩薩はいかにして非道に行ず?」

答曰:「若菩薩行五無間,而無惱恚;至於地獄,無諸罪垢;至於畜生,無有無明、憍慢等過;至於餓鬼,而具足功德;行色、無色界道,不以為勝。示行貪欲,離諸染著;示行瞋恚,於諸眾生無有恚閡;示行愚痴,而以智慧調伏其心;示行慳貪,而捨內外所有,不惜身命;示行毀禁,而安住淨戒,乃至小罪猶懷大懼;示行瞋恚,而常慈忍;示行懈怠,而懃修功德;示行亂意,而常念定;示行愚痴,而通達世間、出世間慧;示行諂偽,而善方便隨諸經義;示行憍慢,而於眾生猶如橋梁;示行諸煩惱,而心常清淨;示入於魔,而順佛智慧,不隨他教;示入聲聞,而為眾生說未聞法;示入辟支佛,而成就大悲,教化眾生;示入貧窮,而有寶手,功德無盡;示入形殘,而具諸相好,以自莊嚴;示入下賤,而生佛種姓中,具諸功德;示入羸劣醜陋,而得那羅延身,一切眾生之所樂見;示入老病,而永斷病根,超越死畏;示有資生,而恆觀無常,實無所貪;示有妻妾采女,而常遠離五欲淤泥;現於訥鈍,而成就辯才,總持無失;示入邪濟,而以正濟度諸眾生;現遍入諸道,而斷其因緣;現於涅槃,而不斷生死。文殊師利!菩薩能如是行於非道,是為通達佛道。」

答えて言う——「もし菩薩五無間に行ずるに、悩恚なく;地獄に至るに、諸の罪垢なく;畜生に至るに、無明・驕慢等の過なく;餓鬼に至るに、功徳具足せり;色・無色界の道に行ずるに、以て勝りと為さず。貪欲を行ずと示すに、諸の染着を離れ;瞋恚を行ずと示すに、諸の衆生に恚礙なく;愚痴を行ずと示すに、智慧を以てその心を調伏す;慳貪を行ずと示すに、内外の所有を捨てて、身命を惜しまず;毀禁を行ずと示すに、浄戒に安住して、乃至小罪にも還りて大懼を懐く;瞋恚を行ずと示すに、常に慈忍し;懈怠を行ずと示すに、勤めて功徳を修し;乱意を行ずと示すに、常に定を念じ;愚痴を行ずと示すに、世間・出世間の慧に通達し;諂偽を行ずと示すに、善き方便を以て諸の経義に随い;驕慢を行ずと示すに、衆生に於て猶お橋梁のごとし;諸の煩悩を行ずと示すに、心は常に清浄なり;魔に入るを示すに、仏の智慧に順いて、他の教に随わず;声聞に入るを示すに、衆生のために未だ聞かざるの法を説き;辟支仏に入るを示すに、大悲を成就して衆生を教化し;貧窮に入るを示すに、宝手ありて功徳無尽なり;形残に入るを示すに、諸の相好を具えて自ら荘厳す;下賎に入るを示すに、仏種姓の中に生まれて諸の功徳を具え;羸劣醜陋に入るを示すに、那羅延(金剛の力士)の身を得て、一切衆生の見るを楽わしむ;老病に入るを示すに、永く病根を断じて死の畏を超越す;資生有るを示すに、恒に無常を観じて実に貪る所なし;妻妾・采女有るを示すに、常に五欲の淤泥を遠離す;訥鈍に現ずるに、弁才を成就して総持失わず;邪済に入るを示すに、正済を以て諸の衆生を度し;遍く諸道に入るを現ずるに、その因縁を断じ;涅槃に現ずるに、生死を断たず。文殊師利!菩薩能くこのごとく非道に行ずれば、これすなわち仏道に通達す。」

於是維摩詰問文殊師利:「何等為如來種?」

ここに維摩詰は文殊師利に問う——「何をか如来種と為す?」

文殊師利言:「有身為種,無明有愛為種,貪恚痴為種,四顛倒為種,五蓋為種,六入為種,七識處為種,八邪法為種,九惱處為種,十不善道為種:以要言之,六十二見及一切煩惱,皆是佛種。」

文殊師利言う——「身有りを種と為し、無明・愛有りを種と為し、貪・恚・痴を種と為し、四顛倒を種と為し、五蓋を種と為し、六入を種と為し、七識処を種と為し、八邪法を種と為し、九悩処を種と為し、十不善道を種と為す:要して之を言えば、六十二見および一切の煩悩は、皆是れ仏種なり。」

曰:「何謂也?」

(維摩詰)言う——「是れ何の意ぞ?」

答曰:「若見無為入正位者,不能復發阿耨多羅三藐三菩提心。譬如高原陸地不生蓮華,卑濕淤泥乃生此華;如是見無為法入正位者,終不復能生於佛法,煩惱泥中,乃有眾生起佛法耳!又如殖種於空,終不得生,糞壤之地,乃能滋茂;如是入無為正位者,不生佛法,起於我見如須彌山,猶能發於阿耨多羅三藐三菩提心,生佛法矣!是故,當知一切煩惱為如來種。譬如不下巨海,不能得無價寶珠;如是不入煩惱大海,則不能得一切智寶。」

答えて言う——「もし無為を見て正位に入る者は、復た無上正等正覚心を発すること能わず。たとえば高原陸地には蓮花生ぜず、卑湿の淤泥にして乃ちこの花を生ずるがごとし;このごとく、無為法を見て正位に入る者は、終に能く復た仏法に生生ぜざるに、煩悩泥の中にして、乃ち衆生ありて仏法を起こすのみ!また種を空中に殖うるがごとくは、終に生ずることを得ず、糞壌の地にして乃ち滋茂すること能うがごとし;このごとく無為正位に入る者は、仏法を生ぜず;たとえ我見の須弥山のごときにしても、なお能く無上正等正覚心を発して仏法を生ぜん!この故に、まさに知るべし一切の煩悩を如来種と為すと。たとえば巨海に下らざれば、能く無価の宝珠を得るあらざるがごとし;このごとく煩悩の大海に入らざれば、則ち能く一切智の宝を得るあらず。」

爾時大迦葉歎言:「善哉,善哉!文殊師利!快說此語。誠如所言,塵勞之疇為如來種;我等今者,不復堪任發阿耨多羅三藐三菩提心,乃至五無間罪,猶能發意生於佛法,而今我等永不能發。譬如根敗之士,其於五欲不能復利;如是聲聞諸結斷者,於佛法中無所復益,永不志願。是故,文殊師利!凡夫於佛法有返復,而聲聞無也。所以者何?凡夫聞佛法,能起無上道心,不斷三寶;正使聲聞終身聞佛法、力、無畏等,永不能發無上道意。」

その時大迦葉は讃歎して言う——「善きかな、善きかな!文殊師利!痛快にこの話を説く。誠に言うがごとく、塵労の儔を如来種と為す;我らはいま復た無上正等正覚心を発するに堪えず、乃至五無間の罪にもなお能く意を発して仏法に生ずべきに、しかして今や我らは永く発する能わず。たとえば根の敗れたる士は、五欲に於て復た利を得ること能わざるがごとし;このごとく声聞の諸結已に断じたるは、仏法の中に於て再び益する所なく、永く志願せず。この故に、文殊師利!凡夫は仏法に反覆ありて、しかして声聞には是れなし。なぜなら、凡夫は仏法を聞きて、能く無上道心を起こし、三宝を断たざれば;たとえ声聞は身終るまで仏法・力・無畏等を聞くとも、永く無上道意を発する能わざるが故に。」

爾時會中有菩薩,名普現色身,問維摩詰言:「居士!父母妻子、親戚眷屬、吏民知識,悉為是誰?奴婢僮僕、象馬車乘,皆何所在?」

その時会の中に菩薩ありて、名を普現色身と曰い、維摩詰に問うて言う——「居士!父母・妻子・親戚・眷属・吏民・知識は、皆誰ぞや?奴婢・僮僕・象馬・車乗は、皆何処に在る?」

於是維摩詰以偈答曰:

ここに維摩詰は偈を以て答えて言う——

「智度菩薩母,方便以為父,

「般若は菩薩の母と為し、方便を以て父と為し、

一切眾導師,無不由是生。

一切の衆の導師は、此に由らずして生ずることなし。

法喜以為妻,慈悲心為女,

法喜を以て妻と為し、慈悲の心を女と為し、

善心誠實男,畢竟空寂舍。

善心誠実を男と為し、畢竟空寂を舎と為す。

弟子眾塵勞,隨意之所轉,

弟子は是れ衆の塵労、意に随ふ所の転ずるところ、

道品善知識,由是成正覺。

道品は是れ善知識、此に由りて正覚を成す。

諸度法等侶,四攝為伎女,

諸度の法を等侣と為し、四摂を伎女と為し、

歌詠誦法言,以此為音樂。

歌詠し法言を誦するを、此を以て音楽と為す。

總持之園苑,無漏法林樹,

総持を園苑と為し、無漏法を林樹と為し、

覺意淨妙華,解脫智慧果。

覚意を浄妙の華と為し、解脱智慧を果と為す。

八解之浴池,定水湛然滿,

八解脱を浴池と為し、定水は湛然として満ち、

布以七淨華,浴此無垢人。

布きて七浄の華と為し、此の無垢の人を浴せしむ。

象馬五通馳,大乘以為車,

象馬は五通を以て馳せ、大乗を以て車と為し、

調御以一心,遊於八正路。

調御するに一心を以て、八正路に遊ぶ。

相具以嚴容,眾好飾其姿,

相具して以て容を厳とし、衆好その姿を飾り、

慚愧之上服,深心為華鬘。

慚愧を上服と為し、深心を華鬘と為す。

富有七財寶,教授以滋息,

七財の宝に富み、教授を以て滋息と為し、

如所說修行,迴向為大利。

説くがごとく修行し、回向して大利益と為す。

四禪為床座,從於淨命生,

四禅を牀座と為し、浄命に従りて生じ、

多聞增智慧,以為自覺音。

多聞に智慧を増し、以て自覚の音と為す。

甘露法之食,解脫味為漿,

甘露法を食と為し、解脱の味を漿と為し、

淨心以澡浴,戒品為塗香。

浄心を以て澡浴し、戒品を塗香と為す。

摧滅煩惱賊,勇健無能踰,

煩悩の賊を摧滅し、勇健にして踰ゆる能くするなし、

降伏四種魔,勝幡建道場。

四種の魔を降伏し、勝幡を道場に建つ。

雖知無起滅,示彼故有生,

起滅なきを知ると雖も、彼を示すが故に生有り、

悉現諸國土,如日無不見。

諸の国土を全部顕現するに、日の見えざるなきがごとし。

供養於十方,無量億如來,

十方の無量億の如来を供養す、

諸佛及己身,無有分別想。

諸仏および己の身に、分別想あることなし。

雖知諸佛國,及與眾生空,

諸仏の国および衆生の空なるを知ると雖も、

而常修淨土,教化於群生。

常に浄土を修して、群生を教化す。

諸有眾生類,形聲及威儀,

諸の有する衆生の類、形声および威儀を、

無畏力菩薩,一時能盡現。

無畏力の菩薩は、一時に能く尽く現ず。

覺知眾魔事,而示隨其行,

衆の魔事を覚知して、随ひてその行を示現し、

以善方便智,隨意皆能現。

善き方便の智を以て、意に随ひて皆能く現ず。

或示老病死,成就諸群生,

或いは老病死を示して、諸の群生を成就し、

了知如幻化,通達無有礙;

幻化のごとく了知して、通達して障碍なし;

或現劫盡燒,天地皆洞然,

或いは劫尽きて焼けるを現じ、天地皆洞然として、

眾人有常想,照令知無常。

衆人に常の想有るを、照らして無常を知らしむ。

無數億眾生,俱來請菩薩,

無数億の衆生、斉しく来たりて菩薩を請い、

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