第40卦 雷水解(らいすいかい) ䷧
卦辭:利西南,無所往,其來復吉。有攸往,夙吉。 初六:無咎。 九二:田獲三狐,得黃矢,貞吉。 六三:負且乘,致寇至,貞吝。 九四:解而拇,朋至斯孚。 六五:君子維有解,吉。有孚于小人。 上六:公用射隼于高墉之上,獲之,無不利。
上卦は震で雷、下卦は坎で水。雷雨が交作して険難は消散す。だから「解」と言い、すなわち解除・紓緩である。卦辞は西南の平易の地に往きて民を安んずるに宜しと言う。禍乱すでに解けたる後、事なければ常態に回復すれば吉。若しなお未了の事あれば、早々に往きて之を辦すれば吉。難を解くは時に及ぶを要とし拖延すべからざるが見える。初六は柔順にして最下にあり、九四と正応を為し、険難は初めて解け、分に安んじて自ら処れば可なり。だからただ災禍なしと断ずるのみ。九二は陽剛が中を得、田獵の中に三匹の狐狸を捕獲す。狐は媚惑の物、朝中の群小を除去するの譬え。また黄色の箭矢を得る。黄は中道を取り、矢は正直を取る。正を守れば吉。六三は陰が陽位に居り失位、物を背負いてまた大車に乗る。小人が君子の位子を竊據す。盗寇を招来するは自ら取るところ。たとえこの局面を守るもただ羞吝あるのみ。九四は陽が陰位に居りて下は六三に比す。脚の大拇指の如き細小の牽絆を解き、小人との私昵を斬断せば、志同の朋友がこそ到来して誠をもって相待たん。六五は柔中にして尊に居り、難を解くの主。君子はただ真に能く小人を解退せしめてこそ吉なり。小人もまたこれによって心服す。難を解くの検証はまさに小人が退避するや否やに在るが見える。上六は解の尽きるところに処し、最後の一つの頑梗は未だ除かれず。鷹隼が高墻の上に盤踞するが如く、公侯は弓を張りて射て之を獲る。一挙に余孽を掃清す。だから利あらざるなし。
第41卦 山澤損(さんたくそん) ䷨
卦辭:有孚,元吉,無咎,可貞,利有攸往。曷之用?二簋可用享。 初九:已事遄往,無咎,酌損之。 九二:利貞,征凶,弗損益之。 六三:三人行,則損一人;一人行,則得其友。 六四:損其疾,使遄有喜,無咎。 六五:或益之十朋之龜,弗克違,元吉。 上九:弗損益之,無咎,貞吉,利有攸往,得臣無家。
上卦は艮で山、下卦は兌で沢。沢は山下にあり、沢土を深く挖りて山体を増高する。だから「損」と言い、下に在る者を減損して上に在る者に奉益すること。卦辞は心に誠信を懐くのみにて大いに吉にして災禍なく、正固を守持し得、往くところあるに宜しと言う。何をもって祭献するか。二簋の粗食もまた神を享するに用い得る。祭祀は誠意に貴んで豊厚に在らず。損の道はまさにこの中に在り。初九は陽剛が下にあって上は六四に応ず。自らの事が辦じ終れば速やかに往きて相助す。もとより災禍なし。しかしなお分寸を斟酌せねばならず、己を損すること太過ぎて自立を失うべからず。九二は陽剛が中を得て当位せず、正を守るに宜しい。このとき冒然として前行すれば凶。自らの剛中の徳を損せざるは、それ自体が上への增益である。六三は損益の理を講ず。三人同行すれば必ず猜疑を生じて一人を減ず。一人独行すれば専一にして伴侶を得ることを得る。余有るを損するはまさにその専一を致さんがためなるを説明す。六四は陰柔が当位にして疾多く、自らの疾患を減損して、初九をして迅速に来りて相助せしめて喜慶有らしむ。だから災禍なし。六五は柔中にして尊に居りて己を虚しくして益を受く。ある人が十朋の価値ある大宝亀を献上す。その吉は推辞する可からず。だから大吉。上九は損の尽きるところに処し、損は極まりてかえって益と為る。それは再び下に向かって索取せずしてかえって施与する。だから災禍なく正を守って吉を得、往くところあるに宜しい。かくの如くすれば天下の臣の帰心を得べく、しかもこの帰心はすでに一家一姓の私門に限らず。
第42卦 風雷益(ふうらいえき) ䷩
卦辭:利有攸往,利涉大川。 初九:利用為大作,元吉,無咎。 六二:或益之十朋之龜,弗克違,永貞吉。王用享于帝,吉。 六三:益之用凶事,無咎。有孚中行,告公用圭。 六四:中行,告公從,利用為依遷國。 九五:有孚惠心,勿問元吉。有孚惠我德。 上九:莫益之,或擊之,立心勿恆,凶。
上卦は巽で風、下卦は震で雷。風雷は相激してその勢い愈々盛ん。卦象は上位に在る者を減損して下民を増益する。だから「益」と言う。卦辞は往くところあるに宜しく、大川を渉渡するに宜しと言う。上が肯んじて己を損して下を益すれば、民心は帰附し、風雷の勢いは大険を済うに足る。初九は陽剛が下にあって上の益を受く。この資助を用いて大事を興辦するに宜しく、事成りて大吉。下位に居るはもとより大事を担当すべからざるも、ただ成績を做出してこそ災禍なしと言うに足る。六二は柔順中正にして己を虚しくして下に居り、十朋の価値ある大宝亀を得るが如く、この増益は推却する可からず。長久に正を守れば吉。このような誠敬を用いて上帝を祭享するもまた吉。六三は陰が陽位に居り失位、本は益を受くべからざるも、得る所を災を救い患を恤うの凶事の上に用いれば過ちなし。ただ心に誠信を懐き、中道を行い、王公に禀告するに圭を執りて信と為せば、人は自ずから信服す。六四は柔にして当位、上下の間に居り、事を行いて中道を守りて王公に禀告してその聴従を得る。このような人は国都を遷移するが如き大事の倚仗に充当するに宜しい。九五は陽剛中正にして尊位に居り、心に誠信を懐きて民に恵むの心を存す。占問を用いず、自ずから大吉。下民もまた誠信をもって回報し、彼の施与する徳沢を感念す。上九は益の尽きるところに処し、上に居りて己を損して下を益せんと肯ぜず、かえって一味に人に求めて自らを增益せんとす。ここに於て益し来る人なく、かえって攻撃する人あり。心志は常を守る能わず。だから凶。
第43卦 澤天夬(たくてんかい) ䷪
卦辭:揚于王庭,孚號有厲,告自邑,不利即戎,利有攸往。 初九:壯于前趾,往不勝,為咎。 九二:惕號,莫夜有戎,勿恤。 九三:壯于頄,有凶。君子夬夬,獨行遇雨,若濡有慍,無咎。 九四:臀無膚,其行次且。牽羊悔亡,聞言不信。 九五:莧陸夬夬,中行無咎。 上六:無號,終有凶。
上卦は兌で沢、下卦は乾で天。水気は天上に昇りて勢い必ず傾瀉して下る。だから「夬」と言い、すなわち決断・決去である。全卦は五陽が併進してただ上六の一陰を残す。君子が小人を決除する時である。卦辞は小人の罪状を王庭の上に公開宣揚せよと言い、誠信を懐きて大声で号令するもその中になお危険あるを深知せよ。先ず自らの城邑より告誡を発布し、立刻に武力を動用するは宜しからず、正道に依りて穏歩に前往するに宜しい。初九は最下に処し、力量はなお脚趾の上に在りて急いで壮を逞しゅうす。往けば未だ必ず勝たず、冒進すればすなわち過ちと為る。九二は陽剛が中を得、能く戒懼して警号を発す。たとえ傍晚に敵兵の来襲に遇うも憂慮するに及ばず。「莫夜」とはすなわち暮夜・天の黑まる時。それは常備して懈らざるがゆえに。九三は陽が陽位に居りて上六と相応ず。剛壮は面颊の上に顕露し、鋒芒は露すこと太甚にして凶あり。君子はここに於て決すべき事を決絕せよ。たとえ独行して雨に遇い、濡れて人の慍怒を遭うも、心跡が坦蕩なれば終に災禍なし。九四は陽が陰位に居り中せず正しからず、進退は拠を失う。臀部に好皮肉なく行走踉蹌するが如し。若し羊を牽くが如く衆に随いて行けば悔恨は消すべきも、惜しいかなそれは忠告を聞きても信ぜざるなり。九五は陽剛中正にして上六に緊鄰す。柔邪を決去するは莧陸の如き柔脆の草を剷除するが如く干脆なるを要す。中道を行えば災禍なし。上六は決去せらるるあの一陰で、孤立して援なく、呼号して救いを求むるも発するに由なし。最終には凶を免れ難し。
第44卦 天風姤(てんふうこう) ䷫
卦辭:女壯,勿用取女。 初六:繫于金柅,貞吉。有攸往,見凶,羸豕孚蹢躅。 九二:包有魚,無咎,不利賓。 九三:臀無膚,其行次且,厲,無大咎。 九四:包無魚,起凶。 九五:以杞包瓜,含章,有隕自天。 上九:姤其角,吝,無咎。
上卦は乾で天、下卦は巽で風。風が天下に行き、遇わざる物なし。だから「姤」と言い、期せずして遇うこと。全卦は五陽の下に忽ち一陰が生ず。陰は微なれども将に長ぜんとす。卦辞はこの女子は強健に過ぎ、これを娶るべからずと言う。まさに人に初めて生ずる陰を小看するなかれと警告する。初六は全卦の成卦の爻で、金属の車闸に繫ぐが如くそれを止めるに宜しく、正を守れば吉。若し放縱して往くところあらしめば、凶険を見ることになる。痩弱の母猪一頭の如く、見れば患いと為すに足らざるが如しなれども、実は正に躁动して安んぜず徘徊して時機を待つ。九二は陽剛が中を得て初六に緊鄰す。厨中の包裹に魚あるが如く、この魚を自らの手中に管束し得る。だから災禍なし。しかしこの魚は自らのものにあらず、それを取りて賓客を款待するは合宜ならず。九三は陽が陽位に居りて過剛、上下に遇うところなく、臀部に好皮肉なく走路踉蹌して行き難きが如く、処境は危険。それは終に初六に沾染せざれば、大きな災禍はなし。九四は陽が陰位に居りて初六ともとより正応なれども、九二に先んじて占められ、包裹の中に魚なく、応ずる所を失う。このとき軽挙妄動すれば凶険あり。九五は陽剛中正にして尊位に居り、高大の杞樹の枝葉を用いて下面の瓜を蔭蔽する。章美を内に含みて外に露さず、徳は中に積み、福は自ら天より降る。上九は卦の極に処し、犄角の如き偏高の処にて相遇するが如く、遇うべき人なくして遺憾を免れず。しかしまさにそれが高居して事外に在り、陰と接せざれば、災禍はなからず。
第45卦 澤地萃(たくちすい) ䷬
卦辭:亨,王假有廟,利見大人,亨,利貞。用大牲吉,利有攸往。 初六:有孚不終,乃亂乃萃,若號,一握為笑,勿恤,往無咎。 六二:引吉,無咎,孚乃利用禴。 六三:萃如嗟如,無攸利,往無咎,小吝。 九四:大吉,無咎。 九五:萃有位,無咎。匪孚,元永貞,悔亡。 上六:齎諮涕洟,無咎。
上卦は兌で沢、下卦は坤で地。水は地上に聚まりて沢と成る。だから「萃」と言い、すなわち聚集である。卦辞は亨通すると言う。君王は宗廟に親臨して人心を聚め、徳位ある大人に進見するに宜しく、かくの如くしてこそ亨通して正を守るに宜しい。衆を聚むるの時は物力は充足す。大牲を用いて祭祀すれば吉、往くところあるに宜しい。初六は柔弱にして下にあって上は九四に応ず。心に誠信を懐くも終りまで堅持する能わず、ここに於て心思は紛乱し、聚散は定まらず。ただ声を放ちて呼号して援を求め得れば、一たび手を伸べれば相助する人ありて泣を転じて笑いと為す。憂慮するに及ばず、往けば災禍はなからん。六二は柔順中正にして上は九五に応ず。牽引されてともに往くこと能わば吉にして災禍なし。心中すでに誠信あれば、微薄の禴祭を用いて奉献するも、神に格するに足る。六三は陰が陽位に居り失位、上に正応なく、聚まらんと欲して得られず、ただ嗟嘆して声を連ねるのみ。何の利もない。強いて往きて上六に依附せば、災禍に至らざるも、終に些許の羞吝あり。九四は陽が陰位に居り当位せざるも、下には群陰の聚まりを得る。位は高くしてその正にあらず。ただ尽善尽美の大吉を為してこそ、災禍なしと言うに足る。九五は陽剛中正にして尊位に居り、天下を聚めてその正位に居る。だから災禍なし。若しなお信服せざる人あらば、長久に至正の道を堅守して彼らを感化せねばならず、かくの如くすれば悔恨は自ずから消失す。上六は萃の尽きるところに処し、帰依するところなくして悲嘆涕泣す。まさにそれが能く自らの処境を知りて哀求するがゆえに、かえって災禍に至らず。
第46卦 地風升(ちふうしょう) ䷭
卦辭:元亨,用見大人,勿恤,南征吉。 初六:允升,大吉。 九二:孚乃利用禴,無咎。 九三:升虛邑。 六四:王用亨于岐山,吉,無咎。 六五:貞吉,升階。 上六:冥升,利于不息之貞。
上卦は坤で地、下卦は巽で木。樹木は地中に生じて日に長く高くなる。だから「升」と言い、下より上へ、小を積みて大を成す上進の象である。卦辞は大いに亨通すると言う。このとき徳位ある大人に進見するに宜しく、憂慮を用いず。南方の光明の地に向かって行進すれば吉。初六は柔順にして最下にあり、全卦の上昇の起點。「允」とは信從である。それは柔順にして九二・九三と志同じく、これによって衆人の認可を得て上昇し得る。だから大吉。九二は陽剛が中を得て上は六五に応ず。剛をもって柔に居るも中道を失わず、心中すでに誠信あれば、微薄の禴祭を用いて奉献するも災禍なし。升進は実徳に倚って外飾に倚らざるが見える。九三は陽剛が当位にして臨む所は坤地の虚順。上昇は守御なき空城に入るが如く、一路通達して阻むものなし。爻辞は吉凶の断語を加えず、その易くして恃むべからざるがゆえに。六四は柔順が当位、周文王が岐山にて祭祀を舉行するが如く、臣位をもって神に事えるの誠を尽くし、各々その分に安んず。だから吉にして災禍なし。六五は柔中にして尊に居りて下は九二に応ず。正を守れば吉。その上昇は躐等して進むにあらず、階梯に循って一級一級登り上がる。上六は升の尽きるところに処し、一味に昏暗の中にて盲目的に上昇す。もとより取るべからず。若しこの已まざる勁頭を転じて正を守るの上に用い得れば、なおその利あり。
第47卦 澤水困(たくすいこん) ䷮
卦辭:亨,貞,大人吉,無咎,有言不信。 初六:臀困于株木,入于幽谷,三歲不覿。 九二:困于酒食,朱紱方來,利用享祀,征凶,無咎。 六三:困于石,據于蒺藜,入于其宮,不見其妻,凶。 九四:來徐徐,困于金車,吝,有終。 九五:劓刖,困于赤紱,乃徐有說,利用祭祀。 上六:困于葛藟,于臲卼,曰動悔有悔,征吉。
上卦は兌で沢、下卦は坎で水。水は沢の下面に漏れて沢中は涸渇す。だから「困」と言い、窮乏して制を受くる象。卦辞は困中にしてなお亨通し得ると言う。正固を守持せば、徳位ある大人は吉を得て災禍はなからん。このとき何を言うも人は信ぜず。だからただ行動をもって自ら明らかにするに宜しく、多く弁ずるに及ばず。初六は陰柔にして最下、臀部は枯れた樹樁の上に困せられて坐立安からず、幽深の山谷に退入し、三年も天日を見ず。困の最も深き者。九二は陽剛が中を得、酒食の奉に困せられる。禄を受くれどもその志を行うを得ず。朱紅の蔽膝はまさに到来せんとす。この誠敬を用いて祭祀祈神するに宜しい。このとき冒然として出征すれば凶、中道を安守すれば災禍はなからん。六三は陰が陽位に居り失位、上は石頭に困せられ、下は蒺藜を踏み、進退ともに傷つく。自らの居室に回るもまた妻子を見ず。内外ともに失う。だから凶。九四は陽が陰位に居りて下は初六に応ず。困を救いに来ること慢吞吞たり、前面の九二のあの金車に阻まる。羞吝あるも、その心志は改まらざれば、終に能く会合し得る。九五は陽剛中正にして尊に居り、上下は両陰に受制す。鼻を割き足を斷くの刑を受くるが如く、また紅色の蔽膝に困せらる。しかしそれは中を守りて移らず、困境は慢慢として紓解を得る。このとき祭祀の誠をもって上下に感通するに宜しい。上六は困の尽きるところに処し、葛藤に纏繞され、動搖不安の地に処す。ただ能く自省して一たび動けばすなわち悔ありと言い、これによって真に悔悟の心を生ぜば、さらに前行すれば吉なり。
第48卦 水風井(すいふうせい) ䷯
卦辭:改邑不改井,無喪無得,往來井井。汔至,亦未繘井,羸其瓶,凶。 初六:井泥不食,舊井無禽。 九二:井谷射鮒,甕敝漏。 九三:井渫不食,為我心惻,可用汲,王明,並受其福。 六四:井甃,無咎。 九五:井冽,寒泉食。 上六:井收勿幕,有孚元吉。
上卦は坎で水、下卦は巽で木。木桶は水中に探入して水を提げ上ぐ。だから「井」と言い、人を養いて窮まらざる象。卦辞は城邑は改建し得れども水井は搬遷する能わずと言う。井水は枯竭して減少するもなく、無故に增多するもなし。来往の人は各々汲取し、井は始終あの一口の井なり。これは常道の変わらざるを講ず。若し水すでに井口に提げんとして近く、なお汲繩を完全に引き出さず、かえって水瓶を打破せば凶なり。功が一簣を虧くは最も惜しむべきを説明す。初六は陰柔にして最下、井底に泥を積みて水は飲むべからず。廃棄の旧井さえも禽鳥の光顧なし。才徳は汙下にして人の求め来るなき象。九二は陽剛が中を得るも下は初六に比す。井水はただ傍らの穴口より漏れ出でてあの小魚を射るのみ能くし、また瓦瓮が破れて水漏るるが如し。才有れども上達する能わず。九三は陽剛が当位にして下卦の上に処し、井はすでに淘洗して乾淨なるも汲み来る人なし。人をして心中惻然たらしむ。この井はもとより汲用し得べし、ただ君王が明察せば、上下ともにその福を受けん。六四は柔にして当位、まさに磚石を用いて井壁を修砌す。このとき人に飲用を供し得ざるも、自身を修養するの必要の功夫なれば、災禍なし。九五は陽剛中正にして尊位に居り、井水は清澈甘冽、寒泉は人に飲用を供し得べし。井道の成なり。上六は井の最も上に処し、井はすでに修成して取水口は覆蓋を加えず、人々をして皆汲取せしむ。この普施の誠信はまさに大吉の在る所なり。
第49卦 澤火革(たくかかく) ䷰
卦辭:己日乃孚,元亨利貞,悔亡。 初九:鞏用黃牛之革。 六二:己日乃革之,征吉,無咎。 九三:征凶,貞厲。革言三就,有孚。 九四:悔亡,有孚改命,吉。 九五:大人虎變,未占有孚。 上六:君子豹變,小人革面,征凶,居貞吉。
上卦は兌で沢、下卦は離で火。水火は一体に相処して彼此消息し、旧質は必ず去る。だから「革」と言い、すなわち変革である。卦辞は己日に至ってこそ衆人の信任を取得すると言う。己は天干の第六位、十干の中に居りて将に転ぜんとす。変革の事は必ず時機の成熟し成效すでに見えたるを待ってこそ、人心は帰服するを象徴す。変革の道は大いに亨通して正を守るに宜しく、かくの如くしてこそもとより有りし悔恨は消失し得る。初九は陽剛が最下にあり、位は卑しくして時は未だ至らず。黄牛の皮革を用いて自らを牢く捆住し、すなわち固守して動かず、軽々に更張を言うべからず。六二は柔順中正にして上は九五に応ず。時機すでに至り、己日に至ってこそ手を動かして変革す。前往して施行すれば吉、災禍はなからん。それは革せざるにあらず、時機の前に搶せざるなり。九三は陽が陽位に居りて過剛躁進す。このとき冒然として出征すれば凶、たとえ正を守るも危険あり。変革の主張は反復討論して三次の後に成り、衆人の誠信の認可を取得してこそ可なり。九四は陽が陰位に居りて剛柔相済う。悔恨は消失す。誠信を憑って旧有の命令と制度を改変す。だから吉。九五は陽剛中正にして尊位に居り、変革の主。猛虎が毛を換えるが如く、紋理は焕然として一新す。その徳は昭著、占問を要せず、人心はすでに早く信服す。上六は革の尽きるところに処し、君子は豹が毛を換えるが如く、細処にて引き続き修飾完善す。小人はただ順從して面孔を改換するのみ。このとき再び一味に征伐して変を求むるは宜しからず、安んじ居て正を守ってこそ吉なり。
第50卦 火風鼎(かふうてい) ䷱
卦辭:元吉,亨。 初六:鼎顛趾,利出否,得妾以其子,無咎。 九二:鼎有實,我仇有疾,不我能即,吉。 九三:鼎耳革,其行塞,雉膏不食,方雨虧悔,終吉。 九四:鼎折足,覆公餗,其形渥,凶。 六五:鼎黃耳金鉉,利貞。 上九:鼎玉鉉,大吉,無不利。
上卦は離で火、下卦は巽で木。木柴を火中に送入して烹煮す。だから「鼎」と言う。鼎は烹飪の器にしてまた宗廟の重器、新故更易・養賢致用の義を取り、前の一卦の革が旧物を去ると正好相承する。卦辞はただ大吉にして亨通すと言う。六爻は鼎の足・腹・耳・鉉より逐層に象を取る。初六は陰柔にして最下、鼎の足なり。鼎足は顛倒し、もとより常を失うも、正好陳積の汚穢を倒出する。かえって利あり。妾を納れて兒子を得るが如く、出身は正しからざるもその実用を得る。だから災禍なし。九二は陽剛が中を得、鼎中に實物を滿載す。我の對頭は接近せんと欲するも自身に病あるがゆえに靠攏する能わず。我は中實をもって自ら守る。だから吉。九三は陽剛が中を過ぎて上九と應ならず、鼎耳に變化生じ、擡舉に著手するところなく、行動はこれによって受阻す。鼎裏の美味なる野雞肉は一時に享用人なし。陰陽和洽して甘雨の降るが如きを待てば、虧欠悔恨は漸く消え、最終にはなお吉。九四は陽が陰位に居りて下は初六に應ず。任する所はその人にあらず、鼎足は折斷し、王公の美食は傾覆して一地に滿ち、自身も狼狽不堪す。だから凶。六五は柔中にして尊に居り、鼎の黃耳に銅鉉を配するなり。中に居りて虛にして人を受く。正を守るに宜しい。上九は鼎の最も上に処し、玉製の鼎鉉なり。玉の性は溫潤にして剛、剛柔は節を得る。だから大吉にして利あらざるなし。
第51卦 震為雷(しんいらい) ䷲
卦辭:亨。震來虩虩,笑言啞啞,震驚百里,不喪匕鬯。 初九:震來虩虩,後笑言啞啞,吉。 六二:震來厲,億喪貝,躋于九陵,勿逐,七日得。 六三:震蘇蘇,震行無眚。 九四:震遂泥。 六五:震往來厲,億無喪,有事。 上六:震索索,視矍矍,征凶。震不于其躬,于其鄰,無咎。婚媾有言。
震は雷。上下の卦がともに震で、雷声は相繼いで至る。だから卦名は「震」といい、驚懼して奮起する象。卦辞は亨通すと言う。雷声が乍ち來れば人々は恐懼戒慎し、驚懼過ぎて後にかえって談笑自若たり。雷威は百里の遠きを震動し、主祭の人の手中の匕と鬯——牲を取る木勺と祭祀の香酒——は依舊として失手せず。これがすなわち大變に臨みてその守を失わざること。初九は全卦の震動の發端、雷が來れば恐懼戒懼し、隨後に談笑自若たり。それは陽剛が當位にして能く懼に因りて福を致すがゆえに。だから吉。六二は柔順中正にして初九の上に乘り、雷の來勢は危く、資財を喪失せんと估し、ここに於て高き九陵に登りて難を避く。追尋するに及ばず、第七の爻位が循環して回るを待てば、失物は自ずから復得せん。六三は陰が陽位に居り失位、震えて戰慄して安からず。まさにこの戒懼に因りて敢えて妄行せず、震に随いて動けばかえって災殃なし。九四は陽が陰位に居りて四陰の間に陷り、雷震して下りて竟に泥中に墜入す。剛にして中せず正しからず、威勢は盡く失う。六五は柔中にして尊に居り、雷震は往來ともに危険あり。大きな喪失はなからんと估し、ただなお爲すべき事を擔當するあり。中に居り位を守るはそれの憑仗なり。上六は震の盡きるところに處し、震えて脚步は瑟縮し、雙目は驚惶して四顧す。このとき前行すれば凶。幸いにして雷震は未だ自らの身上に落ちず、ただ隣近者に及ぶのみ。早く戒懼すれば災禍なし。ただ婚配の事に因りて些かの閒話を招來するを免れ難し。
第52卦 艮為山(ごんいざん) ䷳
卦辭:艮其背,不獲其身,行其庭,不見其人,無咎。 初六:艮其趾,無咎,利永貞。 六二:艮其腓,不拯其隨,其心不快。 九三:艮其限,列其夤,厲薰心。 六四:艮其身,無咎。 六五:艮其輔,言有序,悔亡。 上九:敦艮,吉。
艮は山。上下の卦がともに艮で、兩山重疊して静止して動かず。だから「艮」と言い、すなわち止である。卦辞は人の后背に止まるを言う。背は全身唯一自らを見る能わざるところ。背に止まれば自らの形軀を見ることなく、欲念の萌發する由なし。かくの如くすれば自ら家庭院の中を行くも、人を見ざるが如く心に外鶩なし。だから災禍なし。六爻は下より上へ身體の部位を取象し、止まるはいかなる時・いかなる部位にて最も恰當なるかを講ず。初六は最下にあって、脚趾に止まる。行動は未だ開始せざるに先んじて止まる。最も為し易し。だから災禍なく、かつ長久に正を守るに宜しい。六二は小腿肚に止まる。小腿はそれ自体自主する能わず、それは上面の九三に跟って走る。九三の躁動を挽救する能わず、また隨わざるを得ず。だから心中は快からず。九三は陽剛が下卦の上に居り、腰部に止まる。腰は上下身の樞紐、硬にこれを止めんとすれば、すなわち脊背の肌肉を撕裂し、上下は斷絕し、危厲は火が心を熏るが如し。六四は柔にして當位、整個の軀幹に止まる。能く各々その位に安んじて妄動せず。だから過ちなし。六五は柔中にして尊に居り、口頬に止まる。說話は條理ありて妄りに一言を發せず。だから悔恨は消失す。上九は艮の盡きるところに處し、敦厚篤實の德をもってこの止を成就す。止まることその所を得て遷らず。だから吉、全卦最も善なる爻である。
第53卦 風山漸(ふうざんぜん) ䷴
卦辭:女歸吉,利貞。 初六:鴻漸于干,小子厲,有言,無咎。 六二:鴻漸于磐,飲食衎衎,吉。 九三:鴻漸于陸,夫征不復,婦孕不育,凶。利禦寇。 六四:鴻漸于木,或得其桷,無咎。 九五:鴻漸于陵,婦三歲不孕,終莫之勝,吉。 上九:鴻漸于陸,其羽可用為儀,吉。
上卦は巽で木、下卦は艮で山。樹木は山上に生じて一寸一寸に長く高くなり、躐等すべからず。だから「漸」と言い、すなわち序に循って進むこと。卦辞は女子嫁せば吉、正を守るに宜しと言う。婚嫁は納采・問名等の一整套の禮節を經て後に成る。まさに漸進の典型である。六爻は皆鴻雁の飛行の落點を譬えとす。鴻雁は行きて次序あり、配偶は專一。最も漸義に合す。初六は陰柔にして最下、鴻雁は剛く水邊の岸畔に落ちる。位は卑しくして應なく、年幼の小子が處境危險にしてまた些かの責備の言を聽くが如し。それは進退が序に循うがゆえに、終に災禍なし。六二は柔順中正にして上は九五に應ず。鴻雁は平坦の大磐石に進み、安穩にして居るべく、飲食は和樂從容たり。だから吉。九三は陽が陽位に居りて過剛、鴻雁は高平の陸地に飛到す。それの安んずる所にあらず。丈夫は出征して一去返らず、婦人は孕を懷くも生育する能わず。その正應を失いて凶。この剛強はただ外寇を防禦するに用いるに宜しい。六四は陰柔が當位にして九三の剛に乘る。鴻雁は樹木の上に飛上す。樹枝はもとより鴻雁の抓握し得るにあらず、幸いにして一根の平直なる椽木を尋ね得て棲身し得る。だから災禍なし。九五は陽剛中正にして六二と正應す。鴻雁は高陵に進む。三・四の兩爻に阻隔され、婦人は三年孕まず。しかし正應は終に奪うべからず、最後にそれに勝る能くするものなし。だから吉。上九は漸の盡きるところに處し、鴻雁は高地に飛回る。その脫落の羽毛は禮儀の裝飾に用い得べし。功成りて身を退きて範を世に遺す。だから吉。
第54卦 雷澤歸妹(らいたくきまい) ䷵
卦辭:征凶,無攸利。 初九:歸妹以娣,跛能履,征吉。 九二:眇能視,利幽人之貞。 六三:歸妹以須,反歸以娣。 九四:歸妹愆期,遲歸有時。 六五:帝乙歸妹,其君之袂,不如其娣之袂良,月幾望,吉。 上六:女承筐無實,士刲羊無血,無攸利。
上卦は震で雷、下卦は兌で沢。長男は上にあり少女は下にあり、少女は悦に因りて長男に随う。媒妁正禮に由らず。だから「歸妹」と言う。歸は女子の嫁ぐこと、妹は少女を指す。卦辞は直斷す。かくの如く前往せば凶、何の利もなし。全卦の三・四・五爻は皆當位せざれば、男女の配は正をもってせざるがゆえに。初九は陽剛が最下にあって正應なく、陪嫁の娣媵の身の如く、地位は卑しと雖も能くその職を盡くす。脚は跛なれどもなお行く能く、分に安んじて前行す。だから吉。九二は陽剛が中を得て上は六五に應ず。眼は偏盲なれどもなお見る能く、才は盡く用うるを得ず。この處境は幽居の人の如くその正を守りて聞達を求めざるに宜しい。六三は陰が陽位に居り中せず正しからず、柔をもって剛に乘りて急いで配を求む。かえって人に輕せられ、ただ退き回りて陪嫁の娣媵に充當するのみ能くす。九四は陽が陰位に居りて正應なく、出嫁は婚期を錯過す。これは自ら願って待つので、娶る人なきにあらず。遲く嫁ぐも終に合適の時機を待つを得ん。六五は柔中にして尊に居りて下は九二に應ず。商王帝乙が女を嫁せしむるが如く、身は女君たるも衣袖の華美はかえって陪嫁の娣に如かず。その德を尚びて飾を尚ばざるが見える。月亮は滿に接近するも全滿に至らず、謙にして盈たず。だから吉。上六は歸妹の盡きるところに處し、女子の捧ぐる筐子は空にして一物なく、男子は羊を宰するも血を見ず。祭祀に實なく、夫婦の道は名あって實なし。だから何の利もなし。
第55卦 雷火豐(らいかほう) ䷶
卦辭:亨,王假之,勿憂,宜日中。 初九:遇其配主,雖旬無咎,往有尚。 六二:豐其蔀,日中見斗,往得疑疾,有孚發若,吉。 九三:豐其沛,日中見沬,折其右肱,無咎。 九四:豐其蔀,日中見斗,遇其夷主,吉。 六五:來章,有慶譽,吉。 上六:豐其屋,蔀其家,闘其戶,闃其無人,三歲不覿,凶。
上卦は震で雷、下卦は離で火。明察は内にあり奮動は外にある。だから「豐」と言い、すなわち盛大である。卦辞は亨通すと言う。君王は身をもってこの盛大に達し、憂慮するに及ばず。ただ太陽が正中に行くが如く中道を保持せよ。日中すれば必ず偏す。盛極まれば將に衰う。これが全卦の警語である。六爻は多く日光を遮蔽するを取象し、豐大の時に最も蒙蔽を生じ易きを說明す。初九は陽剛が最下にあって上は九四に應ず。自らと相配する主爻に遇う。兩陽は同類にして相敵するも、勢均力敵に因りて相濟う。たとえ十日滿ちるまで相處するも災禍なく、往けばなお嘉許を受けん。六二は柔順中正にして上は六五に應ずも、遮蔽する草席に擋えられ、正午に北斗星を見るに至る。このとき往けば猜疑と嫉恨を招來す。ただ誠信をもって對方を感發してこそ、轉じて吉と爲し得る。九三は陽剛が當位にして上は上六に應ず。帷幕は愈々厚重、正午に微弱の小星を見るのみ能くす。右臂を折斷するが如く、作爲する能わず。それは暗主に用いられずして自ら守るがゆえに、災禍はなからん。九四は陽が陰位に居り中せず正しからず、同じく草席が日を蔽い正午に斗を見る。幸いにしてそれは能く下に初九という自らと地位相當の同道に遇い、援を得て吉。六五は柔中にして尊に居りて己を虛くして賢を納る。六二の如き章美の才を招來す。これによって吉慶と美譽あり。だから吉。上六は豐の盡きるところに處し、房屋を修めて高大と爲し、家宅を遮りて嚴實と爲す。外よりその門戶を窺看すれば(底本はこの字を闘と作す、通行本は闚——すなわち窺視)、寂静にして一人もなし、三年も人影を見ず。自ら蔽い自ら絕す。だから凶。
第56卦 火山旅(かざんりょ) ䷷
卦辭:小亨,旅貞吉。 初六:旅瑣瑣,斯其所取災。 六二:旅即次,懷其資,得童僕貞。 九三:旅焚其次,喪其童僕,貞厲。 九四:旅于處,得其資斧,我心不快。 六五:射雉一矢亡,終以譽命。 上九:鳥焚其巢,旅人先笑後號咷,喪牛于易,凶。
上卦は離で火、下卦は艮で山。山は止まりて動かず、火は行きて留まらず。人は鄉を離れて外に在る。だから「旅」と言い、羈旅客居の象。卦辞は小さく亨通すと言う。旅居の身は格局有限、ただ正道を守持してこそ吉を得べし。六爻は客居者の自處の道を講ず。愈々卑弱なるほど愈々自重せねばならず。初六は陰柔にして最下、旅の初めに處して瑣碎猥屑、志趣は卑下す。災禍はまさに自ら招來したるなり。六二は柔順中正、旅人は客舍に住み込み、懷中に盤纏を帶び、また忠貞可靠の童僕を得る。旅中最も安穩の一爻。九三は陽が陽位に居りて過剛、人を待つに暴をもってし、結果は客舍焚かれ童僕離散す。たとえ自ら以て正を守るとすとも處境は危險。九四は陽が陰位に居りて中を得ず、暫時の住處を尋ね得るも、錢財と用具を得るも、終に自らの正位にあらず。だから心中は痛快ならず。六五は柔中にして尊に居りて文明に附麗す。野雞を射て一たび箭を損失するも、これに因りて聲譽と爵命を贏得す。小さく失いて大きく得る所あり。旅中最も善なる處境なり。上九は旅の盡きるところに處して剛をもって極に居る。鳥巢が焚かるるが如く、旅人は起先は得意に歡笑し、隨後に號啕大哭す。また輕忽疏易の中に牛という柔順の德を喪失す。だから凶。
第57卦 巽為風(そんいふう) ䷸
卦辭:小亨,利有攸往,利見大人。 初六:進退,利武人之貞。 九二:巽在床下,用史巫紛若,吉,無咎。 九三:頻巽,吝。 六四:悔亡,田獲三品。 九五:貞吉,悔亡,無不利。無初有終,先庚三日,後庚三日,吉。 上九:巽在床下,喪其資斧,貞凶。
巽は風。上下の卦がともに巽で、風は入らざる孔なく相繼いで行く。だから「巽」と言い、すなわち順入・謙遜である。卦辞は小さく亨通すと言う。柔順をもって人に入れば、その功は緩にして速ならず。だからただ小亨なり。往くところあるに宜しく、また德位ある大人に進見するに宜しい。順は歸依する所有ってこそ苟從に流れざるがゆえに。初六は陰柔にして最下、進退猶豫して自ら決する能わず。この優柔の毛病は、武人の如き剛毅にして正を守る態度を用いて矯正するに宜しい。九二は陽剛が中を得て柔位に居り、謙卑は牀下に伏する地步に至る。見れば過分なるも、それは祝史と巫覡に借助して紛紛として禱祝し、誠意を神明に通ず。だから吉にして災禍なし。九三は陽が陽位に居りて過剛、勉強して順從の樣子を作し、一次次反復して心は誠ならず。だから羞吝を齎す。六四は柔にして當位、上は九五を承け、下は三陽に臨む。悔恨は消失す。田獵に三類の獵物を獲るが如く、各々その用を得る。順にして功あるなり。九五は陽剛中正にして尊位に居り、正を守れば吉にして悔恨消失し利あらざるなし。初めは善き開端なくとも、最終には善き結局を得べし。庚は天干第七位、更改の義を取る。だから庚日の前に三日反復して申令し、庚日の後に三日檢查落實せよ。かくの如くしてこそ吉なり。上九は巽の盡きるところに處し、依舊として牀下に伏す。謙卑は頭を過ぎて卑屈と成り、賴って自立する錢財と器具さえも喪失す。この做法を守ればただ凶あるのみ。
第58卦 兌為澤(だいたく) ䷹
卦辭:亨,利貞。 初九:和兌,吉。 九二:孚兌,吉,悔亡。 六三:來兌,凶。 九四:商兌未寧,介疾有喜。 九五:孚于剝,有厲。 上六:引兌。
兌は沢。上下の卦がともに兌で、兩沢相連なりて互相に滋潤す。だから「兌」と言い、すなわち喜悅である。卦辞は亨通して正を守るに宜しと言う。人を悦ばしめ己を悦ばしむるも皆正道に合せねばならず、一味に取悦すればすなわち諂佞と成る。だから特別に一個の貞の字を標出す。六爻は悦ぶ對象と方式をもって吉凶を判ず。初九は陽剛が最下にあって繫應なく、心中に偏私する所なく、平和の心をもって人と相悦ぶ。だから吉。九二は陽剛が中を得て六三という陰柔に緊鄰す。引誘せらるるの危險あるも、內心は篤實にして誠信をもって悦と爲すがゆえに、吉にして悔恨消失す。六三は陰が陽位に居り中せず正しからず、下面に應ずる所なく、やむを得ず回頭して初九・九二に向かって歡悅を求取す。己を屈して人に媚ぶ。だから凶。九四は陽が陰位に居り、九五と六三の間に介し、反復商量して誰に悦ぶべきかと心神不寧たり。ただ疾病を防治するが如く果斷に六三の引誘を隔絕し得れば、喜慶あらん。九五は陽剛中正にして尊位に居り、唯一慮るべきはそれが上六という陽剛を消剥する陰爻に緊鄰すること。若し誠信をもってこの種の小人を信任せば、危險あらん。これは尊に居る者への警告なり。上六は兌の盡きるところに處し、手段を用いて別人を牽引して自らと相悦ばしむ。爻辞は吉凶の斷語を加えず、その失正はすでに言外に在り。
第59卦 風水渙(ふうすいかん) ䷺
卦辭:亨,王假有廟,利涉大川,利貞。 初六:用拯馬壯,吉。 九二:渙奔其機,悔亡。 六三:渙其躬,無悔。 六四:渙其群,元吉。渙有丘,匪夷所思。 九五:渙汗其大號,渙王居,無咎。 上九:渙其血,去逖出,無咎。
上卦は巽で風、下卦は坎で水。風は水上に行きて波紋四散す。だから「渙」と言い、すなわち離散である。卦義はその散ずべき所を散じ、その聚むべき所を聚むるに在り。卦辞は亨通すと言う。君王は宗廟に親臨して人心を聚合し、大川を渉渡して難を濟うに宜しく、正を守るに宜しい。初六は陰柔にして最下、渙散は剛く始まる。このとき九二という強壯の馬に借助して救助すれば、力を用うること小にして功を收むること大なり。だから吉。九二は陽剛が中を得て坎險の裏に陷る。渙散の時、憑靠すべき几案に奔向し、安據する所を得る。だから悔恨消失す。六三は陰が陽位に居り失位、上は上九に應ず。能く自身の私念を散じて公に徇る。だから悔恨なし。六四は柔にして當位、上は九五を承け、能く自らの朋黨を渙散す。至って吉祥の事なり。朋黨散じ去りて後、天下の人はかえって丘山の如く聚合成す。この境界は尋常の人の思い及ぶ所能ならず。九五は陽剛中正にして尊位に居り、號令を發施するは出汗の如く一出して返らざるを要す。令は行われて反悔せず。同時に王居に積聚せる私財を散じて天下に惠及す。だから災禍なし。上九は渙の盡きるところに處し、能く血光の災を散じ、遠く憂懼の地を脫離す。「逖」は遠なり。身を全うして退く。だから災禍なし。
第60卦 水澤節(すいたくせつ) ䷻
卦辭:亨,苦節不可貞。 初九:不出戶庭,無咎。 九二:不出門庭,凶。 六三:不節若,則嗟若,無咎。 六四:安節,亨。 九五:甘節,吉,往有尚。 上六:苦節,貞凶,悔亡。
上卦は坎で水、下卦は兌で沢。沢の容量は有限にして水はその中に注ぎ、多ければすなわち溢出す。だから「節」と言い、すなわち節制して度あること。卦辞は亨通すと言う。しかし苦澁過分の節制は常道と爲して固守すべからず。節は適中に貴ぶが見える。初九は陽剛が當位にして節の初めに處し、戶庭を邁出して一步も出ず。內に慎守して輕出せず。だから災禍なし。九二は陽剛が中を得るも失位、時機すでに至るも仍お門を閉じて出ず。爲すべき機を坐失す。だから凶。同じく出ざるも、初九は止まるべくして止まり、九二は行うべくして行わざるなり。六三は陰が陽位に居り中せず正しからず、自ら節制する能わず、事後にただ嗟嘆するのみ能くす。まさにこの自怨の中に悔悟を含むがゆえに、なお災禍ありと言うに及ばず。六四は柔にして當位、上は九五を承け、安然として節度の中に行いて勉强を覺えず。だから亨通。九五は陽剛中正にして尊位に居り、節を制する主。甘心樂意に節を行いて人をして苦と爲さしめず。だから吉、往けばなお尊崇を受けん。上六は節の盡きるところに處し、節制は苦澁難堪の地步に至る。この做法を守れば凶。しかし枉げを矯めて正に過ぐるは總じて放縱無度に勝る。その用心に就いて言えば、悔恨は終に消失し得べし。
第61卦 風澤中孚(ふうたくちゅうふ) ䷼
卦辭:豚魚吉,利涉大川,利貞。 初九:虞吉,有它不燕。 九二:鳴鶴在陰,其子和之,我有好爵,吾與爾靡之。 六三:得敵,或鼓或罷,或泣或歌。 六四:月幾望,馬匹亡,無咎。 九五:有孚攣如,無咎。 上九:翰音登于天,貞凶。
上卦は巽で風、下卦は兌で沢。風は沢上に行きて水波は相應ず。全卦の二・五兩爻は陽實にして中に居り、三・四兩爻は中虛。中虛はまさに誠信の象。だから「中孚」と言い、すなわち誠信が內心より發すること。卦辞は誠信は豚魚の如き微賤の物に感及し得ると言う。だから吉。大川を渉渡するに宜しく、また正を守るに宜しい。初九は誠信の始めに處し、まず信ずる人が信ずべきかを審度し、度して後に信ずれば吉。若し心に旁鶩して別に牽繫あらば、安寧を得ず。九二は陽剛が中を得て陰位に居り、鶴が幽暗の處に鳴きてその幼子が聲に隨って唱和するが如く、我に一杯の好酒あれば、願わくは你とともに分け享かん。誠信の相感は明處に在らず暗に在り、遠近を問わず。六三は陰が陽位に居り中せず正しからず、信ずる所はその人にあらず。敵手に遇えば忽ち鼓を撃ちて進攻し、忽ち疲憊して罷手し、忽ち哭泣し、忽ち歌唱す。心に主なくして進退は據を失う。六四は柔にして當位、上は九五を承けて初九とその私應を絕つ。月亮が將に圓けんとして未だ圓けざるが如く、馬匹が同伴を失うが如く、その類を捨てて專一にして上に從う。だから災禍なし。九五は陽剛中正にして尊位に居り、誠信をもって天下を牽繫し、上下は緊密に相連なりて攣如たり。だから災禍なし。上九は中孚の盡きるところに處し、雞鳴の聲が天に上達するが如く、聲聞は情に過ぎ、名は實に浮ぶ。この虛聲を守れば凶なり。
第62卦 雷山小過(らいざんしょうか) ䷽
卦辭:亨,利貞,可小事,不可大事。飛鳥遺之音,不宜上,宜下,大吉。 初六:飛鳥以凶。 六二:過其祖,遇其妣,不及其君,遇其臣,無咎。 九三:弗過防之,從或戕之,凶。 九四:無咎,弗過遇之,往厲必戒,勿用永貞。 六五:密雲不雨,自我西郊,公弋取彼在穴。 上六:弗遇過之,飛鳥離之,凶,是謂災眚。
上卦は震で雷、下卦は艮で山。雷は山上にあり、聲は高くして過ぐる所は小。全卦は四陰が外にあり二陽は中に居り、陰は陽に多し。だから「小過」と言い、小事の上にて稍や過ぐるを得べし。卦辞は亨通して正を守るに宜しく、小事を為す可く大事を為す可からずと言う。飛鳥が鳴聲を遺すが如く、鳥は上に飛ぶは逆勢にして力を費やし、下に飛んでこそ順勢なり。だから上に宜しからず下に宜しく、かくの如くしてこそ大吉なり。初六は陰柔にして最下にあって上は九四に應ず。もとより安處すべきに急いで高飛せんと欲し、分を越えて上る。だから凶。六二は柔順中正、祖父を越過して祖母に遇い、君王に攀及する能わずしてただ臣子に遇う。それの過ぐる所は分寸を失わず、止まるべき所に止まる。だから災禍なし。九三は陽剛が當位なるも小過の時に處し、稍や防備に過ぐるを肯ぜず、一味に自らの剛正を恃む。隨い來る陰柔なる者に暗中に戕害せらるるやもしれず。だから凶。九四は陽が陰位に居りて能く自ら抑す。だから災禍なし。それは過分に張揚せずして人と相遇う。往けばすなわち危險あり、必ず戒慎せねばならず。またこの權宜の道を長久不變の常法と爲すも可からず。六五は柔中にして尊に居りて陽剛の應なく、濃雲が自ら我が西郊より昇起するも雨と爲して降らざるが如く、恩澤は施與し出でず。ただ王公が繩を帶びた箭を射て穴中の物を取るが如く、近處の賢者を取用するのみ能くす。上六は小過の盡きるところに處し、相遇うを肯ぜずして一味に越過す。飛鳥が高飛して返らずして羅網の害を遭うが如し。だから凶。これをすなわち天災人禍と叫作す。
第63卦 水火既濟(すいかきせい) ䷾
卦辭:亨小,利貞,初吉終亂。 初九:曳其輪,濡其尾,無咎。 六二:婦喪其茀,勿逐,七日得。 九三:高宗伐鬼方,三年克之,小人勿用。 六四:繻有衣袽,終日戒。 九五:東鄰殺牛,不如西鄰之禴祭,實受其福。 上六:濡其首,厲。
上卦は坎で水、下卦は離で火。水は火上にありて烹飪は成を得る。だから「既濟」と言い、すなわち事情はすでに成功して渡り終えたること。全卦の六爻は陽は奇位に居り陰は偶位に居り、當位せざるものなし。『周易』中で最も整齊の格局なり。卦辞は亨通するはただ小處のみ、正を守るに宜しと言う。初めは吉利、最後に至ってはかえって混亂に轉ず。極盛の後は再び進む可くなし。成を守るは業を創るよりも難し。これが全卦の主旨なり。初九は陽剛が當位にして濟の初めに處し、車輪を拖住して快く走らしめず、尾巴を沾濕して急渡せしめず。能く自ら節制す。だから災禍なし。六二は柔順中正にして上は九五に應ず。婦人は車上の遮蔽簾飾を喪失し、一時は出行する能わず。追尋するに及ばず、その守中正を守り、第七の爻位が循環して回るを待てば自ずから復得せん。九三は陽剛が當位にして下卦の極に處し、商王高宗武丁が鬼方を討伐するが如く、時を費やすこと三年にしてようやく攻克す。既濟の後の用兵の難しきが見える。このとき殊に小人を任用すべからず。六四は陰柔が當位にしてすでに坎體に入り、華美の絲衣の傍らに預め破舊の漏を塞ぐ物を備うるが如く、整天に戒備して水の漏るを待つ。成功の後は時時に患を防ぐべきを說明す。九五は陽剛中正にして尊位に居り、東鄰は牛を殺して盛祭するも、西鄰が微薄の禴祭を用うるに如かず、より能く真に神の福佑を承受す。祭は誠に在りて物に在らず。時は既濟に當たり、殊に浮華を忌む。上六は既濟の盡きるところに處し、河を渡るに連れて頭さえも水に浸沒するが如く、濟は極まりて險生ず。だから危險あり。
第64卦 火水未濟(かすいびせい) ䷿
卦辭:亨,小狐汔濟,濡其尾,無攸利。 初六:濡其尾,吝。 九二:曳其輪,貞吉。 六三:未濟,征凶,利涉大川。 九四:貞吉,悔亡,震用伐鬼方,三年有賞于大國。 六五:貞吉,無悔,君子之光,有孚,吉。 上九:有孚于飲酒,無咎。濡其首,有孚失是。
上卦は離で火、下卦は坎で水。火の性は上に炎し、水の性は下に流れ、兩者相交わらず。事情は未だ辦成せず。だから「未濟」と言い、既濟と正好相反す。全卦の六爻は陽は偶位に居り陰は奇位に居り、當位するものなし。しかし每爻皆正應あり。だから未濟なれども濟すべき理あり。『周易』がこの卦をもって篇を終るは、まさに事に終窮なきの義を取る。卦辞は亨通すと言う。小狐狸は將に河を渡り終らんとして、尾巴を沾濕す。功は敗れて垂成す。だから利する所なし。初六は陰柔にして最下にあって才弱く、未濟の初めに處して急いで河を渡る。尾巴を沾濕して繼續する能わず。力を量るに足らず。だから憾吝あり。九二は陽剛が中を得て柔位に居り、能く車輪を拖住して急進せしめず、中道をもって自ら守る。だから正を守れば吉。六三は陰柔が失位にして坎險の上に處し、未濟の時に冒然として前行すれば凶。しかし險は將に出んとし上に正應あり。若し能く勢に乘じて大川を渡れば、なお利あるなり。九四は陽が陰位に居りてすでに坎險を出づ。正を守れば吉にして悔恨消失す。震動の威を奮起して鬼方を討伐し、時を費やすこと三年にして終に大國の封賞を獲る。難を濟うは一朝の功にあらざるが見える。六五は柔中にして尊に居りて下は九二に應ず。正を守れば吉にして悔恨なし。これは君子の光輝の在る所なり。心に誠信を懷きて衆人は之に歸す。だから吉。上九は未濟の盡きるところに處し、誠信を懷きて人と飲酒してともに樂しむ。もとより災禍なし。しかし若し沈湎して過度に至りて頭を浸濕するに至らば、誠信あると雖も分寸を失う。全書はこの一句の戒辞をもって結と爲す。意味は深長なり。
附録 爻辭應用要點
爻辭應用要點。1. 動爻優先:在梅花易數中,動爻的爻辭是最直接的參考。其爻辭往往能點明事情的關鍵。2. 結合體用:爻辭需結合體用生克關係來理解,不可孤立解讀。3. 觀象取義:爻辭中的意象(如龍、虎、馬、鳥等)可根據問事情境靈活取象。4. 時位相應:注意爻位(初、二、三、四、五、上)所代表的時間或地位含義。
爻辭を用いて卦を斷ずるに、四つの要領あり。その一は動爻優先。『梅花易數』の體例にては、動爻の爻辭は最も直接の判斷依據で、往々にして一句話にて事情の關鍵の在る所を點明し、其餘の各爻はただ參照を作すのみ。その二は體用を結合す。『梅花易數』は卦中の動かざる一卦を「體」と稱し、變動發生の一卦を「用」と稱す。兩者の間に我を生ず、我が生ず、我を克す、我が克すの關係あり。爻辭は必ずこの一層の生克關係の中に放回して理解せねばならず、孤立して一句の爻辭を看れば極めて斷り偏し易し。その三は象を觀て義を取る。爻辭中の龍・虎・馬・鳥の如き形象は皆象を取って理を說く、字面に拘泥すべからず。所問の事情の具體的情境に依って靈活に轉換すべし。人事を問い、行止を問い、財物を問うに、同一の物象の指す所は相同ならず。その四は時位相應す。初・二・三・四・五・上の六つの爻位は、事情の處する先後の階段を表すとともに、當事人の地位の高下をも表す。爻辭を讀む時は爻位の含む時と位を併せ考量してこそ、判斷は準確ならん。
