人皇神農氏政典
政典曰:惟天生民,惟君奉天,惟食喪祭衣服教化,一歸於政。皇曰:我惟生無德,咸若古政。嗟爾四方之君,有官有業,乃子乃父,乃兄乃弟,無亂於政。昔二君始王,未有書契,結繩而治,交易而生,亦惟歸政。昔在天皇,肇修文教,始畫八卦,明君臣民物陰陽兵象,以代結繩之政。出言惟辭,制器惟象,動作惟變,卜筮惟占。天皇氏歸氣,我惟代政,惟若古道以立政。
《政典》曰く――上天は万民を生育し、君主は天命を承奉す。飲食・丧葬・祭祀・衣服・教化この幾桩の事は、全て政事の上に帰結す。人皇神農曰く――我は生まれて并せ如何なる徳行無く、一切は古時の政法に遵照す。嗟、汝ら四方の君長、凡そ官職有り職業有るの人、汝ら児子を為す者・父親を為す者・兄長を為す者・弟弟を為す者は、皆政事を擾乱する勿れ。从前両位の君主始めて王と称せり。あの時還た文字契券無く、結縄を靠りて治理し、交易を靠りて維生し、亦同様に政事の上に帰結せり。从前天皇伏羲は、最先に文教を興修し、八卦を画出し、君・臣・民・物・陰・陽・兵・象の八項を闡明して、用いて結縄の政に取代せり――言を発すれば就中辞と為り、器を制すれば就中象に取法し、行動すれば就中変に體現し、卜筮すれば就中用いて占断す。天皇氏は気帰りて逝けり、我は彼に接替して政事を主持し、ただ古道に遵循して以て政令を建立するのみなり。
皇曰:正天時,因地利,惟厚於民。民惟邦本,食惟民天。農不正,食不豐;民不正,業不專。惟民有數,惟食有節,惟農有教。林林生人,無亂政典。
人皇曰く――天時を端正し、地利に凭借し、務めて百姓を厚待せよ。百姓は国家の根本にして、糧食は百姓の天なり。農事端正せざれば、糧食は就中豊足ならず。民心端正せざれば、本業は就中専一ならず。人口は当に定数有るべく、飲食は当に節制有るべく、務農は当に教導有るべし。芸芸衆生は繁衍生息し、皆この部《政典》を擾乱する勿れ。此処の「民は惟邦の本」の一語は、後世《尚書・五子之歌》に見ゆるも、本篇は却って提前して神農の口中に繋げり。此れ正に《古三墳》の後起成語を襲用するの一処の顕証にして、亦歴來辨偽者の常常引拠する処なり。
政典曰:君正一道,二三凶。臣正一德,有常吉。時正惟四,亂時不植。氣正惟和,氣亂作癘。官正惟百,民正惟四,色正惟五,惟質惟良。病正四百四,藥正三百六十五。過數乃亂,而昏而毒。道正惟常,過政反僻。刑正平,過正反私。祿正滿,過正反侈。禮正度,過政反僭。樂正和,過政反流。治正簡,過政反亂。喪正哀,過政反遊。干戈正亂,過政反危。市肆正貨,過政反邪。譏禁正非,過政失用。
《政典》曰く――君主の守正はただ一条の道有り、三心二意すれば就中凶なり。臣子の守正はただ一種の徳有り、之以恒を持せば就中吉なり。時令の端正はただ四時に在り、時令錯乱すれば庄稼は就中長成せず。気候端正すれば就中調和し、気候錯乱すれば就生瘟疫。官職端正は一百種、民業端正は四類、顔色端正は五色にして、可貴なるは質朴純良なり。疾病の名目端正は四百零四種、薬物端正は三百六十五味にして、この数目を超出すれば就中乱れ、人は就中昏昧中毒せん。道の守正は恒常に在り、施政過頭すれば反而偏邪なり。刑罰の守正は公平に在り、過頭すれば反而偏私なり。俸禄の守正は足用に在り、過頭すれば反而奢侈なり。礼の守正は合度に在り、過頭すれば反而僭越なり。楽の守正は和諧に在り、過頭すれば反而放蕩なり。治理の守正は簡約に在り、過頭すれば反而混乱なり。丧事の守正は哀戚に在り、過頭すれば反而虚浮に流れん。兵戈を動用するの守正は平乱に在り、過頭すれば反而危を招けり。市集店舗の守正は貨物を流通するに在り、過頭すれば反而奸邪を生出せり。稽察禁令の守正は過失を糾挙するに在り、過頭すれば就中其作用を失去せり。整段は「正」と「過」を用いて層層相対し、反復して凡事度有り・過猶不及の道理を申説す。
皇曰:嗟爾有官有業,乃子乃父,乃兄乃弟,咸若我辭,一歸於正。皇曰:君相信任惟正,相君··位惟忠,相官統治惟公,官相代位惟勤,民官撫愛惟仁,官民事上惟業。父無不義,厥子惟孝。兄無不友,厥弟惟恭。夫不遊,妻不淫,師不怠,教不失。刑者形也,形爾身。道者導也,導爾志。禮者制也,制爾情。樂者和也,和爾聲。政者正也,正其事。
人皇曰く――嗟、汝らこれらの官職有り職業有るの人、汝ら児子を為す者・父親を為す者・兄長を為す者・弟弟を為す者は、皆我がこの番話に依照し、一概に端正に帰せよ。人皇曰く――君主の宰輔に対待するは、信任を以て正と為す。宰輔の君主に対待するは、底本此処は两字を脱去して僅かに両個の墨点を存せり、其の位に就りて言えば忠を尽くすを以て正と為す。宰輔の百官に対待するは、統領治理して公を以て正と為す。百官は宰輔の位を承接して、勤勉を以て正と為す。官吏の百姓に対待するは、撫育愛護して仁を以て正と為す。百姓の官府に対待するは、上級に奉事して各々本業を尽くすを以て正と為す。父親を為す者に不義の挙無ければ、其の児子は自然孝順なり。兄長を為す者に不友の行無ければ、其の弟弟は自然恭敬なり。丈夫游荡せず、妻子淫佚せず、師を為す者懈怠せざれば、教化は就中落空せず。所謂「刑」はすなわち「形」にして、是れ汝の身を規範せんとするなり。所謂「道」はすなわち「導」にして、是れ汝の志を引導せんとするなり。所謂「礼」はすなわち「制」にして、是れ汝の情を節制せんとするなり。所謂「楽」はすなわち「和」にして、是れ汝の声を調和せんとするなり。所謂「政」はすなわち「正」にして、是れ汝の弁じる所の事を端正せんとするなり。末尾は連用五組の同音相訓にして、是れ漢代以降声訓の学の常見の手法なり。
形墳 地皇軒轅氏 乾坤易
爻卦大象: 乾形天 地天降氣 日天中道 月天夜明 山天曲上 川天曲下 雲天成陰 氣天習蒙 坤形地 天地圓丘 日地圜宮 月地斜曲 山地險徑 川地廣平 雲地高林 氣地下溼
《形墳》は「形」を以て卦を立て、配するは《乾坤易》なり。其の八個の卦は乾形は天と為り、坤形は地と為り、陽形は日と為り、陰形は月と為り、土形は山と為り、水形は川と為り、雨形は雲と為り、風形は気と為りて、同様に両両相重なりて六十四条と成る。第一行乾形は天を主る――地と天相重なれば其の象は「降気」、日と天相重なれば其の象は「中道」、太陽が天の中道を循りて行くを指す。月と天相重なれば其の象は「夜明」、山と天相重なれば其の象は「曲上」すなわち山勢の盤曲して向上す、川と天相重なれば其の象は「曲下」、雲と天相重なれば其の象は「成陰」、気と天相重なれば其の象は「習蒙」すなわち層層蒙翳す。第二行坤形は地を主る――天と地相重なれば其の象は「円丘」すなわち天を祭る円壇、日と地相重なれば其の象は「圜宮」、月と地相重なれば其の象は「斜曲」、山と地相重なれば其の象は「険径」、川と地相重なれば其の象は「広平」、雲と地相重なれば其の象は「高林」、気と地相重なれば其の象は「下湿」すなわち低窪潮湿の処。
陽形日 天日昭明 地日景隨 月日從朔 山日沉西 川日流光 雲日蔽霠 氣日緡蔀 陰形月 天月淫 地月伏輝 日月代明 山月升騰 川月東浮 雲月藏宮 氣月冥陰
第三行陽形は日を主る――天と日相重なれば其の象は「昭明」、地と日相重なれば其の象は「景随」すなわち影子の日光に随い移動す、月と日相重なれば其の象は「従朔」、朔日の時月亮と太陽の同行を指す。山と日相重なれば其の象は「沈西」、川と日相重なれば其の象は「流光」、雲と日相重なれば其の象は「蔽霠」、霠は陰翳にして雲の日光を遮蔽するを指す。気と日相重なれば其の象は「緡蔀」すなわち昏暗遮覆す。第四行陰形は月を主る――天と月相重なれば其の象は「淫」、月行過度を指す。地と月相重なれば其の象は「伏輝」、日と月相重なれば其の象は「代明」すなわち日月交替照明す、山と月相重なれば其の象は「升腾」、川と月相重なれば其の象は「東浮」、雲と月相重なれば其の象は「蔵宮」、気と月相重なれば其の象は「冥陰」。この両行は専ら日月と天地山川と相遇する時の光影景象を講じ、取象頗る画意有り。
土形山 天山嶽 地山盤石 曰山危峰 月山斜巔 川山島 雲山岫 氣山岩 水形川 天川漢 地川河 日川湖 月川曲池 山川澗 雲川溪 氣川泉
第五行土形は山を主る――天と山相重なれば其の象は「嶽」、地と山相重なれば其の象は「盤石」。下一格は底本は「曰山危峰」と作る、其中「曰」は当に「日」字の訛たるべく、本は日と山相重なれば其の象は「危峰」を指す。今仍ほ原字を照録して、改動を加えず。月と山相重なれば其の象は「斜巔」、川と山相重なれば其の象は「島」、雲と山相重なれば其の象は「岫」すなわち山間洞穴、気と山相重なれば其の象は「岩」。第六行水形は川を主る――天と川相重なれば其の象は「漢」すなわち天上の銀河、地と川相重なれば其の象は「河」、日と川相重なれば其の象は「湖」、月と川相重なれば其の象は「曲池」、山と川相重なれば其の象は「澗」、雲と川相重なれば其の象は「溪」、気と川相重なれば其の象は「泉」。
雨形雲 天雲祥 地雲黃霙 日雲赤曇 月雲素雯 山雲疊峰 川雲流 氣雲散彩 風形氣 天氣垂氤 地氣騰氳 日氣晝圍 月氣夜圓 山氣籠煙 川氣浮光 雲氣流章
第七行雨形は雲を主る――天と雲相重なれば其の象は「祥」、地と雲相重なれば其の象は「黄霙」、霙は雨雪交雑して下るの状を指す。日と雲相重なれば其の象は「赤曇」、月と雲相重なれば其の象は「素雯」、雯は紋理を成せる彩雲を指す。山と雲相重なれば其の象は「畳峰」、川と雲相重なれば其の象は「流」、気と雲相重なれば其の象は「散彩」。第八行風形は気を主る――天と気相重なれば其の象は「垂氤」、地と気相重なれば其の象は「腾氲」、氤氲連用すれば便に元気瀰漫の貌なり。日と気相重なれば其の象は「昼囲」、月と気相重なれば其の象は「夜円」、山と気相重なれば其の象は「籠烟」、川と気相重なれば其の象は「浮光」、雲と気相重なれば其の象は「流章」。末一格の「章」字は、底本原是一個の上「雨」下「章」の僻字にして、今通行字形に依りて「章」と写し、并せて此処に於て其の本来面目を説明す。《三墳》の三張の大象表は此に至りて結束す。通篇はただ名物配当のみ有りて、始終一句の爻辞を見ず。此れ正に歴代学者がそれを偽書と判定する根本理由なり。
地皇軒轅氏政典
皇曰:嗟爾天師、相、五正、百官、士子、農夫、商人、工技,咸若我言。政典曰:國無邪教,市無淫貨,地無荒土,官無濫士,邑無遊民,山不童,澤不涸,其正道至矣。正道至則官有常職,民有常業,父子不背恩,夫婦不背情,兄弟不去義,禽獸不失長,草木不失生。
地皇曰く――嗟、汝ら天師・宰輔・五正・百官・士人・農夫・商人・工匠は、皆当に我がこの番話に依照して去做すべし。《政典》曰く――国の中に邪僻の教説無く、市の上に淫巧の貨物無く、土地に荒蕪の田畝無く、官府に濫竽充数の士人無く、城邑に遊手好閑の百姓無く、山は光秃に至らず、湖沢は干涸に至らざれば、則ち正道は算して極致に達せり。正道極致に達すれば、官吏は就中各々固定の職守有り、百姓は就中各々固定の産業有り。父と子は恩情を背棄せず、夫と妻は情義を背棄せず、兄と弟は道義を丟開せず、禽獣は其の生長を失去せず、草木は其の生機を失去せず。「山童ならず」の「童」は山上に草木無く光秃して童子未冠のごときの意にして、此れ先秦常見の説法なり。
政典曰:方圓角直,曲斜凹凸,必有形。遠近高下,長短疾緩,必有制。寒暑燥溼,風雨逆順,必有時。金木水火,土石羽毛,必有濟。布帛桑麻,筋角齒革,必有用。百工器用,必有制。
《政典》曰く――方の・円の・角有る・笔直の、弯曲の・傾斜の・凹陷の・凸起のは、必ず各々其の形状有り。遠の近の・高の低の、長の短の・快の慢のは、必ず各々其の法度有り。寒と暑・燥と湿、風雨の逆行と順行は、必ず各々其の時節有り。金・木・水・火、土・石・羽・毛は、必ず各々其の相成相済の処有り。布帛と桑麻、筋・角・歯・革は、必ず各々其の用途有り。各行工匠の造れる器具は、必ず各々其の規制有り。この一段の立意は――天下万物は各々形有り・制有り・時有り・用有らざる無し。政を為す人はただこれらの既有の分際に依照して去りて安排すれば足り、別に新法を出すを須いず。
聖人治天下,權以聚財,財以施智,智以畜賢,賢以輔道,道以統下,不以事上,上以施仁,仁以保位,位以制義,義以··禮,禮以制情,情以敦信,信以一德,德以明行,行以崇教,教以歸政,政以崇化,化以順性,性以存命,命以保生,生以終壽。
聖人の天下を治理する――権柄を用いて財貨を聚集し、財貨を用いて智謀を施展し、智謀を用いて賢才を蓄養し、賢才を用いて大道を輔助し、大道を用いて下民を統率し、而してそれを用いて上級に侍奉するに非ず。上位在る者はそれを用いて仁愛を施行し、仁愛を用いて其の位を保守し、位分を用いて義理を裁断す。義理以下は底本は两字を脱去して僅かに両個の墨点を存せり。其の下は接続して礼を用いて性情を節制し、性情を用いて信実を敦厚し、信実を用いて其の徳を専一にし、徳を用いて行為を彰明し、行為を用いて教化を推崇し、教化を用いて政事に帰結し、政事を用いて風化を光大し、風化を用いて本性に順応し、本性を用いて性命を保存し、性命を用いて生機を護持し、生機を用いて天年を終享すと言う。全段は一環一環相扣して、権・財より一直に寿に推到す。是れ治国の道を排して一条の首尾相接の鏈条と為せるなり。
皇曰:岐伯天師,爾司日月星辰,陰陽曆數。爾正爾考,無有差貸。先時者殺,不及時者殺,爾惟戒哉。 皇曰:后土中正,爾識山川草木,蟲魚鳥獸。爾掌爾察,無亂田制,以作田訟。爾惟念哉。 皇曰:龍東正,爾分爵祿賢智,爾諮爾行,無掩大賢以悕財,無庇惡德以私嘗。
地皇曰く――岐伯天師、汝は日月星辰および陰陽暦数を掌管す。汝は当に校正すべく、汝は当に考核すべく、半点の差錯有るを許さず――「差貸」の「貸」は「忒」の借字にして、すなわち差失なり。時令に搶い先んずる者は処死し、時令に趕かざる者は処死す、汝は当に之を以て戒と為すべし。地皇曰く――后土、汝は中正の官を担任し、汝は当に山川草木・虫魚鳥獣を辨識すべし。汝は当に掌管すべく、汝は当に察訪すべく、田畝の制度を擾乱して以て田土の争訟を引起すを許さず。汝は当に之を心に牢記すべし。地皇曰く――竜、汝は東正の官を担任し、汝は爵位俸禄を分派して賢能智慧の士に与うるを負責す。汝は当に徴詢すべく、汝は当に施行すべく、大賢を埋没して財貨を貪るを許さず、亦悪徳の人を庇護して私相賞賜するを許さず。前面《古三墳序》の引く《胤征》「時に先んずる者は殺して赦無し、時に及ばざる者は殺して赦無し」、其の源頭は正に此に在り。
皇曰:融南正,爾平禮服祭祀,爾正惟,無亂國制以僭上,無廢祀事以簡恭,爾惟念哉。 皇曰:太封西正,爾分干戈刑法,爾掌爾平。 皇曰:太常北正,爾居田制民事,爾訓爾均。百工惟良,山川爾圖。爾惟勤恭哉。 皇曰:天師輔相、五正、百官、士子、農夫、商人、工技,咸順我言,終身於休。
地皇曰く――祝融、汝は南正の官を担任し、汝は礼服と祭祀の事を厘定するを負責す。「爾正惟」の三字の下は底本似有脱文にして、語意未完なり。国家制度を擾乱して在上位者に僭越するを許さず、亦祭祀の事を荒廃して恭敬を怠慢するを許さず、汝は当に心に牢記すべし。地皇曰く――太封、汝は西正の官を担任し、汝は兵戈と刑法を分掌するを負責す。汝は当に掌管すべく、汝は当に持平すべし。地皇曰く――太常、汝は北正の官を担任し、汝は田畝制度と民間事務を負責す。汝は当に教導すべく、汝は当に均平すべし。各行工匠は務めて精良を求めよ。山川形勢は汝に由りて絵製して図と為す。汝は当に勤勉恭謹すべし。地皇曰く――天師・輔相・五正・百官・士人・農夫・商人・工匠は、皆我がこの番話に順従せば、就中終身安く美善を享くべし。五正は東・南・西・北・中の五方の官にして、この一段は依次点名授職す。前篇《皇策辞》の飛竜・潜竜諸位を分派するの写法と如出一辙なり。
《古三墳》終後序
(唐末隱士) 《傳》曰:《河圖》隱於周初,《三墳》亡於幽厲,《洛書》火於亡秦,治世之道不可復見。餘自天復中隱於青城之西,因風雨石裂,中有石匣,得古文三篇,皮斷簡脫,皆篆字,乃上古三皇之書也。 《漢魏叢書》本
この篇の後序は唐朝末年一位の隠士の作と題す。序の中に曰く――《伝》の裏に講じて過ぎたり、《河図》は周朝初年に隠没し、《三墳》は周幽王・周厲王の世に亡佚し、《洛書》は秦朝覆亡の際に焚毀せられ、天下を治理する大道は此より再び看ることを得ず。我は唐昭宗天復年間より青城山の西に隠居し、風雨侵蝕に因りて山石の開裂を致し、石の中に一只の石匣を露出せり。裏より古文三篇を得たり。簡を串ぐ皮縄は已に断ち、簡冊もまた散乱し、通篇は皆篆字を以て写成す。原来すなわち上古三皇の書なりき。末行に「《漢魏叢書》本」を標明すは、この附録の依拠する底本が明人の編せる《漢魏叢書》に出づるを説明するなり。留意に値するは、この篇後序の講ずる石匣得書は、前面毛漸自述の泌陽民家に於て借抄せるの説法と完全不同なり。同一部書の裏に併存両種の互いに相干らざる来歴は、本身就是《古三墳》の可疑の一個の明証なり。全巻は此に至りて結束す――前半は馬国翰輯録の《連山》佚文と歴代論説、後半は歴代学者に偽託と判為されたる《古三墳》なり。両者合せて観れば、正に《連山》一書の漢より以下聚訟千年にして終に定論無きの全貌を見るべし。
