国風
有兔斯首,燔之炙之。君子有酒,酌言酢之。
有兔斯首、燔之炙之(はんししゃし)。君子有酒、酌言酢之(しゃくげんさくし・酌んで之に酢す)。
有兔斯首,燔之炮之。君子有酒,酌言酬之。
有兔斯首、燔之炮之(はんしほうし)。君子有酒、酌言醻之(しゃくげんしゅうし・酌んで之に醻る)。
漸漸之石,維其高矣。山川悠遠,維其勞矣。武人東征,不遑朝矣。
漸漸之石(ぜんぜんしせき・漸漸と高い石)、維其高矣(いきこうい・其の高きによる)。山川悠遠(さんせんゆうえん)、維其勞矣(いきろうい・其の勞れるによる)。武人東征(ぶじんとうせい)、不遑朝矣(ふこうちょうい・朝を俟つ暇なし)。
漸漸之石,維其卒矣。山川悠遠,曷其沒矣?武人東征,不遑出矣。
漸漸之石、維其卒矣(いきそつい・其の卒・険峻による)。山川悠遠、曷其沒矣(かつきぼつい・いつか其の沒・尽きるか)。武人東征、不遑出矣(ふこうしゅつい)。
有豕白蹢,烝涉波矣。月離於畢,俾滂沱矣。武人東征,不皇他矣。
有豕白蹢(ゆうしはくてき・白蹢の豕あり)、烝涉波矣(しょうしょうはい・烝として波を涉る)。月離于畢(げつりおひつ・月が畢に離れる)、俾滂沱矣(ひぼうだい・滂沱たらしめる)。武人東征、不遑他矣(ふこうたい・他を顧みる暇なし)。
苕之華,芸其黃矣。心之憂矣,維其傷矣!
苕之華(ちょうしか・凌霄の花)、芸其黃矣(うんきこうい・芸として黄い)。心之憂矣、維其傷矣(いきしょうい・其の傷まるによる)。
苕之華,其葉青青。知我如此,不如無生!
苕之華、其葉青青(きようせいせい)。知我如此(ちがにょじ・我が此く如きを知れば)、不如無生(ふにょむせい・生まれざるに如かず)。
牂羊墳首,三星在罶。人可以食,鮮可以飽!
牂羊墳首(そうようふんしゅ・牝羊の墳・大きな首)、三星在罶(さんせいざいりゅう・三星が罶に在る)。人可以食(じんかいしょく・人は食できるが)、鮮可以飽(せんかいほう・飽くことは鮮ない)。
何草不黃?何日不行?何人不將?經營四方。
何草不黃(かそうふこう・何の草か黃ばない)。何日不行(かじつふこう・何の日か行かない)。何人不將(かじんふしょう・何の人か將・行役しない)。經營四方(けいえいしほう)。
何草不玄?何人不矜?哀我征夫,獨為匪民。
何草不玄(かそうふげん・玄・黑くない)、何人不矜(かじんふきょう・矜・獨りでない)。哀我征夫(あいがせいふ)、獨為匪民(どくいひみん・獨り匪民・民でないとされる)。
匪兕匪虎,率彼曠野。哀我征夫,朝夕不暇。
匪兕匪虎(ひじひこ・兕でなく虎でもないのに)、率彼曠野(そつひこうや・彼の曠野を率・行く)。哀我征夫、朝夕不暇(ちょうせきふか)。
有芃者狐,率彼幽草。有棧之車,行彼周道。
有芃者狐(ゆうぼうしゃこ・芃たる狐あり)、率彼幽草(そつひゆうそう・彼の幽草を率る)。有棧之車(ゆうさんししゃ・棧・高い之車あり)、行彼周道(こうひしゅうどう)。
大雅
文王在上,於昭於天。周雖舊邦,其命維新。有周不顯,帝命不時。文王陟降,在帝左右。
文王在上(ぶんおうざいじょう・文王は上に在り)、於昭于天(おしょうおてん・於昭として天に)。周雖舊邦(しゅうすいきゅうほう・周は旧邦といえども)、其命維新(きめいいしん・其の命は新なり)。有周不顯(ゆうしゅうふけん・有周は顯ならずや)、帝命不時(ていめいふじ・帝命は時ならずや)。文王陟降(ぶんおうちょくこう・文王は陟降し)、在帝左右(ざいていさゆう・帝の左右に在る)。
亹亹文王,令聞不已。陳錫哉周,侯文王孫子。文王孫子,本支百世,凡周之士,不顯亦世。
亹亹文王(びびぶんおう・亹亹と倦まぬ文王)、令聞不已(れいぶんふい・令聞は已まない)。陳錫哉周(ちんしゃくさいしゅう・陳錫するかな周)、侯文王孫子(こうぶんおうそんし・文王の孫子に侯・維る)。文王孫子、本支百世(ほんしひゃくせい・本支は百世)。凡周之士(ぼんしゅうしし・凡そ周の士)、不顯亦世(ふけんやくせい・顯ならずや亦た世に)。
世之不顯,厥猶翼翼。思皇多士,生此王國。王國克生,維周之楨;濟濟多士,文王以寧。
世之不顯(せいしふけん)、厥猶翼翼(けつゆうよくよく・厥の猶は翼翼と慎む)。思皇多士(しこうたし・思うに皇・美しき多士)、生此王國(せいしおうこく・此の王國に生まる)。王國克生(おうこくこくせい・王國は能く生す)、維周之楨(いしゅうしてい・周の楨・幹)。濟濟多士(さいさいたし・濟濟たる多士)、文王以寧(ぶんおういねい・文王は以って寧んず)。
穆穆文王,於緝熙敬止。假哉天命。有商孫子。商之孫子,其麗不億。上帝既命,侯於周服。
穆穆文王(ぼくぼくぶんおう・穆穆たる文王)、於緝熙敬止(おしゅうきけいし・緝熙として敬む)。假哉天命(かさいてんめい・大きなり天命)。有商孫子(ゆうしょうそんし・商の孫子あり)。商之孫子(しょうしそんし)、其麗不億(きれいふおく・其の麗・数は億ならず・一億を超える)。上帝既命(じょうていきめい・上帝は既に命じ)、侯于周服(こうおしゅうふく・周に侯して服す)。
侯服於周,天命靡常。殷士膚敏。裸將於京。厥作裸將,常服黼冔。王之藎臣。無念爾祖。
侯服于周(こうふくおしゅう・周に侯服す)、天命靡常(てんめいびじょう・天命は常なし)。殷士膚敏(いんしふびん・殷士は膚・美しく敏い)。祼將于京(かんしょうおけい・京に祼將・灌祭を獻じる)。厥作祼將(けっさくかんしょう・厥の祼將を作す)、常服黼冔(じょうふくふきゅう・常に黼冔を服する・黼衣と殷冠)。王之藎臣(おうししんしん・王の藎臣・進用の臣)。無念爾祖(むねんじそ・あなたの祖を念ぜざるな)。
無念爾祖,聿修厥德。永言配命,自求多福。殷之未喪師,克配上帝。宜鑑於殷,駿命不易!
無念爾祖、聿修厥德(いっしゅうけっとく・聿に厥の德を修め)。永言配命(えいげんはいめい・永く言に命に配す)、自求多福(じきゅうたふく・自ら多福を求め)。殷之未喪師(いんしみそうし・殷の未だ師・衆を喪わざる時)、克配上帝(こくはいじょうてい・能く上帝に配したり)。宜鑒于殷(ぎかんおいん・宜しく殷に鑑みるべし)、駿命不易(しゅんめいふえき・駿命は易からず)。
命之不易,無遏爾躬。宣昭義問,有虞殷自天。上天之載,無聲無臭。儀刑文王,萬邦作孚。
命之不易(めいしふえき・命は易からず)、無遏爾躬(むあつじきゅう・あなたの躬に遏るな)。宣昭義問(せんしょうぎもん・義問・善い聞を宣昭し)、有虞殷自天(ゆうぐいんじてん・殷の天よりを虞・度る)。上天之載(じょうてんしさい・上天の載・事)、無聲無臭(むせいむしゅう・声なく臭いない)。儀刑文王(ぎけいぶんおう・文王を儀刑・法とせよ)、萬邦作孚(ばんぽうさくふ・萬邦が孚・信を作す)。
明明在下,赫赫在上。天難忱斯,不易維王。天位殷適,使不挾四方。
明明在下(めいめいざいか・明明として下に在り)、赫赫在上(かっかくざいじょう・赫赫として上に在り)。天難忱斯(てんなんしんし・天は忱・信じ難い)、不易維王(ふえきいおう・易からざるは王たること)。天位殷適(てんいいんてき・天位は殷の適・嫡子)、使不挾四方(しふきょうしほう・四方を挾・有せしめない)。
摯仲氏任,自彼殷商,來嫁於周,曰嬪於京。乃及王季,維德之行。
摯仲氏任(しちゅうしじん・摯国任姓の仲氏)、自彼殷商(じひいんしょう・彼の殷商より)、來嫁于周(らいかおしゅう・來り周に嫁ぐ)、曰嬪于京(えつひんおけい・京に嬪と曰う)。乃及王季(だいきゅうおうき・乃ち王季に及び)、維德之行(いとくしこう・ただ德の行を為す)。
大任有身,生此文王。維此文王,小心翼翼。昭事上帝,聿懷多福。厥德不回,以受方國。
大任有身(たいにんゆうしん・大任に身・娠あり)、生此文王(せいしぶんおう)。維此文王(いしぶんおう)、小心翼翼(しょうしんよくよく)。昭事上帝(しょうじじょうてい・昭らかに上帝に事え)、聿懷多福(いっかいたふく・聿に多福を懷・來す)。厥德不回(けっとくふかい・厥の德は回・邪まない)、以受方國(いじゅほうこく・以って方國を受く)。
天監在下,有命既集。文王初載,天作之合。在洽之陽,在渭之涘。
天監在下(てんかんざいか・天は下に監り)、有命既集(ゆうめいきしゅう・命は既に集まる)。文王初載(ぶんおうしょさい・文王の初載・初年)、天作之合(てんさくしごう・天が之に合を作す)。在洽之陽(ざいこうしよう・洽の陽・北岸に)、在渭之涘(ざいいしし・渭の涘に)。
文王嘉止,大邦有子。大邦有子,俔天之妹。文定厥祥,親迎於渭。造舟為梁,不顯其光。
文王嘉止(ぶんおうかし・文王が之を嘉す)、大邦有子(たいほうゆうし・大邦に子あり)。大邦有子、伣天之妹(けんてんしまい・天の妹の伣・如し)。文定厥祥(ぶんじょうけっしょう・文・納幣に厥の祥を定め)、親迎于渭(しんげいおい・渭に親迎す)。造舟為梁(ぞうしゅういりょう・舟を造りて梁・橋と為す)、不顯其光(ふけんきこう・其の光を顯さずや)。
有命自天,命此文王。於周於京,纘女維莘。長子維行,篤生武王。保右命爾,燮伐大商。
有命自天(ゆうめいじてん・天より命あり)、命此文王(めいしぶんおう)。于周于京(おしゅうおけい・周に京に)、纘女維莘(さんじょいしん・莘の女を纘・娶る)。長子維行(ちょうしいこう・長子は維に行・出行す)、篤生武王(とくせいぶおう・篤く武王を生む)。保右命爾(ほゆうめいじ・保右・保佑して爾に命じ)、燮伐大商(しょうばつだいしょう・燮・和して大商を伐つ)。
殷商之旅,其會如林。矢於牧野,維予侯興。上帝臨女,無二爾心。
殷商之旅(いんしょうしりょ・殷商の旅・軍)、其會如林(きかいにょりん・其の會は林の如し)。矢于牧野(しおぼくや・牧野に矢・陳す)、維予侯興(いよこうこう・維に予侯・我が君が興る)。上帝臨女(じょうていりんじょ・上帝は女・あなたがたを臨む)、無貳爾心(むにじしん・爾の心を貳・二にするな)。
牧野洋洋,檀車煌煌,駟騵彭彭。維師尚父,時維鷹揚。涼彼武王,四伐大商,會朝清明。
牧野洋洋(ぼくやようよう・牧野は洋洋と廣い)、檀車煌煌(だんしゃこうこう・檀車は煌煌と)、駟騵彭彭(しげんほうほう・四騵は彭彭)。維師尚父(いししょうふ・師尚父は維に)、時維鷹揚(じいようよう・時に鷹揚する)。涼彼武王(りょうひぶおう・彼の武王を涼・輔く)、肆伐大商(しばつだいしょう・肆として大商を伐つ)、會朝清明(かいちょうせいめい・會朝は清明)。
綿綿瓜瓞。民之初生,自土沮漆。古公亶父,陶復陶冗,未有家室。
綿綿瓜瓞(めんめんかてつ・綿綿たる瓜瓞・大瓜小瓜)。民之初生(みんししょせい・民の初めて生るや)、自土徂漆(じどそしつ・杜より漆に徂く・「土」は「杜」の誤字)。古公亶父(ここうたんぷ・古公亶父)、陶復陶穴(とうふくとうけつ・復を陶し穴を陶す・窯と穴を穿つ・「冗」は「穴」の誤字)、未有家室(みゆうかしつ・家室未だ有らず)。
古公亶父,來朝走馬。率西水滸,至於岐下。爰及姜女,聿來胥宇。
古公亶父、來朝走馬(らいちょうそうば・朝に走馬す)。率西水滸(そつせいすいこ・西の水滸を率・沿い)、至于岐下(しおきか・岐下に至る)。爰及姜女(えんきゅうきょうじょ・爰に姜女を及・伴い)、聿來胥宇(いつらいしょう・聿に來て胥・宇を視る)。
周原膴膴,堇荼如飴。爰始爰謀,爰契我龜,曰止曰時,築室於茲。
周原膴膴(しゅうげんここ・周原は膴膴として肥美)、堇荼如飴(きんとにょい・堇と荼が飴の如し)。爰始爰謀(えんしえんぼう・爰に始め爰に謀り)、爰契我龜(えんけいがき・爰に我が龜を契・灼く)。曰止曰時(えつしえつじ・止まれ時なりと曰い)、築室于茲(ちくしつおし・茲に室を築けと)。
乃慰乃止,乃左乃右,乃疆乃理,乃宣乃畝。自西徂東,周爰執事。
廼慰廼止(だいいだいし・廼に慰め廼に止まり)、廼左廼右(だいさだいゆう)、廼疆廼理(だいきょうだいり・疆し理り)、廼宣廼畝(だいせんだいぼ・宣・導き畝る)。自西徂東(じせいそとう・西より東に徂き)、周爰執事(しゅうえんしっじ・周・遍く爰に事を執る)。
乃召司空,乃召司徒,俾立室家。其繩則直,縮版以載,作廟翼翼。
乃召司空(だいしょうしくう・司空を召し)、乃召司徒(だいしょうしと・司徒を召し)、俾立室家(ひりつしつか・室家を立てしむ)。其繩則直(きしんそくちょく・其の繩は則ち直し)、縮版以載(しゅくはんいさい・版を縮・束ねて以って載・築く)、作廟翼翼(さくびょうよくよく・廟を作ること翼翼と)。
捄之陾陾,度之薨薨,築之登登,削屢馮馮。百堵皆興,鼛鼓弗勝。
捄之陾陾(きゅうしじょうじょう・捄・盛土するに陾陾と)、度之薨薨(たくしこうこう・度・投げるに薨薨と)、築之登登(ちくしとうとう・築くに登登と)、削屢馮馮(さくりょうひょうひょう・屢を削りて馮馮と)。百堵皆興(ひゃくとかいこう・百堵皆興り)、鼛鼓弗勝(こうこふしょう・鼛鼓も勝たない・勞の盛んに鼓の音も及ばない)。
乃立皋門,皋門有伉。乃立應門,應門將將。乃立冢土,戎醜攸行。
廼立皋門(だいりつこうもん・皋門を立つ)、皋門有伉(こうもんゆうこう・皋門は伉・高い)。廼立應門(だいりつおうもん・應門を立つ)、應門將將(おうもんしょうしょう・將將と嚴正)。廼立冢土(だいりつちょうど・冢土・大社を立つ)、戎醜攸行(じゅうしゅうゆうこう・戎醜・大衆が攸く行く)。
四不殄厥慍,亦不隕厥問。柞棫拔矣,行道兌矣。混夷駾矣,維其喙矣!
肆不殄厥慍(しふてんけつうん・肆・故に其の慍を殄さず・「四」は「肆」の誤字)、亦不隕厥問(やくふいんけつもん・亦た其の問・聲名を隕さない)。柞棫拔矣(さくよくばつい・柞棫は拔かれた)、行道兌矣(こうどうだいい・行道は兌・通じた)。混夷駾矣(こんいたいい・混夷は駾・逃げた)、維其喙矣(いきかいい・維に其の喙・喘ぐのみ)。
虞芮質厥成,文王蹶厥生。予曰有疏附,予曰有先後。予曰有奔奏,予曰有禦侮!
虞芮質厥成(ぐぜいしつけっせい・虞芮が質・平し厥の成・爭訟を成せば)、文王蹶厥生(ぶんおうけっけっせい・文王が厥の生・性を蹶・動かす)。予曰有疏附(よえつゆうそふ・予は曰う疏附・親附する者有り)、予曰有先後(よえつゆうせんこう・先後・輔佐する者有り)。予曰有奔奏(よえつゆうほんそう・奔奏・奔走する者有り)、予曰有禦侮(よえつゆうぎょぶ・禦侮する者有り)。
芃芃棫樸,薪之槱之。濟濟闢王,左右趣之。
芃芃棫樸(ぼうぼうよくぼく・芃芃たる棫樸)、薪之槱之(しんしゆうし・之を薪し之を槱・積み焚く)。濟濟辟王(さいさいへきおう・濟濟たる辟王)、左右趨之(さゆうしゅうし・左右が之に趨る)。
濟濟闢王,左右奉璋。奉璋峨峨,髦士攸宜。
濟濟辟王、左右奉璋(さゆうほうしょう・璋を奉る)。奉璋峨峨(ほうしょうがが・峨峨として)、髦士攸宜(ぼうしゆうぎ・髦士の攸く宜しき所)。
淠彼涇舟,烝徒楫之。周王於邁,六師及之。
淠彼涇舟(ひつぴけいしゅう・淠たる涇の舟)、烝徒楫之(しょうとしゅうし・烝徒が之を楫・櫂る)。周王于邁(しゅうおうおばい・周王が邁・行く)、六師及之(ろくしきゅうし・六師が之に及ぶ)。
倬彼雲漢,為章於天。周王壽考,遐不作人?
倬彼雲漢(たくひうんかん・倬たる雲漢・銀河)、為章于天(いしょうおてん・天に章・文彩を為す)。周王壽考(しゅうおうじゅこう)、遐不作人(かふさくじん・何ぞ人を作・育さざらん)。
追琢其章,金玉其相。勉勉我王,綱紀四方。
追琢其章(ついたくきしょう・追琢して其の章)、金玉其相(きんぎょくきそう・金玉は其の相・質)。勉勉我王(べんべんがおう・勉勉たる我が王)、綱紀四方(こうきしほう)。
瞻彼旱麓,榛楛濟濟。豈弟君子,干祿豈弟。
瞻彼旱麓(せんぴかんろく・彼の旱麓を瞻る)、榛楛濟濟(しんこさいさい・榛楛は濟濟と多い)。豈弟君子(かいていくんし)、干祿豈弟(かんろくかいてい・祿を干・求めて豈弟・和樂)。
瑟彼玉瓚,黃流在中。豈弟君子,福祿攸降。
瑟彼玉瓚(しつぴぎょくさん・瑟たる玉瓚)、黃流在中(こうりゅうざいちゅう・黃流・鬱金酒が中に在る)。豈弟君子、福祿攸降(ふくろくゆうこう・福祿の攸く降る所)。
鳶飛戾天,魚躍於淵。豈弟君子,遐不作人?
鳶飛戾天(えんひれいてん・鳶が飛んで天に至り)、魚躍于淵(ぎょやくおえん・魚が淵に躍る)。豈弟君子、遐不作人。
清酒既載,騂牡既備。以享以祀,以介景福。
清酒既載(せいしゅきさい・清酒は既に載・設けられ)、騂牡既備(せいぼきび・騂牡は既に備わる)。以享以祀(いきょういし)、以介景福(いかいけいふく)。
瑟彼柞棫,民所燎矣。豈弟君子,神所勞矣。
瑟彼柞棫(しつぴさくよく・瑟たる柞棫)、民所燎矣(みんしょりょうい・民の燎・焚く所)。豈弟君子、神所勞矣(しんしょろうい・神の勞う所)。
莫莫葛藟,施於條枚。豈弟君子,求福不回。
莫莫葛藟(ばくばくかつるい・莫莫たる葛藟)、施于條枚(しおちょうまい・條枚に施・延びる)。豈弟君子、求福不回(きゅうふくふかい・福を求めて回・邪まない)。
思齊大任,文王之母,思媚周姜,京室之婦。大姒嗣徽音,則百斯男。
思齊大任(しせいたいにん・思齊・斉く莊れたる大任)、文王之母(ぶんおうしぼ)。思媚周姜(しびしゅうきょう・思媚・媚びし周姜)、京室之婦(けいしつしふ・京室の婦)。大姒嗣徽音(たいじしきいん・大姒は徽音を嗣ぐ)、則百斯男(そくひゃくしなん・則ち百斯の男・多くの男子)。
惠於宗公,神罔時怨,神罔時恫。刑于寡妻,至於兄弟,以御於家邦。
惠于宗公(けいおそうこう・宗公に惠み)、神罔時怨(しんもうじえん・神は罔し時の怨なし)、神罔時恫(しんもうじとう・恫・痛みなし)。刑于寡妻(けいおかさい・寡妻に刑・法として)、至于兄弟(しおけいてい)、以御于家邦(いぎょおかほう・以って家邦に御す)。
雍雍在宮,肅肅在廟。不顯亦臨,無射亦保。
雝雝在宮(ようようざいきゅう・雝雝として宮に在り)、肅肅在廟(しゅくしゅくざいびょう・肅肅として廟に在る)。不顯亦臨(ふけんやくりん・顯ならずとも亦た臨む)、無射亦保(むえきやくほう・射・厭きなくも亦た保つ)。
四戎疾不殄,烈假不瑕。不聞亦式,不諫亦入。四成人有德,小子有造。古之人無斁,譽髦斯士。
肆戎疾不殄(しじゅうしつふてん・肆・故に戎疾・大兵害を殄さず・「四戎」は「肆戎」の誤字)、烈假不瑕(れつかふか・烈假・大病は瑕・已まない)。不聞亦式(ふぶんやくしき・聞かずとも亦た式・法に合う)、不諫亦入(ふかんやくにゅう・諫めずとも亦た入・善に入る)。肆成人有德(しせいじんゆうとく・成人に德あり・「四成」は「肆成」の誤字)、小子有造(しょうしゆうぞう)。古之人無斁(このじんむえき・古の人は斁・厭きなし)、譽髦斯士(よぼうしし・斯の髦士を譽める)。
皇矣上帝,臨下有赫。監觀四方,求民之莫。維此二國,其政不獲。
皇矣上帝(こういじょうてい・皇なる上帝)、臨下有赫(りんかゆうかく・下に臨みて赫あり)。監觀四方(かんかんしほう・四方を監觀し)、求民之莫(きゅうみんしばく・民之莫・定まるを求める)。維此二國(いしにこく・此の二國・夏と殷)、其政不獲(きせいふかく・其の政は獲・得ず)。
維彼四國,爰究爰度。上帝耆之,憎其式廓。乃眷西顧,此維與宅。
維彼四國(いひしこく・彼の四國)、爰究爰度(えんきゅうえんたく・爰に究め爰に度る)。上帝耆之(じょうていきし・上帝は之を耆・憎む)、憎其式廓(ぞうきしきかく・其の式廓・規模を憎む)。乃眷西顧(だいけんせいこ・乃ち眷として西を顧み)、此維與宅(しいよたく・此れを維に宅・居を與えた)。
作之屏之,其菑其翳。修之平之,其灌其栵。啟之闢之,其檉其椐。
作之屏之(さくしへいし・之を作・伐り之を屏・除き)、其菑其翳(きさいきえい・其の菑・立ち枯れ其の翳・倒れ枯れ)。修之平之(しゅうしへいし・修め平らげ)、其灌其栵(きかんきれい・其の灌・叢生其の栵・列木)。啟之辟之(けいしへきし・啟き辟く)、其檉其椐(きていききょ・其の檉其の椐)。攘之剔之(じょうしてきし・攘い剔ぎ)、其檿其柘(きえんきしゃ・其の檿・山桑其の柘)。
攘之剔之,其檿其柘。帝遷明德,串夷載路。天立厥配,受命既固。
帝遷明德(ていせんめいとく・帝は明德を遷・就ける)、串夷載路(かんいさいろ・串夷は路・路に疲困す)。天立厥配(てんりつけっぱい・天は厥の配を立て)、受命既固(じゅめいきこ・命を受くること既に固し)。
帝省其山,柞棫斯拔,松柏斯兌。帝作邦作對,自大伯王季。維此王季,
帝省其山(ていせいきさん・帝は其の山を省み)、柞棫斯拔(さくよくしばつ・柞棫は斯に拔かれ)、松柏斯兌(しょうはくしだい・松柏は斯に兌・通直する)。帝作邦作對(ていさくほうさくつい・帝は邦を作り對を作り)、自大伯王季(じたいはくおうき・大伯より王季に)。維此王季(いしおうき・此の王季は)。
因心則友。則友其兄,則篤其慶,載錫之光。受祿無喪,奄有四方。
因心則友(いんしんそくゆう・心に因りて則ち友す)、則友其兄(そくゆうきけい・其の兄に友し)、則篤其慶(そくとくきけい・其の慶を篤くし)、載錫之光(さいしゃくしこう・載に之に光を錫う)。受祿無喪(じゅろくむそう・祿を受けて喪うことなく)、奄有四方(えんゆうしほう・奄として四方を有す)。
維此王季,帝度其心。貊其德音,其德克明。克明克類,克長克君。
維此王季、帝度其心(ていたくきしん・帝は其の心を度す)。貊其德音(ばくきとくいん・其の德音を貊・靜定せしめ)、其德克明(きとくこくめい・其の德は能く明らか)。克明克類(こくめいこくるい・明らかにし類・善類を別ける)、克長克君(こくちょうこくくん・長たり君たることを能くす)。王此大邦(おうしたいほう・此の大邦に王し)、克順克比(こくじゅんこくひ・順い比・親附することを能くす)。
王此大邦,克順克比。比於文王,其德靡悔。既受帝祉,施於孫子。
比于文王(ひおぶんおう・文王に比するに至り)、其德靡悔(きとくびかい・其の德は悔なし)。既受帝祉(きじゅていし・既に帝の祉を受け)、施于孫子(しおそんし・孫子に施す)。
帝謂文王:無然畔援,無然歆羨,誕先登於岸。密人不恭,敢距大邦,
帝謂文王(ていいぶんおう・帝は文王に謂う)。無然畔援(むぜんはんえん・然と畔援・跋扈するな)、無然歆羨(むぜんきんせん・歆羨するな)、誕先登于岸(たんせんとうおがん・誕に先んじて岸・高岸に登れ)。密人不恭(みつじんふきょう・密人が恭せず)、敢距大邦(かんきょたいほう・敢えて大邦に距る)。
