巻首題名
周易略例(しゅうえきりゃくれい)
易経易学典籍
術数への応用を目指すなら、まず六十四卦の卦爻辞と《説卦伝》の取象に親しむ。義理を目指すなら《繋辞伝》から入るのがよい。
經典釋文卷第二。周易音義。唐國子博士兼太子中允贈齊州刺史吳縣開國男陸德明撰。周(代名也,周至也,遍也,備也,今名書義取周普)。易(盈只反,此經名也,虞翻注參同契云字從日下月)。
これは《経典釈文》の第二巻で、《周易音義》と題する。撰者は陸徳明、唐代の人で、名は元朗、字で世に行われ、官は国子博士に至り、太子中允を兼ね、没後に斉州刺史を追贈され、呉県開国男に封じられた。「周」の字は王朝の名であるとともに、周至・周遍・完備の諸義を持つ。この書を《周易》と名づけたのは「周普」の義を取ったもので、その道に包まれないものはないという意である。「易」には「盈只反」と注する。これは反切注音で、「盈」の声母と「只」の韻母・声調とを合わせて読み、yì と読む。これは経書の名である。三国呉の虞翻は《周易参同契》の注で、「易」の字の形は上が「日」で下が「月」であると説く。
上経乾伝第一(篇題)
上經(上者對下立名經者常也,法也,徑也,由也)。乾(卦名)。傳(直戀反,以傳述為義謂夫子十翼也,解見發題)。第一(亦作弟)。王弼注(本亦作王輔嗣注音張具反今本或無注字師無者非)。
「上経」の「上」は「下経」に対して立てられた名目であり、「経」は常道・法則・門径・依循の幾層かの意味を兼ねる。「干」はすなわち「乾」で、卦名である。「伝」には「直恋反」と注する。反切注音で zhuàn と読み、伝述の義を取り、孔子の作った《十翼》を指す。詳しい解説は巻首の《発題》を見よ。「第一」の「第」は「弟」とも書く。「王弼注」の句は、ある本では「王輔嗣注」と作り、輔嗣は王弼の字である。「注」には「張具反」と注し、zhù と読む。今本には「注」の字がないものもあるが、師説では「注」の字を脱したのは誤りとする。
乾(けん)
乾(竭然反,依字作乾下乙干從旦於㫃音偃卦云乾健也,此八純卦象天)。元亨(許庚反,卦德也,訓通也,餘放此)。濳(捷鹽反)。龍(喻陽氣及聖人)。見龍(賢遍反,示也,注及下見龍皆同)。利見(如字下皆同)。大人(王肅云聖人在位之目)。離隱(力智反)。處於(昌呂反,眾經不音者放此)。德施(始豉反,與也)。不偏(音篇)。則過(古臥反,諸經內皆同)。夕惕(他曆反,怵惕也,鄭云懼也,廣雅同)。若厲(力世反,危也)。無(音無易內皆作此字文云竒字無也,通於無者虛無道也,玉述天屈西北為無)。
「干」はすなわち「乾」で、「竭然反」と注する。反切注音であり、「竭」の声母と「然」の韻母・声調とを合わせて qián と読む。字形からは本来「乾」と作るべきで、右旁は「乙」に従い、左旁の「倝」は「旦」と「㫃」とから成る。「㫃」は yǎn と読む。卦辞は乾を剛健と説き、この卦は八純卦で上下同体、天を象とする。「元亨」の「亨」には「許庚反」と注し、hēng と読む。乾卦の卦徳で、通達と訓する。以下同類の字はすべてこの例に倣う。「濳」はすなわち「潜」で、「捷塩反」で qián と読む。「龍」はここで陽気を喩え、また聖人を喩える。「見龍」の「見」は「賢遍反」で xiàn と読み、顕現の義であり、王弼の注文および下の「見龍」もすべてこの読みとする。「利見」の「見」は如字で、すなわち本来の音義のまま読み破読しない。以下すべて同じ。「大人」は、魏の王粛によれば聖人が君位に居る者の称である。「離隠」の「離」は「力智反」で lì と読む。「処于」の「処」は「昌呂反」で chǔ と読み、諸経で別に注を出さないものはすべてこの例に倣う。「徳施」の「施」は「始豉反」で shì と読み、与える義である。「不偏」の「偏」は「篇」の音で piān と読む。「則過」の「過」は「古臥反」で guò と読み、諸経の中ですべて同じである。「夕惕」の「惕」は「他歴反」で tì と読み、すなわち怵惕である。鄭玄は恐懼と訓し、《広雅》の解釈も同じである。「若厲」の「厲」は「力世反」で lì と読み、危険の義である。「无」は「无」の音で、《周易》全書にこの字形を用いる。《説文解字》は「无」は「無」の奇字であるとし、「無」と通じる「无」は虚無の道を指す。字書はまた「天の西北に屈するを无と為す」と説く。
咎(其久反,易內同)。重剛(直龍反,下同)。竭知(音智)。或躍(羊灼反,廣雅云上也,上音時掌反)。所處(一本作可處)。近乎(附近之近)。猶(以救反)。與(音預)。不謬(靡幼反,本或作繆音同)。夫位(音符下皆同)。亢(苦浪反,子夏傳云極也,廣雅云髙也)。則佞(乃定反)。邪(字又作耶似嗟反)。(吐亂反,斷也,斷音都亂反)。資始(鄭云資取也)。乃統(鄭云統本也)。
「咎」には「其久反」と注する。反切注音で jiù と読み、《周易》全書これに同じ。「重剛」の「重」は「直龍反」で chóng と読み、以下同じ。「竭知」の「知」は「智」の音で zhì と読む。「或躍」の「躍」は「羊灼反」で yuè と読む。《広雅》は「躍」を「上」と訓し、この「上」は「時掌反」の音で shǎng と読む。「所処」は別の本では「可処」と作る。「近乎」の「近」は「附近」の「近」の読みで、すなわち去声の jìn である。「猶」には「以救反」と注し yòu と読む。「与」は「預」の音で yù と読む。「不謬」の「謬」は「靡幼反」で miù と読む。ある本では「繆」と作り、読みは同じ。「夫位」の「夫」は「符」の音で fú と読み、句頭の発語詞であり、以下すべて同じ。「亢」には「苦浪反」と注し kàng と読む。《子夏易伝》は極と訓し、《広雅》は高と訓する。「則佞」の「佞」は「乃定反」で nìng と読む。「邪」の字はまた「耶」と書き、「似嗟反」で xié と読む。次の条の頭字はすでに脱け、「吐乱反」と注し tuàn と読む。すなわち《彖》で、「断」と訓し、「断」は「都乱反」の音で duàn と読む。「資始」について、鄭玄は「資」は取ることであると説く。「乃統」について、鄭玄は「統」は本であると説く。
雲行(如字)。雨施(始豉反,卦內皆同)。之累(劣偽反)。者邪(或作耶同餘嗟反後協句辭皆放此)。象(翔丈反,精象擬象也)。自強(其良反)。反覆(芳服反,注同,本亦作覆)。大人造(鄭徂早反為也,王肅七到反就也,至也,劉歆父子作聚)。文言(文飾卦下之言也,夫子之十翼梁武帝云文言是文王所制)。之長(張丈反)。之幹(古旦反)。體仁(如字京房荀爽董遇本作體信)。利物(孟喜京荀陸績作利之)。不成名(一本作不成乎名)。遯世(徒頓反)。
「雲行」の「行」は如字で、本来の音のまま読む。「雨施」の「施」は「始豉反」で shì と読み、本卦の中ではすべて同じ。「之累」の「累」は「劣偽反」で lèi と読む。「者邪」の「邪」は、ある本では「耶」と作り、「余嗟反」で yé と読む。以下、協句のために順読して用いる語助詞はすべてこの例に倣う。「象」には「翔丈反」と注し xiàng と読み、精微の象と摹擬の象とを指す。「自強」の「強」は「其良反」で qiáng と読む。「反復」の「復」は「芳服反」で fù と読み、王弼の注文も同じ。ある本では「覆」と作る。「大人造」の「造」は、鄭玄は「徂早反」に読み zào で「作為」と訓し、王粛は「七到反」に読み、今も zào と読み「就」「至」と訓する。劉向・劉歆父子の本では「聚」と作る。「文言」は卦の下の辞を文飾するという意で、孔子の《十翼》の一つに属する。梁武帝は《文言》は周文王の作だと説いた。「之長」の「長」は「張丈反」で zhǎng と読む。「之干」の「干」は「古旦反」で gàn と読み、すなわち「幹」である。「体仁」の「体」は如字である。京房・荀爽・董遇の本では「体信」と作る。「利物」は、孟喜・京房・荀爽・陸績の本では「利之」と作る。「不成名」は別の本では「不成乎名」と作る。「遯世」の「遯」は「徒頓反」で dùn と読む。
無悶(門遜反)。樂則(音洛)。確乎(苦學反,鄭云堅髙之貌文云髙至)。可拔(蒲八反,鄭云移也,廣雅云出也)。庸行(下孟反)。閒邪(似嗟反,下同)。幾(旣依反,注同理初始微名幾)。能全(一本作能令)。尟克(今亦作鮮同仙善反少也)。怵(律反)。解怠(佳賣反)。上下(並如字王肅上音時掌反)。非離(力智反)。相應(應對之應易內不出者並同)。流溼(申入反)。就燥(蘇早先皂二反)。聖人作(如字鄭云起也,馬融作起)。
「无悶」の「悶」は「門遜反」で反切注音、mèn と読む。「楽則」の「楽」は「洛」の音で lè と読む。「確乎」の「確」は「苦学反」で què と読む。鄭玄は堅固にして高峻の貌だと説き、《説文解字》は「高至」と訓する。「可抜」の「抜」は「蒲八反」で bá と読む。鄭玄は移動と訓し、《広雅》は出と訓する。「庸行」の「行」は「下孟反」で xìng と読み、徳行を指す。「閑邪」の「邪」は「似嗟反」で xié と読み、以下同じ。「幾」には「既依反」と注し jī と読む。王弼の注文も同じで、事理が初めて起こる微細な兆しを指すので「幾」と名づける。「能全」は別の本では「能令」と作る。「尟克」の「尟」は今は「鮮」とも書き、「仙善反」で xiǎn と読み、少ない意である。「怵」には「律反」と注し、反切の上字はすでに脱けており、字は chù と読む。「解怠」はすなわち「懈怠」で、「解」には「佳売反」と注し xiè と読む。「上下」の二字はともに如字で読む。王粛は「上」を「時掌反」に読み、すなわち shǎng である。「非離」の「離」は「力智反」で lì と読む。「相応」の「応」は「応対」の「応」の読みで、すなわち去声の yìng である。《周易》の中で別に注を出さないものはすべて同じ。「流湿」の「湿」は「申入反」で shī と読む。「就燥」の「燥」は二読あり、「蘇早反」で sǎo、「先皁反」で zào と読む。「聖人作」の「作」は如字である。鄭玄は起と訓し、馬融の本はそのまま「起」と作る。
而當(都浪反,易內皆同有異者別出)。故盡(津忍反)。當其(如字)。上治(直吏反,下及注同)。放逺(於萬反)。見而(賢遍反)。粹(雖遂反)。揮(音輝廣雅云動也,王肅云散也,本亦作輝義取光輝)。為行(下孟反,下之行行而皆同)。日可(人實反)。未見(賢遍反)。以辯(如字徐扶免反)。重剛(直龍反,下同)。夫大人(音符發端之字皆放此)。先天(悉薦反)。後天(胡豆反)。知喪(息浪反)。其唯聖人乎(王肅本作愚人後結始作聖人)。
「而当」の「当」は「都浪反」で反切注音、dàng と読む。《周易》の中ではすべて同じで、異読がある場合は別途注を出す。「故尽」の「尽」は「津忍反」で jǐn と読む。「当其」の「当」は如字である。「上治」の「治」は「直吏反」で zhì と読み、以下および注文も同じ。「放逺」の「逺」はすなわち「遠」で、「于万反」に読み yuàn、遠ざかる義である。「見而」の「見」は「賢遍反」で xiàn と読む。「粋」には「雖遂反」と注し suì と読む。「揮」は「輝」の音で huī と読む。《広雅》は動と訓し、王粛は散と訓する。ある本ではそのまま「輝」と作り、光輝の義を取る。「為行」の「行」は「下孟反」で xìng と読み、以下「之行」「行而」の「行」もすべてこの読みとする。「日可」の「日」は「人実反」で rì と読む。「未見」の「見」は「賢遍反」で xiàn と読む。「以辯」の「辯」は如字である。徐邈は「扶免反」に読み、すなわち biàn である。「重剛」の「重」は「直龍反」で chóng と読み、以下同じ。「夫大人」の「夫」は「符」の音で fú と読み、句頭の発語の「夫」の字はすべてこの例に倣う。「先天」の「先」は「悉薦反」で xiàn と読む。「後天」の「後」は「胡豆反」で hòu と読む。「知喪」の「喪」は「息浪反」で sàng と読む。「其唯聖人乎」の句は、王粛の本では「愚人」と作り、後ろの収結のところで初めて「聖人」と作る。
坤(こん)
坤(本又作巛巛今字也,同困魂反卦云順也,八純卦象地)。利牝(頻忍反,徐邈扶忍反又扶死反)。有攸(音由所也)。喪朋(息浪反,馬云失也,下及注並同)。必離(力智反)。無疆(或作壃同居良反下及注同)。必爭(爭之爭)。履霜(如字鄭讀履為禮)。積著(張慮反,眾經不音者皆同)。始凝(魚冰反)。馴(似遵反,向秀云從也,徐音訓此依鄭義)。任其(而鴆反,眾經皆同)。知光(音智注同)。不擅(善戰反,專也)。括(古活反,結也,方言云閉也,廣雅云塞也)。囊(乃剛反)。無譽(音餘又音預)。不造(七到反,又曹早反)。
「坤」の字はまた「巛」と書き、「巛」は今字で、同じく「困魂反」と読む。反切注音で、「困」の声母と「魂」の韻母・声調とを合わせて kūn と読む。卦辞は坤を柔順と説き、この卦は八純卦で、地を象とする。「利牝」の「牝」は「頻忍反」で pìn と読む。徐邈は「扶忍反」に読み、また「扶死反」に読む。「有攸」の「攸」は「由」の音で、「所」の意である。「喪朋」の「喪」は「息浪反」で sàng と読む。馬融は失と訓し、以下および注文も同じ。「必離」の「離」は「力智反」で lì と読む。「无疆」の「疆」は、ある本では「壃」と作り、同じく「居良反」に読み jiāng とし、以下および注文も同じ。「必争」の「争」は「争闘」の「争」の読み。「履霜」の「履」は如字である。鄭玄は「履」を「礼」と読む。「積着」の「着」は「張慮反」で zhù と読み、諸経で別に注を出さないものはすべて同じ。「始凝」の「凝」は「魚氷反」で níng と読む。「馴」には「似遵反」と注し xún と読む。向秀は順従と訓し、徐邈は「訓」の音とし、ここでは鄭玄の義に従う。「任其」の「任」は「而鴆反」で rèn と読み、諸経ともに同じ。「知光」の「知」は「智」の音で zhì と読み、注文も同じ。「不擅」の「擅」は「善戦反」で shàn と読み、専擅の義である。「括」には「古活反」と注し kuò と読み、結び締める義である。《方言》は閉と訓し、《広雅》は塞と訓する。「囊」には「乃剛反」と注し náng と読む。「无誉」の「誉」は「余」の音、また「預」の音である。「不造」の「造」は「七到反」、また「曹早反」で、今はいずれも zào と読む。
否(皮鄙反)。閉(心計反,字林方結反云闔也)。施愼(並如字愼謹也,象詞同,本或作順非)。之飾(申職反,本或作餝俗字)。坤至柔(本或有文言曰者)。為邪(似嗟反)。餘殃(於良反,鄭云禍惡也,文云凶也)。臣弒(式志反,本或作殺音同下同)。由辯(如字馬云別也,荀作變)。言順(如字)。直方大不習無不利則不疑其所行(張璠本此上有易曰眾家皆無)。木蕃(伐反)。而暢(勑亮反)。陰疑(如字荀虞姚信蜀才本作凝)。為其(於偽反,注為其同)。嫌(戸謙反,注同鄭作謙荀虞陸董作嗛)。未離(力智反)。
「否」には「皮鄙反」と注する。反切注音で pǐ と読む。「閉」には「心計反」と注し bì と読む。《字林》は「方結反」に読み、闔と訓する。「施愼」の二字はともに如字で読み、「愼」は謹の意である。《象伝》の文辞も同じ。ある本では「順」と作るが、それは誤りである。「之飾」の「飾」は「申職反」で shì と読む。ある本では「餝」と作るが、俗体字である。「坤至柔」の句は、ある本では前に「文言曰」の三字がある。「為邪」の「邪」は「似嗟反」で xié と読む。「余殃」の「殃」は「于良反」で yāng と読む。鄭玄は禍悪と訓し、《説文解字》は凶と訓する。「臣弑」の「弑」は「式志反」で shì と読む。ある本では「殺」と作り、読みは同じで、以下もまた然り。「由辯」の「辯」は如字である。馬融は分別と訓し、荀爽の本では「変」と作る。「言順」の「順」は如字である。「直方大、不習无不利、則不疑其所行」の句は、張璠の本ではこの句の上に「易曰」の二字があり、他の各家にはない。「木蕃」の「蕃」には「伐反」と注し、反切の上字が脱けており、字は fán と読む。「而暢」の「暢」は「勑亮反」で chàng と読む。「陰疑」の「疑」は如字である。荀爽・虞翻・姚信・蜀才の本では「凝」と作る。「為其」の「為」は「于偽反」で wèi と読み、注文中の「為其」も同じ。「嫌」には「戸謙反」と注し xián と読み、注文も同じ。鄭玄の本では「謙」と作り、荀爽・虞翻・陸績・董遇の本では「嗛」と作る。「未離」の「離」は「力智反」で lì と読む。
屯(ちゅん)
屯(張倫反,難也,盈也,坎宮二世卦)。則否(備鄙反)。得主則定(本亦作則寧)。而難(乃旦反,卦內除六二注難可餘並同賈逵注周語云畏憚也)。天造(徂早反,注同)。草昧(音妹廣雅云草造也,董云草昧微物)。而不寧(而辭也,鄭讀而曰能能猶安也)。經論(音倫鄭如字謂論撰書禮樂施政事黃穎云經論匡濟也,本亦作綸)。
「屯」には「張倫反」と注する。反切注音で、「張」の声母と「倫」の韻母・声調とを合わせて zhūn と読み、艱難と訓し、また盈満と訓する。この卦は坎宮二世卦である。「則否」の「否」は「備鄙反」で pǐ と読む。「得主則定」は、ある本では「則寧」と作る。「而難」の「難」は「乃旦反」で nàn と読む。本卦の中では六二の注の「難可」の一か所を除き、残りはすべてこの読みとする。賈逵は《国語・周語》の注で「難」は畏懼であると説く。「天造」の「造」は「徂早反」で zào と読み、注文も同じ。「草昧」の「昧」は「妹」の音で mèi と読む。《広雅》は「草」は創造の義であると説き、董遇は「草昧」は微小な物を指すと説く。「而不寧」の「而」は語助詞である。鄭玄は「而」を「能」と読み、「能」はすなわち安の意である。「経論」の「論」は「倫」の音である。鄭玄は如字に読み、典章・礼楽・政事を論撰することだと説く。黄穎は「経論」はすなわち天下を匡済することだと説く。ある本では「綸」と作る。
盤(本亦作盤又作盤歩乾反)。桓(馬云盤旋也)。晏安(本又作宴各依字晏一諫反宴一見反)。下賤(遐嫁反)。屯如(子夏傳云如辭也)。邅如(張連反,馬云難行不進之貌)。乗馬(繩證反,四馬曰乗下及注並同鄭云馬牝牡曰乗子夏傳音繩)。班如(如字子夏傳云相牽不進貌鄭本作般)。媾(古後反,馬云重㛰本作冓鄭云猶會,本或作構者非)。相近(附近之近下近五同又如字)。即鹿(王肅作麓云山足)。君子幾(徐音祈辭也,注同又音機近也,速也,鄭作機云弩牙也)。
「盤」の字はある本では「盘」と作り、また「槃」と作り、いずれも「歩干反」と読む。反切注音で pán と読む。「桓」の字は、馬融は「盤桓」は盘旋して進まない貌であると説く。「晏安」の「晏」は、ある本では「宴」と作り、それぞれ本字の音に従う。「晏」は「一諫反」に読み yàn、「宴」は「一見反」に読み yàn である。「下賤」の「下」は「遐嫁反」で xià と読む。「屯如」の「如」は、《子夏易伝》では語助詞だと説く。「邅如」の「邅」は「張連反」で zhān と読む。馬融は難行して進まない貌であると説く。「乗馬」の「乗」は「縄証反」で shèng と読み、馬四匹を一乗といい、以下および注文も同じ。鄭玄は馬に牝牡がそろって「乗」というと説く。《子夏易伝》は「縄」の音とする。「班如」の「班」は如字である。《子夏易伝》は相い牽かれて前に進まない貌だと説き、鄭玄の本では「般」と作る。「媾」には「古后反」と注し gòu と読む。馬融は重婚と説き、本字は「冓」と作り、鄭玄は会合と同じ意だと説く。ある本では「構」と作るが、それは誤りである。「相近」の「近」は「附近」の「近」の読みで、下の「近五」の「近」も同じく、また如字に読んでもよい。「即鹿」の「鹿」は、王粛の本では「麓」と作り、山の麓を指すと説く。「君子幾」の「幾」は、徐邈は「祈」の音とし語辞だと説き、注文も同じ。また「機」の音とし、近・速と訓する。鄭玄の本では「機」と作り、弩牙(弩の引金)を指すと説く。
如舎(式夜反,止也,注下同徐音舍)。往吝(力刃反,又力愼反馬云恨也)。雖比(毗志反,下皆同)。之易(以豉反)。不揆(葵癸反)。以從(如字鄭黃於用反)。合好(呼報反,下同)。恢弘(苦回反,大也)。博施(式豉反,及下文皆同)。拯(拯救之拯)。亨於(許庚反)。他閒(閒廁之閒)。漣如(音連文云泣下也)。應援(於眷反,又音)。闉(音因塞也,春秋傳云當陳隧者井堙木刋是也)。厄(於革反,又於賣反)。委仰(如字又魚亮反)。長也(直良反)。
「如舎」の「舎」は「式夜反」で反切注音、shè と読み、止と訓し、注文および以下同じ。徐邈は「舍」の音とする。「往吝」の「吝」は「力刃反」で lìn と読み、また「力愼反」とも読む。馬融は悔恨と訓する。「虽比」の「比」は「毗志反」で bì と読み、以下すべて同じ。「之易」の「易」は「以豉反」で yì と読む。「不揆」の「揆」は「葵癸反」で kuí と読む。「以従」の「従」は如字である。鄭玄・黄穎は「于用反」に読む。「合好」の「好」は「呼報反」で hào と読み、以下同じ。「恢弘」の「恢」は「苦回反」で huī と読み、大と訓する。「博施」の「施」は「式豉反」で shì と読み、以下すべて同じ。「拯」は「拯救」の「拯」の読み、すなわち zhěng である。「亨于」の「亨」は「許庚反」で hēng と読む。「他閑」の「閑」は「閑厠」の「閑」の読み。「漣如」の「漣」は「連」の音である。《説文解字》は泣き涙が流れ落ちる貌であると説く。「應援」の「援」は「于眷反」で yuàn と読み、また一音があるがその文は脱けている。「闉」は「因」の音で、塞と訓する。《春秋左伝》に「陳の隧に当たる者は井を堙ぎ木を刋る」とあるのがこの義である。「厄」には「于革反」と注し è と読み、また「于売反」とも読む。「委仰」の「仰」は如字で、また「魚亮反」に読み yàng とする。「長也」の「長」は「直良反」で cháng と読む。
蒙(もう)
蒙(莫公反,濛濛也,稚也,稽覽圖云無以敎天下曰蒙方言云蒙萌也,離宮四世卦)。童(如字字書作僮鄭云未冠之稱廣雅云痴也)。筮(市制反,決也,鄭云問)。告(古毒反,示也,語也)。再三(息暫反,又如字)。瀆(音獨亂也,鄭云䙝也)。則復(扶又反)。能斷(丁亂反)。夫疑(音扶六五注同)。閡山(五代反)。時中(張仲反,注時中決中同又如字和也)。童蒙求我(一本作來求我)。不諮(本亦作諮又作資並通)。果行(下孟反,注及六三注象同)。
「蒙」には「莫公反」と注する。反切注音で méng と読み、蒙昧と訓し、また幼稚と訓する。《稽覧図》は「天下を教えることなきを蒙と曰う」と説き、《方言》は「蒙」はすなわち萌であると説く。この卦は離宮四世卦である。「童」は如字である。字書は「僮」と書き、鄭玄はまだ冠礼を行わない者の称であると説き、《広雅》は痴と訓する。「筮」には「市制反」と注し shì と読み、決断と訓する。鄭玄は問と訓する。「告」には「古毒反」と注し gù と読み、示・語と訓する。「再三」の「三」は「息暫反」で sàn と読み、また如字に読んでもよい。「涜」は「独」の音で、乱と訓する。鄭玄は褻慢と訓する。「則復」の「復」は「扶又反」で fù と読む。「能断」の「断」は「丁乱反」で duàn と読む。「夫疑」の「夫」は「扶」の音で fú と読み、六五の注文も同じ。「閡山」の「閡」は「五代反」で ài と読む。「時中」の「中」は「張仲反」で zhòng と読み、注文の「時中」「決中」も同じ。また如字に読んで和と訓してもよい。「童蒙求我」は別の本では「来求我」と作る。「不諮」の「諮」は、ある本では「咨」と作り、また「資」と作り、いずれも通用する。「果行」の「行」は「下孟反」で xìng と読み、注文および六三の注、《象伝》も同じ。
用(吐活反,注同徐又音稅)。桎(音質)。梏(古毒反,在足曰桎在手曰梏小爾雅云杻謂之梏械謂之桎杻音丑)。所惡(烏路反)。包蒙(如字鄭云苞當作彪彪文也)。用取(七住反,本又作娶下及注同)。獨逺(於萬反,下文同)。能比(毗志反)。以巽(音遜鄭云當作遜)。擊蒙(經歷反,王肅云治也,馬鄭作繫)。擊去(起呂反,下同)。為之(於偽反,又如字)。扞(胡旦反)。御(魚呂反,本又作衛)。
「用」の字は上の頭字が脱けており、「吐活反」と注する。反切注音で tuō と読み、すなわち「説」は「脱」に通じ、注文も同じ。徐邈はまた「税」の音とする。「桎」は「質」の音で zhì と読む。「梏」には「古毒反」と注し gù と読む。械が足にあるものを桎といい、手にあるものを梏という。《小爾雅》は「杻」を梏といい「械」を桎というとし、「杻」は「丑」の音である。「所悪」の「悪」は「烏路反」で wù と読む。「包蒙」の「包」は如字である。鄭玄は「苞」は「彪」と作るべきで、「彪」は文采であると説く。「用取」の「取」は「七住反」で qǔ と読み、ある本では「娶」と作り、以下および注文も同じ。「独逺」の「逺」はすなわち「遠」で、「于万反」に読み yuàn、以下同じ。「能比」の「比」は「毗志反」で bì と読む。「以巽」の「巽」は「遜」の音で xùn と読む。鄭玄は「遜」と作るべきだと説く。「撃蒙」の「撃」は「経歴反」で jī と読む。王粛は治と訓し、馬融・鄭玄の本では「系」と作る。「撃去」の「去」は「起呂反」で qù と読み、以下同じ。「為之」の「為」は「于偽反」で wèi と読み、また如字に読んでもよい。「扞」には「胡旦反」と注し hàn と読む。「御」には「魚呂反」と注し yù と読む。ある本では「衛」と作る。
需(じゅ)
需(音須字從兩重而者非飲食之道也,訓養鄭讀為秀解云陽氣秀而不直前者畏上坎也,坤宮游魂卦)。有孚(徐音敷信也,又作旉)。光(師讀絶句)。亨貞吉(一句馬鄭揔為一句)。不陷(陷沒之陷)。位乎(如字鄭音蒞)。雲上(時掌反,干寶云升也)。於天(王肅本作雲在天上)。宴(烏練反,徐烏殄反安也,下同鄭云享宴也,李烏衍反)。樂(音洛注同)。
「需」は「須」の音で xū と読む。字形は「雨」と「而」とに従い、二重に「而」と書くのは誤りである。この卦は飲食の道を説き、「養」と訓する。鄭玄は「秀」に読み、陽気が秀出してあえて直進しないのは上卦の坎険を畏れるためだと解説する。この卦は坤宮遊魂卦である。「有孚」の「孚」は、徐邈は「敷」の音とし、信と訓する。「孚」はまた「旉」と書く。「光」の字は、師説ではここで句を切る。「亨貞吉」の三字を一句とする。馬融・鄭玄は「光亨貞吉」を総じて一句とする。「不陥」の「陥」は「陥没」の「陥」の読み。「位乎」の「位」は如字である。鄭玄は「莅」の音とする。「雲上」の「上」は「時掌反」で shǎng と読む。干宝は升と訓する。「于天」の句は、王粛の本では「雲在天上」と作る。「宴」には「烏練反」と注し yàn と読む。徐邈は「烏殄反」に読み、安と訓し、以下同じ。鄭玄は享宴と説く。李軌は「烏衍反」に読む。「楽」は「洛」の音で lè と読み、注文も同じ。
最逺(萬反,下逺險同)。於難(乃旦反,下及文皆同)。利用恆未失常也(本亦有無咎者)。於沙(如字鄭作沚)。轉近(附近之近)。後時(胡豆反)。衍在(以善反,徐怡戰反)。致寇(如字鄭王肅本作戎)。則闢(音避下同)。己得(音紀又音巳)。所復(扶又反)。不速(如字馬云召也,釋詁云疾也,釋言云征也,召也)。
「最逺」の「逺」はすなわち「遠」で、「万反」と注し、反切の上字はすでに脱け、字は yuàn と読む。以下「逺險」の「逺」も同じ。「于難」の「難」は「乃旦反」で反切注音、nàn と読み、以下および《彖》《象》の文辞もすべて同じ。「利用恒、未失常也」の句は、ある本には「无咎」の二字もある。「于沙」の「沙」は如字である。鄭玄の本では「沚」と作る。「転近」の「近」は「附近」の「近」の読み。「後時」の「後」は「胡豆反」で hòu と読む。「衍在」の「衍」は「以善反」で yǎn と読む。徐邈は「怡戦反」に読む。「致寇」の「寇」は如字である。鄭玄・王粛の本では「戎」と作る。「則辟」の「辟」は「避」の音で bì と読み、以下同じ。「己得」の「己」は「紀」の音、また「巳」の音。「所復」の「復」は「扶又反」で fù と読む。「不速」の「速」は如字である。馬融は召と訓し、《爾雅・釈詁》は疾と訓し、《爾雅・釈言》は征・召と訓する。
訟(しょう)
訟(才用反,爭也,言之於公也,鄭云辯則曰訟離宮游魂卦)。窒(張栗反,徐得悉反又得失反馬作咥云讀為躓猶止也,鄭云咥覺悔貌)。惕(湯歷反,王注或在惕字上或在下皆通在中吉下者非)。中(如字馬丁仲反)。吉(有孚窒一句惕中吉一句)。渉難(乃旦反)。猶復(扶又反,下同)。不枉(紆往反)。而令(力呈反)。正夫(音符下注同)。斷不(丁亂反,下注並同)。契之(苦計反,下同)。其分(符問反)。相濫(力暫反)。爭何(爭之爭)。陰和(胡臥反)。而逋(補吳反,徐方吳反)。
「訟」には「才用反」と注する。反切注音で、「才」の声母と「用」の韻母・声調とを合わせて sòng と読み、争と訓し、争いごとを官府に訴えることを指す。鄭玄は争い弁めることを訟というと説く。この卦は離宮遊魂卦である。「窒」には「張栗反」と注し zhì と読む。徐邈は「得悉反」に読み、また「得失反」に読む。馬融の本では「咥」と作り、「躓」と読むべきで、すなわち止の意だと説く。鄭玄は驚き覚めて悔い悟る貌であると説く。「惕」には「湯歴反」と注し tì と読む。王弼の注文はある本では「惕」の字の上に置き、ある本ではその下に置き、いずれも通じるが、「中吉」の下に置くのは誤りである。「中」は如字である。馬融は「丁仲反」に読み、すなわち zhòng である。「吉」の字で句を切り、「有孚窒」を一句、「惕中吉」を一句とする。「渉難」の「難」は「乃旦反」で nàn と読む。「猶復」の「復」は「扶又反」で fù と読み、以下同じ。「不枉」の「枉」は「紆往反」で wǎng と読む。「而令」の「令」は「力呈反」で líng と読む。「正夫」の「夫」は「符」の音で fú と読み、以下の注の中も同じ。「断不」の「断」は「丁乱反」で duàn と読み、以下の注の中ですべて同じ。「契之」の「契」は「苦計反」で qì と読み、以下同じ。「其分」の「分」は「符問反」で fèn と読む。「相濫」の「濫」は「力暫反」で làn と読む。「争何」の「争」は「争闘」の「争」の読み。「陰和」の「和」は「胡臥反」で hè と読む。「而逋」の「逋」は「補呉反」で bū と読む。徐邈は「方呉反」に読む。
眚(生領反,子夏傳云妖祥曰眚馬云災也,鄭云過也)。下物(遐嫁反)。竄(七亂反,徐又七外反逃也)。掇(徐都活反文云拾取也,鄭本作惙陟劣反憂也)。忤也(五故反)。復即(音服後同者更不音)。渝(以朱反,變也,馬同鄭云然也)。不邪(似嗟反)。錫(星曆反,又星自反賜也)。鞶(歩乾反,馬云大也,徐云王肅作盤)。(音帶亦作帶)。終朝(馬云旦至食時為終朝)。三(息暫反,注同或如字)。褫(徐敕紙反又直是反,本又作音同王肅云解也,鄭本作拕徒可反)。
「眚」には「生領反」と注する。反切注音で shěng と読む。《子夏易伝》は妖祥を眚といい、馬融は災と訓し、鄭玄は過失と訓する。「下物」の「下」は「遐嫁反」で xià と読む。「竄」には「七乱反」と注し cuàn と読む。徐邈はまた「七外反」に読み、逃と訓する。「掇」の字は、徐邈は「都活反」に読み、すなわち duō である。《説文解字》は拾取と訓する。鄭玄の本では「惙」と作り、「陟劣反」に読み chuò、憂と訓する。「忤也」の「忤」は「五故反」で wù と読む。「復即」の「復」は「服」の音で fù と読み、後文でこれに同じものはもう注を出さない。「渝」には「以朱反」と注し yú と読み、変と訓する。馬融も同じで、鄭玄は「然」と訓する。「不邪」の「邪」は「似嗟反」で xié と読む。「錫」には「星歴反」と注し xī と読み、また「星自反」とも読み、賜と訓する。「鞶」には「歩干反」と注し pán と読む。馬融は大と訓する。徐邈は王粛の本では「盘」と作ると説く。次の条の頭字はすでに脱け、「音帯」と注し、字も「帯」と作り、dài と読む。「終朝」は、馬融は夜明けから朝餉の時までを終朝というと説く。「三」には「息暫反」と注し sàn と読み、注文も同じで、また如字に読んでもよい。「褫」の字は、徐邈は「勑紙反」に読み chǐ、また「直是反」に読む。ある本では別体と作り、読みは同じ。王粛は解と訓し、鄭玄の本では「拕」と作り、「徒可反」に読み tuǒ とする。
師(し)
師(云眾也,馬云二千五百人為師坎宮歸魂卦)。貞丈人(絶句丈人嚴莊之稱鄭云能以法度長於人)。之稱(尺證反)。以王(如字物歸往也,徐又往況反)。毒(徒篤反,役也,馬云治也)。畜眾(敕六反,聚也,王肅許六反養也)。否(音鄙惡也,注同馬鄭王肅方有反)。臧(作郎反,善也)。三錫(星曆反,徐音賜鄭本作賜)。天寵(如字鄭云光耀也,王肅作龍云寵也)。背髙(音佩)。有禽(徐本作擒)。長子(丁丈反,注及下同)。軍帥(色類反)。
「師」は、卦辞に衆と説く。馬融は二千五百人を一師というと説く。この卦は坎宮帰魂卦である。「貞丈人」はここで句を切る。「丈人」は厳正にして荘重な者の称で、鄭玄は法度をもって衆を統率できる人だと説く。「之称」の「称」は「尺証反」で反切注音、chèng と読む。「以王」の「王」は如字で、万物が帰往する義を取る。徐邈はまた「往況反」に読み、すなわち wàng である。「毒」には「徒篤反」と注し dú と読み、役使と訓する。馬融は治と訓する。「畜衆」の「畜」は「勑六反」で chù と読み、聚と訓する。王粛は「許六反」に読み xù、養と訓する。「否」は「鄙」の音で、悪と訓し、注文も同じ。馬融・鄭玄・王粛は「方有反」に読み、すなわち fǒu である。「臧」には「作郎反」と注し zāng と読み、善と訓する。「三錫」の「錫」は「星歴反」で xī と読む。徐邈は「賜」の音とし、鄭玄の本はそのまま「賜」と作る。「天寵」の「寵」は如字である。鄭玄は光耀と訓し、王粛の本では「龍」と作り、「龍」はすなわち寵であると説く。「背髙」の「背」は「佩」の音で bèi と読む。「有禽」の「禽」は、徐邈の本では「擒」と作る。「長子」の「長」は「丁丈反」で zhǎng と読み、注文および以下同じ。「軍帥」の「帥」は「色類反」で shuài と読む。
比(ひ)
比(毗志反,卦內並同云輔也,序卦云比比也,子夏傳云地得水而柔水得地而流故曰比徐又補履反坤宮歸魂卦)。凶邪(似嗟反)。求有(本亦作求得)。其炎(於廉反)。缶(方有反,瓦器也,鄭云汲器也,爾雅云盎謂之缶)。有它(敕多反,本亦作他)。匪人(非反,馬云匪非也,王肅本作匪人凶)。三驅(匡愚反,徐云鄭作驅馬云三驅者一曰乾豆二曰賓客三曰君庖)。狹矣(戶夾反)。則舎(音赦又音舍)。背己(音佩)。則射(食亦反)。惡而(烏路反)。舎逆(音舍)。
「比」には「毗志反」と注する。反切注音で、「毗」の声母と「志」の韻母・声調とを合わせて bì と読み、卦内ではすべてこの読みとし、卦辞は輔助と訓する。《序卦伝》は「比」はすなわち親比であると説く。《子夏易伝》は地は水を得て柔潤となり、水は地を得て流行するので「比」というと説く。徐邈はまた「補履反」に読む。この卦は坤宮帰魂卦である。「凶邪」の「邪」は「似嗟反」で xié と読む。「求有」の句は、ある本では「求得」と作る。「其炎」の「炎」は「于廉反」で yán と読む。「缶」には「方有反」と注し fǒu と読み、瓦器である。鄭玄は水を汲む器だと説く。《爾雅》は「盎」を缶というと説く。「有它」の「它」は「勑多反」で tā と読む。ある本では「他」と作る。「匪人」の「匪」には「非反」と注し、反切の上字が脱けている。馬融は「匪」はすなわち非であると説き、王粛の本では「匪人凶」と作る。「三駆」の「駆」は「匡愚反」で qū と読む。徐邈は鄭玄の本では「駆」と作ると説く。馬融は三駆の用途は、一は乾豆の祭、二は賓客の宴享、三は君の庖厨に充てることだと説く。「狭矣」の「狭」は「戸夾反」で xiá と読む。「則舎」の「舎」は「赦」の音、また「舍」の音である。「背己」の「背」は「佩」の音で bèi と読む。「則射」の「射」は「食亦反」で shè と読む。「悪而」の「悪」は「烏路反」で wù と読む。「舎逆」の「舎」は「舍」の音である。
小畜(しょうちく)
小畜(本又作蓄同敕六反積也,聚也,卦內皆同鄭許六反養也,巽宮一世卦)。施未(始豉反,注皆同)。陽上(時掌反)。蒸(職膺反)。車說(吐活反,下文並注並同文云解也)。輻也(音福)。雖復(扶又反,上九注同)。輿(音餘)。輻(音福,本亦作輹音服馬云車下縛也,鄭云伏菟)。陰長(丁丈反,下同)。血(如字馬云當作恤憂也)。去(起呂反,注同)。亦惡(烏路反,履卦同)。攣(力專反,馬云連也,徐又力轉反子夏傳作戀云思也)。幾(徐音祈又音機注同子夏傳作近)。唯泰也則然(一本作然則讀即以也,字絶句)。有難(乃旦反)。可盡(津忍反)。
「小畜」の「畜」は、ある本では「蓄」と作り、同じく「勑六反」と読む。反切注音で chù と読み、積・聚と訓し、卦内ではすべて同じ。鄭玄は「許六反」に読み xù、養と訓する。この卦は巽宮一世卦である。「施未」の「施」は「始豉反」で shì と読み、注文はすべて同じ。「陽上」の「上」は「時掌反」で shǎng と読む。「蒸」には「職膺反」と注し zhēng と読む。「車説」の「説」は「吐活反」で tuō と読み、すなわち「脱」に通じ、以下および注文もすべて同じで、《説文解字》は解と訓する。「輻也」の「輻」は「福」の音で fú と読む。「虽復」の「復」は「扶又反」で fù と読み、上九の注文も同じ。「輿」は「余」の音で yú と読む。「輻」は「福」の音である。ある本では「輹」と作り、「服」の音とし、馬融は車の下の縛木だと説き、鄭玄は伏兎だと説く。「陰長」の「長」は「丁丈反」で zhǎng と読み、以下同じ。「血」は如字である。馬融は「恤」と作るべきで、憂と訓する。「去」には「起呂反」と注し qù と読み、注文も同じ。「亦悪」の「悪」は「烏路反」で wù と読み、履卦も同じ。「攣」には「力専反」と注し luán と読む。馬融は連と訓し、徐邈はまた「力転反」に読む。《子夏易伝》は「恋」と作り、思と訓する。「幾」は、徐邈は「祈」の音、また「機」の音とし、注文も同じ。《子夏易伝》は「近」と作る。「唯泰也則然」の句は、別の本では「然則」と作り、読むときは「也」の字で句を切る。「有難」の「難」は「乃旦反」で nàn と読む。「可尽」の「尽」は「津忍反」で jǐn と読む。
履(り)
履(利恥反,禮也,艮宮五世卦)。咥(直結反,齧也,馬云齕)。而(音恱注及後同)。行夫(音符下同)。佞邪(似嗟反)。疚(久又反,馬云病也,陸本作疾)。坦坦(吐但反,文云安也,廣雅云平也,明也,蒼頡篇云著也)。不憙(虛備反,又音喜)。險厄(於革反,又作戹)。眇(妙小反,字書云盲也,文云小目)。跛(波我反,足跛也,依字作破)。不修(本又作循)。行未(下孟反)。愬愬(山革反,子夏傳云恐懼貌何休注公羊傳云驚愕也,馬本作虩虩音許逆反云恐懼也,文同廣雅云懼也)。逼近(附近之近)。夬(古快反)。考祥(本亦作詳)。
「履」には「利恥反」と注する。反切注音で lǚ と読み、礼と訓する。この卦は艮宮五世卦である。「咥」には「直結反」と注し dié と読み、啮と訓する。馬融は齧咬と訓する。次の条の頭字はすでに脱け、「音恱」と注し yuè と読み、注文および後文も同じ。「行夫」の「夫」は「符」の音で fú と読み、以下同じ。「佞邪」の「邪」は「似嗟反」で xié と読む。「疚」には「久又反」と注し jiù と読む。馬融は病と訓し、陸績の本では「疾」と作る。「坦坦」の「坦」は「吐但反」で tǎn と読む。《説文解字》は安と訓し、《広雅》は平・明と訓し、《蒼頡篇》は着と訓する。「不憙」の「憙」は「虚備反」で xì と読み、また「喜」の音である。「険厄」の「厄」は「于革反」で è と読み、また「戹」とも書く。「眇」には「妙小反」と注し miǎo と読む。字書は盲と訓し、《説文解字》は小目であると説く。「跛」には「波我反」と注し bǒ と読み、足の跛である。字形からは「破」と作るべきである。「不修」の「修」は、ある本では「循」と作る。「行未」の「行」は「下孟反」で xìng と読む。「愬愬」の「愬」は「山革反」で sù と読む。《子夏易伝》は恐懼の貌であると説き、何休は《公羊伝》の注で驚愕であると説く。馬融の本では「虩虩」と作り、「許逆反」の音で xì、恐懼であると説き、《説文解字》も同じで、《広雅》は懼と訓する。「逼近」の「近」は「附近」の「近」の読み。「夬」には「古快反」と注し guài と読む。「考祥」の「祥」は、ある本では「詳」と作る。
泰(たい)
周易上經泰傳第二泰(如字大通也,鄭云通也,馬云大也,坤宮三世卦)。道長(丁丈反)。財成(音才徐才載反荀作裁)。輔相(息亮反,注同)。以左(音佐注同)。右民(音佑注同左右助也)。拔(蒲八反)。茅(卯交反,鄭音苗)。茹(汝據反,牽引也,鄒湛同王肅音如)。彚(音胃類也,李於反傅氏注云彚古偉字美也,古文作董作夤出也,鄭云勤也)。包(本又作苞必交反下卦同音薄交反)。荒(本亦作㐬音同鄭注禮云穢也,文水廣也,又大也,鄭讀為康云虛也)。
この段は巻題「周易上経泰伝第二」から始まる。「泰」は如字に読み、大通と訓する。鄭玄は通と訓し、馬融は大と訓する。この卦は坤宮三世卦である。「道長」の「長」は「丁丈反」で反切注音、zhǎng と読む。「財成」の「財」は「才」の音である。徐邈は「才載反」に読み、すなわち zài。荀爽の本では「裁」と作る。「輔相」の「相」は「息亮反」で xiàng と読み、注文も同じ。「以左」の「左」は「佐」の音で zuǒ と読み、注文も同じ。「右民」の「右」は「佑」の音で yòu と読み、注文も同じ。「左」「右」はともに輔助の意である。「抜」には「蒲八反」と注し bá と読む。「茅」には「卯交反」と注し máo と読む。鄭玄は「苗」の音とする。「茹」には「汝拠反」と注し rù と読み、牽引と訓する。鄒湛は読み同じく、王粛は「如」の音とする。「彚」はすなわち「彙」で、「胃」の音、類と訓する。李軌は別に一読があるがその反切に脱文がある。傅氏の注は「彚」は古い「偉」の字で、美と訓すると説く。古文は別に他の形を作り、董遇は「夤」と作り、出と訓し、鄭玄は勤と訓する。「包」はある本では「苞」と作り、「必交反」で bāo と読み、下卦も同じで、また「薄交反」の音で páo である。「荒」はある本では「㐬」と作り、読みは同じ。鄭玄は《礼記》の注で穢と訓し、《説文解字》は水面が広大であると説き、また大と訓する。鄭玄はまた「康」に読み、虚と訓する。
用馮(音憑注同)。荒穢(於廢反)。不陂(彼偽反,徐甫反傾也,注同又破河反偏也)。象曰無平不陂(一本作無往不復)。篇篇(如字子夏傳作翩翩向本同云輕舉貌古文作偏偏)。以祉(音恥一音勑子反又音止)。女處(本亦作爻處)。盡夫(音符後皆放此以意求之)。隍(音皇城塹也,子夏作堭姚作皇)。所應(如字舊音應對之應)。上承(時掌反)。下施(始豉反)。否道(備鄙反)。
「用馮」の「馮」は「凭」の音で píng と読み、注文も同じ。「荒穢」の「穢」は「于廃反」で反切注音、huì と読む。「不陂」の「陂」には「彼偽反」と注し bì と読む。徐邈は別に一読があるが反切に脱文があり、傾側と訓し、注文も同じ。また「破河反」に読み pō、偏と訓する。「象曰:无平不陂」の句は、別の本では「无往不复」と作る。「篇篇」は如字に読む。《子夏易伝》は「翩翩」と作り、向秀の本も同じで、軽く挙がる貌であると説く。古文は「偏偏」と作る。「以祉」の「祉」は「恥」の音で chǐ と読み、一音「勑子反」、また「止」の音である。「女処」は、ある本では「爻処」と作る。「尽夫」の「夫」は「符」の音で fú と読み、後文はすべてこの例に倣い、文意に随って分別する。「隍」は「皇」の音で huáng と読み、城下の濠溝を指す。《子夏易伝》は「堭」と作り、姚信は「皇」と作る。「所応」は如字に読む。旧音は「応対」の「応」に読み、すなわち yìng である。「上承」の「上」は「時掌反」で shǎng と読む。「下施」の「施」は「始豉反」で shì と読む。「否道」の「否」は「備鄙反」で pǐ と読む。
否(ひ)
否(備鄙反,卦內同閉也,塞也,乾宮三世卦)。道長(丁丈反)。闢難(上音避下乃旦反)。入邪(似嗟反)。不諂(勑檢反)。否亨(許庚反)。疇(直留反,鄭作古字)。休否(虛虯反,美也,又許求反息也,注同)。
「否」には「備鄙反」と注する。反切注音で、「備」の声母と「鄙」の韻母・声調とを合わせて pǐ と読み、卦内ではすべてこの読みとし、閉・塞と訓する。この卦は乾宮三世卦である。「道長」の「長」は「丁丈反」で zhǎng と読む。「辟難」の二字は、上の字「辟」は「避」の音で bì、下の字「難」は「乃旦反」に読み nàn である。「入邪」の「邪」は「似嗟反」で xié と読む。「不諂」の「諂」は「勑検反」で chǎn と読む。「否亨」の「亨」は「許庚反」で hēng と読む。「疇」には「直留反」と注し chóu と読む。鄭玄の本では古い字を用いる。「休否」の「休」は「虚虯反」で xiū と読み、美と訓する。また「許求反」に読み、息と訓し、注文も同じ。
同人(どうじん)
同人(和同也,離宮歸魂卦)。以邪(似嗟反)。炎上(時掌反)。辯物(如字王肅免反)。繫吝(繫或作繫本作黨繫)。則否(方有反,又備鄙反)。褊(必淺反)。狹(戸夾反)。於莽(莫蕩反,王肅冥黨反鄭云叢木也)。物黨(物或作朋)。所比(毗志反)。所當(如字)。量斯(音良又音亮)。其墉(徐音容鄭作庸)。而效(下敎反)。不克則反反則得吉也(一本作反則得得則吉也)。號(戶羔反)。咷(道刀反,號咷啼呼也)。而逺(萬反)。內爭(爭之爭)。異災(一本作它災)。
「同人」は和同の義を取る。この卦は離宮帰魂卦である。「以邪」の「邪」は「似嗟反」で反切注音、xié と読む。「炎上」の「上」は「時掌反」で shǎng と読む。「辯物」の「辯」は如字である。王粛は別に一読があり、反切の上字はすでに脱け、字は biàn と読む。「系吝」の「系」は、ある本では別体に書き、本来は「党系」と作る。「則否」の「否」は「方有反」で fǒu と読み、また「備鄙反」に読み pǐ とする。「褊」には「必浅反」と注し biǎn と読む。「狭」には「戸夾反」と注し xiá と読む。「于莽」の「莽」は「莫蕩反」で mǎng と読む。王粛は「冥党反」に読む。鄭玄は叢生する樹木であると説く。「物党」の「物」は、ある本では「朋」と作る。「所比」の「比」は「毗志反」で bì と読む。「所当」は如字に読む。「量斯」の「量」は「良」の音、また「亮」の音である。「其墉」の「墉」は、徐邈は「容」の音で yōng と読む。鄭玄の本では「庸」と作る。「而效」の「效」は「下敎反」で xiào と読む。「不克則反、反則得吉也」の句は、別の本では「反則得、得則吉也」と作る。「号」には「戸羔反」と注し háo と読む。「咷」には「道刀反」と注し táo と読む。「号咷」とはすなわち啼いて哭き呼ぶことである。「而逺」の「逺」はすなわち「遠」で、「万反」と注し、反切の上字はすでに脱け、字は yuàn と読む。「内争」の「争」は「争闘」の「争」の読み。「異災」は別の本では「它災」と作る。
大有(だいゆう)
大有(包容豐富之象乾宮歸魂卦)。遏(於葛反,止也,徐又音謁)。休命(虛虯反,美也,徐又許求反)。大車(王肅剛除反蜀才作輿)。不泥(乃計反)。用亨(許庚反,通也,下同眾家並香兩反京云獻也,乾云享宴也,姚云享祀也)。其彭(歩郎反,子夏作旁乾云彭亨驕滿貌王肅云壯也,虞作尪姚云彭旁徐音同)。上近(如字亦附近之近)。下比(毗志反)。至知(音智)。可舎(音舍)。斯數(色助反)。晢(章舌反,王廙作晣同音徐李之世反又作哲字鄭本作遰云讀如明星晢晢陸本作逝虞作折)。何難(依象冝如字一音乃旦反)。易而(以豉反)。佑之(音又)。不累(劣偽反,下同)。盡夫(津忍反)。繫辭(音繫)。
「大有」は包容して豊かな象を取る。この卦は乾宮帰魂卦である。「遏」には「于葛反」と注する。反切注音で è と読み、止と訓する。徐邈はまた「謁」の音とする。「休命」の「休」は「虚虯反」で xiū と読み、美と訓する。徐邈はまた「許求反」に読む。「大車」の「車」は、王粛は「剛除反」に読み、すなわち jū。蜀才の本では「輿」と作る。「不泥」の「泥」は「乃計反」で nì と読む。「用亨」の「亨」は「許庚反」で hēng と読み、通と訓し、以下同じ。諸家はみな「香両反」に読み xiǎng、京房は献と訓し、干宝は享宴であると説き、姚信は享祀であると説く。「其彭」の「彭」は「歩郎反」で páng と読む。《子夏易伝》は「旁」と作る。干宝は「彭亨」は驕き満ち足りた貌であると説き、王粛は壮と訓し、虞翻の本では「尪」と作り、姚信は「彭」はすなわち「旁」であると説き、徐邈は読み同じである。「上近」の「近」は如字で、また「附近」の「近」に読んでもよい。「下比」の「比」は「毗志反」で bì と読む。「至知」の「知」は「智」の音で zhì と読む。「可舎」の「舎」は「舍」の音である。「斯数」の「数」は「色助反」で shù と読む。「晢」には「章舌反」と注し zhé と読む。王廙の本では「晣」と作り、読みは同じ。徐邈・李軌は「之世反」に読む。また「哲」とも書く。鄭玄の本では「遰」と作り、「明星晢晢」の「晢」のごとく読むと説く。陸績の本では「逝」と作り、虞翻は「折」と作る。「何難」の「難」は《象伝》の文意に依り如字に読むべきで、一音「乃旦反」すなわち nàn である。「易而」の「易」は「以豉反」で yì と読む。「佑之」の「佑」は「又」の音で yòu と読む。「不累」の「累」は「劣偽反」で lèi と読み、以下同じ。「尽夫」の「尽」は「津忍反」で jǐn と読む。「系辞」の「系」は「系」の音で xì と読む。
謙(けん)
謙(卑退為義屈己下物也,兊宮五世卦子夏作嗛云嗛謙也)。下濟(節細反)。而上(時掌反,下注上承上行同)。虧盈(馬木作毀盈)。而福(京本作而富)。惡盈(烏路反,卦末注同)。而好(呼報反)。裒(蒲侯反,鄭荀董蜀才作捊云取也,字書作掊廣雅云掊減)。稱物(尺證反)。平施(始豉反,注同)。大難(乃旦反)。自牧(牧養之牧徐音目一音茂)。名者聲名聞之謂也(一讀名者聲絶句聞音問)。匪解(佳賣反)。撝(毀皮反,指撝也,義與麾同書云右秉白旄以麾是也,馬云撝猶離也,鄭讀為宣)。下下(上遐嫁反下如字下句同)。用侵(王廙作寢)。徵國(本或作征邑國者非)。不與(音預)。為爭(爭之爭)。
「謙」は卑退を義とし、自らを屈し抑えて礼をもって他人に下ることをいう。この卦は兌宮五世卦である。《子夏易伝》は「嗛」と作り、「嗛」はすなわち謙であると説く。「下済」の「済」は「節細反」で反切注音、jì と読む。「而上」の「上」は「時掌反」で shǎng と読み、以下の注中の「上承」「上行」も同じ。「虧盈」は、馬融の本では「毁盈」と作る。「而福」は、京房の本では「而富」と作る。「悪盈」の「悪」は「烏路反」で wù と読み、卦末の注文も同じ。「而好」の「好」は「呼報反」で hào と読む。「裒」には「蒲侯反」と注し póu と読む。鄭玄・荀爽・董遇・蜀才の本では「捊」と作り、取と訓する。字書は「掊」と書き、《広雅》は「掊」は減損であると説く。「称物」の「称」は「尺証反」で chèng と読む。「平施」の「施」は「始豉反」で shì と読み、注文も同じ。「大難」の「難」は「乃旦反」で nàn と読む。「自牧」の「牧」は「牧養」の「牧」の読み。徐邈は「目」の音、一音「茂」である。「名者、声名声聞之謂也」の句は、別の読みでは「名者声」のところで句を切り、「聞」は「問」の音とする。「匪解」の「解」は「佳売反」で xiè と読み、すなわち懈怠の「懈」である。「撝」には「毁皮反」と注し huī と読み、指揮の義で「麾」と同じ。《尚書》に「右に白旄を秉りて以て麾く」とあるのがこの義である。馬融は「撝」はすなわち離をいうと説き、鄭玄は「宣」に読む。「下下」の二字は、上の字は「遐嫁反」に読み xià、下の字は如字で、下の句も同じ。「用侵」は、王廙の本では「寝」と作る。「征国」は、ある本では「征邑国」と作るが、それは誤りである。「不与」の「与」は「預」の音で yù と読む。「為争」の「争」は「争闘」の「争」の読み。
豫(よ)
豫(餘慮反,恱豫也,備豫也,馬云豫樂震宮一世卦)。不忒(他得反,鄭云差也,京作貸)。地奮(方問反)。殷(於勤反,馬云盛也,文云作樂之盛稱殷京作隱)。薦(將電反,本又作同,本或作獸名耳非)。介於(音界纎介古文作砎鄭古八反云謂磨砎也,馬作扴云觸小石聲)。苟(音恱)。盱(香於反,睢盱也,向云睢盱小人喜恱之貌王肅云盱大也,鄭云誇也,文云張目也,字林火反又火於反子夏作紆京作汙姚作旴云日始出引詩旴日始旦)。
「豫」には「余慮反」と注する。反切注音で、「余」の声母と「慮」の韻母・声調とを合わせて yù と読み、悦豫と訓し、また預備と訓する。馬融は「豫」は安楽であると説く。この卦は震宮一世卦である。「不忒」の「忒」は「他得反」で tè と読む。鄭玄は差失と訓し、京房の本では「貸」と作る。「地奮」の「奮」は「方問反」で fèn と読む。「殷」には「于勤反」と注し yīn と読む。馬融は盛と訓し、《説文解字》は楽を奏することの盛んなことを「殷」というと説き、京房の本では「隠」と作る。「薦」には「将電反」と注し jiàn と読む。ある本では別体と作り、読みは同じ。ある本ではこれを獣の名と解するが、それは誤りである。「介于」の「介」は「界」の音で、繊細の介を指す。古文は「砎」と作り、鄭玄は「古八反」に読み、磨砎であると説く。馬融の本では「扴」と作り、小石に触れる音であると説く。「苟」には「音恱」と注し yuè と読む。「盱」には「香于反」と注し xū と読み、すなわち「睢盱」である。向秀は「睢盱」は小人が喜び楽しむ貌であると説き、王粛は「盱」を大と訓し、鄭玄は夸と訓し、《説文解字》は目を張ることであると説く。《字林》の二読は反切の上字がいずれも「火」に従い、一読はまた「火于反」と作る。《子夏易伝》は「紆」と作り、京房は「污」と作り、姚信は「旴」と作り、太陽が初めて出ることであると説き、並びに《詩経》の「旴日始旦」を引いて証とする。
睢(香維反,文云仰目也,字林火佳反)。由豫(由從也,鄭云用也,馬作猶云猶豫疑也)。盍(胡臘反,合也)。簪(徐側林反子夏傳同疾也,鄭云速也,埤蒼同王肅又祖感反古文作貸京作撍馬作臧荀作宗虞作戠戠叢合也,蜀才本依京義從鄭)。冥(覓經反,馬云冥昧耽於樂也,王廙云深也,又亡定反鄭讀為鳴)。有渝(羊朱反)。盡(津忍反)。樂(音洛)。
「睢」には「香維反」と注する。反切注音で suī と読む。《説文解字》は仰ぐ目であると説き、《字林》は「火佳反」に読む。「由豫」の「由」は従と訓する。鄭玄は用と訓する。馬融の本では「猶」と作り、「猶豫」は迟疑して決しないことであると説く。「盍」には「胡腊反」と注し hé と読み、合と訓する。「簪」の字は、徐邈は「側林反」に読み、すなわち zān、《子夏易伝》も同じで、疾と訓する。鄭玄は速と訓し、《埤蒼》も同じ。王粛はまた「祖感反」に読む。古文は「貸」と作り、京房は「撍」と作り、馬融は「臧」と作り、荀爽は「宗」と作り、虞翻は「戠」と作り、「戠」は聚合であると説く。蜀才の本は京房に依り、釈義は鄭玄に従う。「冥」には「覓経反」と注し míng と読む。馬融は昏昧にして逸楽に耽ることであると説き、王廙は深と訓する。また「亡定反」に読み mìng、鄭玄は「鳴」に読む。「有渝」の「渝」は「羊朱反」で yú と読む。「尽」には「津忍反」と注し jǐn と読む。「楽」は「洛」の音で lè と読む。
随(ずい)
隨(從也,震宮歸魂卦)。而下(遐嫁反,注下柔同)。而(音恱注下皆同)。大亨貞(本又作大亨利貞)。而天下隨時(王肅本作隨之)。隨時之義(王肅本作隨之時義)。而令(力呈反)。否之(備鄙反)。以向(本又作向許亮反王肅本作郷音同)。入宴(徐烏練反王肅烏顯反)。官有(蜀才作館有)。故舎(音舍下文同)。以擅(市戰反)。盡隨(津忍反,盡卷末同)。位正中也(一本作中正)。拘(句於反)。用亨(許庚反,通也,陸許兩反云祭也)。之濵(音賓)。
「随」は従と訓する。この卦は震宮帰魂卦である。「而下」の「下」は「遐嫁反」で反切注音、xià と読み、注文の「下柔」も同じ。次の条の頭字はすでに脱け、「音恱」と注し yuè と読み、注文および以下すべて同じ。「大亨貞」の句は、ある本では「大亨利貞」と作る。「而天下随時」は、王粛の本では「随之」と作る。「随時之義」は、王粛の本では「随之时義」と作る。「而令」の「令」は「力呈反」で líng と読む。「否之」の「否」は「備鄙反」で pǐ と読む。「以向」の「向」は、ある本では別体と作り、「許亮反」に読み xiàng。王粛の本では「郷」と作り、読みは同じ。「入宴」の「宴」は、徐邈は「烏練反」に読み yàn、王粛は「烏顕反」に読む。「官有」は、蜀才の本では「館有」と作る。「故舎」の「舎」は「舍」の音で、以下同じ。「以擅」の「擅」は「市戦反」で shàn と読む。「尽随」の「尽」は「津忍反」で jǐn と読み、巻末までの「尽」の字はすべて同じ。「位正中也」は別の本では「中正」と作る。「拘」には「句于反」と注し jū と読む。「用亨」の「亨」は「許庚反」で hēng と読み、通と訓する。陸績は「許両反」に読み xiǎng、祭祀であると説く。「之濵」の「濵」は「賓」の音で bīn と読む。
蠱(こ)
蠱(音古事也,惑也,亂也,左傳云於文皿蟲為蠱又云女惑男風落山謂之蠱徐又姬祖反一音故巽宮歸魂卦)。先甲(息薦反,並注同)。後甲(胡豆反,並注同)。以斷(丁亂反)。施令(力政反,下同)。競爭(爭之爭)。治也(直吏反,注同)。隨(音恱)。創制(初亮反,此俗字也,依字作剏)。復始(扶又反)。以振(舊之愼反濟也,師讀音眞振振仁厚也)。育德(王肅作毓古育字)。有子考無咎(絶句周依馬王肅以考絶句)。當事(丁堂反)。盡承(津忍反,下皆同)。裕父(羊樹反,馬云寛也)。不累(劣偽反)。
「蠱」は「古」の音で gǔ と読み、事と訓し、また惑・乱と訓する。《左伝》は字形に就いていえば皿の中に虫あるを蠱とし、また女子が男子を惑わし、風が山木を吹き落とすを蠱というと説く。徐邈はまた「姫祖反」に読み、一音「故」である。この卦は巽宮帰魂卦である。「先甲」の「先」は「息薦反」で反切注音、xiàn と読み、注文を連ねて同じ。「后甲」の「后」は「胡豆反」で hòu と読み、注文を連ねて同じ。「以断」の「断」は「丁乱反」で duàn と読む。「施令」の「令」は「力政反」で lìng と読み、以下同じ。「競争」の「争」は「争闘」の「争」の読み。「治也」の「治」は「直吏反」で zhì と読み、注文も同じ。「随」には「音恱」と注し yuè と読む。「創制」の「創」は「初亮反」で chuàng と読む。「創」は俗字で、字形に依れば「剏」と作るべきである。「復始」の「復」は「扶又反」で fù と読む。「以振」の「振」は、旧読「之愼反」すなわち zhèn で、救済と訓する。師読は「眞」の音すなわち zhēn で、「振振」は仁厚の貌である。「育徳」の「育」は、王粛の本では「毓」と作り、古い「育」の字である。「有子考无咎」の句はここで句を切る。周弘正は馬融・王粛に依り、「考」の字で句を切る。「当事」の「当」は「丁堂反」で dāng と読む。「尽承」の「尽」は「津忍反」で jǐn と読み、以下すべて同じ。「裕父」の「裕」は「羊樹反」で yù と読む。馬融は寛と訓する。「不累」の「累」は「劣偽反」で lèi と読む。
臨(りん)
臨(如字序卦云大也,坤宮二世卦)。剛浸(子鴆反)。而長(丁丈反,除六三注末及象咎不長皆同一音此治良反)。而(音恱下同)。敎思(息吏反,注同)。無疆(居良反,注同)。剛勝(升證反,下同)。佞邪(似嗟反,下同)。媚(密備反)。位當也(本或作當位實非也)。知臨(音智注同又如字)。
「臨」は如字に読む。《序卦伝》は大と訓する。この卦は坤宮二世卦である。「剛浸」の「浸」は「子鴆反」で反切注音、jìn と読む。「而長」の「長」は「丁丈反」で zhǎng と読む。六三の注末および《象伝》の「咎不長」を除いてはすべてこの読みで、別の一音は「治良反」に読み cháng である。次の条の頭字はすでに脱け、「音恱」と注し yuè と読み、以下同じ。「敎思」の「思」は「息吏反」で sì と読む。「无疆」の「疆」は「居良反」で jiāng と読み、注文も同じ。「剛勝」の「勝」は「升証反」で shèng と読み、以下同じ。「佞邪」の「邪」は「似嗟反」で xié と読み、以下同じ。「媚」には「密備反」と注し mèi と読む。「位当也」は、ある本では「当位」と作るが、それは誤りである。「知臨」の「知」は「智」の音で zhì と読み、注文も同じで、如字に読んでもよい。
観(かん)
觀(官喚反,示也,乾宮四世卦)。盥(音管)。而不薦(王又作同箋練反王肅本作而觀薦)。顒(魚恭反)。足復(扶又反)。旣灌(官喚反)。不忒(吐得反)。神道設敎(一本作以神道設敎)。省方(悉井反)。童觀(馬云童猶獨也,鄭云稚也)。最逺(萬反)。朝美(直遙反)。所鑑(古暫反,下同)。趣(促裕反)。窺(苦規反,本亦作窺)。者狹(戶夾反)。象曰窺觀女貞(一本有利字)。
「観」には「官喚反」と注する。反切注音で、「官」の声母と「喚」の韻母・声調とを合わせて guàn と読み、示と訓する。この卦は乾宮四世卦である。「盥」は「管」の音で guàn と読む。「而不薦」の「薦」は、王弼の本ではまた別体と作り、「牋練反」に読み jiàn。王粛の本では「而観薦」と作る。「顒」には「魚恭反」と注し yóng と読む。「足復」の「復」は「扶又反」で fù と読む。「旣灌」の「灌」は「官喚反」で guàn と読む。「不忒」の「忒」は「吐得反」で tè と読む。「神道設敎」は、別の本では「以神道設敎」と作る。「省方」の「省」は「悉井反」で xǐng と読む。「童観」の「童」は、馬融はなお独の意だと説き、鄭玄は幼稚と訓する。「最逺」の「逺」はすなわち「遠」で、「万反」と注し、反切の上字はすでに脱け、字は yuàn と読む。「朝美」の「朝」は「直遥反」で cháo と読む。「所鑑」の「鑑」は「古暫反」で jiàn と読み、以下同じ。「趣」には「促裕反」と注し qù と読む。「窺」には「苦規反」と注し kuī と読み、ある本では別体と作る。「者狭」の「狭」は「戸夾反」で xiá と読む。「象曰:窺観、女貞」の句は、別の本には「利」の字がある。
不比(毗志反)。觀國之光(如字或音官喚反)。最近(附近之近)。居近(如字)。德見(賢遍反)。平易(以豉反)。盡夫觀盛故觀至大觀在上(王肅音官)。以觀天下(徐唯此一字作官音)。觀盥而不薦觀之為道而以觀感風行地上觀處於觀時君子處大觀之時處大觀之時大觀廣鑑(亦音官)。居觀之時為觀之主觀之盛也(從盡夫觀以下並官喚反餘不出者並音官)。
「不比」の「比」は「毗志反」で反切注音、bì と読む。「観国之光」の「観」は如字に読み、あるいは「官喚反」の音すなわち guàn とする。「最近」の「近」は「附近」の「近」の読み。「居近」の「近」は如字である。「徳見」の「見」は「賢遍反」で xiàn と読む。「平易」の「易」は「以豉反」で yì と読む。以下に王弼注文中の「観」の字の読みを辨す。「尽夫観盛」「故観至大」「観在上」の諸句は、王粛は平声「官」に読み、すなわち guān である。「以観天下」の句は、徐邈はこの一か所だけを平声 guān と読む。「観盥而不薦」「観之為道」「而以観感」「風行地上観」「処于観時」「君子処大観之時」「処大観之時」「大観広鑑」の諸句も、平声 guān と読む。「居観之時」「為観之主」「観之盛也」の諸句も同じ例である。要するに、「尽夫観」の条以下に挙げた各所は、陸氏本人はすべて「官喚反」すなわち去声 guàn と読み、列挙されなかったその余の「観」の字はすべて平声 guān と読む。
噬嗑(ぜいこう)
周易上經噬嗑傳第三噬(市制反,齧也)。嗑(胡臘反,合也,巽宮五世卦)。齧(研節反)。有閒(如字下同又音間廁之閒)。與過(一本作有過)。頤(以之反)。不合(本又作而合)。不溷(胡困反,濁也,雜也,亂也,韋昭云汙辱也)。上行(時掌反,注同)。勑法(恥力反,此俗字也,字林作勅鄭云勑猶理也,一云整也)。屨(紀具反)。校(爻敎反,注及下同馬音敎)。滅止(本亦作趾趾足也)。桎(章實反)。足懲(直冰反)。木絞(交卯反)。械(口戒反)。
この段は巻題「周易上経噬嗑伝第三」から始まる。「噬」には「市制反」と注する。反切注音で shì と読み、齧咬と訓する。「嗑」には「胡腊反」と注し hé と読み、合と訓する。この卦は巽宮五世卦である。「齧」には「研節反」と注し niè と読む。「有閑」の「閑」は如字で、以下同じ。また「間廁」の「閑」に読み、すなわち jiàn である。「与過」は別の本では「有過」と作る。「頤」には「以之反」と注し yí と読む。「不合」は、ある本では「而合」と作る。「不溷」の「溷」は「胡困反」で hùn と読み、濁・雑・乱と訓する。韋昭は汚辱であると説く。「上行」の「上」は「時掌反」で shǎng と読み、注文も同じ。「勑法」の「勑」は「耻力反」で chì と読む。「勑」は俗字で、《字林》は「勅」と作る。鄭玄は「勑」はなお理の意だと説き、一説は整飭である。「屨」には「紀具反」と注し jù と読む。「校」には「爻敎反」と注し jiào と読み、注文および以下同じ。馬融は「敎」の音とする。「滅止」の「止」は、ある本では「趾」と作り、「趾」はすなわち足である。「桎」には「章実反」と注し zhì と読む。「足懲」の「懲」は「直氷反」で chéng と読む。「木絞」の「絞」は「交卯反」で jiǎo と読む。「械」には「口戒反」と注し xiè と読む。
不行也(或本作止不行也)。噬膚(方於反,馬云柔脃肥美曰膚)。未盡(津忍反,下同)。其分(扶問反)。脃(七歳反)。臘肉(音昔馬云晞於陽而煬於火曰臘肉鄭注周禮小物全乾曰臘)。乾(音乾)。胏(緇美反,馬云有骨謂之肺鄭云簀也,字林云含食所遺也,一曰脯也,子夏作脯徐音甫荀董同)。未光大也(本亦無大字)。何校(何可反,又音何,本亦作荷音同下同王肅云荷擔)。聦不明也(馬云耳無所聞鄭云目不明耳不聦王肅云言其聦之不明)。可解(佳買反)。
「不行也」の句は、ある本では「止不行也」と作る。「噬膚」の「膚」は「方于反」で反切注音、fū と読む。馬融は柔らかく脆く肥えた肉を膚というと説く。「未尽」の「尽」は「津忍反」で jǐn と読み、以下同じ。「其分」の「分」は「扶問反」で fèn と読む。「脃」には「七歳反」と注し cuì と読み、すなわち「脆」である。「腊肉」の「腊」は「昔」の音で xī と読む。馬融は陽光に晒しまた火に焙るを腊肉というと説き、鄭玄の《周礼》注は小物を整只のまま干すを腊というと説く。「干」は「干」の音で gān と読む。「胏」には「緇美反」と注し zǐ と読む。馬融は骨つきのものを胏というと説き、鄭玄は竹席であると説き、《字林》は口中に遺した食物であると説き、一説は干肉である。《子夏易伝》は「脯」と作り、徐邈は「甫」の音、荀爽・董遇も同じ。「未光大也」の句は、ある本には「大」の字がない。「何校」の「何」は「何可反」で hè と読み、また「何」の音である。ある本では「荷」と作り、読みは同じで、以下同じ。王粛は荷担する負荷であると説く。「聦不明也」の句は、馬融は耳に聞こえるものがないことだと説き、鄭玄は目が明らかでなく耳が聡くないことだと説き、王粛はその聞き見が明らかでないと言うのだと説く。「可解」の「解」は「佳買反」で jiě と読む。
賁(ひ)
賁(彼偽反,徐甫反李府瓫反傅氏云賁古字文章貌鄭云變也,文飾之貌王肅符文反云有文飾黃白色艮宮一世卦)。剛上(時掌反,注剛上皆同)。解天(音蟹下同)。以明(蜀才本作命)。折(之舌反,注同鄭云斷也,斷音丁亂反)。其趾(一本作止鄭云趾足)。舎(音舍下及注同)。車(音居鄭張本作輿從漢時始有居音)。安夫(音符)。其須(如字字從彡水邊作非)。而比(毗志反,下同)。上附(時掌反)。循(似遵反)。
「賁」には「彼偽反」と注する。反切注音で bì と読む。徐邈は別に一読があり、反切に脱文がある。李軌は「府瓫反」に読む。傅氏は「賁」は古字で、文采の貌であると説く。鄭玄は変と訓し、文飾の貌であると説く。王粛は「符文反」に読み fén、文飾があり色が黄白を呈すると説く。この卦は艮宮一世卦である。「剛上」の「上」は「時掌反」で shǎng と読み、注文中の「剛上」はすべて同じ。「解天」の「解」は「蟹」の音で xiè と読み、以下同じ。「以明」は、蜀才の本では「命」と作る。「折」には「之舌反」と注し zhé と読み、注文も同じ。鄭玄は断と訓し、「断」は「丁乱反」の音すなわち duàn である。「其趾」は別の本では「止」と作る。鄭玄は「趾」はすなわち足であると説く。「舎」は「舍」の音で、以下および注文も同じ。「車」は「居」の音で jū と読む。鄭玄・張氏の本では「輿」と作る。「車」を「居」の音に読むのは漢代になって初めてある。「安夫」の「夫」は「符」の音で fú と読む。「其須」は如字に読む。この字は「彡」に従い、「水」旁に書くのは誤りである。「而比」の「比」は「毗志反」で bì と読み、以下同じ。「上附」の「上」は「時掌反」で shǎng と読む。「循」には「似遵反」と注し xún と読む。
濡(如㬰反)。皤(白波反,文云老人貌董音盤云馬作足橫行曰皤鄭陸作燔音煩荀作波)。翰(尸旦反,董黃雲馬舉頭髙卬也,馬荀云髙也,鄭云白也,亦作寒案反)。媾(古豆反)。而閡(五戴反)。寇難(乃旦反,下同)。賁于丘園(黃本賁作丗)。束帛(子夏傳云五匹為束三二纁象隂陽)。戔戔(在千反,馬云委積貌薛虞云禮之多也,又音箋黃雲猥積貌一云顯見貌子夏傳作殘殘)。有喜(如字徐許意反無妄大畜卦放此)。
「濡」には「如㬰反」と注する。反切注音で rú と読む。「皤」には「白波反」と注し pó と読む。《説文解字》は老人の貌であると説く。董遇は「盘」の音とし、馬の足が横行することを皤というと説く。鄭玄・陸績の本では「燔」と作り、「煩」の音。荀爽は「波」と作る。「翰」には「尸旦反」と注し hàn と読む。董遇・黄穎は馬が首を昂く挙げることだと説き、馬融・荀爽は高と訓し、鄭玄は白と訓する。「寒案反」に読むのもある。「媾」には「古豆反」と注し gòu と読む。「而閡」の「閡」は「五戴反」で ài と読む。「寇難」の「難」は「乃旦反」で nàn と読み、以下同じ。「賁于丘園」は、黄穎の本では「賁」を「丗」と作る。「束帛」は、《子夏易伝》は五匹を一束とし、そのうち三匹に玄を用い、二匹に纁を用いて、陰陽を象ると説く。「戔戔」には「在千反」と注し jiān と読む。馬融は委積の貌であると説き、薛虞は礼数の多さであると説く。また「牋」の音である。黄穎は猥積の貌であると説き、一説は顕見の貌である。《子夏易伝》は「残残」と作る。「有喜」の「喜」は如字である。徐邈は「許意反」に読み xì。无妄・大畜の二卦はこの例に倣う。
剥(はく)
剝(邦角反,云剝剝也,馬云落也,文云裂也,乾宮五世卦)。人長(丁丈反,下注皆同)。激(經歷反)。拂(附弗反)。觸忤(五故反)。以殞(于敏反)。失處(昌呂反,又昌預反)。蔑(莫結反,猶削也,楚俗有削蔑之言馬云無也,鄭云輕慢荀作滅)。猶削(相略反,或作消此從荀本也,下皆然)。辨(徐音辦具之辦足上也,馬鄭同黃雲床簀也,薛虞膝下也,鄭符勉反王肅否勉反)。
「剥」には「邦角反」と注する。反切注音で、「邦」の声母と「角」の韻母・声調とを合わせて bō と読む。卦辞は「剥」はすなわち剥落であると説き、馬融は落と訓し、《説文解字》は裂と訓する。この卦は乾宮五世卦である。「人長」の「長」は「丁丈反」で zhǎng と読み、以下の注中すべて同じ。「激」には「経歴反」と注し jī と読む。「拂」には「附弗反」と注し fú と読む。「触忤」の「忤」は「五故反」で wù と読む。「以殞」の「殞」は「于敏反」で yǔn と読む。「失処」の「処」は「昌呂反」で chǔ と読み、また「昌預反」に読み chù とする。「蔑」には「莫結反」と注し miè と読み、なお削の意である。楚地方言に「削蔑」の説がある。馬融は无と訓し、鄭玄は軽慢と訓し、荀爽の本では「滅」と作る。「猶削」の「削」は「相略反」で xuē と読む。ある本では「消」と作り、ここでは荀爽の本に依り、以下すべて同じ。「辨」の字は、徐邈は「办具」の「办」に読み、足の上部であると説き、馬融・鄭玄も同じ。黄穎は床席であると説き、薛虞は膝の下部であると説く。鄭玄は「符勉反」に読み、王粛は「否勉反」に読む。
道浸(子鴆反,下同)。稍近(附近之近)。六三剝無咎(一本作剝之無咎非)。以膚(方於反,京作簠謂祭器)。切近(如字徐巨靳反鄭云切急也)。貫魚(古亂反,徐音官穿也)。駢頭(薄田反)。得輿(音餘京作德輿董作德車)。廬(力居反)。覆䕃(於鴆反)。所芘(本又作庇必利反又悲備反)。
「道浸」の「浸」は「子鴆反」で反切注音、jìn と読み、以下同じ。「稍近」の「近」は「附近」の「近」の読み。「六三剥无咎」の句は、別の本では「剥之无咎」と作るが、それは誤りである。「以膚」の「膚」は「方于反」で fū と読む。京房の本では「簠」と作り、祭器であると説く。「切近」は如字に読む。徐邈は「巨靳反」に読む。鄭玄は「切」は急迫であると説く。「貫魚」の「貫」は「古乱反」で guàn と読む。徐邈は「官」の音とし、穿と訓する。「駢頭」の「駢」は「薄田反」で pián と読む。「得輿」の「輿」は「余」の音で yú と読む。京房の本では「徳輿」と作り、董遇は「徳車」と作る。「廬」には「力居反」と注し lú と読む。「覆䕃」の「䕃」は「于鴆反」で yìn と読む。「所芘」の「芘」は、ある本では「庇」と作り、「必利反」に読み bì、また「悲備反」に読む。
