Libo

新书 · 第2巻

西汉 · 贾谊 · 第2巻 / 7

陛下即位以來,濟北一反,淮南為逆,今吳又見告,皆其薄者也。莫大諸侯,澹然而未有故者,天下非有固安之術也,特賴其尚幼偷猥之數也。且異姓負強而動者,漢已幸而勝之矣,又不易其所以然,同姓襲是跡而處,骨肉相動,又既有徵矣。其勢盡又復然,殃禍之變,未知所移,長此安窮?明帝尚不能以安,後世柰何!

陛下即位以來、濟北一度反し、淮南逆を作し、今また呉告發せらる、皆彼の薄弱なり。最大の諸侯は、澹然として未だ變故なし、天下竝びに牢固安定の方法なく、只彼らのなお年幼苟且猥瑣の氣數に依賴するのみ。況んや異姓強に仗りて動く者は、漢已に僥倖勝利せり、また其の然る所以の原因を改變せず、同姓これらの事蹟に沿襲して處り、骨肉互いに騷動し、また已に徵兆あり。其の形勢盡きればまた再びかくのごとく、殃禍の變化、移向する所を知らず、長く此を以て続けば何處か盡頭ならん?明帝なお安定すること能わず、後世如何せん!

屠牛坦一朝解十二牛,而芒刃不頓者,所排擊所剝割皆象理也。然至髖髀之所,非斤則斧矣。仁義恩厚,此人主之芒刃也:權勢法制,此人主之斤斧也。勢已定權已足矣,乃以仁義恩厚因而澤之,故德布而天下有慕志。今諸侯王皆眾髖髀也,釋斤斧之制,而欲嬰以芒刃,臣以為刃不折則缺耳,胡不用之淮南濟北,勢不可也。

屠牛坦は一朝にして十二頭の牛を分解すれども、鋒刃鈍らず、是れ排撃剥割する所皆紋理に順えばなり。然るに髖髀の處に至れば、斤ならざれば斧なり。仁義恩厚は、これ人主の鋒刃、權勢法制は、これ人主の斤斧。形勢已に確定し權已に足りて、始めて仁義恩厚を用い因りて潤澤す、ゆえに德布施して天下仰慕の志向あり。今諸侯王は皆許多の髖髀なり、斤斧の制度を放下して、鋒刃をもって碰らんと欲す、臣以為す刃は折れざれば缺口ならん、何ぞ淮南濟北に用いざるや、是れ形勢可ならざればなり。

審微

審微

善不可謂小而無益,不善不可謂小而無傷,非以小善為一足以利天下,小不善為一足以亂國家也。當夫輕始而傲微,則其流必至於大亂也,是故子民者謹焉。

善は小さきと言うべからずして益なきことなく、不善は小さきと言うべからずして傷害なきことなし、一件の小善足りて天下を利し、一件の小不善足りて國家を亂るがゆえにあらず。まさに開始を輕視し微細を傲視せんとするに、其の流弊必ず大亂に至る、ゆえに民を治むる者これに謹慎す。

彼人也,登高則望,臨深則窺,人之性,非窺且望也,勢使然也。夫事有逐奸,勢有召禍。老曰:"為之於未有,治之於未亂。"管仲曰:"備患於未形",上也。語曰:"焰焰弗滅,炎炎柰何,萌芽不伐,且折斧柯。"智禁於微,次也。事之適亂,如地形之惑人也,機漸而往,俄而東西易面,人不自知也。故墨子見衢路而哭之,悲一跬而繆千里也。

其の人、高きに登れば遠望し、深きに臨めば下窺す、人の性は、竝びに窺わんと望まんとするにあらず、是れ形勢彼をして然らしむればなり。事に奸邪を追逐する有り、勢に禍を召來する有り。老子曰く、「未だ發生せざる時に於て為し、未だ亂れざる時に於て治む」と。管仲曰く、「患未だ成形せざる時に於て防備す」は、上策なり。俗語曰く、「小小なる火苗滅さざれば、熊熊大火如何せん、萌芽伐らざれば、將に斧柯を折らん」と。智は微細の處に禁止するは、次の一等なり。事亂に走向するは、地形の人を迷惑するがごとく、機關漸々前に往き、一會の間東西方向を換え、人自ら知らず。ゆえに墨子は四通の路を見て哭す、悲哀するは一步を差えば卽ち一千里を錯るなり。

昔者衛侯朝於周,周行問其名,曰:"衛侯闢強。"周行還之曰:"啟強。闢強,天子之號也,諸侯弗得用。"衛侯更其名曰毀,然後受之。故善守上下之分者,雖空名弗使踰焉。

昔衞侯周に朝見し、周の行人其の名を問うて曰く、「衞侯辟强」。周の行人還りて彼に曰く、「啓强・辟强は、天子の名號なり、諸侯用うべからず」と。衞侯名を改めて毁と為し、然る後に受くる。ゆえに善く上下名分を守住する者は、たとい空名といえども越えさせず。

古者周禮,天子葬用隧,諸侯縣下。周襄王出逃伯鬥,晉文公率師誅賊,定周國之亂,復襄王之位。於是襄王賞以南陽之地,文公辭南陽,即死得以隧下,襄王弗聽,曰:"周國雖微,未之或代也。天子用隧,伯父用隧,是二天子也。以地為少,餘請益之。"文公乃退。

古の周禮に、天子は葬に隧道を用い、諸侯は棺を懸けて放下す。周襄王伯斗に出逃し、晉文公師を率いて賊を誅し、周國の亂を平定し、襄王の位を恢復す。そこで襄王は南陽の土地を以て賞賜するも、文公南陽を推辭し、卽ち死後隧道を得て以て下葬せんことを求む、襄王聽かずして曰く、「周國微弱なるも、未だ誰か代える者なし。天子は隧道を用い、伯父は隧道を用いれば、卽ち兩箇の天子なり。若し地少なしと以為せば、我請う增加せん」と。文公乃ち退下す。

禮,天子之樂,宮縣:諸侯之樂,軒縣:大夫直縣:士有琴瑟。叔孫於奚者,衛之大夫也。曲縣者,衛君之樂體也。繁纓者,君之駕飾也。齊人攻衛,叔孫於奚率師逆之,大敗齊師,衛於是賞以溫。叔孫於奚辭溫,而請曲縣繁纓以朝,衛君許之。孔子聞之曰:"惜乎!不如多與之邑。夫樂者,所以載國:國者,所以載君。彼樂亡而禮從之,禮亡而政從之,政亡而國從之,國亡而君從之。惜乎!不如多予之邑。"

禮に、天子の樂は宮懸、諸侯の樂は軒懸、大夫は直懸、士は琴瑟あり。叔孫于奚は、衞の大夫なり。曲懸は、衞君の樂制なり。繁纓は、君の駕車裝飾なり。齊人衞を攻め、叔孫于奚師を率いて迎撃し、大いに齊師を敗る、衞そこで温を以て賞す。叔孫于奚温を推辭して、曲懸繁纓を請えて朝見せんとす、衞君許可す。孔子之を聞きて曰く、「惜しいかな!多く彼に食邑を給するに如かず。樂は、以て國を承載するなり;國は、以て君を承載するなり。其の樂亡びれば禮これに隨い、禮亡びれば政これに隨い、政亡びれば國これに隨い、國亡びれば君これに隨う。惜しいかな!多く彼に食邑を給するに如かず」と。

宓子治亶父,於是齊人攻魯,道亶父。始父老請曰:"麥已熟矣,今迫齊寇,民人出自艾傅郭者,歸可以益食,且不資寇。"三請,宓子弗聽,俄而麥畢資乎齊寇。季孫聞之,怒,使人讓宓子曰:"豈不可哀哉!民乎,寒耕熱耘,曾弗得食也。弗知猶可,聞或以告,而夫子弗聽。"宓子蹴然曰:"今年無麥,明年可樹,令不耕者得獲,是樂有寇也。且一歲之麥,於魯不加強,喪之不加弱。令民有自取之心,其創必數年不息。"季孫聞之,慚,曰:"使穴可入,吾豈忍見宓子哉!"

宓子亶父を治理す。そこで齊人魯を攻め、路亶父を經る。初め父老請うて曰く、「麥已に熟す、今齊寇に迫近す、民人出でて自ら外城に近きを收割せば、歸りて糧食を增加し、且つ寇を資助せざらん」と。三回請えども宓子聽かず、一會の間麥全部齊寇を資助せり。季孫之を聞きて、怒り、人をして宓子を責讓せしめて曰く、「豈哀むべからざるか!民や、寒天に耕し熱天に耘して、竟に食を得ず。知らざれば猶可なり、人告げる有るを聞きて、而も夫子夫子聽かざる」と。宓子蹴然として曰く、「今年麥なければ、明年種うべし、耕さざる人をして收穫を得せしむるは、寇有るを樂しむなり。況んや一歲の麥は、魯に於て強を增加せず、之を喪失して弱を增加せず。民をして自ら擅取の心有らしむれば、其の創傷必ず數年止息せず」と。季孫之を聞きて、慚愧して曰く、「假令洞穴入るべければ、我何ぞ忍びて宓子を見ん!」

故明者之感奸由也蚤,其除亂謀也遠,故邪不前達。

ゆえに明智の人は奸邪の由來を早く感知し、彼は亂謀を遠く除去す、ゆえに邪は向前して通達すること能わず。

階級

階級

人主之尊,闢無異堂陛。陛九級者,堂高大幾六尺矣。若堂無陛級者,堂高殆不過尺矣。天子如堂,群臣如陛,眾庶如地,此其闢也。故堂之上,廉遠地則堂高,近地則堂卑。高者難攀,卑者易陵,理勢然也。故古者聖王制為列等,內有公卿大夫士,外有公侯伯子男,然後有官師小吏,施及庶人,等級分明,而天子加焉,故其尊不可及也。

人主の尊は、たとえれば堂陛と異ならず。陛に九級有るは、堂高き幾ど六尺なり。若し堂に陛級なければ、堂高き大概一尺に過ぎず。天子は堂のごとく、群臣は陛のごとく、衆庶は地のごとし、卽ち其のたとえなり。ゆえに堂の上は、邊棱地を離るる遠ければ堂卽ち高く、地を離るる近ければ堂卽ち卑し。高きは攀登し難く、卑きは陵越し易し、是れ理勢然らしむればなり。ゆえに古の聖王は列等を制定し、内に公卿大夫士有り、外に公侯伯子男有り、然る後に官師小吏有りて、庶人に延及す、等級分明にして、天子上に加わる、ゆえに其の尊及ぶべからず。

鄙諺曰:"欲投鼠而忌器",此善喻也。鼠近於器,尚憚而弗投,恐傷器也,況乎貴大臣之近於主上乎。廉醜禮節,以治君子,故有賜死而無戮辱,是以系。縛。榜。笞。髡。刖。黥。劓之罪,不及士大夫,以其離主上不遠也。禮:不敢齒君之路馬,蹴其芻者有罪,見君之几杖則起,遭君之乘輿則下,入正門則趨。君之寵臣,雖或有過,刑戮不加其身,尊君之勢也,此則所以為主上豫遠不敬也,所以體貌群臣而厲其節也。今自王侯三公之貴,皆天子之改容而禮也,古天子之所謂伯父伯舅也,今與眾庶徒隸同黥劓髡刖笞傌棄市之法,然則堂下不亡陛乎?被戮辱者不太迫乎?廉恥不行也,大臣無乃握重權大官,而有徒隸無恥之心乎?夫望夷之事,二世見當以重法者,投鼠而不忌器之習也。

俗諺曰く、「物を投げて鼠を打たんと欲するも器物を顧忌す」、是れ好きたとえなり。鼠は器物に近し、猶懼れて投げず、器物を傷るを怕ればなり、況んや貴大臣主上に近きをや。廉恥禮節は、以て君子を治む、ゆえに賜死有りて戮辱なし。ここにおいて繫・縛・榜・笞・髠・刖・黥・劓の罪は、士大夫に至らず、彼ら主上を離るる遠からざればなり。禮に、敢えて君の路馬の牙齒を數えず、其の草料を踩踏する者有罪、君の几杖を見れば卽ち起ち、君の乘輿に遇えば卽ち下車し、正門に入れば卽ち小步快走す。君の寵臣は、たとい或は過錯あるも、刑戮其の身に加わらず、是れ君の勢を尊敬するなり、卽ち以て主上のため豫め不敬を遠離するなり、以て群臣を禮貌して彼らの節操を激勵するなり。今王侯三公の貴より、皆天子改容して禮を以て相待する所なり、古の天子の所謂伯父伯舅なり、今衆庶徒隸と同じく黥劓髠刖笞罵棄市の法を用うれば、卽ち堂下は陛を失うにあらざるか?戮辱せらるるは太だ迫近にあらざるか?廉恥實行し得ず、大臣只怕重權大官を掌握すれども、徒隸無恥の心有らんか?望夷宮の事、二世重法を以て論處せらるは、卽ち物を投げて鼠を打ちて器物を顧忌せざるの積習なり。

臣聞之曰:"履雖鮮,弗以加枕:冠雖弊,弗以苴履。"夫嘗以在貴寵之位,天子改容而嘗體貌之矣,吏民嘗俯伏以敬畏之矣,今而有過,令廢之可也,退之可也,賜之死可也。若夫束縛之,系紲之,輸之司空,編之徒官。司寇牢正徒長小吏罵詈而榜笞之,殆非所以令眾庶見也。夫卑賤者習知尊貴者之事,一旦吾亦乃可以加也,非所以習天下也,非尊尊貴貴之化也。夫天子之所嘗敬,眾庶之所嘗寵,死而死爾,賤人安宜得此而頓辱之哉。

臣聞く、「鞋子たとい鮮潔なるも、以て枕上に加うることなし;帽子たとい破弊なるも、以て鞋子を墊することなし」と。曾て貴寵の位に處り、天子改容して曾て禮貌相待し、吏民曾て俯伏して敬畏せし、今過錯あれば、廢黜するも可、斥退するも可、之を賜死するも可。至りて彼を捆綁し、繩索を以て繫住し、司空に送り、徒官に編入す。司寇牢正徒長小吏罵詈して榜笞するは、大概衆庶をして見せしむるにあらず。卑賤の人熟知して貴人に對しこれらの事を為す可きを、一旦我も施加すれば、以て天下を習教するに用いるにあらず、尊尊貴貴の教化にあらず。天子の曾て敬重する所、衆庶の曾て寵奉する所、死すれば死するのみ、賤人何ぞ當にこれを得て以て彼を頓挫侮辱すべけんや。

豫讓事中行之君,智伯伐中行,滅之,豫讓移事智伯。及趙滅智伯,豫讓舋面變容,吸炭變聲,必報襄子,五起而弗中,襄子一夕而五易臥。人問豫讓,讓曰:"中行眾人畜我,我故眾人事之:智伯國士遇我,故為之國士用。"故此一豫讓也,反君事讎,行若狗彘,已而折節致忠,行出乎烈士,人主使然也。故人主遇其大臣,如遇犬馬,彼將犬馬自為也:如遇官徒,彼將官徒自為也。頑頓無恥,奊苟無節,廉恥不立,則且不自好,則苟若而可,見利則趨,見便則奪。主上有敗,困而攬之矣:主上有患,則吾苟免而已,立而觀之耳。有便吾身者,則欺賣而利之耳,人主將何便於此!群下至眾,而主至少也,所託財器職業者,率於群下也,但無恥,但苟安,則主最病。

豫讓は中行氏の君に事奉す、智伯中行を伐ち、彼を滅ぼす、豫讓轉じて智伯に事奉す。趙智伯を滅ぼすに及び、豫讓漆を以て面を塗り容貌を改變し、炭を吞んで聲音を改變し、必ず襄子に報復せんとし、五回起こるも命中せず、襄子一個晚上に五回臥處を換えたり。人豫讓に問う、豫讓曰く、「中行衆人を以て我を畜養す、我所以に衆人を以て彼に事奉す;智伯國士を以て我を待す、故に彼のため國士を為して用う」と。ゆえに同じ豫讓、舊君を背叛し仇敵に事奉し、行爲猪狗のごときも、後には節を折り忠を盡くし、行爲烈士より出づるは、是れ人主彼をして然らしむればなり。ゆえに人主大臣に對待するに、若し犬馬に對待するがごとければ、彼は自ら犬馬と爲し;若し官徒に對待するがごとければ、彼は自ら官徒と爲す。頑鈍無恥にして、苟且節操なく、廉恥立たざれば、將に自ら愛せず、卽ち苟且隨便も可なり、利を見れば趨赴し、便利を見れば爭奪す。主上敗有れば、困窘すれば攬取し;主上患有れば、我卽ち苟且禍を免るるのみ、立ちて觀看するのみ。我自身に便利有れば、卽ち欺賣して利を取る、人主將にここより何の便利を得ん!群下極めて多く、主極めて少なし、托付する所の財器職業は、大都群下に在り、只無恥のみ、只苟安のみ、卽ち主最も病痛なり。

故古者禮不及庶人,刑不至君子,所以厲寵臣之節也。古者大臣,有坐不廉而廢者,不謂曰不廉,曰簠簋不飾:坐汙穢男女無別者,不謂汙穢,曰帷簿不修:坐罷軟不勝任者,不謂罷軟,曰下官不職。故貴大臣定有其罪矣,猶未斥然正以呼之也,尚遷就而為之諱也。故其在大譴大訶之域者,聞譴訶則白冠犛纓,盤水加劍,造清室而請其罪爾。上弗使執縛系引而行也。其中罪者,聞命而自弛,上不使人頸盭而加也。其有大罪者,聞命則北面再拜,跪而自裁,上不使人捽抑而刑也。曰子大夫自有過耳,吾遇子有禮矣。遇之有禮,故群臣自喜。厲以廉恥,故人務節行。上設廉恥禮義以遇其臣,而群臣不以節行而報其上者,即非人類也。

ゆえに古は禮庶人に至らず、刑君子に至らず、是れ以て寵臣の節操を激勵するなり。古の大臣、不廉に因りて廢せらるる有るも、不廉と謂わず、簠簋整飾せずと謂い;汙穢男女分別なきに因りて罪を獲るも、汙穢と謂わず、帷簿修まらずと謂い;軟弱勝任せざるに因りて罪を獲るも、軟弱と謂わず、下官職に稱えずと謂う。ゆえに貴大臣罪有るを確定するも、なお明白に直呼せず、なお遷就して彼のため避諱す。ゆえに大譴大訶の範圍に處る者は、譴訶を聞けば卽ち白冠犛纓を戴き、盤水上に劒を加え、淸室に至りて治罪を請うのみ。上は人をして執縛牽引して行かしめず。中等の罪の者は、命令を聞けば卽ち自ら廢弛す、上は人をして頸を扭じて施加せしめず。大罪有る者は、命令を聞けば卽ち北に面して再拜し、跪いて自ら裁斷す、上は人をして揪按して用刑せしめず。曰く子大夫自ら過錯有るのみ、我汝に對待するに禮有り。對待禮有るを以て、ゆえに群臣自重す。廉恥を以て激勵するを以て、ゆえに人節行に致力す。上廉恥禮義を設立して以て臣に對待し、而して群臣節行を以て上に報答せざれば、卽ち人類にあらず。

故化成俗定,則為人臣者,主爾忘身,國爾忘家,公爾忘私。利不苟就,害不苟去,唯義所在,主上之化也。故父兄之臣,誠死宗廟:法度之臣,誠死社稷:輔翼之臣,誠死君上:守衛捍敵之臣,誠死城廓封境。故曰聖人有金城者,比物此志也。彼且為我死,故吾得與之俱生:彼且為我亡,故吾得與之俱存。夫將為我危,故吾得與之皆安。顧行而忘利,守節而服義,故可以托不御之權,可以托五尺之孤,此厲廉恥行禮義之所致也。主上何喪焉?此之不為,而顧彼之行,故曰可為長大息者也。

ゆえに教化成就し風俗確定せば、臣を為すは、主のために身を忘れ、國のために家を忘れ、公のために私を忘る。利は苟且趨就せず、害は苟且避開せず、只義の所在する處、是れ主上の教化なり。ゆえに父兄の臣は、誠心宗廟のために死し;法度の臣は、誠心社稷のために死し;輔翼の臣は、誠心君上のために死し;守衞捍敵の臣は、誠心城郭封境のために死す。ゆえに聖人に金城有りと曰うは、是れ比況するにこの志向なり。彼將に我のために死せんとすれば、故に我得て彼と共に生き;彼將に我のために亡びんとすれば、故に我得て彼と共に存し。彼將に我のために危ならんとすれば、故に我得て彼と皆安し。德を顧念して利を忘れ、節を守りて義に服從す、ゆえに駕御を須えざる權を托付する可く、五尺の孤兒を托付する可し、是れ廉恥を激勵し禮義を實行するの致す所なり。主上何を喪失せし?このを爲さず、却つて反つて彼を爲す、ゆえに說く可爲之長歎と。

卷第三

巻第三

俗激

俗激

大臣之俗,特以牘書不報,小期會不答耳,以為大故,不可矣。天下之大指舉之,而激俗流失,世壞敗矣,因恬弗知怪,大故也。如刀筆之吏,務在筐箱,而不知大體,陛下又弗自憂,故如此哉。

大臣の習俗は、只牘書囘報せざる・小小期會答覆せざるを、以て大故と爲す、不可なり。天下の大旨皆擧出せるに、激盪の習俗流失し、世道敗壞せるに、恬然として奇怪を知らず、こそ大故なれ。刀筆の吏のごとき、事務筐箱の裏に在りて、大體を知らず、陛下また自ら憂慮せず、故にかくのごときなり。

夫邪俗日長,民相然席於無廉醜,行義非循也,豈為人子背其父,為人臣因忠於君哉?豈為人弟欺其兄,為人下因信其上哉?陛下雖有權柄事業,將何寄之?管子曰:"四維:一曰禮,二曰義,三曰廉,四曰醜。四維不張,國乃滅亡。"使管子愚無識人也,則可:使管子而少知治體,則是豈不可為寒心?今世以侈靡相競,而上無制度,棄禮義,捐廉丑日甚,可謂月異而歲不同矣。逐利乎否耳,慮非顧行也。今其甚者,剄大父矣,賊大母矣,踝嫗矣,刺兄矣。盜者慮探柱下之金,掇寢戶之簾,攓兩廟之器,白晝大都之中,剽吏而奪之金。矯偽者出幾拾萬石粟,賦六百餘萬錢,乘傳而行諸侯,此其無行義之尤至者已。其餘猖蹶而趨之者,乃豕羊驅而往,是類管子謂四維不張者與,竊為陛下惜之。

邪俗日々に增長し、民互いに安然として廉恥なき上に坐り、義を行い循る所にあらず、豈子を爲る者父を背棄し、臣を爲る者却つて因りて君に忠ならんや?豈弟を爲る者兄を欺騙し、下屬を爲る者却つて因りて上を信任せんや?陛下たとい權柄事業有るも、將に誰に寄托せん?管子曰く、「四維:一曰禮、二曰義、三曰廉、四曰恥。四維張らざれば、國卽ち滅亡す」と。假令管子愚蠢見識なき人ならば、猶可なり;假令管子稍々治體を知らば、これ豈寒心すべからざるか?當今世上侈靡を以て互相競爭し、而して上に制度なく、禮義を拋棄し、廉恥を捐棄するは日に日に厲し、月月同年年不同なりと謂うべし。只利を逐う與否を問うのみ、想うに德行を顧念するにあらず。今最も甚だしきは、祖父を殺し、祖母を賊害し、老婦を踝辱し、兄長を刺殺す。盜賊想うに柱下の金を探取し、寢室門戶の簾を抽取し、兩廟の器を奪取し、白晝大都の中に於て、官吏を搶劫して其の金を奪う。矯僞の人は幾ど十萬石の粟を拿出し、賦斂六百多萬錢、傳車に乘りて諸侯に行走す、是れ義を行わざる極端頂點に至れるなり。其の餘猖獗して趨赴するは、猪羊驅趕せられて往くがごとし、これ大概管子の所謂四維張らざるならん、竊に陛下のため惋惜す。

以臣之意,吏慮不動於耳目,以為是時適然耳。夫移風易俗,使天下移心而向道,類非俗吏之所能為也,陛下又不自憂,竊為陛下惜之。夫立君臣,等上下,使父子有禮,六親有紀,此非天之所為,人之所設也。夫人之所設,弗為不立,不植則僵,不循則壞。秦滅,四維不張,故君臣乖而相攘,上下亂僭而無差,父子六親殃僇而失其宜,奸人並起,萬民離畔,凡十三歲而社稷為墟。今四維猶未備也,故奸人冀幸,而眾下疑惑矣。豈如今定經制,令主主臣臣,上下有差,父子六親,各得其宜,奸人無所冀幸,群眾信上,而不疑惑哉。此業一定,世世常安,而後有所持循矣。若夫經制不定,是猶渡江河無維楫,中流而遇風波也,船必覆矣。悲夫!備不豫具之也,可不察乎!

臣の意に按ずれば、官吏想うに耳目の上に觸動せず、以て此の時恰好かくのごとくのみ。風を移し俗を易え、天下をして心を移して道に趨向せしむるは、大概俗吏の爲し能わざる所、陛下また自ら憂慮せず、竊に陛下のため惋惜す。君臣を建立し、上下を分別し、父子に禮有らしめ、六親に紀綱有らしむるは、是れ天の爲す所にあらず、人の設立する所なり。人の設立する所、爲さざれば立たず、培植せざれば僵仆し、遵循せざれば敗壞す。秦滅亡し、四維張らざれば、故に君臣乖離して互相攘奪し、上下亂僭して差等なく、父子六親殃を被り戮せられて其の宜を失い、奸人一齊に起こり、萬民離叛し、共に十三年にして社稷廢墟と爲る。今四維未だ齊備せず、故に奸人僥倖を希望し、衆下疑惑す。何ぞ今經常の制度を確定し、主をして主のごとく臣をして臣のごとくせしめ、上下差等有り、父子六親、各々其の宜を得、奸人僥倖を希望する所なく、群衆上を信任して疑惑せざるに如かんや。この事業一定まれば、世世常に安定して、後に執持遵循する所有らん。經常の制度確定せざるに至っては、これ江河を渡るに維楫なきがごとく、中流風波に遇えば、船必ず翻る。悲哀かな!防備豫め具備せず、省察せざる可けんや!

時變

時變

秦國失理,天下大敗,眾揜寡,知欺愚,勇劫懼,壯凌衰,攻擊奪者為賢,貴人善突盜者為忻,諸侯設諂而相飭,設輹而相紹者為知,天下亂至矣。是以大賢起之,威振海內,德從天下,曩之為秦者,今轉而為漢矣。

秦國條理を失い、天下大敗し、人多きは人少なきを掩襲し、智は愚を欺き、勇は懼を劫し、壯は衰を凌ぎ、攻擊奪取するを以て賢と爲し、貴人衝突盜竊を善くするに欣喜を感じ、諸侯諂を設けて互相整飭し、車輹を設けて互相紹介するを以て智と爲す、天下亂極點に至れり。ここにおいて大賢起こり、威勢海內に震動し、德天下をして從わしめ、從前秦に屬せるは、今轉じて漢に屬す。

今者何如?進取之時去矣,幷兼之勢過矣,胡以孝弟循順為?善書而為吏耳,胡以行義禮節為?家富而出官耳,驕恥偏而為吏祭尊,黥劓者攘臂而為政,行惟狗彘也,苟家富財足,隱機盱視而為天子耳。唯告罪昆弟,欺突伯父,逆於父母乎?然錢財多也,衣服循也,車馬嚴也,走犬良也,矯誣而家美,盜賊而財多,何傷?欲交,吾擇貴寵者而交之:欲勢,擇吏權者而使之。取婦嫁子,非有權勢,吾不與婚姻,非貴有戚,不與兄弟,非富大家,不與出入,因何也?今俗侈靡,以出相驕,出倫踰等,以富過其事相競。今世貴空爵而賤良,俗靡而尊奸富。民不為奸而貧,為裡罵:廉吏釋官,而歸為邑笑:居官敢行奸而富,為賢吏:家處者犯法為利,為材士。故兄勸其弟,父勸其子,則俗之邪至於此矣。

今如何?進取の時已に過ぎ、兼并の勢已に過ぎ、還りて孝悌循順を以て何を爲さん?文書を寫す能ければ吏を爲るのみ、還りて行義禮節を以て何を爲さん?家富ければ出仕して官を爲るのみ、驕恥偏邪にして吏を爲り祭尊せられ、黥劓を受けたる人袖を捋りて執政す、行爲只猪狗のごとし、若し家富財足らば、几案に靠りて目を張りて視て卽ち天子を爲るのみ。只告發して兄弟を罪に得罪し、伯父を欺突し、父母を悖逆するのみか?然るに錢財多く、衣服順に、車馬整嚴に、走狗良に、矯誣して家美に、盜賊して財多し、何の傷害あらん?結交せんと欲せば、我貴寵を選擇して結交し;勢を欲せば、吏權有るを選擇して役使す。婦を娶り子を嫁すに、權勢有るにあらざれば、我彼と婚姻せず、貴き親戚有るにあらざれば、彼と兄弟を爲らず、富大家にあらざれば、彼と出入せず、是れ何を以てか?今習俗侈靡、外出排場を以て互相驕矜し、倫類を超出し等級を越え、富を以て本分を超過して互相競爭す。當今世上空爵を看重して良善を看輕し、俗靡にして奸富を尊敬す。民奸を爲らずして貧なれば、里中に罵られ;廉吏官職を放下せば、家に歸りて邑里に笑われ;官を爲りて敢えて奸を行い富めば、以て賢吏と爲され;家居して法を犯し利を求むれば、以て材士と爲さる。ゆえに兄其の弟を勸め、父其の子を勸む、俗の邪此に至れり。

商君違禮義,棄倫理,幷心於進取,行之二歲,秦俗日敗。秦人有子,家富子壯則出分,家貧子壯則出贅。假父耰鉏杖彗耳,慮有德色矣:母取瓢碗箕帚,慮立誶語。抱哺其子,與公並踞。婦姑不相說,則反唇而睨。其慈子嗜利,而輕簡父母也,念罪非有倫理也,其不同禽獸懃焉耳。然猶幷心而赴時者,曰功成而敗義耳。蹶六國,兼天下,求得矣,然不知反廉恥之節,仁義之厚,信幷兼之法,遂進取之業,凡十三歲而社稷為墟,不知守成之數,得之之術也。悲夫!

商君禮義を違背し、倫理を拋棄し、心を並べて進取の上に置き、實行二年にして、秦俗日々に敗壞す。秦人子有り、家富めば子壯年にして分出去し、家貧なれば子壯年にして出贅す。父に鋤耰杖彗を借與するのみ、想うに施德の臉色有り;母瓢碗箕帚を取れば、想うに立ちて責罵す。抱きて子を哺育し、公公と並びて蹲踞す。媳婦婆婆相悅せざれば、卽ち脣を反し目を斜めにす。彼ら子を溺愛し利を嗜好して、父母を輕慢簡忽し、罪過を想うに竝びに倫理なく、彼ら禽獸に異なること僅か一點點のみ。然るに還りて心を並べて時勢に趕赴し、曰く功成りて義を敗壞するのみ。六國を蹶倒し、天下を兼并し、求得すること得たれども、廉恥の節操・仁義の厚に返回を知らず、兼并の法を相信し、進取の事業を成就し、共に十三年にして社稷廢墟と爲る、守成の方法を知らず、是れ取得の方法なり。悲哀かな!

瑰瑋

瑰瑋

天下有瑰政於此,予民而民愈貧,衣民而民愈寒,使民樂而民愈苦,使民知而民愈不知避縣網,甚可瑰也。今有瑋術於此,奪民而民益富也,不衣民而民益暖,苦民而民益樂,使民愈愚而民愈不罹縣網。陛下無意少聽其數乎?

天下ここに一種の奇瑰の政有り、民に東西を給して民越貧しく、民に衣服を給して民越寒く、民をして樂ならしめて民越苦しく、民をして知らしめて民越網法を避くることを知らず、甚だ奇瑰と稱する可し。今ここに一種の瑋術有り、民を奪取して民更加に富み、民に衣服を給せずして民更加に暖かく、民をして苦しからしめて民更加に樂しく、民をして越愚ならしめて民越法網に落ちず。陛下意稍々其の方法を聽かんことなきや?

夫雕文刻鏤,周用之物繁多,纖微苦窳之器,日變而起,民棄完堅,而務雕鏤纖巧,以相競高。作之宜一日,今十日不輕能成:用一歲,今半歲而弊。作之費日挾巧,用之易弊。不耕而多食農人之食,是天下之所以困貧而不足也。故以末予民,民大貧:以本予民,民大富。

花紋を雕鏤し、日常器用の物繁多、纖微粗劣の器具、日々に變化して興起し、民完好堅固を拋棄して、雕鏤纖巧に致力し、以て互相高を競う。製作當に一日なるべきを、今十日も軽易に成り得ず;使用一年なるべきを、今半年にして卽ち弊壞す。製作日を費してまた巧を挾み、使用弊壞し易し。耕さずして農人の食を多吃すは、是れ天下の困貧して足らざる所以の故なり。ゆえに末業を以て民に給すれば、民大いに貧しく;本業を以て民に給すれば、民大いに富む。

黼黻文繡纂組害女工,且夫百人作之,不能衣一人,方且萬里,不輕能具,天下之力,勢安得不寒?世以俗侈相耀,人慕其所不如,悚迫於俗願,其所未至,以相競高,而上非有制度也。今雖刑餘鬻妾下賤,衣服得過諸侯,擬天子,是使天下公得冒主,而夫人務侈也。冒主務侈,則天下寒而衣服不足矣。故以文繡衣民,而民愈寒,以褫民,民必暖,而有餘布帛之饒矣。

黼黻文繡纂組は女工を傷害し、況んや一百人製作して、一人に穿を給すること能わず、況んや遠き萬里に至りて、軽易に具備すること能わざるをや、天下の力量、形勢何ぞ寒からざらん?世上俗侈を以て互相誇耀し、人己に如かざるを羨慕し、俗願に悚迫せられ、未だ達せざるを追求し、以て互相高を競うも、而して上に竝びに制度なし。今たとい刑餘賣妾下賤なるも、衣服諸侯を超過し、天子に比擬し得べし、是れ天下をして公然主上を冒犯し得らしめ、人人侈に致力せしむるなり。主上を冒犯し侈に致力すれば、天下卽ち寒くして衣服足らず。ゆえに文繡を以て民に穿を給すれば、民越寒し;これらを剥去して民に給すれば、民必ず暖かく、布帛の饒足有餘有らん。

夫奇巧末技商販遊食之民,形佚樂而心縣愆,志苟得而行淫侈,則用不足而蓄積少矣。即遇兇旱,必先困窮迫身,則苦飢甚焉。今驅民而歸之農,皆著於本,則天下各食於力,末技遊食之民,轉而緣南畝,則民安性勸業,而無縣愆之心,無苟得之志,行恭儉蓄積,而人樂其所矣,故曰苦民而民益樂也。

其の奇巧末技商販遊食の民は、形體安逸快樂にして心過失に挂り、志向苟得にして行爲淫侈なれば、卽ち用度足らずして蓄積少なし。一旦凶旱に遇えば、必ず先に困窮身に迫り、卽ち飢に苦しむこと甚だし。今民を驅使して農に歸らしめ、皆本業に附著せしめば、天下卽ち各々力を靠りて食い、末技遊食の民は、轉じて南畝に緣り、民卽ち性情を安定し産業を勸勉し、過失に挂る心なく、苟得の志なく、行爲恭儉蓄積して、人其の所に樂しむ、故に曰く民をして苦しからしめて民更加に樂しむと。

世淫侈矣,飾知巧以相詐利者為知士,敢犯法禁昧大奸者為識理,故邪人務而日起,奸詐繁而不可止,罪人積下眾多而無時已。君臣相冒,上下無辨,此生於無制度也。今去淫侈之俗,行節儉之術,使車輿有度,衣服器械各有制數。制數已定,故君臣絕尢,而上下分明矣。擅退則讓,上僭者誅,故淫侈不得生,知巧詐謀無為起,奸邪盜賊自為止,則民離罪遠矣。知巧詐謀不起,所謂愚,故曰使愚而民愈不罹縣網。

世道淫侈せば、智巧を修飾して互相詐利するを以て智士と爲し、敢えて法禁を犯し大奸を隱匿するを以て理を識ると爲す、ゆえに邪人用力して日々に起こり、奸詐繁多にして止むべからず、罪人下に積みて衆多にして停止の時なし。君臣互相冒犯し、上下分辨なきは、これ制度なきより生ず。今淫侈の俗を去り、節儉の方法を實行し、車輿法度有らしめ、衣服器械各々制數有らしめば、制數已に確定せば、ゆえに君臣隔絶特等にして、上下分明なり。擅自退けば責讓し、上に僭越するは誅罰す、ゆえに淫侈發生すること能わず、智巧詐謀興起するに從由なく、奸邪盜賊自然に止息し、民卽ち罪を離るる遠し。智巧詐謀興起せざれば、所謂愚、故に曰く愚ならしめて民越法網に落ちずと。

孽產子

孽産子

民賣產子,得為之繡衣編經履偏諸緣,入之閒中,是古者天子後之服也,後之所以廟而不以燕也,而眾庶得以衣棄妾。白縠之表,薄紈之裡,緁以偏諸,美者黼繡,是古者天子之服也,今富人大賈召客者得以被牆。古者以天下奉一帝一後而節適,今富人大賈屋壁得為帝服,賈婦優倡下賤產子得為後飾,然而天下不屈者,殆未有也。且帝之身,自衣皂綈,而靡賈侈貴,牆得被繡,後以緣其領,孽妾以緣其履,此臣之所謂踳也。

民生みたる孩子を出賣して、彼に繡衣編經履鑲偏諸の邊を穿を給し得べく、宮中に進入す、是れ古の天子皇后の服なり、后は以て廟を祭るに用い燕居に用いず、而して衆庶は棄妾に穿を給し得べし。白縠を以て面を爲し、薄紈を以て裏を爲し、偏諸を縫上げ、美なるは黼繡を用う、是れ古の天子の服なり、今富人大賈は客を召すに以て墻を披くに用い得べし。古は天下を以て一帝一后を奉養して節制適當なり、今富人大賈は屋壁帝服を爲す能く、商賈婦優倡下賤の生みたる子は后の裝飾を爲す能く、然るに天下竭盡せざるは、大概未だ有らざるなり。況んや帝自身、自ら皂綈を穿ちて、侈靡の商賈奢侈尊貴にして、墻は繡を披く能く、后は以て領を緣どり、孽妾は以て履を緣どる、是れ臣の所謂顚倒なり。

且試觀事理夫百人作之,不能衣一人也,欲天下之無寒,胡可得也?一人耕之,十人聚而食之,欲天下之無飢,胡可得也?飢寒切於民之肌膚,欲其無為奸邪盜賊,不可得也。國已素屈矣,奸邪盜賊特須時爾,歲適不為,如雲而起耳。若夫不為見室滿,胡可勝撫也?夫錞此而有安上者,殆未有也。

試みに事理を觀察す:一百人製作して、一人に穿を給すること能わず、天下寒なからんと欲す、何處か得べけんや?一人耕種して、十人聚りて食う、天下飢なからんと欲す、何處か得べけんや?飢寒民の肌膚に切すれば、卽ち雲のごとく起こらん。至りて爲さずして室滿を見るは、何ぞ撫平し盡くすべけんや?かくのごときにして上を安定する有るは、大概未だ有らざるなり。

今也平居則無茈施,不敬而素寬,有故必困。然而獻計者類曰:"無動為大耳。"夫無動而可以振天下之敗者,何等也?曰為大,治,可也:若為大,亂,豈若其小?悲夫!俗至不敬也,至無等也,至冒其上也,進計者猶曰無為,可為長大息者此也。

今平常居處にして卽ち施與なく、敬せずして平素寬縱なれば、變故有れば必ず困窘す。然るに計を獻ずる人大抵皆曰く、「動かざるは大計のみ」と。動かずして天下敗局を振興する可きは、是れ何の一等か?曰く大を爲るは、治なり、可なり;若し大を爲るは、亂なり、何ぞ其の小に如かんや?悲哀かな!俗不敬に至り、等級なきに至り、上を冒犯するに至り、計を進むる人なお無爲と說く、長歎すべきは卽ちこのなり。

銅布

銅布

銅佈於下,為天下菑,何以言之?銅佈於下,則民鑄錢者,大抵必雜石鈆鐵焉,黥罪日繁,此一禍也。銅佈於下,偽錢無止,錢用不信,民愈相疑,此二禍也。銅佈於下,採銅者棄其田疇,家鑄者損其農事,谷不為則鄰於飢,此三禍也。故不禁鑄錢,則錢常亂,黥罪日積,是陷阱也。且農事不為,有疑為菑,故民鑄錢,不可不禁。上禁鑄錢,必以死罪。鑄錢者禁則錢必還重,錢重則盜鑄錢者起,則死罪又復積矣,銅使之然也。故銅佈於下,其禍博矣。

銅下に散布すは、天下の災なり、何を以てかくのごとく言うや?銅下に散布すれば、民錢を鑄る者は、大抵必ず石鉛鐵を摻雜し、黥罪日々に繁多す、是れ第一の禍。銅下に散布すれば、僞錢止境なく、錢用信じられず、民越互いに懷疑す、是れ第二の禍。銅下に散布すれば、銅を採る者田疇を拋棄し、家鑄の者農事を損害し、穀長成せずして飢に接近す、是れ第三の禍。ゆえに錢を鑄るを禁止せざれば、錢卽ち常に亂り、黥罪日々に積累す、是れ陷阱なり。況んや農事爲さざれば、疑慮有りて災と爲る、ゆえに民錢を鑄るは、禁ぜざるべからず。上錢を鑄るを禁止すれば、必ず死罪を用う。錢を鑄る禁ぜられ錢必ずまた重を變じ、錢重ければ盜錢を鑄る人卽ち起こり、死罪また再び積累す、是れ銅彼をして然らしむればなり。ゆえに銅下に散布すれば、禍卽ち廣し。

今博禍可除,七福可致。何謂七福?上收銅,勿令佈下,則民不鑄錢,黥罪不積,一。銅不佈下,則偽錢不繁,民不相疑,二。銅不佈下,不得采銅,不得鑄錢,則民反耕田矣,三。銅不佈下,畢歸於上,上挾銅積以御輕重,錢輕則以術斂之,錢重則以術散之,則錢必治,貨物必平矣,四。挾銅之積,以鑄兵器,以假貴臣,小大多少,各有制度,以別貴賤,以差上下,則等級明矣,五。挾銅之積,以臨萬貨,以調盈虛,以收倍羨,則官必富,而末民困矣,六。挾銅之積,制吾棄財,以與匈奴逐爭其民,則敵必壞矣。此謂之七福。

今廣禍除去する可く、七福招致する可し。何を以て七福と謂うや?上銅を收め、下に散布せしめざれば、民卽ち錢を鑄らず、黥罪積累せず、一なり。銅下に散布せざれば、僞錢繁多せず、民互いに懷疑せず、二なり。銅下に散布せざれば、銅を採る能わず、錢を鑄る能わず、民卽ち田を耕に返回す、三なり。銅下に散布せざれば、全部上に歸し、上銅積を挾みて以て輕重を制御し、錢輕ければ卽ち方法を以て收斂し、錢重ければ卽ち方法を以て發散し、錢必ず治理し、貨物必ず平穩す、四なり。銅積を挾み、以て兵器を鑄造し、貴臣に借與し、小大多少、各々制度有り、以て貴賤を分別し、上下を差等し、等級卽ち分明す、五なり。銅積を挾み、以て萬貨を臨視し、盈虛を調劑し、倍羡を收取し、官必ず富み、而して末業の民困窘す、六なり。銅積を挾み、我ら棄置の財を控制し、以て匈奴と其の民を爭奪し、敵必ず敗壞す。是れを七福と謂う。

故善為天下者,因禍而為福,轉敗而為功,今顧退七福而行博禍,可為長大息者,此其一也。

ゆえに善く天下を治理する者は、禍に因りて福と爲し、敗を轉じて功と爲す、今却つて反つて七福を退掉して廣禍を實行す、長歎すべき、是れ其の一なり。

壹通

壹通

所謂建武關函谷臨晉關者,大抵為備山東諸侯也。天子之制在陛下,今大諸侯多其力,因建關而備之,若秦時之備六國也。豈若定地勢,使無可備之患。因行兼愛無私之道,罷關一通,天下無以區區獨有關中者,所為禁遊宦諸侯及無得出馬關者,豈不曰諸侯得眾則權益重,其國眾車騎則力益多,故明為之法,無資諸侯。於臣之計,疏山東,孽諸侯,不令似一家者,其精於此矣。豈若一定地制,令諸侯之民,人騎二馬,不足以為患,益以萬夫,不足以為害。今不定大理,數起禁,不服人心,害兼覆之義,不便。

所謂武關・函谷・臨晉關を建立するは、大抵是れ山東諸侯を防備するためなり。天子の制度は陛下に在り、今大諸侯力量多く、因りて關を建てて以て防備すは、秦時六国を防備するがごとし。何ぞ地勢を確定し、防備を須うる患なからしむるに如かんや。因りて兼愛無私の道を實行し、關を罷め交通を一統し、天下に区々の地を憑りて獨り關中を有るなからしめば、故に游宦諸侯に於て及び馬關を出でざるを禁止す、豈諸侯衆を得れば權益重く、其の國車騎多ければ力益多しと說くにあらざるか、ゆえに明白此のため立法して、諸侯を資助せず。臣の計に按ずれば、山東を疎遠にし、諸侯を削弱し、一家のごとくせしめざるは、精當卽ちここに在り。何ぞ必ず土地制度を確定し、諸侯の民をして、每人兩馬に騎せしめ、患と爲るに足らず、これに萬人を加えても、害と爲るに足らざるに如かんや。今大理を確定せず、屢々禁令を興起し、人心に服せず、兼覆の義を傷害す、便利ならず。

天子都長安,而以淮南東南邊為奉地,彌道數千,不輕致輸,郡或乃越諸侯,而有免侯之地,於遠方調均發徵,又且必同。大國包小國為境,小國闊大國而為都,小大駁躒,遠近無衰,天子諸侯封畔之無經也,至無狀也,以藩國資強敵,以列侯餌篡夫,至不得也。陛下奈何久不正此?

天子長安に都を定めて、而して淮南東南邊を以て供奉之地と爲す、道路綿延幾千里にして、輸送を輕易にすること能わず、或る郡竟に諸侯を越えて、免侯の地有りて、遠方より均征發を調し、また必ず相同じ。大國小國を包みて以て邊境と爲し、小國大國を隔てて都を爲す、小大錯雜にして、遠近差等なく、天子諸侯封界經常なく、極めて樣子を成さず、藩國を以て強敵を資助し、列侯を以て篡奪者の餌と爲す、極めて得當ならず。陛下何ぞ長久このを糾正せざるや?

屬遠

屬遠

古者天子地方千里,中之而為都,輸將繇使,其遠者不在五百里而至。公侯地百里,中之而為都,輸將繇使遠者不在五十里而至。輸將者不苦其勞,繇使者不傷其費,故遠方人安其居,士民皆有驩樂其上,此天下之所以長久也。

古の天子土地は方圓千里、中央に都を爲し、輸送徭使、遠きは五百里を在らずして至る。公侯の地百里、中央に都を爲し、輸送徭使遠きは五十里を在らずして至る。輸送する者勞を以て苦と爲さず、徭使する者費に傷らず、ゆえに遠方の人安く居處し、士民皆上に歡樂す、是れ天下の長久なる所以の故なり。

及秦而不然,秦不能分尺寸之地,欲儘自有之耳。輸將起海上而來,一錢之賦耳,十錢之費,弗輕能致也,上之所得者甚少,而民毒苦之甚深,故陳勝一動,而天下不振。

秦に至りては然らず、秦は尺寸の土地を分出すること能わず、全部自ら占有せんと欲するのみ。輸送海上より來り、一錢の賦のみ、十錢の費、輕易に送到すること能わず、上の得る所甚だ少なく、而して民毒苦甚だ深し、ゆえに陳勝一動せば、天下卽ち振興すること能わず。

今漢越兩諸侯之中分,而乃以廬江之為奉地,雖秦之遠邊,過此不遠矣。令此不輸將不奉主,非奉地義也,尚安用此而久縣其心哉?若令此如奉地之義,是復秦之跡也,竊以為不便。夫淮南窳民貧鄉也,繇使長安者,自悉以補,行中道而衣行勝已羸弊矣,強提荷弊衣而至,慮非假貸自詣,非有以所聞也。履蹻不數易,不足以至,錢用之費稱此,苦甚。竊以所聞,縣令丞相歸休者,慮非甚強也,不見得從者。夫行數千裡,絕諸侯之地,而縣屬漢,其勢終不可久。漢往者,家號泣而送之:其來繇使者,家號泣而遣之,俱不相欲也。甚苦屬漢而欲王,類至甚也,逋遁而歸諸侯者,類不少矣。陛下不如蚤定,毋以資奸人。

今漢は兩箇の諸侯を越えて中より分け、而して廬江を以て供奉之地と爲す、たとい秦の遠邊といえども、これを超過するも遠からず。ここをして輸送せず主を奉奉ぜざらしめば、供奉之地の義にあらず、還りて何を以てこれを用いて彼らの心を長久に懸挂せん?若しここをして供奉之地の義のごとくせば、卽ち再走秦の老路なり、竊に以爲す便利ならず。淮南は瘠民貧鄉なり、徭使長安に至るは、自ら其の所有を盡くして以て補い、中途に走りて衣服行裝已に羸弊、強いて弊衣を提げ扛げて到る、想うに貸借せずして自ら前往するにあらず、聽說有るにあらず。草鞋數次換えざれば、足らずして到達せず、錢用の費これと相稱し、苦しみ甚だし。竊に聽說する所に就けば、縣令丞相家に歸り休むは、想うに甚だ強しとあらず、從う者を見ず。幾千里を走り、諸侯の地を隔絶し、而して縣のごとく漢に屬す、其の形勢終に長久すべからず。漢に去るは、家號泣して彼を送り;徭使に來るは、家號泣して彼を遣る、皆願わず。甚だ漢に屬するを苦しみて王と稱せんと欲すは、大概極點に至り、諸侯に逃歸するは、大概少なからず。陛下早く定めざる如かず、以て奸人を資助することなかれ。

親疏危亂

親疏危亂

陛下有所不為矣,臣將不敢不畢陳事制。假令天下如曩也,淮陰侯尚王楚,黥布王淮南,彭越王梁,韓信王韓,張敖王趙,貫高為相,盧綰王燕,陳豨在代,令六七諸公皆無恙,案其國而居。當是時,陛下即天子之位,試能自安乎哉?臣有以知陛下之不能也。天下殽亂,高皇帝與諸侯並肩而起,非有側室之勢,以豫席之也,諸侯率幸者乃得為中涓,其次僅得為舍人。高皇帝南面稱帝,諸公皆為臣,材之不逮,至遠也。高皇帝五年即天子之位,割膏腴之地,以王有功之臣,多者百餘城,少者乃三四十縣,德至渥也。然其後十年之間,反者九起,幾無天下者五六。陛下之與諸公也,非親角材而臣之也,又非身封王之也,自高皇帝不能以是一歲為安,陛下獨安能以是自安也?

陛下はなさざる所有り、臣將に敢えて事制を全部陳述せざるべからず。仮令天下從前のごとく、淮陰侯なお楚に在りて王と稱し、黥布淮南に在りて王と稱し、彭越梁に在りて王と稱し、韓信韓に在りて王と稱し、張敖趙に在りて王と稱し、貫高相を爲し、盧綰燕に在りて王と稱し、陳豨代に在りて、六七位の諸公をして皆恙なからしめ、彼らの國に據りて居る。まさに此の時、陛下天子の位に即く、試みに問う能く自ら安定せんや?臣陛下能わざるを知る所以あり。天下淆亂し、高皇帝諸侯と並び肩を竝べて起こり、竝びに側室の勢なく、以て豫め憑藉す、諸侯大抵幸運にして中涓を爲す能く、其次僅かに舍人を爲す能し。高皇帝南面して帝と稱し、諸公皆臣を爲す、材能趕上せず、極めて遠し。高皇帝五年にして天子の位に即き、肥沃の土地を割きて、以て功有る臣を封じて王と爲す、多きは一百餘城、少なきは竟に三四十縣、德極めて優渥なり。然るに其の後十年の間、反叛する者九次起こり、幾ど天下なきこと五六次なり。陛下と諸公は、竝びに親しく較べて親しきにあらず。

然尚有可諉者,曰疏。臣請試言其親者。假令悼惠王王齊,元王王楚,中山王王趙,幽王王淮陽,共王王梁,靈王王燕,厲王王淮南,六七貴人皆無恙,各案其國而居。當是時,陛下即天子之位,能為治乎?臣又竊知陛下之不能也。諸侯王雖名為人臣,實皆有布衣昆弟之心,慮無不宰制而天子自為者。擅爵人,赦死罪,甚者或戴黃屋。漢法非立,漢令非行也。雖離道如淮南王者,令之安肯聽?召之焉可致?幸而至,法安可得尚?動一親戚,天下環視而起,天下安可得制也?陛下之臣,雖有悍如馮敬者,乃啟其口,匕首已陷於胸矣。陛下雖賢,誰與領此?故疏必危,親必亂。(陛下之因今以為治安,柰何知其必且危亂也!然且吟(齒休)而堅控守之,為何如制以(糹靡)相懸。)

然るに還りて推諉する可き有りて、疎遠と説く。臣請う試みに其の親近を說かん。仮令悼惠王齊に在りて王と稱し、元王楚に在りて王と稱し、中山王趙に在りて王と稱し、幽王淮陽に在りて王と稱し、共王梁に在りて王と稱し、靈王燕に在りて王と稱し、厲王淮南に在りて王と稱し、六七位の貴人皆恙なからして、各々其の國に據りて居る。まさに此の時、陛下天子の位に即きて、能く治理せんや?臣また竊に陛下能わざるを知る。諸侯王は名は人臣と雖も、其の實皆布衣兄弟の心有り、想うに宰制して自ら天子を爲さんと欲せざるはなし。擅自人に爵を給し、死罪を赦免し、或るは甚だ黃屋を戴く。漢法未だ立たず、漢令未だ行われず。たとい淮南王のごとき道を離るる者は、彼を命令するに何ぞ肯んじて聽かん?彼を召すに何處か至る能わん?僥倖至れば、法何ぞ還りて施加する能わん?一親戚を動かせば、天下環視して起こり、天下何ぞ還りて制約する能わん?陛下の臣は、たとい馮敬のごとき强悍有るも、口を開けば、匕首已に胸中に陷入す。陛下賢と雖も、誰と共に來領せん?故に疎遠は必ず危うく、親近は必ず亂る。(底本此段末に「陛下之因今以爲治安……」一段の夾注を附す、文殘缺有り、是れ後人の案語の正文に串入せるなり。)

憂民

憂民

王者之法,民三年耕而餘一年之食,九年而餘三年之食,三十歲而民有十年之蓄。故禹水九年,湯旱七年,甚也,野無青草,而民無飢色,道無乞人,歲復之後,猶禁陳耕。古之為天下,誠有具也。王者之法,國無九年之蓄,謂之不足:無六年之蓄,謂之急:無三年之蓄,曰國非其國也。

王者の法、民三年耕して餘一年の糧食有り、九年にして餘三年の糧食有り、三十年にして民十年の蓄積有り。ゆえに禹水災九年、湯旱災七年、嚴重なりしも、野に青草なく、而して民飢色なく、路に乞人なし、年成恢復の後、還りて陳田を翻耕するを禁止す。古天下を治理するは、實に具體辦法有り。王者の法、國九年の蓄積なきは、不足と謂い;六年の蓄積なきは、急と謂い;三年の蓄積なきは、國其の國に似ずと謂う。

今漢興三十年矣,而天下愈屈,食至寡也,陛下不省邪?未獲年,富人不貸,貧民且飢,天時不收,請賣爵鬻子,既或聞耳。曩頃不雨,令人寒心,壹雨爾,慮若更生。天下無蓄,若此甚極也。其在王法謂之何?必須困至乃慮,窮至乃圖,不亦晚乎!

今漢興起三十年なり、而して天下越加竭盡し、糧食極めて少なし、陛下省察せざるか?未だ收穫の年份ならず、富人貸借せず、貧民將に飢えんとし、天時收穫せず、爵を賣り子を賣るを請う、已に或は耳に傳わる。前不久雨降らず、人をして心寒からしめ、雨降るのみ、想うに重新活過來のごとし。天下蓄積なし、かくのごとく極點に至れり。王法の裏に於て何と謂うや?必ず困に至りて始めて思慮し、窮に至りて始めて謀劃すは、亦晚からずや!

然則所謂國無人者,何謂也?有天下而欲其安者,豈不在於陛下者哉。上弗自憂,將以誰偷?五歲小康,十歲一兇,三十歲而一大康,蓋曰大數也。即不幸有方二三千里之旱,天下何以相救,卒然邊境有數十萬之眾,聚天下將何以饋之矣?兵旱相承,民填溝壑,剽盜攻擊者,興繼而起,中國失救,外敵必駭,一日而及,此之必然。且用事之人,未必此省,為人上弗自憂,魄然事困,乃驚而督下,曰:"此天也,可柰何?"事既無如之何及。方今始秋時,可善為。陛下少閒,可使臣從丞相御史計之。

卽ち所謂國に人なしとは、是れ何の義か?天下有りて之を安定せんと欲するは、豈陛下に在らざるか。上自ら憂慮せざれば、將に誰と苟且せん?五年小康、十年一凶、三十年にして一大康、大概大數と説く。一旦不幸方圓兩三千里の旱有れば、天下何を以て互いに救助せん?突然邊境に幾十萬の部衆有れば、天下を聚集し何を以て彼らを饋餉せん?兵旱相乘じ、民溝壑を塡め、剽盜攻撃するは、相繼ぎて興起し、中國救助を失い、外敵必ず驚駭し、一日にして至る、是れ必然なり。況んや用事の人、未だ必ずしもこれを省察せず、人上を爲るに自ら憂慮せず、突然事勢困窘し、始めて驚慌して下を督責し、曰く、「是れ天なり、如何せん」と。事已に無可奈何にして至る。當今纔かに秋時に入る、善く爲す可し。陛下稍々閒暇有れば、臣をして丞相御史に從い謀劃せしむ可し。

解縣

解縣

天下之勢,方倒縣,竊願陛下省之也。凡天子者,天下之首也,何也?上也。蠻夷者,天下之足也,何也?下也。蠻夷徵令,是主上之操也,天子共貢,是臣下之禮也。足反居上,首顧居下,是倒縣之勢也。天下倒縣,莫之能解,猶為國有人乎?

天下の形勢、正に倒懸なり、竊に願わくは陛下省察せんことを。凡そ天子は、天下の首なり、何ぞや?上に在ればなり。蠻夷は、天下の足なり、何ぞや?下に在ればなり。蠻夷征令を受くるは、主上の操持なり;天子進貢するは、臣下の禮なり。足反つて上に居り、首反つて下に居るは、是れ倒懸の形勢なり。天下倒懸して、解く能くする人なし、還りて國に人有りと算せんや?

非特倒縣而已也,又類躄且病痱。夫躄者一面病,痱者一方痛。今西郡北郡,雖有長爵,不輕得復,五尺已上,不輕得息,苦甚矣。中地左戍,延行數千裡,糧食饋饟,至難也。斥候者望烽燧而不敢臥,將吏戍者,或介冑而睡,而匈奴欺侮侵掠,未知息時,於焉望信威廣德,難。臣故曰:"一方病矣,醫能治之。"而上弗肯使也。天下倒縣甚苦矣,竊為陛下惜之。

只倒懸のみにあらず、また跛にして且つ痱を患えるがごとし。跛は一面の病、痱は一方の痛なり。今西郡北郡は、たとい長爵有るも、復除を輕易にすること能わず、五尺以上、休息を輕易にすること能わず、苦しみ甚だし。中地戍守を往左し、延行幾千里、糧食饋餉、極めて難し。斥候烽燧を望みて敢えて臥せず、將吏戍守するは、或は甲冑を著て睡る、而して匈奴欺侮侵掠して、止息の時を知らず、ここに在りて威を伸張し德を廣布せんことを指望するは、難し。臣の曰う所以、「一方病めば、醫之を治する能し」と。而して上役使を肯ぜず。天下倒懸して苦しみ甚だし、竊に陛下のため惋惜す。

進諫者類以為是,困不可解也,無具甚矣。陛下肯幸聽臣之計,請陛下舉中國之禍,而從之匈奴。中國乘其歲而富強,匈奴伏其辜而殘亡,系單于之頸而制其命,伏中行說而笞其背,舉匈奴之眾,唯上之令。陛下威憚大信,德義廣遠,據天下而必固,稱高號誠所宜,俛視中國,遠望四夷,莫不如志矣。然後退齋三日,以報高廟,令天下無愚智男女皆曰:"皇帝果大聖也。"胡忍以陛下之明,承天下之資,而久為戎人欺傲,若此可謂國無人矣。

進諫の人大抵以爲すかくのごとし、困解くべからず、方法極點に至るまでなしと。陛下幸いに臣の計を聽くを肯ぜば、請う陛下中國の禍を擧げて、而して之を匈奴に轉ぜん。中國年歲に趁りて富强なり、匈奴罪を伏して殘亡す、單于の頸を繫して其の命を控制し、中行說を按住して其の背を笞す、匈奴の部衆を擧げ、只上の令に聽從す。陛下威勢憚服大信にして、德義廣遠に、天下を據有して一定牢固に、高號を稱するは實に當然なり、俯視中國、遠望四夷、志に如かざるなし。然る後退きて齋戒三日し、以て高廟に報告し、天下をして愚智男女ならず皆曰はしめん、「皇帝果して大聖なり」と。何ぞ忍びて陛下の明に憑り、天下の資を承受し、而して長久戎人に欺傲せられ、かくのごときを以て國に人なしと謂う可けんや。

威不信

威不信

古之正義,東西南北,苟舟車之所達,人跡之所至,莫不率服,而後雲天子。德厚焉,澤湛焉,而後稱帝。又加美焉,而後稱皇。今稱號甚美,而實不出長城,彼非特不服也,又大不敬。邊長不寧,中長不靜,譬如伏虎,見便必動,將何時已!昔高帝起布衣而服九州,今陛下杖九州而不行於匈奴,竊為陛下不足。且事勢有甚逆者焉,天子者,天下之首也,何也?上也。蠻夷者,天下之足也,何也?下也。蠻夷徵令,是主上之操也:天子共貢,是臣下之禮也。足反居上,首顧居下,是倒植之勢也。天下之勢倒植矣,莫之能理,猶為國有人乎?德可遠施,威可遠加,舟車所至,可使如志,而特捫然數百里而威令不信,可為流涕者此也。

古の正義、東西南北、凡そ舟車の到達し人跡の到る所、率服せざるなし、然る後に天子と稱す。德厚くなり、澤深くなりて、然る後に帝と稱す。また美を加えて、然る後に皇と稱す。今稱號甚だ美なれども、實は長城を出でず、彼ら只服從せざるのみにあらず、また大いに敬せず。邊地長久寧まらず、內地長久靜まらず、伏する虎に比すれば、便利を見て必ず動く、將に何時停止せん!從前高帝布衣より興起して九州を征服し、今陛下九州に仗りて匈奴に行う能わず、竊に陛下のため不足を感ず。況んや事勢に甚だ悖逆有るや、天子は天下の首なり、何ぞや?上に在ればなり。蠻夷は天下の足なり、何ぞや?下に在ればなり。蠻夷征令を受くるは、主上の操持なり;天子進貢するは、臣下の禮なり。足反つて上に居り、首反つて下に居るは、是れ倒植の形勢なり。天下の形勢倒植すれば、理する能くする人なし、還りて國に人有りと算せんや?德遠く施す可く、威遠く加う可く、舟車の到る所、之を志のごとくせしむ可きに、却只悶然幾百里にして威令信從せられず、流涕すべきは卽ちこのなり。

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