Libo

国風

先秦 · 佚名 · 第12巻 / 22

父母生我,胡俾我瘉?不自我先,不自我後。好言自口,莠言自口。憂心愈愈,是以有侮。

父母生我(ふぼせいが)、胡俾我瘉(こひがゆ・どうして私を病ませる)。不自我先(ふじがせん)、不自我後(ふじがこう)。好言自口(こうげんじこう)、莠言自口(ゆうげんじこう・悪い言葉も口から)。憂心愈愈(ゆうしんゆゆ)、是以有侮(ぜいゆうぶ・これによって侮られる)。

憂心惸惸,念我無祿。民之無辜,並其臣僕。哀我人斯,於何從祿?瞻烏爰止?於誰之屋?

憂心惸惸(ゆうしんけいけい・獨りで憂える)、念我無祿(ねんがむろく)。民之無辜(みんしむこ)、并其臣僕(へいきしんぼく・臣僕にまで及ぶ)。哀我人斯(あいがじんし)、于何從祿(おかしょうろく・どこから禄を得るか)。瞻烏爰止(せんうえんし・烏がどこに止まるか見よ)、于誰之屋(おすいしおく)。

瞻彼中林,侯薪侯蒸。民今方殆,視天夢夢。既克有定,靡人弗勝。有皇上帝,伊誰雲憎?

瞻彼中林(せんぴちゅうりん)、侯薪侯蒸(こうしんこうじょう・薪と柴があるばかり)。民今方殆(みんこんぼうたい・民は今まさに殆い)、視天夢夢(してんぼうぼう)。既克有定(きこくゆうじょう・一旦定まることがあれば)、靡人弗勝(びじんふしょう・人に勝てない者はいない)。有皇上帝(ゆうこうじょうてい・皇皇たる上帝)、伊誰云憎(いすいうんぞう・いったい誰を憎むのか)。

謂山蓋卑,為岡為陵。民之訛言,寧莫之懲。召彼故老,訊之占夢。具曰予聖,誰知烏之雌雄!

謂山蓋卑(いざんかいひ・山は蓋し卑いと言うが)、為岡為陵(いこういりょう・岡陵である)。民之訛言、寧莫之懲。召彼故老(しょうひころう・故老を召し)、訊之占夢(しんしせんむ・夢占いに問う)。具曰予聖(ぐえつよせい・皆「予は聖だ」と言う)、誰知烏之雌雄(すいちうししゆう)。

謂天蓋高,不敢不局。謂地蓋厚,不敢不蹐。維號斯言,有倫有脊。哀今之人,胡為虺蜴?

謂天蓋高(いてんかいこう)、不敢不局(ふかんふきょく・身を屈めないわけにいかない)。謂地蓋厚(いちかいこう)、不敢不蹐(ふかんふせき・小さく歩まないわけにいかない)。維號斯言(いごうしげん・これらの言を号する)、有倫有脊(ゆうりんゆうせき・条理があり脊骨がある)。哀今之人(あいこんしじん)、胡為虺蜴(こいきえき・どうして虺蜴のようか)。

瞻彼阪田,有菀其特。天之杌我,如不我克。彼求我則,如不我得。執我仇讎,亦不我力。

瞻彼阪田(せんぴはんでん)、有菀其特(ゆううつきとく・菀として特出した苗)。天之扤我(てんしぐつが・天が私を動かす)、如不我克(にょふがこく・私に勝てないかのように)。彼求我則(ひきゅうがそく・彼らが私を求める時)、如不我得(にょふがとく・得られないかのように)。執我仇仇(しゅうがきゅうきゅう・得ておいて仇のように扱う)、亦不我力(やくふがりょく・私を力ともしない)。

心之憂矣,如或結之。今茲之正,胡然厲矣?燎之方揚,寧或滅之?赫赫宗周,褒姒滅之!

心之憂矣、如或結之(にょかくけつし・何かに結われたよう)。今茲之正(こんししせい・今の政)、胡然厲矣(こぜんれいい・どうしてこんなに厲しいか)。燎之方揚(りょうしほうよう・火が燃え盛っているのに)、寧或滅之(ねいかくめっし・誰か滅せるか)。赫赫宗周(かっかくそうしゅう)、褒姒烕之(ほうじめつし・褒姒が滅ぼした)!

終其永懷,又窘陰雨。其車既載,乃棄爾輔。載輸爾載,將伯助予!

終其永懷(しゅうきえいかい・終に長く懐う)、又窘陰雨(ゆうきんいんう・また陰雨に窘む)。其車既載(きしゃきさい)、乃棄爾輔(だいきじほ・あなたの輔を棄てる)。載輸爾載(さいしゅじさい・荷が落ちそう)、將伯助予(しょうはくじょよ・伯よ私を助けてくれ)。

無棄爾輔,員於爾輻。屢顧爾僕,不輸爾載。終逾絕險,曾是不意。

無棄爾輔(むきじほ)、員于爾輻(いんうじふく・輻を固めよ)。屢顧爾僕(るこじぼく・たびたび僕を顧みよ)、不輸爾載(ふしゅじさい)。終踰絕險(しゅうゆぜつけん・遂に絶険を踰える)、曾是不意(そうぜふい・ところがこれを意に介さない)。

魚在於沼,亦匪克樂。潛雖伏矣,亦孔之炤。憂心慘慘,念國之為虐!

魚在于沼(ぎょざいおしょう)、亦匪克樂(やくひこくらく・楽しむことができない)。潛雖伏矣(せんすいふくい・潜んで伏していても)、亦孔之炤(やくこうししょう・とても明らか)。憂心慘慘(ゆうしんさんさん)、念國之為虐(ねんこくしいぎゃく)。

彼有旨酒,又有嘉餚。洽比其鄰,婚姻孔雲。念我獨兮,憂心殷殷。

彼有旨酒(ひゆうしゅしゅ)、又有嘉肴(ゆうゆうかこう)。洽比其鄰(こうひきりん・隣と洽い比す)、昏姻孔云(こんいんこううん・婚姻がとても周旋する)。念我獨兮、憂心慇慇(ゆうしんいんいん)。

佌佌彼有屋,蔌蔌方有谷。民今之無祿,天夭是椓。哿矣富人,哀此惸獨。

佌佌彼有屋(ししひゆうおく・小さな者が屋を持つ)、蔌蔌方有穀(そくそくほうゆうこく・陋い者が穀を持つ)。民今之無祿(みんこんしむろく)、天夭是椓(てんようぜたく・天が民を夭して椓す)。哿矣富人(かいふじん・富人はよい)、哀此惸獨(あいしけいどく)。

十月之交,朔月辛卯。日有食之,亦孔之醜。彼月而微,此日而微;今此下民,亦孔之哀。

十月之交(じゅうがつしこう・十月の交わり)、朔月辛卯(さくげつしんぼう・朔日は辛卯)。日有食之(じつゆうしょくし・日蝕あり)、亦孔之醜(やくこうししゅう・とても醜い)。彼月而微(ひげつにび・あの月は微れ)、此日而微(しじつにび)。今此下民(こんしげみん)、亦孔之哀(やくこうしあい)。

日月告兇,不用其行。四國無政,不用其良。彼月而食,則維其常;此日而食,於何不臧。

日月告凶(じつげつこくきょう・日月が凶を告げる)、不用其行(ふようきこう・その道を行かない)。四國無政(しこくむせい)、不用其良(ふようきりょう)。彼月而食(ひげつにしょく・あの月が蝕される)、則維其常(そくいきじょう・それは常だ)。此日而食(しじつにしょく)、于何不臧(おかふぞう・どうして善からぬか)。

燁燁震電,不寧不令。百川沸騰,山冢崒崩。高岸為谷,深谷為陵。哀今之人,胡慘莫懲?

燁燁震電(ようようしんでん・雷電が燁燁と光る)、不寧不令(ふねいふれい・安らかでなく善くない)。百川沸騰(ひゃくせんふっとう)、山冢崒崩(さんちょうそつほう・山頂が猝として崩れる)。高岸為谷(こうがんいこく)、深谷為陵(しんこくいりょう)。哀今之人(あいこんしじん)、胡憯莫懲(こさんばくちょう・どうして慘として懲りないか)。

皇父卿士,番維司徒,家伯維宰,仲允膳夫,棸子內史,蹶維趣馬,楀維師氏。醘妻煽方處。

皇父卿士(こうふけいし)、番維司徒(はんいしと)、家伯維宰(かはくいさい)、仲允膳夫(ちゅういんぜんふ)、棸子內史(しゅうしないし)、蹶維趣馬(けついしゅうば)、楀維師氏(ういしし)。豔妻煽方處(えんさいせんほうしょ・豔妻が煽り盛んで処る)。

抑此皇父,豈曰不時?胡為我作,不即我謀?徹我牆屋,田卒汙萊。曰予不戕,禮則然矣。

抑此皇父(よくしこうふ・この皇父は)、豈曰不時(きえつふじ・時を知らないと言うか)。胡為我作(こいがさく・どうして私のために作役させる)、不即我謀(ふそくがぼう・私に就いて謀らない)。徹我牆屋(てつがしょうおく・私の牆屋を徹す)、田卒汙萊(でんそつおらい・田は遂に汙して萊が生える)。曰予不戕(えつよふしょう・「予は戕さない」と言う)、禮則然矣(れいそくぜんい・礼はそういうものだと)。

皇父孔聖,作都於向。擇三有事,亶侯多藏。不憖遺一老,俾守我王。擇有車馬,以居徂向。

皇父孔聖(こうふこうせい・皇父はとても聖い)、作都于向(さくとおこう・向に都を作る)。擇三有事(たくさんゆうじ・三有司を選ぶ)、亶侯多藏(たんこうたぞう・実に多く蓄えた者)。不憖遺一老(ふぎんいいちろう・一老を残すのを惜しまない)、俾守我王(ひしゅがおう・我が王を守らしめない)。擇有車馬(たくゆうしゃば・車馬ある者を選び)、以居徂向(いきょそこう・向に居て往く)。

黽勉從事,不敢告勞。無罪無辜,讒口囂囂。下民之孽,匪降自天。噂沓背憎,職競由人。

黽勉從事(びんべんしょうじ・黽勉して事に従う)、不敢告勞(ふかんこくろう・労を告げることを敢えてしない)。無罪無辜(むざいむこ)、讒口囂囂(ざんこうぎょうぎょう・讒言が囂囂と)。下民之孽(げみんしげつ・下民の災孽)、匪降自天(ひこうじてん・天から降ったのではない)。噂沓背憎(そんとうはいぞう・面では噂沓み背では憎む)、職競由人(しょくきょうゆうじん・ただ人が競って為す)。

悠悠我裡,亦孔之痗。四方有羨,我獨居憂。民莫不逸,我獨不敢休。天命不徹,我不敢效我友自逸。

悠悠我里(ゆうゆうがり・悠々たる我が里)、亦孔之痗(やくこうしばい・とても病む)。四方有羨(しほうゆうせん・四方に余羨あり)、我獨居憂(がどくきょゆう)。民莫不逸(みんばくふいつ・民は皆逸しないではない)、我獨不敢休(がどくふかんきゅう)。天命不徹(てんめいふてつ・天命が徹らない)、我不敢傚我友自逸(がふかんこうがゆうじいつ)。

浩浩昊天,不駿其德。降喪饑饉,斬伐四國。旻天疾威,弗慮弗圖。舍彼有罪,既伏其辜。若此無罪,淪胥以鋪。

浩浩昊天(こうこうこうてん)、不駿其德(ふしゅんきとく・その徳を長くしない)。降喪饑饉(こうそうききん)、斬伐四國(ざんばつしこく)。旻天疾威(びんてんしつい・旻天が疾く威する)、弗慮弗圖(ふりょふと・慮らず圖らない)。舍彼有罪(しゃひゆうざい・有罪を舍て)、既伏其辜(きふくきこ・その辜を伏せる)。若此無罪(じゃくしむざい・これらの無罪は)、淪胥以鋪(りんしょいふ・相い淪れて苦しむ)。

周宗既滅,靡所止戾。正大夫離居,莫知我勩。三事大夫,莫肯夙夜。邦君諸侯,莫肯朝夕。庶曰式臧,覆出為惡。

周宗既滅(しゅうそうきめつ)、靡所止戾(びしょしれい・止まる所がない)。正大夫離居(せいたいふりきょ・正大夫が居を離れる)、莫知我勳(ばくちがくん・私の勳を知る者なし)。三事大夫(さんじだいふ)、莫肯夙夜(ばくこうしゅくや)。邦君諸侯(ほうくんしょこう)、莫肯朝夕(ばくこうちょうせき)。庶曰式臧(しょえつしきそう・庶い善くならんと言うが)、覆出為惡(ふくしゅついあく・かえって出て惡を為す)。

如何昊天,辟言不信。如彼行邁,則靡所臻。凡百君子,各敬爾身。胡不相畏,不畏於天?

如何昊天(じょかこうてん・昊天よどうか)、辟言不信(へきげんふしん・法の言が信じられない)。如彼行邁(にょひこうばい・あの行く者のように)、則靡所臻(そくびしょしん・至る所がない)。凡百君子(ぼんぴゃくくんし)、各敬爾身(かくけいじしん)。胡不相畏(こふそうい・どうして相い畏れないか)、不畏于天(ふいうてん・天を畏れないか)。

戎成不退,飢成不遂。曾我暬御,慘慘日瘁。凡百君子,莫肯用訊。聽言則答,譖言則退。

戎成不退(じゅうせいふたい・兵は成って退かない)、饑成不遂(きせいふすい・饑は成って遂げない)。曾我暬御(そうがせつぎょ・かつて我が近侍)、憯憯日瘁(さんさんじっすい・慘慘と日に瘁る)。凡百君子、莫肯用訊(ばくこうようしん・諫を用いるを肯んじない)。聽言則答(ちょうげんそくとう・耳に快い言には答える)、譖言則退(しんげんそくたい)。

哀哉不能言,匪舌是出,維躬是瘁。哿矣能言,巧言如流,俾躬處休!

哀哉不能言(あいさいふのうげん・哀れだ、言えないとは)、匪舌是出(ひぜつぜしゅつ・舌の出ではない)、維躬是瘁(いきゅうぜすい・ただ身が瘁るのだ)。哿矣能言(かいのうげん・言える者はよい)、巧言如流(こうげんにょりゅう・巧言が流れのよう)、俾躬處休(ひきゅうしょきゅう・身を休処せしめる)。

維曰予仕,孔棘且殆。雲不何使,得罪於天子;亦云可使,怨及朋友。

雖曰從仕(すいえつしょうし・仕に従うと言うが)、孔棘且殆(こうきょくしょたい・とても棘しく且つ殆い)。云不可使(うんふかし・使えないと言えば)、得罪于天子(とくざいおてんし)。亦云可使(やくうんかし・使えるとも言えば)、怨及朋友(おんきゅうほうゆう・怨が朋友に及ぶ)。

謂爾遷於王都。曰予未有室家。鼠思泣血,無言不疾。昔爾出居,誰從作爾室?

謂爾遷于王都(いじせんうおうと・あなたに王都に遷れと言う)、曰予未有室家(えつよみゆうしつか・「予には室家がない」と言う)。鼠思泣血(そしきゅうけつ・憂い泣血する)、無言不疾(むげんふしつ・言わない言ないほど疾しい)。昔爾出居(せきじしゅつきょ・昔あなたが出て居った時)、誰從作爾室(すいしょうさくじしつ・誰が従ってあなたの室を作ったか)。

旻天疾威,敷於下土。謀猶回遹,何日斯沮?謀臧不從,不臧覆用。我視謀猶,亦孔之邛。

旻天疾威、敷于下土(ふうげど・下土に敷く)。謀猶回遹(ぼうゆうかいいつ・謀猶が邪僻)、何日斯沮(かじつしそ・いつの日か沮むか)。謀臧不從(ぼうそうふしょう・謀が善ければ従わない)、不臧覆用(ふそうふくよう・善くなければかえって用いる)。我視謀猶(がしぼうゆう)、亦孔之邛(やくこうしきょう・とても病困だ)。

潝潝訿訿,亦孔之哀。謀之其臧,則具是違。謀之不臧,則具是依。我視謀猶,伊於胡厎。

潝潝訿訿(きゅうきゅうしし・附和し诋毁する)、亦孔之哀。謀之其臧(ぼうしきそう)、則具是違(そくぐぜい・皆これに違う)。謀之不臧(ぼうしふそう)、則具是依(そくぐぜい・皆これに依る)。我視謀猶、伊于胡底(いおこてい・どこに至るか)。

我龜既厭,不我告猶。謀夫孔多,是用不集。發言盈庭,誰敢執其咎?如匪行邁謀,是用不得於道。

我龜既厭(がききえん・我が亀はすでに厭きた)、不我告猶(ふがこくゆう・私に猶を告げない)。謀夫孔多(ぼうふこうた・謀る夫はとても多い)、是用不集(ぜようふしゅう・これによって集まらない)。發言盈庭(はつげんえいてい・言を發して庭に盈ちる)、誰敢執其咎(すいかんしゅうききゅう・誰が敢えてその咎を執るか)。如匪行邁謀(にょひこうばいぼう・行かないのに謀るよう)、是用不得于道(ぜようふとくおどう)。

哀哉為猶,匪先民是程,匪大猶是經。維邇言是聽,維邇言是爭。如彼築室於道謀,是用不潰於成。

哀哉為猶(あいさいいゆう・哀れだ、この謀を為すとは)、匪先民是程(ひせんみんぜてい・先民を程としない)、匪大猶是經(ひだいゆうぜけい・大猶を経としない)。維邇言是聽(いじげんぜちょう・近言を聴く)、維邇言是爭(いじげんぜそう)。如彼築室于道謀(にょひちくしつおどうぼう・道で室を築くのを人に謀るよう)、是用不潰于成(ぜようふかいおせい・成に潰えない)。

國雖靡止,或聖或否。民雖靡膴,或哲或謀,或肅或艾。如彼泉流,無淪胥以敗。

國雖靡止(こくすいびし・国は止まる所がないが)、或聖或否(かくせいかくひ)。民雖靡膴(みんすいびこ・民は膴くないが)、或哲或謀(かくてつかくぼう)、或肅或艾(かくしゅくかくがい)。如彼泉流(にょひせんりゅう・あの泉流のように)、無淪胥以敗(むりんしょいはい・相い淪れて敗れるな)。

不敢暴虎,不敢馮河。人知其一,莫知其他。戰戰兢兢,如臨深淵,如履薄冰。

不敢暴虎(ふかんぼうこ・素手で虎を犯さない)、不敢馮河(ふかんひょうが・徒で河を渡らない)。人知其一(じんちきいつ・人はその一を知る)、莫知其他(ばくちきた・他を知る者なし)。戰戰兢兢(せんせんきょうきょう)、如臨深淵(にょりんしんえん)、如履薄冰(にょりはくひょう)。

宛彼鳴鳩,翰飛戾天。我心憂傷,念昔先人。明發不寐,有懷二人。

宛彼鳴鳩(えんぴめいきゅう・小さな鳴鳩)、翰飛戾天(かんひれいてん・高く飛んで天に至る)。我心憂傷、念昔先人(ねんせきせんじん)。明發不寐(めいはつふび・明けても寐ない)、有懷二人(ゆうかいにじん・あの二人を懐う)。

人之齊聖,飲酒溫克。彼昏不知,一醉日富。各敬爾儀,天命不又。

人之齊聖(じんしせいせい・人が斉明聖智なら)、飲酒溫克(いんしゅうんこく・酒を飲んでも温く克つ)。彼昏不知(ひこんふち・あの昏い者は知らない)、壹醉日富(いっすいじつふ・一たび醉えば日に富むと思う)。各敬爾儀(かくけいじぎ・各自あなたの儀を敬え)、天命不又(てんめいふゆう・天命は再び來ない)。

中原有菽,庶民採之。螟蛉有子,蜾蠃負之。教誨爾子,式谷似之。

中原有菽(ちゅうげんゆうしゅく・原野に豆あり)、庶民采之(しょみんさいし)。螟蛉有子(めいれいゆうし・螟蛉に子あり)、蜾蠃負之(からくふし・蜾蠃が負う)。教誨爾子(きょうかいじし・あなたの子を教誨せよ)、式穀似之(しきこくじし・善を以って似せよ)。

題彼脊令,載飛載鳴。我日斯邁,而月斯徵。夙興夜寐,毋忝爾所生。

題彼脊令(ていひせきれい・あの脊令を見よ)、載飛載鳴(さいひさいめい)。我日斯邁(がじつしばい・我は日に邁む)、而月斯征(にげっしせい・あなたは月に征く)。夙興夜寐(しゅくこうやび・夙に興き夜に寐て)、無忝爾所生(むてんじしょせい・あなたを生んだ者を辱めるな)。

交交桑扈,率場啄粟。哀我填寡,宜岸宜獄。握粟出卜,自何能谷?

交交桑扈(こうこうそうこ・交交と鳴く青雀)、率場啄粟(そつじょうたくぞく・場に沿って粟を啄む)。哀我填寡(あいがてんか・我が窮寡を哀れ)、宜岸宜獄(ぎがんぎごく・岸と獄に当たるべきか)。握粟出卜(あくぞくしゅつぼく・粟を握って出て卜す)、自何能穀(じかのうこく・どこから善を得られようか)。

溫溫恭人,如集於木。惴惴小心,如臨於谷。戰戰兢兢,如履薄冰。

溫溫恭人(うんうんきょうじん・温温たる恭の人)、如集于木(にょしゅうおぼく・木に集まる如し)。惴惴小心(ずいずいしょうしん)、如臨于谷(にょりんおこく・谷に臨む如し)。戰戰兢兢、如履薄冰。

弁彼鷽斯,歸飛提提。民莫不穀,我獨於罹。何辜於天?我罪伊何?心之憂矣,雲如之何?

弁彼鸒斯(べんぴよし・飛ぶ鸒)、歸飛提提(きひていてい・帰り飛ぶこと提提として)。民莫不穀(みんばくふこく・民は皆穀くないではない)、我獨于罹(がどくおんり・我は獨り罹に当たる)。何辜于天(かこうてん・天に何の辜か)、我罪伊何(がざいいか・我が罪は何か)。心之憂矣、云如之何(うんにょしか・どうすればよいか)。

踧踧周道,鞫為茂草。我心憂傷,惄焉如搗。假寐永嘆,維憂用老。心之憂矣,疢如疾首。

踧踧周道(てきてきしゅうどう・平坦な大路)、鞫為茂草(きくいぼうそう・窮まりて茂草となる)。我心憂傷、惄焉如擣(てきえんにょとう・惄として擣かれるよう)。假寐永歎(かびえいたん・和衣して寐て長く嘆く)、維憂用老(いゆうようろう・憂いを以って老いる)。心之憂矣、疢如疾首(しんにょしっしゅ・熱病のように頭痛する)。

維桑與梓,必恭敬止。靡瞻匪父,靡依匪母。不屬於毛?不罹於裡?天之生我,我辰安在?

維桑與梓(いそうよし・桑と梓)、必恭敬止(ひっきょうけいし・必ず恭敬せよ)。靡瞻匪父(びせんひふ・瞻るのは父でない者はなく)、靡依匪母(びいひぼ・依るのは母でない者はいない)。不屬于毛(ふぞくおもう・毛に屬さないのか)、不離于里(ふりおうり・裏に離れないのか)。天之生我(てんしせいが・天が我を生んで)、我辰安在(がしんあんざい・我が辰はどこに在るか)。

菀彼柳斯,鳴蜩嘒嘒,有漼者淵,萑葦淠淠。譬彼舟流,不知所屆,心之憂矣,不遑假寐。

菀彼柳斯(うつひりゅうし・菀とした柳)、鳴蜩嘒嘒(めいちょうえいえつ・蝉が嘒嘒と鳴く)。有漼者淵(ゆうさいしゃえん・漼とした淵がある)、萑葦淠淠(かんいひひ)。譬彼舟流(ひひしゅうりゅう・あの舟流に譬えれば)、不知所屆(ふちしょかい・届く所を知らない)。心之憂矣、不遑假寐(ふこうかび・和衣して寐る暇もない)。

鹿斯之奔,維足伎伎。雉之朝雊,尚求其雌。譬彼壞木,疾用無枝。心之憂矣,寧莫之知?

鹿斯之奔(ろくししほん・鹿が奔る)、維足伎伎(いそくきき・足を伎伎と緩める)。雉之朝雊(ちしちょうこう・雉が朝に雊く)、尚求其雌(しょうきゅうきし・なおその雌を求める)。譬彼壞木(ひひかいぼく・あの壊れた木に譬えれば)、疾用無枝(しつようむし・病んで枝がない)。心之憂矣、寧莫之知(ねいばくしち・誰もこれを知らない)。

相彼投兔,尚或先之。行有死人,尚或墐之。君子秉心,維其忍之。心之憂矣,涕既隕之。

相彼投兔(そうひとうと・あの投げ込まれた兔を見よ)、尚或先之(しょうかくせんし・まだ或いはこれを先に放つ)。行有死人(こうゆうしじん・路に死人があれば)、尚或墐之(しょうかくきんし・まだ或いはこれを墐ぐ)。君子秉心(くんしへいしん・君子が心を秉る)、維其忍之(いきにんし・こんなに忍い)。心之憂矣、涕既隕之(ていきいんし・涕は既に隕れる)。

君子信讒,如或酬之。君子不惠,不舒究之。伐木掎矣,析薪扡矣。舍彼有罪,予之佗矣。

君子信讒(くんししんざん・君子は讒を信じ)、如或醻之(にょかくしゅうし・或いは之を醻する如し)。君子不惠(くんしふけい・君子は惠まない)、不舒究之(ふじょきゅうし・舒徐に之を究めない)。伐木掎矣(ばつぼくきい・木を伐るには掎げ)、析薪杝矣(せきしんいい・薪を析るには杝う)。舍彼有罪(しゃひゆうざい・有罪を舍てて)、予之佗矣(よしいたい・我に佗す・罪を加える)。

莫高匪山,莫浚匪泉。君子無易由言,耳屬於垣。無逝我梁,無發我笱。我躬不閱,遑恤我後。

莫高匪山(ぼうこうひざん・高くない山はなく)、莫浚匪泉(ぼくしゅんひせん・浚くない泉はない)。君子無易由言(くんしむえきゆうげん・君子は由りて言を易くするな)、耳屬于垣(じぞくおえん・耳が垣に屬している)。無逝我梁(むせいがりょう・我が梁に逝くな)、無發我笱(むはつがこう)。我躬不閱(がきゅうふえつ・我が身はまだ閱とされない)、遑恤我後(こうじゅつがこう・我が後を恤える暇があろうか)。

悠悠昊天,曰父母且。無罪無辜,亂如此幠。昊天已威,予慎無罪。昊天大幠,予慎無辜。

悠悠昊天(ゆうゆうこうてん)、曰父母且(えつふぼしょ・父母と曰う)。無罪無辜(むざいむこ)、亂如此幠(らんにょじょこ・乱がこれほど幠い)。昊天已威(こうてんいい・昊天はすでに威した)、予慎無罪(よしんむざい・我は慎んで罪がない)。昊天大幠(こうてんたいこ・昊天は大きく幠い)、予慎無辜(よしんむこ)。

亂之初生,僭始既涵。亂之又生,君子信讒。君子如怒,亂庶遄沮。君子如祉,亂庶遄已。

亂之初生(らんししょせい・乱の始めて生ずる)、僭始既涵(せんしきかん・僭が始めて涵される)。亂之又生(らんしゆうせい)、君子信讒。君子如怒(くんしにょど・君子が怒れば)、亂庶遄沮(らんしょせんそ・乱は庶い遄く沮む)。君子如祉(くんしにょし・祉を賜えば)、亂庶遄已(らんしょせんい・已む)。

君子屢盟,亂是用長。君子信盜,亂是用暴。盜言孔甘,亂是用餤。匪其止共,維王之邛。

君子屢盟(くんしるめい・屢々盟すれば)、亂是用長(らんぜようちょう・乱はこれによって長ず)。君子信盜(くんししんとう・君子は盜を信じ)、亂是用暴(らんぜようぼう)。盜言孔甘(とうげんこうかん・盜の言はとても甘い)、亂是用餤(らんぜようだん・乱はこれによって餤む)。匪其止共(ひきしきょう・其の止共ではない・供職恭敬ではない)、維王之邛(いおうしきょう・ただ王の邛・病い)。

奕奕寢廟,君子作之。秩秩大猷,聖人莫之。他人有心,予忖度之。躍躍毚兔,遇犬獲之。

奕奕寢廟(えきえきしんびょう・奕奕たる寝廟)、君子作之(くんしさくし)。秩秩大猷(ちつちつだいゆう・秩秩たる大猷)、聖人莫之(せいじんばくし・聖人が之を奠める)。他人有心(たじんゆうしん・他人に心あれば)、予忖度之(よそんたくし・我は之を忖度する)。躍躍毚兔(やくやくせんと・躍躍たる狡兔)、遇犬獲之(ぐうけんかくし・犬に遇えば獲られる)。

荏染柔木,君子樹之。往來行言,心焉數之。蛇蛇碩言,出自口矣。巧言如簧,顏之厚矣。

荏染柔木(じんぜんじゅうぼく・荏染たる柔木)、君子樹之(くんしじゅし)。往來行言(おうらいこうげん・往來する行言・流言)、心焉數之(しんえんそうし・心で之を数える)。蛇蛇碩言(だだせきげん・蛇蛇たる碩言・浅薄な大言)、出自口矣(しゅつじこうい)。巧言如簧(こうげんにょこう・巧言が簧の如し)、顏之厚矣(がんしこうい・顔の厚いこと)。

彼何人斯?居河之麋。無拳無勇,職為亂階。既微且尰,爾勇伊何?為猶將多,爾居徒幾何?

彼何人斯(ひかじんし・あれは何人か)、居河之麋(きょかしび・河の麋に居る)。無拳無勇(むけんむゆう・拳なく勇なく)、職為亂階(しょくいらんかい・ただ乱の階を為す)。既微且尰(きびしょしょう・既に微れ且つ尰す・腿が爛れ足が腫れる)、爾勇伊何(じゆういか・あなたの勇は何か)。為猶將多(いゆうしょうた・猶を為すこと將に多し)、爾居徒幾何(じきょといきか・あなたの徒はいくらか)。

彼何人斯?其心孔艱。胡逝我梁,不入我門?伊誰雲從?維暴之雲。

彼何人斯、其心孔艱(きしんこうけん・その心はとても艱しい)。胡逝我梁(こせいがりょう・どうして我が梁に逝く)、不入我門(ふにゅうがもん)。伊誰云從(いすいうんしょう・誰に従うか)、維暴之云(いぼうしうん・暴公と云う)。

二人從行,誰為此禍?胡逝我梁,不入唁我?始者不如今,雲不我可

二人從行(にじんじゅうこう・二人が従って行く)、誰為此禍(すいいしか・誰がこの禍を為したか)。胡逝我梁、不入唁我(ふにゅうげんが・入って我を唁わない)。始者不如今(ししゃふにょこん・初めは今に如かず)、云不我可(うんふがか・「我を可としない」と言う)。

彼何人斯?胡逝我陳?我聞其聲,不見其身。不愧於人?不畏於天?

彼何人斯、胡逝我陳(こせいがちん・どうして我が陳・庭の道に逝く)。我聞其聲(がぶんきせい・其の声を聞く)、不見其身(ふけんきしん)。不愧于人(ふきおじん・人に愧じないか)、不畏于天(ふいおてん・天を畏れないか)。

彼何人斯?其為飄風。胡不自北?胡不自南?胡逝我梁?絺攪我心。

彼何人斯、其為飄風(きいひょうふう・其は飄風の如し)。胡不自北(こふじほく・どうして北から来ない)、胡不自南(こふじなん)。胡逝我梁、祇攪我心(しきょうがしん・ただ我が心を攪す)。

爾之安行,亦不遑舍。爾之亟行,遑脂爾車。一者之來,云何其盱。

爾之安行(じしあんこう・あなたが安く行けば)、亦不遑舍(やくふこうしゃ・舍る暇もない)。爾之亟行(じしきっこう・あなたが亟く行けば)、遑脂爾車(こうしじしゃ・車に脂する暇がある)。壹者之來(いっしゃしらい・一度の來る)、云何其盱(うんいきく・どうしてこんなに盱・憂えるか)。

爾還而入,我心易也。還而不入,否難知也。一者之來,俾我絺也。

爾還而入(じかんににゅう・あなたが還って入れば)、我心易也(がしんえきや・心は易る)。還而不入(かんにふにゅう)、否難知也(ひなんちや・難く知られない)。壹者之來、俾我祇也(ひがぎや・我を祇らせる・病ませる)。

伯氏吹壎,仲氏吹篪。及爾如貫,諒不我鄭出此三物,以詛爾斯。

伯氏吹壎(はくしすいけん・伯氏が壎を吹き)、仲氏吹篪(ちゅうしすいち・仲氏が篪を吹く)。及爾如貫(きゅうじにょかん・あなたと貫の如し・同じ縄に貫かれた如し)、諒不我知(りょうふがち・諒に我を知らないか。(底本の「諒不我鄭出此三物」は脱文の疑いあり、今「諒不我知。出此三物」に基づいて訳す)出此三物(しゅつしさんぶつ・この三物を出し)、以詛爾斯(いそじし・あなたを詛する)。

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