国風
曾是在位?曾是在服?天降滔德,女興是力。
曾是在位(そうぜざいい)、曾是在服(そうぜざいふく・服・職)。天降滔德(てんこうとうとく・天は滔德・慢德を降す)、女興是力(じょこうぜりょく・女は興りて是の力を用いる)。
文王曰諮,諮女殷商。而秉義類,彊禦多懟。
文王曰咨、咨女殷商。而秉義類(にへいぎるい・而も義類・善類を秉るに)、彊禦多懟(きょうぎょたたい・彊禦は多く懟・怨む)。流言以對(りゅうげんいつい・流言を以って對・答える)、寇攘式內(こうじょうしきない・寇攘は式に內・内部に)。
流言以對。寇攘式內。侯作侯祝,靡屆靡究。
侯作侯祝(こうさくこうしゅく・侯に作り侯に祝・詛祝する)、靡屆靡究(びかいびきゅう・屆・極なく究なく・窮極なし)。
文王曰諮,諮女殷商。女炰烋於中國。斂怨以為德。
文王曰咨、咨女殷商。女炰烋于中國(じょほうきゅうおちゅうこく・女は中國に炰烋・咆哮す)。斂怨以為德(れんえんいいとく・怨を斂めて以って德と為す)。
不明爾德,時無背無側。爾德不明,以無陪無卿。
不明爾德(ふめいじとく・爾の德を明らかにせず)、時無背無側(じむはいむそく・時に背なく側なく・後援も側面もなし)。爾德不明(じとくふめい)、以無陪無卿(いむばいむけい・陪臣なく卿なし)。
文王曰諮,諮女殷商。天不湎爾以酒,不義從式。
文王曰咨、咨女殷商。天不湎爾以酒(てんふべんじいしゅ・天は爾を酒に湎・耽らせない)、不義從式(ふぎじゅうしき・不義なのに從って式・法とす)。既愆爾止(きけんじし・既に爾の止・容儀に愆り)。
既衍爾止。靡明靡晦。式號式呼。俾晝作夜。
靡明靡晦(びめいびかい・明なく晦なく)、式號式呼(しきごうしきこ・式に號し式に呼ぶ)。俾晝作夜(ひちゅうさくや・晝を夜と作・為さしめる)。
文王曰諮,諮女殷商。如蜩如螗,如沸如羹。
文王曰咨、咨女殷商。如蜩如螗(にょちょうにょとう・蜩の如く螗の如く)、如沸如羹(にょふつにょこう・沸く如く羹の如く)。
小大近喪,人尚乎由行。內奰於中國,覃及鬼方。
小大近喪(しょうだいきんそう・小も大も喪に近し)、人尚乎由行(じんしょうこゆうこう・人は尚ほ乎れ由行・其の道を行く)。內奰于中國(ないひおちゅうこく・內は中國に奰・怒る)、覃及鬼方(たんきゅうきほう・覃・延びて鬼方に及ぶ)。
文王曰諮,諮女殷商。匪上帝不時,殷不用舊。
文王曰咨、咨女殷商。匪上帝不時(ひじょうていふじ・上帝が時・善くないのではない)、殷不用舊(いんふようきゅう・殷が舊・舊典を用いないのだ)。
雖無老成人,尚有典刑。曾是莫聽,大命以傾。
雖無老成人(すいむろうせいじん・老成人なしといえども)、尚有典刑(しょうゆうてんけい・尚お典刑・典範刑法あり)。曾是莫聽(そうぜばくちょう・曾て是れ聽くこと莫し)、大命以傾(だいめいいけい・大命は以って傾く)。
文王曰諮,諮女殷商。人亦有言:顛沛之揭,
文王曰咨、咨女殷商。人亦有言(じんやくゆうげん・人も亦た言あり)。顛沛之揭(てんぱいしかつ・顛沛・倒れた木の揭・根を揭げ起こす)、
枝葉未有害,本實先撥。殷鑑不遠,在夏後之世。
枝葉未有害(しようみゆうがい・枝葉は未だ害有らず)、本實先撥(ほんじつせんばつ・本實・根本は先に撥・拔かれた)。殷鑒不遠(いんかんふえん・殷の鑒は遠からず)、在夏后之世(ざいかこうしせい・夏后の世に在る)。
抑抑威儀,維德之隅。人亦有言:靡哲不愚,庶人之愚,亦職維疾。
抑抑威儀(よくよくいぎ・抑抑たる威儀)、維德之隅(いとくしぐう・德の隅・廉隅)。人亦有言、靡哲不愚(びてつふぐ・哲人なきに愚なし・哲人でも愚なり)。庶人之愚(しょじんしぐ・庶人の愚は)、亦職維疾(やくしょくいしつ・亦た職・分上の疾・病のみ)。
哲人之愚,亦維斯戾。無競維人,四方其訓之。有覺德行,四國順之。
哲人之愚(てつじんしぐ・哲人の愚は)、亦維斯戾(やくいしれい・亦た維に斯の戾・乖戾のみ)。無競維人(むきょういじん・人に競・比ぶるなし・人材が無比)、四方其訓之(しほうきくんし・四方は其れ之を訓・教訓とする)。有覺德行(ゆうかくとくこう・覺たる德行あり)、四國順之(しこくじゅんし・四國は之に順う)。
訏謨定命,遠猶辰告。敬慎威儀,維民之則。其在於今,興迷亂於政。
訏謨定命(こぼうじょうめい・訏謨・大謀は命を定め)、遠猶辰告(えんゆうしんこく・遠猶は辰・時に告ぐ)。敬慎威儀(けいしんいぎ)、維民之則(いみんしそく・民の則)。其在于今(きざいおこん・其れ今に於いては)、興迷亂于政(こうめいらんおせい・興りて政に迷亂す)。
顛覆厥德,荒湛於酒。女雖湛樂從,弗念厥紹。罔敷求先王,克共明刑。
顛覆厥德(てんぷくけっとく・厥の德を顛覆し)、荒湛于酒(こうたんおしゅ・酒に荒湛・沉溺す)。女雖湛樂從(じょすいたんらくじゅう・女は湛樂に從うといえども)、弗念厥紹(ふねんけっしょう・厥の紹・繼承を念わない)。罔敷求先王(もうふきゅうせんおう・敷・廣く先王を求めず)、克共明刑(こくきょうめいけい・能く明刑・明らかな刑罰を共・執る)。
四皇天弗尚,如彼泉流,無淪胥以亡。夙興夜寐,灑掃庭內,維民之章。
肆皇天弗尚(しこうてんふつしょう・皇天は尚・佑けず・「四皇」は「肆皇」の誤字)、如彼泉流(にょひせんりゅう・彼の泉流の如く)、無淪胥以亡(むりんしょいぼう・相い淪れて亡ぶるな)。夙興夜寐(しゅくこうやび・夙に興き夜に寐て)、洒掃庭內(せんそうていない・庭內を洒掃せよ)、維民之章(いみんししょう・民の章・表)。
修爾車馬,弓矢戎兵,用戒戎作,用逷蠻方。質爾人民,謹爾侯度,用戒不虞。
修爾車馬(しゅうじしゃば・爾の車馬を修め)、弓矢戎兵(きゅうしじゅうへい・弓矢戎兵・兵器)、用戒戎作(ようかいじゅうさく・用いて戎作・兵事の興るに戒め)、用逖蠻方(ようてきばんぽう・用いて蠻方を逖・遠く御ぐ)。質爾人民(しつじじんみん・爾の人民を質・正し)、謹爾侯度(きんじこうど・爾の侯度・為侯の法度を謹み)、用戒不虞(ようかいふぐ・不虞・意外に戒むるに用いよ)。
慎爾出話,敬爾威儀,無不柔嘉。白圭之玷,尚可磨也;斯言之玷,不可為也!
慎爾出話(しんじしゅつわ・爾の出す話を慎め)、敬爾威儀(けいじいぎ・爾の威儀を敬め)、無不柔嘉(むふじゅうか・柔嘉・和らかに嘉くないことなし)。白圭之玷(はくけいしてん・白圭の玷・瑕)、尚可磨也(しょうかまや・尚お磨ける)、斯言之玷(しげんしてん・斯の言の玷は)、不可為也(ふかいや・為すべからず・補えない)。
無易由言,無曰苟矣,莫捫朕舌,言不可逝矣。無言不讎,無德不報。
無易由言(むえきゆうげん・由りて言を易・軽くするな)、無曰苟矣(むえつこうい・苟と曰うな・苟簡だと曰うな)。莫捫朕舌(ばくもんちんぜつ・朕の舌を捫・按える者なし)、言不可逝矣(げんふかせいい・言は逝・去らせられない)。無言不讎(むげんふしゅう・言に讎・酬答せざるなし)、無德不報(むとくふほう・德に報いざるなし)。
惠於朋友,庶民小子。子孫繩繩,萬民靡不承。視爾友君子,輯柔爾顏,不遐有愆。
惠于朋友(けいおほうゆう・朋友に惠み)、庶民小子(しょみんしょうし・庶民小子に及ぶ)。子孫繩繩(しそんじょうじょう・子孫は繩繩と慎み)、萬民靡不承(ばんみんびふしょう・萬民は承・受けざるなし)。視爾友君子(しじゆうくんし・爾が君子を友するを視れば)、輯柔爾顏(しゅうじゅうじがん・爾の顏を輯柔・和柔せよ)、不遐有愆(ふかゆうけん・遐・何ぞ愆・過失あらん)。
相在爾室,尚不愧於屋漏。無曰不顯,莫予雲覯。神之格思,不可度思,矧可射思!
相在爾室(しょうざいじしつ・爾が室に在るを相・視るに)、尚不愧于屋漏(しょうふきおうろう・尚お屋漏・室の西北隅・神に愧じない)。無曰不顯(むえつふけん・顯でないと曰うな)、莫予云覿(ばくようんてき・予を覿・見る者がないと云うな)。神之格思(しんしかくし・神の格・至るや)、不可度思(ふかたくし・度・測るべからず)、矧可射思(しんかしゃくし・況んや射・厭くべきや)。
闢爾為德,俾臧俾嘉。淑慎爾止,不愆於儀。不僭不賊,鮮不為則。投我以桃,報之以李。
辟爾為德(へきじいとく・爾の為す德を辟・修明せよ)、俾臧俾嘉(ひそうひか・臧・善くし嘉くせよ)。淑慎爾止(しゅくしんじし・淑・善く爾の止・容を慎み)、不愆于儀(ふけんおぎ・儀に愆らない)。不僭不賊(ふせんふぞく・僭・越えず賊・害せず)、鮮不為則(せんふいそく・則と為らざる鮮なし)。投我以桃(とうがいとう・我に桃を投げれば)、報之以李(ほうしいり・李を以って之に報いる)。
彼童而角,實虹小子。荏染柔木,言緡之絲。溫溫恭人,維德之基。
彼童而角(ひどうにかく・彼の童・角なき羊が角あるかの如し)、實虹小子(じつこうしょうし・實に小子を虹・惑亂す)。荏染柔木(じんぜんじゅうぼく・荏染たる柔木)、言緡之絲(げんみんしし・之に絲を緡・弦を張る)。溫溫恭人(うんうんきょうじん・溫溫たる恭人)、維德之基(いとくしき・德の基)。
其維哲人,告之話言,順德之行。其維愚人,覆謂我僭。民各有心。
其維哲人(きいてつじん・其れ哲人ならば)、告之話言(こくしわげん・之に話言・善い言を告げれば)、順德之行(じゅんとくしこう・德の行に順う)。其維愚人(きいぐじん・其れ愚人ならば)、覆謂我僭(ふくいがせん・覆って我を僭・越えたと謂う)。民各有心(みんかくゆうしん・民は各おの心有り)。
於乎小子,未知臧否。匪手攜之,言示之事。匪面命之,言提其耳。
於乎小子(おこしょうし・嗚呼小子)、未知臧否(みちぞうひ・臧否・善悪を知らず)。匪手攜之(ひしゅけいし・手を以って之を攜えるのみならず)、言示之事(げんじしじ・事を之に示す)。匪面命之(ひめんめいし・面して之に命ずるのみならず)、言提其耳(げんていきじ・其の耳を提・引く)。
借曰未知,亦既抱子。民之靡盈,誰夙知而莫成?昊天孔昭,我生靡樂。
借曰未知(しゃくえつみち・假に未だ知らないと曰いても)、亦既抱子(やくきほうし・既に子を抱く・已に子を抱く年齢)。民之靡盈(みんしびえい・民は盈・満ちない・足りない)、誰夙知而莫成(すいしゅくちにぼくせい・誰か夙・早く知りて莫・晚く成る者あらん)。昊天孔昭(こうてんこうしょう・昊天は孔く昭・明らか)、我生靡樂(がせいびらく・我が生は樂なし)。
視爾夢夢,我心慘慘。誨爾諄諄,聽我藐藐。匪用為教,覆用為虐。
視爾夢夢(しじぼうぼう・爾を視るに夢夢として昏昧)、我心慘慘(がしんさんさん)。誨爾諄諄(かいじしゅんしゅん・爾を誨えること諄諄)、聽我藐藐(ちょうがばくばく・我を聽くこと藐藐として)。匪用為教(ふよういきょう・用いて教と為さず)、覆用為虐(ふくよういぎゃく・覆って用いて虐・戲虐と為す)。
借曰未知,亦聿既耄。於乎,小子,告爾舊止。聽用我謀,庶無大悔。
借曰未知、亦聿既耄(やくいちきぼう・亦た聿に既に耄・老いた)。於乎小子、告爾舊止(こくじきゅうし・爾に舊止・舊き儀容を告ぐ)。聽用我謀(ちょうようがぼう・我が謀を聽用せば)、庶無大悔(しょむだいかい・庶幾く大悔なし)。
天方艱難,曰喪厥國。取譬不遠,昊天不忒。回遹其德,俾民大棘。
天方艱難(てんぽうかんなん・天は方に艱難)、曰喪厥國(えつそうけっこく・厥の國を喪わんと曰う)。取譬不遠(しゅひふえん・譬を取るに遠からず)、昊天不忒(こうてんふとく・昊天は忒・差失しない)。回遹其德(かいいつきとく・其の德を回遹・邪僻せしめ)、俾民大棘(ひみんだいきょく・民を大いに棘・急困せしめる)。
菀彼桑柔,其下侯旬,捋采其劉,瘼此下民。不殄心憂,倉兄填兮。倬彼昊天,寧不我矜?
菀彼桑柔(うつひそうじゅう・菀たる桑柔)、其下侯旬(きかこうじゅん・其の下は侯に旬・均しく覆う)。捋采其劉(りつさいきりゅう・捋采して其れ劉・稀疏となる)、瘼此下民(ばくしげみん・此の下民を瘼・病ましむ)。不殄心憂(ふてんしんゆう・心憂は殄・絶えない)、倉兄填兮(そうきょうてんけい・倉兄・喪亡の気が填・充ちる)。倬彼昊天(たくひこうてん・倬たる昊天)、寧不我矜(ねいふがきょう・寧ろ我を矜・憐れまざるか)。
四牡騤騤,旟旐有翩。亂生不夷,靡國不泯。民靡有黎,具禍以燼。於乎有哀,國步斯頻。
四牡騤騤(しぼきき・四牡は騤騤と)、旟旐有翩(よちょうゆうへん・旟旐は翩として)。亂生不夷(らんせいふい・亂が生じて夷・平らがない)、靡國不泯(びこくふびん・國に泯・亂ならざるなし)。民靡有黎(みんびゆうれい・民に黎・多きなく)、具禍以燼(ぐかいしん・具に禍を以って燼・灰燼となる)。於乎有哀(おこゆうあい・嗚呼哀れあり)、國步斯頻(こくほしひん・國步は斯に頻・危急)。
國步滅資,天不我將。靡所止疑,雲徂何往?君子實維,秉心無競。誰生厲階,至今為梗?
國步篾資(こくほべつし・國步は資を蔑・無くす)、天不我將(てんふがしょう・天は我を將・扶助しない)。靡所止疑(びしょしぎ・止まる所疑・定まるなし)、云徂何往(うんそかおう・徂・往きて何に往かん)。君子實維(くんしじつい・君子は實に維・思惟す)、秉心無競(へいしんむきょう・心を秉って競なし)。誰生厲階(すいせいれいかい・誰が厲階・禍の階を生じたか)、至今為梗(しこんいこう・今に至りて梗・梗塞と為す)。
憂心殷殷,念我土宇。我生不辰,逢天僤怒。自西徂東,靡所定處。多我覯痻,孔棘我圉。
憂心慇慇(ゆうしんいんいん・慇慇と憂える)、念我土宇(ねんがとう・我が土宇を念う)。我生不辰(がせいふしん・我が生は辰・時に遭わない)、逢天僤怒(ほうてんだんど・天の僤怒・大きな怒に逢う)。自西徂東(じせいそとう)、靡所定處(びしょていしょ・定まる處なし)。多我覯痻(たがこうびん・多く我は痻・病苦に覯う)、孔棘我圉(こうきょくがぎょ・孔く我が圉・邊疆を棘・急す)。
為謀為毖,亂況斯削。告爾憂恤,誨爾序爵。誰能執熱,逝不以濯?其何能淑,載胥及溺。
為謀為毖(いぼういひつ・謀を為し毖・慎み)、亂況斯削(らんきょうしさく・亂の況・情況は斯に削・減る)。告爾憂恤(こくじゆうじゅつ・爾に憂恤を告げ)、誨爾序爵(かいじじょしゃく・爾に序爵・爵を序ずを誨える)。誰能執熱(すいのうしゅうねつ・誰か能く熱を執りて)、逝不以濯(せいふいたく・逝きて濯・水で濯がざらん)。其何能淑(きかのうしゅく・其れ何ぞ能く淑・善くせん)、載胥及溺(さいしょきゅうでき・載に胥・相い及びて溺る)。
如彼溯風,亦孔之僾。民有肅心,荓雲不逮。好是稼穡,力民代食。稼穡維寶,代食維好?
如彼溯風(にょひそくふう・彼の溯風・逆風の如し)、亦孔之僾(やくこうしあい・亦た孔の僾・窒息す)。民有肅心(みんゆうしゅくしん・民は肅心あり)、荓云不逮(へいうんふたい・荓・使に逮・及ばないと云う)。好是稼穡(こうぜかしょく・是の稼穡を好み)、力民代食(りきみんだいしょく・力む民が代わって食・代食する)。稼穡維寶(かしょくいほう・稼穡は維に寶)、代食維好(だいしょくいこう・代食は維に好・好ましい)。
天降喪亂,滅我立王。降此蟊賊,稼穡卒癢。哀恫中國,具贅卒荒。靡有旅力,以念穹蒼。
天降喪亂(てんこうそうらん・天は喪亂を降し)、滅我立王(めつがりつおう・我が立てた王を滅す)。降此蟊賊(こうしぼうぞく・此の蟊賊を降し)、稼穡卒痒(かしょくそつよう・稼穡は卒に痒・病む)。哀恫中國(あいどうちゅうこく・中國を哀恫・痛み哀れむ)、具贅卒荒(ぐせいそつこう・具に贅・連りて卒に荒れる)。靡有旅力(びゆうりょりょく・旅力・体力あるなし)、以念穹蒼(いねんきゅうそう・穹蒼を念るに以ってす)。
維此惠君,民人所瞻。秉心宣猶,考慎其相。維彼不順,自獨俾臧。自有肺腸,俾民卒狂。
維此惠君(いしけいくん・此の惠・順惠なる君)、民人所瞻(みんじんしょせん・民人の瞻る所)。秉心宣猶(へいしんせんゆう・心を秉りて猶を宣・明らかにし)、考慎其相(こうしんきそう・其の相を考え慎む)。維彼不順(いひふじゅん・彼の順わざるは)、自獨俾臧(じどくひそう・自ら獨り俾・己を臧・善とせしむ)。自有肺腸(じゆうはいちょう・自ら肺腸あり・私心あり)、俾民卒狂(ひみんそつきょう・民を卒に狂わしむ)。
瞻彼中林,甡甡其鹿。朋友已譖,不胥以谷。人亦有言:進退維谷。
瞻彼中林(せんぴちゅうりん・彼の中林を瞻る)、甡甡其鹿(しんしんきろく・甡甡として其の鹿・多い)。朋友已譖(ほうゆういしん・朋友は已に譖・譖る)、不胥以穀(ふしょいこく・胥・相いに以って穀・善くせず)。人亦有言(じんやくゆうげん)、進退維谷(しんたいいこく・進退は維に谷・窮谷に陥る)。
維此聖人,瞻言百里。維彼愚人,覆狂以喜。匪言不能,胡斯畏忌?
維此聖人(いしせいじん・此の聖人は)、瞻言百里(せんげんひゃくり・瞻言して百里を見る)。維彼愚人(いひぐじん・彼の愚人は)、覆狂以喜(ふくきょういき・覆って狂して以って喜ぶ)。匪言不能(ひげんふのう・言えないのではない)、胡斯畏忌(こしいき・何ぞ斯に畏忌するか)。
維此良人,弗求弗迪。維彼忍心,是顧是復。民之貪亂,寧為荼毒。
維此良人(いしりょうじん・此の良人は)、弗求弗迪(ふきゅうふてき・求めず迪・進めない)。維彼忍心(いひにんしん・彼の忍心は)、是顧是復(ぜこぜふく・顧戀し反覆する)。民之貪亂(みんしたんらん・民は亂を貪る)、寧為荼毒(ねいいとどく・寧ろ荼毒を為す)。
大風有隧,有空大谷。維此良人,作為式谷。維彼不順,徵以中垢。
大風有隧(たいふうゆうすい・大風には隧・來路あり)、有空大谷(ゆうこうだいこく・空なる大谷あり)。維此良人、作為式穀(さくいしきこく・作為は式に穀・善くす)。維彼不順、征以中垢(せいいちゅうこう・征・行くこと中垢・垢中に)。
大風有隧,貪人敗類。聽言則對,誦言如醉。匪用其良,復俾我悖。
大風有隧、貪人敗類(たんじんはいるい・貪人は類を敗る)。聽言則對(ちょうげんそくつい・聽言・耳に快い言には對・答える)、誦言如醉(しょうげんにょすい・誦言・諫言には醉うが如し)。匪用其良(ふようきりょう・其の良人を用いず)、覆俾我悖(ふくひがぼつ・覆って我を悖・亂せしむ)。
嗟爾朋友,予豈不知而作。如彼飛蟲,時亦弋獲。既之陰女,反予來赫。
嗟爾朋友(さじほうゆう・嗟あなたがた朋友よ)、予豈不知而作(よきふちにさく・予は何ぞ知らずして作・為さんや・知らないで為すのではない)。如彼飛蟲(にょひひちゅう・彼の飛蟲の如く)、時亦弋獲(じやくよくかく・時に亦た弋・射獲される)。既之陰女(きしいんじょ・既に之を陰・蔭うが・蔭ってあなたがたを護れば)、反予來赫(はんよらいかく・反って予に來り赫・威嚇す)。
民之罔極,職涼善背。為民不利,如雲不克。民之回遹,職競用力。
民之罔極(みんしもうきょく・民は罔極・極なし)、職涼善背(しょくりょうぜんはい・職・ただ涼・刻薄して背を善くす)。為民不利(いみんふり・民に不利を為す)、如云不克(にょうんふこく・云う如く克・勝たないかの如く・勝ち切らんとする)。民之回遹(みんしかいいつ・民は回遹・邪僻)、職競用力(しょくきょうようりょく・ただ競って力を用いる)。
民之未戾,職盜為寇。涼曰不可,覆背善詈。雖曰匪予,既作爾歌!
民之未戾(みんしみれい・民は未だ戾・定まらない)、職盜為寇(しょくとういこう・ただ盜・寇を為す)。涼曰不可(りょうえつふか・涼・懇めて不可と曰えば)、覆背善詈(ふくはいぜんり・覆って背に詈・罵るを善くす)。雖曰匪予(すいえつひよ・予に匪・向けたものではないと曰うといえども)、既作爾歌(きさくじか・既に爾の歌を作・あなたがたのためにこの歌を作った)。
倬彼雲漢,昭回於天。王曰:於乎!何辜今之人?天降喪亂,饑饉薦臻。
倬彼雲漢(たくひうんかん・倬たる雲漢)、昭回于天(しょうかいおてん・昭・明るく天に回・巡る)。王曰於乎(おうえつおこ・王が於乎・嗚呼と曰う)、何辜今之人(かここんしじん・今之人は何の辜・罪か)。天降喪亂(てんこうそうらん)、饑饉薦臻(ききんせんしん・饑饉は薦・屢々臻・至る)。
靡神不舉,靡愛斯牲。圭壁既卒,寧莫我聽?
靡神不舉(びしんふきょ・神に舉・祭らないはなく)、靡愛斯牲(びあいしせい・斯の牲・犧牲を愛・惜しまない)。圭璧既卒(けいへききそつ・圭璧は既に卒・尽きた)、寧莫我聽(ねいばくがちょう・寧ろ我を聽くこと莫きか)。
旱既大甚,蘊隆蟲蟲。不殄禋祀,自郊徂宮。上下奠瘞,靡神不宗。
旱既大甚(かんきたいじん・旱は既に大きく甚し)、蘊隆蟲蟲(うんりゅうちゅうちゅう・蘊隆として蟲蟲・熱氣が盛ん)。不殄禋祀(ふてんいんし・禋祀を殄・絶やさず)、自郊徂宮(じこうそきゅう・郊より宮に徂く)。上下奠瘞(じょうげでんえい・上に奠め下に瘞・埋め)、靡神不宗(びしんふそう・宗・尊ぶ神なし)。
后稷不克,上帝不臨。耗斁下土,寧丁我梗
后稷不克(こうしょくふこく・后稷も克・能くせず)、上帝不臨(じょうていふりん・上帝は臨まない)。耗斁下土(こうえきげど・下土を耗斁・損耗敗壊し)、寧丁我躬(ねいていがきゅう・寧ろ我が躬に丁・當るか・底本の此の句は脱文の疑いあり)。
旱既大甚,則不可推。兢兢業業,如霆如雷。周餘黎民,靡有孑遺。
旱既大甚、則不可推(そくふかすい・則ち推・退けるべからず)。兢兢業業(きょうきょうぎょうぎょう・兢兢業業として)、如霆如雷(にょていにょらい)。周餘黎民(しゅうよれいみん・周に餘る黎民)、靡有孑遺(びゆうけつい・孑遺・一つ殘る者もない)。
昊天上帝,則不我遺。胡不相畏?先祖於摧。
昊天上帝(こうてんじょうてい)、則不我遺(そくふがい・則ち我を遺・遺さない)。胡不相畏(こふそうい・何ぞ相い畏れざる)、先祖于摧(せんそおさい・先祖は于に摧・挫折する)。
旱既大甚,則不可沮。赫赫炎炎,雲我無所。大命近止,靡瞻靡顧。
旱既大甚、則不可沮(そくふかそ・沮・止めるべからず)。赫赫炎炎(かっかくえんえん・赫赫炎炎と)、云我無所(うんがむしょ・我に處所なしと云う)。大命近止(たいめいきんし・大命は近く止まる)、靡瞻靡顧(びせんびこ・瞻なく顧ない)。
群公先正,則不我助。父母先祖,胡寧忍予?
群公先正(ぐんこうせんせい・群公先正・先代の正卿)、則不我助(そくふがじょ・則ち我を助けない)。父母先祖(ふぼせんそ)、胡寧忍予(こねいにんよ・何ぞ寧ろ予を忍ばせるか・どうして寧ろ予に忍いか)。
旱既大甚,滌滌山川。旱魃為虐,如惔如焚。我心憚暑,憂心如燻。
旱既大甚、滌滌山川(てきてきさんせん・滌滌として山川は乾く)。旱魃為虐(かんばついぎゃく・旱魃が虐を為す)、如惔如焚(にょだんにょふん・惔・燃える如く焚く如し)。我心憚暑(がしんたんしょ・我が心は暑を憚・懼れる)、憂心如熏(ゆうしんにょくん・熏・燻るが如し)。
群公先正,則不我聞。昊天上帝,寧俾我遁?
群公先正、則不我聞(そくふがぶん・則ち我を聞かない)。昊天上帝、寧俾我遁(ねいひがとん・寧ろ我を俾・遁・逃げさせるか)。
旱既大甚,黽勉畏去。胡寧瘨我以旱?憯不知其故。祈年孔夙,方社不莫。
旱既大甚、黽勉畏去(びんべんいきょ・黽勉して畏れて去る・畏れて去らんと勤勉す)。胡寧瘨我以旱(こねいてんがいかん・何ぞ寧ろ旱を以って我を瘨・病ませるか)。憯不知其故(さんふちきこ・憯・曾て其の故を知らない)。祈年孔夙(きねんこうしゅく・年を祈ること孔く夙・早かった)、方社不莫(ほうしゃふぼ・方・四方と社を祭ること莫・遲くなかった)。
昊天上帝,則不我虞。
昊天上帝、則不我虞(そくふがぐ・則ち我を虞・度らない)。
敬恭明神,宜無悔怒。旱既大甚,散無友紀。鞫哉庶正,疚哉冢宰。
敬恭明神(けいきょうめいしん・明神を敬恭す)、宜無悔怒(ぎむかいど・宜しく悔怒なかるべし)。旱既大甚、散無友紀(さんむゆうき・散亂して友紀・綱紀なし)。鞫哉庶正(きくさいしょせい・鞫・窮まるなり庶正・衆官の長)、疚哉冢宰(きゅうさいちょうさい・疚・病苦するなり冢宰)。
