Libo

国風

先秦 · 佚名 · 第5巻 / 22

緇衣之宜兮,敝予又改為兮。適子之館兮。還予授子之粲兮。

緇衣(しい・黒衣)はあんなによく似合う、敝(へい)れたらまた改めて作る。あなたの館に行き、帰ってきたらまた食事を与える。

緇衣之好兮,敝予又改造兮。適子之館兮,還予授子之粲兮。

緇衣はあんなに好(よ)い、敝れたらまた改造する。あなたの館に行き、帰ってきたらまた食事を与える。

緇衣之席兮,敝予又改作兮。適子之館兮,還予授子之粲兮。

緇衣はあんなに蓆(せき・大きい)、敝れたらまた改作する。あなたの館に行き、帰ってきたらまた食事を与える。

將仲子兮,無逾我裡,無折我樹杞。豈敢愛之?畏我父母。仲可懷也,父母之言亦可畏也。

仲子(ちゅうし)にお願いしたい、私の里(り)を踰(こ)えないで、私が植えた杞(き)を折らないで。どうして樹を惜しむだろうか。私の父母を畏れるのだ。仲子は懐かしいが、父母の言葉も畏れる。

將仲子兮,無逾我牆,無折我樹桑。豈敢愛之?畏我諸兄。仲可懷也,諸兄之言亦可畏也。

仲子にお願いしたい、私の墻を踰えないで、私が植えた桑を折らないで。どうして樹を惜しむだろうか。私の諸兄を畏れるのだ。仲子は懐かしいが、諸兄の言葉も畏れる。

將仲子兮,無逾我園,無折我樹檀。豈敢愛之?畏人之多言。仲可懷也,人之多言亦可畏也。

仲子にお願いしたい、私の園を踰えないで、私が植えた檀(だん)を折らないで。どうして樹を惜しむだろうか。人の多言を畏れるのだ。仲子は懐かしいが、人の多言も畏れる。

叔于田,巷無居人。豈無居人?不如叔也。洵美且仁。

叔(しゅく)が狩りに行くと、巷は人が住んでいないようだ。人が住んでいないわけではない、ただ叔に及ばないだけだ。洵(じゅん)に美しくかつ仁だ。

叔於狩,巷無飲酒。豈無飲酒?不如叔也。洵美且好。

叔が狩りに行くと、巷は酒を飲む人がいないようだ。酒を飲む人がいないわけではない、ただ叔に及ばないだけだ。洵に美しくかつ好い。

叔適野,巷無服馬。豈無服馬?不如叔也。洵美且武。

叔が野に適(てき)すると、巷は馬に服(ふく)する人がいないようだ。馬に服する人がいないわけではない、ただ叔に及ばないだけだ。洵に美しくかつ武だ。

叔于田,乘乘馬。執轡如組,兩驂如舞。叔在藪,火烈具舉。襢裼暴虎,獻於公所。將叔勿狃,戒其傷女。

叔が狩りに行く、四匹の馬を駕する。轡を執れば組(そ)のように、両驂(りょうさん)は舞うようだ。叔は藪(そう)にいて、火は烈(れつ)としてともに挙がる。襢裼(たんせき)して素手で虎を搏(はく)ち、公所に献る。どうか叔は狃(じゅう)れないで、それがあなたを傷つけないよう戒めて。

叔于田,乘乘黃。兩服上襄,兩驂雁行。叔在藪,火烈具揚。叔善射忌,又良御忌。抑罄控忌,抑縱送忌。

叔が狩りに行く、四匹の黄馬を駕する。両服(りょうふく)は前を行き、両驂は雁行(がんこう)のようだ。叔は藪にいて、火は具(ぐ)としてともに揚がる。叔は射に善(よ)い、また御に善い。あるいは縱(しょう)して進まず、あるいは送(そう)して追いかける。

叔于田,乘乘鴇。兩服齊首,兩驂如手。叔在藪,火烈具阜。叔馬慢忌,叔發罕忌,抑釋掤忌,抑鬯弓忌。

叔が狩りに行く、四匹の鴇(ほう・雑色)馬を駕する。両服は首を斉え、両驂は左右の手のようだ。叔は藪にいて、火は具としてともに阜(ふ)さかん。叔の馬は慢(まん)した、叔の発した矢は罕(かん)だ、あるいは弸(ほう・矢筒)の蓋を釋(しゃく)き、あるいは弓を鬯(ちょう)に納める。

清人在彭,駟介旁旁。二矛重英,河上乎翱翔。

清人は彭(ほう)に在り、駟介(しかい)は旁旁(ぼうぼう)と行く。二矛に重英(ちょうえい)を施し、河上で翱翔(ごうしょう)する。

清人在消,駟介麃麃。二矛重喬,河上乎逍遙。

清人は消(しょう)に在り、駟介は麃麃(ひょうひょう)と行く。二矛に重喬(ちょうぎょう)を施し、河上で逍遙(しょうよう)する。

清人在軸,駟介陶陶。左旋右抽,中軍作好。

清人は軸(じく)に在り、駟介は陶陶(とうとう)と行く。左旋して右抽(ちゅう)し、中軍は好(こう)く容(よう)を作る。

羔裘如濡,洵直且侯。彼其之子,捨命不渝。

羔裘は濡(じゅ)として潤い、洵に直(ちょく)であって侯(こう・美しい)。あの人は、命を捨てても渝(ゆ)えない。

羔裘豹飾,孔武有力。彼其之子,邦之司直。

羔裘は豹飾(ひょうしょく)で、孔武(こうぶ)として力がある。あの人は、邦国の司直(しちょく)だ。

羔裘晏兮,三英粲兮。彼其之子,邦之彥兮。

羔裘は晏(あん)として鮮明だ、三英(さんえい)が粲(さん)としてある。あの人は、邦国の彦(げん)だ。

遵大路兮,摻執子之袪兮。無我惡兮,不蓵故也!

大路に遵(じゅん)らって、あなたの袪(きょ・袖口)を攅(せん)って。私を惡(あ)しみないで、寁(せん)として故(ふる)を絶たないで!

遵大路兮,摻執子之手兮。無我魗兮,不蓵好也!

大路に遵らって、あなたの手を攅って。私を醜(しゅう)としないで、寁として好(こう)を絶たないで!

女曰雞鳴,士曰昧旦。子興視夜,明星有爛。將翱將翔,弋鳧與雁。

女は「鶏が鳴いた」と言い、士は「昧旦(まいたん)だ」と言う。あなた起きて夜を視(み)てみろ、明星が爛(らん)としてある。まもなく翱翔して、鳧(ふ・野鴨)と雁を弋(よく)するだろう。

弋言加之,與子宜之。宜言飲酒,與子偕老。琴瑟在御,莫不靜好。

之(これ)を弋中(よくちゅう)したら、あなたとともに加(か)する(調理する)。加して酒を飲み、あなたとともに偕老(かいろう)する。琴瑟が御前(ぎょぜん)に在れば、静か好(よ)くないことはない。

知子之來之,雜佩以贈之。知子之順之,雜佩以問之。知子之好之,雜佩以報之。

あなたが私に來(きた)るのを知って、雑佩(ざっぱい)で贈る。あなたが私に順うのを知って、雑佩で問(もん)する。あなたが私を好(す)くのを知って、雑佩で報いる。

有女同車,顏如舜華。將翱將翔,佩玉瓊琚。彼美孟姜,洵美且都。

女が同車にあり、顔は舜華(しゅんか・木槿の花)のようだ。まもなく翱翔して、瓊琚を佩びる。あの美しい孟姜は、洵に美しくかつ都(と・雅やか)だ。

有女同行,顏如舜英。將翱將翔,佩玉將將。彼美孟姜,德音不忘。

女が同行にあり、顔は舜英(しゅんえい)のようだ。まもなく翱翔して、佩玉が將將(しょうしょう)と鳴る。あの美しい孟姜は、徳音(とくいん)が忘れられない。

山有扶蘇,隰有荷華。不見子都,乃見狂且。

山に扶蘇(ふそ)があり、隰に荷華(かか)がある。子都(しと)が見えず、狂且(きょうしょ・狂った奴)を見る。

山有喬松,隰有游龍,不見子充,乃見狡童。

山に喬松(きょうしょう)があり、隰に游龍(ゆうりゅう・紅草)がある。子充(しじゅう)が見えず、狡童(こうどう)を見る。

蘀兮蘀兮,風其吹女。叔兮伯兮,倡予和女。

蘀(たく・落葉)よ蘀よ、風があなたを吹く。叔よ伯よ、あなたがたが倡(しょう)れば私が和(わ)する。

蘀兮蘀兮,風其漂女。叔兮伯兮,倡予要女。

蘀よ蘀よ、風があなたを漂(ひょう)わせる。叔よ伯よ、あなたがたが倡れば私が要(よう)する。

彼狡童兮,不與我言兮。維子之故,使我不能餐兮。

あの狡童よ、私と言を交わさない。あなたのゆえに、私は食事ができない。

彼狡童兮,不與我食兮。維子之故,使我不能息兮。

あの狡童よ、私と食をともにしない。あなたのゆえに、私は息(そく)することができない。

子惠思我,褰裳涉溱。子不我思,豈無他人?狂童之狂也且!

あなたが恵みとして私を思うなら、裳を褰(けん)して溱水(しんすい)を渉(わた)る。あなたが私を思わないなら、他人がいないわけではないだろう?狂童の狂しいことよ!

子惠思我,褰裳涉洧。子不我思,豈無他士?狂童之狂也且!

あなたが恵みとして私を思うなら、裳を褰して洧水(いすい)を渉る。あなたが私を思わないなら、他の士がいないわけではないだろう?狂童の狂しいことよ!

子之丰兮,俟我乎巷兮,悔予不送兮。

あなたはあんなに豊(ほう)だ、巷で私を待ってくれたのに、送らなかったことを悔いる。

子之昌兮,俟我乎堂兮,悔予不將兮。

あなたはあんなに昌(しょう・盛ん)だ、堂で私を待ってくれたのに、送らなかったことを悔いる。

衣錦褧衣,裳錦褧裳。叔兮伯兮,駕予與行。

錦衣を衣(き)て褧衣を上に、錦裳を裳(しょう)して褧裳を上に。叔よ伯よ、車を駕して私をあなたがたと行かせて。

裳錦褧裳,衣錦褧衣。叔兮伯兮,駕予與歸。

錦裳を裳して褧裳を上に、錦衣を衣て褧衣を上に。叔よ伯よ、車を駕して私をあなたがたと帰らせて。

東門之墠,茹藘在阪。其室則邇,其人甚遠。

東門の墠(せん・平らな所)、茹藘(じょりょ・茜草)が阪(はん)に在る。その室は邇(じ)いのに、その人は遠い。

東門之栗,有踐家室。豈不爾思?子不我即!

東門の栗、踐(せん)として家室がある。あなたを思わないわけではない、あなたが私に就(しゅう)かないのだ!

風雨悽悽,雞鳴喈喈,既見君子。雲胡不夷?

風雨は凄凄(せいせい)として、鶏は喈喈(かいかい)と鳴く。すでに君子を見た、どうして夷(い)らないことがあろうか?

風雨瀟瀟,雞鳴膠膠。既見君子,雲胡不瘳?

風雨は瀟瀟(しょうしょう)として、鶏は膠膠(こうこう)と鳴く。すでに君子を見た、どうして瘳(ちゅう)らないことがあろうか?

風雨如晦,雞鳴不已。既見君子,雲胡不喜?

風雨は晦(かい)のように暗く、鶏は鳴き已(や)まない。すでに君子を見た、どうして喜ばないことがあろうか?

青青子衿,悠悠我心。縱我不往,子寧不嗣音?

青青たるあなたの衿(きん・襟)、悠悠たる私の心。縦(たと)え私が往かなくても、あなたは嗣音(しいん)を継いで寄さないのか?

青青子佩,悠悠我思。縱我不往,子寧不來?

青青たるあなたの佩(はい)、悠悠たる私の思い。縦え私が往かなくても、あなたは来ないのか?

挑兮達兮,在城闕兮。一日不見,如三月兮。

挑(ちょう)達(たつ)として行き来する、城闕(じょうけつ)の上で。一日見なければ、三月のようだ!

揚之水,不流束楚。終鮮兄弟,維予與女。無信人之言,人實誑女。

激しく揚がる水は、束ねた荊も流せない。ついに兄弟が鮮(せん)なく、ただ予(よ)と女(じょ)だけだ。人の言を信じるな、人は実に女を迋(きょう・騙)しているのだ。

揚之水,不流束薪。終鮮兄弟,維予二人。無信人之言,人實不信。

激しく揚がる水は、束ねた薪も流せない。ついに兄弟が鮮なく、ただ二人だけだ。人の言を信じるな、人は実に信じられないのだ。

出其東門,有女如雲。雖則如雲。匪我思存。縞衣綦巾,聊樂我員。

あの東門を出れば、女が雲のように多い。雲のように多くても、私の思う人ではない。縞衣(こうい)に綦巾(ききん・青い頭巾)のあの人こそ、しばらく私を楽しませる。

出其闉闍,有女如荼。雖則如荼,匪我思且。縞衣茹藘,聊可與娛。

あの闉闍(いんと・城の曲門)を出れば、女が荼(と・茅の花)のように多い。荼のように多くても、私の思う人ではない。縞衣に茹藘(じょりょ)のあの人こそ、しばらくともに楽しめる。

野有蔓草,零露漙兮。有美一人,清揚婉兮。邂逅相遇,適我願兮。

野に蔓(まん)草があり、零露(れいろ)が漙(たん)として丸い。一人の美人がいて、清揚(せいよう)として眉目が美しい。邂逅(かいこう)して遭(あ)えば、私の願いに適(てき)う。

野有蔓草,零露瀼瀼。有美一人,婉如清揚。邂逅相遇,與子偕臧。

野に蔓草があり、零露が瀼瀼(じょうじょう)。一人の美人がいて、婉(えん)として清揚だ。邂逅して遭えば、あなたとともに臧(そう・善く)しよう。

溱與洧,方渙渙兮。士與女,方秉蕳兮。女曰觀乎?士曰既且。且往觀乎?

溱と洧、方(まさ)に渙渙(かんかん)と漲る。士と女、方に蕑(かん・蘭)を秉(へい)る。女は「觀(み)に行かないか」と言い、士は「既(すで)に且(まさ)に行った」と言う。「また行って観ないか?」

洧之外,洵訏且樂。維士與女,伊其相謔,贈之以勺藥。

洧の外は、洵に訏(く・大きく)かつ楽しい。士と女、伊(い)として相い謔(ぎゃく)し、勺薬(しゃくやく)を贈り合う。

溱與洧,瀏其清矣。士與女,殷其盈矣。女曰觀乎?士曰既且。且往觀乎?

溱と洧、瀏(りゅう)として清い。士と女、殷(いん)として盈(えい)ちる。女は「観に行かないか」と言い、士は「既に且に行った」と言う。「また行って観ないか?」

洧之外,洵訏且樂。維士與女,伊其將謔,贈之以勺藥。

洧の外は、洵に訏かつ楽しい。士と女、將(しょう)として相い謔し、勺薬を贈り合う。

雞既鳴矣,朝既盈矣。匪雞則鳴,蒼蠅之聲。

鶏は既に鳴いた、朝(ちょう)は既に盈ちた。鶏が鳴いたのではない、蠅(よう)の声だ。

東方明矣,朝既昌矣。匪東方則明,月出之光。

東方が明(めい)いた、朝は既に昌(しょう)だ。東方が明いたのではない、月が出た光だ。

蟲飛薨薨,甘與子同夢。會且歸矣,無庶予子憎。

虫が飛んで薨薨(こうこう)と鳴く、甘(かん)としてあなたと同じ夢を。会(かい)が且(まさ)に帰らんとする、庶(しょ)く憎まれることのないように、予と女が。

子之還兮,遭我乎狃之間兮。並驅從兩肩兮,揖我謂我儇兮。

あなたはあんなに邁(ばい・俊敏)だ、峱(どう)の間で私に遭った。並び駆って二つの肩(けん・大きな獣)を逐(ちく)い、揖(ゆう)して私を儇(けん)だと言う。

子之茂兮,遭我乎狃之道兮。並驅從兩牡兮,揖我謂我好兮。

あなたはあんなに茂(も・盛ん)だ、峱(どう)の道で私に遭った。並び駆って二つの牡(ぼ)の獣を逐い、揖して私を臧(そう・よい)だと言う。

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