Libo

国風

先秦 · 佚名 · 第6巻 / 22

子之昌兮,遭我乎狃之陽兮。並驅從兩狼兮,揖我謂我臧兮。

あなたはあんなに昌(しょう)だ、峱の南で私に遭った。並び駆って二頭の狼を逐い、揖して私を臧だと言う。

俟我於著乎而,充耳以素乎而,尚之以瓊華乎而。

著(ちょ・門と屏の間)で私を待っていた、充耳は素(そ・白絲)で、尚(さら)に瓊華(けいか)を加えていた。

俟我於庭乎而,充耳以青乎而,尚之以瓊瑩乎而。

庭で私を待っていた、充耳は青(せい)で、尚に瓊瑩(けいえい)を加えていた。

俟我於堂乎而,充耳以黃乎而,尚之以瓊英乎而。

堂で私を待っていた、充耳は黄(こう)で、尚に瓊英(けいえい)を加えていた。

東方之日兮,彼姝者子,在我室兮。在我室兮,履我即兮。

東方の日よ、あの姝(しゅ・美しい人)が、私の室にいる。私の室にいて、私の履(り)に履(ふ)んで來(きた)る。

東方之月兮,彼姝者子,在我闥兮。在我闥兮,履我發兮。

東方の月よ、あの姝が、私の闥(たつ)の内にいる。私の闥の内にいて、私の履に履んで發(はっ)する。

東方未明,顛倒衣裳。顛之倒之,自公召之。

東方が未だ明るくない、衣裳を顛倒(てんとう)して着る。顛之倒之(てんしたおす)するのは、公から召(しょう)されたからだ。

東方未晞,顛倒裳衣。倒之顛之,自公令之。

東方が未だ晞(き・乾いて明るい)くない、衣裳を倒顛して着る。倒之顛之するのは、公から令(れい)があったからだ。

折柳樊圃,狂夫瞿瞿。不能辰夜,不夙則莫。

柳を折って圃(ほ・菜園)を樊(はん・囲う)とする、狂夫(きょうふ)は瞿瞿(くく)と目を見張る。辰(しん・時)を度(たく)せず、早すぎるか晚(ばん)すぎるかだ。

南山崔崔,雄狐綏綏。魯道有蕩,齊子由歸。既曰歸止,曷又懷止?

南山は崔崔(さいさい)として高く、雄狐は綏綏(すいすい)と行く。魯の道は蕩(とう)として平坦で、斉の子はここから嫁いだ。すでに嫁いだのに、どうしてまた懐(かい)するのか?

葛屨五兩,冠緌雙止。魯道有蕩,齊子庸止。既曰庸止,曷又從止?

葛屨(かつく・葛の履)は五両(りょう・五対)、冠緌(かんずい)は双(そう)だ。魯の道は蕩として平坦で、斉の子はここから庸(よう・行った)。すでに行ったのに、どうしてまた従(しょう)うのか?

蓺麻如之何?衡從其畝。取妻如之何?必告父母。既曰告止,曷又鞠止?

麻を蓺(げい・植える)にはどうするか。衡(おう)に從(しょう)にその畝(うね)を整える。妻を取るにはどうするか。必ず父母に告げる。すでに告げたのに、どうしてまた鞠(きく・窮める)するのか?

析薪如之何?匪斧不克。取妻如之何?匪媒不得。既曰得止,曷又極止?

薪を析(せき)るにはどうするか。斧がなければ克(こく)らない。妻を取るにはどうするか。媒(ばい)がなければ得られない。すでに得たのに、どうしてまた極(きょく)するのか?

無田甫田,維莠驕驕。無思遠人,勞心忉忉。

甫田(ふでん・大きな田)を畊(こう)るな、莠(ゆう・雑草)だけが驕驕(きょうきょう)と高い。遠い人を思うな、心を労して忉忉(とうとう)と憂える。

無田甫田,維莠桀桀。無思遠人,勞心怛怛。

甫田を畊るな、莠だけが桀桀(けつけつ)と高い。遠い人を思うな、心を労して怛怛(たったつ)と痛む。

婉兮孌兮。總角丱兮。未幾見兮,突而弁兮!

婉(えん)として孌(れん)として(美しい)。總角(そうかく)が丱(かん・角のように翘く)いている。幾(き)ならずして見れば、突然として弁(べん・皮弁)を戴(たい)している!

盧令令,其人美且仁。

盧(ろ・黒い犬)に令令(れいれい)と鈴が鳴る、その人は美しくかつ仁だ。

盧重環,其人美且鬈。

盧に重環(ちょうかん)を着けた、その人は美しくかつ鬈(けん・髪がよい)だ。

盧重鋂,其人美且偲。

盧に重鋂(ちょうばい)を着けた、その人は美しくかつ偲(さい・才がある)だ。

敝笱在梁,其魚魴鰥。齊子歸止,其從如雲。

敝(へい・破れた)笱(こう)が梁(りょう)に在り、その魚は魴(ぼう)と鱮(きょ)。斉の子が帰ってゆく、従う者は雲のように多い。

敝笱在梁,其魚魴鱮。齊子歸止,其從如雨。

敝笱が梁に在り、その魚は魴と鱮(しょ)。斉の子が帰ってゆく、従う者は雨のように多い。

敝笱在梁,其魚唯唯。齊子歸止,其從如水。

敝笱が梁に在り、その魚は唯唯(いい)として出入りする。斉の子が帰ってゆく、従う者は水のように多い。

載驅薄薄,簟茀朱鞹。魯道有蕩,齊子發夕。

載(さい)して驅(く)して薄薄(はくはく)と速い、簟茀(てんふつ・竹席の車蔽)と朱鞹(しゅかく・赤い革)。魯の道は蕩として平坦で、斉の子は發夕(はつせき・夜明け前)に発つ。

四驪濟濟,垂轡沵沵。魯道有蕩,齊子豈弟。

四驪(しり・四匹の黒馬)は濟濟(さいさい)として斉しく、垂轡(すいひ)は濔濔(びび)と垂れる。魯の道は蕩として平坦で、斉の子は豈弟(かいてい・和楽平易)だ。

汶水湯湯,行人彭彭。魯道有蕩,齊子翱翔。

汶水(ぶんすい)は湯湯(しょうしょう)と大きく、行人は彭彭(ほうほう)と多い。魯の道は蕩として平坦で、斉の子は翱翔している。

汶水滔滔,行人儦儦。魯道有蕩,齊了遊敖。

汶水は滔滔(とうとう)と流れ、行人は儦儦(ひょうひょう)と盛んだ。魯の道は蕩として平坦で、斉の子は游敖(ゆうごう)している(底本は「斉了」とするが、「了」は「子」の誤字)。

猗嗟昌兮,頎而長兮。抑若揚兮,美目揚兮。巧趨蹌兮,射則臧兮。

ああ、このように昌(しょう)だ、頎(き)として長い。揚(よう)として眉が揚がるように美しく、美しい目は揚(よう)としてある。巧みに趨蹌(しゅしょう)として、射れば臧(そう)だ。

猗嗟名兮,美目清兮。儀既成兮,終日射侯,不出正兮,展我甥兮。

ああ、このように名(めい)だ、美しい目は清い。儀は既に成り、終日射侯(しゃこう)して、その正(せい・的)から出ない、まことに我が甥(せい)だ!

猗嗟孌兮,清揚婉兮。舞則選兮,射則貫兮,四矢反兮,以御亂兮。

ああ、このように孌(れん)だ、清揚(せいよう)として婉(えん)だ。舞えば則(そく・節度)に中(ちゅう)り、射れば貫(かん)く、四矢が反(はん)って同じ所に至る、以って亂(らん)を御(ぎょ)ぐ。

糾糾葛屨,可以履霜?摻摻女手,可以縫裳?要之襋之,好人服之。

糾糾(きゅうきゅう)と固く葛屨を結び、以って霜を履(ふ)めるか。摻摻(せんせん)とした女の手、以って裳を縫(ほう)えるか。之(これ)を要(よう・腰)し之を襋(きょく・襟)し、好人が之を服(ふく)する。

好人提提,宛然左闢,佩其象揥。維是褊心,是以為刺。

好人は提提(ていてい)として安らかで、宛然(えんぜん)として左に辟(へき)し、象揥(ぞうてい)を佩びている。この褊心(へんしん)のゆえに、是(これ)を以って刺(し)とする。

彼汾沮洳,言採其莫。彼其之子,美無度。美無度,殊異乎公路。

あの汾(ふん)の沮洳(そじょ・低湿地)で、あの莫(ばく・酸模)を采る。あの人は、美しく度(ど)がない。美しく度がない、公路(こうろ)とは殊(しゅ)に異なる。

彼汾一方,言採其桑。彼其之子,美如英。美如英,殊異乎公行。

あの汾の一方(いっぽう)で、あの桑を采る。あの人は、花のように美しい。花のように美しい、公行(こうこう)とは殊に異なる。

彼汾一曲,言採其藚。彼其之子,美如玉。美如玉,殊異乎公族。

あの汾の一曲(いっきょく)で、あの藚(しょ・沢瀉)を采る。あの人は、玉のように美しい。玉のように美しい、公族(こうぞく)とは殊に異なる。

園有桃,其實之餚。心之憂矣,我歌且謠。不知我者,謂我士也驕。

園に桃があり、その実を殽(こう・菜)とする。心の憂いよ、我は歌い謡(よう)う。私を知らぬ者は「この士は驕(きょう)だ」と言う。

彼人是哉,子曰何其?心之憂矣,其誰知之?其誰知之,蓋亦勿思!

あの人が是(ぜ)なのか、あなたはどう思うか。心の憂いよ、知る者がいるか。知る者がいるなら、何ぞ思わざらん!

園有棘,其實之食。心之憂矣,聊以行國。不知我者,謂我士也罔極。

園に棘(きょく・酸棗)があり、その実を食(しょく)とする。心の憂いよ、聊(りょう・しばらく)国中を行く。私を知らぬ者は「この士は罔極(もうきょく・極がない)」と言う。

彼人是哉,子曰何其?心之憂矣,其誰知之?其誰知之,蓋亦勿思!

あの人が是なのか、あなたはどう思うか。心の憂いよ、知る者がいるか。知る者がいるなら、何ぞ思わざらん!

陟彼岵兮,瞻望父兮。父曰:嗟!予子行役,夙夜無已。上慎旃哉,猶來!無止!

あの岵(こ・木のある山)に登って、父を瞻望(せんぼう)する。父は言う:嗟(さ)あ!我が子は役に行き、夙夜(しゅくや)已(や)まない。上(しょう)れ慎(しん)めよ、猶(な)お來(き)て無(ま)止(し)するな!

陟彼屺兮,瞻望母兮。母曰:嗟!予季行役,夙夜無寐。上慎旃哉,猶來!無棄!

あの屺(き・木のない山)に登って、母を瞻望する。母は言う:嗟あ!我が季(き・末子)は役に行き、夙夜寐(び)しない。上れ慎めよ、猶お來て無棄(むき)するな!

陟彼岡兮,瞻望兄兮。兄曰:嗟!予弟行役,夙夜必偕。上慎旃哉,猶來!無死!

あの岡に登って、兄を瞻望する。兄は言う:嗟あ!我が弟は役に行き、夙夜必ず偕(かい)する。上れ慎めよ、猶お來て無死(むし)するな!

十畝之間兮,桑者閒閒兮,行與子還兮。

十畝の間(かん)よ、桑者(そうしゃ)は閑閑(かんかん)として、あなたとともに還(かえ)らん。

十畝之外兮,桑者洩洩兮,行與子逝兮。

十畝の外(がい)よ、桑者は泄泄(えつえつ)として、あなたとともに逝(せい)かん。

坎坎伐檀兮,置之河之幹兮。河水清且漣猗。不稼不穡,胡取禾三百廛兮?

坎坎(かんかん)と檀を伐り、河の干(かん・岸)に寘(ち)く、河水は清くかつ漣猗(れんい)。稼(か)もせず穡(しょく)もしないで、どうして禾三百廛(てん)を取るか?

不狩不獵,胡瞻爾庭有縣貆兮?彼君子兮,不素餐兮!

狩(しゅ)もせず獵(りょう)もしないで、どうしてあなたの庭に縣(けん)された貆(かん・貉)を見るか。あの君子は、素(そ)として餐(さん)しないのだ!

坎坎伐輻兮,置之河之側兮。河水清且直猗。不稼不穡,胡取禾三百億兮?

坎坎と輻(ふく)を伐り、河の側に寘く、河水は清くかつ直猗(ちょくい)。稼もせず穡もしないで、どうして禾三百億(おく)を取るか?

不狩不獵,胡瞻爾庭有縣特兮?彼君子兮,不素食兮!

狩もせず獵もしないで、どうしてあなたの庭に縣された特(とく・大きな獣)を見るか。あの君子は、素として食(しょく)しないのだ!

坎坎伐輪兮,置之河之漘兮。河水清且淪猗。不稼不穡,胡取禾三百囷兮?

坎坎と輪(りん)を伐り、河の漘(しゅん)に寘く、河水は清くかつ淪猗(りんい)。稼もせず穡もしないで、どうして禾三百囷(きん)を取るか?

不狩不獵,胡瞻爾庭有縣鶉兮?彼君子兮,不素飧兮!

狩もせず獵もしないで、どうしてあなたの庭に縣された鶉(じゅん)を見るか。あの君子は、素として飧(そん・夕食)しないのだ!

碩鼠碩鼠,無食我黍!三歲貫女,莫我肯顧。逝將去女,適彼樂土。樂土樂土,爰得我所。

碩鼠(せきそ・大きな鼠)よ碩鼠よ、我が黍を食(は)むな!三歳貫(かん)女(なんじ・あなたに仕えて三年)、我を顧(こ)せず。逝(せい)將(しょう)女を去り、あの楽土に適(てき)かん。楽土よ楽土よ、爰(えん)に我が所を得ん。

碩鼠碩鼠,無食我麥!三歲貫女,莫我肯德。逝將去女,適彼樂國。樂國樂國,爰得我直。

碩鼠よ碩鼠よ、我が麦を食むな!三歳貫女、我を徳(とく)せず。逝將女を去り、あの楽国に適かん。楽国よ楽国よ、爰に我が直(ちょく・分)を得ん。

碩鼠碩鼠,無食我苗!三歲貫女,莫我肯勞。逝將去女,適彼樂郊。樂郊樂郊,誰之永號?

碩鼠よ碩鼠よ、我が苗を食むな!三歳貫女、我を勞(ろう)せず。逝將女を去り、あの楽郊に適かん。楽郊よ楽郊よ、誰が之(これ)に永號(えいごう・長く哭号)せんか?

蟋蟀在堂,歲聿其莫。今我不樂,日月其除。無已大康,職思其居。好樂無荒,良士瞿瞿。

蟋蟀(しっしゅつ)が堂に在り、歲(さい)は聿(いち)として莫(ぼ・暮れる)せんとする。今我不楽なれば、日月は其(き)として除(じょ)す。無(な)かれ已(い)に大康(たいこう)、職(しょく)に其(き)の居(きょ)を思え。好樂(こうらく)して荒(こう)せず、良士は瞿瞿(くく)とする。

蟋蟀在堂,歲聿其逝。今我不樂,日月其邁。無已大康,職思其外。好樂無荒,良士蹶蹶。

蟋蟀が堂に在り、歲は聿として逝(せい)せんとする。今我不楽なれば、日月は其として邁(ばい)す。無かれ已に大康、職に外(がい)を思え。好樂して荒せず、良士は蹶蹶(けつけつ)とする。

蟋蟀在堂,役車其休。今我不樂,日月其慆。無以大康。職思其憂。好樂無荒,良士休休。

蟋蟀が堂に在り、役車は其として休(きゅう)せんとする。今我不楽なれば、日月は其として慆(とう)す。無かれ已に大康、職に其の憂(ゆう)を思え。好樂して荒せず、良士は休休(きゅうきゅう)とする。

山有樞,隰有榆。子有衣裳,弗曳弗婁。子有車馬,弗馳弗驅。宛其死矣,他人是愉。

山に樞(しゅう)があり、隰に楡(ゆ)がある。あなたに衣裳があって、曳(えい)せず婁(る)せず。あなたに車馬があって、馳(ち)せず驅せず。宛(えん)として其(き)死すれば、他人が愉(ゆ)する。

山有栲,隰有杻。子有廷內,弗灑弗掃。子有鐘鼓,弗鼓弗考。宛其死矣,他人是保。

山に栲(こう)があり、隰に杻(ちゅう)がある。あなたに廷内(ていない)があって、洒(さい)せず掃(そう)せず。あなたに鐘鼓があって、鼓(こ)せず考(こう)せず。宛として其死すれば、他人が保(ほ)する。

山有漆,隰有栗。子有酒食,何不日鼓瑟?且以喜樂,且以永日。宛其死矣,他人入室。

山に漆(しつ)があり、隰に栗(りつ)がある。あなたに酒食があるのに、どうして日に鼓瑟(こしつ)しないか。且(しゃ)に以って喜楽(きらく)し、且に以って日を永(えい)せん。宛として其死すれば、他人が室に入る。

揚之水,白石鑿鑿。素衣朱襮,從子於沃。既見君子,云何不樂?

激しく揚がる水、白石は鑿鑿(さくさく)と鮮明だ。素衣(そい)に朱襮(しゅはく・紅い襟)、あなたに従って沃(よく・曲沃)に至る。既に君子を見た、どうして樂(らく)しまないことがあろうか?

揚之水,白石皓皓。素衣朱繡,從子於鵠。既見君子,云何其憂?

激しく揚がる水、白石は皓皓(こうこう)と白い。素衣に朱繡(しゅしゅう)、あなたに従って鵠(こく)に至る。既に君子を見た、どうして憂いがあろうか?

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