説卦伝・広八卦の象
乾為天,為圜,為君,為父,為玉,為金;為寒,為冰;為大赤;為良馬,為老馬,為瘠馬,為駁馬;為木果。
『説卦伝』の此の章は八卦の取る所の物象を広く列す。「乾」は天と為り、円と為る——「圜」はすなわち円、天体は渾円にして而して運転不息。君主と為り父と為る。玉と為り金と為る、玉と金とは皆質地剛潔。乾位は西北に居り時は厳冬に当たる、故に寒と為り氷と為る。その色は日の如し、故に大赤と為る、すなわち朝会の用うる所の赤色の旗。馬類に於ては、良馬・老馬・瘦馬と毛色駁雑の馬と為る。草木に於ては、樹上の果実と為る。これらの物象は皆乾徳の純剛不息の義を取る:諸馬はその健行不已を取り、木果は一歳の生意の開端、正に乾の万物の資始する所と為るが如し。
坤為地,為母,為布;為釜;為吝嗇;為均;為子母牛;為大輿;為文;為眾,為柄;其於地也為黑。
「坤」は大地と為り、母親と為り、布帛と為る(「布」もまた古代の銭幣の名、その流布広被の義を取る)。釜と為る、すなわち炊煮の鍋、能く物を容れて而して成化す。吝嗇と為る、地徳の収斂閉蔵を謂う。均平と為る、物を載するに一たび偏私なきを謂う。小牛を帯びたるの母牛と為る、その柔順にして而して能く生育するを取る。大車と為る、その任重致遠を取る。文采と為る、万物は地に雑陳して而して文を成す。衆庶と為る。柄と為る、万物は皆地を以て本と為す、器物の柄有りて執るべきが猶し。地の顔色に就きて言えば、坤は黒と為る、あれは純陰の色。
震為雷,為龍,為玄黃;為旉;為大塗;為長子;為決躁;為蒼筤竹;為萑葦;其於馬也,為善鳴,為$足,為作足,為的顙;其於稼也,為反生,其究為健,為蕃鮮。
「震」は雷と為り、竜と為り、玄黄と為る——玄是れ天の色、黄是れ地の色、震は一陽を以て地下に於て始動す、天地の色は相雑す、故に玄黄と為る。「旉」と為る、すなわち花の開きて布散す。大道と為る。長子と為る。決躁と為る、急疾奮発の貌。青嫩の竹と為り、荻と蘆葦と為る、皆その春に生じ易く長ずるを取る。馬類に於ては、嘶鳴に善きの馬・後の左蹄の白きの馬・行走する時に四足斉しく動くの馬・白額の馬と為る。庄稼に於ては、「反生」と為る、すなわち麻豆の類の甲を戴きて土を破りて反りて長じ出ずる者。震動は極処に到れば便ち転じて剛健と為る、それゆえ「其究為健」と言う、草木もまた此に由りて蕃育して而して鮮明ならん。
巽為木;為風,為長女;為繩直,為工;為白;為長;為高;為進退;為不果;為臭;其於人也,為寡髮,為廣顙,為多白眼;為近利市三位;其究為躁卦。
「巽」は木と為り、風と為り、長女と為る。縄直と為り百工と為る、木匠は墨縄を以て直を取る、故に巽は縄直・工匠の象有り。白と為る。長と為る。高と為る。進退と為る、風は行くに常なし、故に進退不定の象有り。果決ならざると為る。気味と為る。人身に於ては、頭髪稀少の人・額頭寛闊の人・眼白多きの人と為る。巽は東南に居り、「離」の日中為市の位と相近し、故に市利に近きと為る、三倍の息を得んとす。巽性は入と伏蔵とを主とす、動くこと極処に到れば則ち反りて躁動と成る、それゆえ「其究為躁卦」と言う、終竟に「震」に帰す。
坎為水,為溝瀆;為隱伏;為矯輮;為弓輪;其於人也,為加憂,為心病,為耳痛;為血卦,為赤;其於馬也,為美脊,為亟心,為下首,為薄蹄,為曳;其於輿也,為多眚;為通;為月;為盜;其於木也,為堅多心。
「坎」は水と為り、溝渠と為る。隠伏と為る、坎は一陽を以て二陰の中に陥蔵す、故に隠伏の象有り。「矯輮」と為る、弯曲せるを直に変ぜしむるを矯と言い、笔直なるを曲に変ぜしむるを輮と言う。弓と為り車輪と為る、二者は皆矯輮に由りて成る。人身に於ては、憂慮加重・心病・耳痛と為る。人身に血有るは大地に水有るが猶し、それゆえ坎は血卦と為る、その色は赤と為る。馬類に於ては、脊背健美の馬・性情急躁敏捷の馬・頭を低くするの馬・蹄甲磨薄の馬・拖曳して行き難きの馬と為る。車輿に於ては、多災多難と為る。又た通达と為り月と為り盗賊と為る。草木に於ては、木質堅硬にして而して心多きの樹と為る、棘棗の類の如し。
離為火,為日,為電;為中女;為甲冑,為戈兵;其於人也,為大腹;為乾卦;為鱉,為蟹,為蠃,為蚌,為龜;其於木也,為科上槁。
「離」は火と為り、日と為り、電と為る——離は南方に居り、南方は火に属す、日は火気の精、故に日と為り電と為る。中女と為る。鎧甲と頭盔と為り、戈矛兵器と為る、離は外は剛にして内は柔、甲冑兵器は正に外堅を以て内柔を衛護す。人身に於ては、大腹の人と為る、その中は虚にして外は包むを取る。乾燥の卦と為る、火性は能く物を燥す、故に「為乾卦」と説く。又た鼈と為り蟹と為り螺と為り蚌と為り亀と為る、皆外に甲殻を具えて而して内質柔軟の物。草木に於ては、中心空虚にして上端枯槁の樹と為る。
艮為山,為徑路,為小石;為門闕;為果蓏;為閽寺;為指;為狗,為鼠,為黔喙之屬;其於木也,為堅多節。
「艮」は山と為り、山間の小路と為り、小塊の石頭と為る。門闕と為る、すなわち宮門両旁の台観。「果蓏」と為る、木本の実を果と言い、草本の実を蓏と言う、瓜類の如し。「閽寺」と為る、すなわち宮門を守るの閽人と宮中の寺人、皆門禁を掌管するを以て職と為す。手指と為る。狗と為り鼠と為り黒嘴の猛獣の類と為る。草木に於ては、質地堅硬にして而して結節多きの樹と為る。これらの物象は皆艮の「止」の義を取る:山は止まりて而して遷らず、閽寺は人の出入を止め、狗鼠黔喙は能く守り能く噬い、多節の木はその止まる最も堅し。
兌為澤;為少女;為巫;為口舌;為毀折,為附決;其於地也,為剛滷;為妾;為羊。
「兌」は沼沢と為る。少女と為る。巫と為る、古時に能く歌舞を以て神を降すの女子を巫と言い、男子を覡と言う、巫は口舌を以て神明に通ず、それゆえ兌は巫と為る。口舌と為る。毀折と為る、兌の上一爻は断缺せり、物の毀壊折損するが如し、兌はまた西方の秋を主とし、万物は此に到りて凋落摧折す。附決と為る、兼ねて依附と決去の両義有り。土地に就きて言えば、堅硬の鹽鹼の地と為る。妾と為る、少女の位は卑下、故に妾と為る。羊と為る。兌は一陰を以て二陽の上に顕現し、その象は多く和悦にして之を外に形するの義を取る。
