巻七・至理測法
欠字・六甲を問う
欠字。一人書欠字問六甲,余曰:「明日生男,決非首胎。」時十月初十,到次日果生男。其人復問字理,曰:「欠加兩點為次,故知非首胎。加土為坎。坎,中男也,故知生兒。初十來占,加十一在旁成坎,則今日當產無疑矣。」
人の「欠」の字を写して生育を問う有り。我曰く、「明日男の子を生まん、而且断然として頭胎に非ず」。当時是れ十月初十、第二天に到りて果然男の子を生む。其の人回りて再び其の中の字理を問う。我曰く、「『欠』の字の旁に两点を加うれば便ち『次』の字と成る——次は是れ第二、故に頭胎に非ざるを知る。『欠』の字に『土』の旁を加うれば便ち『坎』の字と成る——《周易》八卦に坎は中男、故に男を生ずと断ず。彼は是れ初十此の日に来りて占す——『初十』の『十』に一横を加うれば正に『土』の字、此の『土』を『欠』旁に添え、恰好『坎』を凑成す——即日分娩するを見るべし、此れ疑問無きなり」。此の一例は加筆・取卦・日期に就きて象を取るの三層を合して用う——是れ「至理測法」の典型手段。
門字・病を問う
門字。一人書門字問病,余曰:「死矣!尚何問焉?」問字理,答曰:「門字之形,乃日有餘、月不足耳。」其人曰:「女病也。」余曰「必死!」閱十四日驗。
人の「門」の字を写して病情を問う有り。我曰く、「已に是れ死症なり、なお何をか問わん」。彼問うて是れ何の字理ぞと。我答えて曰く、「『門』の字の形状、『日』の字に比し笔画多く出づること些か有り、而して『月』の字に比し則ち一笔少なし——謂う所の『日余有りて月足らず』、即ち説く所は日子なお幾天を挨る能くし、而して一個月に満たざるを挨るなり」。其の人曰く、「病むるは是れ個の女人」。我曰く、「那れ更に必死なり!」——月は陰に属し、女子を主り、月既に足らず、女病自然救無し。十四天を過ぎて、果然応験す。
郷字・婚姻を問う
鄉字。一人書鄉字問婚姻,余曰:「姻緣雖易成,男女亦相得,第奈何以真童而娶再醮之女。幸末笑乃節字,到後卻能守節。」其人笑曰:「此女果作過養媳,未成婚而夫死,今翁姑欲嫁之也。不識字理何居,先生何以備知若此?」
人の「郷」の字を写して婚姻を問う有り。我曰く、「此の門の親事は成ること易しと雖も、男女双⽅もなお相投ず——只だ惜しむべくは、一個の未だ嘗て娶らざる童男を以て、一個の再嫁の婦を娶るに行くなり。幸なる所は『郷』の字の末筆は『節』の字の下半に象る——将来此の女人は倒に節を守る能くせん」。其の人笑うて曰く、「果然其の如し!此の女子は童養媳を做り、未だ圓房せざるに丈夫死せり——如今公婆彼女を別に嫁がせ出さんと欲す。此の字理の落つる所を知らず、先生何を以てか知ること此の詳細なるを得たるや」。
余曰:「此無他,乃牛郎織女巧相逢耳。因郎字全,織字只有半邊,是以知之也。」復問:「到後守節,何以不守前夫。」答曰:「節旁耳直。今鄉旁耳多一曲,是以知其節摻之囗二次嫁也。」
我曰く、「別の有る無し、此れ即ち牛郎織女の凑巧に相逢うのみ。『郷』の字の右半は『阝』(耳刀)にして、『良』を配せば即ち『郎』の字——郎の字是れ完整、故に男方を断じて個の整整たる童男と為す;而して『織』の字は只だ半辺を残す、女方即ち是れ残缺して完ならず——故に彼女を断じて是れ再醮の婦と為す」。其の人また問う、「既に彼女の将来節を守る能くせんと曰う、何を以て当初前夫の為に守らざりしか」と。我答えて曰く、「『節』の字の旁の彼の一竪是れ直なり——如今『郷』の字の旁の此の一笔は一道の弯曲多し——彼女の節操中間に折扣を打ちたるを見るべし(底本此処に缺字有り)——故に是れ二次の出嫁なり」。同じ一個の偏旁、直なれば則ち節を守り、曲なれば則ち改嫁す——此れ即ち笔画曲直を以て人事を定むるの用法。
亥字・遺孤の吉凶を問う
亥字。人有遺孤五歲,偶病。其乳母以亥字問吉凶,余曰:「亥乃孩不見子之象,上是六不全,中是久不得,下是人不長;本月三十日是月盡,亥為時盡,此兒殆難矣。」
一家の遺孤纔かに五歳、偶然病を得。其の乳母「亥」の字を写して吉凶を問う。我曰く、「『亥』の字是れ『孩』の字にして『子』の旁を去掉せり——正に是れ孩有りて其の子を見ざるの象。再び其の三段を看る——上頭の彼の一部分は『六』の字に象る而して完全ならず、中間は『久』の字に象る而して久しく得るべからず、下頭は『人』の字に象る而して人長大せず。況や本月三十日即ち月尽の日、而して十二地支に『亥』また末位に居る——是れ一年時辰の尽頭。此の孩子只怕難からん」。
復以一字再問,余曰:「一乃生字之終,死字之始,則生從此盡,死從此至矣。況是半個十字,祿命止於五乎?」其師又以水字參決,斷曰:「水字之形,不能永之象。五行之數,土數五。土能克水,難過五日矣。」至九月初五果殞。
乳母また「一」の字を写して再び問う。我曰く、「『一』是れ『生』の字の最末の一笔、又是れ『死』の字の起首の一笔——生此処に到れば便ち尽き、死此処より便ち来る。況や『一』只だ半個の『十』の字なり——十其の半を減じて五を得、此の孩子の禄命只怕五歳に止まらんか」。孩子の塾師また「水」の字を写して参問す。我断じて曰く、「『水』の字の形状、是れ『永』の字にして一点少なし——正に是れ長久すること能わざるの象。再び五行の数に按すれば、土の数は五、土は能く水を克す——五天を挨る能わざらん」。九月初五に到りて、孩子果然夭亡す。
張字・囚繋の吉凶を問う
張字。維楊汪四被總憲拿問,其羽以張字問吉凶,且曰:「今已有東王爺書到,早晚能出否乎?」余曰:「此字大凶,生且難保,安望其出耶?」因斷曰:「弔客當頭,喪門煞局,內中王心已偏,恐終不能挽回矣。」時在九月二十也。至十月終,果自縊於監中。
揚州人汪四総憲(都御史)に拿へられて罪を問わる。其の党羽「張」の字を写して吉凶を問い、并且に曰く、「如今已に東王爺の書信到る有り、早晚放ち出さるるを得るや否や」と。我曰く、「此の字大凶なり、性命尚お保ち難し、なお放ち出さるるを指望せんや」。於是断語を下す——「『張』の字左辺是れ『弓』、正に是れ『吊客』頭に当たる;右辺是れ『長』、合して喪門煞局と成る。字裏彼の『王』の字の心已に偏に写せり——托する所の王爺の心已に偏移せり、恐怕終に挽回し得ざらん」。当時是れ九月二十日。十月底に到りて、汪四果然獄中に自縊す。
繍字・婚姻を問う
繡字。一人書繡字問婚姻,余曰:「婚姻必成,且十分得意。」問:「何故?」曰:「紅絲緊繫蕭郎足,姻緣自成更美者。字末三川六段,又為地天交泰之象,夫婦可以偕老。」其人悅而去,至十二月成伉儷。
人の「繍」の字を写して婚姻を問う有り。我曰く、「此の門の婚事必ず成る、而且十分心に称わん」。彼緣故を問う。我曰く、「『繍』の字左旁是れ『糹』、正に是れ紅絲緊く蕭郎の脚を繋ぎ住む——月老線を牽き、姻縁自然成就し、而且成ること更に美なり。字の末筆分かれて三川六段と作る、上下相交る——又是れ《周易》地天交泰の象——地在上にして天在下、陰陽交りて万物通ず——故に夫婦白頭偕老すべきと断ず」。其の人歓歓喜喜として去る、十二月に到りて果然夫妻と成る。
青字・聖駕南巡を問う
青字。壬午十月,有遊宦書青字問曰:「昨聞邸報傳云,聖駕南巡已到紅衣鋪矣。弟有一故舊隨來,意欲候之,不知何日至此?敢求細推。」余曰:「字中上乃主形,又是半個來字,必應南幸來至半路矣。但作乃陰象,又是半個背字,塞北陰方必應。聖心戀戀於陰方,將至半道而返也。」其宦猶未深信。果報:駕未逾淮,得太后之旨,遂星夜迴鑾。
壬午年十月、外に在りて官を為す人有りて「青」の字を写して問う——「昨日邸報上に伝うるを聽く、聖駕南巡已に紅衣鋪に到ると。我一個の老朋友駕に随いて同じく来る有り、迎候せんと往かんと欲す——何れの日か此処に到らんとするを知らず。先生に細かに推算を請う」。我曰く、「『青』の字上半是れ『主』の形状、指す所は人主なり;彼の上半又是れ半個の『来』の字なり——故に南巡の聖駕確かに已に半路に来れりと断ず。但是『青』の字下半是れ『月』、月は陰に属し、又是れ半個の『背』の字——背は北に朝く、塞北正に是れ陰方、此の一層必ず北辺に応ずべし。聖心北方に眷戀し、まさに半路に走り至りて便ち折りて回りて去らんとするを見るべし」。彼の官員はなお大いに信ぜず。後に果然伝報す——御駕未だ淮河を渡らざるに、便ち太后の旨意を接し、連夜鑾を回らして北に返る。
瓦字・揺会を問う
瓦字。一人書瓦字問搖會得否,余曰:「得會。」曰:「人眾尚在初起。」曰:「雖係初會,必得!」因批云:「瓦蓋眾人之頭,字形二十九點。得會!」其人去,頃復來曰:「會得矣,點亦如數。」
人の「瓦」の字を写して揺会能く中るや否やを問う有り。謂う所の「揺会」は、是れ民間の合会集資、衆人分子を凑えて骰を揺りて次序を定め、誰に輪るれば誰が一筆の会款を得るなり。我曰く、「会を得るを得べし」。彼曰く、「会裏人多し、眼下なお只だ是れ頭一輪」。我曰く、「頭会なりと雖も、亦た必ず得!」。於是批して曰く、「瓦は衆人の頭頂を蓋覆する能くし——満会の人を圧し得住むを主る;此の字の形状は共に二十九点を合す——会を得ん!」。其の人去りて多しとせずまた回りて来りて曰く、「果然会を得たり、揺り出でたる点数も正に是れ二十九」。此の一例是れ字形笔画に就きて数を取る——数と事恰も相符す。
火字・出門と在家を問う
火字。一人書火字問:「出門與在家孰利?」余曰:「出門利。此字中間有開腳之人,自宜行動。若在家中,有災害也。」
人の「火」の字を写して問う——「是れ出門利有りや、抑も家に待つが利有りや」と。我曰く、「出門利有り。此の字中間に一個の双脚を叉開せる『人』の形を蔵す——人既に脚步を邁開せり、自然行動に宜し;若し家に守れば、『火』便ち是れ災害の象——反って禍患有り」。同じ一個の字、其の中の「人」の形を取れば則ち行動を主り、其の本義を取れば則ち火災を主る——問う所是れ何れの一頭なるを看る。
時旁一人即指此字問曰:「有一兒欲隨貴人上京,今在姑蘇覓一兒作伴同行,利否?」余曰:「大利。」問何故,曰:「火字疊見,乃炎字也。北方水鄉,此去有既濟之義,故利耳。」其人曰:「北方水旺,炎旁加水乃淡字也。財氣不亦淡泊乎?」
当時旁辺に一個の人有りて便ち此の同一の「火」の字を指して問う——「我一個の孩子有りて貴人に跟随して京に上らんと欲し、如今蘇州に在りて別の一個の孩子を找めて伴を作り同行す——利有りや」と。我曰く、「大利」。彼何故ぞを問う。我曰く、「剛才已に一個の『火』の字有り、現在また同じ字を指して問う——両火重畳正に是れ『炎』の字。京城是れ北方に在り、北方は水に属す——此の一去水火相済し、正に《周易》既済卦の義に合す——故に利有り」。其の人曰く、「北方水旺し、『炎』旁に水を加上すれば便ち『淡』の字と成る——財気豈に亦た淡泊せざらんや」。
余曰:「否!非此之論也。兩兒皆南人,南方是火地。跟官之人勢必炎,炎而字中又兩重火。現據理斷之,嫌其太過。所幸者,遠遊北方水旺之鄉,得水制之,則火不猖狂,而兩相為用矣,烏可志其美而反謂之淡泊也哉?」其人復問二兒高下,余曰:「二火一上一下,自有高低。但子之兒高,彼之兒不及也。」請厥理,曰:「先一位以火問事已過,乃退時之火。兄仍以火字問事,乃方興之火。以此較之,是以知此兒後來高於彼兒也。」
我曰く、「対ならず、此の如く論ずべからず。此の両個の孩子皆な是れ南方人、南方本より火地に属す;官長に跟随する人は、気焰勢い必ず更に炎盛なり、況や字裏又是れ两重の火——単に此の道理に按じて断ずれば、正に火太だ過ぐるを嫌う。幸なる所是れ遠く北方水旺の郷に走り、水を得て来りて之を制すれば、火便ち猖狂するに至らず——水火両相為用せり。何を以てか其の此一層の好所を看ずして、反って財気淡泊と説成さんや」。其の人また両個の孩子将来誰か高く誰か低きを問う。我曰く、「両個の『火』一つ上に一つ下に在り、自然高低を分かち出だす。但是您の家の孩子高く、彼の一位の孩子趕き及ばず」。彼其の中の道理を請教す。我曰く、「先前彼の一位は『火』の字を以て事を問い、問いて過ぎ去りぬ——彼是れ已退の火;您如今仍お此の『火』の字を以て事を問う——此れ是れ方興未艾の火。両下相い比すれば、您此の孩子後来必ず彼彼の孩子に高きを過ぐるを知る」。
鳬字・官司を問う
鳧字。一人書鳧字問官司,余曰:「大不利。」其人問故,曰:「梟神頭,白虎腳,勾陳身,膋蛇尾,四凶齊犯。若到官,夾打俱有。一倒便見矣。」因將鳧字倒置几上,令彼自觀,時旁觀者皆歎服。
人の「鳬」の字を写して官司を打つを問う有り。我曰く、「大いに不利」。彼緣故を問う。我曰く、「此の字上頭是れ『鳥』の頭、正に梟神を犯す;下頭の彼の一撇一捺は白虎の足に象る;中段の横撑是れ勾陳の身;末筆の曲折是れ螣蛇の尾——梟神・白虎・勾陳・螣蛇、四凶斉しく犯す。此の案子若し公堂に上れば、夾棍も板子も少なからざらん。字を倒して看れば便ち明白なり」。於是我把て「鳬」の字を写したる紙を倒して几案の上に放ち、彼をして自ら往きて看せしむ——倒せたる字形正に一個の人の反縛され夾打せらるるの様子に象る。当時旁観の人皆な歎服す。
元字・六甲を問う(一)
元字。一人書元字問六甲:「男女何居?」余斷曰:「二八之形,巽卦之變,生女無疑。」復以問他相字者,則不察字理,輒曰:「生男。」至分娩,果產一女。
人の「元」の字を写して胎孕を問う有り——「究竟是れ男か是れ女か」。我断じて曰く、「此の『元』の字は上に两横、下に两笔、二八の形を成す——二と八と皆な是れ陰数;再び卦変に按ずれば、巽卦に属し、巽は長女——女を生ずること疑無し」。彼また持ち去りて別の一の測字する人に問う——其の人細かに字理を察せず、口に随いて便ち曰く、「男を生ず」。臨盆に到りて、果然個の女孩を生む。
元字・六甲を問う(二)
元字。一人將元字問男女,余曰:「生男。」復以問他相字者,則用吾前效應曰:「生女。」至分娩,乃一男。其人復來問字理,余曰:「元乃乾健之體,四德元為之首。兄之所娠又係頭胎。況兼三筆寫成,可改作兒字。故知生子無疑也。」
また人の「元」の字を拿りて男を生ずや女を生ずやを問う有り。我曰く、「男を生ず」。彼亦た持ち去りて別の測字先生に問う——其の人我の上一回の応験を套用し、曰く、「女を生ず」。分娩に到りて、却って是れ個の男孩。其の人回りて字理を問う。我曰く、「『元』是れ乾卦剛健の体、《周易》乾卦の四德『元亨利貞』、元は第一に居る;況や您夫人の懐く所又是れ頭胎。再者此の『元』の字は只だ三笔を以て写し成る——三是れ奇数、陽に属し、而且一笔を改めれば便ち『兒』の字と成る——故に男を生ずと断ず、絶えて疑うべき無し」。
其人問:「師曾斷此字生女,弟遂寫此字求數;因復以問於貴同道,彼亦斷女。何故卻生兒子乎?何故師所斷與前異乎?願聞其說。」餘筆曰:「夫一字之來有一字之機,彼人烏足以語此!蓋前一人之元字中,二橫如橋,字乃四筆寫成,數屬偶,故生女。兄所問之元字,頭尾昂藏,字乃三筆寫成,數屬奇,故生男。奇偶尚不清,曷為乎測字哉?邵康節先生曰:「字同事不同,不宜此而宜彼;事同字不同,倏變吉而變凶。」此之謂也。
其の人問う、「先生従前此の字を断じて是れ女を生ずと為し、我此に因りて亦た此の字を写して数を求む;また持ち去りて您彼の同道に問う——彼亦た女と断ぜり。何を以てか偏に兒子を生みしか?何を以てか先生此の一回の断語は従前と同じからざるか?其の詳を聴かんことを願う」。我筆を提げて写して曰く、「一個の字送り来れば、便ち此の一個の字自己の機兆を帯ぶ——彼の先生何ぞ此の道理を懂得せんや!従前彼の人の写せる『元』の字は、当中の两横平平として橋の如く、整個の字是れ四笔を以て写し成る——四は偶数に属し、偶は陰なり、故に女を生ず;您の写せる此の『元』の字は、頭尾昂揚して神有り、只だ三笔を以て写し成る——三は奇数に属し、奇は陽なり、故に男を生ず。連ねて笔画の奇偶をも分かち清めず、なお何の字をか測らん?邵康節先生曾て曰く——『字同事同じからざれば、此に宜しくして彼に宜しからず;事同じく字同じからざれば、倏に吉を変じて凶を変ず』。説く所正に是れ此の道理」。
門字・行期と功名を問う
門字。一官欲赴京選,問行期,書門字,兼叩功名事。余曰:「此字問功名,可謂大利,但行期遲緩,當為年翁細析其疑。夫門,可開可閉。今方冬令,天地閉藏猶門之閉,進出不通。若交春令,萬物萌芽猶門之開,往來甚便。以此推之,今歲尚未能行也。且字體乃朋來未齊之象,年翁必然等候親友同行,大抵在於新正耳。」其官曰:「弟實欲等浙中二友同行,約燈節前到,故問以決疑也。」
一位の官員京に入りて候選せんとし、動身の日期を問うに来り、一個の「門」の字を写し、同時にまた功名を問う。我曰く、「此の字以て功名を問えば、大利と算すべし;只だ是れ行期遅緩せん——容れ我が老先生の為に此の層の疑惑を細かに剖き開かん。『門』此の東西は開くべく閉づべし:眼下正に冬令に当たり、天地閉蔵す——譬えば門関ざるが如く、進出通ぜず;春令に交るを待てば、万物萌芽す——譬えば門開くるが如く、往来便ち極めて便当なり。此の様に推すに照れば、今年の内なお走り成らざらん。再者『門』の字左右の両扇対峙して中間空しき——是れ朋友已に来れりて未だ斉からざるの象、老先生一定に親友の結伴同行を待ち、大概正月裏に到るべし」。彼の官員曰く、「我確実に浙江の两位の朋友を待ちて同行せんと思う——彼ら元宵灯節の前に趕き到るを約定せり、故に来りて一問い、好く主意を定めんとす」。
幸字・病を問う
幸字。一人書幸字問病,余曰:「不吉。」因問病人年庚,曰:「四十九歲。」余曰:「幸字反有三不幸焉。問病不宜見士與木,今數中士木交加,一不幸也。木中桑木為最堅久,今不成桑木,二不幸也。不完五十,三不幸也。人不能全天命之年,雖幸,實不幸。逢辛日或辛月,恐不能僥倖。若捱過八月至十月,方可謂之幸也。」一月後果卒。
人の「幸」の字を写して病を問う有り。我曰く、「不吉」。於是病人の年歳を問う——答えて四十九と曰く。我曰く、「此の『幸』の字は反って三重の不幸を蔵す。第一、病を問うに最も『士』と『木』とを見るを忌む——『士』は棺前の牌位に象り、『木』は即ち棺木なり——如今此の字上下正に士木交加す、此れ一の不幸。第二、木料の裏は桑木を以て最も堅固耐久と為す、而して此の字は『桑』を凑成せず——此れ二の不幸。第三、四十九歳は一歳差して五十に満たず、天命の年周全を得ず——此れ三の不幸。人活きて天の与える所の年数に満たず——字は『幸』と名づくと雖も、其の実是れ不幸なり。再者『幸』と『辛』とは只だ一笔を差すのみ——辛日或いは辛月に遇上せば、只怕僥倖来らざらん;若し八月に熬え過ぎて十月に到る能くせば、始めて真の『幸』に算上ぐべし」。一個月後、病人果然去世す。
麟字・終身を問う
麟字。一人書麟字問終身,筆跡肥濃,橫直停勻而有神采。因顯唬骸按俗鄭?貴人之格也。其人曰:「我貧漢耳,何貴焉?」余曰:「年翁勿諱言,年翁之貴非自得之也。字後庇廕起手,當是襲職之官。字有戈戟之形,必居元戎之位。
人の「麟」の字を写して終身を問う有り。其の筆跡肥厚濃重、横竪停匀にして神彩を帯ぶ。我於是当面して曰く(底本此処幾字訛誤して読み難し、大意是れ「此の字是れ貴人の格局」)。其の人曰く、「我不過個の窮漢、何れにか貴を説くに足らん」。我曰く、「老先生諱言するを用いず。您の貴は自ら挣り来るに非ず:此の字後半は『粦』に従いて手を起こす——是れ庇蔭を承けて来る、当に是れ父祖の職位を承襲するの武官。字裏また戈戟の形状有り、必定に統兵主帥の位に居る」。
貴則貴矣,但一生不利於南。純水之形,宜往北方便利。二十上下,妻宮寂寞,夫人早已仙遊。三八之時,作事多應迷舛。末筆生三尾,子有河東。上有「六十」形,下有「死年」局,問壽只許六旬。縱然自少至老榮顯,若不升往北方不宜,兄弟不得力,六親無依。此狂瞽之言,請貴人取擇。若云非貴,豈其然乎?」
「貴は固然是れ貴なり、只是一生南方に利あらず。此の字是れ純水の形体、水性北に宜し——故に北方に往きて始めて便利なり。二十歳の上下、妻宮冷落し——尊夫人早已に过世せり。二十四歳の前後(三八相乗の数)事を弁ずるに多く迷乱差錯有り。末筆分かれて三尾を生ず——子息の事別に牽連有るを主る。字の上頭に『六十』の形状有り、下頭『死年』の局を結ぶ——寿数を問えば只だ六十に到るを許す。縱使少より老に至るまで栄顕すと雖も、若し北方に遷升せざれば便ち相宜ならず;兄弟力を得ず、六親倚り傍る所無し。此れら是れ我が狂瞽の言——貴人自ら斟酌取舍せんことを請う。若し您の貴ならざるを説かば、豈に会して此の様ならんや」。
其人始點頭曰:「弟非他,乃京口郭某也。現授廣東水師參將,今年二十九歲矣。二十四克妻。舍弟尚未登仕途。吾本籍北京,十五歲因難廕,即來江南,至今十五年矣。雖有一官,其實百事不遂。幸遇高明指教以南北之向,可謂之半仙也。」揖謝而去。
其の人此に於て始めて頭を点して曰く、「先生に瞞さず、我是れ別人に非ず、即ち鎮江の郭某なり。現在授かる所是れ広東水師参将、今年二十九歳。二十四歳の上妻子を克せり。舍弟未だ仕途に入らず。我本籍北京、十五歳の那年父の死難に因りて蔭職を得、便ち江南に来り、到今天整整十五年なり。一個の官銜を挂くると雖も、其の実百事遂わず。今天高明に遇うの幸有り、我に南北の方位の宜忌を指点す——先生真に半仙と称するを得」。説き罷めて揖を作して謝を道い而去る。
茆字・婚姻を問う
茆字。一人書茆字問婚姻,余曰:「極易成,但妓者耳,兄何留戀於彼耶?」其人笑曰:「果是!一美妓與我相處有年矣,今彼有從良之願,吾欲娶之,不識字理若何?而先生真可謂神見也。」余曰:「此字全是殘花敗柳之象,是以知其為妓也。末筆從節,猶可以為善,兄當娶。」
人の「茆」の字を写して婚姻を問う有り。我曰く、「極めて容易く成る、只だ是れ対方不過個の妓女——您何必彼女に留恋せんや」。其の人笑うて曰く、「果然!一個の美貌の妓女我と相処すること好幾年なり——如今彼女従良の意思有り、我彼女を娶らんと想う。此の裏頭の字理是れ怎様なるを知らず——先生真に神眼と謂うべし」。我曰く、「此の字草頭の下是れ花柳偏斜の形、通体皆な是れ残花敗柳の気象——故に彼女を断じて是れ妓女と為す。不過其の末筆『節』に従う、なお好き処に往き得——故に您尽く娶るべし」。
陸字・晴雨を問う
陸字。釗生書陸字問天晴雨,余曰:「必晴。」曰:「此時將午,已霏霏矣,安得晴乎?」曰:「包晴!字左乃陰不陰、陽不陽之象,本日天色自然晦而無雨。字右卻有兩個土字,土能克水,豈有雨乎?但土空則陷,恐來日當有雨耳。」果然。
釗生一個の「陸」の字を写して天気の晴雨を問う。我曰く、「一定に晴れん」。彼曰く、「眼下将に正午に近し、雨已に霏霏として下り起こりぬ——何を以てか晴れん」。我曰く、「包管晴れん!此の字左辺是れ耳刀(阜)——陰は陰を成さず陽は陽を成さず、故に今天の天色自然是れ陰晦にして雨下らず。字の右辺却って両個の『土』の字有り——土は能く水を克す、何れにか雨有らん?不過土一たび空虚なれば便ち塌陷せん——只怕明天倒に雨下るべし」。後来果然其の如し。
病字・病を問う
病字。一人書病字問病,余曰:「女乎?」曰:「然」。曰:「無妨!內省不疚,何憂何懼?上面主人安穩,下面內人端正,決無害。丙屬火,逢土日洩其氣,可愈。」其人去,未十日來雲病已愈。
人の「病」の字を写して病を問う有り。我曰く、「病むる是れ女人なるべしや」。彼曰く、「是れ」。我曰く、「事を妨げず!《論語》に曰く『内に省みて疚しからざれば、夫れ何を憂え何を懼れん』——此の字病頭の内に一個の『丙』を蔵す——身を反躬して省みて愧ずる無し、何必憂懼せん。字の上頭一点一横安安穏穏——是れ主人平安;下頭の『内』の字端端正正——是れ内人(妻室)恙無し、决然害無し。『丙』は天干に火に属す——土日に遇上せば火気泄を得、病便ち好くならん」。其の人回り去り、十天に到らずして便ち来りて病已に痊愈せりと曰う。
家字・家中の事を問う
家字。一遊宦書家字問家中事,余曰:「一家完全,人口皆安逸。守字頭,緣字腳,且在此地守祿,家中毋庸慮也。」至新正赴郡,得起復之信,自來述喜。
一位の外に在りて官を為す人一個の「家」の字を写して家裏の事を問う。我曰く、「一家完完全全、人口皆な安逸す。此の字上頭是れ『守』の字の頭(宀)、下頭是れ『縁』の字の脚(豕旁の形)——您眼下且く此の地に此の份の俸禄を守るを見るべし、家裏挂慮を用いず」。正月に到りて、彼府城に赴き、起用復職の信を得、親身来りて喜びを道う。
筆字・終身を問う
筆字。周龍從儀真至揚,攜一筆字問終身,余曰:「篤字頭,律字尾,中一豎有精神。逢丑年,交鴻運。十二年順利,家業長二千餘金。二十歲上下即走關津渡口,以建立功名。丰神雖瀟灑,但眉間定有傷痕。筆之為物縱然貴重,卻隨人掌握而行。以吾觀之,早年即當為入幕之賓,妻遲子晚,祖業又凋零虧煞個算頭,著實也,到後來受用些墨沈餘芬。」
周龍儀真より揚州に来り、一個の「筆」の字を帯びて終身を問う。我曰く、「此の字上頭是れ『篤』の字の頭(竹)、下頭是れ『律』の字の尾(聿)、当中一竪写して極めて精神有り。『篤』の字は馬に従う——丑年(牛馬の属)に逢えば便ち鴻運に交る、此の後十二年順順利利、家業二千多両の銀子に長じ得べし。二十歳の上下便ち関津渡口の一帯に奔走し、此のを以て功名を建立せんとす。此の人風神瀟洒たりと雖も、但し眉間一定に一塊の傷痕有り——竹頭の两撇分かれ開き、正に眉眼の位に落つ。筆は是れ貴重の物なりと雖も、却って総て別人の手掌の使喚に随う——故に我看るに照れば、彼早年便ち人家の幕客と為りて去做すべし;妻を娶ること遅く子を得ること晩く、祖上の産業また凋零して余る所幾無し——実実在在に一筆を亏空せり;後来に到りて始めて些かの筆墨余香の換え来る衣食を享用す」。
批畢,周友曰:「名不虛傳,此乃敝友邵令銘所書之字。今年二十八矣,尚未娶。本貫浙紹人,在敝衙門作幕數年。今又有吳江邑尊杜至彼,欲應聘,未知利否?至傷痕之說,尤屬如見。」余曰:「若往吳江更利。」於是別去。後十餘日復至,攜邵謝貼來,兼有詩曰:「閉臥青山愧丈夫。」可想見其平生矣。
批し罷めて、周龍曰く、「先生名虚伝ならず。此れ是我が朋友邵令銘の写せる字。彼今年二十八歳、未だ娶親せず;本籍是れ浙江紹興人、我らの衙門裏に在りて幾年の幕友を做れり。如今呉江県の杜県令彼を請い去らんとす——彼応聘せんと想う、利有り無きを知らず?眉間傷痕の彼の一句に至りては、尤其に親眼見たるが如く説き得たり」。我曰く、「若し呉江に去らば更に利有り」。於是別を道う。十幾天を過ぎて彼また来り、邵令銘の謝帖を帯び来る——帖裏なお一句の詩を附着せり、「青山に閉卧して丈夫に愧ず」——一個の懐才不遇・膝を抱えて空山にあるの書生、平生際遇亦た想い知るべし。
用字・求謁を問う
用字。一人書用字問求謁,余曰:「斷難見。」而其人曰:「我屢候之。」余曰:「雖屢候,彼終不能見也。」問何故,曰:「字之上半全是閉門不納之象,不獨閉門,而門內復將一木緊緊撐之,如此安能見之耶?」曰:「彼不出耶?」曰:「字乃截角之形,彼再不肯出頭也。」旁觀者皆撫掌稱快。
人の「用」の字を写して某人に求見を問う有り。我曰く、「断然見え難し」。其の人曰く、「我已に守候すること好幾回なり」。我曰く、「屢次守候すと雖も、彼終究您に見るを肯ぜざらん」。彼何故を問う。我曰く、「此の字の上半截、整個是れ門を閉じて納れざるの様子;不但門関ず、門裏頭なお一根の木杠を横たえて死死と撑住す——此の様に象れば、怎様に見え得られんや」。彼曰く、「彼出で来らざるか」。我曰く、「此の字是れ角を截去せるの形状、四角全からず——彼是れ再也不肯頭を出さざらん」。旁辺看る人皆な手を拍きて好しと叫ぶ。
歯字・行人を問う
齒字。有人書齒字問:「一人出外十餘年,何時回來?」余曰:「死矣。」問何故,曰:「太歲當頭,外邊重重險厄,終歸於凶,是以知其死也。不知年幾何?」曰:「三十六矣。」曰:「必死!齒,年數也。普天之下,從無三十七齒之人,今以此字問之,恰值三十六歲,吾知其必不能生還也。」
人の「歯」の字を写して問う——「一個の人門を出でて外に在ること十多年なり、什麼時候回り来るや」。我曰く、「已に死せり」。彼緣故を問う。我曰く、「此の字上頭是れ『止』、太歳頭に当たりて圧住す;外面重重包裹す、是れ険厄層層;到底凶象に帰す——故に彼の死せるを知る。彼今年多大なるを知らず」。答えて三十六と曰く。我曰く、「那是れ必死疑無し!『歯』即ち是れ年歳の意思——謂う所の『序歯』『歯徳』皆な年数を指す。普天之下従来三十七顆の牙歯を長ずる人有らず、如今彼恰好三十六歳にしてまた此の字を以て問う——牙歯の数已に尽頭に到るを見るべし、我彼の回り来らざるを断ず」。
其人泣曰:「神數!此吾弟也,一出不歸十餘年,杳無音信。昨有一友從比來,言在某處會見,適吾弟病篤,不能作書,剪髮辮寄歸,令其妻嫁,死後行囊如洗,蒙此友施棺殮葬。吾猶未深信,故特來一決。今如先生所斷,則事果實矣。且三十七齒之說,尤匪夷所思,寧不令人歎服?」
其の人哭きて曰く、「真是れ神算!此れ是我が弟弟、一出門十多年回らず、音信全無し。昨天一位の朋友彼の辺より来り、某処に於て彼を見たりと曰う——正に我が弟弟の病重く、信を写し成らざるに碰上り、便ち髪辮を剪り下げて彼に托して帯び回らしめ、彼の妻子をして改嫁せしむと叫び;死後行囊空空如洗たり——全く此の位の朋友に頼りて施舍の棺木を以て収殮安葬せり。我なお半信半疑なり、故に特地来りて先生の决断を求む。如今先生の断ずる所に照れば、彼の事情果然是れ真実なり。況や『三十七顆牙歯』此の一説、尤其に人の意表に出ず——怎んぞ人をして歎服せしめざらんや」。
吝字・婚姻を問う
吝字。一人書吝字問婚姻,余曰:「上有交歡之象,下有和合之形,姻緣可謂美矣,必成!」其人曰:「神數!本係成事,姑問之也。」
人の「吝」の字を写して婚姻を問う有り。我曰く、「此の字上半是れ『交』の字の頭、交歓の象有り;下半是れ『合』の字の口、和合の形有り。上交り下合す、姻縁美満と算すべし、必ず成る!」。其の人曰く、「真是れ神算!本来便ち是れ已に説定せしの事、不過姑且問うのみ」。此の一例正に対関法の用処を見る——一頭一尾各々一義を取り、合せて起これば便ち判語と成る。
弦字・伙友を問う
弦字。一人書弦字問曰:「聘一夥友,約在臘月前來,今已新正尚未見到。」余曰:「此人不來矣!字左乃膋蛇,字右乃玄武,二人相合已共事矣,豈來乎?」因批曰:「龜蛇二將相連,彼已別生枝葉,祖師不可認真,夥計須當另覓。」其人曰:「龜蛇之說信有之。吾聞其新遇一人,將有共事之意。吾疑信未定,故來問耳。」
人の「弦」の字を写して問う——「我一の合伙の朋友を聘請し、臘月前に来るを約好せり、如今已に正月にして未だ見ず」。我曰く、「此の人来らざらん!字の左辺是れ『弓』、屈曲して螣蛇の如し;右辺是れ『玄』、正に玄武に応ず。螣蛇・玄武の两位合して一処に在り——彼已に別人と搭伙共事するを説明す、何れにか来らん?」於是批して曰く、「亀蛇二将相连なり、彼已に別に枝節を生ぜり;真武祖師当真と為すべからず、伙計は須ち別に找むべし」。其の人曰く、「亀蛇の説確かに其の事有り。我彼の新近一個の人に遇上り、共事の意思有るを聴說せり。我半信半疑、故に来りて一問う」。
虬字・婚姻を問う
虯字。一人書虯字問婚姻,余曰:「必係寡婦,先私後娶,然卻易成。」其人背後一友笑曰:「請教字理。」余曰:「花燭之餘,豈非寡婦;傷風敗化,必有私情;幸王化雖敗壞之極而風聲只缺微邊,往來雖久而知者猶少也。」其人復問:「何日成婚?」余曰:「L 為半九之象,立春前五日成婚。」二人皆嘆曰:「神數!果日期盡不爽。」
人の「虬」の字を写して婚姻を問う有り。我曰く、「対方必定個の寡婦、先に私情有りて後に正式に迎娶す、不過此の門の親事倒に容易く成らん」。其の人身後の一位の朋友笑うて曰く、「其の中の字理を請教せん」。我曰く、「『虬』の字は虫に従い丩に従う——虫の字本は『燭』の字にして火旁を去れり、正に是れ花燭燃え過ぎたる之余、豈に是れ寡婦ならずや?虫また傷風敗化を主る——必ず私情有り。幸なる所是れ、王化敗壊して極処に到ると雖も、而して『風』の字只だ外辺の一点を缺く——風声未だ全く露出せず、両人往来久しきと雖も、知る人なお多からざるを見るべし」。其の人また問う、「何れの日か成婚せん」。我曰く、「末筆弯鈎是れ半個の『九』の字の象——立春前五日成婚せん」。両人倶に歎じて曰く、「神算!日期竟然一点も差わず」。
銭字・梅を観る
一人手持一錢置於几上,復指錢上順字問婚姻,余曰:「必成,況已成矣。」問故,曰:「錢乃團圓之物,外圓內方,地天交泰之義也。倒指順字,可謂手到即順也。」復問財氣,余曰:「惟財氣欠旺,只可二三分之利。」曰:「何故?」曰:「錢乃外實內虛之物,衣服什物雖有而資財恐不多也。且順字從三寫起,願字結局,只得三分如願耳。」
此の一則は「観梅」象を取るの例子——字を写さず、只だ眼前の物に就きて断を起こす。人の手裏に一枚の銅銭を拿りて几案の上に放ち、また指を倒して銭面の「順」の字を指して婚姻を問う有り。我曰く、「必ず成る、況や已に成れたり」。彼緣故を問う。我曰く、「銭是れ団団圓圓の東西、外圓にして内方、圓は天・方は地、天地を包む——正に《周易》地天交泰の義に合し、陰陽交通を主る。您また指を倒転して此の『順』の字を指す——謂うべし手到りて便ち順なりと」。彼再び財気を問う。我曰く、「只だ是れ財気旺ならず、至多二三分の利」。彼何故を問う。我曰く、「銭此の東西は外面是れ実にして当中是れ空——衣服器物有ると雖も、銭財恐怕多からざるを見るべし。再説『順』の字は『川』の字の三笔より頭を起こし、『願』の字に到りて始めて結局を算す——三笔起りて十分に到らず、故に只だ三分の如願を得るのみ」。
寅字・聖駕南巡を問う
寅字。正月初八,一人指時憲書上月建之寅字,問曰:「聞得聖駕南巡否乎?」余曰:「宇宙一人之象,正是兆民仰問聖上之字也。上有離宮之形,下有甲胃之人衛之,財巡必矣。寅,陽木。下月水日到。」後到二月初七壬午日,駐蹕維揚。
正月初八、人の暦書(時憲書)の上の月建の「寅」の字を指して問う——「聖駕南巡せんとするを聽説す、是れ真か」。我曰く、「『寅』の字上頭は宝蓋宇の如く、当中一横一竪宙の如し——正に是れ『宇宙一人』の象、恰恰として是れ万民天子を仰問するの字。字の上部に離宮の形状有り、離は南方と為る;下部に甲を披き胄を執るの人護衛する有り——南巡是れ必定なり。『寅』は五行に陽木に属し、木は水に生ず——下个の月水日に逢えば便ち到らん」。後来二月初七壬午日に到りて、御駕果然揚州に駐蹕す。
公字・合伙を問う
公字。一人以公字問事,久不與斷,平國先來者先測,而後至者次序應之,故不笪即斷也。至臨測時問之曰:「何事?」則曰:「忘之矣。」轉身即走。余曰:「來,且勿行!爾非真忘之也,不過因我之遲而生恚耳。」其人曰:「請說。」余曰:「字雖公字,卻有一團私心;況分字頭、去字腳,汝必與人共事,今欲分頭而去也。」
人の一個の「公」の字を拿りて事を問うに来る有り、我半日彼に断を与えず——一向に先に来る者は先に測り、後に到る者は依次に応対するを以てなり、故に立刻に便ち断ずる能わざりき。彼に輪るに等到りて我問う、「何の事を問う」。彼曰く、「忘れたり」。身を轉じて便ち走らんとす。我曰く、「回れ、且く走るを慢にせよ!你并に真に忘れたるに非ず、不過我が慢なるを嫌い、心裏気を生ぜしのみ」。其の人曰く、「先生に説き看よを請う」。我曰く、「此の字是れ『公』の字なりと雖も、裏頭却って一団の私心を蔵す——『公』の字下半正に是れ『厶』、厶即ち是れ私。況や其の上頭是れ『分』の字の頭、下頭是れ『去』の字の脚——你必定に人と合伙共事し、如今分頭散伙せんと想うを見るべし」。
其人曰:「誠如所言。我與表兄合夥開一銀店,將及三載。今欲分賬自開,不知吉凶何居?」余曰:「一言成訟,此話可謂難講矣。末筆更帶玄武,其中必主小人刁唆,不日將見官司,宜止之。」其人歎服。後旬日復來測定,自言:「承指教歸,並不言及分賬之事,而表兄與我甚相得,親許來歲分店各開矣。」
其の人曰く、「果然先生の説くが如し。我表兄と合伙して一間の銀店を開き、快く三年に満たんとす——如今賬を分かちて各々開かんと想う、吉凶如何なるを知らず」。我曰く、「『公』の字は八に従い厶に従う——一つの話句便ち訟事を惹き出だすを得、此の話算くべし開き難き口なり。其の末筆また玄武の形を帯ぶ、其の中必定に小人の旁より挑唆する有り——不日に便ち官に見えて官司を打たん、なお打住するを好しと為す」。其の人歎服す。十來天を過ぎて彼また来りて測り、自ら曰く、「先生の指教を承け、回去して後一字も賬を分かつの事を提げず——表兄我と反って十分和睦し、親口に明年両家を分かち各自経営するを答允せり」。
求財二字・生意を問う
求財二字。一人云:「我欲求財,請測一字。」余曰:「甚字?」其人呆視不動,余曰:「汝又不寫字,又不拈字,我即將求財二字測之。」其人曰:「知我作何生意?」余曰:「當是賣果子,否則必是樹上所生之物。」曰:「何方買賣?」曰:「東南買至西北方賣,先曾做過。有本而藝術不精,以致虧折。目今第二次矣。生意雖精而本又不足,意欲與人合夥同行也。是乎?否乎?」
人曰く、「我財を求めんと想う、先生に一個の字を測るを請う」。我問う、「何の字を測る」。其の人呆呆として看て動かず。我曰く、「你既に字を写さず、亦た字を拈らず——我便ち你の説く所の『求財』此の両個の字を拿りて測らん」。其の人曰く、「先生我の做る所何の生意なるを知るか」。我曰く、「当に是れ果子を売るべし、不然なれば亦た必定に樹上に長ずるの東西」。彼問う、「何れの一方に在りて買売を做す」。我曰く、「東南より買い入れ、西北に運びて売り出す。従前一回を做り過ぐ、本銭有りて手藝眼力精ならず、以致本を亏せり。眼下是れ第二回なり。此の一回生意是れ精なり、本銭また足らず、人と合伙して同じく去らんと想う。是れか非ずか」。
其人曰:「神數!果是往洞庭山買木瓜、香櫞等至淮北賣,前歲之貨大半黑爛,本折過半。今實約龍同行,利否?」曰:「利。」旁觀者問:「先生所言句句對針,而其理何所據,遂如此之應。」余曰:「求財二字皆有木形,故知買者果子也。求中全然見本而有不永之象,財中只有半本而有搬販之形,是以又知其前後事也。」又問:「何以知其前此藝之不精,而此番之精?」余曰:「求如喪字頭,是以知其不精;財如射字形,是以知其可中也。」
其の人曰く、「真是れ神算!我確実に是れ洞庭山に到りて木瓜・香櫞の一類を買い、淮北に運びて去りて売る。前年の貨大半黒爛し、本銭を一半以上折れり。如今実在に姓龍の者と約して同じく去る——利有りや」。我曰く、「利有り」。旁観の人問う、「先生の説く句句対症す、而して此の道理是れ何を根拠とするか、竟然応験すること此の地步に到る」。我曰く、「『求』『財』の両個の字裏皆な『木』の形を含む——故に彼の買う所是れ果子なるを知る。『求』の字裏明明白白として一個の『本』の字を見、而して長久すること能わざるの象を帯ぶ——故に前次本を亏せり;『財』の字は只だ半個の『本』有り、而して『貝』旁又是れ搬運販売の形——故にまた彼の前後両回の事を知る」。また問う、「怎様に彼の従前手藝精ならず、此の一回却って精なるを知りしか」。我曰く、「『求』の字は甚だ『喪』の字の頭に似る——喪なれば則ち成らず、故に従前精ならざるを知る;『財』の字は甚だ『射』の字の形状に似る——射れば則ち中る能くし、故に此の一回中るべきを知る」。
