北方七宿・女宿
須女四星,賤妾之稱,婦職之卑者。又為天之府藏,掌環佩帛布、列后妃御服、婦功之域。其北曰璃珠,後宮之府藏,主天下后妃,環佩之飾。敗瓜五星,主瓜果。瓠瓜五星,天子之果園,亦主瓜果。又主後宮陰謀之事。天津九星。一曰天江,主四瀆津樑,所以度神道四方也。輦東道四星,曰奚仲,主車正。〔元在輦道下。〕
須女四星は、「須」は賤妾の稱にして、婦職中地位卑下の者を指す。又天上の庫藏にして、環佩布帛を掌り、后妃衣服の陳列を掌り、婦功の屬する領域なり。其の北を「離珠」といふ、後宮の府庫にして、天下后妃の環佩首飾の事を主る(底本「璃珠」と作る)。「敗瓜」五星は、瓜果を主る。「瓠瓜」五星は、天子の果園にして、亦た瓜果を主り、又後宮中の陰謀を主る。「天津」九星は、一名「天江」、江・河・淮・濟の四瀆の津渡橋梁を主り、神道四方に通ずる津口と爲る。輦道の東なる四顆を「奚仲」といふ、奚仲は相傳へて夏代造車の祖とし、此の星は車正の官を主る。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本輦道の下に編せられたり。
諸國合十六星,趙二星在天田東,南越一星在趙南,周二星在羅堰東南,齊一星在越東,鄭一星在齊東,楚一星在鄭東北,秦二星在周之東,燕一星在鄭之東南,魏一星在楚東北、代二星在秦東,晉一星在燕東,韓一星在晉北,各主地。東甌在晉北,亦主其地。璃瑜、天壘城。〔說見虛宿。〕天錢。〔說見危宿。〕
「諸國」の一組共に十六星、各々戰國列國を以て名と爲し、占看の時何れの一顆か變あらば便ち何れの國の故地に應ず。趙二星は天田の東に在り(今の河北南部・山西中部)、南越一星は趙星の南に在り(今の兩廣)、周二星は羅堰の東南に在り(今の洛陽一帶)、齊一星は越星の東に在り(今の山東北部)、鄭一星は齊星の東に在り(今の河南中部)、楚一星は鄭星の東北に在り(今の湖北湖南)、秦二星は周星の東に在り(今の關中)、燕一星は鄭星の東南に在り(今の北京・遼西)、魏一星は楚星の東北に在り(今の豫北晉南)、代二星は秦星の東に在り(今の晉北)、晉一星は燕星の東に在り(今の山西)、韓一星は晉星の北に在り(今の豫西)。別に「東甌」は晉星の北に在り、今の浙南溫臺一帶を主る。「離瑜」「天壘城」の兩條の説解は虛宿に見る。「天錢」の一條の説解は危宿に見る。
北方七宿・虛宿
虛二星、冢宰官也,主北方祭、禱、祝。又主死喪哭泣,亦主風雨。東二星曰司命,主刑罰生算死喪之事。北二星曰司祿,主增益年德、官祿食料之事。東北二星曰司危,主驕溢以正下,又主臺榭死喪之事。又北二星曰司非,司過失,司命而下,皆置官也。壘壁陣。〔說見室宿。〕虛南二星曰哭,主哭泣死喪。
虛宿兩星は、冢宰の官にして、北方の祭祀・祈禱・祝告を主り、又死喪哭泣を主り、亦た風雨を主る。其の東なる兩顆を「司命」といふ、刑罰を主り、人の生死壽���と喪事とを掌る。其の北なる兩顆を「司祿」といふ、年壽德行・官爵俸祿と口糧とを增益するを主る。其の東北なる兩顆を「司危」といふ、驕奢を糾正して下情を整肅するを主り、又臺榭土木と死喪とを主る。更に北なる兩顆を「司非」といふ、過失を稽察するを主る。司命より下の此の數組は、皆天上の設けたる職官なり。「壘壁陣」の一條の説解は室宿に見る。虛宿の南なる兩顆を「哭」といふ、哭泣喪亡を主る。
又蓋屋南二星曰泣,主墳墓倚廬哭泣之事。〔元在蓋屋下。〕諸國東三星曰璃瑜。璃、圭衣;瑜,玉飾。婦人之服。又十三星曰天壘城,主鬼方、北夷也。〔此三者元在諸國〕壘壁陣其南四星曰敗臼,主敗亡災咎。〔舊在羽林軍下。〕
蓋屋星の南に別に兩顆ありて「泣」といふ、墳墓・居喪の結ぶ倚廬及び哭泣の事を主る。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本蓋屋の下に編せられたり。諸國星の東なる三顆を「離瑜」といふ――離は絲質の佩巾にして、瑜は美玉の飾件にして、合して婦人の服飾を指す。又十三顆ありて「天壘城」といふ、分野は鬼方・北狄の類の塞外部族を主る。此處底本脱文あり、校記「此三者元在諸國」の下當に闕字あるべし、下條の文句と相連して未だ斷れざるなり。壘壁陣の南なる四顆を「敗臼」といふ、敗亡災咎を主る。方括號内は宋人の校記にして、此の條は舊編羽林軍の下に在り。
北方七宿・危宿
危三星,天府也。一曰天市。主宗廟宮室,又主營造受藏之事。墳墓四星,為附座。主兆域死喪哭泣之事,北宮真武。虛危東南四星,虛梁。主靈廟祀禱之事。天津旁近河七星曰車府,近河。車輿之府,亦其官,為客館舍。南五星曰人星,一曰三臥星。主萬民,亦主處夜淫佚。又四星曰臼。上三星曰杵,皆主舂軍糧也。危南二星曰蓋屋,主治屋之官也。又南二星曰泣。〔說見虛宿。〕諸國東北十星曰天錢,錢帛所聚,軍之府藏也。〔元在天壘城下。〕離宮其北六星曰造父,主御馬,亦其官也。〔元在離宮下。〕
危宿三星は、天上の府庫にして、一名「天市」、宗廟宮室を主り、又營造と收納儲藏とを主る。「墳墓」四星は其の附座にして、墓域と死喪哭泣とを主り、北宮眞武の位に屬す。虛宿・危宿の東南なる四顆を「虛梁」といふ、陵廟の祭祀祈禱を主る。天津星の旁銀河に近き七顆を「車府」といふ、車輛の府庫にして、亦た車を掌る官なり、兼ねて賓客の館舍と作る。其の南なる五顆を「人星」といふ、一名「三臥星」、萬民を主り、亦た夜間の淫佚の事を主る。又四顆ありて「臼」といふ、其の上なる三顆を「杵」といふ、皆軍糧を舂搗するを主る。危宿の南なる兩顆を「蓋屋」といふ、房屋を修治するを掌る官なり。更に南なる兩顆を「泣」といふ、説解は虛宿に見る。諸國星の東北なる十顆を「天錢」といふ、錢帛の聚積する處にして、卽ち軍中の府藏なり。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本天壘城の下に編せられたり。離宮の北なる六顆を「造父」といふ、車馬を駕御するを主り、亦た馬を掌る官なり。校記――此の條は原本離宮の下に編せられたり。
北方七宿・室宿
營室二星,天子之宮也。一曰直宮,一曰清廟。為軍梁之府,又主土工。離宮六星,兩兩而居,在室上,為附座,天子別宮也。主假藏休息,滋幸之所。其北六星曰造父。〔說見危宿。〕次二十二星曰騰蛇,北方水蟲,主風雨。又南六星曰雷電,主雷電。西南二星曰公土公吏,訣備過失,主土之官。又南五星曰霹靂,西南四星曰雲雨。〔並說見壁宿。〕
營室兩星は、天子の宮室にして、一名「直宮」、一名「淸廟」、軍糧橋梁の府庫と爲り、又土木の工程を主る――古人此の宿の昏中の時に宮室を興造す、故名を營室といふ。「離宮」六星は兩兩對を成し、營室の上に位し、其の附座にして、天子の別宮を象し、臨時藏休して游幸滋息する所を主る。其の北なる六顆を「造父」といふ、説解は危宿に見る。其次の二十二顆を「騰蛇」といふ、北方の水蟲の象にして、風雨を主る。更に南なる六顆を「雷電」といふ、雷電を主る。西南なる兩顆を「土公」「土公吏」といふ、過失を稽核防備するを主り、土功を掌る官なり。更に南なる五顆を「霹靂」といふ、西南なる四顆を「雲雨」といふ、兩條の説解は倂せて壁宿に見る。
壘壁陣西抵虛宿東,近壁宿下,天軍營也。〔元在司非下。〕羽林軍四十五星,在室南,三三而居。市在壘壁陣南,主天軍,翊衛之象。其南四星曰敗臼。〔說見虛宿。〕上一星曰師門,主師門候兵。天庫之蕃落。斧鉞在師門南,主行誅拒難,斬伐奸謀。天綱一星,主武帳戈綱。壁東八星,曰八魁。主設機阱,張羅禽獸之官也。〔元在上公下。〕
「壘壁陣」は西端虛宿に抵り、東端壁宿の下に近づき、天上の軍營壁壘なり。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本司非の下に編せられたり。「羽林軍」四十五星は、營室の南に在り、每に三顆一組に分布し、壘壁陣の南に位し、天子の禁軍を主り、翊衛の象なり。其の南なる四顆を「敗臼」といふ、説解は虛宿に見る。其の上なる一顆を「師門」といふ、軍門候望の哨兵を主り、天庫の外圍藩籬なり。「斧鉞」は師門の南に在り、誅戮を執行し患難を抵禦し奸謀を斬除するを主る。「天綱」一星は、武帳と戈戟の綱紀を主る。壁宿の東なる八顆を「八魁」といふ、陷阱を設置し網を張りて獸を捕ふるを主り、田獵を掌る官なり。校記――此の條は原本上公の下に編せられたり。
北方七宿・壁宿
東壁三星,圖書之官,又主土功。其北十星天廄,主馬廄,亦具官,今之驛遞也。北五星曰王良。〔說見奎宿。〕南二星曰土公,主營造及稼牆,起土之官。又東八星曰八魁。〔說見室宿。〕又室南五星曰霹靂,主陽氣大盛,擊萬物。西南四星曰雲雨,主雲澤。〔此二者元在土公吏下。〕又奎南五星曰鈇鉞,乃芟刈之具,斬芻以種也。〔元在土司空下。〕
東壁三星は、圖書典籍を掌る官にして、又土木の工程を主る――古人壁宿を以て文章を主るとし、故に藏書の府は多く此に象を取る。其の北なる十顆を「天廐」といふ、馬廐を主り、亦た馬を掌る官にして、今の驛站傳遞に相當す。其の北なる五顆を「王良」といふ、説解は奎宿に見る。其の南なる兩顆を「土公」といふ、營造と稼穡とを主り、土を興すを掌る官なり(底本「稼牆」は當に「稼穡」と作るべし)。更に東なる八顆を「八魁」といふ、説解は室宿に見る。又營室の南なる五顆を「霹靂」といふ、陽氣過盛にして萬物を擊傷するを主る。西南なる四顆を「雲雨」といふ、雲澤雨露を主る。方括號内は宋人の校記にして、此の兩條は原本土公吏の下に編せられたり。又奎宿の南なる五顆を「鈇鉞」といふ、本是草を刈る器具にして、芻を斬りて耕に備ふるの義を取る。校記――此の條は原本土司空の下に編せられたり。
西方七宿
西方七宿・奎宿
奎十六星,曰天豕,一曰封豕。天之庫,主兵,所以禁暴橫也。又主溝瀆,其西南大星曰天豕目,亦曰大將。其上一星曰附路,閣道之便道路。天廄北五星曰王良,御車之事,主駕車馬。又為天橋,主津樑。又主風雨兵革之事。〔元在天廄下。〕
奎宿十六星は、形如大豬、故名を「天豕」といふ、「封豕」ともいふ。天上の武庫にして、兵事を主り、以て强暴横行を禁絕す。又溝渠水道を主る。其の西南なる其の大星を「天豕目」といふ、「大將」ともいふ。其の上なる一顆を「附路」といふ、閣道の旁の便道なり。天廐の北なる五顆を「王良」といふ――王良は春秋の時の著名の御手にして、此の星は駕車御馬の事を主る。又「天橋」ともいふ、津渡橋梁を主り、還た風雨と兵革とを主る。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本天廐の下に編せられたり。
婁北一星曰軍南門,主禁入以防益詐,軍營之南門也。〔元在左右更下。〕奎南七星曰外屏,主障蔽惡穢,遮擁天溷。南七星曰天溷,溷養之所。又南六星曰天倉。〔詳見婁宿。〕次一星曰土司空,主水土功利之官。又官五星曰缺鈇鉞。〔說見室宿。〕又東曰天庾。〔說見婁宿。〕
婁宿の北なる一顆を「軍南門」といふ、出入を稽查して以て奸詐を防ぐを主り、軍營の南門なり。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本左右更の下に編せられたり。奎宿の南なる七顆を「外屏」といふ、作用は汚穢を遮擋し、天溷を屏蔽す。其の南なる七顆を「天溷」といふ、豕豚を圈養する廁圂の所なり。更に南なる六顆を「天倉」といふ、詳しくは婁宿に見る。其次の一顆を「土司空」といふ、水土工程の利を掌る官なり。又五顆ありて「鈇鉞」といふ(底本「缺」の字は衍文なり)、説解は室宿に見る。更に東を「天庾」といふ、説解は婁宿に見る。
西方七宿・婁宿
婁三星,為天獄,主牧養犧牲,以給郊祀。亦為興兵聚眾。東西各五曰左右更,左主仁智、陂澤、林藪,小虞之官;右主禮儀牧養,為牧師之官。北一星曰軍南門。〔說見奎宿。〕北十一星曰天大將軍、用武兵之官。中大星,將;其小星,吏;左右星,為旗。又天溷南六星曰天倉,主藏五穀以待邦用。亦倉官。又鈇鉞東三星曰天庾,積穀之所。〔二者元在天溷、鈇鉞下。〕
婁宿三星は、天上の牢圈にして、牧養する祭祀に用ふる犧牲を主りて以て郊祭に供し、亦た兵を興し衆を聚めるを主る。其の東西兩側各々五顆、合して「左更」「右更」と稱す。左更は仁智の政と陂池藪澤とを主り、山澤を掌る小虞の官なり。右更は禮儀と畜牧とを主り、馬を牧るを掌る牧師の官なり。其の北なる一顆を「軍南門」といふ、説解は奎宿に見る。更に北なる十一顆を「天大將軍」といふ、兵を用ふるを掌る官なり――當中の大星は主將を象し、周圍の小星は僚吏を象し、左右の兩顆は旗幟と爲す。又天溷の南なる六顆を「天倉」といふ、五穀を儲藏して以て國用に備ふるを主り、亦た倉官を象す。又鈇鉞の東なる三顆を「天庾」といふ、露天の穀を積む處なり。方括號内は宋人の校記にして、此の兩條は原本天溷・鈇鉞の下に編せられたり。
西方七宿・胃宿
胃三星,天之廚藏,主倉庫,五穀之府也。又主討捕誅殺之事。北八星曰太陵,主陵墓喪死積京也。中一星曰積尸,陵中墓也,亦曰積京。昴北與大陵分勢,九星曰天船,主舟棹水旱之事。中一星曰積水,候水災。〔此元在雞石下。〕天阿、天陰。〔說見昂宿。〕遠胃十三星,曰天囷。主給御廩之繁盛,百庫之儲蓄。〔說見昴宿。〕
胃宿三星は、天上の厨房庫藏にして、倉廩を主り、五穀の府庫と爲り、又搜捕誅殺を主る。其の北なる八顆を「太陵」といふ(大陵とも寫す)、陵墓・喪死と屍を積みて丘と成すを主る。當中の一顆を「積屍」といふ、卽ち陵中の墓穴にして、「積京」ともいふ(京は高丘なり)。昴宿の北と大陵と兩側に分踞する九星を「天船」といふ、舟楫と水旱とを主る。船中の一顆を「積水」といふ、專ら水災を候す。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本礪石の下に編せられたり。「天阿」「天陰」の兩條の説解は昴宿に見る。胃宿を稍し離るる十三顆を「天囷」といふ、圓形の穀倉の象にして、御倉に供給する豊盈と各庫の儲蓄とを主る、説解は昴宿に見る。
西方七宿・昴宿
畢柄西星,曰天廩,御廩也。主蓄九穀,養犧牲以給祭祀,養膳之事。〔元在月星下。〕昴七星,天子再月。主西方,主獄事,又主喪。旄頭,胡星也。昴畢之間為街。北六星曰捲舌,主言語樞機之事,讒佞之侯。中一星曰天讒,主讒佞及醫巫。東南四星曰□石,主磨礪鋒刃,亦主阿候,明兵律,蓋百工之事。天船、積水。〔說見胃宿。〕
畢宿柄部の西なる幾顆の星を「天廩」といふ、卽ち御用の糧倉にして、九種の穀物を貯藏し、祭祀犧牲を豢養し、及び飲食の供膳を主る。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本月星の下に編せられたり。昴宿七星は、卽ち俗に呼ぶ七簇の小星(今の金牛座昴星團)にして、分野は西方を主り、刑獄の事を主り、又喪亡を主る。又「旄頭」ともいふ、胡人の星にして、邊地事あらば往往先づ此に應ず。昴宿と畢宿との間の空隙を「天街」といふ。昴北の六顆を「卷舌」といふ、言語樞機を主り、讒佞の小人の徵候なり。當中の一顆を「天讒」といふ、讒佞の人及び醫師巫祝を主る。東南の四顆を「礪石」といふ(底本此處一字脱し空闕と作る)、兵刃を磨礪するを主り、亦た關隘を守候し兵律を申明するを主る、總じて百工の事なり。「天船」「積水」の兩條の説解は胃宿に見る。
昴東一星曰月,太陰,蟾蜍,女后大臣之象。主刑及死喪事。昴西北一星曰天阿,類天高,主察候山林妖變。西南五星曰天陰,私潛謀之事。從天子,亦為弋獵臣也。〔此二者元在大陵下。〕
昴宿の東なる一顆を「月星」といふ、太陰に屬し、蟾蜍の象を取り、皇后と大臣との象徵にして、刑罰と死喪とを主る。昴宿の西北なる一顆を「天阿」といふ、性質は天高星に近く、山林間の妖異變怪を窺察するを主る。西南なる五顆を「天陰」といふ、私下の潛藏する謀劃を主る。天子に隨從し、亦た田獵に陪同する近臣を象徵す。方括號内は宋人の校記にして、此の兩條は原本大陵の下に編せられたり。
西方七宿・畢宿
天廩。〔說見胃宿。〕又十六星曰天苑。〔一曰在昴、畢南。〕養禽獸之所。亦其官也。天園。〔說見畢宿。〕天苑西六星曰芻藁,以給牛馬之用。〔元在天園下。〕畢八星為車,主戈〔弋〕獵邊兵,所以備敵寇。附耳一星,在畢左股下,為附座,主聽得失,伺愆邪,察不祥。
「天廩」の一條の説解は胃宿に見る。又十六星ありて「天苑」といふ(一説に昴宿・畢宿の南に在りとす)、禽獸を畜養する苑囿にして、亦た苑を掌る官を象す。「天園」の一條の説解は畢宿に見る。天苑の西なる六顆を「芻藁」といふ、牛馬を喂ふる乾草なり。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本天園の下に編せられたり。畢宿八星は形柄を帶びたる獵網か車のごとく、田獵と邊兵とを主り、以て敵寇に防備す(底本「戈」の字の下「弋」と夾注す、是れ當に弋獵と作るべしといふなり)。「附耳」一顆は畢宿左股の下に在り、附座にして、得失を探聽し愆邪を伺察し不祥を審視するを主り、君側に在りて耳を附けて言を進むる人のごとし。
又二星曰天街,主道路,天門之外街,為國界。陰陽之所分,三光之正道。街南為華廈,街北為絕塞。南八星曰天節,主郎將奉使也。南九星曰九州之殊口,主遠方通俗傳驛之官。
又兩顆ありて「天街」といふ、道路を主り、天門の外の街衢にして、亦た國境の分界なり。陰陽此處に劃分し、日月五星ここより正道に通行す。天街以南は華夏諸夏の地、以北は則ち絕遠の塞外なり。其の南なる八顆を「天節」といふ、郎將の節を持ちて出使するを主る。更に南なる九顆を「九州殊口」といふ、遠方異俗を接待し傳譯通事する驛官を主る。
東五星曰五車、柱。各三星,一曰天泉,一曰天林,一曰天榆。天子車舍,五帝座也。主產五稼以候豐儉。西大星為天庫神,又曰令尉,主太白、秦、雍,豆也。東北一星曰天獄,神曰風伯,主辰星、幽燕、趙,稻也。東南六星曰天倉,神曰雨師,主歲星,徐、魯、衛,麻桑也。東南星曰司空,神主填星,主荊楚,黍禾也。西南星曰卿,神曰豐隆,主熒惑,韓、魏,麥也。
畢宿の東なる五星を「五車」といふ、每の顆の旁各々三顆の小星を附して「柱」と稱し、「天泉」「天林」「天榆」と別名す。五車は天子の車庫にして、亦た五方天帝の座なり、五穀の生長を主り、據りて豊歉を候す。此の五顆は各々一神・一星・一地・一種の作物に配す――西邊の其の大星を天庫神と爲し、又令尉と稱し、太白金星に配し、分野は秦・雍(今の陝甘)に在り、豆を主る。東北の一顆を「天獄」といふ、其の神は風伯にして、辰星に配し、分野は幽燕と趙(今の河北山西)に在り、稻を主る。東南の六顆を「天倉」といふ、其の神は雨師にして、歲星に配し、分野は徐・魯・衛(今の蘇北魯豫)に在り、麻と桑とを主る。東南の別の一顆を「司空」といふ、其の神は塡星を主り、分野は荆楚(今の兩湖)に在り、黍と禾とを主る。西南の一顆を「卿」といふ、其の神は豊隆(雷神)にして、熒惑に配し、分野は韓・魏(今の河南)に在り、麥を主る。占看の時、何れの一顆か光明なれば便ち何れの一地の其の一種の作物か豊收を主る。
車中五星曰天潢,又曰潢,天池也。主河梁津渡之事。北三星曰咸池,魚囿,主陂澤、池沼、魚鱉、鳧鷹之事。五車南六星曰諸王,主宗廟,所以蕃屏王室,審察諸侯。又南四星曰天高,主望八方雲氣,觀臺之象。
五車圈内の五星を「天潢」といふ、亦た單に「潢」と稱し、卽ち天上の池沼にして、河梁津渡を主る。其の北なる三顆を「咸池」といふ、魚を養ふ苑囿にして、陂塘池沼と魚鼈鳧雁の事とを主る。五車の南なる六顆を「諸王」といふ、宗廟を主り、王室を藩屏し諸侯を考察するの義を取る。更に南なる四顆を「天高」といふ、八方の雲氣を瞭望するを主り、觀象臺の象なり。
西方七宿・觜宿
參西北九星曰參旗,天子之兵旗,所以尊君之進退也。又南九星曰九斿,一曰天旗,天號也。司弓弩,變候之候,以滅不虞。觜北一星曰天關,日月之行,為天門。主關閉,防道路之事。〔此元在觜下。〕又天苑之南九星,曰天園,囿也。掌蔬菜之官。〔元在天苑下。〕
參宿の西北なる九星を「參旗」といふ、天子の兵旗にして、以て君命の進退を標示す。其の南なる九顆を「九斿」といふ、一名「天旗」、天上の號令旗にして、弓弩兵器を掌り、專ら非常の變を候して、以て意外を消弭す。觜宿の北なる一顆を「天關」といふ、日月運行此處を經過し、天上の門戶にして、關隘の啓閉と道路の防衛とを主る。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本觜宿の下に編せられたり。又天苑の南なる九顆を「天園」といふ、園圃にして、蔬菜を掌る官と爲る。校記――此の條は原本天苑の下に編せられたり。
觜三星,三軍之侯,行軍之府藏,主褒旅收斂萬物。天關。〔說見畢宿。〕井西四星曰司怪,主諸災變而候祥異。〔元在四瀆下。〕車東九星曰座旗,主旗,表尊卑。〔元在五諸侯下。〕
觜宿三星(今の獵戶座頭部の三小星)は、三軍の斥候にして、亦た行軍の時の府庫なり、軍旅を犒賞し萬物を收斂するを主る。「天關」の一條の説解は畢宿に見る。井宿の西なる四顆を「司怪」といふ、各種の災變を主り、專ら祥異の兆を候す。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本四瀆の下に編せられたり。五車の東なる九顆を「座旗」といふ、旗幟を主り、以て尊卑の等次を標明す。校記――此の條は原本五諸侯の下に編せられたり。
西方七宿・參宿
參十星,一曰參伐,一曰大辰,又曰天市,又曰鈇鉞,又曰天獄,主殺伐權衡,所以平理。又主邊城九譯。參為白獸之體,中橫列三星,三將也。其肩:東北左肩,西北右肩,為左右將。足左為後將軍,右為偏將軍。故占參以應七將。中三小星曰伐,天之部御也,主戎狄之國。
參宿伐星を連ねて共に十顆、「參伐」「大辰」「天市」「鈇鉞」「天獄」と別名し、殺伐と權衡とを主り、持平裁斷の義を取り、又邊城と遠方譯語相通ずる諸國とを主る。參宿は西方白虎の軀體なり――當中橫列の三星は三位の主將を象し、兩肩の星は、東北なる者は左肩・西北なる者は右肩にして、左將軍と右將軍とを象す。兩足の星は、左足は後將軍を象し、右足は偏將軍を象す――故に參宿を占ふれば共に七位の將領に應ず。當中の三顆小星を「伐」といふ、天上の討伐を執行する部隊にして、分野は戎狄の國を主る。
右足旁四星曰玉井,主水泉,給尉用也。又南四星曰軍井,營之井,給師徒也。南二星曰屏,以蔽天廁。屏東四星曰天廁,主圓溷疚病之事。南一星曰天屎,主糞穢。丈人子孫。〔並說見井宿。〕
參宿右足の旁なる四星を「玉井」といふ、泉水を主り、軍尉の用に供給す。更に南なる四顆を「軍井」といふ、軍營中の水井にして、士卒に供給す。其の南なる二顆を「屏」といふ、以て天廁を遮蔽す。屏星の東なる四顆を「天廁」といふ、圂廁と疾病とを主る。更に南なる一顆を「天屎」といふ(天矢とも作る)、糞穢を主る――古人は其の色を觀て以て疫病の年成を候すべしと以爲せり。「丈人」「子」「孫」の三條の説解は倂せて井宿に見る。
南方七宿
南方七宿・井宿
井八星,天之南門,為亭候之所,黃道之所經,三光之正道,主水衡、法令、中平之事。鉞一星,附井前,為附座。主伺侯奢淫而斬之。南四星曰水府,水官也,主堤防溝瀆之事。又南四星曰四瀆,江、河、淮、濟之精。西司怪。〔說見觜宿。〕東北五星曰五諸侯,一曰帝師,二曰帝友,三曰三公,四曰博士,五曰大史。決斷疑獄,戒不虞,理陰陽,察得失。座旗。〔說見觜宿。〕
東井八星は、天上の南門にして、亭障候望の所と爲り、黃道は中より通過し、日月五星運行の正道なり。水衡(水利を掌る官)・法令及び持平中正の事を主る。「鉞」一顆は井宿の前に附し、附座にして、奢侈淫佚を伺察して之に誅斬を加ふるを主る。其の南なる四顆を「水府」といふ、水官にして、堤防溝渠を主る。更に南なる四顆を「四瀆」といふ、長江・黃河・淮水・濟水の四條大川の精氣の化する所なり。其の西の「司怪」は、説解は觜宿に見る。東北なる五顆を「五諸侯」といふ――第一顆は帝師と爲し、第二顆は帝友、第三顆は三公、第四顆は博士、第五顆は太史と爲し、職は疑獄を裁斷し意外を戒備し、陰陽を調理し得失を考察するに在り。「座旗」の一條の説解は觜宿に見る。
井東三星曰天樽。樽,器也。主盛饘粥以給貧餒。又東四星曰水位,主水衡。北三星曰北河,與南河夾東井為南北孤戍,亦曰陰門。又曰胡門,為除戶。北戍自首陽臺而北,負微垣而東,抵濊貊、鮮以為北紀,為陰國,自戍北,主攻伐之政。北一星曰積水,供酒用之官也,所以給酒食政。東南一星曰積薪,主外廚烹飪之事。東北四星曰□。〔說見鬼宿。〕
井宿の東なる三顆を「天樽」といふ、樽は酒食を盛る器皿にして、此の星は稠粥を盛りて以て饑貧を賑濟するを主る。更に東なる四顆を「水位」といふ、水衡の政を主る。其の北なる三顆を「北河」といふ、南河と一南一北にして東井を夾住し、合して南北兩處の戍守と爲し、北河は又「陰門」「胡門」ともいふ、「除戶」とも稱す。北面の此の戍所の對應する地界は、首陽臺より北に向ひ、紫微垣に背倚して東行し、直ちに濊貊・朝鮮に抵る、是を「北紀」と爲し、陰國に屬す。此の戍より以北は、征伐の政を主る。北河の北なる一顆を「積水」といふ、酒醴を供給する官にして、酒食の政を掌る。東南の一顆を「積薪」といふ、外厨の柴薪烹飪を主る。東北の四顆の名字は底本脱闕し、説解は鬼宿に見る(卽ち下文の「爟」星)。
南三星曰南河。與北河為相戍,南河為戍也。一曰陽門,一曰鉞,自弘農、函谷絕江漢,南達五嶺,循障而東,西抵越,嶲、東甌,兩戍之間,得山河分陝之限,是為帝闕。七曜之常道,亦為天街、南紀,為陽國,主禮樂之政。西南二星曰闕丘,兩觀也。所以布象緯,列尊卑也。
井宿の南なる三顆を「南河」といふ、北河と互に戍守と爲し、南河は卽ち南面の其の一戍にして、「陽門」ともいふ、「鉞」ともいふ。其の主ずる地界は、弘農・函谷關より起り、長江漢水を越え、南は五嶺に到り、邊障に沿ひて東行し、西は越嶲に抵り、東は東甌に至る。南北兩戍の間は、正しく山河分陝の界限を得、此れ便ち天上の帝闕なり。日月五星常に此に行き、「天街」「南紀」とも稱し、陽國に屬し、禮樂の政を主る。南河の西南なる兩顆を「闕丘」といふ、宮門前に對峙する兩觀(望樓)にして、以て天象圖緯を陳布し、尊卑の次第を排列す。
軍市十三星,在邱西,如天錢,天軍貿易之市也。市中一星曰野雞,精主之變怪,野外之郊政,以虞伏奸也。東南九星曰弧矢,外,矢弓也。一星,矢也。常屬天狗、狼星,陰謀備盜賊。又東南曰天社。〔說見鬼宿。〕次東北曰天狗。〔說見鬼宿。〕天稷。〔說見星宿。〕
「軍市」十三星は闕丘の西に在り、形天錢のごとく、天軍交易の市場なり。市中の一顆を「野雞」といふ、精怪變異を主り、兼ねて郊野の政を主り、以て潛伏の奸人を防範す。其の東南なる九顆を「弧矢」といふ、外圍八顆は彎曲して弓のごとく、當中一顆は箭のごとく、箭鋒は常に天狗と天狼の二星に指向し、陰謀盜賊に防備するを主る。更に東南なる者を「天社」といふ、説解は鬼宿に見る。其次の東北なる者を「天狗」といふ、説解も亦た鬼宿に見る。「天稷」の一條の説解は星宿に見る。
西南一星曰老人,主壽考,常以二分候之,春夕沒於丁,秋晨見於丙。又曰南極者,非樞極,蓋其所屬在於極南近北。天屎南二星曰丈人,主壽考,哀孤獨人之象。東二星曰子,主孝、愛、侍。又東二星曰孫,占如子。〔以上三者元在天屎下。〕
西南の一顆を「老人」といふ、卽ち老人星(今の船底座南極老人)にして、長壽を主る。之を觀測するは春分・秋分の兩節氣に固定す――春分の傍晚は西南の丁位より落ち、秋分の淸晨は南方の丙位より升る、見ゆれば天下安寧し、見えざれば兵起る。又「南極」ともいふ、然れども南天の極軸にあらず、只だ所在の處の南に偏するのみなり(底本「近北」は當に「近極」の誤と爲すべし)。天屎の南なる兩顆を「丈人」といふ、壽考を主り、孤獨の老人を哀憐する象徵なり。其の東なる兩顆を「子」といふ、孝順・慈愛・侍養を主る。更に東なる兩顆を「孫」といふ、占法は子星と同じ。方括號内は宋人の校記にして、以上の三條は原本天屎の下に編せられたり。
南方七宿・鬼宿
鬼四星,主觀明察奸、天目也。中一星曰積尸,又曰鈇鑕,主喪、門祀,誅斬鬼。東南星主積馬,東北星積兵,西南星積布絹,西北星積金玉。井東北四星曰爟,主四時變入,烽燧之官也。〔元在積薪下。〕又弧矢東南六星曰天社,土地之主,社神也。勾龍之精,上為此星,又主禱祀之官。〔元在弧矢下。〕次狼東北七星,曰天狗。主守禦,吠則應之。〔元在狼下。〕
輿鬼四星は、奸邪を明察するを主り、天の眼目なり。當中の一團の朦朧たる星氣を「積屍」といふ、「鈇鑕」(腰斬に用ふる砧板)ともいふ、喪事・門戶の祭祀と鬼物の誅斬とを主る。四星各々主る所有り――東南の一顆は馬匹の積聚を主り、東北の一顆は兵器の積聚を主り、西南の一顆は布絹の積聚を主り、西北の一顆は金玉の積聚を主る。井宿の東北なる四顆を「爟」といふ、四時更替の際の火を擧ぐるを主り、烽燧を掌る官なり。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本積薪の下に編せられたり。又弧矢の東南なる六顆を「天社」といふ、土地の主・社神の所在にして、相傳へて共工の子勾龍の精氣上りて此の星に應ずとし、此の星は又禱祀の官を主る。校記――此の條は原本弧矢の下に編せられたり。天狼星の東北なる七顆を「天狗」といふ、守衛防禦を主り、一たび動靜あらば便ち犬吠のごとく之に應ず。校記――此の條は原本狼星の下に編せられたり。
南方七宿・柳宿
柳南六星,曰外廚,天子之外廚,主烹宰以給宗廟。又東南一星曰天紀,主知禽獸齒,醫獸也。〔此二者在柳星下。〕柳八星,亦曰天相。又為鳥啄,又為天庫,天之廚官。主庖廚、烹祀、燕飲之事。亦主雷雨土功。外廚天紀〔並說見鬼宿。〕
柳宿の南なる六顆を「外厨」といふ、天子の外庖にして、宰殺烹調を主りて以て宗廟の祭享に供す。更に東南なる一顆を「天紀」といふ、禽獸の年齒を辨識するを主り、獸醫の官なり。方括號内は宋人の校記にして、此の兩條は柳宿の下に編せられたり。柳宿八星は、「天相」ともいふ、「鳥啄」(朱雀の喙)ともいふ、「天庫」ともいふ、天上の厨を掌る官にして、庖厨・烹祭・宴飲を主り、亦た雷雨と土木の功とを主る。「外厨」「天紀」の兩條の説解は倂せて鬼宿に見る。
南方七宿・星宿
軒轅右角,太民。西南三星曰酒旗,主饗宴酒食之事。亦為酒官之旗幟也。〔元在右角下。〕星七星,天都也,為朱雀頭。文明之紵,羽儀之所,主衣裳文繡,又主急兵盜賊。
軒轅星官の右角なる一顆を「太民」といふ。其の西南なる三顆を「酒旗」といふ、宴饗酒食を主り、亦た酒官の懸げたる旗幟なり(卽ち後世酒家の幌子を掛くる所本)。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本右角の下に編せられたり。七星宿共に七顆、天上の都城にして、朱雀の頭部と爲り、文采光明の聚まる所・羽儀華飾の在る所なり、衣裳文繡を主り、又突發の兵事と盜賊とを主る。
又北十七星軒轅,一曰東陵,一曰權,主雷雨之神,黃帝之神,黃龍之體,後宮之像,后妃之宮。主內政以弼太微。其南大星,少後也,南小星,女御也。左一星,少民,少後之宗。右一星,太民,太后之宗。次北一星,夫人也,屏也,上將也。北一星,妃也,次將也。餘皆次妃之屬。軒轅為權,太微為衡,南宮朱雀權衡也。
其の北なる十七星總名を「軒轅」といふ、「東陵」「權」と別名し、雷雨を主る神にして、亦た黃帝の神・黃龍の體なり、後宮を象し、卽ち后妃の宮室にして、内廷の政を主りて以て太微垣の外朝を輔佐す。此の十七顆の中、南邊の其の大星は少后を象し(今の獅子座軒轅十四)、其の南の小星は女御を象す。左邊の一顆を「少民」といふ、少后の宗親なり。右邊の一顆を「太民」といふ、太后の宗親なり。更に北なる一顆は夫人を象し、兼ねて屏障と爲り上將と爲る。更に北なる一顆は妃を象し、兼ねて次將と爲る。其餘の各星は皆次妃の類に屬す。軒轅は「權」を主り、太微は「衡」を主る、權は秤錘にして衡は秤杆なり、南宮朱雀の一區は便ち此の一權一衡に由りて合成し、輕重を權衡するの義を取る。
酒旗。〔說見柳宿。〕長垣少微〔說見太微垣。〕東三星曰天相,大臣之象,亦御府官也。中臺東南曰平星,執法平罪之官也。〔元在中臺下〕。中社東南五星曰天稷,〔稷〕之神也,又曰農正。〔元在天狗下。〕
「酒旗」の一條の説解は柳宿に見る、「長垣」「少微」の兩條の説解は太微垣に見る。其の東なる三顆を「天相」といふ、大臣の象にして、亦た御府庫藏を掌る官なり。中臺の東南を「平星」といふ、執法して罪を定め務めて持平を求むる官なり。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本中臺の下に編せられたり。天社の東南なる五顆を「天稷」といふ、稷神(穀神)にして、「農正」ともいふ(底本此處「稷」の一字を夾注し、又「中社」は當に「天社」と作るべし)。校記――此の條は原本天狗の下に編せられたり。
南方七宿・張宿
張六星,主朝服之制。又曰,六星主珍寶、宗廟、服用及衣服、飲食、賞賚之事。中四星又主輔臣也。張南十四星曰天廟,主祭祀天子之廟。東甌。〔說見翼宿。〕三臺太尊。〔並說見太微垣。〕
張宿六星は、朝服の禮制を主る。一説に此の六顆は珍寶・宗廟・器用及び衣服・飲食・賞賜の諸事を主り、當中の四顆は還た兼ねて輔弼の臣を主るとす。張宿の南なる十四顆を「天廟」といふ、天子宗廟の祭祀を主る。「東甌」の一條の説解は翼宿に見る、「三臺」「太尊」の兩條の説解は倂せて太微垣に見る。張宿は朱雀の嗉囊にして、古人は嗉中の納る所は卽ち珍膳服御の物と以爲せり、故に此の宿の主ずる所は全て衣冠・飲食・寶藏・賞賜の類の内府の事に屬す。占看の時、若し張宿の星色明潤ならば、府庫の充盈・賜与の得當を主り、暗昧失色なれば則ち服御の度を失ひ賞罰明ならざるを主る。
南方七宿・翼宿
翼二十二星,天之樂府,亦主遠方賓客、淮海之賓。明堂、靈臺。〔並說見太微垣。〕次天廟東南五星,曰東甌。南越蠻夷之星也。〔元在天廟下。〕
翼宿二十二星は、天上の樂府にして、音樂歌舞を掌り、亦た遠方より來朝する賓客を主り、尤も淮海一帶の賓使を主る。「明堂」「靈臺」の兩條の説解は倂せて太微垣に見る。其次天廟の東南なる五顆を「東甌」といふ、南越蠻夷の星にして、分野は今の浙南閩北一帶に在り。方括號内は宋人の校記にして、此の條は原本天廟の下に編せられたり。
南方七宿・軫宿
軫四星,輔相之臣也。軫主車騎,又主任載,及風雨死喪之事,出入皆占之。左右轄二星。左轄為同姓,右轄為異姓,主侯王。長沙一星,在於軫中。長沙主壽命。東七星曰青丘,南方蠻夷之國。西二星曰天門,天子之軍門也。南四星曰土司空,主界城人民之事。其直南三十二星曰器府,樂府也。
軫宿四星は、輔相の臣を象す。軫は本車厢底部の橫木にして、故に此の宿は車騎を主り、又負載運輸を主り、兼ねて風雨と死喪とを主る。凡そ車駕の出入は皆之を占看す。軫宿の旁に「左轄」「右轄」の兩顆あり、轄は車軸兩端の鍵なり――左轄は同姓の諸侯を象し、右轄は異姓の諸侯を象し、皆侯王を主る。「長沙」一顆は軫宿の正中に在り、人の壽命の長短を主る。其の東なる七顆を「靑丘」といふ、南方蠻夷の國なり。其の西なる兩顆を「天門」といふ、天子の軍門なり。其の南なる四顆を「土司空」といふ、疆界城邑と百姓の事とを主る。正南の三十二顆を「器府」といふ、卽ち樂府にして、樂器を收藏する所なり。
十二分野
二十八宿,天之列舍,象分於其間,猶有九州分佈列舍。眾星分佈於其間,如地有九州而萬物居其內。故古者以列舍紀天之度,而國別為十二次,乃氣接於其間。典籍所載入,時見於書,而初未於某宿之某度,應其野之某州,皆不詳著。
二十八宿は周天の一圈の驛舍にして、天象は便ち此れらの驛舍の中に分布す、正しく大地の九州に劃れ、各種の物類其の内に分居するがごとし。故に古人は一面に二十八宿を用ゐて以て周天の度數を標記し、一面に又國別に按じて周天を十二段に切りて「十二次」と呼び、天地の氣は便ち此れらの段落の間に彼此相接し互相感應すと以爲せり。歷代の典籍は雖時に分野に提到すれども、究竟某宿の第幾度か某一片の地域の何れの州に對應するかは、曾て交代明白ならず。
《周禮》則九國土皆有分星而不列宿次之文,其地所載又復不一。班固始備載十二次於篇,說者曰光祿劉向之言也。以配十二分野而後世用焉。考天官之學,傳自巫咸、石申、班固、費直、蔡邕、李淳風、一行,其說皆不同。一行作《大衍曆考古》,以十道州郡配以參之。然斗牛之分主吳越星辰,西南之星而配在周邦,綿亙萬里,至兗州皆鄭分;而桐柏正在《禹貢》之豫州,為宋分;而淮泗又在《書》之揚州。占之而應驗,如有深義,大抵古今事殊,州郡數易,九分之中,故以角亢鄭分為首焉。
《周禮》は只だ九州各々屬する所の分星ありと説くのみにして、宿次の條文を排出せず、且つ各書の記する地界も一致せず。東漢の班固《漢書・地理志》を寫すに至りて、始めて十二次を完整地に篇中に載入し、論者は此れ實に光祿大夫劉向の説に出づとし、以て十二分野に配し、後世便ち沿用せり。細かく此の天官の學を考するに、巫咸・石申より、班固・費直・蔡邕に至り、再び唐初の李淳風と僧一行に至るまで、各家の説法皆相同じからず。一行は《大衍歷》を撰して倂せて古義を考訂し、改めて唐代十道州郡を用ゐて以て比配參校せり。然れども仍ほ難通の處あり――斗・牛の分は本吳越を主るに、卻りて西南方位の星を以て周地に配し、地界は綿亙萬里して兗州一帶に到るまで皆鄭分と算し、桐柏山は明明《禹��》のいふ豫州に在るに、卻りて宋分と斷じ、淮水泗水一帶は又《尚書》の揚州に見ゆ。然れども之に據りて占驗せば竟に每每應驗し、似たり自ら深意あるがごとし。大抵古今の情勢同じからず、州郡の建置屢々更改あり、本書は九分の中、便ち角・亢の主ずる鄭分を以て首と爲し、依次排列す。
壽星之次・角亢(鄭、兗州)
壽星之次角、亢,壽星之次。初軫十二度,外末氐四度內。於分在鄭,於辰在辰,於野為兗州。自原武、管城,渡河、濟之南,東至封丘、陳留,盡陳、蔡、汝南之地。逾淮源,至於弋陽,西涉南陽,至於桐柏,東北抵嵩山之陽,東涉壽星之次,當洛邑眾山之東,次南直穎之間,太昊之墟,為亢分。南抵淮,氣連鶉尾,在周之東陽,並無角分。今乃開封、陳留、封丘以內,大河以南,並穎、陳、蔡、光、黃、壽州之西界,皆鄭分也。
第一次を「壽星」といふ、所轄は角・亢の兩宿なり。其の起訖の度數は、軫宿十二度の外に起り、氐宿四度の内に止まる。國に按じて鄭に分屬し、十二辰に按じて辰位に居り、九州の野に按じて兗州に屬す。具體の地界――原武・管城より起り、黃河・濟水を渡りて南へ、東は封丘・陳留に到り、陳・蔡・汝南の一帶を涵蓋し(約今の河南中東部)、淮河の源頭を越えて弋陽に到り、西に南陽を經て桐柏山に到り、東北は嵩山の南に抵る。其中の東段は壽星之次に進入り、洛邑の群山以東に位し、南面正しく潁水の間に對する太昊の故墟(今の河南淮陽一帶)なる者は、亢宿の分に屬す。南は淮河に到り、氣脉は鶉尾と相連なりて、周の東陽一帶に在る者は、則ち角分に屬さず。宋朝の建置に折合すれば、開封・陳留・封丘以内、黃河以南、連ねて潁・陳・蔡・光・黃及び壽州の西界は、皆鄭分なり。
大火之次・氐房心(宋、豫州)
木火之次氐、房、心,大火之次。初氐四度,末尾九度內。於分為宋,於辰在卯,於野為豫。自雍丘而東,循濟陰分於齊魯,右四水,達於呂梁,東南抵淮,西接太昊之墟,自商毫負北河,為心分。自豐沛以直河南,為房分,故其下流皆為尾分同占。西接陳、鄭,為氐分。今開封之東,亳、壽之東界,徐、濟、曹、單,皆宋分。
第二次を「大火」といふ(底本は「木火之次」と題す、「木」は「大」の字の誤なり)、所轄は氐・房・心の三宿なり。氐宿四度に起り、尾宿九度の内に止まる。國に按じて宋に分屬し、十二辰に按じて卯位に居り、九州の野に按じて豫州に屬す。地界――雍丘より東へ、濟陰に沿ひて齊魯と分界し、右に四水を挾み、直ちに呂梁に到り、東南は淮河に抵り、西邊は太昊の故墟に接上す。其中商丘・亳邑より黃河北岸に背靠する一段は、心宿の分に屬す。豊縣・沛縣より黃河以南に直到る一段は、房宿の分に屬す、故に此の一帶の下游も亦た一倂に尾宿の分を以て占ふ。西邊陳・鄭に接連するは、氐宿の分に屬す。宋朝の建置に折合すれば、開封以東、亳州・壽州の東界、及び徐・濟・曹・單の諸州は、皆宋分なり。
析木之次・尾箕(燕、幽州)
析木之次尾、箕,析木之次。初尾九度外,末斗十一度內。於分為燕,於辰在寅,於野為幽。自漢渤海、九河之北皆析木之次。尾星得雲漢之末派,海物龜、魚繫焉。故當九河之下流,濱為渤海、碣,皆北絕之所窮,與南相近。故其分自遼水之陽,盡朝鮮三韓之地。在吳越之東,北平、廣信、安乾、永靜、保定、順安、保雄、莫霸、大遼之東偏,與高麗皆燕分也。
第三次を「析木」といふ、所轄は尾・箕の兩宿なり。尾宿九度の外に起り、斗宿十一度の内に止まる。國に按じて燕に分屬し、十二辰に按じて寅位に居り、九州の野に按じて幽州に屬す。地界――漢代の渤海郡及び九河以北の一帶は、皆析木之次に在り。尾宿は正しく銀河の末流に當り、故に海中の龜鼈魚類の事は皆此に繫る。其れ九河の下游に對應し、渤海と碣石とに瀕臨し、北方陸地の盡頭にして、南方と海を隔てて相望す。故に此の分野は遼水の北より起り、一直に朝鮮と三韓の地とを包盡す。位置は吳越の東北方に在り、宋朝の建置に折合すれば、北平・廣信・安肅・永靜・保定・順安・保州・雄州・莫州・霸州、及び遼國の東半部と高麗とは、皆燕分に屬す。
