商書 盤庚上第九
盤庚五遷,將治亳殷,民諮胥怨。作《盤庚》三篇。
盤庚は五回遷都し、まさに亳殷を治めんとした。人民は嘆息して互いに怨恨した。《盤庚》三篇を作った。
盤庚遷於殷,民不適有居,率籲眾慼出,矢言曰:“我王來,既爰宅於茲,重我民,無盡劉。不能胥匡以生,卜稽,曰其如臺?先王有服,恪謹天命,茲猶不常寧;不常厥邑,於今五邦。今不承於古,罔知天之斷命,矧曰其克從先王之烈?若顛木之有由櫱,天其永我命於茲新邑,紹復先王之大業,厎綏四方。”
盤庚は殷に遷り、人民はこの居処を好まず、ここに衆の憂戚の人を呼召して出でさせ、陳述して言った。「わが先王が来て、すでにここに住を改めたのは、わが人民を重視し、人民をしてみな殺害せしめざらんとしたのだ。もし互いに匡正して生存することができざれば、問卜して稽考しても、またどうしようか。先王は事あるに、恭敬謹慎して天命に対待し、なお長久安寧することができず。都邑を固定することができず、今までですでに五つの邦だ。今、古人を継承せざれば、上天が決断する命を知らず。いわんや先王の功業に跟従しうるを言わんや。倒伏の樹木にもなお新芽あるがごとく、上天は大概わが命をこの新邑に長久せしめ、続けて���王の大業を恢復し、四方を安定せしめん。」
盤庚斅於民,由乃在位以常舊服,正法度。曰:“無或敢伏小人之攸箴!”王命眾,悉至於庭。
盤庚は人民を開導し、位に在る大臣を通じて旧有の制度を用い、法度を端正した。言った。「小民の規箴を隱伏せしむるを敢えてする者あらしめるなかれ。」王は衆人に命じて、みな庭中に至らしめた。
王若曰:“格汝眾,予告汝訓汝,猷黜乃心,無傲從康。
王はこのように言った。「来い、汝ら衆人よ。私は汝らに告げ、汝らを訓誡し、汝らの私心を去掉せんことを謀求す。傲慢するなかれ、安逸を貪るなかれ。
古我先王,亦惟圖任舊人共政。王播告之,修不匿厥指。王用丕欽;罔有逸言,民用丕變。今汝聒聒,起信險膚,予弗知乃所訟。非予自荒茲德,惟汝含德,不惕予一人。予若觀火,予亦拙謀作,乃逸。
(盤庚が続けて言うには、)昔、わが先王もまた、ただ旧人を任用して共同で執政するを謀求したのみ。先王は文告を頒布し、修治してその意旨を隱匿せず。先王はこれにより大いに敬重を受け、過当の言なく、人民はこれにより大いに改変した。今、汝らは喧嘩吵閙し、起ちて険悪虚浮の言を相信す。私は汝らが何を争訟しているか知らず。これは私が自らこの徳を荒廃したのではなく、ただ汝らが徳を含蔵して、わが一人を畏懼せざるなり。私は火を看るがごとく清楚である。私もまた謀画作為に拙く、汝らをして安逸せしめた(この句は底本が艱澀。一説に『私がもし謀画に拙ければ、汝らは放逸するであろう』)。
若網在綱,有條而不紊;若農服田,力穡乃亦有秋。汝克黜乃心,施實德於民,至於婚友,丕乃敢大言汝有積德。乃不畏戎毒於遠邇,惰農自安,不昏作勞,不服田畝,越其罔有黍稷。
(盤庚が続けて言うには、)網が綱にあるがごとく、条理あって紊亂せず。農夫が田畝に従事するがごとく、努力して耕作してこそ秋收あらん。汝らが私心を去掉し、切実の徳を人民に施し、婚姻朋友に至るまで及ぼせば、こそ大言して汝らに積徳ありと言う。もし遠近の大害を怕れず、懶惰の農夫が自ら安逸し、努力して作労せず、田畝に従事せざれば、ここに黍稷あらざらん。
汝不和吉言於百姓,惟汝自生毒,乃敗禍奸宄,以自災於厥身。乃既先惡於民,乃奉其恫,汝悔身何及!相時憸民,猶胥顧於箴言,其發有逸口,矧予制乃短長之命!汝曷弗告朕,而胥動以浮言,恐沈於眾?若火之燎於原,不可向邇,其猶可撲滅。則惟汝眾自作弗靖,非予有咎。
(盤庚が続けて言うには、)汝らはよき言を百姓に和諧して宣布せず、ただ汝らが自ら毒害を生出し、ここに敗乱・禍患・内外の奸悪をなして、自ら自身を災害する。汝らはすでに先に悪を人民に加え、再びあの痛苦を承受す。自身を悔悟するもどうして及ばん。あの小民を看よ。なお彼此あの規箴の言を顧念す。いわんや口を出せば過失あらん、いわんや私が汝らの性命の短長を掌握しているをや。汝らはなぜ私に告げず、浮言をもって互いに煽動するか。衆人を沈溺に拖入せんことを恐れんや。火が原野上に延焼するがごとく、靠近すること能わずとも、なお撲滅しうる。これはただ汝ら衆人が自ら不安定を成したので、私に過錯あるのではない。
遲任有言曰:‘人惟求舊,器非求舊,惟新。’古我先王暨乃祖乃父胥及逸勤,予敢動用非罰?世選爾勞,予不掩爾善。茲予大享於先王,爾祖其從與享之。
(盤庚が続けて言うには、)遲任に言あり。『人は旧きを尋求し、器具は旧きを尋求するなかれ、ただ新しきのみ。』昔、わが先王と汝らの祖父父親は、みな共同で労逸し、私は敢えて不当の刑罰を動用せんや。世世代代汝らの功労を計数し、私は汝らの善を掩蓋せず。今、私は先王を大祭し、汝らの祖先もまたこれに跟従して祭祀を享受せん。
作福作災,予亦不敢動用非德。
(盤庚が続けて言うには、)福を作し灾を作すも、私はまた敢えて不当の賞罰を動用せず。
予告汝於難,若射之有志。汝無侮老成人,無弱孤有幼。各長於厥居。勉出乃力,聽予一人之作猷。
(盤庚が続けて言うには、)私は艱難を汝らに告ぐるに、射箭に靶心あるがごとし。汝らは老成の人を軽侮するなかれ、孤幼を弱視するなかれ。各自長久に自らの居処に住め。努力して汝らの気力を使出し、わが一人の作す謀画に聴従せよ。
無有遠邇,用罪伐厥死,用德彰厥善。邦之臧,惟汝眾;邦之不臧,惟予一人有佚罰。凡爾眾,其惟致告:自今至於後日,各恭爾事,齊乃位,度乃口。罰及爾身,弗可悔。”
(盤庚が続けて言うには、)遠近を論ぜず、刑罰をもって死罪を懲治し、徳をもって善行を表彰す。邦国が美好なれば、これは汝ら衆人の力。邦国が不好なれば、これはわが一人に失罰の罪あり。およそ汝ら衆人、互いに転告せよ。今より後に至るまで、各自汝らの職事を恭敬し、汝らの位を整粛し、汝らの口を節度せよ。刑罰が汝らの身に加われば、悔悟すべからざるなり。」
商書 盤庚中第十
盤庚作,惟涉河以民遷。乃話民之弗率,誕告用亶。其有眾鹹造,勿褻在王庭,盤庚乃登進厥民。曰:“明聽朕言,無荒失朕命!嗚呼!古我前後,罔不惟民之承保。後胥慼鮮,以不浮於天時。殷降大虐,先王不懷厥攸作,視民利用遷。
盤庚は興起し、河を渡って人民を帶領して遷徙せんとした。ここにあの遵循せざる人民を会合し、誠意をもって大いに告諭した。あの衆人はみな至り、軽慢するなかれ、王庭にあり、盤庚はここに人民をして上前せしめた。言った。「明白にわが言を聴け。わが命令を荒廃丟失するなかれ。ああ、昔、わが先君、人民を承保せざるなし。君主はみな憂戚にして過失少なく、よって天時に背逆せず。殷地に大灾が降したとき、先王は自らの造る所に留戀せず、人民の利益を看て遷徙した。
汝曷弗念我古後之聞?承汝俾汝惟喜康共,非汝有咎比於罰。予若籲懷茲新邑,亦惟汝故,以丕從厥志。
(盤庚が続けて言うには、)汝らはなぜわが古代先君の傳聞を想想せざるか。汝らを承奉して汝らをして安楽と共享を喜ばしめたのは、汝らに罪あるにより刑罰に比照したのではない。私がこの新邑を懐念するを呼籲するも、また汝らのためなり。来て先王の心志に大大に順從せん。
今予將試以汝遷,安定厥邦。汝不憂朕心之攸困,乃鹹大不宣乃心,欽念以忱動予一人。爾惟自鞠自苦,若乘舟,汝弗濟,臭厥載。爾忱不屬,惟胥以沈。
(盤庚が続けて言うには、)今、私はまさに汝らを帶領して遷徙し、邦国を安定せんと試行す。汝らはわが心裏の困苦を憂慮せず、卻ってみな大大に汝らの心を宣明せず、誠意をもってわが一人を感動���るを敬念せず。汝らはただ自らを窮困し自らを苦しむ。船に乗るがごとく、汝らは渡り去らず、載する所を腐臭せしめん。汝らの誠意は連接せず、ただともに沈没するのみ。
不其或稽,自怒曷瘳?汝不謀長以思乃災,汝誕勸憂。今其有今罔後,汝何生在上?今予命汝,一無起穢以自臭,恐人倚乃身,迂乃心。予迓續乃命於天,予豈汝威,用奉畜汝眾。
(盤庚が続けて言うには、)稍も考察せず、自ら發怒してまたどうして病愈せん。汝らは長遠の謀画を作してあの灾禍を想わず、卻って大いに人に憂愁を勸む。今はただ今日ありて明日なし。汝らは何を憑って世上に生活せん。今、私は汝らに命令す。一律に汚穢を揚起して自らを臭くするなかれ。人が汝らの身子に倚靠し、汝らの心を歪めるを怕る。私は上天に向かい汝らの命を迎續す。私はいずれか汝らを威嚇せん。これはもって汝ら衆人を奉養するのだ。
予念我先神後之勞爾先,予丕克羞爾,用懷爾,然。失於政,陳於茲,高後丕乃崇降罪疾,曰‘曷虐朕民?’汝萬民乃不生生,暨予一人猷同心,先後丕降與汝罪疾,曰:‘曷不暨朕幼孫有比?’故有爽德,自上其罰汝,汝罔能迪。古我先後既勞乃祖乃父,汝共作我畜民,汝有戕則在乃心!我先後綏乃祖乃父,乃祖乃父乃斷棄汝,不救乃死。
(盤庚が続けて言うには、)私は想起す。わが神聖の先君は汝らの祖先を労苦した。私は汝らを進献して養育せんと很想し、もって汝らを懐念せん。然るに政事が失誤し、久しくここに留まれば、偉大なる先君は重ねて罪疾を降下して曰く、『なぜわが人民を虐害するか』と。汝ら万民がもし生生不息せず、わが一人と同心を謀求せざれば、先君は汝らに罪疾を降下して曰く、『なぜわが幼孫と親近せざるか』と。ゆえに差錯ある徳あれば、上頭よりすれば汝らを懲罰し、汝らは逃脫の法なし。昔、わが先君はすでに汝らの祖父父親を労苦し、汝らはともにわが畜養の民を作る。汝らの心にもし戕害あらば、わが先君は汝らの祖父父親を安定せしめ、汝らの祖父父親はすなわち決然として汝らを拋棄し、汝らの死を救わざらん。
茲予有亂政同位,具乃貝玉。乃祖乃父丕乃告我高後曰:‘作丕刑于朕孫!’迪高後丕乃崇降弗祥。
(盤庚が続けて言うには、)今、私に乱政の人ありて官位に同在し、貝玉を聚斂す。汝らの祖父父親はすなわちわが先君に告げて曰く、『わが子孫に大いに刑罰を用いよ』と。開導すれば先君は重ねて不祥を降下せん。
嗚呼!今予告汝:不易!永敬大恤,無胥絕遠!汝分猷念以相從,各設中於乃心。乃有不吉不迪,顛越不恭,暫遇奸宄,我乃劓殄滅之,無遺育,無俾易種於茲新邑。
(盤庚が続けて言うには、)ああ、今、私は汝らに告ぐ。この事は容易ならず。永遠にこの大憂恤を敬慎せよ。互いに疎遠隔絶するなかれ。汝らは分かれて謀慮思念して相従し、各自心中に中道を設立せよ。もし不善不道、顛狂して逾越して恭敬せず、詐偽に遇えばすなわち内外の奸悪をなすあらば、私は鼻を割って滅絶し、遺種を留めず、彼らをしてこの新邑に種を換えしめざらん。
往哉!生生!今予將試以汝遷,永建乃家。”
(盤庚が続けて言うには、)行け。生生不息せよ。今、私はまさに汝らを帶領して遷徙し、永遠に汝らの家を建立せん。」
商書 盤庚下第十一
盤庚既遷,奠厥攸居,乃正厥位,綏爰有眾。曰:“無戲怠,懋建大命!今予其敷心腹腎腸,歷告爾百姓於朕志。罔罪爾眾,爾無共怒,協比讒言予一人。
盤庚はすでに遷徙し、居処する所を安定し、ここに位子を端正し、衆人を安撫した。言った。「嬉戲怠惰するなかれ。努力して大命を建立せよ。今、私は心腹腎腸を攤開し、わが心志を汝ら百姓に一一陳述す。私は汝ら衆人に罪を加えず、汝らはともに發怒して讒言を聯合編造し、わが一人を針對するなかれ。
古我先王將多於前功,適於山。用降我兇,德嘉績於朕邦。今我民用蕩析離居,罔有定極,爾謂朕曷震動萬民以遷?肆上帝將復我高祖之德,亂越我家。朕及篤敬,恭承民命,用永地於新邑。肆予沖人,非廢厥謀,吊由靈各;非敢違卜,用宏茲賁。
(盤庚が続けて言うには、)昔、わが先王は前人の功労を増多せんとして、山地に遷った。よってわが凶灾を降下し、美好の功績をわが邦に降した。今、わが人民はこれにより動盪分散して居処を離れ、固定の止極なし。汝らは私に問う、なぜ万民を震動して遷徙するかと。それゆえ上帝はまさにわが高祖の徳を恢復し、治理してわが家に至らしめんとす。私はここに篤厚敬慎し、恭敬して人民の命を承受し、もって永遠に新邑に住せん。ゆえに我が年輕人は、あの謀画を廢棄するにあらず、善く神靈の指示に従うなり(「弔由霊各」は一説に『善く神靈の分別して降した命を用いる』)。敢えて卜問に違背するにあらず、ただこの美事を光大せんと欲す。
嗚呼!邦伯師長百執事之人,尚皆隱哉!予其懋簡相爾念敬我眾。朕不肩好貨,敢恭生生。鞠人謀人之保居,敘欽。今我既羞告爾於朕志若否,罔有弗欽!無總於貨寶,生生自庸。式敷民德,永肩一心。”
(盤庚が続けて言うには、)ああ、邦伯・師長・百執事の人よ、なおみな体恤せよ。私は努力して汝らを簡選察看し、わが民衆を敬重することを記憶す。私は貪貨の人を任用せず、敢えてあの生生の道を恭敬す。人民を養育し、人民のために安定の居所を謀求する者を、等次に按って敬重す。今、私はすでにわが心志の可否を汝らに進告した。不敬あらしめるなかれ。貨寶を聚斂するなかれ、生生を功とせよ。徳を人民に施行し、永遠に一心を堅持せよ。」
商書 説命上第十二
高宗夢得說,使百工營求諸野,得諸傅巖,作《說命》三篇。
高宗は傅説を夢見、百官をして野外に營造尋求せしめ、傅巖にて彼を得た。《説命》三篇を作った。
王宅憂,亮陰三祀。既免喪,其惟弗言,群臣鹹諫於王曰:“嗚呼!知之曰明哲,明哲實作則。天子惟君萬邦,百官承式,王言惟作命,不言臣下罔攸稟令。”
王は居喪し、諒陰三年。すでに喪を除したが、彼は言を発せず。群臣はみな王に進諫して言った。「ああ、知るを明哲という。明哲は実に法則を制作す。天子は万邦に君臨し、百官は法式を承奉し、王の言はこそ命令を作成す。言わざれば臣下は命令を領受する処なし。」
王庸作書以誥曰:“以臺正於四方,惟恐德弗類,茲故弗言。恭默思道,夢帝賚予良弼,其代予言。”乃審厥象,俾以形旁求於天下。說築傅巖之野,惟肖。
王はこれにより書を作り誥告して言った。「私をして四方の表率とせしむるは、ただ徳が先王に似ざるを怕れて、ゆえに言わざるなり。恭敬して沈黙に道を思索し、上帝が我に賢良の輔弼を賜与するを夢見、彼をしてわが代わりに言わしめん。」ここにあの形象を審定し、人をして形貌に按って天下に廣く尋求せしめた。傅説は傅巖の野で版築し、容貌はきわめて相似たり。
爰立作相。王置諸其左右。
ここに立てて相とした。王は彼を自らの左右に置いた。
命之曰:“朝夕納誨,以輔臺德。若金,用汝作礪;若濟巨川,用汝作舟楫;若歲大旱,用汝作霖雨。啟乃心,沃朕心,若藥弗瞑眩,厥疾弗瘳;若跣弗視地,厥足用傷。惟暨乃僚,罔不同心,以匡乃闢。俾率先王,迪我高後,以康兆民。
彼に命令して言った。「朝夕教誨を進納し、もってわが徳を輔佐せよ。金属のごとく、汝をもって磨石とせよ。大河を渡るがごとく、汝をもって船桨とせよ。年歳の大旱のごとく、汝をもって及時の雨とせよ。汝の心を打開し、わが心を澆灌せよ。薬が人をして暈眩せしめざれば、その病は能く好えざるがごとく、赤足にして地面を看ざれば、その脚はこれにより傷うがごとし。汝と汝の同僚、同心せざるなし。来て汝の君主を匡正せよ。能く先王に遵循し、わが高祖を開導し、もって億兆の人民を安康せしめよ。
嗚呼!欽予時命,其惟有終。”
(高宗が続けて言うには、)ああ、わがこの時の命令を敬慎し、好き結末あらしめよ。」
說復於王曰:“惟木從繩則正,後從諫則聖。後克聖,臣不命其承,疇敢不祗若王之休命?”
傅説は王に回復して言った。「木は繩墨に服從すれば正しく、君主は諫浄に聽従すれば聖なり。君主が能く聖なれば、臣子は命令を待たずに承奉す。誰か敢えて王の美命に恭敬順従せざらん。」
商書 説命中第十三
惟說命總百官,乃進於王曰:“嗚呼!明王奉若天道,建邦設都,樹后王君公,承以大夫師長,不惟逸豫,惟以亂民。惟天聰明,惟聖時憲,惟臣欽若,惟民從乂。惟口起羞,惟甲冑起戎,惟衣裳在笥,惟干戈省厥躬。王惟戒茲,允茲克明,乃罔不休。惟治亂在庶官。官不及私暱,惟其能;爵罔及惡德,惟其賢。
傅説は命を受けて百官を総領し、ここに王に進言して言った。「ああ、明王は天道を奉承順從し、邦国を建立し都邑を設立し、后王君公を樹立し、下に大夫師長を承える。これは安逸享楽のためではなく、ただもって人民を治めるためなり。天は聡明であり、聖人はこれを效法し、臣子は敬慎して順從し、人民は治理に服從す。口は羞辱を惹起し、甲冑は兵戎を惹起し、衣裳は箱の中に置き(妄りに賜うなかれ)、干戈は自らを省察すべし(妄りに動かすなかれ)。王はただこれらを警戒し、確かにこれらを明了すれば、美ならざるなし。治と乱は衆官に在り。官は私用親昵の人に与えるなかれ、ただその才能を用いよ。爵は惡徳の人に与えるなかれ、ただその賢を用いよ。
慮善以動,動惟厥時。有其善,喪厥善;矜其能,喪厥功。惟事事,乃其有備,有備無患。無啟寵納侮,無恥過作非。惟厥攸居,政事惟醇。黷予祭祀,時謂弗欽。禮煩則亂,事神則難。”
(傅説が続けて言うには、)考慮を完善して後に行動し、行動はただ時に適え。自ら善ありと為せば、すなわちその善を喪失す。自らの能を誇耀せば、すなわちその功を喪失す。何の事を為すにも、みな準備あるを要し、準備あれば憂患なし。寵幸を開啓して侮慢を招来するなかれ、過錯を恥と為して改めず、反って非を為すなかれ。ただ汝の安処する所を看よ、政事はこそ純粋ならん。わが祭祀を褻瀆するは、これを不敬という。礼が煩すぎれば乱れ、神明に事奉するは困難なり。」
王曰:“旨哉!說。乃言惟服。乃不良於言,予罔聞於行。”說拜稽首曰:“非知之艱,行之惟艱。王忱不艱,允協於先王成德,惟說不言有厥咎。”
王は言った。「味美なるかな、説よ。汝の言は実行しうる。汝がもし善言せざれば、私は聴きて実行する由なし。」傅説は跪拜して叩頭し言った。「知るは難からず、実行するがこそ難し。王が誠心なれば難からず、確かに先王の成徳に協合しうる。わが傅説が言わざれば罪過あらん。」
商書 説命下第十四
王曰:“來!汝說。臺小子舊學於甘盤,既乃遯於荒野,入宅於河。自河徂亳,暨厥終罔顯。爾惟訓於朕志,若作酒醴,爾惟麴糵;若作和羹,爾惟鹽梅。
王は言った。「来い、汝説よ。我が小子は昔、甘盤に学び、後に荒野に隱避し、黄河の辺に入りて居住した。河より亳に至り、最終までも顕達せず。汝はわが心志を訓誡せよ。酒醴を作るがごとく、汝はすなわち酒曲糵なり。和羹を作るがごとく、汝はすなわち塩と梅なり。
爾交修予,罔予棄,予惟克邁乃訓。”
(高宗が続けて言うには、)汝は多方面に私を修養し、私を拋棄するなかれ。私は必ず汝の訓誡を踐行しうる。」
說曰:“王,人求多聞,時惟建事,學於古訓乃有獲。事不師古,以克永世,匪說攸聞。惟學,遜志務時敏,厥修乃來。允懷於茲,道積於厥躬。惟斅學半,念終始典於學,厥德修罔覺。監於先王成憲,其永無愆。惟說式克欽承,旁招俊乂,列於庶位。”
傅説は言った。「王よ、人が多聞を求取するは、事業を建立するためなり。古訓に学習してこそ收獲あらん。事を為して古人に效法せずして、能く世に長久するは、わが傅説の聞いた所にあらず。学習は謙遜に心志し、時時敏疾にして、修養はこそ到來せん。確かにこれらを懐けば、道は自らの身に積聚せん。人に教うるは学習の半ばなり。始終思念して常に学に在れば、あの徳の修養は不知不覚の中に在らん。先王の成法を察看すれば、永遠に過失なからん。わが傅説はこれにより能く敬承し、廣く杰出の人才を招致し、諸々の位子に列せん。」
王曰:“嗚呼!說,四海之內,鹹仰朕德,時乃風。股肱惟人,良臣惟聖。
王は言った。「ああ、説よ。四海の内、みなわが徳を仰望す。これは汝の教化なり。股肱あってこそ人を成し、良臣あってこそ聖を成す。
昔先正保衡作我先王,乃曰:‘予弗克俾厥後惟堯舜,其心愧恥,若撻於市。’一夫不獲,則曰時予之辜。佑我烈祖,格於皇天。爾尚明保予,罔俾阿衡專美有商。惟後非賢不乂,惟賢非後不食。其爾克紹乃闢於先王,永綏民。”
(高宗が続けて言うには、)昔、先世の執政・保衡(伊尹)はわが先王を成就し、ここに曰く。『我が君主をして堯舜のごとくせしめざれば、心に愧耻して、市上に鞭打たるがごとし』と。一人の匹夫が所得せざれば、すなわち曰く、これはわが罪過なりと。わが烈祖を輔佑し、皇天に感通した。汝はなお明白に私を保護し、阿衡をして独り有商に美名を有せしめるなかれ。君主に賢人なければ治むる能わず、賢人に君主なければ俸祿なし。汝の君主を先王に紹述し、永遠に人民を安定せしむることを希望す。」
說拜稽首曰:“敢對揚天子之休命。”
傅説は跪拜して叩頭し言った。「敢えて天子の美命を對答宣揚せん。」
商書 高宗肜日第十五
高宗祭成湯,有飛雉升鼎耳而雊,祖己訓諸王,作《高宗肜日》、《高宗之訓》。
高宗は成湯を祭祀す。飛雉ありて鼎の耳に登り鳴いた。祖己は諸王を訓誡し、《高宗肜日》《高宗之訓》を作った。
高宗肜日,越有雊雉。祖己曰:“惟先格王,正厥事。”乃訓於王。曰:“惟天監下民,典厥義。降年有永有不永,非天夭民,民中絕命。民有不若德,不聽罪。天既孚命正厥德,乃曰:‘其如臺?’嗚呼!王司敬民,罔非天胤,典祀無豐於暱。”
高宗の肜祭の日、ここに雉鶏の鳴くあり。祖己は言った。「先ず王の心を端正し、再びその政事を端正せよ。」ここに王を訓誡した。言うには、「天は下方の人民を監察し、義をもって常法とす。降下する年壽に長短あり。これは天が人民を夭折せしむるにあらず、人民が自ら中道に命を斷つなり。人民に順わざる徳あれば、罪過を承認せず。天はすでに命令を付予してあの徳を端正せしめたるに、なお曰く、『どうすべきか』と。ああ、王の職司は人民を敬重するにあり、上天の後裔ならざるなし。祭祀を主るは近親の廟に過豊ならしむるなかれ。」
