Libo

商書 西伯戡黎第十六

先秦 · 佚名 · 第5巻 / 10

殷始咎周,周人乘黎。祖伊恐,奔告於受,作《西伯戡黎》。

殷は初めて周を怪罪し、周人は黎に戦勝した。祖伊は恐懼し、奔りて受(紂)に報告し、《西伯戡黎》を作った。

西伯既戡黎,祖伊恐,奔告於王。曰:“天子!天既訖我殷命。格人元龜,罔敢知吉。非先王不相我後人,惟王淫戲用自絕。故天棄我,不有康食。不虞天性,不迪率典。今我民罔弗欲喪,曰:‘天曷不降威?’大命不摯,今王其如臺?”王曰:“嗚呼!我生不有命在天?”祖伊反曰:“嗚呼!乃罪多,參在上,乃能責命於天?殷之即喪,指乃功,不無戮於爾邦!”

西伯はすでに黎に戦勝し、祖伊は恐懼し、奔りて王に報告した。言った。「天子よ。天はすでにわが殷の命を終結した。深く通ずる人が大亀に問卜するも、吉兆を敢えて知る者なし。これは先王がわら後人を保佑せざるにあらず、ただ王が淫戲してよって自ら絕滅す。ゆえに天はわらを抛棄し、安康の食物なし。天性を揣度せず、常典に遵循せず。今、わが人民は滅亡を想わざるなく、曰く。『天はなぜ威罰を降下せざるか』と。大命は來らず。今、王はどうせん。」王は言った。「ああ、私が生れたるは天に命ありではないか。」祖伊は反駁して言った。「ああ、汝の罪は多く、天上に排列す。なお上天に向かい命を責求しうるか。殷はすでに喪亡に接近す。汝の事を指出せば、汝の邦に害せざらんや。」

商書 微子第十七

殷既錯天命,微子作誥父師、小師。

殷はすでに天命を錯乱し、微子は父師・少師に誥を作った。

微子若曰:“父師、少師!殷其弗或亂正四方。我祖厎遂陳於上,我用沈酗於酒,用亂敗厥德於下。殷罔不小大好草竊奸宄。卿士師師非度。凡有辜罪,乃罔恆獲,小民方興,相為敵仇。今殷其淪喪,若涉大水,其無津涯。殷遂喪,越至於今!”曰:“父師、少師,我其發出狂?吾家耄遜於荒?今爾無指告,予顛隮,若之何其?”父師若曰:“王子!天毒降災荒殷邦,方興沈酗於酒,乃罔畏畏,咈其耇長舊有位人。

微子はこのように言った。「父師・少師よ。殷は大概四方を治理端正すること能わざらん。わが祖先成湯は功業を上に陳列したるに、わらは酒に沉酗し、下にあの徳を敗乱す。殷は小大を論ぜず草野の盜竊・内外の奸悪を喜ばざるなし。卿士は互いに效法し、みな法度に合せず。およそ罪過あるも、卻って常に捕らえ得ず。小民はまさに興起し、互いに仇敵をなす。今、殷は大概淪喪せんとす。大水を趟むがごとく、渡口と涯岸なし。殷はここに喪亡し、一直に今日に至る。」また言った。「父師・少師よ、私は出發して狂逃せんか。それともわが家の老人は荒野に逃遁せんか。今、汝らは私に指點告げず、私が跌倒坠落せば、どうせん。」父師はこのように言った。「王子よ。天は毒毒と殷邦に灾荒を降下し、まさに酒に沉酗するを興起し、ここに畏るべきを畏懼せず、年高の長者と旧有の祿位の人に違逆す。

今殷民乃攘竊神祗之犠牷牲用以容,將食無災。

(父師が続けて言うには、)今、殷民は居然として神祇の犧牷牲を盜竊し、もって自らを包容し、食らうも灾なし。

降監殷民,用又讎斂,召敵讎不怠。罪合於一,多瘠罔詔。

(父師が続けて言うには、)上天は殷民を監察するを降下し、また仇斂(横征暴斂)を用い、敵仇を招来してなお怠惰せず。罪惡は合して一となり、許多の貧病の人は告ぐる処なし。

商今其有災,我興受其敗;商其淪喪,我罔為臣僕。詔王子出,迪我舊雲刻子。王子弗出,我乃顛隮。自靖,人自獻於先王,我不顧行遁。”

(父師が続けて言うには、)商は今まさに灾あらんとす。わらは起ちてあの敗亡を承受せん。商がもし淪喪せば、わらは敵人の臣僕を為るを願わず。王子に出走を告げ、わが旧日の言う所の『刻子』(微子を指す。この句は歴來難解)を開導す。王子が出走せざれば、わらは跌倒坠落せん。各自安定を謀求し、各人自ら先王に獻身せよ。私はもはや逃遁の事を顧念せず。」

周書 泰誓上第一

惟十有一年,武王伐殷。一月戊午,師渡孟津,作《泰誓》三篇。

十一年、武王は殷を伐った。一月戊午、軍隊は孟津を渡り、《泰誓》三篇を作った。

惟十有三年春,大會於孟津。

十三年春、孟津に大会した。

王曰:“嗟!我友邦冢君越我御事庶士,明聽誓。惟天地萬物父母,惟人萬物之靈。亶聰明,作元后,元后作民父母。今商王受,弗敬上天,降災下民。沈湎冒色,敢行暴虐,罪人以族,官人以世,惟宮室、臺榭、陂池、侈服,以殘害於爾萬姓。焚炙忠良,刳剔孕婦。皇天震怒,命我文考,肅將天威,大勳未集。

王は言った。「ああ、わが友邦の大君とわが治事の衆士よ、明白にこの誓言を聽け。天地は万物の父母であり、人は万物の靈なり。真に聡明なる者は大君を為し、大君は人民の父母を為る。今、商王受は上天を敬せず、灾を下方の人民に降す。貪色に沉湎し、敢えて暴虐の事を為し、人に罪を加うるに族誅を用い、人を官に任ずるに世襲に按り、ただ宮室・臺榭・陂池・侈麗の衣服を經營し、もって汝ら万姓を殘害す。忠良を燒炙し、孕婦を剖剔す。皇天は震怒し、わが文考文王に命令し、嚴粛に天威を奉行せしめたが、大功はいまだ完成せず。

肆予小子發,以爾友邦冢君,觀政於商。惟受罔有悛心,乃夷居,弗事上帝神祗,遺厥先宗廟弗祀。犠牲粢盛,既於兇盜。乃曰:‘吾有民有命!’罔懲其侮。天佑下民,作之君,作之師,惟其克相上帝,寵綏四方。有罪無罪,予曷敢有越厥志?同力,度德;同德,度義。受有臣億萬,惟億萬心;予有臣三千,惟一心。

(武王が続けて言うには、)ゆえに我が小子發は、汝ら友邦の大君とともに、商の政事を觀察す。受に悔改の心なく、安然として平居し、上帝神祇に事奉せず、彼の先人の宗廟を丢下して祭祀せず。犧牲粢盛はすでに凶人に盜用された。卻って曰く、『我に人民あり、天命あり』と。自らの輕侮を懲戒せず。天は下方の人民を保佑し、彼らに君を立て、彼らに師を立て、ただ能く上帝を輔佐し、四方を寵愛安定せしめんがためのみ。有罪無罪、私はどうしてあの心志を逾越せん。力量が相同なれば、すなわち徳を衡量す。徳が相同なれば、すなわち義を衡量す。受に臣億万あるも、卻って億万條の心なり。我に臣三千あるも、ただ一條の心なり。

商罪貫盈,天命誅之。予弗順天,厥罪惟鈞。予小子夙夜祗懼,受命文考,類於上帝,宜於冢土,以爾有眾,厎天之罰。天矜於民,民之所欲,天必從之。爾尚弼予一人,永清四海,時哉弗可失!”

(武王が続けて言うには、)商の罪は貫串盈滿し、天命は彼を誅滅す。我がもし天に順わざれば、その罪は彼と相等し。我が小子は晝夜敬懼し、文考より命令を接受し、上帝を類祭し、大社を宜祭し、汝ら衆人を用いて、上天の懲罰を施行す。天は人民を憐憫し、人民の欲する所は、天は必ず聽從す。汝らはなおわが一人を輔佐し、永遠に四海を澄清せよ。時機は錯過すべからず。」

周書 泰誓中第二

惟戊午,王次於河朔,群后以師畢會。王乃徇師而誓曰:“嗚呼!西土有眾,鹹聽朕言。我聞吉人為善,惟日不足。兇人為不善,亦惟日不足。今商王受,力行無度,播棄犁老,暱比罪人。淫酗肆虐,臣下化之,朋家作仇,脅權相滅。無辜籲天,穢德彰聞。惟天惠民,惟闢奉天。有夏桀弗克若天,流毒下國。天乃佑命成湯,降黜夏命。惟受罪浮於桀。剝喪元良,賊虐諫輔。謂己有天命,謂敬不足行,謂祭無益,謂暴無傷。厥監惟不遠,在彼夏王。天其以予乂民,朕夢協朕卜,襲於休祥,戎商必克。受有億兆夷人,離心離德。予有亂臣十人,同心同德。

戊午の日、王は河北に駐紮し、各方の諸侯は軍隊を帶領して全部會合した。王はここに軍隊を巡視し宣誓して言った。「ああ、西土の衆人よ、みなわが言を聽け。私は聞く、吉人は善事を為して、ただ日子の足らざるを覺え。凶人は不善の事を為して、またただ日子の足らざるを覺え。今、商王受は力を竭くして法度なき事を為し、老人を拋棄し罪人を親近す。淫酗して放肆暴虐し、臣下もまたこのごとく化成し、朋黨は各自家を成して互いに仇視し、權柄を脅持して互いに消滅す。無辜の人は上天に呼吁し、汚穢の徳はすでに彰聞した。天は人民を惠愛し、君主は天を奉承す。有夏の桀は天に順うこと能わず、毒を下国に流した。天はここに成湯を保佑任命し、夏を廢黜する命を降下した。受の罪は桀を超過す。元良を剥奪喪失し、諫輔を賊害虐殺す。自ら天命ありと言い、敬は實行に値せずと言い、祭祀に益處なしと言い、暴虐に傷害なしと言う。彼の鑑戒は遠からず、すなわちあの夏王に在り。天は大概私をもって人民を治めんとす。わが夢はわが卜と相合し、重疊して美祥あり。戎に伐商すれば必ず勝たん。受に億兆の平人あるも、離心離徳なり。我に治理の臣十人あり、同心同徳なり。

雖有周親,不如仁人。天視自我民視,天聽自我民聽。百姓有過,在予一人,今朕必往。我武維揚,侵於之疆,取彼兇殘。我伐用張,於湯有光。勖哉夫子!罔或無畏,寧執非敵。百姓懍懍,若崩厥角。嗚呼!乃一德一心,立定厥功,惟克永世。”

(武王が続けて言うには、)至親あると雖も、仁人あるに如かず。天の看はわが人民の看よりし、天の聽はわが人民の聽よりす。百姓に過錯あれば、責任はわが一人に在り。今、私は必ず往かん。わが武事は發揚し、彼の疆界に侵入し、あの凶殘の人を捉えん。わが征伐は張大して、湯よりもさらに光あらん。努力せよ将士よ。畏るべきなしと為す者あるなかれ、寧ろ対方を敵手にあらずと認定せよ。百姓は恐懼戰慄し、額頭觸地崩角のごとし。ああ、汝らは一徳一心にして、あの功を立定せば、こそ世に長久しうる。」

周書 泰誓下第三

時厥明,王乃大巡六師,明誓眾士。

このとき天亮し、王はここに六軍を大いに巡視し、衆士に明白に宣誓した。

王曰:“嗚呼!我西土君子。天有顯道,厥類惟彰。今商王受,狎侮五常,荒怠弗敬。自絕於天,結怨於民。斫朝涉之脛,剖賢人之心,作威殺戮,毒痡四海。崇信奸回,放黜師保,屏棄典刑,囚奴正士,郊社不修,宗廟不享,作奇技淫巧以悅婦人。上帝弗順,祝降時喪。爾其孜孜,奉予一人,恭行天罰。古人有言曰:‘撫我則後,虐我則仇。’獨夫受洪惟作威,乃汝世仇。樹德務滋,除惡務本,肆予小子誕以爾眾士,殄殲乃仇。爾眾士其尚迪果毅,以登乃闢。功多有厚賞,不迪有顯戮。嗚呼!惟我文考若日月之照臨,光於四方,顯於西土。惟我有周誕受多方。予克受,非予武,惟朕文考無罪;受克予,非朕文考有罪,惟予小子無良。”

王は言った。「ああ、わが西土の君子よ。天に顯明の道あり、その法則は彰明すべきなり。今、商王受は五常を軽慢侮弄し、荒怠して敬せず。自ら天に絕え、人民と怨を結ぶ。早晨涉水する者の小腿を斫斷し、賢人の心を剖開し、威を作して殺戮し、四海を毒害す。奸邪を崇信し、師保を放黜し、常刑を屏棄し、正直の士を囚禁奴使し、郊社を修治せず、宗廟に歆享せず、奇技淫巧を作して婦人を取悅す。上帝は順從せず、斷然としてこの時の喪亡を降下した。汝らは孜孜努力し、わが一人を奉じて、恭敬して天の懲罰を執行せよ。古人に言あり、『我を撫愛するはすなわち君主、我を虐害するはすなわち仇敵』と。獨夫受は大肆して威を作す。すなわち汝ら世世代代の仇人なり。徳を樹立するは務めて滋長を求め、惡を除去するは務めて根を除くを求む。ゆえに我が小子は汝ら衆将士を帶領し、汝らの仇人を殄滅殲滅す。汝ら衆将士はなお果敢堅毅に進取して、もって汝らの君主を成就せよ。功多ければ厚賞あり、進取せざれば顯明の誅戮あり。ああ、わが文考は日月のごとく照臨し、光輝は四方に到達し、西土に顯耀す。わが周は多方を大受した。我がもし受に戦勝せば、これはわが武勇にあらず、ただわが文考に罪なきなり。受がもし我に戦勝せば、これはわが文考に罪あるにあらず、ただ我が小子が不好なり。」

周書 牧誓第四

武王戎車三百兩,虎賁三百人,與受戰於牧野,作《牧誓》。

武王は兵車三百輛、虎賁三百人をもって、受と牧野で交戦し、《牧誓》を作った。

時甲子昧爽,王朝至於商郊牧野,乃誓。

甲子の日、天まさに亮んとし、王は早晨商郊の牧野に到達し、ここに宣誓した。

王左杖黃鉞,右秉白旄以麾,曰:“逖矣,西土之人!”王曰:“嗟!我友邦冢君御事,司徒、司馬、司空,亞旅、師氏,千夫長、百夫長,及庸,蜀、羌、髳、微、盧、彭、濮人。稱爾戈,比爾幹,立爾矛,予其誓。”

王は左手に黃鉞を持ち、右手に白旄を持って指揮し、言った。「遙遠なるかな、西土の人よ。」王は言った。「ああ、わが友邦の大君と治事の人、司徒・司馬・司空、亞旅・師氏、千夫長・百夫長、および庸・蜀・羌・髳・微・盧・彭・濮人よ。汝らの戈を擧げ、汝らの盾を排好し、汝らの矛を豎立せよ。私は宣誓せん。」

王曰:“古人有言曰:‘牝雞無晨;牝雞之晨,惟家之索。’今商王受惟婦言是用,昏棄厥肆祀弗答,昏棄厥遺王父母弟不迪,乃惟四方之多罪逋逃,是崇是長,是信是使,是以為大夫卿士。俾暴虐於百姓,以奸宄於商邑。今予發惟恭行天之罰。

王は言った。「古人に言あり。『母鶏に報曉なく、母鶏が報曉すれば、この家は空ならん』と。今、商王受はただ婦人の言を聽き、昏乱して彼の陳設する祭祀を拋棄して回報せず、昏乱して彼の遺下する王父母弟を拋棄して進用せず、卻ってただ四方の多罪逃亡の人を推崇・擡高し、信任・使喚し、彼らをもって大夫卿士を為す。彼らをして百姓に暴虐し、商邑に内外の奸惡を為さしむ。今、我發はただ恭敬して天の懲罰を執行す。

今日之事,不愆於六步、七步,乃止齊焉。勖哉夫子!不愆於四伐、五伐、六伐、七伐,乃止齊焉。勖哉夫子!尚桓桓如虎、如貔、如熊、如羆,於商郊弗迓克奔,以役西土,勖哉夫子!爾所弗勖,其於爾躬有戮!”

(武王が続けて言うには、)今日の事、六步七步を過ぎずして、すなわち止まりて整齊す。努力せよ将士よ。四撃五撃六撃七撃を過ぎずして、すなわち止まりて整齊す。努力せよ将士よ。なお威武にして虎のごとく、貔のごとく、熊のごとく、羆のごとく、商郊にありて奔來投降しうる者を迎擊するなかれ。彼らをして西土に服役せしめよ。努力せよ将士よ。汝らがもし努力せざれば、すなわち汝ら自身に誅戮あらん。」

周書 武成第五

武王伐殷。往伐歸獸,識其政事,作《武成》。

武王は殷を伐った。往きて征伐し、歸りて野獸を處置し、あの政事を記錄して、《武成》を作った。

惟一月壬辰,旁死魄。越翼日,癸巳,王朝步自周,於徵伐商。

一月壬辰、旁死魄(月亮大半無光)。明日癸巳に至り、王は早晨周より步行出發し、往きて商を征伐した。

厥四月,哉生明,王來自商,至於豐。乃偃武修文,歸馬於華山之陽,放牛於桃林之野,示天下弗服。

四月、哉生明(新月初現)。王は商より歸り、豐に至った。ここに武事を停止し文教を修明し、馬を華山の南面に放歸し、牛を桃林の原野に放歸し、天下に向かい再び乘用せざるを表示した。

丁未,祀於周廟,邦甸、侯、衛,駿奔走,執豆、籩。越三日,庚戌,柴、望,大告武成。

丁未、周廟に祭祀し、邦内の甸・侯・衛の人は迅速に奔走し、豆と籩を持した。三日庚戌を過を過ぎ、燔柴・望祭し、武功の成就を大告した。

既生魄,庶邦冢君暨百工,受命於周。

既生魄(月亮大半有光)の後、衆邦の大君と百官は、周にて命令を接受した。

王若曰:“嗚呼,群后!惟先王建邦啟土,公劉克篤前烈,至於大王肇基王跡,王季其勤王家。我文考文王克成厥勳,誕膺天命,以撫方夏。大邦畏其力,小邦懷其德。惟九年,大統未集,予小子其承厥志。厎商之罪,告於皇天、后土、所過名山、大川,曰:‘惟有道曾孫周王發,將有大正於商。今商王受無道,暴殄天物,害虐烝民,為天下逋逃主,萃淵藪。予小子既獲仁人,敢祗承上帝,以遏亂略。華夏蠻貊,罔不率俾。恭天成命,肆予東征,綏厥士女。惟其士女,篚厥玄黃,昭我周王。天休震動,用附我大邑周。惟爾有神,尚克相予以濟兆民,無作神羞!既戊午,師逾孟津。癸亥,陳於商郊,俟天休命。甲子昧爽,受率其旅若林,會於牧野。罔有敵於我師,前徒倒戈,攻於後以北,血流漂杵。一戎衣,天下大定。乃反商政,政由舊。釋箕子囚,封比干墓,式商容閭。散鹿臺之財,發鉅橋之粟,大賚於四海,而萬姓悅服。”

王はこのように言った。「ああ、各方の諸侯よ。先王は邦国を建立し土地を開闢し、公劉は能く前人の功業を篤厚し、太王に至りて始めて王業の軌跡を奠定し、王季は王家に勤勞した。わが文考文王は能くあの功勳を成就し、天命を大受し、もって方夏を安撫した。大邦はその力量を畏懼し、小邦はその徳を懐念した。經營九年、大統はいまだ完成せず、我が小子はあの心志を継承す。商の罪を皇天・后土と所經過の名山大川に陳告して曰く、『有道の曾孫周王發、まさに商に大いに征正を舉行せん。今、商王受は無道で、天物を暴殄し、衆民を害虐し、天下の逃亡者の主人を為り、淵藪のごとく聚集す。我が小子はすでに仁人を獲得し、敢えて上帝を敬承し、もって乱謀を遏止せん。華夏蠻貊、從使せざるなし。上天の既成の命を恭奉し、ゆえに我は東征して、あの士女を安定す。あの士女は、筐に玄黃の帛を裝して、我が周王を昭示す。上天の美賜は震動し、よって我が大邑周に歸附す。汝らに神靈あれば、なお能く私を輔佐して億兆の人民を救助すべし。神明の羞辱を為るなかれ。すでに戊午に至り、軍隊は孟津を越えた。癸亥、商郊に陣に陣勢を擺開し、上天の美好の命を等待した。甲子の天まさに亮んとし、受はその部衆を率いて樹林のごとく多く、牧野に會合した。我が軍に敵擋する者なく、前の徒衆は戈を倒し、後のを攻擊してよって敗北し、血は流れて木杵を漂起す。一たび戎衣を穿けば、天下は大大に安定した。ここに商の苛政を反轉し、政事は旧典に依照した。箕子の囚禁を釋放し、比干の墓を封培し、商容の閭里を過る時に軾を撫して致敬した。鹿臺の財貨を散發し、鉅橋の粟を開き、四海に大加賞賜し、万姓はみな喜悦心服した。」

列爵惟五,分土惟三。建官惟賢,位事惟能。重民五教,惟食、喪、祭。惇信明義,崇德報功。垂拱而天下治。

爵位を排列するにただ五等、土地を分封するにただ三等。官職を建立するはただ賢のみ、職事を安排するはただ能のみ。人民の五種の教化と、食・喪・祭を看重す。誠信を厚く待し義を彰明し、徳を崇尚し功を報答す。垂衣拱手にして天下は治まった。

周書 洪範第六

武王勝殷,殺受,立武庚,以箕子歸。作《洪範》。

武王は殷に戦勝し、受を殺し、武庚を立て、箕子を帶いて歸來した。《洪範》を作った。

惟十有三祀,王訪於箕子。王乃言曰:“嗚呼!箕子。惟天陰騭下民,相協厥居,我不知其彝倫攸敘。”

十三年、王は箕子を訪問した。王はここに言った。「ああ、箕子よ。天は黙黙として下方の人民を安定し、彼らを助けて和協して居住せしむ。私はあの常理倫序がどのように排定されたかを知らない。」

箕子乃言曰:“我聞在昔,鯀堙洪水,汩陳其五行。帝乃震怒,不畀‘洪範’九疇,彝倫攸斁。鯀則殛死,禹乃嗣興,天乃錫禹‘洪範’九疇,彝倫攸敘。

箕子はここに言った。「私は聞く、昔、鯀は洪水を堵塞し、五行の陳列を擾乱した。帝はここに震怒し、彼に『洪範』九疇を与えず、常理倫序はこれにより敗壞した。鯀は誅責されて死し、禹はここに継起し、天はここに禹に『洪範』九疇を賜与し、常理倫序はこれにより排定された。

初一曰五行,次二曰敬用五事,次三曰農用八政,次四曰協用五紀,次五曰建用皇極,次六曰乂用三德,次七曰明用稽疑,次八曰念用庶徵,次九曰向用五福,威用六極。

(箕子が続けて言うには、)第一を五行とし、第二を敬用五事とし、第三を努力用八政とし、第四を協和用五紀とし、第五を建立用皇極とし、第六を治理用三徳とし、第七を明天用稽疑とし、第八を思念用庶征とし、第九を獎向用五福とし、威懲用六極とす。

一、五行:一曰水,二曰火,三曰木,四曰金,五曰土。水曰潤下,火曰炎上,木曰曲直,金曰從革,土爰稼穡。潤下作鹹,炎上作苦,曲直作酸,從革作辛,稼穡作甘。

(箕子が続けて言うには、)一、五行:一は水、二は火、三は木、四は金、五は土。水の徳性は潤下、火の徳性は炎上、木の徳性は曲にして可直、金の徳性は順從変革、土はここに稼穡しうる。潤下は鹹を産生し、炎上は苦を産生し、曲直は酸を産生し、従革は辛を産生し、稼穡は甘を産生す。

二、五事:一曰貌,二曰言,三曰視,四曰聽,五曰思。貌曰恭,言曰從,視曰明,聽曰聰,思曰睿。恭作肅,從作乂,明作晢,聰作謀,睿作聖。

(箕子が続けて言うには、)二、五事:一は容貌、二は言語、三は看、四は聴、五は思。容貌は恭を要し、言語は順を要し、看は明を要し、聴は聡を要し、思は通達を要す。恭なればすなわち嚴肅、順なればすなわち能く治理、明なればすなわち智慧、聡なればすなわち能く謀画、通達なればすなわち聖なり。

三、八政:一曰食,二曰貨,三曰祀,四曰司空,五曰司徒,六曰司寇,七曰賓,八曰師。

(箕子が続けて言うには、)三、八政:一は食、二は貨、三は祭祀、四は司空、五は司徒、六は司寇、七は賓、八は師(軍事)。

四、五紀:一曰歲,二曰月,三曰日,四曰星辰,五曰歷數。

(箕子が続けて言うには、)四、五紀:一は歳、二は月、三は日、四は星辰、五は曆数(日月星辰の次序を推步する)。

五、皇極:皇建其有極。斂時五福,用敷錫厥庶民。惟時厥庶民於汝極。錫汝保極:凡厥庶民,無有淫朋,人無有比德,惟皇作極。凡厥庶民,有猷有為有守,汝則念之。不協於極,不罹於咎,皇則受之。而康而色,曰:‘予攸好德。’汝則錫之福。時人斯其惟皇之極。無虐煢獨而畏高明,人之有能有為,使羞其行,而邦其昌。凡厥正人,既富方谷,汝弗能使有好於而家,時人斯其辜。於其無好德,汝雖錫之福,其作汝用咎。無偏無陂,遵王之義;無有作好,遵王之道;無有作惡,尊王之路。無偏無黨,王道蕩蕩;無黨無偏,王道平平;無反無側,王道正直。會其有極,歸其有極。曰:皇,極之敷言,是彝是訓,於帝其訓,凡厥庶民,極之敷言,是訓是行,以近天子之光。曰:天子作民父母,以為天下王。

(箕子が続けて言うには、)五、皇極(君王の建立する大中至正の標準):君王はあの極を建立す。これら五福を收斂し、もって庶民に普く賜与す。ここに庶民は汝の極に對す。汝にこの極を保有せしむる者に賜与せよ。およそ庶民、淫朋なく、官員に比周の徳なく、ただ君王をもって極とす。およそ庶民、謀画あり・作為あり・操守ある者は、汝は彼らを思念すべし。極に協合せず、また罪咎に陷入せざる者は、君王は彼らを容納せよ。神色安和の人が曰く、『わが喜好するは徳なり』と。汝は彼に福を賜与せよ。このような人はすなわちただ君王をもって極とせん。孤獨を虐害して高顯尊貴を畏懼するなかれ。人に才能有り作為有れば、彼をしてその行為を進献せしめよ。邦国は昌盛せん。およそ官に在る正人、すでに富厚祿有り、汝がもし彼らをして汝の家に好き處あらしむる能わざれば、このような人は罪有り。あの徳を好まざる人に対しては、汝が彼に福を賜与すると雖も、彼らは汝に咎害を作為せん。偏するなかれ陂するなかれ、王の義に遵循せよ。私自に作を好むなかれ、王の道に遵循せよ。私自に惡を作るなかれ、王の路に遵循せよ。偏するなかれ黨するなかれ、王道は寛廣蕩蕩なり。黨するなかれ偏するなかれ、王道は平平坦坦なり。反するなかれ側するなかれ、王道はまた正しく直し。あの極に會合し、あの極に歸向せよ。曰く、君王よ、極を陳説せよ。これは常法、これは訓誡、上帝に對してすなわち訓なり。およそ庶民、極を陳説せよ。これは訓誡、これは当行、もって天子の光に接近せん。曰く、天子は人民の父母を為し、よって天下の王を為る。

六、三德:一曰正直,二曰剛克,三曰柔克。平康,正直;強弗友,剛克;燮友,柔克。沈潛,剛克;高明,柔克。惟闢作福,惟闢作威,惟闢玉食。臣無有作福、作威、玉食。臣之有作福、作威、玉食,其害於而家,兇於而國。人用側頗僻,民用僣忒。

(箕子が続けて言うには、)六、三徳:一は正直、二は剛克(剛をもって勝)、三は柔克(柔をもって勝)。平安康寧には正直を用い、強橫して親近不可には剛克を用い、和順して親近可には柔克を用い。深沈潜隱の者には剛克を用い、高明爽朗の者には柔克を用い。ただ君主のみ福を作し、ただ君主のみ威を作し、ただ君主のみ美食す。臣子に福を作し威を作し美食するなし。臣子がもし福を作し威を作し美食せば、すなわち汝の家を害し汝の国を凶にせん。官員はこれにより偏頗邪僻し、人民はこれにより僭越差錯せん。

七、稽疑:擇建立卜筮人,乃命卜筮。曰雨,曰霽,曰蒙,曰驛,曰克,曰貞,曰悔,凡七。卜五,占用二,衍忒。立時人作卜筮,三人占,則從二人之言。

(箕子が続けて言うには、)七、稽疑:卜筮の人を選択設立し、ここに卜筮に命令す。雨を叫び、霽を叫び、蒙を叫び、驛を叫び、克を叫び、貞を叫び、悔を叫ぶ。共に七種。亀卜は五種、筮占は二種、差錯を推演す。これらの人を設立して卜筮を為さしめ、三人が占えば、すなわち二人の言に聽從せよ。

汝則有大疑,謀及乃心,謀及卿士,謀及庶人,謀及卜筮。汝則從,龜從,筮從,卿士從,庶民從,是之謂大同。身其康強,子孫其逢吉,汝則從,龜從,筮從,卿士逆,庶民逆吉。卿士從,龜從,筮從,汝則逆,庶民逆,吉。庶民從,龜從,筮從,汝則逆,卿士逆,吉。汝則從,龜從,筮逆,卿士逆,庶民逆,作內吉,作外兇。龜筮共違於人,用靜吉,用作兇。

(箕子が続けて言うには、)汝にもし大疑あれば、先ず自らの心に謀及し、再び卿士に謀及し、再び庶人に謀及し、再び卜筮に謀及せよ。汝が順從し、亀が順從し、筮が順從し、卿士が順從し、庶民が順從すれば、これを大同という。自身は康強し、子孫は昌盛吉祥せん。汝が順從し、亀が順從し、筮が順從し、卿士が違逆し、庶民が違逆すも、また吉なり。卿士が順從し、亀が順從し、筮が順從し、汝が違逆し、庶民が違逆すも、また吉なり。庶民が順從し、亀が順從し、筮が順從し、汝が違逆し、卿士が違逆すも、また吉なり。汝が順從し、亀が順從し、筮が違逆し、卿士が違逆し、庶民が違逆すれば、内部の事を為すは吉、外部の事を為すは凶なり。亀筮がともに人に違背すれば、靜を用いれば吉、動作為すは凶なり。

八、庶徵:曰雨,曰暘,曰燠,曰寒,曰風。曰時五者來備,各以其敘,庶草蕃廡。一極備,兇;一極無,兇。曰休徵;曰肅,時寒若;曰乂,時暘若;曰晢,時燠若;曰謀,時寒若;曰聖,時風若。曰咎徵:曰狂,恆雨若;曰僣,恆暘若;曰豫,恆燠若;曰急,恆寒若;曰蒙,恆風若。曰王省惟歲,卿士惟月,師尹惟日。歲月日時無易,百穀用成,乂用明,俊民用章,家用平康。日月歲時既易,百穀用不成,乂用昏不明,俊民用微,家用不寧。庶民惟星,星有好風,星有好雨。日月之行,則有冬有夏。月之從星,則以風雨。

(箕子が続けて言うには、)八、庶征:雨を叫び、晴を叫び、暖を叫び、寒を叫び、風を叫ぶ。曰く、これら五者は時に按って斉備し、各自その次序に按れば、衆草は蕃茂す。一種が過甚なればすなわち凶、一種が全無なればまた凶なり。美征は、肅敬なれば寒は時に按り(通行本は「時雨若」、底本は「時寒若」、今は照録す)、治理なれば晴は時に按り、明智なれば暖は時に按り、善謀なれば寒は時に按り、通達なれば風は時に按る。咎征は、狂妄なればすなわち久雨、僭差なればすなわち久晴、逸豫なればすなわち久暖、急迫なればすなわち久寒、昏蒙なればすなわち久風。曰く、王の省察する所は歳のごとく、卿士は月のごとく、師尹は日のごとし。歳・月・日・時に変易なければ、百穀はこれにより成熟し、治理はこれにより彰明し、杰出の民はこれにより顯揚し、家はこれにより平康す。日・月・歳・時すでに変易あれば、百穀はこれにより成熟せず、治理はこれにより昏暗不明、杰出の民はこれにより低微、家はこれにより不安寧なり。庶民は星のごとく、星に風を喜好するあり、星に雨を喜好するあり。日月の運行は、ここに冬あり夏あり。月亮が星に順從すれば、すなわち風雨あらん。

九、五福:一曰壽,二曰富,三曰康寧,四曰攸好德,五曰考終命。六極:一曰兇、短、折,二曰疾,三曰憂,四曰貧,五曰惡,六曰弱。

(箕子が続けて言うには、)九、五福:一は壽、二は富、三は康寧、四は徳を喜好、五は老して善終。六極:一は凶・短命・夭折、二は疾病、三は憂、四は貧、五は邪惡、六は懦弱なり。」

〖分器〗武王既勝殷,邦諸侯,班宗彝,作《分器》。

〖分器〗武王はすでに殷に戦勝し、諸侯を分封し、宗廟の彝器を分發し、《分器》を作った。

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