妙法蓮華經卷第五
無盡意菩薩白佛言:「世尊!觀世音菩薩云何遊此娑婆世界?云何而為眾生說法?方便之力,其事云何?」
無盡意菩薩佛に白して言へらく、「世尊!觀世音菩薩云何にしてか此の娑婆世界に游び、云何にしてか而も衆生の爲に法を說く。方便の力、其の事如何」と。
佛告無盡意菩薩:「善男子!若有國土眾生應以佛身得度者,觀世音菩薩即現佛身而為說法;應以辟支佛身得度者,即現辟支佛身而為說法;應以聲聞身得度者,即現聲聞身而為說法;應以梵王身得度者,即現梵王身而為說法;應以帝釋身得度者,即現帝釋身而為說法;應以自在天身得度者,即現自在天身而為說法;應以大自在天身得度者,即現大自在天身而為說法;應以天大將軍身得度者,即現天大將軍身而為說法;應以毘沙門身得度者,即現毘沙門身而為說法;應以小王身得度者,即現小王身而為說法;應以長者身得度者,即現長者身而為說法;應以居士身得度者,即現居士身而為說法;應以宰官身得度者,即現宰官身而為說法;應以婆羅門身得度者,即現婆羅門身而為說法;應以比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷身得度者,即現比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷身而為說法;應以長者、居士、宰官、婆羅門婦女身得度者,即現婦女身而為說法;應以童男、童女身得度者,即現童男、童女身而為說法;應以天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦樓羅、緊那羅、摩睺羅伽、人非人等身得度者,即皆現之而為說法;應以執金剛身得度者,即現執金剛身而為說法。
佛無盡意菩薩に告げて曰く、「善男子!若し國土の衆生有りて應に佛身を以て度を得べき者には、觀世音菩薩即ち佛身を現じて而も法を說き、應に辟支佛身を以て度を得べき者には、即ち辟支佛身を現じて而も法を說き、應に聲聞身を以て度を得べき者には、即ち聲聞身を現じて而も法を說き、應に梵王身を以て度を得べき者には、即ち梵王身を現じて而も法を說き、應に帝釋身を以て度を得べき者には、即ち帝釋身を現じて而も法を說き、應に自在天身を以て度を得べき者には、即ち自在天身を現じて而も法を說き、應に大自在天身を以て度を得べき者には、即ち大自在天身を現じて而も法を說き、應に天の大將軍身を以て度を得べき者には、即ち天の大將軍身を現じて而も法を說き、應に毘沙門身を以て度を得べき者には、即ち毘沙門身を現じて而も法を說き、應に小王身を以て度を得べき者には、即ち小王身を現じて而も法を說き、應に長者身を以て度を得べき者には、即ち長者身を現じて而も法を說き、應に居士身を以て度を得べき者には、即ち居士身を現じて而も法を說き、應に宰官身を以て度を得べき者には、即ち宰官身を現じて而も法を說き、應に婆羅門身を以て度を得べき者には、即ち婆羅門身を現じて而も法を說き、應に比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷身を以て度を得べき者には、即ち比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷身を現じて而も法を說き、應に長者・居士・宰官・婆羅門の婦女身を以て度を得べき者には、即ち婦女身を現じて而も法を說き、應に童男・童女身を以て度を得べき者には、即ち童男・童女身を現じて而も法を說き、應に天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦樓羅・緊那羅・摩睺羅伽・人非人等の身を以て度を得べき者には、即ち皆之を現じて而も法を說き、應に執金剛身を以て度を得べき者には、即ち執金剛身を現じて而も法を說く。
「無盡意!是觀世音菩薩成就如是功德,以種種形,遊諸國土,度脫眾生。是故汝等應當一心供養觀世音菩薩。是觀世音菩薩摩訶薩於怖畏急難之中能施無畏,是故此娑婆世界皆號之為施無畏者。」
「無盡意!是の觀世音菩薩是の如き功德を成就して、種種の形を以て、諸の國土に游びて、衆生を度脫す。是の故に汝等應當に一心に觀世音菩薩を供養すべし。是の觀世音菩薩摩訶薩怖畏・急難の中に於て能く無畏を施す、是の故に此の娑婆世界皆之を號して無畏を施す者と爲せり。」
無盡意菩薩白佛言:「世尊!我今當供養觀世音菩薩。」即解頸眾寶珠、瓔珞,價直百千兩金,而以與之,作是言:「仁者!受此法施珍寶瓔珞。」時觀世音菩薩不肯受之。無盡意復白觀世音菩薩言:「仁者!愍我等故,受此瓔珞。」
無盡意菩薩佛に白して言へらく、「世尊!我今當に觀世音菩薩を供養せん」と。即ち頸の衆の寶珠・瓔珞を解きて、價百千兩の金に直して、而も以て之に與へて、是の言を作さく、「仁者!此の法施の珍寶瓔珞を受け給へ」と。時に觀世音菩薩肯んじて之を受けざりき。無盡意復た觀世音菩薩に白して言へらく、「仁者!我等を愍むが故に、此の瓔珞を受け給へ」と。
爾時佛告觀世音菩薩:「當愍此無盡意菩薩及四眾,天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦樓羅、緊那羅、摩睺羅伽、人非人等故,受是瓔珞。」
爾の時佛觀世音菩薩に告げて曰く、「當に此の無盡意菩薩及び四衆、天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦樓羅・緊那羅・摩睺羅伽・人非人等を愍むが故に、此の瓔珞を受くべし」と。
即時觀世音菩薩愍諸四眾,及於天、龍、人非人等,受其瓔珞,分作二分,一分奉釋迦牟尼佛,一分奉多寶佛塔。
即時に觀世音菩薩諸の四衆を愍みて、及び天・龍・人非人等に於て、其の瓔珞を受けて、分けて二分と作して、一分釋迦牟尼佛に奉り、一分多寶の佛塔に奉れり。
「無盡意!觀世音菩薩有如是自在神力,遊於娑婆世界。」
「無盡意!觀世音菩薩是の如き自在の神力有りて、娑婆世界に游べり。」
爾時無盡意菩薩以偈問曰:
爾の時無盡意菩薩偈を以て問ひて曰く、
「世尊妙相具,我今重問彼,
「世尊妙相具へり、我今重ねて彼を問ふ、
佛子何因緣,名為觀世音?
佛の子何の因緣ぞ、名づく觀世音と。
具足妙相尊,偈答無盡意:
妙相を具足する尊、偈に答ふ無盡意に:
『汝聽觀音行,善應諸方所,
『汝觀音の行を聽け、善く應ず諸の方所に、
弘誓深如海,歷劫不思議,
弘誓深きこと海の如く、劫を歷るも思議すべからず、
侍多千億佛,發大清淨願。
多くの千億の佛に侍して、大きなる清淨の願を發せり。
我為汝略說,聞名及見身,
我汝の爲に略說す、名を聞き及び身を見るを、
心念不空過,能滅諸有苦。
心念して空しく過ぎずして、能く諸有の苦を滅す。
假使興害意,推落大火坑,
假使害の意を興して、大火坑に推落せしめんも、
念彼觀音力,火坑變成池。
彼の觀音の力を念ずれば、火坑變じて池と成れり。
或漂流巨海,龍魚諸鬼難,
或は巨海に漂流して、龍・魚・諸の鬼の難も、
念彼觀音力,波浪不能沒。
彼の觀音の力を念ずれば、波浪沒すこと能はざれり。
或在須彌峰,為人所推墮,
或は須彌の峰に在りて、人の推墮する所と爲るも、
念彼觀音力,如日虛空住。
彼の觀音の力を念ずれば、日の虛空に住するが如し。
或被惡人逐,墮落金剛山,
或は惡人に逐はれて、金剛山に墮落するも、
念彼觀音力,不能損一毛。
彼の觀音の力を念ずれば、一毛を損ずること能はざれり。
或值怨賊繞,各執刀加害,
或は怨賊に繞まるを值ふ、各々刀を執りて害を加ふるも、
念彼觀音力,鹹即起慈心。
彼の觀音の力を念ずれば、咸く即ち慈心を起こせり。
或遭王難苦,臨刑欲壽終,
或は王難の苦に遭ひて、刑に臨みて壽終らんと欲するも、
念彼觀音力,刀尋段段壞。
彼の觀音の力を念ずれば、刀尋いで段々に壞れり。
或囚禁枷鎖,手足被杻械,
或は囚禁・枷鎖、手足杻械せらるるも、
念彼觀音力,釋然得解脫。
彼の觀音の力を念ずれば、釋然として解脫を得れり。
呪詛諸毒藥,所欲害身者,
呪詛・諸の毒藥、害せんと欲する所の身の者も、
念彼觀音力,還著於本人。
彼の觀音の力を念ずれば、還りて本人に着けり。
或遇惡羅剎、毒龍諸鬼等,
或は惡羅刹・毒龍・諸の鬼等に遇ふも、
念彼觀音力,時悉不敢害。
彼の觀音の力を念ずれば、時に悉く敢へて害せざれり。
若惡獸圍遶,利牙爪可怖,
若し惡獸に圍繞せられて、利き牙爪の怖るべきも、
念彼觀音力,疾走無邊方。
彼の觀音の力を念ずれば、疾く走りて邊方無し。
蚖蛇及蝮蠍,氣毒煙火燃,
蚖蛇及び蝮蝎、氣毒して烟火の燃ゆるも、
念彼觀音力,尋聲自迴去。
彼の觀音の力を念ずれば、聲に尋いで自ら回去せり。
雲雷鼓掣電,降雹澍大雨,
雲雷・鼓・掣電、雹を降らし大雨を澍ぐも、
念彼觀音力,應時得消散。
彼の觀音の力を念ずれば、應時に消散することを得れり。
眾生被困厄,無量苦逼身,
衆生困厄に困まれて、無量の苦身に逼まるも、
觀音妙智力,能救世間苦。
觀音の妙智の力、能く世間の苦を救ふ。
具足神通力,廣修智方便,
神通の力を具足して、廣く智の方便を修めて、
十方諸國土,無剎不現身。
十方の諸の國土、刹有りて身を現ぜざる無し。
種種諸惡趣,地獄鬼畜生,
種種の諸の惡趣、地獄・鬼・畜生の、
生老病死苦,以漸悉令滅。
生老病死の苦、漸くを以て悉く滅せしめん。
真觀清淨觀,廣大智慧觀,
眞觀・清淨觀、廣大の智慧觀、
悲觀及慈觀,常願常瞻仰。
悲觀及び慈觀、常に願ひ常に瞻仰せん。
無垢清淨光,慧日破諸闇,
無垢の清淨の光、慧日諸の暗を破りて、
能伏災風火,普明照世間。
能く災・風・火を伏へて、普く明らかに世間を照らす。
悲體戒雷震,慈意妙大云,
悲體の戒・雷震、慈意の妙なる大雲、
澍甘露法雨,滅除煩惱焰。
甘露の法雨を澍ぎて、煩惱の焰を滅除す。
諍訟經官處,怖畏軍陣中,
諍訟・官を經る處、怖畏の軍陣の中に於ても、
念彼觀音力,眾怨悉退散。
彼の觀音の力を念ずれば、衆の怨悉く退散せん。
妙音觀世音,梵音海潮音,
妙音・觀世音、梵音・海潮の音、
勝彼世間音,是故須常念,
彼の世間の音に勝れたり、是の故に須らく常念すべし、
念念勿生疑。觀世音淨聖,
念々疑を生ずること勿れ。觀世音淨聖、
於苦惱死厄,能為作依怙,
苦惱・死厄に於て、能く依怙を作さん。
具一切功德,慈眼視眾生,
一切の功德を具へて、慈眼を以て衆生を視て、
福聚海無量,是故應頂禮。』」
福聚海の無量なるが、是の故に應に頂禮すべし。』」
