釋詁第一
祭山曰庪縣,祭川曰浮沈,祭星曰布,祭風曰磔。
山を祭るを庪県といい、祭品を懸げる。川を祭るを浮沈といい、祭品を水中に投げる。星を祭るを布といい、風を祭るを磔という。
是禷是礻馬,師祭也。既伯既禱,馬祭也。禘,大祭也。繹,又祭也。
是禷是祃(底本『祃』は示偏に『馬』)とは、出師の祭。既伯既祷とは、馬祖を祭る。禘とは、大祭。繹とは、正祭の後に再び祭る。
周曰繹,商曰肜,夏曰復胙。──祭名。
周代は繹といい、商代は肜といい、夏代は復胙という。以上は祭名。
春獵為蒐,夏獵為苗,秋獵為獮,冬獵為狩。
春に狩るを搜といい、夏に狩るを苗といい、秋に狩るを獮といい、冬に狩るを狩という。
宵田為獠,火田為狩。
夜に狩るを獠といい、火で田を焼いて狩るを狩という。
乃立冢土,戎醜攸行。起大事,動大眾,必先有事乎社而後出,謂之宜。
そこで大社を立て、兵衆はここから出発する。大事を興し大衆を動かすには、必ずまず社で祭ってから出発する。これを宜という。
振旅闐闐,出為治兵,尚威武也。入為振旅,反尊卑也。──講武。
隊伍を整え鼓声が闐闐とする:出征は治兵で、威武を崇め、帰還は振旅で、尊卑の次序を回復する。以上は講武。
素錦綢槓,纁帛縿,素升龍於縿,練旒九,飾以組,維以縷。
白錦で旗杆を纏い、浅絳の帛で旗幅を作り、旗幅に白色の升龍を画き、熟絹で九条の旒を作り、糸組で飾り、糸縷で維繋する。
緇廣充幅,長尋曰旐,繼旐曰旆,注旄首曰旌,有鈴曰旂,錯革鳥曰旟,因
黒帛が幅一杯・長さ八尺を旐といい、旐の後に接ぐを旆といい、旄牛尾を竿頭に注ぐを旌といい、鈴あるを旗といい、交錯する獣皮の鳥を画くを旟といい、すでに
章曰旃。──旌旂。
ある紋章に依るを旃という。以上は旌旗。
釋地第九
兩河間曰冀州,河南曰豫州,河西曰雝州,漢南曰荊州,江南曰楊州,濟河
両河の間を冀州といい、黄河以南を豫州といい、黄河以西を雍州といい、漢水以南を荊州といい、長江以南を揚州といい、済水と黄河の
間曰兗州,濟東曰徐州,燕曰幽州,齊曰營州。──九州。
間を兗州といい、済水以東を徐州といい、燕地を幽州といい、斉地を営州という。以上は九州。
魯有大野。晉有大陸。秦有楊陓。宋有孟諸。楚有云夢。吳越之間有具
魯に大野あり。晋に大陸あり。秦に楊陓あり。宋に孟諸あり。楚に雲夢あり。呉越の間に具
區。齊有海隅。燕有昭餘祁。鄭有圃田。周有焦護。──十藪。
区あり。斉に海隅あり。燕に昭余祁あり。鄭に圃田あり。周に焦護あり。以上は十藪。
東陵阠,南陵息慎,西陵威夷,中陵朱滕,北陵西隃雁門是也。陵莫
東陵を阠といい、南陵を息慎といい、西陵を威夷といい、中陵を朱滕といい、北陵を西隃といい、すなわち雁門。陵は
大於加陵,梁莫大於湨梁,墳莫大於河墳。──八陵。
加陵より大きいものなく、橋梁は湨梁より大きいものなく、堤墳は河墳より大きいものなし。以上は八陵。
東方之美者,有醫無閭之珣玗琪焉;東南之美者,有會稽之竹箭焉;南方
東方の美物には、医無閭の珣玗琪あり。東南の美物には、会稽の竹箭あり。南方
之美者,有梁山之犀象焉;西南之美者,有華山之金石焉;西方之美者,有霍山
の美物には、梁山の犀角・象牙あり。西南の美物には、華山の金属・玉石あり。西方の美物には、霍山
之多珠玉焉;西北之美者,有崑崙虛之璆琳琅玕焉;北方之美者,有幽都之筋角
の多くの珠玉あり。西北の美物には、崑崙虚の璆琳琅玕あり。北方の美物には、幽都の筋角
焉;東北之美者,有斥山之文皮焉;中有岱嶽,與其五穀魚鹽生焉。──九府。
あり。東北の美物には、斥山の紋ある獣皮あり。中央には岱岳があり、五穀・魚・鹽がそこに産する。以上は九府。
東方有比目魚焉,不比不行,其名謂之鰈;南方有比翼鳥焉,不比不飛,其
東方に比目魚があり、並ばなければ行けず、名を鰈という。南方に比翼鳥があり、並ばなければ飛べず、その
名謂之鶼鶼;西方有比肩獸焉,與邛邛岠虛比,為邛邛岠虛,齧甘草,即有
名を鶼鶼という。西方に比肩獣があり、邛邛岠虚とともにいて、邛邛岠虚のために甘草を噛み取り、ひとたび
難,邛邛岠虛負而走,其名謂之蹷;北方有比肩民焉,迭食而迭望;中有
危難に遭えば、邛邛岠虚がそれを背負って走る。名を蹷という。北方に比肩民があり、輪番で食べ、輪番で見張る。中央に
枳首蛇焉。此四方中國之異氣也。──五方。
頭二つの枳首蛇あり。これは四方と中国の特異な気。以上は五方。
邑外謂之郊,郊外謂之牧,牧外謂之野,野外謂之林,林外謂之坰。
邑外を郊といい、郊外を牧といい、牧外を野といい、野外を林といい、林外を坰という。
下溼曰隰,大野曰平,廣平曰原,高平曰陸,大陸曰阜,大阜曰陵,大陵曰
低湿の地を隰といい、大野を平といい、広く平らかなを原といい、高く平らかなを陸といい、大陸を阜といい、大阜を陵といい、大陵を
阿。可食者曰原,陂者曰阪,下者曰隰。田一歲曰菑,二歲曰新田,三歲曰畬。
阿という。耕種できるを原といい、傾斜するを阪といい、低下するを隰という。田を耕して一年を菑といい、二年を新田といい、三年を畬という。
──野。
以上は野。
東至於泰遠,西至於邠國,南至於濮鉛,北至於祝栗,謂之四極。
東は泰遠に至り、西は邠国に至り、南は濮鉛に至り、北は祝栗に至る。これを四極という。
觚竹、北戶、西王母、日下,謂之四荒。
觚竹・北戸・西王母・日下を、四荒という。
九夷、八狄、七戎、六蠻,謂之四海。
九夷・八狄・七戎・六蛮を、四海という。
岠齊州以南,戴日為丹穴,北戴斗極為空桐,東至日所出為大平,西至日
斉州以南で太陽の直下に当たるを丹穴といい、北に北斗・北極に当たるを空桐といい、東は日出ずる所を太平といい、西は日
所入為大蒙。太平之人仁,丹穴之人智,大蒙之人信,空桐之人武。──四極。
の落つる所を大蒙という。太平の人は仁厚、丹穴の人は智慧、大蒙の人は誠信、空桐の人は勇武。以上は四極。
釋丘第十
丘,一成為敦丘,再成為陶丘,再成銳上為融丘,三成為崑崙丘。
丘は、一層を敦丘といい、二層を陶丘といい、二層で頂が尖るを融丘といい、三層を崑崙丘という。
如乘者乘丘,如陼者陼丘。
車乘に似たを乘丘といい、小洲に似たを陼丘という。
水潦所止泥丘。方丘胡丘。
積水が留まる所を泥丘という。方形の丘を胡丘という。
絕高為之京,非人為之丘。
極めて高く人工で堆成したを京といい、人工で堆成せずを丘という。
水潦所還埒丘。上正章丘。
積水が環繞するを埒丘という。頂が平正なるを章丘という。
澤中有丘,都丘。當途梧丘。
沢中に丘あるを都丘という。路の中に当たるを梧丘という。
途出其右而還之畫丘。
路がその右から出てまた繞り戻るを画丘という。
途出其前戴丘,途出其後昌丘。
路がその前から出るを戴丘といい、路がその後ろから出るを昌丘という。
水出其前渻丘,水出其後沮丘。
水がその前から流れ出るを渻丘といい、水がその後ろから流れ出るを沮丘という。
水出其右正丘,水出其左營丘。
水がその右から流れ出るを正丘といい、水がその左から流れ出るを営丘という。
如覆敦者敦丘,邐迤沙丘。
伏せた食器に似たを敦丘といい、斜めに延び開くを沙丘という。
左高鹹丘,右高臨丘,前高旄丘,後高陵丘,偏高阿丘。
左が高いを咸丘といい、右が高いを臨丘といい、前が高いを旄丘といい、後ろが高いを陵丘といい、偏して高いを阿丘という。
宛中宛丘,丘背有丘為負丘,左澤定丘,右陵泰丘。
中が低窪したを宛丘といい、丘の背後にまた丘あるを負丘といい、左に沢を臨むを定丘といい、右に陵を靠るを泰丘という。
如畝畝丘,如陵陵丘。丘上有丘,為宛丘。
田壟に似たを畝丘といい、大陵に似たを陵丘という。丘の上にまた丘あり、これも宛丘という。
陳有宛丘,晉有潛丘,淮南有州黎丘。
陳地に宛丘あり、晋地に潜丘あり、淮南に州黎丘あり。
天下有名丘五,三在河南,其二在河北。──丘。
天下に名ある丘は五座あり、三座は黄河以南にあり、二座は黄河以北にある。以上は丘。
望厓灑而高岸。夷上灑下不漘。
遠く見て水辺が高く削れたを岸という。上が平らで下が削れて水辺をなさないは、漘とはいわない。
隩隈,厓內為隩,外為隈。
隩と隈:崖岸が内へ凹むを隩といい、外へ凸むを隈という。
畢,堂牆。重厓,岸。岸上,滸。墳,大防。
畢とは、堂辺の壁に似る。重なった崖を岸といい、岸上を滸という。墳とは、大堤。
涘為厓。窮瀆,汜。谷者,溦。──厓岸。
水辺を厓という。通じない溝瀆を汜という。山谷の小水流を溦という。以上は厓岸。
