妙法蓮華經卷第二
及聲聞菩薩,如見今滅度。
及び聲聞・菩薩、今滅度せるを見るが如し。
諸比丘當知!佛智淨微妙,
諸の比丘當に知るべし!佛智淨妙にして、
無漏無所礙,通達無量劫。」
無漏にして礙無く、無量劫に通達せり。」
佛告諸比丘:「大通智勝佛壽五百四十萬億那由他劫。其佛本坐道場,破魔軍已,垂得阿耨多羅三藐三菩提,而諸佛法不現在前。如是一小劫乃至十小劫,結加趺坐,身心不動,而諸佛法猶不在前。爾時忉利諸天,先為彼佛於菩提樹下敷師子座,高一由旬,佛於此座當得阿耨多羅三藐三菩提。適坐此座,時諸梵天王雨眾天華,面百由旬,香風時來,吹去萎華,更雨新者。如是不絕,滿十小劫,供養於佛,乃至滅度常雨此華。四王諸天為供養佛,常擊天鼓,其餘諸天作天伎樂,滿十小劫,至於滅度亦復如是。
佛諸の比丘に告げて曰く、「大通智勝佛の壽五百四十萬億那由他劫。其の佛本道場に坐して、魔軍を破り已りて、垂く無上正等正覺を得んとす、而も諸佛の法前に現ぜず。如是一小劫乃至十小劫に至るまで、結跏趺坐して、身心動かず、而も諸佛の法猶だ前に在らず。爾の時忉利の諸天、先に彼の佛の爲に菩提樹の下に師子座を敷く、高さ一由旬、佛此の座に於て當に無上正等正覺を得べし。適ふ此の座に坐する時、諸の梵天王衆の天華を雨らす、面百由旬、香風時に來りて、萎れし華を吹去して、更に新しきを雨らす。如是絕えずして、十小劫に滿ちて、佛に供養す、乃至滅度に至るまで常に此の華を雨らす。四王の諸天佛を供養せんが爲に、常に天鼓を擊ち、其の餘の諸天天伎樂を作す、十小劫に滿ちて、滅度に至るまでも亦復た是の如し。
「諸比丘!大通智勝佛過十小劫,諸佛之法乃現在前,成阿耨多羅三藐三菩提。其佛未出家時,有十六子,其第一者名曰智積。諸子各有種種珍異玩好之具,聞父得成阿耨多羅三藐三菩提,皆捨所珍,往詣佛所。諸母涕泣而隨送之。其祖轉輪聖王,與一百大臣及餘百千萬億人民,皆共圍繞,隨至道場。鹹欲親近大通智勝如來,供養恭敬,尊重讚歎。到已,頭面禮足,繞佛畢已,一心合掌,瞻仰世尊,以偈頌曰:
「諸の比丘!大通智勝佛十小劫を過して、諸佛の法纔かに前に現れて、無上正等正覺を成れり。其の佛未だ出家せざる時、十六の子有りて、其の第一は名づけて智積と曰ふ。諸子各々種種の珍異玩好の具有りて、父の無上正等正覺を成るを得たりと聞きて、皆珍しむ所を舍てて、佛の所に往詣す。諸の母涕泣して而も之を隨送す。其の祖の轉輪聖王、一百の大臣及び餘の百千萬億の人民と、皆共に圍繞して、道場に隨至す。咸く大通智勝如來に親近せんと欲して、供養恭敬し、尊重讚歎す。到り已りて、頭面足を禮して、佛を繞り畢り已りて、一心に合掌して、世尊を瞻仰して、偈を以て頌して曰く、
「『大威德世尊,為度眾生故,
「『大威德の世尊、衆生を度せんが爲の故に、
於無量億劫,爾乃得成佛,
無量億劫に於て、爾れ乃ち佛と成るを得し給へり。
諸願已具足,善哉吉無上。
諸の願已に具足せり、善哉吉無上なり。
世尊甚希有,一坐十小劫,
世尊甚だ希有にして、一坐十小劫、
身體及手足,靜然安不動。
身體及び手足、靜然として安らかに動かず。
其心常惔怕,未曾有散亂,
其の心常に淡泊にして、曾て散亂有ること無く、
究竟永寂滅,安住無漏法。
究竟して永く寂滅して、無漏法に安住し給へり。
今者見世尊,安隱成佛道,
今の者世尊を見る、安穩に佛道を成じ給ふと。
我等得善利,稱慶大歡喜。
我等善利を得たり、慶を稱して大いに歡喜す。
眾生常苦惱,盲瞑無導師,
衆生常に苦惱して、盲瞑にして導師無し。
不識苦盡道,不知求解脫。
苦盡の道を識らず、解脫を求むるを知らず。
長夜增惡趣,減損諸天眾,
長夜に惡趣を增して、諸天の衆を減損し、
從冥入於冥,永不聞佛名。
冥より冥に入りて、永く佛の名を聞かず。
今佛得最上、安隱無漏道,
今佛最上の・安穩無漏の道を得給へり。
我等及天人,為得最大利,
我等及び天人、最大の利を得んが爲に、
是故鹹稽首、歸命無上尊。』
是の故に咸く稽首して、無上尊に歸命す』。
「爾時十六王子偈讚佛已,勸請世尊轉於法輪,鹹作是言:『世尊說法,多所安隱、憐愍、饒益諸天人民。』重說偈言:
「爾の時十六の王子、偈を以て佛を讚し已りて、世尊に法輪を轉ぜんことを勸請して、咸く此の言を作さく、『世尊法を說きて、多く諸天の人民を安穩・憐愍・饒益せよ』と。重ねて偈を說きて曰く、
「『世雄無等倫,百福自莊嚴,
「『世雄等倫無く、百福自ら莊嚴して、
得無上智慧,願為世間說。
無上の智慧を得給へり、願はくは世間の爲に說き給へ。
度脫於我等、及諸眾生類,
我等及び、諸の衆生類を度脱して、
為分別顯示,令得是智慧。
分別顯示して、此の智慧を得しめ給へ。
若我等得佛,眾生亦復然。
若し我等佛を得ば、衆生も亦復た然らん。
世尊知眾生,深心之所念,
世尊衆生を知り給ふ、深心の念ずる所、
亦知所行道,又知智慧力,
亦行ずる所の道を知り、又智慧の力を知りて、
欲樂及修福,宿命所行業。
欲樂及び福を修す、宿命の行じし業を。
世尊悉知已,當轉無上輪。』」
世尊悉く知り已りて、當に無上の輪を轉じ給へ。』」
佛告諸比丘:「大通智勝佛得阿耨多羅三藐三菩提時,十方各五百萬億諸佛世界六種震動,其國中間幽冥之處,日月威光所不能照,而皆大明。其中眾生,各得相見,鹹作是言:『此中雲何忽生眾生,又其國界、諸天宮殿乃至梵宮,六種震動,大光普照,遍滿世界,勝諸天光?』
佛諸の比丘に告げて曰く、「大通智勝佛無上正等正覺を得る時、十方各五百万億の諸佛世界、六種に震動して、其の國中間の幽冥の處、日月の威光の照らす能ふ所にあらざるも、而も皆大明なりき。其の中の衆生、各々相見るを得て、咸く此の言を作さく、『此の中云何にか忽ち衆生を生ずる、又其の國界・諸天の宮殿乃至梵宮、六種に震動して、大光普照して、世界に遍滿して、諸天の光に勝れたるや』と。
「爾時東方五百萬億諸國土中,梵天宮殿光明照曜,倍於常明。諸梵天王各作是念:『今者宮殿光明,昔所未有。以何因緣而現此相?』是時諸梵天王,即各相詣,共議此事。時彼眾中,有一大梵天王,名救一切,為諸梵眾而說偈言:
「爾の時東方五百万億の諸國土の中、梵天宮殿の光明照曜すること、常明に倍せり。諸の梵天王各此の念を作さく、『今の者宮殿の光明、昔の有らざる所なり。何の因緣を以てか而も此の相を現ず』と。是の時諸の梵天王、即ち各相詣りて、共に此の事を議す。時に彼の衆の中に、一大梵天王有り、名は救一切、諸の梵衆の爲に而も偈を說きて曰く、
「『我等諸宮殿,光明昔未有,
「『我等の諸宮殿、光明昔に未だ有らざる所なり、
此是何因緣,宜各共求之。
是れ何の因緣ぞ、宜しく各共に之を求めん。
為大德天生,為佛出世間,
大德の天生ずるか、佛の世間に出でたるか、
而此大光明,遍照於十方。』
而も此の大光明、十方に遍照せり。』
「爾時五百萬億國土諸梵天王,與宮殿俱,各以衣裓,盛諸天華,共詣西方推尋是相。見大通智勝如來處於道場菩提樹下,坐師子座,諸天、龍王、乾闥婆、緊那羅、摩睺羅伽、人非人等恭敬圍繞,及見十六王子請佛轉法輪。即時諸梵天王頭面禮佛,繞百千匝,即以天華而散佛上——其所散華如須彌山;並以供養佛菩提樹——其菩提樹高十由旬。華供養已,各以宮殿奉上彼佛,而作是言:『唯見哀愍,饒益我等。所獻宮殿,願垂納受。』時諸梵天王,即於佛前,一心同聲以偈頌曰:
「爾の時五百万億國土の諸梵天王、宮殿と俱に、各衣裓を以て、諸の天華を盛めて、共に西方に詣りて此の相を推尋す。大通智勝如來の道場菩提樹の下に處りて、師子座に坐し給ふを見、諸天・龍王・乾闥婆・緊那羅・摩睺羅伽・人非人等の恭敬して圍繞する、及び十六の王子の佛に法輪を轉ぜんことを請ふを見たり。即時に諸の梵天王頭面佛を禮して、百千匝を繞りて、即ち天華を以て而も佛の上に散ず——其の散ずる所の華須彌山の如し——竝せて以て佛の菩提樹を供養す——其の菩提樹高さ十由旬。華の供養已りて、各宮殿を以て彼の佛に奉上して、而も此の言を作さく、『唯だ哀愍を見給ひて、我等を饒益せよ。獻ずる所の宮殿、願はくは垂れて納受せんことを』と。時に諸の梵天王、即ち佛の前に於て、一心同聲に偈を以て頌して曰く、
「『世尊甚希有,難可得值遇,
「『世尊甚だ希有にして、得難く値遇し難し、
具無量功德,能救護一切。
無量の功德を具へて、能く一切を救護す。
天人之大師,哀愍於世間,
天人の大師、世間を哀愍して、
十方諸眾生,普皆蒙饒益。
十方の諸の衆生、普く皆饒益を蒙む。
我等所從來,五百萬億國,
我等の從來する所、五百万億の國、
捨深禪定樂,為供養佛故。
深禪定の樂を舍てて、佛を供養する故の爲に。
我等先世福,宮殿甚嚴飾,
我等先世の福、宮殿甚だ嚴飾なり、
今以奉世尊,唯願哀納受。』
今以て世尊に奉る、唯だ願はくは哀れて納受せよ。』
「爾時諸梵天王偈讚佛已,各作是言:『唯願世尊轉於法輪,度脫眾生,開涅槃道。』時諸梵天王,一心同聲而說偈言:
「爾の時諸の梵天王、偈を以て佛を讚し已りて、各此の言を作さく、『唯だ願はくは世尊法輪を轉じて、衆生を度脱して、涅槃の道を開き給へ』と。時に諸の梵天王、一心同聲して而も偈を說きて曰く、
「『世雄兩足尊,唯願演說法,
「『世雄兩足尊、唯だ願はくは法を演說して、
以大慈悲力,度苦惱眾生。』
大慈悲の力を以て、苦惱の衆生を度し給へ。』
「爾時大通智勝如來默然許之。
「爾の時大通智勝如來默然として之を許し給へり。
「又,諸比丘!東南方五百萬億國土諸大梵王,各自見宮殿光明照曜,昔所未有,歡喜踴躍,生希有心,即各相詣,共議此事。時彼眾中有一大梵天王,名曰大悲,為諸梵眾而說偈言:
「又、諸の比丘!東南方五百万億國土の諸の大梵王、各自ら宮殿の光明照曜するを見、昔の有らざる所なり、歡喜踊躍して、希有の心を生じて、即ち各相詣りて、共に此の事を議す。時に彼の衆の中に一大梵天王有り、名づけて大悲と曰曰ふ、諸の梵衆の爲に而も偈を說きて曰く、
「『是事何因緣,而現如此相?
「『是の事何の因緣ぞ、而も如此の相を現ず。
我等諸宮殿,光明昔未有。
我等の諸宮殿、光明昔に未だ有らざる所なり。
為大德天生?為佛出世間?
大德の天生ずるか、佛の世間に出でたるか。
未曾見此相,當共一心求。
未曾て此の相を見ず、當に共に一心に求めん。
過千萬億土,尋光共推之,
千萬億の土を過して、光を尋ねて共に之を推さん、
多是佛出世,度脫苦眾生。』
多くは佛の世に出でて、苦の衆生を度脱するならん。』
「爾時五百萬億諸梵天王與宮殿俱,各以衣裓盛諸天華,共詣西北方推尋是相。見大通智勝如來處於道場菩提樹下,坐師子座,諸天、龍王、乾闥婆、緊那羅、摩睺羅伽、人非人等恭敬圍繞,及見十六王子請佛轉法輪。時諸梵天王頭面禮佛,繞百千匝,即以天華而散佛上——所散之華如須彌山,並以供養佛菩提樹。華供養已,各以宮殿奉上彼佛,而作是言:『唯見哀愍,饒益我等。所獻宮殿,願垂納受。』爾時諸梵天王即於佛前,一心同聲以偈頌曰:
「爾の時五百万億の諸梵天王、宮殿と俱に、各衣裓を以て諸の天華を盛めて、共に西北方に詣りて此の相を推尋す。大通智勝如來の道場菩提樹の下に處りて、師子座に坐し給ふを見、諸天・龍王・乾闥婆・緊那羅・摩睺羅伽・人非人等の恭敬して圍繞する、及び十六の王子の佛に法輪を轉ぜんことを請ふを見たり。時に諸の梵天王頭面佛を禮して、百千匝を繞りて、即ち天華を以て而も佛の上に散ず——散ずる所の華須彌山の如し、竝せて以て佛の菩提樹を供養す。華の供養已りて、各宮殿を以て彼の佛に奉上して、而も此の言を作さく、『唯だ哀愍を見給ひて、我等を饒益せよ。獻ずる所の宮殿、願はくは垂れて納受せんことを』と。爾の時諸の梵天王、即ち佛の前に於て、一心同聲に偈を以て頌して曰く、
「『聖主天中王,迦陵頻伽聲,
「『聖主天中の王、迦陵頻伽(妙音聲の鳥)の聲、
哀愍眾生者,我等今敬禮。
衆生を哀愍する者、我等今敬禮す。
