妙法蓮華經卷第二
世尊甚希有,久遠乃一現,
世尊甚だ希有にして、久遠に乃ち一たび現ず、
一百八十劫,空過無有佛。
一百八十劫、空しく過して佛有ること無し。
三惡道充滿,諸天眾減少,
三惡道充滿して、諸天の衆減少せり。
今佛出於世,為眾生作眼。
今佛世に出でて、衆生の爲に眼と作し給へり。
世間所歸趣,救護於一切,
世間の歸趣する所、一切に於て救護し、
為眾生之父,哀愍饒益者。
衆生の父と爲りて、哀愍して饒益する者なり。
我等宿福慶,今得值世尊。』
我等宿福慶にして、今世尊に値ふを得たり。』
「爾時諸梵天王偈讚佛已,各作是言:『唯願世尊哀愍一切,轉於法輪,度脫眾生。』時諸梵天王一心同聲而說偈言:
「爾の時諸の梵天王、偈を以て佛を讚し已りて、各此の言を作さく、『唯だ願はくは世尊一切を哀愍して、法輪を轉じて、衆生を度脱し給へ』と。時に諸の梵天王一心同聲して而も偈を說きて曰く、
「『大聖轉法輪,顯示諸法相,
「『大聖法輪を轉じて、諸法の相を顯示して、
度苦惱眾生,令得大歡喜。
苦惱の衆生を度して、大歡喜を得しめ給へ。
眾生聞此法,得道若生天,
衆生此の法を聞かば、道を得て若しくは天に生まれん、
諸惡道減少,忍善者增益。』
諸の惡道減少して、忍善の者増益せん。』
「爾時大通智勝如來默然許之。
「爾の時大通智勝如來默然として之を許し給へり。
「又,諸比丘!南方五百萬億國土諸大梵王,各自見宮殿光明照曜,昔所未有,歡喜踴躍,生希有心,即各相詣,共議此事:『以何因緣,我等宮殿有此光曜?』時彼眾中有一大梵天王,名曰妙法,為諸梵眾而說偈言:
「又、諸の比丘!南方五百万億國土の諸の大梵王、各自ら宮殿の光明照曜するを見、昔の有らざる所なり、歡喜踊躍して、希有の心を生じて、即ち各相詣りて、共に此の事を議す、『何の因緣を以てか、我等の宮殿此の光曜有るや』と。時に彼の衆の中に一大梵天王有り、名づけて妙法と曰ふ、諸の梵衆の爲に而も偈を說きて曰く、
「『我等諸宮殿,光明甚威曜,
「『我等の諸宮殿、光明甚だ威曜なり、
此非無因緣,是相宜求之。
此れ因緣無きに非ず、是の相宜しく之を求むべし。
過於百千劫,未曾見是相,
百千劫を過して、未曾て此の相を見ず、
為大德天生?為佛出世間?』
大德の天生ずるか、佛の世間に出でたるか。』
「爾時五百萬億諸梵天王與宮殿俱,各以衣裓盛諸天華,共詣北方推尋是相。見大通智勝如來處於道場菩提樹下,坐師子座,諸天、龍王、乾闥婆、緊那羅、摩睺羅伽、人非人等恭敬圍繞,及見十六王子請佛轉法輪。時諸梵天王頭面禮佛,繞百千匝,即以天華而散佛上——所散之華如須彌山,並以供養佛菩提樹。華供養已,各以宮殿奉上彼佛,而作是言:『唯見哀愍,饒益我等。所獻宮殿,願垂納受。』爾時諸梵天王,即於佛前,一心同聲以偈頌曰:
「爾の時五百万億の諸梵天王、宮殿と俱に、各衣裓を以て諸の天華を盛めて、共に北方に詣りて此の相を推尋す。大通智勝如來の道場菩提樹の下に處りて、師子座に坐し給ふを見、諸天・龍王・乾闥婆・緊那羅・摩睺羅伽・人非人等の恭敬して圍繞する、及び十六の王子の佛に法輪を轉ぜんことを請ふを見たり。時に諸の梵天王頭面佛を禮して、百千匝を繞りて、即ち天華を以て而も佛の上に散ず——散ずる所の華須彌山の如し、竝せて以て佛の菩提樹を供養す。華の供養已りて、各宮殿を以て彼の佛に奉上して、而も此の言を作さく、『唯だ哀愍を見給ひて、我等を饒益せよ。獻ずる所の宮殿、願はくは垂れて納受せんことを』と。爾の時諸の梵天王、即ち佛の前に於て、一心同聲に偈を以て頌して曰く、
「『世尊甚難見,破諸煩惱者,
「『世尊甚だ見難し、諸の煩惱を破る者、
過百三十劫,今乃得一見。
百三十劫を過して、今乃ち一見を得たり。
諸飢渴眾生,以法雨充滿,
諸の飢渴の衆生、法の雨を以て充滿せしむ、
昔所未曾見,無量智慧者,
昔の未曾て見ざりし、無量の智慧の者、
如優曇缽花,今日乃值遇。
優曇鉢華の如く、今日乃ち値遇せり。
我等諸宮殿,蒙光故嚴飾,
我等の諸宮殿、光を蒙るが故に嚴飾せり、
世尊大慈悲,唯願垂納受。』
世尊大慈悲なり、唯だ願はくは垂れて納受せよ。』
「爾時諸梵天王偈讚佛已,各作是言:『唯願世尊轉於法輪,令一切世間諸天、魔、梵、沙門、婆羅門,皆獲安隱而得度脫。』時諸梵天王一心同聲以偈頌曰:
「爾の時諸の梵天王、偈を以て佛を讚し已りて、各此の言を作さく、『唯だ願はくは世尊法輪を轉じて、一切世間の諸天・魔・梵・沙門・婆羅門をして、皆安穩を獲て而も度脱を得しめ給へ』と。時に諸の梵天王一心同聲に偈を以て頌して曰く、
「『唯願天人尊,轉無上法輪,
「『唯だ願はくは天人尊、無上の法輪を轉じて、
擊於大法鼓,而吹大法螺,
大法鼓を擊ちて、而も大法螺を吹き、
普雨大法雨,度無量眾生。
普く大法雨を雨らして、無量の衆生を度し給へ。
我等鹹歸請,當演深遠音。』
我等咸く歸請す、當に深遠の音を演し給へ。』
「爾時大通智勝如來默然許之。西南方乃至下方,亦復如是。
「爾の時大通智勝如來默然として之を許し給へり。西南方乃至下方も、亦復た是の如し。
「爾時上方五百萬億國土諸大梵王,皆悉自覩所止宮殿光明威曜,昔所未有,歡喜踴躍,生希有心,即各相詣,共議此事:『以何因緣,我等宮殿,有斯光明?』時彼眾中有一大梵天王,名曰屍棄,為諸梵眾而說偈言:
「爾の時上方五百万億國土の諸の大梵王、皆自ら止まる所の宮殿の光明威曜を睹て、昔の有らざる所なり、歡喜踊躍して、希有の心を生じて、即ち各相詣りて、共に此の事を議す、『何の因緣を以てか、我等の宮殿、此の光明有るや』と。時に彼の衆の中に一大梵天王有り、名づけて尸棄と曰ふ、諸の梵衆の爲に而も偈を說きて曰く、
「『今以何因緣,我等諸宮殿,
「『今何の因緣を以てか、我等の諸宮殿、
威德光明曜,嚴飾未曾有。
威德の光明曜、嚴飾未曾有なり。
如是之妙相,昔所未聞見,
如是の妙相、昔の未だ聞見せざる所なり、
為大德天生?為佛出世間?』
大德の天生ずるか、佛の世間に出でたるか。』
「爾時五百萬億諸梵天王與宮殿俱,各以衣裓盛諸天華,共詣下方推尋是相。見大通智勝如來處於道場菩提樹下,坐師子座,諸天、龍王、乾闥婆、緊那羅、摩睺羅伽、人非人等恭敬圍繞,及見十六王子請佛轉法輪。時諸梵天王頭面禮佛,繞百千匝,即以天華而散佛上——所散之花如須彌山,並以供養佛菩提樹。花供養已,各以宮殿奉上彼佛,而作是言:『唯見哀愍,饒益我等。所獻宮殿,願垂納受。』時諸梵天王,即於佛前,一心同聲以偈頌曰:
「爾の時五百万億の諸梵天王、宮殿と俱に、各衣裓を以て諸の天華を盛めて、共に下方に詣りて此の相を推尋す。大通智勝如來の道場菩提樹の下に處りて、師子座に坐し給ふを見、諸天・龍王・乾闥婆・緊那羅・摩睺羅伽・人非人等の恭敬して圍繞する、及び十六の王子の佛に法輪を轉ぜんことを請ふを見たり。時に諸の梵天王頭面佛を禮して、百千匝を繞りて、即ち天華を以て而も佛の上に散ず——散ずる所の花須彌山の如し、竝せて以て佛の菩提樹を供養す。花の供養已りて、各宮殿を以て彼の佛に奉上して、而も此の言を作さく、『唯だ哀愍を見給ひて、我等を饒益せよ。獻ずる所の宮殿、願はくは垂れて納受せんことを』と。時に諸の梵天王、即ち佛の前に於て、一心同聲に偈を以て頌して曰く、
「『善哉見諸佛,救世之聖尊,
「『善哉諸佛を見る、世を救ふ聖尊を、
能於三界獄,勉出諸眾生。
能く三界の獄に於て、諸の衆生を免出す。
普智天人尊,哀愍群萌類,
普智の天人尊、群萌の類を哀愍して、
能開甘露門,廣度於一切。
能く甘露の門を開きて、廣く一切を度す。
於昔無量劫,空過無有佛,
昔の無量劫に於て、空しく過して佛有ること無く、
世尊未出時,十方常闇冥,
世尊未だ出でざる時、十方常に暗冥にして、
三惡道增長,阿修羅亦盛,
三惡道增長して、阿修羅も亦盛んにして、
諸天眾轉減,死多墮惡道。
諸天の衆轉た減じて、死して多く惡道に墮つ。
不從佛聞法,常行不善事,
佛に從ひて法を聞かずして、常に不善の事を行じて、
色力及智慧,斯等皆減少。
色力及び智慧、是の等皆減少す。
罪業因緣故,失樂及樂想,
罪業の因緣なるが故に、樂及び樂想を失ひて、
住於邪見法,不識善儀則,
邪見の法に住して、善儀則を識らず、
不蒙佛所化,常墮於惡道。
佛の化する所を蒙らずして、常に惡道に墮つ。
佛為世間眼,久遠時乃出,
佛は世間の眼と爲れり、久遠の時に乃ち出で給ふ、
哀愍諸眾生,故現於世間。
諸の衆生を哀愍して、故に世間に現じ給ふ。
超出成正覺,我等甚欣慶,
超出して正覺を成り給へり、我等甚だ欣慶し、
及餘一切眾,喜歎未曾有。
及び餘の一切衆、歎じて未曾有を喜ぶ。
我等諸宮殿,蒙光故嚴飾,
我等の諸宮殿、光を蒙るが故に嚴飾せり、
今以奉世尊,唯垂哀納受。
今以て世尊に奉る、唯だ垂れて哀れて納受せよ。
願以此功德,普及於一切,
願はくは此の功德を以て、一切に普く及ぼさん、
我等與眾生,皆共成佛道。』
我等與衆生、皆共に佛道を成ぜん。』
「爾時五百萬億諸梵天王偈讚佛已,各白佛言:『唯願世尊轉於法輪,多所安隱,多所度脫。』時諸梵天王而說偈言:
「爾の時五百万億の諸梵天王、偈を以て佛を讚し已りて、各佛に白して言へらく、『唯だ願はくは世尊法輪を轉じて、多く安穩を爲し、多く度脱を爲し給へ』と。時に諸の梵天王而も偈を說きて曰く、
