妙法蓮華經卷第二
「『世尊轉法輪,擊甘露法鼓,
「『世尊法輪を轉じて、甘露の法鼓を擊ちて、
度苦惱眾生,開示涅槃道。
苦惱の衆生を度して、涅槃の道を開示し給へ。
唯願受我請,以大微妙音,
唯だ願はくは我が請を受けて、大微妙の音を以て、
哀愍而敷演,無量劫習法。』
哀愍して而も敷演せよ、無量劫の習する法を。』
「爾時大通智勝如來受十方諸梵天王及十六王子請,即時三轉十二行法輪——若沙門、婆羅門,若天、魔、梵及餘世間所不能轉——謂是苦,是苦集,是苦滅,是苦滅道;及廣說十二因緣法——無明緣行,行緣識,識緣名色,名色緣六入,六入緣觸,觸緣受,受緣愛,愛緣取,取緣有,有緣生,生緣老死憂悲苦惱。無明滅則行滅,行滅則識滅,識滅則名色滅,名色滅則六入滅,六入滅則觸滅,觸滅則受滅,受滅則愛滅,愛滅則取滅,取滅則有滅,有滅則生滅,生滅則老死憂悲苦惱滅。
「爾の時大通智勝如來、十方の諸梵天王及び十六の王子の請を受けて、即時に三轉十二行の法輪を轉じ給へり——若し沙門・婆羅門、若し天・魔・梵及び餘の世間の轉ずる能ふ所にあらざる——謂はく、是れ苦、是れ苦集、是れ苦滅、是れ苦滅の道。及び廣く十二因緣の法を說き給ふ——無明は行に緣し、行は識に緣し、識は名色に緣し、名色は六入に緣し、六入は觸に緣し、觸は受に緣し、受は愛に緣し、愛は取に緣し、取は有に緣し、有は生に緣し、生は老死・憂悲・苦惱に緣す。無明滅せば則ち行滅し、行滅せば則ち識滅し、識滅せば則ち名色滅し、名色滅せば則ち六入滅し、六入滅せば則ち觸滅し、觸滅せば則ち受滅し、受滅せば則ち愛滅し、愛滅せば則ち取滅し、取滅せば則ち有滅し、有滅せば則ち生滅し、生滅せば則ち老死・憂悲・苦惱滅す。
「佛於天人大眾之中說是法時,六百萬億那由他人,以不受一切法故,而於諸漏心得解脫,皆得深妙禪定,三明、六通,具八解脫。第二、第三、第四說法時,千萬億恆河沙那由他等眾生,亦以不受一切法故,而於諸漏心得解脫。從是已後,諸聲聞眾無量無邊不可稱數。
「佛天人大衆の中に於て此の法を說き給ふ時、六百万億那由他の人、一切の法を受けざるを以ての故に、而も諸漏に於て心解脫を得て、皆深妙の禪定を得て、三明・六通、八解脫を具へたり。第二・第三・第四に法を說き給ふ時、千萬億恒河沙那由他等の衆生、亦以て一切の法を受けざるを以ての故に、而も諸漏に於て心解脫を得たり。此より已後、諸の聲聞衆無量無邊にして稱數すべからず。
「爾時十六王子——皆以童子出家而為沙彌,諸根通利,智慧明瞭,已曾供養百千萬億諸佛,淨修梵行,求阿耨多羅三藐三菩提——俱白佛言:『世尊!是諸無量千萬億大德聲聞皆已成就。世尊亦當為我等說阿耨多羅三藐三菩提法,我等聞已,皆共修學。世尊!我等志願如來知見,深心所念,佛自證知。』爾時轉輪聖王所將眾中八萬億人,見十六王子出家,亦求出家。王即聽許。
「爾の時十六の王子——皆童子を以て出家して沙彌(出家して未だ具足戒を受けざる少年)と爲れり、諸根通利にして、智慧明了、已に曾て百千萬億の諸佛を供養し、淨く梵行を修して、無上正等正覺を求む——俱に佛に白して言へらく、『世尊!是の無量千萬億の大德聲聞、皆已に成就せり。世尊も亦當に我等の爲に無上正等正覺の法を說き給ふべし、我等聞き已りて、皆共に修學せん。世尊!我等如來の知見を志願す、深心の念ずる所、佛自ら證知し給ふ』と。爾の時轉輪聖王の將る所の衆の中、八萬億の人、十六の王子の出家するを見て、亦出家を求む。王即ち聽許す。
「爾時彼佛受沙彌請,過二萬劫已,乃於四眾之中說是大乘經,名『妙法蓮華』,教菩薩法,佛所護念。說是經已,十六沙彌為阿耨多羅三藐三菩提故,皆共受持,諷誦通利。說是經時,十六菩薩沙彌皆悉信受;聲聞眾中,亦有信解;其餘眾生千萬億種,皆生疑惑。佛說是經,於八千劫未曾休廢。說此經已,即入靜室,住於禪定八萬四千劫。是時十六菩薩沙彌,知佛入室寂然禪定,各昇法座,亦於八萬四千劫,為四部眾廣說分別妙法華經。一一皆度六百萬億那由他恆河沙等眾生,示教利喜,令發阿耨多羅三藐三菩提心。
「爾の時彼の佛、沙彌の請を受けて、二萬劫を過し已りて、纔かに四衆の中に於て此の大乘經を說き給ふ、名は『妙法蓮華』、菩薩法を教へ、佛の護念する所なり。此の經を說き已りて、十六の沙彌無上正等正覺の故の爲に、皆共に受持して、諷誦通利せり。此の經を說き給ふ時、十六の菩薩沙彌皆悉く信受す、聲聞衆の中にも、亦信解有りき、其の餘の衆生千萬億種、皆疑惑を生ぜり。佛此の經を說き給ふ、八千劫に於て曾て休廢せず。此の經を說き已りて、即ち靜室に入りて、禪定に住すること八萬四千劫。是の時十六の菩薩沙彌、佛の室に入りて寂然禪定するを知りて、各法座に升りて、亦八萬四千劫に於て、四部の衆の爲に廣く妙法華く妙法華經を說きて分別す。一一皆六百万億那由他恒河沙等の衆生を度して、示して教へて利して喜ばしめて、無上正等正覺の心を發さしめり。
「大通智勝佛過八萬四千劫已,從三昧起,往詣法座安詳而坐,普告大眾:『是十六菩薩沙彌甚為希有,諸根通利,智慧明瞭,已曾供養無量千萬億數諸佛。於諸佛所,常修梵行,受持佛智,開示眾生,令入其中。汝等皆當數數親近而供養之。所以者何?若聲聞、辟支佛及諸菩薩,能信是十六菩薩所說經法,受持不毀者,是人皆當得阿耨多羅三藐三菩提、如來之慧。』」
「大通智勝佛八萬四千劫を過し已りて、三昧より起ちて、法座に往詣りて安詳に坐して、普く大衆に告げて曰く、『此の十六の菩薩沙彌甚だ希有なり、諸根通利にして、智慧明了、已に曾て無量千萬億數の諸佛を供養せり。諸佛の所に於て、常に梵行を修して、佛智を受持して、衆生を開示して、其の中に入らしめり。汝等皆當に數數親近して而も之を供養すべし。何以故。若し聲聞・辟支佛及び諸の菩薩、能く此の十六の菩薩の說く所の經法を信じて、受持して毁かざれば、此の人皆當に無上正等正覺・如來の慧を得べきが故に』と。」
佛告諸比丘:「是十六菩薩常樂說是妙法蓮華經。一一菩薩所化六百萬億那由他恆河沙等眾生,世世所生與菩薩俱,從其聞法,悉皆信解,以此因緣,得值四百萬億諸佛世尊,於今不盡。
佛諸の比丘に告げて曰く、「此の十六の菩薩、常に此の妙法蓮華經を樂說す。一一の菩薩の化する所の六百万億那由他恒河沙等の衆生、世世生ずる所に菩薩と俱にして、其より法を聞きて、皆信解して、此の因緣を以て、四百万億の諸佛世尊に値ふを得て、今に於て盡きず。
「諸比丘!我今語汝:『彼佛弟子十六沙彌,今皆得阿耨多羅三藐三菩提,於十方國土現在說法,有無量百千萬億菩薩、聲聞以為眷屬。其二沙彌,東方作佛,一名阿閦,在歡喜國,二名須彌頂;東南方二佛,一名師子音,二名師子相;南方二佛,一名虛空住,二名常滅;西南方二佛,一名帝相,二名梵相;西方二佛,一名阿彌陀,二名度一切世間苦惱;西北方二佛,一名多摩羅跋栴檀香神通,二名須彌相;北方二佛,一名雲自在,二名雲自在王;東北方佛,名壞一切世間怖畏,第十六我釋迦牟尼佛於娑婆國土成阿耨多羅三藐三菩提。』
「諸の比丘!我今汝に語らく、『彼の佛の弟子十六の沙彌、今皆無上正等正覺を得て、十方の國土に於て現在法を說く、無量百千萬億の菩薩・聲聞有りて以て眷屬と爲す。其二の沙彌、東方に佛と作す、一は名は阿閦、歡喜國に在り、二は名は須彌頂、東南方二佛、一は名は師子音、二は名は師子相、南方二佛、一は名は虛空住、二は名は常滅、西南方二佛、一は名は帝相、二は名は梵相、西方二佛、一は名は阿彌陀、二は名は一切世間苦惱を度す、西北方二佛、一は名は多摩羅跋栴檀香神通、二は名は須彌相、北方二佛、一は名は雲自在、二は名は雲自在王、東北方佛、名は一切世間の怖畏を壞る、第十六は我釋迦牟尼佛、娑婆國土に於て無上正等正覺を成れり。』
「諸比丘!我等為沙彌時,各各教化無量百千萬億恆河沙等眾生,從我聞法,為阿耨多羅三藐三菩提。此諸眾生,於今有住聲聞地者,我常教化阿耨多羅三藐三菩提。是諸人等,應以是法漸入佛道。所以者何?如來智慧,難信難解。爾時所化無量恆河沙等眾生者,汝等諸比丘,及我滅度後未來世中聲聞弟子是也。我滅度後,復有弟子不聞是經,不知不覺菩薩所行,自於所得功德生滅度想,當入涅槃。我於餘國作佛,更有異名。是人雖生滅度之想入於涅槃,而於彼土求佛智慧,得聞是經,唯以佛乘而得滅度,更無餘乘,除諸如來方便說法。
「諸の比丘!我等沙彌の時、各各無量百千萬億恒河沙等の衆生を教化せり、我より法を聞きて、無上正等正覺の爲なり。是の衆生、今に於て聲聞地に住する有り、我常に無上正等正覺を教化す。是の人等、應に此の法を以て漸く佛道に入るべし。何以故。如來の智慧、信じ難く解し難し。爾の時化する所の無量恒河沙等の衆生は、汝等諸の比丘、及び我が滅度の後の未來世の中の聲聞の弟子即是れなり。我が滅度の後、復た弟子有りて此の經を聞かず、菩薩の行ずる所を覺えず知らずして、自ら得る所の功德に於て滅度の想を生じて、當に涅槃に入らんとす。我餘國に於て佛と作す、更に異名有り。此の人雖滅度の想を生じて涅槃に入れども、而も彼の土に於て佛の智慧を求めて、此の經を聞くを得ん、唯だ佛乘を以て而も滅度を得ん、更に餘乘無し、諸の如來の方便して法を說くを除く。
「諸比丘!若如來自知涅槃時到,眾又清淨、信解堅固、了達空法、深入禪定,便集諸菩薩及聲聞眾,為說是經。世間無有二乘而得滅度,唯一佛乘得滅度耳。比丘當知!如來方便,深入眾生之性,知其志樂小法,深著五欲,為是等故說於涅槃。是人若聞,則便信受。
「諸の比丘!若し如來自ら涅槃の時の至るを知りて、衆又清淨・信解堅固・空法を了達・深く禪定に入れば、便ち諸の菩薩及び聲聞衆を集めて、此の經を爲に說かん。世間二乘有りて而も滅度を得ること無し、唯一佛乘にて滅度を得るのみ。比丘當に知るべし!如來方便にして、深く衆生の性に入りて、其の小法を志樂して、深く五欲に着するを知りて、是の人の爲の故に涅槃を說く。此の人若し聞かば、則ち便ち信受せん。
「譬如五百由旬險難惡道,曠絕無人、怖畏之處。若有多眾,欲過此道至珍寶處。有一導師,聰慧明達,善知險道通塞之相,將導眾人慾過此難。所將人眾中路懈退,白導師言:『我等疲極,而復怖畏,不能復進;前路猶遠,今欲退還。』導師多諸方便而作是念:『此等可愍,云何捨大珍寶而欲退還?』作是念已,以方便力,於險道中過三百由旬,化作一城,告眾人言:『汝等勿怖,莫得退還。今此大城,可於中止,隨意所作。若入是城,快得安隱。若能前至寶所,亦可得去。』是時疲極之眾,心大歡喜,歎未曾有:『我等今者免斯惡道,快得安隱。』於是眾人前入化城,生已度想、生安隱想。爾時導師,知此人眾既得止息,無復疲惓。即滅化城,語眾人言:『汝等去來,寶處在近。曏者大城,我所化作,為止息耳。』
「譬へば五百由旬の險難惡道、曠絕にして人無く・怖畏の處。若し多くの衆有りて、此の道を過して珍寶の處に至らんと欲す。一の導師有りて、聰慧明達にして、善く險道の通塞の相を知りて、衆人を將導して此の難を過んと欲す。將る所の人衆、中路に懈退して、導師に白して言へらく、『我等疲極して、而又怖畏す、能く復た進まず、前路猶だ遠し、今退還せんと欲す』と。導師多く諸の方便有りて而も此の念を作さく、『是の人愍むべし、云何にか大珍寶を舍てて而も退還せんと欲する』と。此の念を作し已りて、方便力を以て、險道の中に於て三百由旬を過して、化して一城と作して、衆人に告げて言へらく、『汝等怖るる勿れ、退還するを得る莫れ。今此の大城、其の中に止まるべし、意の作す所に隨へ。若し此の城に入らば、快く安穩を得ん。若し能く前に寶所に至らば、亦往くを得ん』と。是の時疲極の衆、心大いに歡喜して、未曾有を歎じて曰く、『我等今の者此の惡道を免れて、快く安穩を得たり』と。是に於て衆人前に化城に入りて、已度の想を生じ・安穩の想を生ぜり。爾の時導師、此の人衆の既に止息を得たるを知りて、復た疲倦無し、即ち化城を滅して、衆人に語りて言へらく、『汝等去來れ、寶處近し。向の者の大城、我の化作する所なり、止息するのみ』と。
「諸比丘!如來亦復如是,今為汝等作大導師,知諸生死煩惱惡道險難長遠,應去應度。若眾生但聞一佛乘者,則不欲見佛,不欲親近,便作是念:『佛道長遠,久受懃苦乃可得成。』佛知是心怯弱下劣,以方便力,而於中道為止息故,說二涅槃。若眾生住於二地,如來爾時即便為說:『汝等所作未辦,汝所住地,近於佛慧,當觀察籌量所得涅槃非真實也。但是如來方便之力,於一佛乘分別說三。』如彼導師,為止息故,化作大城。既知息已,而告之言:『寶處在近,此城非實,我化作耳。』」爾時世尊欲重宣此義,而說偈言:
「諸の比丘!如來も亦復た如是、今汝等の爲に大導師と作して、諸の生死煩惱の惡道險難長遠なるを知りて、應に去り應に度るべし。若し衆生但だ一佛乘を聞く者は、則ち佛を見んと欲せず、親近せんと欲せずして、便ち此の念を作さく、『佛道長遠にして、久しく勤苦を受けて纔かに成るを得べし』と。佛此の心の怯弱下劣なるを知りて、方便力を以て、而も中道に於て止息の爲の故に、二の涅槃を說き給ふ。若し衆生二地に住せば、如來爾の時即便ち爲に說き給ふ、『汝等の作す所未だ辦せず、汝の住する所の地、佛慧に近し、當に觀察籌量すべし、得る所の涅槃實に非ずと。但だ是れ如來の方便の力、一佛乘に於て分別して三と說く』と。彼の導師の、止息の爲の故に、大城を化せしが如し。既に息まるを知りて、而も之に告げて言へらく、『寶處近し、此の城實に非ず、我が化して作したるのみ』と。」爾の時世尊、欲りて重ねて此の義を宣べて、偈を說きて曰く、
「大通智勝佛,十劫坐道場,
「大通智勝佛、十劫道場に坐して、
佛法不現前,不得成佛道。
佛法前に現ぜずして、佛道を成るを得ざりき。
諸天神龍王、阿修羅眾等,
諸天・神・龍王・阿修羅衆等、
常雨於天華,以供養彼佛。
常に天華を雨らして、以て彼の佛を供養す。
諸天擊天鼓,並作眾伎樂,
諸天天鼓を擊ちて、竝せて衆の伎樂を作し、
香風吹萎華,更雨新好者。
香風萎れし華を吹去して、更に新好の者を雨らす。
過十小劫已,乃得成佛道,
十小劫を過し已りて、纔かに佛道を成るを得たり、
諸天及世人,心皆懷踴躍。
諸天及び世人、心皆踊躍を懷けり。
彼佛十六子,皆與其眷屬,
彼の佛の十六の子、皆其の眷屬と俱にして、
千萬億圍繞,俱行至佛所,
千萬億圍繞して、俱に行きて佛の所に至り、
頭面禮佛足,而請轉法輪:
頭面佛足を禮して、而も法輪を轉ぜんことを請へり、
『聖師子法雨,充我及一切。』
『聖師子の法雨、我及び一切に充たん』と。
世尊甚難值,久遠時一現,
世尊甚だ値ひ難し、久遠の時に一たび現じて、
為覺悟群生,震動於一切。
群生を覺悟せしめんが爲に、一切に於て震動す。
東方諸世界,五百萬億國,
東方の諸世界、五百万億の國、
梵宮殿光曜,昔所未曾有。
梵宮殿光曜す、昔の未曾て有らざる所なり。
諸梵見此相,尋來至佛所,
諸の梵此の相を見て、尋ねて來りて佛の所に至り、
散花以供養,並奉上宮殿,
花を散じて以て供養し、竝せて宮殿を奉上し、
請佛轉法輪,以偈而讚歎。
佛に法輪を轉ぜんことを請ひて、偈を以て而も讚歎す。
佛知時未至,受請默然坐。
佛時未だ至らざるを知りて、請を受けて默然として坐し給へり。
三方及四維、上下亦復爾,
三方及び四維・上下も亦復た爾なり、
散花奉宮殿,請佛轉法輪:
花を散じ宮殿を奉りて、佛に法輪を轉ぜんことを請へり、
『世尊甚難值,願以大慈悲,
『世尊甚だ値ひ難し、願はくは大慈悲を以て、
廣開甘露門,轉無上法輪。』
廣く甘露の門を開きて、無上の法輪を轉じ給へ』と。
無量慧世尊,受彼眾人請,
無量慧の世尊、彼の衆人の請を受けて、
為宣種種法:『四諦十二緣,
種種の法を宣べ給ふ、『四諦・十二縁、
無明至老死,皆從生緣有。
無明より老死に至るまで、皆生の緣より有り。
如是眾過患,汝等應當知。』
如是の衆の過患、汝等當に知るべし』と。
宣暢是法時,六百萬億姟,
此の法を宣暢する時、六百万億垓、
得盡諸苦際,皆成阿羅漢。
諸の苦際を盡くすを得て、皆阿羅漢と成れり。
第二說法時,千萬恆沙眾,
第二に法を說き給ふ時、千萬恒沙の衆、
於諸法不受,亦得阿羅漢。
諸法に於て受けずして、亦阿羅漢を得たり。
從是後得道,其數無有量,
此より後に道を得たる、其の數量有ること無し、
萬億劫算數,不能得其邊。
萬億劫を算數すとも、能く其の邊を得ざらん。
時十六王子,出家作沙彌,
時に十六の王子、出家して沙彌と作して、
皆共請彼佛,演說大乘法:
皆共に彼の佛に請ひて、大乘法を演說せしめき、
『我等及營從,皆當成佛道,
『我等及び營從、皆當に佛道を成るべし、
願得如世尊,慧眼第一淨。』
願はくは世尊の如く、慧眼第一淨きを得ん』と。
佛知童子心,宿世之所行,
佛童子の心を知りて、宿世の行ずる所、
以無量因緣、種種諸譬喻,
無量の因緣・種種の諸の譬喻を以て、
說六波羅蜜,及諸神通事。
六波羅蜜を說き、及び諸の神通の事を。
分別真實法,菩薩所行道,
分別して眞實の法、菩薩の行ずる所の道を、
說是法華經,如恆河沙偈。
此の法華經を說き給ふ、恒河沙の偈の如く。
彼佛說經已,靜室入禪定,
彼の佛經を說き已りて、靜室に入りて禪定せり、
一心一處坐,八萬四千劫。
一心して一處に坐すること、八萬四千劫。
