八十八、古人を論望す、難に遭ふ者皆一色有り
邊地起赤雲,唐太宗有金營,百曰縲洩。印堂生暗黔,關雲長有失馬之驚。準頭孟堂君夜津闊津。奸門忽暗,劉玄德有長坡之厄。雙顴如火,楊六郎失職困成川。赤邊三關,楊文廣困柳州三載。印堂暗、顴骨青,伍子胥貴劍走范陽。耳朦額暗,韓文公風雪走潮陽。赤起太陽,陳巡檢梅林尋申陽(失妻之說)。年壽暗如泥,齊孝仁遭失牛。
此の一節は古人を擧げて例と爲し、難に遭ふ時面上皆先づ一種の氣色を現ずるを說明す。額側「邊地」赤雲を泛起す、唐太宗敵營に困せられ、百日の間身縹紲に陷れり。「印堂」暗黑を現出す、關雲長馬を失ふの驚あり。「準頭」惡色を現出す、孟嘗君夜に函谷關に奔れり。「奸門」(眼尾)忽然發暗す、劉備長坂坡の厄あり。兩「顴骨」赤きこと火の如し、楊六郎職を失ひ邊地に困す。邊地と三關一帶發赤す、楊文廣柳州に困せられ三年。「印堂」發暗にして顴骨發青す、伍子胥劍を仗りて范陽に逃奔す。兩耳蒙昧にして額上晦暗、韓愈風雪を冒して潮州に貶謫せらる。「太陽」(眼尾上方)赤色を泛起す、陳巡檢梅嶺に在りて申陽公に攝去せられたる妻子を尋ねたり――舊注曰く、此れ是れ妻を失ふの應驗なり。「年上」「壽上」暗きこと爛泥の如し、齊孝仁牛を丟失するの失に遭遇せり。
以上端不過氣色不好,故有此難,氣色一開安保榮,此乃相貌原好,因氣色不好,故暫守困,色若鮮明,氣若和潤,可保萬里飛高俱無阻滯。此書相周體諸事俱完,尚有行、坐、臥、食、語、笑乃係身外六法,另詳於後。
已上の諸人不過一時氣色好からざるなり、故に纔かに此の等の災難有り。氣色一開けば、自然安然榮顯なり。彼ら本來相貌便ち好なるを、只だ氣色不佳と爲るが因りて、纔かに暫時困を守るのみ。氣色若し鮮明にして、氣息若し和潤なれば、便ち一飛萬里・毫も阻滯無きを保つ可し。此の部の書周身各處の相法を講ずること此に到りて已に說き盡せり、還た行・坐・臥・食・語・笑の此の六項ありて、形體の外の六種の相法に屬し、別に後文に詳述す。
八十九、行の富貴貧賤を論ず
凡行欲正直昂然,不可偏歪曲屈。步欲潤,頭欲直,腰欲挺、胸欲硬。凡偏體搖頭,蛇行雀步,腰折頂歪,俱不好之格。詩曰:行如流水步行來,體直頭品身項停,若是搖頭過步者,田園敗盡老來貧。
走路は須みに端正挺直・氣宇軒昂、歪斜曲縮す可からず。步子は須みに從容餘あり、頭は須みに正直、腰は須みに挺起、胸は須みに堅實ならん。凡そ走る時身子偏側・腦袋亂搖・蛇の如く蜿蜒として行き・麻雀の如く跳躍して走り、腰折背彎・頭頂歪斜のは、皆好格局に非ず。詩に曰く、走起路來流水の如く順暢、身直・頭正・身と頸と皆停勻。若し是れ搖頭晃腦・邁步過大のは、田園敗盡し、老來貧寒なり。
九十、坐の富貴貧賤を論ず
凡坐欲端正、嚴肅。男女一同。不欲體捷身動足貌頭垂,凡此皆不足之相也。坐若丘山者,主大貴。坐若肩圓項正體平,起坐舒緩,此皆貴人之相。詩曰:坐若丘山穩且平,為人忠孝立功勳,皆是頭搖並足動,頑愚下賤不須論。
坐は須みに端正嚴肅、男女一樣ならん。身子輕捷に亂動・脚停まらず擺る・頭下に垂るを要さず、此れら皆是不足の相なり。坐ること一座の山丘の如く穩重のは、大貴を主る。坐る時兩肩圓渾・頸項端正・身軀平穩・起身落座從容不迫、此れら皆是れ貴人の相なり。詩に曰く、坐ること丘山の一般にして又穩に又平のは、人と爲りて忠孝にして功勳を建立する能くす。若し是れ頭を搖り又脚を擺るは、彼は是れ頑愚下賤の輩、多く說くを須ゐず。
九十一、臥の富貴貧賤を論ず
臥乃寐之安,不可不穩。凡臥如龍之盤,如犬之曲,乃貴人之相。凡睡將手抱頭者,善明詞訟。長腳長手,為停尸,大不好也。睡長夢自言自語者,乃狂詐之徒。書云:只因夢裡多狂語,每向人前狂語多。凡睡將背朝天者,主餓死。睡中搖足者,乃上等人之相。睡起者,主夭。不閉眼者,惡死。又云,睡夢狂言奸詐,詐言詐人,開眼張口必遭刑。
睡臥は安穩を求むるを是とし、穩ならざる能わず。睡姿龍の盤曲の如く・狗の蜷臥の如きは、是れ貴人の相なり。睡る時兩手頭を抱くは、善く詞訟を明辨す。手脚伸ばして筆直にして停放する尸首の如きは、大いに好からず。睡る時常に夢を做して夢中自言自語のは、是れ狂妄奸詐の徒なり。相書曰く、只だ夢裡狂語多きが因りて、醒めて人前に在りても亦た常に狂話を說く。睡る時背天に朝かり・臉下に朝きて趴るは、餓死を主る。睡中兩脚輕輕と搖動するは、是れ上等人の相なり。睡下すれば則ち起き・輾轉して安眼する能わざるは、夭亡を主る。睡る時眼睛閉合せざるは、凶死を主る。又曰く、睡夢中狂言する人は奸詐にして、慣ひ詐語を以て人を騙す。睡る時眼を張り・口を張るは、必ず刑罰に遭ふ。
九十二、食の富貴貧賤を論ず
食乃一身之主,宜無相法。凡食慾開大合小,速進食者為妙。猴食鼠餐不足道也。食多哽咽必主流徒。嗒嘴如豬者,難免凶死。項生如馬者,一世辛勤。
飲食は是れ一身を養ふの主、看て相の言ふ可き無きに似たれども、其の實も亦た相法あり。飯を喫する時嘴は須みに張り得ること開き・合し得ること攏ぞん、一口は是一口、進食利落の是最も好し。猴子の如く抓取し・老鼠の如く啃齧するは、提ふるに足らず。飯を喫して常に噎住するは、必ず流放遷徙の厄を主る。東西を喫して咂嘴聲有ること豬の如きは、凶死を免がれ難し。飯を喫する時脖子一伸一伸して馬の如きは、一世辛勞なり。
九十三、語の富貴貧賤を論ず
凡語言與聲音不同,聲音出於丹田,語言出於唇吻。故不同類人,人之語、唇、舌,勻停各緩不露齒為妙。如急焦亂泛者,乃下賤之相,一世無成也。詩曰:語要勻停氣要和,貴人語少小人多,若是泛言唇亂動,不離貧賤病多魔。
言語と聲音とは是れ一回事に非ず:聲音は丹田に發し、言語は脣齒の間に出づ、故に兩者分かちて看るを要す。人の說話する時嘴脣・舌頭須みに勻停從容・各自舒緩にして齒牙を齜かず露さざらん、此れ纔かに好し。若し說話急躁焦灼・雜亂浮泛のは、彼は是れ下賤の相、一世成無し。詩に曰く、說話は須みに勻停、氣息は須みに和緩ならん。貴人は話少く、小人は話多し。若し是れ言語浮泛・嘴脣亂動のは、貧賤多病多災を免がれざらん。
九十四、笑の富貴貧賤を論ず
凡笑乃喜這發,不欲反常。冷笑者多謀足智。藏情者一世奸貧。笑欲開口大、響,不欲閉口無聲者,如馬嘶皆不為美。開口長聲笑者賢,聲音喉內定賢奸,若是馬嘶猿猴叫,又貧又苦又無錢。
笑は是れ喜悅の情の發露、反常するに宜しからず。冷笑に慣む人多く謀略にして智足り。笑する時情緒を藏れ掖るは、一世奸詐にして貧寒なり。笑は須みに口を開きて聲音響亮、嘴を閉ぢて聲無く笑ふを要さず。笑聲馬嘶の如きは、亦た皆好しと算へず。詩に曰く、口を開き聲を放ちて長笑する人は賢良、喉中に發するの笑聲便ち彼が是れ賢か是れ奸かを斷定する可し。若し笑ひ起りて馬嘶の如く・猿猴啼叫の如きは、那ぞ便ち又貧しく又苦しく又錢無きなり。
九十五、行を論ずる說
金木水火土,一身之體不出五行之外。夫金形人:面方耳正眉清目秀,唇齒得配,手小腰圓,白色,方是金形。若是聲高高如金,主大貴。若雜格主小貴。不宜滯,不宜赤。滯為土埋金,主困苦。赤在準頭三陽,主有災難,輕則破敗,重則主死。金形人不宜帶火。書云:部位要周全,三停又帶方,金形人人格,富貴把名揚。
金木水火土五種の形局、人の一身形體皆五行の外に跳出す能わず。先づ「金形」の人を說く:臉方・耳正・眉清・目秀・脣と齒と相配・手小にして腰圓・膚色白に偏す、此れ纔かに是れ金形なり。若し聲音高亢清越して金石の響きの如きは、大貴を主る。若し形局駁雜純ならざれば、只だ小貴を主るのみ。金形人の氣色は滯暗に宜しからず、亦た發赤に宜しからず:滯暗は是れ土金を埋む、困苦を主る。赤色準頭と眼下三陽とに現ずるは、災難有るを主り、輕ければ則ち破敗、重ければ則ち死に致す。金形人は火色を帶ぶるに宜しからず。相書曰く、面上部位須みに周全、三停又皆方正の勢を帶ぶ、金形人此の格に合すれば、便ち富貴揚名する能くす。
凡木形人宜幹直秀長,睛清口潤神足,不偏削歪斜枯陷,腰圓體正,方可棟樑。偏削雲削,小人之相。浮筋露骨何須苦問?功名些須帶,大乃作水火通明,若是土赤金紅,不宜取用。有宜些金還求名之客。木削金重,一生成敗之人。書云:稜形瘦格凜凜更修藏秀氣。生眉眼方言作棟樑。
「木形」の人は身干挺直・清秀修長・眼珠清亮・口脣潤澤・神氣充足・偏せず・削せず・歪斜せず・枯陷せず・腰圓身正に宜しく、此の樣にして纔かに棟梁と爲るに堪つ。若し形體偏斜削薄のは、彼は是れ小人の相なり。青筋浮起・骨節外露のは、何ぞ必ずしも苦苦と前程を追問せんや?此の種の人功名只だ一點の邊を沾むのみ。木形にして水の來り相生し・火の來り通明するを得るは、最も上格と爲す。若し面土色の赤・金色の紅(金の來りて木を克する)を帶ぶれば、便ち取用するに足らず。稍ば一點の金氣を帶ぶるは、還た一個の功名を求めに往く可し。木形單薄にして金氣過重のは、一生成敗反覆す。相書曰く、形體清瘦して稜有り・氣度凜然として又能く秀氣を內藏し、再び一雙の好眉好眼を配上せば、纔かに棟梁の材を做るを談ずるに及ぶ。
凡水形要骨正肉實色白,帶潤體發面回紋看如狀。面觀如仰,腹大殿大方是水形,不宜氣粗色黑,皮白如粉,面嫌肉浮,凡水形人骨少肉多浮,主夭,無鬚皮滑者無子。肉冷者亦無子。書云:眼大並眉粗,城郭要團王。上此相名真水,平生福自然。
「水形」人は須みに骨骼端正・肌肉充實・膚色白淨にして潤澤を帶び・身體豐滿・面部圓轉にして回環の勢有らん。臉看上して仰面朝天の圓盤の如く、腹部大・臀部大、此れ纔かに是れ水形なり。水形は氣息粗重・面色發黑を忌み、皮膚白きこと粉の如きを忌み、臉上も亦た肌肉虛浮を嫌ふ。水形人若し骨少くして肉多く且つ虛浮のは、夭亡を主る。鬍鬚無くして皮膚滑腻のは兒子無く、肌膚冰冷のも亦た兒子無し。相書曰く、眼睛大にして眉毛粗、面輪(城郭)は須みに團圓完整ならん。此の相に合して纔かに真水形と呼び、一生福分自然而來す。
凡火形人上尖下闊形動燥鬚少面紅鼻嬌,不宜帶滯色。宜明潤。耳紅又鬚少,不宜腹大,不宜口大。凡火形貴 不過成職,富不過百金,非大富大貴之相也。凡火形形貌,三停又宜頭高方有子,不然子亦難招,書云:欲識火帶尖身體全淨腮邊少鬢。
「火形」人上尖下闊、擧動急躁、鬍鬚少、面色紅に偏し、鼻子小巧なり。火形は滯暗の色を帶ぶるを忌み、明潤に宜し。耳色發紅にして鬍鬚又少のは、腹部太だ大なるに宜しからず、亦た口形太だ大なるに宜しからず。火形人貴不過有限の職位を做到し、富不過百金、是れ大富大貴の相に非ず。火形の形貌、還た須みに三停相稱・頭部高聳ならん、纔かに子有らん、然らざれば子息も亦た招き難し。相書曰く、火形を認めんと要せば、便ち形體上尖・通身潔淨・腮邊鬢髮稀少を看よ。
凡土形肥大敦厚,面重骨實皮高黑色,聲大如雷,項短頭圓,乃真土也。書云:端厚仍深重安詳,若泰山,心謀測度,信生人間。總論歌:木瘦金方水主肥,土形敦厚背如龜,上尖下潤明如火,五樣人形仔細推。木色青兮火色紅,土黃水黑是真容,只有金形宜帶白,五般顏色不相同。
「土形」人肥大敦厚、面相厚重・骨骼結實・皮膚厚にして色黑に偏し、聲音大きこと雷鳴の如く、頸短頭圓、此れ纔かに是れ真土形なり。相書曰く、人と爲りて端方厚重・深沉安詳・泰山の如く穩かにして、心中自ら謀算有り、是れ人間信義を講ずるの人なり。總論歌曰く、木形瘦・金形方・水形主肥胖、土形敦厚にして背隆ること龜の如し。上尖下闊・光明して火の如きは是れ火形――此の五種の人形須みに子細に推詳すべし。木形の氣色青、火形の氣色紅、土形黄・水形黑纔かに是れ本色、只だ金形白を帶ぶるに宜し:五行の五種の色各々同じからず。
夫人受精於水,稟氣於火,故坎離為方得成身,先精合肉,後神生,先神生而後形全,自知全於內外,不出乎五行生剋之中,富貴貧賤盡在衰強旺弱之配。故取為金木水火土之說。還有飛禽走獸之形。
人は水の中に受精し、火の中に氣を稟ぐ、故に須みに坎(水)離(火)交濟して纔かに此の身子を成すを得。先づ是れ精氣凝合して肉を成し、然る後に神氣生ぜり。神氣先に生じて而後に形體纔かに完備す。此に由りて人の内外皆五行生克の範圍に出でず、富貴貧賤全く五行の衰・強・旺・弱の配合の中に在るを知る可し。故に相法纔かに金木水火土五形の說を立つ。此の外還た別に飛禽走獸一類の形相あり。
金不嫌方,木不嫌瘦,火不嫌尖,土不嫌重,水不嫌黑,似金得金才智深,似木得木資才足,似水得水文學高,似火得火見識深,似土得土財祿足。如得其生扶為妙,得其剝削為忌也。
金形は形方を嫌はず、木形は身瘦を嫌はず、火形は上尖を嫌はず、土形は體重を嫌はず、水形は色黑を嫌はず。形似金にして氣色も亦た金を得るは、才智深し。形似木にして氣色も亦た木を得るは、資財才干皆充足す。形似水にして氣色も亦た水を得るは、文章學問高し。形似火にして氣色も亦た火を得るは、見識深し。形似土にして氣色も亦た土を得るは、財祿豐足なり。若し能く我を生じ我を扶くるの五行を得れば最も好し、我を克し我を削るの五行に遇へば就ち是れ忌諱なり。
五行賦:大哉五行生物之理,萬象宗焉。故木須微火,高明秋開,高步澄清,金木春榜魁名,火克金豈能成用?金克木不得成名。木少金多,還須進氣,木多金少,一世榮。金人火局必成器用,水人土局愚頑之人。木弱金多,只好三旬之寄。金堅秀實方為柱。
《五行賦》に曰く、偉大なり哉、五行萬物を生成するの道理、萬象皆之れを以て宗と爲す。故に木形人は須みに略ば一點の火氣を帶びて、纔かに高明顯達する能く、秋氣開朗・步履清正の如くならん。金形・木形人時を得れば、春榜に魁を奪ふ可し。火の來りて金を克すれば、豈に器を成さんや?金の來りて木を克すれば、亦た名を成し難し。木形にして金氣略ば多のは、還た須みに生氣を進補せん。木形にして金氣少のは、一世榮顯なり。金形人火局に入るは、必ず有用の器を成す。水形人土局に入るは、是れ愚頑の人なり。木形本弱にして金氣過多のは、只だ三十歲に到りて命を寄する能くするのみ。金形は須みに堅實秀潤、纔かに棟梁の柱と當たるを得。
同之人土制水,莊田之客。水生木出仕求名。樑棟材還須水潤。國家珍金木榮明得木方為有用,木運金一世辛勤,形體理還從生克。面上理要看相生,必須強衰旺勝弱五行配,方許得真本形。人還須木色犯生色,還須得利犯克色夭折,須明五行理化生千萬一概論大誤終身。
同じき道理、土能く水を制する人は、是れ田莊を守りて活を過すの人なり。水能く木を生ずるは、出仕して功名を求取する可し。棟梁の材を做らんと要せば、還た須みに水の來り滋潤する有らん。國家の珍重する所の金形木形、皆氣色榮明を要す。金形木を得る(克制所有りて器を成す)方に有用と爲る。木形にして金運を行くは、一世辛勤なり。形體の道理終歸五行生克上に從りて看るを要し、面上の道理相生を看るを要す:必ず強・衰・旺・弱の四者配合し當を得、勝つる或いは及ばざるも皆其の宜を得て、纔かに真の本形を得たりと算ふ。人若し木形にして相生の色を現ずれば、便ち其の利を得。若し相克の色を現ずれば、就ち夭折の危あり。總じて須みに五行化生の道理を明白にせん、千頭萬緒、若し一概に論ずれば、必ず人の終身を誤らん。
中冊、永樂百問
一、朕王位に居る、何の相に出でて、萬民の王と爲るを得たるか?
對曰:王乃龍生鳳長,身長六尺,面大腰圓,能步開三尺。少年所困,未出鬚之數,今已鬚長一尺八寸,以合龍相,當年之壽。
袁珙回答して曰く、陛下は是れ龍種降生・鳳儀長成、身長六尺、面盤寬大・腰身圓渾、一步能く三尺を跨ぐ。早年の困頓する所は、是れ鬍鬚未だ長足せざるが爲なり。如今鬚長已に一尺八寸に達し、正に龍相の數に合し、此の一年正に運に當たり壽を享くるの時なり。
二、凡そ庶民小孩を生下す、其の父子に爵を得るを見るは何の說ぞ?莫非れ小兒も亦た福なりや?
對曰:凡小孩生下瑞香滿室必主大貴。書云:生下身香,定主父爵,身後榮音,劉阿斗、宋太祖生身俱異香百曰。
袁珙回答して曰く、小孩降生する時滿屋祥瑞の香氣のは、必ず大貴を主る。相書曰く、嬰兒地に落つる時身異香有るは、一定父をして爵位を得せしめ、自身日後も亦た榮名を享く。蜀漢後主劉禪・宋太祖趙匡胤出生の時、身上の異香皆一百日持續せり。
三、朕昨一尚書の天庭低きを見る、何故に又官と爲るを得たるか?
對曰:天庭雖低,曰月角開輔,弼骨朝歸,頭平面圓,此乃五行相配,故不忌低,是以得為黨尚書。
袁珙回答して曰く、彼の額上「天庭」雖も低けれども、左右「日角」「月角」開張し、輔骨・弼骨皆朝拱歸攏し、頭頂平正・臉盤圓滿、此れ是れ五行彼此相配の格局、故に天庭低を忌まず、因りて此れ纔かに尚書を做り成すを得たり。
四、朕の宮中方面の妃無し、朕の面方一面を得て配と爲さんと欲す、再び何の說か無き?
對曰:婦人貴在目肩背,子在肚腹乳臍。凡面方者為虎面,必犯殺星,豈能入宮為貴人?凡女形如鳳者方為大貴。鳳形面圓,長上下眉配已高目細秀項圓長眉背平,此乃真貴,縱不入宮,亦不失為夫人。
袁珙回答して曰く、婦人の貴氣は眼睛・肩膀・背脊を看、子息は肚腹・乳房・肚臍を看る。凡そ臉生じて方なるを「虎面」と呼ぶ、必定殺星を犯す、豈に宮に入りて貴人を做らんや?女子形貌鳳の如き纔かに是れ大貴なり。鳳形は是れ:臉盤圓潤、上下相稱、眉位高揚、眼形細長清秀、頸項圓にして長、眉平背平――此れ纔かに是れ真貴の相、縱令宮に入らずと雖も、亦た一位の夫人を失はず。
五、朕向日王公の女を寵し、彼女必ず后母と爲るを相す、朕今彼女を喜ばず、何を以て后母と爲るを得んか?
對曰:非國母福薄,但聖上子星未現,故此不寵,後生成,國後命壽延長,若要出得太子,必定是她。永樂三年後果生太子。
袁珙回答して曰く、并びに非ず是れ此の國母福薄なり、只だ陛下の子息星未だ顯現せざるが爲に、故に眼下寵愛を受けず。日後子星生成せば、此の國后壽命長久、若し太子を生出せんと要せば、必定是れ彼女ならん。永樂三年已後、彼女果然として太子を生下せり。
六、妃を選ぶに綿衣厚窮を用ひ、女をして走り出て汗來らしむ、此れ是何の說ぞ?
對曰:非令女走出汗來,乃知其體香,若何知女人體香,這樣方得大吉。
袁珙回答して曰く、女子をして厚棉衣を着せ行走して汗を出さしむるは、并びに非ず是れ彼女の汗を看るが爲なり、而るに汗氣を借りて彼女の身上體香有りや否やを辨出せんと欲するなり。此の樣ならざれば、何を以て一女子の體是れ香か否かを知らん?體香の纔かに大吉と算ふ。
七、官と爲る者は乃ち貴人、常に刀劊の刑に遭ふ者有り、何を爲ん?
皆因項下有紅絲,耳輪多赤色。犯此者難逃刀斧身亡。
此れ皆頸項下面に紅絲纏繞有り、耳輪上又赤色を多く現ずるが爲なり。此の兩樣の氣色を犯すは、刀斧身に加はりて死することを逃れ難し。
八、曰月交鋒,反得善終,為何?
第八問:左右兩眼(相法中「日月」と稱す)光芒交射相冲、理に按ずれば凶を主る、何故に反って善終を得るを得たるか?ここで底本に脱文あり、袁珙の答語已に佚失し、原書只だ此の一句の問話を留むるのみ。
九、吳尚書の母極めて陋し、二子を生むこと梓童の如し、是れ何の相に出でたるか?
對曰:面雖陋,眼若星,唇若朱,子乃臍腹所載,何在面目?必是臍深腹厚腰正體堅,人若見之俱有懼色。凡女人威嚴者多生貴子,非面之福,乃五臟六腑寬洪秀麗也。後被永樂封為錦陽夫人。又云:眼秀唇紅,常為二國之封。詩云:面陋唇紅眼若星,威嚴沉重世人驚,雖然未得為君后,二國褒封拜聖明。
袁珙回答して曰く、彼女相貌雖も醜陋なれども、眼睛亮きこと星辰の如く、嘴脣紅きこと朱砂の如し。子息本來是れ肚臍と腹部との主る所に由り、豈に面容に在らんや?彼女必定是れ臍深・腹厚・腰正・體格堅實、別人見れば皆心生じて敬畏す。凡そ婦人威嚴有るは多く貴子を生ず、此れ是れ面相の帶來する福に非ず、而るに五臟六腑寬宏秀美の緣故なり。後來彼女永樂皇帝に封ぜられて錦陽夫人と爲れり。又曰く、眼秀脣紅の婦人、常に兩國の封號を受く。詩に曰く、面貌雖も醜なれども脣紅眼亮して星の如く、威嚴沉穩して世人をして喫驚せしむ。雖も君王の皇后を做り成す能はざれども、卻って兩國の褒封を受け・聖明を拜謝せり。
對曰:凡武將不邊眼眉上生殺氣,正高有而觀,所以當得爭戰。眼不露光,項無紅絲,非豬食鼠餐,乃善人之相,能戰之人也。
別に一段の答語有りて曰く、凡そ武將、殺氣眼眉の邊角に生ぜず、而るに正大高揚・一望見る可し、故に能く征戰を擔當す。眼睛凶光を露さず、頸項紅絲無く、吃相豬拱鼠啃の如からず、此れ就ち是れ善良の人にして又能く征戰するの相なり。按:此の段の答語は底本中に之れと相配するの問句を失ふ、當に是れ抄刻錯簡の致す所なり。
十、宮中の女多く子を出ださず、何故ぞ?
古人言美女無肩,將軍無項。肩太垂而身太弱,腰太細而體太輕,犯此四者極多,乃非厚福之相,何故得子?
古人美女に肩無し・將軍に脖子無しと曰く――美女肩削・將軍頸短を形容す。宮中女子肩膀太だ塌れ・身子太だ弱、腰肢太だ細・體態太だ輕、此の四樣を犯す極めて多し、皆是れ福澤深厚の相に非ず、何を以て子嗣有らん?
十一、朝中大臣飲食する能わず、既に官と爲り何ぞ又祿少なき?
官高雖看印堂,富貴還須手過膝。官高因印開眉秀耳正目清,因此大貴。食祿在口,若唇薄口盛食如少也。
官位高低固より「印堂」を看るを、要富貴するは還た須みに兩手垂れ下りて膝を過ぐらん。官位高きは、是れ印堂開闊・眉毛清秀・耳朵端正・眼神清朗と爲るが因りて、故に大貴なり。至りて食祿多少は、則ち口上に應ず。若し嘴脣薄にして口形虛大のは、飲食享用自然少なし。
十二、眉長くして壽長からずは何の說ぞ?
書云:眉毫不如鼻毫,鼻毫不如耳毫,耳毫不如枕骨高。故此眉長能保壽。凡壽在頭皮、項皮、血色為主。
相書曰く、眉中毫を生ずるは鼻中毫を生ずるに如かず、鼻毫は耳中毫を生ずるに如かず、耳毫又腦後枕骨高起に如かず。見る可く眉長只だ一部分の壽元を保する能くするのみ、并びに壽を定するに足らず。壽數を論ずるに、終歸頭皮・頸項皮膚と血色との三樣を以て主と爲す。
十三、耳反して官大なるは何の說ぞ?
相有可忌與不可忌之說,豈可耳理面推?書云:睛雖黃而有神光,梁雖折而準頭豐,身雖瘦而不露骨,此俱不作破敗,還作貴相推之。
相法に忌む可きと忌む可からざるとの分別あり、豈に只だ耳朵一處に憑りて整張の臉を推斷せんや?相書曰く、眼珠雖も發黄なれども神光有り、鼻梁雖も折斷なれども鼻頭豐隆、身形雖も瘦なれども骨外露せず――此の幾樣皆破敗と算へず、仍ほ貴相に按りて推すを要す。耳朵外翻にして官を做ること大なるも、亦た是れ同じき道理なり。
十四、舜目重瞳、辦に重瞳有るは何の說ぞ?
舜目,細而長,乃鳳目也。項目,圓而露,眼邊起皮紋,如雞眼,乃凶相也。
虞舜の眼睛細にして長、是れ鳳目なり、故に重瞳聖德の徵と爲れり。項羽の眼睛圓くして外突し、眼邊皮紋を起き、雞眼の如し、彼は則ち凶相なり。同じく是れ重瞳、吉凶全く眼形を看る。
十五、甘羅十二、太公八十、一遲一早は何の說ぞ?
此二位前賢,雙耳俱有珠齊口角,為明珠出海。甘羅紅如朱,十二到此即遇。太公白如雪,故主老來相遇。
此の兩位の前賢、兩耳皆耳珠を生じ、且つ口角と齊平に到るまで垂れ、之れを「明珠出海」と呼ぶ。甘羅の耳珠紅きこと朱砂の如く、紅は火に屬し・少年に發す、故に十二歲行きて耳運に到りて遇合拜相せり。姜太公の耳珠白きこと霜雪の如く、白は金に屬し・晚年に應ず、故に老來纔かに明主に遇ふを主る。
十六、凡そ人一生疾病無きは何の說ぞ?
人生在世,相合乾坤,驛馬高明邊地靜,印堂平正,六陽光潤,疾厄無暗滯,一生福壽永綿長。
人生世に在り、相貌若し天地の道に合すれば:額側「驛馬」高聳明亮・「邊地」氣色安靜、「印堂」平正、頭上「六陽」諸部光潤、「疾厄宮」(山根年壽の一段)暗滯の色無し――此の樣の人一生福壽綿長、疾病を生ぜず。
十七、凡そ人一生疾病多きは何の說ぞ?
山根常暗準頭青,兩耳生塵目又昏,邊地如泥髮如草,一生何曰得安寧。
「山根」常年晦暗、鼻頭「準頭」發青、兩耳灰塵を蒙るが如く・眼神又昏濁、「邊地」污暗して泥の如く・頭髮枯亂して草の如し――此の樣の人一生那に安寧の日子有らん?疾病自然身に纏はり斷えず。
十八、朕自ら君と爲りて以來、憂心を脫せざるは何の說ぞ?
山根倉庫長青青,準赤腮黃氣不勻,縱此為君也愁悶,庶人得此百無成。必待此色一開,聖心自安矣。
「山根」と天倉・地庫長期泛青、鼻頭發赤・兩腮發黄、氣色勻せず――此の樣の氣色有れば、卽ち君王と爲る貴きも亦た愁悶を免がれず。百姓此の氣色有れば、則ち百事成無し。必ず須みに此の等の氣色一開するを待たん、陛下の心自然安んず。
十九、朕君と爲りて以來、幸ひに國已に平、民已に富、土已に裕、何の說ぞ?
血足神舒眼愈光,印堂平潤是榮昌,為士為官多獲福,庶人得此亦安康。
陛下如今血氣充足・神情舒展、眼中光彩更に盛ん、「印堂」平滿潤澤、此れ正是れ榮顯昌盛の氣色なり。讀書人と官を做ると此の氣色有れば多く福分を得、百姓此の氣色有ればも亦た一樣に安康――國泰民安、正に此處に應ず。
二十、女人多く貴中賤を生じ、賤中貴を生ずるは何の說ぞ?人女人に相無しと言ふ、又は何の說ぞ?
凡女相與男相不同,女豈無相?頭尖髮少,必是賤人之女,生圓目正配良人之妻,血足氣和可生貴子,土正顴平可惟家業,體正面正目秀唇紅,再得肩圓,可許大貴。凡富室之女頭平額潤,目若流星,唇薄身輕貌美倉削齒白肉光,乃賤婦也。
女相と男相と同じからず、豈に女子相看る可き無しと說かんや?頭頂尖・頭髮少のは、必定是れ卑賤の人家の女兒なり。臉盤圓潤・眼目端正のは、良人の妻と爲るに配する能くす。血氣充足・氣息和順のは、貴子を生ずる能くす。鼻(土星)端正・兩顴平滿のは、家業を守住する能くす。身正・面正・眼秀・脣紅、再加へるに兩肩圓潤のは、大貴を許す可し。反つて、富家女子若し只だ頭平額潤・眼亮きこと流星の如し、卻って脣薄・身輕・貌美にして天倉削陷・牙白・肌膚油光なれば、彼は仍ほ是れ卑賤の婦――此れ就ち是れ貴中賤を生じ・賤中貴を生ずるの道理なり。
二十一、五露五反は何の說ぞ?
凡一露二露家無隔宿之糧,三露四露命常短促。五露俱全大貴之格。眼露睛不露光,鼻露竅不偏實,唇露齒不露掀,耳露廊不失珠,此乃金木水火土,五露俱犯,露梁、露光、露掀、露珠,此述是十分下賤之相。五反非善相也,乃兇惡之徒。書云:五反之奧妙多,術人何以得知之,若還一件俱無反,須在朝中掛紫友。
面上外露の部位、只だ一兩處を露すは家隔夜的糧無し、三四處を露すは壽命短促。但し五處全く露れて各々其の法を得るは、反って是れ大貴の格局なり。所謂法に合する五露は是れ:眼雖も外露なれども目光外洩せず、鼻雖も孔を露れども鼻身端實にして偏せず、脣雖も齒を露れども脣上掀せず、耳雖も廓を露れども耳珠を失はず――此れら分別して金・木・水・火・土の五星に應ず。若し五露皆忌を犯せば:鼻梁外露・目光外洩・嘴脣上掀・耳珠缺失、彼は則ち十分下賤の相なり。「五反」も亦た善相に非ず、多く是れ凶惡の徒なり。相書曰く、五反の奧妙甚だ多し、尋常の術士何ぞ能く解せん?若し一處の反相も皆無ければ、彼の人便ち當に朝中に在りて紫袍を身に著け・顯貴と結交すべし。
二十二、小五極何以分明なるや?
凡五小者,一小頭,二小身,三小手,四小足,五小面。此乃五件一身,還要五官六府為主,此乃身體五小也,非五官五小也。若五官俱小,為五極,乃下賤之相也。
所謂「五小」、一是れ頭小、二是れ身小、三是れ手小、四是れ足小、五是れ面小。此の五樣講ずるは整個の身體、還た須みに「五官」「六府」を以て根本と爲して配合せよ。此れ是れ身體の五小、是れ五官の五小に非ず。若し五官皆小なれば、彼を「五極」と呼ぶ、是れ下賤の相なり。
凡五小聲大,五官三停六府為配為妙,如有一件不能配,即不好也。五極乃額耳鼻目口是也,即五星金木水火土。書云:五小身頭共四肢,其言耳鼻口目眉,莫是五官俱得小,一生下賤是痴愚。
身體五小にして聲音洪亮、再加へるに五官・三停・六府皆彼此相配せば、彼は則ち好し。只だ一樣配上せざれば、便ち好からず。所謂「五極」、額・耳・鼻・目・口の此の五處を指し、亦た就ち金・木・水・火・土の五星の在る所なり。相書曰く、五小指すは身・頭連れて四肢、五官說くは耳・鼻・口・目・眉。若し五官樣樣皆小なれば、一生下賤にして癡愚なり。
