Libo

说苑 · 第9巻

西汉 · 刘向 · 第9巻 / 12

鸞設於鑣,和設於軾;馬動而鸞鳴,鸞鳴而和應,行之節也。

鸞鈴は鑣の上に設け、和鈴は軾の上に設く。馬が一たび動けば鸞鈴は即ち響き、鸞鈴が響けば和鈴は即ち應和す。これは行走の節奏なり。

不富無以為大,不予無以合親;親疏則害,失眾則敗;不教而誅謂之虐,不戒責成謂之暴也。

富まざれば即ち以て大を為す無し。給與せざれば即ち以て親人を聚合する無し。親が疏遠すれば即ち害有り、衆人を失えば即ち失敗す。教導せずして誅殺するを虐と曰い、告誡せずして責成するを暴と曰う。

夫水出於山而入於海,稼生於田而藏於廩,聖人見所生則知所歸矣。

水は山裏より出でて海に入り、莊稼は田裏より生長して倉裏に收藏す。聖人は生ずる所を見て即ち歸する所を知れり。

天道布順,人事取予;多藏不用,是謂怨府,故物不可聚也。

天道は布施して順暢なり。人事は取と給に在り。多多に收藏して卻って使用せざるは、これを怨恨の府庫と曰う。ゆえに物は聚集すべからず。

一圍之木持千鈞之屋,五寸之鍵而制開闔,豈材足任哉?蓋所居要也。

一圍の粗さの木頭は千鈞の屋子を撑住し、五寸の門閂は開闔を管制す。豈に是れ材料が足りて勝任するか。是れ處する位置が緊要なるを以てす。

夫小快害義,小慧害道,小辨害治,苟心傷德,大政不險。蛟龍雖神,不能以白日去其倫;飄風雖疾,不能以陰雨揚其塵。邑名勝母,曾子不入;水名盜泉,孔子不飲,醜其聲也。婦人之口可以出走,婦人之喙可以死敗。

小快意は義を傷害し、小聰明は道を傷害し、小辯慧は治理を傷害し、苟且の心は徳を傷害す。大政は險路を走らず。蛟龍は神なりといえども、能く大白天に其の倫類を離る能わず。飄風は迅疾なりといえども、能く陰雨の裏に於て塵土を揚起する能わず。城邑の名は勝母と曰い、曾子は進みて入らず。水の名は盜泉と曰い、孔子は飲まず。是れあの名名稱を厭惡するなり。婦人の口は以て人をして出走せしめ、婦人の喙は以て人をして死敗せしむべし。

不修其身,求之於人,是謂失倫;不治其內,而修其外,是謂大廢。重載而危之,操策而隨之,非所以為全也。

自身を修養せず、卻って人に向かい求む。これを倫序を失うと曰う。內部を治理せず、卻って外部を修飾す。これを大廢と曰う。裝載は甚だ重くして卻ってそれを傾危せしめ、馬鞭を拿りて跟隨するは、以て全を求むるにあらず。

士橫道而偃,四支不掩,非士之過,有土之羞也。邦君將昌,天遺其道;大夫將昌,天遺其士;庶人將昌,必有良子。

士は路の上に橫たわり倒れ、四肢は掩蓋せられず。士の過錯にあらず、是れ土地有る人の羞恥なり。邦君は将に昌盛せんとすれば、天は彼に道を留與す。大夫は将に昌盛せんとすれば、天は彼に士を留與す。庶人は将に昌盛せんとすれば、必ず好兒子有り。

賢師良友在其側,詩書禮樂陳於前,棄而為不善者,鮮矣。義士不欺心,仁人不害生;謀洩則無功,計不設則事不成;賢士不事所非,不非所事;愚者行間而益固,鄙人飾詐而益野;聲無細而不聞,行無隱而不明;至神無不化也,至賢無不移也。上不信,下不忠,上下不和,雖安必危。求以其道則無不得,為以其時則無不成。

賢師良友は旁邊に在り、詩書禮樂は前面に陳列せられ、これらを抛弃して不善を為すは、少なし。義士は自らの心を欺かず、仁人は生命を傷害せず。謀劃は泄漏すれば即ち功なく、計策は設置せずして事は即ち成る能わず。賢士は自らの否定する所を為さず、自らの為す所を否定せず。愚人は偏門を走りて卻って更に固陋し、鄙人は欺詐を粉飾して卻って更に粗野なり。聲音は細微にして聽見せられざるに至る無し、行為は隱蔽にして顯明せざるに至る無し。至神は能く感化せざる無し、至賢は能く移易せざる無し。上は信なく、下は忠なく、上下は不和なれば、たとえ安定するも必ず危險なり。道に按じて往きて求むれば即ち得ざる無し、時に按じて往きて為せば即ち成功せざる無し。

時不至,不可強生也;事不究,不可強求也。貞良而亡,先人餘殃;猖獗而活,先人餘烈;權取重,澤取長。才賢而任輕,則有名,不肖任大,身死名廢。

時は到らざれば、強求して生長せしむべからず。事は窮盡せざれば、強求すべからず。貞良にして卻って滅亡するは、先人の留下する殃なり。猖獗にして卻って存活するは、先人の留下する餘烈なり。權は重を取るを要し、恩澤は長を取るを要す。才賢にして責任輕ければ、即ち名有り。不肖にして責任大なれば、身は死し名は廢す。

士不以利移,不為患改,孝敬忠信之事立,雖死而不悔。智而用私,不如愚而用公,故曰巧偽不如拙誠。學問不倦,所以治己也;教誨不厭,所以治人也,所以貴虛無者,得以應變而合時也。冠雖故,必加於首;履雖新,必關於足,上下有分,不可相倍。一心可以事百君,百心不可以事一君,故曰正而心,又少而言。

士は利を以て轉移せず、患難を以て改變せず。孝敬忠信の事は立定し、たとえ死するも悔いず。智有るも卻って私の上に用いるは、愚にして卻って公の上に用いるに如かず。ゆえに言う、巧僞は拙誠に如かずと。學問は厭倦せず、是れ以て自らを治理す。教誨は厭煩せず、是れ以て人を治理す。ゆえに虛無を看重するは、是れ變に應じて時に合うを得るを以てす。冠は舊なりといえども、必ず頭の上に加う。鞋は新なりといえども、必ず脚の上に穿く。上下に分別有り、互相いに違背すべからず。一顆の心は以て一百個の君に事奉すべく、一百顆の心は以て一個の君に事奉すべからず。ゆえに言う、あの心を端正し、また話を少なからしめよと。

萬物得其本者生,百事得其道者成;道之所在,天下歸之;德之所在,天下貴之;仁之所在,天下愛之;義之所在,天下畏之。屋漏者民去之,水淺者魚逃之,樹高者鳥宿之,德厚者士趨之,有禮者民畏之,忠信者士死之。衣雖弊,行必修;頭雖亂,言必治。時在應之,為在因之;所伐而當其福五之;所伐不當其禍十之。

萬物は其の根本を得れば即ち能く生じ、百事は其の道を得れば即ち能く成る。道の所在する處は、天下はそれに歸向す。徳の所在する處は、天下はそれを看重す。仁の所在する處は、天下はそれを愛す。義の所在する處は、天下はそれを敬畏す。屋子の漏るは民はそれを離れ、水の淺きは魚は逃走し、樹の高きは鳥は栖宿し、徳の厚きは士は趨向し、礼有るは民は敬畏し、忠信の士は彼のために死す。衣服は破るといえども、行為は必ず修整す。頭髪は亂るといえども、説話は必ず條理有り。時はそれに應和するに在り、作為はそれを因循するに在り。征伐する所が得當なれば、あの福は五倍なり。征伐する所が得當ならざれば、あの禍は十倍なり。

必貴以賤為本,必高以下為基。天將與之,必先苦之;天將毀之,必先累之。孝於父母,信於交友,十步之澤,必有香草;十室之邑,必有忠士。草木秋死,松柏獨在;水浮萬物,玉石留止。飢渴得食,誰能不喜?賑窮救急,何患無有?視其所以,觀其所使,斯可知已。乘輿馬不勞致千里,乘船楫不遊絕江海;智莫大於闕疑,行莫大於無悔也。制宅名子,足以觀士。利不兼,賞不倍;忽忽之謀,不可為也,惕惕之心,不可長也。

貴は必ず賤を以て根本と為し、高は必ず下を以て基址と為す。天は将に彼に給與せんとすれば、必ず先に彼をして苦しからしむ。天は将に彼を毀壞せんとすれば、必ず先に彼をして勞累せしむ。父母に孝順し、交友に於て信を取れ。十步の沼澤には、必ず香草有り。十戸の城邑には、必ず忠士有り。草木は秋天に死去して、松柏は独りなお在り。水は萬物を漂浮して、玉石は留まりて停住す。饑渴は食物を得れば、誰か高興せざらん。窮困を賑濟し急難を救えば、何の無きを患えん。彼の以て何を為すを看、彼の役使する所を觀察すれば、即ち以て知るべし。車馬に乘坐すれば勞苦せずして能く千里に到達し、船槳に乘坐すれば游泳せずして能く江海を橫絕す。智は闕疑より大なるなし、行は後悔なきより大なるなし。住宅を建造し兒子に名を取るは、足りて以て士を觀察すべし。利は兼得せず、賞は加倍せず。匆匆の謀劃は為すべからず、惕惕の心は助長すべからず。

天與不取,反受其咎;時至不迎,反受其殃;天地無親,常與善人。天道有常,不為堯存,不為桀亡;積善之家,必有餘慶;積惡之家,必有餘殃。一噎之故,絕谷不食;一蹶之故,卻足不行。心如天地者明,行如繩墨者章。位高道大者從,事大道小者兇;言疑者無犯,行疑者無從;蠹蝝僕柱梁,蚊虻走牛羊。

天は給與して卻って取らざれば、反りてあの咎責を受く。時は到りて卻って迎接せざれば、反りてあの殃禍を受く。天地に私親なく、常に善人に給與す。天道に常規有り、堯を以て存在せず、桀を以て滅亡せず。善を積む人家は必ず多餘の慶有り、惡を積む人家は必ず多餘の殃有り。一次噎住するの緣故を以て、即ち穀食を斷絕して食わず。一次跌倒するの緣故を以て、即ち脚を退きて走らず。心は天地の如くするは即ち��、行為は繩墨の如くするは即ち彰明なり。位子が高く道が大なる人に跟從せよ。事が大にして道が小なる人は凶なり。話の可疑なるは往きて冒犯するなかれ、行為の可疑なるは往きて跟從するなかれ。蠹蟲・蝝蟲は能く柱梁をして仆倒せしめ、蚊虻は能く牛羊をして奔走せしむ。

謁問析辭勿應,怪言虛說勿稱;謀先事則昌,事先謀則亡。

謁見請問の時に言辭を分析して應答するなかれ。怪異の話・虛空の説辭は稱引するなかれ。謀劃は事情の先に在れば即ち昌盛し、事情は謀劃の先に在れば即ち滅亡す。

無以淫泆棄業,無以貧賤自輕,無以所好害身,無以嗜慾妨生,無以奢侈為名,無以貴富驕盈。喜怒不當,是謂不明,暴虐不得,反受其賊,怨生不報,禍生於福。一言而非,四馬不能追;一言不急,四馬不能及。順風而飛,以助氣力;銜葭而翔,以備矰弋。

淫泆を以て事業を抛弃するなかれ、貧賤を以て自らを看輕するなかれ、愛好する所を以て自身を傷害するなかれ、嗜欲を以て生命を妨害するなかれ、奢侈を以て名を求むるなかれ、貴富を以て驕傲盈滿するなかれ。喜怒は得當ならざれば、これを不明と曰う。暴虐は得逞ならざれば、反りて其の賊害を受く。怨恨は產生して卻って報應せず、禍は福の裏より生出す。一句の話は錯えれば、四匹の馬も能く追回せず。一句の話は急がずして言えば、四匹の馬も能く赶上せず。風に順いて飛び、以て氣力を幫助す。蘆葦を銜えて飛翔し、以て矰繳を防備す。

鏡以精明,美惡自服;衡平無私,輕重自得;蓬生枲中,不扶自直;白砂入泥,與之皆黑。

鏡子は精明を以てし、美惡は自ら呈現す。秤は公平無私を以てし、輕重は自ら得當す。蓬は枲麻の中間に生じて、扶けずして自ら直なり。白沙は泥裏に入りて、それと一齊に黑し。

時乎,時乎!間不及謀;至時之極,間不容息;勞而不體,亦將自息;有而不施,亦將自得。

時や時や!空隙は謀劃するに及ばず。時の極に到れば、空隙は一息を容る能わず。勞苦して休息せざれば、また将に自ら停息せん。有して施給せざれば、また将に自ら得せん。

無不為者,無不能成也;無不欲者,無不能得也。眾正之積,福無不及也;眾邪之積,禍無不逮也。力勝貧,謹勝禍,慎勝害,戒勝災。為善者天報以德,為不善者天報以禍。君子得時如水,小人得時如火。謗道己者,心之罪也;尊賢己者,心之力也。心之得,萬物不足為也;心之失,獨心不能守也。子不孝,非吾子也;交不信,非吾友也。食其口而百節肥,灌其本而枝葉茂;本傷者枝槁,根深者末厚。為善者得道,為惡者失道。惡語不出口,苟言不留耳;務偽不長,喜虛不久。義士不欺心,廉士不妄取;以財為草,以身為寶。慈仁少小,恭敬耆老。犬吠不驚,命曰金城;常避危殆,命曰不悔。富必念貧,壯必念老,年雖幼少,慮之必早。夫有禮者相為死,無禮者亦相為死;貴不與驕期,驕自來;驕不與亡期,亡自至。踒人日夜願一起,盲人不忘視。知者始於悟,終於諧;愚者始於樂,終於哀。高山仰止,景行行止,力雖不能,心必務為。慎終如始,常以為戒;戰戰慄慄,日慎其事。聖人之正,莫如安靜;賢者之治,故與眾異。

為さざる無ければ、即ち成就せざる能わざるなし。欲せざる無ければ、即ち得ざる能わざるなし。衆多の正直は積聚せば、福は到らざるなし。衆多の邪僻は積聚せば、禍は赶上せざるなし。力氣は貧窮に勝り、謹慎は禍に勝り、慎重は害に勝り、戒備は災に勝る。善を為すは天は徳を以て報答し、不善を為すは天は禍を以て報答す。君子の得時は水の如く、小人の得時は火の如し。毁謗して自らを説くは、是心の罪なり。尊重して自らを以て賢と為すは、是心の力なり。心に所得有れば、萬物は以て為するに足らず。心に所失有れば、独りあの心も能く守住せず。兒子は孝ならざれば、即ち我が兒子にあらず。交友は信ならざれば、即ち我が朋友にあらず。彼の口を喂えば則ち百節は肥え、其の根本を澆灌すれば則ち枝葉は茂る。根本の傷害せられたは枝は即ち枯れ、根の深きは末梢は即ち厚し。善を為すは道を得、惡を為すは道を失う。惡語は口より出ず、苟且の話は耳裏に留まらず。虛僞に從事すれば能く長久せず、虛假を喜好すれば能く持久せず。義士は自らの心を欺かず、廉士は妄取せず。財を以て草と當り、身子を以て寶と當れり。幼小に對しては慈仁、耆老に對しては恭敬す。狗が叫ぶも驚慌せず、金城と曰う。常に危殆を避開す、不悔と曰う。富裕すれば必ず貧窮を念及し、強壯すれば必ず衰老を念及す。年紀は幼小なりといえども、謀慮は必ず早からん。礼有る人は互相いに對方のために死し、礼無き人もまた互相いに對方のために死す。貴は驕と約定せず、驕は自ら來る。驕は亡と約定せず、亡は自ら到る。瘸腿の人は日夜に能くともに起身せんを希望す。盲人は看るを忘記せず。智者は醒悟より始まりて、和諧を以て終結す。愚人は快樂より始まりて、悲哀を以て終結す。高山は仰望すべく、大道は行走すべし。力量は能く及ばざるといえども、心は必ず務めて為せんを求む。終結を謹慎するは開始の如く、常に警戒と當れり。戰戰栗栗として、每日自らの事を謹慎す。聖人の端正は、安靜より善きなし。賢者の治理は、本來即ち衆人と異なれり。

好稱人惡,人亦道其惡;好憎人者,亦為人所憎。衣食足,知榮辱;倉廩實,知禮節。江河之溢,不過三日;飄風暴雨,須臾而畢。

人の惡を稱説するを喜好すれば、人もまた彼の惡を説く。人を憎惡するを喜好すれば、また人の憎惡する所と為る。衣食は充足して乃ち榮辱を知り、倉廩は充實して乃ち禮節を知れり。江河は漲溢するも三日を超過せず、飄風暴雨は片刻に即ち畢る。

福生于微,禍生於忽;日夜恐懼,唯恐不卒。

福は細微の處より生じ、禍は忽略の處より生ず。日夜に恐懼し、ただ能く終了せざるを怕る。

已雕已琢,還反於樸,物之相反,復歸於本。循流而下,易以至;倍風而馳,易以遠。兵不豫定,無以待敵;計不先慮,無以應卒。中不方,名不章,外不圜,禍之門。直而不能枉,不可與大任;方而不能圜,不可與長存。慎之於身,無曰云云,狂夫之言,聖人擇焉。能忍恥者安,能忍辱者存,唇亡而齒寒,河水崩,其懷在山。毒智者莫甚於酒,留事者莫甚於樂,毀廉者莫甚於色,摧剛者反己於弱。富在知足,貴在求退,先憂事者後樂,先傲事者後憂。福在受諫,存之所由也。恭敬遜讓,精廉無謗,慈仁愛人,必受其賞,諫之不聽,後無與爭,舉事不當,為百姓謗,悔在於妄,患在於先唱。

已に雕過し已に琢過し、なお返りて朴に回歸せんを要す。物は相反に走りて、再び根本に回歸す。水流に順いて下れば、容易く到達す。風に背いて奔馳すれば、容易く遠く走る。兵器は豫め備好せざれば、以て敵人に對待する無し。計策は先に考慮せざれば、以て突然に應對する無し。內裏は方正ならざれば、名声は彰明せず。外面は圓通ならざれば、是れ禍の門なり。直にして能く彎曲せざれば、彼に大任を與うべからず。方正にして能く圓通せざれば、彼と長久に共存すべからず。自身の上に於て謹慎し、如何如何と説くなかれ。狂夫の話も、聖人はまた択擇す。能く恥を忍受すれば即ち��し、能く辱を忍受すれば即ち存す。嘴唇なければ牙齒は即ち寒し。河水は崩決するも、其の懷抱はなお山上に在り。智を毒害するは酒より厲きなし、事を滯留するは樂より厲きなし、廉を毀壞するは女色より厲きなし、剛強を摧折するは反りて自らをして軟弱に落到せしむ。富は知足に在り、貴は退を求むるに在り。先に事を憂慮するは後來は快樂し、先に事に傲慢するは後來は憂愁す。福は進諫を接受するに在り。これは生存の經由する所なり。恭敬遜讓し、精廉にして毁謗なく、慈仁にして人を愛せば、必ずあの賞を受けん。進諫して聽かざれば、後來は彼と争うなかれ。事を辦して得當ならざれば、百姓に毁謗せられん。后悔は妄為に在り、患難は先に倡導するに在り。

蒲且修繳,鳧鴈悲鳴;逄蒙撫弓,虎豹晨嗥。河以委蛇故能遠,山以凌遲故能高,道以優遊故能化,德以純厚故能豪。言人之善,澤於膏沐;言人之惡,痛於矛戟。為善不直,必終其曲;為醜不釋,必終其惡。

蒲且は矰繳を整治し、野鴨と大雁は悲哀して鳴叫す。逄蒙は弓を撫摩し、虎豹は清晨に嗥叫す。河は曲折蜿蜒を以て能く遠くし、山は逐漸傾斜を以て能く高くし、道は優游を以て能く教化し、徳は純厚を以て能く豪なり。人の善を稱説すれば、恩澤は膏沐より潤なり。人の惡を稱説すれば、痛苦は矛戟より深し。善を為して卻って直ならざれば、必ず終に邪曲に至らん。醜惡を為して卻って放下せざれば、必ず終にあの惡に至らん。

一死一生,乃知交情;一貧一富,乃知交態;一貴一賤,交情乃見;一浮一沒,交情乃出。德義在前,用兵在後。初沐者必拭冠,新浴者必振衣。敗軍之將,不可言勇;亡國之臣,不可言智。

一死一生して乃ち交情を知り、一貧一富して乃ち交友の態度を知り、一貴一賤して交情は乃ち顯現し、一浮一沒して交情は乃ち出づ。徳義は前に在り、兵を用いるは後に在り。剛ぎ頭を洗うは必ず冠を擦拭し、新たに沐浴するは必ず衣服を抖す。敗軍の將は以て勇を談ずべからず、亡國の臣は以て智を談ずべからず。

坎井無黿鼉者,隘也;園中無修林者,小也。小忠,大忠之賊也;小利,大利之殘也。自清絕易,清人絕難;水激則悍,矢激則遠;人激於名,不毀為聲。下士得官以死,上士得官以生。禍福非從地中出,非從天上來,己自生之。

淺井の裏に黿鼉なきは、是れ狹隘なるを以てす。園子の裏に高大の林木���きは、是れ小なるを以てす。小忠は、大忠の賊害なり。小利は、大利の殘損なり。自ら清高にして人と絕交するは易く、清高の人をして人と絕交せしむるは難し。水は激盪すれば即ち強悍し、箭は激射すれば即ち遠し。人は名に激奮せられ、たとえ毀せざるも能く声名を成す。下士は官を得てこれにより死し、上士は官を得てこれにより生ず。禍福は地中より出ずるにあらず、天上より來るにあらず。是れ自らそれを生出すなり。

窮鄉多曲學:小辯害大智,巧言使信廢,小惠妨大義。不困在於早慮,不窮在於早豫。欲人勿知,莫若勿為;欲人勿聞,莫若勿言。

窮鄉に多く偏曲の學問有り。小辯は大智を傷害し、巧言は信用を廢掉せしめ、小惠は大義を妨害す。困頓せざるは早く謀慮を作すに在り、窮盡せざるは早く豫備を作すに在り。人をして知らざらしめんと欲するは、為さざるに如かず。人をして聞こえざらしめんと欲するは、説かざるに如かず。

非所言勿言,以避其患;非所為勿為,以避其危;非所取勿取,以避其詭;非所爭勿爭,以避其聲。明者視於冥冥,謀於未形;聰者聽於無聲,慮者戒於未成。世之溷濁而我獨清,眾人皆醉而我獨醒。

該當説くに非ざれば説くなかれ、以てあの患を避開せん。該當為すに非ざれば為すなかれ、以てあの危を避開せん。該當取るに非ざれば取るなかれ、以てあの詭詐を避開せん。該當争うに非ざれば争うなかれ、以てあの声名を避開せん。明の人は昏暗の中に於て看、未だ成形せざる時に於て謀劃す。聰の人は聲なき處に於て聽き、善慮の人は未だ成就せざる時に於て警戒す。世道は溷濁にして我は独り清く、衆人は皆醉いて我は独り醒めり。

乖離之咎,無不生也;毀敗之端,從此興也。江河大潰從蟻穴,山以小阤而大崩,淫亂之漸,其變為興,水火金木轉相勝。卑而正者可增,高而倚者且崩;直如矢者死,直如繩者稱。

乖離の咎責は、生出せざるなし。毁敗の開端は、此處より興起す。江河の大の大潰は螞蟻の穴より始まり、山は小處の崩頹を以て大大に崩塌す。淫亂の開端は、其の變化して興盛と為り、水火金木は輾轉して相勝す。低くして端正なるは以て増高すべく、高くして傾斜なるは将に崩塌せん。直きこと箭の如きは死し、直きこと墨繩の如きは稱揚せらる。

禍生於欲得,福生於自禁;聖人以心導耳目,小人以耳目導心。

禍は得んと欲するより生出し、福は自ら禁制するより生出す。聖人は心を以て耳目を引導し、小人は耳目を以て心を引導す。

為人上者,患在不明;為人下者,患在不忠。人知糞田,莫知糞心,端身正心,全以至今,見亡知存,見霜知冰。廣大在好利,恭敬在事親,因時易以為仁,因道易以達人。營於利者多患,輕諾者寡信。

上を為る人は、患は不明に在り。下を為る人は、患は不忠に在り。人は田に施肥するを知りて、心に施肥するを知らず。身を端正し心を端正せば、保全して今に至れり。亡を見れば即ち存を知り、霜を見れば即ち氷を知れり。廣大は利を好むに在り、恭敬は親を事奉するに在り。時に因れば易く仁を為し、道に因れば易く人に通達す。利を營求するは患多く、輕易に許諾するは信用少なし。

欲賢者莫如下人,貪財者莫如全身;財不如義高,勢不如德尊。父不能愛無益之子,君不能愛不軌之民;君不能賞無功之臣,臣不能死無德之君。問善御者莫如馬,問善治者莫如民。以卑為尊,以屈為伸,聖人所因,上法於天。

賢を欲するは人の下に居るより善きなし。財を貪るは自身を保全するより善きなし。財は義に如かず高し、勢は徳に如かず尊し。父は能く益なき兒子を愛せず、君は能く法度を守らざる民を愛せず。君は能く功勞なき臣を賞せず、臣は能く徳なき君のために死せず。誰が駕馭に善きを問うは馬より清楚なるなし、誰が治理に善きを問うは民より清楚なるなし。卑下を以て尊と當り、屈曲を以て伸と當る。これは聖人の因循する所、上は天に取法す。

君子行德以全其身,小人行貪以亡其身,相勸以禮,相強以仁,得道於身,得譽於人。

君子は徳を實行して以て自身を保全し、小人は貪を實行して以て自身を滅亡す。礼を以て互相いに勸勉し、仁を以て互相いに勉勵す。自身に於て道を得、人の處に於て名譽を得たり。

知命者不怨天,知己者不怨人;人而不愛則不能仁,佞而不巧則不能信;言善毋及身,言惡毋及人;上清而無慾,則下正而民樸。來事可追也,往事不可及。無思慮之心則不達,無談說之辭則不樂。

命を知るは天を怨まず、自らを知るは人を怨まず。人に對して愛なければ能く仁ならず、巧佞にして巧妙ならざれば能く信ならず。善を説くに自身に牽涉するなかれ、惡を説くに人に牽涉するなかれ。在上は清靜にして欲望なければ、則ち在下は端正にして民は朴實なり。未來の事は以て追及すべく、過去の事は赶上すべからず。思慮の心なければ能く通達せず、談説の言辭なければ快樂せず。

善不可以偽來,惡不可以辭去。近市無賈,在田無野。善不逆旅,非仁義剛武無以定天下。

善は以て僞裝を以て招來すべからず、惡は以て言辭を以て去掉すべからず。市集に靠近すれば商賈なく、田裏に在れば荒野なし。善人は旅客を拒絕せず。仁義剛武に非ざれば、以て天下を安定する無し。

水倍源則川竭,人倍信則名不達,義勝患則吉,患勝義則滅。五聖之謀,不如逢時;辯智明慧,不如遇世。有鄙心者,不可授便勢;有愚質者,不可予利器。多易多敗,多言多失。

水は源頭を背離すれば則ち河川は枯竭し、人は信用を背離すれば則ち名声は能く通達せず。義は患に勝れば則ち吉、患は義に勝れば則ち滅亡す。五位の聖人の謀劃は、時に遇うに如かず。辯智明慧は、世に遇うに如かず。鄙陋の心有る者は、便利の勢を授予すべからず。愚昧の資質有る者は、利器を給與すべからず。多く事を容易と看れば多く失敗し、多く説話すれば多く過失す。

冠履不同藏,賢不肖不同位。官尊者憂深,祿多者責大。積德無細,積怨無大,多少必報,固其勢也。

冠と鞋は一處に置きて收藏せず、賢と不肖は同一の位子に處らず。官の尊きは憂慮深く、禄の多きは責任大なり。徳を積むは細小を以て積まざるなし、怨を積むは大を以て停止するなし。多少は必ず報應す。本來即ちあの情勢なり。

梟逢鳩。鳩曰:“子將安之?”梟曰:“我將東徙。”鳩曰:“何故?”梟曰:“鄉人皆惡我鳴,以故東徙。”鳩曰:“子能更鳴可矣,不能更鳴,東徙猶惡子之聲。”

梟は鳩に遇えり。鳩は曰く「お前は将にどこに往かん。」梟は曰く「我は将に東邊に遷らん。」鳩は曰く「何の緣故か。」梟は曰く「鄕人は皆我が叫聲を厭惡す。ゆえに東邊に遷らん。」鳩は曰く「お前は能く叫聲を改變すれば即ち以て可なり。能く叫聲を改變せざれば、東邊に遷るもなおお前の聲音を厭惡せん。」

聖人之衣也便體以安身,其食也安於腹;適衣節食不聽口目。

聖人の衣服は身體の方便を圖りて以て身を安んじ、其の飲食はただ肚子の安穩を求むるのみ。衣服は適宜にして飲食は節有れば、口と眼睛を聽任せず。

曾子曰:“鷹鷲以山為卑,而增巢其上;黿鼉魚鱉以淵為淺,而穿穴其中。卒其所以得者,餌也。君子苟不求利祿,則不害其身。”

曾子は曰く「鷹鷲は山を以て低と為すも、卻って巢を増高してその上に加う。黿鼉魚鱉は淵を以て淺と為すも、卻って裏面に穴を鑿く。終に以て捉えらるる所以は、是れ餌なり。君子はもし利禄を求めざれば、即ち自身を傷害せざらん。」

曾子曰:“狎甚則相簡也,莊甚則不親;是故君子之狎足以交歡,莊足以成禮而已。”

曾子は曰く「過分に親昵すれば即ち互相いに簡慢し、過分に莊重すれば即ち親近せず。ゆえに君子の親昵は以て交歡するに足り、莊重は以て禮を成就するに足るのみ。」

曾子曰:“入是國也,言信乎群臣,則留可也;忠行乎群臣,則仕可也;澤施乎百姓,則安可也。”

曾子は曰く「この國に入りて、説話は能く群臣に於て信を取れば、即ち以て留下すべし。忠は能く群臣の中に於て實行せれば、即ち以て官を為すべし。恩澤は能く百姓に施給せれば、即ち以て安居すべし。」

口者,關也;舌者,機也。出言不當,四馬不能追也。口者,關也;舌者,兵也;出言不當,反自傷也。言出於己,不可止於人;行發於邇,不可止於遠。夫言行者君子之樞機,樞機之發,榮辱之本也,可不慎乎?故蒯子羽曰:“言猶射也。栝既離弦,雖有所悔焉,不可從而追已。”詩曰:“白圭之玷,尚可磨也,斯言之玷,不可為也。”

口は關口、舌は弩機なり。説出する話が得當ならざれば、四匹の馬も能く追回せず。口は關口、舌は兵器なり。説出する話が得當ならざれば、反りて自らを傷害す。話は自らより發出し、能く人の處に於て止住せず。行為は近處より發出し、能く遠處に於て止住せず。言行は君子の樞機、樞機が一たび發動すれば、即ち榮辱の根本なり。能く謹慎せざらんや。ゆえに蒯子羽は曰く「説話は射箭の如し。箭栝が已に弦を離れば、たとえ后悔する所有るも、能く跟いて追回せず。」『詩経』に曰く「白圭の污點は、なお以て磨掉すべし。この話の污點は、以て去掉すべからず。」

蠋欲類蠶,■欲類蛇,人見蛇蠋,莫不身灑然;女工脩蠶,漁者持■,不惡何也?欲得錢也。逐魚者濡,逐獸者趨;非樂之也,事之權也。

毛蟲は蠶に類せんと欲し、鱔は蛇に類せんと欲す。人は蛇と毛蟲を見て、身が發寒せざるなし。女工は蠶を飼養し、漁人は鱔を握るに、卻って厭惡せず。何故か。是れ錢を得んと欲するなり。魚を追う人は沾湿し、獸を追う人は奔跑す。これを喜ぶにあらず、是れ事情の權變なり。

登高使人慾望,臨淵使人慾窺,何也?處地然也。御者使人恭,射者使人端,何也?其形便也。

高處に登れば人をして遠望せんと欲せしめ、深淵に臨面すれば人をして窺看せんと欲せしむ。何故か。是れ處する地勢の然らしむるなり。駕馭は人をして恭謹せしめ、射箭は人をして端正せしむ。何故か。是れあの形體のこの如くに便なり。

民有五死,聖人能去其三,不能去其二。飢渴死者,可去也;凍寒死者,可去也;罹五兵死者,可去也。壽命死者,不可去也;癰疽死者,不可去也。飢渴死者,中不充也;凍寒死者,外勝中也,罹五兵死者,德不忠也;壽命死者,歲數終也;癰疽死者,血氣窮也。故曰中不止,外淫作;外淫作者,多怨怪;多怨怪者,疾病生。故清靜無為,血氣乃平。

民に五種の死有り。聖人は能く其の中の三種を去掉し、能く其の中の兩種を去掉せず。饑渴して死するは、以て去掉すべし。凍寒して死するは、以て去掉すべし。兵器に遭遇して死するは、以て去掉すべし。壽命盡きて死するは、去掉すべからず。癰疽して死するは、去掉すべからず。饑渴して死するは、是れ內裏の充實せざるなり。凍寒して死するは、是れ外面の內裏に勝るなり。兵器に遭遇して死するは、是れ徳の忠實ならざるなり。壽命盡きて死するは、是れ歲數の終了するなり。癰疽して死するは、是れ血氣の窮盡するなり。ゆえに言う、內裏は安定せざれば、外面の淫亂は發作す。外面の淫亂發作するは、怨怪多し。怨怪多きは、疾病は即ち生ず。ゆえに清靜無爲なれば、血氣は乃ち平なり。

百行之本,一言也。一言而適,可以卻敵;一言而得,可以保國。響不能獨為聲,影不能倍曲為直,物必以其類及,故君子慎言出己。負石赴淵,行之難者也,然申屠狄為之,君子不貴之也;盜跖兇貪,名如日月,與舜禹並傳而不息,而君子不貴。

百行の根本は、一句の話なり。一句の話が得當なれば、以て敵人を退却すべし。一句の話が得宜なれば、以て國家を保全すべし。回響は能く獨自して聲音を做成せず、影子は能く彎曲に違背して直を做成せず。物は必ず其の類に按じて以て自身に及ぶ。ゆえに君子は自らの説出する話を謹慎す。石を背負いて深淵に投向するは、行為の中の難なり。しかるに申屠狄はこのように為せり。君子はそれを看重せず。盜跖は凶殘貪婪にして、名声は日月の如く、舜禹と併せて流傳して停まらず。君子は卻って看重せず。

君子有五恥:朝不坐,燕不議,君子恥之;居其位,無其言,君子恥之;有其言,無其行,君子恥之;既得之又失之,君子恥之;地有餘而民不足,君子恥之。

君子に五種の恥有り。上朝して坐せず、宴居して議せずは、君子は以て恥と為す。あの位子に處りて、相應の話なきは、君子は以て恥と為す。あの話有るに、あの行為なきは、君子は以て恥と為す。已に得てまた失うは、君子は以て恥と為す。土地に餘有りて民は足らざるは、君子は以て恥と為す。

君子雖窮不處亡國之勢,雖貧不受亂君之祿;尊乎亂世,同乎暴君,君子恥之也。眾人以毀形為恥,君子以毀義為辱;眾人重利,廉士重名。

君子はたとえ窮困するも亡國の情勢の裏に處らず、たとえ貧窮するも亂君の禄を接受せず。乱世に於て尊崇せらるるは、暴君と相同じ。君子は以て恥と為す。衆人は形體の毁せらるるを以て恥と為し、君子は義の毁せらるるを以て辱と為す。衆人は利を看重し、廉士は名を看重す。

明君之制:賞從重,罰從輕;食人以壯為量,事人以老為程。

明君の制度:賞は重に從い、罰は輕に從う。人に食を與うるは壯年を以て分量と為し、人に事を做らしむるは老年を以て規程と為す。

君子之言寡而實,小人之言多而虛;君子之學也,入於耳,藏於心,行之以身;君子之治也,始於不足見,終於不可及也。君子慮福弗及,慮禍百之,君子擇人而取,不擇人而與,君子實如虛,有如無。

君子の話は少なくして實在、小人の話は多くして虛空なり。君子の學習は、耳に入り、心裏に藏め、自身を以て往きて實行す。君子の治理は、見るに足らざる處より開始し、以て赶上すべからざる處に終結す。君子は福を考慮するにただ及ばざるを恐れ、禍を考慮するに百倍を按じて想う。君子は人を択擇して然る後に取り、人を択擇せずして給與す。君子は充實して卻って虛空の如く、有して卻って無きが如し。

君子有其備則無事;君子不以愧食,不以辱得;君子樂得其志,小人樂得其事;君子不以其所不愛,及其所愛也。

君子は豫備有れば即ち事なし。君子は慚愧を以て食物を換えず、恥辱を以て獲得するに往かず。君子は其の志を得るを樂しみ、小人は其の事を得るを樂しむ。君子は彼の愛せざる所を、彼の愛する所に延及せず。

君子有終身之憂,而無一朝之患,順道而行,循理而言,喜不加易,怒不加難。

君子に終身の憂慮有りて、卻って一朝の患難なし。道に順いて行走し、理に循いて説話す。高興はこれにより改變せず、發怒はこれにより作難せず。

君子之過猶日月之蝕也,何害於明?小人可也,猶狗之吠盜,狸之夜見,何益於善?夫智者不妄為,勇者不妄殺。

君子の過錯は日月の虧食の如く、光明に於て何の妨害有らん。小人もまた可なるは、狗の盜賊に對して叫び、狸猫は夜裏能く見るが如く、善に於て何の增益有らん。智の人は妄爲せず、勇の人は妄殺せず。

君子比義,農夫比谷。事君不得進其言,則辭其爵;不得行其義,則辭其祿。人皆知取之為取也,不知與之為取之。政有招寇,行有招恥,弗為而自至,天下未有。

君子は義を比量し、農夫は穀を比量す。君に事奉して能く彼の話を進獻せざれば、即ち爵を辭去す。能く彼の義を實行せざれば、即ち禄を辭去す。人は皆取るを取ると知りて、給與するもまた取なるを知らず。政令に寇敵を招來する有り、行為に恥辱を招來する有り。爲さずして自ら到來するは、天下にこの樣の事なし。

猛獸狐疑不若蜂蠆之致毒也;高議而不可及,不若卑論之有功也。

猛獸は猶豫するは、蜂蠆の能く毒を送到するに如かず。議論は高遠にして卻って赶上すべからざるは、卑下の議論の功效有るに如かず。

秦信同姓以王,至其衰也,非易同姓也,而身死國亡。故王者之治天下在於行法,不在於信同姓。

秦は同姓を信任して王と称す。其の衰微する時に至りて、併せて同姓を改換せざるに、卻って身は死し國は亡べり。ゆえに王者の天下を治理するは法を實行するに在りて、同姓を信任するに在らず。

高山之巔無美木,傷於多陽也;大樹之下無美草,傷於多陰也。

高山の頂上に美樹なきは、是れ過多の陽に傷害せらるなり。大樹の下面に美草なきは、是れ過多の陰に傷害せらるなり。

鍾子期死而伯牙絕弦破琴,知世莫可為鼓也;惠施卒而莊子深暝不言,見世莫可與語也。

鐘子期は死せり。伯牙は弦を割斷し琴を摔破し、世上に以て彼のために琴を彈くべき人なきを知れり。惠施は死せり。莊子は深深として沉默して話さず、世上に以て���と交談すべき人なきを見れり。

修身者智之府也,愛施者仁之端也,取予者義之符也,恥辱者勇之決也,立名者行之極也。

自身を修養するは智の府庫、愛して施給するは仁の開端、取と給は義の符驗、恥辱に對待するは勇の決斷、名声を樹立するは行為の極致なり。

進賢受上賞,蔽賢蒙顯戮,古之通義也;爵人於朝,淪人於市,古之通法也。

賢人を進薦するは上等の賞を受け、賢人を遮蔽するは顯明の殺戮を蒙受す。これは古代通行の義なり。朝廷の上に於て人に爵を與え、市の上に於て人をして沈淪せしむるは、これは古代通行の法なり。

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