第十首 羨(大寒)
羨:陽氣贊幽,推包羨爽,未得正行。
「羨」は溢出・旁出・迂曲して行くの義にして、第十首と為り、大寒に値り、冬至後第四十日半より第四十五日に至るを主る。陽気は幽隠の物を助佑し、推動して之を包裹せしめ、舒展して開朗ならしむれども、還た正路に走上る能わず。羨は「正」と相対し、此の首は道路の曲直を講ず:一時の迂回は未だ必ずしも坏事に非ず、走り成して習慣と為れば便ち帰り来たる能わず。
初一:羨於初,其次迂塗。測曰:羨於初,後難正也。次二:羨於微,克復可以為儀。測曰:羨微克復,不遠定也。次三:羨於塗,不能直如。測曰:羨於塗,不能直行也。
初一:一開頭に就中岔道に走り、接下来は便ち只迂回の路を剩すのみ。測辞に曰く:初に羨するは、往後は糾正し難きなり;歩を起して一分偏れば、後頭は便ち一丈偏る。次二:細微の処に偏出す、能く立刻に帰れば、便ち衆人の表率と為る可し。測辞に曰く:羨は微にして克く復るは、偏ること遠からずして便ち定住するなり。次三:半路の上に偏出せば、便ち直る能わず。測辞に曰く:涂に羨するは、直路に再走る法無きなり。
次四:羨權正,吉人不幸。測曰:羨權正,善反常也。次五:孔道夷如,蹊路微如,大輿之憂。測曰:孔道之夷,奚不遵也。次六:大虛既邪,或直之,或翼之,得矢夫。測曰:虛邪實夫,得賢臣也。
次四:権変を以て偏斜を矯正す、本是好人なるに而も不幸を遭う。測辞に曰く:羨を権正するは、善く反常の処に於て常道を用うるなり;権を行う人は往往先ず委屈を受く。次五:大道は平平坦坦、小路は却って狭窄行き難し、此れ正しく大車の憂患なり。測辞に曰く:大道此の如く平坦なるに、何故に遵行するを肯んぜざる。次六:大なる空虚は已に偏邪せり、人来りて之を扶直し、人来りて之に輔翼す、是に於て正直矢の如き人を得。測辞に曰く:虚邪にして充実を得るは、賢臣を得たるなり。
次七:曲其故,迂其塗,厲之訓。測曰:曲其故,為作意也。次八:羨其足,濟於溝瀆,面貞。測曰:羨其足,避凶事也。上九:車軸折,其衡抈,四馬就括,高人吐血。測曰:軸折吐血,不可悔也。
次七:事情の原委を扭曲し、該走る路を繞遠す、此れは危険の教訓なり。測辞に曰く:其の故を曲ぐるは、刻意做作・別に用心有るなり。次八:脚步を偏出して、道を繞りて溝渠を渡れば、面前は便ち正路なり。測辞に曰く:其の足を羨するは、為に凶険の事を躲開せんが為なり;此の一偏は偏るに理を得たり。上九:車軸は折断し、車衡も亦弯壊し、四匹の馬は绳索に絆住せられ、車上の貴人は血を吐く。測辞に曰く:軸折れ血を吐くは、已に追悔は及ばず;迂曲の極処に到れば、車は毀れ人は傷う。
第十一首 差(大寒・立春)
差:陽氣蠢闢於東,帝由群雍,物差其容。
「差」は差錯・参差の義にして、第十一首と為り、大寒の末に当たり立春に交り、冬至後第四十五日より第四十九日半に至るを主る。陽気は蠢蠢然として東方より開闢出で、天帝は此に由りて衆物を和洽ならしめ、而も万物の形容は各々参差不齐有り。差は両面有り:物性の本より斉ならざるは自然にして、人事上の偏差は則ち須く及早に改正すべし。
初一:微失自攻,端。測曰:微失自攻,人未知也。次二:其所好,將以致其所惡。測曰:其所好,漸以差也。次三:其亡其亡,將至於暉光。測曰:其亡其亡,震自衛也。
初一:一点の小過失有れば便ち自ら責治し、端正なり。測辞に曰く:微失して自ら攻むるは、別人の未だ知らざるに趁て改むるなり。次二:彼の喜好する物は、将に彼の厭悪する結果を招来せんとす。測辞に曰く:其の好む所は、一点点の偏差の慢慢として積成するなり。次三:口裏は常に「快要亡了快要亡了」と念じ、反って光明に走向せん。測辞に曰く:其の亡なん其の亡なんとは、心に震恐を存して能く自我防衛するなり;常に危亡の念を懐くは、正しく危亡を免るるの道なり。
次四:過小善善,不克。測曰:過小善,不能至大也。次五:過門折入,得彼中行。測曰:過門折入,近復還也。次六:大跌,過其門,不入其室。測曰:大跌不入,誠可患也。
次四:只だ小なる善事の上に於て過分に好を求め、反って事を成す能わず。測辞に曰く:小善に過ぐるは、大処に到達し得ざるなり;細節に糾纏すれば、格局は便ち小なり。次五:門口を走り過ぎて又折返りて入る、是に於て那の不偏不倚の中道を得。測辞に曰く:門を過ぎて折れ入るは、偏ること遠からずして便ち返回するなり。次六:一大跤を跌き、自家の門前より経過するも而も自家の屋に進まず。測辞に曰く:大いに跌きて入らざるは、実に人を憂慮せしむ;錯りて家門までも認めざるに至る。
次七:累卵業嶪,懼貞安。測曰:累卵業業,自危作安也。次八:足累累,其步躟躍,輔銘滅麋。測曰:足累累,履過不還也。上九:過其枯城,或櫱青青。測曰:過其枯城,改過更生也。
次七:堆曇の鶏蛋の如くに岌岌として危く、心に畏懼を懐きて正を守れば、便ち危を転じて安と為す能し。測辞に曰く:累卵業業とは、自ら危険を知り、反って安穏を做成するなり。賛辞は「業嶪」と作り而も測辞は「業業」と作す、底本の用字は一ならず、今は照録す。次八:脚步は一歩緊接一歩、走ること跌撞騰躍し、頬骨までも痕を磨出し眉際までも磨没す。測辞に曰く:足の累累たるは、一路錯を踏み過去して而も回頭するを肯んぜざるなり。上九:那座の荒廃の城を走り過ぐるに、城中に却って青青たる新芽の萌出する有り。測辞に曰く:其の枯城を過ぐるは、過錯を改めれば便ち重新に生発し得るなり;差の極処にして改むるを肯んずれば、反って更生の機と成る。
第十二首 童(立春)
童:陽氣始窺,物僮然咸未有知。
「童」は蒙昧未開の義にして、第十二首と為り、立春に値り、冬至後第四十九日半より第五十四日に至るを主る。陽気は剛し頭を探して窺望し、万物は一派童稚の貌にして、皆未だ知覚有らず。此の首は《周易》の《蒙》に相当し、講ずるは無知の時に如何に明を求むるか:既に人来りて開啓するを要し、亦自ら醒むるを肯んずるを要す。
初一:顓童不寤,會我蒙昏。測曰:顓童不寤,恐終晦也。次二:錯於靈蓍,焯於龜資,出泥入脂。測曰:錯蓍焯龜,比光道也。次三:東辰以明,不能以行。測曰:東辰以明,奚不逝也。
初一:愚頑の童子は睡着して醒めず、偏に又我が蒙昧昏暗の時に撞上す。測辞に曰く:顓童寤めざるは、怕るらくは一直に昏暗して到底せん。次二:霊験の蓍草を錯雑布列し、亀甲を灼焼して其の兆紋を取りて凭と為す、是に於て泥濘の裏より出でて、膏潤の地に走進す。測辞に曰く:蓍を布き亀を灼くは、光明の道に親近せんと要するなり;蒙昧の人は先ず卜筮を借りて明を問う、正しく求知の開端なり。次三:東方の星辰は已に放亮せり、人は而も身を起す能わず。測辞に曰く:東辰以て明なるに、何故に還た動身せざる。
次四:或後前夫,先錫之光。測曰:或後前夫,先光大也。次五:蒙柴求兕,其得不美。測曰:蒙柴求兕,得不慶也。次六:大開惟幕,以引方客。測曰:大開惟幕,覽眾明也。
次四:人の甘んじて原本自己の前頭を走る那位の後面に居る有り、反って先に光栄の賞賜を受く。測辞に曰く:或いは夫に後るるは、人の後に居るを甘んずる者の先に光大を得るなり。次五:柴草を拿して頭を蒙い犀牛を捕らんとす、所得は美好ならず。測辞に曰く:柴を蒙りて兕を求むは、得ると雖も亦慶賀に値せず;眼を蒙いて事を弁ずるは、過ぐるも僥倖のみ。次六:帷幕を大いに敞開し、以て四方の賓客を延引す。測辞に曰く:惟幕を大開するは、衆人の明智を遍覧せんと要するなり;蒙昧を破除する正法は門を開きて賢を納るるなり。
次七:修侏侏,比於朱儒。測曰:洙侏之修,無可為也。次八:或擊之,或刺之,修其玄鑑,渝。測曰:擊之刺之,過以衰也。上九:童麋觸犀,灰其首。測曰:童麋觸犀,還自累也。
次七:号して修長と称す、実則矮小侏儒の状にして、侏儒と一般の高なり。測辞に曰く:此の如き「修長」は作為すべき無きなり;名は修にして実は短、虚に其の表を有するのみ。次八:人の彼を敲打する有り、人の彼を針刺する有り、彼の那の幽深の鏡子を磨治す、是に於て彼は変る。測辞に曰く:之を撃ち之を刺すは、過錯は此に因りて減衰す;「玄鑑」は内心の鏡にして、須く磨礪を経てこそ照明し得。上九:小麋鹿は犀牛を顶撞しに行き、頭は皆砕に撞す。測辞に曰く:童麋の犀に触るるは、反って自己に連累するなり;蒙昧の極処にして自ら量力せざれば、只自ら毀傷を取る能しのみ。
第十三首 増(立春)
增:陽氣蕃息,物則增益,日宣而殖。
「増」は増益・蕃衍の義にして、第十三首と為り、立春に値り、冬至後第五十四日より第五十八日半に至るを主る。陽気は蕃衍生息し、万物は之に随いて増長し、一天天として舒展して繁殖す。増は真増有り虚増有り:根本の上に加うるは実にして、外表の上に加うるは只是装飾のみ、此の首は処処此の両者を分辨す。
初一:聞貞增默,外人不得。測曰:聞貞增默,識內也。次二:不增其方,而增其光,冥。測曰:不增其方,徒飾外也。次三:木以止漸增。測曰:木止漸增,不可蓋也。
初一:正道を聞得して反って更に沈黙し、外人は窺知するに由無し。測辞に曰く:貞を聞きて黙を増すは、所得を心裏に記するなり;増益は先ず内に増すを要す。次二:自己の徳行方正を増厚せずして、只顧表面の光彩を増添す、昏暗なり。測辞に曰く:其の方を増せざるは、白白に外表を装点するのみ。次三:樹木は停停長長の節律に依りて逐漸增高す。測辞に曰く:木は止まりて漸増すは、遮蓋し住る能わざるなり;一寸寸として長り上がれば、終究は看出さる。
次四:要不克,或增之戴。測曰:要不克,可敗也。次五:澤庳其容,眾潤攸同。測曰:澤庳其容,謙虛大也。次六:朱車燭分,一日增我三千,君子慶,小人傷。測曰:朱車之增,小人不當也。
次四:腰腹は本已に支撑し住る能わず、還た頭上に向かいて物を加えんとす。測辞に曰く:腰力は勝えざるは、垮れんと要するなり;根基足らずして一味に碼を加えれば、必ず敗壊に致る。次五:沼沢は自己の容受の処を低下に放し、衆多の水流は便ち皆帰汇して一起に到る。測辞に曰く:沢は其の容を庳くすは、謙虚にしてこそ其の大を成し得るなり。次六:朱漆の車子・分列の火燭、一日の間に我に三千の賞を増添す、君子は慶を得、小人は傷を受く。測辞に曰く:朱車の増は、小人は此の如き厚賜を担当し起る能わざるなり。
次七:增其高,刃其峭,丘貞。測曰:増高刃峭,於損皆行也。次八:兼貝以役,往益來。測曰:兼貝以役,前慶後亡也。上九:崔嵬不崩,賴彼岟崥。測曰:群士橿橿也。
次七:之を増して更に高くし、陡峭の処を刀刃の一般に削り、丘陵の如くに正を得。測辞に曰く:増高と削峭とは、増と損の両辺に於て皆行き通ず;増して該止る処に到れば便ち損に転ず、此れぞ正道なり。次八:財貨を兼并すれば便ち他人を役使し、去る時は益を得、帰り来るに却って……底本此の句の下は疑いに脱字有るべし、今は照録して補わず。測辞に曰く:貝を兼ねて以て役すは、先ず喜慶有りて而る後に喪亡有るなり。上九:山勢は崔嵬として而も崩塌せず、靠るは山脚那片の厚実の坡根なり。測辞に曰く:此れは衆多の賢士の下面に在りて強健有力に撑住すればなり。
第十四首 鋭(立春・雨水)
銳:陽氣岑以銳,物之生也咸專一而不二。
「鋭」は鋭利・專一の義にして、第十四首と為り、立春の末に当たり雨水に交り、冬至後第五十八日半より第六十三日に至るを主る。陽気は高峻にして鋭利、万物は生長の時に皆專一に注して分心せず。鋭の好処は專一にして能く達するにあり、壊処は過鋭必ず折るるにあり、此の首は両面兼ねて説く。
初一:蟹之郭索,後引黃泉。測曰:蟹之郭索,心不一也。次二:銳一無不達。測曰:執道必也。次三:狂銳蕩。測曰:狂銳之蕩,不能處一也。
初一:螃蟹は八爪に横行乱爬し、末了は自己を地下の黄泉の裏に引到る。測辞に曰く:蟹の郭索は、心思の專一ならざるなり。《荀子・勧学》は蟹の六跪二螯にして寄托する所無きを譏る、説くは正しく此の道理なり。次二:鋭意專一なれば、便ち到らざる所無し。測辞に曰く:此れは正道を執守して心志專必なるなり。次三:狂躁に一味に鋭を求めれば、便ち放蕩失拠せん。測辞に曰く:狂鋭の蕩は、那の「一」を守住し得ざるなり。
次四:銳於時,無不利。測曰:銳於時,得其適也。次五:銳其東,忘其西,見其背,不見其心。測曰:銳東忘西,不能迴避也。次六:銳丑,含於五軌萬鍾,貞。測曰:銳於丑,福祿無量也。
次四:合適の時機の上に於て鋭を用うれば、不利無し。測辞に曰く:時に鋭なるは、恰好火喉に対上せるなり。次五:只だ東辺に鋭意し、西辺を忘れ、人家の背は見えても人家の心は見えず。測辞に曰く:東に鋭して西を忘るるは、一頭を偏執して回旋避譲する法無きなり。次六:鋭意を同類衆人の身上に用いれば、五等の車軌・万鐘の俸禄は皆其の中に含まる、正を得。測辞に曰く:丑に鋭なるは、福禄の限量すべき無きなり;鋭にして能く衆と同ずれば、始めて大受有り。
次七:銳於利,忝惡至。測曰:銳於利,辱在一方也。次八:銳其銳,救其敗。測曰:銳其銳,恐轉作殃也。上九:陵崢岸峭,陁。測曰:陵崢岸峭,銳極必崩也。
次七:一味に鋭意して利を牟れば、羞辱と禍悪とは就中跟いて来る。測辞に曰く:利に鋭なるは、耻辱は就中彼の一辺に落着するなり。次八:更に鋭の手段を拿して已に敗壞の局面を補救せんとす。測辞に曰く:其の鋭を鋭にするは、恐らく反って灾殃に転成せん;急を以て急を救うは、往往火の上に油を澆ぐ。上九:山陵は高峻、崖岸は陡峭、終に坍塌して下る。測辞に曰く:陵峥岸峭とは、鋭の極処に到れば必定崩壞するなり;九は禍の極にして、鋭首は此に至りて収束す。
第十五首 達(雨水)
達:陽氣枝枝條出,物莫不達。
「達」は通達の義にして、第十五首と為り、雨水に値り、冬至後第六十三日より第六十七日半に至るを主る。陽気は一枝一条として伸展出で、万物は通達せざる無し。達は内外の分有り:内里の明白なるはぞ真の達にして;只だ耳目の上に通じて心中明ならざるは、反って迷なり。
初一:中冥獨達,迥迥不屈。測曰:中冥獨達,內曉無方也。次二:迷腹達目。迷腹達目,以道不明也。次三:蒼木維流,厥美可以達於瓜苞。測曰:蒼木維流,內恕以量也。
初一:幽暗の中に独自通達し、遠遠として伸展して屈折せず。測辞に曰く:中冥して独達するは、内里明暁して一隅に拘らざるなり。次二:腹中迷惑して、只だ眼睛のみ通達す。底本此の賛は「測曰」二字を脱去し、径に測辞に接す:腹は迷い目は達するは、行う所の道の明ならざるなり。次三:青翠の樹木は水流に順いて生長し、其の美は一直に瓜果の苞蔕にまで通達し得。測辞に曰く:蒼木は流に維ぐは、内心寛恕にして度量有るなり;養分は根より末梢に送到す、正しく恕道の人に推及するが如し。
次四:小利小達,大迷,扁扁不救。測曰:小達大迷,獨曉隅方也。次五:達於中衢,小大無迷。測曰:達於中衢,道四通也。次六:大達無畛,不要止洫作,否。測曰:大達無畛,不可遍從也。
次四:小処に利を得、小処に通達し、大処に於て却って迷失し、浅薄局促、挽救するに由無し。測辞に曰く:小達大迷は、只だ角落里の一方の理を懂得するのみ。次五:四通八達の大路口に於て通達し、小事大事と問わず皆迷失せず。測辞に曰く:中衢に達するは、道路四面皆通ずるなり。次六:大なる通達は辺際無きも、而も溝洫の処に於て収束停住するを肯んぜず、行う可からず。測辞に曰く:大達して畛無きは、様様皆之に跟いて行く能わざるなり;通ずる所無ければ、反って帰着する所無し。
次七:達於砭割,前亡後賴。測曰:達於砭割,終以不廢也。次八:迷目達腹。測曰:迷目達腹,外惑其內也。上九:達於咎,貞終譽。測曰:達咎終譽,善以道退也。
次七:砭石針刺を用い、刀を以て病灶を割去するに肯んずるにまで通達し、眼前は喪失する所有るも、日後は倚頼する所有り。測辞に曰く:砭割に達するは、終究廃棄せられざるに至らず;良薬は口に苦し、一時の痛を忍んでこそ長久を保得す。次八:眼睛は迷乱して腹中は通達す。測辞に曰く:目は迷い腹は達するは、外面の紛擾の内心を迷惑するなり。上九:自己の過咎を看清するに能くするにまで通達し、正を守れば終に美譽を得。測辞に曰く:咎に達して終に譽たるは、善く正道に依りて引退するなり;過を知りて退くは、正しく通達の最高の一層なり。
第十六首 交(雨水)
交:陽交於陰,陰交於陽,物登明堂,矞矞皇皇。
「交」は交接・交感の義にして、第十六首と為り、雨水に値り、冬至後第六十七日半より第七十二日に至るを主る。陽と陰と相交り、陰と陽と相交り、万物は明堂に登上り、一派光明盛美の気象なり。此の首は《周易》の《泰》に相当し、交すれば則ち通じ、交らざれば則ち塞ぐを講じ、亦交る所の人は択ばざる可からざるを講ず。
初一:冥交於神齊,不以其貞。測曰:冥交不貞,懷非含慚也。次二:冥交有孚,明如。測曰:冥交之孚,信接神明也。次三:交於木石。測曰:交於木石,不能向人也。
初一:幽暗中に於て斎戒して神明と相接す、心裏は而も一片貞正に非ず。測辞に曰く:冥交して貞ならざるは、不是を懐き羞慚を含むなり。次二:幽暗中に於て相交りて誠信有り、明亮なり。測辞に曰く:冥交の孚は、誠信を以て神明に接通するなり;人の見る無き処の誠にして、始めて神に通じ得。次三:只だ樹木石頭と相交るのみ。測辞に曰く:木石に交るは、人と相処する能わざるなり;孤僻自守すれば、交道は便ち断たる。
次四:往來熏熏,得亡之門。測曰:往來熏熏,與神交行也。次五:交於鶯猩,不獲其榮。測曰:交於鶯猩,鳥獸同方也。次六:大圈閎閎,小圈交之,我有靈餚,與爾餚之。測曰:小大之交,待煥光也。
次四:往来の間、気息は融融として、此れ正しく所得と所失と共に出づる門戸なり。測辞に曰く:往来熏熏とは、神明と一同に運行するなり;交感の際、得失は皆此処より出づ。次五:黄鶯猩猩の類と相交る、何の栄耀を得る無し。測辞に曰く:鶯猩に交るは、鳥獣と一方に同処するなり;交る所は人に非ざれば、自身も亦之に随いて降格す。次六:大なる圈子は寛宏広大、小なる圈子は来りて之と相交り、我は美好の酒饌を備有し、便ち爾と共享せん。測辞に曰く:小の大と相交るは、等待するは光輝煥発なり;上は下を棄てず、下は上に附るを楽し、交道は始めて盛なり。
次七:交於鳥鼠,費其資黍。測曰:交於鳥鼠,徒費也。次八:戈矛往來,以其貞,不悔。測曰:戈矛往來,徵不可廢也。上九:交於戰伐,不貞,覆於城,猛則啖。測曰:交於戰伐,奚可遂也。
次七:鳥雀老鼠と打交道す、白白に自己の糧食を耗掉す。測辞に曰く:鳥鼠に交るは、純属徒労浪費なり。次八:戈と矛と往来相接す、只だ一つの正の字に凭れば、便ち後悔せざるに至らず。測辞に曰く:戈矛の往来は、征伐の事は全然廃棄す可からず;交りて兵戈を動かすの地步に到れば、正と不正とは唯一の分界なり。上九:戦伐を以て相交り、又正道を守らざれば、便ち城下に覆敗し、一味に猛を逞くば便ち人に吞噬せらる。測辞に曰く:戦伐に交るは、此の路は怎麼して走り到底せんや。
第十七首 耎(雨水・驚蟄)
耎:陽氣能剛能柔,能作能休,見難而縮。
「耎」は「軟」に同じ、柔弱退縮の義にして、第十七首と為り、雨水の末に当たり驚蟄に交り、冬至後第七十二日より第七十六日半に至るを主る。陽気は能く剛にして能く柔、能く振作して能く止息し、艱難を見れば便ち退縮す。縮は怯に等しからず:看準して退くは智にして、退くに時候を錯れば便ち失機と成る。
初一:赤卉方銳,利進以退。測曰:赤卉方銳,退以動也。次二:耎其心,作疾。測曰:耎其心,中無勇也。次三:耎其□,守其節,雖勿肆,終無拂。測曰:耎其□,體不可肆也。
初一:紅色の草木は正しく鋭発の時に当たり、退譲の姿態を用いて前進するに宜し。測辞に曰く:赤卉方に鋭なるは、退を以て動の方式と為すなり。次二:心は先ず軟り下がり、便ち生病せんとす。測辞に曰く:其の心を耎くするは、心裏に勇気無きなり。次三:彼の或る処を軟下し、彼の節操を守住す、放開施展する能わざると雖も、終究拂逆有らず。測辞に曰く:彼の或る処を軟下するは、形体は放縱す可からざるなり。此の賛と測辞とは各々一字を脱す、底本原より闕す、今は「□」を以て標出し、臆補を作さず。
次四:耎其哇,三歲不噣。測曰:耎哇不噣,時數失也。次五:黃菌不誕,俟於慶雲。測曰:黃菌不誕,俟求耦也。次六:縮失時,或承之菑。測曰:縮失時,坐逋後也。
次四:嘴を軟下し、三年も開口して食を啄むを肯んぜず。測辞に曰く:哇を耎くして噣らざるは、屡屡時機を錯過するなり。次五:黄色の菌芝は貿然として生発するを肯んぜず、静候して祥瑞の慶雲を待つ。測辞に曰く:黄菌誕せざるは、相配の時機を等待するなり;該等の時に等るを肯んずるは、正しく柔退の正用なり。次六:退縮して時機を錯過せば、便ち灾禍を承受せん。測辞に曰く:縮して時を失うは、拖延逃避して後頭に落在するに因るなり。
次七:詘其節,執其術,共所歾。測曰:詘節共歾,內有主也。次八:窾枯木,丁沖振其枝,小人有耎,三卻鉤羅。測曰:窾木之振,小人見侮也。上九:悔縮,往去來復。測曰:悔縮之復,得在後也。
次七:彼の気節を屈下するも、而も彼の法術を握定し、人と共に処りて死するに至る。測辞に曰く:節を詘りて歾を共にするは、心裏に自ら主宰有るなり;外面は能く屈して、裏面は動かず、正しく柔中の剛なり。次八:中空の枯木、人に叮叮当当と撞撃して其の枝條を摇撼せらる;小人は一味に退縮し、三次皆鉤網に落ち入る。測辞に曰く:空木の撼せらるるは、小人の人に欺侮せらるるなり;内里空虚なれば、退譲は便ち人の揉搓に任するものと成る。上九:一味の退縮の為に後悔し、去りて又帰り来たる。測辞に曰く:縮を悔いて復るは、所得は後頭に在り;能く悔いて返れば、退縮は還た救い有り。
第十八首 徯(驚蟄)
徯:陽氣有徯,可以進而進,物咸得其願。
「徯」は等待の義にして、第十八首と為り、驚蟄に値り、冬至後第七十六日半より第八十一日に至るを主る。陽気は等待する所有り、前進すべきに到れば便ち前進し、万物は皆自己の心願を遂ぐ。此の首は《周易》の《需》に近く、講ずるは等待の道:待つ所の者正なれば則ち福至り、待つ所の者邪なれば則ち禍来たる。
初一:冥賊徯天,凶。測曰:冥賊之徯,時無吉也。次二:冥德徯天,昌。測曰:冥德之徯,昌將日也。次三:徯後時。測曰:徯而後之,解也。
初一:暗地裏に人を害する心を存して坐等し天意を待つ、凶なり。測辞に曰く:冥賊の徯は、何時に等到ると雖も皆吉利ならざるなり。次二:暗地裏に徳行を積んで静候して天意を待つ、昌盛す。測辞に曰く:冥徳の徯は、昌盛は一天天として到来するなり。次三:等待すれども、等到れば時機は已に経過せり。測辞に曰く:等して時機の後に落るるは、懈怠せるなり。
次四:詘其角,直其足,維以徯谷。測曰:屈角直足,不伎刺也。次五:大爵集於宮庸,小人庳徯空。測曰:宮庸之爵,不可空得也。次六:徯福貞貞,食於金。測曰:徯福貞貞,正可服也。
次四:其の角を屈下し、其の脚を伸直し、只だ山谷の裏に守って等待す。測辞に曰く:角を屈し足を直ぐるは、技を逞いて人を刺しに往かざるなり;鋒芒を收起して時を候うは、ぞ待つの正法なり。次五:大鳥は宮牆の上に聚集し、小人は卑下に空しく一場を等つ。測辞に曰く:宮牆上の大鳥は、白等に得る能く非ざるなり。次六:福分を等待して正を守り移さず、金玉の禄を以て享用す。測辞に曰く:福を徯して貞貞たるは、正を守ってこそ人に信服せしむるなり。
次七:徯禍介介,凶人之郵。測曰:徯禍介介,輿禍期也。次八:不禍禍,徯天活我。測曰:禍不禍,非厥訧也。上九:徯尪尪,天撲之顙。測曰:徯尪之撲,終不可治也。
次七:耿耿然として専ら禍事の門に上るを等つ、此れは凶悪の人の過失なり。測辞に曰く:禍を徯して介介たるは、禍事と日子を約好するに等し。次八:禍患を以て禍患と為さず、只だ上天の来りて我を救活せんを等つ。測辞に曰く:禍を以て禍と為さざるは、実は禍本身の罪過に非ず;錯は坐等に在り、禍の来るに在らず。上九:等ること腰背佝偻・羸弱不堪に至り、上天は一掌を以て彼の額頭上に打つ。測辞に曰く:尪を徯いて撲つは、終に救治する法無し;空しく等到ること形銷骨立に至れば、天も亦彼を幇ける能わず。
第十九首 従(驚蟄)
從:陽躍於淵、於澤、于田、於嶽,物企其足。
「従」は随従の義にして、第十九首と為り、驚蟄に値り、冬至後第八十一日より第八十五日半に至るを主る。陽気は深淵に・水沢に・田野に・山岳に躍動し、万物は皆脚跟を踮起して之に随う。此の首は《周易》の《随》に相当し、講ずるは跟従:従う所の者善なれば則ち吉、従う所の者悪なれば則ち凶、関鍵は全て擇ぶを会するか否かに在り。
初一:日幽嬪之,月冥隨之,基。測曰:日冥月隨,臣應基也。次二:方出旭旭,朋從爾丑。測曰:方出朋從,不知所之也。次三:人不攻之,自然證。測曰:人不攻之,自然證也。
初一:太陽は幽処に隠れ、月は便ち暗中に配合跟随す、此れは根基なり。測辞に曰く:日は隠れて月は随うは、正しく臣下の君上に応和する根基なり。次二:剛し出で来りて旭旭として光有れば、同類の人は皆爾の此一伙に跟く。測辞に曰く:方に出でて朋従すは、還た何処に向かい往くかを知らざるなり;一鬨して従うは、最も准頭無し。次三:別人の彼を攻治するを須せず、自然而然として験証を得。測辞に曰く:外力の攻治を須せざるは、自ら実効を顕出せん;道に従いて人に従わざるは、ぞ真の従なり。
次四:鳴從不藏,有女承其血匡,亡。測曰:鳴從之亡,奚足朋也。次五:從水之科,滿。測曰:從水之科,不自越也。次六:從其目,失其腹。測曰:從目失腹,欲丕從也。
次四:大声鳴叫して人の跟従を招いて全く収斂せず、女子の盛血の筐器を捧ぐる者の来りて相応ずる有り、喪亡す。測辞に曰く:鳴従して亡に致るは、此の如き人は何処に朋類と為るに配せんや。次五:水の如くに行進し、坑坎に遇うは先ず之を填満して而る後に走る。測辞に曰く:水の科に従うは、自己に分限を越越せしめざるなり;《孟子》に流水は科を盈たして而る後に進むと説く、正しく此の意なり。次六:自己の眼睛に跟従して、自己の肚腹を丟失す。測辞に曰く:目に従いて腹を失うは、欲望太だ大にして一味に順従するなり;外に徇えば必ず内を失う。
次七:拂其惡,從其淑,雄黃食肉。測曰:拂惡從淑,救凶也。次八:從不淑,禍飛不逐。測曰:從不淑,禍不可訟也。上九:從徽徽,乃升於階,終。測曰:從徽徽,後得功也。
次七:那些の悪なるを拂拭掉し、那些の善なるに跟従す、好く雄黄の能く毒を解し良薬の能く肌を生ずるに比す。測辞に曰く:悪を拂い淑に従うは、凶を救い得るの弁法なり。次八:不善の人に跟従せば、禍事は飛来して、追うも追い上かず。測辞に曰く:淑ならざるに従うは、此の禍は申弁すべき処無し;自己の選錯したる人なれば、傍人を怨むる得ず。上九:跟従して美好にして条理有れば、是に於て台階に登上り、善終を得。測辞に曰く:徽徽に従うは、後来に到りて終に功業を成就するなり。
