第四十首 法(芒種)
法:陽氣高懸厥法,物仰其墨,莫不被則。
「法」は法度の義にして、第四十首と為り、芒種に値り、冬至後第一百七十五日半より第一百八十日に至るを主る。陽気は其の法度を高く懸起し、万物は皆此の墨線を仰望し、其の規の規範を受けざる無し。此の首は立法と守法とを講ず:法は中道より出づるを要し、自身に於て行い、寛にして苛ならず、密にして羅網を成さず。
初一:造法不法。測曰:造法不法,不足用也。次二:摹法以中,克。測曰:摹法以中,眾之所共也。次三:準繩不甫,亡其規矩。測曰:準繩不甫,其用爽也。
初一:制定し出だしたる法は、本身便ち法に合せず。測辞に曰く:法を造りて法ならざるは、世間に於て行うに用うるに足らず。次二:法度を摹画して其の中正を取れば、成る能し。測辞に曰く:法を摹りて中を以てするは、衆人の共同認可する所なり。次三:準と縄とは擺正せず、規と矩とに跟いて失掉す。測辞に曰く:準縄甫ならざるは、用うれば便ち差錯百出するなり。
次四:準繩規矩,莫違我施。測曰:準繩規矩,由身行也。次五:繘陸陸,瓶窴腹,井潢洋,終不得食。測曰:瓶窴腹,非學方也。次六:於紀於綱,示以貞光。測曰:於紀於綱,大統明也。
次四:準縄と規矩とは、我の施行する所に違背し得る者無し。測辞に曰く:準縄規矩は、自身より做起して践行せんことを要す;法を立つる人は先ず法を守りて、法ぞ立得住る。次五:井繩は一段段として放下去す、瓶子は而も実心に堵がる、井水は汪洋一片、終に水を打ち上げて喝する能わず。測辞に曰く:瓶は肚子を塞ぐは、学問の道を求むる路数に非ざるなり;心裏堵がれば、法度再好なるも灌入るる能わず。次六:綱と紀との上に着眼し、此を以て貞正の光明を昭示す。測辞に曰く:紀に於り綱に於りは、大なる統緒の分明なるなり。
次七:密綱離於淵,不利於鱗。測曰:密綱離淵,苛法張也。次八:正彼有辜,格我無邪。測曰:正彼有辜,歐而至也。上九:井無干,水直衍,匪溪匪谷,終於愆。測曰:井無干,法妄恣也。
次七:細密の網羅を深淵の裏に張設す、魚類に対して利ならず。測辞に曰く:密綱淵に離るは、苛刻の法令の鋪張开来するなり;網眼太だ密なれば、魚は便ち活き成る能わず。次八:那些の罪有る人を糾正し、我が此の邪悪を格拒住す。測辞に曰く:彼の辜有るを正すは、彼らを駆逐して該去る処に送到するなり。上九:井に井欄無く、水は直に外に漫流し、既に溪を成さず亦谷を成さず、終に過失と成る。測辞に曰く:井に干無きは、法度の放縱にして約束する所無きなり;欄無きの井と度無きの法とは、人を害するは一様なり。
第四十一首 応(芒種・夏至)
應:陽氣極於上,陰信萌乎下,上下相應。
「応」は感応・相応の義にして、第四十一首と為り、芒種の末に当たり夏至に交り、冬至後第一百八十日より第一百八十四日半に至るを主る。陽気は最上に到達し、陰気の信息は已に下面に於て萌動し、上と下と彼此相応ず。此の首は正しく一歳の中に当たり、全書陽極陰生の転折なり:上巻四十一首は此に到りて止み、下巻は便ち陰長陽消より説き起す。
初一:六乾羅如,五枝離如。測曰:六乾羅如,附離君也。次二:上歷施之,下律和之,非則否。測曰:上施下和,璣匪其真也。次三:一旋從一橫,天綱罠罠。測曰:一從一橫,經緯陳也。
初一:六根の主干は彼処に羅列し、五条の枝條は其の上に附着す。測辞に曰く:六干羅如とは、衆枝の主干に依附する、正しく臣下の君主に依附するが如し。次二:上に在る者は暦数に依りて施行し、下に在る者は音律に依りて応和す、若し相合せざれば便ち行き通らず。測辞に曰く:上施下和は、倘若璇璣玉衡の校えること准ならざれば、応和し出だすも亦真に非ざるなり。次三:一条の竪・一条の横は交織し起り、天の綱紀は網の如くに張開す。測辞に曰く:一縦一横とは、経と緯と皆陳列し出だすなり。
次四:援我罘罟,絓羅於野,至。測曰:援我罘罟,不能以仁也。次五:龍翰於天,貞栗其鱗。測曰:龍翰之栗,極懼墜也。次六:熾承於天,冰萌於地。測曰:承天萌地,陽始退也。
次四:我が捕獣の網を拉起し、野外に於て羅を掛け阱を設く、来たる。測辞に曰く:我が罘罟を援ぐは、能く仁心を以て感召するに非ざるなり;機巧を用いて感応を求めれば、応じ来るも亦好东西に非ず。次五:龍は高く天に飛び、正を守るも其の鱗甲は戦慄す。測辞に曰く:龍翰の栗とは、極処に升りて墜落を怕るるなり;此れは《周易》乾卦の「亢龍有悔」と正しく相印証す。次六:熾熱は天に承じ、寒冰は已に地下に萌生す。測辞に曰く:天を承げ地に萌するは、陽気の退き始むるなり;夏至に一陰生ず、一年の転折は就中此処に在り。
次七:日強其衰,應蕃貞。測曰:日疆其衰,惡敗類也。次八:極陽徵陰,不移日而應。測曰:極陽徵陰,應其發也。上九:元離之極,君子應以大稷。測曰:元離之極,不可遏也。
次七:一天天として衰落の中に於て勉力自強す、感応する所は繁盛と貞正なり。測辞に曰く:日に其の衰を強にするは、那些の同類を敗壞する人を厭悪するなり。賛辞は「強」と作り而も測辞は「疆」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次八:極盛の陽は往きて陰を征討す、一日を隔てずして回応を得。測辞に曰く:極陽は陰を征すは、感応の発動に随いて至るなり。上九:大なる附麗は極処に到り、君子は社稷の大を以て之に回応す。測辞に曰く:元離の極、此の勢頭は遏止し得住ざるなり。
下巻
第四十二首 迎(夏至)
迎:陰氣誠形乎下,物咸溯而迎之。
「迎」は迎接・感召の義にして、第四十二首と為り、夏至に値り、冬至後第一百八十四日半より第一百八十九日に至るを主る。陰気は確確実実として下面に於て形を成し、万物は皆方向に逆らいて之を迎接す。下巻は此の首より起り、通篇陰長陽消の勢を講ず。迎と応とは相い表裏を為す:応は被動に答え、迎は主動に接ぐ。
初一:迎他匪並,無貞有邪。測曰:迎他匪應,緋所與並也。次二:蛟潛於淵,陵卵化之,人或陰言,百姓和之。測曰:蛟潛之化,中精誠也。次三:精微往來,妖先靈覺。測曰:精微往來,妖咎征也。
初一:別人を迎接しに往くも而も彼と同心せず、正道無くして只だ邪僻有るのみ。測辞に曰く:人を迎えて相応て相応ぜざれば、那れは並肩すべき人に非ざるなり。賛辞は「匪并」と作り而も測辞は「匪応」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次二:蛟龍は深淵に潜伏す、丘陵上の卵は而も它に因りて孵化す;人の暗中に於て一句の話を説く有れば、百姓は便ち皆応和し起る。測辞に曰く:蛟潜の化は、中心の精誠の遠処に感通するなり。次三:精微の気は往来交感し、妖異の兆は霊験に先んじて一歩顕現す。測辞に曰く:精微往来は、妖異は正しく灾咎の征候なり。
次四:裳有衣襦,男子目珠,婦人啑鉤,貞。測曰:裳有衣襦,陰感陽也,也。次五:黃乘否貞。測曰:黃乘否貞,不可與朋也。次六:玄黃相迎,其意感感。測曰:玄黃相迎,以類應也。
次四:下裳の上に衣襦を配し、男子は目光珠の如くに顧盼し、婦人は簪鉤を以て相引く、正を得。測辞に曰く:裳に衣襦有るは、陰の来りて陽を感召するなり。底本此の条の測辞の末尾は一つの「也」の字を重出す、今は照録して刪らず。次五:中央の黄徳は人に乘凌せらる、正ならず。測辞に曰く:黄は乘られて貞ならざるは、此の如き人は彼と朋類を結ぶ可からず。次六:玄色と黄色と互相迎接す、那份の意思は感応綿綿たり。測辞に曰く:玄黄相迎とは、同類の相応ずるなり;玄は天の色、黄は地の色、天地相い迎うるは、感じること深き所以なり。
次七:遠之(目後),近之掊,迎父迦逅。測曰:遠(目後)近掊,失父類也。次八:見血入門,捬迎中庭。測曰:見血入門,以賢自衛也。上九:溼迎床足,累於嬙屋。測曰:溼迎床足,顛在內也。
次七:離るること遠ければ便ち斜眼を以て看て、靠ること近ければ便ち手を伸して攫取し、父輩を迎接するも亦只だ不期而遇の敷衍を当作するのみ。測辞に曰く:遠ければ則ち斜睨、近ければ則ち攫奪とは、人子たるの類属を失掉するなり。底本「(目后)」は偏旁を用いて描摹したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。次八:血跡の家門に進るを見れば、只だ庭院中央に拊掌して迎候する能しのみ。測辞に曰く:血を見て門に入るは、賢能の人に靠りて自我防衛せんことを要するなり。上九:潮気は床脚の上に浸到り、整座の内室までも牽累を受く。測辞に曰く:湿は床足に迎うは、傾覆の根由は已に内部に在るなり;迎う所は陰湿の気なれば、禍は便ち裏頭より起る。
第四十三首 遇(夏至)
遇:陰氣始來,陽氣始往,往來相逢。
「遇」は相逢の義にして、第四十三首と為り、夏至に値り、冬至後第一百八十九日より第一百九十三日半に至るを主る。陰気は開始して到来し、陽気は開始して離去し、一来一往は正しく相逢す。此の首は《周易》の《姤》に相当し、期せずして会することを講ず:遇う所は人か物か・是善か是悪か、往往自己に由らず、能く自処するぞ本事なり。
初一:幽遇神及師,夢貞。測曰:幽遇神,思得理也。次二:沖沖兒遇,不定之諭。測曰:沖沖兒遇,不肖子也。次三:不往不來,得士女之貞。測曰:不往不來,士女則也。
初一:幽暗中に於て神明と先師とに遇い、夢中に見得して正を得。測辞に曰く:幽くして神に遇うは、思慮の事理に合するなり;心裏通じて、夢中ぞ見着し得る。次二:懵懵憁憁として小孩の如くに撞見す、得るは只だ定准無き説法なり。測辞に曰く:冲冲児遇とは、材を成さざる児子なり。次三:往かず亦来らず、得るは士と女と各々其の正を守るなり。測辞に曰く:往かず来らずとは、正しく男女相処の法則なり;苟且に相逢せざるを、始めて正の遇と叫ぶ。
次四:(亻圉)(亻圉),兌人遇雨,歷。測曰:兌人遇雨,還自賊也。次五:田遇禽,人莫之禁。測曰:田遇禽,誠可勉也。次六:俾蛛罔,罔遇蜂,利雖大,不得從。測曰:俾之罔,害不遠也。
次四:踉踉蹌蹌の様子、一味に悦を求める人は偏に大雨に遇い、艱難を歴尽す。測辞に曰く:兌人は雨に遇うは、反って自己を害うるなり。底本「(亻圉)」は偏旁を用いて描摹したる字なり、今は原樣に照りて存録す。次五:田猟の時に禽獣に遇上す、誰も攔得住る能わず。測辞に曰く:田は禽に遇うは、実に勉力して為すに値す;機会は当前に在り、正しく力を尽すべし。次六:蜘蛛に網を結ばしむるも、網は却って黄蜂に撞上す、利は大なりと雖も、而も跟ち下る能わず。測辞に曰く:之に網を結ばしむるは、禍害は就中遠からざる処に在り;遇う所は其の制し得るに非ざれば、網は反って撞破せらる。
次七:振其角,君父遇辱,匪正命。測曰:振其角,直道行也。次八:兩兕斗,一角亡,不勝喪。測曰:兩兕斗,亡角喪也。上九:或氐其角,遇下毀足。測曰:或氐其角,何可當也。
次七:其の角を奮起して抵触しに往けば、君父は此に因りて辱を受く、此れは正当の天命に非ず。測辞に曰く:其の角を振るは、一味に直道に照りて做るなり;直にして曲全を知らざれば、反って尊長を害す。次八:両頭の犀牛は相斗い、一頭は角を折り、勝負未だ分かれずして已に両敗倶傷す。測辞に曰く:両兕の斗い、角を折れば便ち喪亡なり。上九:角を低下来して頂撞しに往けば、下面の阻挡に遇いて反って自己の脚を毀す。測辞に曰く:或いは其の角を氐る、此の如き勢頭は誰が挡不住せんや;相遇の極処に到れば只だ硬拼を剩し、両頭皆保住し得ず。
第四十四首 竈(夏至・小暑)
灶:陰雖沃而灑之,陽猶熱而和之。
「竈」は炊竈の義にして、第四十四首と為り、夏至の末に当たり小暑に交り、冬至後第一百九十三日半より第一百九十八日に至るを主る。陰気は澆灌洒落するに雖も、陽気は仍お其の熱力を以て調和に往く。此の首は炊爨調烹を借りて治国を講ず:鼎中の味は即ち朝廷の政にして、火候・器皿・潔浄、様様講究有り。
初一:灶無實,乞於鄰。測曰:灶無實,有虛名也。次二:黃鼎介,其中裔,不飲不食,孚無害。測曰:黃鼎介,中廉貞也。次三:灶無薪,黃金瀕。測曰:灶無薪,有不用也。
初一:竈上に実在の物無く、只好く隣居に向かい討う。測辞に曰く:竈に実無きは、徒らに虚名有るのみ。次二:黄色の鼎は堅固にして節有り、鼎中の盛む所は而も辺縁に偏し、既に喝せず亦吃せず、誠信有れば便ち害無し。測辞に曰く:黄鼎介とは、居中にして清廉正を守るなり。次三:竈下に柴薪無く、黄金は傍辺に擺すも亦白搭なり。測辞に曰く:竈に薪無きは、物有りて而も用上げ得ざるなり;材料再貴なるも、引火の物を缺けば便ち焼起る能わず。
次四:鬲實之食,得其勞力。測曰:鬲實之食,時我奉也。次五:鼎大可觴,不齊不荘。測曰:鼎大可觴,饗無意也。次六:五味和調,如美如,大人之饗。測曰:味和之饗,宰輔事也。
次四:鬲中に食物を盛満す、是れ自己の労力に靠りて掙来せるなり。測辞に曰く:鬲実の食は、時に按じて我に供奉するなり;食は力より出でて、吃起してぞ安穏なり。次五:鼎は大にして酒器と当用し得るも、斎戒は誠ならず・挙止は荘ならず。測辞に曰く:鼎は大にして觴す可し、此の如き饗礼は誠意無きなり;器再大なるも心敬せざれば、無きに等し。次六:五味は調和得当、美好の至なり、此れは大人の饗宴なり。測辞に曰く:衆味を調和する饗宴は、正しく宰輔の為すべき事なり;鼎を調るは即ち政を調るなり、伊尹は割烹を以て湯を説く、用うるは就中此の譬喩なり。
次七:脂牛正肪,不濯釜而烹,則歐歍之疾至。測曰:脂牛歐歍,不絜志也。次八:食其委,雖噭不毀。測曰:食其委,蒙厥德也。上九:灶滅其火,唯家之禍。測曰:灶滅其火,國之賊也。
次七:肥牛上好の脂膏、而も鍋子を洗浄せずして下りて煮る、嘔吐作悪の毛病は就中来る。測辞に曰く:脂牛は欧歍すは、心志の潔浄ならざるなり;材料再好なるも、器皿潔ならざれば便ち人を害する要す。次八:吃るは積存下来の余糧なり、叫苦するに雖も亦敗亡に至らず。測辞に曰く:其の委を食うは、先前の儲蓄の恩徳を蒙受するなり。上九:竈裏の火は熄滅す、此れは一家の禍事なり。測辞に曰く:竈は其の火を滅すは、大処に往きて説けば便ち国家の禍害なり;炊煙は一たび断たれれば、家国の本は便ち絶たる。
第四十五首 大(小暑)
大:陰虛在內,陽蓬其外,物與盤蓋。
「大」は宏大の義にして、第四十五首と為り、小暑に値り、冬至後第一百九十八日より第二百零二日半に至るを主る。陰は内に虚し、陽気は外に蓬勃し、万物は皆盤の如く蓋の如くに張開す。此の首は大を講ず:真の大は能く容れ能く積むに在り、仮の大は門面声勢に在り;大にして実無ければ、崩るるは最も速し。
初一:淵潢洋,包無方,冥。測曰:淵潢洋,資裹無方也。次二:大其慮,躬自鑢。測曰:大其慮,為思所傷也。次三:大不大,利以成大。測曰:大不大,以小作基也。
初一:深淵は汪洋一片、包容して辺際無く、幽深難測なり。測辞に曰く:淵潢洋とは、其の裹含する所は一定の方所無きなり;大は能く容るるに始まる。次二:思慮を放大し過ぐれば、反って銼刀を拿して自己を磨くに似る。測辞に曰く:其の慮を大にするは、過度の思慮に傷せらるるなり。次三:大にして自ら大と為さず、正しく其の大を成就するに利あり。測辞に曰く:大ならずは、小処を拿して根基と作すなり。
次四:大其門郊,不得其刀,鳴虛。測曰:大其門郊,實去名來也。次五:包荒以中,克。測曰:包荒以中,督九夷也。次六:大失小,多失少。測曰:大失小,禍由微也。
次四:門庭郊野を修治して大ならしむるも、而も一把の刀さえ置弁し起らず、虚名は倒れて伝揚し開く。測辞に曰く:其の門郊を大にするは、実は去り名は来るなり。次五:中道を以て荒遠の地を包容す、成る能し。測辞に曰く:荒を包みて中を以てするは、四方九夷を統領するなり;《周易》泰卦九二に「包荒」と説く、正しく此の義を取る。次六:大を求むる為に小処を失い、多を求むる為に少処を失う。測辞に曰く:大は小を失うは、禍患の細微より起るなり。
次七:大奢迂,自削以觚,或益之餔。測曰:奢迂斥削,能自非也。次八:豐牆峭址,三歲不築,崩。測曰:豐牆峭址,崩不遲也。上九:丈佟以蔑,否出天外。測曰:大終以蔑,小為大資也。
次七:大にして奢侈迂濶なれど、能く自己の用度を削減して只だ簡朴の觚器を用いれば、人々は反って些の飯食を彼に添う。測辞に曰く:奢迂にして肯んじて自我斥退削減するは、能く自己の不是を承認するなり。次八:牆は築きて又高く又厚く、牆基は而も陡峭に修る、三年も修治を加えざれば、便ち崩塌せん。測辞に曰く:豊牆峭址は、崩塌は久しからざらん。上九:大は最後に到りて微末に帰し、閉塞して天外にも出で去る能わず。測辞に曰く:大は終に蔑を以てすは、小処は正しく大の憑資なり;大の極処に到れば、仍お小の上に回到するを得。賛辞は「丈佟」と作り而も測辞は「大終」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。
第四十六首 廓(小暑)
廓:陰氣瘱而怠之,陽猶恢而廓之。
「廓」は開廓・拡張の義にして、第四十六首と為り、小暑に値り、冬至後第二百零二日半より第二百零七日に至るを主る。陰気は収斂して懈怠し下がり、陽気は仍お恢張拡廓す。廓は外囲を撑開するを是とす:撑開して中に人有り徳有れば便ち盛にして、撑開して中空物無ければ便ち虚なり。
初一:廓之恢之,不正其基。測曰:廓之恢之,始基傾也。次二:金乾玉楨,廓於城。測曰:金乾玉楨,蕃輔正也。次三:廓無子,室石婦。測曰:廓無子,焉得後生也。
初一:一味に開廓拡張して、而も其の根基を端正しに往かず。測辞に曰く:之を廓り之を恢くすは、一開始に便ち根基歪みたるなり。次二:金を以て骨幹と為し・玉を以て楨柱と為し、城郭を拡廓し起る。測辞に曰く:金干玉楨とは、屏藩輔弼各々其の正を得るなり。次三:廓は張開するも而も子嗣無く、屋裏は只だ生育能わざる婦人有るのみ。測辞に曰く:廓に子無きは、何処に還た後代有る能せんや;外面再び大に撑げども、承継する人無ければ便ち空なり。
次四:恢其門戶,用圉寇虜。測曰:恢其門戶,大經營也。次五:天門大開,恢堂之階,或生之差。測曰:天門大開,德不能滿堂也。次六:維豐維崇,百辟馮馮,伊德攸興。測曰:維豐維崇,茲太平也。
次四:門戸を恢張拡大し、以て盗寇を抵御す。測辞に曰く:其の門戸を恢くすは、大いに経営を加うるなり;拡張の力を防守の上に用うる、ぞ其の当を得て用うと算す。次五:天門は大いに敞開し、庁堂の台階も亦甚だ寛に拡げ、反って差錯を生出す。測辞に曰く:天門大開は、徳行の此の堂に填満し得ざるなり;門の開くこと愈大なれば、徳足らざれば愈々顕る。次六:既に豊厚にして又崇高、百官は衆多にして気勢充盛、徳行は此に由りて興起す。測辞に曰く:維豊維崇、此れぞ太平の世なり。
次七:外大杚,其中失。君子至野,小人入宅。測曰:外大杚,中無人也。次八:廓其外,虛其內,利鼓鉦。測曰:廓外虛內,乃能有聞也。上九:極廓於高庸,三歲無童。測曰:極廓高庸,終無所臣也。
次七:外面は大にして斉整、裏面は而も已に失守せり;君子は荒野に趕到せられ、小人は宅第に住進す。測辞に曰く:外は大にして杚るは、裏頭に人材無きなり。次八:外殻を甚だ大に拡げ、裏面を甚だ空に掏る、鼓を撃ち鉦を鳴らすに利あり。測辞に曰く:外を廓り内を虚にするは、反って能く声聞を伝出し得;中空にしてぞ響く、此れ正しく虚名の由来なり。上九:高牆を極処に拡廓せば、三年間は僮僕一箇さえ無し。測辞に曰く:極廓高庸とは、終に役使し供べき人無きなり;廓りて人無きに至れば、牆再高きも守住し得ず。
第四十七首 文(小暑)
文:陰斂其質,陽散其文,文質班班,萬物粲然。
「文」は文采・修飾の義にして、第四十七首と為り、小暑に値り、冬至後第二百零七日より第二百一十一日半に至るを主る。陰気は万物の質地を収斂し、陽気はそれらの文采を散布し、文と質と班班として相雑し、万物は是に於て燦然として観る可し。此の首は文質の辨を講ず:文は質より出づれば則ち美、文は質より離れれば則ち乱、文は極処に到るも仍お質に回到するを要す。
初一:袷襀何縵,玉貞。測曰:袷隤何縵,文在內也。次二:文蔚質否。測曰:文蔚質否,不能俱睟也。次三:大文彌樸,孚似不足。測曰:大文彌樸,質有餘也。
初一:夾衣の褶襇の外面に素浄の縵帛を罩け、内里に美玉を蔵す、正を得。測辞に曰く:外に素縵を罩くるは、文采は全て裏面に在るなり。賛辞は「袷襀」と作り而も測辞は「袷隤」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次二:文采は蔚然として質地は足らず。測辞に曰く:文蔚質否は、文と質と一同に純粋なる能わざるなり。次三:最大の文采は反って更に質朴、看るに倒れて還た足らざるに似る。測辞に曰く:大文弥朴とは、質地有余るなり;真に文有る人は外に炫るを須とせず。
次四:斐如邠如,虎豹文如,匪天之享,否。測曰:斐邠之否,奚足譽也。次五:炳如彪如,尚文昭如,車服庸如。測曰:彪如在上,天文炳也。次六:鴻文無範,恣於川。測曰:鴻文無範,恣意往也。
次四:斐然として章を成し紛紛として観る可し、虎豹の皮毛の如く花紋斑斕なるも、而も上天の享用する所に非ず、行う可からず。測辞に曰く:斐邠の行う可からざる所以、此れ何の称誉すべき有らんや;文有りて徳無ければ、虎豹の皮は終究人に剥去せらる。次五:光焰炳耀・紋理彪炳、文治を崇尚して世に昭明し、車馬服飾は各々等差の用有り。測辞に曰く:彪如として上に在るは、天の文采の光明なるなり;上に在る人は文有れば、天下ぞ章法有らん。次六:宏大の文采は規範無く、江河の上に於て任意に流蕩す。測辞に曰く:鴻文範無きは、己意を放縱して往くなり;文一旦法度無ければ、大なるほど愈々乱る。
次七:雉之不祿,而雞藎谷。測曰:雉之不祿,難幽養也。次八:雕韱縠布,亡於時,文則亂。測曰:雕韱縠布,徒費日也。上九:極文密密,易以黼黻。測曰:極文之易,當以質也。
次七:野雉は文采斑斕なるも而も人の豢養を得ず、家鶏は平常文無く反って天天谷を吃すること有り。測辞に曰く:雉の禄せざるは、它の幽閉圈養せられ難きなり;文有りて馴せざれば、便ち世に用いられず。次八:繊細の花紋を雕鏤し、軽薄の縠布を織造し、該正事を為すべき時に於て時令を荒廃せば、文飾は便ち禍乱と変成す。測辞に曰く:韱を雕り縠を布くは、白白に時日を耗費するなり。上九:文采は極密の地步に到れば、便ち黼黻の如き端正の礼服紋様に換成すべし。測辞に曰く:極文の変ずべき所以は、当に質朴の上に回到すべきなり;此れは「文」首の帰結なり。
第四十八首 礼(小暑・大暑)
禮:陰在下而陽在上,上下正體,物與有禮。
「礼」は礼制の義にして、第四十八首と為り、小暑の末に当たり大暑に交り、冬至後第二百一十一日半より第二百一十六日に至るを主る。陰は下に在りて陽は上に在り、上下各々其の体を正しくし、万物は皆此に因りて礼を有す。礼の根本は敬に在り、敬は内心より発す;儀節は外殻にして、心意ぞ実なり。此の首より起りて、底本の第九賛は多く「次九」と題して「上九」と作らず、今は悉く原樣に依りて保留す。
初一:履於跂,後其祖裲。測曰:履於歧,退其親也。次二:目穆穆,足肅肅,乃貫以棘。側曰:穆穆肅肅,敬出心也。次三:畫象成形,孚無成。測曰:畫象成形,非其真也。
初一:脚尖を踮げて路を走り、祖先の衣裳を身後に撇く。測辞に曰く:歧路の上に踩むは、自己の親長を後面に推去するなり。賛辞は「跂」と作り而も測辞は「歧」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次二:眼神は粛穆、脚步は端厳、一挙一動は皆棘刺を貫るが如くに謹慎なり。測辞に曰く:穆穆粛粛とは、恭敬の内心より発するなり。底本此の条「測曰」は誤刻して「側曰」と作す、今は照録して改めず。次三:図像を画出して形貌を做成す、縦ち誠信有るも事を成す能わず。測辞に曰く:象を画きて形を成すは、真の東西に非ざるなり;礼は徒らに儀注有りて実心無ければ、餅を画くに異ならず。
次四:孔雁之儀,利用登階。測曰:孔雁之儀,可法則也。次五:懷其違,折其匕,過喪錫九矢。測曰:懷違折匕,貶其祿也。次六:魚鱗差之,乃大施之,帝用登於天。測曰:魚鱗差之,貴賎位也。
次四:鴻雁の行列を排成するが如き斉整の儀節、階に登りて礼を行うに利あり。測辞に曰く:孔雁の儀は、取法すべき准則なり;雁行は序有るは、正しく礼の本相なり。次五:心裏に礼に違う意を懐き、祭祀の用う所の匕を折断す、過失大にして天子の賜う所の九矢の栄を喪失す。測辞に曰く:違を懐き匕を折るは、彼の俸禄を貶削せんとするなり。次六:魚鱗の如くに一片片依次排列す、是に於て大いに施行し開く、天帝は此の套の礼制に凭りて天に升登す。測辞に曰く:魚鱗之を差すは、尊貴と卑賤の位次を皆排定するなり。
次七:出禮不畏,入畏。測曰:出禮不畏,人所棄也。次八:冠戚月丑履全履。測曰:冠戚履賎,不可不上也。次九:戴無首,焉用此九。測曰:無首之戴,焉所往也。
次七:礼の範囲を出でて還た毫も畏懼せず、礼の中に進みて反って畏縮して前せず。測辞に曰く:礼を出でて畏れざるは、此の如き人は衆人に拋棄せられんとするなり。次八:冠帽は頭頂に親近し、鞋履は最下に踩み、各々其の位置の上に在り。測辞に曰く:冠は貴にして履は賤とは、上下の分は講ぜざる能わざるなり。底本「月丑」は偏旁を拆开して写したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。次九:冠を戴くも而も頭無し、此の第九位は又何の用有らんや。測辞に曰く:首無きの戴は、還た何処に往かんと欲せんや;礼は極処に到りて承戴する所無ければ、便ち空に落る。
第四十九首 逃(大暑)
逃:陰乞章強,陽氣潛退,萬物將亡。
「逃」は逃遁の義にして、第四十九首と為り、大暑に値り、冬至後第二百一十六日より第二百二十日半に至るを主る。陰気は顕揚強盛し、陽気は暗暗に退却し、万物は将に衰亡せんとす。此の首は《周易》の《遁》に相当す:逃げて痕跡を留めざるを上と為し、逃げて人に牽制せらるるを危と為し、逃ぐ可き処無きに到る時に至りてぞ逃げんと想うは便ち晚し。底本「陰乞」の「乞」は当に「気」の字の訛なるべし、今は照録す。
初一:逃水之夷,滅其創跡。測曰:逃水之夷,跡不創也。次二:心惖惖,足金舄,不志溝壑。測曰:心惖惖,義不將也。次三:兢其股,鞭其馬,寇望其戶,逃利。測曰:兢股鞭馬,近有見也。
初一:水路平坦の処より逃走し、留下したる痕跡を皆抹掉す。測辞に曰く:水の夷に逃ぐるは、創痕を留下せざるなり;善く逃ぐる人は人に蹤跡を看見せしめず。次二:心裏は惕惕として安まらず、脚上は而も金飾の鞋を穿き、自己を沟壑に置身するを肯んぜず。測辞に曰く:心惖惖とは、道義の彼を扶持し得住ざるなり;富貴を舎得せざれば、便ち逃げ干浄し得ず。次三:大腿を繃緊し、坐骑を鞭打す、盗寇は已に彼の門戸を盯上せり、逃走してぞ利有り。測辞に曰く:股を兢げ馬を鞭つは、近処已に危険を看見せるなり。
次四:喬木維摐,飛鳥過之,或止降。測曰:喬木之鳥,欲止則降。次五:見鷕踤於林,獺入於淵,徵。測曰:見鷕及獺,深居逃凶也。次六:多田不婁,費我膎功。測曰:多田不婁,費力亡功也。
次四:高大の喬木は枝干撞撃して声有り、飛鳥は彼処を経過して、あるいは便ち停りて降落す。測辞に曰く:喬木上の鳥は、脚を歇めんと想えば便ち降下来る;托すべき処有れば、逃はぞ着落有らん。次五:雌雉の林中に撲落するを見、水獺は深淵に钻進す、行動するに宜し。測辞に曰く:雉と獺との此の如く躲蔵するを見るは、正しく深居して以て凶を避くるなり。次六:田地は多しと雖も而も勤加耕治するを肯んぜず、我が一番の辛苦を白费す。測辞に曰く:田多くして婁せざるは、力気を費して収成無きなり;該収るに収らざるは、該退るに退かざると同様に耗損なり。
次七:見於累,後乃克飛。測曰:見於累,幾不足高也。次八:頸加於矰,維糸羽其繩。測曰:頸加維糸羽,毋自勞也。次九:利逃餅跰,盜德嬰城。測曰:盜德嬰城,何至逃也。
次七:绳索に絆住せられて行蹤を暴露し、随后にぞ勉强して飛起す。測辞に曰く:累に見ゆるは、険くして高く飛び得ざりしなり。次八:脖子は系繩の短箭に撞上し、繩子は還た箭羽に纏る。測辞に曰く:頸上已に繳繩を挂ぐるは、再び力気を白费して挣扎する勿れ。底本「糸羽」は偏旁を拆开して写したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。次九:急急奔逃・跛行して去るに利あり;若し窃取来たるの徳名に靠りて城を環じて自守せば。測辞に曰く:徳を盗み城を嬰ぐは、何処に還た逃を談じ得んや;名は実に副わざれば、城は終に守住し得ず。
