Libo

第六十首 積(白露)

汉 · 扬雄 · 第7巻 / 9

作盤ガイド: 大衍筮法, 六爻納甲の立卦

積:陰將大閉,陽尚小開,山川藪澤,萬物攸歸。

「積」は積聚の義にして、第六十首と為り、白露に値り、冬至後第二百六十五日半より第二百七十日に至るを主る。陰気は将に大いに閉蔵せんとし、陽気は還た一線の小開を留む、山川藪沢の間、万物は皆彼処に向かい帰聚す。善と悪とは皆積む可し:善は子孫に積み、悪も亦子孫に積む。

初一:冥積否,作明基。測曰:冥積否,始而在惡也。次二:積不用,而至於大用,君子介心。測曰:積不用,不可規度也。次三:積石不食,費其勞力。測曰:積石不食,無可獲也。

初一:暗中に不正当の物を积累し、反って之を光明の根基と当作す。測辞に曰く:冥積否は、一開頭に便ち悪の上に積むなり。次二:積蓄し起りて而も用いるを急がず、後来に到りて大用を成就す、君子は此の份の心を守住すること甚だ牢し。測辞に曰く:積みて用いざるは、旁人は彼を測度するに由無し;其の用を見ざるは、正しく大用の自ら出づる所なり。次三:一堆の石頭を積むも又吃す能わず、一番の労力を白费す。測辞に曰く:石を積みて食わざるは、収穫すべき無きなり;物を積み錯れば、積むほど愈々無用なり。

次四:君子積善,至於車耳。測曰:君子積善,至於蕃也。次五:藏不滿,盜不贏。測曰:藏滿盜贏,還自損也。次六:大滿碩施,得人無亢。測曰:大滿碩施,人所來也。

次四:君子は善行を积累し、一直に車耳の如き高さに堆到る。測辞に曰く:君子は善を積むは、繁盛の地步に積み到るなり。次五:庫蔵は填めて太だ満とせず、盗賊は便ち大利を得ず。測辞に曰く:蔵ること太だ満ちて盗賊に利を獲らしむるは、反って自己の損を受くるなり。次六:積むこと大満にして又厚厚として他人に施予す、人心を得て彼と相抗する人無し。測辞に曰く:大満碩施とは、衆人皆彼の此処に往き来るなり;能く散ずる、ぞ積む所を守住し得。

次七:魁而顏而,玉帛班而,決欲招寇。測曰:魁而顏而,盜之招也。次八:積善辰禍,維先之罪。測曰:積善辰禍,非己辜也。次九:小人積非,至於苗裔。測曰:小人積非,禍所骫也。

次七:魁然として自大・気焰は臉に上り、玉帛は満地に鋪陳す、簡直に存心盗寇を招来するなり。測辞に曰く:魁として顔たるは、正しく盗賊を招引する做法なり。次八:善を積むも偏偏として禍患に遇上す、那は先人の留下したる罪なり。測辞に曰く:善を積みて禍に辰うは、自己の過咎に非ず;《周易》に不善を積む家は必ず余殃有りと説く、殃は時に正しく後人の身上に落る。次九:小人は過錯を积累し、一直に子孫後代に積み到る。測辞に曰く:小人は非を積むは、禍患は就中此の如く盤結し起るなり。

第六十一首 飾(白露・秋分)

飾:陰白陽黑,分行厥職,出入有飾。

「飾」は修飾の義にして、第六十一首と為り、白露の末に当たり秋分に交り、冬至後第二百七十日より第二百七十四日半に至るを主る。陰は其の白を顕し、陽は其の黒を顕し、各自分頭に職分を履行し、一出一入は皆文飾を帯ぶ。此の首は《周易》の《賁》に相当す、而も通篇言語を借りて論を立つ:言語は人の最も切身の文飾にして、説くと説かざる・何時に説くかは、皆飾なり。

初一:言不言,不以言。測曰:言不言,默而信也。次二:無質飾,先文後失服。測曰:無資先文,失貞也。次三:吐黃舌,鉗黃聿,利見哲人。測曰:舌聿之利,利見知人也。

初一:説くも而も実際は説かず、並に言辞に靠らず。測辞に曰く:言に言わざるは、沈黙して自然に人に取信するなり。次二:質地無くして只だ文飾有るのみ、先ず文采を講じ、後来に到りて身上の衣服までも保住し得ず。測辞に曰く:底子無くして先ず文采を求むるは、正道を失掉するなり。賛辞は「無質飾」と作り而も測辞は「無資先文」と作す、底本の用字は一ならず、今は各々原樣に依りて保留す。次三:中正の舌頭を吐出して話を説き、中正の筆杆を握定して書写す、明哲の人を見るに利あり。測辞に曰く:舌と筆との利は、利は人を識る人に遇上するに在り。

次四:利舌哇哇,商兒之真。測曰:哇哇之真,利於商也。次五:下言如水,實以天牝。測曰:下言如水,能自沖也。次六:言無追如,抑亦飛如,大人震風。測曰:言無追如,抑亦揚也。

次四:舌頭は霊利・哇哇として停まず、此れは商販子弟の本色なり。測辞に曰く:哇哇の真は、只だ売買を為すに利するのみ;言語を以て利を求むれば、好処も亦此に到りて止む。次五:話を低下して流水の如くに説けば、其の充実は正しく天下の谷牝の如く虚にして能く受るに在り。測辞に曰く:言を下して水の如くするは、能く自ら虚に居るなり。次六:話は一たび口を出口すれば便ち追回し来る能わず、反って飛出去するが如く、大人の言語は疾風の如く四方を震動す。測辞に曰く:言は追如無き、那れ正しく其の飛揚遠播し得るの縁故なり。

次七:不丁言時,微於辭,見上疑。測曰:不丁言時,何可章也。次八:蛁鳴喁喁,血出其口。測曰:蛁鳴喁喁,口自傷也。次九:白舌于于,屈於根,君子否信。測曰:白舌于于,誠可長也。

次七:話を説くに其の時に当たらず、言辞は又含糊隠晦、上位の者に猜疑せらる。測辞に曰く:言時に丁ならざるは、話は怎麼説き明白せんや。次八:蝉の如くに喁喁として停まず鳴叫し、叫ぶこと嘴裏に血を出すに至る。測辞に曰く:蛁鳴喁喁とは、自己の口の自らを害うなり。次九:舌頭は潔白にして舒徐従容、能く根本の処に屈蔵す、君子は軽発の言に対して軽易に相信せず。測辞に曰く:白舌于于とは、此の份の誠実は長久し得るなり;飾りて極処に到りて質実に帰するは、正しく初一の「言不言」と首尾相応ず。

第六十二首 疑(秋分)

疑:陰陽相磑,物咸雕離,若是若非。

「疑」は疑惑の義にして、第六十二首と為り、秋分に値り、冬至後第二百七十四日半より第二百七十九日に至るを主る。陰と陽と互相磨砑し、万物は凋零離散し、看るに似るも亦似ず。此の首は疑を講ず:疑いて能く諸己に反求し旧典を稽考するは、是れ明疑;疑いて心慌主無く・疑神疑鬼するは、是れ妄疑なり。

初一:疑恛恛,失貞矢。測曰:不正之疑,何可定也。次二:疑自反,孚不遠。測曰:疑自反,反清靜也。次三:疑強昭,受茲閔閔,於其心祖。測曰:疑強昭,中心冥也。

初一:疑いて心慌意乱し、那支の笔直の正矢を失掉す。測辞に曰く:正当ならざる疑慮は、怎麼定め下来せんや。次二:疑い起れば便ち反って己に之を求む、誠信は便ち遠からず。測辞に曰く:疑いて自ら反すは、清靜の処に返回到るなり;内に向かい一問せば、疑は自然に消す。次三:本より疑う可きに、而も硬に之を光明正大と説成す、是に於て此の一片の昏昏昧昧を承受す、病根は全て彼の心上に在り。測辞に曰く:疑いて強に昭とするは、心裏本より暗きなり。

次四:疑考舊,遇貞孚。測曰:疑考舊,先問也。次五:赨黃疑金中。測曰:赨黃疑中,邪正也。次六:誓貞可聽,疑則有誠。測曰:誓貞可聽,明王命也。

次四:疑有れば便ち往きて旧典成例を稽考す、便ち貞正と誠信とに遇上し得。測辞に曰く:疑いて旧を考るは、先ず往きて明白を問うなり;下問を恥とせざれば、疑は便ち着落有らん。次五:赤黄の顔色は人に它が究竟純正の黄金の色なるか否かを懐疑せしむ。測辞に曰く:赨黄は中を疑うは、邪と正との間に於て分辨せんことを要す。次六:盟誓は貞正にして聴信するに値し、疑有ると雖も而も自ら誠意有り。測辞に曰く:誓貞聴む可しは、王命の昭明なるなり。

次七:鬼魂疑嚘鳴,弋木之鳥,射穴之狐,反目耳,厲。測曰:鬼魂疑之,誠不可信也。次八:顛疑遇乾客,三歲不射。測曰:顛疑遇乾客,甚足敬也。次九:疑無信,控弧擬麋,無。測曰:疑無信,終無所名也。

次七:疑心して鬼魂の嗚咽鳴叫するを疑い、樹上の鳥を射取り穴中の狐を掏挖するが如く疑神疑鬼し、眼と耳とまでも常を失う、危険なり。測辞に曰く:疑うこと鬼魂の身上に到るは、実に憑信に足らず。次八:疑うこと極処に到りて前来干謁の客人に遇上す、三年も彼を射取りに往かず。測辞に曰く:疑を顛して干客に遇う、此の份の持重は倒れて甚だ敬重に値す。次九:疑いて全く信実無く、弓を張開して麋鹿に比すも而も始終発せず、一の所得無し。測辞に曰く:疑いて信無きは、終究名聲を成就し得ざるなり;疑いて決せざるは、全く疑わざると同様に事を誤る。

第六十三首 視(秋分)

視:陰成魄,陽成妣,物之形貌咸可視。

「視」は観看の義にして、第六十三首と為り、秋分に値り、冬至後第二百七十九日より第二百八十三日半に至るを主る。陰は凝りて形魄を成し、陽は其の配を成就し、万物の形貌は皆見るを得。此の首は看を講ず:内に向かい自己の徳を看るは是れ明視、外に向かい形色を看るは是れ浅視;別人の瑕疵を看見し得るは、自己のを看見し得るに如かず。

初一:內其明,不用其光。測曰:內其明,自窺深也。次二:君子視內,小人視外。測曰:小人視外,不能見心也。次三:視其德,可以乾王之國。測曰:視德之幹,乃能有全也。

初一:光明を内里に収め、其の光耀を動用しに往かず。測辞に曰く:其の明を内にするは、自己の深処に向かい窺察するなり。次二:君子は内に向かい看、小人は外に向かい看。測辞に曰く:小人は外を視るは、人心を看見し得ざるなり。次三:看重する所は徳行にして、此個に凭りて王者の国の任用を求取しに往き得。測辞に曰く:徳を以て進を求む、ぞ始終を保全し得るなり。

次四:粉其題頯,雨其渥須,視無姝。測曰:粉題雨須,不可忍瞻也。次五:鸞鳳紛如,厥德睴如。測曰:鸞鳳紛如,德光皓也。次六:素車翠蓋,維視之害,貞。測曰:素車翠蓋,徒好外也。

次四:額頭顴骨の上に粉を敷き、鬍鬚を湿漉漉に塗り、看るに毫も美好ならず。測辞に曰く:題に粉して須を雨らすは、人に正眼して看るに忍びざらしむ。次五:鸞鳥鳳凰は紛然として至り、それらの徳色は光潤燦爛なり。測辞に曰く:鸞鳳紛如とは、徳の光輝の潔白明亮なるなり。次六:素色の車・翠羽の蓋、看るに好なるも、害処は恰恰就中此処に在り、須く正を守るべし。測辞に曰く:素車翠蓋は、只是一味に外表を愛好するのみ。

次七:視其瑕,無穢。測曰:視其瑕,能自矯也。次八:翡翠于飛,離其翼,狐貂之毛,躬之賊。測曰:翡翠狐貂,好作咎也。次九:日沒其光,賁於東方,用視厥始。測曰:日沒賁東,終顧始也。

次七:能く自己の瑕疵を看見すれば、便ち汚穢無し。測辞に曰く:其の瑕を視るは、能く自我矯正するなり。次八:翡翠鳥は飛翔す、羽毛太だ美なるに因りて翅膀を失掉す;狐と貂の身上の毛皮は、正しくそれら自身の禍害なり。測辞に曰く:翡翠狐貂とは、美好の反って灾咎を招来するなり。次九:太陽は其の光を収斂し、光彩を東方に装点し、以て其の起点を回望す。測辞に曰く:日は没して東を賁るは、終点に走到りて仍お開端を回顧するなり;此の首は此を以て収束す、最後に看到れば還た本初に看回本るを要す。

第六十四首 沈(秋分)

沈:陰懷於陽,陽懷於陰,志在玄宮。

「沈」は兼ねて沈潜と沈溺との両義有り、第六十四首と為り、秋分に値り、冬至後第二百八十三日半より第二百八十八日に至るを主る。陰は陽を懐抱し、陽は陰を懐抱し、心志は皆幽深の玄宮に帰向す。沈り下がり得るは是れ深にして、陥ち入りて出で来らざるは是れ溺なり、此の首は処処此の両者の間に界を劃す。

初一:沈耳於閨,不聞貞。測曰:沈耳於閨,失德體也。次二:沈視白自見,賢於眇之眄。測曰:沈視之見,得正美也。次三:沈於美,失貞矢。測曰:沈於美,作聾盲也。

初一:耳朵を内室の閑言の裏に沈溺せしめ、正道を聴かず。測辞に曰く:耳を閨に沈むるは、徳の本体を失掉するなり。次二:沈静に看て、白なるは自然に顕現し出だす、眼を眯して斜瞟するに比べて高明なること得る多し。測辞に曰く:沈視の見は、正大の美を得たるなり。次三:美色美物の中に沈溺し、那支の笔直の正矢を失掉す。測辞に曰く:美に沈むるは、自己を聾子瞎子と弄成するなり。

次四:宛雛沈視,食苦貞。測曰:宛雛沈視,擇食方也。次五:雕鷹高翔,沈其腹,好憴惡粥。測曰:雕鷹高翔,在腐糧也。次六:見粟如累,明,利以正於王。測曰:見粟如累,其道明也。

次四:鵷鶵は沈静審視し、寧ろ苦澀の物を吃しても正を守る。測辞に曰く:宛鶵沈視とは、食物を挑揀するに法度有るなり;《荘子》は鵷鶵は練実に非ざれば食せずと説く、正しく此の一路なり。次五:雕と鷹とは高く飛翔す、肚子は而も沈甸甸として地面を惦記し、好きも壞きも一概に吃せんと想う。測辞に曰く:雕鷹高翔とは、心思は其実那些の腐壞の糧食の上に落在す;飛ぶこと再高くとも、志は腐鼠に在り。次六:一粒粒として累曇し起る粟米を看見し得、明察なり、此の份の明察を用いて君王を匡正するに利あり。測辞に曰く:粟を累が如く見るは、彼の道の明白清楚なるなり。

次七:離如婁如,赤肉鴟梟,厲。測曰:離婁赤肉,食不臧也。次八:盼得其藥,利徵。測曰:盼得其藥,利徵邁也。次九:血如剛,沈於顙,前尸後喪。測曰:血剛沈顙,終以貪敗也。

次七:眼力は離婁の如く秋毫を明察するも、看中するは而も鴟梟の嘴辺の一塊の生肉なり、危険なり。測辞に曰く:離婁の明は只だ赤肉を盯着するに用うるは、食う所の善ならざるなり;明察を地方に用い錯うなり。次八:一転眼に便ち症に対する薬を尋得す、前行するに利あり。測辞に曰く:其の薬を盼得するは、奮力邁進するに利あり。次九:血は剛劲有力に涌起し、一直に額頭の上に沈聚す、前面に尸有り、後面は喪なり。測辞に曰く:血は剛にして顙に沈むるは、終に貪心に因りて敗亡するなり。

第六十五首 内(秋分・寒露)

內:陰去其內而在乎外,陽去其外而在乎內,萬物之既。

「内」は内室・内人の義にして、第六十五首と為り、秋分の末に当たり寒露に交り、冬至後第二百八十八日より第二百九十二日半に至るを主る。陰は内位を離れて外に処り、陽は外位を離れて内に処る、此れは万物終尽の象なり。此の首は内治を講ず:一家之内の婚配・婦政・母情、件件皆邦国に関わる。

初一:謹於媐求九,初貞後寧。測曰:謹於媐求九,治女政也。次二:邪其內主,於彼黃床。測曰:邪其內主,遠乎寧也。次三:爾儀而悲,坎我西階。測曰:爾儀而悲,代母情也。

初一:婚娶求配の事の上に於て処処謹慎し、起初は正を守り、後来は安寧す。測辞に曰く:配を求むるに謹するは、正しく内室の政を治理するの開端なり。次二:内室の主婦を邪路に走上せしむるは、就中那張の黄色の床上に在り。測辞に曰く:其の内主を邪にするは、安寧より遠きこと甚だし。次三:爾の儀容の中に悲戚を含み、我家の西階下の低窪の処に立つ。測辞に曰く:爾の儀にして悲なりは、母親の情分を代行するなり。

次四:好小好危,喪其縕袍,厲。測曰:好小好危,不足榮也。次五:龍下於泥,君子利用取媐,遇庸夷。測曰:龍下於泥,陽下陰也。次六:黃昏于飛,內其羽。雖欲滿宮,不見其女。測曰:黃昏內羽,不能自禁也。

次四:細小を喜好し・冒険を喜好し、一件の旧絮の袍子までも丟す、危険なり。測辞に曰く:小を好み危を好むは、誇耀に値する無きなり。次五:龍は泥の中に降り、君子は此処に於て妻を娶るに利あり、遇上するは平常安和の人なり。測辞に曰く:龍の泥に下るは、陽の陰に屈就するなり;婚姻の礼は男は先ず女に下る、正しく此の義を取る。次六:黄昏の時分に飛帰り来り、羽翼を内室に収進す;宮室の裏に人を満坐せしめんと想うと雖も、而も那個の女子に見えず。測辞に曰く:黄昏に内に羽すは、自己の自ら管住し得ざるなり。

次七:枯垣生莠,皬頭內其稚婦,有。測曰:枯垣生莠,物慶類也。次八:內不克婦,荒家及國,涉深不側。測曰:內不克婦,國之孽也。次九:雨降於地,不得止,不得過。測曰:雨降於地,澤節也。

次七:枯敗の牆頭に莠草を長出し、白髪蒼蒼の老人は年軽の婦人を門に納り入れ、所得有り。測辞に曰く:枯垣に莠を生ずは、万物各々其の類を以て相慶するなり;枯して復た生ずるは常に合せざると雖も、亦自ら一段の生意有り。次八:内室に於て妻子を治住し得ず、家を荒廃して国に牽累し、深水に渉入するも還た躲避を知らず。測辞に曰く:内は婦に克たざるは、国家の禍害なり。次九:雨は地上に落り、中途に止住する能わず、亦過量する能わず。測辞に曰く:雨の地に降るは、恩沢は節制有るを要するなり;此の首は雨の節有るを以て結を作す、正しく内治の分寸を点出す。

第六十六首 去(寒露)

去:陽去其陰,陰去其陽,物咸倜倡。

「去」は離去・舎棄の義にして、第六十六首と為り、寒露に値り、冬至後第二百九十二日半より第二百九十七日に至るを主る。陽は其の依る所の陰を離れ、陰は其の依る所の陽を離れ、万物は皆倜然として分張す。此の首は去就取舎を講ず:去るに其の所を得るは是れ謙、去るに其の所に非ざるは是れ妄;功成して去るは是れ全、徳失して去るは是れ丑なり。

初一:去此靈淵,舍彼枯園。測曰:去此靈淵,不以謙將也。次二:去彼枯園,舍下靈淵。測曰:舍下靈淵,謙道光也。次三:高其歩,之堂有露。測曰:高歩有露,妄行也。

初一:此の一泓の霊有る深淵を離れ、却って那片の枯敗の園圃に住みに往く。測辞に曰く:此の霊淵を去るは、謙遜を用いて自己を扶持するを肯んぜざるなり;深を舎てて浅に就くは、取舎全く反れり。次二:那片の枯園を離れ、下面の那泓の霊淵の裏に住到る。測辞に曰く:下の霊淵を舎つは、謙遜の道の光彩を放出するなり;下に居るを肯んずる、ぞ深処を得るなり。次三:脚步を甚だ高に抬げ、堂上に走到る、露水は已に衣裳を打湿せり。測辞に曰く:歩を高くして露有るは、妄自に行走するなり;歩子の邁ぐること愈高ければ、愈々一身の湿を沾す。

次四:去於子父,去於臣主。測曰:去於子父,非所望也。次五:攓其衣,之庭有麋。測曰:攓其衣,亦可懼也。次六:躬去於成,天遺其名。測曰:躬去於成,攘不居也。

次四:児子は父親を離棄し、臣下は君主を離棄す。測辞に曰く:子父に於て去るは、此れは人の期望する事に非ざるなり。次五:衣裳を攓起して快步に走開す、庭院の裏には已に麋鹿の游荡する有り。測辞に曰く:其の衣を攓ぐ、此の情形は着実に可怕なり;朝廷は麋鹿の場と成れば、走るは還た及ぶ。次六:功が成った之後に自己引身而退す、上天は反って彼に名聲を留下す。測辞に曰く:成に於て躬を去るは、推譲して功に居るを肯んぜざるなり。

次七:去其德貞,三死不令。測曰:去其德貞,終死丑也。次八:月高弦,火幾縣,不可以動,動有愆。測曰:月弦火縣,恐見咎也。次九:求我不得,自我西北。測曰:求我不得,安可久也。

次七:自己の徳行と貞正とを舎棄し、三次も死に瀕するも一個の善名に換え来らず。測辞に曰く:其の徳貞を去るは、終に死ること難看なり。次八:月は高く上弦の位に懸り、火星は幾乎正しく中天に当たる、此の時は軽挙妄動す可からず、一動すれば便ち過失有り。測辞に曰く:月弦火県とは、咎責を招来するを怕るるなり;天象未だ定まらざれば、静にして之を待つ。次九:来りて我を求むも求め得ず、我は已に西北の方向より離去せり。測辞に曰く:我を求めて得ざるは、此の如くして又怎麼長久せんや;該在る時に在らざれば、去ること最後に到りて人までも尋着かず。

第六十七首 晦(寒露)

晦:陰登於陽,陽降於陰,物咸喪明。

「晦」は昏暗の義にして、第六十七首と為り、寒露に値り、冬至後第二百九十七日より第三百零一日半に至るを主る。陰気は陽位に升登し、陽気は陰位に下降し、万物は皆光明を喪失す。此の首は《周易》の《明夷》に相当す:外面昏暗の時に、君子は自ら其の明を晦して以て禍を避く、心中は而も仍お照見分明なり。

初一:同冥獨見,幽真。測曰:同冥獨見,中獨照也。次二:盲徵否。測曰:盲徵否,明不見道也。次三:陰行陽從,利作不凶。測曰:陰行陽從,事大外也。

初一:衆人と昏暗の中に同処して而も独り看見し得、幽隠にして真実なり。測辞に曰く:冥に同じくして独り見るは、心中に独り一片の光照有るなり。次二:眼を瞎して前に往き走る、行う可からず。測辞に曰く:盲として征して否は、眼前不明にして道路を看見し得ざるなり。次三:陰気は主行して陽気は随従し、興作する所有るも亦凶に至らず。測辞に曰く:陰は行い陽は従うは、事情を外頭に弁むるなり;昏晦の世は主従位を易うるも、仍お以て有為し得。

次四:晦其類,失金匱。測曰:晦其類,法度廢也。次五:日正中,月正隆,君子自晦不入窮。測曰:日中月隆,明恐挫也。次六:玄鳥維愁,明降於幽。測曰:玄鳥維愁,將下昧也。

次四:自己の同類までも一併に遮蔽掉し、金匱の裏に収蔵する典冊までも丟す。測辞に曰く:其の類を晦にするは、法度の荒廃せるなり。次五:太陽は正しく中天に当たり、月は正しく盈満に当たる、君子は而も自ら光芒を隠晦し、此に因りて窮途に陥入せず。測辞に曰く:日中月隆とは、光明太だ盛んなるを怕りて反って受挫するなり。次六:燕子は満懐の憂愁、光明は幽暗の裏に降落し往く。測辞に曰く:玄鳥は愁に維ぐは、将に昏昧に沈入せんとするなり;玄鳥は秋に去る、正しく明の幽に降るの象なり。

次七:睄提明,或遵之行。測曰:睄提明,德將遵行也。次八:視非其真,夷其右目,滅國喪家。測曰:視非夷目,國以喪也。次九:晦冥冥,利於不明之貞。測曰:晦冥之利,不得獨明也。

次七:幽暗中に於て一点の光明を提起せば、便ち人の之に循りて走る有り。測辞に曰く:明を睄提するは、徳行の将に人に遵循せられて行われんとするなり。次八:看見する所は並に真相に非ず、還た自己の右眼を傷い、以て国を滅し家を亡ぼすに至る。測辞に曰く:非を視て目を傷うるは、国家は就中此の如く喪掉するなり。次九:昏暗して一片漆黑に到る、不明の中に於て正を守るに利あり。測辞に曰く:晦冥の利有る所以は、此の時は独り明を逞くする能わざるに因るなり;挙世皆暗にして一人独り亮んとするは、正しく禍を取るの道なり。

第六十八首 瞢(寒露・霜降)

瞢:陰徵南,陽徵北,物失明貞,莫不瞢瞢。

「瞢」は目昏不明の義にして、第六十八首と為り、寒露の末に当たり霜降に交り、冬至後第三百零一日半より第三百零六日に至るを主る。陰気は南に向かい進発し、陽気は北に向かい退行し、万物は光明と貞正とを失掉し、一派瞢瞢然の昏昧なり。晦の講ずるは外面の暗にして、瞢の講ずるは自己の眼裏の暗なり、此の首は専ら人の自らを看清し得ざるを説く。

初一:瞢腹睒天,不睹其畛。測曰:瞢腹睒天,無能見也。次二:明腹睒天,靚其根。測曰:明腹睒天,中獨爛也。次三:師或導射,豚其埻。測曰:師或導射,無以辨也。

初一:肚裏は一団昏昧にして而も眼を抬げて天を窺う、其の界畔を看見せず。測辞に曰く:瞢腹して天を睒むは、根本より何をも看見し得ざるなり。次二:肚裏は明白にして眼を抬げて天を窺えば、其の根柢を看清し得。測辞に曰く:腹明して天を睒むは、内心に独り一片の燦爛有るなり。次三:射師は旁に在りて射法を指点す、箭は而も尽く靶垛の底下に落る。測辞に曰く:師或いは射を導くは、自己に分辨の能力無きなり;人の教うる有るも亦用無し。

次四:鑑貞不迷,於人攸資。測曰:鑑貞不迷,誠可信也。次五:倍明仮光,觸蒙昏。測曰:倍明仮光,人所叛也。次六:瞢瞢之離,不宜熒且妮。測曰:瞢瞢之離,中不眩也。

次四:鏡子の如くに正を守りて迷惑せず、此れは衆人の倚頼する所なり。測辞に曰く:鑑は貞にして迷わざるは、実に信托し得。次五:真の光明を背棄して仮の光亮を借用す、一頭に蒙昧昏黒の裏に撞進す。測辞に曰く:明を倍して光を仮るは、衆人皆彼を背棄せんとするなり。次六:昏昧の中に於て附麗依托す、再び熒惑の小光を用いて人に媚るを応せず。測辞に曰く:瞢瞢の離は、心裏並に昏眩せざるなり;外面瞢して内里眩わざる、ぞ守住し得。

次七:瞢好明其所惡。測曰:瞢好之惡,著不昧也。次八:昏辰利於月,小貞未有及星。測曰:昏辰利月,尚可願也。次九:時(肆差)(肆差),不獲其嘉,男子折笄,婦人易哿。測曰:不獲其嘉,男死婦嘆也。

次七:昏昧の人は偏に彼の憎悪する事を張揚せんと要す。測辞に曰く:瞢は其の悪を好むは、丑事を清清楚楚に顕露し、一点も含糊ならざるなり;自己は看清し得ざるも、倒れて別人の短処を雪亮に照らし出だす。次八:黄昏の時辰は只だ月に利あり、小小として正を守る、還た星辰の明に够上がらず。測辞に曰く:辰昏にして月に利す、此の如くしても亦還た指望し得と算す。次九:時運は参差錯落し、那份の美好を獲得せず、男子は髪笄を折断し、婦人は神色を変ず。測辞に曰く:其の嘉を獲せざるは、男子の死去して婦人の悲嘆するなり。底本「(肆差)」は偏旁を用いて描摹したる一つの字なり、今は原樣に照りて存録す。

第六十九首 窮(霜降)

窮:陰氣塞宇,陽亡其所,萬物窮遽窮。

「窮」は窮尽・困窮の義にして、第六十九首と為り、霜降に値り、冬至後第三百零六日より第三百一十日半に至るを主る。陰気は宇内に充塞し、陽気は其の処所を失掉し、万物は急遽に窮尽に走向す。此の首は《周易》の《困》に相当す:窮して中を守るは是れ正、窮して詐を行うは是れ濫;君子は窮に固し、正しく此処に於て高下を分出す。

初一:窮其窮,而民好中。測曰:窮其窮,情在中也。次二:窮不窮,而民不中。測曰:窮不窮,詐可隆也。次三:窮思達。測曰:窮思達,師在心也。

初一:窮すれば便ち窮に安んず、百姓は此に因りて中道を喜好す。測辞に曰く:其の窮を窮くするは、真情実意を皆中正の上に擺するなり。次二:窮するに而も窮ならざるを装えば、百姓も亦跟いて中正ならず。測辞に曰く:窮して窮ならざるは、詐偽の此に由りて隆盛し起るなり。次三:困窮の中に処りて而も通達を想着す。測辞に曰く:窮して達を思うは、老師を自己の心裏に放るなり;問う可き人無きの時に、心は自ら師と為る。

次四:土不和,木科橢。測曰:土不和,病乎民也。次五:羹無糝,其腹坎坎,不失其範。測曰:食不糝,猶不失正也。次六:山無角,水無鱗,困犯身。測曰:山無角,困百姓也。

次四:土壤は調和せず、樹木は便ち長ること歪斜稀落す。測辞に曰く:土は和せざるは、百姓を害うるなり;土は民の養う所にして、土壊れば則ち民病む。次五:羹湯の裏に一粒の米糝無く、肚子は餓えて咕咕として作響するも、而も自己の法度を失わず。測辞に曰く:吃るに米糝無くとも、仍お其の正を失わざるなり;此れ正しく孔子の陳に於て糧を絶たれて弦歌輟まざるの気象なり。次六:山上に走獣の角を見ず、水裏に魚鱗を見ず、困厄は自身に逼到る。測辞に曰く:山に角無きは、百姓は一齊に困厄に陥入するなり;山沢物無ければ、民は便ち取給する所無し。

次七:正其足,蹛於狴獄,三歲見錄。測曰:正其足,險得平也。次八:涉於霜雪,累項於□。測曰:累項於□,亦不足生也。次九:破璧毀圭,臼竃生黿,天禍以他。測曰:破璧毀圭,逢不幸也。

次七:自己の脚步を端正す、一時は獄牢の中に滞留するに雖も、三年之後は仍お起用せらる。測辞に曰く:其の足を正すは、険境は終に平地と化作するなり。次八:霜雪の中に跋涉し、脖子は绳索に捆縛せらる。測辞に曰く:脖子は拴住せらるは、亦活き成る能わず。此の賛と測辞とは底本各々一字を缺く、今は「□」を以て標出し、臆補を作さず。次九:玉璧は打破せられ、圭璋は毀壞せられ、石臼と竈膛の裏に黿を生出し、上天の禍患は又別処より降下す。測辞に曰く:璧を破り圭を毀るは、不幸を遭逢せるなり;窮の極処に到れば、祭器と炊器とまでも其の器を成さず。

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