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成唯識論巻第八

唐 · 护法等造,玄奘译 · 第33巻 / 39

成唯識論巻第九

護法等菩薩造

護法等の菩薩造。

三藏法師玄奘奉詔譯

三蔵法師玄奘詔を奉じて翻訳す。

若有三性,如何世尊說一切法皆無自性?

もし三性有れば、世尊はどうして一切法は倶に自性無しと説く。

頌曰:

頌に説く:

23即依此三性,立彼三無性,

すなわちこの三性に依って、かの三無性を立つ。

故佛密意說,一切法無性。

ゆえに仏は密意に説く、一切法は性無し。

24初即相無性,次無自然性,

初めはすなわち相無性。次には自然性無し。

後由遠離前,所執我法性,

後は前の執する所の我法の性を遠離するに由って、

25此諸法勝義,亦即是真如,

この諸法の勝義はもまたすなわち是れ真如。

常如其性故,即唯識實性。

常にその性の如きのゆえん、すなわち唯識の實性なり。

論曰:即依此前所說三性,立彼後說三種無性,謂即相、生、勝義無性,故佛密意說一切法皆無自性,非性全無。

論に説く:すなわちこの前の説く所の三性に依って、かの後に説く三種の無性を立つ。いわゆるすなわち相・生・勝義の無性。ゆえに仏は密意に一切法は倶に自性無しと説く。性は全く無しに非ず。

說「密意」言顯非了義,謂後二性雖體非無,而有愚夫於彼增益,妄執實有我、法自性,此即名為遍計所執。為除此執,故佛世尊於有及無,總說無性。

「密意」を説く言は了義に非ざるを顯示す。いわゆる後の二性は体は無に非ざると雖も、しかし愚夫有りて彼に於て增益して、妄りに実の我・法の自性有りを執す。これすなわち名づけて遍計所執。この執を除かんが為に、ゆえに仏世尊は有および無に於て総じて性無しと説く。

云何依此而立彼三?

どうしてこれに依ってかの三を立つ。

謂依此初遍計所執立相無性,由此體相畢竟非有,如空華故。依次依他立生無性,此如幻事託眾緣生,無如妄執自然性故,假說無性,非性全無。依後圓成實立勝義無性,謂即勝義由遠離前遍計所執我、法性,故假說無性,非性全無。如太虛空雖遍眾色,而是眾色無性所顯。

いわゆるこの初の遍計所執に依って相無性を立つ。この体相は畢竟有に非ざるに由る。空華の如きのゆえん。次の依他に依って生無性を立つ。これは幻事の衆縁に託して生ずるが如く、妄執の如き自然の性無きのゆえんに、假に無性と説く。性は全く無しに非ず。後の圓成實に依って勝義無性を立つ。いわゆるすなわち勝義は前の遍計所執の我・法の性を遠離するに由る。ゆえに假に無性と説く。性は全く無しに非ず。太虚空の衆色に遍するも衆色の無性の顯す所なるが如し。

雖依他起非勝義故,亦得說為勝義無性,而濫第二,故此不說。

依他起は勝義に非ざるのゆえんに、もまた勝義無性と説くを得と雖も、しかし第二に濫る。ゆえにここに説かず。

此性即是諸法勝義,是一切法勝義諦故。然勝義諦略有四種:一、世間勝義,謂蘊、處、界等;二、道理勝義,謂苦等四諦;三、證得勝義,謂二空真如;四、勝義勝義,謂一真法界。此中勝義依最後說,是最勝道所行義故,為簡前三,故作是說。此諸法勝義亦即是真如,真謂真實,顯非虛妄,如謂如常,表無變易,謂此真實於一切位常如其性,故曰真如,即是湛然不虛妄義。「亦」言顯此復有多名,謂名法界及實際等,如餘論中隨義廣釋。

この性すなわち諸法の勝義は、一切法の勝義諦なるのゆえん。しかし勝義諦は略して四種有り。一、世間勝義とはいわゆる蘊・處・界等。二、道理勝義とはいわゆる苦等の四諦。三、証得勝義とはいわゆる二空の真如。四、勝義勝義とはいわゆる一真法界。ここに勝義は最後に依って説く。最勝道の行ずる所の義なるのゆえん。前の三を簡ぶが為に、ゆえにかくのごとき説を作す。この諸法の勝義はもまたすなわち真如なり。真とはいわゆる真実にして虚妄に非ざるを顯し、如とはいわゆる如常にして變易無きを表す。いわゆるこの真実は一切位に於て常にその性の如し。ゆえに真如と叫ぶ。すなわち湛然として虚妄ならざるの義なり。「亦」の言はこれにまた多くの名有るを顯示す。いわゆる名づけて法界および実際等という。其余の論の中の如く義に随って広く釋す。

此性即是唯識實性,謂唯識性略有二種:一者虛妄,謂遍計所執;二者真實,謂圓成實性,為簡虛妄說「實性」言。復有二性:一者世俗,謂依他起;二者勝義,謂圓成實,為簡世俗故說「實性」。

この性すなわち唯識の實性は、いわゆる唯識性は略して二種有り。一は虚妄にしていわゆる遍計所執。二は真実にしていわゆる圓成實性。虚妄を簡ぶが為に「實性」の言を説く。また二性有り。一は世俗にしていわゆる依他起。二は勝義にしていわゆる圓成實。世俗を簡ぶが為にゆえに「實性」と説く。

三頌總顯諸契經中說無性言非極了義,諸有智者不應依之總撥諸法都無自性。

三頌は総じて諸契経の中に性無しと説く言は極めて了義に非ざるを顯す。諸々の智有るはそれに依って総に諸法は倶に自性無しと撥すべからず。

如是所成唯識相、性,誰於幾位?如何悟入?

かくのごとく成ぜし所の唯識の相・性は、誰か幾つの位に於て、どうして悟入する。

謂具大乘二種姓者,略於五位漸次悟入。

いわゆる大乗の二種姓を具えるは、略して五位に於て漸次に悟入す。

何謂大乘二種種姓?一、本性住種姓,謂無始來依附本識,法爾所得無漏法因。二、習所成種姓,謂聞法界等流法已,聞所成等燻習所成。要具大乘此二種姓,方能漸次悟入唯識。

何をか大乗の二種の種姓と謂う。一、本性住種姓とは、いわゆる無始より来り本識に依附して、法爾に得る所の無漏法の因。二、習所成種姓とは、いわゆる法界の等流の法を聞き已って、聞の成ずる所等の薫習の成ずる所。大乗のこの二種姓を具えるを要して、乃ち能く漸次に唯識に悟入す。

何謂悟入唯識五位?一、資糧位,謂修大乘順解脫分;二、加行位,謂修大乘順決擇分;三、通達位,謂諸菩薩所住見道;四、修習位,謂諸菩薩所住修道;五、究竟位,謂住無上正等菩提。

何をか唯識に悟入する五位と謂う。一、資糧位とはいわゆる大乗の順解脱分を修す。二、加行位とはいわゆる大乗の順決択分を修す。三、通達位とはいわゆる諸菩薩の住する所の見道。四、修習位とはいわゆる諸菩薩の住する所の修道。五、究竟位とはいわゆる無上正等菩提に住す。

云何漸次悟入唯識?謂諸菩薩於識相、性,資糧位中能深信解;在加行位能漸伏除所取、能取,引發真見;在通達位如實通達;修習位中如所見理,數數修習伏斷餘障;至究竟位出障圓明,能盡未來化有情類,復令悟入唯識相、性。

どうして漸次に唯識に悟入する。いわゆる諸菩薩は識の相・性に対して、資糧位の中に能く深く信解し、加行位に在りて能く漸々所取・能取を伏除して、真見を引発し、通達位に在りて実の如く通達し、修習位の中に見る所の理の如く、数・数修習して余の障を伏断し、究竟位に至りて障を出でて圓明にして、能く未来を尽くして有情類を化し、また彼らをして唯識の相・性に悟入せしむ。

初資糧位,其相云何?

初めの資糧位の行相はいかん。

頌曰:

頌に説く:

26乃至未起識,求住唯識性,

乃至未だ識を起こさざるは、唯識性に住せんことを求めて、

於二取隨眠,猶未能伏滅。

二取の随眠に対しては、猶ほ未だ伏滅する能わず。

論曰:從發深固大菩提心,乃至未起順決擇識,求住唯識真勝義性,齊此皆是資糧位攝,為趣無上正等菩提,修集種種勝資糧故。為有情故,勤求解脫,由此亦名順解脫分。

論に説く:深固の大菩提心を発するより乃至未だ順決択の識を起こさざるに、唯識の真勝義性に住せんことを求むる。このに斉ぎて倶に資糧位の摂する所なり。無上正等菩提に趣かんが為に、種種の勝資糧を修集するのゆえん。有情の為のゆえんに解脱を勤求す。これに由ってもまた名づけて順解脱分という。

此位菩薩依因、善友、作意、資糧四勝力故,於唯識義雖深信解,而未能了能、所取空,多住外門修菩薩行,故於二取所引隨眠,猶未有能伏滅功力,令彼不起二取現行。

この位の菩薩は因・善友・作意・資糧の四勝力に依るのゆえんに、唯識の義に対して深く信解すると雖も、しかし未だ能・所取の空を了せず。多く外門に住して菩薩行を修す。ゆえに二取の引く所の随眠に対しては、猶ほ未だ伏滅の功力有らずして、それらをして二取の現行を起こさざらしむ。

此「二取」言顯二取取,執取「能取」、「所取」性故。二取習氣名彼隨眠,隨逐有情,眠伏藏識,或隨增過,故名隨眠。即是所知、煩惱障種。

この「二取」の言は二取を取るを顯示す。「能取」・「所取」の性を執取するのゆえん。二取の習気を名づけて彼の随眠という。有情に随逐して、蔵識に眠伏し、あるいは過を随増す。ゆえに名づけて随眠という。すなわち所知・煩悩の障種なり。

煩惱障者,謂執遍計所執實我,薩迦耶見而為上首,百二十八根本煩惱,及彼等流諸隨煩惱。

煩悩障とは、いわゆる遍計所執の実我を執して、薩迦耶見を以って上首と為す。百二十八の根本煩悩およびそれらの等流の諸随煩悩。

此皆擾惱有情身、心,能障涅槃,名煩惱障。

これらは倶に有情の身・心を擾惱して、能く涅槃を障る。名づけて煩悩障という。

所知障者,謂執遍計所執實法,薩迦耶見而為上首,見、疑、無明、愛、恚、慢等。

所知障とは、いわゆる遍計所執の実法を執して、薩迦耶見を以って上首と為す。見・疑・無明・愛・恚・慢等。

覆所知境無顛倒性,能障菩提,名所知障。

知る所の境の無顛倒性を覆して、能く菩提を障る。名づけて所知障という。

此所知障,決定不與異熟識俱,彼微劣故,不與無明、慧相應故,法空智品與俱起故。七轉識內,隨其所應或少或多,如煩惱說。眼等五識無分別故,法見、疑等定不相應,餘由意力皆容引起。

この所知障は決定して異熟識と倶せず。それらは微劣なるのゆえん。無明・慧と相応せざるのゆえん。法空の智品と倶に起こるのゆえん。七転識の内にて、その応ずる所に随ってあるいは少あるいは多。煩悩の説くが如し。眼等の五識は分別無きのゆえんに、法の見・疑等は定めて相応せず。其余は意力に由って倶に引起を容す。

此障但與不善、無記二心相應,論說無明唯通不善、無記性故,痴、無痴等不相應故。煩惱障中此障必有,彼定用此為所依故,體雖無異而用有別。故二隨眠,隨聖道用有勝、有劣,斷惑前後。此於無覆無記性中,是異熟生,非餘三種。彼威儀等勢用薄弱,非覆所知,障菩提故。此名無覆,望二乘說,若望菩薩亦是有覆。

この障はただ不善・無記の二心と相応す。論に無明はただ不善・無記性に通ずと説くのゆえん。癡・無癡等は相応せざるのゆえん。煩悩障の中にこの障は必ず有り。それらは定めてこれを用いて依る所と為すのゆえん。体は異ならざると雖も、しかし用は別有り。ゆえに二の随眠は聖道の用に随って勝有り劣有りて、惑を断ずるに前後有り。これは無覆無記性の中に於て是れ異熟生にして、其余の三種に非ず。それらの威儀等は勢用薄弱にして、知る所を覆わず。菩提を障るのゆえん。これを名づけて無覆という。二乗に望めば説く。もし菩薩に望めばもまた是れ有覆なり。

若所知障有見、疑等,如何此種,契經說為無明住地?無明增故,總名無明,非無見等。如煩惱種立見一處、欲、色、有愛四住地名,豈彼更無慢、無明等。

もし所知障は見・疑等有らば、どうしてこの種は契経に説いて無明住地と為す。無明の増するのゆえんに総じて名づけて無明という。見等無きに非ず。煩悩種は見一処・欲・色・有愛の四住地の名を立つるが如し。あにそれらは更に慢・無明等無からんや。

如是二障分別起者,見所斷攝;任運起者,修所斷攝。

かくのごとき二障の分別起は見の断ずる所の摂する所。任運起は修の断ずる所の摂する所。

二乘但能斷煩惱障,菩薩俱斷。

二乗はただ煩悩障を断ずる能くすのみ。菩薩は倶に断ず。

永斷二種,唯聖道能;伏二現行,通有漏道。

永く二種を断ずるはただ聖道は能くす。二の現行を伏するは有漏道に通ず。

菩薩住此資糧位中,二麁現行雖有伏者,而於細者及二隨眠,止、觀力微,未能伏滅。

菩薩はこの資糧位の中に住して、二の麁き現行は伏する有ると雖も、しかし細きおよび二の随眠に対しては、止・観の力微にして、未だ伏滅する能わず。

此位未證唯識真如,依勝解力修諸勝行,應知亦是解行地攝。

この位は未だ唯識の真如を証せず。勝解力に依って諸々の勝行を修す。まさに知るべし、もまた解行地の摂する所なり。

所修勝行,其相云何?

修する所の勝行の行相はいかん。

略有二種:謂福及智,諸勝行中慧為性者皆名為智,餘名為福。且依六種波羅蜜多,通相皆二,別相前五說為福德,第六智慧;或復前三唯福德攝,後一唯智;餘通二種。

略して二種有り。いわゆる福および智。諸勝行の中に慧を性と為すは倶に名づけて智という。其余を名づけて福という。且く六種の波羅蜜多(彼岸に到る)に依って、通相は倶に二。別相は前の五は説いて福徳と為り、第六は智慧。あるいはまた前三はただ福徳の摂する所、後の一はただ智。其余は二種に通ず。

復有二種:謂利自、他所修勝行,隨意樂力一切皆通自他利行,依別相說,六到彼岸、菩提分等,自利行攝;四種攝事、四無量等,一切皆是利他行攝。如是等行差別無邊,皆是此中所修勝行。

また二種有り。いわゆる自・他を利するに修する所の勝行は、意楽力に随って一切は倶に自他の利行に通ず。別相に依って説けば、六の到彼岸・菩提分等は自利行の摂する所。四種の摂事・四無量等は一切倶に利他行の摂する所。かくのごとき等の行は差別辺無し。倶に是れここの修する所の勝行なり。

此位二障雖未伏除,修勝行時有三退屈,而能三事練磨其心,於所證、修勇猛不退:一、聞無上正等菩提廣大深遠,心便退屈,引他已證大菩提者,練磨自心勇猛不退。二、聞施等波羅蜜多甚難可修,心便退屈,省己意樂能修施等,練磨自心勇猛不退。三、聞諸佛圓滿轉依極難可證,心便退屈,引他麁善況己妙因,練磨自心勇猛不退。由斯三事練磨其心,堅固熾然,修諸勝行。

この位は二障は未だ伏除せざると雖も、勝行を修する時に三の退屈有りて、しかるに能く三事にてその心を練磨して、証する所・修する所に於て勇猛にして退せず。一、無上正等菩提は広大深遠と聞けば心は便ち退屈す。他の已に大菩提を証したるを引きて、自心を練磨して勇猛にして退せず。二、施等の波羅蜜多は甚だ修すべき難しと聞けば心は便ち退屈す。自己の意楽は能く施等を修するを省みて、自心を練磨して勇猛にして退せず。三、諸仏の圓滿の転依は極めて証すべき難しと聞けば心は便ち退屈す。他の麁善を引きて自己の妙因に況えて、自心を練磨して勇猛にして退せず。この三事に由ってその心を練磨して、堅固にして熾然として、諸々の勝行を修す。

次加行位,其相云何?

次に加行位の行相はいかん。

頌曰:

頌に説く:

27現前立少物,謂是唯識性,

現前に少物を立つ。いわゆる是れ唯識性。

以有所得故,非實住唯識。

得る所有るに因るのゆえんに、実に唯識に住するに非ず。

論曰:菩薩先於初無數劫,善備福德、智慧資糧。順解脫分既圓滿已,為入見道住唯識性,復修加行,伏除二取,謂煖、頂、忍、世第一法。

論に説く:菩薩は先に初の無数劫に於て、福徳・智慧の資糧を善く備えたり。順解脱分はすでに圓滿し已りて、見道に入りて唯識性に住せんが為に、また加行を修して、二取を伏除す。いわゆる煖・頂・忍・世第一法。

此四總名順決擇分,順趣真實決擇分故。近見道故立加行名,非前資糧無加行義。

この四は総じて名づけて順決択分という。真実の決択分に順趣するのゆえん。見道に近きのゆえんに加行の名を立つ。前の資糧に加行の義無きに非ず。

煖等四法,依四尋思、四如實智初後位立。四尋思者,尋思名、義、自性、差別,假有實無。如實遍知此四離識及識非有,名如實智,名、義相異,故別尋求,二二相同,故合思察。

煖等の四法は四尋思・四如実智の初後の位に依って立つ。四尋思とは、名・義・自性・差別を尋思して、假有にして実無なり。如実にこの四は識を離れておよび識は有に非ずを遍く知るを名づけて如実智という。名・義は相異なるのゆえんに別に尋求し、二々相お同じきのゆえんに合して思察す。

依明得定,發下尋思,觀無所取,立為煖位。謂此位中,創觀所取名等四法皆自心變,假施設有,實不可得。初獲慧日前行相故,立明得名,即此所獲道火前相,故亦名煖。

明得定に依って下尋思を発して、取る所無きを観て、立てて煖位と為す。いわゆるこの位の中に創めて取る所の名等の四法は倶に自心の變現にして、假に施設して有りて、実に求むるを得ざるを観る。初めて慧日の前行相を獲るのゆえんに、明得の名を立つ。すなわちこれが獲る所は道火の前相なり。ゆえにもまた名づけて煖という。

依明增定,發上尋思,觀無所取,立為頂位。謂此位中,重觀所取名等四法皆自心變,假施設有,實不可得。明相轉盛,故名明增,尋思位極,故復名頂。

明増定に依って上尋思を発して、取る所無きを観て、立てて頂位と為す。いわゆるこの位の中に重ねて取る所の名等の四法は倶に自心の變現にして、假に施設して有りて、実に求むるを得ざるを観る。明相転じて盛んなり。ゆえに名づけて明増という。尋思の位極まれるがゆえにもまた名づけて頂という。

依印順定,發下如實智,於無所取決定印持,無能取中亦順樂忍。既無實境離能取識,寧有實識離所取境?所取、能取相待立故。印順忍時總立為忍,印前順後立印順名,忍境、識空故亦名忍。

印順定に依って下如実智を発して、取る所無きに於て決定して印持して、能取無きの中にも順楽忍す。すでに実境無くして能取の識を離るれば、どうして実識有りて取る所の境を離れん。取る所・取る能は相待して立つのゆえん。印順の忍の時に総じて立てて忍と為す。前を印し後に順うを立てて印順の名と為す。境・識の空を忍するのゆえんにもまた名づけて忍という。

依無間定,發上如實智,印二取空,立世第一法。謂前上忍唯印能取空,今世第一法二空雙印,從此無間必入見道故,立無間名,異生法中此最勝故,名世第一法。

無間定に依って上如実智を発して、二取の空を印して、世第一法を立つ。いわゆる前の上忍はただ能取の空を印す。今の世第一法は二空を双び印す。これより無間に必ず見道に入るのゆえんに無間の名を立つ。異生法の中にこれ最勝なるのゆえんに、名づけて世第一法という。

如是煖、頂依能取識觀所取空,下忍起時印境空相;中忍轉位,於能取識如境是空,順樂忍可;上忍起位印能取空;世第一法雙印空相,皆帶相故未能證實。故說菩薩此四位中。猶於現前安立少物,謂是唯識真勝義性,以彼空、有二相未除,帶相觀心有所得故,非實安住真唯識理。彼相滅已方實安住。依如是義,故有頌言:

かくのごとき煖・頂は能取の識に依って取る所の空を観す。下忍の起こる時に境の空相を印す。中忍の転位に能取の識に於て境の如く空なるを順楽忍可す。上忍の起こる位に能取の空を印す。世第一法は双び空相を印す。倶に相を帯びるのゆえんに未だ実を証せず。ゆえに菩薩はこの四位の中に於てと説く。猶ほ現前に於て少物を安立す。いわゆる是れ唯識の真勝義性。それらの空・有の二相は未だ除かざるに因りて、相を帯びて心を観ずるに得る所有るのゆえんに、実に真の唯識理に安住するに非ず。それらの相の滅し已って乃ち実に安住す。かくのごとき義に依って、ゆえに頌有りて説く:

「菩薩於定位,觀影唯是心,

「菩薩は定位に於て、影を観ずればただ心のみ。

義相既滅除,審觀唯自想。

義相すでに滅除して、審かに観ずればただ自らの想のみ。

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