Libo

五燈會元 巻第十八

宋 · 普济 · 第134巻 / 144

平江府西山明因曇玩禪師

平江府西山明因曇玩禅師

溫州黃氏子。徧參叢席。宣和庚子。回抵鍾阜。適朝廷改僧為德士。師與同志數人。入頭陀巖食松自處。久之。圓悟被旨居是山。親至巖所。令去鬚髮。及悟詔補京師天寧。與師俱往。命掌香水海。未幾。因舉枹擊皷。頓明大法。凡有所問。皆對曰。莫理會。故流輩鹹以莫理會稱之。住後。上堂。汝有一對眼。我也有一對眼。汝若瞞還自瞞。汝若成佛作祖。老僧無汝底分。汝若做驢做馬。老僧救汝不得。眾檀越入山。請上堂。說偈曰。我無長處名虗出。謝汝殷勤特地來。明因無法堪分付。謾把山門為汝開。

温州の黄氏の子である。遍く叢席に参ず。宣和庚子、回りて鍾阜に抵った。適あ朝廷は僧を改めて徳士と為す。師は同志の数人と頭陀巌に入りて松を食して自処す。久之。円悟は旨を被りて此の山に居る。親しく巌所に至り、鬚髪を去らしめた。悟は詔して京师天寧を補すに及び、師と倶に往き、香水海を掌らしめた。未几、枹を挙げて皷を撃つに因りて、頓に大法を明す。凡そ問う所有れば、皆な対えて言った。「理会する莫れ。」故に流輩咸く莫理会を以て之を称す。住して後、上堂。「お前は一対の眼有り、我も亦た一対の眼有り。お前若し瞞らば還って自ら瞞しむ。お前若し仏を成り祖を作さば、老僧はお前の底分無し。お前若し驢を作し馬を作さば、老僧はお前を救うを得ず。」衆の檀越は山に入り、請うて上堂。偈を説いて言った。「我に長処無く名は虗出し、お前に謝す殷勤に特に地に来るを。明因に法無く堪えて分付す、謾に山門を把りてお前の為に開かん。」

平江府虎丘雪庭元淨禪師

平江府虎丘雪庭元浄禅師

雙溪人也。上堂。知有底人。過萬年如同一日。不知有者。過一日如同萬年。不見死心和尚道。山僧行腳三十餘年。以九十日為一夏。增一日也不得。減一日也不得。取不得。捨不得。不可得中祇麼得。翠雲見處又且不然。山僧行腳三十來年。誰管他一日九十日。也無得。也無不得。處處當來見彌勒。且道彌勒在甚麼處。金風吹渭水。落葉滿長安。上堂。說得須是見得。見得又須說得。見得說不得。落在陰界。見解偏枯。說得見不得。落在時機。墮在毒海。若是翠雲門下。直饒說得見得。好與三十棒。說不得見不得。也好與三十棒。翠雲恁麼道。也好與三十棒。遂高聲召大眾曰。嶮。上堂。日日日東出。日日日西沒。是時人知有。自古自今。如麻似粟。忽然捩轉話頭。亦不從東出。亦不從西沒。且道從甚處出沒。若是透關底人。聞恁麼道。定知五里牌在郭門外。若是透不過者。往往道半山熱瞞人。僧問。如何是到家一句。師曰。坐觀成敗。問。不與萬法為侶者是甚麼人。師曰。遠親不如近隣。曰。待汝一口吸盡西江水。即向汝道。又作麼生。師曰。近隣不如遠親。問。亡僧遷化向甚麼處去。師曰。糞堆頭。曰。意旨如何。師曰。築著磕著。

双谿の人である。上堂。「有を知る底の人は、万年を過ぎるも一日に同じく、有を知らざる者は、一日を過ぎるも万年に同じ。見ずや死心和尚道う、山僧行脚三十余年、九十日を以て一夏と為す、一日を増すも得ず、一日を減ずるも得ず、取る得ず、舎て得ず、得る可からざる中に只么に得、と。翠雲の見処は又た且つ然らず。山僧行脚三十来年、誰か他の一日九十日を管せん。得るも無く、得ざるも無し。処処当来に弥勒に見ゆ。且く道え弥勒は什麼の処に在る。金風は渭水を吹き、落葉は長安に満つ。」上堂。「説得するは須らく見得すべし、見得するは又た須らく説得すべし。見得して説得せざれば、陰界に落ち、見解偏枯す。説得して見得せざれば、時機に落ち、毒海に堕つ。若し是れ翠雲門下ならば、直饒説得見得すとも、好く三十棒を与えん。説得せず見得せずとも、も好く三十棒を与えん。翠雲恁麼に道うも、も好く三十棒を与えん。」遂に声を高うして大衆を召して言った。「嶮。」上堂。「日々日東に出で、日々日西に没す。是れ時人の有を知る。古自今、麻の如く粟に似たり。忽然として話頭を捩転せば、亦た東より出ず、亦た西より没せず。且く道え甚の処より出没する。若し是れ関を透る底の人ならば、恁麼に道うを聞かば、定めて五里牌の郭門外に在るを知らん。若し是れ透過せざる者ならば、往々にして道う半山熱瞞人と。」僧が問うた。「如何なるか是れ到家の一句。」師は言った。「坐して成敗を観る。」問うた。「万法と侶を為さざる者は是れ什麼の人。」師は言った。「遠親は近隣に如かず。」言った。「お前の一口に西江水を吸尽するを待ちて、即ちお前に向って道わん。又た作麼生。」師は言った。「近隣は遠親に如かず。」問うた。「亡僧遷化して什麼の処に向って去る。」師は言った。「糞堆頭。」言った。「意旨如何。」師は言った。「築着し磕着す。」

衢州天寧訥堂梵思禪師

衢州天寧訥堂梵思禅師

蘇臺朱氏子。上堂。趯飜生死海。踏倒涅槃岸。世上無活人。黃泉無死漢。遂拈拄杖曰。訥堂今日拄杖子有分付處。也還有承當得者麼。試出來擔荷看。有麼有麼。良久。擲拄杖。下座。上堂。知有底。也吃粥吃飯。不知有底。也吃粥吃飯。如何直下驗得他有之與無。是之與非。邪之與正。若驗不出。參學事大遠在。喝一喝。下座。上堂。山僧是楊歧四世孫。這老漢有箇三腳驢子弄蹄行公案。雖人人舉得。祇是不知落處。山僧不惜眉毛。為諸人下箇註腳。乃曰。八角磨盤空裡走。

蘇台の朱氏の子である。上堂。「生死海を趯飜し、涅槃岸を踏倒す。世上に活人無く、黄泉に死漢無し。」遂に拄杖を拈じて言った。「訥堂今日拄杖子に分付の処有り。も還って承当し得る者有るか。試しに出でて来りて担荷して看よ。有るか有るか。」良久。拄杖を擲ち、座を下りた。上堂。「有を知る底もも粥を喫い飯を喫う。有を知らざる底もも粥を喫い飯を喫う。如何にか直下に他の有之と無之、是之と非之、邪之と正之を驗得せん。若し驗出せざれば、参学の事大いに遠く在り。」一喝し、座を下りた。上堂。「山僧は是れ楊岐四世の孫。此の老汉に三脚驢子弄蹄行の公案有り。人々挙得すと雖も、只だ是れ落処を知らざるのみ。山僧眉毛を惜しまず、諸人の為に箇の注脚を下さん。」乃ち言った。「八角の磨盤空裏を走る。」

嶽州君山佛照覺禪師

岳州君山仏照覚禅師

上堂。舉。古者道。仰之彌高。鑽之彌堅。瞻之在前。忽焉在後。諸人還識得麼。若也不識。為你註破。仰之彌高。不隔絲毫。要津把斷。佛祖難逃。鑽之彌堅。真體自然。鳥啼華笑。在碧巖前。瞻之在前。非正非偏。十方坐斷。威鎮大千。忽焉在後。一場漏逗。堪笑雲門。藏身北斗。咄。

上堂。挙ぐ、古者道う、仰げば弥い高し、鑚れば弥い堅し、瞻れば前に在り、忽焉として後に在り。諸人還って識得するか。若しも識らざれば、お前の為に注破せん。「仰げば弥い高し、毫忽を隔てず。要津を把断し、仏祖逃れ難し。鑚れば弥い堅し、真体自然。鳥は啼き華は笑う、碧巌の前に在り。瞻れば前に在り、正に非ず偏に非ず。十方を坐断し、威は大千を鎮む。忽焉として後に在り、一場の漏逗。堪えて笑う可し雲門、身を北斗に蔵す。咄。」

平江府寶華顯禪師

平江府宝華顕禅師

本郡人也。上堂曰。吃粥了也。頭上安頭。洗缽盂去。為虵畫足。更問如何。自納敗闕。良久。高聲召大眾。眾舉首。師曰。歸堂吃茶。上堂。禪莫參。道休學。歇意忘機常廓落。現成公案早周遮。祇箇無心已穿鑿。直饒坐斷未生前。難透山僧錯錯錯。

本郡の人である。上堂して言った。「粥を喫い了れたり。頭上に頭を安ず。鉢盂を洗いに去る。虵の為に足を画く。更に如何と問わば、自ら敗闕を納む。」良久。声を高うして大衆を召す。衆首を挙ぐ。師は言った。「堂に帰りて茶を喫せ。」上堂。「禅は参ずる莫れ、道は学ぶを休めよ。意を歇め機を忘れて常に廓落たり。現成の公案早く周遮せり。只個の无心已に穿鑿せり。直饒未生の前に坐断すとも、山僧の錯錯錯を透ること難し。」

紹興府東山覺禪師

紹興府東山覚禅師

後住因聖。上堂。三通皷罷。諸人各各上來。擬待理會祖師西來意。還知劒去久矣麼。設使直下悟去。也是斬頭覓活。東山事不獲已。且向第二頭鞠拶看。以手拍禪床。下座。上堂。花爛熳。景暄研。休說壺中別有天。百草頭邊如薦得。東高三丈。西闊八寸。上堂。舉。昔廣額屠兒。一日至佛所。颺下屠刀。曰。我是千佛一數。世尊曰。如是如是。今時叢林。將謂廣額過去是一佛。權現屠兒。如此見廣額。且喜沒交涉。又曰。廣額正是箇殺人不眨眼底漢。颺下屠刀。立地成佛。且喜沒交涉。又道。廣額颺下屠刀。曰我道千佛一數。涉一佛多少分明。且喜沒交涉。要識廣額麼。夾路桃華風雨後。馬蹄何處避殘紅。

後に因聖に住した。上堂。「三通の皷罷め、諸人各々上来す。理会して祖師西来の意を擬す。還って剣の去ること久しきを知るか。設使い直下に悟り去るとも、も是れ頭を斬りて活を覓む。東山の事已むを獲ず。且つ第二頭に向って鞠拶して看よ。」手を以て禅床を拍し、座を下りた。上堂。「華爛漫として、景暄妍たり。壺中に別の天有りと説くを休めよ。百草頭辺に如く薦得せば、東は高三丈、西は濶さ八寸。」上堂。挙ぐ、昔の広額の屠児、一日仏所に至り、屠刀を飏げ下し、言う、我は是れ千仏の一数と。世尊言う、如是如是。今時の叢林、将に謂う広額は過去は一仏、権に屠児を現ず、此くの如く広額を見るは、且つ喜ぶ没交渉。又た説く、広額は正に箇の人を殺して眼を眨めざる底の漢、屠刀を飏げ下し、立地に仏を成ず、且つ喜ぶ没交渉。又た道う、広額は屠刀を飏げ下し、我が道う千仏の一数、一仏に渉ること多少分明なり、且つ喜ぶ没交渉。広額を識らんと要するか。路を夾む桃華風雨の後、馬蹄何れの処か残紅を避けん。

台州天封覺禪師

台州天封覚禅師

上堂。無生國裡。未是安居。萬仞崖頭。豈容駐足。且望空撒手。直下飜身一句作麼生道。人逢好事精神爽。入火真金色轉鮮。

上堂。「無生国裏は未だ是れ安居に非ず、万仞の崖頭は豈に足を驻めるを容れん。且つ空に向って手を撒き、直下に身を飜す一句は作麼生にか道わん。人は好事に逢えば精神爽やかに、火に入れば真金の色転じて鮮やかなり。」

成都府昭覺道祖首座

成都府昭覚道祖首座

初見圓悟。於即心是佛語下發明。久之。悟命分座。一日為眾入室。餘二十許人。師忽問曰。生死到來。如何迴避。僧無對。師擲下拂子。奄然而逝。眾皆愕眙。亟以聞悟。悟至。召曰。祖首座。師張目眎之。悟曰。抖擻精神透關去。師點頭。竟爾趨寂。

初め円悟に見え、即心是仏の語下に於て発明した。久之。悟は分座を命じた。一日衆の為に室に入ること、余り二十許人。師は忽ち問うた。「生死到来す、如何にか回避せん。」僧対無し。師は拂子を擲ち下し、奄然として逝った。衆皆な愕眙す。亟に以て悟に聞えた。悟至り、召して言った。「祖首座。」師は目を張りて之を眎た。悟は言った。「精神を抖擞して関を透り去れ。」師は頭を点し、竟爾として寂に趨った。

南康軍雲居宗振首座

南康軍雲居宗振首座

丹丘人也。依圜悟於雲居。一日。仰瞻鐘閣。倐然契證。有詰之者。座酧以三偈。其後曰。我有一機。直下示伊。青天霹靂。電卷星馳。德山臨濟。棒喝徒施。不傳之妙。於汝何虧。悟見大悅。竟以節操自高。道望愈重。甞書壁曰。住在千峰最上層。年將耳順任騰騰。免教名字掛人齒。甘作今朝百拙僧。

丹丘の人である。雲居に於て圜悟に依った。一日、鐘閣を仰瞻して、倐然として契証した。之を詰る者有り。座は三偈を以て酧えた。其の後に言う、「我に一機有り、直下に伊に示す。青天の霹靂、電は巻き星は馳す。徳山・臨済、棒喝徒に施す。伝えざるの妙、お前に於て何の亏らむ。」悟見て大いに悦ぶ。竟に節操を以て自ら高しとし、道望愈々重し。甞て壁に書して言った。「千峰の最上層に住す、年将に耳順なるを騰騰に任す。名字の人の歯に挂からるを免れんと教う。甘んじて今朝の百拙の僧と作さん。」

樞密徐俯

枢密徐俯

字師川。號東湖居士。每侍先龍圖謁法昌及靈源。語論終日。公聞之。藐如也。及法昌歸寂在笑談間。公異之。始篤信此道。後丁父憂。念無以報罔極。命靈源歸孝址說法。源登座。問答已。乃曰。諸仁者。祇如龍圖平日讀萬卷書。如水傳器。涓滴不遺。且道尋常著在甚麼處。而今捨識之後。這著萬卷書底。又卻向甚麼處著。公聞。灑然有得。遂曰。吾無憾矣。源下座。問曰。學士適來見箇甚麼。便恁麼道。公曰。若有所見。則鈍置和尚去也。源曰。恁麼則老僧不如。公曰。和尚是何心行。源大笑。靖康初。為尚書外郎。與朝士同志者掛缽於天寧寺之擇木堂。力參圓悟。悟亦喜其見地超邁。一日至書記寮。指悟項相曰。這老漢腳跟猶未點地在。悟䫌面曰。甕裡何曾走卻鼈。公曰。且喜老漢腳跟點地。悟曰。莫謗他好。公休去。

字は師川。号は東湖居士。毎に先の竜図に侍して法昌及び霊源に謁し、語論すること終日す。公之を聞きて、藐如たり。及び法昌の寂に帰するは笑談の間に在り。公之を異とし、始めて此の道を篤信す。後に父の憂に丁ん。罔極を報ゆる無きを念い、霊源を孝址に帰して法を説かしむ。源座に登り、問答已りて、乃ち言った。「諸の仁者、只だ如く竜図の平日万卷の書を読む、水の器に伝うるが如く涓滴遺さず。且く道え尋常何れの処に着くる。而今識を舎つるの後、此の万卷の書を着る底、又た却って什麼の処に向って着く。」公聞きて、洒然として得有り。遂に言った。「吾憾み無し。」源座を下りて問うた。「学士適来箇の什麼を見て、便ち恁麼に道う。」公は言った。「若し見る所有らば、則ち和尚を鈍置し去るなり。」源は言った。「恁麼なれば則ち老僧如かず。」公は言った。「和尚は是れ何の心行ぞ。」源大笑した。靖康初、尚書外郎と為り、朝士の同志の者と天寧寺の択木堂に鉢を挂け、力めて円悟に参じた。悟も亦た其の見地の超邁を喜ぶ。一日書記寮に至り、悟の項相を指して言った。「此の老汉は脚根なお未だ地を点ぜず。」悟は䫌面して言った。「瓮裏何曽か鼈を走却したる。」公は言った。「且つ喜ぶべし老汉脚根地を点ずるを。」悟は言った。「他を謗ること莫れ好し。」公休み去った。

郡王趙令衿

郡王趙令衿

字表之。號超然居士。任南康。政成事簡。多與禪衲遊。公堂間為摩詰丈室。適圓悟居甌阜。公欣然就其鑪錘。悟不少假。公固請。悟曰。此事要得相應。直須是死一回始得。公默契。甞自疏之。其略曰。家貧遭劫。誰知盡底不存。空屋無人。幾度賊來亦打。悟見。囑令加護。紹興庚申冬。公與汪內翰藻.李參政邴.曾侍郎開詣徑山。謁大慧。慧聞至。乃令擊皷入室。公欣然袖香趨之。慧曰。趙州洗缽盂話。居士作麼生會。公曰。討甚麼碗。拂袖便出。慧起搊住曰。古人向這裡悟去。你因甚麼卻不悟。公擬對。慧𢮁之曰。討甚麼碗。公曰。還這老漢始得。

字は表之。号は超然居士。南康に任じ、政成りて事簡なり。多く禅衲と游ぶ。公堂の間に摩詰丈室を為す。適あ円悟甌阜に居る。公欣然として其の𬬻锤に就く。悟少しも仮せず。公固く請う。悟は言った。「此の事要して相応するを得ば、直に須らく一死回して始めて得べし。」公黙契す。甞て自ら之を疏す。其の略に言う、「家貧しくして劫に遭う、誰か知らん尽底存せざるを。空屋に人無し、幾度か賊来りて亦た打つ。」悟見て、加護せしむるを嘱す。紹興庚申の冬、公は汪内翰藻・李参政邴・曽侍郎開と径山に詣り、大慧に謁す。慧は至るを聞き、乃ち皷を撃ちて室に入らしめた。公欣然として香を袖して之に趨る。慧は言った。「趙州の鉢盂を洗うの話、居士作麼生にか会せん。」公は言った。「什麼の碗を討ぞ。」袖を拂いて便ち出でた。慧起ちて之を搊住して言った。「古人は此の裏に向って悟り去る。お前因りて什麼が却って悟らざる。」公対を擬した。慧は之を𢮁きて言った。「什麼の碗を討ぞ。」公は言った。「此の老汉を還して始めて得べし。」

侍郎李彌遜

侍郎李弥遜

號普現居士。少時讀書。五行俱下。年十八。中鄉舉。登第京師。旋歷華要。至二十八歲。為中書舍人。常入圓悟室。一日早朝回。至天津橋馬躍。忽有省。通身汗流。直造天寧。適悟出門。遙見便喚曰。居士且喜大事了畢。公厲聲曰。和尚眼華作甚麼。悟便喝。公亦喝。於是機鋒迅捷。凡與悟問答。當機不讓。公後遷吏部。乞祠祿歸閩連江。築庵自娛。忽一日示微恙。遽索湯。沐浴畢。遂趺坐。作偈曰。謾說從來牧護。今日分明呈露。虗空拶倒須彌。說甚向上一路。擲筆而逝。

号は普現居士。少時書を読みて五行倶に下る。年十八、郷挙に中り、京师に登第す。旋りて華要を歴る。二十八歳に至り、中書舎人と為る。常に円悟の室に入った。一日早朝より回り、天津橋に至りて馬躍る。忽ち省有り、通身汗流る。直ちに天寧に造った。適あ悟門を出で、遥かに見て便ち喚んで言った。「居士且つ喜ぶべし大事了畢せり。」公声を厲めて言った。「和尚の眼花は什麼を作す。」悟便ち喝した。公も亦た喝した。是に於て機鋒迅捷し。凡そ悟と問答するに、機に当りて譲らず。公後に吏部に遷り、祠禄を乞うて閩の連江に帰り、庵を築きて自ら娯しむ。忽一日微恙を示し、遽かに湯を索め、沐浴畢りて、遂に趺坐し、偈を作して言った。「謾に説く従来の牧護、今日分明に呈露す。虗空は須弥を拶倒す、什麼か説かん向上の一路を。」筆を擲ちて逝った。

覺庵道人祖氏

覚庵道人祖氏

建寧遊察院之姪女也。幼志不出適。留心祖道。於圓悟示眾語下。瞭然明白。悟曰。更須颺卻所見。始得自由。祖答偈曰。露柱抽橫骨。虗空弄爪牙。直饒玄會得。猶是眼中沙。

建寧游察院の姪女である。幼にして志して出適せず、心を祖道に留めた。円悟の示衆の語下に於て、了然として明白たり。悟は言った。「更に須らく見る所を飏却して始めて自由を得べし。」祖は偈を答えて言った。「露柱は横骨を抽き、虗空は爪牙を弄す。直饒玄く会得すとも、なお是れ眼中の沙。」

令人本明

令人本明

號明室。自機契圓悟。徧參名宿。皆蒙印可。紹興庚申二月望。親書三偈寄呈草堂清。微露謝世之意。至旬末。別親裡而終。草堂䟦其偈。後為刊行。大慧亦甞垂語發揚。偈曰。不識煩惱是菩提。若隨煩惱是愚痴。起滅之時須要會。鷂過新羅人不知。不識煩惱是菩提。淨華生淤泥。人來問我若何為。吃粥吃飯了洗缽盂。莫管他。莫管他。終日痴憨弄海沙。要識本來真面目。便是祖師一木叉。道不得底叉下死。道得底也叉下死。畢竟如何。不許夜行。投明須到。

号は明室。自ら機円悟に契い、遍く名宿に参じ、皆な印可を蒙った。紹興庚申二月の望、親しく三偈を書して草堂清に寄呈し、微かに世を謝するの意を露わす。旬末に至り、親里に別れて終った。草堂は其の偈を䟦し、後に刊行す。大慧も亦た甞て語を垂れて発揚した。偈に言った。「煩悩の是れ菩提を識らず、煩悩に随えば是れ愚痴なり。起滅の時須らく会すべし、鷂は新羅を過ぎて人知らず。煩悩の是れ菩提を識らず、浄華は淤泥に生ず。人来りて我に問う若何か為らん。粥を喫い飯を喫い了りて鉢盂を洗う。他を管する莫れ、他を管する莫れ。終日痴憨として海沙を弄す。本来の真面目を識らんと要せば、便ち是れ祖師の一叉なり。道うを得ざる底は叉下に死し、道うを得る底もも叉下に死す。畢竟に如何。夜行するを許さず、明に投げて須らく到るべし。」

成都府範縣君者

成都府范県君

嫠居歲久。常坐而不臥。聞圓悟住昭覺。往禮拜。請示入道因緣。悟令看不是心。不是佛。不是物。是箇甚麼。久無所契。範泣告悟曰。和尚有何方便。令某易會。悟曰。卻有箇方便。遂令祇看是箇甚麼。後有省曰。元來恁麼地近那。

嫠居すること歳久し。常に坐して臥せず。円悟の昭覚に住するを聞き、往きて礼拝し、入道の因縁を示さんことを請うた。悟は看せしめた、是れ心に非ず、是れ仏に非ず、是れ物に非ず、是れ箇の什麼ぞ。久しく契う所無し。范は泣きて悟に告げて言った。「和尚に何の方便か有る、某をして易く会せしめよ。」悟は言った。「却って箇の方便有り。」遂に只看せしめた、是れ箇の什麼ぞ。後に省有りて言った。「元来恁麼地に近きなり。」

太平懃禪師法嗣

太平懃禅師法嗣

常德府文殊心道禪師

常徳府文殊心道禅師

眉州徐氏子。年三十得度。詣成都習唯識。自以為至。同舍詰之曰。三界唯心。萬法唯識。今目前萬象摐然。心識安在。師茫然不知對。遂出關。周流江淮。既抵舒之太平。聞佛鑑禪師夜參。舉趙州栢樹子話。至覺鐵觜雲。先師無此語。莫謗先師好。因大疑。提撕既久。一夕豁然。即趨丈室。擬敘所悟。鑑見來便閉門。師曰。和尚莫謾某甲。鑑雲。十方無壁落。何不入門來。師以拳擉破窻紙。鑑即開門搊住雲。道。道。師以兩手捧鑑頭。作口啐而出。遂呈偈曰。趙州有箇栢樹話。禪客相傳徧天下。多是摘葉與尋枝。不能直向根源會。覺公說道無此語。正是惡言當面罵。禪人若具通方眼。好向此中辨真假。鑑深然之。每對客稱賞。後命分座。襄守請開法天寧。未幾擢大別文殊。上堂曰。師子嚬呻。象王哮吼。雲門北斗裡藏身。白雲因何喚作手。三世諸佛不能知。狸奴白牯卻知有。且道。作麼生是他知有底事。雨打棃華峽蝶飛。風吹柳絮毛毬走。上堂。拈拄杖直上指曰。恁麼時。刺破憍屍迦腳跟。卓一下曰。恁麼時。卓碎閻羅王頂骨。乃指東畔曰。恁麼時。穿過東海鯉魚眼睛。指西畔曰。恁麼時。塞卻西王母鼻孔。且道總不恁麼時如何。今年雨水多。各宜頻曬㫰。宣和改元。下詔改僧為德士。上堂。祖意西來事。今朝特地新。昔為比丘相。今作老君形。鶴氅披銀褐。頭包蕉葉巾。林泉無事客。兩度受君恩。所以道。欲識佛性義。當觀時節因緣。且道即今是甚麼時節。毗盧遮那。頂戴寶冠。為顯真中有俗。文殊老叟。身披鶴氅。且要俯順時宜。一人既爾。眾人亦然。大家成立叢林。喜得群僊聚會。共酌迷僊酎。同唱步虗詞。或看靈寶度人經。或說長生不死藥。琴彈月下。指端發太古之音。棊布軒前。妙著出神機之外。進一步便到大羅天上。退一步卻入九幽城中。祇如不進不退一句。又作麼生道。直饒羽化三清路。

眉州の徐氏の子である。年三十にして度を得た。成都に詣りて唯識を習い、自ら以て至れりと為す。同舎之に詰めて言った。「三界は唯心、万法は唯識。今目前に万象摐然として、心識安くんぞ在る。」師茫然として対えるを知らず。遂に関を出で、周流して江淮す。既に舒の太平に抵り、仏鑑禅師の夜参を聞き、趙州の栢樹子の話を挙ぐ。覚鉄觜の云うに至りて、先師は此の語無し、先師を謗ること莫れ好し。因りて大いに疑う。提撕すること既に久しく、一夕豁然とした。即ち丈室に趨り、悟る所を叙べんと擬す。鑑来るを見て便ち門を閉ぢた。師は言った。「和尚は某甲を谩る莫れ。」鑑云く、「十方に壁落無し、何ぞ門に入り来らざる。」師は拳を以て窻紙を擉破した。鑑即ち門を開きて搊住して云く、「道え、道え。」師は両手を以て鑑頭を捧げ、口を啐して作り出でた。遂に偈を呈して言った。「趙州に箇の栢樹の話有り、禅客伝えて遍く天下す。多く是れ葉を摘み枝を尋ぬ、直に根源に向って会する能わず。覚公の道う無此の語、正に是れ悪言当面の罵り。禅人若し通方の眼を具さば、好く此の中に向って真假を辨ぜよ。」鑑深く之を然とし、毎に客に対して称賞した。後に分座を命ぜられた。襄守は天寧に開法を請う。未几、大別の文殊に擢められた。上堂して言った。「師子嚬呻し、象王哮吼す。雲門北斗裏に身を蔵す。白雲因りて何ぞ手と喚ばれる。三世諸仏知る能わず、狸奴・白牯却って有を知る。且く道え作麼生にか是れ他の有を知る底の事。雨は棃華を打ち峡蝶飛び、風は柳絮を吹き毛毬走る。」上堂。拄杖を拈じ直ちに上を指して言った。「恁麼の時は、憍尸迦の脚根を刺破す。」一下卓して言った。「恁麼の時は、閻羅王の頂骨を卓碎す。」乃ち東畔を指して言った。「恁麼の時は、東海鯉魚の眼睛を穿ち過ぐ。」西畔を指して言った。「恁麼の時は、西王母の鼻孔を塞却す。」且く道え総て恁麼ならざる時は如何。今年雨水多し、各に宜しく頻りに曬㫰すべし。宣和元を改む、詔を下して僧を改めて徳士と為す。上堂。「祖意西来の事、今朝特に地新なり。昔は比丘の相と為り、今は老君の形と作す。鶴氅は銀褐を披き、頭は蕉葉の巾を包む。林泉の無事の客、両度君恩を受く。所以に道う、仏性の義を識らんと欲せば、当に時節因縁を観ずべし。且く道え即今是れ什麼の時節ぞ。毘盧遮那、頂に宝冠を戴く、真中に俗有るを顕さんが為なり。文殊の老叟、身に鶴氅を披く、且つ要して時宜に俯順せんとす。一人既に爾り、衆人亦然り。大家叢林を成立し、群僊の聚会を喜び得、共に迷僊酎を酌み、同じく歩虗詞を唱う。或いは霊宝度人経を看、或いは長生不死の薬を説く。琴は月下に弾き、指端太古の音を発す。棋は軒前に布き、妙着は神機の外に出づ。一歩進めば便ち大羅天上に到り、一歩退けば却って九幽城中に入る。只だ如く進まず退かざるの一句、又た作麼生にか道わん。直饒羽化の三清路を

終是輪迴一幻身。二年九月。復僧。上堂。不掛田衣著羽衣。老君形相頗相宜。一年半內閑思想。大底興衰各有時。我佛如來預讖法之有難。教中明載。無不委知。較量年代。正在於茲。魔得其便。惑亂正宗。僧改俗形。佛更名字。妄生邪解。刪削經文。鐃鈸停音。缽盂添足。多般矯詐。欺罔聖君。賴我皇帝陛下。聖德聖明。不忘付囑。不廢其教。特賜宸章。頒行天下。仍許僧尼。重新披削。實謂寒灰再焰。枯木重榮。不離俗形而作僧形。不出魔界而入佛界。重鳴法皷。再整頹綱。迷僊酎變為甘露瓊漿。步虗詞飜作還鄉曲子。放下銀木簡。拈起尼師壇。昨朝稽首擎拳。今日和南不審。祇改舊時相。不改舊時人。敢問大眾。舊時人是一箇。是兩箇。良久曰。秋風也解嫌狼籍。吹盡當年道教灰。建炎三年春。示眾。舉臨濟入滅囑三聖因緣。師曰。正法眼藏瞎驢滅。臨濟何曾有是說。今古時人皆妄傳。不信但看後三月。至閏三月。賊鍾相叛。其徒欲舉師南奔者。師曰。學道所以了生死。何避之有。賊至。師曰。速見殺。以快汝心。賊即舉槊殘之。血皆白乳。賊駭。引席覆之而去。

「終に是れ輪廻の一幻身。」二年九月、僧に復した。上堂。「田衣を挂けずして羽衣を着る、老君の形相頗る相宜たり。一年半の内、閑思想すれば、大底興衰各々時有り。我仏如来は預め法の難有るを谶したり、教中明らかに載せ、委知せざる無し。年代を較量すれば、正に茲に在り。魔其の便を得て、正宗を惑乱す。僧は俗形に改め、仏は名字を更へ、妄りに邪解を生じ、経文を删削し、鐃鈸は音を停め、鉢盂は足を添う。多般の矯詐、聖君を欺罔す。我が皇帝陛下に頼る、聖徳聖明、付嘱を忘れず、其の教を廃せず。特に宸章を賜り、天下に頒行し、仍りて僧尼を許し、重ねて披削す。実に謂う寒灰再び焔え、枯木重ねて栄ゆと。俗形を離れずして僧形と作り、魔界を出でずして仏界に入る。重ねて法皷を鳴らし、再び頽綱を整う。迷僊酎変じて甘露瓊漿と為り、歩虗詞飜って還郷の曲子と作る。銀木の簡を放下し、尼師壇を拈起す。昨朝は稽首擎拳し、今日は和南不審す。只だ旧時の相を改む、旧時の人を改めず。敢て大衆に問う、旧時の人は是れ一個か、是れ両個か。」良久して言った。「秋風も亦た狼籍を嫌うを解し、当年の道教の灰を吹き尽くす。」建炎三年の春、衆に示す。挙ぐ、臨済滅に入りて三聖に嘱するの因縁。師は言った。「正法眼蔵瞎驢滅す。臨済何ぞ曽て是の説有らん。今古時人皆な妄りに伝う。信ぜざれば但だ後の三月を看よ。」閏三月に至り、賊の鍾相叛す。其の徒師を挙げて南に奔らんと欲する者有り。師は言った。「道を学ぶは以て生死を了る所以なり。何ぞ之れ避くる有らん。」賊至る。師は言った。「速かに殺を見えて、以てお前の心を快くせよ。」賊即ち槊を挙げて之を残した。血皆な白乳なり。賊駭き、席を引いて之を覆いて去った。

韶州南華知昺禪師

韶州南華知昺禅師

蜀之永康人也。上堂。此事最希奇。不礙當頭說。東鄰田舍翁。隨例得一橛。非唯貫聲色。亦乃應時節。若問是何宗。八字不著人。擊禪床。下座。上堂。日日說。時時舉。似地擎山爭幾許。隴西鸚鵡得人憐。大都祇為能言語。休思惟。帶伴侶。智者聊聞猛提取。更有一般也大奇。貓兒偏解捉老鼠。上堂。以拄杖向空中攪曰。攪長河為酥酪。鰕蟹猶自眼搭眵。卓一下曰。變大地作黃金。窮漢依前赤骨力。為復自家無分。為復不肯承當。可中有箇漢荷負得行。多少人失錢遭罪。再卓一下曰。還會麼。寶山到也須開眼。勿使忙忙空手回。上堂。春光爛熳華爭發。子規啼落西山月。僑梵缽提長吐舌。底事分明向誰說。嗄。上堂。迷不自迷。對悟立迷。悟不自悟。因迷說悟。所以悟為迷之體。迷為悟之用。迷悟兩無從。箇中無別共。無別共。撥不動。祖師不將來。鼻孔千斤重。

蜀の永康の人である。上堂。「此の事最も希奇なり。当头に説くを碍げず。東隣の田舎の翁、例に随いて一橛を得たり。唯だ声色を貫くに非ず、亦た乃ち時節に応ず。若し是れ何の宗ぞと問わば、八字は人に着かず。」禅床を撃ち、座を下りた。上堂。「日々説き、時時挙げて、地の山を擎ぐに似たるも争うこと幾許ぞ。隴西の鸚鵡は人の憐れみを得、大都只だ是れ言語を能くするが為のみ。思惟するを休め、伴侶を帯びよ。智者聊か聞かば猛く取り挙げよ。更に一般も亦た大いに奇なり、猫児は偏りに老鼠を捉るを解す。」上堂。拄杖を以て空中に向って攪して言った。「長河を攪めて酥酪と為すに、鰕蟹なお自ら眼搭眵たり。」一下卓して言った。「大地を変えて黄金と作すに、窮漢依前として赤骨力たり。為れか自家に分無き、為れか承当せざるを肯んぜざる。可中に箇の漢荷負して行くを得る者有らば、多少の人錢を失い罪に遭わん。」再び卓して一下し言った。「還って会するか。宝山に到りても須らく眼を開くべし。忙忙として空手に帰ることを使う莫れ。」上堂。「春光爛熳として華争いて発す。子規啼きて西山の月を落とす。僑梵鉢提長く舌を吐く。底事は分明に誰にか説かん。嗄。」上堂。「迷は自ら迷わず、悟に対して迷を立つ。悟は自ら悟らず、迷に因りて悟を説く。所以に悟は迷の体と為り、迷は悟の用と為す。迷悟両なら無くして従り、箇の中に別の共無し。別の共無し、撥ねて動かず。祖師は将来らず、鼻孔は千斤の重し。」

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