五燈會元卷第十
華嚴靜禪師法嗣
華厳静禅師法嗣
鳳翔府紫陵匡一定覺禪師
鳳翔府紫陵匡一定覚禅師
初到蟠龍。見僧問。碧潭清似鏡。蟠龍何處安。龍曰。沈沙不見底。浮浪足巑岏。師不肯。龍請師道。師曰。金龍迥透青霄外。潭中豈滯玉輪機。龍肯之。住後。僧問。未作人身已前。作甚麼來。師曰。石牛步步火中行。返顧休銜日中草。問。智識路絕。思議併忘時如何。師曰。停囚長智。養病喪軀。
初めて蟠龍に到る。僧に見えて問うた。「碧潭は清きこと鏡の如し、蟠龍は何の処にか安んずる。」龍は言った。「沙を沈めて底を見ず、浮浪は巑岏たり。」師は肯ぜず、龍は師に道わんことを請う。師は言った。「金龍は迥かに青霄の外に透り、潭中に豈に玉輪の機を滞めんや。」龍は之を肯とした。住して後、僧が問うた。「未だ人身を作さざる已前、何を作して来た。」師は言った。「石牛は歩歩に火中を行き、返り顧いて日の中の草を銜むるを休めよ。」問う。「智識の路絶え、思議并せて忘るる時如何。」師は言った。「囚を停めて長く智め、病を養りて軀を喪う。」
九峰滿禪師法嗣
九峰満禅師法嗣
洪州同安院威禪師
洪州同安院威禅師
僧問。牛頭未見四祖時如何。師曰。路邊神樹子。見者盡擎拳。曰。見後如何。師曰。室內無靈床。渾家不著孝。問。祖意教意。是同是別。師曰。玉兔不曾知曉意。金烏爭肯夜頭明。問。如何是同安一曲。師曰。靈琴不別人間韻。知音豈度伯牙門。曰。未審何人和得。師曰。木馬嘶時從彼聽。石人拊掌阿誰聞。曰。或遇知音時如何。師曰。知音不度耳。達者豈同聞。師一日遊山。大眾隨後。師曰。堦前翠竹。砌下黃花。古人道真如般若。同安即不然。有僧曰。古人也好和尚。師曰。不貪香餌味。可謂碧潭龍。曰。諸方眼目。不怪淵明。師曰。闍黎閉目中秋坐。卻笑月無光。曰。堦前翠竹。砌下黃花。又作麼生。師曰。安南未伏。塞北那降。僧禮拜。師曰。名稱普聞。師問僧。寅晡飲啄。無處藏身。你道有此道理麼。曰。和尚作麼生。師打一拂子。僧曰。撲手徵人。徒誇好手。師曰。握鞭側帽。豈是闍黎。曰。今古之道。何處藏身。師曰。闍黎作麼生。僧珍重。便出。師曰。未在。
僧が問うた。「牛頭が未だ四祖に見えざる時如何。」師は言った。「路辺の神樹子、見る者は尽く拳を擎ぐ。」言った。「見えし後如何。」師は言った。「室中に霊床無く、渾家は孝を着けず。」問う。「祖意教意、是れ同か是れ別か。」師は言った。「玉兔は曾て曉意を知らず、金烏は争でか夜頭の明るきを肯んずや。」問う。「如何なるか是れ同安の一曲。」師は言った。「霊琴は人間の韻を別たず、知音は豈に伯牙の門に度さん。」言った。「未だ審らかならず何の人か和するを得。」師は言った。「木馬の嘶く時は彼に従りて聴け、石人の掌を拊つを阿谁か聞かん。」言った。「或いは知音に遇う時如何。」師は言った。「知音は耳を度さず、達する者は豈に聞を同じうせん。」師が一日山に游ぶ。大衆は後に随った。師は言った。「階前の翠竹、砌下の黄花、古人は真如般若と道う、同安は即ち然らず。」僧有りて言った。「古人も亦た好し和尚。」師は言った。「香餌の味を貪らず、謂う可し碧潭の龍と。」言った。「諸方の眼目、淵明を怪しまず。」師は言った。「闍黎は目を閉ぢて中秋に坐し、却って月の光無きを笑う。」言った。「階前の翠竹、砌下の黄花、又作麼生。」師は言った。「安南は未だ伏せず、塞北は那ぞ降さん。」僧が礼拝した。師は言った。「名称普く聞ゆ。」師が僧に問うた。「寅晡に飲啄するに身を蔵する処無し。汝道え此の道理有るか。」言った。「和尚は作麼生。」師が一拂子を打った。僧は言った。「手を扑する征人、徒らに好手を誇る。」師は言った。「鞭を握りて帽を側するは、豈に是れ闍黎ならんや。」言った。「今古の道、何の処に身を蔵する。」師は言った。「闍黎は作麼生。」僧が珍重して便ち出でた。師は言った。「未だ在らず。」
北院通禪師法嗣
北院通禅師法嗣
京兆府香城和尚
京兆府香城和尚
初參北院。問曰。一似兩箇時如何。院曰。一箇賺汝。師乃有省。僧問。三光景色謝照燭事如何。師曰。朝邑峰前卓五彩。曰。不涉文彩事作麼生。師曰。如今特地過江來。問。向上一路。請師舉唱。師曰。釣絲鉤不出。問。牛頭還得四祖意否。師曰。沙書下點落千字。曰。下點後如何。師曰。別將一撮表人天。曰。恁麼則人人有也。師曰。汝又作麼生。問。囊無繫蟻之絲。廚絕聚蠅之糝時如何。師曰。日捨不求。思從妄得。
初めて北院を参ず。問うて言った。「一も似たる両箇の時如何。」院は言った。「一箇は汝を賺す。」師は乃ち省有り。僧が問うた。「三光の景色が照燭を謝する事如何。」師は言った。「朝邑の峰前に五彩を卓す。」言った。「文彩に渉らざる事作麼生。」師は言った。「如今特地に江を過ぎて来た。」問う。「向上の一路、請う師挙唱せん。」師は言った。「釣絲は鉤り出でず。」問う。「牛頭は還た四祖の意を得るや否や。」師は言った。「沙書は下に点を落して千字。」言った。「下に点を落しし後如何。」師は言った。「別に一撮を将て人天を表す。」言った。「恁麼ならば則ち人人有り。」師は言った。「汝は又作麼生。」問う。「嚢に蟻を繋ぐ絲無く、厨に蠅を聚むる糝絶ゆる時如何。」師は言った。「日の舎に求めず、妄より得るを思う。」
五燈會元卷第十三
五燈會元卷第十四
青原下七世
青原下七世
洞山延禪師法嗣
洞山延禅師法嗣
瑞州上藍院慶禪師
瑞州上藍院慶禅師
初遊方。問雪峰。如何是雪峰的的意。峰以杖子敲師頭。師應諾。峰大笑。師後承洞山印解。開法上藍。僧問。如何是上藍無刃劒。師曰。無。曰。為甚麼無。師曰。闍黎。諸方自有。
初めて方に游ぶ。雪峰に問うた。「如何なるか是れ雪峰の的的の意。」峰は杖子を以て師の頭を敲いた。師が喏と応えた。峰は大いに笑った。師は後に洞山の印解を承け、上藍に法を開いた。僧が問うた。「如何なるか是れ上藍の刃無き剣。」師は言った。「無し。」言った。「なぜ無し。」師は言った。「闍黎、諸方自ら有り。」
洪州同安慧敏禪師
洪州同安慧敏禅師
初參洞山。問。諸聖以何為命。山曰。以不間斷。師曰。還有向上事也無。山曰。有。師曰。如何是向上事。山曰。不從間斷。師於言下有省。住後。僧問。請師一句。師曰。好記取。
初めて洞山を参ず。問うた。「諸聖は何を以て命と為す。」山は言った。「間断せざるを以てす。」師は言った。「還た向上の事有るや無しや。」山は言った。「有り。」師は言った。「如何なるか是れ向上の事。」山は言った。「間断より出でず。」師は言下に於て省有り。住して後、僧が問うた。「請う師一句せん。」師は言った。「好く記取せよ。」
金峰志禪師法嗣
金峰志禅師法嗣
廬山天池智隆禪師
廬山天池智隆禅師
在金峰普請般柴次。峰問。般柴人過水否。師曰。有一人。不過水。曰。不過水還般柴否。師曰。雖不般柴。也不得動著他。
金峰に在りて普請に柴を搬る次。峰が問うた。「柴を搬る人は水を過ぐるか。」師は言った。「一人有り、水を過ぎず。」言った。「水を過ぎずんば還た柴を搬るか。」師は言った。「柴を搬らずと雖も、他を動かすを得ず。」
鹿門真禪師法嗣
鹿門真禅師法嗣
襄州谷隱智靜悟空禪師
襄州谷隠智静悟空禅師
僧問。如何是和尚轉身處。師曰。臥單子下。問。如何是道。師曰。鳳林關。曰。學人不會。師曰。直至荊南。問。如何是指歸之路。師曰。莫用伊。曰。還使學人到也無。師曰。甚麼處著得汝。問。靈山一會。何異今時。師曰。不異如今。曰。不異底事作麼生。師曰。如來密旨。迦葉不聞。問。古㵎寒泉。甚麼人得飲。師曰。絕飢渴者。曰。絕飢渴者如何得飲。師曰。東畎東流。西畎西流。
僧が問うた。「如何なるか是れ和尚の轉身の処。」師は言った。「臥単の子の下。」問う。「如何なるか是れ道。」師は言った。「鳳林関。」言った。「学人会せず。」師は言った。「直に荊南に至る。」問う。「如何なるか是れ指帰の路。」師は言った。「伊を用ゐること莫れ。」言った。「還た学人を使して到らしむるや無しや。」師は言った。「何の処に汝を着くるを得。」問う。「霊山の一會、今時に何の異ならん。」師は言った。「如今に異ならず。」言った。「異ならざる底の事作麼生。」師は言った。「如来の密旨は、迦葉聞かず。」問う。「古㵎の寒泉、何の人か飲むを得。」師は言った。「飢渇を絶つ者。」言った。「飢渇を絶つ者は如何にして飲むを得。」師は言った。「東畎は東に流れ、西畎は西に流る。」
益州崇真禪師
益州崇真禅師
僧問。如何是禪。師曰。澄潭釣玉兔。曰。如何是道。師曰。拍手笑清風。問。如何是大人相。師曰。泥揑三官土地堂。
僧が問うた。「如何なるか是れ禅。」師は言った。「澄潭に玉兔を釣る。」言った。「如何なるか是れ道。」師は言った。「手を拍ちて清風を笑う。」問う。「如何なるか是れ大人の相。」師は言った。「泥揑の三官土地堂。」
襄州鹿門志行譚禪師
襄州鹿門志行譚禅師
僧問。如何是實際理地。師曰。南贍部洲。北鬱單越。曰。恁麼則事同一家也。師曰。隔須彌在。問。遠遠投師。請師一接。師曰。從甚麼處來。曰。江北來。師曰。南堂裡安下。問。如何是清淨法身。師曰。戌亥年生。
僧が問うた。「如何なるか是れ実際の理地。」師は言った。「南は贍部洲、北は鬱単越。」言った。「恁麼ならば則ち事は一家に同じ。」師は言った。「須弥を隔てて在り。」問う。「遠々師に投ず、請う師一接せん。」師は言った。「何の処より来た。言った。「江北より来た。」師は言った。「南堂裏に安下せよ。」問う。「如何なるか是れ清浄の法身。」師は言った。「戌亥年に生ず。」
廬山佛手巖行因禪師
廬山佛手巌行因禅師
鴈門人也。首謁鹿門。師資契會。尋抵廬山。山之北。有巖如五指。下有石窟。可三丈餘。師宴處其中。因號佛手巖和尚。江南李主三召不起。堅請就棲賢。開堂不逾月。潛歸巖室。僧問。如何是對現色身。師竪一指(法眼別雲。還有也未)。後示微疾。謂侍僧曰。日午吾去矣。及期。僧報日午也。師下床。行數步。屹然立化。李主備香薪。茶毗。塔於巖之陰。
雁門の人である。首めに鹿門を謁え、師資契會した。尋いで廬山に抵る。山の北に巌有りて五指の如く、下に石窟有り、三丈余可なり。師は其の中に宴処し、因りて佛手巌和尚と号す。江南の李主が三たび召すも起たず、堅く請いで栖賢に就き、堂を開くこと月を逾えず、潜かに巌室に帰った。僧が問うた。「如何なるか是れ対現の色身。」師が一指を竪た(法眼が別に言った。「還た有るや未だ。」)後に微疾を示して侍僧に謂いて言った。「日午に吾去らん。」期に及びて、僧が日午なりと報ず。師が床を下りて数歩を行き、屹然として立化した。李主は香薪を備えて茶毘し、塔を巌の陰に建つ。
曹山霞禪師法嗣
曹山霞禅師法嗣
嘉州東汀和尚
嘉州東汀和尚
僧問。如何是向去底人。師曰。石女紡麻縷。曰。如何是卻來底人。師曰。扇車關棙斷。問。徧界是佛身。教某甲甚麼處立。師曰。孤峰頂上木人呌。紅焰輝中石馬嘶。
僧が問うた。「如何なるか是れ向去の人。」師は言った。「石女が麻縷を紡ぐ。」言った。「如何なるか是れ却来の人。」師は言った。「扇車の関棙断えり。」問う。「徧界是れ仏身、某甲を教えて何の処に立たしめん。」師は言った。「孤峰頂上に木人呌び、紅焔の輝中に石馬嘶く。」
草菴義禪師法嗣
草庵義禅師法嗣
泉州龜洋慧忠禪師
泉州亀洋慧忠禅師
本州陳氏子。謁草菴。庵問。何方來。師曰。六眸峰。庵曰。還見六眸否。師曰。患非重瞳。庵然之。師尋回故山。屬唐武宗廢教。例民其衣。暨宣宗中興。師曰。古人有言。上昇道士不受籙。成佛沙彌不具戒。祇為白衣。過中不食。不宇而禪。跡不出山者三十年。述三偈以自見曰。雪後始知松栢操。雲收方見濟河分。不因世主教還俗。那辨雞群與鶴群。多年塵事謾騰騰。雖著方袍未是僧。今日修行依善慧。滿頭留髮候然燈。形儀雖變道常存。混俗心源亦不昏。試讀善財巡禮偈。當時豈例作沙門。謂門弟子曰。眾生不能解脫者。情累爾。悟道易。明道難。僧問。如何得明道去。師曰。但脫情見。其道自明矣。夫明之為言。信也。如禁蛇人。信其呪力藥力。以蛇綰弄揣懷袖中無難。未知呪藥等力者怖駭棄去。但諦見自心。情見便破。今千疑萬慮不得用者。未見自心者也。忽索香焚罷。安然而化。全身葬於無了禪師塔之東。後數年。塔忽坼裂。連階丈餘。主僧將發視之。是夜宴寂中見無了曰。不必更發也。今為沈陳二真身。無了姓沈。見馬祖。
本州の陳氏の子。草庵を謁えた。庵が問うた。「何方より来た。」師は言った。「六眸峰。」庵は言った。「還た六眸を見るか。」師は言った。「重瞳に非ざるを患う。」庵は之を然とした。師は尋いで故山に回った。唐の武宗の教を廃するに属し、例に衣を民とした。宣宗の中興に暨りて、師は言った。「古人言有り、上升の道士は籙を受けず、成仏の沙弥は戒を具せず、只だ白衣の為、中を過ぎて食せず、宇せずして禅し、迹は山を出でざること三十年。」三の偈を述べて以て自ら見えて言った。「雪後に始めて松栢の操を知り、雲収まりて方に済河の分を見る、世主の教に因らずんば還俗せんや、那ぞ鶏群と鶴群とを辨ぜん、多年の塵事は谩り騰騰、方袍を着ると雖も未だ是れ僧ならず、今日修行は善慧に依りて、満頭に髪を留めて然灯を候す、形儀は変ると雖も道は常に存り、俗に混ずるも心源は亦た昏ならず。試しに善財の巡礼の偈を読め、当時豈に例に沙門と作さんや。」門弟子に謂いて言った。「衆生の解脱すること能わざるは、情の累なり、道を悟るは易く、道を明らむるは難し。」僧が問うた。「如何にして道を明らむること去らんを得。」師は言った。「但だ情見を脱せば、其の道自ずから明ならん、夫れ明と為すの言は信なり、禁蛇の人の如く、其の呪力薬力を信じて、蛇を以て懐袖の中に綰き弄び揣るに難無し、未だ呪薬等の力を知らざる者は怖駭して棄て去る、但だ自心を諦らかに見れば、情見は便ち破れん。今千疑万慮の用ゐるを得ざるは、未だ自心を見ざる者なり。」忽ち香を索めて焚き罢め、安らかに化した。全身を無了禅師の塔の東に葬る。後数年、塔は忽ち坼裂して階に連なること丈余。主僧が将に発きて之を視んとす。是の夜、宴寂の中に無了を見て言った。「必ず更に発くるを要せず、今為に沈陳二の真身、無了は沈に姓し、馬祖に見えん。」
同安丕禪師法嗣
同安丕禅師法嗣
洪州同安志禪師
洪州同安志禅師
先同安將示寂。上堂曰。多子塔前宗子秀。五老峰前事若何。如是三舉。未有對者。末後師出曰。夜明簾外排班立。萬裡歌謠道太平。安曰。須是這驢漢始得。住後。僧問。二機不到處。如何舉唱。師曰。徧處不逢。玄中不失。問。凡有言句。盡落今時。學人上來。請師直指。師曰。目前不現。句後不迷。曰。向上事如何。師曰。迥然不換。標的即乖。
先の同安が将に示寂せんとし、上堂して言った。「多子塔の前に宗子秀で、五老峰の前の事如何。」是の如く三たび挙ぐれども、未だ対する者有らず。末後に師が出でて言った。「夜明の簾外に班を排して立ち、万里に歌謡して太平を道う。」安は言った。「須く是れ這の驢漢なるを始めて得。」住して後、僧が問うた。「二機の到らざる処、如何に挙唱せん。」師は言った。「徧処に逢わず、玄中に失わず。」問う。「凡そ言句有れば、尽く今時に落つ、学人は上来す、請う師直指せん。」師は言った。「目前に現ぜず、句後に迷わず。」言った。「向上の事如何。」師は言った。「迥然として換えず、標的せば即ち乖く。」
