五燈會元 巻第十八
南康軍歸宗真牧正賢禪師
南康軍帰宗真牧正賢禅師
潼川陳氏子。世為名儒。幼從三聖海澄為苾蒭。具滿分戒。遊成都。依大慈秀公習經論。凡典籍過目成誦。義亦頓曉。秀稱為經藏子。出蜀謁諸尊宿。後扣佛眼。一日入室。眼舉殷勤抱得旃檀樹。語聲未絕。師頓悟。眼曰。經藏子漏逗了也。自是與師商確淵奧。亹亹無盡。眼稱善。因手書真牧二字授之。紹興己巳。歸宗虗席。郡侯以禮請。堅臥不應。寶文李公懋甞問道於師。同屬官強之。乃就。上堂。且第一句如何道。汝等若向世界未成時.父母未生時.佛未出世時.祖師未西來時道得。已是第二句。且第一句如何道。直饒你十成道得。未免左之右之。卓拄杖。下座。上堂。良久召大眾曰。作麼生。若也擬議。賢上座謾你諸人去也。打地和尚。瞋他秘魔巖主擎箇叉兒。胡說亂道。遂將一摑成虀粉。散在十方世界。還知麼。舉拂子曰。而今卻在拂子頭上。說一切智智清淨無二。無二分無別無斷故。還聞麼。閻老子知得。乃曰。賢上座。你若相當去。不妨奇特。或不相當。總在我手裡。祇向他道。閻老子你也退步。摸索鼻孔看。擊禪床。下座。僧問。久默斯要。已洩真機。學人上來。請師開示。師曰。耳朵在甚麼處。曰。一句分明該萬象。師曰。分明底事作麼生。曰。臺星照臨。枯木回春。師曰。換卻你眼睛。
潼川の陳氏の子である。世は名儒と為る。幼にして三聖の海澄に従いて苾蒭と為り、具は分戒を満つ。成都に游び、大慈の秀公に依りて経論を習う。凡そ典籍目を過ぎれば成誦し、義も亦た頓に暁る。秀は称して経蔵子と為す。蜀を出でて諸の尊宿に謁す。後に仏眼を扣いた。一日室に入り、眼挙げて、殷勤に旃檀樹を抱得す、語声未だ絶えざるに、師頓悟した。眼は言った。「経蔵子漏逗了れり。」自ら是れ師と淵奥を商確し、亹亹として尽きず。眼は善を称し、因りて手ずから真牧の二字を書して之に授く。紹興己巳、帰宗席を虗くす。郡侯礼を以て請う。堅く臥して応ぜず。宝文の李公懋は甞て道を師に問い、属官同じく之を強う。乃ち就いた。上堂。「且く第一句は如何にか道わん。お前等若し世界未だ成らざる時・父母未だ生ぜざる時・仏未だ世に出でざる時・祖師未だ西来せざる時に道得せば、已に是れ第二句。且く第一句は如何にか道わん。直饒お前十成に道得すとも、未だ免れず之を左にし之を右にす。」拄杖を卓し、座を下りた。上堂。良久して大衆を召して言った。「作麼生。若しも擬議せば、賢上座はお前諸人を谩り去るなり。地を打つ和尚、他の秘魔巌主が箇の叉児を擎ぐるを瞋りて、胡説乱道す。遂に一掴を将て虀粉と成し、十方世界に散ぜん。還って知るか。」拂子を挙げて言った。「而今却って拂子頭上に在りて、一切智清浄無二無二分無別無断の故と説くを説く。還って聞くか。閻老子知得せり。乃ち言った。「賢上座、お前若し相当に去らば、妨げず奇特なり。或いは相当せざれば、総て我が手裏に在り。只だ他に向って道わん、閻老子お前も亦た歩を退きて、鼻孔を摸索して看よ。」禅床を撃ち、座を下りた。僧が問うた。「久しく斯の要を黙す、已に真機を泄す。学人上来す、師の開示を請う。」師は言った。「耳朵は什麼の処に在る。」言った。「一句分明に万象を該す。」師は言った。「分明の底事は作麼生。」言った。「台星照臨し、枯木春に回る。」師は言った。「お前の眼睛を換却す。」
安吉州道場正堂明辯禪師
安吉州道場正堂明辯禅師
本郡俞氏子。幼事報本蘊禪師。圓顱受具後。謁諸名宿。至西京少林。聞僧舉佛眼以古詩發明罽賓王斬師子尊者話。曰。楊子江頭楊柳春。楊華愁殺渡江人。一聲羗笛離亭晚。君向瀟湘我向秦。師默有所契。即趨龍門。求入室。佛眼問。從上祖師方冊因緣。許你會得。忽舉拳曰。這箇因何喚作拳。師擬對。眼築其口曰。不得作道理。於是頓去知見。住後。上堂。猛虎口邊拾得。毒虵頭上安排。更不釘樁搖艣。回頭別有生涯。婆子被我勘破了。大悲院裡有村齋。上堂。淨五眼。湧金春色晚。得五力。吹落碧桃華。唯證乃知難可測。卓拄杖曰。一片何人得。流經十萬家。上堂。三祖道。但莫憎愛。洞然明白。當時老僧若見。便與一摑。且道是憎邪是愛邪。近來經界稍嚴。不許詭名挾佃。解夏。上堂。十五日已前不得去。少林隻履無藏處。十五日已後不得住。桂子天香和雨露。正當十五日。又且如何。阿呵呵。風流不在著衣多。上堂。舉。僧問投子。大死底人卻活時如何。子曰。不許夜行。投明須到。師曰。我疑千年蒼玉精。化為一片秋水骨。海神欲護護不得。一旦鰲頭忽擎出。上堂。華開隴上。柳綻堤邊。黃鸎調叔夜之琴。芳草入謝公之句。何必聞聲悟道。見色明心。非唯水上覓漚。已是眼中著屑。擘開胸曰。汝等當觀吾紫磨金色之身。今日則有。明日則無。大似無風起浪。全不知羞。且道今日事作麼生。好箇迷逢達磨。不知誰解承當。僧問。如何是佛。師乃鳴指三下。問。語默涉離微。如何通不犯。師曰。橫身三界外。獨脫萬機前。曰。祇如風穴道。長憶江南三月裡。鷓鴣啼處百華香。又作麼生。師曰。說這箇不唧𠺕漢作麼。曰。嫰竹搖金風細細。百華鋪地日遲遲。師曰。你向甚麼處見風穴。曰。眼裡耳裡絕瀟灑。師曰。料掉無交涉。問。蓮華未出水時如何。師曰。未過冬至莫道寒。曰。出水後如何。
本郡の兪氏の子である。幼にして報本の蕰禅師に事え、円顱受具の後、諸の名宿に謁す。西京少林に至り、僧の挙ぐる仏眼が古詩を以て罽賓王の師子尊者を斬るの話を発明せしを聞く、説く、楊子江頭楊柳の春、楊華愁い殺す渡江の人、一声の羗笛離亭の晩、君は瀟湘に向い我は秦に向かう。師黙然として契う所有り。即ち竜門に趨り、室に入らんことを求む。仏眼問うた、「従上祖師の方册の因縁、お前を会得するを許す。忽ち拳を挙げて言った、「此の箇は因りて何ぞ拳と喚ばれる。」師対を擬した。眼其の口を築きて言った。「道理を作すを得ず。」是に於て頓に知見を去った。住して後、上堂。「猛虎の口辺に拾得し、毒虵の頭上に安排す。更に桩を釘り艣を揺せず、頭を回らせば別に生涯有り。婆子は我に勘破せられたり、大非院裏に村斎有り。」上堂。「五眼を浄うすれば、金を涌かす春色晩なり。五力を得れば、碧桃の華を吹落す。唯だ証して乃ち知る、測り難し。」拄杖を卓して言った。「一片何人か得る、流れ経ること十万家。」上堂。「三祖道う、但だ憎愛する莫れ、洞然として明白なり。当時老僧若し見れば、便ち一掴を与えん。且く道え是れ憎なるか是れ愛なるか。近来経界稍く厳にして、詭名挟佃を許さず。」解夏。上堂。「十五日已前は去るを得ず、少林の只履蔵むる処無し。十五日已後は住するを得ず、桂子天香に雨露を和す。正に十五日に当りて、又た且く如何。阿呵呵。風流は衣を着ること多きに在らず。」上堂。挙ぐ、僧が投子に問う、大死の底の人却って活する時は如何。子は言った、夜行するを許さず、明に投じて須らく到るべし。師は言った。「我疑う千年の蒼玉精、化して一片の秋水の骨と為る。海神護らんと欲するも護るを得ず、一旦鰲頭忽ち擎出す。」上堂。「華は隴上に開け、柳は堤辺に綻ぶ。黄鶯は叔夜の琴を調え、芳草は謝公の句に入る。何ぞ必ずしも声を聞きて道を悟り、色を見て心を明らかにせん。唯だ水上に漚を覓るに非ず、已に是れ眼中に屑を着けるなり。」胸を擘開して言った。「お前等当に吾が紫磨金色の身を観ずべし。今日は則ち有り、明日は則ち無し。大いに似たり風無くして浪を起こすに、全く羞を知らず。且く道え今日の事作麼生。好個の達磨に迷逢す、誰か承当を解するを知らん。」僧が問うた。「如何なるか是れ仏。」師乃ち指を鳴らすこと三下。問うた。「語黙は離微に渉る、如何にか通じて犯さざらん。」師は言った。「身を三界の外に横たえ、独り万機の前を脱す。」言った。「只だ如く風穴道う、長く憶う江南三月裏、鷓鴣啼く処百華香、又た作麼生。」師は言った。「此の不唧𠺕の漢を説いて作麼せん。」言った。「嫰竹は金風細々に揺れ、百華は地を鋪き日遅々たり。」師は言った。「お前は什麼の処に向って風穴を見る。」言った。「眼裏耳裏に瀟洒を絶つ。」師は言った。「料掉して交渉無し。」問うた。「蓮華未だ水を出でざる時は如何。」師は言った。「冬至を過ぎずば寒しと道う莫れ。」言った。「水を出でたる後は如何。
師曰。未過夏至莫道熱。曰。出與未出時如何。師曰。三十年後。不要錯舉。問。如何是佛。師曰。無柴猛燒火。曰。如何是法。師曰。貧做富裝裹。曰。如何是僧。師曰。賣扇老婆手遮日。曰。如何是和尚栗棘蓬。師曰。不答此話。曰。為甚麼不答。師大笑曰。吞不進。吐不出。問。如何是一喝如金剛王寶劍。師曰。古墓毒虵頭戴角。曰。如何是一喝如踞地師子。師曰。虗空笑點頭。曰。如何是一喝如探竿影草。師曰。石人拍手笑呵呵。曰。如何是一喝不作一喝用。師曰。布袋裡豬頭。曰。四喝已蒙師指示。向上還有事也無。師曰。有。曰。如何是向上事。師曰。鋸解秤鎚。隨聲便喝。佛眼忌拈香。龍門和尚闡提潦倒。不信佛法。滅除禪道。拶破毗盧向上關。貓兒洗面自道好。一炷沈香爐上然。換手槌𮌎空懊惱。遂搖手曰。休懊惱。以坐具搭肩上。作女人拜。曰。莫怪下房媳婦觸忤大人好。室中垂問曰。貓兒為甚麼愛捉老鼠。又曰。板鳴因甚麼狗吠。師家風嚴冷。初機多憚之。因贊達磨曰。昇元閣前懡㦬。洛陽峰畔乖張。皮髓傳成話霸。隻履無處埋藏。不是一番寒徹骨。爭得梅華撲鼻香。雪堂行一見。大稱賞曰。先師猶有此人在。只消此贊。可以坐斷天下人舌頭。由是衲子奔湊。臨終登座。拈拄杖於左邊。卓一下曰。三十二相無此相。於右邊卓一下曰。八十種好無此好。僧繇一筆畫成。誌公露出草藁。又卓一下。顧大眾曰。莫懊惱。直下承當休更討。下座歸方丈。儼然趺坐而逝。火後收靈骨設利。藏所建之塔曰僊人山。
師は言った。「夏至を過ぎずば熱しと道う莫れ。」言った。「出づると未だ出でざるの時は如何。」師は言った。「三十年の後、錯りて挙ぐるを要せず。」問うた。「如何なるか是れ仏。」師は言った。「柴無くして猛く火を焼く。」言った。「如何なるか是れ法。」師は言った。「貧は富を装裹す。」言った。「如何なるか是れ僧。」師は言った。「扇を売る老婆手は日を遮る。」言った。「如何なるか是れ和尚の栗棘蓬。」師は言った。「此の話に答えず。」言った。「什麼が為に答えざる。」師大笑して言った。「呑み入れず、吐き出さず。」問うた。「如何なるか是れ一喝金剛王宝剣の如し。」師は言った。「古墓の毒虵頭に角を戴く。」言った。「如何なるか是れ一喝地に踞る師子の如し。」師は言った。「虗空笑って頭を点く。」言った。「如何なるか是れ一喝探竿影草の如し。」師は言った。「石人手を拍して笑うこと呵呵。」言った。「如何なるか是れ一喝一喝の用を作さざる。」師は言った。「布袋裏の猪頭。」言った。「四喝已に師の指示を蒙る、向上に還って事有るや無しや。」師は言った。「有り。」言った。「如何なるか是れ向上の事。」師は言った。「秤鎚を鋸解す。」声に随いて便ち喝した。仏眼の忌に香を拈ず、言った。「竜門和尚は闡提潦倒し、仏法を信ぜず、禅道を滅除す。毘盧向上の関を拶破し、猫児は面を洗いて自ら好しと道う。一炷の沈香炉上に然り、手を換え𮌎を槌うも空しく懊悩す。」遂に手を摇って言った。「懊悩するを休めよ。」坐具を以て肩上に搭し、女人の拜を作して言った。「怪む莫れ下房の媳婦が大人に触忤するを好し。」室中に垂問す、「猫兒は什麼が為に老鼠を捉るを愛する。」又た言った、「板鳴るに因りて什麼が狗吠ゆる。」師の家風厳冷にして、初機多く之を憚る。因りて達磨を賛して言った。「升元閣前に懡㦬し、洛陽峰畔に乖張す。皮髄伝わりて話霸と成り、只履蔵埋する処無し。是れ一番の寒さ骨を徹するに非ざれば、争うか得ん梅華の鼻を撲つの香。」雪堂行一たび見て、大いに称賞して言った。「先師なお此の人有り。只だ消す此の賛、以て天下人の舌頭を坐断す可し。」是に由りて衲子奔凑す。終に臨みて座に登り、拄杖を拈じて左辺に於て、一下卓して言った。「三十二相に此の相無し。」右辺に於て一下卓して言った。「八十種好に此の好無し。僧繇の一笔画きて成り、志公草藁を露出す。」又た一下卓し、大衆を顧みて言った。「懊悩する莫れ。直下に承当して更に討るを休めよ。」座を下りて方丈に帰り、儼然として趺坐して逝った。火後に霊骨・設利を収め、建つる所の塔に蔵し、僊人山と曰う。
潭州方廣深禪師
潭州方広深禅師
僧問。一法若有。毗盧墮在凡夫。萬法若無。普賢失其境界。未審意旨如何。師曰。富嫌千口少。貧恨一身多。
僧が問うた。「一法若し有れば毘盧凡夫に堕在し、万法若し無ければ普賢其の境界を失う。いまだ審らかならず意旨如何。」師は言った。「富は千口の少きを嫌い、貧は一身の多きを恨む。」
世奇首座者
世奇首座
成都人也。徧依師席。晚造龍門。一日燕坐。瞌睡間群蛙忽鳴。誤聽為淨髮版響。亟趨往。有曉之者曰。蛙鳴非版也。師恍然。詣方丈剖露。佛眼曰。豈不見羅睺羅。師遽止曰。和尚不必舉。待去自看。未幾有省。乃占偈曰。夢中聞版響。覺後蝦蟇啼。蝦蟇與版響。山嶽一時齊。由是益加參究。洞臻玄奧。眼命分座。師固辭。曰。此非細事也。如金針刺眼。毫髮若差。睛則破矣。願生生居學地。而自煅煉。眼因以偈美之曰。有道只因頻退步。謙和元自慣回光。不知已在青雲上。猶更將身入眾藏。暮年。學者力請。不容辭。後因說偈曰。諸法空故我心空。我心空故諸法同。諸法我心無別體。祇在而今一念中。且道是那一念。眾罔措。師喝一喝而終。
成都の人である。遍く師席に依り、晩に竜門に造る。一日燕坐して、居睡の間に群蛙忽ち鳴く。誤って浄髪の版の響きと聴く。亟く趨り往く。これを暁る者が言う、蛙鳴は版に非ずと。師恍然として方丈に詣り剖露す。仏眼は言った。「羅睺羅を見ざるか。」師遽かに止めて言った。「和尚は挙げるに及ばず、去りて自ら看よ。」未几省有り。乃ち偈を占して言った。「夢中に版の響きを聞き、覚えし後に虾蟇啼く。虾蟇と版の響き、山岳一時に斉し。」是に由りて益々参究を加え、洞く玄奥に臻る。眼分座を命ず。師固く辞して言った。「此れ細事に非ざるなり。金針の眼を刺すが如く、毫髪若し差えば睛は則ち破れん。願わくは生生学地に居りて自ら鍛錬せん。」眼因りて偈を以て之を美して言った。「道有るは只だ頻りに歩を退くに因り、謙和は元来自ら回光に慣む。知らず已に青雲の上に在りと、猶ほ更に身を将って衆蔵に入る。」暮年に学者力めて請い、辞するを容れず。後に因りて偈を説いて言った。「諸法空なるが故に我が心空なり、我が心空なるが故に諸法同じ。諸法と我が心と別体無く、只だ而今の一念の中に在り。且く道え是れ那の一念ぞ。」衆措く罔し。師は一喝して終わった。
溫州淨居尼慧溫禪師
温州浄居尼慧温禅師
上堂。舉。法眼示眾曰。三通皷罷。簇簇上來。佛法人事。一時周畢。師曰。山僧道。三通皷罷。簇簇上來。拄杖不在。苕帚柄聊與三十。
上堂。挙ぐ、法眼衆に示す、「三通の皷罷みて、簇簇として上来す。仏法人事、一時に周畢す。」師は言った。「山僧は道う、三通の皷罷みて、簇簇として上来す。拄杖在らざれば、苕帚の柄を以て聊か三十を与えん。」
給事馮楫濟川居士
給事馮楫済川居士
自壯扣諸名宿。最後居龍門。從佛眼遠禪師。再歲。一日同遠經行法堂。偶童子趨庭。吟曰。萬象之中獨露身。遠拊公背曰。好。聻。公於是契入。紹興丁巳。除給事。會大慧禪師就明慶開堂。慧下座。公挽之曰。和尚每言於士大夫前曰。此生決不作這蟲豸。今日因甚卻納敗缺。慧曰。盡大地是箇杲上座。你向甚處見他。公擬對。慧便掌。公曰。是我招得。越月。特丐祠坐夏徑山。榜其室曰不動軒。一日。慧陞座。舉。藥山問石頭曰。三乘十二分教。某甲粗知。承聞南方直指人心。見性成佛。實未明瞭。伏望慈悲示誨。頭曰。恁麼也不得。不恁麼也不得。恁麼不恁麼總不得。你作麼生。山罔措。頭曰。子緣不在此。可往江西見馬大師去。山至馬祖處。亦如前問。祖曰。有時教伊揚眉瞬目。有時不教伊揚眉瞬目。有時教伊揚眉瞬目者是。有時教伊揚眉瞬目者不是。山大悟。慧拈罷。公隨至方丈曰。適來和尚所舉底因緣。某理會得了。慧曰。你如何會。公曰。恁麼也不得囌嚧娑婆訶。不恁麼也不得㗭唎娑婆訶。恁麼不恁麼。總不得囌嚧㗭唎娑婆訶。慧印之以偈曰。梵語唐言打成一塊。咄哉俗人。得此三昧。公後知卭州。所至宴晦無倦。甞自詠曰。公事之餘喜坐禪。少曾將脇到床眠。雖然現出宰官相。長老之名四海傳。至二十三年秋。乞休致。預報親知。期以十月三日報終。至日。令後廳置高座。見客如平時。至辰巳間。降堦望闕肅拜。請漕使攝卭事。著僧衣履。踞高座。囑諸官吏及道俗。各宜向道。扶持教門。建立法幢。遂拈拄杖按膝。蛻然而化。漕使請曰。安撫去住如此自由。何不留一頌以表罕聞。公張目。索筆書曰。初三十一。中九下七。老人言盡。龜哥眼赤。竟爾長往。建炎後名山巨剎。教藏多不存。公累以己俸印施。凡一百二十八藏。用祝君壽。以康兆民。門人蒲大聘甞誌其事。有語錄.頌古行於世。
壮いより諸の名宿を扣き、最後に竜門に居り仏眼遠禅師に従うこと再歳。一日遠と同じく法堂を経行し、偶さま童子庭を趨り、吟じて言う、万象の中独り身を露すと。遠公の背を拊して言った。「好いぞ、聻。」公是に於て契入した。紹興丁巳、給事を除す。会う大慧禅師の明慶に就きて堂を開くに。慧座を下り、公之を挽いて言った。「和尚毎に士大夫の前に於て言う、此生決して此の虫豸と作らじと。今日因甚か却って敗缺を納る。」慧は言った。「大地を尽くすは箇の杲上座なり、お前什麼の処に向ってか彼を見る。」公対を擬す。慧便ち掌す。公は言った。「是れ我が招き得たり。」月を越え、特に祠を丐り径山に坐夏す。其の室に榜して不動軒と曰う。一日慧座に升り、挙ぐ、薬山が石頭に問うて曰く、三乗十二分教は某甲粗か知る、承く聞く南方は直に人の心を指し、性を見て仏と成ると、実に未だ明了せず、伏して慈悲の示誨を望むと。頭は言った、「恁麼しても得ず、恁麼せざるも得ず、恁麼不恁麼総て得ず、お前作麼生。」山措く罔し。頭は言った、「子の縁は此に在らず、江西に往きて馬大師に見えよ。」山馬祖の処に至り、亦た前の如く問う。祖は言った、「時には伊を教えて眉を揚げ目を瞬かしめ、時には伊を教えて眉を揚げ目を瞬かしめず。時には伊を教えて眉を揚げ目を瞬かしむる者是れ、時には伊を教えて眉を揚げ目を瞬かしむる者不是れ。」山大悟した。慧拈じ罷る。公随って方丈に至りて言った。「適来和尚の挙げし所の因縁、某理会し得たり。」慧は言った。「お前如何にか会する。」公は言った。「恁麼しても得ず蘇𠰷娑婆訶、恁麼せざるも得ず㗭唎娑婆訶、恁麼不恁麼総て得ず蘇𠰷㗭唎娑婆訶。」慧之を印可して偈に言った。「梵語唐言一塊に打成す、咄なる哉俗人、此の三昧を得り。」公後に邛州を知り、所至に宴晦して倦まず。甞て自ら詠じて言った。「公事の余に坐禅を喜び、少かり曾て脇を将て床に眠らず。現に宰官の相を出すと雖も、長老の名は四海に伝わる。」二十三年秋に至り、休致を乞い、預め親知に報じ、期すらく十月三日に報終せんと。日に至り、後庁に高座を置かせ、客に見ゆること平時の如し。辰巳の間に至り、堦を降りて闕を望み粛拝し、漕使を請うて邛事を摂せしめ、僧衣履を着け、高座に踞り、諸の官吏及び道俗に嘱す、各々宜しく道に向い教門を扶持し法幢を建立すべしと。遂に拄杖を拈じ膝に按じ、蜕然として化した。漕使請うて言った、「安撫の去住此くの如く自由なる、何ぞ一頌を留めて以て罕聞を表さざる。」公目を張り、筆を索め書して言った。「初は三十一、中は九下は七、老人言尽き、亀哥眼赤し。」竟に爾り長往した。建炎後、名山巨刹の教蔵多く存せず。公累々己の俸を以て印施す、凡そ一百二十八蔵、用いて君寿を祝し以て兆民を康くす。門人の蒲大聘甞て其の事を志す。語録・頌古世に行わる。
開福寧禪師法嗣
開福寧禅師の法嗣
潭州大溈月庵善果禪師
潭州大沩月庵善果禅師
信州餘氏子。上堂。奚仲造車一百輻。拈卻兩頭除卻軸。以拄杖打一圓相曰。且莫錯認定盤星。卓一卓。下座。謝供頭。上堂。解猛虎頷下金鈴。驚群動眾。取蒼龍穴裡明珠。光天照地。山僧今日到此。讚歎不及。汝等諸人。合作麼生。竪起拂子曰。眨上眉毛。速須薦取。擲拂子。下座。上堂。心生法亦生。心滅法亦滅。心法兩俱忘。烏龜喚作鼈。諸禪德。道得也未。若道得。道林與你拄杖子。其或未然。歸堂吃茶去。僧問。達磨九年面壁時如何。師曰。魚行水濁。曰。二祖禮三拜。為甚麼卻得其髓。師曰。地肥茄子大。曰。祇如一華開五葉。結果自然成。明甚麼邊事。師曰。賊以贓為驗。曰。有時乘好月。不覺過滄洲。師曰。闍黎無分。問。有句無句。如藤倚樹時如何。師曰。驗盡當行家。曰。樹倒藤枯。句歸何處。又作麼生。師曰。風吹日炙。曰。溈山呵呵大笑。聻。師曰。波斯讀梵字。曰。道吾推倒泥裡。溈山不管。此意又且如何。師曰。有理不在高聲。曰。羅山道。道吾是撮馬糞漢。又作麼生。師曰。多口阿師。曰。今日足見老師七通八達。師曰。仰面哭蒼天。僧禮拜。師曰。過。問。蓮華未出水時如何。師曰。乾坤無異色。曰。出水後如何。師曰。徧界有清香。
信州の余氏の子である。上堂。「奚仲車を造ること百輻、両頭を拈却し軸を除却す。」拄杖を以て一円相を打ちて言った。「且く錯りて定盤の星を認む莫れ。」卓一卓、座を下りた。供頭を謝す。上堂。「猛虎の頷下の金鈴を解き、群を驚かし衆を動かす。蒼竜の穴裏の明珠を取り、光天に地を照らす。山僧今日此に到り、讃嘆及ばず。お前等諸人、合して作麼生せん。」拂子を竪起して言った。「眉毛の上を眨ぎ、速やかに須らく薦取すべし。」拂子を擲ち、座を下りた。上堂。「心生じれば法も亦た生じ、心滅すれば法も亦た滅す。心法両ら倶に忘れば、烏亀を呼んで鼈と作す。諸の禅徳、道得せりや未だ。若し道得せば、道林お前に拄杖子を与えん。其れ或いは未然ならば、堂に帰りて茶を喫せよ。」僧が問うた。「達磨九年面壁の時は如何。」師は言った。「魚行けば水濁る。」言った。「二祖三拝を礼して、什麼が為に却って其の髄を得る。」師は言った。「地肥えて茄子大なり。」言った。「只だ一華開けて五葉、結果自然に成るが如き、什麼の辺事か明らかにする。」師は言った。「賊は贓を以て験と為す。」言った。「時に好月に乗じて、覚えず滄州を過ぐ。」師は言った。「闍黎分無し。」問うた。「有句無句、藤の樹に倚るが如き時は如何。」師は言った。「当行家を験尽す。」言った。「樹倒れ藤枯る、句は何の処にか帰する。又た作麼生。」師は言った。「風吹き日炙る。」言った。「潙山呵呵大笑す、聻。」師は言った。「波斯梵字を読む。」言った。「道吾泥裏に推し倒し、潙山管せず、此の意又た且く如何。」師は言った。「理有るは高声に在らず。」言った。「羅山道う、道吾是れ馬糞を撮む漢、又た作麼生。」師は言った。「多口の阿師。」言った。「今日足らく見る老师の七通八達を。」師は言った。「面を仰ぎて蒼天を哭す。」僧が礼拝した。師は言った。「過ぎり。」問うた。「蓮華未だ水を出でざる時は如何。」師は言った。「乾坤に異色無し。」言った。「水を出でたる後は如何。」師は言った。「遍界に清香有り。」
大隨靜禪師法嗣
大随静禅師の法嗣
台州釣魚臺石頭自回禪師
台州釣魚台石頭自回禅師
本郡人也。世為石工。雖不識字。志慕空宗。每求人口授法華。能誦之。棄家投大隨。供掃灑。寺中令取崖石。師手不釋鎚鑿。而誦經不輟口。隨見而語曰。今日硿磕。明日硿磕。死生到來。作甚摺合。師愕然。釋其器。設禮。願聞究竟法。因隨至方丈。隨令且罷誦經。看趙州勘婆因緣。師念念不去心。久之。因鑿石。石稍堅。盡力一鎚。瞥見火光。忽然省徹。走至方丈。禮拜呈頌曰。用盡工夫。渾無巴鼻。火光迸散。元在這裡。隨忻然曰。子徹也。復獻趙州勘婆頌曰。三軍不動旗閃爍。老婆正是魔王腳。趙州無柄鐵掃帚。掃蕩煙塵空索索。隨可之。遂授以僧服。人以其為石工。故有回石頭之稱也。上堂。參禪學道。大似井底叫渴相似。殊不知塞耳塞眼。迴避不及。且如十二時中。行住坐臥。動轉施為。是甚麼人使作。眼見耳聞。何處不是路頭。若識得路頭。便是大解脫路。方知老漢與你證明。山河大地與你證明。所以道。十方薄伽梵。一路涅槃門。諸仁者。大凡有一物當途。要見一物之根源。一物無處。要見一物之根源。見得根源。源無所源。所源既非。何處不圓。諸禪德。你看老漢有甚麼勝你處。諸人有甚麼不如老漢處。還會麼。太湖三萬六千頃。月在波心說向誰。
本郡の人である。世は石工と為る。字を識らずと雖も、志して空宗を慕う。毎に人に求めて法華を口授し、能く之を誦す。家を棄てて大随に投じ、掃洒を供す。寺中に崖石を取らしむ。師手に鎚鑿を釈さずして、誦経口に輟めず。随見て語うて言った。「今日硿磕、明日硿磕、死生到来せば、作甚折合せん。」師愕然として其の器を釈し、礼を設け、究竟の法を聞かんことを願う。因りて随に従いて方丈に至る。随且く誦経を罷め、趙州の勘婆因縁を看よと令す。師念念心を去らず。久之し、石を鑿つに因り、石稍く堅し、力を尽くして一鎚す。瞥然として火光を見、忽然として省徹す。方丈に走り至り、礼拝して頌を呈して言った。「工夫を用い尽くすも、渾て巴鼻無し。火光迸散す、元来是れ此の裏に在り。」随忻然として言った。「子徹したり。」復た趙州勘婆の頌を献ず。「三軍動かず旗閃爍し、老婆正に是れ魔王の脚。趙州柄無き鉄掃帚、煙塵を掃蕩して空しく索索たり。」随之を可とす。遂に僧服を以て授く。人其の石工と為るを以て、故に回石頭の称有り。上堂。「参禅学道は、大いに似たり井底に渇を叫ぶに。殊に知らず耳を塞ぎ眼を塞げば、回避及ばざるを。且く十二時中の如く、行住坐卧・動転施為は、是れ什麼人の使作ぞ。眼見耳聞、何れの処か路頭に非ざる。若し路頭を識得せば、便ち是れ大解脱の路。方に知る老汉お前と証明し、山河大地お前と証明す。所以に道う、十方の薄伽梵、一路の涅槃の門と。諸の仁者、大凡そ一物途に当れば、一物の根源を見るを要し、一物処無ければ、一物の根源を見るを要す。根源を見得れば、源源とする所無し、所源既に非ず、何れの処か円ならざる。諸の禅徳、お前等看よ、老汉に什麼かお前に勝る処有る。諸人に什麼か老汉に如かざる処有る。還って会するか。太湖三万六千頃、月は波心に在りて誰に向ってか説く。」
潼川府護聖愚丘居靜禪師
潼川府護聖愚丘居静禅師
成都楊氏子。年十四。禮白馬安慧為師。聞南堂道望。遂往依焉。堂舉香嚴枯木裡龍吟話。往返酧詰。師於言下大悟。一日。堂問曰。莫守寒巖異草青。坐卻白雲宗不妙。汝作麼生。師曰。直須揮劒。若不揮劒。漁父棲巢。堂矍然曰。這小廝兒。師珍重便行。出住東巖。上堂。月生一。東巖乍住增愁寂。紅塵世路有多端。米麫倉儲無顆粒。崖為伴。泉為匹。颯颯清風來入室。山王土地暗中忙。雲版鐘魚偷淚滴。世人莫道守空巖。亦有東籬打西壁。甞謂眾曰。參學至要。不出先南堂道。最初句及末後句。透得過者。一生事畢。儻或未然。更與你分作十門。各各印證自心。還得穩當也未。一.須信有教外別傳。二.須知有教外別傳。三.須會無情說法與有情說法無二。四.須見性如觀掌中之物。了了分明。一一田地穩密。五.須具擇法眼。六.須行鳥道玄路。七.須文武兼濟。八.須摧邪顯正。九.須大機大用。十.須向異類中行。凡欲紹隆法種。須盡此綱要。方坐得這曲彔床子。受得天下人禮拜。敢與佛祖為師。若不到恁麼田地。祇一向虗頭。他時異日。閻老子未放你在。間有學者各門頌出。呈師。師以頌示曰。十門綱要掌中施。機會來時自有為。作者不須排位次。大都首末是根基。
成都の楊氏の子である。年十四にして、白馬の安慧を礼して師と為す。南堂の道望を聞き、遂に往きて依る。堂香厳の枯木裏の竜吟の話を挙ぐ。往返酧詰す。師言下に於て大悟した。一日堂問うた、「寒岩を守る莫れ異草青々として、坐して白云宗の妙ならざるを却る。お前作麼生。」師は言った。「直に須らく剣を揮うべし。若し剣を揮わざれば、漁父巣に栖む。」堂矍然として言った。「此の小厮児。」師珍重して便ち行く。出でて東岩に住す。上堂。「月生一、東岩乍ち住して愁寂を増す。紅塵の世路多端有り、米面倉儲に顆粒無し。崖を伴と為し、泉を匹と為す。颯颯たる清風室に入り来たる。山王土地暗中に忙しく、云版鐘魚涙を倫んで滴らす。世人空岩を守ると道う莫れ、亦た東籬有りて西壁を打つ。」甞て衆に謂うて言った。「参学の至要は、先南堂の道に出でず、最初の句及び末後の句に在り。透過せば一生の事畢わる。儻し或いは未然ならば、更にお前の為に分ちて十門と作し、各々自心を印証す。還って穏当を得るや未だ。一、須らく教外別伝有るを信ずべし。二、須らく教外別伝有るを知るべし。三、須らく無情の説法と有情の説法と二無きを会すべし。四、須らく性を見ること掌中の物を観るが如く、了了分明にして一々田地穏密なるべし。五、須らく擇法の眼を具すべし。六、須らく鳥道玄路を行ずべし。七、須らく文武兼済すべし。八、須らく邪を摧き正を顕すべし。九、須らく大機大用すべし。十、須らく異類の中に向って行ずべし。凡そ法種を紹隆せんと欲せば、須らく此の綱要を尽くし、方に此の曲彔床子に坐し、天下人の礼拝を受け、敢えて仏祖と師と為るを得べし。若し恁麼の田地に至らざれば、只だ一向の虚頭なり、他時異日、閻老子未だお前を放さざるなり。」間に学者の各門に頌出し、師に呈する有り。師頌を以て示して言った。「十門の綱要掌中に施し、機会来れば自ら為有り。作者は位次を排するを須いず、大都首末是れ根基なり。」
簡州南巖勝禪師
簡州南岩勝禅師
上堂召大眾曰。護生須是殺。殺盡始安居。會得箇中意。分明在半途。且道到家一句又作麼生。釋迦彌勒沒量大。看來猶祇是他奴。僧問。放行五位即不問。把定三關事若何。師曰。橫按鏌鎁全正令。曰。把定三關蒙指示。放行五位事如何。師曰。太平寰宇斬痴頑。曰。恁麼則南巖門下。土曠人稀。師曰。靈利衲僧。祇消一點。曰。自古自今。同生同死時如何。師曰。家賊難防。曰。今日學人小出大遇去也。師便打。曰。須是老僧打你始得。僧禮拜。師曰。切忌詐明頭。
上堂、大衆を召して言った。「護生は須らく是れ殺すべし、殺尽して始めて安居す。箇中の意を会得せば、分明として半途に在り。且く道え到家の一句又た作麼生。釈迦弥勒も量無き大、看るに猶ほ只だ是れ他の奴なり。」僧が問うた。「放行の五位は則ち問わず、把定の三関の事は若何。」師は言った。「横に鏌鎁を按じて正令を全うす。」言った。「把定の三関は指示を蒙る、放行の五位の事は如何。」師は言った。「太平の寰宇痴頑を斬る。」言った。「恁麼ならば則ち南岩の門下、土旷にして人稀なり。」師は言った。「霊利の衲僧、只だ一点を消す。」言った。「自ら古今、生を同じく死を同じくする時は如何。」師は言った。「家賊防ぎ難し。」言った。「今日学人小出大遇し去るなり。」師便ち打つ。言った。「須らく是れ老僧お前を打たば始めて得。」僧が礼拝した。師は言った。「切に詐明頭を忌む。」
常德府梁山廓庵師遠禪師
常徳府梁山廓庵師遠禅師
合川魯氏子。上堂。舉楊岐三腳驢子話。乃召大眾曰。揚其湯者。莫若撲其火。壅其流者。莫若杜其源。此乃智人之明鑒。佛法之至論。正在斯焉。這因緣。如今叢林中提唱者甚多。商量者不少。有般底。祇道宗師家無固必。凡有所問。隨口便答。似則也似。是即未是。若恁麼。祇作箇乾無事會。不見楊岐用處。乃至祖師。千差萬別。方便門庭。如何消遣。又有般底。祇向佛邊會。卻與自己沒交涉。古人道。凡有言句。須是一一消歸自己。又作麼生。又有般底。一向祇作自己會。棄卻古人用處。唯知道明自己事。古人方便卻如何消遣。既消遣不下。卻似抱橋柱澡洗。要且放手不得。此亦是一病。又有般底。卻去腳多少處會。若恁麼會。此病最難醫也。所以他語有巧妙處。參學人卒難摸索。才擬心則差了也。前輩謂之楊岐宗旨。須是他屋裡人。到恁麼田地。方堪傳授。若不然者。則守死善道之謂也。這公案直須還他透頂徹底漢。方能了得。此非止禪和子會不得。而今天下叢林中。出世為人底。亦少有會得者。若要會去。直須向威音那畔。空劫已前。輕輕覷著。提起便行。捺著便轉。卻向萬仞峰前進一步。可以籠罩古今。坐斷天下人舌頭。如今還有恁麼者麼。有則出來道看。如無。更聽一頌。三腳驢子弄蹄行。直透威音萬丈坑。雲在嶺頭閑不徹。水流㵎下太忙生。湖南長老誰解會。行人更在青山外。上堂。天得一以清。地得一以寧。君王得一以治天下。這箇說話。是家常茶飯。須知衲僧家。別有奇特處始得。且道衲僧門下有甚奇特處。天得一。鬥牛女虗危室壁。地得一。萬象森羅及瓦礫。君王得一。上下四維無等匹。且道衲僧得一時如何。要見客從何處來。閑持經卷倚松立。浴佛上堂。舉藥山浴佛公案。拈雲。這僧問處。依稀越國。髣髴楊州。藥山答來。眼似流星。機如掣電。點檢將來。二俱不了。
合川の魯氏の子である。上堂。楊岐の三脚の驢子の話を挙げて、乃ち大衆を召して言った。「其の湯を揚ぐるは、其の火を払うに若かず、其の流を壅ぐるは、其の源を杜ぐるに若かず。此れ乃ち智人の明鑑・仏法の至論、正に斯に在り。此の因縁、如今叢林中に提唱する者甚く多く、商量する者少なからず。般の底有りて、只だ道う宗師家固必無しと、凡そ問い有れば口に随いて便ち答うと。似るは則ち也だ似る、是れは即ち未だ是れならず。若し恁麼ならば、只だ箇の乾無事会と作さんのみ、楊岐の用処を見ず。乃至祖師、千差万別の方便門庭、如何にか消遣せん。又た般の底有りて、只だ仏辺に向って会し、却って自己と交渉無し。古人道う、凡そ言句有らば、須らく是れ一々自己に消帰すべしと、又た作麼生。又た般の底有りて、一向只だ自己会と作し、古人の用処を棄却し、唯だ己の事を道明するを知る、古人の方便は却って如何にか消遣せん。既に消遣し下さざれば、却って橋柱を抱きて澡洗するに似たり、要して且く手を放すを得ず。此れ亦た是れ一病なり。又た般の底有りて、却って脚の多少の処に去りて会す。若し恁麼会せば、此の病最も医し難し。所以に他の語巧妙の処有れば、参学人卒に摸索し難し、才だ心を擬せば則ち差う。前輩之を楊岐の宗旨と謂う。須らく是れ他の屋裏の人、恁麼の田地に到りて、方に堪えて伝授せん。若し然らざる者は、則ち善道を守り死するの謂なり。此の公案直に須らく他の透頂徹底の漢に還し、方に能く了得せん。此れ禅和子会するを得ざるに止まらず、而今天下叢林中の出世为人の底も、亦た会得する者少なし。若し会せんことを要せば、直に須らく威音の那畔・空劫已前に向って、軽く覷着し、提起すれば便ち行き、捺着すれば便ち転じ、却って万仞の峰前に一歩を進め、以て古今を籠罩し、天下人の舌頭を坐断すべし。如今還って恁麼の者有るか。有らば出で来て道え看よ。無くば、更に一頌を聴け。三脚の驢子蹄を弄して行き、直に威音の万丈の坑を透る。雲は嶺頭に在りて閑にして徹せず、水は澗下に流れて太だ忙し。湖南の長老誰か会を解す、行人更に青山の外に在り。」上堂。「天一を得て以て清く、地一を得て以て寧し、君王一を得て以て天下を治む。此の説話は是れ家常の茶飯なり。須らく知れ衲僧家別に奇特の処有るを始めて得。且く道え衲僧の門下に什麼の奇特の処か有る。天一を得れば、斗牛女虚危室壁。地一を得れば、万象森羅及び瓦礫。君王一を得れば、上下四維等匹無し。且く道え衲僧一を得る時は如何。客の何の処よりか来たるを見んと要し、閑に経巻を持して松に倚りて立つ。」浴仏上堂。薬山浴仏の公案を挙げ、拈じて云く、「此の僧の問処は、依稀として越国・髣髴として楊州。薬山の答え来るは、眼は流星に似て機は掣電の如し。点検して将来すれば、二倶に了せず。」
若是山僧即不然。當是時。才見他問。只浴得這箇。且不浴得那箇。但轉木杓柄與伊。待他擬議之間。攔面便潑。假饒這僧有大神通。具大智慧。也無施展處。敢問大眾。這箇即且置。喚甚麼作那箇。下座。佛殿燒香。為你說破。師有十牛圖並頌行於世。
「若し是れ山僧ならば則ち然らず。是れ其の時に当り、才だ彼の問うを見れば、只だ此の箇を浴するも、且く彼の箇を浴せず、但だ木杓の柄を転じて伊に与え、彼の擬議の間を待ち、面を拦えて便ち潑がん。仮饒此の僧大神通有り、大智慧を具すとも、亦た施展の処無からん。敢えて大衆に問う、此の箇は即ち且く置く、什麼をか彼の箇と喚ぶ。」座を下り、仏殿に香を焼き、お前の為に説破せん。師に十牛図并びに頌有りて世に行わる。
嘉州能仁默堂紹悟禪師
嘉州能仁黙堂紹悟禅師
結夏上堂。最初一步。十方世界現全身。末後一言。一微塵中深鎻斷。有時提起。如倚天長劒。光耀乾坤。有時放下。似紅爐點雪。虗含萬象。得到恁麼田地。天魔外道。拱手歸降。三世諸佛。一時稽首。便可以大圓覺為我伽藍。於一毫端現寶王剎。如是則朝往西天。暮歸東土。亦是禁足。百華叢裡坐。婬坊酒肆行。亦是禁足。雖然如是。不曾動著這裡一步。恁麼則九旬無虗棄之功。百劫有今時之用。堪報不報之恩。以助無為之化。此即是涅槃妙心。金剛王寶劒。敢問大眾。作麼生得到這田地去。如人上山。各自努力。上堂。舉趙州訪二庵主公案。頌曰。一重山盡一重山。坐斷孤峰子細看。霧捲雲收山嶽靜。楚天空闊一輪寒。
結夏上堂。「最初の一歩、十方世界全身を現す。末後の一言、一微塵の中に深く鎖断す。時に提起すれば、倚天の長剣の如く、光は乾坤を耀かす。時に放下すれば、紅炉の点雪に似て、虚に万象を含む。恁麼の田地に到得せば、天魔外道も拱手して帰降し、三世の諸仏も一時に稽首す。便ち以て大円覚を我が伽藍と為し、一毫端に於て宝王刹を現ずべし。是の如くなれば則ち朝に西天に往き暮に東土に帰るも、亦た是れ禁足なり。百華の叢裏に坐し、婬坊酒肆に行くも、亦た是れ禁足なり。是の如しと雖も、曾て此の処の一歩を動着せず。恁麼なれば則ち九旬に虚棄の功無く、百劫に今時の用有り。堪えて報ずべからざるの恩に報い、以て無為の化を助く。此れ即ち是れ涅槃の妙心・金剛王の宝剣なり。敢えて大衆に問う、作麼生にして此の田地に到得せんや。人の山に上るが如く、各々自ら努力せよ。」上堂。趙州の二庵主を訪うの公案を挙げ、頌に曰く、「一重の山尽き一重の山、孤峰を坐断し仔細に看る。霧巻き雲収め山岳静か、楚天の空闊に一輪寒し。」
彭州土溪智陀子言庵主
彭州土渓智陀子言庵主
綿州人也。初至大隨。聞舉石頭和尚示眾偈。倐然領旨。歸隱土溪。懸崖絕壑間有石若蹲異獸。師鑿以為室。中發異泉。無涸溢。四眾訝之。居三十年。化風盛播。室成日。作偈曰。一擊石庵全。縱橫得自然。清涼無暑氣。涓潔有甘泉。寬廓含沙界。寂寥絕眾緣。箇中無限意。風月一床眠。
綿州の人である。初め大随に至り、石頭和尚の衆に示す偈を挙ぐるを聞き、倐然として旨を領す。帰りて土りて土渓に隠る。懸崖絶壑の間に石の蹲る異獣の若き有り。師鑿ちて以て室と為す。中に異泉を発し、涸溢無し。四衆之を訝る。居ること三十年、化風盛んに播まる。室成る日、偈を作して言った。「一撃して石庵全うし、縦横に自然を得たり。清涼にして暑気無く、涓潔にして甘泉有り。寛廓として沙界を含み、寂寥として衆縁を絶つ。箇中無限の意、風月一床の眠り。」
劍門南修道者
剣門南修の道者
淳厚之士也。自大隨一語契投。服勤不怠。歸謁崇化贇禪師。坐次。贇以宗門三印問之。南曰。印空印泥印水。平地寒濤競起。假饒去就十分。也是靈龜曳尾。
淳厚の士である。大随の一语契投してより、服勤怠らず。帰りて崇化贇禅師に謁す。坐次に、贇宗門の三印を以て之に問う。南は言った。「印空・印泥・印水、平地に寒涛競い起る。仮饒去就十分なるも、亦是れ霊亀の尾を曳くなり。」
莫將尚書
莫将尚書
字少虗。家世豫章分寧。因官西蜀。謁南堂靜禪師諮決心要。堂使其向好處提撕。適如廁。俄聞穢氣。急以手掩鼻。遂有省。即呈以偈曰。從來姿韻愛風流。幾笑時人向外求。萬別千差無覓處。得來元在鼻尖頭。南堂答曰。一法才通法法周。縱橫妙用更何求。青虵出匣魔軍伏。碧眼胡僧笑點頭。
字は少虚。家世は豫章分寧。官に因りて西蜀に在り。南堂静禅師に謁して心要を咨決す。堂其をして好の処に向って提撕せしむ。適に如厠して、俄かに穢気を聞き、急に手を以て鼻を掩う。遂に省有り。即ち偈を呈して言った。「従来姿韻風流を愛し、几たび笑う時人の外に求むるを。万別千差も覓る処無く、得るは元来鼻尖頭に在り。」南堂答えて言った。「一法才だ通ずれば法法周く、縦横の妙用更に何をか求めん。青虵匣を出でて魔軍伏し、碧眼の胡僧笑って頭を点く。」
龍圖王蕭居士
竜図王蕭居士
字觀復。留昭覺日。聞開靜板聲。有省。問南堂曰。某有箇見處。才被人問。卻開口不得。未審過在甚處。堂曰。過在有箇見處。堂卻問。朝斾幾時到任。公曰。去年八月四日。堂曰。自按察幾時離衙。公曰。前月二十。堂曰。為甚麼道開口不得。公乃契悟。
字は観復。昭覚に留まる日、開静の板声を聞き、省有り。南堂に問うて言った。「某に箇の見処有り、才だ人に問われて、却って口を開くを得ず。未だ審らかならず過は什麼の処に在る。」堂は言った。「過は箇の見処有るに在り。」堂却って問う。「朝斾几時か任に到る。」公は言った。「去年八月四日。」堂は言った。「按察自ら几時か衙を離る。」公は言った。「前月の二十。」堂は言った。「什麼が為に道う口を開くを得ずと。」公乃ち契悟した。
