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五燈會元卷第五

宋 · 普济 · 第31巻 / 144

因往羅漢。路逢一騎牛公子。師問。羅漢路向甚麼處去。公拍牛曰。道。道。師喝曰。這畜生。公曰。羅漢路向甚麼處去。師卻拍牛曰。道。道。公曰。直饒恁麼。猶少蹄角在。師便打。公拍牛便走。

羅漢に往くに因りて、路に一騎牛の公子に逢う。師は問うた。「羅漢の路は什麼の処に向いて去る。」公は牛を拍ちて言った。「道、道。」師は喝して言った。「這の畜生。」公は言った。「羅漢の路は什麼の処に向いて去る。」師は卻って牛を拍ちて言った。「道、道。」公は言った。「直にかくの如くを饒くるも、猶お蹄角の少なき在り。」師は便ち打った。公は牛を拍ちて便ち走った。

唐朝因禪師

唐朝因禅師

微時。甞運槌擊土次。見一大塊。戲槌猛擊之。應碎。豁然大悟(後有老宿聞雲。盡山河大地。被因禪師一擊百雜碎)。

微の時、嘗て槌を運らして土を撃つ次に、一大塊を見て、戯れに槌を猛く之を撃てば、応に碎けて、豁然として大いに悟れたり。(後に老宿有りて聞きて言った。「山河大地を尽くす、因禅師の一撃に被りて百の雑碎と為れり。」)

福州東山雲頂禪師

福州東山雲頂禅師

泉州人(遺其氏)。以再下春闈。往雲臺大吼寺剃染具戒。即謁大愚.芝神.鼎諲。後見羅漢下尊宿。始徹己事。道學有聞叢林。稱為頂三教。僧問。如何是和尚日用事。師曰。我吃飯。汝受飢。曰。法法不相到。又作麼生。師曰。汝作罪。我皆知。問。如何是和尚一枝拂。師曰。打破修行窟。曰。恁麼則本來無一物也。師曰。知無者是誰。曰。學人罪過。師曰。再思可矣。居士問洞山道。有一物上拄天。下拄地。未審是甚麼物。師曰。擔鐵架。吃鐵棒。曰。天地黑。山河走。師曰。閻老殿前添一鬼。北邙山下臥千年。士呌。快活。快活。師曰。也是野狐吞老鼠。九龍觀道士並三士人。請上堂。儒門畫八卦。造契書。不救六道輪回。道門朝九皇。鍊真氣。不達三祇劫數。我釋迦世尊。洞三祇劫數。救六道輪回。以大願攝人天。如風輪持日月。以大智破生死。若劫火焚秋毫。入得我門者。自然轉變天地。幽察鬼神。使須彌.鐵圍.大地.大海入一毛孔中。一切眾生。不覺不知。我說此法門。如虗空俱含萬象。一為無量。無量為一。若人得一。即萬事畢。珍重。

泉州の人なり(其の氏を遺す)。再び春闈を下げるを以って、雲台の大吼寺に往きて剃染し具戒す。即ち大愚、芝神、鼎𬤇に謁す。後に羅漢の下の尊宿に見えて、始めて己が事を徹す。道の学は叢林に聞えて、頂の三教と称す。僧が問うた。「如何なるか是れ和尚の日用の事。」師は言った。「我は飯を喫し、汝は飢を受く。」曰く、「法々は相い到らず、又作麼生。」師は言った。「汝は罪を作し、我は皆知る。」問う。「如何なるか是れ和尚の一枝の拂。」師は言った。「修行の窟を打ち破る。」曰く、「かくの如くすれば則ち本来一物無し。」師は言った。「無しと知る者は誰ぞ。」曰く、「学人は罪過なり。」師は言った。「再び思えば可なり。」居士が問うた。「洞山は道う一物有りて上は天を拄き、下は地を拄ぐと。未だ審らかに是れ什麼の物ぞ。」師は言った。「鉄の架を担いで、鉄の棒を喫す。」曰く、「天地は黑く、山河は走る。」師は言った。「閻老の殿の前に一鬼を添え、北邙の山の下に臥すこと千年なり。」士は叫びた。「快活、快活。」師は言った。「も是れ野狐が老鼠を呑みたり。」九龍観の道士と三士人と、上堂を請う:「儒の門は八卦を画き、契書を造るも、六道の輪回を救わず。道の門は九皇に朝して、真の気を錬るも、三祇の劫数を達せず。我が釈迦世尊は、三祇の劫数を洞かにして、六道の輪回を救う。大きなる願を以って人天を摂すこと、風輪の日月を持つが如く。大きなる智を以って生死を破ること、劫火の秋毫を焚くが若し。我が門に入る者は、自然に天地を転変し、幽かに鬼神を察す。須弥、鉄囲、大地、大海をして一毛孔の中に入れしむるに、一切の衆生は覚えず知らず。我は此の法門を説く、虚空の万象を俱に含むが如し。一は無量と為り、無量は一と為る。若し人一を得れば、即ち万事畢えり。珍重。」

婺州雲幽重惲禪師(今曰法雲)

婺州雲幽重恽禅師(今は法雲と曰う)

初謁雪峰。次依石霜。乃開悟。旋里隱居。蔽形唯一衲。住後。上堂。雲幽一隻箭。虗空無背面。射去徧十方。要且無人見。時有僧問。如何是和尚一隻箭。師曰。盡大地人無髑髏。

初めて雪峰に謁し、次いで石霜に依りて、乃ち悟を開く。里に旋りて隠居し、形を蔽うは唯一衲なり。住の後。上堂:「雲幽の一只の箭は、虚空は背面無し。射去りて十方に遍く、要して且つ人の見る無し。」時に僧が問うた。「如何なるか是れ和尚の一只の箭。」師は言った。「大地の人を尽くして髑髏無し。」

雙溪布衲如禪師

双渓布衲如禅師

因嵩禪師戲以詩悼之曰。繼祖當吾代。生緣行可規。終身常在道。識病懶尋醫。貌古筆難寫。情高世莫知。慈雲布何處。孤月自相宜。師讀罷舉筆答曰。道契平生更有誰。閑卿於我最心知。當初未欲成相別。恐誤同參一首詩。投筆坐亡。於六十年後。塔戶自啟。其真容儼然。

嵩禅師が戯れに詩を以って之を悼みて言うに因る:「祖に継ぐは当に吾が代、生縁は行規る可し。終身は常に道に在り、病を識りて医を尋ぬるを懶す。貌は古にして筆は写し難く、情は高くして世は知る莫し。慈の雲は何の処か布く、孤月は自ら相宜なり。」師は読み罷りて筆を挙げて答えて言った。「道は平生に契う、更に誰か有らん、卿は我に於て最も心を知るを閑す。当初は未だ相い別るを成さんと欲せざる、恐らくは同参の一首の詩を誤らんことを。」筆を投げて坐に亡ぶ。六十年の後に於て、塔の戸は自ら啓きて、其の真の容は俨然たり。

舒州投子通禪師

舒州投子通禅師

僧問。達磨未來時如何。師曰。兩岸唱漁歌。曰。來後如何。師曰。大海湧風波。問。如何是孤峰頂上節操長松。師曰。能為萬象主。不逐四時凋。問。如何是和尚這裡佛法。師曰。東壁打西壁。

僧が問うた。「達磨未だ来たらざる時如何。」師は言った。「両岸は漁歌を唱う。」曰く、「来たりて後如何。」師は言った。「大海は風波を涌ぐ。」問う。「如何なるか是れ孤峰の頂の上の節操の長松。」師は言った。「万象の主と為る能く、四時に逐りて凋まず。」問う。「如何なるか是れ和尚の此の里の佛法。」師は言った。「東の壁は西の壁を打つ。」

處州法海立禪師

処州法海立禅師

因朝廷有旨。革本寺為神霄宮。師陞座謂眾曰。都緣未徹。所以說是說非。葢為不真。便乃分彼分此。我身尚且不有。身外烏足道哉。正眼觀來。一場笑俱。今則聖君垂旨。更僧寺作神霄。佛頭上添箇冠兒。算來有何不可。山僧今日不免橫擔拄杖。高掛缽囊。向無縫塔中安身立命。於無根樹下嘯月吟風。一任乘雲仙客。駕鶴高人。來此呪水書符。叩牙作法。他年成道。白日上昇。堪報不報之恩。以助無為之化。秖恐不是玉。是玉也大奇。然雖如是。且道山僧轉身一句作麼生道。還委悉麼。擲下拂子。竟爾趨寂。郡守具奏其事。奉旨改其寺曰真身。

朝廷に旨有りて、本寺を革めて神霄宮と為るに因る。師は座に升りて衆に謂うて言った。「都て未だ徹せざるに縁りて、所以に是非を説き説くは是なり。蓋し真ならざるを為めて、便ち乃ち彼を分かち此を分かつ。我が身は尚且ち有らざれば、身の外は烏ぞ道うに足らんや。正の眼を以って観れば、一場の笑具なり。今は則ち聖君は旨を垂れて、更に僧寺を神霄と作す。佛の頭の上に箇の冠兒を添うるに、算め来れば何の不可か有らん。山僧は今日は免れず横たえて拄杖を担いで、高く鉢の囊を挂く。縫無き塔の中に向いて身を安んじ命を立て、根無き樹の下に於て月を嘯いて風を吟ず。一たび雲に乗る仙の客、鶴を駕る高の人に任せて、此に来りて水を咒い符を書き、牙を叩きて法を作さしめん。他年は道を成して、白日に上昇せん。報ずべきの恩を報ぜざるに堪えて、無為の化を助けん。只だ恐らくは是れ玉に非ざれ、是れ玉ならばも大いに奇なり。然りと雖も是の如し、且く道え山僧の身を転ずる一句は作麼生に道うや。還た委悉するや。」拂子を擲ち下ろして、竟に爾として寂に趨く。郡守は具さに其の事を奏す。旨を奉じて其の寺を改めて真身と曰う。

汝州天寧明禪師

汝州天寧明禅師

改德士日。師登座謝恩畢。乃曰。木簡信手拈來。坐具乘時放下。雲散水流去。寂然天地空。即斂目而逝。

徳士と改むる日、師は座に登りて恩を謝し畢りて、乃ち言った。「木の簡は手に信じて拈じ来り、坐具は時に乗じて放下す。雲散じ水流れて去れば、寂然として天地空なり。」即ち目を斂めて逝く。

蜀中仁王欽禪師

蜀の中の仁王欽禅師

僧問。如何是佛。師曰。聞名不如見面。曰。如何是祖師西來意。師曰。閙市裡弄猢猻。曰。如何是道。曰。大蟲看水磨。

僧が問うた。「如何なるか是れ佛。」師は言った。「名を聞くは面を見るに如かず。」曰く、「如何なるか是れ祖師西来の意。」師は言った。「閙の市の裏は猢猻を弄す。」曰く、「如何なるか是れ道。」曰く、「大虫は水の磨を看る。」

金陵鐵索山主(遺其名)

金陵鉄索山主(其の名を遺す)

僧問。久嚮鐵索。未審作何面目。主打露柱。僧曰。謝見示。主曰。你據箇甚麼便恁麼道。僧卻打露柱。主曰。且道索在恁麼處。僧作量勢。主曰。今日遇箇同參。

僧が問うた。「久しく鉄索を響かす、未だ審らかに何の面目を作す。」主は露柱を打った。僧は言った。「示し見たるを謝す。」主は言った。「汝は箇の什麼に據りて便ちかくの如く道う。」僧は卻って露柱を打った。主は言った。「且く道え索はかくの如くの処に在る。」僧は勢を量り作さんとす。主は言った。「今日は箇の同参に遇えり。」

樓子和尚

楼子和尚

不知何許人也。遺其名氏。一日偶經遊街市間。於酒樓下整襪帶次。聞樓上人唱曲雲。你既無心我也休。忽然大悟。因號樓子焉。

何許の人かを知らず、其の名氏を遺す。ある日偶さま街市の間を経て游び、酒の楼の下に於て襪帯を整うる次に、楼の上の人の曲を唱うて「汝既に心無くば我も亦た休めり」と説くを聞きて、忽然として大いに悟れり、因りて楼子と号す。

神照本如法師

神照本如法師

甞以經王請益四明尊者。者震聲曰。汝名本如。師即領悟。作偈曰。處處逢歸路。頭頭達故鄉。本來成現事。何必待思量。

嘗て経の王を以って四明尊者に益を請う。者は声を震わせて言った。「汝の名は本如なり。」師は即ち悟を領した。偈を作りて言った。「処処に帰路に逢い、頭頭に故郷に達す。本来は成現の事なり、何ぞ必ずしも思量を待たん。」

臨安府上竺圓智證悟法師

臨安府上竺円智証悟法師

台州林氏子。依白蓮僊法師。問具變之道。蓮指行燈曰。如此燈者。離性絕非。本自空寂。理則具矣。六凡四聖。所見不同。變則在焉。師不契。後因掃地誦法華經。至知法常無性。佛種從緣起。始諭旨。告蓮。蓮然之。師領徒以來。甞患本宗學者囿於名相。膠於筆錄。至以天台之傳為文字之學。南宗鄙之。乃謁護國此庵元禪師。夜語次。師舉東坡宿東林偈。且曰。也不易到此田地。庵曰。尚未見路徑。何言到耶。曰。祇如他道。溪聲便是廣長舌。山色豈非清淨身。若不到此田地。如何有這箇消息。庵曰。是門外漢耳。曰。和尚不吝。可為說破。庵曰。卻秖從這裡猛著精彩覷捕看。若覷捕得他破。則亦知本命元辰落著處。師通夕不寐。及曉鍾鳴。去其秘畜。以前偈別曰。東坡居士太饒舌。聲色關中欲透身。溪若是聲山是色。無山無水好愁人。特以告此庵。庵曰。向汝道是門外漢。師禮謝。未幾。有化馬祖殿瓦者。求語發揚。師書曰。寄語江西老古錐。從教日炙與風吹。兒孫不是無料理。要見冰消瓦解時。此庵見之。笑曰。須是這闍黎始得。

台州林氏の子なり。白蓮仙法師に依りて、具変の道を問う。蓮は行灯を指して言った。「此の灯の如くなる者は、性を離れて非を絶し、本より自ら空寂なり、理は則ち具えり。六凡と四聖とは、見る所は同じからず、変は則ち焉に在り。」師は契わず。後に地を掃きて法華経を誦するに因りて、「法の常に性無きを知る、佛の種は縁より起こる」に至りて、始めて旨を諭さえた。蓮に告ぐ。蓮は之を然とす。師は徒を領して以来、嘗て本宗の学者は名相に囿り、筆の録に膠けて、天台の伝を以って文字の学と為すを患え、南宗は之を鄙びた。乃ち護国の此庵元禅師に謁す。夜の語の次に、師は東坡の東林に宿するの偈を挙げ、且つ言った。「も易らず此の田地に到れり。」庵は言った。「未だ路の径を見ず、何をか到ると言わんや。」曰く、「只だ如他の道う、渓の声は便ち是れ広長の舌、山の色は豈に清浄の身に非ずやと。若し此の田地に到らざれば、如何にして此の消息有らん。」庵は言った。「是れ門外の漢のみ。」曰く、「和尚は吝かならざれば、可なり説き破るを為さん。」庵は言った。「卻て只だ此の裏に従りて猛く精彩を著けて覷捕して看よ。若し覷捕して他の破を得ば、則ち亦た本命の元辰の落ち著く処を知らん。」師は夕を通じて寐ねず。及び暁鐘鳴りて、其の秘畜を去りて、前の偈を以って別して言った。「東坡居士は太だ饒舌なり、声色の関の中は身を透さんと欲す。渓若し是れ声、山は是れ色ならば、山無く水無きは好く人を愁わしむ。」特に此庵に以って告ぐ。庵は言った。「汝に向いて道うは門外の漢と。」師は礼謝す。未だ幾ばくもなく、馬祖殿の瓦を化する者有りて、語を求めて発揚す。師は書して言った。「語を寄す江西の老古錐、教に従え日炙と風吹と。児孫は是れ料理無きに非ず、氷消瓦解の時を見んと要す。」此庵は之を見て、笑うて言った。「須く是れ這の闍黎にして始めて得べし。」

本嵩律師

本嵩律師

因無為居士楊傑請問宣律師所講毗尼性體。師以偈答曰。情智何甞異。犬吠虵自行。終南的的意。日午打三更。

無為居士楊杰の請い問う宣律師の講ずる所の毘尼の性体に因る。師は偈を以って答えて言った。「情智は何ぞ嘗て異ならん、犬は吠え蛇は自ら行く。終南の的の意は、日の午に三更を打つ。」

昔有一老宿。一夏不為師僧說話。有僧歎曰。我秖恁麼空過一夏。不敢望和尚說佛法。得聞正因兩字也得。老宿聞。乃曰。闍黎莫𧬊速。若論正因。一字也無。道了叩齒雲。適來無端。不合與麼道。隣壁有一老宿聞曰。好一釜羹。被一顆鼠糞汙卻(雪竇代雲。誰家釜裡無一兩顆)。

昔一老宿有りて、一夏に師僧の為に話を説かず。僧有りて嘆して言った。「我は只だかくの如く空しく一夏を過ぐ、敢えて和尚に佛法を説かんことを望まず、正因の両字を聞き得ばも得なり。」老宿は聞きて、乃ち言った。「闍黎は躁く速する莫れ。若し正因を論ぜば、一字も無し。」道い了えて歯を叩きて言った。「適来は端無し、与めに道うに合せず。」隣の壁に一老宿有りて聞きて言った。「好一の釜の羹を、一顆の鼠の糞に被りて汚れ却けり。」(雪窦代わりて言った。「誰が家の釜の裏に一両顆無からん。」)

昔有一僧。在經堂內不看經。每日打坐。藏主曰。何不看經。僧曰。某甲不識字。主曰。何不問人。僧近前。叉手鞠躬曰。這箇是甚麼字。主無對(大通本代雲。大道不識)。

昔一僧有りて、経堂の内に在りて経を看ず、毎日坐を打つ。蔵主は言った。「何ぞ経を看ざる。」僧は言った。「某甲は字を識らず。」主は言った。「何ぞ人に問わざる。」僧は近き前ね、手を叉きて鞠躬して言った。「這箇は是れ什麼の字ぞ。」主は対無し。(大通本代わりて言った。「大道は識らず。」)

昔有一老宿。住菴。於門上書心字。於牕上書心字。於壁上書心字(法眼雲。門上但書門字。牕上但書牕字。壁上但書壁字。玄覺雲。門上不要書門字。牕上不要書牕字。壁上不要書壁字。何故。字義炳然)。

昔一老宿有りて、庵に住す。門の上に心字を書し、窓の上に心字を書し、壁の上に心字を書す。(法眼曰く、「門の上は但だ門字を書せ、窓の上は但だ窓字を書せ、壁の上は但だ壁字を書せ。」玄覚曰く、「門の上は門字を書するを要せず、窓の上は窓字を書するを要せず、壁の上は壁字を書するを要せず。何を為めての故。字の義は炳然なり。」)

昔有二庵主。住庵。旬日不相見。忽相會。上庵主問下庵主。多時不相見。向甚麼處去。下庵主曰。在庵中造箇無縫塔。上庵主曰。某甲也要造一箇。就兄借取塔樣子。下庵主曰。何不早說。恰被人借去了也(法眼雲。且道是借他樣。不借他樣)。

昔二庵主有りて、庵に住す。旬日も相い見えず、忽ち相い会す。上庵主は下庵主に問うた。「時多く相い見えず、什麼の処に向いて去った。」下庵主は言った。「庵の中に在りて箇の縫無き塔を造れり。」上庵主は言った。「某甲もも箇を造らんと要す、兄に就きて塔の样子を借り取らん。」下庵主は言った。「何ぞ早く説かざる。恰も人に借り去られたる哉。」(法眼曰く、「且く道え是れ他の様を借るか、他の様を借らざるか。」)

昔有一庵主。見僧來豎起火筒曰。會麼。曰。不會。主曰。三十年用不盡底。僧卻問。三十年前用箇甚麼。主無對(歸宗柔代雲。也要知)。

昔一庵主有りて、僧の来るを見て火筒を竪起して言った。「会するか。」曰く、「会せず。」主は言った。「三十年に用い尽くさざる底。」僧は卻って問うた。「三十年前は箇の什麼を用いた。」主は対無し。(帰宗柔代わりて言った。「も知るを要す。」)

昔有一老宿。因江南國主問。予有一頭水牯牛。萬裡無寸草。未審向甚麼處放。宿無對(歸宗柔代雲。好處放)。

昔一老宿有りて、江南の国主の問うに因る:「予に一頭の水牯牛有り、万里に寸草無し。未だ審らかに什麼の処に向いて放たん。」宿は対無し。(帰宗柔代わりて言った。「好処に放て。」)

昔有一老宿。問僧。甚麼處來。僧曰。牛頭山禮拜祖師來。宿曰。還見祖師麼。僧無對。(歸宗柔代雲。大似不相信)。

昔一老宿有りて、僧に問うた。「什麼の処より来た。」僧は言った。「牛頭山に祖师を礼拜して来たり。」宿は言った。「還た祖师を見るか。」僧は対無し。(帰宗柔代わりて言った。「大いに信じ相わざるに似たり。」)

昔有一老宿。有偈曰。五蘊山頭一段空。同門出入不相逢。無量劫來賃屋住。到頭不識主人公。(有老宿雲。既不識他。當初問甚麼人賃)。

昔一老宿有りて、偈有りて曰く、「五蘊の山の頭の一段の空は、同門は出入して相い逢わず。無量の劫の来は屋を賃して住す、頭に到りて主人公を識らず。」(老宿有りて言った。「既に他を識らざれば、当初は什麼の人に問い賃した。」)

僧問老宿。如何是密室中人。老宿曰。有客不答話(玄沙雲。何曾密。歸宗柔別老宿雲。你因甚麼得見)。

僧が老宿に問うた。「如何なるか是れ密室の中の人。」老宿は言った。「客有りて話に答えず。」(玄沙曰く、「何ぞ曾て密ならん。」帰宗柔は老宿に別して言った。「汝は什麼に因りて見るを得た。」)

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