Libo

五燈會元卷第十

宋 · 普济 · 第88巻 / 144

上堂召大眾曰。春將至。歲已暮。思量古往今來。祇是箇般調度。凝眸昔日家風。下足舊時岐路。勸君休莫莽鹵。眨上眉毛須薦取。東村王老笑呵呵。此道今人棄如土。

上堂して大衆を召して言った。「春は将に至らんとし、歳は已に暮れんとす、思量すれば古往今来は、只だ是れ箇の般の調度、眸を凝らせば昔日の家風、足を下せば旧時の岐路、君に勧む莽卤に莫れ、眉毛を眨ぐには須く薦取すべし、東村の王老は笑うこと呵呵、此の道は今人は土の如くに棄つ。」

青原下十四世

青原下十四世

長蘆了禪師法嗣

長蘆了禅師法嗣

明州天童宗玨禪師

明州天童宗玨禅師

僧問。如何是道。師曰。十字街頭休斫額。上堂。劫前運步。世外橫身。妙契不可以意到。真證不可以言傳。直得虗靜斂氛。白雲向寒巖而斷。靈光破暗。明月隨夜船而來。正恁麼時作麼生履踐。偏正不曾離本位。縱橫那涉語因緣。

僧が問うた。「如何なるか是れ道。」師は言った。「十字街頭に額を斫るを休めよ。」上堂して言った。「劫の前に歩を運び、世の外に身を横え、妙契は意を以て到る可からず、真証は言を以て伝う可からず、直に虗静は氛を斂じ、白雲は寒巌に向かって断ち、霊光は暗を破り、明月は夜船に随いて来たる、正に恁麼なる時は作麼生に履践せん、偏正は曾て本位を離れず、縦横は那ぞ語の因縁に渉らん。」

真州長蘆妙覺慧悟禪師

真州長蘆妙覚慧悟禅師

上堂。盡大地是箇解脫門。把手拽不肯入。雪峰老漢抑逼人作麼。既到這裡。為甚麼鼻孔在別人手裡。良久曰。貪觀天上月。失卻手中橈。僧問。鴈過長空。影沈寒水。鴈無遺蹤之意。水無沈影之心。還端的也無。師曰。蘆花兩岸雪。江水一天秋。曰。便恁麼去時如何。師曰。鴈過長空聻。僧擬議。師曰。靈利衲子。

上堂して言った。「大地を尽くし是れ箇の解脱の門、手を把りて拽くるも入るを肯せず、雪峰の老漢は抑えて人を逼るを作麼、既に這裏に到れば、なぜ鼻孔は別人の手裏に在る。」良久して言った。「天上の月を観るを貪りて、手中の橈を失い却る。」僧が問うた。「雁は長空を過ぎて影は寒水に沈む、雁は蹤を遺す意無く、水は影を沈む心無し、還た端的なるや無しや。」師は言った。「蘆花は両岸の雪、江水は一天の秋。」言った。「便ち恁麼に去る時如何。」師は言った。「雁は長空を過ぐる聻。」僧が擬議せば、師は言った。「霊利なる衲子。」

福州龜山義初禪師

福州亀山義初禅師

上堂。久默斯要。不務速說。釋迦老子寐語作麼。我今為汝保任。斯事終不虗也。大似壓良為賤。既不恁麼。畢竟如何。白雲籠嶽頂。翠色轉崔嵬。

上堂して言った。「久しく黙すは斯に要なり、速く説くを務めず、釈迦老子は寐語を作すか、我は今汝の為に保任せん、斯の事は終に虗ならざるなり、大いに良を圧して賤と為すに似たり、既に恁麼ならざれば、畢竟に如何、白雲は岳頂を籠め、翠色は転じて崔嵬なり。」

建康保寧興譽禪師

建康保寧興誉禅師

上堂。步入道場。影涵宗鑑。粲粲星羅霽夜。英英花吐春時。木人密運化機。絲毫不爽。石女全提空印。文彩未彰。且道不一不異。無去無來。合作麼生體悉。的的縱橫皆妙用。阿儂元不異中來。

上堂して言った。「歩を道場に入れて、影は宗鑑に涵る、粲粲たる星羅の霁夜、英英たる花の春時に吐く、木人は密かに化機を運び、絲毫も爽わず、石女は全く空印を提げ、文彩は未だ彰れず、且く道え一ならず異ならず、去る無く来る無し、合作麼生に体悉せん、的的として縦横は皆妙用、阿儂は元より中より来るに異ならず。」

真州北山法通禪師

真州北山法通禅師

上堂。吞盡三世底。為甚麼開口不得。照破四天下底。為甚麼開眼不得。作麼生得十成通暢去。金針雙鏁備。葉露隱全該。僧問。斷言語。絕思惟處。乞師指示。師曰。滴水不入石。

上堂して言った。「三世を吞尽くす底は、なぜ口を開くを得ざる、四天下を照破する底は、なぜ眼を開くを得ざる、作麼生にして十成に通暢して去るを得ん、金鍼は双鎖を備え、葉露は全該を隱す。」僧が問うた。「言語を断ち、思惟を絶する処に、乞う師指示せん。」師は言った。「滴水は石に入らず。」

天童覺禪師法嗣

天童覚禅師法嗣

明州雪竇聞庵嗣宗禪師

明州雪竇聞庵嗣宗禅師

徽州陳氏子。幼業經圓具。依妙湛慧禪師。詰問次。釋然契悟。慧以麈尾拂付之。後謁宏智。蒙印可。其道愈尊。出住普照.善權.翠巖.雪竇。上堂。人人有箇鼻孔。唯有善權無鼻孔。為甚麼無。二十年前被人掣落了也。人人有兩箇眼睛。唯有善權無眼睛。為甚麼無。被人木槵子換了也。人人有箇髑髏。唯有善權無髑髏。為甚麼無。借人作屎杓了也。遂召大眾曰。鼻孔又無。眼睛又無。髑髏又無。諸人還識善權麼。若也不識。是諸人埋沒善權。其或未然。更聽一頌。㵎底泥牛金貼面。山頭石女著真紅。繫驢橛上生芝草。不是雲靄香爐峰。上堂。翠巖不是不說。祇為無箇時節。今朝快便難逢。一句為君剖決。露柱本是木頭。秤鎚祇是生鐵。諸人若到諸方。莫道山僧饒舌。僧問。蓮花未出水時如何。師曰。沒卻你鼻孔。曰。出水後如何。師曰。穿著你眼睛。曰。如何是正法眼。師曰。烏豆。問。如何是君。師曰。磨礱三尺劒。待斬不平人。曰。如何是臣。師曰。白雲閑不徹。流水太忙生。曰。如何是君臣道合。師曰。雲行雨施。月皎星輝。問。如何是正中偏。師曰。菱花未照前。曰。如何是偏中正。師曰。團圞無少剩。曰。如何是正中來。師曰。徧界絕纖埃。曰。如何是兼中至。師曰。齧鏃功前戲。曰。如何是兼中到。師曰。十道不通耗。問。如何是轉功就位。師曰。撒手無依全體現。扁舟漁父宿蘆花。曰。如何是轉位就功。師曰。半夜嶺頭風月靜。一聲高樹老猿啼。曰。如何是功位齊彰。師曰。出門不踏來時路。滿目飛塵絕點埃。曰。如何是功位俱隱。師曰。泥牛飲盡澄潭月。石馬加鞭不轉頭。師終於本山。塔全身寺之西南隅。

徽州の陳氏の子。幼にして経を業として円具す。妙湛慧禅師に依る。詰問の次、释然として契悟せり。慧が麈尾の拂を以て之に付す。後に宏智を謁えて、印可を蒙る。其の道は愈々尊し。出でて普照・善権・翠巌・雪竇に住す。上堂して言った。「人々に箇の鼻孔有り、唯だ善権のみ鼻孔無し、なぜ無き、二十年前に人に掣め落とされたり、人々に両箇の眼睛有り、唯だ善権のみ眼睛無し、なぜ無き、人に木槵子を以て換えられたり、人々に箇の髑髏有り、唯だ善権のみ髑髏無し、なぜ無き、人に借りて屎杓と作したり。」遂に大衆を召して言った。「鼻孔も又無く、眼睛も又無く、髑髏も又無し、諸人は還た善権を識るか、若しも識らざれば、是れ諸人が善権を埋没する、其の或いは未だ然らざれば、更に一頌を聴け、㵎底の泥牛は金を面に貼り、山頭の石女は真紅を着る、驢を繋ぐ橛の上に芝草生ず、是れ雲靄の香炉峰に非ず。」上堂して、翠巌は説かざるに非らず、只だ箇の時節無きが為なり、今朝の快便は逢い難く、一句を君の為に剖決す、露柱は本より是れ木頭、秤鎚は只だ是れ生鉄、諸人は若し諸方に到らば、山僧が舌を饒ると道うこと莫れ。」僧が問うた。「蓮花未だ水を出でざる時如何。」師は言った。「汝の鼻孔を没し却る。」言った。「水を出でし後如何。」師は言った。「汝の眼睛を穿り着けん。」言った。「如何なるか是れ正法眼。」師は言った。「烏豆。」問う。「如何なるか是れ君。」師は言った。「三尺の剣を磨礲して、平らかならざる人を斬らんと待つ。」言った。「如何なるか是れ臣。」師は言った。「白雲は閑として彻せず、流水は太だ忙しきが如し。」言った。「如何なるか是れ君臣の道合。」師は言った。「雲は行き雨は施し、月は皎として星は輝く。」問う。「如何なるか是れ正中偏。」師は言った。「菱花は未だ照らさざる前。」言った。「如何なるか是れ偏中正。」師は言った。「団圞にして少しの剰え無し。」言った。「如何なるか是れ正中の来。」師は言った。「徧界は繊埃を絶つ。」言った。「如何なるか是れ兼中至。」師は言った。「鏃を嚙むは功前の戯。」言った。「如何なるか是れ兼中到。」師は言った。「十道は耗に通ぜず。」問う。「如何なるか是れ功を轉じて位に就く。」師は言った。「手を撒きて依無く全体現じ、扁舟の漁父は蘆花に宿す。」言った。「如何なるか是れ位を轉じて功に就く。」師は言った。「半夜に嶺頭の風月静かなり、一声は高樹の老猿啼く。」言った。「如何なるか是れ功位斉しく彰る。」師は言った。「門を出でて来し時の路を踏まず、目に満つる飛塵は点埃を絶つ。」言った。「如何なるか是れ功位俱に隱る。」師は言った。「泥牛は澄潭の月を飲尽くし、石馬は鞭を加えども頭を轉ぜず。」師は終に本山に於て卒し、全身を寺の西南隅に塔した。

常州善權法智禪師

常州善権法智禅師

陝府栢氏子。壯於西京聖果寺祝髮。習華嚴。棄謁南陽謹。次參大洪智。踰十年無所證。後於宏智言下豁然。出居善權。次遷金粟。上堂。明月高懸未照前。雪眉人憑玉欄幹。夜深雨過風雷息。客散雲樓酒椀乾。上堂。三界無法。何處求心。驚虵入草。飛鳥出林。雨過山堂秋夜靜。市聲終不到孤岑。

陜府の栢氏の子。壮にして西京の聖果寺に於て髪を祝ぎ、華厳を習う。棄てて南陽の謹を謁え、次いで大洪智に参ず。十年を逾えて証する所無し。後に宏智の言下に豁然たり。出でて善権に居り、次いで金粟に遷る。上堂して言った。「明月は高く懸りて未だ照らさざる前、雪眉の人は玉欄干に凭る、夜は深く雨過ぎて風雷息み、客は散じて雲楼に酒椀干からん。」上堂して言った。「三界に法無し、何の処にか心を求めん、虵を驚かせば草に入り、飛鳥は林を出づ、雨過ぎて山堂の秋夜静かなり、市声は終に孤岑に到らず。」

杭州淨慈自得慧暉禪師

杭州浄慈自得慧暉禅師

會稽張氏子。幼依澄照道凝。染削進具。甫二十。扣真歇於長蘆。微有所證。旋里謁宏智。智舉當明中有暗。不以暗相遇。當暗中有明。不以明相覩。問之。語不契。初夜定。回往聖僧前燒香。而宏智適至。師見之。頓明前話。次日入室。智舉堪嗟去日顏如玉。卻歎回時𩯭似霜。詰之。師曰。其入離。其出微。自爾問答無滯。智許為室中真子。紹興丁巳開法補陀。徙萬壽及吉祥.雪竇。淳熈三年。勑補淨慈。上堂。朔風凜凜掃寒林。葉落歸根露赤心。萬派朝宗船到岸。六窓虗暎芥投針。本成現。莫他尋。性地閑閑耀古今。戶外凍消春色動。四山渾作木龍吟。上堂。釋迦老子。窮理盡性。金口敷宣。一代時教。珠回玉轉。被人喚作拭不淨故紙。達磨祖師。以一乘法直指單傳。面壁九年。不立文字。被人喚作壁觀婆羅門。且道作麼生行履。免被傍人指注去。衲帔蒙頭萬事休。此時山僧都不會。上堂。巢知風。穴知雨。甜者甜兮苦者苦。不須計較作思量。五五從來二十五。萬般施設到平常。此是叢林飽參句。諸人還委悉麼。野老不知堯舜力。鼕鼕打皷祭江神。上堂。谷之神。樞之要。裡許旁參。回途得妙。雲雖動而常閑。月雖晦而彌照。賓主交參。正偏兼到。十洲春盡花凋殘。珊瑚樹林日杲杲。僧問。如何是正中偏。師曰。昨夜三更星滿天。曰。如何是偏中正。師曰。白雲籠嶽頂。終不露崔嵬。曰。如何是正中來。師曰。莫謂鯤鯨無羽翼。今日親從鳥道來。曰。如何是偏中至。師曰。應無跡。用無痕。曰。如何是兼中到。師曰。石人衫子破。大地沒人縫。上堂。皮膚脫落絕方隅。明瞭身心一物無。妙入道寰深靜處。玉人端馭白牛車。妙明田地。達者還稀。識情不到。唯證方知。白雲兒靈靈自照。青山父卓卓常存。機分頂後光。智契劫前眼。所以道新豐路兮峻仍皾。新豐洞兮湛然沃。登者登兮不動搖。

会稽の張氏の子。幼にして澄照道凝に依り、染削して具を進む。甫らかに二十にして、長蘆に於て真歇を扣き、微かに証する所有り。里に旋りて宏智を謁う。智が当に明中に暗有りて、暗を以て相遇せず、当に暗中に明有りて、明を以て相覩せずを挙げて之に問う。語は契らず。初夜に定して、回りて聖僧の前に往きて香を焼く。宏智が適に至りて、師が之を見て、頓に前の話を明らむ。次日室に入る。智が堪え嗟く去日の顔は玉の如し、却って嘆ず回時の𩯭は霜に似たりとを挙げて之を詰ず。師は言った。「其の入るは離にして、其の出づるは微なり。」自より問答に滞無し。智は室中の真子と許す。紹興丁巳に補陀に於て法を開き、万寿及び吉祥・雪竇に徙し、淳熈三年に勅して浄慈を補す。上堂して言った。「朔風凛凛として寒林を掃い、葉は落ちて根に帰りて赤心を露う、万派は宗に朝りて船は岸に到り、六窗は虗暎にして芥は針に投ず、本より成り現ず、他に尋ぬること莫れ、性地は閑閑として古今に耀う、戸外は凍消えて春色動き、四山は渾く木龍の吟と作る。」上堂して言った。「釈迦老子は、理を窮め性を尽くし、金口に敷宣して一代の時教、珠回り玉転じ、人に拭浄ならざる故紙と喚ばれ、達磨祖師は、一乗法を以て直に指し単伝して、面壁九年、文字を立てず、人に壁観の婆羅門と喚ばる、且く道え作麼生に行履して、傍人の指注に被るを免れん、衲帔を頭に蒙せば万事休み、此の時山僧も都て会せず。」上堂して言った。「巣は風を知り、穴は雨を知る、甜きは甜く苦きは苦し、計校して思量を作すを須いず、五五は从来二十五、万般の施設は平常に到る、此は是れ叢林の飽参の句、諸人は還た委悉するか、野老は堯舜の力を知らず、冬冬として皷を打ちて江神を祭る。」上堂して言った。「谷の神、枢の要は、裏許に旁参して、途を回して妙を得る、雲は動くと雖も常に閑なり、月は晦むと雖も弥よ照らす、賓主交参して、正偏兼ねて到る、十洲の春尽きて花凋残すれど、珊瑚樹の林は日に杲杲たり。」僧が問うた。「如何なるか是れ正中偏。」師は言った。「昨夜三更に星は天に満つ。」言った。「如何なるか是れ偏中正。」師は言った。「白雲は岳頂を籠めて、終に崔嵬を露わさず。」言った。「如何なるか是れ正中の来。」師は言った。「鯤鯨に羽翼無しと謂うこと莫れ、今日親しく鳥道に従りて来た。」言った。「如何なるか是れ偏中至。」師は言った。「に迹無く、用に痕無し。」言った。「如何なるか是れ兼中到。」師は言った。「石人の衫子は破れて、大地に縫う人無し。」上堂して言った。「皮肤脱落して方隅を絶ち、身心を明了して一物無し、妙に道寰の深静の処に入りて、玉人は端く白牛車を馭す、妙明の田地は、達する者は還た稀なり、識情は到らず、唯だ証して方に知る、白雲の児は霊霊として自ら照らし、青山の父は卓卓として常に存す。」機は頂後の光を分かち、智は劫前の眼に契う、是を以て道う新豊の路は峻にして仍ほ皾し、新豊の洞は湛然として沃かなり、登る者は登るに動揺せず、

遊者遊兮莫忽速。亭堂雖有到人稀。林泉不長尋常木。諸禪德。向上一著尊貴難明。瑠璃殿上不稱尊。翡翠簾前還合伴。正與麼時。針線貫通。真宗不墜。合作麼生施設。滿頭白髮離巖谷。半夜穿雲入市鄽。上堂。舉傅大士法身頌雲。空手把鋤頭。步行騎水牛。人從橋上過。橋流水不流。雲門大師道。諸人東來西來。南來北來。各各騎一頭水牯牛來。然雖如是。千頭萬頭。祇要識取這一頭。師曰。雲門尋常乾𪹼𪹼地。錐劄不入。到這裡。也解拖泥帶水。諸人祇今要見這一頭麼。天色稍寒。各自歸堂。上堂。舉風幡話。師曰。風幡動處著得箇眼。卻是上座。風幡動處失卻箇眼。即是風幡。其或未然。不是風幡不是心。衲僧徒自強錐針。巖房雨過昏煙淨。臥聽涼風生竹林。七年秋。退歸雪竇。十年仲冬二十九日中夜。沐浴而逝。窆全身於明覺塔右。

游ぶ者は游ぶに忽速なること莫れ、亭堂は有ると雖も到る人稀なり、林泉は尋常の木を長ぜず。諸の禅徳、向上の一着は尊貴にして明らめ難し、瑠璃の殿上には尊と称せず、翡翠の簾前には還た伴に合す、正に恁麼なる時、鍼線は貫通し、真宗は墜ちず、合作麼生に施設せん、頭に満つる白髪は巌谷を離れ、半夜に雲を穿ちて市鄽に入る。」上堂して、傅大士の法身の頌を挙げて言った。「空の手に鋤頭を把り、歩行して水牛に騎る、人は橋の上を従りて過ぎ、橋は流れて水は流れず。雲門大師は道う、諸人は東より来り西より来り、南より来り北より来りて、各々一頭の水牯牛に騎りて来る、然ると雖も是の如し、千頭万头も、只だ要す這の一頭を識取せんを、師は言った、雲門は尋常は干𪹼𪹼の地にして、錐札も入らず、這裏に到れば、亦た泥を拖き水を帯ぶるを解す、諸人は只今這の一頭に見えんと要するか、天色は稍や寒し、各々自ら堂に帰れ。」上堂して、風幡の話を挙げる。師は言った。「風幡の動く処に箇の眼を着け得ば、却って是れ上座、風幡の動く処に箇の眼を失い却れば、即ち是れ風幡、其の或いは未だ然らざれば、風幡に非ず心に非ず、衲僧は徒らに自ずから錐鍼を強いる、巌房は雨過ぎて昏烟浄く、臥して聴く涼風の竹林に生ずるを。」七年の秋、退きて雪竇に帰る。十年仲冬二十九日中夜に、沐浴して逝いた。全身を明覚塔の右に窆す。

明州瑞巖石窻法恭禪師

明州瑞巌石窓法恭禅師

郡之奉化林氏子。於棲真院下髮受具。往延慶講下。一夕。誦法華至父母所生眼。悉見三千界時。聞風刺椶櫚葉聲。忽然有省。棄依天童。始明大旨。凡當世弘法者。悉往諮決。出住能仁光孝瑞巖。上堂。春風楊柳眉。春禽弄百舌。一片祖師心。兩處俱漏洩。不動步還家。習漏頓消滅。暗投玉線芒。曉貫金針穴。深固實幽遠。無人孰辨別。慚愧可憐生。頭頭皆合轍。不念阿彌陀。南無乾屎橛。無智痴人前。第一不得說。上堂。見得徹。用時親。相逢盡是箇中人。望空雨寶休誇富。無地容錐未是貧。踏著秤鎚硬似鐵。八兩元來是半斤。上堂。舉世尊生下指天指地公案。頌曰。五天一隻蓬蒿箭。攪動支那百萬兵。不得雲門行正令。幾乎錯認定盤星。

郡の奉化の林氏の子。栖真院に於て髪を下し具を受け、延慶の講下に往き、一夕に法華を誦して父母の生ずる所の眼は悉く三千界を見るに至る時、風の椶櫚の葉を刺す声を聞きて、忽然として省有り。棄てて天童に依りて、始めて大旨を明らむ。凡そ当世に法を弘むる者には、悉く往きて咨決した。出でて能仁光孝瑞巌に住す。上堂して言った。「春。「春風は楊柳の眉、春禽は百舌を弄す、一片の祖師の心は、両処に俱に漏泄す、歩を動かさずして家に還り、習漏は頓に消滅す、暗に玉線の芒を投げ、暁に金鍼の穴を貫く、深固にして実に幽遠なり、人無き孰れか辨別せん。」慚愧して憐れむ可き生なり、頭頭は皆轍に合す。阿弥陀を念ぜず、南无の干屎橛。智無き痴人の前には、第一に説くを得ず。上堂して言った。「見ること彻すれば用に親しく、相逢うは尽く是れ箇中の人、空に望みて宝を雨らすは富を誇るを休め、錐を容るる地無きは未だ是れ貧ならず、秤鎚を踏着すれば硬きこと鉄の似たり、八両は元来是れ半斤なり。」上堂して、世尊が生れて天を指し地を指した公案を挙げて、頌して言った。「五天の一只の蓬蒿の箭、支那の百万の兵を攪動す、雲門の正令を行ずるを得ざれば、幾ほどに錯りて定盤の星を認めんとす。」

襄州石門清涼法真禪師

襄州石門清涼法真禅師

劒門人也。上堂。柳色含煙。春光迥秀。一峰孤峻。萬卉爭芳。白雲淡濘已無心。滿目青山元不動。漁翁垂釣。一溪寒雪未曾消。野渡無人。萬古碧潭清似鏡。賓中有主。拄杖橫挑日月輪。主中有賓。踏破草鞋赤腳走。直得賓主互顯。殺活自由。理事渾融。正偏不滯。入荒田不揀。信手拈來草。且道如何委悉。塵中雖有隱身術。爭似全身入帝鄉。

剣門の人である。上堂して言った。「柳色は烟を含み、春光は迥かに秀で、一峰は孤峻にして、万卉は芳を争う、白雲は淡泞として已に心無く、目に満つる青山は元より動かず、漁翁は釣を垂れて、一谿の寒雪は未だ曾て消えず、野渡は人無くて、万古の碧潭は清きこと鏡の似たり。」賓中に主有りて、拄杖は横に日月の輪を挑ぐ、主中に賓有りて、草鞋を踏破りて赤脚に走る、直に賓主互に顕れ、殺活は自由、理事は渾融して、正偏は滞らず、荒田に入りて揀わず、信手に拈げ来れば草なり、且く道え如何に委悉せん、塵中は隠身の術有ると雖も、争でか全身で帝郷に入るに似ん。」

明州光孝了堂思徹禪師

明州光孝了堂思彻禅師

上堂。羊頭車子推明月。沒底船兒載曉風。一句頓超情量外。道無南北與西東。所以劫前消息。非口耳之所傳。格外真規。豈思量之能解。須知佛佛祖祖。了無一法為人。子子孫孫。直下全身荷負。既已萬機寢削。自然一糝不留。湛湛之波。碧水冷涵於秋色。靈靈之照。霽天淨洗於氷輪。宛轉旁參。葉通兼帶。夢手推開玉戶。飜身撥動機輪。正令才行。又見一陽萌動。化工密運。俄驚三世變遷。雖則默爾無言。爭奈熾然常說。無遷無變。今朝拈置一邊。有故有新。且道如何話會。諸人還委悉麼。群陰消剝盡。來日是書云。

上堂して言った。「羊頭の車子は明月を推し、底無き船児は暁風を載す、一句は頓に情量の外を超え、道は南北と西東と無し、是を以て劫前の消息は、口耳の伝うる所に非ず、格外の真規は、豈に思量の解する能う所、須知すべし仏々祖々は、了て人と為る一法無し、子々孫々は、直下に全身で荷負す、既に万机は寝削し、自ずから一糁も留めず、湛湛たる波は、碧水は秋色を冷に涵し、霊霊たる照は、霁天は氷輪を浄く洗う、宛転に旁参して、葉は通じ兼帯す、夢の手は玉戸を推開き、身を飜して機輪を撥動す、正令は纔かに行われて、又た一陽の萌動を見る、化工は密かに運びて、俄かに三世の変遷を驚かす、則ち黙尔として言無しと雖も、争奈せん熾然として常に説く、遷る無く変る無しは、今朝拈げて一辺に置き、故有り新有りて、且く道え如何に話会せん、諸人は還た委悉するか、群陰は消剥し尽きて、来日は是れ書雲なり。」

隨州大洪法為禪師

随州大洪法為禅師

天台鮑氏子。上堂。法身無相。不可以音聲求。妙道亡言。豈可以文字會。縱使超佛越祖。猶落階梯。直饒說妙談玄。終掛唇齒。須是功燻不犯。形跡不留。枯木寒巖。更無津潤。幻人木馬。情識皆空。方能垂手入鄽。轉身異類。不見道。無漏國中留不住。卻來煙塢臥寒沙。

天台の鮑氏の子。上堂して言った。「法身は相無くして、音声を以て求む可からず、妙道は言を亡して、豈に文字を以て会する可けん、縦使し仏を超え祖を越ゆるも、猶お階梯に落ち、直饒妙を説き玄を談ずるも、終に唇歯に挂く、須く是れ功に熏じて犯さず、形迹を留めざるべし、枯木寒巌は、更に津潤無し、幻人木馬は、情識皆空し、方に能く手を垂れて鄽に入り、身を轉じて異類に就く、道うを見ざるか、漏無き国中に留まるを得ず、却りて来りて烟塢の寒沙に臥す。」

真州長蘆琳禪師

真州長蘆琳禅師

上堂拈拄杖曰。其宗也離心意識。其旨也超去來今。離心意識。故品萬類不見差殊。超去來今。故盡十方更無滲漏。當頭不犯。徹底無依。悟向朕兆未生已前。用在功勳不犯之處。平常活計。不用躊躕。擬議之間。即沒交涉。

上堂して拄杖を拈じて言った。「其の宗や心を離れ意識を離れ、其の旨や去を超え来を超え今を超ゆ、心を離れ意識を離るれば、故に万類を品して差殊を見ず、去来今を超ゆれば、故に十方を尽くして更に渗漏無し、頭に当たりて犯さず、彻底して依無し、朕兆未だ生ぜざる已前に向かって悟り、功勲犯さざるの処に於て用ゐる、平常の活計は、踌蹰を用ゐず、擬議の間に、即ち交渉を没せん。」

大洪預禪師法嗣

大洪預禅師法嗣

臨江軍慧力悟禪師

臨江軍慧力悟禅師

上堂。一切聲。是佛聲。簷前雨滴響泠泠。一切色。是佛色。覿面相呈諱不得。便恁麼。若為明。碧天雲外月華清。

上堂して言った。「一切の声は、是れ仏の声、檐前の雨滴は響き泠泠、一切の色は、是れ仏の色、覿面に相呈して諱むを得ず、便ち恁麼にして、若為に明らかならん、碧天雲外の月華清し。」

福州雪峰慧深首座

福州雪峰慧深首座

示眾。未得入頭應切切。入頭已得須教徹。雖然得入本無無。莫守無無無間歇。大洪聞之。乃曰。深兄說禪若此。惜福緣不勝耳。一日普說罷。揮偈辭眾。以筆一拍而化。

衆に示す。未だ入頭を得ざれば応に切切たるべく、入頭を已に得ば須く彻を教えん、然ると雖も入るを得るも本より無無なり、無無に間歇無きを守ること莫れ。大洪が之を聞きて、乃ち言った。「深兄の禅を説くこと此の若し、惜しむべし福縁の勝ならざるを。」一日普説罷りて、偈を揮いで衆を辞し、筆を以て一拍して化した。

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