易林に存する失伝の象
乾:為日、河、海、山、陵、南、順。坤:為水、江、淮、河、海、魚、淵、雲、虛(同墟)、薪、逆、北。震:為武、旗、鴻、隼、鳥、箕子、南、射、爵、樽食、鶴、君、伐、姬(周姓)、甕、胎(卽孕)、舟船、飛、翼、老夫、商旅、公(父同)、口、神、襦、缶、瓶、辰、簋、登、狩、乘、華、羽、東北、萌芽、翰、髮、袂。巽:為母、齊、姜、少姜、寡、隕、落、羸、蠱、石、隙、袽。
乾(これらは皆《易林》にのみ見え後世に失伝した象):日を為し、河、海、山、陵、南方、順を為す。坤:水・江・淮・河・海・魚・淵・雲・虚(「墟」に同じ、廃墟)・薪・逆・北方を為す。震:武・旗・鴻・隼・鳥・箕子・南方・射・爵(飲酒の器)・樽食・鶴・君・伐・姫(周朝の国姓)・瓮・胎(すなわち孕)・舟船・飛・翼・老夫・商旅・公(「父」と同義)・口・神・襦(短衣)・缶・瓶・辰・簋・登・狩・乗・華・羽・東北・萌芽・翰・髪・袂(衣袖)を為す。巽:母・斉国・姜姓・少姜・寡・陨・落・羸・蠱・石・隙・袽(破敝の絮帛)を為す。
坎:為大首、肉、土、眾、胏、楫、西、脯、鬼、矢、夫。離:為枯、星、東。艮:為火、鳥、鴂、隼、面、簪、須、祖、臣、臣妾、角、啄、豚、負、何、壽、貴、邑、邦、床、西北、斯析、貝、金、觀、光、明、龜、視。兌:為月、華、老婦、魯、資斧、牙。右從《易林》尋得失傳之象,共百廿一;又有為《易林》所無,祗見於《左傳》者一象:震為輹(詳卷七)。
坎:大首・肉・土・衆・胏(骨付きの干肉)・楫(船櫂)・西方・脯・鬼・矢・夫を為す。離:枯・星・東方を為す。艮:火・鳥・鴂・隼・面・簪・須・祖・臣・臣妾・角・啄・豚・負・何(担荷)・寿・貴・邑・邦・牀・西北・斯析(劈開する)・貝・金・観・光・明・亀・視を為す。兌:月・華・老婦・魯国・資斧・牙を為す。以上は《焦氏易林》の中から尋繹し出した失伝の象で、全部で一百二十一個。この外にまた《易林》に無く、《左伝》にのみ見える象が一つあり、即ち震は輹を為す(詳しくは本書巻七に見る)。
共百廿二象,至漢魏皆失傳。除姬、旗、姜數象可釋《左傳》外,餘無一字不與《易》有關,可據以更正昔儒誤解誤象,如撥雲霧而見青天,如闇夜之逢華燭也。至其所推廣之象,奇詭百出,如一一列舉,雖數倍於孟氏逸象而不能盡也。
両項合計一百二十二象は、漢魏の時に至り全て失伝した。姫・旗・姜等の数個の象は《左伝》を解釈するに用いるだけの外、その余は一文字とて《周易》と関わらないものがなく、皆拠って前人の経文への誤解と誤取の象を訂正できる。これは雲霧を撥いて青天を見るがごとく、また暗夜で明るい燭に逢うがごとし。《易林》がこれらの象の上にさらに推衍した部分に至っては、さらに奇詭百出であり、もし一々列挙しようとすれば、篇幅は孟氏逸象の数倍としても挙げ尽くせない。
而尤要者,《易林》視本象與對象不分,由是易用旁通之處始明;《易林》以覆象與正象雜用,妙不可階,由是易用覆象之處,其神妙亦漸解;推之半象大象,無不皆然。初觀其辭,妙義環生,玲瓏剔透,不可端倪,若焦氏用象,獨擅天機;及推求其例,無不源本於經,無絲毫之逾越規矩也。昔人知《太玄》擬易,故往往卽玄首以解經,而不知焦氏《易林》之亦擬易也。嗚呼!後之人有究心易數者乎?愚以為《太玄》其階。有究心易象者乎?《易林》其數也。
殊に要緊なのは:《焦氏易林》は本卦の象と対卦(旁通)の象を一体と見做して分別せず、これにより《周易》が旁通で象を取る所がはじめて明らかになった。《易林》はまた覆象(整卦を倒して見る)と正象を挟み雑えて用い、巧妙で企及する由なし。これにより《周易》が覆象を用いる所の、その神妙も漸く解くことができる。さらに半象・大象に推しても、皆このようでないものはない。初めて《易林》の林辞を読むと、妙義が層出し玲瓏剔透で、端倪を摑ませず、焦延壽の用象は独り天機を得たかのようである。彼の義例を推求し出してから、はじめて一つとして経文に本づかないものがなく、毫も規矩を逾越しないことを知る。昔の人は揚雄《太玄》が《周易》を摹擬して作ったことを知っていたので、往々《太玄》の「首」に就いて経を解いたが、焦氏《易林》も同じく《周易》を摹擬したことを知らなかった。嗚呼!後世に肯んじて易数に専心して研究する人がいるか。私は《太玄》は彼の階梯と思う。肯んじて易象に専心して研究する人がいるか。《易林》は彼の入門の憑借である。
