五燈會元 巻第十八
字子羽。出知永嘉。問道於大慧禪師。慧曰。僧問趙州。狗子還有佛性也無。趙州道。無。但恁麼看。公後乃於栢樹子上發明。有頌曰。趙州栢樹太無端。境上追尋也太難。處處綠楊堪繫馬。家家門底透長安。
字は子羽。出でて永嘉を知る。大慧禅師に道を問う。慧は言った、「僧趙州に問う、狗子還って仏性有るや無しや。趙州道う、無。但だ恁麼看よ。」公後に乃ち柏樹子上に於て発明す。頌有りて言った、「趙州の柏樹太だ端無し、境上に追尋する也太だ難し。処処の緑楊堪えて馬を繫ぎ、家家の門底長安に透る。」
提刑吳偉明居士
提刑呉偉明居士
字元昭。久參真歇了禪師。得自受用三昧。為極致。後訪大慧於洋嶼庵。隨眾入室。慧舉狗子無佛性話問之。公擬答。慧以竹篦便打。公無對。遂留諮參。一日慧謂曰。不須呈伎倆。直須啐地折.嚗地斷。方敵得生死。若祇呈伎倆。有甚了期。即辭去。道次延平。倐然契悟。連書數頌寄慧。皆室中所問者。有曰。不是心。不是佛。不是物。通身一具金鎻骨。趙州親見老南泉。解道鎮州出蘿蔔。慧即說偈證之曰。通身一具金鎻骨。堪與人天為軌則。要識臨濟小廝兒。便是當年白拈賊。
字は元昭。久しく真歇了禅師に参じ、自受用三昧を得て、極致と為す。後に洋嶼庵に於て大慧を訪う。衆に随いて室に入る。慧狗子無仏性の話を挙げて之に問う。公答えんと擬す。慧竹篦を以て便ち打つ。公対無し。遂に留まりて咨参す。一日慧謂う、「須せず伎倆を呈する、直に須らく啐地に折れ嚗地に断えて、方に生死に敵せん。若し只だ伎倆を呈せば、什麼の了期か有らん。」即ち辞し去る。道延平に次ぎ、倐然として契悟す。連ねて数頌を書して慧に寄す、皆な室中の問う所の者なり。言う有り、「心に非ず、仏に非ず、物に非ず、通身一具の金鎖骨。趙州親しく老南泉に見え、解く道う鎮州蘿蔔を出づと。」慧即ち偈を説いて之を証して言った、「通身一具の金鎖骨、堪えて人天と軌則と為す。要して識れ臨済の小厮児、便ち是れ当年の白拈の賊。」
門司黃彥節居士
門司黄彦節居士
字節夫。號妙德。於大慧一喝下。疑情頓脫。慧以衣付之。甞舉首山竹篦話。至葉縣。近前奪得拗折。擲向堦下曰。是甚麼。山曰。瞎。公曰。妙德到這裡。百色無能。但記得曾作蠟梅絕句曰。擬嚼枝頭蠟。驚香卻肖蘭。前村深雪裡。莫作嶺梅看。
字は節夫、号は妙徳。大慧の一喝下に於て、疑情頓に脱す。慧衣を以て之に付す。甞て首山竹篦の話を挙げ、葉県に至りて近づき前にして奪得して拗折し、堦下に向って擲ちて言う、是れ什麼ぞ。山は言う、瞎。公は言った、「妙徳此に到りて、百色能無し。但だ記う曾て蠟梅の絶句を作るを、説く、枝頭の蠟を嚼まんと擬す、驚く香は却って蘭に肖る。前村の深雪裏、嶺梅と作して看る莫れ。」
秦國夫人計氏法真
秦国夫人計氏法真
自寡處屏去紛華。常蔬食。習有為法。因大慧遣謙禪者致問其子魏公。公留。謙以祖道誘之。真一日問謙曰。徑山和尚尋常如何為人。謙曰。和尚祇教人看狗子無佛性及竹篦子話。祇是不得下語。不得思量。不得向舉起處會。不得向開口處承當。狗子還有佛性也無。無。祇恁麼教人看。真遂諦信。於是夜坐。力究前話。忽爾洞然無滯。謙辭歸。真親書入道槩略。作數偈呈慧。其後曰。逐日看經文。如逢舊識人。莫言頻有礙。一舉一回新。
寡処してより紛華を屏去し、常に蔬食し、有為の法を習う。因りて大慧謙禅者を遣わして其の子魏公に問を致せしむ。公留む。謙祖道を以て之を誘う。真一日謙に問うて言った、「径山和尚は尋常如何にか人と為る。」謙は言った、「和尚は只だ人を教えて狗子無仏性及び竹篦子の話を看せしむ。只だ是れ語を下すを得ず、思量するを得ず、挙起の処に向って会するを得ず、口を開くの処に向って承当するを得ず。狗子還って仏性有るや無しや、無。只だ恁麼人を教えて看せしむ。」真遂に諦信す。是に於て夜坐して、力めて前の話を究む。忽爾として洞然として滞無し。謙辞して帰る。真親しく入道の概略を書し、数偈を作りて慧に呈す。其の後に言った、「日を逐いて経文を看れば、旧識の人に逢うが如し。頻りに碍有りと言う莫れ、一挙一回新し。」
虎丘隆禪師法嗣
虎丘隆禅師の法嗣
明州天童應庵曇華禪師
明州天童応庵曇華禅師
蘄州江氏子。生而奇傑。年十七。於東禪去髮。首依水南遂禪師。染指法味。因徧歷江湖。與諸老激揚。無不契者。至雲居禮圓悟禪師。悟一見痛與提䇿。及入蜀。指見彰教。教移虎丘。師侍行。未半載。頓明大事。去謁此庵。分座連雲。開法妙嚴。後遷諸巨剎。住歸宗日。大慧在梅陽。有僧傳師垂示語句。慧見之。極口稱歎。後以偈寄曰。坐斷金輪第一峰。千妖百怪盡潛蹤。年來又得真消息。報道楊岐正脈通。其歸重如此。上堂。九年面壁。壞卻東土兒孫。隻履西歸。鈍置黃面老子。以拄杖畫一畫曰。石牛攔古路。一馬生三寅。上堂。德章老瞎禿。從來沒滋味。拈得口。失卻鼻。三更二點唱巴歌。無端驚起梵王睡。喝一喝。曰。我行荒草裡。汝又入深村。上堂。臨濟在黃檗處三度吃棒底意旨。你諸人還覷得透也未。直饒一咬便斷。也未是大丈夫漢。三世諸佛。口掛壁上。天下老和尚。將甚麼吃飯。上堂。十五日已前。水長船高。十五日已後。泥多佛大。正當十五日。東海鯉魚。打一棒雨似盆傾。直得三千大千世界。一切眾生。悉皆歡喜。謂言打這一棒。不妨應時應節報恩。不覺通身踴躍。遂作詩一首。舉似大眾。蜻蜓許是好蜻蜓。飛來飛去不曾停。被我捉來摘卻兩邊翼。恰似一枚大鐵釘。上堂。若作一句商量。吃粥飯阿誰不會。不作一句商量。屎坑裡蟲子笑殺闍黎。拈拄杖曰。拄杖子罪犯彌天。貶向二鐵圍山。且道薦福還有過也無。卓拄杖曰。遲一刻。上堂。明不見暗。暗不見明。明暗雙忘。無異流俗阿師。野幹鳴。師子吼。師子吼。野幹鳴。三家村裡臭猢猻。價增十倍。驪龍頷下明月珠。分文不直。若作衲僧巴鼻。甚處得來。三十年後。換手搥胷。未是苦在。上堂。飯籮邊.漆桶裡。相唾饒你潑水。相罵饒你接觜。黃河三千年一度清。蟠桃五百年一次開華。鶴勒那咬定牙關。朱頂王呵呵大笑。
蘄州の江氏の子である。生まれて奇傑。年十七、東禅に於て髪を去る。首に水南遂禅師に依り、法味に指を染む。因りて遍く江湖を歴り、諸老と激揚す。契わざる無し。云居に至りて円悟禅師に礼す。悟一見して痛く提䇿を与う。及び蜀に入り、彰教に見ゆるを指す。教虎丘に移る。師侍行す。未だ半載ならずして、頓に大事を明らかにす。去りて此庵に謁す。連雲に分座し、妙厳に法を開く。後に諸の巨刹に遷る。帰宗に住する日、大慧梅陽に在り。僧の師の垂示の語句を伝うる有り。慧之を見、口を極めて称歎す。後に偈を以て寄せて言った、「金輪の第一峰を坐断し、千妖百怪尽く蹤を潜む。年来又た真の消息を得たり、報道す楊岐の正脉通ずと。」其の帰重する此の如し。上堂。「九年の面壁、東土の児孫を壊却し、只履の西帰、黄面老子を鈍置す。」拄杖を以て一画を画きて言った。「石牛古路を拦え、一馬三寅を生ず。」上堂。「徳章の老瞎禿、従来滋味無し。口を拈得して鼻を失却す。三更二点に巴歌を唱い、端無く梵王の睡を驚起す。」一喝して言った。「我荒草裏に行き、お前又た深村に入る。」上堂。「臨済の黄檗の処に在りて三度棒を喫らう底の意旨、お前諸人還って覷透するを得るや未だ。直饒一咬して便ち断えるとも、未だ是れ大丈夫の漢に非ず。三世の諸仏、口を壁上に掛け、天下の老和尚、什麼を将てか飯を喫わん。」上堂。「十五日已前、水長じ船高し。十五日已後、泥多く仏大なり。正に十五日に当りて、東海の鯉魚、一棒を打てば雨の盆を傾くるが如し。直に三千大千世界の一切衆生をして悉く皆な歡喜せしめて、謂い言う此の一棒を打つは、妨げず時節に応じて恩を報ずと、覚えず通身踊躍す。遂に詩一首を作りて、大衆に挙似す。蜻蜓許れ是れ好蜻蜓、飛び来り飛び去りて曾て停まらず。我に捉え来られて両辺の翼を摘却せらる、恰似す一枚の大鉄釘。」上堂。「若し一句の商量と作さば、粥飯を喫うは阿誰か会せざる。一句の商量と作さざれば、屎坑裏の虫子阇黎を笑殺す。」拄杖を拈じて言った。「拄杖子の罪は天に犯ぶ、二鉄囲山に向って貶す。且く道え薦福還って過有るや無しや。」拄杖を卓して言った。「一刻遅し。」上堂。「明は暗を見ず、暗は明を見ず、明暗双忘すれば、流俗の阿師に異なる無し。野干鳴き、師子吼え、師子吼え、野干鳴く。三家村裏の臭猢狲は、価十倍を増し、驪竜の頷下の明月の珠は、分文も直さず。若し衲僧の巴鼻と作さば、什麼の処よりか得来る。三十年の後、手を換えて𮌎を搥かば、未だ是れ苦に在らず。」上堂。「飯籮の辺・漆桶裏、相唾すればお前に饒らく水を潑き、相罵ればお前に饒らく觜を接ぐ。黄河は三千年に一度清く、蟠桃は五百年に一次華を開く。鶴勒那は牙関を咬定し、朱頂王は呵呵大笑す。
歸宗五十年前有一則公案。今日舉似諸人。且道是甚麼公案。王節級。失卻帖。上堂。三十二相。八十種好。從朝至暮。啾啾唧唧。說黃道黑。不知那裡是二時。上堂。吃粥吃飯。不覺嚼破舌頭。血濺梵天。四天之下。霈然有餘。玉皇大帝發。追東海龍王。向金輪峰頂鞫勘。頃刻之間。追汝諸人作證見也。且各請依實供通。切忌迴避。儻若不實。喪汝性命。上堂。趙州吃茶。我也怕他。若非債主。便是冤家。倚牆靠壁成群隊。不知誰解辨龍虵。上堂。五百力士揭石義。萬仞崖頭撒手行。十方世界一團鐵。虗空背上白毛生。直饒拈卻膱脂帽子。脫卻鶻臭布衫。向報恩門下。正好吃棒。何故。半夜起來屈膝坐。毛頭星現衲僧前。上堂。三世諸佛。眼裡無筋。六代祖師。皮下無血。明果咬定牙關𨁝跳。也出他圈䙡不得。何故。南泉斬貓兒。上堂雲。參禪人切忌錯用心。悟明見性是錯用心。成佛作祖是錯用心。看經講教是錯用心。行住坐臥是錯用心。吃粥吃飯是錯用心。屙屎送尿是錯用心。一動一靜。一往一來。是錯用心。更有一處錯用心。歸宗不敢與諸人說破。何故。一字入公門。九牛車不出。上堂雲。良工未出。玉石不分。巧冶無人。金沙混雜。縱使無師自悟。向天童門下。正好朝打三千。暮打八百。驀拈拄杖雲。喚作拄杖。玉石不分。不喚作拄杖。金沙混雜。其間一箇半箇。善別端由。管取平步丹霄。苟或未然。卓拄杖雲。急著眼看。僧問。婆子問巖頭。呈橈舞棹則不問。且道婆手中兒子甚處得來。巖頭扣船舷三下。意旨如何。師曰。燋磚打著連底凍。曰。當時若問和尚。如何對他。師曰。一棒打殺。曰。這老和尚大似買帽相頭。師曰。你向甚處見巖頭。曰。劄。師曰。杜撰禪和。曰。婆生七子。六箇不遇知音。祗這一箇也不消得。擲向水中。又且如何。師曰。少賣弄。曰。巖頭當時不覺吐舌。意作麼生。
(師は接して言った。)「帰宗五十年前に一則の公案有り、今日諸人に挙似す。且く道え是れ什麼の公案ぞ。王節級、帖を失却す。」上堂。「三十二相・八十種好、朝自り暮に至るまで、啾啾唧唧として、黄を説き黒を道い、何れの処か是れ二時を知らざる。」上堂。「粥を喫い飯を喫うも、覚えず舌頭を嚼破す。血梵天に濺ぎ、四天の下、霈然として余有り。玉皇大帝発して、東海の竜王を追し、金輪峰頂に向って鞫勘す。頃刻の間、お前諸人を追して証見を作さん。且く各々請う依実に供通せよ、切に回避を忌む。儻し若し実ならざれば、お前の性命を喪わん。」上堂。「趙州茶を喫う、我も亦た他を怕る。若し債主に非ざれば、便ち是れ冤家。墻に倚り壁に靠りて群隊を成し、誰か竜虵を弁ずるを解すを知らず。」上堂。「五百力士の石を揭ぐの義、万仞の崖頭手を撒いて行く。十方世界一団の鉄、虚空の背上白毛生ず。直饒膱脂の帽子を拈却し、鶻臭の布衫を脱却すとも、報恩の門下に向って、正に棒を喫らうを好し。何ぞ故に、半夜起き来りて膝を屈して坐すれば、毛頭の星衲僧の前に現ず。」上堂。「三世の諸仏、眼裏に筋無し。六代の祖師、皮下に血無し。明果牙関を咬定し𨁝跳すれども、也だ他の圈䙌を出でるを得ず。何ぞ故に、南泉猫児を斬る。」上堂。「参禅人切に心を錯用するを忌む。悟明見性は是れ心を錯用す、成仏作祖は是れ心を錯用す、経を看り教を講ずるは是れ心を錯用す、行住坐卧は是れ心を錯用す、粥を喫い飯を喫うは是れ心を錯用す、屎を屙り尿を送るは是れ心を錯用す。一動一静・一往一来は、是れ心を錯用す。更に一処の心を錯用する有り、帰宗敢えて諸人と説破せず。何ぞ故に、一字公門に入れば、九牛車して出でず。」上堂。「良工未だ出でざれば、玉石分れず。巧冶人無ければ、金沙混雑す。縦使い師無くして自ら悟るも、天童の門下に向って、正に朝に三千を打たれ暮に八百を打たるるを好し。驀然に拄杖を拈じて云く、「拄杖と喚べば、玉石分れず。拄杖と喚ばざれば、金沙混雑す。其の間の一箇半箇、善く端由を別せば、管取して歩を平らに丹霄せん。苟も或いは未然ならば。」拄杖を卓して云く。「急いで眼を着けて看よ。」僧が問うた。「婆子岩頭に問う、橈を呈し棹を舞すは則ち問わず、且く道え婆が手中の児子は什麼の処よりか得来る。岩頭船舷を三下扣く、意旨如何。」師は言った。「燋塼は連底の凍を打着す。」言った。「当時若し和尚に問わば、如何にか彼に対せん。」師は言った。「一棒打殺せん。」言った。「此の老和尚大いに似たり帽を買いて頭を相すに。」師は言った。「お前什麼の処に向って岩頭を見る。」言った。「札。」師は言った。「杜撰の禅和。」言った。「婆七子を生み、六箇知音に遇わず、祗だ此の一箇も亦た消するを得ず、水中に向って擲つ。又た且く如何。」師は言った。「売弄する少なし。」言った。「岩頭当時覚えず舌を吐きて、意は作麼生。
師曰。樂則同歡。曰。僧問雲門。如何是清淨法身。雲門曰。華藥欄。此意如何。師曰。深沙努眼睛。問。祇這是埋沒自己。祇這不是孤負先聖。去此二途。和泥合水處。請師道。師曰。玉箸撐虎口。曰。一言金石談來重。萬事鴻毛脫去輕。師曰。莫謾老僧好。問。人皆畏炎熱。我愛夏日長。燻風自南來。殿閣生微涼時如何。師曰。倒戈卸甲。虎丘忌日。拈香曰。平生沒興。撞著這無意智老和尚。做盡伎倆。湊泊不得。從此卸卻干戈。隨分著衣吃飯。二十年來坐曲彔木。懸羊頭賣狗肉。知他有甚憑據。雖然。一年一度燒香日。千古令人恨轉深。師於室中能鍛鍊耆艾。故世稱大慧與師居處為二甘露門。甞誡徒曰。衲僧家著草鞋住院。何啻如蚖虵戀窟乎。隆興改元。六月十三日。奄然而化。塔全身於本山。
(師は接して言った。)師は言った。「楽しければ則ち同歡す。」言った。「僧云門に問う、如何なるか是れ清浄の法身。云門は言う、華薬欄。此の意如何。」師は言った。「深沙眼睛を努めたり。」問うた。「只だ此れは自己を埋没す、只だ此れざるは先聖を孤負す、此の二途を去れ。泥に和し水に合する処、師の道うを請う。」師は言った。「玉箸虎口を撑ぐ。」言った。「一言金石は談じ来りて重く、万事鴻毛は脱し去りて軽し。」師は言った。「谩りて老僧を谩る莫きを好し。」問うた。「人皆な炎熱を畏る、我は愛む夏日の長きを、薫風南自り来り、殿閣微涼を生ずる時は如何。」師は言った。「戈を倒し甲を卸す。」虎丘の忌日に、香を拈じて言った。「平生興無く、此の意智無き老和尚に撞着し、伎倆を作し尽くせども、湊泊するを得ず。此に従りて干戈を卸却し、分に随いて衣を着け飯を喫う。二十年の来曲彔の木に坐して、羊頭を懸けて狗肉を売る。他に知らしめん什麼の憑据か有ると。然りと雖も、一年一度の香を焼くの日、千古人をして恨を転じて深からしむ。」師室中に於て能く耆艾を鍛錬す。故に世大慧と師と居処を二甘露門と称す。甞て徒に誡めて言った、「衲僧家は草鞋を着けて院に住す、何ぞ啻に蚖虵の窟を恋うが如きのみ。」隆興改元、六月十三日、奄然として化した。全身を本山に塔す。
育王裕禪師法嗣
育王裕禅師の法嗣
福州清涼坦禪師
福州清涼坦禅師
有僧舉大慧竹篦話請益。師示以偈曰。徑山有箇竹篦。直下別無道理。佛殿廚庫三門。穿過衲僧眼耳。其僧言下有省。
僧の大慧の竹篦の話を挙げて益を請う有り。師偈を以て示して言った。「径山に箇の竹篦有り、直下別に道理無し。仏殿厨庫三門、衲僧の眼耳を穿過す。」其の僧言下に省有り。
臨安府淨慈水庵師一禪師
臨安府浄慈水庵師一禅師
婺州馬氏子。十六披削。首參雪峰慧照禪師。照舉藏身無跡話問之。師數日方明。呈偈曰。藏身無跡更無藏。脫體無依便廝當。古鏡不勞還自照。淡煙和霧濕秋光。照質之曰。畢竟那裡是藏身無跡處。師曰。嗄。照曰。無蹤跡處因甚麼莫藏身。師曰。石虎吞卻木羊兒。照深肯之。住後。上堂。舉。圓悟師翁道。參禪參到無參處。參到無參始徹頭。水庵則不然。參禪參到無參處。參到無參未徹頭。若也欲窮千里目。直須更上一層樓。上堂。凍雲欲雪未雪。普賢象駕崢嶸。嶺梅半合半開。少室風光漏洩。便恁麼去猶是半提。作麼生是全提底事。無智人前莫說。打你頭破額裂。上堂。舉。法眼示眾曰。盡十方世界明皎皎地。若有一絲頭。即是一絲頭。師竪起拂子曰。還見麼。穿過髑髏猶未覺。法燈雲。盡十方世界自然明皎皎地。若有一絲頭。不是一絲頭。師曰。夜來月色十分好。今日秋山無限清。上堂。寂然不動。感而遂通古人恁麼說話。大似預搔待癢。若教渠踏著衲僧關捩。管取別有生涯。喝一喝。卓拄杖下座。
婺州の馬氏の子である。十六にして披削す。首に雪峰慧照禅師に参ず。照蔵身無跡の話を挙げて之に問う。師数日にして方に明らかにす。偈を呈して言った、「蔵身跡無く更に蔵する無し、脱体依無くて便ち厮当す。古鏡労せずして還って自ら照し、淡煙和して霧秋光を湿らす。」照之を質して言った、「畢竟那の処か是れ蔵身無跡の処。」師は言った、「嗄。」照は言った、「蹤跡無きの処に因甚か蔵身する莫れ。」師は言った、「石虎木羊児を呑却す。」照深く之を肯す。住して後、上堂。挙ぐ、「円悟師翁道う、参禅は無参の処に参りて、無参に参りて始めて徹頭す。水庵は則ち然らず、参禅は無参の処に参りて、無参に参りて未だ徹頭せず。若し也だ千里の目を窮めんと欲せば、直に須らく更に一層の楼に上るべし。」上堂。「凍雲雪せんと欲して未だ雪せず、普賢の象駕峥嵘たり。嶺梅半ば合し半ば開き、少室の風光漏洩す。便ち恁麼して去らば猶ほ是れ半提、作麼生か是れ全提の底の事。智無き人の前には説く莫れ、お前の頭を打ちて破額を裂かん。」上堂。挙ぐ、「法眼衆に示す、十方世界を尽くして明皎皎地にして、若し一絲頭有らば、即ち是れ一絲頭。」師拂子を竪起して言った。「還って見るか、髑髏を穿過して猶ほ未だ覚えず。法灯云く、十方世界を尽くして自然に明皎皎地にして、若し一絲頭有らば、是れ一絲頭に非ず。」師は言った。「夜来月色十分に好し、今日秋山無限に清し。」上堂。「寂然として動かず、感じて遂に通ず、古人恁麼話を説くも、大いに似たり預め掻きて痒を待つに。若し渠を教えて衲僧の関捩を踏着せしめば、管取して別に生涯有らん。」一喝し、拄杖を卓し、座を下りた。
安吉州道場無庵法全禪師
安吉州道場無庵法全禅師
姑蘇陳氏子。東齋川和尚為落髮。師久依佛智。每入室。智以狗子無佛性話問之。師罔對。一日。聞僧舉五祖頌雲趙州露刃劒。忽大悟。有偈曰。皷吹轟轟袒半肩。龍樓香噴益州船。有時赤腳弄明月。踏破五湖波底天。住後。上堂。欲得現前。莫存順逆。卓拄杖雲。三祖大師變作馬面夜叉。向東弗於逮.西瞿耶尼.南贍部洲.北鬱單越。卻來山僧手裡。首身元來只是一條黑漆拄杖。還見麼。直饒見得。入地獄如箭射。卓拄杖。下座。上堂。拈拄杖曰。汝等諸人。箇箇頂天立地。肩橫楖栗。到處行腳。勘驗諸方。更來這裡覓箇甚麼。才輕輕拶著。便言天台普請。南嶽遊山。我且問你。還曾收得大食國裡寶刀麼。卓拄杖曰。切忌口衘羊角。僧問。牛頭未見四祖時如何。師曰。天下無貧人。曰。見後如何。師曰。四海無富漢。乾道己丑七月二十五日。將入寂。眾求偈。師瞪目下視。眾請益堅。遂書無無二字。棄筆而逝。火後設利五色。塔於金斗峰。
姑蘇の陳氏の子である。東斎の川和尚髪を落とさしむ。師久しく仏智に依り、毎に室に入れば、智狗子無仏性の話を以て之に問う。師対え罔し。一日、僧の五祖の頌を挙ぐるを聞きて云く、趙州刃を露すの剣。忽ち大悟す。偈有りて言った、「皷吹轟轟として半肩を袒し、竜楼香は益州の船に噴く。時に赤脚にして明月を弄し、五湖の波底の天を踏破す。」住して後、上堂。「現前を得んと欲せば、順逆を存する莫れ。」拄杖を卓して云く、「三祖大師は変じて馬面の夜叉と作し、東の弗于逮・西の瞿耶尼・南の贍部洲・北の鬱単越に向い、却って来りて山僧の手裏に在りて、身を首う。元来只だ是れ一条の黒漆の拄杖。還って見るか、直饒見得すとも、地獄に入ること箭の射るが如し。」拄杖を卓し、座を下りた。上堂。拄杖を拈じて言った。「お前等諸人、箇箇天を頂き地に立ち、肩に楖栗を横たえ、処処に行脚して、諸方を勘験す。更に此に来りて箇の什麼をか覓る。才だ軽く拶着せば、便ち言う天台に普請し南岳に游山すと。我且くお前に問う、還って曾て大食国裏の宝刀を収得するや。」拄杖を卓して言った。「切に口に羊角を銜むを忌む。」僧が問うた。「牛頭未だ四祖に見えざる時は如何。」師は言った。「天下に貧人無し。」言った。「見えし後は如何。」師は言った。「四海に富漢無し。」乾道己丑七月二十五日、寂に入らんと将にす。衆偈を求む。師目を瞠りて下を視る。衆請うこと益々堅し。遂に無無の二字を書し、筆を棄てて逝った。火後に設利五色、金斗峰に塔す。
泉州延福寒巖慧升禪師
泉州延福寒岩慧升禅師
建寧人也。上堂。喝一喝曰。盡十方世界。會十世古今。都盧在裡許。畐畐塞塞了也。若乃放開一針鋒許。則大海西流。巨嶽倒卓。黿鼉魚龍。鰕蟹蚯蚓。盡向平地上湧出波瀾。游泳鼓舞。然雖如是。更須向百尺竿頭自進一步。則步步踏轉無盡藏輪。方知道鼻孔搭在上唇。眉毛不在眼下。還相委悉麼。復喝一喝曰。切忌轉喉觸諱。
建寧の人である。上堂。一喝して言った。「十方世界を尽くし、十世古今を会して、都盧裏許に在りて、畐畐塞塞し了れり。若し乃ち放ち開きて一針鋒許りならば、則ち大海西流し、巨岳倒卓し、鼋鼉魚竜、鰕蟹蚯蚓、尽く平地上に向って波瀾を湧出して、游泳鼓舞す。然りと雖も是の如し、更に須らく百尺竿頭に向って自ら一歩を進めて、則ち歩歩尽き無き蔵輪を踏転して、方に知る鼻孔は上唇に搭し、眉毛は眼下に在らざるを。還って相委悉するか。」復た一喝して言った。「切に喉を転じて諱に触るるを忌む。」
大溈泰禪師法嗣
大沩泰禅師の法嗣
潭州慧通清旦禪師
潭州慧通清旦禅師
蓬州嚴氏子。初出關至德山。值泰上堂。舉。趙州曰。臺山婆子已為汝勘破了也。且道意在甚麼處。良久曰。就地撮將黃葉去。入山推出白雲來。師聞釋然。翌日入室。山問。前百丈不落因果。因甚麼墮野狐。後百丈不昧因果。因甚麼脫野狐。師曰。好與一坑埋卻。住後。上堂。說佛說祖。正如好肉剜瘡。舉古舉今。猶若殘羹餿飯。一聞便悟。已落第二頭。一舉便行。早是不著便。須知箇事。如天普蓋。似地普擎。師子遊行。不求伴侶。壯士展臂。不借他力。佛祖拈掇不起。衲僧願見無門。迷悟雙忘。聖凡路絕。且道從上諸聖以何法示人。喝一喝曰。莫妄想。佛性和尚忌日。上堂。三腳驢子弄蹄行。步步相隨不相到。樹頭驚起雙雙魚。拈來一老一不老。為憐松竹引清風。其奈出門便是草。因喚檀郎識得渠。大機大用都推倒。燒香勘證見根源。糞埽堆頭拾得寶。叢林浩浩謾商量。勸君莫謗先師好。
蓬州の厳氏の子である。初め関を出でて徳山に至り、泰の上堂に値い、趙州の説を挙ぐ、「台山の婆子は已に汝の為に勘破し了れり。且く道え意は什麼の処に在る。」良久して言った、「地に就きて黄葉を撮み将り去り、山に入りて白云を推し出し来たる。」師聞きて釈然たり。翌日室に入る。山問う、「前の百丈は因果に落ちざれば、因甚か野狐に堕つる。後の百丈は因果を昧まずすれば、因甚か野狐を脱する。」師は言った、「好く一坑に埋め却れ。」住して後、上堂。「仏を説き祖を説くは、正に是れ好肉に瘡を剜る。古を挙げ今を挙ぐるは、猶ほ若し残羹の馊飯。聞いて便ち悟るは、已に第二頭に落つ。挙げて便ち行ずるは、早く是れ便に着かず。須らく知れ箇の事は、天の普く蓋うが如く、地の普く擎ぐるに似たり。師子游行して伴侶を求めず、壮士臂を展べて他力を借らず。仏祖も拈掇し起さず、衲僧も見るを願うに門無し。迷悟双忘し、聖凡路絶す。且く道え従上の諸聖は何の法を以てか人に示す。」一喝して言った。「妄想する莫れ。」仏性和尚の忌日に、上堂。「三脚の驢子蹄を弄して行き、歩歩相随いて相到らず。樹頭に双ならびの魚を驚起し、拈じ来りて一老一不老。松竹を憐れみて清風を引く、其の奈いかんせん門を出でれば便ち是れ草。因りて檀郎を喚びて渠を識得せしめば、大機大用都て推倒す。香を焼きて根源を勘証見し、糞掃堆頭に宝を拾得す。叢林浩浩として谩り商量す、君を勧めて先師を謗る莫きを好しと。」
澧州靈巖仲安禪師
澧州霊岩仲安禅師
幼為比丘。壯遊講肆。後謁圓悟於蔣山。時佛性為座元。師扣之。即領旨。逮性住德山。遣師至鍾阜通嗣書。圓悟問曰。千里馳來。不辱宗風。公案現成。如何通信。師曰。覿面相呈。更無回互。曰。此是德山底。那箇是上座底。師曰。豈有第二人。曰。背後底。聻。師投書。悟笑曰。作家禪客。天然有在。師曰。付與蔣山。次至僧堂前。師捧書問訊首座。座曰。玄沙白紙。此自何來。師曰。久默斯要。不務速說。今日拜呈。幸希一覧。座便喝。師曰。作家首座。座又喝。師以書便打。座擬議。師曰。未明三八九。不免自沈吟。師以書復打一下。曰。接時。圓悟與佛眼見。悟曰。打我首座死了也。佛眼曰。官馬廝踢。有甚憑據。師曰。說甚官馬廝踢。正是龍象蹴踏。悟喚師至。曰。我五百人首座。你為甚麼打他。曰。和尚也須吃一頓始得。悟顧佛眼吐舌。眼曰。未在。卻顧師。問曰。空手把鉏頭。步行騎水牛。人從橋上過。橋流水不流。意作麼生。師鞠躬曰。所供並是詣實。眼笑曰。元來是屋裡人。又往見五祖自和尚。通法眷書。祖曰。書裡說箇甚麼。師曰。文彩已彰。曰。畢竟說箇甚麼。師曰。當陽揮寶劒。曰。近前來。這裡不識幾箇字。師曰。莫詐敗。祖顧侍者曰。是那裡僧。曰。此上座向曾在和尚會下去。祖曰。怪得恁麼滑頭。師曰。被和尚鈍置來。祖乃將書於香爐上燻。曰。南無三曼多沒陀南。師近前。彈指而已。祖便開書。回德山日。佛果佛眼皆有偈送之。未幾。靈巖虗席。衲子投牒。乞師住持。遂師法焉。上堂。參禪不究淵源。觸途盡為留礙。所以守其靜默。澄寂虗閑。墮在毒海。以弱勝強。自是非他。立人我量。見處偏枯。遂致優劣不分。照不構用。用不離窠。此乃學處不玄。盡為流俗。到這裡。須知有殺中透脫。活處藏機。佛不可知。祖莫能測。所以古人道。有時先照後用。
幼にして比丘と為り、壮にして講肆に游ぶ。後に蔣山に於て円悟に謁す。時に仏性座元と為り、師之を扣けば、即ち旨を領す。逮い性徳山に住するに及び、師を遣わして鐘阜に至らせ嗣書を通ぜしむ。円悟問うて言った、「千里馳せ来たりて、宗風を辱しめず。公案現成す、如何にか通信せん。」師は言った、「覿面相呈して、更に回互無し。」問う、「此れ是れ徳山の底、那の箇か是れ上座の底。」師は言った、「豈に第二人有らんや。」問う、「背後の底は聻。」師書を投ず。悟笑って言った、「作家の禅客、天然有りて在り。」師は言った、「蔣山に付与す。」次いで僧堂前に至り、師書を捧げて首座に問訊す。座は言った、「玄沙の白紙、此れ自ら何より来る。」師は言った、「久しく斯の要を黙し、速説を務めず。今日拝呈す、幸いに一覧を希う。」座便ち喝す。師は言った、「作家の首座。」座又た喝す。師書を以て便ち打つ。座擬議す。師は言った、「未だ三八九を明らかにせざれば、免れず自ら沈吟す。」師書を以て復た一下を打ちて言った、「時に接す。」円悟仏眼と見る。悟は言った、「我が首座を打ちて死なしめたり。」仏眼は言った、「官馬の斯踢、什麼の憑据か有る。」師は言った、「什麼をか官馬の斯踢を説く、正に是れ竜象の蹴踏。」悟師を喚び至らせて言った、「我が五百人の首座を、お前什麼が為にか彼を打つ。」言った、「和尚も須らく一頓を喫らわば始めて得。」悟仏眼を顧みて舌を吐く。眼は言った、「未だ在り。」却って師を顧みて、問うて言った、「手を空しくして鋤頭を把り、歩行して水牛に騎る。人橋上を過ぎ、橋流れて水流れず。意は作麼生。」師鞠躬して言った、「供する所並びに是れ詣実。」眼笑って言った、「元来是れ屋裏の人。」又た往きて五祖自和尚に見え、法眷の書を通ず。祖は言った、「書裏に箇の什麼をか説く。」師は言った、「文彩已に彰れり。」問う、「畢竟箇の什麼をか説く。」師は言った、「陽に当りて宝剣を揮う。」言った、「前に近づき来れ。此の裏几箇の字を識らず。」師は言った、「敗を詐る莫れ。」祖侍者を顧みて言った、「是れ那の裏の僧ぞ。」言った、「此の上座向に曾て和尚の会下に在りしなり。」祖は言った、
且要共你商量。有時先用後照。你須是箇漢始得。有時照用同時。你又作麼生抵當。有時照用不同時。你又向甚麼處湊泊。還知麼。穿楊箭與驚人句。不是臨時學得來。
(師は接して言った。)「恁麼の滑頭なるを怪むを得たり。」師は言った、「和尚に鈍置せられ来たり。」祖乃ち書を将て香炉上に於て熏して言った、「南無三曼多没陀南。」師前に近づき、指を弾ずるのみ。祖便ち書を開く。徳山に回る日、仏果・仏眼皆な偈有りて之を送る。未几、霊岩席を虚くし、衲子牒を投げて、師の住持を乞う。遂に法を師とす。上堂。「参禅に淵源を究めざれば、途に触れて尽く留碍と為る。所以に其の静黙を守り、澄寂虚閑なれば、毒海に堕つ。弱を以て強に勝ち、自ら是とし他を非とし、人我の量を立つ。見処偏枯にして、遂に優劣分たざるを致す。照は用を構えず、用は窠を離れず。此れ乃ち学処玄ならず、尽く流俗と為る。此に到りて、須らく知れ殺中の透脱・活処の蔵機有るを。仏も知る可からず、祖も測る能わず。所以に古人道う、時に先に照して後に用い、
成都府正法灝禪師
(師は接して言った。)「且く要すお前と商量せん。時に先に用いて後に照す、お前須らく是れ箇の漢ならば始めて得。時に照用同時ならば、お前又た作麼生にか抵当せん。時に照用同時ならざれば、お前又た什麼の処に向って湊泊せん。還って知るか、楊を穿つ箭と人を驚かす句とは、臨時に学び得来るに非ず。」
上堂。舉永嘉到曹谿因緣。乃曰。要識永嘉麼。掀飜海嶽求知己。要識祖師麼。撥動乾坤建太平。二老不知何處去。卓拄杖曰。宗風千古播嘉聲。
成都府正法灝禅師
成都府昭覺辯禪師
上堂。永嘉の曹渓に到るの因縁を挙げて、乃ち言った。「永嘉を識らんと要するか、海岳を掀飜して知己を求む。祖師を識らんと要するか、乾坤を撥動して太平を建つ。二老は何れの処にか去ると知らず。」拄杖を卓して言った。「宗風千古に嘉声を播く。」
上堂。毫𨤲有差。天地懸隔。隔江人唱鷓鴣詞。錯認胡笳十八拍。要會麼。欲得現前。莫存順逆。五湖煙浪有誰爭。自是不歸歸便得。
成都府昭覚辯禅師
護國元禪師法嗣
上堂。「毫𨤲差有れば、天地懸隔す。江を隔てて人鷓鴣の詞を唱えば、錯りて胡笳の十八拍を認む。会せんと要するか。現前を得んと欲せば、順逆を存する莫れ。五湖の煙浪誰か有りて争わん、自ら是れ帰らずして帰れば便ち得。」
台州國清簡堂行機禪師
護国元禅師の法嗣
本郡人。姓楊氏。風姿挺異。才壓儒林。年二十五。棄妻孥。學出世法。晚見此庵。密有契證。出應莞山。刀耕火種。單丁者一十七年。甞有偈雲。地爐無火客囊空。雪似楊華落歲窮。拾得斷麻穿壞衲。不知身在寂寥中。每謂人曰。某猶未穩在。豈以住山樂吾事邪。一日偶看斫樹倒地。忽然大悟。平昔礙膺之物。泮然冰釋。未幾。有江州圓通之命。乃曰。吾道將行。即欣然曳杖而去。登座說法雲。圓通不開生藥鋪。單單只賣死貓頭。不知那箇無思算。吃著通身冷汗流。上堂。單明自已。樂是苦因。趣向宗乘。地獄劫住。五日一參。三八普說。自揚家醜。更若問理問事。問心問性。克由叵耐。若是英靈漢。窺藩不入。據鼎不甞。便於未有生佛已前轉得身。卻於今時大官路上捷行闊步。終不向老鼠窟.草窠裡頭出頭沒。若也根性陋劣。要去有滋味處咬嚼。遇著義學阿師。遞相錮鏴。直饒說得雲興雨現。也是蝦蟇化龍。下梢依舊。吃泥吃土。堪作甚麼。上堂。仲秋八月旦。庭戶入新涼。不露風骨句。愁人知夜長。上堂。無隔宿恩。可參臨濟禪。有肯諾意。難續楊岐派。窮廝煎。餓廝炒。大海祇將折箸攪。你死我活。猛火然鐺煑佛喋。恁麼作用。方可撐門拄戶。更說聲和響順。形直影端。驢年也未夢見。僧問。三聖問雪峰。透網金鱗。未審以何為食。峰雲。待汝出網來。即向汝道。意旨如何。師曰。同途不同轍。曰。三聖道。一千五百人善知識。話頭也不識。峰雲。老僧住持事繁。又作麼生。師曰。前箭猶輕後箭深。曰。祇如雪竇道。可惜放過。好與三十棒。這棒一棒也較不得。直是罕遇作家。意又作麼生。師曰。陣敗說兵書。曰。這棒是三聖合吃。雪峰合吃。師以拂子擊禪床曰。這裡薦取。示眾雲。衲僧拄杖子。不用則已。用則如鴆鳥落水。魚鼈皆死。正按傍提。風颯颯地。獨步大方。殺活在我。所以道。
台州国清簡堂行機禅師
千人排門。不如一人拔關。若一人拔關。千人萬人得到安樂田地。還知麼。鴛鴦繡出從君看。不把金針度與人。示眾雲。觀色即空成大智。故不住生死。觀空即色成大悲。故不證涅槃。生死不住。涅槃不證。漢地不收。秦地不管。且道在甚麼處安身立命。莫是昭昭於心目之間。而相不可覩。晃晃於色塵之內。而理不可分麼。莫是起坐鎮相隨。語默同居止麼。若恁麼。總是髑髏前敲磕。須知過量人自有過量用。且作麼生是過量用。北斗藏身雖有語。出群消息少人知。
本郡の人、姓は楊。風姿挺異にして、才は儒林を圧す。年二十五、妻孥を棄て、出世の法を学ぶ。晩に此庵を見え、密かに契証有り。出でて莞山に応じ、刀耕火種して、単丁なること一十七年。甞て偈有り、「地炉に火無く客囊空し、雪は楊華に似て歳窮まるに落つ。断麻を拾得して坏衲を穿ち、知らず身の寂寥の中に在るを。」毎に人に謂うて言った、「某猶ほ未だ穏ならざるなり、豈に山に住するを吾が事と楽まんや。」一天偶さま樹を斫り地に倒るを看て、忽然大悟し、平昔膺に碍するの物、泮然として氷釈す。未几、江州円通の命有りて、乃ち言った、「吾が道将に行かんとす。」即ち欣然として杖を曳きて去る。座に登りて法を説く、「円通は生薬舗を開かず、単単只だ死猫頭を売る。知らず那の箇の思算無きが、喫着して通身冷汗流る。」上堂。「単に自己を明らかにするは、楽しみは是れ苦の因。宗乗に趣向するは、地獄に劫住す。五日一参・三八の普説は、自ら家醜を揚ぐ。更に若し理を問い事を問い、心を問い性を問わば、克由叵耐なり。若し是れ英霊の漢ならば、藩を窺えども入らず、鼎に拠れども嘗めず、便ち未だ生仏有らざる已前に身を転じ得て、却って今時の大官の路上に捷行闊歩し、終に老鼠窟・草窠裏頭に向って出で没せず。若し也だ根性陋劣にして、滋味有るの処に去りて咬嚼せんと要せば、義学の阿師に遇着し、銅鏴を相い递ぐ。直饒説き得ること雲興り雨現ずとも、亦是れ虾蟆の化竜、下梢依旧として泥を喫い土を喫う、堪えて作さん什麼を。」上堂。「仲秋八月の旦、庭戸新涼に入る。風骨の句を露さず、愁人是れ知る夜の長きを。」上堂。「宿恩を隔てずは、臨済の禅を参ず可し。肯諾の意有らば、楊岐の派を続ぎ難し。窮厮は煎じ餓厮は炒り、大海は只だ箸を折りて攪く。お前死我が活せん、猛火鐺を燃して仏を煮喋す。恁麼の作用、方に可なり門を撑ぎ戸を拄ぐ。更に和の声に順い形直ければ影端しと説けば、驢年も未だ夢に見ず。」僧が問うた。「三聖雪峰に問う、網を透るの金鱗、未だ審らかならず何を以てか食と為す。峰は言う、お前網を出で来るを待ちて、即ちお前に向って道わん。意旨如何。」師は言った。「途を同じくして轍を同じくせず。」問うた。「三聖道う、一千五百人の善知識、話頭も識らず。峰は言う、老僧住持事煩し。又た作麼生。」師は言った。「前の箭猶ほ軽く、後の箭深し。」問うた。「只だ雪竇の道う、惜しむ可し放過す、好く三十棒を与えよ、此の棒は一棒も校べるを得ず、直に是れ作家に遇うを得難し、意又た作麼生。」師は言った。「陣敗れて兵書を説く。」問うた。「此の棒は三聖合して喫らうべきか、雪峰合して喫らうべきか。」師拂子を以て禅床を撃ちて言った。「此の裏に薦取せよ。」衆に示す。「衲僧の拄杖子、用いざれば則ち已む、用いれば則ち鴆鳥の水に落つるが如く、魚鼈皆な死す。正に按じ傍に提げ、風颯颯として地に。独り大方を歩み、殺活は我に在り。所以に道う、「千人門を排すは、一人関を㧞くに如かず。若し一人関を㧞かば、千人万人安楽の田地に到るを得ん。還って知るか、鴛鴦繍い出でて君に看るに従えども、金針を把りて人に度さず。」衆に示す。「色を観じて即ち空と為れば大智を成り、故に生死に住せず。空を観じて即ち色と為れば大悲を成り、故に涅槃を証せず。生死に住せず、涅槃を証せず、漢地収めず、秦地管せず。且く道え什麼の処に在りて身を安んじ命を立てん。莫しや是れ昭昭として心目の間に在りて、而して相睹う可からず、晃晃として色塵の内に在りて、而して理分る可からざるか。莫しや是れ起坐鎮い相随い、語默同居止するか。若し恁麼ならば、総て是れ髑髏の前の敲磕なり。須らく知れ過量の人自ら過量の用有るを。且く作麼生か是れ過量の用。北斗に身を蔵すと雖も語有り、群を出づるの消息知る人少なし。」
鎮江府焦山或庵師體禪師
鎮江府焦山或庵師体禅師
