Libo

五燈會元 巻第十八

宋 · 普济 · 第143巻 / 144

南平人。上堂。不是心。不是佛。不是物。瀝盡野狐涎。趯飜山鬼窟。平田淺草裡。露出焦尾大蟲。太虗寥廓中。放出遼天俊鶻。阿呵呵。露風骨。等閑拈出眾人前。畢竟分明是何物。咄咄。上堂。玉露垂青草。金風動白蘋。一聲寒鴈叫。喚起未惺人。

南平の人である。上堂。「是れ心に非ず、是れ仏に非ず、是れ物に非ず。野狐の涎を瀝尽し、山鬼の窟を趯飜す。平田浅草の裏に、焦尾の大虫を露出す。太虚寥廓の中に、遼天の俊鶻を放出す。阿呵々、風骨を露す。等閑に拈出して衆人の前、畢竟分明に是れ何物ぞ。咄々。」上堂。「玉露青草に垂れ、金風白苹を動かす。一声寒雁叫びて、未だ惺れざる人を喚起す。」

汀州報恩法演禪師

汀州報恩法演禅師

果州人。上堂。舉俱胝竪指因緣。師曰。佳人睡起懶梳頭。把得金釵插便休。大抵還他肌骨好。不塗紅粉也風流。

果州の人である。上堂、倶胝指を竪つの因縁を挙ぐ。師は言った、「佳人睡り起きて懶く頭を梳る、金釵を把得して挿し便ち休む。大抵他に還す肌骨の好き、紅粉を塗らずとも也だ風流なり。」

臨安府淨慈肯堂彥充禪師

臨安府浄慈肯堂彦充禅師

於潛盛氏子。幼依明空院義堪為師。首參大愚宏智.正堂大圓。後聞東林謂眾曰。我此間別無玄妙。祇有木札羹。鐵釘飯。任汝咬嚼。師竊喜之。直造謁。陳所見解。林曰。據汝見處。正坐在鑑覺中。師疑不已。將從前所得底一時颺下。一日。聞僧舉南泉道。時人見此一株華。如夢相似。默有所覺。曰。打草祇要虵驚。次日入室。林問。那裡是巖頭密啟其意處。師曰。今日捉敗這老賊。林曰。達磨大師性命在汝手裡。師擬開口。驀被攔胷一拳。忽大悟。直得汗流浹背。點首自謂曰。臨濟道。黃檗佛法無多子。豈虗語邪。遂呈頌曰。為人須為徹。殺人須見血。德山與巖頭。萬裡一條鐵。林然之。住後。上堂。世尊不說說。迦葉不聞聞。卓拄杖曰。水流黃葉來何處。牛帶寒鴉過遠村。上堂。舉雪峰示眾雲。盡大地是箇解脫門。因甚把手拽不入。師曰。大小雪峰話作兩橛。既盡大地是箇解脫門。用拽作麼。上堂。一向與麼去。法堂前草深一丈。一向與麼來。腳下泥深三尺。且道如何即是。三年逢一閏。鷄向五更啼。上堂。舉卍庵先師道。坐佛床。斫佛腳。不敬東家孔夫子。卻向他鄉習禮樂。師曰。入泥入水即不無。先師爭奈寒蟬抱枯木。泣盡不回頭。卓拄杖曰。灼然。有不回頭底。淨慈向升子裡禮汝三拜。上堂。三世諸佛。無中說有。䕞𦿆拾華針。六代祖師。有裡尋無。猿猴探水月。去此二途。如何話會。儂家不管興亡事。盡日和雲占洞庭。元庵受智者請。引座曰。南山有箇老魔王。烱烱雙眸放電光。口似血盆呵佛祖。牙如劍樹罵諸方。幾度業風吹不動。吹得動。雲黃山畔與嵩頭陀.傅大士。一火破落戶。依舊孟八郎。賺他無限痴男女。開眼堂堂入鑊湯。忽有箇衲僧出來道。既是善知識。為甚賺人入鑊湯。只向他道。非公境界。後示寂。塔於寺之南庵。

于潜の盛氏の子である。幼年に明空院の義堪に依りて師と為す。先ず大愚・宏智・正堂・大円に参ず。後に来りて聞けるは東林衆人に対して説いて言う、「我此の裏別に玄妙無し、只だ木札の羹・鉄釘の飯有り、お前に任せて咬嚼す。」師私かに喜び、径に去りて拝謁し、自己の見解を陳述す。林は言った、「お前の見処に拠れば、正に鑒覚の中に坐す。」師疑う已まず、従前所得のを一時に揚下す。一天、僧の挙ぐる南泉の話を聞く、「時人此の一株の花を見る、夢の相似なり。」黙かに覚る所有りて言った、「草を打つは只だ要として蛇を驚かす。」次日室に入る。林問う、「何れの処か是れ岩頭の密かに其の意を啓するの処ぞ。」師は言った、「今日此の老賊を捉敗す。」林は言った、「達磨大師の性命はお前の手裏に在り。」師剛し口を開かんと要するに、蓦然として胸を攔えて一拳せられ、忽然として大悟し、直に汗流れ背に浹するを得たり。頭を点いて自ら言った、「臨済の道う、黄檗の仏法多子無し、豈是れ虚語ならんや。」是に於て頌を呈す、「人と為るに須らく徹と為すべし、人を殺すに須らく血を見るべし。徳山与に岩頭とは、万里一条の鉄。」林然許す。住して後、上堂。「世尊は説かずして説き、迦葉は聞かずして聞く。」拄杖を卓して言った、「水は黄葉を流して来たるは何れの処ぞ、牛は寒鴉を帯びて遠村を過ぐ。」上堂、雪峰の衆に示すを挙げて言う、「尽大地は是れ箇の解脱門、因ってか手を把りて拽り入らざる。」師は言った、「大小の雪峰は話を両橛に作す。既に尽大地是れ箇の解脱門、拽るを用いて什麼と作さん。」上堂。「一向に与麼に去れば、法堂前に草は深きこと一丈。一向に与麼に来れば、脚下に泥は深きこと三尺。且く道え如何なるか即ち是れぞ。三年に一閏に逢い、鶏は五更に向って啼く。」上堂、卍庵の先師の道うを挙ぐ、「仏床に坐して仏脚を斫り、東家の孔夫子を敬せず、却って他郷に向って礼楽を習う。」師は言った、「泥に入り水に入るは即ち無からず。先師は争奈か寒蝉の枯木を抱き、泣き尽くして頭を回さざるを。」拄杖を卓して言った、「灼然として頭を回さざる底有り。浄慈升子の裏に向ってお前に三拜を礼せん。」上堂。「三世の諸仏、無の中に有を説き、莨菪は花針を拾う。六代の祖師、有の裏に無を尋ね、猿猴は水月を探る。此の二途を去りて、如何にか話会せん。儂家は興亡の事を管せず、尽日雲と与に洞庭を占む。」元庵智者の請を受け、座を引きて言った、「南山に箇の老魔王有り、炯炯たる双眸は電光を放つ。口は血盆に似て仏祖を呵り、牙は剣樹の如くして諸方を罵る。幾度も業風吹きて動かざるも、吹き動かせば、雲黄の山畔に嵩頭陀・傅大士与に、一火の破落户、依旧として孟八郎。彼を賺して無限の痴男女、眼を開き堂堂として鑊湯に入る。忽ち箇の衲僧有りて出でて言わば、既に是れ善知識、何が為に人を賺して鑊湯に入ると。只だ彼に向って言わん、公の境界に非ずと。」後来示寂し、塔は寺の南庵に在り。

婺州智者元庵真慈禪師

婺州智者元庵真慈禅師

潼川人。姓李氏。初依成都正法出家。具戒後遊講肆。聽講圓覺。至四大各離。今者妄身當在何處。畢竟無體。實同幻化。因而有省。作頌曰。一顆明珠。在我這裡。撥著動著。放光動地。以呈諸講師。無能曉之者。歸以呈其師。遂舉狗子無佛性話詰之。師曰。雖百千萬億公案。不出此頌也。其師以為不遜。乃叱出。師因南遊。至廬山圓通掛塔。時卍庵為西堂。為眾入室。舉。僧問雲門。撥塵見佛時如何。門雲。佛亦是塵。師隨聲便喝。以手指𮌎曰。佛亦是塵。師復頌曰。撥塵見佛。佛亦是塵。問了答了。直下飜身。勸君更盡一杯酒。西出陽關無故人。又頌塵塵三昧曰。缽裡飯。桶裡水。別寶崑崙坐潭底。一塵塵上走須彌。明眼波斯笑彈指。笑彈指。珊瑚枝上清風起。卍庵深肯之。

潼川の人、姓は李氏。初め成都の正法に依りて出家す。戒を具えて後に講肆に游び、『円覚』を聴講し、「四大各離れ、今者の妄身は当に何れの処にか在らん、畢竟体無く、実に幻化に同じ」に到りて、因りて省有り。頌を作して言った、「一顆の明珠、我が此の裏に在り。撥きて動き着けば、光を放ちて地を動かす。」諸の講師に呈するも、能く暁了する者無し。帰りて老師に呈す。老師便ち狗子仏性無きの話を挙げて詰問す。師は言った、「百千万億の公案と雖も、此の頌を出でず。」老師不遜と為し、便ち叱出す。師因りて南に游び、廬山の円通に到りて塔を掛ぐ。当時卍庵は西堂を為り、衆人の為に室に入る。挙ぐ、「僧雲門に問う、塵を撥りて仏を見る時は如何。門は言う、仏も亦た是れ塵。」師声に随いて便ち喝す。手を以て胸を指して言った、「仏も亦た是れ塵。」師又た頌して言った、「塵を撥りて仏を見れば、仏も亦た是れ塵。問い了わり答え了われば、直下に身を飜す。君に勧む更に尽くせ一杯の酒、西に陽関を出づれば故人無し。」又た塵塵三昧を頌して言った、「鉢裏の飯、桶裏の水。別に崑崙を宝して潭底に坐す。一尘の塵上に須弥を走らしむ。明眼の波斯は笑って指を弾く。笑って指を弾けば、珊瑚枝上に清風起る。」卍庵深く肯可す。

西禪需禪師法嗣

西禅需禅師の法嗣

福州皷山木庵安永禪師

福州皷山木庵安永禅師

閩縣吳氏子。弱冠為僧。未幾謁懶庵於雲門。一日入室。庵曰。不問有言。不問無言。世尊良久。不得向世尊良久處會。隨後便喝。倐然契悟。作禮曰。不因今日問。爭喪目前機。庵許之。住後。上堂。要明箇事。須是具擊石火.閃電光底手段。方能嶮峻巖頭全身放捨。白雲深處得大安居。如其覷地覓金針。直下腦門須迸裂。到這裡假饒見機而變。不犯鋒鋩。全身獨脫。猶涉泥水。祇如本分全提一句。又作麼生道。擊拂子曰。淬出七星光燦爛。解拈天下任橫行。上堂。舉睦州示眾雲。諸人未得箇入處。須得箇入處。既得箇入處。不得忘卻老僧。師曰。恁麼說話。面皮厚多少。木庵則不然。諸人未得箇入處。須得箇入處。既得箇入處。直須颺下入處始得。上堂。拈拄杖曰。臨濟小廝兒。未曾當頭道著。今日全身放憨。也要諸人知有。擲拄杖。下座。僧問。須彌頂上飜身倒卓時如何。師曰。未曾見毛頭星現。曰。恁麼則傾湫倒嶽去也。師曰。莫亂做。僧便喝。師曰。雷聲浩大。雨點全無。

閩県の呉氏の子である。弱冠にして僧と為る。久しからずして懶庵を雲門に謁う。一天室に入る。庵は言った、「有言を問わず、無言を問わず。世尊良久す。世尊良久の処に向って会するを得ず。」随いて便ち喝す。師倏然として契悟し、礼を作して言った、「今日の問に因らざれば、争いでか目前の機を喪せん。」庵許可す。住して後、上堂。「此の件の事を明にせんと要せば、須らく石を撃てば火・電を閃かす光の底の手段を具し、方に能く険峻の岩頭に於て全身を放舎し、白雲の深処に於て大安居を得べし。其れ如し地を覷りて金針を覓めば、直下に脳門須らく迸裂すべし。此に到れば、仮饒機を見て変じ、鋒鋩を犯さず、全身独り脱するも、猶ほ泥水に渉る。只だ如し本分の全提の一句は、又た作麼生にか道わん。」拂子を撃ちて言った、「淬出せば七星の光燦爛、拈じ解けば天下に任せて横行せん。」上堂、睦州の衆に示すを挙げて言う、「諸人未だ箇の入処を得ざれば、須らく箇の入処を得べし。既に箇の入処を得たれば、老僧を忘却するを得ず。」師は言った、「恁麼に説話するは、面皮の厚さ幾多ぞ。木庵は則ち然らず。諸人未だ箇の入処を得ざれば、須らく箇の入処を得べし。既に箇の入処を得たれば、直に須らく入処を揚下して始めて得。」上堂、拄杖を拈じて言った、「臨済の小厮児、未だ曾て当頭に道着せず。今日全身を放憨し、也だ要して諸人に有るを知らしむ。」拄杖を擲ちて座を下る。僧問う、「須弥頂上に身を飜して倒卓する時は如何。」師は言った、「未だ曾て毛頭星の現ずるを見ず。」言った、「恁麼ならば則ち湫を傾け岳を倒して去る也。」師は言った、「乱りに作す莫れ。」僧便ち喝す。師は言った、「雷声は浩大にして、雨点は全く無し。」

溫州龍翔栢堂南雅禪師

温州龍翔柏堂南雅禅師

上堂曰。瑞峰頂上。棲鳳亭邊。一杯淡粥相依。百衲蒙頭打坐。二祖禮三拜。依位而立。已是周遮。達磨老臊胡。分盡髓皮。一場狼籍。其餘之輩。何足道哉。栢堂恁麼道。還免諸方檢責也無。拍繩床雲。洎合停囚長智。上堂曰。大機貴直截。大用貴頓發。縱有嚙鏃機。一鎚須打殺。何故。我王庫內無如是刀。上堂曰。紫蕨伸拳筍破梢。楊華飛盡綠陰交。分明西祖單傳句。黃鸝留鳴燕語巢。這裡見得諦。信得及。若約諸方決定。明窻下安排。龍翔門下直是一槌槌殺。何故。不是與人難共住。大都緇素要分明。

上堂に言った、「瑞峰の頂上、栖鳳の亭辺。一杯の淡粥相依し、百衲頭を蒙りて打坐す。二祖は礼三拜して位に依りて立つ、已に是れ周遮なり。達磨の老臊胡、髄皮を分尽して、一場狼藉たり。其の余の輩は、何ぞ道わんに足らん。柏堂恁麼に道う、還って諸方の検責を免るや無しや。」繩床を拍して言った、「洎りて合に停囚長智すべし。」上堂に言った、「大機は直截を貴び、大用は頓発を貴ぶ。縦い鏃を齧むの機有らばも、一鎚に須らく打殺すべし。何が為にぞ、我が王庫内に是の如き刀無し。」上堂に言った、「紫蕨は拳を伸べて筍は梢を破る。楊花飛び尽くして緑陰交わる。分明なる西祖単伝の句、黄鹂は鳴を留めて燕は巢に語る。此の裏に諦を見得て、信じ及ばん。若し約すれば諸方の決定は、明窗の下に安棑す。龍翔門下は直に是れ一槌に槌殺す。何が為にぞ、是れ人と難く共に住らざるに非ず、大都緇素要して分明ならんと欲す。」

福州天王志清禪師

福州天王志清禅師

上堂。竪起拂子云。只這箇天不能蓋。地不能載。徧界徧空。成團成塊。到這裡三世諸佛向甚麼處摸索。六代祖師向甚麼處提持。天下衲僧向甚麼處名邈。除非自得自證。便乃敲唱雙行。雖然如是。未是衲僧行履處。作麼生是衲僧行履處。是非海裡橫身入。豺虎叢中縱步行。

上堂、拂子を竪起して言った、「只だ此の箇は天も盖う能わず、地も載する能わず、遍界遍空にして、団を成し塊を成す。此に到りて三世の諸仏は什麼の処に向って摸索せん、六代の祖師は什麼の処に向って提持せん、天下の衲僧は什麼の処に向って名邈せん。非ざれば自ら得自ら証せば、便ち乃ち敲唱双行せん。如是と雖も、未だ是れ衲僧の行履の処ならず。作麼生か是れ衲僧の行履の処ぞ。是非の海裏に身を横えて入り、豺虎の叢中に歩を縦す。」

南劒州劒門安分庵主

南剣州剣門安分庵主

少與木庵同隷業安國。後依懶庵。未有深證。辭謁徑山大慧。行次江干。仰瞻宮闕。聞街司喝侍郎來。釋然大悟。作偈曰。幾年箇事掛胷懷。問盡諸方眼不開。肝膽此時俱裂破。一聲江上侍郎來。遂徑回西禪。懶庵迎之。付以伽棃。自爾不規所寓。後庵居劒門。化被嶺表。學者從之。所作偈頌。走手而成。凡千餘首。盛行於世。示眾。這一片田地。汝等諸人。且道天地未分已前在甚麼處。直下徹去。已是鈍置分上座不少了也。更若擬議思量。何啻白雲萬裡。驀拈拄杖。打散大眾。示眾。上至諸佛。下及眾生。性命總在山僧手裡。檢點將來。有沒量罪過。還有檢點得出者麼。卓拄杖一下曰。冤有頭。債有主。遂左右顧視曰。自出洞來無敵手。得饒人處且饒人。示眾。十五日已前。天上有星皆拱北。十五日已後。人間無水不朝東。已前已後總拈卻。到處鄉談各不同。乃屈指曰。一二三四五。六七八九十。十一十二十三十四。諸兄弟今日是幾。良久曰。本店買賣。分文不賖。

少き時木庵与に倶に安国に在りて業に隶す。後に来りて懶庵に依るも、未だ深証有らず。辞別して径山の大慧を謁えんと去る。江辺に走り到りて、宮闕を仰瞻し、街司の喝す「侍郎来たる」を聞きて、釈然として大悟す。偈を作して言った、「几年の箇事胸懐に掛く、諸方を問尽すも眼開かず。肝胆此の時倶に裂破す、一声江上侍郎来たる。」是に於て径に西禅に回る。懶庵迎接し、伽梨を把りて彼に付与す。此れより寓る所を規せず。後来剣門に庵居し、教化は嶺表に遍及し、学者之に跟従す。作る所の偈頌は、手を走らせて成り、凡そ千余首、世に盛行す。衆に示す、「此の一片の田地は、お前等諸人、且く道え天地未だ分れざる已前は什麼の処に在る。直下に徹し去れば、已に是れ鈍置分上座少なからざる了れり。更に若し拟議思量せば、何ぞ啻んや白雲万里。」蓦然に拄杖を拈じて、大衆を打散す。衆に示す、「上は諸仏に至り、下は衆生に及ぶ、性命は総て山僧の手裏に在り。検点して将来れば、没量の罪過有り。還って検点し出するを得る者有るか。」拄杖を卓して一下して言った、「冤には頭有り、債には主有り。」是に於て左右顧視して言った、「自ら洞を出でて来りて敵手無し、人を饒るを得る処は且く人を饒れ。」衆に示す、「十五日已前は、天上星有りて皆北に拱し、十五日已後は、人間水無しと雖も東に朝ぜざる無し。已前已後総て拈却して、到る処郷談各同じからず。」是に於て指を屈して言った、「一二三四五、六七八九十、十一十二十三十四。諸の兄弟、今日は是れ几ぞ。」過了良久して言った、「本店の売買は、分文も賖さず。」

東禪嶽禪師法嗣

東禅岳禅師の法嗣

福州皷山宗逮禪師

福州皷山宗逮禅師

上堂。世尊道。應如是知。如是見。如是信解。不生法相。遂喝曰。玉本無瑕卻有瑕。

上堂。「世尊の道う、応に是の如く知り、是の如く見、是の如く信解して、法相を生ぜず。」是に於て喝して言った、「玉は本より瑕無しと雖も却って瑕有り。」

西禪淨禪師法嗣

西禅浄禅師の法嗣

福州乾元宗頴禪師

福州乾元宗穎禅師

上堂。卓拄杖曰。性燥漢祇在一槌。靠拄杖曰。靈利人不勞再舉。而今莫有靈利底麼。良久曰。比擬張麟。兔亦不遇。

上堂、拄杖を卓して言った、「性燥の漢は只だ一槌に在り。」拄杖に靠れて言った、「霊利の人は再挙を労せず。而今莫しや霊利の底有るか。」過了良久して言った、「張麟に比拟するも、兎も亦た遇わず。」

開善謙禪師法嗣

開善謙禅師の法嗣

建寧府仙州山吳十三道人

建寧府仙州山呉十三道人

每以己事扣諸禪。及開善歸。結茆於其左。遂往給侍。紹興庚申三月八日夜。適然啟悟。占偈呈善曰。元來無縫罅。觸著便光輝。既是千金寶。何須彈雀兒。善答曰。啐地折時真慶快。死生凡聖盡平沉。僊州山下呵呵笑。不負相期宿昔心。

毎に己事を以て諸禅を扣問す。開善帰り来るを等ちて、其の左辺に茅を結び、便ち去りて侍給す。紹興庚申三月八日の夜、適然として啓悟す。偈を占して善に呈す、「元来縫罅無し、触れ着けば便ち光輝す。既に是れ千金の宝、何ぞ須いん雀児を弾くを。」善答う、「啐地折るる時は真に慶快、死生凡聖尽く平沈す。仙州山下呵呵笑い、相期する宿昔の心を負かず。」

天童華禪師法嗣

天童華禅師の法嗣

慶元府天童密庵鹹傑禪師

慶元府天童密庵咸杰禅師

福州鄭氏子。母夢廬山老僧入舍而生。自幼頴悟。出家為僧。不憚遊行。徧參知識。後謁應庵於衢之明果。庵孤硬難入。屢遭呵。一日。庵問。如何是正法眼。師遽答曰。破沙盆。庵頷之。未幾。辭回省親。庵送以偈曰。大徹投機句。當陽廓頂門。相從今四載。徵詰洞無痕。雖未付缽袋。氣宇吞乾坤。卻把正法眼。喚作破沙盆。此行將省覲。切忌便跺跟。吾有末後句。待歸要汝遵。出世衢之烏巨。次遷祥符.蔣山.華藏。未幾詔住徑山.靈隱。晚居太白。僧問。虗空銷殞時如何。師曰。罪不重科。上堂。牛頭橫說竪說。不知有向上關棙子。有般漆桶輩。東西不辨。南北不分。便問如何是向上關棙子。何異開眼尿床。華藏有一轉語。不在向上向下。千手大悲摸索不著。雨寒無處曬㫰。今日普請。佈施大眾。良久曰。達磨大師。無當門齒。上堂。世尊不說說。拗曲作直。迦葉不聞聞。望空啟告。馬祖即心即佛。懸羊頭賣狗肉。趙州勘庵主。貴買賤賣。分文不直。祇如文殊是七佛之師。因甚出女子定不得。河天月暈魚分子。槲葉風微鹿養茸。上堂。卓拄杖曰。迷時祇迷這箇。復卓一下曰。悟時祇悟這箇。迷悟雙忘。糞埽堆頭重添搕𢶍。莫有向東湧西沒全機獨脫處道得一句底麼。若道不得。華藏自道去也。擲拄杖曰。三十年後。上堂。舉金峰和尚示眾雲。老僧二十年前。有老婆心。二十年後。無老婆心。時有僧問。如何是和尚二十年前有老婆心。峰雲。問凡答凡。問聖答聖。曰。如何是二十年後無老婆心。峰雲。問凡不答凡。問聖不答聖。師曰。烏巨當時若見。但冷笑兩聲。這老漢忽若瞥地。自然不墮聖凡窠臼。上堂。舉婆子燒庵話。師曰。這箇公案。叢林中少有拈提者。傑上座裂破面皮。不免納敗一上。也要諸方檢點。乃召大眾曰。這婆子洞房深穩。水洩不通。偏收枯木上糝華。寒巖中發燄。箇僧孤身迥迥。

福州の鄭氏の子である。母は廬山の老僧の舎に入るを夢みて生む。自ら幼にして頴悟、出家して僧と為る。游行を憚からず、遍く知識に参ず。後来衢州の明果に於て応庵を謁う。庵は孤硬にして入り難く、屡々呵責を遭う。一天、庵問う、「如何なるか是れ正法眼ぞ。」師立ち所に答う、「破沙盆。」庵頭を点く。久しからずして、辞して帰りて親を省す。庵偈を以て送る、「大徹の投機の句、当陽は頂門を廓かにす。相従今四載、征詰は洞として痕無し。未だ鉢袋を付せずと雖も、気宇は乾坤を呑む。却って正法眼を把りて、破沙盆と喚ぶ。此の行は将に省覲せん、切に跺跟することを忌めよ。吾に末後の句有り、帰るを待ってお前に遵わんことを要す。」出世は衢州の烏巨に在り。後来祥符・蒋山・華蔵に遷る。久しからずして径山・霊隠に住すを詔す。晩く太白に居る。僧問う、「虚空の銷殞する時は如何。」師は言った、「罪は科を重ねず。」上堂。「牛頭は横に説き竪に説くも、向上の関棙子有るを知らず。有般の漆桶の輩は、東西を弁ぜず南北を分かたずして、便ち問う如何なるか是れ向上の関棙子ぞと、開眼して尿床するに異ならんや。華蔵に一転の語有り、向上向下に在らず、千手の大悲も摸索し着かず。雨寒に晒す処無し。今日普請して、大衆に布施せん。」過了良久して言った、「達磨大師は、当門の歯無し。」上堂。「世尊は説かずして説くは、曲を拗じて直と作し、迦葉は聞かずして聞くは、空を望みて啓告す。馬祖の即心即仏は、羊頭を懸けて狗肉を売り、趙州の庵主を勘するは、貴く買い賎しく売りて、分文も直ならず。只だ如し文殊は是れ七仏の師、因ってか女子の定を出づるを得ざる。河天は月暈に魚分子、槲葉は風微に鹿茸を養う。」上堂、拄杖を卓して言った、「迷う時は只だ此の箇を迷い、」又た卓一下して言った、「悟る時は只だ此の箇を悟る。迷悟双忘すれば、糞掃の堆頭に重ねて搕圾を添う。莫しや東に涌き西に没し、全機独脱の処に向って一句を道い得る底有るか。若し道い得ざれば、華蔵自ら道い去らん。」拄杖を擲ちて言った、「三十年後。」上堂、金峰和尚の衆に示すを挙げて言う、「老僧二十年前は老婆心有り、二十年後は老婆心無し。」当時僧の問う有り、「如何なるか是れ和尚の二十年前老婆心有るぞ。」峰は言う、「凡に問えば凡に答え、聖に問えば聖に答う。」問う、「如何なるか是れ二十年後老婆心無きぞ。」峰は言う、「凡に問えば凡に答えず、聖に問えば聖に答えず。」師は言った、「烏巨は当時若し見れば、但だ冷笑して両声せん。此の老汉忽ち若し瞥地すれば、自然聖凡の窠臼に堕ちざらん。」上堂、婆子庵を焼くの話を挙ぐ。師は言った、「此の箇の公案は、叢林の中少なき拈提する。杰上座は面皮を裂破し、免れず敗を納る一上、也だ要して諸方に検点せらん。」是に於て大衆を召して言った、「此の婆子は洞房深穏にして、水も泄らず通ぜず、偏ねに枯木の上に花を糁り、寒岩の中に焔を発すを収む。箇の僧孤身迥迥にして、

慣入洪波。等閑坐斷潑天潮。到底身無涓滴水。子細檢點將來。敲枷打鎻則不無二人。若是佛法未夢見在。烏巨與麼提持。畢竟意歸何處。良久曰。一把柳絲收不得。和煙搭在玉欄幹。上堂。動絃別曲。葉落知秋。舉一明三。目機銖兩。如王秉劒。殺活臨時。猶是無風帀帀之波。向上一路。千聖把手共行。合入泥犂地獄。正當與麼時。合作麼生。江南兩淛。春寒秋熱。上堂。盡乾坤大地。喚作一句子。擔枷帶鎻。不喚作一句子。業識茫茫。兩頭俱透脫。淨倮。倮赤灑灑。沒可把。達磨一宗。掃土而盡。所以雲門大師道。盡乾坤大地。無纖毫過患。猶是轉句。不見一法。始是半提。更須知有全提底時節。大小雲門。劒去久矣。方乃刻舟。後示寂。塔於寺之中峰。

(師は接して言った。)「慣れて洪波に入り、等閑に潑天の潮を坐断す。底に到りて身に涓滴の水無し。仔細に検点して将来れば、枷を敲き鎖を打つは則ち二人無からず。若し是れ仏法ならば、未だ夢に見ざる在り。烏巨与麼に提持す、畢竟意は何れの処に帰せん。」過了良久して言った、「一把の柳絲収むるを得ず、煙と和して玉欄干に搭す。」上堂。「弦を動かして曲を別し、葉落ちて秋を知る。一を挙げて三を明にし、目機は銖両。王の剣を秉るが如く、殺活は時に臨む。猶ほ是れ無風匝匝の波。向上の一路は、千聖手を把りて共に行くも、合に泥犁地獄に入るべし。正に与麼の時に当りて、合作麼生ぞ。江南両浙、春は寒く秋は熱し。」上堂。「乾坤大地を尽くして、一句子と喚べば、枷を担い鎖を帯び、一句子と喚ばざれば、業識茫茫たり。両頭倶に透脱して、浄裸裸・赤洒洒として把る可き無し。達磨の一宗は、土を掃いて尽くさん。所以に雲門大師の道う、尽乾坤大地に繊毫の過患無くとも、猶ほ是れ転句、一法を見ずして始めて是れ半提、更に須らく全提の底の時節有るを知らんと。大小の雲門、剣去ること久し、方に乃ち舟を刻す。」後来示寂し、塔は寺の中峰に在り。

南書記者

南書記者

福州人。久依應庵。於趙州狗子無佛性話。豁然契悟。有偈曰。狗子無佛性。羅睺星入命。不是打殺人。被人打殺定。庵見。喜其脫略。紹興末終於歸宗。

福州の人である。久しく応庵に依る。趙州の狗子仏性無きの話の上に於て、豁然として契悟す。偈有り、「狗子仏性無し、羅睺星は命に入る。是れ人を打殺するに非ず、人に打殺せらるるは定なり。」庵見て、其の脱略を喜ぶ。紹興の末に帰宗に終す。

侍郎李浩居士

侍郎李浩居士

字德遠。號正信。幼閱首楞嚴經。如遊舊國。志而不忘。持橐後。造明果。投誠入室。應庵揕其𮌎曰。侍郎死後。向甚麼處去。公駭然汗下。庵喝出。公退參。不旬日竟躋堂奧。以偈寄同參嚴康朝曰。門有孫臏鋪。家存甘贄妻。夜眠還早起。誰悟復誰迷。庵見稱善。有鬻胭脂者。亦久參應庵。頗自負。公贈之偈曰。不塗紅粉自風流。往往禪徒到此休。透過古今圈䙡後。卻來這裡吃拳頭。

字は徳遠、号は正信。幼年に『首楞厳経』を閲し、旧国に游ぶが如くして志して忘れず。橐を持して後、明果を造訪し、誠を投げて室に入る。応庵其の胸口を揕して言った、「侍郎死して後、什麼の処に向って去る。」公駭然として汗下る。庵喝出す。公退きて参じ、十天に到らずして竟に堂奥に躋る。偈を用いて同参の厳康朝に寄す、「門には孫臏の鋪有り、家には甘贄の妻存す。夜眠りて還って早く起き、誰か悟り復た誰か迷う。」庵見て善しと称す。胭脂を売る者有りて、亦た久しく応庵に参じ、頗る自負す。公彼に偈を贈る、「紅粉を塗らずして自ずから風流、往々禅徒此に到りて休す。古今の圏繢を透過して後、却って此の裏に来りて拳頭を喫う。」

道場全禪師法嗣

道場全禅師の法嗣

常州華藏伊庵有權禪師

常州華蔵伊庵有権禅師

臨安昌化祁氏子。年十四得度。十八歲。禮佛智裕禪師於靈隱。時無庵為第一座。室中以從無住本。建一切法問之。師久而有省。答曰。暗裡穿針。耳中出氣。庵可之。遂密付心印。嘗夜坐達旦。行粥者至。忘展缽。鄰僧以手觸之。師感悟。為偈曰。黑漆崑崙把釣竿。古帆高掛下驚湍。蘆華影裡弄明月。引得盲龜上釣船。佛智嘗問。心包太虗。量廓沙界時如何。師曰。大海不宿死屍。智撫其座曰。此子他日當據此座。呵佛罵祖去在。師自是埋藏頭角。益自韜晦。遊歷湖湘江淛幾十年。依應庵於歸宗。參大慧於徑山。無庵住道場。招師分座說法。於是聲名隱然。住後。上堂。今朝結卻布袋口。明眼衲僧莫亂走。心行滅處解飜身。噴嚏也成師子吼。栴檀林。任馳驟。剔起眉毛頂上生。剜肉成瘡露家醜。上堂。禪禪。無黨無偏。迷時千里隔。悟在口皮邊。所以僧問石霜。如何是禪。霜雲㼾甎。又僧問睦州。如何是禪。州雲。猛火著油煎。又僧問首山。如何是禪。山雲。猢猻上樹尾連顛。大眾。道無橫徑。立處孤危。此三大老。行聲前活路。用劫外靈機。若以衲僧正眼檢點將來。不無優劣。一人如張良入陣。一人如項羽用兵。一人如孔明料敵。若人辨白得。可與佛祖齊肩。雖然如是。忽有箇衲僧出來道。長老話作兩橛也。適來道。道無橫徑。無黨無偏。而今又卻分許多優劣。且作麼生祇對。還委悉麼。把手上山齊著力。咽喉出氣自家知。淳熈庚子秋。示微疾。留偈。趺坐而逝。茶毗齒舌不壞。獲五色舍利無數。瘞於橫山之塔。分骨歸葬萬年山寺。

臨安昌化の祁氏の子である。年十四にして得度す。十八歳にして、霊隠に於て仏智裕禅師に礼す。当時無庵は第一座を為り、室中に「従無住本、建一切法」を以て彼に問う。師久しくして省有り、答う、「暗裏に針を穿ち、耳中に気を出す。」庵之を可として、是に於て心印を密付す。曾て夜坐して亮に至る。粥を行う者到るも、鉢を展ぶるを忘る。隣僧手を以て彼に触るるを、師感喩して偈を作す、「黒漆の崑崙は釣竿を把り、古帆は高く掛けて驚湍を下る。蘆花の影裏に明月を弄して、盲亀を引きて釣船に上る。」仏智曾て問う、「心は太虚を包み、量は沙界を廓む時は如何。」師は言った、「大海は死尸を宿さず。」智其の座を撫して言った、「此の子他日当に此の座に拠りて、仏を呵り祖を罵り去る在らん。」師此れより頭角を蔵埋し、益々自ら韜晦す。湖湘江浙に游歴すること几十年。帰宗に於て応庵に依り、径山に於て大慧に参ず。無庵道場に住して、師を招きて座を分かちて法を説かしむ。是に於て声名隠然たり。住して後、上堂。「今朝布袋の口を結却し、明眼の衲僧は乱りに走る莫れ。心行滅する処に身を飜じ解けば、噴嚏もも師子の吼と成る。栴檀林、馳驟に任す。眉毛を剔起して頂上に生じ、肉を剜りて瘡を成して家醜を露す。」上堂。「禅禅、党無く偏無し。迷う時は千里隔ち、悟るは口皮の辺に在り。所以に僧石霜に問う、如何なるか是れ禅ぞ、霜は言う碌磚。又た僧睦州に問う、如何なるか是れ禅ぞ、州は言う、猛火に油を着けて煎る。又た僧首山に問う、如何なるか是れ禅ぞ、山は言う、猢猻は樹に上りて尾は顛に連なる。大衆、道に横径無く、立処孤危なり。此の三大老は、声前の活路を行じ、劫外の霊機を用る。若し衲僧の正眼を以て検点して将来れば、優劣無からざる無し。一人は張良の陣に入るが如く、一人は項羽の兵を用るが如く、一人は孔明の敵を料るが如し。若し人弁白するを得ば、与に仏祖と肩を斉しくせん。如是と雖も、忽ち箇の衲僧有りて出でて言わば、長老は話を両橛に作す也、適来の道う、道に横径無く党偏無し、而今又た却って許多の優劣を分かつと、且く作麼生にか只だ対せん。還って委悉するか。手を把りて山に上りて斉しく力を著け、咽喉より気を出づるは自ら家知れり。」淳熙庚子の秋、微疾を示す。偈を留めて、趺坐して逝く。茶毗に歯舌壊れず、五色の舎利を獲ること無数。横山の塔に瘞め、骨を分かちて万年山寺に帰葬す。

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