五燈會元卷第五
僧問。杲日符天際。珠光照舊都。浦津通法海。今日意如何。師曰。寶劒揮時。豈該明暗。
僧が問うた。「杲日は天際に符し、珠光は旧都を照らす。浦津は法海に通ず、今日の意は如何。」師は言った。「宝剣は揮う時、豈に明暗を該めん。」
逍遙忠禪師法嗣
逍遥忠禅師法嗣
泉州福清院師巍通玄禪師
泉州福清院師巍通玄禅師
僧問。枝分夾嶺。的紹逍遙。寶座既登。法雷請震。師曰。逍遙迥物外。物外霞不生。問。如何是西來的的意。師曰。立雪未為勞。斷臂方為的。曰。恁麼則一華開五葉。芬芳直至今。師曰。因圓三界外。果滿十方知。
僧が問うた。「枝は夾嶺に分かれ、的に逍遥を紹ぐ。宝座は既に登れたり、法の雷を震わんことを請う。」師は言った。「逍遥は迥かに物の外にして、物の外は霞生ぜず。」問う。「如何なるか是れ西来の的の意。」師は言った。「雪に立つは未だ労と為らず、臂を断つは方に的と為る。」曰く、「かくの如くすれば則ち一華開きて五葉なり、芬芳は直ちに今に至る。」師は言った。「因は三界の外に円え、果は満ちて十方の知る所。」
京兆府白雲無休禪師
京兆府白雲無休禅師
僧問。路逢猛虎。如何降伏。師曰。歸依佛法。僧問。如何是白雲境。師曰。月夜樓邊海客愁。
僧が問うた。「路に猛虎に逢う、如何に降伏せん。」師は言った。「佛法に帰依せよ。」僧が問うた。「如何なるか是れ白雲の境。」師は言った。「月の夜は楼の辺に海の客愁う。」
蟠龍文禪師法嗣
蟠竜文禅師法嗣
廬山永安淨悟禪師
廬山永安浄悟禅師
僧問。如何是出家底事。師曰。萬丈懸崖撒手去。曰。如何是不出家底事。師曰。迥殊雪嶺安巢節。有異許由掛一瓢。問。六門不通。如何達信。師曰。闍黎外邊與誰相識。問。脫籠頭.卸角䭾來時如何。師曰。換骨洗腸投紫塞。鴈門切忌更銜蘆。問。從上諸聖將何示人。師曰。有異祖龍行化節。迥超棲鳳越揚塵。問。如何是解作客底人。師曰。寶御珍裝猶尚棄。誰能歷劫傍他門。問。如何是西來意。師曰。海底泥牛吼。雲中木馬嘶。問。眾手淘金。誰是得者。師曰。黃帝不曾遊赤水。神珠罔象也虗然。問。雪覆蘆華時如何。師曰。雖則沍凝呈瑞色。太陽暉後卻迷人。
僧が問うた。「如何なるか是れ家を出づる底の事。」師は言った。「万丈の懸崖に手を撒きて去る。」曰く、「如何なるか是れ家を出でざる底の事。」師は言った。「迥かに雪嶺の巣を安んずるの節に殊なり、許由の一瓢を挂くるに異有り。」問う。「六門通ぜず、如何に信を達せん。」師は言った。「闍黎の外辺は誰と与に相い識る。」問う。「籠頭を脱ぎ角駄を卸きて来る時如何。」師は言った。「骨を換え腸を洗いて紫塞に投ぐ、雁門は切に更に芦を衔えるを忌め。」問う。「従上の諸聖は何を将て人に示す。」師は言った。「祖竜の化を行うの節に異有り、迥かに鳳に栖みて塵を越え揚ぐを超ゆ。」問う。「如何なるか是れ客を作すを解する底の人。」師は言った。「宝御珍装も猶お尚お棄つ、誰か能く劫を歴りて他の門に傍らん。」問う。「如何なるか是れ西来の意。」師は言った。「海底の泥牛は吼え、雲の中の木馬は嘶く。」問う。「衆の手は金を淘す、誰是れ得る者。」師は言った。「黄帝は曾て赤水に游ばず、神珠の罔象も亦た虚然なり。」問う。「雪は芦華を覆う時如何。」師は言った。「冱凝は瑞色を呈すると雖も、太陽の暉の後は卻て人を迷わす。」
袁州木平山善道禪師
袁州木平山善道禅師
初謁洛浦。問。一漚未發已前。如何辨其水脈。浦曰。移舟諳水脈。舉棹別波瀾。師不契。乃參蟠龍。語同前問。龍曰。移舟不別水。舉棹即迷源。師從此悟入。僧問。如何是西來意。師曰。石羊頭子向東看。問。如何是正法眼。師曰。拄杖孔。問。如何是不動尊。師曰。浪浪蕩蕩。問。如何是木平一句。師曰。畐塞虗空。曰。畐塞虗空即不問。如何是一句。師便打。凡有新到。未許參禮。先令運土三擔。而示偈曰。南山路側東山低。新到莫辭三轉泥。嗟汝在途經日久。明明不曉卻成迷。師肉髻螺紋。金陵李氏嚮其道譽。迎請供養。待以師禮。甞問。如何是木平。師曰。不勞斤斧。曰。為甚麼不勞斤斧。師曰。木平。法眼禪師有偈贈曰。木平山裡人。貌古言復少。相看陌路同。論心秋月皎。壞衲線非蠶。助歌聲有鳥。城闕今日來。一漚曾已曉。滅後。門人建塔。諡真寂禪師。
初めて洛浦に謁し、問うた。「一漚未だ発せざる已前は、如何にして其の水の脈を辨ず。」浦は言った。「舟を移して水の脈を諳れ、棹を挙げて波瀾を別け。」師は契わず、乃ち蟠竜に参じて、語は前の問に同じ。竜は言った。「舟を移すも水を別たず、棹を挙ぐれば即ち源を迷う。」師は此より悟り入った。僧が問うた。「如何なるか是れ西来の意。」師は言った。「石の羊の頭子は東に向いて看る。」問う。「如何なるか是れ正法の眼。」師は言った。「拄杖の孔。」問う。「如何なるか是れ動かざる尊。」師は言った。「浪浪として蕩蕩たり。」問う。「如何なるか是れ木平の一句。」師は言った。「畐く虚空を塞ぐ。」曰く、「畐く虚空を塞ぐは即ち問わず。如何なるか是れ一句。」師は便ち打った。凡そ新到は、未だ参礼を許さず、先ず土三担を運ばしめて、而る後に偈を示して言った。「南山の路側は東山低し、新到は三転の泥を辞する莫れ。嗟れ汝は途に在りて日を経ること久し、明明として暁らざれども卻て迷と成れり。」師は肉髻螺の紋有り。金陵の李氏は其の道の誉れを響かし、迎え請うて供養し、師の礼を以って待す。嘗て問うた。「如何なるか是れ木平。」師は言った。「斤斧に労せず。」曰く、「何を為めて斤斧に労せざる。」師は言った。「木平。」法眼禅師は偈有りて贈りて言った。「木平の山の裏の人は、貌は古にして言は復た少なし。相い看るに陌路同じく、心を論ずるに秋の月皎し。壊衲の線は蚕に非ず、歌の声を助くるに鳥有り。城闕に今日来りて、一漚は曾て已に暁く。」滅の後、門人は塔を建つ。諡は真寂禅師。
崇福志禪師
崇福志禅師
僧問。供養百千諸佛。不如供養一無心道人。未審諸佛有何過。無心道人有何德。師曰。雪深宜近火。身煖覺春遲。問。貧子獻珠時如何。師曰。甚麼處得來。問。如何是道。師曰。回車有分。
僧が問うた。「百千の諸佛を供養するは、一無心の道人を供養するに如かず。未だ審らかに諸佛は何の過か有り、無心の道人は何の徳か有る。」師は言った。「雪深きは火に近づくに宜しく、身暖かくして春の遲きを覚ゆ。」問う。「貧子は珠を献ずる時如何。」師は言った。「什麼の処より得て来たる。」問う。「如何なるか是れ道。」師は言った。「車を回らすに分有り。」
陝府龍溪禪師
陝府龍渓禅師
上堂。僧問。如何是無縫塔。師曰。百寶莊嚴今已了。四門開豁幾多時。師乃曰。直饒說似箇無縫塔。也不免老僧下箇橛。作麼生免得去。眾無對。師曰。下去。
上堂。僧が問うた。「如何なるか是れ縫無き塔。」師は言った。「百宝の荘厳は今已に了え、四門は開豁として幾多の時ぞ。」師は乃ち言った。「直に箇の縫無き塔を説き似るを饒くるも、も老僧の箇の橛を下すを免れず。作麼生にして免れ得て去らん。」衆は対無し。師は言った。「下りて去れ。」
黃山輪禪師法嗣
黄山輪禅師法嗣
郢州桐(或作潼)泉山禪師
郢州桐(或は潼と作す)泉山禅師
參黃山。山問。天門一合。十方無路。有人道得。擺手出漳江。師曰。蟄戶不開。龍無龍句。山曰。是你恁麼道。師曰。是即直言是。不是直言不是。山曰。擺手出漳江。山復問。卞和到處荊山秀。玉印從他天子傳時如何。師曰。靈鶴不於林下憩。野老不重太平年。山深肯之。住後。僧問。如何是相傳底事。師曰。龍吐長生水。魚吞無盡漚。曰。請師挑剔。師曰。擂鼓轉船頭。棹穿波裡月。
黄山に参ず。山は問うた。「天門は一合すれば、十方に路無し。人道い得る者有らば、手を摆して漳江を出でん。」師は言った。「蟄の戸は開かず、竜に竜の句無し。」山は言った。「是れ汝のかくの如く道う所。」師は言った。「是れば即ち直ちに是と言い、不是なれば直ちに不是と言う。」山は言った。「手を摆して漳江を出でよ。」山は復た問うた。「卞和の到る処は荊山秀で、玉の印は他の天子に従りて伝う時如何。」師は言った。「霊鶴は林の下に憩わず、野老は太平の年を重ねず。」山は深く之を肯んじた。住の後。僧が問うた。「如何なるか是れ相い伝うる底の事。」師は言った。「竜は長生の水を吐き、魚は無尽の漚を呑む。」曰く、「師の挑剔を請う。」師は言った。「鼓を擂して船頭を転じ、棹は波の裏の月を穿つ。」
韶山普禪師法嗣
韶山普禅師法嗣
潭州文殊禪師
潭州文殊禅師
僧問。如何是祝融峰前事。師曰。巖前瑞草生。問。仁王登位。萬姓霑恩。和尚出世。有何祥瑞。師曰。萬裡長沙駕鐵船。問。如何是本爾莊嚴。師曰。菊花原上景。行人去路長。
僧が問うた。「如何なるか是れ祝融峰の前の事。」師は言った。「巌の前に瑞草生ず。」問う。「仁王は位に登りて、万姓は恩に沾う。和尚の出世は、何の祥瑞か有る。」師は言った。「万里の長沙は鉄船を駕す。」問う。「如何なるか是れ本爾の荘厳。」師は言った。「菊花の原の上の景は、行人の去る路長し。」
耀州密行禪師
耀州密行禅師
僧問。密室之言。請師垂示。師曰。南方水濶。北地風多。曰。不會。乞師再指。師曰。鳥棲林麓易。人出是非難。
僧が問うた。「密室の言は、師の垂示を請う。」師は言った。「南方は水濶く、北地は風多し。」曰く、「会せず。師の再び指すを乞う。」師は言った。「鳥は林麓に栖るは易く、人は是非を出づるは難し。」
思明禪師法嗣
思明禅師法嗣
襄州鷲嶺善本禪師
襄州鷲嶺善本禅師
浴次。僧問。和尚是離垢人。為甚麼卻浴。師曰。定水湛然滿。浴此無垢人。問。祖意教意。是同是別。師曰。鷲嶺峰上。青草參天。鹿野苑中。狐兔交橫。
浴する次。僧が問うた。「和尚は是れ垢を離れたる人、何を為めて卻て浴す。」師は言った。「定の水は湛然として満ち、此の垢無き人を浴す。」問う。「祖意と教意とは、是れ同なるか別なるか。」師は言った。「鷲嶺の峰の上は、青草は天に参ず。鹿野の苑の中は、狐兎は交横す。」
青原下七世
青原下七世
藤霞禪師法嗣
藤霞禅師法嗣
澧州藥山禪師
澧州薬山禅師
上堂。夫學般若菩薩。不懼得失。有事近前。時有僧問。藥山祖裔。請師舉唱。師曰。萬機挑不出。曰。為甚麼萬機挑不出。師曰。他緣岸谷。問。如何是藥山家風。師曰。葉落不如初。問。法雷哮吼時如何。師曰。宇宙不曾震。曰。為甚麼不曾震。師曰。徧地娑婆。未甞哮吼。曰。不哮吼底事如何。師曰。闔國無人知。
上堂:「夫れ般若を学ぶ菩薩は、得失を惧れず。事有れば近き前ね。」時に僧が問うた。「薬山の祖裔は、師の挙唱を請う。」師は言った。「万機は挑み出さず。」曰く、「何を為めて万機は挑み出さざる。」師は言った。「他は岸谷に縁す。」問う。「如何なるか是れ薬山の家風。」師は言った。「葉落ちて初めに如かず。」問う。「法の雷は哮吼する時如何。」師は言った。「宇宙は曾て震わず。」曰く、「何を為めて曾て震わざる。」師は言った。「遍地の娑婆は、未だ曾て哮吼せず。」曰く、「哮吼せざる底の事如何。」師は言った。「国を闔けて人知る無し。」
雲蓋景禪師法嗣
雲蓋景禅師法嗣
衡嶽南臺寺藏禪師
衡嶽南台寺蔵禅師
僧問。遠遠投師。請師一接。師曰。不隔戶。問。如何是南臺境。師曰。松韻拂時石不點。孤峰山下壘難齊。曰。如何是境中人。師曰。巖前栽野菓。接待往來賓。曰。恁麼則謝師供養。師曰。怎生滋味。問。如何是法堂。師曰。無壁落。問。不顧諸緣時如何。師良久。
僧が問うた。「遠々として師に投ず、師の一接を請う。」師は言った。「戸を隔たず。」問う。「如何なるか是れ南台の境。」師は言った。「松の韻は拂う時に石は点たず、孤峰の山の下は壘は斉し難し。」曰く、「如何なるか是れ境の中の人。」師は言った。「巌の前に野果を栽えて、往来の賓を接待す。」曰く、「かくの如くすれば則ち師の供養を謝す。」師は言った。「怎生の滋味ぞ。」問う。「如何なるか是れ法堂。」師は言った。「壁落無し。」問う。「諸の縁を顧みざる時如何。」師は良久とした。
潭州雲蓋山證覺禪師
潭州雲蓋山証覚禅師
僧問。如何是和尚家風。師曰。四海不曾通。問。如何是一塵含法界。師曰。通身體不圓。曰。如何是九世剎那分。師曰。繁興不布彩。問。如何是宗門中的的意。師曰。萬裡胡僧。不入波瀾。
僧が問うた。「如何なるか是れ和尚の家風。」師は言った。「四海は曾て通ぜず。」問う。「如何なるか是れ一塵は法界を含む。」師は言った。「身体を通して円ならず。」曰く、「如何なるか是れ九世の刹那の分。」師は言った。「繁興は彩を布かず。」問う。「如何なるか是れ宗門の中の的の意。」師は言った。「万里の胡の僧は、波瀾に入らず。」
烏牙賓禪師法嗣
烏牙賓禅師法嗣
