五燈會元巻第七
台州紫凝普聞寺智勤禪師
臺州紫凝普聞寺智勤禪師
僧問。如何是空手把鉏頭。師曰。但恁麼諦信。曰。如何是步行騎水牛。師曰。汝自何來。有偈示眾曰。今年五十五。腳未蹋寸土。山河是眼睛。大海是我肚。太平興國四年。有旨試僧經業。山門老宿。各寫法名。唯師不閑書札。時通判李憲問。世尊還解書也無。師曰。天下人知。淳化初。不疾。命侍僧開浴。浴訖垂誡徒眾。安坐而逝。塔於本山。三年後。門人遷塔發龕。覩師容儀儼若。髭髮仍長。遂迎入新塔。
僧が問うた:「どうして空手に鋤頭を把るか。」師は言った:「但だ此の如く諦信せよ。」僧は言った:「どうして歩行に水牛に騎るか。」師は言った:「あなたは自ずから何より來る。」偈有りて衆に示して言った:「今年五十五、脚未だ寸土を踏まず。山河は是れ眼睛、大海は是れ我が肚。」太平興國四年、旨有りて僧の經業を試す。山門の老宿、各々法名を寫す。唯だ師のみ書札を閑せず。當時通判の李憲が問うた:「世尊は還た書を解するか無しや。」師は言った:「天下の人知る。」淳化初め、疾ならず、侍僧に命じて浴を開かしめた。浴び訖わりて徒衆に誡を垂れ、安坐して逝った。本山に塔す。三年の後、門人が塔を遷し龕を發き、師の容儀儼若として、髭髮仍りて長なりしを睹、就ち迎え入れて新塔とした。
溫州鴈蕩山願齊禪師
溫州鴈蕩山願齊禪師
錢塘江氏子。上堂。僧問。夜月舒光。為甚麼碧潭無影。師曰。作家弄影漢。其僧從東過西立。師曰。不唯弄影。兼乃怖頭。
錢塘江氏の子。上堂。僧が問うた:「夜月は光を舒る、何の故に碧潭に影無し。」師は言った:「作家の影を弄する漢。」那の僧は東より西に過りて立った。師は言った:「唯だ影を弄するのみならず、兼ねて乃ち頭を怖がらす。」
杭州普門寺希辯禪師
杭州普門寺希辯禪師
蘇州人也。忠懿王命主越州清泰。署慧智。後遷上寺。上堂。山僧素乏知見。復寡聞持。頃雖侍立於國師。不蒙一句開示。以致今日與諸仁者聚會。更無一法可相助發。何況能為諸仁者區別緇素。商量古今。還怪得山僧麼。若有怪者。且道此人具眼不具眼。有賓主義。無賓主義。晚學初機。必須審細。僧問。如何是普門示現神通事。師曰。恁麼則闍黎怪老僧去也。曰。不怪時如何。師曰。汝且下堂裡思惟去。太平興國三年。吳越王入覲。師隨寶塔至。見於滋福殿。賜紫衣。號慧明禪師。端拱中乞還故里。詔從之。賜御製詩。忠懿王施金於常熟本山院。創甎浮圖七級。高二百尺。功既就。至道三年八月示寂。塔於院之西北隅。
蘇州の人。忠懿王が命じて越州淸泰を主らしめ、慧智と署した。後來上寺に遷った。上堂:「山僧は素より知見乏しく、復た聞持寡し。頃るく雖も國師に侍立せりといへども、一句の開示を蒙らず、以て今日諸の仁者と聚會するに至る、更に一法も相助發すべき無し。何を況んや能く諸の仁者の爲に緇素を區別し、古今を商量せんや。還た山僧を怪み得るか。若し怪む者有らば、且く道え、此の人は眼を具するか具せざるか、賓主の義有るか、賓主の義無きか。晚學の初機、必ず須く審細なるべし。」僧が問うた:「どうして普門が神通を示現する事ですか。」師は言った:「此の如くすれば闍黎は老僧を怪みに去る。」僧は言った:「怪まざる時は如何。」師は言った:「あなたは且く堂裡に下りて思惟して去れ。」太平興國三年、吳越王が入覲した。師は寶塔に隨って至り、滋福殿に於て見えた。紫衣を賜わり、慧明禪師と號す。端拱中に故里に還らんことを乞う、詔に從う。御製の詩を賜った。忠懿王が常熟の本山院に金を施し、磚浮圖七級を創り、高さ二百尺。功既に就き、至道三年八月に示寂した。院の西北隅に塔す。
杭州光慶寺遇安禪師
杭州光慶寺遇安禪師
錢塘沈氏子。上堂。僧問。無價寶珠。請師分付。師曰。善能吐露。曰。恁麼則人人具足去也。師曰。珠在甚麼處。僧禮拜。師曰。也是虗言。問。提綱舉領。盡立主賓。如何是主。師曰。深委此問。曰。如何是賓。師曰。適來向汝道甚麼。曰。賓主道合時如何。師曰。其令不行。問。心月孤圓。光吞萬象。如何是吞萬象底光。師曰。大眾總見汝恁麼問。曰。光吞萬象從師道。心月孤圓意若何。師曰。抖擻精神著。曰。鷺倚雪巢猶可辯。光吞萬象事難明。師曰。謹退。問。青山綠水。處處分明。和尚家風。乞垂一句。師曰。盡被汝道了也。曰。未必如斯。請師答話。師曰。不用閑言。又一僧方禮拜。師曰。問答俱備。僧擬問。師乃叱之。上堂。欲識曹溪旨。雲飛前面山。分明真實箇。不用別追攀。僧問。古德有言。井底紅塵生。山頭波浪起。未審此意如何。師曰。若到諸方。但恁麼問。曰。和尚意旨如何。師曰。適來向汝道甚麼。乃曰。古今相承。皆雲塵生井底。浪起山頭。結子空華。生兒石女。且作麼生會。莫是和聲送事。就物呈心。句裡藏鋒。聲前全露麼。莫是有名無體。異唱玄譚麼。上座自會即得。古人意旨即不然。既恁麼會不得。合作麼生會。上座欲得會麼。但看泥牛行處。陽𦦨飜波。木馬嘶時。空華墜影。聖凡如此。道理分明。何須久立。珍重。
錢塘沈氏の子。上堂。僧が問うた:「無價の寶珠、師に分付せんことを請う。」師は言った:「善く吐露を能くす。」僧は言った:「そうすれば人人具足に去りました。」師は言った:「珠は何の處に在る。」僧は礼拜した。師は言った:「也た是れ虛言。」問うた:「綱を提げ領を擧げ、盡く主賓を立つ。どうして主ですか。」師は言った:「深く此の問いに委す。」僧は言った:「どうして賓ですか。」師は言った:「適來あなたに向かって何を道いし。」僧は言った:「賓主道合する時は如何。」師は言った:「其の令行われず。」問うた:「心月孤圓して、光は萬象を吞む。どうして萬象を吞むの光ですか。」師は言った:「大衆總にあなたが此の如く問うを見る。」僧は言った:「光が萬象を吞むは師に從って道う。心月孤圓の意は若何。」師は言った:「精神を抖擻し著けよ。」僧は言った:「鷺は雪巢に倚るも猶お辯すべし。光が萬象を吞むは事明かなり難し。」師は言った:「謹み退け。」問うた:「青山綠水、處處分明。和尚の家風、垂れんことを乞う一句。」師は言った:「盡くあなたに道われた。」僧は言った:「未だ必ずしも斯の如くならず。師に答話せんことを請う。」師は言った:「閑言を用いず。」又一の僧方に礼拜せば、師は言った:「問答俱に備わる。」僧は擬して問わんとす、師は就ち之を叱った。上堂:「曹溪の旨を識らんと欲せば、雲飛んで前面の山。分明なる真實箇、別に追攀するを用いず。」僧が問うた:「古德に言有り、井底に紅塵生じ、山頭に波浪起こる、と。未だ審かならず此の意は如何。」師は言った:「若し諸方に到らば、但だ此の如く問え。」僧は言った:「和尚の意旨は如何。」師は言った:「適來あなたに向かって何を道いし。」そこで言った:「古今相承え、皆な塵は井底に生じ、浪は山頭に起こり、結子は空華、生兒は石女と云う。且く作麼生に會する。莫れ是れ聲に和して事を送り、物に就いて心を呈し、句裡に鋒を藏め、聲の前に全く露するか。莫れ是れ名有りて體無く、唱を異にして玄を譚るか。上座は自ら會すれば即ち得たり。古人の意旨は即ち然らず。既に此の如く會することを得ざれば、合に作麼生に會すべき。上座は會せんと欲するか。但だ泥牛の行く處、陽𦦨の波を翻すを看、木馬の嘶く時、空華の影を墮つを。聖凡此の如く、道理分明。何の須か久立せん。珍重。」
台州般若寺友蟾禪師
臺州般若寺友蟾禪師
錢塘人也。初住雲居普賢。忠懿王署慈悟禪師。選止上寺。眾盈五百。僧問。鼓聲才罷。大眾雲臻。向上宗乘。請師舉唱。師曰。虧汝甚麼。曰。恁麼則人人盡霑恩去也。師曰。莫亂道。
錢塘の人。初め雲居普賢に住した。忠懿王が慈悟禪師と署した。選びて上寺に止め、衆五百に盈つ。僧が問うた:「鼓聲纔かに罷み、大衆雲臻す。向上の宗乘、師に擧唱せんことを請う。」師は言った:「あなたを何か虧く。」僧は言った:「そうすれば人人盡く恩に沾りに去りました。」師は言った:「亂道するな。」
婺州智者寺全肯禪師
婺州智者寺全肯禪師
初參國師。國師問。汝名甚麼。師曰。全肯。國師曰。肯箇甚麼。師於言下有省。乃禮拜。住後。僧問。有人不肯。還甘也無。師曰。若人問我。即向伊道。
初め國師に參した。國師が問うた:「あなたの名は何か。」師は言った:「全肯。」國師は言った:「箇の何を肯する。」師は言下に省有りて、就ち礼拜した。住持して以後、僧が問うた:「人肯せざる有れば、還た甘んずるか無しや。」師は言った:「若し人我に問わば、即ち彼に向かって道わん。」
福州玉泉義隆禪師
福州玉泉義隆禪師
上堂。山河大地。盡在諸人眼睛裡。因甚麼說會與不會。時有僧問。山河大地眼睛裡。師今欲更指歸誰。師曰。祇為上座去處分明。曰。若不上來伸此問。焉知方便不虗施。師曰。依俙似曲才堪聽。又被風吹別調中。
上堂:「山河大地、盡く諸人の眼睛裡に在り。因なんとして會すと會せずと説く。」當時僧有りて問うた:「山河大地は眼睛裡に在り、師今欲する更に誰に指歸せん。」師は言った:「只だ上座の去處分明なるが爲。」僧は言った:「若し上りて來りて此の問いを伸ばさざれば、焉んぞ方便の虛施ならざるを知らん。」師は言った:「依稀として曲に似て纔かに聽くに堪う、又た風に吹かれて別調中に。」
杭州龍冊寺曉榮禪師
杭州龍册寺曉榮禪師
溫州鄧氏子。僧問。祖祖相傳。未審和尚傳阿誰。師曰。汝還識得祖也未。僧慧文問。如何是真實沙門。師曰。汝是慧文。問。如何是般若大神珠。師曰。般若大神珠。分形萬億軀。塵塵彰妙體。剎剎盡毗盧。問。如何是日用事。師曰。一念周沙界。日用萬般通。湛然常寂滅。常展自家風。小參次。僧問。向上事即不問。如何是妙善臺中的的意。師曰。若到諸方。分明舉似。曰。恁麼則雲有出山勢。水無投㵎聲。師乃叱之。
溫州鄧氏の子。僧が問うた:「祖祖相傳し、未だ審かならず和尚は阿阿誰に傳える。」師は言った:「あなたは還た祖を識得したか未や。」僧の慧文が問うた:「どうして真實の沙門ですか。」師は言った:「あなたは慧文。」問うた:「どうして般若の大神珠ですか。」師は言った:「般若の大神珠、形を分かつ萬億の軀。塵塵妙體を彰かす、刹刹盡く毗盧。」問うた:「どうして日用の事ですか。」師は言った:「一念は沙界を周め、日用は萬般通ず。湛然として常に寂滅、常に自家の風を展ぶ。」小參の時、僧が問うた:「向上の事は即ち問わず。どうして妙善臺中の的的の意ですか。」師は言った:「若し諸方に到らば、分明に擧似せよ。」僧は言った:「そうすれば雲に山を出づる勢有りて、水に澗に投ずる聲無し。」師は就ち之を叱った。
杭州功臣慶蕭禪師
杭州功臣慶蕭禪師
僧問。如何是功臣家風。師曰。明暗色空。曰。恁麼則諸法無生去也。師曰。汝喚甚麼作諸法。僧禮拜。師曰。聽取一偈。功臣家風。明暗色空。法法非異。心心自通。恁麼會得。諸佛真宗。
僧が問うた:「どうして功臣の家風ですか。」師は言った:「明暗色空。」僧は言った:「そうすれば諸法無生に去りました。」師は言った:「あなたは何を喚んで諸法と作す。」僧は礼拜した。師は言った:「一偈を聽取せよ。功臣の家風、明暗色空。法法は異に非ず、心心自ら通ず。此の如く會得せば、諸佛の真宗。」
越州稱心敬璡禪師
越州稱心敬琎禪師
僧問。結束囊裝。請師分付。師曰。莫諱卻。曰。甚麼處孤負和尚。師曰。卻是汝孤負我。
僧が問うた:「囊裝を結束す、師に分付せんことを請う。」師は言った:「却すな。」僧は言った:「何の處に和尚を孤負する。」師は言った:「却って是れあなたが我を孤負する。」
福州嚴峰師朮禪師
福州嚴峰師術禪師
開堂陞座。極樂和尚問曰。大眾顒望。請震法雷。師曰。大眾還會麼。還辨得麼。今日不異靈山。乃至諸佛國土。天上人間。總皆如是。亙古亙今。常無變異。作麼生會無變異底道理。若會得。所以道。無邊剎境。自他不隔於毫端。十世古今。始終不離於當念。僧問。靈山一會。迦葉親聞。嚴峰一會。誰是聞者。師曰。問者不弱。問。如何是文殊。師曰。來處甚分明。
開堂して座に升る。極樂和尚が問うて言った:「大衆の顒望に、法雷を震わんことを請う。」師は言った:「大衆は還た會するか。還た辯することを得るか。今日は靈山と異ならず。乃至諸佛の國土、天上人間、總に皆な是の如し。亘古亘今、常に變異無し。作麼生に變異無きの道理を會する。若し會得せば、だから道う、無邊の剎境、自他毫端に隔たらず、十世古今、始終當念を離れず、と。」僧が問うた:「靈山の一會、迦葉が親く聞きたり。嚴峰の一會、誰か是れ聞者。」師は言った:「問う者は弱からず。」問うた:「どうして文殊ですか。」師は言った:「來處甚だ分明。」
潞府華嚴慧達禪師
潞府華嚴慧達禪師
僧問。如何是古佛心。師曰。山河大地。問。如何是華嚴境。師曰。滿目無形影。
僧が問うた:「どうして古佛心ですか。」師は言った:「山河大地。」問うた:「どうして華嚴の境ですか。」師は言った:「滿目に形影無し。」
越州清泰院道圓禪師
越州淸泰院道圓禪師
僧問。亡僧遷化向甚麼處去也。師曰。今日遷化嶺中。上座問。如何是祖師西來意。師曰。不可向汝道庭前栢樹子。
僧が問うた:「亡僧は遷化して何の處に向かって去った。」師は言った:「今日嶺中に遷化す。」上座が問うた:「どうして祖師西來の意ですか。」師は言った:「あなたに向かって庭前の柏樹子と道うべからず。」
杭州九曲觀音院慶祥禪師
杭州九曲觀音院慶祥禪師
餘杭人也。辯才冠眾。多聞強記。時天台門下。推為傑出。僧問。湛湛圓明。請師一決。師曰。十里平湖。一輪秋月。問。險惡道中。以何為津梁。師曰。以此為津梁。曰。如何是此。師曰。築著汝鼻孔。問。無根樹子向甚麼處栽。師曰。汝甚處得來。
餘杭の人。辯才衆に冠り、多聞強記。當時天臺の門下、推して傑出と為した。僧が問うた:「湛湛たる圓明、師の一決を請う。」師は言った:「十里の平湖、一輪の秋月。」問うた:「險惡の道中、何を以て津梁と為す。」師は言った:「此を以て津梁と為す。」僧は言った:「どうして此ですか。」師は言った:「あなたの鼻孔に築き著く。」問うた:「根無き樹子は何の處に向かって栽えん。」師は言った:「あなたは甚の處より得て來りし。」
杭州開化寺行明傳法禪師
杭州開化寺行明傳法禪師
本州於氏子。禮雪竇智覺禪師為師。及智覺遷永明。遂入天台國師之室。蒙授記莂。復歸永明。翊贊廼師。海眾傾仰。忠懿王建六和寺(本朝賜開化額)。延請住持。聚徒說法。僧問。如何是開化門中流出方便。師曰。日日潮音兩度聞。問。如何是無盡燈。師曰。謝闍黎照燭。
本州于氏の子。雪竇智覺禪師を禮して師と爲した。及び智覺が永明に遷るに、就ち天臺國師の室に入り、記莂を授かるを蒙った。復た永明に歸り、乃師を翊贊して、海衆は傾仰した。忠懿王が六和寺を建て(本朝は開化の額を賜わる)、延請して住持せしめ、徒を聚めて法を説かしめた。僧が問うた:「どうして開化の門中に流出の方便ですか。」師は言った:「日日に潮音は兩度聞こゆ。」問うた:「どうして無盡燈ですか。」師は言った:「闍黎の照燭に謝す。」
越州漁浦開善寺義圓禪師
越州漁浦開善寺義圓禪師
僧問。一年去。一年來。方便門中請師開。師曰。分明記取。曰。恁麼則昔時師子吼。今日象王回也。師曰。且喜沒交涉。
僧が問うた:「一年去り、一年來る。方便門中に師に開かんことを請う。」師は言った:「分明に記取せよ。」僧は言った:「そうすれば昔時は獅子吼、今日は象王回りました。」師は言った:「且く沒交涉を喜べ。」
溫州瑞鹿寺上方遇安禪師
溫州瑞鹿寺上方遇安禪師
福州人也。得法於天台。又常閱首楞嚴經。到知見立知。即無明本。知見無見。斯即涅槃。師乃破句讀曰。知見立。知即無明本。知見無。見斯即涅槃。於此有省。有人語師曰。破句了也。師曰。此是我悟處。畢生不易。時謂之安楞嚴。至道元年春。將示寂。有嗣子蘊仁侍立。師乃說偈示之。不是嶺頭𢹂得事。豈從鷄足付將來。自古聖賢皆若此。非吾今日為君裁。付囑已。澡身易衣。安坐。令舁棺至室。良久。自入棺。經三日。門人啟棺。覩師右脇吉祥而臥。四眾哀慟。師乃再起。陞堂說法。訶責垂誡。此度更啟吾棺者。非吾之子。言訖。復入棺長往。
福州の人。天臺に於て法を得た。又た常に首楞嚴經を閲して、「知見は知を立つ、即ち無明の本。知見は見無し、斯れ即ち涅槃」に至る。師は就ち句を破って讀して言った:「知見立てば、知即ち無明の本。知見無ければ、見斯れ即ち涅槃。」此に於て省有り。人に對して師に言う者有り:「句を破りたり。」師は言った:「此れ是れ我が悟る處。畢生易えず。」當時安楞嚴と稱す。至道元年春、將に示寂せんとす、嗣子の蘊仁有りて侍立す。師は就ち偈を説いて之に示して言った:「是れ嶺頭に𢹂げ得る事に非ず、豈に雞足より付して將來せん。自ら古の聖賢皆な此の若し、吾が今日君が爲に裁するに非ず。」付囑已り、身を澡め衣を易え、安坐す。棺を舁して室に至らしめた。久しく過ぎて、自ら棺に入った。三日を經て、門人が棺を啓けば、師の右脇吉祥にして臥すを睹た。四衆哀慟す。師は就ち復た起ち、堂に升りて法を説き、訶責して誡を垂れて言った:「此の度更に吾が棺を啓く者は、吾が子に非ず。」言い訖わりて、復た棺に入りて長く往ぬ。
杭州龍華寺慧居禪師
杭州龍華寺慧居禪師
閩人也。自天台領旨。忠懿王命住上寺。開堂示眾曰。從上宗乘。到這裡如何舉唱。祇如釋迦如來說一代時教。如瓶注水。古德尚雲。猶如夢事寱語一般。且道據甚麼道理便恁麼道。還會麼。大施門開。何曾壅塞。生凡育聖。不漏纖塵。言凡則全凡。舉聖則全聖。凡聖不相待。箇箇獨稱尊。所以道。山河大地。長時說法。長時放光。地水火風。一一如是。時有僧出禮拜。師曰。好箇問頭。如法問著。僧擬進前。師曰。又沒交涉也。問。諸佛出世。放光動地。和尚出世。有何祥瑞。師曰。話頭自破。上堂。龍華這裡。也祇是拈柴擇菜。上來下去。晨朝一粥。齋時一飯。睡後吃茶。但恁麼參取。珍重。問。學人未明自己。如何辨得淺深。師曰。識取自己眼。曰。如何是自己眼。師曰。向汝道甚麼。
閩の人。天臺より旨を領した。忠懿王が命じて上寺に住せしめた。開堂して衆に示して言った:「上よりの宗乘、此の裏に到りて如何に擧唱せん。只だ釋迦如來が一代の時教を説くが如く、瓶に水を注ぐが如し。古德は尚お云う、猶お夢事の囈語の一般の如し、と。且く道え、何の道理に據りて便ち此の如く道う。還た會するか。大施門開きて、何曾て壅塞せん。凡を生じ聖を育て、纖塵を漏らさず。凡を言えば全凡、聖を擧げば全聖。凡聖相待たず、箇箇獨り尊と稱す。だから道う、山河大地は長時に法を説き、長時に光を放つ。地水火風、一一は是の如し、と。」當時僧有りて出でて礼拜した。師は言った:「好い問頭。法の如く問い著けよ。」僧は擬して前に進まんとす。師は言った:「又た沒交涉。」問うた:「諸佛出世して、光を放ち地を動かす。和尚出世して、何の祥瑞有るか。」師は言った:「話頭自ら破す。」上堂:「龍華の此處、也た只だ柴を拈じ菜を擇ぶのみ。上り下り、晨朝は一粥、齋時は一飯、睡後は茶を喫す。但だ此の如く參取せよ。珍重。」問うた:「學人未だ自己を明かさず、如何にか淺深を辨じ得ん。」師は言った:「自己の眼を識取せよ。」僧は言った:「どうして自己の眼ですか。」師は言った:「あなたに向かって何を道う。」
