水星第一百五十四
水星者,北方之宿,水之精也。出於仲月,天下和平。若仲月不見,則災變生,大饑,陰陽錯亂,國家傾危,冬溫夏涼,害人傷物。主制五刑,偏將軍之象也。其精下為先農之神,以不效為凶。一名紐(一作丑)極。
水星是れ北方の星宿にして、是れ五行の中水氣の精華なり。它仲月(二月・五月・八月・十一月)に出現すれば、天下就ち太平和順なり。若し仲月に它を見る能わざれば、就ち災變を生出せん。大饑荒・陰陽錯亂・國家傾危・冬天反って暖に夏天反って凉にして、人畜萬物を傷害せん。它人事上に於て五種の刑罰を主掌し、是れ偏將軍の象徵なり。它の精氣人間に降れば就ち是れ先農の神にして、期に按じて應驗する能わざるを以て凶と爲す。它又「紐極」と名づく(「紐」は一本に「醜」と作る)。
變色出己所見不常之處,其光青白輝輝然者,此帝王之為德及(一作正)也。如此星見,多夜雨晝晴者,臣下用陰謀其上也。至於偏裨地,皆放此。其星若不見四仲見於四孟之月者,其神明名勾星。光芒勃勃然如片雲,大如景星燦爛,九月所見,分野人多流亡,疊相嚙食,白衣聚會,兵起,吞並九州,十年大荒。其變如此,審詳候之。
水星顏色を變換し、自己の平常出現すべからざる位置に出現して、而して光色青白にして閃耀するは、此是れ帝王の德行天下に普及するの征象なり(「及」は一本に「正」と作る)。此の星出現する時、若し多く是れ夜裏雨を下し白天放晴なれば、那是れ臣下の暗中に君上を算計するなり。偏將・副將の一級の應驗に至っても、もまた皆此に照らして類推せよ。此の星若し四仲の月に出現せず、反って四孟の月(正月・四月・七月・十月)に出現せば、它の神明就ち「勾星」と叫ぶ。光芒勃發して一片の浮雲の如く、碩大燦爛として景星の如く、若し九月に出現せば、あの一分野の人口の大量に流亡し、人々相殘食し、喪服を穿る白衣の人聚集し、兵禍興起して、九州を吞倂し、十年大荒を主る。星此の地步に變すれば、必ず仔細に觀測詳審するを要す。
其久而不沒,光聚兩角,變彗勃勃然者,象海鯨魚死,易王迎新之象。其神又名爨星,芒急輝輝然,其芒角五鋒狀如勵劍,形於萬物者也。早為月食,晚為彗星。一時不出,其時不和;四時不出,天下大饑。失其時而出(一作為),當寒反溫,當溫反寒。當出不出,是謂(一作以)擊,卒兵大起也。與他星遇而鬥,天下大亂。
水星長久に隱沒せず、光芒聚りて兩角を成し、變じて彗星の一樣に勃勃として發散するは、此れ海の中の鯨魚の死去するを象徵し、是れ君王を更換し新主を迎立するの星象なり。它の神又「爨星」と名づき、芒角急促にして閃耀し、五道の鋒刃を射出し、形狀磨礪し過る利劍の如く、萬物上に於て對應の形迹を顯出せん。它出現する過早は、應驗して月食と爲す。出現する過晚は、應驗して彗星と爲す。一季出現せざれば、あの一季氣候就ち和を失わん。四季皆出現せざれば、天下大饑荒なり。正常の時令を失去して出現すれば(「出」は一本に「爲」と作る)、冷すべき時に反って溫暖にして、暖すべき時に反って寒冷なり。出現すべきに卻って出現せざれば、これを「擊」と叫作す(「謂」は一本に「以」と作る)、突然大擧に兵を興すを主る。它別の星と相遇して爭鬥せば、天下大亂を主る。
凡水星入月,主敗兵。與金星合而出,破軍殺將,客勝。視旗所指,以命破軍。環金星,大戰,客勝。守房,胡敗。守婁,兵起。犯畢,夷傷主人,客勝。出昴北,胡主死。守畢、昴,邊兵起。守參、伐南,胡人入塞。入井,則兵進;出井,則兵退。犯鬼,兵起。入婁,兵起。守柳,牛馬貴。守張,兵起。入翼,兵大起。犯五車,兵起。留心,兵起四方。
凡そ水星月中に進入すれば、軍隊の敗北を預示す。它金星と相合同出すれば、軍を破り將を殺すを主り、客軍獲勝す。旗星の指す所の方向を看るを要し、此に據って何れの一方の軍隊の擊破せらるるかを判定せよ。它金星を環繞せば、大戰有るを主り、客軍勝つ。房宿に停留せば、胡人の敗を主る。婁宿に停留せば、兵を興すを主る。畢宿を侵犯せば、夷狄の主軍を傷害するを主り、客軍勝つ。昴宿の北に出現すれば、胡人君主の死亡を主る。畢宿・昴宿に停留せば、邊地に兵を興すを主る。參宿・伐星の南に停留せば、胡人の邊塞を入侵するを主る。井宿に進入すれば、就ち兵を進むべし。井宿を離開すれば、就ち兵を退くべし。鬼宿を侵犯せば、兵を興すを主る。婁宿に進入すれば、兵を興すを主る。柳宿に停留せば、牛馬の價貴を主る。張宿に停留せば、兵を興すを主る。翼宿に進入すれば、大擧して兵を興すを主る。五車星を侵犯せば、兵を興すを主る。心宿に滞留せば、四方に兵を興すを主る。
土星第一百五十五
土星者,中央之宿,土之精也。若見於四季,表主之盛衰也。其神隱於大微,或下於人間,為妖異,為艷女起亂,亡破國家,為妖言惑亂人心;或為近臣,間鬥忠良。若其星光潤鮮明,見井、鬼之間,伏沒依常道,則正道不失;不依常道,則三綱錯亂。夫此星之色本黃而光明獨鋒在上,如火焚(一作炎)之狀,四面象光細而附上毳然,即土星之本體。
土星是れ中央の星宿にして、是れ五行の中土氣の精華なり。它若し四季の月(三月・六月・九月・十二月)に出現せば、就ち君主の國運の盛衰を昭示す。它の神靈太微垣の中に隱藏し、ある時人間に降りて妖を興し怪を作す。艷麗の女子と化して禍亂を挑起し、國家をして覆亡破敗せしむ。妖言を散布して人心を迷惑攪亂す。あるいは化して君主の近臣と作り、忠良を離間構陷す。此の星若し光色溫潤鮮明にして、井宿と鬼宿との間に出現し、伏沒顯現皆常道に合乎すれば、那麼正道就ち喪失せざらん。若し常道に合せざれば、君臣・父子・夫婦の三綱就ち錯亂せん。此の星の本色是れ黄色にして、而して光明單獨一道の鋒芒上に向かい、火焰の燃燒する樣子の如く(「焚」は一本に「炎」と作る)、四面の光象細微にして上に向かって附着し、柔軟にして細毛の如く、這就ち是れ土星の本來の形體なり。
土星所居國,吉。未當居而居之,若已去而復還,居之國得土地。當居不居,既已居之又東西去之,國失土。居其宿久則福(一作禍)厚,居其宿易則福薄。當居不居為失鎮,其下國可伐,得者不可伐。其盈為王不寧,縮有軍不復。一曰:既已居之,又東西去之,其國凶,兵將亂,不可舉事用兵。失次二舍、三舍,有王命不成,不然將有大水。
土星の停留する所の分野の國吉利なり。它停留すべからざるに卻って停留し、あるいは已に離開して又返り回り來れば、它に停留せらるる國家土地を獲得する能わし。停留すべきに卻って停留せず、あるいは已に停留して了又東西方に向かって移り開けば、あの國家就ち土地を喪失せん。它某宿に停留する時間長ければ、福澤就ち深厚なり(「福」は一本に「禍」と作る)。停留時間短く變換すること快ければ、福澤就ち淺薄なり。停留すべきに卻って停留せざれば、「失鎭」と叫作し、それの對應する所の分野の國討伐し得べし。之に反して、它の鎭守を得到する國家は討伐する可からず。土星運行超前するを「盈」と叫び、君王の安寧を得ざるを主る。運行落後するを「縮」と叫び、出征の軍隊の返回する能わざるを主る。另一種の説法は、已に停留して了又東西方に向かって移り開けば、あの國家凶險にして、軍隊將に亂を作さんとし、事を擧げ兵を用うる可からず。若し次序を失去して兩宿・三宿なれば、帝王の詔命の成功する能わざるを主り、然らざれば就ち大水災有らん。
凡犯左角,大將戰死。守右角,兵起。守糠,兵大起。入天廟,兵大起。守虛,有客兵至,不過五日自去。守奎,入奎,有邊兵起。入婁亦如之。入胃,客兵敗,主兵不用。入昴,胡主死。入畢,臣下為亂。入觜,兵起逆行。守參,胡兵起。守井,越兵起。
凡そ土星角宿の左星を侵犯せば、大將の戰死を主る。角宿の右星に停留せば、兵を興すを主る。糠星に停留せば、大擧して兵を興すを主る。天廟星に進入すれば、大擧して兵を興すを主る。虛宿に停留せば、客軍の來犯する有るを主り、五天を過りずして自行に退去せん。奎宿に停留しあるいは奎宿に進入すれば、邊地に兵を興すを主る。婁宿に進入するもまた是の如し。胃宿に進入すれば、客軍の敗を主り、主軍動用するに必あらず。昴宿に進入すれば、胡人君主の死亡を主る。畢宿に進入すれば、臣下の亂を作すを主る。觜宿に進入すれば、兵を興して而且行軍倒退するを主る。參宿に停留せば、胡兵興起を主る。井宿に停留せば、越地に兵を興すを主る。
入胃,舍七星,兵起,負海大饑。守張,多盜賊,興土工,兵起。入軫,兵發事自敗。入天庫,兵起。守河南界,蠻夷兵起。出東掖門,為將軍寶事。出西掖門,為將軍受事,西出受刑。
胃宿に進入し七星宿に居れば、兵を興すを主り、瀕海の一帶大饑荒なり。張宿に停留せば、盜賊衆多・大興して土木工役・兵を興すを主る。軫宿に進入すれば、兵を出だして事情自行に敗壞するを主る。天庫星に進入すれば、兵を興すを主る。黄河以南の分界處に停留せば、蠻夷の兵を興すを主る。太微垣の東掖門より出去すれば、將軍の賞を受くるの事有るを主る。西掖門より出去すれば、將軍の任命を領受するを主り、西邊より出れば則ち刑を受くるを主る。
分野統論第一百五十六
《易》曰:天垂象,聖人則之。又曰:仰以觀乎天文,俯以察乎地理。此皆前聖人洞吉凶興亡之道,然而天文、地理、兵象之要略,得不審而用之哉?行師之際,五星伏沒、遲順兩曜、盈虧薄食、飛流示變、孛彗為妖,既知之矣,必審必詳所居躔度焉。
《周易・繫辭上》説く、「上天象を垂示し、聖人それに法を取る」と。又説く、「頭を抬げて天文を觀察し、頭を低うして地理を審視す」と。此れら皆是れ前代聖人の吉凶興亡を洞察するの門徑なり。此の然るが如く然れば、天文・地理と兵家の星象の要領は、何ぞ能く仔細に考察したる後に再び運用を加えざるを得んや。行軍作戰の際、五星の伏藏隱沒・日月兩曜の遲行と順行・月相の盈虧と日月の薄蝕・流星飛墜の示す所の變異・孛星彗星の成す所の妖象は、此れら既に知曉すれば、就ち必ず審慎詳察してそれらの處する所の「躔度」を、就ち是れ星辰の天上に運行して經る所の度數なり。
其躔度既詳之矣,必審所管分野焉。茍如是,方可以精別災異,順其舉動而已矣。今臣輒上據天文,下推地理,以別十二分野。外以觀星辰之變,內以備山川之用,天地之間,燦然在目。其圖其狀,以示於來者焉。
躔度既に詳審せば、就ち必ず再びそれの管轄する所の「分野」を弄清せよ。就ち是れ天上の星宿と地上の州國と相對應する區劃なり。此の一步を做到して、纔か能く精確に災異を辨別し、天象に順應して自己の行動を決定するを得。如今臣許洞就ち上に天文に依り下に地理を推して、以て十二分野を劃分す。外に對して它を以て星辰の變化を觀察し、內に對して它を以て山川地形の運用を籌備すれば、天地の間の形勢便ち一目瞭然なり。臣關有る圖形と形狀とを繪錄して下りて、後來の人の參看に留め遺す。
雲氣統論第一百六十九
臣聞百人已上,勝敗之氣必具焉。是以順之者昌,逆之者亡。天地無言,吉凶以象占;雲氣有異,必契災變。占氣之時,觀氣之初出如甑上雲勃鬱上騰,氣積而為霧氣,陰氣結為虹霓、暈珥之屬;不積不結,散漫一方,不能為災。必須知雜殺氣森森然疾起者,乃可占。常以平明、下晡、日出沒時候之。其內有風雨為解者,不成災也。
臣聞く、凡そ百人以上の隊伍は、勝敗の氣就ち必定に具備す。ゆえにそれに順應するは就ち昌盛し、それに違逆するは就ち敗亡す。天地説話せず、吉凶は天象に靠って占測するを要す。雲氣異狀を出現せば、必定に災變と相應ず。雲氣を占望する時は、氣の剛に升起する樣子を看るを要す。蒸鍋上の水汽の蓬勃して上騰するが如同じく、氣積聚して起きて霧氣と爲り、陰氣凝結して虹霓・日暈・耳珥の類と成る。若し積聚せずもまた凝結せず、ただ是れ散漫して一方に在れば、就ち災を成す能わず。必ずあの種の殺氣を夾雜し森然として急速に升起するを辨認出だして、纔か以て占斷に據る可し。通常天剛に亮ける・傍晚の申時および日出日落の時候に於てそれを觀測す。若し氣の中に風雨有りてそれを化解開けば、就ち災を成さざらん。
若出軍之日,天氣漠漠,雲彩陰沉而寒者,必戰之象也。若晴陽蕩和,風雨不動者,不戰也。如或有青氣見君王相上者,大勝。青屈旋留註者,下流血。大霧五十日不散者,其境當有兵馬。霧色蒼黃者,亦有災變也。白雲如匹練經丑未者,兵之象也。或雲如人行,排列如陣,或壬子日四面無雲,獨見出雲如旌旗,皆兵象也。
若し兵を出だすあの天天色沉沉として、雲彩陰暗にして寒氣人に逼れば、此れ必定に交戰せんと要するの征象なり。若し晴朗和暖にして、風雨興らざれば、就ち開戰せざらん。倘若青氣有りて君王および輔相の對應する所の位次上に出現せば、大勝を主る。青氣屈曲盤旋して停留して下注するは、下方に流血の事有るを主る。大霧五十天散ぜざるは、あの一帶の地方將に兵馬の興動有らん。霧色蒼黄のも、もまた災變有らん。白雲一匹の白絹の如く丑位と未位とを橫貫するは、是れ兵事の征象なり。ある雲人の行走するが如く、排列して軍陣の如同じき有り。あるいは壬子日四面雲無く、唯獨一片の雲の升起して形如旌旗を見る有り。此れら皆是れ兵象なり。
或雲三道,如霧非霧,如塵非塵者,敵人發軍之徵,隨其起處防之。或白雲如匹布起於東方者,大兵起也,色赤者尤甚,青者大喪,黑者亦如之也。或黑雲三道,首尾銳而中裂者,其下將有大戰。或雲氣赤而其緣黃者,大臣專權之兆也,不早除之,將有大變。於軍上往來,則往者敗,來者勝。
ある雲三道に分作し、霧と説くも卻って霧に似ず、塵と説くも又塵に似ず。此是れ敵人の兵を發するの征兆にして、それの升起する方位に順って防備を加以するを要す。ある白雲一匹の布の如く東方より升起するは、大擧して兵を興すを主り、色赤の尤も嚴重にして、色青の大喪有るを主り、色黑のもまた是の如し。ある黑雲三道に分成し、首尾尖銳にして中間裂開するは、それの下方將に大戰有らんを主る。ある雲氣色赤にして邊緣黄を泛ぶは、此是れ大臣の權を專るの預兆にして、早く除かずば、將に大きな變故有らん。此の種の氣若し軍營の上空に於て往來すれば、去る一方失敗し、來る一方獲勝す。
或雲氣散如錦文者,當有赦書行天下。天下若無慶賀事,必見流血。或雲氣如虎頭者,暴亂之象也(象一作眾)。或雲氣如弩弓之狀者,天子之氣。或雲氣長數十百丈者,猛將之氣也。或雲氣無故如虎行雲中者,當暴兵至也。或雲如人字在空者,所發之處(一作地)必有人來告急,一人則氣一條。雲如方一紅者,暴兵至也。
ある雲氣散開して錦緞の花紋の如きは、將に赦免の詔書の天下に頒行する有るを主る。天下若し慶賀に值する事無ければ、就ち必定に血を見るを要す。ある雲氣形如虎頭のは、是れ暴亂の征象なり(「象」は一本に「眾」と作る)。ある雲氣形如弩弓のは、是れ天子の氣なり。ある雲氣長さ數十上百丈に達するは、是れ猛將の氣なり。ある雲氣故無く緣無く老虎の雲中に行走するが如きは、將に亂兵の到來有るを主る。ある雲「人」の字の如く空中に懸るは、它の出現する地方(「處」は一本に「地」と作る)必定に人の前來告急する有り、一箇人就ち一條の氣に對應す。雲一方の紅色の如きは、亂兵の到來を主る。
或望無雲,獨見赤氣如旦暮之霞,或見黑雲極天,或白雲如仙人衣,十萬聯結,部隊相逐,罷而復起,或白雲廣大七丈,東西極天,如此者皆起兵之象。或有黑雲如人持刀盾者,暴兵之氣也。如見之國,當嚴號令,肅士伍以備之。
ある時望去し雲無く、唯獨赤氣の早晚の霞光の如同じきを見、あるいは黑雲の天際に布滿するを見、あるいは白雲仙人の衣裳の如く十萬片連綴して一緒に成り、一隊隊互相に追逐し、散じて又重新に聚起るを見、あるいは白雲寬廣七丈にして東西天際を橫貫するを見る。此の樣の如きの是れ皆兵を起さんと要するの征象なり。ある黑雲人の手に刀と盾牌を持つの如きは、此是れ亂兵の氣なり。它何れの國家に出現するや、あの裏就ち應當に號令を嚴明にし行伍を整肅して以て防備を加以すべし。
雜雲氣第一百七十
凡占氣三四百里,平目望在桑榆上千餘里,登高望之下屬地者居三二千里。雲氣有如獸踞上者,戰。自華而南,氣下黑上赤;嵩高三河之郊,氣正赤;常山已北,氣下黑上青;渤碣海岱之間,氣皆黑;江淮之間,氣皆白。徒氣白,土功氣黃,車氣乍高乍下、往往而聚,騎氣卓而(卓一作卑)布,卒氣搏。
凡そ雲氣を占望するは、平地三四百里を望み得べし。平視して氣の桑榆樹梢の上に在るを望到するは、一千餘里に及び得べし。高きに登りて俯望して氣の下垂して地に接するは、相距ること二三千里なり。雲氣野獸の蹲踞して上面に在るが如き有りて、交戰を主る。華山以南は、氣下に黑く上に赤し。嵩山の高處および河東・河內・河南の三河一帶の郊野は、氣純赤なり。常山以北は、氣下に黑く上に青し。渤海・碣石と東海・泰山との間は、氣皆是れ黑色なり。江淮の間は、氣皆是れ白色なり。服役徒衆の氣色白く、土木工役の氣色黄く、兵車の氣忽高忽低にして往往一團に聚成し、騎兵の氣高聳して散布し(「卓」は一本に「卑」と作る)、步卒の氣團聚して塊を成す。
前卑而後高疾,前方而後高者銳,後銳而卑者卻。其氣平者徐行,前高後卑者不至而反。氣相遇者,卑勝高,銳勝方。來卑而修速者,不過三四日去之五六里見。氣來高七八尺者,不過五、六日十餘里、二十里見。來高又餘二十丈者,不過三十日去之五、六十里見。
氣前低くして後高きは、行軍迅速を主る。前面方正にして後面高聳するは、鋒芒銳利を主る。後面尖銳にして低伏するは、退却を主る。氣面平齊なるは、行軍緩慢を主る。前高後低のは、兵未だ到らずして返回せんを主る。兩股の氣相遇の時、低きは高きに勝ち、尖銳の方正に勝つ。氣の來ること低くして細長迅速なるは、三四天を出でずして、五六里外に於て敵軍を望見し得べし。氣の來る時高さ七八尺のは、五六天を出でずして、十餘里・二十里外に望見す。氣の來る時高さ二十丈を出るは、三十天を出でずして、五六十里外に望見す。
和雲精白者,其將悍,其士怯。其大根而前絕遠者,當戰。精白而前低者,戰勝。其前末兩昴者,戰不勝。陣雲如立垣,杼雲如杼,軸雲搏而端銳,鉤雲如城者亙天其半,雲霓者類闕。
雲氣柔和にして精純潔白なるは、對方の將領强悍にして士卒怯懦なるを主る。氣の根部粗大にして前端伸ばすこと極めて遠きは、將に交戰有らん。精白にして前端低垂するは、交戰獲勝す。氣の前端の末梢兩支に分作して高揚するは、交戰取勝する能わず。陣雲形如竪立の墻垣にして、杼雲形如織布の梭子にして、軸雲團聚して兩端尖銳にして、鉤雲城墻の半箇天空に橫亙するが如く、雲霓の一類形狀宮門前の雙闕の如し。
其故劍雲鉤曲者,此云見,以五色占而澤搏密,其見動人,乃有占,兵必起,必戰鬥。其旦五朔所候,次於日旁雲氣。人主人象皆如其形,故北狄之氣如群畜穹廬,南夷之氣類舟航幡旆(一作旗)。若冬至之後夜明者,陽氣之動也,不足占。
あの種の形狀舊劍の如くして鉤曲する雲は、此の雲出現する時、五色の法則に按じて以て占斷するを要す。氣色潤澤にして團聚緊密にして、望去して以て人の心目を動かすに足るのみ、纔か以て占測に據り得べく、必定に兵を興し必定に戰鬥發生せんを主る。每月初一清晨の觀測せんと要する所は、次序太陽の旁邊の雲氣の後に排す。君主と人事との形象皆各々その本來の樣子の如くなり。ゆえに北方の狄人の氣成群の牲畜と穹廬氈帳とに似、南方の夷人の氣舟船と旗幡とに似(「旆」は一本に「旗」と作る)。冬至以後夜裏天色の發亮するに至っては、那是れ陽氣始めて萌動するにして、此に據って占斷するに足らず。
勝兵雲氣第一百七十一
處營臨陣之時,紫氣出於軍上者,大慶之兆也,即日有喜。或軍上雲氣如覆堤前赤後白者,勝氣,利進兵攻擊,在敵則勝。或軍上氣凝成雲,中天而住(一作往)堅固不變者,名曰剛氣,在敵則勿攻之。或軍上雲氣作盤踞之狀者,此之謂天威也,宜用精兵固以漸進戰。
營壘に駐扎し陣に臨み敵に對する時、若し紫氣我軍の上空より升起する有れば、此是れ大吉慶の預兆にして、當天就ち喜事有らん。ある軍營の上空雲氣覆蓋する堤岸の如く前赤後白なるは、此是れ取勝の氣にして、兵を進め攻擊するに利し。若し敵軍の上空に出現せば、就ち是れ敵方の獲勝なり。ある軍營の上空氣凝聚して云と成りて、半空に停り(「住」は一本に「往」と作る)堅固にして變らざるは、名を「剛氣」と曰い、若し敵軍の上空に在れば就ち攻打するなかれ。ある軍營の上空雲氣盤曲蹲踞の狀を作すは、これを「天威」と叫作し、應當に精銳部隊を動用し、陣脚を穩めて逐步に推進して作戰すべし。
或軍上雲氣如華蓋先動者,或雲氣上赤下黑臨軍者,此弱彼強,然終破強,小能擊大,大戰大勝,小戰小勝。或雲氣如黑人在赤雲中,謂之捷(一作梅)氣。或雲氣如十十五五童子,氣中赤氣在前者,強兵之氣也。
ある軍營の上空雲氣華蓋の如くして率先して移動する有り。ある雲氣上赤下黑にして軍營に壓臨する。此れ我方弱くして敵方强きを表示し、然而して最終に强敵を擊破し得、小を以て大を擊ち、大戰大勝し小戰小勝す。ある雲氣黑色の人の赤雲の中に立つが如きを「捷氣」と叫作す(「捷」は一本に「梅」と作る)。ある雲氣十箇五箇成群の童子の如く、氣の中又赤氣有りて前に在るは、此是れ强兵の氣なり。
或雲氣如山堤林木;或白氣粉(一作分)澤如樓,繞以赤氣;或雲氣爛如火光或湧如火煙;或雲氣如山蓋分為(一作高)兩穗蓬蓬然,又類草煙之狀,此得天勢也;或雲氣凝日而成五色;或雲氣十十五五如赤鳥蹲黑氣中;或氣如黑煙;或雲氣如馬頭高尾低;或雲氣如人持斧向敵;或雲氣如二匹練:此十者,勁兵之氣也,在敵則宜避之,在我則所向皆克矣。
ある雲氣山堤と樹林との如き有り。ある白氣潤澤して樓臺の如く(「粉」は一本に「分」と作る)四周赤氣に繞られたる有り。ある雲氣燦爛として火光の如くあるいは涌動して火煙の如き有り。ある雲氣山蓋の兩穗に分成して蓬蓬鬆鬆たるが如く(「為」は一本に「高」と作る)、又野草焚燒の煙の如きは、此是れ天時地勢を得たるなり。ある雲氣日邊に凝聚して五色を現出する有り。ある雲氣十箇五箇成群にして、赤鳥の黑氣の中に蹲るが如き有り。ある氣黑煙の如き有り。ある雲氣馬頭高くして馬尾低きが如き有り。ある雲氣人の斧を持ちて敵方に朝向するが如き有り。ある雲氣兩匹の白絹の如き有り。此の十種皆是れ勁兵の氣にして、敵方に出現すれば就ち應當に避開し、我方に出現すれば則ち向かう所皆能く取勝し得べし。
黃雲氣黃白厚潤而重者;或雲氣動,廣如三匹皂帛,前大後狹,軍行其中,有雲如鬥雞,赤白相隨在氣中;或陣上有五色氣連天;或雲氣連天如烏衣人在赤雲中;或黃氣亙天:此五者,應天之兵也,擊之大凶。
黄色の雲氣黄白相間にして厚潤凝重なる有り。ある雲氣浮動して寬さ三匹の黑色繒帛の如く前寬後窄にして、軍隊其の中に行進し、又斗雞の如き雲有りて赤白二色氣の中に相隨う有り。ある陣地の上空五色の氣の天際に連接する有り。ある雲氣天に連なりて、黑衣を穿る人の赤雲の中に立つが如き有り。ある黄氣天空を橫貫する有り。此の五種皆是れ天意に順應する軍隊にして、彼らを攻打すれば大凶なり。
或軍上氣如蛇舉頭向敵;或赤黃氣干天;或雲氣如日月而赤氣繞之;或雲氣如日暈有光著(一作者);或氣凝聚而不散;或赤雲如龍,彩色鬱鬱沖天;或雲相繞又如鳳凰之狀;或雲氣光潤如城門隱隱在白雲中;或氣內赤外黃:此九者,強兵之勝氣,一曰王者之氣也。雲氣如是者,在我軍上則出擊敵,若在敵上則慎勿妄動。又若在我軍上,及敵人軍氣如常者,亦勝兆也。
ある軍營の上空氣蛇の頭を昂げて敵方に朝向するが如き有り。ある赤黄の氣直に天際を衝る有り。ある雲氣日月の如くして赤氣の環繞有る有り。ある雲氣日暈の如くして光を帶ぶる有り(「著」は一本に「者」と作る)。ある氣凝聚して消散せざる有り。ある赤雲龍の如く色彩濃郁にして直に天空を衝る有り。ある雲互相纏繞して又鳳凰の形狀の如き有り。ある雲氣光潤して城門の隱隱として白雲の中に現るるが如き有り。ある氣內赤にして外黄なる有り。此の九種是れ强兵の取勝の氣にして、もまた人説く就ち是れ王者の氣なりと。雲氣此の樣の如く、我軍の上空に出現すれば就ち應該に敵人を出擊すべし。若し敵軍の上空に出現せば、就ち千萬に輕擧妄動するなかれ。另外、若し此の種の氣我軍の上空に在りて、而して敵軍の氣一ただ平常の如くなれば、那もまた是れ取勝の征兆なり。
城上雲氣第一百七十二
進兵攻城,及敵來圍我,亦審雲氣之吉凶。或城上或營上有氣如人十十五五,皆叉手低頭者,軍人願降也(此章一緣勝敗之氣雜論之,又多言城中之事,故別立此章。若於營塞及陣上吉凶亦同)。或雲氣上黃下白,名曰善氣,所臨之軍欲相和解。或城中氣如白旗者,不可拔。或黃雲臨城者,城中有大喜慶。
兵を進め城を攻め、および敵人の前來して我方を包圍する時も、もまた雲氣の吉凶を審察するを要す。ある時城上あるいは營上氣人の十箇五箇成群するが如く、皆拱手して頭を低むは、此是れ守軍の投降を願意するなり(本章原本勝敗の氣と混り合って論述し、又多く城中の事を談ず。ゆえに別に一章を立つ。若し營壘要塞と陣地上の吉凶に用いれば、判法相同じ)。ある雲氣上黄下白なるは、名を「善氣」と曰い、それの臨む所の兩軍の講和せんと想うを主る。ある城中の氣白色の旗幟の如きは、此の城攻下る能わず。ある黄雲城上に壓臨するは、城中大きな喜慶有るを主る。
或青色氣如牛頭觸人者,城中不可屠(一作圖)。或城中氣出東方色黃者,此天鉞,不可伐,伐者大禍。或城上氣如火煙分湧者,主人慾出戰也。其氣無極,不可擊。諸色但出而無極者,不可屠。或赤色或黑氣如杵形從城內向外者,內兵突出,主人大勝。或城上雲氣分為兩穗火之狀者,不可攻。或蒙氣繞城而不入者,外兵不得入。
ある青色の氣牛頭の人を頂撞するが如きは、此の城屠戮する可からず(「屠」は一本に「圖」と作る)。ある城中の氣東方に出現して色黄なるは、これを「天鉞」と叫び、討伐する可からず。討伐する一方大禍有り。ある城上の氣火煙の股に分かれて涌出するが如きは、守方の將に出戰せんとするを主る。此の種の氣若し無邊無際なれば、就ち攻擊する可からず。各種顏色の氣ただ涌出して窮盡無きのは、皆城を屠る可からず。ある赤色あるいは黑色の氣杵形の如く城內より城外を指向するは、城內の軍隊の圍を突いて出で守方の大勝を主る。ある城上の雲氣兩穗に分成して火焰の狀の如きは、進攻する可からず。ある蒙昧の氣城を繞りて進入せざるは、城外の軍隊の攻め進入る能わざるを主る。
凡攻城塞有諸氣從城中出入吾軍者,勝氣也,謹備之。或攻城赤氣在城上,黃氣在四面繞之者,城中大將死,城降。或城上赤氣如飛鳥者,急攻之,立可破矣。或氣出入於城中者,城中居(一作軍)民欲逃散,無鬥志,急攻之。或氣如死灰而覆其城寨者,吏士(一作使)病,城可屠。或城全無雲氣者,士卒心散。
凡そ城塞を攻打する時、各種の氣の城中より出來して又我軍に進入する有るは、此是れ敵方の取勝の氣にして、謹慎に防備するを要す。ある攻城する時赤氣城上に在り黄氣四面に於て環繞するは、城中の大將の死亡・城池の投降を主る。ある城上の赤氣飛鳥の如きは、趕緊に進攻し、立刻に以て攻破し得べし。ある氣城中に出出入入するは、城中の居民(「居」は一本に「軍」と作る)の逃散せんと想い鬥志無きを主り、應當に急攻すべし。ある氣死灰の城寨を覆蓋するが如きは、城中の官吏士卒の患病するを主り(「士」は一本に「使」と作る)、城攻下り屠滅し得べし。ある城上完全に雲氣無きは、守軍士卒の人心渙散を主る。
或城上赤氣如眾人頭向下者,其下多死喪血流。或白氣繞城而入者,急攻之,可拔。或白氣光如劍形,長百餘丈,自敵上起而橫城上者,攻之者受禍,城不可屠,八十一日內應。或黑雲高起,以黃為緣,長凝於陣前,橫列如跪,其狀如手相牽,三三五五低頭拱手營陣之上者,人必降。
ある城上の赤氣衆人の頭顱の下に朝くが如きは、城下多く死喪流血有るを主る。ある白氣城を繞りて入るは、趕緊に進攻し、以て攻拔し得べし。ある白氣光を發して劍形の如く長さ百餘丈にして、敵方の上空より升起して城上に橫たわるは、城を攻むる一方禍を受けんを主り、此の城屠滅する可からず、八十一天の內に應驗せん。ある黑雲高高に升起して、黄色を以て邊緣と爲し、久久凝聚して陣前に在り、橫列して跪伏の如同じく、形狀手に手を拉するが如く、三三五五頭を低め拱手して營陣の上空に懸るは、敵人必定に投降せんを主る。
或雲氣如雞雉及走兔者,賊當來攻城,急備之。或雲氣三條五條橫列成陣,文如虎斑者,所臨之軍必拔城殺將,見之急攻之。或雲如龍行於城上者,必有大水。凡城上勝敗之氣如是者,勝在敵,不可攻之;敗在敵,可攻之。勝在我,則利出兵進擊;敗在我,則堅壁清野,嚴以守之。雲氣所見,天地心也,可不慎哉!
ある雲氣雞雉と奔跑の兔子との如きは、賊兵の將に來りて城を攻めんとするを主り、趕緊に防備せよ。ある雲氣三條五條橫列して陣を成し、紋理虎皮の斑紋の如きは、それの臨む所のあの支の軍隊必定に城池を攻下り敵將を斬殺せんを主り、見れば急攻せよ。ある雲龍の城上に行走するが如きは、必定に大水有るを主る。凡そ城上の勝敗の氣上面の説く所の此れらの如し。勝氣敵方に在れば、就ち進攻する可からず。敗氣敵方に在れば、就ち進攻し得べし。勝氣我方に在れば、就ち兵を出だし進擊するに利し。敗氣我方に在れば、就ち壁を堅くし野を清め、嚴しく固守を加うるを要す。雲氣の顯現する所は、正に是れ天地の心意なり。何ぞ能く慎重ならざらんや。
將軍雲氣第一百七十三
欲知敵將之賢愚,亦以雲氣占之。夫軍上青雲帶赤中黃白,自旦日至夜不散者,其主弱臣強,大將軍驕恣,法令顛倒,可急攻之。或軍上雲氣昏昏暗濁者,主將不明,賢良不附也。或軍上雲氣如蛟龍者,主將軍神魂散亂,可擊之。或出自白日沒之後,有青氣西亙天者,經十日不雨,大將當失位,強在三年之內也。已而變赤者,大敗之兆也。
敵方の將領の賢明なるか愚昧なるかを知らんと想えば、もまた以て雲氣に用いて占測し得べし。凡そ敵軍の上空青云にして赤色を帶び當中黄白を夾むは、清晨より夜裏に到るまで消散せざれば、對方の君弱く臣强きを主り、大將軍驕橫放縱にして、法令顛倒混亂し、以て急速に攻打し得べし。ある軍營の上空雲氣昏暗渾濁なるは、將領の賢明ならざるを主り、賢良の士歸附するを肯ぜず。ある軍營の上空雲氣蛟龍の如きは、將軍の心神散亂を主り、以て攻擊し得べし。ある白天日落の後より開始して、青氣自ら西より天空を橫貫するを出現し、十天を經過して雨を下さざれば、大將の將に職位を丟掉せんとするを主り、最遲くも三年の內に在り。此の後青氣又轉じて赤色と成るは、就ち是れ大敗の預兆なり。
或軍上青氣漸黑者,大將軍死。或雲氣黃白而潤澤者,將有威德也。或軍上氣漸漸如雲變作山形者,將有深識也。或雲外黑而中赤向前者,或兩軍相當雲氣如倉者,或赤氣如山者,此三者將悍精驍勇也。或雲上與天連者,將有智也。
ある軍營の上空青氣漸漸に黑に轉ずるは、大將軍の死亡を主る。ある雲氣黄白にして潤澤なるは、將領の威望德行有るを主る。ある軍營の上空の氣漸漸に雲より山の形狀と變成するは、將領の深遠の見識有るを主る。ある雲外面黑を發して中間赤紅にして前に向かって推進する有り。ある兩軍對壘の時雲氣糧倉の如き有り。ある赤氣山の如き有り。此の三種皆敵將の强悍精干・驍勇善戰を主る。ある雲上に向かって天と相連なるは、將領の智謀有るを主る。
或雲氣如龍虎在煞氣中,或如火煙奮奮,或如火光變變,或如林木あだ者,或如塵埃頭大而卑者,或色紫黑狀如門上樓者,或如紫粉(一作粉素)霏拂者,或如龍游黑霧中者,或如日月有赤氣起繞者,或狀如門上黑下赤者,或如皂旗者,或如弓形,或蜿蜒如蛟蛇者,此十三者猛將之氣也。
ある雲氣龍虎の殺氣の中に處するが如き有り。ある火煙の騰騰として奮起するが如き有り。ある火光の閃爍變幻するが如き有り。ある叢生の林木の如き有り(原文此處二字已に殘訛なり、姑らくその舊を存す)。ある塵埃の如くして頭部粗大にして位置低伏する有り。ある色紫黑にして形狀城門上の譙樓の如き有り。ある紫色粉末の飄拂するが如き有り(「紫粉」は一本に「粉素」と作る)。ある龍の黑霧の中に游動するが如き有り。ある日月の如くして赤氣の升起環繞する有る有り。ある形狀門の如く上面黑く下面赤き有り。ある黑色の旗幟の如き有り。ある弓の形狀の如き有り。ある蜿蜒として蛟蛇の如き有り。此の十三種皆是れ猛將の氣なり。
或雲氣青而疏散者,將怯弱也。或前大後小者,將不明也。或內黑緣以白氣者,將懦而無謀也。如此者,可以詐動,可以事惑,可以威,可以強逼決勝矣。
ある雲氣色青にして稀疏鬆散なるは、將領の怯懦軟弱を主る。ある前大後小なるは、將領の事理を明らめざるを主る。ある內裏黑を發して外緣白氣に鑲れるは、將領の懦弱にして謀略無きを主る。此の樣の敵將に遇上すれば、就ち以て詐術を用いて它を調動し、以て事端を用いて它を迷惑し、以て聲威を用いて它を震懾し、以て强いて逼戰して勝負を決出し得べし。
伏兵雲氣第一百七十四
進兵之時,先於山川四面望其雲氣。渾渾圓長,赤氣在其中者,或如赤杵在黑雲中者,其下有伏兵。或氣青黑色掩北斗者,敵將設伏兵以待我也。或兩軍相當,赤氣在陣前後者,亦有伏兵隨氣所在之方。或雲絞絞綿綿者,此以車騎為伏也。或雲氣聳然類山丘形者,此皆精猛之伏兵也。或雲氣成布席狀者,此以步卒為伏也,所見之地急防之。
兵を進むるの時、要して山川の四面に於て雲氣を眺望するを先とす。若し氣渾然として圓長にして赤氣其の中に在るか、あるいは赤色の木杵の黑雲の中に立つが如ければ、あの下伏兵を埋む有り。ある氣青黑色を呈して北斗を遮掩するは、敵將の伏兵を設下して我軍を等つを主る。ある兩軍對壘の時赤氣陣前陣後に出現するも、もまた是れ伏兵有りて、方位就ち赤氣の所在する處に隨って以て定まる。ある雲絞結纏綿して一片に連成するは、此是れ車兵騎兵を以て伏を設く。ある雲氣高聳して山丘の形狀の如きは、此れら皆是れ精銳勇猛の伏兵なり。ある雲氣鋪開の席子の狀を形成するは、此是れ步卒を以て伏を設く。何れの方位に於て見るや、就ち趕緊にあの裏に防を設くべし。
奸賊雲氣第一百七十五
白氣群行,徘徊結陣往來者,他國人來欲圖亂我,不可應之。視其所往,隨而擊之,可得也。或有黑氣臨我軍上,如車輪行,敵人深入,謀襲營柵。或有黑氣遊行,中含五色,臨我軍上,必謀合諸侯而伐我,諸侯必謀反敵軍,敵軍當自敗。或有黑氣如幢節之狀出於營中,上黑下黃,敵人來求戰,無誠實言信相,及九日內必覺,備之吉。凡雲氣如是者,敵之密謀也。
白氣成群に移動して、徘徊往來して又陣勢を結成するは、別國の人の前來して我方を圖謀擾亂するを主り、貿然と應戰する可からず。それの往き去る何方を看るを要し、跟隨して過去攻擊せば、就ち能く擒獲し得べし。ある黑氣我軍の上空に壓臨して、車輪の般に滾動するは、敵人已に我境に深入し、我方の營柵を偸襲せんと圖謀するを主る。ある黑氣游走して、その中五色を含み、我軍の上空に壓臨するは、敵人必定に諸侯を聯合して我を討伐せんを謀るを主る。而して諸侯必定に反って敵軍を算計し、敵軍將に自行に敗亡せん。ある黑氣旗幢符節の形狀の如く營中より升起し、上黑下黄なるは、敵人の前來して戰を求めるを主り、言辭誠信の憑るべき無く、至多九天の內必定に識破せられん。防備を加以すれば吉利なり。凡そ雲氣此れらの樣子の如きは、皆是れ敵人の祕密の圖謀なり。
敗兵雲氣第一百七十六
軍上氣如死灰,或如馬肝,或如偃蓋,或如群羊,或如驚鹿,或如臥人無手,皆敗征也。或黑如壞山(壞一作敗),隨軍,軍敗將死;隨我,亦(一作移)當避之。或雲氣白黃昏發連夜襲敵者,軍士散亂,擊之吉。或軍上氣卑而一絕一敗,在東發白氣者,災深。或雲氣五色而東西南北不定者,軍欲敗。或赤氣炎隆於天者,大將軍死而眾軍潰亂。
軍營の上空の氣死灰の如くあるいは馬肝の如くあるいは仰翻の車蓋の如くあるいは一群の羊の如くあるいは驚を受けた鹿の如くあるいは躺る人の如くして手臂無きは、此れら皆是れ敗亡の征象なり。ある氣黑きこと崩壞の山の如く(「壞」は一本に「敗」と作る)、某支の軍隊に跟隨すれば、あの支の軍隊就ち敗れ將領就ち死せんを要す。若し我軍に跟隨すれば、もまた應當に避開すべし(「亦」は一本に「移」と作る)。ある雲氣白を發して、黄昏の時に興起して連夜敵人を襲擊するは、軍士の散亂を主り、它を攻擊すれば吉利なり。ある軍營の上空の氣低伏にして時斷時續・一段段に潰散し、且つ東方に於て白氣を生出するは、災禍深重を主る。ある雲氣五色を呈して東西南北飄忽不定なるは、軍隊將に敗亡せんを主る。ある赤氣火焰の隆盛にして天を衝るが如きは、大將軍の死亡・全軍の潰亂を主る。
或黑氣如牛馬從霧中漸漸入軍者,名曰天狗下食血,必營於遠處避之。或雲氣蓋道蒙蔽而晝冥者,立敗之征也,爨不暇熟,急避之。若雲氣或青或碎如瓦礫,所臨之軍即敗也。若雲氣或赤或白,如人無頭,如人臥匐地低頭,所臨之軍敗也,當流血百餘里。在吾而欲禳之者,大將移營他處即吉也,士卒令其歡心上騰,可以解福。
ある黑氣牛馬の霧中より漸漸に軍營に進入するが如きは、名を「天狗下食血」と曰い、必ず營寨を遠處に移到して躲避するを要す。ある雲氣道路を遮蔽し天日を蒙蔽して以て白晝昏暗致らしむは、此是れ立時に敗亡するの征象にして、飯の熟するを等つに及ばずして趕緊に躲避するを要す。若し雲氣あるいは青色を呈しあるいは破碎して瓦礫の如ければ、それの壓臨する所の軍隊立即に敗亡せん。若し雲氣あるいは赤あるいは白にして、頭無き人の如く、人の地に趴伏して頭を低むるが如ければ、それの壓臨する所の軍隊敗亡して、將に百餘里を流血せん。此の種の氣若し我方に出現して禳解せんと想えば、大將營寨を別處に遷せば就ち吉利にして、同時に士卒をして心情歡暢・士氣上揚せしめば、就ち以て災禍を消解し福分を轉來し得べし。
或雲氣如水破堤,士伍潰之兆也,敵將潛兵襲我之後。或夜雲氣長如引索垂下,所臨之軍敗也。或夜半雲氣濃黑者,多陰謀。色青白及蒼黑者,皆反戾之兆也。或黑雲如車輪轉而入軍者,小人謀逆,急察備之。或雲氣狀如犬者,其下多流血。或雲氣黑色而黃色在上者,士卒怯懦,內亦有反亂之計也。
ある雲氣大水の堤壩を衝破するが如きは、此是れ隊伍の潰散するの預兆にして、敵將の暗中に兵を派して我軍の後方を襲擊するを主る。ある夜間の雲氣細長として垂下の繩索の如きは、それの壓臨する所の軍隊敗亡せん。ある半夜の雲氣濃黑なるは、陰謀多きを主る。氣色青白および蒼黑のは、皆是れ叛逆悖亂の預兆なり。ある黑雲車輪の如く旋轉して軍營に進入するは、小人の謀反を主り、趕緊に查察防備するを要す。ある雲氣形狀狗の如きは、それの下方多く流血有るを主る。ある雲氣黑色にして上面黄を泛ぶは、士卒の怯懦を主り、內部もまた反叛作亂の圖謀を藏す。
或黑雲如幡幢在氣中者,或赤氣如血,飛鳥在黑氣中者,皆敗兆也。或黑雜碎如群豕,或如群牛馬,或如群驚鳥者,皆敗兆也。或雲氣如浮塵散漫者,士卒謀反逆。或赤如火之猛焰燭天而起者,大敗流血。或赤雲如人三三兩兩或行或坐者,暴兵將至也。或雲氣如焚生草煙,所臨之軍大敗也。或雲氣如焚生草煙,所臨之軍雖前勇,後當自退。能以歲月候而擊,可勝。
ある黑雲旗幡幢蓋の如く氣の中に立つ有り。ある赤氣血の如く、又飛鳥黑氣の中に在る有り。皆是れ敗亡の兆なり。ある黑氣雜亂破碎して一群の猪の如くあるいは一群の牛馬の如くあるいは一群の驚を受けた鳥の如く、もまた皆是れ敗兆なり。ある雲氣浮塵の一樣に散漫するは、士卒の反叛を圖謀するを主る。ある赤氣烈火猛焰の天空を照亮して升起するが如きは、大敗して流血するを主る。ある赤雲人の三三兩兩なるが如くある行走しある坐するは、亂兵將に到來せんを主る。ある雲氣青草を焚燒の煙の如きは、それの壓臨する所の軍隊大敗せん。ある雲氣青草を焚燒の煙の如きは、それの壓臨する所の軍隊雖も起初勇猛なるも、隨後必定に自行に退却せん。能く年月に按じて時機を推算して攻擊に往けば、就ち以て取勝し得べし。
或赤雲氣而漫漫如垂蓋者,軍當自亂。或赤雲兩向狀如八字,各有首尾,銳而復大者,大戰血流,先動者敗。言先動而敗者,謂有兩軍交刃之時之兆也。或雲氣如懸衣,敗兆也。雲氣如轉蓬者,敗兆也。或兩相當,敵上全無雲氣者,擊之可破也。或兩軍相當,敵上雲氣極天如陣者,此之謂橫海氣,力攻之可破也。或兩軍相當,望彼軍上有火照人者,此失將士之心,攻之可敗也。
ある赤色の雲氣彌漫して低垂の車蓋の如きは、軍隊將に自行に潰亂せんを主る。ある赤雲兩邊に分向して、形狀「八」の字の如く各々首尾有りて、先に尖銳にして後に變大するは、大戰して流血するを主り、先に手を動かす一方失敗せん。謂う所の先動して敗るは、説く所是れ此れ兩軍の刀刃相接する時の征兆なり。ある雲氣懸挂の衣服の如きは、是れ敗兆なり。雲氣風に隨って翻滾する蓬草の如きも、もまた是れ敗兆なり。ある兩軍對壘して敵軍の上空完全に雲氣無ければ、它を攻擊すれば就ち以て擊破し得べし。ある兩軍對壘して敵軍の上空雲氣高く天際に接し排列して軍陣の如ければ、これを「橫海氣」と叫作し、全力攻打して以て擊破し得べし。ある兩軍對壘して對方の軍營の上空火光の人を照らす有るを望見すれば、此れ敵將已に將士の心を失去せるを表示し、它を攻打して以て取勝し得べし。
或雲氣如群鳥亂飛者,敗兆也。或雲氣毿毿如虎尾垂於軍上者,軍欲降。不然,將有奸人為敵應。或兩軍相當,去十里內望見彼軍上氣白又高,後有青雲者,立敗之兆也,宜速鼓行而擊。或雲氣蒼黑者,敗兆也。或雲氣如行牛,或如鼓車,或如群蛇亂走,或黑雲如人牽牛,皆敗兆也。或雲如壞屋之狀,兵亂將死。或淡黑雲中有深黑雲,黯黯而如星者,謂之敗軍之氣,兵大災。
ある雲氣群鳥の亂飛するが如きは、是れ敗兆なり。ある雲氣毛茸茸として虎尾の如く軍營の上空に垂るは、此の支の軍隊將に投降せんを主る。不然なれば、就ち奸細の敵人の內應を充當する有らん。ある兩軍對壘して、十里の內に對方の軍營の上空氣色の白を發して而且高聳し、後面還って青云有るを望見すれば、此是れ立刻に敗亡するの預兆にして、應當に迅速に鼓を擊ちて軍を進め攻擊すべし。ある雲氣蒼黑なるは、是れ敗兆なり。ある雲氣行走の牛の如くあるいは戰鼓車の如くあるいは一群の蛇の亂竄するが如くあるいは黑雲人の牛を牽くが如きは、皆是れ敗兆なり。ある雲倒塌の房屋の如きは、兵變作亂・將領死亡を主る。ある淡黑雲の中又深黑の雲有りて、暗淡として星點の如きは、これを敗軍の氣と叫作し、兵禍大災を主る。
夫興師動眾,天以勝敗之氣告人者有以也。當勝氣者不可恃之,當修軍政、精智慮、嚴號令、正賞罰,此可以答天地之貺也。茍或恃勝氣而軍政不修,荒怠敗度,此可以反勝為敗也。遇敗氣者詎能必敗也?當以嚴教令、謹智慮,責躬罪己、恭答天譴,此可變敗為勝也。大將得不以勝敗之象,立修德之方乎!
凡そ師を興し衆を動かすに、上天勝敗の氣を以て世人に告知するは、是れ緣故有り。勝氣を占得るは以て它を倚仗する可からず。應當に軍政を整頓し精心に謀劃し號令を嚴明にし賞罰を公正にして、此の樣纔か天地の賜予に配得上すべし。假如勝氣を倚仗して軍政修めず、荒廢懈怠して法度を敗壞せば、此れ就ち以て勝局を翻して敗局と爲すに足らん。敗氣に遇上するは難道一定に失敗せんや。應當に敎令を嚴明にし思慮を慎密にし、咎を引きて自ら責め恭敬に上天の譴告に回應して、此の樣就ち以て敗を轉じて勝と爲すを得。身大將と爲りて、何ぞ能く勝敗の天象を借りて、以て德行を修養するの門徑を確立せざらんや。
