伏兵氣
氣如赤杵幢節在烏雲中,或如烏人在赤氣中,或黑氣渾渾圓而赤氣在其中,或白氣紛沸起如樓狀,其下皆有伏兵。若軍行近山谷之間林坑,甚防之。
気は赤色の木杵・幢幡・旌節に似て烏雲の中に処り、或は黒衣の人の赤気の中に処るに似、或は黒気は渾然として円形を団成して赤気は当中に夾まり、或は白気は紛紛として涌起して形は楼閣のごとき――此らの気の下方は皆敵兵を埋伏す。若し行軍して山谷の間の林木と坑洼の地帯とを経過せば、尤も要に厳しく防備を加うべし。
雲紛紛綿綿相絞,及似蒿草長數尺者,以車騎為伏兵;如布席,似蒿草長尺許者,以步卒為伏兵。黑雲出營南,賊逃,我後有伏兵,謹候察之。
雲気紛紛綿綿として互相に絞結し、および蒿草のごとくして長さ数尺に至るは、敵方は是れ車騎を用いて伏を設け、鋪開の席子に似て蒿草に似てただ一尺ばかりの長さなるは、敵方は是れ歩卒を用いて伏を設く。黒雲は営壘の南面より升起するは、主として賊衆逃走するも、我が軍の後方に敵人の伏兵有り、謹慎に偵察するを要す。
兩軍相當,赤氣,伏兵氣。若前有赤氣,則前有伏兵;後有赤氣,則後有伏兵;左右亦如之。黑雲變赤及白形如山者,有伏兵;雲如山林,或前黑氣,後有白氣者,有伏兵。
両軍對壘するの時、赤色の気は則ち伏兵の気なり。前方に赤気有れば、前方に則ち伏兵有り、後方に赤気有れば、後方に則ち伏兵有り、左右両側もまた此に照らして判断す。黒雲は変じて赤色或は白色と為りて形状は山に似るは、主として伏兵有らん。雲は山林に似、或は前面は黒気にして後面は白気なるも、また主として伏兵有らん。
暴兵氣
白氣如瓜蔓連結,部隊相逐,須臾罷而復出,或如八九而來不絶者,有急賊至。白氣如仙人衣,千萬連結,部隊相逐,罷而復興,當有千里兵至。
白気は瓜蔓の一様に連綴して結聚し、一隊接いで一隊相継いで來り、片刻停歇してまた再び出現し、或は八九股の接連として断えずに涌來するに似るは――主として緊急の賊寇の到來有らん。白気は仙人の衣裳に似て、千絲万縷連綴して一起と為り、一隊接いで一隊相継いで來り、停み下りてまた再び興起す――主として千里の外の軍隊の開到する有らん。
黑氣從彼來我軍者,欲襲我也,急宜備,不宜戰;敵還,從而擊之,必得小勝。
黒気は敵方より我が軍に向かって飄來するは、敵人は我が方を襲撃せんと欲するを説明し、当に趕く戒備して、出戦するに宜あらず。敵人の退回するを待ちて再び尾隨して攻撃せば、必定に小勝を取得する能し。
天色蒼茫而有此氣,依支干數,內無風雨,所發之方,必有暴兵。日克時則凶,時剋日則自消散。此氣所發之方,當有事告急。一人來則氣一條,依數計之;若散漫一方,必有眾至。依日支干數,內有風雨,則不應。
天色蒼茫にして此の種の気出現し、干支の主する所の日数に按じて推算し、此の段の日数の内に若し風雨無ければ、則ち気の升起するのあの方向は必定に突發の兵禍有らん。若し日辰は時辰を克制せば、主として凶なり。若し時辰は日辰を克制せば、兵禍は自ら消散せん。此の種の気の升起するの方向は、必定に緊急の軍情來り報ぜん。一個人來れば則ち一条の気有りて、条数に依りて人数を推算すべく、若し気は一方に彌漫せば、必定に大批の人馬の到來有らん。干支に按じて推算するの日数の内に若し風雨を下せば、此の一占は應驗せざらん。
伏兵氣,如人持刀盾,或有雲如坐人,赤色,所臨城邑,有猝兵至。赤氣如人持節,雲如方虹,或如赤虹,其下暴兵至。或如旌旗、如虎躍、如人行,或白氣如道帶竟天,或白虹所出,或赤雲如火,或雲如匹布,著天經丑未者,天下多兵,赤者尤甚。
伏兵の気は人の手に刀盾を持つに似、或は雲の端坐の人に似て赤色を呈するは――此の類の気の臨照する所の城邑は、會い突然到來の兵禍有らん。赤気は人の手に符節を持つに似、雲は方形の虹に似、或は赤色の虹に似て、其の下方は主として暴發の兵禍の到來有らん。或は気は旌旗に似て老虎の跳躍に似て人の行走に似、或は白気は道路に似て帯子に似て長天を横貫し、或は是れ白虹の出現するの処、或は赤雲は火に似、或は雲は一匹の布に似て、天空に貼りて丑未の方向に沿いて横亘す――此らは皆主として天下に戦事多く、其の中の赤色は尤も嚴重なり。
有雲如番人列陣;或白氣廣五六丈,東西竟天;有雲如豹五六枚相聚;或如狗四五枚相聚;四方清明,獨有赤雲赫然者︰所見之地,兵起。四望無雲,獨有黑雲極天,名曰「天溝」,主兵起。
雲有りて外族の人の列陣するに似、或は白気の寛さ五六丈にして東より西に向かって長天を横貫し、雲有りて五六隻の豹の聚まるに似、或は四五条の狗の聚まるに似、或は四方の天色清朗にして唯独一片の赤雲赫然として顕現す――此らの異象の出現するの地方は、皆戦事を興起せん。四面望去して皆雲無く、唯独黒雲の直に天際を貫く有るは、これを「天溝」と謂う作り、主として戦事興起せん。
壬子日候,四方無雲,獨有雲如旌旗,其下兵起;徧四方,天下兵起。雲氣一道,上白下黃,白色如布匹,長數丈;或上黃下白,如旗狀,長二三丈;或長氣純如赤而委曲,一道如布匹︰皆謂之「蚩尤旗」,見,兵大起。
壬子日に於て観察し、四方皆雲無くして、唯独一片の雲の旌旗に似る有れば、其の下方の地区は戦事を興起せん。若し此の種の雲は四方に遍布せば、天下は皆戦事を興起せん。一道の雲気有りて、上白く下黄く、白の部分は一匹の布に似て長さ数丈に達し、或は上黄く下白くして形は旗幟のごとく長さ二三丈、或は一道の長気は純赤にして弯曲盤繞して形は一匹の布のごとき――此らは皆「蚩尤旗」と謂う作り、一旦出現すれば、主として大規模の戦事興起せん。
戰陣氣
氣如人無頭、如死人、如丹蛇,赤氣隨之,必有大戰,殺將。四望無雲,獨有赤雲如狗,入營,其下必有流血;或獨見赤雲如立蛇,或赤雲如覆舟,其下大戰。
気は頭無きの人に似て死人に似て紅色の蛇に似て、また赤気の其の後に跟随する有れば、必定に大戦の発生有りて、併せて将領の殺せらるる有らん。四面望去して皆雲無く、唯独一片の赤雲の狗の一様に軍営に飄入するは、其の下方は必定に流血の事有らん。或はただ赤雲の直立の蛇に似るを見、或は赤雲の翻扣の船に似て、其の下方は主として大戦有らん。
白虹或赤屈虹見城營上,其下大戰流血。白氣如車,入北斗中轉移者,大戰。雲如耕隴,大戰。
白虹或は弯曲の赤虹の城池・営壘の上方に出現するは、其の下方は主として大戦流血せん。白気は車子に似て、北斗の中に進入して輾転移動するは、主として大戦有らん。雲の形状は耕り過ごしたる田壟に似るも、また主として大戦有らん。
日旁黑氣如虹,或白氣如虹,交見,兩軍相當,必交戰;無軍,兵起。四、五、六虹見,大戰。
太陽の旁边の黒気は虹に似、或は白気は虹に似て、交錯して出現す――此の時両軍若し正に對壘せば、必定に交戦し、若し軍隊の外に在る無くとも、また戦事を興起せん。同時に四道・五道・六道の虹出現するは、主として大戦有らん。
日月有赤雲,截之如大杵,軍在外,萬人戰死;兩軍相當,不利先舉。月初滿而蝕,有軍必戰。
日・月の旁に赤雲の其の上を横截して形は大木杵のごとき有る――若し軍隊の外に在る有れば、主として上万人戦死し、若し両軍正に對壘せば、先ず手を動かすの一方は不利なり。月亮剛に満ちて則ち月食を発生するは、軍隊の外に在る有るは必定に交戦せん。
蒼白雲氣經天,其下有拔城大戰。赤氣漫漫如血色,有大戰流血。
蒼白色の雲気は長天を横貫し、其の下方は主として城池を攻拔するの大戦有らん。赤気は彌漫して血色のごとくして、主として大戦流血せん。
陰謀氣
氣白而群行徘徊,結陣而來者,他國人來相圖謀也,不可忽;應視其所往,隨而伐之,得利。黑氣如幢,出於營中,上黑下黃,敵欲來求戰,而無誠實,言信相反,七日內必覺,備之,吉。
気色は白を發して成群にして移動し、徘徊して去らず、陣勢を結成して來るは、是れ別国の人の來りて我が方を圖謀するにして、疏忽すべからず。当に其の何れの処に往くかを看清して、随い即ち兵を出だして討伐して、以て利益を得べし。黒気は幢幡に似て、営中より升起して、上黒く下黄く、敵人は雖も來りて戦を求めんと欲するも、卻って誠意を併せ持たず、言語は実情と相反なるを説明す。七天の内に必定に察覚し、予め防備するは吉と為す。
黑氣臨我軍上,如車輪行,敵人謀亂,國有小臣勾引,宜察之。黑氣如引,牽來如陣前銳者,有陰謀。
黒気は我が軍の上方に臨壓して、車輪のあの様に滾動して前行するは、敵人は正に乱を作さんと圖謀し、而も我が国の内に小臣の暗中に勾結引導する有るを説明し、当に詳しく察訪を加うべし。黒気は牽引せらるるの一般に拖曳して來り、陣前に到りて尖鋭と變成するは、主として敵方に陰謀有らん。
天沉陰不雨,晝不見日,夜不見星、月,三日以上者,陰謀也,將軍宜愼防左右。連陰十日,亂風四起,欲雨不雨,其名曰「濛」,為臣謀君。
天色陰沉にして雨を下らず、白天には太陽を看見せず、夜裏には星月を看見せずして、連続三天以上するは、主として陰謀有りて、将軍は当に左右の近侍を謹慎防備すべし。連陰十天して、乱風は四面より刮起し、雨を下らんと要してまた下り來らざるは、此の種の天象を「蒙」と謂う作り、主として臣下は君主を圖謀せん。
天陰沉,日月無光,有雲障之,不雨,此君臣俱有陰謀。兩敵相當,則陰謀也。若晝晴夜陰,臣謀君;晝陰夜晴,君謀臣。
天色陰沉にして、日月光無く、雲有りて遮蔽して雨を下らざるは、これ君と臣との双方は皆陰謀を懐有するを説明す。若し両軍正に對壘せば、則ち是れ敵我の間に各々圖謀有らん。若し白天は晴れて夜裏は陰れば、主として臣下は君主を圖謀し、白天は陰れて夜裏は晴れば、主として君主は臣下を圖謀せん。
四夷氣
東夷之氣如𣗳。西夷之氣如屋。南夷之氣如樓臺,或如舟航。北狄之氣如牛羊,或如穹廬。
東方の夷人の気は、形状は樹木に似、西方の夷人の気は、房屋に似、南方の夷人の気は、楼台亭閣に似て、或はまた船只に似る有り、北方の狄人の気は、成群の牛羊に似て、或はまた游牧の居する所の毡帐穹廬に似る有り。
遠近氣
氣初出桑榆一千五百里,平觀一千里,仰視中天一百里,平望桑榆二千里,登高下屬三千里。〈○此條依張刻本補。〉凡候氣之法:氣初出時,若雲非雲,似霧非霧,彷彿若可見,初出森森然,若高五六尺者,是千五百里以外氣也。
気剛に桑榆(日の落つるの地平線の処)より升起するの時は、以て一千五百里の外の情形を望見すべし。平視にて観察すれば、一千里に及ぶべし。仰視して天頂を見れば、ただ一百里に及ぶ。桑榆の方向に朝きて平望すれば、二千里に及ぶべし。高に登りて下に向かって俯望すれば、三千里に及ぶべし。(此の一条は張刻本に依りて補入す。)凡そ気を観察するの方法――気剛に出現するの時は、云と説くもまた云に似ず、霧と説くもまた霧に似ず、隱隱約約として見ゆるに似たり、初めて起る時は森然として立つ。若し高さ約五六尺なれば、あれは便ち一千五百里以外の気なり。
凡候敵上氣,敵在東,日出候之;敵在西,日入候之;敵在南,日中候之;敵在北,夜半候之。欲知我軍氣,常以甲己日及庚子戊午日、未日、亥日及八月十八日,去軍十里,登高望之,但百人以上,則皆有氣。
凡そ敵軍の上方の気を観察するに――敵は東方に在れば、則ち日出の時に於て観察し、敵は西方に在れば、則ち日落の時に於て観察し、敵は南方に在れば、則ち正午の時に於て観察し、敵は北方に在れば、則ち半夜の時に於て観察す。我が軍自らの気を察看せんと欲せば、通常は甲日・己日および庚子日・戊午日・未日・亥日と八月十八日とに於て、軍営を離るること十里、高に登りて遠望す。ただ人数一百以上に在らば、軍隊の上方には則ち皆気有らん。
凡氣欲似甑出炊氣,勃勃而上升,外積結成形,而後可占。氣不結積,散漫不定,不能為災祥,亦必和雜殺氣森森然,乃可論也。
凡そ占験に供するべきの気は、蒸鍋の裏より冒出するの炊気のあの様に、蓬蓬勃勃として上に向かって昇騰し、外面に於て積聚凝結して形を成して、然る後に始めて以て拠りて占断すべし。気若し凝結積聚する能わず、散漫飄忽して定まらざれば、則ち灾祥を預示する能わず。此の外なお須と森然の肅殺の気を夾雑して、始めて論断に値すべし。
凡軍城上,氣安,則人安;氣不安,則人不安;氣盛,則兵盛;氣衰,則中衰;氣散,則眾散。凡氣得旺相色,吉;休囚色,凶。軍上氣,高勝下,厚勝薄,實勝虛,長勝短,澤勝枯。
凡そ軍営城壘の上方は、気安定なれば則ち人心安定し、気安定ならざれば則ち人心安んぜず。気盛んなれば則ち兵勢強盛にして、気衰えれば則ち軍の中衰弱し、気散ずれば則ち部衆離散す。凡そ気は当令の「旺」「相」の色を呈現するは、吉と為し、「休」「囚」の色を呈現するは、凶と為す。両軍の上方の気を比較すれば――高きは低きに勝り、厚きは薄きに勝り、実は虚に勝り、長きは短きに勝り、潤澤は枯槁に勝つ。
凡占災祥,先推九宮分野,六壬日月,不應陰霧風雨,其占乃準。凡候氣,多假日月之光,照耀而形,故暈珥抱背,皆出日月之旁;虹蜺相象,莫不因日而見。是故晝候日旁,夜候月旁,輝光所燭,無得而隱矣。
凡そ灾祥を占断するは、先ず九宮分野と六壬の主する所の日月とを推算して、併せて陰霾・霧気・風雨に遇上せざるを要して、占断して始めて准確なり。凡そ気を観察するは、多半は日月の光を借りて照耀して初めて形を顕すを要し、故に暈・珥・抱・背の此らの気象は、皆日月の两旁に出現し、虹と副虹の一類の形象は、日光に因りて始めて顕現せざるなし。これに因りて白天は太陽の周囲を観察し、夜裏は月亮の周囲を観察するを要す。ただ光輝の照到するの地方は、気は則ち蔵るるに従なし。
凡氣見,近三日,遠七日,內有大風雨,則不應災祥。故曰:「風以散之,雨以解之。」凡軍行,先觀其氣。兵有勝負氣,有盛衰氣。銳兵強氣,伏兵弱氣。兵行氣行,兵止氣止,兵急氣急,兵散氣沒。故曰:「氣是兵主,風是兵苗。」為將者,不可不知也。
凡そ気出現した後、近ければ則ち三天、遠ければ則ち七天、此の期間に若し大風大雨有れば、則ち灾祥の占断は應驗せざらん。故に曰う――「風は之を吹散し、雨は之を化解す」と。凡そ行軍は、先ず軍隊の気を観察するを要す。軍隊に勝負を主するの気有り、盛衰を主するの気有り。鋭利の精兵は、其の気強盛にして、埋伏の兵は、其の気微弱なり。軍隊行進すれば気もまた行進し、軍隊停止すれば気もまた停止し、軍隊急促すれば気もまた急促し、軍隊潰散すれば気もまた之に随いて隠没す。故に曰う――「気は軍隊の主宰にして、風は戦事の苗头なり」と。将領を為すの人は、以て此の道理を懂得せざるべからず。
分野占
經曰:天有二十八宿,為十二次;在地為十二辰,配十二月。至於九州分野,各有攸繫,上下相應,故可得而占識之。
兵経に曰く――天上に二十八宿有りて、十二星次を划分す。地上に對應すれば則ち十二辰にして、また十二個月を配す。九州各地の分野に至りては、皆各々帰属する所の星宿有りて、天上地下彼此に呼應す。故に以て此に拠りて占験し吉凶を識別すべし。
角、亢:鄭之分,於辰在辰,為壽星;於野,在潁川、父城、定陵、襄城、潁陽、陽翟、汝南、宏農、城父、新安、宜陽、河南、新鄭,屬兗州。氐、房、心:宋之分,於辰在卯,為大火;於野,在楚州、山陽、清平、濟陽、東郡、須昌、壽陽、睢陽、定陶等郡,屬豫州。
角宿・亢宿――鄭国の分野に對應し、十二辰の中は辰に属し、星次を「寿星」と謂う。地上の分野に於ては、颍川・父城・定陵・襄城・颍陽・陽翟・汝南・宏農・城父・新安・宜陽・河南・新鄭等の地を包括し、兗州に隷属す。氐宿・房宿・心宿――宋国の分野に對應し、十二辰の中は卯に属し、星次を「大火」と謂う。地上の分野に於ては、楚州・山陽・清平・濟陽・東郡・須昌・寿陽・睢陽・定陶等の郡を包括し、豫州に隷属す。
尾、箕:燕之分,於辰在寅,為析木;於野,在漁陽、北平、遼東、遼西、上谷、代郡、雁門、涿郡、范陽、新城、固安、良鄕、涿州、昌黎、渤海、安定、朝那、樂浪、元菟、易、定,屬幽州。南斗牽牛:吳之分,木辰在丑,為星紀;於野,在會稽、九江、丹陽、豫章、廣陵、廬江、安陸、臨淮、蒼梧、鬱林、桂陽、合浦、交趾、九眞、日南、南海,屬揚州。
尾宿・箕宿――燕国の分野に對應し、十二辰の中は寅に属し、星次を「析木」と謂う。地上の分野に於ては、漁陽・北平・遼東・遼西・上谷・代郡・雁門・涿郡・范陽・新城・固安・良郷・涿州・昌黎・渤海・安定・朝那・楽浪・玄菟・易州・定州を包括し、幽州に隷属す。南斗・牽牛――呉国の分野に對應し、十二辰の中は丑に属し(「木辰」は当に「于辰」と作るべし)、星次を「星紀」と謂う。地上の分野に於ては、會稽・九江・丹陽・豫章・広陵・廬江・安陸・臨淮・蒼梧・郁林・桂陽・合浦・交趾・九真・日南・南海を包括し、揚州に隷属す。
須、女、虛:齊之分,於辰在子,為元枵;於野,在高密、城陽、泰山、濟南、平原,屬青州。危、室、壁:衛之分,於辰在亥,為娵訾;於野,在魏郡、黎陽、河內、朝歌、濮陽,屬幷州。
須宿・女宿・虛宿――斉国の分野に對應し、十二辰の中は子に属し、星次を「玄枵」と謂う(唐人は避諱して「元枵」と写作す)。地上の分野に於ては、高密・城陽・泰山・済南・平原を包括し、青州に隷属す。危宿・室宿・壁宿――衛国の分野に對應し、十二辰の中は亥に属し、星次を「娵訾」と謂う。地上の分野に於ては、魏郡・黎陽・河内・朝歌・濮陽を包括し、并州に隷属す。
奎、婁:魯之分,於辰在戌,為降婁;於野,在東海、泗州、陰陵、曲阜,屬徐州。胃、昴:趙之分,於辰在酉,為大梁;於野,在信都、眞定、常山、中山、鉅鹿、高陽、廣平、河間、武昌、文安、清河、內黃、斥邱、太原、定襄、雲中、五原、朔方、上黨、邯鄲,屬冀州。
奎宿・婁宿――魯国の分野に對應し、十二辰の中は戌に属し、星次を「降婁」と謂う。地上の分野に於ては、東海・泗州・陰陵・曲阜を包括し、徐州に隷属す。胃宿・昴宿――趙国の分野に對應し、十二辰の中は酉に属し、星次を「大梁」と謂う。地上の分野に於ては、信都・真定・常山・中山・鉅鹿・高陽・広平・河間・武昌・文安・清河・内黄・斥丘・太原・定襄・雲中・五原・朔方・上黨・邯鄲を包括し、冀州に隷属す。
畢、觜、參:魏之分,於辰在申,為實沈;於野,在高陵、河東、河內、陳留、汝南、新野、舞陽、河南、開封、陽武,屬益州。井、鬼:秦之分,於辰在未,為鶉首;於野,在弘農、京兆、扶風、馮翊、北地、上郡、西河、安定、天水、隴西、蜀郡、廣漢、武威、張掖、酒泉、燉煌,屬雍州。
畢宿・觜宿・参宿――魏国の分野に對應し、十二辰の中は申に属し、星次を「実沈」と謂う。地上の分野に於ては、高陵・河東・河内・陳留・汝南・新野・舞陽・河南・開封・陽武を包括し、益州に隷属す。井宿・鬼宿――秦国の分野に對應し、十二辰の中は未に属し、星次を「鶉首」と謂う。地上の分野に於ては、弘農・京兆・扶風・馮翊・北地・上郡・西河・安定・天水・隴西・蜀郡・広漢・武威・張掖・酒泉・敦煌を包括し、雍州に隷属す。
柳、星、張:周之分,於辰在午,為鶉火;於野,在河南、洛陽、平陰、偃師、鞏縣、三河,屬豫州。翼、軫:楚之分,於辰在巳,為鶉尾;於野,在南郡、江陵、零陵、桂陽、武陵、長沙、漢中、汝南、南中,屬荊州。
柳宿・星宿・張宿――周室の分野に對應し、十二辰の中は午に属し、星次を「鶉火」と謂う。地上の分野に於ては、河南・洛陽・平陰・偃師・鞏県・三河を包括し、豫州に隷属す。翼宿・軫宿――楚国の分野に對應し、十二辰の中は巳に属し、星次を「鶉尾」と謂う。地上の分野に於ては、南郡・江陵・零陵・桂陽・武陵・長沙・漢中・汝南・南中を包括し、荊州に隷属す。
風角
㢲為風,申明號令,陰陽之使也,發示休咎,動彰神教。《春官》,保章氏以十二風察天地之妖祥。故金縢未啟,表拔木之徵;玉帛方交,起偃禾之異。宋襄失德,六鷁退飛;仰武將焚,異鳥先唱。此皆一時之事。
巽卦は風を象徴す。風は能く号令を申明し、是れ陰陽の使者なり。其の吉凶の示警を發出して、一たび動けば便ち神明の教令を彰顯す。《周礼・春官》に記載す、保章氏は十二方位の風を用いて天地の間の妖异と祥瑞とを察験せり。故に周公の金縢の書未だ啓封せざるに、上天は先ず大風の木を拔くの征兆を顕出せり。諸侯の玉帛交聘するの際、また禾苗尽く偃るの異象出現せり。宋襄公徳を失えば、則ち六隻の鷁鳥の倒退して宋都を飛び過ぐる有り。「仰武」は将に焚毀に遭わんとするの前、怪鳥は先ず已に鳴叫して警を報せり。此らは皆一時の應驗の事なり。
且興師十萬,相持數年,日費千金,而爭一旦之勝負。鄕導之說、間諜之詞,取之於人,尚猶不信,豈一風動葉、獨鳥鳴空,而舉六軍投不測之國,欲幸全勝,未或可知。謀既在人,風鳥參驗,亦存而不棄。
再び説くに兵十万を發して、数年相持ちて、每天千金を耗費して、ただ一朝一夕の勝負を争奪せんが為なり。向導の説法・間諜の報告は、皆活き生きたる人より取る、尚且つ尽く信ずる能わず。豈に能く一陣の風の樹葉を吹動し一隻の孤鳥の空中に於て鳴叫するに凭りて、則ち六軍を把りて預測し難きの敵国に投入し、僥倖に全勝を取得せんと指望せんや。あれは預料する能わざるなり。謀画の根本は既然として人に在れば、則ち風角・鳥情の類はただ参考験証と作りて、姑く保留して完全に廃棄せざるのみ。
夫占風角,取雞羽八兩,懸於五丈竿上,置營中,以候八風之雲。凡風起,初遲後疾,則遠來;風初疾後遲,則近來。風動葉十里,搖枝百里,鳴枝二百里,墜葉三百里,折小枝四百里,折大枝五百里,飛石千里,拔木五千里。三日三夜,遍天下;二日二夜,半天下;一日一夜,及千里;半日半夜,五百里。
風角を占候するの弁法――鶏毛八両を取り、五丈高きの竿子の上に懸掛し、営中に立てて、以て八方の來風と相應の雲気とを測候す。凡そ風起る、先ず慢くして後に快きは、風の遠処より來るを説明し、先ず快くして後に慢きは、風の近処より來るを説明す。風ただ樹葉を吹動すは、十里以内より來り、樹枝を揺動すは、百里より來り、枝條をして鳴響を發出せしむは、二百里より來り、樹葉を吹落すは、三百里より來り、小枝を折断すは、四百里より來り、大枝を折断すは、五百里より來り、石頭を吹りて飛起せしむは、千里より來り、能く大樹を拔起すは、五千里より來る。風は三天三夜連刮すれば、應驗の範囲は天下に遍及し、两天两夜なれば、天下の半に及び、一天一夜なれば、千里に及び、半天半夜なれば、五百里に及ぶ。
五音占風
宮風聲如牛吼空中。 徵風聲如奔馬。商風聲如離群之鳥。 羽風聲如擊濕鼓之音。角風聲如千人之語。
「宮」音に属するの風は、声音は牛の空中に於て吼叫するに似、「徵」音に属するの風は、声音は奔馳の馬に似。「商」音に属するの風は、声音は群を離れたる孤鳥に似、「羽」音に属するの風は、声音は湿気を受けたる鼓を敲打するに似。「角」音に属するの風は、声音は上千人の同時に説話するに似たり。
子、午為宮。 丑、未、寅、申為徵。 卯、酉為羽。
十二地支は五音に配属す――子・午の两支は「宮」に属し、丑・未・寅・申の四支は「徵」に属し、卯・酉の两支は「羽」に属す。
辰、戌為商。巳、亥為角。宮風發屋折木,未年兵作。徵風發屋折木,四方告急。商風發屋折木,有急兵。羽風發屋折木,米價貴。角風發屋折木,有急盜賊、戰鬬。
地支の辰と戌とは「商」音を配し、巳と亥とは「角」音を配し、上文の列する所を連ねて、子・午は「宮」を配し、丑・未と寅・申とは「徵」を配し、卯・酉は「羽」を配せば、十二地支は便ち五音に分属す。風を占するの時、若し「宮」音の風刮起して、風勢大にして屋頂を掀翻し樹木を折断せば、未年に則ち戦事の興起有らん。「徵」音の風刮起して屋を掀し木を折れば、四方の辺境は皆急を告げん。「商」音の風刮起して屋を掀し木を折れば、會い緊急の軍情有らん。「羽」音の風刮起して屋を掀し木を折れば、米価必定に上漲せん。「角」音の風刮起して屋を掀し木を折れば、會い突發の盗賊の乱を作し厮殺争闘する有らん。
歲月日時,陰德陽德自處,陰德在十二干,陽德在天。歲月日時,子刑卯、卯刑子、丑刑戌、戌刑未、未刑丑、寅刑巳、巳刑申、申刑寅、辰午酉亥各自相刑。子、丑、寅、巳、申為刑上,卯、戌、未為刑下。風從刑下來,禍淺;刑上來,禍深。三刑:為刑上、刑下、自刑。
年・月・日・時の四柱を排出した後、「陰徳」と「陽徳」とは各々自ら固定の位次の上に安処す――陰徳は十二天干に依附して推求し、陽徳は則ち天に於て應驗す。年・月・日・時の地支の間にまた「相刑」の関係有り――子は卯を刑し卯は子を刑し、丑は戌を刑し戌は未を刑し未は丑を刑し、寅は巳を刑し巳は申を刑し申は寅を刑し、辰・午・酉・亥の此の四支は則ち各々自ら自身と相刑して、「自刑」と謂う作る。其の中の子・丑・寅・巳・申は「刑上」と謂う作り、卯・戌・未は「刑下」と謂う作る。風は「刑下」の方位より吹來すれば、招來するの禍患は軽浅にして、「刑上」の方位より吹來すれば、招來するの禍患は深重なり。謂うところの「三刑」は、指すは則ち刑上・刑下・自刑の此の三類なり。
凡災風之來,多挾殺氣,尅日,濁塵飛埃。凡祥風之來,多興德氣,並日色晴朗,天氣溫涼,風氣索索不動,塵平行而過。
凡そ灾祸を主するの風の吹來るは、多半は肅殺の気を夾帯して、其の五行の属性はまた正に当日の日干を克制し、天光昏濁にして、塵土飛揚す。凡そ吉祥を主するの風の吹來るは、多半は中和徳有るの気を帯起して、同時に日色晴朗にして、天气温和清凉にして、風声窸窸窣窣として草木は併びに揺動せず、塵土は地面に貼りて平平として掠過す。
凡申、子為貪狼,主欺紿、不信、亡財、遇盜賊,主攻劫人。巳、酉為寛大,主福祿,主貴人、君子。亥、卯為陰賊,主戰鬬殺傷、謀反大逆。寅、午為廉貞,主賔客、禮儀、嫁娶。丑、戌為公正,主報仇怨,主兵。辰、未為奸邪,主驚恐。
凡そ申・子の两支の占する所の位次は「貪狼」と謂う作り、主として欺詐哄騙・言して信無し・財を破し物を失し盗賊に遭遇し、また主として人の來りて攻打劫掠する有らん。巳・酉の两支は「寛大」と謂う作り、主として福気と禄位と、主として貴人と君子とに遇上せん。亥・卯の两支は「陰賊」と謂う作り、主として厮殺傷亡・謀反叛逆せん。寅・午の两支は「廉貞」と謂う作り、主として賓客往來・礼儀の事と男婚女嫁とせん。丑・戌の两支は「公正」と謂う作り、主として仇を報じ恨を雪し、また主として兵を興し武を動かさん。辰・未の两支は「奸邪」と謂う作り、主として驚慌恐懼せん。
貪狼之日,風從寛大上來,〈○此下原衍「及寛大上來」五字,參《虎鈐經》刪。〉所主之言,〈○「言」疑「占」。〉仍以貪狼參說吉凶,他倣此。
「貪狼」に属するの日子に於て、若し風は「寛大」に属するの方位より吹來れば、下さんとする所の断語は、仍旧に「貪狼」の性質を一併に参合して、両者を合して以て吉凶を推説するを要し、其余の各種の組合は皆此の弁法に照らして類推す。(原書校記――「風從寛大上來」の句の下に原本は「及寛大上來」の五字を多出す、《虎鈐經》を参照して删去す。「所主之言」の「言」の字は、疑う当に「占」と作るべし。)
有旋風入幕,折干戈,壞帳幙,必有盜賊入營,將軍必死。旋風從三刑上來,其兵不可當。有風從王氣上來,官軍勝,大寒大勝,小寒小勝。凡風蓬勃四方起,或有觸地,皆為逆風,則有暴兵作。寅時作,主人逆;辰時作,主兵逆;午時發,左右逆;戌時發,外賊逆。
若し旋風の営帐に巻進み、兵器を折断し、帐幕を吹壞せば、必定に會い盗盗賊の営中に混入する有りて、主将もまた難を免れずして命を喪わん。旋風は「三刑」の所在の方位より巻來すれば、來犯の敵軍の兵勢は鋭く当たるべからず。若し風は当令の旺気の方位より吹來れば、則ち官軍勝を得し、風勢極めて寒冷なれば則ち大勝にして、ただ一点の寒意を帯ぶれば則ち小勝なり。凡そ大風蓬蓬勃勃として四面より同時に刮起し、或は地面に貼りて翻巻するは、皆「逆風」と算して、會い突然爆發の兵乱有るを預示す――寅の時に刮起するは、是れ主方自ら内部に於て変を生ぜんとす。辰の時に刮起するは、是れ本軍の士卒は嘩變せんとす。午の時に刮起するは、是れ身辺の親近の人は乱を作さんとす。戌の時に刮起するは、是れ外來の賊寇は境を犯さんとす。
宮日大風從角上來,有急兵來圍,至日中折木者,城陷。羽日大風,暝日無光,有圍城,客軍勝。陰賊日風,從陰賊上來,大寒有自相殺者。商日大風,從四季上來,有賊攻城,關梁不通。
「宮」音に属するの日子に大風刮起して、而且に「角」音の配する所の方位より吹來せば、會い敵兵の急速に來りて城を囲む有らん。風一直に正午に刮り至るもなお樹木を折断せば、城池は則ち陷落せんとす。「羽」音に属するの日子に大風刮起して、天色昏暗にして光無ければ、将に城を囲むの戦有りて、客軍(進攻するの一方)は勝を得せん。「陰賊」に属するの日子に風刮りて、また正に「陰賊」の配する所の方位より吹來し、風勢酷寒なれば、営中に會い自ら相残殺するの事出現せん。「商」音に属するの日子に大風刮起して、辰・戌・丑・未の此の四季の方位より吹來せば、會い賊兵の來りて城を攻むる有りて、關隘橋梁の交通断絶せん。
