景徳傳燈錄 巻第十二
荊南惟忠禪師法嗣四人(忠禪師亦名南印)道圓禪師
荊南惟忠禅師の法嗣四人(忠禅師、亦の名は南印) 道円禅師
益州如一禪師
益州如一禅師
奉國神照禪師
奉国神照禅師
廬山東林雅禪師(已上四人無機緣語句不錄)
廬山東林雅禅師(以上四人は機縁の語句なきゆえ録せず)
吳頭陀法嗣一人玄固禪師(一人無機緣語句不錄)
呉頭陀の法嗣一人 玄固禅師(一人は機縁の語句なきゆえ録せず)
曹谿別出第五世四人
曹渓別出第五世四人
遂州道圓禪師法嗣一人見錄終南山圭峰宗密禪師
遂州道円禅師の法嗣一人見録 終南山圭峰宗密禅師
奉國神照禪師法嗣鎮州常一禪師
奉国神照禅師の法嗣 鎮州常一禅師
滑州智遠禪師
滑州智遠禅師
鹿臺玄邃禪師(已上三人無機緣語句不錄)
鹿台玄邃禅師(以上三人は機縁の語句なきゆえ録せず)
曹谿別出第六世一十一人
曹渓別出第六世一十一人
圭峰宗密禪師法嗣圭峰溫禪師
圭峰宗密禅師の法嗣 圭峰温禅師
慈恩寺太恭禪師
慈恩寺太恭禅師
興善寺太錫禪師
興善寺太錫禅師
萬乘寺宗禪師
万乗寺宗禅師
瑞聖寺覺禪師
瑞聖寺覚禅師
化度寺仁瑜禪師(已上六人無機緣語句不錄)
化度寺仁瑜禅師(以上六人は機縁の語句なきゆえ録せず)
鹿臺玄邃禪師法嗣龍興念禪師(一人無機緣語句不錄)
鹿台玄邃禅師の法嗣 龍興念禅師(一人は機縁の語句なきゆえ録せず)
滑州智遠禪師法嗣彭門審用禪師
滑州智遠禅師の法嗣 彭門審用禅師
圓紹禪師
円紹禅師
上方真禪師
上方真禅師
東京法志禪師(已上四人無機緣語句不錄)
東京法志禅師(以上四人は機縁の語句なきゆえ録せず)
懷讓禪師第七世
懐譲禅師第七世
前郢州芭蕉山慧清禪師法嗣
前郢州芭蕉山慧清禅師の法嗣
郢州興陽山清讓禪師僧問。大通智勝佛十劫坐道場。佛法不現前不得成佛道時如何。師曰。其問甚諦當。僧曰。既是坐道場。為什麼不得成佛道。師曰。為伊不成佛。
郢州興陽山清譲禅師。僧が問う―「大通智勝仏、十劫道場に坐して仏法現前せず、仏道を成ずるを得ざる時いかん。」師が言う―「その問い、甚だ諦当なり。」僧が言う―「すでに是れ道場に坐するに、何の故ぞ仏道を成ずるを得ざる。」師が言う―「彼の仏を成ぜざるが為なり。」
洪州幽谷山法滿禪師。僧問。如何是道。師良久曰。會麼。僧曰。學人不會。師曰。話道語下無聲。舉揚奧旨丁寧。禪要如今會取。不須別後消停。
洪州幽谷山法満禅師。僧が問う―「いかなるか道。」師、良久して言う―「会すや。」僧が言う―「学人会せず。」師が言う―「話道、語下に声無く、挙揚、奥旨を丁寧す。禅要、いま会取せよ、別後消停を須いず。」
前吉州資福如寶禪師法嗣
前吉州資福如宝禅師の法嗣
吉州資福貞邃禪師(第二世住)僧問。和尚見古人得何意旨便歇去。師作圓相示之。問如何是古人歌。師作圓相示之。問如何是最初一句。師曰。未具世界時闍梨亦在此。問百丈卷席意如何師。良久。問古人道前三三後三三意如何。師曰。汝名什麼。曰某甲。師曰。吃茶去。師謂眾曰。隔江見資福剎竿便迴去。腳跟也好與三十棒。豈況過江來時。有僧才出師曰。不堪共語。問如何是古佛心。師曰。山河大地。
吉州資福貞邃禅師(第二世住)。僧が問う―「和尚、古人を見て何の意旨を得て便ち歇去せし。」師、円相を作りてこれを示す。問う―「いかなるか古人の歌。」師、円相を作りてこれを示す。問う―「いかなるか最初の一句。」師が言う―「いまだ世界を具せざる時、闍梨も亦た此に在り。」問う―「百丈巻席の意いかん。」師、良久す。問う―「古人、前三三後三三と道う、その意いかん。」師が言う―「お前、名は何と。」言う―「某甲。」師が言う―「茶を吃して去れ。」師、衆に対して言う―「江を隔てて資福の刹竿を見れば便ち回りて去る、脚跟も亦た好し、三十棒を与うべし、あに況んや江を過ぎて来るをや。」時に僧、纔かに出づ、師が言う―「語を共にするに堪えず。」問う―「いかなるか古仏の心。」師が言う―「山河大地。」
吉州福壽和尚。僧問。祖意教意同別。師乃展手。問文殊騎師子普賢騎象。未審釋迦騎什麼。師舉手雲。邪邪。
吉州福寿和尚。僧が問う―「祖意と教意と同じきか別なるか。」師乃ち手を展ぐ。問う―「文殊は師子に騎り、普賢は象に騎る、いまだ審らかならず、釈迦は何にか騎る。」師、手を挙げて言う―「邪邪。」
潭州鹿苑和尚。僧問。餘國作佛還有異名也無。師作圓相示之。問如何是鹿苑一路。師曰。吉嘹舌頭問將來。問如何是。閉門造車。師曰。南嶽石橋。僧曰。如何是出門合轍。師曰。拄杖頭鞋。師上堂展手雲。天下老和尚諸上座命根總在遮裡。有一僧出曰。還收得也無。師曰。天台石橋側。僧曰某甲不恁麼。師曰。伏惟尚饗。問如何是世尊不說說。師曰。須彌山倒。曰如何是迦葉不聞聞。師曰。大海枯竭。
潭州鹿苑和尚。僧が問う―「余国の作仏は還って異名有るや無きや。」師、円相を作りてこれを示す。問う―「いかなるか鹿苑の一路。」師が言う―「吉嘹の舌頭、問い将り来れ。」問う―「いかなるか門を閉ぢて車を造る。」師が言う―「南岳の石橋。」僧が言う―「いかなるか門を出でて轍に合す。」師が言う―「拄杖頭の鞋。」師、上堂して手を展げて言う―「天下の老和尚、諸上座の命根、総ぼてここに在り。」一僧有りて出でて言う―「還って収得するや無きや。」師が言う―「天台石橋の側。」僧が言う―「某甲はかくのごとからず。」師が言う―「伏惟尚饗。」問う―「いかなるか世尊の不説説。」師が言う―「須弥山倒る。」問う―「いかなるか迦葉の不聞聞。」師が言う―「大海枯竭す。」
前汝州寶應和尚法嗣(亦曰南院)
前汝州宝応和尚の法嗣(亦た南院と曰う)
汝州風穴延沼禪師餘杭人也。初發跡於越州鏡清順德大師。未臻堂奧。尋詣裡州華嚴院。遇守廊上坐。即汝州南院侍者也。乃密探南院宗旨。後至南院初見不禮拜。便問曰。入門須辨主。端的請師分。南院以左手拊膝。師喝。南院以右手拊膝。師又喝。南院舉左手曰。遮箇即從闍梨。又舉右手曰。遮箇又作麼生。師曰瞎。南院擬拈拄杖次。師曰。作什麼。奪拄杖打著老和尚。莫言不道。南院曰三十年住持。今日被黃面浙子上門羅織。師曰。和尚大似持缽不得詐道不饑。南院曰。闍梨幾時曾到南院來。師曰。是何言歟。曰老僧端的問汝。師曰也不得放過。南院曰。且坐吃茶。師方敘師資之禮。自後應溈仰之懸記出世聚徒。南院法道由是大振諸方矣。師上堂謂眾曰。夫參學眼目。臨機直須大用現前。勿自拘於小節。設使言前薦得。猶是滯㲉迷封。縱然句下精通。未免觸途狂見。觀汝諸人。應是向來依他作解。明昧兩岐與爾一時掃卻。直教箇箇如師子兒吒呀地哮吼一聲壁立千仞。誰敢正眼覷著。覷著即瞎卻渠眼。師又赴郢州衙內。昇座示眾雲。祖師心印。狀似鐵牛之機。去即印住。住即印破。秖如不去不住。印即是不印即是。還有人道得麼。時有盧陂長老出問。學人有鐵牛之機。請師不搭印。師雲。慣釣鯨鯢澄巨浸。卻嗟蛙步𩥇泥沙(卿公事苑雲。蛙當作窪。謂馬出於渥窪水也。風穴所謂𩥇者。以良馬出清水。而反𩥇臥於泥沙之中。是其意也。今錄謂蛙者蝦蟆也。豈能為馬步而𩥇臥邪。𩥇張扇切)陂佇思。師喝雲。長老何不進語。陂擬議。師打一拂子云。還記得話頭麼。試舉看。陂擬開口。師又打一拂子。牧主雲。信知佛法與王法一般。師雲。見什麼道理。牧主雲。當斷不斷返招其亂。師便下座。上堂僧問。師唱誰家曲宗風嗣阿誰。師曰。超然逈出威音外。翹足徒勞讚底沙(本生經云。過去久遠有佛。
汝州風穴延沼禅師は、余杭の人。初め越州鏡清順徳大師に発迹すれども、いまだ堂奥に臻らず。尋いで襄州華厳院に詣り、守廊上座に遇う、すなはち汝州南院の侍者なり。乃ち密かに南院の宗旨を探る。後に南院に至り、初めて見えて礼拝せず、便ち問うて言う―「門に入れば須らく主を辨ずべし、端的に師に分を請う。」南院、左手を以て膝を拊つ。師、喝す。南院、右手を以て膝を拊つ。師また喝す。南院、左手を挙げて言う―「この箇はすなはち闍梨に従う。」また右手を挙げて言う―「この箇また作麼生。」師が言う―「瞎。」南院、拄杖を拈ぜんと擬する次。師が言う―「何を作す。拄杖を奪いて老和尚を打ち着けば、道わざりしと言うなかれ。」南院が言う―「三十年の住持、今日、黄面の浙子に羅織を上門せられたり。」師が言う―「和尚、大いに鉢を持すること能わずして、詐りて飢えざると道うに似たり。」南院が言う―「闍梨、幾時か曽て南院に来たりし。」師が言う―「是れ何の言歟。」言う―「老僧、端的にお前に問う。」師が言う―「も亦た放過することを得ず。」南院が言う―「且く坐して茶を吃せ。」師、方に師資の礼を叙す。此より後、潙仰の懸記に応え、世に出でて徒を聚む。南院の法道、此に由りて大いに諸方に振るえり。師、上堂して衆に対して言う―「それ参学の眼目は、機に臨みて直に須らく大用を現前せしむべし、自ら小節に拘わるなかれ。設し言前に荐得すとも、なお是れ殻に滞り封に迷う。たとえ句下に精通すとも、いまだ途に触れて狂見するを免れず。お前たちを観るに応に向來、他に依りて解を作し、明昧両岐ならん、お前と一時に掃い却せん。直に箇箇をして師子の児のごとく、咤呀として哮吼一声、壁立千仞ならしめん。誰か敢て正眼にして觑着せん。觑着すればすなはち渠の眼を瞎却せん。」師また郢州衙内に赴き、座に升りて衆に示して言う―「祖師の心印、状は鉄牛の機に似たり。去ればすなはち印住し、住すればすなはち印破す。ただかくのごとき不去不住、印すれども即是、印せざれども即是。還って人の道得する者有るや。」時に盧陂長老出でて問う―「学人に鉄牛の機有り、師に請うて印を搭さざらんことを。」師が言う―「鯨鯢を釣るに慣れて巨浸を澄ます、却って嗟く蛙步の泥沙に𩥇するを。」(『卿公事苑』に云く、蛙は洼と作るべし、馬の渥洼水より出づるを謂うなり。風穴の𩥇と謂えるは、良馬清水より出でて、反って泥沙の中に𩥇卧すを以て、是れその意なり。今の録、蛙と謂うは蝦蟆なり、あに能く馬步を為して𩥇卧せんや。𩥇は張扇切。)陂、佇思す。師、喝して言う―「長老、何ぞ語を進めざる。」陂、拟議す。師、一拂子を打ちて言う―「話頭を記得するや、試みに挙げ看よ。」陂、口を開かんと擬す。師また一拂子を打つ。牧主が言う―「信に知る、仏法は王法と一般なるを。」師が言う―「何の道理を見る。」牧主が言う―「断ずべくして断断ぜざれば、返ってその乱を招く。」師、便ち座を下る。上堂す。僧が問う―「師、誰が家の曲を唱い、宗風は阿誰を嗣ぐ。」師が言う―「超然として迥かに威音の外に出づ、足を翘げて徒らに底沙を讃す。」(『本生経』に云く、過去久遠に仏有り、
名曰底沙。時有二菩薩。一名釋迦。二名彌勒。是佛觀見釋迦心未成熟而諸弟子心皆純熟如是思惟。一人之心易可速化。眾人之心難可疾治。即上雪山。入寶窟中入大禪定。時釋迦菩薩作外道仙人。上山採藥。見底沙佛。見已歡喜心生敬信。翹一腳立。叉手向佛一心而觀。目未曾瞬。七日七夜以一偈讚佛曰。天上天下無如佛。十方世界亦無比。世界所有我盡見。一切無有如佛者。於是超越九劫。於九十一劫得阿耨菩提)問古曲無音韻。如何和得齊。師曰。木雞啼子夜芻狗吠天明。問如何是一稱南無佛。師曰。燈連鳳翅當堂照。月影娥眉䫌(匹迷切傾頭也)面看。問如何是佛。師曰。如何不是佛。問未曉。玄言。請師直指。師曰。家住海門洲。扶桑最先照。問朗月當空時如何。師曰。不從天上輥。任向地中埋。問如何是佛。師曰。嘶風木馬緣無絆。背角泥牛痛下鞭。問如何是廣慧劍。師曰。不斬死漢。問古鏡未磨時如何。師曰。天魔膽裂僧曰。磨後如何。師曰。軒轅無道。僧問。朗月當空時如何。師曰。不在團天(一作圓天)且居羑里。問矛盾本成雙翳病。帝網明珠事若何。師曰為山登九仞。捻土定千鈞。僧曰。如何。師曰。如何。問幹木奉文侯。知心有幾人。師曰。少年曾決龍蛇陣。潦倒還聽稚子歌。問如何是清涼山中主。師曰。一句不遑無著問。迄今猶作野盤僧。問句不當機如何顯道。師曰。大昴縱同天。日輪不當午。問如何是和尚家風。師曰。鶴有九皐難翥翼。馬無千里漫追風。問如何是佛。師曰。勿使異人聞。問未有之言請師試道。師曰。入市能長嘯。歸家著短衣問夏終今日師意如何。師曰。不憐鵝護雪。且喜蠟人氷。問歸鄉無路時如何。師曰。平窺紅爛處。暢殺子平生。師赴州衙請上堂。有僧問人王與法王相見時如何。師曰。大舞遶林泉。世間無憂喜(或作有喜)。僧曰。共譚何事。師曰。
名づけて底沙と曰う。時に二菩薩有り、一は名は釈迦、二は名は弥勒。是の仏、観見して釈迦の心いまだ成熟せざるに、諸弟子の心皆純熟なるを見る。かくのごとく思惟す、一人の心は易く速やかに化すべし、衆人の心は難く疾く治すべからず。すなはち雪山に上り、宝窟中に入りて大禅定に入る。時に釈迦菩薩、外道仙人と作りて山に上りて薬を采るに、底沙仏を見る。見え已りて歓喜し、心に敬信を生じ、一脚を翘げて立ち、手を叉いで仏に向かい、一心にして観じ、目曽て瞬かず。七日七夜、一偈を以て仏を讃して言う―「天上天下、仏の如き無し、十方世界も亦た比ぶ無し。世界の所有、我尽く見る、一切、仏の如き者有る無し。」ここにおいて九劫を超越し、九十一劫に於て阿耨菩提を得たり。)問う―「古曲音韻無し、いかにして和すること斉しきを得ん。」師が言う―「木鶏、子夜に啼き、芻狗、天明に吠ゆ。」問う―「いかなるか一称南無仏。」師が言う―「灯、鳳翅を連ねて堂に当たりて照らし、月影、蛾眉、䫌(匹迷切、頭を傾けるなり)面に看る。」問う―「いかなるか仏。」師が言う―「如何にして仏にあらざらん。」問う―「いまだ玄言に暁せず、師に直指を請う。」師が言う―「家は海門洲に住し、扶桑最も先に照らる。」問う―「朗月、空に当たる時いかん。」師が言う―「天上より辊ずるに従わず、地中に向かいて埋むに任す。」問う―「いかなるか仏。」師が言う―「風に嘶く木馬、縁に絆無く、背角の泥牛、痛く鞭を下す。」問う―「いかなるか広慧剣。」師が言う―「死漢を斬らず。」問う―「古鏡いまだ磨かざる時いかん。」師が言う―「天魔、胆裂く。」僧が言う―「磨きたる後いかん。」師が言う―「軒轅、道無し。」僧が問う―「朗月、空に当たる時いかん。」師が言う―「団天に在らず(一に円天と作す)、且く羑里に居す。」問う―「矛盾、もと翳の病を双成し、帝網明珠の事、いかん。」師が言う―「山を為して九仞に登り、土を捻じて千鈞を定む。」僧が言う―「如何。」師が言う―「如何。」問う―「干木、文侯を奉ず、知心幾人ぞ。」師が言う―「少年、曽て龍蛇の陣を決し、潦倒として還って稚子の歌を聴く。」問う―「いかなるか清涼山中の主。」師が言う―「一句、遑えずして無著の問、今に迄ってなお野盤の僧と作す。」問う―「句、機に当たらず、いかにして道を顕せん。」師が言う―「大昴、縦い天を同じくするも、日輪、午に当たらず。」問う―「いかなるか和尚の家風。」師が言う―「鶴は九皋有りて翼を翥げ難く、馬は千里無くて漫に風を追う。」問う―「いかなるか仏。」師が言う―「異人に聞かしむることなかれ。」問う―「いまだ有らざるの言、師に試みに道えを請う。」師が言う―「市に入りて能く長嘯し、家に帰りて短衣を着く。」問う―「夏終わる今日、師の意いかん。」師が言う―「鵝の雪を護るを憐れまず、且く蜡人の冰を喜ぶ。」問う―「郷に帰るに路無き時いかん。」師が言う―「平かに紅爛の処を窺い、子の平生を暢殺す。」師、州衙の請に赴きて上堂す。僧有りて問う―「人王と法王と相見する時いかん。」師が言う―「大舞、林泉を繞り、世間に憂喜無し。」(或いは有喜と作す。)僧が言う―「何事を共に談ず。」師が言う―
虎豹巖前曾宴坐。隼旟光裡播真宗。問摘葉尋枝即不問。如何是直截根源。師曰。赴供凌晨。入開堂(或作塘)帶雨歸。問凡有所問盡是揑怪。請師直截根源。師曰。罕逢穿耳客。多遇刻舟人。問正當恁麼時如何。師曰。盲龜值木雖優穩。枯木生華物外春。問如何是密室中事。師曰。出袖(當作就)譚今古。迴顏獨皺眉。問驪龍頷下珠如何取得師曰。曾向海邊乾竹刺。直至如今治素琴。問大舸搖空如何舉櫂。師曰自在不點胸。渾家不喜見問追風難把促前程事若何。師曰。波斯衣𧝷(丘畏)解。問誕生王子還假及第否。師曰。一句擬光禪子問(或作訝)。三緘恐負古人機。問隨緣不變者。急遇知音人時如何。師曰。披莎側笠千峰裡。引水澆蔬五老前。問刻舟求不得當體事如何。師曰。大勳不立賞。柴扉草自深。問從上古人印印相契。如何是印底眼。師曰。輕囂道者知機變。拈與霑魂拭淚巾。問九夏賞勞請師言薦。師曰。出岫拂開龍洞雨。汎波僧湧缽囊華。問最初自恣合對何人。師曰。一把香芻拈未下。六環金錫響搖空。問西祖傳來請師端的。師曰。一犬吠虛千猱啀實(猱當作㺜奴刀功。惡犬長毛也。猱猴也非義。啀音崖犬鬪也)。問王道與佛道相去幾何。師曰。芻狗吠時天地合。木雞啼後祖燈輝。問祖師心印請師拂拭。師曰。祖月凌空圓聖智。何山松檜不青青。問大眾雲集請師說法。師曰。赤腳人趁兔。著鞾人吃肉。問不曾博覽空王教。略借玄機試道看師曰白玉無瑕卞和刖足。問如何是無為之句。師曰。寶燭當軒顯。紅光爍太虛。問如何是臨機一句。師曰。因風吹火用力不多。問素面相呈時如何。師曰。拈卻蓋面帛。問如何是衲僧氣息。師曰。膝行肘步大眾見之。問紫菊半開秋已至。月圓當戶意如何。師曰。月生蓬島人皆望。昨夜遭霜子不知。問如何是直截一路。師曰。直截迂曲。問如何是師子吼。師曰。
「虎豹巌前に曽て宴坐し、隼旟の光裏に真宗を播く。」問う―「葉を摘み枝を尋ぬるはすなはち問わず、いかなるか根源を直截する。」師が言う―「供に赴きて凌晨に入り、堂を開きて(或いは塘と作す)雨を帯びて帰る。」問う―「およそ問う有る所は尽く是れ怪を捏ぬ、師に請うて根源を直截せんことを。」師が言う―「耳を穿つ客に逢うこと罕く、舟を刻む人に遇うこと多し。」問う―「正にかくのごとき時に当たりていかん。」師が言う―「盲亀、木に値うは優りて穏やかなりといえども、枯木、華を生ぜば物外の春。」問う―「いかなるか密室中の事。」師が言う―「袖を出でて(就と作るべし)今古を談じ、顔を回らして独り眉を顰む。」問う―「驪龍の頷下の珠、いかにして取得せん。」師が言う―「曽て海辺に向かい干竹を刺し、今に至るまで素琴を治む。」問う―「大舸、空を揺りて、いかにして棹を挙げん。」師が言う―「自在、胸を点せず、渾家、見るを喜ばず。」問う―「風を追うに把促し難し、前程の事、いかん。」師が言う―「波斯、衣𧝷を解す。」問う―「誕生の王子、還って及第を假るや否や。」師が言う―「一句、禅子の問いを光らんと擬す(或いは訝と作す)、三緘、恐る古人の機に負かんことを。」問う―「縁に随うて変わらざる者、急に知音の人に遇う時いかん。」師が言う―「莎を披き笠を側けて千峰の裏、水を引きて蔬を澆りて五老の前。」問う―「舟を刻むも求め得ず、当体の事いかん。」師が言う―「大勲、賞を立てず、柴扉、草自ずから深し。」問う―「上りより古人、印印相契す、いかなるか印底の眼。」師が言う―「軽囂の道者、機変を知り、拈じて魂に沾る涙巾を拭うに与う。」問う―「九夏、賞労して師に言荐を請う。」師が言う―「岫を出でて龍洞の雨を拂開し、波を泛べて僧涌の鉢嚢の華。」問う―「最初、自恣するに合に何人に対すべき。」師が言う―「一把の香芻、拈じていまだ下さず、六環の金錫、空に揺りて響く。」問う―「西祖より伝来す、師に端的を請う。」師が言う―「一犬虚に吠え、千猱実に啀う。」(猱は㺜と作るべし、奴刀切、悪犬の長毛なり。猱は猴なり、義に非ず。啀の音は崖、犬の闘うなり。)問う―「王道と仏道と相去ること幾何。」師が言う―「芻狗吠うる時、天地合し、木鶏啼きたる後、祖灯輝く。」問う―「祖師の心印、師に拂拭を請う。」師が言う―「祖月、空を凌ぎて聖智を円し、何の山か松桧の青青ならざる。」問う―「大衆、雲集せり、師に説法を請う。」師が言う―「赤脚の人は兎を趁い、靴を着る人は肉を吃す。」問う―「曽て空王の教を博覧せず、略か玄機を借りて試みに道え看よ。」師が言う―「白玉瑕無きに、卞和足を刖う。」問う―「いかなるか無為の句。」師が言う―「宝燭、軒に当たりて顕れ、紅光、太虚に爍く。」問う―「いかなるか機に臨むの一句。」師が言う―「風に因りて火を吹く、力を用うること多からず。」問う―「素面相呈する時いかん。」師が言う―「面を蓋うの帛を拈却せよ。」問う―「いかなるか衲僧の気息。」師が言う―「膝行肘歩、大衆これを見る。」問う―「紫菊、半開にして秋すでに至り、月円くして戸に当たる意いかん。」師が言う―「月、蓬島に生じて人皆望む、昨夜霜に遭いたるを子知らず。」問う―「いかなるか直截の一路。」師が言う―「直截迂曲。」問う―「いかなるか師子吼。」師が言う―
阿誰要汝野幹鳴。問如何是諦實之言。師曰。心懸壁上。問心不能緣口不能言時如何。師曰。逢人但恁麼舉看。問龍透清潭時如何。師曰。印𩦲捺尾。問任性浮沈時如何。師曰。牽牛不入欄。問有無俱無去處時如何。師曰。三月懶遊華下路。一家愁閉雨中門。問語默涉離微(肇法師寶藏論離微體淨品雲。其入離其出微。知入離外塵無所依。知出微內心無所為。內心無所為。諸見不能移。外塵無所依。萬有不能機。萬有不能機。想慮不乘馳。諸見不能移。寂滅不思議。可謂本淨體離微也。據入故名離。約用故名微。混而為一無離無微。體淨不可染。無染故無淨。體微不可有。無有故無無)如何通不犯。師曰。常憶江南三月裡。鷓鴣啼處野華香。問百了千當時如何。師曰。不許夜行投明須到。問無地容身時如何。師曰。熊耳塔開無叩客。僧曰。如何即是。師曰。快須斷卻。問盡大地人來一時致問如何秖對。師曰。伯牙(或作子期)琴韻少知音。問央堀逼佛時如何。師曰。大家保護。萬迴憨問。心印未明如何得入。師曰。雖聞酉帥投歸款。未見牽羊納璧來。問如何是臨濟下事。師曰。桀犬吠堯。問如何是齧鏃事(太平廣記。隋末有督君謨者。善閉目而射。志其目則中目。志其口則中口。有王靈智者。學射於謨。以為曲盡其妙。欲射殺謨獨擅其美。謨執一短刀。箭來輒截之。惟有一矢。謨張口承之。遂齧其鏑。笑曰。汝學三年。吾未教汝齧鏃之法)。師曰。孟浪借辭論馬角。問不修定慧為什麼成佛無疑。師曰。金雞專報曉。漆桶黑光生。問一念萬年時如何。師曰。拂石仙衣破。問洪鍾未擊時如何。師曰。充塞大千無不韻。妙含幽致豈能分。僧曰。擊後如何。師曰。石壁山河無障礙。翳消開後好沾聞。問如何是西來意。師曰。尋山水盡山無盡。問大人相為什麼不具足。師曰。鴟梟夜半欺鷹隼。問古今才分請師密要。
「阿誰、お前の野干鳴を要せん。」問う―「いかなるか諦実の言。」師が言う―「心、壁に懸る。」問う―「心、縁ずること能わず、口、言うこと能わざる時いかん。」師が言う―「人に逢えばただかくのごとく挙げ看よ。」問う―「龍、清潭を透る時いかん。」師が言う―「印䩲、尾を捺す。」問う―「性に任せて浮沉する時いかん。」師が言う―「牛を牽きて欄に入らず。」問う―「有無倶に去る処無き時いかん。」師が言う―「三月、嬾にして華下の路を遊ばず、一家、愁えて雨中の門を閉ぢる。」問う―「語黙、離微に渉る(肇法師『宝藏論・離微体浄品』に云く、その入るは離なり、その出づるは微なり。入離を知れば外塵依る所無く、出微を知れば内心為す所無し。内心為す所無ければ諸見移ること能わず、外塵依る所無ければ万有機すること能わず。万有機すること能わざれば想慮乗馳せず、諸見移ること能わざれば寂滅不思議なり。謂うべし、本浄の体離微なり。入るに拠るゆえに名づけて離とし、用に約するゆえに名づけて微とす。混じて一と為せば離無く微無し。体浄にして染むべからず、染無きゆえに浄無し。体微にして有るべからず、有無きゆえに無無し。)いかにして犯さずして通せん。」師が言う―「常に憶う江南三月裏、鷓鴣啼く処の野華の香。」問う―「百了千当の時いかん。」師が言う―「夜行を許さず、明に投し須らく到るべし。」問う―「身を容るる地無き時いかん。」師が言う―「熊耳塔、開くに叩客無し。」僧が言う―「いかにすればすなはち是。」師が言う―「快く須らく断却すべし。」問う―「尽大地の人、来りて一時に問いを致す、いかにしてただ対せん。」師が言う―「伯牙(或いは子期と作す)の琴韻、知音少なし。」問う―「央掘、仏を逼る時いかん。」師が言う―「大家、保護す。」万回、憨なりて問う―「心印いまだ明らかならず、いかにして得入せん。」師が言う―「酉帥の款に投じ帰るを聞くといえども、いまだ羊を牽き璧を納めて来るを見ず。」問う―「いかなるか臨済下の事。」師が言う―「桀の犬、堯に吠ゆ。」問う―「いかなるか嚙鏃の事。」(『太平広記』:隋末に督君謨と言う者有り、善く目を閉ぢて射て、その目を志えばすなはち目に中り、その口を志えばすなはち口に中る。王霊智と言う者有りて謨に射を学び、曲げてその妙を尽くしたりと以い、謨を射殺して独りその美を擅にせんと欲す。謨、一短刀を執り、箭来れば輙ちこれを截る。ただ一矢有りて、謨、口を張りてこれを承け、遂にその鏑を嚙む。笑い言う―「お前、三年を学べども、吾いまだお前に嚙鏃の法を教えず。」)師が言う―「孟浪、辞を借りて馬角を論ず。」問う―「定慧を修せずして、何の故ぞ成
師曰。截卻重舌。問如何是大人相。師曰。赫赤窮。僧曰未審和尚二時如何。師曰。攜籮挈杖。問如何是賓中主。師曰。入市雙瞳瞽。曰如何是主中賓。師曰。迴鑾兩曜新。曰如何是賓中賓。師曰。攢眉坐白雲。曰如何是主中主。師曰。磨礱三尺刃。待斬不平人。問如何是钁頭邊事。師曰。山前一片青。問如何是佛。師曰。杖林山下竹筋鞭(西域記雲。昔摩竭陀國有婆羅門。聞釋迦佛身長丈六。常懷疑惑未之信也。乃以丈六竹杖。欲量佛身。恆於杖端出過丈六。如是增高莫能窮實。遂投杖而去。因植根焉。今竹林脩茂被山滿谷)。
師が言う―「重舌を截却せよ。」問う―「いかなるか大人の相。」師が言う―「赫赤窮なり。」僧が言う―「いまだ審らかならず、和尚二時いかん。」師が言う―「籮を携え杖を挈ぐ。」問う―「いかなるか賓中の主。」師が言う―「市に入りて双瞳瞽れり。」問う―「いかなるか主中の賓。」師が言う―「鑾を回らして両曜新たなり。」問う―「いかなるか賓中の賓。」師が言う―「眉を攒めて白雲に坐す。」問う―「いかなるか主中の主。」師が言う―「三尺の刃を磨礱し、不平の人を斬るを待つ。」問う―「いかなるか镢頭辺の事。」師が言う―「山前の一片の青。」問う―「いかなるか仏。」師が言う―「杖林山下の竹筋鞭。」(『西域記』に云く、昔、摩竭陀国に一婆羅門有り、釈迦仏の身長丈六なるを聞きて、常に疑惑を懐き、いまだこれを信ぜず。乃ち丈六の竹杖を以て仏身を量らんと欲して、恒に杖端に於て丈六を出過す。かくのごとく増高して、能く実を窮める莫く、遂に杖を投げて去る、因りて根を植る。今、竹林修茂にして山を被い谷に満つ。)
