表記
子言之:“歸乎!君子隱而顯,不矜而莊,不厲而威,不言而信。”
孔子が言った。「帰ろう!君子は隠れていても顕れ、矜らなくても荘厳であり、厳しくなくても威があり、言わなくても信がある。」
子曰:“君子不失足於人,不失色於人,不失口於人。是故君子貌足畏也,色足憚也,言足信也。甫刑曰:敬忌而罔有,擇言在躬。”
孔子が言った。「君子は人の前で足を失せず、顔色を失せず、言葉を失せない。だから君子の姿は人を畏れさせるに足り、顔色は人を憚らせるに足り、言葉は人を信じさせるに足りる。《尚書・呂刑》に言う。敬い戒めて過ちなく、言葉を選ぶのはその身にある。」
子曰:“裼襲之不相因也,欲民之毋相瀆也。”
孔子が言った。「裼衣と襲衣を互いに沿い用いないのは、民が互いに褻れ合わないようにしたいからである。」
子曰:“祭極敬,不繼之以樂;朝極辨,不繼之以倦。”
孔子が言った。「祭りは敬を極め、楽をもって続けない。朝政は弁を極め、倦をもって続けない。」
子曰:“君子慎以闢禍,篤以不揜,恭以遠恥。”
孔子が言った。「君子は慎みをもって禍を避け、篤実をもって覆われず、恭をもって恥を遠ざける。」
子曰:“君子莊敬日強,安肆日偷,君子不以一日使其躬儳焉,如不終日。”
孔子が言った。「君子は荘敬であれば日に日に強くなり、放肆に安んじれば日に日に苟且となる。君子は自らの身を一日たりとも整えないままにせず、一日を過ごせないかのようにする。」
子曰:“齊戒以事鬼神,擇日月以見君,恐民之不敬也。”
孔子が言った。「斎戒して鬼神に仕え、日月を選んで君に見えるのは、民が敬わないことを恐れるからである。」
子曰:“狎侮死焉,而不畏也。”
孔子が言った。「軽慢し侮辱して死に至っても、なお畏れない。」
子曰:“無辭不相接也,無禮不相見也,欲民之毋相褻也。易曰:‘初筮告,再三瀆,瀆則不告。’”
孔子が言った。「辞令なくして交わらず、礼なくして見えないのは、民が互いに褻れ合わないようにしたいからである。《周易・蒙》に言う。『初めの蓍筮には告げるが、再三すれば褻れであり、褻れれば告げない。』」
子言之:“仁者天下之表也,義者天下之制也,報者天下之利也。”
孔子が言った。「仁は天下の表、義は天下の制、報は天下の利である。」
子曰:“以德報德,則民有所勸;以怨報怨,則民有所懲。詩曰:‘無言不讎,無德不報。’大甲曰:‘民非後,無能胥以寧。後非民,無以闢四方。’”
孔子が言った。「徳をもって徳に報いれば、民に励ますところがあり、怨をもって怨に報いれば、民に懲らしめるところがある。《詩経・大雅・抑》に言う。『言で酬いないものはなく、徳で報いないものはない。』《尚書・太甲》に言う。『民に君なければ互いに安んずることができず、君に民なければ四方を君臨することができない。』」
子曰:“以德報怨,則寬身之仁也;以怨報德,則刑戮之民也。”
孔子が言った。「徳をもって怨に報いるのは、身を寛げる仁である。怨をもって徳に報いるのは、刑戮を受ける民である。」
子曰:“無慾而好仁者,無畏而惡不仁者。天下一人而已矣,是故君子議道自已,而置法以民。”
孔子が言った。「求める欲なくして仁を好み、畏れることなくして不仁を悪む者は、天下にただ一人いるだけである。だから君子は道を論じるのに自らより始め、法度を設けて民に用いる。」
子曰:“仁有三,與仁同功而異情。與仁同功,其仁未可知也;與仁同過,然後其仁可知也。仁者安仁,知者利仁,畏罪者強仁。仁者右也,道者左也。仁者人也,道者義也。厚於仁者薄於義,親而不尊。厚於義者薄於仁,尊而不親。道有至,義有考。至道以王,義道以霸,考道以為無失。”
孔子が言った。「仁に三等あり、仁と同じく成り立っても情が異なる。仁と同じく成り立てば、その仁はまだ知ることができない。仁と同じく過ちがあって、はじめてその仁を知ることができる。仁の人は仁に安んじ、智の人は仁に利し、罪を畏れる人は勉めて仁を行う。仁は右にあり、道は左にある。仁とは人であり、道とは義である。仁に厚き者は義に薄く、親しみあって尊ばれない。義に厚き者は仁に薄く、尊ばれて親しまれない。道には至極のものがあり、義には考えるべきものがある。至極の道はもって王と称し、義の道はもって覇と称し、考えるべき道はもって過ちなきを得る。」
子言之:“仁有數,義有長短小大。中心憯怛,愛人之仁也;率法而強之,資仁者也。詩云:‘豐水有芑,武王豈不仕。詒厥孫謀,以燕翼子。武王烝哉,數世之人也。’國風曰:‘我今不閱,皇恤我後。’終身之仁也。”
孔子が言った。「仁に数あり、義に長短小大あり。内に痛ましく悲愴なるは、人を愛する仁である。法に循いて勉めて為すは、仁に資を借りるものである。《詩経・大雅・文王有聲》に言う。『豊水に芑あり、武王は仕えないことがあろうか。孫に貽すその謀を遺して、子を安楽に翼う。武王は美しいかな!』これは数世にわたる人である。《國風》に言う。『我は今、身すら容れられない、どうして我が後を顧みる暇があろう。』これは終身の仁である。」
子曰:“仁之為器重,其為道遠,舉者莫能勝也,行者莫能致也。取數多者,仁也。夫勉於仁者不亦難乎?是故君子以義度人,則難為人;以人望人,則賢者可知已矣。”
孔子が言った。「仁は器としては重く、道としては遠い。挙げる者は能く任ずることなく、行く者は能く至ることなし。数の最も多きを取れば、仁である。仁に勉めるは難きことではないか。だから君子は義をもって人を衡量すれば、人たること難し。人をもって人を望めば、賢者は知ることができる。」
子曰:“中心安仁者,天下一人而已矣。大雅曰:‘德輶如毛,民鮮克舉之。我儀圖之,惟仲山甫舉之,愛莫助之。’小雅曰:‘高山仰止,景行行止。’”
孔子が言った。「内に安んじて仁にある者は、天下にただ一人いるだけである。《大雅》に言う。『徳は毛のように軽しといえども、民は鮮しくこれを挙げることができない。我これを揣るに、仲山甫のみこれを挙げ、愛してもこれを助けることができない。』《小雅》に言う。『高山は仰ぎ、大道は行く。』」
子曰:“詩之好仁如此,鄉道而行,中道而廢,忘身之老也不知年數之不足也。俛焉日有孳孳,斃而後已。”
孔子が言った。「《詩》の仁を好むことはこのようである。道に向かって行き、中途で廃止し、身の老いを忘れ、年数の足りないことも知らず、勤勉として日々孳孳とし、倒れてはじめて止む。」
子曰:“仁之難成久矣。人人失其所好,故仁者之過易辭也。”
孔子が言った。「仁の成り難いこと久しい。人は皆その好むところを失う。だから仁者の過ちは解し易い。」
子曰:“恭近禮,儉近仁,信近情。敬讓以行,此雖有過,其不甚矣。夫恭寡過,情可信,儉易容也,以此失之者,不亦鮮乎?詩曰:‘溫溫恭人,惟德之基。’”
孔子が言った。「恭は礼に近く、倹は仁に近く、信は情に近い。敬譲をもってこれを行えば、過ちあっても甚だしくはない。恭なれば過ち少なく、情あれば信ずることができ、倹なれば容れ易し。これに因って失う者、少なからざらんや。《詩経・大雅・抑》に言う。『温温として恭なる人は、徳の基なり。』」
子曰:“仁之難成久矣!惟君子能之。是故君子不以其所能者病人,不以人之所不能者愧人。是故聖人之制行也,不制以已,使民有所勸勉愧恥以行其言。禮以節之,信以結之,容貌以文之,衣服以移之,朋友以極之,欲民之有壹也。小雅曰:‘不愧於人,不畏於天。’是故君子服其服,則文以君子之容;有其容,則文以君子之辭;遂其辭,則實以君子之德。是故君子恥服其服而無其容,恥有其容而無其辭,恥有其辭而無其德,恥有其德而無其行。是故君子衰絰則有哀色,端冕則有敬色,甲冑則有不可辱之色。詩云:‘惟鵜在梁,不濡其翼。彼記之子,不稱其服。’”
孔子が言った。「仁の成り難いこと久しい!ただ君子のみ能くする。だから君子は己の能くするところをもって人を責めず、人の能くせざるところをもって人を愧らしめない。だから聖人は行いを制するに、己をもって制せず、民に勧め愧じるところをしてその言を行わしめる。礼をもって節し、信をもって結び、容貌をもって文め、衣服をもって移し、朋友をもって極めるは、民をして壹たらしめんと欲するなり。《小雅》に言う。『人に愧じず、天を畏れず。』だから君子はその服を服すれば、君子の容をもってこれを文め、その容あれば、君子の辞をもってこれを文め、その辞を成せば、君子の徳をもってこれを充実する。だから君子はその服を服してその容なきを恥じ、その容あってその辞なきを恥じ、その辞あってその徳なきを恥じ、その徳あってその行なきを恥じる。だから君子は喪服を服すれば哀の色があり、端冕を服せば敬の色があり、甲冑を服せば辱められざるの色がある。《詩経・曹風・候人》に言う。『鵜鶘は梁に在りて、その翼を濡らさず。あの人らは、その服に称わず。』」
子言之:“君子之所謂義者,貴賤皆有事於天下。天子親耕,粢盛秬鬯,以事上帝,故諸侯勤以輔事於天子。”
孔子が言った。「君子の言う義は、貴賤ともに天下に事あり。天子は自ら耕して、粢盛と秬鬯を作り、もって上帝に事える。だから諸侯は勤勉して天子に輔け事える。」
子曰:“下之事上也,雖有庇民之大德,不敢有君民之心,仁之厚也。是故君子恭儉以求役仁,信讓以求役禮,不自尚其事,不自尊其身,儉於位而寡於欲,讓於賢,卑己而尊人,小心而畏義。求以事君,得之自是,不得自是,以聽天命。詩云:‘莫莫葛藟,施於條枚。凱弟君子,求福不回。’其舜、禹、文王、周公之謂與?有君民之大德,有事君之小心。詩云:‘惟此文王,小心翼翼,昭事上帝,聿懷多福。厥德不回,以受方國。’”
孔子が言った。「下が上に事えるに、民を庇う大徳あっても、民に君臨する心を敢えて有せざるは、仁の厚きなり。だから君子は恭倹して仁に仕えることを求め、信譲して礼に仕えることを求め、自らその事を崇めず、自らその身を尊ばず、位に在りて倹して欲寡なく、賢に譲り、己を卑しくして人を尊び、小心にして義を畏れ、もって君に事えるを求め、得てもこのよう、得ざるもこのよう、もって天命を聴く。《詩経・大雅・旱麓》に言う。『茂れる葛藟、条枚に施る。和楽平易の君子、福を求めて邪せず。』おそらく舜・禹・文王・周公を言うのであろうか。民に君臨する大徳あり、君に事える小心あり。《詩経・大雅・大明》に言う。『惟この文王、小心翼翼、昭明して上帝に事え、よって多くの福を懐く。その徳邪せず、よって四方の国を受く。』」
子曰:“先王諡以尊名,節以壹惠,恥名之浮於行也。是故君子不自大其事,不自尚其功,以求處情;過行弗率,以求處厚;彰人之善而美人之功,以求下賢。是故君子雖自卑而民敬尊之。”
孔子が言った。「先王は謚をもって名を尊び、節をもってその一の惠を壹にし、名が行を過ぐるを恥とした。だから君子は自らその事を大きくせず、自らその功を崇めず、実に処るを求め、過ぐる行は人に従わしめず、厚に処るを求め、人の善を彰めて人の功を美して、賢に下るを求める。だから君子は自ら卑しくしても民はこれを敬い尊ぶ。」
子曰:“后稷天下之為烈也,豈一手一足哉?唯欲行之浮於名也,故自謂便人。”
孔子が言った。「后稷が天下に功を建てたのは、一手一足のものであろうか。ただ行を名に過ぎんと欲して、自ら便巧の人と称しただけである。」
子言之:“君子之所謂仁者,其難乎?詩云:‘凱弟君子,民之父母。’凱以強教之,弟以說安之。樂而毋荒,有禮而親,威莊而安,孝慈而敬,使民有父之尊,有母之親。如此而後可以為民父母矣。非至德其孰能如此乎?今父之親子也,親賢而下無能;母之親子也,賢則親之,無能則憐之。母親而不尊,父尊而不親。水之於民也,親而不尊,火尊而不親;土之於民也,親而不尊,天尊而不親;命之於民也,親而不尊,鬼尊而不親。”
孔子が言った。「君子の言う仁は、ほぼ難しいのであろう。《詩経》に言う。『和楽平易の君子は、民の父母なり。』和楽をもって彼らを教え勉め、悌をもって彼らを悦ばし安んずる。楽しみて荒れず、礼ありて親しく、威荘にして安く、孝慈にして敬あり、民に父の尊あり、母の親あらしめる。このようのごときにしてはじめて民の父母たるべし。至極の徳にあらざれば誰かこのようのごときならん。今、父は子を親愛すれども、賢を親愛して無能を下に見る。母は子を親愛すれども、賢なればこれを親しみ、無能なればこれを憐れむ。母は親して尊からず、父は尊して親しからず。水は民に対して親して尊からず、火は尊して親しからず、土は民に対して親して尊からず、天は尊して親しからず、命は民に対して親して尊からず、鬼は尊して親しからず。」
子曰:“夏道尊命,事鬼敬神而遠之,近人而忠焉。先祿而後威,先賞而後罰。親而不尊。其民之敝,惷而愚,喬而野,樸而不文。殷人尊神,率民以事神,先鬼而後禮,先罰而後賞。尊而不親,其民之敝,蕩而不靜,勝而無恥。周人尊禮尚施,事鬼敬神而遠之,近人而忠焉,其賞罰用爵列。親而不尊,其民之敝,利而巧,文而不慚,賊而蔽。”
孔子が言った。「夏の道は命を尊び、鬼に事え神を敬してこれらを遠ざけ、人に近づきて忠なり。先ず禄して後に威し、先ず賞して後に罰す、親して尊からず。その民の弊は、蠢として愚、驕として野、朴として文なし。殷人は神を尊び、民を率いて神に事えしめ、先ず鬼して後に礼し、先ず罰して後に賞す、尊して親しからず。その民の弊は、蕩として静かならず、勝を好みて恥なし。周人は礼を尊び施与を尚び、鬼に事え神を敬してこれらを遠ざけ、人に近づきて忠なり、賞罰は爵列を用い、親して尊からず。その民の弊は、利を貪りて巧、文ありて慚らず、賊害して蔽塞す。」
子曰:“夏道未瀆辭,不求備,不大望於民,民未厭其親。殷人未瀆禮,而求備於民。周人強民,未瀆神,而賞爵刑罰窮矣。”
孔子が言った。「夏の道はまだ辞令を褻れず、備を求めず、民に大いに望まず、民はまだその親に厭かず。殷人はまだ礼を褻れずして、民に備を求めた。周人は民を強いて、まだ神を褻れずして、賞爵刑罰はすでに窮まった。」
子曰:“虞夏之道,寡怨於民。殷周之道,不勝其敝。”
孔子が言った。「虞夏の道は、民に怨少なし。殷周の道は、その弊に堪えず。」
子曰:“虞夏之質,殷周之文,至矣。虞夏之文,不勝其質;殷周之質,不勝其文。”
孔子が言った。「虞夏の質、殷周の文は、至りたり。虞夏の文はその質に堪えず、殷周の質はその文に堪えず。」
子言之曰:“後世雖有作者,虞帝弗可及也已矣!君天下,生無私,死不厚其子,子民如父母,有憯怛之愛,有忠利之教,親而尊,安而敬,威而愛,富而有禮,惠而能散。其君子尊仁畏義,恥費輕實,忠而不犯,義而順,文而靜,寬而有辨。甫刑曰:‘德威惟威,德明惟明。’非虞帝其孰能如此乎?”
孔子が言った。「後世に作る者あるも、虞帝には及ぶべからず!天下に君臨し、生きるに私なく、死してその子を厚くせず、民を子とするに父母のごとく、痛ましく悲愴の愛あり、忠利の教えあり、親して尊、安して敬、威して愛、富して礼あり、惠を施して能く散ず。その君子は仁を尊び義を畏れ、費を恥じ実を軽んじ、忠して犯さず、義して従い、文して静、寛して弁あり。《尚書・呂刑》に言う。『徳の威のみ威、徳の明のみ明。』虞帝にあらざれば誰かこのようのごときならん。」
子言之:“事君先資其言,拜自獻其身,以成其信。是故君有責於其臣,臣有死於其言。故其受祿不誣,其受罪益寡。”
孔子が言った。「君に事えるは先ずその言に藉り、拝して自ら身を獻じ、もってその信を成す。だから君は臣に責めあり、臣はその言のために死す。だからその禄を受くるに誣妄せず、その罪を受くるに益寡なし。」
子曰:“事君大言入則望大利,小言入則望小利。故君子不以小言受大祿,不以大言受小祿。易曰:‘不家食,吉。’”
孔子が言った。「君に事えるに、大言入れば大いに利を望み、小言入れば小に利を望む。だから君子は小言をもって大禄を受けず、大言をもって小禄を受けず。《周易》に言う。『家に食わずして、吉。』」
子曰:“事君不下達,不尚辭,非其人弗自。小雅曰:‘靖共爾位,正直是與。神之聽之,式谷以女。’”
孔子が言った。「君に事えるに下情を達せず、辞令を尚ばず、その人にあらざれば自ら進まず。《小雅》に言う。『安く恭く汝の位に居り、正直なる者はこれに近づく。神これを聴きて、禄をもって汝に与える。』」
子曰:“事君遠而諫,則讇也。近而不諫,則尸利也。”
孔子が言った。「君に事えるに、遠くして諫めれば諂いなり。近くして諫めざれば、位を尸りて利を求むるなり。」
子曰:“邇臣守和,宰正百官,大臣慮四方。”
孔子が言った。「近臣は和を守り、宰は百官を正しくし、大臣は四方を謀る。」
子曰:“事君欲諫不欲陳。詩云:‘心乎愛矣,瑕不謂矣。中心藏之,何日忘之?’”
孔子が言った。「君に事えるに諫めんことを欲して彰さんことを欲せず。《詩経・小雅・隰桑》に言う。『心に愛す、どうして言わざらん。心にこれを蔵して、いつの日かこれを忘れん。』」
子曰:“事君難進而易退,則位有序;易進而難退,則亂也。故君子三揖而進,一辭而退,以遠亂也。”
孔子が言った。「君に事えるに進み難く退き易ければ、位に序あり。進み易く退き難ければ乱なり。だから君子は三揖して進み、一辞して退く、もって乱を遠ざけるなり。」
子曰:“事君三違而不出竟,則利祿也。人雖曰不要,吾弗信也。”
孔子が言った。「君に事えるに三違えて境を出ざれば、利禄のためなり。人たとえ求めにあらずと言うも、我は信ぜず。」
子曰:“事君慎始而敬終。”
孔子が言った。「君に事えるに始めを慎み終わりを敬う。」
子曰:“事君可貴可賤,可富可貧,可生可殺,而不可使為亂。”
孔子が言った。「君に事えるに、貴くすべく賤くすべく、富むべく貧すべく、生くべく殺すべくして、乱を為さしむべからず。」
子曰:“事君,軍旅不闢難,朝廷不辭賤。處其位而不履其事,則亂也。故君使其臣,得志則慎慮而從之,否則孰慮而從之。終事而退,臣之厚也。易曰:‘不事王侯,高尚其事。’”
孔子が言った。「君に事えるに、軍旅に在りて難を避けず、朝廷に在りて賤を辞せず。その位に処りてその事を履まざれば乱なり。だから君がその臣を使うに、志を得れば慎み謀りて従い、然らざれば熟慮して従う。事終わりて退くは、臣の厚なり。《周易》に言う。『王侯に事えず、その事を高くす。』」
子曰:“唯天子受命於天,士受命於君。故君命順,則臣有順命。君命逆,則臣有逆命。詩曰:‘鵲之姜姜,鶉之賁賁。人之無良,我以為君。’”
孔子が言った。「ただ天子のみ天より命を受け、士は君より命を受く。だから君命順なれば、臣に順の命あり。君命逆なれば、臣に逆の命あり。《詩経・鄘風・鶉之奔奔》に言う。『鵲の姜姜たる、鶉の賁賁たる。人良なくば、我これを君と為す。』」
子曰:“君子不以辭盡人。故天下有道,則行有枝葉;天下無道,則辭有枝葉。是故君子於有喪者之側,不能賻焉,則不問其所費。於有病者之側,不能饋焉,則不問其所欲。有客不能館,則不問其所舍。故君子之接如水,小人之接如醴。君子淡以成,小人甘以壞。小雅曰:‘盜言孔甘,亂是用餤。’”
孔子が言った。「君子は辞令をもって人を尽くさず。だから天下道あれば、行に枝葉あり。天下道なければ、辞に枝葉あり。だから君子は喪ある人の側にあって、喪財を助ける能わざれば、その費うところを問わず。病ある人の側にあって、饋る能わざれば、その欲するところを問わず。客ありて館舎を舎る能わざれば、その宿るところを問わず。だから君子の接は水のごとく、小人の接は醴のごとし。君子は淡くして成り、小人は甘くして壊る。《小雅》に言う。『讒言は甘く、乱これによりて加わる。』」
子曰:“君子不以口譽人,則民作忠。故君子問人之寒則衣之,問人之飢則食之,稱人之美則爵之。國風曰:‘心之憂矣,於我歸說。’”
孔子が言った。「君子は口をもって人を誉めざれば、民は忠に興る。だから君子は人の寒を問えば衣を与え、人の飢を問えば食を与え、人の美を称えば爵を与える。《國風》に言う。『心に憂いあり、我に來りて休まん。』」
子曰:“口惠而實不至,怨菑及其身。是故君子與其有諾責也,寧有己怨。國風曰:‘言笑晏晏,信誓旦旦,不思其反,反是不思,亦已焉哉!’”
孔子が言った。「口に惠して実至らざれば、怨と災は身に及ぶ。だから君子は諾の責めあるよりは、むしろ己の怨あれ。《國風》に言う。『言笑晏晏として、信誓旦旦たり。その反覆を思わず、反覆せば亦た思わず、亦た已むのみ。』」
子曰:“君子不以色親人。情疏而貌親,在小人則穿窬之盜也與?”
孔子が言った。「君子は色をもって人に親しまず。情疎にして貌親しきは、小人に於いては墻を穿つ盗ならんか。」
子曰:“情慾信,辭欲巧。”
孔子が言った。「情は信実なることを欲し、辞は巧妙なることを欲す。」
子言之:“昔三代明王,皆事天地之神明,無非卜筮之用,不敢以其私褻事上帝。是故不犯日月,不違卜筮。卜筮不相襲也,大事有時日,小事無時日。有筮,外事用剛日,內事用柔日,不違龜筮。”
孔子が言った。「昔三代の明王は、皆天地の神明に事え、卜筮の用にあらざることなく、敢えてその私をもって上帝に事えるを褻れず。だから日月に犯さず、卜筮に違わず。卜筮は互いに沿い用いず。大事には時日あり、小事には時日なくして筮あり。外事には剛日を用い、内事には柔日を用い、亀筮に違わず。」
子曰:“牲牷禮樂齊盛,是以無害乎。鬼神無怨乎百姓。”
孔子が言った。「牲体完備、礼楽粢盛あれば、これにより鬼神に害なく、百姓に怨なし。」
子曰:“后稷之祀易富也,其辭恭,其欲儉,其祿及子孫。詩曰:‘后稷兆祀,庶無罪悔,以迄於今。’”
孔子が言った。「后稷の祀は易くして足り、その辞は恭、その欲は倹、その禄は子孫に及ぶ。《詩経・大雅・生民》に言う。『后稷祀を肇め、罪悔なからんことを庶幾い、今に至るまで。』」
子曰:“大人之器威敬。天子無筮,諸侯有守筮。天子道以筮,諸侯非其國不以筮。卜宅寢室,天子不卜處大廟。”
孔子が言った。「大人の器は威容恭敬なり。天子は筮せず、諸侯は国を守るの筮あり。天子は道に在りて筮し、諸侯はその国に在らざれば筮せず。宅居寝室を卜するに、天子は太廟に処るを卜せず。」
子曰:“君子敬則用祭器,是以不廢日月,不違龜筮,以敬事其君長。是以上不瀆於民,下不褻於上。”
孔子が言った。「君子は敬して祭器を用い、これにより日月を廃せず、亀筮に違わず、もって君長に恭敬して事える。だから上は民に褻れず、下は上に慢せず。」
