巽宮・山雷頤
巽宮:《山雷頤》(游魂),屬木,艮上震下。伏神、本卦:兄弟丙寅木;子孫辛巳火,父母丙子水;妻財丙戌土,世;官鬼辛酉金,妻財庚辰土;兄弟庚寅木;父母庚子水,應。龍隱深潭之卦,遷善遠惡之象。判曰:頤者,養也。謹言節食,能養其身。震動艮止,萬物皆春。惡事消散,不害於人。
《山雷頤》は「巽宮」の「游魂卦」で、艮が上、震が下、卦気は木に属す。装卦は上より下へ。上九は「兄弟丙寅木」に配し、六五は「父母丙子水」に配しその下に「子孫辛巳火」が伏し、六四は「妻財丙戌土」に配してかつ「世」を持ち、六三は「妻財庚辰土」に配しその下に「官鬼辛酉金」が伏し、六二は「兄弟庚寅木」に配し、初九は「父母庚子水」に配して「応」となる。本卦には子孫と官鬼が見えず、子息を占い官訟・病災を占うにはいずれも伏神を取りて用を論じ、「月卦身」は酉金に当たるもまた卦に上らず。卦象は「龍隠深潭」と称し、龍は深水に潜み、蓄養して時を待つ。また「遷善遠悪」と称す。判詞に曰く、「頤」とはすなわち頤養である。言語を謹慎し飲食に節あってはじめてこの身を養い得る。内の震は動を主り、外の艮は止を主り、動止宜しきに合すれば、万物は春に逢うがごとし。およそ悪事は皆消散し、人を傷るに至らず。
《易經》第二十七卦,頤,山雷頤,艮上震下。頤:貞吉。觀頤,自求口實。《彖》曰:“頤,貞吉”,養正則吉也。“觀頤”,觀其所養也。“自求口實”,觀其自養也。天地養萬物,聖人養賢以及萬民。頤之時大矣哉!《象》曰:山下有雷,頤;君子以慎言語,節飲食。
これは《周易》第二十七卦《頤》、艮が上、震が下。卦辞に曰く、《頤》は正を守れば吉。人の養う対象を観察し、さらに彼が如何に自ら口中の食を謀るかを見よ。《彖伝》の解釈に曰く「頤、貞吉」とは、養う所が正道に合せば吉を得るなり。「観頤」とは彼が養う者が何人かを見るなり。「自ら口実を求む」とは彼が如何に己を養うかを見るなり。天地は万物を養育し、聖人は賢才を養育して恩沢を万民に及ぼす。頤養の道は時に随いて用い、その意義はなんと宏大なるか。《象伝》に曰く、山の下に雷声響く、《頤》の象なり。君子はこれに取法して、言語を謹慎し飲食に節あり。
六爻斷:初九:舍爾靈龜,觀我朵頤,凶。《象》曰:“觀我朵頤”,亦不足貴也。六二:顛頤。拂經,于丘頤,征凶。《象》曰:六二“征凶”,行失類也。六三:拂頤,貞凶。十年勿用,無攸利。《象》曰:“十年勿用”,道大悖也。六四:顛頤,吉。虎視眈眈,其欲逐逐,無咎。《象》曰:顛頤之吉,上施光也。六五:拂經。居貞吉,不可涉大川。《象》曰:居貞之吉,順以從上也。上九:由頤。厲吉,利涉大川。《象》曰:“由頤,厲吉”,大有慶也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初九、汝は己の食らわずして生き得る霊亀を棄てて、我を盯め涎を垂らし腮を鼓す、凶。《象伝》に曰く、かく他人の口食を覬覦するは、実に貴重に値せず。六二、顛倒して下に求養し、常理に背き、転じて上りて丘陵のごとき上九に求養す。往けば凶。《象伝》に曰く、六二の「征凶」とは、行動して同類の依応を失えばなり。六三、頤養の道に背けば、正を守るも凶。十年の内は施為あるべからず、得る所の利なし。《象伝》に曰く「十年用うる勿れ」とは、行う所が大いに正道に背けばなり。六四、同じく顛倒して下に求養するも、吉利を得る。虎のごとく目光を下に視て専注して移らず、欲する所は相継いで来る。過咎なし。《象伝》に曰く、顛頤の吉なる所以は、上に在る者の施恵光大なればなり。六五、常理に背きて人を養う能わざれども、安居して正を守れば吉。ただし大川を渉越して険を冒すべからず。《象伝》に曰く、居貞にして吉を得るは、上九に順従して行えばなり。上九、天下は皆彼によりて養いを得る。危地に処れども終に吉利、大川を渉越するに利あり。《象伝》に曰く「頤に由る、厲にして吉」とは、大福慶あればなり。
巽宮・山風蠱
巽宮:《山風蠱》(歸魂),屬木,艮上巽下。伏神、本卦:兄弟丙寅木,應;子孫辛巳火,父母丙子水;妻財丙戌土;官鬼辛酉金,世;父母辛亥水;妻財辛丑土。三蟲食血之卦,以惡害義之象。判曰:蠱者,事也。幹父之體,任用於先,三蟲在器,陰害相連。厭昧之事,其疾難痊。求謀欲起,慮恐相干。
《山風蠱》は「巽宮」の「帰魂卦」で、艮が上、巽が下、卦気は木に属す。装卦は上より下へ。上九は「兄弟丙寅木」に配して「応」となり、六五は「父母丙子水」に配しその下に「子孫辛巳火」が伏し、六四は「妻財丙戌土」に配し、九三は「官鬼辛酉金」に配してかつ「世」を持ち、九二は「父母辛亥水」に配し、初六は「妻財辛丑土」に配す。卦中に「子孫」が見えず、子息を占い災を解くを占うには五爻下の伏神を取りて用を論じ、「月卦身」は寅木に当たり、ちょうど上爻に落つ。卦象は「三虫食血」と称し、皿の中に虫を養いて互いに噬う、積久して弊を生ず。また「悪をもって義を害す」と称す。判詞に曰く、「蠱」とは積弊ありて理を待つことである。子が父の遺した敗局を整治するがごとく、まず事を担い上げなければならない。三虫は一器に同処し、陰毒の害は牽連して断えず。およそ曖昧にして明らかなりがたい事は、その病もまた痊愈しがたい。謀求がまさに発動せんとすれば、先だち人の干擾あるを慮らなければならない。
《易經》第十八卦,蠱,山風蠱,艮上巽下。蠱:元亨,利涉大川。先甲三日,後甲三日。《彖》曰:“蠱”,剛上而柔下,巽而止,蠱。“蠱,元亨”,而天下治也。“利涉大川”,往有事也。“先甲三日,後甲三日”,終則有始,天行也。《象》曰:山下有風,蠱;君子以振民育德。
これは《周易》第十八卦《蠱》、艮が上、巽が下。卦辞に曰く、《蠱》は大いに亨通し、大川を渉越するに利あり。号令を発施するには甲日の前の三日に先だち申明し、甲日の後の三日にさらに復査を加えよ。《彖伝》の解釈に曰く、剛爻は上に居り柔爻は下に居り、内は巽順にして外は艮止、因循・牽就すれば積みて「蠱」を成す。「蠱、元亨」とは、蠱を治して後天下大治なればなり。「大川を渉るに利あり」とは、往けば必ず為すべき事あればなり。「甲に先んずる三日、甲に後る三日」とは、終わりて復た始まり、天道の運行して息まざる理のごとし。《象伝》に曰く、山の下に風吹く、《蠱》の象なり。君子はこれに取法して、民心を振作し徳行を培育す。
六爻斷:初六:幹父之蠱,有子,考無咎,厲終吉。《象》曰:“幹父之蠱”,意承考也。九二:幹母之蠱,不可貞。《象》曰:“幹母之蠱”,得中道也。九三:幹父之蠱,小有悔,無大咎。《象》曰:“幹父之蠱”,終無咎也。六四:裕父之蠱,往見吝。《象》曰:“裕父之蠱”,往未得也。六五:幹父之蠱,用譽。《象》曰:“幹父,用譽”,承以德也。上九:不事王侯,高尚其事。《象》曰:“不事王侯”,志可則也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初六、父の遺留した弊事を整治すれば、かくのごとき子あれば亡父は過咎なし。危厲あれども最終に吉利。《象伝》に曰く「父の蠱を幹す」とは、その心意は父志を承継するに在り。九二、母の遺した弊事を整治するに、固執して強直たるべからず。《象伝》に曰く「母の蠱を幹す」とは、九二は中に居りて中和の道を行い得ればなり。九三、父の遺留した弊事を整治すれば、稍々悔恨あれども大きな過咎なし。《象伝》に曰く、かくのごとくすれば終に咎あることなし。六四、父の弊事を寛縦して治めざれば、かく続けば必ず困窘に致る。《象伝》に曰く「父の蠱を裕にす」とは、さらに前に往きても一も得る所なし。六五、父の弊事を整治してこれにより称誉を獲る。《象伝》に曰く「父を幹し、誉れを用う」とは、徳行をもって先人を承継すればなり。上九、往きて王侯に事えず、己の操守をより高しと見る。《象伝》に曰く「王侯に事えず」とは、この志節は以て効法の準則となすべし。
離宮・離為火
離宮:《離為火》(六沖),屬火,離上離下。【本卦】兄弟己巳火,世;子孫己未土;妻財己酉金;官鬼己亥水,應;子孫己丑土;父母己卯木。飛禽遇網之卦,大明當天之象。判曰:離者,麗也。光明美麗,不利出師。二鳥同飛,雄失其雌,婚姻未合,易起官非。口舌相尚,財散人離。
《離為火》は「離宮」の首卦で、上下ともに離、「八純卦」に属し、六爻が自ら相冲するので「六冲」と標し、卦気は火に属する。装卦は上から下へ、上九は「兄弟己巳火」に配してまた「世」を持ち、六五は「子孫己未土」に配し、九四は「妻財己酉金」に配し、九三は「官鬼己亥水」に配して「応」となり、六二は「子孫己丑土」に配し、初九は「父母己卯木」に配する。六親がすべて備わり、「月卦身」は巳火に当たり、ちょうど上爻にあって世爻と同位である。卦象は「飛禽遇網」と称し、鳥が羅網に入り、明に処してかえって制せられる。また「大明当門」とも称し、日が中天に麗く。判語に曰く、「離」とはすなわち附麗である。光明にして華美であるが、出兵には利しない。二鳥が並び飛んで雄鳥が雌鳥を失うので、婚姻を占えば多くは成りがたく、また官司を招きやすい。口舌が争い勝を求め、錢財は散じ尽くして人も心離れる。
《易經》第三十卦,離,離為火,離上離下。離:利貞,亨。畜牝牛,吉。《彖》曰:“離”,麗也。日月麗乎天,百穀草木麗乎土,重明以麗乎正,乃化成天下。柔麗乎中正,故亨,是以畜牝牛吉也。《象》曰:明兩作,離;大人以繼明照于四方。
これは《周易》第三十卦《離》で、上下ともに離。卦辞に曰く、《離》は正を守るに利あり、亨通せり。母牛を畜養すれば、吉。《彖伝》の解釈に曰く、「離」とは附着である。日月は天に附麗し、百穀草木は地に附麗し、二重の光明が正道に附麗して、はじめて化育して天下を成就できる。六二・六五の二つの柔爻が中正の位に附麗するので亨通し、母牛の性は柔順なので、これを畜養して吉を得るのは、まさにこの柔順の義を取る。《象伝》に曰く、光明が二度昇るは《離》の象。大人はこれに法り、接続して絶えない光明をもって四方に照臨する。
六爻斷:初九:履錯然,敬之,無咎。《象》曰:履錯之敬,以辟咎也。六二:黃離,元吉。《象》曰:“黃離,元吉”,得中道也。九三:日昃之離,不鼓缶而歌,則大耋之嗟,凶。《象》曰:“日昃之離”,何可久也?九四:突如其來如,焚如,死如,棄如。《象》曰:“突如其來如”,無所容也。六五:出涕沱若,戚嗟若,吉。《象》曰:六五之吉,離王公也。上九:王用出征,有嘉,折首,獲匪其醜,無咎。《象》曰:“王用出征”,以正邦也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初九、足取りが紛雑に交錯するも、敬慎を持し得れば過ちなし。《象伝》に曰く、錯雑の際にも敬意を存するは、まさに災咎を避けるための用である。六二、黄色の象徴する中道に附麗すれば、大吉。《象伝》に曰く「黄離、元吉」は、六二が居中の道を得たことによる。九三、日の偏西の時の附麗、もし瓦缶を敲いて歓歌して自適できなければ、垂暮の老人の悲嘆のみ残り、凶。《象伝》に曰く、日すでに西斜の光明、なお長久ならんか。九四、来勢が突兀として、烈火の焚くがごとく、身の死するがごとく、弃てられるがごとし。《象伝》に曰く「突如其来如」は、剛暴にして人を逼め天地も容れざるである。六五、涕涙滂沱として、憂傷嗟嘆するも、かえって吉を得る。《象伝》に曰く、六五の吉は、王公の位に附麗して憂惧し自省できるにある。上九、君王が兵を出して征伐し、嘉美の功あり、元凶を斬獲し、俘獲する所はその同類の脅従の人ではなく、過ちなし。《象伝》に曰く「王用出征」は、邦国を匡正するためである。
離宮・火山旅
離宮:《火山旅》,屬火,離上艮下。伏神、本卦:兄弟己巳火;子孫己未土;妻財己酉金,應;官鬼己亥水,妻財丙申金;兄弟丙午火;父母己卯木,子孫丙辰土,世。如鳥焚巢之卦,樂極哀生之象。判曰:旅者,客也。長途落落,羈旅悽悽,火行山上,逐草高低。如鳥焚巢,無枝可棲。雖然先笑,後有悲啼。
《火山旅》は「離宮」第二卦、「一世卦」に属し、離が上、艮が下、卦気は火に属する。装卦は上から下へ、上九は「兄弟己巳火」に配し、六五は「子孫己未土」に配し、九四は「妻財己酉金」に配して「応」となり、九三は「妻財丙申金」に配して、その下に「官鬼己亥水」が伏し、六二は「兄弟丙午火」に配し、初六は「子孫丙辰土」に配してまた「世」を持ち、その下に「父母己卯木」が伏する。卦中に父母と官鬼が見えず、文書功名・病訟を占うには伏神を取って論断せねばならず、「月卦身」は午火に当たり、二爻に落ちる。卦象は「如鳥焚巢」と称し、また「楽極哀生」とも。判語に曰く、「旅」とはすなわち作客して外にいること。長路漫漫として、羈旅凄清。火が山上を行き、草木の高低に随って蔓延り、定所なし。ちょうど鳥の巣が焼かれて、再び棲息すべき枝头がないがごとし。たとえ初め歓笑しても、後には終に悲啼に帰る。
《易經》第五十六卦,旅,火山旅,離上艮下。旅:小亨,旅貞吉。《彖》曰:“旅,小亨”,柔得中乎外而順乎剛,止而麗乎明,是以“小亨,旅貞吉”也。旅之時義大矣哉!《象》曰:山上有火,旅;君子以明慎用刑,而不留獄。
これは《周易》第五十六卦《旅》で、離が上、艮が下。卦辞に曰く、《旅》は小さく亨通し、客旅の人が正を守れば吉。《彖伝》の解釈に曰く、「旅、小亨」は、六五が柔をもって外卦の中に居り上下の剛爻に順承し、内の艮は止を知り外は光明に附麗するので、「小亨、旅貞吉」と言う。羈旅の時の含む義理は、実に重大である。《象伝》に曰く、山上に火が燃えるは《旅》の象。君子はこれに法り、審明にして慎重に刑を用い、案件を久しく留めて決せしめない。
六爻斷:初六:旅瑣瑣,斯其所取災。《象》曰:“旅瑣瑣”,志窮災也。六二:旅即次,懷其資,得童僕貞。《象》曰:“得童僕貞”,終無尤也。九三:旅焚其次,喪其童僕,貞厲。《象》曰:“旅焚其次”,亦以傷矣。以旅與下,其義喪也。九四:旅于處,得其資斧,我心不快。《象》曰:“旅于處”,未得位也。“得其資斧”,心未快也。六五:射雉,一矢亡,終以譽命。《象》曰:“終以譽命”,上逮也。上九:鳥焚其巢,旅人先笑後號咷。喪牛于易,凶。《象》曰:以旅在上,其義焚也。“喪牛于易”,終莫之聞也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初六、客旅の人が猥瑣に計較するは、まさに自ら災禍を取る所以。《象伝》に曰く「旅瑣瑣」は、志気が窮蹙してはじめて災殃を招く。六二、客旅が旅舎に住み込み、懐に盤纏を帯び、また忠貞の僮僕を得る。《象伝》に曰く「得童僕貞」は、終に過失なからん。九三、客旅が自分の住む客舎を焼き、また僮僕を失う。正を守っても危うし。《象伝》に曰く「旅焚其次」は、すでに傷ついたり。客旅の身をもって下人に対し剛暴に過ぎれば、彼らを失うのが理の当然。九四、客旅は暫く安身の処を得、また盤纏と防身の利斧を得るも、心は痛快ならず。《象伝》に曰く「旅于処」は正位を得ざるであり、「得其資斧」もなお意に称わず。六五、山鶏を射て、一矢を射失すも、終にこれにより美誉と爵命を獲る。《象伝》に曰く「終以誉命」は、尊上に承って声名が遠く及ぶ。上九、鳥の巣が焼かれ、客旅の人は先に歓笑して後に号啕大哭す。辺邑で牛を容易く失い、凶。《象伝》に曰く、客旅の身をもって高亢の位に居るは、焚かるべき理。「喪牛于易」は、災禍臨頭して竟に聞く所なきである。
離宮・火風鼎
離宮:《火風鼎》,屬火,離上巽下。伏神、本卦:兄弟己巳火;子孫己未土,應;妻財己酉金;妻財辛酉金;官鬼辛亥水,世;父母己卯木,子孫辛丑土。調和鼎鼐之卦,去舊取新之象。判曰:鼎者,定也。鼎象九州,和羹之器,變生為熟,以成香味。鼎乃易溢,不宜爭事,官鬼持世,求官最利。
《火風鼎》は「離宮」第三卦、「二世卦」に属し、離が上、巽が下、卦気は火に属する。装卦は上から下へ、上九は「兄弟己巳火」に配し、六五は「子孫己未土」に配して「応」となり、九四は「妻財己酉金」に配し、九三は「妻財辛酉金」に配し、九二は「官鬼辛亥水」に配してまた「世」を持ち、初六は「子孫辛丑土」に配して、その下に「父母己卯木」が伏する。卦中に父母が見えず、文書を占うには初爻下の伏神を取るべく、「月卦身」は丑土に当たり、ちょうど初爻に落ちる。卦象は「調和鼎鼐」と称し、宰輔が調剤する任。また「去旧取新」とも。判語に曰く、「鼎」には安定の義あり。鼎の形制は九州に象を取り、五味を調和する器皿で、生を熟に変えて、もって香美の味を成就す。鼎中の物は満溢しやすいので、是非を争競するに宜しからず。この卦は「官鬼」が世を持ち、官職功名を求取するに最も利あり。
《易經》第五十卦,鼎,火風鼎,離上巽下。鼎:元吉,亨。《彖》曰:“鼎”,象也。以木巽火,亨飪也。聖人亨以享上帝,而大亨以養聖賢。巽而耳目聰明,柔進而上行,得中而應乎剛,是以元亨。《象》曰:木上有火,鼎;君子以正位凝命。
これは《周易》第五十卦《鼎》で、離が上、巽が下。卦辞に曰く、《鼎》は大いに吉利にして亨通せり。《彖伝》の解釈に曰く、「鼎」は器物の象を取って卦を立てる。木柴をもって火中に送り入るは、まさに烹煮の事。聖人は烹煮して犠牲を作り、もって上帝を祭享し、また大いに烹調してもって聖賢を奉養す。内は巽順にして外は光明ゆえ、耳聡く目明らか。六五は柔をもって進んで上行し、中位に居りまた下に九二の剛に応ずるので、大いに亨通す。《象伝》に曰く、木の上に火燃えるは《鼎》の象。君子はこれに法り、居る位を端正し、受くる命を凝守す。
六爻斷:初六:鼎顛趾,利出否。得妾以其子,無咎。《象》曰:“鼎顛趾”,未悖也。“利出否”,以從貴也。九二:鼎有實,我仇有疾,不我能即,吉。《象》曰:“鼎有實”,慎所之也。“我仇有疾”,終無尤也。九三:鼎耳革,其行塞。雉膏不食,方雨虧悔,終吉。《象》曰:“鼎耳革”,失其義也。九四:鼎折足,覆公餗。其形渥,凶。《象》曰:“覆公餗”,信如何也!六五:鼎黃耳,金鉉,利貞。《象》曰:“鼎黃耳”,中以為實也。上九:鼎玉鉉,大吉,無不利。《象》曰:玉鉉在上,剛柔節也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初六、鼎を倒して鼎足を上に向かしめれば、ちょうど中の敗物を倒出し得る。妾を娶ってその子を得るがごとく、過ちなし。《象伝》に曰く「鼎顛趾」は理に悖らず、「利出否」は尊貴の新に従うためである。九二、鼎中に実物盛満し、我が仇敵はまさに病を患えて、我に近づく能わず、吉。《象伝》に曰く「鼎有実」は往く所を慎むべく、「我仇有疾」は終に怨を招かざる。九三、鼎耳が形を変え、擡ぐ能わず行く能わず、鲜美の雉肉を喫し得ず。陰陽和洽して雨降るを待てば、悔恨は消減し、終に吉利なり。《象伝》に曰く「鼎耳革」は、九三が有るべき義を失える。九四、鼎足が折断し、王公の美食を打ち翻し、鼎身は沾污して一片、凶。《象伝》に曰く、王公の鼎食を打ち翻す、この信任また如何せん。六五、鼎に黄色の耳と金属の鉉を配し、正を守るに利あり。《象伝》に曰く「鼎黄耳」は、居中の徳を実とする。上九、鼎に玉製の鉉を配し、大吉にして利せざるなし。《象伝》に曰く、玉鉉がその上に高居し、剛と柔と調節宜しきを得る。
離宮・火水未済
離宮:《火水未濟》,屬火,離上坎下。伏神、本卦:兄弟己巳火,應;子孫己未土;妻財己酉金;官鬼己亥水,兄弟戊午火,世;子孫戊辰土;父母戊寅木。竭海求珠之卦,憂中望喜之象。判曰:未濟者,失也。水火不交,剛柔失位,求事未成,多有壅滯。如狐渡水,必濡其尾。積小成大,謂之未濟。
《火水未済》は「離宮」第四卦、「三世卦」に属し、離が上、坎が下、卦気は火に属する。装卦は上から下へ、上九は「兄弟己巳火」に配して「応」となり、六五は「子孫己未土」に配し、九四は「妻財己酉金」に配し、六三は「兄弟戊午火」に配してまた「世」を持ち、その下に「官鬼己亥水」が伏し、九二は「子孫戊辰土」に配し、初六は「父母戊寅木」に配する。卦中に官鬼が見えず、官訟病祟を占うには三爻下の伏神を取るべく、「月卦身」は申金に当たり、卦に上がらず。卦象は「竭海求珠」と称し、力を費やして得がたし。また「憂中望喜」とも。判語に曰く、「未済」とはすなわち失序である。水火相済えず、剛爻柔爻ともに位に当たらず、求める事はいまだ成り办らず、多く阻塞あり。譬えば狐の渡河、終に尾を濡らさん。事は一点点に小を積んで大を成すべく、これ正しく「未済」と謂う。
《易經》第六十四卦,未濟,火水未濟,離上坎下。未濟:亨。小狐汔濟,濡其尾,無攸利。《彖》曰:“未濟,亨”,柔得中也。“小狐汔濟”,未出中也。“濡其尾,無攸利”,不續終也。雖不當位,剛柔應也。《象》曰:火在水上,未濟;君子以慎辨物居方。
これは《周易》第六十四卦、また全経の末卦《未済》で、離が上、坎が下。卦辞に曰く、《未済》は亨通せり。小狐は河を渡らんとほぼ済るも、尾を濡らして、利処なし。《彖伝》の解釈に曰く、「未済、亨」は、六五が柔をもって中に居る。「小狐汔済」は、いまだ坎険の中より脱せず。「濡其尾、无攸利」は、事を接続して底に至る能わざる。この卦の六爻は陰陽ともに位に当たらざるも、剛柔は両両に相応す。《象伝》に曰く、火が水の上に在り、各々相済えざるは《未済》の象。君子はこれに法り、慎みて事物を辨别し、各々その所に安んぜしむ。
六爻斷:初六:濡其尾,吝。《象》曰:“濡其尾”,亦不知極也。九二:曳其輪,貞吉。《象》曰:九二“貞吉”,中以行正也。六三:未濟,征凶,利涉大川。《象》曰:“未濟,征凶”,位不當也。九四:貞吉,悔亡。震用伐鬼方,三年有賞于大國。《象》曰:“貞吉,悔亡”,志行也。六五:貞吉,無悔。君子之光,有孚,吉。《象》曰:“君子之光”,其暉吉也。上九:有孚于飲酒,無咎。濡其首,有孚失是。《象》曰:飲酒濡首,亦不知節也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初六、渡河して尾を濡らす、困窘す。《象伝》に曰く「濡其尾」は、自ら量らずして限度を知らざる。九二、車輪を曳いて急進せしめず、正を守れば吉。《象伝》に曰く、九二の「貞吉」は、中に居って正道を行く能う。六三、事いまだ成らざる時に貿然と前征すれば凶、然れどもこの時まさに大川を渉越して険を出でるを謀るに宜し。《象伝》に曰く「未済、征凶」は、六三の居る位が正しからざる。九四、正を守れば吉を得、悔恨消える。威武を奮い起こして鬼方を討伐し、三年の後に大国の封賞を受く。《象伝》に曰く「貞吉、悔亡」は、心志の施行を得る。六五、正を守れば吉にして悔恨なし。君子の徳輝は外に顕れ、誠信を懐き、吉。《象伝》に曰く「君子之光」は、その光輝が吉慶を齎す。上九、誠信を懐いて飲酒して自楽するは、過ちなし。若し沈湎して頭まで浸湿するに至れば、たとえ誠信ありとも分寸を失う。《象伝》に曰く、飲酒して濡首に至るは、節制を知らざる。
離宮・山水蒙
離宮:《山水蒙》,屬火,艮上坎下。伏神、本卦:父母丙寅木;官鬼丙子水;妻財己酉金,子孫丙戌土,世;兄弟戊午火;子孫戊辰土;父母戊寅木,應。人藏菸草之卦,萬物始生之象。判曰:蒙者,昧也。蒙以養正,山下有泉,回還反覆,迷悶相連。多憂過失,病患相纏,欲進欲追,疑惑不前。
《山水蒙》は「離宮」第五卦、「四世卦」に属し、艮が上、坎が下、卦気は火に属する。装卦は上から下へ、上九は「父母丙寅木」に配し、六五は「官鬼丙子水」に配し、六四は「子孫丙戌土」に配してまた「世」を持ち、その下に「妻財己酉金」が伏し、六三は「兄弟戊午火」に配し、九二は「子孫戊辰土」に配し、初六は「父母戊寅木」に配して「応」となる。卦中に妻財が見えず、錢財婚事を占うには四爻下の伏神を取るべく、「月卦身」は酉金に当たり、卦に上がらず。卦象は「人蔵煙草」と称し、蒙昧にして未だ開けず。また「万物始生」とも。判語に曰く、「蒙」とはすなわち昏昧にして明ならず。蒙昧の時はまさにその正を涵養すべく、山下に泉水涌き出で、盤旋回繞して反覆定まらず、迷悶の事は一椿また一椿。占えば多く憂愁過失あり、疾病纏身す。前進せんと欲しまた追趕せんと欲するも、終に疑惑により前に能わず。
《易經》第四卦,蒙,山水蒙,艮上坎下。蒙:亨。匪我求童蒙,童蒙求我。初筮告,再三瀆,瀆則不告。利貞。《彖》曰:“蒙”,山下有險,險而止,蒙。“蒙,亨”,以亨行時中也。“匪我求童蒙,童蒙求我”,志應也。“初筮告”,以剛中也。“再三瀆,瀆則不告”,瀆蒙也。蒙以養正,聖功也。《象》曰:山下出泉,蒙;君子以果行育德。
これは《周易》第四卦《蒙》で、艮が上、坎が下。卦辞に曰く、《蒙》は亨通せり。我が蒙昧の童に求むるにあらず、童が我に求むるなり。初めて求問すればこれに告げ、一再糾纏すればすなわち褻瀆、褻瀆すれば再び告げず。正を守るに利あり。《彖伝》の解釈に曰く、「蒙」は山下に険あり、険に遇いて歩を止むるゆえ蒙昧を成す。「蒙、亨」は、亨通の道をもって施行し、時宜の中に恰合す。「匪我求童蒙、童蒙求我」は、九二と六五と志意相応ず。「初筮告」は、九二が剛をもって中に居る。「再三瀆、瀆則不告」は、かくのごとくはかえって啓蒙の事を褻瀆す。蒙昧の時にその正を涵養するは、これ聖人を造就する功業。《象伝》に曰く、山下に泉水涌き出ずるは《蒙》の象。君子はこれに法り、事を行うに果決にして、徳性を培育す。
六爻斷:初六:發蒙,利用刑人,用說桎梏;以往吝。《象》曰:“利用刑人”,以正法也。九二:包蒙,吉。納婦,吉;子克家。《象》曰:“子克家”,剛柔接也。六三:勿用取女,見金夫,不有躬,無攸利。《象》曰:“勿用取女”,行不順也。六四:困蒙,吝。《象》曰:困蒙之吝,獨遠實也。六五:童蒙,吉。《象》曰:童蒙之吉,順以巽也。上九:擊蒙,不利為寇,利禦寇。《象》曰:利用禦寇,上下順也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初六、蒙昧を啓発するに、宜しく先ず刑罰をもって威を立て、人に畏懼する所を知らしめて脚鐐手錠を脱せしむべし。若し一味に刑を用いて下去れば、困に致らん。《象伝》に曰く「利用刑人」は、法度を端正するため。九二、寛厚をもって蒙昧の者を包容すれば吉。妻室を娶納すれば吉。子は家事を担当する能く。《象伝》に曰く「子克家」は、九二の剛と六五の柔と上下相接する。六三、かかる女子を娶るなかれ。彼女は有銭有勢の男子を見れば身を失いて相従す。利処なし。《象伝》に曰く「勿用取女」は、その行為が順正の道に合せざる。六四、蒙昧の中に困して、困窘す。《象伝》に曰く、困蒙の困窘の所以は、六四が孤单に九二のごとき剛実の才を遠離する。六五、童子のごとく虚心に求教すれば吉。《象伝》に曰く、童蒙の吉を得るは、それが柔順にして謙遜に聴従する能う。上九、猛力をもって蒙昧を撃破するに、強寇のごとく暴を施すに宜しからず、外寇を防御するがごとく正を護るに宜し。《象伝》に曰く、用いて寇を御ぐに宜しきは、かくのごとくは上下相順ぐ能う。
離宮・風水渙
離宮:《風水渙》,屬火,巽上坎下。伏神、本卦:父母辛卯木;兄弟辛巳火,世;妻財己酉金,子孫辛未土;官鬼己亥水,兄弟戊午火;子孫戊辰土,應;父母戊寅木。順水行舟之卦,大風吹物之象。判曰:渙者,散也。逐波隨水,患難將消,惡事離身,獄訟出牢。利涉大川,舟楫遙遙,出入無滯,福德滔滔。
《風水渙》は「離宮」第六卦、「五世卦」に属し、巽が上、坎が下、卦気は火に属する。装卦は上から下へ、上九は「父母辛卯木」に配し、九五は「兄弟辛巳火」に配してまた「世」を持ち、六四は「子孫辛未土」に配して、その下に「妻財己酉金」が伏し、六三は「兄弟戊午火」に配して、その下に「官鬼己亥水」が伏し、九二は「子孫戊辰土」に配して「応」となり、初六は「父母戊寅木」に配する。卦中に財・鬼の両親はともに卦に上がらず、財を占い訟病を占うにはともに伏神を取るべく、「月卦身」は辰土に当たり、ちょうど二爻に落ちる。卦象は「順水行舟」と称し、また「大風吹物」とも。判語に曰く、「渙」とはすなわち離散である。波に随い流に逐いて下り、患難まさに消解せんとし、悪事は己身を脱離し、牢獄訟事は開釈を得る。大川を渉越するに利あり、舟楫遠行す。出入に阻滞なく、福気徳沢は滔滔として来る。
《易經》第五十九卦,渙,風水渙,巽上坎下。渙:亨。王假有廟,利涉大川,利貞。《彖》曰:“渙,亨”,剛來而不窮,柔得位乎外而上同。“王假有廟”,王乃在中也。“利涉大川”,乘木有功也。《象》曰:風行水上,渙;先王以享于帝立廟。
これは《周易》第五十九卦《渙》で、巽が上、坎が下。卦辞に曰く、《渙》は亨通せり。君王親ら宗廟に至り人心を聚合す、大川を渉越するに利あり、正を守るに利あり。《彖伝》の解釈に曰く、「渙、亨」は、九二の剛が外より来り内に居りて困窮に至らず、六四の柔は外に位を得て九五と同心。「王假有廟」は、君王が中正の位に居る。「利渉大川」は、木舟に乗って水を渡りて成功する能う。《象伝》に曰く、風が水面の上を行き、波紋を吹散すは《渙》の象。先王はこれに法り、上帝を祭享し宗廟を建立し、もって渙散の人心を收合す。
六爻斷:初六:用拯,馬壯,吉。《象》曰:初六之吉,順也。九二:渙奔其機,悔亡。《象》曰:“渙奔其機”,得願也。六三:渙其躬,無悔。《象》曰:“渙其躬”,志在外也。六四:渙其群,元吉。渙有丘,匪夷所思。《象》曰:“渙其群,元吉”,光大也。九五:渙汗其大號,渙王居,無咎。《象》曰:王居無咎,正位也。上九:渙其血去,逖出,無咎。《象》曰:“渙其血”,遠害也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初六、渙散の初めに於て着手して拯救し、借る馬はまた強壮、吉。《象伝》に曰く、初六の吉の所以は、それが柔順にして九二に承順する能う。九二、渙散の時に凭倚すべき几案に奔れば、悔恨消える。《象伝》に曰く「渙奔其机」は、心願を遂げるを得た。六三、自己一身の私念を散去すれば、悔恨なし。《象伝》に曰く「渙其躬」は、その心志が外にあり、意を渙を済すに専らにす。六四、原有の朋党を解散すれば、大吉。散じて復た聚まり、丘陵のごとき大群に聚成するは、これ平常の人の想到し得るにあらず。《象伝》に曰く「渙其群、元吉」は、その道が光明宏大なる。九五、汗出でて返らざるがごとく重大な号令を発布し、君王の積蓄を散尽して天下を済すは、過ちなし。《象伝》に曰く、王居して咎なしは、九五が正位に居る。上九、傷害流血の事を散去せしめ、遠々しく離るれば、過ちなし。《象伝》に曰く「渙其血」は、禍害に遠離る。
離宮・天水訟
離宮:《天水訟》(游魂),屬火,乾上坎下。伏神、本卦:子孫壬戌土;妻財壬申金;兄弟壬午火,世;官鬼己亥水,兄弟戊午火;子孫戊辰土;父母戊寅木,應。縱鷹逐兔之卦,天水相違之象。判曰:訟者,論也。天道西往,水脈東流。求事未遂,心常懷憂。爭訟宜止,可用和休。
《天水訟》は「離宮」の「游魂卦」で、乾が上、坎が下、卦気は火に属する。装卦は上から下へ、上九は「子孫壬戌土」に配し、九五は「妻財壬申金」に配し、九四は「兄弟壬午火」に配してまた「世」を持ち、六三は「兄弟戊午火」に配して、その下に「官鬼己亥水」が伏し、九二は「子孫戊辰土」に配し、初六は「父母戊寅木」に配して「応」となる。卦中に官鬼が見えず、官非訟事を占うには三爻下の伏神を取るべく、「月卦身」は卯木に当たり、卦に上がらず。世爻は兄弟で、耗財争競を主る。卦象は「縦鷹逐兎」と称し、両下相争う。また「天水相違」とも。判語に曰く、「訟」とはすなわち是非を争辯すること。天体は自ら東より西に運行し、水脈は却って自ら西より東に流去す。両者は背道して馳す。求める事は遂願しがたく、心に常に憂慮を懐く。争訟の事は早く止息すべく、和解をもって了結するをよしとす。
《易經》第六卦,訟,天水訟,乾上坎下。訟:有孚窒,惕中吉,終凶。利見大人,不利涉大川。《彖》曰:“訟”,上剛下險;險而健,訟。“訟,有孚窒,惕中吉”,剛來而得中也。“終凶”,訟不可成也。“利見大人”,尚中正也。“不利涉大川”,入于淵也。《象》曰:天與水違行,訟;君子以作事謀始。
これは《周易》第六卦《訟》で、乾が上、坎が下。卦辞に曰く、《訟》卦は誠信ありて阻塞せられ、戒惧を存し中途にして止むれば吉、一味に争い尽せば凶。大人に出見して公断を求むるに利あり、大川を渉越して冒険するに利せざる。《彖伝》の解釈に曰く、「訟」は上卦が剛強、下卦が険陥。内に険を懐き外に強を逞しうゆえ訟を成す。「訟、有孚窒、惕中吉」は、九二の剛が外より来りて中位に居るを得る。「終凶」は、争訟の事は尽頭に作るべからず。「利見大人」は、九五の中正を崇尚す。「不利渉大川」は、かくのごとくは深淵に陥入せん。《象伝》に曰く、天は西に転じ水は東に流れ、両相背離するは《訟》の象。君子はこれに法り、事を作すの初に先ず謀を周にして、争端を生ぜしめず。
六爻斷:初六:不永所事,小有言,終吉。《象》曰:“不永所事”,訟不可長也。雖“小有言”,其辯明也。九二:不克訟,歸而逋。其邑人三百戶,無眚。《象》曰:不克訟,歸逋竄也;自下訟上,患至掇也。六三:食舊德,貞,厲終吉。或從王事,無成。《象》曰:“食舊德”,從上吉也。九四:不克訟,復即命,渝,安貞,吉。《象》曰:“復即命,渝,安貞”,不失也。九五:訟,元吉。《象》曰:“訟,元吉”,以中正也。上九:或錫之鞶帶,終朝三褫之。《象》曰:以訟受服,亦不足敬也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初六、争訟の事を長引かせず、小さく口舌ありと雖も、終に吉利なり。《象伝》に曰く「不永所事」は、争訟は長久すべからず。些許の口角ありと雖も、是非は終に辯明し分かる。九二、訟に勝つ能わず、急いで帰りて避け、その三百戸の小邑は灾を免るるを得る。《象伝》に曰く、訟に勝たざれば帰りて逃避す。在下の身をもって在上の者と争訟すれば、禍患の来るは手を伸べて拾うがごとく易し。六三、旧有の俸禄徳業を安享し、正を守り危を防げば、終に吉利なり。或いは往きて君王の差事を辦理するも、その功を居らず。《象伝》に曰く「食旧徳」は、在上の者に随従してはじめて吉を得る。九四、訟に勝つ能わず、頭を回らして正理に依就し、争訟の心を改変し、正を守るに安んずれば、吉。《象伝》に曰く「復即命、渝、安貞」は、かくのごとくは便ち失う所有らざる。九五、中正の位に居りて訟を聴き獄を断ずれば、大吉。《象伝》に曰く「訟、元吉」は、九五が中正にして偏なきによる。上九、争訟により大帯の栄を賜るを得るも、一朝にして三度剥奪せらる。《象伝》に曰く、争訟を靠って得たる服飾の栄は、また敬重に値せず。
離宮・天火同人
離宮:《天火同人》(歸魂),屬火,乾上離下。【本卦】子孫壬戌土,應;妻財壬申金;兄弟壬午火;官鬼己亥水,世;子孫己丑土;父母己卯木。游魚從水之卦,管鮑分金之象。判曰:同人者,親也。同心之言,其臭如蘭。二人同心,其利斷金。所求皆得,無不稱心。
《天火同人》は「離宮」の「帰魂卦」で、乾が上、離が下、卦気は火に属する。装卦は上から下へ、上九は「子孫壬戌土」に配して「応」となり、九五は「妻財壬申金」に配し、九四は「兄弟壬午火」に配し、九三は「官鬼己亥水」に配してまた「世」を持ち、六二は「子孫己丑土」に配し、初九は「父母己卯木」に配する。父・兄・子・財・官の五親すべて備わり、「月卦身」は寅木に当たり、卦に上がらず。卦象は「游魚従水」と称し、相得て相離れず。また「管鮑分金」とも称し、管仲と鮑叔牙と財を分き相知る旧事を用いて、朋友の同心を喻す。判語に曰く、「同人」とはすなわち親和である。《系辞》に同心の人の言う所の言は、気味芬芳として蘭草のごとしと講じ、両人同心すれば、その鋒利は金属を断断するに足ると。この卦を占い得れば、求むる所は皆手に到り、意に称わざるなし。
《易經》第十三卦,同人,天火同人,乾上離下。同人:同人于野,亨。利涉大川,利君子貞。《彖》曰:“同人”,柔得位得中而應乎乾,曰同人。同人曰。“同人于野,亨,利涉大川”,乾行也。文明以健,中正而應,君子正也。唯君子為能通天下之志。《象》曰:天與火,同人;君子以類族辨物。
これは《周易》第十三卦《同人》で、乾が上、離が下。卦辞に曰く、人と和同するは旷野のごとき公にして私なき地方に至るべし、亨通せり。大川を渉越するに利あり、君子の正を守るに利あり。《彖伝》の解釈に曰く、六二は柔をもって正に居り中を得て上に九五の乾に応ずるゆえ「同人」と曰う。(この下の「同人曰」の三字は、底本は通行本の旧を承け、文に脱誤ありて強解すべからず。)「同人于野、亨、利渉大川」は、乾健の徳が推行する。内の離は文明にして外の乾は剛健、六二九五が中正に相応じ、これ正しく君子の正道。ただ君子のみが能く天下人の心志を会通す。《象伝》に曰く、天は上に在り火は炎上し、同じ向に行くは《同人》の象。君子はこれに法り、族類により事物を区分し異同を辨明す。
六爻斷:初九:同人于門,無咎。《象》曰:出門同人,又誰咎也?六二:同人于宗,吝。《象》曰:“同人于宗”,吝道也。九三:伏戎于莽,升其高陵,三歲不興。《象》曰:“伏戎于莽”,敵剛也。“三歲不興”,安行也。九四:乘其墉,弗克攻,吉。《象》曰:“乘其墉”,義弗克也。其吉,則困而反則也。九五:同人先號啕而後笑。大師克相遇。《象》曰:同人之先,以中直也。大師相遇,言相剋也。上九:同人于郊,無悔。《象》曰:“同人于郊”,志未得也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初九、門を出でて便ち人と和同し、親疎を分かたず、過ちなし。《象伝》に曰く、門を出でて人と和同するは、また誰か責むる能わん。六二、ただ自家の宗族の裏に党を結び相同ずるは、困窘す。《象伝》に曰く「同人于宗」は、これ一条の困吝に通ずる路。九三、兵士を草莽の裏に埋伏し、また高陵に登りて瞭望す、三年して敢えて発動せず。《象伝》に曰く「伏戎于莽」は、相手の九五が太だ剛強なり。「三歳不興」は、かくのごとくは如何して行き通さん。九四、相手の城墻に登り乗るも、終に進攻せず、吉。《象伝》に曰く「乗其墉」は、義理により本より攻むべからず。その吉の所以は、困に遇うて能く法則に返帰す。九五、人と和同して、先に号啕大哭して後に歓笑し、大軍を出動して阻隔に戦勝して後に相遇を得る。《象伝》に曰く、同人が先に号啕するは、九五が中正にして心直し。大軍相遇は、中間の阻隔を克服したを言う。上九、城外の郊野に於て人と和同すれば、悔恨なし。《象伝》に曰く「同人于郊」は、和同の志はいまだ完全に実現する能わず。
坤宮・坤為地
坤宮:《坤為地》(六沖),屬土,坤上坤下。【本卦】子孫癸酉金,世;妻財癸亥水;兄弟癸丑土;官鬼乙卯木,應;父母乙巳火;兄弟乙未土。生載萬物之卦,博厚無疆之象。判曰:坤者,順也。乃順成天,萬物資生。用動則濁,用靜則清。所作有順,萬物皆成。
《坤為地》は「坤宮」の首卦で、上下ともに坤、「八純卦」に属し、六爻が自ら相冲するので「六冲」と標し、卦気は土に属する。装卦は上から下へ、上六は「子孫癸酉金」に配してまた「世」を持ち、六五は「妻財癸亥水」に配し、六四は「兄弟癸丑土」に配し、六三は「官鬼乙卯木」に配して「応」となり、六二は「父母乙巳火」に配し、初六は「兄弟乙未土」に配する。父・兄・子・財・官の五親すべて備わり、「月卦身」は亥水に当たり、ちょうど五爻に落ちる。卦象は「生載万物」と称し、また「博厚无疆」とも。判語に曰く、「坤」の徳性は順である。それは天道を順承して化育を成就し、万物は皆それに靠って生長を得る。これをもって妄動すれば、気は濁りて事は乱れ。これをもって静を持すれば、気は清く事は明らかなり。行いが順道に合すれば、万物は皆成就する能く。
《易經》第二卦,坤,坤為地,坤上坤下。坤:元亨,利牝馬之貞。君子有攸往,先迷後得,主利。西南得朋,東北喪朋。安貞吉。《彖》曰:至哉坤元!萬物資生,乃順承天。坤厚載物,德合無疆,含弘光大,品物咸亨。牝馬地類,行地無疆,柔順利貞,君子攸行。先迷失道,後順得常。西南得朋,乃與類行。東北喪朋,乃終有慶。安貞之吉,應地無疆。《象》曰:地勢坤,君子以厚德載物。
これは《周易》第二卦《坤》で、上下ともに坤。卦辞に曰く、《坤》は大いに亨通し、宜しく母馬のごとき柔順の正道を守るべし。君子往く所有り、先んじて抢すれば迷失し、後れて跟従すれば得る所有り、かくのごとくはじめて利に主ぜらる。西南に往けば同類の朋助を得、東北に往けば朋類を失う。正を守るに安んずれば吉。《彖伝》の讃嘆に曰く、偉大なるかな坤の元始の徳。万物はそれに依頼して生長し、それは上天を順承す。坤は厚重にして万物を承載し、徳性は広大にして辺際なく、含容宏遠にして光明博大、各類の物品はこれにより皆亨通す。母馬は地に属する物にして、大地を奔行して窮尽なく、柔順にして正を守るに利あり、正しく君子の行うべき道。先んじて妄動すれば正道を迷失し、後れて順従すれば常理に合す。「西南得朋」は、同類と同行する。「東北喪朋」は、朋を捨て陽に従いて終に吉慶を得る。正を守るに安んずるの吉の所以は、大地の無辺の徳性に順応する。《象伝》に曰く、大地の形勢はすなわち坤順、君子はこれに法り、深厚の徳行をもって万物を承載す。
六爻斷:初六:履霜,堅冰至。《象》曰:履霜堅冰,陰始凝也。馴致其道,至堅冰也。六二:直方大,不習無不利。《象》曰:六二之動,直以方也。“不習無不利”,地道光也。六三:含章可貞。或從王事,無成有終。《象》曰:“含章可貞”,以時發也。“或從王事”,知光大也。六四:括囊,無咎,無譽。《象》曰:“括囊,無咎”,慎不害也。六五:黃裳,元吉。《象》曰:“黃裳,元吉”,文在中也。上六:戰龍于野,其血玄黃。《象》曰:“戰龍于野”,其道窮也。用六:利永貞。《象》曰:用六永貞,以大終也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初六、脚下に霜を履むれば、堅氷まさに至らんと知るべし。《象伝》に曰く、霜を履みて堅氷を知るは、陰気まさに凝結を始む。この路に順い一步步下去すれば、終に堅氷を結成す。六二、正直・方正・宏大にして、学習演練を待たずして利せざるなし。《象伝》に曰く、六二の挙動は、直にして且つ方なり。「不習无不利」は、地道の光明は自然にかくのごとし。六三、文采を含蓄して正を守る能く。或いは往きて君王の差事を辦するも、その成を居らずして終を有する能く。《象伝》に曰く「含章可貞」は、時を待ちて発す。「或従王事」は、その智識が光明宏大なる。六四、口袋を扎緊するがごとく緘黙収斂すれば、過ちなく称誉もなし。《象伝》に曰く「括嚢、无咎」は、謹慎に自守すれば害を招かざる。六五、黄色の下裳を着せば、大吉。《象伝》に曰く「黄裳、元吉」は、文徳が中に蕴含す。上六、龍が郊野の上に争戦し、青黄相雑の血を流出す。《象伝》に曰く「戦龍于野」は、陰道すでに窮極に到る。用六、長久に正を守るに利あり。《象伝》に曰く、用六にして長久に正を守る能うは、広大の徳をもってその終を善くする。
坤宮・地雷復
坤宮:《地雷復》(六合),屬土,坤上震下。伏神、本卦:子孫癸酉金;妻財癸亥水;兄弟癸丑土,應;兄弟庚辰土;父母乙巳火,官鬼庚寅木;妻財庚子水,世。淘沙見金之卦,反覆往來之象。判曰:復者,反也。內悅外順,舉動無違。世應相合,遷官益財。失而復得,往而復來。婚姻占得,夫婦和諧。
《地雷復》は「坤宮」第二卦、「一世卦」に属し、坤が上、震が下、六爻が両両相合するので「六合」と標し、卦気は土に属する。装卦は上から下へ、上六は「子孫癸酉金」に配し、六五は「妻財癸亥水」に配し、六四は「兄弟癸丑土」に配して「応」となり、六三は「兄弟庚辰土」に配し、六二は「官鬼庚寅木」に配して、その下に「父母乙巳火」が伏し、初九は「妻財庚子水」に配してまた「世」を持つ。卦中に父母が見えず、文書屋宅を占うには二爻下の伏神を取るべく、「月卦身」は子水に当たり、ちょうど初爻に落ちる。卦象は「淘沙見金」と称し、久しく淘してはじめて得る。また「反覆往来」とも。判語に曰く、「復」とはすなわち返回である。内卦は震動にして喜悦、外卦は坤徳にして柔順、一挙一動皆違逆せず。世爻と応爻と相合し、官職を升遷し錢財を増益するを主る。失えるは重新に得る能く、去れるはなお還り来る。婚姻を占ってこの卦を得れば、夫妻和睦す。
《易經》第二十四卦,復,地雷復,坤上震下。復:亨。出入無疾,朋來無咎。反復其道,七日來復。利有攸往。《彖》曰:“復,亨”,剛反。動而以順行,是以“出入無疾,朋來無咎”。“反復其道,七日來復”,天行也。“利有攸往”,剛長也。復其見天地之心乎!《象》曰:雷在地中,復;先王以至日閉關,商旅不行,后不省方。
これは《周易》第二十四卦《復》で、坤が上、震が下。卦辞に曰く、《復》は亨通せり。陽気は出入して損害を受けず、同類の前来するも過ちなし。往返してその道に循環し、七日すれば一回回復す。往く所有るに利あり。《彖伝》の解釈に曰く、「復、亨」は、一陽が卦中に返回す。内は震動し坤順に依て行くゆえ、「出入无疾、朋来无咎」。「反復其道、七日来復」は、天道の運行かくのごとし。「利有攸往」は、陽剛まさに生長す。《復》卦により、大概天地の生生不息の本心を見るべきか。《象伝》に曰く、雷は地中に蔵するは《復》の象。先王はこれに法り、冬至の日に関口を閉鎖し、商旅は出行せず、君主も四方を巡視せずして、一陽を静養せしむ。
六爻斷:初九:不遠復,無祗悔,元吉。《象》曰:不遠之復,以修身也。六二:休復,吉。《象》曰:休復之吉,以下仁也。六三:頻復,厲無咎。《象》曰:頻復之厲,義無咎也。六四:中行獨復。《象》曰:“中行獨復”,以從道也。六五:敦復,無悔。《象》曰:“敦復,無悔”,中以自考也。上六:迷復,凶,有災眚。用行師,終有大敗;以其國,君凶,至于十年不克征。《象》曰:迷復之凶,反君道也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初九、走ること遠からずして頭を回らせば、大きな悔恨を醸成するに至らず、大吉。《象伝》に曰く、遠からずして復るは、正しく自身を修養するを用う。六二、美善に回帰すれば吉。《象伝》に曰く、休復の吉の所以は、それが己を屈して初九のごとき仁者に下従する能う。六三、屡々失い屡々頭を回らす、危厉ありと雖も過ちなし。《象伝》に曰く、頻復は危なしと雖も、道義上に於ては咎責なし。六四、衆陰の中を走りて独り正道に回帰す。《象伝》に曰く「中行独復」は、正道に随従するため。六五、敦厚篤実に回帰すれば、悔恨なし。《象伝》に曰く「敦復、无悔」は、中に居りて能く自我省察す。上六、方向を迷失して頭を回らすを知らず、凶、災禍有らん。これをもって行軍打仗に用いれば、終に大敗す。これをもって国を治むれば、国君も凶に遭い、十年の久しきに至るまで征伐するに力なし。《象伝》に曰く、迷復の凶の所以は、為君の道に違反する。
坤宮・地沢臨
坤宮:《地澤臨》,屬土,坤上兌下。【本卦】子孫癸酉金;妻財癸亥水,應;兄弟癸丑土;兄弟丁丑土;官鬼丁卯木,世;父母丁巳火。鳳入雞群之卦,以上臨下之象。判曰:臨者,大也。以大臨小,以上臨下,內柔外和,人非欺詐。居官進升,文才和雅。縱有災害,不能相惹。
《地沢臨》は「坤宮」第三卦、「二世卦」に属し、坤が上、兌が下、卦気は土に属する。装卦は上から下へ、上六は「子孫癸酉金」に配し、六五は「妻財癸亥水」に配して「応」となり、六四は「兄弟癸丑土」に配し、六三は「兄弟丁丑土」に配し、九二は「官鬼丁卯木」に配してまた「世」を持ち、初九は「父母丁巳火」に配する。父・兄・子・財・官の五親すべて備わり、「月卦身」は丑土に当たり、三爻と四爻の上にともに有り、これ卦身両見なり。卦象は「鳳入鶏群」と称し、才徳衆に出ずるも庸常の中に屈居す。また「以上臨下」とも。判語に曰く、「臨」は大をもって小に臨むの義あり。尊大の者をもって卑小の者に臨み、在上の者をもって在下の者に臨み、内心柔和にして外貌温順なれば、遇う所の人は欺詐の心を存せず。官を為すは升遷を望むべく、文才は温雅にして観るべし。たとえ災害の事ありとも、己の身に惹く能わず。
《易經》第十九卦,臨,地澤臨,坤上兌下。臨:元亨,利貞。至于八月有凶。《彖》曰:“臨”,剛浸而長,說而順,剛中而應。大亨以正,天之道也。“至于八月有凶”,消不久也。《象》曰:澤上有地,臨;君子以教思無窮,容保民無疆。
これは《周易》第十九卦《臨》で、坤が上、兌が下。卦辞に曰く、《臨》は大いに亨通し、正を守るに利あり。八月に至れば凶悪有らん。《彖伝》の解釈に曰く、「臨」は二陽が漸々に生長して上り、内の兌は喜悦にして外の坤は柔順、九二は剛をもって中に居りて上に六五に応ず。大いに亨通にしてまた正道より出ずるは、これ天の法則。「至于八月有凶」は、陽長の勢いまもなく消退に転ずるを言う。《象伝》に曰く、沼沢の上に大地が俯臨するは《臨》の象。君子はこれに法り、人民を教誨するの心に窮尽なく、百姓を容納保育するに疆界なし。
六爻斷:初九:咸臨,貞吉。《象》曰:“咸臨,貞吉”,志行正也。九二:咸臨,吉,無不利。《象》曰:“咸臨,吉,無不利”,未順命也。六三:甘臨,無攸利。 既憂之,無咎。《象》曰:“甘臨”,位不當也。“既憂之”,咎不長也。六四:至臨,無咎。《象》曰:“至臨,無咎”,位當也。六五:知臨,大君之宜,吉。《象》曰:“大君之宜”,行中之謂也。上六:敦臨,吉,無咎。《象》曰:敦臨之吉,志在內也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初九、感通の心をもって下に臨み、正を守れば吉を得る。《象伝》に曰く「咸臨、貞吉」は、その心志の行う所が正道に合す。九二、感通の心をもって下に臨めば吉にして利せざるなし。《象伝》に曰く、「咸臨、吉、无不利」の所以は、それが一味に上命に順従せず、能く自主してその正を持つ。六三、甜言好臉を用いて下に臨むは、利処なし。すでに憂を知りて改むれば、災禍有らざる。《象伝》に曰く「甘臨」は、六三の居る位が当を得ざる。「既憂之」は、過咎は長久ならざる。六四、身を親しみ切近に下に臨めば、過ちなし。《象伝》に曰く「至臨、无咎」は、六四の居る位が当を得る。六五、明智をもって下に臨むは、これ大君の有るべき作法、吉。《象伝》に曰く「大君之宜」は、事を行うに中道に合するを言う。上六、敦厚篤実に下に臨めば吉にして過ちなし。《象伝》に曰く、敦臨の吉の所以は、その心志が内に向かい、下の二陽を眷顾する。
坤宮・地天泰
坤宮:《地天泰》(六合),屬土,坤上乾下。伏神、本卦:子孫癸酉金,應;妻財癸亥水;兄弟癸丑土;兄弟甲辰土,世;父母乙巳火,官鬼甲寅木;妻財甲子水。天地交暢之卦,小往大來之象。判曰:泰者,通也。天地交泰,陰陽和光,麒麟悉出,丹鳳來翔。小人道滅,君子道昌,求謀順遂,惡事消亡。
《地天泰》は「坤宮」第四卦、「三世卦」に属し、坤が上、乾が下、六爻が両両相合するので「六合」と標し、卦気は土に属する。装卦は上から下へ、上六は「子孫癸酉金」に配して「応」となり、六五は「妻財癸亥水」に配し、六四は「兄弟癸丑土」に配し、九三は「兄弟甲辰土」に配してまた「世」を持ち、九二は「官鬼甲寅木」に配して、その下に「父母乙巳火」が伏し、初九は「妻財甲子水」に配する。卦中に父母が見えず、文書屋宅を占うには二爻下の伏神を取るべく、「月卦身」は寅木に当たり、ちょうど二爻に落ちる。卦象は「天地交暢」と称し、また「小往大来」とも。判語に曰く、「泰」とはすなわち通達である。天地の気は交感して通泰し、陰陽調和して各々その明を顕し、麒麟は一斉に出現し、丹鳳は飛翔して来る。小人の道は消滅し、君子の道は昌盛す。謀求する所は順利に遂心し、悪事は自然に消亡す。
《易經》第十一卦,泰,地天泰,坤上乾下。泰:小往大來,吉亨。《彖》曰:“泰,小往大來,吉亨”。則是天地交而萬物通也,上下交而其志同也。內陽而外陰,內健而外順,內君子而外小人,君子道長,小人道消也。《象》曰:天地交,泰;后以財成天地之道,輔相天地之宜,以左右民。
これは《周易》第十一卦《泰》で、坤が上、乾が下。卦辞に曰く、《泰》は陰柔が外に往き陽剛が内に来り、吉利亨通せり。《彖伝》の解釈に曰く、いわゆる「泰、小往大来、吉亨」は、正しく天地の気が相交りて万物通暢し、君臣上下が相交りて心志相同じ。内卦は陽、外卦は陰、内は剛健にして外は柔順、内裏に君子を安置して小人を外に排す。これにより君子の道は生長し、小人の道は消退す。《象伝》に曰く、天地交感するは《泰》の象。君主はこれに法り、裁節して天地の道を成就し、輔佐して天地の宜を調理し、もって百姓を教養輔佐す。
六爻斷:初九:拔茅茹以其匯,征吉。《象》曰:拔茅征吉,志在外也。九二:包荒,用馮河,不遐遺。朋亡,得尚于中行。《象》曰:“包荒”,“得尚于中行”,以光大也。九三:無平不陂,無往不復。艱貞無咎,勿恤其孚,于食有福。《象》曰:“無往不復”,天地際也。六四:翩翩,不富以其鄰,不戒以孚。《象》曰:翩翩不富,皆失實也。“不戒以孚”,中心願也。六五:帝乙歸妹,以祉元吉。《象》曰:“以祉元吉”,中以行願也。上六:城復于隍。勿用師,自邑告命,貞吝。《象》曰:“城復于隍”,其命亂也。
爻ごとの断辞は次のとおり。初九、茅草を拔き起こせば、根鬚が同類を牽連してともに出ず、往けば吉。《象伝》に曰く、茅を拔きて征して吉を得るは、心志が外に向かい進取す。九二、荒穢を包容する能く、敢えて徒歩して大河を渉り、疎遠の人を遺漏せず。私党を結ばざれば、はじめて中正の道に配するを得る。《象伝》に曰く「包荒」にして「得尚于中行」は、九二の徳量が光明宏大なる。九三、一直に平坦にして傾斜せざるはなく、一に往きて返回せざるもなし。艱難の中に正を守れば過ちなく、自己の誠信を憂慮するを須いず、禄食を享用して自ら福分あり。《象伝》に曰く「无往不復」は、天地陰陽交接の処は必ずかくのごとし。六四、軽飄飄として群を成して降下し、富厚を待たずして隣伴を帯動し、また告戒を須いずして彼此信従す。《象伝》に曰く、翩翩として富まざるは、衆陰皆陽実を失う。「不戒以孚」は、内心の意願より出づ。六五、帝乙が少女を嫁出せば、これにより福を得、大吉。《象伝》に曰く「以祉元吉」は、六五が中に居りて能く心願を実行す。上六、城墻が倒塌して乾壕に帰る。この時用兵すべからず、ただ自己の邑中より命令を申告するに宜し、正を守るも困吝を免れがたし。《象伝》に曰く「城復于隍」は、政令すでに紊乱せり。
