噬嗑の林(噬嗑卦六十四林)
巽 懷璧越鄉,不可遠行。蔡侯兩裘,久苦流離。
寶璧を懷揣して鄉を離れて遠く去る、此のごときは遠門を出ずるに宜ならず。蔡侯只だ兩件の裘衣に因りて楚人を罪し、扣留せられて長久困苦流離す、事《左傳》に見ゆ。此の林財に因りて禍を賈い、羈旅して歸り難きを主とし、遠行を占問うに凶。
兌 伯氏歸國,多所恨惑。車頓蓋傾,身常驚惶。乃得其願,雌雄相從。
伯氏本國に返回し、心中怨恨と疑惑と多し。車子顛覆し車蓋傾倒し、一路驚慌して安んぜず。最終卻って心願を遂げ、雌雄相隨相合す。此の林先に險にして後に遂う、終に團圓を得るを主とし、家に歸ると婚姻とを占問うに先に凶にして後に吉。
渙 火石相得,乾無潤澤,利少囊縮。
火と石と相い擊して熱を生じ、乾燥の極毫も潤澤なく、利息微薄にして、錢囊一天天乾癟す。此の林燥竭して資無く、利を獲ること甚少しを主とし、財を求むるを占問うに利ならず。
節 君明聖哲,鳴呼其友。顯德之徒,可以禮仕。
君主聖明睿智にして、鳴禽の同伴を呼喚するがごとく賢友を招來す、《詩經・小雅・伐木》正に鳥鳴して友を求むるの義を取る。徳行顯著の人、禮を依りて出仕する可し。此の林明主賢を求め、士其の時を得るを主とし、官を求めと薦擧とを占問うに皆吉。
中孚 騎豚逐羊,不見所望。徑涉虎廬,亡豚失羊。乾之蹇)
小豬を騎りて羊群を追趕に往けば、指望する物一樣も追上げ得ず。また徑直に老虎の巢穴を闖過し、結果猪無くなり、羊もまた丢了。此の林恃む所人に非ず、貪求して兩失するを主とし、財を求めと追討とを占問うに皆凶。同辭また「乾の蹇」に見ゆ。
小過 元黃虺隤,行者勞罷。役夫憔悴,處子猥衰。
馬病みて毛色黯淡・腿脚發軟す、《詩經・周南・卷耳》正に「我が馬虺隤」の句有り。路を趕る人もまた疲勞不堪なり。服役の人形容憔悴し、閨中の女子隨い之枯槁す。此の林行役困頓し、內外交瘁するを主とし、出行と身體とを占問うに皆利ならず。
既濟 右手掩目,不見長叔。失其所得,悔吝相仍。
右手を以て眼睛を遮住し、自家の長輩叔父すらも看不見ず。已に手に到手したる物また失了、悔恨と吝惜と接續して斷えず。此の林自ら其の明を蔽い、得て復た失うを主とし、成を守ると財を理するとを占問うに皆凶。
未濟 免冠進賢,步出朝門。儀體不正,賊孽為患。否之兌)
官帽を脫下し賢能を推擧し、緩步して朝堂大門を走出す。然るに儀容擧止法度に合せず、奸邪の輩便ち隙に乘じて害を爲す。此の林賢に讓るは善なると雖も自處儀を失し、終究禍端を啓開すを主とし、官事を占問うに禮法を謹守するに宜し。同辭また「否の兌」に見ゆ。
剥の林(剥卦六十四林)
剝 行觸大諱,與司命忤。執囚束縛,拘制於吏。憂人有喜。中孚之震)
行事重大の忌諱に觸犯し、人の生死を掌る司命の神と相い抵牾し、因りて捉拿捆縛せられ、官吏の拘管を受く。幸いに憂愁の人終に喜事有り。此の林忌を犯して刑を招き、先に囚われて後に釋かるを主とし、官訟を占問うに先に凶にして後に吉。同辭また「中孚の震」に見ゆ。
乾 穿胸狗邦,僵離旁舂。天地易紀,日月更始。師之謙)
穿胸國・狗國此等の遠方異邦、《山海經》貫胸の民と犬封の國とを載す。彼の處の人僵仆流離し、只だ傍に在りて米を舂き役に服するを得。天地綱紀を更換し、日月重ねて開始す。此の林世道劇變し、舊秩序崩壞するを主とし、占問うに元を改め主を易うるの象有り、靜觀して時を待つに宜し。同辭また「師の謙」に見ゆ。
坤 從風縱火,荻芝俱死。三害集房,十子中傷。
風勢に順いて火を放ち、蘆荻と靈芝と一同に燒死し、好壞俱に毀る。三樣の禍害屋の中に聚集し、十個の孩子皆傷を受く。此の林玉石俱に焚れ、子孫に殃及ぶを主とし、家宅を占問うに大凶。
屯 北山有棗,橘柚所聚。荷囊載擔,香盈筐筥。
北山上棗樹を長せ、亦た橘柚の匯聚の處なり。口袋を背起し擔子を挑上して前去して采摘すれば、香氣圓筐方筥に裝滿す。此の林物産豐饒にして、獲を載せて歸るを主とし、財を求めと遠行して利を獲るとを占問うに皆吉。
蒙 □金贖狸,不聽我辭。繫於虎鬚,牽不得來。否之革,需之睽,震之咸,巽之需)
錢を以て狸貓を贖回せんと往くも、對方卻って我が說辭を聽かず。あの狸老虎の鬚の上に拴がれ、怎麼牽くも牽き過來ず。此の林求む所强者に受制し、贖討功なきを主とし、失物と人情とを占問うに皆遂い難し。同辭また「否の革」「需の睽」「震の咸」「巽の需」に見ゆ。
需 上下惟邪,寡婦無夫。歡心隔塞,君子離居。
上上下下皆邪路を走り、寡婦丈夫依る可きなし。歡好の心阻隔壅塞せられ、君子只だ家を離れて別居するを得。此の林風俗敗壞し、情意通通ぜざるを主とし、婚姻と家宅とを占問うに皆凶。
訟 二人輦車,徙去其家。並沸釜鳴,不可安居。復之旅)
兩個の人車子を推し、家を擧げて搬遷離去す。鍋中水一齊に沸騰して釜鳴響を發す、此れ不祥の兆にして、再び安居する能わず。此の林遷徙動蕩し、宅守る可からざるを主とし、居處を占問うに凶。同辭また「復の旅」に見ゆ。
師 蹇驢不才,駿驥失時。筋力勞盡,罷於沙丘。履之巽)
跛驢本來才力なく、駿馬また生まれて時に逢わず。筋力耗尽し、困頓して沙丘に倒斃す。此の林良材時を失い、力竭きて成るなきを主とし、人を用ゐと遠行とを占問うに皆利ならず。同辭また「履の巽」に見ゆ。
比 明傷之初,為穆出郊。以讒復歸,名曰豎牛。剝亂叔孫,飫於空丘。
光明初めて損傷を受くるの時、穆子の緣故に因りて郊外に出づ。此の人讒言を進るを靠りて回來を得、名づけて豎牛と曰う。《左傳》豎牛の叔孫氏の家を攪亂し、終に叔孫穆子をして餓死せしめ、自己卻って空丘に飽食するを載す。此の林讒佞家を亂り、嫡庶序を失うを主とし、家事を占問うに大凶。
小畜 天火大起,飛鳥驚駭。作事不時,為多咎。
天大火を降して熊熊と燃え起き、飛鳥驚駭して四散す。事を做すに時宜に合せず、因りて災咎多し。此の林天災驟に至り、擧動時を失うを主とし、諸事を占問うに利ならず。
履 土與山連,共保歲寒。終無災患,萬世長安。
平地と高山と相い連なり、一同に歲末の嚴寒を守住す。始終災禍なく、萬代長久安寧す。此の林基業厚重にして、久安して危ならざるを主とし、家宅と國運とを占問うに皆大吉。
泰 日出阜東,山蔽其明。章甫薦履,箕子佯狂。賁之屯)
太陽東邊の土山より升起すれど、卻って高山に光明を遮蔽せらる。章甫の禮冠を墊きて鞋子と作す、尊卑顛倒す。箕子紂王の亂に面對し、只だ佯狂して禍を免るるを得。此の林賢才抑を受け、時事昏亂するを主とし、隱晦して自ら全うするに宜し。同辭また「賁の屯」に見ゆ。
否 龍馬上山,絕無水泉。喉焦唇乾,口不能言。乾之訟)
竜馬高山に奔上すれど、山上一點の泉水もなし。喉嚨焦渴して嘴唇乾裂し、話すらも說出す能わず。此の林高に處りて其の資とする所を失い、才大にして養う所無きを主とし、財を求めと助を求むるとを占問うに皆着落なく、凶。同辭また「乾の訟」に見ゆ。
同人 雄處弱水,雌在海濱。將別持食,悲哀於心。
雄鳥西方の弱水に棲し、雌鳥遙かに東邊の海濱に在り。弱水《山海經》に見ゆ、遙かに涉る可からざるの水なり。別れに臨みて各々食物を銜みて、心中一片悲哀なり。此の林兩地相隔て、生離して聚まり難きを主とし、婚姻と遠行とを占問うに別離を主とす。
大有 庭燎夜明,追嗣日光。陽軟不至,陰雄生戾。
庭中火炬を燃起して長夜を照亮し、勉强して白日の光明を接續す、《詩經・小雅・庭燎》正に朝會に燭を秉るの事を詠む。陽氣衰弱して時に按じて至る能わず、陰氣反つて雄位に居りて乖戾を生出す。此の林主弱くして臣强し、陰陽位を失うを主とし、家國を占問うに皆內變の憂有り。
謙 三婦同夫,忽不相思。志恆不愁,顏色不怡。
三個の婦人一夫に共事し、彼此漠然として並びに相い念ぜず。心志憂愁と說くに足らずと雖も、臉色總じて歡愉ならず。此の林同室にして心を離れ、貌合せども神離るるを主とし、家事と合伙とを占問うに皆和睦し難し。
豫 鶴盜我珠,逃於東都。鵠怒追求,郭氏之墟。不見蹤跡,反為患災。豫之明夷)
鶴我が明珠を銜走して、東都に逃往す。鵠鳥憤然として追討し、一直に郭氏の廢墟に追到す。蹤跡全無く、反つて災患を惹上す。此の林物を失いて追い難く、窮究して禍を招くを主とし、失脫と爭訟とを占問うに皆凶。同辭また「豫の明夷」に見ゆ。
隨 沐猴冠帶,盜在非位。眾犬共吠,倉狂蹶足。
獼猴冠帶を戴きて人樣を裝い、本來占むべからざる位子を竊據す、《史記・項羽本紀》之を譏りて「沐猴而冠」と爲す。衆犬一齊に狂吠し、它倉皇失措して一跤を跌す。此の林小人位を竊び、衆怒當たり難きを主とし、官を求めと人を用ゐとを占問うに皆凶。
蠱 黍稷禾稻,垂畝方好。中旱不雨,傷風病稿。
黍・稷・禾・稻田壟に掛滿し、長勢正に好し。中途大旱不雨に遭遇し、また風の傷る所と爲り、禾苗枯槁して病と成る。此の林先に盛んにして後に衰え、功敗れて成に垂ぼさるを主とし、農事と事を謀るとを占問うに中折の憂有り。
臨 雄聖伏名,人匿麟遠。走鳳飛北,亂禍未息。中孚之損)
雄杰聖者名聲を隱藏し、賢人躲避して麒麟遠去す。鳳凰北に飛走し、禍亂始終平息せず。此の林賢者世を遁れ、亂象未だ止まざるを主とし、時局を占問うに安んぜず、退藏して出づる勿れに宜し。同辭また「中孚の損」に見ゆ。
觀 三母多福,天祿所伏。居之寵光,君子有福。
太姜・太任・太姒三位の賢母福澤深厚にして、天賜の祿位便ち此の裏に潜藏す。周室三母の賢《列女傳》に見ゆ。此の高位に居りて寵榮を享け、君子因りて福有り。此の林善を積む家慶餘り有るを主とし、家門と子嗣とを占問うに皆吉。
噬嗑 被服文德,升入大麓。四門雍肅,登受大福。
文徳の教を身披り、山麓深林に進入して試を受く。《尚書・舜典》舜の「大麓に納る」を載す、また「四門に賓して、四門穆穆たり」。四方の門肅穆して序有り、因りて位に登りて大福を承受す。此の林徳備わりて命を受け、拔擢望み有るを主とし、進を求むるを占問うに大吉。
賁 褰裳涉河,水流漬衣。幸賴舟子,濟脫無他。觀之渙,賁之大過,坤之萃)
下裳を撩起して徒步して河を渡れば、水流衣裳を浸濕せしむ。幸いに船夫の相渡する有りて、纔に平安して險を脫し、別の禍事なし。此の林險を涉りて救を得、驚有りて險なきを主とし、危難を占問うに人の扶助を得れば則ち吉。同辭また「觀の渙」「賁の大過」「坤の萃」に見ゆ。
復 班馬還師,以息勞疲。役夫嘉喜,入戶見妻。觀之既濟,賁之蠱)
軍馬師を班にして朝に回り、疲憊の士卒をして休息を得せしむ。服役の人歡喜萬分にして、門に進めば便ち妻子を見る。此の林征役告終し、夫妻重逢するを主とし、家に歸ると久事の成を得とを占問うに皆吉。同辭また「觀の既濟」「賁の蠱」に見ゆ。
旡妄 東鄰嫁女,為王妃后。莊公築館,以尊王母。歸於京師,季姜悅喜。
東邊の鄰國女兒を嫁出し、天子の妃后と做る。魯莊公彼女のために館舍を修築し、以て王姬を尊崇す。《春秋》莊公の王姬の館を外に築くを載す。女子京師に歸し、季姜心中歡喜す。此の林女貴して宮に入り、婚姻高攀するを主とし、嫁娶を占問うに大吉。
大畜 百足俱行,相輔為強。三聖翼事,王室寵光。屯之履,晉之坤,遯之復)
百足の蟲衆足齊動し、彼此扶持して因りて强健なり。三位の聖賢國事を輔翼し、王室これによって榮耀して光有り。此の林群策群力し、賢佐人を得るを主とし、合作と仕進とを占問うに皆吉。同辭また「屯の履」「晋の坤」「遯の復」に見ゆ。
頤 危坐至暮,請求不得。膏澤不降,政戾民忒。泰之離,需之頤,漸之坎)
端坐して日暮に至るまで守候す、請求する所の事仍ほ着落なし。恩澤膏雨のごとく降下せず、政令乖戾にして百姓變を生ず。此の林上情達せず、下情通ぜざるを主とし、干求と官事とを占問うに皆遂わず。同辭また「泰の離」「需の頤」「漸の坎」に見ゆ。
大過 百川朝海,泛流不止。路雖遼遠,無不到者。
百川大海に奔赴し、滔滔として流れ曾て停歇せず。道路遙遠なると雖も、到らざる一條もなし。此の林衆望の歸する所、志有れば竟に成るを主とし、遠行と事を謀るとを占問うに終に必ず成るを得、吉。
坎 乘騮駕驪,東至於濟。遭遇仁友,送我以資。厚得利歸。
赤馬を騎り黑馬を駕し、東に濟水の濱に來到す。路上仁厚の朋友に遇見し、我に盤纏資財を贈り、厚利を滿載して歸る。此の林行きて貴人に遇い、利を獲ること豐厚を主とし、出行して財を求むるを占問うに大吉。
離 禮壞樂崩,陰請不當。成子傲慢,為簡生殃。欲求致理,力疲心爛。
禮制敗壞し樂章崩廢し、暗中請託全く法度に合せず。陳成子驕橫傲慢にして、齊簡公に殺身の禍を招來す、事《左傳》哀公十四年に見ゆ。治理を求得せんと想うも、只だ力盡き心焦るを落得す。此の林權臣主を凌ぎ、政亂れて救い難きを主とし、國事と官事とを占問うに皆凶。
咸 一人輦車,乘入虎家。王母貪饕,盜我犁牛。
一個の人車子を推して、徑直に虎狼の家に闖進す。あの王母貪婪にして厭無く、我が田を耕る牛をも偷走す。此の林自ら險地に投じ、財物奪はるるを主とし、財を求めと人に託するとを占問うに皆凶。
恆 羊頭兔足,少肉不飽。漏囊敗粟,利無所得。渙之艮)
只だ一個の羊頭・幾隻の兔脚を得、肉太少くして肚子を填飽せず。口袋破漏して粟米霉壞し、利益一の得る所なし。此の林獲る所微薄にしてまた得に隨いて失うを主とし、財を求むるを占問うに大利ならず。同辭また「渙の艮」に見ゆ。
遯 新田宜粟,上農得谷。君子懷德,以千百福。恆之離)
新開墾の田地粟を種るに適し、勤力の上等農夫滿倉の谷子を收得す。君子心に徳行を懷き、因りて千百種の福氣を招來す。此の林耕耘して獲有り、徳厚くして福隨うを主とし、農事と家運とを占問うに皆吉。同辭また「恒の離」に見ゆ。
大壯 夷羿所射,發輒有獲。雙鳧俱得,利伐王國。
東夷の后羿弓を張りて射獵し、一箭を發すれば每に斬獲有り、一箭便ち兩隻の野鴨を射得す。此を以て兵を出して敵國を征伐するも利有り。此の林箭虛發なく、事を擧ぐれば必ず成るを主とし、征戰と謀取とを占問うに皆吉。
晉 鳧舞鼓翼,嘉樂堯德。虞夏美功,要荒賓服。
野鴨翅膀を鼓動して翩然として起舞し、唐堯の聖徳を歡慶す。虞舜と夏禹功業美盛にして、極邊遠の要服・荒服の地すらも來りて歸順す。此の林徳化遠く播れ、四方賓從するを主とし、國事と遠交とを占問うに皆吉。
明夷 登丘上山,對酒遇歡。終年卒歲,優福無患。
土丘に登上し高山に攀上し、美酒に面對して喜慶に逢う。一年到頭、福澤優裕にして禍患なし。此の林高に登りて意を得、終歲安樂するを主とし、諸事を占問うに皆吉。
家人 歲暮花落,陽入陰室。萬物伏匿,藏不可得。
一年將に盡きんとし、花朵凋落し、陽氣幽暗の室に退入す。萬物潜伏隱匿し、藏起すれば再び尋着けず。此の林時過ぎ境遷り、求む所着無きを主とし、人を尋ね物を覓るを占問うに皆得ず。
睽 螟蟲為賊,害我禾穀。簞瓶空虛,飢無所食。
螟蟲肆虐して災を成し、我が莊稼を毀壞す。飯箪と水瓶と皆空空如也、饑餓して食う可き糧なし。此の林蟲害歲歉し、家餘儲無きを主とし、農事と衣食とを占問うに皆凶。
蹇 陽虎脅主,使德不通。炎離為殃,年穀患傷。
陽虎季氏を挾持し國君を脅迫し、徳政をして通行する能わざらしむ、《左傳》定公八年其の魯に亂を作すを載す。烈火の災禍殃と成り、當年の穀物大いに損傷を受く。此の林權臣擅に命じ、天時順わざるを主とし、國事と農事とを占問うに皆凶。
解 四馬共轅,東上泰山。騂驪同力,無有重難。與君笑言。渙之豐)
四匹馬同じく一轅を拉し、東に泰山に攀上す。赤馬と黑馬と心を齊しく力を合し、再び重き路も艱難を覺えず、還て您と談笑して行く能くす。此の林同心協力して、艱險越る可きを主とし、出行と事を共にするとを占問うに皆吉。同辭また「渙の豐」に見ゆ。
損 牧羊稻園,聞虎喧讙。畏懼悚息,終無禍患。隨之漸,井之否,中孚之小過)
稻田邊に羊を放ち、忽然老虎の喧鬧の吼聲を聽聞す。呼吸を屏り戰栗して安んぜざるに嚇かされると雖も、最終卻って平安にして事なし。此の林虛驚一場、險有りて傷なきを主とし、諸事を占問うに驚きて凶ならず。同辭また「隨の漸」「井の否」「中孚の小過」に見ゆ。
益 陽花不時,冬實生危。憂多橫賊,生不能服。崑崙之玉,取求必得。
陽氣の生ずる所の花時令に按じて開放せず、冬天結實は本來危殆の兆なり。憂患多くして橫禍相い侵す、生きても安順を得難し。幸いに崑崙山の美玉、前去して求取すれば必ず手に到手す。此の林時序錯亂して憂中獲有るを主とし、占問うに先に險にして後に得。
夬 高阜所在,陰氣不淋。洪水不處,為家利寶。
高高の土岡の上に住し、陰濕の氣浸上せず。洪水此に淹れ到らず、此の塊の高地便ち一家の利と寶と成る。此の林高を擇びて險を避け、家業保を得るを主とし、居宅と産を置くとを占問うに皆吉。
姤 釋然遠咎,避患革害。田獲三狐,以貝為寶。君子所在,安寧不殆。
心中釋然として災咎に遠ざかり、禍患を躲開し損害を革除す。田獵して三隻の狐狸を捕得し、また貝幣のごとき寶貨を得、語本《易・解》の九二爻辭なり。此の林害を除きて利を得、身安くして危なきを主とし、出行と財を求むるとを占問うに皆吉。
萃 兩目失明,日奪無光。脛足跛曳,不可以行。頓於丘旁,亡妾莫逐。嵬然獨宿。
兩眼失明し、太陽光亮を奪去せらる。小腿脚跛して、拖いて路を成さず。山丘の旁に困頓し、妾室逃走するも追趕する力無く、只だ孤零零として獨宿するを得。此の林身殘して助を失い、家人離散するを主とし、疾病と家事とを占問うに大凶。
升 鴻飛循陸,公出不復,伯氏客宿。中孚之同人)
鴻雁高地に沿いて飛行し、主人門を出でて一去して返らず、伯氏只だ外に寄宿して客と做るを得。《詩經・豳風・九罭》に「鴻飛びて陸を遵り、公歸りて復たせず」の句有り。此の林遠行して歸らず、外に羈旅するを主とし、歸期を占問うに卜り難し。同辭また「中孚の同人」に見ゆ。
困 佩玉累蕊,無以繫之。孤怨獨處,愁哀相憂。一作桑方云云)
佩玉一串串花蕊のごとく垂るれど、卻って繫住する可き絲帶無し。孤獨怨恨して獨り居處し、憂愁悲哀相接續す。此の林美質託する所無く、孤苦して依無きを主とし、婚姻と依託とを占問うに皆遂わず。一本此の條「桑方將落」云々と作る。
井 載船渡海,雖深何咎。孫子俱在,不失其所。
船に乘りて海を渡る、水深しと雖も又何の災禍有らん。子孫皆身邊に在り、各々其の安身の處を失わず。此の林舟楫恃む可く、家を擧げて安穩なるを主とし、出行と家宅とを占問うに皆吉。
革 鵠求魚食,道遇射弋。繒加我頸,繳縛兩翼。欲飛不能,為羿所得。
鵠鳥魚を尋ねて饑を充さんとし、半路射獵の人に遇上す。絲繩頸脖を套住し、繳線雙翅を縛住し、飛ばんと想うも飛動かず、終に后羿のごとき善射の者の捉える所と爲る。此の林食を貪りて彀に入り、身羅網に陷るを主とし、利を求むるを占問うに反つて其の困を受くる、凶。
鼎 泥面亂頭,忍恥少羞,日以削消。
滿臉污泥して頭髮蓬亂し、耻辱を忍受して羞慚を知らず、家業一天天削减消亡す。此の林頹敗して自ら棄て、日に就て衰微するを主とし、家運と名聲とを占問うに皆凶。
震 桑方將落,隕其黃葉。失勢傾倒,如無所立。一作佩玉云云)
桑樹將に凋零せんとし、紛紛として枯黄の葉子を落下す、《詩經・衛風・氓》正に桑落を以て色衰に喩う。人憑恃を失して傾倒し、站つも站たざるに似たり。此の林盛極まりて衰え、勢を失いて依無きを主とし、家道と恩寵とを占問うに皆衰替を主とす。一本此の條「佩玉累蕊」云々と作る。
艮 巨蛇大□,戰於國邦。上下隔塞,主君走逃。巽之臨)
巨蛇と大獸と國中に相い鬥い、上下音信阻隔壅塞し、國君只だ出走逃亡するを得。此の林異物の國中に鬥うを以て內亂大作に比喻す、國事と家事とを占問うに皆凶、遠避するに宜し。同辭また「巽の臨」に見ゆ。
